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国民・アスリート等の声
参考資料2 国民・アスリート等の声 1.アスリート等との意見交換について 2.インターネット意識調査について 3.官邸ホームページ等に寄せられた国民の声について アスリート等との意見交換について 参考資料2-1 7月28日~8月25日の間で、計29回(スポーツ団体4回、アスリート12回、 マスコミ6回、建築家・デザイナー3回、学識経験者4回)の意見交換を実施。 また、8月10日には閣僚会議で舛添都知事及びアスリート5名と意見交換。 (スポーツ団体) ・7月 28 日 (公財)日本サッカー協会 ・7月 29 日 (公財)日本陸上競技連盟 ・7月 31 日 (公財)日本オリンピック委員会 ・7月 31 日 (公財)日本障がい者スポーツ協会 日本パラリンピック委員会 (アスリート・有識者) ・7月 30 日 佐藤真海 氏(パラリンピアン;陸上競技) ・7月 31 日 為末 大 氏(オリンピアン;陸上競技) ・8月 3日 山口 香 氏(オリンピアン;柔道) ・8月 3日 奥山清行[ケン・オクヤマ]氏(工業デザイナー) ・8月 4日 平尾誠二 氏(ラグビー) ・8月 4日 室伏広治 氏(オリンピアン;陸上競技) ・8月 4日 橋本五郎 氏(ジャーナリスト) ・8月 5日 河合純一 氏(パラリンピアン;水泳) ・8月 6日 高橋尚子 氏(オリンピアン;陸上競技) ・8月 6日 槇 文彦 氏、大野秀敏 氏(建築家) ・8月 7日 角谷浩一 氏(ジャーナリスト) ・8月 10 日 朝原宣治 氏(オリンピアン;陸上競技) ・8月 10 日 北澤 豪 氏(サッカー) ・8月 10 日 清宮克幸 氏(ラグビー) ・8月 10 日 根木慎志 氏(パラリンピアン;車いすバスケット) ・8月 10 日 ヨーコ ゼッターランド氏(オリンピアン;バレーボール) ・8月 11 日 玉木正之 氏(スポーツ評論家) ・8月 11 日 結城和香子 氏(ジャーナリスト) ・8月 11 日 岡田武史 氏(サッカー) ・8月 18 日 松岡修造 氏(オリンピアン;テニス、スポーツキャスター) ・8月 19 日 新浪剛史 氏(サントリーHD 代表取締役社長、経済財政諮問会議議員) ・8月 19 日 宮嶋泰子 氏(ジャーナリスト) ・8月 19 日 金 哲彦 氏(マラソン指導者、陸上競技解説者) ・8月 20 日 間野義之 氏(早大スポーツ科学学術院教授;スポーツマネジメント) ・8月 20 日 森山高至 氏(建築家) ・8月 20 日 渡 文明 氏(JX ホールディングス名誉顧問、行政改革推進会議構成員) ・8月 20 日 溝口紀子 氏(オリンピアン;柔道、社会学者) ・8月 21 日 杉山 茂 氏(スポーツプロデューサー) ・8月 25 日 峰 竜太 氏(俳優・タレント) (東京都との意見交換) ・8月 10 日 舛添東京都知事 アスリート等からの意見概要 ■日本サッカー協会 日 時:平成 27 年 7 月 28 日(火)11:00~ 出席者:(公財)日本サッカー協会 大仁邦彌会長 【意見の概要】 8 万人を収容するスタジアムとしてほしい。 日本サッカー界では、2050 年までに日本においてワールドカップを開催することを約束と して掲げており、上記の実現に向けては、国際サッカー連盟(FIFA)がワールドカップの開 催国に求める競技場(スタジアム)の基準の一つである「開幕戦及び決勝戦は 8 万人を収容 するスタジアムで開催する」という要件を満たす必要がある。 加えて、2023 年には女子のワールドカップ招致も視野に入れており、その他、数多くの国 際大会や日本代表チーム等の試合を新国立競技場で開催したいと考えている。 可動式スタンドを設置してほしい。 東京オリンピック・パラリンピックのレガシーとして、陸上とサッカー・ラグビーが共存 できるよう、スタジアムが陸上競技場となる場合は陸上トラックを可動席で覆うことができ る構造とし、臨場感あふれるスタジアムとすることが望ましいと考えている。 全ての観客席を覆うことのできる屋根を設置してほしい。 全ての観客席を覆う屋根を設置し、雨や雪、強い日差しを避けることで、観戦者の快適性 を確保することが望まれる。 加えて、スポーツの主役であるプレーヤーが最高のプレーを披露するためには、最高の芝 のコンディションを保つことが必須となるため、芝生の育成管理の観点も合わせて配慮され ることが求められる。 上記に加えて重要となるのが「ホスピタリティ機能」である。国内外問わず様々な方々が 集う会合やビジネスの場としてのラウンジの活用など、海外ではスタジアムが「スポーツに 留まらない多様な社交場」の役割を備えたものであることが求められており、これは「収益 を生み出す場」にも繋がるものと考える。 ■(公財)日本陸上競技連盟 日 時:平成27年7月29日(水)16:15~ 出席者:(公財)日本陸上競技連盟 横川浩会長、尾縣貢専務理事、風間明事務局長 【意見の概要】 新国立競技場の建設に当たっては、実際に使用する陸上競技関係者からの技術的・専門的 意見にも十分に耳を傾けていただきたい。検討会等を開催する場合には、当連盟にも声をか けていただきたい。 新国立競技場は、競技者・競技運営関係者・メディア・観客等のすべてに「使い勝手がよ い」施設にしていただきたい。 例えば、ウォームアップ場とメイン競技場は近接し、移動距離を短くすること、バリアフ リーにすること、すべての座席を屋根で覆うことなど。 サブトラックを常設していただきたい。 オリンピック・パラリンピック開催後も、国際規模・全国規模の陸上競技大会を開催する ためには、サブトラックが必須。 また、大会中にウォームアップ場として利用したサブトラックは、一般市民が気軽に利用 できるよう開放することが望ましい。 工期は、プレ大会が開催できる期間内に収めていただきたい。 大会を成功させるためには、プレ大会の実施が不可欠である。当連盟では、2020 年春から 6 月にかけて日本選手権大会を含む複数のプレ大会を開催し、リハーサルにしたいと強く希 望しており、そのためにも遅くとも同年 3 月までに新国立競技場を完成させ、用器具の搬入 も終わらせられるようにしてほしい。 ■佐藤真海氏(パラリンピアン;陸上競技) 日 時:平成 27 年 7 月 30 日(木)11:00~ 出席者:佐藤真海氏(パラリンピアン;陸上競技) 【意見の概要】 北京とロンドンのパラリンピックは満員のスタジ アムで迎えられ、最高の思い出を持ち帰ることができ た。 『素晴らしい競技場とは』と振り返ると、アスリー トがベストなパフォーマンスをできること、そして観客がそれを一体となって楽しむことが できること、この二つが合わさってよい競技場となるのではないでしょうか。 アスリートがベストパフォーマンスを発揮できるためにはどうしたらよいのかは、アスリ ート自身が一番よく知っているので、新国立競技場の計画を検討するに当たっても、その生 の声を聞いてほしい。また、観客の方々が楽しめるような施設を考えていただきたい。 東京大会はちょうど今頃の暑い時期に開催されるので、暑さ対策が課題になる。自己記録 を更新するには難しい環境であり、待機場所や移動時に暑さを軽減したり、体力の消耗を押 さえたりできることが重要。少しでも日陰になるような仕組みなど、暑さ対策に配慮してほ しい。 ハイテクは、日本が最先端の分野も多いので、技術と環境とのベストミックスを目指して ほしい。 国立競技場は、やはり自分にとって聖地。また、観客にとって競技場は、見上げた時に「こ こに来たんだ」と思えるような、スポーツの力を感じられる象徴であると思う。 新しい国立競技場は大会終了後も、大人や子供、障害のある人が集う場所であってほしい。 競技場の更衣室のアクセシビリティも重要。特にパラリンピアンにとっては、寝転んで着 替えられたり、異性の付き添いがいる場合の仕切りがあったりするような配慮が必要。 ■為末大氏(オリンピアン;陸上競技) 日 時:平成 27 年7月 31 日(金)9:30~ 出席者:為末大氏(オリンピアン;陸上競技) 【意見の概要】 新国立競技場の検討プロセスの中で、選手の声 を取り入れていただくことは良いこと。 検討に当たっては、陸上競技・サッカー・ラグ ビーなどの各競技者・団体だけでなく、後利用の 観点から音楽・エンターテイメント関係者等から も様々な意見が寄せられると思うが、すべての要望に対応することは無理なので、これらの 要望を踏まえて総合的に判断してほしい。 どこかで我慢してもらいながら進めることがスポーツ界全体にとっても良いことになる と思う。 外観のデザインのことは良くわからないが、皆が集える場にすることが重要。 飲食店などの施設も併設し、日常的に子供や家族が集って楽しめるような競技場にしてほ しい。海外では、日本の国立競技場ほど聖域化している競技場はない。 陸上競技専用の競技場は理想のイメージとしてはあるが、現実的には、陸上競技の試合は 数が少ないので、サッカーなどの球技やエンターテイメントなども含めた活用を考えた方が 良いと思う。 ■(公財)日本オリンピック委員会 日 時:平成 27 年7月 31 日(金)10:00~ 出席者:(公財)日本オリンピック委員会(JOC) 平岡栄介専務理事、日比野哲郎事務局長 【意見の概要】 今回の件で、オリンピックに対するマイナスの イメージが大きくなってしまったことは残念。遠 藤大臣を中心に機運を盛り上げていってほしい。 JOC としては、オリンピック・パラリンピックに確実に間に合うように新国立競技場を完 成させていただきたい。 工期は、希望としては 2019 年 12 月。プレ大会をきちんと行うには、このくらいの完成時 期が望ましい。ただ、それが現実的に無理ならリミットは 2020 年 3 月。 新国立競技場について、陸上競技を考えないというのは難しいだろう。 リオデジャネイロ五輪の開会式はサッカー専用のスタジアムであるが、国立競技場は陸上 競技にとって聖地。ラグビーにとっても、正月の大学選手権は同じ位置付けではないか。 サブトラックは陸上競技開催の絶対条件であり、整備していただきたい。陸上競技の大会 を開催できないような競技場にすべきではない。仮設とするか常設とするかは今後検討され るとのことだが、競技場へのアクセスなど選手の動線にも配慮したものとなるように検討し てほしい。 観客席は 8 万人とする必要がある。IOC との公約で開閉会式会場は 8 万人を確保するとな っている。 検討に当たっては、アスリート・ファーストで考えてほしい。 競技者にとって使いやすいようにすることが大切。民間委託などの声もきちんと関わった 形で運営すべき。 ■(公財)日本障がい者スポーツ協会 日本パラリンピック委員会(JPC) 日 時:平成 27 年7月 31 日(金)15:00~ 出席者:(公財)日本障がい者スポーツ協会 日本パラ リンピック委員会(JPC)鳥原光憲会長、山脇康委員長 【意見の概要】 競技エリア等の整備に当たっては、アスリート・ ファーストの理念の下、参加選手にとって最高の 競技環境を確保できるようお願いしたい。 参加選手がおのおのの自己ベストを目指すことができるよう、移動や準備に支障を来たさ ないような設備等とすることが必要。 客席エリア等の整備に当たっては、最高水準のアクセシビリティを確保するようお願いし たい。 障がいのある方が家族と一緒に競技場での観戦・応援を楽しめる環境となるよう、国際パ ラリンピック委員会(IPC)のアクセシビリティ・ガイドに準拠した施設・設備の整備をお願 いしたい。 例えば、女性用トイレが多いといったことも“売り”になる。 競技場の周辺への配慮も必要。 新国立競技場には国内外から大勢の観客が集まるので、観客が最寄り駅等から競技場にス ムーズに移動できるような周辺環境の整備にも配慮してほしい。 ■奥山清行(ケン・オクヤマ)氏(工業デザイナー) 日 時:平成 27 年 8 月 3 日(月)8:00~9:00 出席者:奥山清行(ケン・オクヤマ)氏 (工業デザイナー) 【意見の概要】 私はかつてトリノオリンピックの聖火台とトー チのデザインを担当し、後世に残るという観点を 意識して指揮をとっていた。 日本の地場産業は素晴らしい技術(例:鯖江市のチタン鍛造、燕三条市の磨きの技術)を 持っているので、例えば、選手村のナイフ・フォークに採用し、大会後はお土産として持ち 帰ってもらうことも一つのアイディアではないか。日本の技術を世界に PR する上で効果が ある。 観客席も 8 万席すべてを統一する画一的な発想ではなく、場所によって素材やデザインを 変える方法もあり得るのでは。 機能を主会場としてのものだけに限定する考え方もあるが、オリンピック・パラリンピッ クは歴史的な意味があり、後世に残るという視点も重要なので、新国立競技場はコモディテ ィ化(均質化)せずに、ブランドとして文化的な潤いを持たせることが必要。メイン会場は、 後々までシンボルとなる。さらに日本の現在の建築技術を世界にアナウンスする絶好の機会 にもなる。 今回のコンペはデザインコンペであり、設計コンペではない。今回 2,520 億円という数字 が独り歩きしているが、この額は出発点である。ここから施主・デザイナー・建築会社の相 談によってコストを抑えていくのが通常。その意味で、もっと丁寧に説明をした方がよかっ たかもしれない。 この事業は規模・工期を考えると、非常に難易度の高い仕事であり、価格が増えるという 要素しかない。理想のデザインに近づけつつ、一方で建築費は抑えるという相反する目標を 調整するため、デベロッパーや関係企業には、今回の仕事だけで採算が取れるかどうかとい う発想ではなく、日本のために国家的な事業を請け負うという意義も考慮していただくこと が必要ではないか。 デザインの追求とコストの削減は相反する。この矛盾を調整するため、デザインチームは デザインをしたらあとは建設チームに任せるというのではなく、デザインチームも完成まで 建設チームと絡むべき。また、デザインと建築の両方がわかり、全体を少し離れた立場から 俯瞰できる責任者が一人必要。 ■山口香氏(オリンピアン:柔道) 日 時:平成 27 年8月3日(月)10:30~ 出席者:山口香氏(オリンピアン:柔道) 【意見の概要】 オリンピック・パラリンピックはスポーツイベ ントではあるが、やはり国家事業でもある。そし て、国立競技場は選手にとって聖地と言える。こ うしたことを考えると、新しい国立競技場が、日 本の科学技術なども含めて日本を世界に発信・ア ピールする場になればよい。 海外の人と話していると、 「日本は大丈夫だと思っていた」という声をよく聞く。オリンピ ック・パラリンピックは、競技場の問題も含めて色々な課題を抱えていると思う。日本でう まくいかないということになると、 「日本でもできないのか」ということで、今後のオリンピ ック招致イメージに悪影響を与えかねない。「やはり日本はきちんとできた」ということを 世界に発信することは非常に重要な役割だと思う。 アスリート・ファーストの理念はもちろん大切であるが、スポーツを「する人」、 「見る人」、 そして「支える人」という全体でスポーツを盛り上げるべきだ。 「する人」はもちろん、 「見 る人」が快適に見られるような、また「支える人」にとって機能するような競技場にしてほ しい。例えば、選手や観客の動線をどうするか、猛暑の中で 8 万人もの観客が一斉に競技場 に入ったり出たりすることになるが、これをうまく捌けるような動線にする必要がある。ま た、暑い中での観戦になるが、飲み物の持ち込みにセキュリティ上、どう対応するかといっ たことも検討課題となろう。 (猛暑の中での誘導やセキュリティの問題なども、トータル で考えてほしい。) イギリスに留学していた際、ウィンブルドンのことをすごいと思った。「ウィンブルドン =テニス」といえ、まさに「聖地」である。町の人もウィンブルドンを誇りに思っているし、 イギリスの選手が活躍する・しないに関わらず、スポーツの祭典として脈々と受け継いであ おり、スポーツが文化になっていると言えると思う。 採算を取るというだけであれば、文化というものなかなか醸成されていかない。日本人や スポーツ人が誇りにできることを今回のオリンピックで発信していければ、日本がスポーツ 文化というものを獲得していけると思う。コストは大切なことだが、それが第一義的になる と、そもそもオリンピックが不要ではないかということになりかねない。 そこ(競技場)が「聖地」だと、みんなそこに来て戦ってみたい、そこで競技をすること が誇りになっていくので、文化が醸成されていく。 競技場の建設やセキュリティなどについての蓄積は、前回のロンドン大会、前々回の北京 大会とうまく国際連携を取って財産として繋げていくことが、ひとつのレガシーになると思 う。そのような取組を、ニュースやメディアを通して発信していくことが大切である。引き 継いでいけるものについては、引き継いでいき、さらに進めることができる部分については、 競技場も含めて進化させていくことで、世界の人がオリンピック・パラリンピックはこうや って進化しているんだな、ということがわかり、競技面だけではない何かを見せることがで きると思う 日本企業の最新技術など示して、 「さすが日本」と言われるようなものにしたい。世界に対 して誇れる「JAPAN ブランド」の誇りを取り戻せるようなオリンピック・パラシンピックに したい。 世界最高峰の競技イベントなので、世界の選手たちが「この競技場のこの環境だからコン ディションも良く精一杯戦えた」と言ってくれるような大会を目指したい。全てが最高峰と いうことは難しくても、その競技場で最高峰のアスリートが競い合うことは人類の財産にな る。 1964 年の東京オリンピックに関する資料を読んでいると、当時も有識者からの批判もあ り、皆が応援していたわけではないということがわかる。しかし、国立での開会式を観た後 は、平和の祭典・オリンピックを日本でできたことは誇らしいという思いが共有されている ■平尾誠二氏(元ラグビー選手) 日 時:平成 27 年8月4日(火)12:30~ 出席者:平尾誠二氏(元ラグビー選手) 【意見の概要】 新しい国立競技場でラグビーのワールドカ ップができないことは残念。国内だけでなく国 外のラグビー関係者も残念がっている。ただ、 これは仕方がない話なので、国立競技場が使え ないことを前提に、新しいシナリオを考えなければならない。また、2020 年以降はラグビー でも使わせてもらうことになると思うので、その時に、ラグビーの良さを国立競技場を通し て伝えられるようにしていきたい。 これからの競技場には4つのキーワードがあると考えている。 ① セキュリティ:人が多く集まるのでテロ対策および安全対策が重要になる ② パフォーマンス:プレイヤーズ・ファーストの目線からすると、高いパフォーマンス を引き出せる施設ということが重要になる。 ③ ホスピタリティ:今や、観客の満足度が高まらなければ、競技場の価値はないと思う。 プレイヤーズ・ファーストということはもちろんだが、それと同レベルに近いくらいに、 観客の皆さんの満足度ということが重要になる。また身障者の方々のみる権利(安全性・ 快適性)も十分に保証されなければいけない。 ④ エンターテイメント:エンターテイメントがないと賑わいが出てこない。単なるスポ ーツ施設というだけでいいのか。コストを回収できるのか、ランニングコストを賄える のかなどの問題が出てくるので、適宜考えていく必要がある。 ハイパフォーマンスができる施設の条件としては、グラウンド・コンディションが重要。 最近のサッカーやラグビーの競技場は、敷地面積を有効活用するために、コンパクトにな って観客席が高くなっており、見る人にとって、どこの席に座っても競技場全体が見えるよ うになっている(観客席が低いと、座席の位置により見え方が異なり死角が出てくる場合も あるので、観客に不公平感が生じてしまう)。 オリンピックの競技場として使うのであれば、陸上競技にも対応していくことになると思 うが、サッカー・ラグビーの試合となると、トラックの部分により観客席との距離感が生じ て見えにくくなってしまうので、その点をどうしていくか考える必要がある(フランスやオ ーストラリアのラグビー場は可動席になっており、ラグビーの際には競技場との距離を縮め ている。)。 観客から競技が見えやすいように観客席を高くすると、風通しが悪くなり、芝生の養生 が難しい。つまりスタジアムの近代化と芝生の育成環境に矛盾が生じている。これはどこ の競技場もが抱えている問題であり、選手のハイパフォーマンスをコンスタントに引き出 すため、ハイブリッドな芝生の導入などの対策が行われている。 今の時代、高額な料金を払って見に来てもらうようなスタジアムで、観客が状況によっ て動くというようなことはありえない。そういうことを考えた時に、スペクテーターズ (観客)に呈するホスピタリティは非常に大事である。 ラグビーの試合を人工芝で行うのは厳しい。特に、夏場の人工芝は熱くなるので、火傷 をしてしまい健康上良くない。冬場はまだ考えられるかもしれない。雨の時の水はけの良 さなど人工芝のメリットもあるが、本質的にラグビーやサッカーは天然芝で試合をすると いうことが常識化している。 ハイブリッド芝は、時間が経てば経つほど技術開発が進むので安くなっていく。大量生 産化すると安くなる。普及が進んできており、イギリスのラグビー・ワールドカップの会 場のうちのいくつかはハイブリッド芝である。 屋根付きの競技場とサッカーやラグビー用のように観客席が高くなっている競技場につ いては、永遠の課題が芝生である。(観客の満足度を上げるために観客席を高くしたこと で)芝生のコンディションが悪化してしまい、選手のパフォーマンスが落ちてしまったら 本末転倒という話になる。そのせめぎ合いはしばらく続くと思われ、その解決策としての ハイブリッド芝は、今後検討されていくと思う。 すべての競技において満点の競技場ということはなかなかないと思う。どういった競技 で多く使うのかなどを考慮する必要がある。 皆が知っている場所である神宮外苑は、ビルが過密する東京の中で、大きな防災拠点と なり得る場所である。 (オーストラリアのラグビー・ワールドカップの決勝戦では、屋根付きの競技場でも屋 根を閉めていなかった。)サッカーやラグビーのように基本的に雨天中止のないスポーツ については、観客席の部分の屋根は必要だが、フィールド部分の屋根が必ず必要かどうか は明らかでない。 ヨーロッパでは、観客の満足度は非常に重要。観客満足度は、結局は入場料の価格設定 に影響してくるので、非常に重要な視点である。 プレイヤーズ・ファーストというのはもちろんであるが、これだけメディアが発達する と、見る側の意見は、無視できないどころか、貴重になってきている。そのため、観客の 満足度というのは、重要度が高くなってくる。 競技場を建設した後で、どうやって上手く費用を回収していくか、どうやってランニン グコストを賄っていくのかも考えなければならない。スポンサーズボックスや LED 看板な どの収入を得るための仕組みを考える必要がある。 広義に言うのであれば、「見る人」もプレーヤーと言えるかもしれない。 自分は国立に「聖地」という感覚がある。国立競技場については、もっと身近なものに して多くの人が活用できるようにするべきだという意見があり、そのような意見もおかし くないと思う。一方で、いつでもできるということになると、価値がないのではないかと 思えてしまう。あの競技場は特別で、そこで試合をするために命を懸けて競技するといっ たように、目標が非常に高いところにあるということが重要であり、それが聖地たる所以 なのではないか。ただし、商業施設やスポーツのミュージアムなど付帯施設を日常的に使 えるということは良いことだと思う。 今、世間の注目がコストの面に集まっている。コストはたしかに大切であるが、我が国の 技術力の高さを集約したものを表現するという機会でもあるので、上手くやっていければ いい。 ■室伏広治氏(オリンピアン;陸上競技) 日 時:平成 27 年 8 月 4 日(火)16:00~16:30 出席者:室伏広治氏(オリンピアン;陸上競技) 新国立競技場についてまず大事なことは、オリンピ ックに間に合うよう完成させることである。 コストを抑え、一方でレガシーとなる建造物を建設 するという相反する目標の兼合いは難しいと思うが、 知恵を出しながら計画を策定してほしい。 建築費については、資材の高騰や為替の影響もある ので、過去のメインスタジアムと単純に比較することはできないと思う。経済状況を考慮す ると、負担が大きいことはわかるが、将来のために投資をするという意識も大事である。使 うべきところには、使うべき。 新国立競技場のコンセプトのポイントとしては、モンスター・スタジアムではなく、機能 的で、綺麗、清潔、シンプルという点であると思う。 日本のセキュリティ・レベルは高く、安全性の面では大きな懸念はないと思うが、何かあ った場合の動線はスムーズでなければならない。 ヨーロッパの会場で試合をすると、競技場の内部の雰囲気が施設ごとに異なる。一方で、 日本国内のスタジアムは画一的であり、個性が感じられない。競技場の内部にも、海外から 来た選手や観客が、日本を感じられるようなスタイルにしてほしい。 動線は、選手・観客の移動時や緊急避難時にスムーズに動きやすいことが重要。また、選 手は競技場に入って一定時間を過ごさなければならないので使い勝手を良くする必要があ る。このような観客・選手にとってオペレーションがしやすい配慮が必要。また、動線は設 計が終わってからでは改良できないので、計画段階から専門的な会議で良く検討してほしい。 多くの人が、スタジアムに行ってみたいと思うようなスタジアムにしてほしい。 都心で陸上競技ができる施設は、駒沢オリンピック公園総合運動場だけ。故に、インター ハイも現在は都外で実施している。選手の立場としては、都心に陸上競技場があり、それが 新国立競技場であったらいいなと思う。 競技場の規模については、常に巨大なものはいらないという考え方があると思う。国際陸 連は、競技場の規模として普段は3万人の収容規模であり、オリンピック・世界陸上級の大 会となると6万人級と示している。大規模な陸上競技大会を数年に一度開催するだけなら、 小規模な施設にして仮設シートで対応すればよいが、毎年のように頻繁に開催するのなら、 常設席で大規模な施設にするのがよいと思う。 オリンピックは対外的に日本の技術を PR する側面があるが、コストと、対外的に PR でき るレベルの施設を建設することの折り合いが課題であると思う。例えば、規模は6万人程度 として、大会後に撤去する仮設シートを記念品として販売することで、費用を集めればコス ト負担の軽減になるのではないか。 シートと屋根に関しては、シートが自在に動き、かつ屋根は開閉式というのが理想。 ■橋本五郎氏(讀賣新聞 特別編集委員) 日 時:平成 27 年 8 月 4 日(火)16:00~ 出席者:橋本五郎氏(讀賣新聞 特別編集委員) 【意見の概要】 今回の新国立競技場の問題ではっきりわかっ たのは、大きな事柄を決めるには、多くの人々 の理解を得られないと進められないというこ と。この件は、さまざまな立場の人々から諸々 の要求が出ており、調整が大変困難である。難 しい連立方程式であるが、何かを捨てなればな らない。そこは決断する必要がある。 責任の所在を明確にし、責任者は責任をとることも必要である。責任者は率直に話し、国 民に理解してもらうよう努めることが重要ではないか。 計画の考え方に関して言えば、既存の計画には戦略的設計というものが乏しかった。昨今 の議論の風潮はコスト減に傾いているようだが、コストを抑えるだけでよいのか。設計を考 える際に、今だけを考えるか、50 年後から今を考えるか。昔こういうものを造ったと 50 年 後に誇れるものを示さなければならない。単にお金をかけなくてよかった、というだけでは 済まない。 オリンピックは、単なるイベントではない。2020 年に向けていろいろな業界が動き出して いる。大きな目標であり、日本が諸々の面で変わるかもしれない。重要な節目の年に日本の 技術の粋と国民の力を結集して、オリンピック・パラリンピックのメイン会場である新国立 競技場を造るべきではないか。それを見据えて判断し、計画を策定するのが政治の仕事であ ると思う。 今回、ロンドンや北京といった過去のメインスタジアムと比較されることが多いが、日本 特有の耐震構造のためのコスト増や為替の変動などもあって次元が異なるので、単純に比較 するのはおかしい。建設費について多くの人に理解してもらい、かつ自分たちが参加してい るんだという気持ちを持ってもらえるような解にしてほしい。 ■河合純一氏(パラリンピアン;水泳) 日 時:平成 27 年 8 月 5 日(水)16:30~17:00 出席者:河合純一氏(パラリンピアン;水泳) 新国立競技場については、開閉会式を開催すると同時 に、その後も残っていくものとして、アクセシビリティ に十分に配慮されていることが何よりも大事だと思う。 その中でも、①「する」スポーツ、②「見る」スポーツ、 ③「支える」スポーツそれぞれにとってのアクセシビリ ティを担保した競技場を示すべきだと思っている。全て の人にとってアクセシブルなスタジアムを造り上げていただきたい。訪れた人たち、例えば子 供たちが今まで気付かなかった配慮などに気付くことで、多様性の素晴らしさを感じることが できるようなシンボルであってほしい。 「お金をかけてほしい」というわけではなく、シンボルとなるスタジアムが必要であると いう思いがある。また、競技場はいざと言うときに避難所などにもなると思うので、我々に とっての安心感につながる場所であることが必要だと思う。 スポーツ界としてシンボルとなるような場所を見せ、伝えて、残していくことは重要なこ とだと思う。単にコストだけの話ではなく、大会が終わってからも、将来、地方の施設を建 て替える時のモデルとなるような施設であってほしい。 車いす利用者の方の席は、絶対に分散させるべきである。もし何かあった時に、一か所に 集まっていては移動が困難になり、リスクマネジメントとしても間違っていると思う。様々 な場所に席を設けて、障がいのある人たちが見に来ているということに、他の観客に気付い てもらうことが重要。集約という発想は、できるだけやめていただきたい。 ■高橋尚子氏(オリンピアン:陸上競技) 日 時:平成 27 年 8 月 6 日(木)11:00~ 出席者:高橋尚子氏(オリンピアン;陸上競技) 選手にとって一番うれしい競技場は、競技に向 けたウォーミングアップや練習をしやすい環境が 整っていることと、タイムが出る、記録が出ると いうことが大きな要素。 いい記録が出る競技場には、オリンピックが終 わった後も海外からトップ選手が集まり、そうな れば観客も必ず集まる。 第二にサブトラックがあること。オリンピック後に国体やインターハイ(高校総体)の陸 上ができないのは致命的である。新しい国立競技場でも常設にできないことはないと思う。 また、サブトラックは日頃から市民に開放してほしい。その際、有料にすればオリンピック 後の採算面でも貢献するのではないか。 トイレの配置についても、数万人の利用者が集う場所であるので数多く配置してほしい。 女性用トイレの数についても配慮してほしい。 競技場にはトレーニングジムも必要であり、造ってほしい。 暑さ対策を考慮してほしい。木を植える、屋根を設置することで日陰を作るなどしてほしい。 ■槇文彦氏(建築家)、大野秀敏氏(建築家) 日 時:平成 27 年 8 月 6 日(木)15:00~15:45 出席者:槇文彦氏(建築家)、大野秀敏氏(建築家) ※○:槙文彦氏 □:大野秀敏氏 △:遠藤大臣 【意見の概要】 △ 新国立競技場の整備の見直しの機会を作ってく ださったことに感謝。コストとアスリート・ファー ストの観点を軸に検討し、来月早々に計画の方向 性を決めたい。 □ 先月末に、ザハ案に関する見解をマスコミの皆様に公表した。 □ 具体的には、第一に、施設規模の点がある。8 万人規模の施設は、あの土地には大きい。6 万人規模の施設が妥当ではないか。膨大な維持・修繕費を支払い続けていかなければならない。 また、セキュリティの観点からも、8 万人収容規模となると、テロが起こるだけの空間のゆ とりは十分ある。 □ 2 点目に、ザハ案は多様な機能を盛り込もうとしていたが、室外スポーツと室内イベントは 本来相反する機能を相互に持っているため、理想的な室外スポーツ施設でもなければ、理想的 な室内イベントホールでもないという結果になってしまう。いろいろな機能を一つにしようと しているが、陸上競技が中心なのか、サッカーが中心なのか、施設の主目的をはっきりして軸 を決めることが施設の質を高めることとなる。 ○ 3 点目に、景観の問題がある。あのように巨大な施設を都市の中心地に設置しておいてよい ものか。できるだけ土地にふさわしい身の丈に合ったものの方が、最終的にはお金もかからな いし、皆さんが喜ぶのではないか。 □ 4 点目に、スケジュールが大事である。大会に間に合うように、8 月いっぱいで枠組みをま とめることが必要。 ○ 競技場計画策定に当たって考慮すべき点として、暑さ対策がある。オリンピックは夏季に開 催されるところ、選手たちが酷暑に耐えられ、良い記録が出やすい施設を作るべき。日本のお もてなしの精神からこういった観点も盛り込んではどうか。 △ 先週より、様々な方の意見を伺っているが、すべての要求を受け入れることはできないので、 策定計画のポイントから外さなくてはならないものもある。それらを総合的に考えて、私が責 任を持って判断したい。 ■角谷浩一氏(ジャーナリスト) 日 時:平成 27 年 8 月 7 日(木)17:00~ 出席者:角谷浩一氏(ジャーナリスト) 【意見の概要】 私はラジオ番組(3 時間、朝 6 時~朝 9 時) で DJ をしておりアンケートを行ったところ、 真面目な意見を多数いただいた。主な内容とし ては、①造る以上はしっかりしたものを造って ほしい、②コスト削減が議論の中心になってい るが、中長期的な将来を見据えて計画を作成する視点も必要ではないか、という声があっ た。ザハ案策定時には、国民に意見を聞いたことがないと思うが、今回のアンケートを通 じて、国民の皆さんから非常に積極的なご意見をいただいた。 大臣は様々な方から意見を聴き、またコスト・資材調達の困難性など大変な問題がある と思うが、新国立競技場に関するコンセプトを提示して、国際コンペを開催すべきであ る。 ホストシティタウン構想を実施しているとのことだが、認知度を高めるために、積極的 に報道してもらえるようにしてはどうか。 オリンピックのメイン施設は世界的な注目を浴びるので、しっかりした施設を造ってほし いという声は多々あると思うが、一方で予算的制約の問題もある。提案だが、大臣は会見を 開き、予算ごとの設計イメージ、例えば予算 1,300 億円の場合はベーシックな競技場となる が、これに数百億円を追加した場合は防災にもしっかりと対応できる設備を備えられるとい ったイメージを示し、国民の反応を確かめてみてはどうか。 ■玉木正之氏(スポーツ評論家) 日 時:平成 27 年 8 月 11 日(火)11:00~ 出席者:玉木正之氏(スポーツ評論家) 【意見の概要】 これまでは建物のデザインについてばかり議 論されてきた感があるが、デザインではなくス ポーツ施設という観点を中心に考えることが大 事である。サブトラックは絶対に必要である。 サブトラックは、言葉通りの“サブの”トラックではない。むしろサブトラックの方が メインだと考えてほしい。サブトラックを都民・国民が気軽に使え、常に利用されている ことが望ましい。女子マラソンの増田さんも言っていたが、ストックホルムやドイツの北 の方でも、最近はサブトラックがメインになっている。市民にとっては、サブトラックが メインで、イベントを行う時は別であると。サブトラックを造るのに 4 億円くらいかかる が、仮設で造って大会後に潰したら将来、国際規模の大会ができなくなる。 また、陸上関係者から配線も重要だと聞いた。最近は、トラックの下にスタート合図用 の電気配線などを入れており、それが6億円ほどかかるそうだが、サブトラックがないた めにメイン会場で大きな大会を開けないとなると、その 6 億円も無駄になってしまう。 トラックは、芝以上に利用価値がある。一般利用に供してもあまり痛まないので、旧国 立競技場でも一般の人がかなり使っていた。一方、芝生は管理が必要なので、一般の人は 使いにくい。 神宮外苑の全体をスポーツ施設としてコーディネートする。それを考えた上での国家と しての新国立競技場だと思うので、東京都の計画とドッキングできるならドッキングして も構わないと思う。5 年後の東京大会は、将来を見通した上での途中経過であるという考え でやるべきではないか。 1940 年にオリンピックを招致した時は途中で返上になったが、あの時もギリギリになっ てメイン会場の神宮外苑を造り替えるのを中止し、計画を駒沢に移している。駒沢をメイ ンに据えるという案は昔からあった話。 問題は、サブトラック問題と将来的なスポーツパーク構想。スポーツパーク構想は、東 京都と一緒になって打ち出した方が良い。単に国立競技場を造るだけでは駄目。 日産スタジアムなどは、都市公園法の制限があるために商業施設の設置ができず、離れ たところにレストランがあるが、あれは止めた方がいい。 大きな周辺を含めたスポーツパーク構想、これの概略を早く打ち出してほしい。 それと、オリンピックのスローガンがまだ決まっていないのでは。どの大会でもスロー ガンがあるので、何か一つ出したほうが、国民やマスコミにもわかりやすいと思う。 もう一つ、イギリスでロンドン大会終了後、メダリストがスポーツクラブに入りましょ うというキャンペーンを行ったが、その時の台詞が、みんながスポーツをやると腰痛と心 臓疾患が減って、国の保険や医療費が節約できますからというものだった。なかなか面白 いキャンペーンで、大会前のオリンピック・パラリンピック・キャンペーンと大会後のス ポーツ・キャンペーン、競技場の話とは逸れるが面白かった。 ■結城和香子氏(讀賣新聞編集委員) 日 時:平成 27 年 8 月 11 日(火)15:00~ 出席者:結城和香子氏(讀賣新聞編集委員) オリンピック・パラリンピックのレガシーとい うものをどのように考え、それがどのような価値、 特に(医療費、社会保障費削減など)経済的な数 字に換算した価値を持つのかを考えていくことが 必要である。それに対応して、50 年分のレガシー に対するコストをどのように考えたらいいのか、 その議論を深めることが非常に大切になると思う。 「安かろう、悪かろう」ではいけないという考え方に賛同する。クアラルンプールの IOC 総会でもそのように言う人が多かった。スタジアムは人々がスポーツに触れる接点であり、 スポーツを通じ社会にどんな影響を与えたいのかという視点を貫くべきである。 どのようなレガシーをどの程度のコストで作るのか。そして、そのコストは誰がどのよう に分担していくのかということについて透明性を持ってディベートし、理解を得ていくしか ないように思う。 アスリートにとっても、観客との一体感が自分にとっての大きな力になるとおっしゃる方 が多い。観客がどれだけアスリートの競技を見たいと思って来てくれるか、どれだけ臨場感 を感じてくれるかということも、アスリート・ファーストの中に入ってくると思う。 基本の骨組だけのスタジアムにしてしまって 10 年、20 年経って振り返った時に、あの時、 なぜ日本で造らなかったのかという思いをするようなものにはすべきではない。 運営母体を一つに限る必要はない。イギリスでは、アクアティックセンターの運営を GLL (Greenwich Leisure Limited)という社会的企業が、国民の寄附金や助成金で賄って行っ ており、選手の活動拠点としてだけでなく、家族連れや障害のある人などコミュニティのた めに楽しめる拠点として運営している。 「民」とはいっても、 「公共」の色彩が強く、面白い 動きであると思う。 私たちは、自分たちとの関わりが何かということが理解できて初めて支持する気になるの で、この施設を造ることがどのような意味を持つのか、それがこの先 50 年間どのような象 徴になるのかという「レガシーの物語」を、皆に理解できるような形で伝えなければならな い。 スタジアムのサイズや外観、内部設備の質も軽視できない。日本のブランド(品格)を表 し、人々が憧れ、行ってみたいと魅力に感じるものであってほしい。 人々に理解してもらうためには、費用についてそれぞれわかりやすい形で示すしかないと 思う。 「この部分は、前はここまでかかりましたけど、これくらい削りました。一方、防災の 機能はしっかりしたものを造りたいから、これだけお金をかけます」というように説明して いくことが大切ではないか。 ■岡田武史氏(サッカー指導者) 日 時:平成 27 年 8 月 11 日(火)17:00~ 出席者:岡田武史氏(サッカー指導者) 【意見の概要】 多様な議論やご意見があると思われるが、全 ての意見を満たすのは無理。新国立競技場にレ ガシーとしてどういうものを残すかをよく考え て計画を策定するのがよいのではないか。例え ば、陸上競技なら収容施設を6万人とし、オリン ピック用に仮設シートをプラスする。収容施設を 8 万人にする案があると思うが、全部を国 でやろうとすること自体が時代遅れである。国立という形で国家が運営する大規模競技施設 は、世界中で日本くらいではないか。どのような施設にするのかは、オリンピックのメイン 施設として利用後、新国立競技場をどう利用するか決めて、オリンピック開催に間に合うよ うにすれば、自ずと計画は見えてくると思う。 サッカー界は、将来的なワールドカップ招致を目指して収容施設 8 万人が必要と言ってい る。サッカー界から怒られそうだが、次の次はカタールで、アジアが開催施設に選ばれるの は、早くて 19 年後である。19 年後には、レギュレーションも変更されている可能性があり、 また施設自体も老朽化しているため、新築する必要が生じる可能性がある。誰も責任を取れ ない先のことより、オリンピック・パラリンピック後、どのような用途として新国立競技場 を使用するかという視点に基づき検討すると答えが出る気がする。 8 万人収容施設を満員にできるかどうかはチーム次第。代表戦は観客が入るだろうが、ア ジア杯などは相手チームにもよると思う。トヨタカップも決勝戦は入るだろうが、予選では 難しいかもしれない。 サブトラックについては、オリンピック開催時に設置し、開催後は別の用途のために整備 してはどうか。また、サブトラックを常設できないこともあるなら、メイン会場も大会後ト ラックを無くして球技専用にするのが集客力の面からも一番合理的ではないか。 権利だけ主張して、義務を負おうとしないのは良くない。主張する場合は、イニシャルコ ストは別として、ランニングコストを負担するべきである。 公園法の対象範囲となるスタジアムでは、イベントを開催しないと収益は出ない。スポー ツイベントの開催のみでは収益が出ない。長年にわたってスタジアムを運営するとなるとイ ニシャルコストよりランニングコストの方が上回るが、このランニングコストを回収するた めには、スポーツ以外のイベント実施が必須。 開閉式屋根にした場合、採光量が少ないので天然芝の育成は難しい。芝生を年に数度張り 替える必要があるので、莫大なコストを要する。 空調に関し、暑さ対策が必要ではないか。私は札幌ドームでサッカー監督を 3 年間務めた が、冷房を運転しても 4 万人の観客の熱気により、冷房が追い付かず大変暑かった。 日本のスポーツにおけるスポンサー探しとは、所謂タニマチ探しであって、売るものはな いが、相手の「好き」によって、一方通行的に支援しているのが現状。世界はビジネスモデ ルとして成り立っている。海外は都市以外では娯楽施設が少ないため、気軽にディズニーラ ンドに行くことができない、故に海外はスポーツの放映権が日本の約 10 倍。アメリカ的な エンターテイメントとヨーロッパ的文化の両方の側面を持って、スタジアムに来させる必要 がある。日本のスポーツ界は頭を切り替える必要がある。そうしなければ、日本のスポーツ 界は廃れてしまう。 ■松岡修造氏 (オリンピアン;テニス、スポーツキャスター) 日 時:平成 27 年 8 月 18 日(火)19:00~ 出席者:松岡修造氏(オリンピアン;テニス、 スポーツキャスター) 国立競技場の問題については、みんなが同じ 思いであると思う。みんなが一つになった結 果、計画が見直されることになり、その動きが 進んでいるのではないか。 オリンピック・パラリンピックは招致した時 から戦いが始まっている。アスリートは 2020 年の舞台で戦うのが役割だが、招致が決まって東京でしっかりとしたオリンピック・パラリ ンピックを開くという意味では、国を含めて全員の戦いである。もちろん敵がいる戦いでは なく、大会の準備をしてちゃんと成功させるという戦いである。選手のフェアプレーととも に、大会の開催準備におけるフェアプレーを見せることが大切。 オリンピック・パラリンピックを通じて何を伝えるか、それは開催国の文化ではないか。 日本の文化を世界に発信できるチャンスでもある。 みんなのオリンピック・パラリンピックなので、一般の方もボランティアに参加すること で、自分の国にやってくる一大イベントに自分の目標を持つことも大切ではないか。 日本と欧米のスポーツで何が違うかというと、スポーツを「支える」という点。スポーツ を「する」、 「見る」は定着しているが、 「支える」があって初めて日本のスポーツ文化がつく り上げられると思う。 コスト抑制の議論があるが、国立競技場は、選手が走る時に血が騒ぎ、大会を契機として 日本が変わったと感じられる象徴となる、そういう場所であってほしい。ずっと残っていく ものだから、日本の良さ、例えば安心・安全ということを第一に考えるべきではないか。 開閉会式の会場となるスタジアムは“日本の会場”であることがいいと思う。日本のため に、日本を感じられる、日本のスポーツを感じられる会場であってほしい。例えば、全豪オ ープンの会場では、過去の選手の銅像、写真、文章などが飾られてあり、会場を訪ねた時点 で豪州スポーツの歴史を感じられる。日本人が誇りを持てる、レガシーとなるスポーツの歴 史が詰まったものがよい。 競技場を聖地として建設すべきという考え方と、単なる競技場であって聖地という要素は 不要であるという考え方があるが、自分としては、新国立競技場はアスリートのための競技 場だけでなく、日本人のための競技場だと思っている。競技場に入った時に、日本の魂や感 動、こんな大きなことをやり遂げたという感覚を感じられるところであってほしい。 ウィンブルドンは自分にとっての聖地であり、そこを夢見て戦ってきた。年に2週間しか 使用されず、勝ち残った人以外はシャットアウト。このセンターコートに 1996 年に初めて 立った時、歴代の名選手と同じ場所に自分が立っているのだというその実感、芝の感覚に思 わずひざまずき、涙が止まらなかった。こうした体験からも、新しい会場は日本の今のみな さんの思いが詰まったものであってほしい。建物の形やデザインよりも、みんなの思いが入 っていることが伝わってくることが大事なのではないか。 屋根の有無については、屋根がなくてもオリンピック・パラリンピックはできるが、その 後の収入面を含めて検討すべきである。屋根がないと、イベント開催などが制約を受けるこ とも考えられるので、その面も含めて検討してほしい。 ■新浪剛史氏 (サントリーホールディングス株式会社 代表取締役社長) 日 時:平成 27 年 8 月 19 日(水)9:00~ 出席者:新浪剛史氏 (サントリーホールディングス株式会社 代表取締役社長) 【意見の概要】 パラリンピックは最近いろいろな企業がバック アップして関心が高くなっており、経済同友会も 重視している。オリンピックだけでなく、パラリンピックをもっと盛り上げようという経営 者の方がたくさん出てきているのは、大変よいこと。 私は経済財政諮問会議のメンバーでもあるので、その観点から言うと、財政再建をしなけ ればいけない時に、当初予定していた額を倍以上に上回るという事態は問題であり、当然見 直すべきである。その意味で、総理が白紙であるとおっしゃったのは大変な英断である。 財政再建が急務である一方で、オリンピック・パラリンピックの成功も喫緊の課題である ので、1,500 億円前後でできるようなら、この目線で最大限の努力をしていく必要がある。 予算の中で何を捨て、何を残すかということをよく考えていかなくてはならない。やはり陸 上競技の聖地とするということに絞り込んで、1,400 億円の目線で、もう一度デザインから やり直すということが必要ではないか。 大会後にレガシーをどう残していくかは PPP・PFI により民間資金を活用することも検討 してはどうか。企業の知恵をもって、開閉式にするのか、コンサートホールなども含めた多 目的利用を考えるのかといったことを考えていくべき。民間もお金があるし、国費の投入は 最小限に抑え、民間の資金を使う方法を考えるべきではないか。 サブトラックの問題には非常にシンパシーを持っている。この問題にどう対応するかは、 大臣も非常に悩まれていると思うが、場所があそこしかないのだから、地下に造るとしたら どのくらいお金がかかるのか等々も考えながら、多目的利用を諦めて陸上の聖地にするか、 あるいはサッカーやラグビーなどにも使えるということにするかがよいのではないか。 私は IOC との約束事を承知していないが、多額の費用をかけてデザインに拘ったり多目的 利用を考えたりすることについては是なのだろうかと疑問に思う。 白紙撤回したものの、結果的に 2,000 億円を要したとなると「何だ、やっぱりか」となり、 評価してくれた国民の期待を裏切ってしまうことになる。そこで「よくぞやったぞ」という 雰囲気を作るためにも、1,500 億円でやるべきではないか。時間もないタイミングであるが、 遠藤大臣のリーダーシップでぜひ英断してほしい。 企業にとって大会終了後の競技場の価値は、ここで東京オリンピック・パラリンピックの 開閉会式を行い、選手が競った聖地であるということである。高校野球でいう甲子園と同じ で、このこと自体がブランドになる。 大会後の活用方策としてコンサートを行うためには音響機能等が必要になるが、今回そう したものまで一緒に整備していくと、ものすごい金額になる。そこで、コンサートを行いた いなら、大会終了後、再整備のために必要な費用は PPP・PFI で調達するのがよい。コンサー ト利用のための屋根などアディショナルな部分の経費は民活により確保していく、そういう 考え方で運営も任せるというように進めていけばよいのではないか。 メンテナンスコストをいかに下げるかということも重要。メンテナンスをやっている会社 などの専門家に、どのくらいの費用がかかるのかを確認すべき。建設費が少し高くなっても、 メンテナンス費用が下がるのであれば、その合わせ技で判断すべきだと思う。 全体の構想をどう描くかも大事であるが、アスリートのための具体的な機能を早く詰める べきではないか。 ■宮嶋泰子氏(スポーツコメンテーター) 日 時:平成 27 年 8 月 19 日(水)10:00~ 出席者:宮嶋泰子氏(スポーツコメンテーター) 【意見の概要】 アスリートにとって良い競技場であることは当 然として、お客様である観客が入って気持ちが良 いものであることが一番大切である。旧国立競技 場は、アスリートのトイレ事情、特に女性のトイレ 事情が非常に良くなかったので改善する必要があ る。 海外の競技場は観客席とフィールドの高さの差が 50 センチ程度しかないところが多く、 非常に臨場感がある。 女性や障がい者、高齢者にも優しいスペースが必要。キッズスペースは多目的ルームが基 本。選手だけでなく、審判やボランティアにも子供がいる方が多く、子供を帯同する人も増 えている。たとえ仮設であっても、託児スペースは絶対に必要。 障がい者向けのスポーツ施設を造るよりも、健常者と障がい者が共用できる方がより良い と思う。障がい者だけの施設にするのではなく、健常者と障がい者が一緒に利用できるよう にすることが重要。 ロンドンオリンピックの際には、女性トイレだけでなく、男性トイレにもおむつ替えスペ ースが設置されており、目から鱗の経験であった。2020 年の東京オリンピックでは、このよ うな配慮が絶対に必要になる。 オリンピック・パラリンピックは、経済的な発展もさることながら、医療費を削減するた めにも、体を動かすことの楽しさやスポーツの面白さを意識付けしていく非常に良いチャン スであると思う。 2020 年の東京大会のレガシーは、スポーツや運動の楽しさを感じることができる環境だと 思う。 どこのスタジアムにも、そのスタジアムの歴史を感じられるスペースがある。旧国立競技 場にも秩父宮記念博物館があった。このような施設をぜひ残してほしいし、これも一つのレ ガシーになると思う。 日本を表現するために、和のテイストを取り入れることも重要。 『「聖地」だから、みんなが入ってはいけない』というのは古い発想ではないか。スポーツ はアスリートだけがするものではなくて、誰もがする時代である。スポーツ全体の視点から 見ると、アスリートだけでなく、観客やアスリートのパフォーマンスを支える人を含めての 競技会だと思う。 オリンピック後に国民が広く利用できるようにするために、民間事業者に施設管理・運営 を委託するのであれば、選定の際に「この競技場は国民の運動とスポーツのシンボルである から、国民が広く利用できるようにする」という条項を盛り込むべきである。 座席数については、6 万 5,000 席程度にして、1 万 5,000 席程度を仮設とすればよいので はないか。 土地の所有権などの関係をかんがみた場合、陸上競技のためのサブトラックは残念だが仮 設にするしかないのだろう。 ■金哲彦氏(マラソン指導者・陸上競技解説者) 日 時:平成 27 年 8 月 19 日(水)11:00~ 出席者:金哲彦氏(マラソン指導者・陸上競技解説者) 【意見の概要】 東京大会は真夏の開催になるので、暑さ対策は重 要。マラソンは、暑さ対策のため早朝にスタートし ており、東京でも同様の工夫が必要。 陸上競技の立場から言えば、サブトラックは国際 的な陸上競技大会を開催する場合に必要なので、 2020 年の東京大会以降もサブトラックが常設されて国際大会が開催できることが望ましい。 その一方で「サブトラックを設置できないなら、東京大会の陸上競技も他の場所で行ったら どうか」という考えもあるが、このような発想はいかがなものか。 オリンピックは競技(Competition)という以上に、世界中の人が平和を感じる機会であ り、絆を深めていく場でもある。その中でメインスタジアムは、最も人々の印象に残る開閉 会式を行う場であるので、日本を象徴するような場所に建設することが重要である。 開閉会式は、誰が何を話すかといった内容も大事であるが、それ以上にどのような場、空 間で式が流れていくかということが重要であり、人々の記憶に一つ一つずっと残ることにな るので、スタジアムもそういう視点で考える必要がある。 サブトラックに関してもう一つ言えば、神宮外苑には軟式野球場・フットサルコート・テ ニスコートがあるが、それぞれのスポーツが単独でしか利用できないのはもったいない。軟 式野球・テニス・フットサルなども含め、もう少し多目的に活用することを考える中で、サ ブトラックも位置付けられないか。 市民マラソンの観点から言うと、せっかく新国立競技場が建設されるのであれば、緑溢れ るロードコースが併設されるようにできたらいいと思う。特定の競技だけでなく、いろいろ なスポーツを楽しめる場所になると非常に良い。 海外には、例えば米国のオレゴンのようにトラックの内側に樹木があって庭になっている ような競技場がある。陸上競技場は、フィールド競技用の芝生エリアと 400 メートルトラッ クとを分けて配置し、トラック競技は緑の庭園の中を走るようにするという発想もあるので はないか。今のルールでは無理かもしれないが、東京大会は環境を大切にするという立場か ら、IF(国際競技連盟)に変更を提案すればよい。 ノルウェーのオスロにある競技場(ビスレット・スタディオン )は、トラックの一番外側 のコースのすぐ横が観客席になっており、トラックと観客席が一体化し、選手が観客の目の 前を走っていくような感じで観戦できる競技場である。 ■間野義之氏(早稲田大学教授) 日 時:平成 27 年 8 月 20 日(木)9:05~9:50 出席者:間野義之氏(早稲田大学教授)、 舟橋弘晃(早稲田大学助手)、 上林功(早稲田大学大学院博士後期課程) 【意見の概要】 新国立競技場の計画策定に当たっては、オリン ピック・モードとレガシー・モードを、すなわち オリンピック・パラリンピック開催時と終了後の 活用とを切り分けて考えることも必要。オリ・パ ラは大切だが、あくまで通過点。大会終了後はそのままの形で活用するのではなく、切り替 えていくことが大切。 スポーツの「聖地」と言われる施設は、日本全体に分散させていくことも必要。特に地方 創生・人口分散化の観点から重要。 発注段階はスケルトンでシンプルに建設してはどうか。国立競技場は、建設するときは DBO 方式(PFI 事業者に設計(Design)、建設(Build)、運営(Operate)を一括して委ね、施 設の所有、資金の調達については公共側が行う方式)、建設後は RO 方式(Rehabilitate Operate:施設を改修し、管理・運営する事業方式。所有権の移転はなく、地方公共団体が所 有者となる方式。)を取るべきと考える。まず、オリンピック・パラリンピックのために極 力シンプルなものを造り、その後、すぐに民活できるよう改修を行う。オリンピック・パラ リンピックが終わるまでは最低限の性能を示してデザインビルドで立ててもらい、終了後は RO で民間に改修運営を任せるべき。 関係者は皆、天然芝の維持管理のことを気にしすぎている。ロンドンでも、天然芝と人工 芝のハイブリッドでやっている。これから人工芝の技術も進展してくるので、それを見越し た屋内対応というのも考えられるのではないか。 トラックをオリンピック終了後も残すのかどうかは、設計段階から決めておく必要がある。 これからはスマートメディアへスタジアムの専用アプリやスタジアム専用 OS などの ICT 化への対応も重要。 大会後に改修を行う場合、RO にいくらかかって、その中に政府の持ち出しがいくらかかる のか、すなわちライフサイクルコストを並行して考える必要がある。 ■森山高至氏(建築家) 日 時:平成 27 年 8 月 20 日(木)11:00~ 出席者:森山高至氏(建築家) 新国立競技場を陸上競技場としてもサ ッカー場としても使用できるようにする と、双方は異なる整備が必要になるため、 双方にとって使いにくい「帯に短し、襷に 長し」の施設になってしまう。したがって、 施設の目的を一つに絞るべきである。 工期がネックになっていると思うが、工 期短縮の方法はいくつかある。一つは、建物の規模を最小限にすること。二つ目は、初代の 明治神宮外苑競技場を参考にする案。この初代競技場は、重機のない時代に地形を有効活用 して短期間で建設されており、この形態までなら 1 年以内に完成する。多目的スタジアムに する場合、旧国立競技場をベースとする方法も考えられる。いずれにしても、大会後にオプ ションでラグビー施設なりコンサートホールなりの設備を増設していったらどうか。 オリンピック・パラリンピック東京大会後の新国立競技場の機能の一つとして、現在は JSC の下部組織である JISS を独立拡大させて、運動支援型のスポーツメディカルセンターを設 置することも考えられる。このセンターは、全国の現役選手への治療・リハビリのサポート を行うこととし、一般の方々への開放も考える。また、資格を取得したアスリートがこのセ ンターで治療やリハビリの支援を行うようにすれば、彼らのセカンドキャリアの幅が拡がる という点でも意義がある。 従来、JSC 側の計画担当者には、建設技術に関する専門家が不在だったので、今後はゼネ コン側と対等に交渉でき、実務も含めて JSC 側の代弁者となる建築知識のある人間を配置す ることが必要である。 ■渡文明氏 (JXホールディングス株式会社 名誉顧問) 日 時:平成 27 年 8 月 20 日(木)14:00~ 出席者:渡文明氏 (JX ホールディングス株式会社 名誉顧問) 【意見の概要】 新国立競技場についての大原則として 三つ申し上げたい。 一つは、我々が誇りを持っている分野を 具現化し、世界に発信できるような施設にしていただきたいということ。その分野としては、 ①環境(神宮の森の周辺環境との調和)、②技術(CO2 フリーなど日本ならではの技術)、③ 文化(おもてなしなど)であり、これらが将来のレガシーになるように新国立競技場を造っ ていただきたい。 大原則の二つ目は、ランニングコスト・運営コストを徹底的な圧縮が必要であるというこ と。上記の三分野に徹して、不必要なもの、贅沢・華美なものを廃し、可能な限りシンプル 化していくことが必要である。これによってオリンピック・パラリンピック終了後に増改築 しやすくなり、将来につながる。 大原則の三つ目は、予算についての考え方である。 「歳出削減」と「ケチり」は違う。ケチ ったら、つまり必要なものまで削ってしまったら、将来の活用に支障が生じ、捨て金になっ てしまう。そうならないよう注意が必要である。 新国立競技場は、オリンピック・パラリンピックの 30 日間だけでなく、世代を超えて 50 年、100 年というところまで考えた設備にしていただきたい。仮に建設費用を 2,000 億円と して回収期間を 50 年とすると、1 年あたり 40~50 億円であり、環境・技術・文化という日 本が最も得意とする分野を世界にアピールできる費用と考えれば、高すぎるということはな いのではないか。もちろん、コストダウンは重要であるが、必要なものには勇気を持ってお 金をかけることが大事である。 民営化をして、民間の知恵と資金を活用して、維持管理・運営を行うということであれば、 民間の意欲を阻害するような中途半端な設備は是非とも造らないでいただきたい。特に大会 後に増改築する際に制約が多すぎると何もできなくなってしまう。大会後のビジネスモデル 策定は、マーケット・サウンディングをかけて進めれば、いろいろなことがクリアになると 思う。また、多目的使用を可能にして、人気アーティストのコンサートなど 10 万人規模の 集客力があるイベントができるようにしないと、PFI はできないと思う。 民営化の問題を整理すると、大会後の使用は PFI・コンセッション方式で行うべき。その ためには、①規模は当初案のとおり 8 万人程度とすること、②大会後の増設が可能となるよ う最初はシンプルで簡素な施設を造ること、③維持管理コストが最小になるように設計・施 工のコンペの際に応募者に責任を持たせ、応札の条件に入れるようにすることが必要と考え る。 行政改革の観点から言えば、透明性・効率性を確保していただきたい。そのためには、ま ず司令塔機能の強化が必要であり、関係閣僚会議には、ぜひ予算の管理、様々な関係者から の要望の取捨選択、各省庁の連携の要になって頑張っていただきたい。次に、コスト削減や 効率化に向けた工夫が国民に見えるようにしていただきたい。そのためには、PDCA サイクル を回す必要がある。 まずは、できるだけシンプルに造り、後から増設できるようにするのがよい。未来永劫に アスリート専用のスポーツ施設というだけでは、民間企業は誰もやらない。民間が知恵と工 夫を出しながらやっていけるような体制にどうやって持って行けるかがポイント。 ■溝口紀子氏(オリンピアン、社会学者) 日 時:平成 27 年 8 月 20 日(木)17:00 ~ 出席者:溝口紀子氏 (オリンピアン;柔道、社会学者) 【意見の概要】 新国立競技場の問題は、責任者不在・ 当事者意識のないままに事業が進めら れていた印象だったが、現在は、遠藤 大臣の下、アスリートだけでなく有識 者の意見を「傾聴」をされている。こ のままの姿勢を続けていただきたい。 伝統と現在がつながっている一体感というのは日本にしかない。その空気や伝統の継承と いうのは、神宮でなければ醸し出せないと思う。 新国立競技場については、予算の制約もあると思うので、機能美、すなわち機能を追求し た上での美しさというものがあれば、十分に皆様にご理解いただけるのではないかと思う。 神宮外苑の整備について、まず既存の施設を壊してしまってからその後の利用をどうする のかを考えるのではなくて、残すべきものと、残さないものの精査も丁寧にやっていただき たい。 スポーツの機能を重視し、アスリートのパフォーマンスが最大限引き出される魅力ある競 技場を作っていただきたい。 スポーツ関係者は、景観という点については疎かったが、周辺住民からはハレーションが あった。このような反対の声にも耳を傾けることで沈静化できるのではないか。 競技場の建設にあたっての課題を明示しながら透明性の運営が見えると、皆さんの理解も 深まるのではないか。 ■杉山茂氏(スポーツプロデューサー) 日 時:平成 27 年 8 月 21 日(金)11:00~ 出席者:杉山茂氏(スポーツプロデューサー) 【意見の概要】 新しい国立競技場は 2020 年の東京大会の シンボルであり、憧れでもある。また、2020 年以降は観光資源としての意味合いもある のでランドマークであるとも言える。高校 野球の甲子園のように、日本ではスポーツ 大会が開催地と合わせて語られ「聖地化」さ れ過ぎているように思う。これからは、この ようなセントラル方式ではなく、ホーム・アンド・アウェイ方式でもよいのではないか。 サブトラックの問題は非常に悩ましい。国際陸連が今後どうするのか、レギュレーション が今後どうなるのかを見通すことも重要。サブトラックをウォームアップする場所と割り切 って簡素化されれば違ってくると思うが、サブトラックの条件が厳しいままでは、競技場を 造る際、陸上競技の優先順位が低くなる。そうなると、本格的な陸上競技は長居でやるとい うことも考える必要があるかもしれない。 後利用としてコンサート等を開催することは悪いとは思わないが、初めから音楽ありきで はなく、まず競技施設としてのあり方を考えるべきではないか。 今回の設計の中で競技場のフィールドをどう考えるかは課題。トラックの造り方には単心 円、二心円、三心円があり、日本では旧国立競技場をはじめ殆どが単心円。単心円ではまず トラックを考え、その内側に球技のフィールドを確保するが、三心円はまず球技ありきで芝 生面を確保し、その周りにトラックを配置するので、陸上競技は走りにくくなる。したがっ て、陸上競技を優先するなら単心円、サッカーなどを優先するなら三心円を中心に考えなけ ればならない。 国民体育大会の際に造る体育館は見る側への配慮が乏しく、土足厳禁にするなど後利用の 使い勝手が非常に悪く、スポーツを小さいものにしていると思う。 スポーツにしても音楽にしても、見る角度を考えることが重要。スポーツの中でも、サッ カー・ラグビーを観戦しやすい場所と陸上競技を観戦しやすい場所は異なるので、VIP ルー ムを設置する際にどこを念頭に置くかも課題となる。 アスリート・ファーストという考え方はよくわかるが、同時に見る側、お客様にとっても 憧れの場所であるためには、観客席の居住性も考える必要がある。贅沢にする必要はなく、 屋根が付けば十分だと思う。また、競技を見やすい、観客席に出入りしやすい、大型の化粧 室(トイレット)といった点も重要。 これからは、メディアが取材しやすいような配慮も重要。もちろんメディアがすべてでは ないが、世界に向けて中継・情報発信されるので、メディアが仕事をしやすい環境を整える という視点も必要ではないか。特に、今は記者も ICT を活用して記者席から記事を発信する ようになっているので、2020 年大会では全会場でメディア関係の設備の問題が出てくるは ず。 また、テレビのためのカメラ席を設けると、そのすぐ後ろの数十席からは観戦できなくな って観客席として売れなくなる。放送機械搬入、設置も専門家の意見を採り入れてほしい。 それによって、世界中にテレビ中継が行われ、多くの人が観戦できるということも考えてい ただきたい。 建設費については、消費税も上がっている上、資材等も値上がりしているため、当初案の 1,300 億円に収まらないとなった時に、1,500 億円辺りが一つのラインになるのではないか。 いずれにしても、世間・世論に対し説得力があるかどうかが重要。 ■峰竜太氏(俳優・タレント) 日 時:平成 27 年 8 月 25 日(火)11:50~ 出席者:峰竜太氏(俳優・タレント) 【意見の概要】 新国立競技場の周辺をどのように開発してい くのかを総合的に考えることが大切である。例 えば、周辺にスポーツセンターのような施設を 造って、陸上のトラックとしても野球場として も利用できるようにして、一般利用者に開放す るのはどうか。土地の権利関係など難しい問題 もあるかと思うが、関係者で話し合って、最終 的には採算が取れるような整備をすべきだと思う。また、近隣にスポーツメーカーに出店して もらったり、飲食店にも出店してもらったりして、いつでも入ることができて、子供も、お年 寄りも、障がい者の方も、皆が楽しめるように施設にしていただきたい。東京の真ん中にある 貴重な広い土地を有効に活用していただければと思う。 オリンピック・パラリンピック終了後に民間事業者が活用しやすく造ることが重要である。 また、防災施設としての機能をどのように上手く組み込んでいくかも重要な視点。オリンピッ ク・パラリンピックの終了後に、どうしたら新国立競技場の周辺に人を集めることができるか を関係者みなで総合的に考えることが重要であると思う。 貴賓室は、多く造る必要はないのではないか。オリンピック・パラリンピックの時点では IOC の基準を満たす必要があるとしても、仮設にするなどして、大会後の活用の幅を広げるべきだ と思う。 日本の企業は、きっちりと儲けることを考えるので、良い企業を選べば、採算が合うような 運営をすることができると思う。 (以上) 参考資料2-2 インターネット意識調査の結果(1) (8 月 4 日(火)~8 月 17 日(月)) 〔出典:Yahoo!ニュース 意識調査〕 インターネット意識調査の結果(2) (8 月 4 日(火)~8 月 17 日(月)) 〔出典:Yahoo!ニュース 意識調査〕 参考資料2-3 首相官邸ホームページ等に寄せられた「国民の声」について ○ 主なご意見(趣旨) 1 新国立競技場に必要な機能について 1)「アスリート第一」について アスリートのことを一番に考えるべき。シンプルでいいから、使い やすく走りやすい競技場を望んでいるはず。 自国のアスリートはもちろん、他国のアスリートにも喜んでいただ ける新国立競技場を、と強く願う。 アスリートは常に勝つことや自己記録の更新を求めている。スポー ツ科学が日々進歩する中、アスリートが使いやすい施設、記録の出や すい競技場づくりが必要。また、国内の学生や社会人に「あの競技場 で走ってみたい」と思わせる魅力づくりが今後につながる。 2)「競技機能に限定」について ①機能的かつシンプル 見た目にとらわれず、シンプルで機能を重視。たくさんの人々が集 まる場所です。そこで競技する選手たちが 120%の力が発揮でき、観戦 する人たちが心地よく快適に応援できることが何よりも大切です。 なんでもかんでも要望を聴く必要はなく、目的を絞り最小限の機能 に限定する。 競技場の機能から分離できるものは分離し、複合化による事業費増 を避ける。 競技場という従来の物理的施設としてだけでなく、いかに情報空間 とリンクさせることができるかが重要。 ②スポーツ専用 『スポーツ競技場』兼『コンサート場』にしようとするからコスト が高くつく。 スポーツに特化する案に賛成。サッカー、ラグビー等を含め陸上の 競技に何が必要かを考えるべき。アスリートが正々堂々と競技できる 環境づくりが最も大切で、使うか使わないかわからないような設備は 1 不要。 新国立競技場は、コンサート利用を二義的なものとして、主体は陸 上競技、サッカー、ラグビーに使用することを目的として建設すべき。 ③スポーツ以外の利用 集客力は『スポーツ』より『文化』が勝るので、年間を通じてコン サートが開催できる施設にして、多くの人が利用できるようにすべき。 屋根の開閉機能はいらないので、今までどおり、アーティストのコ ンサートにも使用させてほしい。 開催後にイベント会場として音楽関係も行えるよう、そのための設 備が後付けででも追加工事できる計画にできないか。 スポーツを総合的に学べるミュージアム施設や、トレーニングを体 験できるような場所があるとよい。 3)「屋根」について 客席を覆うだけならまだしも、年に数回のコンサートのための屋根 に、多額の税金を使うのは納得できない。 開閉式屋根は、芝の生育、維持によくないので止めるべき。 スタジアム全面を覆う屋根がないと、スタジアムはスポーツにしか 利用できず、稼働率が下がり運営も赤字になってしまう。 我が国の気象状況からすると、全天候型の競技場にしておかなけれ ば未来のニーズに対応できない状況が予想される。 4)「諸施設の水準」について ① 球技専用化 オリパラ後にサブトラックを撤去しなければならないなら、その後 は陸上競技の公式大会は開催できないと聞く。ならば、そもそもトラ ックを設置する意味はなく、初めから球技専用のスタジアムを作るべ き。 新国立競技場は、いったん陸上トラック付きで建設し、五輪後に改 修して球技専用として観客を集められるようにすべき。2000 年シドニ ー、1996 年アトランタはそれぞれ球技専用、野球場に変更している。 ラグビーを行うときに、インゴールエリアも取れるように対応して ほしい。 ② トラック、サブトラック 2 第一種陸上競技場の指定のため、仮設でない常設サブトラックの整 備が必要。 サブトラックは、敷地がなければ地下にでも作るべき。 トラックの向き(メインスタンドの位置)を逆にしてほしい。今ま でのままだと向かい風が多いため、記録が出にくい競技場になる。 ③収容人員規模 世界大会の収容人員については仮設で対応すべき。そのための機材 をプールしてその都度使えばよい。 将来のサッカーワールドカップ開催を目指していることを考えれ ば、収容人員 8 万人は必要。 サッカーワールドカップに必要とされる 8 万人の座席規模は、本当 に 必要なら、サッカー協会に負担させるべき。 近年は高解像画像ができるので、観客席数は減らして、競技場の外 の広場で映像を見ながら多くの人が楽しめるようにしてほしい。 ④観客の利便 競技場は、移動しやすく、座席も疲れにくく、座席の前がある程度 広くてトイレに行きやすく、トイレも近くに広いものが多くあり、通 路・階段も広く、色々なタイプの観客席があるのがよい。 一般にスタジアムに求められるものは、どこからでも観やすいスタ ンドの傾斜、トイレの数と場所、コンコースの幅と導線、芝の育成と 屋根のセリだし幅の関係、といった非常にシンプルな項目だ。 入退場がスムーズでトイレも待たない。入場券にバーコードがあっ て、各ポイントのリーダーにかざせば座席までスムーズに案内してく れる。観客席にもミストシャワーが降り注ぎ、防風対策もある。冬に は足元の保温システムを。 観客席の傾斜について、観戦しやすくしてほしい。 様々な国の人々が利用する施設なのでユニバーサルデザインをわ かりやすく表示してほしい。一度にたくさんの観客が出入りするので 大きな出入口を多数設置する。駅や空港からアクセスしやすいように 数多く案内板を作ってほしい。 IT 関連の機能はすぐに陳腐化するので、無線 LAN 環境を十分に整備 すればよい。 電光掲示板は、旧国立競技場には一つしかなかった。世界のスタン 3 ダードは二つだが、日本の大規模スタジアムなら 3 つ、4 つあっても いい。 急病人の対策、新鮮な空気の入れ替え、十二分な水洗トイレなどが 重要。 可動式観客席はやめた方がよい。 ⑤暑さ対策 オリンピック・パラリンピックの期間が猛暑日になることを想定し て、選手や関係者の体を守るため温度管理ができる構造や装置を考え てほしい。 暑さ対策として、常にミストが出ている状態にできないか。 ⑥トイレ 観戦の際、いつも困るのはトイレの長蛇の列。どうしても女性用の 方が時間がかかるので、男性用よりも大幅に数を増やしてほしい。 パラリンピックのためにも、障害者用のトイレをたくさん作る。 ⑦施設の材質 国産材による木造化、木質化により、日本古来の「木の文化」の発 信や CLT など新たな木材利用の拡大等にもつながる。 竹や間伐材など、日本的な素材を使用した新国立競技場の建設を。 チタンや炭素繊維強化プラスティックなど、新素材、新建材を使用 すれば価格も廉価になるのではないか。 5)「周辺地域の環境や景観等との調和」について 競技選手が利用しやすいことはもちろん、神宮外苑における周囲の 環境・自然との調和が重要と考える。周辺駅への導線整備も必要。 新国立競技場は、文化的景観の保全再生、自然との共生を基本に据 えて整備され、国内外に、スマートで持続的な国の発展を象徴するよ うなメッセージを発信することが、新たなレガシーを構築することに なる。 150 年後を思い描いてつくられた神宮の森と近接していることを考 慮すべき。神宮の森の木々が全国からの献木であったこと、多くのボ ランティアが森を作る大きな力となったことなどをヒントに、日本の 精神性を表現したものにすべき。 競技場の周囲は原則緑化し、明治神宮の森に負けない平成の森をオ 4 リンピアン、パラリンピアンやボランティア、都民、アスリートが協 同してつくり育てていく場とする。 その土地その土地に相応しいデザインがあるはずで、東京の新しい ランドマークとしての視点も交え、環境に配慮し溶け込んだ長く愛さ れるものになるとよい。 6)「日本らしさへの配慮」について 最新の技術で日本らしい「和」のイメージのある競技場にしてほし い。 日本らしさを全面的に出す、例えば、日本伝統の木造建築の技術や 日本らしい雰囲気の建築様式を取り入れることで、海外からも大きな 注目を呼ぶことができる。 設備・システム・運営など、どれをとっても世界が真似のできない、 日本ならではの「おもてなしの心」と「技術力」を世界に知らしめる 良い機会だと思います。 四季のうつろい、富士山や桜など、日本のオリジナリティを発揮し てほしい。 この機会に、日本が培ってきた技術、文化、国民の意識、一人一人 のマナー、配慮や気づかい、仕事への情熱、責任感、団結力、そんな 能力が皆に備わっているこの日本を、世界へ発信してはどうか。 日本の美の基本である『削って、削って、これ以上削ったら成立し ないところまで削った美』。華道や茶道に通じる美意識を基本におい てほしい。 7)「バリアフリー」について 障害のある方やお年寄り、子供が観戦しやすいように、緩やかな階 段、多くのスロープ、ゆったりした座席、洋式トイレなど、細かいと ころまで長い間利用しやすい施設にすべき。 どこでも、全てが健常者の目線でできている。障害者や高齢者、子 供たちの目線を基準にした公共施設は世界になく、日本がモデルケー スとして完成させれば、オリンピック・パラリンピック憲章に誇る施 設となり世界的に称賛される。 障害者席は、障害者が苦労せず、かつ観やすい席で、障害を持って いない家族とも一緒に観ることができるようにすべき。 競技場に屋根がないなら、障がい者の方が濡れない場所を確保して ほしい。 5 手話や点字などによる情報伝達の配慮も必要。 8)「安全・安心」について 安心安全に競技ができる環境の要素は、万一のテロへの備えた安全 体制が組めること、バリアフリーであること、想定される首都圏直下 型地震、南海大地震に耐えうることの 3 点だ。 9)「防災機能」について 競技場の地下は、防災用品の備蓄基地にして、いざという時はここ を防災拠点に。 首都直下地震など大災害の際の緊急避難場所・避難所、緊急の医療 拠点として利用できるようにできれば有用だ。地下に食糧備蓄庫や緊 急医療設備用のスペースを作り、神宮エリアが東京都の防災拠点とな ることが望ましい。 10)「地球環境」について 再生可能エネルギーの活用を追求した建物を作り、世界に向けて日 本の技術を示す。 環境にやさしい省エネシステム競技場にするため、屋根に太陽光発 電システムを設置し、雨水はトイレに利用する。 競技場の側面(壁面)は、蔦などの植物でグリーンカーテンにする。 水素、蓄電池技術などを駆使しエコなオリンピック・パラリンピッ クを実現。 11)「大会後の維持管理」について オリンピック・パラリンピック後の使用に配慮した、どんなことに も応用が可能な汎用性のある構造にしておくべき。 奇抜なデザインの建造物は、当初は見栄えが良いが老朽化すると修 繕費が莫大になると聞く。税金を使うのだから価格を抑えるのはもち ろん、建設後も実用性があって使用しやすく、修繕も容易にできる建 造物にすべき。 競技場を建設するなら開閉の屋根など不要なものを作らず、将来安 く維持管理ができ、選手が使い勝手の良い構造にすべき。 2 整備等に要するコストについて 6 1)建設費の抑制について 国の財政が逼迫するなか、必要な機能を最低限備えたもので十分。 国内外の他のスタジアムの建設費用との並びを考えて、常識的な範囲 内の金額に収めてほしい。 競技場の建物は必要最低限の出費に抑え、選手の強化育成にお金を かけてほしい。 2)維持管理費の抑制について 開催後の維持管理に莫大な費用がかからない、後々にツケを残さな いような、その後の時代に合った改装も安価にできるような施設がで きることを希望。 建設時のコストダウンも大事だが、建設後のコストダウンも考える べき。競技に関係ない部分は徹底してコストダウンすべき。 ランニングコストと将来の維持費が安く済む、そのための知恵が評 価されるような施設にしてほしい。 3)慎重な削減について 昨今の安さを求める風潮を優先すると、機能も耐久性も意匠も『安 物買いの銭失い』になりかねない。安っぽい国立はお金の無駄。だか らといって贅を凝らした華美な国立はもっと無駄だが。 経費削減が叫ばれるが、日本に一つしかない最高峰の競技場でなけ れば意味がない。長期間利用し、いつの時代も最高といわれるものな らば、お金を惜しむべきではい。 2012 年に招致に臨んだ時の、日本再生のきっかけにしたい、世界に 日本の復活を示したいとの初心を忘れず、そのことを決してコストの 犠牲にしてはならない。 4)建設への協力について 日本のものづくりの展示場と捉えて、採算を度外視して参加するメ ーカーを増やせば、建設費の削減につながる。 建設業界に、国立競技場建設応援団を作ってもらい、建設業界は利 害を捨てて全面的に協力することを表明してもらう。 競技場の壁面に個人の名前を入れる権利を売却する。 東日本復興の特別税のように、広く薄く 1 年限りのオリンピック協 力金を、これ位ならば、という額で集めればよい。 7 3 今後の進め方について 1)「国民・アスリートの声とプロセスの透明化」について 幅広い人たちからの意見を聴いて、国民が納得できる競技場を建設 すること。 どのような競技場を建設するにしても、国民にきちんと説明をして ほしい。 2)「設計・施工を一貫して行う方式」について 設計と施工が一体化することにより懸念される安易な質の低下を 許さないオブザーバーを置くことで、それぞれの主体の責任を明確化 できる。 再コンペでゼネコンと建築家が組んで、もしも『安かろう、早かろ う、悪かろう』の建物ができてしまったら最も国益に反する。ゼネコ ンにはコストと工期についてのコントロール能力はある。ただし、会 社の最大の目的は儲けだ。 3)「民間事業への移行」について オリンピック・パラリンピック終了後は、民間委託により広く利用 されるような対応が必要。 建設コストと維持費に見合う使用方法を商業ベースできちんと検 討すべき。 ※官邸ホームページへのご意見数 2,375 通(7 月 17 日~8 月 25 日)分 ※Yahoo!ニュース 意識調査のコメント数 1,874 件(8 月 4 日~8 月 17 日)分 8