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九州工業大学学術機関リポジトリ
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多次元解析による長寿因子の抽出
前田, 幹夫
1984-03-01T00:00:00Z
http://hdl.handle.net/10228/4295
Rights
Kyushu Institute of Technology Academic Repository
九州工業大学研究報告(工学)No.48 1984年3月 23
多次元解析による長寿因子の抽出
(昭和58年11月24日 原稿受付)
情報工学教室前田幹夫
ASampling of The Long・life Factors with
AMulti−dimensional Analysis.
by Mikio MAEDA
Abstract
This paper deals with a sampling of the long−1ife factors. A multi−dimensional analysis is used to
6nd the long−1ife factors and its approach is shown as follow.
1)Making a long・life questionaire witb respect to old people who Iive in Kitakyushu・city, and
whose age is greater than seventy five old or so equaL
2)Amulti・dimensional analysis is performed basis on the data from long・1ife questionaire&
3)Asampling of the long−1ife factors was tried by results of analysis.
In this paper, the long−1ife factors were not clarified, but the pre−factors which were thought were
proven・
とは限らないという点と,比較の対照群(死因が直接老
1・まえがき 化に関係のない死亡者)のデータがないという点から,
この世に生を享けた者にとっては,老化一死とは一度 この論文での長寿因子は,老化のみというのではなく,
は経験しなければならないものと思われます。病死する 広い意味での長生きするための因子であるといえる。但
人もいれば,静かに老衰死する人もいます。また,自ら し,アンケート対象者は老人である為,目の不自由な人,
命をたつ人,不慮の事故により死亡する人もいます。こ 寝たきりの人がいると思われるので,アンケート調査は
の中で,病死,事故死,自殺は医学の発達や社会環境, 個別訪問によって行う。
食生活の改善等によって減少させることができるでしょ 参考までに現在の超高齢者の死因のを述べますと,
う。しかし,老化の過程だけは避けられそうにありませ 1位悪性新生物(ガン),2位脳血管疾患,3位以下,
ん。そうかといって,ただ何もしないで,「老化は当然 心疾患,…,老衰となっている。また,本論文のように,
の事である。」という考えで生活するのも人間として虚 長寿因子を社会生活のレベルで描出しようという研究は
しいものです。もし,老化の進行に影響を与える因子, まだ数少ないようである。なお,本論文で使用するデー
つまり長寿因子がわかれば,この因子をコントロールす タは昭和54年のアンケート調査のデータであり,当時の
ることによって少しでも長生きできるように,我々は努 死因順序は脳血管疾患,悪性新生物,心疾患…の順で
力するでしょう。しかし,現時点において,はっきりし あった。
た因子はまだ発見されていません。
本論文では,北九州市在住の75才以上の老人のアン 2・サンプル調査5}
ケート調査で得たデータをもとに,単純統計1),数量化 2.1・サンプル調査の目的と方法
理論2)因子分析法3)(多変量解析法)で解析することに 老人の幼年期からの生活環境や既往症を調査すること
よって,細胞レベルではなく,社会生活のレベルで長 によって,長寿並びに疾病に及ぼす因子を見い出し,ひ
寿因子を抽出しようとするものである。被アンケート者 いては,病気にかからず,長寿のための指針を探ること
(老人)はすべて生存者であって,将来,皆老衰死する が,このサンプル調査の目的である。方法としては,小
24 前 田 幹 夫
倉北区,南区在住の75才以上の老人を対象母集団として, 表一1 サンプル調査の内容
2段サンプリングを行う。なぜ,2段サンプリングを行
調査項目
調 査 目 的
うかというと,単純ランダムサンプリングではサンプル
性 別
性と老化の関係
職 業
職業とストレス,老化の関係
運 動
運動量と体力,老化の関係
趣 味
趣味と老化の関係
嗜 好
茶,コーヒー酒,タバコの量や
J始年令と病気の関係
ングすることである。このとき,抽出された人が第2次
食 事
食物の内容と体力,老化の関係
のサンプリング単位となり,合計m×n人が抽出され
満 足 度
生活状態の満足度とストレスの
親族の状況
親族の遺伝的影響
病 気
病気と長寿の関係
楽 し み
ストレスと老化の関係
が広い地域にちらばってしまい,訪問調査のために多く
の労力と費用を必要とするからである。
2段サンプリングとは,対象集団から直接サンプリン
グするのでなく,まず,小倉北,南区の各地域を第一次
のサンプリング単位として,これらの地域を単純ランダ
ムにm単位サンプリングし,さらにサンプリングされ
た各々の地域からn人ずつを単純ランダムにサンプリ
る。実際のサンプル調査では,小倉北,南区を2500単位
として,25単位を抽出し,さらに各単位からそれぞれ4
人ずつ抽出して,総計200人とした。つまり対象集団約
5000人から200人を抽出したことになる。この調査は対
象が老人であるため訪問調査であり,体の不自由な人に
は個別面接調査を行う。アンケート調査期間は昭和54年
若者に対する
C 持
ヨ係
ストレスと老化の関係
9月から昭和55年1月までである。
2.2.サンプル調査の内容 である。酒も表より飲まない人が多い事がわかる。次に,
サンプル調査の目的が,幼年期から現在までの生活環 食事の面からみると,主食の第一番目には,穀物,漁,
境と既往症によって長寿因子を探ることであるので,社 野菜,肉,2番目には,野菜,漁,漬物,3番目には肉
会生活,食生活に関する項目が調査内容の大部分をしめ 以外の物が多い。全体的に食事をみると,穀物,野菜中
ている。その項目と趣旨を表一1に示す。実際には表一1 心で,それに,漁,肉,漬物の順に食べていたことがわ
の項目以外の事(親族の生,死,死亡者の病名)も調査 かる。病気の面からみると,若い頃,ほとんどの人が病
したわけであるが,対象が老人であるため,‘‘昔の事だ 気に罹った事がなく,現在においても,無病の人が多く,
から覚えていない”,“死因はわからない”という人が大 患っている病気といえば,高血圧,必臓病,神経痛,
半をしめ,データ不足の為,この表には示さなかった。 リューマチで,これらの病気は年令と体の衰えからくる
2・3.サンプル調査の統計結果 老人特有のもので,老人病ともいわれ,一般的な病気と
Z2の表一1に示した内容を老人200人を対象にして いうものではないと思われる。配偶者の生死について調
調査し,比較的データの整っている105名(男性57名, べてみると,無回答者が16名と多いので,はっきりした
女性48名)の統計結果を表一2に示す。この105名を職業 事はわからないが,生存していると答えた41名を男女別
別にみると,家事,専門技能職,農林,漁業が大半をし にすると,33名が男性,8名が女性となり,男性の多く
め,家事の29名は女性と考えられる。その下は若い頃の は,配偶者が生存しており,女性のほとんどの人の配偶
運動量についての結果であるが,スポーツをかなりして 者は死亡していることがわかった。生活状態は,満足し
いた人が多いことがわかる。趣味の面からは,若い頃も, ている人が大半であり,やってみたい事については‘‘な
今も趣味のない人が大半である。嗜好品からみると,茶 い”と答えた人が多く,この人たちの何人かは,いつ死
では,あまり飲まない人が多く,特に飲まないと答えた んでもよいと答えている。
人が45名いる。しかし,食事時には,日本人であれば, 簡単に,項目別に結果を述べたが,全体的にまとめる
1,2杯は飲むはずである。たぶん食事時以外を考えて と,穀物,野菜,漁を主食とし,嗜好品が少なく,若い
答えたのではないかと思う。タバコの喫煙量では圧倒的 頃スポーツをして,無病で元気であった人が現在も元気
に吸わない人が多く,コーヒでも飲まない人がほとんど で,生活に満足している人が多い。また,男性と女性の
多次元解析による長寿因子の描出 25
表一2 サンプル調査の結果
項目
カ テ ゴ リ ー
人数(人)
専 問 的 職 業
25
項目
人数(人)
無 回 答
主食
ヌ 理 的 職 業
磨@ 務 職
フ 売 業
カ テ ゴ リ ー
漁
@ 菜
秩@ 類
C 草 類
_ 林, 漁 業
フ鉱,採石業
^ 輸 業
Z 能 工
ロ 案 業
無 回 答
準主食
漁
@ 菜
ニ 事
現在の運動
サ の 他
ミ 物
無 回 答
堰@ン ニ ン グ
秩@ 類
C 草 類
サ の 他
?Z等の運動
無 病
46
a@ 血 圧
Q0
S 臓 病
怐@ 尿 病
P2
U 歩 程 度
ハ に な し
サ の 他
現在の病気■琶
無 回 答
若い頃の運動
ルとんどしていない
x炎,気管支災
y い 運 動
=@ 通
フ 臓 病
ォ 臓 病
ン 腸 病
_経痛,リューマチ
] 軟 下 症
ゥなりはげしい運動
無 回 答
現趣
ンの味
ネ い
?@ る
若趣い頃の味
無 回 答
72276
41784
既往症
R0才以前,10本以下
ォ 臓 病
ン 腸 病
X153410
求@ 核
配生
者の死
R0才以後,10本以下
@〃 ,11∼20本
@〃 ,21本以上
45
A20才以前,2,3杯以下
R6
生活の満足度
U108
C20才以後,2,3杯以下
コ開
16
カ 存
S1*
r30年以前死亡
P8
r31年以後 ”
Q6
yしく,最高な生活
栫@足 な 生 活
?髓 度満足な生活
竄笊s満な生活
D ” ,4杯以上
①②③ 茶と同じ
無 回 答
無 回 答
①飲 ま な い
B 〃 ,4杯以上
S44352
x炎,気管支炎
73
@〃 ,11∼20本
@” ,21本以上
茶と開始年令
83
S 臓 病
ネ い
?@ る
吸 わ な い
無 病
a@ 血 圧
ニても不満な生活
82
希薬 し望邑
無 回 答
11
?@ る
R3
ネ い
U1
X491
P始ヒ1年と令
C⑤
・内男33
@女8人
飲 ま な い
77
Q0才以前,2,3杯以下
P4
@〃 ,4杯以上
Q0才以後,2,3杯以下
R0才以後, 〃
S0才以後, 〃
R272
26 前 田 幹 夫
配偶者の生死の差についてはいろいろな要因があると思 グループ1
われるが,著者は,女性のほうが男性に比べて体に無理 o女性で家事
をしないことや,配偶者の死亡による精神的面や社会環 O酒,タバコ,コーヒーを嗜好しない
境に男女差があること,または戦争による影響(戦死) o生活に対してある程度以上満足
があるのではないかと思う。 o過去に心臓病を患う
グループ2
3・統計的解析による長寿因子の抽出 o若い頃ハ_ドにスポ_ッをし,穀類を主食にして
2では,サンプル調査の統計結果について述べたが 漁をよくたべた
本章ではサンプル調査のデータを基にして,さらに解析 020才以後,茶を毎日2,3杯以上飲む
を試みる。解析方法は林の数量化III類と因子分析法で, o現在趣味はあるが楽しみはない
各方法ともサンプルをグループ化して因子を抽出するも oS30年以後,配偶者の死亡した者が多い
のである。 グループ3
3.1.数量化m類による解析2) o若い頃肉,野菜をよく食べ,趣味あり,病気なし
数量化III類はパタン分類の数量化ともいわれ,外的 O現在神経痛,リューマチを患っている
基準のない反応データの解析に用いられる方法である。 グループ4
データが表一3のようにカテゴリー反応行列として与 o若い頃,人並にスポーッをし,漁,野菜をよく食べ
えられているとする。(∨印はあるサンプルがその特性 た
を持っている事を示す。)V印のパタンの似ているもの o職業は農林漁業で茶を20才前から毎日2,3杯以下
が集まるように,サンプルと特性(カテゴリー)を適当 飲む。
に並びかえて,v印が対角になるようにすると,特性の o年令80才以上で現在肺炎,気管支炎を患っている
パタンよりサンプルの親近性を明らかにすることができ, グループ5
サンプルの分類と特性の分類を同時行える。つまり,サ o職業は営業で,タバコを毎日約20本吸い,若い頃か
ンプルiにγ‘,特性jに拘の数量を考え,xとyの相 ら軽いスポーッをしているが,趣味なし
関係数ρを最大にするようにγ」(∫=1,_,〃),xノ(ノ=1, 0今までやや生活に不満があったが,現在は楽しみが
...,N)を与えることに相当する。実際の計算では,最大 ある
固有値の固有ベクトルを求める事でy,σ=1,2_,n),κ∫ o現在高血圧症を患っており,配偶者は生存している。
(ノ=1,2,_,N)を得ることができる。また一次元で分類 (男性のカテゴリーに近い)
が十分に行えないときは,次元を拡張して,多次元で数 グループ6
量化を行う。 o職業は事務,採鉱,採石で漁が好きである
o年令80才以下で,現在健康,スポーツは散歩程度
表一3反応パターン グループ7
o男性で専問的,技術的職業
〉 ∨ >
O過去に肺炎,気管支炎を患い,現在心臓病を患って
> > > >
いる
>
グループ8
> > V >
0職業,技能工で酒を20才前から毎日4杯以上飲む
> > >
となるが,サンプル数105に比べて,カテゴリー数62が
サンプル調査によって得られたデータを基に数量化 極めて大きいので,はっきりした分類はできなかったが,
III類で求めた数量(カテゴリー)でグループ化した結 i)嗜好品を少なくして, ii)適度な運動をし, iii)穀類,
果は以下のとうりである。ただし,グループ化において 漁,野菜を中心に食事をして,iv)若い頃に病気に罹ら
は3次元までのファクターを考慮している。 ず,v)無理な仕事をしていない人が多く,これらが長
多次元解析による長寿因子の描出 27
寿の要因かもしれない。特に,農林,漁業の人は体に無 して,ある人が年令80才以上ならば,Z、=1,80才以下
理をしている為,肺炎,気管支炎を患っている人が多い。 ならば,Z、=0というように数値を与えるわけである。
これ以上は数量化からははっきりした事はわからない, また,胃腸,肝臓,腎臓,糖尿病の4っの病気を1つの
その為,カテゴリー数を減らす方法を考えなければなら 変量Z33として定義すると,ある人が胃が悪ければ,
ない,そこで,因子分析による解析を行ってみることに Z33=1,高血圧であればZ33=0である。しかしこの場
する。 合,高血圧の変量は数値1(Z3。=1)となる。
3.2.因子分析による解析3) 具体的な変量は以下に示すとおりである。
因子分析は変量間の相関行列の数値を説明するために ①年令,②男,③女,④専問的,技術的職業,保安業,
潜在的な因子の存在を仮定したり,あるいは因子という ⑤管理的職業,⑥事務職,⑦販売業,⑧農林漁業,⑨採
名の構成物を想定し,複雑な相互関係をできるだけ簡単 石,運輸,⑩家事,その他,⑪スポーッ(無回答),⑫
な形でとらえる手段を提供するものであり,次の(a)∼ スポーツ,⑬現在の趣味(無回答),⑭現在の趣味,⑮
(d)の目的に適用される。 若い頃の趣味(無回答),⑯若い頃の趣味,⑰茶,⑱タ
(a)仮説的モデルの検証(b)一般的モデル構造の推定 バコ,⑲酒,⑳コーヒ,⑳主食(無回答),@肉,⑳漁,
(c)観察対象の個体の分類または類型化(d)データ記 ⑭野菜,⑳漬物,⑳穀類,⑳海藻,⑳その他(主食),
述。これらのどの目的においても,ほとんどの場合次の ⑳無病(現在の病気),⑳高血圧,脳軟化症,脳血塞
様なステップを経て行われる。i)変量を選ぷ,ii)変量間 (現在),⑪心臓病(現在),⑳肺炎,気管支炎(現在),
の相関係数を計算する,iii)回転前の因子描出を行う, 璽胃腸,肝臓,腎臓,糖尿病(現在),⑭神経痛,リュー
iv)因子回転を行う,V)回転後の因子行列の解釈をする。 マチ(現在)@無病(過去),⑳高血(過去),⑳心臓病
因子分析モデルはデータ変量の標準スコアが共通因子 (過去),⑳肺炎,気管支炎(過去),⑳胃腸,腎臓病(過
タ
スコァ,特殊因子スコア,および,誤差因子スコアの線 去),⑳結核(過去),@配偶者(無回答),⑫配偶者生
形結合として次の様にあらわされる。 存,⑬配偶者死亡(S31年∼S 54年)⑭配偶者死亡(S
Z」‘=α」1F、8+α」2F2‘十…十α」mF副+α」、5」∫+α3。E∫‘ 30年以前),⑮楽しみ(無回答),⑯楽しみ,⑰生活の不
(3−1) 満度(無回答),⑱生活の不満度。
ここで, これらの変量の値をもとに,因子分析法で求めた因子負
Z」‘:個人∫の変量ノにおける標準スコア 荷量で各変量の散布図を描くと図一1∼図一3のようにな
α」凋:変量ノの第m共通因子への負荷量 る。図一1の1軸は性別を表わし,II軸は気力を表わし
α」,:変量ノの特殊因子への負荷量 ている。図一2のm軸は主食(正側:タンパク質,負
α」。:変量ノの誤差因子への負荷量 側:雑穀類)を表わしている。この図からわかることは,
凡ξ:個人’の第m共通因子の標準スコア 穀類を主によく食べた人程現在も健康で夫婦ともに長寿
動‘:個人匡の特段因子ノの標準スコア であるといえる。それは穀類の布置の近くに,配偶者生
Eが 個人∫の誤差因子ノの標準スコア 存,配偶者近年死亡と,無病(現在)が布置しているか
である。 らである。また,漁が好きで,よく食べたわりには野菜
このモデルを実際に適用するにあたっては,変量Z」‘ をあまり食べなかった人程,現在胃腸,肝臓,腎臓,糖
σ=1,…,η)が個人別に観測(測定)されている必要が 尿病等の内臓の病気を患っている人が多い。図一3のIV
ある。因子分析は,このデータを基に変量間の相関行列 軸は心配性,不安感,V軸は感性を表わしている。この
を計算し,種々の方法により因子負荷量を求め,分析を 図で特に注目されるのは肉(主食)の布置である。つま
行うのがふつうである。 り感性豊かで心配性の人は肉を好んでよく食べる人であ
実際に因子分析モデルを長寿因子の抽出に適用するに るということになるのだが実際にはよくわからない。病
は,サンプル調査で得たデータを手直ししなければなら 気の面については,感性豊かで少し心配性の人に現在も
ない。また,サンプル数が少ないので変量数を減らす必 健康者が多く,感性に之しい人程内臓を患っている人が
要がある。そこで,変量のとりうる値を{α1,2,3, 多くて,職業では農林,漁業に従事している人が多い。
45}のいずれかとする。例えば,年令の変量をZ、と 図には示さなかったが,VI軸は血圧の高低を表わし,
28 前 田 幹 夫
VII軸は解釈が難しいが精神的余裕を表わしているので 6) 目的を持って生活すること
はないかと思われる。また,VIII, IV軸を45度左に回転 7)配偶者を大切にすること(特に男性)
させるとVIII軸は栄養分, IX軸は労働量を表わして が考えられるが,これらの要因の中に従来から考えられ
いることがわかり,穀類,心臓病(現在),農林,漁業 ていた要因を多く含んではいるが,数量化によって表わ
が一つのグループを形成していることから,重労働は心 せたことに意義があると思う。その他,高齢者の死因別
臓に負担を与えるのではないかと思われる。また,軽い 死亡率をみると,1位,悪生新生物,2位,脳血管疾患,
仕事で楽しみがあって,野菜の好きな人には健康者が多 3位,心疾患,4位,肺炎,気管支炎,5位,老衰(昭
いことがわかる。以上,簡単に分析結果を述べたわけで 和56年調べ)以下省略,となっているので,塩分はひか
あるが総合的に把握すると,長寿の要因として, えめにし,特に悪性新生物による死亡率が年々上昇して
1)無理な仕事をしないこと いるので,発ガン物質6)を多く含むハム,ソーセージ,
2) 食事は穀類,野菜類を中心に摂取し,不足栄養分 焼漁,焼肉等の摂取をひかえめにし,代わりに豆類,野
を漁,肉で補うこと 菜,乳製品を多く摂取してガン発生率を押さえるべきで
3)心を大きく持って,あまり心配したり,くよくよ ある。また,発ガンに影響を与えていると思われるタバ
しないこと コはすぐにでも禁煙すべきである。参考までに,著者は
4) ストレスが蓄積したら早目に解消すること この研究以来(53年∼)禁煙している。
5) 嗜好品(酒,タバコ,コーヒ)はやめること
II
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.’ノ (若)1
(三壱二z/’
、
”趣味 農林∼
㌔㌔(項≧.、三
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’“採石 ’” ”(41) (47) ・
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無(21) 無病(過),1
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∫無
・,(15)
無⑳・
(11)ノ
図一1因子分析による因子負荷量(1,II軸)
多次元解析による長寿因子の描出 29
m
’!’ 漁 ’、
, 、
’ 、
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∼(21) (現) ノ
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タバコ無病(過),/
.(現),〆ノ
、
、、
、、
、、
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・、穀類∫
図一2 因子分析による因子負荷量(II, m軸)
V
不満
無
肉 趣味駕
楽しみ
欝
管理
.・…、 海そう茶 心酒
過)肺炎(現)
”販売、 スポーツ趣
/ 1 タバコ麟事漁専門魍過)
;結核(現)ソ 男 三採年配死(削) IV
‘・一・一/ 賢胃 石令無病(過)
(過)㌔議盤纐野菜
(15)血(現)漬物
配生 圧配死
蓮(後)
鉦 …柚…
(45) (21).’・・一、、
,”無 \
!’(13) \、
1糖,胃,肝,賢 l
t(現) 農林
ば
図一3 因子分析による因子負荷量(IV, V軸)
30 前 田 幹 夫
で指摘したことを実行する人程,長寿の可能性が大きい
4あとがき と思う。
サンプル調査のデータを基に単純統計や多変量解析 なお,本研究にあたりサンプル調査のデータ収集に御
(数量化III類,因子分析)法による結果を分析したわ 協力頂いた本学情報工学科シス工学研究室の卒論生諸氏,
けであるが,変量に比べてサンプル数が少ないため明確 北九州市福祉事務所の方々に深く感謝の意を表します。
に断言できる様な長寿因子は抽出できなかったが,それ
らしき因子は抽出できたのではないかと思う.しかし, 参考文献
まだまだ詳細な研究が必要であり・綱』・家族繊 1鵠遮遵認㌶ζユミレーシヨン”九州工業
若年令等のデータを豊富に取り入れた解析を行えば,さ 2)林,樋口,駒沢:“情報処理と統計数理”,産業図書
らにはっきりした因子を抽出できるのではないかと思う。 3)奥野・久米ら:“多変量解析法”・日科技連
4)厚生省:‘‘厚生白書,56年版”大蔵省刷局
また・鋭で指摘した因子をいくら認識したとしても・ 5)多賀保志:“サンプル調査の理論”サイエンス社
それを実行しない限り長寿へとつながる可能性は少ない。 6)平山雄:“環境癌研究における疫学の役割”,医学のあゆ
それゆえ,1年でも長生きしたいと思うならば,長寿の み・第87巻第4号・P・197∼204(昭48年)
可能性の大きな方法を実行すべきだと思う。つまり3.
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