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講義概要 - マテリアルズサイエンスイノベーション

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講義概要 - マテリアルズサイエンスイノベーション
各種マテリアルのリサイクル技術概論
マテリアルズサイエンスイノベーション集中講義
2016年7月8日
物質系専攻
松浦 宏行
1
1:リサイクルの意義・必要性
2:日本のマテリアルバランス・エネルギーバランス
2-1:概況
2-2:主要元素
3:リサイクル事例
3-1:鉄鋼スクラップ
発生量・マテリアルフロー・リサイクル技術
3-2:金属製錬スラグ・ごみ処理溶融スラグ
発生量・リサイクル技術(土木建築分野・農業分野・海洋分野)
3-3:プラスチック
発生量・マテリアルフロー・リサイクル技術(鉄鋼での利用・その他)
3-4:ダスト、スラッジ
発生量・亜鉛/鉛のマテリアルフロー・ダストリサイクル技術
4:まとめ-持続的社会の構築には
2
大量消費社会における物質循環
膨大なエネルギー消費
原料
エネルギー
エネルギー
製造
プロセス
加工
プロセス
素材
製品
社会
(使用・消費)
膨大な
資源消費
リサイクル
エネルギー
廃棄
大きな
地球環境負荷
3
理想的な循環型社会
エネルギー消費量削減
原料
エネルギー
エネルギー
製造
プロセス
加工
プロセス
素材
資源
消費量
削減
製品
社会
(使用・消費)
廃棄
再生プロセス
地球環境
負荷低減
エネルギー
4
持続的社会構築のための3R
原料
Reduce
Reduce
エネルギー
エネルギー
製造
プロセス
加工
プロセス
素材
Reduce
Recycle
Reuse
再生プロセス
製品
社会
(使用・消費)
廃棄
Reduce
エネルギー
5
リサイクル手法の分類
Reduce:マテリアルやエネルギー原料の使用量削減:利用効率の向上
Reuse:製品や部品を再利用する:必要エネルギーは少ない
Recycle:不要になった製品を状態に応じて再利用
マテリアルリサイクル
素材原料として再利用、素材の機能・特性を活用
ケミカルリサイクル
素材を転換して利用、素材の成分を活用
サーマルリサイクル
素材のエクセルギーを利用、素材の内部エネルギーの活用
近年は上記に加えてRefuse(不要なものを持ち込まない)という考えもある
⇒ある境界を設定した系内での捉え方
⇒社会全体では直接的な効果が無い(ただし淘汰作用はある)
6
地球資源
•地下
鉱物
原料
無機資源 ほぼ再生産不可
有機資源 ほぼ再生産不可
エネルギー
有機資源(化石燃料) ほぼ再生産不可
•地表
水資源
•大気
酸素、窒素、炭酸ガス
太陽光、風力、水力
植物・動物由来
⇒再生可能
7
日本のマテリアルバランス
単位:100万トン
<出典>産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター「リサイクルデータブック2015」
8
日本の廃棄物発生量
<出典>産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター「リサイクルデータブック2015」
9
日本の主要金属のマテリアルバランス
アルミニウム(2014)
<出典>石油天然ガス・金属鉱物資源機構 「鉱物資源マテリアルフロー2015」
10
日本のエネルギーバランス(2014年度)
単位:1015 J
<出典>資源エネルギー庁 エネルギー白書2016
11
鉄鋼製造プロセスを中心とするリサイクル事例
鉄鋼生産概況
Crude steel production (Mt)
900
Japan
China
Korea
England
Germany
USA
CIS
800
700
600
500
400
300
200
100
0
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
2015
主要国の鉄鋼生産量
12
鉄鋼製造プロセスの特徴
環境問題
環境負荷の大きな低減
・大量の資源・エネルギーの消費
・大量の副産物(CO2を含む)と熱の生成
製鉄所の利点
スケールメリット
・大規模プロセス
・高温プロセス
・廃棄物の無害化・大量処理が可能(高温プロセス)
他産業とのマテリアル・エネルギー連携
環境コンビナートの構築
各種廃棄物の無害化・利材化プロセス
13
鉄鋼のマテリアルフロー
原材料
スクラップ
(鉄鉱石 etc.)
非鉄
製錬
鉄鋼製錬
(高炉-転炉法)
鉄鋼溶解
(電気炉法)
鋳
物
国内蓄積
輸
入
自動車・機械
土木
分離
建築
スクラップ
輸出
輸出
14
スクラップ需給バランス
供 給
消 費
転炉用
高炉
自家発生
電炉
鋳物
加工スクラップ
電炉用
自動車
市中スクラップ
機械
建設
老廃スクラップ
鋳物用・他
他
輸入 416
輸出
<出典>日本鉄源協会
15
トランプエレメントに対する対処方法
• トランプエレメントを除去する
⇒精錬・高純度化プロセスの開発
• トランプエレメント濃度を下げる
⇒“汚染されていない”鉄鋼で希釈
• トランプエレメントの入ったものは使わない
⇒“汚染された”鉄鋼を廃棄
• トランプエレメントを無害化する
⇒鉄鋼材料に悪影響を与えない材料設計
16
スラグ(Slag)
金属の製錬反応で、残滓として発生する
主として酸化物から成る
製錬過程では高温の液体
鉄鋼製錬スラグ 高炉スラグ、製鋼スラグ、電気炉スラグ
非鉄製錬スラグ 銅、鉛、亜鉛スラグなど
(ごみ処理溶融スラグ ごみ焼却灰の溶融処理物、ごみ溶融灰)
鉄鉱石、コークス中の不純物成分の吸収・分離
⇒液体であること、流動性が重要
精錬剤として不純物の除去を促進
⇒溶融と精錬反応を促進
17
高炉スラグ
銑鉄を製造する高炉で溶融された鉄鉱石の鉄以外の
成分は、副原料の石灰石やコークス中の灰分と一緒に
高炉スラグとなり分離回収
銑鉄(Fe-4~5mass%C)1トン当たり約290 kg生成
約1,500℃の溶融状態から冷却
18
高炉スラグ
徐冷スラグ
溶融スラグを冷却ヤードに流し込み、自然放冷と適度
の散水によって冷却し、結晶質の岩石状のスラグとなる
道路用・ コンクリート用粗骨材などに利用
水砕スラグ
溶融スラグに加圧水を噴射するなどして、急激に冷却し
た ガラス質(非晶質)の粒状スラグ
セメント用、土工用、コンクリート用細骨材として利用
19
製鋼スラグ
製鋼プロセスの転炉、電気炉で生成するスラグ
(転炉系スラグ・電気炉系スラグ)
粗鋼1トン当たり約110 kg生成
高炉徐冷スラグとほぼ同じ方法で加工、各種用途に利用
20
高炉スラグの用途別使用量(2013年度実績)
Soil improvement Others
2.3%
0.3 %
Civil eng.
1.8%
Concrete
9.2%
Road
14.3%
Total
25.871 Mt
Cement
72%
<出典>鐵鋼スラグ協会
21
転炉スラグの用途別使用量(2013年度実績)
Landfill
Others 0.3%
Cement
4.9%
4.1%
Soil improvement
6.3%
Reuse
18.9%
Total
12.857 Mt
Civil eng.
33.0%
Road
32.5%
<出典>鐵鋼スラグ協会
22
電気炉スラグの用途別使用量(2013年度実績)
Others
7.5%
Reuse
0.9%
Soil improvement
7.3%
Resources
2.5%
Landfill
3.8%
Total
2.840 Mt
Road
35.4%
Civil eng.
42.5%
<出典>鐵鋼スラグ協会
23
スラグのリサイクル利用技術
セメント材料
高炉スラグの組成がセメント組成と同じ
路盤材料
岩石、砕石の代替材料
肥料
りん酸、酸化鉄、石灰を含む
海洋環境修復材
酸化鉄からの二価鉄イオンの溶出
24
海域環境修復材料としての製鋼スラグ利用技術開発
製鋼スラグの有効利用法として、製鋼スラグ-土壌や
製鋼スラグ-腐植物質の混合材料による、海洋植物の
生育促進用材料、新たな海域環境修復材料の創成
鉄イオンの存在の効果が確認されている
Fe2+ イオンの溶出メカニズムと有機酸との反応
海洋藻類の成長促進
CO2固定化への効果
製鋼スラグ及びその混合材による、海洋域造成材、
海洋植物成長促進のための材料としての利用、海洋
環境の修復・保持材としての利用効果の機構を
明らかにする必要性
25
鉄鋼プロセスでの廃プラスチックリサイクル技術
コークス炉での処理(コークス炉化学原料化法)
Plastics
Raw material Recycling
Waste Plastics
Chemical treatment
Coal
Pretreatmen
Oil
Gas purification
Classification
gas
Coke Oven
Coke
Power plant
Blast Furnace
Pig Iron
Steel Product
26
コークス炉化学原料化法
62
86
CSR (%)
150
Drum index, DI15 (-)
88
84
60
58
82
80
石炭のみ
1%プラスチック添加
56
石炭のみ
1%プラスチック添加
プラスチック添加によるコークス品質への影響は極めて小さい
<出典>Kato et al.: J. Mater. Cycles Waste Manag., (2003), p.98
27
高炉原料化法
 塩化ビニル以外のプラスチックの吹き込み開始: 1996年
 吹き込み量 88,000 t/y
 発生する水素ガス利用によるCO2発生量の減少
 塩化ビニルからの塩素の除去プロセス
28
電気炉ダスト処理プロセス
ウェルツキルン炉(Zn回収)Dust, Coke, Coal
- 70% of Zn recovery
- Reduction & Evaporation
- Recovered zinc
Crude zinc oxide
Low quality
Cl=8%
Zn=20%
ZnO(s)+CO(g)=Zn(g)+CO2(g)
1373-1573K
Burner
Rotary Kiln
Collector
Rotary Cooler
Zn(g)+air=ZnO(s)
Resource of ISP process
- Pretreatment for Cl removal
Weak reduction atmosphere
- Difficulty of Zn recovery
from ZnFe2O4
Crude ZnO
Crude ZnO
App. 20%
of dust
App. 20% of dust
Zn=50%
Zn=50%
Pb=6%
Pb=6%
Cl=8%
Cl=8%
Clinker
App. 70% of dust
T.Fe=50%
Off Gas
29
電気炉ダスト処理プロセス
MF炉(Zn、貴金属回収)
Dust, Coal, Silica sand, etc
Steam
Power Generation
Bag
Cooler Filter
MF
Boiler
Dryer
Conveyor
Slag Metal
Hot
Blast
Tuyere
Smelting zone(=1773K)
Detail of MF
Crude
CrudeZnO
ZnO
Zn=50%
Zn=50%
- Reduction & Evaporation
- Treatment with Cu or Ag
refining residue
- Strong reduction atmosphere
- Residues is exhausted as slag
- High energy consumption
30
電気炉ダスト処理プロセス
Z‐STAR炉(Zn回収)
EAF dust
Dehydrated
sludge
(Raw material for
Zn smelting)
31
エコマテリアルとは
•資源は使える限り何度でも再利用
•環境負荷を最小
•資源の有効利用
=
Eco-material
Environmental Conscious Material
環境を意識したマテリアル
32
世界の年間生産量
単位:トン
<出典>物質・材料研究機構 元素戦略アウトルック「材料と全面代替戦略」(2007)
33
関与物質総量(エコロジカルリュックサック)
単位:倍
<出典>物質・材料研究機構 元素戦略アウトルック「材料と全面代替戦略」(2007)
34
年間総関与物質総量
単位:100万トン
<出典>物質・材料研究機構 元素戦略アウトルック「材料と全面代替戦略」(2007)
35
資源・エネルギーの消費
直接見えない地球規模の環境負荷は著しい
生産ー廃棄のマテリアル設計
↓↓↓
から
↓↓↓
リサイクル容易なマテリアル設計
エコマテリアルへの転換
36
材料のエコマテリアル化
37
リサイカブルマテリアルの設計・考え方
有害元素を除去したマテリアル
有害元素を希釈・無害化したマテリアル
低級マテリアルとしての利用、または、廃棄
そもそも有害元素を含まないマテリアル設計
分離可能元素によるマテリアル設計・技術開発
有害元素を含むマテリアルの高機能化
フロンティア性・アメニティー性・環境調和性の追求
上記観点での材料設計の重要性
38
鉄鋼材料の場合~更なるリサイクルの推進~
•鉄鋼スクラップのリサイクル利用は必須
•除去困難な不純物元素含有量の増加は不可避?
•不純物と捉えるか、それとも合金元素と捉えるか
•プロセス開発と材料設計の両者の立場
•環境負荷の少ない鉄鋼材料の製造プロセス
39
レポート課題
今後、日本が必須の金属資源を確保しつつ、
環境に調和した資源循環型社会を構築するためには
どのような施策・技術・社会が必要か。
日本国内のみならず、世界諸国との間の資源・製品の
流れも考慮しつつ、優れた技術システム(社会システム)や
必要であろう技術開発要素をA4用紙2枚程度で提案せよ。
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