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ADB 財務概要 - Asian Development Bank

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ADB 財務概要 - Asian Development Bank
アジア開発銀行について
経済発展のサクセス・ストーリーが脚光を浴びる一方で、アジア・太平洋
地域には、世界の貧困層の3 分の2が、また生活費が一日2 ドル未満の人々
が約18 億人、そのうち9 億300 万人は一日1.25 ドル未満で暮らしている
とされています。マニラに本部を置くアジア開発銀行(Asian Development
Bank: ADB、加盟国・地域数67、うち域内48)は、アジア・太平洋地域から
貧困がなくなる日の実現をめざし、全ての人々に恩恵が行き渡る(インクル
ーシブな)経済成長、環境に調和した持続可能な成長、および地域統合の促
進を通じて、途上加盟国の貧困削減と人々の生活の向上を支援しています。
ADB が行う支援の具体的手段は、政策対話、融資、出資、保証、無
償援助、技術協力などです。
ADB
財務概要
2011
アジア開発銀行
6 ADB Avenue, Mandaluyong City
1550 Metro Manila, Philippines
www.adb.org
ISBN 978-92-9092-344-2
出版物番号 RPT113619
再生紙使用
印刷:フィリピン
ADB
財務概要
2011
© 2011 アジア開発銀行
無断転載禁ず。2001年発行。
印刷:フィリピン
ISBN 978-92-9092-344-2
出版物番号 RPT113619
出版物分類データ
アジア開発銀行
財務概要2011
Mandaluyong City, Philippines: Asian Development Bank, 2011.
1. 財務概要 2. アジア開発銀行 I. アジア開発銀行
本書では、用いられるデータの正確性の確保に全力を尽くしている。アジア開発銀
行(ADB)の出版物におけるデータは、出版時期の違い、データ情報源、解釈などに
より差異が生じることもある。データの使用において生じる結果について、ADBは一
切責任を負わない。
本書において特定の領域または地域に何らかの呼称をつけ、もしくは言及し、また
は「国」という言葉を使うことがあっても、ADBはそれをもって領域または地域の法
的その他の地位について何らかの判断を下すことを意図していない。
情報の印刷はまたは複製は、個人的および非商業目的においてのみ、かつADBへの適
切な言及を行う場合にのみ奨励される。利用者がADBの明示的な書面による同意を得
ずに、本書を再販売・再頒布し、または商業目的で二次的著作物を創作することは
禁じられる。
本書で「$またはドル」と言う場合には米ドルを指す。
2011年4月
アジア開発銀行
6 ADB Avenue, Mandaluyong City
1550 Metro Manila, Philippines
電話番号 +63 2 632 4444
Fax番号 +63 2 636 2444
www.adb.org
注文は広報部(Department of External Relations)まで。
Fax番号 +63 2 636 2648
[email protected]
再生紙使用
目次
略語・頭字語
iv
ADB財務概要2011
1
アジア・太平洋地域におけるADB
2
ADBの業務
4
2010年の業務成果と主な出来事
6
信用の基盤
7
17
金融商品
22
特別基金
27
ADB加盟国
34
主要連絡先
35
ADBオンライン
38
アジア開発銀行
借入業務
iii
財務概要2011
略語・頭字語
iv
ADB
ADBI
ADF
APDRF
ATF
CCF
DMC
JFPR
JSF
JSP
LBL
LCL
LIBOR
OCR
OECD
ORM
PEF
RCIF
SCL
TASF
アジア開発銀行
アジア開発銀行研究所
アジア開発基金
アジア太平洋災害対応基金
アジア津波基金
気候変動基金
開発途上加盟国
貧困削減日本基金
日本特別基金
日本奨学生プログラム
LIBORベースの融資
現地通貨建て融資
ロンドン銀行間取引金利
通常資本財源
経済協力開発機構
リスク管理部
パキスタン地震基金
地域協力・統合基金
単一通貨融資
技術協力特別基金
ADB財務概要2011
アジア開発銀行(ADB)は、健全な資本基盤に基づく
国際開発金融機関です。ADBは、全ての人々に恩恵が
行き渡る(インクルーシブな)成長、環境に調和し
た持続可能な成長、および地域協力・統合の促進を
通じて、アジア・太平洋地域の貧困を削減すること
を目標としています。
ADBの本部はフィリピンのマニラにあります。この他にも、北米(ワ
シントンDC)、欧州(フランクフルト)および日本(東京)の代表
事務所など、域内外に事務所が設置されています。
アジア開発銀行
ADBは、その出資者である加盟国が署名した「アジア開発銀行設立
協定」(以下「ADB設立協定」)によって、1966年に設立されまし
た。2010年末現在、加盟国は67カ国で、うち48カ国はアジア・太平
洋地域の国です。また、23カ国が経済協力開発機構(OECD)に加盟
しています。
2010年末現在の職員数は2,833名で、その出身加盟国は59にのぼり
ます。
1
アジア・太平洋地域にお
けるADB
ADBは「貧困のないアジア・太平洋地域」
財務概要2011
をめざし、開発途上加盟国が貧困を削減し、生活条件
および生活の質を改善できるように支援しています。
2
ADBは、全ての人々に恩恵が行き渡る(インクルーシブな)経済成
長、環境に調和した持続可能な成長、および地域協力・統合の促進
という3つの戦略的課題に支援を集中することにより、ビジョンの実
現に向けた実質的な貢献を目指しています。
ADBは2008年に採択した新たな長期戦略の枠組み「ストラテジー2020
」の下で、2020年までの業務の指針となる自らの役割と戦略的方向
を定義し、開発途上加盟国に対するより適切で実効性のある支援を
進めています。
表1: ADBの概要
数字は各年の年末時点のもの、または年間合計額(単位:百万ドル)
2010
2009
2008
2007
OCR融資承認額
ソブリン
8,197
10,568
6,839
6,972
ノンソブリン公共
–
134
75
10
ノンソブリン民間
1,053
304
1,222
640
5,272
7,449
5,878
4,743
OCR融資実行額
ソブリン
ノンソブリン公共
75
–
54
30
ノンソブリン民間
598
449
540
461
グラント
982
924
707
549
保証
982
325
–
251
貿易金融プログラム
–
850
–
–
出資
243
220
103
80
技術協力グラント
175
203
189
161
協調融資
3,669
3,418
1,275
534
授権資本
163,843
166,179
54,890
55,978
応募済資本
60,751
54,890
55,978
14,940
10,359
9,372
8,854
借入残高
51,822
42,063
35,672
31,569
通常準備金
10,030
9,790
9,532
9,245
特別準備金
総収入
230
219
210
203
1,142
1,472
2,064
2,208
614
(37)
1,119
760
保証手数料の特別準備金への充当後
の純利益(損失)
アジア開発銀行
143,950
年間借入総額
− = 該当データなし、OCR = 通常資本財源
注:小数点以下の処理により合計が一致しない場合がある。
出所:アジア開発銀行年次報告「記録」。
3
ADBの業務
ADBは、使命達成のため、様々な活動やイニシアティ
ブを通じて、開発途上加盟国の経済成長と社会開発
を推進しています。
財務概要2011
ADBは、開発途上加盟国(DMC)内の融資プロジェクトおよびプログ
ラムに対して融資を行うとともに、技術協力、グラント(無償援
助)
、保証および出資の各業務を行っています。
また、ADBは政策対話や助言を行うほか、公的資金、民間資金および
輸出信用機関との協調融資を通じて資金を動員し、援助による開発
効果の最大化を図っています。業務の財源は通常資本財源(OCR)と
特別基金です。
OCRと特別基金は、ADB設立協定により、常に完全に分離して管理お
よび運営することが義務づけられています。
通常資本財源(OCR)
ADBのOCR業務は多岐にわたり、農業・天然資源、教育、エネルギ
ー、金融、保健・社会保障、産業・貿易、公共セクター運営、運
輸・情報通信技術、マルチセクター、ならびに上水道・都市インフ
ラの各セクターにわかれます。OCR融資は基本的に、比較的高い水準
の経済開発を達成したDMCが対象です。
ADBが設立以来2010年末までに承認したOCR融資の累計額(中止分お
よび減額分を除く)は1,263億6,690万ドルにのぼります。2010年末
現在、OCR融資の残高と未実行額の合計は705億990万ドルとなってい
ます。これらOCR融資総約定額の約94.3%は公共セクター(加盟国政
府および政府の保証を受けた政府機関その他の公的機関)に対する
4
ソブリン融資です。約5.7%は民間セクターの企業、金融機関および
政府保証のつかない特定の公共セクターの団体に対するノンソブリ
ン融資です。
ADBは2009年6月、経済危機の影響を受けた開発途上加盟国に期間を
限定して追加的支援を提供するために、総額30億ドル相当の「景気
循環相殺政策支援ファシリティ」を創設しました。同ファシリティ
からの融資は2010年末をもって終了し、それまでに5件・計25億ドル
のソブリン融資が承認され、その全額が実行されました。
OCRの財源 OCRの財源には、払込資本、利益剰余金(準備金)およ
び借入金が含まれます。ADBはOCR融資業務の財源を調達するため、
各国の資本市場および国際資本市場から借入を行っています。
ADBの債務証券は、すべての主要な国際信用格付け機関から最高の投
資格付けを得ています。
表2: 投資格付け
機関
格付け
ムーディーズ・インベスターズ・サービス
Aaa
スタンダード・アンド・プアーズ
AAA
フィッチ
AAA
アジア開発銀行
5
2010年の業務成果と
主な出来事
(カッコ内は2009年実績)
堅実な収益性
財務概要2011
ADBは設立以来、良好な財務実績を毎年達成し続けており、融資のデ
フォルト率はきわめて低い水準にとどまっています。2010年の営業
利益は5億4,800万ドルに達しました(2009年は4億2,010万ドル)。
融資(OCR) 2010年のOCRからの融資承諾総額は92億4,970万ドル
(2009年は110億560万ドル)で、うち10億5,270万ドル(2009年は4
億4,290万ドル)がノンソブリン案件でした。
出資(OCR) 出資の承認総額は2億4,300万ドル(2009年は2億2,000
万ドル)でした。
借入 ADBは、中長期資金として149億4,000万ドル(2009年は103億
5,900万ドル)、短期資金として3,000万ドル(2009年は3億4,000万
ドル)を調達しました。
現地通貨建ての借入とスワップ ADBは香港(中国)での中国元建て
の起債を通じ、12億元を調達しました。また、費用効果の高い通貨
スワップを通じて、フィリピン・ペソおよびタイ・バーツの資金調
達を行いました。
6
信用の基盤
ADBの資本基盤は、債券投資家の皆様に最高水準の安
全性を提供します。
加盟国政府の支払保証を得ている堅実なバランスシート
応募済資本は、払込資本と請求払い資本から成っています。
払込資本は、ADBのOCR融資業務に利用可能な資本金の自己資本部分
を構成します。これは利益剰余金によって補完され、借入金により
補強されます。
アジア開発銀行
請求払い資本は、ADBの借入先の大規模な債務不履行という不測の事
態が発生した場合に、ADBの債権者(主にADB債券を保有する投資家
とADB保証の所有者)保護を目的として利用することができます。し
かし、過去にADBが請求払い資本の実行を請求した例はありません。
ADBの出資国は、アジア・太平洋地域内の開発途上国と先進国48カ
国、および、域外国19カ国です。各出資国は、ADBの全ての決定権
限を有する総務会に代表者(総務)を派遣しています。2010年末現
在、日本が最大の出資国で、応募済資本の17.7%および議決権の
14.5%を保有しています。OECD加盟国が全体に占める割合は応募済
資本の60.4%、議決権の55.2%です。
第5次一般増資
2009年4月29日、67加盟国の大多数の賛成を得て、ADBの資本を550億
ドルから3倍の1,650億ドルに引き上げる第5次一般増資(GCI V)が
承認されました。増資は1994年の第4次一般増資(増資比率100%)
以来で、200%(3倍)という増資比率は過去最大です。今回の増資
により、ADBが「ストラテジー2020」を実施し、域内の長期的な開発
ニーズに対応するために必要な資金が確保されます。増資総額のう
7
ち4%は払込資本の増加、残る96%は請求払い資本の増加によるもので
す。応募期限は2010年12月31日でしたが、後に2011年6月30日に延
期されました。2010年末までに、全加盟国の84%に当たる56カ国か
ら、GCI V増資株式の82%に当たる総額700億ドルの応募がありまし
た。2010年12月31日の当初期限後に、さらに4加盟国からの6億ドル
の応募が発効し、応募国は全加盟国の90%、応募済株式はGCI V増資
株式の83%に達しました。
表3: 資本構成
各年末現在(単位:百万ドル)
2010
2009
2008
2007
応募済資本
143,950
60,751
54,890
55,978
請求払い資本
136,535
56,641
51,029
52,041
7,415
4,110
3,861
3,937
払込資本
うち差引き調整分
3,159
292
84
95
差引き後払込資本
4,256
3,818
3,777
3,842
利益剰余金
11,623
11,358
11,492
10,413
計
15,879
15,176
15,269
14,255
借入残高(スワップ後)
48,121
40,649
36,709
30,537
総資本
64,000
55,825
51,978
44,792
財務概要2011
表4: 出資比率 a
2010年末現在
OECD加盟国
日本
%
%
中国
7.3
オーストラリア
6.6
インド
7.2
米国
5.9
インドネシア
6.2
カナダ
5.9
マレーシア
3.1
韓国
5.7
フィリピン
2.7
ドイツ
4.9
パキスタン
2.5
フランス
2.6
タイ
1.5
英国
2.3
台湾
1.2
イタリア
2.1
バングラデシュ
1.2
ニュージーランド
1.7
その他域内国
6.7
その他域外国
4.9
計
17.7
開発途上加盟国
60.4
39.6
OECD = 経済協力開発機構
a
ADBの第5次一般増資は応募期限が2011年6月30日まで延期され、現在も継続中である。2010年12月31日までに、全67
加盟国のうち56カ国から応募があった。
注:小数点以下の処理により合計が一致しないことがある。
8
信用の基盤
ADBは強力なガバナンスと堅実な財務管理により、金
融市場における借入人として最高水準の信用を得て
います。
堅実な財務管理
ADBの強固な財務体質を支えているのは次の2つの基本原則です。
•融資限度枠:ADBの融資政策に基づき、融資実行残高、出資承認
•借
入限度枠:ADBの借入政策に基づき、総借入残高は、非借入加
盟国からの請求払資本、払込資本および準備金(剰余金を含む)
の合計額を超えることはできません。
アジア開発銀行
額およびADBが請求されうる保証の現在高総額の合計は、毀損し
ていない応募済資本、準備金および剰余金の合計額を超えること
はできません。
ADBは、堅実な財務管理政策によって融資および借入の総額を常にこ
れらの限度枠内に余裕を持って維持しています。2010年末現在、ADB
の融資実行残高、出資承認額およびADBが請求されうる保証の現在高
総額の合計は融資限度枠の30.2%、総借入残高は借入限度枠の52.0%
でした。
ADBの投資戦略の主目的は、流動性と投資資金の安全性を最適水準に
維持することです。ADBはこの目的を踏まえた上で、投資収益の最大
化に努めています。その結果、ADBの流動資産ポートフォリオは慎重
かつ堅実に運用されています。流動資産は、政府その他の公的機関
の債券、格付けの高い銀行や金融機関の定期預金その他の無条件の
債券、および限定的な規模において、信用度の高い社債、抵当証券
ならびに資産担保証券の形で保有されています。
9
流動資産は21種類の通貨で運用され、目的別のポートフォリオに分
けて管理されています。運転資本ポートフォリオ(業務用現金ポー
トフォリオおよび現金クッション・ポートフォリオ)は、ADBが必要
とする短期的キャッシュ・フローに利用され、借入金を融資実行ま
で保有しておくことを目的としています。裁量的流動資産の資金は
借入により調達されます。その目的は、キャッシュ・フローのニー
ズが生じる前に借入を行い、多額の借入の集中から生じる借り換え
リスクを回避し、資本市場におけるプレゼンスを平準化することに
より、ADBの資金調達プログラムを柔軟に実施できるようにすること
です。株式で調達される安全性流動資産は、ADBが通常条件およびス
トレス下において18カ月分の現金を継続的に供給できるよう、最低
限の正味現金必要額を確保できるようにするものです。
表5: 流動資産ポートフォリオの年末時点の残高と収益率
安全性流動資産
財務概要2011
業務用現金ポートフォリオ
10
a
年末時点の残高
(百万米ドル)
収益率
(年率・%)
2010
2009
2010
12,592
10,302
3.50
2009
3.83
218
198
0.15
0.13
現金クッション・ポートフォリオ
1,933
1,954
0.46
0.87
裁量的流動資産
3,091
1,236
0.30b
0.34b
1.36
4.14
その他
合計
453
500
18,286
14,191
a
継続的な流動資産管理により、ポートフォリオの構成は年ごとに変動することがある。
b
資金調達コストに上乗せされるスプレッド(12月31日時点)
注:小数点以下の処理により合計が一致しないことがある。
信用の基盤
ADBのあらゆる政策決定と運営活動における中核的な
規律として重要な役割を果たしているのがリスク管
理です。
包括的リスク管理
ADBは、業務の拡大を支えるべく、引き続きリスク管理部(ORM)の機
能強化に努めています。
アジア開発銀行
ADBは使命を果たす上で様々なリスクを負うことになり、そうした
リスクは①信用リスク、②市場リスク、③流動性リスクおよび④オ
ペレーショナル・リスクに分類されます。ORMはこうしたリスクを
計測、モニター、管理するリスク政策と各種手続を制定・実施しま
す。ADBのリスク管理制度における他の組織には、ADBのリスク管理
を監督し総裁にリスク政策や対策を勧告するリスク委員会、そして
理事会の監査委員会があります。経営陣は、ADBの全体的なリスク特
性について包括的な報告書を作成し、理事会および監査委員会に提
出します。
ADBは、新規ノンソブリン案件についてリスク評価を行い、融資開始
後には独立したモニタリングを行い、必要な場合は問題案件の解決
に責任を持って取り組みます。ADBはまた、カウンターパーティの信
用度、金利リスクや為替リスクといった市場リスクや財務リスクに
ついてもモニタリングを行っています。また、各種の限度額や集中
度をモニターし、貸倒引当金を積み立て、集合的準備金を含む貸倒
引当金の必要額を計算し、適正資本量を評価しています。
11
信用リスク-ソブリン
ソブリン信用リスクとは、中央政府の保証を有するいわゆるソブリ
ンの借入人が融資または保証にかかる債務を履行できなくなるリス
クを指します。ADBは適切な貸倒引当金および保守的な適正資本量の
確保を通じてソブリン信用リスクを管理しています。ADBはこれま
でにソブリン業務で貸し倒れを経験したことはありません。返済の
遅延があった場合でも、借入国は一般的に債務の履行を再開してお
り、ADBがOCR財源からのソブリン融資を償却せざるを得なくなった
ことは、これまで1度もありません。
ADBでは、特定案件に問題があると判断した場合、利益を財源として
準備金を積み立てています。また、融資業務において予想される平
均的な損失を相殺する貸倒引当金を、バランスシートの自己資本の
部に積み立てています。準備金は予想される将来の返済能力に基づ
いて、貸倒引当金はソブリン借入人の国際開発金融基金に対するデ
フォルトの経験に基づいて設定されます。準備金と貸倒引当金の合
計額は、ADBのソブリン業務において予想される損失額の推定値に相
当します。
財務概要2011
信用リスク・株価リスク-ノンソブリン
ノンソブリン信用リスクとは、中央政府による保証がない案件にお
いて、借入人が融資または保証にかかる債務を履行できなくなるリ
スクを指します。ADBが活動している地域には経済状況が不安定なと
ころもあるため、ADBのノンソブリン信用リスクは比較的大きいと考
えられています。また、ADBの融資は、地域の経済発展に不可欠なイ
ンフラおよび金融セクターに集中しています。ADBは様々な政策に基
づく対策を通じて、これらのリスクを管理しています。
リスク委員会がノンソブリン・ポートフォリオのリスク管理を監
督します。事務総長がリスク委員会の委員長を務めるリスク委員
会は、全体的なポートフォリオ・リスクと信用価値が悪化した個
別案件をモニターするほか、ポートフォリオのリスク管理政策
の変更と毀損案件に引き当てる準備金を承認します。これとは別
に、業務担当副総裁が委員長を務める投資委員会が、すべての新
規ノンソブリン案件について信用価値を審査し、金利その他の諸
条件を設定します。
ADBはORMを通じてノンソブリン信用リスクを管理しています。ORM
は、すべての新規案件について、コンセプト審査承認の段階および
融資承認前に独立した審査を行います。承認後、ORMはあらゆるリ
スク資産を少なくとも年に1度評価します。デフォルトの可能性が
高い案件または過去にデフォルトがあった案件については、より
頻繁にリスク評価を行います。各評価において、ADBはリスク特性
12
に変化があったかどうかを調べ、必要なリスク軽減措置を取り、リ
スク格付けを再確認または変更し、出資の場合は持ち株の公正価額
を見直します。必要があれば、ADBは準備金積み立て政策に基づい
て、個別準備金を手当てします。危険と考えられる投資案件は業務
部門から(ORM内の) 会社再生ユニットに移管してリストラと再生を
管理することがあります。
出資もノンソブリン・ポートフォリオの下で管理されます。市場で
取引される株式については、ADBは投資額の値洗いを四半期毎に行い
ます。民間企業への直接出資については、少なくとも年に1度公正価
額を評価します。プライベート・エクイティ・ファンドについては
少なくとも年に1度、報告される純資産価値を検証します。ADB設立
協定により、ADBの出資額は毀損していない払込資本、準備金および
剰余金(特別準備金を除く)の合計額の10%以下に制限されていま
す。また、リスク管理のため、プライベート・エクイティ・ファン
ドに対する投資は同合計額の5%以下に制限されています。
アジア開発銀行
ADBは、融資または保証について既知の損失または予想される損失
を相殺する個別準備金を、純利益に対する借方記入として認識しま
す。また、融資ポートフォリオにおいて投資等級以下の実行済み融
資に存在すると考えられる不特定の損失については、集合的準備金
を純利益に対する借方記入として認識します。さらに、投資適格の
融資および投資等級以下の融資の未実行分について予想される平均
的な損失を相殺するため、貸倒引当金を、バランスシートの自己資
本の部に設定しています。個別準備金は予想される将来の返済能力
に基づいて設定され、一括準備金と貸倒引当金は、ADBのポートフォ
リオに対応したムーディーズ・インベスターズ・サービスによる過
去のデフォルトのデータに基づいて設定されます。ADBは毎年、この
外部データがADBの実際の損失に近似しているかどうかを確認し、そ
の結果予想値を修正することがあります。個別準備金、集合的準備
金と貸倒引当金の合計額は、ADBのノンソブリン業務において予想さ
れる損失額の推定値に相当します。
ADBはノンソブリン・ポートフォリオにおける集中リスクを管理する
ため、国、産業セクター、企業グループ、債務者および取引件数の
それぞれについて限度枠を定めています。
信用リスク-財務ポートフォリオ
発行体デフォルト・リスクとカウンターパーティ・リスクは財務ポ
ートフォリオに影響する信用リスクです。発行体デフォルト・リス
クとは、債券の発行体が利子または元本の支払義務を履行できなく
なるリスクで、カウンターパーティ・リスクとは、カウンターパー
ティ(取引の相手先)がADBに対する契約上の義務を履行できなくな
るリスクです。
13
ADBでは発行体デフォルト・リスクとカウンターパーティ・リスクを
管理するため、2社以上の評判の良い格付け機関から格付けを受け、
かつ財務状況が健全な機関に取引先を限定しています。さらに、財
務ポートフォリオは一般的に、短期金融市場商品や国債などの安全
性の高い資産に投資されています。加えて、ADBは企業投資、預託関
係およびその他の投資商品について保守的なエクスポージャ制限を
設けています。
デリバティブ取引から生じるカウンターパーティの信用リスクを軽
減するため、ADBはカウンターパーティについて厳格な適格基準を定
めています。一般的に、ADBがスワップ取引を行うカウンターパーテ
ィは、カウンターパーティ信用格付けの最低基準を満たし、ADBとの
国際スワップデリバティブ協会マスター契約書および信用補完付属
書に署名していなければなりません。信用補完付属書に基づき、デ
リバティブ・ポジションは毎日値洗いされ、その結果判明するリス
ク資産は米ドルの現金および米国の国債によって担保されます。ま
た、ADBはスワップの各カウンターパーティについてエクスポージャ
制限枠を設けており、この制限枠に照らして現在のエクスポージャ
と潜在的エクスポージャの双方をモニターしています。ADBは必要に
応じて日毎の有担保コールを活用し、カウンターパーティによる担
保義務の履行を確保しています。
財務概要2011
市場リスク
市場リスクとは、市場価格の変動により金融商品に関連して損失が
生じるリスクです。ADBが直面する市場リスクには、株価リスク(前
記「信用リスク・株価リスク-ノンソブリン」を参照)、金利リス
クおよび為替リスクの3種類があります。
市場リスク-金利
業務ポートフォリオにおける金利リスクは、借入人の利払いをADBの
借入経費とマッチさせることによって完全にヘッジされています。
従って、借入人が金利変動リスクを負担する一方、ADBの利ざやは概
ね一定となっています。
ADBにおいては、金利リスクは主に財務ポートフォリオを通じて発生
します。ADBは様々な計量手法を用いて財務ポートフォリオの金利リ
スクをモニター・管理しています。ADBはすべてのポジションを値洗
いし、金利リスク指標をモニターし、ストレス試験およびシナリオ
分析を実施しています。
ADBはデュレーションおよび金利バリューアットリスク(VaR)を用い
て財務ポートフォリオにおける金利リスクを計測しています。デュレ
14
ーションとは、金利が1%変化した際にポートフォリオの価値が何パー
セント変化するかを推定するものです。金利VaRは、一定期間における
金利変動によって、特定の信頼水準で発生する可能性のある損失額を
統計的に計算するものです。ADBはこの計算において信頼水準を95%、
期間を1年としています。ADBはデュレーションとVaRを用いて財務ポー
トフォリオ全体の金利リスクを計測していますが、安全性流動資産に
ついては、デュレーションの限度枠が高めに設定されており、従って
金利リスクも比較的高いため、特に注意を払って管理しています。
市場リスク-為替
ADBは業務上の為替リスクの最小化に努めています。業務ポートフォリ
オと財務ポートフォリオの双方において、ADBは融資および投資の支払
通貨と受領通貨をマッチさせるよう義務づけられています。借入金また
は投資資金を他の通貨に転換できるのは、通貨スワップまたは先物為替
契約によってその取引が完全にヘッジされている場合に限られます。し
かし、ADBは複数の通貨で業務を行っているため、米ドル建てで報告す
る決算においては通貨換算調整に起因する変動リスクが存在します。
流動性リスク
アジア開発銀行
流動性リスクは、ADBが財務上および業務上の債務を履行するための
資金を調達できない場合に発生します。ADBは、資本市場での資金調
達が一時的にできなくなった場合に流動性が不足する事態を防ぐた
め、安全性流動資産を維持しています。流動資産の水準と必要現金
額は継続的にモニターされ、四半期毎に理事会に報告されます。
オペレーショナル・リスク
オペレーショナル・リスクとは、内部プロセス、人員および各種シ
ステムの不備もしくは欠陥、または外部事象によって損失が生じる
業務上のリスクのことを指します。ADBは様々なオペレーショナル・
リスクに晒されていますが、健全な内部統制を通じてこれを低減し
ています。厳格な取引承認プロセスを採用することで融資業務にお
けるミスを予防しているほか、突発的な事象による影響を低減する
ために、情報技術を中心とする事業継続性の強化も行っています。
適正資本量
ADBが抱える最大のリスクは、融資ポートフォリオに多大なデフォル
トが発生するリスクです。ADBは信用リスクを、予想される損失と予
想外の損失の両面から計測します。予想される損失に対して、ADB
15
は貸倒引当金や準備金を積み立てています。予想外の損失について
は、ADBは自らが獲得する収入と資本によって対応することになりま
す。信用リスクやその他のリスクから生じる予想外の損失に対応す
るための最後の砦が資本なのです。
ADBは主にストレス試験を用いて、資本が予想外の損失をどれだけ吸
収できるかを評価しています。この枠組みには2つの目的がありま
す。第1の目的は、信用ショックによる収入の損失を吸収するADBの能
力を計測することです。ADBはこのモニタリングを通じて、払込資本
の増額や請求払い資本の払い込みといった出資国の支援に頼らざるを
得なくなる可能性を低減しています。その結果、出資国が保護される
だけでなく、ADBのトリプルA格付けが維持され、それが借入コストの
低減につながり、ひいては融資金利の低下につながります。
財務概要2011
この枠組みの第2の目的は、信用ショックが起きた場合でも、以前ほ
どのペースではないにしても、引き続き融資を拡大していくために
充分な収入を生み出せるかどうかという、ADBの収入力を評価するこ
とです。金融危機が発生した場合、一部の開発途上加盟国では資本
市場からの資金調達が難しくなるため、ADBの開発機関としての役割
はさらに重要になります。そのため、ADBは、そうした困難な状況下
にあっても融資を行う能力を維持する必要があります。
ストレス試験では、ポートフォリオについて数千もの潜在的なシナ
リオを設定し、その99%を網羅する大規模な信用ショックを想定しま
す。そして、モデルを用いて今後10年間の資本貸付率を計算し、資
本への影響を評価します。2010年に行ったストレス試験の結果、ADB
は深刻な信用ショックが発生した場合でも、その損失を吸収し、開
発融資業務を継続していくために充分な資本を有していることが示
されました。
資産・債務管理
ADBの資産・負債管理の目的は、純資産と適正資本量を保全し、ADBの
リスク負担能力の着実な増加を促進し、妥当な水準の財務リスクを取
るために、健全な財務政策を規定することにあります。ADBの財務の
健全性を保全しつつ、借入人に有利な条件で融資できるように開発融
資の原資をできるだけ低くかつ安定したコストで調達することを目指
しています。ADBは資産・負債管理を通じて、純資産を為替リスクか
ら守り、利ざやを金利の変動から守り、業務に必要な流動性を確保し
ています。ADBはまた、ソブリン融資については費用転嫁型の金利政
策を採用しており、最もコストの低い借入金をソブリン融資に配分し
ています。2006年、ADBは資産・負債管理の目的と手続を明文化し、
政策の枠組みとして理事会の承認を得ました。この枠組みは、流動資
産、投資、株式の管理や適正資本量を含む、資産・負債管理に関連す
るすべての財務政策の指針として機能しています。
16
借入業務
国際市場で最高のAAA(トリプルA)格付けを有する
ADBは、国際資本市場および各国の国内資本市場を通
じて定期的に資金を調達しています。
ADBがアジア・太平洋地域の貧困削減という使命を達成するためには
効率的な資金調達が不可欠です。
ADBの年次借入プログラムは、刻々と変化する市場環境において、融
資業務、債務償還および流動性政策の各要件を満たすように注意深
く計画されます。
目的
アジア開発銀行
今後3年間の必要借入額は年間150~170億ドルと予想されています。
ADBによる借入の最も重要な目的は、OCR借入人のために長期資金を
できる限り安定した低コストで確保することにあります。この目的
を踏まえた上で、ADBは資金調達先となる市場、金融商品および償還
期間の多様化に努めています。
借入の目的を達成するため、ADBは下記の戦略を追求しています。
•流動性の高い債券指標銘柄を発行し、主要通貨の債券市場で強力
なプレゼンスを維持する
•低コストかつ機動的な私募債の発行を通じて資金を調達する
ADBはまた、現地通貨建ての借入や資金取引を通じて開発途上加盟国
の国内資本市場の発展に努めています。
17
表6: 借入
12月31日現在(単位:百万ドル)
借入残高
(スワップ前)
2010
2009
2008
2007
51,822
42,063
35,672
31,569
中長期借入
公募
10,726
7,644
4,794
4,023
私募
4,214
2,715
4,578
4,831
取引件数
公募
20
9
11
10
私募
72
35
102
84
通貨の種類
(スワップ前)
財務概要2011
a
18
公募
6
4
4
8
私募
7
4
6
9
短期借入a
30
340
2,867
3,139
2010年および2009年の各年末時点の元本残高はゼロ。
借入業務
ADBは借入を多様化し投資家基盤を拡大するという政
策に従って、幅広い通貨、金融商品、市場および償
還期間による借入を行っています。
資金調達手法
2010年末現在、ADBの未償還債券の元本残高は518億2,200万ドルで、
平均償還期間は3.8年となっています。
アジア開発銀行
2010年、ADBは92件の取引を通じて約149億ドルの中長期資金を調達
しました(2009年は104億ドル)
。新規の借入は、オーストラリア・
ドル、ブラジル・レアル、中国元、メキシコ・ペソ、ニュージーラ
ンド・ドル、南アフリカ・ランド、スイス・フラン、トルコ・リラ
および米ドルの9通貨建てで行われました。このうち96.1%に相当す
る144億ドル相当分は米ドルにスワップされ、残る5億ドル(3.9%)
は日本円(2.7%)および中国元(1.2%)でした。借入の平均償還期
間は4.9年でした(2009年は3.8年)
。2010年の全借入のうち、2件・
計55億ドルの米ドル建てグローバル・ベンチマーク債および1件の現
地通貨建て債券を含む20件の公募債を通じた調達分が107億万ドル、
私募債72件を通じた調達分が42億ドルでした。また、ユーロ・コマ
ーシャル・ペーパー(ECP)市場でのプレゼンスを高め、一時的な現
金ニーズをまかなうため、ECPプログラムを通じて3,000万ドルの短
期資金を調達しました。
2010年1月、ADBは、資金枠50億ニュージーランド(NZ)ドルの国内
ミディアム・ターム・ノート(MTN)プログラムに基づき、同国初と
なる2億2,500万NZドル(1億6,200万ドル)・期間4年のカウリ債を発
行しました。また、2010年3月には初めてテーマ型債券を発行し、
2トランシェのウォーター・ボンドを通じて6億3,800万ドルを調達し
ました。この起債は、ウォーター・ファイナンシング・プログラム
19
の事業に資金を提供し、アジアの水および衛生関連のニーズに対応
しようとするADBの努力を支えるものです。その成功を受けて、ADB
は2010年第3四半期に2件目のテーマ型債券を発行しました。5トラン
シェ・総額2億4,400万ドルのクリーンエネルギー・ボンドです。こ
の起債は、域内において再生可能エネルギー事業および省エネ事業
を推進するというADBの努力を支えつつ、特定のテーマ型債券に対す
る投資家の需要に応えるものです。
デリバティブ
ADBは、主要資本市場での借入を維持しつつ、業務に必要な通貨を低
コストで調達するため、完全にヘッジされた通貨スワップと金利ス
ワップを活用しています。スワップがADBの借入残高(2010年末現
在)の通貨構成と金利構成に及ぼす影響は、下記の図1・2の通りで
す。また、資産・負債管理の一環として、負債を融資の金利特性に
マッチさせるためにも金利スワップを活用しています。
図1:通貨構成に対する影響
2010年末現在
借入残高の通貨構成
(スワップ前)
借入残高の通貨構成
(スワップ後)
その他通貨b
9.4%
日本円
1.6%
財務概要2011
その他通貨a
38.2%
米ドル
54.5%
米ドル
89.0%
日本円
7.3%
その他通貨には、オーストラリア・ドル、ブラジル・レアル、カナダ・ドル、中国元、ユーロ、香港ドル、インド・ルピー、カザフスタン・テン
a
ゲ、マレーシア・リンギット、メキシコ・ペソ、ニュージーランド・ドル、フィリピン・ペソ、英ポンド、シンガポール・ドル、南アフリカ・ラ
ンド、スイス・フラン、タイ・バーツ、トルコ・リラが含まれる。
その他通貨には、中国元、インド・ルピー、カザフスタン・テンゲ、フィリピン・ペソ、英ポンド、スイス・フランが含まれる。
b
図2:金利構成に対する影響
2010年末現在
借入残高の金利構成
(スワップ前)
借入残高の金利構成
(スワップ後)
固定
8.9%
変動
6.7%
固定
93.3%
20
変動
91.1%
借入業務
ADBは開発途上加盟国の国内資本市場の発展に尽力し
ています。
現地通貨建て借入
ADBは、域内債券市場の発展に貢献し、借入人に適切な現地通貨建
て資金を提供するという目的に向けて努力を続けました。2010年に
は、香港(中国)で初めて12億中国元の起債を成功させました。ま
た、費用効果の高い通貨スワップを通じて、フィリピン・ペソおよ
びタイ・バーツ建ての資金調達を行いました。
アジア開発銀行
ADBは、アジア通貨建て債券(ACN)プログラムおよびマレーシア・
リンギットMTN(MYRMTN)プログラムを設置しています。両プログラ
ムを通じた年間調達可能額は、ADBの理事会が決定する年間グローバ
ル借入枠により上限が設けられています。
表7: 新規借入の平均償還期間
2010
2009
2008
2007
平均償還期間(年)
6.1
5.2
4.4
9.4
ファーストコールまでの平均期間(年)
4.9
3.8
3.5
5.2
21
金融商品
持続可能な経済・社会開発に向けた投融資
OCR融資
財務概要2011
現存のOCR融資ポートフォリオには様々なローン商品が含まれます
(表8参照)。2001年7月1日以降、ADBの新規OCR融資は大半がLIBORベ
ースの融資(LBL)となっています。LBLの導入に伴い、プール方式
複数通貨建て融資、プール方式単一通貨融資、市場ベース融資など
の他の商品は廃止されました。
LBL商品は、下記の点において借入における柔軟性をもたらします。
•ベースとなる通貨・金利の選択
•様々な返済オプション
•当初の融資条件を融資期間中いつでも変更可能
•キャップまたはカラーを購入する選択肢
LBLはユーロ、日本円または米ドル建て、金利は固定と変動の2種類
が可能です。必要に応じてこれ以外の融資通貨を採用することも可
能です。当初の金利はコスト・ベースの金利(LIBOR)にスプレッド
(手数料)を加算した変動金利となりますが、借入人は、融資期間中
いつでも金利を変更することができます。2007年10月1日から2010年
6月30日までに交渉されたソブリン融資契約にはすべて、0.20%の貸
付スプレッドが適用されました。理事会は2010年4月、2010年7月1日
から2011年6月30日までに交渉されるすべてのソブリン融資契約につ
いては貸付スプレッドを0.30%とし、2011年7月1日以降に交渉される
すべてのソブリン融資契約については貸付スプレッドを0.40%とする
ことを承認しました。ノンソブリン融資に対するスプレッドは、借
入人とプロジェクトに関するADBのリスク負担に基づいて個別に決定
されます。
22
常に変化する借入人の金融ニーズに対応するため、ADBは2005年8月
に現地通貨建て融資(LCL)商品を導入しました。LCLは民間セクタ
ーの借入人だけでなく、地方政府や公営企業を含む公共セクターの
団体も利用できます。LCLは、開発途上加盟国における通貨ミスマッ
チを削減することを目的としています。LCLにおいては、借入人は、
融資期間中いつでも金利ベースを固定または変動金利に変更する要
請ができますが、規制当局の承認およびADBが国内スワップ市場で適
切な取引を行えることが条件となります。
表8: 商品別OCR融資ポートフォリオ
各年末現在(単位:百万ドル)
ソブリン
ノンソブリン
2010
2009
2010
2009
実行済
32,388
28,189
1,654a
1,309a
未実行
22,752
20,824
949
1,241a
実行済
414
449
60
79
未実行
–
–
–
–
実行済
2,392
2,615
–
–
未実行
–
–
–
–
実行済
5,857
6,482
–
–
未実行
–
–
–
–
実行済
2,500
2,000
–
–
未実行
–
500
–
–
実行済
–
–
647
578
未実行
151
–
726
314
実行済
16
19
5
12
未実行
–
–
–
–
実行済
43,567
39,754
2,366
1,978
未実行
22,902
21,324
1,675
1,554
LIBORベース融資
a
市場ベース融資
プール方式SCL-日本円
景気循環相殺政策支援ファシリティ
アジア開発銀行
プール方式SCL-米ドル
現地通貨建て融資
その他
合計
b
− = 該当データなし。
a
国有企業に対する政府保証のない融資を含む。
b
未実行残高には、発効済み、および承認済み未発効の融資予定分が含まれる。
小数点以下の処理により合計が一致しないことがある。
23
債務管理商品
ADBは、加盟国および加盟国の100%保証を受けた団体に対し、第三
者への債務に関する債務管理商品を提供しています。第三者債務に
関する債務管理商品を提供することで、ADBは開発途上加盟国の経済
発展に貢献することができます。具体的には、加盟国またはその保
証を受けた団体の債務管理を強化することにより、経済の変動性や
借入コストを低減し、資本市場に対するアクセスを改善し、希少な
資金を経済発展に振り向けることが可能になります。
ADBが提供する債務管理商品には、現地通貨スワップを含む通貨スワ
ップと金利スワップがあります。通貨スワップにおいては、加盟国
またはその保証を受けた団体は、外貨建て債務を現地通貨建て債務
に転換できますが、逆に現地通貨建て債務を外貨建て債務に転換す
ることはできません。
ノンソブリン開発業務
財務概要2011
2010年、ADBは10億5,300万ドルのノンソブリン融資、2億4,300万ドルの
出資、5億5,000万ドルの保証、3億2,000万ドルのBローン、および200万
ドルのグラントを承認しました。2010年末現在、ノンソブリン支援の総
額(出資、融資および保証の実行済み残高および未実行約定額を含む)
はおよそ53億ドルとなっています。
出資
ADB設立協定により、毀損していない払込資本、準備金および剰余
金(特別準備金を除く)の合計額の10%を上限として、OCRを財源と
する民間企業への出資が認められています。2010年末時点の出資総
額(実行済みの出資と承認済みではあるが未実行の出資の双方を含
む)は11億8,670万ドルで、設立協定が定める上限のおよそ79%で
した。
2010年には、8件・計2億4,300万ドルの出資が承認されました(2009
年は5件・計2億2,000万ドル)。同年における出資の実行総額は1億
9,260万ドルとなり、2009年の5,870万ドルから228.1%増加しまし
た。また、30件の出資案件からの資本分配および持ち株の一部また
は全部の売却金として、総額1億1,130万ドルを受け取りました。持
ち株の売却は、投資におけるADBの開発上の役割が果たされた後に、
良好なビジネス慣行に則り、対象企業の安定を損なわないように行
われました。
24
保証
国外から開発途上加盟国へ、また開発途上加盟国間での資本の流れ
を促進する触媒的な役割を果たすため、ADBは適格プロジェクトに対
して保証を供与しています。保証により、融資パートナーは自ら容
易には吸収できず、または独自には管理できない特定のリスクをADB
に移転することができます。保証の受益者はインフラ事業、金融機
関、資本市場の投資家および貿易金融業者で、様々な債務形態が対
象になります。金銭的リスクを対象とする包括的な保証と、政治リ
スクを含む限定的な保証があります。
保証は、ADBが融資、出資または技術協力を通じてプロジェクトま
たは関連セクターに直接・間接的に関与している場合に供与されま
す。保証の期間はプロジェクトの要件に基づいて決められ、保証さ
れる事象が発生した場合には繰り上げられることもあります。保証
手数料は受入国政府による連帯保証の有無によって異なります。受
入国政府の連帯保証がある場合の保証手数料は、ADBのソブリン融
資のスプレッドと同じ料率になります。連帯保証がない場合は、市
場の料率をもとに決定されます。連帯保証が部分的である(特定の
リスク、金額または期間のみを対象とする)場合、最終的な手数料
は、それぞれの部分にかかる料率を合算したものになります。ADB
は、業界の慣行に従い、信用補完商品の処理と実施にかかる事務費
およびその他の手数料を請求し、または支払うことがあります。
アジア開発銀行
保証は様々な形態の債務を対象とすることができます。具体的に
は、①上位債、劣後債、メザニン債および転換債、②プロジェク
ト・ファイナンシングまたはリミテッド・リコース・ファイナンシ
ング、③銀行が調達する補完的自己資本(“tier 2”資本)、④株
主向け貸付、⑤資本市場で取引される債務、⑥契約履行保証、入札
保証、前払金保証およびその他の支払保証、⑦信用状、約束手形、
為替手形またはその他の貿易金融債務、および⑧その他の形態の期
日指定義務または偶発義務であって債務を構成するもの、が含まれ
ます。株式は保証の対象になりません。
ADBは、主に政治リスク保証と信用保証という2種類の保証を提供し
ており、いずれも融資パートナーのリスクを軽減することを目的と
しています。
シンジケーション
シンジケーションにより、ADBは直接融資および融資パートナーに対
する保証に関連するリスクの一部または全部を移転し、そのことによ
って信用リスクを軽減することができます。フロンティング、再保険
およびセルダウンを含むシンジケーションは、ADBのノンソブリン・
ポートフォリオのリスクを軽減・多様化するために利用されます。
25
財務概要2011
シンジケーションは、市場や関連事業の状況およびADBのポートフ
ォリオ調整の必要性に応じて、原債務の契約成立前または原債務の
履行期間中に組成することができます。ADBはシンジケーションを
通じて、負担するリスクを適切にバランスさせることが可能になり
ます。シンジケーションは、業界の慣行に従い、案件単位、ポート
フォリオ単位またはその他の態様で編成することが可能です。フロ
ンティングまたは再保険においては、ADBは、ADB融資からのあらゆ
る回収金をシンジケーションに参加する融資パートナーと共有しま
す。再保険においては、融資パートナーがADBに対する損失補償義
務を履行できなくなるというカウンターパーティ・リスクをADBが
負担します。2010年、ADBはシンジケーション(Bローン)を通じて
3億2,000万ドルの資金を動員し、3件のプロジェクトに提供しまし
た。(2009年の実績は3件のプロジェクトに対し2億7,620万ドル。
)
26
特別基金
(2010年末現在)
ADBの特別基金は、OCRを通じて開発イニシアティブのために利用さ
れる資金とは別の、追加的資金です。各基金の会計処理と利用は、
他の基金およびOCRと区別して行われます。
特別基金は、アジア・太平洋地域の貧困削減という主目的の下に、
譲許的融資、グラントや技術協力を含む様々な活動に利用されてい
ます。
特別基金内部のあらゆる承諾プロセスおよび管理業務は、OCR融資と
同じ厳格な基準に則って実施されます。
アジア開発基金(ADF)は、1人当たり国民総生産(GNP)が低く債
務返済能力に限りがある開発途上加盟国に対して譲許的融資を供与
するものです。ADFは、アジア・太平洋地域における貧困削減と生活
の質の向上を目的として譲許的支援を提供する唯一の多国間ファシ
リティです。域内外の32のドナー加盟国が同基金に拠出を行ってい
ます。ADFの財源は、二国間および多国間の開発パートナーからの協
調融資によって補完されています。
アジア開発銀行
アジア開発基金
2008年8月、総務会はADFの第9次財源補充(ADF X)および技術協力
特別基金(TASF)の第4次定期財源補充を認める決議を採択しまし
た。2009年6月16日に発効したこの決議により、2009~2012年のADB
の譲許的プログラムの資金源となるADFの大規模な財源補充が実現
し、同時に技術協力業務の資金源となるTASFの財源も補充されるこ
とになりました。理事会は2009年6月、ADFの適格要件のみを満たす
国に対する4億ドルの追加支援を承認しました。財源補充の総額は
75億SDR(119億ドル相当)で、このうち73億SDR がADF X、2億SDRが
TASFとなっています。補充額のおよそ36%に相当する27億SDR(42億
ドル相当)は、ドナーからの新たな拠出によって賄われます。
27
2010年には51件・計22億ドルのADF融資が承認されました(2009年は
45件・計22億ドル)
。同年中の融資実行総額は16億ドルとなり、2009
年の22億ドルから28.6%減少しました。2010年末時点のADFからの累
積実行額は309億ドルでした。2010年中の融資返済額は9億580万ド
ル、2010年末時点のADF融資残高は290億ドルとなっています。
2010年には34件・計9億6,720万ドルのグラントが承認され(2009年
は27件・計9億1,130万ドル)、21件・計6億5,180万ドルのグラント
が発効しました(2009年は32件・計9億5,250万ドル)
。終了したグラ
ント案件の約定済み未使用残の繰り戻しは590万ドルでした(2009年
は500万ドル)
。
技術協力特別基金
技術協力特別基金(TASF)は、ADBの開発途上加盟国および域内で実
施される技術協力業務に対して無償資金を提供するために設立され
ました。
財務概要2011
2008年8月、ADFの第9次財源補充(ADF X)の一環として、拠出国は
財源補充総額の3%を技術協力特別基金(TASF)の第4次定期財源補充
に充てることに同意しました。この財源補充は2009年から2012年ま
での4年間を対象としています。
2010年末時点で、27の拠出国がADF XおよびTASFの第4次財源補充
の一環として、TASFに対し計2億8,850万ドルの拠出を約定してい
ます。約定額のうち、これまでに1億4,230万ドルが払い込まれま
した。
2010年には、インドとパキスタンが自主的に、それぞれ40万ドルお
よび10万ドルの直接拠出を行いました。さらに、OCR純利益配分の一
環として4,000万ドルがTASFに配分され、TASFの第4次財源補充に50
万ドルが配分されました。2010年末時点で、TASFの資金総額は17億
5,970万ドルで、うち15億1,160万ドルが約定済み、未約定残高は2億
4,810万ドルでした。
技術協力約定額(承認済みおよび発効済み)は2009年には1億1,720
万ドルでしたが、2010年に発効した195件の技術協力プロジェクトに
対する約定額は1億3,470万ドルに増加しました。完了済みまたはキ
ャンセルされた技術協力プロジェクトの約定済み未使用残の繰り戻
しは1,180万ドルでした(2009年は1,330万ドル)
。技術協力の未実行
約定額は増え、2010年末時点で2億9,860万ドルになりました(2009
年は2億5,890万ドル)
。TASFの資金により、2010年に承認された技術
協力活動の45.1%が賄われました。
28
日本特別基金
日本特別基金(JSF)は1988年、ADBを管理者とし、資金の拠出に関
する合意協定が日本政府との間で結ばれて設立されました。協定で
日本政府は、主に技術協力業務を通じて、ADBの開発途上加盟国によ
る経済改革と新規投資機会の拡大を支援するため、当初資金を拠出
することに合意しました。
1988年の設立から2010年末までに日本がJSFに拠出した累計額は
1,129億円(約9億7,370万ドル相当)で、このうち通常拠出が948億
円(8億2,290万ドル相当)
、追加拠出が181億円(1億5,080万ドル相
当)となっています。2010年末現在、承諾済み未発効の技術協力を
含む未約定残高は4,850万ドルでした。
JSFを財源とする技術協力は引き続き、貧困削減を目的とするADBの
業務を支える役割を果たしました。2010年には7件・計1,170万ドル
の技術協力プロジェクトが承認され、22件・計2,330万ドルの技術協
力プロジェクトが発効しました。技術協力の未実行約定額は、2010
年末現在で7,250万ドルとなりました(2009年末時点は9,410万ド
ル)
。
アジア開発銀行研究所
運営費は、ADBが研究所の設立文書に従って運営するアジア開発銀
行研究所によって賄われています。2010年6月、日本政府が15回目
の拠出金として7億円(790万ドル相当)を拠出し、オーストラリア
政府が50万オーストラリア・ドル(40万ドル相当)を拠出しまし
た。2010年12月には、日本が16回目の拠出金として7億円(860万ド
ル相当)の拠出を約定しました。
アジア開発銀行
アジア開発銀行研究所は、開発途上加盟国における有効な開発戦略
の特定および健全な開発運営に向けた能力開発を目的として、1997
年にADBの付属機関として設立されました。
2010年末時点の累計拠出約定額(通貨換算調整額を除く)は186億円
および50万オーストラリア・ドル(約1億6,620万ドル相当)となっ
ています。受領済みの拠出金総額のうち1億5,740万ドルが同年末ま
でに使用され、主な使途は、①シンポジウム、フォーラムや研修の
開催、②研究報告書、出版物およびウェブサイトの作成、③運営経
費を含む研究および能力開発活動となっています。将来のプロジェ
クトやプログラムに利用可能な正味流動資産残高(不動産、家具や
機材を除く)は、およそ880万ドルでした。
29
アジア津波基金
アジア津波基金(ATF)は、2004年12月26日のインド洋津波の被害を
受けた開発途上加盟国の特別事情に対応するため、2005年2月に設立
されました。2010年末をもってATFは法的に解散されましたが、事業
を終了するために必要な活動はその後も続けられます。
ADBはATFに6億ドルを拠出し、うち未使用の5,000万ドルはOCRに繰り
戻され(2005年11月に4,000万ドル、2006年6月に1,000万ドル)、そ
のうち4,000万ドルは2009年5月にアジア太平洋災害対応基金に移管
されました。また、オーストラリアが3,800万ドル、ルクセンブルク
が100万ドルをそれぞれ拠出しています。2010年末現在、同基金の累
計拠出額は5億8,690万ドルで、うち5億8,430万ドルが使用済み、未
使用残高は260万ドルとなっています(2009年末時点の未使用残高は
450万ドル)
。
2010年に承認されまたは発効した技術協力およびグラント案件はあ
りませんでした。2010年末時点の約定済み未実行残高は2,200万ドル
でした(2008年末時点の同残高は1億1,680万ドル)
。
財務概要2011
パキスタン地震基金
パキスタン地震基金(PEF)は、2005年10月8日の大地震の被害を受
けたパキスタンの特別なニーズに対応するため、同年11月に設立さ
れました。PEFは地震直後の復興・復旧と関連開発事業を支援する投
資および技術協力プロジェクトに対して無償資金を提供する特別基
金です。
拠出国とADBが合意して異なる決定を行わない限り、PEFは、①理
事会のPEF承認日から3~4年後、または②PEFの全資金がADBによっ
て支出された日のいずれか早い方に解散されることになっていま
す。2010年6月29日、理事会はPEFの期限を2011年6月30日まで延長す
ることを承認しました。
ADBはPEFに8,000万ドルを拠出しました。また、オーストラリア、ベ
ルギー、フィンランドとノルウェーがそれぞれ1,500万ドル、1,430
万ドル、1,230万ドル、2,000万ドルを拠出しています。2010年末現
在、同基金の累計拠出額は1億4,520万ドルで、うち1億4,130万ドル
が使用され、未使用残高は390万ドルとなっています(2009年末時点
の未使用残高は330万ドル)
。
30
2010年に承認または発効した技術協力およびグラント案件はありま
せんでした。2010年末時点の約定済み未実行残高は3,400万ドルでし
た(2009年末時点の残高は4,940万ドル)
。
地域協力・統合基金
地域協力・統合基金(RCIF)は、アジア・太平洋地域のADB加盟国に
よる地域協力と地域統合関連活動についての需要の高まりに対応す
るため、2007年2月に設置されました。その主な目的は、アジア・太
平洋地域における地域協力と地域統合を進めるために追加的資金と
知識資源をプールし提供することです。
ADBは、2006年のOCR純利益配分の一環としてRCIFに4,000万ドルを拠
出しました。2010年5月には、OCRの純利益から1,000万ドルがRCIFに
移転されました。2010年末現在の累計拠出額は5,300万ドルで、うち
4,260万ドルが使用され、未約定残高は1,040万ドルとなっています
(2009年末時点の残高は1,250万ドル)
。
気候変動基金
気候変動基金(CCF)は、関連セクターにおけるADB自身の支援と並
行して、気候変動の原因と影響への対応に資する開発途上国向け投
資の促進のため、2008年4月に設立されました。ADBは2007年のOCR
純利益配分の一環として、2008年5月に当初拠出金4,000万ドルを提
供しました。2010年5月には、OCRの純利益から1,000万ドルがCCFに
移転されました。2010年末時点の資金総額は5,100万ドルで、うち
3,190万ドルが使用され、未約定残高は1,910万ドルとなっています
(2009年末時点の残高は2,670万ドル)
。
アジア開発銀行
2010年には、総額1,200万ドルにのぼる13件の技術協力案件および1
件の追加承認案件が発効しました(2009年に発効した技術協力案件
は12件・計1,210万ドル)
。終了済み技術協力案件の未使用残の繰り
戻しは10万ドルでした(2009年はゼロ)。2010年末時点の約定済み
未実行残高は2,940万ドルでした(2009年末時点の残高は2,310万ド
ル)
。
2010年には、総額1,720万ドルにのぼる9件の技術協力ならびにグラ
ント案件、および2件の追加承認案件が承認され発効しました(2009
年は技術協力およびグラント案件が12件・計1,070万ドル)
。2010年
末時点の約定済み未実行残高は2,560万ドルでした(2009年末時点の
残高は1,300万ドル)
。
31
アジア太平洋災害対応基金
アジア太平洋災害対応基金(APDRF)は、自然災害の被害を受けた
開発途上加盟国に対して迅速に追加的なグラント資金を提供するこ
とを目的として、2009年4月に設立されました。同年5月に、当初
資金として4,000万ドルがATFから移転されました。投資その他の
累計収入10万ドルを加えた2010年末現在の資金総額は4,010万ドル
で、うち1,260万ドルが使用され、未約定残高は2,750万ドルとな
っています。
2010年には2件・計550万ドルのグラント案件が発効しました(2009
年は3件・計700万ドル)
。2010年末時点の約定済み未実行残高は600
万ドルでした(2009年末時点の残高は700万ドル)
。
財務概要2011
無償資金による協調融資
信託基金と特定プロジェクト支援グラントは、外部から無償資金を
動員して技術協力や投資プロジェクトの一部に振り向けるための重
要な手段です。これらの手段はADB独自の財源を補完し、能力開発そ
の他の開発途上加盟国の具体的要請に応えるうえで重要な役割を果
たしています。国際機関、二国間ドナーおよび民間セクターのパー
トナーはADBの業務に対し、これまでに30億ドル以上のグラント用資
金を提供しています。2010年には、ADBが承認したプロジェクトに
対して計3億760万ドルのグラント用協調資金が動員され、うち1億
5,025万ドルは112件の技術協力プロジェクト、1億5,735万ドルは23
件の投資プロジェクトに対するものでした。
2010年末現在、ADBは37の信託基金を運営しています。そのうち22は
単一ドナー、15は複数ドナーの信託基金で、それぞれ貧困削減、ガ
バナンス、ジェンダーと開発、開発成果マネジメント、HIV・エイ
ズ、水資源、エネルギー、教育、情報通信技術および貿易・金融と
いった各種セクターまたは特定のテーマにおける活動に資金を提供
しています。
信託基金は当初、様々なセクターを対象とし、技術協力資金の提供
に主眼を置く特定ドナーとのチャンネル・ファイナンシング協定を
通じて設立されていました。最近では、「ストラテジー2020」の優
先セクターを支援するため、またファイナンシング・パートナーシ
ップ戦略および調和化に向けた努力に沿って、ADBは開発パートナー
との協定および拠出金を通じた資金提供に基づく信託基金を設立し
ています。これらの基金は、特定のセクターまたはテーマを対象と
するファイナンシング・パートナーシップという包括的ファシリテ
ィの下に設立され、技術協力や投資プロジェクトのグラント部分に
資金を提供します。2010年現在、4つのファイナンシング・パートナ
ーシップ・ファシリティがあり、水資源、クリーン・エネルギー、
32
地域協力・統合および都市開発ファイナンシングの各分野における
プロジェクトに資金を提供しています。
ADBが管理する信託基金
日本奨学生プログラム
日本奨学生プログラム(JSP)は、開発途上加盟国の優れた人材に対
し、アジア・太平洋地域の精選された教育機関において、経済学、
経営学、科学技術およびその他の開発関連分野で大学院課程の研究
機会を提供するため、1988年に設立されました。
JSPは日本政府から資金拠出を受け、ADBが運営しています。2010年
現在、10カ国27の教育研究機関がJSPに参加しています。1988年から
2010年までに日本は1億1,610万ドルを拠出し、35加盟国の2,696名に
奨学金が提供されました。このうち2,362名が課程を修了しており、
女性の受給者は925名にのぼっています。過去10年間、平均で毎年
155名に奨学金が提供されています。
貧困削減日本基金
アジア開発銀行
日本政府は、ADBのプロジェクトに付加価値をもたらしうる貧困削減
および関連する社会開発活動の支援を目的として、2000年5月に貧困
削減日本基金(JFPR)を設立しました。2010年には、JFPRはグラン
ト支援の範囲を拡大し、プロジェクト・グラントに加えて技術協力
グラントも提供するようになりました。2010年末時点で、同基金は
累計でおよそ4億4,580万ドルの拠出を受け、137件・計3億5,290万ド
ル相当のグラントおよび30件・計2,540万ドル相当の技術協力プロジ
ェクトが承認されています。
33
ADB加盟国
(2010年末現在)
財務概要2011
域内(ABC順)
アフガニスタン
アルメニア
オーストラリア*
アゼルバイジャン
バングラデシュ
ブータン
ブルネイ
カンボジア
中華人民共和国
クック諸島
フィジー諸島
グルジア
香港(中国)
インド
インドネシア
日本*
カザフスタン
キリバス
韓国*
キルギス
ラオス
マレーシア
モルジブ
マーシャル諸島
ミクロネシア連邦
モンゴル
ミャンマー
ナウル
ネパール
ニュージーランド*
パキスタン
パラオ
パプアニューギニア
フィリピン
サモア
シンガポール
ソロモン諸島
スリランカ
台湾
タジキスタン
タイ
東ティモール
トンガ
トルクメニスタン
ツバル
ウズベキスタン
バヌアツ
ベトナム
域内(同上)
オーストリア*
ベルギー*
カナダ*
デンマーク*
フィンランド*
フランス*
ドイツ*
アイルランド*
イタリア*
ルクセンブルク*
* OECD加盟国
34
オランダ*
ノルウェー*
ポルトガル*
スペイン*
スウェーデン*
スイス*
トルコ*
英国*
米国*
主な連絡先
アジア開発銀行
6 ADB Avenue, Mandaluyong City 1550, Metro Manila Philippines
電話番号: +63 2 632 4444
E-mail: [email protected]
SWIFT コード: ASDBPHMM
FAX番号: +63 2 636 2444
総裁室
黒田 東彦
副総裁(業務1担当)
Xiaoyu Zhao
副総裁(業務2担当)
C. Lawrence Greenwood, Jr.
副総裁
(民間セクター・協調融資担当)
Lakshmi Venkatachalam
副総裁
(ナレッジ・マネジメント・持続的開発担当) Ursula Schäfer-Preuss
副総裁
(財務・管理担当)
Bindu N. Lohani
事務総長
Rajat M. Nag
アジア開発銀行
総裁
財務局
Thierry de Longuemar
財務局長
+63 2 632 4700
[email protected]
35
資金調達課
福永 一樹
課長
+63 2 632 4713
[email protected]
主要通貨担当
Maria A. Lomotan
+63 2 632 4478
[email protected]
Ana A. Kotamraju
+63 2 632 4737
[email protected]
Yue Shen
+63 2 632 5548
[email protected]
財務概要2011
現地通貨担当
Monish Mahurkar
+63 2 632 6811
[email protected]
Michael L. de los Reyes
+63 2 632 5647
[email protected]
直通FAX番号
+63 2 632 4120
投資課
Michael T. Jordan
課長
+63 2 632 4712
[email protected]
ポートフォリオ管理担当
西宮 幸宏
+63 2 632 4776
[email protected]
黒沼 正司
+63 2 632 4788
[email protected]
Woo Suk Chang
+63 2 632 4678
[email protected]
定量分析・戦略担当
36
Chun Du
+63 2 632 4524
[email protected]
直通FAX番号
+63 2 632 4707
財務政策・計画課
Tobias C. Hoschka
課長
+63 2 632 4701
[email protected]
資産・負債管理担当
Rajesh Poddar
+63 2 632 4714
[email protected]
Anthony M. Ostrea
+63 2 632 4371
[email protected]
アジア開発基金担当
Im-em Unkavanich
+63 2 632 4704
[email protected]
Mina Oh
+63 2 632 4616
[email protected]
クライアント業務担当
+63 2 636 2631
[email protected]
Asad Alamgir
+63 2 632 4732
[email protected]
直通FAX番号
+63 2 632 5476
財務業務課
Sukhumarn Phanachet
課長
+63 2 632 4730
[email protected]
アジア開発銀行
Deepak Taneja
銀行業関係担当・SWIFTセンター
Jose Morales
+63 2 632 4277
[email protected]
債券・デリバティブ管理および投資取引決済担当
Changhan Lee
+63 2 632 5395
[email protected]
37
現金管理および融資・技術協力・一般管理費支出担当
Nuzhat Khan
+63 2 632 4793
[email protected]
システム支援・データ管理担当
Ayite Gaba
+63 2 632 4106
[email protected]
直通FAX番号
+63 2 636 2635
財務概要2011
ADBオンライン
38
一般情報
www.adb.org
財務情報
www.adb.org/finance
アジア経済モニター
www.aric.adb.org
アジア開発銀行について
経済発展のサクセス・ストーリーが脚光を浴びる一方で、アジア・太平洋
地域には、世界の貧困層の3 分の2が、また生活費が一日2 ドル未満の人々
が約18 億人、そのうち9 億300 万人は一日1.25 ドル未満で暮らしている
とされています。マニラに本部を置くアジア開発銀行(Asian Development
Bank: ADB、加盟国・地域数67、うち域内48)は、アジア・太平洋地域から
貧困がなくなる日の実現をめざし、全ての人々に恩恵が行き渡る(インクル
ーシブな)経済成長、環境に調和した持続可能な成長、および地域統合の促
進を通じて、途上加盟国の貧困削減と人々の生活の向上を支援しています。
ADB が行う支援の具体的手段は、政策対話、融資、出資、保証、無
償援助、技術協力などです。
ADB
財務概要
2011
アジア開発銀行
6 ADB Avenue, Mandaluyong City
1550 Metro Manila, Philippines
www.adb.org
ISBN 978-92-9092-344-2
出版物番号 RPT113619
再生紙使用
印刷:フィリピン
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