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山口県人権教育推進資料 (PDF : 559KB)

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山口県人権教育推進資料 (PDF : 559KB)
山口県人権教育推進資料
平成24年(2012年)
山 口 県 教 育 委 員 会
はじめに
国際連合は、昭和23年(1948年)12月10日、第3回国連総会で「人類社会のす
べての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認すること
は、世界における自由、正義及び平和の基礎である」と人権の尊重を謳った
『世界人権宣言』を採択し、人権の国際基準を示しました。
我が国においても、基本的人権の尊重を基本原理の一つとする『日本国憲
法』が制定され、その憲法のもとで、国政の全般にわたり人権に関する諸施策
や諸制度の整備が推進されています。
山口県においても、幅広い人権課題への対応や、より一層の人権尊重を踏ま
え た 行 政 の 推 進 な ど 、 人 権 に 関 す る 総 合 的 な 取 組 を 推 進 す る た め 、 平 成 14年
(2002年)3月に『山口県人権推進指針』が策定され、平成 19年(2007年)6月に
は、『指針』の「分野別施策の推進」について改定が行われました。
その後、社会情勢の変化や新たな人権課題も生じていることから、平成20年
(2008年)に実施された「人権に関する県民意識調査」の結果も踏まえ、平成24
年(2012年)3月に『指針』が改定されました。
この『指針』においては、山口県民すべてが、自分の人格が尊重され、他人
の人格を尊重して自由で平等な生活を共に営むことができるよう、一人ひとり
がかけがえのない尊い「いのち」の主体者であるという、人間尊重を基本的な
考え方として、人権に関する取組を総合的に推進するという基本理念が示され
ています。
山口県教育委員会では、『指針』を踏まえ、人権教育を推進する上での基本
的な方向を示すものとして平成14年(2002年)4月に『人権教育の推進にあたっ
て』を作成し、平成15年(2003年)3月には、この考え方や進め方をさらに具体
的に説明した『人権教育推進資料』を作成しました。
平成23年(2011年)3月には、『人権教育の推進にあたって』と『人権教育推
進資料』の見直しを行い、『人権教育推進資料(新訂版)』としてとりまとめま
したが、この度の『指針』の改定を受けて、学校・地域社会における自主的な
取組がより高まるよう、『山口県人権教育推進資料』として作成しました。
本資料が広く活用され、一人ひとりが人権教育を推進していく主体者である
という認識のもとに、“県民一人ひとりの人権が尊重された心豊かな地域社
会”の実現に向けて、自主的、積極的な取組が展開されることを心から期待し
ます。
平成24年(2012年)3月
目次
○
「山口県人権推進指針」の基本理念、キーワード
Ⅰ
1
2
本県における人権教育の取組
基本姿勢
人権教育の全体構想図
1
2
2
3
<基本的人権に関わる学び>の図
Ⅱ
1
学校における取組
推進体制の確立
5
6
(1)校内推進組織の充実
(2)家庭、地域社会、関係機関との連携
(3)全体計画作成の意義や目的
(4)年間指導計画の作成
<学校における人権教育推進の全体構想図(例)>
2
人権尊重の視点に立った指導の充実
8
(1)人権尊重の視点に立った学校づくり
(2)児童生徒の自主性と実践への意欲を育む指導の充実
3
研修機会の充実等
10
(1)年間研修計画の作成
(2)多様な研修機会の充実
4
Ⅲ
1
取組の評価と見直し
地域社会における取組
支援体制等の整備・充実
10
11
11
(1)地域社会で自主的に取り組む気運の醸成に向けて
(2)県、市町及び社会教育関係団体等の相互の連携
(3)家庭、地域社会への情報提供の充実
(4)家族とのふれあいを大切にする家庭教育への支援
(5)家庭教育に関する相談体制など、支援体制の整備・充実
2
指導者の養成
12
(1)指導者の役割
(2)指導者の資質向上
3
4
Ⅳ
1
2
3
4
5
学習機会の充実等
取組の評価と見直し
推進上の留意点(配慮事項)
教育の中立性の確保
学習者の主体性の尊重
地域社会の課題や住民の興味・関心に即した学習内容や資料の選定
個人情報やプライバシーに関することへの配慮
人権課題の学習について
13
13
14
「山口県人権推進指針」の基本理念、キーワード
1 基本理念
私たちの身の回りには、日本国憲法に定める自由権、平等権、生存権、教
育を受ける権利、勤労権などに関わる様々な人権課題が幅広く存在していま
す。
この指針においては、すべての県民が、家庭、地域、職場、学校、施設、
その他あらゆる場において、人としての尊厳が損なわれることなく、自分の
人格が尊 重され、 他 人の人格 を尊重し て 自由 で平 等 な生活を 営むこと がで
きるよう、一 人ひと りがかけがえ のない 尊い 生 命(いのち )の 主体者である
と い う 、人 間 尊 重 を基本的な 考え方と し て、「県 民一人ひ と りの人権 が尊
重された心豊かな地域社会」の実現に向け、総合的に人権に関する取組を推
進することを基本理念とします。
2 キーワード
こ の 基 本 理 念 に 基 づ い た さ ま ざ ま な 取 組 を 進 め る た め 、 「 じ ゆ う 」 (自
由)、「びょうどう」(平等)、「いのち 」(生命)をキーワードとして諸施策
を推進し、人権の世紀と言われている21世紀を共に生きる地域社会の実現
をめざします。
じ
ゆ
う
(自由)
だれもが 人として大切にされ 自由に自分らしく生きる
ことができる地域社会の実現をめざします
このため
県民一人ひとりが 自由にものごとを考え 自由の意義を
理解し 自ら決定していくことが大切となります
だれもが 社会の一員として等しく参加・参画し 個性や
能力を十分に発揮できる地域社会の実現をめざします
びょうどう
(平等)
このため
県民一人ひとりが 平等に権利を有していることを理解し
お互いの自由や生命を尊重する地域づくりに貢献すること
が大切となります
だれもが 尊い生命の主体者として大切にされる地域社会
の実現をめざします
い
の
ち
(生命)
このため
県民一人ひとりが かけがえのない生命を大切にし 安心
して安全に暮らせる地域づくりに貢献することが大切とな
ります
- 1 -
Ⅰ
本県における人権教育の取組
1
基本姿勢
日本国憲法及び教育基本法の精神にのっとり、基本的人権が尊重され
るよう人権教育を推進します。
山口県においても様々な人権問題が幅広く存在しており、社会経済情勢の
変化などに伴い、人権に関する新たな課題も見られる ようになってきていま
す。
こ の ような状況を踏 まえ、すべての人々 の基本的人権が尊重 された社会の
実現をめざしていくためには、県民一人ひとりが基本的人権の意義や人権尊
重の理念について理解を深めるとともに、日常生活にお いて人権の大切さに
気付く豊かな感性を育むことや、一人ひとりの存在 を認め合い互いに個性を
尊重することによって人権を尊重した言動ができることが大切です。
そのためには、基本的人権尊重の視点に立って、 人権教育を推進すること
が必要です。
推進にあたっては、これまでの取組の成果を踏まえて課題を明確にすると
ともに、学習方法等にも工夫を凝らしながら、体系的・計画的に実施してい
くことが大切です。
また、学校、家庭、地域社会の様々な場を通じて推進していくことが必要
であり、そのためには県・市町や、民間団体、企業等がそれぞれの果たす役
割と課題を明確にして、相互に連携を図りつつ、自主的・主体的に取り組ん
でいくことも大切です。
- 2 -
2
人権教育の全体構想図
県民一人ひとりの人権が尊重された心豊かな地域社会をめざして
基 本 的 人 権 尊 重 の 視 点 に 立 っ た 取 組
○基本的人権の意義
○人権の大切さに気付く
豊かな感性
の正しい理解
○人権尊重の理念
の育成
○実践的な人権感覚
様
々
な
人
学校における取組
権
課
題
地域社会における取組
児童生徒の心身の成長の過程に即し、
地域社会における人権尊重の意識と自
学校の教育活動を通して人権尊重の意識
主的な取組の高まりをめざし、市町との
を高め、一人ひとりを大切にする教育を
連携を図りながら、職場を含めた地域社
組織的・計画的に推進します。
会における学習機会の充実に努めます。
○推進体制の確立
○支援体制等の整備・充実
○人権尊重の視点に立った指導の充実
○指導者の養成
○研修機会の充実等
○学習機会の充実等
○取組の評価と見直し
○取組の評価と見直し
家庭教育への支援
○学習機会・情報提供の充実
○相談体制等の支援体制の整備・充実
- 3 -
<基本的人権に関わる学び>の図
県民一人ひとりの人権が尊重された心豊かな地域社会をめざして
基本的人権尊重の視点に立った取組
個 人 の 尊重 、 生命 ・ 自由 ・ 幸福 追 求 の権 利 の尊 重 、
法 の 下 の平 等 など 、 <基本的人権に関わる学び>
○基本的人権の意義
○人権の大切さに気付く
豊かな感性
の正しい理解
の育成
○人 権 尊 重 の 理 念
○実践的な人権感覚
様々な人権課題
学
連
家
校
携
庭
地域社会
人権教育を推進するために、次のように取り組んでいくことが必要です。
基本的人権尊重の視点に立った取組の中で、個人の尊重、生命・自由・幸
福追求の権利の尊重、法の下の平等など、<基本的人権に 関わる学び>とし
て、基本的人権の意義や人権尊重の理念の正しい理解と人権の大切さに気付
く豊かな感性などの育成をめざします。
様々な人権課題に関する学習においても<基本的人権に 関わる学び>から
捉えていくことが大切です。
このような取組の中で、学習方法等の工夫に努め、学校、家庭、地域社会
の連携のもとに、様々な場を通じて取り組みます。
*「基本的人権の意義」や「人権尊重の理念」の正しい理解と、「人権の大切さに
気付く豊かな感性」や「実践的な人権感覚」の育成を、以下、「人権教育におけ
る理解・育成」と表現します。
- 4 -
Ⅱ
学校における取組
児童生徒の心身の成長の過程に即し、学校の教育活動を通して人権
尊重の意識を高め、一人ひとりを大切にする教育を組織的・計画的に
推進します。
このことを踏まえ、「人権教育における理解・育成」を通して、基本的人
権が尊重されるよう取り組んでいくことが大切です。
「人権教育における理解・育成」を通して
基本的人権の意
義の正しい理解
*意義…意味・価値
人 間 の 尊 厳 に 基 づ い て各 人 が も っ て い る
固 有 の 権 利で あ り、 これ ら の 権 利は 、 人 類
の 多 年 に わた る 自由 獲得 の 努 力 の成 果 で あ
っ て 、 侵 すこ と ので きな い 永 久 の権 利 で あ
ることを理解する。
基
人権尊重の理念
の正しい理解
*理念…基本的な考え方
自分の人権とともに他者の人権も大切で
あることと権利の行使に伴う責任を自覚
し、人権を相互に尊重し合うことの重要性
を理解する。
本
的
人
権
人権の大切さに
気付く豊かな
感性の育成
の育成
個人の尊厳、生命の尊重、自由で平等な
生活、誰もが幸せに生きることの価値や重
要性に気付き、共感できるようにする。
実践的な人権感
覚の育成
一人ひとりの存在を認め合い、互いに個
性を尊重し、人権を尊重した言動ができる
ようにする。
の
尊
重
- 5 -
1
推進体制の確立
学校において、人権教育を組織的・計画的に推進するために、校内の推進
体制の充実と、家庭、地域社会等との連携が大切になります。
(1)校内推進組織の充実
人権教育担当者を校務分掌に位置付けるとともに、人権教育推進委員会
等の校内推進組織を設置し、担当者を中心として、組織的に全体計画や年
間指導計画、研修計画の立案等を行う。その際、生徒指導担当部等との連
携を図りながら推進する。
(2)家庭、地域社会、関係機関との連携
・学校、家庭、地域社会のネットワークの下で、効果的な取組に努める。
・保護者や地域社会の人々に対して、学校の人権教育の取組や「山口県人
権推進指針」等の理解を得るため、各種広報誌や、参観日・学校公 開等
の機会を捉えて、広報活動や研修機会を設定する。
・公民館等と連携し、様々な教育活動を実施していく。
(3)全体計画作成の意義や目的
ア
全体計画作成の意義
・「日本国憲法」や「教育基本法」、「山口県人権推進指針」等を踏ま
え、学校としての人権教育推進の基本的な考え方や方向性についての共
通理解を図る。
・学校における人権教育の全体構想の理解に基づき、各学年・各学級・各
教科等の役割を明確にする。
イ
人権教育目標の設定
・学校教育目標の具現化に向けた取組の中で、人権尊重の視点からの教育
課題を解決するために人権教育目標を設定する。
・学校や地域社会の実情や児童生徒の実態等を十分踏まえるとともに、学
校として取り組むべき課題を明確にした上で設定する。
・児童生徒の実態や心身の成長の過程を踏まえた目標を設定する。
・教科や分掌の指導目標との関連を明確にする。
(4)年間指導計画の作成
ア
年間指導計画作成の意義
・各教科等の指導内容相互の関連を踏まえて、意図的・計画的に配列する
ことができる。
・支援や評価を記録し、次年度の取組に生かすことができる。
・指導計画作成の取組を教職員の研修機会として活用することができる。
- 6 -
イ
作成上の留意点
・各単元の関連を踏まえ、1年間の見通しに立った計画を立てる。
・卒業までの心身の成長の過程を見通した計画等の工夫を行う。
ウ
各教科等の指導計画との関連
各教科等の指導内容で、人権教育に関わるものについては、基本的人権
の理念や個別の人権課題との関連、他の教科等との関連が分かるような工
夫を行い、より効率的・効果的な取組となるよう配慮する。
スペースをトル
- 7 -
2
人権尊重の視点に立った指導の充実
人権教育の推進にあたっては、教育内容、指導方法とともに、学習の場そ
のものが、児童生徒にとって、安心して、楽し く学ぶことのできる環境でな
ければなりません。そのため、互いを尊重した人間関係や人権が尊重された
学習環境などが、人権教育の重要な基盤となります。
(1)人権尊重の視点に立った学校づくり
ア
人権教育の視点を踏まえた教育課程の編成
・人権教育の目標と各教科等の目標や指導内容との関連を明確にした上で、
各教科等の指導の中で、人権教育の目標が達成できるよう留意する。
・児童生徒一人ひとりの特性を踏まえた指導を通して、基礎的な知識・技
能及びそれらを活用して問題を解決する力等を身に付けさせ、「確かな
学力」を育む。
・道徳教育や特別活動との関連を図るとともに、キャリア教育の視点も踏
まえた長期的展望をもって、人間としての在り方生き方についての自覚
を深めさせる。
・地域の教育力の活用や体験的な活動の導入を積極的に行う。
イ
人権を尊重した生徒指導・キャリア教育の充実
・児童生徒一人ひとりの人格の尊重と共感的な人間関係を基盤として、自
己存在感をもたせるとともに、互い を尊重した言動ができるような指導
を充実させる。
・児童生徒の思いを受容し、自己決定の 場を設定するなど、主体性を育み
自主的な取組を活性化させる指導の充実を図る。
・児童生徒の様々な悩みや不安に対して、平素の会話や生活の様子の観
察、教育相談等を踏まえ、適切な支援や指導を行う体制を整える。
・いじめや暴力行為、危険な行為などに対して、生命尊重や個人の尊厳の
観点から、毅然とした指導を行う。
・児童生徒一人ひとりの成長の過程を的確に把握し、将来への展望を育む
とともに、勤労への関心や意欲を高めるような支援を行う。
ウ
一人ひとりを大切にした学級経営等
学級集団づくりにあたっては 、互いを尊重した人間関係を基盤に、共に
よりよく生きようとする意欲を高め、規範等を尊重し義務や責任を果た す
ことの重要性を理解させることが大切になる。そのためには、次のような
視点が考えられる。
・1年間の見通しに立った、個々の児童生徒を生かす集団づくり
・児童生徒の自主的な意見表明や話合い活動の重視
・人権尊重の視点からの学習環境づくり
・学級通信等を活用した情報提供と、保護者との情報交換の場の設定
- 8 -
(2)児童生徒の自主性と実践への意欲を育む指導の充実
ア
主体的な学びを形成するための手法等の創意工夫
・社会科や道徳の時間等の学習を中 心に、心身の成長の過程に即し、基本
的人権の意義や人権尊重の理念について理解を深めさせる。
・児童生徒が生活の中で経験したことや生活に身近な素材を取り入れて主
体的に課題を解決する学習や、多様な体験活動の機会を設定するなどの
工夫により、人権に関わる問題の共感的な受け止めと主体的な学びを形
成する。
・学習した事象に対して自分なりの意 見をもち、表現していく活動の設定
により、自分を大切にする気持ちや自発性を育てる。
・教科等の学習の中で、小集団による問題解決場面を設定することによ
り、互いの意見を尊重し、協力して前向きに 解決を図ろうとする 意欲を
育てる。
イ
人と人との関わりを通した学び
様々な人と関わる中で、相手の気持ちに対する想像力、相互理解のため
のコミュニケーション能力(伝え合う力)と技能、人間関係を調整する
力、問題解決のための実践力等を育てることが大切になる。
ウ
適切な指導資料の選定
児童生徒の指導で活用する資料を選定する場合には、次のことに留意す
る必要がある。
・各教科等の目標やねらい、指導計画との関係を踏まえ て、人権教育の目
標やねらいが達成できること
・児童生徒の心身の成長の過程を踏まえた資料を選定すること
・児童生徒の興味・関心(ニーズ)、地域社会の課題等を踏まえること
・人権課題の歴史的・社会的背景や現状を正しく認識できる内容であるこ
と
【資料例】
・生命の大切さについて考える教材
・自由や平等の意義について考える教材
・様々な人権課題の現状と課題等について考える教材
・自己と社会との関係について考える教材
・表現力や伝え合う力を育てる教材
- 9 -
3
研修機会の充実等
教職員は、その言動が児童生徒の心身の成長や人格形成に大きく影響する
ことを深く自覚し、人権尊重の態度や児童生徒との信頼関係を基盤にした指
導を行うことが求められます。そのことによって、児童生徒に自分が大切に
されているという安心感を与えるとともに、自尊感情を育てることにつなが
ると考えられます。
そのために、教職員は以下のことに留意する必要があります。
・人権尊重の意義や理念について、深く理解すること
・様々な人権課題に対する正しい認識をもつこと
・児童生徒や保護者からの人権に係る相談に対して適切に助言できること
これらのことを自覚する意味でも、様々な 指導場面において、児童生徒の
人権を尊重しているかを絶えず見つめ直す必要があります。
また、教職員自らが人権を意識すると同時に、互いの人権を尊重し合う教
職員集団の雰囲気を醸成していくことも大切になります。
さらに、指導の在り方等に関する話合いや相互啓発により、教職員の中に
共通認識や信頼関係、様々な事象に組織的に対応できる態勢がつくられま
す。
(1)年間研修計画の作成
・児童生徒の実態、教職員のニーズ、地域社会の課題等を踏まえた研修内
容で構成する。
・外部講師を招聘しての講義や小グループでの課題解決、演習等の 様々な
手法を工夫する。
・年度途中や年度末に実施状況についての評価を行い、改善に生かす。
(2)多様な研修機会の充実
教職員研修において取り組む内容の例として以下のようなものが考えら
れる。
・人権尊重の意義や理念についての研修
(「日本国憲法」や「山口県人権推進指針」の活用)
・児童生徒理解に関すること(教育相談の技法、特別支援教育の研修、事
例研修等)
・指導方法に関すること(授業づくり、人間関係づくり、学級経営等)
・様々な人権課題に関すること(現状と課題、法律や施策等の理解)
・家庭・地域社会との連携における留意点や行政の各種相談窓口・支援体
制等に関すること
4
取組の評価と見直し
推進体制や各種計画については、進捗状況等を踏まえ、適切な評価を行
い、見直し等に努めます。
- 10 -
Ⅲ
地域社会における取組
地域社会における人権尊重の意識と自主的な取組の高まりをめざ
し、市町との連携を図りながら、職場を含めた地域社会における学習
機会の充実に努めます。
1
支援体制等の整備・充実
一人ひとりの人権を尊重するまちづくりを進めるためには、住民の主体的
な取組が大切になります。そのため、社会教育関係団体等の相互の連携に基
づき、地域社会全体の自主的な取組が活性化するよう支援します。
(1)地域社会で自主的に取り組む気運の醸成に向けて
地域社会で自主的な取組 を活性化させるためには、次のことを把握し、
支援体制の在り方を考え、自主的な参加が得られるようにしていくことが
大切になる。
・人権教育推進協議会等の推進組織の活動状況
・人権尊重に関する地域社会の課題や住民の興味・関心
・人権教育推進のための指導者や担当者の現状
(2)県、市町及び社会教育関係団体等の相互の連携
社会教育関係団体や社会福祉関係諸団体等の様々な団体の代表者で構成
する「人権教育推進組織」等を活用し、相互の連携を深める。
(3)家庭、地域社会への情報提供の充実
広報活動の工夫として、テレビ、ラジオ、新聞、広報誌、自治体の Web
ページ等の様々な広報媒体を活用して、広く情報提供をしていく必要があ
る。その際、次のことに配慮が求められる。
・すべての家庭に、正確で、新しい情報を提供していくこと
・文章表記等の中で誤解を招いたり、押し付けになったりしないこと
・専門用語や外来語の使用は控え、分かりやすい表記にすること
【広報の内容例】
・人権教育推進組織の活動状況等の紹介
・各種研修会や行事の案内
・様々な人権課題の現状等に関する情報提供
・様々な相談機関や教育機関の活動状況と活用者の声等の紹介
- 11 -
(4)家族とのふれあいを大切にする家庭教育への支援
家庭においては、尐子化の進行、家族形態の変化、共働き家庭の増加な
どにより、子どもと家庭を取り巻く環境が大きく変化している。そうした
中で、家庭の教育力の向上を図るためには、地域社会の教育力の活性化に
努め、次のような様々な学習機会の充実を図っていくことが必要になる。
・子どもの人権に関する学習講座の開設
・家族のふれあいや親子の共同体験の機会の充実等
(5)家庭教育に関する相談体制など、支援体制の整備・充実
家庭においては、子育ての悩みや不安を抱える親が増えているこ とか
ら、これらの家庭教育上の諸問題について、いつでも気軽に相談できる支
援体制の整備・充実を図ることが求められている。
相談体制については、相談機関に関する情報が各家庭に周知され、相談
窓口で十分な対応ができることが大切になる。
2
指導者の養成
地域社会の自主的な取組を活性化させるためには、中核となる指導者の役
割がとても重要になります。
(1)指導者の役割
・所属している団体や人権教育推進組織等の 一員としてリーダーシップを
発揮するとともに、様々な指導助言の他、各種研修会の企画・運営等を
積極的に行う。
・様々な組織間の連携を密にし、ネットワークの強化に努める。
(2)指導者の資質向上
・「山口県人権推進指針」や本資料等の各種資料を活用し、人権教育の考
え方や現状と課題等について理解を深める。
・人権に関わる講演会や講座等への自主的な参加により、人権に 関わる認
識を深めるとともに、講座等の運営に必要なスキルを身に付ける。
- 12 -
3
学習機会の充実等
学習の過程で獲得された様々な知識や技能が、人権が尊重されたまちづく
りに生かされることが大切であり、そのために多様な学習機会の設定や学習
資料等の充実を図るなど、条件整備に努めることが大切です。
〈学習プログラム企画のポイント〉
○ねらい(何のために)
人権が尊重されるまちづくりの視点を大切にする。
○参加対象者(誰が)
行政機関、社会教育関係団体、各種サークル、地域社会、企業等との連携を
図り、幅広い参加者が得られるような工夫を行う。
○学習内容(何を)
学習者のニーズや地域社会の課題等を踏まえた内容にする。
基本的人権の意義や人権尊重の理念に関する理解はもとより、様々な人権課
題に関する認識が深まるような構成を工夫する。
○学習方法、活用する資料(どのように)
押し付けにならないように、講義やグループ協議、体験活動を組み合わせた
構成を工夫する。
○開催時期、時間の設定(いつ)
学習者の実情を踏まえて、参加しやすい時間設定を工夫する。
○開催場所(どこで)
学習者の人数、年齢、会場への交通手段等を踏まえて決定する。
○広報
様々な機会やメディアを積極的に活用し広範囲に呼びかける。
社会教育関係団体等のネットワークを活用して直接声をかける。
4
取組の評価と見直し
研修会や各種のイベント等を行った後には、参加者の意見や感想のアンケ
ートを実施するなどして取組の評価を行い、次回の取組に生かすことが大切
になります。
- 13 -
Ⅳ
推進上の留意点(配慮事項)
1
教育の中立性の確保
教育の中立性を確保するとともに、 「山口県人権推進指針」に基づいた取
組を行います。また、人権教育を担当する行政においては、その主体性の確
保が求められます。
2
学習者の主体性の尊重
学習者の主体性を尊 重し、自主的な取組が活性化するよう支援することに
より、互いの人権を尊重できるようになることが大切です。
3
地域社会の課題や住民の興味・関心に即した学習内容や資料の選定
人権教育をより効果的に推進するために、地域社会の課題や住民の興味・
関心を十分把握した上で、学習者が意欲的に取り組める資料の整備・充実に
努めることが必要です。
4
個人情報やプライバシーに関することへの配慮
児童生徒や参加者が、授業や研修会で扱う人権課題等に直接 関わりがある
場合もあることから、個人情報やプライバシー などの背景に配慮しながら進
めていく必要があります。
5
人権課題の学習について
人権課題についての学習にあたっては、それぞれの課題の歴史的・社会的
背景を踏まえて、現状と課題や解決に向けての取組 の考え方、関係する法令
や制度、施策について、正しく認識することが大切になります。
また、人間尊重を基本的な考え方とするとき、どの人権課題も重要な課題
です。
- 14 -
Fly UP