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「認知症買い物セーフティーネット」普及事業

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「認知症買い物セーフティーネット」普及事業
2009−10
活動名称
「認知症買い物セーフティーネット」普及事業
−認知症になっても安心して買い物ができる地域づくり−
活動要旨
日常生活に欠かせない“買い物”を通して、買い物安心マークを普及することにより
地域の中で認知症の人と家族を見守る支援のネットワークをつくる取り組みを行って
応募者
いる。
特定非営利活動法人 HEART TO HEART 尾之内 直美
連絡先
〒477-0034 愛知県東海市養父町北堀畑 58-1
0
【概要】
日常生活に欠かせない“買い物”を通して、
買い物安心マークを普及することにより地域の
中で認知症の人と家族を見守る支援のネットワ
ークをつくろうという取り組みです。
<きっかけは介護中のスタッフの声>
NPO法人HEART TO HEARTは、認知症の人と
家族の会愛知県支部の世話人と福祉医療関係者が中心
となって平成16年に発足しました。年々深刻化する認知症に対して、家族の会のボラン
ティア活動だけでは支援の限界があるため、それを側面からサポートし、より充実した支
援につなげていくことを大きな目的としています。家族の会と連携しながらの活動のため、
NPOのスタッフは介護経験者も多くいます。
スタッフ会議の中で、
「押し入れにいっぱいになった化粧品の山でおかしいと気づいた」
「目を離すとすぐにどこかに行ってしまうので、一緒に買い物していてもヒヤヒヤだ」
「店
員さんが声をかけてくれて助かった」という買い物トラブルの話から、
「認知症になるとこ
んなことが起きることをもっとみんなに知ってもらいたい」
「何か目印があるといいのに」
という声が出たことがきっかけになり、お店や地域の人に、
「①認知症になると買い物トラブルが生じやすい」ことを知ってもらう
「②それを理解して接して欲しい、協力して欲しい」ということを伝え、
地域で認知症の人を見守るシステムを作ろうという取り組みが始まりました。
その方法として、
◇買い物トラブルに対する知識や理解を得るための「DVD・冊子」を作成し、
認知症の勉強会や講演会などを通してお店や地域の人へ配布する。
◇ 認知症を理解し取り組みに賛同し協力してもらえるお店には、お互いの目印
として「買い物安心マーク」を張ってもらう、マークが張ってあるお店を増やし、
どこでも安心マークが張ってある地域づくりへの取り組みを通して、地域の中に
「認知症買い物セーフティーネット」の機能を構築していく。
<取り組みの流れ>
「買い物部会」の発足(NPO法人内)
介護経験のある人などに呼び掛け、冊子・DVD作成・啓発のための学習会な
どに携わってもらえるボランティアを募集し「買い物部会」を組織しました。
東海市に「買い物セ―フティーネット」の提案と協力の依頼
市民協働課・保健福祉課・商工労政課・社会福祉協議会との支援連携のもとで
取り組みを実施していくことを了解し合いました。
実態調査の実施
認知症の人と家族の会愛知県支部にアンケート調査を依頼し、買い物の実態調
査を行いました。
「実行委員会」の発足
コミュニテイ・老人会・家族会等関係者が集まり、地域の中で取り組みを進め
て行く核となる「実行委員会」を発足しました。
「意見交換会」の発足
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大型スーパー・商工会議所・家族など実際に買い物に携わる人どうしが情報交
換する場として「意見交換会」を発足しました。
買い物安心マークの公募
目印となるマークを新聞・市の広報・ホームページなど公募にて募集しました。
採用作品には5万円の副賞
買い物安心マークの決定
学識経験者・市長・マスコミ関係者等にマーク選考委員をお願いし、選考委員
会にてマークを選考決定しました。
マークの発表および認知症講演会の開催
マークの表彰式を行い、認知症のことを知ってもらうための講演会を開催
して、地域の皆さんに取り組みをお知らせしました。
この講演会は認知症サポーター養成講座として実施し、オレンジリングの普及も
合わせて行いました。
表彰式
兵庫県の小柴さん(プロデザイナー)の作
品が選考されました。
講演会の様子
買い物安心マーク(愛称募集中)
会場いっぱいの人に熱気ムンムン
※
DVD・冊子の制作 (完成21年12月)
介護経験のあるボランティアが集まり
認知症の人の買い物トラブルについて
知ってもらうための、DVD・冊子の
作成を行っています。
冊子は、子どもたちにも分かりやすい
ように全ページマンガで作っています。
※
多くのお店や地域の人に普及できるよう、
東海市においてキャラバンメイトを養成し
認知症サポーター養成講座とタイアップし
て普及啓発活動を進めていきます。
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ひなた
あ た ろ う
日向 明太郎じいちゃんの活躍
【地域の紹介】
東海市は、知多半島の西北端に位置し、西は伊勢
湾に面し、北は名古屋市、東は大府市、東浦町、南
は知多市に接しており、名古屋市の中心地区まで約
15 キロメートルに位置しており、中部国際空港も
近距離にあります。
また、愛知県の主要な工業地域である名古屋南
部臨海工業地帯の一角を形成しており、産業上の
拠点都市としての役割もはたしています。
鉄鋼基地を中心とする一大工業地帯への発展に
よって、全国各地からの急激な人口の流入を生み、
昭和 35 年(1960)∼40 年(1965 年)の人口増加は、
約 23,000 人で、実に 68 パーセントという驚異的
な増加率になり、市域が大変容をとげました。
現在はその世代が高齢化をむかえ、一人暮らし、
老夫婦世帯の増加など年々高齢者問題は深刻な
問題となっています。現在の人口は世帯数 44,510 戸
人口 108,197 人です。
介護保険は3市1町(東海市・大府市・知多市・東浦町)
の広域連合で運営しており、近隣市町村には長寿医療センターや、認知症介護研究・研修大府
センター、日本福祉大学などがあり、様々な社減資源とも連携できる立地条件にあります。
“協働と共創のまちづくり”
東海市では、
『住み続けたい東海市“協働と共創のまちづくり”』と題して、まちづくり市
民委員会を組織して、様々な分野に市民の意見や力を取りいれた活動に取り組んでいます。
団体の提案を「市民協働課」で受け付け、団体と関係部署の担当者が一堂に会しての話し
合いが持たれます。
今回の「買い物セーフティーネット」では、平成20年6月「市民協働課」
「保健福祉課」
「商工労政課」の3つの部署と社会福祉協議会にも加わってもらい、当法人の提案につい
て検討会を行い、東海市からの発信として、行政と協働しながら「認知症安心マークの普
及を通して」地域の「認知症買い物セーフティーネット」構築に取り組むことが決まり、
そこから活動が本格的に始まりました。
“地域におけるNPO法人HEART TO HEART”
当法人は家族の会と連携しながら、地域における家族会の立ち上げ支援など、現在愛知
県下13市町村の委託事業に取り組んでいます。東海市は、地元でもあり数年前から家族
支援プログラムなどを通して地域支援事業を実施しています。買い物の取り組みは、これ
までの東海市との関係が下地となり、スムーズな連携体制につながっています。
平成22年度には、啓発講演会や出前講座について、市との協働事業として予算が確定し
ました。
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【活動の内容】
認知症の人の買い物トラブルの実態を調査するために、
認知症の人と家族の会愛知県支部に依頼しアンケート調
査を実施しました。大変な反響があり624通に対してたったの1週間で208通の返信
がありました。困った経験は家族にとどまらず、サービス事業所の職員などからもたくさ
ん寄せられ、その関心の高さや困りごとの多さを実感しました。しかも病気の初期から重
度になるまで長期にわたり困り事が発生しており、地域の皆さんへの理解を求める声も多
く寄せられました。 アンケートまとめ(活動結果ページに掲載)
実態調査アンケート
<実行委員会メンバー>
実行委員会の設置
コミュニティー
東海市の支援のもと、
「買い物セーフティーネット」
の構築にむけた取り組みの核となる“実行委員会”を
発足しました。
この委員会が活動を進めていくうえでの心臓部と
なっており、今後活動の広がりに合わせて、医師会、
警察、学校関係等々にも呼びかけを行いメンバーを増
やしていく予定です。
老人会
意見交換会の開催
NPO法人(事務局)
商工会議所
社会福祉協議会
認知症の人と家族の会
認知症介護研究・研修大府センター
学識経験者(日本福祉大学)
介護サービス関係者
東海市(オブザーバー)
マークの普及もネットワークもお店側の理解と協力
がなくては、取り組みは進みませんので、東海市内の
4つの大型スーパーおよび商工会議所・介護家族・施
設職員・市役所(商工労政課・市民協働課・保健福祉
課)が集まり“意見交換会”を発足しました。
お互いが情報交換しながら連携し合えるよう、毎年
1回∼2回程度開催し、交流を深めています。
ライバルともいえる店舗の皆さん同士が集まる機会は、他ではないということで、お互いに名
刺交換したり、この取り組みを通して、違った意味合いでもいい機会となっているようです。
買い物安心マークの募集・決定まで
買い物安心マークを、新聞、ホームページ、デザイン関係の大学や専門学校、家族の会会
員などに呼び掛け広く募集しました。東海市では広報に掲載し、一般市民からの応募を募
りました。マークの選考には、様々な分野から委員としてご協力いただき、選考委員会を
開催して決定しました。
買い物安心マーク選考委員
名古屋学芸大学
教授
河村 暢夫 (委員長)
東海市役所
市長
鈴木 淳雄
東海市商工会所
会頭
木下 善雄
愛知県社会福祉協議会
事務局長 西尾 昭雄
認知症介護研究・研修東京センター
センター長
NHK名古屋放送局
チーフプロデュ-サー 小野 昭一
認知症の人と家族の会愛知県支部
副代表
河合 静子
NPO法人HEART TO HEART
理事長
尾之内
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長谷川 和夫
直美
約80件の応募マーク
小学4年生から70歳代まで、一般の人から
プロの人まで幅広い応募がありました。
「認知症買い物セーフティーネット」への、
マスコミの関心は高く、マーク決定はどこの
新聞でも大きく取り上げていただきました。
冊子・DVDの作成
お店や地域の人に、認知症のことや買い物トラブルについての知識を持ってもらうための、
冊子・DVDを作成しています。DVDには、大型スーパーなどの協力を得て、困った経
験を持つ家族の生の声なども盛り込み、お互いの経験を交換できるものです。
冊子は、介護経験のある家族がアイデアを出し合って作成していますが、誰にでも理解で
きるようにマンガを使っています。
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マーク表彰式・講演会の開催
開催日 平成21年3月6日(金)
テーマ:地域で支える認知症
◇「認知症買い物セーフティーネット」
買い物安心マーク決定!!
◇ 特別講演「安心して暮らせる老後を目指して」
講師 長谷川和夫氏
◇ 認知症介護の仕方を学ぼう
ディスカッション
講演会では作成中のDVDの試写会も
参加者
220名
開催しました。
<取り組みの特徴>
◇ これまで、
“高齢者の買い物に同伴する”
“買い物代行”の取り組みは各地で行われてい
ますが、買い物の見守り支援を通しての地域づくりは、全国的にも新しい試みです。
◇ 認知症になっても、自分で買い物ができる期間が長くなり、住み慣れた場所での社会生
活の継続が可能となる為、認知症の進行予防にもつながります。
◇ 買い物は認知症の初期の頃から関わることができますので、病気が進行し徘徊が始まっ
た時には徘徊ネットワークとして機能することができます。
◇ 買い物は子供からお年寄りまで、誰にとっても身近な事柄であり、より手軽に幅広
いネットワークづくりができます。
◇ 今後“独居の認知症高齢者”や“認認介護”が増加すると、さらに見守り支援の必
要性が高まると思われますが、どこの地域でも活用できるものです。
<行政の意識の変化>
買い物トラブルに関しての困りごとは頻度は多くても“徘徊”
“高齢者虐待”と比べて命に
かかわる可能性が低いため、当初行政内ではまったく重要視されていませんでしたが、ア
ンケートや家族の声を伝えることで徐々に理解が深まってきました。買い物というツール
を通して、認知症対策が保健福祉課だけでなく、商工労政課、市民協働課といった複数の
課が関わり庁舎内の横断的取り組みとして進められていることはとても先駆的なことです。
今後は、さらにマンガを活用して子どもたちへの啓発など学校教育課や社会教育課などに
も参画していただけるよう働きかけていきたいと考えています。
<店舗の意識の向上>
多くの家族が困った経験を持ち、お店や地域への理解を求めているにも関わらず、第一回
目の“意見交換会”では、取り組みの必要性を感じているお店はなく、お店側の“認知症”
に対する知識や認識はとても温度の低いものでした。
しかし、話し合いを進める中で、認知症という病気を知らないことで、買い物トラブルに
気がついていないとか、個々には現場で対処されていても場あたり的になっていて、その
情報がお店全体に共有化されていないなどの実態もわかり、
“意見交換会”という情報交換
の場を作ること自体にも大きな意味合いがありました。
今後、各店舗で、認知症キャラバンメイトによる出前講座などを実施し、従業員の人への
啓発や協力を呼びかけて、マークの普及に取り組みいたいと思っています。
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【活動の成果と今後の展望】
アンケート調査考察
アンケート調査結果から,現在買い物に出かけるという認知症の人が約
半数を占め,その中の 60%以上が週に 1 回以上買い物に出かけており,買い物が日常生活と切
り離すことができない実態が明らかになった.家族は店舗でのトラブルを 4 割近くが経験し,
専門職も 8 割近くが実際の経験・相談経験がある.この点から,認知症の人の買い物に関する
支援ニーズは潜在的に存在していると言える.
家族や専門職が記入した,実際のトラブル内容や,店舗や行政に要望などから,具体的にど
のような支援や体制づくりが求められているのかが明らかになり,そこから得られた視点が買
い物支援プログラム開発に活かされた.
また,買い物をする店舗は徒歩圏内の地域の店舗が多く,認知症の人が一人で買い物に出か
ける可能性も 4 割以上あった.よって,買い物の支援は,店舗の協力も含め,地域で支えると
いう視点が不可欠である.地域にある店舗を,認知症の人を地域で支える社会資源として活用
するという点は,新たな取り組みであり,このプログラムの大きな特徴でもある.今後は,こ
のような特徴を備えた買い物支援プログラムを推進していくことが必要であり,またそのこと
が安心して生活できる町づくりそのものにつながっていくと考える.
(作成・.・・家族の会愛知県支部研究班・認知症介護研究・研修大府センター)
アンケート調査により実態が明らかになることで、行政やお店などへ認知症の人の買い物
支援の必要性をアピールすることができました。この結果は 10 月の認知症ケア学会で報告
の予定です。
介護経験が活きる地域づくり
より多くの人たちに呼び掛けができるよう、東海市においてキャラバンメイトを養成し、
認知症サポーター養成講座と合わせて普及活動に取り組みます。
メイト養成講座には、介護経験のある家族にも受講してもらい、地域の家族会のメンバー
がメイトとして普及活動に参加することで、これまで苦労してきた家族の介護経験が地域
の社会資源として、活かしていけるよう取り組みます。
<実施計画>平成 21 年度 コミュニティ認知症研修会・大型店舗認知症出前講座
平成 22 年度 講演会 1 回 出前講座(一般)6 回 商工会議所 希望団体
地域みんなでコラボレーション
買い物安心マーク普及の取り組みは、まだ始まったばかりです。どこのお店にも賛同を
得てマークが張ってある地域づくりに至るまでには、まだまだ時間がかかります。
しかし当法人からの「認知症買い物セーフティーネット」構築の発信が、多くの皆様の賛
同を得て、コミュニティ・老人会・行政・店舗など様々な人たちのコラボレーションによ
り認知症の人の生活全般をサポートする地域での見守り支援の仕組みづくりへと発展して
きていることは、ぼけても安心して暮らせる地域づくりの第一歩でもあります。
今後さらに認知症介護研究・研修大府センターなどの協力も得ながら、近隣市町村にもネ
ットワークを広げいき、大型店舗には、市内だけでなく市外、県外の店舗にも取り組みを
働きかけていきたいと計画しております。
ひなた
あ た ろ う
あわせて「マンガ 日向 明太郎じいちゃん」の活躍を通して、子どもから高齢者まで、
病気のことをわかりやすく伝える工夫にも取り組んでいきたいと思います。
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