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CMIP3マルチ気候モデルにおける アジアモンスーンの再現性比較
日本気象学会春季大会(2008年5月21日) 専門分科会 CMIP3マルチ気候モデルにおける大気海洋諸現象の再現性比較 CMIP3マルチ気候モデルにおける アジアモンスーンの再現性比較 *井上知栄・植田宏昭 筑波大学大学院 生命環境科学研究科 はじめに • WCRP-CMIP3マルチ気候モデルにおけるアジアモンスーンの現 在気候再現性評価に関して、降水量についてはKitoh and Uchiyama (2006, JMSJ)の研究などがある • 本研究では、夏季アジアモンスーン循環場に着目し、 (1)対流圏中上層の夏季気温南北逆転 (2)下層風循環場の空間分布 に関する現在気候再現性の比較を行う • データ:CMIP3(24モデル)の20世紀再現ラン(20C3M)における 1980-99年の20年平均値(JJA)を使用、検証データは主にERA40(一部NCEP-NCAR, JRA-25およびCMAP降水量使用) 謝辞 本研究は、環境省の地球環境研究総合推進費(S-5-2)の支援により実施された ものである。 (1)Meridional Thermal Gradient (MTG)の比較 • MTG (Kawamura 1998, JMSJ): チベット上空と北インド洋上空との 200-500 hPa のthicknessの差(□-□)、 南北気温逆転の程度 • 大陸上空の加熱中心・・・アジアモンスーン循環の駆動源 →夏季アジアモンスーン循環の強さを表す広域的指標 6-8月の200-500hPaの thickness MTGの値の比較(6~8月) •24のモデルのうち6つは、対流圏中~上 層の気温南北逆転を再現できていない モデル毎の200-500 hPa Thickness分布 ERA40(70.4m) 橙:6600-6700m 赤:6700m•気温の逆転がみられないモデルでは、層厚の最大 域がチベット高原付近に現れていない BCC(182.2m) GISS-ER(167.6m) GISS-EH(136.5m) IPSL(90.7m) GISS-AOM(46.3m) IAP(-2.7m) インド洋北部夏季(JJA) 850hPa東西風の比較 (5-20N,40-110E,Webster & Yang Index (1992)の領域) U850(m/s) (1980-99, JJA; 5-20N, 40-110E) 12 10 8 6 4 0 A B C D E F G H -2 • I J K L M N O P Q R T U V W X Y MTGが負となるモデルはインドモンスーン西風が弱い ERA 2 A: B: C: D: E: F: G: H: I: J: K: L: M: N: O: P: Q: R: S: T: U: V: W: X: Y: bcc_cm1 bccr_bcm2_0 cccma_cgcm3_1 cccma_cgcm3_1_t63 cnrm_cm3 csiro_mk3_0 csiro_mk3_5 gfdl_cm2_0 gfdl_cm2_1 giss_aom giss_model_e_h giss_model_e_r iap_fgoals1_0_g ingv_echam4 inmcm3_0 ipsl_cm4 miroc3_2_hires miroc3_2_medres miub_echo_g mpi_echam5 mri_cgcm2_3_2a ncar_ccsm3_0 ncar_pcm1 ukmo_hadcm3 ukmo_hadgem1 (2)アジアモンスーン下層風の再現性比較 •アジアモンスーン地域における夏季降水量の再現性を評価した Kitoh and Uchiyama (2006)の手法を参考に、同領域における 夏季アジアモンスーンの対流圏下層(850 hPa)の風の、空間分 布再現性に基づく指標を計算 •Taylor (2001, JGR)のスキルスコア 空間相関係数 観測vs各モデル 4(1 + R) S= 1 2 4 ) (1 + R0 ) (σˆ f + σˆ f 4 標準偏差比(空間分布の振幅) (モデル標準偏差/観測標準偏差) 同一モデル内 相関係数 夏季アジアモンスーン下層風の再現性スコア • 対象領域:20S-50N, 40-160E(Kitoh and Uchiyama 2006と同じ) • U850とV850の2変数のスコアの積を下層風の再現性指標とする ERA-40 UV850 1980~99年 6~8月 夏季アジアモンスーン下層風の再現性スコア A: B: C: D: E: F: G: H: I: J: K: L: M: N: O: P: Q: R: S: T: U: V: W: X: Y: • • bcc_cm1 bccr_bcm2_0 cccma_cgcm3_1 cccma_cgcm3_1_t63 cnrm_cm3 csiro_mk3_0 csiro_mk3_5 gfdl_cm2_0 gfdl_cm2_1 giss_aom giss_model_e_h giss_model_e_r iap_fgoals1_0_g ingv_echam4 inmcm3_0 ipsl_cm4 miroc3_2_hires miroc3_2_medres miub_echo_g mpi_echam5 mri_cgcm2_3_2a ncar_ccsm3_0 ncar_pcm1 ukmo_hadcm3 ukmo_hadgem1 MTGが負となるモデルはインド洋北部の西風弱く再現され、低スコア 西部北太平洋モンスーン(WNPM)の西風が強すぎるモデルもスコア低い (以下、下層モンスーン循環をほとんど再現していないモデルAを除いた図) 850hPa東西風の境界のモデル間比較(JJA) • • • インド付近における西風はほぼすべてのモデルで一致 西風領域の東端はモデル間の差が大きい 日本南海上の高気圧軸(南東風と南西風の境)は、ERA-40より北に位置する モデルが多い WNPM領域の下層西風の強さと 太平洋高気圧リッジ緯度の関係 (JJA) R=0.703 40N 30N 20N 10N 130E 150E • フィリピン海の下層西風が強いモデルほど、太平洋高気圧の張り 出し位置が北寄りとなる傾向 太平洋高気圧リッジ緯度の季節変化比較 • リッジの北上が早すぎるモデルが多い 850hPa風と降水量の再現性指標の対応関係 降水量 再現性スコア • 同じ領域における降水 量の再現性スコア (Kitoh and Uchiyama 2006)と下層風スコア との対応関係:正相関 R=0.746 →下層風の空間分布再 現性の高いモデルは、 降水量の空間分布再 現性も高い傾向 850hPa風 再現性スコア まとめと今後の方針 まとめ (1)対流圏中上層の夏季気温南北逆転の再現性 • いくつかのモデルで逆転がみられず、これらのモデルではインド洋北 部の下層西風も観測より弱く再現 (2)下層風循環場の空間分布の再現性 • 夏季の下層モンスーン西風領域はモデルごとに大きな違い • 西太平洋モンスーン西風が再解析より強いモデルは太平洋高気圧 が西へ張り出す緯度も北偏する傾向がある 今後の方針 •SSTとの対応関係の解析など、再現性の違いをもたらすメカニズムへ のアプローチ •これまでは夏季平均での比較のみ→西部北太平洋の対流ジャンプな ど、夏季アジアモンスーンの段階的季節進行の比較解析を進める