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第9講 労働統計
経済統計a:第九回 担当教員 黒田敏史 2009年6月22日 経済統計a:第9回 今週の内容 • 労働統計 – – – – 労働力統計 失業率の実態 賃金統計 労働時間統計 2009年6月22日 経済統計a:第9回 今週の内容 • 労働統計 – – – – 労働力統計 失業率の実態 賃金統計 労働時間統計 2009年6月22日 経済統計a:第9回 労働力統計 • 労調は労働力統計の要 – 労働力調査(労調):労働市場における需給状況を把 握 • 基礎調査票:現状把握のための設問 • 特定調査票:失業状態の内容の詳細把握 – 国勢調査・就業構造基本調査 • 労調に比べて規模が大きい、副業を調べている – 職業安定業務統計 • 職業安定所の書類から作成、有効求人倍率を作成 • 職安を経由しない就職が6割ある – 雇用動向調査 • 労働者の流動状況を把握 • 新卒に関しては文科省の就職内定状況調査がある 2009年6月22日 経済統計a:第9回 労働力統計 表7.1 主要な労働力統計の概要(改訂) 労働力調査 調査期間 総務省統計局 統計の種類 指定統計 就業構造基本調査 総務省統計局 指定統計 西暦の末尾が2と7の年 の毎月 職業安定業務統計 雇用動向調査 厚生労働省職業安定局 厚生労働省政策調査部 業務統計 承認統計 調査周期 毎月 調査実施日 毎月末 同左 - 集計対象期間 毎月末の1週間 就業関連:「普段」の状 態 一ヶ月 調査客体 15歳以上の全世帯員 15歳以上の全世帯員 求人事業所、求職者 調査客対数 約5171万世帯 同左 未公表 調査数 約1万世帯 約45万世帯 未公表 抽出率 0.02% 2009年6月22日 毎月 0.87% - 経済統計a:第9回 半年ごと 第1回:当年7月 第2回:翌年1~2月 第1回:当年1~6月 第2回:当年7~12月 常用労働者五人以上の 事業所への入職・同事 業所からの離職者など 入職者数:約673万人 離職者数:約685万人 入職者数:約8.6万人 離職者数:約10.7万人 1.40% 労働力統計 • 就業・不就業状態の把握方法 – アクチュアル方式(労働力方式):労調で採用 • ILOに準拠 • 特定の1週間において就業しているか否か – ユージュアル方式(有職者方式):就調で採用 • 戦前から日本で採用 • 普段の状態として就業しているか否かを判断 – そのうち、仕事が主なものと仕事が従なものを区別 – 分析の殆どがアクチュアル方式 – 2002年以降労調に求職状況調査項目が増加し たため、就調の役割は低下 2009年6月22日 経済統計a:第9回 労働力統計 • 就業・不就業状態の把握方法 – アクチュアル方式(労働力方式) • 15歳以上人口 – 労働意欲のある労働力人口 » 就業者 » 従業者:調査を行った週に仕事を1時間以上したもの » 休業者:仕事を有しているが、調査期間中に仕事をしな かったもの » 完全失業者(a)職が無く、(b)就業可能、(c)求職活動をして いるもの – 労働意欲のない非労働力人口(火事、通学、その他) 2009年6月22日 経済統計a:第9回 労働力統計 • 主要指標 – 労働力率 – 完全失業率 – 雇用失業率 労働力人口 × 100 15歳以上人口 完全失業者数 完全失業率(%)= × 100 労働力人口 完全失業者数 雇用失業率(%)= × 100 雇用者数+完全失業者数 労働力率(%)= • 自営業の影響を除くために利用 – 有業率 – 有効求人倍率 有業者数 × 100 15歳以上人口 有効求人数 有効求人倍率(倍)= ×100 有効求職者数 有業率(%)= • 速報性が高く、景気指標として利用されることが多い – 新規求人倍率 欠員数 欠員率(%)= – 欠員率 欠員数+雇用者数 新規求人数 ×100 新規求職者数 × 100 新規求人倍率(倍)= 欠員数= 2009年6月22日 翌月への繰り越し求人数 + 当月の有効求人数 − 当月の求職件数 2 経済統計a:第9回 今週の内容 • 労働統計 – – – – 労働力統計 失業率の実態 賃金統計 労働時間統計 2009年6月22日 経済統計a:第9回 失業率の実態 • 失業定義の問題点 – 労調の失業の用件 • (a)職がない • (b)就業可能であること • (c)求職活動をしている者 – (a)の問題点 (a) • 1時間でも働けば有職者となり、それだけでは生活が出来な い人も有職者となる(あくまでも有職なだけで、所得水準につ いては何も語らない) • テキストには生活費を稼ぐ必要性の乏しい人が完全失業者 に分類とされているが、必ず完全失業者になっているわけで はなく、こうした人の内上記3条件を満たす人も完全失業者に 含まれるという意味 2009年6月22日 経済統計a:第9回 失業率の実態 • 失業定義の問題点 – (b)の問題点 • 就業の意思がないにも関わらず、失業保険を受給して いる人が失業者になる事がある – (c)の問題点 • 求職活動を(1)人に仕事の依頼をした場合、(2)公共職 業安定所に申し込んだ場合、(3)新聞の求人広告に応 募した場合、(4)過去に行った求職活動の結果を待って いる場合、(5)事業を始めるための資金などを調達して いる場合、としており、求人雑誌の利用者や求職活動の 成果の見込みの低さから求職活動を止めてしまった人 が非労働力人口に分類される 2009年6月22日 経済統計a:第9回 失業率の実態 • 失業率は実態より低く現れるか? – 1980年代に専業主婦の存在等によって完全失業 率が低めに出るのではないかと言う主張があった が、欧米流に定義をしてもさほど変わらないことが 判明 • 調整失業率:米国定義に変えた場合の失業率 • 標準化失業率:OECDによる国際比較可能な失業率 – 詳細は、総務省「労働力調査に関するQ&A」を参 照のこと http://www.stat.go.jp/data/roudou/qa-1.htm 2009年6月22日 経済統計a:第9回 失業率の実態 • UV分析と均衡失業率 – UV分析 • 縦軸に雇用失業率u(供給)、横軸に欠員率v(需要)を プロット • 原点に対して右下がりの曲線を描く – 構造的失業(ミスマッチ)によって上下にシフト • 45度線のより上方にある方がミスマッチが大きい • u-vを需要不足失業率とも呼ぶ • 1990年代の欠員率の改善無しに雇用失業率が上昇し たのは、ミスマッチの水準が拡大したから? 2009年6月22日 経済統計a:第9回 失業率の実態 • 失業状況の深刻度 – 自発的失業と非自発的失業 • 完全失業者には自発的失業と非自発的失業があり、景気悪 化に伴う非自発的失業に注目する必要がある – 失業継続期間 • 失業してから失業が終了するまでの平均月数 – 失業頻度 • 1ヶ月の失業発生数を労働力人口で割った数字 – その他、追加就業や転職を希望する者の数なども重 要 – 『労働力調査年報』『労働経済白書』など参照(翌週) 2009年6月22日 経済統計a:第9回 今週の内容 • 労働統計 – – – – 労働力統計 失業率の実態 賃金統計 労働時間統計 2009年6月22日 経済統計a:第9回 賃金統計 • 賃金水準と賃金制度の統計 – 毎月勤労統計調査(毎勤) • 事業所規模別の賃金、雇用、労働時間を調査 • 賃金の推移を見るのに適している – 賃金構造基本統計調査(賃講、賃金センサス) • 事業所、年齢、学歴、規模、産業、地域別の賃金を調査 • 賃金の構造を見るのに適している • 五人以上の事業所に限定されている – 就労条件総合調査(2000年にテキストの「賃金労働時 間制度など総合調査」から改訂) • 30人以上の企業を対象に、賃金制度を決定する各種制度を 把握 2009年6月22日 経済統計a:第9回 賃金統計 表7.2 主要な賃金統計の概要(改訂) 毎月勤労統計調査 全国調査 地方調査 特別調査 調査期間 厚生労働省情報部 同左 同左 厚生労働省統計情報部 統計の種類 調査周期 調査実施日 指定統計(第7号) 毎月 毎月末 同左 毎月 毎月末 同左 毎年 当年7月末日 指定統計(第94号) 毎年 毎年7月 1ヶ月 決まって支給する給 与:当年7月 特別に支払われた給 与:前年8月~当年7月 決まって支給する給与:当 年6月 特別に支払われた給与: 前年1月~当年12月 同左 同左 同左 集計対象期間 調査業種 調査客体 調査客対数 調査数 抽出率 2009年6月22日 1ヶ月 農林水産用、公務、そ の他を除く全産業 常用労働者5人以上の 事業所 約180万事業所 約3万3千 1.8% 賃金構造基本統計調査 常用労働者1~4人の 事業所 同左を県別集計 - - 同左を県別集計 約2万5千事業所 - 1.8% - - 同左 経済統計a:第9回 賃金統計 • 「常用労働者」という労働者 – 常用労働者とは、次の(1)~(3)のいずれかに該当 する者 • (1)期間を定めずに雇われている労働者 • (2)1か月を超える期間を定めて雇われている労働者 • (3)1か月以内の期間を定めて雇われている労働者又 は日々雇われている労働者で、11月及び12月の各月に それぞれ18日以上雇用された者 – 上記定義に含まれない派遣労働者やアルバイトが 存在するため、生産活動に関与した労働者数と調 査上の常用労働者が異なる 2009年6月22日 経済統計a:第9回 賃金統計 • 一般労働者とパートタイム労働者 – 就業形態の多様化が進んでいるが、統計は一般・ パートタイム別まで 正規雇用 パート・アルバイ ト 派遣労働者請負 労働者 雇用 テレワーク NPO 非弾力的 自営業者 家族従業者 非雇用 2009年6月22日 経済統計a:第9回 在宅就業・SOHO ワーカーズ・コレ クティブ 弾力的 賃金統計 • 給与分類 – 企業の賃金の大まかな区分 • 基本給:職務の遂行状況に関わらず、退職金の算定基準となる • 諸手当:職務、生活費用、労働意欲、勤務時間などに関連した様々な 手当 • 現物給付(定期券、食券等)は含まれないため、経済学上の賃金とは 異なる – 現金給与総額(毎月勤労統計調査):所得税・社会保険料など控 除前の現金給与総額 • 決まって支給する給与 – 所定内給与:金額が固定的な部分 – 所定外給与:時間外手当、休日出勤手当などの部分 • 特別に支払われた給与:ボーナスなど – 現金給与総額(賃金構造基本統計調査) :所得税・社会保険料 など控除前の現金給与総額 • 決まって支給する現金給与額 – 所定内給与額:金額が固定的な部分 – 超過労働給与額:時間外手当、休日出勤手当などの部分 • 年間賞与その他特別給与額 2009年6月22日 経済統計a:第9回 賃金統計 • 賃金指数の作成 – 毎勤では現金給与総額指数、決まって支給する給 与指数、所定内給与指数の3つの賃金指数が公 表されている – 職種構成を考慮して、職種別人数で加重して総合 指数を作成(w:職種別賃金、n:職種別人数、i:職種 、t:比較時点,t=0:基準時点) – 名目賃金指数 = Σwit nit ÷ Σwi 0 ni 0 ×100 Σnit Σni 0 – 実質賃金指数 = 2009年6月22日 名目賃金指数 ×100 実質賃金指数 経済統計a:第9回 今週の内容 • 労働統計 – – – – 労働力統計 失業率の実態 賃金統計 労働時間統計 2009年6月22日 経済統計a:第9回 労働時間統計 • 毎勤を中心とした労働時間統計 – 毎勤の月間労働時間数 • 総実労働時間数:所定内+所定外 • 所定内労働時間数:事業所の就業規則で定められた正規の始業 時刻と終業時刻との間の労働時間数 • 所定外労働時間数:早出・残業、臨時の呼び出し、休日出勤などの 労働時間数 – 好不況を反映するため、景気動向指数の一致系列に採用 – 労働時間指数の作成方法 • 総実労働時間指数、所定内労働時間指数、所定外労働時間指数 を作成、指数の作成は賃金指数の賃金項目を労働時間に置き換 えたもの – 大きく異なる労働時間 • 労調は労働者が回答するためサービス残業が記載されるが、毎勤 はそれが含まれない • 見なし労働・フレックスタイムの広がりは労働時間の補足を困難に 2009年6月22日 経済統計a:第9回 次週の内容 • 直近の労働統計 – 労働経済白書等を用いて直近の各種データを紹 介 2009年6月22日 経済統計a:第9回