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パッシブリズミング空調システム
BRI−H16講演会テキスト パッシブリズミング空調 − 快適性と省エネルギーを両立する空調制御方式の開発 − 首席研究員 Ⅰ はじめに COP3対応に向けて、二酸化炭素排出抑制は喫緊の課題 である。とりわけ、建築・住宅等の民生部門はわが国全体の 排出量の36%を占め、さらに、暖冷房・空調用は民生用の 坊垣 和明 とによって、容易にかつ簡便に導入が可能であるため初期コ ストを抑えて設置できる。例えば、初期コストは同等の効果 があるインバーターの数分の一である。 また、このシステムを空調設備に導入することによって、 1/3に達するため、排出抑制への取り組みが強く求められ 搬送動力用エネルギーを年間20%から30%削減できる。 ている。これへの対応を模索する中で、空調の熱源は停止し 某百貨店への導入実績(図−2,3)によると、年間で32% ているにも拘わらず、吹き出し口のリボンが動くあるいは空 の省エネルギーを達成し、初期投資は約2年で回収できた。 調ファンの音がするだけで在室者は運転中であると錯覚する さらに、被験者実験によれば、特に冷房時の女性の快適性 ことを発見し、空調停止による省エネルギーの可能性を発想 向上に顕著な効果が明らかになっており、空調機器ハードに した。 言うまでもなく、 省エネルギーの最も効果的な方法は、 係わる省エネ等の効果にとどまらず、冷房病予防などの副次 エネルギー消費機器を使用しないことである。一方で、人体 的な効果も期待できると予想している。 は定常環境よりも変動する環境に快適性を感じるという特性 を有しており、一時的な空調の停止による室温変動は十分に Ⅳ 適用範囲 中央式空調方式における、 空調機(エアハンドリングユニッ 許容されると予測し、本技術の開発に着手した。 ト)、2次冷温水ポンプ等への導入は問題なく、効果が高いこ Ⅱ 開発の経緯およびシステムの内容 とが実証されている。したがって業務用ビルの多くに適用が まず、空調停止による室温変動がもたらす快適性への影響 可能である。 さらに、 ヒートポンプパッケージエアコンなど、 を、被験者実験(図−1)で確かめ、快適性を損なわない空 業務用個別運転機器にも適用が可能である。家庭用のエアコ 調の停止・運転パターンが設定できることを明らかにした。 ンについても、制御方式に本技術を導入することが可能であ そのパターンを基本として、快適性と省エネルギーの両立を る。したがって、空調機器のほとんどが適用範囲となる。 可能とする具体の制御システム「パッシブリズミング空調」 を構築した。 このシステムは、 室内温度と炭酸ガス濃度を監視しながら、 また、専用制御装置は、自動制御の配線改造のみで採用で き、さらに、自動制御のオープン化に対応して LONWORKS(米 国 ECHELON 社)標準としており、 通常の空調機器等との通信が ある一定の周期で空調設備の運転と停止を繰り返すロジック 容易である。したがって、新築、既設を問わず、幅広い適応 を組込んだ制御装置(コントローラ)を主要な機器とし、こ が可能である。 れを空調制御盤等に設置することで利用可能である。中央監 Ⅴ 適用実績とこれから 視装置からの空調機の運転に連動し、立ち上がりの一定時間 すでに、神戸某百貨店への空調改修工事(平成 9 年 11 月∼ 経過後からパッシブリズミング空調を開始する。設置時の初 平成 17 年 2 月、写真1,2、図−2,3)や東京某百貨店 ESCO 期設定と暖房・冷房時の設定変更を行えば、あとは全て自動 事業(平成 15 年4月∼25 年3月)など約10物件に適用さ で運転されメンテナンスフリーである。 れている。今後は、普及に向けて一般化を推進したい。 Ⅲ 省エネルギー等の効果 適用に際しては、小型で安価な専用の制御装置を用いるこ なお、当技術は第6回国土技術開発賞「優秀賞」 (H16.10) などを受賞している。 *快適感アンケートは7段階評価『非常に快適』∼『中立』∼『非常に不快』とした。 (合計100%)…空気調和・衛生工学会学術論文集№64- p68 1997.1. [%] 100 非常に快適 75 快適 50 被験者実験風景 空調再開 空調停止 やや快適 25 表面温度 28 ℃ 27 室内温度 中立 0 通常の 空調方式 (連続運転) 26 0 10 30 40 60 70 90 実験パターン例 (10分停止20分運転) 分 パッシブ 15 分停止 30 分運転 パッシブ 10 分停止 20 分運転 パッシブ 5分停止 25 分運転 被験者実験による快適感申告の割合 図−1 快適性を損なわない停止の条件を被験者実験で確かめた 写真−1 適用事例(既設対応)の某百貨店外観 写真−2 コントローラと設置状況(既設改修例) 設計値(4台×10時間) パッシブ導入後 60 MWH 56 52 50 ▲15% ▲18% 51 50 50 47 ▲17% ▲24% ▲21% ▲31% ▲25% ▲22% 47 ▲37% 45 43 ▲50% 38 40 38 38 36 ▲59% 52 50 40 30 電力料金(万円) 90 56 50 51 49 ▲69% 20 26 32 3月 4月 70 5月 6月 7月 8月 9月 10月 12月 1月 2月 図−2 各月の電力節減状況(写真−1の実績) 66 72 67 64 66 64 66 64 59 50 45 40 55 51 46 48 45 42 37 30 設 計 値 730万円 パッシブ 490万円 → 240万円/年 低減効果▲240万円 20 10 11月 64 57 30 14 72 66 60 21 設計値 600MWH パッシブ 400MWH 低減効果▲200MWH 10 0 80 0 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 24 17 1月 図−3 コスト削減効果(写真−1の実績) 2月