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旭化成ケミカルズのメタクリル樹脂板
デラグラス 技術資料
TM
´12.10
旭化成テクノプラス株式会社
目次
1.はじめに
1
『Ⅰ.物性編』
2.デラグラスTMの性質(総合)
2
3.デラグラスTMの光学的性質
4
4.デラグラスTMの機械的性質
19
5.デラグラスTMの水に対する性質
22
6.デラグラスTMの耐候性
27
7.デラグラスTMの耐薬品性
28
8.デラグラスTMを用いた製品の設計
29
『Ⅱ.加工編』
9.デラグラスTMの取り扱い
37
10.デラグラスTMの機械加工
39
11.デラグラスTMの接着加工
43
12.デラグラスTMの加熱成形加工
46
13.デラグラスTMの表示、装飾加工
55
付表 : 単位の換算
57
●取り扱い上のご注意
58
旭化成テクノプラス株式会社
1
1.はじめに
「デラグラスTM」は、当社が製造・販売するメタクリル樹脂シートの商標です。
TM
「デラグラス 」には、MMAモノマーを重合してMMAポリマー(メタクリル樹脂)とし、これを押出
TM
製法によりシートにしたデラグラス Aと、MMAモノマーをキャスト重合製法により直接シートに
TM
したデラグラス Kがあります。
TM
TM
「デラグラス 」は、原料から製品まで一貫した生産体制で製造され、成形材料のデルパウダ 、
及びデルペットTMやプリズム材料のデラプリズムTMとともに、当社のメタクリル樹脂事業を支える
柱の一つになっています。
デラグラス TM ができるまで
当社のメタクリル樹脂関連製品の原料から製品に至る流れを簡単に図1に示します。
イソブチレン
メタクロレイン
MMAモノマー
(メタクリル酸メチル)
(成形材料)
PMMAビーズ
デルパウダTM
押出板
デラグラスTM A
(成形材料)
PMMAペレット
デルペットTM
押出板
デラプリズムTM M
キャスト板
デラグラスTM K
図1 原料から製品に至る流れ 尚、押出板にはデラグラスTMAの他に、耐衝撃性を付与したデラグラスTMSR、表面がマット
面になっているデラグラスTMAM、表面硬度の高いデラグラスTMHA、エッジからの照明で
シート全面が光るデラグラスTMAL等各種の製品がありますので、カタログ等をご参照の上
用途に合わせて適宜ご選択下さい。
旭化成テクノプラス株式会社
2
『Ⅰ.物性編』
2.デラグラスTMの性質(総合)
TM
デラグラス は、メタクリル樹脂の特長である優れた透明性、耐候性、耐熱性に加え、軽くて強度が高い、電気絶縁
性に優れる、着色・加工が容易であるなどの特長を生かして、看板、ディスプレイ、店装備品、照明、液晶表示用導
光板、建材、建機、自販機、ゲーム機、工業部品、文具、その他の幅広い分野に使われています。
表1にデラグラスTMの性質、表2に代表的な透明樹脂シートとの比較をまとめて示します。
表1 デラグラスTMの性質
試験規格
項目
ISO
JIS
密度(比重)
1183
K 7112
吸水率
62-1
K 7209
全光線透過率
光学的性質
屈折率 nD
13468-1
20
引張(破壊)強さ
527-2/1B/5
引張(破壊)伸び
機械的性質
デラグラスTMSR
デラグラスTMK
g/cm3
1.19
1.18
1.19
0.3
0.3
0.3
92
92
92
-
1.49
1.49
1.49
MPa
75
60
76
%
8
30
8
3200
2500
3300
120
84
125
3400
2700
3500
%
K 7113
527-2/1B/1
曲げ強さ
MPa
178
曲げ弾性率
K 7171
178
シャルピー衝撃強さ
熱的性質
デラグラスTMA
K 7105
489
引張弾性率
単位
2
179/1fU
-
KJ/m
19
47
19
ロックウェル硬さ
-
K 7202
-
98
80
105
ビカット軟化温度
306B、50N
K 7206
103
102
113
荷重たわみ温度
75-2/A
K 7191
100
99
109
-
K 7123
KJ/㎏・℃
1.5
1.5
1.5
11359-2
K 7197
K-1
7×10-5
8×10-5
7×10-5
-
A 1413
W/m・℃
0.2
0.2
0.2
体積抵抗率
Ω ・cm
>1015
>1015
>1015
表面抵抗率
Ω
>1016
>1016
>1016
60Hz
-
4
4
4
3
-
3
3
3
-
3
3
3
60Hz
-
0.06
0.05
0.06
3
10 Hz
-
0.04
0.04
0.04
6
-
0.02
0.02
0.02
KV/mm
20
20
20
sec
痕跡なし
痕跡なし
痕跡なし
比熱
線膨張係数
熱伝導率
誘電率
10 Hz
6
10 Hz
電気的性質
誘電正接
10 Hz
絶縁破壊強さ
耐アーク性
-
K 6911
℃
これらの数値は、定められた試験法に基づいて得られた代表値であり、保障値ではありません。
個々の用途に最適なグレードを選ぶ目安としてご参照して下さい。
なお、これらの数値は物性改良のために変更することもあります。
旭化成テクノプラス株式会社
3
表2 代表的な透明樹脂シートの比較
試験方法
項目
メタクリル樹脂
ポリスチレン
ポリカーボネート
硬質塩化ビニル樹脂
(PMMA)
(PS)
(PC)
(硬質PVC)
単位
JIS
ASTM
3
密度(比重)
K 7112
D792
g/cm
1.19
1.05
1.20
1.40
吸水率
K 7209
D570
%
0.3
0.01~0.03
0.2~0.3
0.01~0.02
92
87~92
86~89
76~82
D1003
%
0.1
1~2
1~2
8~15
-
1.49
1.59
1.59
1.53
MPa
75
50
66
41~53
%
8
3
100
4~40
3200
3200
2200~2400
3200~3400
120
105
100
104~107
3400
3300
2300
3500~3600
全光線透過率
光学的
特性
ヘーズ(曇価)
K 7105
屈折率
D542
引張(破壊)強さ
引張(破壊)伸び
K 7113
D638
引張弾性率
機械的
特性
MPa
曲げ強さ
K 7171
D790
曲げ弾性率
K 7110
D256
kJ/m2
2
2
60~98
3~10
ロックウェル硬さ(Mスケール) K 7202
D785
-
98
84
70~74
80~84
103
94~103
145~150
70~80
100
76~83
132~140
60~77
アイゾット衝撃強さ(ノッチ有)
ビカット軟化温度
K 7206
D1525
℃
荷重たわみ温度(1.8MPa)
K 7191
D648
線膨張係数
K 7197
D696
K-1
7×10-5
5~8×10-5
6~7×10-5
6~7×10-5
熱伝導率
A 1413
C177
W/m・℃
0.21
0.11
0.19
0.15~0.21
比熱
K 7123
kJ/kg・℃
1.47
1.34
1.17~1.26
1.05~1.21
熱的
特性
体積抵抗率
D257
Ω ・cm
絶縁破壊強さ
D149
kV/mm
誘電率(60Hz)
(103Hz)
電機的
6
特性 (10 Hz)
K 6911
D150
(103Hz)
6
(10 Hz)
D495
耐酸性
耐薬品
16
16
>1016
>10
>10
20
20~28
18~22
17
4
2.4~2.7
3.17
3.4~3.6
3
2.4~2.7
2.99
3.0~3.3
3
2.4~2.7
2.93
2.8~3.1
0.06
0.001
0.009
0.007~0.020
0.04
0.0005
0.0015
0.009~0.017
0.02
0.0005
0.010
0.006~0.019
痕跡なし
60~140
80~120
60~80
良
良
良
良
良
良
不可
良
良
可
可
可
-
誘電正接(60Hz)
耐アーク性
>10
15
sec
-
耐アルカリ性
耐候性(耐紫外線)
-
ここに示した数値は比較の為の参考値で、メタクリル樹脂(PMMA)についてはデラグラスTMA(押出板)を、
また他の透明樹脂についてはカタログや文献等に紹介されている代表値を示しています。
測定規格は、既刊の文献等に多く記載されているJIS、ASTMによるものとしました。
旭化成テクノプラス株式会社
4
TM
3.デラグラス の光学的性質
(1)光の透過性能
メタクリル樹脂はプラスチックの中で最も光を良く通し、非常に透明性に優れた樹脂です。
メタクリル樹脂シートであるデラグラスTMは本来無色透明で、可視光線透過率は92%を超え、
ガラスと比較しても優れています。
デラグラスTMには紫外線吸収剤が添加されているので、紫外領域の光は殆ど吸収されて透過
しません。
TM
図2に厚さ3mmのガラスとデラグラス を比較した光の波長と透過率の関係を示します。
(800)
(380)
紫外線
可視光線
赤
外
線
1400
1600
1800
透 過 率 (%)
100
80
60
40
ガラス
デラグラスTM
20
0
0
200
400
600
800
1000
1200
波 長 ( nm )
図2 光の波長と透過率
旭化成テクノプラス株式会社
2000
2200
5
(2)光の反射と屈折
光は物質(第一媒質)の中を直進しますが、進路の途中に異なった物質(第二媒質)がある
と図3に模式的に示すように、その界面で光の一部は反射され、残りの光はその進路を曲
げて第二媒質中に進入します。
これを光の屈折と言い、媒質の組み合わせによって決まる定数です。
第一媒質が空気の場合で、次式によって定義される n を屈折率といいます。
n = sin i / sin r
n : 屈折率 i : 入射角
r : 屈折角
反射光
光
i
i
第一媒質:空気
第二媒質:デラグラスTM
r
進入光
図3 光の反射と屈折
TM
TM
デラグラス A、デラグラス Kの屈折率は共に1.49です。
(波長589nmナトリウムD線による常温での測定値)
光が空気中から垂直に近い角度でデラグラスTMに入射したとき、空気とデラグラスTMの界面で
約4%反射し、デラグラスTMから空気中に出射するとき、デラグラスTMと空気の界面で約4%の
反射が起こります。
TM
デラグラス は透明性が高く、内部を光が透過するときの損失は実質的に無視できる範囲で
すので、出射する光の量(透過率)は両界面での反射を差し引いた約92%となります。
旭化成テクノプラス株式会社
6
デラグラスTMの中から空気に向かって光が進む場合、すなわち光学的に密な媒質から疎な
媒質に光が進む場合には、入射角度が大きくなるに従って反射する光量が多くなり、ある
角度以上になると全量が反射されます。
この全反射が起こる最小入射角度を臨界角といい、デラグラスTMA、デラグラスTMKの空気
に対する臨界角は42°10′です。
図4にこれらの関係を模式的に示します。
臨界角と屈折率との間には次の関係があります。
sin θ = 1 / n
θ : 臨界角
n : 屈折率
臨界角以下では光の多くが出射
空気
デラグラスTM
臨界角θ
42°10'
臨界角以上では全ての光を反射
光
図4 臨界角
この臨界角以上で全ての光を反射する(全反射する)性質を巧みに利用したものとして、
シートの端面から光を導入するエッジライティング方式による導光板、面発光板、照明器
具等が挙げられます。
旭化成テクノプラス株式会社
7
通常の光線は、種々の振動方向の異なる光線の混合したものですが、図5のようにRP
とRSの二種類の振動方向に分けた直線偏光として考えることが出来ます。
法線
法線
Rp
入射光の振動方向が入射
光の方向と物体面の法線
とがなす平面内にあるよう
な直線偏光。
Rs
入射光の振動方向が入射
光の方向と物体面の法線
とがなす平面内に垂直で
あるようなな直線偏光。
図5 二種類の直線偏光 TM
RPとRSの入射角度と反射率の関係を、空気中からデラグラス に光が進行する場合を
TM
図6に、デラグラス から空気中に光が進行する場合を図7に示します。
尚、通常の反射率はRsとRpの平均を言い図6、7でRsとRpの中央の曲線で示します。
また、図6でRpは入射角度が56.1°で全く反射が生じなくなり、この角度をブリュース
ター角又は偏光角といいます。
図7で全ての光が反射する角度は、前述の臨界角です(正確には42°10’)。
100%
80%
反射率
60%
40%
Rs
20%
Rp
0%
0
15
30
45
入射角 (°)
60
75
90
図6 空気中からデラグラスTM内部への光の入射角度と表面反射
旭化成テクノプラス株式会社
8
100%
反射率
80%
60%
40%
Rs
20%
Rp
0%
0
15
30
45
入射角 (°)
60
75
90
図7 デラグラスTM内部から空気中への光の入射角度と表面反射
(3)屈折率
デラグラスTMの屈折率は、光源として黄色のナトリウムD線(波長589nm)を使用し、温度は
室温(約20℃)に保った一般的な条件で測定すると1.49です。
この屈折率は光の波長によって変化し、波長が長くなるほど(すなわち赤色に近付くほど)
小さくなります。
また、屈折率は温度によっても変化して、温度が高くなるほど小さくなります。
これらの関係をまとめて図8に示します。
1.505
1.500
10℃
20℃
30℃
60℃
屈折率
1.495
1.490
1.485
1.480
1.475
400
500
600
波長(nm)
700
TM
図8 デラグラス Aの屈折率(波長と温度の影響)
旭化成テクノプラス株式会社
800
9
図8の実測値を、コーシー(Cauchy)の分散公式で表すと、式-1となります。
n=1.4777+(4.2103×103)/λ 2+(3.4276×107)/λ
4
式-1
n:屈折率(20℃)
λ :光の波長(ナトリウムD線の場合589nm)
また、温度による屈折率の変化は、ナトリウムD線(589nm)に対して式-2で表されます。
n=1.4921-9.8956×10-5t+3.3149×10-9t2
式-2
n:屈折率
t:温度(℃)
(4)品種毎の光学性能
TM
デラグラス の各品種について、全光線透過率、拡散光線透過率、及びヘイズを表3に
まとめて示します。
測定機器 : 日本電色株式会社製 NDH-2000(ヘイズメーター)
又、光の波長毎の分光透過率をチャート a~o に示しますので、材料選択の際の参考
として下さい。
測定機器 : 株式会社島津製作所製 UV-3100PC (分光光度計)
旭化成テクノプラス株式会社
10
TM
表3 デラグラス の光学性能(透過率・ヘイズ)
No
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
19
20
21
24
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
57
58
59
60
61
62
63
64
65
66
67
68
69
70
71
品種
色番
999
色調
透明
021
乳半
052
デラグラスTMA
022
白
916
920
923
925
927
930
950
スモーク
653
ガラス色
658
900
黒
999
透明
074
乳半
022
白
658
ガラス色
900
黒
デラグラスTMML
996
高透過乳半
デラグラスTMAT
046
乳半
000
透明
デラグラスTMAM
132
デラグラスTMK
422
乳半
430
132
TM
乳半
デラグラス KM
422
厚み
mm
2
3
5
10
20
2
3
5
2
3
5
2
3
5
2
2
2
2
2
2
2
2
3
5
3
5
2
3
5
2
3
5
2
3
5
2
3
5
3
5
2
3
5
2
1.5
1.8
2
3
2
3
5
2
3
5
2
3
5
2
3
5
2
3
5
2
3
5
全光線透過率
(%)
拡散光線透過
率 (%)
ヘイズ
(%)
93
93
93
93
92
48
44
36
56
52
41
14
8
5
30
41
54
66
82
19
27
91
90
89
90
89
0.1
0.0
0.0
93
93
93
69
66
49
15
10
5
92
89
0.1
0.1
0.0
87
67
65
60
51
93
93
93
56
56
45
83
80
77
35
34
29
57
54
47
84
84
75
0.2
0.2
0.3
0.3
0.8
47
43
36
55
51
41
14
8
5
0.2
0.2
0.2
0.4
0.7
0.1
0.2
0.5
0.5
0.2
0.2
0.2
0.0
0.0
0.0
77
67
55
68
65
48
14
10
5
68
52
0.1
0.1
0.0
86
66
64
60
50
0.1
0.1
0.2
56
55
45
76
79
76
35
34
29
56
53
46
76
82
74
0.2
0.2
0.3
0.3
0.8
0.6
0.5
0.4
0.6
0.8
0.7
0.9
0.6
0.5
0.2
0.2
0.3
0.1
0.1
0.2
-
旭化成テクノプラス株式会社
11
デラグラスTMA999(透明) 板厚別
チャート a
100
90
板厚:2mm
板厚:3mm
板厚:5mm
板厚:10mm
板厚:20mm
80
透過率(%)
70
60
50
40
30
20
10
0
200
250
300
350
400
450
500
550
600
650
700
750
波長(nm)
チャート b
デラグラスTMA999(透明) 板厚別・広波長域
100
板厚:2mm
板厚:3mm
板厚:5mm
板厚:10mm
板厚:20mm
90
80
透過率(%)
70
60
50
40
30
20
10
0
200
400
600
800
1000
1200
1400
1600
波長(nm)
旭化成テクノプラス株式会社
1800
2000
2200
800
12
デラグラスTMK000(透明) 板厚別
チャート c
100
90
板厚:2mm
板厚:3mm
板厚:5mm
80
70
透過率(%)
60
50
40
30
20
10
0
200
250
300
350
400
450
500
550
600
650
700
750
800
波長(nm)
チャート d
デラグラスTMK000(透明) 板厚別・広波長域
100
90
板厚:2mm
板厚:3mm
板厚:5mm
80
透過率(%)
70
60
50
40
30
20
10
0
200
400
600
800
1000
1200
1400
波長(nm)
旭化成テクノプラス株式会社
1600
1800
2000
2200
13
チャート e
デラグラスTMA021(乳半) 板厚別
100
板厚:2mm
板厚:3mm
板厚:5mm
90
80
透過率(%)
70
60
50
40
30
20
10
0
200
250
300
350
400
450
500
550
波長(nm)
600
650
700
750
800
デラグラスTMA052(乳半) 板厚別
チャート f
100
90
板厚:2mm
板厚:3mm
板厚:5mm
80
透過率(%)
70
60
50
40
30
20
10
0
200
250
300
350
400
450
500
550
波長(nm)
旭化成テクノプラス株式会社
600
650
700
750
800
14
デラグラスTMA(スモーク系)
チャート g
100
90
80
透過率(%)
70
【板厚:2mm】
60
A927
A925
A923
A920
A916
A950
A930
50
40
30
20
10
0
200
250
300
350
400
450
500
550
波長(nm)
600
650
700
750
800
デラグラスTMA653(ガラス色) 板厚別
チャート h
100
90
80
板厚:2mm
板厚:3mm
板厚:5mm
透過率(%)
70
60
50
40
30
20
10
0
200
250
300
350
400
450
500
550
波長(nm)
旭化成テクノプラス株式会社
600
650
700
750
800
15
デラグラスTMAM074(乳半) 板厚別
チャート i
100
板厚:2mm
板厚:3mm
板厚:5mm
90
80
透過率(%)
70
60
50
40
30
20
10
0
200
250
300
350
400
450
500
550
波長(nm)
600
650
700
750
800
デラグラスTMAT046(乳半) 板厚別
チャート j
100
90
80
板厚:2mm
板厚:3mm
透過率(%)
70
60
50
40
30
20
10
0
200
250
300
350
400
450
500
550
波長(nm)
旭化成テクノプラス株式会社
600
650
700
750
800
16
デラグラスTMK132(乳半) 板厚別
チャート k
100
90
板厚:2mm
板厚:3mm
板厚:5mm
80
70
透過率(%)
60
50
40
30
20
10
0
200
250
300
350
400
450
500
550
600
650
700
750
800
波長(nm)
デラグラスTMK422(乳半) 板厚別
チャート l
100
90
80
透過率(%)
70
板厚:2mm
板厚:3mm
板厚:5mm
60
50
40
30
20
10
0
200
250
300
350
400
450
500
550
波長(nm)
旭化成テクノプラス株式会社
600
650
700
750
800
17
デラグラスTMK430(乳半) 板厚別
チャート m
100
90
80
板厚:2mm
板厚:3mm
板厚:5mm
透過率(%)
70
60
50
40
30
20
10
0
200
250
300
350
400
450
500
550
600
650
700
750
800
波長(nm)
デラグラスTMKM132(乳半) 板厚別
チャート n
100
90
板厚:2mm
板厚:3mm
板厚:5mm
80
透過率(%)
70
60
50
40
30
20
10
0
200
250
300
350
400
450
500
550
波長(nm)
旭化成テクノプラス株式会社
600
650
700
750
800
18
デラグラスTMK422(乳半) 板厚別
チャート o
100
90
80
透過率(%)
70
板厚:2mm
板厚:3mm
板厚:5mm
60
50
40
30
20
10
0
200
250
300
350
400
450
500
550
波長(nm)
旭化成テクノプラス株式会社
600
650
700
750
800
19
TM
4.デラグラス の機械的性質
デラグラスTMの機械的性質は、他の熱可塑性樹脂と同様に温度の影響を大きく受けます。
また、含まれる水分によっても僅かではありますが影響されます。
通常の測定試験は、温度23℃、相対湿度50%に調整された環境で実施します。
(1)温度の影響
材料に応力を加え、引っ張ったり曲げたりしたときに材料が破壊する応力をそれぞれ引張り
強さ、曲げ強さといいます。
図9にデラグラスTMAの各温度における引張りひずみ(伸び)と応力(加えた力)の関係を示し
ます。
デラグラスTMAは、-20~40℃の間では明確な降伏を示さずに破断しますが、これ以上の
温度では降伏し、伸びが増大します。
試験片の厚さ:3mm
試験速度:5mm/min
-20℃
100
応力(MPa)
0℃
×:破断を示す
80
20℃
60
40℃
降伏点
40
60℃
80℃
20
破断伸び:60%
0
0
5
10
15
ひずみ (%)
20
図9 デラグラスTMAの各温度における応力-ひずみ線図
旭化成テクノプラス株式会社
20
図10に各温度における引張り強さ、及び曲げ弾性率の関係を示します。
180
6,000
曲げ弾性率
140
デラグラスTMA、デラグラスTMK
120
4,000
100
引張り強さ
80
デラグラスTMK
60
2,000
引張り強さ
40
デラグラスTMA
20
0
0
-40
-20
0
20
40
温度 (℃)
60
80
100
図10 各温度における引張り強さ、曲げ弾性率
旭化成テクノプラス株式会社
曲げ弾性率 (MPa)
引張り強さ (MPa)
160
21
(2)水分の影響
TM
デラグラス の場合、後述の5.水に対する性質の項で詳しく述べますが、最大2%の水分を
吸収し、この水分による作用で機械的強さが低下する傾向を示します。
図11、及び図12にデラグラスTMに含まれる水分率と引張り強さ、曲げ強さの関係を示します。
図からもわかるように吸収した水分の影響は僅かであり、実用的に問題は殆どありません。
試験片の厚さ:3mm
試験速度:5mm/min
80
デラグラスTM K
引張強さ (MPa)
100
60
デラグラスTM A
40
20
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
1.4
1.6
1.8
2.0
水分率 (%)
図11 水分率と引張り強さ
150
デラグラスTMA、デラグラスTMK
曲げ強さ (MPa)
130
110
90
70
50
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
水分率 (%)
図12 水分率と曲げ強さ
旭化成テクノプラス株式会社
1.4
1.6
1.8
2.0
22
TM
5.デラグラス の水に対する性質
(1)空気中の相対湿度と吸水率
TM
デラグラス は、他の多くの樹脂と同様に吸水、又は乾燥により長さ、体積、重量が変化します。
TM
デラグラス が吸水する程度は、置かれている環境の温度や湿度に依存し、最終的には図13
に示す平衡吸水率(重量%)に達します。
しかし、大気中に放置して置いただけで直ちにこれだけ吸水するわけでは無く、長時間かかって
平衡に達するものです。
また、シートの厚みが厚くなるほどこの平衡に達するまでの時間は長くなります。
図14、15に各種の厚みのデラグラスTMを一定の相対湿度に調節した雰囲気に放置したときの
経過日数と吸水率(含有水分重量%)の関係を示します。
図16には相対湿度毎の、経過日数と吸水率(含有水分重量%)の関係を示します。
TM
TM
尚、デラグラス Aとデラグラス Kは同じ挙動を示します。
平衡吸水率 (%)
2.0
試験温度:23℃
水分測定:カールフィッシャー法
1.6
1.2
0.8
デラグラスTMA、デラグラスTMK
0.4
0.0
0
20
40
60
相対湿度 (%)
図13 大気中の相対湿度と平衡吸水率
旭化成テクノプラス株式会社
80
100
23
0.4
0.4
0.4
2mm
3mm
0.3
0.3
0.3
吸水率(%)
吸水率(%)
吸水率(%)
5mm
10mm
0.2
0.2
0.2
20mm
0.1
0.1
0.1
0.0
0.0
00
0
0
グラフスムージング必要
試験片寸法 100×100(mm)
(データ微修正)
2020
20
40
40
60
80
60
80
60
80
経過日数
経過日数
40
100
120
120
100
120
経過日数
図14 23℃相対湿度25%
0.8
2mm
3mm
5mm
吸水率(%)
0.6
0.4
10mm
20mm
0.2
試験片寸法 100×100(mm)
0.0
0
20
40
60
80
経過日数
100
図15 23℃相対湿度50%
旭化成テクノプラス株式会社
120
140
24
1.8
吸水率 (%)
相対湿度90%
試験片寸法:3×80×100(mm)
温度 : 23℃
1.6
1.4
経過日数(日)
1.2
相対湿度70%
1.0
0.8
0.6
相対湿度40%
0.4
0.2
0.0
0
10
20
30
40
50
60
図16 相対湿度毎の経過日数と水分率
(2)水中に浸漬したときの吸水率
図17に各種厚さのデラグラスTMを23℃の水中に浸漬した場合の経過日数と吸水率(含有水分
重量%)の関係を、図18には厚さ2mmのデラグラスTMを20℃、又は50℃の水中に浸漬した
場合を示しますが、いずれも、デラグラスTMAとデラグラスTMKは同じ挙動を示します。
2.5
23℃水中浸漬
2.0
2mm
吸水率(%)
3mm
1.5
5mm
10m
1.0
20m
0.5
試験片寸法 100×100
0.0
0
20
40
60
経過日数
80
図17 水中に浸漬した場合の吸水率
旭化成テクノプラス株式会社
100
120
25
50℃
20℃
吸水率 (%)
2
1
試験片寸法:2×80×100(mm)
0
0
10
20
30
40
経過日数 (日)
50
60
図18 浸漬日数と吸水率
(3)乾燥
TM
デラグラス は相対湿度の低い雰囲気に置くと、平衡吸水率以上に水分が含まれていた場合
には徐々に水分を放出して乾燥(脱水)します。
早く乾燥するには、温度を高くした空気を循環する熱風オーブンが多く使用されますが、デラ
グラスTMが熱により軟化して変形等を起こさないように注意が必要です。
図19に吸水(湿)した厚さ3mmのデラグラスTMを各条件下に置いた場合の経過時間と含有す
る水分率(重量%)の変化を乾燥カーブ(1)として示します。
TM
図20、21には各種板厚のデラグラス を空気温度を80℃に調節した熱風オーブンに置いた
場合の、経過時間と含有水分率(重量%)の関係を乾燥カーブ(2)、同(3)として示します。
1.8
1.6
1.4
水分率(%)
1.2
1.0
23℃相対湿度50%雰囲気中
0.8
0.6
0.4
50℃熱風循環乾燥機中
0.2
試験片寸法:3×100×100(mm)
0.0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
経過時間(hrs)
図19 各条件でのデラグラスTM乾燥カーブ(1)
旭化成テクノプラス株式会社
90
26
2.0
1.8
80℃熱風循環オーブン
1.6
水分率(%)
1.4
1.2
5mm(初期水分1.40%)
1.0
3mm(初期水分1.65%)
0.8
2mm(初期水分1.81%)
0.6
0.4
試験片寸法 100×100(mm)
0.2
0.0
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
経過日数(日)
TM
図20 各種板厚のデラグラス 乾燥カーブ(2)
1.4
80℃熱風循環オーブン
1.2
0.8
0.6
20mm(初期水分0.92%)
0.4
10mm(初期水分1.31%)
0.2
試験片寸法 100×100(mm)
0.0
0
10
20
30
40
50
経過日数(日)
60
70
図21 各種板厚のデラグラスTM乾燥カーブ(3)
旭化成テクノプラス株式会社
80
8
2
5
寸
水分率(%)
1.0
水
90
27
TM
6.デラグラス の耐候性
メタクリル樹脂は、プラスチックの中で最も耐候性に優れた樹脂の部類に位置付けられます。
TM
メタクリル樹脂シートであるデラグラス は長期間屋外で連続使用しても、強い日光(紫外線)
や、風雨によっても変色したり、強度の劣化が少なく、初期の特性を良く保持します。
8
95
6
90
4
85
2
80
0
光線透過率 (%)
100
0
1
2
黄色度(YI値)
図22に沖縄で屋外暴露したときのデラグラスTMAの暴露期間と光線透過率、および黄色度
との関係を示します。
3
暴露期間 (年)
図22 デラグラスTMAの屋外暴露試験結果(沖縄)
図23には促進暴露試験による暴露時間と引張り強さ、曲げ強さの関係を示します。
SWM:サンシャインウェザーメーター
引張り強さ,曲げ強さ (MPa)
140
曲げ強さ
120
100
引張り強さ
80
60
40
20
0
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
暴露時間 (h)
図23 デラグラスTMAの促進暴露試験結果(SWMによる促進耐候性試験)
旭化成テクノプラス株式会社
28
7.デラグラスTMの耐薬品性
TM
デラグラス は希薄酸、アルカリ、無機塩類、脂肪族炭化水素、油脂類には通常侵されません。
しかし、温度の高い環境や、曲げ等の応力がかかっている場合にはクラック(細かいひび割れ)
を発生することがありますので、注意が必要です。
また、強酸、ケトン類、エステル類、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、低級脂肪酸等には膨
潤、または溶解したり、クラックが発生したりします。
TM
表4にデラグラス の各種薬品に対する常温での耐性を示します。
表4 デラグラスTMの各種薬品に対する耐性
○ 侵されない
△ 膨潤したり、クラックが発生したりする
× 溶解する
薬
品
名
濃塩酸
塩酸 (10%)
濃硫酸
硫酸 (30%)
濃硝酸
酸
硝酸 (30%)
氷酢酸
酢酸 (10%)
ギ酸
フェノール
カセイソーダ (50%)
アルカリ
アンモニア水 (10%)
n-ヘキサン
パラフィン系 n-ヘプタン
炭化水素
nーオクタン
医療用パラフィン
メチルアルコール
エチルアルコール
イソプロピルアルコール
アルコール系
ブタノール
変性アルコール
ベンジルアルコール
ホルムアルデヒド (40%)
アルデヒド系 アセトアルデヒド
ベンツアルデヒド
メチルエーテル
ジエチルエーテル
イソプロピルエーテル
エーテル系
プロピオンオキサイド
ジオキサン
セロソルブ
アセトン
メチルエチルケトン
ケトン系
メチルイソブチルケトン
シクロヘキサノン
ギ酸エチル
エステル系
酢酸メチル
酢酸エチル
耐性
△
○
×
○
×
○
×
○
×
×
○
○
○
○
○
○
△
△
△
△
△
×
○
×
△
△
△
△
×
×
△
×
×
×
△
×
×
×
薬
品
名
酢酸プロピル
酢酸ブチル
酢酸アミル
エステル系
ジブチルフタレート
ジオクチルフタレート
メタクリル酸メチル
アクリル酸メチル
ベンゼン
トルエン
芳香族系
キシレン
シクロヘキサン
二塩化メチレン
二塩化エチレン
ハロゲン系
三塩化エチレン
炭化水素 クロロホルム
四塩化炭素
クロルベンゼン
ガソリン
灯油
石油類
テレピン油
ソルベントナフサ
フラン
フルフラール
フラン系
フルフリルアルコール
テトラヒドロフラン
ニトロメタン
ニトロ系
ニトロエタン
ニトロベンゼン
二トリル系
アミン系
その他
旭化成テクノプラス株式会社
耐性
×
×
×
△
△
×
×
×
×
×
△
×
×
×
×
△
×
○
○
○
○
×
×
×
×
×
×
×
アセト二トリル
×
エチレンジアミン
ジエチルアミン
ジメチルホルムアルデヒド
アニリン
食塩水 (10%)
海水
石鹸水 (1%)
過酸化水素水 (10%)
○
○
×
×
○
○
○
○
29
TM
8.デラグラス を用いた製品の設計
デラグラスTMを用いて様々な用途に向け製品化する場合、実使用時の寸法変化や変形に十分
な注意を払う必要があります。
(1)寸法変化
デラグラスTMは一般の樹脂と同様、使用される雰囲気の温度や湿度の影響により寸法変化を
起こします。
温度に関する要因として、気温、空調温度等の環境温度の他に、太陽光の輻射熱や、製品に
組み込まれた器具から発生する熱の影響についても考慮することが必要です。
一方、湿度については天候や季節による空気中の相対湿度の変化がありますが、これにより
デラグラスTMに含まれる水分の変化は急ではありませんが徐々に起こり、無視できませんので
製品設計に反映させる必要があります。
a.温度の影響
基準温度を境に温度が高くなると寸法は大きく、逆に温度が低くなると寸法が小さくなります。
温度による寸法変化量は、その材料の線膨張係数によって決まります。
樹脂の線膨張係数は金属と比べて通常数倍大きく、又温度が高くなる程大きな値となります。
TM
デラグラス の温度と線膨張係数の関係を図24に示します。
10
線膨張係数 ×10-5(K-1)
9
8
7
6
5
4
-30
-20
-10
0
10
20
温度 (℃)
図24 デラグラスTMの線膨張係数
旭化成テクノプラス株式会社
30
40
50
30
b.湿度の影響
樹脂が吸水することにより寸法が元より大きくなり、逆に乾燥すると寸法は小さくなります。
TM
アクリル樹脂であるデラグラス は、樹脂の中でも比較的吸水性の高い部類に入ります。
図25にデラグラスTMに含まれる水分率と寸法変化率の関係を示します。
寸法変化率 (%)
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
0.0
0.5
1.0
水分率 (重量%)
1.5
図25 水分率と寸法変化率
旭化成テクノプラス株式会社
2.0
31
【寸法変化の計算例】
長さ1mのデラグラスTMについて、冬季を起点として夏季に至る寸法変化量を計算する。
仮に、気温を冬季0℃、夏季30℃、空気中の相対湿度を冬期20%、夏期80%とする
と、デラグラスTMの寸法変化量は以下の通り算出される。
①温度変化による寸法変化量は式-3で表される
⊿LT =L×{(α 1+α 2)/2}×(t1-t2)
⊿LT:温度変化による寸法変化量(mm)
L:元の長さ(mm)
α 1:温度t1における線膨張係数(K-1)
α 2:温度t2における線膨張係数(K-1)
式-3
t1:夏期温度(℃)
t2:冬期温度(℃)
L=1000、図24からα 1=6.8×10-5、α 2=5.5×10-5、t1=30、t2=0を式-3に代入
して計算すると次の結果が得られる。
⊿LT =1000×{(6.8+5.5)×10-5/2}×(30-0)
=1.8(mm)
すなわち、夏季は冬季に比べて温度の影響により1.8mm寸法が大きくなる。
②空気中の相対湿度の影響による寸法変化量は次式で表される
⊿LH =L×(β 1-β 2)/100
式-4
⊿LH:湿度変化による寸法変化量(mm) h1:夏季相対湿度における平衡吸水率(%)
h2:冬季相対湿度における平衡吸水率(%)
L:元の長さ(mm)
β 1:平衡吸水率h1における寸法変化率(%)
β 2:平衡吸水率h2における寸法変化率(%)
夏期の相対湿度80%における平衡吸水率h1は、第5章図13より1.25%、同様に冬期の
相対湿度20%で平衡吸水率h2は0.20%となる。
それぞれの吸水率における寸法変化率は図25より、夏期0.21%、冬期0.02%となる
ので、これを式-4に代入して計算し次の結果を得る。
⊿LH =1000×(0.21-0.02)/100
=1.9(mm)
すなわち、夏季は冬季に比べて相対湿度の影響で1.9mm寸法が大きくなる。
TM
寸法変化量は①と②を合計した値であり、冬季の長さ1mのデラグラス は夏季にその長
さが1.8+1.9=3.7 すなわち3.7mm増大する。
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32
(2)たわみ
デラグラスTMは水平に設置した場合などに自重によるたわみが生じます。、
このたわみの大きさは寸法(板厚、幅、長さ)、支持方法、自重以外の荷重有無、及び温度等に
より大きく変わります。
a.たわみの計算方法
①4辺自由支持の場合
TM
4辺が自由支えの状態で水平に置いたデラグラス に、等分布荷重がかかっている場合の
中央部における最大たわみをδ とすれば、式-5により求めることが出来る。
δ =(α ・P・a4)/(E・h3)
式-5
尚、想定した最大たわみの条件を満たすデラグラスTMの厚さを求める場合は、式-5を変形
した式-6により求めることが出来る。
h={(α ・P・a4)/(δ ・E)}1/3
式-6
但し、式-5、6が適用できるのはたわみが板厚に比して小さいことが前提となる。
②4辺固定支持の場合
4辺が固定された状態で水平に置いたデラグラスTMに、等分布荷重がかかっている場合の
中央部における最大たわみをδ とすれば、式-7により求めることが出来る。
δ =(β ・P・a4)/(E・h3)
式-7
TM
尚、想定した最大たわみの条件を満たすデラグラス の厚さを求める場合は、式-7を変形
した式-8により求めることが出来る。
h={(β ・P・a4)/(δ ・E)}1/3
式-8
δ :最大たわみ(cm)
α :4辺自由支持のたわみ係数/表5参照、両辺の長さの比に関係する
β :4辺固定支持のたわみ係数/表6参照、両辺の長さの比に関係する
h:厚さ(cm)
P:荷重(kg/cm2) 自重のみの場合は1.19h×10-3kg/cm2
a:短辺の長さ(cm)
b:長辺の長さ(cm)
4
2 E:曲げ弾性率(室温の場合 3×10 kg/cm )
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33
表5
4辺自由支持のたわみ係数
b/a
α
1.0
0.0443
1.1
0.0530
1.2
0.0616
1.3
0.0697
1.4
0.0770
1.5
0.0843
1.6
0.0906
1.7
0.0964
1.8
0.1017
1.9
0.1064
2.0
0.1106
3.0
0.1336
4.0
0.1400
5.0
0.1416
∞
0.1422
表6
4辺固定支持のたわみ係数
b/a
β
1.0
0.0138
1.1
0.0164
1.2
0.0188
1.3
0.0210
1.4
0.0226
1.5
0.0240
1.6
0.0251
1.7
0.0260
1.8
0.0268
1.9
0.0275
2.0
0.0280
3.0
0.0281
4.0
0.0281
5.0
0.0283
∞
0.0284
【自重たわみの計算例】
短辺50cm、長辺100cmのデラグラスTMAを4辺自由支持で水平に設置するとき、
中央部の自重によるたわみを2.5mm以下にしたい場合の板厚を算出する。
但し、温度条件は40℃とする。
各パラメータを式4に代入し、hを求めればよい。
a:50 b:100 δ :0.25 P:1.19×h×10-3
α :0.1106(表5 b/a2.0の欄より)
E:2.7×104 (4項の図10より40℃での曲げ弾性率を求め、MPaからkg/cm2
への単位換算をした)
h={(α ・P・a4)/(δ ・E)}1/3
-3
4
4
1/3
={(0.1106×1.19×h×10 ×50 )/(0.25×2.7×10 )}
={(0.1106×1.19×h×10-3×504)/(0.25×2.7×104)}1/3
=(0.1219h)1/3
両辺を3乗し、両辺をhで割ると上式はh2=0.1219となる
両辺の平方根を求めると、次の等式が成り立つ
1/2
h=(0.1219) ≒ 0.35(cm)
すなわち、板厚4mmのデラグラスTMAを使用すれば良い。
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34
b.自重たわみの実測例
TM
図26に厚さ3mmのデラグラス Aを室温にて水平に4辺自由支持の状態(4辺周囲を固定せず
自由な状態で支える)で測定した、幅・長さ(L1・L2で表示)と自重による中央部のたわみの大き
さの関係を示します。
1,600
14
1,200
12
2,000
1,000
たわみ (mm)
10
800
8
L2=500mm
6
4
2
0
0
500
1,000
1,500
L1 (mm)
TM
図26 デラグラス A(板厚3mm)の自重によるたわみ
旭化成テクノプラス株式会社
2,000
2,500
35
c.風圧によるたわみ
2.5
250
2.0
200
1.5
150
1.0
100
0.5
50
0.0
風圧 (kg/m2)
風圧 (kPa)
屋外に設置された看板等では、風圧によるたわみを考慮する必要が有ります。
風速と風圧の関係を図27に示します、この風圧(荷重)からたわみ量を計算することができます。
0
0
20
40
60
風速 (m/sec)
図27 風速と風圧の関係
計算式 P=V2/16 により換算した結果をグラフ化した。
P=風圧(荷重)kg/m2
V=風速 m/sec.
【風圧によるたわみ計算例】
短辺50cm、長辺2mのデラグラスTMAで4辺固定支持の看板を作るとき、風速50m
/secのときの最大たわみを10mm以下にする板厚を求める(温度は30℃とする)。
各パラメータを式6に代入してhを算出する。
a:50(cm) b:200(cm) δ :1(cm) 2
2
-2
2
P:1.56×10 (kg/m )=1.56×10 (kg/cm )
β :0.0281 E:3×104(kg/cm2)
図27(又は計算式)から
表6 b/a 4.0 の欄より
4項図10より求め、単位換算
h={(0.0281×1.56×10-2×504)/(1×3×104)}1/3
=(0.0913)1/3 ≒ 0.45(cm)
TM
従って、5mmのデラグラス Aを使用すると良い。
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36
d.風圧を想定したたわみの実測例
板厚2mm、1m角のデラグラスTMAを水平に4辺固定支持して、静荷重をかけたときの最大た
わみを実測した結果を図28に示す。
静荷重は、デラグラスTMの上に風圧を想定し砂袋を均等に並べて置いた。
(板厚に比してたわみが大きいので、式7は適用できない)
図28 静荷重(風速)とたわみ
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37
『Ⅱ.加工編』
9.デラグラスTMの取り扱い(一般的な注意事項)
デラグラスTMは、光学的性質、機械的性質、熱的性質等の各種の性質に優れたバランスの良い
プラスチックシートですが、メタクリル樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂であるため、熱、キズ、
汚れ、及び溶剤等について、次のような注意を払う必要があります。
(1)温度に対する注意
デラグラスTMは高温になると変形する性質がありますから、70℃を超えるような環境での使用
は避けてください。
保管する場合はなるべく40℃以下の場所とし、直射日光を避け、風通しを良くすることも大
切です。
(2)表面の損傷に対する注意
デラグラスTMの表面硬度はアルミニウムと同程度で、プラスチックの中では硬い方ですが、取り
扱い中のキズに対しては注意して下さい。
デラグラスTMには通常、表面を保護するために保護紙が貼られています、取り扱い中はキズや
ホコリの付着を防ぐために、できるだけ保護紙を貼ったまま行い、最後に剥がすことをお勧め
します。
デラグラスTMの表面の汚れを落とすときは、流水で洗い流すか、水あるいは水で希釈した中性
洗剤を含ませた柔らかい布等を用い、軽く拭い取るようにして下さい。
(3)ゴミ付着に対する注意
デラグラスTMの表面を乾いた布で強くこすると、摩擦による帯電で空気中に浮遊しているゴミが
付着し易くなり、またキズの原因にもなりますので注意して下さい。
表面を清拭したい場合は、帯電防止剤、又は水で希釈した中性洗剤液を柔らかい布につけ、
軽く拭くことをお勧めします。
(4)熱膨張に対する注意
デラグラスTMは多くのプラスチックと同様に熱膨張係数(線膨張係数)が金属等に比べて大きい
ので、使用に当たっては温度変化による伸縮を考慮して下さい。
【長さ1mのデラグラスTMは温度変化が10℃で約0.6mm、30℃で約1.8mm伸縮します】
(5)湿度に対する注意
デラグラスTMは空気中の湿度の変化によっても伸縮が起こります。
デラグラスTMに含まれる水分の量が湿度によって変化するためで、その変化は徐々に起こり、
温度変化ほど応答は早くはありませんが、使用に当たっては注意する必要があります。
【長さ1mのデラグラスTMは冬季と夏季の湿度差を60%とすると、約1.9mm伸縮します】
表裏、および端部が不均一に吸湿した場合、反りが生じるので注意が必要です。
また過度に吸湿しますと、熱成形時の発泡や、印刷、塗装のクラック(亀裂)の発生原因とな
ることがありますので、できるだけ乾燥した場所での保管をお勧めします。
(6)溶剤に対する注意
デラグラスTMは、塗料や溶剤により表面が侵され艶を失ったり、クラック(亀裂)が発生すること
がありますから、塗料の貯蔵室や吹き付け室等の溶剤蒸気の立ちこめるような場所に保管す
ることは避けて下さい。
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38
(7)燃焼に対する注意
デラグラスTMは引火性物質ではありませんが、炎に触れると着火し、木材と同程度に燃焼します。
消火については、一般火災と同様の消火方法で行えます。
(8)保管中の置き方に対する注意
デラグラスTMは、保管中に反りが生じないように注意が必要です。
a.立てかけ置き
図29(1)良い例に示すように、架台等で立てかける壁を10°~15°の角度で傾斜させた
状態で保管するようにします。
図29(2)悪い例に示したように、壁にそのまま立てかけると、デラグラスTMの自重で反りを生
ずることがあります。
b.平置き
図30(1)良い例に示すように、パレットに平置きして保管するようにします。
同一寸法か面積の大きいものを必ず下にすることで、長期保管に適しています。
図30(2)悪い例に示したように、面積の小さいデラグラスTMが下になると、その上の面積が
大きいデラグラスTMに反りを生ずることがあります。
壁
面
壁
面
架台
(2)悪い例
(1)良い例
図29 デラグラスTMを立てかけて保管する方法
(1)良い例
(2)悪い例
図30 デラグラスTMをパレットに平置きして保管する方法
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39
TM
10.デラグラス の機械加工
デラグラスTMは通常のプラスチックシートの加工に用いられている機械加工装置を用いて、切断、
切削などをすることができます。
例えば、丸鋸や糸鋸、帯鋸などによる切断、ルーターや彫刻機による切削やくり抜き、ボール盤
による穴あけなどです。
機械加工を行うときに注意すべきことは、使用する刃物はよく研磨して使用することです。
切削性の良好な刃物で加工することにより、加工時の欠けや摩擦熱による切断面の融着、ひ
ずみの発生などを低くおさえることができます。
加工の種類とそれに適した加工機械を表7に示します。
表7 加工の種類と加工機械
加工の種類
加工機械
直線状の切断
丸鋸 設置型として次のタイプがあり、加工精度が高い
ランニングソー
鋸歯が移動する/大サイズ向き
パネルソー
台がスライドする/小・中サイズ
テーブルソー
鋸歯が上下する昇降盤、携帯用電動丸鋸も使用される
曲線状の切断
糸鋸、ルーターマシン
成形品のトリミング 丸鋸、ルーターマシン、ディスクソー、ホットカット(熔断)
複雑な形状のくり抜き 糸鋸、彫刻機、ルーターマシン、旋盤、ホットカット(熔断)
真円加工
彫刻機、ルーターマシン、旋盤
穴あけ
ボール盤、ルーターマシン
艶出し
布バフ、フレームバフ
デラグラスTMA(押出板)は、デラグラスTMK(キャスト板)に較べると、加工時にいくらか融着し易
い(粘り易い)傾向にあります。
ポリエチレンの保護紙(マスキング)を施したデラグラスTMAの場合、切断、切削加工をする際に
このポリエチレンをはがさずに加工することによって融着をおさえ、デラグラスTMKに近い加工性
を得ることができます。
これは、加工によって発生する熱によりポリエチレンが熔けて潤滑効果をもたらすためです。
デラグラスTMSRについては、デラグラスTMAに準じた取り扱いをお願いします。
10-1 切断加工
(1)丸鋸による切断
デラグラスTMを丸鋸で切断しようとする場合、鋸歯の寿命が長く切り口が綺麗なハードチップソー
(超硬合金のチップの付いた鋸歯)が適しています。
デラグラスTMAを丸鋸で切断する場合の、標準的な加工条件を表8に示します。
デラグラスTMKでは、回転数をやや高く設定してください。
シートは重ねて切断できます、この場合総厚さを20mm以下にすることをお奨めします。
表8 丸鋸でデラグラスTMAを切断する場合の加工条件
項目
条件
項目
条件
すくい角(°)
0
鋸歯の直径(mm)
255~305
逃げ角(°)
10~30
回転数(RPM)
3,000~5,000
アサリ(°)
2~3
送り速度(m/分)
3~5
鋸歯の厚み(mm)
1.5~2.5
モーター動力(馬力)
2~3
歯数(個/周)
80~100
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40
●すくい角
正である方が切断能力は大きいが、割れの発生を防ぐため負または0°の方が良い。
●逃げ角
小さいと切粉が逃げ面からスムーズに排出せず、シートの切断面に融着することがある。
したがって少なくとも10°取るのがよい。
●アサリ
これも逃げ角の場合と同じ理由から、大きい方が切粉が逃げやすく、摩擦による過熱を
防ぐ。しかし、あまり大きく取りすぎると融着するので、2~3°程度がよい。
●刃先角
刃先角は大きい方が摩擦熱をよく刃側に吸収する。しかし、刃先角を大きくし過ぎると
逃げ角が小さくなるので、逃げ面での切粉の融着によるトラブルを起こし易くなる。
図31に、ハードチップソーの刃先各部の詳細を示します。
鋸刃の厚み
逃げ角
刃先角
逃げ面
アサリ
すくい角
図31 ハードチップソーの刃先
(2)ケガキによる切断
図32にケガキ用具の市販品の一例を示します。
数mmぐらいまでの厚さのシートであればこれで切断できます。
まず、ケガキ用具を用いて、刃先を定規に沿わせながら、板の厚さの1/3以上の深さに
達するように切り込みを付け、次に、図33に示したように、この切り込み(溝)を上にして、
台の縁等に沿って支え、下方へ折り曲げて切断します。
シートの両端部を中央部より一段と深く切り込むと、割れや欠けを防ぐことができます。
図32 ケガキ用具
あて木等
①押さえる
ケガキ部
②折り曲げるように切断
デラグラス
平台
図33 ケガキによる切断の方法
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41
(3)糸鋸(ミシン鋸)による加工
切文字、図柄のような複雑な形状を切り抜き加工する場合には、糸鋸(ミシン鋸)や彫刻盤
を用いて加工することができます。
この場合もシートは重ねて切断できます、重ねたシートをしっかり固定することで、同一の
切文字等を多数枚作成できますが、重ねた総厚さを20mm以下にすることをお奨めします。
(4)その他の切断方法
a.レーザー切断
レーザー光線による切断で、NC装置と連動でき、高能率ですが、装置が高価です。
曲線、直線、斜め切断など自由に切断でき、切断面は研磨しなくても光沢があります
が重ね切りはできません。
切断面より3mm程度の範囲に熱歪が残り、加工後の接着、印刷、塗装ではクラックが
生じますので、アニール処理(適度な加熱による歪の解消)が必要です。
アニール処理条件としては、70~80℃で3~8時間の加熱が適当です。
b.ウォータージェット切断
超高速のジェット水流を利用し、NC装置との連動で、正確に高速で切断できます。
切断面は粗面となりますが、切断時に発熱せず、切粉が出ない利点があります。
10-2 穴あけ加工
ボール盤やドリルを用いて、デラグラスTMに穴あけ加工を行うことができます。
穴あけ加工条件としてはドリルの形状、回転数、送り速度が重要です、表9の標準条件
を参考にしてください。
表9 デラグラスTMAに穴あけ加工する場合のドリルの標準条件
ドリルの形状
ドリル回転数
送り速度
逃げ角
15~20°
先端角
120~140°
すくい角
0°
径 2mm
2,000~4,000 rpm
径 6mm
1,000~2,000 rpm
径13mm
500~1,000 rpm
50~200 mm/分
ドリルの穴あけ加工で起こりがちなトラブルは穴周辺の割れや欠けで、回転数が早過ぎ
たり送り速度が早過ぎると、割れや欠けを起こし易くなります。
シートの保持状態が悪く加工中にシートが動くと割れや欠けが生じやすいので、必ず治具
等を用いてしっかりと固定します。
ドリル刃先がシートを突き抜けるときにも割れや欠けが生じやすいので、突き抜ける直前
から送り速度を小さくしたり、穴をあけようとするシートの下に他の不要なシートや木材を
当てがうようにします。
デラグラスTMKは、デラグラスTMAよりも、回転数を若干早めにすると良い結果が得られます。
加工時に融着(粘り)がある場合、次のような方法で綺麗な仕上がりにすることができます。
・穴あけの途中でドリルを上下して切屑をとり除く
・冷却剤(水、石けん水など)を用いる
・エアを吹きかけ冷却を行う
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42
10-3 彫刻加工
良く研磨したカッター刃を用い、エア冷却しながら切削を行えば、良い仕上がりを得ることが
でき、塗装後のクラックも防ぐことができます。
カッター刃の回転数は、デラグラスTMAの場合には8,000~9,000rpm、デラグラスTMKの場合
は12,000rpm程度が適当です。
10-4 ルーター加工
溝加工、段付加工、くり抜き、曲線切り、トリミングなどの加工にNC装置を組み込んだ高
性能のルーターマシーンが一般に使用されています。
加工品の重量、サイズが大きく運搬、固定が困難な場合、ハンドルーターも使用されます。 カッター刃はいろいろな形状があり、通常1枚刃か2枚刃で、多数刃もあります。
ルーターの回転数は、刃径が12mm以上で15,000rpm、刃径が12mm未満で25,000rpm
程度にすれば、デラグラスTMA、デラグラスTMKの両方に対応できます。
カッター刃の形状により、図34のような加工ができます。
端面段差
溝切り
図34 ルーターによる加工例
コーナーR
10-5 艶出し加工
(1)バフ研磨加工
丸鋸等でカットした後、カット面の仕上げを行ってからバフがけしますが、特に美しい仕上
げ面を得たいときには、電動カンナで仕上げた後、サンドペーパーで#250程度から始めて、
#600程度まで数段階の下研磨の後にバフがけすることをお奨めします。
また、エンドレスバフ(サンドペーパーがベルト状になったバフ、サンドバフともいう)も、
デラグラスTMの艶出し加工に用いることができますが、この方法は摩擦熱によってシート
の研磨面にひずみを多く発生させるおそれがあります。
このため、その後に接着や印刷加工を行うと、接着剤やシンナーおよびそれらのガスの
作用で、艶出し面にクラックを生じ易くなりますので、これらの影響が直接なくなった最終
工程で実施することをお勧めします。
(2)フレームバフ加工
デラグラスTMの切断面の艶出し加工法として、水素酸素炎、またはプロパンガス酸素炎によ
るフレームバフ加工があります。
バフ研磨加工のできない場所(穴の奥や内側、複雑な形状をしたものなど)でも艶出しできる
便利な方法で、短時間に艶付けができます。
この方法は、炎によってシートの表面をわずかに熔融して艶出しする方法で、切断したまま
の面に施すと鋸目が必ず残りますので、美しい仕上げを得たいときは、下研磨を行ってから
施してください。
デラグラスTMAの場合は、デラグラスTMKより炎をやや小さ目にして、熔融による変形(垂れ)
が起こらないように注意します。
フレームバフをかけたあとは、ひずみが多く残っていますので、接着や印刷をしたり、溶剤
や溶剤のガスにさらされると、バフをかけた部分にクラックを生じることがあります。
従って、フレームバフがけは接着、印刷を終りこれらの影響が直接なくなった最終工程で
行うようにして下さい。
多く吸湿したシートにフレームバフを施すと、フレームが当たった箇所近くの水分が瞬間的
に蒸発し、シート内部との間に強いひずみを生じ、ここに溶剤の影響があるとクラックをいっ
そう生じ易くなりますのでご注意ください。
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43
TM
11.デラグラス の接着加工
デラグラスTMの接着方法として、溶剤を使用する溶剤接着が簡便です。
接着用の溶剤として、ジクロロメタン(別名、二塩化メチレン)が一般的に用いられます。
溶剤接着で接着部分や接着部分の付近にクレーズ(微細なひび割れ)やクラック(亀裂)が
生ずる場合があります。
このクレーズ、クラックは外観を損なうばかりでなく接着部の強度を著しく低下させますから、
発生させないために十分な注意が必要で、以下その原因と防止方法を示します。
●デラグラスTMの吸湿量が多いと発生し易く、事前に70~80℃で3~8時間乾燥する
(デラグラスTMに含まれる水分を概ね1%以下とする)
●切断、穴あけ等の機械加工時にひずみが残っている場合はその箇所に発生する、
70~80℃で3~8時間のアニール処理を行えばこのひずみは殆ど除去できる
●加熱折り曲げ、加熱成形等の加工によりひずみが残っていると発生し易い、この
場合も前述と同様のアニール処理でひずみを除去する
●不均一な支持や押え等でデラグラスTMが曲がったり、圧縮された状態となって応力が
作用していると発生し易いので、無理な力がかからないようにする
夏場など高温多湿の環境で接着加工を行った場合に、ジクロロメタンが付着したデラグラス
の表面が白くなる現象(白化)を起こすことがあります。
ジクロロメタンは沸点が低く(40℃)非常に蒸発し易い溶剤で、急激に蒸発するとその付近
が蒸発潜熱で冷却され、そこに空気中の水分が結露することによって生ずる現象です。
このような場合、沸点の高いジアセトンアルコールや氷醋酸を3~10%添加すると、白化の
防止に加え、クラックの防止にも良い結果が得られます。
TM
溶剤接着で実用的には充分な接着強さが得られますが、とくに大きい接着強さを求められ
る場合には重合接着が採用されることがあります。
その他、市販されているプラスチック用の接着剤(瞬間接着剤等)での接着も可能です。
注)溶剤、接着剤等の取り扱いの際は予めメーカー発行のMSDS(製品安全データシート)
を参照の上、安全にご注意下さい。
作業中は目、皮膚との接触を避け、蒸気を吸入しないように保護具の着用が必要です。
ジクロロメタンは、化学物質の有害性分類基準で発がん性区分2(人に対する発がん
性が疑われる)に分類されています。
11-1 溶剤接着
接着したいデラグラスTMの接着面をお互い接触させ、動かないように固定しておき、注射器に
吸入した溶剤(例えばジクロロメタン)を接触面の間隙に注射針から注入します。
溶剤は、毛管現象で接触面の内部に浸透していくので、その様子を観察しつつ、部分的に
過不足にならないように溶剤を注入し、固定した状態でしばらくそのまま静置しておきます。
溶剤注入後すぐに押して圧力をかけると、接着面から気泡が抜けてより綺麗で確かな接着
を行うことができますが、あまり強く押しすぎると溶剤が流れ出して板面を汚してしまったり、
ひずみによるフラックの原因となりますので注意してください。
接着する品物の形状にもよりますが、ある程度の接着強さに達すれば、支えが無い状態で
も自己保持が可能となります。
一般に自己保持できる強さに達するまでの時間は、デラグラスTMAで約15秒、デラグラスTMK
では約30秒となります。
さらにそのまま室温にて12~24時間は静置しておき、溶剤が揮散し充分な接着強さに達
するのを待ちます。
参考に2枚の試験片端部を重ねて接着したときの、曲げ試験による接着強さの測定方法
を図35に、接着後の時間経過と共に接着強さを測定した結果を図36に示します。
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44
接着部分
厚さ3mm、幅20mm、長さ70mmの試験片
2枚の両端を相互に10mm重ね、この
部分をジクロロメタンで接着する
荷重
接着後所定の時間経過した接着試験片
を曲げ試験機を使用して60mmスパンで
均等に支持し、中央に荷重を負荷して接
着部分が破壊したときの荷重を測定する
支持
支持
図35 接着強さ試験方法
35
接着強さ(荷重)
(kg)
A
K
デラグラスTMA
10
10
5
15
12.4
7.6
30
17.6
12.4
60
23.4
17.2
90
26.0
19.8
120
27.6
21.4
150
28.6
23.0
経過時間
(秒)
接着強さ(荷重kg)
30
25
20
15
10
デラグラスTMK
5
0
0
20
40
60
80
100
経過時間(秒)
120
図36 接着後の経過時間と接着強さ
旭化成テクノプラス株式会社
140
160
45
11-2 重合接着
MMAモノマーにメタクリル樹脂を少量溶解して粘度を上げたシロップを準備しておき、
このシロップに硬化剤(重合開始剤)を加え、接着すべき部分の間隙に注入し、MMAモノ
マーが重合反応で硬化すると同時に接着する方法です。
この方法は、構造体として高度な信頼性が要求される場合などに用いられます。
事前の準備や接着後の仕上げが必要で手間を要しますが、接着強さが大きくデラグラスTM
どうしが一体化した美しい外観を得ることができます。
a.シロップの作製例
配合
MMAモノマー(メタクリル酸メチル)
85~75重量%
TM
15~25重量%
デルペット 80N(メタクリル樹脂)
EGDMA(エチレングリコールジメタクリレート) 1 重量%
調合方法
TM
MMAモノマーを強く攪拌しながらデルペット 80Nを加え、60~70℃に
昇温してデルペットTM80Nを完全に溶解する(所要時間は1~2時間)。
その後冷却して室温でEGDMAを添加攪拌後、冷暗所に保管する。
b.重合接着剤の調整例
硬化剤(重合開始剤)として、aで調合したシロップに2,2'azobis(2,4dimethylvareronitrile)
0.1~0.4重量%、又は2,4dichlorobenzoylperoxide0.3~0.8重量%を室温で添加
攪拌し、減圧(真空)状態で約5分間脱泡して重合反応を阻害する溶存酸素を除く。
このように調整した重合接着剤を使用すると、無色透明な接着部を得ることができる。
尚、硬化剤の量は作業環境温度によって適宜調整する(夏季高温時は少い方向)。
c.接着方法
接着したい部位に間隙を設け、ポリエステルフィルム、セロハンテープ等で接着剤が漏
れないように予めシールや仕切りを作り、ここに調整した接着剤を流し入れる。
重合反応で硬化する際に約20%の体積収縮が起こるので、接着部の凹みを防ぐには
接着剤をこの分盛り上げておく必要がある。
通常室温で数時間で硬化するので、さらに80℃で2~3時間の加熱処理を行い、重合
反応の完結と、歪を除くアニール処理を施す。
d.仕上げ
接着部のはみ出した箇所を、グラインダー、サンドペーパー等で荒仕上げし、バフ研磨
で最終仕上げを行う。
11-3 その他の接着方法
(1)一般の接着剤での接着
シアノアクリレート系接着剤(瞬間接着剤)は短時間で硬化し、無色透明であることから、
TM
広く使用されており、デラグラス どうし、および他の素材(他樹脂、ゴム、木材、金属、
ガラス等)との接着も可能です。
その他にエポキシ系、アクリル系、シリコン系等の一般に市販されている各種接着剤に
よる接着は可能ですが、シアノアクリレート系を含め、各々の接着剤の特徴、強度、耐久
性等を予めメーカー発行の取扱説明書他で調査確認の上、目的に合わせて実施下さい。
(2)超音波接着
同種または異種の熱可塑性樹脂を接触させ、超音波の作用でこの接触部分を発熱熔融
して相互接着する原理を応用した方法で、デラグラスTMも接着が可能です。
(3)光硬化性接着剤による接着
光エネルギーにより硬化する感光性樹脂を接着剤として、デラグラスTMを接着する方法で、
紫外線(UV)照射で硬化するタイプや、可視光線の照射で硬化するタイプがあります。
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46
TM
12.デラグラス の加熱成形加工
デラグラスTMは熱可塑性樹脂で、加熱により軟化し、ほとんど望み通りの形状に成形する
ことができます。
成形方法には簡単な直角曲げ加工、曲面加工、複雑な凹凸加工等、目的により種々の
方法があります。
12-1 折り曲げ加工
棒ヒータでデラグラスTM表面を直線状に加熱し、軟化した段階でL字の他、複雑な形状に
折り曲げ、そのまま静置放冷して目的の形状とします。
加熱時のデラグラスTMの反りを押さえ、また折り曲げた形状を冷却が終わるまで保持する
ための冶具を用いると便利です。
使用する棒ヒータの仕様例を表10に示します。
表10 折り曲げ加工に使用する棒ヒータの仕様例
直径(丸棒Φ )
mm
10
12.7
16
長さ(L)
mm
600
1,000
1,350
1,000
1,500
2,000
電力容量
W
200
400
500
400
500
600
折り曲げ加工を行う場合には、次の点に留意して下さい。
● テフロンコーティング、またはテフロンチューブを被覆した棒ヒータを使用すると、デラグラ
スTMが接触してもヒータ表面に焼き付くのを防いで綺麗に仕上げることができる。
● デラグラスTMの加熱、折り曲げはマスキングをしたままでもよい。
このようにすると傷やホコリがつくのを防ぐことができ、マスキングは冷却後に剥ぎ取る。
● 折り曲げるときの温度は、デラグラスTMAの場合は表面が90℃、デラグラスTMKの場合は
表面が100℃を超える温度に達したときを目安とするが、実際には棒ヒータの温度と加熱
時間で管理する。
● 板厚が3mm以下のデラグラスTMは片面からの加熱のみで折り曲げることができるが、4mm
以上の場合は両面を加熱する方が早く、かつ綺麗に仕上げることができる。
● 棒ヒータで加熱するとき、接触加熱による方法は伝熱に有利で加工スピードは早いが、
ヒータに当たったデラグラスTM表面に跡が残り外観が損なわれることが多く、美しい面を保
つには数mmの間隙を設けて間接的に加熱する非接触加熱による方法が望ましい。 旭化成テクノプラス株式会社
47
デラグラスTMを折り曲げるときのヒータ温度と加熱時間の目安を、表11に示します。
表11 折り曲げ加工のヒータ温度と適正な加熱時間の目安
加熱の ヒータ温度 厚み
方式
(℃)
(mm)
2
150
3
4
接触
2
3
190
4
5
220
非接触
3
300
適正な加熱時間(秒)
デラグラスTMA
デラグラスTMK
45
55
100
130
190
230
25
30
60
80
115
145
220
275
220
270
140
195
棒ヒータの仕様 : Φ 12.7 L1350 500W
(非接触加熱はデラグラスTM表面と棒ヒータとの間隙を2mmに設定)
デラグラスTMの折り曲げ冶具の例を図37、38に示します。
デラグラスTM
図37 L字曲げ冶具の例
デラグラス
デラグラス
図38 複雑な形状の曲げ冶具の例
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48
12-2 真空成形加工
真空成形機で、デラグラスTMを加熱し軟化状態で真空源を利用して型で成形する方法で、プ
レス成形等とも組み合わされ、複雑な形状や深絞り成形などにも用いられている方法です。
(1)加熱
a.加熱温度
先ず成形に適した加熱温度を決める必要があります。
デラグラスTMが十分軟化して、成形の際に容易に伸びる温度が最も好ましいと言えます。
加熱温度が高すぎると吸水している場合には発泡することがあり、さらに温度が高くなると
樹脂の分解による発泡が起こります。
従って、できるだけ低い温度で成形することが望ましいのですが、一方で型形状の再現性
を良くするためにはできるだけ高い温度が有利なので、発泡しない上限の温度から、若干
低い温度が目標となります。
デラグラスTMAは軟化温度が低く、デラグラスTMKと比べてより低温での成形が可能です。
加熱温度の目安はデラグラスTMAで140~150℃、デラグラスTMKで170~190℃ですが、
実際には使用するデラグラスTMの板厚、成形法、および成形品形状に適した温度を設定して
ください。
b.温度の測定
デラグラスTMの温度は、表面温度計を用いて測定しますが、接触式と非接触式があります。
接触式の場合、冷えている温度検出端子が加熱されたデラグラスTMに接触したときにデラグ
ラスTM表面の熱が奪われ、実際の温度より低く測定していることがあり注意を要します。
非接触式の表面温度計の場合は、赤外線を検知する方式であり、この問題はありません。
予め、使用する成形機での加熱時間と表面温度との関係を求めておけば便利ですし、同
時に雰囲気温度もチェックすることで、季節ごとの加熱時間の調整に役立ちます。
デラグラスTMAとデラグラスTMKの加熱時間と表面温度の関係は変わりません。
参考に、デラグラスTMを成形機で加熱したときの加熱時間と温度との関係を図39に示します。
220
シート表面温度 (℃)
200
デラグラスTMK
の適正条件
180
160
140
デラグラスTMA
の適正条件
120
20
30
40
50
60
加熱時間 (sec)
図39 デラグラスTMの加熱時間と温度との関係
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板厚 3mm
寸法 650mm角 ヒータ容量
上ヒータ 16.8kW 2.7W/cm2
下ヒータ 4.8kW
0.8W/cm2
49
c.水分による発泡
デラグラスTMに含まれる水分は通常0.5%以下で、一般的な成形加熱条件では問題ありま
せんが、メタクリル樹脂であるデラグラスTMは各種合成樹脂類の中で比較的吸湿性が大きく、
梱包形態、在庫環境と期間等により、吸湿して含有水分が多くなっている場合があります。
吸湿したデラグラスTMを加熱し、温度の限界を超えると水分が気化し発泡現象を起こします。
デラグラスTMKはデラグラスTMAに比べて、高温でも発泡し難い傾向があります。
参考に、デラグラスTMAとデラグラスTMKの含有水分率と発泡する限界の表面温度を表12に示
します。
表12 デラグラスTMの含有水分率と発泡する限界の表面温度
デラグラスTMA
205
188
172
158
147
含有水分率%
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
デラグラスTMK
217
207
201
198
196
(2)真空成形の方法
真空成形には次に示すようないろいろな方法があり、このうちどの方法をとるかは目的と
する成形品の大きさや形状により選択されます。
また、技術的には類似していますが、最大でも0.1MPa(1気圧)の圧力である真空成形に
比べ、0.2~0.5MPa(2~5気圧)の圧搾空気を導入して、より高圧での深絞り成形や
割型を用いたアンダーカットのある成形を行う圧空成形があります。
a.ストレート成形法
デラグラスTMをクランプして加熱した後、そのまま真空源(真空ポンプ)で吸引する。
型は雌型を用いるが、型に最後に接した部分の成形品の肉厚が薄くなりやすい。
(図40参照)
ヒーター
加熱
クランプ
成形品
デラグラス
型
真空
図40
ストレート成形法
旭化成テクノプラス株式会社
50
b.ドレープ成形法
デラグラスTMをクランプして加熱した後、型のところまで下ろし(あるいは型を突き上げ)て
シール(エヤタイト)し、真空源(真空ポンプ)で吸引する。
通常雄型を用い、成形品の肉厚は比較的均一になる。
(図41参照)
ヒーター
デラグラス
デラグラス
成形品
クランプ
加熱
型
真空
図41
ドレープ成形法
c.プラグアシスト成形法
デラグラスTMを加熱した後、プラグで引き伸ばし、プラグストロークの終点においてシールし、
同時に型を真空状態にして、成形する。
プラグの大きさや温度によって、成形品肉厚の均一性が変わる。
(図42参照)
デラグラスTM
ヒーター
クランプ
プラグ
成形品
加熱
型
真空
図42
プラグアシスト成形法
旭化成テクノプラス株式会社
51
d.プラグアシストおよび圧搾空気併用成形法
プラグアシスト真空成形法に類似しているが、プラグストロークが終点に達したとき、型内
を真空にすると同時にプラグ側から加熱した圧搾空気を送り込む。
プラグの温度を調整できるようにすれば、より成形品肉厚の均一化が図れる。
(図43参照)
ヒーター
デラグラスTM
プラグ
クランプ
加熱
圧搾空気
成形品
型
真空
図43 プラグアシスト及び
圧搾空気併用成形法
e.真空スナップバック成形法
デラグラスTMを加熱した後、真空ボックス上でシール(エアタイト)して真空で一旦引き伸ばし、
さらにプラグでシール(エアタイト)して、プラグ側からの真空作動でプラグ側に引き寄せる。
プラグ側(雄型)の真空作動時には、真空ボックス内を大気に開放するか、圧搾空気を送り
込むようにする。
(図44参照)
プラグ
ヒーター
デラグラス
デラグラス
加熱
真空
クランプ
型
真空
図44
圧搾空気
真空スナップバック成形法
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成形品
52
(3)成形加工における不良現象と対策
成形加工時に発生する不良現象の原因とその対策を、参考として表13に示します。
表13 不良現象の原因と対策
不良現象
原因
シートの吸湿
発泡
加熱温度が高い
不均一な加熱
反り
離型時の割れ
型での冷却
表裏の温度差
型から外れ難い
枠部の切れ込み
型痕
型面の転写
対策
・シートが吸湿しないよう保管に注意する
・成形前に予備乾燥する(約80℃で数時間以上)
・加熱設定温度と時間を見直し適正温度以上にしない
・深絞り、複雑な形状等の場合、プラグアシスト他の
成形法の採用で過度の加熱を避ける
・加熱装置の温度を均一にする
・加熱し難いクランプ部等を予熱しておく
・型温を上げ、加熱シート接触時の急冷を避ける
・冷却時はなるべく表裏の温度差を少なくする
・適正な抜きテーパーをとり、成形品を外れ易くする
・型の面を平滑にして滑りやすくする
・クランプする枠を尖らせない
・木型では木目が出易く十分な研磨と目止めが必要
・石膏、樹脂、金属型は表面を十分研磨する
(5)成形型
型としてはその材質別に、木型、石こう型、樹脂型、金型などがあります。
各種型材の特徴を表14に示します。
表14 各種型材の特徴
長所
◇加工、修正が容易
木型 ◇試作から生産まで可能
◇安価
◇型作りが容易
石こう型 ◇試作から生産まで可能
◇安価
◇寸法精度、強度が高い
樹脂型 ◇成形時の加熱、冷却の繰り
返しでの型の変形が少ない
◇寸法精度、強度が最も高い
◇耐久性がある
◇型温調節が可能で、一定
金型
条件を保持できる
◇型を冷却することでサイクル
タイムの短縮ができる
短所
◇加熱、冷却の繰り返しによる
変形やひび割れを起こし易い
◇木目が成形品に移り易い
◇欠け易いので、複雑な形状、
大型の成形品には向かない
◇伝熱が悪く、冷却サイクルが
長くなる
◇比較的重い
◇成形中に型に接した部分が
先に冷え、厚みむらが出易い
◇重い
◇高価
型材として何を選択するかは、つぎのような要因を検討して決定します。
● 試作か、生産か(生産の場合はその数量)
● 成形品の形状は単純か複雑か
● 成形品に求められる寸法精度
● 成形サイクル
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53
型の設計に当たっては、次の点に留意しなければなりません。
● 成形品の収縮を見込んだ寸法とする
デラグラスTMAの場合は通常6/1000、デラグラスTMKでは4/1000程度の収縮を見込む。
(押出板であるデラグラスTMAの場合、押出方向の収縮がいくらか大きく、押出方向に
7/1000、幅方向に5/1000程度を見込むと良い結果を得る場合が多い。 一方
キャスト板のデラグラスTMKは、方向による収縮の違いは考慮せずとも構わない)
● 抜き勾配を設ける 凸型の場合、4~5°の抜き勾配をとることでスムースな型外しが可能となる。
凹型の場合、成形品の収縮によって型離れすることもあるが、2~3°の抜き勾配
をとった方がよい。
12-3 フリー加熱加工
フリー加熱加工というのは、シートを自由な状態(クランプしない)で加熱炉に入れて加熱し、
シートが軟化した状態で種々の形に成形する加工の総称です。
図45~49に示すように、種々の成形方法があります。
加熱に先立って、在庫期間の長いシートでは予備乾燥するのが好ましく、これはシートが
発泡したり、表面が荒れるというような不良現象に対する対策となります。
予備乾燥は、70~80℃に温度調節した空気槽(オーブン)内で3~8時間行うことをお奨
めします。
シートを軟化する加熱炉は、電気又はガスヒーターで昇温した空気を強制循環する方式
の熱風循環式加熱炉が温度の制御精度が高く、最も推奨されます。
デラグラスTMAで160~170℃、デラグラスTMKで180~200℃に設定します。
炉内の温度が一様になるように、棚板の位置、吊り下げの方法等シートの保持方法に配
慮し、加熱時間は通常板厚1mm当たり1~2分です。
簡便には電熱ヒーターを下部に設けた自然対流炉、(遠)赤外線を放射するヒーターを備
えた(遠)赤外線炉も使用されますが、不均一な加熱、及び過度の加熱を起こし易いため、
成形品の不良発生を防ぐためには十分な注意が必要で、大型の成形には不向きです。
押出板であるデラグラスTMAは、加熱軟化時に押出方向にやや大きく収縮する傾向にあり、
シートの採寸に当ってはこれを見込む必要があります。
上述のような温度条件に於いて、デラグラスTMAは押出方向に2~5%の収縮を、また幅方
向に0~1%の増大を見込んで下さい。
キャスト板のデラグラスTMKの場合、板の方向に関係なく、1~2%の加熱収縮があることを
見込んで下さい。
成形品のサイズが大きくなるに従い、加熱ムラ、収縮ムラ、表裏の冷却ムラ等で、成形品
の形状が若干ゆがむ場合がありますので、注意が必要です。
図45 雄型を用いる成形の例
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54
図46 雌型を用いる成形の例
図47 雌雄型を用いる成形の例
図48 押し込み、たらし込み成形の例
図49 絞込み成形の例
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55
TM
13.デラグラス の表示、装飾加工
デラグラスTMの表面に文字、模様、絵柄、色付けなどの表示、装飾を行い、ディスプレー、看板、
銘板、表示板などとして広く使用されています。
表示、装飾の方法として、塗装、印刷、ホットスタンプ、ラミネートなどがあります。
13-1 塗装
スプレー塗装、及び文字入れ塗装が主に行われています。
(1)スプレー塗装
TM
デラグラス への塗装は、エヤーガン等一般の塗装設備を使ったスプレー塗装が比較的容易
に行われ、塗料はアクリル系のものが主に使用されています。
金属、木材などへの塗装の場合に起こる問題の他に、アクリル板がゆえに起こる下記の問
題がありますので注意が必要です。
・クレーズ、クラックの発生
塗料はメーカーがアクリル用として発売しているものを使用することをお勧めしますが、塗
料中に含まれる溶剤により、クレーズ(微細なヒビ割れ)やクラック(亀裂)が発生すること
があり注意が必要です。
参考に11.デラグラスTMの接着加工の項に示すクレーズ、クラックの原因と防止方法も参照
下さい。
・熱による変形
デラグラスTMは熱可塑性樹脂ですので塗装後の乾燥温度に限界があり、60℃程度を目安
にして80℃を超えない管理が必要です。
特に、加熱硬化型の塗料は注意が必要です。
(2)文字入れ塗装
デラグラスTMに施した彫刻凹部に、塗料を入れて文字や目盛り等を引き立たせる塗装です。
彫刻部には歪が残っている場合が多いので、使用する塗料の溶剤はクレーズ、クラックの
防止のために一般に比べて作用がマイルドなアルコール系を多く含んだ組成のものが
適当です。
13-2 印刷
デラグラスTMは無色で透明性が極めて高いため、裏面に印刷した図柄が鮮明で、ディスプレー、
看板、銘板、表示板用の素材として最も適したものといえます。
デラグラスTMへの印刷の方法として、スクリーン印刷が主に実施されています。
(1)スクリーン印刷
スクリーン印刷は、スクリーンに形成された印刷版の目を通して押し出されたインクでデラグ
ラスTMに印刷する方法で、多色刷りを施しても鮮明な図柄を得ることができます。
印刷版付きスクリーンをデラグラスTM表面から2~5mm離して各々平面に置き、スクリーン上
のインクをスキージでしごきながらスクリーンの弾性を利用して連続的にデラグラスTM表面に
押し付けることで印刷します。
図50に印刷時の状態を示します。
・スクリーンは絹、ナイロン、ポリエステル、金属(ステンレススチール他)等の素材ででき
た目開き150~300メッシュの網を用い、木枠、又は金属枠に張られる。
・印刷版の製作には、所望の図柄をカッティングしてスクリーンに接着するカッティング法、
スクリーンにつけた感光膜に光を照射して図柄を焼き付ける感光法等がある。
・インクは、常温乾燥タイプが設備的にも容易で広く使われるが、用途によっては紫外線
(UV)硬化タイプも使用されることがある。
旭化成テクノプラス株式会社
56
・インクの粘度は、スクリーン上に自重で広がり印刷版の目を通過しない程度に調整する。
粘度が低いとインクがにじみ、高いと版詰まりを起こしたりスクリーンの目が印刷面に出
る等の不具合が起こるので注意が必要である。
・スキージはウレタンゴム製(シヨア硬度60~80°)のものが良く用いられ、先端を平坦に
鋭く仕上げておくことが大切で、傷がついていると印刷むらを起こし易くなる。
・スキージは40~60°に傾斜させ、その摺動速度の目安は60~200㎜/secとする。
スキージ
2~5mm
版枠
印刷版
インク
デラグラスTM
印刷台
図50 スクリーン印刷
(2)その他の印刷方法
a.転写印刷
ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、紙などの一面に剥離層を設け、この上
にグラビア印刷などで図柄を印刷し、更にその上に接着層を設けて転写紙とします。
この転写紙を使用して、熱と圧力を加えることでデラグラスTMに印刷図柄を接着層を介し
て転写する方法です。
b.インクジェット印刷
細いノズルからインク滴を吐出させ印刷する方式で、高精度でカラー適性に優れてい
ることから比較的新しい方式ですがプラスチック分野への適用が進められています。
13-3 ホットスタンプ
ポリエステルフィルム等の薄いキャリーフィルムに、インク、メタリックホイル等で形成された
装飾皮膜を、熱と圧力によって、デラグラスTMの表面に転写する方法です。
装飾皮膜側をデラグラスTMに挟んだ状態で、110~170℃に温度を上げた刻印等の型をキャリ
ーフィルムに0.2~1秒の間押し付けます。
特徴として、以下のことがあげられます。
・作業時間が短い。
・塗装や印刷と違って、乾燥工程を必要としないため、簡便で生産スピードが速い。
・市販の装置、装飾皮膜付きキャリーフィルムは扱い易く、熟練を必要としない。
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57
付表 : 単位の換算
項目
SI単位
引張り強さ、弾性率
MPa
単位換算の方法
従来単位
kgf/cm
2
曲げ強さ、弾性率
kgf/cm2 ⇒ MPa
0.09806 を掛ける
MPa ⇒ kgf/cm2
0.09806 で割る
2
2
シャルピー衝撃強さ
kgf・cm/cm
kJ/m
2
アイゾット衝撃強さ
比熱
熱伝導率
力
仕事、エネルギー
kgf・cm/cm
kJ/kg・℃
W/m・℃
N
J
kgf・cm/cm ⇒ kJ/m
2
kJ/m2 ⇒ kgf・cm/cm2
kgf・cm/cm ⇒ kJ/m
2
0.09806 を掛ける
0.09806 で割る
0.09806 を掛ける
kJ/m2 ⇒ kgf・cm/cm
0.09806 で割る
kcal/kg・℃ ⇒ kJ/kg・℃
4.186 を掛ける
kJ/kg・℃ ⇒ kcal/kg・℃
4.186 で割る
kcal/h・m・℃ ⇒ W/m・℃
1.162 を掛ける
W/m・℃ ⇒ kcal/h・m・℃
1.162 で割る
kgf ⇒ N
9.806 を掛ける
N ⇒ kgf
9.806 で割る
kgf・m ⇒ J
9.806 を掛ける
J ⇒ kgf・m
9.806 で割る
kcal/kg・℃
kcal/h・m・℃
kgf
kgf・m
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58
●取り扱い上のご注意
デラグラスTMの取り扱い上の注意については、製品安全データシート(MSDS)を別途作成
しておりますので、使用前に必ずお読み下さい。
次の事項はデラグラスTMの取り扱いについての要点です、安全な取り扱いにご活用下さい。
① 安全衛生上の注意点
デラグラスTMの切断エッジ面等は鋭利な為、切り傷にご注意下さい。
取り扱い作業においては保護具(保護着、保護眼鏡、保護手袋等)の着用が必要です。
TM
デラグラス の乾燥、又は過度の加熱による熔融時に発生するガスの眼、皮膚への接触や、
吸入を避けるように注意し、高温の樹脂には直接触れないようにして下さい。
乾燥、熔融などの作業においては、局所排気装置等の換気設備の設置が必要です。
② 燃焼に関する注意点
TM
デラグラス は可燃性ですので、取り扱い、保管は熱源、及び発火源から離れた場所で行っ
て下さい。
万一燃焼した場合には、不完全燃焼により一酸化炭素等の有毒ガスを発生する恐れがあり
ます。
消化には水、二酸化炭素、泡消火剤、粉末消火剤が使用できます。
③ 廃棄上の注意点
TM
デラグラス は埋め立て、又は焼却により処理できます。
廃棄処分する場合には公認の産業廃棄物処理業者、又は地方公共団体に委託し、「廃棄
物の処理及び清掃に関する法律」等の関係する法規、地区条例に従い処理して下さい。
●適合規格に関して
デラグラスTMにはUL(Underwriters Laboratories Inc.)、ポリオレフィン等合成樹脂製食
品容器等に関する自主基準の規格に適合するグレードがあります。
ご使用の用途につきましては、法規制、規格・基準、使用制限等への適合性や、用途に応じ
た要求特性に対する適合性、安全性等を貴社の責任でご検討頂き、使用の可否をお決め下
さい。
●その他
ご使用に際しましては、工業所有権等にもご注意下さい。
【使用上の制限】
デラグラスTMは長期的(30日以上)に人体組織や体内流体と接触する医療用の器具、及
び製品、乳幼児の口に触れるものや、飲み込む可能性のあるものには使用しないで下さい。
又、上記に該当しない医療用途、食品、及び飲料水に接触する用途、化粧品・玩具・スポ
ーツ用具等の用途にご使用の際には、必ず、予め旭化成テクノプラス(株)アクリルシート
事業部までご連絡下さい。
個別にご相談に応じます。
(ご注意)
この資料の記載内容は現時点で入手できる資料、情報、データに基づいて作成しており、
新しい知見により改訂されることがあります。
旭化成テクノプラス株式会社
旭化成ケミカルズ株式会社
www.asahi-kasei.co.jp
樹脂総合研究所 アクリル樹脂技術開発部
〒210-0862 神奈川県川崎市川崎区浮島町10-9
TEL.044-271-4450
FAX.044-271-4477
旭化成テクノプラス株式会社
アクリルシート事業部
www.aktp.co.jp
〒104-0033 東京都中央区新川2-26-3
(住友不動産茅場町ビル2号館9階)
TEL.03-3552-9111
FAX.03-3552-9131
旭化成テクノプラス株式会社
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