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平成22年度成果報告書

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平成22年度成果報告書
経済産業省
健康情報活用基盤構築のための標準化及び実証事業
かがわeヘルスケアコンソーシアム
平成 22 年度成果報告書
平成 23 年
代表団体
2月
株式会社 STNet
はじめに
現在、個人の医療・健康情報は、物理的に独立した医療連携ネットワークごと、ある
いは、医療機関や企業、医療保険者などの機関ごとで個別に管理されており、治療や疾
病予防のために必要なとき、必要な情報を把握することが困難な状況にあるが、個人が
本人の医療・健康情報を主体的に管理できるようにすることにより、個人の健康意識の
向上や情報の有効活用による既存の医療・健康サービスの質的向上が図られ、疾病予防
や健康増進が促進されることが期待される。
香川県では、これまでに推進してきた医療連携ネットワークの仕組みを地域の医療基
盤として利用するとともに、個人が本人の医療・健康情報を一元的に管理し、主体的な
健康づくりの取組みに活用するための健康情報活用基盤を構築することを目指して、医
療連携ネットワークの推進に大きな役割を担った香川大学医学部や香川県医師会、香川
県、各システムベンダーなどに、四国旅客鉄道株式会社、ジェイアール四国バス株式会
社、高松琴平電気鉄道株式会社といった企業及び健康サービス事業者などの新たな参加
団体を加えて、かがわeヘルスケアコンソーシアム(以下、当コンソーシアムという。)
が設立された。
本紙は、平成 20 年度から平成 22 年度にかけて実施された、経済産業省「健康情報活
用基盤構築のための標準化及び実証事業」にて、健康情報活用基盤による疾病予防の取
組み強化の実現に向け、当コンソーシアムが健康情報活用基盤を構築、実証した成果を
最終事業成果報告書としてまとめたものである。
0. 目次
0. 目次 ....................................................................... 1
1. 本事業の背景及び目的 ....................................................... 3
1.1. 背景 ..................................................................... 3
1.1.1. 国の動向 ............................................................... 3
1.1.2. 香川県の状況 ........................................................... 3
1.1.3. 香川県の医療連携ネットワークの状況 ..................................... 5
1.1.4. 課題解決に向けた検討協議会の発足 ....................................... 6
1.2. 本事業の目的 ............................................................. 7
2. 本事業の内容 ............................................................... 8
2.1. 本事業にて実施すべき事項 ................................................. 8
2.1.1. 健康情報活用基盤及び周辺システムの機能要件 ............................. 9
2.1.2. 健康情報活用基盤を活用したサービスの提供要件 .......................... 13
2.1.3. アクションプラン ...................................................... 15
2.2. 健康情報活用基盤及び周辺システムの構築 .................................. 17
2.2.1. 医療機関からの情報収集 ................................................ 17
2.2.2. 企業/健康保険組合からの情報収集 ....................................... 19
2.2.3. 利用者本人からの情報収集 .............................................. 20
2.2.4. 基盤のセキュリティ .................................................... 22
2.2.5. 認証基盤 .............................................................. 23
2.2.6. 情報公開設定 .......................................................... 24
2.2.7. 医師・保健師との情報共有 .............................................. 24
2.2.8. 他事業者との情報共有 .................................................. 25
2.2.9. 健康サービス事業者との情報共有 ........................................ 26
2.2.10. 保健指導支援 ......................................................... 27
2.3. 健康情報活用基盤を利用したサービスの提供 ................................ 28
2.3.1. 指導対象者の抽出 ...................................................... 28
2.3.2. 指導サポート .......................................................... 35
3. 本事業の成果 .............................................................. 43
3.1. 健康情報活用基盤及び周辺システムの構築による成果 ........................ 43
3.1.1. 医療機関からの情報収集 ................................................ 43
3.1.2. 企業/健康保険組合からの情報収集 ....................................... 55
3.1.3. 利用者本人からの情報収集 .............................................. 56
3.1.4. 基盤のセキュリティ .................................................... 81
3.1.5. 認証基盤 .............................................................. 85
3.1.6. 情報公開設定 ......................................................... 101
3.1.7. 医師・保健師との情報共有 ............................................. 105
3.1.8. 他事業者との情報共有 ................................................. 107
3.1.9. 健康サービス事業者との情報共有 ....................................... 115
3.1.10. 保健指導支援 ........................................................ 119
3.2. 健康情報活用基盤を利用したサービスの提供による効果 ..................... 130
3.2.1. 指導対象者の抽出 ..................................................... 130
3.2.2. 指導サポート ......................................................... 136
4. 総括 ..................................................................... 146
1
4.1. 目的達成に対する評価 ...................................................
4.2. 価値 ...................................................................
4.3. 残存する課題 ...........................................................
4.3.1. 健康情報活用基盤及び周辺システムの構築 ...............................
4.3.2. 健康情報活用基盤を利用したサービス提供 ...............................
5. 今後の取組み .............................................................
5.1. 健康情報活用基盤の機能改善 .............................................
5.1.1. 医療連携ネットワーク、健診システムなどとの連携推進 ...................
5.1.2. 利便性の向上 .........................................................
5.1.3. 標準規格への対応強化 .................................................
5.1.4. 基盤セキュリティの維持 ...............................................
5.1.5. 個別サービスの改善と新規サービスへの対応 .............................
5.2. 運用ルールの見直し .....................................................
5.2.1. 情報公開・共有時 .....................................................
5.2.2. 利用申請及びカード発行・失効など .....................................
5.2.3. 運用体制 .............................................................
5.3. サービスモデルの検討 ...................................................
5.3.1. 当コンソーシアムのサービスモデル .....................................
5.3.2. PtoB モデルでの推進 ...................................................
5.4. 継続運用にむけた当面の展開 .............................................
5.4.1. 近隣各県企業への提供拡大(面的拡大) .................................
5.4.2. 疾病管理サービスなどサービス内容の拡充 ...............................
別紙 1 利用者へのアンケート(設問) .........................................
別紙 2 利用者へのアンケート(設問別・利用者属性別回答結果) .................
別紙 3 健康情報コンテンツ講師 略歴 .........................................
別紙 4 利用者による日常情報の登録件数(利用者属性別利用頻度) ...............
別紙 5 保健指導事例① .......................................................
別紙 6 保健指導事例② .......................................................
別紙 7 保健指導事例③ .......................................................
別紙 8 保健指導事例④ .......................................................
別紙 9 保健指導事例⑤ .......................................................
別紙 10 保健指導事例⑥ ......................................................
別紙 11 指導対象者へのアンケート(設問) ....................................
別紙 12 指導対象者へのアンケート(設問別・利用者属性別回答結果) ............
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181
1. 本事業の背景及び目的
1. 本事業の背景及び目的
1.1. 背景
1.1.1. 国の動向
現在の日本では、尐子高齢化に伴い、国民に占める高齢者の割合が世界でもトッ
プクラスの超高齢化社会の時代が到来しつつある。
高齢者層の増加に伴い、老人医療費を中心に日本の医療費は年々増加傾向にあり、
国民所得に占める医療費の割合も高まっていることから、国は医療機関の機能分化
を行うことにより、医療機関のマンパワーや医療設備などの資源を効率的に配分し、
医療費の適正化を目指す方策などを推進しているところである。
しかし、医療機関の機能分化により効率化が図れる反面、患者側には一つの疾病
であっても、病状・病態の変化により受診機関を変更する必要性に迫られる場合が
あり、患者サービスの低下につながることも考えられる。
また、自宅にも戻れないが介護施設などにも入所できない(しない)「社会的入院」
について、非効率な医療費の増大が原因の一つと指摘されているが、このような問
題に対しての根本的な社会保障システムの見直し、受け入れ施設の増加、医師や財
源の確保など、解決すべき課題は山積している。
そのような中、日本政府は、尐子高齢化が急速に進む中で、より効率的な医療費
の適正使用や高齢化社会の国民生活の安定を踏まえ、IT 戦略本部によるビジョンの
公表や各省庁にて様々な施策を実施している。
それらの施策の中でも、積極的に推進されているものとして生活習慣病の予防対
策があるが、糖尿病、高血圧、高脂血症やその予備軍の増加に歯止めをかけるべく、
疾病にかかる前の予防こそが医療制度改革の最重要課題と捉え、平成 20 年度より
市町村医療保険者に生活習慣病健診、保健指導の義務化を実施することが決定して
いる。
このような施策により、これまでの病気治療が主体の医療から、予防が主体の医
療に切り替えることにより、超高齢化社会による医療費増を抑止するとともに、長
寿かつ元気な国民の生活を実現していく形になっていくものと思われる。
また、上記のような予防医療、健康増進を効果的に進めるためには、患者や国民
の意識向上が必要であり、それらを高める制度や仕組みの整備が急務であるが、こ
の点についても、本実証事業をはじめとし、他にも税と社会保障制度の番号制度の
議論も加速しており、国民の医療・健康情報を一元的に管理したうえでの予防医療
または新しい健康増進サービスの試行が進んでいる。
1.1.2. 香川県の状況
当コンソーシアムが所在する香川県は、四国地域の玄関口として、主に大企業の
拠点や支店が多く設置された、いわゆる支店経済都市であり、転勤族が多く在住し
ている。また、香川に本社を置く全国企業も多く、県内から東京などの都会への出
入りは比較的多いと考えられる。県面積は全国で最も狭く、瀬戸内海に面しており、
多くの離島を抱えている。
3
1. 本事業の背景及び目的
県域推計人口は、平成 21 年 2 月現在で約 100.2 万人であり、わずかずつではあ
るが、年々減尐傾向にある。平成 19 年の人口動態調査によると、香川県の高齢者
率(65 歳以上)は、24.4%となっており、すなわち 4 人に 1 人は 65 歳以上の高齢化
社会になっている。この 24.4%という数値は、全国平均より 5 年、東京より 10 年弱
高齢化が進んでいることになる。また、高齢者人口に占める要介護者比率は、17.0%
と全国平均より 1%多い。香川県の人口構成について「図 1.1 香川県人口及び年齢
5歳階級別人口構成」に示す。
図 1.1
香川県人口及び年齢5歳階級別人口構成
しかし、施設数や医師数などの社会インフラとしては、人口 110 万人当たりの病
床数 1,634.2 床(全国平均との比較 1.28 倍)、医師数 250.8 人(1.15 倍)、看護
師数 1,249.1 人(1.34 倍)、救急病院数 5.9 施設(1.75 倍)となっている。特別
養護老人ホーム普及率、介護老人保健施設普及率についても、それぞれ人口 1000
人当たり 17.9 箇所(全国平均との比較 1.19 倍)及び 14.2 箇所(1.22 倍)と、い
ずれも全国平均より普及していることから、医療提供体制は、全国と比較してかな
り良好な環境下にあると言える。
疾病別の死因の面からみると、「図 1.2 主要死因別死亡者数」の通り、全国共
通と言える、がん、心臓病、脳卒中などの脳血管障害が大半を占める一方、厚生労
働省の人口動態統計「図 1.3 糖尿病死亡率の推移」によると、2004 年時点での香
川県の糖尿病死亡率は全国5位、糖尿病で治療を受けている人の割合も、香川県は
全国で 2 番目(2002 年)に高いという結果となっており、糖尿病での死亡数が全国
平均と比べ多いことが指摘できる。
これは、四国近県でも同様の結果がでていることから、地方特有の車依存社会に
よる運動不足や食生活の問題に起因するものと分析されている。
4
1. 本事業の背景及び目的
図 1.2
図 1.3
主要死因別死亡者数
(資料:四国新聞ニュース)
糖尿病死亡率の推移
(資料:四国新聞ニュース)
ここまでのデータを総括すると、香川県は高齢者率の高い地域であり、今後さら
にその率は伸びるものと思われるが、医療機関や医師などの医療スタッフの数、老
健施設の充実度については、かなり整備されており、高齢者も含めた県民への良質
な医療提供体制は整っていると考えられる。
しかしながら、慢性疾患患者の増大や、社会的入院などの問題は尐なからず生じ
ており、医療費の適正化や疾病予防管理を推進するための各種施策は急務である。
1.1.3. 香川県の医療連携ネットワークの状況
上記の、国または香川県の状況を背景として、香川県は効率的な医療連携を目指
し、早くから香川大学医学部などが中心となり、医療連携システムの構築について
検討着手してきた。
香川県が構築し、香川県医師会が現在主体となってシステムを運営継続している、
「かがわ遠隔医療ネットワーク(略称:K-MIX)」においては、稼働開始から 6 年
が経過した現在のところ自立的運営が成立しており、地域の医療機関の医師間の情
報連携に利用されている。さらに新たな機能として「クリティカルパス連携機能」
が機能追加され、医師だけでなく保健師との情報連携にも利用されているところで
ある。
また、同様に、香川県と当コンソーシアムの参加団体である株式会社ミトラにて
企画開発された県域を対象とした事業である「かがわ周産期ネットワーク」におい
ても、日本全国の自治体や医療機関、数十個所に導入され、妊婦や産婦人科医に利
用されるなど、面的展開が徐々に進みつつある。
こうした医療連携ネットワークをもとに、地域医療機関間の情報共有化を図ると
ともに、それらのネットワークの仕組みを地域の医療基盤として活用することで、
県民の日常の健康増進・維持を可能とする、県民参加型の広域ネットワークシステ
ムの構築を検討・推進してきた。
例えば、インターネットを使って家庭にて生活習慣病の診断から生活習慣の改
善・指導までを可能とするシステムや、医療機関の放射線画像情報や診療情報を保
管し患者に公開するデータセンター型オンライン保管システムなどについて、香川
大学医学部やその他中核医療機関にて研究・実証などを行ってきたところである。
5
1. 本事業の背景及び目的
これらの広範囲な医療連携ネットワークの推進は、前述の通り、地域での医療情
報化の基盤となり、地域医療機関への標準的な連携手法の提供による円滑な医療連
携の推進には寄与しているものの、医療機関などの医療従事者向けの仕組みである
ため、患者や県民本人での活用は考慮されていない。
このように、IT による医療連携基盤は以前から取り組まれており、今後とも鋭意、
機能向上・適用範囲の拡大などを推進して行くこととなるが、それに比べ患者や県
民が直接参加する仕組みが皆無なことが課題であると指摘されている。
1.1.4. 課題解決に向けた検討協議会の発足
香川県では、医療をとりまく日本政府または地域性などの背景を鑑み、医療連携
ネットワークの推進とその過程で生じた課題を解決していくとともに、それと並行
した個人の健康情報を一元管理できる健康情報活用基盤の構築と、病気予防または
健康増進につながるサービスへ向けての検討が必要であるとの意見が増えてきた。
そのため、これまで医療連携ネットワークの推進に大きな役割を担った香川大学
医学部や香川県医師会、香川県、K-MIX 運営委員会、各システムベンダーなどが一
体となった組織にて、県域の健康情報を一元化し、県民が本人の健康情報を主体的
に管理する県域全体もしくは県域を跨った活用を図っていくためのサービス提供
を目指した仕組みについて、構築・運用・検討に鋭意取り組むこととした。
ついては、健康情報活用基盤の検討と展開へ向けて、医療機関や医療従事者など
のメンバーに加えて、企業や企業健保などを巻き込むべく調整し、四国旅客鉄道株
式会社、ジェイアール四国バス株式会社、高松琴平電気鉄道株式会社といった企業
及び健康サービス事業者なども新たに参加団体として迎えることとなった。
こうしたメンバーにより、かがわeヘルスケアコンソーシアム(以下、当コンソ
ーシアムという。)が設立され、本実証事業にて、企業・保険者による従業員/組
合員の健康増進などを図るとともに、個人の健康意識の向上を目指すべく検討を開
始したとともに、本実証事業にて実証を行ってきたところである。
良質な医療提供体制が整備されている一方で、高齢者率や糖尿病死亡率が比較的
高い香川県の地域特性を考慮すると、医療機関や医療スタッフ、老健施設などの社
会インフラの活用により医療・健康サービスを向上することで、健康寿命の延伸や
生活習慣病による死亡率の減尐を実現することが望まれる。
しかし、これまで述べてきたように、現在、個人の医療・健康情報は、物理的に
独立した医療連携ネットワークごとで、あるいは、健診機関や企業、医療保険者な
どの機関ごとで個別に管理されており、治療や疾病予防のため必要なときに必要な
情報を把握することが困難な状況にある。
個人が本人の医療・健康情報を主体的に管理することにより、個人の健康意識の
向上や情報の有効活用による既存の医療・健康サービスの質的向上が図られ、健康
増進・生活習慣病の予防(一次予防)、疾病の早期発見・早期治療(二次予防)、
重症化予防(三次予防)などの疾病予防が促進されることが期待される。
特に、近年、高齢化の進展に伴い、疾病の治療や介護に係る社会的負担が過大と
なることが予想される中で、従来の疾病予防の中心であった早期発見・早期治療に
とどまることなく、健康を増進し、疾病の発病を予防する「一次予防」に一層の重
点を置いた対策が求められている。
6
1. 本事業の背景及び目的
当コンソーシアムでは、本事業の開始までに推進してきた K-MIX などの医療連携
ネットワークの仕組みを地域の医療基盤として活用するとともに、個人が本人の医
療・健康情報を一元的に管理し、主体的な健康づくりの取組みに有効活用すること
を支援する新たな仕組みを構築することを目指すこととした。
1.2. 本事業の目的
個人が健康増進や生活習慣改善などのために行動変容し、その行動を継続してい
くことは決して容易ではない。当コンソ-シアムでは、自由な意思決定にもとづく
健康づくりに関する意識の向上・取組みを促進するため、個人の問題解決を支援す
るカウンセリング、アセスメント、コーチングなどの知識を有する専門職である保
健師による保健指導内容の質的向上により、個人の行動変容に対する自己効力感・
満足感が高まり、疾病予防が促進されると考えた。
そこで、本事業では、個人が本人の医療・健康情報を一元的に管理する健康情報
活用基盤を構築し、その情報を有効活用して保健師による保健指導を支援するサー
ビスを提供することで、疾病予防の取組みの強化を図ることとした。
保健指導支援サービスの提供先については、特定健診・特定保健指導の義務化に
伴い、労働生産性の向上の観点から企業の従業員健康管理の意識が高まっているこ
とや、医療費の適正化の観点から健康保険組合の組合員健康管理の意識が高まって
いること、実証サービスの参加団体がすべて企業であることなどから、企業/健康
保険組合にターゲットを絞ることとした。
サービス提供の具体的な目的については、一次予防に重点を置いて、「保健指導
が必要な従業員の効率的な抽出」及び「保健指導に対する従業員満足度向上及び健
康意識改善」とした。
7
2. 本事業の内容
2. 本事業の内容
本事業の目的を達成するために実施すべき事項としては、目的に即して、「健診
結果や日常情報を分析することで、将来の発症リスクが高い従業員を抽出する」、
「従業員の日常情報を把握することで、より個人の生活習慣に合わせた指導を提供
する」ことに重点を置く。
健康情報活用基盤を利用したサービス提供の概要を「図 2.1 サービス提供の概
要」に示す。
図 2.1
サービス提供の概要
2.1. 本事業にて実施すべき事項
健康情報活用基盤を利用して保健指導を支援するサービスを提供するためには、
必要なときに必要な情報を利用できるように、医療機関、企業/健康保険組合、健
康サービス事業者などの各機関で個別に管理されている個人の医療・健康情報を健
康情報活用基盤で一元的に管理することが求められる。
個人の医療・健康情報を一元的に管理することは、
・様々な機関で個別に管理されている情報を収集できるようにする
・非常に機微な個人情報を保護し、安全に管理できるようにする
・必要に応じて第三者と共有できるようにする
という 3 つの要件に分けて実施することとする。
情報を収集する相手先としては、サービスの提供先を企業/健康保険組合に絞っ
8
2. 本事業の内容
たことから、医療機関、企業/健康保険組合(外部委託している場合は健診機関)、
従業員とした。なお、医療機関からの情報収集の相手先としては、本事業の開始前
から香川県の医療機関の医療連携ネットワークとして利用されている K-MIX を地域
の医療基盤として活用する。
情報の安全な管理については、本事業実証開始前から K-MIX やかがわ周産期ネッ
トワークなど地域の医療連携ネットワークの運用の実績があり、ISMS(Information
Security Management System)の認証を取得している事業者のデータセンターで管
理することとする。
情報を共有する相手先としては、医師・保健師、他の健康情報活用基盤を利用し
たサービスを提供する事業者(以下「他事業者」という。)、独自の健康情報シス
テムによりサービスを提供する事業者(以下「健康サービス事業者」という。)と
する。
以上の実施すべき事項及びその実現のために求められる要件を踏まえた本事業
の全体像を「図 2.2 本事業の全体概要」に示す。
図 2.2
本事業の全体概要
2.1.1. 健康情報活用基盤及び周辺システムの機能要件
本事業では、まず、実施すべき事項の実現のために求められる要件を実現する基
本機能として、散在する情報の収集を実現する「他システムからの連携機能」、非
常に機微な個人情報の安全管理を実現する「認証基盤」、第三者との情報共有の要
件を実現する「他システムとの接続機能」を構築する。
次に、実施すべき事項を実現するためのサービス提供用機能として、指導対象者
の抽出や指導の高度化をサポートする「保健指導支援機能」を構築する。
9
2. 本事業の内容
健康情報活用基盤の概要を「図 2.3
図 2.3
健康情報活用基盤の概要」に示す。
健康情報活用基盤の概要
1) 様々な機関から医療・健康情報を収集する
医療機関からの医療情報、企業/健康保険組合(外部委託している場合は健診機
関)からの健診情報を利用者が情報入力の手間をかけずに、既存の医療連携ネット
ワークからの情報連携機能により収集できるようにする。また、利用者本人の日常
情報(バイタル、運動、食事)を Web 画面での登録機能により収集できるようにす
る。
① 医療機関からの情報収集
利用者が医師の承認のもとで利用者本人の医療情報を収集し、保健師に公開する
ことで、医師と保健師が連携して、より個人の診療状況や生活習慣に合わせた保健
指導を提供することが可能になる。
本事業では、利用者本人や保健師が診療情報を活用できるようにするため、香川
県内で遠隔医療ネットワークシステムとして稼動している K-MIX の機能を利用して、
医療機関の医師が登録した診療情報を健康情報活用基盤に連携できるようにする。
② 企業/健康保険組合からの情報収集
健診情報は、疾病の発症リスクを早期発見するために必要不可欠な情報であるが、
過去の履歴を含めると大量のデータとなるため、健康情報活用基盤の利用開始前に、
利用者本人の同意のもとで自動的に収集され、あらかじめ蓄積されていることが望
ましい。
本事業では、利用者本人や保健師が診療情報を活用できるようにするため、参加
企業の四国旅客鉄道株式会社や高松琴平電気鉄道株式会社などの協力を得て、企業
が管理している健診情報を健康情報活用基盤に連携できるようにする。
10
2. 本事業の内容
③ 利用者本人からの情報収集
運動の励行や適切な食生活など生活習慣の改善による健康増進を目的とする一
次予防の保健指導では、現在の生活習慣に合わせた指導内容を設定するため、指導
対象者の日常情報(バイタル、運動、食事)を収集する必要がある。
本事業では、消費カロリ・摂取カロリの自動計算など入力負荷の低減や、歩数と
連動したルート表示などゲーム感覚にも配慮したうえで、利用者本人が日常情報を
Web 画面から登録できるようにする。
また、健康情報活用基盤が管理する医療・健康情報については、多種多様なデー
タが対象となり、それらの情報をすべて実体データとして蓄積すると莫大な規模の
データ容量になる。
今後の利用促進に伴うデータ量の増加に備えて、必要の都度、健康情報活用基盤
から外部の医療・健康情報システムにシームレスにアクセスすることを目的として、
健康情報活用基盤内部の日常情報の登録機能を擬似的な外部システムとみなして、
シングルサインオンできるようにする。
2) 非常に機微な医療・健康情報を管理する
医療機関からの医療情報、企業/健康保険組合からの健診情報、他事業者からの
医療・健康情報、健康サービス事業者からの運動情報、利用者本人からの日常情報
など、収集した多種多様な医療・健康情報を一元的に管理するとともに、その非常
に機微な個人情報を保護し、利用者が情報を安心して預けられるようにする。
① 基盤のセキュリティ
情報セキュリティに対する脅威には、火災・地震などの物理的脅威、不正アクセ
ス・盗聴などの技術的脅威、人的ミス・内部の不正行為などの人的脅威がある。非
常に機微な個人情報を取扱う健康情報活用基盤では、これらの脅威に対して対策を
施し、情報の機密性、完全性、可用性を維持する必要がある。
本事業では、ISMS 適合性評価制度の認定を受けた事業者のデータセンターにて、
物理的対策、技術的対策、人的対策を実施することにより、健康情報活用基盤の情
報セキュリティを確保する。
② 認証基盤
健康情報活用基盤では、診療情報などの非常に機微性の高い個人情報を扱うため、
個人情報を完全に保護するセキュリティを確保するとともに、利用者のシステム利
用を阻害しないため、煩雑な操作を排除するなど利便性にも配慮する必要がある。
本事業では、IC カードに記録されたログイン ID と利用者によるパスワード入力
を組み合わせた認証方式を採用し、IC カードという物理的要素と ID&パスワードと
いう知識的要素による二要素認証による高いセキュリティを実現するとともに、ア
クセスする情報の機微性に応じて、電子メールアドレスを利用したログイン認証が
可能な基盤を構築する。
11
2. 本事業の内容
また、健康情報活用基盤へのアクセスについては、医療・健康情報データベース、
医療情報連携データベースそれぞれのセキュリティレベルに応じて、アクセスでき
るアクタ(*)を制限するとともに、アクセスするアクタと情報の種類ごとに利用権
限を付与・制限できるようにする。
(*)アクタ:システムの外部に存在してシステムと相互作用する、特定の目的と
役割を持つ存在で、人や組織、外部システムなど。
③ 情報公開設定
利用者が利用者本人の医療・健康情報を医師や保健師などに公開することで、よ
り高度な医療・健康情報サービスの提供を受けることが可能になるが、健康情報活
用基盤で管理する医療・健康情報については、利用者が安心して預けられるように、
非常に機微な個人情報として安全に取扱わなければいけない。
本事業では、利用者が利用者本人の医療・健康情報を第三者に情報公開する場合
に、利用者本人が公開先や公開情報を選択できるようにするとともに、システムが
採取した監査証跡を公開した情報へのアクセス履歴として利用者本人がモニタリ
ングできるようにする。
3) 必要に応じて第三者と情報を共有する
健康情報活用基盤で管理する医療・健康情報について、医師、保健師、他事業者、
健康サービス事業者など利用者以外の第三者と、必要な情報(全部/一部/特定など)、
環境(健康情報活用基盤内/外など)や頻度(定期/臨時/随時など)に応じて、情
報共有できるようにする。
① 医師・保健師との情報共有
医師・保健師が、利用者の発症リスクや生活習慣に関する詳細な情報を把握する
ことで、より個人の診療状況や生活習慣に合わせた診療や保健指導を提供すること
が可能になる。
本事業では、利用者本人が医師や保健師に公開設定した医療・健康情報について、
健康情報活用基盤内の Web アプリケーションを利用して、随時、情報共有できるよ
うにする。
② 他事業者との情報共有
個人の医療・健康情報は、生涯にわたって恒久的な情報であることから、個人の
選択の自由により事業者を変更した場合も、変更後の健康情報活用基盤で一元的に
管理されるべきである。
本事業では、他コンソーシアムとのデータ交換実証により、技術・標準 WG が策
定したデータ交換規格に準拠して、他事業者との間で利用者の医療・健康情報を欠
損なく情報共有(交換)するポータビリティを確保できるようにする。
12
2. 本事業の内容
③ 健康サービス事業者との情報共有
スポーツジムなどの健康サービス事業者が管理するバイタル・運動情報などを健
康情報活用基盤にて管理する医療・健康情報と組み合わせることで、利用者にとっ
てより有益な情報を提供することが可能になる。
ただし、上記の「他事業者との情報共有」とは異なり、健康サービス事業者との
情報共有においては、多種多様な情報の中の一部の情報を共有するケースが多いた
め、データ交換規格にもとづくデータフォーマットや交換手続きを実装することが、
健康サービス事業者にとって過負荷となるおそれがある。
本事業では、株式会社コナミスポーツ高松店の協力を得て、21 年度にコナミスポ
ーツと疎通テストレベルの実証試験を行うことにより、健康情報活用基盤と健康サ
ービス事業者の健康情報システムとの間で、それぞれが提供する API(*)を使用して
互いに必要な情報のみを共有できることを検証する。
(*)API:アプリケーション・プログラミング・インタフェース(Application
Programming Interface)の略。
あるアプリケーション、またはアプリケーション・システム向けのソフ
トウェアを開発する際に使用できる命令や関数の集合体。
4) 保健指導支援の仕組みを提供する
従業員の健診情報だけでなく、日常情報にもとづいて、指導対象者を抽出し、よ
り個人の生活習慣に合わせた指導内容の設定や実施状況の管理を行う仕組みを提
供できるようにする。
① 保健指導支援
糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病を予防するための保健指導では、
その要因となっている生活習慣を正確に把握したうえで、生活習慣改善のための適
切な指導を行う必要がある。
本事業では、健診情報だけでなく、日常情報をもとに指導対象者を抽出できるよ
うにするとともに、生活習慣改善のための適切な指導内容(行動計画)・目標を登
録し、その実施状況をモニタリングする仕組みを提供できるようにする。
2.1.2. 健康情報活用基盤を活用したサービスの提供要件
本事業では、「健診結果や日常情報を分析することで、将来の発症リスクが高い
従業員を抽出すること」「従業員の日常情報を把握することで、より個人の生活習
慣に合わせた指導を提供すること」という実施すべき事項を実現するため、保健指
導の業務フローに即して、「指導対象者の抽出」「指導サポート」のフェーズに分
けてサービスを提供する。
サービス提供の業務フローの概要を「図 2.4 保健指導業務フローの概要」に示
す。
13
2. 本事業の内容
従業員
企業
保健師
医療機関
利用申込書
提出
健診情報登録
同意書提出
指導対象者の
抽出サービス
健診情報
連携
健康情報
公開
保健指導
計画策定
指導対象者
抽出
指導サポート
サービス
保健指導
(1回目)
日常情報
登録
受診
勧奨
バイタル情報
(血圧、体重等)
運動情報
食事情報
有
無
行動変容
行動計画
・目標登録
実施状況
登録
実施状況
確認
診療情報
公開
診療情報
登録
診療情報
連携
保健指導
(2回目)
:システムプロセス(健康情報活用基盤)
図 2.4
:システムプロセス(K-MIX)
:人間系プロセス
保健指導業務フローの概要
1) 保健指導支援のサービスを提供する
健康情報活用基盤の保健指導支援の仕組みを利用して、健診結果や日常情報を分
析・把握することで、将来の発症リスクが高い従業員を抽出し、より個人の生活習
慣に合わせた指導を行なうことを支援するサービスを提供できるようにする。
① 指導対象者の抽出
2008 年より開始された特定健診・特定保健指導により、従来の疾病の早期発見・
早期治療のための保健指導から、特定の疾病を未然に防止するための保健指導に注
14
2. 本事業の内容
目が集まっている。中でも、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などに代表される生活
習慣病は、動脈硬化や脳卒中、狭心症や心筋梗塞などの疾病を直接引き起こす可能
性があり、また、腎障害との合併症の発症などの原因とされているため、健康診断
の結果から糖尿病、高血圧症、脂質異常症の指標である血糖値、血圧、コレステロ
ールによる定量的なリスク分析が実施されている。
しかし、健康診断の実施頻度は半年~1 年に 1 度であり、その間の悪化傾向を把
握することや、その日の体調や精神状態に左右される検査項目に関する潜在的なリ
スクを把握することは困難である。
健康診断の結果から基準値により指導対象者を抽出するだけでなく、過去の健康
診断の経年変化や利用者が日々入力する日常情報から抽出することで、健康度の悪
化傾向や潜在的な発症リスクを保有する指導対象者抽出のサービスを提供できる
ようにする。
② 指導サポート
疾病を予防するための保健指導では、保健師が指導対象者の生活習慣や診療状況
を的確に把握したうえで、指導対象が無理なく継続して実施できる適切な指導内容
を設定することが重要である。それにより、対象者が生活習慣における課題に気付
き、生活習慣改善に向けた行動変容を起こすことが期待される。
また、指導対象者が設定された指導内容に沿って新たな生活習慣を確立し、維持
することは容易ではない。保健師は、指導対象者が新たな行動を持続できるよう定
期的に助言・支援するとともに、実行していることに対しては励ましや賞賛するな
どフォローアップすることが重要となる。また、そのフォローアップも早ければ早
いほど、その効果は大きい。
抽出した指導対象者が日々入力した日常情報や医師が入力した診療情報を保健
指導時に参照することで、保健師が生活習慣や診療状況を正確に把握すること、さ
らに、問診より豊富な情報をもとに生活習慣や診療状況にもとづく具体的な指導内
容(行動計画・目標)を策定することを支援するサービスを提供できるようにする。
また、指導内容を策定した指導対象者の日々の実施状況や目標の達成状況を的確
に把握し、その状況に応じた助言・励ましを行うことで、指導対象者の自己効力感
を高める継続的な保健指導を支援するサービスを提供できるようにする。
2.1.3. アクションプラン
本事業では、「図 2.5 本事業のアクションプラン」の通り、3 ヶ年の事業期間
において、3 つのステップに分けて健康情報活用基盤及び周辺システムの構築と健
康情報活用基盤を活用したサービスの提供を行うことを計画し、概ね予定どおり実
施した。
15
2. 本事業の内容
第1ステップ
(H20年度)
PHR基盤の構築
システム
の構築
PHR総合ポータルサイトの構築
第2ステップ
(H21年度)
第3ステップ
(H22年度)
PHRアプリケーションの構築
PHRアプリケーションの構築
(日常情報収集)
(医療・健康情報活用)
他システムとの連携
他システムとの連携
(健康情報連携)
(医療情報連携)
実証サービス
(健康情報収集)
サービス
の提供
実証サービス
(医療・健康情報収集~活用)
実証サービスの範囲及び、
参加企業の拡大
図 2.5
本事業のアクションプラン
1) 第 1 ステップ(平成 20 年度)
非常に機微な個人情報である医療・健康情報を管理する健康情報活用基盤及び多
種多様な医療・健康情報を管理する健康情報活用基盤の窓口となる総合ポータルサ
イトを構築する。
2) 第 2 ステップ(平成 21 年度)
健康情報活用基盤アプリケーションのうち、利用者の日常情報を収集する運動・
食事登録機能及び他システムとの連携のうち、企業から連携される従業員の健診情
報を取り込む健診情報連携機能などを構築し、散在している健康情報の収集に関す
る実証サービスを提供する。
3) 第 3 ステップ(平成 22 年度)
健康情報活用基盤アプリケーションのうち、保健指導に有効な医療・健康情報の
分析・提供を行う保健指導支援機能及び他システムとの連携のうち、医師が登録し
た診療情報を利用者本人や保健師に連携する医療情報連携機能などを構築し、第 2
ステップでの実証サービスから対象範囲や参加企業を拡大して、医療・健康情報の
保健指導への有効活用に関する実証サービスを提供する。
第 2 ステップと第 3 ステップの実証サービスの比較を「表 2.1
ービスの概要」に示す。
16
本事業の実証サ
2. 本事業の内容
対象範囲
ターゲット
主な目的
参加企業
( )内は
企業別の
参加人数
参加人数
表 2.1 本事業の実証サービスの概要
第 2 ステップ(平成 21 年度)
第 3 ステップ(平成 22 年度)
健康情報の収集
医療・健康情報の収集~活用
利用者
保健師
健診情報の連携
指導対象者の抽出
日常情報の登録
保健指導への情報の有効活用
四国旅客鉄道株式会社(161)
四国旅客鉄道株式会社(343)
JR 四国バス株式会社(9)
高松琴平電気鉄道株式会社(254)
ことでんバス株式会社(148)
ことでんサービス株式会社(88)
株式会社 STNet(319)
170名
1,152名
第 2 ステップの実証サービスでは、利用者をターゲットに健診情報の連携、日常
情報の登録など健康情報の収集に関する安全性・利便性について検証するが、第 3
ステップの実証サービスでは、保健師をターゲットに指導対象者の抽出、保健指導
への日常情報・診療情報の活用など医療・健康情報の有効活用による保健指導の質
的向上について検証する。
2.2. 健康情報活用基盤及び周辺システムの構築
前節の本事業にて実施すべき事項にもとづき、様々な機関から医療・健康情報を
収集する機能、非常に機微な医療・健康情報を管理する基盤、必要に応じて第三者
と医療・健康情報を共有する機能、保健指導支援の仕組みを提供する機能を有する
健康情報活用基盤及び周辺システムを構築する。
2.2.1. 医療機関からの情報収集
利用者が利用者本人の医療情報を収集し、疾病予防のために有効に活用するため
には、医療情報を管理している医療機関の医療情報システムや医療連携ネットワー
クから、標準的なデータフォーマットにより、健康情報活用基盤にデータを連携す
る機能が必要である。
本事業では、保健師から利用者への受診勧奨先を K-MIX 参画医療機関とすること
で、K-MIX の機能を利用して、医師が登録した診療情報を健康情報活用基盤に連携
し、利用者本人や保健師が診療情報を活用できるようにすることを目的とした医療
情報連携機能を構築する。
まず、医療情報連携機能の基盤となるデータフォーマットの標準化を行い、それ
にもとづいて診療情報を K-MIX から健康情報活用基盤へ取り込む、医療情報連携デ
ータベース及び診療情報連携機能を構築する。
17
2. 本事業の内容
1) 標準規格への対応
健康情報活用基盤における医療情報連携のデータフォーマットとしては、広く一
般に認識され、今後の安定的な普及が見込める標準規格を採用することが望ましい
と思われる。HL7(Health Level Seven)は、医療情報交換のための標準規約とし
て米国規格協会(ANSI)にて承認され、かつ業界のデファクトスタンダードとなっ
ており、健康情報活用基盤の医療情報連携におけるデータフォーマットとして採用
するのに相応しいデータ標準規格であると考えられる。
そこで、健康情報活用基盤と他の医療情報システムとの医療情報連携におけるデ
ータフォーマットとして、HL7 を採用する。HL7 に関しては、日本においても、10
年以上前から本規格の国際支部として日本 HL7協会を設立し、日本固有の仕様を標
準に反映させる取組みがなされている。また、厚生労働省から保険医療情報分野の
標準規格として認可を受けており、今後ますますの拡張・普及が見込まれている。
なお、本規格に準拠したデータを取扱う医療情報システムは多数存在するため、
健康情報活用基盤への医療情報の連携元として採用する医療情報システムの選定
も容易に行えるものと考えられる。
2) 医療情報連携データベース
医療情報連携データベースは、他の医療情報システムから連携された医療情報を
医療・健康情報データベースから隔離し、医師を除くすべての利用者からのアクセ
スを一切禁止した状態で保管・管理する。保管された医療情報は、利用者からの要
求にもとづく医師による画面上からの公開操作により、医療・健康情報データベー
スへの連携及び利用者への情報提供が可能となる。
3) 診療情報連携機能
診療情報連携機能では、HL7 準拠の標準データとして K-MIX より連携され、健康
情報活用基盤の医療・健康情報データベースへ取り込まれた診療情報を、医師の操
作にもとづいて医療・健康情報データベースに取り込むことで、健康情報活用基盤
上で利用者が利用者本人の診療情報を照会することを可能とする。
本機能を含む、医師による患者の診察後から、健康情報活用基盤上で患者(利用
者)が診療情報を照会可能となるまでのシステム利用の流れを「図 2.6 診療情報
連携機能の利用手順」に示す。
18
2. 本事業の内容
医師 患者情報
登録機能
情報提供依頼機能
診療情報
連携機能
K-MIX
診療情報の
登録・送信
健康情報活用基盤
患者情報の
登録
(初診のみ)
K-MIXへの
情報提供
依頼
K-MIX利用
ユーザIDの
入力・送信
患者への
診療情報
送信
診療情報
参照
患者
図 2.6
診療情報連携機能の利用手順
まず初診の場合には、患者情報登録機能により、医師は健康情報活用基盤に患者
情報を登録する。次に、情報提供依頼機能により、利用者が医師に対して診療情報
の連携を依頼する。医師は利用者(患者)の依頼にもとづき、K-MIX システムにて
利用しているユーザ ID を健康情報活用基盤に入力する。最後に、診療情報連携機
能により、医師は K-MIX システムから連携された診療情報を確認し、健康情報活用
基盤に登録する。
2.2.2. 企業/健康保険組合からの情報収集
健康情報活用基盤の利用開始前に、健診情報を利用者本人の同意のもとで自動的
に収集するためには、健診情報を管理している企業や健康保険組合、または外部委
託している健診機関から、各機関固有のデータフォーマットを標準的なデータフォ
ーマットに変換して、健康情報活用基盤に連携する機能が必要である。
本事業では、企業が管理している健診情報を健康情報活用基盤に連携し、利用者
本人や保健師が健診情報を活用できるようにすることを目的とした健康情報連携
機能を構築する。
企業で実施している健康診断データの特徴は、検査項目が多いことに加えて、同
じ検査項目についてもそれを実施している健診機関ごとに、検査項目を判別するコ
19
2. 本事業の内容
ード、単位及び検査結果を判定する基準値が異なる。
医療・健康情報データベース情報に蓄積する情報は JLAC10 などに代表される標
準コードで統一されており、健診システムに依存している健診データを正しく取り
込むためには、それぞれの健診機関から出力されたデータを、統一されたコードに
正しく変換し取り込む必要がある。例えば、眼底検査では医療機関からのデータは
Ⅰ、Ⅱなどの値で連携されるが、医療・健康情報データベース内部では 1、2 の数
値で蓄積されるため、その検査項目ごとに変換が必要である。また、取り込みを実
施する前に書式チェック・値のエラーチェックを入念に実施した後に、取り込みを
実施できるような仕組みを設け、誤り無くデータ取り込みを行える仕組みを構築す
る。
2.2.3. 利用者本人からの情報収集
一次予防の保健指導において、指導対象者が自らの生活習慣を振り返り、生活習
慣の改善を目指した行動目標を設定するとともに、その目標を実践できるよう支援
するためには、指導対象者の日常情報(バイタル、運動、食事)を収集し、現在の
生活習慣を詳細に把握する必要がある。
本事業では、利用者本人が日々のバイタル(血圧、体重など)、運動、食事の情
報を継続的に記録し、利用者本人や医師・保健師がそれらの情報を活用できるよう
にすることを目的とした運動・食事登録機能を構築する。
また、香川県では、K-MIX をはじめ、医療情報共有化ネットワークシステムなど
様々な医療連携ネットワーク・医療情報システムが存在しており、既に個人に関す
る多種多様な医療・健康情報が蓄積されている。
それらの情報をすべて実体データとして蓄積すると莫大な規模のデータ容量に
なるため、本事業では、今後の利用促進に備えて、必要の都度、健康情報活用基盤
から外部の医療・健康情報システムにシームレスにアクセスすることを目的として、
健康情報活用基盤内部の運動・食事登録機能を擬似的な外部システムとみなしたシ
ングルサインオン機能を構築する。
さらに、多種多様な医療・健康情報を一元的に管理する健康情報活用基盤の窓口
として、利用者が容易に日常情報などの登録画面に到達できるアクセシビリティ・
ユーザビリティを兼ね備えた総合ポータルサイトを構築するとともに、利用者に
「健康を増進し、疾病を予防するためには、どのような生活習慣に改善すればよい
か」を具体的にイメージしてもらい、日々の運動や食事について継続入力の意識向
上を図ることを目的とした健康情報コンテンツを製作する。
1) 日常情報の収集
日々のバイタルの記録では、血圧を入力する以外に、その日の体調や、血圧の値
と密接な情報である体重・腹囲を合わせて登録することで、血圧との関連を分かり
やすく参照できる機能としている。
運動の記録では、日常生活強度から本格的な運動強度まで、約 40 種類以上の運
動メニュー一覧から選択し、運動時間を入力するだけで、消費カロリを自動計算し
20
2. 本事業の内容
入力でき、また毎日の歩数からは自動で消費カロリを算出するなどの機能で入力の
負担を軽減する。また、歩数と連動したルート表示機能(四国八十八箇所お遍路体
験)や、参加者内での歩数や BMI のランキングによりゲーム感覚に楽しむことで、
継続的な入力を促す。
食事の記録では、食品のグラム数やカロリを入力せずに、食事メニューの一覧か
ら選択することで、自動で摂取したカロリなどが記録できる機能とし、簡易な操作
による入力機能とする。食事メニューが一覧に無い場合は、利用者本人が食事メニ
ューを登録できる“メニュー作成機能”により、利用者の独自レシピなどの食事メ
ニュー作成ができることで、すべての食事記録を補完できる機能とする。
2) シングルサインオン
総合ポータルサイトへのログイン ID として発行する統合 ID を、すべてのシステ
ムへのログイン認証の ID として共通管理することで、利用者は統合 ID を使用した
総合ポータルサイトへのログインを行うだけで、他の医療・健康情報システムが提
供する医療・健康情報サービスの利用に対する個別のログイン認証操作を必要とし
ないシングルサインオンの仕組みを実現する。
なお、本事業においては、健康情報活用基盤内で稼動する運動・食事登録機能を
外部の医療・健康情報システムとみなし、実装したシングルサインオン機能を擬似
的に検証する。
3) 総合ポータルサイト
総合ポータルサイトの構築においては、利用者が「何ができるのか」「どうやっ
て操作するのか」を明瞭に理解できるようコンテンツのデザイン性や操作性を重視
する。まず、トップ画面においては、運動・食事登録機能をはじめとする各機能の
コンテンツの利用ガイドを掲載することで、利用者による日常情報のスムーズな登
録を支援する。次に、利用者ポータルトップ画面においては、分かりやすくカテゴ
ライズされたメニューをクリックするだけで、他の医療・健康情報システムが管理
するコンテンツも含めたすべてのコンテンツに対して、容易にアクセス可能とする
ことで、日常情報などの登録における利用者の手間を軽減する。
4) 健康情報コンテンツ
本事業では、日々の運動や食事の記録を継続的に入力することで、利用者が自ら
の生活習慣を振り返ることなどにより、生活習慣改善など疾病予防が促進されるこ
とを狙いとしているが、そもそも疾病の予防と、日々の運動や食事の記録とのつな
がりがあいまいでは、利用者の継続入力への意識も高まりにくいと思われる。
そこで、NTT 西日本高松診療所予防医療センタ所長の福井敏樹医師に講師となっ
ていただき、メタボリックシンドロームや生活習慣病、健康診断について利用者に
分かりやすく解説する動画コンテンツ「健康講座」を製作する。
コンテンツの回数は、当初、全 5 回となっていたが、講師などとコンテンツの内
容について協議を重ねた結果、全 8 回に増やすとともに、単なる静止画像による情
報提供ではなく、講師による解説を主体とした動画とすることで、内容の充実と利
用者の視聴意欲向上を目指すこととする。
21
2. 本事業の内容
また、事柄に感じられるよう配慮し、生活習慣病と日々の生活習慣との因果関係
を具体的に分かりやすく利用者に説明するため、1 つのテーマについて各 2 回とす
る。
健康情報コンテンツのテーマと主な内容を「表 2.2 健康講座の概要」に示す。
表 2.2
テーマ
メタボリックシン 第 1 回
ドローム
第2回
健康診断
第3回
第4回
糖尿病
第5回
第6回
高血圧
第7回
第8回
健康講座の概要
主な内容
メタボリックシンドロームの現状・判定基準
生活習慣の改善、健康診断の受診
健康診断受診の意義
健康診断結果の活用
糖尿病の現状・判定基準
糖尿病の治療・生活習慣是正
高血圧の現状・判定基準
家庭での血圧測定・予防
2.2.4. 基盤のセキュリティ
健康情報活用基盤で管理する医療・健康情報については、機微な個人情報として
厳重に取扱われなければいけない。その具体的なレベルについて、技術・標準 WG
にて検討の結果、原則として、すべての情報を医療情報と同じセキュリティレベル
で取扱うことが求められた。
医療情報のセキュリティレベルを規定したものとしては、以下の関連ガイドライ
ンがある。
・医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライ
ン
・医療情報システムの安全管理に関するガイドライン
・医療情報を受託管理する情報処理事業者向けガイドライン
各ガイドラインでは、対象となる情報、考え方、最低限のガイドライン、推奨さ
れるガイドラインが明記されており、具体的指針が示されている。本事業では、技
術・標準 WG での検討結果を受けて、これらのガイドラインに準拠して、個人情報
を安全に取扱うこととする。
また、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」では、外部情報保
存受託機関について、“プライバシーマーク制度や不足なく適用範囲を定めた適用
宣言書にもとづく ISMS 認定制度などによる公正な第三者の認定を受けているこ
と”との条件が明記されていることなどから、それら制度の認定を取得している事
業者のデータセンターにて、健康情報活用基盤を運用管理することとする。
本事業では、技術・標準 WG での指摘を受けて、これらのガイドラインをもとに
して健康情報活用基盤では個人情報が安全に取扱われるようにシステム構築する
にあたり、情報の安全性を損なう原因を分類してその原因に対しての対策を検討す
ることとする。
22
2. 本事業の内容
情報の安全性を損なう可能性があるものについては、“脅威”と定義される。デ
ータやシステムには、権限を持たない者によって、読まれること・改ざんされるこ
と・消去されることなどの脅威が一般的に存在している。ネットワークシステムの
場合には、盗聴されるなどの脅威も存在している。さらにシステムへのアクセスに
おいては、利用者本人でない者がアクセスを試みる脅威が一般的に存在している。
本事業では、これらの脅威について検討したところ、以下の分類に整理すること
ができた。
・火災、地震、落雷(停電)、侵入者による物理的な破壊・盗難などの「物理
的脅威」
・不正アクセス、盗聴、コンピュータウィルスなどの「技術的脅威」
・人的ミス、内部犯などの「人的脅威」
本事業では、これらの分類した脅威に対する対応策について、一般的な保護され
るべき情報の 3 特性(機密性、完全性、可用性)と照らし合わせることで個人情報
を安全に保護することとする。
2.2.5. 認証基盤
健康情報活用基盤では、非常に機微性の高い個人情報を扱うため、利用者が情報
を安心して預けられるセキュリティの確保が必要である。また一方、活発な利用を
促進するためには、煩雑な認証操作を極力排除する必要がある。
本事業では、個人情報保護のセキュリティと利用者の利便性の双方を確保するこ
とを目的として、IC カードによる認証基盤を構築する。
また、医療・健康情報データベース、医療情報連携データベースそれぞれの利用
目的やセキュリティレベルに応じて、アクセスできるアクタを制限するとともに、
アクタのアクセスする情報の種類を制御することを目的としたアクセスコントロ
ール機能を構築する。
1) 認証
健康情報活用基盤では、診療情報などの非常に機微性の高い情報を取扱うため、
IC カードに記録されたログイン ID と利用者によるパスワード入力を組み合わせた
認証方式を採用する。これにより、IC カードという物理的要素とパスワードという
知識的要素による二要素認証が可能となり、より高いセキュリティを実現すること
ができる。機微性の低いサービスについては、電子メールアドレスを利用したログ
イン認証を採用することで、利便性を重視した認証方式を実現する。
さらには、利用者カードとして利用した IC カードについては、高松市民の生活
に広く浸透している、高松琴平電気鉄道株式会社が発行する非接触方式 IC カード
Felica の鉄道サイバネ規格準拠カードである「IruCa」カードに統合 ID を格納する
ことで、「健康 IruCa」カードとして新たに発行し、健康情報活用基盤への電子認
証デバイスとして安全性と利便性を確保する。
23
2. 本事業の内容
2) アクセスコントロール
医療・健康情報データベースは、多種多様な医療・健康情報を個人の生涯にわた
って恒久的に管理するため、HL7 CDA 構造に準拠した文書データや J-MIX、JLAC10
に準拠したデータ項目セットなど、一般に広く普及している標準仕様を採用して、
構築されたデータベースである。
医療情報連携データベースは、K-MIX から一次連携された医療情報を管理し、医
師の最終確認後の指示により医療・健康情報データベースに二次連携するため、医
療・健康情報データベースと同じデータ構造やデータ項目セットを採用して、構築
されたデータベースである。
上記データベースへのアクセスについては、データベースごとのセキュリティレ
ベルに応じて、アクセスできる機能やアクタを制限するとともに、アクセスするア
クタと情報の種類ごとに利用権限を付与・制限するアクセスコントロールの実装に
より、高いセキュリティを確保する。
2.2.6. 情報公開設定
健康情報活用基盤で管理する医療・健康情報については、非常に機微な個人情報
であるため、安全に取扱わなければいけないが、利用者が利用者本人の医療・健康
情報を医師や保健師などの第三者に公開することで、より個人の診療状況や生活習
慣に合った診療や保健指導の提供を受けることが可能になる。
本事業では、利用者が利用者本人の医療・健康情報の公開に関して、公開先や情
報の範囲を選択可能とするとともに、公開した情報へのアクセス履歴を参照するこ
とを目的とした情報公開設定機能及び監査証跡照会機能を構築する。
情報公開設定では、利用者本人の情報を公開する場合に、利用者本人が公開先や
公開情報を選択する機能や、システムで採取した監査証跡を利用者本人の情報への
アクセス履歴として利用者本人がモニタリングする機能を構築する。
情報公開する際には、公開先の医師や保健師を設定したうえで、利用者本人の健
康情報のカテゴリ(身体情報、運動情報、食事情報、健診情報、診療情報など)か
ら、公開する情報を選択できる仕組みとし、個人の意思により公開できる仕組みと
する。
2.2.7. 医師・保健師との情報共有
医師や保健師による診療や保健指導においては、対象者の発症リスクや生活習慣
に関する詳細な情報を把握したうえで、総合的に判断することが望ましい。しかし、
実際には、診療や問診でのヒアリングなどでの情報収集にとどまるため、十分な情
報を把握できていない場合がある。そのため、利用者が医師や保健師に対して、利
用者の生活習慣に関わる毎日のバイタル、運動、食事の日常情報などを必要に応じ
て公開し、共有できる仕組みが必要である。
本事業では、利用者が日々入力した日常情報などを医師や保健師と共有し、診療
や保健指導に活用することを目的として、利用者本人が第三者への情報公開を設定
24
2. 本事業の内容
する機能及び公開した利用者の日常情報を保健師や医師が参照する機能を Web アプ
リケーションとして構築する。
本機能においては、医師や保健師による診療、保健指導への活用を目的として、
利用者が健康情報活用基盤の医療・健康情報データベースに日々蓄積している利用
者本人の日常情報のうち、必要な情報のみを選択的に第三者へ公開することが可能
である。また、公開先についても、利用者が必要と判断した医師や保健師に限定す
ることが可能である。
一方、利用者から情報を公開された医師や保健師は、健康情報活用基盤上で提供
されている Web 画面を利用することで、利用者の日常情報を過去からの経緯を含め
た形で、総合的に照会することが可能である。
本機能を利用することで、利用者においては、利用者本人の生活習慣や発症リス
クについての情報提供が容易に、かつ正確に行えるため、それらの情報にもとづく
診療、健康指導の内容に安心感や信頼感を覚えることとなる。また、医師や保健師
においては、利用者の生活習慣や発症リスクに関して十分な情報を得ることで、こ
れまで以上に正確で有効な診療や保健指導を効率的に実施することが可能となる。
2.2.8. 他事業者との情報共有
利用者が、医療・健康情報サービスに有効活用する目的で、自身の医療・健康情
報を主体的に管理する場合、個人の選択の自由により事業者を自由に変更すること
が考えられる。その際、個人の医療・健康情報については、生涯にわたる恒久的な
情報であることから、事業者を変更した場合であっても、それまで蓄積した情報を
変更後の健康情報活用基盤で一元的に管理できる必要がある。
本事業では、技術・標準 WG が策定したデータ交換規格に準拠して、他コンソー
シアムとのデータ交換実証を実施することで、他事業者との間で利用者の医療・健
康情報を欠損なく情報共有(交換)することを目的としたデータポータビリティ機
能を構築する。
技術・標準 WG では、事業者間のデータポータビリティを実証するにあたり、本
事業に参画している他コンソーシアムをデータポータビリティ先の事業者と想定
し、他事業者システムとの健康情報の交換が可能であることを実証することとなっ
た。当コンソーシアムにおいても、それにあわせて事業者間での健康情報のデータ
ポータビリティ交換実証を進めることとなった。
本事業に参画しているコンソーシアムは、当コンソーシアムをはじめとし、柏健
康サポートネットワークコンソーシアム(千葉)、ホームヘルスケア創造コンソー
シアム(大阪)、浦添地域健康情報活用基盤構築(沖縄)の 4 コンソーシアムであ
る。本事業の技術・標準 WG を中心に、各コンソーシアム間における医療・健康情
報データベースの健康情報を対象として実証を行うことで、ポータビリティの確保
について検証する。
データポータビリティ実証の手順として、平成 21 年度の技術・標準 WG にて作成
された「実証システム仕様書」及び平成 21 年度の運用・普及 WG にて作成された「運
用ルール集」をもとに、その妥当性を確認することを目的として、それぞれの WG
25
2. 本事業の内容
からの指示のもと、第 1 フェーズ、第 2 フェーズ、第 3 フェーズの 3 つの段階にわ
けて検証を行う。
第 1 フェーズは、単独検証フェーズとして位置づけられたポータビリティの検証
を行った。具体的には、「実証システム仕様書」の内容に従い、当コンソーシアム
にて構築したポータビリティデータのインポート機能及びエクスポート機能が仕
様に準拠していることを検証した。また反対に、システムの実装を行ううえで、
「実
証システム仕様書」の内容に不明瞭な箇所がないかについても検証する。
第 2 フェーズは、技術仕様検証フェーズとして位置づけられたポータビリティの
検証を行った。具体的には、第 1 フェーズで行った検証作業を、2 つのコンソーシ
アム間のデータ授受により検証し、当コンソーシアムにて構築したポータビリティ
データのインポート機能及びエクスポート機能が仕様に準拠していることを検証
した。また、第 1 フェーズと同様に、「実証システム仕様書」の内容に不明瞭な箇
所がないかについても検証する。
第 3 フェーズは、総合検証フェーズとして位置づけられ、
「実証システム仕様書」、
「運用ルール集」の内容についての妥当性を検証する。具体的には、「運用ルール
集」に準拠して作成した、当コンソーシアムの利用規約、運用ルール、データ移管
申請書などについて、データ授受(ポータビリティデータの当コンソーシアムの健
康情報活用基盤へのインポート及び当コンソーシアムからのエクスポートデータ
の他コンソーシアムへの連携)に関する運用性について検証を行う。
3 つのフェーズを通して検証した結果を元に、データポータビリティについては、
平成 22 年度の成果取りまとめ WG にて「実証システム仕様書」、「運用ルール集」
を見直し、「PHR データ交換規格」としてまとめられた。
2.2.9. 健康サービス事業者との情報共有
健康情報活用基盤の利用者の中には、スポーツジムなどの健康サービス事業者が
提供するサービスを利用し、利用者本人のバイタル・運動情報を健康サービス事業
者にて管理する健康情報システムに蓄積しているケースがある。それらの運動・身
体情報を健康情報活用基盤にて管理する医療・健康情報と組み合わせることで、利
用者にとってより有益な情報を提供することが可能になると考えられる。そのため
には、健康情報活用基盤と健康サービス事業者の健康情報システムとの間を接続し、
情報を共有できる仕組みの構築が必要である。
本事業では、データ連携元の事業者(システム)側にて、情報提供のための API/SDK
を構築・公開し、連携先の事業者(システム)はそれらの API/SDK を利用して必要
な情報を取得することを可能とする相互接続機能を構築する。
当コンソーシアムでは、健康情報活用基盤と株式会社コナミスポーツの運動情報
管理システムとの間で情報連携する相互接続機能を構築する。それぞれのシステム
にて提供する情報の内容を「表 2.3 相互接続機能における提供情報」に示す。
26
2. 本事業の内容
表 2.3
情報提供元システム
健康情報活用基盤
運動情報管理システム
相互接続機能における提供情報
提供情報
・健診情報
・身体情報
・運動情報(歩数計の情報)
健康情報活用基盤から運動情報管理システムへは、健診情報を提供する。運動を
することで、生活習慣病に対する心臓・肺・筋肉の機能強化、肥満の改善、血糖や
血圧の改善及び HDL コレステロール(善玉コレステロール)の増大などの効果があ
り、医療機関においては食事療法、薬物療法と並んで運動療法を処方されることが
ある。健診情報を運動情報管理システムへ連携することで、利用者の健康状態に応
じた効果的な運動メニューの推奨が可能となる。
一方、運動情報管理システムから健康情報活用基盤へは、身体情報や運動情報を
連携する。健康情報活用基盤にて蓄積した医療情報や健診情報に加え、身体情報や
運動情報を一元管理することで、保健師による保健指導において、多角的な分析、
アドバイスの実施が可能となる。なお、健康情報活用基盤においても、身体情報や
運動情報を登録する機能を提供しているが、運動情報管理システムから自動連携す
ることで、利用者の入力の手間を軽減する狙いもある。
2.2.10. 保健指導支援
従来の保健指導では、疾病の早期発見・早期治療を主目的としていたが、特定健
診・特定保健指導の義務化などに伴い、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活
習慣病を予防するための保健指導が重視されている。生活習慣病を予防するために
は、その要因となっている生活習慣を正確に把握したうえで、生活習慣改善のため
の適切な指導を行う必要がある。
本事業では、日常情報を指導対象者の抽出や指導内容の設定及び実施状況の管理
に活用することで、潜在的な発症リスクを把握したうえで、生活習慣改善のための
適切な行動計画・目標を設定し、実施状況に応じたフォローアップを行うことを目
的とした保健指導支援機能を構築する。
健康情報活用基盤による保健指導支援機能は、従業員が保有する健康情報を用い
て保健指導を実施する。
まず、指導対象者の抽出では、従業員が公開した健診結果やバイタル情報などの
健康情報を用いて抽出を実施する。
次に、保健指導を実施する際には、対象者の日々のバイタル情報、運動情報や食
事情報などを参考に、指導内容を登録する。また、指導内容登録のオプションとし
て、具体的な数値目標を設定することができる。
保健指導の実施記録では、食事の摂取カロリや、運動の消費カロリ、歩数を目標
値に設定することで、日々の運動・食事登録機能で登録されたデータから実施結果
を自動的に判定できる機能や、保健指導の実施記録をカレンダー形式で表示する機
能により、指導対象者が容易に登録できる。
また、保健指導を実施していない対象者や、実施しているが目標値に達していな
27
2. 本事業の内容
い対象者を保健師が日々監視できるようにすることで、対象者の保健指導の継続実
施やフォローアップができる。
2.3. 健康情報活用基盤を利用したサービスの提供
前節の通り構築した健康情報活用基盤を利用して、健診結果や日常情報を分析・
把握することで、将来の発症リスクが高い指導対象者を抽出し、より個人の生活習
慣に合わせた保健指導をサポートするサービスを提供する。
2.3.1. 指導対象者の抽出
健康診断の実施頻度は半年~1 年に 1 度であり、その間の悪化傾向を把握するこ
とや、その日の体調や精神状態に左右される検査項目に関する潜在的なリスクを把
握することは困難である。
本事業では、健康診断の結果に対する閾値による指導対象者の抽出に加え、健康
診断の経年変化や日常情報にもとづいた抽出を行うことで、健康度の悪化傾向や潜
在的な発症リスクを確実に検知することを目的とした指導対象者の抽出サービス
を提供する。
1) 概要
まず、指導対象者を抽出するために必要な健診情報と日常情報の登録及び利用者
本人による情報公開設定のサービスを提供する。
健診情報の登録については、利用者本人の同意を得て、企業から健診情報を連携
する。日常情報の登録については、利用者本人が Web 画面で日々入力した情報をデ
ータベースに登録する。
次に、登録した健診情報と日常情報にもとづき、指導対象者の抽出のサービスを
提供する。指導対象者の抽出は、健診結果の各検査項目による「メタボリック抽出」
「閾値抽出」、健診結果が毎年悪化傾向にあり、次回健診で基準値を超えてしまう
可能性がある従業員を検知する「経年変化による抽出」、日常情報からリスクを検
知する「血圧による抽出」「体重変化による抽出」など様々な抽出方法で行う。
2) 詳細
① 指導対象者の抽出
指導対象者抽出サービスの詳細を「図 2.7
ー」に示す。
28
指導対象者抽出サービスの業務フロ
2. 本事業の内容
凡例
書類
システム
操作
処理の流れ
他フロー
処理手順
利用者
(従業員)
同意書提出
日常情報入力
健康情報公開
健診情報利用
同意書
保健指導へ
保健指導
計画策定
保健師
(産業保健師)
指導対象者
抽出
健康情報
統計
労務管理担当
保健指導対象者
抽出画面
指導対象者
選択
保健指導対象者
抽出一覧画面
健診情報連携
健診情報連携
保健師に対して
自分の健康情報を
公開
健康情報
活用基盤
健診情報登録
日常情報登録
(GPH1110U、
GPH1120U)
健康情報
公開設定
(GPH0090U)
健康情報
統計提供
(GHE0010R)
指導者対象者
抽出
(GHE0210R)
指導者対象者
登録
(GHE0220R)
※( )内は健康情報活用基盤の画面ID
図 2.7
指導対象者抽出サービスの業務フロー
指導対象者抽出サービスは、業務フローに即して、以下の(a)~(f)の流れとなる。
(a) 健診情報登録
従業員の同意のもとで、企業の労務管理担当から健診情報を連携し、健康情報活
用基盤の医療・健康情報データベースに登録する。
(b) 日常情報登録
従業員が日々Web 画面で入力した日常情報(バイタル、運動、食事)を健康情報
活用基盤の医療・健康情報データベースに登録する。
(c) 健康情報公開設定
従業員本人が所属する企業の保健師に対して設定した健康情報の公開内容(公開
相手先名、公開情報の種類など)を健康情報活用基盤のアクセスコントロール機能
に設定する。
(d) 健康情報統計提供
登録した健診情報と日常情報をもとに、保健師が所属する企業の健康情報統計
(BMI、有所見率、メタボリック階層分布など)を提供し、対象企業の地域・業種
29
2. 本事業の内容
などの特性に合った保健指導計画の策定を支援する。
健康情報統計の例を「図 2.8 健康情報統計イメージ」に示す。
30
2. 本事業の内容
メタボリック判定
~19歳
20歳~29歳 30歳~39歳
男性 女性 男性 女性 男性 女性
3
0
150
30
278
32
0.3% 0.0% 13.0% 25.4% 24.1% 27.1%
1
0
37
6
68
5
0.1% 0.0% 3.2% 5.1% 5.9% 4.2%
2
0
15
1
25
0
0.2% 0.0% 1.3% 0.8% 2.2% 0.0%
0
0
98
23
185
27
0.0% 0.0% 8.5% 19.5% 16.0% 22.9%
全体
メタボリック対象者
メタボリック予備軍対象者
上記外
40歳~49歳
男性 女性
311
29
26.9% 24.6%
83
5
7.2% 4.2%
26
2
2.3% 1.7%
202
22
17.5% 18.6%
50歳~59歳
60歳~
全体
男性 女性 男性 女性 男性 女性
303
21
109
6
1154 118
26.3% 17.8% 9.4% 5.1% 100.0% 100.0%
99
4
33
0
321
20
8.6% 3.4% 2.9% 0.0% 27.8% 16.9%
22
1
4
0
94
4
1.9% 0.8% 0.3% 0.0% 8.1% 3.4%
182
16
72
6
739
94
15.8% 13.6% 6.2% 5.1% 64.0% 79.7%
メタボリック対象者分布
~19歳
20歳~29歳 30歳~39歳 40歳~49歳 50歳~59歳
60歳~
全体
男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性
1
0
37
6
68
5
83
5
99
4
33
0
321
20
0.3% 0.0% 11.5% 30.0% 21.2% 25.0% 25.9% 25.0% 30.8% 20.0% 10.3% 0.0% 100.0% 100.0%
0
0
11
0
15
0
14
2
16
1
6
0
62
3
0.0% 0.0% 3.4% 0.0% 4.7% 0.0% 4.4% 10.0% 5.0% 5.0% 1.9% 0.0% 19.3% 15.0%
1
0
7
3
14
2
24
0
30
2
7
0
83
7
0.3% 0.0% 2.2% 15.0% 4.4% 10.0% 7.5% 0.0% 9.3% 10.0% 2.2% 0.0% 25.9% 35.0%
0
0
8
1
14
1
17
3
20
1
5
0
64
6
0.0% 0.0% 2.5% 5.0% 4.4% 5.0% 5.3% 15.0% 6.2% 5.0% 1.6% 0.0% 19.9% 30.0%
0
0
11
2
25
2
28
0
33
0
15
0
112
4
0.0% 0.0% 3.4% 10.0% 7.8% 10.0% 8.7% 0.0% 10.3% 0.0% 4.7% 0.0% 34.9% 20.0%
メタボリック対象者
血清脂質異常+血圧高値
血圧高値+高血糖
血清脂質異常+高血糖
血清脂質異常+血圧高値+高血糖
メタボリック対象者分布図
35.0%
30.0%
25.0%
20.0%
血清脂質異常+血圧高値+高血糖
血清脂質異常+高血糖
血圧高値+高血糖
血清脂質異常+血圧高値
15.0%
10.0%
5.0%
0.0%
男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性
~19歳
20歳~29歳30歳~39歳40歳~49歳50歳~59歳
60歳~
メタボリック判定基準
腹囲周囲径が男性の場合では85cm以上、女性では90cm以上で、以下の①~③を2つ以上満たす場合メタボリックと判定されます。
(特定健診判定基準)
①血清脂質異常 高トリグリセリド血症(150mg/dl以上) / 低HDLコレステロール血症(40mg/dl未満)のどちらか、または両方を満たす場合
②血圧高値 収縮期血圧(130mmHg以上) / 拡張期血圧(85mgHg以上)のどちらか、または両方を満たす場合
③高血糖 空腹時高血糖(110mg/dl以上)を満たす場合
※血糖値がない場合、過去1-3か月の血糖値を反映した血糖値のコントロールの指標であるHbA1c 検査から高血糖の判定を行います。
(HbA1cが5.2%以上の場合、高血糖と判定します。)
メタボリック予備軍対象者分布
~19歳
20歳~29歳 30歳~39歳
男性 女性 男性 女性 男性 女性
2
0
15
1
25
0
2.1% 0.0% 16.0% 25.0% 26.6% 0.0%
0
0
5
1
7
0
0.0% 0.0% 5.3% 25.0% 7.4% 0.0%
1
0
4
0
3
0
1.1% 0.0% 4.3% 0.0% 3.2% 0.0%
1
0
6
0
15
0
1.1% 0.0% 6.4% 0.0% 16.0% 0.0%
メタボリック予備軍対象者
血清脂質異常
血圧高値
高血糖
40歳~49歳
男性 女性
26
2
27.7% 50.0%
8
1
8.5% 25.0%
6
1
6.4% 25.0%
12
0
12.8% 0.0%
50歳~59歳
60歳~
全体
男性 女性 男性 女性 男性 女性
22
1
4
0
94
4
23.4% 25.0% 4.3% 0.0% 100.0% 100.0%
10
0
3
0
33
2
10.6% 0.0% 3.2% 0.0% 35.1% 50.0%
5
0
0
0
19
1
5.3% 0.0% 0.0% 0.0% 20.2% 25.0%
7
1
1
0
42
1
7.4% 25.0% 1.1% 0.0% 44.7% 25.0%
メタボリック予備軍対象者分布図
50.0%
45.0%
40.0%
35.0%
30.0%
25.0%
20.0%
15.0%
10.0%
5.0%
0.0%
高血糖
血圧高値
血清脂質異常
男性
女性
~19歳
男性
女性
男性
女性
男性
女性
男性
女性
20歳~29歳 30歳~39歳 40歳~49歳 50歳~59歳
男性
女性
60歳~
メタボリック予備軍判定基準
腹囲周囲径が男性の場合では85cm以上、女性では90cm以上で、以下の①~③を1つ以上満たす場合メタボリック予備軍と判定されます。
(特定健診判定基準)
①血清脂質異常 高トリグリセリド血症(150mg/dl以上) / 低HDLコレステロール血症(40mg/dl未満)のどちらか、または両方を満たす場合
②血圧高値 収縮期血圧(130mmHg以上) / 拡張期血圧(85mgHg以上)のどちらか、または両方を満たす場合
③高血糖 空腹時高血糖(110mg/dl以上)を満たす場合
※血糖値がない場合、過去1-3か月の血糖値を反映した血糖値のコントロールの指標であるHbA1c 検査から高血糖の判定を行います。
(HbA1cが5.2%以上の場合、高血糖と判定します。)
図 2.8
健康情報統計イメージ
31
2. 本事業の内容
(e) 指導対象者抽出
公開された従業員の健診情報や日常情報をもとに、保健師が指定した抽出方法・
条件により、指導対象者を抽出する。保健師は、メタボリック対象者抽出をはじめ、
検査項目ごとの閾値による抽出、過去の健診結果の経年変化による抽出、日々のバ
イタルサインによる抽出、体重の変化による抽出など、様々な抽出方法・条件を指
定することができる。
(ア) 健診結果の経年変化による抽出
健診結果による指導対象者の抽出では、特定保健指導に代表されるように、特定
の検査項目の値が閾値を超えた場合や、下回った場合など、基準値の範囲外の場合
に指導対象者として、その改善に向けた指導・計画を実施している。
しかし、一度判定された、メタボリック判定や検査項目判定を改善するためには、
時間と労力が必要であり、指導対象者の負担も大きい。また、長年の生活習慣を直
ちに見直すことは難しいのが現状である。
そこで、指導対象者と判定される以前から、過去数年の健診結果を参照し、検査
値が増加傾向、減尐傾向にある項目の推移を捉え、次回の健診時に基準値の範囲外
となる可能性のある従業員のリスクを検知し、早期の指導を実施することで、指導
対象者の発生を防ぐことを目的としている。
具体的な経年変化による抽出方法を以下の、「図 2.9 経年変化抽出方法」に示
す。
1)健診結果の値は、該当する健診結果と、その直近1回の健診結果の移動平均を求め、
該当する健診結果の値とする。対象とする健診結果は過去3回分を利用する。
2)求められた、2つの結果の差から、次年度(最新の健診日付の翌年)に基準値を
超える場合に対象とする。
HDLコレステロールが160以上の場合、指導対象としている場合の例
1)
健診日
HDLコレステロール
2)
健診日
HDLコレステロール
2007/8/6
80
2008/9/16
100
2009/11/6
140
2010/8/6
155
2007/8/6
80
2008/9/16
100
2009/11/6
120
2010/8/6
147.5
2011/8/6
175
200.0
180.0
160.0
160
140.0
120.0
100.0
2009/11/6
2009/11/6
図 2.9
2010/8/6
2011/8/6
経年変化抽出方法
32
2. 本事業の内容
(イ) 日々のバイタルサインによる抽出
バイタルサインの中でも、生活習慣病の予防するうえで、血圧は重要因子の一つ
である。血圧値が高い高血圧の状態は、動脈硬化や脳卒中、狭心症や心筋梗塞など
の疾病を直接引き起こす可能性がある。また、腎障害などとの合併症の発症などと、
高血圧そのものよりも、それが原因で様々な疾病につながるため、重要な管理が必
要な日常情報である。
また、血圧は、時間や環境によって変動することが多いため、健康診断時に測定
するだけではなく、日々記録した血圧値が非常に重要で、保健指導を実施するうえ
で、有用な情報である。
そこで、健診結果による指導対象者抽出だけではなく、日々の日常情報である血
圧を抽出対象基準とすることで、健診結果の判定に加え、日常情報による、複合的
な指導対象者の抽出機能を提供する。
具体的なバイタルサインによる抽出方法を以下の、「図 2.10 バイタルサイン
による抽出方法」に示す。
1)過去1ヶ月間の間で、I 度高血圧の基準値を、期間中1/3回の割合で測定された場合に
対象とする。
成人における血圧値の分類
分類
収縮期血圧
至適血圧
< 120
かつ
拡張期血圧
< 80
正常血圧
< 130
かつ
< 85
正常高値血圧
130~139
または
85~89
I 度高血圧
140~159
または
90~99
II 度高血圧
160~179
または
100~109
III 度高血圧
≧180
または
≧ 110
(孤立性)収縮期高血圧
≧140
かつ
< 90
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2009年版」
図 2.10
バイタルサインによる抽出方法
(ウ) 体重の変化による抽出
厚生労働省研究班「多目的コホート研究(JPHC 研究)」の調査結果では、中年
期の 5 ヶ年に体重があまり変化しなかった人に比べ、5kg 以上の増加・減尐のあっ
た人は、生活習慣病による総死亡リスクが高くなる報告が発表されている。
また、肥満は、高血圧、糖尿病などの生活習慣病の発症と関連があり、さらには
様々な疾病につながる要因の一つであるため、重要な管理が必要な日常情報である。
日々の日常情報である体重の変化を抽出対象基準とすることで、健診結果の判定
に加え、日常情報による、複合的な指導対象者の抽出機能を提供する。
具体的な体重変化による抽出方法を以下の、「図 2.11 体重変化による抽出方
法」に示す。
33
2. 本事業の内容
1)最新の体重データと直近の健診時の体重データで指定したkg以上の変化(増減)が
あった場合に抽出します。
2)最新の体重データが直近の健診時の体重データの場合、その前の健診時の体重データ
との差異で判定します。
絶対値差が指定したKg以上
直近の健診時
(その前の健診時)
最新情報
(直近の健診時)
図 2.11
体重変化による抽出方法
(f) 指導対象者登録
抽出した指導対象者の中から、保健師が選択した指導対象者を健康情報活用基盤
に登録する。
従来の健診・保健指導では「病気の早期発見・早期治療」を目的としていたが、
2008 年 4 月より開始された特定健診・特定保健指導は、内臓脂肪型肥満に着目し、
その要因となっている生活習慣を改善するための保健指導を行い、糖尿病などの生
活習慣病の有病者・予備群を減尐させることを目的として開始された。制度として
義務化されたことにより、その実態が浮き彫りとなり、企業内でも特定保健指導対
象者数の軽減に努め、自主的に保健指導を実施するなど、指導対象者と判定される
以前から、従業員の生活習慣の改善や生活習慣病の予防が求められている。
中でも、保健指導の重要業務である指導対象者の抽出では、従来は健診結果の閾
値による抽出や、複合条件などによる組み合わせによる抽出であり、また指導対象
者となって初めて、問診・面談などから生活習慣を知るケースが多く、対象者以外
の生活習慣やリスクの増加までは把握できていない。
そこで、指導対象者抽出サービスでは、従業員の公開された健診情報をはじめと
する日常情報を用いて「メタボリック判定」、「検査項目の閾値判定」、潜在する
リスクをいち早く察知する「経年変化による抽出」、さらには日常情報を利用した
「血圧による抽出」、「体重による抽出」により、様々な観点から容易に抽出でき
るサービスとする。
また、「経年変化による抽出」では、現段階では指導対象者でないが、来年以降
対象者となるリスク保有者を察知・指導することで従業員の健康を維持するために
有効である。また、日常情報による「血圧による抽出」、「体重による抽出」では、
いち早く従業員の変調を捉えることで、高度な保健指導ができる。
以上の指導対象者の抽出は、健診情報と日常情報のうちのバイタル情報を活用し
た抽出であるが、今後は生活習慣を構成する重要な要素である運動・食事情報を活
34
2. 本事業の内容
用することも求められている。
2.3.2. 指導サポート
疾病を予防するための保健指導では、指導対象が無理なく継続して実施できる適
切な指導内容を設定すること及び設定した指導内容を実行していることに対して
フォローアップすることが重要となる。
本事業では、指導対象者が日々入力した日常情報や医師が入力した診療情報を保
健指導に活用することで、適切な行動計画・目標を設定することを目的とした保健
指導の支援サービスを提供する。
また、指導内容を設定する仕組みと日常情報を登録する仕組みを連動することで、
状況に応じた適切な助言を行うことを目的とした指導対象者のフォローアップ支
援のサービスを提供する。
1) 概要
① 指導対象者の保健指導支援
まず、指導対象者への問診票の入力を依頼し、依頼にもとづき指導対象者が入力
した問診票を登録するサービスを提供する。
次に、指導内容の設定を支援するための健康情報の提供及び指導内容の登録のサ
ービスを提供する。
健康情報の提供は、指導対象者の日々のバイタル情報、運動情報、食事情報、診
療情報、健診情報などを、タブ構成やグラフ表示による照会画面で分かりやすく提
供する。
② 指導対象者のフォローアップ
まず、指導対象者の指導内容に対する実施状況・達成状況の登録及び登録された
実施状況・達成状況に関する保健師への情報通知のサービスを提供する。
実施状況・達成状況の登録については、指導対象者本人が Web 画面で日々入力し
た日常情報の内容をもとに自動的に登録する。
次に、指導対象者のフォローアップを支援するための実施記録情報の提供及び指
導コメントの登録のサービスを提供する。
③ 指導対象者の診療情報提供
医療機関からの診療情報連携及び指導対象者本人の情報公開による保健師への
診療情報提供のサービスを提供する。
35
2. 本事業の内容
2) 詳細
① 指導対象者の保健指導支援
保健指導支援サービスの詳細を「図 2.12
に示す。
凡例
保健指導支援サービスの業務フロー」
書類
操作
システム
処理の流れ
他フロー
処理手順
診療へ
利用者
(従業員)
フォローアップへ
問診票入力
有り
保健師
(産業保健師) 抽出から
問診票入力
依頼指示
保健指導
(1回目)
受診
勧奨
無し
指導内容設定
健康情報
照会画面
労務管理担当
健康情報
活用基盤
問診票入力依頼
(GHE0200R)
問診票登録
(GCM0400U)
健康情報提供
(GCM0230R)
指導内容登録
(GHE0310U)
※( )内は健康情報活用基盤の画面ID
図 2.12
保健指導支援サービスの業務フロー
保健指導支援サービスは、業務フローに即して、以下の(a)~(d)の流れとなる。
(a) 問診票入力依頼
保健師が Web 画面から問診票入力依頼することにより、指導対象者のポータル画
面にアナウンスする。
(b) 問診票登録
入力依頼にもとづき、指導対象者本人が Web 画面で入力した情報を健康情報活用
基盤に登録する。
(c) 健康情報提供
血圧、体重などの日常情報の推移をグラフで表示する Web 画面などで、保健師に
36
2. 本事業の内容
指導対象者の健康情報を提供する。
指導対象者が日々入力した日常情報などを面談時に Web 画面で参照することで、
生活習慣を正確に把握することや、生活習慣改善の行動計画・目標となる指導内容
を設定することを支援する。
健康情報照会の一例を「図 2.13 健康情報照会画面」に示す。
お酒の飲み過ぎは血圧上昇の原因になります。
最低でも週に1度は休肝日を設けましょう。
飲酒の量は、ビールなら中ビン1本まで、焼酎な
ら2/3合までが理想的です。
また、魚練り製品や肉加工品は以外に塩分が多
いので、お酒のつまみにするのはなるだけ避け
ましょう。塩分は1日6g以下を目標としてくださ
い。
図 2.13
健康情報照会画面
(d) 指導内容登録
保健師が設定した指導内容(行動計画)を健康情報活用基盤に登録する。指導対
象者が日々入力する運動・食事登録機能と連動するよう、1 日の摂取カロリ、消費
カロリ、歩数を行動目標として設定することもできる。
保健指導の目的は、指導対象者が振り返りを行うことで自らの健康状態や生活習
慣を知り、健康的な生活習慣の改善のための自主的な取組みを継続的に行うことが
できるようにすることにある。
保健指導を実施する際には、この振り返りが初期の段階で特に重要であり、指導
37
2. 本事業の内容
内容の具体的な実施内容としても有効に活用される。健康情報活用基盤では、指導
対象者が自ら登録している過去の運動情報や食事情報を振り返りに利用し、過去の
摂取したメニュー、カロリ、塩分量、アルコール摂取量などを参照することで、具
体的な生活習慣を知るとともに、普段摂取している食事メニューや運動内容に着目
した具体的な指導の実施が可能である。
また、対象者にとっては、個人の生活に沿った具体的な指導であれば、直感的に
分かりやすく、保健指導を生活の延長で実施することができ、実施・継続しやすい。
健康情報活用基盤は、保健指導において指導対象者の生活習慣を把握及び指導内
容を策定するツールとしての効果が期待される。
② 指導対象者のフォローアップ
生活習慣病などの予防のための保健指導フォローアップサービスの詳細を「図
2.14 指導対象者フォローアップ支援サービスの業務フロー(指導内容設定)」に
示す。
凡例
書類
システム
操作
処理の流れ
他フロー
処理手順
指導内容実施
記録
利用者
(従業員)
指導コメント
確認
保健指導
から
指導対象者
状況確認
保健師
(産業保健師)
個別指導状況
確認
保健指導対象者
一覧画面
指導コメント
入力
指導内容
実施記録画面
指導内容実施記録
一覧画面
保健指導
(2回目)
健康情報
照会画面
未実施、未達の
保健指導対象者
の人数をアラート
し通知
労務管理担当
指導内容実施
状況登録
(GCM0410U)
健康情報
活用基盤
実施状況通知
(GHE0200R)
指導内容
実施情報提供
(GCM0420R)
指導コメント
登録
(GCM0420R)
指導コメント
情報提供
(GCM0410U)
健康情報提供
(GCM0230R)
※( )内は健康情報活用基盤の画面ID
図 2.14
指導対象者フォローアップ支援サービスの業務フロー(指導内容設定)
保健指導支援サービスは、業務フローに即して、以下の(a)~(f)の流れとなる。
(a) 指導内容実施状況登録
保健師が設定した指導内容に対して、指導対象者が入力した実施状況の記録を登
38
2. 本事業の内容
録する。1 日の摂取カロリ、消費カロリ、歩数を行動目標として設定している場合
は、入力された運動・食事情報から達成状況を自動判定する。
(b) 実施状況通知
保健師が設定した指導内容を実施できていない指導対象者(未実施者)や、行動
目標を達成できていない指導対象者(未達者)の情報を保健師に提供する。
未実施者や未達者については、人数だけでなく、一覧表から個人を特定すること
ができる。
指導対象者の一覧を参照する画面イメージを「図 2.15 指導対象者一覧画面」
に示す。
保健指導実施していない従業員
や、実施しているが目標が高く
て実施できていない従業員数を
表示
図 2.15
指導対象者一覧画面
(c) 指導内容実施記録情報提供
指導対象者の日々の実施状況を時系列で、保健師に提供する。指導期間中の目標
値と実施記録値を併せて参照することができるので、継続できているか、また、適
正な目標であるかなどを随時確認することができる。
(d) 指導コメント登録
保健師が入力した指導対象者に対する助言や励ましなどを指導コメントとして
登録する。登録した指導コメントを速やかに指導対象者に通知することにより、生
活習慣改善のための行動変容の継続を支援する。
39
2. 本事業の内容
(e) 指導コメント提供
登録した指導コメントの情報を指導対象者に提供することにより、生活習慣改善
のための行動変容の継続を支援する。
(f) 健康情報提供
血圧、体重などの日常情報の推移をグラフで表示する Web 画面などで、保健師に
指導対象者の健康情報を提供する。
保健指導の目的は継続して実施でき、自主的な取組みから発する行動変容に繋げ
ることであり、保健指導を実施するうえで、重要視されることはその実施を継続さ
せるために支援することにある。対象者の生活習慣の問題点を特定し、保健指導内
容の策定も重要であるが、その指導内容が適正なものなのか、また継続して実施で
きているのか、またできていない場合は何に問題があるのかをいち早く察知し、そ
の改善・見直しを実施することがさらに重要である。
健康情報活用基盤を用いた保健指導では、指導内容を日々繰り返し実施するだけ
は緊張感や危機感も薄れるため、日々入力する日常情報と連動することで、対象者
が実施結果を視覚的に見ることや、達成感を感じるような仕組みとし継続実施を促
すサービスとすることができる。
また、保健指導が実施できていない対象者や、目標に達成していない対象者を
日々確認することができるようになったことで、その指導内容の問題点の早期発見
や、改善への見直しの実現を可能とし、対象者に対して無理のない、長期継続でき
る保健指導のフォローアップが期待できる。
③ 指導対象者の診療情報提供
疾病の早期発見・早期治療ための保健指導フォローアップサービスの詳細を以下
の「図 2.16 指導対象者フォローアップ支援サービスの業務フロー(診療情報提
供)」に示す。
40
2. 本事業の内容
凡例
書類
システム
操作
処理の流れ
他フロー
処理手順
患者情報参照
医師
診療
診療情報
連携
健康情報
照会画面
利用者
(従業員)
診療情報提供
依頼
保健師
(産業保健師)
診療情報公開
保健指導
(2回目)
保健指導から
健康情報
照会画面
診療情報
提供依頼
(GPH0230R)
健康情報
活用基盤
提供依頼
受付
K-MIX
サービス
図 2.16
診療情報
受信・登録
(GME0060U)
健康情報提供
(GCM0230R)
診療情報
登録・送信
医療情報
公開設定
(GPH0090U)
診療情報提供
(GCM0230R)
※( )内は健康情報活用基盤の画面ID
指導対象者フォローアップ支援サービスの業務フロー(診療情報提供)
保健指導支援サービスは、業務フローに即して、以下の(a)~(e)の流れとなる。
(a) 診療情報提供依頼
従業員から K-MIX の参加医療機関の医師に対して診療情報の提供を依頼できるよ
うに、K-MIX に依頼情報を送信する。
(b) 健康情報提供
血圧、体重などの日常情報の推移をグラフで表示する Web 画面などで、医師に指
導対象者の健康情報を提供する。
(c) 診療情報受信・登録
医師が K-MIX で登録・送信した診療情報を健康情報活用基盤の医療情報連携デー
タベースに登録し、医師の再確認後の指示を受けて医療・健康情報データベースに
連携する。
(d) 医療情報公開設定
従業員本人が所属する企業の保健師に対して設定した医療情報の公開内容(公開
相手先名、公開情報の種類など)を健康情報活用基盤のアクセスコントロール機能
41
2. 本事業の内容
に設定する。
(e) 診療療情報提供
医師が K-MIX で登録・送信した指導対象者の診断結果や処方内容、所見やコメン
トの情報を保健師に提供する。
保健師が、受診勧奨した指導対象者の診療情報を参照することで、指導対象者の
疾病の早期発見・早期治療できるとともに、2回目以降の保健指導に活用すること
ができる。
診療情報を参照する画面イメージを「図 2.17 診療情報照会画面」に示す。
図 2.17
診療情報照会画面
疾病の可能性が高い、またはすでに発症している従業員に対しても、受診勧奨後
の診療情報を参照することにより、従業員の重疾化予防や就業上の安全衛生管理に
活用できるようになる。
42
3.本事業の成果
3. 本事業の成果
3.1. 健康情報活用基盤及び周辺システムの構築による成果
3.1.1. 医療機関からの情報収集
1) 構成
医療機関からの情報収集では、K-MIX より連携された HL7 準拠の標準データを一
度、医療情報連携データベースへ取り込みを行う。連携された診療情報は医療機関
で管理されている患者 ID であるため、利用者の医療・健康情報データベースへ連
携するためには、患者 ID と利用者 ID をシステム上マッチングしたうえで、医師の
操作により、医療・健康情報データベース連携できる構成とした。
医療情報連携機能の構成を「図 3.1 医療情報連携機能の構成」に示す。
健康情報活用基盤
医療機関
(K-MIX)
HL7 CD
準拠
医療情報連携
データベース
診療情報連携機能
医療・健康情報
データベース
図 3.1
ア
ク
セ
ス
コ
ン
ト
ロ
ー
ル
機
能
認
証
基
盤
医療情報連携機能の構成
医師向け機能として患者の管理、診療を記録する画面などから構成し、患者向け
機能は、受診時の診療記録の提供依頼を容易できる画面構成とし、「医師ポータル
トップ画面」、「利用者ポータルトップ画面」と医師向けと患者向けに分けた画面
遷移とした。
医療情報連携機能の画面遷移を「図 3.2 医療情報連携機能の画面遷移図」に示
す。
43
3.本事業の成果
医師ポータル
トップ画面
(GME0010R)
患者情報登録画面
(GME0040U)
送信患者選択画面
(GME0010R)
送信情報選択画面
(GME0030R)
送信情報確認画面
(GME0060U)
医師ID入力画面
(GPH0210R)
医師確認画面
(GPH0220R)
利用者ポータル
トップ画面
(GPH0010R)
情報提供依頼画面
(GPH0200R)
図 3.2
送信完了画面
(GPH0230R)
医療情報連携機能の画面遷移図
2) 詳細
① 標準規格への対応
健康情報活用基盤と他の医療情報システムとの医療情報連携のデータフォーマ
ットとして、HL7(Health Level Seven)に準拠したフォーマットを採用した。HL7
では、医療情報の電子データ交換に関する幅広い内容を網羅的に規定しているが、
健康情報活用基盤の医療情報連携における標準データについては、HL7 準拠の標準
の 1 つである HL7 CDA(Clinical Document Architecture) R2 を採用することと
した。HL7 CDA は、そのデータ構造に XML を取り入れており、インターネットなど
の回線上でのデータ交換を意識した規格であることがその大きな理由の 1 つである。
健康情報活用基盤の医療情報連携において使用するデータフォーマットについ
ては、HL7 CDA R2 に規定されている通り、大きくはヘッダ部、ボディ部から構成さ
れる。ヘッダ部には、受信文書の ID、種別、発行日、患者情報などの文書全体に共
通する項目を定義し、ボディ部には、傷病名・主訴、既往歴、家族歴などの医療情
報として個別管理する必要のある項目を任意に定義できる構成としている。
健康情報活用基盤の医療情報連携機能において使用する標準データフォーマッ
トの例を「図 3.3 医療情報連携機能の標準データフォーマット」に示す。
44
3.本事業の成果
<ClinicalDocument> 診療文書
<id />
文書ID
<code />
文書種別コード
<effectiveTime /> 発行日
<recordTarget /> 患者情報
<author /> 作成者(連携元診療機関・医師・システム情報)
<informationRecipient /> 紹介先診療機関・医師・システム情報
<custodian /> 文書管理責任者情報
<component> 診療文書本文
<structurebody>
<component>
<section>
<code code="MDxxxxxxx" codeSystem="XXXXXX" displayName="XXXXXX" />
<title>xxxxxx</title>
<text>xxxxxx</text>
</section>
</component>
<component>
<section>
<code code="MDxxxxxxx" codeSystem="XXXXXX" displayName="XXXXXX" />
<title>xxxxxx</title>
<text>xxxxxx</text>
</section>
</component>
・
・
・
図 3.3
医療情報連携機能の標準データフォーマット
HL7 CDA の規定では、section 要素については、データを交換する両者にて任意
に取り決めできることになっている。そこで、健康情報活用基盤の医療情報連携機
能においては、連携する対象として J-MIX により標準化されている診療情報のデー
タ項目セットを用いた。
健康情報活用基盤の医療情報連携において、section 要素にて使用する主な code
属性、displayName 属性の一覧を「表 3.1 健康情報活用基盤の連携データにおけ
る section 要素の主な属性」に示す。
45
3.本事業の成果
表
項番
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
3.1 健康情報活用基盤の連携データにおける section 要素の主な属性
code 属性
displayName 属性
MD0018530
傷病名・主訴
MD0020200
目的
MD0014230
既往歴
MD0014860
家族歴
MD0022790
現疾患(診断内容)
MD0020890
治療経過
MD0022780
現在の処方
MD0018730
身体所見
MD0012990
生活習慣/リスク要因
MD0014760
アレルギー
MD0013820
予防接種
MD0020330
備考・連絡事項
② 医療情報連携データベース
(a) 医療機関固有のデータの管理
医療情報連携データベースでは、医療機関で発生する医療情報を管理するため、
HL7 CDA や DICOM などの標準化された文書データや画像データに準拠することはも
ちろんのこと、PDF、エクセルデータ、一般的な動画データなど、医療機関固有の
あらゆるデータを蓄積・管理できる必要がある。
そこで、当コンソーシアムでは、診療文書国際標準である HL7 CDA 構造を採用し、
同規格に則った情報を漏れなく取り込める構造とした。
(b) 医療・健康情報データベースへのシームレスな連携
医療情報連携データベースには、各医療機関固有のデータが蓄積されており、患
者個人を識別する管理番号も独自のルールにもとづいて採番されている。そこで、
医療情報連携データベースにて、診療情報の患者個人を識別する患者 ID と健康情
報の利用者個人を識別する統合 ID を紐付けることにより、医療・健康情報データ
ベースへのシームレスな連携が実現できるような構造とした。
医療・健康情報データベースの概要を「図 3.4 医療・健康情報データベースの
概要」に示す。
46
3.本事業の成果
【医療連携システムゾーン】
登録
医
療
情
報
登
録
機
能
【健康情報活用基盤ゾーン】
登録
医療情報
連携DB
医療情報
診
療
情
報
連
携
機
能
K-MIX
物理的に分割
図 3.4
医療・健康
情報DB
日常情報
健診情報
医療情報
ア
ク
セ
ス
コ
ン
ト
ロ
ー
ル
ア
プ
リ
ケ
ー
シ
ョ
ン
総
合
ポ
ー
タ
ル
サ
イ
ト
参照
健康情報活用基盤
医療・健康情報データベースの概要
③ 診療情報連携機能
(a) 患者情報登録機能
K-MIX から診療情報を健康情報活用基盤に連携するにあたり、前準備として健康
情報活用基盤に患者情報を登録することとした。医師が健康情報活用基盤に患者情
報を登録する際には自医療機関内で患者を特定する患者 ID に加えて患者氏名、性
別、生年月日、保険証番号などの基本情報を併せて登録できるようにした。K-MIX
から診療情報を連携した際には、それらの情報でマッチングを行い、医療情報連携
がシステム的に患者を取違えることがないように配慮した。
医師が患者基本情報を登録する画面例について「図 3.5
示す。
47
患者情報登録画面」に
3.本事業の成果
マッチング
項目
図 3.5
患者情報登録画面
(b) 情報提供依頼機能
健康情報活用基盤から K-MIX システムに対して、医療情報の連携を依頼し、それ
に呼応した形で K-MIX から医療情報を送信することでシステム的に患者情報の取違
えが発生しないようにした。
以下に、健康情報活用基盤から K-MIX システムに対して、医療情報の連携を依頼
する手順について記載する。
まず、医療情報を連携してほしい利用者と医師が対面しているところで、利用者
が健康情報活用基盤にログインをし、「情報提供依頼画面」に遷移する。具体的な
画面イメージについて「図 3.6 情報提供依頼画面」に示す。
48
3.本事業の成果
K-MIXへの医療情報連
係依頼を行う
図 3.6
情報提供依頼画面
次に、医療情報を連携してほしい医師に K-MIX ユーザ ID を入力してもらう。具
体的な画面イメージについて「図 3.7 医師 ID 入力画面」に示す。
K-MIXのユーザーIDを入力する
図 3.7
医師 ID 入力画面
入力された K-MIX ユーザ ID が正しいことを確認し、K-MIX を利用している医師宛
に健康情報活用基盤への医療情報連携依頼を行う。システム的には、K-MIX システ
ム上で利用医師の ToDo リストに利用者への医療情報連携を行うための作業内容を
追加するように依頼情報を K-MIX システムに送信する。併せて利用者の統合 ID に
ついても K-MIX システムの医療情報連携データとして連携する。K-MIX システムと
健康情報活用基盤間については、K-MIX システムで公開している WEB サービスを利
49
3.本事業の成果
用することとした。
(c) 診療情報連携機能
情報提供依頼された医師が K-MIX 側にて診療情報を登録することで、診療情報は
健康情報活用基盤の医療情報連携データベースに一旦連携される。医師は改めて医
療情報連携データベースに蓄積された内容を確認し、利用者に参照権限を与えて問
題ないことを確認し、利用者に公開する。医師からの公開がなされることで、利用
者は医師が行った診療情報について参照することが可能となる。
K-MIX との医療情報連携を行うことについて当コンソーシアムで検討したところ、
上記の手順にて公開することとした。K-MIX による連携は医療機関間を想定してお
り、連携された状態は医療情報そのものであるとの認識から、まだ医師の管理下に
あるべき情報として、K-MIX から連携された医療情報そのままを利用者に公開する
ことは控えることとなった。そこで、K-MIX において登録された医療情報は健康情
報活用基盤の医療情報連携データベースに一旦取り込むこととし、改めて医師が利
用者に公開することとした。
以下に、医療情報を利用者へ公開する手順について記載する。
まず、医師は K-MIX から連携されている依頼一覧の画面に遷移し、依頼一覧の中
から医療情報を公開する利用者を選択する。具体的な画面イメージについて「図
3.8 送信患者選択画面」に示す。
公開するPHR利用者の
医療情報を選択する
図 3.8
送信患者選択画面
次に、医師は選択した利用者について蓄積されている医療情報一覧の画面に遷移
し、医療情報一覧の中から公開する医療情報を選択する。具体的な画面イメージに
ついて「図 3.9 送信情報選択画面」に示す。
50
3.本事業の成果
公開する医療情報
を選択する
図 3.9
送信情報選択画面
次に、医師は選択した医療情報の内容について利用者について公開してよいかど
うかを確認し、利用者に送信する。具体的な画面イメージについて「図 3.10 送
信情報確認画面」に示す。
51
3.本事業の成果
図 3.10
送信情報確認画面
3) 考察
健康情報活用基盤における医療情報連携のデータフォーマットとしては、HL7 に
準拠し、かつネットワークを介した電子データ交換のフォーマットとして広く利用
されている XML をベースとしたデータ標準である HL7 CDA R2 を採用することとし
た。HL7 及び HL7 CDA については、米国規格協会(ANSI)や日本の厚生労働省にお
いて標準規格として認可・承認を受けており、今後ますますの拡張・普及が見込ま
れている。また、現時点で本規格に準拠したデータを扱う医療・健康情報システム
は多数存在し、本分野におけるデファクトスタンダードとなっている。以上を勘案
しても、医療情報連携のデータフォーマットとして HL7 CDA を採用することが最良
の選択であると思われる。
なお、HL7 についてはさらなる拡張に向けた議論が現在も行われており、定期的
に内容の改訂やバージョンアップが行われている状況である。それら標準化の動向
について今後も注意深く調査し、必要に応じて健康情報活用基盤の標準規格への対
応に組入れる取組みが必要である。
医師が管理する医療情報については、患者情報の中で特に機微性の高い情報であ
り、万が一にも漏洩事故があってはならない情報である。また、すべての医療情報
52
3.本事業の成果
が患者本人に直接参照させて良いものという訳ではなく、その内容によっては医師
の確認・判断が必要な内容も多く含まれる。
そのため、他の医療情報システムから連携された医療情報は、医療・健康情報デ
ータベースへ直接保管するのではなく、一旦、医療情報連携データベースに保管す
る仕組みとし、医師による公開操作が実施されるまで、利用者への公開を禁止する
こととした。さらに、診療情報を利用者へ公開するトリガとなる診療情報連携機能
においては、操作が煩雑とも思えるほどの確認手順をシステムに実装した。具体的
には、医師と患者が対面してはじめて利用者は医師に情報提供の依頼を行う情報提
供依頼機能、患者に医療情報を公開する際に改めて内容を確認する診療情報連携機
能などの機能を実装した。
これらの仕組みにより、医療情報を取違えることなく目的の利用者が参照できる
ように連携することで、利用者から公開された保健師は医療機関でどのような診療
を行っているかが確認できるようになった。
本事業では、K-MIX 以外に、Web 親子手帳システム、医療情報共有化ネットワー
クシステムとの医療情報連携についても疎通テストのレベルまで実証を行った。今
後は、医療情報システム側で医療機関間をまたがって患者を特定できる ID が整備
されることで、さらに様々な医療情報システムからの医療情報が利用者に連携され
ることが期待される。
4) 評価
利用者(患者)からの情報提供の依頼に対して、医師が K-MIX に登録した診療情
報を連携することにより、健康情報活用基盤への医療情報の収集を実現した。
本事業では、K-MIX 側に複数の医療機関で一元的に患者を識別する ID などが存在
しなかったため、医師が患者の情報を取違えることなく確実に情報提供できるデー
タ送受信による連携方式を採用した。
将来的には、医療機関での診療情報を一元的に管理する制度の導入などにより、
本事業で構築・実証した統合 ID 管理機能を利用した個別参照型の情報収集やアカ
ウントアグリゲーションによる情報閲覧などのサービスの拡充も必要になると思
われる。
K-MIX の全体像を「図 3.11 K-MIX 全体概要」に示す。
53
3.本事業の成果
・参加医療機関数:県内を中心に約100(H22.3)
図 3.11
K-MIX 全体概要
また、医療情報交換のための標準規格である HL7 CDA に準拠した連携フォーマッ
トの適用により、将来発生しうる他の医療連携ネットワークからの医療情報の収集
にも対応できるようにした。
今後の診療情報活用に関する評価として、利用者に対して実施したアンケート結
果を以下に示す。
医療機関から提供された診療情報と、食事・運動情報を同一システム内で参照でき
るようになれば、有効に活用できると思いますか?(回答者:N=482人)
6%
16%
19%
有効に活用できる
活用できる
あまり活用できない
まったく活用できない
59%
70%以上の利用者が「有効に活用できる」「活用できる」と回答しており、本事
業での医療情報連携の取組みが非常に高い評価を得ていることが分かる。
54
3.本事業の成果
将来的には、健康情報活用基盤で提供するサービスの有用性をより一層向上させ
るため、本事業で構築・実証した K-MIX からの診療情報連携に加え、他の様々な医
療連携ネットワークから医療情報を連携できるよう、対象範囲を拡大していく必要
があると思われる。
利用者へのアンケート調査の詳細については、「別紙 1 利用者へのアンケート
(設問)」、「別紙 2 利用者へのアンケート(設問別・利用者属性別回答結果)」
に示す。
3.1.2. 企業/健康保険組合からの情報収集
1) 構成
企業/健康保険組合からの情報収集では、各企業や健康保険組合ごとに異なって
いる健診データを、企業や健康保険組合に負担をかけることなく、また異なってい
るデータ形式を医療・健康情報データベース上で一元的に管理できるように取り込
みできる構成とした。
機能の構成を以下の、「表 3.2 機能構成」に示す。
表 3.2
サブ機能
健診データチェック機能
健診データ登録機能
機能構成
機能内容
提供される健診データの項目ごとに、JLAC10 などに
代表される標準コードに変換できるかどうかのチ
ェックを実施する。健診機関ごとにデータフォーマ
ットが異なるため、その健診機関に合わせたチェッ
クを実施する。
健診機関より提出された健診データを医療・健康情
報データベースに取り込みを行う。取り込みは
JLAC10 などに代表される標準コードに変換し登録
する。
2) 詳細
① 健診データチェック機能
健診機関ごとに提供された csv ファイルを取り込み、健診機関ごとの健診データ
書式に合わせたデータのチェックを実施する。チェックする内容は、データの項目
数、検査項目のコード変換チェック、検査値の範囲チェックなどを実施し、検査デ
ータにエラーが無い場合は、さらに健診データに付加された従業員番号から、医
療・健康情報データベース情報の統合 ID に紐付く従業員番号と照合した整合性チ
ェックを実施する。エラーが発生した場合、そのエラー件数と個別のエラー内容を
項目ごとにファイル出力する。
55
3.本事業の成果
② 健診データ登録機能
健診データに誤りが無かった場合、その健診機関の健診データを医療・健康情報
データベース情報内部の JLAC10 などの標準コードへ変換を実施し、医療・健康情
報データベースに取り込みを行う。健診データには企業内で管理される従業員番号
が付加されており、その従業員番号と医療・健康情報データベース情報に登録され
ている統合 ID に紐付けられた従業員番号とが一致する従業員のデータを登録する。
3) 考察
特定健診の制度開始に伴い、「特定健診の電子的なデータ標準様式」により特定
健診のデータ標準規約が制定されており、特定健診の交換には標準フォーマットが
利用されている。しかし、各健診機関で実施されている健診などは標準化されてお
らず、検査システムを導入しているベンダー・検査会社の仕様に委ねられている。
健診データ取り込み機能を構築するにあたり、現状では様々な用語とコードが用い
られている健診データを、定型のデータ書式を定義したうえで取り込みを実施する
検討もされたが、参加企業の負担が大きいため、今回は実証を円滑に行うことに主
眼を置き、各参加企業から出力される書式を JLAC10 などの標準コードに変換し統
一したデータとし保存し、漏れなく取り込める仕組みとした。以上より、参加企業
の負荷をかけることなく、また円滑に取り込みを行うことができ、実証をスムーズ
に行うことができた。しかし、健診データの有効活用には、標準規格への対応によ
る相互交換が不可欠であり、今後の健康情報活用基盤の普及においても、健診デー
タの標準化とその普及が望まれる。
4) 評価
日常情報とともに保健指導に不可欠な健診情報については、利用者の同意手続き
のルールを確立したうえで、参加団体の企業から過去 3 ヶ年分のデータを一括連携
することにより、利用者の入力の負荷を大幅に低減することができた。
3.1.3. 利用者本人からの情報収集
1) 構成
① 日常情報の収集
日常情報の収集では、利用者本人自らが、生活の中の身体情報や食事情報、運動
情報、バイタル情報を容易に記録できるような構成とした。
日常情報の収集の構成を以下の「表 3.3 日常情報の収集の構成」に示す。
56
3.本事業の成果
表 3.3
サブ機能
身体/運動記録機能
食事記録機能
身体/運動/食事照会機能
日常情報の収集の構成
機能内容
身体の記録では、その日の体調や血圧、身長、体
重、腹囲を容易に登録できる。運動記録は、運動
メニューの一覧を選択し、運動時間を入力するだ
けで、消費カロリを自動計算し登録する。また、
登録した情報は、利用者内でのランキング表示や、
歩数と連動した四国八十八箇所お遍路の擬似ウォ
ークでき、札所の情報の参照ができる。
食事メニューの一覧を選択することで、摂取カロ
リを登録する。また、食事メニューが一覧にない
場合、利用者本人のオリジナルメニューの登録が
できる。
登録した日常情報(歩数、身長、体重、BMI、腹囲、
血圧、摂取カロリ、消費カロリ)の一覧表示機能、
また選択した日常情報によるグラフ表示を行う。
画面は利用者ポータルトップ画面から、簡単に運動・食事が登録できる画面構成
とした。まず、運動・食事登録機能からは、マイライフリズム画面や、ランキング
画面などのように蓄積した運動・食事情報を参照できる画面遷移とした。また、運
動・食事を登録する際には、参照画面(マイライフリズム画面)から、それぞれ身
体・運動記録と、食事情報の登録と利用者に分かりやすい画面遷移とした。
日常情報の収集の画面遷移を「図 3.12 運動・食事登録機能画面遷移図」に示
す。
57
3.本事業の成果
利用者ポータル
トップ画面
(GPH0010R)
運動・食事登録機能
トップ画面
(GPH1000R)
マイライフリズム
画面(GPH1100R)
身体・運動情報
登録画面(GPH1110U)
食事情報登録
画面(GPH1120U)
食事メニュー
画面(GPH1130R)
食事メニュー作成
画面(GPH1140U)
ランキング画面
(GPH1200R)
ルート表示画面
(GPH1300R)
図 3.12
運動・食事登録機能画面遷移図
② シングルサインオン
総合ポータルサイトへのログイン ID として発行する統合 ID を、すべてのシステ
ムへのログイン認証の ID として共通管理し、その認証や設定ができる構成とした。
シングルサインオン機能の構成を以下の「表 3.4 機能構成」に示す。
表 3.4
サブ機能
シングルサインオン
認証機能
シングルサインオン
設定機能
機能構成
機能内容
他の医療・健康情報システムへのシームレスなア
クセスを可能とする。
シングルサインオン認証を可能とするよう統合 ID
と他の医療・健康情報システムのユーザ ID との紐
付けを行う。
シングルサインオン機能では、利用者情報を登録した際に、自動的にその外部シ
ステムのユーザ情報を自動で発行する仕組みや、また、既に外部システムの利用者
情報が発行済みの場合は、その利用情報を設定できる画面遷移とした。
シングルサインオン機能の画面遷移を「図 3.13 シングルサインオンの画面遷
移」に示す。
58
3.本事業の成果
PHR事業者ポータル
トップ画面
(GIF0010R)
利用者一覧・検索画面
(GIF0020R)
図 3.13
利用者登録・訂正画面
(GIF0030U)
シングルサインオンの画面遷移
③ 総合ポータルサイト
総合ポータルサイトでは、利用者が視覚的に何を行うことができるのかを、より
分かりやすい構成とした。
機能の構成を以下の「表 3.5 機能構成」に示す。
表 3.5
サブ機能
利用者ポータルトップ画面
トップ画面
機能構成
機能内容
・メニューのカテゴリ化
・基本情報(体重、身長など)の表示
・健康情報コンテンツの配信
・コンテンツ概要の表示
・コンテンツ詳細への遷移
総合ポータルサイトでは、セキュリティを担保したアクセスである利用者カード
認証画面と、機微な情報以外を取扱うメールアドレス認証画面を用意することで、
手元に利用者カードが無い場合でも、運動・食事情報を登録できる仕組みとし、ま
た、カードによる認証の場合は、全ての機能を利用できるような画面遷移とした。
総合ポータルサイトにおける画面遷移を「図 3.14 総合ポータルサイトの画面
遷移図」に示す。
トップ画面
(GCM0000R)
運動・食事登録機能など、各コンテンツ(の詳細説明)に遷移
利用者ポータル
トップ画面
(GPH0010R)
利用者カード認証画面
(GUM0010R)
メールアドレス認証画面
(GUM0020R)
図 3.14
総合ポータルサイトの画面遷移図
59
3.本事業の成果
④健康情報コンテンツ
健康情報コンテンツでは、その情報コンテンツのテーマや内容について、直感的
に分かりやすい仕組みや、ワンクリックで参照できるような構成とした。
機能の構成を以下の「表 3.6 機能構成」に示す。
表 3.6
サブ機能
健康情報コンテンツ
機能構成
機能内容
メタボリックシンドローム、生活習慣病などのテ
ーマにもとづいた健康講座コンテンツ(映像)の
参照ができる。
健康情報コンテンツでは、利用者がまずはじめにアクセスする利用者ポータルト
ップ画面に、健康講座の一覧を配置し、ワンクリックで健康情報コンテンツを閲覧
できる画面遷移とした。
健康情報コンテンツの画面遷移を「図 3.15 健康情報コンテンツの画面遷移図」
に示す。
トップ画面
(GCM0000R)
利用者ポータル
トップ画面
(GPH0010R)
健康講座第1回画面
健康講座第2回画面
・
・
・
健康講座第8回画面
図 3.15
健康情報コンテンツの画面遷移図
2) 詳細
① 日常情報の収集
(a) 身体・運動情報登録
日々の血圧、体重などの身体情報及び歩数や運動内容などの運動情報を登録する。
身体情報については、血圧、体重などの定量的な情報に加え、体調やその日の日記
(コメント)などの定性的な情報を登録する。
運動情報については、その日の歩数、運動内容・運動時間を登録する。
また、登録した運動情報をもとに、消費カロリを自動計算し、画面上に表示する。
60
3.本事業の成果
歩数については、運動内容“さんぽ”として運動時間や消費カロリを自動計算する。
身体・運動情報を登録する画面イメージを「図 3.16 身体・運動情報登録画面」
に示す。
歩数を入力し、「自動算出」をクリック
すると自動で運動時間や消費カロ
リーを自動計算する。
図 3.16
身体・運動情報登録画面
利用者が設定したニックネームによる日々の歩数や、理想的(男性、女性とも 22.0
により近い)な BMI ランキングを、利用者全員の中から上位 10 名を表示する。
歩数ランキングでは、日々記録される歩数の合計値を競い合い、利用者本人がラ
ンク外の場合は、利用者本人のランキングを表示し全体の中での位置を把握する。
BMI の値を意識することで健康意識の向上を高め、日々の歩数を競うことで運動の
実施を促進する。
ランキングを参照する画面イメージを「図 3.17 ランキング画面」に示す。
61
3.本事業の成果
自分の現在のランキングが表
示される。
図 3.17
ランキング画面
日々入力した歩数から、自動で距離を算出し、札所(霊場)の写真を見ながら「四
国八十八箇所お遍路」擬似ウォーキングを行う。
また、四国の地図上をアバター(*)が歩いて、巡礼の全体行程を把握する。
擬似ウォーキングの状況を参照する画面イメージを「図 3.18 ルート表示画面」
に示す。
(*)アバター:アプリケーションやコミュニケーションツールで、利用者本人の
分身として画面上に登場するキャラクター。
62
3.本事業の成果
全体の巡礼の位置
をアバターが歩いて
表示する
現在の巡礼している札所
(霊場)の写真を表示
図 3.18
ルート表示画面
(b) 食事記録機能
日々の食事情報の登録を行う。食事は、摂取した時間別(朝、昼、夜)に登録が
できる。また、登録した食事内容から摂取カロリ、塩分、鉄分、カルシウム、ビタ
ミンなどの摂取量を時間別と 1 日の総量とで個別に把握する。
食事メニューを一覧形式で表示し、選択をクリックすることで食事情報の登録を
行う。食事内容は食事の種類(主菜、副菜、飲み物など)の検索や、名称による検
索ができる。
また、食事メニューにデータの登録がない場合、利用者本人がオリジナルのメニ
ューを登録できる。
63
3.本事業の成果
食事記録を登録する画面イメージを「図 3.19
食事情報登録画面」に示す。
食事メニューに無い
場合は、自分でメ
ニューを作成できる
図 3.19
食事情報登録画面
(c) 身体/運動/食事照会機能
選択した日常情報を、表示する期間を指定してグラフ表示を行う。
また、日々入力した BMI と連動して、設定したキャラクターが太ったり、痩せた
64
3.本事業の成果
り変化する。さらに、登録した日常情報(歩数、身長、体重、BMI、腹囲、血圧、
摂取カロリ、消費カロリ)を時系列で一覧表示し、利用者本人の健康情報の履歴が
簡単に参照できる。
日常情報を参照する画面イメージを「図 3.20 マイライフリズム画面」に示す。
体重、腹囲など表示し
たい情報を切り替えな
がらグラフ表示する
図 3.20
BMIと連動して、キャラク
ターが太ったり、痩せたり
変化
マイライフリズム画面
② シングルサインオン
(a) シングルサインオン認証機能
外部参照による健康サービス事業者との連携機能においては、総合ポータルサイ
トにログインすることにより、他の医療・健康情報システムに対してワンストップ
による利用を実現した。
65
3.本事業の成果
総合ポータルサイト配下に配置される運動・食事登録機能では、自機能固有のユ
ーザ ID により利用者を管理しているため、統合 ID と運動・食事登録機能のユーザ
ID を紐付けて管理する必要がある。運動・食事登録機能へのアクセスが発生した際
には、統合 ID 管理機能が紐付け情報をもとに、統合 ID から運動・食事登録機能固
有のユーザ ID に変換して自動でログイン処理を行うことで、ユーザはシームレス
なアクセスが可能となる。
(b) シングルサインオン設定機能
健康情報活用基盤においては、利用申請にともなう利用者登録をトリガとして、
統合 ID の発行及び運動・食事登録機能のユーザ ID との紐付けまでの一連の作業を
システムが自動で行う仕組みとした。
シングルサインオンによる運動・食事登録機能の利用概要を「図 3.21
ルサインオンによる運動・食事登録機能の利用」に示す。
シング
【PHRシステム】
統合ID
ユーザID
シングルサインオン
認証機能
利用者
運動・食事登録機能
運動・食事
コンテンツ
運動・食事
コンテンツ
統合ID/ユーザIDの引当て
PHRデータベース
ユーザIDで管理される
運動・食事コンテンツ
シングルサインオン設定情報
(統合ID-ユーザID)
統合ID/ユーザIDの紐付け
ユーザID発行要求
統合ID
シングルサインオン
設定機能
受付担当者
図 3.21
運動・食事コンテンツ
ユーザID発行機能
ユーザID
シングルサインオンによる運動・食事登録機能の利用
また、シングルサインオンを設定する利用者登録画面のイメージを「図 3.22
用者登録画面」に示す。
66
利
3.本事業の成果
必要な利用者情報を登
録することで、統合IDが
発行される。
図 3.22
利用者登録画面
利用者登録から統合 ID と運動・食事登録機能のユーザ ID との紐付け設定(シン
グルサインオン設定)までの処理フローを「図 3.23 シングルサインオン設定の
処理フロー」に示す。
67
3.本事業の成果
凡例
書類
システム
データ
操作・作業
処理の流れ
他フロー
担当者/システム 処理手順
引続き、ICカード発行、利用者への
配送の手続を実施する。
利用者申請の受付、申請書類の内容
確認の完了後に、健康情報活用基盤
への利用者登録を実施する。
受付担当者
利用者カード
発行依頼一覧作成
利用者登録
印刷
発行依頼一覧は「受領書」
作成に必要な為、一時保存する
申請書内容から入力を行い、問題が
無ければ、申込書の「入力」欄に確認
者の”名前”と”日付”を記載する。
利用者カード
発行依頼一覧
利用者カード
発行依頼一覧
(Exce)
「発行依頼一覧」は
A3用紙に印刷して
カード発行担当者へ提出
利用者登録から統合ID発行、
シングルサインオン設定まで
はシステムが自動で行う。
健康情報活用基盤
健康情報システム
利用者登録・
訂正画面
(GIF0030U)
統合ID発行
利用者の統合IDの
発番処理
ユーザID
発行依頼
シングルサインオン
設定
利用者登録・
訂正画面
(GIF0030U)
運動・食事コンテンツ
ユーザID発行機能
図 3.23
シングルサインオン設定の処理フロー
③ 総合ポータルサイト
(a) トップ画面
ログイン前のトップ画面においては、健康情報活用基盤で提供するコンテンツに
ついて、分かりやすく色分けを行い、その特長と併せて表示する。さらに、詳細ボ
タンを押下することで、対応するコンテンツに関する詳細な説明を画面イメージと
併せて参照できる。これにより、利用者は「何ができるのか」「どうやって操作す
るのか」を明瞭に理解することができる。
トップ画面のイメージを「図 3.24 トップ画面」に示す。
68
3.本事業の成果
図 3.24
トップ画面
(b) 利用者ポータルトップ画面
利用者ポータルトップ画面においては、利用可能なコンテンツメニューをカテゴ
ライズするとともに、イメージアイコンや平易な説明文を表記することで、「何が
できるのか」を直感的に把握できるデザインを取り入れた。
また、身長、体重、BMI などの基本情報を画面左部に常時表示することで、他の
69
3.本事業の成果
コンテンツの利用時に都度参照することができるよう利便性の向上を図った。
さらに、健康情報コンテンツを定期的に配信することで、利用者の定期的なシス
テム利用を促す仕組みとした。
利用者ポータルトップ画面のイメージを「図 3.25 利用者ポータルトップ画面」
に示す。
カテゴライズされ
たメニュー
健康情報コンテン
ツの配信
基本情報の表示
図 3.25
利用者ポータルトップ画面
70
3.本事業の成果
④健康情報コンテンツ
各回とも、おおよそ 10 分前後、PPT スライドの映像に講師のナレーションによる
解説を重ねたものをメイン映像とし、女性ナビゲーターや講師のコメント映像を前
後に挿入したシリーズものとした。
PPT スライドにはグラフやイラストを多用し、専門用語などには説明を加えるな
ど、利用者に理解しやすい内容になるよう配慮した。
健康講座の画面イメージを「図 3.26 健康講座画面」に示す。
71
3.本事業の成果
図 3.26
健康講座画面
また、各回のタイトルと主な内容を「表 3.7
72
健康講座の主な内容」に示す。
3.本事業の成果
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回
第7回
第8回
表 3.7 健康講座の主な内容
タイトル
主な内容
メタボリックシンドローム メタボリックシンドロームの概要(氷山
と生活習慣病 前編
の例を用いて説明)や生活習慣の乱れか
ら派生する合併症などについて説明し、
メタボリックシンドロームの判定につい
て腹囲の計測を中心に説明する。
メタボリックシンドローム 具体的にCT写真を見比べながら、生活
と生活習慣病 後編
習慣の改善による減量の効果について説
明し、最後に、腹囲にのみ焦点が集まっ
ているメタボリックシンドロームについ
て、腹囲以外の血液検査の重要性を説き、
健診の受診を促す。
健診のしくみ
大半の人が年に 1 回は受診している健康
診断について、そもそもなぜ受診しなけ
ればならないのかという意義について説
明する。
健診の見方
健診後に送られてくる結果をもとに、ど
こに注意して見ればよいのか、どのよう
に活かせばよいのかなどについて説明す
る。
糖尿病の現状と診断
糖尿病の現状に関する様々なデータや判
定基準をもとに、糖尿病が身近な生活習
慣病であることを説明する。
糖尿病の予防と治療
糖尿病の発症原因から治療の目的、具体
的な治療について説明し、治療の基本で
ある“生活習慣の是正”への取組みを促
す。
高血圧の現状と診断
生活習慣病の中でも最も多い高血圧につ
いて、その判断基準や危険な合併症など
を説明する。
家庭血圧の測定と高血圧の 家庭での血圧測定時の注意点、また普段
予防
の生活において血圧を下げるためにどん
なことに留意すべきかを説明する。
※健康情報コンテンツ講師の略歴については、「別紙 3
師 略歴」に示す。
健康情報コンテンツ講
3) 考察
① 日常情報の収集
生活習慣病を予防・改善するうえで重要なことは、利用者本人の生活習慣を振り
返り、また利用者本人の状態を把握することである。そのための方法として、毎日
の血圧や体重などの身体情報や、運動習慣、食事などを「記録」するという方法が
大変重要な役割を担う。
73
3.本事業の成果
毎日の食事や運動を「記録」することにより、自分自身を客観的に「観察」し、
さらにそこから生じる達成感や反省によって、さらなる目標・行動への変化が期待
できる。
しかし、「記録」することに時間を要する、あるいは「記録」したものをそのま
まの形式で照会できるだけという状況では、飽きがきてしまい利用の継続が難しい。
そこで、本システムでは、生活習慣を把握する手段である「記録」を、いかに継
続的に実践するかに注目し、「入力のしやすさ」や「継続的な利用」に着目し機能
構築を実施した。
利用者による日常情報の登録件数を「表 3.8 利用者による日常情報の登録件数
(2011 年 2 月 6 日現在)」に示す。
表 3.8
アクタ
従業員
利用者による日常情報の登録件数(2011 年 2 月 6 日現在)
アクセス
区分
登録
バイタル
1,701 件
日常情報
運動
2,041 件
食事
5,752 件
「表 3.8 利用者による日常情報の登録件数(2011 年 2 月 6 日現在)」の詳細に
ついては、別紙 4 に示す。
調査結果では、やはり利用者が日々必ず行う「食事」の情報の登録が多い。これ
は、利用者が食事の記録に関心があり、意識して登録しているためと考えられる。
「運動」に着目すると、利用者は日々“通勤”、“家事”などをはじめとする運
動内容を行っているが、記録している内容は自ら実施したスポーツに代表される内
容が多いことがあげられる。
次に、利用者の年齢別での登録件数を「図 3.27
す。
年代別の登録件数比率」に示
【年代別の登録分布状況】
30%
25%
20%
15%
10%
5%
0%
:登録件数比率 (N=9,494件)
(年代別登録件数の割合)
:人員構成比率 (N=1,169人)
(年代別利用者数の割合)
10代 20代 30代 40代 50代 60代
図 3.27
• 20代、60代の利用者の登録件数
は人数の割合よりも多い
• 40代、50代の利用者の登録件数
は人数の割合よりも尐ない
年代別の登録件数比率
20 代、60 代の利用者数の登録件数は人数の割合よりも登録件数が多いものの、
疾病予防に特に注意すべき年代である 40 代、50 代では、その人員構成に比べ登録
74
3.本事業の成果
件数が尐ないことがよく分かる。
そこで年代間のばらつきなく「継続的な利用」を促進するためには、年齢層に関
係なく常に身に付けている携帯電話から日々の情報をその都度入力できることや、
入力結果をランキングやルート表示などで照会できることが望まれる。さらに今後
は、より簡単に利用できるようにするため、普及しつつあるスマートフォンや次世
代端末などの入力方法を検討する必要がある。
② シングルサインオン
総合ポータルサイトを起点としたシングルサインオン機能により、外部の医療・
健康情報システムをワンストップで利用する仕組みを実現した。本事業では、外部
の医療・健康情報システムではなく、健康情報活用基盤内の独立した機能である運
動・食事登録機能に対して擬似的な外部利用を実現したが、今回の仕組みを利用し
て外部の医療・健康情報システムに対しても同様の機能を適用可能であると考えて
いる。
これにより、セキュリティ要件、システム基盤構成及びデータ容量などの問題に
より医療・健康情報データの連携機能による医療・健康情報データベースでの情報
の一元管理ができないケースにおいても、統合 ID によるシームレスなアクセスを
実現することが可能となる。その結果、健康情報活用基盤へのコンテンツ提供に参
画する医療・健康情報システムの増加が図れ、利用促進につながることが期待され
る。
③ 総合ポータルサイト
総合ポータルサイトにおいては、多種多様のサービスが混在する状況で、「何が
できるのか」「どうやって操作するのか」を利用者が直感的に、かつ容易に把握で
きるための施策を行った。特に、健康サービスという特性上、パソコン操作に不慣
れな高齢者が利用者に多く含まれることを想定し、以下のような工夫を取り入れた。
・メニューについてはすべてが常に表示された状態とし、その内容に応じてカ
テゴライズする
・視覚的に判断できるようにアイコンなどを多く使用する
これにより、運動・食事記録をはじめとする各種コンテンツの利用促進が図れた
と考えている。
また、継続的な利用を促すために、定期的に配信される健康情報コンテンツを利
用者ポータルトップ画面に表示することで、習慣的にログインしてもらえるような
施策も取り入れた。
今後の課題としては、将来的にコンテンツメニューがさらに追加されることを想
定し、利用者の趣向や利用頻度などに応じて、利用者本人が自由にメニューをカス
タマイズできる個人ユース向け機能の充実を検討する必要がある。
また、高齢者が手軽に操作・活用できる仕組み作りとして、現在急速に普及して
いる携帯電話やスマートフォン向けコンテンツの提供についても併せて検討する
必要がある。
75
3.本事業の成果
④ 健康情報コンテンツ
メタボリックシンドロームなど、今まで耳にすることはあっても漠然とした知識
しか持っていなかったテーマについて、専門家(医師)の解説を視聴することによ
って、利用者の理解が深まったと考えられる。
また、それぞれのテーマについて回数を 2 回に分け、生活習慣病の予防と日々の
生活習慣の因果関係を繰り返し説明することで、利用者が生活習慣改善の意識を持
つきっかけをより多く与えることができ、それが日々の運動・食事記録の継続入力
に結び付いたと考えている。
4) 評価
① 日常情報の収集
利用者本人が日常情報を Web 画面から入力することにより、生活習慣改善などの
保健指導に不可欠な日常情報を収集することができた。
構築した日常情報登録機能の利便性に関する評価として、利用者に対して実施し
たアンケート結果を以下に示す。
身体/運動記録サービスは、便利だと思いましたか?(回答者:N=185人)
9%
12%
非常に便利である
やや便利である
22%
あまり便利ではない
便利ではない
57%
76
3.本事業の成果
食事記録サービスは、便利だと思いましたか?(回答者:N=191人)
9%
14%
非常に便利である
やや便利である
あまり便利ではない
便利ではない
29%
48%
日常情報登録機能の利便性については、回答の過半数の利用者から良好な評価が
得られた。この結果より、本事業で構築した日常情報の収集の仕組みが、利用者の
日常情報記録のために一定の成果をあげたことが分かる。
次に構築した日常情報登録機能の操作性に関する評価として、利用者に対して実
施したアンケート結果を以下に示す。
身体/運動サービスの操作性はどうでしたか?(回答者:N=183人)
16%
17%
非常に簡単である
やや簡単である
尐しとまどった
できなかった
24%
43%
77
3.本事業の成果
食事記録サービスの操作性はどうでしたか?(回答者:N=194人)
9%
15%
非常に簡単である
やや簡単である
尐しとまどった
できなかった
34%
42%
日常情報登録機能の操作性については、「尐しとまどった」「できなかった」と
の評価が、身体・運動記録では 40%、食事記録では半数を超えている。
本事業では、実証サービス期間中にも、画面レイアウト変更による操作性向上や
1 画面当たりの表示件数の制限によるレスポンス向上などの機能改善を行ったが、
上記のアンケート結果からは、なお一層の機能改善が必要と思われる。
②シングルサインオン
利用者が利用する複数の医療・健康情報システムのアカウント情報(ID やパスワ
ードなど)を一元的に管理する認証基盤の統合 ID 管理機能を利用し、ポータルサ
イトから外部システムにシームレスにアクセスできるようにした。
本事業では、外部の医療・健康情報システムから収集したデータを医療・健康情
報データベースにそのまま実体として蓄積する仕組みとしたため、外部システムの
データベースを必要の都度、参照して情報を収集することはなかったが、健康情報
活用基盤アプリケーションの一部機能を外部システムとみなした実証を行い、シン
グルサインオンでのアクセスを検証した。
統合 ID 管理によるシングルサインオンのイメージを「図 3.28 統合 ID 管理と
シングルサインオンの概要」に示す。
78
3.本事業の成果
健康情報活用基盤
シングルサインオン集中管理
利用者
シングルサイン
オン機能
保健指導
支援機能
運動・食事
登録機能
外部システム
統合IDマスタ
管理者
認証基盤
統合ID管理
:本事業の実証範囲
図 3.28
統合 ID 管理とシングルサインオンの概要
③ 総合ポータルサイト
健康情報活用基盤内部で管理する利用者個人の医療・健康情報や、外部システム
にログインして参照する医療・健康情報など多種多様な情報を一回のログイン手続
きと簡易な操作で閲覧できるポータルサイトを構築し、利用者本人が必要に応じて
医療・健康情報を幅広く利用できるようにした。
また、高年齢層でも容易に利用できるアクセシビリティへの配慮や、利用者本人
の情報以外の健康情報コンテンツの定期配信などにより、利用者の継続的な使用を
促した。
④健康情報コンテンツ
本事業では、メタボリックシンドロームや生活習慣病などについて、利用者に分
かりやすく解説する動画コンテンツを製作し、利用者が日常情報記録や生活習慣改
善の意識を持つきっかけとなる情報を提供することができた。
構築した健康情報提供機能による気付きや知識向上についての評価として、利用
者に対して実施したアンケート結果を以下に示す。
79
3.本事業の成果
健康講座をご覧頂いて、健康に関して以前より興味が出ましたか?
(回答者:N=286人)
10%
17%
出た
まあまあ出た
あまり出ない
出ない
18%
55%
健康講座をご覧頂いて、知識は深まりましたか?(回答者:N=252人)
11%
14%
深まった
まあまあ深まった
あまり深まらない
21%
深まらない
54%
構築した健康情報提供機能による気付き・知識向上については、60%を超える利
用者から良好な評価が得られた。この結果より、本事業での健康情報コンテンツの
提供により、利用者の生活習慣改善の気付き・知識向上に一定の成果があったこと
が分かる。
次に、構築した健康情報提供機能による健康意識の変化や行動変容についての評
価として、利用者に対して実施したアンケート結果を以下に示す。
80
3.本事業の成果
健康講座をご覧頂いて、意識の変化や行動の変化はありましたか?
(回答者:N=263人)
8%
19%
有る
まあまあ有る
あまり無い
33%
無い
40%
半数を超える利用者が「あまり無い」「無い」と回答しており、健康意識の変化
や行動変容に至っていないため、利用者の気付き・知識向上を健康意識の変化や行
動変容に繋げられるよう、情報提供するコンテンツの内容について、今後継続して
検討を進める必要がある。
3.1.4. 基盤のセキュリティ
1) 構成
個人情報の安全を脅かすものとして 3 つの脅威(物理的脅威、技術的脅威、人的
脅威)が存在し、その脅威に対する対応策が各ガイドラインに整理されている。当
コンソーシアムにおいては、個人情報の安全を保護するための対応策として、各ガ
イドラインに照らし合わせて問題が無いことを確認した。
2) 詳細
当コンソーシアムが利用する健康情報活用基盤においては、その取扱う個人情報
の重要性に鑑み、個人情報の漏えい、滅失またはき損の防止その他の安全管理が必
要である。
① 物理的脅威に対する対策
当コンソーシアムでは、個人情報を取扱うシステムの安全を脅かす物理的脅威に
ついて、火災、地震、落雷(停電)、侵入者による物理的な破壊・盗難などがある
ことを認識し、
「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠して、
ISMS 認定制度による認定を取得しているデータセンターを利用することで、以下の
ような対策を実施した。
81
3.本事業の成果
(a) 火災対策
当コンソーシアムで利用したデータセンターにおいては、火災消火時にサーバや
ネットワーク機器への影響が尐ないガス消火設備を有していることが確認された。
ガス消火設備での消火であれば、対象の電子機器自体に故障が無い限り、鎮火後で
も電子機器の利用は可能であり、情報が消失となる可能性は低い。
(b) 地震対策
当コンソーシアムで利用したデータセンターにおいては、国内有数の免震/耐震
構造ビルにより地震に強い建物であることが確認された。さらに、ハウジングラッ
クに固定された機器にて健康情報活用基盤を稼動させることで他機器との接触な
どによる機器の破損はないと考えられた。
(c) 落雷(停電)対策
当コンソーシアムで利用したデータセンターにおいては、通常時は、別々の変電
所から 2 系統で受電する電源多重化構成をしており、さらに、瞬断や停電の場合で
も、無停電電源装置(CVCF)と非常用蓄電池、非常用発電機で安定した電源を供給
できる設備を有していることが確認された。
(d) 入退館入退室管理
当コンソーシアムで利用したデータセンターにおいては、マシン室内で不正な操
作が行われないようフロア全体を死角なく 24 時間監視し、記録を保存するなど、
万全なセキュリティを実施しており、入退館・入退室の記録を保存していることが
確認された。さらに、ディンプル鍵にて施錠された耐震ハウジングラックに固定さ
れた機器にて健康情報活用基盤を稼動させることで、侵入者による物理的な破壊・
盗難は困難である。
② 技術的脅威に対する対策
当コンソーシアムでは、個人情報を取扱うシステムの安全を脅かす技術的脅威に
ついて不正アクセス、盗聴、コンピュータウィルスがあることを認識し、「医療情
報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠して、以下のような対策を実
施した。
(a) 不正ネットワークアクセス対策
当コンソーシアムでは、不正ネットワークアクセス対策として、個人情報を保持
する機器については、適切なポートのみが開放されたファイアウォールの配下に安
全に配置し、不要なポートは通信を遮断することとした。
82
3.本事業の成果
(b) 盗聴対策
当コンソーシアムでは、盗聴対策について対応方法として、インターネットバン
キングなどでも利用されている SSL 暗号化により通信を秘匿にすることとした。さ
らに、「チャレンジ&レスポンス認証」により通信の相手を正しく認証することと
した。
(c) ウィルス対策
当コンソーシアムでは、ウィルス対策として、適切なウィルス感染対策を機器に
施すことで外部からのウィルスによる脅威を未然に防止することとした。
③ 人的脅威に対する対策
当コンソーシアムでは、個人情報を取扱うシステムの安全を脅かす人的脅威につ
いて人的ミス、内部犯があることを認識し、「医療情報システムの安全管理に関す
るガイドライン」に準拠して、情報の種別や重要性、利用形態に応じて、利用者ご
とに利用権限を規定し、付与する利用権限を必要最小限にするなど、情報の取扱い
ルールを厳格化することとした。
当コンソーシアムで構築した健康情報活用基盤を利用開始するにあたり、利用申
請から始まり、受付、本人確認、利用者カード発行、宛名印刷、封入、送付まで様々
な運用作業が必要となる。これら運用作業には、利用者識別情報を参照する機会が
非常に多く、利用者識別情報が漏洩すれば、その利用者に成りすまして個人情報を
参照、改ざん、破棄することが可能になる。
当コンソーシアムで利用者識別情報の取扱いルールについて検討した結果、利用
者識別情報を発行・管理する事業者の中でも、作業アクタごとに細分化した利用権
限を設け、それぞれ利用できる機能を制限することで個人情報へのアクセスを最小
限に抑える仕組みとした。
具体的には、利用者識別情報の参照については問合せ窓口担当者、利用申請受付
担当者、カード発行担当者のみ可能とし、利用者識別情報の登録、削除については
利用申請受付担当者のみ可能とした。また、情報の持ち出しなどによる漏洩を防ぐ
ため、利用者識別情報の管理についてリストへの出力は不可とし、データベース内
(画面表示)のみの管理とした。
また、一般的なシステムであれば、システム全体を管理するシステム管理者は、
全ての情報へのアクセス権限が与えられるケースが多いが、健康情報活用基盤のシ
ステム管理者については、一般利用者に関する情報を参照できない仕組みとし、そ
れぞれの利用権限を最小限にまで抑制する機能を構築した。
事業者における利用権限について「表 3.9 利用者識別情報参照権限」に示す。
83
3.本事業の成果
利用者
利用者本人
問合せ窓口担当者
利用申請受付担当者
カード発行担当者
システム管理者
表 3.9 利用者識別情報参照権限
利用者識別情報
情報の参照
情報の更新
○
○
△
×
○
○
△
×
×
×
○:利用可能、△:一部利用可能、×:利用不可
さらに、利用者識別情報の発行・管理に利用したデータセンター事業者において
は、ISMS 適合性評価制度に適合し、プライバシーマーク制度の認定を取得している
ことから、個人情報保護推進のための組織体制などの整備、個人情報の漏えいなど
の問題が発生した場合などにおける報告連絡体制の整備、雇用契約時における個人
情報保護に関する規程の整備、従業者に対する教育研修の実施について充実してい
ることを確認した。
3) 考察
当コンソーシアムにおいては、実施した対策によって、個人情報の機密性、完全
性、可用性の特性が損なわれることがないと判断した。当コンソーシアムにおいて
判断し、実施した対策と効果のあった情報の特性との対応について「表 3.10 対
策による効果表」に示す。
分類
物理的対策
技術的対策
人的対策
表 3.10 対策による効果表
実施した対策
機密性
火災対策
-
地震対策
-
落雷(停電)対策
-
入退館入退室管理
○
不正ネットワークアクセス対策
○
盗聴対策
○
ウィルス対策
○
情報の取扱いルールの厳格化
○
完全性
可用性
○
○
○
○
-
○
-
○
○
-
-
-
○
○
○
-
○:効果あり
4) 評価
当コンソーシアムでは、データセンターを利用して個人情報が安全に取扱われる
健康情報活用基盤を構築した。
当コンソーシアムにおいては、個人情報が安全に取扱われるために実施した各対
策によって、個人情報の機密性・完全性・可用性について安全性を確保することが
できたと判断した。しかしながらセキュリティ技術については日進月歩であり、個
84
3.本事業の成果
人情報の機密性・完全性・可用性について安全性を脅かす新たな脅威(特に技術的
脅威)が発生する可能性がある。新たな脅威に対して現在対策している内容が有効
である保証は無い。個人情報という機微な情報を常に安全に取扱うためには、今後
もセキュリティ技術の動向を確認し、見直しと改善を継続する必要がある。
3.1.5. 認証基盤
1) 構成
① 認証
認証基盤では、セキュリティを担保した安全性と、利用したい時どこらかでも利
用できる利便性を考慮した構成とした。
健康情報活用基盤で使用するログイン認証方式を「表 3.11 健康情報活用基盤
のログイン認証方式」に示す。
表 3.11
健康情報活用基盤のログイン認証方式
項番
認証方式
利用可能なメニュー
ログイン ID
パスワード
1 IC カード内の統合 ID
利用者が健康情報活 すべてのメニュー
用基盤内で設定した
・日常情報
パスワード
・健診情報
・医療情報
2 電子メールアドレス
機微性の低いメニュー
・日常情報
バイタル情報
運動情報
食事情報
認証基盤では、全ての利用者が利用するトップ画面を利用して認証を行った後、
医師、保健師、利用者のポータルトップ画面に遷移する仕組みとした。また、その
利用者が認証に利用するカードを発行する利用者の登録画面や、発行したカードを
確認できるように利用者の申請から発行まで一貫した画面遷移とした。
認証基盤の画面遷移を「図 3.29 認証基盤の画面遷移」に示す。
85
3.本事業の成果
<PHR利用者画面>
トップ画面
(GCM0000R)
利用者カード認証画面
(GCM0010R)
メールアドレス認証画面
(GCM0020R)
<PHR事業者画面>
PHR事業者ポータル
トップ画面
(GIF0010R)
利用者一覧・検索画面
(GIF0020R)
利用者登録・訂正画面
(GIF0030U)
FeliCa登録画面
(GIF0035U)
FeliCa情報照会画面
(GIF0300R)
図 3.29
認証基盤の画面遷移
② アクセスコントロール
医療・健康情報データベースでは、多岐にわたる健康情報を一元的に集めること
が必須であり、さらに情報の安全性も確保する必要がある。
医療・健康情報データベースの構成要件を「表 3.12
ースの構成要件」に示す。
表 3.12
構成要件
汎用フォーマット
医療・健康情報データベ
医療・健康情報データベースの構成要件
要件内容
多種多様な健康情報を蓄積できる汎用性の高いフォ
ーマットのデータ構造とする。
医 療 機 関固 有 のデ ータ 標準化された文書データや画像データ、一般的な動画
管理
データなどを管理できる構造とする。
セキュリティの確保
セキュリティの高い認証基盤、厳密なアクセスコント
ロール機能のもとで安全に利用できる構造とする。
86
3.本事業の成果
アクセスコントロール機能では、利用するアクタごとに利用できるデータベース
や、画面機能を制限し、医師、保健師、利用者が利用可能な機能以外利用できない
ような構成とした。
アクセスコントロール機能の構成を「表 3.13 アクセスコントロール機能の構
成」に示す。
表 3.13
サブ機能
DB 別アクセス
コントロール
アクタ別アクセス
コントロール
アクセスコントロール機能の構成
機能内容
医療情報連携データベース、医療・健康情報データベー
スそれぞれのセキュリティレベルに応じてアクセスを制
御する。
アクタや情報の種類ごとに利用権限を付与、制限する。
2) 詳細
① 認証
(a) IC カード内の統合 ID による認証
(ア) 統合 ID 管理
健康情報活用基盤のログイン ID については、利用者が利用する複数の医療・健
康情報システムのアカウント情報(ID やパスワードなど)を一元的に管理すること
ができる統合 ID とした。
この統合 ID の管理機能により、統合 ID と他システムで個別に識別されるユーザ
ID を関連付けて管理することで、他システムとの連携において、連携される情報が
利用者本人のものであることを認証(照合)する仕組みを構築した。
例えば、医療情報連携においては、統合 ID と医療機関の患者 ID との関連付けに
より、また、健診情報連携においては、統合 ID と企業の従業員 ID との関連付けに
より、本人認証を行った。
さらに、統合 ID 管理機能により、他システムとの連携だけでなく、ポータルサ
イトを介しての外部システムの参照において、個別のログイン認証操作を必要とし
ない「シングルサインオン」の仕組みを実現した。
なお、IC カード内に記録するデータについては、書込みバイト数の制限(32 バ
イト)により、利用者を識別するための統合 ID のみとした。統合 ID は、利用者に
関するあらゆる情報の主キーであるため、健康情報活用基盤の利用においては、統
合 ID のみを記録することで問題ないと判断した。
(イ) チャレンジ&レスポンス認証
本認証方式においては、インターネット上のサービスで広く利用されているワン
タイムパスワード認証の 1 つである「チャレンジ&レスポンス認証」をベースの認
証方式として採用した。
チャレンジ&レスポンス認証では、クライアントから認証要求が発生した場合、
毎回異なる「チャレンジ」と呼ばれるランダムな事前予測困難な値をサーバ側で生
87
3.本事業の成果
成し、クライアントへ送信する。これを受け取ったクライアントは、利用者が入力
したパスワードと「チャレンジ」をもとに演算した「レスポンス」をサーバへ返信
する。サーバでは、算出した値と受け取った「レスポンス」が一致することを確認
し、相手ユーザの正当性を認証する。
チャレンジ&レスポンス認証の場合、サーバが送信する「チャレンジ」のみで「レ
スポンス」を作成することや、「チャレンジ」あるいは「レスポンス」からパスワ
ードを逆算することは不可能である。
また、サーバが送信する「チャレンジ」は毎回変更され、それをもとに算出する
「レスポンス」も毎回変化するため、第三者が通信系路上で盗聴した場合に、パス
ワードを解読することはできない。
さらに、「レスポンス」をコピーしてサーバへのログインを試みた場合も、ログ
インの都度「レスポンス」が変化するため、認証に失敗する仕組みとなっている。
チャレンジ&レスポンス認証の処理イメージを「図 3.30 チャレンジ&レスポン
ス認証」に示す。
事業者
利用者
認証要求
チャレンジ
予測
レスポンス
照合
健康情報
活用基盤
統合ID
パスワード
認証
図 3.30
チャレンジ&レスポンス認証
(ウ) IC カードによるログイン
本認証方式では、IC カード内の統合 ID と利用者が画面から入力するパスワード
を組み合わせて認証することとした。ログインの手順については、健康情報活用基
盤のログイン画面にて IC カードをカードリーダにかざし、パスワードを入力する。
使用するパスワードは、利用者本人のみが知り得る情報であるため、IC カード内の
統合 ID とパスワードによる二要素を使用した認証となり、セキュリティの高い本
人性の確認が行える。
また、IC カード内のデータ(統合 ID)は暗号化されおり、健康情報活用基盤用
に開発した専用プログラムからのみ読み取りが可能であるため、統合 ID が漏洩す
るリスクは低いと思われる。
本認証方式によるログイン画面のイメージを「図 3.31 IC カード内の統合 ID
による認証画面」に示す。
88
3.本事業の成果
この画面で健康IruCaカー
ドをカードリーダにかざすこ
とで、パスワード入力画面
へ遷移。
図 3.31
IC カード内の統合 ID による認証画面
(エ) IC カードの運用管理
IC カードの利用を円滑に行うためには、利用申請から始まり、受付、利用者本人
確認、利用者カード発行、宛名印刷、封入、送付まで様々な運用作業が必要となる。
統合 ID を含む IC カードの発行作業には、個人情報を参照する機会が非常に多いた
め、個人情報を扱う箇所に制限を設けることで、セキュリティ面の強化を図る必要
89
3.本事業の成果
がある。
そこで、IC カードを発行・管理する事業者のなかでも、作業アクタごとに細分化
した利用権限を設け、それぞれ利用できる機能を制限することで個人情報へのアク
セスを最小限に抑える仕組みとした。
具体的には、統合 ID などの利用者情報の参照については問合せ窓口担当者、利
用申請受付担当者、カード発行担当者のみ可能とし、利用者情報の登録、削除につ
いては利用申請受付担当者のみ可能とした。また、情報の持ち出しなどによる漏洩
を防ぐため、統合 ID の管理についてリストへの出力は不可とし、データベース内
(画面表示)のみの管理とした。
さらに、システム全体を管理するシステム管理者は、一般的に全ての情報へのア
クセス権限が与えられるケースが多いが、健康情報活用基盤のシステム管理者につ
いては、利用者に関する情報を参照できない仕組みとし、それぞれの利用権限を最
小限にまで抑制する機能を構築した。
事業者における利用権限について「表 3.14 事業者の利用権限」に示す。
表 3.14
利用担当者
問合せ窓口担当者
利用申請受付担当者
カード発行担当者
事業者の利用権限
利用者情報
情報の参照
情報の更新
カード発行
△
×
×
○
○
×
△
×
○
○:利用可能、△:一部利用可能、×:利用不可
また、IC カードの発行に関する運用フローを「図 3.32
ロー」に示す。
90
IC カード発行の運用フ
3.本事業の成果
凡例
書類
データ
システム
操作・作業
処理の流れ
他フロー
担当者/システム 処理手順
利用申請の受付、申請書類の内容確認、
および健康情報活用基盤への利用者登録
の完了後に、カード発行を依頼する。
受付担当者
新規利用者
カード発行依頼
在籍証明書
身分証明書
(写)
利用者カード
発行依頼一覧
カード発行担当者
引続き、利用者へのカード配送の
手続を実施する。
利用者カードの
受領
既存利用者
カード再発行依
頼
利用者カード
発行依頼一覧
【様式A】
新規利用申請の
受領
利用者カードの
発行
必要書類の
印刷・確認・封入
封入物の確認
申請登録通知
送付物の提出
・登録完了通知書
・パスワード通知書
・簡易操作
マニュアル
Irucaの
注意事項
健康情報活用基盤
利用者登録・
訂正画面
(GIF0030U)
FeliCa登録
画面
(GIF0035U)
利用者登録・
訂正画面
(GIF0030U)
FeliCa内容
照会画面
(GIF0300R)
カードは封入した状
態で確認を行う。
図 3.32 IC カード発行の運用フロー
受付担当者は、申請者(利用者)からの利用申請(もしくはカード再発行依頼)
を受け付け、申請書類の内容確認及び健康情報活用基盤への利用者登録を実施した
後、カード発行担当者へカードの発行を依頼する。依頼を受けたカード発行担当者
は、連携された各種申請書に記載の内容にもとづき、IC カードの発行を行う。具体
的には、健康情報活用基盤の管理機能である「カードデータ書込み機能」を使用し
て、申請者へ割り振られた統合 ID を IC カードへ書込む。
その後引続いて「利用者照会画面」において、受付担当者により既に登録されて
いる利用者の情報を引出し、IC カードと併せて送付する関連書類の印刷・確認・封
入を行い、利用者への郵送の準備を行う。封入が完了した段階で、封入物の最終確
認の一環として、「カードデータ読込み機能」を使用して、カードに記録された統
合 ID 及び利用者に関する登録内容の最終確認を行う。本機能においては、誤操作
などによる内容の変更を抑制するよう、照会専用の画面として実装した。
IC カードへの書込み及びカードの内容を確認する画面イメージを「図 3.33
FeliCa 書込画面」及び「図 3.34 FeliCa 内容照会画面」に示す。
91
3.本事業の成果
利用者登録・訂正画面
(GIF0030U)
FeliCa登録画面
(GIF0035U)
※具体的な表示内容については秘匿事項のため非表示
図 3.33
図 3.34
FeliCa 書込画面
FeliCa 内容照会画面
92
3.本事業の成果
(オ) IruCa カードの利用
健康情報活用基盤では、ログイン認証に使用する IC カードとして、高松琴平電
気鉄道株式会社が発行する非接触方式 IC カード Felica である「IruCa」カードを
採用した。この「IruCa」カードに、健康情報活用基盤の統合 ID を格納した「健康
IruCa」カードを新たに発行し、健康情報活用基盤への電子認証デバイスとして利
用できる仕組みを構築した。
「IruCa」カードを採用した主な理由は以下の通りで、普及性・利便性・コスト
削減を勘案したうえで決定した。
・高松市民に広く普及しており、利用者にとって抵抗なく利用することができ
る
・電子マネーとしての機能を含むため、常に携行している可能性が高い
・すでに運用がなされているため、カード発行に関する初期投資が大幅に削減
できる
(b) 電子メールアドレスによるログイン
本認証方式では、利用者がログイン画面上から入力するメールアドレスとパスワ
ードにもとづいて認証することとした。「IC カード内の統合 ID による認証」と比
較した場合、メールアドレスが類推されやすいというデメリットはあるものの、IC
カードを携行していなくとも健康情報活用基盤を利用できるという利便性でのメ
リットが大きい。
なお、セキュリティ面での安全性を考慮し、本認証方式によりログインした場合
には、バイタル情報、運動情報、食事情報などの機微性の比較的低い日常情報に関
連するメニュー利用に限定する制限を設けた。
本認証方式によるログイン画面のイメージを「図 3.35
よる認証画面」に示す。
93
電子メールアドレスに
3.本事業の成果
図 3.35
電子メールアドレスによる認証画面
② アクセスコントロール
(a) 医療・健康情報データベース
医療・健康情報データベースでは、日常情報(日々のバイタル情報、食事情報、
運動情報など)、健診情報、医療情報など、情報量や記録形態の異なる多種多様な
情報を蓄積・一元管理する。また、利用者が生涯にわたって情報を蓄積できるデー
タベースであるためには、現在想定される健康情報はもちろんのこと、今後新たに
発生する健康情報も視野に入れた構築が必要となる。
そこで、各所からの多種多様な健康情報を恒久的に蓄積できる汎用性の高い項目
設計として、診療文書国際標準である HL7 CDA 構造を採用し、同規格に則った情報
を漏れなく取り込める構造とした。
医療・健康情報データベースの健康情報蓄積汎用フォーマットを「表 3.15 健
康情報蓄積汎用フォーマット」に示す。
94
3.本事業の成果
表 3.15
項番 名称
1 データ項目セット/
コード値
2 記録年月日
健康情報蓄積汎用フォーマット
説明
健康情報を管理するデータ項目セット及びコー
ド値
健康情報を記録した日付(※累積が不要な情報の
場合は省略)
健康情報の定量値及び半定量値
3
記録量
4
記録単位
記録量の単位
5
記録内容
6
測定器
7
外部ファイル管理番号
住所、氏名、所見など定性的な情報(※記録量の
補足情報としても利用)
健康情報の記録に測定機を用いた場合、測定器の
情報
情報が電子文書で収集された場合、電子文書を参
照する管理番号(※電子文書は別途管理)
上記フォーマットにおける「データ項目セット/コード値」については、多種多
様な健康情報を適切に識別できるよう、J-MIX や JLAC10 といった標準化されたデー
タ項目セット及びそれらをベースに定義した拡張データ項目セットに対応した。
本事業では、医療・健康情報については、標準的なデータ項目セットである J-MIX
や JLAC10 を適用しているが、日常情報については、J-MIX や JLAC10 に規定されて
いない項目が多いため、技術・標準 WG で拡張された JMIX-PHR や、当コンソ-シア
ムで独自に規定したデータ項目セットを使用した。
当コンソ-シアムで独自に規定したデータ項目セットについては、将来的に標準
化された際には、標準化項目コード、標準化項目セットにマッピングすることがで
きるように拡張性を持たせた。
医療・健康情報データベースで対応したデータ項目セットを「表 3.16 データ
項目セット一覧」に示す。
95
3.本事業の成果
表 3.16
項
名称
番
1 J-MIX
区分
標準
2
JLAC10
標準
3
PHR データ
交換規格
拡張
4
地 域 固 有 拡張
データ
データ項目セット一覧
説明
日常 健診 医療
情報 情報 情報
医療情報システムとの連携などに利
○
用される、電子保存された診療情報
の交換のためのデータ項目セット
身長、体重、血圧などの検査結果に ○
○
利用される、臨床検査項目分類コー
ド
食事カロリ情報、運動カロリ情報な ○
どに利用される、技術・標準 WG にて
J-MIX を拡張した健康情報活用基盤
用の項目セット
身体、運動、食事の詳細情報や医療 ○
情報などに利用される、当コンソー
シアムにて拡張した健康情報活用基
盤用の項目セット
(b) データベース別アクセスコントロール
当コンソーシアムでは、医療情報連携データベース、医療・健康情報データベー
スそれぞれのセキュリティレベルを「表 3.17 データベース別セキュリティレベ
ル」の通り設定し、データベースごとに異なるアクセスコンロール機能を構築する
こととした。
表 3.17
データベース別セキュリティレベル
データベース
セキュリティレベル
医療情報連携
情報管理者は医師であり、一般の個人情報よりも強固なセ
データベース
キュリティが必要。
医療・健康情報デ 情報管理者は利用者本人であり、一般の個人情報と同など
ータベース
のセキュリティが必要。
医療情報連携データベース、医療・健康情報データベース共通のアクセスコント
ロールとして、専用のラックに搭載して 24 時間 365 日常時監視しているサーバ上
で稼動させ、アクセス時には監査証跡として記録を採取するとともに、特権利用時
には管理簿にて利用者、利用日時を管理することとした。
さらに、医療情報連携データベースの医療情報は、医療情報システムである K-MIX
から連携された情報であることから、改ざんなどによる誤情報に起因して重篤な事
態が発生することも考えられるため、より強固なセキュリティを確保した。
具体的には、限定された管理者のみがアクセスできる特別なデータベースにする
とともに、「図 3.36 データベース別アクセスコントロールの概要」の通り、専
用のアクセスインターフェイスである医療情報登録機能、または医療情報連携機能
を介してのみアクセスを許可することとした。
96
3.本事業の成果
【医療連携システムゾーン】
【健康情報活用基盤ゾーン】
データベース共通
登録
医
療
情
報
登
録
機
能
登録
診
療
情
報
連
携
機
能
医療情報
連携DB
医療情報
K-MIX
医療・健康
情報DB
日常情報
健診情報
医療情報
ア
ク
セ
ス
コ
ン
ト
ロ
ー
ル
ア
プ
リ
ケ
ー
シ
ョ
ン
総
合
ポ
ー
タ
ル
サ
イ
ト
参照
医療情報連携データベース固有
物理的に分割
図 3.36
健康情報活用基盤
データベース別アクセスコントロールの概要
医療情報登録機能は、K-MIX から医療情報連携データベースへの連携に必要な患
者情報を登録し、登録した患者情報の患者 ID と利用者の統合 ID を紐付ける機能で
ある。
診療情報連携機能は、医療情報連携データベースに連携された医療情報を利用者
(患者)に提供するにあたって、医師が提供する内容を再度確認したうえで、医療・
健康情報データベースに連携する機能である。医療情報は、確かに利用者の個人情
報とはいえ、利用者本人への情報提供が病状の告知となり、かえって治療の妨げに
なる可能性もあるため、慎重を期して医師による連携確認の機能を構築した。
(c) アクタ別アクセスコントロール
医療情報連携データベースでは、情報管理者は医師であり、アクタも医師に限定
される。医療・健康情報データベースでは、情報管理者は利用者であるが、蓄積し
た医療・健康情報を診療や保健指導に活用するため、利用者本人による情報公開(同
意)により、医師や保健師もアクタとなる。
当コンソーシアムでは、技術・標準 WG で策定された「実証システム仕様書(案)」
を参考に、上記のデータベースの利用特性に応じて、アクタ別の利用権限を設定し
た。
3) 考察
① 認証
健康情報活用基盤で取扱う情報は、健診情報や診療情報などセンシティブで機微
性が非常に高いものを多く含むため、セキュリティホールになり得る可能性の高い
ログイン認証の実装については、特に十分な検討が必要である。健康情報活用基盤
においては、IC カードを利用した二要素認証を採用することで、一般に広く普及し
ている画面からのログイン ID、パスワードの入力によるログイン認証と比較し、成
りすましなどのセキュリティ面でのリスクを格段に抑制することが期待できる。
97
3.本事業の成果
また、IC カードに記録された統合 ID は、利用者に関するあらゆる情報のキーで
あり、情報が漏洩した場合の損害は計り知れないため、十分な管理体制が必要であ
る。そこで、IC カードの発行においては、発行の過程ごとに利用者権限を細分化し、
個人情報が容易に露呈しない仕組みを構築するとともに、細分化された利用者権限
ごとに互いに利用ログを監視することで、個人情報の漏洩及びデータ改竄などの脅
威に対する安全性を確保する機能を構築した。
なお、IC カードとしては、非接触方式 IC カード Felica の鉄道サイバネ規格準拠
カードである IruCa カードを採用した。IruCa カードについては、市民の生活に浸
透したカードになりつつあり、利用に対する抵抗感も尐なく、健康情報活用基盤の
普及・利用促進に多く寄与することになると思われる。
② アクセスコントロール
医療・健康情報データベースの構築では、既に標準化されているデータ構造に準
拠しつつも、その他情報や今後新たに追加される情報などに幅広く連携できるよう、
拡張性をもった仕組みを構築しつつ、その情報ごとにアクセスできる制限を設けた
ことで、安全で利便性の高い基盤を構築した。
また、医療情報は、本来、医師が管理する機微性の高い情報であるが、利用者に
情報提供された時点で、個人情報として利用者に管理が移管されるため、当コンソ
ーシアムでは、その機微性の異動に合わせたセキュリティレベルを設定し、異動前
と異動後で互いのセキュリティレベルに干渉することなく管理する仕組みを構築
することができた。
これにより、多種多様な情報源からの情報を一元管理することが可能であり、安
全に情報を取扱うことができ、今後柔軟に健康情報サービスの提供が行えるものと
思われる。
5) 評価
① 認証
利用者の識別及び認証については、格納されている情報への外部からのアクセス
が困難な IC カードを適用して二要素認証の基盤を構築することにより、なりすま
し防止などのセキュリティを確保するとともに、参加団体である高松琴平電気鉄道
株式会社が既に発行している交通系 IC カード「IruCa」を採用することにより、利
用者の利便性の向上やカード発行コストの低減を図ることができた。
IruCa の全体像を「図 3.37 IruCa 全体概要」に示す。
98
3.本事業の成果
・ことでんIruCaカード発行枚数: 177千枚(H22.3)
・乗車(鉄道)でのカード利用率の8割を超える
・電子マネーインフラ:商店、駐車場、各種決済
・香川大学学生証・職員証/高松市職員証/eヘルスケアバンク
図 3.37
IruCa 全体概要
さらに、機微性の低い日常情報については、メールアドレスによる認証でのアク
セスを許可するなど、セキュリティと利便性の適切なバランスに配慮した。
認証方法の概要を「図 3.38 認証方法の概要」に示す。
図 3.38
認証方法の概要
99
3.本事業の成果
構築した認証基盤の評価として、利用者に対して実施したアンケート結果を以下
に示す。
今回、配布致しましたカードにはIruCaの機能が搭載されておりますが、このような事
業においてカードに付加機能をつけた取組みについてどう思いますか?
(回答者:N=389人)
3%
7%
便利である
まあまあ便利である
あまり便利でない
便利でない
51%
39%
日々の食事・運動情報などを記録・参照する場合は、メールアドレスによる
認証で実施できる事についてどう思いますか?(回答者:N=350人)
5%
10%
良い
どちらかというと良い
38%
どちらかというと悪い
悪い
47%
いずれの設問ともに 80%を越える利用者から高い評価を得ている。
前者の結果より、電子マネーなどの便利機能が付加された IC カードを二要素認
証の基盤として提供することが、健康情報活用基盤の利用促進につながることが期
待される。
後者の結果より、記録・参照する情報のセキュリティレベルに応じて、複数の認
証方法を提供することが、利用促進に向けて非常に有用であることが分かる。
100
3.本事業の成果
② アクセスコントロール
医療・健康情報データベースの構造については、すでに標準化されているフォー
マットに準拠しつつも、他の医療情報システムから連携した情報も欠損なく管理で
きるように拡張性を持った仕組みとしたことで今後の活用に期待できる。
また、医療情報連携データベース、医療・健康情報データベースそれぞれのセキ
ュリティレベルに応じて、アクタと情報の種類ごとにアクセスコントロールを設定
することにより、健康情報活用基盤に収集した医療・健康情報を安全に管理できる
ようにした。
さらには、医療・健康情報データベースへのアクセスについても、アクセスコン
トロールによる制御を行い、健康情報活用基盤に収集した医療・健康情報を一元的
に管理できるようにした。
3.1.6. 情報公開設定
1) 構成
情報公開設定では、利用者本人の健康情報を医師や保健師に参照してもらうこと
で、健康相談などができる仕組みとし、また安全性を考慮し、利用者本人への健康
情報への証跡を残せる構成とした。
公開設定機能の構成を「表 3.18 公開設定機能の構成」に示す。
表 3.18
サブ機能
情報公開設定
監査証跡照会
公開設定機能の構成
機能内容
利用者本人が情報公開の相手先や範囲を設定する。
利用者本人が利用者本人の情報への第三者のアクセス履
歴を照会する。
アクセスコントロール機能では、利用者ポータルトップ画面から、既に利用者本
人の情報を公開している医師や保健師の一覧を確認・設定でき、またその医師や保
健師からの利用者本人への情報アクセスを簡単に参照できる画面遷移とした。
公開設定機能の画面遷移を「図 3.39 公開設定機能の画面遷移」に示す。
利用者ポータル
トップ画面
(GPH0010R)
相談先一覧・検索画面
(GPH0080R)
公開情報設定画面
(GPH0090U)
監査証跡一覧・検索画面
(GCM0170R)
図 3.39
公開設定機能の画面遷移
101
3.本事業の成果
2) 詳細
① 情報公開設定
本事業では、利用者本人が医療・健康情報データベースに蓄積された医療・健康
情報を医師や保健師に公開し、診療や保健指導を受けるサービスを提供した。
利用者の医療・健康情報を医師や保健師に公開することは、個人情報の第三者提
供に当たるため、個人情報保護法(第 23 条 第三者提供の制限)などに規定されて
いるように、あらかじめ利用者本人の同意を得なければならない。
そこで、当コンソーシアムでは、医師や保健師への情報公開については、利用者
本人が情報公開を設定登録(同意)した場合のみ可能にした。
利用者本人による情報公開の設定登録手順は、以下の通りである。
(a) 公開先の選択
利用者本人が公開先の医師や保健師など、情報提供する第三者を個人単位で選択
する。
公開先選択の画面イメージを「図 3.40 相談先一覧・検索画面」に示す。
図 3.40
相談先一覧・検索画面
(b) 公開情報の選択
上記で選択した公開先(第三者)ごとに、提供する情報を情報の種類単位(バイ
タル情報、運動情報、食事情報、健診情報、診療情報など)に選択する。
公開情報選択の画面イメージを「図 3.41 公開情報設定画面」に示す。
102
3.本事業の成果
図 3.41
公開情報設定画面
② 監査証跡
健康情報活用基盤に蓄積された医療・健康情報へのアクセス時には監査証跡とし
て記録を採取しているが、その監査証跡を利用者本人が利用者本人の情報へのアク
セス履歴として参照できるようにした。
当コンソーシアムでは、利用者本人の情報公開設定による第三者からのアクセス
状況や、不正なアクセスの有無などを直接モニタリングすることにより、健康情報
活用基盤に対する利用者の安心感が増すと考えたためである。
監査証跡照会の画面イメージを「図 3.42 監査証跡一覧・検索画面」に示す。
図 3.42
監査証跡一覧・検索画面
103
3.本事業の成果
3) 考察
当コンソーシアムでは、医師や保健師が健康情報活用基盤を利用して、効果的な
診療や保健指導を行えるように、利用者の医療・健康情報を医師や保健師に公開す
るため、アクタ別アクセスコントロールや情報公開設定の機能を実装することによ
り、利用者本人による個人情報の第三者提供の基盤を構築することができた。
さらに、利用者本人が利用者本人の情報へのアクセス状況をモニタリングする機
能を構築するなど、利用者が健康情報活用基盤に情報を安心して預けられるように
配慮した。
医療・健康情報データベースに蓄積される医療・健康情報は、非常に機微な個人
情報であるため、高度なセキュリティの確保が必須である一方、医療・健康サービ
スのために利活用することも求められる。本事業で、セキュリティと利便性の双方
を確保するアクセスコントロールの仕組みを実現したことで、個人情報の保護と併
せて、医療機関や健康サービス事業者など各機関での情報の有効活用に期待が持て
る。
4) 評価
利用者本人が、医師や保健師に対して利用者本人の健康情報へのアクセスを許可
(情報公開)したり、利用者本人の健康情報への第三者のアクセス(監査証跡)を
監視したりする公開設定の機能を構築することにより、利用者が安心して情報を預
けられる仕組みを実現した。
構築した情報公開の範囲設定機能の評価として、利用者に対して実施したアンケ
ート結果を以下に示す。
なお、保健師への情報公開については、医療・健康情報の保健指導への有効活用
の一環として別途、効果確認を行ったため、本設問については、医師への情報公開
に限定した調査となっている。
医療機関に公開する健康情報は、種別(身体・食事・運動・処方・診療・健診)を指定
できた方が良いと思いますか?(回答者:N=322人)
7%
3%
良い
32%
どちらかというと良い
あまり良くない
良くない
58%
104
3.本事業の成果
90%の利用者が「良い」「どちらかというと良い」と回答しており、情報公開時
に範囲設定できることについて高い評価を得ている。
今後とも、範囲設定を行う情報の単位をより細分化するなど、利用者の安心感を
向上するための機能改善への取組みが必要である。
3.1.7. 医師・保健師との情報共有
1) 構成
健康情報活用基盤の医療・健康情報データベースに蓄積された利用者の医療・健
康情報の共有の相手先には、医師・保健師、他事業者、健康サービス事業者が存在
する。
医師・保健師との情報共有については、健康情報活用基盤上に構築した Web アプ
リケーションにより実現した。
医師・保健師との情報共有の機能概要を「図 3.43 情報共有の機能概要(医師・
保健師との情報共有)」に示す。
API
健康サービス
事業者
API
医療・健康情報
データベース
データ交換規格
事業者
利用者
医師
保健師
医師・保健師との情報共有
データ交換規格
図 3.43
W
e
b
ア
プ
リ
ケ
ー
シ
ョ
ン
倉庫DB
情報共有の機能概要(医師・保健師との情報共有)
医師・保健師との情報共有は、医師による診療及び保健師による保健指導におけ
る参考情報として、健康情報活用基盤上で必要の都度、必要な情報のみを参照する
ような利用を支援する。
医師・保健師との情報共有の利用概要を「表 3.19 情報共有先別の利用概要(医
師・保健師との情報共有)」に示す。
105
3.本事業の成果
表 3.19
情報共有先
医師・保健師
情報共有先別の利用概要(医師・保健師との情報共有)
利用環境
利用頻度
利用情報量
健康情報活用基盤
必要の都度
小
(リアルタイム)
他事業者
他システム
事業者の変更時
大
(一括バッチ)
健康サービス事業者 他システム
必要の都度
小
(リアルタイム)
医師・保健師との情報共有は、利用者による公開設定にもとづき、利用者が蓄積
した健康情報活用基盤上の医療・健康情報を、第三者である医師や保健師に提供す
る機能構成とした。
医師・保健師との情報共有の構成要件を「表 3.20 医師・保健師との情報共有
の機能構成」に示す。
表 3.20 医師・保健師との情報共有の機能構成
構成要件
用件内容
健康情報公開設定
健康情報活用基盤の医療・健康情報データベースに蓄積さ
れた日常情報について、第三者への公開を設定する。
健康情報照会
利用者より公開を許可された第三者が、利用者の健康情報
を閲覧する。
2) 詳細
① 健康情報公開設定
利用者は、健康情報活用基盤の医療・健康情報データベースに日々蓄積している
利用者本人の医療・健康情報を、医師や保健師と情報共有することで、より精度の
高い診療、保健指導を受けることが可能となる。それにより、知ってもらえている
という安心感、信頼感が向上し、診療や保健指導の結果内容にもとづく生活習慣改
善に向けた行動変容も起こりやすくなると考えられる。
健康情報公開設定においては、利用者が医療・健康情報のうち、どの種類の情報
を誰に公開するかを設定のうえ、必要な情報のみを適切な第三者と共有することを
可能とした。
② 健康情報照会
医師や保健師は、健康情報活用基盤の医療・健康情報データベースに日々蓄積し
ている利用者の医療・健康情報を共有することで、これまで以上に正確な診療や保
健指導を、より効率的に実施することが可能になると考えられる。
健康情報照会においては、利用者から公開された医療・健康情報をもとに、グラ
フによる推移表示や表形式での集計表示など、参照した際に素早い判断ができるよ
うな分かりやすい情報を提供した。
106
3.本事業の成果
3) 考察
利用者は、利用者本人の医療・健康情報を医師や保健師に提供することで、より
精度の高い診療や保健指導を受けることが可能となる。また一方、医師や保健師は、
判断材料が増えることで、診療や保健指導の効率化を図ることが可能となる。
さらに、本事業で構築した Web 情報公開機能を利用することで、利用者は必要な
情報を必要な第三者へ公開する細やかな公開設定が可能であるため、安心して情報
共有することができると考えられる。また、医師や保健師においても、単なる情報
の列挙ではなく、グラフや集計表などによる情報照会が可能であるため、利用者の
健康状態に関して、経緯や総合量を勘案しての判断が容易となると考えられる。
なお、本機能については、1 人暮らしの高齢者の医療・健康情報を、離れて暮ら
す家族が定期的に確認する見守りサービスなど、さまざまなサービスへの活用も期
待される。
4) 評価
利用者が日々蓄積している利用者本人の日常情報を、第三者である医師や保健師
に対して、利用者本人が設定した公開範囲に応じて提供可能とすることで、利用者
だけでなく、保健師にとっても非常に有用であることが検証できた。
なお、医師の診療への利用についての検証は、本実証の範囲外であるため、その
有用性の評価には至っていない。
3.1.8. 他事業者との情報共有
1) 構成
健康情報活用基盤の医療・健康情報データベースに蓄積された利用者の医療・健
康情報の共有の相手先には、医師・保健師、他事業者、健康サービス事業者が存在
する。
他事業者との情報共有については、データ交換規格にもとづいたデータポータビ
リティ機能により実現した。
データポータビリティ機能の機能概要を「図 3.44 情報共有の機能概要(デー
タポータビリティ)」に示す。
107
3.本事業の成果
API
健康サービス
事業者
API
医療・健康情報
データベース
データポータビリティ機能
データ交換規格
事業者
データ交換規格
図 3.44
W
e
b
ア
プ
リ
ケ
ー
シ
ョ
ン
利用者
医師
保健師
倉庫DB
情報共有の機能概要(データポータビリティ)
データポータビリティ機能は、利用者が健康情報活用基盤の提供事業者を変更し
た場合に、それまでに蓄積している利用者の医療・健康情報のすべてを変更先の他
事業者のシステムへ一括して連携することで、個人が生涯にわたって保持すべき情
報を漏れなく一元管理可能とする。
データポータビリティ機能の利用概要を「表 3.21 情報共有先別の利用概要(デ
ータポータビリティ)」に示す。
表 3.21
情報共有先
医師・保健師
情報共有先別の利用概要(データポータビリティ)
利用環境
利用頻度
利用情報量
健康情報活用基盤
必要の都度
小
(リアルタイム)
他事業者
他システム
事業者の変更時
大
(一括バッチ)
健康サービス事業者 他システム
必要の都度
小
(リアルタイム)
他事業者との情報共有を実現するデータポータビリティ機能は、事業者間で交換
する健康情報のデータフォーマットであるエクスポートパッケージ、交換した健康
情報のすべてを蓄積・保管するための倉庫 DB 及び事業者固有の健康情報を参照す
るための参照ビューアの 3 つからなる構成とした。
データポータビリティ機能を実現する構成要件として、当コンソーシアムにて実
装したものを「表 3.22 データポータビリティ機能の」に示す。
108
3.本事業の成果
表 3.22
構成要件
エクスポートパッケージ
倉庫 DB
参照ビューア
データポータビリティ機能の構成
要件内容
各コンソーシアム間で健康情報を相互に交換できる
フォーマットのデータ構造とする。
当コンソーシアムにポータビリティされたすべての
健康情報を蓄積できるようにする。
当コンソーシアムからポータビリティされるすべて
の健康情報を参照できるようにする。
2) 詳細
① エクスポートパッケージ
各コンソーシアム間で健康情報を相互に交換するために、技術・標準 WG にて議
論された結果、一般に普及している各種標準規約や「医療情報システムにおける相
互運用性の実証事業 医療情報システムにおける相互運用性推進普及プロジェク
ト」の考え方に準拠し、「実証システム仕様書」として「エクスポートパッケージ」
が定められた。この「エクスポートパッケージ」をもとに、平成 21 年度には、各
コンソーシアム間でのデータ交換が技術的に可能であることを実証した。
実証検証した結果をもとに、各コンソーシアム間で健康情報を相互に交換するた
めの要求定義として、平成 22 年度には成果取りまとめ WG にて「PHR データ交換規
格」としてまとめられた。
当コンソーシアムにおいては、技術・標準 WG にて定められた「実証システム仕
様書」に対応して健康情報を蓄積できるように医療・健康情報データベースを設
計・実装した。具体的には、保持する項目ごとにセクション、グループ、項目コー
ドを設定し、分類したコードで管理することとした。
セクションにより各項目が基礎情報セクション、バイタルサインセクション、喫
煙情報セクション、栄養情報セクション及び運動情報セクションなどのどのセクシ
ョンに該当するかを保持する。セクションの内容については「実証システム仕様書」
で既定されている内容を使用した。グループにより各項目が当コンソーシアムで取
扱うどの機能・画面に該当するかを保持する。グループの内容については当コンソ
ーシアムにて検討、使用した。項目コードにより、各項目を固有に管理できる。項
目コードについては「実証システム仕様書」で規定されている内容を使用した。
当コンソーシアムにおいて設計・実装したエクスポートパッケージの概要を「図
3.45 エクスポートパッケージと医療・健康情報データベースの関連」に示す。
109
3.本事業の成果
エクスポートパッケージ
健康情報活用基盤
身体情報セクション
血圧(伸縮)
血圧(拡張)
…
健診情報セクション
血圧(伸縮)
血圧(拡張)
…
運動・食事登録機能
医療・健康情報データベース
項目
血圧(伸縮時)
血圧(拡張時)
血圧(伸縮時)
血圧(拡張時)
血圧(伸縮時)
血圧(拡張時)
血圧(伸縮時)
血圧(拡張時)
セクション
身体情報
身体情報
身体情報
身体情報
健診情報
健診情報
健診情報
健診情報
グループ
運動・食事登録機能
運動・食事登録機能
エクスポートパッケージ
エクスポートパッケージ
健診情報連携機能
健診情報連携機能
エクスポートパッケージ
エクスポートパッケージ
値
120
70
115
72
122
74
116
70
単位
mmHg
mmHg
mmHg
mmHg
mmHg
mmHg
mmHg
mmHg
血圧(伸縮)
血圧(拡張)
…
健診情報連携機能
血圧(伸縮)
血圧(拡張)
…
・
・
・
・
・
凡例:
図 3.45
項目
機能
エクスポートパッケージと医療・健康情報データベースの関連図
② 倉庫 DB
技術・標準 WG における議論の結果、各コンソーシアムの健康情報活用基盤間で
の健康情報の交換においては、健康情報活用基盤で利用しないものも含め、連携さ
れた健康情報をすべて蓄積する仕組みが必要であるとの結論に至った。これは、利
用者に関する健康情報の欠損を防ぐことが目的である。
本来、各コンソーシアムが運営する健康情報活用基盤において取扱う情報は、各
健康情報活用基盤が実装するサービスにて利用する情報のみで十分である。しかし
ながら、各コンソーシアムの健康情報活用基盤には独自性があるため、コンソーシ
アム独自の健康情報が存在することがある。具体的には、当コンソーシアムで取扱
う情報の中には、食事情報における塩分量、日々の歩数などがコンソーシアム独自
の健康情報である。これらのコンソーシアム独自項目については、他コンソーシア
ムで取扱う情報ではないため、他コンソーシアムでは取り込むことができず、健康
情報が欠損する結果となる。
健康情報を漏れなく蓄積する仕組みについて、技術・標準 WG 及び運用・普及 WG
の中で検討した結果、「倉庫 DB」という概念が提案された。
「倉庫 DB」とは、他コンソーシアムの健康情報活用基盤より受領した健康情報を
保管することを目的とした健康情報活用基盤内のデータベース概念である。「倉庫
DB」では、各コンソーシアムから連携されたコンソーシアム独自項目データを含む
健康情報をそのまますべて保管する。倉庫 DB で保管されたデータのうち、当コン
ソーシアムのサービスで利用する項目データについて医療・健康情報データベース
に取り込む。
この「倉庫 DB」の概念を実装することで、各コンソーシアム独自の健康情報につ
いても欠損無く蓄積することが可能となる。
この技術・標準 WG 及び運用・普及 WG での検討結果を受け、当コンソーシアム内
においても「倉庫 DB」の概念について議論し、倉庫 DB を利用することで健康情報
活用基盤でのデータの欠損が発生しないとの判断に至った。
そこで、当コンソーシアムでは、健康情報活用基盤におけるデータの欠損を防止
110
3.本事業の成果
する施策として、倉庫 DB の概念を導入して利用者に関する過去すべての健康情報
を保持する医療・健康情報データベースの設計・構築を行った。
当コンソーシアムにて構築した倉庫 DB を用いたポータビリティのイメージを「図
3.46 倉庫 DB 運用イメージ」に示す。
医療・健康
情報DB
医療・健康
情報DB
医療・健康
情報DB
③
②
⑥
⑤
倉庫DB
倉庫DB
⑤
健康情報活用基盤A
①
健康情報活用基盤B
④
③
⑥
⑥
Aの内容
健康情報活用基盤C
⑦
Bの内容
利用者
【運用内容】
①利用者は、健康情報活用基盤Aを利用している。
②利用者は、異動(住居移転等)により、健康情報活用基盤Aからデータを返還して貰う。
③利用者は、健康情報活用基盤Aのデータ健康情報活用基盤Bへ提出する。
健康情報活用基盤Bの倉庫DB、及び医療・健康情報DBに取り込まれる。
④利用者は、健康情報活用基盤Bを利用し、日々の健康情報を入力する。
⑤利用者は再び、異動(住居移転等)により、健康情報活用基盤Bからデータを返還して貰う。
⑥利用者は、健康情報活用基盤Aのデータ、健康情報活用基盤Bのデータを健康情報活用基盤C
へ提出する。Cの倉庫DB、及び医療・健康情報DBに取り込まれる。
⑦利用者は、健康情報活用基盤Cを利用し、日々の健康情報を入力する。
図 3.46
倉庫 DB 運用イメージ
倉庫 DB の概念を用いてポータビリティの検証を進めていく中で、日付を保持し
ていないデータにおいて、過去データによる上書きが発生するケースがあるという
問題点が浮上してきた。日付を保持していないデータとして具体的には、氏名、住
所、電話番号などの利用者基本情報があり、これらのデータが過去データで上書き
される原因としては、以下の 2 点が挙げられた。
・他コンソーシアムから連携されたデータの取り込み順によって過去データで
の上書きが発生する
・インポート前に利用者が入力したデータに対して、他コンソーシアムから連
携されたデータを取り込むことで、利用者が入力したデータに対して過去デ
ータでの上書きが発生する
111
3.本事業の成果
前者の原因の対応として、当コンソーシアム内で検討した結果、インポート時に
確実に処理順序を判別する工夫が必要であると判断した。その具体策としては、連
携される一連のデータについて、取り込み順を示す番号を採番し、その取り込み順
を連携するデータとともに連携先に伝達するということである。そして、取り込み
順を示す番号体系について検討した結果、そのデータの登録日付を利用することで、
冗長な項目を増やすことなく目的が達成できることを確認した。この対応策につい
て技術・標準 WG に報告し、議論したところ了承された。この内容を踏まえて、技
術・標準 WG を引き継いだ成果取りまとめ WG にて「PHR データ交換規格」がまとめ
られた。
後者の原因の対応として、当コンソーシアム内で検討した結果、利用者によって
インポート先に有効なデータが登録されていた場合、上書きを行なわない仕組みが
必要であると判断した。具体策としては、前者でも検討したデータの登録日付を利
用することとした。連携されたデータの登録日付とインポート先にデータがすでに
登録されていた際のデータの登録日付とを比較し、インポート先のデータの登録日
付の方が新しい場合、インポートデータを取り込まないこととした。これにより目
的が達成できることを確認した。
③ 参照ビューア
「倉庫 DB」の概念により、他コンソーシアムからの健康情報についても欠損する
ことなく蓄積することが可能となった。しかしながら、当コンソーシアムのサービ
ス対象外のデータの場合、そのデータが表す内容については判別できないため、デ
ータの参照ができないこととなる。データの参照ができないとなると、せっかく蓄
積していても蓄積していないことと同じである。
技術・標準 WG 及び運用・普及 WG において、この問題について議論された結果、
データ出力側の健康情報活用基盤にて参照用のビューアを提供することで、データ
受け取り側の健康情報活用基盤にてデータの照会を可能とすることが提唱された。
その際、エクスポートパッケージの標準内容を参照する手段については、技術・標
準 WG から参照用のビューアとしてスタイルシートが提供された。
当コンソーシアムでは技術・標準 WG での検討結果を受けて、コンソーシアム独
自の健康情報を含んだポータビリティデータを参照できるビューアとして、技術・
標準 WG から提供された標準内容参照用のビューアをもとに当コンソーシアム用の
スタイルシートを定義した。なお、「実証システム仕様書」と比較した場合、当コ
ンソーシアムで取扱う情報の中で独自の健康情報としては、食事情報における塩分
量、日々の歩数などが含まれていた。
当コンソーシアムからエクスポートされた独自項目を含んだポータビリティデ
ータの表示例を「図 3.47 ポータビリティデータの表示例」に示す。
112
3.本事業の成果
――― 途中省略 ―――
当コンソーシアム
独自項目の表示例
図 3.47
ポータビリティデータの表示例
3) 考察
技術・標準 WG での提案により、倉庫 DB を利用することで、利用者個人が所有す
るコンソーシアム独自項目を含めた健康情報を、欠損なく保持することが可能とな
った。しかし、倉庫 DB の概念を用いてポータビリティの検証を進めていく中で、
倉庫 DB に対して以下に示す新たな問題点が浮上してきたため、当コンソーシアム
から技術・標準 WG に対して問題を提起し、解決に向けての施策の検討を依頼した。
① 日付ごとに発生するデータの重複
日付ごとに発生するデータとして、具体的には日々の体重、体脂肪率、食事摂取
カロリ、運動消費カロリなどの利用者健康情報がある。当データが重複する原因と
しては「倉庫 DB から医療・健康情報データベースに取り込まれていたデータにつ
113
3.本事業の成果
いては、必ず重複して連携される」ことが挙げられた。
出力元コンソーシアムで倉庫 DB から取り込んだデータについては、同じ健康情
報タとして出力されるため、次のコンソーシアムに連携される時点では倉庫 DB に
あったデータと必ず重複したデータとなる。
当コンソーシアムにおいては、「値が完全一致した際に取り込まない」というロ
ジックを組込むことで、対策を行なえると想定・検証した。しかし、出力元コンソ
ーシアムで倉庫 DB から取り込んだデータを健康情報として出力する前に、倉庫 DB
から取り込んだデータに対して更新を実施していた場合、上記対策では検出するこ
とができないことが判明した。その結果、取り込み側では更新前、更新後の 2 レコ
ードが作成されてしまうこととなった。
根本対策を当コンソーシアムで検討した結果、全てのコンソーシアムにおいて、
ポータビリティのインポート実施時に医療・健康情報データベースに取り込んだ項
目は倉庫 DB から削除する事で対応が可能であると想定した。当コンソーシアムで
は、上記の仕様について技術・標準 WG に対して指摘した。
当コンソーシアムからの問題提起にもとづき、技術・標準 WG にて議論した結果、
健康情報はあくまでも利用者個人の情報であることから欠落さえしなければ問題
ない、との判断により、更新前、更新後の 2 レコードが作成されてしまうことへの
影響は尐ないとの結論となった。
② 外部ファイルを利用するデータにおけるファイル名の重複
外部ファイルを利用するデータとして、具体的には健診情報、薬歴などがある。
当データのファイル名が重複する原因としては「倉庫 DB と健康情報データに同一
のパスを持つファイルが存在できる」ことが挙げられた。
当コンソーシアムでは、添付ファイルを利用するポータビリティ項目にて、倉庫
DB と健康情報データそれぞれに同一のパスを持つファイルが複数存在した場合、イ
ンポート作業、エクスポート作業を行う際に問題が発生するかどうか検証した。そ
の結果、インポート作業においては、添付ファイルの実体をフォルダ構成ではなく、
データベース内部で保持するため、問題ないことを確認した。しかし、エクスポー
ト作業においては、技術・標準 WG によって作成された「実証システム仕様書(案)」
による仕様により、同一の出力先となり出力が行えないことを確認した。当コンソ
ーシアムにおいては、上記の仕様上の問題点について技術・標準 WG に対して指摘
した。
当コンソーシアムからの問題提起にもとづき、技術・標準 WG にて議論した結果、
エクスポートのファイル命名基準は HL7J-CDA-004 可搬電子診療文書媒体規格に
準じることで解決するとの結論となった。この結論を踏まえて、最終の平成 22 年
度には、成果取りまとめ WG にて「PHR データ交換規格」としてまとめられた。
最終的に、当コンソーシアムでは、データポータビリティの実現に向けて、シス
テムの構築、実証を行い、コンソーシアムを横断しての健康情報が欠損無く連携で
きることを確認した。これにより、当事業の市場規模が拡大した際にも、連携仕様
を遵守することで、コンソーシアム独自の健康情報を含んだ利用者の情報が欠落す
114
3.本事業の成果
ることがない土台ができたことは十分に評価できるものだと思われる。
4) 評価
他コンソーシアムとの情報交換の実証において、技術・標準 WG の指導のもとで、
ポータビリティ交換規約への準拠及び倉庫 DB 概念の導入、参照ビューアの開発な
どを実施したことにより、事業者固有の情報も欠落することなく収集することが可
能になり、利用者による事業者の乗換・変更のために必要なポータビリティを確保
することができた。
3.1.9. 健康サービス事業者との情報共有
1) 構成
健康情報活用基盤の医療・健康情報データベースに蓄積された利用者の医療・健
康情報の共有の相手先には、医師・保健師、他事業者、健康サービス事業者が存在
する。
健康サービス事業者との情報共有については、独自の API を利用した相互接続機
能により実現した。
相互接続機能の機能概要を「図 3.48 情報共有の機能概要(相互接続)」に示
す。
API
健康サービス
事業者
API
医療・健康情報
データベース
データ交換規格
相互接続機能
事業者
データ交換規格
図 3.48
W
e
b
ア
プ
リ
ケ
ー
シ
ョ
ン
利用者
医師
保健師
倉庫DB
情報共有の機能概要(相互接続)
相互接続機能は、スポーツクラブやフィットネスクラブなどの健康サービス事業
者との間で、それぞれが個別に管理する利用者の医療・健康情報を必要の都度、相
互に授受して必要な情報のみを補うことで、利用者へより有用なサービスを提供す
ることを可能とする。
相互接続機能の利用概要を「表 3.23 情報共有先別の利用概要(相互接続)」
に示す。
115
3.本事業の成果
表 3.23 情報共有先別の利用概要(相互接続)
情報共有先
利用環境
利用頻度
医師・保健師
健康情報活用基盤
必要の都度
(リアルタイム)
他事業者
他システム
事業者の変更時
(一括バッチ)
健康サービス事業者 他システム
必要の都度
(リアルタイム)
利用情報量
小
大
小
健康サービス事業者との情報共有を実現する相互接続機能では、健康サービス事
業者が扱う多種多様な情報のうち、必要な一部の情報のみを抽出して共有する必要
があるため、データフォーマットや交換手続きについての標準化が困難である。
そこで、データ連携元の事業者(システム)側にて、情報提供のための API/SDK
を構築・公開することで、それぞれの事業者が個々に蓄積・管理する情報を、相互
に連携して情報共有する機能構成とした。
2) 詳細
① 健康情報活用基盤から運動情報管理システムへの情報提供
健康情報活用基盤から運動情報管理システムへの情報提供における標準データ、
API/SDK 及び連携方式については、運動情報管理システム側でのデータベース構造
の変更や大規模な機能追加が発生しない点に留意して仕様を検討した。
まず、標準データとして、XML-RPC に準拠した XML データを定義した。仕様が非
常にシンプルで実装が容易であること及びデータフォーマットが電子データ交換
に最も適した XML ベースであることが XML-RPC を採用したおもな理由である。
次に、API/SDK については、情報取得に必要な 3 種類の API を構築した。健康情
報活用基盤にて提供する API/SDK の仕様を「表 3.24 健康情報活用基盤の
API/SDK」に示す。
表 3.24 健康情報活用基盤の API/SDK
API 種別
処理内容
ユーザ存在チェック API
運動情報管理システムのユーザ情報をもとに、健
(getPHRUser)
康情報活用基盤のユーザ情報(以下、「利用者特
定情報」と記載)を返す。
健診データ一覧取得 API
利用者特定情報、期間をもとに、当該ユーザの健
(getHealthList)
診一覧(ヘッダ情報のみ)を返す。
健診データ取得 API
(getHealthDat)
利用者特定情報及び健診(ヘッダ情報)をもとに
健診明細を返す。なお、ヘッダ情報が指定されな
い場合は、最新の健診明細を返す。
最後に連携方式としては、HTTPS による WEB サービスの形態とした。その理由と
しては、連携先の運動情報管理システム側に特別な環境を導入する必要がないこと、
116
3.本事業の成果
及び取得プログラムの実装が容易であることなどが挙げられる。
API/SDK を利用した連携の処理フローを「図 3.49
連携の処理フロー」に示す。
ENTRANCE
ユーザ情報チェックAPIのリクエストパ
ラメータに健康サービス事業者会員番号
/パスワードをセット
ユーザ存在チェックAPI
No
最新の健診
データの取得
Yes
ユーザ存在チェックAPIのレスポンスの
PHRユーザ特定情報を健診データ取得API
のリクエストパラメータにセット
ユーザ存在チェックAPIのレスポンスの
PHRユーザ特定情報を健診データ一覧取
得APIのリクエストパラメータにセット
健診データ取得API
健診データ一覧取得API
ユーザ存在チェックAPIのレスポンスの
SysTgold、健診データ一覧取得APIのレ
スポンスの健診INDEXを健診データ取得
APIのリクエストパラメータにセット
健診データ取得API
EXIT
図 3.49
連携の処理フロー
なお、セキュリティ面の施策として、HTTP ではなく SSL で暗号化された HTTPS
でのみサービスの提供を行い、さらに、要求元 IP を制限する処理を設け、あらか
じめ登録した要求元 IP 以外からの応答を行わないこととした。
117
3.本事業の成果
② 運動情報管理システムから健康情報活用基盤への連携
運動情報管理システムから健康情報活用基盤への連携においては、標準データ、
API/SDK 及び連携方式のすべてについて、運動情報管理システムにて構築済みであ
った既存資産を流用した。
なお、運動情報管理システムが提供する連携方式としては、HTTPS による WEB サ
ービスの形態で、まず、ユーザ ID による運動情報管理システムへのログインし、
その後、データ取得用 API をコールしてデータを取得する。
本事業においては、健康情報活用基盤側にてバッチプログラムを構築し、スケジ
ュール起動による日次周期でデータ取得する運用とした。
3) 考察
当コンソーシアムの健康情報活用基盤と株式会社コナミスポーツの運動情報管
理システムとの間での相互接続機能として、それぞれのシステムにて構築・公開す
る API/SDK を利用し、相互に情報連携する仕組みを構築した。機能検証として実施
した相互接続試験においても、それぞれのシステムが大きな問題なく適切にデータ
の取得が行えることを確認できた。
まず、健康情報活用基盤から運動情報管理システムへの連携においては、WEB サ
ービス型の API で構築し、かつ汎用的プロトコル(HTTPS)や標準化された規格
(XML-RPC)を利用することで、要求元クライアントの環境に依存せず、健康サービ
ス事業者へ医療・健康情報データベースの情報を公開できる機能を構築できたと考
えている。
次に、運動情報管理システムから健康情報活用基盤への連携においては、身体情
報、体脂肪情報、歩数情報などの項目に限定した連携ではあったものの、運動情報
管理システムの API を用いた定期的(日次周期)な情報連携機能の構築が可能であ
ることを検証できた。
今回は疎通テストのレベルまでの構築・検証に留まったが、本機能をさらに拡張
することで、相互に情報連携して一元管理する仕組みだけでなく、リアルタイムに
他システムから情報を取得して利用者へ提供する機能も構築可能であり、ポータル
サイトを介した他システムとのシームレスなアクセスが実現できるものと思われ
る。
ただし、実際の運用に際しては、情報公開に関する利用者本人からの同意の取得
方法など、運用面のルールについての検討が必要である。
4) 評価
健康サービス事業者との相互接続用 API/SDK を開発することにより、健康サービ
ス事業者から運動情報などを収集する仕組みを構築することができた。
また、上記の仕組みにより健康情報活用基盤の医療・健康情報を健康サービス事
業者に提供することも可能となり、今後の利用促進のために必要な健康サービス事
業者との情報共有(交換)の実現性を検証することができた。
118
3.本事業の成果
3.1.10. 保健指導支援
1) 構成
保健指導支援機能では、従来の健診結果からの対象者抽出に加え、健康情報活用
基盤を利用することにより、日常情報による抽出や、問診や面談に加え生活習慣を
十分に把握することで、より高度な保健指導支援ができる構成とした。
機能の構成を以下の、「表 3.25 機能構成」に示す。
表 3.25
サブ機能
指導対象者抽出機能
保健指導内容登録機能
保健指導実施管理機能
機能構成
機能内容
保健指導の実施期間や各種データ分析を行い、対
象の特性や健康状態を把握し、具体的な目標を定
めた年次計画を策定する。従業員の公開済み健診
情報や日常情報を利用して、様々な条件で指導対
象者を抽出する。
指導対象者に対して、実施が必要な保健指導内容
を登録する。保健指導の実施内容は、運動・食事
登録機能の登録データから自動的に判定できる
目標値の設定ができる。
指導対象者が保健指導の実施内容をカレンダー
形式で容易に登録できる。また、保健師は指導対
象者の保健指導実施状況を日々監視し、指導内容
が守れているかなど、実施内容の確認ができる。
保健指導支援機能では、保健師向けに保健指導の管理や、現在指導している対象
者を一覧で分かりやすく参照できる指導対象者一覧画面を用意した。指導対象者一
覧画面からは、指導対象者ごとに状況を参照できるように一覧画面から指導対象者
を参照できる画面遷移とした。また、利用者からは、アクセスを容易にするために、
ポータルトップ画面から、日々の実施記録画面に遷移して実施記録を登録できる画
面遷移とした。
保健指導支援機能の画面遷移を「図 3.50 保健指導機能画面遷移図」に示す。
119
3.本事業の成果
保健師トップ画面
(GHE0010R)
保健指導登録画面
(GHE0100U)
指導対象者一覧画面
(GHE0200R)
保健指導対象者
抽出画面(GHE0210R)
保健指導対象者抽出
一覧画面(GHE0220R)
保健指導内容
一覧画面(GHE0300R)
保健指導内容
登録画面(GHE0310U)
指導内容実施記録
一覧画面(GCM0420R)
利用者トップ画面
(GPH0010R)
問診票登録・参照
画面(GCM0400U)
指導内容・実施記録画面
(GCM0410U)
図 3.50
保健指導機能画面遷移図
2) 詳細
① 指導対象者抽出機能
公開された従業員の健診情報を用いて、データ分析(男女別・年代別の健診結果、
有所見状況、内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)該当者数・予備群対象
者数の統計を出力することで、指導対象者の概数を把握する。
統計結果より指導対象者の概数を把握することにより、具体的な実施期間、保健
指導の名称などを登録する。
統計を出力する画面イメージを「図 3.51 保健師トップ画面(従業員統計出力)」
に示す。
120
3.本事業の成果
統計の出力条件を入
力してボタンを押すと
統計が出力される
図 3.51
保健師トップ画面(従業員統計出力)
指導対象者の抽出は、健診結果の各検査項目に着目した「閾値による抽出」、メ
タボリックの検査項目に着目した「メタボリック抽出」、検査結果が悪化傾向にあ
る「経年変化による抽出」、また日常情報の血圧を捉えた「血圧による抽出」、「体
重変化による抽出」の抽出機能から構成される。
また、入力した抽出条件・基準値はテンプレートにパターン登録することができ、
対象者の階層化などに利用する。
指導対象者を抽出する画面イメージを「図 3.52 指導対象者抽出画面」に示す。
121
3.本事業の成果
(イ)メタボリック抽出
(ア)しきい値による抽出
(エ)血圧による抽出
(オ)体重変化による抽出
(ウ)経年変化による抽出
図 3.52
指導対象者抽出画面
(a) 閾値による抽出
健診結果の検査項目ごとに抽出基準値や所見の有無を設定し、基準値を超えたり、
下回った場合や、所見があった場合に、対象者として抽出する。
検査項目ごとの抽出条件の内容を「表 3.26 閾値による抽出項目」に示す。
122
3.本事業の成果
検査内容
診察など
血圧
血液検査
表 3.26 閾値による抽出項目
検査項目
BMI、腹囲、視力(裸眼、矯正)
最高血圧、最低高血圧
白血球数、赤血球数、ヘモグロビ
ン、ヘマトクリット、総コレステ
ロール、HDL コレステロール、LDL
コレステロール、GOT、GPT、γ-GTP、
空腹時血糖、HbA1c、尿酸
HBs 抗原、HCV 抗体
前立腺がん検査
尿糖、尿蛋白、尿潜血
抽出条件
入力値(※1)
入力値(※1)
入力値(※1)
(+):陽性
入力値(※1)
-、±、+、++、
+++、++++
大腸がん検査
(+):陽性
所見
内科健診、胸部 X 線検査、腹部超 所見の有無
音波検査、心電図検査、眼底検査、
胃部X線検査または胃カメラ検
査、喀痰細胞診、婦人科健診、乳
がん健診、子宮がん健診
※1 入力値:画面に入力した値(入力値が無い場合は抽出基準値)
(b) メタボリック抽出
厚生労働省令第 157 号「特定健康審査及び特定保健指導の実施に関する基準」第
4 条の規定及び規定にもとづく大臣告知により、腹囲、脂質、血圧、血糖の値が特
定保健指導の対象者に該当する場合、指導対象者として抽出する。
(c) 経年変化による抽出
健診結果の経年変化から、次回健診時の結果を類推し、基準値を超える可能性の
ある場合に保健指導の対象者として抽出する。
(d) 血圧による抽出
過去1ヶ月の間に3回に1回に割合で、I 度高血圧の基準値を超えた場合に保健
指導の対象者として抽出する。
(e) 体重変化による抽出
直近の健診結果の体重と、最新の日常情報の体重を比較して、指定した kg 以上
の体重変化があった場合に指導対象者として抽出する。
抽出結果の一覧から、対象者を選択し「対象者選択」ボタンをクリックし、対象
123
3.本事業の成果
者に加える。
また、「抽出結果出力」ボタンをクリックすることで、抽出条件・基準値に対す
る対象者一覧を出力・保管することで条件ごとの指導対象者の推移や分析ができる。
対象者を抽出する画面イメージを「図 3.53 指導対象者抽出一覧画面」に示す。
抽出結果された従業員を
選択し「対象者選択」ボタン
を押すと対象者となる。
抽出条件・基準値と、その
抽出結果のエクセルが表
示される。
図 3.53
指導対象者抽出一覧画面
124
3.本事業の成果
② 保健指導内容登録機能
指導対象者に対して、問診票の入力依頼を実施する。依頼を実施すると指導対象
者は問診票の入力が可能になる。
指導対象者への依頼を実施する画面イメージを「図 3.54 指導対象者一覧画面」
に示す。
保健指導を実施する対象者を選
択し、「問診指導開始」ボタンを押
すと、対象者に問診票の入力依頼
が送信されます。
図 3.54
指導対象者一覧画面
125
3.本事業の成果
指導対象者は、生活習慣などについて、あらかじめ保健師により設定された設問
内容に則して問診票に入力する。
問診票を入力する画面イメージを「図 3.55 問診内容記録画面」に示す。
図 3.55
問診内容記録画面
126
3.本事業の成果
保健指導の実施状況は、目標値を設定すると、日々の運動や食事情報と連動し、
自動で実施の判定を行うことができる。設定できる目標は摂取カロリ、消費カロリ、
歩数から選択できる。登録できる指導内容は4つまで登録できる。
指導内容を登録する画面イメージを「図 3.56 保健指導内容登録画面」に示す。
図 3.56
保健指導内容登録画面
実施する保健指導内容に誤りが無いことを確認し、誤りが無い場合に「指導開始」
をクリックすることで、保健指導を開始する。保健指導内容に誤りがあった場合、
該当する保健指導内容を選択し、「編集」ボタンをクリックすることで、再編集が
できる。また、誤って登録した保健指導の場合は、該当する保健指導内容を選択し
「削除」ボタンをクリックすることで一覧から保健指導が削除される。
指導を開始する画面イメージを「図 3.57 保健指導内容一覧画面」に示す。
127
3.本事業の成果
「指導開始」ボタンにより
指導が開始される
図 3.57
保健指導内容一覧画面
③ 保健指導実施管理機能
指導対象者は指導された内容を日々指導実施記録として登録する。登録は該当日
をカレンダーから日付を選択し、「できた」、「できなかった」の何れかを選択し
登録する。
指導実施記録を登録する画面イメージを「図 3.58 指導内容・実施記録画面」
に示す。
保健指導の実施結果を
入力し日々登録
図 3.58
指導内容・実施記録画面
128
3.本事業の成果
保健師は対象者の日々の実施記録を参照できる。目標値を設定された保健指導内
容の場合、日々の運動・食事登録機能で登録されたデータにより自動で判定され、
その結果を指導内容・実施記録画面で確認できる。
指導内容・実施記録を参照する画面イメージを「図 3.59 指導内容・実施記録
一覧画面」に示す。
保健指導の実施状況が
一覧で確認できる
運動食事登録すること
で、実施結果自動的に
判定できる
図 3.59
指導内容・実施記録一覧画面
3) 考察
健康情報活用基盤の保健指導へ活用することにより、健診結果に加えて、運動・
食事情報などの日常情報と組み合わせ、個人の生活習慣をデータにもとづき正確に
把握したうえで、きめ細かい指導の実施が可能になり、各個人の生活習慣に適した
効果的な指導が期待できると予想される。
また、指導対象者の実施記録の入力については、日々入力する日常情報と連動す
る仕組みを構築することで、指導対象者の入力負荷の軽減を図ることができた。た
だし、指導対象者(延べ 91 名)のうち、実施記録の入力を実施したのは約半数で
129
3.本事業の成果
あったため、ゲーム性の導入など、入力継続のためのさらなる施策の検討が必要で
ある。
指導対象者の従業員による指導内容実施記録のアクセス状況及び入力率を、「表
3.27 実施記録へのアクセス状況及び入力率(2011 年 2 月 6 日現在)」に示す。
表 3.27 実施記録へのアクセス状況及び入力率(2011 年 2 月 6 日現在)
アクタ
アクセス区分
指導内容実施
入力率
従業員
登録
3,109 件
50%
4) 評価
保健指導の実施内容に則して、歩くことや運動を実施することは、指導対象者に
とって負担であり、楽しくないものになりがちである。しかし、日々の歩数や、体
重などをグラフ表示したり、実施記録を一覧表示したりすることで、利用者本人の
努力を可視化し達成感を感じることや、指導内容の実施状況を保健師と対象者が共
有することによる、親近感や使命感を感じることで、指導内容を継続するための動
機付けになると期待できる。
3.2. 健康情報活用基盤を利用したサービスの提供による効果
3.2.1. 指導対象者の抽出
1) 抽出対象者の拡大
これまでは、過去の健診結果が基準値を超過している要観察者や、すでに症状が
現れている要管理者など、特に注意すべき従業員を対象として、手作業で抽出し、
その健康状態変化を優先的に確認していた。
本事業では、健康情報活用基盤の活用により、健康情報活用基盤を利用している
全従業員を対象として、対象企業の保険指導計画にもとづく抽出方法・条件で、自
動的に指導対象者を抽出することが可能になった。
抽出対象者が要観察者や要管理者から健康情報活用基盤を利用している全従業
員に拡大し、より広い範囲から発症リスクを検知できたこと、また、健診結果の経
年変化や日常情報のモニタリングなどの新しい抽出方法により、半年~1 年の頻度
で実施される健康診断では発見しにくい潜在的なリスクを検知できたことから、参
加企業 A 社では新たな抽出方法で 17 名のリスク保有者を新たに検知し、保健指導
を実施することができた。
指導対象者数増加の内訳を「表 3.28 参加企業 A 社の指導対象者数の増加」に
示す。
130
3.本事業の成果
表 3.28
抽出元
情報
抽出基準
各検査項目
基準値
健診情報
健診結果
経年変化
高血圧
判定基準
日常情報
体重変化
合計
-
参加企業 A 社の指導対象者数の増加
指導対象者数(単位:人)
抽出条件
既存の
新たな
増減
抽出方法 抽出方法
健診結果の検査項目 ご
との基準値を超える、ま
42
52
+10
たは下回る
健診結果の経年変化 か
ら次回結果を類推し た
値が基準値を超える、ま
たは下回る
過去 1 ヶ月の測定値が、
1/3 以上の頻度で高血圧
の基準値を超える
最新の日常情報と直 近
の健診結果を比較して、
指定した値以上の体 重
変化がある
-
0
3
+3
-
2
+2
-
2
+2
42
59
+17
上表のうち、健康情報からの抽出については、抽出対象者を拡大できたことによ
り指導対象者数が 13 名増加したと考えられる。
また、日常情報からの抽出については、新しい抽出基準・条件により潜在的なリ
スクを検知したことにより指導対象者数が合計 4 名増加したと考えられる。
以上の結果から、健康情報活用基盤を利用した指導対象者の抽出は、本事業の目
的である「指導が必要な従業員の効率的な抽出」に寄与していると考えられる。
2) リスク保有者の検知
これまでは、直近の健診情報のみにもとづいて、リスク保有者を検知していたた
め、直近の健診結果が基準値を著しく超過するか、または症状が現れるまで、生活
習慣病などの発症リスクを検知することができなかった。
本事業では、健康情報活用基盤を利用している全従業員を対象として、健診情報
と日常情報にもとづいて、健康度が悪化傾向にある従業員やその日の体調や精神状
態に左右される検査項目に関する潜在的なリスクを保有する従業員などのリスク
保有者を次回健診まで待たずに検知することが可能になった。
<リスク保有者の検知方法例>
・健診情報の各検査項目基準値
健診結果の検査項目ごとに基準値と比較する。
131
3.本事業の成果
・健診情報の経年変化
過去の健診結果の経年推移から次回結果を類推する。
・日常情報のモニタリング
過去 1 ヵ月の血圧測定結果の高血圧度をチェックする。
・健診情報と日常情報の比較
直近の健診から最新の体重測定までの体重増減をチェックする。
健康度の悪化傾向や、その日の体調や精神状態に左右される検査項目に関する潜
在的なリスクを検知した以下の事例を確認した。
① 経年変化による抽出事例(30 代男性)
直近の健診結果での空腹時血糖値(108mg/dl)は基準値内(109mg/dl 以下)であ
るが、過去 3 ヶ年の健診結果の経年変化から次回結果を類推した値(110mg/dl)が
基準値を超えている高血糖のリスク保有者を抽出し、次回健診前に肥満予防の指導
を行うことができた。
② 高血圧判定基準による抽出事例(40 代男性)
直近の健診結果での収縮期血圧(132mmHg)は正常高値血圧(130~139mmHg)で
あるが、過去 1 ケ月の日常の測定ではⅠ度高血圧(140~159mmHg)の値が多くなっ
ている高血圧のリスク保有者を抽出し、次回健診前に飲酒面での生活習慣改善の指
導を行うことができた。
③ 体重変化による抽出事例(30 代男性)
直近の健診結果では 74.5kg であった体重が、直近の日常の測定では 6.5kg 増加
して 81kg となり、肥満 1 度(BMI が 25 以上 30 未満)に該当している肥満のリスク
保有者を抽出し、次回健診前に肥満解消の指導を行うことができた。
経年変化や日常情報による抽出事例の詳細を「図 3.60 経年変化による抽出事
例」「図 3.61 高血圧判定基準による抽出事例」「図 3.62 体重変化による抽出
事例」に示す。
132
3.本事業の成果
【健診情報照会】
健診結果照会
定期健診や個別に実施した健診結果を参照します。
また、健保から連携したデータを参照します。
さんの健診結果です。
前へ
次へ
検査項目
健診年月日
基
本
情
報
健診機関
2010/05/27
2009/05/18
2008/05/26
○○病院
○○病院
○○病院
業務歴
既往歴
自覚症状
他覚症状
直近の健診結果は基準値内
検査項目
空腹時血糖
代謝系
108mg/dl
102mg/dl
98mg/dl
-
-
-
HbA1c
尿糖
血清尿酸
次回の健診結果の計算値は基準値超
【健診結果計算】
検査項目
空腹時血糖
代謝系
計算値
測定値
2011年度
2010年度
2009年度
2008年度
110mg/dl
108mg/dl
102mg/dl
98mg/dl
-
-
-
HbA1c
尿糖
血清尿酸
mg/dl
110
基準値
C
B
100
過去3回の測定値から
移動平均法により
次回健診結果を計算
A
90
80
* 移動平均値(A点、B点)=(前回値+今回値)÷2
* 類推値(C点)=B点+(B点-A点)
2008年度
2009年度
2010年度
高血糖のリスクと併せて体重の増加傾向も確
認したので、肥満予防の指導を行った。
図 3.60
経年変化による抽出事例
133
2011年度
3.本事業の成果
【健診情報照会】
健診結果照会
定期健診や個別に実施した健診結果を参照します。
また、健保から連携したデータを参照します。
さんの健診結果です。
前へ
次へ
検査項目
健診年月日
基
本
情
報
健診機関
2010/04/26
2009/04/22
2008/04/23
○○健診
○○健診
○○健診
業務歴
既往歴
自覚症状
他覚症状
直近の健診結果は基準値内
検査項目
血圧
血圧
収縮期血圧/拡張期血圧
132mmHg/73mmHg
133mmHg/71mmHg
116mmHg/67mmHg
所見
【身体情報照会】
過去1ヶ月の日常情報は基準値超あり
基準値
基準値
本人に高血圧の自覚がなかったので、生活習
慣改善のための良い気づきとなった。
図 3.61
高血圧判定基準による抽出事例
134
3.本事業の成果
【健診情報照会】
健診結果照会
定期健診や個別に実施した健診結果を参照します。
また、健保から連携したデータを参照します。
さんの健診結果です。
前へ
次へ
検査項目
健診年月日
基
本
情
報
2010/05/10
2009/05/13
2008/05/20
○○病院
○○病院
○○病院
身長
172.2cm
172.7cm
173.2cm
体重
74.5kg
74.7kg
78.6kg
健診機関
業務歴
既往歴
自覚症状
他覚症状
検査項目
身体
計測
【身体情報照会】
直近の健診から体重5kg以上増加
6.5kg
増加
急激な体重増加により肥満(1度)になったことを確認。
現時点では、高血圧など他の症状は表れてないので、
早期に肥満解消するよう指導を行った。
図 3.62
体重変化による抽出事例
135
3.本事業の成果
3.2.2. 指導サポート
本事業では、健診情報だけでなく、従業員本人が登録した日常情報や指導内容に
対する実施記録、医師が登録した診療情報などを、従業員本人の同意のもとに保健
師に提供し、より個人の生活習慣に合わせた保健指導の提供やフォローアップを支
援するサービスを提供することで、指導の高度化や指導に対する従業員の満足度・
自己効力感向上を実現することができた。
従業員・医師・保健師による医療・健康情報へのアクセス状況を「表 3.29 保
健師によるアクセス状況(2011 年 2 月 6 日現在)」に示す。
アクタ
従業員
医師
保健師
表 3.29 保健師によるアクセス状況(2011 年 2 月 6 日現在)
アクセス
健診情報
日常情報 指導内容 診療情報
区分
実施記録
問診
健診結果
登録
88 件
2,027 件
9,494 件
3,109 件
-
登録
-
-
-
-
4件
参照
87 件
292 件
352 件
139 件
36 件
1) 保健指導の高度化
これまでは、指導対象者の日常情報や診療情報を保健指導時のヒアリングにより
把握していたが、その分だけ保健指導の時間が短縮され、かつ、詳細な情報を把握
することができなかった。
また、指導開始後の指導内容に対する実施状況を次回の保健指導時に確認してい
たが、その間の継続的なフォローアップの頻度は尐なく、かつ、詳細な状況を把握
することができなかった。
本事業では、健康情報活用基盤の活用により、指導対象者の詳細な日常情報や診
療情報を迅速に把握し、保健指導に活用することで、具体的な指導内容を提供する
ことが可能になった。
また、指導開始から次回の保健指導までの詳細な実施状況を迅速に把握し、励ま
しや賞賛、指導内容の見直しを行うことにより、きめ細かなフォローアップを実施
することが可能になった。
日常情報を保健指導に活用した事例として、直近の健診から 4 ヶ月で腹囲が約
5cm 増加した指導対象者の日常情報を参照して、ほぼ毎日適量を超える飲酒をして
いるなど、問診では把握が難しかった生活習慣を把握することで、休肝日の設定な
ど、より具体的な指導を提供できたことを確認した。
上記事例の詳細を「図 3.63 日常情報を活用した保健指導事例」に示す。
136
3.本事業の成果
直近の健診結果及び、最新の日常情報のBMI値は、ともに基準値以下であるが、双方の腹囲を
比較すると、直近の健診から約5cm増加しており、肥満傾向が見られる。
【直近の健診結果】
検査項目
身体
計測
2010年05月14日
体重
61.8kg
腹囲
81.2cm
腹囲が直近の健診から約5cm
増加し、85cmを超えている
【最新の日常情報(バイタル)】
日付
身長(cm)
体重(kg)
腹囲(cm)
血圧(mmHg)
2010年09月30日
172.0
63.5
86.0
122/85
【食事情報照会】
日付
時間
内容
昼
2011/01/20
2011/01/19
2011/01/18
:
塩鮭のおにぎり
ハヤシライス
夜
ツナのサラダ
その他 焼酎(3杯)
ロールパン(2個)
ブロッコリーのサラダ
朝
ベーコンエッグ
野菜ジュース
さばの味噌煮
ごはん(120g)
朝
ほうれん草と油揚げのみそ汁
厚焼き玉子
ハヤシライス
夜
切干大根の煮物
その他 焼酎(3杯)
:
:
その他 焼酎(3杯)
:
:
:
カロリー
(kcal)
293.0
821.0
347.0
393.0
190.0
91.0
218.0
34.0
202.0
202.0
66.0
156.0
821.0
89.0
393.0
:
393.0
:
塩分
(g)
2.4
4.0
2.0
0.0
0.7
1.2
0.8
0.0
0.8
0.0
1.2
1.2
4.0
1.1
0.0
:
0.0
:
鉄分
(mg)
0.4
1.1
0.4
0.0
0.4
0.5
1.1
0.0
1.1
0.1
1.9
1.5
1.1
1.6
0.0
:
0.0
:
ほぼ毎日アルコールを摂取しており、
飲酒量も適量よりやや多め
【指導内容登録】
指導内容
毎日の飲酒となると、肝臓を休める時がないので、肝機能の数値が上がりま
す。
まず、これから週1度月曜日を休肝日にしてみましょう。
▲
▼
肥満傾向にあることを確認できた。
また、肝機能の数値が悪いことにも自覚があるため、飲酒量を減らすことや
油分の多い料理を控えるなど、まずは食生活を改善することに努めたい。
図 3.63
日常情報を活用した保健指導事例
137
3.本事業の成果
① 医師、保健師へのヒアリング結果
本事業の実証サービスで診療や保健指導を実施した医師、保健師に対して、ヒア
リングを実施し、日常情報や診療情報を活用した保健指導による指導の高度化の効
果を調査した。
医師、保健師に対するヒアリング結果を以下に示す。
<医師>
・当院での糖尿病患者 1 人当たりの診療時間は平均 5 分程度なので、診療や処
方以外に生活習慣改善などの指導を行なうのは難しい。
・その意味で、患者本人を経由して保健師に診療情報を連携することで、糖尿
病の治療に必要な生活習慣改善を保健師と連携して支援できることは意義が
あると思う。
・今回、医師と保健師との連携強化の取組みにより、患者本人に糖尿病の治療
は診療や処方だけでなく、食事や飲酒の減量など生活習慣の改善が不可欠で
あることの気付きが生まれ、行動変容に結び付いている事例も出始めている。
(保健指導事例①参照)
<保健師>
・従業員本人が健康情報活用基盤を活用して日常の健康記録を継続するように
指導することで、従業員の健康意識改善や行動変容に効果がある。
(保健指導事例①②参照)
また、従業員が記録した日常の健康情報を観察することで、今までは健診結
果によるしかなかった疾病の早期発見に効果がある。
(保健指導事例③参照)
・保健指導時、指導対象者の日常の生活習慣や指導内容の実施状況について、
これまでよりも詳細に把握でき、指導内容がより具体的になることで、その
分、指導に対する従業員の満足度も向上すると思う。
(保健指導事例④⑤⑥参照)
また、医師-従業員本人-保健師が診療情報を共有しながら、指導を行うこ
とで、すでに生活習慣病が発症している指導対象者に、疾病の状況に合わせ
た生活習慣改善の良いきっかけを与えることができると思う。
(保健指導事例①②参照)
・20代、30代の若い年代層は、特定保健指導の対象外になっていることも
あり、疾病予防のための健康増進や生活習慣改善の重要性を認識してもらう
機会が尐なかったが、健診結果以外に日常の健康記録をもとに保健指導を行
うことで、若い年代層にも良い気付きを与えることができると思う。
(保健指導事例④⑥参照)
(a) 保健指導事例①(60 代男性)
現在、糖尿病治療中であるが、病気への認識不足のため、お酒を飲み過ぎるなど
体重や血糖値のコントロールができていない状況であった。
健康情報活用基盤を利用した保健指導により、日常情報の記録を習慣づけること
で、従業員本人の健康意識が改善し、血糖値も減尐傾向にある。今後は食事面での
138
3.本事業の成果
改善の取組みを支援する。
(b) 保健指導事例②(20 代男性)
入社時より体重は増加傾向にあり、それに伴う血圧の上昇や脂肪肝が見られる。
また、糖尿病は放置していたため、入社後間もなく投薬治療を開始している。
健康情報活用基盤を利用した保健指導により、日常情報の記録を習慣づけること
で、食事面での生活習慣改善が見られ、体重も減尐傾向にある。今後も指導内容を
継続することを支援する。
(c) 保健指導事例③(50 代男性)
5~6 年前より健診結果において血圧が境界域にあるが、体重は基準値内であり、
喫煙歴もないため、遺伝的な要因が考えられる。
健康情報活用基盤を利用した保健指導により、日常情報の記録を習慣づけること
で、日常的に血圧が高い状況を把握できた。今後も測定を継続したうえで、必要で
あれば受診勧奨を行う。
(d) 保健指導事例④(30 代男性)
体重は正常範囲内ではあるが、半年で約4kg(腹囲は5cm)の上昇が見られる。
また、肝機能の危険因子もやや上昇傾向にある。
体重の増加傾向や肝機能リスクから、まず食事や飲酒の指導内容を策定したが、
健康情報活用基盤を利用して、日常情報を詳細に確認したところ、運動不足である
ことも分かったので、運動の取組みを追加する。
(e) 保健指導事例⑤(40 代男性)
健診結果より体重・腹囲が基準値を超えており、それに伴う脂肪肝も見られる。
また、日常生活においても血圧が基準値を超えていることがある。
半年前の怪我を考慮して、食事面での指導内容のみ策定したが、健康情報活用基
盤を利用して、日常の実施状況を観察するかぎり、やや停滞気味なので、指導目標
に運動への取組みを追加する。
(f) 保健指導事例⑥(30 代男性)
体重が増加傾向(+4kg)にあるとともに血糖値も上昇傾向にあり、次回の健
診では基準値を超えることが予測される。
健診結果と日常情報を併せて糖尿病の発症リスクを検知したが、健康情報活用基
盤を利用して、日常の実施状況を観察するかぎり、食事面での生活習慣改善があま
りできていないので、引続き従業員本人への意識づけを行う。
保健指導事例①~⑥の詳細については、「別紙 5~10
示す。
139
保健指導事例①~⑥」に
3.本事業の成果
2) 指導対象者の自己効力感・満足度向上
上記の保健指導の高度化により、より個人の生活習慣や症状に合わせた指導内容
が提供されること、指導内容に対する実施状況に合わせたフォローアップが行われ
ることから、指導対象者の自己効力感や保健指導に対する満足度が向上することが
期待される。
① 指導対象者へのアンケート結果
本事業の実証サービスで指導対象者となった従業員に対して、アンケートを実施
し、健康情報活用基盤を利用した保健指導による健康意識の変化や行動変容の効果
を調査した。アンケートは、保健指導の都度、計 2 回実施し、1回目と 2 回目との
結果を比較調査した。
健康情報活用基盤を利用した保健指導による健康意識の変化についての評価と
して、指導対象者に対して実施したアンケート結果を以下に示す。
ご自身の健康状態(体重変化、健診結果等)を把握していますか?(回答者:N=27人)
(2回目)
(1回目)
0%
15%
4%
把握している
0%
41%
どちらかというと把
握している
41%
どちらかというと把
握していない
55%
把握していない
44%
健康・病気に関する知識を十分に持っていると思いますか?(回答者:N=27人)
(1回目)
思う
(2回目)
7%
4%
15%
22%
30%
26%
どちらかというと思
う
どちらかというと思
わない
思わない
52%
44%
上記の 1 回目と 2 回目を比較すると、健康状態を把握している人、健康に関する
知識を持っている人がいずれも 1 回目より 2 回目の方が増加していることが分かる。
この結果より、健康情報活用基盤を利用した保健指導による健康意識の改善の効果
140
3.本事業の成果
が確認できる。
次に、健康情報活用基盤を利用した保健指導による行動変容についての評価とし
て、指導対象者に対して実施したアンケート結果を以下に示す。
定期的に運動をしていますか?(回答者:N=27人)
(1回目)
(2回目)
11%
19%
毎日している
11%
15%
15%
時々している(週
に2回以上)
33%
41%
あまりしていない
(週に1回以下、
不定期)
意識的にはしてい
ない
55%
食事に気を遣っていますか?(回答者:N=27人)
(1回目)
11%
(2回目)
0%
11%
思う
22%
11%
どちらかというと思
う
どちらかというと思
わない
思わない
52%
37%
56%
他に、健康を意識して行っている活動はありますか?(回答者:N=27人)
(1回目)
(2回目)
22%
ある
ない
44%
78%
56%
上記の 1 回目と 2 回目を比較すると、定期的に運動している人、食事に気を遣っ
ている人、なるだけ階段を使うようにするなど健康を意識した活動を行っている人
141
3.本事業の成果
がいずれも増加していることが分かる。この結果より、健康情報活用基盤を利用し
た保健指導による行動変容の効果が確認できる。
最後に、保健指導に関する自由意見の一部を以下に示す。
<日常情報を活用した保健指導について>
・日々登録しているデータを根拠に指導いただけるので、説得性がある。
(30 代:男性)
・日常情報を用いた具体的な保健指導により、今後健康になるような気がする。
(40 代:男性)
<実施状況を活用したフォローアップについて>
・指導目標を設定することで、目標や目安が分かりやすく、取り組む意識が高
まった。(40 代:男性)
・これまでの実績を見て指導内容を変更いただいたので、より保健指導の効果
が上がると思う。(40 代:男性)
<健康意識の変化について>
・健康意識が高まるので、今後も続けて欲しい。(50 代:男性)
・日々記録することで、血圧の高低を意識するようになった。(50 代:男性)
・食事のタイミングや量について、意識して気をつけるようになった。
(20 代:男性)
・利用者本人の生活に合った指導をしてくれるので、自分なりに頑張れるよう
になった。(40 代:男性)
以上のアンケート結果から、健康情報活用基盤を利用した保健指導は、本事業の
目的である「指導内容に対する従業員の満足度向上及び健康意識改善」に寄与して
いると考えられる。
指導対象者へのアンケート調査の詳細については、別紙 11、12 に示す。
② 利用者へのアンケート結果
本事業の実証サービスの利用者に対して、アンケートを行い、健康情報活用基盤
を利用した保健指導に対する従業員の意識を調査した。
健康情報活用基盤を利用した保健指導の提供に対する従業員の満足度・期待の評
価として、利用者に対して実施したアンケート結果を以下に示す。
142
3.本事業の成果
日々の生活習慣や健康情報を入力することにより、保健指導の内容が向上し、
健康状態が改善されると思いますか?(回答者:N=360人)
3%
6%
非常に改善される
18%
改善される
あまり改善されない
まったく改善されない
73%
今後、日々の生活習慣や健康情報をもとに
健康指導を受けることを希望しますか?(回答者:N=389人)
12%
3%
強く希望する
希望する
あまり希望しない
40%
まったく希望しない
45%
健康情報活用基盤を利用した保健指導の提供について、約 80%の利用者が健康度
の改善効果があると考えているにもかかわらず、提供を希望する人は半数を下回っ
ている。この結果より、健康情報活用基盤を利用した保健指導の提供に対する効果
を認めながら、実際に保健指導を受けることには消極的な従業員が 30%以上いるこ
とが分かる。
要因としては、健康情報活用基盤の利用による改善効果を評価・期待する一方で、
利用者本人の医療・健康情報が人事考課に影響するとういう危惧を持っている従業
員が多いことが考えられる。このような危惧は、健康情報活用基盤の利用促進に向
けて、大きな障害となることが予想されることから、健康情報活用基盤の利用目的
及び目的に沿った情報の取扱い方法の明示などにより、理解の向上を図る必要があ
る。
143
3.本事業の成果
次に、健康情報活用基盤の利用による健康意識の変化に関する評価として、利用
者に対して実施したアンケート結果を以下に示す。
今回の事業のようなサービスを利用することにより、
日々の健康情報を記録する習慣ができると思いますか?(回答者:N=373人)
14%
14%
できる
まあまあできる
あまりできない
できない
24%
48%
今回の事業のようなサービスを利用することにより、
あなたの健康意識にどのような変化があると思いますか?(回答者:N=492人)
1%
向上する
変化なし
低下する
41%
58%
健康情報活用基盤を利用した保健指導の提供について、約 60%の利用者が健康情
報記録の習慣づけ、健康意識の向上に効果があると回答している。この結果より、
健康情報活用基盤を利用した保健指導の提供により健康意識の改善に一定の効果
があることが確認できる。
最後に、健康意識の変化に関する自由意見の一部を以下に示す。
<日常情報の記録について>
・今まで、血圧などは病院で測るだけだったが、毎日測ることによって、健康
144
3.本事業の成果
管理を意識的に考えるようになった。(50 代:女性)
・食事面で偏りがないか、日々継続的に適度な運動を取れているかを確認でき
これに体重を加味すれば自ら健康管理することができる。(60 代:男性)
・日常、何気なく過ごしているが、改めて健康情報を記録することの大切さに
気付かされた。(20 代:男性)
<日常情報を活用した保健指導について>
・日常情報を記録するだけでは、意識の変化はあまり期待できないが、実際に
健康指導を受けると、今後気を付けようという気持ちになると思う。
(30 代:女性)
<健康意識の変化について>
・過去から現在の健康状態の経過を把握できるため、健康に気を遣うようにな
ると思う。(20 代:男性)
・健康記録を毎日継続することで、健康についての意識付けができると思う。
(30 代:男性)
以上のアンケート結果から、健康情報活用基盤を利用した保健指導は、本事業の
目的である「指導内容に対する従業員の満足度向上及び健康意識改善」に寄与して
いると考えられる。
145
4.総括
4. 総括
4.1. 目的達成に対する評価
本事業では、指導が必要な従業員の効率的な抽出、指導に対する従業員満足度向
上及び健康意識改善という目的を達成するため、「散在している情報を収集できる
ようにする」「非常に機微な情報を管理できるようにする」「必要に応じて第三者
と情報共有できるようにする」という要件を満たす基本機能及び「情報を有効活用
して保健指導を支援できるようにする」というサービス提供機能を備えた健康情報
活用基盤及び周辺システムを構築し、その基盤を利用して「指導対象者の抽出」及
び「指導サポート」のサービスを提供した。
実際の構築及びサービスの提供の中で、上記の各要件を実現することにより、前
章で述べたような成果・効果を上げることができた。
指導が必要な従業員の効率的な抽出という目的の達成状況については、健康情報
活用基盤を活用することにより、これまで検知できなかったリスク保有者を新たに
抽出し、実際に抽出した指導対象者数が増加したことを確認した。
また、指導に対する従業員満足度向上及び健康意識改善という目的の達成状況に
ついては、保険指導の提供を受けた指導対象者や一般の従業員に対するアンケート
調査により、健康情報活用基盤を活用した保健指導に対する従業員の満足度・期待
度が高いことや、健康情報活用基盤を活用することにより従業員の健康意識が向上
する可能性が高いことを確認した。
上記確認の結果、今回構築した健康情報活用基盤を利用したサービスの提供によ
り、本事業の目的を達成することができたと評価している。
4.2. 価値
本実証事業では、健康情報活用基盤を利用したサービスの提供により、指導が必
要な従業員の効率的な抽出、指導に対する従業員満足度向上及び健康意識改善とい
う目的が達成され、健康情報活用基盤の価値を確認できた。今後、個人の主体的な
健康づくりに関する意識が向上し、疾病予防の取組みが促進されることが期待でき
る。
実際に診療情報を連携した医師や保健指導を提供した保健師へのヒアリング調
査でも、健康情報活用基盤を利用した保健指導の提供により、指導対象者に生活習
慣改善の気付きが生まれ、行動変容に繋がる効果があったことを事例として確認で
きた。
個人が健康増進や生活習慣改善のために行動変容し、その行動を継続していくこ
とは決して容易ではないが、健康情報活用基盤を利用した保健指導支援サービスの
提供により、個人の健康意識が改善し、疾病予防の取組みが促進されることは、超
高齢化社会の到来に向けて、疾病の発病を未然に防止する「一次予防」に重点を置
いた保健指導が求められる中で、重要な価値がある。
今後、健康情報活用基盤を利用したサービスの提供が継続・促進されることで、
肥満、高血圧、高脂血、高血糖などの危険因子が減尐し、がん・脳卒中・心筋梗塞・
糖尿病などの疾病が減尐することが期待される。
146
4.総括
なお、将来の健康情報活用基盤の利用促進に向けて、次節のような課題も明確に
なっている。
4.3. 残存する課題
4.3.1. 健康情報活用基盤及び周辺システムの構築
1) 医療機関からの情報収集
本事業では、利用者からの情報提供の依頼に対して、医師が登録した診療情報を
K-MIX から連携することにより、医療機関からの情報収集を実現できた。
ただし、K-MIX から健康情報活用基盤への片方向の情報連携であったため、健康
情報活用基盤に蓄積された運動・食事・飲酒などの生活習慣に関する日常情報を
K-MIX などの医療連携ネットワークで直接利用できるようにはなっていない。
今後は、健康情報活用基盤に蓄積された日常情報を医療機関での問診や指導など
に有効活用できるよう、健康情報活用基盤から K-MIX などの医療連携ネットワーク
に連携する双方向の情報連携を検討する必要がある。
2) 企業/健康保険組合からの情報収集
健康診断結果の電子化については、特定健診・特定保健指導については、厚生労
働省「特定健康診査・特定保健指導に関する通知」における電磁的方法により作成
された特定健康診査及び特定保健指導に関する記録の様式について(平成 20 年 3
月 28 日 健総発第 0328001 号、保総発第 0328002 号)にて、データ交換の標準規
約が制定されているが、一般定期健診・学校健診などについては、健診機関や検査
機関における対応の差があり、個別の様式やコードが利用されている事が多い。
本事業でも、実証における各参加企業の負担軽減を配慮して、各参加企業から出
力される独自の様式に個別に対応し、検査項目などを特定健診の標準規約に沿った
形で JLAC10 コード変換したうえで健康情報活用基盤に漏れなく取り込める健診情
報連携機能を構築したが、今後の健康情報活用基盤利用促進による参加企業の増加
に対して、データ交換について個別対応していたのでは、そのたびに開発コストが
発生することが想定され、参加した企業が健康情報活用基盤の利用開始までに相応
の時間がかかるなどの問題が考えられる。
今後は、一般の定期健診・学校健診などについても、特定健診と同様にデータ交
換の規約が標準化され、それに各機関の対応が普及することで、参加企業の負担軽
減、開発コストの低減、利用開始までの準備期間の短縮が期待できる。そうするこ
とで、健康情報活用基盤の利用に対する障壁が小さくなり、利用促進に繋がること
が期待される。
また、現在、四国経済産業局「健幸支援産業創出事業」の中で検討が進められて
いる医療・健康情報の標準化の対象として、一般定期健診・学校健診などのデータ
交換についても、四国・香川県下を中心とした標準規約策定の活動が行われており、
その検討の状況に合わせて本事業で検証した内容を反映することで、地域内での標
準規約適用の取組みを進めていく必要があると考える。
147
4.総括
3) 利用者本人からの情報収集
日常情報の画面入力については、実証サービス期間中にも利用者の要望をもとに、
画面レイアウト変更によるユーザインターフェース向上や、1 画面当たりの表示件
数の制限によるレスポンス向上など、利用者の操作性向上のための機能改善を行っ
たが、利用者へのアンケート結果などからは、なお一層の改善が必要と思われる。
今後は、バイタル情報については体重計や血圧計などの測定機器からのデータ取
り込み、運動情報については多機能型歩数計などからのデータ取り込み、食事情報
については電子マネー決済時の自動連携など、自動的に情報収集できる仕組みと連
携することにより、利用者の手入力を極力減らすなど、ユーザビリティーを一層向
上する取組みが必要である。
また、可搬型の入力ツールとして、年齢層、職種などに関わらず、利用者が常に
身近に持ち歩く携帯電話・スマートフォンを利用することを今後検討する必要があ
る。
4) 基盤のセキュリティ
本事業では、非常に機微性の高い医療情報のセキュリティレベルを確保するため、
医療情報の適正な取扱いや、安全管理、受託管理に関するガイドラインに準拠して、
物理的・技術的・人的な脅威に対して様々な対策を講じ、情報セキュリティの機密
性、完全性、可用性を維持している。
ただし、情報セキュリティ分野は、常に積極的に新しい対策を実施していないと、
新たな脅威に対応できないという側面を持っているため、環境の変化に合わせて絶
えず、見直しと改善が求められる。
今後は、Plan(計画)-Do(実施)-Check(点検・監査)-Act(見直し・改善)という PDCA
サイクルを繰り返し、健康情報活用基盤としてのセキュリティ対策における目標達
成レベルを継続的に維持改善していく必要がある。
5) 認証基盤
健康情報活用基盤へのログイン認証に使用する IC カードを発行するには、利用
申請から始まり、受付、利用者本人確認、発行、封入、送付まで様々な運用作業が
発生するが、IC カードに記録された統合 ID は、利用者に関するあらゆる情報のキ
ーであるため、十分なセキュリティ管理体制が必要である。
本事業では、複数書類による厳正な利用者本人確認や、IC カードを発行・管理す
る事業者内の利用者権限区分の細分化など、個人情報の漏洩やデータ改竄に対する
万全な安全対策を実施した。
ただし、その結果、利用申請から IC カード発行までの作業に手間がかかり、多
数の申請が重なった場合は最大で 3 週間程度の期間を要したため、利用者の利用開
始時期が予定より遅れることもあった。
今後の利用促進に伴う利用申請の増加により迅速に対応できるよう、漏洩やデー
タ改竄に対するセキュリティレベルの維持を前提としつつ、利用者本人確認手続き
148
4.総括
や利用者権限区分などを簡素化する方法の検討が必要である。
6) 情報公開設定
本事業では、利用者が利用者本人の医療・健康情報を医師や保健師などの第三者
に公開する場合に、利用者本人が公開する相手先や情報の種類を選択して設定する
ようにしたが、公開する相手先として、機関・事業者ごとに設定できるようにする
ことの可否を検討した結果、機微な個人情報を安全に取扱うことを優先して、あく
まで個人ごとに設定することとした。
公開先の機関・事業者ごとの設定について、今回の実証では特に利用者から要望
はなかったが、協力団体へのヒアリング調査の中で、スポーツクラブの健康運動指
導士は、利用の都度、担当者が異なることが多く、その場合には公開先として個人
を設定することが困難であることが分かった。
健康運動指導士による運動指導への有効活用など、今後の健康情報活用基盤の利
用促進に合わせて、個人情報保護のセキュリティレベルを維持しつつ、公開先とし
て機関・事業者を設定する方法を検討する必要がある。
7) 医師・保健師との情報共有
本事業では、運動・食事・飲酒などの生活習慣に関する日常情報について、利用
者と医師・保健師が共有できるよう、情報公開設定機能と Web 画面での照会機能を
構築した。
利用者と保健師の日常情報などの共有により、より個人の生活習慣に合わせた保
健指導を提供できることを確認したが、医師の問診・指導などへの有効活用につい
ては、今回の実証の範囲外であり、検証できていない。
今後は、利用者が登録した日常情報を共有するだけでなく、日常情報と併せて、
生活習慣と疾病発生との関連を示す統計情報を提供するなど、機能の改善やユーザ
インターフェースの向上を図ることにより、医師など活用先を拡充していく必要が
ある。
8) 他事業者との情報共有
本事業では、技術・標準 WG が策定したデータ交換規格に準拠して、他コンソー
シアムとのデータ交換実証を行い、個人の自由な選択による事業者の乗換などの際
に、事業者間で欠損なく情報共有できるポータビリティを確保した。
今後、健康情報活用基盤に対する個人の理解が浸透し、利用が促進されることに
より、事業者間のポータビリティの標準規約として、データ交換規格の普及が進む
ことが期待される。
9) 健康サービス事業者との情報共有
本事業では、健康情報活用基盤で管理する多種多様な情報のうち、互いに必要な
149
4.総括
一部の情報だけを健康サービス事業者と共有するため、提供先からの要求(GET 方
式)に対応する API を通してリアルタイムにシステム間を接続する仕組みを構築し
た。
ただし、今回の実証は疎通テストレベルでの検証であったため、リアルタイムの
システム間接続において、相手方事業者の機関認証を一要素認証で行っており、機
微性の低い日常情報以外の情報を共有する場合は、通常のログイン認証よりもセキ
ュリティレベルが低く、その分なりすましリスクが高くなっている。
今後は、健康サービス事業者と情報共有する前提として、事業者の機関認証用ア
プリケーションを提供先システムに導入することを必須とするなど、リアルタイム
のシステム間接続における機関認証のセキュリティレベルを向上する必要がある。
10) 保健指導支援
本事業では、従業員の健診結果だけでなく、日常情報をもとに、様々な方法・条
件で指導対象者を抽出することにより、生活習慣病などの発症リスク保有者を検知
する仕組みを提供した。抽出対象となる日常情報については、発症リスクを最も検
知しやすいバイタル情報にターゲットを絞って仕組みを提供し、前章で述べた通り
の成果・効果をあげることができた。
今後は、健康情報活用基盤に蓄積された日常情報にもとづくリスクと疾病発生の
関連性調査・分析などを踏まえて、個人の生活習慣の重要な要素である運動・食事・
飲酒などの日常情報をもとに、生活習慣病などの発症リスク保有者を検知する仕組
みの検討が必要である。
4.3.2. 健康情報活用基盤を利用したサービス提供
1) 指導対象者の抽出
本事業では、健康診断の結果から基準値により指導対象者を抽出するだけでなく、
過去の健康診断の経年変化や利用者が日々入力する日常情報から抽出することで、
健康度の悪化傾向や潜在的な発症リスクを保有する指導対象者抽出のサービスを
提供した。
実際に利用した抽出条件の組合せパターンや抽出結果については、テンプレート
として登録できるようになっており、保健師が疾病予防のためのリスク検知方法を
維持改善できるよう配慮した。
今後は、有識者などの意見を聞きながら、疫学的な見地から健康情報活用基盤に
蓄積された日常情報などを調査し、同一の企業・職場内で特定の疾病を有する従業
員の集団と有していない従業員の集団のリスク保有率を比較(症例対照)する、あ
るいは、特定のリスクを有する従業員の集団と有していない従業員の集団の疾病発
生率を比較(要因対照)するなど、リスクと疾病発生の相関関係やパターンを分析
することにより、リスク検知方法のさらなる精度向上を図ることが期待される。
150
4.総括
2) 指導サポート
本事業では、指導対象者が日々入力した日常情報や医師が入力した診療情報を保
健師に提供することで、生活習慣や診療状況を正確に把握すること、さらに、問診
より豊富な情報をもとに生活習慣や診療状況にもとづく具体的な指導内容(生活習
慣改善のための行動計画・目標)を策定することを支援するサービスを提供した。
今後は、日常情報や診療情報と併せて、リスクと疾病発生の関連の分析結果を提
供することで、さらなる指導の高度化が期待されるとともに、健康情報活用基盤を
利用した保健指導支援以外のサービスの提供が促進され、新たな医療・健康サービ
ス創生の機会が拡大されると考えられる。
151
5.今後の取組み
5. 今後の取組み
これまでの実証期間における成果及び課題などを踏まえ、本実証事業の仕組みを
今後とも継続運用し、かつ永続的なサービス化を実現するための手法・取り組みに
ついて、以下の通り検討し推進する。
5.1. 健康情報活用基盤の機能改善
本実証事業における課題については、今後の継続運用の面で利用者のモチベーシ
ョンにつながる部分も尐なくない。
実証において発生した課題に対して、事業継続を行いつつ徐々に改善が必要であ
るが、その改善策について記述する。
5.1.1. 医療連携ネットワーク、健診システムなどとの連携推進
課題の 1) 医療機関からの情報収集、2) 企業/健康保険組合からの情報収集にお
いて明らかになった課題であるが、実証期間中はあくまでも軽微な連携で留まって
いた K-MIX などの医療連携ネットワークとの連携をさらに密にすることで、健康情
報活用基盤の情報が医療機関でも活用が可能となる。
これにより、医療機関での問診による判断の高度化や患者への指導などへの時間
割り当ての増加が保健師と同様に見込まれる。
ただし、日常情報の正確な記録なしには実現しないことでもあり、健康情報活用
基盤の日常情報などに代表される患者個人の情報についての信憑性の確保の問題
や活用方法などを、医療従事者を交えて今後議論して行くものとする。
また、企業/健康保険組合の健診システムとの連携においては、健康情報活用基
盤を用いた指導対象者抽出並びに指導サポートサービスにおいて基本となる情報
のひとつである健診データを収集するために重要な連携であるが、現状、各企業/
健康保険組合が導入しているシステムごとに個別のコード体系や出力様式となっ
ている。
これについては、5.1.3 の標準規格への対応にも関連するが、標準規格が浸透す
るまではデータ個別取り込み対応サービスなどを検討して行くことが必要になる
と考える。
5.1.2. 利便性の向上
4.総括にて挙げられた、3) 利用者本人からの情報収集の課題については、今後
の利用者確保の面においても非常に重要である。
本実証事業ではある程度省力化の仕組みは試行したが、利用者からの評価はさら
に努力が必要なものであったことから、より入力行為が円滑に図られる仕組みの導
入が必要となる。この傾向は、他コンソーシアムでもやはり同様の結果がでている。
単純に、運用面で企業または健康保険組合の積極的介入により利用者の入力頻度
を確保することも一定の効果があると評価できるが、それでは利用者の健康意識向
152
5.今後の取組み
上につながらず、情報活用面での展開が鈍化する恐れもあるため、4 章にて述べた
通り、自動収集や携帯電話を活用した簡単なデータ登録の仕組みを鋭意検討する。
5.1.3. 標準規格への対応強化
標準規格への対応については、健康情報活用基盤及び関連するシステムにとって
必須といえるものであるが、その対応には改修費や多数の関係者・システムがある
ことから、長期間を要するものと想定される。
この課題については、他プロジェクトで検討中であるローカル標準規格への対応
の議論とあわせて検討し、企業/健康保険組合の個別に異なる出力様式をローカル
または正式な国の標準様式に変換できるアプリケーションの提供といった形態に
つなげて行くよう検討する。
5.1.4. 基盤セキュリティの維持
4) 基盤のセキュリティ、5) 認証基盤における課題については、利用者の健康情
報を取扱う基盤として、本実証事業でも現在考えられる最大限のセキュリティ対策
と、確実性の高い運用方法にて実証した。
また、セキュリティ対策は不正アクセス対策やデータ暗号化など医療システムと
ほぼ同等の対策を施しているが、今後は、4 章の健康サービス事業者との情報共有
でも課題として挙げたように、様々な他システムとの連携や取扱う情報の増加もあ
り適宜対応が必要と思われる。
特に、セキュリティ確保と認証基盤においては、税と社会保障制度の議論におい
ても、2015 年に各制度をまたがった共通番号制度の開始を目指すとの政府方針も発
表されていることから、香川県でも実証事業が行われた「社会保障カード(仮称)
の制度設計に向けた検討のための実証事業」にて培った共通番号制度の認証基盤の
ノウハウを生かすとともに、健康情報活用基盤への共通番号制度の適用の準備を行
う必要があると考えている。
5.1.5. 個別サービスの改善と新規サービスへの対応
当コンソーシアムでは、企業/健康保険組合向けのサービスとして、保健指導の
準備段階においての 1) 指導対象者の抽出と、保健指導開始後の 2) 指導サポート
についてサービスを提供する実証を行った。
本サービスは主に保健師または企業労務管理者向けのサービスであるが、保健師
などの業務省力化やそれに伴う保健指導の時間の増加には役立ったが、さらに入力
などの手間を軽減することが利用者の情報登録と同様に課題と認識している。
これらについては、指導内容のテンプレート化、自動コメント生成などにて対応
して行くとともに、さらに保健師とも共同し、保健指導における抽出条件の高度
化・多様化を図りそういったノウハウを機能に反映したい。
また、疾病予防のための保健指導時の活用のみならず、すでに特定の疾病に罹患
されている従業員や組合員への疾病管理のサービスに拡張し、予防から管理までを
153
5.今後の取組み
健康情報活用基盤にて行うことにより、従業員や組合員には適切なサービスを福利
厚生や組合サービスとして提供するとともに、企業や健康保険組合にとっては、企
業リスクの低減や医療費の将来的な適正化につながるものとするよう努力してい
きたい。
5.2. 運用ルールの見直し
5.2.1. 情報公開・共有時
本実証事業では、高いセキュリティとそのうえでの利便性の追求を観点に健康情
報活用基盤を実証したが、それに伴う課題も出てきている。
情報の共有時には、現在は個人ごとの共有設定となっているが、これは保健師や
医療機関の業務・運用を考えると適合していない。
今後は医療機関の医師や保健師個人ごとの設定ではなく、組織ごとに設定を可能
とする方向性も必要との課題も出ているが、共有の仕組みの考え方はセキュリティ
などへの影響も大きいため、慎重に検討して行く。
5.2.2. 利用申請及びカード発行・失効など
利用者の申請及びカード発行などにも、実証において厳格に運用を実施したため、
発行や同意取得の事務作業において多大な時間を要し、発行までの日数がおよそ最
大で 3 週間程度と、商用サービスのレベルを維持できなかった。
この点については、企業や健康保険組合のさらなる事務協力を得たとしても容易
に短縮できるとは言えず、大きな課題である。
対策としては、運用者のルール最適化も検討しつつ、利用者からの申請時の本人
確認などの簡素化を早急に検討が必要であり、他業界などでセキュリティ面も含め
て実績のある手法などを調査し、対応するものとする。
5.2.3. 運用体制
実証期間中は、コンソーシアム形態にて実施してきたが、実証終了後の継続運用
形態については、かがわeヘルスケアコンソーシアムとして運用継続して行くか、
K-MIX を運用している社団法人香川県医師会へ事業移管するか、地元研究機関と民
間企業の共同運営とするか議論を行っている最中である。
また、利用者アンケート結果からも、民間サービスとして展開するにはハードル
がまだ高いと思われるため、実施主体の検討は慎重に行う。
事業主体については、主に事業主体の変更に伴う運用形態や体制の再構築が必要
となる。現在のところ実施主体は検討中であるが、基盤運営事業者は代表団体、各
サービスコンテンツは地元ベンダーなどにて継続的に運用予定である。
154
5.今後の取組み
5.3. サービスモデルの検討
5.3.1. 当コンソーシアムのサービスモデル
企業及び健康保険組合向けの疾病予防を図る試みとして、企業または健康保険組
合を対象とした疾病予防サービスについて、当コンソーシアムは実証を行ってきた。
実証した疾病予防サービスにおけるサービスモデルは、一般的に言われるところ
の「BtoBtoC」モデルとなり、最終受益者である個人に対して直接的に対価を求め
るのではなく、個人にサービスを提供することで自身の受益につながる事業者(企
業または健康保険組合など)をターゲットとして推進してきた。
こうしたターゲット設定の理由については、世界からも評価の高い国民皆保険制
度による医療機関へのフリーアクセスが可能なことを背景に、現時点で大部分の地
域県民が本人の健康管理や疾病予防に対して高い管理意識が持てていないことか
ら、本人にて健康管理することに対する対価の支払意思が薄いと想定したことによ
る。
一方、企業や健康保険組合側から見ると、現状従業員の健康管理は年一回の定期
健診が主であり、それ以外はレクリエーション的な健康イベントの周知などの方策
を行っていることが一般的であり、日常の健康情報を管理している企業または健康
保険組合はごく一部である。また、年々医療費は増大傾向にあり、健康保険組合に
とっては健康保険料に対する医療費の適正化が問題となっている。
このようなことから、企業は従業員の日常における健康管理を健康情報活用基盤
を利用して積極的に支援することで従業員の健康に関連する企業リスクを下げる
ことができ、健康保険組合は疾病予防措置を取ることで医療費の適正化が図られる。
こうしたニーズは、今後健康情報活用基盤を活用していく原動力となりうると想
定し、当コンソーシアムでは、運輸業である四国旅客鉄道株式会社、高松琴平電気
鉄道株式会社を中心とした実証により検証を行ってきた。
5.3.2. PtoB モデルでの推進
サービス提供モデルについて、成果とりまとめ WG にて整理された各サービスモ
デルそれぞれに対して事業性などの観点から評価を実施した。
評価結果については「表 5.1 サービスモデル適合評価」に示す。
155
5.今後の取組み
表 5.1
サービスモデル
個人(PtoC)
直接提供型
企業/健保
(PtoB)
広告宣伝型
直接提供型
自治体
間接提供型
(PtoG)
民間支援型
サービスモデル適合評価
システム
実現性
事業性
適合性
○
×
×
◎
◎
○
×
△
△
○
△
○
○
×
△
○
△
○
◎非常によい ○良い △可能性あり
将来対応
可能性
○
-
○
○
×
○
×可能性なし
企業または健康保険組合は、事業者に対して福利厚生費または健康保険料から利
用料を支払い、従業員(または組合員)に対して保健指導や健康管理を行うことで、
メリットを得る。
PtoB モデルは、直接コンシューマーに対してサービス提供する PtoC モデルより
事業の運営がやりやすいと考えるが、一方、利用者拡大の面では、企業、健康保険
組合ごとに協議が必要となり一気に利用者を拡大させることは難しい。
現在、日本国内で提供されている健康情報活用基盤サービスは、健康管理の面で
の PtoC サービスが多いが、当コンソーシアムにて実証した疾病予防サービスは、
企業、健康保険組合~産業医・保健師~従業員(個人)というアクタが連携し、疾
病予防に対して PDCA サイクルを実施することにより、疾病予防とともに健康にな
るモデルであるため、既存のサービスより厳格な管理が必要であり、また企業や健
康保険組合との連携が欠かせないものである。
したがって、PtoB モデルは当コンソーシアムの実証参加企業などへ健康情報活用
基盤を継続利用してもらうためには最適であり、具体的なサービスである疾病予防
サービスの最適な課金方法となると考える。
そこで、今後の継続運用のための事業性評価について、PtoB モデルにて実施した。
(*)PtoB モデル:健康情報活用基盤事業者を(P)とし、一般事業者を(B)としてそ
の両者にて成立するビジネスモデルまたはサービスモデル。
1) PtoB モデルの適用検討
PtoB モデルにおける課金方法については、
・直接提供型(健康情報活用基盤を直接サービス事業者に提供)
・広告宣伝型(サービス事業者の広告を健康情報活用基盤が個人に提供する)
が考えられるが、広告宣伝型は、健康情報活用基盤の普及及び浸透がまだこれか
ら始まることから、早期の事業化は困難と判断した。
したがって、直接提供型について以下の通り検討した。直接提供型の課金モデル
について、以下の「図 5.1 直接提供型の課金モデル」に示す。
156
5.今後の取組み
福利厚生費/健康保険料
利用者
利用
基盤提供
健康情報
活用基盤 対価
企業/健保
保健師
図 5.1
直接提供型の課金モデル
2) 市場規模
① 全国の生活習慣病患者及びその予備軍の数と四国の患者の特徴
日本全国の生活習慣病の推定有病者数は、2005 年の時点で高血圧、高脂血症、糖
尿病合わせて、6,840 万人とほぼ国民の半数が何らかの生活習慣病の問題にさらさ
れていることがわかる。
特に糖尿病については、香川県の糖尿病による死亡率は 10 万人当たり 13.1 人と
全国 5 位(2004 年度)。糖尿病死亡率の上位 5 位に、四国の 3 県(1 位 徳島県、4
位 高知県)が入っており、厳しい状態となっている。
香川県の生活習慣病に関する状況を「図 5.2 香川県の生活習慣病の状況」に示
す。
図 5.2
香川県の生活習慣病の状況
② 全国の生活習慣病患者などの数から四国地域の患者数想定
2008 年 10 月1日時点の推計人口で、四国4県の合計人口は 401 万人(総務省統
計局調べ)となっている。
また同年の日本の人口は 127,692 千人と約 1.28 億人となっており、四国の全国
に占める人口比は約 3%となっている。
単純に前項の生活習慣病有病者数推定 6,840 万人の 3%が四国の有病者数と想定
157
5.今後の取組み
すると、約 205 万人となる。
また、違う切り口で全国民のほぼ半数が生活習慣病有病者数との推定から、四国
の人口 401 万人の約半数と仮定した場合も、およそ 200 万人となる。
3) 想定利用者数と提供料金
① 想定利用者数と獲得利用者数の設定
本実証事業の利用者アンケートによると、健康情報活用基盤のサービスについて
は、下記に再掲したように過半数の利用者が良い印象を持っており、継続利用につ
いても前向きである。
今回利用されたサービスを今後も継続的に利用したいと思いますか?
(回答者:N=283人)
11%
18%
利用したい
どちらかというと利用し
たい
どちらかというと利用し
たくない
利用したくない
27%
44%
このことから、潜在的な利用ニーズも含めた想定利用者数を約 200 万人の 50%で
ある 100 万人と設定する。また、当面の獲得利用者数について、100 万人を四国 4
県で平均すると 1 県当たり 25 万人となり、そのうちの 20%である約 5 万人程度の
参加を事業化における目標としたい。
これはかがわeヘルスケアコンソーシアムを構成する企業やベンダー、公的機関
などの構成を鑑み、到達可能な現実的目標として検討し設定した。
② 利用料金の設定
健康関連の既存サービスは、事例を見ても機器購入に伴うため無償のサービスで
あったり、携帯電話などのモバイル機器向けのサービスであっても高くて 300 円/
月程度が殆どである。
本実証事業でも、利用者アンケートにて継続利用時の個人の料金感覚を調査して
いるが、その結果では無償での利用が適切との声が最も多く、その他の意見でも数
百円/月程度の結果となっているところから、相当数の利用者数を確保する必要が
あることが確実である。
158
5.今後の取組み
今回利用されたサービスを今後も利用する場合に、
どれくらいの費用負担(月額)が妥当だと思いますか?(回答者:N=459人)
5%
1% 0%
0円/月
100円/月
300円/月
500円/月
1000円/月
それ以上
13%
20%
61%
獲得利用者数については、最大 5 万人を当面の目標とするが、上記利用者アンケ
ート結果を考慮し、最低で 100 円/月・人の収入となった場合の収入を計算すると
年間 6,000 万円となり、十分維持運営可能と考えられる。
4) 継続運用に向けた展開
継続運用の展開については、当面 5 万人の利用者を目標にて展開して行くが、直
接個人利用者にサービス提供するモデルではなく、PtoB モデルであるため、サービ
ス提供先は企業または健康保険組合となる。
今後の展開としては、現在の実証参加者の継続利用や、医療機関からの患者や企
業への紹介、コンソーシアムからの営業などを行う。
継続へのポイントとしては、事業終了後の 1~2 年、利用者数の確保が軌道に乗
るまでのところであるため、積極的に PR を開始する。
5) 事業主体の検討と移行
今後は、健康情報活用基盤のサービスを継続する方向で推進していくが、健康情
報活用基盤の実施主体については、本コンソーシアム内での検討の結果、
・民間主体サービス
・自治体主体サービス
・自治体、民間共同サービス
などが考えられると議論されたが、当コンソーシアムにおいては、民間単独また
は民間と自治体共同にて継続的なサービス化が図れないか検討した。
本事業にて実施した利用者へのアンケート結果によると、健康情報活用基盤に登
録されている利用者本人の情報が匿名化されて二次利用されることについての抵
抗感についてアンケート調査を行った結果、抵抗がある利用者とそれほどない利用
者が拮抗した結果となり、他者への匿名化した情報提供については一定の周知活動
を行った上で、理解を求めていけばある程度可能性があることが判明した。
159
5.今後の取組み
しかし、健康情報活用基盤の運営を行う事業者は国または自治体などの公的機関
での運営が適当との回答が有効回答数の(468 名)の約 70%とほとんどを占めるた
め、民間単独でのサービス開始には利用者意識がハードルとなり困難が予想される。
個人が記録した医療・健康の情報を匿名化し、統計・動向などの情報活用を
実施する場合、ご自身の情報を提供する事に抵抗はありますか?
(回答者:N=407人)
19%
22%
ある
どちらかというとある
どちらかというと無い
無い
31%
28%
今回の事業のように個人が自身の医療・健康の記録を管理するサービスを
提供する事業者としてはどのような機関が適当と思いますか?(回答者:N=468人)
8%
24%
22%
国
地方公共団体
保健所
健康サービス事業者
情報処理事業者
27%
19%
現時点で、かがわeヘルスケアコンソーシアムでは香川県の支援はもとより、社
団法人香川県医師会による K-MIX 事業の運営内に、健康情報活用基盤を統合してい
くプランを検討しているが、香川県医師会は医師の団体であり、健康情報活用基盤
を運営して行く団体には適当しないとの意見もあり協議中である。
また香川県では、他の自治体も同様であるが医療政策にまず力を入れるスタンス
であり、健康情報活用基盤の積極的展開は尐し先になると思われる。
したがって、当面の対策として、基盤部分の運用などはかがわeヘルスケアコン
ソーシアムが自助努力し、香川県医師会や香川県の支援を受けながら継続して行く
160
5.今後の取組み
こととなる。
また、かがわeヘルスケアコンソーシアムに法人格を持たせ運用者としていく方
向性も検討しているところである。
コンソーシアム形態であれば、多様な組織が支援・協賛可能であり、自治体など
の参加もしやすいためである。
将来的には、疾病管理の仕組みも拡張することにより、香川県や医療機関による
疾病管理サービスとしての利用も視野に入れて行く。
5.4. 継続運用にむけた当面の展開
健康情報活用基盤を、今後も継続運用し事業として継続するためには、今以上の
認知度の向上、特にそのメリットについて幅広く地域県民に理解してもらう必要が
ある。
現時点では、まだ健康情報活用基盤のメリットは利用者にとって分かりにくく、
将来のための備えとして考えたとしても、医療・健康情報の活用方法が限定的であ
りどう役に立つのか明確かつ具体的に啓蒙・周知する活動が必須と考える。
また周知にあわせて、医療・健康情報を本人が活用する場面を社会的に増やして
いく必要もあり、医療機関や企業、健康保険組合、健康サービス事業者での取扱い
方法や活用について、個人情報保護に最大限留意しつつ検討していく必要があると
考える。
さらに、社会制度として健康情報活用基盤の活用を視野に入れた個人へのインセ
ンティブも普及浸透において効果的であり、例えば健康保険料への割引なども検討
の余地がある。
個人の健康に関わるライフイベントを、長いスパンで参照可能となる健康情報活
用基盤は、活用されて初めて有意な物となり、これまでにない個人に適切な医療・
健康サービスを提供できる新しいサービス創出のキーとなりうる。
そのような認識のもと、当コンソーシアムでは、今後も下記のような質的及び面
的双方での健康情報活用基盤のサービス展開を検討、実施していく。
今後の展開等について、「図 5.3 今後の取り組みと将来像」に示す。
161
5.今後の取組み
図 5.3
今後の取り組みと将来像
5.4.1. 近隣各県企業への提供拡大(面的拡大)
・現在実証参加中である四国旅客鉄道株式会社や高松琴平電気鉄道、株式会社
STNet などの従業員、1000 人超の利用者の継続利用推進
・その他県内企業への参加勧誘
・大手流通業の顧客満足度向上策として、ドラッグストアなどでの顧客健康管
理の仕組みとして利用を提案
・近県(徳島県、愛媛県、高知県など)の自治体または企業へのサービス展開
5.4.2. 疾病管理サービスなどサービス内容の拡充
現在提供中の疾病予防における指導対象者抽出、保健指導サポートに加え、新た
なサービスの提供を模索する。
・医療機関や他事業者などと連携した、特定疾病(生活習慣病など)における
疾病管理サービスの提供
・薬局と連携した、お薬手帳管理サービス
・地域連携パスにおける在宅事業者、介護事業者と連携した、在宅向けバイタ
ル及び健康情報自動収集管理サービス
これらの新たなサービスを検討し提供することで、健康情報活用基盤が現在の企
業及び健康保険組合向けのみの提供より、利用者にとって身近になり認知度や役立
162
5.今後の取組み
つシーンが拡大するとともに、徐々に個人の健康意識の向上につながることで、長
いスパンでの健康増進につなげていけるものと考える。
163
(別紙)
別紙 1
利用者へのアンケート(設問)
A)あなたご自身についてお答えください。
No
設問
1-1
性別
1-2
年代
回答
1.男
2.女
1. ~19 歳
4.40~49 歳
7.70 歳以上
2.20~29 歳
5.50~59 歳
3.30~39 歳
6.60~69 歳
B)今回の実証事業における利用状況についてお答えください。
No
設問
回答
2-1
どのくらいの頻度で利用しましたか? 1.毎日利用した
2.毎日ではないがよく利用した
3.時々利用した
4.ほとんど利用しなかった
5.まったく利用しなかった
2-1
今回の実証事業において、ご利用され 1.食事記録
2.身体・運動記録
3.血圧等記録
たサービスはどれですか?
4.健康情報照会
5.健康施設表示
(複数回答可)
6.健康度チェック 7.ダイエット実施
2-3
利用されたサービスは便利だと思いま ①食事記録について
したか?
1.非常に便利である
2.やや便利である
(サービス毎にご回答ください)
3.あまり便利ではない
4.便利ではない
5.わからない
②身体・運動記録について
1.非常に便利である
2.やや便利である
3.あまり便利ではない
4.便利ではない
5.わからない
③血圧等記録について
1.非常に便利である
2.やや便利である
3.あまり便利ではない
4.便利ではない
5.わからない
④健康情報照会について
1.非常に便利である
2.やや便利である
3.あまり便利ではない
4.便利ではない
5.わからない
⑤健康施設表示について
1.非常に便利である
2.やや便利である
3.あまり便利ではない
4.便利ではない
5.わからない
⑥健康度チェックについて
1.非常に便利である
2.やや便利である
3.あまり便利ではない
4.便利ではない
5.わからない
⑦ダイエット実施について
1.非常に便利である
2.やや便利である
3.あまり便利ではない
4.便利ではない
5.わからない
164
(別紙)
No
2-4
設問
利用されたサービスの操作性はどうで
したか?
(サービス毎にご回答ください)
2-5
上記の質問で「尐しとまどった」「で
きなかった」と回答された方へ、その
理由や改善点を記入してください。
C)健康講座についてお答えください
No
設問
3-1
健康講座をご覧頂いて、健康に関して
以前より興味が出ましたか?
3-2
健康講座をご覧頂いて、知識は深まり
ましたか?
3-3
健康講座をご覧頂いて、意識の変化や
行動の変化はありましたか?
3-4
上記の質問で「有る」「まあまあ有る」
と回答された方へ、その変化の内容を
具体的に記入してください。
回答
①食事記録について
1.非常に簡単である
2.やや簡単である
3.尐しとまどった
4.できなかった
5.わからない
②身体・運動記録について
1.非常に簡単である
2.やや簡単である
3.尐しとまどった
4.できなかった
5.わからない
③血圧等記録について
1.非常に簡単である
2.やや簡単である
3.尐しとまどった
4.できなかった
5.わからない
④健康情報照会について
1.非常に簡単である
2.やや簡単である
3.尐しとまどった
4.できなかった
5.わからない
⑤健康施設表示について
1.非常に簡単である
2.やや簡単である
3.尐しとまどった
4.できなかった
5.わからない
⑥健康度チェックについて
1.非常に簡単である
2.やや簡単である
3.尐しとまどった
4.できなかった
5.わからない
⑦ダイエット実施について
1.非常に簡単である
2.やや簡単である
3.尐しとまどった
4.できなかった
5.わからない
回答
1.出た
3.あまり出ない
5.わからない
1.深まった
3.あまり深まらない
5.わからない
1.有る
3.あまり無い
5.わからない
165
2.まあまあ出た
4.出ない
2.まあまあ深まった
4.深まらない
2.まあまあ有る
4.無い
(別紙)
D)サービスの継続についてお答えください
No
設問
4-1
今回利用されたサービスを今後も継続
的に利用したいと思いますか?
4-2
4-3
4-4
今回利用されたサービスを今後も利用
する場合に、どれくらいの費用負担(月
額)が妥当だと思いますか?
費用負担が発生しても妥当な金額なら
ば利用したいと思うサービスはどれで
すか?
その他に、今後どのようなサービスが
あれば利用したいと思いますか?具体
的に記入してください。
回答
1.利用したい
2.どちらかというと利用したい
3.どちらかというと利用したくない
4.利用したくない
5.わからない
1.0000 円/月
2.0100 円/月
3.0300 円/月
4.0500 円/月
5.1000 円/月
6.それ以上
1.食事記録
2.身体・運動記録
3.血圧等記録
4.健康情報照会
5.健康施設表示
6.健康度チェック 7.ダイエット実施
E)サービスの仕組みや安全性についてお答えください。
No
設問
回答
5-1
今回の事業のように個人が自身の医 1.良い
療・健康の記録を管理し、それを活用 3.どちらかというと悪い
して様々なサービスを受けられる事に 5.わからない
ついてどう思いますか?
5-2
今回、配布致しましたカードには IruCa 1.便利である
の機能が搭載されておりますが、この 3.あまり便利でない
ような事業においてカードに付加機能 5.わからない
をつけた取り組みについてどう思いま
すか?
5-3
日々の食事・運動情報などを記録・参 1.良い
照する場合は、メールアドレスによる 3.どちらかというと悪い
認証で実施できる事についてどう思い 5.わからない
ますか?
5-4
個人が記録した医療・健康の情報を匿 1.ある
名化し、統計・動向などの情報活用を 3.どちらかというと無い
実施する場合、ご自身の情報を提供す 5.わからない
る事に抵抗はありますか?
5-5
今回の事業のように個人が自身の医 1.国
療・健康の記録を管理するサービスを 3.保健所
提供する事業者としてはどのような機 5.情報処理事業者
関が適当と思いますか?
166
2.どちらかというと良い
4.悪い
2.まあまあ便利である
4.便利でない
2.どちらかというと良い
4.悪い
2.どちらかというとある
4.無い
2.地方公共団体
4.健康サービス事業者
(別紙)
F)今後のサービスの利用による保健指導や健康意識の変化についてお答えください
No
設問
回答
6-1
日々の生活習慣や健康情報を入力する 1.非常に改善される
2.改善される
ことにより、保健指導の内容が向上し、 3.あまり改善されない
4.まったく改善されない
健康状態が改善されると思いますか? 5.わからない
6-2
今後、日々の生活習慣や健康情報をも 1.強く希望する
2.希望する
とに健康指導を受けることを希望しま 3.あまり希望しない
4.まったく希望しない
すか?
5.わからない
6-3
個人が記録した医療・健康の情報を診 1.有効に活用される
2.活用される
療先の医療機関に公開することによ 3.あまり活用されない
4.まったく活用されない
り、有効に活用されると思いますか? 5.わからない
6-4
医療機関に公開する健康情報は、種別 1.良い
2.どちらかといえば良い
(身体・食事・運動・処方・診療・健 3.あまり良くない
4.良くない
診)を指定できた方が良いと思います 5.わからない
か?
6-5
医療機関から提供された診療情報と、 1.有効に活用できる
2.活用できる
食事・運動情報を同一システム内で参 3.あまり活用できな
4.まったく活用できない
照できるようになれば、有効に活用で
きると思いますか?
6-6
今回の事業のようなサービスを利用す 1.できる
2.まあまあできる
ることにより、日々の健康情報を記録 3.あまりできない
4.できない
する習慣ができると思いますか?
5.わからない
6-7
今回の事業のようなサービスを利用す 1.向上する
2.変化なし
ることにより、あなたの健康意識にど 3.低下する
のような変化があると思いますか?
(低下する場合は理由をお書きください)
167
(別紙)
別紙 2
利用者へのアンケート(設問別・利用者属性別回答結果)
アンケート調査は、参加企業の従業員 1,052 名に対して実施し、545 名(回答率:約 51%)から回答をいた
だいた。
設問番号
A
B
回答
回答内容
2-1
1
2
3
4
5
2-2
1
2
3
4
5
6
7
2-3 ①
1
2
3
4
5
2-3 ②
1
2
3
4
5
2-3 ③
1
2
3
4
5
2-3 ④
1
2
3
4
5
2-3 ⑤
1
2
3
4
5
2-3 ⑥
1
2
3
4
5
2-3 ⑦
1
2
3
4
5
2-4 ①
1
2
3
4
5
2-4 ②
1
2
3
4
5
2-4 ③
1
2
3
4
5
年齢-性別
毎日利用した
毎日ではないが良く利用した
時々利用した
ほとんど利用しなかった
まったく利用しなかった
無回答
食事記録
身体・運動記録
血圧等記録
健康情報照会
健康施設表示
健康度チェック
ダイエット実施
無回答
非常に便利である
やや便利である
あまり便利ではない
便利ではない
わからない
無回答
非常に便利である
やや便利である
あまり便利ではない
便利ではない
わからない
無回答
非常に便利である
やや便利である
あまり便利ではない
便利ではない
わからない
無回答
非常に便利である
やや便利である
あまり便利ではない
便利ではない
わからない
無回答
非常に便利である
やや便利である
あまり便利ではない
便利ではない
わからない
無回答
非常に便利である
やや便利である
あまり便利ではない
便利ではない
わからない
無回答
非常に便利である
やや便利である
あまり便利ではない
便利ではない
わからない
無回答
非常に簡単である
やや簡単である
少しとまどった
できなかった
わからない
無回答
非常に簡単である
やや簡単である
少しとまどった
できなかった
わからない
無回答
非常に簡単である
やや簡単である
少しとまどった
できなかった
わからない
無回答
年齢-性別
10代 10代 20代 20代 30代 30代 40代 40代 50代 50代 60代 60代 70代 70代 男性 女性 記入
合計
男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性
計
計
なし
5
0
75
8
141
12
134
11
111
6
33
0
0
0
499
37
9
545
0
0
0
0
2
0
1
0
2
1
1
0
0
0
6
1
0
7
0
0
3
1
5
0
8
1
15
0
5
0
0
0
36
2
1
39
0
0
11
1
23
5
29
0
25
0
9
0
0
0
97
6
0
103
3
0
35
4
56
4
55
6
23
0
5
0
0
0
177
14
1
192
2
0
25
2
52
3
40
4
45
5
13
0
0
0
177
14
4
195
0
0
1
0
3
0
1
0
1
0
0
0
0
0
6
0
3
9
1
0
22
2
29
4
22
3
17
0
4
0
0
0
95
9
1
105
1
0
21
1
26
2
32
1
22
0
7
0
0
0
109
4
0
113
2
0
18
3
22
4
36
1
43
1
15
0
0
0
136
9
0
145
1
0
14
3
35
3
30
2
12
0
5
0
0
0
97
8
0
105
0
0
7
0
12
2
20
1
6
0
1
0
0
0
46
3
0
49
0
0
9
0
14
1
24
2
13
1
6
0
0
0
66
4
1
71
0
0
6
0
13
0
5
0
3
0
2
0
0
0
29
0
0
29
2
0
21
1
47
4
38
4
40
5
11
0
0
0
159
14
7
180
1
0
2
1
0
0
4
0
6
0
2
0
0
0
15
1
1
17
0
0
12
1
27
2
26
0
16
0
8
0
0
0
89
3
0
92
0
0
13
0
13
3
15
1
7
0
3
0
0
0
51
4
0
55
1
0
5
0
10
1
7
1
2
0
0
0
0
0
25
2
0
27
2
0
35
5
59
4
53
4
31
2
7
0
0
0
187
15
3
205
1
0
8
1
32
2
29
5
49
4
13
0
0
0
132
12
5
149
1
0
2
0
5
0
5
1
6
0
3
0
0
0
22
1
0
23
0
0
16
3
25
3
30
1
20
0
7
0
0
0
98
7
0
105
0
0
6
0
12
0
14
1
6
0
1
0
0
0
39
1
0
40
1
0
4
0
6
0
3
0
2
0
1
0
0
0
17
0
0
17
2
0
38
4
65
6
57
1
29
2
5
0
0
0
196
13
3
212
1
0
9
1
28
3
25
7
48
4
16
0
0
0
127
15
6
148
1
0
7
0
4
0
10
2
15
1
6
0
0
0
43
3
0
46
1
0
17
3
28
3
39
0
24
0
7
0
0
0
116
6
0
122
0
0
6
0
9
1
8
0
5
0
3
0
0
0
31
1
0
32
1
0
3
0
3
0
4
0
1
0
0
0
0
0
12
0
0
12
2
0
31
5
64
5
50
3
28
1
7
0
0
0
182
14
3
199
0
0
11
0
33
3
23
6
38
4
10
0
0
0
115
13
6
134
0
0
8
1
12
0
13
2
6
0
2
0
0
0
41
3
0
44
0
0
14
2
23
3
33
1
19
0
11
0
0
0
100
6
0
106
0
0
2
0
7
0
8
0
3
0
0
0
0
0
20
0
0
20
1
0
3
0
4
0
2
0
3
0
0
0
0
0
13
0
0
13
2
0
37
4
60
6
47
1
31
2
6
0
0
0
183
13
3
199
2
0
11
1
35
3
31
7
49
4
14
0
0
0
142
15
6
163
0
0
6
0
6
0
6
0
8
0
2
0
0
0
28
0
0
28
0
0
12
2
18
2
29
2
14
0
8
0
0
0
81
6
0
87
0
0
4
0
10
0
8
0
3
0
0
0
0
0
25
0
0
25
1
0
3
0
3
0
5
0
3
0
0
0
0
0
15
0
0
15
2
0
39
5
70
7
57
2
30
2
7
0
0
0
205
16
3
224
2
0
11
1
34
3
29
7
53
4
16
0
0
0
145
15
6
166
0
0
4
0
4
0
9
1
8
1
2
0
0
0
27
2
0
29
0
0
19
2
23
1
30
2
17
0
8
0
0
0
97
5
0
102
0
0
4
0
10
0
6
0
3
0
0
0
0
0
23
0
0
23
1
0
1
0
3
0
2
0
2
0
1
0
0
0
10
0
0
10
2
0
36
5
65
8
57
2
28
1
5
0
0
0
193
16
3
212
2
0
11
1
36
3
30
6
53
4
17
0
0
0
149
14
6
169
0
0
2
0
3
1
6
1
4
0
2
0
0
0
17
2
0
19
0
0
16
2
19
0
21
0
18
0
7
0
0
0
81
2
0
83
0
0
3
0
6
0
6
0
3
0
0
0
0
0
18
0
0
18
1
0
1
0
5
0
4
0
1
0
1
0
0
0
13
0
0
13
2
0
43
5
74
8
69
3
32
2
7
0
0
0
227
18
3
248
2
0
10
1
34
3
28
7
53
4
16
0
0
0
143
15
6
164
0
0
4
0
4
0
3
0
2
0
3
0
0
0
16
0
1
17
1
0
10
2
16
1
19
0
13
0
4
0
0
0
63
3
0
66
1
0
20
0
24
3
19
3
9
0
2
0
0
0
75
6
0
81
0
0
2
1
8
1
9
0
6
1
2
0
0
0
27
3
0
30
2
0
31
4
56
5
54
2
29
1
6
0
0
0
178
12
4
194
1
0
8
1
33
2
30
6
52
4
16
0
0
0
140
13
4
157
1
0
5
1
5
0
10
1
5
0
3
0
0
0
29
2
0
31
0
0
9
1
21
3
21
0
16
0
7
0
0
0
74
4
1
79
0
0
11
0
10
0
14
1
8
0
0
0
0
0
43
1
0
44
0
0
4
1
9
0
7
0
6
0
2
0
0
0
28
1
0
29
3
0
37
4
67
6
54
2
25
2
6
0
0
0
192
14
3
209
1
0
9
1
29
3
28
7
51
4
15
0
0
0
133
15
5
153
2
0
10
1
7
2
15
0
13
1
6
0
0
0
53
4
1
58
0
0
11
2
19
3
30
0
22
0
8
0
0
0
90
5
0
95
0
0
5
0
8
0
12
0
6
0
2
0
0
0
33
0
0
33
0
0
2
1
8
0
4
0
4
0
0
0
0
0
18
1
0
19
3
0
36
4
65
5
49
4
24
1
6
0
0
0
183
14
3
200
0
0
11
0
34
2
24
7
42
4
11
0
0
0
122
13
5
140
168
(別紙)
設問番号
C
D
E
回答
回答内容
2-4 ④
1
2
3
4
5
2-4 ⑤
1
2
3
4
5
2-4 ⑥
1
2
3
4
5
2-4 ⑦
1
2
3
4
5
3-1
1
2
3
4
5
3-2
1
2
3
4
5
3-3
1
2
3
4
5
4-1
1
2
3
4
5
4-2
1
2
3
4
5
6
4-3
1
2
3
4
5
6
7
5-1
1
2
3
4
5
5-2
1
2
3
4
5
5-3
1
2
3
4
5
非常に簡単である
やや簡単である
少しとまどった
できなかった
わからない
無回答
非常に簡単である
やや簡単である
少しとまどった
できなかった
わからない
無回答
非常に簡単である
やや簡単である
少しとまどった
できなかった
わからない
無回答
非常に簡単である
やや簡単である
少しとまどった
できなかった
わからない
無回答
出た
まあまあ出た
あまり出ない
出ない
わからない
無回答
深まった
まあまあ深まった
あまり深まらない
深まらない
わからない
無回答
有る
まあまあ有る
あまり無い
無い
わからない
無回答
利用したい
どちらかというと利用したい
どちらかというと利用したくない
利用したくない
わからない
無回答
0円/月
100円/月
300円/月
500円/月
1000円/月
それ以上
無回答
食事記録
身体・運動記録
血圧等記録
健康情報照会
健康施設表示
健康度チェック
ダイエット実施
無回答
良い
どちらかというと良い
どちらかというと悪い
悪い
わからない
無回答
便利である
まあまあ便利である
あまり便利でない
便利でない
わからない
無回答
良い
どちらかというと良い
どちらかというと悪い
悪い
わからない
無回答
年齢-性別
10代 10代 20代 20代 30代 30代 40代 40代 50代 50代 60代 60代 70代 70代 男性 女性 記入
合計
男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性
計
計
なし
0
0
5
2
7
0
13
2
3
0
0
0
0
0
28
4
0
32
0
0
13
1
20
3
26
1
15
0
8
0
0
0
82
5
0
87
0
0
10
0
11
0
8
0
6
0
2
0
0
0
37
0
0
37
0
0
1
1
6
0
5
0
4
0
1
0
0
0
17
1
0
18
3
0
35
3
60
6
52
1
31
2
6
0
0
0
187
12
4
203
2
0
11
1
37
3
30
7
52
4
16
0
0
0
148
15
5
168
0
0
3
0
6
0
7
0
4
0
1
0
0
0
21
0
0
21
0
0
12
2
14
2
25
1
13
0
5
0
0
0
69
5
0
74
0
0
7
0
9
0
6
0
2
0
0
0
0
0
24
0
0
24
0
0
1
1
6
0
7
0
7
0
2
0
0
0
23
1
0
24
3
0
41
4
71
7
59
3
30
2
6
0
0
0
210
16
4
230
2
0
11
1
35
3
30
7
55
4
19
0
0
0
152
15
5
172
0
0
6
1
5
0
6
1
2
1
1
0
0
0
20
3
0
23
0
0
12
1
17
1
24
0
15
0
6
0
0
0
74
2
0
76
0
0
5
0
7
0
6
0
6
0
0
0
0
0
24
0
0
24
0
0
0
1
6
0
7
0
5
0
2
0
0
0
20
1
0
21
2
0
40
3
72
8
60
4
27
1
4
0
0
0
205
16
4
225
3
0
12
2
34
3
31
6
56
4
20
0
0
0
156
15
5
176
0
0
5
0
2
1
2
0
1
0
1
0
0
0
11
1
0
12
0
0
10
2
12
0
20
0
13
0
4
0
0
0
59
2
0
61
0
0
5
0
11
0
4
0
5
0
0
0
0
0
25
0
0
25
0
0
0
1
5
0
9
1
6
0
1
0
0
0
21
2
0
23
3
0
45
4
75
8
69
3
29
2
7
0
0
0
228
17
4
249
2
0
10
1
36
3
30
7
57
4
20
0
0
0
155
15
5
175
0
0
3
0
4
0
8
2
7
0
4
0
0
0
26
2
1
29
1
0
19
1
39
4
47
1
31
1
9
0
0
0
146
7
2
155
0
0
8
0
15
2
18
2
5
0
2
0
0
0
48
4
0
52
1
0
8
2
20
0
9
1
8
0
1
0
0
0
47
3
0
50
3
0
33
5
54
5
42
4
33
2
7
0
0
0
172
16
3
191
0
0
4
0
9
1
10
1
27
3
10
0
0
0
60
5
3
68
0
0
2
1
5
0
10
1
11
0
5
0
0
0
33
2
1
36
1
0
16
1
34
3
50
1
24
0
4
0
0
0
129
5
2
136
0
0
10
0
10
3
13
2
11
0
4
0
0
0
48
5
0
53
1
0
4
1
14
0
5
0
2
0
0
0
0
0
26
1
0
27
3
0
38
4
69
4
45
5
36
2
8
0
0
0
199
15
3
217
0
0
5
1
9
2
11
2
27
4
12
0
0
0
64
9
3
76
0
0
1
0
4
0
5
0
7
0
3
0
0
0
20
0
1
21
1
0
6
1
22
1
29
3
19
0
3
0
0
0
80
5
2
87
0
0
17
0
28
3
33
1
18
0
5
0
0
0
101
4
0
105
1
0
7
2
18
4
11
2
4
0
1
0
0
0
42
8
0
50
3
0
38
4
60
3
45
3
34
3
9
0
0
0
189
13
3
205
0
0
6
1
9
1
11
2
29
3
12
0
0
0
67
7
3
77
1
0
4
2
3
0
9
1
6
1
4
0
0
0
27
4
1
32
0
0
11
2
41
3
35
1
24
0
9
0
0
0
120
6
0
126
0
0
16
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20
3
15
0
4
0
0
0
70
5
0
75
1
0
10
0
17
3
6
0
9
1
2
0
0
0
45
4
1
50
3
0
30
3
60
3
53
5
38
1
7
0
0
0
191
12
4
207
0
0
4
1
5
1
11
1
19
3
7
0
0
0
46
6
3
55
3
0
51
2
87
6
70
3
39
1
10
0
0
0
260
12
3
275
0
0
8
3
22
3
30
2
20
1
4
0
0
0
84
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93
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0
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1
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0
0
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12
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0
0
0
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0
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1
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0
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0
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0
14
0
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0
0
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0
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0
1
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0
0
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1
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41
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0
2
0
2
0
0
0
3
0
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0
0
0
7
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0
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1
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0
14
1
14
3
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0
0
0
53
5
2
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0
11
1
9
2
5
0
6
0
1
0
0
0
33
3
0
36
1
0
42
5
79
8
83
6
60
5
20
0
0
0
285
24
7
316
1
0
25
4
34
2
33
4
27
1
7
0
0
0
127
11
1
139
2
0
23
2
58
7
61
3
41
0
14
0
0
0
199
12
1
212
0
0
0
0
4
0
3
0
0
0
1
0
0
0
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0
0
8
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0
0
0
0
0
1
0
2
0
0
0
0
0
3
0
0
3
2
0
25
1
43
2
33
3
30
2
7
0
0
0
140
8
5
153
0
0
2
1
2
1
3
1
11
3
4
0
0
0
22
6
2
30
1
0
29
4
51
3
58
5
34
1
13
0
0
0
186
13
2
201
0
0
17
2
42
3
42
3
32
0
10
0
0
0
143
8
1
152
0
0
7
0
7
1
7
0
4
0
0
0
0
0
25
1
0
26
0
0
0
0
2
1
5
0
2
0
0
0
0
0
9
1
0
10
4
0
20
1
37
3
18
2
28
2
6
0
0
0
113
8
4
125
0
0
2
1
2
1
4
1
11
3
4
0
0
0
23
6
2
31
1
0
18
4
35
5
33
7
20
0
9
0
0
0
116
16
1
133
1
0
22
2
44
1
44
1
37
1
9
0
0
0
157
5
2
164
0
0
7
0
7
1
12
0
6
0
1
0
0
0
33
1
0
34
0
0
2
0
4
0
9
0
4
0
0
0
0
0
19
0
0
19
3
0
23
1
47
4
33
2
32
2
8
0
0
0
146
9
4
159
0
0
3
1
4
1
3
1
12
3
6
0
0
0
28
6
2
36
169
(別紙)
設問番号
F
回答
回答内容
5-4
1
2
3
4
5
5-5
1
2
3
4
5
6-1
1
2
3
4
5
6-2
1
2
3
4
5
6-3
1
2
3
4
5
6-4
1
2
3
4
5
6-5
1
2
3
4
6-6
1
2
3
4
5
6-7
1
2
3
ある
どちらかというとある
どちらかというと無い
無い
わからない
無回答
国
地方公共団体
保健所
健康サービス事業者
情報処理事業者
無回答
非常に改善される
改善される
あまり改善されない
まったく改善されない
わからない
無回答
強く希望する
希望する
あまり希望しない
まったく希望しない
わからない
無回答
有効に活用される
活用される
あまり活用されない
まったく活用されない
わからない
無回答
良い
どちらかというと良い
あまり良くない
良くない
わからない
無回答
有効に活用できる
活用できる
あまり活用できない
まったく活用できない
無回答
できる
まあまあできる
あまりできない
できない
わからない
無回答
向上する
変化なし
低下する
無回答
年齢-性別
10代 10代 20代 20代 30代 30代 40代 40代 50代 50代 60代 60代 70代 70代 男性 女性 記入
合計
男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性
計
計
なし
0
0
11
1
26
1
18
1
15
0
5
0
0
0
75
3
0
78
1
0
11
2
41
4
29
4
25
1
3
0
0
0
110
11
3
124
1
0
16
1
28
3
34
2
19
0
9
0
0
0
107
6
1
114
0
0
17
1
19
2
25
3
20
0
4
0
0
0
85
6
0
91
3
0
18
2
24
1
25
0
20
2
7
0
0
0
97
5
3
105
0
0
2
1
3
1
3
1
12
3
5
0
0
0
25
6
2
33
3
0
16
0
38
2
23
2
21
1
7
0
0
0
108
5
0
113
0
0
23
4
30
1
28
3
32
0
5
0
0
0
118
8
1
127
1
0
10
1
26
6
25
2
16
0
3
0
0
0
81
9
0
90
0
0
11
2
21
1
33
1
20
0
10
0
0
0
95
4
3
102
0
0
8
0
13
1
10
0
3
0
1
0
0
0
35
1
0
36
1
0
7
1
13
1
15
3
19
5
7
0
0
0
62
10
5
77
1
0
5
0
7
0
5
0
4
0
1
0
0
0
23
0
0
23
1
0
35
7
62
9
74
7
47
1
18
0
0
0
237
24
2
263
1
0
11
0
17
0
17
1
13
0
3
0
0
0
62
1
0
63
0
0
3
0
3
0
3
0
2
0
0
0
0
0
11
0
0
11
2
0
20
1
49
2
30
2
29
2
7
0
0
0
137
7
5
149
0
0
1
0
3
1
5
1
16
3
4
0
0
0
29
5
2
36
1
0
2
0
2
0
1
0
4
0
1
0
0
0
11
0
0
11
0
0
18
2
29
7
44
4
37
1
14
0
0
0
142
14
1
157
1
0
28
4
50
2
45
5
30
0
7
0
0
0
161
11
2
174
0
0
6
1
24
1
10
0
3
0
1
0
0
0
44
2
1
47
3
0
20
1
33
1
28
1
22
2
6
0
0
0
112
5
3
120
0
0
1
0
3
1
6
1
15
3
4
0
0
0
29
5
2
36
1
0
11
2
20
3
11
2
6
1
4
0
0
0
53
8
1
62
0
0
32
4
48
4
55
4
48
0
13
0
0
0
196
12
1
209
0
0
8
1
23
1
25
3
14
0
1
0
0
0
71
5
0
76
0
0
1
0
3
0
5
0
1
0
0
0
0
0
10
0
0
10
4
0
22
1
45
3
33
1
27
2
11
0
0
0
142
7
5
154
0
0
1
0
2
1
5
1
15
3
4
0
0
0
27
5
2
34
1
0
22
5
27
1
16
5
19
0
5
0
0
0
90
11
1
102
0
0
26
3
37
5
59
4
35
1
14
0
0
0
171
13
2
186
0
0
4
0
9
0
7
0
3
0
1
0
0
0
24
0
0
24
0
0
0
0
3
1
3
0
3
0
0
0
0
0
9
1
0
10
4
0
22
0
63
4
44
1
36
2
8
0
0
0
177
7
4
188
0
0
1
0
2
1
5
1
15
3
5
0
0
0
28
5
2
35
1
0
11
1
20
3
19
3
10
1
5
0
0
0
66
8
1
75
1
0
39
6
70
7
79
6
59
0
15
0
0
0
263
19
3
285
2
0
13
0
35
0
20
0
20
0
1
0
0
0
91
0
0
91
0
0
7
0
6
1
5
0
4
1
5
0
0
0
27
2
2
31
1
0
5
1
10
1
11
2
18
4
7
0
0
0
52
8
3
63
2
0
7
0
10
0
9
1
13
1
9
0
0
0
50
2
1
53
0
0
22
5
44
6
50
2
38
0
11
0
0
0
165
13
1
179
0
0
14
2
27
2
24
4
13
0
2
0
0
0
80
8
1
89
1
0
8
0
20
0
11
2
9
0
1
0
0
0
50
2
0
52
2
0
23
1
38
3
34
1
22
2
5
0
0
0
124
7
4
135
0
0
1
0
2
1
6
1
16
3
5
0
0
0
30
5
2
37
2
0
34
6
68
9
77
7
58
1
20
0
0
0
259
23
4
286
2
0
36
1
65
2
49
3
35
2
7
0
0
0
194
8
0
202
0
0
2
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
4
0
0
4
1
0
3
1
6
1
8
1
18
3
6
0
0
0
42
6
5
53
170
(別紙)
別紙 3
健康情報コンテンツ講師
氏名
職歴および研究歴
資格および
非常勤称号等
学会活動
社会活動
最近の著書
略歴
福井 敏樹 氏
平成元年 6 月
大阪市立大学医学部附属病院第一内科研修医
平成 3 年 10 月 大阪市立大学医学部附属病院第一内科臨床研究医
平成 4 年 4 月
香川医科大学医学部附属病院第二内科医員
平成 5 年 8 月
アメリカ合衆国エモリー大学循環器部門研究医
平成 9 年 4 月
香川医科大学薬理学講座文部科学教官助手
平成 13 年 5 月 NTT 西日本高松診療所および同予防医療センタ所長
同四国健康管理センタ部長(兼務)
香川大学医学部 臨床准教授
東海大学医学部 非常勤講師
日本人間ドック学会専門医および指導医
日本高血圧学会高血圧専門医および特別正会員(FJSH)
日本内科学会認定医
日本医師会認定産業医
日本医師会認定健康スポーツ医
人間ドック健診情報管理指導士
国立保健医療科学院特定研修生活習慣病対策健診・保健指導に関する
企画・運営・技術研修終了
日本人間ドック学会評議員
学術・図書編集委員会委員(2006~2009)
特定健診・特定保健指導対策委員会委員(2007~)
人間ドック判定・指導ガイドライン作成委員会委員(2007~2009)
学術委員(2010~)
日本抗加齢医学会評議員
日本内科学会、日本高血圧学会、日本循環器学会、日本糖尿病学会、
日本産業衛生学会などに所属
厚生労働省 健康科学総合研究事業「健康診査の精度管理に関する研究」
委員(2005~2008)
経済産業省「先進的保健指導サービス推進プロジェクト」健康情報基盤を
活用した特定健診・保健指導の実用化 WG 委員会委員(2007~2008)
特定健診・特定保健指導 人間ドック健診情報管理指導士テキスト
-第 2 版-(共著)
健診判定ガイドライン 改定新版「動脈硬化ドック」 文光堂(共著)
人間ドック健診フォローアップガイド(共著)
メタボリックシンドローム(文光堂)
など
171
(別紙)
別紙 4
利用者による日常情報の登録件数(利用者属性別利用頻度)
抽出期間:2010/9/1~2011/2/6、抽出条件:利用者区分=一般利用者(医師、保健師を除く)
利用者属性 10代
10代
20代
20代
30代
30代
40代
40代
50代
50代
60代
60代
合計
合計
合計
男性
女性
男性
女性
男性
女性
男性
女性
男性
女性
男性
女性
男性
女性
合計
勤務先 情報
JR四国 運動情報
3
314
29
1
7
29
382
食事情報
3
803
147
2
712
422
2,087
身体情報
1
107
52
1
131
29
320
小計
7
1,224
228
4
850
480
2,789
ことでん 運動情報
123
282
7
65
4
258
33
761
食事情報
509
670
32
170
39
184
210
1,743
身体情報
92
273
1
179
6
304
68
916
724
1,225
40
414
49
746
311
3,420
小計
STNet
運動情報
14
食事情報
161
身体情報
合計
191
383
2 2,089
1
321
4 2,793
11
772
71 1,814
7
923
89 3,509
98
64
89
1
84
5
531
816
3
698
73
344
9
237
5
319
1,759
84
50
79
1
100
1
126
405
3
880
187
512
11
421
11
976
2,980
212 3,192
72
161
5
371
5
564
1,959
82 2,041
107 1,226
48
843
5
529
5,589
163 5,752
7
433
1
194
1,641
60 1,701
11 1,287
9,189
305 9,494
16
小計
1
運動情報
3
451
409
食事情報
3
1,473
3 1,515
身体情報
1
215
409
合計
7
2,139
3 2,333
52
389
231 1,776
172
60 1,647
70
886
90 1,849
52
457
(別紙)
別紙 5
保健指導事例①
ヒアリング事例①:日常情報の記録による健康意識改善
年代/性別
60代/男性
リスク 現在、糖尿病治療中であるが、病気への認識不足のため、お酒を飲み過ぎるなど体重や血
/症例 糖値のコントロールができていない状況である。
事例概要
保健 日常情報の記録を習慣づけることで、本人の意識が変わり始め、血糖値も減尐傾向であると
指導 いう主治医の報告もあるので、今後は食事面での改善の取り組みを支援する。
検査項目
単位
基準値
身長
体重
BMI
腹囲
血圧(収縮期/拡張期)
空腹時血糖
HDLコレステロール
LDLコレステロール
中性脂肪
GOT(AST)
GPT(ALT)
γ -GT(γ -GTP)
リスク数
cm
-
kg
-
-
25未満
cm
男85・女90未満
mmHg
140/90未満
mg/dl
110未満
mg/dl
40以上
mg/dl
160未満
mg/dl
150未満
IU/l
50未満
IU/l
50未満
IU/l
80未満
-
-
健康診断
2010/6/2
157.0
68.1
27.6
91
154/98
87
57
92
268
63
42
323
6
日常情報
2010/1/5
157.0
65.0
26.4
2011/1/21
157.0
67.0
27.2
130/72
314
102/67
124/61
2
1
1
2010/12/25
66.6
27.0
【保健指導(指導内容策定)】
○生活習慣の把握
日常情報
確認結果
運動 週2日以上定期的に1時間以上のウォーキングをしている。
食事
やや気を遣ってはいるが、行事等があると食べ過ぎや飲み過ぎになり血糖値が悪化してい
る。また日常生活においても飲み過ぎの傾向がある。
○指導内容の策定
指導内容
(行動計画・目標)
①
②
③
④
毎日体重を測り、記録する
毎日血圧を測り、記録する
毎日歩数を記録する
【保健指導(実施状況確認)】
○診療情報の把握
診療情報
確認結果
-
・糖尿病 ・高脂血症 ・高尿酸血症 ・高血圧症
○糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、高血圧症共に処方あり
○血糖は上昇していますので薬を追加します
○体重を減らす方向で行きましょう
○実施状況の把握
実施記録
確認結果
※丸数字は指導内容に対応
①
②
③
④
1ヵ月に数回実施できている
1ヵ月に数回実施できている
1ヵ月に数回実施できている
○指導内容の継続・見直し
指導内容
見直し
保健師コメント
①
②
③
④
-
※丸数字は指導内容に対応
継続
継続
継続
まず日々の体重・血圧・歩数(運動量)を測り記録していくことで、疾病治療のための体重
や血圧管理の重要性を認識してもらう。
意識付けができた上で、減量やお酒(飲む量・飲む回数)を減らすための取り組みを追加し
て支援していく。
※1月下旬頃から本人の意識が変わり始め、血糖値も減尐傾向(HbA1c-0.5)であるという
主治医の報告あり。
173
(別紙)
別紙 6
保健指導事例②
ヒアリング事例②:日常情報の記録による生活習慣改善
年代/性別
20代/男性
リスク 入社時より体重は増加傾向にあり、それに伴う血圧の上昇や脂肪肝が見られる。
/症例 また糖尿病は放置していたため、入社後間もなく投薬治療を開始している。
事例概要
保健 日常情報の記録を習慣づけることで、食事面での改善が見られ、体重も減尐傾向にあるの
指導 で、指導内容を継続することを支援する。
検査項目
単位
基準値
身長
体重
BMI
腹囲
血圧(収縮期/拡張期)
空腹時血糖
HDLコレステロール
LDLコレステロール
中性脂肪
GOT(AST)
GPT(ALT)
γ -GT(γ -GTP)
リスク数
cm
-
kg
-
-
25未満
cm
男85・女90未満
mmHg
140/90未満
mg/dl
110未満
mg/dl
40以上
mg/dl
160未満
mg/dl
150未満
IU/l
50未満
IU/l
50未満
IU/l
80未満
-
-
健康診断
2009/5/7
176.3
102.1
32.8
144/87
333
47
118
849
45
57
122
6
2010/11/12
日常情報
2010/12/28
2011/1/22
108.6
34.9
105.5
33.9
105.0
33.8
128/68
1
1
1
【保健指導(指導内容策定)】
○生活習慣の把握
日常情報
確認結果
運動
毎日の生活の中で、仕事での作業(平均10000歩)・さんぽ・自転車等の活動を意識して
行っている。
食事
摂取カロリーも過剰にはなっておらず、間食を減らしたり、夜中にお菓子を食べない等で気
を遣っている。
○指導内容の策定
指導内容
(行動計画・目標)
①
②
③
④
早食いをしない
寝る3時間前は飲食しない
1回の間食の量を半分に減らす
油分の多い料理(揚げ物や炒め物など)を食べる回数を減らす
【保健指導(実施状況確認)】
○診療情報の把握
診療情報
確認結果
-
・糖尿病 ・高尿酸血症
○糖尿病、高尿酸血症ともに処方あり
○肥満は継続している
○内服をきちんとすること
①
②
③
④
毎日実施できている
毎日実施できている
毎日実施できている
毎日実施できている
○実施状況の把握
実施記録
確認結果
※丸数字は指導内容に対応
○指導内容の継続・見直し
※丸数字は指導内容に対応
指導内容
見直し
①
②
③
④
継続
継続
継続
継続
保健師コメント
-
指導目標を毎日実施できており、体重は約3ヵ月で3kgの減量となり維持できている。
今後も健診結果や治療状況を確認しながら、指導目標を継続して減量に取り組んでいける
ように支援していく。
174
(別紙)
別紙 7
保健指導事例③
ヒアリング事例③:日常情報によるバイタルサインのモニタリング
年代/性別
50代/男性
リスク 5~6年前より健診結果において血圧が境界域にある。
/症例 体重は基準値内であり喫煙歴もないため、遺伝的な要因が考えられる。
事例概要
保健 今回、健診だけでなく、日常情報を記録してもらうことにより、日常的に血圧が高い状況を把
指導 握できた。今後も測定を継続した上で、必要であれば受診勧奨を行う。
検査項目
単位
基準値
身長
体重
BMI
腹囲
血圧(収縮期/拡張期)
空腹時血糖
HDLコレステロール
LDLコレステロール
中性脂肪
GOT(AST)
GPT(ALT)
γ -GT(γ -GTP)
リスク数
cm
-
kg
-
-
25未満
cm
男85・女90未満
mmHg
140/90未満
mg/dl
110未満
mg/dl
40以上
mg/dl
160未満
mg/dl
150未満
IU/l
50未満
IU/l
50未満
IU/l
80未満
-
-
健康診断
2010/6/30
160.2
54.7
21.3
79
138/101
103
48
129
235
17
14
19
1
2010/12/1
日常情報
2010/1/6
2011/1/28
159/98
165/103
157/82
1
1
1
【保健指導(指導内容策定)】
○生活習慣の把握
日常情報
確認結果
運動
マラソン選手として大会にも参加しているため、日常生活において定期的(週2~3日)に1
回1時間程度のジョギングや水泳(潜水)を行っている。
食事
高血圧予防のためにしょうゆや塩分を控えめにする等を実施して、どちらかというと気を
遣っている。
○指導内容の策定
指導内容
(行動計画・目標)
①
②
③
④
出勤時に血圧を測り、記録する
週3回、1回20~30分程度の筋トレをする
【保健指導(実施状況確認)】
○診療情報の把握
診療情報
確認結果
-
診療なし。
①
②
③
④
毎日実施できている
9割実施できている
○実施状況の把握
実施記録
確認結果
※丸数字は指導内容に対応
○指導内容の継続・見直し
指導内容
見直し
保健師コメント
①
②
③
④
-
※丸数字は指導内容に対応
継続
継続
血圧は健診時に高いだけではなく普段の測定でも日常的に高い状況(8割が140/90以
上)が把握できた。
今後も測定を継続した上で、3回に1回の割合で150/100以上になった時点で受診勧
奨を行う。
175
(別紙)
別紙 8
保健指導事例④
ヒアリング事例④:日常情報による指導内容策定
年代/性別
30代/男性
リスク 体重は正常範囲内ではあるが、半年で約4kg(腹囲は5cm)の上昇が見られる。
/症例 また、肝機能の危険因子もやや上昇傾向にある。
事例概要
保健 体重の増加傾向や肝機能リスクから、まず食事や飲酒の指導内容を策定したが、日常情報を
指導 詳細に確認したところ、運動不足であることも分かったので、運動の取り組みを追加した。
検査項目
単位
基準値
身長
体重
BMI
腹囲
血圧(収縮期/拡張期)
空腹時血糖
HDLコレステロール
LDLコレステロール
中性脂肪
GOT(AST)
GPT(ALT)
γ -GT(γ -GTP)
リスク数
cm
-
kg
-
-
25未満
cm
男85・女90未満
mmHg
140/90未満
mg/dl
110未満
mg/dl
40以上
mg/dl
160未満
mg/dl
150未満
IU/l
50未満
IU/l
50未満
IU/l
80未満
-
-
健康診断
2010/5/14
173.3
61.8
20.6
81
96/58
98
105
155
86
25
25
87
1
2010/9/13
日常情報
2010/9/22
2010/10/1
64.0
21.3
84
65.0
21.6
85
65.5
21.8
86
1
1
【保健指導(指導内容策定)】
○生活習慣の把握
日常情報
確認結果
運動
デスクワーク中心の仕事、通勤は自転車で往復30分という生活以外に特に運動は行って
いない。
食事
適正エネルギー1652~1983Kcalをオーバーして、約2400~3000Kcal摂取してお
り、毎日の飲酒(焼酎3杯)がこれに含まれている。
○指導内容の策定
指導内容
(行動計画・目標)
①
②
③
④
週1日休肝日をつくる(月曜日)
油分の多い料理(揚げ物や炒め物など)を食べる回数を減らす
毎日夕食後30回腹筋をする
【保健指導(実施状況確認)】
○診療情報の把握
診療情報
確認結果
-
診療なし。
①
②
③
④
実施できている
3割実施できている
7割実施できている
○実施状況の把握
実施記録
確認結果
※丸数字は指導内容に対応
○指導内容の継続・見直し
指導内容
見直し
保健師コメント
①
②
③
④
-
※丸数字は指導内容に対応
継続
継続
継続
食事については記録することで適正カロリーオーバーを自覚できるようになり、また肝機能
(γ ーGTP)が上昇傾向のため、まずは週1日休肝日を作るように指導した。
運動不足を解消して腹囲の減量(-5cm)に重点をおくために、「毎日腹筋をする」という取
り組みを行い経過を見ることとした。
176
(別紙)
別紙 9
保健指導事例⑤
ヒアリング事例⑤:日常情報による実施状況のモニタリング
年代/性別
40代/男性
リスク 健診結果より体重・腹囲が基準値を超えており、それに伴う脂肪肝も見られる。
/症例 また、日常生活においても血圧が基準値を超えていることがある。
事例概要
保健 半年前の怪我を考慮して、食事面での指導内容のみ策定したが、日常情報で実施状況を観
指導 察するかぎり、やや停滞気味なので、指導目標に運動への取り組みを追加する。
検査項目
単位
基準値
身長
体重
BMI
腹囲
血圧(収縮期/拡張期)
空腹時血糖
HDLコレステロール
LDLコレステロール
中性脂肪
GOT(AST)
GPT(ALT)
γ -GT(γ -GTP)
リスク数
cm
-
kg
-
-
25未満
cm
男85・女90未満
mmHg
140/90未満
mg/dl
110未満
mg/dl
40以上
mg/dl
160未満
mg/dl
150未満
IU/l
50未満
IU/l
50未満
IU/l
80未満
-
-
健康診断
2010/4/13
165.4
81.1
29.6
88
124/70
92
55
127
117
25
30
96
3
2010/12/3
日常情報
2010/12/20
2011/1/24
77.8
28.4
77.3
28.3
78.4
28.7
129/78
125/81
143/97
1
1
2
【保健指導(指導内容策定)】
○生活習慣の把握
日常情報
確認結果
運動 半年前の骨折の影響があり、現在運動はほとんど行っていない。
食事 食事にはやや気を遣ってはいるが、減量に対する取り組みは行っていない。
○指導内容の策定
指導内容
(行動計画・目標)
①
②
③
④
夕食時はご飯のおかわりをしない
大盛りをやめ、普通盛りにする
【保健指導(実施状況確認)】
○診療情報の把握
診療情報
確認結果
-
診療なし。
①
②
③
④
8割実施できている
6割実施できている
○実施状況の把握
実施記録
確認結果
※丸数字は指導内容に対応
○指導内容の継続・見直し
指導内容
見直し
①
②
③
④
保健師コメント
-
※丸数字は指導内容に対応
継続
継続
指導目標を実施しながら減量に取り組んでいたが、年末年始を挟んだためにやや停滞気
味である。
今後は肥満が血圧等に及ぼす影響を認識した上で、指導目標に運動への取り組みを追加
して減量への支援をしていく。
177
(別紙)
別紙 10 保健指導事例⑥
ヒアリング事例⑥:日常情報による実施状況のモニタリング
年代/性別
30代/男性
リスク 体重が増加傾向(+4kg)にあると共に血糖値も上昇傾向にあり、次回の健診では基準値を
/症例 超えることが予測される。
事例概要
保健 健診結果と日常情報を併せて糖尿病の発症リスクを検知したが、日常情報で実施状況を観
指導 察するかぎり、あまり改善できていないので、引続き本人への意識づけを行う。
検査項目
単位
基準値
身長
体重
BMI
腹囲
血圧(収縮期/拡張期)
空腹時血糖
HDLコレステロール
LDLコレステロール
中性脂肪
GOT(AST)
GPT(ALT)
γ -GT(γ -GTP)
リスク数
cm
-
kg
-
-
25未満
cm
男85・女90未満
mmHg
140/90未満
mg/dl
110未満
mg/dl
40以上
mg/dl
160未満
mg/dl
150未満
IU/l
50未満
IU/l
50未満
IU/l
80未満
-
-
健康診断
2010/5/27
176.2
77.6
25.0
87
111/72
108
52
107
365
27
28
54
3
2010/11/25
日常情報
2010/12/14
2011/1/26
79.6
25.6
80.6
26.0
81.5
26.3
1
1
1
【保健指導(指導内容策定)】
○生活習慣の把握
日常情報
確認結果
運動 現場勤務(車両工場)での活動量以外は運動を行っていない。
食事 全く気を遣っていない。
○指導内容の策定
指導内容
(行動計画・目標)
①
②
③
④
1回の間食の量を半分に減らす
夕食時のおかずの量を減らす
【保健指導(実施状況確認)】
○診療情報の把握
診療情報
確認結果
-
診療なし。
①
②
③
④
8割実施できている
2割実施できている
○実施状況の把握
実施記録
確認結果
※丸数字は指導内容に対応
○指導内容の継続・見直し
指導内容
見直し
保健師コメント
①
②
③
④
-
※丸数字は指導内容に対応
継続
継続
健康・病気に対する意識付けがないために、食事や運動への取り組みができない状況で
ある。
今後は糖尿病に対する病識を深めた上で、指導目標に運動への取り組みを追加して減量
への支援を行い、糖尿病の発症予防につなげていく。
178
(別紙)
別紙 11 指導対象者へのアンケート(設問)
A)本人情報
No
設問
3
年齢
4
性別
5
家族構成
回答
歳
□男
□女
□ご自身のみ
□ご夫婦
□ご夫婦とお子様
□その他(具体的にお書きください
)
6
7
(通院している方のみ)
病名
抽出基準
(当てはまるものを一つお選び下さい)
□経年変化
(具体的にお書きください
)
□モニタリング
(具体的におかきください
)
8
今までに保健指導を受けたことがあるか
□ある
□ない
もしあれば、直近の保健指導の時期
直近の保健指導の時期
(
179
)
(別紙)
B)健康意識
No
設問
1-1 ご自身の健康状態(体
重変化、健診結果等)
を把握しています
か?
1-2 健康・病気に関する知
識を十分に持ってい
ると思いますか?
1-3
定期的に運動をして
いますか?
また、その内容を具体
的にお教え下さい。
回答(1 回目)
□把握している
□どちらかというと把握している
□どちらかというと把握していない
□把握していない
□思う
□どちらかというと思う
□どちらかというと思わない
□思わない
□毎日している
□時々している(週に 2 回以上)
□あまりしていない(週に 1 回以下、
不定期)
□意識的にはしていない
回答(2 回目)
□把握している
□どちらかというと把握している
□どちらかというと把握していない
□把握していない
□思う
□どちらかというと思う
□どちらかというと思わない
□思わない
□毎日している
□時々している(週に 2 回以上)
□あまりしていない(週に 1 回以下、
不定期)
□意識的にはしていない
内容
(例:毎日 8,000 歩は歩く
内容
(例:毎日 8,000 歩は歩く
)
1-4
食事に気を遣ってい
ますか?
また、その内容を具体
的にお教え下さい。
)
□思う
□どちらかというと思う
□どちらかというと思わない
□思わない
□思う
□どちらかというと思う
□どちらかというと思わない
□思わない
内容
(例:夜中にお菓子を食べない
内容
(例:夜中にお菓子を食べない
)
1-5
)
他に、健康を意識して
行っている活動はあ
りますか?
□ある
□ない
□ある
□ない
「ある」とお答えの方
は、その内容を具体的
に教えて下さい。
内容
(
内容
(
C)その他
No
設問
2-1 保健指導に対し、何か
ご意見・ご要望があれ
ばお教え下さい。
)
)
回答
例)自分の健康情報を用いることで今まで以上に分かりやすい指導になった
180
(別紙)
別紙 12 指導対象者へのアンケート(設問別・利用者属性別回答結果)
アンケート調査は、参加企業の従業員のうち指導対象者 89 名に対して実施し、平成 23 年 2 月 8 日現在で
27 名(回答率:約 30%)から回答をいただいた。
年齢-性別
設問番号
回答
A
5
8
B
1-1
1回目
1-1
2回目
1-2
1回目
1-2
2回目
1-3
1回目
1-3
2回目
1-4
1回目
1-4
2回目
1-5
1回目
1-5
2回目
1
2
3
4
1
2
1
2
3
4
1
2
3
4
1
2
3
4
1
2
3
4
1
2
3
4
1
2
3
4
1
2
3
4
1
2
3
4
1
2
1
2
回答内容
年齢-性別
ご自身のみ
ご夫婦
ご夫婦とお子様
その他
ある
ない
把握している
どちらかというと把握している
どちらかというと把握していない
把握していない
把握している
どちらかというと把握している
どちらかというと把握していない
把握していない
思う
どちらかというと思う
どちらかというと思わない
思わない
思う
どちらかというと思う
どちらかというと思わない
思わない
毎日している
時々している(週に2回以上)
あまりしていない(週に1回以下、不定期)
意識的にはしていない
毎日している
時々している(週に2回以上)
あまりしていない(週に1回以下、不定期)
意識的にはしていない
思う
どちらかというと思う
どちらかというと思わない
思わない
思う
どちらかというと思う
どちらかというと思わない
思わない
ある
ない
ある
ない
10代 10代 20代 20代 30代 30代 40代 40代 50代 50代 60代 60代 70代 70代 男性 女性 記入 全体
男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性 計
計 なし 計
0
0
1
0
10
0
7
0
5
0
2
0
0
0
25
0
2
27
0
0
0
0
2
0
0
0
1
0
0
0
0
0
3
0
0
3
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
1
0
0
0
2
0
0
2
0
0
0
0
5
0
6
0
1
0
1
0
0
0
13
0
2
15
0
0
1
0
3
0
1
0
2
0
0
0
0
0
7
0
0
7
0
0
1
0
10
0
4
0
3
0
1
0
0
0
19
0
2
21
0
0
0
0
0
0
3
0
2
0
1
0
0
0
6
0
0
6
0
0
1
0
3
0
2
0
3
0
1
0
0
0
10
0
1
11
0
0
0
0
5
0
4
0
2
0
1
0
0
0
12
0
0
12
0
0
0
0
2
0
1
0
0
0
0
0
0
0
3
0
1
4
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
4
0
4
0
4
0
1
0
0
0
14
0
1
15
0
0
0
0
5
0
3
0
1
0
1
0
0
0
10
0
1
11
0
0
0
0
1
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0
0
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0
0
0
0
0
1
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0
1
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0
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0
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0
0
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0
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1
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1
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0
1
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1
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0
0
4
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0
4
0
0
0
0
3
0
7
0
2
0
1
0
0
0
13
0
1
14
0
0
0
0
5
0
0
0
1
0
0
0
0
0
6
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1
7
0
0
0
0
1
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0
0
1
0
0
0
0
0
2
0
0
2
0
0
1
0
1
0
3
0
1
0
2
0
0
0
8
0
0
8
0
0
0
0
5
0
4
0
2
0
0
0
0
0
11
0
1
12
0
0
0
0
4
0
0
0
1
0
0
0
0
0
5
0
1
6
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
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