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学会発表
JSASS-2013-S002 超音速ノズルによるデトネーション推進装置の高推力化 ○高橋 遼(大分高専・専攻科),利光和彦(大分高専) Improvement of Detonation Propulsion System to Increase Thrust by means of a Supersonic Nozzle Ryo Takahashi and Kazuhiko Toshimitsu (Oita National College of Tech.) Key Words: Thruster, Detonation, Impulse, Supersonic Flow, Method of Characteristics, CFD, Nozzle Abstract A pulse detonation engine (PDE) is one of candidates as a supersonic cruse and flight aerospace engines. In the paper, a supersonic nozzle ejector is designed for both detonations of methane-oxygen and hydrogen-oxygen mixtures to increase thrust of a single pulse detonation. The design method is based on the conventional characteristic method and the inlet condition is the averaged value of detonations for methane-oxygen and hydrogen-oxygen mixtures. In order to ensure the designed nozzle performance, the comparison of thrusts among the optimized nozzle (long-type), a non-optimized nozzle (short-type) and no nozzle (straight-type) is conducted. Furthermore, the flow velocity, temperature and velocity in the designed nozzle are calculated by means of the software ANSYS CFX ver.14 to ensure the appropriateness of the design. Consequently, the thrusts of the optimized nozzle are 1.4 and 2.0 times as large as ones of straight-type for methane-oxygen and hydrogen-oxygen mixtures respectively. 1.緒 言 航空宇宙分野における推進装置の高効率化は,常 𝜋 𝐼 = 𝑚 ∙ 𝑥 ∙ 𝑒 2𝜁 ∙ に求められる課題である.特に,超音速航行に使用 できる高効率推進機関の開発が求められている.こ のようなニーズを背景に,デトネーションを応用し た新しい概念のパルスデトネーションエンジン 2𝜋 𝑇 (1) 3. 軸対称超音速ノズルの設計 Crownの文献 4) に記述されたFoelschの方法に基づ く特性曲線法により軸対象超音速推進ノズルを設計 再開され,現在も多くの機関で研究されている.[例 した.DT管出口にこのノズルを取り付けることで, 推力の向上を図る.ノズルに対する特性曲線法の適 えば文献 (1), (2) ] 本研究は,比較的小型の飛翔体推進装置として使 トロピー流れを仮定し,境界層は考慮していない. (PDE)が提案された.PDEは,1990年代から研究が 用図をFig.2に示す.なお,この計算法は定常等エン 用可能なPDEを,研究室レベルで設計・製作・作動 させることを最終的な目標としている. 本報では,その要素技術として,単一パルスデト ネーションの推力の増加を実現する超音速ノズルを 4. 製作したノズル 設計条件をTable 1に示す.ノズルは,Fig.3に示す3 種類を製作した.それぞれ,超音速燃焼流れに最適 特性曲線法に基づき簡便に設計・製作する.さらに, 実験によって,設計ノズルの有効性を検証する.ま Detonation Tube Ignition Switch たノズルの内部流れをCFD解析し,設計の妥当性を 検討する. 2. 実験装置 Stainless Wire φ1mm Ignition Circuit Laser Displacement Sensor 本研究で設計・製作した実験装置全体の概略図を Fig.1に示す.デトネーション管(以後,DT管とする) は全長1000mm,内径30mm,肉厚10mmである. 推力は,八房ら3)の提案する弾道振り子法により測 定する.すなわち,2本のステンレスワイヤ(直径1mm) でDT管(質量 m [kg])を懸垂し,懸垂中立点(振 り子中立点)からの最大振幅 x [m],減衰係数 ζ , 振動周期 T [s]を測定することにより次式で求める. Supersonic Nozzle (I.D. 30mm, 1000mm) Igniter Diaphragm H2 Tank CH4 O2 Tank Tank Vacuum Pump Pressure Gage Fig. 1 Experimental apparatus for the thrust measurement on the basis of the ballistic pendulum method Long Short Inlet Table 1 Gas conditions of the supersonic nozzle for characteristic method S. H. R Total Pressure Total Temperature 𝑝0𝑖 [kPa] 𝑇0𝑖 [K] 𝛾 1.31 2000 2500 1.40 792 300 Mach Number Pressure [kPa] Temperature [K] Dia. [mm] C. S. A. [mm2] 𝑀𝑖 𝑝𝑖 𝑇𝑖 𝑑𝑖 30.0 𝐴𝑖 706.9 𝑑𝑒 83.8 𝐴𝑒 5515.4 Long 1.7 354.6 1530 Short 1.0 418.8 250 Outlet Long 𝑀𝑒 3.7 𝑝𝑒 101.3 𝑇𝑒 400.0 Short 2.0 101.2 166.7 54.0 2290.2 (a) Pressure distribution Fig. 2 Method of characteristic of axisymmetric supersonic nozzle flow (b) Temperature distribution Fig.3 Nozzle inner profiles (c) Velocity distribution Fig. 4 CFD Mesh (d) Velocity distribution on the nozzle exit Fig.5 CFD analysis of the long-type supersonic nozzle 化したノズル(ロングタイプ),空気流を仮定した =1463.2s (φ=0.4), H2-O2で I sp =3095.6s (φ=0.39)で 非最適化ノズル(ショートタイプ)およびノズルな し(ストレートタイプ)である.なお,ロングタイ あった.これは,CH4-O2の場合がラムジェットエン プのノズル入口の設計条件は,CH4-O2およびH2-O2の ボジェットエンジンの比推力(2300s-2900s)に相当 混合気において当量比𝜑 =1の場合のデトネーション する. 一方,混合気ベース(ロケットエンジンタイプ) 5. CFD解析 一定となる.また,比推力は,ストレートタイプよ 燃焼状態の平均値とし,出口圧力𝑝𝑒 は大気圧となる よう設計した. ノズル内部流れの状態を把握するため,汎用熱流体 解析ソフトウエアANSYS CFX Ver.14を用いて,ロン グタイプについてCFD解析を行った. ジンの比推力(500-1,500s)に,H2-O2の場合がター での比推力は,CH4-O2混合気の0.8 < φ < 2.0(当量 比φ=0.6と2.2を除いて)で,当量比φに影響なくほぼ りロングタイプの方が1.4倍程度大きくなる.また, 火炎速度が非デトネーションの φ=2.2 において,ロ ングタイプは比推力が低下しないが,ストレートタ 計算条件はTable1に示すもので,ノズル入口は静温 イプは低下する.この物理的原因はまだ分かってい 1530K,速度700m/s(M=1.7),出口は100kPa(大気 圧),比熱比1.31である.乱流モデルは,渦スケール ないが,φ=2.2 が CH4-O2混合気のデトネーション範 を2.0mm,乱流強度5%の渦粘性モデル,ノズル壁面 はnon-slipとした.解析には,Fig.4に示す非構造格子 囲 (0.8 < φ < 2.0)から外れる非デトネーション状 態であることに何らかの原因があると思われる. 一方,H2-O2混合気では,いずれのノズルタイプで (三角錐要素2,701,865個,472,930節点)を用いた. Fig.5 に圧力,温度,速度分布を示す.ノズル出口 も当量比に比例して比推力は大きくなる. においてほぼ一様な圧力および流出速度が得られて 7. 結 論 いることが分かる.また,壁面付近温度は高いもの 本研究では,特性曲線法に基づいてデトネーション の境界層は比較的薄いものとなっており,本設計法 による形状はほぼ妥当であると考えられる. 燃焼気体に対する推力ノズルの設計・製作を行った. 6. 実験結果 なし(ストレート)の3タイプのノズルを用いて,メ 6-1 インパルス 各ノズルに対して,混合気体CH4-O2とH2-O2の当量 タン-酸素,水素-酸素の可燃混合気体で,当量比と 比φを変化させて行った実験結果をFig.6に示す. 設計したノズルの有効性を確認するため,最適化ノズ ル(ロング),非最適化ノズル(ショート),ノズル 推力の関係を弾道振り子法により把握した.得られた 結果は以下の通りである. ロングタイプ装着時のインパルスは,ストレート タイプよりCH4- O2で約1.4倍, H2- O2で約2倍大きい. 一方,ショートタイプは,ストレートタイプの1.1倍 (1) 最適化ノズル(ロング)は,ノズルなし(スト のインパルスしか得られない.これは,本設計が, レート)より CH4-O2 で約 1.4 倍,H2- O2 で約 2 倍大きなインパルスを実現できる.すなわち, デトネーションの推力増加に対して有用であること 本設計は,デトネーション推力ノズルとして有 を意味する. 6-2 比推力 用である. (2) 比推力 I sp [s]は,質量1kgの推進剤が1Nの推力を発 の両方が,当量比 φ の増加に対して比推力が減 生して維持できる時間を表し,次式で定義される. 𝐼𝑠𝑝 𝐹𝑡 𝐼 = = 𝑚̇𝑔 𝑚𝑔 燃料ベース比推力では,CH4-O2,H2-O2 混合気 少する.特に PDE では,希薄燃焼が有利で, 最 適化 ノズ ル(ロ ング )では CH4-O2 で I sp =1463.2s (φ=0.4), H2-O2 で I sp =3095.6s (φ= (2) (3) は推進剤の単位時間あた ここで, Ft は推力[N], m りの燃焼質量[kg/s],𝐼はインパルス[Ns], m [kg]は推 進剤燃焼質量,𝑔は重力加速度[m/s2]である. Fig.7~10に比推力の結果を示す.燃料ベースでは, 0.39)を実現できる. CH4-O2 混合気ベース比推力では,非デトネーシ ョン火炎(φ=2.2)でも最適化ノズル(ロング) は比推力が低下しない. (4) CH4-O2 および H2-O2 の混合気デトネーション燃 CH4-O2,H2-O2の両混合気において,当量比φの増加 焼の平均排出条件をノズル入口条件に用いた本 設計により,両混合気体に対して大幅な推力増 に対して比推力が減少する.特に希薄燃焼で比推力 加が実現できた. が 大 き く , ロ ン グ タ イ プ 装 着 時 に CH4-O2 で I sp 謝 辞 超音速ノズル製作では,岩本光弘,古賀つかさ技 術員に製作の協力をしていただきました.ここに, 記して謝意を表します. 参考文献 1) Kailasanath: A review of PDE research – performance estimates, AIAA Paper-2001-0474, the 39th Aerospace sciences meeting & exhibit, Jan, 2001. 2) 藤原:日本の産官学共同による PDE 開発に向け た研究,第 33 回流体力学講演会講演集(2001), pp.1-13. 3) 八房ら:パルスデトネーションエンジンのイニ シエータがデトネーション起爆と推力に及ぼす 影響,日本機械学会論文集,Vol.74,No.745, pp2055-2062,2008 4) Crown, B. J. C. : Supersonic Nozzle Design,NACT Technical note,No.1651,1948. Fig. 8 Effect of the nozzle types and equivalence ratio on specific impulse based on fuel base with H2-O2 mixture Fig. 9 Effects of nozzle type and equivalence ratio on specific impulse based on mixture base with CH4-O2 Fig. 6 Effects of nozzle type, mixture gases and equivalence ratio on impulse mixture Fig. 10 Effects of nozzle type and equivalence ratio on specific impulse based on mixture base with H2-O2 Fig. 7 Effects of nozzle type and equivalence ratio on specific impulse based on fuel base with CH4-O2 mixture mixture