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配付資料:C 「公正・公平な評価のための基準と合理的配慮」
平成 28年度 全国障害学生支援セミナー 専門テーマ別セミナー【3】分科会2 (2016.12.1) 公正・公平な評価のための 基準と合理的配慮 竹田一則 筑波大学 人間系 障害科学域 ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター 五味洋一 ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター アクセシビリティ部門 アクセシビリティ部門 本日の内容 今あらためて、大学における「合理的配慮」とは? 障害のある学生に対する「公正・公平な評価」とは? 「公正・公平な評価」を行う上での課題 障害者の権利に関する条約における 「合理的配慮」 ・平成18年12月 ・平成19年 9月 ・平成26年 1月 ・平成26年 2月 国連総会にて採択 (2006) 日本署名(賛同) (2007) 批准(2014) 発効(2014) 障害者権利条約における合理的配慮 第24条 教育(抜粋) 5 締約国は、障害者が、差別なしに、かつ、他の者と平等に高等教育一般、職業訓練、成人 教育及び生涯学習の機会を与えられることを確保する。このため、締約国は、合理的配慮 (reasonable accommodation)が障害者に提供されることを確保する。 ※第2条 定義(抜粋) 「合理的配慮」とは、障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又 は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合にお いて必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。 平等な機会を与えるために障害者に与えられるもの 障害者基本法の改正における「合理的配慮」 ・障害者権利条約の理念に沿う、条約の締結に向けた国内法の整備 ・平成23年8月 改正法施行 (2011) 第4条 差別の禁止(抜粋) 何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の 権利利益を侵害する行為をしてはならない。 2 社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、か つ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて 前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ 合理的な配慮がされなければならない。 ※第2条 定義(抜粋) 一 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害 (以下「障害」 と総称する。)があるものであつて、障害及び社会的障壁により継続的に日 常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 二 社会的障壁 障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような 社会生活における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 社会的障壁の除去のために障害者に与えられるもの 障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律) ・障害者基本法第4条に規定された「差別の禁止」を具体化 ・それが遵守されるための具体的な措置等を規定 ・平成25年6月公布、平成28年4月施行(一部を除く) (2016年施行) 第7条 行政機関等における障害を理由とする差別の禁止(抜粋) 2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除 去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重 でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、 年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮 をしなければならない。 第8条 事業者における障害を理由とする差別の禁止(抜粋) 2 事業者は、(同上)…必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。 国公立大学・高専など ⇒ 行政機関等(第2条第3号) ⇒ 学校法人、学校設置会社 ⇒ 事業者(第2条第7号) ⇒ 法的義務 努力義務 (合理的配慮は)社会的障壁の除去のために必要かつ合理的な手段及び方法により、実施に伴 う負担が過重とならない範囲で行われるものであり、代替措置の選択も含め双方の建設的対話 による相互理解の中で柔軟に対応がなされるもの 障害者差別解消法基本方針 (閣議決定; 2015年2月) 合理的配慮の考え方(定義) (平成24年12月(2012),文部科学省検討会 ○検討会報告(第一次まとめ)における定義 障害のある者が、他の者と平等に「教育を受ける権利」を共有・行使 することを確保するために、大学等が必要かつ適当な変更・調整を行う ことであり、障害のある学生に対し、その状況に応じて、大学等におい て教育を受ける場合に個別に必要とされるものかつ大学等に対して、体 制面、財政面において、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの 大学における合理的配慮のポイント 【参考】障害者の権利に関する条約の定義 第2条 定義(抜粋) 「合理的配慮」とは、障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保す るための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した 又は過度の負担を課さないものをいう。 • 必要かつ適当な変更・調整を行うこと • 個々の学生の教育的ニーズに応じて提供 • 大学等にとって過度な負担ではないか≒合理的かを吟味す る必要がある 障害学生へのこれまでの支援とこれからの「合理的配慮」 より積極的な取組(メニューの提供)を妨げるも のではない 大学における障害のある学生と合理的配慮とは? 機能の障害 + 運動機能の問題・・・ 視機能の問題・・・ 聴力の問題・・・ 社会的障壁によって日常生活や社会参加に制限 を受けている人 大学においては、機能障害と社会的障壁によって入学、キャンパスラ イフや大学の提供するプログラムへの参加に制限を受けている学生 これを取り除くために必要なのが大学における合理的配慮 合理的配慮に関する留意点 大学において障害のある学生に平等なプログラム参加の機会を与えることを目的とした変更・調整 ただし、これまで(一次まとめ;2014等)は、修学上の合理的配慮に関する議論が中心 (文部科学省検討会;2012.12) (文部科学省対応指針;2016.4) 生活面、サークル活動、通学支援など周辺領域への配慮が不要ということではない 障害学生に対する「公正・公平な評価」の原則 障害を理由とする不利がある場合、評価方法を調整するこ とで他の学生と公平な条件を整える必要がある 教育目標や公平性を損なうような評価基準の変更や、合格 基準を下げるなどの対応は行わない 参考;「教職員のための障害学生修学支援ガイド(平成26年度改訂版)」 http://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/guide_kyouzai/guide/index.html 試験における配慮 成績評価においては、入学試験(センター試験)と同様の配慮で対応 ➔「読むこと」や「書くこと」に困難がある場合 ・試験時間の延長 ・パソコン筆記 ・口述試験にする ・レポートにする ➔文章を読むことが必要な場合 ・文章の印刷の仕方(文字の大きさや行間)を工夫する ➔試験時間や方法に特別な配慮が必要な場合、集中力の問題がある場合、試験中の行動 が他の受講生に影響を与える場合(例えば、試験問題を音読しなければならない場合) など ・別室受験が必要になる場合もある。 ◎他の学生との公平性も考慮に入れる ◎能力特性の検査結果等を踏まえた医師、心理士など、専門家の助言を受ける ことが望ましい。 参考;「教職員のための障害学生修学支援ガイド(平成26年度改訂版)」 http://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/guide_kyouzai/guide/index.html レポート評価での配慮 (障害特性により)自分で資料を収集し、まとまった量の文章を書 くことが期待されるレポートが苦手な学生の場合。 レポート課題は、どのような内容が期待され、どのような点が評価 されるかを、できるだけ具体的に伝える。 「レポートの書き方」のようなアカデミックスキルを、大学として初 年次教育の一環で指導したり、学習支援の部署のワークショップ や個別指導が効果的な場合もある。 参考;「教職員のための障害学生修学支援ガイド(平成26年度改訂版)」 http://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/guide_kyouzai/guide/index.html 評価方法の公開 評価方法、評価基準をシラバス・ガイダンスで、で きるだけ詳しく記述・説明する。 各授業でどのような評価を行うかは、授業選択の上 での判断材料にもなる。 参考;「教職員のための障害学生修学支援ガイド(平成26年度改訂版)」 http://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/guide_kyouzai/guide/index.html 評価における留意点 ◎成績評価においては、その授業で設定されている「学ぶべきも の」を学生が修得したかどうかが重要。 ◎決められた評価方法のみでは、障害があることによって正しい評 価ができない場合もある。 ➔文字を書くことに困難さがある場合、長文を限られた時間に書く 形式の試験では、理解度や考え方の評価ではなく、書字能力の評価 のようになってしまう。 ➔公平さに配慮しながら、いかにその学生の学習成果を評価するか、 授業担当者が本人や医師、心理士等と相談しながら最適な方法を見 つけていく(例;時間延長、PCワープロ使用許可など) 。 参考;「教職員のための障害学生修学支援ガイド(平成26年度改訂版)」 http://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/guide_kyouzai/guide/index.html 公正・公平な評価のポイント 障害名による対応ではなく、その学生の苦手なこと、得意なこと に応じた配慮を行う。 成績評価の変更・調整は、根拠資料にもとづいて行うことが基本。 評価方法に関して、できるだけ詳しい情報を事前に公開しておく (”後出し”をしない)。 合理的配慮の内容は、授業担当者と本人、専門家で協議し、妥当 性の判断については組織的判断を行う(※)。 ※教育組織を必ず含む 参考;「教職員のための障害学生修学支援ガイド(平成26年度改訂版)」 http://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/guide_kyouzai/guide/index.html 「公正・公平な評価」に関し、配慮ニーズに対し、その 合理性に苦慮するケース(想定事例1) 事例① 〔スライドで提示予定〕 「公正・公平な評価」に関し、配慮ニーズに対し、その 合理性に苦慮するケース(想定事例2) 事例① 〔スライドで提示予定〕 オーストラリア| inherent requirements 資格関連・実習を伴う科目での問題は議論になっている ❏ inherent requirements(IR)を入学前に提示する ❏ 学生入学を希望するが、障害により IRに懸念がある場合には事前に大学に相談 ❏大学と合理的調整(Reasonable Adjustment)をについて相談(臨床実習のディレクター、アカデミックリエゾン教員、 保健スタッフ、障害学生支援の専門家、学部 ) ❏合理的調整を行ってもIRを満たさない場合には、他の研究・オプションに関する情報を提供する ❏ 入学基準を満たす場合、障害を理由に入学時に拒否することは原則としてできない 適切な合理的配慮のもとで評価を行うことが大前提 IRを満たしている 入学 IRを満たしていない IR提示 入学 せず ・実習参加 ・単位取得 ・実習不参加 ・実習停止 ※事前に参加を拒否することには慎重 ※他に代替手段がないかどうかを検討 ※IRはフェアでクリアでなければならない 公正・公平な評価 ① 合理的配慮 ② プログラムへの参加 ③ 障害学生 一般学生 ※公正・公平な評価のためには、プログラムへの参加はもち ろん、①②③のすべてに適切な合理的配慮が行われている ことが大前提! 障害のある学生に対する「公正・公平な評価」 について (Take-home messages) 教育目標や公平性を損なうような評価基準の変更や、合格基準を 下げるなどの対応は行わない。 評価方法に関して、できるだけ詳しい情報を事前に公開しておく (”後出し”をしない) 「公正・公平な評価」に関する合理的配慮の内容は、授業担当者 と本人、専門家で協議し、妥当性の判断については教育組織を含 めた組織的判断を行う。 公正・公平な評価のためには、プログラムへの参加はもちろん、 履修登録からプログラムの提供段階から適切な合理的配慮が行わ れていることが大前提。