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子どもの権利条約批准と国内改革の課題

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子どもの権利条約批准と国内改革の課題
麗子どもの権利条約批准と国内改革の課題
特集2
子どもの権利条約批准と国内改革の課題
子どもの権利条約批准の会
(1)
し、同時に子どもの権利条約文の外務省公定訳を公表した
(政府の説明書は巻末資料{と参照)。これ{せ受けて国会で
ったが、PKO法案審議のあおりをくった形で、審議がほ
れ、その後、外務委員会を中心に審議を展開するはずであ
は、五月には衆議院本会議で批准案件の趣旨説明が行わ
一九八九年二月二○日、国連第四四回総会で採択され
子どもの権利条約批准をめぐる状況
た子どもの権利条約は、’九九○年九月二曰に国際条約と
曰本政府の批准決定自体はよろこばしいことであるが、
る見通しとなった。
子どもの権利条約が国連で採択されて二年七ヵ月、政府が
とんどなされないまま、六月末の国会会期末には批准され
国際人権規約)の精神と経験が集約されており、大人と同
して発効したが、現在では二五カ国以上が批准をすませ
等の権利を有する子どもに焦点をあてた現代的人権保障の
り、:遅きに失した感がある。また曰本政府の閣議決定にい
国連で署名してから一年九カ月間も経過してのことであ
ている。この条約の中には国際人権章典(世界人権宣言と
枠組みが明記されており、平和と人権の面で国際社会に貢
連情報の提供を求めてきたのに、子どもの権利条約の曰本
れわれをはじめ多くの団体が子どもの権利条約に関する国
たる経過と内容には、多くの問題点が存在する。特に、わ
献することをめざすわが国政府としては、ただちに批准す
ところで周知のとおり、九二年一一一月一一一一曰、曰本政府は
べき条約の一つである。
子どもの権利条約批准案件の第一一一三国会提出を閣議決定
このような態度は、国際世論および国内世論にも背くも
条文でもo汀豈を「子ども」ではなく「児童」と訳すなど
のであり、またこれまでの国連子どもサミット二九九一
皿語訳すら公表を拒否してきた点は重大である。また先の国
准したい」と言明したものの、国内批准にむけた関係省庁と
年九月)や曰本の国会審議の過程での曰本政府代表の答弁
正しく伝える上で大きな難点となっている。
の協議に手間取り、最終的に批准案件の国会上程にはいた
にも反するもので、背信行為に他ならない。わたしたち子
曰本語訳に問題点が多くあり、子どもの権利条約の精神を
らず、今国会での批准案件の提出となったわけで、子どもの
どもの権利条約批准の会(以下、「批准の会」と略す)で
会でも当時の海部首相や中山外務大臣が「関係省庁と協議
ついての今後の国会論議の高まりに期待するものである。
は、三月一六曰に荒木康雄事務局長(全国同和教育研究協
議会)らが、船田元・自民党外交部会長、土井たか子・
社会党外務部会理事、東祥三・公明党青年局長らに要請
るべき国会審議の中で子どもの権利条約の完全批准と「子
を行い、同時に全政党の党首に文書で申し入れを行い、来
るよう強く要請した。
どもの権利保障推進国内行動計画」(仮称)の樹立を求め
ところでこのような経過を反映して、三月一三日の子ど
問題点を含んだものとなっている。第一に、政府の閣議決
以下にそれぞれの問題点について指摘したい。
曰本政府の責務
(1)|切の留保をつけず完全批准することこそ
イ解釈宣言と留保をつけて批准を目論む日本政府
くつかの留保と解釈宣言をつけた不完全なものであり、子
く退去強制の結果として児童が父母から分離される場合
合について適用されるものであり、出入国管理法に基づ
この規定は父母が児童を虐待する場合のような特定の場
第一に、政府の閣議決定の内容は、条約批准に際してい
どもの権利条約批准への消極姿勢そのものである。日本政
については適用されるものではないと解する旨の宣言を
れるに至っている。児童の人権の尊重というこの条約の目
において、世界各国に対し、この条約の早期締結が勧奨さ
ット』(平成二年九月開催)、国連総会、国連人権委員会等
に高まり、この条約については、『子供のための世界サミ
はないと解する旨の宣言を行う。
との義務はそのような申請の結果に影響を与えるもので
的、人道的かつ迅速な方法」で出入国の申請を取り扱う
扱う旨規定していろ。我が国は、この規定にいう「積極
て、締約国が「積極的、人道的かつ迅速な方法」で取り
よる締約国への入国又は締約国からの出国の申請につい
第十条は、家族の再統合のための児童又はその父母に
行う。
府は国会への「説明書」で「との条約は、平成四年三月一一
日現在、既に、英国、フランス、イタリア及びカナダを含
②家族の再統合のための出入国について
一にするものであり、我が国としても、この条約を早期に
一層推進していくことが重要である」と、条約批准の意義
歳未満の者)が成人(十八歳以上の者)から分離されなけ
第三十七条0は、自由を奪われたすべての児童(十八
③自由を奪われた児童の成人からの分離について
を述べているものの、続いて「我が国の留保等」の項をお
の関係法令により、自由を奪われた者は基本的に二十歳
ればならない旨規定していろ。我が国においては、国内
ロ政府の解釈宣言・留保の不当性
に拘束されない権利を留保することとする。(以下、略)
で分離することとされていること等にかんがみ、右規定
こし、次の一一つの解釈宣言(第九条一項、一○条)と一つ
離されないことを確保する旨規定していろ。我が国は、
第九条一は、権限のある当局が必要と決定する場合を
除くほか児童がその父母の意思に反してその父母から分
山児童の父母からの分離
の留保(第三七条C項)をおこなうとしている。すなわち
締結し、児童の権利の尊重及び保護についての国際協力を
的は、基本的人権の尊重を理念とする我が国の憲法と軌を
児童の権利の尊重及び保護の重要性に関する認識が世界的
む一二カ国が締結しており、また、我が国は、この条約
に署名している(平成二年九月)。特に、最近においては、
011』■05。-907109010000△q0467Q-00-0●8‐。△■ロ一・・l・●Ⅱ109●●■●6-■●一.40〈0.q-。・1..10列‐9■『‐ZR■びり知U1Jo二■一N▽咄■『QqjD少宕■5‐:■■■■□虹98コ‐‐■ムナ。■中中巾十坐■●9勺(。。田一■パⅢ皿、。。}『『■ご□L|月
の日本語公定訳では、名称を「児童の権利条約」とし、冬
と断定している。そして第三に、やっと公表された外務省
伴う国内法改正は全く考えておらず、予算措置も行わない
消極姿勢がみうけられる。第二に、閣議決定は条約批准に
のみであり、国会への情報提供の消極ざなど条約批准への
料は外務省訳の子どもの権利条約全文と簡単な「説明書」
をつけた不完全なものであり、また、国会に配布された資
定の内容は、条約批准に際していくつかの留保と解釈宣言
もの権利条約批准案件に関する政府の閣議決定は、多くの
二政府見解の問題点
権利条約の精神と豊富な内容を日本社会にどう生かすかに
しながら一生懸命検討している」「できるだけ今国会で批
閉子どもの権利条約批准と国内改革の課題
るため行われるものであるが、全く不当なものである。子
どもの権利条約第九条と第一○条は、差別禁止をうたった
第二条ともあいまって内外人平等原則を具体化する条項で
入管法(出入国管理及び難民認定に関する法律)に抵触す
配この第九条一項と第一○条に関する解釈宣言は、現行の
が子どもの権利保障の面で優れている場合は、その国内法
条約の規定よりも国内法の規定や他の国際条約の規定の方
から、子どもを留置場に入れることの犯罪性がより高いと
護士が付くケースの方がまれである少年審判・裁判の実態
たように、子どもの権利条約第四一条では、子どもの権利
(2)
いわざるをえない。またかって石井小夜子弁護士が指摘し
あり、むしろ政府はこの内外人平等原則からみて立ち後れ
の規定や他の国際条約の規定の方を優先すべきことが明記
されている。この点を政府は意図的に無視している。
このように本来は不要なはずの条約三七条C項の留保を
あえておこなうのは、代用監獄を温存し、また曰弁連らの
強い反対で中断している現行少年法改正問題(年齢引き下
げと罰則強化)に道をつけようとの意図がうかがえろ。
は年間一万数千人の子どもが代用監獄(警察の留置場)に
入れられ密室での取り調べを強要されている事実の隠ぺい
政府の閣議決定の第二の問題点は、子どもの権利条約批
イ「子どもへの約束」の実行こそが今、求められている
論議の高揚を
(2)条約を速やかに批准し、国内改革プランの
であり、第二に子どもの権利条約第四一条との関連につい
11
ないと断定している点である。先にもふれた政府の「説明
准に伴う国内法改正は全く考えておらず、予算措置も行わ
てのゴマヵシである。代用監獄(警察の留置場)について
は、「えん罪の温床」として国際的にも批判されているが、
政府は一向に改善しようとしない。特に少年事件にかかわ
との条約の実施のためには、新たな国内立法措置を必要と
書」は、「三条約実施のための国内措置」の項で、「一
調していろ。
これらの子どもの権利条約にこめられた国際世論をふま
p子どもの権利条約批准後に国内行動計画の策定を
での国連子どもサミット二九九一年九月)や曰本の国会
えるなら、子どもの権利条約を「絵に書いたモチ」に終わ
らせないためにも、批准にともなう子どもの権利保障に向
けた予算措置の増額と国内法改正は必要不可欠なものであ
世紀の地球を担う子どもたちへの約束であり、まず条約を
の成立経過や国際的な子どもの人権保障の経験を国内に紹
わたしたち批准の会では、まず国会が子どもの権利条約
ることは理の当然である。
批准し具体化への行動を一歩一歩着実に前進させなければ
いて国会の中でじゅうぶん論議を深め、同時に国民にも知
介し、各条文にこめられたこれらの国際的経験の意義につ
の子どもの権利条約に関する情報提供があまりにも乏しす
ぎるため、与野党とも議論を深めることができない状況に
らせる努力を行ってほしいと願っている。現状は政府から
国もあれば発展途上国もあります。すべての国で同じよう
ある。したがってまず子どもの権利条約を完全批准し、批
またユニセフ渉外部長ビクター・ソレⅡサラ氏は、一九
に『条約』を守るということが可能なのかという批判もあ
いのです」と指摘し、子どもの権利条約が求めているのは
権利の保障が可能なら、『条約』を制約と考えるべきでな
ので、どの国も、国内法や政策で『条約』が求める以上の
規がない問題(立法不作為)とが存在することをふまえて
規の問題と、②条約に明記されているが国内に関連する法
国内法との関連については、①条約に抵触する国内関連法
る。その際には、次項で触れるように子どもの権利条約と
「行動計画」としてつくり上げることが必要だと考えてい
准後に子どもの権利保障の推進にむけた計画的な努力を
最低水準でありそこに留まらず前進すべきであることを強
だして下さい。この『条約』は国際的な最低条件を示すも
ります。この種の批判に対しては、条約の第四一条を思い
九一年に来曰した際に、「世界には曰本のような先進工業
ならないことを強調した。
九九二年世界子供白書』の中で、子どもの権利条約は二一
すユニセフ(国連児童基金)のグラント事務局長は、『一
子どもの権利条約成立と今後の実施に大きな役割を果た
信行為に他ならない。
審議の過程での曰本政府代表の答弁にも反するもので、背
国際世論および国内世論にも背くものであり、またこれま
措置は不要である」と言明していろ。このような態度は、
しない」コーなお、この条約を実施するためには、予算
っては、本人の意見表明が十分保障されない司法体質や弁
ここには二つの問題点が隠されている。その一つは曰本で
を二○歳未満としているが子どもの権利条約では子ども
の定義は一八歳未満であるため留保が必要としているが、
次に、条約三七条C項の留保は、現行の少年法との関連
で留保が必要であるかの説明がなされているが、この留保
も不当である。政府は、現行の少年法は未成年者Ⅱ子ども
じて許されるべきではない。
な子どもの権利条約の精神をないがしろにする態度は、断
が目立つ現行入管法こそ改正すべきなのである。このよう
27子どもの権利条約批准と国内改革の課題
28
29子どもの権利条約批准と国内改革の課題
少年
法
少
年
20歳未満の者
刑
法
刑事未成年者
14歳未満の者
児
童
18歳未満の者
乳児
1歳未満の者
幼児
1歳から小学校就学の始期に達するまで
少年
小学校就学の始期から18歳に達するまで
学齢児童
6歳に達した日の翌日以後における最初
から、12歳に達した日の属する学年の終
児童福祉法
20歳未満の者
婚姻適齢
巍轤(蕊需は、父母の同意を得
年少者
18歳未満の者
児
15歳未満の者(例外あり)
部)の課程を終了した日の翌日以後にお
年の初めから、15歳に達した日の属する
までの者
では、名称を「児童の権利条約」とし、各条文でもo江臣
てきた。ところがやっと、公表された外務省の日本語公定訳
しないため、国際教育法研究会やユニセフの曰本語訳を参
考に独自訳を作成して子どもの権利条約内容の検討を進め
の期待が高かった。批准の会でも、政府が曰本語訳を公表
が、一一年三ヵ月後にやっと公表されたわけであり、関係者
をはじめ多くの団体が日本語訳の早期公表を求めてきた
が国連総会で採択されて以来、子どもの権利条約批准の会
務省公定訳にある。一九八九年一二月に子どもの権利条約
「閣議決定」の問題点の第三は、子どもの権利条約の外
(3)子どもの権利条約の外務省公定訳の問題点
文書を文字通りタタキ台にして、より内容の充実した国内
行動計画に仕上げていくことが求められていろ。
わめてずさんなものといわざるをえない内容である。この
議論を煮詰めていくべきだと考えている。
その点で、一九九○年九月の「世界子どもサミット」の
フォローァップとして最近外務省が取りまとめ、国連へ送
付した『西暦二○○○年に向けての国内行動計画』は、き
学齢生徒
つかの問題点が存在し、条約の精神を正しく伝える上で大
を「子ども」ではなく「児童」と訳すなど曰本語訳にいく
きな難点となっていろ。
童
未成年者
民法上の未成年者
児童
6歳以上13歳未満の者
幼児
6歳未満の者
大型免許を
与えない者
20歳に満たない者
18歳に満たない者
16歳に満たない者
壷 #鰯i鬘
未成年者
満20歳に至らざる者
黍鋒鐵i鬘
未成年者
満20歳に至らざる者
総務庁『青少年白書(平成3年版)』より
第一一一に旨&、8.口のを先住民ではなく、「原住民」と外
ると考える。
せて幅広い内容を持つ概念と理解することが重要な点であ
ティを第二条の差別禁止原則、内外人平等原則とも関連さ
じさせる。特に第八条の解釈にあたっては、アイデンティ
ろ「身元関係事項」と漢字表記することの方が問題点を生
カナ表記しており、不都合はないものと考えられる。むし
務省も条文の曰本語訳ではニス・メディア」などをカタ
イデンティティ」とカタカナ表記する方が妥当である。外
あり、日本の国内法規にはなじみのうすい概念であり、「ア
承認する今曰の国際的な人権概念とも深くかかわる用語で
と外務省が訳している点である。昼の日】弓は多様な価値を
第一一に区8畳]を「身元関係事項」及び「文化的同一性」
めにも「子ども」と訳すべきである。
子どもの権利条約をより国民にわかりやすいものにするた
の方がより親しみやすく、未成年者の総称となっている。
会通念上も「子どもの曰」と称されるように、「子ども」
という表記が子どもを総称するものとはなっていない。社
法令上の「子ども」の定義は多様で、かならずしも「児童」
いと考える。政府の『青少年白書』も指摘するように現行
童」と訳しているが、われわれは「子ども」の方がのぞまし
その第一は、o江匡の曰本語訳である。外務省訳は「児
労働基準法
普通免許、大
型特殊免許及
びけん引免許
を与えない者
二輪免許、小
型特殊免許及
び原付免許を
与えない者
道路交通法
未成年者
法
民
小学校(又は盲学校、聾学校若しくは菱
学校教育法
区
齢
年
称
坪
法律の名称
iIIIIII‐調
資料①:各種法令による子ども(未成年)の呼称及び年齢区分
30
31子どもの権利条約批准と国内改革の課題
務省が訳している点である。日本語の原住民という言葉
は、子どもの権利条約四三条にもとづき一○名の委員から
従来にないスピードで批准国が増加している。そして国運
政策の遂行を求める宣言と行動計画を採択したことから、
なる「子どもの権利委員会」を九二年二月一七曰にスター
は、黒人や第三世界の人びとへの偏見ともあいまって、差
年を「国際先住民年(先住民のための国際年)」と外務省
で子どもの問題に取り組む体制がととのったとされてい
トさせ、今秋の九月には第二回会合が予定され、地球規模
別的な語感を持っていると思われている。また、一九九三
も一方で広報している事実からも、「先住民」と訳すべき
(3)
(NGO)が「アドホック・グループ」(特別資格団体)
過程にユニセフ(国連児童基金)とともに多くの民間団体
まとめられたものである。そして子どもの権利条約の作成
「宣言」の条約化を提案して以来、一○余年の歳月を経て
に高めたもので、七九年の国際児童年にポーランド政府が
連子どもの権利に関する宣言(以下「宣言」)を国際条約
この子どもの権利条約は、周知のように一九五九年の国
る。
である。
その他に◎閂のを「養護」とする点や、宮】ぐ四・]を「私
生活」と訳す点にも疑問があり、また締約国の責任をあい
まいにする方向で「確保する」としている点も問題がある。
以上の表記については、子どもの権利条約の国連での審
議経過を紹介する資料を外務省が曰本語訳で提供し、国会
の中で十分に審議を行うべきである。
三子どもの権利条約批准と国内改革の課題
わたしたち批准の会は、子どもの権利条約を三つの特徴
として参画した。
でに二五ヵ国が批准し、署名国も一一一三カ国をこえてい
周知のとおり子どもの権利条約は、九二年五月現在、す
没させられていた「子どもの人権」に焦点を当て、子ども
ける弱い立場にあり、ともすれば「大人の権利」の中に埋
同等の「権利の主体」とする点である。子どもは差別を受
を持つものと考えていろ。それは第一に、子どもを大人と
る。特に昨年九月一一九曰から三○曰にかけて国連本部で
ている。条約は国際人権規約の精神をふまえ、すべての子
を権利を持つ主体としてとらえ、「世代間の平等」を提起し
(1)子どもの権利条約の意義
「子どものための世界サミット」が世界の七一カ国の代表
一方、政府は、九一年一二月末に世界子どもサミット(一
教育改革中心の提言となっている。
正の提一一旨」をとりまとめ公表した。また今年五月五日の子
どもの曰に際しては、社会党が「子ども庁(仮称どの設
置や「子ども基本法(仮称)」を提唱したりしているが、
(4)
か出されてきている。最近では、日教組や子どもの人権連
が「子ども基本法(仮称)」を提唱したり、三月には第一一
東京弁護士会が子どもの権利に関する委員会として『法改
らの曰本の教育や児童福祉をはじめとする国内改革に大き
な影響をおよぼすものである。ところで、日本においても
この一年間で子どもの権利条約に関する関心が大いに高ま
り、子どもの権利条約と国内改革に関連する提言もいくつ
このような内容を持つ子どもの権利条約を曰本が批准す
ることは、極めて大きな意義を有するが、とりわけこれか
(2)日本における国内改革論議
機関の設置を定めている」と述べていろ。
たりCISの【のロ◎の』○巨二のpH員①目農・ロロ])のダニエル
・オドーネル氏は、「子どもの権利条約を作成した第一の
理由は、子どもの諸権利に関する国際基準の遵守を監視す
るために、専門家からなる特別の国際機関を設けることで
あった。条約は、子どもの権利委員会とよばれるこうした
を集めて開催され、この条約の早期批准と子ども最優先の
ている。
どもたちに生きる権利、発育(発展)の権利、保護される
権利、参加や意見表明の権利を基本的人権として明文化し
第二にこの条約は、差別撤廃と平等保障の原則を強調し
ている点が特徴となっている。子どもの権利条約は、国際
人権規約や人種差別撤廃条約をふまえ、すべての子どもの
人権を保障するためにはまず社会的に弱い立場にある少数
者や先住民の子どもの権利を実質的に保障することを重視
し、差別を受けている当事者の意見表明や参加を最優先の
課題としていろ。
そして第三にこの条約は、子どもの人権を国境を越えた
普遍的なものと考え、子どもの権利を国際協力の力で守る
原則を提起している点が特徴となっていろ。すべての子ど
もの人権の保障は、たがいの尊厳と違いを認めあい、国際
協力の中でこそ保障されるとし、アジアや第三世界の国ぐ
にの子どもの現状と将来に、曰本の大人や子どもたちが深
く関わっていることに気づくことが必要だと提起してい
る。特に「子どもの権利委員会」で政府代表だけでなく民
間団体(NGO)の発言もできるだけ保障しようとの姿勢
は、今後の国連をはじめとする国際機関の新しい試みとし
て注目ざれ評価される点である。子どもの権利条約作成に
深くかかわったアドホック・グループの中心的役割を担っ
32
33子どもの権利条約批准と国内改革の課題
九九○年九月)で約束された国内行動計画を取りまとめ、
は、条約の実施のための国内措置については不要との考え
先にも述べたとおり、国会に提出された「説明書」で
子どもサミットの宣言の約束を忠実に実行するものとは言
1アップー』と題するこの国内行動計画は、国内の被差別
の立場の子どもの状況や識字学習者(非識字者)に全く触
れていないズサンな内容である。この政府の姿勢は、世界
けた国内行動計画」を批判的に継承し、新たに「子どもの
権利保障推進一○か年計画」(仮称)の樹立実現を付帯決
議として求めるべきである、と要望した。批准案件の審議
の過程で今後の国内改革の課題を明らかにし、条約批准後
に審議会を設けるなどして「子どもの権利保障推進一○か
年計画」(仮称)の樹立実現をはかるべきだと考えている。
会では、三月一六日に与野党各党に国会での子どもの権利
条約審議課題と対応策について申し入れ、条約の早期完全
批准とともに政府が国連に提出した「西暦二○○○年に向
で、国内改革や予算増加は一切考えられていない。批准の
るべきという、子どもの権利条約の精神にも反するもので
子どもの権利条約と国内法との関連の究明については、
①条約に抵触する国内関連法規の問題と、②条約に明記さ
国内行動計画l「子どものための世界サミット」のフォロ
九二年一月に国連に提出した。『西暦二○○○年に向けた
ある。不思議なことに、この「国内行動計画」は子どもの
権利条約とは別のものとして扱われ、国会には資料提供が
れているが国内に関連する法規がない問題(立法不作為)
世界のすべての国に存在すること、またこのような児童に
は特別の配慮を必要としていることを認め」(条約前文)
てこれらの被差別状況下の子どもに優先的に施策を実行す
えないし、「極めて困難な条件の下で生活している児童が
行われていない。
推進すべきである。
とが存在することをふまえて、次の四つの柱で国内改革を
子どもの権利条約批准を求める人びとの中でも、残念な
がらこの政府のまとめた「国内行動計画」への関心はあま
り高くないが、この検討は重要である。
(3)国内改革の四つの重点施策I批准の会の要求
ており、この原則の具体化が国内改革の第一の課題である。
第一は、条約二条や四条、八条などを受けた差別撤廃と
平等保障の課題の推進である。子どもの権利条約はどの国
際条約よりももっとも広範に差別の禁止と平等保障を規定
しており、子どもに対するあらゆる形態の差別撤廃条約と
も称することができる。子どもの権利条約の特徴の一つで
関連する条項としては、第二条を中心にして、四条、七条、
イ国内改革の重点施策
て)被差別の存在ととらえるとともに、子どもの中の被差
ある意見表明や参加の権利も、子ども総体を(大人に対し
暦二○○○年に向けた国内行動計画」では、「二、総論」
三一条をはじめ多岐にわたっている。ところで政府の「西
で「我が国の児童をめぐる現状と課題」の項が設けられ、
八条、一一一条、一七条、一八条、一三条、一一一一一条、一一九条、
第二は、差別撤廃・平等保障と密接な関係のあるアイデ
また「三、我が国の児童をめぐる現状と施策」で「特に困
る。
ンティティの保全の課題である。異なるアイデンティティ
別の立場のものを重視することにより、真実のものとな
をもつ人びとが差別を受けることなく、自己の文化や伝統
の子どもの現状と課題についてはほとんど触れられていな
い不十分なものである。差別撤廃と平等保障のためには、
難な状況下の子供」の項があるが、いずれも被差別状況下
差別を受けている当事者の意見表明や参加を最優先の課題
に誇りをもって生きることの保障は、国際化を叫ぶ曰本社
第三は、条約三条や五条、一八条、一九条、二○条など
会の当面する重要課題でもある。
を受けた家族関係法制の改革の課題である。子どもを権利
の人権を保障するためにはまず社会的に弱い立場にある少
数者や先住民の子どもの権利を実質的に保障することを重
として位置付ける国際人権章典をふまえ、すべての子ども
視する方向を明示し、曰本国憲法よりも進んで条約の規定
主体とみとめた上で親子関係、家族関係をどう見直すか
最後に第四として、条約一一一条や三七条、四○条を具体
を最大限生かす取り組みが求められている。
は、発想の転換を求められる重要な課題である。
化する少年司法の改革の課題である。条約に明らかに違反
条約に抵触する国内関連法規の問題と、②条約に明記され
約の差別撤廃と平等保障原則の国内実施を考える場合、①
ろ。これらのいずれも日本国憲法にはない規定である。条
(5)
身障害」、「出生」などによる差別の禁止の規定が注目され
あるが、その中でも「種族的もしくは社会的出身」、「心
特に条約第二条の規定が差別撤廃と平等保障原則の柱で
する現行少年法の無期懲役刑の廃止や代用監獄(警察の留
どの保障などが上げられる。
置場)の廃止、少年審判での意見表明権と弁護士接見権な
ロ差別撤廃と平等保障の課題l第一の課題
先にも述べたとおり、この子どもの権利条約は、差別撤
廃と平等保障の原則を強調している点が大きな特徴となっ
百■■■■qd10U■■?可;①10‐■
新とともに、ノーマライゼーションを基本として地域の保
はじめてである。障害および障害者についての考え方の革
区別して論議をする必要があるが、①については「出生」
(6)
育所や学校への就学保障、仕事保障、街づくり、障害者福
社などの抜本改革が必要となってくる。
も明記された規定であるが、残念ながら国際人権規約の国
「出生」による差別禁止規定は、すでに国際人権規約に
処罰から保護されることを確保するためのすべての適当な
動、表明した意見又は信念によるあらゆる形態の差別又は
童がその父母、法定保護者又は家族の構成員の地位、活
なお、子どもの権利条約第二条二項は、「締約国は、児
内批准に際しては国内改革問題が十分論議されなかったた
している点も、曰本国憲法にない優れた規定である。
措置をとる」と、差別撤廃に向けた国の積極的施策を要求
課題
異文化理解とアイデンティティの保全の課題l第二の
め、現行の非嫡出子に対する差別的取り扱いは容認された
法全体の改正につながるものであるが、子どもの権利条約
次に「種族的(もしくは社会的)出身」による差別の禁
批准を期にあらためて見直し論議を高めるべきである。
ティの保障についても、すでに国際人権規約にも明記され
国内改革の第二の課題である異文化理解とアイデンティ
イヌ民族出身者や在曰韓国・朝鮮人に対する教育や就職・
止規定は、曰本国籍は有するが異なる民族出身者であるア
社会生活上の差別を撤廃する課題を前進させる上で重要と
でいない状況にある。条約第七条、八条、一三条、一一九
条、三○条の具体化とあわせて、改めて重要な課題と受け
た規定であるが、残念ながら国内具体化は遅々として進ん
である。特にアイヌ新法(仮称)制定や在曰韓国・朝鮮人
止め施策の具体化を進める必要がある。異なるアイデンテ
や伝統に誇りをもって生きることの保障は、「国際化」が
らに対する戦後保障法(仮称)制定要求にも役立つもので
また「心身障害」に対する差別の禁止規定は、日本国憲
声高に叫ばれている日本では緊急の課題である。条約第二
ィティをもつ人びとが差別を受けることなく、自己の文化
法にない規定で、国際諸条約の中でも子どもの権利条約が
の尊敬心、第四は差別撤廃の精神で相互理解と共生・共存
の教育を創造すること、第五に地球環境を尊重する態度の
育成、などの具体化を求めている。これらの規定は、一二
世紀の教育の指針であり、世界的な「人権教育」の経験の
と、第三に子どもとその親のアイデンティティや異文化へ
際的な人権基準(基本的人権と自由)への尊敬心を高めるこ
子どもの発達可能性を全面的に開化させること、第二に国
が差別を受けることなく、自己の文化や伝統に誇りをもっ
て生きることを教育や仕事や社会生活全般の中で保障して
いくことは、緊急の課題である。わたしたち批准の会は、
このことは特に教育分野での具体化が強く求められている
と考えている。条約第二九条は、二一世紀にむけてめざす
べき教育の内容(目標)を五点にわたって規定し、第一に
けた国内行動計画」では、アイヌ民族の子どもや在曰韓国
・朝鮮人、そして在曰外国人などの子どもの現状と課題に
ついてはほとんど触れられていない。さる三月一一七日、大
阪地裁の在日フィリピン女性母娘強制退去訴訟で和解が成
立し、法務省が在曰フィリピン人の母娘一一人の定住資格の
特別在留許可を与え実質的な原告側勝訴のケースがマスコ
ミで報道されたが、異なるアイデンティティをもつ人びと
ところが、先にも引用した政府の「西暦二○○○年に向
どもたちにも適用されるべき規定である。
条にいう〔その管轄下にある児童に対し、.…:いかなる差
別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する」
ことは、当然、アイヌ民族の子どもや在曰韓国・朝鮮人、
そして在日外国人などの異なるアイデンティティをもつ子
ある。
なる。またすべての在日外国人の権利保障にとっても重要
ノ、
形となっている。この問題は、民法を中心とする家族関係
ると思われる。
「種族的(もしくは社会的)出身」、「心身障害」が該当す
による差別禁止が該当すると思われ、後者の②については
狐ているが国内に関連する法規がない問題(立法不作為)とを
茄子どもの権利条約批准と国内改革の課題
家族関係改正の課題の第一は、条約第二条(差別撤廃と
平等保障)の具体化である。先にふれた通り「出生」によ
る差別として非嫡出子・婚外子に対する差別は社会生活上
も法制上も差別的取り扱いが歴然としてあり、出生届け記
載の問題(戸籍法改正)や住民票記載の問題(住民基本台
本的改革に取り組む好機でもある。
ている点である。国連は一九九四年を「国際家族年(家庭
環境を奪われた人びとの国際年)」と定め、取り組みを進
めつつあり、民法を中心とするわが国の家族関係法制の抜
国内改革の第三の課題である家族関係法制の改革も、重
要かつ大きな課題である。条約第二条、三条P五条、七
条、八条、九条、一九条、二○条などがかかわるが、重要
なことは大人と同等の権利を持つ主体である「子ども」の
立場から、親や家族のあり方をとらえ直すことが求められ
一一家族関係法制の改革の課題l第三の課題
具体化されなければならないと、考える。
中からまとめられたものであり、学習指導要領の中でこそ
I
11
の不備、「代理出産」などでの親の認知問題など、新しい
活上も法制上も差別的取り扱いが歴然として存在し、指紋
てある。日本国籍を有しない子どもに対する差別は社会生
見表明権を保障することや、子どもに離婚後の親との面接
の点では、離婚の際の親権者の決定の手続きに子どもの意
分離禁止と分離のための手続き)の具体化問題がある。こ
家族関係法改正の第三の課題は、条約第九条(親からの
事態への対応策の立ち後れが課題となっている。
(外登法の改正)や、無国籍のまま放置された子どもの生
行民法には、旧民法的発想がいくつか残存しているが「親
権と子どもの権利の関係)全般の見直しがあげられる。現
家族関係法改正の第四の課題として、親子関係規定(親
の保障をはかる方策などが指摘されている。
一八歳、女一六歳としているが、なぜ男と女で婚姻を認め
たままである。現行民法では、婚姻を認められる年齢を男
権」はその典型で、「子どもは半人前」「子どもは親の付
もへの「義務」としての位置付けへの転換が図られなけれ
属物」との発想があり、親の「権利」の体系から親の子ど
といわざるをえない。「男一八歳」は家庭を維持するため
に必要な年齢(社会的基準)と思われるが、「女一六歳」
ばならない。
の面では、無戸籍(無国籍)の子どもの救済のため、出産
籍の権利、親を知り養育される権利)の具体化である。こ
家族関係法改正の第二の課題は、条約第七条(名前、国
(責務)の充実方策が問われている。生涯学習社会の提唱
と親の養育権を尊重した形での子育て支援への国の施策
「親権」の規定の明確化の問題があり、また親の養育責任
体化にあたっても、親の養育責任と親の養育権の関連など
たとえば条約第一八条(親の養育責任と国の援助)の具
に立ち会った医師等が親にかわって出生届けをできるよう
が検討されるべきである。
とも相まって、多様な保育サービスと子育て支援策の創出
査機関が集めた「黒い」証拠を全部見て、いわば捜査機関の嫌疑
まず二項Ⅲりの「無罪推定」である。これは当然の規定である。
しかし、わが国の法規定および運用を考えるとかなり問題があ
ると思う。わが国の少年審判制度では無罪推定制度で重要な意味
をもつ、予断排除の原則や伝聞法則などがなく、家庭裁判所は捜
Ⅲ無罪の推定について
を考えるに、この点からも併せて検討する。
少年司法については四○条に規定されている。国連では、詳細
に規定した「少年司法運営に関する最低基準規則」(以下単に「基
準規則」という)が既に採択されているので、子どもの権利条件
鈴木祥蔵編『人権ブックレット蛇すべての子どもに人権
を子どもの権利条約の解説』、解放出版社、九○年四月)
最後に国内改革の第四の課題として、少年司法の改革の
課題がある。条約一一一条や三七条、四○条を具体化し、条
約に明らかに違反する現行少年法の無期懲役刑の廃止や代
用監獄(警察の留置場)の廃止、家庭裁判所の機能を充実
ざせ少年審判での子どもの意見表明権や弁護士依頼権など
の保障の必要性について、すでに曰弁連などが提言を行っ
ているので、ここでは石井小夜子弁護士の提言を以下に引
用して紹介する。(石井小夜子「改善急がれる少年司法」、
ホ少年司法改革の課題l第四の課題
;
一方、条約第一九条(親による虐待・放任・搾取からの
にするなど戸籍法の改正や、親に認知されない子どもの救
る。
場合(祖父母が孫を養子とするケースや連れ子で再婚する
ケース)などの場合の手続き(現状では家庭裁判所への届
出不要)も再検討すべきだとの主張が、児童虐待に取り組
む関係者から出されている。その他、特別養子縁組制度に
ついても適正手続きの整備をはかるべきだとの指摘があ
「家の(親の)ため」の養子制度から「子どもの最善の利
益」のための制度への転換をはかるため、養子縁組の目的
や要件等を見直す課題がある。特に直系卑属を養子とする
また、条約第二一条(養子縁組)の具体化とかかわって
生涯学習社会の実現のためにも課題となっている。
る児童虐待を防止する観点からも指摘されている。曰弁連
は八九年九月に「親権をめぐる法的諸問題と提言l親によ
る子どもの人権侵害防止のためにl」を発表したが、適正手
続を保障して親権の一時停止措置を盛り込むよう提言し、
親権の喪失に関する第三者機関の積極的かかわりをめざし
児童福祉法、労働基本法、民法の改正を働きかけている。
また条約第二○条(家庭環境を奪われた子どもの養護)
の具体化とかかわって、児童相談所や福祉施設の機能充
実、社会保育(学童保育等)の充実が、学校五曰制実現や
の関係のみなおしが、最近社会問題になりつつある親によ
保護)の具体化とかかわって、「親権」と「子どもの権利」
改正がある。さらには「人工受精児」などに関する法整備
済のための方策として認知の訴えの改善の問題など民法の
あろう。
り、合理的区別とはいいがたい。男女同一年齢にすべきで
とは子どもを出産するに適した生理的基準と考えられてお
られる年齢に差があるのかについて、合理的根拠に乏しい
存権保障の課題がある。また婚姻年齢での差別も放置され
押捺や登録証常時携帯の強制やきびしい出入国管理の問題
法改正が必要となる。次に「国籍」による差別も歴然とし
舶帳法改正)、財産分与の問題(民法改正)など、いずれも
37子どもの権利条約批准と国内改革の課題
もない。家庭裁判所の決定(少年院送致など)については不服申
れる監護措置(少年鑑別所への収容)については不服申立制度
詔をそのまま引き継いで審判に臨むのである。また、身柄拘束をさ
は必然であろう。
きなり告知される。したがって、この手続きの改善を迫られるの
実については、監護措置決定の際の審問時や審判の場で口答でい
合、それに類似した規定がない。家庭裁判所に送致された犯罪事
③弁謹人依頼権
子どもの権利条約では、被疑事実の告知の際の防御の際(二佃
を設けているが、これは弁護人の援助と考えてよいだろう。防御
遡)、決定の際の立会い(同遡)などの項で「法的援助」の規定
力のない子どもにとって、親の援助と共に、弁護人の援助は適正
わが国の場合、あらゆることが原則として裁判所の裁量に任さ
の目的は達せられるが、残念ながらそうでない方向に来ている。
は、「手続を通じて少年は法律的助言者によって代理される権利
手続きを保障する上で不可欠である。国連の基準規則一五’一で
あるいはそのような規定のある国では無償の法律扶助を求める権
利を持たなければならない」としている。
しかし、家庭裁判所で付添人という名で弁護人がつくのは全体
これを実質的に保障するためには、弁護人選任権の保障(告知)
の○・六パーセントにすぎず、捜査段階ではそれを下回るのだか
だけではなく、自ら選任しない場合には裁判所によって選任して
適当な場合は親などを通じて告知されること、自己の防御の準備
しかし、わが国の制度および運用はこれがないに等しい。逮捕
ら、わが国の今の制度ではこれがないに等しい。
・拘留については、告知規定があるが、子どもが理解できるような
なしの手続きを進められない(必要弁護)とする三つの権利の保
もらう権利(国選制度等)と共に、当人の意思に関係なく弁護人
・提出の際に法的援助を受けることなどと規定し、防御力のない
何で逮捕され、何で取り調べを受けているのかわからないまま自
刑事裁判の場合、事前の起訴状謄本の送達が義務づけられ予め
るが、権利条約の規定をみれば明らかなように、裁判所の逸脱を
家庭裁判所ではこれを裁判所の協力者と位置付けているようであ
また、現在少年審判では弁護人は、「付添人」という名であり
障がなければならない。(中略)
の防御準備期間を保障する制度になっているが、少年審判の場
国会審議の過程で今後の課題を明らかにする十分な審議を
行うべきである。そして、解釈宣言や留保を付けずに子ど
もの権利条約を完全批准し、その後に審議会を設けるなど
して「子どもの権利保障推進一○か年計画」(仮称)の樹
立実現をはかるべきであると、わたしたちは考えろ。
以上述べてきたとおり、今、国会では子どもの権利条約
批准案件の審議が行われようとしているが、政府の閣議決
定にいたる経過と内容には多くの問題点が存在する以上、
国内改革にむけ世論の結集を
四子どもの権利条約批准を契機に、
なければならないだろう。
るべきである。また、現在保護処分が継続中に限り再審申立がで
きるとされているが、保護処分の期間は短く、いつでも可能とし
訴の制度である。三⑪v)。現在抗告制度があるが、判例上、非
行事実がないと主張しているのにあると認定されて不処分になっ
た場合は抗告できないとされている。このことは早急に改善され
この他、改善をしなければならないことは多々ある。一つは上
⑤その他
捜査の嫌疑を引き継ぐから、反対尋問権の保障はきわめて重要で
護人制度が要求されるだろう。
所は捜査機関が集めたいわば「黒い」記録を全部読み、そのまま
反対尋問権の保障も同様である。前述のとおり、わが国の少年
審判の場合、起訴状一本主義など予断排除の制度がなく家庭裁判
される必要がある。(中略)
の確立、前記ミランダルールなど取り調べでの弁護人の立会い、
立会いなしの自白の証拠能力で否定などが最低の制度として保障
したがって、黙秘権を実質的に保障し、任意でない自白をさせ
ないためには、制度としてかなりのものを早急に確立しなければ
ならない。そのためには、前項で述べた捜査段階からの弁護制度
罪は氷山の一角である。
裁判所においても自白の任意性などについてはほとんど疑問を
はさまない。「綾瀬母マ
はさまない。「綾瀬母子強殺事件」は記憶に新しいが、少年の冤
いるとは言えないと断言せざるを得ない。
いることが少年事件を担当していると見えてくる。このような実
情から見ると、「黙秘権の告知」だけでは、黙秘権が保障されて
このため暴力をはじめ様々な違法・不当な方法で自白を強要して
しかし、わが国の実情はあまりにお粗末である。少年事件は圧
倒的に自白事件である。少年事件の捜査の実情を見ると、成人事
件以上に自白獲得のみが目的とされていると断じざるを得ない。
しく実質的な保障でなければならない。
これは二佃湖に保障されている。これも子どもの制度にふさわ
例黙秘権と反対尋問権,
監視し、少年の権利を守る存在として徹底できる、名実ともに弁
ある。(中略)
概括的に後述する)などの立会いが必要となってくるだろう。
白に追い込まれるおそれは多分にある。弁護人(これについては
注意規定もなく、実際にもそのような配慮は加えられていない。
子どもの権利行使にふさわしい手続きを要求している。
二項佃刺には被疑事実の迅速な告知が規定されている。同項は
②被疑事実の告知
この無罪推定の保障でも同様のことが言える。
したがって、制度的な改革が必要となってくると思われるが、
れている。裁判官個人が少年法の趣旨に添った運用をすれば所期
してしまう場合がないわけではない。(中略)
執行されてしまう。したがって、中には不服申立中に処分が終了
立制度はあるものの、不服申立をしても決定は停止せず、直ちに
39子どもの権利条約批准と国内改革の課題
人民の相互理解と信頼の醸成のためにも「人権教育」を高
める動きなど、世界的に「人権教育」を重視しようとの動
が、人権の伸長と平和と民主主義を希求する曰本こそが、
されることが予定されていると伝えられている。
では、一九九○年代を「人権教育推進の一○年」にしよう
とのよびかけがなされているし、一九九三年に開催が予定
されている国連世界人権会議でも更に発展させた宣言が出
きが活発化していろ。そして一九九○年三月のタイ(ジョ
ムティエン)での「すべての人に教育を世界会議」の宣言
国際社会の中で、とりわけアジアの中でおたがいの違いと
障には、地球規模で考え、行動することが求められている
尊厳を認め合い、民主主義と人権を保障するとりくみの発
子どもの権利条約第四二条は国(及び大人の)広報義務
展に大きく寄与しなければならない。
を定め、「締約国は、適当かつ積極的な方法でこの条約の
どもたちに身に付けさせることが重視されている。すなわ
で含んだものとなっている。これらの中では、人権につい
ての国際水準の理解と共に、豊かな人権感覚と行動力を子
原則及び規定を成人及び児童のいずれにも広く知らせるこ
に子どもの権利条約の内容を正しく伝える努力を、そして
とを約束する」としている。まず当事者である子どもたち
子どもの声を大人たちが十分に受け止める努力を推し進め
れている。これらの「人権教育」の中心には差別撤廃をめ
についての知識から人権を守るための行動へと呼びかけら
ざす教育の創造があり、地球的規模での差別撤廃のために
ち具体的な差別の事例について考える体験を重視し、人権
いる。国連を中心とする国際社会では、一九八○年代以後
は南北問題(「北」の豊かさと「南」の貧しさの関連)を
ることが求められている。その意味からも学校における人
「人権」概念が大きく拡大し、古典的な自由権や社会権的
解決する視点が重視されている。
(参老)
目次
三条約の実施のための国内措置
6最終条項
5委員会の設置等
4条約の広報義務
外務省
3条約と国内法及び他の国際法との関係
2締約国の義務
1児童の定義
二条約の内容
6他の国際約束との関係
5我が国の留保等
4早期国会承認が求められる理由
3条約の締結により我が国が負うこととなる義務
2条約締結の意義
1条約の成立経緯
一慨説
児童の権利に関する条約の説明書
平成四年三月
〈資料〉
把握から進んで、環境権や発展の権利など「第三世代の人
(文責・前川実)
の中に具体化することを特に期待する次第である。
に盛り込まれた世界的な「人権教育」の視点を日本の教育
点の課題についての国内改革論議を高めるとともに、条約
子どもの権利条約の批准を契機にして、さきにのべた四
権」が主張されてきている。またEC統合による域内各国
権教育の伸長が重要な課題であると、わたしたちは考えて
法や国際法の学習)にとどまらず、「異文化理解教育(国
際理解教育、多文化教育)」、「環境教育」や「開発教育」、そ
して被差別者の権利侵害の実態をふまえた反差別の教育ま
そこで構想されている「人権教育」はたいへん多岐にわ
たるものとなっており、曰本での古典的な社会科学習(憲
側この条約に盛り込まれた理念を生かし、子どもの権利が
真に尊重される社会に変革するためには、日本の教育や福
祉や少年司法の改革、そしてアジアの子どもたちの人権保
障の発展にむけた国際協力の面で、具体的で効果的な施策
の充実にむけ十分な論議が必要である。地球時代の人権保
41子どもの権利条約批准と国内改革の課題
42
鍋子どもの権利条約批准と国内改革の課題
概説
1条約の成立経緯
人権の尊重は、国際連合(以下「国連」という。)が最も大き
な関心を払ってきた事項の一つである。児童の権利については、
昭和三十四年の第十四回国連総会において「児童の権利に関す
る宣言」が採択された後、昭和五十三年にこの条約の草案が提
が行われてきた。その結果、「児童の権利に関する宣言」三十周
出され、同年の第三十三回国連総会以来、十年間にわたる検討
年及び国際児童十周年に当たる平成元年三月に案文が完成し、
3条約の締結により我が国が負うこととなる義務
この条約の締結により我が国が負うこととなる主要な義務の
なお、この条約では、十八歳未満のすべての者を「児童」と
概要は、次のとおりである。
、定義している。
を尊重し及び確保すること。
川児童に対し、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利
②この条約において認められる権利の実現のため、すべての
適当な立法措置、行政措置その他の措置を譜ずること。ただ
る利用可能な手段の最大限の範囲内で、また、必要な場合に
し、経済的、社会的及び文化的権利に関しては、自国におけ
は国際協力の枠内で、これらの措置を講ずること。
同年の第四十四回国連総会において、この条約案が無投票で採
なお、この条約は、平成二年九月二日に効力を生じ、平成四
択された。
年三月一一日現在、百十一箇国が締約国となっている。
この条約は、我が国が締約国となっている「経済的、社会的
例この条約において認められる権利の実現のためにとった措
知らせること。
③この条約の原則及び規定を成人及び児童のいずれにも広く
及び文化的権利に関する国際規約」及び「市民的及び政治的権
二年以内に、⑪その後は五年ごとに、国連事務総長を通じて
置及びこれらの権利の享受についてもたらされた進歩に関す
る報告を、側我が国についてこの条約が効力を生ずる時から
2条約締結の意義
利に関する国際規約」において定められている権利を児童につ
児童の権利に関する委員会に提出すること。
いて広範に規定するとともに、更に、児童の人権の尊重及び確
国がこの条約を締結することは、かかる我が国の人権尊重への
基づいている我が国の憲法とも軌を一にするものである。我が
に、最近においては、児童の権利の尊重及び保護の重要性に関
た、我が国は、この条約に署名している(平成二年九月)。特
ス、イタリア及びカナダを含む百十一箇国が締結しており、ま
この条約は、平成四年三月一一日現在、既に、英国、フラン
4早期国会承認が求められる理由
取組の一層の強化及び人権尊重についての国際協力の一層の推
のであり、その目的とするところは基本的人権の尊重の理念に
保の観点から必要となる詳細かつ具体的な事項をも規定したも
進の見地から有意義である。
第十条1は、家族の再統合のための児童又はその父母によ
る締約国への入国又は締約国からの出国の申請について、締
約国が「積極的、人道的かつ迅速な方法」で取り扱う旨規定
している。我が国は、この規定にいう「積極的、人道的かつ
ではないと解する旨の宣言を行う。
②家族の再統合のための出入国について
いことを確保する旨規定している。我が国は、この規定は父
母が児童を虐待する場合のような特定の場合について適用さ
れるものであり、出入国管理法に基づく退去強制の結果とし
て児童が父母から分離される場合については適用されるもの
第九条1は、権限のある当局が必要と決定する場合を除く
ほか児童がその父母の意思に反してその父母から分離されな
⑪児童の父母からの分離
である。
我が国が、この条約の締結に当たり行う留保等は次のとおり
5我が国の留保等
いくことが重要である。
する認識が世界的に高まり、この条約については、「子供のた
めの世界サミット」(平成二年九月開催)、国連総会、国連人権
委員会等において、世界各国に対し、この条約の早期締結が勧
奨されるに至っている。児童の人権の尊重というこの条約の目
的は、基本的人権の尊重を理念とする我が国の憲法と軌を一に
するものであり、我が国としても、この条約を早期に締結し、
児童の権利の尊重及び保護についての国際協力を一層推進して
児童とは、十八歳未満のすべての者をいう。ただし、当該児
童で、その者に適用される法律によりより早く成年に達したも
1児童の定義
要は、次のとおりである。
この条約は、前文、本文五十四箇条及び末文から成り、その概
二条約の内容
発生。我が国は、昭和五十四年六月に締結)がある。
児童を含む個人の人権について広範に定める条約としては、
「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(昭和四
十一年十一万採択。昭和五十一年一月効力発生。我が国は、昭
和五十四年六月に締結)及び「市民的及び政治的権利に関する
国際規約」(昭和四十一年十一一月採択。昭和五十一年三月効力
6他の国際約束との関係
を留保することとする。
満の者)が成人(十八歳以上の者)から分離されなければな
らない旨規定している。我が国においては、国内の関係法令
により、自由を奪われた者は基本的に二十歳で分離すること
とされていること等にかんがみ、右規定に拘束されない権利
第三十七条回は、自由を奪われたすべての児童(十八歳未
③自由を奪われた児童の成人からの分離について
を行う。
迅速な方法」で出入国の申請を取り扱うとの義務はそのよう
な申請の結果に影響を与えるものではないと解する旨の宣言
I
必
嫡子どもの権利条約批雄と国内改革の課題
のを除く。(第一条)
Ⅲ一般的義務
2締約国の義務
Ⅲ締約国は、児童又はその父母若しくは法定保護者の人
種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、
国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出
生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの
条約に定める権利を尊重し、及び確保する(第二条)。
回児童に関するすべての措置をとるに当たり、児童の最善
の利益が主として考慮される(第三条)。
め、すべての適当な立法措置、行政措置その他の措置を讃
例締約国は、この条約において認められる権利の実現のた
ずる(第四条)。
H締約国は、父母、法定保護者等が児童の発達しつつある
能力に適合する方法で適当な指示及び指導を与える責任、
権利及び義務を尊重する(第五条)。
不法に奪われる場合には、これを回復するため、適当な援
元関係事項を保持する権利を尊重し、その身元関係事項が
助及び保護を与える(第八条)。
側家族から分離されない権利
重する(第九条)。
川締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から
分離されないことを確保し、また、父母の一方又は双方か
ら分離されている児童が父母との接触を維持する権利を尊
回家族の再統合のための児童又はその父母による締約国へ
の入国又は締約国からの出国の申請については、締約国が
積極的、人道的かつ迅速な方法で取り扱う(第十条)。
川締約国は、児童が不法に国外へ移送されることを防止し
の措置を講ずる(第十一条)。
及び国外から帰還することができない事態を除去するため
締約国は、児童が自由に自己の意見を表明する権利を確保
⑤意見を表明する権利
する。児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相
応に考慮される(第十二条)。
②生命に対する権利
締約国は、生命に対する児童の固有の権利を認めるものと
し、この権利を漸進的にかつ機会の平等を基礎として達成
するための措置をとる。また、締約国は、学校の規律が児
童の人間の尊厳に適合する方法で運用されることを確保す
u教育及び文化の分野における児童の権利
川締約国は、教育についての児童の権利を認めるものと
(第二十七条)。
㈲締約国は、相当な生活水準について児童の権利を認める
二十六条)。
権利を認めるものとし、このための必要な措置をとる(第
H締約国は、すべての児童が社会保障からの給付を受ける
についての児童の権利を認める(第二十五条)。
児童に対する処遇等に関する定期的な審査が行われること
円締約国は、養護、保護又は治療を目的として収容された
ことについての児童の権利を認める(第二十四条)。
回締約国は、到達可能な最高水準の健康を享受すること並
びに病気の治療及び健康の回復のための便宜を与えられる
であることを認める(第二十三条)。
を容易にする条件の下で十分かつ相応な生活を享受すべき
の尊厳を確保し、自立を促進し及び社会への積極的な参加
川締約国は、精神的又は身体的な障害を有する児童が、そ
⑪医療及び福祉の分野における児童の権利
確保するための適当な措置をとる(第二十二条)。
れている児童が適当な保護及び人道的な援助を受けることを
締約国は、難民の地位を求めている児童又は難民と認めら
⑧結社及び集会の自由についての権利
利を尊重する(第十四条)。
、思想、良心及び宗教の自由についての権利
締約国は、思想、良心及び宗教の自由についての児童の権
児童は、表現の自由についての権利を有する(第十三条)。
㈹表現の自由についての権利
する(第六条)。
し、児童の生存及び発達を可能な最大限の範囲において確保
⑧登録、氏名、国籍等についての権利
Ⅲ締約国は、児童が出生後直ちに登録され、氏名を有し及
び国籍を取得する権利の実現を確保する(第七条)。
回締約国は、児童が国籍、氏名及び家族関係を含むその身
し,
締約国は、結社の自由及び平和的な集会の自由についての
児童の権利を認める(第十五条)。
⑨干渉又は攻撃に対する保護
いかなる児童も、その私生活、家族、住居若しくは通信に
不法に攻撃されない(第十六条)。
対して窓意的に若しくは不法に干渉され又は名誉及び信用を
⑩情報及び資料の利用
締約国は、大衆媒体(マス・メディア)の果たす重要な機
得ることを確保する(第十七条)。
能を認め、児童が多様な情報源からの情報及び資料を利用し
⑪家庭環境における児童の保護
Ⅲ締約国は、児童の養育及び発達について父母が共同の責
任を有するとの原則の認識を確保するために最善の努力を
払う(第十八条)。
九条)。
何締約国は、虐待、放置、搾取(性的虐待を含む。)等か
ら児童を保護するためのすべての適当な措置をとる(第十
h家庭環境を奪われた児童は、国が与える特別の保護及び
援助を受ける権利を有する(第二十条)。
H締約国は、児童の養子縁組に当たり、児童の最善の利益
について最大の考慮が払われること、また、権限のある当
一条)。
局によってのみこれが認められることを確保する(第二十
⑫難民の児童に対する保護及び援助
46
47子どもの権利条約批准と国内改革の課題
るためのすべての適当な措置をとる(第二十八条)。
回締約国は、児童の教育が、児童の人格、才能等を最大限
度まで発達させること、人権及び基本的自由並びに国連憲
すべての適当な措置をとる(第三十五条)。
剛締約国は、いずれかの面において児童の福祉を害する他
のすべての形態の搾取から児童を保護する(第三十六条)。
Ⅲ締約国は、いかなる児童も、拷問又は他の残虐な、非人
等の取扱い及び武力紛争における児童の保護
㈹自由を奪われた児童、刑法を犯したと申し立てられた児童
国の国民的価値観並びに自己の文明と異なる文明に対する
ないこと、不法に又は窓意的にその自由を奪われないこと
道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受け
の文化的同一性、言語及び価値観、児童の居住国及び出身
章にうたう原則の尊重を育成すること、児童の父母、児童
尊重を育成すること等を指向すべきことに同意する(第二
(5)条約第二条の外務省訳は次の通り。
を九一年二月に発表している。
が『弁護士七○人の提言・子どもの権利条約と日本の子ども』
(4)その他に東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する委員会
参照されたい。
の作成した解説資料は、本紀要第七一号で紹介しているので、
(3)アドホック・グループの事務局を担当したDCIとユニセフ
肥、解放出版社)に所収。
(2)鈴木祥蔵編『すべての子どもに人権を』(人権ブックレット
だきたい。
(1)紙面の都合上、条約文は省略させていただいた。批准の会編
『子どもと人権』第七号に全文を収録しているので、参照いた
注
4締約国平成四年一一一月二日現在百十一箇国(以下、略)
3署名国平成四年三月一一日現在百三十二箇国(以下、略)
1作成平成元年十一月二十日ニューヨークにおいて作成
2効力発生平成二年九月二日
(参考)
る。
2なお、この条約を実施するためには、予算措置は不要であ
ない。
1この条約の実施のためには、新たな国内立法措置を必要とし
三条約の実施のための国内措置
H締約国は、刑法を犯したと申し立てられ、訴追され又は
認定されたすべての児童が尊厳及び価値についての意識を
十九条)。
・会復帰を促進するためのすべての適当な措置をとる(第三
h締約国は、放置、搾取若しくは虐待、拷問若しくは他の
残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しく
は刑罰又は武力紛争による被害者である児童の回復及び社
八条)。
回締約国は、武力紛争の影響を受ける児童の保護及び養護
を確保するためのすべての実行可能な措置をとる(第三十
されること等を確保する(第三十七条)。
がその最善の利益であると認められない限り成人とは分離
的な事情がある場合を除くほか成人とは分離されないこと
者の必要を考慮した方法で取り扱われること、特に、例外
人道的に、人間の固有の尊厳を尊重し、かつ、その年齢の
等を確保する。締約国は、また、自由を奪われた児童が、
し
十九条)。
円少数民族に属し又は原住民である児童は、自己の文化を
使用する権利を否定されない(第三十条)。
享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を
H締約国は、休息及び余暇についての児童の権利並びに児
童が遊び及びレクリエーションの活動を行い並びに文化的
な生活及び芸術に参加する権利を認める(第三十一条)。
旧搾取等からの児童の保護
川締約国は、児童が経済的な搾取から保護され及び教育の
る労働への従事から保護される権利を認める(第三十二
障害となり又は健康若しくは発達に有害となるおそれのあ
条)。
回締約国は、麻薬及び向精神薬の不正な使用からの児童の
保護等のためのすべての適当な措置をとる(第三十三条)。
h締約国は、あらゆる形態の性的搾取及び性的虐待から児
童を保護することを約束する(第三十四条)。
H締約国は、児童の誘拐、売買又は取引を防止するための
四十条)。
促進させるような方法等で取り扱われる権利を認める(第
3条約と国内法及び他の国際法との関係
この条約のいかなる規定も、締約国の法律及び締約国につい
て効力を有する国際法に含まれる規定であって、児童の権利の
一条)。
実現に一層貢献するものに影響を及ぼすものではない(第四十
4条約の広報義務
締約国は、この条約の原則及び規定を成人及び児童のいずれ
にも広く知らせることを約束する(第四十二条)。
5委員会の設置等
もよく
凶この条約において負う義務の履行の達成に関する締約国に
よる進捗の状況を審査するため、児童の権利に関する委員会
(以下「委員会」という。)を設置する(第四十三条)。
②締約国は、この条約において認められる権利の実現のため
にとった措置等に関する報告を国連事務総長を通じて委員会
に提出することを約束する(第四十四条)。
③委員会は、専門機関及び国連児童基金その他の国運の機関
からこの条約の実施についての報告を提出するよう要請する
ことができる。また、委員会は、提案及び一般的な性格を有
する勧告を行うことができる(第四十五条)。
6最終条項
署名、批准、加入、効力発生、改正、留保等について規定し
ている(第四十六条から第五十四条まで)。
第二条
し、及び確保する。
1締約国は、その管轄の下にある児童に対し、児童又はそ
の父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、
宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは
社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわ
らず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重
べての適当な措置をとる。
2締約国は、児童がその父母、法定保護者又は家族の構成
員の地位、活動、表明した意見又は信念によるあらゆる形
態の差別又は処罰から保護されることを確保するためのす
(6)この点については、紀要第七四号の楠敏雄論文「子どもの権
利条約と障害児の権利保障」や、批准の会編『障害者差別の実
態と子どもの権利条約』(九○年二月)などを参照。
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