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Title フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷

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Title フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷
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フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷および賃料債権の担保化の実
務 (ニ・完) : 我が国における近時の解釈論・立法論を踏まえて
片山, 直也(Katayama, Naoya)
慶應義塾大学法学研究会
法學研究 : 法律・政治・社会 (Journal of law, politics, and sociology). Vol.75, No.9 (2002. 9) ,p.1978
Journal Article
http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00224504-20020928
-0019
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法
規制の変遷および賃料債権の担保化の実務︵二・完︶
1我が国における近時の解釈論・立法論を踏まえてー
ゆ ]八五五年法制定前夜の裁判例⋮︵以上七五巻七号︶
㈹ 法改革に向けた新たな努力
⑭ 一八五五年三月二三日法
ω 一八四一年のアンケート
ニ フランスにおける詐害的賃料処分に対する法規制の歴史的
圃 小括
四 碧菖3冨三凶窪莞による個別規制
O位蝕猪讐δ昌のメカニズム
三 フランスにおける賃料債権担保の法実務
四 結びにかえて1日本法への示唆ー:⋮⋮・⋮⋮︵以上本号︶
ロ 象志窓二2α巴o冨屋①コ淫轟三8の実務
口 一九世紀前半の判例・学説
⑭ 破殿院一八二二年判決
図 法典編纂過程における議論
ω 古法
日 前史
展開
の 比 較 法 研 究 ︵ フ ラ ン ス 法 研 究 ︶ の 意 義
口 立法による法規制
也
の 我 が 国 の 法 状 況
直
序論
山
D はじめに
⑬ 一九世紀前半の学説
19
片
法学研究75巻9号(2002:9)
ニ フランスにおける詐害的賃料処分に対する法規制の歴史的展開
︵1︶
国 立法による法規制
フランスにおける詐害的賃料処分に対する法規制の歴史的展開のうち、前節では一九世紀前半における判例・
学説による解釈論レベルでの法規制を概観してきたが、同時期、立法による法規制が強く望まれるようになって
いた。立法化に向けた努力は一八五五年の不動産謄記法に結実するが、本節では同法を含め後の立法の起点とな
った抵当制度改革に関する一八四一年アンケートを一瞥した後︵ω︶、一八五五年法の立法経緯を分析し︵⑭︶、
最後に一八五五年法施行後二〇世紀前半に至る立法化の動向を紹介することにしよう︵⑥︶。
ω 一八四一年のアンケート
一八四一年、当時の司法大臣マルタン・デュ・ノール︵冒畦ぎ身Zo巳︶は全国の主要な裁判所・大学法学部
︵2︶
を対象に抵当制度およびその改革に関するアンケートを行った。アンケートは司法官・大学教授に対して法律の
不備・欠陥およびその改善方法についての意見を求めるもので、その際に特に注意すべき点として、所有権の移
転に関する民法典のシステムとブリュメール法︵一〇乙①ω毎ヨ普。︶のシステムとの選択、法定抵当権および先取
特権の公示への賛否、源除手続きの簡略化・実効性の検討などの八項目が大臣通達の中で挙げられたが、回答を
︵3︶
それに限定する趣旨ではなく、実際、裁判所・法学部からはしばしばその項目の範囲を超える様々な意見が寄せ
られた。公示の範囲すなわちいかなる行為および権利が公示されるべきかに関しては、裁判所・法学部の間で見
解が大きく分かれたようだが、唯一、長期の賃貸借および地役権については、公示に好意的な見解が多数を占め、
︵4︶
反対は僅かに三つの裁判所にとどまったとされている。具体的には、賃料の事前処分の公示に関する意見は次の
20
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
︵5︶
ように整理することができよう。
A”公示に賛成する立場︵肯定説︶
ω すべての賃料処分を公示すべきとする意見︵全部説︶
︵6︶
⋮⋮アジャン、バスティア、ディジョンの各控訴院
⑭ 一年を超える期間の賃料処分を公示すべきとする意見︵一年説︶
︵7︶
⋮⋮アミアン、メッツ、モンペリエ、パリ、ポワチエの各控訴院、カーン大学法学部
⑬ 二年を超える期間の賃料処分を公示すべきとする意見︵二年説︶
︵8︶
⋮グルノーブル控訴院
ω 三年を超える期間の賃料処分を公示すべきとする意見︵三年説︶
︵9︶
⋮⋮レンヌ大学法学部
︵10︶
㈲慣習に従いそれを超える期間の賃料処分を公示すべきとする意見︵慣習説︶
⋮⋮ドゥエ控訴院
B”公示に反対の立場︵否定説︶
︵11︶
⋮オルレアン、ポー、ルーアンの各控訴院
否定説は少数ながらも有力に主張されていた。例えばオルレアン控訴院は、﹁賃貸借については、所有者では
あるがまもなく執行される者が、後に奪われることを知りながら急いで不動産を賃貸に供したり、小作料を、あ
るいは実際にあるいは見せかけで一年ないし複数年にわたって前払いすることがしばしば起こりうる。しかしな
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法学研究75巻9号(2002:9)
がらこのような行為にはフロードが伴わないことは稀であろうから︵特に小作料の前払いは常にフロードを示すで
あろうから︶、債権者が行為を無効とすることができないということもまた稀であろう。よって現実には債権者
はそれらの行為からいかなる損害を被ることもないであろう﹂と述べ、ブリュメール法のように物または権利の
︵12︶
移転的な行為︵碧誘寓碧ω巨募︶に謄記義務を限定すべきだとする。すなわち詐害的な賃貸借・賃料処分には
﹁フロード﹂法理で対処可能であり、不動産謄記は抵当権の効力が及ぶ物または権利の移転的行為を公示すると
の原則を堅持すべきだとの主張である。さらにルーアン控訴院は、①要式の履践がもたらす費用負担、②その不
遵守が善意の賃借人や小作人をしばしば気難しく手厳しい取得者の恣意に委ねることになる危険、③農業が被る
ことになる損害などの政策的な根拠づけを挙げている。
︵13︶
これに対して多数意見は、賃料処分を一定の範囲では公示の対象とすべきだとする。例えば一年説を採るモン
ペリエ控訴院は、ブリュメール法によって謄記が要求される移転的行為だけではなく、所有権を移転するわけで
︵14︶
はないが所有権を支分したりその価値の大幅な減少をもたらす行為にも謄記を要求すべきであるとし、その例と
して賃貸借︵富琵︶および小作料の前払︵一窃葛旨讐窪房α9Rヨ餌鵬8冨轟呂含B二9︶を取り上げている。前払
については、買主、差押債権者および買受人から、多かれ少なかれ長期に亘って売却不動産や抵当不動産の果実
を奪ってしまうものであるから、不動産信用を害することは明らかである。よって全面的に禁止すべきか、それ
とも制限を行いつつ容認すべきかが問題となる。一方では賃貸人の取引に不安がない場合、前払には、それを手
段とした資金調達、その他賃貸人・賃借人間の共通のメリットがあるものの、他方では賃貸人の取引に不安があ
倣い、一年を超える前払は、謄記なくば第三者に効力を有しないとすべきだと提言している。さらにパリ控訴院
る場合には、前払にはほとんど常に債権者の利益を危機に晒すフロードが隠されているゆえ、古法時代の判例に
︵15︶
は、前払だけでなく、一年以上の期限未到来の小作料・賃料の移転または譲渡を含む行為︵一8碧誘8耳①轟日
22
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷および賃料債権の担保化の実務(二・完)
︵16︶
賃き80ほ28量9号o一島匹.§。き鼠。号出Rヨお①2α。一身R帥曾ぎεも謄記の対象とする。
以上のように一八四一年のアンケートでは、賃料処分の公示に反対する少数意見も有力であったが、公示に賛
成する意見、特に一年を超える賃料処分︵前払・譲渡︶を謄記の対象とすべきだとの意見が多数意見であり、そ
こでは、所有者に資金調達の余地を残しつつ、債権者に対するフロードを画一的に抑止することが企図されてい
たといえよう。以後の立法作業においては、この﹄年説﹂が実務界の要請︵裁判所の多数意見︶として位置づ
けられることになる。
︵1 7 ︶
⑭ 一八五五年三月二二日法
一八四一年のアンケートを踏まえ、司法大臣マルタンは一八四八年に抵当改革に関する法律案を準備する委員
会を設置したが、その作業は一八四八年の二月革命によって中断された。次いで第二共和政下、一八四九年六月
一五日、共和国大統領ルイ・ナポレオンのアレテによって立法作業が開始されるが、これもまた一八五一年一二
︵18︶
月のクーデターによって中断されることになる。この二度の挫折を経て立法作業が再開されるのは、第二帝政下
の一八五三年であった。
︵19︶
一四ヶ条からなる政府草案﹁抵当権関連の謄記に関する法律案︵零o憲号巨ω貫σけ轟昌ωR一言9窪日呂曾①
身89伽8冨︶﹂は、コンセイユ・デタ︵国務院︶における一八五三年四月二二日∼五月三日の審議を経て承認さ
れた後に、一八五三年五月二日、理由書︵国巻oω伽号ωヨo無ω︶とともに立法議会︵9壱2貫巨餌島︶に提出さ
れた。立法議会では同草案の検討を特別の委員会︵9旨巨隆曾魯費転①α、。轟巨器二①震o蒼繕巨ωξ5霞き−
の9言9窪ヨ呂曾①ξoo辞嶽8冨︶に委ねたが、委員会では政府草案を基に新たな起草︵Z霊奉幕泳3往8︶が
行われ二︸条からなる委員会草案が作成され、改めてコンセイユ・デタの承認を受けた。一八五四年五月一二
23
法学研究75巻9号(2002:9)
日、立法議会において、検討委員会を代表する立法議会議員ベレイム︵>3言冨O①守F畦語︶によって、政府
草案を踏まえた上で委員会草案についての報告がなされた。立法議会は、一八五五年一月二二日から審議を行い、
同月一七日に一二四対六の賛成多数で同法案を可決した。三月一四日には元老院︵ω曾8を通過し、一八五五
年三月二二日、﹁抵当権関連の謄記に関する法律︵8一霊二9声霧9言oコ窪ヨ呂驚。ξb9漂8一邑﹂︵いわゆる一
八五五年法︶が公布されるに至る。
︵20︶
まずは賃料処分に関する政府草案と委員会草案の関連条文を挙げておこう。ちなみに委員会草案二条四号、五
号は修正を施されることなく一八五五年法二条四号、五号に引き継がれている。
︻政府草案二条︼
以下もまた謄記によって公示される。
︵21︶
四号 二七年以上の期間の賃貸借、およびそれに満たない期問の賃貸借についても三年以上の期限未到来の賃料ま
たは小作料の前払をもたらすすべての行為
︻委員会草案二条 ︼
以下もまた謄記される。
四号 一八年以上の期間の賃貸借
︵22︶
五号 それに満たない期間の賃貸借についても賃料または小作料の三年に相当する額の前払または譲渡を認めるす
べての行為または判決
立法議会においてベレイムによってなされた同規定の趣旨説明︵一八五四年五月二一日︶に耳を傾けよう。
設定ではないが、所有権の価値を大幅に変化させる性質を有するすべての行為を謄記に従わしめる必要があろう。長期
﹁有益にかつ実際に所有権の金銭的価値を高めるというその目的を完全に達成するためには、さらに進んで、物権の
24
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷および賃料債権の担保化の実務(二・完)
の賃貸借や賃料の数年にわたる予めの受領がそれである。それらの行為の存在が所有権の価値に及ぼすあらゆる影響を
考慮しよう。その使用、収益および享有が侵害される。それゆえ買主や抵当貸主はそれらを知る正当の利益を有するの
である。
十分承知していた。だが我々にはその公示は正当かつ必要なものと思われた。それゆえ法律が目指す目的にとって必要
我々は、賃貸借や賃料の受領の公示が、債権の領域への侵害となり、私的な合意の自由や秘匿の原則に反することは
欠くべからざる条件としてこれを採用したのである。
抵当権に関して云えば、借金がなされるのは所有権があるゆえにである。それは支払が可能であることの証明となる。
がある。それに対して所有権の対物信用は、まさしくその金銭的価値の限度で評価される。資金はそれを超えることは
対人的な信用供与は柔軟であり得るが、必ずしも借主の財産に対応してはいない。取引の中に信用や将来についての幅
ない。それゆえにその価値にかかわるすべての事柄が公示されるべきである。
それは所有権の負担がすべて明らかにされることによってのみなされ得る。利害関係を有する第三者にもっとも完全
な安全を与えることによって、不動産信用のより望ましい発展を保障することができよう。
謄記に従うべき賃貸借の期間および賃料の予めの支払の範囲の設定は必然的に恣意的なものとなった。委員会はコン
︵23︶
セイユ・デタとの同意のもと、不動産信用の要請と用益および私的な合意の自由の尊重との調整を模索したのである。﹂
ここでは賃貸借・賃料前払がたとえ債権関係であっても不動産所有権の価値を下落させるものゆえ公示︵謄
記︶の対象とすることによって不動産信用の安定を確保するというのが同規定の趣旨だが、同時に用益および合
意の自由の尊重も無視することはできず、その調整を図るために公示︵謄記︶の範囲が設定されたが︵賃貸借H
一八年、賃料前払“三年︶、それは恣意的なものとならざるを得なかったことが明らかにされている。
なお賃料処分については、政府草案では﹁予めの受領︵ε葺き8︶﹂のみ文言化され﹁譲渡︵8婁9︶﹂は漏れ
ていた。この遺漏はおそらく先に見たように一八四一年のアンケートにおいて裁判所の意見の多くが﹁予めの受
25
法学研究75巻9号(2002:9)
領︵前払︶﹂のみを要求していたという事実に起因していると分析されている。さらに一八五一年に既に立法化
︵24︶
されたベルギー抵当法が﹁予めの受領︵前払︶﹂のみを規定したことも影響を与えたかも知れない。だが譲渡と
︵25︶
受領は、第三者に対して同様に危険であり同一の取扱いがなされるべきであろう。そうでないと所有者に法律を
迂回する容易な手段を与えることになるからである。おそらくこの点が考慮され、委員会草案においては﹁譲
渡﹂についても明文化されているが、この点に関して趣旨説明はなされていない。
以上の趣旨説明に続いて、一八五五年一月一三日から立法議会の審議が開始されるが、同日の審議において、
委員会のメンバーであったデュクロ︵∪霧一8︶は、期問が一八年以上の場合にのみ賃貸借の謄記を要求する二条
の規定を批判し、農村部の不動産の賃貸借については一八年を認めるとしても、都市部の所有権についてはその
期間は九年に短縮すべきであると主張した。同様に、予めの賃料受領を三年に満たない期間につき謄記の必要性
から免れさせたのは妥当でないとの意見を述べている。デュクロは、一八四一年のアンケートにおける支配的な
見解に従い、一年以上の期間の予めの賃料受領はすべて謄記に服するべきことを主張した。さらに、すべての場
合において、従来と同様、予めの弁済が債権者を害して行われたとの状況を判断する権限を裁判所に残してこと
が望ましいとも要求している。
︵26︶
またポン︵評巳℃・召︶はその一八五四年の論文において、一八五三年の政府草案につき、一方では、賃料処
分行為︵前払︶自体ではなくそれを含む賃貸借のみの謄記を認めるベルギー抵当法と異なり、﹁すべての行為﹂
として賃貸借が合意された後になされた、賃貸借とは分離された賃料処分行為も謄記の対象とする点を評価しつ
つも、他方ではデュクロと同様に、謄記義務の範囲が三年以上の期間の前払とされている点を批判し、一八四一
︵27︶
年のアンケートの多数意見︵特にモンペリエ控訴院の意見︶を援用し、一年とすべきだと主張している。特に﹁果
実を一年以上譲渡されたにもかかわらず通常の負担の支払を余儀なくされるという不動産は、その価値を六分の
26
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
一あるいは五分の一とさえ評価される割合で失うに等しく、このような重大な価値低下の原因が秘匿され得ると
︵28︶
なると、謄記を制度化する趣旨にも惇ることになろう﹂と述べている。
以上の反対にも係わらず委員会は、範囲の設定は﹁恣意的﹂な問題としつつ、﹁不動産信用の要請と用益およ
︵29︶
び私的な合意の自由の尊重との調整﹂を模索した結果、政府草案の﹁三年﹂を維持したのである。
⑬ 法改革に向 け た 新 た な 努 力
三年を超える賃料処分を謄記の対象とした一八五五年法に対しては、既に立法段階から一年を超える賃料処分
に謄記義務を課すべきだとするデュクロやポンなどの有力な批判が存したが、その批判は一九世紀後半から二〇
︵30︶
世紀初頭にかけての新たな法改革の動きの中で再燃する。ここでは主要な法改正の試みとして、ω一八九一年五
月三〇日のデクレによって財務省︵三一三ω88号ω霊轟旨窃︶内に設置された台帳委員会︵Ooヨヨ一ωω一自①答轟冨雫
一Φ日①日巴窓身8量怨Φ︶による予備草案︵>轟旨も邑9、および㈲一八九六年一〇月二七日に司法大臣ダルラ
ン︵U畳窪︶により提出された政府草案を紹介しておこう。
ω 台帳委員会の予備草案
台帳委員会の三つの小委員会の一つ法律問題小委員会︵ωo島δoヨ巨琶2甘ユ象ρ諾︶は、取引の安全と不動
産信用の発展のために、不動産所有権の法的状態を変更するすべての行為やすべての事実を公示に服せしめるこ
とが有用であろうと判断し、一八九一年七月二日の会議において、いかなる方法によってかついかなる制裁の下
にこの拡張を行うべきかの調査を起草・研究部会︵9巨菰8融鼠&92α、曾&①ω︶に委託した。そしてその結
果は、一八九二年六月二日の法律問題小委員会第二三回会議において、﹁先取特権・抵当権以外の物権の公示に
27
法学研究75巻9号(2002=9)
それに満たない期間の賃貸借についても、期限未到来の賃料または小作料の一年分以上の額の弁済または譲
渡を認める行為または判決
この条文につきマシグリ委員は以下のように説明している。
対抗できるので、不動産の金銭的価値を変ずる可能性が存するのは明らかである。それゆえ一八五五年法は、賃貸借の
﹁少なくとも支配的な考え方によると、賃貸借が賃借人に付与する享有権は、真の意味で物権ではないが、第三者に
効果がある期間を超えて及ぶ場合には、賃貸借は公示されるべきであるとし、その限界を一八年に設定した。また期限
未到来の賃料・小作料の前払や譲渡についても、買受人および抵当債権者にとって見込み違いとなるであろうから、公
る。予備草案はこの解決を原則においては維持している。ただ公示の要請により適うように、それ以上について謄記が
示に従わせた。そこでは支払または譲渡された額が賃料・小作料の三年分以上となる場合には謄記が要求されたのであ
義務づけられる限界︵それは必然的に恣意的なものにならざるを得ないが︶につき修正を施した。すなわち賃貸借の期
間および賃料・小作料の前払の範囲が改革点である。同時に現行法が未解決の問題について、第三者の利益により有利
な方向で解決を図っている。すなわち当初は公示を免れた賃貸借が期間満了前に更新され、新たに約定された期間およ
び残存期間の合計が法定の限界を超える場合に公示を要するか否かという問題である。﹂
︵33︶
28
関する予備草案︵>轟暮も邑9窪二餌讐窪。譲号ω鳥○詩鳳巴ωき露ωε巴8實三一貫8。二①ωξ899器。っ︶﹂と
してマシグリ︵9.題霧巴讐︶委員から報告がなされた。関連する予備草案の条文は次の二条二号、三号である。
︵31︶
︵32︶
︻予備草案二条︼
当初の期間であると期間満了前の合意更新によるものであるとを問わず、一二年を超える賃貸借
二〇口︶によって公示されなければならない︶。
以下についても同様である︵不動産登記簿︵口≦巴o目一R︶の不動産票︵h窪≡9α巴.巨B窪び一①︶に登記︵3ω9亨
口 口
万7ゴ
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
ここでは一八五五年法の原則を維持しつつ、より公示義務の範囲が拡大されている。かくして一八四一年のア
ンケート以来の実務的要請であった一年以上の賃料前払・譲渡の公示が法案化されることになったのである。
㈹ 一八九六年の政府草案
同様の改正案は、一八九六年一〇月二七日、司法大臣ダルランにより提出された政府草案においても提案され
ている。
︵34︶
︻政府草案一条︼
以下は物件所在地の抵当権保存所に謄記によって公示される。
︵35︶
二号 当初の期問であると更新によるものであるとを問わず一二年を超える賃貸借
三号 それに満たない期間の賃貸借であっても、期限未到来の賃料または小作料の一年分以上の額の弁済または譲
渡
ここでも取得者から三年以上に亘って不動産の収益を奪うのは、不動産の価値減少をもたらすから公示すべき
︵36︶
であるとの一八五五年法の原則を採用しつつ、それをさらに厳格にしたものと分析されている。
なおこの二つの草案によっても依然未解決の問題が残されているとして、①複数の異なる人に賃料譲渡がなさ
れた場合、その総額が一年分の額を超えていても、各譲渡がその額を下回るときには、同じく抵当債権者が害さ
れることになるにもかかわらず、公示の対象とならない点が問題である点、②法定期問を超える将来の賃料譲渡
または受領が謄記されていない場合、取得者は譲渡・受領につきそのすべてを無効とみなし得るか、あるいは三
︵37︶
年または一年については尊重しなければならないのかが不明である点を指摘するものが存した。
29
法学研究75巻9号(2002:9)
以上の二つの草案が最終的に実を結ぶことはなかったが、少なくとも一九世紀末葉から二〇世紀の初頭にかけ
ては、一年以上の賃料処分を公示の対象とすべきだという一八四一年のアンケート以来の要請に沿った法改革の
努力が、一八五五年法以降においても積み重ねられていたことは確かである。
だがその後は、この法改革の動きも、公示されるべき賃料処分の範囲に関しては終息の方向に向かい、三年分
に相当する賃料処分につき謄記義務を課す一八五五年法の取扱いが是認されるようになる。その原因は定かでは
ないが、第一次世界大戦の結果ドイツ領からフランス領に復帰したアルザス・ロレーヌ地方にフランス民事立法
を適用するための一九二四年六月一日法が、二一年以上の期間の賃貸借に基づく賃借権とともに、期限未到来の
︵38︶
賃料三年分の前払・譲渡を登記の対象とした点の影響が大きかったと推測される。著名な民法典改正委員会の作
業︵一九四五−一九四六年︶においても、﹁アルザス・ロレーヌ地方を含む大陸フランス領の不動産公示制度を統
一する草案﹂一一条によって、賃貸借については九年以上の賃貸借を公示の対象にするとの法改正が提案されて
いるが、賃料処分については一八五五年法および一九二四年法を修正する提言はなされていない。周知のように
︵39︶
現行法である一九五五年一月四日デクレは、二一年以上の期間の賃貸借と三年分に相当する賃料の前払・譲渡を
公示の対象とする次の規定を置き、同デクレの制定によって、フランスにおける詐害的な賃料処分に対する立法
による法規制の試みが一応の終焉を迎えることになるのである。
︻二八条︼
以下は不動産所在の抵当権保存所に必ず公示されなければならない。
一号 以下の事項を生前に記載しまたは確認するすべての証書︵停止条件付のものも含む︶ および判決
㈱略
30
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
㈲ 一二年以上の期間の賃貸借およびそれに満たない期間の賃貸借であっても期限未到来の賃料もしくは小作
料の三年分に相当する額の受領または譲渡
︻三〇条三款︼
公示を欠いた場合、以下については同条一款一号によって定義された第三者に対抗し得ない。
賃貸借については一二年以上の期間
︵40︶
期限未到来の賃料または小作料の譲渡を記載する証書について三年以上の期間
四 8言コ忌⊆=ΦヨΦによる個別規制
前節口では、フランスにおける詐害的な賃料処分に対する立法による法規制について検討した。その仕組みは、
三年︵あるいは一年︶に相当する額以上の賃料処分を不動産公示の対象とすることにより、抵当債権者・取得者
の保護を図るという点に存した。まずはその点が我が国の近時の立法論にとって参考となろう。しかしながら序
論において言及したように、比較法としてのフランス法研究の意義はそこに止まらない。フランス法の枠組みは
複合的・重層的であり、その全体像を把握することが重要であると思われる。
まず取り上げられるべきは、本章の歴史的考察がそれを示すように、詐害的な賃料処分に対する法規制は、フ
ロード︵ヰき号︶を要件とする個別規制を出発点としているという点である。これは中世ローマ法以来の法諺で
ある誉ミ嵩 もミミ亀 らミ\ミミ蔑妹︵フロードはすべてを無にする︶、一九世紀初頭に判例法として承認された奪
ミミ魯融舞翁ミ黛賊§織ミミ塁、塁㌔、凝、翁︵フロードはすべての規則の例外をなす︶などの法諺によって示される
一般法理︵以下、フロード法理︶、あるいは霧江§℃釜一一窪莞︵詐害行為取消権︶を規定するフランス民法典一一
31
、
法学研究75巻9号(2002:9)
六七条を根拠とする、﹁詐害意思﹂を要件とした個別規制である。判例は古くから二六七条を一般債権者だけ
ではなく、抵当債権者の保護にも援用しており︵一種の転用論︶、近時は︵特に一九九〇年代以降︶、学説もそれを
支持するようになってきている。
︵41︶
それでは以下霧且3冨三一自器による個別規制に関するフランスの判例・学説を簡略に整理しておこう。
ω 一九世紀
既に述べたように、一八五五年法制定直前においては、賃料譲渡︵8隆9号一〇希邑や賃料支払指図︵急5
鴇ぎ口号一〇畜邑などの賃料処分が抵当権実行の効力︵果実の不動産化︶に優先するとの裁判例が多数を占め、
﹁確固たる判例法﹂を形成していると評されていた︵本稿﹁O﹂七号二六頁参照︶。ただ多くの裁判例が、﹁フロー
︵42︶
ドの徴候がない限り﹂、﹁フロードなしになされた場合には﹂など、フロード︵ヰ雲号︶がある場合の例外の余地
を認めていたし、﹁⋮⋮不動産の果実は、債権者の権利を詐害して譲渡されうるが、それらの権利は対人的な権
︵43︶
利として、一一六七条によって保護されるのみである﹂とし、餌&9霊三一窪羅︵二六七条︶による排除を示
︵44︶
唆するものも存した。実際にフロードを認定した例として、コルマール控訴院︵正確にはOo霞冒忌量芭一八
五一年八月六日判決︵前掲︻9︼判決︶があり、九年に及ぶ小作料の譲渡につき一一六七条︵霧ぎミ曾088ぎ︶
に基づいて取消を命じる判決を下している。ただ一九世紀においては、零戯2冨三一窪莞を行使できるとする
場合、あくまでも一般債権者の地位においてなのか、それとも別個の要件で抵当債権者として行使することが可
能なのか、その点が特に意識的に論じられているわけではなかった。
︵45︶
⑭グルベのテーズ
32
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
その点を明確に論じたのが、グルベ︵>.身。壽男︶のテーズ︵一九一三年︶である。グルベは、判例の詳細な
︵46︶
分析を通して、零自2冨三一窪幕が一般債権者の保護のために機能する通常形態︵霧ぎ昌B巳一き需o巳ヨ巴邑
︵47︶
と、それを超えて機能する特殊形態︵霧二9冨自窪莞ω忌。巨Φ︶を体系的に二分し、要件の明確化を企図した。
特殊形態︵いわば転用例︶として想定されているのは、特定物債権保全のケースと、抵当債権保全のケースであ
る。後者では一般担保︵鴇鷺転泳邑︶ではなく特別担保︵題鷺ω忌。巨︶の保全が図られており、債務者の資
︵48︶
力・無資力は考慮されない点が抽出された。この分析は後の判例理論の確立に少なからぬ影響を与えたものと推
測される。
㈹ 判例法理の確立
詐害的な賃料処分の取消については、パリ控訴院一九三七年七月壬二日判決およびその上告審判決である破殿
︵︻15︼判決︶
︵51︶
および破殿院審理部一九四一年二月二四日判決
︵︻16︼判
院審理部一九四一年二月二四日判決が存する。両判決については既に別稿において参考として取り上げているが、
︵49︶
七
年
七
月
日
判_
決鯉
本稿の考察にとり重要であるのでここに再録することにしよう。
九
与し︵年利八・二%︶、Y所有の不動産に抵当権の設定を受けたが、後にYの利息の支払が滞ったので、Xは一九三四
原告・相互会社X︵被控訴人・被上告人︶は、被告・不動産会社Y︵控訴人︶に対して、八OO万フランの信用を供
︻事案の概要︼
控
訴
院
年七月五日および同年八月九日に差押えのための支払催告をなした︵なお差押えは同年一〇月三日、差押調書の送達は
33
決
) ノマ
リ
法学研究75巻9号(2002:9)
一〇月二一日、謄記は一〇月二五日︶。他方Yは同年九月一五日に、抵当不動産上の一六〇人の賃借人のうち六四人に
ワヨ
ついて賃料四年分を、債権者の一人である被告Y︵控訴人・上告人︶に代物弁済として私署証書で支払指図︵泳慰鴇−
二8︶を行った︵謄記は同年一〇月五日︶。そこでXはY、Yを被告として、一一六七条に基づき右賃料支払指図
︵泳臥鴇試9α巴昌Rω︶の取消を請求した。第一審は原告の請求認容。これに対してY、Y控訴。
︻控訴審判決︼︵パリ控訴院一九三七年七月二三日判決︶ 控訴棄却
①﹁ある物についての債権または特別の担保を付与された債権者に関しては、損害は、債権者の権利の行使に重大な侵
害をもたらすという状況において債務者が担保の価値を変ずる方法でその物を処分した場合に生じる。よって債務者が
完全に無資力ではなく、それゆえ債権者が相当の満足を得られるかどうかは問題とならない。特別担保が債務者の処分
行為により不十分となること、あるいはその度合いが大きくなること、それが碧試90き一一雪器を行使するのに必要
な損害を構成するのである﹂。
②﹁債務者の側のフロードは、債務者が自らの行為が債権者の特別の権利の行使を妨げることを認識している点にあ
る﹂。
③﹁担保債権者あるいは抵当債権者に損害を及ぽす行為の受益者の側のフロードは、その状況について知っていたこと
に存する﹂。
︻上告審判決︼︵破殿院審理部一九四一年二月二四日判決︶ 上告棄却
①コ般債権者に対してなされた賃料支払指図は、その債権の決済を保証するためになされる場合には、それ自体とし
ては適法であるが、それが抵当債権者の権利を侵害する性質を有し、かつ債務者を無資力に陥れまたはその度合いを増
大させることによって、抵当債権者の利益を害する目的で同意および承諾がなされた場合には取り消され得る﹂︵無資
力の立証もあり︶ 。
34
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷および賃料債権の担保化の実務(二・完)
②﹁︵実行手続きと賃料支払指図の日付の接近が︶、債務者の意図、およびすべての状況を知って抵当債権者の正当な利
益を害そうとする陰謀に加担した一般債権者の意図を証明する﹂。
本事例では抵当権の実行手続きと相前後してなされた詐害的な賃料支払指図︵鼠一猪蝕2号δ希邑の貰江書
冨急窪莞による取消が認められている。原審判決︵パリ控訴院判決︶は、無資力要件を不要とし、特別担保を
保全するために碧江2も四巳一窪器を﹁転用﹂することを明らかにし、かつ主観的要件も認識で足りると明記し
ており、後の判例法理の展開をリードする先駆的な判決として位置づけられている。
︵52︶
しかしながら上告審判決︵破殿院審理部判決︶は、無資力を要件とし、かつ詐害の意図を認定して、霧ぎロ
︵53︶
冨急窪莞の伝統的な枠組み︵一①8辞①霞区葺9器一α巴。碧二9冨島2器︶の中での解決に回帰している。抵当債
権あるいは特別担保を保全するために碧江3鴇巳一窪斥の援用を認める判例法理︵いわゆる転用論︶が確立する
のは、直後の破殿院社会部一九四一年一二月一九日判決によってである。詐害的賃貸借の事案で、期間一五年の
︵54︶
農地賃貸借の二六七条による取消が争われた。同判決は﹁債権者が特に抵当権の設定など債務者の特定の財産
について特別の権利を付与されている場合、損害は債権者の無資力︵ぎωo一轟巨寡︶以外のところに存する﹂と
︵55︶
︵56︶
判示して無資力要件が不要であることを明らかにした。この立場は、破殿院第一民事部一九八○年一〇月一五日
判決によって確認されることになる。
近時は、賃料処分に関する事案は存しないものの、抵当権保全のために8二3冨三一窪潟5を活用する判例
︵57︶ ︵58︶ ︵59︶
法理はすっかり定着したといえよう。詐害的な長期賃貸借の例として、破殿院第一民事部一九九五年七月一八日
判決、破殿院民事第三部一九九六年三月二〇日判決などが挙げられよう。
@学説の対応
35
法学研究75巻9号(2002:9)
︵60︶
当初学説は霧菖o⇒冨三一窪幕を転用する判例法理に批判的なものが大勢であった。批判学説の中では、民事
︵61︶
責任︵お呂o塁ぎ三応含三。︶と構成するものの他、﹁フロードはすべてを無にする︵勢嚢吻◎ミ這霜らミミミ黛、︶﹂、
﹁フロードはあらゆる規則の例外をなす︵ミ、ミミ鳴ミ、蘂R貰ミ匙融ミ霧試惹曳琶﹂などの法諺に基礎を置く
フロード︵ヰ雲号︶法理によって解決しようとの8ぎ=窪ヰ碧号説が有力に主張されていた。そこでは﹁フロ
︵62︶
ード︵サき号︶﹂の要件が﹁認識︵8目器ωき8︶﹂に緩和されて解釈されている二六七条ではなく、﹁詐害の意
︵63︶
図︵ぎ9旨一9︷轟鼠三窪ω①︶﹂を本質的な要件とするフロード一般法理が妥当すべきであるとされた。
︵64︶
これに対して近時の学説は、特に一九九〇年代以降、判例法理を承認するものが多数を形成しつつあるといえ
よう。
以上がフランスにおける8鼠自冨呂9器による個別規制に関する判例・学説の推移の概要である。
一九世紀においては、このような個別規制では不十分だという認識から、立法による客観的・画一的な法規制
が模索されたのであるが、それによって個別規制が不要となったとは考えられていない点を見過ごしてはなるま
い。むしろ個別規制を前提とした上で、客観的・画一的法規制が行われていると捉えるべきであろう。実際に、
公示︵謄記︶が要求されない三年︵一年︶に相当する額の範囲でなされる賃料処分が抵当債権者を害する可能性
︵65︶
はあるし、さらに公示のなされていない長期にわたる賃料処分についても三年の期間の範囲においては抵当権者
に対抗できるとされたので、個別規制すなわち詐害の意思を立証して賃料処分の全体についてそれを対抗不能と
する余地を残しておく必要性が存するのである。
国 小括
本章では、 フランスにおける詐害的な賃料処分に対する法規制の歴史的な変遷を概観してきた。
36
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷および賃料債権の担保化の実務(二・完)
フランスでは古法以来、詐害的な賃料処分に対する規制が模索されており、賃料・小作料の前払については一
定の期間︵半年または]年︶についてのみ効力を有するとの構成、賃料譲渡については、期限未到来の賃料・小
作料を譲り受けた譲受人は、第三者に対する関係では、順次期限が到来した時点においてしか権利を取得しえな
いという構成︵ポティエ理論︶によって規制がなされていた。
一九世紀初頭、破殿院一八一三年判決は、期限未到来の賃料の処分︵譲渡︶がなされたとしても、抵当権の実
行による果実の不動産化以降については、賃料処分を抵当債権者に対抗できないとの抵当権優先説︵二〇九]条
類推適用説︶を採用したが、同世紀中葉に至ると、一八一三年判決の先例的価値は失われ、賃料処分は抵当権の
効力に優先するとの裁判例が蓄積し確固たる判例法を形成するに至る。これによって、詐害的な賃料処分に対す
︵66︶
る規制は、フロード法理あるいは霧試o⇒℃窪一一窪羅による詐害意思を要件とする個別規制に委ねられることに
なったが、同時にフランスでは判例法理の転換とあいまって、いよいよ詐害的な賃料処分に対する立法による法
規制が強く望まれるようになる。
一八四一年のアンケートを経て、一八五五年の不動産謄記法は、一八年以上の期間の賃貸借とともに、三年に
相当する額の賃料処分︵前払・譲渡︶につき謄記義務を課し、謄記なくば抵当債権者・買受人に対抗できないと
した。一八四一年のアンケート結果が既にそうであったように、謄記︵公示︶の対象を一年に相当する額の賃料
処分にするべきであるとの意見が強く、それによった法改革の動きもあったが、最終的に一九五五年デクレにお
いては、賃貸借の期間は一二年とされたものの、賃料処分については三年に相当する額の前払・譲渡を公示︵謄
記︶の対象とする一八五五年法が維持されている。いずにせよフランスでは三年に相当する額の賃料処分を公示
︵謄記︶の対象とするという形で詐害的な賃料処分に対する客観的・画一的法規制を立法により行うこととなっ
たのである。
37
法学研究75巻9号(2002:9)
しかしながらこのような立法による客観的・画一的な法規制によって、個別的な規制が全く不要となったとは
考えられていない点を見過ごしてはならない。むしろ霧江§も窪一一窪希転用論による個別的法規制が当然の前
提としてあって、その上で客観的・画一的法規制が行われていると位置づけるべきであろう。
以上の歴史的経緯を捨象し、今日のフランス法の詐害的賃料処分に対する法規制の枠組みを整理するならば、
次のようになろう。
︻フランス法における詐害的賃料処分に対する法規制︼
A”詐害行為取消権︵四&2冨急窪器︶にょるフロード︵守霊号︶ を要件とした個別的・例外的な法規制
B“不動産公示︵冒び一§泳89醇①︶による画一的な法規制
我が国の判例法理が、﹁賃料債権への物上代位﹂による抵当権の強化という極めて単一的な発想によって解決
を図ろうとしているのと対照的に、フランス法の枠組みは複合的・重層的である。
右の枠組みは、今日の我が国における立法論および解釈論にとりきわめて示唆に富むものであると思われるが、
その点については、﹁四 結びにかえて﹂で再論しよう。
︵1︶ フランスにおける一九世紀から二〇世紀にかけての抵当制度の改革全般については、気’ゆ塁。。oz︵国ヨヨき一お一︶ゆ
ヤ
ミミ&ミ∼還。。§き、亀ミ鳴無勘、.賢ミミ晦ミ魯ミ訣、翁ミ尉凡ミ的醤。。§.知、ミ。りざミ。っ﹂OoO一し。OΦσヨo洋①︵℃餌ユω︶旧O①
ト塁鳶ミ塁♂ミ凡ミφ職琴鳳♂、ミ鳴ミ唱ミ、∼魯ミ糞肉、、ミ鳴ミ織ミ、Qミ災ミミQミ。。ミN匙ミヘミミ織誉吻、ミ誤ミ詠。。凡ミ嵩
[o巨甥︵ワン一ΦOoα①o一<一一Φ二〇R盆F因置一ヨ①ゴ旨09曾巴吋ρ菊猪一ヨ①α巴鋤霞四口ωヨ一ωω一〇コα巴曽竃o震欲歩ヨト魅
︵℃弩凶ω︶︶も℃●ωo
o一9ω●旧O戸昌FO蜜召︵r︶曽[鋤お<一ω一〇口α⊆泳ひq凶ヨoゴk℃o浮ぴ8一お伽一四三一〇巽Ooα①o一≦一﹂昌卜鳴O◎魯
9魯亀黒卜﹄。。ミー遮量鳶N壽魯題ミ§奪、魅も弩霊ωoo一仙なα.ひεα。ω臥駐ω一呂くΦ9け﹂。.﹂㊤O介>昌ど円肉o⊆ωω。窪
38
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
魯bミ的やOo魯9竃卜9αω①ζoコεΦ≡①ぴ一〇〇8一ヨ震■O仁ω辞餌<①コ﹃ヨ一P家o葺鋤器9ω一〇畦象︵ζo口6Φ≡R︶“ω濯︵ル毎
竃竃卜∼oOミー這ミ︶卜賊ミ、魅魯らミ慧ミミ騨“bP﹄o。9ω。“の召u
c,国↓︵㍉oω8﹃︶︶卜器ミ、ミ無。っ誉惹♂ミミ、胸遙ミ、N魯融還
︵国B一一の︶wい”泳8﹃ヨ①αo一餌℃仁三一9敏859酵①︵Oぴo﹃9αo土き≦R一〇脇ンSO、﹂O脇﹂﹂認9Z男㏄07︵勾○鵬震ン
高橋康之﹁フランスにおける資本主義の発展と抵当制度の変遷−古法時代から十九世紀半ばまで﹂法時二八巻一一号
一曽詠8目日oqΦ一鋤O仁σ一一含酔ひ8づq酵o︵O伽R9α①ω“す=<一R①二“090酵o一〇田︶︶O.一39急、もミ貯ミ︶O℃﹂ヨ卑ω.“
二一頁以下︵一九五六年︶、伊藤道保﹄九五五年、フランス不動産登記制度の改正について﹂比較法研究一六号三
降の不動産物権公示制度の改正﹂同・民法論集第二巻一頁以下、一〇七頁以下︵有斐閣・一九七〇年︶、今村与一
五頁以下︵一九五八年︶、星野英一﹁フランスにおける不動産物権公示制度の概観﹂﹁フランスにおける一九五五年以
五頁以下︵一九八六年︶など参照。
﹄九世紀フランスの抵当改革︵一︶︵二︶1その理論史的考察1﹂社会科学研究三七巻六号︼頁以下、三八巻︸号四
︵2︶ アンケート結果は霞夷目z︵α⊆Zo&γb象§Nミ∼、G。、、無ミ勢ミミ臥賢ミ幅ぎ唱ミ、、警ミ秘、偽寒ミ嚢惹融、ミ麩Qミoミ
ヘ蔵ミミ8魯G。る<o寅一〇。匙﹂ヨ萄●﹃○冨8︵勺象邑に収録されている。同書は﹁民法典の諸規定の最も詳細なコンメ
ンタール、抵当制度の関する理論的諸見解の最も完全な全体像﹂︵気。切甥し・○多選・ミ。も。一=︶をなすものと云われ、
当時の法曹・法学者の見解を知るうえで必見のものとされている︵今村・前掲﹄九世紀フランスの抵当改革︵一︶﹂
二八頁参照︶。アンケート結果の詳細な分析として、気。身拐。∩胃も辱ミ’もマo。①Φ訂.併せて、星野・前掲﹁フラン
スにおける不動産物権公示制度の概観﹂三五頁以下、今村・前掲﹁一九世紀フランスの抵当改革︵一︶﹂二七頁以下
など参照。
︵3︶ 9論。
り胃る誉ミこ薯魯8−竃財今村・前掲﹄九世紀フランスの抵当改革︵一︶﹂二七∼二八頁、星野・前掲﹁フ
ランスにおける不動産物権公示制度の概観﹂三五∼三六頁など参照。
︵4︶O召。∩6
。馴ζ>召7boミミ鳴ミ。。、ミミき韓﹂﹂コqo2葺○算oも,い図図≦一卑
。 国プ違’ミニb。一89薯﹂嵩−一一。
い図図図ざミ9併せて、星野・前掲﹁フランスにおける不動産物権公示制度の概観﹂三八頁、今村・前掲﹄九世
︵5︶○、。℃Oz↓︵℃き一yOげωR<呂9ω呼震80ω9胃o一9αΦσ一〇一ωξσσきωR言畝o置︶肉ミミ亀、ミミミ魯
紀フランスの抵当改革︵一︶﹂一二頁など参照。
39
法学研究75巻9号(2002:9)
−o
鳴蔚試。。も、袋無“ミR習﹂くしO
o㎝“一〇℃・ま叩ま9一君>力霧︵>●ンb翁ら塁。り融§。。魁S眺賊駄罫ミRq。麟醤殊魯骨魯。。魯
。㊤oo︵Ooξ8る8号菊2窪yただしルーアン控訴院は、前払を含む賃貸借について公示否定説を採用するが、譲
︵11︶目夷艮7b8黛§飛ミ房ミ騨、駄勢習﹂曽戸ω$︵Ooξω﹃o﹃巴①ユ、〇二雷5ω︶曽Pω醇︵Oo信同3︽巴ΦαO℃”仁︶20℃DωO刈
︵10︶三>召一7b象黛ミミ軸尉㌔、無ミ㌦勢習﹂.P器Oo︵Oo信﹃εK巴ΦαΦOo⊆讐︶。
︵9︶三夷目7bもミミ魅ミGづ塙、奥ミき韓﹂も﹂OO︵評。巳敏α①母o一酔号寄目霧︶●
︵ω︶,
︵8︶竃>召2b8軸§眺ミ恥ミNミ勢ト一も﹄虹︵02箕o釜一①α。9。8び一Φ︶も一9冨門一>o夷目︶§●ミニPo。ジ88
︵司㊤O¢一泳αOα3津α①O蝉Φ5︶。
Q ︵OO⊆目8<巴①αo℃貸一ω︶一PO
o刈刈︵Oo仁﹃δ﹃巴Φα①℃〇三〇お︶9も・占一
︵Ooq目3矯巴oαo寓o昌8①田R︶・OPQo①叩らo①o
︵7︶冨夷目7b◎ミミ鴨ミ鋤ミ、ミき習●層P一〇。刈︵Oo⊆員畠m一Φα、>日一9ω︶も・N鴇︵Oo弩8葦一①αo冒9N︶も﹄お−㎝
ゆえ正確にはOoξ8巻冨である︵以下同様︶。
︵Oo一旨δ冨冨号望一9︶’なお慣例に倣い﹁控訴院﹂と訳出するが、アンケートの行われた一八四一年は七月王政期
︵6︶三>菊↓2︶b8黛ミ鳴ミ。。ミ、ミ帖勢”け﹂︶P一瞳︵Ooξ3賓巴oα、>鵬①pyP一器︵Oo信同同o﹃巴①αoω四ω二鋤︶韓P認N
ン控訴院、パリ控訴院︵後注︵7︶参照︶、Bのルーアン控訴院︵後注︵n︶参照︶のみである。
職9なお﹁賃料処分﹂としたが、多くは﹁前払﹂のみを論じている。﹁賃料譲渡﹂に言及するものは、A⑭のアミア
ミミ。りも黛融\ミ亀領題ミもミ駄さミ鉾誓砂ω①℃四ユP一〇一鉾︾﹃辞げ巽勾o仁のω8F℃PNOo−Go一“O召。りD
。 国ジ選。亀︾もP=下二〇 〇”
賢気ミご蕎無駄
) ) ) ) ) )
〇。
竃>菊昌7b8ミミ魅醤尉ミ誉織蔚曽け炉PωOGQ旧<。鋤⊆ωωPO釜ωQ∩国プO唱。亀、こP一一〇
竃>召2boミ§鳴ミ。。ミNミ蓼蓉﹂Ψ薯。ω雪−ωOoo“<・鎖=ωωン﹃︵甲夷u騨§。ミ。︶も℃﹄o。−竈●
竃夷↓囲7b象ミミ銚ミ。っミ融織誇︶δ﹂曽OP曽一−Nお’
]≦>勾昌7b8ミミ鳴ミ冴㌔、ミミ賊券︶けンPGQ①Oo。
]≦>召一zりb象ミミ鴨ミ的ミ、ミ、誇韓﹂wOPNお−鴇9
G︾℃02ジo鳶無、こ唱層一①㎝−一①9[>O夷ugq唱。亀、・曽OPω一−ω聾職貸
40
猷
、
17 16 15 14 13 12
渡については一年を超える果実の譲渡は公示の対象とすべきだとしている︵マω零︶。
ハ フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
︵18︶ 以上の経緯の詳細については、気.O召誘胃.選●ミこoo﹄旨餌望評誘○客選ミ蝋、薗もP二望=曾O霞Fo¢夷P
。鴇薯.蒔一−島ド星野・前掲﹁フランスにおける不動産物権公示制度の概観﹂四一頁以下、今村・前掲
§.ミこ⇒。○
コ九世紀フランスの抵当改革︵一︶﹂四〇頁以下、﹁︵二︶﹂四六頁以下など参照。
ちなみに、一八五〇年四月四日に国民議会︵>ωωoヨ巨陪惹二9巴o︶に提出された後、国民議会によって抵当制度
改革委員会︵Ooヨ日一ωω一88ξみ8目B①ξ暮9ひ8港︶に移付され、同委員会によって審議された政府草案︵議会
での報告者の名をとって牢9曾審く呂ヨ窃巨と呼ばれる︶においては、一八年を超える賃貸借およびそれ以下の
期間であっても二年を超える賃料の前払を含む賃貸借については謄記義務に服するとされていた︵気嘔O閑監。。胃︶§・
︵19︶ これは第二帝政における土地信用制度の創設、具体的には一八五二年二月二八日デクレ、一八五三年六月一〇日
ミ●も。旨Oo“星野・前掲﹁フランスにおける不動産物権公示制度の概観﹂四三頁︶。
のであった︵気。ゆ塁9。o!§.竃︾OP=㌣匿O旧Oヨ﹂[○露召も㌣ミ。魯。OもP畠㌣おG。旧星野・前掲﹁フランスにお
法による、独占的な土地信用銀行すなわちクレディ・フォンシエ︵9巴一二9含R号零睾8︶の設立に対応したも
ける不動産物権公示制度の概観﹂四九頁、今村・前掲﹁一九世紀フランスの抵当改革︵二︶﹂九〇∼九二頁など参
照︶。
〇田、>αBぎ一ωq醇一〇口α仁
︵20︶ 卜蔑Gっミミミ魯。りもミミ登栽誉、ミも。’ミ歳ミミミ∼ミG。ゆミ蔚感、Oミ駕竃、織肉、ミ︶無♪“。ω恥陣P一〇
勾①eo置鵬9働巴号巴9ω黛号ω畦議貫ωマ9・︶℃P睡倉望今村・前掲﹄九世紀フランスの抵当改革︵二︶﹂九〇
頁など参照。
︵
2︶ >二。N。ω〇三猪巴oヨ①導おコα島O⊆σ一一〇ωO霞衝q蝉霧Rぎ二〇R
1
“o [①ωびき図α、⊆器α仁みΦα①巳⊆ωα①<嘗鵬醗茄8け鋤昌鼠oω.雪8舞霧一①o筥轟冒m日︶ヨ⑪ヨ①もo弩ぴ巴一α①
ヨo冒αおα⊆詠ρρ三算弩8αΦ巳⊆ωα①qo一ωき急①ωαΦ一〇鴇房○仁犠Rヨ謎のω3⇒伽魯¢ω・︵気卜蔑。り隣ミミミ籍。り曽
pま︶
︵22︶ >拝ドωo日猪巴ΦヨΦ葺一目四島R洋ω一
“○ 一8σ四信図α、⊆莞α⊆み①α①巳仁ωαΦ象図−﹃⊆評餌旨昌ぴΦ2
Uo ↓o旨霧80自冒篶巳Φ艮8窃鼠9旨鴇ヨ⑪ヨoOO霞σ鋤臣号∋oぎ象Φαg誌ρρ三一寅筥Φ○⊆8ωω一〇⇒α、仁莞
41
法学研究75巻9号(2002:9)
ハ O、卜蔑Gう亀ミミミ魯。り曽P曽・
ベルギー抵当法︵一八五一年一二月一六日︶“一〇一ξ8夢脅巴お身5急o・一〇。竃
︻一条二項︼これらの権利︵先取特権・抵当権以外の不動産物権︶の移転に関する合意または権原に代わる既判
力を有する判決、これらの権利の放棄証書、および九年を超える賃貸借または少なくとも三年にわたる賃料の
予めの受領を含む賃貸借は、同様である︵謄記される︶。
8コ<①耳一〇霧o⊆α〇二貸①ωもo仁二餌#餌霧ヨ一ωω一〇5αΦo①ω毎o一辞9αΦω鋤9①ωαΦ﹃①口oコ息象一〇p呼8ω響o詳o。o辞α①ω
>昌9一︶包9N−−目o⇒のΦ轟魁oヨ⑪ヨoα①ω冒鷺ヨ①葺ω℃餌ω絃。りΦ昌8目8α①o﹃oωΦ冒閃伽ρ毎コ㊤日=①仁α①
げ四仁x①鳳②㊤日莞鼠四=激①ωΨo⊆8艮g餌具ρ三辞鋤g①α、餌仁eoぎωqo一ω餌口急①ω号一〇冨目’
しかしながら注意を要する点は、ベルギー抵当法が謄記の対象としているのは、文言上、賃料処分︵譲渡・前払︶
自
体
で
は それ
な く 、前払を含む賃貸借だという点である。そこで賃貸借とは分離された前払および譲渡の効力如何が
問題
と
な
る
。かつては、たとえ三年以上であっても謄記に従うことはなく賃貸不動産の取得者に対抗できるとする学
説と
︵気翁・[さ謡z日︵﹁y、註ミ骨塁誉ミ黛、らミ、韓.図さ〆o。.盆薗口・。おリコ。園ρP嵩がミヘ︶、債権的拘束にと
どま
物 権 取 得
抗 で き な
る︵
学象
説簑﹂≦ン零︵︶ζ︵国α日○昌αyb帖しっb斗ミ鰍隣翁ミ嫡、もミ諒きミ麩ミヘ
り
者
に
対
い
と
す
8§ミ眺ミミ鳶魯ミ、蔑§ま隷亀ミミ驚賊Q。廼防ミ避慧蔚、§織ミ鳳瞬ミ曳誉遙ミ隷らミ糞酔﹂.、る。二轟鴨﹂o。①G。Ψ一曲び。
が、今日的には、賃料処分︵前払・譲渡を区別せずに︶についても三年にわたるものは公示の対象とすべきとしつつ、
もo一旨①3巳ρ莞α、>仁騨∪①8︵ω歪認=8︶①酢口σ﹂.>⊆磐ω鼠Oξ讐α︵℃貰邑︶コ。島も℃刈㌣引︶との対立が存した
たとえ三年に満たない賃料譲渡・前払であっても、不動産差押命令の送達以降は抵当債権者に対抗できないとする学
説︵気巽。Uo℃>論︵=窪らΦ醗U国罠男しつ︵菊Φ激ySミ織緊駄ミ§、ミ還魯ミ黛、亀竃、ミ耐魯一・<一一﹄。巴●し38
ωε二鋤昌も。、昭06箪もP認一−認Nも。・。一〇誌山O器もP8甲8曾鳴ミが有力である︵ベルギー法の詳細につき、=
﹄§ミミ塁魯ミ肉ミミ、魯b、亀、魯卜隷唄鴨﹂8トZ。一︶OPO㌣㊤倉零ゐP一〇一︶。
男昭8︵評三ン田一強弩2Rg餌g窃号象巷8三自ωξ一Φ巴○苫β南幕房弩、猪鋤巳号のR雷糞属ω夏・89曾鉱β
42
のo巳ヨ08旨く巴o葺Φ餅群o一ω四⇒菰Φω号一〇︾δおo⊆︷Rヨ謎①ω昌o昌ひ魯=ω。︵気卜亀的ミミミ腎鉾P旨︶
) ) )
G、。いン︵甲>幻uFも唱。9、こPωO旧災ら●
252423
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完
31 30 29 28 27 26
︵2
3︶
O、卜§匙ミ∼ミ魯吻も.ω一・
G>℃OZプ§。ら、.︾薯﹂蟄−一①S
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ωoヨB①ωε②,一窪お餅琶Φ讐まΦα巴o︸δ﹃ωo¢犠R∋斜①ω8コひ。ご2
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ω。OΦω富顎ox鼠量旨αo⊆N①き口伽①9ωoヰ冨二の霞8﹃ヨ①oユ讐轟ぎ.ωo津B二.①爲一α、琶﹃窪2<①=のヨ①巨
8蓉一R︶”
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O召誘胃るやミ.もPG。82碧OPま一簿望川島武宜・所有権法の理論︵岩波書店.一九四九年︶二八九∼二
頁、星野・前掲﹁フランスにおける不動産物権公示制度の沿革の概観﹂六五頁以下など参照。
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〇〇昌<㊦=⊆鋤く鋤昌叶Φ図唱一円p
N。Ooω富琵突。&鋤旨α○自。き急①9ωo詳g二の⊆二霞ヨ。oユ讐墨一﹃ρωo詳B二.Φ睦㊤α、§お8ヌ・。=①ヨΦ三
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43
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3433
法学研究75巻9号(2002:9)
︵Oカ>ω鴇ジ8’亀妹こP宅“︶
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44
窪O曾一〇貫①餅⊆口①㊤=激①号一〇侵角o仁αΦ︷R5四鷺コo昌心9仁●
︵35︶ なお同草案二条は、一条で掲げたすべての行為につき対抗不能のサンクションを規定するが、賃貸借については
次のような詳細な規定を付加している。
﹁謄記されていない一二年を超える賃貸借は、既に開始されている二一年の期間の残存期間についてのみ対抗で
8g匡目αΦ一鋤O恥δα①α①一N鋤霧8日ヨ①昌o曾●︶
きる﹂︵ぴ①ωσ餌⊆図突急α餌筥旨餌旨口曾ω口Oコ嘗四霧R一貫口ΦOO仁語嵩一簿おOOOOω診ρ信O唱Oξ一Φ9ヨ霧おω$嘗ψ
6︶ O︾の召ω田プ§●ミ。も●認9なお同文献は草案が公示の範囲を三年から一年に厳格化した点に否定的である。
︵3
︵38︶ ︻三八条︼︵一九二四年六月一日法︶
︵37︶ O、■O召ωω胃るP。F薯ひ。。060。S②につき後注︵65︶参照。
以下は不動産登記簿に登記される。
d︶ 一二年以上の期間の賃貸借の場合における賃借人および小作人の権利
e︶ 期限未到来の賃料または小作料の三年に相当する額の前払または譲渡
ωO目辞営 ω O 鼠 富 四 仁 一 一 < ﹃ 0 8 コ O 一 ① 旨
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昌○昌曾び信ω旧
①︶一〇〇四括ヨ①筥四日一〇ぢぴoq一餌8ωωδpα.¢器ωOBヨΦ8三く巴餌葺餅霞o凶ω◎p鼠のωα〇一〇畜お〇二︷Rヨ罐窃
︻四〇条三項︼
登記されていない賃貸借は第三者に対して一二年を超える期間については対抗できない。賃料または小作料の
期限前の受領または譲渡は三年に相当する額以下についてのみ対抗できる。
>旨●“9巴.G
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フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
き急Φω・雰ωρ三暮碧8ωo⊆8ωω一〇参睾ユ巳忌①ωαo一〇︸δお2噛霞ヨ謎霧器冨⊆<①三卿おOoもoω曾ωρまOo弩
=⇒①ωo]B]B①ぎ欲二〇二器妙qo一ω鋤pω.
︵気.U■マ一〇瞳。“boo9ω⊆旨o日NOoO幽OO︶
なお同法については、星野・前掲﹁フランスにおける不動産物権公示制度の沿革の概観﹂七九∼八二頁など参照。
︵39︶ 写9倉α、=巳ロ8ユo口α=誌讐ヨ①αΦ一”℃=σ一一ユ叡αΦ④身o一房一ヨヨ○亘三Rωωξ一〇毎霞詳o一おα①σ男轟目8
8日一器筥巴ρ賓8ヨ胃一巴①ωα9餌ぽoヨ9ωα=ゆ霧−菊露Pα⊆コ磐マ菊匡昌9α①σ家oω①=ρ費什μ一﹂昌﹃、ミ・ミ嚢魯
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︵40︶
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[①ω霧9ωoo辞餌筥8ωω一〇昌αΦ一〇希毎2︷震ヨ謎Φω=gひ3仁98ξ=莞α⊆芯Φ誓℃ひユ窪お餅霞9ω讐ω’
なお筆者は、霧二自B三一窪器の転用による詐害的な賃貸借の排除については、民法三九五条但書の解釈論と
て
既
に
別
稿
を
草
し
て
論
じ
て
い 関連 づけ
る の で 、 詳細はそちらを参照されたい︵拙稿﹁フランスにおける詐害的賃貸借
︵41︶
法
理
−
民
法
三
九
五
条
但
書
の
解
釈
に
む
け
て
ー
﹂ 法研六四巻二一号二七五頁以下︵一九九一年︶、同﹁現行民法の
排除の
法
三
九
五
条
と
五
八
一
条
但
書
と
の
比
較
考
察
買戻 制 度 に お け る 賃 貸 借 の 保 護 と 排 除 − 民
−︵二・完︶﹂法研七二巻二号三
○ ︶く。質三一猪①の9ξ℃〇一謡−
=猪ρ“冒ぎ一。o島曽U薗∼Nミ轄ミ魯ミ帖職慧、ミ魯肉魯ミ、ミ奉けG。刈もo舅●盆;一〇。㎝。
八頁以
下
︵一九九九年︶など参照︶。
︵42︶
45
Go
法学研究75巻9号(2002:9)
︵43︶ 器目Φω為甘≡﹂Oo認︶U知。器φ器・︵︻7︼判決︶
) ) ) ) ) )
︵3
5︶
︵4
5︶
O︾ω①8急&。。曹ωo仁ω勾8:睡欲<●一〇占’
ωooこ一〇αひρ一濾ドU。ρおDO9﹄O℃お﹂一﹂ooOP&G。●団ヨ=Φω08急“卜塁晦ミミ︸匙ミ、無。。魯奪㌦ミ蔚b、Nミ§ら鳴
∪.Oρ
O一﹂肉,巽O
oもミ、免三一9①一く霧ω窪昌肉Sbら導二一〇〇
Ω<﹂.。レ㎝8酬■おooρboミト黛8・こ一︶づ。謡刈“U.o
〇ピP8ど&Gつ。
詳細は、拙稿﹁フランスにおける詐害的賃貸借排除の法理﹂三〇五∼三〇六頁参照。
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巳 O
o 一〇〇〇倉Qoマ9.遭ロ。一親●
竃竃、 αΦ
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母 暮︶
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︵55︶
︵56︶
〇冒≡。一89山ミト亀斧型コ 。ω曽嚇O。一89Gりもミミ。︶PNOooリミミ鳴ω辞9﹃四莞霊巴①晟≦9
開轟月o一ωO﹃餌σ霧。
ω℃霊α①=oρPしoOドミミ鳴国ユo>鵬oω江三“ b鴨蔓ぎ黛Gっ﹂OOgO●鼠一〇曽さミミQミ肉℃霞一ぢ冨U①一〇げ8⊆¢
︵57︶ Ω<薗一吋。.一〇
46
209口。一刈OyP昭9U自9ま欲<。一〇〇㎝ρU。マ認ドお旧ω●9P巴S︵︻5︼︻6︼判決︶
貸借排除の法理﹂三〇一頁参照。
︵44︶ Oo巨鐸①き⇔二・。竃Ψ曽℃﹄㎝ド謡。。旧ψ竃P島。︵︻9︼判決︶ 併せて拙稿・前掲﹁フランスにおける詐害的賃
︵45︶ 拙稿・前掲﹁フランスにおける詐害的賃貸借排除の法理﹂三〇三頁参照。
︵46︶ Oカ○¢閃男︵>一①鍔口鳥①ンb鴨、、ミ誌§、ミヘ、賊§§瓜§警亀、亀竃N蔓匙鳶ミGリミミ鳴ミbミミド9ぴ。D①℃巽一ω﹂O一ωりω一﹃2’
抗不能﹄概念の生成を中心にー﹂慶大大学院法学研究科論文集二六号︵一九八七年︶二二頁注︵36︶参照。
同テーズの重要性につき、拙稿﹁フランスにおける詐害行為取消権の法的性質論の展開−二〇世紀前半における﹃対
oO・
o甘芭〇二8メOOロz︵>。︶①辞Oン一・胃ン旨︵軍ンO◎ミ議魅駄ミミ国、ミミ魯要黛、亀蔑、
O、’O鋤一一㊤ロ戸&。。.ωo⊆ω℃醇一ω﹄o
刃Φρ鴇N“欲<﹂漣一し.○マ島﹂一﹂箪。。る富,国巨一①ω①8鼠。︵︻16︼判決︶
℃弩銃器冒≡﹂器80,℃﹄9ドooザミミ亀諭鋤昌菊包2き豆90℃るQo﹂H﹂露る身’菊①激O匙鋤葺。︵︻15︼判決︶
拙稿・前掲﹁フランスにおける詐害的賃貸借排除の法理﹂三〇六∼三〇八頁参照。
O召岳男曽選.亀、こ口。ωミ㊤山ooρOP弩①−竃oo.
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フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完
ρ同﹄。ωOおKミ、ミさミ℃田言需ω冒一RR℃三一一薯①O①一〇びΦ8器,
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︵脇︶ O一<。ωのwNOヨ四﹃ω一〇〇①Ψbq貸、トら執惣。一一炉口。刈一■“ O。一−㊤O①Ψしり◎ミNミNこO,も o刈噸ミ◎、鳴0
︵59︶ その他の抵当権保全の例として、気。Ω<﹂。、,ひ息o﹂89boミ、●急・.一⇒。虹聾Oヒ9Gり◎ミミこPG。器ミミ魅Oo巳ω
。8盆’ρンづ。斜8G
。ゆp竈ρらミもミミミ。℃琶一薯。O巴oσ8器’
蜜器①き9Ω<る①蕊顔き≦①二88野ミ●息こ≡﹄。一9P⑩。。曽しり§ミ魯も﹂8忌ミ鳴ω辞9訂莞霊巴Φ瀬≦①こ9
匹℃男↓︵O,ン§、ミ織ミ、ミ尽ミ魯さ・ミら∼ミ︾、§︵ミ。。.け≦一一〇σ一耐呂o易国ΦB三ρ一3“︶B﹃℃・国ωヨΦ一p﹄
︵0
6︶ O、 亀と5菊>UO仁ンZ↓曽ミも、鴨ωO=ω℃鋤同一9 Nω一==尉 一㊤ω刈“ ω国nO仁跡.もぴ吻’ωO仁ω菊Oρ二N“軌伽<。一■O“一“ ℃[>Z一〇一 ︵匡.︶ 〇一
寄αo轟日卑ρO呂05ρ一〇U脳昌。。ω。
。もPま。。−曽9家ン召ノ,︵の●︶菊シ・zン5︵℃。︶。こ霧↓く︵写■︶曽bこ、、魯・∼、ト器
。Pω一﹃2口。一。8薯﹂認ー一鉛ミう
&蒔ミミ軸。。・け一H一一①泳騎巨ρNΦ盆こ一㊤。
︵飢︶ O、 鳴と●三>囲↓︽鴇菊ン︽Z>[︻圃︶Φ一脳国ψ↓ンN、 O鳩。 ら無こ コ。 一■①刈曽 09一㎝ω旧∼・●鋤=ωω一︶ω一Z>ノ, ︵=。ン >O鉱O昌 O鋤⊆一一〇Pコ① Φ辞
︵62︶ O、 鴨遍’ ゆ国∩O︻詠9 、Oら。 へ賊卜“ ℃[ンZ剛○[ ①辞 肉困℃国勾↓鴇 、◎9 ら無: Oン閏↓一国開 ︵℃一〇吋﹃①ー一、<①ω︶曽 閑魯。 織、、巳 へ執触: <。 mO口O昌
DOOコω鋤び自淳仙血価=O辞⊆①=①餅一鋤一⊆ヨ一ぴ同OαΦ一四一⊆﹃一ωも目仁αOコOO同邸∩①コ辞①∂肉Sbへ、∼、:一〇“Oc‘℃9一﹁c
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O ω︶コ。一G
g急①量ρ一。。。。。︵き含①コ竃盆三g︶も。恥9ミヘ■
︵63︶ O、貸.ω国β急丸ミ6亀、’旧災︾なお、㊥と鱒胃︵○=≦段y卜.匙もbミヘ∼、㌔、詠鴇ミ鳴ミミ昏、蔑、ミ嚢駄愚ミあ栽鳴栽.ミ、さ、ミ
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§ミミミぎ外浮酵o℃餌岳︵α碧辞40︶﹄。一〇一もも﹂。。①−一〇
格になることを懸念して、碧二自も四巳一窪羅によることも否定できないとする。
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㎝りOも.O一㎝IO一①旧 ↓国力刃勾時
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︵斜︶ O、 偽逸● O国ピ閃ω国︵Od国曽 へ誉N◎き凡Q駿眺 の一﹄吋 O一<. 一﹁﹁Φψ 一■O
o↓HZ7 ミ◎、鳴 ωO仁ω O一<’ 一同Φ‘ 一Q
霞ン[ン仁勾︻国 ︵℃び彫︶ ①叶>︽Zけ㏄ ︵]﹁・︶Ψb秘、O∼、 ら蹄蔵卜 卜魁Go ◎む、㌧偽亀、駄q§Go壷一〇① ひαこ 一〇〇〇INOOO︶=。 一
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Q①NIG
℃q↓7一ンZ︵国’︶Oδω同[[Hン仁︵冨●︶、﹃︸・亀、、駄駄鳴織、O、、ら軌魁∼卜﹄︶、◎賊、へO、醤、嵩ミミ駄魁Gりoo鵠㌔・飛、駄oo、、駄鳴、、鳴吻糟一㊤O①曽昌。“Oらψ℃も。G
o①㎝10
︵問同。︶、ω夢F国勾 ︵℃﹃●︶ O辞い国C仁国↓↓国 ︵K。γb、・も賊、ら、触卜 卜偽oうOぴ、∼偽霜篭◎やNqo“①の.一⑩㊤O噸コ。一〇刈刈.もO。O
0①①“ 宮国㏄、円勾国 ︵笥.︶.
鳴、︾
︵65︶ この点はアルザス・ロレーヌの一九二四年法︵四〇条三号︶、一九五五年デクレ︵三〇条三款︶によって明文化
されたが、既に一八五五年法下においても判例・学説によって同様の結論が導かれていた︵気。≦田F︵と露︶.﹃
47
法学研究75巻9号(2002:9)
併せて次注︵66︶参照。
48
ω雪o鳳o口α=急壁暮αo霞餌pωoユ宮一〇コ℃o⊆二①ωσき図αΦ巳=ωαo象イ﹃三けきω︶U。一〇おちぼ○巳ρ⊆ρOP誤当9蔑ら︶。
8三ω留霞日︵︻17︼判決︶旧Ω<こ這欲賃﹂8炉Uも●8・一るG。刈忌ミ鴨>旨σ9器9一ぎ︵︻18︼判決︶嚇勾8二辰ヨ巴
︵66︶ 一九世紀末から二〇世紀初頭にかけて破殿院判決が相次いで下され︵Ω<こ一〇甘一ロ一〇。08U・℃﹂OOO﹂。鴇8ミ、驚
一8担U。マミ﹂“島︵︻19︼判決︶︶、①三年に満たない額の賃料の前払・譲渡は、公示が全くなされていなくても、
産化︵冒日o獣房呂9︶は、不動産の所有者が有効に譲渡し得なかった賃料についてしか及ばない点が確認されて
それらが詐害︵ヰき号︶なしに同意されたものである限り、抵当債権者に対抗することができる点、②果実の不動
2αo一.臼覧o詳震﹂Φ吋鋤三〇一ΩUoω88ωα、㊤α巨凶巳ωq象一〇昌卑αεo⊆一ω鐙gρ詑魯ミ、蔑ミ晦野野、ミb、ミ蔚ミSヘ
いる︵気。Z>零︵冤震8一yO①門ぴ房口α仁Φ亀=母O淳bOξ8℃﹃O質一騨巴おα。=口︷ヨヨ窪亘O﹃賓OO毎8⊆OαO一、鋤αヨぎ甲
である。そうであるならば日仏で比較されるべきは、実は、賃料債権につき抵当権による物上代位を認める我が
︵2︶
われており、その手段としては、﹁債権譲渡︵8婁自︶﹂よりも﹁支払指図︵庶一猪呂9︶﹂が多用されているよう
者が抵当権の効力とは別個の枠組みにおいて、抵当不動産の賃料債権を補充的な担保にとるという金融実務が行
のそれから明らかに乖離し全く異なる方向に歩み始めていると云えよう。だがフランス法においても、抵当債権
︵ω仁σ畠呂9鼠色。︶という議論も存しない。この点で平成元年判決以来の我が国の判例法による運用は、母法
︵1︶
8ヨヨ窪号ヨ。艮︶﹂前に賃料に抵当権の効力を及ぽすことは全く想定されておらず、また賃料債権への物上代位
フランスにおいては、抵当権の実行としての﹁差押え︵里ω◎﹂正確には﹁支払催告の公示︵2σま鼠身
三 フランスにおける賃料債権担保の法実務
ミミミ賊ミ︵b鴨ぐ騨蔑防︶﹂OGo9醇けN酷Oドロ。嵩ω三併ρ℃P一〇“山O卸蔑ら︶Q
q段
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷および賃料債権の担保化の実務(二・完)
国の判例法理と、フランスにおける賃料債権担保の金融実務ということになろう。このような趣旨から、ここで
︵3︶ ︵4︶
はフランスにおける賃料債権担保の実務︵﹁担保としての賃料支払指図︵象一猪呂自号一〇鴇あΦ目窓轟忌①︶﹂︶の
紹介を行うが︵口︶、まずはそれに先だって﹁支払指図︵急一魯器9︶﹂のメカニズムを簡略に検討しておこう
︵8︶。
の 忌一〇σq舞δコのメカニズム
︵5︶
ω概要
一般に﹁指図﹂と訳出されることの多い﹁デレガシオン︵泳一猪呂9︶﹂は、﹁それによってある者︵被指図人
急一禽鼠︶が他の者︵指図人急示彊日︶の指示に基づいて第三の者︵受取人獄一猪讐巴邑に対して債務を負担す
る取引﹂であると定義される。よってデレガシオンは三面関係であり、①指図人と被指図人の間、②被指図人と
︵6︶
受取人の間の二つの合意を要素とするが、決定的な要素は②であると云われる。すなわちデレガシオンを性質づ
け、かつ他の観念や技術からそれを区別することを可能とするものは、被指図人と受取人の間の新たな債務関係
の創設である。
デレガシオン︵支払指図︶には二つの類型があるとされる。①不完全あるいは単純支払指図︵急一魯呂自
︵7︶
言Bヰ聾①2ω冒巳Φ︶および②完全あるいは更改を伴う支払指図︵急一猪呂29旨ぎo⊆き轟8ぎ︶がそれで
ある。更改︵債務者の交替︶を伴わない支払指図、すなわち不完全支払指図または単純支払指図が、もっとも頻
︵8︶
繁に用いられる形態で、デレガシオン︵支払指図︶の一般法を形成するとされている。これに対して更改を伴う
︵9︶
支払指図、すなわち完全支払指図は受取人が指図人をその固有債務から免責することについて承認を与える取引
である。
49
法学研究75巻9号(2002:9)
周知のようにローマ法では債務関係は法鎖と観念され債権や債務の移転は想定されていなかった。そこでデレ
ガシオン︵支払指図︶や更改などの方法が、債務関係の厳格に一身専属的な性質と直接抵触することなく、一つ
の實oヨ奮δが二つの既存の債務を消滅させるという構成によって、実質的に債権・債務の移転がなされるの
と同一の結果を実現することを可能にしたのである。
︵10︶
今日的には、既存の債務の消滅としてデレガシオン︵支払指図︶が有する簡易決済︵ω巨葛浮畳9︶機能の他
に、派生的・副次的な機能が認められるようになってきた。すなわちデレガシオン︵ここでは泳一猪呂8ω冒三①
︵n︶
9冒B臥昌Φ︶は、担保︵8お邑すなわち信用供与手段︵ぎ弩=ヨ。暮号R&δとして用いられることが多い。
本稿が扱う﹁担保としての賃料支払指図﹂はその一例である。
︵12︶
⑭ 債権譲渡︵8ω巴380み睾8︶との相違点
デレガシオン︵支払指図︶と債権譲渡は、債権者Aがその債務者Bの債務者である第三債務者Cに対して直接
履行請求が可能になるという点で類似の機能を営む。すなわちBは自分のAに対する債務をCに対する債権で決
済するために、CをAに泳辰讐Rするか、AにCに対する債権をo盆震するかの選択が可能である。
歴史的には両者は混同されて用いられてきた。そもそも伝統的な公証実務においては、﹁債権者はその債権を
﹃譲渡、移転および指図する﹄︵一①Ω雷目属ろ&ρけ轟房8幕9象一9器あ餌。泳窪8︶﹂との慣例的な表現がしばし
︵13︶
ば用いられている。
一九世紀においては、デレガシオンの中に債権譲渡の要素を見出し、デレガシオンは民法典一六九〇条の要式
に従うとの見解が多数を占めた。しかしながら、﹁獄臥讐Rされるのは常に人であって債権ではない︵。.。ωけ8年
︵14︶
︵15︶
す自ω琶Φ冨お2器∈εωε象鵬泳ρ8コ琶9誌き8︶﹂。そこに両制度の本来的な構造上の相違点が存すると理解
50
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
︵16︶
すべきであろう。それでは以下、シムレール教授の著述に従い、 両制度の相違点を整理しておこう。
㈱ 要件上の相違点
デレガシオン︵支払指図︶は、三者間の取引であり、被指図人が受取人に対して新たな約務の負担を同意する
ことが必要である。このようにデレガシオンは三者の同意︵8房窪冨ヨ①簿︶を要件とするが、それはいかなる特
︵17︶
別な要式にも従わない。債権譲渡に関しては、対抗不能の制裁の下、民法典一六九〇条の要式に従うことが要求
されるが、デレガシオンに関して、債権譲渡に関する民法典一六九〇条の要式に従うかどうかが争われた。一九
︵18︶
世紀においては、デレガシオンを債権譲渡に類比し一六九〇条の要式の履践に従わしめる裁判例・学説も存し
︵19︶ ︵20︶
たが、破殿院は、デレガシオンが債権譲渡の第三者に対する対抗のために規定された要式には従わないと判示す
ることによって、この論争に終止符を打った。学説はこの解決を承認し、今日的にはもはや異論は存しない。
㈲ 効果上の相違点
デレガシオン︵支払指図︶の効果は、債権の移転ではなく、新たな債務の創設である。
そこからまずは﹁抗弁の対抗不能︵ぎ88都琶ま箒ω霞。8ぎ霧︶﹂が帰結される。すなわち受取人に対する
被指図人の債務は新たな自律した債務であるから、被指図人は原則として受取人に対していかなる抗弁︵被指図
︵21︶
人と指図人との関係に基因する抗弁、指図人と受取人との関係に基因する抗弁︶も対抗できなくなる。しかしながら
︵22︶
抗弁の対抗不能の原則を厳格に適用することは、被指図人に不当な損失をもたらすおそれがあるので、一定の範
囲で緩和がなされうる。特に抗弁の対抗不能は公の秩序に関する強行規定ではないので、被指図人が指図人に対
する債務の範囲でのみ受取人に対しても義務を負うとする特約を結ぶことは可能であり、そのことは被指図人が
51
法学研究75巻9号(2002:9)
︵23︶
︵24︶
指図人との関係に基因する抗弁を受取人に対して対抗できることを意味している。この限りでデレガシオン︵支
払指図︶は債権譲渡に近接する。 ・
次いでデレガシオンについてはその効果︵新たな債務の発生︶を何らの特別の要式なく第三者に対抗すること
ができるという点が帰結される︵㈲参照︶。さらに新たな債務の存在︵発生︶自体を第三者に対抗するためには、
︵25︶
第三者の認識も不要であると説かれている。
債権譲渡は一般に投機的な性質︵8轟簿曾①ω審S冥5を有しているといわれる。譲受人は、引き受けたとみ
@ 実際的な機能の違い
︵26︶
なされる危険の対価として、債権の額面よりも低い価格でしか債権の取得に同意しない。それに対応して、譲渡
人は譲受人に対して移転時の債権の存在のみを担保し︵フランス民法典一六九三条︶、債務者の資力を担保するこ
とはない︵同一六九四条︶。他方デレガシオン︵支払指図︶については、このような投機的精神は見出されない。
受取人は新たな契約が決定する範囲において被指図人の債権者となる。受取人は、危険性や偶然性を引き受ける
ことなく、単純支払指図︵急一猪蝕8ω巨巳。︶の場合には、むしろ強化された安全性を見出す。なぜならば爾後
一つの債権につき二人の債務者を得ることになるからである。換言すれば、債権譲渡が﹁危機対応型﹂の担保と
︵27︶
︵28︶
して用いられる傾向にあるが、デレガシオン︵支払指図︶は﹁正常業務型﹂の担保に適していると云うことがで
きよう。
㈹ 指図人の被指図人に対する債権の帰趨
デレガシオン︵ここでは&鼠窓二9巴ヨ巳①︶ において、被指図人による受取人への新たな債務負担がなされる
52
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
ことによって、指図人の被指図人に対する債権が消滅するのか否か、引き続き指図人の共同担保︵責任財産︶を
︵29︶
構成するのか否かが争われてきた。実質的にはデレガシオンに担保的効力︵優先弁済効︶が認められるか否かに
かかわる問題である。
①即時消滅説︵σ9曾。α巴、①注糞ぎ三ヨヨ盆蛋①︶
かつては、デレガシオンによって、被指図人の指図人に対する債務は消滅し、新たに受取人に対して同意され
︵30︶ ︵31︶
る債務にとって替わられる。それゆえ指図人の被指図人に対する債権はもはや指図人の責任財産を構成しないと
する学説が有力てあった。この点を明快に説示する裁判例も存した。しかしながら、この考え方はデレガシオン
を債権譲渡などの債権・債務の移転的メカニズムと混同するものであり、後述する破殿院一九九六年判決によっ
︵32︶
て否定されることになる。
少数説ながら、指図人の被指図人に対する債権はデレガシオン後も存続すると構成する説も存した。しかしな
②単純存続説︵一、己曾号誓三。2お①冨巨三①︶
︵33︶
がら同説によると、指図人が受取人と競合して、被指図人に対して債権の弁済を請求でき、かつ指図人の債権者
︵34︶
が、被指図人の手中においてこの債権を差し押さえることができるという不合理な結果が帰結されることになる。
③条件付存続説︵一.こ曾号霊三。8&三〇琶色。︶
近時の有力説は、理論上の難点から①即時消滅説は妥当でなく、さらに実際上の難点から②単純存続説は受け
入れ難いとし、折衷的な考え方として、指図人の被指図人に対する債権は条件付で存続とすると構成する。そし
︵35︶
てこの考え方は破殿院一九九六年四月一六日判決によって採用されることになった。同判決は、﹁指図人の被指
︵36︶
図人に対する債権が消滅するのが、被指図人の受取人に対する約務を受取人が受諾するという事実によってでは
なく、デレガシオン︵支払指図︶が履行されるという事実によってであるとしても、被指図人が受取人に対して
53
法学研究75巻9号(2002:9)
不履行に陥る以前においては、指図人であってもその債権者であっても、弁済を請求することは許されない。そ
の結果、指図人の債権者によって被指図人の手元でなされた差押H差止め︵ω巴鴇砧霞9は、受取人の受諾以降、
被指図人により直接なされる弁済につき受取人が有する、差押債権者によって競合されることのない排他的な権
利︵辞鼻露2島5を奪う効果を有しない﹂と述べて、指図人の被指図人に対する債権が消滅するのはデレガシ
オンの履行︵受取人に対する債務の履行︶によってであるが、不履行に陥るまでは指図人は被指図人に弁済を請求
することはできず、かつその結果、指図人の債権者は同債権の差押えをなしても受取人の優先的満足を阻止でき
なくなると判示したのである。
判例・学説はこのように解することによって、指図人の債権につき、移転的な構成によらないで、実質的に指
︵37︶
図人の共同担保︵責任財産︶からの隔離を果たし、デレガシオンの優先弁済効︵担保的効力︶を確保することを可
能としたわけである。しかしながら先述したようにデレガシオン︵支払指図︶は債権譲渡とは異なり、公示︵一
六九〇条の要式の履践︶なくして第三者効を生じるとされるゆえに、第三者︵債権譲受人・差押債権者︶の利益を
害するおそれはあろう。
︵38︶
なおニボワイエは、この一九九六年判決を賃料支払指図︵象一爾器2号一〇冨邑に敷術し、以下のように説明
している。﹁取得者︵指図人︶は賃借人に貸主への支払を命ずることによって、彼がそもそも有していた賃料債
権の弁済を被指図人たる賃借人に対して請求することを放棄したのである。この放棄︵お3琴巨一9︶は指図人
の固有の債権者に対抗されるので、固有債権者はその債務者の財産の変動を被ることになる。強調されるべきは、
賃料債権が譲渡されたわけではないので、取得者︵指図人︶の債権者の権利はその賃料債権に及んでいるのでは
あるが、貸主︵受取人︶はその直接的な権利︵象o一&99によって、取得者︵指図人︶の債権者との競合状態に
は置かれないという点である﹂。
︵39︶
54
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
それでは以上で検討したデレガシオン︵支払指図︶のメカニズムを前提として、次に節を改め、フランスの金
融実務が、賃料債権担保の一手段としてデレガシオン︵支払指図︶をどのように用いているのかを分析しよう。
口 α①一甜魯o⊃号δ括房雪σQoる言Φの実務
ω 裁判例に現れた賃料支払指図の実務
本章冒頭で言及したようにフランス法においては、抵当債権者が抵当権の効力とは別個の枠組みにおいて、抵
当不動産の賃料債権を補充的な担保にとるという金融実務が行われている。そしてその手段として用いられてい
るのが、Oで概観した﹁支払指図︵念一爾器9︶﹂である。
フランスにおいても不動産の収益を担保にとる方法としては第一に、﹁不動産質︵き昌ぼ駐Φ︶﹂が存するが、
︵40︶
債権者にとっては不動産の管理が負担となるので、不動産自体と切り離して収益の担保化を図ることが求めら
れる。賃料債権担保の方法としてはまず﹁債権質︵轟呂ω紹ヨΦ暮号R雷目。①︶﹂が挙げられるが、債務者の不履
︵41︶
行が要件となりかつ裁判所の許可がなければ第三債務者の弁済を得ることができない点で機動性を欠く。そこで、
債権者に賃料収取権を直接に付与するために用いられる構成が、﹁譲渡︵8隆9︶﹂または﹁支払指図︵急一猪甲
二9︶﹂である。
だが既に紹介したように、﹁債権者はその債権を﹃譲渡、移転および指図する﹄︵一①R盆蓉醇ろ鑑ρロき80﹃9
9泳一猪諾あ鴛みき8︶﹂との慣例的な表現を用いる公証実務に端的に現れているように︵前注︵13︶参照︶、デレガ
シオン︵支払指図︶と債権譲渡はしばしば混同されてきた。よって実際にはその性質決定は困難を伴う。とはい
え、デレガシオンを譲渡から決定的に分かつ要素が、賃借人︵被指図人︶の同意︵8霧窪9ヨΦ耳︶であることは
争いのない点である。先述したようにデレガシオンは、指図人、被指図人、受取人の三人の同意を要件とし、特
55
法学研究75巻9号(2002=9)
に被指図人の同意が存することが、抗弁の対抗不能を正当化するのである。よって、たとえ﹁賃料支払指図
︵泳一爾注自留一昌巴﹂と表示されていたとしても、賃借人の同意を欠く場合には、債権譲渡であるとの認定が
なされる余地は存するが︵前注︵17︶参照︶、逆に賃借人の同意があればデレガシオンが容易に認定されよう。
ここではまず、破殿院判決に現れた事案において﹁担保としての賃料支払指図﹂がどのように行われ、かつ認
定されているかを見ておこう。ここに引用する破殿院民事部一九四七年一二月二九日︻20︼判決は、﹁期限未到
来の賃料の支払指図︵急一猪呂9号一〇畜お昌oづ脅言ω︶﹂についても、不動産謄記法︵一八五五年法︶二条五号の
﹁期限未到来の賃料の前払または譲渡︵2律き828量8号一〇希お⇒9魯ゴω︶﹂を類推して、三年分に相当す
る部分については謄記なくば第三者に対抗できないとした著名な判決であるが、事案は後順位の抵当債権者が補
︻20︼判決
充的担保として、﹁条件付きの賃料支払指図︵泳一猪器自8邑庄o器頴号δ希邑﹂を留保したというケースであ
る。
︵42︶
破殿院民事部一九四七年一 二月二九日判決
︻事案の概要︼
Aは自己所有の当該土地につき賃貸用不動産を建築するために、Xによる抵当信用の開設に同意を得て、第一順位の
抵当権が一九二六年四月二五日、債権者Xによって登記された。
数年後の一九三〇年一〇月から一九三一年七月にかけて、AはY等から新たな融資を得て、︵次順位の︶抵当権を設
定した。さらにY等は慎重を期して、債務者が利息の期限に支払を怠った場合を想定し、担保不動産につき他の者に優
先するために、﹁条件付きの賃料の支払指図︵象一猪蝕28&三〇目色①号一身Rω︶﹂を留保しておいた︵支払指図は
Y等への債務八五万フラン完済に至るまで合意されたもので三年を優に超える期間に相当する︶。
56
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷および賃料債権の担保化の実務(二・完)
一九三四年に予期した事態が発生したので、この支払指図︵無一猪呂9︶は一九三四年八月九日一〇日および一一日
に公正証書によって要式化され、同月二〇日に謄記された。支払指図は賃借人等に送達されることが約定されていたが、
送達は行われず、賃借人等は明瞭な私署証書で承諾︵碧8筥呂8︶をなしたが、それは登録されてはいない。その中
の代理人に支払うことを約束します︵縛8宮Rご急慰鴇二自倉ω.①轟儂Rψo塁R一①瑛一身RきxR雷目醇ω
で賃借人等は、﹁支払指図に承諾し、Aが行うべきすべての送達を免除し、賃料を受取人、譲受人たる債権者またはそ
泳鼠鴨邑お98婁9蝉常ω雲巴①ξ巽8み器筥き寅象ω幕霧き二①ω90黄=鋤ヨ巴︵>︶号8旨①ω凶讐強。畳9︶﹂と
明言している。
債務者AはYに対すると同様にXに対しても債務の履行を怠ったので、Xは担保不動産につき不動産差押えの手続き
をなし、差押えが一九三五年二月二三日︵六日?︶に謄記された。Yは手続きに参加し、売却条件明細書︵8謀R号
魯四茜霧︶に自らが受益者となる支払指図の行使を留保する旨の記載を申し立てたが、これに対してXは、異議申立書
により当該支払指図の有効性に異議があると抗弁した。
セーヌ裁判所一九三七年二月四日判決は、デレガシオン︵支払指図︶は有効で、それのみで登記債権者および一般債
権者に対抗できると判示した。これに対してXは、①公正証書による承諾または被指図人への送達を欠くので第三者に
対抗できない、②仮に有効であっても三年間についてしか効果を生じないと主張して控訴した。
パリ控訴院一九三八年五月六日判決は、①当該行為は債権譲渡︵8裟曾号R盆丙①ω︶をも、賃料の完全支払指図
︵急示淫江9寒課巴98一〇冨毎︶をも構成せず、唯一、不完全支払指図︵急一猪呂2一ヨB風巴けΦ︶を構成するのみで
あり、その有効性は民法典一六九〇条の要式には従わない、②適式に謄記されたデレガシオン︵支払指図︶について、
その効果を三年に縮減するということは問題にならないと判示した。これに対してX上告。
︻判決︼破棄差戻
﹁不動産の所有者が債権者の一人に対して自己の債務の完済に至るまで行うことを同意し、 かつ賃借人等によって承
57
法学研究75巻9号(2002:9)
諾された、期限未到来の賃料の支払指図︵急慰鴇虹9α巴o旨お昌o口曾どω︶は、それが所有権者に対する同様の剥奪
および債権者の不動産担保の価値の同様の減少をもたらすという意味において、賃料の固有の意味での譲渡︵8隆8
實8お日o日98号8巴o冨邑と同等である。それゆえ期限前の受領および将来の賃料譲渡と同様に、支払指図︵デ
レガシオン︶は、その設定証書の謄記がなされる以前に登記をなし、適法に不動産に関する自己の権利を保存した抵当
債権者に対しては、三年に満たない期間についてのみ対抗可能である。
﹁係争行為は、それが三年に満たない期間を対象とする範囲においては単なる管理行為︵巴ヨ巳窃霧冨ωα.呂ヨぎび
q器2︶を構成し、その期間に制限されるならば謄記を免れる。反対にその範囲を超える場合は、法律の目からは真
の処分行為︵<驚一蜜巨窃霧鼠ω89ω℃8三2︶となり、一八五五年法二条によって予定されている公示︵讐巨三融︶
に従わなければならない。賃料、法定果実は日々取得されるが、二つの期間は法的に区別されるべきである。他方、当
該行為が、適法に不動産について自己の権利を保全した第三者であるXの債権の登記よりも後の日付でのみ謄記された
に過ぎない場合は、不動産差押えの謄記の日から起算して、三年よりも一日少ない期間について申立人に対抗できると
しても、同法三条に照らしそれを超える部分については対抗できない。それゆえ、すべての期間について対抗できると
した原審判決は上記法令に違背したことになる。﹂
本事案における賃料支払指図は、後順位の抵当債権者が、抵当権を補充する担保として設定したものであり、
担保目的であることは、利息の支払の不履行を停止条件とする点、デレガシオンの範囲が被担保債権の完済に至
るまでとして定めれられている点に現れている。
さらに、﹁支払指図に承諾し、Aが行うべき送達をすべて免除し、賃料を受取人、譲受人たる債権者またはそ
の代理人に支払うことを約束します︵㊤88§σ象一猪畳99ω、①轟甜R妙も身R一Φξ一2の目磐図R盆匿醇ω
象一猪讐巴お98ω巴8巴おω2巴Φ弩ωお℃誌ω窪$艮9象8窪ωき二Φω90黄=四BΦ一︵>︶号8葺oω貫⇒庄8ユ9︶﹂との
条項からは、当事者の合意においては、賃料支払指図︵デレガシオン︶か賃料債権譲渡かという性質決定は必ず
58
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
から伺われる︶、事実審裁判所は、賃借人等の同意︵承諾︶を決め手として賃料支払指図︵デレガシオン︶である
しも明らかではないが︵その点は﹁受取人、譲受人たる債権者︵R魯房属ω急一猪讐巴おω︶8裟o墨ぎω︶﹂という表現
︵43︶
との性質決定をなしていると推測されよう。
なお原審判決が判示しているように、支払指図︵デレガシオン︶については、一六九〇条の要式に従わないの
で、承諾︵霧8筥畳9︶は私署証書でなされたものであっても、デレガシオンの効果は発生する。実は、一六九
〇条の要式すなわち﹁送達︵ω置巳守讐一9︶﹂または﹁公正証書による承諾︵四88婁一93屋§霧9砦9Φ日一−
ρ⊆①︶﹂によらずして、私署証書で賃借人の同意︵承諾︶さえ得られれば、デレガシオン︵支払指図︶の効力︵第
三者効も含めて︶を確保できる点が、デレガシオンの大きなメリットのうちの一つだということが、﹁A︵賃貸
人︶が行うべき送達をすべて免除し︵象呂窪鐙具>α①8旨Φ巴讐⋮8ぎコ︶﹂という部分からも間接的に読みとれ
よう。
いずれにせよ本判決の事案を通して、フランスにおいて、抵当権を補充する担保として、支払指図︵デレガシ
︵44︶
オン︶によって抵当不動産の賃料を担保にとるという実務が行われていることが明らかにされたといえよう。
さて本判決の意義は、賃料支払指図も、賃料処分という点では、一八五五年法が予定する賃料前払および賃料
︵45︶
譲渡と同様であり、不動産取引・不動産信用の安全を確保するために、三年分に相当する処分は不動産の担保価
値自体を下落させるものゆえ、公示︵謄記︶の対象にするとした点にある。詐害的な賃料処分に対する法規制の
必要性という視点からは、前章四の碧鼠3冨三一窪器による個別規制で取り上げたパリ控訴院一九三七年七月
二三日判決︵︻15︼判決︶および破殼院審理部一九四一年二月二四日判決︵︻16︼判決︶が代物弁済としてなされた
賃料支払指図の事案であったことが思い返されよう。実務において賃料処分はもっぱらデレガシオン︵支払指
図︶によって行われていることを踏まえて、ダゴーは﹁判例は、賃料支払指図︵デレガシオン︶を、期限未到来
59
法学研究75巻9号(2002:9)
︵46︶
の賃料の譲渡および前払と同視することによって、 わずかではあるが条文を蘇生させたのである﹂ と評している。
⑭ 契約条項による賃料支払指図の適正化
デレガシオン︵支払指図︶によって被指図人が受取人に対して同意する債務は、構造的には指図人と被指図人
との債権債務関係から自律した債務である。よって指図人が受取人に対して負担する債務の簡易決済や担保が目
的である場合、被指図人は、指図人が受取人に対して支払うべき額に至るまで、制限なく受取人に対して債務を
負担するのが原則となる。さらに被指図人は原則として受取人に対していかなる抗弁︵被指図人と指図人との関係
に基因する抗弁、指図人と受取人との関係に基因する抗弁︶も対抗できない︵﹁抗弁の対抗不能﹂︶。しかしながら先に
述べたように抗弁の対抗不能の原則を厳格に適用することは、被指図人に不当な損失をもたらすおそれがあるの
で、一定の範囲で緩和がなされうる。特に抗弁の対抗不能は公の秩序に関する強行規定ではないので、被指図人
が指図人に対する債務の範囲でのみ受取人に対しても義務を負うとする特約を結ぶことは可能なのである︵前注
4︶参照︶。
︵1
2︶∼︵2
以上のことは、賃料債権の担保化の手段としてデレガシオン︵支払指図︶が選択される場合︵﹁担保としての賃
料支払指図﹂︶に関しても妥当する。すなわち、実際に被指図人︵賃借人︶が賃料債務の範囲を超えて受取人に支
払う意思がある場合は稀であろう。よって合理的意思解釈として、被指図人︵賃借人︶が受取人に負担する債務
は、賃料債務の範囲に限定されるべきであるし、実務においては契約書の中で被指図人︵賃借人︶の債務を制限
する条項を置いておくことが望ましい。例えば公証実務の書式解説においては、以下の三つの条項を置くことが
︵47︶
推奨されている。
60
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷および賃料債権の担保化の実務(二・完)
︵48︶
①被指図人の約務に停止条件を付す条項
判例は、被指図人が受取人に対して署名する約務は、指図人が被指図人の債権者であるという条件においての
み署名され得ること、すなわちその債権額に制限され得ることを認めている。よって、受取人に対する被指図人
︵49︶
の約務は、被指図人が、指図人たる賃貸人に対して確実で、確定されかつ請求可能な額についての債務者である
という条件において署名されよう。
︵ 5 0 ︶
②常に受取人に対して賃料を支払う旨の条項
被指図人が、賃貸人に支払うべき賃料を、賃貸人の通告なくとも、受取人に直接支払うべき旨を規定しておく
ことが有用であるとされる。過誤弁済の原因となる複雑さを回避するためである。よって指図人は、支払指図の
︵51︶
うえに、指図人に支払われるべきすべての額を受取人に支払うよう指示を与えることが望ましい。かくして弁済
指定︵ぎ象8ぎコ号冨す日Φ葺︶が支払指図︵忌一猪蝕9︶と二重に設定されることになる。
︵52︶
③被指図人が指図人への債務から免責される旨の条項
被指図人が債務者として指図人に支払うべきすべての額を受取人に支払ったならば免責されることを明記して
おくことが望ましい。民法典に制度化された古典的な支払指図においては、被指図人が受取人に対して負う義務
はその原因から独立しているからである。担保としての賃料支払指図においては、賃借人が指図人の債務者であ
るという条件においてのみ、かつその債務の範囲においてのみ、受取人の債務者となることを受諾することは明
らかであろう。同様に受取人に対して支払われた額が指図人たる賃貸人の債権を同額において消滅させるという
条件の下で受託されることも明らかである。よって支払指図には、賃貸人に支払われるべき額が受取人に弁済さ
61
法学研究75巻9号(2002:9)
れたならば、賃貸人は賃借人を免責する旨の条項を組み入れておくべきであろう。
このように公証実務においては、契約条項による賃料支払指図の適正化が行われているようである。
* * *
以上フランスにおける担保としての賃料支払指図の実務を概観してきた。これによりフランスにおいては、抵
当債権者が抵当権の効力とは別個の枠組みにおいて、抵当不動産の賃料を補充的な担保にとるという金融実務が
行われていることが明らかにされたといえよう。そこで用いられる構成が﹁支払指図︵急一猪器9︶﹂であった。
﹁譲渡︵8匪2︶﹂と対比するとき、﹁支払指図﹂構成のメリットとしては、①抗弁の対抗不能、②不動産謄記
︵公示︶の回避、③民法典一六九〇条の要式履践︵送達・公正証書による承諾︶の回避などが想定されるが、②に
ついては、一九四七年の破殿院判決以来、賃料支払指図も同じく抵当不動産の担保価値を下落させる賃料処分と
して賃料譲渡と同様に謄記︵公示︶の対象とされるようになった。これによって現実には、三年を超えない範囲
で賃料債権の担保化を図ることが是認されたと考えることができよう。
実務では③のメリットが重視されているようである。当事者間において譲渡か支払指図かの性質決定はあいま
いにされることが多いが、私署証書による承諾が、送達を不要とし、抵当債権者への直接の支払を約束するもの
であれば、デレガシオン︵支払指図︶が認定されている。
デレガシオン︵支払指図︶の最大のメリットは①の抗弁の対抗不能であるが、この点は担保としての賃料支払
指図においてはあまり強調されていない。賃借人に著しい不利益を及ぼすからである。そこで実務では、契約書
の中に種々の条項︵被指図人の約務に停止条件を付す条項、常に受取人に対して賃料を支払う旨の条項、被指図人が指
62
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
図人への債務から免責される旨の条項など︶を設けることによって、受取人たる抵当債権者に対して被指図人たる
賃借人が負うべき債務を、賃借人が賃貸人に本来負うべき賃料債務の範囲に制限する形で適正化が図られている。
このように検討してくると、支払指図︵急一猪慧9︶構成の核心は本来的には、既存の賃料債務とは別個の新
たな自律的な債務を負担することにあったにもかかわらず、既存の債権︵賃料債務︶の移転という譲渡︵。串
ω一8︶構成の権利移転的要素が大幅に加味され、その意味で﹁支払指図﹂構成は﹁譲渡﹂構成にかなり接近して
いるとの分析が可能であろう。その点は一九九六年の破殿院判決が指図人の被指図人に対する債権の責任財産か
らの隔離を認めた点にも見て取れよう。
︵53︶
さらに我が国においては、周知のようにフランス法を母法としながらも、債権譲渡の対抗要件︵四六七条︶が
大幅に緩和されたという経緯が存するので、③の債権譲渡の要式履践の回避というメリットもやや割り引いて評
価しなければならない。
以上の検討を踏まえ、我が国との比較法的視角からフランスの賃料債権担保の実務を分析するならば、④我が
国の物上代位構成とは異なり、抵当不動産と切り離して賃料債権を担保化するという実務が行われている点と、
その際に@賃借人の同意︵抵当債権者への直接の支払約束︶が取り付けられている点の二点が抽出できるように思
われる。
︵1︶ 高橋智也﹁抵当権の物上代位に関する一考察ーフランスω呂8鵬呂自絃亀①理論の歴史的展開からの示唆口﹂都
立大学法学会雑誌三九巻二号七八九頁︵一九九八年︶など参照。
︵2︶ 本稿のテーマ︵特にフランスでの金融実務︶に関しては、トゥールーズ大学ミッシェル・ダゴー︵ζ一3①一
〇>8↓︶教授、ストラスブール大学フィリップ・シムレール︵℃三一ご冨oo一≡男︶教授、ランス大学マルク・ビリオ
学U国ωω−08詳き母鼠巴の演習に参加した折に、シムレール教授には一九九九年二↓月二日および二〇〇一年五
ー︵三震。聾F一>巳教授にインタビューを行い︵ダゴー教授には一九九九年−二〇〇〇年度のトゥールーズ第]大
63
法学研究75巻9号(2002:9)
64
月一九日に、ビオリー教授には二〇〇一年二月二日に︶、懇切丁寧なご教授を得た。記して謝意を表する次第である。
︵3︶象袋’ゆ・o↓目男︵写き8一ω︶︶象一猪魯oP一〇畜お窪窟轟呂ρOoヨヨ①日巴おω9男o﹃B巳。9S6♪ひ阜Zこ
一〇㊤押Z田OK胃︵冨”ユ①−い窪おγ⊂器=一⊆ωq讐一〇pαq8コ8宮α①昏o一9三一αoω餌哺巴8ωHピ四泳一伽鴇江o昌αΦ一〇〇象巴目−
9ω●⋮い国爵とω︵OOヨぎ昼莞︶︶卜塁隣亀ミミ暗。。8ミ竃ミ鰍§ミ誉。りG。ミミ魯ミ軸。っ堕OO一一①oユO口U8詳α①ω畦貯一層oω9αΦ
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一、の耳おbユωρ国8poヨ一〇勲一〇〇〇ρ口。ω霧Q
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。8嚇ω目Hき︵竃舘oy卜亀無、魯ミ蝋§魯ら惹§欝穿。リミ織、Nミ鴨
ωOo一ひ菰守き8一ωα、一ヨ震一日ユΦ雪α①一一σ巴﹃一ρ一〇
O自霞象ω90σ凝簿δ霧︶蜀器o﹂O齢U勉猪呂oP∼6卜≧ミミ賊ミ肉魯ミミミ﹂8鮒魁9併せて、上柳克郎﹁フラ
導魯註軸風ミミ避ミ魯ミ隷N骨ミ軌§§辱禽、魯防◎ミ尉ミ焼§。り︶匪び●鳥も匡<ρけNO8[OOシ一〇〇〇曾ω豪[男︵℃露一σ冨︶︶
ンス法における指図について﹂民商二八巻一号一頁︵一九五三年︶、柴崎暁﹁フランス法における指図︵σ 象一猪甲
試9︶の概念﹂山形大学法政論叢三号︵一九九五年︶五九頁以下など参照。
︵5︶ 忌一猪讐δ口の訳語については、﹁﹃指図﹄の訳語を宛てることは、その内容の豊富さから言って不満が残る︵指
図人による一方的な指示とも受け取れるからである︶﹂との指摘が存する︵柴崎・前掲﹁フランス法における指図
人が被指図人に受取人への支払をさせること︵正確には受取人に対する新たな債務を負担させること︶を意味する。
︵象一猪讐一8︶概念﹂六二∼六三頁参照︶。急慰讐震は人を派遣することであるが、債務法の領域においては、指図
全体を指す場合には﹁指図支払﹂︵指図によって支払をなすこと︶、被指図人の行為に着目する場合には﹁指図支払約
よって泳一猪讐δコの訳語としては、指図人への行為に着目する場合には﹁支払指図﹂︵支払を指図すること︶、取引
束﹂︵指図によって受取人に対して支払を約束すること︶が正確であろう。本稿では基本的に指図人の行為に着目し
﹁﹃契約当事者の地位の移転﹄の再構成①﹂立教法学三九号︵一九九四年︶一五頁以下参照︶。
﹁支払指図﹂と訳出しておく。なお、旧民法︵財産編四九五条以下の規定︶では、﹁嘱託﹂とされていた︵野澤正充
〇①9く’きωω廿竃夷霞︵O●︶曽勾>旨>5︵℃D︶9爵ω↓>N︵℃巨ンbこ母9箋卜卜塁oミむミご誤トN”一〇誌讐BρNΦひαこ
︵6︶O︾↓男毘︵写●︶あ一≡男︵菊F︶9爵2胃↓国︵インb、ミ息きト鴨。りもミ尉ミ凡§。うふ。&こ一〇〇ρO餌=oNも。一〇。。
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フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
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謁魯ミ慰受鼻昌。PPG。旧蔑︾なお用語の多義性につき、気’ω≡診F卜貸隷、帯ミ§∼魯へ、、転ミNR鴇コ。一︶薯﹂−卜
︵7︶O、袋●↓男量oo︻≡男9[8q胃↓9§●ミこ口。一G。島曽℃P一。①o。−一。刈O“ω雪茜男↓︵>.yb、ミヘミ、”卜塁
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︻フランス民法典二一七五条︼
フランス民法典は債務の消滅事由の一つである更改︵ぎく器9︶の款に次の条文を置く。
ω︻7目男︶∼6シ≧ミミ転ミ肉魯ミ、黛還︶昌。NP合黛ら●
肉野等ミ魯OΦ巴:一800乞≦o日oぼΦω一一のPロ。一器Oo‘P一まO引↓勇講、o
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︵9︶
が指図を行った債務者を免責する意図がある旨を明示的に申述した場合でなければ、なんら更改を生じない︵法
債務者が債権者に他の債務者を付与し、その者が債権者に対し義務を負う旨の指図︵α命猪器9︶は、債権者
務大臣官房司法法制調査部編・フランス民法典ー物権・債権関係︵法曹会・一九八二年︶一〇三頁参照︶。
ピ餌急一猪9二〇=O費蚕ρ莞一一①⊆口急げ詳Φξαoコ器曽仁o円盆蓉一R信昌曽旨お急ぴ淳①⊆﹃ρ巳ω.〇三蒔①Φ口<oあ一Φ
>拝旨謡 α ⊆ O O α ① 息 ≦ 一 砕 蝉 昌 8 帥 ω
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O、・ω三田劉∼6貸≧◎ミ篭ミ謁魯ミむ、ミ“口。ω曽Pω嚇ω一F同>F卜寝織駄叔隣ミ蝋§魯筆、魯ミ題︶コ。。 。N−G
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o DこoP二9碧コ。.謡O−謡Pも℃﹄。。幽09併せて、柴崎・前掲﹁フランス法における指
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。 ︾コ。.一㎝9。
︵10︶
図︵象一猪讐一9︶概念﹂八九∼九〇頁参照。
︵n︶ O、舞.r塁塁7選。亀卜噸コ。まOo9ωこOP一翻雪碧ω一ンF男曽S6卜≧ミミ、執ミ肉魯ミミ受魯づ。一ρP9災9こ
の点では、保証︵8旨δコ器ヨ①筥︶または自律的担保︵窓轟葺8窪88ヨΦ︶に近づく︵この点につき、ω豪[男
65
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法学研究75巻9号(2002=9)
。Oo
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。“松岡久和﹁保証論﹂法時六六巻一二号一〇一∼一〇二頁︵一九九四年︶、柴崎暁﹁請求払補償の原因、自律性
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︵℃匡冒℃①ンOミミ§ミミ鳴ミ康晦ミ§ミ暗。うミ寒§oミ塁o。。8こ口鼠oるOOρp。G。伊℃Pω①−ω8コ。.○。零−o。O。
および濫用﹂山形大学法政論叢一四号︵一九九九年︶五六頁注13114など参照︶。
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︵12︶ O︾ω雪>田z夢§.ミこコ。謡し
︵13︶ G、§●ω一≡男︶トΩ≧ミミ賊ミ肉魯ミミミ魯。。。も●ω旧ω↓夷R︵中ン菊○望zu︵頃●︶9ω2男︵[●︶.Oミ耐ミ∼§。。、
“肉禽言鰹職惹\ミ﹂。巴←一8ρ口け。ρ昌。○。O−一も’㎝。
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4
︵
1︶ O︾一九世紀の判例・学説につき、気’=鵠男↓もやミこ昌。。,一〇ω山竃曽薯﹂認−匿99=↓当↓︵=窪包丸ミ鳴
〇ρOP一Goω山Qo①●“∼、9
ミ曽コ。。。匿O−一〇
︵15︶ O︾ω三[男.S6卜≧ミ匙篭ミ謁魯鳴、、亀ミ曽口。鴇.PP
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︵16︶ O>ω一7F葵曽S−Oト≧ミミ、凡ミ肉魯ミ、、亀還w口。、蛤−G
︵冨貰o︶ミミ鳴ωo⊆ωOo日。﹂冒ぎ一89望8。一●$Oは被指図人とされた債務者を欠いてなされた念一猪呂9号R盆亭
︵17︶新たな債務者の介入を欠いた場含、デレガシオン︵支払指図︶以外の法的性質決定がなされる︵国F晃.
8を債権譲渡と性質決定すべきであるとしている︶。なお一六九〇条二項は、債権譲渡につき被譲債務者の公正証書
が予想される︵気。ψ葺男、∼6ト≧ミミ帖ミ肉魯ミミミ︶昌。鴇曽P一〇︶。逆に債権譲渡につき、﹁一六九〇条にいう
による承諾が送達に代わるとするので、公正証書による承諾がなされた場合、その法的性質決定は困難を極めること
﹃公正証書による承諾﹄は、対債務者との関係では私署証書でもよいとする考え方が、一九世紀の後半にはすでに通
説として確立していたと見ることができ﹂、﹁ヴァレット以下の学者はそれぞれに私署証書による承諾を一種の支払約
束や支払保証のごとく構成していたことに注意しなければならない﹂との興味深い指摘が存する︵池田真朗・債権譲
渡の研究︻増補版︼︵弘文堂・一九九七年︶三一〇∼三一一頁、併せて七二頁参照︶。またこの点に関連して、我が民
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フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
法典四六八条一項の債権譲渡における異議を留めない承諾による抗弁切断効について﹁フランス法の原則に照らせば、
このような抗弁制限の効果は指図にこそ認められるべきものであって、債権譲渡には認められない。したがって本条
の効果を理解する上で、参照すべきなのは、むしろ指図の構造であろう﹂との指摘︵柴崎・前掲﹁フランス法におけ
る指図︵急辰淫江9︶の概念﹂九三頁参照︶も示唆に富む。
︵18︶ 且剛い在︵M︶参7昭川。
︵19︶ 菊Φρ.圏甘=一.一〇
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Q .露﹂。N零ミミ曳国.O曽ωo口⇒o#Ωく二器⇒o<’一〇〇㊤O
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︵20︶ O、巽。o
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︵21︶ O、痩9ω一7目男曽S−O卜≧ミミ“ミ肉へ唱ミ、、黛、、鼻コ。Go一︶P一ρコ。9。o
O 一9ω二〇P圏9ω。二≦ヒ>F田①侍>︽訴チ◎博.亀∼:
旨“ら山N“90P一N①G
QI園O合P。旨㎝ρOP冨①①1園①コ無ら。
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︵22︶ かつてはデレガシオンの中にコーズ︵8⊆器︶から独立したいわゆる﹁抽象的行為︵零9ぎω霞鉱け︶﹂を見出す試
みも存したが︵気。Oζ問甕↓︵=窒邑“b曳ミらミ泰鴨織霧もミ耐ミ、ミ鼻NΦ8・﹂露倉O巴δ斜⇒。、一刈①−一ミもP器O山遭旧
。もす認①−躍O︶、今日的には支持されていない︵気巽あ巨目F∼6卜≧ミミ凡ミ謁魯ミ嘗、ミも。ooPも﹄9
い>男○⊂ζ胃︵O﹃ユωロm口︶鴇卜竈選辱、ミ執ミ胡㌦ミ、ミ避黛箋勘、㌔、蔑。。bミ¢ミミ塁§さ、ミ、ミ、、融︶9かω①ゆO&8⊆鉾α鋤o身一9
一〇①○
。も。旨○
些FヲF卜匙織蔑へ偽ミ蝋ミ軸魯貸魯ミミ︶P。一認w℃P一躍−窃9ζき些[田雪︾壱霧︶ミ。9貸コ。園O曾P刈お旧魁ら︶。ビリ
オーは抗弁の対抗不能を﹁契約の相対効︵o睦9おξ葺号ω8旨轟邑﹂によって説明する︵些F舅ごト亀隷叔偽ミ、§
。。︶
o890
爵ミ簿ミ亀︶旨。.認一Φ一ωこもPG
ωり同田刀Rい国9雨↓↓即o唱’亀、こp。一ω“POP一〇刈㎝山O刈9無へ。
ogP謡二≦詫>冨田卑>イz誘曽◎唱。町、こo。旨OトPミ合↓男罵曽
︵23︶ O、舞・ω一7目男鴇∼−O卜≧ミミぎ、訪駄bミ、、禽、§冨。o
︵24︶ O、。竃き>冨田o件>イz財︶ミ5亀卜
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法学研究75巻9号(2002:9)
︵25︶ ビリオーは、第三者の認識︵擬制された認識も含む︶を対抗の実効の要件とするデュクロの対抗の一般理論
︵気.U¢ρ8︵ぎ獣y卜、選遠旨ミミ駄︵肉旨ミ栽、、ミ鴨ミ駄ミ贈偽騨野ミ驚ン匪σ響◎震一な韓.嵩PU巴一〇N﹂Ooo“︶を批判
し、認識は常に対抗の要件とされるわけではないと主張する︵気●O臣。。ゴz︵脳●︶曽レ尾z︵O巨︶魯聾F一君︵冨●y
目、ミ織辱亀、亀蔑トト塁鳴詳冴§8ミ、ミ﹄。8こいの∪シ一8合コ。.ω○。一山o
。ドOP畠刈山G。c
G ︶。認識が無関係である場
合の一例として挙げられているが急慰懸鉱9号R魯丙oであり︵づ。G。。
。 “もPホO−濠O︶、ビリオーは﹁第三者の認識
しなければならないが、契約は第三者に作為不作為の義務を負わせるわけではない。しかしながら契約が第三者に損
は権利の創設︵R雷獣3α、仁づ身oごの場合には要求されない。急一猪呂9号o誌琶8および呂2一呂自8ξ
習嘗三が特にその場合に該当する。というのは第三者の地位は変更されていないからである。第三者は契約を尊重
る︵コ。GQOω曽Pホ“︶。
害を及ぼすならば、第三者は霧二自冨三一窪斥をバイアスとして契約を廃罷することは可能である。﹂と総括してい
一一一−一一ρ=。曽♪P一①OD
︵26︶ O、巽●ω一葺男︶∼6卜≧ミ爲篭ミ需魯ミ、禽ミ、コ。認.P一90◎ミ、鱗O、巽.寓︵田とつ。曽選。気、こコ。−。一お山ミ︶℃P
︵27︶ O、簑,ω一葺男k8気∼・
譲渡特例法、ダイイ法等︶などによって、債権譲渡が投機的ではなく健全な担保手段として発展することを想定する
︵28︶ ただしこの分析はあくまでも債権譲渡︵担保︶の実務の現状を踏まえたものであって、日仏の新たな立法︵債権
ならば、本文中の債権譲渡とデレガシオン︵支払指図︶の対比は意味をなさなくなるであろう︵気.一塁塁7、象
告︶﹁金融機関を当事者とする債権の譲渡および質入れーフランスにおける最近の動向﹂金融法研究七号五八頁以下
ミ。︶。フランスのダイイ法︵rgO毘才︶につき、池田・前掲債権譲渡の研究三〇七∼三〇八頁の他、山田誠一︵報
︵一九九一年︶、同・金融法研究・資料編︵6︶五〇頁以下︵一九九〇年︶など参照。我が国の債権譲渡特例法につい
ては、池田真朗・債権譲渡法理の展開︵債権譲渡研究第二巻︶︵弘文堂・二〇〇一年︶七三頁以下など枚挙に暇がない。
oO山G
1一ωρOP一し
o9災9
︵29︶ O、翁●ω一≡爵鴇∼6卜≧ミミ蔚、肉魯ミ、魯奔⇒。、,①“−①PP一〇−N廿卑FヌF卜亀隷、魯ミ凡ミ噛魯貸簿ミ“コ。・。誌①
︵30︶ G、巽・℃5呂9雪閑弓男プ息鼠O貰ω≡島F∼6卜≧もミ嵩ミ肉魯ミ、ミ、ミ︶コ。①POPお−8’なおω雰胃7零︶9召
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フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
Φ一甲浸葵もや町︾コ。O一も.昭は﹁デレガシオンは被指図人の約務を受取人が受諾したときにその効力を生じ、共通
法にしたがって第三者に対抗可能となる。さらに受取人の被指図人に対する直接の権利の対抗によって、そのときに
・OρO。ワ箪■ドNミは﹁デレガシオンの受諾のときに、支払指図された債権およびその付加物は
被指図人に対する債権は指図人の財産を構成することをやめ、それによって後になされた債権譲渡や差押えは無駄と
なる﹂とする。
指図人の債権者の共同担保を構成することをやめ、受取人の特別担保すなわち排他的担保となる﹂と説示する。
︵
3︶ 身oP一N欲≦﹂○
1
と指摘する︵6︾ω⋮田劉∼6卜>ごミ蔑ミ謁魯ミ様蔑還・コ。①9戸8︶。
︵32︶ シムレールは、そもそも概念の混同は、︽獄鼠覧二2号R盆コ8︾という表現が用いられたことから生じたのだ
︵33︶ O、巽。ω塁ヨz↓︵Oげ︶の辞一夷旨2寄−即£ozz困男国︵℃.︶︶Ooミ奉魯織、黛、ら勘、幾︶、ミ∼Rぴト斗、卜塁らミ∼、ミ、。。災
N塁もミ尉ミ、ミ。り.O畦O・[鎚四益①9菊.零誕o戸NΦ盆こ一〇器︶>目毎ξ菊o⊆ωω$F昌。一〇NドP一〇ド寓夷↓ゴ℃ン憂>g
9㍉塁↓>N曽ob薗隻、:口。蕊PPおOo“ミら。
。≒曽Pεおは﹁潜在的な存続︵ω竃≦のξ8夏の︶﹂、堕FヌF卜隣
︵
3︶ ↓男鼠ゆ9≡葵R[遷島自劉§・町卜﹂昌。一〇
5
︵34︶ G>Q
o毫臣知∼6卜≧ミミ、∼ミ肉魯ミ、、蔑、、♪o。①8も。N9
隷叔晦ミ、§詳ら鳳ミN舞雷。曽鱈薯●圏ヤ曽卸さ・肉魯。職き魯ゴ昌。轟P薯。㌣①は期限の付与による﹁中和化
oPミミ肉]≦震oω≡冨三〇。8ー㎝刈一丸ミ誉
︵36︶ O◎ミこ一①鋤≦.一㊤09boミト亀∼・﹂<︶昌。旨O“∼O℃Oρ8ρ戸認①O
︵尾暮轟房簿一9︶﹂と説明する。
寓四NΦ餌⊆α●
Oぼ巨壁昌一鋤霞〇一﹄ヨ9旧O●霧ωoヨヨ。器鉾も富薗[鋤⊆ヨ9>︽3碧U9融コo諺一8ρ鋤雰ω禽Oo一.一200壷o富‘U①巳ω
︵37︶ q●霞ンヌ9田卑>艶け。。︸選。ミ,も。昌零も﹄ミ’ラルメは﹁処分不可能性︵ぎ象省o巳σ旨畝︶﹂という概念で説
明する。すなわち﹁指図人の債権は受取人に移転するわけではないが、デレガシオンには指図人の財産の中における
当該債権の処分不可能性が包含されている。かかる処分不可能性は、法律によって認められるものではなく、デレガ
シオンの観念に内在的なものである﹂と︵気●r葵○≡胃曽ミミ偽ω〇二ωOoヨこ一①簿≦﹂8ρP㎝お︶。ビリオーは﹁契
約の相対効︵Φ睦9お5葺α霧8日轟邑﹂によって説明する。すなわち﹁二つの債務︵〇三貫窪ご窃︶は存在するが、
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法学研究75巻9号(2002:9)
受取人の排他権︵一。普9ぢ蓉ごω5が被指図人の対人的な約務︵窪醤鷺ヨ①耳需あ9需一︶には及んでいる。しかし
些F一>“ミミ鴨ωo=ωOo日こ一〇餌≦﹂8ρも■ωお︶。
指図人はその約務に対して権利を有しておらず、その結果、指図人の債権者も同様に権利を有していない﹂と︵気。
︵39︶ ○︾Z田○畠り§・気、こも.胡’
︵38︶ 一九九六年判決以前のものであるが、象.一塁望7§・ミこ昌。鴇9℃P一8山竃.
融ミ趨糞刈①8・も巽肖<①ω空8ρ一。。P匡o筥。ぼ①ω辞一g9も。一。。も﹂。。聾災ら。
∩︵写。ント袋◎ミ魯辱黛、織言きト㌧§﹄鴨、魁ミ㍉しり聴ミ舞︾ヘミ脳亀敬
︵40︶ O、巽’ζ>N塁ε︵=こ一●Φけ匂,︶90臣巽。
︵41︶ O、巽,ぴ国爵>7§。亀卜︶昌。旨ρP一㎝Oo旧職ら。
︵42︶ 9磐。るO泳o﹂漣8U﹂O“oo﹂①9脳O℃一濠oo﹂一﹂一ω一︶&Gり”菊き巳O蝉<㊤霞oo●
︵43︶ 本来的には﹁同意︵8霧①日oヨ①耳︶﹂すなわち新たな債務負担の意思表示が必要であろう。本件事案の中では、
﹁支払指図を承諾する︵餌8Φ夏段σ窓慰悪試9︶﹂と同時に、﹁受取人たる債権者への支払を約束する︵ω・o轟譜Rψ
D冨二窪二2R雲図o鳳鋤9一Rω急一猪簿巴おω︶﹂立思思を形成している点が重要だと思われる。
09
借人を借入金返済の債務者として付与するケース、さらに複雑なケースとして、不動産建築の融資に際して、賃貸借
︵44︶ さらにZ田○苗ご§。ミこ冒P謡−認は、不動産の取得の際に資金の提供を受けた貸主に対して当該不動産の賃
されるケースを取り上げている。
の予約または将来の建物の賃貸借による既に特定されている将来の賃借人︵一〇8琶冨賞ε﹃急捗こ窪象◎が付与
9萄鴇>N︵℃F︶曽bこ無ら執蔑卜卜騎。う尋、ミ跨鴇卜匙bミミ箒、蔵むミ∼鳶忌Φ盆二ωマo︾♂おOo8コ。謡♪マ認S昌9①︵一︶“ω一ン目葵
︵45︶ この判例の結論については今日異論は存しない。︵気巽。多き旨プ§。亀、こPミ咽冨夷譲︵ρン肉自釜5︵マ︶
︵℃巨︶90膨田禺8臣︵℃Fyb、禽、竃竃卜卜塁慧\ミ勢︶卜匙ミヘミミ織融ミ∼ミる。8二〇巴一〇NるOOρ口。おNも’爲ρコo併①
一一乳ら●なお三年︵マイナス一日︶の期間の起算点については、本判決は不動産差押えの謄記︵霞睾の鼠冥δコ号5
ω巴巴Φ冒日3≡驚①︶の時点とする。今日的には支払催告の公示︵2窪8ぎ口α信8日eき血①旨o日︶の時点となろ
亀、こPミ鴇口08一P災ら︶Q
う。この点については判例・学説が一致しているとされる︵9チ葵09&勉ωo霧Ω<。NO獄ρおミ脚Z曼︶話↓曽選。
70
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
∪ン︵甲o↓︵]≦一〇冨一︶‘卜匙ミヘミ、亀欺融ミ聾§一〇〇
〇一.℃¢明︶戸に9
G、、Zお○旨ゴ◎b。隻、こO。お9ωo寡○導口o毎一一9
0︾ゆoご↓ゴ男ψ選。竃卜、コ。一ρP吟
賃料支払指図の事例ではないが、気象G登﹄・。る血ひρおo。HU■。。ド濠釧ぎ5﹄霧ε霧家窃ぼΦ●
O、。ω〇一月目葵.選。亀、こ昌。=︶P“’
﹁支払指図﹂と異なり、﹁弁済指定︵ぎ98ぎ⇒号o巴。ヨ①暮︶﹂においては第三者︵第三債務者︶の債権者に対
︵債権者の第三者に対する債権︶は発生しない︵気900一葺男‘卜9≧ミミ、、ミ需魯ミ、鷺ご貸p。謡︶P
存する。
権の独自の担保化を阻害し、債務者・設定者が、新たな融資を受け、更生を得る機会を奪ってしまっているとの指摘も
︵価値権性・非占有担保性︶を大幅に改変してしまってよいのかとの根本的な疑問も提起されている。さらには賃料債
る抵当不動産の担保価値の下落という一過的な異常現象に対処するために、民法典が本来予定していた抵当権の特質
いるといえよう。だが同時に既にその実務上の弊害が指摘されているだけではなく、これによってバブル経済崩壊によ
判例法理については、バブル経済崩壊後の金融実務の要請に正面から応えたものとして概ね肯定的に受けとめられて
﹁① 抵当権の物上代位を強化し過ぎているのではないか?
ω それでは本稿冒頭の我が国の判例法理に対する二つの疑問に再び立ち返ろう。
四 結びにかえて1日本法への示唆1
池田・前掲債権譲渡の研究第一部第一章第二章、特に四一頁、八八∼八九頁参照。
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②将来の賃料債権の包括的処分を制限なく有効かつ対抗できるとしてよいか?
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法学研究75巻9号(200219)
賃料債権は確かに担保不動産とは独立した財産権︵債権︶には違いないが、本来的には不動産の収益︵果実︶を前提
賃料処分︵譲渡・差押・質権設定︶は、一定の範囲を超えた場合、不動産自体の価値を奪ってしまうものであるから、
としたものであって、不動産の支配から完全には切り離すことはできないはずだとの疑問である。すなわち、包括的な
不動産自体の処分行為として取り扱われるべき性質のものであり、一定の範囲を超える賃料債権の処分については、賃
︵1︶
貸不動産本体の物権的処分に対抗しえないとすべきであるとの指摘が有力になされている。﹂
さらに立法論もいよいよ活発に展開されるようになってきた。
﹁周知のように法制審議会の担保・執行法制部会は、平成一四年四月に﹁担保・執行法制の見直しに関する要綱中間
試案﹂︵以下﹁中間試案﹂︶を公にしたが、そこでは﹁抵当不動産の収益に対する抵当権の効力﹂に関して、﹁㈲抵当権
の実行に係る手続として強制管理に願するものを設けることとする場合において、その内容をどのようなものとする
か﹂、﹁㈲抵当権の実行に係る手続として強制管理に類するものを設けることとする場合において、抵当権に基づく賃料
に対する物上代位の在り方の見直しをする必要があるか﹂を検討するとして、複数の案が併記されるとともに、﹁後注﹂
として﹁不動産の賃料に対して抵当権の効力が及ぶことの当否自体についても、なお検討する﹂との留保が付されてい
る。そこでは﹁強制管理﹂類似の制度の導入と同時に、賃料債権に対する物上代位に関する判例法理の見直し、ひいて
︵2︶
は賃料︵収益︶への抵当権の効力自体についての再検討が示唆されている。﹂
⑭ これに対して本稿で検討したフランスの枠組みは、我が国の判例法理が、﹁賃料債権への物上代位﹂によ
る抵当権の強化という極めて単一的な発想によって解決を図ろうとしているのと対照的に、おそらくその歴史的
な議論の蓄積ゆえに、複合的・重層的であった。再度、フランス法の枠組みを整理しておこう。
︻フランス法の枠組み︼
①詐害的賃料処分に対する法規制
72
フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
AH詐害行為取消権︵鋤&3B急讐莞︶にょるフロード︵中雲号︶ を要件とした個別的・例外的な法
規制
B”不動産公示︵2び膏譲8蓉一驚①︶による画一的な法規制
②賃料債権担保の実務
ー担保としての賃料支払指図︵無一猪呂9号一〇希お①昌鴇轟注。︶
以上のフランス法の枠組みは、我が国の解釈論・立法論にとりきわめて示唆に富むものと思われる。それでは
以下、本稿のフランス法研究が我が国の解釈論・立法論に与える比較法的な示唆を整理しておこう。
ω まずは抵当権による賃料債権への物上代位を無条件に肯定し︵平成元年判決︶、抵当権に基づく物上代位が
賃料債権の包括的譲渡に対して優先するとし︵平成一〇年判決︶、抵当権の強化︵物h代位による収益回収の強化︶
を図ろうとする我が国の判例法理に対しては、既にバブル経済崩壊による抵当不動産の担保価値の下落という一
過的な異常現象に対処するために、民法典が本来予定していた抵当権の特質︵価値権性・非占有担保性︶を大幅に
改変してよいのかとの根本的な疑問が提起されているところであるが、フランスにおいて抵当権優先説を採用し
た一八一三年の破殿院判決が次第に先例的価値を失って行ったという歴史的事実は、我が国の判例理論が必ずし
も絶対的ではなく、将来的には判例変更も視野に入れた判例法理の見直しが検討されるべき余地の存することを
︵3︶
示唆するものと云えよう。
㈹ 仮にこのように賃料債権への物上代位に関する判例法理が見直されるべきであるとするならば、次いで、
フランスにおける詐害的賃料処分に関する法規制のあり方は、我が国の解釈論・立法論に次の二つの示唆を与え
る。
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法学研究75巻9号(2002:9)
④ 解釈論上の示唆
詐害的な賃料処分については、三九五条但書の解除制度のような特別の規定が置かれていないので、その規制
は﹁フロード︵詐害の意思︶﹂を要件とした個別規制がなされるべきであろう。そのための解釈技術として、法諺
四条︶の転用論がきわめて有用であるように思われる。またこの個別規制は、次の立法による画一的・客観的な
︵区諾。︶、原則︵質ぎ9需︶自体に法源性を認めることを通例としない我が国においては、詐害行為取消権︵四二
︵4︶
法規制によって不要とされるものではない。
︵5︶
◎ 立法論上の示唆
とはいえ﹁フロード︵詐害の意思︶﹂を要件とした個別規制では不十分ゆえ、立法による画一的・客観的な法規
制が必要であることは言を待たない。フランス法の基本的な発想は、長期にわたる包括的な賃料処分は不動産の
価値を大幅に奪ってしまうものであるから、物権の処分と同様にそれを不動産公示︵謄記︶の対象とすることに
より不動産信用や取引の安全を確保すべきだとする点にある。ただすべての賃料処分を公示の対象とすることは、
不動産所有者の使用収益を過度に制約することになるので、私的な合意の自由の尊重の要請も同時に確保する必
要がある。そこで線引きを一定の期間︵三年あるいは一年︶により政策的に行い、その範囲を超える期間に相当
する賃料処分は公示︵謄記︶なくば、抵当債権者・物権取得者に対抗できないとした。このような法規制の方法
は我が国の法改正論議においても参酌されるべきであろう。
ハ ㈹ そしてさらにこのような立法による法規制は同時に、一定の範囲︵三年あるいは一年︶内における、所有
者H抵当権設定者の自由な賃料処分︵担保化︶を保障する仕組みとなっている点を看過してはなるまい。我が国
の判例法理、特に包括的な賃料譲渡に対する抵当権に基づく物上代位の優先を認めた平成一〇年判決に対しては、
設定者による賃料債権の独自の担保化を阻害する結果となっているとの批判が有力である。仮に我が国の判例法
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フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
理の見直しが行われるとするならば、それは抵当制度とは別個の枠組みで賃料債権の担保化を可能とする仕組み
を実務に提示しつつなされる必要があろう。この点については、フランスにおける賃料債権担保化の実務がきわ
ハ こ
めて有益な資料を提供しているように思われる。
フランスにおいては、抵当債権者が抵当権の効力とは別個の枠組みにおいて、抵当不動産の賃料を補充的な担
保にとるという金融実務が行われており、そこで用いられる構成が﹁支払指図︵息一猪呂9︶﹂であった。﹁譲渡
︵8裟3︶﹂構成と対比するとき、﹁支払指図﹂構成のメリットとしては、今日的には、①抗弁の対抗不能、②民
法典■ハ九〇条の要式履践︵送達・公正証書による承諾︶の回避などが想定されるが、①については賃借人に著し
い不利益を及ぼすおそれがあるので、契約条項による適正化が行われているところであり、また②についても、
債権譲渡の要式が緩和された我が国においては︵民法四六七条︶、そのメリットは既に半減しているとの見方もで
きなくはない。よって我が国においても、賃料債権担保は﹁支払指図﹂によってなされるべきとの短絡的な主張
はやや説得力を欠くように思われる。しかしながら、我が国の債権譲渡担保がいわゆるサイレント方式による
﹁危機対応型﹂の担保として用いられる傾向にあることと対比するならば、フランスのデレガシオン︵支払指図︶
︵8︶
が、賃借人の同意︵抵当債権者への支払約束︶を要件とするいわば﹁正常業務型﹂の担保である点は、我が国の実
務のあり方に一石を投じるものではなかろうか。
㈹ 本稿において筆者が意図するところは、我が国の解釈論・立法論を検討する前提作業として、不動産賃料
の処分規制および担保化に関するフランス法の状況を客観的に紹介することに尽きるのであって、それに基づい
て具体的にどのような解釈論・立法論を展開すべきかは、既に本稿の範囲を超えた課題であると云えよう。にも
かかわらず本稿ではあえて解釈論・立法論のいくつかの方向性を模索してみた。詳細については個々の問題点毎
に別稿を草して具体的な議論を展開させたいと考えている。
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法学研究75巻9号(2002:9)
国における近時の解釈論・立法論を踏まえて︵一︶﹂法学研究七五巻七号四∼五頁、九頁注︵10︶︵n︶、三三頁注︵49︶
︵1︶ 本稿﹁フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷および賃料債権の担保化の実務ー我が
︵2︶ 同五頁、一〇頁注︵1
2︶、三四頁注︵0
5 ︶参照。なお校正段階で、中問試案に対する各界意見が公にされた他︵谷口
︵二〇〇二年︶参照。
四五頁以下など参照︶、内田貴他﹁抵当権法改正中間試案の公表﹂ジュリ一二二八号︵二〇〇二年︶一八一頁以下に
国恵他﹁﹃担保・執行法制の見直しに関する要綱中間試案﹄に対する各界意見の紹介﹂金法一六五一号︵二〇〇二年︶
接した。後者では、三七一条の改正で差押後に抵当権の効力が法定果実にも及ぶことが明記されるとともに︵二〇二
頁︶、賃料に対する物上代位を全廃することが提案されている︵二一〇頁︶。さらに三九五条の改正において﹁当期及
び次期に関するもののほか賃料の前払い又は賃料債権の処分をもって抵当権者及び買受人に対抗することができな
い﹂︵ニニ一、≡]二頁︶としている点が注目されよう︵後注︵6︶参照︶。
︵3︶ 抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえた場合にも、敷金の充当によって賃料債権は消滅すると
した最一小判平成一四年三月二八日民集五六巻三号六八九頁、賃料債権に関するものではないが、抵当権の物上代位
の目的となる債権に対する転付命令は、第三債務者への送達までに抵当権者による当該債権の差押えがなされない限
成一〇年判決との関係が議論されるべきであろう。
りその効力を妨げられないとした最三小判平成一四年三月一二日民集五六巻三号五五五頁などは、かかる視角から平
︵4︶ 拙稿﹁現行民法の買戻制度における賃貸借の保護と排除−民法三九五条と五八一条一項との比較考察︵二・完︶﹂
法研七二巻二号三八頁以下︵一九九九年︶参照。三九五条但書の立法過程において明らかにされたように、四二四条
転用論は起草者・梅の考え方でもあった︵同四一頁︶。
︵5︶ 視点を転ずれば、近時の三九五条︵但書を含めて︶の改正論議においては、詐害的賃貸借の個別規制︵すなわち
四二四条転用論︶を踏まえた議論がなされるべきと云えよう。
六三条参照︶、抵当不動産の売却の時点を基準として、一定の期間︵例えば当期及び次期︶を超える処分については、
︵6︶ 詐害的な賃料処分に対する立法による画一的な法規制のあり方としては、ドイツ法を例にとり︵我が国の破産法
一律に効力を生じないあるいは抵当権者・買受人に対抗できないとする方法︵占部洋之﹁ドイツ法における抵当不動
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フランスにおける不動産賃料の詐害的な処分に対する法規制の変遷およひ賃料債権の担保化の実務(二・完)
産賃料の事前処分︵三・完︶﹂大阪学院大学法学研究二五巻一号︵一九九八年︶一八七頁、内田他・前掲﹁抵当権法
改正中間試案の公表﹂二二二頁など参照︶と、本稿で分析したようにフランス法を参考にして、一定の範囲︵一年あ
るいは六ケ月︶を超える賃料処分を不動産公示の対象とするという方法とを対置することができよう︵気●一牽夷臨
勾○⊆ωω$F署■窃山O︶。長期にわたる賃料処分を処分行為として不動産公示の対象とする考え方は、一方では不動産
︵>.︶.b塁R。り。。凡ミNGリミQミミミ嚇R。。匙ミミb魯銃魯、ミミ、G。ミ、ミ・ミ麸箋、§N警、ミ恥︶9αω①℃巽一9一〇一ω﹂>同毎霞
公示による取引の安全を確保しつつ、他方では設定者︵所有者︶の財産処分・担保化の自由を確保できる点でより優
れているように思われる。
︵7︶ この点につき、アメリカ法における不動産収益の担保化をめぐる議論との対比は有用であろう︵青木則幸﹁アメ
リカ法における賃料譲渡制度の現状−不動産収益の担保化に関する制度的研究に向けて﹂早稲田大学大学院法研論集
の展開を中心に︵一︶∼︵五︶﹂同九五∼一〇〇号︵二〇〇〇∼二〇〇二年︶など参照︶。
九四巻一頁以下︵二〇〇〇年︶、同﹁アメリカ法における賃料譲渡制度の史的考察ーカルフォルニア州における法理
務者として付与するケース、さらに複数な例として、不動産建築の融資に際して、賃貸借の予約または将来の建物の
︵8︶ この点に関しては、不動産の取得の際に資金の提供を受けた貸主に対して当該不動産の賃借人を借入金返済の債
賃貸借による﹁既に特定されている将来の賃借人︵一〇8蜜一お噛日ξ急寅こ雪二験︶﹂が付与されるケースを取りヒげ
ているニボワイエの論稿は示唆に富む︵気■ZおS鴫︵ζ貰8−一讐おン⊂需芭仁ω叶醤二2α=8旨Φ筥号身o詳含∼・二
ミ賊魯ミ∼ミミ、ド一8PO鋤=oN︶O戸目〇一ω●︶。
αΦω織団巴8ω一[四泳臥巻二〇⇒α巴oo象巴﹃ρ餅9おαo巻轟葺一p、こ。。驚ヘミ翁ミミ黛、警ミミミ貯ミ◎b賊ミ轟ミ。。貸ミヘ
︵9︶ 債権譲渡以外にも、代理受領、振込指定、第三者のためにする契約など他の担保方法との比較考察が必要となろ
う︵この点につき、ら、・一国︵肖と。6︵Uoヨぎδ⊆oント霧晦霞、ミ嚇篭塁らミミミミミミミ、麩。。、顎へ鳳ミミ傷‘OO=9二〇⇒O﹃o津O霧
象︷巴おω9αΦ一、窪q8ユωρ国8冒oヨ一8﹂㊤Oo9㍉塁一︾zo︵国ヨヨき器一︶遭肉。。吻ミ的ミ、ミ旨寓聴ミ脳ミ∼冬bミφミ軸ミ叙ミ∼。。
〇 .一〇〇﹄“一89ミら︶。
Nミミミミ、織ごミむミ㌧ミ。ω一び。融・冥ぞ少けG。一。
︻追記︼ 本稿の一部は、そもそも平成一一年三月に慶鷹義塾を退職された新田敏先生の本誌記念号への掲載を予定した
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法学研究75巻9号(200219)
して以来、大学院の演習、先生ご主催の財産法研究会などを通じて、多岐にわたってご指導を賜ってきた。思えば筆
ものであったが、筆者の在外研究と重なり、それを果たすことができなかった。新田敏先生には筆者が大学院に進学
職を祝しかつ学恩に感謝しつつここに改めて本稿を捧げる次第である。
者が賃貸借法理に興味を持つようになったのも、財産法研究会での報告が契機であった。遅ればせながら先生のご退
なお本稿は、平成一〇年度慶鷹義塾福澤諭吉記念基金に基づく在外研究の成果の一部である。
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