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与謝野ブランド戦略

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与謝野ブランド戦略
与謝野ブランド戦略
最終報告書
2016.3.10
VELDT LUX
YOSANO
BRANDING
2015.12.20
2016.03.10
与謝野ブランド戦略最終報告書
目次
1、与謝野ブランド戦略の策定
・情報の整理
・目標の設定
・ブランドコンセプト
・成果
2、与謝野ブランド戦略マネジメント体制の構築と確立
・体制づくりと課題
3、与謝野ブランド戦略各プロジェクト等へのアドバイス
・知的財産
・PR 戦略
・ビジュアルコミュニケーション
・VI の検討
・どの他
4、総括
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2015.12.20
2016.03.10
1、与謝野ブランド戦略の策定
<情報の整理>
■ 平成 27 年度当初予算の確認
与謝野町は、持続可能なまちづくりを目指し、可能性を繋ぎあわせ、躍動し、うねりを生み出すことを
平成 27 年度の目標と掲げた。町民同志が意識を高め、自ら行動するモチベーションを高めるインナー
ブランディングに重点を置いて活動することを確認した。
平成 27 年度当初予算の概要書より転載
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<情報の整理>
■ 平成 27 年度当初予算の確認
平成27年度の主要政策として掲げられた「新しい視点での産業振興策」の中で中核を担うのが本報告
書にまとめる「与謝野ブランド戦略マネジメント」である。地域ブランドを構築するにあたっての上位
概念となるコンセプトを打ち出すことが本年の目標である。また、同時にブランド戦略に紐づく各プロ
ジェクトのディレクションも併行して行うことを確認した。
平成 27 年度当初予算 の概要書より転載
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<情報の整理>
■ 平成 27 年度当初予算の確認
エムテドがクリエイティブディレクターとして就任する以前に、平成27年度当初予算の段階で各プロ
ジェクトは以下のように設定されていた。
<ものづくり産業の強化>
○活動目標
・既存企業のブラッシュアップ
・次世代事業者の意欲喚起と育成
・地域の強みを活かしたグッド デザインの商品・製品開発
↓
●プロジェクト
・ものづくりワークショップ(クリエイティブなコミュニティ空間創出)
・FirstSilk
・クラフトビール醸造事業(ホップ栽培)
<エリア構築>
○活動目標
・与謝野ブランド戦略拠点の整備
・地域産業の新たな価値を創出する空間整備と集積
・ものづくり産業へのフィールドとして解放 ( 実証実験特区 )
↓
●プロジェクト
・阿蘇ベイエリア活性化 ( マスタープラン策定 ) ( 公共建築物の活用・整備 ) ( 公共空間のリノベーション )
・織物の建築資材化
<プロモーションの強化>
○活動目標
・産地の価値を可視化
・地域の誇りを醸成
・与謝野町の認知拡大
↓
●プロジェクト
・地域資源調査 ( 産地の価値の映像化 )
・タウンプロモーション ( タウン誌発行・情報発信 )
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<情報の整理>
■ 平成 27 年度当初予算 の確認
同じく就任前に既に設定された与謝野ブランド戦略事業の概要は以下の通りだった。
◆「ものづくり × クリエイティビティ」を機軸にした地域ブランド 構想を戦略的に展開することで、
産業分野における新たな価値を創出し、魅力あるまちづくりを進める。
◆与謝野ブランド戦略による一気通貫したプロジェクト、産業政策 を展開するため、行政、産業振興
会議に加え、クリエイティブディ レクターを招聘し、マネジメント体制を構築する。
◆施策展開は、3 本の柱を軸に、下記プロジェクトを展開する。
「ものづくり産業の強化」
ー 織物業 :「first silk」ブランドの構築、織物の建築資材化
ー 農業 : クラフトビール醸造に向けたホップ栽培
ー 全般 : ものづくりワークショップ開催
「プロモーションの強化」
地域資源調査 : 産地の価値の映像化
タウンプロモーション : 上記調査をもとにプロモーション展開
「エリア構築」
阿蘇ベイエリア活性化に向けたマスタープランの策定
◆与謝野ブランド戦略シンポジウムの開催
平成 27 年度当初予算の概要書より転載
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<情報の整理>
■ 平成 27 年度当初予算の検証
就任後、与謝野ブランド戦略事業を進めるにあたり、以下の要点で実行内容の見直し等を行った。
<ものづくり産業の強化>
○活動目標
・既存企業のブラッシュアップ
・次世代事業者の意欲喚起と育成
・次地域の強みを活かしたグッドデザインの商品・製品開発
↓
●プロジェクト
・ものづくりワークショップ(クリエイティブなコミュニティ空間創出)
産業の振興以前に町のものづくりの気運を高めることが先決である。事業者の問題意識の造成やモ
チベーションの向上など教育的な側面が重要な事業と考える。ものづくりのポテンシャルを正常に
発揮させるために、外部組織の場を利用して、織物業者を対象にしたワークショップを実施する。
ものづくりワークショップの実行者として株式会社ロフトワークを推薦した。ワークショップの結
果を商品開発や事業化に繋げる環境整備を行政が行うことが重要であることと、ロフトワークのも
つメディア機能を利用しながら町のブランド訴求を狙うこととした。
・FirstSilk
与謝野ブランドコンセプトが設定される以前に具体的な商品を開発し、グッドデザイン賞等を受賞
することを目的にしたプロジェクト設定は妥当ではないと判断した。ものづくりワークショップへ
吸収させ、ものづくりワークショップのプログラム充実に費用をあてることを提言した。
・クラフトビール醸造事業(ホップ栽培)
すでにホップの栽培が開始され、生産者組合の発足、アドバイザーの招聘が行われ、プロジェクト
が始動してしていたので、経過を観察することとした。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<情報の整理>
■ 平成 27 年度当初予算の検証
実行内容の見直し続き
<エリア構築>
○活動目標
・与謝野ブランド戦略拠点の整備
・地域産業の新たな価値を創出する空間整備と集積
・ものづくり産業へのフィールドとして解放 ( 実証実験特区 )
↓
●プロジェクト
・阿蘇ベイエリア活性化 ( マスタープラン策定 ) ( 公共建築物の活用・整備 ) ( 公共空間のリノベーション )
プロポーザルの募集要項にブランド戦略のエッセンスをできる限り反映することや、ブランド戦略
の方向性にのっとったマスタープランを策定すること、また、プランの監修を可能にするポジショ
ンを確約していただくように提言した。
・織物の建築資材化
与謝野ブランドコンセプトが設定される以前に具体的な開発商材を設定していることの違和感は否
めず、建築資材化が目的とならないように提言した。
<プロモーションの強化>
○活動目標
・産地の価値を可視化
・地域の誇りを醸成
・与謝野町の認知拡大
↓
●プロジェクト
・地域資源調査 ( 産地の価値の映像化 )
・タウンプロモーション ( タウン誌発行・情報発信 )
対外的な情報発信よりも町内へのインナーブランディングの役割が大きいとした。すでに ROOM
による制作活動が開始されており、コンセンサスをとる範囲にとどめた。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<情報の整理>
■ 平成 27 年度当初予算の検証
実行内容の見直し続き
◆施策展開は、3 本の柱を軸に、下記プロジェクトを展開する。
「ものづくり産業の強化」
ー 織物業 :「first silk」ブランドの構築、織物の建築資材化
ー 農業 : クラフトビール醸造に向けたホップ栽培
ー 全般 : ものづくりワークショップ開催
プロジェクトの見直し内容と同じ
「プロモーションの強化」
地域資源調査 : 産地の価値の映像化
タウンプロモーション : 上記調査をもとにプロモーション展開
ROOM の調査とは別途、エムテド主体で地域の資源調査を行い、ブランドコンセプトの要件を抽
出する。その内容とタウンプロモーションの制作内容は必ずしも同期ははからないが、
織物業に偏っ
た編集内容とならないこと、プロジェクト名の再考を初期段階で
合せた。
「エリア構築」
阿蘇ベイエリア活性化に向けたマスタープランの策定
ブランドコンセプトのエッセンスを実行者選定までになるべく明確化させ、単なるハード整備に終
始しないように監理することとした。
◆与謝野ブランド戦略シンポジウムの開催
与謝野ブランド戦略コンセプトをシンポジウムにて発表し、次年度の実行目標を設定するスケ
ジュールで進めることとした。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<情報の整理>
■ 与謝野ブランド戦略実行体制について
与謝野ブランド戦略は、クリエイティブディレクターであるエムテドが与謝野町行政、産業振興会議と
連携を図りながら策定する。与謝野町担当は商工観光課が窓口となり、町の情報を随時報告し、エムテ
ドにて集約、精査、編集等を行いながら戦略の精度を高めて行くこととした。産業振興会議メンバーは
与謝野町で活動する事業者によって構成されているため、より現実的な意見やアドバイス等によってブ
ランド戦略の核心をついていくことが望ましいと思われた。
上記のコアメンバーによって検討された内容が、各プロジェクトの実行者(業務委託先)に伝達され、
各プロジェクトの企画が作成されることとした。各プロジェクトの実行者は以下の方法で選定された。
「ものづくり産業の強化」
株式会社ロフトワーク
ロフトワークは、オープンコラボレーションを通じて、Web、コンテンツ、サービス、コミュニケー
ション、空間などをデザインするクリエイティブ・エージェンシー。
「クリエイティブの流通」をミッションに掲げ、2000 年に創業。2.3 万人が登録するクリエイターネッ
トワーク「loftwork.com」を核に、様々なクリエイティブサービスを提供。
与謝野町内の織物業者と外部クリエイターの引き合わせを行いながら、個々の能力開発を行うワー
クショップを行い、内発的に事業化に踏み出す環境を支援するために、最良のパートナーと考えた。
「プロモーションの強化」
ROOM
平成 26 年度に選定済み。
「エリア構築」
プロポーザルによる選定が前提条件であったため、応募者がパートナーとして最良かどうかの判断
を行うこととした。選定の際はハード提案だけでなく、町民参加のまちづくりに重点を置き、企画・
実行を行うソフト面に長けた業者選定を必須とした。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<情報の整理>
■ 与謝野ブランド戦略実行体制について
「エリア構築」 プロポーザル結果
プロポーザルへの応募は以下の二社による一組であったが、以下の業者の能力を評価し、選定委員会に
よりパートナーに選定した。
KKAA(隈研吾建築都市設計事務所)
隈 研吾氏が代表をつとめる日本でも有名な建築設計事務所であり、国内外の受賞歴を多数もつ実
績が高いことが評価できる。また、知名度の高さから、ブランド戦略上ニュース性に富んでおり、
メリットが大きいと思われた。ハードウェアの開発が主たる業務となるが、豊富な経験によって、
話題性のある企画案が立案されることが期待された。
OpenA(東京 R 不動産)
馬場正尊氏が代表をつとめる建築設計監理、不動産賃貸監理、編集等メディア機能をもつ。都市の
空地を発見するサイト「東京 R 不動産」を運営し、地域リノベーションの実績が豊富。ソフトウェ
ア開発を得意とし、KKAA を補完する立場を担うことを期待した。カルチャー色が強く、独自にメ
ディアを保有していることも優位点であると評価した。
エリア開発を推進するにあたって、町民の賛同を得ることや、プロジェクトが行政主体でなくなった際
の内発的な行動力を鍛錬するための活動を織り込むことが必要不可欠であり、ブランド戦略ビジョンを
投影しながら推進することを合意した上で進めることとした。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<情報の整理>
■ フィールドワーク
<与謝野町とは>
与謝野町は、大江山連峰に囲まれた自然豊かな地域。山々から阿蘇海へ流れ込む野田川によって、肥沃
な平野が広がり、農林業と共に人々が暮らしてきた。衣食住が
う安住の地として、いにしえより栄え
たこの地域においては、中世には「丹後精好」
、江戸時代には「丹後ちりめん」という絹織物文化が花
開いた。
1、大江山連峰と野田川
大江山連峰とそこから流れ込む清らかな水によって、与謝野町の肥沃な大地は育まれている。野田川に
は鮭が
上することが知られているが、林業の衰退との関連から、栄養を含んだ土や土砂の流出が影響
し、近年は鮭の個体の減少が危惧されている。農地からの化学肥料、生活雑廃水なども野田川と阿蘇海
の汚濁に影響していると思われ、持続可能な社会を目指し、課題の解決に取り組むことは、町としての
使命である。自然の循環を守り里山風景を維持することはブランド構築大きく影響すると思われる。
2、阿蘇海
日本海の宮津湾から天橋立によって仕切られてできた内海。塩分濃度が外海の 2 / 3 程度であることか
ら、外海の魚の産卵場となっており、脂の乗った金
いわしが名産で知られている。阿蘇海は栄養に富
んだ海であることと、外界と隔てられているせいで海水の入れ替わりが少なく、海底へのヘドロの堆積
による水質汚染が昔から問題視されていることも事実である。1993 年度から始まった覆砂事業の成果
としては、底生生物の種類数の増加により海域環境が改善している。地域住民や 関係団体、行政の連
携のもと、2015 年に阿蘇海流域ビジョンを策定し、環境改善に取り組んでいる。現在の阿蘇海へ与謝
野町側から入って遊び姿を確認することはない。さらに護岸には柵が設置され「入るな」と注記されて
いることから、町民が阿蘇海に親水性を感じることがないのが問題と考える。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<情報の整理>
■ フィールドワーク
<与謝野町とは>つづき
3、古墳公園
与謝野町立古墳公園は、日本海地域屈指の大型古墳の国史跡「蛭子山 ( えびすやま ) 古墳」と国史跡「作
山 ( つくりやま ) 古墳」を復元整備した歴史公園だ。この古代の丘に立つと、なだらかな 大江山連峰を
背景として、はるか 1600 年前に隆盛を誇った古代丹後の姿に思いをはせてることができる。これらか
ら与謝野の地域が古代より人々が暮らす安住の地として恵まれていたことが分かる。自然の豊かな実り
をすべていただきながら、衣食住の文化を発展させてきたということだ。宮津市にある元伊勢籠神社や
真名井神社の伝説からもこの地がいかに自然資源に恵まれていたかを感じ取ることができる。この日本
らしい歴史は、日本人はもちろんのこと、インバウンドによる外国人観光客には大いに共感されること
と思われる。
4、ガラス釧
大きさは、外径 9.7cm・内径 5.8cm・重さ 168.1g。平成 10 年夏に、阿蘇海を見下ろす丘陵上にある大
風呂南 1 号墳第 1 埋葬部から発掘された。腕輪と表現されるが、装飾品として使用されていたかは定
かではない。
1800 年前の古代丹後王の繁栄を感じさせる瑠璃色の腕輪はこの地域の至宝。中国大陸から輸入された
と思われ、古代丹後王の活動が広範囲だったことを物語る貴重な歴史資料だ。これらからも豊かな暮ら
しがこの地域で営まれていたことを窺い知ることがでる。
古墳同様に歴史をブランドストーリーに盛り込むことは有効である。多くの人が興味を喚起され大切に
したい地域であると共感しやすい素材であるからだ。また現代の産業のルーツを語る上でも有効である。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<情報の整理>
■ フィールドワーク
5、基幹産業 1 ー京の豆っこ米
与謝野町では日本三景の天橋立・阿蘇海の環境を守るための取り組みとして自然循環農業を実践してい
る。その一貫としておからを主原料に、有効成分の高い米ぬか、ミネラル分豊かな魚あらの 天然成分
を発酵させた有機質肥料「豆っこ肥料」を使ったお米「京の豆っこ米」の栽培を推進している。
「京の豆っ
こ米」( 京都丹後産コシヒカリ ) は食味ランキング通算 12 回の特 A を獲得。
残念なところといえば、豆っこ肥料を製造する原料が与謝野町由来ではないことであり、特に活動の発
端である白大豆の栽培は今も続いていることや、白大豆の栽培に関して農業者が黄綬褒章を授与された
りと高い農業技術を誇る地域であることがストーリーから抜け落ちていることはもったいない。
水田整地では濁り水防止や漏水を極力少なくするために「浅水代かき」という農法を採用したり、阿蘇
海近辺の環境浄化や環境学習にも取り組んでいる。一部地域では「いなき干し」が里山風景を作り出し
ている。
農業に関する大きな課題としては、多くの農家が農産物を JA におろしていることであり、それによっ
て「与謝野町産」という地域名が埋没してしまうことにある。また JA の買い取りは、最低価格を保証
してくれるものの、農産物の価値にみあってフェアトレードがされにくい。そのため農家へのインセン
ティブがなかなか向上しないのが実状だ。JA と足並みを
えながらも、良質で持続可能な農業従事者
を絶やさず、新規就農者を増やし、できれば与謝野町へ移住者を増やすためにも、自主流通を促進する
支援が必要と思われる。実状は町が運営する乾燥倉庫が小さく、自主流通をさせようにも保管する場所
がないことが課題だ。
また、豆っこ肥料も設備の老朽化によって安定供給が図りにくいのも問題だ。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<情報の整理>
■ フィールドワーク
6、基幹産業 2 ーちりめん織物
江戸時代に京都西陣から持ち帰られた製織技術が普及したことにより、明治、大正、昭和初期にかけて
高級織物「丹後ちりめん」の産地として隆盛を極めた。湿度が高い気候風土と高い撚糸の技術によって、
独特の肌触りと風合いをもつ織物を織り上げることができる。
最近は丹後ちりめんだけでなく、世界のメゾンで採用されるジャカード織物や手織りのファブリックな
どグローバルに戦う若手の活躍が目覚ましく、世界に誇る織物産地になるべく、挑戦者への支援を積極
的に行う必要がある。
織物業者数社を視察したところ、独自性をもった業者のみが生き残り、下請けに従事していた業者は淘
汰されているようだった。また現在の事業者のうち成功しているのは第二創業をしている方であること
も特徴的だ。既存の流通ルートからの脱却や、二次産業だけに留まらない事業領域を検討することが必
要不可欠だろう。
しかしながら、誰も思いつかないような変革を感じる事業者はいないと感じた。そのため、30代を中
心としたメンバーの士気やモチベーションを高める活動を「ものづくりワークショップ」によって実行
し、より幅広い可能性を探る必要があると感じた。
織物が現代の産業において強いインパクトを持つための要素を、もう少し俯瞰して広い視野で探る必要
があると感じた。たとえば、シルクの糸ははどこから来ているかといえば、ほとんどが中国やベトナム、
ブラジルといった海外であり、メイドインジャパンと言い切れるかといえば、プロダクトにしているの
が日本という環境であるにすぎない。
織物業はもともと分業によって成り立ってきた分、素材をつくることだけに従事し、一気通貫した産業
になっていないことで、ブランドを訴求する時の「物語」を作り出しにくくなっている。
持続可能な社会を形成することは、もはやまちづくり、ものづくりの絶対条件であるため、織物産業の
ひずみを補正することがブランド戦略には必要ではないかと思われた。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<情報の整理>
■ フィールドワーク
6、基幹産業 2 ーちりめん織物(つづき)
追加として、町内の養蚕についても調査を行ったところ、旧加悦町時代に人工飼育による養蚕「松原方式」
を試験した記録が残っていた。織物の産地として養蚕に再度トライする価値はまだあると考えた。日本
の伝統産業を根底から維持したいのであれば、養蚕までアプローチし、日本全国の織物産地の中心的存
在となってもおかしくないからだ。
加えて、人口飼育が最善の方法なのかを検証するために、国立研究開発法人農業生物資源研究所(筑波市)
を視察した。これによって得た情報としては、織物用途だけでは単価が見合わないかもしれないが、医
療等の産業用途を視野にいれた事業を展開すれば、新機軸を狙えるかもしれないということであった。
また、研究所では光るシルク等、まったく新しい用途への実用化を目指して日々研究しているとのこと
だ。養蚕に取組むことは、丹後地域全体、はたまた日本全国の織物業の活路を見いだすことになるかも
しれない。ちなみに人工飼育による養蚕は、蚕が「水ぶくれ」状態になる症状を発症することから、健
全なシルクを生成する方式には適していないとの説明を受けた。桑の葉をそのまま食べる方が良質な蚕
を育成することにつながるため、養蚕以前に桑の葉の栽培との抱き合わせで方法論を考える必要がある。
いずれにしても、養蚕から織物、商品化、流通といった一気通貫を考える材料としては有効であること
がわかった。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<目標の設定>
A, 「ものづくり産業の強化」
1、織物業 :
1−1、ものづくりワークショップ『Yosano Open Textile Project』の実行
与謝野ブランド戦略の「ものづくり産業の強化」に位置づける新プロジェクト。
「与謝野発、織物の可能性をみんなで作り考える」をテーマに、町内織物事業者と異業種のクリエ
イターがコラボレーションして織物業が秘める可能性を探り、新しい価値を生み出すプロジェクト
として、1月から3月まで実施することとした。
パートナー:株式会社ロフトワーク
1−2、阿蘇ベイエリアマスタープラン策定内で素材活用及び訴求を検討
「阿蘇ベイエリア活性化マスタープラン」の策定に向けた町民参加ワークショップ内において、織
物の展示等を通し、町内外に織物産地を認知させる。またグランドデザイン「阿蘇ベイエリア活性
化マスタープラン」の策定の際は織物の周知、将来的プラン検討を行う。
パートナー:隈研吾建築都市設計事務所、OpenA(公共 R 不動産)
2、農業 :
2−1、クラフトビール醸造に向けたホップ栽培
農林課とフリーランス生産者組合によるホップ栽培を成功に導くために経過を観察するとともに、
そのプロセスをコンテンツとして全国規模のメディアへ積極的に発信する。新規性ある事業は与謝
野ブランドの起爆剤であり、注目が集まることは間違いなく、フレッシュなニュース性を活用しな
がら、「与謝野」の地名や写真の露出機会を増やし、この地域へのイメージを早期段階から定着さ
せることを狙う。同時にパートナーとなるメディアの開拓を行う。
田子學が講演する機会も多いことから、積極的にトピックスを扱い、話題が継続することに努める。
ホップ栽培及びビール醸造のニュース発信の際は、ブランドイメージを損なわないよう、ビジュア
ルコミュニケーションの監理も行う。
パートナー:藤原ヒロユキ氏、京都与謝野ホップ生産者組合
3、全般 :
ものづくりワークショップ開催は1−1に集約する。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<目標の設定>
B,「プロモーションの強化」
1、タウンプロモーション : 調査をもとにプロモーション展開
「織りなす人 -YOSANO WEAVER-」の公式サイトを設置し、1週間に 1 回の頻度でムービーを更
新する。まちを愛し、挑戦を続け、未来を創造するものづくりの担い手「織りなす人」のドキュメ
ンタリー映像を通して、ものづくり産地として秘める力と可能性と発信する。制作は ROOM と与
謝野町商工観光課で推進し、エムテドは制作監理しない。
http://yosano-weaver.jp
C, 「エリア構築」
1、阿蘇ベイエリア活性化に向けたマスタープランの策定
与謝野町の特性が可視化される場所として、阿蘇ベイエリアを重点地域として定め、再構築する。
このエリアでは衣食住の体現、オリジナリティ
れる各種織物、地産地消の食文化の提供をはじめ
とし、与謝野が味わえる体験を提供価値とする。
与謝野町らしい風景を創出するためにも、海や公園の開かれた使い方を企画したり、町並みや景観
の保全活動を実施、地元木材の活用による空き家・空き店舗のリノベーショ ンなどを視野に入れ、
阿蘇ベイエリアマスタープラン策定へのアドバイスを適宜行う。
D,「与謝野ブランド戦略シンポジウムの開催」
1、ブランドコンセプトの発表
A、B、C の上位概念としてブランドコンセプトを作成する。またシンポジウムの企画も行い、多
くの町民へ向けて「クリエイティブによる町づくり」への理解を深めてもらえるよう、適切な表現
方法による情報発信に努める。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<ブランドコンセプト>
□はじめに
まず現在の与謝野町が掲げるスローガン、町民憲章の意志を尊重し、その理念を踏襲することを前提条
件とする。三町が合併し、与謝野町が生まれてまだ10年と年月が浅く、また、憲章も平成20年に制
定されていることから、既存の方針と異なる新しい目標設定をすると、かえって混乱をきたすという見
解によるものである。スローガンと憲章にはエムテドが行ったフィールドワークで感じた町の資源につ
いて適確に触れているので全く問題ないと考えた。
『スローガン』
水・緑・空 笑顔かがやく ふれあいのまち
『与謝野町町民憲章』
わたしたち与謝野町民は
豊かな自然と歴史に
育まれた郷土を誇りに思い
お互いが思いやり
元気あふれる住みよい町を築くため
この憲章を定めます。
一、自然を守り、環境美化に心がけましょう
一、伝統と文化を大切に学びの心を育てましょう
一、きまりを守り自律心を養いましょう
一、あたたかい家庭と地域の絆を大切にしましょう
一、健康で仕事に励み豊かな未来をつくりましょう
平成二十年一月制定
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<ブランドコンセプト>
□ビジョン
与謝野町は、大江山連峰に囲まれた自然豊かな地域だ。山々から阿蘇海へ流れ込む野田川によって、肥
沃な平野が広がり、農林業と共に人々が暮らしてきた。衣食住が
う安住の地として、いにしえより栄
えたこの地域においては、中世には「丹後精好」
、江戸時代には「丹後ちりめん」という絹織物文化が
花開いた。しかし今、時代の移ろいの中で見失ってしまったものを見つめ直し、今すべきことを町民の
皆さんと考え実行する必要があると考える。
今私達が再認識すべきは、自然のシステムの中で私達自身が暮らしを営んできたということだ。5月の
就任以降、様々な方と出会いヒアリングを繰り返す中で聞こえるのは、
「与謝野町には資源がない」と
いう言葉である。町外の、しかも東京で暮らすエムテドにとっては信じがたい言葉だった。これだけの
自然があるということがどれだけの恵みであるかを、町に暮らす当人たちは解っていないということは
明白だった。与謝野町の独自性ともいえるその原点に立ち戻ることで、持続可能な社会、人類にとって
かけがえのない地球を守ることになると考える。その姿勢は、たとえ小さな町であっても、世界にイン
パクトを与えることができるはずだ。
これらのビジョンを集約した言葉が「与謝野ブランド戦略コンセプトーみえるまちー」だ。
「みえるまち」の具体的施策はさらに3つのキーワードから構成される。
1、安心安全がみえる
2、個性がみえる
3、もてなしがみえる
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<ブランドコンセプト>
概念図
Market
INTERNET
インターネット
YOSONO MARKET
与謝野マーケット
REAL SHOP
実店舗
Product
SILK
シルク
TPP
環太平洋経済連携協定
BEER
ビール
Agriculture
SAKE
日本酒
COCOON
繭
KAIKO
TOFU
蚕
豆腐
OOEYAMA REMPO
HOP
大江山連峰
ホップ
MAMEKO COMPOST
京の豆っこ肥料
RICE
Nature
米
AMANOHASHIDATE
ANOHASHIDATE
天橋立
SOY
大豆
ASO BAYAREA
阿蘇海
NODAGAWA
野田川
WATER
SALMON
水
鮭
与謝野町はすべて みえる ことに自信を持ち、約束すること。
そして、新しい取り組みへ挑戦することを約束する。
与謝野町には、世界に誇る一次産業、二次産業が息づている。
これら産業を育んでいるのは、大江山連峰、野田川、阿蘇海へとつながる自然環境だ。
まちの中にこれだけの恵まれた環境があることは誇るべき点である。
豊かな環境によって育まれる農業、健全な一次産業が成り立つことによって実現できるものづくり、
それらすべてがそろって初めて上質なサービスを商流にのせていくことができる。
与謝野町は、
「みえるまち」をコンセプトに、一気通貫して「信頼」を提供できる環境を構築し、
小さな町から世界にインパクトを与えるような行動を起こし、
産業を基軸に次の世代にまちを繋くことを目標に設定する。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<ブランドコンセプト>
1、安心安全がみえる
<基幹産業の源流強化と与謝野流エコシステムの確立>
農業分野においては、自然循環農業を深化させ、
「京の豆っこ」を使用した農法の確立や、
「SOFIX(土
壌肥沃度指標)ブランド認証」を受けた農産物の流通体制構築を目指すことにより、自主流通を促進さ
せながら「与謝野版農業モデル」のブランド化を図る。織物分野においても、源流である糸づくりに目
を向け、新たな価値を創出し世界に誇る産地を目指す。また、農業・織物業を分断せず、相互に点在す
る要素を結びつけながら、「与謝野流エコシステム」の構築を目指す。
解説:
まずは TPP の課題が国家レベルの課題であるから、それに町がどのように取り組むかは無視できない。
そういった背景を鑑みると、与謝野町の農業に目を向けるのは必然である。
食物を提供する地域がら、安心安全な食材を提供することは高付加価値となりえる。
すでに10年も京の豆っこ肥料の製造をはじめとして、自然循環農業を実践している土壌は宝そのもの。
やるべきことはまだ認知度の低い「京の豆っこ」の名前をブランドとして広く認知させることで、この
地域の農業に対する取り組み方や真伨な姿勢をアピールすることだ。
そのためには豆っこ肥料の製造、供給の課題をクリアしたり、今までの商流では画一化されて豆っこブ
ランドが際立たなかかった問題をクリアしなければならない。
具体的には老朽化した有機物供給施設の改修を実施し、豆っこ肥料そのものの販売、豆っこ肥料をつかっ
た農法の確立とノウハウの知財化をはかるべきであると思われる。
すでに実験している SOFIX や e- 案山子も知財戦略の一端として、明確な方針を打ち出すべきだ。
また豆っこブランドは独自のトレーサビリティシステムを確立し、それを透明性あるものとして公開し
ながら、その基準にしたがった農作物にはブランドタグをつける。
町がきちんとトレーサビリティに向き合っていること自体が地域ブランドとなり、地域の土壌そのもの
を守っていくことになる。一度汚れてしまった土壌は、すぐに元に戻すことはできないのだから。
また現在は与謝野町産大豆でつくった豆腐、さらにはシルク入りの豆腐と生産しているが、その商材に
大きくスポットがあたっていない。現在は養分の関係で町内豆腐工場からでたおからを豆っこ肥料の原
料に使用していないが循環型農業の発想の原点であることからも、もう一度各事業のポジションを見直
すべきではないか。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<ブランドコンセプト>
また、町内で出るシルクの端材を使った食材や肌に触れるものについて、シルクの大元のトレーサビリ
ティにも目を向けなければならない。昨今のシルクは大半が中国、ブラジルの原糸であり、それらを食
する安心安全は担保されているのか疑念を抱きやすい。ブランドへの信頼を勝ち取るためにも、トレー
サビリティを見える化することは有効である。
そのため、将来的には養蚕∼生糸の製造∼織る∼商流にのせるまでを一気通貫できる町であることが理
想だ。農業が土から真伨に向き合っているのに対して、織物業はプロダクトレイヤしか見ていない。
本来は自然の恵みを享受して暮らしてきた地域であり、養蚕への研究と取り組みを今一度行うこと姿勢
をアピールすること自体が織物業へのブランド訴求効果として跳ね返る。
また、養蚕を行い、生糸を製造することは、今までの産業とは別の産業を生む可能性がある。
今年度は三井化学株式会社の協力を得て、シルク入りのプラスチックボトルを試作した。
多くの強化プラスチックは従来ガラス繊維を混入製造されてきたが、リサイクル性が皆無で、廃棄の点
で大きな課題があった。そこで有機物による強化プラスチックの研究とコラボレーションを行い、リサ
イクルが可能なプラスチックの製造の可能性を探っている。例えばそれが可能になった場合、シルク入
りボトルに与謝野町産ホップをつかったビールを入れて、商流にのせることができるかもしれない。
また、前述のように、医療等の産業用途への展開を視野にいれると可能性は広がるだろう。
このように、点在する要素をエコシステムとして結びつけ、そこに安心、安全といったトレーサビリティ
を掛け合わせることでエビデンスを明らかにし、産業の発展を促すことが与謝野ブランド戦略の基本的
な考え方だ。
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<ブランドコンセプト>
2、個性がみえる
<共創による仕組みづくり、仕事づくり、人づくり>
与謝野町の優位性や付加価値をステークホルダー(利害関係者)に伝えるとともに、こだわりが対価と
なる仕組みづくりを目指す。また、価値共創の必要性を認識し、オープンでクリエイティブな環境を整
えることに努め、起業家精神を育み、商品やサービスの開発を活性化するための支援に取り組む。これ
らを円滑に推進するために、行政、商工会等の連携により、「与謝野ブランド戦略推進チーム(仮称)」
を設置し、仕組み、仕事、人材を生み、育むまちを目指す。
解説:
京の豆っこのブランドが認知されにくい現状として設備の老朽化によって肥料自体の供給バランスが崩
れていることにある。町が運営する乾燥倉庫が小さく、自主流通をさせようにも保管する場所がないこ
とも要因であろう。例えば JA の倉庫に入ると、京の豆っこという名称は使われず、画一的な値段で取
引がされてしまい、農家のインセンティブにつながらないことなどが課題の本質にある。
ブランドとは他との優位性をストレートに発信しない限りは、誰も気づいてくれない。
せっかくの取り組みも出口で打ち消されているのが現状であり、フリーランスの活動が奨励され、コミュ
ニケーション力を高めるための施策は重要な課題だ。そのため、こだわりが高付加価値として評価され、
評価が正当な対価になっているフェアトレードな世界を実現することが必須課題だろう。
また、高付加価値のついた生産物が既存の商流だけでなく、新規チャネルを開拓しながら訴求力を高め
ていく支援も大切だ。それらの支援を行うためには、農業を六次産業にまで引き上げる必要があること
と、六次産業化を実現するためには商工会が組織力を強化して各種の支援を行う必要があるだろう。
商工会の活動は上記のように、個性が際立つ産業の活動を支援することにある。フェアトレードができ
る仕組みや、ビジネスモデルの支援や知財によるライセンスビジネスなどが考えられる。
また、現代は一人の力ではなく、同じビジョンを持った人が共創する Co-creation の時代であり、町内
の点在する産業や産業を結びつけてシナジーを発揮させる仕組みや支援活動を行う必要があるだろう。
起業支援についても、単にお金を助成するのではなく、クリエイティブレジデンスなどコミュニティで
情報交換やお互いに刺激しあう場を設けるなど、環境整備に目を向けなければならない。
織物業については、ちりめん織物以前に、織物全般にたいする知見の深さを表現するための戦略を商工
会主導で考えるべきだろう。27 年度に掲げていた「ものづくりワークショップ」についても、プロジェ
クトの成果に対して商工会がイニシアチブを取りながら戦略的なものづくり、チャネル開拓を支援して
いくべきと思われる。
商工会は織物の産地として与謝野町をブランド化し、各種展示会などでそのクオリティを訴求する具体
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<ブランドコンセプト>
的なプランを、民間事業者とともに作成すべきである。また、市場性を意識した産業とは切り離した上で、
伝統産業としてのちりめん織物の継承を考えなければならない。
組織の機能不全という点でいうと、行政と商工会や観光協会などの連携がなされていないこともあげら
れる。行政よりも現場に近い組織が主体的に方針を打ち出し、行政の経営方針とすり合わせながら共に
活動しなければならないだろう。
また、行政は相変わらずの縦割り組織であり、職員が同じ方向と温度感で活動しているとは言いがたく、
行政内の意識改革やインナーブランディングも必要と感じられる。各種組織を活性化するためには、ブ
ランド戦略推進室を設置するなど横断的なチームを正式に結成する必要があるだろう。
3、もてなしがみえる
<みえるまちを体感・発信する拠点エリアを構築>
阿蘇ベイエリアを拠点と位置づけ、「ヒト、モノ、コト、情報の流れ」をデザインする。それにより、
基幹産業のイノベーションと住民・事業者の挑戦を支え、世界に向けて町の魅力や姿勢を発信する場、
賑わいに満ちた豊かな生活をおくる舞台として再構築する。そのためには、衣食住の豊かさを体現する
カスタマータッチポイント(与謝野町と住民・事業者・来訪者の接点)の不足が課題であり、共感を呼
ぶ仕組みづくり、場づくりを行いながら解消を図ることを目指す。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<ブランドコンセプト>
解説:
ブランド戦略の出口としては、現在要素として整っていない要素を全て整える必要がある。
たとえば町外から訪れた際に満足できるホスピタリティが用意されていない。観光拠点と思われるちり
めん街道ですら飲食店や土産物屋がなく、せっかく訪れてお金を落としていこうと思っても、使う場所
がない。これでは足早にそこを離れるか、そもそも足を運ぶことすらしなくなってしまう。
エンドユーザーとのカスタマータッチポイントを町内に設置することで、フィードバックを得やすくな
り、次に何をすべきか情報を収集することができるようになるだろう。
もてなしを表現する場は阿蘇ベイエリアの再構築に注力する必要がある。そこで自然の恩恵を受けて暮
らしを営んできた与謝野町の衣食住が体現される必要があると感じている。
衣について
織物の町としてバリエーションに富んだ素材を扱っていることをプレゼンテーションできることが望ま
しい。ちりめん織物の過去の成功にすがるのではなく、オリジナリティ
れるハイクオリティな素材を
提供できる産地であるというを訴求するために、世界に通用しているジャカード織はもちろん、綿を扱っ
ても良いと思われるし、すでに衰退した藤織などを横並びで見せることで、織物に精通していた地域で
あることが表現できるだろう。
食について
地産地消による豊かな食文化を表現し、提供する場があると望ましい。それは決して贅沢や華美である
必要はなく、素材そのものが一級であり、日常の中に豊かさがあることを表現するほうが重要だ。
町外の人が与謝野町に求めるものは豪華さではないだろう。地に足のついた生活環境、それによって感
じる心の豊かさに憧れを抱き、それを守り抜こうとする姿勢に共感を覚えるはずだ。
また国内で初めてフリーランスでの試験栽培に成功したホップは話題性が十分にあり、キラーコンテン
ツとして扱うべきだ。TPP を鑑み、輸出農作物としての世界に誇るホップを作り上げることや、その圃
場を来訪者に見せ「安心安全なものづくりの姿勢」をアピールすることもできるだろう。
住(空間)について
与謝野町の雰囲気が存分に味わえる場がなかったり、写真に収めたくなるような風景が凝縮されていな
いことも課題である。
阿蘇海を望む沿岸は埋め立てられてしまった上、柵が設置され、柵の中に入らないことと注意書きがさ
れている。普段から海に接していることで、環境保全にも目を向けるような教育的な地域であることを
目指すべきと考える。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<ブランドコンセプト>
古い町並みは所々にあるものの、それらが空き家となって有効に活用されていなかったり、維持ができ
なくなると取り壊されて町の風景が崩れていくことになる。こういった事態を防ぐために、空き家の活
用や、町並みを整えるための条例を制定する必要があると考える。
また、与謝野町らしい町並みを推進するためのレギュレーションづくりを急務とし、活用されていない
地元の木材の有効活用をする場合に、リフォームの補助金を出すなどの案も検討してもいいのではなか
ろうか。
また、情報発信の仕方でいうと、町のブランドのトーンが一定でないのも課題と思われる。
町の発信する印刷物のデザインに統一感がなかったり、フェイスブックなどでは与謝野町として発信し
ているアカウントが乱立しているため、情報が多面的であっても全体像が掴みにくいのが実状だ。
そのためブランド戦略のためのビジュアルコミュニケーションを整えたり、ブランド戦略にのっとった
活動には共通のエンブレムを貼り付けるなど、町の一体感を醸成するための施策も必要である。
大事なことは、町が統一見解を持っていることを対外的に発信し、アピールしているのだと感じ取れる
ことが大切である。
そのためにもビジュアルコミュニケーションデザインは非常に重要だという認識のもと、毎年の予算も
検討すべきである。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<ブランドコンセプト>
□まとめ
与謝野町の憲章に掲げられているのは、「水・緑・空 笑顔かがやく ふれあいのまち」
自然に敬意を払いながら、その恩恵を享受し、人々が繋がって、本当の豊かさを提供価値としていくこ
とが大切と考える。
今回のコンセプト作成に伴い、ブランド戦略のシンボルとしてマークを作成した。
このロゴに表現されているのは、与謝野町の豊かな資源である。
既存のロゴを活かしながら、モノクロ扱いとすることで、これから色々なカラーをつけていくことがで
きる。色をつけていくのは町民の皆さんだという想いが込められている。
そのため次年度はいよいよ町内の皆さん、また、与謝野町に共感する皆さんが、具体的に行動すること
が何よりも重要である。
※ブランドレギュレーションに関しては別紙参照
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<成果>
A, 「ものづくり産業の強化」
1、織物業 :
1−1、ものづくりワークショップ『Yosano Open Textile Project』の実行
町内の織物事業者(20 代・30 代の若手織物職人)をプロジェクトメンバーに、株式会社ロフトワー
クのファシリテーション、ディレクター水野大二郎氏 / 慶応義塾大学環境情報学部准教授・芸術博
士(ファッションデザイン)、クリエイター(吉行良平氏 / プロダクトデザイナー、浅野翔氏 / デ
ザインリサーチャー、高松一理氏 / ファブディレクター、三重野龍氏 / グラフィックデザイナー等)
が文化的資産を有効活用するためには、革新と保護の両方からアプローチし、「Co-work」によっ
てできる限り可能性を探索し、答えを出す過程を共有する試みを実施した。
<プロセス>
○フィールドワーク:織物の現状を理解し可能性を模索する(2 日間)
↓
○ アイデアソン :みんなで考え、話し、作る
↓
○中間報告会:3 チームの実験をみんなで共有する
↓
○プロトタイプ制作:ワークショップの成果として、チームごとにプロトタイプを制作・発表する
写真:YOSANO OPEN TEXTILE PROJECT オフィシャルサイトより転載
<次年度にむけて>
今回のワークショップの成果を今後の商品開発にどう活かすのかが課題である。ラップアップをし
たのち、商工観光課、商工会を交えて、どのような事業支援を継続するのかを検討する必要がある。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<成果>
A, 「ものづくり産業の強化」
1、織物業 :
1−2、阿蘇ベイエリアマスタープラン策定内で素材活用及び訴求を検討
住民と一緒に楽しむまちづくりを目標として、「与謝野ラウンドテーブル」と称してワークショッ
プシリーズを実施した。
10 月 24 日 ブレストミーティング ( 第 2 回与謝野ラウンドテーブル ) でのフィールドワークとブレ
ストにおいて「織物」チームが機屋を訪れ、活用の可能性を検討。次回のラウンドテーブルで町内
業者の製品を収集し展示することを目標と設定された。
11 月 21∼23 日に開催されたトライアル /3DAYS( 第 3 回与謝野ラウンドテーブル ) では「与謝野
の織」と題して、山与醤油株式会社倉庫の一部空間に、織物によるインスタレーショ ンを設置。
ちりめん織物に触れてその魅力を再確認する機会を設けた。またヨサノキッチン夜の部では反物を
テーブルクロスとして使用。町内外がちりめん織物を身近に感じる機会を創出した。
「阿蘇ベイエリア活性化マスタープラン」において、織物の訴求方法として、機屋の町並み保存、
機屋による織物体験、ショップ・イベントスペース・ギャラリー等の情報発信の場の形成、将来的
にはブランドを強化するインキュベーション施設・研究所等の開設・運営が提案されている。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<成果>
A, 「ものづくり産業の強化」
2、農業 :
2−1、クラフトビール醸造に向けたホップ栽培
農林課と京都与謝野ホップ生産者組合で試験栽培を実施。8月にはホップが収穫でき、10月に初
開栓となった。クラフトビールをキラーコンテンツとした与謝野ブランドのメディアリーチは想像
以上に効果が高く、各種メディアで複数ページを裂いてもらう結果となった。
また、エムテド代表 田子 學 が登壇する講演、セミナー等では「地方創生 × クリエイティブ」の
話題への要望がほとんどを占めており、本年度については話題性の中心として「クラフトビール醸
造事業」が最適であった。与謝野ブランド戦略としてのイメージの定着に大きく貢献した事業といっ
て良い。
2015 年 12 月 12 日開催の「HEART CATCH 2015」においては、町長及び商工観光課担当職員と
共に登壇する機会を得た。
PR 費を全く用いずに、与謝野町の名前を全国規模にアピールした点で、大きな広告効果を上げた
と言ってよいだろう。(広告換算値 1100 万円以上)
掲載メディア
・ 日経ものづくりオンライン(WEB)
・ 日経デザイン(雑誌)
・ 事業構想(雑誌、WEB)
・ブレーン(雑誌、WEB)
・ AXIS(雑誌)
・ Forbes(予定。取材済み)
(雑誌)
・ 先見経済(※田子學連載枠にて不定期にトピックスを掲載)(雑誌)
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<成果>
A, 「ものづくり産業の強化」
2、農業 :
2−1、クラフトビール醸造に向けたホップ栽培(つづき)
<次年度に向けて>
ホップ栽培にあたっては、生産者組合の知見により試験栽培を成功させたが、本年の成功の理由の
分析はこれからとなる。次年度は SOFIX 等の活用を含め、安定供給に向けた取り組みを推進する
必要がある。また、豆っこ肥料の使用を含め、与謝野町ならではの栽培方法の確立も望まれる。
ビール醸造にあたっては、生産者組合の個人的なつながり等に任せ、ホップの販売∼ビール醸造、
保管監理等まで任せている状態である。六次産業化を進め、付加価値の高い商品を製造するための
シナリオが煮詰められていないのが実状であり、残す二年間のマイルストーンが明確にされる必要
がある。
特に今後出版される国際的ビジネス誌「Forbes」の表紙を飾ることは非常に大きな成果であると考
える。今後は国内外から町政へ注目が集まる中で、継続的に話題を作り、メディア露出を繰り返す
ためにも、本事業は最も重要と言っても過言ではない。
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<成果>
B,「プロモーションの強化」
1、タウンプロモーション : 上記調査をもとにプロモーション展開
以下のサイトにて週1回のペースでドキュメンタリー映像を公開した。
http://yosano-weaver.jp
宣伝会議「ブレーン」においてプロジェクト概要が掲載され、与謝野町がクリエイティブに注力し
ていることを日本全国にアピールした。
<次年度に向けて>
本年の活動で、町にどのようなプレイヤーが存在するのかがアーカイブできた。取り上げられたプ
レイヤーのモチベーション向上に寄与したことと思われる。常に誰かに見られているという良い意
味での緊張感は継続すべきではないかと考える。
このようなプロモーションを行うことで、町内外の学生・児童に与謝野町内の産業へ興味喚起を行
うことは、人材育成の上で大変意義深い。特に町内においては、こういった活動をきっかけに、与
謝野町へ誇りを抱くようになり、大人になった時に与謝野町で働こうと考えるであろう。
今後は町政において各プレイヤーとどのように連携したり、支援していくのかが課題である。また、
この活動がブランド戦略の輪郭にどのように影響してくるのか、今後織りなす人のプロジェクトが
どのような展開を目指していくべきか、検討しなければならない。加えて、次世代のプレーヤー育
成にも力を入れ、与謝野町の産業をより深く理解する教育の場や体験の機会があることが望ましい。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<成果>
C, 「エリア構築」
1、阿蘇ベイエリア活性化に向けたマスタープランの策定
マスタープランチーム(隈研吾建築都市設計事務所と Open A)が与謝野ブランド戦略マネジメン
トチームと連携を図りながら、プラン策定にあたった。
ブランド戦略マネジメントチームからは、プラン策定にあたり、町民参加のワークショップの実施
と、その意見集約によるプラン策定のプロセスを要望した。加えて、マスタープランチームが現地
調査へ入る前にブリーフィングを行い、キーワード化したブランドイメージを伝えた上で、ワーク
ショップをファシリテーションするように要望した。
1、ラウンドアバウト
どこからでも入れてどこへでもつながる。小さくても循環するコミュニティが有機的に繋がる、与
謝野ブランドはそんな地域コミュニティを目指したい。
2、エコシステム
持続可能な町を目指すならば、市民全員がアントレプレナーシップ(起業家マインド)を持ち、自
分自身がエコシステムにどう組み込まれるべきかを考え、適材適所に人、モノ、カネが配置されな
ければいけない。
3、起業家マインド ( 教育 )
これからの経済を担う人材に必要といわれているのが「起業家マインド」である。与謝野町は町民
全般にこの必要性を理解してもらい、マインドセットを行うことを目指したいとしている。
4、創造都市ボローニャ
創造都市ボローニャは基本的には自分達の力で大学や研究所をつくったり様々な仕掛けをつくるこ
とで町を発展させた。これからの地方都市に重要なのは、国の助成金をもらうことや大企業を誘致
することではなく、内発的な力でイノベーションを起こすことにある。
5、リノベーション
阿蘇ベイエリアは、与謝野町にとってハブとなり、ここで繰り広げられる様々な営みが地域全体に
派生しなければならない。阿蘇ベイエリアに限定しない、全域に通じるシナリオを作る必要がある。
また、地域コミュニティの活性には、徒歩20分圏内に衣食住が存在することという説がある。町
内の動線と外からの動線をどのように考えるのかは課題であると思われる。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<成果>
C, 「エリア構築」 つづき
6、ちりめん織物
与謝野ブランド戦略では、織物業の再生は単に今までの絹織物市場を拡大することが狙いではない。
新しい産業のあり方を町内の人々が模索したり、モノづくりを通して次世代を担う子供に教育をほ
どこし、この土地でもチャレンジができるのだと、マインドセットをしていくことが重要であると
思っている。それらのシナジーによって、与謝野町の基幹産業が復活したり、新しいビジネスが生
まれることが到達目標である。
7、ホップ栽培
与謝野町で今年から開始したホップの試験栽培。農業からビール製造販売まで、六次産業化を目指
した期待のプロジェクトである。ホップ栽培が成功すると、新しいビジネスや雇用が創出されるこ
とになり、与謝野町にとって大変意義深く夢のある話であり、大きな期待を寄せている。
8、農業
与謝野町では豆っこ肥料を使った自然循環農業を実践している。与謝野ブランドの中核となる大切
な産業であり、今後は普及エリアの拡大を目指したいそうだ。農業の原風景を守ることは、自然の
生態系を守ることであり、その社会的取り組み自体が大きなブランド力となりうる。
9、阿蘇海
現在は産業廃水、生活排水によって外海と比較すると汚れている。阿蘇ベイエリアの開発は、陸だ
けの開発だけでなく、内海環境の再生も視野にいれたい。与謝野町は山も海もある恵まれた土地で
ある。そのため山の環境保全を川上に据え、海を浄化するような意識の醸成も行って行きたい。町
内の人、与謝野町を訪れる人にそのような意識を積極的にもってもらうためには、山や海のフィー
ルドで活動できるアクティビティを用意することも一案だと考える。入りたいと思うような海にし
てプロセス自体も設計する必要がある。
イメージ
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<成果>
C, 「エリア構築」 つづき
9 月 26 日 キックオフミーティング ( 第 1 回与謝野ラウンドテーブル ) のライトニングトークにお
いて、エムテド代表田子學より阿蘇ベイリアへのアプローチについて以下の通り提案した。
阿蘇ベイエリア再構築にあたり、議論の多くは湾岸の陸に偏ったものであることを指摘。その原因
は阿蘇シーサイドパークから阿蘇ベイエリアを臨む風景にあると投げかけた。
合成写真(左)を作成し投影したが、聴衆の多くは普段みなれている風景とどこに差があるのか分
からなかった。次に写真(右)を投影したところ、多くの聴衆が非常に人工的な風景になっている
現実に気付かされたのである。
このように与謝野町に住んでいる方は、あまりに自然が近くにあるために、その恩恵を意識するこ
とが少ないと指摘した。同時にブランドの根底には豊かな自然があることを思い出して欲しいと提
言した。
道路や柵の設置により、海が身近なものでなくなった現状を打開することで、海の保全、さらには
海をつくる山の保全にも目を向けるべきである。
また、ワークショップ前に商工観光課職員が早朝にカヤックを浮かべ試乗した写真も投影した。内
海ならではの穏やかさを満喫し、自然を身近に感じ、共生するために必要なことを気付かせる教育
的観点としては、大変有効であると提案した。
プロポーザルの提案書においては、ベイエリアの陸地に偏ったものであったが、ラウンドテーブル
1回目のこの提言によって、阿蘇ベイエリアのメインは海であることが軌道修正された。また、こ
れをもとに、マスタープラン策定にあたってのメインストーリーが作成されるに至った。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<成果>
C, 「エリア構築」 つづき
参考;
カヤックの試乗。早朝と夕刻は風がおきず水面も凪状態となるため、初心者でも安心して体験が可
能である。朝日をあびながら与謝野町から天橋立に向かって水面ぎりぎりを疾走する爽快感と目の
前に広がる風景は格別である。第 3 回与謝野ラウンドテーブルにおいてもカヤックと SUP の体験
を行った。
京都府が進める「海の京都」事業との親和性もこれで確立できる。
今後の課題としては、阿蘇シーサイドパークへの進路が安全でないこと。道幅が広く、高速で自動
車やオートバイが往来する。また、護岸に柵があることで、各種道具を持ち運ぶのが大変苦労する。
柵の撤去等については検討していただきたいと提言している。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<成果>
D,「与謝野ブランド戦略シンポジウムの開催」
1、ブランドコンセプトの発表
町内外の参加者にブランドコンセプトを共有する以外にも、ブランド戦略を多角的に理解していた
だくために、以下のようにシンポジウムを企画した。
<与謝野ブランド戦略シンポジウム プログラム>
1)与謝野ブランド戦略コンセプト発表
2)基調講演「ブランド戦略における知的財産の活用と有用性」
3)阿蘇ベイエリア活性化マスタープラン中間報告
4)トークセッション「与謝野の魅力を編集」
5)新プロジェクト発表
6)町長メッセージ
以下にその概要を掲載する。
プロローグ
豊かな自然に囲まれ、農林業と織物業を基幹産業とする与謝野町(京都府与謝郡与謝野町 町長:
山添藤真)は、本年度の主要施策の一つに「与謝野ブランド戦略事業」を掲げ、5 月には、田子學
氏(MTDO inc.)をクリエイティブディレクターに招聘し、与謝野町産業振興会議とともに、デザ
インマネジメントによるまちづくりを展開しています。本年度の活動として、ホップの試験栽培を
行う「与謝野クラフトビール醸造事業」をはじめ、同ブランド戦略の拠点として阿蘇ベイエリアの
再構築を目指す「阿蘇ベイエリア活性化マスタープラン策定事業」、ものづくりの担い手を毎週一
本の動画で配信する「織りなす人」など、各プロジェクトを進めてきました。これらプロジェクト
の上位概念として位置する「与謝野ブランド戦略」について、コンセプト等を発表するのが本日開
催することなった「与謝野ブランド戦略シンポジウムーみえるまちー」です。
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<成果>
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1、ブランドコンセプトの発表(続き)
1)与謝野ブランド戦略コンセプト発表
■登壇者:
与謝野町クリエイティブディレクター・田子學氏(MTDO inc.)
■内容:
発表内容としては、冒頭にイメージビデオを流した上で、前述のブランドコンセプトを以下キーノー
トにて発表。
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<成果>
D,「与謝野ブランド戦略シンポジウムの開催」
1、ブランドコンセプトの発表(続き)
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<成果>
D,「与謝野ブランド戦略シンポジウムの開催」
1、ブランドコンセプトの発表(続き)
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<成果>
D,「与謝野ブランド戦略シンポジウムの開催」
1、ブランドコンセプトの発表(続き)
2)基調講演「ブランド戦略における知的財産の活用と有用性」
■登壇者:
日高一樹氏(日高国際特許事務所)
―ビジネスデザイン・知的財産権ストラテジスト、日高国際特許事務所所長、弁理士、知的財産権
侵害訴訟代理人。金沢美術工芸大学産業デザイン学科卒、通商産業技官、特許庁審査官、通商産業
省課長補佐を経て、1990 年日高国際特許事務所設立。現在、京都工芸繊維大学特任教授、東京芸
術大学大学院、金沢美術工芸大学、芝浦工業大学講師、( 社 ) 日本デザインコンサルタント協会副
代表理事、グッドデザイン賞審査委員、東京ビジネスデザインアワード審査委員などを務める。
■内容:
強いブランドをつくるためには、戦略において欠かせいのが「知的財産の視点」である。ビジネ
ス戦略と知的財産権戦略を融合したコンサルティングを中心に、商品開発・デザイン開発及びビジ
ネスプランニングとそれに適合した知的財産権の構築と経営資産化についての方法論・戦略を提供
する日高氏の講演により、事例を通して「知的財産の活用と有用性」について理解を深めた。
3)阿蘇ベイエリア活性化マスタープラン中間報告
■登壇者:
服部一晃氏(隈研吾建築都市設計事務所)
■内容:
与謝野町では「阿蘇ベイエリア」を与謝野ブランド戦略の拠点エリアと位置づけ、空き家・空き
店舗、公共施設、公共空間、阿蘇海の活用などによるエリア再構築のグランドデザイン「阿蘇ベイ
エリア活性化マスタープラン」の策定に向けて、隈研吾建築都市設計事務所と OpenA/ 公共 R 不
動産をパートナーとして事業展開してきた。プラン策定にあたっては、地域産業のイノベーション
と起業・創業へのチャレンジを喚起するリノベーション空間の創出、Fun(楽しさ・共感)と Fan(ファ
ン)を生む空間の創出、エリアの未来を感じさせる「場」づくりと住民の機運醸成を重点ポイント
としており、策定までの過程として「ワークショップ」を重視し、プラン作りとともに、プランを
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<成果>
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1、ブランドコンセプトの発表(続き)
実行できる体制の構築も目指している。ワークショップは、
「与謝野ラウンドテーブル」と題して、
「再
発見」をテーマに、地域住民や事業者をはじめ、与謝野町に思いを寄せる人、今後与謝野町と関わ
りを持ちたい人などに対してオープンでクリエイティブな場を設け、9月と10月にワークショッ
プを実施。11月21日から23日の3日間、ワークショップで実施した「フィールドワーク」や「ブ
レストミーティング」において参加者により発見・発掘された阿蘇ベイエリア内の空間を活用し、
与謝野町の魅力と可能性を秘めるコンテンツや参加者のアイデアを実験的に実現することを目的
に、ワークショップの延長線上として「阿蘇ベイエリアトライアル/3DAYS」を開催した。
「食」
「織」
「阿蘇海」をキーコンテンツとして、拠点となった山与醤油倉庫や阿蘇海ではこれまでになかっ
た与謝野町の風景を創出した。こういったこれまでの取り組みを通じて導き出したメインコンセプ
ト案を発表した。
「与謝野みなとまち」
・ 海の玄関 としての阿蘇ベイエリア
・モノ・人・情報を集積し発信する新しい時代の港街
・与謝野町が生み出す新しい素材や新しい体験を世界に届ける
4)トークセッション「与謝野の魅力を編集」
■登壇者:
田子學(MTDO inc.)
馬場正尊氏(Open A/ 公共 R 不動産)
―建築家。1968 年佐賀県生まれ。1994 年早稲田大学大学院建築学科修了。博報堂で博覧会やショー
ルームの企画などに従事。その後、早稲田大学博士課程に復学。雑誌『A』の編集長を経て、2003
年 OpenA Ltd. を設立。建築設計、都市計画、
執筆などを行う。同時期に「東京 R 不動産」を始める。
2008 年 よ り 東 北 芸 術 工 科 大 学 准 教 授。建 築 の 近 作 と し て「TABLOID(2010)、
「観 月 橋 団 地」
(2012)、
「道頓堀角座」(2013) など。近著は『RePUBLIC 公共空間のリノベーション』( 学芸出版 ,
2013)、
『PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた』( 学芸出版 ,2015)
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<成果>
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1、ブランドコンセプトの発表
■内容:
阿蘇ベイエリア活性化マスタープラン策定のパートナーであり、ワークショップ「第2回与謝野
ラウンドテーブル」でもファシリテーターを務めた馬場正尊氏(OpenA/ 公共 R 不動産)と、与謝
野町クリエイティブディレクターの田子學が、与謝野町で発見した魅力や潜在的な可能性、それら
を編集して生み出される新しい価値について語り、「与謝野ブランド戦略」や「阿蘇ベイエリアプ
ロジェクト」のこれからを展望した。
5)新プロジェクト発表
■登壇者:
与謝野町長 山添藤真
■内容:
『Yosano Open Textile Project』
与謝野ブランド戦略の「ものづくり産業の強化」に位置づける新プロジェクト「Yosano Open
Textile Project」を発表した。パートナーは株式会社ロフトワーク。「与謝野発、織物の可能性を
みんなで作り考える」をテーマに、町内織物事業者と異業種のクリエイターがコラボレーションし
て織物業が秘める可能性を探り、新しい価値を生み出すプロジェクトとして、1月から3月まで実
施することを発表した。
6)町長メッセージ
シンポジウムを総括し、「与謝野ブランド戦略」による新しいまちづくりについて、与謝野町長 山添藤真が展望・決意を語った。
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<成果>
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2、ブランドイメージパネル制作
与謝野ブランド戦略コンセプトの背景となる情報を A2 パネル 10 枚にして会場に掲出した。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<成果>
D,「与謝野ブランド戦略シンポジウムの開催」
3、シンポジウム告知チラシ作成
与謝野ブランドがクリエイティブに注力していることを町内外に多く訴求するため、インパクトの
大きな新聞折込チラシを作成し、従来の行政へ対するイメージの刷新を図った。作成にあたっては、
企画編集、テキスト原稿作成、グラフィックデザイン、DTP を行った。また、申込み方法も従来
の電話・FAX に加え、メールアドレス、QR コードも掲載することを提案し、若い世代がより多く
町政に興味を持つような工夫を行った。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<成果>
D,「与謝野ブランド戦略シンポジウムの開催」
3、サインの作成
シンポジウム会場前に掲出するサインのデザインを行った。タイトルをひらがな表記とすることで、
行政の硬いイメージを払拭し、誰もがこのムーブメントに参画が可能であるオープンなイメージを
演出した。今後のブランド戦略活動の際には会場前にこのサインを掲出し、イメージ定着を図る。
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1、与謝野ブランド戦略の策定
<成果>
D,「与謝野ブランド戦略シンポジウムの開催」
4、ブランドサイト制作
シンポジウムで発表した与謝野ブランド戦略コンセプトを町内外のより多くの方と共有するため
に、ブランドサイトの制作を実行した。
形式としては和英によるバイリンガルサイト。デバイスはスマートフォンを前提とし、PC でも閲
覧できるようなプログラム仕様とした。
サイトマップは以下の通り。
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<成果>
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4、ブランドサイト制作(続き)
デザインは以下の通り。
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4、ブランドサイト制作(続き)
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2、与謝野ブランド戦略マネジメント体制の構築と確立
<体制づくり>
□当初計画
与謝野ブランド戦略マネジメント体制は前述の通り、就任時にすでに与謝野町商工観光課、産業振
興会議メンバー、エムテドによって形成されていた。それらのブランド戦略推進チームが月1回の
会合にて意見を取りまとめ、紐づく各プロジェクトに助言や進言を行うもののとしていた。
□今後の課題
行政の課題:
本年度は商工観光課担当職員が与謝野ブランド戦略に関する窓口業務を担当したが、実際に討議を
はじめると、町内の情報を幅広く集約する必要があった。しかしながら、こちらからの働きかけが
ないかぎり、横断的情報が積極的に提供されることがなく、フィールドワークに時間を要した。行
政特有の縦割り組織の弊害が如実に表れたのは否めない。商工観光課担当職員にかかる負荷が日に
日に増大していったことも今後の課題であり、生産性の向上のためにも横断的な組織編成を要する。
また、PR にかかる予算を当初より計上していない傾向が特徴的である。与謝野町オフィシャルサ
イト上でブランドイメージを訴求できないことや、予算不要な FACEBOOK を利用した各種メディ
アの乱立や、各プロジェクトごとに立ち上がっているドメインの不
いなサイト構成等は問題であ
り、ブランドの輪郭を不明瞭にしていることは否めない。今後はブランド戦略公式サイトが立ち上
がるが、そこの運営管理者やコンテンツの企画編集者が必要となる。
また行政以外にも商工会、観光協会、教育委員会等、各所との連携が不足していることは否めない。
周囲の組織とも連携を図りながら、限られたマンパワーで効率よく事業を運営していく組織づくり
は改善の余地があると思われる。
加えて、行政内で立ち上がっている会議体において、似たようなことが議論されていた。その内容
が産業振興会議において共有、議論されることがなく、町として一つの方向性を打ち出すための情
報の集約に大変苦労した。効率をあげ生産性を重視するためにも似通った会議体は極力減らし、兼
任しているメンバーの負荷を軽減する必要があると思われる。
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2、与謝野ブランド戦略マネジメント体制の構築と確立
<体制づくり>
産業振興会議の課題:
本年の産業振興会議メンバーは実際に事業を行っている30代∼50代を中心としたプレーヤーに
よってメンバーが構成されていた。そのため従来の形式的会議に留まらない会議となったことは良
い結果であると思われる。
一方、公開会議という限界や障壁を感じたのも事実である。それぞれにアイデアがあっても、参加
メンバーが各事業を抱えていることによって、それを公の場で共有する事は大変難しかった。まし
てビジネスモデル等の知的財産に関わるコンテンツについては、公開することは大変難しい。ブラ
ンド構築に際してクリエイティブな戦略を立てる場合は、産業振興会議という枠組みは適切ではな
いと感じた。
シンポジウム終了後の12月末日の打ち合わせにおいて上記は商工観光課担当職員と共有し、次年
度のチーム形成の参考としてもらうことにした。
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3、与謝野ブランド戦略各プロジェクト等へのアドバイス
<知的財産>
シンポジウムにおいて、日高一樹氏に知的財産戦略に関する必要性をプレゼンテーションしても
らった。TPP においても今後国家の発展のためには知的財産戦略が重要な項目であると設定され
ているが、日本においてはまだまだ知的財産の活用性や有用性の理解が乏しく、それに投資する意
識が大変希薄である。
□課題:
本年度の戦略においても常に知財戦略と抱き合わせで議論されることが少なかった。また今後のブ
ランド構築では、競争優位性、独自性(差異化)を図るためには、知財の存在がかかせない。議論
の中で出てきたものを事務処理する人材が必要なのではなく、より多くの実績をもち、戦略に長け
た外部有識者を活用することも考慮するべきではないだろうか。
<PR 戦略>
PR に関する戦略チームが存在しないことで機会損失をしていると思われる。強いブランドをつく
るためには、戦略において欠かせいのが「周到なメディア戦略」である。本年の活動にあたっては、
クリエイティブディレクター就任に際し、全国規模で発信力のあるメディア各所に通達をし、町担
当職員への紹介を行った。その後、地方創生特集を組む雑誌、WEB メディアにおいて、与謝野ブ
ランド戦略を題材としたいとする取材に多數対応することに成功した。
従来は新聞地方紙で旧来型のニュースを発信することがほとんどであったが、全国規模かつ影響力
を持つニュース源にリーチできたことで、与謝野町外へ与謝野町を知らしめることに貢献した。
□課題:
今後の課題としては、継続的なニュースリリースを発信し続けながら、メディアとのパイプライン
を途絶えさえない努力が必要である。実際に起きたことの報告となるリリースにとどまらず、記者
の視点で記事を書き上げてもらえるような、メディアが集まりやすい話題作りの視点が必要である。
また、より深いパイプラインを形成するために、メディアを招待した成果発表の開催等、PR に力
点を置いた予算配分と目標設定が必要であると思われる。
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3、与謝野ブランド戦略各プロジェクト等へのアドバイス
<ビジュアルコミュニケーション>
ブランド構築に必要なことはイメージの定着である。そのため、情報を発信するコミュニケーショ
ンは一定のクオリティを保つ事が望まれる。
町が発信する印刷物はもちろんのこと、WEB サイトに掲載する写真のクオリティマネジメント、
各種イベントデザイン等、一環したビジュアルコミュニケーションが必要とされる。
□課題:
本年度はエムテドが様々なデザイン作業を行ったが、ブランドイメージを維持するためには、エム
テド不在となった時点でもクオリティを担保するクリエイティブ人材も必要と思われる。また、リ
リース一つとっても、文章作成、グラフィックデザイン等は全て専門職が存在し、ギャランティが
発生する類いの作業である。都度制作するものに費用が発生することも予定しておかなければなら
ない。
<VI の検討>
一定のクオリティでビジュアルコミュニケーションのマネジメントを実行するために、ブランド戦
略としては次のとおりレギュレーションを提案した。
1、フォント
2、ロゴマーク
3、2015-2016 スローガン
4、ブランドシール
上記詳細は次ページに掲載する。
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3、与謝野ブランド戦略各プロジェクト等へのアドバイス
<VI の検討>続き
< フォントレギュレーション >
見出し:英文フォント
DIN 1451 std Mittelschrift
ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ
abcdefghijklmnopqrstuvwxyz
1234567890!” #$%&’ ()0`{+*}<>?_
見出し:和文フォント
汎用フォントではないため
02 うつくし明朝
よりブランドイメージを訴求したい場合や
特長のあるデザインを求める場合に
あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねの
はひふへほまみむめもやゆよらりるれろわをん
アイウエオカキクケコサシスセソタチツテトナニヌネノ
ハヒフヘホマミムメモヤユヨラリルレロワヲン
!”#$%&’()=∼|`『+*』<>?_
用いるフォント。
本文:和英フォント案1
游ゴシック Bold /トラッキング 50
あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねの
はひふへほまみむめもやゆよらりるれろわをん
アイウエオカキクケコサシスセソタチツテトナニヌネノ
ハヒフヘホマミムメモヤユヨラリルレロワヲン
! #$%& ()=∼|`『+*』<>?_
WIN / MAC ともに使用できる汎用フォント。
WEB のフォントにも設定している。
本文:和英フォント案1
游ゴシック Medium /トラッキング 50
あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねの
はひふへほまみむめもやゆよらりるれろわをん
アイウエオカキクケコサシスセソタチツテトナニヌネノ
ハヒフヘホマミムメモヤユヨラリルレロワヲン
! #$%& ()=∼|`『+*』<>?_
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3、与謝野ブランド戦略各プロジェクト等へのアドバイス
<VI の検討>続き
< 与謝野ブランド戦略ロゴ >
基本デザイン
与謝野町の既存ロゴマークをモノクロに置き換え使用する。
与謝野町のロゴのシルエットを活かしながらも、モノトーン(ニュートラル)にすることで、こ
れからの新しい町政に対して固定概念を植え付けることないように心がけた。
また、これからは町民がこれに色をつけていくべきである、というメッセージも込められている。
ブラックは伝統的なイメージに合致するのはもちろんのこと、エッジの効いたモダンなイメージ
を与えることも可能である。
反転する場合
(背景の明度が暗く視認性が悪い場合)
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3、与謝野ブランド戦略各プロジェクト等へのアドバイス
<VI の検討>続き
<2015-2016 スローガン >
H27 年度予算に掲出したスローガンをブランド戦略スローガンに位置づけ積極的に掲出する。
協議の上、新たなスローガンの必要性が生じた場合は、適宜変更していく。
< ロゴ+スローガン >
2015-2016 の活動においては、ロゴと組み合わせて使用することで訴求力を高めることとする。
基本デザイン(縦)
反転する場合
基本デザイン(横)
反転する場合
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3、与謝野ブランド戦略各プロジェクト等へのアドバイス
<VI の検討>続き
< ブランドシール >
与謝野ブランド戦略事業の PR 促進ツールとして、シールを制作、活用する。
<シール使用の基準>
・与謝野ブランド戦略事業メンバーで協議の上、与謝野ブランド戦略事業のコンセプトを理解し
掲出に適切であると承認した活動体にデザインを無償で提供する。
□今後の課題
提案したレギュレーションを行政の事務作業に徹底させる体制を構築しなければならない。
また、ブランドシールの運用にあたっては、どのようにシール使用の認定を行うのかといった評価
軸や規約づくりを要する。
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3、与謝野ブランド戦略各プロジェクト等へのアドバイス
<その他>
与謝野ブランド戦略に関連して、以下の開催へのアドバイスや登壇を行った。
□リベラルアーツ推進事業
通念のプログラム構成を確認し、アカデミックに偏っていることを指摘。特にタイトルが大学の講
義名のようで、日々の事業や暮らしへの実用性が感じにくかった。目標はアントレプレナー精神の
醸成であり、講義内容に工夫をすることを申し伝えた。また、なぜ与謝野町がクリエイティブに注
力しているのかという点について理解を深めてもらえるよう、田子 學によるデザイン講座を開講
した。会場が満員になり、町内外のクリエイティブに対する関心の高さが伺えた。
□起業家セミナー
これから必要な人材育成を推進するために商工会主催、与謝野町後援の YOSANO 企業セミナーを
開講した。企業に必要なマインド、環境等について、事例とともに紹介した。町内外の意識の高い
人材が参加したが、商工会がどのようにこのような人材を支援して行くかという点が今後の課題で
ある。
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4、総括
おわりに
平成27年5月に就任して以降、ヒアリングを中心としたフィールドワークを重ね、与謝野町が潜在
的に保有する資源や可能性を多く見つけることができた。
最も印象的であったことは、町が自ら有機質肥料を製造し、自然循環農業を打ち出していることだ。
さらに SOFIX や e- 案山子など、ICT を活用した新しい農業を模索していることにも強い興味を持った。
反面、農業に関する PR 戦略には力が入っていないと感じた。特 A を連続で取得するほどの美味しい
お米ですら、都心に住んでいる者はその名を目にすることはない。高い品質を市場で認めてもらう施策
は積極的に進めるべきである。
これら農業の品質を担保する大きな要因は、大江山連峰に囲まれた地形にある。野田川には鮭が
上
し、川の水は阿蘇海と流れ込んでいる。これら自然の恵みを背景に与謝野町という町の営みがあること
を、町民の多くは自覚がなかったり忘れてしまっていることも印象的であった。
阿蘇海を望む沿岸には柵が張り巡らされていることも象徴的であった。自然に畏敬の念を抱きながら、
共存しようとする姿はそこに見当たらない。結果、阿蘇海を綺麗にするために、山の手入れをしなけれ
ばならないことも後手に回っていることは否めない。
今こそ柵を取り払い、本当の循環型社会を目指す町になって欲しいと感じる。
かつて隆盛を極めた織物業も、絹織物の市場の縮小から打開策を見い出しにくい。しかしながら、す
ぐに売れるものを考えるというのでは、短絡的で拙速な結果となることは目に見えている。今必要なこ
とは、各事業者のポテンシャルを発揮させ、養蚕事業も視野に入れながら、独自の事業モデルを模索す
ることにあるだろう。
町に課せられた使命は、それを実現するための環境を整備することに他ならない。本年度のものづく
りワークショップを皮切りに、その後の事業化支援、PR 支援等を多角的に行うことを期待する。
本年はクラフトビール醸造に向けたホップの試験栽培が成功したことは最も大きな功績であった。こ
のニュースによって、今まで取り上げてくれなかったような全国規模の媒体が「ちいさな町」に誌面を
裂いてくれる事態に発展した。今となっては、地方創生のユニークなモデルとして国際的ビジネス誌ま
で振り向いてくれる結果となった。
平成28年は構想を実行する年である。それにはより早いスピードと、町内外の共感や支援が必要に
なることであろう。ブランド戦略チームの結束を高め、ブランドの輪郭をより明瞭にしていきたいもの
である。
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