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補助人工心臓治療の潮流

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補助人工心臓治療の潮流
京府医大誌
122
(12),843~850,2013.
補助人工心臓治療の潮流
<特集「心臓植込みデバイスの現状」
>
補助人工心臓治療の潮流
五
條
理
志*
京都府立医科大学大学院医学研究科人工臓器・心臓移植再生医学講座
Evol
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抄
録
植込み型補助人工心臓が 2011年 4月に保険償還されて 3年以上が経過した.アメリカの I
NTERMACS
というレジストリとほぼ同等の J
MACSと名付けられた補助人工心臓市販後レジストリシステムが,本
邦でも稼働しており,補助人工心臓治療の透明性は他の先端医療の範になるまでになっている.J
MACSは補助人工心臓治療のリスク・ベネフィットの明確化と対象機器の植込み後の性能評価を行う
ことを目的に 2010年 6月に設立され,次世代の人工心臓開発,治療成績に影響を及ぼす因子解析を行
うことによる管理方法の最適化を強力に推し進める役割を果たすと考えられている.アメリカでは,
I
NTERMACSによる統計と So
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nによる心臓移植統計
がオープンな形で提供されており良好な連携が構築されてきたが,漸く本邦においても症例が蓄積され
始め同様の状況が生まれた.これらの統計を見ても,重症心不全治療はここ数年で大きく転換し,心臓
移植の立ち位置にも影響を及ぼす程になっている.本稿では,J
MACSによる統計データを基に,ここ
数年の本邦における補助人工心臓治療を概観する.
キーワード:重症心不全,補助人工心臓,心臓移植.
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n.
平成25年10月30日受付
*連絡先
五條理志 〒602
‐8566京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465番地
g
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j
p
843
五
844
は
じ
め
條
に
重症心不全に対する治療の最終ラインは,心
臓移植が標準治療となっている.しかし,ド
ナー不足・厳しい選択基準を背景に,その症例
数は世界の統計においては 2000年頃より 4000
例程度でプラトーに達している.日本において
は臓器移植法が改正され,脳死心臓移植が多く
なったが,それでも年間 30例前後しか行われて
いない.医療統計学的には,どれほどの潜在的
対象者として存在しているのか,心不全の詳細
な統計データが存在しないため,欧米のデータ
である心不全の人口に占める割合が 2
~3%,重
症心不全はその中の 0.
4%程度という数字を,
日本の人口動態に当てはめ,75歳以下を 30%
程度と考えると,約 2800人という数字が算出
される1).このギャップは,まだ重症心不全の
患者が治療の選択肢としての世界に既に存在す
る治療法の正しい情報を与えられぬままになっ
ていることを示唆している.
人工心臓開発は 1960年代に遡るが,当初は
傍流であった完全置換型ではなく補助人工心臓
が現在の本流となっている.更には,拍動流型
が生理的であり開発目標とされてきたが,これ
も傍流であった定常流型が,その小型化の容易
さと生体適合性の良好さの利点を十分に生か
し,残存心筋機能と共に拍動流を作り出すこと
などの利点から様々なハードルを越えてスタン
ダードとなっている.ここ最近の人工心臓の小
型化とDe
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r
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py
(DT:長期在宅治療)
2)
という概念 の普及は,欧米においては重症心不
全治療としての Go
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r
dである心臓移植の
ポジションにさえ大きな変化をもたらし始めて
いて,重症心不全治療(心臓移植と長期使用型人
工心臓)の統計からも,それらの実施件数におけ
るトレンドが転換し,軸足を人工心臓に移して
いることが明らかである3)4).アメリカにおいて
は,TheI
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(I
NTERMACS)
という長期使用型人工心臓のデータベースが,
保険診療とリンクして運営されており,現在で
は登録症例が 6000例を越え統計学的に様々な
理
志
解析が可能な状況になっている.アメリカの心
臓移植統計も毎年統計を発表しており,オープ
ンに詳細に比較検討が出来る環境が整っている.
この環境が,新しいテクノロジーのさらなる発
展を促進し,より良い治療を確立するための重
要な基盤をなしている.一方,日本では,2011
年 4月に植込み型補助人工心臓が保険診療の下
で使用可能となった.ただ,その適応は心臓移植
へのブリッジ(Br
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n:BTT)
のみである.日本においても I
NTERMACSに
当たるJ
MACS(J
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)が立ち上が
り5),本治療における統計値も定期的に報告さ
れるようになっている6).本稿では様変わりし
つつある重症心不全の現況を J
MACSのデータ
を基本にその概要を報告する.
重症心不全の定義
心不全の定義は,
“心筋障害により心臓のポ
ンプ機能が低下し,末梢主要臓器の酸素需要量
に見合うだけの血液量を絶対的にまた相対的に
拍出できない状態であり,肺,体静脈系または
両系にうっ血を来たし日常生活に障害を生じた
病態”とされている(慢性心不全ガイドライン)
.
客観的な指標としては,左室駆出率は有意な指
/
kg
/
mi
n以下であるこ
標にはならず,VO2:14ml
とや 6分間歩行が 300m以下であること等であ
るが,心臓そのものの機能の客観的な指標が存
在しない7).現在,重症心不全を対象とする植
込み型補助人工心臓の適応を決定する上におい
て,リスクが層別化され,I
NTERMACSPr
o
f
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i
ng
(Fi
g
.
1A)が提唱され,その妥当性はレジ
ストリデータから証明されている.
●
重症心不全の治療戦略
重症心不全は,時間とともに病状は著しく変
化するもので,その経過と全身状態によって治
療法は決定されるもので,極めて流動的であ
る.それは,初期の適応のみでなく,人工心臓
治療を行っている間においても同様の配慮が必
要である8).また,人工心臓の種類は体外式・植
込み型,一時型・長期使用型に分けられ,適切
補助人工心臓治療の潮流
845
Fi
g
.1. A;I
NTERMACSPr
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ng
,B;I
NTERMACS層別化による補助人工心臓症例推移,C;本邦にお
ける I
NTERMACS層別化による補助人工心臓症例数
な適応において使用される必要がある.人工心
臓を用いた治療戦略としては Br
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(BTT)
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(DT)
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(BTD)
,Br
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(BTR)が挙げられる.日本では,現在,DTへ
の保険償還の為の交渉が行われており,更には
心臓移植適応の年齢制限である 65歳が植込み
型補助人工心臓においても適応されているが,
65歳以上への適応拡大も検討され始めている.
J
MACS:日本の補助人工心臓
市販後レジストリ
2008年に本レジストリは産官学の連携にお
いて計画が始動し,2010年 6月に日本において
市販されている補助人工心臓に関するデータ収
集を目的に,全例登録を義務付けた観察的レジ
ストリとして登録が開始された.現在は,承認済
みの植込み型 3機種(Dur
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,EVAHEART,
He
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Ma
t
eⅡ)及び体外型 1機種(Ni
pr
oVAS)
を対象に,H25年 6月の時点で 27施設が参加し
ている.目的は,使用される人工心臓の長期成
績を様々な交絡因子と共にデータベース化し,
客観的な機械の性能と管理方法の改善による成
績向上を目指すものである.ステークホルダー
は,植込み医療機関,人工心臓関連企業,医薬
品医療機器総合機構(PMDA)
,関連学会(日本
人工臓器学会,日本臨床補助人工心臓研究会,
日本胸部外科学会,日本心臓血管外科学会,日
本循環器学会,日本心不全学会,日本心臓病学
会)と独立したデータセンターからなっている.
医療機関はインターネットを介して症例登録を
データセンターに対して行い,それを人工心臓
関連企業は自社製品に関してのみ閲覧すること
五
846
條
ができる.企業はこの情報を,薬事法に基づく
不具合報告等に利用することができる.関連学
会・PMDAは連携してこのデータベースをスー
パーバイズする体制が取られている.医療機関
は So
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nとしてデータセンター
からの査察を受けなければならない.
登録は,術前に患者プロファイル,既往歴,合
併症,NYHA分類,血行動態,薬物治療,臨床
検査値,QOL指標,6分間歩行などを記録し,
手術後 1週間,1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月後,それ
以降は半年ごとに装置のパラメーターと共に記
録がなされる.イベント発生時には随時,その
詳細が報告される仕組みとなっている.データ
センターは NPO法人日本臨床研究支援ユニッ
ト(J
CRSU)へ委託され,プロジェクトオー
ナー・リーダーの下,プロジェクト・オペレー
ション,データマネージメント,監査,システ
ム支援,品質保証の部門に分かれて 10数名のス
タッフによって運営されている.
有害事象の登録と関連企業への通知は,この
システムの中でも特記すべきものである.死亡
(植込み 15日以内)
,装置の不具合,主要な感
染,神経障害,大量出血(いずれも植込み 30日
以内)等の主要なものを含めて,右心不全,心
筋梗塞,不整脈,心嚢水貯留,高血圧,非中枢
系動脈血栓塞栓,静脈血栓塞栓,溶血,腎機能
障害,肝機能障害,呼吸不全,精神症状,創部
離開なども定義を行い,迅速に登録することと
なっている.これはデータセンターより当該人
工心臓関連企業にメールにて通知されることと
なっている.これにより,企業は迅速に不具合
情報を入手し,対応策を行うことが可能とな
る.このようなシステムは,植込み型デバイス
の領域にあって極めて先駆的なシステムであ
り,安全・安心な医療デバイスの今後の進路を
示すものであると考えられる.
J
MACSSt
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alRepor
tから
2010年 6月の J
MACSの運用開始より 2013
年3月31日までに補助人工心臓植込みを行われ
た患者 181症例の中で,左室補助人工心臓のみ
(両室補助は除かれている)
,19歳以上,初回の
理
志
植込みに限定して 135症例を検討した報告がな
されている.植込み型 91症例,体外設置型 44
症例が登録され,術前診断は,体外設置型・植
込み型ともに約 80%が拡張型心筋症によって
占められている.虚血性心疾患が多くを占め
ている欧米とは対照的な結果となっている.
I
NTEMACSPr
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f
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ngでの層別化(Fi
g
.
1A)で
は,レベル 1においての植込みは,そのほとん
どが体外設置型で行われている.レベル 1への
人工心臓植込みにおける割合が全体の 20%に
及ぶ割合は,欧米での割合より若干多いもの
の,そのほとんどが体外設置型であることは,
大きな違いである
(Fi
g
.
1B)
.欧米においてのレ
ベル 1への対応は,神経障害を有する者に関し
ては,簡易型 ECMO
(Ex
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)へと移行し,Br
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o
n
のための循環補助が行われ,補助人工心臓の植
込みは行われていないが,それ以外の場合は必
要があり,かつ経験を豊富に有する施設であれ
ば以前よりは前向きに植込み型人工心臓を装着
する状況とに変化している(Fi
g
.
1C)
.また,本
邦においてはレベル 4,
5においてはまだほとん
ど人工心臓植込みの実績はない状況にあり
(Fi
g
.
1B)
,これもI
NTERMACSのデータとは好
対象である.欧米では 2006年以降,植込み型
補助人工心臓の成績が極めて良好であること,
一世を風靡した左室形成術の限界,移植のド
ナー不足,医療経済的に良好なデバイスである
ことが認知されたことなどが相まって,適応も
極めて急速に軽症例にシフトし(Fi
g
.
1C)
,逆に
重症例においては判断を行うために安価な遠心
ポンプを用いた ECMOが使われるようになっ
ている.
補助人工心臓症例数はほぼ一定に累積数を延
ばしており,人工心臓治療の Out
c
o
meデータを
解析するに足るものにしている (Fi
g
.
2A)
.結
果は,心臓移植の予後が世界のデータに比べて
格段に良好な状況と同様に,極めて良好である
ことが改めて示される結果となった.全体とし
ての一年生存率は 86%を示し,植込み型 87%,
体外設置型 84%となっている (Fi
g
.
2B&C)
.
I
NTERMACSの層別化を行ったデータでも,レ
補助人工心臓治療の潮流
847
Fi
g
.2. A;本邦における人工心臓装着症例推移,B;補助人工症例生存率 ,C;植込み型 /
体外設置型補助人工心臓別の
生存率 ,D;I
NTERMACS層別化による生存率(J
MACSSt
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lRe
po
r
t
(2010年 6月~2013年 7月) 改変)
ベル 1
;87%,レベル 2
;89%,レベル 3
;80%,
レベル 4
;100%となっており(Fi
g
.
2D)
,レベル
1で有意に低い傾向は示されず,レベル 1にお
いても He
t
e
r
o
g
e
ni
e
t
yがあり十分な症例の選択
を行うことで,その成績は維持することが可能
なのかもしれない.しかしながら,まだそれを
示すには十分な症例数の蓄積が必要で,更なる
層別化の基準が必要であろう.
有害事象に関しては,装置の不具合,感染,神
経機能障害,大量出血が比較的割合が高いもの
であると報告されている.Ka
pl
a
nMe
i
e
rPl
o
t
において 1年間での非発生割合を植込み型,体
外設置型で検討されている.装置の不具合に関
しては,植込み型は外部コントローラ,外部
バッテリ,接続コード,ポンプ駆動部に発生し
たものが主要なもので,体外設置型においては
装置内血栓が主要なものであり,それぞれ 52%
と 49%であった(Fi
g
.
3A)
.主要な感染症は
43%と 24%であり,体外設置型において指摘さ
れていたドライブライン感染の多さが明らかと
なった(Fi
g
.
3B)
.しかしながら,植込み型にお
いても 6割もの感染が起こっていることはまだ
まだ感染対策を次世代の人工心臓開発に盛り込
む必要が有ることを示している結果である.神
経機能障害においても,植込み型,体外設置型
での非発生率はそれぞれ 54%,62%と有意では
ないにせよ,体外設置型以上に,植込み型にお
いて約半数で神経機能障害が生じていることと
なり,その抗凝固管理は未だに大きな問題を抱
えていることを示唆している(Fi
g
.
3C)
.一方,
大量出血の非発生率は 85%,78%であり,多く
は周術期に発生しており,安定した状況では起
こりづらいことが分かったが,感染を契機に体
外設置型では 2年以降において再び発生率の上
昇が見られ,体外設置型での移植待機の限界を
示す結果が明らかとなった(Fi
g
.
3D)
.
5th I
NTERMACSannualr
epor
tから
I
NTERMACSが設立されてより 5回目の年次
レポートによると4),植込み型定常流補助人工
心臓の増加傾向も落ち着きを示しており,2012
年上半期では 862例の実績となり年間約 1800
848
五
條
理
志
Fi
g
.3. A;本邦における補助人工心臓装置不具合の非発生率,B;主要感染症の非発生率,C;神経機能障害の非発生
率,D;大量出血の非発生率(J
MACSPr
o
g
r
e
s
sRe
po
r
t
(2012年版)改変)
症例程度と見込まれ,2011年からほぼ増減なし
という状況となりそうである.2008年より極
めて急激に増加傾向を示して心臓移植症例を追
い抜くかに思える状況であったが,ほぼ同数の
症例を分かつ形に落ち着いていく様相を示して
いる.一方,DTは 2010年に 500症例を越える
実績を示し,2012年も 800症例に達する見込み
であり,DTが市民権を確立した状況が読み取
れる.術前の I
NTERMACSPr
o
f
i
l
i
ngにおいて
は,一時期はレベル 1に関してはほとんど植込
み型補助人工心臓の適応外とでも言えるような
状況であったが,最近は再びレベル 1に対して
も患者病態の更なる評価基準が作られ,慎重な
患者選択のもと人工心臓総植込み数の 16%程
度がレベル 1の患者が占めるに至っている.日
本においては,数年前の欧米の状況に引きずら
れる形で,レベル 1に関してはほぼ体外設置型
を適応している現状であるが,そろそろ植込み
型補助人工心臓を注意深い患者選択の下に,慎
重に施行していく時期に来ていると考えられて
いる.植込み型定常流左室補助人工心臓の生存
率は 1年が 80%で,2年が 70%,それ以降も 1
年にほぼ 10%の死亡が発生するカーブを描い
ている.一方,拍動流型においては 1年生存率
が 60%程度までと悪く,2年に及んでは 50%を
切るまでに落ち込んでいる.この結果が著しい
植込み型への傾斜に繋がっており,日本におい
てはほとんど差がでていないことと比較すると,
ここでも鮮明な違いが生じている点は特記すべ
きである.ただ,両心室補助人工心臓の周術期
死亡率は拍動流でも定常流でも同等で 30%程
度の死亡率を示している.I
NTERMACSによ
る生存率は,植込み型補助人工心臓が行われ始
めた当初はその層別化と良好に相関したが,現
在はレベル 1
~4において有意な生存率に相違
はない結果となっている.これは,層別に管理
の方法が十分に調整され,それが周知され実行
されていることを物語っており,I
NTERMACS
というレジストリがもたらした大きな成果の 1
つであると考えられている.
補助人工心臓治療の潮流
お
わ
り
に
重症心不全治療が補助人工心臓を用いて行わ
れるようになり,装着後在宅での QOLも向上
し,就学・就職・結婚・アウトドアでのレジャー
をも行っている患者さんを見るようになってい
る.機械との共生はテクノロジーの進歩ととも
に,更に質の高いものを提供してくれるように
文
1)Tr
o
c
huJ
N,Le
pr
i
nc
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保し,より良い技術開発に欠かせない存在であ
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クノロジーを進化させる重要なパートナーとな
ると考えられる.
開示すべき潜在的利益相反状態はない.
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著者プロフィール
五條 理志 Sa
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所属・職:京都府立医科大学大学院医学研究科人工臓器・心臓移植再生医学講座・教授
略
歴:1990年 3月 奈良県立医科大学卒業
1990年 4月 奈良県立医科大学第三外科入局
1997年 4月 Ha
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1999年 4月 埼玉医科大学医学部第一外科学助手
2000年 1月 埼玉医科大学総合医療センター心臓血管外科助手
2002年 7月 埼玉医科大学総合医療センター心臓血管外科講師
2007年 3月 埼玉医科大学総合医療センター心臓血管外科助教授
2008年 5月 東京大学大学院医学系研究科重症心不全治療開発講座特任准
教授
2011年1
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月 現職
専門分野:人工臓器,再生医療,心臓血管外科
最近興味のあること:医療の国際展開(特にアジアに向けて)
主な業績(府立医大着任後)
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