...

平成 25 年度随時監査等結果報告の提出について

by user

on
Category: Documents
9

views

Report

Comments

Transcript

平成 25 年度随時監査等結果報告の提出について
報 告 監 26 の 第 23 号
平 成 26 年 5 月 27 日
大阪市監査委員 金 沢 一 博
同
有 本 純 子
同
貴 納 順 二
同
阪 井 千鶴子
平成 25 年度随時監査等結果報告の提出について
(IT適正利用推進計画に係る事務)
地方自治法(昭和 22 年法律第 67 号)第 199 条第2項及び第5項の規定による平成 25
年度随時監査等を実施し、同条第9項の規定により監査の結果に関する報告を次のとおり
決定したので提出する。
第1 監査の概要
1 監査の対象
IT適正利用推進計画に係る事務
2 監査の目的と範囲
本随時監査では、
平成 23 年度から5年間を目途に進められているIT適正利用推進
計画(以下「本計画」という。)について、中間年度となる平成 25 年度の時点で、計
画に基づく事務の実施状況等を監査し、今後における本市のIT適正利用の着実な推
進に寄与することを目的とする。
3 監査の着眼点
(1)本計画の各施策は、市政を取り巻く問題点に対し有効な解決策となるよう、適切
なプロセスで検討及び決定されたものか。
(2)本計画で定める基幹系システムの更新計画は、当初計画どおりに進捗しているか。
また、当初計画と進捗に差がある場合、その差が生じた理由は適切であり、かつ、
適正なプロセスにより変更することが決定されているか。
(3)本計画で定める情報システムの調達(以下「IT調達」という。)の適正化は、
- 85 -
当初計画していた改善が行われ、有効に機能しているか。
(4)本計画で定める本市のIT活用力を向上させる方策は有効に機能しているか。
(5)本計画で定める同計画の推進体制について、局横断的なプロジェクト等は市最高
情報統括責任者(以下「市CIO(注)」という。)である市長に諮り、市長の指示
のもとで事業が進められているか。
(注)Chief Information Officer の略。
4 監査の実施方法
本計画に定められている各種取組について、その実施状況、進捗並びに効果を監査
の着眼点ごとの監査手続に基づき、関連書類の確認及び関係職員からの説明を聴取す
るなどの方法により、監査を実施した。
5 監査の期間
平成 25 年9月9日から同年 10 月 18 日まで
第2 事務の概要
1 本市のITにかかる事務の状況
本市では、各部局等において行政事務に関する 150(注1)の情報システムが利用され
ており、それらの利用用途別区分及びそれぞれに該当するおもな情報システムは次の
とおりである。
(1)市民への情報提供を目的とするシステム (22 システム)
本市ホームページ、スポーツ施設利用システム、電子調達システム 等
(2)市民の情報を扱うシステム (43 システム)
国民健康保健等システム、税務事務システム、住民基本台帳等システム
(3)内部事務を処理するシステム (40 システム)
文書管理システム、財務会計システム、職員情報システム 等
(4)まちづくりを支援するシステム (45 システム)
道路橋梁総合管理システム、下水道総合情報システム、消防情報システム 等
また、新たなITの利用形態として、SaaS、PaaS、IaaS等のクラウド
(注2)
を利用したシステムとして、危機管理情報システムや統合型GIS、通信ネット
ワークシステム等もある。
これらのシステムに要する経費(以下「IT経費」という。)は、開発や改修、機
器の更新に必要となる「一時経費」と、機器のリースや運用の保守に必要となる「経
常経費」に分類され、平成 25 年度の予算内示額ベースで、一時経費、経常経費とも約
- 86 -
76 億円の合計約 152 億円となっている。
このようにIT経費は全市的に捉えた場合、非常に大きなものとなっており、厳し
い財政状況において、IT経費を抑えることは重要な課題となっている。
このため、本市ではIT改革として平成 19 年度よりシステムの集約化、共通化とと
もにIT関連予算の調整に取組んだ結果、
システム数を平成 19 年度の 160 システムか
ら平成 22 年度には 147 システムに集約するとともに、
図-1に示すとおり経常経費を
平成 19 年度の約 171 億円から平成 23 年度には約 137 億円に圧縮している。
平成 23 年度からは、それまでのIT改革を引継ぎ、より発展させるものとして、平
成 27 年度までの5年間を目途とした「本計画」を定め、同計画に基づく取組を進めて
いるところである。
(注1)
150 の情報システムは、本市IT統括課が掌握するもので、水道局、交通局、病院局
及び学校園を除く
(注2)
SaaS、PaaS、IaaS等のクラウドとは、情報システムの所有及び利用形態
を示し、過去よりシステム利用者毎に所有されてきたIT資産(アプリケーション、
OS、ハードウェア等)及びそれらの運用業務の一部または全部について、第三者
が提供するサービスを利用する形態を総称してクラウドという。
提供されるITサービスの範囲の違いにより、SaaS、PaaS及びIaaSの
三種に分類される。
図-1 平成 23 年度までのIT経費の推移
IT調達改革スタート
約12億円
約
64
億
円
約
140
億
円
約
153
億
円
平成17年度
当初予算額
約 140 億円
平成18年度
当初予算額
約 153 億円
約
107
億
円
平成19年度
当初予算額
約 171 億円
+ 約1億円
+ 約9 億円
約
63
億
円
約
65
億
円
約
95
億
円
約
93
億
円
平成20年度
当初予算額
約 159 億円
平成21年度
当初予算額
約 158 億円
4年間の
予算調整により
約3 4億円の縮減
+ 約12億円
約
59
億
円
約
49
億
円
一
時
経
費
・ 新規や再構築
・ 改修経費
・機器の更新
等に伴う経費
約
90
億
円
約
88
億
円
経
常
経
費
・ 運用保守費
・機器リース
・回線使用料
・パンチ費
等の経費
平成22年度
当初予算額
約 149 億円
平成23年度
当初予算額
約 137 億円
2 本市の情報システムにかかる事業の推進体制
本市では、平成19年4月1日に情報通信の技術の利用における安全性及び信頼性を
- 87 -
確保し、行政事務の簡素化及び効率化並びに市民の利便性の向上を図ることを目的と
して、「行政事務における情報通信の技術の適正な利用の推進に関する規程」(以下
「情報推進規程」という。)を定め、 本市の行政事務における情報通信の技術の適正
な利用に関し、推進体制、情報システムの企画、開発及び運用並びに通信ネットワー
クの整備及び運用について必要な事項を定めるとともに、必要に応じて随時更新して
いる。
情報システムにかかる事業を適正かつ適切に実施するために情報推進規程で定めら
れている体制を表-1に、IT統括課の組織を表-2、人員配置を表-3に示す。
- 88 -
表-1 本市におけるIT情報通信技術の適正利用を推進する体制
最高情報統括責任者(CIO)
:市長
本市の情報通信の技術の適正な利用の推進に関する事務を統括する。
(第4条)
また、以下に示す指針等を定める。

中央情報処理センターの整備、運用、利用及び安全対策に係る指針(第 21 条)

本市通信ネットワークの整備に関する指針(第 22 条)

本市通信ネットワークに係る運用管理の方法(第 23 条)

本市通信ネットワークの利用方法及び利用する際の技術的要件に係る指針
(第 25 条)
:総務局IT統括担当部長
本 市副情報統括責任者( 市副CIO )
市
全
最高情報統括責任者を補佐し、次に掲げる事務を掌理する。
(第4条)
体
を (1)IT適正利用推進計画の着実な進行管理に関すること
掌
理 (2)ITの適正な利用の推進に係る総合調整及び局等に対する指導に関すること
(3)情報システムの企画、開発及び運用に係る局等に対する技術的指導及び支援に関す
ること
(4)通信ネットワークの整備及び運用に関すること
(5)情報システムの企画、開発及び運用並びに通信ネットワークの整備及び運用に係る
経費の縮減に関すること
(6)中央情報処理センターの運用管理に関すること
(7)その他情報通信の技術の適正な利用の推進に関して必要な事務
情報統括責任者:局総務部長等
最高情報統括責任者の命を受けて、局等の所管事務における情報通信の技術の適正な利用
局
(第6条)
ご の推進に関する事務を掌理する。
と
に IT管理者:局総務課長等
局
長
情報統括責任者の命を受けて、局等の所管事務における情報通信の技術の適正な利用を推
が
任 進するために必要な指導、助言又は調整を行う。
(第6条)
命
IT主任:IT管理者を補佐する担当係長等
IT管理者を補佐する。
(第6条)
- 89 -
表-2 総務局行政部IT統括課の組織
IT統括課 【IT統括担当部長(市副CIO)
】

庶務(局との調整、渉外、文書等)

IT適正利用全体管理(規程・計画等の整備)

IT調達適正化(IT関連協議、予算精査)

情報セキュリティ対策

ソフトウェアライセンス管理
プロジェクト

基幹系業務システムに係る業務・システム最適化
支援グループ

業務・システム最適化のための次世代IT基盤企画・整備
【IT適正化担当】

IT活用力の向上 研修企画・実施、OJT(注)・研究企画・実施
基盤グループ

課の事業にかかる計理、阿波座センタービルの共同管理

中央情報処理センターの運営

総務局データセンターの運営

共通IT基盤の運用

ネットワーク機器等の機種更新・共通ツール開発等
企画グループ
(注)On the Job Traning の略。実際の業務を通じて実施する指導、研修のこと。
表-3 総務局行政部IT統括課の人員
(単位:人)
係長
係員
部課長・課長代理
計
5
企画グループ
3
8
11
プロジェクト支援グループ
4
4
8
基盤グループ
3
12
15
10
24
39
計
3 IT適正利用推進計画の概要
情報推進規程第8条において、市副CIOはITの適正な利用を計画的かつ効率的
に推進するため、CIOの承認を受けた上で、本計画を作成するとともに、情報通信
の技術をめぐる情勢の変化等を勘案し、適宜検討を加え、必要があると認めるときは
変更しなければならないと定められている。
情報推進規程に基づき、平成 23 年3月 22 日に開催された大阪市政策会議において
CIOである市長の承認を受け、
平成 23 年度から5年間を目途とした中期計画として
定められたのが本計画である。
- 90 -
本計画は、1章から3章においてIT改革の取組の評価、分析を行い、4章で外部
環境について分析し、5章で今後の取組について各々の課題に対する改善計画を具体
的に挙げる構成となっている。
本計画の概要は表-4のとおりであるが、5章の「IT適正利用を推進するための
今後の取組」については、今回の監査をふまえ、「第3 監査の結果」において詳細
に記述する。
表-4 IT適正利用推進計画の構成
1 ITの適正な利用の推進について
平成 19 年度からのIT改革の結果を踏まえ、平成 23 年度から概ね5年間の取組みとし
て取りまとめた「IT適正利用推進計画」の成立ちについて説明。
2 IT改革の取組
平成 19 年度から取組んだIT改革の成果を紹介。
 平成 19 年度に 160 システムあった情報システムを平成 22 年度に 147 システムに集
約した。
 平成 19 年度に予算ベースで 171 億円あったIT経費を平成 23 年度予算で 137 億円
に縮減した。
3 IT改革の成果と平成 23 年度以降も取組む必要のある課題
(1) 更なるIT経費抑制の取組みが求められている。
(2) 基幹系システム再構築においては、複数局にまたがる統一的なプロジェクトマネジ
メントが必要である。
(3) 業務システム毎の課題抽出を求め、課題解決に向け適切な指導・助言を行うなど経
費抑制に向けた取組を継続する必要がある。
4 ITを取り巻く環境の変化
 住基法改正等の住民情報系の事務と業務システムに影響する制度変更への迅速な
対応が必要である。
 ICT分野の目覚ましい技術革新を上手に活用した効率的な情報システムの構
築・運用が求められる。
5 IT適正利用を推進するための今後の取組
(1) 業務・システム最適化
 平成 23 年度から基幹系システム再構築に着手
 基幹系システムの統合基盤への移行
 住民情報系システムにおける業務改善策や市民サービス向上策の検討とシステム
検討への反映
- 91 -
 内部事務系システムに関する再編に向けた改善策の検討指示。
 パッケージ利用を前提とし、カスタマイズを最低限に抑える。
 財務会計システムと文書管理システムの統合
 職員情報システム、勤務情報システム、庶務ガイドと職員ポータルとの連携
 サーバー等機器の民間データセンターへの収容
 基幹系システムの開発・運用保守調達における総合評価方式一般競争入札の導入
 住民情報系システム再構築に必要となる統合基盤上の開発ガイドライン策定
 基幹系システム再構築に先だって必要な業務改善ニーズ、国の施策や制度改正、技
術革新等の把握、調査
(2) IT調達適正化
 システムの基本方針や計画についての指導・調整
 予算化に当たっての経費の可視化、無駄の排除
 運用中のシステムの課題抽出及びその解決方法の協議
 システム開発、再構築の基本方針及び計画の策定
 システム開発、再構築等におけるパッケージソフト利用による業務改善の検討
 システム開発、再構築等におけるスクラッチ開発の場合の業務改善箇所の洗い直し
(3) IT活用力の向上
 各局IT担当及びシステム所管職員を対象とした、IT調達管理、システム開発・
運用等の基礎的知識の習得を図る「システム担当者研修」の実施
 各局IT担当及びシステム所管職員を対象とした、IT調達管理の実践、プロジェ
クト管理等の知識の習得を図る「システム専門研修」の実施
 意欲のある職員を対象とした、庁内のIT環境を利用したプログラム作成等により
業務課題を解決できる職員の養成を図る「IT利活用研修」の実施
 IT統括課職員の知識、ノウハウ習得を図る外部研修等への参加
 プロジェクト実施段階におけるOJT、意欲のある職員の庁内横断的組織による情
報共有
 特に高度な専門性が必要な職域に資質のある職員を相当期間配置するなどの戦略
的な人事配置
(4) 推進体制
 総務局IT統括担当部長及びIT統括課による調達の協議、チェックによる市長部
局のIT適正利用の推進
 「大阪市ITアドバイザー」設置による外部からの指導、助言の取得
- 92 -
第3 監査の結果
IT適正利用の推進に向けた取組みの実施状況の確認結果をふまえた、監査の結果を
以下に記述する。
監査の対象である、副CIO及びIT統括課(以下「IT統括課」という。)が実施
する「IT適正利用推進計画に係る事務」については、大別すると(1)業務システム
の最適化、(2)IT調達の適正化、(3)IT活用力の向上、(4)IT適正利用の
推進体制の4つに分類される。
はじめに、「業務システムの最適化」については、本市の基幹業務を担う8つの情報
システム(以下「基幹系システム」という。)とそれらの共通基盤を対象とし、システ
ム所管局の再構築プロジェクトマネジメント等による支援を通じて、業務の簡素化及び
効率化という観点から、パッケージの利用やシステム間の連携を推進するとともに、住
民情報系の5つのシステムの再構築においては、そのプロジェクト毎にIT統括課の担
当者を配置し、直接的に基本計画策定の支援を実施している。
なお、基幹系システムの再構築等のスケジュールについては、市政改革の方向性や国
の施策・法改正などをふまえ、図-2に示すとおり見直しが行われている。
図-2 基幹系システム再構築スケジュール
H21
内
部
系
基
幹
系
シ
ス
テ
ム
H22
H23
H26
H27
H28
H29
更新作業
再構築作業
財会
再構築作業
更新作業(文書統合)
再構築から更新に変更
国保
住基
H31
更新作業
更新作業
更新作業
更新作業
H32
H33
H34
更新作業
再構築作業
再構築作業
介護
税務
H30
更新から再構築に変更
更新作業
総福
統
合
基
盤
H25
文書
職情
住
民
系
H24
更新作業
再構築作業
更新作業
再構築作業
更新作業
再構築作業
更新作業
再構築作業
平成 24・25 年度から平成 25・26 に変更
更新作業
平成 30・31 年度から平成 31・32 年度に変更
基幹系システム統合基盤整備
平成 23~25 年度から平成 23~26 年度に変更
更新作業
凡例
機器更新
再構築等
次に、「IT調達の適正化」については、システム所管局等が情報システムの企画、
計画、予算、発注を行う各段階において、IT統括課がそれらの内容を妥当性の観点か
- 93 -
らチェックし、指導・助言を行うことにより、適正な投資が行われるように導くといっ
た組織的な取組が行われている。
基幹系システムについては、従前から行われていた保守業務の開発業務受託者への随
意契約を開発と保守を一体的に捉えた総合評価一般競争入札を採用することにより、表
-5に示すとおり、平成 23 年度以降に再構築されたシステムにおいて運用保守費の削
減が実現されている。
表-5 基幹系システムの調達における総合評価方式の費用削減効果
(注)運用保守が随意契約の場合、予定価格がほぼそのまま契約金額となるため、予定金額と落札額との
差額を総合評価方式一般競争入札による削減額としている。
また、今年度までの3年間、業務システム数が約 150 と横ばいの中で、それらにかか
る経常経費については、表-6に示すとおり減少しており、平成 25 年度は平成 23 年度
との比較で約 88 億円から約 76 億円に約 14 パーセントの削減効果が現れている。
なお、一時経費については、平成 23 年度以降増加に転じている。これは、平成 24 年
度から着手した住民情報系システムの再構築による一時的な増大であるが、その結果、
平成 24 年度、25 年度ではIT関連予算全体は増加している。
表-6 IT関連予算の推移
年度
IT関連予算
経常経費
一次経費
業務システム数
23
約 137 億円
約 88 億円
約 49 億円
147 システム
24
約 144 億円
約 78 億円
約 66 億円
150 システム
25
約 152 億円
約 76 億円
約 76 億円
150 システム
- 94 -
図-3 IT経費の推移(平成 17 年度~平成 25 年度)
IT調達改革
約
64
億
約
140
億
約
153
億
約
107
億
IT適正利用推進計画
約
63
億
約
65
億
約
95
億
約
93
億
約
59
億
約
49
億
約
66
億
約
76
億
一
時
経
費
約
90
億
約
88
億
約
78
億
約
76
億
経
常
経
費
平成17年度 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度
当初予算額 当初予算額 当初予算額 当初予算額 当初予算額 当初予算額 当初予算額 当初予算額 当初予算額
約 140 億円 約 153 億円 約 171 億円 約 159 億円 約 158 億円 約 149 億円 約 137 億円 約 144 億円 約 152 億円
続いて、「IT活用力の向上」については、各システム所管課においてITを活用し
た業務改善を自立的に行うことができるよう、テーマごとの各種研修を展開していると
ともに、IT統括課内部の人材育成として「IT統括課人材育成計画」を策定し、それ
に沿った研修や業務分担等を行っている。
なお、システム所管局を含めた市全体としての戦略的な人事配置については、本計画
において具体的な実施内容や目標が定められていないが、人事室への働きかけや庁内公
募並びにシステムを所管する各所属の人事配置に対するアドバイスなどにより、戦略的
な人事配置ができるよう取組んでいる。
最後に、「IT適正利用の推進体制」については、前述のとおり、IT統括課による
指導・助言が組織的に行われているとともに、局横断的な調整が必要な事案(3年間で
5件)についてもCIOに諮られている。
このように、本計画に定められている各種取組については、概ねその内容どおり実施
されていることが今回の監査において確認できたが、一部取組の実施段階において、事
務の質的向上やIT推進体制における人材育成などの課題解決のため、意見すべき点が
認められた。
今後はこれらに留意し、本市のIT適正利用の着実な推進が行われるよう、一層努力
されたい。
(意見)
1 IT調達適正化に向けた取組の改善について
情報推進規程によれば、情報システムの企画、計画、予算及び調達については、市
副情報統括責任者に協議(以下「IT協議」という。)し、承認を受けなければなら
ないとされており、この規程に基づき定められた本計画において、IT調達の適正化
については、情報システムの企画、計画、予算、調達等の各段階において総務局がチ
- 95 -
ェックや指導・助言を行うこととされている。
IT協議を担当する総務局行政部IT統括課企画グループでは、これらのチェック
や指導、助言の品質が担当職員のITに関するスキルや専門知識(以下「ITスキル」
という。)に左右されないようにするため、以下に示す方法で業務を行っている。
(1)協議対象となる所属ごとの複数年次にわたる継続的な検討事項に対応でき、かつ
協議窓口を一元化するため、所属ごとに担当職員を定めており、担当する所属によ
って指導する水準が一定となるよう、
2名以上の職員を組み合わせて配置している。
(2)各担当職員が指導や助言の内容について、毎週開催するIT適正利用会議や定常
的なOJTを通じて、担当職員間の意見交換や情報共有を図っている。
これらの取組が効果的に実施されるには、指導、助言等を行う指標や基準が一定で
あり、かつ各局等のシステム担当者等と共有されていることが求められる。
しかしながら、IT統括課では指導、助言等を行う基準として「IT調達適正化に
係る技術審査基準」(以下「IT技術審査基準」という。)の作成及び各局等への情
報提供を企画していたが、IT統括課の指導、助言を担当する職員間においても情報
共有が必要となるような新しい技術、情報通信サービス等に関する内容が大部分を占
めており、各局等で行うIT調達の広範な検討に対応できる基準となるように、既知
の内容をまとめ直すなどの作業が、あまり進められていない状況であった。
IT技術審査基準の内容が十分でない点について早急に見直し、各局が所管する情
報システムに係る業務の改善に役立つものとして、情報システムを所管する各所属に
提供されたい。
また、IT分野の技術革新は日進月歩であることから、IT技術審査基準の内容を
動向と照らし合わせて、適宜チェック、改訂されるよう仕組を構築されたい。
2 企画、計画に係る協議の期間の確保について
新たな情報システムを構築する場合、その企画、計画、予算、調達の各段階におい
て市副情報統括責任者と協議を実施し、承認を得なければならないとされている。こ
のうち、予算承認にかかる協議は、予算要求時期に合わせて毎年7月頃から実施され
るが、企画、計画、調達の各協議は、各システムの所管局からの申入れにより随時協
議が行われている。
情報システムの企画、計画に係る協議は予算承認に係る協議に先だって行う必要が
あるが、システム所管局からの協議の申し入れ時期によっては、企画や計画について
IT統括課が指導、調整するための期間を十分に確保できないまま、予算承認に係る
協議の時期になる場合があり、中には予算承認に係る協議と同時に企画、計画に係る
協議を依頼される場合が見受けられた。
- 96 -
このような事態が生じると、情報システムの企画、計画にかかる協議が不十分なま
ま予算化の協議が進められ、IT統括課からの十分な指導、調整ができない、発注時
期の遅延、システム形態の適切化に問題が生じるなどのおそれがある。
今後は、企画、計画に係る協議においては、各システム所管局の工程管理を指導徹
底し、予算協議の開始までに十分な検討を行う時間を確保することができるよう、各
協議について実施時期の原則を規定するなど改善されたい。
3 研修の効果測定について
IT推進計画によれば、業務・システム最適化プロジェクトや現行システムのライ
フサイクル管理はもとより、IT資産を有効に活用し実効性のある業務改善を自立的
に行える人材を育成するための研修を実施するとされている。
また、本市職員に求められるITスキルについては、業務分析・改善技法、プロジ
ェクト管理、調達管理及びIT関連規定等の習得としている。
IT統括課では、この目的を達成するために、各局のIT担当者や業務システム担
当者等を対象として研修を実施しており、その効果測定については、受講者への理解
度と役立ち度のアンケートによる評価を指標としている。
しかしながら、理解度は研修の難易度等に左右されるため、スキルの習得度合いと
直接関連付けができないこと、役立ち度は研修直後の評価よりも実際の業務を経た後
の方が適切な判断結果が得られると考えられることなどから、スキルの習得度合いを
測定する定量的かつ客観的な指標とは言い難いものであると考えられる。
今後は、IT資産の有効活用や実効性のある業務改善を自立的に行える人材の育成
という目標達成に向けて、研修を受講した各局のIT担当者のスキル習得の達成度合
いをより適切に判断できるよう、研修後一定期間の業務経験を経た時期に評価を実施
するなど、効果測定の方法をさらに工夫されたい。
4 本市における今後のIT戦略推進体制のあり方について
本計画は、平成 23 年度から5年間を目途に、本市が実施すべきITに係る施策や取
組をまとめたもので、その内容は主として「業務・システム最適化」、「IT調達適
正化」、「IT活用力の向上」の3つの取組である。これら3つの取組については、
総務局の運営方針として、業績目標の設定や自己評価が行われている。
しかしながら、総務局の運営方針及びその自己評価結果を確認したところ、以下の
内容が認められた。
(1)「業務・システム最適化」については、IT統括課職員が開発や更新などのプロ
ジェクトに直接関与している基幹系システムのみが業績目標や自己評価の対象にな
っていた。
- 97 -
(2)「IT活用力の向上」については、業績目標が受講者のアンケートによる評価値
となっており、ITスキルの習得や、ITスキルを習得した人材を必要とする所属
への適切な配置という観点での業績目標は設定されていなかった。
このような事態が生じているのは、
本計画が本市全体のIT戦略と位置付けて立案、
承認されたものでありながら、総務局の業務範囲内での評価が行われていたためと考
えられる。今後は、本市のIT全体を統括する視点から業績目標の設定や評価が行わ
れる枠組が構築されることが望ましいと考えられる。
また、本計画は策定から3年が経過し、情報技術を取り巻く環境も大きく変化して
きており、最近ではオープンデータ等の情報の二次利用や、ビッグデータ等の情報の
新しい利活用方法が注目されている。今後は、新しい情報技術による本市事業への貢
献がますます求められていくものと考えられ、そのような動きに対応していくために
は、本計画を適時適切に見直し、更新していく必要があるものと考えられる。
ついては、本計画以後の本市IT戦略について、政府において平成 25 年度に新たに
導入された政府CIOに係る制度を参考にするなど、CIOが本市のITに係る諸施
策を横断的に掌理し、強力なリーダーシップを持って諸施策を実行できる体制とする
とともに、情報技術を取り巻く環境の変化を踏まえた新たなIT戦略となるよう検討
されたい。
- 98 -
Fly UP