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Cognitive Psychobiology Research Group

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Cognitive Psychobiology Research Group
Cognitive Psychobiology Research Group
東京大学医学部附属病院精神神経科
神経画像・臨床神経生理グループ(CP研)
Contents
1.メンバー
2
2.研究体制
3
3.研究グループ
・磁気共鳴画像(MRI)
・事象関連電位(ERP)
・近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)
・脳磁図(MEG)
・神経心理検査(neuropsychological assessment)
5
6
7
9
10
4.研究プロジェクト
・統合失調症 こころのリスク外来・IN-STEP研究
・発達障害 自閉症スペクトラム障害・ADHD
・トゥレット障害
・気分障害 「こころの検査入院」
・双生児研究
・中間表現型研究
・包括脳データベースと支援活動
・新学術領域「自己制御精神」
11
13
19
21
23
24
25
5.関連講座の研究
・こころの発達医学分野
・ユースメンタルヘルス講座
27
29
6.学位論文
32
7.研究助成
33
8.主要業績
36
9.情報公開
45
1
1.メンバー
Members
Medical doctors
笠井清登
山末英典
荒木
剛
桑原 斉
管 心
滝沢 龍
大渓俊幸
武井邦夫
石井礼花
井上秀之
織壁里名
永井達哉
小池進介
高野洋輔
齋藤有希
岩白訓周
木下晃秀
戸所綾子
青木悠太
夏堀龍暢
里村嘉弘
多田真理子
榊原英輔
(Studying abroad
細川大雅 切原賢治)
Researchers
川久保友紀 八幡憲明
山崎修道 河野稔明 高岸治人
西村幸香
Technical experts
江口聡 下條千恵 濱田香澄
市川絵梨子
2
居石亜起
2.研究体制
Research System
■設立の経緯
東京大学医学部精神医学教室Cognitive Psychobiology Research Group (CP
研) は、もともと脳波・事象関連電位などの神経生理学的手法を用いた統
合失調症臨床研究のグループとして出発しました。
90 年 代 後 半 か ら 、 事 象 関 連 電 位 ( ERP ) に 加 え て 、 磁 気 共 鳴 画 像
(MRI)、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)、脳磁図(MEG)を組
み合わせて用いるマルチモダリティ神経画像計測を行っています。
■ミッション
各種精神疾患の脳病態を神経生理・神経画像を用いて解明することを通
じて、精神疾患を持つ当事者の診断・治療の向上などの福祉や精神医学の
発展に貢献することを目指しています。
また、日本における臨床精神医学研究ラボラトリーのモデルとなるよう
な研究体制の確立や、臨床・教育とのバランスの取れた大学研究者の育成
も大切な役割と考えています。
■研究倫理の遵守
○研究倫理規定(ヘルシンキ宣言)を遵守し、倫理委員会への申請やイン
フォームドコンセントを完全に行う
○研究における参加者の侵襲・負担を最小限にする
○個人情報の保護に細心の注意を払う
○研究費を適正に使用する
○データ解析・公表の際の不正を防止する
○当事者の福祉や医学の発展に結びつく研究デザインを追究する
○研究結果を必ず公表に結びつける責任を負っていることを自覚する
■研究体制
○常勤医師9名(うち2名海外留学中)、PhD研究者6名(常勤4名含む)、
大学院生10名、実験補助スタッフ5名(2011年7月現在)の構成により、シ
ステマティックな研究体制を確立しています。
○多施設共同研究、遺伝子解析グループとの共同研究をはじめ、放射線科、
工学系研究者、薬学系研究者、企業、外国研究室との連携も盛んに行って
います。
3
Research Group & Projects
4
3.研究グループ
磁気共鳴画像
(Magnetic Resonance Imaging; MRI)
対象:統合失調症・自閉症・PTSD・うつ病・健常者の人格特性
研究モダリティ:脳形態:Volumetric-MRI, Voxel-based morphometry,
Diffusion tensor imaging; 脳代謝:Magnetic resonance spectroscopy; 脳機
能:functional-MRI; Imaging genetics
共同研究機関:東大放射線科・東大統合生理・昭和大学・富山大学・
ハーバード大学・信州大学・横浜市立大学・東京都立松沢病院・生理
学研究所・国立がんセンター
これまでの研究実績:脳形態から代謝、そして機能に至る、静的な指
標から動的な指標を網羅したマルチモダリティーのMRI解析を用いて、
上記の様な精神疾患や人格特性といった行動レベルの障害や偏りの脳
神経基盤の解明を進める知見を見出してきました。また、より静的な
指標である遺伝子多型と動的な指標である行動レベルの問題との関連
もMRI解析を用いて研究してきました。こうした精神疾患のマルチモ
ダリティーMRI解析と遺伝子との関連を検討出来る体制を実現出来て
いるグループは世界でも限られており、これまでの研究成果はPNAS,
Annals of Neurology, Biological Psychiatryといった一流紙に繰り返し論
文掲載されています(P.32参照)。
現行プロジェクト:3テスラMRIスキャナーを用いて、マルチモダリ
ティーMRI解析とImaging genetics、更には、新たな治療薬候補物質を
用いた臨床試験を行っています。特に統合失調症の早期発見・早期治
療を目的としたat risk mental state (ARMS)の研究(P.11参照)と、自閉
症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorders: ASD)における社会性の
障害の研究に重点を置いていきます(P.13参照)。いずれのプロジェ
クトでも、新しく優れた診断法や治療法の開発など、精神障害の当事
者の方の利益に直結する研究成果をあげるための研究を行っています。
5
3.研究グループ
事象関連電位
(Event-related potentials; ERPs)
事象関連電位 (ERP; Event-Related Potential)
脳波は脳の電気活動を頭皮上からリアルタイムで測定可能な検査です。様々な精神作
業中の脳波を測定すると一過性の電位変動が出現し、この電位変動は事象関連電位
(ERP)と呼ばれ、認知過程(心の働き)と関係することが知られています。
われわれはこのERPを指標として精神疾患の病態解明に取り組んでいます。ERPの代
表的な成分であるP300やmismatch negativity (MMN)を指標とし、統合失調症やPTSDなど
の精神疾患における脳活動を調べてきました。さらに統合失調症前駆期研究においても
ERPを測定し、生物学的マーカーやリスク推定の指標となるかを検証していきます。
例えばPTSDではP300振幅が減衰し、さらに
前部帯状回の構造異常とも関連していること
を見いだしました。
(Araki et al., Neuroimage, 2005)
多チャンネル脳波計測
近年、従来よりも多くの電極を用いて脳波を測定し、ERPをより詳細に調べられるよ
うになり、現在、64チャンネルの脳波測定装置を導入して、表情認知に関連するN170や
MMNの測定を行い、さらに脳神経細胞間の同期を検討するガンマ帯域オシレーション
解析などを加えた新たな研究を進めています。
6
3.研究グループ
近赤外線スペクトロスコピー
(Near-infrared spectroscopy; NIRS)/
光トポグラフィー検査(Optical Topography)
「手軽に生きているヒトの脳の働きをリ
アルタイムに捉える事ができたら。」
そんな願いを実現させたのが、近赤外線
ス ペ ク ト ロ ス コ ピ ー ( Near-infrared
spectroscopy;以下NIRSと略)です。頭皮上
から近赤外光をあて、脳内で乱反射してく
る光を再び頭皮上で検出し、大脳皮質での
酸素化・脱酸素化ヘモグロビン濃度の変化
量を捉えることができる技術で、これによ
り局所脳血液量を推定し、測定部位の脳機
能を検討する方法論です。
NIRSは比較的新しく確立された脳機能イ
メージング技術で、他の脳機能画像に比べ
て有する特長は、1) 時間分解能が高く(0.1
秒)、2) 装置が小型で移動ができ、3) 他のモ
ダリティに比べコストも安価で、4) 簡便に
自然な姿勢で、5) 安全・非侵襲的に、時間
経過による脳活動変化を捉えることができ
る点です。一方、現時点での限界は、6) 大
脳皮質のみで、辺縁系などの脳深部構造の
活動は捉えられず、7) 空間分解能が2~3cm
程度で、大まかな脳部位を特定できるにす
ぎない点です。
NIRSは、その装置の簡便さ、非侵襲性、
低拘束性という特徴から、被検者の負担が
少なくて済み、精神疾患に役立つ臨床検査
として応用可能性が高いと期待されていま
す。
7
3.研究グループ
現状の精神疾患の診断・治療は、患者の
主観的な「体験」と治療者の捉える患者の
「行動」を指標として行なわれており、高
血圧症に対する血圧、糖尿病に対する血糖
値、癌に対する腫瘍マーカーにあたるよう
な客観的指標は今のところ存在しません。
しかし、今後、精神疾患の医療を発展さ
せるためには、精神疾患を診断し、重症度
を評価し、治療効果を判定することのでき
る臨床検査を確立することが重要な課題と
考えられています。
我々を含む日本全国7施設の多施設共同
研究の結果から、NIRS信号がうつ症状の
ある精神疾患の一部の鑑別診断補助に役立
つのではないかとして、厚生労働省より先
進医療の認可を受け、今後の実際の臨床応
用・実用化へ向けて、さらなる実証研究を
続けています。
我々CP研では、特に統合失調症(前駆
期を含む;IN-STEP研究、P.11)、気分障
害(うつ病・双極性障害;こころの検査プ
ログラム研究、P.19)、自閉症スペクトラ
ム障害、注意欠陥・多動性障害(ADHD、
P.13)に双生児(P.21)を加えて、小児・
成人を問わず幅広い対象の前頭葉機能につ
いて検討しています。これまで変化の量や
パターンに特徴的なNIRS波形が見出され
ており、精神疾患の病態解明に寄与するも
のとして研究を続けています。
新しい検討として、1)大規模疫学研究
との共同研究、2)Real-time NIRS技術で
自らの脳機能を自ら調整する検討、3)脳
機能研究の現在のゴールドスタンダードで
あるfMRIとの比較検討、4)心理社会的
療法の生物学的評価検討などにも取り組ん
でいます。
8
3.研究グループ
脳磁図
(Magnetoencephalography; MEG)
脳磁図とは?
運動、知覚、思考など様々な脳神経の活動に伴い微弱な電流や磁場が惹起されます。
この磁場を測定するのが脳磁図です。脳磁図は、脳内で生じた電流の発生源を推定す
ることが可能で、数ミリ秒単位の高い時間分解能があるため、運動、知覚や思考など
を行なった際に、脳のどの部分が中心に活動しているか知ることができます。また、
脳腫瘍や脳血管障害、てんかんなどが脳のどの部分で起きているか調べるためにも用
いられます。
どのように記録するか?
正確に磁場を計測するため、周囲の磁気の影響を受けないよう静電
遮蔽されたシールドルームで計測を行います(図1)。ヘルメット型
の円筒状の部分に306個のコイルが入っており、脳全体の活動(図2)
を捉えることが可能で、それをもとに発生源を推定します(図3)。
臨床への応用
精神疾患(統合失調症、自閉症)での脳機を測定し、精神
図1.計測の様子
活動に伴う脳内過程を探ることで疾患の脳基盤の理解や脳活
動に与える影響を調べています。また、健常双生児を対象と
した計測を通じて、遺伝子が脳機能に及ぼす影響の解明も目
指しています。
図3.記録された波形から求められたダイポール
これまでに明らかになったこと
異なる音を聞いた際に音の違いを検出する情報処理が脳
内で行なわれます。しかし、健常者と比較して統合失調症
や自閉症では異なる音に対する処理の違いが明瞭ではなく、
特に、/a/と/o/のような話し言葉と関連した音においてその
処理過程の違いが顕著であることから、統合失調症や自閉
症のコミュニケーション障害の根底には初期の聴覚情報処
理の問題があることが分かっています(図4)。
さらに、健常者において性格傾向や性別などの特性と聴
覚情報処理との関連が見られることも明らかになりました
図2.異なる音に対して記録された波形
(図5)。
図5. 健常者における性格傾向と聴覚情報処理の関係
Matsubayashi et al,. 2008
9
図4. 統合失調症者と健常者の波形
Kasai et al,. 2002 Schizopher Res
3.研究グループ
神経心理検査
(neuropsychological assessment)
神経心理検査とは
神経心理検査は認知機能を評価するための検査です。認知機能には知覚、注意、
学習、記憶、概念形成、推論、判断、言語活動及び抽象的思考などが含まれます。
精神医学の領域では、認知機能障害が、統合失調症の中核的な病態であり、疾患の
予後との関連が深いことから、臨床に役立てる目的で、生物学的研究・社会機能と
の関連研究・薬物治療の効果について、広く用いられています。
神経心理検査の実施
当グループでは、認知機能の一連の情報処理過程について、注意・記憶・思考・
遂行機能を包括的に評価できるよう検査バッテリーを組んで実施しています。
特に統合失調症発病前後の機能の変化について把握できるよう認知知能検査を縦
断的に実施しています(IN-STEP研究)。また統合失調症認知機能評価尺度の開発
研究(Cogstate統合失調症バッテリー、MATRICS Cognitive Battery日本語版)にも
従事しています。その他、発達障害児・者(自閉症スペクトラムや注意欠陥多動性
障害)とその健常兄弟(姉妹)児・者を対象に実施し、発達による変化と遺伝的素
因との関連を検討しています。
向精神薬の効果
神経心理検査
遺伝子多型
社会機能
統合失調症
ARMS
健常者
発達障害
MRI
NIRS
10
ERP
4.研究プロジェクト
統合失調症 こころのリスク外来・IN-STEP研究
(The outpatient unit specialized for early intervention in the University of Tokyo
Hospital & Integrated Neuroimaging studies in Schizophrenia Targeting Early
intervention and Prevention ; IN-STEP research)
webpage URL http://plaza.umin.ac.jp/arms-ut/
精神疾患においても早期支援・介入が
注目されており、統合失調症でも発症後
2 - 3年を臨界期(critical period)として、
重点的な支援・介入を行うことで症状・
社会機能の予後が改善するということが
明らかとなりつつある。
また生物学的にも、臨界期に側頭葉を
中心として進行性に脳体積が減少するこ
とが分かっている。さらに、精神疾患は
14歳までに50%、24歳までに75%発症す
ることが分かっており、統合失調症では
精神病未治療期間(duration of untreated
psychosis; DUP)が短いほど、その後の
症状・社会機能が良いということが分
かっている。
そうした知見を踏まえ、統合失調症の
枠を超えて、精神疾患の発症好発年齢で
あるユース世代のこころの健康を増進す
ることで、精神疾患の早期支援・介入の
みならず、予防も可能になるのではない
かと示唆されている。
当科では、2008年9月から「こころの
リスク外来」というユース世代に特化し
て対応する専門外来を開設し、精神病発
症前後の若者に対して十分に時間をかけ
た支援・介入を行ってきた。同時に当科
で行っている遺伝子・生化学・神経心
理・神経画像を組み合わせたマルチモダ
リティ研究(IN-STEP研究)を各研究部
門・機関の協力のもとに行っており、縦
断的な検討も行っている。
NHK教育テレビ「福祉ネットワーク」2011年1月12日より
11
4.研究プロジェクト
Locations
[oxy-Hb] changes
51
29
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0
-0.2
-0.4
*
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0
-0.2
-0.4
*
*
*
36
*
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0
-0.2
-0.4
Controls
*
*
UHR
情報提供および相談をインターネッ
ト で 行 い ( http://plaza.umin.ac.jp/armsut/)、都立高校への専門医派遣事業
(2010年度21校、2011年度20校)を
行っている。臨床研究として2011年3
月より「初回エピソード精神病状態に
対する包括的な早期支援・治療の多施
設 ラ ン ダ ム 化 比 較 試 験 」
( Comprehensive early intervention for
patients with first-episode psychosis in
Japan; J-CAP )を行っている。
*
*
FEP
ChSZ
(共同通信社)
12
今後は、2011年5月に開設したユー
スメンタルヘルス講座をユース世代の
こころの健康に関する相談・支援・人
材育成の拠点とし、こころのリスク外
来で医療的支援・治療を行いつつ、
IN-STEP研究で生物学的研究による精
神疾患の病態解明、客観的な治療指標
の開発を目指し、臨床・教育・研究の
拠点となることを目指す。
4.研究プロジェクト
自閉症スペクトラム障害
(Autism Spectrum Disorders)
研究モダリティ:脳形態:Volumetric-MRI, Voxel-based morphometry, Diffusion tensor
imaging; 脳代謝:Magnetic resonance spectroscopy; 脳機能:functional-MRI; Imaging
genetics
共同研究機関:東大放射線科・統合生理、昭和大学、国立精神神経センター、浜松医
科大学、生理学研究所
これまでの研究実績:他者の意図や気持ちを感じ取って対人交渉することが難しいた
めに、たとえ知的水準が高くても社会の中で居場所を作れずにいる方は少なくありま
せん。一方でミリメートル単位・秒単位で脳の構造や働きを捉える技術が飛躍的に進
歩し、この対人交渉の障害の基礎を成す脳内回路が見出してきました(図1)。こう
した脳内回路は社会性の男女差と関連する脳部位を含み、自閉症スペクトラム障害の
頻度の男女差との関連が注目されます(図2)。こうした脳内回路の障害の治療法開
発や原因解明(図3)の試みについても行ってきました。
現行プロジェクト:3テスラMRIスキャナーを用いて、マルチモダリティーMRI解析
とImaging genetics、更には、新たな治療薬候補物質としてオキシトシン経鼻スプレー
を用いた臨床試験を行っています。特に、自閉症スペクトラム障害における社会性の
障害の研究に重点を置いて、新しく優れた診断法や治療法の開発など、当事者の方の
利益に直結する研究成果をあげるための研究を行っています。
図1. 対人コミュニケーションの障害に下前頭回弁蓋部の体積減少が関与
(Yamasaki et al., Biological Psychiatry, 2010より)
頭部MRIから下前頭回の体積を弁蓋部と三角部に区分して測定しました。知的には
平均以上である自閉症スペクトラム障害の成年男性からなるグループでは、年齢や知
能および両親の社会経済背景に差が無い定型発達男性と比べ、下前頭回の体積が左右
ともに統計学的に有意に小さく、特に右半球の弁蓋部の体積が小さい人ほど模倣等を
介した対人コミュニケーションの障害が重度であることを見出しました。
13
4.研究プロジェクト
図2.女性に特有な協調性と灰白質体積の局所および脳全体での相関
(Yamasue et al., Cerebral Cortex, 2008より)
女性では男性に比べて平均的には協調性が高いことが、我々の研究、さらには欧
米での研究でも報告されています。また一方で、頭全体の大きさを分母にした時の
大脳皮質の体積は女性の方が平均的には大きい事も認められています。そしてさら
に、この協調性の男女差と大脳皮質の体積の男女差は関連することが認められまし
た。さらに、この協調性と大脳皮質の体積の関連は、脳の中では特に他者の模倣や
共感などに関わる脳部位に集中しているという結果を認めました。
図3.オキシトシン受容体遺伝子のタイプが
ヒトの社会性に関わる扁桃体の体積差に関与
(Inoue et al., Biological Psychiatry, 2010より)
自閉症との関連が報告されている遺伝子「
オキシトシン受容体遺伝子」とMRIから測定
した脳部位の体積との関係を検討しました。
自閉症の人に多く認められるタイプのオキシ
トシン受容体遺伝子を持つ人は、そうでない
タイプの遺伝子を持つ人に比べて、他者の表
情の理解や共感に関与する扁桃体の体積が統
計学的に有意に大きいことを見出しました。
14
4.研究プロジェクト
注意欠如多動性障害
(Attention Deficit Hyperactivity Disorder; ADHD)
ADHDとは?
ADHDとは、発達の水準に不相応で不適応な不注意や多動性、または衝動性行動を特徴とす
る障害で、小児期に多く認められる代表的な精神疾患です。有病率は学童の3~7%、成人の3.5
~5%と報告されています。
歴史的には1845年に、ドイツの精神科医・ホフマンが著
した絵本「もじゃもじゃペーター」の中に登場する“じた
ばたフィリップ”がADHDについて最初に記載した例だと
いわれています。以降、Lancetなどの医学誌でその原因が
論じられ、一時期は微細脳機能障害と考えられていました。
1960年代には病因の追究が半ば諦められ、障害を症状とし
て捉えるという観点が提示され、「多動」には「不注意」
が多く併存することが指摘されました。
その後ADHDは、WHOや米国精神医学会の診断基準に
も含まれるようになり、現在の「多動衝動性優勢型」「混
合型」「不注意優勢型」の3つの型に分類する診断基準が
できました。
赤い服を着た男の子が“じたばたフィリップ”
H. ホフマン 「もじゃもじゃペーター」
(ほるぷ出版)より
ADHDの脳画像研究
ADHDは鑑別疾患や併存障害が数多く、症状のみによる診断の難しいことが指摘されており、
その病態解明や客観的な診断指標の確立が求められてきました。近年、脳神経画像技術の発展に
伴い、当該疾患についての様々なエビデンスが蓄積されてきています。
例えばMRI研究から、ADHD患者の前頭葉-線条
体回路の構造的異常が明らかにされました。この経
路は、ADHDの治療薬として長く使用されてきたリ
タリン(一般名:塩酸メチルフェニデート:MPH)
などの薬物が、ドパミン、ノルアドレナリンレセプ
ターを活性化させ、患者の注意力を向上させると考
えられていたことから、ADHDの病態との関連が指
摘されてきた経路でした。
また機能的には、ADHDに特徴的な認知機能障害、
特に実行機能に着目した研究が多く行われてきま
した。例えば遂行機能を調べるために抑制反応に
関する課題が用いられ、前頭葉機能の問題が示さ
れ て き ま し た 。 近 年 は 、 右 図 の よ う な ” dual
pathway”の異常が指摘されるようになり、線状体や
Dual Pathway Model
ADHDの病態に関する神経回路モデル
扁桃体を含む報酬系回路の活動性についても注目
Sonuga-Barke et al. (2003)
されるようになってきています。そこで私達は、
ADHD患者に関連する実行機能・報酬系回路に着目
した脳機能画像研究に取り組んでいます。
15
4.研究プロジェクト
光トポグラフィーを用いた客観的診断・治療効果予測指標の開発
光トポグラフィーは、計測が簡便に実施できる脳機能画像法のひとつで、検査に伴う負担が
軽く、小さなお子さんに対しても安全に使用することができます(P.7参照)。
私達は、右図のような装置による前頭葉機能検査法を開
発し、ADHD患者の前頭葉の活性化特性を調べています。
この研究から得られる知見をもとに、客観的な診断指標の
開発を目指しています。現在は、ADHDとの鑑別が難しい
とされる広汎性発達障害の患者との比較検討が進行中です。
このような客観的指標は、治療効果の予測指標としても
役立つと考えられます。子供のADHDの治療薬であるコン
サータ(MPH徐放剤)は高い治療効果を示す反面、依存性
の問題や子供の成長過程への影響が指摘されています。私
達は、長期的な薬物治療を実施する前に、長期内服後の治 生体光計測装置における刺激課題呈示装置
療効果の予測ができるような検査法の開発にも取り組んで および刺激課題呈示方法(特願2008-146721)
います。
Functional MRIを用いたADHDにおける報酬系回路の検討
ADHDにおける報酬系回路の機能を評価するためには、脳深部の活動を捉える必要があり、私
達はFunctional MRIによる脳機能画像研究を行っています。
ADHDでは、従来の実行機能に加え、報酬系回路の障害が提唱
されて久しく、報酬課題を用いた様々な行動実験データがありま
す。報酬系回路の機能異常は、心理学的には報酬の強化が低下し、
報酬を魅力的に感じる効果が持続しないため遅い報酬が待てず、
衝動的に代替報酬を選択する、または報酬が得られるまでの主観
的な時間を短縮するため、他に注意を逸らして気を紛らわすよう
な代償行為をするといった問題行動の引き金になると考えられて
います。しかし、その神経メカニズムについての知見は未だ限定
的であり、今後脳機能画像研究などを通して、一層理解を深める
必要があります。
私達は、大阪大学社会経済研究所と共同して、
従来行われてきた報酬課題を、よりADHDの病
態が反映されるものに改良し、ADHDにおける
衝動性の本態としての報酬系回路障害を含めた
強化学習不全の脳神経基盤の探索を行っていま
す。これにより、ADHDに対する医学・心理
学・教育的介入の意義をより明確にすることを
目指しています。
↑異時点間選択課題
Tanaka et al. (2006)
← 報酬獲得の予期に
関連した脳活動
16
4.研究プロジェクト
トゥレット症候群
(Tourette’s syndrome)
トゥレット症候群とは?
トゥレット症候群とは、小児期に発症し、運動チッ
クと音声チックの両方が慢性的に(1年以上)続くチッ
ク障害です。チックとは突発的、急速、反復性、非律
動的、常同的な運動・発声のことで、過剰な瞬き、首
振り、咳払いなどが典型的ですが、顔しかめ、肘突き
、跳躍、奇声、言葉など、複雑なものもあります。フ
ランス人医師Gilles de la Touretteは、1885年の報告で汚
言を特徴としましたが、現在の診断基準は汚言を必須
としてはいません。
典型的な経過としては、就学期ごろ単純運動チック
で発症し、徐々に音声チック、複雑性のチックが出現
して思春期に最も重症となり、多くは成人期の初めに
軽快します。また、トゥレット症候群には強迫性障害
(OCD)や注意欠如・多動性障害(ADHD)が高率に
Gilles de la Tourette
併発し、チック症状と主な併発症の症状には、強迫性
(Advances
in Neurology vol. 58, 1992から)
および衝動性として集約される類似した性質がありま
す。チックの重症度や併発症の有無・重症度は様々で
すが、社会適応が著しく不良となる場合もあります。
トゥレット症候群の原因は?
トゥレット症候群は、かつて養育環境が原因と考えられていました。しかし、チッ
クに対する抗ドーパミン作用薬の有効性が発見されてから、多方面での研究が進み、
現在では生物学的な基盤があると考えられています。
遺伝学的には、高い家族集積性から単一の原因遺伝子が想定された時期もありまし
たが、近年では複数の遺伝子と環境要因の相互作用による多因子疾患という考え方が
一般的です。環境要因としては、周生期異常のほか、少数ですが一部の症例では、溶
連菌感染が原因となっている(小児自己免疫関連疾患)可能性が示唆されています。
病態としては皮質-線条体-視床-皮質回路の異常が想定されており、同様の異常は併
発症のOCDやADHDにも見られます。トゥレット症候群では、この回路上にある線条
体の低灌流や補足運動野、感覚運動野の過活動が報告されています。
17
4.研究プロジェクト
皮質-線条体-視床-皮質回路
C:尾状核 L:レンズ核 Th:視床
(Peterson BS, 2001を改変)
トゥレット症候群の病因・病態解明と治療法の向上をめざして
トゥレット症候群の機能画像研究や神経心理研究では、所見の一貫しない部分も多
くあります。それには併発症、治療薬、年齢・罹病期間、それに伴って発達する代償
能力が影響している可能性が考えられます。
こうしたことを念頭に置き、私たちは症状評価、神経心理検査、光トポグラフィー
による研究を行い、臨床症状相互の関連や、臨床症状と神経心理・神経生理との関連
を検討してきました。また2011年度からは、衝動性に着目し、遅延報酬課題を用いた
予備的なfMRI研究を行っています。
今後は、fMRI研究の賦活課題を修正して対象を年少者に拡大することや、非服薬者
のデータを蓄積することを考えています。また神経心理研究により、前駆衝動(チッ
クに先行する独特の感覚)やチックのコントロールに関連する認知機能を特定し、よ
り良い治療への寄与を目指します。
18
4.研究プロジェクト
気分障害 「こころの検査入院」
(Mood disorder: ‘Mental health examination program’)
webpage URL http://www.h.utokyo.ac.jp/patient/depts/kokoro/index.html
厚生労働省の2009年調査によれば、うつ病が大半を占める「気分障害」の患者が
1996年43万300人、1999年に44万1000人とほぼ横ばい、2002年から71万1000人と急増
し、2008年では104万1000人に達したと発表され、10年足らずで2.4倍に急増したと
して注目されています。また、世界保健機関(WHO)のGlobal Burden Of Disease
Report(2005年)によれば、すべての疾患を含めて計算した生活機能障害年数(years
lived-with-disability;YLD)のうち、第1位 31.7%が精神・神経疾患であり、単極性大
うつ病性障害(うつ病)(11.8%)と双極性障害(躁うつ病)(2.4%)がその中でも多くの割
合を占め、就業・学校・家庭における生活の機能低下に甚大な影響を与えているこ
とがわかっています。
そのような状況の中で、気分障害の病態解明、治療法の確立が強く望まれており、
様々な角度からの研究が推し進められています。中でも、脳画像研究は、その技術
の進歩と共に、脳の活動を直接客観的に捉え可視化出来ることから、病院及び病態
生理を解明する手段として重要視されています。大脳特定部位の体積、安静時の神
経活動、認知課題施行中の脳活動パターンにおいて、気分障害患者と健常者との差
異が見られることが知られており、これらの違いを詳しく研究することで、気分障
害のより詳細な病態理解、診断、適切な治療が可能になる可能性があります。
当研究室では、主にNIRS(近赤外線スペクトロスコピー)を用いた気分障害の研
究が行われています。認知課題遂行中の脳血流変化パターンを健常者、他精神疾患
患者と比較検討し、病態、病期、臨床指標、遺伝子多型などとの関連性、差異を研
究しています。
その一環として、うつ症状を呈する疾患の鑑別精度をより高め、より客観的でシ
ンプルなアルゴリズムの開発を目指して「心の健康に光トポグラフィー検査を応用
する会[会員施設:群馬大学、国立精神・神経センター、昭和大学、東京大学、鳥
取大学、都立松沢病院(三重大学)、福島県立医科大学]」による多施設共同研究
を進めており、全国7施設において言語流暢性課題を同一のプロトコールとして、同
一装置によるNIRS検査を施行しています。
健常群
賦活課題区間
うつ病群
賦活課題区間
19
躁うつ病群
賦活課題区間
4.研究プロジェクト
また、当科ではNIRSによる先進医療と合わせて、他の身体検査、構造化面接、各種
心理検査・臨床指標、簡単な心理教育など施行する4日間の「こころの検査入院プロ
グラム」(http://www.h.utokyo.ac.jp/patient/depts/kokoro/index.html )を2009年9月から開
始しています。「こころの検査入院プログラム」を通じて、種々の臨床情報と現段階
におけるNIRSの知見を総合的に検討し、臨床現場へのフィードバックを行いつつ、う
つ症状鑑別の有用性についての追試を進めています。さらに、気分障害を有する同一
の患者さんの症状とNIRS所見を経時的にフォローすることによって、NIRS所見とうつ
症状の増悪寛解や躁転との関連性についての検討を進めています。
これらの研究を通じて、より生物学的な見地に立った診断や治療法の選択し、その
方それぞれに合った最適な医療への道が開かれることを目指しています。
20
4.研究プロジェクト
双生児研究
(Todai-TWIN: Todai-Twin project With
Integrative Neuroimaging)
【双生児研究の意義】
ある病気に関する一般的な双生児研究の手法は、一卵性と二卵性双生児間の罹患一
致率を比較するものです。双子の一方が病気になった時、もう一方が同じ病気になる
確率はどのくらいかを調べる研究であり、例えば一卵性の双子の一方がある病気の場
合もう一方が同じ病気である割合が90%で、二卵性の双子の場合わずかに10%だったと
すると、その病気が「遺伝的要因が関わっている病気」であることの強力な証拠にな
り得ます。
【精神疾患の双生児研究】
精神疾患の病因として遺伝の役割の大きさを確認するため、多くの双生児研究が行
われてきました。現時点で例えば、「一卵性双生児の一人が統合失調症にかかった場
合、もう一人もかかる割合はどの程度か?」という質問への答えは、控えめに見積
もっても「統計法にもよるが、おおよそ28~40%」というものです。他の中枢神経系
の疾患と双生児間の罹患一致率を比較すると、統合失調症(28%)は、ダウン症(95%)や
てんかん(61%)や双極性気分障害(56%)などの一致率より低いものでした(Torrey, 1992)。
【Todai-TWINの開始】
われわれCP研の双生児研究(TWIN)では、将来計画されている精神疾患の罹患一
致・不一致例の研究の予備段階として、健常双生児における基礎データの収集を続け
ています。これまでWeb(図1)や新聞広告(図2)で募集し、2006年1月から2011年8月末
現在で100組201名の双生児ペア(三つ子を含む)の参加を頂いています。(表1)
図1
図2
21
4.研究プロジェクト
図3
【Todai-TWINの内容】
脳機能・認知機能を計測するために機能的MRI、脳磁図(MEG), 近赤外線スペ
クトロスコピ-(NIRS),などの非侵襲的な脳機能画像検査や神経心理・性格検査
などを施行することに加え、遺伝・生体物質の情報による解析を組み合わせること
で、多面的なアプローチでヒトの心理・精神現象や精神障害の病因について明らか
にすることができると考えています。
【Todai-TWINの特徴】
これまでの精神疾患の双生児研究の大半は、診断基準が標準化されていない問題
や卵性診断の正確性の問題がありました。我々の双生児研究(TWIN)では、こう
した点を克服するため、遺伝子配列から卵性診断を正確に行っている点や、胎生期
や周産期(妊娠と分娩)の要因が精神疾患の病因と関連することが示唆されている
ことから、できるだけ母子手帳からの産科合併症や出生時体重などの情報を得てい
る点があります。
【これまでの結果と今後の展開】
これまでに、健常一卵性ペアで二卵性ペアより一致率の高い指標(図3、表2)を
MEGやNIRSの指標においていくつか認めています。今後これらの脳機能指標を精
神疾患ペアでの比較解析に応用することで、精神疾患の病態解明をより明らかにす
ることに寄与するものとして研究を続けています。さらに、片方の方のみが精神疾
患に罹患している不一致例の双生児についての検討を開始することにしています。
表2. NIRS信号の級内相関係数
表1. リクルート実績(2006.1-2011.8)
小児 46組 92名
成人 54組 109名
合計 100組 201名
一卵性
二卵性
左前頭葉
0.57
0.05
右前頭葉
0.85
0.22
22
4.研究プロジェクト
中間表現型研究
(Endophenotype study)
私たちは、遺伝子・ゲノム解析やアミノ
酸・蛋白などの新しい解析を行う研究者らと
共同して、神経画像を中間表現型とした研究
にも取り組んでいます。
神経画像データと同時期に採取した血液
データを組み合わせることによって、表現型
(疾患診断・臨床症状・人格傾向)-脳機
能・構造-遺伝子・ゲノムといった階層性の
関連性を明らかにし、遺伝子解析の効率化や、
薬効予測につながる神経画像検査法の確立
(医療の個別化)に役立つことが期待されて
います。
その他、ゲノムだけでなく、メタボロミク
スやプロテオミクスなどのOmics研究等で先
進的な研究者と共同研究を行っています。
こうした科内外の研究グループ間の共同研
究の成果の一端として、精神疾患と関連が報
告される遺伝子多型と脳形態や脳機能の関連
を 青 木 ら か に し た 論 文 ( Inoue et al,
Biologocal Psychiatry, 2010; Takizawa et al,
PLoS One, 2009)などを発表しました。
前頭前野シナプス間隙のドーパミン量を
調節するCOMTの遺伝子多型によって、統
合失調症患者の前頭前野NIRS信号が有意に
ことなりました。NIRSによる簡便で非侵襲
的な神経伝達物質関連遺伝子多型の推定と
薬効予測の実用化を目指しています。
こうした検討から今後、統合失調症・発
達障害を初めとする精神神経疾患の病態解
明や新しい治療法開発に貢献することが期
待されます。
23
4.研究プロジェクト
包括脳データベースと支援活動
(Comprehensive Brain Science Network)
webpage URL http://cbsn-mri.umin.jp/
精神疾患の病態研究では、分子・細胞・動物モデル・神経画像などのモダリティで
様々な知見が蓄積されてきました。今後、その病因や病態に関わる要因の同定や、仮
説検証の試みを一層加速させるためには、研究リソース(脳画像・血液DNA・患者脳
組織など)を今まで以上に充実させ、これを包括的に利用しながら研究を進めること
が重要との認識が世界的に広まりつつあります。
しかし、これらのリソースを個別の研究グループが短期間に多数取得することは決
して容易ではありません。また、病態解明に真のブレークスルーをもたらすためには、
データ解析や統計理論に熟知した専門家、最新の分子生物学的解析法に精通する基礎
神経科学者などとの連携も不可欠です。
東大精神神経科は、文部科学省新学術領域研究・包括型脳科学研究推進支援ネット
ワーク(包括脳ネットワーク)における疾患拠点を務めており、精神疾患の脳画像・
血液DNAならびに死後脳を多数例収載したデータベースの構築を進めています。また、
各リソースの収集・管理・解析についてプロトコルの標準化を図り、研究者コミュニ
ティに対しての普及活動と運用支援を行っています。このような活動を契機として、
精神疾患に関連する新規バイオマーカーの発見や新規治療法の開発が促進されるよう、
長期的な視点のもとで研究基盤の整備に取り組んでいます。
包括脳ネットワークにおけるデータベース構築と研究支援活動
24
4.研究プロジェクト
精神機能の自己制御理解にもとづく
思春期の人間形成支援学
(Adolescent Mind and Self-Regulation)
webpage URL http://npsy.umin.jp/amsr/
人間の脳がつむぎ出す精神機能の最大の特長は、高度な言語能力と社会性の上に
自我が成立し、その精神機能が再帰的に制御可能な点にあります。これによって人
間は自ら脳機能を制御し、意識的な自己発展を図ることができます。
この«自己制御精神»は、進化の過程でヒト前頭葉が格段に発達した中で獲得され
たものであり、個体においても前頭葉が成熟する思春期に確立します。思春期とは、
社会環境に適応した自己を形成するための極めて重要なライフステージであり、こ
こでの発達の歪みは現代の若年層に見出される深刻なこころの問題や社会病理に多
大な影響を及ぼすと考えられます。
本領域は、人間における自己制御精神の成立、思春期における発達過程を個人・
集団レベルで解明し、分子から社会までの統合的・学際的アプローチによって«思春
期における自己制御精神の形成支援»を目指す、新たな人間科学を確立します。
25
4.研究プロジェクト
A01集団研究では、思春期における精神機能の自己制御性の形成過程を解明するため、
10代の地域標本からなるティーンコホートを対象に、精神医学、心理学、行動学的な
調査を行います。その際、ヒトの進化における思春期の特殊性に着目し、進化心理
学・人間行動生態学からの仮説と神経経済学のパラメータを導入し、発達パターンの
集団内変異の幅を測定するとともに、自己制御の発達におけるどのような要因が、そ
の後の精神機能自己制御に影響を及ぼすかを検討します。
A02個体研究では、神経科学、認知科学、言語学の融合により、精神機能の自己制御
とその思春期発達の神経基盤を明らかにするという極めて先駆的な研究を行います。
これは、自己制御の内外過程であるメタ認知・社会認知機能に注目し、動物とヒトを
対象とした比較認知科学的アプローチを用いて社会適応的自己制御の神経基盤とその
思春期発達を明らかにするものです。
A03個体研究では、思春期における精神機能の自己制御の形成過程(A01)と神経基
盤(A02)の理解にもとづき、分子~神経モジュレーション~心理・社会的介入までの
幅広いアプローチによって、思春期の若者が精神機能の自己制御性を育み、それに
よって自己を発展させ、成熟した人間形成に至る過程の支援策を開発します。
26
5.関連講座の研究
こころの発達医学分野
(Department of Child Neuropsychiatry)
webpage URL http://childpsy.umin.jp/
教室の紹介
発達障害をはじめとするこころの発達の問題が増加の一途をたどり、児童精神科医
などのこころの発達の問題の専門家を質量共に充実させることが急務である現状に対
応すべく、我が国で最初の本格的な児童精神医学教室として、2010年4月に脳神経医
学専攻統合脳医学講座に新設されました。
研究能力を十分に身につけた児童精神科医、臨床と連携できる脳とこころの発達の
研究者などを養成し、こころの発達の問題に関わる研究の発展に貢献することを目指
しています。
発達の観点に立ち、精神医学教室、分子精神医学教室、教育学研究科などと協同し
て、自閉症スペクトラム障害、ADHD、トゥレット障害を対象とした研究を進めてい
ます。
スタッフと研究体制
27
5.関連講座の研究
脳画像研究
ASDを対象として、MRIによる形態画像研究、MEGやNIRSやfMRIによる機能画像研
究を行っています。特に、小児や発達障害でも施行しやすいNIRSを用いた前頭葉血流
変化の検討がASD、ADHD及びトゥレット症候群で積極的に進められており、ADHD
児童では、メチルフェニデートの効果予測の指標としてNIRSが活用できるかの検討を
行なっています。さらに、成人のADHD及びトゥレット症候群を対象として、fMRI計
測も行っています。
遺伝研究
ASDを対象として、2番染色体、7番染色体長腕、15番染色体長腕に焦点を当てた
遺伝子解析を行っています。遺伝と環境との相互作用にも注目しており、親の年齢や
生殖補助医療と発達障害との関連について検討しています。また、トゥレット症候群
の臨床遺伝学的検討も行っています。
治療効果研究
治療教育を行っているという特性を生かして、認知発達治療に対応する発達段階分け
である太田ステージの信頼性・妥当性の再検討、ASD児を対象とした治療教育効果の
検討を行っています。成人のASDを対象とした研究では、感情のコントロールを目的
とした集団療法の効果検討を行なっています。
臨床評価
トゥレット症候群(多様な運動チックと音声チックを有する慢性のチック障害)や児
童思春期強迫性障害を対象としてチックや強迫症状などを評価して症状間の関連を検
討する研究も進行しています。また、ASDの診断基準として国際的に標準化された評
価方法を用いた診断を行なっています。
28
5.関連講座の研究
ユースメンタルヘルス講座
(Department of Youth Mental Health)
webpage URL http://plaza.umin.ac.jp/~youth-mh/
ユース期(思春期・青年期)は,生物の中で人間だけが持つ「自分が自分であるという
意識=自我機能」が育まれる人間の一生の中で非常に大切な時期であり,何らかの原因で
自我の成長が上手くいかず,自我機能が破たんして起こる精神疾患の発症が非常に多い時
期でもあります.
ユース期は,子どもと大人のはざまの時期に当たるため,これまでの精神医学の歴史
の中で,特別に焦点を当てた研究や実践が行なわれてきませんでした.また,ユース期は
,生物学的・心理的・社会的に,成長に伴って大きく変化する時期であるため,生物・心
理・社会的要因を一体的に研究していく必要があります.
ユースメンタルヘルス講座では,ユース期のメンタルヘルスについて,これまでの生物
学的精神医学と社会精神医学を融合させて,新たな社会精神医学を構築し,実践と人材育
成を通じて成果を社会に還元していきます.
研究の柱は,以下の3つです.以下の3つについて,さまざまな研究・実践機関と協力し
ながら進めていきます.
1) ユース・コホート研究の立ち上げ
「コホート研究」とは,ある特定の地域の住
民や,大きな集団を長期間追跡する調査方法
のことです.コホート研究では,大きな集団
を長期間追跡して調査するので,遺伝や環境
・人間関係などたくさんの要因が複雑に絡み
合って起こる精神疾患の原因解明にとても役
に立ちます.これまで日本では,ユース世代
の精神保健問題に対するコホート研究が十分
行われていませんでした.ユース世代の精神
保健問題とその対処法を見つけ出すために,
ユースコホート研究を行っていきます.
2) 早期診断の確立
東京大学医学部附属病院では,精神疾患を
客観的に診断できるようにするための技術を
開発し,診断技術を応用した「こころの検査
入院」を行っています.「こころの検査入
院」では,従来の精神科医の問診による診断
に加えて,心理検査や生理的指標(バイオ
マーカー)を用いた検査を行って,より客観
的に診断ができるようにする試みを行ってい
ます.精神疾患を早い段階で診断して,早い
段階で治療・支援できるようにするための研
究(IN-STEP)に,ユースメンタルヘルス講
座も協力しています.
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5.関連講座の研究
3 ) 早 期 支 援 に お け る 効 果研 究 J-CAP (Japanese Comprehensive Approach to
Psychosis)
欧米では,精神疾患の発症早期に心理士やソーシャルワーカーによるケースマネ
ジメント(心理社会的支援)を行うことで,患者さんの希望に沿った支援が可能で
あり,再発率・再入院率の減少,生活の質の向上につながることが分かっています.
日本でも,東京大学医学部附属病院を含む4つの施設において,この効果を立証する
ための試験が始まりました.ユースメンタルヘルス講座は,J-CAPに協力していま
す.
ユースメンタルヘルス講座では,ニーズとステージに即した地域ベースの実践や啓
発,技術の普及・人材育成もミッションとしています.
実践活動:東北関東大震災被災地における支援活動
東京大学医学部附属病院災害医療支援の一環として,東北関東大震災被災地(宮城
県東松島市)における精神保健医療活動の支援を行っています.震災被災地での支
援でも,ニーズとステージに即した地域ベースの支援活動が不可欠になります.東
京大学・精神神経科・こころの発達医学分野とも連携しながら,活動を展開してい
ます.
人材育成:現在(2011年8月)までに,
以下の講演会・研修会を実施いたしました.
・2011.06.24
日本医学会総会体験博覧会 講演
「これからの日本を支えるこころの健康づくり」
・2011.07.04
練馬区障害者就労支援ネットワーク会研修会
「知的・精神・発達障害者の理解と就労支援」
・2011.07.13
第1回 ユース支援者研修会
メルボルン大学早期支援サービス
ORYGEN視察報告
・2011.07.29-30 H23年度第1回 ケースマネジメントRCT合同研修会
・2011.08.04
京都障害者高等技術専門校
「精神障害者を支えるコミュニケーションのポイント」
・2011.08.27-28 H23年度第2回 ケースマネジメントRCT合同研修会
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Publications, Grants, and
Contribution to Society
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6.学位論文
Doctoral Theses
CP研メンバーによる、最近の博士論文です
平成16年度
大渓俊幸 「外傷後ストレス障害に対する治療的アプローチについての研究 : Eye
movement desensetization and reprocessing(EMDR)についてのNIRSによる検
討」
平成17年度
山末英典 「心的外傷後ストレス性障害と関連した前部帯状皮質体積の減少」
平成18年度
桑原斉
「近赤外線スペクトロスコピーを用いた広汎性発達障害における前頭前野
機能異常の検討」
平成19年度
河野稔明 「トゥレット症候群の前頭葉機能と臨床指標との関連 : 近赤外線スペクトロ
スコピー研究」
平成20年度
武井邦夫 「統合失調症における認知機能障害と神経線維束構造異常の関連」
切原賢治 「統合失調症における事象関連電位を用いた視線認知異常と臨床症状・社会
機能との関連の検討」
細川大雅 「気分障害における脳糖代謝変化のFDG-PETによる検討」
丸茂浩平 「カテゴリー流暢性課題施行時の近赤外線スペクトロスコピー計測による統
合失調症の前頭前皮質機能異常に関する研究」
平成21年度
荒木剛 「Go/No-go課題遂行時の事象関連電位計測による統合失調症における抑制機
能障害の検討」
木納賢 「近赤外線スペクトロスコピーによる統合失調症とうつ病における前頭前野
の機能異常の検討」
滝沢龍 「近赤外線スペクトロスコピィを用いた統合失調症の前頭前皮質機能異常と
生活機能障害との関連についての研究」
平成22年度
石井礼花 「注意欠如多動性障害患児に対する塩酸メチルフェニデートの効果を予測す
る近赤外線スペクトロスコピィを用いた補助診断法の開発研究」
井上秀之 「統合失調症における臨床病期の進行とグルタミン酸関連代謝物濃度の変
化:3テスラMRSを用いた検討」
織壁里名 「覚せい剤精神病患者の海馬・扁桃体における体積減少」
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7.研究助成
Research Grants
文部科学省・科学研究費補助金事業
・若手研究(B)「非侵襲脳計測を用いた広汎性発達障害の素因・発病マー
カーの解明」(H17-18)代表者:川久保友紀
・基盤研究(C)「脳機能イメージングをエンドフェノタイプとした統合失調
症の前頭葉機能障害の研究」(H18-19)代表者:滝沢龍
・若手研究(B)「うつ病患者の脳機能解明とこれに抗うつ薬がもたらす作用
に関する機能的MRI研究」(H18~H19)代表者:八幡憲明
・特定領域・統合脳「遺伝子・生化学マーカー・神経画像解析を組み合わせた
統合失調症の進行性脳病態の解明」(H20-21)代表者:笠井清登
・基盤研究(C)「脳機能計測を用いた自閉症スペクトラム障害の異種性の解
明—経年変化による検討」(H20-22)代表者:川久保友紀
・若手研究(B)「オキシトシンによる社会性障害の改善の脳基盤解明と、脳
画像指標による改善効果の予測」(H20-21)代表者:山末英典
・基盤研究(C)「うつ病薬物治療の最適化の為の画像等検査バッテリーの確
立とその有効性の前方視的研究」(H20~H24)代表者:八幡憲明
・若手研究(B)「事象関連電位(ガンマ帯域解析)による統合失調症のセルフモ
ニタリング異常の検討」(H20-21)代表者:荒木剛
・基盤研究(A)「双生児法を用いた統合失調症脳病態に対する遺伝・環境要
因の解明」(H21-23)代表者:笠井清登
・新学術領域研究(研究領域提案型)「現代社会の階層化の機構理解と格差の
制御:社会科学と健康科学の融合」(H21-25)領域代表者:川上憲人、計画研
究「社会階層による健康格差のメカニズム解明」分担研究者:荒木剛
・新学術領域研究(研究領域提案型)『生命科学系3分野支援活動』「包括型脳
科学研究推進支援ネットワーク」(H22-26)領域代表者:木村實「データ融合
型脳リソース構築:脳画像統合データベース支援活動:疾患拠点」拠点代表
者:笠井清登
・若手研究(A)「マルチモダリティMRI解析を中間表現型とした対人行動の障
害のゲノム要因の同定」(H22-25)代表者:山末英典
・若手研究(スタートアップ)「統合失調症の顔認知障害に関連したγ帯域異
常の検討」(H22-23)代表者:切原賢治
・若手研究(B)「統合失調症発症の脳病態解明と発症予測因子の同定」
(H22-23)代表者:管心
・若手研究(B)「近赤外線スペクトロスコピーを用いた広汎性発達障害の診
断法の開発」(H22-23)代表者:桑原斉
・挑戦的萌芽研究「社会知能の客観的評価を実現する心理検査バッテリーの開
発」(H23-24)代表者:山末英典
33
7.研究助成
・若手研究(B)「うつ症状を呈する精神疾患の脳機能基盤と経時的変化につ
いての縦断的研究」(H23-24)研究代表者:滝沢龍
・若手研究(B)「事象関連電位を用いた統合失調症前駆期の縦断的検討」
(H23-24)代表者:荒木剛
・新学術領域研究(研究領域提案型)「学際的研究による顔認知メカニズムの
解明」(H20-24)領域代表者:柿木隆介、公募研究「成人期のアスペルガー障
害の表情模倣に関わる神経基盤の解明とその可塑性の検討」(H23-24)代表
者:川久保友紀
・新学術領域研究(研究領域提案型)「精神機能の自己制御理解にもとづく思
春期の人間形成支援学 」(H23-28)領域代表者:笠井清登
文部科学省
・科学技術振興費・脳科学研究戦略推進プログラム課題D「社会的行動を支え
る脳基盤の計測・支援のための先端的研究開発」(H21-25)代表者:狩野方伸、
「神経回路の動作原理に基づく社会的脳機能の計測・支援技術の開発と応用」
代表機関代表者:狩野方伸、「社会性障害のソーシャルブレインマーカーの開
発と応用」分担者:笠井清登
・ひらめき☆ときめきサイエンス事業「こころの働きが目に見える☆最先端脳
科学に触れる体験ツアー!」(H22)事業代表者:笠井清登
科学技術振興機構
・戦略的創造研究推進事業 CREST、「社会行動関連分子機構の解明に基づく自
閉症の根本的治療法創出」(H20-24)代表者:加藤進昌、「成人における、脳
画像指標を中間表現型として用いた、オキシトシンによる社会性障害の治療効
果と関連分子遺伝子多型の関係解明」分担研究者:山末英典
厚生労働科学研究費補助金
・こころの健康科学研究事業(H17-こころ-一般-009)「双生児法による精神疾
患の病態解明」(H17-19)代表者:加藤忠史、「神経画像学的解析」分担研究
者:笠井清登
・こころの健康科学研究事業(H17-こころ-一般-012)「思春期精神病理の疫学
と精神疾患の早期介入方策に関する研究」(H19-21)代表者:岡崎祐士、
「PLE体験者と非体験者の脳画像比較と縦断的追跡脳研究」分担研究者:笠井
清登
・こころの健康科学研究事業(H20-こころ-一般-001)「脳画像に基づく精神疾
患の「臨床病期」概念の確立と適切な治療・予防法の選択への応用についての
研究」(H20-22)代表者:福田正人、分担研究者:笠井清登、山末英典
34
7.研究助成
・障害者対策総合研究事業(精神障害分野)(H22-精神-一般-015)「精神病初
回発症例の疫学研究および早期支援・早期治療法の開発と効果確認に関する臨床
研究」(H22-24)代表者:岡崎祐士、「精神病初回発症例の早期介入サービスと
生物学的指標に基づく効果検証」分担研究者:笠井清登
・障害者対策総合研究事業(精神障害分野)、「NIRSを用いた精神疾患の早期
診断についての実用化研究」(H23-25)研究代表者:福田正人、分担研究者:滝
沢龍
精神・神経疾患研究委託費
・「精神疾患の客観的補助診断法の標準化と科学的根拠に基づく治療反応性の判
定法の確立」(H20-22)代表者:三國雅彦、「神経画像を用いた統合失調症・発
達障害の客観的補助診断法の標準化と治療反応性の判定法の確立」分担研究者:
笠井清登
・「統合失調症の診断、治療法の開発に関する研究」(H21-23)主任研究者:安
西信雄、「統合失調症の脳病態の解明に関する研究」、分担研究者:荒木剛
・「精神疾患の鑑別診断および治療転帰の予測における近赤外線スペクトロスコ
ピー(NIRS)の有用性」(H23-25)主任研究者:中込和幸、分担研究者:滝沢
龍
その他・民間研究助成など
・統合失調症研究会第4回研究助成「統合失調症前駆期における事象関連電位研
究」(H20)代表者:荒木剛
・成長科学協会研究補助金「双生児法を用いた周産期環境と小児期・思春期にお
ける精神機能発達との関連の検討」(H21)研究代表者:川久保友紀
・精神・神経科学振興財団 「統合失調症患者での認知機能評価尺度(Cogstate統
合失調症バッテリー日本語版)のバリデーション研究」(H21-22)分担研究者:
管心
・臨床薬理研究振興財団 研究奨励金 「光トポグラフィー検査(NIRS)と遺伝
子多型を用いたうつ症状の鑑別診断補助と薬効・機能評価に関する研究」(H2123)研究代表者:滝沢龍
・HMTメタボロミクス先導研究助成「精神病の発症予測に応用可能な客観的指標
の探索的研究」(H22)代表者:小池進介
・第19回(平成22年度)ファイザーヘルスリサーチ振興財団国内共同研究事業
(39歳以下)助成、「思春期の精神疾患患者を抱える家族に対する教育および心
理的支援の有効性に関する研究」(H22)代表者:小池進介
・精神・神経科学振興財団「日本人健康成人を対象とした認知機能評価尺度
(MATRICS Cognitive Battery; MCCB日本語版)の標準化研究」(H22)分担研究
者:管心
35
8.主要業績
Selected Publications
MRIグループ
Orikabe , Yamasue H, Inoue H, Takayanagi Y, Mozue Y, Sudo Y, Ishii T, Itokawa M,
Suzuki M, Kurachi M, Okazaki Y, Kasai K. Reduced amygdala and hippocampal volumes
in patients with methamphetamine psychosis. Schizophr Res, in press.
Yamasue H, Suga M, Yahata N, Inoue H, Tochigi M, Abe O, Liu X, Kawamura Y, Rogers
MA, Takei K, Yamada H, Aoki S, Sasaki T, Kasai K. Reply to “Neurogenetic effects of
OXTR rs2254298 in the extended limbic system of
healthy Caucasian adults”. Biol Psychiatry, in press.
Yamasaki S, Yamasue H, Abe O, Suga M, Yamada H, Inoue H, Kuwabara H, Kawakubo Y,
Yahata N, Aoki S, Kano Y, Kato N, Kasai K. Reduced gray matter volume of pars
opercularis is associated with impaired social communication in high-functioning autism
spectrum disorders. Biol Psychiatry. 68:1141-7. 2010.
Inoue H, Yamasue H, Tochigi M, Abe O, Liu X, Kawamura Y, Takei K, Suga M, Yamada
H, Rogers MA, Aoki S, Sasaki T, Kasai K. Association between the oxytocin receptor gene
(OXTR) and amygdalar volume in healthy adults. Biol Psychiatry. 68:1066-72. 2010
Takei K, Yamasue H, Abe O, Yamada H, Inoue H, Suga M, Muroi M, Sasaki H, Aoki S,
Kasai K. Structural disruption of the dorsal cingulum bundle is associated with impaired
Stroop performance in patients with schizophrenia. Schizophr Res. 114: 119-27, 2009.
Yamasue H, Abe O, Suga M, Yamada H, Rogers MA, Aoki S, Kato N, Kasai K. SexLinked neuroanatomical basis of human altruistic cooperativeness. Cereb Cortex. 18:
2331-40, 2008.
Takei K, Yamasue H, Abe O, Yamada H, Inoue H, Suga M, Sekita K, Sasaki H, Rogers
MA, Aoki S, Kasai K. Disrupted integrity of the fornix is associated with impaired memory
organization in schizophrenia. Schizophr Res. 103: 52-61, 2008.
*Kasai K, *Yamasue H (*Equal contribution), Gilbertson MW, Shenton ME, Rauch SL,
Pitman RK. Evidence for acquired pregenual anterior cingulate gray matter loss from a twin
study of combat-related posttraumatic stress disorder. Biol Psychiatry. 63: 550-6, 2008.
Yamasue H, Abe O, Kasai K, Suga M, Iwanami A, Yamada H, Tochigi M, Ohtani T,
Rogers MA, Sasaki T, Aoki S, Kato T, Kato N. Human brain structural change related to
acute single exposure to sarin. Ann Neurol. 61: 37-46, 2007.
36
8.主要業績
Yamasue H, Ishijima M, Abe O, Sasaki T, Yamada H, Suga M, Rogers M, Minowa I,
Someya R, Kurita H, Aoki S, Kato N, Kasai K. Neuroanatomy in monozygotic twins with
Asperger disorder discordant for comorbid depression. Neurology. 65: 491-492, 2005.
Yamasue H, Yamada H, Yumoto M, Kamio S, Kudo N, Uetsuki M, Abe O, Fukuda R,
Aoki S, Ohtomo K, Iwanami A, Kato N, Kasai K. Abnormal association between reduced
magnetic mismatch field to speech sounds and smaller left planum temporale volume in
schizophrenia. Neuroimage. 22: 720-727, 2004.
Yamasue H, Kasai K, Iwanami A, Ohtani T, Yamada H, Abe O, Kuroki N, Fukuda R,
Tochigi M, Furukawa S, Sadamatsu M, Sasaki T, Aoki S, Ohtomo K, Asukai N, Kato N.
Voxel-based analysis of MRI reveals anterior cingulate gray-matter volume reduction in
posttraumatic stress disorder due to terrorism. Proc Natl Acad Sci U S A. 100: 9039-9043,
2003. DOI: 10.1073/pnas.1530467100
ERPグループ
Kirihara K, Araki T, Uetsuki M, Yamasue H, Hata A, Rogers MA, Iwanami A, Kasai K:
Association study between auditory P3a/P3b event-related potentials and thought disorder in
schizophrenia. Brain Imaging Behav 3: 277-283, 2009.
Araki T, Kasai K, Kirihara K, Yamasue H, Kato N, Kudo N, Nakagome K, Iwanami A:
Auditory P300 latency prolongation with age in schizophrenia: gender and subcomponent
effects. Schizophr Res 88: 217-221, 2006.
Araki T, Kasai K, Rogers MA, Kato N, Iwanami A: The effect of perospirone on auditory
P300 in schizophrenia: a preliminary study. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry
30: 1083-1090, 2006.
Araki T, Yamasue H, Sumiyoshi T, Kuwabara H, Suga M, Iwanami A, Kato N, Kasai K:
Perospirone in the treatment of schizophrenia: effect on verbal memory organization. Prog
Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 30: 204-208, 2006.
Kirihara K, Araki T, Kasai K, Maeda K, Hata A, Uetsuki M, Yamasue H, Rogers MA, Kato
N, Iwanami Confirmation of a relationship between reduced auditory P300 amplitude and
thought disorder in schizophrenia. Schizophr Res 80: 197-201, 2005.
Araki T, Kasai K, Yamasue H, Kato N, Kudo N, Ohtani T, Nakagome K, Kirihara K,
Yamada H, Abe O, Iwanami A: Association between lower P300 amplitude and smaller
anterior cingulate cortex volume in patients with posttraumatic stress disorder: a study of
victims of Tokyo subway sarin attack. Neuroimage 25: 43-50, 2005.
37
8.主要業績
NIRSグループ
滝沢龍、笠井清登、福田正人. 気分障害の脳画像研究と先進医療NIRSの紹介 -光
トポグラフィー検査「うつ症状の鑑別診断補助」- 精神医学 53(4): 383-392, 2011.
Koike S, Takizawa R, Nishimura Y, Marumo K, Kinou M, Kawakubo Y, Rogers MA, Kasai
K. Association between severe dorsolateral prefrontal dysfunction during random number
generation and earlier onset in schizophrenia. Clin Neurophysiol. 122(8):1533-40.2011.
Nishimura Y, Takizawa R, Muroi M, Marumo K, Kinou M, Kasai K. Prefrontal cortex
activity during response inhibition associated with excitement symptoms in schizophrenia.
Brain Res. 2011, 1370: 194-203.
滝沢龍、福田正人、心の健康に光トポグラフィー検査を応用する会.精神疾患の臨
床検査としての近赤外線スペクトロスコピィNIRSの実用化-先進医療『光トポグラ
フィー検査』-.医学のあゆみ. 231(10): 1045-1053, 2009.
Takizawa R, Tochigi M, Kawakubo Y, Marumo K, Sasaki T, Fukuda M, Kasai K.
Association between Catechol-O-Methyltrasferase Val108/158Met Genotype and Prefrontal
Hemodynamic Response in Schizophrenia. PLoS ONE. 4(5): e5495, 2009.
Takizawa R, Hashimoto K, Tochigi M, Kawakubo Y, Marumo K, Sasaki T, Fukuda M,
Kasai K. Association between sigma-1 receptor gene polymorphism and prefrontal
hemodynamic response induced by cognitive activation in schizophrenia. Prog
Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 33(3): 491-498, 2009.
Marumo K, Takizawa R, Kawakubo Y, Onitsuka T, Kasai K. Gender difference in right
lateral prefrontal hemodynamic response while viewing fearful faces: A multi-channel nearinfrared spectroscopy study. Neurosci Res. 63(2): 89-94, 2009.
Takizawa R, Kasai K, Kawakubo Y, Marumo K, Kawasaki S, Yamasue H, Fukuda M.
Reduced frontopolar activation during verbal fluency task in schizophrenia: a multi-channel
near-infrared spectroscopy study. Schizophr Res. 99(1-3): 250-62, 2008
Kono T, Matsuo K, Tsunashima K, Kasai K, Takizawa R, Rogers MA, Yamasue H, Yano T,
Taketani Y, Kato N: Multiple-time replicability of near-infrared spectroscopy recording
during prefrotal activation task in healthy men. Neurosci Res. 57: 504-512, 2007.
Kuwabara H, Kasai K, Takizawa R, Kawakubo Y, Yamasue H, Rogers MA, Ishijima M,
Watanabe K, Kato N: Decreased prefrontal activation during letter fluency task in adults
with pervasive developmental disorder: a near-infrared spetroscopy study. Behav Brain Res.
172: 272-277, 2006.
38
8.主要業績
MEGグループ
Takei, Y., Kumano, S., Maki, Y., Hattori, S., Kawakubo, Y., Kasai, K., Fukuda, M.,
Mikuni, M., Preattentive dysfunction in bipolar disorder: a MEG study using auditory
mismatch negativity. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 34, 903-912. 2010
Takei, Y., Kumano, S., Hattori, S., Uehara, T., Kawakubo, Y., Kasai, K., Fukuda, M.,
Mikuni, M. Preattentive dysfunction in major depression: a magnetoencephalography
study using auditory mismatch negativity. Psychophysiology 46, 52-61, 2009.
Matsubayashi J, Kawakubo Y, Suga M, Takei Y, Kumano S, Fukuda M, Itoh K, Yumoto
M, Kasai K. The influence of gender and personality traits on individual difference in
auditory mismatch: A magnetoencephalographic (MMNm) study. Brain Res, 1236:159-65,
2008
脳磁図(MEG)の精神疾患診断への応用、武井雄一、管心、栗田澄江、笠井清登、
福田正人、三國雅彦、精神疾患診断のための脳形態・機能検査法、新興医学出版
社(印刷中)
神経心理検査グループ
植月美希、松岡恵子、金吉晴、荒木剛、管心、山末英典、前田恵子、山崎修道、
古川俊一、岩波明、加藤進昌、笠井清登:日本語版National Adult Reading Test
(JART)を用いた統合失調症患者の発病前知能推定の検討、精神医学、48:15-22,
2006
植月美希、松岡恵子、笠井清登、荒木剛、管心、山末英典、前田恵子、山崎修道、
古川俊一、岩波明、加藤進昌、金吉晴:統合失調症患者の発病前知能推定に関す
る日本語版National Adult Reading Test (JART)短縮版妥当性の検討、精神医学、
49(1):17-23, 2007
室井みや、笠井清登、植月美希、管心:統合失調症における非情動的・情動的情
報に対する選択的注意機能の検討、認知心理学研究、4:65-73, 2007
Takei K, Yamasue H, Abe O, Yamada H, Inoue H, Suga M, Sekita K, Sasaki H, Rogers
M, Aoki S, Kasai K: Disrupted integrity of the fornix is associated with impaired memory
organization in schizophrenia. Schizophr Res. 2008 Aug;103(1-3):52-61.
Sumiyoshi C, Kawakubo Y, Suga M, Sumiyoshi T, Kasai K. Impaired ability to organize
information in individuals with autism spectrum disorders and their siblings,
Neuroscience Research, Neurosci Res. 2011 Mar;69(3):252-7
39
8.主要業績
Yoshida T, Suga M, Arima K, Muranaka Y, Tanaka T, Eguchi S, Lin C, Yoshida S,
Ishikawa M, Higuchi Y, Seo T, Ueoka Y, Tomotake M, Kaneda Y, Darby D, Maruff P,
Iyo M, Kasai K, Higuchi T, Sumiyoshi T, Ohmori T, Takahashi K, Hashimoto K.
Criterion and Construct Validity of the CogState Schizophrenia Battery in Japanese
Patients with Schizophrenia. PLoS ONE. 2011 6(5): e20469
統合失調症
こころのリスク外来・IN-STEP研究
Koike S, Takizawa R, Nishimura Y, Takano Y, Takayanagi Y, Kinou M, Araki T, Harima
H, Fukuda M, Okazaki Y, Kasai K: Different hemodynamic response patterns in the
prefrontal cortical sub-regions according to the clinical stages of psychosis. Schizophr Res
in press.
Koike S, Nishida A, Yamasaki S, Ichihashi K, Maegawa S, Natsubori T, Harima H, Kasai
K, Fujita I, Harada M, Okazaki Y: Comprehensive early intervention for patients with firstepisode psychosis in Japan (J-CAP): study protocol for a randomised controlled trial.
Trials 12(1):156, 2011
自閉症スペクトラム障害
Yamasue H, Suga M, Yahata N, Inoue H, Tochigi M, Abe O, Liu X, Kawamura Y, Rogers
MA, Takei K, Yamada H, Aoki S, Sasaki T, Kasai K. Reply to “Neurogenetic effects of
OXTR rs2254298 in the extended limbic system of healthy Caucasian adults”. Biol
Psychiatry, in press.
Yamasaki S, Yamasue H, Abe O, Suga M, Yamada H, Inoue H, Kuwabara H, Kawakubo
Y, Yahata N, Aoki S, Kano Y, Kato N, Kasai K. Reduced gray matter volume of pars
opercularis is associated with impaired social communication in high-functioning autism
spectrum disorders. Biol Psychiatry. 68:1141-7. 2010.
Inoue H, Yamasue H, Tochigi M, Abe O, Liu X, Kawamura Y, Takei K, Suga M, Yamada
H, Rogers MA, Aoki S, Sasaki T, Kasai K. Association between the oxytocin receptor
gene (OXTR) and amygdalar volume in healthy adults. Biol Psychiatry. 68:1066-72. 2010
Yamasue H, Abe O, Suga M, Yamada H, Rogers MA, Aoki S, Kato N, Kasai K. SexLinked neuroanatomical basis of human altruistic cooperativeness. Cereb Cortex. 18:
2331-40, 2008.
Yamasue H, Ishijima M, Abe O, Sasaki T, Yamada H, Suga M, Rogers M, Minowa I,
Someya R, Kurita H, Aoki S, Kato N, Kasai K. Neuroanatomy in monozygotic twins with
Asperger disorder discordant for comorbid depression. Neurology. 65: 491-492, 2005.
40
8.主要業績
Yamasue H, Kuwabara H, Kawakubo Y, Kasai K. Oxytocin, sexually dimorphic features of
the social brain, and autism. Psychiatry and Clin Neurosci. 63: 129-40, 2009.
ADHD
石井礼花「注意欠如多動性障害の脳画像」精神医学キーワード辞典、p576-578、
中山書店、2011.
石井礼花「注意欠陥多動性障害」ポケットプラクティス小児神経・発達診断、
p116-120、中山書店、2010.
石井礼花・金生由紀子「ADHDの診断分類の課題:DSM-Ⅴに向けて」精神科治療
学、25巻、p460-468、 2010.
石井礼花「発達障害とサイコセラピ-;学童期とサイコセラピ-」精神科、17巻、
p460-468、 2010.
高橋礼花・加藤忠史・金生由紀子「小児における「双極性障害」診断の問題点」
精神科治療学、23巻、p823-829、 2008.
高橋礼花、笠井清登:「AD/HD」精神疾患の脳画像解析・診断学、p110-112、南
山堂、2008.
高橋礼花 「多動」
中山書店、2008.
精神科専門医のためのプラクティカル精神医学、p49-56、
高橋礼花「ADHDの脳科学」心療内科、11巻、p154-159、2007.
高橋礼花「養子縁組制度」児童青年精神医学(翻訳)、p439-448、明石書店、2007.
高橋礼花・小尾央桂・金生由紀子「思春期のうつ病にSSRIは有効か?」EBM小児
疾患の治療2007-2008、p572-577、中外医学社、2007.
【特許】生体光計測装置における刺激課題呈示装置(特許出願番号;特願2008146721)The patent (12996190) of United States, the patent (09758336.3) of European
Union, and the patent (20090120823.5) of People’s Republic of China
気分障害
「こころの検査入院」
里村嘉弘、滝沢龍、笠井清登.気分障害の診断・治療と近赤外線スペクトロスコ
ピー(near-infrared spectroscopy: NIRS)―東大病院「こころの検査プログラム」
の紹介―Medical Practice28巻10号《特集:内科医のためのうつ病診療》(in press)
41
8.主要業績
滝沢龍、笠井清登.精神疾患の臨床検査としての光トポグラフィー検査(NIRS)-
先進医療『うつ症状の鑑別診断補助』- In: 加藤進昌・神庭重信・笠井清登(編)
TEXT精神医学(第4版)、南山堂、東京、(in press).
滝沢龍、笠井清登、福田正人. 気分障害の脳画像研究と先進医療NIRSの紹介 -光ト
ポグラフィー検査「うつ症状の鑑別診断補助」- 精神医学 53(4): 383-392, 2011.
福田正人,滝沢龍(2011)気分障害の診断・治療に近赤外線スペクトロスコピィは有
力か? 上島国利・三村將・中込和幸・平島奈津子 編『EBM 精神疾患の治療20112012』,中外医学社,東京,p.114-121.
滝沢龍、福田正人、心の健康に光トポグラフィー検査を応用する会.精神疾患の臨床
検査としての近赤外線スペクトロスコピィNIRSの実用化-先進医療『光トポグラ
フィー検査』-.医学のあゆみ. 231(10): 1045-1053, 2009.
木納賢、滝沢龍、丸茂浩平、笠井清登、福田正人:
の応用. 臨床精神医学 38(4): 429-436, 2009.
気分障害のNIRS研究と臨床へ
滝沢龍、福田正人、心の健康に光トポグラフィー検査を応用する会.Ⅴ.NIRS検査
の実用化.2.多数データ・個別データの解析.(福田正人(編):精神疾患と
NIRS)、中山書店、東京、p.232-247, 2009.
双生児研究
滝沢龍、西村幸香、小池進介、笠井清登、福田正人.統合失調症のNIRS研究と臨床
応用.精神科16(5): 448-456, 2010.
滝沢龍、西村幸香、小池進介、笠井清登、福田正人.統合失調症の神経生理学的研究
―NIRSを用いた検討―.脳と精神の医学20(4): 319-329, 2009.
滝沢龍、小池信介、高橋礼花、木納賢、笠井清登.NIRSでみる精神疾患の前頭葉機
能.神経内科 71(3):286-294, 2009.
滝沢龍、川久保友紀、桑原斉、笠井清登: Ⅲ.精神疾患への応用.1.統合失調
症・自閉症の前頭葉機能障害とNIRSの臨床応用.(福田正人(編):精神疾患と
NIRS)、中山書店、東京、p92-102, 2009.
笠井清登、滝沢龍:統合失調症の神経画像研究.精神医学
滝沢龍、笠井清登:統合失調症の前頭葉機能障害
応用.認知神経科学雑誌、10(1): 15-18, 2008.
42
-
51(2): 177-184, 2009.
光脳機能イメージングの臨床
8.主要業績
中間表現型研究
Inoue H, Yamasue H, Tochigi M, Abe O, Liu X, Kawamura Y, Takei K, Suga M, Yamada H,
Rogers MA, Aoki S, Sasaki T, Kasai K(2010) Association between the oxytocin receptor gene
(OXTR) and amygdalar volume in healthy adults. Biol Psychiatry 68:1066-72.
Inoue H, Yamasue H, Tochigi M, Takei K, Suga M, Abe O, Yamada H, Rogers M, Aoki S,
Sasaki T, Kasai K (2010) Effect of tryptophan hydroxylase-2 gene variants on amygdalar and
hippocampal volumes. Brain Res 1331: 51-57.
Takizawa R, Tochigi M, Kawakubo Y, Marumo K, Sasaki T, Fukuda M, Kasai K. Association
between Catechol-O-Methyltrasferase Val108/158Met Genotype and Prefrontal
Hemodynamic Response in Schizophrenia. PLoS ONE. 4(5): e5495, 2009.
Takizawa R, Hashimoto K, Tochigi M, Kawakubo Y, Marumo K, Sasaki T, Fukuda M, Kasai
K. Association between sigma-1 receptor gene polymorphism and prefrontal hemodynamic
response induced by cognitive activation in schizophrenia. Prog Neuropsychopharmacol Biol
Psychiatry. 33(3): 491-498, 2009.
Inoue H, Yamasue H, Tochigi M, Suga M, Iwayama Y, Abe O, Yamada H, Rogers M,
Aoki S,Kato T, Sasaki T, Yoshikawa T, Kasai K (2009) Functional (GT)npolymorphisms in
promoter region of N-methyl-D-aspartate receptor 2A subunit (GRIN2A) gene affect
hippocampal and amygdala volumes. Genes Brain Behavr 9: 269-75.
Yamasue H, Kakiuchi C, Tochigi M, Inoue H, Suga M, Abe O, Yamada H, Sasaki T, Rogers
MA, Aoki S, Kato T, Kasai K(2008) Association between mitochondrial DNA 10398A>G
polymorphism and the volume of amygdala. Genes Brain and Behavr 7: 698-704, 2008.
Yamasue H, Suga M, Yahata N, Inoue H, Tochigi M, Abe O, Liu X, Kawamura Y, Rogers
MA, Takei K, Yamada H, Aoki S, Sasaki T, Kasai K. Reply to “Neurogenetic effects of
OXTR rs2254298 in the extended limbic system of healthy Caucasian adults”. Biol Psychiatry,
in press.
包括脳データベースと支援活動
八幡憲明、根本清貴、山下典生. 精神疾患の脳画像データベース構築へ向けて- 研究
資産としての脳画像. 医学のあゆみ 231(10), 991-995, 2009.
43
8.主要業績
こころの発達医学分野
Kuwabara H, Kono T, Shimada T, Kano Y: Factors affecting clinicians’ decision as to
whether to prescribe psychotropic medications or not in treatment of tic disorders. Brain
Dev (in press).
Marui T, Funatogawa I, Koishi S, Yamamoto K, Matsumoto H, Hashimoto O, Jinde S,
Nishida H, Sugiyama T, Kasai K, Watanabe K, Kano Y, Kato N. The NADH-ubiquinone
oxidoreductase 1 alpha subcomplex 5 (NDUFA5) gene variants are associated with autism.
Acta Psychiatr Scand 123(2): 118-124, 2011.
Iwanami A, Okajima Y, Ota H, Tani M, Yamada T, Hashimoto R, Kanai C, Watanabe H,
Yamasue H, Kawakubo Y, Kato N. Task dependent prefrontal dysfunction in persons with
Asperger’s disorder investigated with multi-channel near-infrared spectroscopy. Res Autism
Spectr Disord 5(3): 1187-1193, 2011.
Sumiyoshi C, Kawakubo Y, Suga M, Sumiyoshi T, Kasai K. Impaired ability to organize
information in individuals with autism spectrum disorders and their siblings. Neurosci Res
69(3):252-257, 2011.
Kano Y, Kono T, Shishikura K, Konno C, Kuwabara H, Ohta M, do Rosario MC. Obsessive
compulsive symptom dimensions in Japanese Tourette syndrome subjects. CNS Spectr
15(5): 296-303, 2010.
Takei Y, Kumano S, Maki Y, Hattori S, Kawakubo Y, Kasai K, Fukuda M, Mikuni M,
Preattentive dysfunction in bipolar disorder: a MEG study using auditory mismatch
negativity. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 34(6): 903-912, 2010.
Yamasaki S, Yamasue H, Abe O, Suga M, Yamada H, Inoue H, Kuwabara H, Kawakubo Y,
Yahata N, Aoki S, Kano Y, Kato N, Kasai K. Reduced gray matter volume of pars
opercularis is associated with impaired social communication in high-functioning autism
spectrum disorders. Biol Psychiatry 68(12): 1141-1147, 2010.
Kuwabara H, Kasai K, Takizawa R, Kawakubo Y, Yamasue H, Rogers MA, Ishijima M,
Watanabe K, Kato N. Decreased prefrontal activation during letter fluency task in adults
with pervasive developmental disorders: a near-infrared spectroscopy study. Behav Brain
Res 172(2): 272-7. 2006
44
9.情報公開
Public Release
■2010年2月25日
東大病院
プレスリリース
精神神経科にて「こころの検査入院プログラム」を開始
■2010年6月10日
東大病院
「うつ病診療の最前線
メディア懇談会
―科学的な診断と治療をめざして―」
【光トポグラフィー検査と「こころの検査入院プログラム」に関する報道】
2009年4月10日「らいふプラス 脳の血流で心の病診断 今月から先進医療に」日本
経済新聞夕刊
2009年6月号「近赤外光でうつ状態を評価 うつ病、双極性障害、統合失調症の判定
に威力」日経メディカル
2009年7月23日「展望:うつ症状の客観的指標に近赤外線スぺクトロスコピー検査
臨床現場で役立つ検査をめざして」Medical Tribune
2010年1月18日「脳科学真価を問う 脳血流で心の病診断」日本経済新聞朝刊
2010年3月5日「こころの検査入院 東大病院がうつ患者対象に開始」科学新聞
2010年3月10日「うつ診断・治療で新プログラム開始 東京大学病院精神神経科」薬
事日報
2010年3月11日NHK総合TV「うつ病診断に最新画像検査法」NHKニュース7
2010年4月8日「脳血流で精神疾患診断」読売新聞夕刊
2010年5月10日「医療ルネッサンス うつ治療を見直す 脳血液量測り診断補う」読
売新聞朝刊
2010年6月号「うつ症状鑑別の新しい検査 光トポグラフィー検査でうつ症状の鑑別
診断を補助」月刊誌「くらしと健康」
2010年6月22日東大病院がうつ症状の科学的診断に取り組む 「こころの検査入院プ
ログラム」でNIRSを本格的に臨床使用 Medical Tribune MTPro
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1002/1002084.html
2010年7月30日うつ病の客観的な診断を目指す光トポグラフィー検査 先進医療.net
http://www.senshiniryo.net/column_a/10/index.html
2010年7月24日号
「光トポグラフィー検査 心の病気の「見える化」でうつ病診断がより正確に」東
洋経済
2011年1月12日NHK教育TV 「シリーズ統合失調症(1) 診断・治療
“最前線”」福祉ネットワーク
2011年2月26日NHK教育TV 「若者のこころの病 -実は身近な“統合失調症”-」
2011年7月18日号 「心の病を血液で診断」日経ビジネス
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9.情報公開
2009年6月号「近赤外光でうつ状態を
評価 うつ病、双極性障害、統合失調
症の判定に威力」日経メディカル
2010年4月8日「精神疾患画像で診断
うつ病や統合失調症 脳血流の変化
から判別」読売新聞夕刊
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9.情報公開
■2010年9月14日
東大病院プレスリリース
「自閉症の新たな治療につながる成果
― 世界初 自閉症に関わる脳の体積変化および自閉症の候補遺伝子との関連
を解明 ―」
・Yamasaki S, Yamasue H, Abe O, Suga M, Yamada H, Inoue H, Kuwabara H, Kawakubo Y, Yahata N,
Aoki S, Kano Y, Kato N, Kasai K. Reduced gray matter volume of pars opercularis is associated with
impaired social communication in high-functioning autism spectrum disorders. Biological Psychiatry.
2010
Aug 27. [Epub ahead of print]
・Inoue H, Yamasue H, Tochigi M, Abe O, Liu X, Kawamura Y, Takei K, Suga M, Yamada H, Rogers
MA, Aoki S, Sasaki T, Kasai K. Association between the oxytocin receptor gene (OXTR) and amygdalar
volume in healthy adults. Biological Psychiatry. 1;68(11):1066-72. 2010.
自閉症は、相手や場の状況に合わせた振る舞いができないといった対人コ
ミュニケーションの障害を主徴とする代表的な発達障害です。この障害の原因
や治療法は未確立で、高い知能を有する人でも社会生活に困難をきたすことが
多い現状にあります。
東京大学大学院医学系研究科精神医学分野の准教授 山末英典、教授 笠井清登
らのグループは、ヒトの脳部位のうち他者への協調や共感に関わる下前頭回弁
蓋部と他者の感情の理解に関わる扁桃体について調べ、下前頭回弁蓋部の体積
減少が自閉症の対人コミュニケーションの障害に関与すること、さらに扁桃体
の体積の個人差が自閉症に関わるオキシトシン受容体遺伝子のタイプに関連し
ていることを、いずれも世界で初めて明らかにしました。
今回の研究成果は、自閉症の原因や仕組みの解明に遺伝子や脳体積のレベル
から貢献し、近年注目されるオキシトシンによる治療の可能性を支持するもの
です。(科学技術振興機構「戦略的創造研究推進事業 CREST」および文部科学
省「脳科学研究戦略推進プログラム -社会的行動を支える脳基盤の計測・支援
技術の開発-」による成果)
これらの成果は2編の論文として、日本時間 9月2日および9月11日に米国
Biological Psychiatry誌オンライン版にて発表しました。
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9.情報公開
【本研究に関する報道】
・ 時事通信ならびに共同通信の配信による電子メディアでの報道を受け全国各
地の新聞から報道(添付pdfファイル)東京新聞、北海道新聞、岩手日報、河北
新報、山形新聞、山梨日々新聞、新潟日報、北日本新聞、中日新聞、大阪日日
新聞、神戸新聞、山陰中央新報、四国新聞、徳島新聞、西日本新聞、佐賀新聞
ほか多数
・日本経済産業新聞による報道(下記)
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9.情報公開
■2010年4月6日
2010年 4月 6日
2010年 4月19日
2010年 4月28日
2010年 8月 9日
2011年 2月12日
2011年 4月18日
こころのリスク外来
共同通信社
福井新聞
北日本新聞
教育新聞
NHK教育テレビ「福祉ネットワーク」
教育新聞
2010年4月28日
北日本新聞による報道
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9.情報公開
2010年4月19日
福井新聞による報道
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9.情報公開
■2010年8月21~22日
研究成果の社会還元・普及事業
ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~KAKENHI
「こころの働きが目に見える☆最先端脳科学に触れる体験ツアー!」
「ひらめき☆ときめきサイエンス」は、日本学術振興会による研究成果の社会還
元・普及事業として行われており、研究機関で行っている最先端の科研費の研究成果
について、小学校5・6年生、中学生、高校生の皆さんが、直に見る、聞く、ふれる
ことで、科学のおもしろさを感じてもらうプログラムです。
今回のプログラムでは、こどもたちに実際にMRI・MEG・NIRSを見学、また測定を
体験、そして、それらの機器を用いた最新の脳機能画像研究の研究成果の講義を受け
てもらいました。さらに、自分自身でミニ論文発表も行い、各機器の特徴を確認し、
自分の研究の目的に適する機器を用いた研究をデザインする体験を行えるように工夫
しました。最後に、担当した石井礼花先生から、一人ずつ研究計画に対するコメント
とともに、未来博士号が授与されました。
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9.情報公開
■当日のスケジュール
1日目 中学生、2日目 小学生とも基本的には同じカリキュラム
9:30~10:00 (受付開始)東大病院救急夜間外来入口集合
10:00~10:30 開講式・説明(科研費の説明を含む)
10:30~12:30 東大病院研究施設見学
脳機能検査測定体験(光トポグラフィ-、MRI、脳磁図など)
(「見学→測定グループ」「測定→見学グループ」に分かれる)
12:30~14:00 昼食・休憩
14:00~14:30 最新脳画像研究成果の講義
14:30~15:20 ミニ論文づくり
15:20~15:30 クッキータイム
15:30~16:00 ミニ論文発表会
16:00~16:30 修了式
(アンケート作成、未来博士号授与)
16:30 記念撮影、解散
★平成22年度
よく工夫されたプログラム10点に選ばれました★
(写真は、光トポグラフィ-のプローブキャップをみんなで装着しているところ)
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〒113-8655 東京都文京区本郷 7-3-1
TEL 03-5800-9263 FAX 03-5800-6894
Website http://npsy.umin.jp/cp.html
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