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残存軸耐力 - 日本大学理工学部

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残存軸耐力 - 日本大学理工学部
B-59
曲げ降伏後にせん
降伏後にせん断破壊
にせん断破壊する
断破壊する鉄筋
する鉄筋コンクリート
鉄筋コンクリート造柱
コンクリート造柱の
造柱の残存軸耐力
Residual Axial Load Capacity of Reinforced Concrete Columns Failing in Shear after Flexural Yieding
○堀内 瞳*1 小林 博一*1 黒川 和泰*2 安達 洋*3 中西 三和*3
Hitomi Horiuchi,Kazuhiro Kobayashi,Kazuyasu Kurokawa,Hiromi Adachi,Mitukazu Nakanishi
The purpose of this study is to investigate the residual axial load capacity of reinforced concrete (RC) columns in various
kinds of damage levels after earthquake. The static and dynamic tests were carried on RC columns failing in shear after
flexural yielding. In this paper, the test results are presented.
Table 1. Horizontal load experiment result
1. はじめに
主筋j降伏時
筆者らは,文献 1 で昨年度実施した実験の結果を報告し
た.本報では,F 値(靱性指標)に基づいた 3 段階の損傷レベ
試験体名
BS-S-Pmax
BS-S-F2.6
BS-D-F2.6
ルをパラメータとした静的及び動的な水平載荷実験と,そ
BS-S-F3.2
BS-D-F3.2
F値
損傷レベル
2.1
1/75(10㎜)
2.6
1/50(15㎜)
3.2
1/30(25㎜)
残存軸耐力の関係が静的及び動的載荷でどのように異なる
荷重
変位
荷重
変位
荷重
[㎜]
[kN]
[㎜]
[kN]
[㎜]
[kN]
[㎜]
-109.6
-7
-
-
115.7
8.94
-112
-8.99
5.53
-110.8
108.2
-6.76
119.1
8.86
-113.1
-8.92
3.6
-
-
115.6
9.39
-121.8
-11.16
-84.9
-8.13
-75.9
-15.41
111.5
6.03
-113.5
-7.94
107.7
4.02
-
-
126.6
8.57
-120.3
-8.97
150
BS-D-F2.6 荷重[kN]
100
BS-D-F3.2
50
0
0
-20
0
20
40
-40
-20
変位[㎜]
-50
かを調べた.
0
20
-100
静的載荷
-150
水平載荷実験結果を Table1,各試験体の荷重-変位曲線を
40
変位[㎜]
-50
-100
2.. 水平載荷実験結果
変位
102.4
50
-40
負側
変位
[kN]
BS-S-Pmax 荷重[kN]
100
BS-S-F2.6
BS-S-F3.2
行った.検討結果から水平加力後の RC 柱の損傷レベルと
正側
荷重
150
の後の残存軸耐力を求める軸載荷実験結果の詳細な検討を
最大耐力時
横補強筋降伏時
動的載荷
-150
Fig 1. Load-displacement relationship
Fig 1,水平載荷後の破壊状況を Fig 2 に示す.静的及び動的
載荷時共に損傷は柱頭(柱脚)部に集中したが,損傷状況で比
較すると,動的載荷時の方がひび割れ本数は少ない傾向が
BS-S-Pmax BS-S-F2.6
見られた.また,動的載荷時における最大耐力は,D-F2.6
BS-S-F3.2
BS-D-F2.6
BS-D-F3.2
Fig 2. Destruction situation after horizontal load
正
試験体の正側を除いて静的載荷時よりも大きな値を示した.
3. 載荷速度が
載荷速度が最大耐力に
最大耐力に及ぼす影響
ぼす影響
負
①
③
②
④
既往の研究において,一般的に鉄筋やコンクリートなどの材
料が地震時に経験する最大歪速度のレベルでは,歪速度の影響
を受けて材料強度が上昇することが知られている.ここでは,
実験結果より得られた歪速度と材料強度推定式
3)4)
より歪速度が
最大耐力に及ぼす影響について考察する.
①歪速度と
歪速度と材料の
材料の強度上昇
歪の測定点を Fig3,鉄筋の動的降伏点強度・コンクリートの圧
縮強度と材料強度上昇を Table2 に示す.歪速度は Fig3 より,計
4 点の測定歪から計測インターバル(1/100 秒)毎の歪の時間的変
化量(Δε)として計算した.正負繰り返し載荷においては,柱端
部の主筋が引張を受けたときの最大の歪速度を鉄筋の歪速度と
し,同主筋で圧縮を受けた時の最大の歪速度をコンクリートの
歪速度とした.
Fig 3. Strain rate measure point
Table 2. Low yield strength steel and concrete
材料
試験体
測定点
静的降伏点強度
2
sfy(N/㎜ )
歪速度
(1/sec)
動的降伏点強度
2
Dfy(N/㎜ )
降伏強度上昇率
2
f
/
f
(N/㎜
)
(D y-sfy) s y
材料
試験体
測定点
静的圧縮強度
2
sfy(N/㎜ )
歪速度
(1/sec)
動的圧縮強度
2
Dfy(N/㎜ )
圧縮強度上昇率
2
(D fy-sfy)/sfy(N/㎜ )
鉄筋
①
②
F-2.6
③
④
平均
①
②
372
F-3.2
③
④
平均
0.1282
372
0.0235
0.0479
0.2606
0.153
0.1213
0.0353
0.1219
0.2172
0.1384
416
422
436
431
429
419
429
434
430
430
11.9
13.4
17.1
15.9
15.4
12.7
15.4
16.7
15.7
15.5
①
②
F-2.6
③
④
平均
②
F-3.2
③
④
平均
0.0539
コンクリート
①
21.8
21.8
0.0244
0.0483
0.0523
0.0968
0.0555
0.0258
0.0758
0.0602
0.0537
27.3
27.8
27.8
28.3
27.9
27.3
28.1
28
27.9
27.9
25.1
27.5
27.7
29.9
28
25.3
29
28.2
27.8
27.9
*1:測定点①②は柱頭材端柱主筋,③④は柱脚材端柱主筋での歪測定点を示す。
1:日本理工・院・海建 Graduate Student, Graduate School of Science & Technology, Nihon Univ.
2:国際検査確認センター Center of International Architectural Standard
3:日大理工・教員・海建 Prof, Dept of Oceanic Architecture & Engineering, College of Science & Technology, Nihon Univ. .
207
試験体材端の主筋における鉄筋の最大歪速度は,D-F3.2
Table 3. experiment value and Calculation value
試 験 体 に お い て 引 張 側 で 0.1282(1/sec) , 圧 縮 側 で
実験値最大耐力
実験値最大耐力上昇率*1
終局強度計算値
終局強度計算値上昇率*1
Pmax〔kN〕
〔%〕
〔kN〕
〔%〕
試験体
0.0539(1/sec)であった.
曲げ強度せん断強度 せん断余裕度 曲げ強度せん断強度 せん断余裕度
正側
負側
平均
正側
負側
平均
Pmu
Psu
Psu/Pmu
Pmu
Psu
Psu/Pmu
BS-S-Pmax
115.7
112
113.9
-
-
-
110.5
101.9
0.92
-
-
-
BS-S-F2.6
119.1
113.1
116.1
-
-
-
110.5
101.9
0.92
-
-
-
式の推定式に代入して材料強度を算出し,材料強度上昇率
BS-D-F2.6
115.6
121.8
118.7
-2.94
7.69
2.24
120.7
112
0.93
9.23
9.91
1.09
BS-S-F3.2
111.5
113.5
112.5
-
-
-
110.5
101.9
0.92
-
-
-
を求めた.
BS-D-F3.2
126.6
120.3
123.5
13.5
5.99
9.73
120.7
111.8
0.93
9.23
9.72
1.09
算出した歪速度を,
文献3・4に記載されている(1)式及び(2)
Fy
S
Fy
= 1.38 + 0.08log ε&D
Dfy:鉄筋の動的降伏点強度
D fy
S fy
・・・(1)
Sfy:鉄筋の静的降伏点強度
DFy:コンクリートの動的圧縮強度
1400
:BS-S-Pmax
:BS-S-F2.6
:BS-D-F2.6
:BS-S-F3.2
:BS-D-F3.2
1200
ε:歪速度(1/sec)
・・・(2)
= 1.20 + 0.05 log ε&
*1:終局強度計算値上昇率は静的載加時の最大耐力を sPmax,動的載荷時の最大耐力を
DPmax とすると,(DPmax-sPmax)/sPmax で表される。
1000
軸耐力[kN]
D
800
600
400
SFy:コンクリートの静的圧縮強度
εD:歪速度(1/sec)
200
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
軸変形[㎜]
②材料強度上昇
材料強度上昇を
強度上昇を考慮した
考慮した諸強度計算値
した諸強度計算値
Fig 4. axial-transformation relationship
実験値耐力一覧及び耐力上昇率を Table 3 に示す.諸強度
計算値のうち,静的載荷した試験体の計算値は,静的材料
強度を,動的載荷した試験体の計算値は,動的材料強度を
Table 4. Axial load experiment result
試験体名
BS-S-Pmax
用いた.ここでは,静的載荷と最も異なる値を示した D-F3.2
BS-S-F2.6
試験体に着目した.その結果,終局強度計算値は実験値最
BS-D-F2.6
BS-S-F3.2
BS-D-F3.2
大耐力と概ね同等の値を示しており,材料強度の上昇を考
BS-S-2007年度
慮した動的載荷の終局強度計算値に関しても実験値をほぼ
損傷レベル
F値
2.1
2.6
3.2
3.6
部材角
1/75
〔10㎜〕
強度低下率
Q/Qmax
柱軸耐力
N〔kN〕
残存軸耐力 残存軸耐力率
Nr〔kN〕
ηr
0.96
1320.6
1/50
0.87
1248
0.92
〔15㎜〕
1/30
〔25㎜〕
1/20
〔37.5㎜〕
0.9
0.47
0.67
1329.7
574.2
962.1
0.98
0.43
0.71
693.7
0.43
0.37
1350
1631
0.98
Fig 5. Final failure state
同等に評価している.なお,せん断余裕度においては,若
干の上昇は確認できたが著しい変化は確認できなかった.
4. 軸載荷実験結果
各試験体の軸力-軸変位関係を Fig4,軸載荷実験結果一覧
を Table 4,最終破壊状況を Fig 5 に示す.Table4 の残存軸耐
BS-S-Pmax
BS-S-F2.6
BS-D-F2.6
BS-S-F3.2
BS-D-F3.2
力及び残存軸耐力率は,文献 1 で示した(1)式,(2)式より算出した値を図中に記載した.水平載荷終了時において,S-F3.2
試験体のみ斜めせん断ひび割れが発生し,残存軸耐力率は 0.43 であった.静的載荷と動的載荷時を比較すると,おいて
も,残存軸耐力の大きな低下は確認できなかった.この結果より,残存軸耐力の低下の要因には,せん断ひび割れが大き
な影響を及ぼしていることが確認できた.
5. まとめ
以上,実験結果から以下の知見が得られた.
[1]最大耐力付近の損傷では,残存軸耐力率は 1.0 に近く柱軸耐力の低下は見られなかった.
[2]載荷速度が上昇すると,せん断強度・曲げ強度の上昇率は近い値を示し,せん断余裕度は若干上昇する.
[3]せん断ひび割れによる柱軸耐力の低下が確認でき,柱軸耐力に影響があることがわかった.
6. 参考文献
[1]黒川和泰ら:「損傷レベルの異なる鉄筋コンクリート造柱の残存軸耐力に関する実験的研究」
,平成 20 年度日本大学理
工学部学術講演会論文集,p.p.222-225
[2]松本惇:「鉄筋コンクリート造柱の軸力支持限界に関する実験的研究」,日本大学大学院理工学研究科修士論文要旨集,
p.p.95-100,2007
[3]小谷俊介:「鉄筋コンクリートにおける載荷速度の影響」,コンクリート工学 Vol.21,NO.11,Nov 1983,p.p.23-34
[4]藤本盛久ら:「高速荷重を受ける RC 柱に関する実験的研究(その 5)コンクリート動的素材試験及び曲げ破壊型の高速
載荷実験概要」,日本建築学会大会学術講演概要集(関東),昭和 63 年 10 月,p.p.753-754
[5] 黒木光博ら:「耐震診断基準における残存耐力の検証」2005 年度日本建築学会大会学術講演概要集 p.p.127-132
208
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