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上記6調査研究課題一括(PDFファイル 7673KB
雑豆需要促進研究情報収集事業
平成 20 年度採択課題成果(要約版)
平成 20 年 11 月
(財)日本豆類基金協会
雑豆需要促進研究情報収集事業
平成 20 年度採択課題一覧
調査研究テーマ
調査研究1
調査研究2
調査研究3
調査研究4
調査研究5
調査研究6
調査研究組織
抗花粉症糖鎖薬剤開発に向けた雑豆糖タン 国立大学法人
パク質糖鎖のグライコミクス解析
岡山大学大学院
雑豆由来色素のメタボリック症候群改善作用 国立大学法人
に関する研究
京都大学大学院
インゲン豆を用いた新規味噌の開発
東横学園
女子短期大学
小豆粉を用いた新食感アロマパンの製法と 国立大学法人
その評価に関する研究
雑豆を用いた新種焼酎の開発
世界の豆料理の精査による、若い日本人の
嗜好にあった豆料理の提案
高知大学
研究者(代表者)
木村 吉信
河田 照雄
谷口亜樹子
河野 俊夫
別府大学
高松 伸枝
聖徳大学
吉田 真美
調査研究の要約
1. 調査研究テーマ:
抗花粉症糖鎖薬剤開発に向けた雑豆糖タンパク質糖鎖のグライコミクス解析
2. 調査研究組織:
代表者
木村 吉伸
共同研究
者
木村万里子
岡山大学大学院
・教授
くらしき作陽大
学・講師
生物化学
食品生化
学
九州大学大
学院 博士
課程
鹿児島大学
連合大学院
博士課程
農学博士
研究全般
博士(農学)
糖鎖の調
製・精製
3. 調査研究目的
植物種子中には強力な抗原性を有するオリゴ糖鎖が多く存在し,植物アレルギー発症に関与
する可能性が示唆されている。ほとんどの植物アレルゲンタンパク質には抗原性糖鎖が結合
することから,それら抗原性糖鎖の化学構造同定とそれら糖鎖を除去した食品タンパク質の
調製も試みられている。しかしながらその一方で,アレルゲン性タンパク質に結合する抗原
性糖鎖を遊離型にした場合,T-細胞からのアレルギー関連サイトカイン分泌を抑制すること
を既に我々は見いだしている。この事実は,植物抗原性糖鎖が抗アレルギー薬剤として利用
可能であることを示唆する。そこで今回の申請課題では,これまで解析されることのなかっ
た雑豆に注目し,そこに存在するオリゴ糖鎖について,化学構造特性や免疫活性を調査研究
することにより,新たな機能性オリゴ糖鎖の発掘を試みるとともに大量生産系を構築する。
更に,雑豆中の糖タンパク質に結合するオリゴ糖鎖のカタログ化を行うことで,有用糖鎖の
供給資源としての雑豆利用を試みる
4. 調査研究方法と結果
13 種の雑マメ(アズキ,ウズラ豆,虎豆,大納言,金時,白花,紫花,ひよこ豆,蚕豆,白刀豆,
ササゲ,赤エンドウ,大福豆:各々100g)を粉砕脱脂後,熱湯 500ml を注ぎ熱処理および超音波処理
(15 分)を行い,タンパク質を変性させた。冷却後,3%になるようにギ酸を加え pH を約 2 に調整
後,ペプシン(200 mg)を添加し,37℃で 2 日間インキュベートすることによりタンパク質分解を行
った。消化後,消化物を透析チューブに入れて脱塩水(3L)に対して透析(4℃,2 日間)を行った。
得られた透析外液を減圧濃縮(50ml)後,Dowex 50 x 2 カラム(4 x 30 cm)に供与し,非吸着画分を
3%ギ酸で十分洗浄した後,0.1N アンモニア水溶液(500ml)を添加することにより糖ペプチドを溶
出させた。糖ペプチドを凍結乾燥後,ヒドラジン分解により糖鎖を遊離させ,還元末端を 2-アミノピ
リジンで蛍光標識した。その後,蛍光標識糖鎖を 2 種のカラムを組み合わせた HPLC により精製した
後,それぞれの化学構造を質量分析計,核磁気共鳴分析,グリコシダーゼ分解法により解析した。ま
た,試料によっては,複合型糖鎖とハイマンノース型糖鎖を Con A アフィニティーカラムにより分離
した後,それぞれを構造解析に供した。
本年度,上記 13 種の雑豆糖タンパク質糖鎖について構造解析を行った。その結果,すべての雑豆由
来糖タンパク質には β1-2 キシロース・α1-3 フコースを有する抗原性糖鎖が結合することが明らかとな
ったが,相対量としてはハイマンノース型糖鎖の存在量が多いことが特徴的であった。分泌型植物糖
タンパク質には複合型(抗原性)糖鎖が主要構造を占めるのとは対照的であった。また,雑豆種類によっ
て糖タンパク質の存在量が大きく変動することが明らかとなり,貯蔵タンパク質を糖タンパク質とし
て生合成する意義が植物種特異的に存在する可能性が推察され興味深い。例えば,インゲン属の 5 種
雑豆(金時,ウズラ,虎豆,大福豆,紫豆)は,いずれも糖タンパク質含量が高く,しかもハイマン
ノース型糖鎖が主成分となっている(図 1,2)一方,ソラマメ属,エンドウ属,ナタマメ属,ヒヨコ
マメ属の雑豆には糖タンパク質含量は少なく,白刀豆では糖タンパク質性の貯蔵タンパク質が殆ど生
合成されていないことがわかった。更に,ササゲ属においては,小豆と大納言は糖タンパク質含量が
多いのに対して,ササゲでは白刀豆同様に糖タンパク質含量が極めて少ないことがわかった。本研究
課題の目的の一つである「抗原性糖鎖 (Man3Xyl1Fuc1GlcNAc2)の多量調製」にとっては,大福豆及び
紫豆の糖タンパク質が使用可能であることがわかった。一方,ハイマンノース型糖鎖(Man9GlcNAc2,
Man8GlcNAc2)はリソソーム病治療のための糖タンパク質薬剤開発にとって極めて重要な糖鎖であり,
この種の糖鎖を有する短鎖糖ペプチドの大量調製は薬剤開発に不可欠である。この目的には,虎豆
(Man9GlcNAc2),大納言(Man8GlcNAc2)
,小豆(Man7GlcNAc2)が有用な雑豆となる。これら雑豆
に含まれる糖タンパク質に結合する糖鎖は構造不均一性が比較的小さく,構造均一な糖ペプチドの調
製にとって有用な供給資源としての利用が期待できる。今後は,本研究データをもとに有用糖鎖含有
糖ペプチドを適切な雑豆より調製した後,糖タンパク質性薬剤創製への応用を試みる計画である。
以下に本研究の概要を箇条書きでまとめる。
1. 蚕豆( ソラマメ属 ),赤エンドウ( エンドウ属 )
,白刀豆( ナタマメ属 )
,ひよこ豆( ヒヨコ
豆 ),ささげに含まれる N-グリカン量は相対的に低く,糖鎖多量調整には適さない。その一方で,
未知高分子構造糖鎖の存在量が相対的に多い。
2. 小豆,大納言,虎豆由来の糖タンパク質糖鎖には構造不均一性があまり見られず,それぞれ
Man7GlcNAc2,Man8GlcNAc2,Man9GlcNAc2 が主要構造であった。この 3 種雑豆からの N-グリカ
ン収量は高いので高分子ハイマンノース型糖鎖の供給源として適した雑豆といえる。
3. 金時,ウズラ豆,大福豆,紫豆由来の糖タンパク質糖には,高い構造不均一性がみ見られ,Man9
∼5 GlcNAc2 がほぼ均等に存在する。
4. 大福豆,紫豆には,25∼30%程度の抗原性糖鎖が含まれており,糖鎖収量も多いため,この 2 種雑
豆は抗アレルギー糖鎖薬剤調製のために適した雑豆であると考えられる。また,新規構造のハイマ
ンノース型糖鎖が存在することが明らかとなった。
5. ルイス a 含有(Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAcβ1-) N-グリカンは,いずれの種子タンパク質からも検出さ
れなかった。
図1. 雑豆糖タンパク質糖鎖(N-グリ
カン)存在量の比較
図 2. 雑豆糖タンパク質糖鎖(N-グリカン)のサイズ
フラクショネーション (SF-) HPLC プロファイル
M4~M9 = Man4GlcNAc2-PA ~ Man9GlcNAc2-PA
1.調査研究テーマ
健康維持・増進に関する研究:「雑豆由来色素のメタボリック症候群改善作用に関する研究」
2.調査研究組織名及び研究者名
氏名
所属機関・職名
現在の専門
最終卒業学校
学位
役割分担
代表者
河田 照雄
京都大学農学研究
科・教授
食品機能学
平井 静
京都大学農学研究
科・博士研究員
食品栄養学
永井 宏幸
京都大学大学院農
学研究科・博士課
程大学院生
食品機能学
京 都 大
学 農 学
博士
京 都 大
学 博 士
(農学)
京 都 大
学 修 士
(農学)
総括および試料
調製
共同研究
者
京都大学大学
院農学研究科
博士課程
同上
京都大学大学
院農学研究科
修士課程
生理活性機能
評価
構造活性相関
解析
3.調査研究の目的
新しい生活習慣病の疾患概念として規定されたメタボリック症候群は、内臓脂肪蓄積を
発症基盤として、冠動脈疾患発症のリスクを 30 倍以上増加させ、死亡率を著しく高める。
このことは 2002 年の WHO の世界の死因の第一位が冠動脈疾患であるとの報告とあいまっ
て、現在の世界的な社会的問題となっている。報告者らは、肥満状態の内臓脂肪蓄積異常
が、脂肪組織での脂肪細胞とマクロファージ間の炎症反応を引き起こし、その際生成・分
泌されるサイトカイン、ケモカインや一酸化窒素がインスリン抵抗性や動脈硬化の直接的
な発症要因になることを報告してきた 1-3)(図1)。
そこで本調査研究においては、我が国の伝統的な行事、例えば無病息災、健康を願う慶
事の際の食物の「彩り、色付け」として活用されてきた、小豆やささげなどの雑豆の有用
色素、特にアントシアニンとその生体内代謝物(図3)の抗炎症作用を検討することによ
り、雑豆の有する健康・維持増進作用をメタボリック症候群の予防・改善の新たな観点か
ら評価することを目的とした。
4.調査研究の方法
(1) 雑豆色素の調製:抗炎症機能評価のための試料として、小豆やささげなどの雑豆の
代表的な色素であるアントシアニン(シアニジン、シアニジン 3-グルコシド、ペオニジ
ン、デルフニジン、ペチュニジン、マルビジン)、合計6種類の化合物について調達、調
製を行った。また、アントシアニンの生体内吸収および代謝を考慮して、主要な生体内代
謝物であるプロトカテキュ酸についても調製を行った。それらの名称、略号および化学構
造式を図3に示した。
(2) 雑豆色素の抗炎症作用評価:報告者らは、in vitro で脂肪細胞とマクロファージそ
れぞれの炎症反応を評価することができる細胞培養系を確立した。さらに、それらの共培
養系を確立することにより、肥満状態での脂肪組織におけるマクロファージの浸潤を含む
炎症状態の増悪連鎖モデル系を構築し、上記(1)で調製した雑豆色素の抗炎症作用を抗
炎症薬剤(BAY)と比較しながら評価した。
1
(3) 雑豆色素の抗炎症作用物質の化学構造活性相関解析:上記(2)で明らかとなった
雑豆アントシアニン色素について、化学構造を比較することにより抗炎症作用物質の化学
構造活性相関を検討した。
5.調査研究成果
メタボリック症候群の予防・改善には、図1に概略を示したようにその標的臓器である脂
肪組織における炎症反応を抑制することが極めて有効な方法である 1-3)。そこで本研究では、
まず in vitro 培養細胞系において脂肪組織での抗炎症作用が定量的に測定できる評価系を
構築した。その評価系は、マウス由来のマクロファージ様前駆細胞 RAW264 細胞とマウス
由来の 3T3-L1 脂肪細胞とを共培養した後、リポポリサッカライド(LPS)刺激により
RAW264 細胞をマクロファージに分化させて NO(一酸化窒素)などの炎症性化合物の生
成をもたらす肥満状態下の脂肪組織の炎症モデルとしたものである。その概略を図2に示
した。この系を用いることによりメタボリックシンドロームの改善、予防をもたらす肥満
状態での抗炎症化合物を効率的に探索することが可能となる。
小豆、ささげ、ひよこ豆などの雑豆の代表的な色素であるアントシアニン(シアニジン、
シアニジン 3-グルコシド、ペオニジン、デルフニジン、ペチュニジン、マルビジン)、合計
6種類の化合物とアントシアニンの生体内吸収および代謝を考慮して、主要な生体内代謝
物であるプロトカテキュ酸についても抗炎症作用があるか否かを検討した。
その結果、図4に示したように各種アントシアニンのうち雑豆に多く含まれるシアニジ
ン 3-グルコシド(C3g)、ペオニジン(Pn)、デルフニジン(Dp)には NO 産生抑制を指標とする
有意な抗炎症作用が認められた。特にシアニジン 3-グルコシドは効果的であった。興味深
いことにシアニジン 3-グルコシドの主要な生体内代謝物であるプロトカテキュ酸(PCA)に
も有意な抗炎症作用が認められ、生体内でのアントシアニン類の長期的な機能発現が示唆
された。一方、シアニジン、ペチュニジン、マルビジンにはそのような作用は認められな
かった。シアニジンの非有効性の要因については現時点では不明であるが、ペチュニジン、
マルビジンの非有効性については、アントシアニジン(アグリコン)の B-環の水酸基やメ
トキシル基の数により影響を受け、化学構造活性相関が存在する可能性が示唆された。
雑豆は、その色素および生体内代謝物の抗炎症作用を介してメタボリック症候群の発症
における予防・改善に新たな観点か有効な機能性食材となりうる可能性が示唆された。今
後、作用機序の解明など更なる詳細な研究が大いに期待される。
参考文献
1) 平井
静、後藤
剛、柳
梨娜、高橋
信之、河田
謝」肥満・メタボリックシンドロームと食品機能
照雄:「肥満と脂肪エネルギー代
建帛社
(2008)
2) Kawada T, Goto T. Hirai S. et al.: Dietary regulation of nuclear receptors in obesity-related
metabolic syndrome. Asia Pac. J. Clin. Nutr.17:(Suppl):126-130 (2008)
3) Kim C-S, Kawada T, et al.: Circulating levels of MCP-1 and IL-8 are elevated in human obese
subjects and associated with obesity-related parameters. Int. J. Obesity. 30:1347-1355 (2006
2
<材料と方法>
フィードバックループ
MCP-1
MCP-1
マクロファージ
の浸潤
NO,
マクロファージ TNF-α
細胞:(1) RAW264 (マウスマクロファージ様細胞)
→LPS(リポポリサッカライド)の刺激により、
マクロファージ様に分化.
(2) 3T3-L1 (マウス脂肪細胞)
MCP-1
の活性化
LPS
脂肪細胞とマクロファージの共培養系
脂肪組織の肥大化
特に内臓脂 肪組織
共培養系を用いて機能性
評価:炎症性マーカー、
NO測定
脂肪組織の
慢性的な炎症反応
メタボリックシンドローム
インスリン抵抗性
2型糖尿病
アテローム性動脈硬化症
色素およびその生体内
代謝物添加:24時間
マウス脂肪細胞:3T3-L1
マウスマクロファージ:RAW 264
脂肪細胞 前駆脂肪細胞 マクロファージ
図2 雑豆由来色素の機能性評価系の構築
図1 肥満状態での脂肪組織における炎症反応とメタボリック症候群発症の概念図
肥満状態では、脂肪組織での炎症反応(NO,一酸化窒素などの生成)が
メタボリック症候群の発症において決定的に重要な役割を果たす。
OH
OH
OH
OH
O
HO
OH
+
O
HO
OH
シア ニジ ン
(Cy anidi n:Cy )
OH
HO
O
CH2OH
OH
OH
+
OH
OH
OMe
OH
O
+
OH
O
OH
OH
O
ペオ ニジ ン
( Peon idin: Pn)
プロ トカ テキュ 酸
(Pro tocat echu ate:P CA)
OH
シ アニジ ン 3グル コシ ド
(Cy anidi n 3- gluco side :C3g )
OH
O
HO
OMe
O Me
OH
OH
+
O
HO
OH
OH
+
HO
OH
OH
O
+
OH
OH
OH
OH
OM e
OH
ペチ ュニジ ン
(Pe tuni din:P t)
デル フィニ ジン
(Del phin idin: Dp)
マ ルビジ ン
(Malv idin :Mv)
図3 雑豆類に含まれる各種色素,アントシアニンおよびその代謝物
30
NO 産生量(μM)
25
*
20
*
*
**
15
10
5
**
0
control
BAY
Cy
C3g
PCA
Pn
Dp
Pt
Mv
図4 雑豆類に含まれる各種色素,アントシアニンおよびその代謝物による NO 産生抑制
BAY: 抗炎症薬剤(ポジティブコントロール)5μM
各アントシアニン色素(略語は図3で説明)およびその代謝物は 50μM で測定
** P <0.01, *P <0.05
3
調査研究報告書の要約
1.調査研究テーマ
インゲン豆を用いた新規味噌の開発
2.調査研究組織名及び研究者名
(1)調査研究組織名:東横学園女子短期大学 (現在
(2)研究者名:谷口(山田)亜樹子
鎌倉女子大学)
3.調査研究の目的
本研究では,豆類の加工利用および機能性食品への利用に関する研究の一環
として,米または麦の代わりに炭水化物の成分としてインゲン豆を用い,味噌
の製造を行い,新規味噌の開発を行なった。インゲン豆はデンプンが多く,脂
質が少なく,米または麦の代わりの原料として利用が期待できる。また,イン
ゲン豆はミネラル,ポリフェノール,食物繊維が豊富であることから,インゲ
ン豆により製造された味噌の機能性が考えられる。昨年度は,豆麹を用いて炭
水化物の原料である米または麦の代わりにインゲン豆のみを用いたが,今年度
はインゲン豆および米麹を使用し,味噌の食味の改良,熟成期間の短縮,食品
機能性の向上を目的とした。
4.調査研究の方法
(1)味噌原料:原料に用いたインゲン豆は金時豆,ウズラ豆,大福豆の3種
類(写真 1)を用い,大豆,米は国内産を使用し,種麹は米味噌用種麹を用いた。
食塩は市販の並塩を使用した。
(2)味噌の製造:米麹に蒸煮インゲン豆および大豆を混合して仕込み, 6 ヶ月
熟成させ,製品とした。原料はインゲン豆,大豆,米麹を各々1/3 で配合した。
(3)味噌の一般成分および食品の機能性成分の測定:味噌の一般成分は基準
味噌分析法に準じて測定した。他にγ–アミノ酪酸量,ポリフェノール量,DPPH
ラジカル消去能等を測定した。
4)味噌の官能評価:味噌の評価は「味噌そのもの」と「味噌汁(味噌2g をお
湯 100ml に溶解)にて行った。5段階の評価により実施した。
5.調査研究結果
(1)インゲン豆味噌の一般成分(表1):大福豆味噌は水溶性タンパク質が他の
味噌の約 1.2 倍高く,タンパク溶解率およびタンパク分解率が高く,アミノ酸,
ペプチドが多い熟成の高い味噌であることが推察された。全糖および還元糖と
もに,昨年の豆麹を用いた味噌より高く,特に大福豆味噌が最も多かった。3
種の中では大福豆味噌が最も低分子糖が多く,糖の分解が進んでいることが推
察された。酸度Ⅱは大福豆味噌が高く,アミノ酸,ペプチドの含有量が高いこ
とが推察された。
(2)インゲン豆味噌の遊離アミノ酸量およびミネラル量:大福豆味噌が最も
遊離アミノ酸含量が高かった。各インゲン豆味噌ともにうま味成分であるグル
1
タミン酸が多く含まれていた。P,K,Mg 含量は金時豆味噌が最も高く,灰分
量も金時豆味噌が最も高く,これは原料のインゲン豆と相関性が考えられた。
米味噌に比べ,インゲン豆味噌は 1.4〜2.1 倍ミネラル含量が高かった。
(3)インゲン豆味噌の食品の機能性(表2)
:米麹を用いたインゲン豆味噌の
γ–アミノ酪酸量は豆麹を用いるより約 2 倍の含量であり,高い機能性がみられ
た。ポリフェノール量は大福豆味噌が多く,熟成中に生成されることが推察さ
れた。インゲン豆味噌は高い抗酸化作用があることが確認され,機能性の味噌
であることが確認できた。
(4)味噌の官能検査:大福豆味噌の評価が高かった。各味噌ともインゲン豆
特有のうま味があり,大豆味噌よりまろやかで,甘味のある味噌であった。イ
ンゲン豆味噌の製品を写真2に示した。
(5)味噌熟成中の成分の経時的変化:pH,水溶性窒素量,糖量について,仕
込み後直後,熟成 3 か月,6か月(熟成終了後)の経時的変化調べたところ,
味噌熟成の前半で糖の低分子化がみられ,後半にタンパク質の低分子であるペ
プチド,アミノ酸が多く生成されることが推察された。その結果,熟成の前半
より後半の方が pH の低下がみられ,熟成の進行が確認された。
インゲン豆を用いた味噌製造は本研究が初めての試みであり,その食品の機
能性について調べることができた。インゲン豆を用いて味噌を製造することは
充分可能であり,今後,インゲン豆の新たな利用が期待される。インゲン豆味
噌は米味噌にないインゲン豆特有のうま味のある味噌になり,ミネラル,ポリ
フェノール含量が高く,抗酸化作用など機能性のある味噌になり,商品価値の
高い味噌となった。
金時豆
ウズラ豆
大福豆
写真 1
試料に用いた3種類のインゲン豆
2
表1
インゲン豆(金時豆,ウズラ豆,大福豆)味噌の一般成分
金時豆味噌
ウズラ豆味噌
大福豆味噌
1.58
0.74
0.33
46.8
20.9
23.2
15.5
5.48
7.5
6.2
12.0
43.4
19.32
1.54
0.85
0.35
55.2
22.7
23.5
19.6
5.34
7.6
6.0
12.3
44.6
18.76
1.48
0.92
0.38
62.2
25.7
23.7
20.8
5.30
0.6
8.0
11.2
45.1
18.44
全窒素量(%)
水溶性窒素量(%)
ホルモール窒素(%)
タンパク溶解率(%)
タンパク分解率(%)
全糖量(%)
直接還元糖(%)
pH
酸度Ⅰ(ml)
酸度Ⅱ(ml)
食塩(%)
水分(%)
灰分(%)
表2
インゲン豆味噌の食品の機能性
金時豆味噌
うずら豆味噌
大福豆味噌
γ—アミノ酪酸量(mg/100g 味噌)
15
15
18
ポリフェノール量(mg/100g 味噌)
260
279
313
抗酸化作用(molTrolox/100g 味噌)
0.186
0.170
0.157
金時豆味噌
写真2
ウズラ豆味噌
大福豆味噌
製造したインゲン豆味噌
3
1.調査研究テーマ
新需要開発に関する研究
「小豆粉を用いた新食感アロマパンの製法とその評価に関する研究」
2.調査研究組織名及び研究者名
(1)調査研究組織名
国立大学法人
高知大学
(2)研究者名
代表者
農学部
准教授
河野俊夫
3.調査研究の目的
小豆はパン材料としては全粒のまま用いられることがほとんどであるが、製粉小豆を用
いたパン生地にはピーナッツ様の芳香がある。しかし、発酵から焼成に至る製法が適切で
ないと、膨化率の高い、ふんわりした製パンを得ることは難しい。そこで本調査研究では、
小豆粉を用いた新しい食感アロマパンに必要な製法を調査研究し、その製パン品質を評価
した。
4.調査研究の方法
供試材料の小豆には平成 19 年度北海道産のものを用い、蒸留水 190mL、強力粉 280g、砂
糖 22g、脱脂粉乳(森永乳業)4.5g、ショートニング(ニップン)20g、ドライイースト(日清フ
ーズ)2.7g を「基準配合」として、小豆粉、砂糖及びショートニングの配合を変えて小豆パ
ンの試験製造を行い、発酵特性、粘弾性などの基本特性を測定した他、試験区のうち特徴
的な 8 試験区を抽出し、表色、香り、近赤外分光特性、インピーダンス特性及び糖成分分
析を行った。
(測定方法)
発酵容器ヘッドスペース中の CO2 ガス濃度及び O2 ガス濃度を TCD ガスクロマト
1)発酵特性
グラフ(島津製作所、GC-8AIT)を用いて計測した。カラムは並列分流型カラム(信和化工、
ZY-1)を用い、He ガス(純度 99.99%)をキャリアーガスとして 40mL/min で流し、注入部(INJ)
温度及び検出器(DET)温度 80℃、カラム温度 75℃の条件で、ヘッドスペースガス 1000μ
L(1.0mL)を注入して計測を行った。
2)粘弾性特性
発酵前、焼成前、焼成後の粘弾性特性を、レオメーター(島津製作所、EZ Test)
を用いて咀嚼試験モードで 50mm/min の咀嚼速度で計測した。その後、粘弾性解析ソフト(島
津製作所、ShiKiBU)により粘着性、硬さ、凝集性、ガム性の4つの咀嚼特性値を求めた。
3)表色測定
210℃にセットした恒温槽(アズワン、DO-450PA)内で焼成を行い、焼成の終了
する 40 分後まで、10 分間おきに、試験生地の平均表色を色差計(ミノルタ、Color Reader
CR-13)により計測した。
4)香り測定
ガラス容器内で焼成パン 35g の香りを高純度 ODS シリカモノリス吸着剤(GL サ
イエンス、MonoTrap DSC18、直径 10mm,厚さ 1mm)5 枚により捕集し、香り成分を 1.0mL のエ
タ ノー ルで溶 出さ せ、濃 縮な しに 1μ L を FID ガス クロ マトグ ラフ (島津 製作 所、
GC-2014ATFSP)に注入し、ガス分析した。カラムは内径 0.25mm、長さ 30m のキャピラリーカ
ラム(GL サイエンス、InertCap Pure-WAX)を用い、He ガスキャリアーガスとして流圧 95kPa
で流し、INJ/DET 温度 250℃の条件でスプリットレスモードで昇温プログラム(40℃5 分、4℃
/min で昇温、250℃5 分)によりピーク検出した。
5)近赤外分光測定
焼成小豆パンを 10cm サンプリングして、20℃にセットした恒温槽(ヤ
マト科学、IQ820)内で読み取り顕微鏡(PIKA SEIKO 社)の台座上に静置し、100W のハロゲン
光源(MORITEX 社、Model MHF-D100LR)及び USB 小型マルチチャンネル分光器(相馬光学、
S-2730)を用いて波長 900nm~1600nm における小豆パン表面の拡散反射分光特性を計測した。
6)インピーダンス特性
パン生地 200g をステンレス製円盤電極に挟み、レオメーター(島
津製作所、EZ Test)の台座上に置いた後、上部電極の絶縁ラバー側にレオメーターの加圧
プランジャーを押し当てて3N(300gf)の圧力をかけ、LCR メーター(HIOKI 社、LCR HiTester
model 3532-50)を用いて周波数 42Hz~5MHz における電気インピーダンスを計測した。
7)糖成分分析
パン生地中のフルクトース、グルコース及びスクロース含量を、糖分析用
カラム(COSMOSIL 社,5NH2-MS,φ4.6mm×長さ 250mm)を用いて、RI 検出高速液体クロ
マトグラフ(日立ハイテクノロジーズ社,RI 検出器 Model L2490)により分析した。移動相液
には、75%アセトニトリル水溶液を用い、流速 0.8mL/min.
、カラムオーブン温度 35℃、
RI 検出器温度 38℃の条件で測定した。
5.調査研究成果
1)発酵特性
小豆粉配合割合に関わらず、発酵時の CO2 発生量は基準配合の場合がパン酵
母の最も活発であることがわかった。また、ショートニングについては、基準配合では 50%
配合の場合がヘッドスペース中の CO2 濃度が最も高くなったのに対して、小豆粉 20%配合及
び 60%配合の場合ではショートニングの配合量が増加するにつれ CO2 の排出量も多くなり、
配合 200%で最も高い濃度値を示した。
2)粘弾性特性
小豆粉の配合割合が増加するに伴い、歯ごたえが増し、ずしりとした食感
があるものと推定される。ショートニングの配合割合の増加により硬さが低下し、食感が
柔らかくなる傾向が数値的に明らかになった。ショートニングを基準値の 2 倍にした小豆
パンの場合は、基準パンに比較し、1/3~1/2 程度の硬さとなり、かなり柔らかい食感を得
られるものと推定される。
3)表色測定
小豆粉を含まないパンの明度は 52.6 あるのに対して、小豆粉 20%配合では 40
前後、60%配合の場合は 30 前後の数値となり、白色パンではなく、小豆特有の色が呈した
パンとなった。砂糖及びショートニングの配合が焼成パンのクラストに及ぼす影響に変化
は認められなかった。一方、色ベクトルの線分と仰角に対応する彩度と色相は、小豆粉を
配合しないパンとの比較では、小豆粉 20%、ショートニング 200%のものがほぼ同じ表色と
なった。砂糖配合による焼成パン表色への影響では、小豆粉の配合割合が 20%の場合では、
ショートニングの配合割合が増えるに伴い、彩度が増加し小豆色が薄れる傾向となった。
4)香り測定
図1に、それぞれ小豆を配合しな
いパン、小豆粉 60%、砂糖 200%を配合した小豆
パン及び小豆粉 60%、ショートニング 200%を配
合したパンの香りを FID ガスクロマトグラフ
で分析したクロマトグラムを示す。
クロマトグラムはリテンションタイム 8.0~
65.0min までを表示している。初期の飽和ピー
クは香り成分溶出に用いたエタノールである。
本研究と同じキャピラリーカラムを用い、同じ
クロマト条件で GC/MS 測定された資料と照らし合わせると、小豆粉配合パンではリテンシ
ョンタイム 14~15min における 1,2-Butanediol または Propanoic acid, 2-hydroxy-,ethyl
esteroate、リテンションタイム 17~18min における Tetradecane、リテンションタイム 19
~20min における Ethanone,1(2-furanyl)-が関連する特徴成分として対応づけられた。
5)近赤外分光測定
図2に小豆粉
を 60%配合した小豆パンの近赤外
分光特性を示す。小豆粉の配合割合
を 60%まで増加させると、波長 900
~1383nm の広い範囲に亘り小豆パ
ンの吸光度は小豆無配合パンより
も著しく吸光度が大きくなり、この
違いを用いて近赤外分光特性によ
る小豆パンの品質評価に役立もの
と考えられる。
6)インピーダンス特性
図3は小
豆粉 60%配合パンのインピーダン
スである。砂糖の配合割合及びシ
ョートニングの配合割合が増加す
るに伴い曲線は円弧から楕円弧へ
と、リアクタンス側の半径が小さ
くなる傾向を示した。また、砂糖
の配合割合よりもショートニングの配合割合の方が、パン生地のリアクタンス値に与える
影響が大きかった。
7)糖成分分析
小豆粉配合割合 20%では、溶出した3種糖成分の総量が大きくなっている
が、一方、小豆粉配合割合 60%では 20%配合の場合に比べ、相対的に3種の糖成分の総量
が低く、全体に占めるグルコースの割合が大きくなった。
1.調査研究テーマ:雑豆を用いた新種焼酎の開発
2.調査研究組織
代表者:別府大学食物栄養科学部食物バイオ学科 高松伸枝
共同研究者:別府大学食物栄養科学部食物バイオ学科 古川謙介
3.調査研究の目的
現在焼酎は酒類トップのシェアであり,注目度の高いアルコール飲料となっている.新たな販路を見
出すため,原料や製法,呈味に工夫をほどこした焼酎の研究開発が望まれている.今回は雑豆中の小豆
に着目し,新種焼酎の製造を試みた.現在市販されている小豆焼酎は,米麹を使用して“掛豆”をする,い
わゆる香味成分の活用を目的として小豆を用いているが,本実験では製麹原料に米を使用せず,小豆
100%にて試作を行った.
4.調査研究の方法
国内で生産される小豆(大納言)を原料に用いた.原料小豆を 24 時間浸漬後,蒸煮した.種麹は河内
菌白麹(河内源一郎商店)を添加し,恒温装置にて製麹した.
発酵は麦を用いた製造法と同様とし,普通麹と全麹の 2 種試作した.蒸留は減圧蒸留及び常圧蒸留を
行った.
製麹過程における酵素活性(α-アミラーゼ,α-グルコシダーゼ,酸性カルボキシぺプチダーゼ)に
関しては,キッコーマン醸造分析キットを用いた.またもろみ,生成酒のアルコール濃度(GC),糖,
有機酸,アミノ酸,フェノール系化合物(HPLC),低沸点香気成分(GC-FID),含硫香気成分(GC-SCD)
の分析を行った.
5.調査研究結果
当初,蒸し小豆を丸豆の状態で製麹を試みたが,十分な麹が繁殖せず,発酵に適した麹に仕上がらな
かった.そこで原料を浸漬後,家庭用蒸し器にて 50 分蒸煮後冷却した(写真1).ミートグラインダー
でミンチ状にした後(写真2),200℃,8 分間オーブン加熱して,水分が約 23%となるように調整し,
製麹を行った(写真3,写真4).
写真1
写真2
写真3
写真4
麹中の酵素活性は他穀類原料に比較して高く(表1),顕微鏡(400 倍)にて麹の胞子が確認された
(写真3).麹の外見は,豆の粘りが消えて軽く,米麹や麦麹とは状態が異なるものであった.味に甘
味はなく,酸味とわずかな苦味が残るものであった(写真4).
1 次仕込み 1 日目では,重量減少はあったが,米や麦と比較して,液化の進み方が少なかった(写真5,
図1).2 次仕込み(写真6)では 4 日目に重量減少がなくなり低温室へ数日間保持後,蒸留となった.
2 次仕込み終了後のアルコール濃度は,普通麹で 5.55%,全麹で 8.2%であった.蒸留後のアルコール濃
度は普通麹で約 13%,全麹で約 22%であった.アルコールは感じられるものの,原酒としては薄く,豆
と味噌の香りが残る独特な味であった.
-1-
写真5
写真6
小豆の炭水化物は 58%程度,うちデンプンが 60%である.米や麦に比較してデンプン量の少ないこと
がアルコール収率を低くした原因の一つであろう.逆にタンパク質(20%)や灰分は高いため,麹菌の
増殖を促進させる成分が多く,酵素生産に影響している1)と思われた.
また1次仕込みで液化の遅れ,2次仕込みでは発酵に伸びがみられなかった.今回用いた原料は小豆
粉に近いもので保水性が低く,米や麦と比較して扱いが異なるものであった.したがってより多くの加
水が必要であったこと,小豆の外皮部分や,デンプンの構造や量など酵母の発酵を阻害する要因が存在
する2)のではないかと思われた.
もろみ及び生成酒における成分分析結果においては,バニリン酸,アセトアルデヒドの生成がみられ,
原料皮に由来するものと考えられた3)4).もろみ中のアミノ酸(アスパラギン酸,グルタミン酸など)
及び硫化水素,メチルメルカプタンが大麦麹に比較して高い値を示した.これらは原料小豆中のタンパ
ク質の関与が大きく,生成酒の呈味に影響を及ぼしている5)ものと考えられた.
より好ましい仕上がりにするためには,原料の配合,豆皮の処理方法など,さらなる製造方法の検討
が必要である.
本実験の遂行にあたり,ご指導を賜りました三和酒類株式会社
本和哉,小川清 諸氏に深謝いたします.
大森俊郎,古田吉史,梶原康博,橋
文献
1)本格焼酎製造技術,財団法人日本醸造協会,95,2004.
2)岩野君夫他,焼酎製造における原料特性について,日本醸造協会誌,84(1),55-57,1989.
3)醸造物の成分,財団法人日本醸造協会,129,1999.
4)醸造物の成分,財団法人日本醸造協会,124,1999.
5)醸造物の成分,財団法人日本醸造協会,137,1999.
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調査研究報告書の要約
1.調査研究テーマ
世界の豆料理の精査による,若い日本人の嗜好にあった豆料理の提案
2.調査研究組織名及び研究者名
聖徳大学
人文学部人間栄養学科
吉田真美
3.調査研究の目的
情報・流通がグローバル化した現代において,世界の豆料理の研究により世
界の嗜好や傾向を知り,これらに工夫を加えて日本に新しい味覚の豆料理とし
て提案し,雑豆の需要促進をはかる。
4.調査研究の方法
⑴調査資料
調査対象地域として世界の 17 地域を選択した。選択基準は,1 年の1人当た
りの「豆類」供給量が 4 kg 以上の国を調査することにして 13 カ国を選び,そ
れに日本,中国,朝鮮半島,フランスを加えて 17 地域とした。
これらの地域の料理書計 68 冊を調査対象資料とした。料理書は,日本とアメ
リカの一般書籍店で購入し,一部はインターネットを通じて通信販売で購入し
た。68 册の料理書から豆使用料理を抜き出したところ,956 品の料理が見いだ
された。おのおののレシピから,エクセルに,地域名,料理名,豆の種類,調
理法,豆の形状,調味料,スパイスなどの項目内容を入力した。内容を解析し
て,地域ごとの豆料理の特徴を調べた。
⑵豆料理の試作
956 品のうち,豆料理研究をおこなったゼミナール学生の間で評価の高かった
料理の中から,16 品を選択した。聖徳大学調理学実習室に於いて調理し,官能
評価をおこなった。
⑶官能評価
パネルは 20 才代に限定した。豆料理 16 品についてそれぞれ 20 人以上のパネ
リストが嗜好型の評価尺度法の採点法で官能評価をおこなった。
(4)まとめ
(2)と(3)の結果を 1 冊のレシピ集にまとめた。
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5.調査研究結果
(1)世界の豆料理の特徴
東アジアの日本,中国,朝鮮半島では大豆(soy bean)の使用頻度が際立って
多いが,その他の地域ではタイ以外はほとんど利用されていなかった。日本,
中国,朝鮮半島は豆の調理という観点からみると世界的には特殊であり,使用
される豆の種類,調味法,形状が大きく他の国々とは異なっていた。
インドはアジアで最大の豆消費国であるが,大豆の利用がみられない反面,
ひよこ豆( garbanzo,chickpea)やレンズ豆(lentil)が多く利用されていた。調
味法はスパイスが大きな役割を果たしていた。
中東と近隣のトルコ地域はひよこ豆,レンズ豆が食用豆の中心を占めており,
マイルド味のスパイスを中心に調味がおこなわれていた。
エジプト・北アフリカは,レンズ豆よりそら豆(broad bean)とひよこ豆に比
重が移っていたが,相対的には中東諸国と類似した豆料理であった。
ヨーロッパは,白いんげん豆(white bean),グリーンピース(green peas),
さやいんげん(green bean)の利用が目立ち,白と緑で視覚的な向上の役割も果
していた。グリーンピースやさやいんげんを野菜代わりにして,肉料理の副菜
として多く利用していた。
北アメリカ大陸のメキシコでは,インゲン属の黒豆(black bean)の使用頻
度が高く,南アメリカ大陸のブラジルも同様に黒豆や白いんげん豆の利用が多
かった。調味法は,メキシコは唐辛子を多用した辛くて濃い調味であるのに対
して,ブラジルはこしょうとにんにくが中心のマイルドな味付けで,大きな差
が認められた。
⑵世界の豆料理の調理と官能評価
選択した 16 品の豆料理は,インド 3 品,トルコ 3 品,中東 2 品,ブラジル 2
品,メキシコ 2 品,エジプト 1 品,イタリア 1 品,ポルトガル 1 品,タイ 1 品
であった。
それぞれの料理を試作し,20 歳代のパネルによる採点法の官能評価をおこな
った結果,大半の料理についてプラスの評価が得られた。最も評価が高かった
のは,タイの料理で,緑豆を使ったケーキ(緑豆カスタード)であり,次いで
メキシコ料理でアボガドと豆の和え物(ワッカモーレ)であった。各料理につ
いてレシピを作成し,官能評価結果,考察とともに別冊を作成して添付した。
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