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94 表 3-54:HS Code と GTAP 業種分類との関係(3)

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94 表 3-54:HS Code と GTAP 業種分類との関係(3)
表 3-54:HS Code と GTAP 業種分類との関係(3)
2002 HS Code
80 Tin and articles thereof.
81 Other base metals; cermets; articles thereof.
Tools, implements, cutlery, spoons and forks, of base metal; parts thereof of
82
base metal.
83 Miscellaneous articles of base metal.
84 Nuclear reactors, boilers, machinery and mechanical appliances; parts thereof.
Electrical machinery and equipment and parts thereof; sound recorders and
85 reproducers, television image and sound recorders and reproducers, and parts
and accessories of such articles.
Railway or tramway locomotives, rolling-stock and parts thereof; railway or
86 tramway track fixtures and fittings and parts thereof; mechanical (including
electro-mechanical) traffic signalling equipment of all kinds.
Vehicles other than railway or tramway rolling-stock, and parts and
87
accessories thereof.
88 Aircraft, spacecraft, and parts thereof.
89 Ships, boats and floating structures.
Optical, photographic, cinematographic, measuring, checking, precision, medical
90
or surgical instruments and apparatus; parts and accessories thereof.
91 Clocks and watches and parts thereof.
92 Musical instruments; parts and accessories of such articles.
93 Arms and ammunition; parts and accessories thereof.
Furniture; bedding, mattresses, mattress supports, cushions and similar stuffed
94 furnishings; lamps and lighting fittings, not elsewhere specified or included;
illuminated signs, illuminated name-plates and the like; prefabricated buildings.
95 Toys, games and sports requisites; parts and accessories thereof.
96 Miscellaneous manufactured articles.
97 Works of art, collectors' pieces and antiques.
99 Commodities not specified according to kind
GTAP7.0 分類
36(Metals nec)、一部 37(Metal products)
36(Metals nec)、一部 37(Metal products)
37(Metal products)
37(Metal products)
41(Machinery and equipment nec)、一部 31(Paper products, publishing)、33(Chemical,
rubber, plastic products ) 、 37 ( Metal products ) 、 38 ( Motor vehicles and parts ) 、 39
(Transport equipment nec)、40(Electronic equipment)
内容に応じて 40(Electronic equipment)と 41(Machinery and equipment nec)、一部 33
(Chemical, rubber, plastic products)、34(Mineral products nec)
39(Transport equipment nec)、一部 38(Motor vehicles and parts)
内容に応じて 38(Motor vehicles and parts)、39(Transport equipment nec)、41(Machinery
and equipment nec)、42(Manufactures nec)
39(Transport equipment nec)、一部 27(Textiles)
39(Transport equipment nec)
内容に応じて 40(Electronic equipment)と 41(Machinery and equipment nec)、一部 42
(Manufactures nec)
41(Machinery and equipment nec)、一部 29(Leather products)
42(Manufactures nec)
41(Machinery and equipment nec)、一部 37(Metal products)
内容に応じて 27(Textiles)、30(Wood products)、33(Chemical, rubber, plastic products)、
34(Mineral products nec)、37(Metal products)、41(Machinery and equipment nec)、42
(Manufactures nec)
42(Manufactures nec)
42(Manufactures nec)、一部 29(Leather products)、30(Wood products)
42(Manufactures nec)、一部 41(Machinery and equipment nec)
出所:Hutcheson, Thomas, HS2002-CPC 1.1-ISIC, Rev3-GTAP Concordance (GTAP Resource #1916), 2006
(https://www.gtap.agecon.purdue.edu/resources/res_display.asp?RecordID=1916)等より、作成。
94
4.貿易円滑化の持つ経済的位置付け
4-1 貿易円滑化による潜在的効果
(1)貿易円滑化に伴う関税率削減に相当する効果
表 4-1:貿易取引コストの関税等価率(まとめ)
出所:3-1の基礎データを3-2のステップに則して株式会社三菱総合研究所作成。
95
3.における検討・推計の結果として得られた貿易取引コストの関税等価率の全体像は、前頁
に示す通りである。国によって違いはあるものの、全体としてみると、輸出・輸入共貿易額に対
して数%の比率を占めていることがわかる。一見すると、比率は小さいが、3.の各国の産業分
類別関税等価率をまとめた表からも明らかなように、産業分類によっては 5%を超える関税等価
率を示している分野もあり、貿易円滑化が持つ潜在的な効果は決して無視できないと言える。
貿易取引コストを推計した既存の先行研究を見ても、その分析手法には様々なものがあり且つ
貿易取引コストの範囲についても様々な捉え方があるが、貿易取引に関わるコストが貿易額の
数%~10%弱に相当するという推計結果が得られている。
表 4-2:貿易取引コストと貿易円滑化の効果に関する既存の先行研究
既存研究
US NCITD (1971)
範囲
• 直接コスト(文書コス
ト、金融・保険、輸
送、フォワーダー等と
の契約)
コストの推計
便益の推計
備考
• 総コストはアメリカの
輸出入合計の
7.5%
-
• 企業調査に基
づく
Ernst and Whinney
(1988a,b)
for
Cecchini et al
(1988)
• 直接コスト(通関規
制遵守)
• 間接コスト(道路
hailers、逸失事業
機会)
• 通関規制遵守が
EC 域内貿易額の
約 1.5%
• 逸失事業機会が
EC 域内貿易額の
1-3%
-
• 企業調査に基
づく
SWEPRO (1985)
• 直接コスト(通関規
制遵守)
• 貿易総額の 8%
-
• 一部、スウェーデン
の税関・ビジネス
界のデータ
EU COST 306
Final
Report
(1989)
• 直接コスト(文書コス
ト)
-
不明
UNCTAD (1994b)
• 直接・間接コスト
(銀行・保険、通
関、事業情報、輸
送、通信を含む取
引コスト)
• 輸入価額の
2-3%相当の取引
コストの抑制
• NCITD、EU、
SITPRO 等の研
究を参照
Dee, Geisler and
Watts (1996)
• 貿易円滑化・
TBT・競争政策・
政府調達・透明性
を含む APEC 貿
易自由化プログラム
-
APEC (1997)
• 貿易円滑化・
TBT・競争政策・
政府調達・透明性
を含む APEC 貿
易自由化プログラム
-
Staples (1998), et
al
• 直接コスト(通関
規制遵守)
• 貿易総額の
7-10%
• 貿易総額の
3.5-7%、エラー発
生の場合は
10-15%
• 取引コストは全世
界の貿易総額の
10%、貿易関連
取引コストは同
7-10%
• 貿易円滑化だけ
で貿易額の 5%、
TBT・競争政策・
政府調達・透明性
措置も考慮すると
10%の便益
• 貿易円滑化の直
接的便益に関す
る推計のコンセンサス
を 2-3%とした上
で、1-2%というデ
ータを利用
-
• 二次データを利
用
• 二次データを利
用
• 二次データを利
用
出所:John S. Wilson, Catherine Mann, Yuen Pau Woo, Nizar Assanie, Inbom Choi, Trade Facilitation: A Development
Perspective in the Asia Pacific Region, 2002, Table 2-2.
96
また、APEC では既にこれまでも貿易取引コストの削減に向けた取り組みがなされてきた。例え
ば、2001 年の APEC 首脳会議では上海目標として、2001 年から 5 年かけて貿易取引コストを 5%
削減することが打ち出された。その後、2006 年の APEC 首脳会議ではハノイ宣言として上海目標
が達成されたことを確認した上で、2010 年までに更に 5%の貿易取引コストを削減することが盛
り込まれた。更に、2009 年の APEC 首脳会議では、世界銀行の Doing Business でも取り上げられ
ている「Starting a Business」、「Getting Credit」、「Enforcing Contracts」、「Trading Across
Borders」、
「Dealing with Permits」という事業環境に関する 5 つの領域において、2011 年まで
に 5%、2015 年までに 25%の改善(コスト、時間、手続き)を図ることが打ち出されている。ま
た、Trade Facilitation Action Plan II を通じて 2006 年~2008 年にかけて 3.2%のコスト削減
が図られたが、2010 年までに事業上の取引コストを更に 5%削減することも謳われている。
以上を踏まえて、表 4-1 に示した現状における貿易取引コストが今後 2015 年までに 25%削減
されるという想定をおくと、国及び産業分類による違いはあるが、関税率に換算して 1~2%のコ
ストの削減が図られることになる。
また、物流事業者に対するインタビュー結果からは、現状の国際海上輸送に係る貿易取引コス
トの削減可能性については、以下のような意見が聞かれた。
表 4-3:事業者の視点から見た貿易取引コストの削減可能性
○ Ports and terminal handling charge は船会社による料金設定によるものであり貿易円滑化とは直接関
連しないが、Inland transportation and handling については効果が期待できる
・
実態的には内陸輸送運賃は既にかなり低い水準にあるので直接的なコスト削減余地は小さい
・
但し、インフラの整備による施設回転率の向上のメリットは大きい
○ 特に、輸入については手続きの効率化・簡素化が図られているが、一層のコスト削減余地が大きい
(輸入については、関税が関係するために、各種手続きにかかるコストは大きくなる傾向が相対的に
強い)
・
輸出国現地での検疫の活用
・
事前申請手続きの拡大
・
関税区分の簡素化
出所:国際ロジスティクス企業及び物流事業者に対するインタビュー調査結果。
以上は単純に貿易取引コストを関税率に置き換えた場合の、貿易円滑化の効果である。しかし
ながら、前述したように、貿易円滑化がグローバルなサプライチェーンの効率化を通じて、産業・
経済活動の効率化に波及していくという効果を見逃すこともできない。
この点については、貿易円滑化の対象となる貿易取引コストを要素分解することで、検討する
ことが可能になる。すなわち、生産要素のどの部分に貿易円滑化が効いてくるかを明らかにする
ことで、GTAP によるシミュレーションを通じて効率性・生産性に及ぶインパクトを推計すること
が可能となる。
97
(2)貿易円滑化の効果経路の細分化
貿易取引コストを要素別に検討するアプローチとして、以下では、世界銀行の Doing Business
のデータを出発点として、ある程度集計化された産業・経済データを組み合わせることで、貿易
取引コストの要素分解を試み、貿易円滑化の効果経路を細分化した分析につなげることとする。
なお、こうしたアプローチでは、通関業者・倉庫業者・運輸業者等関連する事業主体の事業活
動に関わる生産要素を個別に推計・積算して要素毎に貿易取引コストを積み上げることで得られ
るデータ程には個別性・正確性を担保できないという限界がある。分析結果を解釈する場合には、
こうした点を十分留意することが必要であるが、本調査研究における分析の基礎データとして用
いた世界銀行の Doing Business の 4 つのプロセスコストデータと近い分類レベルにおける近似
的・試行的なアプローチとして位置付けることとする。
①Documents preparation に係るコスト
Documents preparation に係るコストは、通関業者や物流事業者が顧客に対して手数料として
請求する定額・定率のコストとそれ以外の部分とに大別できると考えられる。そこで、(独)日本
貿易振興機構の『ASEAN 物流ネットワークマップ 2008』に記載されているシンガポール・マレー
シア・インドネシア・ベトナムの書類作成料(船荷証券当りの定額で設定された書類作成料)の
データを手数料に相当する手続きコストとして、推計を行った。
これら諸国の書類作成料の比率は経済発展段階との間に一定の相関関係を有している。経済発
展段階が上昇するにつれて、必要な書類を作成することができるホワイト・カラーの希少性が減
少するために、書類作成料に占める労働コストの比率が低下するためであると考えられる。こう
した想定に基づいて、1 人当たり GDP の大きさを「10,000 ドル以上」
・
「3,000 ドル以上 10,000 ド
ル未満」・「1,000 ドル以上 3,000 ドル未満」「1,000 ドル未満」4 つのグループに分けて、その他
の諸国の Documents preparation コストを分解した。
表 4-4:各国の 1 人当たり GDP による手続コスト比率の想定
出所:(独)日本貿易振興機構、『ASEAN 物流ネットワークマップ 2008』。2009 年。
上記の結果は次頁の表 4-5 に示す通りであり、37 頁・38 頁の表 3-3 と表 3-4 に前掲した世界銀
行の Doing Business の Documents preparation のコストに当てはめて細分化した結果を、表 4-6
と表 4-7 にまとめた。
98
表 4-5:各国の 1 人当たり GDP および想定手続コスト比率
出所:The World Bank, Doing Business 2010、World Development Indicators、(独)日本貿易振興機構、『ASEAN 物流ネ
ッ ト ワ ー ク マ ッ プ
2008 』 よ り 、 株 式 会 社 三 菱 総 合 研 究 所 作 成 。
99
100
表 4-6:「Document preparation」の細分化(輸出)
手続コスト 労働コスト
($)
($)
Australia
Canada
Chile
China
China, Hong Kong SAR
Japan
Malaysia
Mexico
Negara Brunei Darussalam
New Zealand
Papua New Guinea
Peru
Philippines
Rep. of Korea
Republik Indonesia
Russian Federation
Singapore
Taiwan
Thailand
USA
Viet Nam
Cambodia
India
Laos
Myanma Naingngan
Austria
Belgium
Bulgaria
Cyprus
Czech Rep.
Denmark
Estonia
Finland
France
Germany
Greece
Hungary
Ireland
Italy
Latvia
Lithuania
Luxembourg
Malta
Netherlands
Poland
Portugal
Romania
Slovakia
Slovenia
Spain
Sweden
United Kingdom
86
68
35
36
21
60
22
65
57
66
26
43
27
82
30
52
32
22
70
57
13
26
50
14
-
199
157
100
214
49
140
63
185
133
152
192
122
162
188
180
148
73
164
200
133
94
194
300
106
-
39
111
52
60
32
61
60
30
32
43
71
62
57
66
60
51
91
-
91
258
148
140
73
142
140
70
73
99
164
143
132
152
140
119
209
-
39
45
45
130
63
30
76
35
42
91
105
105
371
145
70
175
81
98
出所:The World Bank, Doing Business 2010、World Development Indicators、(独)日本貿易振興機構、『ASEAN 物流ネッ
トワークマップ 2008』より、株式会社三菱総合研究所作成。
101
表 4-7:「Document preparation」の細分化(輸入)
手続コスト 労働コスト
($)
($)
Australia
81
188
Canada
56
129
Chile
48
137
China
37
223
China, Hong Kong SAR
24
54
Japan
60
140
Malaysia
22
63
Mexico
78
222
Negara Brunei Darussalam
43
99
New Zealand
60
140
Papua New Guinea
26
192
Peru
48
137
Philippines
27
160
Rep. of Korea
82
188
Republik Indonesia
30
180
Russian Federation
52
148
Singapore
27
61
Taiwan
31
224
Thailand
78
222
USA
62
143
Viet Nam
8
62
Cambodia
25
185
India
56
334
Laos
14
106
Myanma Naingngan
Austria
44
101
Belgium
106
244
Bulgaria
65
185
Cyprus
115
265
Czech Rep.
42
98
Denmark
61
142
Estonia
63
147
Finland
54
126
France
47
108
Germany
55
127
Greece
42
98
Hungary
59
136
Ireland
50
115
Italy
66
152
Latvia
110
255
Lithuania
60
140
Luxembourg
91
209
Malta
Netherlands
67
155
Poland
45
105
Portugal
91
209
Romania
104
296
Slovakia
63
145
Slovenia
39
91
Spain
76
175
Sweden
47
107
United Kingdom
66
154
出所:The World Bank, Doing Business 2010、World Development Indicators、(独)日本貿易振興機構、『ASEAN 物流ネッ
トワークマップ 2008』より、株式会社三菱総合研究所作成。
102
②Custom clearance and technical control に係るコスト
世界銀行の Doing Business のデータによれば、日本の Custom clearance and technical control
に係るコストは輸出で 58 ドル・輸入で 116 ドルとなっている。日本の「通関業務料金最高額表」
によると、通関業務のうち輸出申告の最高額は 1 件当り 5,900 円、輸入申告の最高額は 11,800 円
となっている。また、同様にアメリカにおける通関手数料規定(merchant processing fee, harbor
maintenance fee, customs clearance charges)に基づいて、重量 10 トン・貿易価額 20,000 ド
ルの 20 フィートコンテナの手数料を試算すると、67 ドルとなる。
以上を念頭において、世界銀行の Doing Business の Custom clearance and technical control
データについては、手続コストと想定することとする。なお、専門家・有識者に対するインタビ
ュー調査からは、業務委託手数料等を勘案すると、
世界銀行の Doing Business の Custom clearance
and technical control データについては、実態と比較して過大評価されているのではないかと
のコメントが得られている。
③Ports and terminal handling 及び Inland transportation and handling に係るコスト
Ports and terminal handling は、荷物の積み下ろし、港湾内での輸送等に相当するものであ
り、倉庫での保管・荷役に関連するコストであると言える。一方、Inland transportation and
handling は港湾と主要都市間の輸送及び荷物の積み下ろしに関連するコストである。
その意味では、前者は倉庫業、後者は陸上運送業のサービスにほぼ該当すると考えることがで
きる。そこで、各国の産業連関表から、前者については Supporting and auxiliary transport
activities、後者については Land transport を取り上げ、付加価値に占める労働コスト、資本コ
スト・マージン(粗事業利益=純事業利益+減価償却)
、ネットの税金(生産・輸入品に課される
税-補助金であり、税よりも補助金の方が大きい場合には付加価値に占める比率がマイナスにな
る場合がある)に分割する。但し、ネットの税金については、本来生産要素に係るコストではな
いので、ネット税金額を除外した付加価値額をいったん計算した上で同額に占める労働コストと
資本コスト・マージン比率とに二分した。
なお、特記されていない限り、Supporting and auxiliary transport activities については、
定義上、輸送施設の運営・管理といった輸送前後の貨物取り扱いに関連する活動はもちろん該当
するものの、旅行代理店等の旅客輸送関連サービスも含まれている点には留意が必要である。Land
transport についても、パイプラインでの輸送や旅客輸送が含まれている点には注意が必要であ
る。
データは、オーストラリア(2004/05 年)、カナダ(2005 年)
、中国(2002 年)、インドネシア
(2005 年)
、日本(2005 年)、メキシコ(2003 年)、ニュージーランド(2002/03 年)、インド(2003/04
年)、韓国(2005 年)、ロシア(2000 年)、台湾(2001 年)、米国(2005 年)については、OECD の
Input Output Table 2009 Database のデータを利用した。
103
また、EU 加盟国(ギリシアは 2008 年、チェコ・ルクセンブルグは 2007 年、オーストリア・オ
ランダ・スウェーデン・スペイン・ドイツ・フランス・ポルトガル・ルーマニアは 2006 年、アイ
ルランド・エストニア・スロベニア・デンマーク・ハンガリー・フィンランド・ポーランド・リ
トアニアは 2005 年、ブルガリア・ベルギーは 2004 年、イギリスは 2003 年、マルタは 2001 年、
スロバキアは 1999 年、ラトビアは 1998 年)については、Eurostat の ESA 95 Supply Use and
Input-Output Tables を用いた。
シンガポール(2000 年)については Statistics Singapore の Singapore Input-Output Tables
2000、フィリピン(2000 年)については Philippine National Statistical Coordination Board
の Input-Output Tables 2000 を利用した。
産業連関表に関しては、GTAP7 データベースからも、産業別の土地・労働・資本のデータを得
ることができるが、産業分類がその他輸送という分類となってしまっており、道路輸送に加えて、
鉄道輸送・パイプライン輸送・その他運輸付帯サービスが一括されてしまっているので、以下で
は GTAP7 データベースの数値は採用しないこととする。
なお、産業連関表の個別データが得られないそれ以外の国については、以下のように想定した。
すなわち、ニュージーランドについては独立して Land transport のデータが得られず、パプアニ
ューギニアについてもデータが得られないので、オーストラリアと同様とした。また、ベトナム・
ラオス・カンボジア・ミャンマーのデータは得られないのでインドの、チリについてはメキシコ
の、香港・ブルネイについてはシンガポールの、マレーシア・ペルー・タイについては中国の、
イタリアについてはスペインの、キプロスについてはギリシアのデータを各々援用した。
試算に用いた各国の付加価値額に占める生産要素の比率は、次頁以降の図に示すとおりである。
また、
それらの比率を 37 頁・38 頁の表 3-3 と表 3-4 に前掲した世界銀行の Doing Business の Ports
and terminal handling 及び Inland transportation and handling のコストに当てはめ、各々を
細分化したものが、表 4-8 と表 4-9 である。
104
図 4-1:「Ports and terminal handling」に適用する各国の付加価値の生産要素別構成比
0%
Australia
20% 40% 60% 80% 100%
47.2
Canada
Chile
China
China, Hong Kong SAR
Japan
20.9
Cyprus
Czech Rep.
76.2
47.9
Estonia
Malaysia
37.4
80%
50.9
41.2
39.4
60.6
23.3
76.7
61.0
39.0
38.6
61.4
62.6
Finland
Mexico
20.9
79.1
Negara Brunei Darussalam
23.8
76.2
34.7
France
65.3
64.5
Germany
35.5
53.3
46.7
New Zealand
47.2
52.8
Greece
Papua New Guinea
47.2
52.8
Hungary
52.2
47.8
Ireland
55.8
44.2
Peru
Philippines
37.4
62.6
25.0
75.0
43.1
56.9
Latvia
Republik Indonesia
40.5
59.5
Lithuania
Singapore
48.8
23.8
Taiwan
Thailand
Malta
76.2
37.4
Poland
62.6
50.3
40.5
55.5
24.0
76.0
70.2
43.8
Netherlands
28.1
60.6
49.7
Luxembourg
51.2
71.9
39.4
Italy
Rep. of Korea
Russian Federation
29.8
56.2
52.4
47.6
39.4
Portugal
60.6
53.0
47.0
USA
73.3
26.7
Viet Nam
69.1
30.9
Cambodia
69.1
30.9
Slovenia
48.9
51.1
India
69.1
30.9
Spain
49.7
50.3
Laos
69.1
30.9
Sweden
50.8
49.2
Myanma Naingngan
69.1
30.9
United Kingdom
労働コスト
100%
24.6
58.8
Denmark
52.1
60%
49.1
Bulgaria
62.6
23.8
40%
75.4
Belgium
26.3
79.1
37.4
20%
Austria
52.8
73.7
0%
資本コスト・マージン比率
Romania
25.5
74.5
Slovakia
28.8
71.2
労働コスト
75.5
24.5
資本コスト・マージン比率
出所: OECD Input Output Table 2009 Database, Eurostat, ESA 95 Supply Use and Input-Output Tables, Statistics
Singapore, Singapore Input-Output Tables 2000 ,Philippine National Statistical Coordination Board, Input-Output
Tables 2000 より、株式会社三菱総合研究所作成。
105
図 4-2:「Inland transportation and handling」に適用する各国の付加価値の生産要素別構成比
0%
20% 40% 60% 80% 100%
0%
Australia
59.4
40.6
Austria
Canada
57.8
42.2
Belgium
Chile
China
34.3
Bulgaria
65.7
50.7
China, Hong Kong SAR
Japan
Czech Rep.
14.1
73.9
42.6
50.7
34.3
Negara Brunei Darussalam
65.7
85.9
41.6
Greece
Papua New Guinea
58.4
41.6
Hungary
Rep. of Korea
Republik Indonesia
Russian Federation
50.7
56.4
62.5
59.2
42.3
Italy
Lithuania
50.7
Malta
14.1
79.8
69.7
Poland
49.3
63.0
37.0
42.8
75.9
24.1
61.8
38.2
47.4
52.6
65.5
33.3
30.9
66.7
69.8
32.9
30.2
67.1
64.7
42.3
35.3
57.7
80.5
19.5
Romania
37.2
62.8
Slovakia
39.9
60.1
Viet Nam
30.7
69.3
Cambodia
30.7
69.3
India
30.7
69.3
Spain
Laos
30.7
69.3
Sweden
Myanma Naingngan
30.7
69.3
United Kingdom
Slovenia
資本コスト・マージン比率
17.4
57.2
Netherlands
20.2
30.3
82.6
Luxembourg
51.2
85.9
56.6
Portugal
労働コスト
44.4
43.4
Latvia
40.8
57.7
48.8
USA
37.5
55.6
Ireland
75.0
Taiwan
Thailand
49.3
25.0
Singapore
19.5
42.8
43.6
Germany
58.4
Philippines
29.6
57.4
France
14.1
New Zealand
Peru
100%
49.3
Finland
Mexico
80%
57.2
Estonia
Malaysia
60%
80.5
Denmark
26.1
40%
70.4
Cyprus
49.3
85.9
20%
労働コスト
56.4
43.6
47.4
52.6
57.6
42.4
72.8
27.2
資本コスト・マージン比率
出所: OECD Input Output Table 2009 Database, Eurostat, ESA 95 Supply Use and Input-Output Tables, Statistics
Singapore, Singapore Input-Output Tables 2000 ,Philippine National Statistical Coordination Board, Input-Output
Tables 2000 より、株式会社三菱総合研究所作成。
106
表 4-8:「Ports and terminal handling」及び「Inland transportation and handling」の細分化(輸出)
個別産業連関表基準
Ports and terminal
handling
労働コスト
Inland transportation
and handling
資本コスト・
資本コスト・
労働コスト
マージン比率
マージン比率
Australia
165.2
184.8
225.8
154.2
Canada
441.9
158.1
433.4
316.6
Chile
43.9
166.1
120.2
229.8
China
31.8
53.2
48.2
46.8
China, Hong Kong SAR
74.8
240.2
171.8
28.2
Japan
114.1
123.9
364.2
128.8
Malaysia
50.4
84.6
83.7
81.3
Mexico
36.0
136.0
309.0
591.0
Negara Brunei Darussalam
57.0
183.0
128.8
21.2
New Zealand
141.6
158.4
175.2
124.8
Papua New Guinea
82.1
91.9
125.0
89.0
Peru
123.3
206.7
142.0
138.0
Philippines
67.4
202.6
42.4
127.6
Rep. of Korea
133.5
176.5
266.4
183.6
Republik Indonesia
66.9
98.1
67.7
92.3
Russian Federation
121.9
128.1
439.0
461.0
Singapore
42.8
137.2
120.2
19.8
Taiwan
130.2
50.8
188.4
47.6
Thailand
31.8
53.2
111.5
108.5
USA
293.2
106.8
251.8
148.2
Viet Nam
255.1
113.9
55.2
124.8
Cambodia
69.1
30.9
46.0
104.0
India
121.0
54.0
92.0
208.0
Laos
89.9
40.1
490.9
1,109.1
Myanma Naingngan
Austria
150.9
49.1
562.8
237.2
Belgium
171.9
178.1
523.3
126.7
Bulgaria
144.7
101.3
438.5
591.5
Cyprus
118.1
181.9
145.8
109.2
Czech Rep.
64.1
210.9
281.0
364.0
Denmark
116.6
74.4
171.8
103.2
Estonia
67.6
107.4
180.6
144.4
Finland
53.7
101.3
86.9
113.1
France
203.8
112.2
437.2
189.8
Germany
133.3
116.7
371.8
78.2
Greece
89.8
138.2
263.1
196.9
Hungary
78.4
71.6
607.4
192.6
Ireland
121.6
96.4
336.1
207.9
Italy
169.0
171.0
246.6
273.4
Latvia
60.7
83.2
98.2
46.4
Lithuania
28.9
91.1
166.6
333.4
Luxembourg
245.8
104.2
453.9
196.1
Malta
Netherlands
136.2
123.8
268.5
146.5
Poland
43.3
66.7
229.9
314.1
Portugal
137.9
122.1
140.8
34.2
Romania
76.4
223.6
148.7
251.3
Slovakia
82.3
203.7
357.7
538.3
Slovenia
97.9
102.1
403.1
311.9
Spain
109.8
111.2
284.5
315.5
Sweden
96.6
93.4
201.6
148.4
United Kingdom
150.9
49.1
400.7
149.3
出所: OECD Input Output Table 2009 Database, Eurostat, ESA 95 Supply Use and Input-Output Tables, Statistics
Singapore, Singapore Input-Output Tables 2000 ,Philippine National Statistical Coordination Board, Input-Output
Tables 2000 より、株式会社三菱総合研究所作成。
107
表 4-9:「Ports and terminal handling」及び「Inland transportation and handling」の細分化(輸入)
個別産業連関表基準
Ports and terminal
handling
労働コスト
Australia
Canada
Chile
China
China, Hong Kong SAR
Japan
Malaysia
Mexico
Negara Brunei Darussalam
New Zealand
Papua New Guinea
Peru
Philippines
Rep. of Korea
Republik Indonesia
Russian Federation
Singapore
Taiwan
Thailand
USA
Viet Nam
Cambodia
India
Laos
Myanma Naingngan
Austria
Belgium
Bulgaria
Cyprus
Czech Rep.
Denmark
Estonia
Finland
France
Germany
Greece
Hungary
Ireland
Italy
Latvia
Lithuania
Luxembourg
Malta
Netherlands
Poland
Portugal
Romania
Slovakia
Slovenia
Spain
Sweden
United Kingdom
165.2
478.8
43.9
29.9
62.9
114.1
50.4
62.7
74.8
141.6
110.0
123.3
67.4
133.5
66.9
121.9
42.8
130.2
74.7
307.8
298.0
150.0
138.3
207.4
150.9
171.9
144.7
129.9
64.1
116.6
67.6
53.7
203.8
133.3
149.6
78.4
141.1
169.0
68.0
48.1
245.8
112.6
43.3
137.9
76.4
82.3
97.9
109.8
96.6
150.9
Inland transportation
and handling
資本コスト・
資本コスト・
労働コスト
マージン比率
マージン比率
184.8
171.2
166.1
50.1
202.1
123.9
84.6
237.3
240.2
158.4
123.0
206.7
202.6
176.5
98.1
128.1
137.2
50.8
125.3
112.2
133.0
67.0
61.7
92.6
49.1
178.1
101.3
200.1
210.9
74.4
107.4
101.3
112.2
116.7
230.4
71.6
111.9
171.0
93.2
151.9
104.2
102.4
66.7
122.1
223.6
203.7
102.1
111.2
93.4
49.1
225.8
433.4
120.2
68.5
171.8
364.2
83.7
326.1
146.9
175.2
125.0
142.0
43.7
266.4
67.7
439.0
120.2
188.4
111.5
377.7
107.4
55.2
76.7
490.9
562.8
523.3
438.5
145.8
309.3
171.8
180.6
86.9
437.2
371.8
274.5
607.4
391.1
246.6
110.0
166.6
453.9
268.5
229.9
140.8
148.7
357.7
403.1
284.5
201.6
437.1
154.2
316.6
229.8
66.5
28.2
128.8
81.3
623.9
24.1
124.8
89.0
138.0
131.3
183.6
92.3
461.0
19.8
47.6
108.5
222.3
242.6
124.8
173.3
1,109.1
237.2
126.7
591.5
109.2
400.7
103.2
144.4
113.1
189.8
78.2
205.5
192.6
241.9
273.4
51.9
333.4
196.1
146.5
314.1
34.2
251.3
538.3
311.9
315.5
148.4
162.9
出所: OECD Input Output Table 2009 Database, Eurostat, ESA 95 Supply Use and Input-Output Tables, Statistics
Singapore, Singapore Input-Output Tables 2000 ,Philippine National Statistical Coordination Board, Input-Output
Tables 2000 より、株式会社三菱総合研究所作成。
108
当然のことながら、Inland transportation and handling については、総じて労働コストが相
対的に高い経済水準の高い国で、労働のウェイトが高くなっている。Ports and terminal handling
についても、荷役作業が含まれることから、概して言えば同様の傾向を見出すことはできるが、
一方で自動化・機械化の余地も大きいことから、経済水準とコスト構造は必ずしも対応しないと
いう結果となっている。
以上から、貿易円滑化の生産要素に則した経路別の効果としては、以下の点が指摘できる。
第 1 に、Document preparation については、貿易円滑化を通じた文書作成手数料の簡素化・引
き下げの効果は相対的に限定されており、寧ろ労働市場の環境による影響がより大きいと考えら
れる。
第 2 に、Custom clearance and technical control については、法定その他の規定上の手数料
であり、貿易円滑化を通じて事務手続きコストが削減されることで総コストを削減できる余地は
小さくないと見られる。
第 3 に、貿易取引関連コストの太宗を占める Ports and terminal handling と Inland
transportation and handling については、主に前者のプロセスに貿易円滑化は大きく効いてく
ると考えられる。国によって経路に違いはあるものの、貿易円滑化によって投入される労働或い
は資本の効率化につながる余地が大きいと考えられるからである。一方、後者については国によ
って影響の経路は異なり、内陸輸送の効率化が、途上国では労働投入の削減を通じて、先進諸国
では資本設備利用の効率化を通じて影響を及ぼすといえる。
なお、産業分類が粗いために、前述の通り、今回は採用しなかったが、GTAP7 データベースの
その他輸送の生産要素別コスト構成データに基づいた「Ports and terminal handling」と「Inland
transportation and handling」のコストの要素分解を参考まで示すと、次頁以降のようになる。
109
図 4-3:「Ports and terminal handling」及び「Inland transportation and handling」の細分化
GTAP7 データベース基準
0%
20%
40%
オーストラリア
60%
80%
62.6
37.4
ニュージーランド
49.8
50.2
その他オセアニア(含、PNG)
47.6
52.4
日本
66.9
中国
48.3
香港
51.7
38.9
韓国
61.1
56.5
台湾
カンボジア
33.1
43.5
74.9
14.5
25.1
85.5
インドネシア
57.3
ラオス
42.7
52.4
47.6
ミャンマー
マレーシア
フィリピン
タイ
その他東南アジア(含、ブルネイ)
72.8
29.9
70.1
35.6
64.4
39.3
シンガポール
60.7
44.0
インド
56.0
62.6
ベトナム
40.8
24.0
76.0
39.9
60.1
65.8
EU27
その他
30.4
59.2
ペルー
ロシア
47.8
69.6
カナダ
チリ
37.4
52.2
アメリカ
メキシコ
27.2
34.2
50.1
49.9
46.1
53.9
41.3
土地
58.7
労働
出所: GTAP7 Database より、株式会社三菱総合研究所作成。
110
資本
100%
4-2 今後の検討課題
本調査研究では、世界銀行の Doing Business のデータを基本的な出発点として、貿易円滑化の
潜在的な効果を試行的に分析した。方法論的には先行研究にも見られる 2 段階アプローチ(いっ
たん前提条件・データセットを推計・分析した上で、その結果を外生条件として活用して効果の
シミュレーションを行うもの)を採用したが、世界銀行の Doing Business のコストデータを基礎
に関税等価率の計算と当該コストデータの構成要素への分解を行った点は新たな試みであったと
考える。世界銀行の Doing Business データのこれまでの活用については、貿易取引時間データを
用いた分析や、他の先行研究の条件を確認するために世界銀行の Doing Business のコストデータ
を参照した例等に留まっている。
一方で、本調査研究で採用したデータ利用・活用のあり方については、実態的な個別データに
直接依拠していないという意味で限界がある。コストデータも生産要素の分解についても、比較
的アグリゲートされた既存のデータを参照していることから、それらが実態と乖離しているとい
うリスクも否定できない。こうした限界に伴う今後の課題やより長期的な検討の方向性として考
えられる主要なポイントについて、以下の 2 点を確認しておく。
第 1 に、コストの構成要素をいかにして分解していくかという課題を指摘することができる。
関税以外の貿易障壁を削減することの効果を分析する上では、先ず定量化、特にコスト換算する
ことがポイントとなる。このポイントがクリアできれば、関税以外の貿易障壁の削減効果を、関
税等価率が減少するという形で、GTAP 等のモデルでシミュレーションすることは可能である。し
かし、貿易取引コストを関税等価率に換算することが妥当であるかという議論もなされており、
特に貿易円滑化については、グローバルなサプライチェーンの効率化という視点から、産業・経
済活動の効率化・生産性向上をもたらすという効果も無視できない。それ故、この点を分析する
ためには、コストを単に関税率に還元するだけではなく、貿易取引コストが何に基づくのかとい
う点から構成要素を分解することが必要になる。
既存の関連先行研究の内容(Tsigas, Giamalva, Grossman and Kowalski(2008)や Jensen(2009))
等も踏まえると、この点については基本的に、貿易取引に関連する事業者のパネルデータ等を収
集して、ミクロレベルからコスト要素毎に貿易取引にかかる総コストを積み上げるというアプロ
ーチが考えられる。具体的には、より詳細且つ独自に世界銀行の Doing Business に類するデータ
セットを準備するというイメージである。但し、その場合には、データ収集・整理の負担が大き
くならざるを得ないこと、特に国際的なデータセットを準備する場合には特にこの点が重要なハ
ードルになると考えられる。その意味では、世界銀行による Doing Business に関する調査のより
高度化・詳細化を通じて、データの充実・精緻化を働きかけていくということも考えられる。ま
た、本調査研究でも採用した産業連関表のデータ以外に、日本については活用可能な企業統計等
の財務データを活用するといったアプローチも、中間的な方策としては考えられる。
第 2 に、より個別の貿易円滑化が持つ効果の分析と、一般均衡モデルを用いた経済全体への効
111
果に関する分析とを融合・関連付けていくという課題である。これまで見てきた通り、貿易円滑
化の経済効果を分析する上では、より実態的な貿易取引コストのデータをいかに構築するかが入
り口における最大の課題である。そして、この点との関連では、本調査研究の過程で実施した、
貿易取引に関わる有識者・専門家に対するインタビューからも明らかになったが、貿易する品目、
荷主の個別ニーズ、貿易相手国・ルート等によって、貿易取引コストは個別の事例に応じて様々
であるということに留意する必要がある。つまり、第 1 の点とも関係するが、パネルデータ等を
収集してミクロレベルからデータを構築するにしても、実態的取引の多様性をどこまで勘案する
かによって、データの精度・網羅性は異なってくる。
データの網羅性は直接的には若干犠牲にせざるを得ないが、個別の事例分析を実施することで、
具体的・実態的な前提条件に基づく効果の分析も可能となり、データ及び分析結果の精度をより
高めることができる。特に、本調査研究のように、APEC という貿易円滑化を導入する地域を限定
した分析を進めるのであれば、対象国・地域内での取り組みに関する実証分析結果を積み上げて
いくことの意味は大きいと言えよう。
更に、2.の文献調査の先行研究でも取り入れられていた 2 段階での分析アプローチと同様、
個別事例に基づく現状データ・効果分析の結果を積み重ねていくことで、当該サンプルデータを
一般均衡分析等における現実的な前提条件として援用していくこともより容易になってくると考
えられる。
112
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