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胸腔鏡下肺生検後に急性増悪した特発性肺線維症
806 日呼吸会誌 40(10),2002. ●原 著 胸腔鏡下肺生検後に急性増悪した特発性肺線維症症例の検討 榎本 達治1) 川本 雅司2) 功刀しのぶ2) 平松久弥子1) 榊原桂太郎1) 臼杵 二郎1) 吾妻安良太1) 平井 恭二3) 悠2) 工藤 翔二1) 潔3) 小泉 福田 要旨:1997 年 1 月から 2001 年 12 月までの 5 年間に当院で施行された胸腔鏡下肺生検で通常型間質性肺炎 と診断された特発性肺線維症 9 例のうち 2 例が術後急性増悪を起こした.増悪はいずれも術後第 6 病日に 生じた.増悪例と非増悪例の術前評価・術中管理・術後経過・病理所見を比較検討した.増悪した 2 症例 では末梢血白血球数,血清 KL-6 が高く,動脈血酸素分圧,肺活量,1 秒量が低い傾向がみられた.また, 術中 100% 酸素吸入時間が長く,術後胸腔ドレーン抜去が困難な症例,病理所見で fibroblastic foci が多く, 細胞浸潤の強い症例で増悪が生じた.疾患活動性が疑われ,低肺機能の特発性肺線維症疑い症例の胸腔鏡下 肺生検の施行については,このような危険因子の克服を視野に入れた再検討が必要と考えられる. キーワード:特発性肺線維症,通常型間質性肺炎,胸腔鏡下肺生検,急性増悪 Idiopathic pulmonary fibrosis,Usual interstitial pneumonia,Video-assisted thoracoscopic surgical lung biopsy, Acute exacerbation 緒 間質性肺疾患における胸腔鏡(video-assisted coscopic 職業歴:設計業,研磨業に 7 年間従事したことがある. 言 現病歴:3 年前より労作時呼吸困難出現し,近医で間 thora- 質性肺炎と診断をうけ,対症療法を受けていたが本人の surgery ; VATS)下肺生検は,臨床所見や画 希望で,当院初診,1999 年 10 月 9 日精査目的入院となっ 像所見が非特異的であった場合,確定診断や治療方針決 定のため,必須の検査と考えられる.しかしその結果が た. 入院後経過:白血球が 10,100 と上昇,KL-6,SP-D の 通常型間質性肺炎(usual interstitial pneumonia ; UIP) 上昇を認めた(Table 1) .HR-CT 上典型的蜂巣肺の形 であった場合,手術侵襲が病態の悪化を招くこともあり, 成がなくスリガラス影が有意であった(Fig. 1A) .以上 安全に施行されなければならない.今回著者らは VATS より臨床的に non-UIP,剥離性間質性肺炎(desquama- 下肺生検術後に急性増悪した 2 例を経験したので報告 tive interstitial pneumonia ; DIP)や塵肺が疑われ,同 し,その再発防止のため,術後増悪しなかった症例と術 年 10 月 26 日 VATS 下肺生検を施行した.VATS 下に 前評価・術中管理・術後経過・病理所見を比較し,安全 左 S 1+2 a,S 5,S 10 c を stapler を用いて,wedge resection 性確保の可能性につき検討したので報告する. し,stapler 部分にフィブリン糊を噴霧し,air leak のな 症例呈示 症例 1. いことを確認し終了した.生検病理所見では UIP と診 断された. 術後に,皮下気腫の合併,術側肺の拡張不良にて胸腔 49 歳男性. ドレーン管理が続いていた(Fig. 1B)が,呼吸状態は 主訴:労作時呼吸困難. 安定しており,感染の徴候は見られなかった.術後第 6 既往歴:糖尿病,慢性 C 型肝炎. 病日,低酸素血症,発熱を認め,胸部レントゲン所見を 家族歴:特記すべきことなし. 含めて急性増悪と診断した.急性増悪時のレントゲンで 喫煙歴:40 本! 日,20 から 40 歳. は,両側性にスリガラス影および consolidation の悪化 〒113―8603 東京都文京区千駄木 1―1―5 1) 日本医科大学内科学第 4 講座 2) 同 第 1 病理学教室 3) 同 外科学第 2 講座 (受付日平成 14 年 6 月 13 日) が認められる(Fig. 1C) .同日よりステロイドパルス療 法,ウリナスタチン投与等にて加療するも改善得られず, 術後第 9 病日死亡した.病理解剖を行ったが,感染の所 見はなく,急性増悪であったことを確認した. 症例 2. VATS 下肺生検後急性増悪した IPF 症例の検討 807 Table 1 Clinical characteristics of cases Acute exacerbation cases Age(yrs) Sex Brinkman index WBC(/μl) CRP(mg/dl) LDH(IU/l) KL-6(U/ml) SP-D(ng/ml) SP-A(ng/ml) TP(mg/dl) TC(mg/dl) Case 1 Case 2 49 male 800 10,100 0.8 483 1,030 271 62.4 8.0 168 64 male 190 9,700 0.4 559 1,134 320 60.5 6.0 238 Non-exacerbation cases(n=7) Mean values(ranges) 60.1(47―70) M/F: 6/1 1,035(0―1,880) * 7,243(5,800―9,000) 0.9(0.1―3.1) 432(324―670) 685(435―1,210) 246(77―574) 93.3(43.6―214.0) 7.3(6.5―7.8) 217(190―275) * = p < 0.05(Mann-Whitney’ s U test) WBC = white blood cell count, CRP = C-reactive protein, LDH = lactate dehydrogenase, SP = surfactant protein, TP = total protein, TC = total cholesterol A B C Fig. 1 (A)Case 1 : Chest HRCT obtained on admission showing ground-glass opacity in both lower lung fields without typical honeycombing. (B)Case 1 : Chest radiograph 4 days after biopsy.(C)Case 1 : Chest radiograph 6 days after biopsy. More marked ground-glass opacities are observed in(C)than in(B) . Fig. 2 Case 2 : Chest CT obtained on admission showing(A)more granular opacity in the right upper field and larger cystic formation in the left upper field than that in(B) , and areas of honeycombing in both lower fields. 64 歳男性. 現病歴:健康診断で胸部 X 線上異常を認め近医受診, 主訴:労作時呼吸困難,乾性咳嗽. 間質性肺炎疑いにて当院紹介,1999 年 5 月 6 日精査目 既往歴:特記すべきことなし. 的入院となった. 家族歴:特記すべきことなし. 入院後経過:白血球が 9,700 と高値,KL-6,SP-D の 喫煙歴:5 本! 日,20 から 58 歳. 上昇,低酸素血症,低肺機能を認める(Table 1) .CA 職業歴:椅子の取り付け. 19-9 2,300,CA-50 1,030,Span-1 730 と上昇を認め,消 808 日呼吸会誌 40(10),2002. Table 2 Arterial blood gas analysis and pulmonary function before operation Acute exacerbation cases PaO2(torr) PaCO2(torr) AaDO2(torr) VC(l) %VC(%) FEV1(l) %FEV1(%) FEV1/FVC(%) RV/TLC(%) Case 1 Case 2 61.7 44.5 32.7 1.60 43.2 1.46 39.5 94.5 ND 40.1 44.9 35.8 1.22 47.5 0.98 44.1 92.5 40.4 Non-exacerbation cases(n=7) Mean values(ranges) * 82.1(67.4―100.0) 42.2(35.9―50.4) 16.7(0―43.1) * 2.78(1.65―4.76) * 86.8(59.2―141.7) 2.24(1.32―3.02) * 88.1(45.4―118.9) 87.2(70.4―98.9) 37.5(26.4―65.6) * = p < 0.05(Mann-Whitney’ s U test) 化管,肝・胆・膵の精査を行うも異常が認められなかっ 手術時間,麻酔時間,麻酔の種類,出血量,輸液バラン た.HRCT 上,両側肺底部に蜂巣肺の形成を認め(Fig. ス,100% 酸素吸入時間,最大気道内圧,片肺換気時間, 2B) ,上肺野では右肺には粒状影,左肺には下肺の蜂巣 胸腔ドレナージ期間とした.病理所見としては,標本内 肺より大きな!胞状陰影が認められた(Fig. 2A) .以上 に認められる Mallory body の数,1 cm2 あたりの fibro- より UIP が極めて疑わしいものの,画像上非典型所見 blastic foci の平均個数,リンパ球,好中球の浸潤の程度 を含むこと,腫瘍マーカー上昇の原因が明らかでないこ とした. と よ り 同 年 5 月 11 日 VATS 下 肺 生 検 を 施 行 し た. これらの結果を術後増悪した例と増悪しなかった例に VATS 下に右 S 2,および下葉を stapler にて wedge re- 分け比較検討した.統計学的検索には,Mann-Whitney section が施行し,air leak のないことを確認し終了した. の U 検定またはカイ 2 乗検定を用いた. 生検病理所見では UIP と診断された. 結 術後,術肺の拡張不良にて胸腔ドレーン管理が続いて いたが,呼吸状態は安定しており経過良好であった.術 後第 6 病日低酸素血症認め,CRP,LDH の増加,胸部 レントゲン所見より急性増悪と診断した.増悪時のレン トゲンでは両肺特に右肺すなわち術側に強く consolida- 果 9 症例中,術後 1 カ月以内に急性増悪を起こしたのは, 冒頭の 2 例のみで,いずれも術後第 6 病日に発生した. (1)術前評価(患者背景,Table 1) 年齢,性別,喫煙歴,血清 CRP,LDH,SP-D,SP-A, tion が出現していた.同日よりステロイドパルス療法, 総蛋白,総コレステロールには増悪例と非増悪例で差が ウリナスタチン投与を行い,人工呼吸管理を開始した. 認 め ら れ な か っ た.末 梢 血 白 血 球 数 は,増 悪 2 例 で 感染否定のために,気管支鏡下に洗浄を行ったが感染徴 10,100, 9,700! µl と有意に高値を示した. 血清 KL-6 は, 候は認められなかった.加療を行うも改善せず,術後第 増悪 2 例で 1,030,1,134 U! ml と統計学的有意差は認め 28 病日死亡した. られないものの,高い傾向が認められた. 臨床的検討 対象と方法 1997 年 1 月から 2001 年 12 月までの 5 年間に当院で 施行された VATS 下肺生検で UIP の所見を得て,特発 性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis ; IPF)と診 (2)術前評価(術前動脈血液ガス分析・肺機能,Table 2) 61.7,40.1 torr, 増悪 2 例では,動脈血酸素分圧(PaO2) 肺活量(VC)1.60,1.22 l ,肺活量! 予測肺活量(%VC) 43.2,47.5%,1 秒量! 予測 1 秒量(%FEV1.0)39.5,44.1 %と非増悪例に比べ有意に低値を示した. (3)術中術後管理(Table 3) 断した 9 例を対象とし,診療録および病理標本を retro- 手術時間,麻酔時間,麻酔の種類,出血量,輸液バラ spective に検討した.調査項目は,術前評価として,年 ンス,最大気道内圧,片肺換気時間には,増悪例,非増 齢,性別,喫煙歴,術前末梢血白血球数,血清 CRP,LDH, 悪例で差が認められなかった.増悪した 2 例では,術中 KL-6,Surfactant protein(SP) -D,SP-A,総蛋白,総 の 100% 酸素使用時間が 165,123 分と,非増悪例に比 コレステロール,および術前,動脈血血液ガス分析,肺 べて統計学的有意差はないものの長い傾向が認められ 機能(スパイロメータ) とした.術中術後管理としては, た.また,術後胸腔ドレナージを要した期間は増悪した VATS 下肺生検後急性増悪した IPF 症例の検討 809 Table 3 Anesthetic and surgical management Acute exacerbation cases Operation time(min.) Anesthetic time(min.) Anesthetic type Blood loss(ml) Total balance(ml/kg/hr) FiO2 = 1.0(min.) Max. airway pressure(cmH2O) One lung ventilation time(min.) Duration of chest drainage(days) Non-exacerbation cases(n=7) Case 1 Case 2 Mean values(ranges) 145 230 GOS 0 2.72 165 24 95 6 110 220 GOS + Epi 0 4.25 123 25 40 28 113.4(45―185) 219.7(145―275) GO+Epi: 1, GOI+Epi: 1, GOS+Epi: 5 21.4(0―100) 4.84(2.84―8.26) 104.1(0―175) 22.4(17―30) 103.6(40―140) * 3.4(1―8) * = p < 0.05(Mann-Whitney’ s U test) Table 4 Pathological findings Acute exacerbation cases Mallory body(/ all fields) Fibroblastic foci(/cm2) Lymphocyte infiltration Neutrophil infiltration Case 1 Case 2 0 5.5 + + + + 2 4.2 + + Non-exacerbation cases(n=7) Mean values(ranges) 0.28(0―1) 2.07(0.41―5.50) − /+: 4, +: 2, + +: 1 − : 3, − /+: 4 * = p < 0.05(Mann-Whitney’ s U test) Grade of cellular infiltration: −= none, − /+ = slight, += mild, + += moderate 2 例で 6 日間,28 日間と非増悪例の平均 3.4 日間に比べ 有意に長期間を要していた. 生検後の 30 日以内の死亡は 9 例中 2 例,22.2% となる. これら死亡率はいずれも極めて高く,術後増悪症例を (4)病理所見(Table 4,Fig. 3) 術前に予測することは,重要である.術後の急性増悪症 病理所見はいずれも UIP であり,Mallory body の数 例について,詳細に記された報告は少ない.今回の症例 には差が認められなかったが,fibroblastic foci の平均個 はいずれも術後第 6 病日に急性増悪を引き起こした.そ 数は増悪した 2 症例で,5.5,4.2! cm2 と多い傾向が見ら の増悪症例では,術前の末梢血白血球高値,血清 KL-6 れた.また,リンパ球,好中球の浸潤も強い傾向が認め 高値を示した.血清 KL-6 の高値は疾患活動性を示唆す られた. るものと考えられる7)8).また,須賀らは,末梢血白血球 考 高値の特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumo- 察 nia ; IIP)症例が気管支肺胞洗浄後に急性増悪したこと 間質性肺疾患における VATS 下肺生検は,臨床所見 を報告し9),その機序として,好中球による組織傷害に や画像所見が非特異的であった場合,確定診断や治療方 着目し,末梢血白血球が増加している状態では IIP の活 1) ∼3) .しかし,その結果 動性が上昇した際には肺組織へ動員される白血球が多い が UIP であった場合は,画期的治療法がない2)現状にお ことが予測され,その結果組織傷害が重篤になると推測 いては,患者に与えるメリットは少ない.我々の施設で している.我々の症例でも同様の機序が考えられる.ま は,臨床所見や画像所見から典型的 IPF と診断できる た,我々の症例で,増悪 2 例の組織所見で,fibroblastic 症例においては,VATS 下肺生検を行っておらず,過 foci が目立って認められた.これは増悪 2 例が,他の 7 去 5 年間に VATS 下肺生検で UIP の結果を得て,IPF 例に比べ活動性のある症例であったことを裏付けてい と診断した症例は,9 例のみであった. る10).増悪 2 症例は,リンパ球や好中球の細胞浸潤の比 針決定のために推奨されている IPF 症例における VATS 下肺生検の危険性を示す報 告も散見され,外科的生検後 30 日以内の死亡率は, 13.6∼60% と報告されている 4) ∼6) .今回の急性増悪例は, 術後第 9 病日および第 28 病日に死亡しており,外科的 較的強い症例であったが,特にリンパ球浸潤については, 広範な胞隔への浸潤や,リンパ濾胞を形成するものでは なく,原因不明の間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias ; IIPs)の分類基準11)から UIP と診断した. 810 日呼吸会誌 40(10),2002. おいても病態解明や治療法確立のためには,VATS 下 肺生検は必要な検査であるかもしれない.また,IPF 患 者に高頻度に合併する肺癌の治療として手術は余儀なく される.しかし,わが国の IPF 急性増悪に対する認識 が諸外国に比べ強いことを考えあわせると,今回の検討 は,IPF 症例の VATS 下肺生検は,これまで認識され てきた以上に危険度の高いものであり,とくに IPF が 疑われ間質性肺炎に活動性があり,低肺機能の症例の VATS 下肺生検施行にあたっては,その必要性と危険 性を慎重に判断されるべきことを示唆するものである. これまで,IPF 症例の VATS 下肺生検の危険度を評 価する大規模な prospective study はないため,特別な 忠告を成文化することは難しい.今後,間質性肺炎患者 に対する VATS 下肺生検の適応基準ないし除外基準の 作成が期待される. 本論文の要旨は第 42 回日本呼吸器学会総会 (2002 年 4 月, 仙台)にて発表した. 謝辞:稿を終えるにあたり,本研究の麻酔学的検討につい て御教示賜りました,本学麻酔学教室の金徹先生,並びに増 悪 2 症例を私と共に受持ち苦労してくれた,当時当科研修医 の水谷英明先生,上村なつ先生に深謝申し上げます. 文 献 1)Raghu G : Interstitial Lung Disease : A Diagnostic Fig. 3 Lung biopsy specimen (A)Exacerbation case(case 1):Many fibroblastic foci (arrow)are observed adjacent to honeycomb fibrosis. (B)Exacerbation case(case 1) :Abundant lymphocyte and neutrophil infiltration is observed in the site of honeycomb fibrosis. (C)Non-exacerbation case : Peripheral area of lung shows honeycomb fibrosis. Inflammatory cell infiltration and fibroblastic foci are inconspicuous. Approach―Are CT Scan and Lung Biopsy Indicated in Every Patients? Am J Respir Crit Care Med 1995 ; 151 : 909―914. 2)American Thoracic Society and European Respiratory Society : Idiopathic Pulmonary Fibrosis : Diagnosis and Treatment―International Concensus Statement. Am J Respir Crit Care Med 2000 ; 161 : 646―664. 3)Hunninghake GW, Zimmerman MB, Schwartz DA, et al : Utility of a Lung Biopsy for the Diagnosis of また,今回の検討では,増悪は PaO2 の低い症例,VC, %VC,%FEV1.0 の低い症例,すなわち,低肺機能の症 Idiopathic Pulmonary Fibrosis. Am J Respir Crit Care Med 2001 ; 164 : 193―196. 例に生じている.成松らは,VATS 下肺生検は,開胸 4)Salazar-Flores M, Salas-Hernandez J : Causes of 肺生検に比べ肺機能や血液ガスに与える影響は少ないと death in 110 patients with pulmonary fibrosis. Am J しながらも,VATS 下肺生検症例では術前後で%VC が Respir Crit Care Med 1998 ; 157 : A 279. 5.3% 低下したとしている .また,J.P. Utz らは,外科 5)Tazelaar HD, Viggiano RW, Pickersgill J, et al : In- 的肺生検後に急性増悪した UIP 症例を検討し,DLco の terstitial lung disease in polymyositis and dermaton- 12) 6) 低い症例に生じたと報告している .古くより,%VC, %FEV1.0 の低い症例では,胸部外科手術における危険度 が増すことが報告されており13),VATS 下肺生検におい ても同様のことと考えられる. 臨床所見や画像所見が非特異的な間質性肺炎症例の確 定診断や治療方針決定のための VATS 下肺生検は勿論 のこと,一般に予後不良である IPF が疑われる症例に yositis : clinical features and prognosis as correlated with histologic findings. Am J Respir Crit Care Med 1990 ; 141 : 727―733. 6)Utz JP, Ryu JH, Douglas WW, et al : High short-term mortality following lung biopsy for usual interstitial pneumonia. Eur Respir J 2001 ; 17 : 175―179. 7)Kobayashi J, Kitamura S : KL-6 : A Serum Marker VATS 下肺生検後急性増悪した IPF 症例の検討 811 11)American Thoracic Society and European Respira- for Interstitial Pneumonia. Chest 1995 ; 108 : 311― tory Society : American Thracic Society! European 315. 8)戸谷嘉孝,出村芳樹,飴島慎吾,他:特発性間質性 Respiratory Society Society International Multidis- 肺炎の活動性診断における血清 KL-6 値の有用性の ciplinary Consensus Classification of the Idiopathic 検討.日呼吸会誌 2000 ; 38 : 437―441. Interstitial Pneuumonias. Am J Respir Crit Care Med 2002 ; 165 : 277―304. 9)須賀達夫,杉山幸比古,大野彰二,他:気管支肺胞 12)成松紀子,田代雅文,須加原一博,他:胸腔鏡下肺 洗浄を契機として急性悪化した IIP の 2 症例.日呼 生検と開胸肺生検の麻酔中合併症と肺機能変化.臨 吸会誌 1994 ; 32 : 174―178. 床麻酔 1996 ; 20 : 1467―1470. 10)King TE, Schwarz MI, Brown K, et al : Idiopathic Pulmonary Fibrosis―Relationship between Histo- 13)Mittman C : Assessment of operative risk in tho- pathologic Features and Mortality. Am J Respir Crit racic surgery. Am Rev Respir Dis 1961 ; 84 : 197― Care Med 2001 ; 164 : 1025―1032. 207. Abstract Clinicopathological Analysis of Patients with Idiopathic Pulmonary Fibrosis which Became Acutely Exacerbated after Video-Assisted Thoracoscopic Surgical Lung Biopsy Tatsuji Enomoto1), Masashi Kawamoto2), Shinobu Kunugi2), Kumiko Hiramatsu1), Keitaro Sakakibara1), Jiro Usuki1), Arata Azuma1), Kyoji Hirai3), Kiyoshi Koizumi3), Yuh Fukuda2) and Shoji Kudoh1) Fourth Department of Internal Medicine1), First Department of Pathology2), Second Department of Surgery3), Nippon Medical School, 1―1―5 Sendagi Bunkyo-ku Tokyo 113―8603, Japan Nine patients undergoing video-assisted thoracoscopic surgical(VATS)lung biopsy over a five-year period from 1997 to 2001 with the ultimate diagnosis of usual interstitial pneumonia without underlying connective tissue disease were identified. In two of nine patients, acute exacerbation occurred six days after VATS lung biopsy. We reviewed the clinical records and pathology of all nine cases, and found that the two cases of exacerbation had higher peripheral white blood cell counts and KL-6, lower PaO2, VC and FEV 1, and a longer inhalation of FIO 2= 1.0 during VATS, and needed a longer period of chest drainage after VATS. Abundant inflammatory cell infiltration and fibroblastic foci were observed in the exacerbation cases. Thus, patients with usual interstitial pneumonia of the idiopathic type, who have high disease activity and low pulmonary function, may be at high risk of acute exacerbation following VATS lung surgery.