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製品含有化学物質に関するトピックス(2016 年 6 月号) RoHS指令関連
■製品含有化学物質に関するトピックス(2016 年 6 月号) 発行 2016.6.27 ◆RoHS指令関連情報 *Q.483 RoHS 指令の適用除外用途が期限切れとなった場合、適用除外用途に該当していた部品をスペアパ ーツとして出荷することは可能でしょうか? A.483 RoHS 指令は特定の有害化学物質の含有を制限していますが、技術的に代替が困難な用途については、含有制 限の対象を除外する具体的な用途と有効期限が附属書 III および IV で定められています。記載されている有効期限 が過ぎるとその適用除外用途の恩恵を受けることはできません。 ただし、第 4 条 4 項では、スペアパーツについて次のとおり定めています。 以下の電気電子製品(EEE)の修理、再利用、機能更新等の目的で使用されるケーブル類及びスペアパーツは含 有制限の対象外とする。 (a)~(e):RoHS 指令の適用以前に上市された EEE(記述省略) (f):適用除外用途に該当し、当該適用除外用途の期限満了前に上市された EEE すなわち、当該適用除外用途の恩恵を受ける部品などを組み込んだ EEE が、適用除外の期限満了前に上市され ていれば、その EEE 用のケーブル類及びスペアパーツは、含有制限の対象外となります。従って、適用除外用途に 該当するスペアパーツは上市可能になります。しかし、適用除外用途の有効期限後に上市される EEE は適用除外の 恩恵が受けられないのは勿論、その EEE 用のスペアパーツとしても上市できません。 上市する場合は、有効期限前に上市された EEE 用のスペアパーツであることの明確な識別が必要と思われます。 そのため、貴社が販売するスペアパーツが、RoHS 指令の適用対象外であること(期限前に上市された EEE のみに利 用されること)を税関など当局に説明できるようにすることが必要です。 附属書 III には、適用除外用途の有効期限が明示されている用途と明示されていない用途があります。明示されて いない用途の期限は、旧 RoHS 指令から適用されていたカテゴリー1~7 及び 10 については、適用後最大 5 年(2016 年 7 月 21 日)と定められており、多くの適用除外用途の期限が 2016 年 7 月 21 日となっています。本来であれば有効 期限切れの 6 か月前にあたる 2016 年 1 月 21 日までに欧州委員会が有効期限の更新決定を行わなければなりませ んでした(第 5 条 5 項)。しかし、現時点ではいまだ更新決定がされていません。そのため、仮に有効期限が過ぎたと しても決定されるまで有効であり、また、適用除外用途の更新が認められない場合は、その決定から 12~18 か月後 までは適用除外用途が認められることになります。 なお、2016 年 7 月 21 日に有効期限を迎える RoHS 指令附属書 III の更新については、下記に詳しく解説されてい ますので参照ください。 附属書 III 更新申請に対する検討状況⇒当トピックス 2016 年 2 月号掲載 (2016/6/17 J-Net21“ここが知りたいREACH規則”Q&Aより引用) *RoHS 指令適用除外用途見直しプロジェクト(Pack 10)の最終報告書 掲題の Pack 10 プロジェクトは、2014 年 4 月に最終報告書 1)が公表された Pack 4 プロジェクトの対象であったディ スプレイ用照明部品中のカドミウムの適用除外用途に関するプロジェクトでした。当該最終報告書( Pack4)では RoHS2 の附属書 III39 項を見直して有効期間を 2017 年 7 月 1 日まで延期する提案でした。 1 2015 年 2 月に上述の Pack4 の最終報告書に基づいて欧州委員会から委員会委任指令案 が提示されましたが、 2015 年 5 月 20 日に欧州議会は当該委員会委任指令案に反対し、報告書の見直しを要求しました。その結果、 Pack10 プロジェクトとしてそれらの要求の再評価が実施されていました。Pack 10 プロジェクトのステークホルダーコン サルテーションは、2015 年 11 月 30 日から 2016 年 1 月 8 日までの 5 週間実施され、2016 年 4 月に公表される予定 であった最終報告書 2)は実際には 2016 年 5 月 17 日に公表されました。 上記の経緯については、2015 年 10 月 9 日掲載の当欄コラム 3)においても取り上げていました。 「欧州委員会から委託を受けて、Oeko-Institut は、9 月 23 日にディスプレイ照明機器の部品中のカドミウムに関 するプロジェクトを開始しました。本プロジェクトの意見募集は 2015 年 10 月に開始され、2016 年 4 月に最終報告書が 公表される予定です。」 開始されるプロジェクトの内容は以下のとおりです。 No 適用除外用途 同左(和訳) 2013-2 Cadmium in color converting IIーVI LEDs(< 10μ g Cd 固体照明またはディスプレイシステムで使用する色変 per mm2 of light - emitting area)for use in solid state 換 II-VI LED 中のカドミウム(光放出面積 1mm2 当たり illumination or display systems "(Request for renewal <10μ g Cd) (RoHS 指令 2011/65/EU 附属書 III の見 of Exemption 39 of Annex III of Directive 2011/65/ 直し要求) EU) 2013-5 Cadmium in light control materials used for display ディスプレイ装置で使用される光制御材料中のカドミ devices ウム 以下に Pack 10 最終報告書の概要を記します。 1. 契約(Framework Contract no. ENV.C.2/FRA/2011/0020)に基づき、欧州委員会環境総局は、Eunomia Research&Consulting が主導するコンソーシアムに対し、RoHS 2 体制下での除外要求の評価支援を要求してい る。 評価作業は Oeko-Institut が請負い、Eunomia Research&Consulting によって厳密なレビュー(peer review) が行われた。 2.アプローチ 指令 2011/65/EU(RoHS 2)は 2011 年 7 月 21 日に公布され、指令 2002/95/EC (RoHS 1)は 2013 年 1 月 3 日に廃止された。 ・指令 RoHS 2 の適用範囲は全電気電子機器に拡大(第 2 条(1)、第 3 条(1)) ・RoHS 1 の除外リストは RoHS2 附属書 III に変換された。附属書 IV にカテゴリー8 と 9 に特定された除外リストが 追加された。 ・除外申請は附属書 V に従ってなされねばならない。第 5 条(8)は、調和化したフォーマット、中小企業を考慮した 包括的なガイダンスが欧州委員会により採用されるべきことを規定している。 ・科学と技術の進歩への適合に対する手続きと基準は変更され、現在は考慮すべき付加的条件および要点が含ま れている。 第 5 条(1)(a)は附属書 III および IV への除外の追加を正当化するため考慮されるべき様々な基準と問題点を詳 細に示している。 ・除外は REACH 規則により与えられる環境と健康の保護を弱体化しない場合にのみ許可される。 ・除外要求は、以下の 3 条件の 1 つにしたがい正当性が見出されねばならない。 i. 代替が科学的または技術的に不可能 ii. 代替の信頼性が保証されない iii. 代替による環境、健康および消費者安全の負の影響がそれによる便益に勝る 2 ・一旦、これらの条件の一つが達成されると必要な期間の評価を含めて除外の評価は代替の有効性および代替の 社会経済的影響、イノベーションに関わる逆の影響、除外の包括的な影響に関するライフサイクル分析が考慮され ねばならない。そして ・すべての除外は除外有効期限が付与されており、新規の申請提出によってのみ当該除外は見直され得る。 カドミウム量子ドットテクノロジー(Cadmium Quantum Dot Technology)に対する除外の再評価の内容と経過 今回の調査(study)は 2012 年と 2013 年に提出された 2 つの除外要求の再評価である。最初の評価は 2013-2014 であった。2012 年 12 月に欧州委員会は附属書 III 除外 39 の見直し要求、そして 2013 年 5 月に新規の附属書 III に 対する除外要求を受け付けた。両者ともカドミウム量子ドット(CdQD)アプリケーションを扱っていて、その除外は 2013 年~2014 年に実施された評価期間中にレビューされていた。その最終報告書は 2014 年 4 月に公表された。2015 年 5 月 20 日に欧州議会は、上述の報告書に基づき採択された委員会委任法は更新されるべきであるとして反対した。 その結果、これらの要求に対する再評価が実施された。両者の除外要求は EEE 中の量子ドットテクノロジー の適用 に関係しており共同の評価が実施された。 最初のレビュー時には市場においてはまだ利用可能ではないと理解されていた CdQD アプリケーションおよび Cd -free QD アプリケーションに関して市場で変化が起っていると見なしていた委任法に対する議会の反対という重要な 局面が持ち上がった。 それ故、本プロジェクトの立ち上げ時には、除外要求の申請者、および Cd-free QD 材料製造者は CdQD および Cd-free QD 材料を使用している EU 市場およびグローバル市場において利用可能となる EEE に係る情報提供が要 求される。パーティーは、またそのようなアプリケーションの性能に関するデータおよび使用時や末端のアプリケーシ ョンで使用時にどのようにテクノロジーが比較できるかに関するデータの供給を要求される。2013-2014 のレビュー 期間に利用可能であったドキュメントに加えて、供給された最初の情報は、2015 年 10 月 30 日および 2016 年 1 月 8 日の間に行われたステークホルダーコンサルテーションの一部としてステークホルダーがレビユーするためのベース としてステークホルダーが進行中の再評価対して寄稿することを可能とするためその時に使用された。 寄稿されたドキュメントは QD アプリケーションに関する科学進歩の評価およびその除外要求に関する結果を許容 するために更にレビューされた。 主要な調査結果 本プロジェクトおよび関連する申請者がカバーする除外要求、最終の推奨および除外期限は下表のとおりである。 除外要求 2013-2 および 2013-5 の見直しに対する要求に対する推奨は Oeko-Institut により欧州委員会に提 出されており 2016 年 6 月 2 日に EU CIRCA のフーウェブサイトで公開されている。これまでのところ欧州委員会は、 これらの推奨に基づいた指令 2011/65/EU の何らの改版も採用していない。 除外要求 文言 番号 申請者 推奨 : 提案される除外文言 提案された 期間 ソリッドステートイルミネーションまたは ディスプレイシステムに使用する色変 2013-2 2013-5 換 IIーVI LED 中のカドミウム(光放出面 QV Vision , ディスプレイ照明装置に使用される半 積 1mm2 当たり <10μ g Cd)(指令 Inc 導体ナノクリスタル量子ドットベースの 除外は 3 2011/65/EU 附属書 III の除外 39 の ダウンシフトカドミウム中のセレン化カ 年間許可 更新要求 ドミウム(ディスプレイスクリーン面積の されるべき LCD 量子ドット光学制御フィルムおよび コンポネント中のカドミウム 3M Optical Systems Division 本報告書には以下のセクションが含まれています。 3 mm2 当り<0.2μ g Cd) セクション 1.0 プロジェクトの立上げ セクション 2.0 範囲 セクション 3.0 指令から REACH 規則へのリンク セクション 4.0 ~ 7.0 は本プロジェクトで処理された除外要求の共同再評価が包含されている。 (2016/6/10 J-Net21“ここが知りたいRoHS指令”コラムより引用) ◆REACH規則関連情報 *日没日を経過した認可対象物質の制限検討 ~フタル酸エステル類の制限提案~ ご承知のとおり、REACH 規則の附属書 XIV(認可対象物質)に収載され、日没日を経過した物質については、認可 申請がなければ、上市や使用が原則禁止されます。ただし、輸入成形品については、認可の枠組みの対象外となっ ているため、日本から成形品を輸出する場合には、認可対象物質となっても、認可対象候補物質(Candidate List)に 関わる情報提供や届出は継続して課されますが、継続使用にあたって認可が必要となることはありません。 しかしながら、本コラム(2015 年 11 月 27 日付)でも、説明されているように、REACH 規則第 69 条 2 項によって、欧 州化学品庁(ECHA)に、「日没日を経過した認可対象物質について、成形品中の該当物質によるリスク管理状況を検 討し、リスクが適切に管理されていない場合には、制限提案を行うことが定められています。 今回は、この第 69 条 2 項による ECHA のリスク管理状況の検討や制限提案の状況について整理します。 1. ムスクキシレンおよび 4,4'-ジアミノジフェニルメタン(MDA) 両物質は認可対象物質のうち、日没日が最も早い 2014 年 8 月 21 日に設定されていました。これらの物質につい て、第 69 条 2 項に基づいた ECHA による成形品中の両物質に関する検討結果が 2015 年 11 月 12 日に公表されて います。 ECHA は両物質ともに、一般的に化学物質や混合物として使用されており、また登録情報の用途で成形品中での 使用がなく、認可対象候補物質(Candidate List)の届出や認可申請もなかったことから、成形品中の使用に関するリ スクは特定されないとし、成形品に対する制限提案は不要であると結論づけました。 2. 4 種のフタル酸エステル類 ムスクキシレン、MDA に次いで、2015 年 2 月 21 日に日没日を迎えたのが、DEHP、DBP、BBP、DIBP の 4 種のフタ ル酸エステル類です。 ECHA は成形品中のこれらフタル酸エステル類について検討した結果、リスクが十分に管理されていないと結論付 け、2015 年 3 月に制限提案意向を発表し、制限提案文書を 4 月 1 日に制限提案文書を提出、現在、12 月 15 日を期 限とする意見募集が実施されている状況です。 制限提案文書では、「可塑化された材料中に 4 種のフタル酸エステルを合計 0.1wt%超含有する成形品」の上市を 官報公示の 3 年後から禁止する内容となっています。ただし、一部制限対象外となる製品として、次のような内容が挙 げられています。 ・皮膚や粘膜に長時間接触せず、屋外でのみ使用される成形品 ・労働者の皮膚に長時間接触しない工業および農業用途の成形品 ・実験用の測定機器 ・食品接触材、医薬品包装、玩具および育児用品(DEHP、DBP、BBP のみ)といった既存の他法規制で規制対象と なっている成形品 4 屋内使用の消費者向け製品を対象とした 4 種のフタル酸エステル類の制限については、2011 年 4 月にデンマーク が制限提案を行っていましたが、2012 年 12 月に ECHA の専門委員会が制限提案を支持するだけの根拠がないと結 論付け、2014 年 8 月にはデンマーク提案に対しては REACH 規則附属書 XVII の改正は行わないことが正式に官報 公示されたという経緯がありました。 今回の ECHA の制限提案は、前回のデンマークによる制限提案を基にしつつも、認可申請や認可付与の内容を考 慮するとともに、ばく露や代替化、費用・便益などに関する新たな情報が反映されています。 これら 4 種のフタル酸エステル類については、RoHS 指令においても 2015 年に制限対象物質に追加され、2019 年 7 月から均質材料中の最大許容濃度を 0.1wt%とする含有制限が課されることになっています。また、すでに REACH 規則附属書 XVII の 51 項において、玩具や育児用品中の可塑化された材料中において DEHP、DBP、BBP の合計が 0.1wt%以下とする含有制限が課されています。 これらに加えて、今回の制限提案内容が、もし、REACH 規則附属書 XVII に収載されることになれば、RoHS 指令や 既存の REACH 規則附属書 XVII の 51 項の規制対象である電気電子製品や玩具および育児用品だけでなく、さらに 幅広い輸入成形品に対して、フタル酸エステル類の含有制限が課されることになります。一度、提案が退けられてい ることもあり、どのような判断が下されるかは、今後の制限手続きの状況を確認する必要があります。 3. 今後の成形品中の認可対象物質に関する検討 上記物質に続き、2015 年 5 月 21 日にはクロム酸鉛や三酸化二ひ素などが、2015 年 8 月 21 日にはリン酸トリス(2クロロエチル)やヘキサブロモシクロロドデカン(HBCDD)などが、2016 年 4 月 1 日にはトリクロロエチレンが日没日を 迎えています 6)。 これらの物質の中には、すでに REACH 規則附属書 XVII に収載されている、または POPs 規則等の他法規制によ って、成形品についても含有制限が課されている物質もあります。 これらの物質に関する第 69 条 2 項に基づいた検討結果は、ECHA の「制限に関する検討中の活動 7)」または「制 限に関する完了済活動 8)」のページで公表されますが、現時点では、まだ検討結果は公表されておりませんので、今 後、順次検討が進められ、制限提案の要否が公表されていくものと想定されます。 認可対象物質は EU 域内において、すでにその使用や上市が原則禁止されています。つまり、EU 域内企業は代替 等の対応を実施していることになります。 多くの日本企業は、認可対象候補物質(Candidate List)に関する義務に対応するために、製品含有化学物質情報 を把握されていることと思います。今後は、フタル酸エステル類のように、制限によって輸入成形品に対する含有制限 が課されることもあり得ることを念頭に置き、必要な場合に代替化に向けた取り組みを開始できるように準備しておく ことも必要であると考えます。 (2016/6/24 J-Net21“ここが知りたいREACH規則”コラムより引用) *BPA(ビスフェノール A)の規制動向 BPA(4,4'-isopropylidenediphenol :bisphenol A:CAS No. 80-05-7)に関連する情報がこのところネットで目立つ気 がします。質問も来ていますので、情報を整理してみます。 BPA の健康有害性が着目される切っ掛けが、シーア・コルボーン等の「奪われし未来(原著 Our Stolen Future 1996 年、邦訳 長尾 力 訳 1997 年)」です。「奪われし未来」のなかで、プラスチックのポリカーボネート(PC)から BPA が 「しみ出し」ていて、これがエストロゲン(女性ホルモン)類似物質として発見されたことで、有名になりました。 BPA は内分泌攪乱物質(いわゆる環境ホルモン)として、様々な研究や規制がされてきています。 5 1. BPA とは BPA はポリカーボネートやエポキシ樹脂をはじめ、さまざまなプラスチックの合成に使われています。BPA は抗酸 化剤、あるいは重合禁止剤としてポリ塩化ビニルの可塑剤として添加されています。 ネットで話題となっているのが、レシートなどに使用される感熱紙の顕色剤として BPA が使用されていることです。 ポリカーボネートやエポキシ樹脂は BPA を原料として重合していますので、理論的には BPA は存在しません。プラ スチックの添加剤や顕色剤は BPA を含有することになります。 2. BPA の分類 EU の C&L Inventory では次となっています。 ・皮膚感作性 区分 1 ・重篤な眼損傷性 区分 1 ・特定標的臓器毒性(単回ばく露) 区分 3 ・生殖毒性 区分 2 3. 規制内容 厚生労働省の「ビスフェノール A についての Q&A」で情報を提供しています。 用途としては、ポリカーボネートは電気電子機器・機械部品、エポキシ樹脂は金属の防蝕塗装、電気電子部品や 土木・接着材等に使われており、一部、食器・容器等にも使用されています。 また、これらプラスチックには製造過程で反応しなかったビスフェノール A が残留し、微量のビスフェノール A が含ま れているとしています。 日本の食品衛生法では、ポリカーボネート製器具及び容器・包装からのビスフェノール A の溶出試験規格を 2.5μ g /ml(2.5ppm)以下としています。材料中の含有量は 500ppm 以下としています。 この根拠として、無毒性量(動物において有害な影響が観察されなかった最大量)を基にして、耐容一日摂取量(食 品の消費に伴い摂取される汚染物質に対して人が許容できる量)を 0.05mg/kg 体重が設定されているとしています。 日本の業界では、上記基準より厳しい値の業界基準を定めています。例えば、ポリカーボネート樹脂技術研究会で は、含有量は 250ppm 以下としています。 EU は、「食品と接触することを意図するプラスチック素材及び製品に関する委員会規則」(EU REGULATION 10/2011)で、食品接触プラスチック材から食品へ溶出した未反応あるいは不完全に反応したモノマー、他の出発原 料、または低分子添加物から生じる可能性を潜在的健康リスクとして規制しています。 この規則で、BPA はその成分が食品 1kg あたりで 0.6mg/kg を溶出制限としています。その後、規則 321/2011 で、 ポリカーボネートを 12 カ月以下の乳児用哺乳瓶の製造に使用することを制限する改正をしました。 フランスでは、2010 年 6 月 30 日に BPA をベースとした哺乳瓶は食品安全庁が決定するまで製造、輸入を禁止とし ました。 2015 年 7 月 1 日から食品との直接接触が意図されているあらゆる梱包、コンテナ、または調理器具の製造、輸入、 輸出、販売が制限されました。 アメリカは FDA が BPA に関するリスク評価を行っています。21 CFR part 1779)で、哺乳瓶などに、ポリカーボネート の使用を禁止し、N-ヘプタンによる 6 時間還流温度での抽出で、0.15 重量%以下としています。 カナダでは、BPA は健康リスクがあるとはしていないものの、BPA を含むポリカーボネート製哺乳瓶を 2010 年 10 月から制限しています。 4. 新たな動き 上記のように、ポリカーボネートは製造過程で反応しなかった微量のビスフェノール A が残留するので、健康に対 するリスクは研究中で確定はしていない面もありますが、乳幼児向けの哺乳瓶などが規制対象となっています。 EU 玩具指令が改正され 2015 年 12 月 21 日から、36 カ月未満の子供が使用することが意図された玩具または口 に入れることを意図したその他の玩具について附属書 II 付録 C で BPA は溶出量が 0.1mg/l と制限されました。試験 6 方法は EN 71-10:2005 及び EN 71-11:2005 です。乳児製品から子供に拡大されました。 BPA の規制の基本は、食品接触プラスチック材からの食品への移行量(溶出量)です。 2016 年 2 月 8 日にフランスが Current SVHC intentions(SVHC としての意図)として、BPA を届出ました。根拠は CMR/眼損傷としていますが、詳細は示されていません。 Candidate List に収載するためには、生殖毒性区分は 1A または 1B が要件で、前記の C&L Inventory では区分 2 になっています。 フランスから 2014 年 3 月に RAC(The Committee for Risk Assessment)に BPA は区分 2 から区分 1B にする提案 があり、RAC も受け入れていました。 フランスはこれにより SVHC として届出をしたものです。これにより、Candidate List に収載される可能性があり、この 場合は溶出量ではなく、含有量(0.1%)基準となります。 このように、規制は科学進歩や状況により変化がおき、技術的データで変化しないと思われている C&L Inventory の内容も、変わることがあることが示されました。 なお、RAC は 2015 年 12 月にレシートなどに使用される感熱紙の顕色剤を扱う作業者管理が適切に管理されてい ないとして、BPA を REACH 規則の制限の提案をしました。 (2016/6/3 J-Net21“ここが知りたいREACH規則”Q&Aより引用) ◆chemSHERPA(ケムシェルパ)関連情報 *経産省主導のケムシェルパ、運用賛同100社・団体に 経済産業省主導で開発した化学物質情報伝達の新方式「chemSHERPA」(ケムシェルパ)の運用に賛同する企 業が100社・団体に達した。3月末までにキヤノン、NEC、ソニー、パナソニック、コニカミノルタなど96社・団体が賛 同。その後、富士通、シャープ、フジキン(大阪市西区)などが賛同表明し、100社・団体となった。 ケムシェルパは部品や部材に含まれる化学物質情報を取引先に伝える共通ルール。ケムシェルパを利用する企 業同士なら対象物質などが共通なので、円滑に情報を伝達できる。 経産省は複数の方式の乱立を解消し、中小企業の負担を軽減しようと標準方式となるケムシェルパを開発。2018 年度の完全移行を目指し、採用を検討する賛同企業を募っていた。 (2016/6/21 日刊工業新聞) *シチズンHD、18年度めどに化学物質情報の伝達を「ケムシェルパ」移行 シチズンホールディングス(HD)は2018年度までに取引先との化学物質情報の伝達を、経済産業省主導で開発 した「ケムシェルパ」方式に移行する。具体的な手順や運用は各事業会社に任せるが、中核会社のシチズン時計(東 京都西東京市)は17年度内に管理システムをケムシェルパに対応した新システムに切り替える。 シチズンHDはアーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)の伝達方式を各事業会社に推奨してきた。JAMPが 法規制に合わせて対象物質を追加する更新作業を18年6月で終えるため、ケムシェルパへの移行を決めた。 すでに各事業会社の環境担当者向けにケムシェルパの説明会を開いた。シチズン時計は現在、JAMP方式で情 報を受け取れる管理システムを運用している。ケムシェルパへの移行に向けてシステムを作り替える必要があり、買 い替えや更新を検討する。 時計や工作機械の事業会社は取引先から情報を入手することが多く、電子部品の事業会社は完成品メーカーへ 提出することが多い。電機や自動車など業界ごとに要求が違うため、ケムシェルパの運用は事業会社に委ねる。 ケムシェルパは伝達方式の乱立を解消する狙いで、経産省が開発した。 (2016/6/24 日刊工業新聞) 7