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1つ以上の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus
JP 2011-519974 A 2011.7.14 (57)【要約】 1つ以上の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢膜抗原 に特異的なIgM 抗体を使用する、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)感染を治療又は予防する抗体に基づいた新規の方法。これら抗体の例とし ては(i)プール供血者血漿から単離され、黄色ブドウ球菌(Staphylococc us aureus)莢膜抗原に特異的に結合するIgMが濃縮されたポリクローナルI gM抗体組成物、又は(ii)黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aur eus)莢膜抗原に特異的に結合する1つ以上のIgMモノクローナル抗体などがある。 【選択図】なし (2) JP 2011-519974 A 2011.7.14 【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢 膜抗原に特異的に結合するIgMが濃縮されている抗体の混合物であり、少なくとも10 の異なる提供者から蓄えられた血漿から精製された抗体のポリクローナル混合物、及び薬 剤的に許容できる担体を含む組成物。 【請求項2】 IgMが少なくとも約5重量パーセントの抗体の混合物を含む、請求項1に記載の組成 物。 【請求項3】 10 IgMが少なくとも約10重量パーセントの抗体の混合物を含む、請求項2に記載の組 成物。 【請求項4】 IgMが少なくとも約25重量パーセントの抗体の混合物を含む、請求項2に記載の組 成物。 【請求項5】 IgMが少なくとも約50重量パーセントの抗体の混合物を含む、請求項2に記載の組 成物。 【請求項6】 前記少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus 20 )莢膜抗原が血清型5莢膜抗原を含む、請求項1に記載の組成物。 【請求項7】 前記少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus )莢膜抗原が血清型8莢膜抗原を含む、請求項1に記載の組成物。 【請求項8】 前記少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus )莢膜抗原が血清型5莢膜抗原及び血清型8莢膜抗原を含む請求項1に記載の組成物。 【請求項9】 前記抗体の混合物が、莢膜抗原以外の黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス)の抗原に 特異的に結合するIgMもまた濃縮されている、請求項1に記載の組成物。 30 【請求項10】 前記莢膜抗原以外の黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス)の抗原が、タンパク質A、 血清型336多糖抗原、コアグラーゼ、クランピング因子A、クランピング因子B、フィ ブロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、コラーゲン結合タンパク 質、エラスチン結合タンパク質、MHC類似タンパク質、細胞接着多糖、アルファヘモリ シン、ベータヘモリシン、デルタヘモリシン、ガンマヘモリシン、パントン・バレンタイ ン・ロイコシジン、表皮剥脱毒素A、表皮剥脱毒素B、V8プロテアーゼ、ヒアルロン酸 リアーゼ、リパーゼ、スタフィロキナーゼ、LukDEロイコシジン、エンテロトキシン 、毒素ショック症候群毒素1、ポリ−N−スクシニル ベータ−1→6グルコサミン、カ タラーゼ、ベータラクタマーゼ、テイコ酸、ペプチドグリカン、ペニシリン結合タンパク 40 質、走化性阻害タンパク質、補体阻害剤、及びSbiからなる群から選ばれる、請求項9 に記載の組成物。 【請求項11】 抗体がヒト由来である、請求項1に記載の組成物。 【請求項12】 抗体がウシ由来である、請求項1に記載の組成物。 【請求項13】 前記提供者が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対す る免疫反応を誘導する薬剤を含むワクチンを投与されていない、請求項1に記載の組成物 。 50 (3) JP 2011-519974 A 2011.7.14 【請求項14】 少なくとも1つの前記提供者が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus a ureus)に対する免疫反応を誘導する薬剤を含むワクチンを投与された、請求項1に 記載の組成物。 【請求項15】 前記薬剤が少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aur eus)莢膜抗原を含む、請求項13又は14に記載の組成物。 【請求項16】 前記抗体の混合物が凍結乾燥されている、請求項1に記載の組成物。 【請求項17】 10 前記抗体の混合物が、ナトリウム及び塩化物イオンを含む溶液中に溶解されている、請 求項1に記載の組成物。 【請求項18】 前記抗体の混合物が、アルブミン、グルコース、マルトース、ショ糖、ソルビトール、 ポリエチレングリコール、及びグリシンからなる群より選ばれた少なくとも1つの安定剤 を含む溶液中に溶解されている、請求項1に記載の組成物。 【請求項19】 前記抗体の混合物が、殺菌剤を含む溶液中に溶解されている、請求項1に記載の組成物 。 【請求項20】 20 前記殺菌剤が、界面活性剤、有機溶媒、及び界面活性剤並びに有機溶媒の混合物からな る群から選ばれた、請求項19に記載の組成物。 【請求項21】 少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢 膜抗原に特異的に結合するIgMが濃縮された抗体のポリクローナル混合物をプール血漿 から単離する工程;及び 単離した抗体のポリクローナル混合物を薬剤的に許容できる担体中に溶解する工程、を 含む方法。 【請求項22】 単離した抗体のポリクローナル混合物をろ過する工程をさらに含む、請求項21に記載 30 の方法。 【請求項23】 単離した抗体のポリクローナル混合物を界面活性剤と接触させる工程をさらに含む、請 求項21に記載の方法。 【請求項24】 単離した抗体のポリクローナル混合物を有機溶媒と接触させる工程をさらに含む、請求 項21に記載の方法。 【請求項25】 単離した抗体のポリクローナル混合物をβ−プロピオラクトンと接触させる工程をさら に含む、請求項21に記載の方法。 40 【請求項26】 単離した抗体のポリクローナル混合物を透析にかける工程をさらに含む、請求項21に 記載の方法。 【請求項27】 (a)少なくとも10の提供者から蓄えられた少なくとも10リットルの血漿を得る工 程; (b)前記プール血漿を少なくとも第一部分及び該第一部分に比べてIgMが濃縮され ている第二部分に分離する工程; (c)前記第二部分を少なくとも第三部分及び該第三部分に比べて少なくとも1つの黄 色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢膜抗原に特異的に結合 50 (4) JP 2011-519974 A 2011.7.14 するIgMが濃縮されている第四部分に分離する工程; (d)前記第四部分を回収する工程;及び (e)前記第四部分に含まれるIgMを薬剤的に許容できる担体中に溶解する工程、を 含む方法。 【請求項28】 前記少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus )莢膜抗原が血清型5莢膜抗原を含む、請求項27に記載の方法。 【請求項29】 前記少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus )莢膜抗原が血清型8莢膜抗原を含む、請求項27に記載の方法。 10 【請求項30】 前記少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus )莢膜抗原が血清型5莢膜抗原及び血清型8莢膜抗原を含む、請求項27に記載の方法。 【請求項31】 前記第三部分と比較して、前記第四部分において少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(S taphylococcus aureus)莢膜抗原に特異的に結合するIgM及び莢 膜抗原以外の黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス)の抗原に特異的に結合するIgMが 濃縮されている、請求項27に記載の方法。 【請求項32】 前記莢膜抗原以外の黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス)の抗原が、タンパク質A、 20 血清型336多糖抗原、コアグラーゼ、クランピング因子A、クランピング因子B、フィ ブロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、コラーゲン結合タンパク 質、エラスチン結合タンパク質、MHC類似タンパク質、細胞接着多糖、アルファヘモリ シン、ベータヘモリシン、デルタヘモリシン、ガンマヘモリシン、パントン・バレンタイ ン・ロイコシジン、表皮剥脱毒素A、表皮剥脱毒素B、V8プロテアーゼ、ヒアルロン酸 リアーゼ、リパーゼ、スタフィロキナーゼ、LukDEロイコシジン、エンテロトキシン 、毒素ショック症候群毒素1、ポリ−N−スクシニル ベータ−1→6グルコサミン、カ タラーゼ、ベータラクタマーゼ、テイコ酸、ペプチドグリカン、ペニシリン結合タンパク 質、走化性阻害タンパク質、補体阻害剤、及びSbiからなる群より選ばれた、請求項3 1に記載の方法。 30 【請求項33】 前記プール血漿を少なくとも第一部分及び第二部分に分離する工程(b)が、 (b1)脂質を除いたプール血漿を得るために、プール血漿から脂質を除去する工程; (b2)脂質を除いたプール血漿を水及び低イオン強度緩衝液からなる群より選ばれた 液体に対して透析することによって脂質を除いたプール血漿に含まれる真性グロビンを沈 殿させる工程;及び (b3)前記第二部分が含む回収した真性グロビンである沈殿した真性グロビンを回収 する工程、を含む、請求項27に記載の方法。 【請求項34】 工程(b)が前記回収した真性グロビンからIgMを精製する工程(b4)をさらに含 40 む、請求項33に記載の方法。 【請求項35】 前記プール血漿を少なくとも第一部分及び第二部分に分離する工程(b)が、プール血 漿を0℃未満においてエタノールと接触させる工程を含む、請求項27に記載の方法。 【請求項36】 前記第二部分がコーンフラクションIIIペーストを含む、請求項35に記載の方法。 【請求項37】 前記第二部分がキストラー・ニッチマン(Kistler−Nitschmann)沈 殿Bを含む、請求項35に記載の方法。 【請求項38】 50 (5) JP 2011-519974 A 2011.7.14 前記第二部分を少なくとも第三部分及び第四部分に分離する工程(c)が、前記第二部 分を少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) 莢膜抗原と結合したクロマトグラフィーの担体を用いた免疫アフィニティクロマトグラフ ィーにかける工程を含む、請求項27に記載の方法。 【請求項39】 前記提供者が、少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus a ureus)莢膜抗原に特異的に結合する血漿IgMの閾値濃度を有することに基づいて 選択された、請求項27に記載の方法。 【請求項40】 前記閾値濃度が、提供者が属する種の一般的な集団の少なくとも1つの黄色ブドウ球菌 10 (Staphylococcus aureus)莢膜抗原に特異的に結合する血漿Ig Mの平均濃度よりも少なくとも50%高い、請求項39に記載の方法。 【請求項41】 前記閾値濃度が、少なくとも血漿1ミリリットル当たり10マイクログラムである、請 求項39に記載の方法。 【請求項42】 前記閾値濃度が、少なくとも血漿1ミリリットル当たり50マイクログラムである、請 求項39に記載の方法。 【請求項43】 (a)プール血漿を、IgGが90%より多い抗体のポリクローナル混合物並びに少な 20 くとも部分的にIgGが枯渇した少なくとも1つの第二画分を含む第一画分、及び第二画 分に分離する工程;及び (b)少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureu s)莢膜抗原に特異的に結合するIgMが濃縮されている単離されたIgであるIgを、 少なくとも1つの第二画分から単離する工程、を含む方法。 【請求項44】 少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢 膜抗原に特異的に結合するが黄色ブドウ球菌タンパク質Aには特異的に結合しない、ヒト 又はヒト化IgM mAb、及び薬剤的に許容できる担体を含む組成物。 【請求項45】 30 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢膜抗原が血清型5 莢膜抗原を含む、請求項46に記載の組成物。 【請求項46】 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢膜抗原が血清型8 莢膜抗原を含む、請求項46に記載の組成物。 【請求項47】 少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢 膜抗原に特異的に結合するが黄色ブドウ球菌タンパク質Aには特異的に結合しない、第一 のmAbが第二のmAbとは異なる、少なくとも第一及び第二のヒト由来又はヒト化Ig M mAbを含む混合物。 40 【請求項48】 第一のmAbが黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血清 型5莢膜抗原に特異的に結合し、及び第二のmAbが黄色ブドウ球菌(Staphylo coccus aureus)血清型8莢膜抗原に特異的に結合する、請求項47に記載 の混合物。 【請求項49】 前記混合物が莢膜抗原以外の黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス)の抗原に特異的に 結合する第三のmAbをさらに含む、請求項48に記載の混合物。 【請求項50】 莢膜抗原以外の黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス)の抗原が、タンパク質A、血清 50 (6) JP 2011-519974 A 2011.7.14 型336多糖抗原、コアグラーゼ、クランピング因子A、クランピング因子B、フィブロ ネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、コラーゲン結合タンパク質、 エラスチン結合タンパク質、MHC類似タンパク質、細胞接着多糖、アルファヘモリシン 、ベータヘモリシン、デルタヘモリシン、ガンマヘモリシン、パントン・バレンタイン・ ロイコシジン、表皮剥脱毒素A、表皮剥脱毒素B、V8プロテアーゼ、ヒアルロン酸リア ーゼ、リパーゼ、スタフィロキナーゼ、LukDEロイコシジン、エンテロトキシン、毒 素ショック症候群毒素1、ポリ−N−スクシニル ベータ−1→6グルコサミン、カタラ ーゼ、ベータラクタマーゼ、テイコ酸、ペプチドグリカン、ペニシリン結合タンパク質、 走化性阻害タンパク質、補体阻害剤、及びSbiからなる群より選ばれた、請求項49に 記載の混合物。 10 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 関連出願 本出願は2008年5月12日に出願された米国仮特許出願第61/052,281号 の優先権を主張する。 【0002】 技術分野 本発明は一般的には抗体(Ab)、免疫学、感染症、及び薬剤の分野に関する。より具 20 体的には、本発明は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)( SA)莢膜抗原に特異的なIgM型の免疫グロブリン(Ig)を濃縮したAb製剤に関す る。 【背景技術】 【0003】 SAはヒト及び動物双方における病気及び死亡の相当な原因である。これらグラム陽性 球菌の感染は、しばしば表在性膿腫の発展を生じる。SA感染のその他の症例はさらに深 刻になる場合がある。例えば、リンパ及び血液へのSAの侵入は、その後に心内膜炎、関 節炎、骨髄炎、肺炎、敗血症性ショック及び死亡のような合併症を引き起こす可能性のあ る、全身感染症を誘導する場合がある。外科的部位での感染および肺炎の院内感染におけ 30 る最も頻度の高い原因であり、心血管および血流感染において二番目に頻度の高い原因で あるSAの院内感染はしばしば見られ、特に問題である。 【0004】 SA感染の経済的影響も無視できない。ノスキン(Noskin)らによる後ろ向き解 析(Arch Intern Med 165:1756−1761,2005)は、米 国の全入院患者の0.8%が退院時診断としてSA感染と報告され、そして、SAに感染 していない入院患者と比較してSA感染患者の入院期間は3倍長く、合計金額が3倍であ り(48,824ドル対14,141ドル)、そして院内死亡のリスクが5倍であること を見いだした。これら事柄からノスキンらは、米国の病院患者のSA感染は、一年間に約 12,000人の入院患者の死亡と95億ドルの過剰な料金を生じると推定している。 40 【0005】 SA感染に対するこれまで及び現在の標準的な治療は抗生物質の投与である。しかし残 念なことに、抗生物質の使用はSAにおける抗生物質耐性の発展をもまたもたらした。と りわけ、メチシリン耐性SA(MRSA)はペニシリン及びセファロスポリンなどのベー タラクタム抗生物質に抵抗する能力を発達させた。さらに驚くべきことに、近年、バンコ マイシンやリネゾリドなどの最終手段である抗生物質に耐性のSAも出現した。そのため 、SA感染を予防及び治療する新規の取り組みが必要とされている。 【発明の概要】 【0006】 本発明はSA感染の治療又は予防に対する、Abに基づく新規の方法の開発に関する。 50 (7) JP 2011-519974 A 2011.7.14 この方法は1つ以上のSA莢膜抗原に特異的なIgM Abを使用する。そのようなAb の例としては(i)プール供血者血漿から単離され、SA莢膜抗原に特異的に結合するI gMが濃縮されたポリクローナルIgM Ab組成物、又は(ii)SA莢膜抗原に特異 的に結合する1つ以上のIgMモノクローナルAb(mAb)などがある。 【0007】 SA感染の治療又は予防に対するAbに基づいたこれまでの方法は、臨床前及び初期の 臨床試験においては見込みを示したが、第三相臨床試験においてはエンドポイントに達し なかった。これらの結果を説明すると、おそらくこれまでの方法は、Ab反応を回避する ために相乗的に作用する二つの主要なSA毒性因子である(i)多糖莢膜生産、及び(i i)ブドウ球菌プロテインA(Spa)発現の両方に対処していなかった。細菌の細胞壁 10 の外表面を被膜することで、そうでなければ細菌を攻撃するであろうAb及び免疫エフェ クター細胞から認識される、その他細胞関連SA抗原を多糖莢膜が「覆う」。Ab製剤中 のIgが非莢膜抗原に達するためには最初に莢膜を貫通しなくてはならないため、非莢膜 SA抗原に特異的なAb製剤は細菌を殺菌するのにあまり効果的でない。一度莢膜を貫通 すると、非莢膜抗原に結合したIgは莢膜の下に局在し、食細胞などの免疫エフェクター からの力が及ばない。さらに悪いことに、Fc(エフェクター)領域を介してIgに結合 する細胞壁関連タンパク質Spaは、(i)莢膜抗原に結合するこれらIgを吸収する又 は莢膜の非特異的な貫通を生じるスポンジ、及び(ii)Igのエフェクター部分を、補 体及びFc受容体を有する食細胞などのFcと相互作用する免疫エフェクターから離して 配向するFc領域アンカー、の両方として作用する。従って、このようにSA莢膜抗原に 20 特異的な多くのAbは免疫エフェクターから隔離されている。覆うこと及び隔離すること の相乗効果の重要性について強調すると、ほぼ全ての臨床的に単離されたSAはこれら毒 性因子の両方を発現する。 【0008】 本発明のAbはSpaによって隔離され得ない(又はほとんど隔離されない)Ig(例 えばIgM)を用い、覆われていない抗原(すなわち多糖莢膜そのもの)を標的とするこ とでこの覆いと隔離の相乗的防御を克服する。IgM Abは、それらを被嚢性の細菌を 除去するのに非常に効果的にする他の特徴を有することから(例えば有効な補体活性化) 、現在好まれている。実際に、オオタニワタリで生じるようなIgM記憶B細胞の欠如は 被嚢性細菌への免疫反応の損傷と関連している。 30 【0009】 従って、一つの態様において本発明は、少なくとも1つのSA莢膜抗原に特異的に結合 する非Spa結合Igが濃縮されたAbの混合物であって、少なくとも10の異なる提供 者(例えば少なくても5、10、20、100、500、1000L以上のプール血漿) から蓄えられた血漿から精製されたAbのポリクローナル混合物を含む組成物を特徴付け る。前記Abの混合物は少なくとも1つのSA莢膜抗原に特異的に結合するIgM(例え ば少なくても約1、2、3、4、5、10、30重量パーセント以上のAbの混合物)が 濃縮されていてもよい。前記の少なくとも1つのSA莢膜抗原は血清型5莢膜抗原、血清 型8莢膜抗原、又は前述の両方の混合物の場合がある。特定の実施形態においては、組成 物のAbはヒト由来である。その他の実施形態においては、Abはウシ由来(SA関連ウ 40 シ乳房炎の治療用)である。血漿提供者はSA(例えば少なくとも1つのSA莢膜抗原) に対する免疫反応を誘導する薬剤を含むワクチンによって免疫され、又は免疫されない提 供者の場合がある。 【0010】 Abの混合物は、凍結乾燥され;ナトリウム及び塩化物イオンを含む溶液に溶解され; アルブミン、グルコース、マルトース、ショ糖、ソルビトール、ポリエチレングリコール 、及びグリシンなどの1つ以上の安定剤を含む溶液に溶解され;及び/又は殺菌剤(例え ば界面活性剤、有機溶媒、及び界面活性剤並びに有機溶媒の混合物)を含む溶液に溶解さ れていても良い。 【0011】 50 (8) JP 2011-519974 A 2011.7.14 別の態様においては、Abの混合物は莢膜抗原以外の、1つ以上の(例えば1、2、3 、4、5、6、7、8、9、10以上の)SA抗原に特異的に結合するIgが濃縮されて いても良い。そのような他の抗原の例としては、Spa、血清型336多糖抗原、コアグ ラーゼ、クランピング因子A、クランピング因子B、フィブロネクチン結合タンパク質、 フィブリノゲン結合タンパク質、コラーゲン結合タンパク質、エラスチン結合タンパク質 、MHC類似タンパク質、細胞接着多糖、アルファヘモリシン、ベータヘモリシン、デル タヘモリシン、ガンマヘモリシン、パントン・バレンタイン・ロイコシジン、表皮剥脱毒 素A、表皮剥脱毒素B、V8プロテアーゼ、ヒアルロン酸リアーゼ、リパーゼ、スタフィ ロキナーゼ、LukDEロイコシジン、エンテロトキシン、毒素ショック症候群毒素1、 ポリ−N−スクシニル ベータ−1→6グルコサミン、カタラーゼ、ベータラクタマーゼ 10 、テイコ酸、ペプチドグリカン、ペニシリン結合タンパク質、走化性阻害タンパク質、補 体阻害剤、及びSbiなどがある。 【0012】 本発明には、少なくとも1つのSA莢膜抗原に特異的に結合する非ブドウ球菌プロテイ ンA結合Igが濃縮されたAbのポリクローナル混合物を、プール血漿から単離する工程 を含む方法もまた含まれる。この方法は、単離されたAbのポリクローナル混合物を薬剤 的に許容できる担体中に溶解する工程、単離されたAbのポリクローナル混合物をろ過す る工程、単離されたAbのポリクローナル混合物を界面活性剤と接触させる工程、単離さ れたAbのポリクローナル混合物を有機溶媒と接触させる工程、単離されたAbのポリク ローナル混合物をβ−プロピオラクトンと接触させる工程、及び/又は単離されたAbの 20 ポリクローナル混合物を透析する工程をさらに含む。 【0013】 本発明に含まれる別の方法は、(a)少なくとも10の提供者から蓄えられた血漿を得 る工程;(b)プール血漿を少なくとも第一部分と、第一部分に比べて非Spa結合Ig が濃縮されている第二部分に分離する工程;(c)第二部分を少なくとも第三部分と、第 三部分に比べて少なくとも1つのSA莢膜抗原に特異的に結合するIgが濃縮されている 第四部分に分離する工程;(d)第四部分を回収する工程;及び(e)第四部分に含まれ るIgを薬剤的に許容できる担体に溶解する工程、を含む。プール血漿を少なくとも第一 部分と第二部分に分離する工程(b)は、(b1)脂質を除いたプール血漿を得るために プール血漿から脂質を除去する工程;(b2)脂質を除いたプール血漿を水及び低イオン 30 強度緩衝液からなる群より選ばれた液体に対して透析することにより、脂質を除いたプー ル血漿に含まれる真性グロビンを沈殿させる工程;及び(b3)第二部分が含む回収され た真性グロビンである沈殿した真性グロビンを回収する工程、を含んでいても良い。工程 (b)は、(b4)回収された真性グロビンからIgMを精製する工程、をさらに含んで いても良い。この方法の一つの型においては、プール血漿を少なくとも第一部分と第二部 分に分離する工程(b)は、0℃より低い温度でプール血漿をエタノールと接触させる工 程を含む。第二部分はコーンフラクションIIIペースト及び/又はキストラー・ニッチ マン沈殿Bを含む場合がある。第二部分を少なくとも第三部分と第四部分に分離する工程 (c)は少なくとも1つのSA莢膜抗原と結合したクロマトグラフィーの担体を用いて、 第二部分をイムノアフィニティークロマトグラフィーにかける工程を含む。 40 【0014】 本発明に含まれるさらに別の方法は、(a)プール血漿を、IgGが90%より多いA bのポリクローナル混合物並びに少なくとも部分的にIgGが枯渇した第二画分を少なく とも1つ含む第一画分、及び第二画分に分離する工程;及び(b)少なくとも1つのSA 莢膜抗原に特異的に結合するIgMが濃縮されている単離されたIgであるIgを、少な くとも1つの第二画分から単離する工程、を含む。 【0015】 別の態様において本発明は、Igを含む試料を(a)SA血清型5莢膜抗原と結合した クロマトグラフィーの担体、(b)SA血清型8莢膜抗原と結合したクロマトグラフィー の担体、及び、任意に、(c)Spa、血清型336多糖抗原、コアグラーゼ、クランピ 50 (9) JP 2011-519974 A 2011.7.14 ング因子A、クランピング因子B、フィブロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結 合タンパク質、コラーゲン結合タンパク質、エラスチン結合タンパク質、MHC類似タン パク質、細胞接着多糖、アルファヘモリシン、ベータヘモリシン、デルタヘモリシン、ガ ンマヘモリシン、パントン・バレンタイン・ロイコシジン、表皮剥脱毒素A、表皮剥脱毒 素B、V8プロテアーゼ、ヒアルロン酸リアーゼ、リパーゼ、スタフィロキナーゼ、Lu kDEロイコシジン、エンテロトキシン、毒素ショック症候群毒素1、ポリ−N−スクシ ニル ベータ−1→6グルコサミン、カタラーゼ、ベータラクタマーゼ、テイコ酸、ペプ チドグリカン、ペニシリン結合タンパク質、走化性阻害タンパク質、補体阻害剤、及びS biなどの非莢膜SA抗原と結合したクロマトグラフィーの担体と接触させる工程を含む 方法を特徴付ける。 10 【0016】 SA血清型5、SA血清型8莢膜抗原、及び、任意に、SA血清型336抗原などの非 莢膜SA抗原と結合したクロマトグラフィーの担体もまた本発明において特徴付けられる 。 【0017】 本発明はさらに、SA莢膜抗原(例えば血清型5又は8抗原)に特異的に結合するがS paには特異的に結合しないmAb(例えば哺乳類由来、ヒト由来、ヒト化された、又は ウシ由来)を含む。それらmAbの混合物、例えば(i)血清型5及び血清型8特異的I gM mAbの混合物及び(ii)血清型5、血清型8、及び血清型336特異的IgM mAbの混合物、もまた本発明に含まれる。 20 【0018】 本明細書では、「抗体」又は「Ab」はIg、同一あるいは異種Igの溶液、又はIg の混合物である。「モノクローナル抗体」又は「mAb」は一つのクローン性B細胞株に よって発現されるAbである。本明細書では、その語は、特定の抗原の特定のエピトープ と免疫反応することが可能な一種類の抗原結合部位のみを含むAb分子の集団を意味する 。「ポリクローナル抗体」又は「ポリクローナルAb」は異種のAbの混合物である。典 型的には、ポリクローナルAbは、抗原又は微生物の異なるエピトープと免疫反応する少 なくともいくつかの異なるAbによって特定の抗原又は特定の微生物と結合する、無数の 異なるAb分子を含んでいても良い。本明細書では、ポリクローナルAbは二種類以上の mAbの混合物の場合もある。 30 【0019】 Abの「抗原結合部分」はAbのFab部分の様々な領域中に含まれ、そしてそれらは Ab(すなわち、典型的には、Abの重及び軽鎖の相補性決定領域から形成される三次元 ポケット)への抗原特異性を決定するAbの部分である。「Fab部分」又は「Fab領 域」はそのIgの抗原結合部分を含む、パパインによって分解されたIgのタンパク質分 解性断片である。「非Fab部分」はFab部分に含まれない部分のAb、例えば「Fc 部分」又は「Fc領域」である。Abの「定常領域」は様々な領域の外側の部分のAbで ある。通常、免疫反応を促進するその他の免疫系構成要素と結合する部分のAbである、 Abの「エフェクター部分」が定常領域中に含まれる。従って、例えば、補体成分又はF c受容体と(それ自身の抗原結合部分を介さずに)結合するAb上の部位が、そのAbの 40 エフェクター部分である。 【0020】 Abなどのタンパク分子について述べる場合には、「精製された」は、それらの分子を 天然に伴っている構成要素から分離されたことを意味する。典型的には、Ab又はタンパ ク質は、それが少なくとも約10重量%(例えば、9%、10%、20%、30%40% 、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.9%、及 び100%)の場合に精製され、それらと天然で関連している、非Abタンパク質または 天然に生じる有機分子を含まない。純度は、例えばカラムクロマトグラフィー、ポリアク リルアミドゲル電気泳動、又はHPLC解析などいずれかの適切な方法によって測定する ことができる。化学的に合成されたタンパク質又はそれらが自然に生ずる細胞型以外の他 50 (10) JP 2011-519974 A 2011.7.14 の細胞型において生産されたその他の組み替えタンパク質が「精製された」。Abによる 処理において、処理前よりも処理後で、求められるIgが求められないIgよりも高い比 を生じた場合に、求められるIg型及び求められていないIg型を含むAbが求められる Ig型のために「濃縮された」。例えば、SA莢膜結合Ig及び非SA莢膜結合Igを含 むAbの溶液において、後者のために全SA莢膜結合Abのいくらかが溶液から除去され る場合には濃縮され;Spa結合Ig及び非Spa結合Igを含むAbの溶液において、 後者のために全Spa結合Abのいくらかが溶液から除去される場合に濃縮された。 【0021】 「結合」、「結合する」又は「と反応する」は、試料中においてある分子が特定の第二 の分子を認識して接着し、実質的に試料中の他の分子を認識又は接着しないことを意味す 10 る。通常、他の分子に「特異的に結合する」Abはその分子に対して約105、106、 107、108、109、1010、1011、又は1012リッター/モルより大きい Kdを有する。 【0022】 「治療に有効な量」は処理した動物又はヒトにおいて医学的に求められる効果(例えば 、疾病の改善又は予防)を生ずることができる量である。 【0023】 その他に定義がない限り、本明細書で使用されている全ての技術的及び化学的な単語は 、本発明が属している当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本発明の実 施又は試験においては、本明細書に記載されているものと同様又は同等の方法及び材料が 20 使用可能であるが、適した方法及び材料が以下に記載されている。本明細書で言及してい る全ての出版物、特許出願、特許及びその他の参考文献は参照することによりその全文を 組み込まれたものとする。相容れない場合には、定義を含む本明細書が優先される。さら に、材料、方法及び実施例は説明となるだけであって、限定することを意図しない。 【0024】 本発明のその他の特徴及び利点は、以下の発明の詳細な説明、及び請求項から明らかと なる。 【発明を実施するための形態】 【0025】 本発明は、SA莢膜特異的ポリクローナル及びモノクローナルIgM Ab製剤、及び 30 それらAb組成物の製造に用いられる方法並びに組成物を含包する。以下に記載されてい る好ましい実施形態はこれら組成物及び方法の適応を説明する。それに関わらず、これら 実施形態の記載から、以下に提供される記載に基づいて本発明のその他の態様が作成及び /又は実施され得る。 【0026】 生物学的方法 通常の免疫学的及び分子生物学的手法を含む方法が本明細書に記載されている。免疫学 的方法(例えば、抗原−Ab複合体の局在を検出するアッセイ、免疫沈降、イムノブロッ ティングなど)は当業者において周知であり、Current Protocols i n Immunology,Coligan et al.,ed.,John Wil 40 ey & Sons,New Yorkなどの方法論に記載されている。分子生物学的手 法はMolecular Cloning:A Laboratory Manual, 2nd ed.,vol.1−3,Sambrook et al.,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spr ing Harbor,N.Y.,2001;及びCurrent Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,ed. ,Greene Publishing and Wiley− Interscien ce,New Yorkなどの方法論に記載されている。血漿分画の方法はMethod s of Plasma Protein Fractionation,Cursli ng,J.M ed.,Academic Press,San Diego,Cali 50 (11) JP 2011-519974 A 2011.7.14 f.,1980;及びBlood Separation and Plasma Fr actionation,Harris,J.R.,ed.,Wiley−Liss,N ew York 1991に記載されている。Abの方法はHandbook of T herapeutic Abs,Dubel,S.,ed.,Wiley−VCH,20 07及びHarlow E.and Lane,D.Using Anitibodie s:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbo r Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N. Y.,1999に記載されている。細胞培養の手法は当業者においては一般的に知られて おり、Culture of Animal Cells:A Manual of B asic Technique,4th edition,by R Ian Fres 10 hney,Wiley−Liss,Hoboken,N.J.,2000;及び Gen eral Techniques of Cell Culture,by Maure en A Harrison and Ian F Rae,Cambridge Un iversity Press,Cambridge,UK,1994などの方法論に詳 細に記載されている。タンパク質の精製方法はGuide to protein Pu rification:Methods in Enzymology,Vol.182 ,Deutscher M P,ed.,Academic Press,San Di ego,Calif,1990において考察されている。 【0027】 SA莢膜抗原に特異的なポリクローナルIgM Ab 20 通常ポリクローナルAbは抗原を用いて宿主動物を免疫し、その後その動物からAbを 含む血清を回収することによって生産される。SA多糖莢膜に特異的なAbを得るために は、典型的には、細菌から精製された1つ以上(1、2、3以上)のSA莢膜多糖抗原が 使用され得る。例えば、Ausebel et al.,Current Protoc ols in Molecular Biology,John Wiley & So ns,Inc.,NY,1989を参照。T細胞依存(IgG)Ab反応を誘導するため には、抗原はキーホールリンペットヘモシアニンや緑膿菌外毒素Aなどの担体タンパク質 と結合されていてもよい。主にT細胞非依存(IgM)Ab反応を誘導するためには、そ の抗原の平均分子量を増加させるために莢膜多糖抗原が共に結合される場合もある。Ab 反応を高めるためにアジュバントが使用されてもよい。抗原を用いて1回以上免疫した後 30 に、血液は宿主動物から回収され、抗血清は既知の方法によって回収される。抗血清に含 まれた抗原特異的Abを、脱塩、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグ ラフィー、及びアフィニティクロマトグラフィーなどの既知の方法によって濃縮又は精製 することができる。 【0028】 前述の方法も本発明において使用することが可能であるが、SA莢膜抗原に特異的なI gMは対象動物(例えばヒト及びウシ)の血液中で天然に生じるため、これらのIgMを 生産するための現在の好ましい方法は単に、前述のパラグラフに記載されているようには 免疫されていない、複数の提供者(例えば、5、10、50、100、500、1000 、5000、10000以上の個別の提供者)からのプール血漿(例えば、100、50 40 0、1000、5000L以上のプール血漿)からそれらを精製するものである。提供者 を免疫する必要がないこと、及び大量のSA莢膜抗原に特異的なIgMを生産するための 現行の大規模な血漿分画操作が容易に適用可能であるため、この方法が好ましい。 【0029】 提供者はポリクローナルIgM Ab組成物が投与される予定の種と同じ種であること が好ましい。例えばヒトへの投与に対しては、望ましくない反応を避けるために、提供者 は好ましくはヒトである。同様に、ウシへの投与に対しては、提供者は好ましくはウシで ある。他の例においては、提供者はヒト又はウシ以外の、例えば、ウマ、ヒツジ、イヌ、 ネコ、マウス、ラット、ウサギ、サル、チンバンジー、ヤギなどの哺乳類種の場合もある 。回収率を高めるために、相対的に高いIgM抗SA莢膜Ab力価を有する提供者[例え 50 (12) JP 2011-519974 A 2011.7.14 ば、(母集団の)平均よりも50、100、200、500、1000パーセント以上の 力価のIgM抗SA莢膜Abを有する提供者;及び以前にSAに感染した提供者]が母集 団から特に選択され得る。IgM抗SA莢膜Abの力価測定のために提供者は、RIA及 びELISAなどの通常の免疫学的手法の適応を用いて試験され得る。例えば、精製され たSA莢膜抗原はELISA解析の開発に用いることができる。 【0030】 SA莢膜抗原特異的IgMはプール供血者血漿からいずれの適した方法によっても単離 することができる。一般には、それらの方法はまずIgMを血漿試料から精製し、その後 1つ以上のSA莢膜抗原に特異的に結合する精製したIgM産物を濃縮する工程を含む。 一方それらの方法が、まず1つ以上のSA莢膜抗原に特異的に結合する血漿試料からIg 10 を精製し、その後第一工程の産物から非Spa結合Ig(例えば、IgM)を単離する工 程を含む場合もある。 【0031】 血漿またはその他の試料からIgMを単離する数多くの手法が知られている。例えば、 真性グロブリンの沈殿(例えば水又は低イオン強度緩衝液に対する透析)と、その後のサ イズ排除又はイオン交換法によってIgMを血漿から単離することができる。一方、改変 ドイツ・キストラー・ニッチマン(Deutsch−Kistler−Nitschma nn)エタノール分画プロトコルとそれに続くオクタン酸沈殿及び二回のイオン交換クロ マトグラフィー工程が用いられる場合もある。Hurez et al. Blood. 1997;90:4004−13を参照。加えて、固定化抗IgM Ab又は固定化C 20 1qを用いたアフィニティクロマトグラフィーを使用することもできる。それらを含めた IgM精製のその他の方法はArnold et al.,J.Biol.Chem.2 80:29080−29087,2005;米国特許第5,077,391号公報;米国 特許第5,112,952号公報;米国特許第5,308,753号公報;米国特許第5 ,612,033号公報;及び米国特許第6,136,312号公報に記載されている。 【0032】 1つ以上のSA莢膜抗原に特異的に結合するIg(例えば、IgM)を単離するのに適 したいずれの手法も本発明において使用することができる。例えば、1つ以上の精製され たSA莢膜抗原をリガンドとして用いるアフィニティ精製プロトコルが用いられる場合も ある。例えばAntibodies:Volume 1 :Production an 30 d Purification,G.Subramanian,ed.,Springe r 2004;Protein Purification:Principles a nd Practice,R.K.Scopes,Springer,1993;及び Handbook of Affinity Chromatography,T.Kl ine,ed.,Marcel Dekker,1993を参照。1つ以上のSA莢膜抗 原に特異的に結合するIgをそうでないIgから分離するには、抗原アフィニティカラム クロマトグラフィーが用いられる場合もある。精製したSA莢膜抗原(例えば血清型5、 8、又はそれらの混合物)を、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)又はN−サクシニミジ ル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)などの結合剤又はカーボリン クキット(Carbolink kit)(ピアス、製品番号44900)を用いてクロ 40 マトグラフィー基剤(例えば、アガロ−ス又はセファロースビーズ)に固定化することが できる。 【0033】 別の実施形態においては、提供者血漿から始めるよりも、1つ以上のSA莢膜抗原に特 異的に結合するIgMが、IgMを含む市販のIg製剤(IVIG)からスクリーニング される場合もある。それらの抗体を含む一群の製品が供給源として使用されてもよく、そ れらからSA莢膜特異的IgMが精製され得る。流通市場において現在、数多くのIVI G製品、例えばフレボガンマ(Flebogamma(登録商標))(グリフォルズ)、 ガムネックス(Gamunex(商標))(タレクリス・バイオセラピューティクス)、 オクタガム(Octagam(登録商標))(オクタファルマ)、ガンマガード(Gam 50 (13) JP 2011-519974 A 2011.7.14 magard(登録商標))(バクスター・ヘルスケア)、カリミュンNF(Carim une(商標)NF)(CSLベーリング)、ガンマーP(Gammar(登録商標)P )(CSLベーリング)、イヴィガムEN(IveegamEN)(バクスター・ヘルス ケア)、パンタグロブリンNF(Panglobulin(登録商標)NF)(バクスタ ー・ヘルスケア)、ポリガムS/D(Polygam(登録商標)S/D)(バクスター ・ヘルスケア)、サンドグロブリン(Sandoglobulin(登録商標))(CS Lベーリング)、及びペンタグロビン(Pentaglobin(登録商標))(ビオテ ストAG)が入手可能である。より高いIgM濃度を有するIVIG製剤が好ましい(例 えばペンタグロビン(Pentaglobin(登録商標))IVIG)。大部分の通常 のIVIG生産操作は本来、血漿のIgG画分を精製することを対象としているので、I 10 gMを含むがIgGが枯渇した、それら操作の廃棄物が本明細書に記載された精製方法の 出発材料として用いられる場合もある。 【0034】 本発明の精製されたAb組成物はSA莢膜抗原−特異的IgM Ab以外の血漿構成要 素を含む場合がある。例えばこの組成物はIgG、IgA、IgE、アルブミンなどを含 む場合がある。好ましくは、最小の副作用で対象に投与できるSA莢膜抗原特異的IgM の高い力価を保証するために、本発明のAb組成物は少なくとも0.5、1、2、3、4 、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35 、40、45、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99、99. 9重量パーセント以上のSA莢膜抗原特異的IgMを好ましく含む。SA莢膜抗原特異的 20 IgMに加えて、本発明の抗体組成物は莢膜抗原以外の1つ以上のSA抗原に特異的に結 合するIg(IgMなどのSpa結合又は非Spa結合Igの場合もある)もまた含む場 合がある。それらその他の抗原の例としては、Spa、血清型336多糖抗原、コアグラ ーゼ、クランピング因子A、クランピング因子B、フィブロネクチン結合タンパク質、フ ィブリノゲン結合タンパク質、コラーゲン結合タンパク質、エラスチン結合タンパク質、 MHC類似タンパク質、細胞接着多糖、アルファヘモリシン、ベータヘモリシン、デルタ ヘモリシン、ガンマヘモリシン、パントン・バレンタイン・ロイコシジン、表皮剥脱毒素 A、表皮剥脱毒素B、V8プロテアーゼ、ヒアルロン酸リアーゼ、リパーゼ、スタフィロ キナーゼ、LukDEロイコシジン、エンテロトキシン、毒素ショック症候群毒素1、ポ リ−N−スクシニル ベータ−1→6グルコサミン、カタラーゼ、ベータラクタマーゼ、 30 テイコ酸、ペプチドグリカン、ペニシリン結合タンパク質、走化性阻害タンパク質、補体 阻害剤、及びSbiなどがある。 【0035】 SA莢膜抗原に特異的なモノクローナルIgM Ab 本発明は、ポリクローナルAbに加えて、1つ以上のSA莢膜抗原に特異的に結合する モノクローナルIgM Abもまた特徴付ける。SA莢膜抗原に特異的なIgMを発現す るBリンパ球はヒト及びその他の動物例えばウシにおいて天然に生じるので、mAbを得 る現在の好ましい方法は、まずそれらのBリンパ球を対象から単離し、その後それを培養 において継続的に複製されるように不死化するものである。天然に生じるSA莢膜抗原に 特異的なIgMを発現する大量のBリンパ球を欠いた対象を1つ以上の多糖SA莢膜抗原 40 によって免疫するか、又はそれらBリンパ球の数を増加させるために1つ以上の多糖SA 莢膜抗原を発現しているおよそ致死量のSAを感染させる場合がある。ヒトmAbはヒト 抗体分泌細胞(例えばヒト血漿細胞)を免疫することによって準備できる。例えば米国特 許第4,634,664号公報を参照。ウシmAbは米国特許第5,087,693号公 報に記載されているような既知の方法を適用することにとって準備され得る。 【0036】 典型的な方法においては、血液中のそれらIgMの存在を確認するために1以上(例え ば、5、10、25、50、100、1000以上)のヒト対象(例えばSAワクチンを 以前に投与されていない対象)がスクリーニングされる。求められるIgM Abを発現 しているそれらの対象がその後Bリンパ球提供者として用いられ得る。1つの実行可能な 50 (14) JP 2011-519974 A 2011.7.14 方法においては、1つ以上のSA莢膜抗原に特異的なIgMを発現しているBリンパ球を 有するヒト提供者から末梢血が得られる。その後、その血液試料から、IgM+Bリンパ 球(又はIgM+CD27+記憶Bリンパ球)を選択するために例えばセルソーティング (例えば蛍光活性化セルソーティング、FACS、又は磁気ビーズセルソーティング)に よって、それらのBリンパ球が単離される。これらの細胞はその後既知の手法に従って、 ウイルスを用いた形質転換(例えばEBVを用いた)又はヒト骨髄腫細胞などのその他の 不死化された細胞と融合させることによって、不死化され得る。その後、この集団に中の SA莢膜抗原に特異的なIgMを発現しているBリンパ球が限界希釈法(例えば、マイク ロタイタープレートのウェル中のSA莢膜抗原に特異的なIgM陽性の細胞が選択及びサ ブカルチャーされ、そして求められるクローン株が単離できるまでこの過程が繰り返され 10 る)によって単離され得る。例えばGoding,Monoclonal Antibo dies:Principles and Practice,pp.59−103,A cademic Press,1986を参照。SA莢膜抗原に対して少なくともナノモ ル又はピコモルの結合親和性を有するIgMを発現している、それらクローン細胞株が好 ましい。これらのクローン細胞株から分泌されたmAbを培地、腹水、又は血清から通常 の免疫グロブリン精製過程、例えば脱塩、イオン交換分離、及びアフィニティクロマトグ ラフィーによって精製することができる。 【0037】 1つ以上のSA莢膜抗原に特異的なIgMを発現しているBリンパ球が特定の対照にお いて相対的に高い量存在すると考えられているので、それらの特定のBリンパ球を一般的 20 なBリンパ球の集団から同定及び選択するために、検出可能な標識と結合したSA莢膜抗 原を用いることができる。例えば、第一の蛍光色素分子で標識した抗IgM Ab及び第 二の蛍光色素分子で標識したSA莢膜抗原、及び任意に第三の蛍光色素分子で標識した抗 CD27+Ab、を用いたFACSによって、SA莢膜抗原結合IgMを発現しているB リンパ球を末梢血試料から単離することができる。前述の通りに、この方法に従って単離 されたBリンパ球がその後不死化され、さらに選択される。 【0038】 不死化Bリンパ球はmAbを直接生産するためのインビトロ培養において使用され得る が、特定の例においてはmAbを生産するために異種発現系を用いることが望ましい場合 がある。例えば米国特許出願第11/754,899号公報に記載の方法を参照。例えば 30 、異種宿主細胞(CHO細胞、COS細胞、ミエローマ細胞、及び大腸菌細胞)中で発現 させるためには、1つ以上のSA莢膜抗原に特異的なIgM mAbをコードしている遺 伝子がクローニングされ、そして発現ベクター(例えばプラスミドを基にした発現ベクタ ー)に導入される場合がある。IgはH2L2構造中の重(H)及び軽(L)鎖を含むた め、それぞれをコードする遺伝子を別々に単離し、異なるベクター中で発現させる場合が ある。加えて、天然のBリンパ球における状況を模倣して主に五量体IgM生産するため に、重及び軽鎖遺伝子と共にIgM J(連結)鎖をコードする遺伝子を共発現させる場 合もある。一方いくつかの例においては、例えば主に六量体IgM(補体の活性化におい てより効果的な場合がある)を生産することが求められる場合など、J鎖を共発現しない 方が好ましい場合もある。例えば、Randall et al.,J.Biol.Ch 40 em.267:18002−18007,1992;Davis et al.,EMB O J.8:2519−2526,1998を参照。 【0039】 一般的には好ましくないが、本発明においては異なる動物種(例えば、ヒト免疫グロブ リンの定常領域に融合したマウス免疫グロブリンの様々な領域)由来の異なる部分を有す る抗原結合分子であるキメラmAb(例えば「ヒト化」mAb)が用いられる場合もある 。それらのキメラ抗体は当業者において既知の方法によって準備できる。例えば、Mor rison et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,81: 6851,1984;Neuberger et al.,Nature,312:60 4,1984;Takeda et al.,Nature,314:452,1984 50 (15) JP 2011-519974 A 2011.7.14 。同様に、当業者に知られた方法によって抗体はヒト化できる。例えば、求められる結合 特異性を有するモノクローナル抗体は、周知の方法又は米国特許第5,693,762号 公報;米国特許第5,530,101号公報;あるいは米国特許第5,585,089号 公報に記載の通りにヒト化できる。 【0040】 本明細書に記載されているmAbの結合特異性を向上又は変更するために、VH及びV Lドメインシャッフリング(Marks et al.Bio/Technology 10:779−783,1992)、超可変部及び/又は骨格残基のランダム変異導入( Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:38 09−3813,1994;Schier et al.Gene 169:147−1 10 55,1995;Yelton et al.J.Immunol.155:1994− 2004,1995;Jackson et al.,J.Immunol.154(7 ):3310−9,1995;及びHawkins et al,J.Mol.Biol .226:889−896,1992)などの既知の方法によって親和性成熟させる場合 もある。Abのアミノ酸配列変異体は、Abをコードしているヌクレオチド配列に適切な 変異を導入することによって準備され得る。加えて、特定の発現系(一定の発現系でのイ ントロン除去及び/又はコドンの最適化)におけるmAb生産を向上させるため、mAb をコードしているヌクレオチド配列への修飾(mAbのアミノ酸配列を変えることなく) が変更される場合もある。本明細書に記載のmAbをその他のタンパク質(例えば他のm Ab)又は非タンパク質分子と結合させることによって修飾する場合もある。例えば、m 20 Abをポリエチレングリコール又はカーボンナノチューブなどの水溶性の重合体と結合さ せる場合がある(例えばKam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci .USA 102:11600−11605,2005を参照)。米国特許出願第11/ 754,899号公報を参照。 【0041】 好ましくは、最小限の副作用とともに対象に投与できるSA莢膜抗原特異的IgMの高 い力価を保証するための本発明のmAb組成物の純度は、少なくとも0.5、1、2、3 、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、 35、40、45、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99、9 9.9重量パーセント以上である(どのような賦形剤も含まない)。本発明のmAb組成 30 物は、単一の型のmAb(すなわち単一のクローンBリンパ球株から生産された)のみ、 又は二種類以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上)の異な る型のmAb(例えば、5型莢膜抗原に特異的な第一mAb、8型莢膜抗原に特異的な第 二mAb、及び/又は336型莢膜抗原に特異的な第三mAbを含む組成物;又は第一、 第二、及び第三エピトープが互いに異なるエピトープである場合に5型莢膜抗原の第一エ ピトープに特異的な第一mAb、5型莢膜抗原の第二エピトープに特異的な第二mAb、 及び/又は5型莢膜抗原の第三エピトープに特異的な第三mAbを含む組成物)の混合物 を含んでいてもよい。SA莢膜抗原特異的IgM mAb加えて、本発明の抗体組成物は 、莢膜抗原以外の1つ以上のSA抗原に特異的に結合する、その他のmAb(Spa結合 又は、好ましくはIgMなどの非Spa結合Igである場合がある)もまた含んでいても 40 よい。そのようなその他の抗原の例としては、Spa、336型抗原、コアグラーゼ、ク ランピング因子A、クランピング因子B、フィブロネクチン結合タンパク質、フィブリノ ゲン結合タンパク質、コラーゲン結合タンパク質、エラスチン結合タンパク質、MHC類 似タンパク質、細胞接着多糖、アルファヘモリシン、ベータヘモリシン、デルタヘモリシ ン、ガンマヘモリシン、パントン・バレンタイン・ロイコシジン、表皮剥脱毒素A、表皮 剥脱毒素B、V8プロテアーゼ、ヒアルロン酸リアーゼ、リパーゼ、スタフィロキナーゼ 、LukDEロイコシジン、エンテロトキシン、毒素ショック症候群毒素1、ポリ−N− スクシニル ベータ−1→6グルコサミン、カタラーゼ、ベータラクタマーゼ、テイコ酸 、ペプチドグリカン、ペニシリン結合タンパク質、走化性阻害タンパク質、補体阻害剤、 及びSbiなどがある。 50 (16) JP 2011-519974 A 2011.7.14 【0042】 医薬並びに診断のための組成物及び方法 本発明のAb組成物は、投与の方法と経路及び標準的な薬務に基づいて選択された薬剤 的に許容できる担体(例えば無菌食塩水)中で動物又はヒトに投与し得る。薬剤的に許容 できる担体のリスト及び製剤処方は、この分野及びUSP/NFでの標準的なテキストで あるRemington’s Pharmaceutical Sciencesの中に 見られる。その他の物質も組成物、及び組成物を安定化及び/又は保存するためにとられ る工程、及び/又は対象に投与する工程で加える場合がある。 【0043】 例えば、Ab組成物は凍結乾燥され(Draber et al.,J.Immuno 10 l.Methods.181:37,1995;及びPCT/US90/01383参照 );ナトリウム及び塩化物イオンを含む溶液に溶解され;アルブミン、グルコース、マル トース、ショ糖、ソルビトール、ポリエチレングリコール、及びグリシンなどの1つ以上 の安定剤を含む溶液に溶解され;ろ過され(0.45及び/又は0.2ミクロンフィルタ ー);ベータ−プロピオラクトンと接触され;及び/又は殺菌剤(例えば界面活性剤、有 機溶媒、及び界面活性剤並びに有機溶媒の混合物)を含む溶液に溶解される場合がある。 加えて、本発明のSA莢膜特異的IgMは、抗生物質(米国特許第5,545,721号 公報参照)、ポリエチレングリコール、又はビオチンや蛍光色素分子あるいは放射性同位 元素などの検出可能な標識と結合した、単量体、二量体、五量体、六量体の場合がある。 【0044】 20 本発明の組成物はいずれかの適した手法によって動物又はヒトに投与され得る。典型的 には、それらの投与は非経口(例えば、静脈内、皮下、筋内、又は腹膜内への導入)であ ろう。例えば内部又は外部の標的部位へ外科的な導入によって、又は血管で到達できる部 位へカテーテルによって、組成物を標的部位(例えば膿腫)に直接投与することもできる 。投与のその他の方法、例えばリポソーム投与、又は組成物で満たした装置からの拡散が 当業者において知られている。組成物は単一の丸薬中で、頻回注射において、又は持続注 入(例えば静脈注射又は腹膜透析による)によって投与され得る。 【0045】 治療に有効な量とは、処理された動物又はヒトにおいて医学的に求められる結果を生じ ることができる量である。医療従事者において知られているように、特定の動物又はヒト 30 への投与量は、対象の大きさ、体表面面積、年齢、投与しようとする特定の組成物、性別 、投与の時間と経路、総体的な健康、及び同時に投与しようとするその他の薬剤などを含 む多くの要因に依存している。抗体の静脈投与における適切な投与量は、約0.01から 100mg/kg体重の幅になるだろうと推定される。 【0046】 本発明のAb組成物は、SA感染(例えば、メチシリン又はバンコマイシン耐性株によ って引き起こされる抗生物質耐性SA感染)の発現から対象を予防するために使用される 場合がある。SA感染の発現に対して高いリスクを有する対象の例としては、入院してい る対象、手術やカテーテル方などの侵襲的な医療処置を受けた又は受ける予定のある対象 、及び免疫抑制された対象などがある。SA感染を予防するためには単一の型のSA莢膜 40 (例えば5型又は8型)にのみ特異的なAbを用いてもよいが、どの特定のSA血清型が 対象に感染するか予測するのは難しいので、予防のためにはその特定の種に感染する最も 一般的なSAの血清型に特異的なAbを含むAb組成物を用いることが好ましい。例えば 、ヒト対象に対しては、予防的Ab組成物は少なくとも5及び8血清型(例えば血清型5 、8並びに336及びその他の臨床的に意義のある血清型に特異的なAbを含む組成物) に特異的なAbを含む場合がある。本発明のAb組成物は、現存するSA感染(例えば、 メチシリン又はバンコマイシン耐性株によって引き起こされる抗生物質耐性SA感染)を 有する対象を治療するためにも使用される場合がある。複数の型のSA莢膜に特異的なA bがSA感染の治療に使用され得るが、一般的には、まず感染を引き起こしている特定の SAの血清型を決定し、その後その血清型のみに結合するAbのみを対象に投与すること 50 (17) JP 2011-519974 A 2011.7.14 が好ましい。例えば、患者が5型SAのみに感染している場合には、5型に特異的なAb のみが投与に必要とされる。 【0047】 本明細書に記載のSA特異的Abはまた、SAを有することが疑われる試料を1つ以上 のSA莢膜抗原に特異的なAbと接触させてSAの存在を診断するためにSA−Ab反応 を検出する、SA感染を検出する装置及び方法に用いられる場合がある。IgM Abに よるSpa結合の欠如によって特異的抗原結合及び非特異的Spa結合が識別できる。従 って、Abは試料中に存在するSAの血清型を特異的に決定するために使用され得る。特 定の実施形態においては、Abは酵素、金属粒子、蛍光色素分子、色素、ナノ粒子、及び /又は放射性同位元素などの検出可能な標識と結合している。いくつかの例においては、 10 例えばELISA、RIA、又は免疫沈降解析において、抗SA抗体に特異的な二次抗体 が抗SA抗体を検出するために使用される場合がある。 【0048】 その他の実施形態 本発明はその詳細な説明と共に記載されているが、前述の記載は説明することを意図し たものであり、添付の請求項の範囲によって定義される本発明の範囲を限定しない。例え ばIgM以外の、非黄色ブドウ球菌タンパク質A(Spa)結合Igが用いられてもよい (例えば、アミノ酸位置435番目にアルギニンを有するヒトIgG3);(IgGに対 して)多量のIgM反応を優先的に引き起こすためにSA莢膜抗原を基にしたワクチンが 処方されてもよい;本発明のAbはSA以外の、Fc結合タンパク質(例えばタンパク質 G)を発現する被嚢性の細菌種の莢膜抗原に特異的な場合もある;本明細書に記載の組成 物は通常の抗生物質及び/又はその他のSA毒性因子の阻害剤(例えば、カタラーゼの阻 害剤又はその他の抗酸化剤)などの他の薬剤と併用されてもよい。その他の態様、利点、 及び変更は以下の請求項の範囲に含まれる。 【手続補正書】 【提出日】平成22年4月5日(2010.4.5) 【手続補正1】 【補正対象書類名】特許請求の範囲 【補正対象項目名】全文 【補正方法】変更 【補正の内容】 【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢 膜抗原に特異的に結合するIgMが濃縮されている抗体の混合物であり、少なくとも10 の異なる提供者から蓄えられた血漿から精製された抗体のポリクローナル混合物、及び薬 剤的に許容できる担体を含む組成物。 【請求項2】 IgMが少なくとも約5重量パーセントの抗体の混合物を含む、請求項1に記載の組成 物。 【請求項3】 IgMが少なくとも約10重量パーセントの抗体の混合物を含む、請求項2に記載の組 成物。 【請求項4】 IgMが少なくとも約25重量パーセントの抗体の混合物を含む、請求項2に記載の組 成物。 【請求項5】 IgMが少なくとも約50重量パーセントの抗体の混合物を含む、請求項2に記載の組 成物。 20 (18) JP 2011-519974 A 2011.7.14 【請求項6】 前記少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus )莢膜抗原が血清型5莢膜抗原を含む、請求項1に記載の組成物。 【請求項7】 前記少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus )莢膜抗原が血清型8莢膜抗原を含む、請求項1に記載の組成物。 【請求項8】 前記少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus )莢膜抗原が血清型5莢膜抗原及び血清型8莢膜抗原を含む請求項1に記載の組成物。 【請求項9】 前記抗体の混合物が、莢膜抗原以外の黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス)の抗原に 特異的に結合するIgMもまた濃縮されている、請求項1に記載の組成物。 【請求項10】 前記莢膜抗原以外の黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス)の抗原が、タンパク質A、 血清型336多糖抗原、コアグラーゼ、クランピング因子A、クランピング因子B、フィ ブロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、コラーゲン結合タンパク 質、エラスチン結合タンパク質、MHC類似タンパク質、細胞接着多糖、アルファヘモリ シン、ベータヘモリシン、デルタヘモリシン、ガンマヘモリシン、パントン・バレンタイ ン・ロイコシジン、表皮剥脱毒素A、表皮剥脱毒素B、V8プロテアーゼ、ヒアルロン酸 リアーゼ、リパーゼ、スタフィロキナーゼ、LukDEロイコシジン、エンテロトキシン 、毒素ショック症候群毒素1、ポリ−N−スクシニル ベータ−1→6グルコサミン、カ タラーゼ、ベータラクタマーゼ、テイコ酸、ペプチドグリカン、ペニシリン結合タンパク 質、走化性阻害タンパク質、補体阻害剤、及びSbiからなる群から選ばれる、請求項9 に記載の組成物。 【請求項11】 抗体がヒト由来である、請求項1に記載の組成物。 【請求項12】 抗体がウシ由来である、請求項1に記載の組成物。 【請求項13】 前記提供者が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対す る免疫反応を誘導する薬剤を含むワクチンを投与されていない、請求項1に記載の組成物 。 【請求項14】 少なくとも1つの前記提供者が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus a ureus)に対する免疫反応を誘導する薬剤を含むワクチンを投与された、請求項1に 記載の組成物。 【請求項15】 前記薬剤が少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aur eus)莢膜抗原を含む、請求項13又は14に記載の組成物。 【請求項16】 前記抗体の混合物が凍結乾燥されている、請求項1に記載の組成物。 【請求項17】 前記抗体の混合物が、ナトリウム及び塩化物イオンを含む溶液中に溶解されている、請 求項1に記載の組成物。 【請求項18】 前記抗体の混合物が、アルブミン、グルコース、マルトース、ショ糖、ソルビトール、 ポリエチレングリコール、及びグリシンからなる群より選ばれた少なくとも1つの安定剤 を含む溶液中に溶解されている、請求項1に記載の組成物。 【請求項19】 前記抗体の混合物が、殺菌剤を含む溶液中に溶解されている、請求項1に記載の組成物 (19) JP 2011-519974 A 2011.7.14 。 【請求項20】 前記殺菌剤が、界面活性剤、有機溶媒、及び界面活性剤並びに有機溶媒の混合物からな る群から選ばれた、請求項19に記載の組成物。 【請求項21】 少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢 膜抗原に特異的に結合するIgMが濃縮された抗体のポリクローナル混合物をプール血漿 から単離する工程;及び 単離した抗体のポリクローナル混合物を薬剤的に許容できる担体中に溶解する工程、を 含む方法。 【請求項22】 単離した抗体のポリクローナル混合物をろ過する工程をさらに含む、請求項21に記載 の方法。 【請求項23】 単離した抗体のポリクローナル混合物を界面活性剤と接触させる工程をさらに含む、請 求項21に記載の方法。 【請求項24】 単離した抗体のポリクローナル混合物を有機溶媒と接触させる工程をさらに含む、請求 項21に記載の方法。 【請求項25】 単離した抗体のポリクローナル混合物をβ−プロピオラクトンと接触させる工程をさら に含む、請求項21に記載の方法。 【請求項26】 単離した抗体のポリクローナル混合物を透析にかける工程をさらに含む、請求項21に 記載の方法。 【請求項27】 (a)少なくとも10の提供者から蓄えられた少なくとも10リットルの血漿を得る工 程; (b)前記プール血漿を少なくとも第一部分及び該第一部分に比べてIgMが濃縮され ている第二部分に分離する工程; (c)前記第二部分を少なくとも第三部分及び該第三部分に比べて少なくとも1つの黄 色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢膜抗原に特異的に結合 するIgMが濃縮されている第四部分に分離する工程; (d)前記第四部分を回収する工程;及び (e)前記第四部分に含まれるIgMを薬剤的に許容できる担体中に溶解する工程、を 含む方法。 【請求項28】 前記少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus )莢膜抗原が血清型5莢膜抗原を含む、請求項27に記載の方法。 【請求項29】 前記少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) 莢膜抗原が血清型8莢膜抗原を含む、請求項27に記載の方法。 【請求項30】 前記少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus )莢膜抗原が血清型5莢膜抗原及び血清型8莢膜抗原を含む、請求項27に記載の方法。 【請求項31】 前記第三部分と比較して、前記第四部分において少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(S taphylococcus aureus)莢膜抗原に特異的に結合するIgM及び莢 膜抗原以外の黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス)の抗原に特異的に結合するIgMが 濃縮されている、請求項27に記載の方法。 (20) JP 2011-519974 A 2011.7.14 【請求項32】 前記莢膜抗原以外の黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス)の抗原が、タンパク質A、 血清型336多糖抗原、コアグラーゼ、クランピング因子A、クランピング因子B、フィ ブロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、コラーゲン結合タンパク 質、エラスチン結合タンパク質、MHC類似タンパク質、細胞接着多糖、アルファヘモリ シン、ベータヘモリシン、デルタヘモリシン、ガンマヘモリシン、パントン・バレンタイ ン・ロイコシジン、表皮剥脱毒素A、表皮剥脱毒素B、V8プロテアーゼ、ヒアルロン酸 リアーゼ、リパーゼ、スタフィロキナーゼ、LukDEロイコシジン、エンテロトキシン 、毒素ショック症候群毒素1、ポリ−N−スクシニル ベータ−1→6グルコサミン、カ タラーゼ、ベータラクタマーゼ、テイコ酸、ペプチドグリカン、ペニシリン結合タンパク 質、走化性阻害タンパク質、補体阻害剤、及びSbiからなる群より選ばれた、請求項3 1に記載の方法。 【請求項33】 前記プール血漿を少なくとも第一部分及び第二部分に分離する工程(b)が、 (b1)脂質を除いたプール血漿を得るために、プール血漿から脂質を除去する工程; (b2)脂質を除いたプール血漿を水及び低イオン強度緩衝液からなる群より選ばれた 液体に対して透析することによって脂質を除いたプール血漿に含まれる真性グロビンを沈 殿させる工程;及び (b3)前記第二部分が含む回収した真性グロビンである沈殿した真性グロビンを回収 する工程、を含む、請求項27に記載の方法。 【請求項34】 工程(b)が前記回収した真性グロビンからIgMを精製する工程(b4)をさらに含 む、請求項33に記載の方法。 【請求項35】 前記プール血漿を少なくとも第一部分及び第二部分に分離する工程(b)が、プール血 漿を0℃未満においてエタノールと接触させる工程を含む、請求項27に記載の方法。 【請求項36】 前記第二部分がコーンフラクションIIIペーストを含む、請求項35に記載の方法。 【請求項37】 前記第二部分がキストラー・ニッチマン(Kistler−Nitschmann)沈 殿Bを含む、請求項35に記載の方法。 【請求項38】 前記第二部分を少なくとも第三部分及び第四部分に分離する工程(c)が、前記第二部 分を少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) 莢膜抗原と結合したクロマトグラフィーの担体を用いた免疫アフィニティクロマトグラフ ィーにかける工程を含む、請求項27に記載の方法。 【請求項39】 前記提供者が、少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus a ureus)莢膜抗原に特異的に結合する血漿IgMの閾値濃度を有することに基づいて 選択された、請求項27に記載の方法。 【請求項40】 前記閾値濃度が、提供者が属する種の一般的な集団の少なくとも1つの黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus)莢膜抗原に特異的に結合する血漿Ig Mの平均濃度よりも少なくとも50%高い、請求項39に記載の方法。 【請求項41】 前記閾値濃度が、少なくとも血漿1ミリリットル当たり10マイクログラムである、請 求項39に記載の方法。 【請求項42】 前記閾値濃度が、少なくとも血漿1ミリリットル当たり50マイクログラムである、請 求項39に記載の方法。 (21) JP 2011-519974 A 2011.7.14 【請求項43】 (a)プール血漿を、IgGが90%より多い抗体のポリクローナル混合物並びに少な くとも部分的にIgGが枯渇した少なくとも1つの第二画分を含む第一画分、及び第二画 分に分離する工程;及び (b)少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureu s)莢膜抗原に特異的に結合するIgMが濃縮されている単離されたIgであるIgを、 少なくとも1つの第二画分から単離する工程、を含む方法。 【請求項44】 少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢 膜抗原に特異的に結合するが黄色ブドウ球菌タンパク質Aには特異的に結合しない、ヒト 又はヒト化IgM mAb、及び薬剤的に許容できる担体を含む組成物。 【請求項45】 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢膜抗原が血清型5 莢膜抗原を含む、請求項44に記載の組成物。 【請求項46】 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢膜抗原が血清型8 莢膜抗原を含む、請求項44に記載の組成物。 【請求項47】 少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢 膜抗原に特異的に結合するが黄色ブドウ球菌タンパク質Aには特異的に結合しない、第一 のmAbが第二のmAbとは異なる、少なくとも第一及び第二のヒト由来又はヒト化Ig M mAbを含む混合物。 【請求項48】 第一のmAbが黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血清 型5莢膜抗原に特異的に結合し、及び第二のmAbが黄色ブドウ球菌(Staphylo coccus aureus)血清型8莢膜抗原に特異的に結合する、請求項47に記載 の混合物。 【請求項49】 前記混合物が莢膜抗原以外の黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス)の抗原に特異的に 結合する第三のmAbをさらに含む、請求項48に記載の混合物。 【請求項50】 莢膜抗原以外の黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス)の抗原が、タンパク質A、血清 型336多糖抗原、コアグラーゼ、クランピング因子A、クランピング因子B、フィブロ ネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、コラーゲン結合タンパク質、 エラスチン結合タンパク質、MHC類似タンパク質、細胞接着多糖、アルファヘモリシン 、ベータヘモリシン、デルタヘモリシン、ガンマヘモリシン、パントン・バレンタイン・ ロイコシジン、表皮剥脱毒素A、表皮剥脱毒素B、V8プロテアーゼ、ヒアルロン酸リア ーゼ、リパーゼ、スタフィロキナーゼ、LukDEロイコシジン、エンテロトキシン、毒 素ショック症候群毒素1、ポリ−N−スクシニル ベータ−1→6グルコサミン、カタラ ーゼ、ベータラクタマーゼ、テイコ酸、ペプチドグリカン、ペニシリン結合タンパク質、 走化性阻害タンパク質、補体阻害剤、及びSbiからなる群より選ばれた、請求項49に 記載の混合物。 【手続補正書】 【提出日】平成23年1月13日(2011.1.13) 【手続補正1】 【補正対象書類名】特許請求の範囲 【補正対象項目名】全文 【補正方法】変更 【補正の内容】 【特許請求の範囲】 (22) JP 2011-519974 A 2011.7.14 【請求項1】 少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢 膜抗原に特異的に結合するIgMが少なくとも約5重量パーセントの抗体をその組成物中 に含む、精製された抗体及び薬剤的に許容できる担体を含む組成物。 【請求項2】 前記IgMが少なくとも約50重量パーセントの抗体をその組成物中に含む、請求項1 に記載の組成物。 【請求項3】 前記IgMが黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血清型 5莢膜抗原に特異的に結合するIgM及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcu s aureus)血清型8莢膜抗原に特異的に結合するIgMを含む、請求項1に記載 の組成物。 【請求項4】 前記抗体が、莢膜抗原以外の黄色ブドウ球菌抗原に特異的に結合する免疫グロブリンを もまた含む、請求項1、2、又は3に記載の組成物。 【請求項5】 前記莢膜抗原以外の黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス)の抗原が、タンパク質A、 血清型336多糖抗原、コアグラーゼ、クランピング因子A、クランピング因子B、フィ ブロネクチン結合タンパク質、フィブリノゲン結合タンパク質、コラーゲン結合タンパク 質、エラスチン結合タンパク質、MHC類似タンパク質、細胞接着多糖、アルファヘモリ シン、ベータヘモリシン、デルタヘモリシン、ガンマヘモリシン、パントン・バレンタイ ン・ロイコシジン、表皮剥脱毒素A、表皮剥脱毒素B、V8プロテアーゼ、ヒアルロン酸 リアーゼ、リパーゼ、スタフィロキナーゼ、LukDEロイコシジン、エンテロトキシン 、毒素ショック症候群毒素1、ポリ−N−スクシニル ベータ−1→6グルコサミン、カ タラーゼ、ベータラクタマーゼ、テイコ酸、ペプチドグリカン、ペニシリン結合タンパク 質、走化性阻害タンパク質、補体阻害剤、及びSbiからなる群より選ばれた、請求項4 に記載の組成物。 【請求項6】 前記IgMが完全にヒト由来である、請求項1、2、3、4、又は5に記載の組成物。 【請求項7】 前記IgMがヒト由来及び非ヒト由来両方の免疫グロブリン部分を含む、請求項1、2 、3、4、又は5に記載の組成物。 【請求項8】 前記IgMがプール血漿から精製された、請求項1、2、3、4、5、6、又は7に記 載の組成物。 【請求項9】 前記血漿がヒト由来である、請求項8に記載の組成物。 【請求項10】 前記血漿がウシ由来である、請求項8に記載の組成物。 【請求項11】 少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢 膜抗原に特異的に結合するが黄色ブドウ球菌タンパク質Aには特異的に結合しないヒト又 はヒト化IgMモノクローナル抗体を少なくとも約5重量パーセント含む精製された抗体 、及び薬剤的に許容できる担体を含む組成物。 【請求項12】 前記IgMモノクローナル抗体が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus a ureus)血清型5莢膜抗原及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus a ureus)血清型8莢膜抗原に特異的に結合する、請求項11に記載の組成物。 【請求項13】 前記抗体が莢膜抗原ではなく黄色ブドウ球菌抗原に特異的に結合する免疫グロブリンを (23) JP 2011-519974 A 2011.7.14 もまた含む、請求項11又は12に記載の組成物。 【請求項14】 プール血漿から、少なくとも1つの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢膜抗原に特異的に結合するIgMが濃縮された、抗体のポリクローナル 混合物を単離する工程;及び 単離された抗体のポリクローナル混合物を薬剤的に許容できる担体中に溶解する工程、 を含む方法。 【請求項15】 (a)少なくとも10の提供者から蓄えられた少なくとも10リットルの血漿を得る工 程; (b)前記プール血漿を少なくとも第一部分及び該第一部分と比べてIgMが濃縮され ている第二部分に分離する工程; (c)前記第二部分を少なくとも第三部分及び該第三部分に比べて少なくとも一つの黄 色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)莢膜抗原に特異的に結合 するIgMが濃縮されている第四部分に分離する工程; (d)前記第四部分を回収する工程;及び (e)前記第四部分に含まれたIgMを薬剤的に許容できる担体中に溶解する工程、を 含む方法。 (24) JP 2011-519974 A 2011.7.14 【国際調査報告】 10 20 30 40 (25) JP 2011-519974 A 2011.7.14 10 20 30 40 (26) JP 2011-519974 A 2011.7.14 10 20 30 40 (27) JP 2011-519974 A 2011.7.14 10 20 30 40 (28) JP 2011-519974 A 2011.7.14 フロントページの続き (51)Int.Cl. FI テーマコード(参考) A61K 47/34 (2006.01) A61K 47/34 A61P 31/04 (2006.01) A61P 31/04 A61K 45/00 (2006.01) A61K 45/00 (81)指定国 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM), EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,S K,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW, 10 BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,K E,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL ,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW (72)発明者 キム,スタンレイ,エイ. アメリカ合衆国 フロリダ州 33414,ウェリントン,ヘッドウォーターサークル 1269 7 Fターム(参考) 4C076 AA29 CC31 DD38Q DD51Q DD67Q EE23Q EE41Q 4C084 AA19 MA02 NA14 ZB352 ZC752 4C085 AA13 BB37 CC22 DD39 DD41 DD88 EE01 EE03 20