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地下水 RO(逆浸透)膜処理水と腐食 鹿島建設

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地下水 RO(逆浸透)膜処理水と腐食 鹿島建設
腐食センターニュース
No. 057
2011 年 8 月
地 下 水 RO(逆 浸 透 )膜 処 理 水 と腐 食
鹿島建設(株)エンジニアリング本 部 中 島 博 志
(0)はじめに
地下水 RO(逆浸透)膜処理水が日本中で用いられ、銅管・ステンレス鋼管を用いた配管に局部腐食
を発生させる事例が発生している。何故地下水 RO(逆浸透)膜処理水で、銅管・ステンレス鋼管を用
いた配管に局部腐食が発生するかについて基本的事項を含め解説する。又この腐食を発生させない方法
について述べる。
(1)背景
・歴史
戦後の復興期には水道等インフラが未整備であったため、地下水を井水として大量に使用した。この
結果地盤の沈下等が発生した為に都市部の地下水の使用が規制された。しかし戦後 60 年を経過して地
下水水位は元に戻り、再び地下水が使用されるようになった。逆に地下水位の上昇により地下構造物の
浮力が問題となるケースも発生している。そこで最近国土交通省も一部地下水の使用を奨励する方向に
転じた。更に気候変動が大きくなり渇水による水不足から、地下水を水道水として使用することに大き
なメリットが発生する。(しかし日本の水不足は大部分が本当に水がないわけではなく、水利権問題で
ある。)
・位置
大きな都市は沿海部に多く存在するため、出てきた井戸水に多量の塩化物イオンを含む場合があると、
水道法の塩化物イオン 200mg/l 以下・TDS(全溶解固形物)500mg/l(WHO では 1000mg/l)以下等が
守れなくなるので水処理が必要になる。イオンを取り除く処理には、イオン交換樹脂法・RO(逆浸透)
膜処理があるが、イオン交換樹脂法はイオン交換樹脂再生の為の多量の塩酸・苛性ソーダが必要になる
為、RO(逆浸透)膜処理が用いられる。
・建物種別
ホテルでは入浴等に多量に水が用いられ、飲食店・アスレチックを持つ複合ビル、スーパー銭湯等の
大型入浴施設ではプール・入浴・調理・洗浄等に多量の水が必要となる。これらが都市部に建設される
場合には水使用量に応じた累進料金が適用される為水道単価がかなりの高額になり 500 円/m3 に達する。
これに対して地下水は電気代を考慮しても数十円/m3 であり、膜処理設備を設置しても水道水の半額以
下の水代になる。この為年間の水道代を数千万円節約可能となる場合もある。但し RO 膜処理の場合流
入原水の 30%程度の濃縮水の排水が発生するので条例でこの排水に下水代が課金されると節約金額は
減ずる。
・レジオネラ症対策
従来、給水中に残留塩素が検出されるビルにおいて、中央循環式給湯設備における残留塩素は通常時
間帯は検出出来ないレベル迄低下していることが知られている。ところが平成 15 年 4 月のビル管法改
正で給湯設備におけるレジオネラ症防止の為、
残留塩素の検出が義務づけられた。
又同年7月告示第 264
号により貯湯槽で 60℃・末端水栓で 55℃が義務づけられた。この為ステンレス鋼管・銅配管等耐食性
配管に局部腐食を発生させる方向に、環境条件が変化している。
1
腐食センターニュース
No. 057
2011 年 8 月
(2)水に含まれている物質
水道法は飲料水基準に適合した水であることを求めている。従って飲料水として自治体から供給され
るいわゆる市水(City Water)以外の、井水・河川水・工業用水を飲料水として使用する場合には、使
用者が飲料水基準に適合した水を供給することが必要となる。市水が水源を河川とする場合で、敷地内
井水よりも水質として劣る場合はよくあることである。又工業用水という名前の水では井水を水源とす
る場合から湖沼水を水源とする場合までその水質は大きく異なる。
ここで水質が劣るという非科学的なよく使われる言葉を使用した。そもそも水のはじめは熱帯地方の
海面で太陽の熱を受け取って蒸発した水蒸気が、高緯度地方で潜熱を放出して液体の雨となって山に降
り①、降った雨の半分は地表を流れて川に入り②、残りの半分は地中に浸透して地下水源に入る。一般
的には地下水源に入った量だけ、過去に地下水源に蓄えられた水③が河川の底に出てくるという大循環
をして平衡を保っている。ここで①の水は純水(蒸留水)に近く、それに大気中のガス(CO2,NOX,SOX)
を吸収した水質となる。②の水は①の水質に地表面からの浸出物を加えたものとなる。③の水は長期間
地底にあって種種のイオンを溶解させた水質でありイオン種とその濃度は、地層を構成する物質と山か
らの距離に依存している。即ち大雑把に言って名古屋の水道水は山からの距離が短く導電率が 100μ
S/cm を下回るのに対して、東京の江戸川(利根川・荒川の下流)では 300μS/cm を超える導電率とな
る。一般的に日本と欧州(ドイツ・フランス)
・米国を比べれば河川の長さは 10 倍位異なるので、溶解
しているイオン量も大きく異なる。但しシリカ(SiO2)等は日本に火山があるのに対し、欧州・米国に無
い為5倍以上日本の水のシリカ濃度が高い。日本の中でも大きな地域差があり、東京では利根川の水が
含まれる場合約 30mg/l 前後であり、大阪の水道水のシリカは 5mg/l と外国なみに低い。
東京の水道水を例にとると、図-1 に示すように水道水 1m3 の中に H2O は約 999.7kg でその他の物質
が約 300g 含まれている。
その他の物質の内電荷を持った陽イオンと陰イオンとで 240g、シリカが 30g、
溶存ガス(酸素 8g・窒素 14g・二酸化炭素 3g 以上)25g、その他が 3g 程度である。
その他 300g
陽イオン
陰イオン
Ca
2+
30
HCO3-
65
Na
+
25
50
H2O
Mg
2+
5
Cl -
SO4 2-
999.7 kg
K
3
NO3-
4
+
SiO2
20
溶解物質
30
CO2
3 (O2 8,N2)
溶存ガス
その他
3
微量金属・有機物質
図-1 東京の水道 1m3 に含まれる H2O 以外の物質の重量 g
ではその他の約 3g の微量物質の中身は何であろうか?これを図-2 に示す。この図でわかるように微
量金属と有機物には数多くの物質が含まれており、実際にはこの図に記載されていない極微量の物質の
数はここに記載されている種類の数十倍はあると考えられるが有意な特性を示さないので除外してあ
る。
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水 1m3 中
電気伝導度(μS/cm)×0.7=TDS200~300 g/m3
陽イオン
陰イオン
Ca
HCO3
Na
Mg
Cl
SO4
K
NO3
重量の99%
SiO2
(O2 ,N2)
CO2
Fe
Mn
Cu
Al
Cu
Zn
NH4
Pb
H
+
微量金属
アンモニウム
OH
pH
-
HClO
-
残留塩素
フミン酸
着色物質
ジオスミン・ジメチルインボルネオール
臭い
トリハロメタン
発ガン性
トリクロルエチレン
有機溶剤
TOC
細菌・ウィルス
パイロジェン(エンドトキシン)
図-2 東京の水道水に含まれる物質(詳細)
・水道水に含まれる物質(mg/l=g/m3)
①イオン類
図 1・2 に示すとうり濃度の大きい主な陽イオン 4 種(カルシウム Ca、ナトリウム Na、マグネシウ
ム Mg、カリウム K)と陰イオン 4 種(重炭酸 HCO3、塩化物 Cl、硫酸 SO4、硝酸 NO3)である。
②イオン又はコロイド状態の濃度の大きな物質
シリカはイオン状とコロイドの両方の形で水中に溶解している。火山性の地層に由来するため、地域
によって濃度の差が大きな物質である。
③溶存ガス類
炭酸ガス(CO2)・酸素(O2)・窒素(N2)がある。大気由来であるが炭酸ガス(CO2)には地層に由来する場
合(地下水を原水とする場合・河川水原水であるが伏流水として地下水が河川に入っている場合)、
浄水場における凝集剤に由来する場合もある。
地下水の炭酸ガスは地中に有機物の分解による高圧の炭酸ガス層がある場合のほか微生物の様々な
活動により pH 変化により水中の重炭酸イオンからガスが生成する場合も考えられる。
炭酸ガスは正常な水道水に含まれる濃度の大きな唯一の弱酸であり、図-7 に示したように 2 段の解離
平衡に従い水の pH を支配している。純水ではその導電率も炭酸ガスの平衡に支配されている。
④微量金属イオンとアンモニア
微量金属イオンには図-2 に示した種類以外に微量濃度の数多くの元素が含まれている。
⑤残留塩素
日本の水道水には、水栓末端において 0.1mg/l の遊離残留塩素が検出されることが義務付けられてい
る。残留塩素は塩素ガス・次亜塩素酸ナトリウム等の物質として添加されている。イオンの形は
HOCl・OCl-であり pH によりその存在割合が変化し結果として酸化力(殺菌能力)が変化する。
水道水の場合水道局の判断で添加され、水道原水の有機物汚染程度が大きい程多量に添加される傾向
がある。この為河川の最下流域の河川水を原水とする浄水場では残留塩素の添加量が大きい。江戸川
や淀川がこれに当たる。又供給先に工場等の建設が予定されている敷地で、建設されていないため水
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腐食センターニュース No. 057
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が未使用の工業団地などがある場合には長時間の滞留による消耗を見込んで高濃度の塩素が添加さ
れる。
井水等のユースポイントにおける残留塩素の添加が必要となる場合には、受水槽における滞留や、末
端の水栓までの消耗を見込んで基準濃度より高濃度の添加が行われる。実際にどれだけ減少するかは、
水中の残留塩素消耗物質(⑥微量有機物質等)の濃度と受水槽の滞留時間等に影響を受ける。
⑥微量有機物
平成 16 年の水道水の水質基準からこの部分の濃度が TOC(Total Organic Carbon 全有機体炭素)
5mg/l 以下と規定された。きれいな水道水では 1mg/l 程度と考えられる少量の部分に水の評価を左右
する微量有機物質が数多く含まれている。浄水場の処理では溶解性の有機物質は塩素によって分解さ
れる。昔の緩速ろ過を採用していない通常の浄水場における処理では塩素による分解以外の溶解性有
機物の減少は無い。しかし UF(限外ろ過)や RO(逆浸透)膜を用いると殆ど除去することが可能と
なる。(表1参照)
・着色物質
代表的なものに微黄色を呈する、地層の腐食した植物由来のフミン質がある。フミン質は浄水場で
塩素により分解してトリハロメタンが生成するためトリハロメタン前駆物質として知られている。水
道水中のフミン質は分解されなかったフミン質の残りである。
・トリハロメタン
メタン CH4 の H の代わりにハロゲン元素(Cl.Br 等)が炭素と結合した物質(クロロホルム、ブロモジ
クロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルム)の総称で発がん性がある事で着目された物質
である。前述したフミン質等から生成される。分子量が小さいため高温で蒸発する。
・臭気原因物質
臭気原因物質には数多くの有機物質があり、数 ppb(μg/l)存在するだけでも臭気が感じられる事が特
徴である。図-2 には臭気として問題になった典型的な物質を記した。
この水道水を原水として純水を製造する場合に、水分子以外の 300g の内 299g を取り除くとおおよ
その導電率が 1μS/cm となる。精製水の純度試験の限界 TDS(Total Dissolved Solids 全溶解固形物)
は 1mg/100ml なので、最低 290g を取り除けばよいことになる。先に「水質が劣る」と表現した一つの
内容が H2O 以外の溶解物質の量が多いということである。又重さは 0.1g 以下であるが、生菌や臭気の
原因物質があれば同じく「水質が劣る」事になる。更に Ca や SiO2 等の特定の物質は濃縮するとスケー
ル化し、RO(逆浸透)膜を使用する水処理では採水量の割合が減る為「水質が劣る」事になる。
さて代表的な水道水として東京の利根川を水源とするものの構成を示したが、世の中には様々な水が
ある。これを H2O 以外の物質の量を軸として見ると図-3 のようになる。
H2O 以外の物質量は最も少ないのは、超純水と呼ばれるもので 1m3 の水中に 0.1g 以下であり、純水
と呼ばれるもので 1g 程度である。降雨水・蒸気のドレン水等で 40g 以下であり、水道水・井水で日本
であれば 500g 以下である。
上記の水を水源として冷却水・洗浄水・ボイラー水等の用途に使用され物質が付加された後に廃水と
なる。付加されるものに有機物が主体の場合と無機物が主体の場合がある。プロセスに使用された水に
はプロセスで使用された物質がロス分だけ廃水に加わる。
そしてこれらの廃水が有機物については法規に従って処理され(減少して)河川に放出される。河川
は自然のメカニズムにより有機物と一部の無機物を処理して海に水を流す。
ちなみに 1m3 の海水には無機物主体で 30kg が含まれている。その内大部分が Na と Cl とのイオンで
ある。無機物はイオンとして溶解している場合とコロイドや SS(Suspended Solids)として水中に含
ま れ る 場 合 が あ る 。 低 分 子 量 の 有 機 物 質 は 溶 解 し 、 分 子 量 が 大 き な 有 機 物 質 は コ ロ イ ド や SS
(Suspended Solids)として水中に含まれる場合がある。
この為沿海部の地下水には塩化物イオンが数千 g 含まれ、他の陰イオンが数十 g しか含まれない、イ
オンプロファイルを持つ場合がある。
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腐食センターニュース
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冷却水
一過性
用 水
純 水
●
プロセス排出
ユーティリティ
(再生・ブロー)
●
無
機
純水処理
アニオン
● 全硬度
無
機
無
機
● TDS
(全溶解固形物)
Ca
Na Mg
K NH4
Fe Zn Cu Al Mn
廃 水
HCO3
Cl SO4
NO3
Na
Ca Mg
K NH4
…
Fe Zn Cu
アニオン
電気伝導度
洗浄水
冷 却水
循 環水
カチオン
カチオン
●
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Cl
SO4
NO3
HCO3
…
シリカ SiO2
溶存ガス
再生処理
シリカ SiO2
有
機
無機 ・
有機
●
●
●
電気伝導度
●
TDS
エバポ レータ
ドラムドライヤー
脱水機
微量有機物質
溶存ガス
カスケード利用
コロイド・SS
(無機・有機)
有
機
物
TOC
(全有機体炭素)
● COD MN
● 色 素
● 有機塩素化合物
● トリクロルエチレン
● トリハロメタン
● 臭 気
● パイロジェン
● エンドトキシン
●
固形物
INPUT
吸 収
デンプン
糖
タンパク
油脂
…
コロイド・SS
(無機・有機)
濁 度
SS
沈 殿
蒸 発
放 散
●TOC
● COD
● BOD
● TN
● N - NH3
● N - NO3
● N - ケルダール
● ノルマルヘキサン抽出物
● SS
微生物
図-3 超純水から固形物までの水質
(3)RO(Reverse Osmosis:逆浸透)膜処理による水質変化
浸透現象とは図-4 に示すように、半透膜で仕切られた希薄溶液と濃厚溶液がある場合、希薄溶液から
水が濃厚溶液に浸透する現象である。このとき両者の圧力差が水位の差として現れ、この差圧を浸透圧
Po と呼ぶ。逆浸透現象は図-5 に示すように、濃厚液に先の浸透圧 Po より大きな圧力を与えると、濃厚
液から水が希薄溶液側に移行する現象である。
半透膜
半透膜(逆浸透膜)
Po
浸透圧
圧力 P
P>Po
水
濃厚溶液
水
稀薄溶液
濃厚溶液
図-4 浸透現象
稀薄溶液
図-5 逆浸透現象
①RO 膜の歴史
この原理が実用的に脱イオン処理として水処理に用いられたのは、1960 年代半ばに米国において、
かん水(塩水)処理装置としてであった。この時の膜は酢酸セルロース(CA)膜チューブラー型であ
った。その後 1970 年米国デュポンが、ポリアミド膜を開発した。日本では 1971 年に 3000m3/日のか
ん水脱塩装置が実用に供された。1980 年代には日本で数社が RO 膜を生産するようになっている。現
在では膜材質はポリスルホン系が主流になっている。半導体加工の微細化に伴い、半導体製造用に微粒
子の少ない水が要求されるようになり、現在では必ず RO 膜が使用されるようになっている。イオン交
換装置に対しての優位性は再生に使用される塩酸や苛性のタンク又中和装置が不要となるといった基
本性能以外の特性にもある。
5
腐食センターニュース No. 057
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②RO 膜と使用圧力・温度
RO 膜には高圧・中圧・低圧等の呼び名があるが、これは原水の浸透圧に依存しており、浸透圧は溶
解物質の濃度に比例する。海水中のイオンが 35g/kg であるのに対し、水道水では 0.3g/kg であり、約
100 倍の物質濃度を持っている。この為海水淡水化や食品の濃縮に用いられる RO 膜は 40kg/cm2 以上
の高圧膜が用いられ、中程度の濃度の原水(かん水・水道水)には 20-40 kg/cm2 の中圧膜が用いられ、
低濃度の原水(上水・純水処理)には 20 kg/cm2 以下の低圧膜が用いられる。
RO 膜を使用するときに重要となるのが水温である。RO 膜の透過水量は水の粘度に大きく影響され、
水量の変化率は約 2.3%/℃である。これはかなり大きな値で供給水温に 40℃の差があると RO 膜の必要
面積が 2 倍異なると言うことである。従って水量の大きな RO 膜装置には供給水を、25℃に加温する装
置が設けられることが一般的である。加熱源である蒸気や温水を手軽に得られない場合も多い。現在で
は RO 膜の価格がかなり低下したため、少量の装置では設置場所における最低供給水温で機器仕様を満
たす大きな膜面積を持った装置が使用される。
③RO 膜のマテリアルバランス
図-6にRO膜を使用した場合のリアルタイムのマテリアルバランスを示す。原水の水量100に対して、
濃縮ブラインとして捨てられる水量を35として示してある。この比率は日本の平均的な水道水の場合で、
実際には原水水質により計算された比率を用いる必要がある。と言うのは水量の35に原水中の溶解物質
の95%が溶解しているので、濃縮ブラインの溶解物質濃度は原水の100に対して248と2.48倍に濃縮さ
れている。この濃縮で溶解物質の内のカルシウムやシリカが飽和溶解度を超えると膜表面にスケールが
生成して膜が使用できなくなる。先に「硬度成分やシリカの濃度の高い原水に対しては水収支が極端に
悪く現実的に採用できない場合もある。」と述べた様に、原水の水質によっては濃縮ブラインの水量が
50を超える場合もあり得るからである。このような場合には原水の半分以下しか水として利用できない
ことになる。多量の水が必要な場合には不合理な処理法となる。
原水の硬度やシリカの濃度が高い場合には軟水処理をして使用することも可能である。また RO 処理
業者のなかには、酸やスケール分散剤としてポリマー(高分子重合体)を使用してこの比率を改善して
いる業者もある。
原水
水量
100
濃度 [100]
水量
RO 装置
溶解物質
・10,000
65
濃度 [ 5 ]
溶解物質
・325
水量
35
濃度 [248]
排水
溶解物質
・9,675
図-6 RO膜を使用した装置のマテリアルバランス例
原水として流入した溶解物質を 10000 とすれば、濃縮ブラインとして排出されるのは 9675 である。
④水処理における RO 膜と物質の阻止能力
水処理によく用いられるその他の膜としては精密ろ過膜(MF:Micro Filtration),限外ろ過膜
(UF:Ultra Filtration)があり、それぞれの分離サイズは 10-0.01μm、100-10nm であり、RO 膜の
分離サイズは 1nm 以下である(表 1)。ここで分離サイズと言う表現を用いたが RO 膜の分離現象は、
分離対象物質のイオン性によって大きく影響されることが知られており、イオン性を持っているものは
良く阻止できるが、イオン性を持っていない物質(例えば水和の炭酸ガス)は良く透過し、結果として
RO 膜出口の pH を低下させる。又イオンでもイオンの種類によってその阻止率が異なる(表 2)。表 2
の阻止率は膜が新品に近い場合のデータである。通常の設計では 95%の阻止率で計算をし、阻止率がこ
れを下回るとき膜の寿命とする。
6
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表1 膜の種類と用途
膜の種類
孔 径
精密ろ過膜(MF)
膜上阻止物質
膜透過物質
バクテリア
粒子
ラテックス
細胞
0.0 1 ~ 1 0 μ m
水溶性高分子
ウイルス
たんぱく質
エンドトキシン(パイロジェン)
アミノ酸
高分子
0.0 0 1 ~ 0. 01 μ m
抗生物質
たんぱく質
限外ろ過膜(UF) ( 分 子 分 画 量 :
エンドトキシン(パイロジェン) 糖 類
1 0 0 0~ 1 00 万 ) ウイルス
ペプタイド
多糖類
塩 類
逆浸透膜(RO)
0 .0 01 μ m 以 下
( 分子 分 画 量 :
5 00 以 下 )
アミノ酸
抗生物質
糖 類
ペプタイド
塩 類
水
アルコール
酸
表 2 RO 膜のイオン種別除去率(原水が水道水の場合の例)
供給原水(mg/l) 除去率(%)
別の測定例の
除去率(%)
分析項目
透過水(mg/l)
pH
5.5
6.6
-
-
Cl
0.03
13
99.8
99.7
SO4
<0.03
44
>99.9
99.9
NO3
0.10
11
99.2
95.9
Na
1.3
11
89.4
81.0
K
0.4
2.7
86.7
83.3
Ca
<0.05
28
>99.8
99.2
Mg
<0.02
1
>98.2
99.7
SiO2
0.12
12
99.1
98.3
⑤RO 膜処理による pH の低下
RO 膜処理による水質変化は、②で述べた単に、イオン類の変化だけでなく pH にも大きく影響を与
える。水中の炭酸物質は、遊離炭酸(CO2aq= H2CO3)、重炭酸イオン(HCO3-)、炭酸イオン(CO32-)であ
る。炭酸物質は水中で炭酸平衡を保って存在している。この平衡式から水の pH は水中の全炭酸物質(遊
離炭酸(CO2aq)、重炭酸イオン(HCO3-)、炭酸イオン(CO32-)の合計)に対する各炭酸物質(遊離炭酸
(CO2aq)、重炭酸イオン(HCO3-)、炭酸イオン(CO32-)の内の1つ)で決定される。
イ) 水と接する清浄な気相に含まれる気体は、水蒸気・窒素・酸素・炭酸ガスである。このうち
液相の水と反応して化合物を形成する気体は、炭酸ガスのみである。
ロ) 炭酸ガスはヘンリーの法則に従った濃度の炭酸 H2CO3 を生成する。ヘンリーの法則に従った
濃度の炭酸とは、その温度のヘンリー定数に気相の炭酸ガス分圧を乗じた濃度の炭酸である。
ハ) 水中の炭酸 H2CO3 は水素イオン H+と重炭酸イオン HCO3-と平衡状態を保つ。これを炭酸の
第一解離平衡という。
ニ) 水中の重炭酸イオン HCO3-は水素イオン H+と炭酸イオン CO32-と平衡状態を保つ。これを炭
酸の第二解離平衡という。
ホ) この平衡が成立している水中の pH は、3つの炭酸物質(炭酸・重炭酸イオン・炭酸イオン)
の合計のモル濃度で、各炭酸物質(炭酸・重炭酸イオン・炭酸イオン)のモル濃度を割った
α1、α2、α3 によって決定される。
以上を図-7・図-8・図-9 に示す。
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水と化合物を作らない
N2
大気
O2
CO2
①
水中
CO2 + H2O → H2CO3*(CO2aq) 炭酸(水和炭酸ガス)
②
*
H2CO3 → H+ + HCO3- 重炭酸イオン
③
HCO3- → H+ + CO32- 炭酸イオン
図-7 水と反応する炭酸ガス
全炭酸物質 TCO2 =
[H2CO3]
[HCO3- ]
+
+
[CO32- ]
K 1 K2
K1
(KH PCO2 ) +
(KH PCO2 )
[H+ ] 2
[H+ ]
K 1 K2
K1
(KH PCO2 ) =CT
+
1 +
[H+ ] 2
[H+ ]
= KH PCO2 +
=
α1 =
α2 =
α3 =
[H2CO3]
TCO2
1 +
[HCO3- ]
=
TCO2
[CO32- ]
TCO2
1
=
K1
[H+ ]
+
K 1 K2
[H+ ] 2
αi = f i ( [H+ ] )
K1
[H+ ]
1 +
K1
[H+ ]
2CT = [H2CO3] + [HCO3 ] + [CO3 ]
ここでpH = -log [H+ ] より
+
K 1 K2
[H+ ] 2
K1 K2
[H+ ] 2
=
K 1 K2
K1
1 +
+
[H+ ] 2
[H+ ]
αi = f i (pH)
pH = f -1(αi)・・・pHはαi で決定される。
KH ・K1・K2・KW = f j(TC)
図-8 水中の炭酸物質の存在比率と pH
全炭酸物質 TCO2 =
存在比率
1
0.9
0.8
-
2-
[H2CO3] + [HCO3 ] + [CO3 ]
pHと各炭酸物質の存在比率
α1 =
[H2CO3]
TCO2
α2 =
[HCO3 ]
TCO2
-
[H2CO3]
3
[HCO ]
[CO
23
]
20.7
[CO3 ]
α3 =
0.6
TCO2
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 12.0 13.0 14.0
pH
図-9 水中の炭酸物質の存在比率αi と pH
8
腐食センターニュース No. 057
2011 年 8 月
RO 膜はその特性として、電荷を持った物質は阻止できるが、電荷を持っていない分子(H2O, CO2aq)
は阻止できない。結果として RO 膜を透過した水中の炭酸物質の割合では、図-9 で見られるようにα1
が 1 に近づき pH が低下する。
ここで水道法では水道水の pH は 5.8-8.6 と定められている。このためイオン阻止率の高い RO 膜を
使用するとこの基準を満たせなくなる場合がある。この透過水をばっきなどで大気と平衡させれば pH
を上昇させることも可能であるが、市水と混合するかアルカリ剤を添加する場合がある。
(4)RO 処理地下水の腐食事例
この種の腐食事例は公表されているものは少ないが、いくつかの例を挙げて RO 処理地下水の腐食の
特徴と、使用上の注意事項を述べる。
(a)ステンレス鋼管を給湯に使用した腐食事例
ステンレス鋼管を給湯管に使用した2つの腐食事例を記す。2 事例共に直管部に孔食を発生した珍し
い事例である。又その孔食断面も一般に起こるステンレスの孔食と異なるものであった。又 2 事例共に
外面応力腐食割れを多数発生させていた。両事例共に市水を使用していて、数年後から RO 処理地下水
に変更された事例である。
a-1)事例1:ステンレス管(ラップジョイント+ルーズフランジ、65A 以下メカニカル継ぎ手)
宿泊施設の中央循環式給湯設備において竣工 6 年目に市水から井水 RO 処理水に切り替えた。7 年目
から直管部に孔食による漏水が発生した。ピット断面(図-10)は複雑で孔食内壁面から成長・停止を
繰り返したと考えられた。この孔食断面は事例 2 とも共通しており、高い塩化物イオンが孔食ピット内
に閉じ込められていたと考えられる。この理由はいったん停止した孔食の内壁から孔食が成長する場合
に成長している孔食の内液と、その外側の液との間に塩化物イオンの濃度差が小さいと考えられるから
である。そしてこのような状況が一度形成されると、僅かの電位上昇で孔食が成長すると考えられる。
給湯水から検出された遊離残留塩素は 0.1mg/l で、水源変更の前後では塩化物イオンが 15 から
max83mg/l へと大きく変化していたことが確認された。
図-10 直管部孔食の断面(事例 1)28)
a-2)事例2:ステンレス管(ラップジョイント+ルーズフランジ、65A 以下メカニカル継ぎ手)
宿泊施設の中央循環式給湯設備において竣工 4 年目に市水から井水 RO 処理水に切り替えた。4 年目
から直管部に孔食による漏水が発生した。ピット断面(図-11)は事例 1 と同じく複雑で孔食内壁面から
9
腐食センターニュース No. 057
2011 年 8 月
成長・停止を繰り返したと考えられた。給水から検出された遊離残留塩素は 0.7mg/l で、水源変更の前
後では塩化物イオンが 15 から max130mg/l へと大きく変化していたことが確認された。
図-11 直管部孔食断面(事例 2)28)
給湯補給水の塩化物イオン・残留塩素・漏水発生の竣工からの経時変化を図-12 に示す。
140
1.2
市水使用期
120
処理井水使用
1
塩化物イオン
残留塩素
100
0.8
80
0.6
60
0.4
残留塩素(mg/l)
塩化物イオン(mg/l)
漏水
40
0.2
20
0
0
365
730
1095
1460
1825
2190
0
2555
竣工からの日数
図-12 給湯補給水の塩化物イオン・残留塩素・漏水発生の経時変化(事例 2)28)
漏水の竣工からの日数をワイブルチャートにプロットしてみると明らかに傾きの異なる3つのモード
(期間)が見られ、漏水頻発期間と孔食成長速度の遅い期間に対応する(図-13)。ステンレスの孔食成
長速度が環境(水質)によって大きな影響を受けることを伺わせる。
10
腐食センターニュース
No. 057
2011 年 8 月
Y-PLOT
99.9
2
99
95
1
80
70
60
50
40
第2モード
-1
30
累積不良率F(t)(%)
0
20
15
第3モード
10
7
5
4
3
2
1.5
-2
-3
-4
累積不良率lnln(1/(1-F(t)))
90
1
0.7
0.5
0.4
0.3
-5
第1モード
-6
0.2
0.15
0.1
-7
100
1000
竣工からの日数(日)
10000
図-13 漏水時期のワイブルプロット(事例 2)28)
a-3)事例1・2
共通
①外面応力腐食割れ
これらのステンレス給湯配管の事例ではどちらも内面からの孔食に加え外面からの応力腐食割れ
が発生していた(図-14)
。これは孔食により漏水した水が GW 保温材中の塩化物イオンを溶かし出し、
これが配管表面に到達すると高温(60℃程度)により塩化物イオンが濃縮し、割れが発生すると考え
られている。特に縦管が 65A 以下の場合メカニカル継ぎ手で接続されるため、保温に止水となる区切
りが無く、1 箇所で発生した腐食による漏水が連鎖的に外面応力腐食割れを生じる事が知られている
(図-15・16)。
実際の事例では百箇所を超える外面応力腐食割れが経験されている。配管内部の温度は、表面に到
着した水の塩化物イオン濃度の濃縮と、SCC 感受性の両方に影響する。宿泊施設の給湯設備は客の入
浴が重なる時間帯に使用量のピークを迎える為、設計時に想定した必要給湯量よりも大きくなった場
合、給湯温度の設定を高くする等の運用が行われると SCC は更に発生しやすくなるので注意が必要
である。保温材への水の浸入は、腐食でなくても、雨水・結露水・メンテ時等に起こりうるので、保
温材の水の止水区画を行うことが設計・施工上重要である。
腐食により漏水した水が塩化物イオンを多量に含んでいれば、保温材中の塩化物イオンの多少に関
わらず外面応力腐食割れは発生しやすくなることが推定される。
11
腐食センターニュース
No. 057
2011 年 8 月
図-14 外面応力腐食割れ(事例 2)28)
外面
CL
SUS
断熱材
断熱材
高CL濃度
SUS
高温(50℃以上) 内面
高温(50℃以上)
水侵入・断面材中CL溶出
蒸発によCL高濃縮
孔食起点 応力あり ・・・ SCC
応力なし ・・・ 孔食
断熱材
断熱材
SUS
高温(50℃以上)
SUS
高温(50℃以上)
腐食成長・漏水
孔食・SCC起点の発生
図-15 給湯配管の外面応力腐食割れの連鎖 14)
フランジ
継手
最上階
SCC
メカニカル
継手
漏 水
SCC
最下階
フランジ
継手
貯湯槽
返湯ポンプ
メカニカル継手保温
止水構造なし
フランジ継手保温
止水構造あり
図-16 給湯配管の外面応力腐食割れの連鎖 28)
12
腐食センターニュース No. 057
2011 年 8 月
ステンレス鋼管内面の変色
図-17 は事例 1 の貯湯槽の蒸気コイルに使用されたステンレス管の外面である。薄い茶色に変色し
ていた。高温による変色かと考え内面を観察するとステンレスの元の色であった。図-18 は事例 1・2
のステンレス鋼管の水洗浄後の内面である。どちらも茶色に変色している。この変色が高い残留塩素
によるものかどうかについて分析はされていない。
②
図-17 事例 1 の貯湯槽蒸気コイル外面(左)と内面(右)
図-18 ステンレス給湯管の内面
事例 1(左)事例 2(右)
(b)銅管を給湯に使用した腐食事例
井水処理水を使用した宿泊施設の中央循環式給湯設備において、竣工 4 年目に直管に孔食による漏水
が発生した。ピット断面(図-19)は典型的なⅡ型孔食であった。給湯から検出された遊離残留塩素は
0.1mg/l・pH6.5 で、塩化物イオンは 28 mg/l と高く、M アルカリ度 2.5 mg/lAsCaCO3 と硫酸イオンが
0.4 mg/l という極めて低い水質に特徴があった。このため給湯銅Ⅱ型孔食発生水質の特徴であるマトソ
ン比(HCO3/SO4)は 7.7 と発生水質と適合しない。配管内面には黒色の厚い CuO と考えられる皮膜が
成長し、残留塩素濃度が高く高温であったと考えられる。
13
腐食センターニュース
No. 057
2011 年 8 月
図-19 給湯銅管孔食の平面と断面(事例 3)28)
(5)事例水質の腐食性の検討
事例 1・2・3 とステンレスの腐食を発生させた下水再生水(RO 処理はされていない)の水質を表-3
に示す。事例においては酸消費量 4.8・塩化物イオン・硫酸イオンに特徴(市水との差)があることが
判る。即ち(3)RO 処理による水質変化において示したように RO 処理をするとイオンのプロファィ
ルが自然水と大きく異なる事がわかる。
硫酸イオンの塩化物イオンの比率が示されているが、ステンレスが腐食した事例 1・2 と下水再生水
のこの比率は市水に比べて相当低い事がわかる。
MWPI は給水・給湯に用いられる銅の孔食指数であるが、事例の全てで高い数値を示している。市水
は事例 1 を除いて非腐食性である。
SUSPI は後述するステンレスの孔食指数であるが、ステンレスが腐食した事例 1・2 と下水再生水で
は大きな数値を示している。事例 1・2 は市水から RO 処理水に変更した事例であるが、市水はいずれ
も非腐食性である。
表 3 各事例の水質分析値 28)
水質項目(mg/l)
事例 1(SUS)
全国水道
平均
処理井水
市水
サンプリング時期 *2
水温(℃)
7
50
3
50
事例 2(SUS)
処理井水
市水
処理井水
市水
6
60 *5
3
25
4
63
4
25
0.4
6.5
94
2.5
3.07
3.8
1.8
16
0.7
0.5
2.5
28
0.4
0.87
1.7
-4.7
7.7
0.01
90
-6
0.4
7.8
169
36
43.7
55.6
35
12
14
5
6.9
21
23
3.1
1.2
-0.6
1.9
1.1
-2
25
残留塩素
0.38
0.15
0.7 *4
1.0
pH
7.3
7.5
*7
7
7.5
7.5
導電率(μS/cm)
170
460
98
*3
酸消費量4.8 *1
43.2
8.5
26.9
5
75
*6
重炭酸イオン
6.1
全硬度 *1
53.1
1.6
46.1
59
Ca 硬度 *1
34
45
Na
12.2
66
Ca
18
Mg
3.3
SiO2
26.8
0.3
塩化物イオン
12.9
83
*7
14.7
130
17
硫酸イオン
18
1.2
21.3
4.1
1.1
硝酸イオン
3.8
0.1
遊離炭酸
6.6
0.3
ランゲリア指数
-1.5
-0.0
マトソン比(HCO3/SO4)
2.6
8.6
1.5
1.5
83.2
硫酸塩化物比(SO4/Cl)
1.4
0.01
1.4
0.03
0.1
MWPI(PI for Cu)
6
45
35
49
-24
SUSPI
-14
43
-14
47
-25
*1:(mg/lasCaCO3),*2:(竣工からの年数),*3:TDSx0.7,*4:給湯補給水,*5:竣工後5年までは55℃
*6:当該浄水場平均値 ,*7.pH6.5-7.6,Cl 56-83
14
事例 3(Cu)
下水再生水(SUS)
平均
0.6
7.6
1010
62
75.6
85
25
199
78
1.2
-0.6
1.9
0.4
32
40
腐食センターニュース No. 057
2011 年 8 月
a)ステンレス鋼管と銅管の水質依存性の違い
事例 1 と 2 はステンレス鋼管であり、事例 3 は銅管である。どちらも淡水中では耐食性配管とされて
いるが、腐食の水質依存性には大きな違いがある。
表 4 に耐食皮膜の形成についてのステンレス鋼管と銅管の違いを示す。最も大きな違いは、ステンレ
ス鋼管は大気中で瞬時に形成される皮膜が水中でも充分な耐食性を持っており、銅管は水中に浸漬され
てからその表面に水中における耐食性皮膜を形成するという事である。耐食性皮膜の厚さもステンレス
が数 nm であるのに対し、銅はμm のオーダーの厚みまで成長する。
表 4 ステンレスと銅の耐食性皮膜 16)
材料
銅
使用前空気中で形成される
耐食性皮膜
常温で形成されるアモルファスな下
部亜酸化銅(Cu2O)・上部酸化銅
(CuO)の薄い(ナノメートル)皮膜
水中で形成される耐食性皮膜
初期腐食速度
影響する因子
常温で形成される結晶性の亜酸化銅
(Cu2O)の厚い皮膜
5mdd以下
pH
給水銅管・冷温水銅管
高温で形成される結晶性の下部亜酸化
銅(Cu2O)上部酸化銅(CuO)の厚い皮膜
2mdd以下
pH
給湯銅管
水中のシリカと形成するアモルファスのオ 耐食性皮膜上に
ルソ珪酸銅
形成
ステンレス
大気中で薄いクロム酸化皮膜(数オ
ングストローム)を瞬間的に形成
水中で表面のクロム濃度が少しづつ上昇
0.1mdd以下
SiO2
備考
給湯銅管・温水銅コイル
-
pH,Cl
a-1)銅:
銅は空気中において薄い非晶質の酸化銅(CuO)と亜酸化銅(Cu2O)の皮膜が形成され、大気中ではよ
い耐食性を示す。この皮膜は水中での耐食性は持たず、中性より高い pH の水中では、結晶性を持つ亜
酸化銅の皮膜が厚く形成されることにより、全面腐食速度が低下し水中でのよい耐食性を得る。その結
果として水質によっては孔食等の局部腐食が発生する。
その他の耐食性皮膜としては高温で酸化剤の供給が多い水中で結晶性の酸化銅が形成される。シリカ
の濃度が 15mg/l を超える水が供給される場合には非晶質のオルソ珪酸銅が形成され耐食性が向上する。
シリカ濃度が 40mg/l を超える水が連続的に供給される環境ではガラス状のシリカの皮膜が形成される
場合がある。これはシリカの飽和溶解度が低温で小さいことによる(10℃で 40mg/l)。絶縁性のシリカ
の皮膜は同時に孔食の発生を促進していると考えられる。
銅の腐食が高い水質依存性を持つ理由は水中に浸漬後に、水中で耐食的な皮膜が形成される事による。
a-2)ステンレス鋼:
大気中にできた皮膜が水中で耐食的であるために腐食の水質依存性が他の金属に比して低く、むしろ
溶接などによる金属側の表面酸化物(熱影響部)・組織等の変化(鋭敏化)や皮膜の維持に必要な酸素
の濃淡ができるすきま構造等に依存性が高い。
水中では時間をかけてわずかずつ最表面のクロム濃度が上昇していると考えられる。このことが局部
腐食発生の可能性を高める場合がある。しかし水中におけるステンレス鋼の腐食の局部腐食は非常に頻
度高く溶接部に発生する事から、銅に比して腐食の水質依存性は低い材料であるといえる。但し保温材
の下等で高濃度塩化物環境が形成された場合は非溶接部分でも応力腐食割れを容易に生じる。
b)Nakajima Diagram による水質検討
ステンレスの局部腐食発生水質は発表されているが複雑で判り難い。そこで発表されている腐食事例
水質を Nakajima Diagram で検討して SUSPI(ステンレス孔食指数)を算出した。この指数について
は今後のデータ蓄積が待たれる。銅の孔食指数 MWPI については統計的に有意であることが検証されて
いる。表 5 に SUSPI(ステンレス孔食指数)と銅の孔食指数 MWPI の計算式を示す。
15
腐食センターニュース No. 057
2011 年 8 月
孔食指数 MWPI が示している意味は、「pH が低くかつ HCO3-が少なく, SO42-,C1-が多い水質」にお
いて銅の局部腐食が発生するということである。全アニオンにおける SO42-,C1-の全アニオンに対する
等量比率は、局部腐食が発生した場合の、局部腐食内部に腐食電流によって運ばれる pH 低下に寄与す
るアニオンの比率を表しているものと考えられる。
孔食指数 SUSPI が公表された表 7 の腐食事例水質に対してどのようになっているかを図 20 に示す。
又 RO 処理地下水による事例 1・2・3 の RO 処理地下水とその建物に供給されていた市水を対応させ
て Nakajima Diagram にプロットして図-21 に示す。これから 3 事例とも市水は使用材料に対して孔食
領域になく、RO 処理水は孔食領域にあることが判定される。即ち市水から RO 処理井水に変更された
ことで局部腐食の発生可能性が高まったという推定が可能である。
表5
MWPI(給水・給湯銅管孔食指数)と SUSPI(ステンレス孔食指数)29)
Index name
Calculating formula
MWPI(Cu):Make-up Water Pitting Index
=100/((0.02*A)/(B/48 +C/35.5)+1)-(44.9*pH-288)
SUSPI:SUS Pitting Index
=100/((0.02*A)/(B/48 +C/35.5)+1)-(-50*pH+425)
A=Acid consumption(pH4.8) mgCaCO3/l、B=SO42- mg/l、C=Cl- mg/l
Nakajima Diagram の縦軸と横軸を表 6 に示す。
表 6 Nakajima Diagram の縦軸と横軸 9)
Name of figure
Vertical axis
Horizontal axis
2-
Nakajima Diagram
((SO4+Cl)/Anion)eq% = (100 x (SO4
(HCO3
2-
-*
2-
Eq + SO4
pH
-
Eq + Cl Eq)
-
2-
Eq + Cl-Eq) /
-
SO4 Eq= (SO4 mg/l)/48, Cl Eq= (Cl mg/l)/35.5
-*
HCO3 Eq=(Acid consumption(pH4.8)mgCaCO3/l)/50
Remarks
表 7 公表された腐食事例水質 27)
腐食種別
文献サンプル
名
pH
孔食割れ
新潟井水
6.9
孔食
熊本井水
7
孔食
東京井水
7
孔食割れ
静岡地水
7.1
浦安
7.2
孔食割れ
浦安上水
7.3
孔食
筑波上水
7.4
沖縄上井
7.8
孔食割れ
沖縄井水
7.8
沖縄上水
7.8
孔食割れ
墨田井水
7.9
沖縄上水
7.9
((SO4+Cl)
/Anion)eq
%
MWPI
SUSPI
78
40
60
56
32
22
27
0
-8
-2
11
-24
-44
-53
20
-9
11
17
2
2
16
28
19
26
48
12
2
12
150
53
536
259
79
68
61
620
110
110
200
330
606
86
39
22
165
18
309
79
21.8
42
32.1
38
1.7
250
70
21
29
19
19
5
364
79
53
39.9
64
428
144
574
203
778
188
909
33
578
170
355
85
338
70
13.9
14.7
485.4
電気伝導率
μS/cm
総硬度
Ca硬度
Mアルカリ度
mg/l
SO42-
C1-
2.88
50.7
全シリカ
(mg/A)
徳島井水
Average
8.2
100
66
86
87
67
62
71
63
54
61
78
42
27
27
7.5
63.6
St Dev
0.4
21.3
38.8
13.9
209.9
66.0
12.9
41.9
49.5
88.4
Min
Max
6.9
26.8
-53.2
-8.5
150.0
33.0
7.6
29.0
2.9
19.0
1.7
8.2
100.0
78.2
48.0
909.0
259.0
44.6
139.0
200.0
330.0
33.0
四国井水
8
16
44.6
47
17
43.1
122
33
78
138
26
131
96
40
212
132
18
55.4
14.4
139
11
28
13.9
125
6
28.3
8
116.4
20.6
88.5
38.2
93.1
14.5
10.9
7.6
14
33
22
No. 057
腐食センターニュース
2011 年 8 月
100
MWPI
SUSPI
90
((SO4+Cl)/Anion)eq%
80
70
60
50
40
30
SUSPI=0
SUSPitting
MWPI
20
10
Nakajima Diagram
0
6.0
6.5
7.0
7.5
pH
8.0
8.5
9.0
図-20 ステンレスの局部腐食事例水質と SUSPI29)
100
SUS孔食RO処理地下水 事例1,2
90
Cu孔食RO処理地下水 事例3
((SO4+Cl)/Anion)eq%
80
70
60
Cu事例3 市水
SUS事例1 市水
50
40
SUSPI=0
30
MWPI=0
事例2 RO
20
MWPI
SUS事例2 市水
事例1 RO
SUSPI
10
Cu事例3
Nakajima Diagram
0
6.0
6.5
7.0
7.5
pH
8.0
8.5
9.0
図-21 事例(表 3)の処理水質と対応する市水水質のプロット
c)RO 処理による水質変化のシミュレーション
地下井水原水から RO 処理をされて供給されるにいたるまでに、腐食性がどのように変化するかシミ
ュレーションで検討する。銅に対する腐食性を MWPI でステンレスに対する腐食性を SUSPI で評価す
る。
表 8 は地下水の原水から RO 膜処理をされた原水が pH 調整を受けた場合を、阻止率を仮定して計算
したものである。この表によると原水はいずれも TDS が水道法を大きく外れている為に、RO 膜処理を
せざるを得ない原水である。これらの原水はいずれも銅・ステンレスに対して腐食性である。RO 膜処
17
腐食センターニュース No. 057
2011 年 8 月
理をすると、銅に対しては腐食性が高まるが、ステンレスに対しては非腐食性迄改善されている。遊離
炭酸の値を見ると、原水と大差なく「(3)RO 処理による水質変化⑤RO 膜処理による pH の低下」で
述べたように電荷を持たない遊離炭酸がほぼ全量 RO 膜をパスしていることがわかる。このままで水道
法適であるが、水道法の pH は 5.8-8.6 なので pH の値がぎりぎりである。そこでアルカリ剤や水道水
とのブレンドを行い pH が 1 上がった場合(事例 2 の処理水では既に pH を上げる処理が施されている
ので 1 下がった場合)をシミュレートしてみた。すると pH を上げると銅に対する腐食性は改善される
が、逆にステンレスに対する腐食性が増加する結果となった。
表 8-1 地下水原水から RO 膜処理の水質シミュレーション
飲用不適水
Na
塩化物イオン
pH
電気伝導率
NO3
SO4
HCO3
全硬度
Ca硬度
Ca
Mg
ランゲリア指数
SiO2
酸消費量(pH4.8)
遊離炭酸
TDS
TDS/電気伝導率
MWPI
SUSPI
1号井戸原 2号井戸原 3号井戸原
水
水
水
413
213
1060
1480
584
3220
7.16
7.27
7.01
4580
2070
10700
9.6
15.9
2.2
176
98
532
110
94
98
1270
457
3960
640
229
2040
256
92
816
154
55
468
-0.356
-0.648
-0.248
66
66
67
87
72
74
7
5
8
3840
1820
9280
0.84
63
29
0.88
54
31
0.87
72
24
阻止率
93
98
98
93
99.5
94
99.9
99.9
99.5
98.2
飲用適水
1号井戸処 1号井戸処 2号井戸処 2号井戸処 3号井戸処 3号井戸処
理水
理水
理水
理水
理水
理水
28.9
28.9
14.9
14.9
74.2
74.2
29.6
29.6
11.7
11.7
64.4
64.4
6.0
7.0
6.0
7.0
5.9
6.9
91.6
91.6
41.4
41.4
214.0
214.0
0.7
0.7
1.1
1.1
0.2
0.2
0.9
0.9
0.5
0.5
2.7
2.7
6.6
6.6
5.6
5.6
5.9
5.9
1.3
1.3
0.5
0.5
4.0
4.0
0.6
0.6
0.2
0.2
2.0
2.0
1.3
1.3
0.5
0.5
4.1
4.1
2.8
2.8
1.0
1.0
8.4
8.4
97
96
2.0
3.5
6.9
64.1
2.0
3.5
0.7
64.1
2.0
2.9
5.7
29
2.0
2.9
0.6
29
2.0
3.0
7.4
150
2.0
3.0
0.7
150
TDS/電気
伝導率
MWPI
SUSPI
0.70
111
-33
0.70
66
17
0.70
104
-40
0.70
59
10
0.70
120
-33
0.70
75
17
表 8-2 地下水原水から RO 膜処理の水質シミュレーション
飲用不適水
Na
塩化物イオン
pH
電気伝導率
NO3
SO4
HCO3
全硬度
Ca硬度
Ca
Mg
ランゲリア指数
SiO2
酸消費量(pH4.8)
遊離炭酸
TDS
TDS/電気伝導率
MWPI
SUSPI
4号井戸原
事例2原水
水
551
1800
2050
7.1
7.42
6320
9230
9.3
270
300
100
100
1880
1770
950
381
226
-0.37
63
13.8
74
83
6
5280
6700
0.84
67
27
0.73
52
43
阻止率
93
98
98
93
99.5
94
99.9
99.9
99.5
98.2
飲用適水
4号井戸処 4号井戸処 事例2処理 事例2処理
理水
理水
水
水
38.6
38.6
36.0
36.0
41.0
41.0
6.0
7.0
6.8
5.8
126.4
126.4
184.6
184.6
0.7
0.7
0.0
0.0
1.4
1.4
1.5
1.5
6.0
6.0
6.0
6.0
1.9
1.9
1.8
1.8
0.9
0.9
1.9
1.9
4.1
4.1
97
96
1.9
3.0
5.9
88
1.9
3.0
0.6
88
0.4
3.3
1.1
129
0.4
3.3
10.5
129
TDS/電気
伝導率
MWPI
SUSPI
0.70
113
-30
0.70
68
20
0.70
77
10
0.70
122
-40
18
腐食センターニュース No. 057
2011 年 8 月
d)SUS 孔食事例 1 と 2 の水質シミュレーション
地下水原水水質データから出発した表 8-1・2 のシミュレーションで、原水は SUSPI が正で孔食性が
高く、RO 透過水は SUSPI が負で孔食性が低く、pH 調整をした最終処理水は SUSPI が正で孔食性が
高いという結果が得られたが、実際の SUS 孔食事例ではどうであろうか。
表 9 に実際に孔食が発生した給湯水質から出発したシミュレーションを行った結果を示す。表 9 と表
8-1・2 の結果が2つの事例の結果と一致することは興味深い。即ち RO 透過水の pH 調整により孔食性
が高まるという結果が得られた。更に事例を積み重ねる必要があろう。
表 9 SUS 孔食事例 1 と 2 の水質シミュレーション
水質項目(mg/l)
処理井水
事例 1(SUS)
RO透過水
地下原水
事例 2(SUS)
処理井水 RO透過水 地下原水 地下原水
RO膜除去率
推定or実測
実測
推定
推定
実測
推定
推定
実測
水温(℃)
残留塩素
pH
導電率(μS/cm)
酸消費量4.8 *1
重炭酸イオン
全硬度 *1
Ca 硬度 *1
Na
Ca
Mg
SiO2
塩化物イオン
硫酸イオン
硝酸イオン
50
0.15
7.5
25
0
6.2
25
0
7.42
8.5
10.4
1.6
1.12
6
7.3
1.6
1.12
100.0
122.0
1600
1120
83
1.2
4150
240
25
0.0
7.4
9200
83
102
1788
1364
1320
545
100
13.6
2167
315
0.5
7.6
-2.7
-4.1
8.6
6.1
0.01
0.01
45
105
43
-20
*1:(mg/lasCaCO3)*2:竣工後5年までは55℃
7.6
1.3
0.5
0.06
53
44
25
0.0
6.18
460
5
6.1
59
45
66
18
3.3
0.3
130
4.1
0.1
6.6
-2.7
1.5
0.03
108
-19
25
0.0
7.42
9230
83
100
1770
1239
83
1.2
60 *2
0.7
7.5
460
5
6.1
59
45
66
18
3.3
0.3
130
4.1
0.1
0.3
-1.4
1.5
0.03
49
47
遊離炭酸
ランゲリア指数
マトソン比(HCO3/SO4)
硫酸塩化物比(SO4/Cl)
MWPI(PI for Cu)
SUSPI
100
13.8
2050
300
6.6
1.1
0.3
0.15
53
43
%
95
94
94
96-99.9
96-99.9
95
96-99.9
96-99.9
97-98
94-98
98-99.5
6.3
1.1
0.3
0.15
52
43
③処理井水 事例1
②RO透過水 事例2
③処理井水 事例2
((SO4+Cl)/Anion)eq%
①地下原水 事例2
②RO透過水 事例1
①地下原水 事例1
90
SUS・銅共に
腐食する領域
銅のみ
腐食する領域
SUSのみ
腐食する領域
MWPI
SUSPI=0
SUSPI
MWPI=0
事例NO1SIM
Nakajima Diagram
事例NO2SIM
80
6.0
6.5
7.0
7.5
pH
8.0
8.5
図-22 SUS 腐食事例 1・2 の Nakajima Diagram 上の軌跡
19
9.0
腐食センターニュース
No. 057
2011 年 8 月
(6)まとめ
地下水を RO 膜で処理して、水道水として使用する背景・処理の特性・腐食事例について解説・分析
を行った。その結果として以下の事が確認された。水質と金属の腐食については不明な事もあるが、今
後の事例データの蓄積が必須である。
① 沿海部の地下水には、アニオンとして塩化物イオンを突出して多く(他のアニオンの 5 倍以上)含
む場合がある。この様な地下水を RO(逆浸透)膜で処理すると、アニオンが地下水と同じイオン
比率を持った水道水が製造される。
② 地下水には雑菌が含まれる為に、残留塩素が投入される。RO(逆浸透)膜で処理した水は、残留塩
素を消費する物質が少ない為末端のユースポイントまで高濃度の残留塩素が届けられる。
③ このような水は、ステンレスの非溶接部や銅管に局部腐食を発生させやすい水になる。
④ ステンレス協会が公表した腐食事例水質データ(1998)から作成した孔食指数 SUSPI を、過去に公
表した直管部(非溶接部)孔食発生水質データ適用すると良く当てはまることが判った。
⑤ 地下原水から使用水質までの、水処理の過程における水質変化を Nakajima Diagram により検討し
た結果、ステンレスに対する腐食性は pH を調整する事によって高くなる。
このような腐食を防止する為には、地下水を RO(逆浸透)膜した処理水と、塩化物イオンがアニオ
ン中で突出しない水(別の深度の地下水・市水として供給される水道水等)を、Nakajima Diagram 上
で、使用する材料に併せた孔食性の低い水に混合して使用する。又別の方法としては地下水を 2 段 RO
処理した水を、消石灰処理等によって水質を変える等がある。
本稿を作成するにあたり御指導・御協力を頂いた、辻川茂男東大名誉教授・三建設備の細谷清氏に深甚の
謝意を表するものである。
(7)参考文献
1. (社)空気調和衛生工学会:「給湯水の水質に関する報告書」平成6年3月(1994)
2. 笠原晃明, 小向 茂: 防食技術, 36, 492-499(1987).
3. 辻川茂男;「腐食・防食ハンドブック」、p60,腐食防食協会編、丸善(2000)
4. 明石正恒:材料と環境 2005 講演集, 腐食防食協会, A113 (2005)
5. 細谷 清, 中島博志: 材料と環境 2002 講演集, 腐食防食協会, B313, (2002).
6. 細谷 清, 高田康治, 中村慎二:材料と環境講演集、d307,(2008)
7. 中島博志;日本材料学会,腐食防食部門委員会第 278 回例会(2011)
8. 中島博志;「銅の腐食事例と水質」、材料と環境 2009 講演集、c112、(2009)
9. 中島博志;腐食センターニュース No54, 腐食センター JSCE, (2010) http://www.corrosion-center.jp/news/news.html
10. 中島博志:「Nakajima Diagram と水質変化」,材料と環境,Vol.59,pp.382-384,(2010)
11. 中島博志、細谷 清;「金属材料の淡水中の腐食」、空衛,日本空調衛生工事業協会, (12/2006)
12. 中島博志;「建築設備の腐食と防食」,建築設備技術者協会,pp27-34, (06/2009)
13. 腐食防食協会編:[腐食・防食ハンドブック CDROM 版、第Ⅱ編第 1 章 1.3],丸善, (2003)
14. 中島博志: 「建築設備の腐食・防食・寿命予測に関する研究」、九州大学学位論文、(2004)
15. 中島博志;材料と環境 2006 梗概集、b110、(2006)
16. 中島博志:材料と環境,腐食防協会,Vol50,No3,pp81-87,(2001)
17. 久松敬弘:「Fe-Ni-Cr 合金の局部腐食について-孔食・すきま腐食・応力腐食割れ-」、日本金属学会会報,第 20 巻、第 1 号、1981
18. 鹿島建設・栗田工業共編:[配管防食マニュアル(第 3 版)],日本工業出版 (1994)
19. 村田和也;材料と環境 2010 予稿集(2010)
20. 中島博志:[腐食・防食ハンドブック CDROM 版、第Ⅶ編第 5 章建築、建築設備], 腐食防食協会編,丸善,pp.807-840,2003
21. 中島博志;「空調用銅コイルの孔食」第 44 回材料と環境討論会,C-305,(1997)
22. 梅村文夫 額賀考訓 熊谷克彦:第 51 回材料と環境討論会」、B-310,(2004)
20
腐食センターニュース
No. 057
2011 年 8 月
23. 中島博志:「銅の腐食と新しい水質管理手法」九州機械工業振興会腐食防食セミナー、(2010/10)
24. 中島博志:「Nakajima Diagram と水質変化」、材料と環境 2010、c201,(2010).
25. 中島博志、細谷 清、縣 邦雄、松川安樹:建築設備の腐食と水質(その1 建築設備の腐食と水質)材料と環境 2001,
腐食防食協会,C-101,pp.195-198,(2001)
27. 腐食対策委員会・設備配管システム分科会合同会議;[屋内配管におけるステンレス鋼の耐食性と水質の関係について
平成 10 年 3 月 31 日(改訂)],ステンレス協会,(1998)
28. 中島博志;「給湯配管の局部腐食事例」、材料と環境 2005 講演集、a115、(2005)
29. 中島博志:「Nakajima Diagram について」、材料と環境 2011、d308,(2011)
最近の問合わせから―
「水道水系」にも微生物腐食
304 ステンレス鋼(18Cr‐9Ni)におこった微生物腐食事例についてセンターニュース No.028(2003
年 12 月)に紹介した。当センターに調査委員会を設け 1997 年 12 月 10 日に通水を一時停止して現地
での電位・水質・堆積物・鋼材などの測定・採取を実施したが、これらの調査は工業用水(工水という)
系に限っていた。しかし併行して走る「水道水(上水)系」にも漏水がおこっていた。
漏水に至る時経緯を表 1 にまとめた。工水系では通水後 1.5 年で漏水が発見されたが上水系では 3.0
年とやや永くかかっている。表 2 にまとめた漏水状況によると、工水系では 79Ring(周溶接による接
合部)中の 47Ring,95 箇所,で漏水した。これに対して上水系では 76Ring 中の 7Ring,7 箇所,と
少ない。
上水系では漏水までの時間,漏水箇所数,が工水系に比べて少ないが漏水がおこっていること自体は
同じである。この上水系では下流での使用者・使用量が少なかったために定常的な通水状態が与えられ
なかったことが原因と考えられた。微生物腐食という腐食形態は同じと仮定している。
上水に通常添加されている塩素系消毒剤(Cl ,HClO またはClO )は管壁上で還元されCl になって
しまうので微生物の活動を抑制する効果を失ってしまう。極端な場合流速がゼロになれば、遅かれ早か
れ上水中の消毒剤濃度はゼロになり工水と同じになってしまう。
上記の工水の場合のように鉄酸化菌(IOB)などの原因微生物の生息の事前調査も望ましいが、上水
系ではこれなしでも発現に至らないことも多いと想われる。そこでは定常的な通水状態が失なわれると
発現に至りうることに要注意である。
21
腐食センターニュース
No. 057
2011 年 8 月
表 1 漏水の時経緯
表 2 工水・上水での漏水状況
22
腐食センターニュース
No. 057
2011 年 8 月
海水中におけるステンレス鋼の腐食
高谷泰之,戸越健一郎
海水中で使用する魚群探知機器を船底に取付けるために,ポリウレタン樹脂製匡体が使用されていた.
その匡体を固定していたステンレス鋼製ボルト・ナットが約 4 年間で腐食を起こし,機能しなくなった.
ボルト・ナットの腐食状況を調査したので,その状況を説明する.
1. 腐食損傷の状況
ポリウレタン樹脂に埋め込まれたナットの腐食状況を図 1 に示す.海水に接触していたナットの断
面(端面)が虫に食われたように腐食し,ボルトは脱落していた.
2. 匡体の概要
FRP 樹脂製船底に取付けられた魚群探知器を
覆うようにポリウレタン樹脂匡体が取り付けら
れる.その取付け状況を図 2 に示す.その匡体に
SUS304 鋼製ナットを埋め込む形で SUS304 鋼
製皿ボルトが固定されていた.使用していたもの
と同じ形のボルト・ナットの取付けを再現し,そ
の断面状況を図 3 に示す.ボルトの頭部が海水に
浸されていた.
SUS304 鋼製ナット④をポリウレタン樹脂に
埋め込み,SUS304 鋼製ボルト①とナットはエポ
キシ樹脂系のプレコートメック加工がなされ,ね
じのゆるみ防止と海水からの気密性を保つ構造
になっていた.
図 1 ポリウレタン樹脂に埋め込まれた
SUS304 製ナットの腐食状況
図 2 ボルト・ナットの取り付け状況
①
SUS304 鋼製皿ボルト,②船底ケース,③パテ,④ポリウレタン樹脂埋込 SUS304 製ナット
23
腐食センターニュース
No. 057
2011 年 8 月
図 3 皿ボルト/ナットの取付け方
図 4 皿ボルトの腐食状況
3. 腐食部材の調査
3.1 皿ボルト表面
埋め込まれたナットの腐食状況は,前述したように海水に接したナット端面において木材断面が虫に
食われたように腐食していた.一方,皿ボルトの表面は図 4 に見られるようにわずかに錆が付着するも
のの,ねじ山も残り比較的健全であった.
3.2 ナットの表面状況とその断面形状
ポリウレタン樹脂匡体からナットを取りだし,
ナット内面にカメラの焦点を合わせて撮影した.
その内面の腐食状況(図 5)と内面に堆積した腐
食生成物の EDS 分析結果(図 6)を示す.その
内面はねじ山も含め全面にわたって茶褐色の腐
食生成物が堆積し,全面にわたって腐食が進行
していた.腐食生成物には Cl の他に S,Si,Al,
Ca が含まれていた.
次に,ナット断面に焦点を合わせた断面形状
を図 7 に示す.海水に接していたと予想される
ナット部は内面および外面(写真中右側)とも
に減肉が大きく,ボルトおよびポリウレタン樹
脂製匡体との間でナット側にすき間腐食が起こ
っていた.ナット端面は素材の長手方向の金属
図 5 ナット内面の腐食状況
図 7 ナット断面の腐食状況
図 6 堆積していた腐食生成物の EDS 分析
24
腐食センターニュース
No. 057
2011 年 8 月
(a)
(b)
(d)
10mm
(c)
500μm
300μm
500μm
図7
腐食したナットの金属組織
(図 6 の上部断面)
組織に沿った溶解跡が見られた.いわゆる端面
腐食 1)が生じていた.ナットのねじ部は形状が
保たれているが,その山部の腐食も生じていた.
3.3 ナットの断面金属組織
ナット断面における各部の金属組織を図 7 に
示す.それは図 6 の上断面であり,ポリウレタ
ン樹脂と接触したナットの側面が激しく減肉
していた.表面には灰色をした腐食生成物が厚
く堆積していることが解かる.
端面腐食が生じていたナットの端面(d)は,選
択腐食が生じていた.その拡大図を図 8 に示す.
鋼材の長手方向に白色部分と灰色部分が層状
に積み重なり,引き伸ばされた黒色の線が見ら
れ,それに沿って選択的に溶解していた.
図 8 ナット端面の金属組織
(c)
(b)
(d)
500μm
(a)
10mm
500μm
図9
腐食したナットの金属組織
25
(図 6 の下部断面)
500μm
腐食センターニュース
No. 057
2011 年 8 月
図 10 使用していた SUS304 鋼製皿ナット(図 4)の断面形状(a)とその金属組織(b)
ねじ山部の金属組織(c)は,やはり長手方向の海水に露出した端面が選択的に溶解していた.もう一方
の端面(b)は,腐食が穏やかであるが選択腐食の形跡がみられた.
次に,図 6 の下方の断面状況を図 9 に示す.上部と同様に長手方向の端面の選択腐食が起こっている
様子が見られた.
4.
皿ボルトの金属組織
腐食がほとんど起こっていなかった皿ボルトの金属組織を図 10 に示す.ボルトのねじ山部など(a)の
形状は保たれほとんど腐食されていない.その金属組織を(b)に示した.結晶粒界が見られ,それらが潰
されたようになっている.ボルトは鍛造加工されて製造されたと思われる.
5.おわりに
丸棒や圧延材のように長手方向に連なっている金属組織が選択的に腐食した腐食損傷である.
鍛造材よりも圧延材が激しく腐食されていたことから,鍛造品が海水中で耐食性が良いように思える.
しかし,両者を組み合わせて使用しているため,圧延材が腐食を起こしたために鍛造品ボルトは防食さ
れたともいえる.
海水中でオーステナイト系ステンレス鋼を使用する場合には防食対策を施すことが賢明であるとい
える.
参考文献
1) 尾崎敏範,石川雄一,穐山雅男:海水機器の腐食-損傷とその対策-,p55(2002)㈱技術評論社.
後記 本稿で端面腐食とよんでいるのと同じ腐食形態が組織的に研究された報告をひきつづいて
紹介する。
26
腐食センターニュース
No. 057
2011 年 8 月
核燃料再処理環境における加工フロー腐食
ピューレックス法と呼ばれる低濃縮ウラン燃料の再処理方法では、ジルコニウム合金製の被覆管
ごと細かく切断して中の燃料部分のみを硝酸中に溶かし出す。これらは有機溶媒によりウラン溶液
およびプルトニウム溶液に分離してそれぞれの純度を高めた後に、硝酸を蒸発させて粉末状の製品
とする。
上記の硝酸環境は高温・高濃度に加えて溶出した核分裂生成物が高い酸化性を与えるので、ステ
ンレス鋼はクロム成分が 6 価(CrO またはCr O -Cr VI とかく)で溶ける過不動態とよばれる
高電位域におかれる。
圧延や鍛造などによる加工をうけた金属では変形にともなう金属材料の流れ(メタルフロー)は
長く伸びた粒界をつくり、これが環境にさらされると粒界腐食が奥深く進むおそれがある。
1),2)
この現象は当初 tunneling corrosion, end grain corrosion などとよばれた が、ここでは加工
3)
フロー腐食 という。
1)R. D. Shaw and D. Elliot:Stainless Steels’ 84, p.395 (1985).
2) 武田誠一郎,林正太郎:動燃技報,67,64 (1988).
3) 木内 清:日本原子力学会誌,31,230 (1989).
以下に紹介する文献 N と同 T で採用された粒界腐食試験の条件と一部の結果を表 1 にまとめた。
文献 T による腐食電位は、Huey 試験時 910mV vs. SCE,Coriou 試験時 1050mV(1 g/L Cr(VI)
のとき)、1100 mV(5g/L Cr(VI)のとき)である (図 1)。これらに対する最大侵食深さは Huey
試験では現れないが、Coriou 試験には大きく反映される-この場合の供試 AOD 溶製まま材につい
ては後述する。
表1
粒界腐食試験の条件と一部の結果
Huey 試験
Coriou 試験
14.4kmol/m HNO
*1
5kmol/m HNO
+8g/L Cr(VI)
*1
48h/c×15c
304L~100 m/30 日
304ULC 侵食なし
24h/c×8c
304L~2400 m/8 日
304ULC 1200 m/8 日
加工フロー腐食は鋼中濃度の 6 倍に濃化した
P 正偏析領域に発生
65% HNO
8N HNO
*1
*2
文献
N
+1g/L Cr(VI),+5g/L Cr(VI),
*1
48h/c×5c (20c)
24h/c×4c
AOD/ESR による差より
C 量の影響の方が大きい
加工フロー腐食は AOD 精錬ままでは現れるが
ESR 精錬を加えると著しく低減される
T
文献 N 金子道郎,阿部征三郎:鉄と鋼,81,85 (1995).
文献 T 松岡 聡,牛田包久,松本次郎:大平洋金属技報,No.1,13 (1997).
*1 沸騰
*2 1 サイクル 48h 試験を 5 サイクル,場合によっては 20 サイクル,実施との意,
他も同様。
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腐食センターニュース
No. 057
2011 年 8 月
910mV
…Huey 試験
1050
…Coriou 試験 1g/L Cr(VI)
1100
…
同
5g/L Cr(VI)
図 1 AOD 溶製まま材に発生した最大侵食深さに及ぼす
腐食電位の影響(文献 T)
供試材
供試材の化学組成を表 2 に示した。
文献 N では実機製造した厚さ 10mm の 304L 鋼板および厚さ 29mm の 304ULC 鋼板を用いた。
いずれも連続鋳造→熱間圧延及び固溶化熱処理工程を経て製造し、機械加工により仕上げた試験片
は湿式 600 番研磨→電解研磨ののち腐食試験にかけた。
304ULC 鋼実機製造スラブ(板厚:190mm)から上記厚さ 29mm まで圧延するまでの均熱処理
とその後の固溶化熱処理の諸条件が加工フロー腐食へ及ぼす影響を詳しく検討した。なお固溶化熱
処理後の冷却を空冷による場合は実機での板厚中心部のそれを模擬するため約 30℃/秒とした。
文献 T における製造工程を図 2 に示す。フエロニッケルとフエロクロムとの溶湯は AOD(Argon
Oxygen Decarburization)炉で脱炭などの精錬後 ESR(Electro Slag Remelting)精錬を経て 2
~10 トンの鋼塊とし、鍛錬比**5S から 20S の熱間鍛造を加えてφ200×200L(mm)の供試材をえた。
その後 1050℃×8 時間、水冷の固溶化熱処理を施した。表 2 中の NAG18/10L は英国の再処理施
** JIS G 0701
設で使用されている耐硝酸用ステンレス鋼の規格である。
表 2 供試材の化学組成(mass%)
文献 N
文献 T
(以下略)
28
腐食センターニュース
FeNi
FeCr
No. 057
AOD 炉
2011 年 8 月
ESR
鍛造
固溶化熱処理
図 2 ステンレス鍛造品製造工程(文献 T)
実験結果と判明事項
文献 N
304L 鋼板での腐食は鋼板の中心付近で粒界腐食として進んだ。この形態は Huey/Coriou-両試
験で変らず、侵食速度は後者で著しく大きかった。加工フロー腐食を発生した板厚中心部に Cr の
負偏析領域は存在せず、
それが検出された板厚の 1/4 付近でも負偏析の程度は鋼中 Cr 量(約 18%)
に対して約 1%の低下にとどまった。また Coriou 試験液中において Cr 量の高い鋼の方が低いもの
より速い速度で溶解していたこと、腐食電位は低 Cr 鋼でより高かったこと、から Cr の負偏析領域
が選択溶解する機構は採れないとした。
304ULC 鋼での加工フロー腐食は Huey 試験では観察されなかった。
Coriou 試験では板厚中心付近に同腐食が観察され、この発生領域は P 量が鋼中(平均)濃度の約 6
倍に濃化した正偏析領域に対応していた。
しかし侵食深さは 304L の 1/2 程度にとどまりさらなる P 濃度の均一化が必要と考えた。結論
的に固溶化熱処理後の冷却を水冷とするか、固溶化熱処理時間を 5 時間以上として空冷とする(図
3)、あるいはスラブ加熱の熱処理条件を 1220℃以上で 5 時間とする(図 4)、これによって加工フ
ロー腐食の侵食深さをさらに低減できることを見出した。
図 3 侵食深さに及ぼす 1050℃での溶体化処理時間・
冷却速度(空冷,水冷)の影響(文献 N)
図 4 侵食深さに及ぼすスラブ加熱温度の影響
(文献 N)
文献 T
Coriou 試験後に SEM 下に観察した穴数を図 5 に示す。AOD 精錬ままでは 800mm2 の広さ範囲
内に 40 ケを数えるが、ESR 精錬を加えたものでは数ケにとどまり、0.01~0.025%の P 量に依存
していない。上記の穴は Coriou 試験の 1 回→4 回の増加によって深さ方向に進行しており成長性で
あることがわかる(図 6)。
29
腐食センターニュース No. 057
2011 年 8 月
文献 N と T とを通じて、C・P 量の低減に加えて、文献 N では固溶化熱処理時間を十分長くとり、
その後は水冷すること、文献 N では ESR 精錬仕上げを加えること、が加工フロー腐食のさらなる
低減に有効になることがわかった。
図 5 加工フロー腐食発生頻度に及ぼす P 量および溶解方法の影響(1g/L Cr(VI))
SEM 像
断面ミクロ像
24 時間
1回
24 時間
2回
(48 時間)
24 時間
3回
(72 時間)
24 時間
4回
(96 時間)
300μm
400μm
図 6 Coriou 試験(1g/L Cr(VI))における加工フロー腐食進行状況
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腐食センターニュース
No. 057
2011 年 8 月
腐食センターニュース No.057
( 2 0 11年 8月 )
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