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Late preterm infant Final - NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント
ABMプロトコル第10号 後期早産児(在胎 34 週 0 日- 36 週 6 日)の母乳育児 (2011 年 6 月改訂第1版)* ABM Clinical Protocol #10 0/7 Breastfeeding the Late Preterm Infant (34 6/7 to 36 Weeks Gestation) * (First Revision June2011) The Academy of Breastfeeding Medicine The Academy of Breastfeeding Medicineの中心目標は,母乳育児成功に強い影響を与え得る日常よくみられる医学的な問 題の取り扱いに関するプロトコルを作成することである。これらのプロトコルは母乳育児をしている母親と乳児のケアのため のガイドラインとしてのみ適用されるものであり、医学的ケアの標準として適用するためや絶対的な治療手段として書かれた ものではない。治療方針は個々の患者の必要に応じて適切な幅をもたせてよい。これらのガイドラインは、すべてを含むこと を意図されたものではなく、母乳育児に関する医師の教育について基本的な枠組みを提供するためのものである。 目標 背景 1. 後期早産児の母乳育児の推進、支援、持続 2. 乳児と母親の最適な健康状態の維持 早産児にとっての母乳栄養の利点は、正期産児の場合よりさらに 大きいことは明らかである;しかし、過去5年の間に出された大量の 目的 論文は、後期早産児がしばしば栄養の問題に関連して、とくに母乳 1. 後期早産児にできる限り乳房から母乳を飲ませること、およ 育児についての適切なサポートを受けられない場合には、罹患率の 3-11 び/または搾母乳を与えること みならず死亡率さえ上昇するリスクがあることを示している 。後 2. 後期早産児とその母親が母乳育児に際して経験する可能性の 期早産児母乳育児を確立することは、正期産児の場合に比べ、しば ある困難について意識を高めること。 しば問題が生じがちである。その未熟性のために、後期早産児は正 3. 後期早産児とその母親が入院中および外来で経験するかもし 期産児に比べて眠りがちで、スタミナも少なく、吸着、吸啜、嚥下 れない母乳育児上の問題を、あらかじめ想定し、すぐにそれ がより困難である。眠りがちなことや、活発に吸啜できないがため と認識し、対処するための戦略を提供すること に、敗血症と誤診されて不必要な母子分離や治療を受けることにな 4. 後期早産児に起こりうる医学的問題(脱水、低血糖、高ビリ る。逆に後期早産児は、一見活気があると見間違われることがある ルビン血症、発育障害など)を予防すること かもしれない。体格の大きい新生児は、しばしば実際の在胎週数よ 5. 母親が「今」どうしたいかを理解した上で、母親のニーズや りも成熟していると間違えられやすく、結果としてその児が必要と 問題対処能力を継続的に知ること するだけの注意を向けてもらえない場合がある。例えば、在胎40週 で出生体重が 3.8kgだとしたら、36週の時点では 3.0kgであったの 定義 である。 本プロトコル作成当初は、在胎37週未満で出生した新生児を表す 後期早産児は、正期産児よりも体温維持がより困難であり、易感 際に通常使用される near-term infantという用語を用いていた。 染性があり、ビリルビン排泄がより遅く、呼吸がより不安定である。 2005年7月にNational Institute of Child Health and Human その結果、低体温、低血糖、過度の体重減少、脱水、体重増加不良、 Developmentに集まった専門家による研究班は、在胎34週0日から 成長障害、人工乳の長期補足、黄疸の増強、核黄疸、脱水による二 36週6日までに生まれた新生児は本当に 未熟 であり ほぼ成熟し 次的発熱、敗血症、無呼吸、再入院、そして母乳育児の失敗につな ているのではない ことを強調するため、そしてその時期をより正確 がりやすい。さらに 後期早産児の母親は多胎妊娠であったり、糖尿 に定義づける用語としてlate preterm(以下、後期早産とする)と 病、妊娠高血圧症候群、絨毛膜羊膜炎といった医学的問題を合併し 1 いう言葉を指定した 。しかし、この定義は以前のABMのプロトコ ていたり、また帝王切開での分 も多く、結果として母乳育児の成 ルで扱っていたnear-term infant(35週0日∼36週6日)だけではな 功に影響を及ぼしやすい 。また後期早産児は医学的問題の評価と治 く、もう1週早く生まれた新生児(在胎34週0日∼34週6日)も含ん 療のため母子分離となることが多い。後期早産児は、子宮外生活に でいる。加えて、37週0日から37週6日で出生した乳児に関しても、 うまく適応した後に退院するかもしれないが、 それは乳汁生成II期が 同様に母乳育児上の問題を生じる可能性があるため、以下のガイド 完全に確立する前である場合がある。また吸着や乳汁移行に関する 9 2 ラインは彼らにも適用可能であると考えられる 。 問題が発見され、それに対して適切な処置がなされる前に退院する *このプロトコルは前回 少し早く生まれた赤ちゃん(在胎35̶37週)の母乳育児援助 というタイトルであった。 1 こともある。両親への教育、および母乳育児を熟知した支援者によ 4. 以下において、母子分離を避ける、もしくは最小限にとどめる る適切なタイミングでの外来フォローは、母親と乳児の双方にとっ a, 出産直後も含めての産後入院期間 て、母乳育児が適切に行われるために極めて重要な役割を果たす。 b. 母親または乳児が医学的理由のため入院している場合 「母乳育児成功のための10か条」を実践している病院においては、 5. 母乳育児されている 後期早産児がしばしば遭遇する問題の予 後期早産児を含め全ての乳児は母乳だけで育つチャンスがより大き 防と迅速な発見 くなる。このためには、医療専門家は「10か条」を熟知し、 「10か a. 低血糖 条」に記載されたガイドラインを支持するために、産科施設の管理 b. 低体温 12 者と協力しなければならない 。 c. 高ビリルビン血症 正期産児に比べ後期早産児には先に挙げられた医学的問題のリ d. 脱水または過度の体重減少 スクが高まる事が知られているので、とくに子宮外環境に充分に適 e. 成長障害 応できないリスクが最も高まる生後 12 時間もしくは生後 24 時間 6. 教育 は、綿密な経過観察とモニタリングが求められる。各分 施設は、 a. 入院中でも外来でも、スタッフや養育者に後期早産児の母 母子とその母乳育児を支援しながら、このモニタリングが最も良好 乳育児における特有の問題について継続的に教育する。 に達成できる方法と場所を決定しなければならない。34 週 0 日か b. 後期早産児の母乳育児について両親を教育する ら 34 週 6 日に出生した児は、出生後産科入院中に疾病を有する割 c. 以下についての、外来での支援者(看護師もしくは母乳育児 9 合が 50%であることを記憶にとどめておくとよいだろう 。後期早 支援担当者)を 1 人(もしくは 2 人)育成する: 産児に生じる緊急性を伴う問題の幾つかは、産科棟でも対応可能で i. 母乳育児支援、アセスメント、基礎的な母乳育児問題の あるが、より適切なケアとモニタリングのために高次医療施設に移 解決、後期早産児の特徴 さねばならない場合もある。 ii. 後期早産児の母乳育児にまつわる問題 後期早産児は、退院後も適切な時期に評価する事が必要である。 7. 退院/フォローアップ 多くの病院が母乳育児に やさしく なってきているように、病院の a. 退院基準を設定する 外来や診療所でも単に母乳育児中の母親を応援するのみならず、母 b. 退院後の授乳計画を立てる 乳育児に関するあまり複雑ではない問題や母親の持つ疑問につい c. 退院後効果的に母乳育児が行われているかを確認するた ても支援できるようになる必要がある。より複雑な母乳育児上の問 めに、タイムリーでかつ頻繁な外来フォローを予定する 題に関しては、教育を受けた母乳育児支援専門家に適切なタイミン d. 退院後も母親と乳児を注意深くモニタリングする グで母子を紹介できることが不可欠である。母乳育児に関連する紹 8. 質の向上事業を通して後期早産児の(入院中および外来での) 介は、他の緊急性のある医学的紹介と同様に、緊急の医学的問題と ケアをモニタリングする みなされ、対応されるべきである。 入院中:ケアの原則の実施 ケアの基本原則 括弧内に各推奨事項に対するU.S. Preventative Services Task * 1. 最適な情報交換: Forceのガイドラインに基づく エビデンス評価 を表示する。 a. 後期早産児の母乳育児のためのクリニカルパスと指示書 *エビデンスのレベル(I, II-1, II-2, II-3, および III)は、U.S. Preventive 13 Services Task Force Quality of Evidence.(エビデンスの質) に基づいて いる。 の作成。 b. 退院後の授乳計画を家族およびプライマリケア担当者 下記事項は後期早産児への最適ケアについてのガイドラインであ (primary health provider)へ明確に伝えること る。各保健医療提供者および各新生児施設は、各々の施設や実践に c. 入院中でも外来でも、医師、看護師、ラクテーション・コ 即した形でこれらの推奨事項を利用するとよい。 ンサルタント間でのコミュニケーションを円滑にすること 1. 最初のステップ: d. 母親と家族に対して、授乳計画について矛盾した助言をし a. 後期早産児用の指示書をあらかじめ作成しておき、それを ないようにすること 通してスタッフに授乳計画を知らせておく。その指示書は、 2. アセスメントと再アセスメント 14 a. 在胎週数を客観的にアセスメントすること。また、合併す 容易に改変できるものであること (Ⅲ) 。 るリスクをアセスメントすること b. 分 直後に充分な肌と肌の触れあいを奨励する。それによ b. 生理的不安定の徴候がないか注意深く観察 って、出生後の心拍・呼吸・体温・代謝はより安定化し、早 c. 産科棟もしくは新生児病棟で、毎日母乳育児をアセスメン 期の母乳育児も促進される (Ⅰ) 。 トすること c. 産科的評価および Ballard/Dubowitz スコアを用いて、在 d. 外来における母乳育児上の問題のきめ細かなアセスメン 胎週数をアセスメントする (Ⅲ) 。 ト d. 出生後 12 時間もしくは 24 時間は綿密に新生児を観察し、 15 16 生理的に不安定な状態(低体温、無呼吸、多呼吸、酸素飽和 3. 入院および外来におけるタイムリーな母乳育児支援 度の低下、低血糖、哺乳不良など)でないかどうかを鑑別す 2 19 る。このプロトコルの「背景」に記載されているように、分 乳房圧迫をするよう教えたり (Ⅲ) 、極薄のシリコン製ニッ 30,32 施設毎に、母と子の母乳育児を支援しながらどこでどうや プルシールドの使用を考慮する (Ⅱ-2) 。このような状況 ってこの観察をするのかを決定しなければならない(Ⅲ) 。 でのニップルシールドの使用は普及してきており、役立つ可 e. 24 時間の母子同室と頻回で充分な肌と肌の触れあいを推 能性がある。ニップルシールドを使用するなら、母親と乳児 奨する。児が生理学的に安定していて健康ならば、抗菌薬の はトレーニングされたラクテーション・コンサルタントまた 点滴や光線療法を受けていても、母親の側にいられるように は母乳育児に詳しい保健医療専門家により綿密にフォロー 17 する (Ⅲ) 。 されるべきである(Ⅲ) 。 f. 自由に乳児が乳房を吸うことができるようにし、生後1時間 ii. 授乳前後の体重測定は、乳汁生成Ⅱ期が始まれば、授乳 18 33,36 以内に母乳育児を開始するよう勧める (Ⅱ-2) 。 状況のアセスメントに役立つであろう g. 時間や回数を制限せずに、欲しがれば直接授乳することを iii. 場合によっては、直接授乳の後、母の搾母乳、ドナー母 勧める。後期早産児には珍しいことではないが、空腹のサイ 乳、あるいは人工乳を少量補足する必要があるかもしれな 19 (Ⅱ-2) 。 ンを示さない場合は起こす必要があることもある 。24 時間 い(生後 24 時間以内は授乳ごとに毎回 5-10ml、その後は に少なくとも 8∼12 回は児に直接授乳させる(または搾母乳 授乳ごとに毎回 10-30ml) 。臨床状況と母親の好みによ を与える)べきである。乳児が有効に直接哺乳できないので って、胸につける補足用補助器具(SNS)を用いたり、カ あれば、母親は搾乳して、代替授乳手段を用いて搾母乳を与 ップ授乳をしたり、フィンガー・フィーディング(指を用 える必要があるかもしれない 14,20 19,20 (Ⅲ) 。 いた授乳方法) 、シリンジの使用、あるいは哺乳びんによる 20 h. 顎と頭を適切に支持するよう注意を払う事によって、効果 補足を行なってもよい 。カップ授乳は、早産児でも安全 21 的なラッチ(吸着)を促す方法を母に示す (Ⅲ) 。 性が証明されているが、哺乳びんを用いた授乳に比べて摂 取量が少なく授乳時間も長くなる 2. 入院中の継続的なケア: 37,39 。 しかし他の授乳手 段の安全性と有効性、およびそれらの直接授乳に対する影 a. 日々の授乳計画の変更は、直接もしくはコットに置いてあ 響については、エビデンスがほとんどない。衛生状態が十 るカードのようなベッドサイドの書面にしたツールを使って 分でない場合は、カップ授乳を選択するのが最適であろう 14 40 申し送る (Ⅲ) 。 (Ⅰ、Ⅱ-1、Ⅱ-2、Ⅱ-3、III) 。 b. 分 後24 時間以内に、正式にはラクテーション・コンサ iv. 補足を行う場合、児の直接授乳が確立して分泌量が維持 ルタントに、もしくは 後期早産児の母乳育児支援に熟練した できるようになるまで、母親は 24 時間に 6∼8 回は授乳後 14 有資格の保健医療従事者によって評価する事が望ましい(Ⅲ) 。 22 23 c. 標準化されたツール(例えばLATCH Score 、IBFAT 、 に搾乳器で搾乳するか、もしくは手で搾乳すべきである 11,20 。 病院仕様の電動搾乳器の使用は推奨される。母乳の産生は、 24 Mother/Baby Assessment Tool )を用いて、少なくとも2人 搾乳中に手による乳房のマッサージを行うことにより増え の異なる保健医療従事者が、1日少なくとも2回の母乳育児の るかもしれない (Ⅱ-3) 。 41 15 アセスメントを行い、記録する(Ⅱ-3) 。 h. できるだけ肌と肌の触れ合い(例えばカンガルーケア) d. 母親に後期早産児に対する母乳育児の具体的な方法 (例えば (Ⅰ)を行ったり、必要に応じて児を二重に包んだり、ある ポジショニング[抱き方、授乳姿勢] 、ラッチ[吸いつかせ方] 、 いは衣服と帽子を着せたりして、低体温のストレスを避ける。 授乳時間、早期の欲しがるサイン、乳房圧迫法など)を教える 体温を維持するために、保育器の間欠的な使用を考慮する 17,19 (Ⅲ) 。 (Ⅲ) 。 14,19 e. バイタルサイン、体重の変化、便と尿の排泄、母乳摂取量 11,25 をモニタリングする (Ⅲ) 。 3. 退院計画 f. しばしば起こりうる問題(例えば低血糖、低体温、哺乳不 良、高ビリルビン血症)についてモニタリングする a. 生理学的に安定しているか、直接授乳のみ、もしくは補足 26,28 。後 を併用することで充分な乳汁摂取ができているかを含めて、 期早産児はビリルビン値の検査閾値が低いので綿密なフォロ 退院可能かどうかをアセスメントする (Ⅱ-2) 。 生理学的 42 * ーが必要であり、生後時間による Bhutani のノモグラム 上に に安定している後期早産児は、開放式のベビーベッドで少な ルチンにビリルビンをプロットする事によって退院を決定す くとも 24 時間体温を維持でき、出生体重より 7%以上減っ 2,29 るべきである (Ⅲ) 。 ていないこと。充分に乳汁摂取できているかどうかは、哺乳 量や児の体重が適切に変化しているか(例えば、横ばいもし (*訳注:Age specific birirubin nomogram:Bhutani VK et al. 14 くは増加)によって確認する (Ⅱ-2) 。充分な精度のある体 Pediatrics 1999;103:6-14、ABM Clinical Protocol #22、p2 に引用) 39 重計を用いて、24 時間の哺乳量測定をしてもよい (Ⅱ-3)。 g. 過度の体重減少または脱水を避ける。出生後の体重減少率 b. 退院後の授乳計画をたてる。哺乳量(ml/kg/day) 、哺乳 が、生後 24 時間までに 3%、もしくは生後 72 時間までに 7% 方法(直接授乳か、哺乳びんか、補足用の器具か) 、摂取して を超える時は、さらなる評価やモニタリングがなされるべき いるものは何か(例えば母乳かドナー母乳か人工乳か)を考 である 14,19 (Ⅲ) 。 14 慮する 。補足する場合は、退院後も母親に最も受け入れら i. 有効な乳汁移行がないと判断される場合は、児の吸啜時に 3 20 れやすい方法にする (Ⅲ) 。 ii. 授乳の回数を増やす。 c. 体重、充分飲めているか、および黄疸の再評価のために、 iii. 授乳後に補足(搾母乳が望ましい)を行う、あるいはそ 17 退院1-2日後のフォローアップの予約を取る (Ⅱ-2) 。 の量を増やす。 d. 退院後の授乳計画を、母親や小児科外来担当者に伝える。 iv. 搾乳器または手によるによる搾乳を開始するか、頻度を その際は書面でのやりとりが好ましい(Ⅲ) 。 増やしてみる。母乳育児支援の専門家に紹介することを考慮 する(III) 。 b. 吸着が困難な新生児に対しては、児の口腔内に解剖学的異常 外来:ケアの原則の実施 (例えば舌癒着症[舌小帯短縮症]や口蓋裂など)がないか注意 1. 初回診察: 深く診察し、指を使って吸啜の状態を調べるべきである。母親の a. 最初の外来診察あるいは自宅への訪問診察は退院後12 乳頭や乳房に対しては、乳管閉塞、乳腺炎、病的緊満、乳汁の充 17 日で行なわれるべきである (II-2) 。 満、乳頭の傷について診察しなければならない。吸着、吸啜、お b. 出生前、周産期、乳児自身の経過や栄養法の推移などを含 よび嚥下に関しては、実際に直接授乳させて観察すべきである。 む入院中の母親と児の情報をチェックし、外来記録に記載する。 トレーニングを受けた母乳育児支援専門家への紹介が必要にな (たとえば、入院中に補足を必要としたか、吸着の問題があっ るかもしれず、舌癒着症の事例では切開術のトレーニングを受け たか、 光線療法を必要としたか、 など) 在胎週数と出生体重は、 た保健医療提供者への紹介が必要かもしれない 11,44-46 25 目立つように記載されなくてはならない (III) 。 (I、II-2、III) 。 c. 黄疸のある後期早産児は、高ビリルビン血症の管理を考慮す c. 医師による退院後の母乳育児の問診は、授乳回数、およその る際に、より問題を起こしやすい。全てのリスク因子をチェッ 授乳時間、およびどのような方法で授乳されているか(たとえ クしなければならず、主たる原因が乳汁摂取不足にあるならば、 ば直接授乳か、搾母乳をSNSのような器具や、フィンガー・フ 治療の第一選択はもっと多くの乳汁を飲ませることであ。それ ィーディングや、哺乳びんと人工乳首を使って飲ませているの は直接授乳方法を改善すること、もしくは搾母乳による補足に かなど)について非常に詳しく行われる必要がある。便や尿の よってなされることが望ましい。光線療法を家庭や病院で行な 回数、便の色、児の状態(たとえば、授乳後も泣く、満足して う場合は、母乳の産生や母乳の摂取が障害されないようにする いない、眠りがちで授乳中に起こしておく事が難しい、など) べきである の情報も得ておく必要がある。両親が授乳の記録を書いていた 時は、 牛乳を原料とした人工乳を少量使用することが出来る 。 2,47 。母親自身の母乳やドナーの母乳が入手出来ない 47 11 ら、それもチェックするべきである (III) 。 通常の人工乳より加水分解乳のほうがビリルビン値の低下に効 d. 乳児の服を脱がせて正確に体重を測り、診察する。出生体 果的であるというエビデンスがあるので、この場合は加水分解 重からと、退院時からどのくらいのパーセントの変化があっ 乳の使用を考慮すべきである (II、III) 。 たかを計算し、覚醒状態、脱水の有無について評価する。必 d. 乳汁産生が少ないと判明し、その他の方法を試しても効果が 要に応じて、経皮的黄疸計に加えて/または血清ビリルビン なかった母親に対しては、母乳分泌促進剤(母乳産生を増やす薬 48 11 49,50 測定により黄疸のアセスメントを行う (III) 。 剤やハーブ)の使用を考慮してもよい (II-2、III) 。 e. 乳頭の形、痛みや傷、病的緊満、乳腺炎がないかなど、乳 e. 母親がその授乳計画を実際にこなせる能力があるかどうか 房の状態を評価する。とくに定期的な補足が必要な場合は、母 を評価する。母親がうまくやっていけないようなら、一緒に解 親の感情の状態や疲労の度合いなどにも注意がはらわれなく 決策を探し計画を修正し、もっと実際にやれそうな計画に変更 てはならない。可能ならいつでも直接授乳の様子を観察して、 する (III) 。 20 11 吸着、吸啜、嚥下の様子をアセスメントすること (III) 。 3、 フォローアップ 2、 問題の解決: a, 体重増加が充分でなく授乳計画の変更を要した乳児につ a. 体重増加不良(<20g/日)は、母乳摂取不足のためにお いては、各変更後 2∼4 日に受診を必要とするだろう。保健 こる事が多い。健康な新生児の体重増加の中央値は 2834g/ 師などが家庭訪問を行って、かかりつけ医などに乳児の体重 43 日である 。保健医療従事者は、母乳産生が不足しているこ を報告してもよい。家庭訪問担当者は新生児の医学的評価と とが問題なのか、 児が充分量の母乳を飲み取れていないのか、 母乳育児支援についてのトレーニングを受けていることが望 あるいは両方の組み合わせなのかはっきりさせなくてはなら ましい(III) 。 ない。母乳を充分飲んでいる新生児は、生後 96 時間までに b. 母乳で育てられている後期早産児を含む全ての新生児は、 少なくとも 1 日6回の排尿と、4回のまとまった量の黄色顆 出生直後にビタミンKの投与を受けなくてはならない (II-3) 。 粒便を排泄し、7%以上の体重減少はなく、20∼30 分の授 またAAP(アメリカ小児科学会)は生後数日以内にビタミンD 51 11 52 乳で満足しなくてはならない 。以下の戦略は一助になるで (400IU/日)の投与を開始することを推奨している (II-3) 。 あろう: 母乳育児されている後期早産児は正期産児に比べて鉄の貯蔵 53 i. 後期早産児が約 30 分の授乳で満足しないのであれば、 が少なく、鉄欠乏のリスクがある (I) 。AAPの栄養委員会は 1 回の授乳時間を短くする。 全ての早産児に対して、生後1∼12ヶ月の間 2mg/kg/日の鉄の 4 5. 補充を勧めている。したがって、母乳で育てられている後期早 28. 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Iron supplements re- duce the risk of iron deficiency anemia in marginally low birth weight infants. Pediatrics 2010;126:e874‒e883. ABMのプロトコルは、出版から5年が有効期限である。エビデンスに基づ く改訂版を5年以内に、もしくはエビデンスに重要な変更があった時にはも っと早くに発表することとする。 原稿作成者 Eyla G. Boies, M.D., FAAP Yvonne E. Vaucher, M.D., M.P.H. ABMプロトコル委員会 Maya Bunik, M.D., MSPH, FABM Caroline J. Chantry, M.D., FABM Cynthia R. Howard, M.D., MPH, FABM Ruth A. Lawrence, M.D., FABM Kathleen A. Marinelli, M.D., FABM, 委員会委員長 Larry Noble, M.D., FABM, 翻訳委員長 Nancy G. Powers, M.D., FABM Julie Scott Taylor, M.D., M.Sc., FABM 問い合わせ先:: [email protected] 付録:母乳育児成功のための10か条 産科医療や新生児ケアにかかわるすべての施設は以下の条項を守 らなければなりません。 1. 母乳育児についての基本方針を文書にし、関係するすべての 保健医療スタッフに周知徹底しましょう。 2. この方針を実践するために必要な技能を、すべての関係する 保健医療スタッフにトレーニングしましょう。 3. 妊娠した女性すべてに母乳育児の利点とその方法に関する情 報を提供しましょう。 4. 産後 1 時間以内に母乳育児が開始できるよう、母親を援助し ましょう。 5. 母親に母乳育児のやり方を教え、母と子が離れることが避け られない場合でも母乳分泌を維持できるような方法を教えま しょう。 6. 医学的に必要がない限り、新生児には母乳以外の栄養や水分 を与えないようにしましょう。 7. 母親と赤ちゃんが一緒にいられるように、終日、母子同室を 実施しましょう。 8. 赤ちゃんが欲しがる時に欲しがるだけの授乳を勧めましょう。 9. 母乳で育てられている赤ちゃんに、人工乳首やおしゃぶりを 与えないようにしましょう。 10. 母乳育児を支援するグループ作りを支援し、産科施設の退院 時に母親に紹介しましょう。 この日本語訳は、ABMの承認を得ています。 日本語訳::水谷佳世、湯浅正太、木村武司、杉田昌昭、奥 起久子、瀬尾智子 再翻訳::弘田由紀子 日本語版作成は、NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会の助成 を得て行った。 このプロトコルの著作権は、Academy of Breastfeeding Medicine に属し ています。無断で複写・複製・転載をすることはできません。使用の場合は [email protected] まで許諾申請して下さい。 6