...

コンシェルジュ学指導書 成果物を開く - 成長分野等における 中核的専門

by user

on
Category: Documents
5

views

Report

Comments

Transcript

コンシェルジュ学指導書 成果物を開く - 成長分野等における 中核的専門
平成27年度文部科学省
成長事業分野における中核人材養成の戦略的推進事業
コンシェルジュ学入門
・・・・攻めのホスピタリティ構築のために
(授業推進のための指導書)
訪日外国人受け入れに対する日本型コンシェルジュ育成事業
学校法人穴吹学園
専門学校穴吹ビジネスカレッジ
平成27年度文部科学省
成長事業分野における中核人材養成の戦略的推進事業
コンシェルジュ学入門
・・・・攻めのホスピタリティ構築のために
(授業推進のための指導書)
訪日外国人受け入れに対する日本型コンシェルジュ育成事業
学校法人穴吹学園
専門学校穴吹ビジネスカレッジ
(目次)
まえがき
1
第1章
コンシェルジュとは何か
3
第2章
ホテル・旅館業の基礎知識
9
第3章
コンシェルジュとしての接遇
15
第4章
インバウンド客対応の初歩
19
第5章
インフォメーション・ガイド機能
23
第6章
飲食施設についての基礎知識
27
第7章
食材・調理・飲料の基礎知識
31
第8章
日本文化理解初歩
33
第9章
海外文化理解初歩
37
第 10 章
地元学の構築
39
第 11 章
「サービス」と「ホスピタリティ」
43
第 12 章
日本型コンシェルジュとして「生きる」こと
47
(付録1)アクティブラーニングの一環としてのケースメソッドの一例
51
(付録2)コンシェルジュ学入門
57
シラバス例
まえがき
本書はテキスト『コンシェルジュ論入門―「攻め」のホスピタリティ構築のために』を
教授される先生の授業展開に役立つことを目的に編集されました。
コンシェルジュという職域はかなり人口に膾炙されてきたとはいえ、まだまだ一般的な
市民権を得ているとは言いがたいと思います。
しかしながら、日本が「観光立国」を旗印に掲げ、訪日外国人客数が2000万人近く
になっている今、ホテル・旅館に求められる地域へのガイド性、旅行客の様々な問いかけ
に答える職域としてのコンシェルジュの重要性は日を追って高まりつつある状況です。
そして、それは単に問い合わせに対して受動的に答えるだけの存在ではなく、旅する人
が本当にしたいことを探り当て、実現することの手伝いも含む能動的な職種としての機能
が期待されています。ここでは、それを「攻め」のホスピタリティと規定しています。そ
れができるとき、その宿泊業(ビジネスホテルも温泉旅館も含まれます)の人気はいやが
うえにも高まり、それがひいてはその地域へのリピーター率を高め、やがては日本全体が、
高品位な観光目的国になる可能性が生まれてくると思います。
このテキストは、そうしたコンシェルジュ職に必要な知識・技術の初歩をまとめたもの
です。なかには、ホテル概論的な部分もありますが、コンシェルジュは他のセクションの
人たち以上に、自分のホテル旅館や業界全体のことまで知っていないと務まらないと思う
からです。コンシェルジュはある意味、ホテルのホスピタリティを象徴する存在でもあり
ます。以下、この指導書使用の注意点を掲げます。
① 全体で12章あります。これを15回の授業に分ける場合は、どこかの章を2回で行う
必要があります。その措置は、先生方にお任せします。
② この指導書とテキストそのものだけで、授業のすべてを自動的に行えるわけではありま
せん。それぞれの章について、先生方なりの知識、体験、独自の教材で授業が立体的に
行われることを期待しています。
③ 各章の最後に、授業ごとに配布するレジュメの例を掲載しています。これはあくまで参
考のための例題なので、実際には先生方が工夫して、授業の流れを作りやすい形で書い
てほしいと思います。
④ 付録として、アクティブラーニングの一環として推奨したいケースメソッドの実例をひ
とつ加えました。積極的なご活用を望むものです。
編者 穴吹ビジネスカレッジ
1
第1章 コンシェルジュとは何か
●この章で教えるべきポイント●
①コンシェルジュとはどういう存在か
②コンシェルジュとは何か(歴史)
③コンシェルジュの役割
④コンシェルジュの「日本型」とは
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(解説)
①コンシェルジュとはどういう存在か
・まず、ホテルのロビーの一角にコンシェルジュ(時にゲストリレーションの名称もある)
のデスクを置くところが多くなったことを指摘する
・そこに、ゲスト(ホテル利用客全般、宿泊客だけではない)が訪れ、いろいろな相談事
をしている風景が珍しくなくなってきた。
・とくに、外国人客の多いホテルは利用される頻度が高い。
・コンシェルジュがてきぱきと対応しているその姿は、新しいホテルの「おもてなし」の
スタイルといっていい。
・ホテルはお客が100人いれば、100の異なった事情を抱えてやってくる「器」だ。
そのなかには、今夜の食事はどこに行くといいか、という質問から、今日、彼女にプロポ
ーズしたいんだけど、何かいいアイデアはない?
というような、どきっとさせる問いか
けまで様々なものが、コンシェルジュのデスクに寄せられる。
・こういう問題に的確に答えていくコンシェルジュは、ある意味、ホテルが体現すべき「親
切さ」の究極のようなところがある。
- 3 -
・大事なのは、問い合わせに表面的に、平凡な答えを用意することではなく、ゲストの質
問や要求の深いところにある、
「本当に尋ねたいこと」を探り当てることだ。もしも、それ
ができれば、まさに、それは「攻めのホスピタリティ」になるのではないか。そのことを
きちんと伝えることが、この科目を楽しく受講させポイントになる。
②コンシェルジュとは何か(歴史)
・コンシェルジュの起源をラテン語から説明する。あまり難しく解説しなくてもよい。要
するに、人様の面倒をみる、いろいろなお世話をする係りというものは古代ローマの時代
からめんめんとあるということを分かってもらう。
・なお、コンシェルジュの居場所はホテルのロビーだから、当然、ホテル業の歴史と関係
がある。ホテルの歴史については、テキスト第2章「ホテル旅館業の基礎知識」で再度詳
しく触れることに言及すること。とくに「グランドホテル」の成立との関連が大事。
・コンシェルジュを英語でどう綴るのか、くらいは覚えさせること
・コンシェルジュは他のホテルの同業の人たちと連携することがある。ゲストからの問題
に自分の力だけでは対応できないとき、他のホテルのコンシェルジュに尋ねるのはよくあ
ることだ。そういう意味でコンシェルジュはきわめて職人的な部分があり、同じ職人同士
が連合するギルド(職人組合)を形成することがある。
それが、現代のコンシェルジュたちがつくる「クレ・ドールの会」につながっている。
クレとはフランス語で「鍵」、ドールは「黄金の」という意味。つまり、黄金の鍵。ゲスト
の難問に黄金の鍵で解決への扉を開けてあげるということなのである。
③コンシェルジュの役割
・基本的には、ゲストからの質問・要望に応える「よろず相談係」
・但し、ホテルの外のことを知っているだけではだめで、自分のホテルについての情報も
きちんと整理して自分のものにしておかないといけない。また、ホテル業界の全般、歴史
などについても、ある程度の知識が欲しいと思う。
そういう観点で、テキスト8~9ページの「コンシェルジュの業務内容」については詳
し目に説明するほうがよい。
- 4 -
④コンシェルジュの「日本型」とは
・コンシェルジュというと、東京や大阪といった大都市の高級ホテルにしか存在しないイ
メージがあるが、決して、そうではないことを示してもらいたい。
・ゲストが旅先で、何かを知りたい、相談することがある、というのは都市ホテルに限っ
てのことではない。普通の人々が利用するビジネスホテルや温泉観光地の旅館にだって、
そういうものを要求するお客様がいる理屈だ。だから、ビジネスホテルや旅館にだって、
コンシェルジュが求められている。いや、むしろ、そういうところにこそ「攻めのホスピ
タリティ」を実現するコンシェルジュ的なものが大きな効果をもたらすのではないか。
・ビジネスホテルや旅館のような規模が小さな業態では、コンシェルジュを専門職として
おくのは不可能だが、フロントの誰か、ときにはレストランの誰かでもいい、コンシェル
ジュ的な役割を兼任できる人材をもつことは、その施設の競争力をぐんとアップさせるこ
とになる。
・ホスピタリティの「厚さ」を体現するコンシェルジュ概念は、今、ホテル業界だけでは
なく、まったく異なる別業界にも導入されている。その姿を12ページの表で学ばせたい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 5 -
(レジュメ例)第 1 章 コンシェルジュとは何か
1
コンシェルジュ論を学ぶことの意味
・ホテルは様々な人々が様々な問題(優しい問題から難問まで多種多様)を持ってや
ってくる場所(100 人お客がいれば 100 のシチュエーションがある)
・コンシェルジュは、お客様が問いたい問題に答え、解決を与える仕事
・地域の案内係としての役目
・訪日外国人客(インバウンド)の劇的な増大
・コンシェルジュはホテル旅館の「親切さ」の象徴
・ホテル業務を職種横断的にこなす「おもてなし」のプロ
2
コンシェルジュの歴史
・語源で探るコンシェルジュの意味
・20 世紀初頭のヨーロッパ、グランドホテル時代の産物
・異なるホテルのコンシェルジュが連携する(ギルド的)
・レ・クレドール(黄金の鍵)はコンシェルジュの象徴
3
コンシェルジュの役割
・お客様の要望に応える係り(よろず相談係)
・基本的にパーソナライズド・サービス(お客個人にテーラーメイド)
・職場はロビー
・5つの基本業務
- 6 -
ルーム・インフォメーション(ガイド)
ハウス・インフォメーション(ガイド)
シティ。エリア・インフォメーション(ガイド&カウンセリング)
リクエスト対応(カウンセリング)
VIP対応(アテンド)
4
「日本」型コンシェルジュの提案
・都市ホテルだけでなくリゾート旅館やビジネスホテルにも必要
・応用範囲はホテル旅館を超えて、様々な業種に展開
・誰もがコンシェルジュをやれたら最高のホスピタリティ
- 7 -
- 8 -
第2章 ホテル・旅館業の基礎知識
●この章で教えるべきポイント●
① ホテル業の歴史
② 旅館業の歴史
③ ホテル業と旅館業の違い
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(解説)
① ホテル業の歴史
・この章の授業を始める前に、なぜコンシェルジュなのにホテルや旅館の歴史を学ぶべき
なのか、を説明する方がよい。それは、コンシェルジュは誰よりも、自分がいるホテルや
旅館の世界について深い知識を持っていることが必要だからだ。コンシェルジュにはホテ
ルや旅館についての「何でも博士」のようなところがあるといい。実際にホテルの歴史な
どについて、ゲストから質問が出ることはないかもしれないが、それでも自分たちが勤め
ている業界が、遥か昔から、人に「親切さ」を提供することが存在意義だったことを知っ
ておくのは悪いことじゃない。
・ホテルの歴史については、テキストのとおり進めればいいが、とくに強調すべきは、ホ
テルの直接のルーツ(起源)が中世ヨーロッパの僧院の付帯施設(ホスペス)にあること
だ。このホスペスは僧院が旅する人々のために作ったもので、この言葉自体がホスピタリ
ティ(おもてなし)やホスピタル(病院)と関連していることは、絶対に必要な認識だ。
・欧米のホテル史では、セザール・リッツが開発したグランドホテルという形式がホテル
は今の形になった原型であることは、とくに強調しておくこと。そのグランドホテルに欠
かせないスタッフとして、近代的なホテル・コンシェルジュが誕生している。
・その後、欧米のホテルはスタットラーやヒルトンなどの改革者が出て、チェーン化が進
んで、今のような状態になった。
・日本のホテル業は明治維新とともに始まったことを最初に説明する。基本的には外国の
- 9 -
ホテルを見よう見まねで作ったもので、要するに輸入品であった。
・本格的なホテル第一号は1890年創業の帝国ホテル。そのことについては、よく調べ
て授業に臨んでほしい。参考書はたくさんあり、エピソードも豊富だ。
・第二大戦後、日本のホテルも整備され、1964年の東京オリンピック、1970年の
大阪万国博覧会、1984年からのバブル景気など国中が湧きたつような出来事があるた
びに、ホテルがどんどん増え、機能も整備されていったことを語ること。
・バブル崩壊後は、外資系のホテルがどんどん誕生し、日本のホテルマップを豊かなもの
にしていった。各ホテルのHPから外観、ロビー、代表的なルームなどの写真をダウンロ
ードし、受講生に見せるのは大いに意味があることだ。
・同時に、東横イン、アパホテル、ドーミーインなどのエコノミー型のホテルが急成長し
ていることにも触れてほしい。
② 旅館業の歴史
・地味な話題ながら、日本における他人を泊める施設のルーツが奈良・平安の王朝時代に
あったといわれる「布施屋」(ふせや)と称する建物であったことは触れておきたい。これ
は仏教のお坊さんが、旅している人々に床と屋根のある施設を提供したもので、ホテルが
中世の僧院から出発しているように、日本でも人を救いたいという宗教的な情熱が、旅館
の原型を作っていることを知ってもらいたいのである。
・江戸時代には本陣から商人宿まで、様々な「業態」が揃っていたこと。結構、江戸時代
は進んでいたのである。
・第二次大戦後は温泉地・熱海を代表とする、飲めや歌えの享楽型の旅館が隆盛をみた。
忙しく働きづめの日本人が束の間の休日に目一杯楽しみたいという欲求が「観光爆発」現
象を起こし、日本の旅館業がビジネス(事業)になっていくきっかけを作ったこと。
・現在の旅館は、食事がオールビュフェのところが多いが、廉価に温泉を楽しめる業態、
個室に専用の露天風呂がつくデラックスな宿、合宿などに向く宿など、それなりに多彩な
形式をもつようになったことも知識としてもってもらうよう指導する。コンシェルジュに
は外国人ゲストから。いい温泉旅館を紹介してくれ、という要望も多いのである。
- 10 -
③ ホテル業と旅館業の違い
・日本は宿泊するとき、西洋式のホテルと純和風の旅館とふたつのジャンルから選べる世
界唯一の国だと思う。中国も韓国もそれぞれ独自の歴史をもつ宿泊業の形態があったよう
だが、今はほとんど消滅し、ベッドのホテル形式に統一されてしまっている。
・ホテルと旅館の違いについては、テキスト25ページの一覧表にまとめてある。大きな
相違点としては、建築様式、客室構成、食事、大浴場の有無などが挙げられるが、ソフト
的には、パブリック施設に浴衣のままで行ける、行けないの差があったり、表にはないが
客室内に土足のままで入るか(ホテル)
、靴を脱ぐか(旅館)の違いもある。
・旅館のホテルに対する有利さは、浴衣、自然との融合、温泉に浸かれること。要するに
リラクゼーションという部分にある。
・なお、経営の側から見るなら、
「ルームチャージ制」か「一泊二食制」か、お客様から料
金をいただくシステムの差が重要になる。
・いずれにせよ、コンシェルジュとして一流になりたいのなら、日本情緒たっぷりの旅館
にも関心をもつべきだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 11 -
(レジュメ例)第2章 ホテル・旅館業の基礎知識
1
ホテル業の歴史
・人間(ホモ・サピエンス)の本質としての長距離移動
・キャラバン(隊商)の旅 サライ
ギリシャでは「レスケ」 外国人の宿「バンドケイオン」
・古代ローマの温泉開発
・ヨーロッパ中世の僧院付属の宿舎 ホスペス
・イン(馬車と宿) コーヒーハウス(カフェ)とタバーン(酒場)
・18 世紀 グランドホテルの登場
・スタットラーとヒルトン(ホテルビジネスの標準化)
・アメリカンホテルチェーンの誕生(ホリディイン、マリオットなど)
(日本のホテル)
・1867 年 築地ホテル館
・1890 年 帝国ホテル
・幻の東京オリンピック(1940)を目指して地方にホテルが続々建設(富士ビューホ
テル、雲仙観光ホテル、唐津シーサイドホテルなど)
・戦後第一次ホテルブーム 1964 年東京オリンピック(ホテルオークラ、東京ヒルト
ン、ニューオータニなど)
・第二次ホテルブーム 1970 年大阪万国博(プラザ、東洋ホテル、京王プラザ)
・第三次ホテルブーム バブルとともに。
(新宿のヒルトン、浅草ビュー、東京全日空 )
- 12 -
・1990 年代と 2000 年代二度にわたる外資系ホテルラッシュ
1990 年代御三家 フォーシーズンズ、ウェスティン、パークハイアット
2000 年代御三家 マンダリン、ペニンシュラ、リッツカールトン
・ビジネス系ホテルも 東横イン、アパ、ドーミーインなど隆盛
カプセルホテルなどの業態も
2
旅館業の歴史
・旅館のルーツとしての布施屋
・木賃宿と旅籠(はたご)
・江戸時代の宿のバラエティ化(本陣、商人宿。お茶屋など)
・戦前 温泉観光地 湯治場
・戦後 観光爆発 熱海の隆盛 温泉ブーム
・秘湯、小宿、ビュフェ型の宿
3
ホテル業と旅館業の違い
・和室と洋室・・・布団対ベッド 畳対カーペット、靴をぬぐ対靴のまま
・浴衣の存在 対 パブリックは洋服のまま
・和食中心とレストランのバラエティ
・大浴場の存在 対 バスルームの快適さ
・自然との共生 対 都市の中の便利さ
・一泊二食料金制(泊食一致) 対 ルームチャージ制(泊食分離)
- 13 -
- 14 -
第3章 コンシェルジュとしての接遇
●この章で教えるべきポイント●
① みだしなみは「清潔さ」第一
② 姿勢・物腰は「適度な緊張感」がキーワード
③ 挨拶は「スマイル」と「アイコンタクト」
④ 接客用語のきもは「七大用語」と「敬語」
⑤ 職場の中での振る舞いに注意せよ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(解説)
① みだしなみは「清潔さ」第一
・この章で語られることは、コンシェルジュを含むホテルスタッフならどんな職域にいよ
うと守られなければならない基本であることを、まず強調する。
・コンシェルジュはとくにゲストから注目を集める職域だけに「基本」には、より忠実で
ありたい。
・みだしなみの基準については、テキスト27~28ページにあるとおり。
② 姿勢・物腰は「適度な緊張感」がキーワード
・男性・女性とも身なり、髪の毛の始末など、先生がチェックし、不備を指摘することも
大事。このあたりは多少、厳しく指導していいところだ。
・表情、待機、歩き方など実演してみせ、みんなを立たせ、やらせてチェックする教授法
が望ましい。
- 15 -
③ 挨拶は「スマイル」と「アイコンタクト」
・会釈、礼、最敬礼などは、実際にやらせてみてチェックすること。
・同時に、お客様を案内するときやものを渡すときの作法も実演さてチェックを。
④ 接客用語のきもは「七大用語」と「敬語」
・テキスト32ページの七大用語は、何度か復唱させること
・敬語は相当、難しい。テキストに盛り込んだ表をもとに、尊敬語と謙譲語を使い分ける
実地訓練を施すこと。これは練習で慣れるしかない。
⑤ 職場の中での振る舞いに注意せよ
・ゲストはこちらが想像する以上に、スタッフの動きを見ている。スタッフが仲間同士だ
らしない感じでお喋りしていたりすると、すかさずチェックが入ったりする。今、目の前
にいるお客様だけに丁寧にしていても、それ以外の時に不用意な態度を示していると、ホ
スピタリティ全体が嘘くさくみえて逆効果になる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 16 -
(レジュメ例)第3章 コンシェルジュとしての接遇
1
みだしなみは「清潔さ」第一
2
姿勢・物腰は「適度な緊張感」がキーワード
3
挨拶は「スマイル」と「アイコンタクト」
4
接客用語のきもは「七大用語」と「敬語」
5
職場の中での振る舞いにも注意せよ
- 17 -
- 18 -
第4章 インバウンド客対応の初歩
●この章で教えるべきポイント●
① 基本的な心構え
② グリーティング(歓迎)
③ 挨拶用語
④ 相手に呼びかける
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(解説)
① 基本的な心構え
・インバウンド(外国から日本へ)とアウトバウンド(日本から外国へ)の違いをきっち
り説明し、インバウンド、アウトバウンド客の増減を、できれば最新データで示したい。
観光庁の統計が公開されているので、それを利用すればよい。
・日本は観光鎖国から、観光開国に大きく変貌したことを認識させる
・ホテルで働くということは、どうしても外国人客との接触が不可避だし、また外国人の
従業員と一緒に働くことにもなる。外国人とのコミュニケーションは絶対に欠かせないテ
ーマになることを分からせる。
・外国人との交流となると、すぐカンバセーション・スキル(会話術)を問題にすること
が多いが、むしろコミュニケーション・マインドの方が大事(言葉は拙くとも、コミュニ
ケーションしようとする熱意)
。
② グリーティング
・簡単な挨拶でも相手の国の言葉ですれば感激される。
・異質のものを受容することの大切さ。世の中は多様であることの理解
- 19 -
③ 挨拶用語
・挨拶の各国語比較をつけておいたので、それを練習させる。照れることなく、きちんと
挨拶させることが大事。
④ 相手に呼びかける。
・外国人客相手に積極的に会話を展開させるための導入の慣用句をテキスト39~41ペ
ージにまとめてあるので、これをもとに具体的な文例をつくり、お客役とホテルスタッフ
役のふたつに分け、ロールプレイング的に練習することを推奨したい。
・コミュニケーションは結局、場数。経験値をあげれば自然と出来るようになると、受講
者に確信をもたせること。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 20 -
(レジュメ例)第4章 インバウンド客対応の初歩
1
基本的な心構え
・・・・・
「おもてなし」に国境はない
2
相手国の言葉でグリーティング(歓迎の挨拶)
・・・・・こんな簡単なことでも、お客様は感動
3
基本的な挨拶用語の基礎練習
・・・・・覚えてしまえば簡単
4
相手に呼びかけるための会話練習
・・・・・外国人はこちらからの呼びかけに驚くほど喜ぶ
- 21 -
- 22 -
第5章 インフォメーション・ガイド機能
●この章で教えるべきポイント●
① インフォメーションには、自分のホテルに関する情報も含まれる
② 交通機関を問われる
③ シティ・エリアのインフォメーション
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(解説)
① インフォメーションには、自分のホテルに関する情報も含まれる
・コンシェルジュは様々な情報(インフォメーション)の提供を求められる。意外に多い
のが、そのホテルに延泊(宿泊を延ばす)のことや、他地域のホテルへの予約代行などだ。
そういう仕事は予約を扱うフロント(宿泊部)の仕事と、他のセクションに回したりしな
こと。
・そのためには、フロント(宿泊部)では常識とされる予約に関する用語などを体得して
おくことが必要だ。その基本用語をテキスト44~46ページにまとめてあるので、でき
れば実務に則した形で説明することが望ましい。
・これに関しては小テストの実施などを考慮に入れてもよい
② 交通機関を問われる
・これはもっとも多い質問のひとつ。まず各路線を英語で何というか、確認しておくこと。
・ホテル周辺の地図はほとんどのホテルで用意されていると思うが、コンシェルジュは一
度はすべての駅に徒歩で歩き、かかった時間、行きやすい道筋、目立つ目標などをチェッ
クし、自分だけのホテル交通マップをつくるとよい。
・情報は「手作り」で自分のところに保存しておくのがよい
- 23 -
・外国人と交通機関に関してかわす会話の例は47ページ。練習させよう。
③ シティ・エリアインフォメーション
・自分のホテル周辺にどんな観光スポット、美術館、ホールなどがあるか、これもすべて
自分の眼と足で確かめておきたい。どの劇場がどんな出し物をやり、今、美術館や博物館
でどんな催し事が開催されているのか、をチェックしたい。
・そのために、定期的に施設のホームページなどをチェックし、常に最新のものを書き込
んでおく台帳を作っておくくらいの準備があっていい。
(台帳はコンシェルジュチームでパ
ソコン内に共同開発サイトを作ってもよい)
。このことは、意外とできていないホテルが多
い。
・コンシェルジュが推薦したところに行ったゲストには、帰ってきたら感想を求めること
くらいしよう。それができると、ホテルが本当に身近なものに思えてくるから。
・ホテル利用客の便宜を図るための生活支援スポット。コンビニエンス・ストアの配置、
銀行ATMの所在地、郵便局などの場所も頭に入れておくこと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 24 -
(レジュメ例)第5章 インフォメーション・ガイド機能
1
ルーム・インフォメーション
・・・・・お客様の宿泊に関する情報を融通すること。
基本的には宿泊部(フロント)の担当だが、そちらに回すことなくコン
シェルジュの段階で処理できるとスマート
2
予約などに関する用語を身に着けておくこと
3
交通機関のガイド 公共交通機関 航空券 タクシー・ハイヤーなど
4
シティ・エリアインフォメーション
・・・・・観光資源 ショッピング レストラン エンターテインメント
コンシェルジュの腕の見せ所。当たり前の「定番」だけでなく。お客様の心
の底にある気持ちまで探り当てること(本当に行きたいところを割り出す)
5
日常生活支援
・・・・・銀行/ATM 郵便局 コンビニエンス・ストアなどについては最新情報を
整理しておくこと
- 25 -
- 26 -
第6章 飲食施設についての基礎知識
●この章で教えるべきポイント●
① なぜ、飲食施設の知識が必要か
② ゲストから、本当に行きたい店を聞きだすには
③ ガイドブックについて
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(解説)
① なぜ、飲食施設の知識が必要か
・コンシェルジュの腕のみせどころは、ゲストが訪ねてくる「いい食事場所を推薦してく
れ」という質問に適切な答えを与え、満足して帰ってきてもらうことだ。
・そのためには、単にお店の数を知っているだけではなく、飲食業がどんな「論理」で運
営されているか、を学んでおくと、お店の特徴を把握しやすい。
・そこで、このテキストでは、飲食業経営の基本になる「業種」と「業態」の区別につい
て触れている。コンシェルジュにそこまでの知識が必要かという意見もあると思うが、星
の数ほどある飲食施設の特徴を掴むために、このものの考え方がきわめて有効であること
を説明しておきたい。
・業種とは「何を」売っているかで分類するための用語であり、
「業態」とは「どのように」
売っているかを示す用語だ。
業種は通常、○○屋さんと表現される。おそばをメインメニューにしていれば、
「そば屋」
。
小売業でも、野菜や果物を扱っていれば「八百屋」だし、お薬を売っていれば「薬屋」と
いうことになる。簡単な話だ。しかし、同じ「そば」を業種にしていても、売り方は多様
だ。駅の立ち食いそばもあれば、街の中の普通のそば屋さんもある。居酒屋的なメニュー
を持ちながら、締めのそばがうまいとなれば「そば居酒屋」になる。そして、ざるそば一
杯で 1,000 円以上取る超高級そば屋さんもある。全部、業種としては「そば屋」である。
だから、
「そば屋さんに行きたい」という申し出があったとき、「どういう営業形態のそば
屋さんなのか」を探り当てなければいけない。このように、飲食施設の勉強も常に、
「業種」
- 27 -
と「業態」の区分をしっかり見定めてしなければならないのである。
② ゲストから本当に行きたい店を聞きだすには
・人はお店を選ぶとき、無意識のうちに、T(タイム:時)
、P(プレース:場所)
、O(オ
ケージョン:場合・動機)
、S(スタイル:こだわり)を頭に入れて選んでいるものだ。コ
ンシェルジュはお客からお店選びを託されたら、逆にこのTPOSを丁寧に聞き出すと、
「業態」を選べる。
・この中で、Sが比較的難しい概念かと思うが、これはその人の食に関するこだわりを意
味する。典型的なのはベジタリアン(菜食主義)などだ。その他、内装がゴージャスじゃ
なきゃいや、とかワインの品揃えが貧しい店には行きたくないといった、お店選びのとき
の癖があるものだ。それを、TPOSのSと考えよう。
・そして、CP(コストパフォーマンス)も考えておくこと
③ ガイドブックについて
・ここではフランスのミシュラン、アメリカのザガットの二種類を挙げた。
・それぞれ、日本版が刊行されているので、入手し、評価基準の見方が前文にあるので、
熟読しておくこと。授業に際しては、現物を持ち込んで説明するとよい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 28 -
(レジュメ例)第6章 飲食施設についての基礎知識
1
「業種」と「業態」の考え方のちがい
・業種・・・
「何を」売っているか。WHAT TO SELL
・業態・・・
「どう」売っているか。HOW TO SELL
*「業種」は何屋さんかを示すもの
「業態」はいくらで売るかを示すもの
*お客様の「何を」食べたいかについてのアンサーは業種
お客様の「予算」についてのアンサーは業態
「業態」の両方で把握しないとベストアンサーが得られない
*相手の求めるものを「業種」
2
それはお客様の「TPOS」と「CP」の両方に関係する
・T・・・TIME(どんな時か)
・P・・・PLACE(場所)
・O・・・OCCASION(場合) どんな理由で食事したいか
・S・・・STYLE(スタイル) 食事に関してどんなこだわりを持つか
・CP・・・COST PERFORMANCE かけた値段に対する効果
3
各種専門店について
4
ガイドブック
ミシュラン ザガット ぐるなび他
- 29 -
- 30 -
第7章 食材・調理・飲料の基礎知識
●この章で教えるべきポイント●
① 西洋料理の世界と調理技術用語初歩
② 日本料理の世界とおもてなし、そして中国料理
③ アルコール飲料の基礎知識
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(解説)
① 西洋料理の世界と調理技術初歩
・コンシェルジュは一応、料理各種のアウトラインを知っておかなければならない。ここ
では主に、フランス料理のコース(ターブル・ドート)のことを学ぶ
・フランス料理の献立は、材料名と調理法の組み合わせで書かれる。ここでは魚料理、肉
料理の双方について、調理技術の名称を学んでおく。ゲストに料理の特徴を伝える時に、
調理技術の用語を交えたりすると効果的。「あのレストランのグリエの技術は最高ですか
ら・・・・」などと。
② 日本料理の世界とおもてなし、そして中華
・外国人が求める正式な和食。それが「懐石」であり「会席」だ。どちらも正式な日本料
理の呼称だが、このふたつの違いは明確に知っておきたい。
・とくに「懐石」はおもてなしの原点というべき、千利休の茶道に通じるエピソードを元
にしている。このあたりは丁寧に説明するとよい。
・中国料理については、簡単な種別の説明にとどめた
③ アルコール飲料の基礎知識
・醸造酒、蒸留酒、混成酒の違いと、それぞれの代表的な飲料の名前を確認。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 31 -
(レジュメ例)第7章 食材・調理・飲料の基礎知識
1
西洋料理の種別と特徴
・フランス料理 西洋料理の王者、もっともフォーマル
・イタリア料理 パスタ・ピザ中心に親しみやすい料理 いまや世界食に
・英国料理 ローストビーフとイングリッシュブレックファスト
・アメリカ料理 ステーキ、ハンバーガー、ワイルドで実質的
・朝食 コンチネンタルとアメリカン
2
西洋料理 調理技法の基礎
3
日本料理
・懐石料理と会席料理のちがい
4
中国料理
・北京料理 広東料理 四川料理
5
アルコール飲料の基礎知識
・醸造酒 蒸留酒 混成酒(リキュール)
- 32 -
第8章 日本文化理解初歩
●この章で教えるべきポイント●
① 日本文化の基底にある季節の移ろいへの“あはれ“を理解する
② 季節を示す言葉の多様さ、繊細さ、美しさ
③ 茶道に象徴される日本のおもてなしの姿
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(解説)
① 日本文化の基底にある季節の移ろいへの“あはれ“を理解する
・日本は春夏秋冬がはっきり分かる季節感が特徴。どんなに暑い夏があっても、やがて秋
から冬に移っていく。それはまるで人の一生と同じように感じられる。
・コンシェルジュは、そのような季節の移ろいに関する感性も磨いておきたい。それが日
本の誇りでもあるからだ。
② 季節を示す言葉の多様さ、繊細さ、美しさ
・ここでは二十四節気、五節供、月の満ち欠けによる呼称などで、季節に対する日本人の
繊細な感覚を知ってもらう。
・難しい漢字、読みが多いが、これらを単語帳のようにして覚えさせるのもよい。
・外国人には無理に英語に直さず、意味の方を丁寧に説明するといいが、これは中級以上
の知識となるか。
・季節感にちなんだ、花や風景、月の写真、イラストなどを用意できると効果的。
③ 茶道に象徴される日本のおもてなしの姿
・このテキストでは詳しく触れていないが、日本の茶道の歴史を簡単におさらいしておい
- 33 -
てほしい。遊戯としての「闘茶」に始まり、村田珠光の侘茶から千利休によって完成され
る道のりの解説はあったほうがよい。
・そんな茶道のおもてなしが、季節はめぐる、人生もめぐる、しょせん人生は儚いものだ、
だからこそ一瞬、一瞬をかけがえのないものとして扱おうという、人生に対する姿勢(ア
ティチュード)に根差していることに触れておく。
・テキスト64ページにある「懐石」の由来を再説するのもよい
・
「一期一会」は日本のおもてなしを象徴する究極の一句だが、これは毎日顔を合わせてい
る人同士にでもあてはまることを強調しておきたい。若い人たちは、この言葉を初めて出
会うことの大切さのみと狭く理解しがちだからだ。
・利休七則の「当たり前のことを当たり前にすること」の大事さもきちんと伝えておきた
いものだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 34 -
(レジュメ例)第8章 日本文化理解初歩
1
日本文化の特質 ドナルド・キーンさんの意見
・はかないものへの愛
・曖昧さへの共感
・礼儀正しさ
・清潔さ
・よく働くこと
2
日本の季節感
・・・・
「移ろい」へのセンシティブな感覚
3
二十四節気と月の呼び名
・・・・季節の表徴としての言葉たち
4
日本の「おもてなし」文化の精髄を茶道に学ぶ
・一期一会
・一座建立
「茶懐石」のもてなし
・
・叶いたがるこころ
・利休七則
- 35 -
- 36 -
第9章 海外文化理解初歩
●この章で教えるべきポイント●
① 仕草が文化。外国人客と摩擦を避けるために
② プロトコル
③ 宗教の問題
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(解説)
① 仕草が文化。外国人客と摩擦を避けるために
・外国人客と接する機会が多いコンシェルジュ。よくいわれることだが、ホテルスタッフ
は民間の外交官でもある。
・必要なのは、なによりも相手国およびその国特有の文化に敬意を払うこと。
・その敬意の表れ方が集積されて、国際的な儀礼として決められているのがプロトコルと
いうもの。
・堅苦しいものばかりでなく、握手の習慣ひとつとっても、民族性が出たりするもの。エ
レベータへの案内、レディファースト、まこと「仕草」は文化だ。
② プロトコル
・ここではドレスコード、席次、国旗掲揚などの決め事について学ぶ
③ 宗教の問題
・これは軽んじてはいけない問題と強調すること。ちょっとでも、相手の宗教を侮蔑する
ことがあれば、時として戦争にまで発展するほどのことなのだと説明する。
・また、食に関する宗教的なタブーも概略、知っておくこと。
- 37 -
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(レジュメ例)第9章 海外文化理解初歩
1
外国人と接する基本マナー
・・・
「仕草」は文化そのもの。交流はそこから発生する
・握手
・エレベータ・自動車
・レディファースト
・ドレスコード
・席次
・国旗
2
宗教のタブー
・・・知らないと外交問題にまで発展?
- 38 -
第10章 地元学の構築
●この章で教えるべきポイント●
① 自分の足元のことを知る大事さ
② 様々なツーリズム
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(解説)
① 自分の足元を知る大事さ
・コンシェルジュの大きな仕事のひとつに、ホテルや旅館を取り囲む「我が地域」のこと
をゲストに積極的に紹介することがある。
・「積極的に」ということがポイントで、聞かれたから答えられるレベルを越えて、こちら
から地域独自のイベントや風物詩などを提案していく。それもカラフルなエピソードつき
でできると、旅人のその地域への愛着が生まれる。
・コンシェルジュは地域の情報を伝える、地域コミュニケーション・オフィサーであるこ
とを示す。
・そのために、86ページに示した地域概要をそらんじておくいことは必須。
・また、自分にしか語れない地元の良さをメモし、集積させた自分流の地元学は、有効な
武器なる。
② 様々なツーリズム
・旅の目的が多様になりつつある時代だ。旅行会社の店舗に備え付けられているパッケー
ジ旅行の中で、ユニークなものを見つけ、自分なりにファイルしておくとよい。これは教
える側にも大事で、新聞広告、チラシなどで、へー、こんなツァーがあるんだと知り、そ
の実物を受講生に提示することで、観光旅行の多様化を実感させることができる。
・近年、とみに注目されている「世界遺産」については、関連書も多く出版されているこ
- 39 -
ともあり、詳しく教えることもよいことだ。コンシェルジュは、少なくとも、自分の地域
にある世界遺産について、それが世界遺産に認定されるまでの経緯なども学習しておいて
いいと思われる。
(聞かれて答えられると信頼感が醸成される)
・グリーンツーリズムからダークツーリズムまで、様々な観光目的があることをきちんと
知り、我が地域ならではの新しいツーリズムの目的を発見できないか、考えさせるのもよ
い。
・近年、インバウンド客に注目のジャパン・クールについても、勉強させる。長野や三重
県のニンジャ観光などは、その典型。
・また、最近ではインバウンド客が本国に帰ってブログで紹介する面白い個人的な旅行体
験が新たな観光デスティネーションを生んでいる例が見られるので、自分の地域のそうい
った評判・口コミには常に注意を払っておくこと。
- 40 -
(レジュメ例)第10章 地元学の構築
1
地元を調べることの意義
・これだけは調べておきたい項目
・自分だけの「地元学」が武器になる
・フィールドワークの必要性
2
着地型観光の意味
3
様々なツーリズム
・世界遺産
・産業観光
・グリーンツーリズム
・フードツーリズム
・エコツーリズム
・メディカルツーリズム
・シネマツーリズム
・ジャパン・クール
・ダークツーリズム
・聖地巡礼
- 41 -
- 42 -
第11章 「サービス」と「ホスピタリティ」
●この章で教えるべきポイント●
① 「サービス」はお約束を果たすこと、「ホスピタリティ」はプラスαであること
② ホスピタリティの本質は、個人プレイ
③ ホスピタリティの効果は、事前の期待<事後の結果、にあり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(解説)
① 「サービス」はお約束を果たすこと、「ホスピタリティ」はプラスαであること
・コンシェルジュの仕事は、100のお客がいれば、100の要求があり、100の解決
策があること。つまり、マニュアルで決められる「サービス」の領域に収まるものではな
い。そのことを理解するために、
「サービス」と「ホスピタリティ」の言葉をきちんと使い
分けよう、と語ることが最初。
・端的にいってしまえば、そのお店やホテルが、お客様に最低限、これだけはしてあげな
いと、約束違反でお代をいただけない行為、アクションを「サービス」とします。この最
低限のことを満たした上で、なにかプラスαでお客が居心地よく感じられることをしてあ
げられることが出来たら、それを「ホスピタリティ」としよう、ということだ。
・例を挙げると、ファミリーレストラン。この業態で食事をいただこうと入店したお客は、
当然にも、座席への案内、お水のサービス、注文取り、出来あがった料理の配膳、食べ終
わった食器類の下げ、などの事柄はやってくれるものと思っている。お約束だろう。
もしも、ファミリーレストランがそれを怠って、実は全部セルフサービスでした、とい
えばお客は怒りだすだろう。「サービス」とはそういうものだ。ここでは、それをお店側が
お客に提供する最低限の「業務」と規定している。
そして、その当然の業務を提供しながら、たとえばサーバーがにこりと笑って、天気の
ことを話題にしたり、脇に置かれたハンドバックが汚れないように、そっとナプキンを掛
けてあげたりすると、それは、そのお客だけに示されたプラスαということになる。それ
をホスピタリティとして、
「おもてなし」の訳をあてている。
- 43 -
・サービス部分をきちんとやれないと、ホスピタリティ(おもてなし)はありえない。な
ぜなら、基本動作がきちんとできないで、愛想ばかりよくてもお客はしらける一方だから
だ。サービスは業務、お客への接遇の一階部分、その上の二階部分にホスピタリティ、お
もてなしがあると考えさせたい。
・このプラスαの部分は様々なエピソードで語るとわかりやすい。東京ディズニーリゾー
トの本に盛り込まれたキャストたちの活躍の物語や、接遇系のコンサルタントの著作など
から、そのような話を採集できるので、自分だけの「ネタ帳」を作っておくとよい。
② ホスピタリティの本質は、個人プレイ
・ある意味、プラスαはゲストにとって、いい意味での裏切り、サプライズだ。
・それは、100の要求に100の答えだから、絶対に標準化できない。また予測がつく
ものでもない。本質は「この時・この場・この人だけが・この人にだけ」しかできないこ
とだ。すべて、一回性。再現性がないものだ。
・つまり、ホスピタリティには誰もが繰り返し行うことができる「システム」としての性
質がない。結局、今、現場にいるコンシェルジュが自分の考え、自分の個性を発揮して対
処しなければならない。ホスピタリティはきわめて個人的なものだ。
それを企業の上意下達の仕組みにいれることに抵抗は多いだろう。しかし、ここを企業
文化として乗り越えないと、なかなかホスピタリティは企業の中には根付かない。
④ ホスピタリティの効果は、事前の期待<事後の結果、にあり
・今、なぜホスピタリティなのか?
それは顧客に「意外性」という形で示されるものだ
からである。
・この店なら、これくらいのことはやってくれるだろう、とお客は事前の期待をもってや
ってくる。それが満たされれば、まあ代金相応、損しなくてよかったという納得で帰るこ
とができる。でも、それは本当の意味での満足ではない。サービス(業務)メニューを破
綻なくこなしても、それは「不満足ではない状態」を作れるかもしれないが、お客を歓喜
させるには至らない。
・事前の期待を結果が大きく上回ったとき、顧客の深い満足が生まれ、リピートしてくれ
る原動力になる。これが「攻め」のホスピタリティ。コンシェルジュに欲しい姿勢だ。
- 44 -
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(レジュメ例)第11章 サービスとホスピタリティ
1
「サービス」と「ホスピタリティ」を分けて考える
・・・どこまでが「サービス」で。どこからが「ホスピタリティ」か
2
サービスとホスピタリティ 語源から探る本質の違い
・・・サービスは「犠牲を伴う奉仕」
ホスピタリティは「友情をもとにした相互互恵」
3
ホスピタリティは個人プレイ
・この時、この場、この人だけが、この人にだけ
・一回性(再現性がない)
・決められた手順ではない。当意即妙の趣向
・「覚える」ではなく「考える」
・高品質(計測可能)ではなく高品位(計測不能)の実現
4
なぜ、ホスピタリティが必要か
・・・
「期待値」と「結果」の相関関係
(それは、人が左右する)
- 45 -
- 46 -
第12章 日本型コンシェルジュとして「生きる」こと
●この章で教えるべきポイント●
① コンシェルジュには、どんな資質が要求されるのか
② コンシェルジュは楽な仕事じゃない
③ コンシェルジュべからず集
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(解説)
① コンシェルジュには、どんな資質が要求されるのか
・よきコンシェルジュであるためには、どんな資質が必要か、を示す
・101~104ページに資質を8つに分けて論じてある。
ここでのポイントは、資質というものは、磨けるものだと強調すること。誰にでも、資
質を示す芽はある。それを見つけて大事に育てる気構えが大事だと伝えたい。
② コンシェルジュは楽な仕事じゃない
・基本的に顧客に合わせて仕事をしなければならない。相手に合わせる。
・時間的にも長く、ゲストの要求にアンサーを出さなければならない責任感、プレッシャ
ーも強い。
・どんな接客業にもいえるが、個人的に辛いときでも、笑顔を浮かべなければならない精
神的な苦悩(感情労働)
。
・コンシェルジュはある意味、仕事としてだけ捉えるとなかなか貫徹できない面がある。
この仕事が好きで、天職と思え、働くことと生きがいが一致し、コンシェルジュを「演じ
る」のではなく、コンシェルジュを「生きる」ことができれば最高。
・コンシェルジュ同士の関係性の良さを守る努力、ホテルの他部署との接触での気配り、
- 47 -
社内人間関係もかなりの感情労働になる。
③ コンシェルジュ べからず集
・面倒くさそうな態度(アイコンタクトなしで、お客として聞くのが怖い)
・ネット頼りのありきたりな回答(そんなことなら自分で調べられる)
・ナルシシズム、自己陶酔は鼻持ちならない (陥りがちである)
・仲間に対して頭ごなしの対応(あせっているのは分かるけど)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 48 -
(レジュメ例)第12章 日本型コンシェルジュとして「生きる」こと
1
日本型コンシェルジュに必要な資質
・尊敬と愛情(職務に対する誇り)
・自己都合ではなく他人のため(観察眼、洞察力)
・思考の柔軟性(機転、工夫、発想の柔らかさ)
・タフさと忍耐力(接客の量と質が半端じゃない)
・オープンさとユーモア(気持ちをほぐす。チームワークを意識)
・社会倫理(顧客のプライバシーを預かる)
2
コンシェルジュとしての「感情労働」
・感情を商品にする部分(ストレスも大きい)
・コンシェルジュは「従事する」職業として考えたら行き詰る。
コンシェルジュという人生を「生きる」と覚悟しなければならない部分もある
(そういう意味では、24 時間営業、公私混同の部分もある)
・コンシェルジュの「エンジン」は人に親切にしてあげないと気が済まない性格その
もの。
- 49 -
- 50 -
(付録1)アクティブラーニングの一環としての
「ケースメソッド」の一例
ケースメソッドとは、アメリカのハーバード大学で開発された学習のためのメソッド(方
法)です。とくに経営学のMBAのコースに多く採用され、実際に効果を上げている教育
手法とされています。
まず、
「ケース」があります。ケースというのは、経営の様々な分野で起きる事件、問題
点のことです。それを多くの場合、物語形式に仕立てます。現実にあった出来事を下敷き
にしていても、物語形式にすることで、現実に足をとらわれない自由な議論を誘導したと
いう理由があるからです。
複雑なケースの場合は、前の週とか事前にプリントしたものを配布し、事件の背景など
を自分で調べさせたりすることもありますが、ここでは予習なしでいける例題を提示した
いと思います。
まず、そのケースを朗読し、みんなで物語を共有します(ケースリーディング)。
その場合、教員が注釈を施したいときは、読み終えた時に、その説明をすることもあり
ます。物語理解のための前提条件で説明をしないといけない時があるからです。
「さー、主人公はこの時、どうする」という形をとります。聴
ケースの多くは、最後に、
講生は、ここで主人公になりかわって「あなたなら、どうする」を問われます。
それをみんなでディスカッションするわけです。
ディスカッションにはルールがあります。
①誠実に他人の意見に耳を傾けること
②決して、他者の意見を非難、中傷してはいけない
③自分の意見を堂々と根拠をはっきりさせて述べる
④お互いに、このディスカッションが、「正解」を求めるものではないと、了解しあう。
ディスカッションは教員対一人一人の形式でもいいし、大人数の場合はグループに分け
て、まずそこで議論させて発表する方式でもよい。
教員は、それぞれの論点を簡潔に整理し、それを板書する。それを見ながら、さらに討
- 51 -
論を深める。メンバーが気づいていない重要な論点がある場合、教員はそこを指摘するこ
ともやむをえない(参加者自身に気づかせたいが)
。
できれば、リーディングが何時何分から何分まで、グループディスカッションが何分ま
で。発表が何分間かといったタイムスケジュールを板書し、時間管理をさせるほうが緊張
感を高めて好ましい。
このメソッドの目的は、
「ケース」についてのディスカッションを通じて、他人の話をき
ちんと聞き、様々な視点があることを知り、そして自分の考えを深めていくプロセスにあ
ります。つまり、ケースごとに最良のアンサーを見つけ出そうというものではないのです。
あくまで、
「自分の頭」でものごとを考える訓練がこのメソッドの本質です。
先行する成功事例(ベストプラクティス)を学習して、それを教訓として体得するケー
ススタディとそこが大きく異なる点なのです。
「赤ちゃんとホテル―あるホテル実習生の機転の問題」と題したケースを見本に提
以下、
示します。
- 52 -
ホスピタリティ・ケースメソッド
『赤ちゃんとホテル』
・・・・・あるホテル実習生の機転の問題
作・松坂 健
・舞台
東京の一流ホテル ホテルオーヤマ コーヒーハウス
・時
猛烈に込み合うランチタイム
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(登場人物)
美雪・・・・わたし。ホテルオーヤマの正社員、コーヒーハウス”リリー”に配属されて
3年目
佳奈子・・・ホテル専門学校から実習生として派遣されている。20歳。
今林・・・・コーヒーハウスのアシスタントマネジャー。頼りにならない。
山中さん・・コーヒーハウスのお客さん。奥さんと生まれて8か月くらいの乳幼児をつれ
て来店
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
わたしは美雪。東京でもトップクラスのホテルオーヤマに就職して3年。FB(レスト
ラン部)に配属されて、今はこのホテルのコーヒーハウス”リリー”に勤務中だ。コーヒ
ーハウスは、いわばホテルの中でファミリーレストランの役目を果たしているところだ。
もちろん、値段は比べ物にならないくらい高いが、朝食から夜食まで、幅広いメニューを
もち、それこそ企業のエグゼクティブからファミリー客まで、多様な種類のお客さんが商
談、お喋り、仕事、デートまで様々な動機で途切れなく来店くださる、このホテルでもっ
とも繁盛しているレストランだ。
今日もまた、大盛況のランチタイムを迎えた。ホテルの宿泊者だけでなく、近くの企業
から会社員の方々が押し寄せるし、つい最近、雑誌にここのランチメニューがお買い得と
掲載されたこともあり、それを見た奥様軍団がたくさん来ている毎日だ。お昼時は、ほと
んど満席状態が続いている。わたしたちサーバーたちも猫の手も借りたいほどの大忙しだ。
そんな折、客席からものすごいとしかいいようのない赤ちゃんの泣き声が響いてきた。
- 53 -
かわいいなんてものじゃなく、そのむずかる声は暴力的なほどの大きさだった。
わたしはさっそくレジ回りから飛び出し、泣き声の方を目指した。ベビーバギーに生後
1年はたっていないだろう赤ちゃんをのせた若い夫婦がおろおろしている。お母さんが抱
いても泣き止まず、かえって大きくなる一方だ。若いお父さんはおろおろするばかり。
回りのお客さんも明らかに迷惑がっている。ここは、このご家族に店を出てもらうしか
ないな、とわたしはとっさに判断した。それでアシスタントマネジャーに相談しようと踵
(きびす)を返した。今林さんは副店長さん格で人柄はすごくいいのだが、こういう突発
事態にとても弱い人だ。
「いやあ、どうしよう」と頭を抱えるばかり。その間にも、赤ちゃ
んの泣き声は高まる一方だ。
そうしていると、わたしのそばにいた佳奈子ちゃんが、
「よ~し、わたしが行ってみます。
わたし、赤ちゃん、あやすの慣れているんです」と持っている配膳用のトレイをわたしに
押しつけると、若い家族のもとに急行した。
佳奈子はとあるホテル専門学校から実習生として派遣されている、まだ20歳の子だ。
本来、こういうときに出しゃばっていい立場ではないのだが、いつもお客さんの懐に飛び
込むようなホスピタリティ精神のあふれる子でもある。
見ていると、佳奈子が赤ちゃんを抱いている。不思議に赤ちゃんはぴったりと泣き止ん
だ。しばし、静寂が戻る。でも、彼女が赤ちゃんをバギーに戻すと、またけたたましく泣
き出してしまう。そして、また佳奈子が抱き上げると泣き止む。その繰り返しだ。
そのとき、佳奈子が意を決したように、若い父親と母親にこう言った。
「お客様、わたしがこの赤ちゃんを10分くらいならあやしてられますから、どうぞ早
く出せるカレーライスのようなものなら、お食べいただけると思います。いかがでしょう?」
お客は一瞬、戸惑いの表情だったが、佳奈子の好意を無視できないと感じたのか。
「それ
じゃ、早く食べられるもので食事を済ませます」とカレーライスを注文した。
佳奈子はバギーをもって、お店の外に出て、赤ちゃんを抱き上げ、あやした。赤ちゃん
は嬉しそうにしていた。
10分ほどして、若夫婦が食事を済ませ、レジにきた。この頃には赤ちゃんは泣きくた
びれたのか、眠りに入っている。佳奈子は赤ちゃんをバギーに戻し、
「またのお越しをお待
ちします」と言葉を添えた。
「わたしは山中と申しまして、昨日、今日と二泊させていただいてますが、今日は本当
にありがとうございました。このホテルの皆様のホスピタリティには感動しました。生涯、
ここを使うことになるでしょう」
そう言って山中さんは去っていった。それを見ていたレジ待ちのお客さんが小さな拍手
をしたところ、それが伝染したのか、拍手の渦が起きてしまった。佳奈子は顔を真っ赤に
- 54 -
染めてお辞儀をするばかりだ。アシマネの今林さんはあっけにとられた表情だ。
わたしは?
佳奈子のとっさの機転には驚かされたし、山中さんご夫妻もランチを食べられて良かっ
たとは思うけれど、20歳の正社員でもない実習生が、上司の許可もとらず、ここまでや
ったことに複雑な思いもある。佳奈子以外のスタッフの忙しさは普段以上になってしまっ
たのだから。でも、もちろん、感動している自分もいる。
さて、みなさん、あなたが美雪さんの立場だったらどう思うでしょう。佳奈子の行動に
イエス、というのか、それともNOか。議論してみようではありませんか?
(後日談)
以下は実際にあったこの事件後、このホテルのレストランで職場会議が開かれた経緯で
す。職場会議のテーマは、この実習生が行ったホスピタリティは、このホテルの接客場面
での標準に適合するか否か、ということでした。
結論を述べますと、こんなに美しい話なのに、会議での評価は NO でした。理由は、
① この実習生がやったことは、一回性のもので反復できない。たまたま成功しただけで、
リスクも大きい。今日出来ても、明日出来ないかもしれないことはサービスの標準には
ならない。
② この実習生が職場を無断で離れたのは事実だ。忙しい現場でチームプレイが求められる
なか、こういうことを許していると秩序が保てなくなる。
③ 万が一、この実習生が赤ちゃんを取り落とすなどの事故が起きたら、とりかえしがつか
なくなる。
といったものでした。
この後日談はもちろん、討論の前に話してはいけません。熱いディスカッションが展開
したあとに、
「現実はこうだった」と説明に使ってもかまいませんが、その判断は教員先生
のご判断にお任せしましょう。
- 55 -
- 56 -
付録2
作成者:
科
目
名
学科/学年
年度/時期
コンシェルジュ学入門(シラバ
授業形態
講義
ス例)
授業時間
回数
単位数(時間数)
90 分
16 回
2 単位(32 時間)
授
業
の
概
必須・選択
担当教員
要
ホテル・旅館にこれから欠かせない存在になるコンシェルジュ職。それはもはや先端
的都市ホテルだけのものではなく、地方都市のビジネス系も含めたホテル、観光地の
リゾート旅館にも必ず期待される職位になる。そして、これはより地域文化やそこに
住む人々と密着した形でのコンシェルジュであってほしい。この授業ではそうした日
本型コンシェルジュの初級に必要な知識とスキルを身に着けることを目的とする。
授業終了時の到達目標
地域密着型のコンシェルジュとして、初歩の知識、またそれから先、自分で学んでい
くためのメソッドを習得する。地方ではコンシェルジュだけの独立した職位は難しい
と思われるが、フロントや営業企画、お部屋係をしながらも、お客様にはコンシェル
ジュ機能を提供できる形にしたい。
回
1
2
テ
ー
マ
内
コンシェルジュとは
コンシェルジュ概念の起源、欧米と日本のコンシェルジ
何か①
ュ事情の違い
11/24 1 限
コンシェルジュとは
何か②
ホテルと旅館の歴史、ホテル産業の業態分類
礎知識①
11/30
3限
ホテル・旅館業の基
4
基本的な役割について
11/24 2 限
ホテル・旅館業の基
3
容
旅館業の業態分類、ホテルと旅館の違い
礎知識②
11/30
4限
- 57 -
5
コンシェルジュとし
身だしなみ、姿勢・物腰、挨拶、接客用語、職場での振
ての接遇
る舞い
11/30
5限
インバウンド客の対
6
応の初歩
12/1
7
基本的な心構え、初歩会話事例
1限
インフォメーショ
ルーム・インフォメーション、ハウス・インフォメーシ
ン・ガイド機能
ョン、交通機関、シティガイド
12/1
2限
飲食施設についての 飲食施設の業態と業種、各種専門店、飲食店との接点を
8
基礎知識
つくる
12/7
3限
食材・調理・飲料の 西洋料理、日本料理、中国料理、アルコール飲料につい
9
基礎知識
ての初歩
12/7
10
11
12
4限
日本文化理解初歩
12/7
5限
海外文化理解初歩
12/8
外国人の職の基本マナー、食の宗教的タブー
1限
地元学の構築
12/8
日本の季節感、日本のおもてなし
地元を調べる、地域密着の方法論(今井)
2限
「サービス」と「ホ サービスとホスピタリティはどう違うか、ディズニーに
13
スピタリティ」①
12/14
学ぶホスピタリティ
3限
「サービス」と「ホ 1 ダースのホスピタリティ・マジック。攻めるホスピタ
14
スピタリティ」②
12/14
15
リティ
4限
日本型コンシェルジ
日本型コンシェルジュに必要な資質、感情労働としての
ュとして「生きる」
コンシェルジュ、日本型コンシェルジュの未来
こと
12/15 1 限
- 58 -
16
期末試験
12/ 15 2 限
教科書・教材
評価基準
評価率
コンシェルジュ学入門
出席率
20.0%
(学校法人穴吹学園 専門学校穴
授業態度
20.0%
吹ビジネスカレッジ)
期末試験
60.0%
- 59 -
その他
平成27年度 文部科学省
成長事業分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進事業
訪日外国人受け入れに対応する日本型コンシェルジュ育成事業
(授業推進のための指導書)コンシェルジュ学入門・・・攻めのホスピタリティ構築のために
平成28年2月
訪日外国人受け入れに対応する日本型コンシェルジュ育成事業
(代表校 学校法人穴吹学園)
連絡先 〒760-0017 高松市番町2-4-14
学校法人穴吹学園 専門学校穴吹ビジネスカレッジ
電話 087-822-3007
* 本書の内容を無断で転記、記載することは禁じます。
Fly UP