...

中国 - Japan Patent Office

by user

on
Category: Documents
73

views

Report

Comments

Transcript

中国 - Japan Patent Office
はじめに
財団法人交流協会では、特許庁からの委託により、工業所有権に関する情報収集等
の事業を平成9年度より実施しております。この間、財団法人交流協会は、台湾の産
業財産権に関する情報誌及び模倣対策マニュアルの発行、専門家を講師とするセミナ
ーの開催、台湾智慧財産局との意見交換等を行ってきました。昨年11月30日、1
2月1日に財団法人交流協会とそのカウンターパートである亜東関係協会との間で
行われた第30回日台貿易経済会議においても、知的財産権関係の議題が多数提案さ
れ、充実した議論がなされたところです。
2002年1月には世界貿易機関(WTO)の正式メンバーとなり、台湾の知的財
産権をめぐる環境も大きく変わりつつあるなか、当協会の模倣対策マニュアルも8冊
目となりました。
今年度のマニュアルは昨今の知的財産権の法改正を中心に台湾における知的財産
権の実態と近況等を掲載しております。
本書が、少しでも皆様のお役に立てば幸甚です。
2006年3月
財団法人交流協会
台湾模倣対策マニュアル 目次
1.台湾における知的財産権の実態と近況 - - - - - - - - -
1
知財業務の背景に関する近況整理
- - - - - - - - -
1
台湾におけるエンフォースメント機関の動向及び取り組みについて
- - - - - - - - -
3
知的財産権保護体制
- - - - - - - - -
3
台湾におけるエンフォースメント機関の体系図
- - - - - - - - -
15
台湾での権利行使の方針
- - - - - - - - -
18
台湾の裁判制度及び知的財産権実務界の構成
- - - - - - - - -
23
- - - - - - - - -
29
特許権の種類
- - - - - - - - -
29
商標権
- - - - - - - - -
30
著作権
- - - - - - - - -
31
公平取引法の関連権利
- - - - - - - - -
40
営業秘密保持権
- - - - - - - - -
48
集積回路の回路配置権
- - - - - - - - -
49
コンピュータの処理による個人データ保護権
- - - - - - - - -
51
権利行使のグレーゾーン
- - - - - - - - -
51
権利侵害の民事責任と刑事罰則の規定
- - - - - - - - -
52
- - - - - - - - -
69
証拠収集--法律事実の把握とそれを立証する証拠を確保
- - - - - - - - -
69
警告状及び通告書
- - - - - - - - -
94
特許侵害の鑑定
- - - - - - - - - 101
侵害訴訟の所要時間及び基本出費の概算
- - - - - - - - - 107
2.権利及び権利行使の手段
3.刑事告訴前の準備作業
4.告訴
- - - - - - - - - 108
告訴要件及び告訴状
- - - - - - - - - 108
警察・調査機関での調書作成
- - - - - - - - - 111
捜索令状の申請
- - - - - - - - - 111
取締り
- - - - - - - - - 112
5.捜査と起訴前の取り調べ
- - - - - - - - - 113
捜査の手続
- - - - - - - - - 113
起訴及び不起訴
- - - - - - - - - 114
6.刑事訴訟における審理段階
- - - - - - - - - 114
訴訟手続きの進行
- - - - - - - - - 114
判決
- - - - - - - - - 116
再審の訴え、非常上告
- - - - - - - - - 117
被告の抗弁手段
- - - - - - - - - 119
刑事訴訟の所要期間と経費
- - - - - - - - - 120
7.自訴
- - - - - - - - - 120
概説
- - - - - - - - - 120
起訴のタイミング
- - - - - - - - - 120
注意事項
- - - - - - - - - 120
8.民事訴訟手続き
- - - - - - - - - 121
特許実施権許諾権者及び共同権利人の提訴について
- - - - - - - - - 121
付帯民事訴訟の手続
- - - - - - - - - 122
知的財産権侵害に関する民事訴訟
- - - - - - - - - 123
民事訴訟の停止
- - - - - - - - - 128
民事訴訟の期間と経費
- - - - - - - - - 129
9.保全手続
- - - - - - - - - 129
仮処分
- - - - - - - - - 130
仮差押え
- - - - - - - - - 138
証拠の保全
- - - - - - - - - 139
10.公平会への摘発
- - - - - - - - - 140
11.和解
- - - - - - - - - 148
和解の基本原則
- - - - - - - - - 148
和解関連事務処理にあたっての留意事項
- - - - - - - - - 148
12.裁判以外の紛争処理
- - - - - - - - - 150
13.ライセンス契約
- - - - - - - - - 151
結び
- - - - - - - - - 160
台湾知的財産権関連判例
- - - - - - - - - 162
特許権・実用新案権・意匠権関連
- - - - - - - - - 164
商標権関連
- - - - - - - - - 178
著作権関連
- - - - - - - - - 213
公平取引法関連
- - - - - - - - - 230
付録1.台湾特許出願関係フロー図
- - - - - - - - - 237
付録2.台湾商標出願関係フロー図
- - - - - - - - - 245
台湾知的財産権関連法律条文
- - - - - - - - - 250
2004年改正特許法
- - - - - - - - - 250
商標法
- - - - - - - - - 271
2004年著作権法改正条文
- - - - - - - - - 284
公平取引法
- - - - - - - - - 304
営業秘密法
- - - - - - - - - 314
台湾模倣対策マニュアル
2006
I.台湾における知的財産権の実態と近況
知財業務の背景に関する近況整理
■ 上向く景況感に連動する知的財産戦略
1 本格的な景況改善の中で重要さを増す知的財産戦略
2006 年 3 月現在、日本のデフレ現象の終焉が経済界のコンセンサスとなり、安定成長を示す統計上の
数字と収益拡大による設備投資回収が見込まれるなどの点が、アジアの景況予想を一層上向いたものと
し、投資者に期待感を抱かせる要因となっている。
一方で、膠着状態にある中近東情勢と中国の内需拡大などによる原油価格の急騰が懸念要素になって
いる。しかしながら一部で不透明感はあるものの、全体としては穏やかな成長の兆しがアジア全域に見
渡されている。
2005 年度の台湾向け特許出願件数は 79,447 件で、8 万件の大台に差し掛かろうとしている。一方、登
録件数が 2004 年の 66,490 件から 57,473 件へ下落した。2004 年度の特許登録件数に於いては、日本企
業による出願が 11,800 件ほどを占め、米国と EU 全域台湾に於ける登録件数の 9,369 件より1割上回る
など、日本の産業技術力を体現した数字といえる。中国への技術と資本の過大投資によるリバウンドが
日本の産業界に危機感をもたらし、ハイテク部門に於ける優位性を確保するための研究開発戦略が練り
直され、新たな特許重視の時代が開かれようとしている。(2005 年の国別統計数字はまだ公表されてい
ない)
2
市場優位性確保のためのハイテク研究開発と特許戦略の強化
米国と日本の金利引上げ政策によって、世界の産業界の資金調達ルートが活性化する一方、投資量に
ついてもなお成長が見込まれる。また、途上国の設備投資が一段落し、余剰資金が製造技術の研究開発
に投入される見込みが強くなっている。
先進国はこれまで十年ほど中国やインド等の途上国へ膨大な資金と技術を注入し、製造拠点としての
優位性を確保する動きを続けてきたが、過剰な投資と技術流出による被害が次第に明らかになり、産業
政策の見直しが求められている。
他方、台湾を始めとする新興工業国の企業は、競争力の強化を目指し、ハイテク部門の研究開発への
投資を更に増加している。韓国の産業界ほど日系企業と競合することはないが、次第に技術力が向上す
る台湾勢への対応に新たな特許戦略が模索されている。
ハイテク部門の R&D への投資により台湾の企業は徐々に競争力をつけて来ている。台湾当局が設立し
た財団法人工業技術研究院が先頭となり、ハイテク業界にとって福音となりうる目玉技術の研究開発に
注力してきた。開発された技術は台湾の企業に有料でライセンスを与えるか、無料で提携するかの方法
により、台湾産業界の競争力の強化を図り、それが実を結んできている。
台湾は 2005 年度においては原油価格高騰の影響を受けたが、4.1%の経済成長率を記録した。主要輸出
市場にあたる米国の内需拡大を背景に、台湾の産業界は市場競争力の強化を一層意識した知的財産権戦
略を重視するとももに、研究開発への投資を更に拡大し、同時に高度技術産業の重要な基盤ともいうべ
き特許出願と権利行使を一層重視する動きが見られる。
3 台湾企業の IP 投資の強化 熾烈な国際競争に直面する台湾の産業は、急速な産業構造の転換への対応
が喫緊の課題となっている。技術力の向上及び新製品の開発、製造に関する環境整備及び能力向上、加
えて人材の育成と確保等々が、これから台湾が国際競争を勝ち抜くためのメインテーマであろう。
その変革への一環として、台湾の企業は近年急激に特許戦略を重視する方針を取っている。確実に国
内と国外の特許出願件数を増やすと共に、特許の質の強化も実現してきている。米国の特許庁の統計と
分析報告によれば、台湾籍の出願人が取得した特許の重要度は、世界諸国の出願人を国毎にランクした
中で米国と日本に次ぐ第三位のランクを占めるほどになっている。米国特許の全件数における台湾企業
が取得する米国特許重要特許も、米国企業と日本企業についで第三位となっている。台湾企業の米国に
おける特許訴訟の件数は急激に増えており、台湾企業勝訴の判決が見られるようになってきた。また、
米国向け出願件数も急増しており、2000 年以来毎年1割強のペースで増えつづけ、2004 年は既に 15,000
件台に達している。それに比して日本とヨーロッパへの出願件数は停滞の傾向にあり、2004 年の統計で
1
はそれぞれ 3,444 件と 562 件に止まっている。台湾企業の特許戦略の国際競争力に直結する意識が伺わ
れ、その実績も確実に上がってきていると見られている。
4
強化の余地が残る日本企業のブランド力---商標戦略再考の勧め
日本企業は欧州及び米国の合計より膨大な台湾向けの輸出実績を誇りながら、登録商標がわずか欧米
全体の3分の1に過ぎない。日系企業の商標ビジネス戦略価値を再考する。
日本の名だたる企業の多くが保守的な商標ポリシーのため、自社名称や商標などを多くの台湾の個人
や会社、商号によって無断使用され、或いは台湾企業の名義で商標登録をされてしまうなどの事態が見
られる。また、登録商標の使用実績がないという理由で取り消されたということもしばしば耳にする。
年間売上が数千億円ないし数兆円単位にのぼるこれらの大手名門企業は、自社の大切な商標やハウスマ
ークが、台湾の中小零細の個人や会社に使われてしまい、その後始末を強いられている。
自社の業務多角化に備えて、将来進出しそうな分野においても未然に商品や役務を指定して登録して
おく配慮や、登録商標やマークを維持するために指定分野における使用実績や証拠を確保する努力、ブ
ランドの著名性を構築するための宣伝広報、ライセンシーを募集する広告を業界紙に刊行するなどの戦
略等々、ブランド価値を向上させつつ紛争にも強い商標戦略の見直しが求められている。
2005 年において米国と EU から台湾への輸入貿易額が 383 億ドルにとどまる一方、日本からの輸入金
額は 440 億ドルにのぼった。しかし商標登録の件数は、日本企業は欧米企業の3分の1ほどしかない。
虚業にせよ実業にせよ、企業の実力に相応するコーポレート・イメージ・アップの戦略は、より一層強
力に展開すべき時期が到来している。
5
権利行使の手段の多様化
特許侵害の権利行使は、2002 年頃までは刑事罰に基づいて刑事訴訟法主導で行われていたが、刑事罰
が撤廃されてから、民事損害賠償と差止請求訴訟に切り替わった。民事訴訟は特許無効審判などによっ
て停止されることが良くあるため、市場での優位性を速やかに確保するためには、仮処分と仮差し押さ
えなどの民事保全手段が用いられる。2003 年 9 月の民事訴訟法改正で、仮処分の即効性が殺がれたが、
以降、仮差押え制度が多用されることとなった。
また、従来裁判所は証拠保全の申立に対する対応が極めて慎重で、申立人が主張する事実をある程度
証明できる具体的な証拠がなければ、公権力に基づく命令を下すことを避けていた。そのため、証拠保
全の申立は実用的とは言い難かった。しかし、法改正に合わせ 2005 年現在では、裁判所の見解がだいぶ
緩和され、係争事件の道筋を立てるべく不明瞭な法律事実を把握するために、最低限の証拠物の保全や
証拠調査などを行う必要が申立てられた場合、証拠保全の実益を認める裁定を下すケースが急増してい
る。よって特許侵害事件においてもっとも肝心かつ困難な証拠入手の問題を、証拠保全手続きである程
度対処できるものと期待されている。
2
台湾におけるエンフォースメント機関の動向
及び取組みについて
一 知的財産権保護体制
1. 知的財産権保護協調報告会議
経済部の主導のもと、三ヶ月に一回のペースで各中央省庁の関係者が集まり、会合を行う。知的財
産権保護行動計画の実施状況について報告・検討し、今後の方針等を決める。各省庁を横断した知的
財産権保護施策の最高指導機関といった存在である。
2. 経済部「知的財産局」
知的財産局は主に商標権、特許権、著作権、集積回路の回路配置、営業秘密等知的財産に関連する
法制の研究・検討・制定、登録業務を掌り、模倣品・海賊版撲滅キャンペーンや取締活動の舵取り役を
担っている。
2-1 紹介
1998 年 10 月 15 日の立法院(国会)会議で経済部知的財産局組織条例について採決が行われ、可決・
成立したことにより、中央標準局が知的財産局に編制を変更し、特許権、商標権、著作権、集積回路
の回路配置(レイアウト)等知的財産権及び営業秘密を所管する専門機関としての法的根拠が与えら
れた。中央標準局の現有の標準、度量衡業務については、商品検査局(商品検験局)が引き継ぐこと
になり、標準検査局として組織を再編する。一方、職務の編成により設立された内政部著作権委員会
もその業務を知的財産局に引き渡した後で解散する。上述のとおり 1999 年 1 月 26 日に経済部商品検
査局が標準検査局、そして中央標準局が組織を再編成し名前を知的財産局に変更して再発足し、これ
まで分散していた業務と人力の一元化を図ることにより、完全な検査基準を設立し、知的財産権管理
体制を構築する。
今まで知的財産権に関する事務は経済部中央標準局、内政部著作権委員会、経済部「査禁倣冒商品
小組」(模倣品対策班)及び商業司がそれぞれ司ることになっていたが、知的財産局が発足した後、
中央標準局が取扱っていた特許、商標審査業務は段階的に新しく配置された専任審査官に引き渡して
いく。業務の拡大に対応するため特別認可を受け招聘した特許審査委員及び研究員については、逐次
人数を減らし、四年後には法定編制による定員の 20%を超えないようにする。
このほか、長年にわたって実施されてきた、学識者と専門家を特許審査委員に起用する制度も五年
後には全面的に内部審査に転換させる方針である。
組織改編後の知的財産局は七つの業務組(チーム)(総合企画組、専利一組、専利二組、専利三組、
商標権組、著作権組及び資料サービス組並びに六つの行政チームに分かれる。一方、標準検査局も同
じく七つの業務組(第一組標準組、第二組農畜水産及び化学工業検査行政管理組、第三組機械電機電
子検査行政管理組、第四組度量衡組、第五組総合企画組、第六組検査組、第七組検定検査組)及び六
つの行政組に分かれる。
知的財産局発足後、「知的財産権国際化、サービス電子化、審査専門化」を目標に掲げ、そして特
許・商標の審査について、審査作業のスピードアップ及びサービスの質の向上のため、サービスの自
動化を進め、次の通り電子化サービスを提供していく方針である。(一)特許・商標手数料の自動化
システム、(二)意匠(十四万件)図面のデータベース、(三)特許書類の two dimension bar-code
自動入力システム、(四)閲覧、検索サービスに供する特許電子公報の作成、(五)国内外特許デー
タベースの統合、検索サービスシステムの構築、(六)英文ホームページによる国際化・ネットワー
ク化の情報サービスの提供。
2-2 知的財産局の取り組み
2-2-1 知的財産専門人材養成
2005 年 11 月、知的財産専門人材の育成訓練プログラムが正式に発足した。6 月 28 日、知的財産局
に「知的財産育成訓練学院」(智慧財産培訓学院)オフィスが設置され、産官学から知的財産分野の
専門家七人を網羅したチームが養成講座のカリキュラム設計及び教材編成にあたっている。プログラ
ムは初級と進級のクラス、さらに特許法制、特許出願審査、パテントエンジニア、特許訴訟等幾つか
のクラスに細かく分けて設定されている。欧州特許庁の EPA(European Patent Academy)、アメリカ
の国際知的財産研究所(International Intellectual Property Institute、IIPI)の専門家を講師に
招いて授業を強化し、知的財産に精通したプロフェッショナルな人材、IP 専門教育をサポートする教
師の卵を育てる揺りかごになることを目指している。
3
知的財産局の蔡練生局長によれば、今の産業界で必要とされているのは技術の革新・研究開発に取
り組む技術者だけでなく、知的財産の創出、保護、応用等知的財産を管理する面においても素質の高
い人材が強く求められている。先進諸国に知的財産に関する人材育成を目的とする専門機関が相次い
で設置されていることからも分かるように、研究開発の成果を保護し、会社の運営にそれを生かして
いくうえで必要不可欠な人材確保の重要性に対する認識が極めて高い。
しかし台湾における知的財産人材の質・量ともに不十分なため、知的財産局としては同学院を設置す
ることによって、企業側が進んで研究開発の成果を特許権利化し、自ら知的財産管理体制を確立して
出願対象となる特許・商標の中身の向上を図ることに期待している。そのうえ、知的財産関連知識に
精通した法曹を養成し、知的財産権を侵害された権利者が有効な司法救済によって権利を確保できる
ように、教育面で支援していく考えである。
2-2-2 インターネット上の権利侵害への対応
音楽、映画等デジタルコンテンツが著作権者の許諾なしにインターネットで流されたり、インター
ネット上のプラットフォームを利用してブランド品の偽物が販売されたりするケースが相次ぎ、伝統
的な海賊版・模倣品の流通パターンが変貌しつつある。サーバー犯罪の急増に対し迅速に対応する必要
があるため、知的財産局は模倣品・海賊版のネット販売の摘発及び貢献した者に対し知財権侵害関連物
品の小売価格の 20%にあたる金額を、民間人の通報者には報奨金、法執行機関の人員には奨励金として
支給するほか、「コンピュータソフトウェア保護強化に関する実施計画」、そして「インターネット
上の権利侵害抑止強化の実施計画案」の策定に向けた作業を着々と進めている。
知的財産局は法務部、教育部、電信総局、内政部警政署及び経済部所轄の関連部会、権利者団体、
インターネットサービスプロバイダー等を招集して討議した結果、インターネット上の権利侵害抑止
に関する実施計画案を決議した。実施期間は 2005 年 1 月 1 日から 2007 年 12 月 31 日までとし、具体
的な実施要領、措置内容はおおむね次のとおりである。
一.改正著作権法の宣伝強化。
二.ISP 業者と権利者団体の連携及び自律の強化。
三.キャンパスでのネットワーク管理強化。
四.インターネット上の権利侵害抑止。
インターネット上の権利侵害の抑止効果を高めるため、知的財産権保護警察隊とコンパクトディス
ク合同検査チームからパソコン、インターネット、科学技術関連法律知識に詳しい担当者を選び、知
財局「著作権チーム」に窓口を設けて「インターネット上の権利侵害専門捜査班」を結成させ、イン
ターネット上の権利侵害行為の取締りを強化する。また、これらの事件の摘発、捜査、起訴の迅速化
を図るため、法執行機関の実務担当者に対する訓練を強化している。さらに事件の摘発や犯人の検挙
に手柄を立てた捜査機関関係者、民間人の通報者に支給する報奨金を引き上げ、取締り担当者の実績
評価を行うことによってインターネット上の権利侵害問題への積極的な取り組みを奨励する。また、
捜査機関の摘発を免れるため外国のサーバーに開設された不法サイトの摘発は困難を伴うため、友好
国との交流・対話ルート確立も必要不可欠としている。
2-2-3 医薬品特許の強制輸出許諾に向けた法改正
鳥インフルエンザの感染拡大等疫病の発生による公共衛生への打撃に備えて、知的財産局は、特定
の状況下で強制実施許諾の許可を受けた国内の製薬メーカーにジェネリック医薬品の製造、及び第三
世界の貧しい国への輸出を認める方針が明らかになった。緊急事態に備えた強制実施許諾は既に特許
法に規定されており、今回は新たに医薬品特許権の強制輸出許諾に関連する規定を追加し、強制輸入
許諾についてはなお検討中である。
国家の緊急事態等一定の条件を満たしている場合、製薬メーカーは特許法(専利法)第 76 条に基づ
いて、特許保護期間中の医薬品について知的財産局に製造の認可を申請することができる。認可を受
けたメーカーはたとえ当該医薬品の特許権者から許諾を得ていなくても、緊急的に生産することがで
きる。但し、生産の量についてはあくまでも限定的で、輸出するには知的財産局の許可が必要とされ
る。
強制輸出許諾を盛り込んだ「専利法」(日本の特許法、実用新案法、意匠法三法に相当)改正案は
優先法案として国会での早期成立を目指している。
2-2-4 動植物特許出願解禁の動き
農業バイオテクノロジーを特許で守ろうと知的財産局が作成した「専利法の一部を改正する法律案」
は、2005 年 12 月 28 日に開かれたバイオテクノロジー産業指導チーム委員会議で議決され、2006 年半
ばまでの法案成立を目指して、近く行政院会議による閣議に付託される見通しになった。立法院で法
案が成立すれば、動植物関連発明の特許出願が解禁されることになる。
バイオテクノロジーが目覚しく進歩する中で、動植物関連発明を特許で保護することが、バイオテ
クノロジー産業の発展を加速させ、わが国農林水産業の国際競争力の強化とビジネスチャンスの創出
4
に寄与する。
台湾のバイオテクノロジーは世界でも先進的水準にあり、遺伝子組み替え作物の研究開発で数歩先
を歩んでいる先進国の企業に引けを取らない高度な技術力を備えているという認識が解禁の背景にあ
るものとみられる。また、動植物関連発明が特許の対象になるのは、アジアでは日本に続いて二番目
となる。
台湾では、パパイヤ、トマト、ブロッコリー、ジャガイモ、水稲などバイオテクノロジーを利用し
た遺伝子改造農産物などの研究開発が進んでおり、数多い新品種の育成にも成功している。無限の可
能性を秘めたこれらの研究成果を特許で保護し、特許権の実施による広範な運用を農林水産物の高付
加価値化に結びつける、というのが最大の狙いである。
2-3 実績
米民間団体、国際知的財産権同盟(IIPA)の 2005 年の発表によると、台湾のゲームソフトの違法コ
ピー率は 2002 年の 56%から 42%へ、海賊版音楽著作物は 47%から 42%へ、海賊版ビジネスソフトウェア
は 2001 年の 53%から 43%へと減少傾向が目立ち、知的財産権問題が指摘されている地域の中で最も成
果をあげたとして高い評価を受けている。
2004 年、台湾政府は著作権法改正案の成立、法執行の強化、医薬品と農薬品のテストデータが商業
活動で不正に利用されるのを回避するため関連法令改正の検討などを行ってきた。法律による有効な
データ保護が未だに実現されていないという指摘もあったが、著作権保護や法執行の面においては重
大な進展が見られ、米側が長期にわたって関心を示している海賊版・模倣品問題を解決するための方
策を実施していることなどが総合的に評価され、2005 年 1 月、米スペシャル 301 条項の優先監視対象
から一般監視対象への格下げにつながったとみられる。
3. 経済部「査禁模倣商品小組」(模倣品対策班、2006.01.01 廃止)
知的財産権に対する保護政策を着実に進めるため、1981 年 3 月 13 日、経済部は「査禁模倣商品小組」
(通称、「禁倣小組」)を発足させた。模倣品に関する通報を受け付けるほか、模倣品対策や執行計画
の策定・推進、そして常に先頭にたって検察・警察・調査機関と協調しながら捜査・取締活動を仕切っ
てきた。産業界に自社ブランドの立ち上げを奨励し、知的財産権を保護する重要性・必要性を宣伝普及
し、商業倫理・市場秩序を建て直すことによるイメージアップに努めた。
2003 年 1 月 1 日に知的財産権保護警察隊が発足し、2004 年 11 月 1 日に法制化されたことによって、
台湾における知的財産権保護、そして模倣品問題への取り組みは新しい節目に向かって歩き出した。こ
れを機に、同チームはもうこれ以上独立して存続する意義がなくなったとの判断から、廃止することと
なった。今まで模倣品対策で核心的な機能を果していた「禁倣小組」も終幕を迎えた。
同チームの役目は経済部で各省庁を横断した「知的財産権保護協調報告会議」、高等検察署に設置し
た「知的財産権保護専門プロジェクト報告会議」、内政部警政署下の「知的財産権保護警察隊」が引き
継ぎ、模倣品・海賊版との戦いはまだ続いている。
4. 知的財産権保護警察大隊
4-1 紹介
行政院長(総理大臣に相当)の指示により、内政部警政署(日本の警察庁に相当)「保安警察第二
総隊知的財産権保護警察大隊」の発足式典が 2003 年 1 月 1 日に行われた。特にこの日を選んだのは、
知的財産権保護への取り組みが新たな段階に入ったことを意味付ける狙いがあったからである。同警
察隊は本来の保安警察第二総隊(本隊)の隊員からなり、総勢 220 人が知的財産権侵害事件の摘発、
模倣品・海賊版の取締に投入されている。大隊の下に三つの中隊があり、第一中隊に台北分隊、花蓮
東部分隊、サイバー犯罪捜査チーム、光ディスクチーム、新聞折り込み広告(海賊版販売)チーム、
第二中隊に桃園分隊、台中分隊、第三中隊に嘉義分隊、高雄分隊がそれぞれ設置されている。製造業
者、中間卸商、小売店を重点対象に綿密な捜査網を張り巡らし、海賊版・模倣品の取り締まりに中心的
な役割を果すことが大いに期待される中のスタートとなった。
インターネットを利用した犯罪の頻発に対応して、警政署は個別案件への奨励金の引き上げ、特別
採点基準の導入、捜査設備の充実化等様々な対策を打ち出し、所轄機関に取締強化を指示している。
その一環として知的財産保護警察隊ではサイバー犯罪捜査チームを設置し、サイバー犯罪の情報分析
や摘発に当たっている。
5
4-2
2005 年度知的財産権侵害事件の摘発状況
知的財産権保護警察隊における知的財産権侵害事件の摘発状況
出動回数 動員人数
総計
著作権法違反
商標法違反
件数 検挙し 侵害物品金額
件数
検挙し 侵害物品金額 件数 検挙し 侵害物品金額
た人数 (概算)
(台湾元)
た人数
(概算)元
た人数
(概算)元
1月
114
133
280,923,865
50
66
135,692,200
64
67
145,231,665
533
2,342
2月
99
112
558,125,385
21
24
47,287,600
78
88
510,837,785
441
1,945
3月
110
119
853,688,821
26
31
105,976,465
84
88
747,712,356
477
2,025
4月
122
143
656,097,005
42
50
333,356,980
80
93
322,740,025
439
1,835
5月
133
149
1,016,211,397
36
43
868,994,225
97
106
147,217,172
502
2,127
6月
125
142
407,015,625
35
39
81,479,105
90
103
325,536,520
414
1,588
7月
82
88
566,460,907
30
35
453,510,382
52
53
112,950,525
370
1,275
8月
121
131
629,380,948
42
44
362,326,096
79
87
267,054,852
365
1,246
9月
108
118
338,208,655
40
46
207,059,339
68
72
131,149,316
375
1,299
10 月
122
131
518,830,581
56
59
429,651,701
66
72
89,178,880
382
1,150
11 月
162
187
1,332,299,932
65
83 1,217,003,530
97
104
115,296,402
306
903
12 月
130
140
757,481,098
52
56
609,856,948
78
84
147,624,150
329
1036
合計 1,428 1,593
7,914,724,219
495
576 4,852,194,571
933
1,017 3,062,529,648
4,933
18,771
注:以上の数値には他の機関との合同捜査により摘発した事件が含まれている。
2005
年
5. 経済部「光ディスク合同査察チーム」
5-1 紹介
光ディスク製品が違法コピーに悪用される海賊版を効果的に取締るために、2001 年 11 月 16 日に
「光
ディスク管理条例」が制定された。経済部は同条例に基づいて、さらに「光ディスク管理業務及び査
察作業実施要点」を策定し、所轄国際貿易局、工業局、知的財産局及び標準検査局の関係者をかき集
めた「光ディスク合同査察チーム」を結成させ、法律に基づいて設立された光ディスクメーカーを対
象に全面的に査察を行っている。同チームは発足当初は、臨時的に編成された組織であり、任務の遂
行に必要なときに上記四つの関係機関から人員を派遣して共同で査察を行う形をとっていたため、こ
れといってめぼしい成果がなかった。2002 年、経済部は光ディスク査察業務の統合を図るため、「光
ディスク合同査察チーム併合計画」のもと、同年 9 月から上記四つの機関からそれぞれ二人の担当者
を内政部警政署保安第二本隊の本部に集め、同警察隊とともに機動的に行動する体制を取り入れた。
2003 年 1 月、知的財産権保護警察隊の発足に伴い、同チームは再び拠点を移転した。
査察は警察との協力のもと不定期に行われている。その際には検査対象となる工場への事前通知は
行わない。また、通報があれば、優先して処理する。
5-2 2005 年の実績
2005 年の 1 年間で、査察チームは延べ 1193 回の査察を行っており、2004 年の 1067 回に比してさら
に回数を増やしている。特に重大な海賊版製造行為は発見しなかったが、頻度の高い査察活動が十分
な威嚇効果を発揮しているといえる。
6. 法務部調査局
6-1 紹介
本局は 1927 年に発足し、1949 年 4 月に「内政部調査局」に改編され、初めて立法手続きを完了した
調査機関として再発足した。同年 12 月、内戦に敗北した国民党政府とともに、台湾に拠点を移した。
1956 年 6 月、司法行政部の所轄機関になり、主に台湾の安全や利益に関する事件調査・保安・防止事
項を掌る。
司法行政部調査局は 1980 年 8 月 1 日に法務部調査局に組織を再編成し、専門的な調査機関として活
動している。知的財産権侵害事件の調査においては、検察・警察とともに最前線で活躍している。
6-2 主な活動内容
法務部調査局組織条例第 2 条により、調査局は台湾の安全への危害及び利益違反についての調査・
保安・予防を掌る。1998 年 10 月 30 日、行政院は調査局の所掌業務を次の通り修正した。
► 内乱の予防及び抑止
► 外患の予防及び抑止
6
► 機密漏えいの予防及び抑止
► 汚職の予防及び抑止
► 毒物の予防及び抑止
► 組織犯罪の予防及び抑止について各部署と連携
► 重大経済犯罪及び資金洗浄(マネーロンダリング)の予防及び抑止
► 統計調査
► 上級機関の特別指示による台湾の安全及び利益に関する調査・保安・防止
1979 年、経済犯罪事件が深刻化するなかで、経済力に悪影響を及ぼすことを懸念し、当局は社会
の安定や経済発展のために、調査局の下に「経済犯罪防制(犯罪の防止・抑制)センター」を設立
した。同センターは経済犯罪の防止及び調査に重点を置き、既に発生している犯罪行為を調査し、
犯罪そのものを根本的に解決する対策を講ずる。つまり、犯罪の防止と調査を並行して行うことを
モットーに活動する。
■犯罪の予防と抑止
▪ 情報の収集・ファイリング・統計・分析を通して、犯罪の糸口を探し出し、適時に有効な予防
措置をとる。
▪ 学界、当局の政策決定の参考に資するために「業務執行年報」を発行する。
▪ 重大な経済犯罪の問題について、定期的に「経済犯罪を抑止する検討会」を開き、犯罪の原因、
法令や行政作業に不十分な点がないかを検討した結果をまとめて、関連機関に提出する。
■犯罪事件の調査
▪ 「経済犯罪の罪名及び範囲の認定基準」により、正常な経済活動の妨害、経済秩序への影響、
経済構造の破壊、不法利益の不当取得などの犯罪行為について調査を進める。これには詐欺、
横領、高利貸、密輸、税金の申告漏れ、貨幣の偽造・変造、有価証券の偽造・変造、銀行法違
反、証券取引法違反、公平取引法違反、先物取引法違反及び知的財産権侵害事件などが含まれ
る。
7. 関税総局及び各地税関
7-1 沿革
関税総局は当初「海関総税務司署」という名称で、1854 年に設立された。関税の徴収はもちろん、
西洋から伝わってきた新しい考え方や制度を導入し、海軍の建設、港務、郵政、運航補助設備、気象、
教育、外交などの活動にも積極的に取り組んだ。そのうち、港務、郵政は一時税関が所管することに
なっていたが、港務局、郵政総局の発足にともない関係業務の引継ぎが行われた。運航補助設備の管
理については、税関が引き続きその責任を負っている。なお、1991 年 2 月 1 日付けで「財政部関税局
組織条例」が公布され、「財政部関税局」となった。
本局は財政部に属し、関税業務の執行機関である。また、関政司は財政部内部の幕僚機関であり、
関税業務に関する政策決定並びに法令の研究・制定を所掌する。
7-2 組織構成
関税総局に、総局長一人、副総局長一人、主任秘書一人を置く。総局の下に課徴、課税原則、取締
り、検査及び見積り、保税及び税金還付、税関業務、情報処理、総務の八ヶ処、人事、経理、統計、
法制、監督・査察、風紀の六ヶ室、並びに訴願審議、輸入貨物原産地認定の両委員会及び課税原則分
類・見積りの評議会が置かれている。
7-3 税関の取り組み
総局は関税の課徴、密輸の取締り、保税・税金還付、貿易統計、運航補助設備の建設及び管理を所
掌するほか、その他機関の委託による税金や手数料の徴収、管制も行う。ここ数年、次々と業務の効
率化を図るための措置をとってきている。例を挙げると、輸出入貨物の通関自動化、入国通関手続き
の簡素化を導入して、効率的な税務行政やサービスの質の向上を実現している。
TRIPS 協定第三部――知的所有権の行使では、加盟国に対して輸入の知的財産権関連製品について水
際措置をとることを求めている。台湾は知的財産権保護政策を着実に進めるために、輸出品の検査に
多額の金員を注ぎ込み、
「コンピュータプログラム関連製品輸出管理制度(Export Monitoring System)」、
「商標輸出監視システム」を導入し、輸出貨物検査を実施するなど、海賊版や模倣品の海外への流出
を食い止めることに努めている。
台湾北部にある基隆税関局は 2005 年 3 月から違法な輸出入を第一線で取り締まる税関の職員を対象
に、専門家を講師に招いてタバコや電卓等の真贋判定トレーニングを行っている。
世界中に流通する偽タバコの 85%は中国で製造されている。偽タバコが横行する問題はタバコ産業の
発展に悪影響を及ぼすだけでなく、税収減にも繋がる。また、質の悪いタバコには健康を害する物質
が含まれていないとも限らない。偽タバコかどうかを確認するにはパッケージの一番外側の透明な紙
7
の品質、生産期日を示すバーコード、箱の色、タバコのサイズ、包装方法等から判断することができ
るため、偽物を見抜く技術を税関の職員らに学ばせている。
近年、国際郵便を利用した海賊版・模倣品の輸入が激増していることに対応するため、2005 年 3 月
から全ての国際郵便物をエックス線検査装置にかける措置をとっている。
7-4 知的財産権侵害物品の差止実績
2005年の税関における知的財産権侵害物品の輸入差止実績は以下のとおりである。
(1)差止件数では、商標権に係るものが174件、タバコ、バッグ類、衣類、薬品が多い。
(2)著作権に係るものが76件、海賊版コンパクトディスクが33,290点、ゲーム機基板が3,823枚。
税関は「税関における特許・商標及び著作権権益保護措置の実施に関する作業要点」に基づ
いて、知的財産権侵害物品の水際取締りを行っている。具体的に、商標権については、
「商標
輸出監視システム」及び「権利者による押収申立制度」がある。商標権者は商標法第65条か
ら第67条までの規定及び「税関における商標権侵害物品の押収実施規則」により、一定金額
の保証金を担保に入れたうえで、税関に押収を申請することができる。著作権についても、
権利者或いは発行権(製版権)者が著作権法第90条ノ1及び「税関における著作権又は製版権
侵害物押収実施規則」により、保証金を担保に入れ、侵害疑義貨物の押収を申請することが
できる。このほか、映画著作物(台湾では「視聴著作物という」)及び受注生産レーザーレコ
ードについての著作権関連書類審査制度、輸出海賊版コンパクトディスク審査制度がある。
また、光ディスク製造機具及び光ディスクの水際での審査、Mask-ROMを対象にするチップマ
ーキング制度の下で登録証明書等の書類審査も行っている。
税関における知的財産権保護への積極的な取り組み姿勢を内外にアピールするために、2005 年 1
月、税関密輸取締条例に第 39 条ノ 1(日本では第○条ノ 2 から始まる)を新設し、これにより、輸
出入申告が行われた貨物、郵便物又は旅行客が持ち込む物品で、特許権、商標権又は著作権(真正
品の並行輸入を除く)の侵害に関わったものについて、最高で貨物価格の 3 倍にあたる金額の過料
を科することができるほか、侵害物品の没収も可能になった。また、改正税関密輸取締条例の施行
に伴い、知的財産権侵害事件、輸入品に関する不実な申告、又は不実の証憑書類の提出があった場
合の行為者に対する処罰がよりいっそう厳しくされた。同条例によるこれまでの過料処分は最高額
でも 9 万元程度にとどまるのと比べると、300 万元への大幅な引き上げは、知的財産権侵害への抑止
力を高めたい関係当局の狙いがうかがえる。
税関での水際措置の強化が奏功して、米国土安全保障省の税関・国境警備局及び移民関税執行局が
発表したデータによると、米税関で押収された台湾からの海賊版・模倣品は金額にして 2002 年の
2,650 万ドルから 2003 年の 61 万ドルへ、さらに 2004 年上半期では 6 万ドルへの大幅減となった。
知的財産権保護で大きな成果を収めたことが、2004 年 11 月の台米間の貿易及び投資枠組協定(TIFA)
交渉再開を実現しただけでなく、米スペシャル 301 条項に基づく優先監視対象リストから一般監視
国への格下げにもつながった。
8.海岸巡防署(通称「海巡署」)
8-1 紹介
海上の安全を確保し、密入国・密輸を取り締まり、輸入禁制品を押収する等々はもともと内政部、
国防部、財政部及び行政院農業委員会がそれぞれの権限に基づいて行っていたが、所掌事務や権限の
不一致が業務を遂行する上で大きな支障となり、海上治安の維持に関して深刻な問題になっていた。
近年、中国から偽タバコやプラセボ(偽薬)、輸入禁止の農産物・水産物・畜産物等の密輸が激増し、
社会治安や市場秩序に悪影響を与えている。こうした問題を徹底的に解決するために設けられたのは、
「海岸巡防署」である。同署は 2000 年 1 月 28 日に発足し、台湾沿岸水域に発生する犯罪事件の予防・
捜査、海上における船舶の安全航行と遭難救助はもとより、知的財産権侵害物品への水際取締におい
ても重要な役割を果している。
本署の下に海洋巡防総局と海岸巡防総局があり、前者は元水上警察局と関税総局の密輸取締艦艇・
人員からなり、後者は元国防部海岸巡防司令部から編成される。
8-2 主な活動内容
▲海洋巡防総局
►海域における犯罪事件の調査
►海上における密輸取締
►海上治安の確保
►海上交通安全管理
►海上紛争事件の情報収集・処理
8
►警備救難
►海洋環境保全と保育
►漁業資源の確保
►海上における渉外事件の調査・処理
▲海岸巡防総局
►海岸管制区域の検査・管理
►海岸における密輸取締、密入国・密出国取締
►海岸付近の監視活動
►船舶の非法侵入等海路経由の交通管制
►海岸における犯罪事件の捜査・防止、警備
►海岸・漁港・商港の安全検査
►海岸における渉外事件の調査・処理
8-3 模倣品・海賊版への水際取締実績
海上保安が専門とはいえ、水際措置がより効率的に行われ、十分機能するうえでの「海巡署」の存
在感は大きく、実際に警察にも劣らぬ着実な成果をあげている。
2006 年 3 月、海岸巡防署(以下、「海巡署」)の取締機動隊は漁民が漁船を使ってソニー「プレイ
ステーション 2」のほか、先月日本で発売したばかりのゲームソフトを密輸入するとの情報を掴んで、
一ヶ月間にわたり容疑者らを尾行した結果、14 日、海賊版ソフトを積んで入港した漁船を立入検査し
たところ、市場価格約 1,500 万元(約 4,500 万円)の PS2 等海賊版ゲームソフトを 7,000 枚余押収し
た。船長ら 3 人は密輸懲罰条例、著作権法違反の容疑で逮捕されている。機動隊員や「海巡署」所轄
現地安全検査所の捜査員、あわせて数十人が動員された大掛かりな捜査だった。
通報を受けた「海巡署」の各機動隊が、管轄警察と連携して中国からコンテナを利用して密輸入さ
れるバッグ類、衣類、時計等ニセブランド品の差し止め、知的財産権侵害事犯の検挙にも一役買って
いる。これまでに「海巡署」機動隊の協力により知的財産権侵害物品を水際で差し止めた事例は数え
切れない。
8-4 組織構成
9
9 国際貿易局
9-1 紹介
国際貿易局(国貿局と略称する)は 1969 年 1 月 1 日に発足した。経済・貿易環境の変化に対応し
て何度も組織の再編成を図った。近年、貿易の自由化にあわせて、輸出入管理にネガティブリスト
を導入すると同時に、輸出入許可の申請件数を減らそうと、許可不要の項目を増やした。一方、外
国との経済貿易上の関係を強化するため、国際経済貿易組織の活動にも積極的に参加している。
9-2 所管業務
所
第一組
輸入業務及び貨物分
類業務
第一科
輸入総合業務、ハイ
テク、車両関連商品
の輸入管理
第一科
総合業務及び輸出
入業者登記管理
管
業
務
第二科
農産品、水産物、紙
製品及び印刷物の
輸入管理
第二科
農、林、漁、鉱業及
びハイテク
第三科
第四科
紡績品、金属、機械、輸入許可及び鉱産
電子及びその他の 物、化学品等の貨物
貨物輸入管理
輸入管理
第二組
第三科
第四科
輸出業務及び輸出入
紡績品管理及び輸 知的財産権、輸出貿
業者登記管理
出産地表示
易紛争処理及び優
良業者の表彰
第三組
第一科
第二科
第三科
WTO、OECD 及びその他 WTO(1)及び総合業 WTO(2)及び OECD WTO(3)及びその他
の国際経済貿易組織 務
業務
の国際経済貿易組
関連業務
織業務
第四組
第一科
第二科
第三科
第四科
APEC、アジア太平洋地 APEC 関連業務
アセアン及び南ア 中国大陸、香港、マ 日本、韓国、オース
域及び中国大陸との
ジア
カオ及びモンゴル トラリア、ニュージ
経済貿易業務
ーランド及びオセ
アニア州
第五組
第一科
第二科
第三科
ヨーロッパ、アメリ アメリカ、カナダへ ヨーロッパを中心 中南米、中東及びア
カ、アフリカ及び中東 の輸出拡大計画の に、外国駐在機関の フリカを対象に、外
地区との間の経済貿 実行、経費の確保・ 考査、外賓招待作業 国駐在機関の成績
易業務
管理
考査、勤務評定、外
賓招待
総合企画委員会
第一科
第二科
総合企画業務
研究・考査
秘書室
文書科
事務科
貨物商品分類委員会
商品分類の審議及び
編集・印刷
人事室
会計室
統計室
政風室(風紀室)
資訊中心(情報センタ
ー)
国際貿易行政情報シ
ステムの企画と実行
異議申立審議委員会
貿易処分に対する異
議申立の審議
台北世界貿易センタ
ー南港展示館企画チ
ーム
10
紡績品検査チーム
高雄事務所
紡績品検査業務
第一科
輸入総合業務
第二科
輸出総合業務及び
輸出入業者登記
第三科
高雄事務所総合業
務
9-3 知的財産権輸出管理
貿易法第 2 条により、貿易は貨物及び貨物に付属する知的財産権の輸出入行為及びその関連事項
を含む。知的財産権の範囲は商標権、特許権、著作権及びその他法律によって保護される知的財産
権に及ぶ。また、貨物輸出管理弁法第 3 章及び第 4 章にも商標の表示、物品に著作がある場合の輸
出に関する規定が置かれている。輸出品における商標の不正な表示のないように、国際貿易局と財
政部関税総局が共同で「商標輸出監視システム運営執行手続き」を制定しており、登録商標への保
護を強化している。海賊版コンピュータプログラムの輸出は著作権者に損害を与えるのみならず、
国のイメージダウンにもなりかねないので、コンピュータプログラム関連製品輸出管理制度も導入
している。
9-3-1 商標の表示について
(1) 輸出品の本体又はその内外の包装又は容器に商標が表示された場合、輸出者は自らその商
標権の帰属について確認しなければならない。他人の登録商標を無断で商品に表示することは
できない。
(2)輸出に際して、輸出者は輸出品に表示された商標の見本を正確に通関書類に明記し、又は貼
付しなければならない。商標の表示がないものは「商標なし」と明記する。
(3)商標が表示された貨物を輸出するときは、輸出申告書類に「商標なし」と記載することはで
きないが、再輸出の外国貨物等について例外的に認める場合がある。
9-3-2 商標輸出監視システム
登録受理機関:経済部国際貿易局
執行機関:各地税関
知的財産権の保護を着実に進め、不法コピー商品の外国への流出を食い止めるために、国際貿易
局及び関税総局は関連機関と連携して、『商標輸出監視システム』を導入し、1994 年 10 月 1 日に実
施を開始した。輸出品に表示された商標は同システムで商標権者による登録手続きが完了済みの商
標が不正に使用されていないか税関においてチェックする仕組みになっている。有料制で登録され
た商標のデータベースを利用し輸出貨物を対象にサンプリング検査を行う科学的な管理システムの
導入によって、水際取締の効果を高めることを目的としている。
❒概要
経済部国際貿易局は 1994 年 10 月下旬に、輸出品の商標登録作業の準備を整えた。同作業はC・
C・Code(Standard Classification of Commodities of the Republic of China Code)によって
分類される項目に従って登録を行うが、細かな分類によって登録項目が増加するのを防ぐため、6
桁による分類の簡素化を図った。
上記の通り輸出業者には自社が取り扱う輸出品目に使用する商標について申告し、対象となる商
標を使用する権限があることを証明できる書類の提出も義務づけられている。しかし、輸出業者が
誠実に申告するか否かを問わず、不特定の対象に対して検査を行う。検査で貨物に使用された商標
とその品目が監視システムで、登録済みの商標及び指定商品と一致する場合、輸出業者の当該商標
の正当な使用権限の有無について調査する。輸出業者が当該商標の権利者の使用許諾のない者であ
る場合、税関は輸出業者に商標権者の指定書類、又は使用許諾書、その他不正使用の事実のないこ
との証明に足る書面の提出を命じ、書面を審査した上で通関を許可する。監視システム登録済みの
商標と類似する場合、税関は類似の度合により混同誤認を生じさせるおそれがあるかどうか判断し、
前述のような措置を取るか、或いは輸出業者に商標の不正使用のないことを明記した誓約書を提出
させ、商標権侵害がないことを確認した後通関を許可し、関連主務官庁に事後検査を行うよう照会
する。
同システムは外圧によって出来上がった制度ではあるが、商標を盗用する商品の取締強化に寄与
することを期待されている。特に通関手続を長引かせることなく知的財産権侵害行為を効率的に取
締まることができる点において高い評価を受けている。
11
❒商標輸出監視システムを利用する際の具体的手続き
A.申請者の資格
(1)台湾で商標登録を受けた商標権者
(2)他国で商標登録を受けた商標権者で、知的財産局に商標登録出願をした者、又はその商標が
著名商標であることを証明できる者、のいずれに該当する者。
B.申請に必要な書類:
登録を申請するには、「商標権者登録済商標申請書」、「商標権者登録済み商標資料表」、「登
録商標表示許諾証明書」、「商標特徴説明書」のほか、次に掲げる書類の提出が必要である。
一. 既に台湾で商標の登録を受けた商標権者は次の証明書類を提出する。
1.商標登録証書のコピー
2.代理人が登録を申請するときは代理の権限を明記した委任状を添付すること。
二.外国で登録を受け、かつ知的財産局に登録出願をした商標権者は次の書類を提出する。
1.商標登録を受けている国の公証人による公証を経た外国商標登録証書コピー、又は当該外
国の商標主務官庁が発行する認証証明(中国語訳本を添付)。
2.商標登録出願願書(知的財産局への出願証明として)及び手数料納付証明のコピー。
3. 代理人が登録手続きを代行する場合は代理の権限(登録手続き、書類の提出及び「登録商
標の表示についての同意書」の内容変更等を委任する)が明記された委任状を添付すること。
4.知的財産局の登録査定を受けたときは、直ちに貿易局に登録資格種類の変更を申請しなけれ
ばならない。
三. 外国で登録を受けており、その商標は著名商標であることを主張する商標権者は次の証明
書類を提出する。
1. 外国商標登録証書のコピー(当該外国現地の公証人による公証を経たもの、又は当該外国
商標主務官庁発行の認証証明、中国語訳本を添付)
2. その商標が著名商標であることを証明する書類
3. 代理人が登録申請手続きを代行する場合は代理の権限を明記した委任状を添付すること。
四. 登録の申請に関し、国際貿易局は必要と認めるときは、申請者又はその代理人に対して身
分証明又は法人資格証明の提出を要求することができる。
五. 申請者が外国語で記載された証明書類を提出したときには、中国語訳本を添付しなければ
ならない。
六. 申請者が提出した証明書類のコピー及び中国語訳本には申請人又はその代理人が署名し、
その内容は「正本と一致」と明記しなければならない。
C.登録申請審査
登録申請がなされる商標について、既に登録している商標と照合し、同一又は類似かどうかを確
認する。同一でも類似でもないものについては、登録を認める。
D. 登録料金について
1) 基本登録料金:同一の登録商標についての申請は一件とする。登録貨物の範囲は商標登録証書
に記載された指定商品の範囲を超えてはならない。登録証書に列挙された指定商品の項目を貨
物品目分類番号(CCC Code)に転換して、最初の6桁(世界通用のHSコード)が同じ場合は一類
とする。類別が10以内の登録は新台湾ドル5,000元、類別が10以上の場合は超過部分について一
類につき新台湾ドル1,000元を追加徴収する。登録後の修正は一件につきNT2,000元を徴収する。
2)商標権権利期間の更新は資料の変更とみなし一件につき毎回NT$2,000元の費用がかかる。
D.税関における検査の対象及び根拠法
(1)我が国で商標登録を受けた場合
a. 検査の対象:輸出品全般。
b. 根拠法:商標法、貿易法、貿易法施行細則、物品輸出管理規則、輸出貨物の通関検
査及び許可規則。
(2)他国で商標登録を受けた商標で、知的財産局へ商標登録出願中の場合
a.検査の対象:商標登録を受けた当該外国への輸出品に限る。
b.根拠法:商標法、貿易法、貿易法施行細則、物品輸出管理規則、輸出貨物の通関検査
及び許可規則。
(3)台湾で商標登録を受けていない外国著名商標の場合
a.検査の対象:輸出品全般。
b.根拠法:公平取引法、貿易法、貿易法施行細則、物品輸出管理規則、輸出貨物の通関
検査及び許可規則。
9-3-3 コンピュータプログラム関連製品輸出管理制度(2005.1.1 から撤廃)
12
9-3-4 光ディスク製品輸出管理制度(SID コード表示、Source Identification Code)
台湾は年間 10 億枚を超えるブランクコンパクトディスクを輸出しており、海賊版に悪用された CD
の海外への流出を効果的に食い止め、合法業者の権利を確保するために、音声・映像などが書き込ま
れた光ディスクの本体に SID コード(出所識別コード)の表示が義務づけられている。SID コード
が表示されていない光ディスクは、輸出はもちろん、国内で販売することもできない。
SID コードが表示されていない光ディスク製品が通関検査の際に発見された場合、国際貿易局は貿
易法第 28 条により 3 万∼30 万元の過料を科する。
9-3-5
チップマーキング制度
チップマーキングはゲームソフトに使われるチップの偽造防止を図ることを目的として Mask ROM
を適用対象とする制度であり、再輸出(一度外国から輸入した Mask-ROM を再び輸出する)の場合を
除き、すべての Mask-ROM に出所表示がなされていなければ輸出することができない。台湾経済研究
院と中華工商研究所はチップマーキングの登録機関として 2000 年 7 月 1 日から受付を始めた。
チップの設計や受注生産の業者は規定に従って登録しなければ、Mask-ROM の輸出が認められない。
設計業者と受注生産業者によって登録内容も登録名義も異なる。登録内容としては、前者は集積回
路の Mask であり、後者はチップの本体である。登録作業はおおよそ 5∼6 日間かかる。登録作業終
了後、登録機構は証明書を発行し、また輸出入品の検査に資するために、登録手続きを完了した業
者の名簿を作成して関税総局に提出し、変更があり次第、更新されることになっている。
2000 年 7 月 1 日から実施のチップマーキング制度に対応して、改正「貨物輸出管理規則」及び税
関での関連措置も同年 9 月から実行されている。
輸出の通関手続きをするにあたり、輸出者は商品分類番号、品名及び登録証明書番号を偽りなく
記載した輸出申告書類とともに経済部知的財産局の認可を受けた機構が発行するチップマーキング
登録証明書の写しを提出しなければならない。税関は作業の手順により、輸出品を「書類審査済み」
(C2)又は「貨物検査済み」(C3)に分類する。
2000 年第四四半期から、税関は Mask-Rom の輸出に対して厳重な書類検査を実施している。
Mask-Rom の貨物検査には技術上の問題があるため、代わりに書類検査をすることになった。識別記
号の書き込み、いわゆるチップマーキングをしておらず、かつ登録手続きを行っていない場合、そ
の製品の輸出は認められない。
10 内政部警政署経済チーム
10-1 知的財産権保護関連業務
►知的財産権保護強化活動実施計画案の策定
►海賊版・模倣品撲滅への取組み強化
►全国一斉取締活動実施計画案の策定
►警察機関における海賊版掃蕩作戦実施計画の策定
►知的財産局の知的財産権保護活動に協力
►露天商が集中するナイトマーケット 30 箇所、光ディスク製造工場 67 箇所をパトロール
11 高等検察署「知的財産権侵害取締協調監督作業チーム」
全国の検察機関が知的財産関連事件を処理する際の方法について協調する。このチーム(小組)は
コンピュータプログラムのコピーなどといったコンピュータを利用した犯罪事件の調査を検察部署の
重点的業務の一環としているので、1998 年 4 月 16 日に「コンピュータ犯罪防止センター」を設立して
コンピュータ犯罪の抑止に力を入れている。同センターの主任は高等検察署の検事長が兼任する。こ
のほか、諮問・協調委員会を設けている。
12 地方検察署「知的財産権専門チーム」
1999 年 7 月に法務部が公布した
「地方法院検察署検察官特別チーム試験実施の事件処理実施要点」
により、各地方検察署は知的財産権侵害などの特殊な犯罪類型について特別チームを設置して事件
を処理しなければならない。今後、各地方検察署の「知的財産権専門チーム」には四名以上(全国
124 名)の検察官が配置され、二年以上専ら知的財産権関連犯罪の処理に当たらせることとしてい
る。
13
13 地方裁判所「知的財産権専業法廷」
アメリカからの圧力と立法院(国会)からの要求を受けて、台湾台北地方裁判所は 1998 年 7 月 1
日に台湾初となる知的財産権侵害事件を審理する専業法廷を設立し、経歴豊富かつ知的財産分野にお
ける専門知識をもつ八名の裁判官を指名して知的財産権関連事件の審理にあたっている。今後はさら
に設置の範囲を拡大する見通しである。
14
知的財産法院(2007 年 3 月より運営開始予定)
2007 年 3 月からの「知的財産裁判所」運営開始に向け、司法院は 2006 年 1 月から裁判官訓練、裁
判所用地購入と整備計画策定などの具体的な作業を本格的に展開する。同裁判所は高裁レベルに位置
付けられ、知的財産権に関連する民事・刑事・行政訴訟事件を審理する。初期の段階においては、三
つの法廷に裁判官を十五名置くほか、ドイツの特許裁判所を手本に、知的財産分野や技術者を技術審
査官に起用し、裁判官が技術的問題に関して判断をする際に専門的な知見を提供する。
知的財産裁判所の創設は、台湾司法史上初めての試みであるとともに、知識産業の新しい道筋を開
いたということでもある。特許権・商標権・著作権関連民事訴訟・刑事訴訟・行政訴訟の審理の迅速
化、司法資源の節約、紛争の早期解決による社会コストの低減、訴訟長期化による当事者への不利益
の回避が図れる等のメリットがあり、司法現代化の重要な一環である。
同裁判所は台北県の林口に位置する敷地5万平方メートルの司法パーク内に建てられ、建物全体の
建設工事が 2011 年に完了する予定。知的財産裁判所の早期成立を求める各界の期待に応え、2007 年
3 月の運営開始に間に合わせるため、建設用地に隣接する場所に代用裁判所を一時的に設置する予定。
しかし、司法院が計画している台北県林口郷(町)の知的財産裁判所建設予定地は交通が不便で、政
府機関が集中する台北市に設置すべきとされ、立法院における 06 年度司法院予算審査会議で用地購
入にかかる経費 2 億元が全て凍結されている。
こうした事態により、2007 年 3 月からの運営に支障が出るのではという懸念の声について、司法
院は当面代替場所を借りて、予定を遅らせたりするようなことはないだろうと話している。
知的財産裁判所の用地購入予算を巡り、与野党協議の段階では全額削除の意見が多数あったが、立
法院長(議長)王金平氏の折衝で「削除」ではなく、凍結という形でとりあえず決着させたが、「知
的財産裁判所組織法」と「知的財産訴訟事件審理法」の法律案についても、いつ国会で成立するのか、
2006 年 3 月の時点ではまだ見通しが立っていない。
15 その他
●刑事警察局第九捜査隊
警政署は全国警察機関を指揮監督する立場にあり、刑事鑑識・犯罪捜査能力の向上、反テロ対策
強化、振り込め詐欺事件等従来の所掌業務にとどまらず、知的財産権侵害事犯の摘発にも力を入れ
ている。保安第二本隊からなる知的財産権保護警察隊以外、全国に起きる重大な刑事事件の捜査に
あたっている警政署所轄刑事警察局下の「第九捜査隊」においても、サイバー犯罪などハイテクを
駆使した犯罪事件の調査・摘発を専門的に行っている。
●標準検査局
標準検査局は「光ディスク管理条例」に基づき、光ディスク製品に SID コード(出所識別コード)
が確実に表示されているかどうか、検査を実施している。検査をクリアしなければ、国内で販売す
ることも輸出することも禁止される。
14
台湾におけるエンフォースメント機関の体系図
行政部門
知的財産権保護警察隊▼商標権・著作権侵害事犯の摘発
刑事警察局第九捜査隊▼サイバー犯罪・ハイテク犯罪捜査
経済チーム▼知的財産権保護強化実施案・全国一斉取締活動計画・海賊版掃蕩作戦計画等を策定
各地税関▼知的財産権侵害貨物の差止・水際取締
・
海岸巡防総局▼偽タバコ 麻薬 けん銃・輸入禁制品の取締、海岸立入禁止区域検査、密入国防止
海洋巡防総局▼海上安全と治安を確保、海上密輸行為取締
﹁知的財産権保護協調報告会議﹂
︵各省庁関係者を集めて三ヶ月
ごとに会合を行う。知的財産権保護行動計画の実施状況等を報
告検討︶、経済部主催。知的財産権保護施策の最高指導機関
国際貿易局▼輸出品の商標表示管理・商標輸出監視システム、光ディスク輸出をモニター
標準検査局▼光ディスク識別コード表示検査、製造元を特定
光ディスク合同査察チーム▼光ディスク管理条例に基づき、警察の協力により製造工場を立入検
関税総局
警政署
公平取引委員会
内政部
財政部
海岸巡防署
経済部
法務部
・
・
1
1
月 日から廃止
「
6
0
0
2
」
検・警合同取締活動の
各地検察署における
年
知的財産局 特許 商標 著作権等知的財産権の所管庁。▼知的財産専門人材育成訓練学院運営・
コンピュータ犯罪防止センター
知的財産権保護特別取締計画報告会議
知的財産諸関連法規改正案作成。 査禁模倣商品小組︵模倣品対策班︶
高等検察署
地方検察署知的
協調 指導にあたる
・
財産権担当チーム
年 月
2007
3 から運営開始予定︶
調査局▼国家安全・重大経済犯罪事件捜査・組織犯罪予防調査・情報収集分析等。知財権侵害事件摘発にも一役
各級裁判所︵知的財産裁判所は
15
・
司法部門
台湾における登録特許件数統計 出願企業別
20010101-20060321 累計
Invention Patent and Utility Patent only
Rank
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
46
47
48
49
50
Amount
3770
2727
2648
2040
1926
1863
1755
1738
1737
1643
1639
1416
1288
1238
1204
1117
1045
939
930
912
901
894
888
873
869
850
843
774
774
765
632
620
614
519
496
479
476
460
439
438
436
431
428
423
423
410
402
401
397
392
Applicant
Country
Hon Hai Precision Industry Co., Ltd. (Taiwan)
Industrial Technology Research Institute
Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.
United Micro-Electronics Corporation (UMC)
International Business Machines Corporation
Hitachi Ltd.
Mitsubishi Electric Corporation
Matsushita Electric Industrial Co., Ltd.
Samsung Electronics Co., Ltd.
Toshiba Corporation
Sony Corporation
Sharp Corp.
Inventec Corporation
Koninklijke Philips Electronics N.V.
Seiko Epson Corporation
Sanyo Electric Co., Ltd.
Intel Corporation
Fujitsu Ltd.
Honda Corp.
Applied Materials, Inc.
Via Technologies Inc.
NEC Electronics Corp.
Au Optronics Corp.
Macronix International Co., Ltd.
Infineon Technologies AG
Advanced Semiconductor Engineering, Inc.
Molex Incorporated
Mitac International Corporation
Benq Corporation
Tokyo Electron Limited
NEC Corporation
Delta Electronics, Inc.
Winbond Electronics Corporation
Inventec Appliances Corporation
Alps Electrical Co., Ltd.
Uni-Charm Corporation
Bayer Aktiengesellschaft
Siemens Aktiengesellschaft
Umax Data Systems Inc.
Promos Technologies Inc.
Nanya Technology Corporation
Canon Inc.
Chipmos Technologies (Bermuda) Ltd.
Hewlett-Packard Company
Qualcomm Incorporated
Shimano Inc.
Murata Manufacturing Co., Ltd.
Far East College
Molex Taiwan Ltd.
Lite-on Technology Corporation
16
TAIWAN
TAIWAN
TAIWAN
TAIWAN
U.S.A.
JAPAN
JAPAN
JAPAN
KOREA
JAPAN
JAPAN
JAPAN
TAIWAN
THERLANDS
JAPAN
JAPAN
U.S.A.
JAPAN
JAPAN
U.S.A.
TAIWAN
JAPAN
TAIWAN
TAIWAN
GERMANY
TAIWAN
U.S.A.
TAIWAN
TAIWAN
JAPAN
JAPAN
TAIWAN
TAIWAN
TAIWAN
JAPAN
JAPAN
GERMANY
GERMANY
TAIWAN
TAIWAN
TAIWAN
JAPAN
UK
U.S.A.
U.S.A.
JAPAN
JAPAN
TAIWAN
TAIWAN
TAIWAN
台湾における登録特許件数統計 出願企業別
20010101-20060321 累計
Invention Patent, Utility Patent, and New Design concluded
Rank
Amount
1
4484
2
2735
3
2648
4
2079
5
2040
6
1929
7
1890
8
1889
9
1839
10
1798
11
1738
12
1501
13
1444
NETHERLANDS
14
1308
15
1241
16
1200
17
1181
18
1050
19
943
20
917
21
916
22
905
23
894
24
888
25
878
26
874
27
869
28
850
29
825
30
814
31
675
32
662
33
621
34
614
35
566
36
551
37
534
38
503
39
502
40
477
41
467
42
442
43
441
44
438
45
437
46
436
47
429
48
428
428
50
415
Applicant
Country
Hon Hai Precision Industry Co., Ltd. (Taiwan)
Industrial Technology Research Institute
Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.
Matsushita Electric Industrial Co., Ltd.
United Micro-Electronics Corporation (UMC)
International Business Machines Corporation
Hitachi Ltd.
Sony Corporation
Toshiba Corporation
Mitsubishi Electric Corporation
Samsung Electronics Co., Ltd.
Sharp Corp.
Koninklijke Philips Electronics N.V.
TAIWAN
TAIWAN
TAIWAN
JAPAN
TAIWAN
U.S.A.
JAPAN
JAPAN
JAPAN
JAPAN
KOREA
JAPAN
Inventec Corporation
Seiko Epson Corporation
Honda Corp.
Sanyo Electric Co., Ltd.
Intel Corporation
Fujitsu Ltd.
Applied Materials, Inc.
Benq Corporation
Via Technologies Inc.
NEC Electronics Corp.
Au Optronics Corp.
Molex Incorporated
Macronix International Co., Ltd.
Infineon Technologies AG
Advanced Semiconductor Engineering, Inc.
Mitac International Corporation
Tokyo Electron Limited
Delta Electronics, Inc.
NEC Corporation
Inventec Appliances Corporation
Winbond Electronics Corporation
Hannspree Inc.
Canon Inc.
Uni-Charm Corporation
Siemens Aktiengesellschaft
Alps Electrical Co., Ltd.
Bayer Aktiengesellschaft
Shimano Inc.
Umax Data Systems Inc.
Lite-on Technology Corporation
Promos Technologies Inc.
Hewlett-Packard Company
Nanya Technology Corporation
J.S.T. Mfg. Co., Ltd.
Chipmos Technologies (Bermuda) Ltd.
Qualcomm Incorporated
Mitac Technology Corporation
TAIWAN
JAPAN
JAPAN
JAPAN
U.S.A.
JAPAN
U.S.A.
TAIWAN
TAIWAN
JAPAN
TAIWAN
U.S.A.
TAIWAN
GERMANY
TAIWAN
TAIWAN
JAPAN
TAIWAN
JAPAN
TAIWAN
TAIWAN
TAIWAN
JAPAN
JAPAN
GERMANY
JAPAN
GERMANY
JAPAN
TAIWAN
TAIWAN
TAIWAN
U.S.A.
TAIWAN
JAPAN
UK
U.S.A.
TAIWAN
17
1-2 台湾での権利行使の方針
1.積極的に法手段の限界に挑む
権利の限界に挑む厳正な態度が重要である。権利は実際行使されてからはじめて抽象概念から
具体性を帯び、世間一般に認められるものである。そのため、権利者は権利を最大限に行使しな
ければ、権利の具体的な効果と権利の範囲が明確に認識されない。たとえば類似商標を取り消し
たい場合、ある程度予想を試みることはできても、類似性の認定基準はどのように係争の商標に
当てはまるかは、実際争わないと予想しにくい。著名性の程度もまた類似性の認定の結果に影響
を与える。第三者や客観的な環境によって権利主張の許容範囲が浮動する場合も多い。たとえば、
外国における商標の著名性を台湾で主張する必要性が、台湾でその商標を襲用する者の使用態様
によって異なる。また、権利者の積極的な主張によって、権利の強さが異なる。かつて他人の商
標を襲用する場合、代理関係の存在がなければ取り消し理由にならない時代が続いたが、大勢の
商標権利者の努力によって、徐々に認定の基準が緩和されてきた。不正競争の分野も同じく、誤
認混同の認定基準が次第に合理化されつつある。
逆に、権利を主張しないまま眠らせていれば、第三者の侵害行為を容認するに等しく、目前の
損害がなくても将来の権利行使に支障を招くケースが多い。たとえば他人の登録した自分の商標
に酷似する商標を早急に取り消さないと、自分の登録商標が希釈され、ひいては自分の名義で類
似商標を登録する権利まで制限される。特許の例を見ても同様。医薬品の特許侵害容疑相手に対
して早急に差止請求をしなければ、相手側から特許権非侵害と製造販売行為を容認せよとの旨の
仮処分を先に押さえられる場合、権利行使がさらに困難になる。司法当局の観点にしても、限界
に挑む果敢な態度で権利行使を展開する権利者をある程度評価する傾向がある。
但し正当な権利行使と権利乱用の境界線が、民主化の発展とともに曖昧になる部分も現れてい
る。特に特許侵害行為の刑事訴訟においては、実態技術面の認定が困難なため、検察官の捜査と
押収の令状の妥当性が疑問視され、台湾国内の産業界から厳しい批判があがった。その個別事件
における強制処分の妥当性に対する批判が、特許侵害に対する刑事罰則全体の正当性を否定する
までにエスカレートした。人権保護と民主自由主義の台頭に伴い、検察官による司法強制権の介
入は非常に慎重になってきている。特許侵害行為に対しては、即効性を重視する場合、やはり民
事訴訟や仮差止めの効果が注目されている。2005 年からは、仮処分のほか、資産に対する仮差押
えと証拠資料を聞き出すために発動される証拠保全手続きの積極的な活用が注目されている。
また、取引関係にある相手に対して知的財産権を主張する際、必要以上に相互の関係を懸念せず、
法律上の権利義務を客観的に把握した上で動くことが大切。権利を過大に主張して相手からの逆
襲に負けるのもよくないが、逆に、遠慮しすぎてタイミングを失うのも引き合わない。そこは良
心的な弁護士などのアドヴァイスを受け冷静に判断した上で果敢に行動する必要がある。
2.知的財産権の公益性に対する尊重
権利行使は権利者に法的利益の保証を付与する手段であるとともに、社会秩序の維持という二
重の性格を持ち合わせている。つまり利己的な効果を上げると共に、法による社会正義と経済上
の正義を守る役割も果たしている。特に刑事訴追について社会公共のための公益確保の性格が強
い。そのため、国家は行政機関と司法機関への投資と人員の投入を通して、権利行使の便宜と効
率化を図っている。権利者の正当な権利行使であれば、国家の各方面からの支援を受けるのは社
会公共全体としても利益を享受するので正義にかなうことであるが、それが不正競争や和解金の
取り立てなどの手段に悪用される場合、国も公的な支援を提供する正当な根拠に欠ける。例えば、
検察官と警察に公権力を発動させ、礼状の発行により偽物を押収した後に、明らかな証拠がある
にもかかわらず、金銭和解契約の取り交わしで告訴を取り下げる場合、検察側や警察、調査機関
などは自分の努力が単に賠償金を取るための手段に利用されたと反感を持っても仕方がない。
特に刑事訴訟の権利行使は一貫性が重要である。原則として、弁護士は刑事事件において成功
報酬の受領が禁止されている。権利行使が第三者によって悪用されることがないよう気を付ける
ことも重要である。
3.攻撃と防御の準備を万全に
提訴などの積極的な権利行使のほか、第三者の競合活動や侵害に有効に対応するための準備と
他者の権利を侵害しないための対策も広義の権利行使に入る。攻勢をかけるだけでは十分に自身
の権限を守れないケースが増えている。他者の権利行使によって自身の利益が脅かされる可能性
にも留意すべきである。たとえば権利侵害の恐れのある商業活動(商号名称の使用、商標の登録
と使用、技術の使用など)に関して、特許と商標の出願や公開資料の調査を確実に実施するほか、
万一訴訟を起こされたときには抗弁の材料に困らないよう、自身の善意を証明できる資料を普段
から収集するのも大切である。最低限の他者の権利関連の調査を怠った場合、すでに展開した市
場投資と労力などの負担が増える、権利調査は早期に専門家に委託し着実に行ったほうが賢明で
18
あろう。
また、自身の権利を有効に主張するための対策も早期から考慮すべきである。たとえば他者の
無断使用や襲用登録に対応できるために、商品の入荷と販売を立証するための書類証拠を早めに
確保することも大切である。コピーされやすい意匠の商品は権利化の登録のほか、他人の襲用登
録を防ぐべく、カタログを関連当局に送付して公開資料に提供する手段もある。
4. 継続的且つ抜本的な展開と推進が必要
利益があがるかぎり、模倣品製造と販売を働く者は存在する。他者の創作と技術開発の投資を
免れる分、利益をあげられるからだ。真正品が売れれば売れるほど、特許、意匠や商標、著作権
を無視して模倣品の製造販売ラインを立ち上げる誘引になりうる。たとえ根絶に成功したとして
も、残党による権利侵害行為の再発事例が後を絶たない。刑事罰が廃止された後は、その点が尚
憂慮される。
また持続性と徹底性に欠ける権利行使は、模倣品による侵害を撲滅する効果を上げられないば
かりでなく、模倣品の闇相場を間接的に上昇させ、模倣品業者に経済的な利益を与えてしまうよ
うな、いわば洛陽の紙代を高めるといった皮肉な現象を誘発する。そのため、健全な事業環境と
競争優勢を確保するには、模倣品の対策は持続的かつ徹底的に推進する必要がある。
以上のような状況を鑑みて、台湾国内での知的財産権の権利行使にあたっては以下の三つのポ
イントが重要である。
1.完全なる権利基礎を持つこと
知的財産権侵害を主張でき、刑事訴訟と民事訴訟を提起出来うる権利をなるべく早期に取得
し、確保すること。創作主義に基づいて発生する著作権の場合は、著作物の創作時点を立証資
料として用意できれば権利行使を確実かつ迅速に展開できる。登録権利(特許、意匠、商標)の
場合は、早期の出願と登録が重要。
2.周到なる情報網と証拠収集能力
模造品のソースを突き止める調査能力と、検事及び裁判官が信じるに足る有力な証拠の収集
能力。
3.経験豊富な訴訟代理人
早急に正確な判断と有効な取締を実行出来るベテラン法律事務所と実務経験のある知的財産
権訴訟専門弁護士の助力を得ること。また、中国における台湾の業者の模倣品製造販売活動に
ついて情報収集と法律手段を講じる場合も、台湾の法律事務所と調査会社の助力を得て進める
のが無難だが、任せきりではなく、進捗については常に把握することと、実績を明確に要求し
た上で依頼することが重要である。調査会社も現地の代理人経由の依頼のほうが受けやすいこ
ともあり、信頼できる現地代理人の確保が重要。
19
2004 年の捜査機関による知的財産権侵害物品の摘発実績
期
間
内政部警政署
法務部調査 保安第二本隊
局
経済部
知的財産権保 コンパクトディスク合同検査
護警察隊
件数 (容疑
海賊版
者)人
CD
数
(枚数)
件数
経済部模倣商品捜査チーム
人
件数
人数
数
チーム
検査 重大 行政
過料
民間か 報奨金
報奨金
対象 事件 処分
らの通 が給付
合計額
会社
報
される
数
2004 年
4,209
4,321 2,492,147
157
294 1,219
1,052 1,067
(台湾元)
件数
7
4
NT$
1 月から
289
955
27,595,733
594
1,217
15,129,231
600 万元
12 月までの累計
前年同期
4,660
5,713 3,272,359
199
294 2,017
1,025 1,088
10
NT$1,850 万
8
元
対前年
-9.68% -24.37% -23.84% -21.11% 0% -39.56% 2.63% -1.93% -30% -50%
-67.57%
-51.35% -21.53%
82.40%
増減率
注:1.警政署の統計データには保安第二本隊知的財産権保護警察隊による摘発件数が含まれている。
2005 年の捜査機関による知的財産権侵害物品の摘発実績
期間
内政部警政署
法務部調査局
保安第二本隊 経済部コンパクトディスク 経済部模倣商品捜査チーム
知的財産権保
合同検査チーム
護警察隊
件数 (容疑 海賊版
者)
件数
人数
件数
人数
CD
人数 (枚数)
検査対 重大 行政 過料 民間か 報奨金
報奨金
象会社 事件 処分
合計額
らの通 給付さ
数
報
れる件 (台湾元)
数
2005 年 4,648
5,245
1,578,734 135
224
1,428
1,593
1,193
0
0
0
360
456
17,012,883
4,321
2,492,147 157
298
1,219
1,052
1,067
7
4
600
289
955
27,595,733
1-12 月
累計
前年
4,209
同期
対前年 10.43% 21.38% -36.65% -14.01% -23.81% 17.15% 51.43% 11.81% -100% -100% -100% 24.57% -52.25% -38.35%
増減率
注:警政署の統計データには保安第二本隊知的財産権保護警察隊による摘発件数が含まれている。
20
内政部警政署台湾地区警察機関における知的財産権侵害事件処理件数
合計
2004
商標権
著作権
著作権関連渉外事件
年
米国関連
米国以外の他国
関連
件数
人数
件数
人数
件数
人数
CD 枚数
件数
人数
件数
人数
1月
394
343
139
158
255
185
194,886
11
9
7
7
2月
375
369
148
174
227
195
138,180
15
14
18
15
3月
292
326
165
204
127
122
78,346
8
7
25
8
4月
281
293
132
146
149
147
82,548
7
4
16
12
5月
323
302
149
170
174
132
74,057
12
11
41
4
6月
266
298
128
154
138
144
107,421
8
8
18
14
7月
426
424
138
165
288
259
686,087
6
6
78
21
8月
395
420
178
224
217
196
228,436
4
4
11
14
9月
270
317
136
166
134
151
67,188
3
5
10
9
10 月
467
447
191
232
276
215
94,178
4
4
54
8
11 月
333
362
129
150
204
212
654,086
5
7
25
4
12 月
387
420
218
245
169
175
86,734
6
6
6
6
1~12
4,209
4,321
1,851
2,188
2,358
2,133
2,492,147
89
85
309
122
4,660
5,713
2,014
2,419
2,617
3,254
3,272,359
127
147
201
242
月
累計
前年
同期
累計
対前 -9.68% -24.37% -8.09% -9.55% -9.90% -34.45%
年
増減
率
21
-23.84%
-29.92% -42.18% 53.73% -49.59%
2005 年内政部警政署台湾地区警察機関における知的財産権侵害事件処理件数
著作権関連渉外事件
合計
2005 年
商標権
著作権
米国関連
米国以外の他国
関連
件数
人数
件数
人数
件数
人数
CD 枚数
件数
人数
件数
人数
1月
263
311
122
130
141
181
159,968
4
4
22
23
2月
365
404
198
231
167
173
183,466
9
10
31
10
3月
324
338
158
182
166
156
251,714
7
9
5
5
4月
352
403
175
220
177
183
186,822
5
5
43
51
5月
557
643
294
351
263
292
156,635
13
14
26
28
6月
407
451
203
230
204
221
57,152
8
8
27
29
7月
378
421
131
147
247
274
115,768
4
4
27
28
8月
475
507
207
242
268
265
106,934
10
14
39
43
9月
365
415
192
225
173
190
73,238
7
8
62
55
10 月
293
327
136
152
157
175
32,119
6
9
62
64
11 月
478
593
236
300
242
293
198,347
7
11
68
86
12 月
391
432
192
217
199
215
56,571
9
14
67
54
4,648
5,245
2,244
2,627
2,404
2,618 1,578,734
89
110
479
476
4,209
4,321
1,851
2,188
2,358
2,133 2,492,147
89
85
309
122
10.43% 21.38% 21.23% 20.06% 1.95% 22.74% -36.65%
0%
1-12 月
累計
2004 年
同期
対前年
増減率
22
29.41% 55.02% 290.16%
1-3 台湾の裁判制度及び知的財産権実務界の構成
1-3-1裁判制度
(1)一般裁判制度
裁判は民事、刑事及び行政など三種類があり、原則として条件つきの併行が認められている。各種
の知的財産権の侵害事件につき刑事効果が付与されているほか、刑事裁判に繋属中の刑事裁判法廷に
付帯民事裁判手続を提起できるとされ、民事損害賠償の請求手段が更に強化されている。民事及び刑
事の裁判は三審終審制度に基づくが、特定の法定最高刑罰及び民事上の請求金額に未たない事件は二
審で終審となる。行政訴訟は行政処分に対する不服申立の手続きに当たる訴願及び再訴願の救済手段
として設けられ、2001年以降は二審終審制に転換した。台湾全国に19の地方裁判所、6の高等裁判所
があり、最高裁判所を頂点として各裁判所の行政管理を行政院法務部が統轄している。
全国裁判所の数;それぞれ民事と刑事法廷が設けられている(括弧内の数字は台湾における各級裁
判所
■最高裁判所(1)
■高等裁判所(6)
◇台灣高等法院
台灣高等法院台中分院、
台灣高等法院台南分院、
台灣高等法院高雄分院、
台灣高等法院花蓮分院、
◇福建高等法院金門分院、
■地方裁判所(地方法院 20):
◇台灣高等法院所轄
台北地方法院、
士林地方法院、
板橋地方法院、
桃園地方法院、
新竹地方法院、
宜蘭地方法院、
基隆地方法院、
◇台灣高等法院台中分院所轄
苗栗地方法院、
台中地方法院、
南投地方法院、
彰化地方法院、
◇台灣高等法院台南分院、
雲林地方法院、
嘉義地方法院、
台南地方法院、
◇台灣高等法院高雄分院、
高雄地方法院、
屏東地方法院、
澎湖地方法院、
◇台灣高等法院花蓮分院、
花蓮地方法院、
台東地方法院、
◇福建高等法院金門分院
福建金門地方法院、
裁判は民事、刑事及び行政など三種類があり、原則として条件つきの併行が認められている。各種
の知的財産権の侵害事件につき刑事効果が付与されているほか、刑事裁判進行中に繋属中の刑事裁判
法廷に付帯民事裁判手続を提起できるとされ、民事損害賠償の請求手段が更に強化されている。
司法院は2005年に向かって「知的財産専門裁判所」及び「民事訴訟への証拠開示手続き導入」の実
施可能性について検討する方針を明らかにした。これらの構想が実現できれば、知的財産関連産業の
23
発展及び民事訴訟の進行に大きな影響を与えることになる。事件の審理終結の迅速化、ひいては司法
資源の節約を図り、また訴訟の長期化によるビジネスチャンスの喪失を避け、社会資源の消耗を防ぐ
ことが見込まれ、台湾における特許権、商標権、著作権その他ビジネス紛争の早期解決に寄与するこ
とが期待される。
(2)行政訴訟制度の変革
1998 年 10 月 2 日、全文 308 条の行政訴訟法の全面改正が行われ、台湾の行政訴訟制度に重大な変
革をもたらした。改正法は 2001 年 7 月より発効した。行政手続法の改正と相まって、従来の行政救
済制度から再訴願を廃止、従来の一審だけの行政訴訟体制が二審級体制に改正された。また、行政訴
訟の手続きがさらに整備され、公共的な性格を帯びるとともに民事訴訟制度に比肩するようになった。
それにより知的財産権の権利行使の実体認定の体制はさらに強化された。改正後の行政訴訟法の知的
財産権に関連する重要箇所を以下に説明する。
一.「二級二審」制を増設して、行政裁判所を「高等行政裁判所」と「最高行政裁判所」に分ける。
要するに、訴願人が訴願の決定に不服があるときは高等行政裁判所に対して、取消し訴訟又は義
務を課す訴えを提起することができ、高等行政裁判所の裁決に不服があるときは最高行政裁判所
に上訴をすることができる。高等行政裁判所を第一審の裁判所とし、事実及び法律について審理
する。また最高行政裁判所は上訴審の裁判所とする。
二.訴訟の種類を追加する。現存の取消し訴訟を除くほか、確認訴訟、給付訴訟及び義務を課す訴え
を追加する。即ち、(一)行政処分又は訴願決定に不服がある場合に提起する「取消しの訴え」、
(二)請求に対する拒絶又は不作為について提起する「義務を課す訴え」(請求の内容は「行政
処分をすべき訴え」及び「特定の内容の行政処分をすべき訴え」の二種を含む)、(三)処分に
ついて無効、違法、又は公法上法律関係の存否の確認を求める訴訟、(四)公法上の原因により
生じた財産上の給付の請求又は行政処分以外の非財産上の給付の請求又は公法上の契約により
生じた給付訴訟(一般の給付訴訟)、である。ただ、取消し訴訟を提起できる者は行政機関によ
ってなされた違法な行政処分に限り、不当な行政処分はその対象に含まれていない。
三.訴願前置主義の現状維持。但し、行政訴訟を提起するために訴願手続を経る必要があるものは、
取消し訴訟及び行政処分を求める訴訟のみ適用する。その他の訴訟を提起する場合、その性質に
より訴願前置主義を適用しない。又、争点主義に基づき、訴願の段階に提示された争点に限定して
審理が行われる原則となっている。そのため、訴願の段階でなるべく争点を提示しつくす必要が
ある。
四.概括主義を導入して、「行政訴訟事件」の範囲を拡大する。「公法上の争議」は、法律に別段の
定めがある場合を除き、すべて行政訴訟を提起することができる。
五.行政訴訟と民事、刑事訴訟との関係を修正し、「第一次権利保護優先制度」を採用する。民事又
は刑事訴訟の裁判は、行政処分が無効又は違法であるかどうかを根拠とする場合、行政争訟手続
に基づきこれを確定しなければならない。また行政訴訟のうち一般給付訴訟の裁判に関して、行
政処分を取消すべきか否かを根拠とするものは、本法により取消訴訟を提起するときにこれを併
合して請求するものとする。
六.行政裁判所は通常の裁判所との間で同一事件についてその裁判権の帰属をめぐって争議が生じ
たときは、司法院の大裁判官がこれを解釈する。
七.原告適格の範囲を明確に定める。客観訴訟を除き、「法律上の利益」の有無を判断基準とする。
このほか、同時に原告適格の問題に係るものについては、「団体訴訟」の許容性を認める。
八.訴訟経済原則に合致させるために、訴訟参加制度を修正し、並びに裁判の結果の分岐を防止する。
九.行政訴訟は裁判費を徴収しない。但し、その他訴訟を進行するために必要とされる費用は敗訴し
た当事者がこれを負担しなければならない。
十.行政訴訟手続の開始は当事者進行主義をとり、訴訟手続きの進行及び終結はその性質により職権
進行主義を兼ねて採用する。
十一.訴訟目的の処分に関し、当事者に処分する権利があって、かつ公益に関係のない場合を除き、
任意にこれをなすことができず、当事者処分権主義について制限を加えなければならない。
十二.行政処分又は決定の執行は原則として行政訴訟の提起により停止しない。
十三.高等行政裁判所の第一審の訴訟手続は口頭審理主義を原則とし、最高行政裁判所の上訴審の手
続は書面審理主義を原則とする。ただし、特定の条件付きで口頭弁論を行うこともできる。
十四.行政裁判所は取消訴訟については職権により証拠調べをしなければならない。その他の訴訟に
ついては公益を保護するための訴訟においても同様とする。
十五.「事情判決」制度を採用する。行政裁判所が取消訴訟を審理した結果、原処分又は審決が違法
ではあるが、それを取り消し、又は変更することにより、公益に著しい障害を生じる場合におい
て、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償の程度、又は防止方法その他一切の事情を考慮し
たうえ、原処分又は裁決の取り消し又は変更が明らかに公益に適合しないと認めるときは、裁判
所は原告の訴えを棄却することができる。行政裁判所がかかる事情の判決をするときは原告の請
24
求により、原告が違法な処分又は裁決により受けた損害について、判決において被告の行政庁に
賠償を命じて、原告の利益を配慮しなければならない。
十六.利害関係にある善意の第三者も確定判決について救済を申立てることができるようにするた
め、改めて審理する旨の規定を増設する。
十七.行政訴訟法は公法上の争議を処理する法律で、私法上の法律関係を処理する民事訴訟法とは異
なるが、両者の間では性質の相当な個所もないわけではないので、関連規定を準用することがで
きる。したがって、本法が改正されるにあたって、民事訴訟法の全条文について逐一検討した。
民事訴訟法の規定のうち、行政訴訟の特性に合わないものは別段の定めを設ける。重要な原則に
属するものは、民事訴訟法における同様の規定を本法の改正草案に盛り込む。その他の細部につ
いて、行政訴訟法と共通の性質を有し、準用の必要があるものは、各編、章、節に従ってその準
用を逐条列挙し、明確を期する。
1-3-2関連法律実務家の資格
1 法曹界の構成
裁判官の資格 裁判官は弁護士と同じく一般 4 年制大学の法学部を終了したもの或は法律学科の修士
号を修得したものが殆どで技術問題に精通する者が少ない。特許事件の侵害判断については、ほとん
ど標準局や専門鑑定機関の意見に一任する。弁護士や証人による技術面の説明にかかる技法が重要と
されている。又、いくつか主要な裁判所では、特定の法廷に(一般事件も担当させる傍ら)知的財産
権間連の事案を審理させる擬似の専門法廷制度を導入しているところはあるが、担任の裁判官は 2 か
ら 3 年位階の頻度で転任することによって、専門裁判官の育成制度が定着しにくくなり、制度の趣旨
を損ねている。
2004 年 1 月頃、司法院は 2005 年に向かって「知的財産専門裁判所」及び「民事訴訟への証拠開示
手続き導入」の実施可能性について検討する方針を明らかにした。これらの構想が実現できれば、知
的財産関連産業の発展及び民事訴訟の進行に大きな影響を与えることになる。事件の審理終結の迅速
化、ひいては司法資源の節約を図り、また訴訟の長期化によるビジネスチャンスの喪失を避け、社会
資源の無駄な消耗を防ぐことが見込まれ、台湾における特許権、商標権、著作権その他ビジネス紛争
の早期解決に寄与することが期待される。
裁判官及び検察官の人数、登用条件及び構成などについて
台湾における裁判官人数は概算で 1,300 人、検察官人数は 700 人ほど、弁護士人数は 3,800 人程度
である。中央標準局で登録してある特許代理人の数は 5,400 人ほどにのぼるが、実際執務するのは 200
名程度と見られる。
裁判官と検察官は 司法官特別試験 という国家試験のもとで選抜されている。近年では 5,500 人
ほどの受験者の中から、100∼200 程度の合格者を挙用する。裁判官は弁護士と同じく一般 4 年制大学
の法学部を終了したもの或は法律学科の修士号修得したものが殆どで技術問題に精通した者が少ない。
特許事件の侵害判断については、ほとんど標準局や専門鑑定機関の意見に一任する。弁護士や証人に
よる技術面の説明にかかる技法が重要とされている。
司法人員人事条例第九条により、地方裁判所(地方法院)またはその分院の裁判官、地方裁判所又
はその分院検察署の検察官は、次の資格の一を備えるものから任命する。
一.司法官試験に合格した者
二.かつて判事、裁判官、検察官に任じ、司法院審査を経て合格と認めた者
三.弁護士試験に合格し、且つ弁護士職務を三年以上執行し、成績優秀であって薦任職任用の資格を
備えている者
四.公立又は認可を得た私立大学、独立学院の法律学科又は法律大学院(法律研究所)を卒業して、
三年以上公立又は認可を経た私立大学、独立学院の教授、助教授に任じ、又は五年以上講師とし
て勤め、主要な法律科目を講義し、法律専門の著作があり、司法院又は法務部の審査に合格し、
かつ薦任職任用の資格を備えている者
(注:薦任職任用資格とは職階制によって官職を職務の種類及び複雑と責任の度に応じて、いずれか
の職給に格付けすることをいう)
司法改革の一環として、裁判官の起用制度を巡り盛んな議論がされている。現行の司法試験制度は裁
判官と検察官のみの試験と弁護士の試験に分けられており、裁判所と民間法曹の人材を隔てたシステム
となるので、互いの交流と融和を妨げる原因になるとして、試験制度の改正案が近年考試院と司法院に
よって考案されている。
その他、弁護士資格に基づく裁判官の資格の付与に関する検定制度の緩和と合理化も弁護士会を中心
として推進されている。従来では裁判官退官者が弁護士になるケースが多く、弁護士が裁判官になる場
合は司法当局の厳格な審議によるため、極めて少数に留まるというアンバランスな現象が続き、裁判官
尊弁護士卑の傾向に拍車をかけるきらいがある。民間法曹のステータス向上と裁判官人材の質的向上を
目指す具体的な対策が求められている。
25
司法官試験(裁判官及び検察官)と弁護士試験とは同一の試験ではない。近年の応募者数、合格者
数については別表をご参照ください。
(1)司法裁判官
年別
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2000
2001
2002
2003
2004
2005
第一回 第二回
応募者数
4,327
4,506
5,012
5,170
5,220
4,524
4,703
5,133
5,267
5,072
5,666
5,602
全科目受験
3,624
3,662
3,720
4,327
4,506
3,732
4,185
3,991
3,606
3,156
3,793
3,832
3,587
3,897
3,819
99
141
120
150
100
173
125
185
98
91
124
132
98
121
182
2.73%
3.85%
3.23%
3.47%
2.22%
4.64%
2.99%
4.64%
2.71%
2.88%
3.27%
3.44%
2.73%
3.10%
4.77%
者数
合格者数
合格率
弁護士の資格取得の条件及び構成について
弁護士法(律師法)第三条の規定により、毎年行われる弁護士試験に合格し、且つ研修訓練を経て
合格と認められた中華民国人民は、弁護士になることができる。又、下記の資格の一に該当する者は
検定をもって弁護士試験を行う。
①かつて裁判官又は検察官に任じた者
②公立又は認可を受けた私立大学、独立学院の法律学科を卒業し、公立又は認可を受けた私立大学、
独立学院法律学科または法律大学院(研究所)で専任教授を二年、助教授を三年若しくは講師を五
年勤め、主要な法律科目を講義した者
③公立又は認可を受けた私立大学、独立学院の法律学科を卒業し、又は軍法官試験に合格し、薦任職
相当の軍法官に六年以上在職した者
台湾では大陸法体系に従い、弁護士は原則として法廷で訴訟活動を行えるが、特殊な規定(弁護士法)
により、地方裁判所が管轄する当地の弁護士会に会員登録しなければ、当該地方裁判所で代理人とし
て活動できない。弁護士の行為能力を不当に制限しているこの法律を撤廃する動きが続いている。
弁護士試験の受験者数及び合格者数については次の表をご参照ください。
(2)弁護士
年度
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
応募者数
3,472
3,977
4,223
4,695
5,108
5,173
5,202
5,440
5,714
6,009
6,565
6,424
6,430
6,727
7,084
7,502
3,296
3,700
3,803
3,758
4,151
3,915
4,129
4,064
4,395
4,616
4,623
4,799
4,979
5,300
全科目受
験者数
合格者数
合格率
290
363
349
563
215
287
293
265
231
564
264
326
359
388
399
427
10.59%
15.22%
5.65%
7.64%
7.06%
6.77%
5.59%
13.88%
6.01%
7.06%
7.77%
8.09%
8.01%
8.06%
弁護士資格は裁判官選抜の司法官試験とは別の 専門職業技術人員高等試験 という国家試験に合
格したものに与えられる。弁護士の試験に近年毎年7000人ほどの受験生が参加し、200∼300名前後の
合格者が出る。裁判官と弁護士試験における受験者資格は同様で、原則として四年制大学法学部を終
了したものに限られていたが、最近は一定の選考試験に合格したものでも受験できるようになり、外
国人でも受験できるようになった。また、従来の受験者はほとんど法学部出身のものに限り、理工系
出身の者は極めて稀であった。しかし、最近では米国のロースクールに近いプロセスを踏まえて、理
工科専攻の大学卒業生で更に台湾の法学大学院で3年間のコースを終了した者が増え、技術を知る法
律家が活躍する時代が到来しつつある。
弁護士団体について 台湾全国では、おおよそ5,000名ほどの弁護士が登録され、各地方県市において
台北市のように3,000人程の会員を持つ大規模な弁護士会から、百名未満の小弁護士会まで計20の弁護
士会に所属している。一弁護士につき、19箇所の地方裁判所のうち4箇所しか登録を受けられない制限
があったが、2002年の法改正で同制限が撤廃された。但し、特定の地方裁判所で弁護人又は訴訟代理
人として活動するには、同地方裁判所の所属地域の弁護士会に会員として加盟していなければならな
い。全国弁護士会を個人会員制に切り替えて、一括の入会で全国各地の裁判所で自由に活動できる総
会制の導入に向けて改革は長年討議されているが、地域の弁護士会の反対で今でも実現されていない。
26
台湾全国弁護士会(日弁連に相当)は会員制ではなく代表制を取り、各地方の弁護士会の理事、幹
事によって全国弁護士会の理事会及び幹事会が構成されている。
台北弁護士会は台湾全国の弁護士の総数の2分の1以上の3,500人もの会員を擁している。同会のもと
で26の専門委員会が設けられ、知的財産委員会もその重要名構成をなしている。1990年理事長制を選
挙によって確立して以来、台北弁護士会は弁護士同業者団体として再発足し、内部組織の改造から社
会改革まで全分野において活躍してきた。26の専門委員会を率いる弁護士倫理風紀委員会、人権保護
委員会、司法改革委員会、及び憲法と行政法委員会などが同弁護士会の司法制度に対する改革の意欲
と切望を体現する。同時に国際委員会及び中国大陸委員会の存在と活動が、国際交流への意気込みを
表している。
又、台湾法曹界では、約8割の弁護士が独立開業をしているローカル個人法律事務所であったが、弁
護士の人数が増える一方でその比重が減ってきている。渉外事務所で知的財産関係事件を手がける比較
的規模の大きい事務所を利用する場合、紹介かインターネットなどの情報源を通してコンタクトするこ
とが出来る。一方こうした大規模な事務所では、多数のクライアントを抱えており、コンフリクトの問
題があるので、依頼する場合には、相手となる台湾企業の名称を具体的に提示した上で、コンフリクト
チェックをしてもらい、バッティングの疑慮をクリアしてから正式に依頼するほうが得策である。
2・特許出願代理人の資格について
外国人が台湾で特許を出願する場合は、 専利代理人 という資格を持つ台湾の住民によって代行
すべきとされている。しかし、目下台湾ではまだ特許出願代理人のみの資格を与えるような試験がな
いので、暫定の法律によって以下の者に特許出願代理する資格が与えられている。
①裁判官又は弁護士の有資格者、
②会計士の資格を有する者 公認会計士、
③国家試験によって選抜された工、鉱業技師登記証書を受領した特定の公認専門技士
④専科学校以上を卒業し、かつ特許主務官庁で審査官勤続2年以上の者。
専利代理人(弁理士に相当する)の組織は法律の欠如により未だに結成されていない。その代わり、
APAA(ASIAN PATENT ATTORNEYS ASSOCIATION)の台湾部会(TAIWAN GROUP)が現在の台湾弁理士会の
役割を果たしている。同グループは、現在台湾の特許業務主務官庁である中央標準局で特許代理人の
資格登録を受けた170名ほどの実務家がメンバーとして参加している。APAAに参加していない代理人は
ほかにまだ5,000名ほどいると言われているが、なかには実際営業していない名ばかりの特許代理人も
多いようである。
2006年3月現在では、90年代に立案された特許弁理士(専利師)法草案がまだ行政院の最終決定を待
っているので、法律化の期日はなお先送りされる模様である。
3.商標出願代理人の資格について 外国人が台湾で商標を出願する場合は、台湾の住民によって代行
すべきとされている。しかし、目下台湾ではまだ商標出願代理人に関する特定の資格認定制度が設け
られていない;台湾において住所さえ持っていれば誰でも商標登録の出願を代理できる事になってい
る。但し、「商標師法」の制定とともに商標師という制度の導入が近年標準局の商標処によって提案
されている。98年7月現在では未だ法案の立法院への提起が見られないが、特許代理人の商標出願にお
ける代理人を務める権限が剥奪される恐れがあることから、特許代理人業界と主務官庁間の斡旋があ
った上、立法院の都合で2000年以降棚上げの状態が現在まで続いている。
4.弁護士及び特許代理人の費用の規定について
法律は特に弁護士費用について規定を置いていないが、台北弁護士会(律師公会)が報酬の目安基
準として「台北律師公会会員収受酬金辧法」を設けている。
特許代理人については特に規制が設けられていない。台湾では 1991 年公平取引法施行以降、同業者
組合による費用の設定という慣行が禁止された。弁護士会の公定費用表も時々問題にされることがあ
る。
5・主務官庁と関連機関
■
経済部知的財産局
主務官庁と関連機関
台湾では、知的所有権の主務官庁は行政院経済部所轄の 中央標準局 という官庁で、500名程度の
人員が編成されている。1999年以降は 知的財産局 の設立条例に基づいて、正式に知的財産局に組
織変更されてきた。その組織再編につれて、従来行政院経済部所轄の 査禁倣冒小組 も知的財産局
に編入され、各官庁と警察機関などから人員が出向しており、関連部局の知的財産権保護施措が有効
27
に実行されるために政府各部門間の連絡ネットワークを強化する特設の組織として業務を続ける。同
小組は現在各機関からの出向勤務人員15名ほどによって構成されている。従来内務省所轄の著作権委
員会も知的財産局におさまった。但し、2006年1月に、専門のIP警察部隊が順調に機能していることな
どを背景に、査禁小組はIPOにおける組織編成の中で撤廃される運びになった。
知的財産局(Taiwan Intellectual Property Office / TIPO)は主に商標、特許、著作権、集積回路
の回路配置、営業秘密に関する法制の研究・検討・制定、登録事項を所掌するとともに、コピー商品
取締活動の協調の役を担う。
TIPO 設立及び組織編成と業務実態
1998 年 10 月 15 日の立法院(国会)会議で経済部知的財産局組織条例について採決が行われ、可
決・成立した。この条例の成立により、中央標準局が知的財産局に編制を変更した後、特許権、商
標専用権、著作権、集積回路の回路配置(レイアウト)などの知的財産権及び営業秘密を管理する
専門機関としての法源を賦与された。中央標準局の現有の標準、度量衡業務については、商品検査
局(商品検験局)が引き継ぐことになり、標準検査局として組織を再編する。一方、職務の編成に
より設立された内政部著作権委員会もその業務を知的財産局に引き渡した後で解散する。1999 年 1
月 26 日に経済部商品検査局が標準検査局、そして中央標準局が組織を再編成し名前を知的財産局に
変更して再発足し、これまで分散していた業務と人力の一元化を図り、もって完全な検査基準を設
立し、知的財産管理のメカニズムを構築する。
今まで我が国における知的財産権に関する事務は経済部中央標準局、内政部著作権委員会、経済
部模倣商品取締グループ(経済部査禁倣冒商品小組)及び商業司がそれぞれ司ることになっていた
が、知的財産局が発足した後、中央標準局が取り扱っていた特許、商標審査業務は次第に新しく配
置された専任審査官に引き渡して処理させる。それまで業務の成長に対応するために特別認可を受
けて招聘した特許審査委員及び研究員については、年毎に人数を減らし、2007 年前後には法定編制
による定員の 20%を超えないようにする。2006 年現在では、かつて 700 名解いた外部審査員の人数
が、400 名弱に抑制されている。
このほか、長い間実施されてきた、学者と専門家を特許審査委員に招請して特許出願審査に協力
を求める制度も五年後には全面的に内部審査に回帰させる方針である。
組織改編後の知的財産局の構造の骨子についてはおおむね七つの業務組(グループ)
(総合企画組、
専利(特許)一組、専利二組、専利三組、商標権組、著作権組及び資料サービス組並びに六つの行
政組に分かれる。一方、標準検査局も同じく七つの業務組(第一組標準組、第二組農畜水産及び化
学工業検査行政管理組、第三組機械電機電子検査行政管理組、第四組度量衡組、第五組総合企画組、
第六組検査組、第七組検定検査組)及び六つの行政組に分かれる。
合併後の知的財産局の三大目標として陳明邦局長は「知的財産権国際化、サービス電子化、審査専門
化」を挙げている。そして特許・商標の審査について、審査作業のスピードアップ及びサービスの品
質改良のために、知的財産局は引き続きサービスの自動化を促進し、近いうちに次の電子化サービス
を設立する見通しである。(一)特許・商標手数料の自動化システム、(二)意匠(十四万件)図面
のデータベース、(三)特許書類のtwo dimension bar-code自動入力システム、(四)閲覧、検索サ
ービスに供する特許電子公報の作成、(五)国内外特許データベースの整合、検索サービスシステム
の構築、(六)英文のホームページによる国際化・ネットワーク化の情報サービスの提供。
28
台湾知的財産局組織図
特許出願と文献検索作業の電子化の推進 その他、IPOが2002年より特許の文献データ公開と検索
の環境を電子化することの前提となる特許電子出願の導入に積極的に取り組むようになり、目下韓国
特許庁(KPO)と提携し綿密な計画の下で2004年7月頃をめどに部分的な導入を目指して第一段階の実施
を予定していた。しかし、法制度の改正と技術上の課題などが障壁となり、2005年2月現在、試験運転
がまだ実現されていない。又、特許出願の審査に携わる審査官の人数を来(2004)年中に100名ほど増や
し、230名の定員編成を目指す予算の確保に成功したため、審査技量の更なる向上が期待される。2006
年現在では、特許審査官の人数は160名ほどに増えている。
税関も知的財産権の権利実行における有用な一環となっている。各海港空港の税関は裁判所の仮差
押え決定や確定判決に基づき、権利侵害容疑のある貨物の通関を差し止めることができる。また、登
録に基づき、特定の商標を使用した輸出貨物のサンプリング検査により検出して押収することができ
る 輸出商標登録監視システム も95年より運用されている。2003年4月、税関総局が知的財産権の侵
害容疑のある貨物の取り扱いに関する準則を制定し、権利者とその代理人と協力し、より有効な対応
をとる姿勢を見せた。
2 権利及び権利行使の手段
■権利の取得
出願と登録が必要な知的財産権で、特に特許の世界では、台湾においてはまだPCTを初めとする国際協
力体制に加盟できていないのが現状である。権利化を巡る制度上の融通が他の国々ほど利かないことも
あるので、権利化のステップを法定期限に遅れないように取る心構えが必要であり、面倒ではあるが権利
者方にぜひ留意していただきたい。
WTO加盟国の国民に対し、加盟国に於ける第一次特許出願日より1年間の期限が優先権期限となり、そ
の期間内での台湾特許出願が優先権主張の資格を認められるが、PCTの枠組みほど長い猶予期間は容認さ
れていない。優先権の主張は出願日と同時にする必要があるが、詳細の資料、例えば優先権出願の件名
や出願番号などについては、後で訂正できる。
但し出願の際は英語、日本語又はその他の諸外国語の原文明細書を提出すれば出願日を確保できる。
優先権証明証書と、委任状並びに譲渡証明書は出願日より四ヶ月以内に提出すればよい。発明者の宣誓
書の提出は不要になっている。
2-1 特許権の種類
■発明特許 自然法則を利用した技術的思想の高度の創作に関する特許。(特許法第19条)2004
年7月以降では、定義に
高度
という表現は撤廃される。
29
出願してから18ヶ月経過した後に出願にかかる内容の書誌的事項と要旨は公開され
る。優先権を主張した場合は優先権日より18ヶ月間経過してから公開される。出願日
より3年以内に実体審査請求しなければ出願は取下げとみなされる。(特許法第36条ノ
1から第36条ノ6)平均24ヶ月前後に審決が下付される。権利存続期間は出願日より20
年間有効。特許審決以降三ヶ月間の公告期間を経て異議申し立てがなければ正式に権
利証書が発行される。(特許法第41条、第85条)特許出願をした発明が査定を経て公
告されたときは、暫定的に特許権の効力を生じる。但し、2004年7月以降では査定通知
に基づいて納費が済めば特許登録になると共に特許権が更に早期に付与される新制度
が導入される。それに伴い、公告と異議申し立て制度が廃止される。(特許法第50条)
■実用新案 物品の形状、構造又は装置の創作又は改良に関する特許。(特許法第97条)
公開の対象にならず審査請求も不要である。権利存続期間は出願日より起算して10
年をもって満了する。(特許法第100条)
■意匠
物品の形状、模様もしくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて訴求す
る創作に関するデザイン特許。2004年の法改正以降、従来の美観に関する用件が削除
された効果として、工業設備の備品や機械装置のユニットなども意匠登録の対象とな
り、意匠登録の実用性を相当向上させた。(特許法第109条)
公開の対象にならず審査請求も不要である。提出の図面については特殊な要求があ
る上、クレームと異なる説明の記述も付記する必要がある。
権利存続期間は出願日より起算して12年をもって満了する。(特許法第109条)
2-2 商標権
■独占販売権、独占代理権
■商号権・会社名・氏名独占権
商標出願の世界においても、台湾はマドリード条約に加盟していないので、第三者が不
法に先登録を受けないうちに有効に台湾特許庁に対する出願を提起することが重要であ
る。
商標登録の出願 従来では、一出商標願は一商品や役務区分に限って複数商品や役務
の指定のもとで行われてきた。
2003 年 11 月以降、商標法改正によって多区分出願とその後の分割出願や指定商品や
指定役務の分割使用許諾が許容されてきた。 客観的に商標は顕著性を備えないものでな
ければならないが、原生的な顕著性のほか、副次的な顕著性も認められる。出願人側では
出願される商標の使用の意思を表彰する誓約書があれば出願できる。(商標法第 2 条)商
標は登録の日から登録者が商標専用権を取得する。又商標専用権は労特許法を受けた商標
及びその指定商品又は役務に限る。(商標法第 21 条)しかし権利侵害に関する侵害事実
の場合は、類似商品や役務の概念を用いて判断される。
商標権の存続期間は、登録日から 10 年間とする。(商標法第 24 条)商標は登録後、
商標の図形を任意に変更する場合と、正当な事由なく使用せず、又は続けて3年間使用を
停止した場合、ならびに登記せずに他人に使用を許諾した場合、更に商標が他人の著作権、
意匠権又はその他の権利を侵害した場合、利害関係人の請求により、取り消されることが
ある。(商標法第 31 条)
登録商標の専用権は長年会社名称専用権、商号権また最近ではドメインネーム登録と
使用権などとよく競合してしまうが、必ずしも商標権が優先とはされない。例えば、他人
の著作権,意匠専用権またはその他の権利を侵害したものは,商標登録を受けられない(商
標法第 31 条第 1 項第 4 号)。また,他人の肖像,法人及びその他の団体または全国著名
の商号名称あるいは姓名,芸名,筆名,字号を無断に襲用したものは原則上商標登録を受
けられない。但し、商標の指定商品や役務が消防または法人の営業事項と抵触しない場合
はその限りでない。(商標法第 37 条第 11 号)
一方,他人の登録商標を自分の会社名または称号に故意で襲用することは原則上禁止
される。侵害差止請求を受けてもなお権利侵害の行為を改めないものは刑事罰則を受ける
ことがある。(商標法第 65 条)。そのため、権利者は業務形態に合わせて運用対策を早期
に立てるべきである。
また、商標の著名性を立証できれば、消費大衆に対して対象商標と混同誤認を招致す
る恐れがある場合、その対象商標の商標登録の取り消しの根拠となりうる。(商標法第 37
条第 7 号)改正法案では、混同誤認を要求する度合いを下方修正して、商標の名誉或いは
著名性を傷つける「希釈効果」を排除する画期的な改正も実現されてきた(改正商標法第
30
23 条)。
■新たな法改正の雛議
商標保護に関する適用法の競合問題について、公平交易委員会(日本の公正取引委員会に
相当。通称「公平会」)と知的財産局が協議した結果、それぞれ公平交易法(日本の独占
禁止法と不正競争防止法に相当。通称「公平法」)と商標法の改正案を提出することで合意
したことが明らかにされた。国際的規範に合致するように、商標権侵害に関しては商標法
に立ち返って定めるべきであるとして、公平法における商標に関する保護規定を削除する
ほか、未登録著名商標を新たに商標法が保護する対象に加えいれ、公平法、商標法の競合
による適用法の不明確性を解消する。2006 年 1 月頃、IPOは公平取引委員会と協議を試み
て、法改正の必要性と具体的なアプローチについてヒアリングを開いた。
商標やトレードドレスなどといった識別機能をもつ知的財産への保護においては、公平法
は商標法の不足を補う位置付けにあるとされている。登録済み著名商標が商標法によって
保護されているにもかかわらず、公平法第 20 条は「関連事業者若しくは消費者の間で広
く認識されている表示」について、「商標」等を列挙している。
商標法では、商標を、文字、図形、記号、色彩、音声、立体的形状であるかこれらの結合
からなり、消費者が商品(役務)の出所を示す標識として認識し、他人の商品、役務と識
別できるものと定義している。一方、公平法第 20 条は、関連事業者若しくは消費者によ
って広く認識されている他人の氏名、商号若しくは会社名称、商標、商品の容器、包装の
外観その他他人の商品を示す表示を規定している。
実務上、商品表示等が類似し、消費者に混同誤認を生じさせたことにより、公平法違反と
される行為に対して科される処罰が、商標法のそれよりも厳しい、というのは本末転倒で
あるとかねてから指摘されている。商標権を侵害された場合、商標法より、公平取引法の
ほうが実効的な救済を受けられるという印象を権利者に与えているだけでなく、制裁手段
が不条理になり、本来ならば司法事件として扱われるべき商標権侵害への度を過ぎた行政
権の介入というおかしな現象を生み出している。そのため、商標法と公平取引法の内容を
相互に協調できるようにそれぞれ改正する余地があると見られている。こうした点に基づ
いて、知的財産局と公平取引法が法改正の素案作成に向かって取り組んでいる。
2-3 著作権
著作権法の改正によって、WTO 加盟国の国民の著作物は台湾においても原則上創作主義に基づい
て著作権が認められて来た。著作権者である事実を立証するための書物や記録を厳重に用意して権
利行使に生かすことが重要であるほか、ライセンスを与える場合でも複製許諾の範囲と形態が明確
であることを心がける必要がある。
2-3-1 概説
■日本企業の台湾に於ける著作権保護の正常化
特許と商標権の保護と優先権の主張に関する二国間の協定は、台湾と日本の間には既にそれぞれ
1960 年代と 1990 年代より実現されてきたが、著作権保護の相互協定は台湾の WTO 加盟の正式発効
日の 2002 年になっても実現されていなかった。
台湾はベルヌ条約、ローマ条約にも加盟していないが、台湾のWTO加盟を機に、台湾と日本は多辺
条約の加盟者同士としての協力関係が構築されつつある。
一方、WTO の加盟者に遵守義務が課される TRIPs の内容に合致するために、台湾は著作権法を含
め知的財産法制度と権利行使の効率性全般に関する国際調和を 1990 年代以降の 10 年間以上の複数
の法改正を推進してきた。TRIPs の規定が概ね前期のベルヌ条約とローマ条約の主旨をカバーする
とすれば、台湾の知的財産制度も概ね各条約に対応しているといえよう。
2002 年元日以降、台湾がWTO加盟すると共に、同条約が規定する各分野の知的財産権の保護に関す
る加盟者の国民への国民同等待遇の法律効果が正式に発行した。そのため、懸案となっていた台湾
における日本国民や法人の著作権の保護に関する空白の状態は終焉となり、日本の国民と企業がほ
ぼ日本と世界各地域における同等の著作権の権利の主張と保護を受けることができるようになっ
た。勿論台湾における著作権の内容と権利行使の方式は台湾の法律に従うことになる。
31
2-3-2 著作権の保護対象物について
著作物の分類に関して、著作権法は例示の規定をおいている。主に第 5 条がそれに該当する。
一方、第 5 条を含め著作権法の用語の定義を巡って、本法第 3 条が詳細の規定を設けている。2003
年 6 月発効の改正法では公開放送の定義を更に明確化するほか、公開伝送と「電子的著作権管理情
報」に関して定義の増設の改正がなされた。後の 2004 年の法改正は更にデッドコピー防止措置:著
作権者が他人が無断に著作に侵入すること又はそれを利用することを禁止または制限するために設
ける設備、機材、部品、技術若しくは其の他の科学技術手段に関する規定を増設した。
2004 年改正著作権法新旧条文対照表
改 正 条 文
現 行 条 文
(2004 年 9 月 1 日公布)
(2003 年 7 月 9 日公布)
第3条
この法律における用語の意義は下記の通 第 3 条
この法律における用語の意義は下記の通
りとする。
りとする。
一. 著作物:文学、科学、芸術若しくはその他
一. 著作物:文学、科学、芸術若しくはその他
の学術の範囲に属する創作物をいう。
の学術の範囲に属する創作物をいう。
二. 著作者:著作物を創作する者をいう。
二. 著作者:著作物を創作する者をいう。
三. 著作権:著作物の完成により生じる著作人格 三. 著作権:著作物の完成により生じる著作人格
権及び著作財産権をいう。
権及び著作財産権をいう。
四. 公衆:不特定の者又は特定かつ多数の者をい 四. 公衆:不特定の者又は特定かつ多数の者をい
う。但し家庭及びそれと正常の社交関係にある
う。但し家庭及びそれと正常の社交関係にある
多数の者はこの限りでない。
多数の者はこの限りでない。
五. 複製:印刷、複写、録音、録画、撮影、筆記 五. 複製:印刷、複写、録音、録画、撮影、筆記
その他の方法により直接、間接、永久又は一時
その他の方法により直接、間接、永久又は一時
的に再製することをいい、脚本、音楽の著作物
的に再製することをいい、脚本、音楽の著作物
その他これに類する著作物の実演、放送を録音
その他これに類する著作物の実演、放送を録音
し、又は録画すること、また建築に関する設計
し、又は録画すること、また建築に関する設計
図若しくは模型に従って建築物を完成するこ
図若しくは模型に従って建築物を完成するこ
ともこれに属する。
ともこれに属する。
六. 公開口述:口述又はその他の方法により著作 六. 公開口述:口述又はその他の方法により著作
物の内容を公衆に伝達することをいう。
物の内容を公衆に伝達することをいう。
七. 公開放送:公衆に直接聞かせ又は見せること 七. 公開放送:公衆に直接聞かせ又は見せること
を目的として、有線電気通信、無線通信その他
を目的として、有線電気通信、無線通信その他
の設備の放送システムによる送信を行うこと
の設備の放送システムによる送信を行うこと
により、音声若しくは映像を通じて著作物の内
により、音声若しくは映像を通じて著作物の内
容を公衆に伝達することをいう。原放送者以外
容を公衆に伝達することをいう。原放送者以外
の者によって、有線電気通信、無線通信その他
の者によって、有線電気通信、無線通信その他
の設備の放送システムによる送信を行うこと
の設備の放送システムによる送信を行うこと
により、元放送されていた音声若しくは映像を
により、元放送されていた音声若しくは映像を
公衆に伝達することもこれに属する。
公衆に伝達することもこれに属する。
八. 公開上映:単一又は複数の視聴機器その他映 八. 公開上映:単一又は複数の視聴機器その他映
像を伝送する方法により、同一の時間に著作物
像を伝送する方法により、同一の時間に著作物
の内容を現場若しくは現場以外の一定の場所
の内容を現場若しくは現場以外の一定の場所
にいる公衆に伝達することをいう。
にいる公衆に伝達することをいう。
九. 公開実演(上演・演奏):演技、舞踊、歌唱、 九. 公開実演(上演・演奏):演技、舞踊、歌唱、
楽器の演奏その他の方法により著作物の内容
楽器の演奏その他の方法により著作物の内容
を現場の公衆に伝達することをいう。拡声器そ
を現場の公衆に伝達することをいう。拡声器そ
の他の装置により元放送されていた音声又は
の他の装置により元放送されていた音声又は
映像を公衆に向けて伝達するのもこれに属す
映像を公衆に向けて伝達するのもこれに属す
る。
る。
十. 公開伝送:有線電気通信、無線通信の電気
十. 公開伝送:有線電気通信、無線通信の電気
通信回路その他の通信方法により、音声又は映
通信回路その他の通信方法により、音声又は映像
像を通じて公衆に対して著作物の内容を提供
を通じて公衆に対して著作物の内容を提供し又
し又は伝達することをいい、公衆が各自に選定
は伝達することをいい、公衆が各自に選定する時
する時間に、又は場所において上記の方法によ
間に、又は場所において上記の方法により著作物
り著作物の内容を受信することを含むものと
の内容を受信することを含むものとする。
32
十一. 改作:翻訳、編曲、書き換え、映画の撮影
又はその他の方法により原作品について別途
創作をすることをいう。
十二. 頒布:有償であるか又は無償であるかを問
わず、著作物の原作品若しくは複製物を公衆の
取引又は流通に提供することをいう。
十三. 公開展示:公衆に著作物の内容を展示する
ことをいう。
十四. 発行:権利者が公衆の合理的需要を満足さ
せることのできる複製物を頒布することをい
う。
十五. 公表:権利者が発行、放送、上映、口述、
実演(上演・演奏)、展示その他の方法により
著作物の内容を公衆に提示することをいう。
十六. 原作品:著作物に最初固定されているも
のをいう。
十七. 電子的権利管理情報:著作物の原作品又
はその複製物において、又は著作物の公衆への
伝達がなされるときに表示される著作物、著作
の名称、著作者、著作財産権者又はその利用許
諾を受けた者及び利用期間若しくは条件を特
定するに足る電子的関連情報をいい、数字、符
号を用いてこれらの情報を表示するものもこ
れに属する。
十八. デッドコピー防止措置:著作権者が他人
が無断に著作に侵入すること又はそれを利用す 2
ることを有効に禁止又は制限するために設ける
設備、機材、部品、技術若しくは其の他の科学技
術手段。
2
前項第 8 号にいう現場若しくは現場以外の一定
の場所とは、映画館、倶楽部、ビデオテープ若し
くはレーザーディスクが再生される場所、旅館
(ホテル)の部屋、公衆の使用に供される交通機
関その他不特定の者の出入りに供される場所を
含む。
33
する。
十一. 改作:翻訳、編曲、書き換え、映画の撮影
又はその他の方法により原作品について別途
創作をすることをいう。
十二. 頒布:有償であるか又は無償であるかを問
わず、著作物の原作品若しくは複製物を公衆の
取引又は流通に提供することをいう。
十三. 公開展示:公衆に著作物の内容を展示する
ことをいう。
十四. 発行:権利者が公衆の合理的需要を満足さ
せることのできる複製物を頒布することをい
う。
十五. 公表:権利者が発行、放送、上映、口述、
実演(上演・演奏)、展示その他の方法により
著作物の内容を公衆に提示することをいう。
十六. 原作品:著作物に最初固定されているも
のをいう。
十七. 電子的権利管理情報:著作物の原作品又
はその複製物において、又は著作物の公衆への
伝達がなされるときに表示される著作物、著作
の名称、著作者、著作財産権者又はその利用許
諾を受けた者及び利用期間若しくは条件を特
定するに足る電子的関連情報をいい、数字、符
号を用いてこれらの情報を表示するものもこ
れに属する。
前項第 8 号にいう現場若しくは現場以外の一定
の場所とは、映画館、倶楽部、ビデオテープ若し
くはレーザーディスクが再生される場所、旅館
(ホテル)の部屋、公衆の使用に供される交通機
関その他不特定の者の出入りに供される場所を
含む。
2-3-3
著作権関連実務問題と論点
1
台湾の著作権法整備の概観
台湾は 1990 年代以降著作権権利行使の整備を含めて知的財産権法制度の強化を推進してきたが、現
行の著作権法と旧来の著作権法を重点的に比較する表を参考資料として添付する。
新旧著作権法権利行使関連規定の比較表----従来法律の規定を基準に改正法を評価;
▲は従来法より向上の意 ▼は従来法に劣る意
2003 改正著作権法
従来法 (比較の対象)
特に規定されていない
権利侵害品目の没 ▲
入規定
第 98 条
第 91 条から第 96 条ノ 2 までの規定に定
める犯罪に関し、犯罪の用途に供され、又
は犯罪により得た物は、これを没収するこ
とができる。但し、第 91 条第 3 項及び第
91 条ノ 2 第 3 項に定める犯罪に関し、没収
し得る物は犯人に属するものに限らない。
第 98 条ノ 2
第 91 条第 3 項又は第 91 条ノ 2 第 3 項に
定める犯罪を犯した行為者が逃げ失せ、確
認するすべがない場合、犯罪の用途に供さ
れ、又は犯罪により得た物について、司法
警察機関は直接これを官没することがで
きる。
2 前項官没に係る物について、官没され
た金員を国庫に納めるほかは、これを焼却
する。その焼却又は官没金の処理手続につ
いては、社会秩序保護法の関連規定を準用
してこれを扱う。
光ディスク海賊品 ▲
特に規定されていない
関連罰則;特別加 *第 91 条 営利を目的として複製の方法を
重と公訴罪化
もって他人の著作財産権を侵害した者は、
5 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾
ドル 20 万元以上 200 万元以下の罰金を併
科する。
2 非営利目的で複製の方法により他人の
著作財産権を侵害し、その複製の部数が五
点を超え、又は摘発された時点で合法的複
製物の時価にしてその侵害総額が新台湾
ドル 3 万元を超えたときは、3 年以下の懲
役、拘留に処し、又は新台湾ドル 75 万元
以下の罰金を科し又はこれを併科する。
3 光ディスクに複製する方法により、第 1
項の罪を犯したものは、5 年以下の懲
役、拘留に処し、又は新台湾ドル 50 万
元以上 500 万元以下の罰金を併科する。
*第 91 条ノ 2 営利を目的として所有権を
移転する方法により著作物の原作品又は
その複製物を頒布し他人の著作財産権を
侵害したものは、3 年以下の懲役、拘留に
処し、又は新台湾ドル 75 万元以下の罰金
を科し又はこれを併科する。
2 非営利目的で所有権を移転する方法に
より著作物の原作品又はその複製物を
頒布し、又は頒布を意図して公開に陳列
し若しくは所持し、他人の著作財産権を
侵害した場合、頒布の部数が五点を超
34
え、又は摘発された時点で合法的複製物
の時価にしてその侵害総額が新台湾ド
ル 3 万元を超えるときは、2 年以下の懲
役、拘留に処し、又は新台湾ドル 50 万
元以下の罰金を科し又はこれを併科す
る。
3 第 1 項の罪を犯し、その複製物が光デ
ィスクであるときは、3 年以下の懲役、拘
留に処し、又は新台湾ドル 150 万元以下の
罰金を科する。
4 前項の罪を犯した者がその物品の出所
を供述し、これにより(捜査機関による)
検挙が成功したときは、その刑を軽減する
ことができる。
罰金の上限は最高 30 万元までだった。
権利侵害に関する ▲
罰金の金額の引き 罰金を全面的に引き上げる;営利目的の光
ディスク媒体の海賊品複製の罪に関して
上げ
は、罰金金額は最低 50 万元から最高 500
万元までに向上。他の形態の侵害に関する
罰金も大幅に引き上げられた。
公訴罪罪名拡大
税関措置
執行猶予規定
従来は常習犯を中心にのみ公訴罪化
▲
光ディスク媒体海賊著作物複製等の侵害
に対する公訴罪化
=従来の規定と変更なし(第 90 の 1 条) 従来から同制度が既に導入された。
=
従来では懲役刑の実刑の上限のほか、6
ヶ月ほどの懲役刑下限も設けてあったが、
今回の法改正では常習犯を除き、それを撤
廃することになった。一方、執行猶予の判
決に関しては、もとより二年以下の初犯或
いは前回の懲役刑を服してから 5 年以内に
再度有期懲役経緯条ノ刑の宣告を受けて
いない被告に対する実刑判決に限定され
ているので、今回の改正で執行猶予の確率
が高まるようになるとは思えない。
著作権権利侵害に ▼
従来では実刑の上限のほか、下限も設け
関する刑事懲役刑 今回の法改正では常習犯を除き、それを撤 てあった。
最低刑度
廃することになった。そのため、初犯の場
合、従来より軽い、例えば 3 ヶ月ないし 6
ヶ月ほどの実刑判決の言い渡しの多発が
予想される。刑法第 41 条の「懲役と拘留
刑を罰金に変更する規定」によって、6 ヶ
月以下の実刑判決を受ける場合、最高法定
刑が 5 年以下の罪に限って、罰金に換算し
て刑を処することが出来る。その点、従来
より更に執行猶予か罰金換算の判決がよ
く見られるだろう。
一方常習犯に対しては 1 年以上 7 年以下の
法定懲役期間が設けられているので、悪質
な犯罪に対する威嚇効果はなお強いと思
われる。
非営利侵害罰則
▼
従来では刑事罰則が特に営利目的の無断
従来と異なって、原則上少量の非営利目的 複製に限定していなかった。
35
の無断複製と頒布などの利用形態は刑事 第 91 条 無断で複製の方法を以て他人
責任を負わないようになる。一方民事上の の著作財産権を侵害した者は、6 ヶ月以
権利侵害責任は免除されない。しかし消費 上 3 年以下の懲役に処し、並びに新台湾
者による非営利目的の少量の無断複製な ドル 20 万元以下の罰金を併科すること
どの無罪化の改正は、当該行為がいわゆる ができる。
「合理的使用」に該当するとの錯覚を与え 2 販売又は貸与を意図して無断で複製
る懸念も高い。消費者が複製又は頒布或い の方法を以て他人の著作財産権を侵害し
は他の侵害行為にかかる著作物の部数が た者は、6 ヶ月以上 5 年以下の懲役に処
五点を超え、又は摘発された時点で合法的 し、並びに新台湾ドル 30 万元以下の罰金
複製物の時価にしてその侵害総額が新台 を併科することができる。
湾ドル 5 万元又は 3 万元を超えなければ、
刑事責任のほか民事責任も不問となるこ
とを誤解しないように、指導する必要があ
る。
刑法の罰金転換基 ▼
準
従来では実刑の上限のほか、下限も設け
てあったが、今回の法改正では常習犯を除
き、それを撤廃することになった。そのた
め、初犯の場合、従来より軽い、例えば 3
ヶ月ないし 6 ヶ月ほどの実刑判決の言い渡
しの多発が予想される。刑法第 41 条の「懲
役と拘留刑を罰金に変更する規定」によっ
て、6 ヶ月以下の実刑判決を受ける場合、
最高法定刑が 5 年以下の罪に限って、罰金
に換算して刑に処することが出来る。その
点、従来より更に執行猶予か罰金換算の判
決がよく見られるだろう。
一方常習犯に対しては 1 年以上 7 年以下
の法定懲役期間が設けられているので、悪
質の犯罪に対する威嚇効果はなお強いと
思われる。
一方、懲役刑においては、一般の著作権
侵害では複製とその他の犯行形態と営利
目的か個人非営利の犯行なのか、また光デ
ィスク媒体の著作物を扱うかによって 5 年
以下、3 年以下、ないしは 2 年以下の法定
刑限度となっているが、営利目的の業務常
習犯の場合は 1 年から 7 年以下となる。同
時に、刑法第 41 条の改正によって、従来の
罰金に転換できる最高法定刑限度が元の 3
年から現行法の 5 年に引き上げられたこと
によって、従来罰金転換の対象でなかった
罪でも罰金に転換するようになるので、実
質上罰金転換の判決となるケースが増え
る予想があり、実質上の刑罰の軽減効果に
つながるだろう。
2 ナイトマーケットでの海賊版販売が公訴罪に該当するかどうか不明な点がある問題
----海賊版著作物商品の販売を巡る責任は、販売行為が発生する時間と販売行為の態様と販売対象の種
類等三通りの要素によって決まる。
(1)先行無断複製行為の継続実施による海賊著作物
2003 年の著作権法改正法によって、2002 年元日以前の著作物の無断複製行為によって製造された(海
賊)著作物は、2004 年 6 月まで販売が許される。この種類の早期無断複製行為の継続実施による無断
複製品の取り扱いは、原則上刑事罰則に抵触することはない。但し 2003 年 6 月以降からはその期間
における販売実績に応じて著作権者に対して合理的な使用料の支払いの義務が発生する。(著作権法
36
第 106 条ノ 3)
(2)光ディスクの著作物の営利目的による無断複製や頒布による侵害行為も例外的に公訴罪になる複製
権の侵害と頒布件の侵害はそれぞれ基本的に著作権の侵害行為に該当するが、中でも光ディスクを媒体
として発行される著作物の侵害物権を複製すること又は侵害となる無断複製品を頒布する場合、デジタ
ル複製の容易性とそれに関係する利益による悪質性の高さに鑑みて、特別に公訴罪として規定されてい
る。
*第 91 条 複製権の侵害
営利を目的として複製の方法をもって他人の著作財産権を侵害した者は、5 年以下の懲役、拘留に処し、
又は新台湾ドル 20 万元以上 200 万元以下の罰金を併科する。
2 非営利目的で複製により他人の著作財産権を侵害し、その複製の部数が五点を超え、又は摘発された
時点で合法的複製物の時価にしてその侵害総額が新台湾ドル 3 万元を超えたときは、3 年以下の懲役、
拘留に処し、又は新台湾ドル 75 万元以下の罰金を科し又はこれを併科する。
3 光ディスクに複製する方法により、第 1 項の罪を犯したものは、5 年以下の懲役、拘留に処し、又は
新台湾ドル 50 万元以上 500 万元以下の罰金を併科する。
■
例外的な公訴罪
*第 91 条ノ 頒布権の侵害
1 営利を目的として所有権を移転する方法により著作物の原作品又はその複製物を頒布し他人の著
作財産権を侵害したものは、3 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 75 万元以下の罰金を科し又
はこれを併科する。
2 非営利目的で所有権を移転する方法により著作物の原作品又はその複製物を頒布し、又は頒布を意
図して公開に陳列し若しくは所持し、他人の著作財産権を侵害した場合、頒布の部数が五点を超え、
又は摘発された時点で合法的複製物の時価にしてその侵害総額が新台湾ドル 3 万元を超えるときは、2
年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 50 万元以下の罰金を科し又はこれを併科する。
3 第 1 項の罪を犯し、その複製物が光ディスクであるときは、3 年以下の懲役、拘留に処し、又は
新台湾ドル 150 万元以下の罰金を科する。
4 前項の罪を犯した者がその物品の出所を供述し、これにより(捜査機関による)検挙が成功したと
きは、その刑を軽減することができる。
■ 例外的な公訴罪
(3)著作権侵害の常習犯の場合、例外的に公訴罪になる
著作権侵害を構成する物品を複製することやその不法複製物を対象とする無断の頒布、又は公開の口
述、放映、上映、実演、伝送、展示或いは改作編集若しくは貸借等の方法による侵害行為、又は第 70
条「音楽著作物の強制利用許諾を得たものに対する複製物の台湾域外輸出の制限」を違反する罪と第 87
条「著作権侵害と見なされる行為態様」を構成するものに課する罪を業とする常習犯に対しては、例外的
に公訴罪とされている。
第 93 条
第 70 条「音楽著作物の強制利用許諾を得たものに対する複製物の台湾域外輸出の制限」を違反
する罪と第 87 条「著作権侵害と見なされる行為態様」を構成するものに課する罪
営利を目的として次に掲げる場合のいずれかに該当するものは、2 年以下の懲役、拘留に処し、又は
新台湾ドル 50 万元以下の罰金を併科する。
一. 第 70 条の規定に違反したとき。
二. 第 87 条第 2 号、第 3 号、第 5 号又は第 6 号の方法により他人の著作財産権を侵害したとき。
2 非営利目的で前項の罪を犯し、その複製物が五点を超え、又は権利者が受けた損害が新台湾ドル 5 万
元を超えるときは、1 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 25 万元以下の罰金を科し又はこれを
併科する。
*第 94 条 無断複製、頒布、公開口述、公開放送、公開上映、公開実演、公開伝送、公開展示、改作、
編集又は貸与等の方法による侵害の常習犯の罰則
第 91 条第 1 項、第 2 項、第 91 条ノ 1、第 92 条又は第 93 条に定める犯罪を業とする者は、1 年以上 7
年以下の懲役に処し、並びに新台湾ドル 30 万元以上 300 万元以下の罰金を併科することができる。
2 第 91 条第 3 項に定める犯罪を業とする者は、1 年以上 7 年以下の懲役に処し、並びに新台湾ドル
80 万元以上 800 万元以下の罰金を併科することができる。
■例外公訴罪
37
3
求刑最低制限の取消し問題
実刑の下限規定の撤廃
著作権侵害の刑事責任に関し、現行法上の自由刑の度合いが適切ではあるが、経済犯罪につき金銭
罰を制裁の手段とすることも考えられるので、侵害行為をより効果的に抑止するため、罰金刑を高め
ることとする。海賊版による複製権と頒布権への侵害が著作財産権者に与える損害が最も重大で、国
家や産業の競争力を弱体化させるだけでなく、国民のモラルや風紀を乱す悪質な犯罪行為でもある。
したがって、故意の犯行又は情状重大(光ディスク媒体の無断複製物の製造販売等)の被告に対して、
罰金刑を加重するとともにこうした侵害行為を非親告罪とする。しかし、従来では実刑の上限のほか、
下限も設けていたが、今回の法改正では常習犯を除き、それを撤廃することになった。そのため、初
犯の場合、従来より軽い、例えば 3 ヶ月ないし 6 ヶ月ほどの実刑判決の言い渡しの多発が予想される。
一方常習犯に対しては 1 年以上 7 年以下の法定懲役期間が設けられているので、悪質の犯罪に対する
威嚇効果はなお強いと思われる。
一方、懲役刑においては、一般の著作権侵害では複製とその他の犯行形態と営利目的か個人非営利
の犯行なのか、又光ディスク媒体の著作物を扱うかによって 5 年以下、3 年以下、ないし 2 年以下の
法定刑限度となっているが、営利目的の業務常習犯の場合は 1 年から 7 年以下となる。同時に、刑法
の改正によって、従来の罰金に転換できる最高法定刑限度が元の 5 年間から現行法の 3 年間に引き下げ
られたことによって、罰金に転換するケースが増える予想があり、実質上の刑罰の軽減効果につなが
るだろう。(改正条文第 88 条、第 91 条から第 95 条まで及び第 100 条)
4
専属ライセンシーの告訴権の明文合法化
著作財産権の許諾に関し、現行法(2001 年 11 月 12 日公布)第 37 条第 2 項には「前項の許諾は公
証人が公証して証書を作成した場合、著作財産権者が後にその著作財産権を譲渡し又は再許諾したこ
とにより影響を受けない。」とあって、ベルヌ条約第 5 条第 2 項「権利の享有及び行使には、如何な
る方式の履行をも要しない」に反するのではないかと疑義を生ずるので、この条文を削除すべきであ
る。また、現行規定により、専属利用許諾における利用権者が許諾を受けた範囲内において、著作財
産権者として権利を行使することができるとはいえ、自己の名義をもって訴訟上の行為をすることが
できるかどうかについては明確にされていないため、あわせて利用権者が自己の名義をもって訴訟上
の行為をすることができるように明確に定める。
(改正条文第 37 条)
5
おとり捜査による容疑者逮捕の問題
マイクロソフト社から派遣のスタッフが顧客になりすまして、経済状況が悪いとか、学生だからお
金がないと偽って他人の同情心に訴え、同社のソフトウェアを無料でコンピュータにインストールす
るよう執拗に要請し、相手が承諾してくれれば、早速警察に通報してその場で犯罪の証拠をキャッチ
するのが、MS社の海賊版ソフトに関する証拠収集の手法である。あるコンピュータ販売業者は、MS社
が仕掛けた罠とも知らずにまんまとはめられ、MS社の通報を受けてやってきた警察の捜査でインスト
ールに使う海賊版ソフトが押収され、さらにMS社から台湾ドル1000万元を超える損害賠償を求められ
たことが最近明らかになった。
捜査機関のものがおとりを使いまた自らおとりとなって、売春や賭博、覚せい剤等麻薬取引等犯罪
に関わる者を検挙するときによく利用される捜査方法である「おとり捜査」は、もともと犯罪を実行
する意図のないものが、おとりとなった捜査機関の者の明示或いは暗示にそそのかされて犯罪に及ん
だということから問題となる。おとり捜査に引っかかった一度限りの犯行の場合は特にそうである。
■証拠の取得についての合法性要求−−囮捜査の合法性
台湾では米国のように証拠の合法性についての要求は厳格ではない。従来、後日の訴訟における証
拠の収拾と確保のため、権利を侵害する完成品や部品を製造販売する人に興味を示して、問題の製品
を購入しようとする買い手と偽って、模倣品不法製造者を誘い寄せてオファー書類や領収書を取得し、
アルバイト工員として模造品製造の工場に潜り込んで、半月間密かに証拠収集に励んでからさっさと
辞めるような所謂おとり捜査は、興信所の証拠集めの常套手段として認識され、今までは裁判所でも
別に問題とされていない。但し営業秘密法及び電脳処理個人資料保護法など企業や個人の情報を保障
する法律の成立によって、従来のような放任主義も多少修正させられるようになるであろう。また、
弁護士と調査会社の調査人員など法律によって司法警察の身分を持たない者による強制捜査と押収が
不法と主張され、証拠物と証言を否認する被告も増えているので、証拠収集における合法性への配慮
が重要である。
38
又、無断で録音したテープは証拠としての合法性はあるが、合成処理などの抗弁が信憑性を弱める
場合が多い。調査会社よりの情報の持ち込み;契約していない場合でも、著名企業の場合には調査会
社からアプローチがある。
尚、2004年最近の実例で見られたおとり捜査の合法性の判断基準も若干参考価値がある。海賊版ソ
フトウェアの製品を販売するものは、大手を振って海賊製品を掲示などしないで内緒で販売するのが
普通である。そのため、販売行為を立証するための証拠は入手しにくい。販売者の口頭のオッファーを
証拠にするために警察官が顧客を扮してそれを誘致する手法を使う場合もある。しかし、顧客と偽った
警部が自発的に海賊版の商品を尋ねて開示してもらう要請をする場合、たとえ販売側がそれに応じて
海賊商品を提示して見せて取引を成立させたとしても、その取引は証拠を収集するための警察官の 誘
致 によって誘発或いは教唆されたものとして、その誘致自体の合法性の問題を取り上げて取引によっ
て入手した証拠の合法性を否定する裁判所の見解がある。例えば「正規品が高いから海賊版はないの
か?」とたずねるのは勿論教唆になる。「正規品が高いから他に安いものはないのか?」と言っても海賊
版品を購買する意欲が明らかだから犯罪教唆を免れない。その手のおとり捜査は合法性の問題が濃厚
で起訴や有罪証拠に使われにくい。
犯罪の教唆と一線を画して著作物の海賊版商品を販売する行為の証拠集めの手法として、偽りの顧
客は積極的かつ直接に海賊商品の提示を要請するのを避けて、間接的に海賊品を提示するような意欲
を引き出すまでの言動しか取らないのがポイント。例えば、「予算が限られているので、もうちょっと
負けてほしい」とか、「この値段ではどうにもならないから、他の商品はないのか?」や「負けても
らえなければ買うのを諦めるしかない」と海賊品の購買の示唆を避けて、値切り一点ばりの口説きに
徹するほうが、陥害教唆の疑いなしに海賊品を販売する証拠を集められる。
6 機能する改正著作権法の著作権保護効果----MP3 音楽ファイル P2P 形式のネット上の交換を巡る権利
侵害訴訟の実態とフォロー
台湾著作権 2004 年 9 月頃の法改正をきっかけに、世を風靡するMP3 のネット上のP2P方式の交換が
音楽著作の権利者の抗議を受けて、交渉が物別れの結果、権利者による刑事告訴と民事訴訟がそれぞ
れ提起されて、一連の判決の結果、目下の改正著作権法が前より改正前より有効に著作物の権利者を
保障できるものであることが明らかになってきた。
■台北地検が音楽ファイル交換サイト KURO を起訴
IFPI の声明発表に KURO が猛反発
50 万人の加入会員を誇る P2P 音楽配信サービスサイト、「KURO(飛行網)」が著作権法違反として台
北地検に起訴されたことについて、IFPI(國際レコード産業連盟)は昨日、8 項目にわたる声明を発
表し、権利侵害行為の即時停止を求めるとともに、P2P サイトの利用を止めるようユーザーに呼び掛
けた。声明以外に KURO の投資者及び使用料徴収代行業者に関する情報も公表された。これに猛反発す
る KURO は IFPI の動きを商業活動を抑圧したものだと批判する一方、ネット上に P2P の是非を問う論
戦が広がり、住民投票を通じて消費者の声を伝えようと行動を促す意見もチャット仲間の間から出て
いる。
KURO が発表した声明によれば、
「多くの消費者は KURO が提供するソフトを利用して家庭用か個人的
に使用する目的で MP3 ファイルをサーチしたり交換したりする。これらの行為は著作権法に定める「合
理的利用」の範囲に含まれており、適法性に問題はないはずである。」という。IFPI が記者会見で「飛
行網」の投資者等関連情報を公表したことについて、法的手段を借りて商業活動を抑圧しようとする
ものだと IFPI のやり方に疑問を投げた。
■P2Pファイル交換、刑法に抵触せず サイト経営者に無罪判決
IFPI失望と控訴の意向表明
(台北士林地方裁判所2005.06.30刑事判決(92年度訴字第728号)、台北士林地方裁判所2005.06.30民
事判決(93重附民2))
国際レコード産業連盟(IFPI)が台湾の音楽ファイル交換サイト「ezPeer」を著作権法違反で刑事
告訴した事件について、台北士林地裁は30日、著作権法で禁止している「無断で他人の著作物を複製
し又は公開伝達する」事実はなかったとして、同サイト責任者に無罪判決を言い渡した。裁判長は、
本審理において裁判所が審理すべきことは、音楽ファイル交換のためにプラットフォームを提供して
いることが果して刑法上の犯罪を構成するかどうかにあり、民事上の権利侵害についてはここで問う
39
ことではない、と強調している。
ezPeerはインターネットでP2Pソフトによるファイル交換サービスを提供している。同サイトを利用
するユーザーたちはサーバーを経ることなく、互いにパソコンのシェアフォルダに保存してあるファ
イルをダウンロードしあうことができる。
この判決について、知的財産局は次のように述べた。
「これはあくまでezPeerとその責任者がソフト
を提供しサイトを経営していることについての判決であり、他人が著作権を所有する音楽、録音、映画、
言語等著作物のP2Pソフトによる複製或いは公開伝達が権利侵害に当たらないというわけではない。判
決でも、P2Pソフトを利用して他人の著作物を複製したり公開伝達したりする行為は、権利侵害を構成
する可能性を明確に示している。
」
IFPIをはじめとする三つの音楽著作物権利者団体はこの判決に納得がいかず、音楽の創作に携わっ
ている人々のために公平を求め真理を追究すべく、控訴の考えを明らかにするほか、P2Pのユーザーに
も宣戦布告を行った。
■音楽ファイルの違法ダウンロード P2Pサイト管理者とユーザーに有罪判決
(台北地方裁判所刑事判決92年訴字第2146号)
著作物の利用について事前に著作権者から許諾を得ないで、P2Pソフトを公衆が音楽ファイル等の交
換に利用できるような状態にする一部のウェブサイトへの法的責任の追及が相次いでいる。
台湾国内最大級のP2Pサイト、
「KURO」の経営者ら三人とそのサービスを利用していた会員が著作権
法違反で起訴された事件において、台北地裁刑事法廷は9月9日、有罪判決を言い渡した。
KUROは、自身が提供するP2Pソフトとインターネットサービスを利用すれば違法ダウンロードが行え
ることを明らかに知っていながら、金もうけのために会員数の拡大を狙って広告に「KUROのソフトと
サービスを利用すれば数十万曲の新曲がダウンロードできる」と宣伝し、KUROへの加入を勧誘した。
その広告内容から、会員(被告)による著作権侵害の結果をKUROが主観的に予見していたはずであっ
て、かつ本意に反するものではないということが分かる。したがって、KUROの責任者ら三人と被告会
員には犯罪の意思(犯意)連絡があり、ともに犯罪行為を分担した共同正犯である。
被告会員はKUROのソフトを利用してインターネットから970曲の楽曲をダウンロードし、他人が有す
る著作財産権(複製権)を侵害したとされ、懲役4ヶ月、執行猶予3年の判決が言い渡された。
他方、KUROと同様にP2Pソフトをユーザーに提供して会員からの入会費と固定制の月額利用料金を主
な収入源とするウェブサイトで、レコード会社から著作権法違反で提訴された「ezPeer」は今年6月30
日、士林地裁から無罪判決を受けている。「ezPeer」の責任者を無罪とした理由について、判決では、
現行法にはオンラインファイル交換のプラットフォーム提供を禁止し若しくは制限する規定はなく、
またユーザーによって伝送されたりするファイルが違法なものかどうかをフィルタリングすることを
業者に義務付けていないなどを挙げている。
同じP2Pサイトでありながら、それぞれ無罪と有罪、何が裁判の結果を分けたのか、KURO とezPeer
の弁護を担当する弁護士は、経営モデルの相違や裁判官の自由心証を理由に挙げた。
2-4. 公平取引法の関連権利
■トレードドレス商品化権
■ドメインネーム独占登録使用権
■商号権・会社名・氏名独占権
■著名商標の希薄化防止の差し止め請求権
上記の権利は、公平取引法で明文化されているとは限らないが、通常同法に解決対策が求め
られる。特にドメインネームの登録権、著名商標に対する第三者の無断使用から起こりうる商
標の希薄化を懸念する事案において、他の法律では敬遠されがちな難問はよく公平取引法に解
答を求める。無断の並行輸入が商標権の侵害になるかについての認定も単純な商標使用の領域
を超え、平行輸入者の商品における付記と標識の状態と、それらの状態が消費者間の混同誤認
を招致する確率などの認定は、やはり公平取引法の縄張りに入る。
勿論、同法の条文でもそれらの状況が明文化されているわけではなく、当事者の主張と説得
力によって実務見解が形成されうる世界となり、権利者と代理弁護士の決心と腕が試される可
能性とリスクが併存する領域である。
それぞれの事案の内容によって、公平取引法や商標法等の規定によって当事者の独占権利の
保護を図ることができる。1999 年 2 月同法は改正されたが、罰則に関する改正を注目すべきで
ある。改正法第 35 条によれば、第 20 条第 1 項の規定に違反したときは、中央主務官庁(公平
取引委員会)が第 41 条の規定により、期限を定めて其の行為の停止、改善又は必要な是正措
置を講ぜず、改善をせず、又は必要な是正措置を講ぜず、又は停止した後に再び同一もしくは類
似の違反行為をしたときは、行為者に対して 3 年以下の懲役、拘留に処し、又は NT$1億円以下
の罰金を科し、又はこれを併科する。
40
罰金の上限は旧法よりずいぶん引き上げられたものの、被告側に相当な猶予の機会を与える
ことによって、もとより 周知 をめぐる定義の法的解釈上の厳格さによって実現しにくい当
事者の不正競争禁止請求権の実現が、さらに不透明色を帯びたと懸念される。
特許、商標等知的財産専用権と不正競争禁止法律の運用 特許と商標の正当な権利行使の場
合は、原則上公平取引法に抵触しないが、近年では米国のアンチトラスト法の提訴事件の多発
の影響を受けるか、特許や商標の権利主体に対する不正競争禁止条文に違反する旨の告発が急
増。IP諸権利の侵害を巡る警告状の送付に関するガイドラインが99年ごろ制定されて以来、物
権効果を持つはずのIP諸権利の絶対的な対人と対物の効力がある程度制限を受けるようになり、
新たな競争原理と法体制の形成の芽生えが見受けられている。
また、真正品の並行輸入が著作権物を除いて、特許と商標に関連するものに対しては原則上
容認されるとの法律条文のあり方によって、公平取引法の不正競争禁止関連規定に基づいて対
応する余地が増え、公平取引法を軸とする法的論戦の分野が広がろうとしている。
知的財産権保護に関連する特許、商標と特許の侵害容疑者に対する警告状の送付を巡るガイ
ドラインが実務運用の実態に合わせて改定された。又、公平取引法第20条と第24条の運用に関
するガイドラインも頒布された。
著作権、商標権及び特許権の侵害に関わる
警告状の送付に関連する事件の処理原則
20050916 改正
1
目的
事業者の公平競争を確保し、取引の秩序を維持し、また事業者が著作権、商標権或いは許
権を濫用し、不当に競争相手が著作権、商標権或いは特許権等を侵害する旨の啓告上を外部
へ送付する紛争事件を有効に処理するために、本処理原則を制定する。
2
用語定義
本処理原則が称する警告状の送付は、事業者が下記の方式を用いて、それ自身或いは他の
事業の取引相手もしくは潜在的な取引相手に対して、特定の競争相手を指名して同人が前掲
事業者自身が所有する著作権、商標権或いは特許権を侵害する旨の消息を頒布する行為を指
す。
1,警告状;
2,敬告状;
3,弁護士状;
4,公開状;
5,新聞広告;
6,其の他の事業自身或いは他の事業の取引相手もしくは潜在的な取引相手に対して知らせ
得る方式。
3
著作権、商標権或いは特許権を行使する正当行為の例ーその 1
事業者が下記の手続きの何れを実践し権利侵害を確認した後に、警告状を送付する場合、
其の行為は著作権法、商標法或いは特許法による権利行使の正当な行為とされる。
1、裁判所の一審判決を経て著作権、商標権或いは特許権の侵害を確認できるもの。
2、著作権審議会及び調解委員会を経て著作権侵害の事実が確認されたもの。
3、著作権、商標権或いは特許権を侵害し得る容疑対象物を、鑑定専門機構に送付し、鑑定
報告書を作成した上で、かつ警告状の送付に先だって侵害容疑の製造者、輸入者或いは代理商
社に対して通知をし、侵害の排除を要請したもの。
事業が前項第 2 号の後半に掲げられる侵害排除の通知を実践しないときでも、事前に権利
救済手続を取った、或いは合理的な可能な範囲内の注意義務を尽くした場合、もしくは前項
の通知が客観上不可能な場合、又は具体的な根拠に基づいて告知を受けるべき者は既に権利
侵害紛争の事情を知得している場合、権利行使の正当な行為とみなすことが出来る。
4
著作権、商標権或いは特許権を行使する正当行為の例ーその 2
事業者が下記の手続きのいずれかを実践したのち警告状を送付する場合、かつ第 6 点から第
9 点の違法事情が存在しない場合、その行為は著作権法、商標法或いは特許法による権利行使
の正当な行為とされる。
41
1、警告状の送付に先だって侵害容疑の製造者、輸入者或いは代理商社に対して通知をし、侵
害の排除を要請したもの。
2、警告状において、受信者が係争権利の侵害につながる可能性を知得できるように、其の
著作権、商標権或いは特許権の明確な内容、権利範囲及び侵害される具体的な事実につき明瞭
な説明を付したもの。(例えば係争権利又は技術の成立時、成立地、如何に先方側の製造、
使用、販売又は輸入行為によって侵害されていること)
事業が前項第 2 号の後半に掲げられる侵害排除の通知を実践しないときでも、合理的に可
能な範囲内の注意義務を尽くした場合、もしくは前項の通知が客観上不可能な場合、権利行
使の正当な行為とみなすことが出来る。
5
第 3 点と第 4 点を実践せずに警告状を送付する状況に関する処理
事業者が第 3 点或いは第 4 点の手続きを実践せずに、直に警告状を送付した者に対しては、
其の行為が取引の秩序に影響を与えるに足るか、明らかに公平を欠く場合かを究明した上で、
公平取引法第 24 条の規定に違反するとされる。本委員会が処分をする前に、事業者が裁判所
の第一審判決を提示し、(警告状の主張の正当性を)証明するものについては、其の限りでな
い。
6
公平取引法第 19 条が規定した違法構成要件
事業者が第 4 点の規定に従った場合でも、送付された警告状が特定の競争相手に損害を与
えることを目的とし、競争相手の取引相手に同競争相手と特定の交易を拒否するよう勧誘す
る内容を含む時、其れが競争を制限又は公平競争を妨害する恐れを有する場合、公平取引法
第 19 条第 1 号の規定に違反するとされる。
前項の行為に従事する事業が、競争者の取引相手に自分と取引を行うように勧誘し、其れ
が競争を制限する又は公平競争を妨害する恐れを有する場合、公平取引法第 19 条第 3 号の規
定に違反するとされる。
7
公平取引法第 21 条が規定した違法構成要件
事業が第 4 点の規定に従った場合でも、送付された警告状が警告状の名義人自信の商品又
は服務に関して、虚偽不実或いは他人を誤解させる陳述を含む場合、公平取引法第 21 条の規
定に違反するとされる。
8
公平取引法第 22 条が規定した違法構成要件
事業者が第 4 点の規定に従った場合でも、送付された警告状が競争の損害を目的とし、競
争相手の営業信用と名誉を毀損するに足りる虚偽事情の陳述がある場合、公平取引法第 22 条
の規定に違反するとされる。
9
公平取引法第 24 条が規定した違法構成要件
事業者が第 4 点の規定に従った場合でも、送付された警告状が下記のいずれの状況に該当
し、それが交易の秩序に影響を与える場合は、公平取引法第 24 条に違反するとされる:
1、警告状の名義人が合法の著作権、商標権或いは特許権を持っていない場合;
2、著作権、商標権或いは特許権の権利範囲を誇示又は拡張する場合;
3、虚偽の陳述を以って、特定の競争相手又は漠然と示唆される市場における他の競争者が警
告状の送付主の著作権、商標権或いは特許権を侵害することを暗示すること;
4、その他第三者を欺瞞あるいは著しく公平を失する陳述の内容を含む場合。
10
不当に異業種事業に対して権利侵害の主張を公表する事案に対する本規定の適用
事業者が異業種の事業者に対して、自身の著作権、商標権或いは特許権が侵害される旨の警
告状を不当に公表し、不公平競争の事情を醸成する場合においても、本規定の適用を受けら
れる。
42
行政院公平交易委員会の公平交易法第20条案件に関する処理原則
83.7.6.第 143 回委員会議通過
87.7.8.第 348 回委員会議修正第 10 点通過
88.3.17.第 384 回委員会議修正第 2,3,4,5,7
,10(1)(2)(3)(4)(5),11(1),12(1),13,14,15,17,19 点通過
88.3.20(88)公参字第 00782 号書簡
94.1.13.第 688 回委員会議通過
94.2.24.公法字第 0940001293 号令公布
一、 目的
行政院公平交易委員会(以下、本会)は、事業者間の公平な競争を確保し、消費者の権
益を保障し、公平交易法(以下、本法)第20条に定める模倣事件を効果的に処理する
ため、特に本処理原則を制定する。
二、 名詞釈義一
本法第 20 条においていう関係事業者又は消費者とは、当該商品又は役務に関して販売・購入等
取引関係が発生する可能性のある者をいう。
三、 名詞釈義二
本法第 20 条においていう関係事業者又は消費者の間で広く認識されているとは、相当な知名度
を持っていて、関係事業者又は消費者の多くに周知されていることをいう。
四、 名詞釈義三
本法第 20 条においていう表示とは、識別性又はセカンダリー・ミーニングを有する特徴であっ
て、商品又は役務の出所を示し、関係事業者又は消費者がそれによって異なる商品又は役務である
ことを区別できるものをいう。
前項の識別性とは、ある特徴が特別に顕著で、関係事業者又は消費者がそれを見れば、その
特徴が表す商品又は役務は特定の事業者によって製造(生産)又は提供されるものであると認
識できるものをいう。
第 1 項のセカンダリー・ミーニングとは、本来、識別性を有しない特徴が長期的に継続して使用
されていたことにより、関係事業者又は消費者の間で知られるようになり、彼らはその特徴から商
品又は役務の出所を連想することができ、その特徴による商品又は役務の出所を区別することので
きるもう一つの意味合いのことをいう。
五、 名詞釈義四
本法第 20 条にいう同一又は類似の使用について、同一とは文字、図形、記号、商品の容器、包
装、形状若しくはその組み合わせの外観、排列、カラー設定が完全に同一であることをいい、類似
とは、主要部分を襲用して関係事業者又は消費者が購入するときに普通の注意を払っても混同誤認
の虞のあるものをいう。
六、 名詞釈義五
本法第 20 条においていう混同誤認とは、商品又は役務の出所につき誤認、誤信があることをい
う。
七、 表示の判断要素
本法第 20 条においていう表示とは、次に掲げる場合のいずれかに該当するものをいう。
(一)文字、図形、記号、商品の容器、包装、形状、又はその組み合わせが特別に顕著で、関係事
業者又は消費者がそれによって商品又は役務を表す標識と認識するに足り、他人の商品又は
役務と区別がつくもの。
(二)文字、図形、記号、商品の容器、包装、形状、又はその組み合わせ自体は特別に顕著ではな
いが、相当の時間にわたって使用されていたことにより、関係事業者又は消費者が認識する
に足り、またこれを商品又は役務の出所と連想することのできるもの。
八、 表示の例示
次に掲げる各号は本法第 20 条でいう表示に該当する。
(一)氏名。
43
(二)商号又は会社名称。
(三)商標。
(四)標章。
(五)特別に設計され、識別性を持つ商品の容器、包装、外観。
(六)本来、識別性を持たない商品の容器、包装、外観が長期間にわたって継続して使用されていたこ
とにより、セカンダリー・ミーニングを持たせるようになったもの。
九、 表示に該当しないものの例示
次の各号は商品又は出所を表す機能がないため、本法第 20 条でいう表示に該当しない。
(一)商品について慣用されている形状、容器、包装。
(二)商品に関する説明文字、内容又は色彩。
(三)実用的又は技術的機能を有する形状。
(四)商品の内部構造。
(五)営業又は役務の慣用名称。
十、関係事業者又は消費者の間で広く認識されているかの判断要素。
表示が関係事業者又は消費者の間で広く認識されているかどうかを判断するには、次の事項を総
合的に勘案しなければならない。
(一)当該表示を売り物にする広告の量が、関係事業者又は消費者に当該表示に対する印象を生じ
させるに足りるか。
(二)当該表示を有する商品又は役務が市場に於いて販売された時間が、関係事業者又は消費者に
当該表示に対する印象を生じさせるに足りるか。
(三)当該表示を有する商品又は役務の市場に於ける販売量が、関係事業者又は消費者に当該表示
に対する印象を生じさせるに足りるか。
(四)当該表示を有する商品又は役務の市場占有率が、関係事業者又は消費者に当該表示に対する
印象を生じさせるに足りるか。
(五)当該表示を有する商品又は役務が媒体の広範な報道を経て、関係事業者又は消費者に当該表
示に対する印象を生じさせるに足りるか。
(六)当該表示を有する商品又は役務の品質及びその評判。
(七)当事者が当該表示に係る商品又は役務について、科学的、公正的、かつ客観的な市場調査資
料を提供している。
(八)関連主務官庁の意見。
前項第七号の当事者が提供した市場調査資料を勘案するときは、本会第 322 回委員会会議を通過し、
また第 347 回会議で修正・可決された「行政院公平交易委員会による当事者提供市場調査報告に関
する評価要項」を適用して処理する。
第一項に列挙された考慮事項は、その他の関連事項を参照して総合的に勘案しなければならない。
十一、混同誤認の判断要素
第 20 条においていう混同誤認を引き起こすか否かを判断するには、次に掲げる事項を勘案しな
ければならない。
(一)通常の知識経験を有する関係事業者又は消費者の注意力の程度。
(二)商品又は役務の特性、差異化、価格等が注意力に対する影響。
(三)表示の知名度、企業規模及び企業イメージ。
(四)表示には独特の創意が見られるか否か。
十二、判断原則
表示の同一又は類似の使用であるか否かを勘案するには、客観的事実に基づき、次の原則によ
りこれを判断する:
(一)通常の知識経験を有する関係事業者又は消費者が普通の注意を払うことを原則とする。
(二)全体観察及び主要部分(要部)比較の原則。
(三)時と場所を異にして隔離的観察をする原則。
十三、認定手続き
表示が関係事業者又は消費者の間で広く認識されているか、同一又は類似の使用か否か、又は
混同誤認を生じるか否かについては、次の手続きによってこれを認定する:
(一)本会委員会議により認定する。
44
(二)相当な争議があって判断し難いものは、公聴会あるいは座談会を開催することができる。
学者・専門家、業者代表、消費者代表、関連産業組合及び機関の意見を諮問し、本会認定の
参考に供することができる。
(三)影響が重大かつ相当な争議があって、判断し難いものは、公正・客観的な団体、学術機構
に委託して、アンケート調査で一般大衆又は関連取引相手の意見を聴取することができる。
十四、会社名称
二の会社名称の中に異なる業務種類が明記されているものは、その会社名称は本法第 20 条で
いう同一又は類似の使用に該当しない。
通常の使用方法をもって、会社法により登記した会社名称を使用する場合、関係事業者又は消
費者に広く認識されている他人の営業と混同誤認を生じさせるような積極的行為がないときは、
本法第 20 条の規定に違反しない。
十五、商号名称
通常の使用方法を以って、商業登記法により登記した商号名称を使用する場合、関係事業者又
は消費者に広く認識されている他人の営業と混同誤認を生じさせるような積極的行為がないと
きは、本法第20条の規定に違反しない。
十六、本法第 20 条と第 24 条規定の適用原則
次の各号に掲げる場合が本法第 20 条規定の構成要件に該当しないときは、第 24 条規定違反に
よってこれを処理することができる。
(一)他人の著名な商品又は役務の表示を襲用し、混同誤認を生じさせるようなことがないと謂
えども、積極的に他人の商誉に便乗することがある場合。
(二)他人の商品又は役務の外観を模倣し、積極的に他人の努力成果を搾取し、競争者に対して
著しく公正さを欠き、取引秩序に影響している場合。
前項の場合は、商品の外観が公衆の自由に利用できる技術であるものについては適用しない。
十七、既往に遡及しない原則
公平交易法施行前に、すでに多数の関連業者によって共同使用されている商品の容器、包装、
外観その他の表示であって、関係事業者又は消費者がその容器、標示の外観からその出所を区別
することができないときは、ある特定の事業者から最も先に使用したとの主張があった場合でも、
他人の使用を排除することができない。
十八、告発方式
他の事業者による本法第 20 条規定違反を告発するものは、書面をもって具体的な内容、真実の氏
名及び住所を明記させなければならない。口頭でこれを行うときは、本会が書面記録を作成し、
そこに告発者が署名又は押印する。
告発は、真実の氏名、住所、署名(押印)又は具体的な内容がないときは、これを処理しない
ことができる。但し明らかに公共利益を侵害する虞があるときは、公平な競争及び消費者の利益
を確保するため、職権によりこれを調査・処理することができる。
十九、告発者による事実証拠の提供
他の事業者による本法第 20 条違反を摘発するものは、関連商品又は役務の表示が関係事業者又は
消費者に広く認識されていることについての証拠、及び他の事業者が違法に関わっている具体的
な事実や証拠を提供しなければならない。
前項によって関連資料を提供しないものは、書面を以て相当の期限内に提供するよう通知する。
期限を超過しても提供しないときは、その告発に具体的内容がないものと見なす。
二十、不受理案件の処理手順
次に掲げる場合のいずれかに該当するときは、業務部門が意見を付けて、当番の委員に移送して
審査を行い、長官の認可を経た後、ファイルに保管し(ファイリング)、又は回答書簡を出して
案件を終了し、並びに定期的にまとめて委員会議に報告する。
(一) 告発事件が本処理原則により処理しないことができる場合。
(二) 告発に具体的な内容がない場合。
(三) 告発事項が単に双方当事者の紛争に関するもので、かつ双方当事者がすでに和解した
場合、又は告発者が告発を撤回した場合。
二十一、被告発事業者が意見を陳述する機会
本会が事業者に対して処分を為す前に意見陳述の機会を与えなければならない。但し、本会が
期間を限定し、事業者に出頭して意見陳述し、又は書面を提出して説明することを通知した後、
期限を超過しても出頭せず、又は書面による説明を提出しない場合は、この限りでない。
45
行政院公平交易委員会の公平交易法第 24 条案件に対する処理原則
82.12.29 第 117 次委員会議通過
90.12.20 第 528 次委員会議通過
91.1.9 公法字第 0910000252 号書簡分行
94.1.13 第 688 次委員会議通過
94.2.24 公法字第 0940001299 号令発布
一、(目的)
公平交易法第 24 条(以下、本条)は概括性規定であることに鑑みてその適用の具体化、明確化を
期するため、特に本処理原則を制定する。
二、(公平交易法第 24 条適用の基本精神)
本条と民法、消費者保護法等その他法律の関連規定との別を明確にするため、
「取引
秩序に影響するに足りる」の要件をもって、公平交易法又は本条に適用するかの選別
の準拠と為すべきである。即ち係争行為において市場取引秩序に影響を生じるに足り
るとき、はじめて本会は本条の規定によって当該案件を受付けるが、もしも「取引秩
序を影響するに足りる」の要件に合致しないものは民法、消費者保護法或はその他法
律をもって救済を要請することを促すということである。
本条の適用範囲を確定するため、
「取引秩序に影響するに足りる」の要件をもって前提と為すべきである。
先に「競争制限」の規範(独占、結合、連合行為及び垂直競争制限)を検証し、次に「不公平競争」
の規範(例えば、商業模倣、不実広告、営業誹謗)を検証する。前記の特別規定が係争行為の不法内
容を十分に規範できない場合に限って、本条適用の余地が有る。よって、本条をもって公平交易法の
その他条文の適用と区別することはただ「補充原則」関係の適用が有るわけで、本条は単に公平交易
法のその他条文規定に包攝されない行為においてのみ適用する。もし公平交易法のその他の条文規定
が某違法行為に対して既にこれを十分に論述しているとき、即ち当該個別規定がすでに当該行為の不
法性を十分に評価している、或いは当該規定が当該行為の不法の内容を補充に規定した場合、当該行
為についてはただ当該個別条文規定を構成するか又は構成しないかの問題が有るのみで、更に本条で
以って規範を補充する余地はないのである。これに反して、もし当該個別条文規定では十分に当該違
法行為を評価し切れない時に始めて本条をもって補充規範を加える余地が有るのである。
「消費者権益の保護」に関しては、係争事業者がその相対的優勢の地位をもって、「欺罔」または
「著しく公正さを欠く」販売手段を利用して消費者権益が損害を受けるに至り、「取引秩序に影響
するに足りる」の要件に合致するかを検視して本条規定に適用するかを判断する準拠とする。
三、(その他法律との競合を明確にする。)
本条の事業者に対する規範は、常にその他法律との競合の疑義が有るので左記事項を考慮してこれ
を判断すべきである。
(一)元々事業者と事業者或は消費者との間の契約約定は、自由意志に基づいて締結した取引条件
である。その内容が明らかに不公平か否か、又は事後に約定に依って履行したか否かを問わ
ず、この契約行為は契約法を以ってこれを規範する。係争行為が競争秩序又は市場取引秩序
に危害を及ぼすときにおいて、始めて例外的に本条の適用がある。例えば契約内容に著しく
公正さを欠く部分があっても、若しもそれが「取引秩序に影響するに足りる」の要件に合致
しない場合、民事方法によって救済・解決すべきである。前記要件に合致し、公共利益を考
慮するときにのみ、始めて本条が介入してこれを規範する。
(二)消費者権益の保護は元々公平交易法第 1 条に明定された立法の目的ではあるが、両者の保護
法益の重点を区別するため、本条が消費者権益に対する介入には、「取引秩序に影響するに
足りる」との要件に合致し、かつ公共利益の性質を有する行為に限る。例えば、業者が消費
者に対して相対的に市場優勢の地位に在る場合、或いは(問題となる一方的なメーカー優勢
現象は)当該業種において普遍的な現象として見られている場合、消費者がサプライヤーに
高度に依頼する或いは選択の余地がない等々のために損害を受けた情況に限られるべきであ
る。
(三)知的財産権者がその知的財産権を侵害する虞がある者に対しては、知的財産権関連法律によっ
て自ら侵害者に通知し、その侵害の排除を請求することができる。但し、確認及び先行通知
の手順を履行する前に、直接その競争相手の販売ルート又は消費者(取引相対人又は潜在的
な取引相対人)に対して、口頭或いは書面をもって、相手方がその権利を侵害したとの表明
46
を為し、しかも受信者が合理的に知的財産権の濫用により不公正競争の真偽を判断する根拠
を示されていない場合は引き起したことに属するので、これには本条の適用がある。これは
つまり、公平交易法が知的財産権の口頭或は書面警告行為に介入するのは、その権利の非正
当行使が不公正競争を引き起すことを前提としている。又それが公平交易法に違反したか否
かの判断は、ただその形式上の権利行使の正当手順を実行したか否かを以って為せば、足りる
のである。実体上の権利侵害の事実認定迄には及ばない。
四、(公平交易法其他条項規定との区別適用)
本条の規定を適用するには、「補充原則」に符合しなければならない。即ち、本条は公平交易
法のその他の条文が言及していない行為に対してのみ適用する。若しも公平交易法のその他
条文の規定が某違法行為に対して既に包摂し尽した場合、即ち当該個別条文の規定で当該行
為の不法性を充分に評価でき、又は当該個別条文の規定がすでに十分当該行為の不法性を規
制する場合、当該行為はただ当該個別条文の規定を構成するか或は構成しないかの問題しか
なく、別段本条によって規範を補充する余地はないのである。当該個別条文の規定が当該違
法行為の評価規範と為し得ないときにのみ、はじめて本条をもって規範を補充する余地があ
るのである。
五、(取引秩序に影響するに足りるかの判断において考慮すべき事項)
本条で称する取引秩序とは、善良風習の社会倫理及び効能競争の商業競争倫理に符合する取引行為
をいう。その具体的な内容は、社会倫理及び自由、公平競争精神に依拠するところの取引秩序なの
である。
「取引秩序に影響するに足りる」と判断する時、全体の取引秩序に影響するに足りるかを考察する
(例えば、被害者人数の多寡、引起した損害の量及び程度、その他事業者に対して警戒効果がある
か、及び特定の団体や集団に対する欺罔または著しく公正さを欠く行為であるか、等事項)或いは
将来潜在的な多数の被害者に影響を及ぼす効果がある案件であることを確認する。又、取引秩序に
対する影響は既に発生した事案には限らないのである。なお単一の個別的非経常性の取引紛糾に関
しては、民事救済を求めるべきであり、本条の規定には適用しない。
六、(欺罔の判断において考慮すべき事項)
本条で称する欺罔とは、取引相対人に対して、重要な情報について積極的欺瞞又は消極的な隠匿に
よって人を錯誤に導く方式で取引に従事することをいう。
前項で称する重要な取引情報とは取引決定に影響するに足りる重要な取引情報を指す。所謂人を錯
誤に導くとは、客観上一般大衆の誤認を引起すか否か、或いは取引相手が騙される合理的な確率(可
能性さえあれば、任意ではない)があるかを以って判断の基準とする。同時に、取引相手の判断能
力を考慮する基準は「合理的判断」とすべきである。(極端に低い注意程度をもって判断基準とは
しない)。そのよく見られる類型は左記の如くである。
(一)
信頼性ある主体と冒称する或いはそれに便乗する。
(二)
不実な販売促進手段
(三)
重要取引情報を隠匿する
七、(著しく公正さを欠く判断において考慮すべき事項)
本条で称される「著しく公正さを欠く」とは、「著しく公正さを欠く方法で競争或いは商業取引を
行う」者をいう。
そのよく見られる主要な内容は三つの類型に分けられる。
(一)商業競争倫理に背く不公正競争行為
1. 他人の努力成果を榨取する
違法の如何を判断する時、原則上次のことを考察すべきである、(一)或いは高度剽窃
された標的は、当該事業者が既に相当程度の努力を投入したもので、市場において一定
の経済利益を有し、しかもそれが係争行為によって搾取されたもの(二)その冒称また
は剽窃の結果が、取引相対人をして両者が同一の来源、同系列の産品或は関係企業であ
ると誤認させるに至る等効果がなければならない。しかし、その採用手段の非難性が非
常に高い(例えば完全一致の剽窃)ものは、たとえ前述二要素の情況には属さないけれ
ども、やはり違法の虞があり、具体的ケースの実際情況によって、これを総合判断する。
その様態は左記の通り:
(1)他人の商誉に依付便乗する
47
本条の保護する商誉であるかを判断するには、当該ブランドが市場において相当の
知名度を有するか、且つ市場の関係事業者或は消費者が一定の品質の連想を生じる
かを考察すべきである。
(2)高度剽窃
高度剽窃を判断するには、次のことを総合考察する:(一)当該剽窃は「完全一致」
に達したか、或は「高度近似」の程度であるか、(二)剽窃者が払った努力や投資
対価とそれと引き換えに得られた競争優勢又は利益との関連性および相当性、及び
(三)剽窃される対象の市場競争における独特性及び占有状態。
(3)他人の努力を利用して、自己の商品または役務を提供する行為。
2. 競争相手に損害を与える目的で、公正競争を阻害する行為
その常に見られる類型は次の通り:
(1)不当な比較広告:
比較広告の中に、自己及び他人の商品或いは役務について不実の陳述はしてな
いが、同様の製品に対して異なる計測方法又基準を採用して比較する手法、或
は重要な比較項目の中に、単に自分側の比較的優良な項目を打出し、故意に相
手方の優良項目を無視し不公平な比較結果を全体の印象において造り上げるこ
とを意図するもので、しかし一方、公平交易法第 22 条の構成要件には符合しな
いもの。
(2)競争相手の取引相手側に対して、その競争相手が知的財産権を侵害したと表示
する行為
知的財産権権利者が市場にその権利を侵害する可能がある商品を発見し、その
直接侵害の製造者或いは同等地位にある商品輸入の輸入者または代理者等に対
して、侵害の通知、排除の請求をすることは法により権利を行使する正当行為
であるから、その内容の真偽虚実を問わず、共に知的財産権争議に属すること
である故に、本条の適用はない。もしそれが間接侵害の販売業者又は消費者(即
ち競争相手の取引相手又は潜在取引相手)に対して、自分の競争がその権利を
侵害したと表明(書面又は口頭を問わず)するとき、その必要の確認及び先行
通知の手順を経ないものは、相手方の取引相対人に嫌疑を生じさせるに足り、
甚だしきに至っては取引を拒絶されることになるもので、本条の「著しく公正
さを欠く行為」を構成するものである。
(二)社会倫理に符合しない手段で取引に従事する行為
よく見られる類型は例えば:取引相対人を脅迫等により、取引相対人が取引を決定する自由意
思が抑圧された情況下に、取引を完成させる行為。
(三)市場の相対的優勢な地位を濫用して、不公平取引に従事する行為相対的な市場力又は市場情報
の優勢地位を有する事業者が、取引相手人(事業或は消費者)の情報上不対等又はその取引上
の相対的な弱勢地位を利用して、不公平取引に従事する行為。
類型例:
1. 市場機能が停止し、供給需要の均衡を喪失したとき、事業が代替性の低い民生必需品また
はサービスを提供し、商業倫理或は公序良俗に反する方式で取引に従事する行為。
2. 情報が透明化されないために引き起した著しく公正さを欠く行為。
2-5. 営業秘密保持権
1995年12月22日国会で可決されて、1996年1月17日総統令をもって公布され、現在既に施行されている。
条文は全部で16条だけだが、情報社会における秘密保守の原則の集大成の法律となっている。要点を次
の通りに集約する。
1.明確な定義:権利の肥大化による情報漏洩を防ぐため明確に営業秘密の定義を冒頭に設けている。
本法で営業秘密というのは、方法、技術、製造過程、処方、設計、装置或は其の他生産、販売、経
営の情報に使われるもので、且下記の要件を満たしたものを指す。
1)関係大衆に共知されないもので、
2)その秘密性により、実際に又は潜在的な経済価値を有するもの。
3)所有者が既に秘密保持のために合理的な措置を取っているもの。
2.職務上の研究開発に関る営業秘密は原則として雇用者の所有となる。
48
3.営業秘密の侵害様態の分類
1)不正当な方法をもって営業秘密を取得したもの。(日本不正競争防止法第3項第1号相当)
2)前号の指す営業秘密と知り或は知らざることにつき重大な過失がある場合、それを取得、
使用又は漏洩(不法開示)するもの;(日本不正競争防止法第3項第2号相当)
3)営業秘密を取得した後、当該営業秘密が第1号の指す者と知りつつ、或は知らざりしことにつき
重大な過失がある場合、それを使用又は漏洩するもの。(事後の故意)(日本不正競争防止法
第3項第3号相当)
4)法律行為によって取得した営業秘密を不正当な方法で使用又は漏洩したもの。
5)法令により営業秘密を保守する義務がある者がそれを使用又は理由なくして漏洩する場合。
但し、侵害を構成しない除外規定が置かれてない。
4.営業秘密の侵害を受けたものへの差止請求権、侵害防止請求権及び相関物品の廃棄及び必要な処置
の請求権。 (第11条)
5.営業秘密侵害による民事損害賠償義務及び損害賠償請求に関する時効の制限。(第12条)
故意又は過失により、不法に他人の営業秘密を侵害したものは、損害賠償の責任を負わねばならな。
但し、損害賠償請求権は、請求権者が侵害行為があり、賠償義務人を知った時から2年間不行使によ
り消滅する。侵害行為の時より10年間経過した時もまた同じである。
6.損害賠償請求金額の推定(第13条)
損害賠償金額の算定基準は次のように明文で規定されている。
1)民法第216条によって損害を具体的に証明する。証明できない場合は通常得られる利益と侵害を
受けてから同一営業秘密を利用する場合に得られる利益の差額をその受けた損害の額とみなす。
2)侵害者が侵害によって得た利益。侵害者のコスト又は必要費用を立証しにくい場合は、その侵
害行為によって得た収入の全数をその利益とみなす。侵害行為が故意による場合、裁判所は被
害者の請求により、侵害程度に基づき、損害額以上の賠償を酌定することができる。但し、最
高でも既に立証した損害額の三倍を超過してはならない。
7.専門法廷の設立及び秘密審判の可能性 (第14条)
裁判所で営業秘密の訴訟事件を審理するとき、専門の法廷を設け又は専門の者を指定して審理さ
せることができる。当事者が提出した攻撃又は防御方法が営業秘密に関連する時、当事者からの申
請に基づき裁判所が妥当であると認めた時は、公開審判せず又は訴訟資料の閲覧を制限することが
できる。
8.互恵原則 (第15条)
外国人の所属する国が台湾との条約或は協定によって、若しくはその国の国内法律によって台湾
人の営業秘密に対して保護を与える場合、その外国人も台湾で営業秘密に関する保護を受けられる。
実務上は事例に応じて個別的に証拠に基づいて認定するようにしているが、公平取引法などの分野
に見られるように、日本人が主体となる場合は権利を主張し保障を求めることができる。
2-6. 集積回路の回路配置権
1.用語の定義:第2条
集積回路:トランジスター、キャパシター、電気抵抗、或は其の他の電子及びその間の連接線路を半導
体材料の表面、または材料の内部に集積し電子回路の機能を有する製品又は半製品を指す。
回路配置:集積回路に電子素子及びこの素子を接続した導線の平面又は立体設計を指す。
頒布:売買、ライセンス、譲渡をし、又は売買、ライセンス譲渡の為に陳列することを指す。
商業利用:商業の目的で回路配置又は当該回路配置を含む集積回路を公開頒布することを指す。
複製:光学、電子又は其の他の方式で、くり返し回路配置又は当該回路配置を含む集積回路を製作する
ことを指す。
リバース・エンジニアリング:集積回路から分析、評価を経て、その元来の電子回路、又は機能圖を習
得し、そして、それに基づき機能が互換出来る集積回路の回路配置を設計すること。
2.管轄機関は経済部で、同機関は主務官庁を指定することができる。(第3条)
3.外国人に対する保護の条件は形式互恵主義と実質互恵主義を平行して採択している。第5条現在日本
の企業や個人の創作者の登録申請も受け付けられている。
4.外国人の出願形式条件(1)(第8条)
台湾に住所を持つ代理人に委任しなければならない。
5.出願の必要書類及び添付物品 (第10条)
図式、写真実物サンプル等の代わりの書面理由説明書及び創作者の創作証明書類が必要。
6.出願日の認定基準 (第12条)
政府料金の納付及び第10条規定の書類が完備した日を申請日とする。
7.出願の時間的制限 (第13条)
商業使用後2年間以内に出願しなければならない。
8.登録主義 (第15条)
49
回路配置権は登録により発生する。
9.保護の要件 (第16条)
新規性:創作者の知的努力によるもので他人の設計を盗用したものでないもの。
進歩性:創作の時点において集積回路の産業及び回路配置の設計者からして、平凡、普通又は周知に
属されるものでないもの。
特別状況の保護条件認定基準:平凡、普通又は周知の素子による組み合わせ、又は回路を連結して設
計した回路配置については、其の全体の組み合わせが、前項の要件に合致したものについて
のみ、保護を与える。
10.登録済みの権利者の権利内容 (第17条)
権利者は以下の権利を有する。
独占複製権:回路配置の一部又は全部を独占で複製する権利。
独占輸入、頒布及び応用権:商業目的で、回路配置、又は当該回路配置を含んだ集積回路を輸入、頒
布したもの。
11.権利除外条項 (第18条)
回路配置権は次の事項に及ばない。
1)研究、教育又はびリバース・エンジニアリング等の目的に基づいて、他人の回路配置を分析又は計量
のために複製する
2)前項のリバース・エンジニアリングにより、第16条の条件に叶った回路配線或はそれに基づいて作ら
れた集積回路。
3)合法的に複製された回路配置又は集積回路を所有する者が、その合法的に所持する回路配置又は集積
回路を輸入又は頒布したもの。即ち真正品の並行輸入品の第一次販売を認める事を明文で規定する。
4)善意の第三者の所持する集積電路侵害品。
5)善意の第三者の偶然の同一創造。
12.権利期間 (第19条)
以下の日付の早い方のいずれかより10年間保護を付与する。
登録出願日から、又は最初の商業利用日から。
13.登録対抗事項 (第22条)
譲渡、実施権許諾並びに質入れの設定、移転、変更、及びその消滅。
14.強制実施許諾 (第24条)
前提:一般として、公共利益の増進のために限定するが、特殊の場合として、回路配置権人に不正競
争にかかわる事情がある場合、それにつき裁判所の判決又は行政院公平取引委員会の不正競争に関す
る判断や処分が確定されたものは、公共利益の増進効果の有無とかかわらずに、強制実施許諾の申請
ができる。又、強制実施は独占できず、他人が同一の回路配置権について、更に実施権を取得できる
としている。強制実施にともなって実施料の支払義務があり、その金額の評価基準を主務機関が当事
者間に争議がある場合決定することができる。強制実施権の譲渡、譲渡、実施許諾或は質権を設定す
るなどは、必ず関連営業と併合して同時にしなければならない。
15.権利登録の取消し (第27条)
裁判所の確定判決によって権利が不存在と判断された場合に、回路配置権が取り消されることになる。
ただ、主務機関の付与した権利を否定する権限のある裁判所の確認も、当該権利を取り消し得る訴訟
の種類などにつき、実務的な諸問題はまだ実例の発生を待って始めてしだいに解決されていく。其の
他本法規定違反によって権利無効になる場合は次の通りである。
第5条乃至第7条 共有者関係の問題
第10条 登録出願の形式条件欠如
第13条第39条 登録出願の時間的制限違反
第38条 費用の滞納
第16条 実体的な条件の欠如
16.権利者の侵害に対する救済権能 第29条
権利者自身が回路配置権の侵害に対する救済権能を有する以外に、独占(専用)実施権の権利者の権
能も事前に権利者本人に請求してから救済の権利を行使できる。救済権の権能は侵害排除(差止)請
求権、侵害防止請求権及び損害賠償請求権。侵害品を使用する完成品を扱う悪意の第三者或は証拠に
よって知り得た第三者が不法複製にかかる回路配置によって作成された集積回路に関して、商業目的
で輸入或は頒布をする場合も、回路配置権の侵害とみなす(但し、集積回路が製品と分離された場合
はその限りでない)。又、侵害救済権の行使の際、鑑定書添付の義務がある。複数の侵害者は、連帯
損害賠償の債務を負う。そのほか、第18条第4号の善意の第三者に対して侵害事実の通知及び鑑定書
を送付した後、当人がその行為を商業目的で継続した場合、回路配置権者はその第三者に対して通常
利用によって徴収しうる実施料に相当する額を損害賠償金額として請求することができる。
17.損害賠償額の計算(推定) (第30条)
損害賠償金額の算定基準は次のように明文で規定されている:
50
(1)民法第216条によって損害を具体的に証明する;証明できない場合は通常得べかりし利益と侵害
を受けてから同一回路配置を利用する場合の得べかしり利益の差額を損害とみなす。
(2)侵害者が侵害によって得た利益。侵害者のコスト又は必要費用を立証しにくい場合は、その回路
配置自体或はそれを含む集積回路全体の販売によって得た収入の全数をその利益とみなす。
(3)請求によって裁判所に状況斟酌の上、NT$500万元以内に決定した金額を損害額とみなす。
18.侵害者の謝罪広告掲載の責任 (第32条)
19.外国法人や団体の民事訴訟提起権利 (第33条)
特許法や商標法などと同じく、集積回路設計権の侵害訴訟に関する権利の行使は、台湾で認可を得て
いない外国法人または団体にも認められている。
20.本法の規定は回路配置権者や第三者が他の法律によって取得した権利を害しない。 (第35条)
21.遡及規定 (第39条)
この法律の施行前2年以内において最初の商業上の利用をした者は、この法律の施行後6ヶ月以内に登
録申請を行うことができる。一方、登録に際して形式審査しか行わない。業者間の悪質競争の道具と
して悪用されないよう、民事救済の手段しか認められず、刑事罰則は置かれていない。
2-7 コンピュータの処理による個人データ保護権
個人の資料がデータベース化された後、本人の意志を尊重せずに乱用される場合、加害者に対して、当
事者が差し止め請求権とともに、刑罰を求めることができる。
定義:
1)個人資料:
自然人の姓名、生年月日、身分証明書のシリーズナンバー、過程、教育、職業、健康状況、カ
ルテ、財務状況、社会活動、及びその他をもって個人を識別出来る全ての資料を指す。
2)個人資料データベース:
特定の目的の為に、電磁記録又は其の他の形式のメディアによって保存されている資料の集合。
3)電脳処理:
電脳又は其の他の自動化機会を利用した、資料の入力、保存、編集、修正、検索、削除、出力、
伝送、若しくは其の他の処理を指す。
4)収集:
個人資料データベースを作るための個人資料の取得。
2-8 権利行使のグレーゾーン
いわゆるグレーゾーンは、およそ以下二種類の状況を指す。一つは権利行使の対象となるべき権利に
ついて、当事者により権利化作業が怠られ、そのため台湾においては当該権利が存在せず当然権利を主
張することできない場合である。もう一つは、係争の当事者の利益は、法律で明文化した規定が置かれて
いないため、保護されていない場合である。以下は比較的に不明確な権利に関する実務上の問題点をみ
てみよう。
Q1.真正品平行輸入の取り扱い
台湾において、真正品の平行輸入に関する規制は近年の法律改正と裁判実務の条文適用の解
釈によって、大分緩和されている。自由貿易の趨勢と相まって、平行輸入の許容範囲は特許関
連製品を始めとして、商標使用の商品、乃至集積回路権に関わる真正品までも拡大されている。
唯一明白な例外となるのは、米国との特別著作権保護協定に従って著作権法で明文をもって、
真正著作物の平行輸入を禁止していること。
現在、真正品の平行輸入については、殆ど法律によって明文に規定されている。
(1)商標権商品の真正品平行輸入の法的根拠(許容)
商標法第23条第3項は次のように規定している。
商標権者又はその許諾を得た者によって商標を付した商品が市場において取引、又は流
通される場合は、商標権利者は当該商品について商標権を(再び)主張することができな
い。但し、商標の変質、毀損を防止するため、又は其の他の正当な事由がある時はこの限
りでない。
(2)特許及び実用新案に関する真正品平行輸入の取り扱い(許容)
特許と実用新案権の権利範囲は特許権と同一の規定を適用している(特許法105条準用57
条)。すなわち権利消耗原則が認められている。
第57条は下記の通りに規定している。
特許権の効力は次の各号に及ばない。
1∼5 省略
7.特許権利者が製造、又はその権利者の許諾の元で製造した特許物の販売の後に、同特
許物の使用及び再販売は既に特許権の拘束を受けない。上記製造、販売は国内に限らない。
51
(3)著作権法における真正品輸入の禁止規定(禁止)
台湾の著作権第87条は平行輸入を禁止する旨の規定を置いている。
第87条 (著作権侵害時候の様態)
左記事情につき、この法律に別段の定めがある場合を除き、著作権利又は製版権を侵害し
たものとみなす。
1∼3 省略
4.著作所有権利者の同意を経ずして原著作物或はその複製品を輸入した物。
5.省略
(4)意匠権にかかる真正品の平行輸入権を容認する規定(許容)
特許法第118条は意匠権の効力の例外情況を規定している。
第118条(意匠権効力の例外)
①意匠権の効力は、次の各号の事情に及ばない。
1∼2 省略
3.意匠権者が製造した、又は意匠者の同意で製造した意匠権物が販売された後、同物品
を使用し、又は再販売したもの。上記製造販売は国内に限らない。
②省略。第3号の販売出来る地域は、裁判所が事実によって認定する。
(5)集積回路配置権にかかる新製品の平行輸入権の容認規定(許容)
集積回路配置保護法第18条権利除外条項に関する規定
回路配置権は次の事項に及ばない。
1) 研究、教育又はリバース・エンジニアリング等の目的に基づいて、他人の回路配置を
分析又は計量のために複製する
2) 前項のリバース・エンジニアリングにより、第16条の条件に叶った回路配線或はそれ
に基づいて作られた集積回路。
3) 合法的に複製された回路配置又は集積回路を所有する者が、その合法的に所持する回
路配置又は集積回路を輸入又は頒布したもの。即ち真正品の平行輸入品の第一次販売を
認める事を明文で規定する。
Q2.台湾で商標権によって保護を受けていないが、外国で登録されている商標権が台湾で適
切な保護を受けるために
台湾の商標法は先願登録主義を取っており、先に登録出願した物に登録が与えられ、権利
を付与することになるので、商標権の確保を図るためには、早めに登録出願を行うべきであ
る。もし商標の登録前に係争が発生した場合、たとえ早期の使用を立証出来ようが、商標が
出願に係っていようが、依然として権利を主張出来ない。
一方、商標の登録前に、他人によって先に登録又は出願される場合、当該登録又は出願に
対して、盗用登録か出願の理由で無効審判或は異議申し立てをする事が出来る。その際、対
象商標の採択と創作の経緯を示す証拠資料の他、長期間に渡って対象商標を使用してその著
名性を高め、ないしは既に著名となった事を立証出来る下記の資料を提出出来れば、勝訴の
見込みは一層高まる。
1.諸外国での登録資料又はリスト
2.対象商標を付した商品の販売実績、ことに台湾向けの販売実績を示す資料の提出が肝要
3.対象商標に関する新聞雑誌に関する広告
Q3.台湾で権利を持たない外国の知的財産権の保護の条件
台湾国内で商標などの権利によって保護を受けていない外国の有名商標、又は外国で商
標権等の権利によって保護されている商品が台湾で模倣されて、権利保護のある国(市場)
へ輸出されている場合、台湾の税関で当該模倣品を差し押さえることが出来るか?
外国の裁判所による確定判決を提示出来れば、輸出を差し止める事も考えられる。勿論
台湾の民事訴訟法によって台湾で認められる外国の判決に限る。確定判決が無い場合、税
関を通して禁倣小組に通報があった場合、同模倣品の輸出に携わる業者に外国の権利者の
権利を侵害している事実を説き明かし、輸出行為を停止するよう行政上の勧告を行うこと
しか期待出来ない。端的に言えば、台湾で権利化するほか有効な保護措置は取りにくい。
2-9 権利侵害の民事責任と刑事罰則の規定
1.方針転換----従来の刑事訴訟中心の権利行使対策から民事措置の活用への変化
台湾における知的財産権の侵害は、特許を含めて殆ど刑事罰の対象となる。刑罰の内容を
考えれば、先進国家の基準にしては相当厳しい法律制度と言えよう。
刑事罰、特に懲役刑の威嚇効果は極めて明白である。侵害者は禁固刑を免れるため、起訴
前から示談を真剣に進めて、協力的な態度を見せ、引いてはより合理的な和解賠償条件を申
52
し出るようになる。それゆえ、従来の台湾での知的財産権の権利行使及び取締は刑事手続き
を中心に展開するといえる。
但し、1994年の特許法改正により、発明特許及び実用新案の侵害事件における告訴の合法
要件として容疑者に対する警告状と鑑定意見書の提出が義務付けられ、同鑑定意見書の発行
者に関する資格の制限から来た問題、並びに発明特許につぎ、2003年では実用新案と意匠権
を侵害する者に科された懲役刑の全面廃止が知的財産権法制の刑事政策に大きな影響を与え
る。そのほか、公平取引法違反の刑事罰則も99年度に軽減された。
委員会の決定下付が構造上の理由により長期化する等々が、特許やほか知的財産関連権利
の侵害訴訟に於いて権利者の攻勢に支障を来すことが近時多発する傾向がある。より実効性
のある解決方策として近頃活用されるのは民事上の仮処分や仮差押えなどのアプローチであ
る。
2.権利別罰則要約:
(1)特許権
2003年4月現在では、発明特許権をはじめ、実用新案権と意匠権の侵害行為に対する刑事
罰の規定は既に廃止されている。
全般的に観察すれば、今回の発明特許の刑事罰廃止の台湾企業に与える影響は、最初
危惧したほど大きくはなく、特許紛争の解決手段を従来の国家公権力の介入による刑罰
の威嚇効果に頼る介入方式から、当事者同士の法的手段による民事手続きの攻防戦略の
展開と言うシビリアン・ベースの紛争解決方式の軌道に引き戻す積極的な効果があると
期待されている。
(2) 商標権:
2003 年の商標改正法は、商標侵害の刑事行為に関して更に明確に定義を加えた。又、条文も簡素化さ
れた。
商標権者に無断で下記の行為をしたものに対して
一、同一商品又は役務において、同一の登録商標又は団体商標を使用したとき
二、類似商品又は役務において、同一の登録商標又は団体商標を使用し、関係する消費者に誤認混同を
生じさせるおそれがあるとき
三、同一又は類似商品又は役務において、その登録商標又は団体商標と類似する商標を使用し、関係す
る消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるとき、いずれも 3 年以下の懲役、拘留、又は 20 万元
以下の罰金を科し又は併科する。(商標法第 81 条)
前条の商品であることを明らかに知りながら販売し、販売の意図をもって陳列し、輸出又は輸入し
たものは、一年以下の懲役、拘留、又は 5 万元以下の罰金を科し又は併科する。(第 82 条)
また、商標法違反の罪を犯して製造、販売、陳列、輸出又は輸入した商品又は役務の提供に使用し
た物品又は書類は、犯人が所有するものかを問わず、これを没収する。(第 83 条)
一方、従来では悪意をもって他人の登録商標の中の文字を自己の社名又は商号名称の主要部分に使用
して、同一又は類似商品の業務を経営し、利害関係人からその使用停止を請求されたにもかかわらず、
その使用を停止しなかった者は、1 年以下の有期懲役、拘留又は NT$5 万元以下の罰金に処するとの規定
があったが、改正法では削除された。
関連の刑法上の虚偽表示罪と文書偽造罪もよく適用される
第253条
第254条
商標や商号の偽造模倣罪――2年以下の懲役、罰金。
偽造され、又は模倣された商標や商号の商品を故意に陳列し、販売し又は輸入する者を処罰す
る罪――6000元以下の罰金。
第255条 商品の原産国又は品質について虚偽の表示をした場合――1年以下の懲役及び罰金3000元以下。
第210条 私文書を偽造或いは変造する罪――5年以下の懲役刑。
第216条 変造や偽造された私文書を行使する罪――偽造と変造の罪に準じて処罰する。
53
(3)著作権:
1
台湾の著作権法整備の概観
台湾は 1990 年代以降著作権権利行使の整備を含めて知的財産権法制度の強化を推進してきたが、現
行(2003 年度改正法)の著作権法は旧来の刑事罰則規定を大幅に改正したので、両者の重点比較表を
参考にされたい。
新旧著作権法権利行使関連規定の比較表----従来法律の規定を基準に改正法を評価;
▲は従来法より向上の意 ▼は従来法に劣る意
2003 改正著作権法
1 権利侵害品目の没入規定 ▲
第 98 条
第 91 条から第 96 条ノ 2 までの規定に定める犯罪に関し、犯罪の用途に供され、又は犯罪に
より得た物は、これを没収することができる。但し、第 91 条第 3 項及び第 91 条ノ 2 第 3 項
に定める犯罪に関し、没収し得る物は犯人に属するものに限らない。
第 98 条ノ 2
第 91 条第 3 項又は第 91 条ノ 2 第 3 項に定める罪を犯した行為者が逃げ失せ、確認するすべ
がない場合、犯罪の用途に供され、又は犯罪により得た物について、司法警察機関は直接こ
れを官没することができる。
2 前項官没に係る物について、官没された金員を国庫に納めるほかは、これを焼却する。そ
の焼却又は官没金の処理手続については、社会秩序保護法の関連規定を準用してこれを扱う。
2 光ディスク海賊品関連罰則;特別加重と公訴罪化 ▲
*第 91 条 営利を目的として複製の方法をもって他人の著作財産権を侵害した者は、5 年以下
の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 20 万元以上 200 万元以下の罰金を併科する。
2 非営利目的で複製の方法により他人の著作財産権を侵害し、その複製の部数が五点を超え、
又は摘発された時点で合法的複製物の時価にしてその侵害総額が新台湾ドル 3 万元を超えた
ときは、3 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 75 万元以下の罰金を科し又はこれを
併科する。
3 光ディスクに複製する方法により、第 1 項の罪を犯したものは、5 年以下の懲役、拘留に
処し、又は新台湾ドル 50 万元以上 500 万元以下の罰金を併科する。
*第 91 条ノ 2 営利を目的として所有権を移転する方法により著作物の原作品又はその複製物
を頒布し他人の著作財産権を侵害したものは、3 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル
75 万元以下の罰金を科し又はこれを併科する。
2 非営利目的で所有権を移転する方法により著作物の原作品又はその複製物を頒布し、又は
頒布を意図して公開に陳列し若しくは所持し、他人の著作財産権を侵害した場合、頒布の部
数が五点を超え、又は摘発された時点で合法的複製物の時価にしてその侵害総額が新台湾ド
ル 3 万元を超えるときは、2 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 50 万元以下の罰金
を科し又はこれを併科する。
3 第 1 項の罪を犯し、その複製物が光ディスクであるときは、3 年以下の懲役、拘留に処し、
又は新台湾ドル 150 万元以下の罰金を科する。
4 前項の罪を犯した者がその物品の出所を供述し、これにより(捜査機関による)検挙が成
功したときは、その刑を軽減することができる。
3 権利侵害に関する罰金の金額の引き上げ
▲
罰金を全面的に引き上げる;営利目的の光ディスク媒体の海賊品複製の罪に関しては、罰金
金額は最低 50 万元から最高 500 万元までに向上。他の形態の侵害に関する罰金も大幅に引き
上げられた。
4 公訴罪罪名拡大 ▲
光ディスク媒体海賊著作物複製等の侵害に対する公訴罪化
税関措置
=従来の規定と変更なし
5
執行猶予規定
=
従来では懲役刑の実刑の上限のほか、6 ヶ月ほどの懲役刑下限も設けてあったが、今回の法改
正では常習犯を除き、それを撤廃することになった。一方、執行猶予の判決に関しては、も
とより二年以下の初犯或いは前回の懲役刑に服してから 5 年以内に再度有期懲役経緯条ノ刑
の宣告を受けていない被告に対する実刑判決に限定されているので、今回の改正で執行猶予
の確率が高まるようになるとは思えない。
54
6
著作権権利侵害に関する刑事懲役刑最低刑度 ▼
今回の法改正では常習犯を除き、それを撤廃することになった。そのため、初犯の場合、従
来より軽い、3 ヶ月ないし 6 ヶ月ほどの実刑判決の言い渡しの多発が予想される。刑法第 41
条の「懲役と拘留刑を罰金に変更する規定」によって、6 ヶ月以下の実刑判決を受ける場合、
最高法定刑が 5 年以下の罪に限って、罰金に換算して刑を処することが出来る。その点、従
来更に執行猶予か罰金換算の判決がよく見られるだろう。
一方常習犯に対しては 1 年以上 7 年以下の法定懲役期間が設けられているので、悪質な犯罪
に対する威嚇効果はなお強いと思われる。
7 非営利侵害罰則 ▼
従来と異なり、原則上少量の非営利目的の無断複製と頒布などの利用形態は刑事責任を負わ
ないようになる。一方民事上の権利侵害責任は免除されない。しかし消費者による非営利目
的の少量の無断複製などの無罪化の改正は、当該行為がいわゆる「合理的使用」に該当すると
の錯覚を与える懸念も高い。消費者が複製又は頒布或いは他の侵害行為にかかる著作物の部
数が5点を超え、又は摘発された時点で合法的複製物の時価にしてその侵害総額が新台湾ド
ル 5 万元又は 3 万元を超えなければ、刑事責任のほか民事責任も不問となることを誤解しな
いように、指導する必要がある。
8
刑法の罰金転換基準 ▼
従来では実刑の上限のほか、下限も設けてあったが、今回の法改正では常習犯を除き、それ
を撤廃することになった。そのため、初犯の場合、従来より軽い、例えば 3 ヶ月ないし 6 ヶ
月といった実刑判決の言い渡しが多発することが予想される。刑法第 41 条の「懲役と拘留刑
を罰金に変更する規定」によって、6 ヶ月以下の実刑判決を受ける場合、最高法定刑が 5 年以
下の罪に限って、罰金に換算して刑に処することが出来る。その点、従来よりも更に執行猶
予か罰金といった判決がよく見られることになるだろう。
一方常習犯に対しては 1 年以上 7 年以下の法定懲役期間が設けられているので、悪質な犯罪
に対する威嚇効果はなお強いと思われる。
一方、懲役刑においては、一般の著作権侵害では複製とその他の犯行形態と営利目的か個人
非営利の犯行なのか、また光ディスク媒体の著作物を扱うかによって 5 年以下、3 年以下、乃
至 2 年以下の法定刑限度となっているが、営利目的の業務常習犯の場合は 1 年から 7 年以下
となる。同時に、刑法第 41 条の改正によって、従来の罰金に転換できる最高法定刑限度が元
の 3 年から現行法の 5 年に引き上げられたことによって、従来罰金転換の対象でなかった罪
でも罰金に転換するようになるので、実質上罰金転換の判決となるケースが増える予想があ
り、実質的に刑罰の軽減効果につながるだろう。
4.公平取引法関連諸権利
公平取引法の規制に違反する場合は、刑事罰の効果はない。公平取引委員会の差止め命令や改善の命
令を無視して違法行為を継続する、或いは中断した後に更に違法行為を開始する場合は、罰金を徴収
することができる。罰金は行政罰の性格のものだが、金額は新台湾ドルで最高1億元まで課せられる。
その他、損害を受けたものは違法行為を行ったものに対して損害賠償を請求できる。故意の侵害の場
合、実証損害の三倍までの処罰損害賠償まで請求できる。
独占、連合及び模倣行為の規定に違反したときは、中央主務官庁が第 41 条の規定により期限を定
めてその行為の停止、改善又は必要な是正措置を命じたにもかかわらず、期間を超えてその行為の停
止、改善をせず、又は必要な是正措置を講ぜず、又は停止した後に再び同一若しくは類似の違反行為
をしたときは、行為者に対して3年以下の有期懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル1億元以下の罰金
を科し、又はこれを併科する。第 23 条の規定に違反したものは行為者に対して3年以下の懲役、拘
留に処し、又は新台湾ドル1億元以下の罰金を科し、又はこれを併科する。第 32 条、第 35 条、第
36 条
(4)営業秘密法
差し止め請求権と損害賠償請求権で民事責任を追及する。原則上刑事罰則はないが、行政バスが設けて
ある
(5)集積電路保護法
差し止め請求権と損害賠償請求権で民事責任を追及する。原則上刑事罰則はないが、公務員の責務上の
秘密情報漏洩罪、または代理人,弁護人,鑑定人もしくは証人や仲裁者等の身分を有する人間の秘密情
報漏洩罪が設けてある(営業秘密法第9条)。
55
(6)コンピュータ個人データ保護法
差し止め請求権と損害賠償請求権で民事責任を追及するほか、刑事罰も設けられている。
◇関連罰則(刑事罰と行政罰)規定の抜粋
● 特許法
■特許権侵害民事責任
第84条
特許権が侵害を受けたときは、特許権者は損害賠償を請求することができ、並びにその侵害を排除
することも請求できる。侵害のおそれがあるときは、それを防止することを請求することができる。
専属実施権者も前項の請求をすることができる。但し、契約に他の約定がある場合はその約定に
従う。
発明の特許権者又は専属実施権者が前二項の規定により請求をするときは、特許権の侵害に係る
物又は侵害行為に係る原料若しくは器具について、廃棄又はその他必要な処置を請求することができ
る。
発明者の氏名表示権が侵害を受けたときは、発明者氏名の表示、又はその他名誉回復に必要処分
を請求することができる。
本条に定める請求権は、請求権者が行為及び賠償義務者を知ったときから二年間、行使しないと
きに消滅する。行為があったときから 10 年間を超えたものも同様とする。
第85条
前条の規定により、損害賠償を請求するときは、次の各号の一を選んでその損害を算定すること
ができる。
一.民法第216条の規定による。但し、証拠方法を提供してその損害を証明することができないと
きは、特許権者はその特許権を実施して通常得られる利益より、損害を受けた後に同一特許権を実施
して得られる利益を差引いた差額を損害の額とする。
二.侵害者が侵害行為によって得た利益による。侵害者がそのコスト、又は必要な経費について
立証できないときは、当該物品を販売して得た収入の全部をその所得利益とする。
前項規定のほか、特許権者の業務上の信用が侵害行為により減損されたときは、別途相当金額の
賠償を請求することができる。
前二項の規定により侵害行為が故意になされたときは、裁判所は侵害の状況を斟酌して損害額以
上の賠償額を決定することができる。但し、損害額の三倍を超えることはできない。
第86条 他人の特許権を侵害するために使用された物、又はその行為により生じた物については、侵害
された者の請求により、仮差押えをし、賠償の判決があった後に、賠償金の全部又は一部にこれを充
当することができる。
当事者が前条の起訴及び本条の仮差押えの申立をしたときは、裁判所は民事訴訟法の規定により訴訟に
よる救済を許可しなければならない。
第87条 製造方法に係る特許により製造された物品が、その製造方法の特許出願前に国内外において発
見されなかったものであるときは、他人が製造した同一物品はその方法特許によって製造されたもの
と推定する。
前項の推定は、反証を提出してそれを翻すことができる。被告が当該同一物品の製造に使用された方法
は製造方法特許と異なることを立証したときは、反証が提出されたものとする。被告が立証する際に
掲示される製造上及び営業上の秘密の合法的権益は、十分に保障されなければならない。
第 88 条
発明特許に係る訴訟案件について、裁判所は判決書の正本を一部特許主務官庁に送付しなければな
らない。
第 89 条
被侵害者は、勝訴判決が確定した後、裁判所に対して敗訴者の費用負担において判決書の全部又は
一部を新聞紙に掲載するよう裁定の申立をすることができる。
第 90 条
特許権に関する民事訴訟は、出願案、無効審判の請求、取消の請求が確定するまで裁
56
判を停止させることができる。
裁判所は前項の規定によって審判停止を裁定するときは、無効審判提出の正当性に注意しなけれ
ばならない。
侵権訴訟の審理に関わる無効審判は主務官庁はそれを優先して審査することができる。
第 91 条
認許を経ていない外国法人又は団体は、本法が規定する事項については民事訴訟を提起することが
できる。但し、条約又はその本国の法令、慣例により、中華民国国民又は団体が同国において同等な
権利を受けられる場合に限る。団体又は機構が相互に特許を保護する協議を取り決めており、主管官
庁の許可を受けた場合も同様とする。
第 92 条
裁判所は、発明特許に係る訴訟案件を処理するために専門の法廷を設け、又は専門の担当者を指定
して処理させることができる。
司法院は特許侵害鑑定の専門機構を指定することができる。
裁判所は発明特許訴訟案件を受理するときは、前項の機構を嘱託して鑑定させることができる。
■特許権侵害刑事罰則--すべて廃止
▲留意事項:2001年10月付け特許法第123条、第124条及び第127条発明特許の刑事罰則に関する条文が
全面削除される運びとなっている。削除された条文は下記の通りである。第125条,126
条、128条、129条及び131条ら実用新案と意匠の侵害に対する刑事罰の規定も2003年4月1
日より廃止された。
第123条 物品の発明に係る特許権者の同意を得ないで当該物品を製造したことにより、その特許権を
侵害したときは、新台湾ドル60万元以下の罰金に処する。
第124条 方法の発明に係る特許権者の同意を得ないで当該方法を使用したことにより、その特許権を
侵害したときは、新台湾ドル30万元以下の罰金に処する。
第127条 特許権者の同意を得ないで製造した物であることを明らかに知りながら、それを販売し、又
は販売を意図して陳列し、又は販売を意図して外国から輸入したときは、新台湾ドル6万元以
下の罰金に処する。
第125条 実用新案権者の同意を得ないで、実用新案に係る物品を製造したことにより、その実用新案
権を侵害したときは、2年以下の有期懲役、拘留、若しくは新台湾ドル15万元以下の罰金に処
し、又はこれを併科する。
第126条 意匠権者の同意を得ないで、意匠に係る物品を製造したことにより、意匠権を侵害したとき
は、1年以下の懲役、拘留、若しくは新台湾ドル6万元以下の罰金に処し、又はこれを併科す
る。
第128条 実用新案権者の同意を得ないで製造した物品であることを明らかに知りながら、それを販売
し、又は販売を意図して陳列し、販売を意図して外国から輸入したときは、6ヵ月以下の有期
懲役、拘留、又は新台湾ドル3万元以下の罰金に処する。又は上記罰金を併処する。
第129条 意匠権者の同意を得ないで製造した物品であることを明らかに知りながら、それを販売し、
又は販売を意図して陳列し、販売を意図して外国から輸入したときは、拘留若しくは新台湾
ドル1万5千元以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第130条 第83条の規定に違反した者は、6ヵ月以下の有期懲役、拘留、若しくは新台湾ドル5万元以下
の罰金に処し、これを併科する。
第131条
①本章の罪は第130条を除くほか、親告罪とする。
②特許権者が第123条から第126条までの規定により告訴を提起したときは、侵害鑑定報告書
及び特許権者の侵害者に対する侵害排除請求の書面通知を提出しなければならない。
③前項書類を提出しないときはその告訴を不適法とする。
④司法院と行政院は協調して、侵害鑑定の専門機構を指定しなければならない。
● 商標法上の民事侵害責任と虚偽表示禁止処罰規定
■商標権民事侵害責任
第 61 条
商標権者はその商標権を侵害したものに対し、損害賠償を請求することができ、その侵害
排除を請求することができる。侵害のおそれがあるときは、その防止を請求することができる。
商標権者の同意を得ず、第 29 条第2号の各規定の一に該当するときは、商標権を侵害するものとする。
商標権者が第1項の規定により請求を行うときは、商標権侵害に係る物品又は侵害行為に用いられた
原料又は器具に対し、廃棄又はその他の必要な処置を請求することができる。
57
第 62 条
商標権者の同意を得ず、次に掲げる事情の一に該当するものは、商標権を侵害するものと
みなす。
一、他人の著名な登録商標であることを明らかに知りながら同一又は類似の商標を使用し、又は当該
著名商標にある文字を自らの会社名、商号名、ドメイン名又はその他の営業主体として使用し、又は
出所の標識として、著名商標の識別性又は信用・名声に損害を生じさせるとき
二、他人の登録商標であることを明らかに知りながら、当該商標にある文字を自らの会社名、商号名、
ドメイン名又はその他の営業主体として使用し、又は出所の標識として、商品又は役務に関連する消
費者に誤認混同を生じさせるとき
第 63 条
商標権者が損害賠償を請求するときは、次の各号に掲げる一を選択してその損害を計算す
ることができる。
一、民法第 216 条の規定による。ただし、その損害を証明する証拠方法を提供できないときは、商標
権者はその登録商標を使用することにより通常得られる利益から、侵害された後に同一の商標を使用
して得た利益を差し引いた差額をもって損害額とすることができる
二、商標権侵害行為により得た利益による。商標権侵害者がその原価又は必要経費を挙証できないと
きは、当該商品を販売した収入の全部をその所得利益とする
三、押収した商標権侵害にかかる商品の販売単価の 500 倍から 1500 倍迄の金額を損害額とする。但し、
押収した商品が 1500 個を越えるときは、その総額で賠償金額を定める
前項の賠償金額が明らかに相当しないときは、裁判所がそれを参酌し減額することができる。
商標権者の業務上の信用・名声が侵害により損害されたときは、別途相当する賠償額を請求すること
ができる。
第 64 条
商標権者は、商標権侵害者に商標権侵害案件の判決書全文又は一部を新聞に掲載する費用
の負担を請求することができる。
第 65 条
商標権者は輸入又は輸出において商標権を侵害する物品に対し、税関に予め差押を申請す
ることができる。
前項の申請は、書面を以って行い、侵害事実を釈明しなければならず、税関
において当該輸入貨物の CIF 価格又は輸出貨物の FOB 価格の保証金相当又は相当の担保を提供する。
税関が差押申請を受理したときは、速やかに申請人へ通知しなければならない。前項の規定を具備す
るものと認定し、差押を実施するときは、書面を以って申請人及び被差押人へ通知しなければなら
ない。
被差押人は、第 2 項の保証金額の倍額の保証金又は相当の担保を提供し、税関へ差押の取消及び輸出
入貨物の通関に関する規定による処分を請求することができる。
税関は対象の差押物件の機密資料を保護する状況において、申請人又は被差押人の申請によりその差
押物件を検閲することができる。
差押物件に関して、申請人が裁判所により商標権侵害の確定判決を受けた場合、第 66 条第 4 項の規定
に該当するものを除き、被差押人は差押物件の貨物延滞費、倉庫賃貸費、積み卸し費用等の関連費
用を負担しなければならない。
第 66 条
次に掲げる情況の一に該当するものは、税関は差押を取消さなければならない。
一、申請人が税関の差押通知を受理した日から 12 日以内に、第 61 条の規定により差押物件を侵害物
件として訴訟を提起せず、税関へ通知しなかったとき
二、申請人が差押物件を侵害品として訴訟を提起し、裁判所の裁定により請求棄却が確定したとき
三、差押物件が裁判所による確定判決を経て、商標権侵害に該当しないとされたとき
四、申請人が差押の取消を申請したとき
五、前条第 4 項の規定に該当するとき
前項第 1 号に規定する期限は、税関は必要により 12 日の延長をすることができる。
税関が第 1 項の規定により差押を取り消すときは、輸出入貨物の通関に関連する規定により処理しな
ければならない。
第 1 項第 1 号乃至第 4 号の事由により差押を取り消す場合、申請人は差押物件の貨物延滞費、倉庫賃
貸費、積み卸し費用等の関連費用を負担しなければならない。
第 67 条
差押物件が裁判所の判決を経て商標権侵害に該当しないと確定したときは、申請人は被差
押人が貨物を差押えられたことにより、又は第 65 条第 4 項の規定により提出した保証金で受けた
損害を賠償しなければならない。
申請人は第 65 条第 4 項に規定する保証金について、被差押人は第 65 条第 2 項に規定する保証金につ
58
いて、質権者と同一の権利を有する。ただし、前条第 4 項及び第 65 条第 6 項に規定する貨物延滞
費、倉庫賃貸費、積み卸し費用等の関連費用は、申請人又は被差押人の損害を優先して賠償する。
次に掲げる情況の一に該当するときは、税関は申請人の申請により第 65 条第 2 項に規定する保証金を
返還しなければならない。
一、申請人が勝訴の確定判決を受け、又は被差押人との和解が成立し、すでに保証金の提供を継続す
る必要がなくなったとき
二、前条第1項第1号乃至第 4 号に規定する事由により差押が取消され、被差押人が損害を被るに至
った後、又は被差押人が勝訴の確定判決を受けた後、申請人が 20 日以上の期間を定め被差押人へ
権利行使を催促しても行使しなかったことを証明したとき
三、被差押人が返還に同意したとき
次に掲げる一の情況に該当するときは、税関は被差押人の申請により第 65 条第 4 項に規定する保証金
を返還しなければならない。
一、前条第1項第1号乃至第 4 号に規定する事由により差押が取消され、又は被差押人と申請人との
和解が成立し、すでに保証金の提供を継続する必要がなくなったとき
二、申請人が勝訴の確定判決を受けた後、被差押人が 20 日以上の期間を定め申請人へ権利行使を催促
しても行使しなかったことを証明したとき
三、申請人が返還に同意したとき
第 68 条
前 3 条に規定する差押申請、差押取消、差押物件の検閲、保証金又は担保の納付、提供と
返還の手続き、必要書類及びその他の遵守事項にかかる規定については、主務官庁が財政部と共に
これを定める。
第 69 条
第 33 条の規定により商標の使用許諾を受けたものは、その使用権が損害を被った場合は、
本章の規定を準用する。
第 70 条
外国法人又は団体でも認許を受けたものに限らず、本法に規定する事項について告訴、自
訴又は民事訴訟を提起することができる。
第 71 条
裁判所が商標訴訟案件を処理するために、専門の法廷を設立し、又は専任者を指定して処
理することができる。
■商標法刑事罰則
第 81 条
商標権者又は団体商標権者の同意を得ず、次に掲げる情況の一に該当するものは、3 年以下
の有期懲役、拘留、又は 20 万元以下の罰金を科し又は併科する。
一、同一商品又は役務において、同一の登録商標又は団体商標を使用したとき
二、類似商品又は役務において、同一の登録商標又は団体商標を使用し、関係する消費者に誤認混同
を生じさせるおそれがあるとき
三、同一又は類似商品又は役務において、その登録商標又は団体商標と類似する商標を使用し、関係
する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるとき
第 82 条
前条の商品であることを明らかに知りながら販売し、販売の意図をもって陳列し、輸出又
は輸入したものは、一年以下の有期懲役、拘留、又は新台湾ドル 5 万元以下の罰金を科し又は併科す
る。
第 83 条
前 2 条の罪を犯して製造、販売、陳列、輸出又は輸入した商品又は役務の提供に使用した
物品又は書類は、犯人が所有するものかを問わず、これを没収する。
● 刑法上の虚偽表示罪と文書偽造罪
第253条
第254条
商標や商号の偽造模倣罪――2年以下の懲役、罰金。
偽造、又は模倣した商標や商号の商品を故意に陳列し、販売し又は輸入する者を処罰する罪
――新台湾ドル6千元以下の罰金。
第255条 商品の原産国又は品質について虚偽の表示をした場合――1年以下の懲役及び罰金新台湾ド
ル3千元以下。
第210条 私文書を偽造或いは変造する罪――5年以下の懲役。
第216条 変造や偽造した私文書を行使する罪――偽造と変造の罪に準じて処罰する。
59
● 著作権法
■著作権侵害民事責任規定
第 84 条 著作権者又は出版権者は、その権利を侵害した者に対し、その侵害の排除を請求することがで
きる。侵害のおそれがあるときは、その防止を請求することができる。
第 85 条 著作人格権を侵害した者は、損害賠償の責任を負わなければならない。財産上の損害ではない
場合においても、被害者は相当の金額の賠償を請求することができる。
2 前項の侵害について、被害者は著作者の氏名若しくは名称の表示、内容の訂正又はその他名誉回復に
適当な処分を請求することができる。
第 86 条 著作者が死亡した後にその遺言状に別段の指定がないかぎり、次に掲げる者は、順位に従って
第 18 条に違反し又は違反のおそれがある者に対し、第 84 条及び前条第 2 項の規定により、救済を請
求することができる。
一. 配偶者
二. 子女
三. 父母
四. 孫、孫女
五. 兄弟姉妹
六. 祖父母
*第 87 条
次の各号のいずれかに該当するときは、この法律に別段の定めがある場合を除き、著作権又
は出版権を侵害したものとみなす。
一. 削除
二. 出版権の侵害に係るものであることを明らかに知っていながら、それを頒布し、又は頒布を意図し
て公開に陳列し若しくは所持していたとき。
三. 著作財産権者又は出版権者から複製についての許諾を受けない複製物又は出版物を輸入したとき。
四. 著作財産権者の同意を得ないで著作物の原作品若しくはその複製物を輸入したとき。
五. コンピュータプログラムに関する著作財産権の侵害に係る複製物であることを明らかに知っていな
がら、営業のために使用したとき。
六. 著作財産権侵害に係るものであることを明らかに知っていながら、所有権を移転し、または賃貸し、
頒布し、又は著作財産権侵害に係るものであることを明らかに知っていながら、頒布を意図して公開
に陳列し若しくは所持していたとき。
第 87 条ノ 2 次の各号のいずれかに該当するときは、前条第 4 号の規定を適用しない。
一. 中央又は地方機関の利用に供するために輸入したとき。但し学校又はその他の教育機構の利用に供
するために輸入し、又は資料保存を目的とせずに映画著作物の原作品若しくはその複製物を輸入した
ときは、この限りでない。
二. 営利を目的としない学術、教育若しくは宗教機構の資料保存のため、映画著作物の原作品若しくは
一定の数量の複製物を輸入し、又はその図書館での借覧若しくは資料保存の目的で映画著作物以外の
その他の著作物の原作品若しくは一定の数の複製物を輸入し、かつ第 48 条の規定によりこれを利用
しなければならないとき。
三. 輸入者の個人的使用に供するため、又は入国者の荷物の一部として著作物の原作品若しくは一定の
数量の複製物を輸入したとき。
四. 貨物、機器、若しくは設備に付けられた著作物の原作品若しくはその複製物であって、貨物、機器
若しくは設備の合法的輸入とともに輸入されたときは、当該著作物の原作品若しくはその複製物を使
用する際、又は貨物、機器若しくは設備を操作する際には、それを複製してはならない。
五. 貨物、機器又は設備の案内書又はマニュアルに付属して貨物、機器又は設備の合法的輸入とともに
輸入されたとき。但し、主に案内書又はマニュアルを輸入したときは、この限りでない。
2 前項第 2 号及び第 3 号の一定の数量は、主務官庁が別途これを定める。
*第 88 条
故意又は過失により他人の著作財産権又は出版権を不法に侵害した者は、損害賠償の責任を
負う。数人が共同で不法に侵害したときは賠償の連帯責任を負う。
2 前項の損害賠償につき、被害者は次の規定により択一して請求することができる。
一. 民法第 216 条の規定により請求する。但し、被害者がその損害を証明できないときは、その権利の
行使により通常の情況からして予期できる利益から、侵害を受けた後に同一権利を行使して得た利益
を差引いた差額をもってその受けた損害の額とすることができる。
二. 侵害者に対し侵害行為により得た利益を請求する。但し、侵害者がその原価又は所要費用を証明で
きないときは、その侵害行為により取得した全部の収入をその得た利益とする。
3 前項の規定により、被害者が容易にその実際の損害額を証明できないときは、裁判所に対して侵害の
情状を斟酌して新台湾ドル 1 万元以上 100 万元以下の賠償額を算定するよう請求することができる。
損害行為が故意に為され、かつ情状が重大な場合は、賠償額を新台湾ドル 500 万元にまで増やすこと
ができる。
第 88 条ノ 2
第 84 条若しくは前条第 1 項により請求するときは、侵害行為により製作された物、若し
60
くは主として侵害の用途に使われた物について、焼却廃棄その他の必要な処置を請求することができ
る。
第 89 条
被害者は侵害者の費用負担において、判決書内容の全部又は一部を新聞紙、雑誌に掲載する
ことを請求することができる。
第 89 条ノ 2
第 85 条及び第 88 条の損害賠償請求権は、請求権者が損害のあったこと及び賠償義務の
ある人を知った時点から起算して 2 年間行使しないことにより消滅する。権利侵害行為のあった時点
から起算して 10 年間を超えたときも同様である。
第 90 条
共同著作物の各著作権者は、その著作物を侵害した者に対し、それぞれ本章の規定により救
済を請求し、並びにその持分に基づき、損害賠償を請求することができる。
2 前項の規定は、その他の関係により成り立つ共同著作財産権若しくは出版権の共有者においてもこれ
を準用する。
第 90 条ノ 2
著作権者又は出版権者は、その著作権若しくは出版権の侵害に係る物品を輸入し、若し
くは輸出した者に対し、あらかじめ税関に差押えを申し立てることができる。
2 前項の申立ては書面をもってこれをし、侵害の事実を釈明するとともに、差押処分を受ける者が差押
えにより蒙った損害の賠償の担保として、その輸入貨物について税関が見積った税金完納後の価格又
は輸出貨物の本船渡し価格に相当する保証金を提供しなければならない。
3 税関が差押えの申し立てを受理したときは、直ちに申立人に通知しなければならない。前項規定に適
合して差押えを行うときは、書面をもって申立人及び差押えを受ける者に通知しなければならない。
4 申立人又は差押え処分を受けた者は、税関に対し差押えられた物件の検査を申し立てることができる。
5 差し押えられたものについて、申立人が裁判所の民事確定判決を経て著作権又は出版権の侵害に係る
ものとされたときは、税関がこれを没収する。没収された物のコンテナ使用期間超過料金、倉庫賃貸、
積み卸し等の関連費用及び焼却廃棄処分に要する費用は、差押処分を受けた者が負担しなければなら
ない。
6 前項の焼却廃棄処分に要する費用に関し、税関が期間を限定して納付することを通知しても納付のな
いときは、法により移送して強制執行を行う。
7 次の各号のいずれかに該当するものは、税関が差押処分を廃止し、輸出入貨物の通関に関連する規定
により処理するほか、申立人は差押処分を受けた者が差押えにより蒙った損害を賠償しなければなら
ない。
一. 差し押えられたものが、裁判所の確定判決を経て著作権又は出版権を侵害したものに当たらないと
判断されたとき。
二. 税関が申立人に差し押えの受理を通知した日から 12 日内に、差し押えの物件を侵害物品とする訴訟
が提起された旨の告知を受けなかったとき。
三. 申立人から差押処分廃止の申立てがあったとき。
8 前項第 2 号に定める期間は、必要なときに税関がこれを 12 日間延長することができる。
9 次の各号のいずれかに該当するものは、税関は申立人の申立てにより保証金を返還しなければならな
い。
一. 申立人が勝訴の確定判決を取得し、又は差し押えを受けた者との間に和解が成立し、引続き保証金
を提供する必要がなくなったとき。
二. 差押処分廃止後、申立人は、20 日以上の期間を定めて差押処分を受けた者に権利の行使を催告した
にもかかわらず、権利行使の行為がなかったことを証明したとき。
三. 差押処分を受けた者が返還に同意したとき。
10 差押えを受けた者が、第二項の保証金につき、質権者と同一の権利を有する。
第 90 条ノ 3
前条の実施方法は、主務官庁が財政部と共同でこれを定める。
*第 90 条ノ 4 第 80 条ノ 2 の規定に違反して著作権者に損害を生じさせたものは、賠償責任を負う。数
人が共同して違反したときは、賠償の連帯責任を負う。
2 第 84 条、第 88 条ノ 2、第 89 条ノ 2 及び第 90 条ノ 2 の規定は、第 80 条ノ 2 の規定に違反した場
合において準用する。
■著作権法刑事罰則
*第 91 条 営利を目的として複製の方法により他人の著作財産権を侵害した者は、5 年以下の懲役、拘留
に処し、又は新台湾ドル 20 万元以上 200 万元以下の罰金を併科する。
2 非営利目的で複製の方法により他人の著作財産権を侵害し、その複製の部数が五点を超え、又は摘発
された時点で合法的複製物の時価にしてその侵害総額が新台湾ドル 3 万元を超えたときは、3 年以下
の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 75 万元以下の罰金を科し又はこれを併科する。
3 光ディスクに複製する方法により、第 1 項の罪を犯したものは、5 年以下の懲役、拘留に処し、又
は新台湾ドル 50 万元以上 500 万元以下の罰金を併科する。
*第 91 条ノ 2 営利を目的として所有権を移転する方法により著作物の原作品又はその複製物を頒布し
他人の著作財産権を侵害したものは、3 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 75 万元以下の
61
罰金を科し又はこれを併科する。
非営利目的で所有権を移転する方法により著作物の原作品又はその複製物を頒布し、又は頒布を意
図して公開に陳列し若しくは所持し、他人の著作財産権を侵害した場合、頒布の部数が五点を超え、
又は摘発された時点で合法的複製物の時価にしてその侵害総額が新台湾ドル 3 万元を超えるときは、
2 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 50 万元以下の罰金を科し又はこれを併科する。
3 第 1 項の罪を犯し、その複製物が光ディスクであるときは、3 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台
湾ドル 150 万元以下の罰金を科する。
2
前項の罪を犯した者がその物品の出所を供述し、これにより(捜査機関による)検挙が成功した
ときは、その刑を軽減することができる。
*第 92 条
営利を目的として公開口述、公開放送、公開上映、公開実演、公開伝送、公開展示、改作、
編集又は貸与の方法により他人の著作財産権を侵害した者は、3 年以下の懲役、拘留に処し、又は新
台湾ドル 75 万元以下の罰金を併科する。
2 非営利目的で前項の罪を犯し、その侵害した著作物が五点を超え、又は権利者が受けた損害が新台湾
ドル 3 万元を超えるときは、2 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 50 万元以下の罰金を科
し又はこれを併科する。
*第 93 条
営利を目的としてなされ、次に掲げる場合のいずれかに該当するものは、2 年以下の懲役、
拘留に処し、又は新台湾ドル 50 万元以下の罰金を併科する。
一. 第 70 条の規定に違反したとき。
二. 第 87 条第 2 号、第 3 号、第 5 号又は第 6 号の方法により他人の著作財産権を侵害したとき。
2 非営利目的で前項の罪を犯し、その複製物が五点を超え、又は権利者が受けた損害が新台湾ドル 5
万元を超えるときは、1 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 25 万元以下の罰金を科し又は
これを併科する。
*第 94 条
第 91 条第 1 項、第 2 項、第 91 条ノ 2、第 92 条又は第 93 条に定める犯罪を業とする者は、
1 年以上 7 年以下の懲役に処し、並びに新台湾ドル 30 万元以上 300 万元以下の罰金を併科すること
ができる。
2 第 91 条第 3 項に定める犯罪を業とする者は、1 年以上 7 年以下の懲役に処し、並びに新台湾ドル
80 万元以上 800 万元以下の罰金を併科することができる。
*第 95 条 第 112 条の規定に違反したものは、1 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 2 万元以
上 25 万元以下の罰金を科し又はこれを併科する。
第 96 条 第 59 条第 2 項又は第 64 条の規定に違反したものは、新台湾ドル 5 万元以下の罰金を科する。
*第 96 条ノ 2 第 80 条ノ 2 に違反したものは、1 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 2 万元以
上 25 万元以下の罰金を科し又はこれを併科する。
*第 96 条ノ 3 本章により罰金を科するときは、犯人の資力及び犯罪収益を斟酌しなければならない。
犯罪収益が罰金の最も多い額を超えるときは、その犯罪収益の範囲内で情状を考慮して加重すること
ができる。
第 97 条 削除
*第 98 条 第 91 条から第 96 条ノ 2 までの規定に定める犯罪に関し、犯罪の用途に供され、又は犯罪に
より得た物は、これを没収することができる。但し、第 91 条第 3 項及び第 91 条ノ 2 第 3 項に定める
犯罪に関し、没収し得る物は犯人に属するものに限らない。
*第 98 条ノ 2 第 91 条第 3 項又は第 91 条ノ 2 第 3 項に定める犯罪を犯した行為者が逃げ失せ、確認す
るすべがない場合、犯罪の用途に供され、又は犯罪により得た物について、司法警察機関は直接これ
を官没することができる。
2 前項官没に係る物について、官没された金員を国庫に納めるほかは、これを焼却する。その焼却又
は官没金の処理手続については、社会秩序保護法の関連規定を準用してこれを行う。
第 99 条 第 91 条から第 95 条までの罪を犯した者は、被害者その他告訴権を有する者の申立により、判
決書の全部又は一部を新聞紙に掲載させることができ、その費用は被告の負担とする。
*第 100 条 本章の罪は告訴をまって論ずる。但し、第 91 条第 3 項、第 91 条ノ 2 第 3 項及び第 94 条の
罪はこの限りでない。
*第 101 条 法人の代表者、法人若しくは自然人の代理人、又は被用者その他の従業員が、業務の遂行に
より第 91 条から第 96 条ノ 2 までの罪を犯したときは、各当該規定によりその行為者を処罰するほか、
当該法人又は自然人に対しても各当該条文に定める罰金を科する。
2 前項の行為者、法人又は自然人の一方に対して為した告訴又は告訴の取り下げは、他方にも効力が及
ぶ。
*第 102 条 認許を受けない外国法人は、第 91 条から第 96 条ノ 2 までの罪に対して告訴し又は自訴を提
起することができる。
第103条 司法警察官又は司法警察は、他人の著作権又は出版権を侵害することで告訴され、告発された
者に対して、法によりその侵害物品を差押え、送検することができる。
2
62
● 公平取引法の罰則
■公平取引法民事責任規定
第 30 条 権利保護
事業者が本法の規定に違反し、他人の権益を侵害した場合、被害者はそれを排除することを請求する
ことができる。また侵害のおそれがあるときは、その防止を併せて請求することもできる。
第 31 条 権利侵害行為の責任
事業者が本法の規定に違反し、他人の権益を侵害した場合は、損害賠償の責任を負わなければならな
い。
第 32 条 損害賠償の計算
裁判所は前条被害者の請求により、事業者の故意による行為である場合、侵害の情状を斟酌して損害
額以上の賠償額を定めることができる。但し、すでに立証された損害額の三倍を超過してはならない。
侵害者が侵害行為によって利益を受けている場合、被害者は専ら当該利益について損害額を計算する
ことを請求することができる。
第 33 条 消滅時効
本章に定める請求権は、請求者が行為及び賠償義務者を知った時から二年間、これを行使しないこと
によって消滅する。行為の時から十年間を経過したときも同様である。
第 34 条 判決書内容の公開
被害者が本法の規定により裁判所に裁判を起こしたときは、侵害者の費用負担において判決書の内容
を新聞紙に掲載することを請求することができる。
■公平取引法の行政罰と刑事罰則
第 35 条 独占、連合及び模倣行為の処罰
第 10 条、第 14 条、第 20 条第 1 項の規定に違反したときは、中央主務官庁が第 41 条の規定により
期限を定めてその行為の停止、改善又は必要な是正措置を命じたにもかかわらず、期間を超えてその
行為の停止、改善をせず、又は必要な是正措置を講ぜず、又は停止した後に再び同一若しくは類似の
違反行為をしたときは、行為者に対して三年以下の有期懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル一億元以
下の罰金を科し、又はこれを併科する。
第 23 条の規定に違反したものは行為者に対して三年以下の有期懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル一
億元以下の罰金を科し、又はこれを併科する。
第 36 条 公正競争妨害の処罰
第 19 条の規定に違反し、中央主務官庁が第 41 条の規定により期限を定めてその行為の停止、改善
又はその是正に必要な措置を命じたにもかかわらず、期間を超えてその行為の停止、改善をせず、又
はその是正に必要な措置を講ぜず、又は停止した後再び同一若しくは類似の違反行為をしたときは、
行為者に対して二年以下の有期懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 5 千万元以下の罰金を科し又はこ
れを併科する。
第 37 条 商業上信用毀損の処罰
第 22 条の規定に違反したものは、行為者を一年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 5 千万
元以下の罰金を科し、又はこれを併科する。
前項の罪は親告罪とする。
第 38 条 法人に対する処罰
法人が前三ヶ条の罪を犯した場合は、前三ヶ条の規定によってその行為者を処罰するほか、当該法
人に対しても各該当条文の罰金を科する。
第 39 条 重罰
前四ヶ条の処罰が、他の法律においてより重い規定が置かれている場合は、その規定による。
第 40 条 事業結合規定違反に対する過料処分
事業者が第 11 条第 1 項、第 3 項の規定に違反して結合をし、又は届出後中央主務官庁からその結
合を禁止されているにもかかわらず結合をし、又は第 12 条第 2 項の結合に付けられた負担を履行し
ない場合、第 13 条の規定により処分するほか、新台湾ドル 10 万元以上 5000 万元以下の過料に処す
る。
事業の結合に関し、第 11 条第 5 項但し書第 2 号に定める場合に該当するときは、新台湾ドル 5 万
元以上 50 万元以下の過料に処する。
第 41 条 違法行為の期限付き停止又は改善
公平取引委員会は本法規定に違反した事業者に対して、期限を定めてその行為の停止、改善又はそ
の是正に必要な措置を命じ、並びに新台湾ドル 5 万元以上、2500 万元以下の過料に処することがで
きる。期限を超えても、なおその行為を停止、改善せず、又はその是正に必要な措置を講じなかった
ときは、引き続きその行為の停止、改善又はその是正に必要な措置を命じることができ、またその行
為が停止若しくは改善され、又はその是正に必要な措置が講じられるまで、回数に応じて連続して新
台湾ドル 10 万元以上、5000 万元以下の過料に処することができる。
63
第 42 条 違法な多層連鎖販売の処分
第 23 条の規定に違反したものは、第 41 条の規定により処分するほか、その状況が重大なものは解
散、営業停止又は強制休業を命ずることができる。
第 23 条ノ 1 第 2 項、第 23 条ノ 2 第 2 項又は第 23 条ノ 3 の規定に違反したものは、期限を定めて
その行為の停止、改善又はその是正に必要な措置を命じ、並びに新台湾ドル 5 万元以上、2500 万元
以下の過料に処することができる。期限を超えても、なおその行為を停止、改善せず、又はその是正
に必要な措置を講じなかったときは、引き続きその行為の停止、改善又はその是正に必要な措置を命
じることができ、またその行為が停止若しくは改善され、又はその是正に必要な措置が講じられるま
で、回数に応じて連続して新台湾ドル 10 万元以上、5000 万元以下の過料に処することができる。そ
の情状が重大なものは解散、営業停止又は強制休業を命じることもできる。中央主務官庁が第 23 条
ノ 4 により定めた管理規則に違反したものは、第 41 条の規定により処分する。
第 42 条ノ 1 営業停止期間
本法により処する営業停止の期間は、一回につき 6 ヶ月間に限る。
第 43 条 調査拒否の処罰
公平取引委員会が第 27 条の規定により調査を行うときに、調査を受ける者が期限内に正当な理由
がなく調査を拒否し、出頭して意見を陳述することを拒否し、又は関係帳簿、書類等の資料若しくは
証拠物件の提出を拒んだ場合、新台湾ドル 2 万元以上 25 万元以下の過料に処する。調査を受ける者
が再び通知を受けたにもかかわらず、正当な理由無しにこれを拒み続けた場合、公平取引委員会は引
き続き調査を通知し、並びに出頭して意見を陳述し、又は関係帳簿、書類等の資料若しくは証拠物件
の提出がなされるまで、回数に応じて連続して新台湾ドル 5 万元以上 50 万元以下の過料に処するこ
とができる。
第 44 条 過料の強制執行
前四ヶ条の規定により処された過料の納付を拒んだ者は、裁判所に移管して強制執行を行うものと
する。
● 消費者保護法
第22条
企業経営者は広告の内容の真実性を確保しなければならない。消費者に対して負う義務は広
告の内容より低下してはならない。
第23条 広告を掲載し又は報道するマスメディアの経営者は広告の内容が事実と一致しないことを明
らかに知り、又は知り得るべきときは、消費者が当該広告を信頼することにより受けた損害に
ついて、企業の経営者と連帯責任を負う。
第24条 ①企業経営者は商品表示法等の法令により商品又は役務の表示をしなければならない。
②輸入商品又は役務は中国語による表示及び説明書を添付しなければならず、その内容は原産地の表
示及び説明書より簡略であってはならない。
③輸入商品又は役務について、原産地で警告表示を付記したものは前項の規定を準用する。
第25条 ①企業経営者が消費者に対して商品又は役務の品質を保証するときは自ら進んで書面による
保証書を提出しなければならない。
②前項保証書には次に掲げる事項を明記しなければならない。
一.商品又は役務の名称、種類、数量。製造番号又は品番があるものはその製造番号又は品番。
二.保証の内容。
三.保証期間及びその起算方法。
四.製造業者の名称、住所。
五.販売取次業者によって売り出されるものはその取次業者の名称及び住所。
六.取引期日。
第26条 企業経営者は提供する商品についてその性質及び取引上の慣習に基づいて震動防止、防湿、
防塵又はその他商品を保存するために必要な包装をし、もって商品の品質及び消費者の安全を
確保しなければならない。但し、その内容を誇張し、又は過大な包装をしてはならない。
● 商品表示法
第5条
商品の表示には以下の事情があってはならない。1.内容が虚偽不実である。2.表示方法が誤
解を招く恐れがある。3.公共秩序と善良風俗に反したもの。
第8条 包装された商品が台湾で販売される場合、次の表示をすべきである。1.商品名称、2.製造者
の名称及び住所並びに輸入者の名称とその住所、3.商品の内容、4.製造日時及び有効期間、5.
その他中央標準機関が定めた規定。
第10条 下記の事項について主務官庁の許可がない限り表示してはならない。1.商標使用権許諾、2.
特許権、3.技術提携、4.その他法律により許可に基づいてしか表示できない事項。又特許権
に関する表示は特許名称及び証書の番号を明記すべきであり、技術提携に関する表示は有効期
間及び協力相手を明記すべきである。
第11条 輸出向けの商品は商品本体若しくは包装の上に中国語若しくは所定の外国語訳文を用いて産
64
地を表示すべきである。
第13条 商品表示に関する規定は、商品広告に準用する。
第14条 商品について法律に従って表示しない場合、各県と市若しくは直轄市の主務官庁が商品出所
の会社に対して改正又は陳列及び販売の停止を命じなければならない。
第15条 この法律の規定に違反して、主務官庁から改正若しくは停止の命令を受けた後においても遵
守しない者は、新台湾ドル50,000元以下の罰金又は営業の一時停止若しくは永久停止の処分に
処することができる。
● 営業秘密法
第9条
①公務員が公務の取扱により他人の営業秘密を知悉し又は保有したときは、これを使用し又は故なく
これを漏らしてはならない。
②当事者、代理人、弁護人、鑑定人、証人及びその他の関係者が司法機関の取調べ又は審理により他
人の営業秘密を知悉し又は保有したときは、これを使用又は故なく漏らしてならない。
③仲裁者及びその他の関係者が仲裁事件を処理するときは、前項の規定を準用する。
第10条 営業秘密の侵害様態の分類
1)不正な方法をもって営業秘密を取得したもの。(日本不正競争防止法第2条第4項相当)
2)前号の指す営業秘密であることを知りながら、又は重大な過失により営業秘密と知らずに、それを
取得、使用又は漏洩(不法開示)したもの。(日本不正競争防止法第2条第5項相当)
3)営業秘密を取得した後、当該営業秘密が第1号の営業秘密であることを知りながら、又は重大な過
失により、知らずにそれを使用又は漏洩するもの。(事後の故意)(日本不正競争防止法第2条第6
号相当)
4)法律行為により取得した営業秘密を不正な方法で使用し又は漏洩したもの。
5)法令により営業秘密を保持する義務がある者がそれを使用又は理由なくして漏洩する場合。
第 11 条 ①営業秘密が侵害されたとき、被害者はその侵害の排除を請求することができる。侵害の虞
あるときは、その防止を請求することができる。
②被害者が前項の請求をしたとき、侵害行為により作成したもの又は専ら侵害の行為に供したものの
廃棄処分又はその他必要な措置を請求することができる。
第 12 条 ①故意又は過失により不法に他人の営業秘密を侵害した者は、損害賠償の責任を負う。数人
が共同で不法に侵害したときは、連帯損害賠償の責任を負う。
②前項の損害賠償請求権は、請求権者が侵害行為のあったこと及び賠償義務者を知った時から2年間行
使いないときは、時効によって消滅する。侵害行為の時から10年を経過したときも、同様である。
第 13 条 ①前条により損害賠償を請求したとき、被害者は、左の各号に掲げる規定より、一つを選択
して請求することができる。
一.民法第 216 条の規定により請求する。但し被害者がその損害を立証できないときは、通常それを
使用するときに予期できる利益から、侵害された後に同一の営業秘密を使用して得た利益を差し
引いて得た差額をその受けた損害の額とすることができる。
二.侵害者が侵害行為によって取得した利益を請求する。但し、侵害者がそのコスト又は必要な費用
を立証できないときは、その侵害行為によって取得した全部の収入をその所得利益とする。
②前項の規定により侵害行為が故意になされたときは、裁判所は被害者の請求によりその侵害された
情状を考慮して損害額以上の賠償を算定することができる。
③但し、既に立証された損害額の三倍を超過してはならない。
第 14 条 ①営業秘密に係る訴訟事件を審理するために、裁判所は専門の法廷を設け又は専門の担当者
を指定して審理させることができる。
②当事者が提出した攻撃又は防禦方法が営業秘密に関わる場合においては、当事者が申立てをしたう
え、裁判所がそれを妥当と認めたときは、裁判を公開せず、又は訴訟資料の閲覧を制限することが
できる。
● 集積回路回路配置保護法
第29条 権利者の侵害に対する救済権能
権利者自身が回路配置権の侵害に対する救済権能を有する以外に、独占(専用)実施権の権利者の
権能も事前に権利者本人に請求してから救済の権利を行使出来る。救済権の権能は侵害排除(差止)
請求権、侵害防止請求権及び損害賠償請求権。侵害品を使用する完成品を扱う悪意第三者或は証拠に
よって知り得べかりし第三者が不法複製にかかる回路配置によって作成された集積回路に関して、商
業目的で輸入或は頒布をする場合も、回路配置権の侵害とみなす(但し集積回路が製品と分離された
場合はその限りでない)。又、侵害救済権の行使の際、鑑定書添付の義務がある。複数の侵害者は、
連帯損害賠償の債務を負う。その外、第18条第4号の善意第三者に対して侵害事実の通知及び鑑定書を
送付した後、当人がその行為を商業目的で継続した場合、回路配置権者はその第三者に対して通常利
65
用によって徴収しうる実施料に相当する額を損害賠償金額として請求できる。
第30条 損害賠償額の計算(推定)
損害賠償金額の算定基準は次のように明文で規定されている。
(1)民法第216条によって損害を具体的に証明する。証明できない場合は通常得べかりし利益と侵害
を受けてから同一回路配置を利用する場合に得られる利益の差額を損害とする。
(2)侵害者が侵害によって得た利益。侵害者のコスト又は必要費用を立証しにくい場合は、その回路
配置自体或はそれを含む集積回路全体の販売によって得た収入の全数をその利益とする。
(3)請求により裁判所が状況を斟酌して、NT$500万元以内に決定した金額を損害額とする。
第32条 侵害者の謝罪広告掲載の責任
第33条
①外国法人や団体の民事訴訟提起権利
②特許法や商標法などと同じく、集積回路設計権の侵害訴訟に関する権利の行使は、台湾で認可を得
ていない外国法人または団体にも認められている。
●コンピュータ処理による個人データ保護法
第27条
①公務機関がこの法律の規定に違反して当事者の権利に損害を与えたときは、損害賠償の責を負わな
ければならない。
②非財産上の損害につき、相当の金額の賠償を請求できる。名誉が侵害された場合、名誉回復の適切
な処分を請求できる。
③前2項の損害賠償の計算につき、被害者一人に対してNT$2万元より10万元までの金額を基準とする。
④同一原因事実における当事者全員に対する損害賠償の責任は、最高NT$2,000万元に止まるとする。
第28条
①非公務機関がこの法律の規定に違反して当事者の権利を損害した場合、損害賠償の責を負わなけれ
ばならない。
②賠償金額の基準については前条に従う。
第34条 ①法令違反で他人に損害を与えた者に対する罰則。
②一年以下有期懲役、拘留又は新台湾ドル2万元以下の罰金を科する。
第35条 ①個人資料データの正確性を害する者に対する罰則。
②三年以下有期懲役、拘留又は新台湾ドル5万元以下の罰金を科する。
66
1-4-2
権利基礎と権利内容
付録 2
侵害
権利根拠
侵害行為の分類と刑事罰則及び民事責任の一覧表(数字は各法律の条文番号)
製造
販
陳
輸
輸
使
頒
虚偽
模倣
権利行使条 差止請求権/損 処罰方法/ 仮差押え 処罰方 処罰方法/判 専門
行為
複製
売
列
入
出
用
布
広告
不正取得
件/鑑定書
害額の計算基
侵害排
類型
模倣
表示
漏えい
送付
準
盗用
特許
56、57
123
権侵
124
害
127
実用
上記と同じ
125
127
127
127
124
130
131Ⅱ~Ⅳ
84~86
法/業務 決書の新聞
法廷
法人
除・侵害物
上信用
の設
の訴
品の廃棄、
毀損賠
置
訟権
没収
償
84
規定
外国
86
85Ⅱ
での掲載
88
91
89
128
128
128
130
131Ⅱ~Ⅳ
上記と同じ
86
85Ⅱ
新案
88
91
89
権侵
害
意匠
上記と同じ
126
129
129
129
130
131Ⅱ~Ⅳ
上記と同じ
86
85Ⅱ
権侵
88
91
89
害
商標
27
権侵
29Ⅱ
害
30
集積
15
回路
16
配置
17
82
82
82
82
81
81
63
61
63Ⅲ
64
71
70
32
34
33
63Ⅱ
31
29
32
30
36
11
14
15
81
102
権
営業
2~4
秘密
7
10
12
13
著
84
91
85~88
84
作
85
92~99
89-1
88-1
権
86
90-1
85
89
82
103
90-1
著名
商標法 23(12)
商標
公取法
商標法 23(12)
公取法 25~29
公取法
30~34
公取法 34
20、24、35
20、24、35
氏
公取法
公取法
公取法 25~29
名
20、24、35
20、24、35
30~34
権
67
公取法 34
トレ
公取法
公取法
公取法 25~29
−ド
20、24、35
20、24、35
30~34
ドレ
ス
商業
商標法 63Ⅱ
上の
信用
[表記方法]
例:
89Ⅱ:
第 89 条第 2 項
37(7):
第 37 条第 7 号
90-1:
第 90 条ノ 1
公取法: 公平取引法
68
公取法 34
刑事告訴前の準備作業
すべての法的手段の前提は法律事実に立脚する。その意味では、刑事告訴だけではなく、民事訴訟の
提訴,または訴訟前の警告や交渉などをはじめる前に、法律効果をもたらす事実、すなわち法律事実を
明確に把握することが必要である。又,特定の法律事実を明確に立証するための証拠も周到に確保する
必要がある。
3-1 証拠収集--法律事実の把握とそれを立証する証拠を確保
3-1-1 証拠収集の端緒
1.侵害事件の形跡を発見する
何等かの情報源によって権利侵害の形跡が現れた場合、権利者は追跡調査をして、自ら犯人を
探し出す方法も有るが、普通は知的財産権侵害事件専門の特許法律事務所を通して調査会社に証
拠の収集を依頼して、刑事告訴或いは民事の法律手段の準備を整える。時折、お節介な興信所は
商売気から針小棒大な情報を売り込んでくることもあるので、情報に翻弄されないように、信頼
できる特許法律事務所に相談したうえ、情報収集の方針を検討したほうが無難で効率的である。
大規模な侵害事件や模造事件の調査につき、国家の治安維持と犯罪関連情報収集の専門機関に
協力してもらうことも考えられる。行政院法務部の調査局は、その大規模な人力と調査に関する
専門技術を持ち合わせるので、警察機関と検察機関と提携して、国家安全に関係する重大な刑事
事件や内乱罪、外患罪、汚職罪、暴力団等の組織犯罪事件や密輸、不法取引、脱税等の経済犯罪
事件の調査等を中心とする既存の職務を遂行する傍ら、近年では知的財産権侵害事件の証拠集め
と摘発の事業を主導するようになってきている。但し、最近民主化の進行に伴い、国家権利の濫
用との批判を更に警戒するため、調査手法が一層慎重になっていると言われている。例えば,従
来では容疑の業者に従業員に扮して潜入して、又虚偽の注文を外部から入れて,容疑の業者が受
注するまでの証拠を一部始終に入手することによって、不法行為の立証に資する大胆な調査手法
があった。更に、警察,検察と調査局三位一体の時代も過去の名残になりつつある。時代の進歩
に伴い、部署ごとに業務の専門家と分業化も進んでいる。ことに国民全体の法と権利意識が高ま
る中、証拠の合法性に関しても次第に厳しく要求されつつある。又,民事不介入という観点にお
いては、調査局が警察局よりもっと公共治安に重点がおかれる性格がある。暴力団体がらみや犯
罪組織関連の事件に於いては、調査局の調査力を切り札として利用することもあるが、やはり例
外的である。又、調査局は一般の検察機関とは根本的に違うので、非国家機関の個人の告発や通
報は原則として受理しないが、その提携機関の検察署、禁倣小組や警察局に告訴してから同局の
協力を仰ぐ。結論を言うと、知的財産権侵害の不法行為に関する証拠の収集に関しては、調査局,
または警察局,その他知的財産権保護保安部隊などの助力も効果が大きいが、当事者が自分の意
志で依頼若しくは指揮できる存在ではないので,当事者自身の証拠収集の努力が依然として重要
である。
2.証拠収集の対象物
権利侵害を立証するための重要証拠を権利別に羅列する。
基本資料:
法責任を追及する対象の特定
容疑者が個人の場合、最低限にその氏名を把握すること。絶対必要ではないが、住所と連絡
手段他人別特定の資料も出来るだけ確認すること。相手方が会社法人の場合、その名称をは
じめ住所や電話などを入手。刑事告訴と民事訴訟などを提起する場合必ずしも当事者の詳細
資料を完全に明記する必要はないが、最低限対象を特定するために、通常氏名や会社名の上、
訴状を送達するためにも住所の特定も必要となる。そのため容疑者の名刺を確保するのもコ
ツ。但し住所が不明或いは偽住所しか掴んでいない場合でも、人物特定さえ出来れば司法手
段を提起するのに差し支えない。ホームページに模造品の広告を掲載する事実を把握すれば、
そのホームページの所持者を対象に告訴や訴訟提起も出来る。
証拠資料:
▼特許権
▽留意事項 発明特許に関する侵害行為の刑事罰則は2001年10月の法改正により削除されて
いる。又実用新案と意匠の侵害に対する刑事罰則も2003年の4月1日より廃止されてい
る。ご留意ください。
①模造品サンプルと写真、プロセスや方法特許の場合は完成品の写真以外製造現場の写真も入
手すべきである。又、先方に先立って適格の鑑定機関に技術鑑定を内密に依頼し、有利な理
論構成を先駆けて確保する。製造や販売拠点の写真。
69
②侵害容疑者によって掲載或いは発行された特許侵害品目の広告パンフレット等の宣伝出版物、
日付を証明できるほうが更によい。
③模造品の販売価格と販売実績を立証できる発売領収書と帳簿。
④模造品製造或いは提供委託の発注書類や契約書、顧客リスト、又は各顧客の発注金額を表す
経理資料。模造品販売の領収書、伝票など。
⑤侵害容疑者の会社資料、主要株主、資本金構成、営業項目乃至主要顧客リストを含む(発注
元へ模造品の購入を停止するよう勧告するため。ただし公平取引法に引っかかることに要注
意)。侵害行為の立証のほか、場合によって仮処分を申請するときの担保金の計算の参考資
料として利用することも考えられる。
⑥製造、輸送、又販売拠点の住所と活動パターン;販売店頭や製造工場又は倉庫の風景。
⑦製造設備機械を提供する者。意匠侵害の場合、金型の場所の確認も。
⑧容疑者の故意を立証するための資料:権利者と当該特許権に関連する通信のコピーや技術提
携契約書。但し特許侵害の故意に関する扱いは目下特許侵害鑑定基準の検討の課題となって
いる。
⑨先方から自分の特許に対する無効審判を掛けられることを予想し、権利の有効性を主張する
答弁資料の用意、若しくは特許請求範囲の修正の腹案の準備。
▼商標権と著作権侵害に関して
①包装箱の図面と表記を明晰に写した模造品サンプルと写真、販売店頭や製造工場又は倉庫の
風景。自分の台湾以外の登録商標の図面を盗用した台湾の登録商標を無効審判にかけるため
には、ついでに襲用商標の登録権利者の悪意を立証できるオリジナル商標にアクセスした事
実資料も入手すべきである。又、先方に先立って適格な鑑定機関に商標類似に関する鑑定を
内密に依頼し、有利な理論構成を先駆けて確保する。又、商標のほか、偽造品と真正品の判
別基準も明晰に作成すれば警察側に協力してもらいやすい。正式な制度にはなっていないが、
偽造物の判別要領の紙面の資料を警察または税関に提供すれば、ある程度偽造品の摘出の協
力は期待できる。勿論現在ではまだ政府機関にそれを受け付ける義務が法律によって明文化
されていない。
②侵害容疑者によって掲載或いは発行された商標権侵害品目の広告パンフレット等の宣伝出版
物、日付を証明できるほうが更によい。製造や販売拠点の写真。
③模造品の販売価格と販売実績を立証できる発売領収書と帳簿。
④模造品製造或いは提供委託の発注書類や契約書、顧客リスト、又は各顧客の発注金額を表す
経理資料。模造品販売の領収書、伝票など。
⑤侵害容疑者の会社資料、主要株主、資本金構成、営業項目乃至主要顧客リストを含む(発注
元へ模造品の購入を停止するよう勧告するため。ただし公平取引法に引っかかることに要注
意)。侵害行為の立証のほか、場合によって仮処分を申請するときの担保金の計算の参考資
料として利用することも考えられる。
⑥製造、輸送、販売拠点の住所と活動パターン:販売店頭や製造工場又は倉庫の風景。
⑦製造設備機械を提供する者。
⑧容疑者の故意を立証するための資料:権利者と当該特許権に関連する通信のコピーや技術提
携契約書。但し特許侵害の故意に関する扱いは目下特許侵害鑑定基準の検討の課題となって
いる。
⑨先方から自分の特許に対する無効審判を掛けられることに備え、権利の有効性を主張する答弁
資料の用意、若しくは商標指定商品や役務の修正と増加の腹案も準備すべきである。
又自分の商標権の有効性と周知度を主張するために、使用証明と商品の市場好評度、
注目度などのアンケートや調査の資料の確保も肝心。
▼著作権侵害に関して
①包装箱の図面と表記を明晰に写した海賊品サンプルと写真、販売店頭や製造工場又は倉庫の
風景。著作権侵害に関しては容疑者が権利者の著作物にアクセスした事実を立証する証拠、
例えば係争著作物の送付領収書等。又、係争の商品に付される表示の他、海賊品と真正著作
権物の判別基準も明晰に作成すれば警察側に協力してもらいやすい。正式な制度にはなって
いないが、海賊品の判別要領の紙面の資料を警察または税関に提供すれば、ある程度海賊品
の摘発は期待できる。勿論現在ではまだ政府機関にそれを受け付ける義務が法律によって明
文化されていない。
②侵害容疑者によって掲載或いは発行された著作権侵害品目の広告パンフレット等の宣伝出版
物、日付を証明できるほうが更によい。製造や販売拠点の写真。
③海賊品の販売価格と販売実績を立証できる発売領収書と帳簿。
④海賊品製造或いは提供委託の発注書類や契約書、顧客リスト、又は各顧客の発注金額を表す
70
経理資料。
⑤侵害容疑者の会社資料、主要株主、資本金構成、営業項目乃至主要顧客リストを含む(発注
元へ模造品の購入を停止するよう勧告するため。ただし公平取引法に引っかかることに要注
意)。侵害行為の立証のほか、場合によって仮処分を申請するときの担保金の計算の参考資
料として利用することも考えられる。
⑥製造、輸送、販売拠点の住所と活動パターン:販売店頭や製造工場又は倉庫の風景。
⑦無断コピーのために使用する設備機械の場所、または印刷版、金型、コンテンツソースを提
供する者。
⑧自分の著作権の有効性を立証するため、自国の国会図書館に係争の著作物の登録証明、また
はその登録番号を用意すること。台湾では著作権の存在を立証すべく著作物を民間組織に登
録する方法は法律の承認をまだ得ていない。創作期日を立証する創作日誌などの記録文書の
提示。
▼公平取引法に違反する不正競争行為侵害に関して
①包装箱の図面と表記を明晰に写した模造品サンプルと写真、販売店頭や製造工場又は倉庫の
風景。著作権侵害に関しては容疑者が権利者の著作物にアクセスした事実を立証する証拠、
例えば係争著作物の送付領収書等。又、登録権利がなければ通常警察や調査局は介入を控え
るが、係争の商品に付される商標の他、偽造品と真正著作権物の明晰な判別基準もがあれば
警察側にある程度目をつけてもらえる。
②侵害容疑者によって掲載或いは発行された係争商品の広告、日付を証明できるほうが更によ
い。製造や販売拠点の写真。
③模造品の販売価格と販売実績を立証できる発売領収書と帳簿。
④模造品製造或いは提供委託の発注書類や契約書、顧客リスト、又は各顧客の発注金額を表す
経理資料。
⑤侵害容疑者の会社資料、主要株主、資本金構成、営業項目乃至主要顧客リストを含む(発注
元へ模造品の購入を停止するよう勧告するため。ただし公平取引法に引っかかることに要注
意)。侵害行為の立証のほか、場合によって仮処分を申請するときの担保金の計算の参考資
料として利用することも考えられる。
⑥製造、輸送、又販売拠点の住所と活動パターン:販売店頭や製造工場又は倉庫の風景。
⑦自分の商品または役務の知名度を主張するため、市場における進出の経緯、公告の投資と実
績、市場占有度、消費者の注目度、認識度、また係争商品や役務と自分の商品や役務との類
似性と消費者に与える混同誤認の錯覚の度合。アンケート資料も参考になれる。
3-1-2 証拠の出所・証拠収集方法
下記の通り項目ごとに紹介する。
a 調査会社
調査会社は通常警察機関と協力関係がよく、取り締まりに欠かせない媒体でもある。ただし、
入手する情報と見合わないほど高額の請求をするずさんな興信所に出くわさないため、ワンクッ
ション置いて弁護士の紹介を得て協力してもらった方がより効率的な付き合い方。
複数の調査会社を起用する当事者もいるが、それらの情報を整理と消化する作業はやはり法律
事務所が果たすべきである。ところで、法律事務所と主導権を争う過度に自己膨張する調査会社
もある。一部の調査会社によれば、国際化する模造品製造販売集団を根絶するためには、個別の
模造業者を捕まえるだけでは足りず、必ずや関連の情報を綿密に収集した上、集団の関係者同士
が国境を越えて芋づる式に追撃してゆくしか方法がないとの説がある。確かに、複雑化する知的
財産関連の犯罪や侵害事件、特に多国に渡る製造と発注と販売の拠点を把握する国際間の知的財
産検侵害事案においては、ますます高度な情報探知と調査の技能を必要とされている。台湾の製
造業が中国並行する傾向が上昇する中、中国における知的財産権侵害製品の製造拠点と販売会社
を探知するための要請も増えている。しかし一方、台湾側で模造品の製造販売に関わる容疑者を
追跡する警察官たちの立場からすれば、最も動機を与えてくれるのは台湾国内の取り締まり実績
による報奨金のことであることも忘れてはならない。あまり複雑な国際犯罪組織の調査事業にた
とえ寄与できても、直接に自分の管轄区域内の立案となれ、そのために身近な加点と賞与に繋が
らなければ、かえって時間と精力を割く動機が殺がれる場合もある。権利者と代理人はその辺の
機微をつかめば現場の警察ネットワークを更に有効に駆使できるはずと思われる。
調査会社への依頼及び調査会社と法律事務所の関係 案件の推進のためにも、当事者のためでも、
弁護士を通して調査会社を利用するほうが法律手段の展開に密接した情報収集活動を効率よく
行えるはずである。そのため、通常当事者、特に外国人の方において、現地の案件の情報収集に
71
関しては、法律事務所を通して現地の調査会社を利用する形態と取っている。又、調査事項を具
体的に指示した上、希望する形態の報告書と期限などを明確に要求することが重要。
しかし、ごく少数に留まるが、法律事務所をライバル視する調査会社もある。入手した情報を当
事者が依頼する法律事務所を差し置いて直接当事者に手柄を示さんばかりに提示し、法律事務所
を情報網から締め出そうとして弁護士の存在を矮小化するとたくらむような調査会社がある。い
ざ訴訟の準備段階になると、弁護士が急遽突き出された訴訟資料を十分に吟味もできずに訴状を
叩き上げる窮状に見舞われる。弁護士側は特に主導権を握りたがるよりも、告訴や起訴に備えて
有効に行動するために、調査会社より入手の情報を当事者よりも早い時点で把握する様になるだ
けである。
逆に法律事務所の立場からすれば、訴訟をはじめとするオモテの法律業務を本業とする法律事務
所は、到底法律手段を支えるウラの事実を調べる興信所の業務をこなす本領と意欲もないのが本
音である。刑事と民事責任を追及するための情報収集は調査対象に敵意を抱かせ、危険にさらさ
れる行動が必要なので、当事者も都合上顔合わせの機会を減らしたほうがよいのと同じく、現地
弁護士はなるべく加担しない。その意味では調査会社のサービスも大変ではあるが、弁護士の業
務と競合することはないと思われる。
調査費用 調査費用は弁護士に依頼する事件に関しても、調査会社利用の場合は調査会社が請求
する費用を法律事務所が実費として請求する形のみで、弁護士費用の請求と関係しないのが普通
である。
調査費用は調査会社と調査形態によって大分異なるが、調査対象を限定する依頼の場合、一対象
に関して調査会社の事務所と調査解消との距離によって違うが、1.8 万元乃至 2.5 万元ほどかか
るのが相場。調査活動があっても希望の結果がない場合、事前に費用折半など割引の約束があれ
ば然るべき費用減免も可能なので、具体的に取り決めるべきである。
特定対象に関する調査のほか、市場全体を把握する一定期間にわたる監視作業も依頼の項目にな
る。但しレポートの制度を具体的に要求しないと情報価値の疑わしい報告書で敷衍されることが
あるので留意すべきである。
専門領域 調査会社によって規模と専門領域も大分異なる。4、5 人程度のフルタイムスタッフ
からなる現地小規模社が台湾国内の対象に対する調査に向く。その業務は大まかに①模倣業者の
行動監視と模倣品製造販売の証拠を収集する活動;②会社の業務や取引対象、財務事情又は役員
などの実態を把握する現状調査;③会社や個人の不動産や銀行口座など資産の調査等に分けられ
る。他国に拠点を置く外資系の調査会社は通常国境を跨る業者の動きの追跡に向いているが、台
湾国内の業者の製造販売拠点を抉る作業には割高になるか苦手な場合が多い。その代わり、動向
を綿密に追跡することで評判が高い多国間調査会社もある。
又、特定の分野の業界を専門とする調査会社もある。例えば、偽造タバコの製造販売の最大拠点
となった中国において著名なタバコメーカ−数社から共同依頼を受けて長年その業界の調査に
取り組む会社のように、依頼人のニーズによって特定分野に業務が特化するものがあるが、それ
ぞれの調査会社の過去の実績について把握した上依頼したほうが無難である。
■証拠の取得についての合法性要求−−囮捜査の合法性
台湾では米国のように証拠の合法性についての要求は厳格的ではない。従来、後日の訴訟にお
ける証拠の収拾と確保のため、権利を侵害する完成品や部品を製造販売する人に興味を示して、
問題の製品を購入しようとする買い手と偽って、模造品不法製造者を誘い寄せてオファー書類や
領収書を取得したり、アルバイト工員として模造品製造の工場に潜り込んで、半月間密かに証拠
収集に励んでからさっさと辞めるような所謂囮捜査は、興信所の証拠集めの常套手段として、今
までは裁判所にも別に問題とされていない。但し営業秘密法及び電脳処理個人資料保護法など企
業や個人の情報を保障する法律の成立によって、従来のような放任主義も多少修正させられるよ
うになるであろう。また、弁護士と調査会社の調査人員など法律によって司法警察の身分を持た
ない者による強制捜査と押収が不法と主張され、証拠物と証言を否認する被告も増えているので、
証拠収集の段階の合法性への配慮が重要である。
又、無断に録音したテープは証拠としての合法性はあるが、合成処理などの抗弁が信憑性を弱
化する場合が多い。調査会社よりの情報の持ち込み:契約していない場合でも、著名企業の場合
には調査会社からアプローチがある。
尚、2004年最近の実例で見られたおとり捜査の合法性の判断基準も若干参考価値がある。海賊
版ソフトウエアの製品を販売するものは、大手を振って海賊製品を掲示などせず内緒に販売する
のが普通である。そのため、販売行為を立証するための証拠は入手しにくい。販売者の口頭のオ
72
ファーを証拠にするために警部が顧客に扮してそれを誘致する手法を使う場合もある。しかし、
顧客と偽った警察官が自発的に海賊版の商品を尋ねて開示してもらう要請をする場合、たとえ販
売側がそれに応じて海賊商品を提示して見せて取引を成立させたとしても、その取引は証拠を収
集するための警察官の 誘致 によって誘発或いは教唆されたものとして、その誘致自体の合法
性の問題を取り上げて取引によって入手した証拠の合法性を否定する裁判所の見解がある。例え
ば「正規品が高いから海賊版はないのか?」とたずねるのは勿論教唆になる。「正規品が高いから
他に安いものはないのか?」と言っても海賊版品を購買する意欲が明らかだから犯罪教唆を免れ
ない。その手のおとり捜査は合法性の問題が濃厚で起訴や有罪証拠に使われにくい。
犯罪の教唆と一画して著作物の海賊版商品を販売する行為の証拠集めの手法として、偽りの顧
客は積極的且つ直接に海賊商品の提示を要請するのを避けて、間接的に海賊品を提示するような
意欲を引き出すまでの言動までしか取らないのがポイント。例えば、「予算が限られているので、
もうちょっと負けてほしい」とか、
「この値段ではどうにもならないから、他の商品はないのか?」
や「負けてもらえなければ買うのを諦めるしかない」と海賊品の購買の示唆を避けて、値切り一
点ばりの口説きに徹するほうが、陥害教唆の疑いなしに海賊品販売の証拠を集められる。
Q.調査会社による定期的市場調査;定期的市場調査契約の内容および費用の具体事例について。
台湾の製造元⇒バイヤー⇒海外市場という経路で台湾市場に出回らない製品の製造元特定調査
は可能か。又、スポットの調査依頼を受け付ける場合の調査活動と費用等について。
----台湾の興信業界では、例えば、中華徴信所企業股份有限公司 www.credit.com.tw が、よく台
湾企業の経営実態、営利情況について、定期的な市場調査を行い、並びにその資料を整理して一
冊の単行本にまとめた上、商工業界の参考資料として提供している。そういう単行本は年に一冊
出版され、約新台幣 NT$6000 元で販売されている。なお、特定の事項、例えば、ある台湾メーカ
ーの海外販路、或は当該メーカーの海外販売対象については、興信所の人員による個別調査を経
なければならないことになっていて、その調査費用は、一件毎に約新台幣 NT$1 万 5000 元から NT$2
万元となっている。
Q.新聞広告に基づくタレコミの慣習は台湾でもあるか?又、新聞広告掲載費用とタレコミ謝礼
の具体的にどの程度であるか?
----新聞に広告を登載して、大衆に検挙を励ましたりすることは、あまり見受けないが、新聞へ
の掲載費用は、掲載する版とかサイズの大小によって異なるが、約 NT$3 万元から 10 万元等いろ
いろある。謝礼として給付される奨金はそれぞれの情況によって定められるべきものであり、関
係のない第三者には知る由もない。
Q.消費者からの問い合わせ;台湾現地事務所がない外国企業の製品に対する問い合わせを受け
付ける行政窓口は存在するのでしょうか。
----目下警察や検察機関の告訴や告発の提起でなければ、情報諮問だけの窓口は設けてない。
Q. 台湾の業者が中国にも模倣品製造販売の拠点を設置した場合、どのように証拠を収集したほ
うがよいか?
----中国で発生する権利侵害事実は、原則上台湾の司法権では管轄権が及ばない。但し、首謀者
が台湾の業者の場合、台湾で教唆や指令を出すことを立証できれば、台湾で保護される権利が侵
害された事実に基づいて訴追することも可能。
その場合、中国で情報収集の活動を起こす必要があるが、台湾を拠点とする調査会社でも、中
国にブランチや提携事務局があればある程度カバーできる。以来のときは従来台湾における評判、
活動範囲、中国での調査実績、専門とする品目の分野などについて詳しく把握した上、法律事務
所の紹介を受けて、具体的な事項を明確に依頼するのがポイント。
b 調査局
近年(98年10月∼2002年)一連の日本製PCゲーム対応のCD−ROM模造品の摘発に、全国の調査
局の支局や警察局による実績が次々に報道されて、知的財産権事件における調査局の活躍が目立
った。調査局の元来の役割は、法務部調査局組織条例第2条によれば、国家安全への危害及び国
家利益違反についての調査・保安・防止事項を掌る。しかし、台湾政府側の知的財産権保護を強
化する方針に基づいて公共政策正確を帯びた私的権利にあたる知的財産権の侵害事件の取り締
まりに積極的に関与してきた。
当事者達の自主的な調査活動を待たずに、調査局が主導する調査と家宅倉庫や工場の踏み込み
捜査で大量の模造品の摘発との押収が実行された後、始めて地元の代理人に通告するような政府
機関の自発的な活動による知的財産権侵害事件制裁の活動が活発なりつつある。当事者が台湾の
73
特許代理人より連絡を受けた後に本件の訴追作業が開始される事案が急速に増えている。
調査局は犯罪の被害者にあたる知的財産権の権利者らの代理人とダイレクトにコンタクトや
提携するのを排除することが少なく、比較的協力できる対象にもなる。但し、民間の調査会社と
はもとより性格が違うので、告訴を受理するにしても、当事者の要望通りに捜査を行う仕組みで
はなく、上部の国策指導を受け、明確な目的意識が強く、自主的に捜査プランを練り、プロット
通りにに進める傾向がある。そのため、スムーズに情報提供と協力ができる代理人なら、比較的
緊密にコーディネートし、効果的に犯罪の摘発が進む。しかし、メリットシステムのおかげもあ
り、警察部隊ないし検察官と同じく管轄地域に敏感な点がある。各調査局の内部業務に過度にか
かわりすぎると、他の管轄地域の警察や調査機関の管轄地域に乱入すると排斥されることもあり
うる。
C 刑事警察局と各保安警察部隊及び知的財産権保護専門警察隊
行政院内政部(内務省)のもとに各地の刑事警察局が司法警察と警察官として犯罪摘発から操
作、押収の執行まで法の強制効果をもたらす。警察局の協力は地域的な要素があり、興信所との
協力関係に影響されやすい。各警察局の管轄地域が相当細分化され、それなりに犯罪者の動向を
把握する能力に優れる。民間の調査会社との協力関係も構築しやすい。そのため、調査会社が必
要な情報を提供できれば、現場における有効な執行が期待できる。管轄地に張り付く性格からし
て、外地の法律事務所から直接連絡を受けたりするより、調査会社とコーディネートするのにな
れている。
その他、行政院警政署著活の各保安警察部隊は、従来の国営事業の警備と地方治安維持の任務
から解任された後、知的財産権侵害事件の摘発活動に運用されつつある。目下五つほどの部隊の
中、ゲームソフト内臓のCD-ROMと著作権侵害事件に注力する部隊と各様の偽造ブランド品や嗜好
品の取り締まりを専門とする部隊とそれぞれ守備分野が異なるように専業化も進んでいる。
最近、一連の日本製PCゲーム対応のCD−ROM 、又キャラクター関連生活用品とファッション製
品の模造品の追跡と摘発が、全国の警察局と保安部隊によって次々に実行され、その実績が広範
に報道されて、知的財産権侵害事件における行政側の関与と役割がさらに強化されたと見られて
いる。当事者達の自主的に調査活動を待たずに、警察当局の熱心な刑事が調査局に負けないほど
の綿密な捜査網と熟練な手法で確実な証拠を確保したうえ、大量の模造品の押収に成功した事例
が急増している。
知的財産権保護警察大隊の設立 知的財産権を保護する環境を整備する要請が高まる中、台湾
は率先して「知的財産権保護警察大隊」の設立に手がけて、大きな実績をあげている。2003 年 1
月 1 日、行政院警政署管轄下の保安警察第二総隊の傘下に、編成定員 220 面程の同大隊が数年間
の準備を経て正式に創設され、同時に運営が発足した。保安警察第二總隊は 97 年頃以来、台湾
国内において光ディスクを媒体とするゲームソフトや映画及び音楽ソフトの模造品の摘発にも
っとも積極的且つ高い実績を上げる政府側の知的財産権の保護の取り組みを実施する警察部隊
として評価されたものである。しかし、知的財産権法務の専門化に合わせて、臨時任務編成にし
たがって知的財産権侵害事件を摘発するための各警察部隊より結成された人員を固定編成のも
とで知的財産権関連事件を専門に担当する専門部隊を設立する要請が高まってきた。しかし予算
の制限によって政府は各部署の人員編成の縮小と凍結を既定方針に掲げるなか、特に警察部隊に
対して編成縮小を急いでいた。かくような逆境を凌ぎ、第二總隊の実績と専門能力が行政院側に
高度に認められ、知的財産権関連摘発と取り締まりの専門業務を担う部隊の設立にまで同總隊を
中心に進行した。台湾政府が知的財産権保護対策にかけて、全面的且つ抜本的、又持久的な取り
組みの表れとして、各界から大いに期待をかけられている。2003 年 1 月 1 日に正式に発足して以
来、4 月上旬まで既に 700 回ほどの出動を実施し、200 件以上の事案を立案した上、被告人 42 名
ほど送検したほか、25 万枚ほどの違法模造CDの押収に成功してきた。2004 年前後も、大規模な
ビジネスソフトの海賊品製造販売組織を成功に摘発してきて、その実績が米国当局まで大いに評
価されるように至っている。2005 年 10 月現在では各種商標、著作権を侵害するも贓品・海賊品の
製造販売を行う犯罪者とその拠点の摘発の実績が更に評価されている。犯罪者側は実物を展示す
る屋台販売方式のリスクを嫌って、チラシ宣伝を経て、この頃はインターネットを限定媒体に運
営するようになった。不法取引だから通常のホームページを出して堂々と宣伝する代わりに、ネ
ット・カフェーで発信し、バーチャルアドレスから遣り取りするようにして正体をくらます。こ
のようなモダン技術による犯行を地道に突き止めて犯人とその拠点を掴めえるノウハウを知財
保護警察大隊の若手のメンバーらが積極的に習得して、次々に個人や集団の犯罪者の摘発をやり
遂げ、ネット上の犯罪を打撃する専門部隊の好評を博している。
目下は同大隊の総局は台北県にあり、傘下に台北、台中及び高雄それぞれ第一、第二及び第三中
隊がおかれている。一中隊毎に二つの分隊が設置してあって、総勢二百名ほどのメンバーによっ
て組織されている。
74
d 税関による措置
d-1 税関・商標輸出監視システム及び台湾における知的財産権侵害物品の水際取締制度の概説
知的財産権侵害態様の国際化が進むなか、税関の役割が増えている。
台湾の税関当局では、90年代以降、密輸や違法の武器、薬物等の貨物のほか、知的財産権侵害
の物品の摘発と押収乃至司法当局への送検の事業を行うようになってきた。国際物流の自由化に
まぎれて大量化する偽造品の輸出入を食い止めるためには、税関に更なる大きい判断権限と強制
処分権を与えるシステムが必要である。しかし、台湾の税関当局において、現在でもまだ実現さ
れていないのは、米国や香港の税関における擬似の司法決定権限のもとで独自の判断で侵害容疑
にかかる貨物に対する調査、押収と立案等の処分を下す権限の確保である。知的財産を有効に保
護するには、侵害を構成する偽造品や模造品の流出を効率的に差し止めることに重点がかかって
いる。台湾における水際管理機構は知的財産権侵害の模造品の取締制度においての位置づけ及び
機能を概略に説明する。
■関連法律規定の説明 台湾は貿易法を始めとする、輸出入を管轄する諸法律条例は貨物に付
属される知的財産権も適用対象として明文に規定している。
■貿易法 第2条 本法律にいう貿易は、貨物或は貨物に付属された知的財産権の輸出入行為及
び相関事項を指す。前項知的財産権の範囲は、商標専用権、専利権、著作権及び其の他法律に
よって保護されている全ての知的財産権を含む。)また、輸出入業者と個人は、国際貿易局で
登録を済まされた品目について或いは特別の品目の制限の下でしか輸出入を行うことが出来な
い(貿易法第9条)。第15条に特別条例を経済部が制定するように規定している。その補充法律
が貨物輸出管理辧法と貨物輸入管理辧法となっている。その中に貨物輸出管理辧法は、 輸出
貨物の商標模倣及び原産地虚偽表示防止辧法 が93年に廃止された後に、後者の知的財産権侵
害物品の輸出の重要関係条文を受け継いで制定されたものである。
■貨物輸出管理辧法 貨物の輸出入に関する規制の中で、輸出の規制が輸入の規制より仔細に
できている。貨物輸出管辧法は輸出者に対して扱う貨物に使用された商標について申告する義
務を課するように規定し、検査の結果申告が実物と合致しない場合に、輸出業者が当該商業の
商標専用権者より発行された証明又はほか模倣の事情を否定出来る証拠を提出しない限りでは
通関を認めてはならないと規定している(貨物輸出管理条例第9、10条)。同法第17条第1号に、
輸出入者は台湾又は外国の法律によって保護される知的財産権を侵害する行為を禁止する旨の
規定を置いている。当該規定の違反の罰則として、台湾元3万より30万までの罰金に処する他、
事情が厳重な場合に経済部国際貿易局によって一ヶ月以上一年以下の貨物輸出入禁止処分又は
輸出入業者登録を取り消すことが出来るように規定している(同法28条)。輸出入に係る貨物
が台湾又は外国の知的財産権を侵害することが立証された場合に限って、同貿易局は輸出入者
に輸出入行為の一時的な停止を命じる権限がある(第30条)。罰金の強制執行も可能と規定さ
れている(第33条)。輸出貨物に付する商標の合法性を管理監督する為に設置された商標輸出
管理システムの法的根拠となる規定も同条例に置かれ、1994年10から同システムが発足したと
ころである(同条例15条の1)(後詳述)。
■関税法 第45条が知的財産権に侵害の商品の通関を禁止する旨の規定を置いている。下記の
流通禁止品目については、別途法令の規定がある場合を除き、輸入してはならない。
(1)偽造の貨幣、証券、銀行券及び偽造品印刷の使用にかかる鋳型。
(2)賭博道具、及び外国発行の宝くじ、ロタリー券、其の他類似の者。
(3)風紀を害する書物、絵画及び淫具。
(4)共産主義を宣伝する書物及び其の他の物品。
(5)特許権、図案権(註:デザイン関係)、商標権及び著作権を侵害する物品。
(6)其の他法律による流通禁止品目。
第54条
第45条に違反するときは、その他の法律に別段の定めがある場合を除き、没入するものとす
る。
■著作権法
著作権法第104条が著作権侵害物品の輸出入の差止申立に関して規定があり、
著作権法施行規則第39条及び第40条では申し立ての際に提出すべき書類及び裁判所へ提訴し
たことの証明書類の税関宛提出についての規定を置いている。
■商標法 商標法第65条から第68条も税関による商標権を侵害する貨物の押収申し立てに関
する手続きの規定を設けてある。
75
d-2 税関による貨物押収の措置----司法上の対策と行政上の対策、及びその比較
著作権を侵害する海賊品が税関を通過する際、著作権者としては権利侵害の不法商品を押収してそれ
を証拠として裁判所に提示して法手段をとることを希望するはずである。その目的を実現するためには、
台湾では二通りの方法が考えられる:
(1)司法による対策----民事訴訟法の仮処分命令を通して、特定主体の特定の商品に関する輸出入行為を
差し止めること。対人の効果が発生する。処分を受ける者が税関に貨物を経由する場合、結果的にそ
の裁判所の命令を持って税関に輸出入にかかる権利侵害容疑貨物の押収を実施してもらうことにな
るが、判断は裁判所の権限に留まる。これについて、民事手続きの章の中の保全手続きのセクション
で説明する。
(2)行政による対策----著作権法第 90 ノ 1 条と「税関による商標権及び著作権保護措置の執行について
の作業要点」(200308 頒布施行)に基づいて、税関に特定の輸出入に掛かる著作権侵害容疑の貨物
を押収する。対物の効果が中心の対策。 税関に若干の準司法裁量権を与えて、権利者の要請に基づ
いて、税関が独自の権限で著作権侵害容疑に掛かる貨物を押収して、権利者に訴追の手がかりを確保
することが主旨となる。この制度は 90 年代以降から導入されてきたものだが、ようやく 2003 年 8
月になって初めてその制度を実施するための施行細則が公布された。
司法上の対策と行政上の対策は、終局的には税関という行政機関によって実施されることにはなるが、
手続きと当事者の権利義務関係が根拠となる法律規定によって大分異なるので、ここに表で相違点を列
挙してみる。
■民事訴訟法の仮処分と著作権法及び商標法による税関の貨物押収制度の比較
■著作権第 90 の 1 条及び商標法第 ■裁判所の仮処分命令による
65 条等による税関押収
押収
債権者が金銭請求以外の請求を
処分の原因
輸出入に掛かる著作権或いは製版
権を侵害する容疑のあるものに対 保全したい場合、それ請求対象の
して押収したい場合。著作権法第 現状が変更に瀕し、そのために後
日強制執行が不可能或いは甚だ困
90 ノ 1 条第 1 項。
難になる恐れがある場合に限って
請求できる。民事訴訟法第 532 条
決定する期間
税関
管轄裁判所(民事訴訟法第 524 条)
実施する機関
税関
税関が実施する時もある
反対担保金供託制度とそれに基づ 著作権に関しては無;商標権に関 有り。
民事訴訟法第 536 条:仮処分が保
く押収或いは仮処分の取り消しの しては有。
全する請求が金銭の給付でその目
制度の有無
的を達成できるものである、或い
は債務者が仮処分によって補償し
がたい重大な損害を蒙り得る、若
しくは其の他特別な事情がある場
合、裁判所が仮処分の裁定書に、
「債務者が所定の担保金を供託し
た後、その仮処分を免れる稼動処
分を取り消す」かの文面を記載で
きる。仮にその旨の記載がない場
合でも、債務者も裁判所に担保金
の供託に合わせて仮処分裁定を取
り消すようにとの請求をすること
が出来る。
但し、その「反対担保」の金額は、
決して仮処分を申請した原告側の
供託した金額と同一視してはなら
ない。被告側が供託すべき担保金
の金額は、原告側が当該仮処分が
取り消された場合蒙り得る損害を
見積もった金額で定めるべきであ
る。原告側が最初に供託した担保
金に相当する金額を供託して仮処
76
分を取り消してもらった事案もあ
るが、それは偶然に両者の事情を
考慮して算出された金額が一致す
る場合に限るとしか考えられな
い。
担保金計算の容易度
強制処分の対象と行動態様
著作権法の税関押収制度の条文
では保証金と称するが、主旨は担
保金と同様。
保証金の算出基準は簡単明快。
輸出入貨物について税関が見積っ
た税金完納後の価格又は輸出貨物
の本船渡し価格に相当する保証金
を提供しなければならない。(著作
権法第 90 ノ 1 条第 2 項)
限定された税関を通る貨物に対
する物理的な留置の措置。
被告側が処分による実体訴訟が
確定判決を得るまでの期間におい
て蒙り得る損害を見積もった金額
なので、比較的に複雑で算出しが
たい。
被告側の特定の作為或いは不作
為を法的に禁止する命令。処分を
受ける側が故意にその命令に違反
する場合は罰則に処する。
申立て人の資料提示義務の煩雑度 摘発時に提供すべき資料(税関 民事訴訟法第 525 条、第 526 条
による商標権及び著作権保護措置
の執行についての作業要点)
凡そ商標権者及び著作権者
(専属性の使用許諾先を含む)、
又はその代理人は、商標権又は著
作権を侵害した輸入又は輸出の物
品に対し、書面を以って関税総局
又は輸出入地の関税局宛に摘発す
べきで、摘発時には併せて下記の
資料を提供すべきである:
(1)侵害の事実及び侵害物を識別
できるに足る説明。
(2)権利侵害の容疑に関連した輸
出入業者の名称、物品の名称、
輸出入の地点及び日付、航空機
(船舶)の便名、コンテナの番
号、物品の置き場所等関連の具
体的資料。
(3)商標登録の書類、著作権の証明
又はその他顕かに著作権を認
定できるに足る書類。
(4)もし代理人であれば、須らく代
理人である証明書類を添付す
ること。
被告側の反論の機会の有無
特に無。
有り。民事訴訟法第 528 条
真正品と偽造品の相違点を説明す 必要;特定に形態の資料までは要 必要;しかしその上、緊迫事態に
関する説明も必要。
る資料
求されていないが。
終局処分の比較
権利侵害事実が裁判等で確定とな 権利侵害事実が裁判等で確定とな
る場合、原則上押収された貨物が る場合でも、仮処分はそのまま有
効状態を継続する。
廃棄或いは没入される。
押収されたものについて、申立
人が裁判所の民事確定判決を経て
著作権又は出版権の侵害に係るも
のとされたときは、税関がこれを
官没する。官没された物のコンテ
77
取り消し原因の比較
ナ使用期間超過料金、倉庫賃貸、
積み卸し等の関連費用及び焼却廃
棄処分に要する費用は、差押処分
を受けた者が負担しなければなら
ない。前述の焼却廃棄処分に要す
る費用に関し、税関が期間を限定
して納付することを通知しても納
付のないときは、法により移送し
て強制執行を行う。
民事訴訟法第 529 条、530 条
②終局処分
B
権利侵害事実が裁判等で
否定される場合
次の各号のいずれかに該
当するものは、税関が差押
処分を廃止し、輸出入貨物
の通関に関連する規定によ
り処理するほか、申立人は
差押処分を受けた者が差押
えにより蒙った損害を賠償
しなければならない。
一. 差し押えられたものが、
裁判所の確定判決を経て著
作権又は出版権を侵害した
ものに当たらないと判断さ
れたとき。
二. 税関が申立人に差し押え
の受理を通知した日から 12
日内に、差し押えの物件を
侵害物品とする訴訟が提起
された旨の告知を受けなか
ったとき。
三. 申立人が差押処分廃止の
申立てがあったとき。
担保金返還の原因
保証金と称する。第 90 ノ 1 条第 8
項:
次の各号のいずれかに該当する
ものは、税関は申立人の申立てに
より保証金を返還しなければなら
ない。
一. 申立人が勝訴の確定判決を取
得し、又は差し押えを受けた者
との間に和解が成立し、引続き
保証金を提供する必要がなくな
ったとき。
二. 差押処分廃止後、申立人は、
20 日以上の期間を定めて差押処
分を受けた者に権利の行使を催
告したにもかかわらず、権利行
使の行為がなかったことを証明
したとき。
三. 差押処分を受けた者が返還に
同意したとき。
貨物の一部が侵害を構成する問題
の有無
処分が実行されるまでの時間
推定 1 週間くらい(実例がないの
78
民事訴訟法 531 条
仮処分の申立て人が一定期間内
において起訴しなかった場合、又
は不当という原因で取り消された
場合、或いは申立て人側が本案の
訴訟の確定敗訴判決を受けた場合
に於いて、申立て人(債権者)側は
債務者がわに仮処分によって蒙っ
た損害を賠償しなければならな
い。
個別に認定する
3 週間ないし数ヶ月間。
で)
税関の貨物の押収に間に合わな
い。
仮処分が取り消されるまで継続
処分の有効期間
特定の貨物に対する物理的な処
分なので、いずれ貨物を廃棄或い 的に有効。
は没入することになる.そのきっ
かけは原則上貨物が権利侵害品目
であることが実証される時点とな
る。すなわち権利侵害事実が裁判
等で確定となる場合:押収された
ものについて、申立人が裁判所の
民事確定判決を経て著作権又は出
版権の侵害に係るものとされたと
きは、税関がこれを官没する。官
没された物のコンテナ使用期間超
過料金、倉庫賃貸、積み卸し等の
関連費用及び焼却廃棄処分に要す
る費用は、差押処分を受けた者が
負担しなければならない。前述の
焼却廃棄処分に要する費用に関
し、税関が期間を限定して納付す
ることを通知しても納付のないと
きは、法により移送して強制執行
を行う。
■上記の分析のとおりに、民事訴訟法による仮処分と税関による侵害品の押収という二つの制度は、
相当な相違点があるので、実際の状況に応じて活用するか、両者を平行して運用するかで応用すべきだ
と思われる。民事訴訟法の仮処分は近年手続きの煩雑化が見られ、もとより 2 週間ほどの審理時間が掛
かるなどによって、余り税関の貨物の押収に向かないと思われる。税関による侵害品の押収も実際の施
行規則が周到でなく、実例が極めて少ないのが現状。
そのため、実務上最も活用される押収の名目は、上記の制度より刑事訴訟法の告訴に基づく犯罪関連品
目の押収令状の申請と発行の制度である。
d-2-1 著作権侵害容疑貨物押収を申立出来る権利者の条件
著作権者又は出版権者は、その著作権若しくは出版権の侵害に係る物品を輸入し、若しくは輸出した
者に対し、あらかじめ税関に差押えを申し立てることができる。
d-2-2 申立の形式必要条件--書面形式と担保金の納付
前述の申立ては書面をもってこれをし、侵害の事実を釈明するとともに、差押処分を受ける者が差押
えにより蒙った損害の賠償の担保として、その輸入貨物について税関が見積った税金完納後の価格又は
輸出貨物の本船渡し価格に相当する保証金を提供しなければならない。保証金の納入期限は最長 12 日ま
でとする。
■摘発時に提供すべき資料(税関による商標権及び著作権保護措置の執行についての作業要点)
凡そ商標権者及び著作権者(専属性の使用許諾先を含む)、又はその代理人は、商標権又は著作権
を侵害した輸入又は輸出の物品に対し、書面をもって関税総局又は輸出入地の関税局宛に摘発すべきで、
摘発時には併せて下記の資料を提供すべきである:
(1)侵害の事実及び侵害物を識別するに足る説明。
(2)権利侵害の容疑に関連した輸出入業者の名称、物品の名称、輸出入の地点及び日付、航空機(船
舶)の便名、コンテナの番号、物品の置き場所等関連の具体的資料。
(3)商標登録の書類、著作権の証明又はその他顕かに著作権を認定できるに足る書類。
(4)もし代理人であれば、須らく代理人である証明書類を添付すること。
d-2-3 税関の対応形態の分類
(1)内容確認、判断と当事者への通知
■判断要点
税関にて第(一)項の摘発の通知を受けた際は、摘発の内容は具体的であるか否かを検
討判断すべきで、もし申請を受理したときは、摘発人に通知すべきである。もし受理しない場合も亦摘
発人にその旨通知し(必要あれば摘発人に現場に出頭させて説明するよう通知することができる)及び
受理しない理由を説明すべきである。
■通知 認定手続き進行の通知
一旦税関にて摘発事件を受理し検証した結果、もし物品が摘発の内容と一致したときは、即電話及
79
びファクシミリをもって摘発人に通知し、摘発人は通知を受けた後の一定時間内(空便で輸出:4 時
間、船便で輸出入及び航空便で輸入:1 日の作業日)に税関に赴き認定をする。税関では同時に電話
及びファクシミリをもって物品の輸出入業者に使用許諾の資料の提供を通知する。
税関が差押えの申立てを受理したときは、直ちに申立人に通知しなければならない。前項規定に適
合して差押えを行うときは、書面をもって申立人及び差押えを受ける者に通知しなければならない。
(2)処分
①中間処分
A 摘発人より著作権の侵害疑似を認定するとき:
1.輸出入業者から使用許諾の書類を提出できないとき、税関は現場にて書面をもって摘発人に
通知し、摘発人は税関からの書面による通知を受け取った日付より三日間の作業期間に著作権
法第 90 条の 1 及び税関が著作権又は製版権侵害物品の差し押え実施弁法の規定により、税関に
保証金を提供して差し押え処分を申請し、又は裁判所に保全処分を申請し、税関より差し押え
の執行に協力すべきである。
期限を逸しても未だ処理しないとき、もしその他の通関規定に違反することがなければ、税
関では輸出入業者に権利侵害の事情がない旨の始末書を作成させた後に、代表的な見本を取り
付けた上で、物品の輸出入を解禁し、並びに刑事訴訟法第 241 条の規定により、見本を取揃え
て税関所在地の司法機関宛告発することができる
(経済部知的財産局にも併せ通知すること)。
B.輸出入業者から使用許諾に係る書類を提出したとき、税関は現場にて書面を以って摘発人に
その旨通知し、摘発人は税関からの書面による通知を受取った日より 3 日の作業日内に、法の
規定により、税関に差し押え処分を申請し、又は裁判所に保全処分の申請を行ない、税関から
差し押えの執行に協力すべきで、もし期限を逸しても処理しないとき、別段その他の通関規定
に違反することがなければ、税関側では代表的な見本を取り付けた後に物品の輸出入を解禁し、
並びに参考迄に主管官庁宛に書面を送付すべきである。
②終局処分
A 権利侵害事実が裁判等で確定となる場合
差し押えられたものについて、申立人が裁判所の民事確定判決を経て著作権又は出版権の侵害に
係るものとされたときは、税関がこれを官没する。官没された物のコンテナ使用期間超過料金、倉
庫賃貸、積み卸し等の関連費用及び焼却廃棄処分に要する費用は、差押処分を受けた者が負担しな
ければならない。前述の焼却廃棄処分に要する費用に関し、税関が期間を限定して納付することを
通知しても納付のないときは、法により移送して強制執行を行う。
B 権利侵害事実が裁判等で否定される場合
次の各号のいずれかに該当するものは、税関が差押処分を廃止し、輸出入貨物の通関に関連す
る規定により処理するほか、申立人は差押処分を受けた者が差押えにより蒙った損害を賠償しな
ければならない。
一. 差し押えられたものが、裁判所の確定判決を経て著作権又は出版権を侵害したものに当たらな
いと判断されたとき。
二. 税関が申立人に差し押えの受理を通知した日から 12 日内に、差し押えの物件を侵害物品とする
訴訟が提起された旨の告知を受けなかったとき。
三. 申立人が差押処分廃止の申立てがあったとき。
d-2-4 申立人側の権限と義務
(1)権限 納入した補償金の返還を請求する権限
次の各号のいずれかに該当するものは、税関は申立人の申立てにより保証金を返還しなければならな
い。
一. 申立人が勝訴の確定判決を取得し、又は差し押えを受けた者との間に和解が成立し、引続き保
証金を提供する必要がなくなったとき。
二. 差押処分廃止後、申立人は、20 日以上の期間を定めて差押処分を受けた者に権利の行使を催告
したにもかかわらず、権利行使の行為がなかったことを証明したとき。
三. 差押処分を受けた者が返還に同意したとき。
(2)義務
申立ては書面をもってこれをし、侵害の事実を釈明するとともに、差押処分を受ける者が差押えにより
蒙った損害の賠償の担保として、その輸入貨物について税関が見積った税金完納後の価格又は輸出貨物
80
d-2-5 被告側の権限と義務
(1)権限
①税関に対して押収される貨物を検証するよう申し立てる権限
申立人又は差押え処分を受けた者は、税関に対し差押えられた物件の検査を申し立てることができる。
②申立て人が納入した補償金に対する質権
差押えを受けた者が、第二項の保証金につき、質権者と同一の権利を有する。
d-2-6
事前通報制度の運用
d-2-6-1 事実通報
権利者、権利者の使用許諾先、権利者の代理人、権利者の団体から提示し、又はその他の機関からの
通報による事件の作業手続き:
(一) 権利者、権利者の使用許諾先、権利者の代理人、権利者の団体から提示し、又はその他の機関
からの通報により、もし税関にて輸出入の物品が提示乃至通報された商標権又は著作権を侵害
した物品の外観が顕かに一致するとき:
1.税関は権利者、権利者の使用許諾先、権利者の代理人、権利者の団体に通知して認定方協力
を要請し、並びに物品輸出入業者より使用許諾の資料を提供する様通知することができる。税
関にて権利者、権利者の使用許諾先、権利者の代理人、権利者の団体と連絡し、資料を取り付
けることができなければ、ファクシミリをもって経済部知的財産局宛に必要なる協力を請求す
ることができる。もし税関が 1 日の作業日内に連絡の結果、関連の資料を取り付けることがで
きず、又別段その他の輸出入通関規定にも違反する事情がなければ、税関では代表的な見本を
取り付けた上で物品の輸出入を解禁すべきである。
2.権利者、権利者の使用許諾先、権利者の代理人、権利者の団体が税関からの通知を受取った
後は、商標の登録書類、著作権の証明又はその他明らかに著作権を認めるに足りる書類(もし
代理人であれば、須らく代理人の証明書類を添付すること)を提供し、並びに認定に協力すべ
きである。作業手続きに関しては、この要点の三、(三)から(七)迄の規定により之を処理
する。
(二)司法機関にて、もし輸出入物品が商標権又は著作権を侵害している具体的な事実、証拠を把握し
ており、書面をもって税関に通知し或は差し押え命令を提示し、税関にて事件に関連した物品を発
見したときは、事件の全部と物品を併せ当該機関宛に送検して処理させるべきである。仮に物品の
置き場所に困難あるときは、当該機関より権利者の責任で物品を貨物倉庫、コンテナの集散地又は
航空貨物の集散站等之物品の置き場所に置く様請求する。
d-2-6-2 確定判決の通報
物品には商標権又は著作権を侵害した事実があり、司法機関の判決を経て確定したとき、税関は初
めて権利者に侵害物品に係る出荷人、輸出入業者、荷物引取人及び関連の権利侵害物品の数量等資料
(代表者の姓名、会社名、所在地等を含む)を提供することができる。
■著作権法関連規定一覧
第 90 条ノ 2 未修正
第 90 条ノ 2
著作権者又は出版権者は、その著作
権若しくは出版権の侵害に係る物品を輸入し、若し
くは輸出した者に対し、あらかじめ税関に差押えを
申し立てることができる。
2 前項の申立ては書面をもってこれをし、侵害の
事実を釈明するとともに、差押処分を受ける者が
差押えにより蒙った損害の賠償の担保として、そ
の輸入貨物について税関が見積った税金完納後
の価格又は輸出貨物の本船渡し価格に相当する
保証金を提供しなければならない。
3 税関が差押えの申し立てを受理したときは、直
ちに申立人に通知しなければならない。前項規定
に適合して差押えを行うときは、書面をもって申
立人及び差押えを受ける者に通知しなければな
らない。
4 申立人又は差押え処分を受けた者は、税関に対
し差押えられた物件の検査を申し立てることが
できる。
5 差し押えられたものについて、申立人が裁判所
81
の民事確定判決を経て著作権又は出版権の侵害
に係るものとされたときは、税関がこれを官没す
る。官没された物のコンテナ使用期間超過料金、
倉庫賃貸、積み卸し等の関連費用及び焼却廃棄処
分に要する費用は、差押処分を受けた者が負担し
なければならない。
6 前項の焼却廃棄処分に要する費用に関し、税関
が期間を限定して納付することを通知しても納
付のないときは、法により移送して強制執行を行
う。
7 次の各号のいずれかに該当するものは、税関が
差押処分を廃止し、輸出入貨物の通関に関連する
規定により処理するほか、申立人は差押処分を受
けた者が差押えにより蒙った損害を賠償しなけ
ればならない。
一. 差し押えられたものが、裁判所の確定判決
を経て著作権又は出版権を侵害したものに当
たらないと判断されたとき。
二. 税関が申立人に差し押えの受理を通知した
日から 12 日内に、差し押えの物件を侵害物品
とする訴訟が提起された旨の告知を受けなか
ったとき。
三. 申立人が差押処分廃止の申立てがあったと
き。
8 前項第 2 号に定める期間は、必要なときに税関
がこれを 12 日間延長することができる。
9 次の各号のいずれかに該当するものは、税関は
申立人の申立てにより保証金を返還しなければ
ならない。
一. 申立人が勝訴の確定判決を取得し、又は差
し押えを受けた者との間に和解が成立し、引
続き保証金を提供する必要がなくなったと
き。
二. 差押処分廃止後、申立人は、20 日以上の期
間を定めて差押処分を受けた者に権利の行使
を催告したにもかかわらず、権利行使の行為
がなかったことを証明したとき。
三. 差押処分を受けた者が返還に同意したと
き。
10 差押えを受けた者が、第二項の保証金につき、
質権者と同一の権利を有する。
第 90 条ノ 3
未修正
第 90 条ノ 3
前条の実施方法は、主務官庁が財政
部と共同でこれを定める。
*第 90 条ノ 4 第 80 条ノ 2 の規定に違反して著作権
者に損害を生じさせたものは、賠償責任を負う。数
人が共同して違反したときは、賠償の連帯責任を負
う。
2 第 84 条、第 88 条ノ 2、第 89 条ノ 2 及び第 90 条
ノ 2 の規定は、第 80 条ノ 2 の規定に違反した場
合において準用する。
82
■商標法関連条文一覧(2003 年 11 月 28 日施行改正法より)
第 65 条
商標権者は輸入又は輸出において商標権を侵害する物品に対し、税関に予め差押を申請する
ことができる。
前項の申請は、書面をもって行い、侵害事実を釈明しなければならず、税関
において当該輸入貨物の CIF 価格又は輸出貨物の FOB 価格の保証金相当又は相当の担保を提供
する。
税関が差押申請を受理したときは、速やかに申請人へ通知しなければならない。前項の規定
を具備するものと認定し、差押を実施するときは、書面を以って申請人及び被差押人へ通知し
なければならない。
被差押人は、第 2 項の保証金額の倍額の保証金又は相当の担保を提供し、税関へ差押の取消
及び輸出入貨物の通関に関する規定による処分を請求することができる。
税関は対象の差押物件の機密資料を保護する状況において、申請人又は被差押人の申請によ
りその差押物件を検閲することができる。
差押物件に関して、申請人が裁判所により商標権侵害の確定判決を受けた場合、第 66 条第 4
項の規定に該当するものを除き、被差押人は差押物件の貨物延滞費、倉庫賃貸費、積み卸し費
用等の関連費用を負担しなければならない。
第 66 条 次に掲げる情況の一に該当するものは、税関は差押を取消さなければならない。
一、申請人が税関の差押通知を受理した日から 12 日以内に、第 61 条の規定により差押物件を
侵害物件として訴訟を提起せず、税関へ通知しなかったとき
二、申請人が差押物件を侵害品として訴訟を提起し、裁判所の裁定により請求棄却が確定した
とき
三、差押物件が裁判所による確定判決を経て、商標権侵害に該当しないとされたとき
四、申請人が差押の取消を申請したとき
五、前条第 4 項の規定に該当するとき
前項第 1 号に規定する期限は、税関が必要により 12 日の延長をすることができる。
税関が第 1 項の規定により差押を取り消すときは、輸出入貨物の通関に関連する規定により
処理しなければならない。
第 1 項第 1 号乃至第 4 号の事由により差押を取り消す場合、
申請人は差押物件の貨物延滞費、
倉庫賃貸費、積み卸し費用等の関連費用を負担しなければならない。
第 67 条
差押物件が裁判所の判決を経て商標権侵害に該当しないと確定したときは、申請人は被差押
人が貨物を差押えられたことにより、又は第 65 条第 4 項の規定により提出した保証金で受けた
損害を賠償しなければならない。
申請人は第 65 条第 4 項に規定する保証金について、被差押人は第 65 条第 2 項に規定する保
証金について、質権者と同一の権利を有する。ただし、前条第 4 項及び第 65 条第 6 項に規定す
る貨物延滞費、倉庫賃貸費、積み卸し費用等の関連費用は、申請人又は被差押人の損害を優先
して賠償する。
次に掲げる情況の一に該当するときは、税関は申請人の申請により第 65 条第 2 項に規定する
保証金を返還しなければならない。
一、申請人が勝訴の確定判決を受け、又は被差押人との和解が成立し、すでに保証金の提供を
継続する必要がなくなったとき
二、前条第 1 項第 1 号乃至第 4 号に規定する事由により差押が取消され、被差押人が損害を被
るに至った後、又は被差押人が勝訴の確定判決を受けた後、申請人が 20 日以上の期間を定
め被差押人へ権利行使を催促しても行使しなかったことを証明したとき
三、被差押人が返還に同意したとき
次に掲げる一の情況に該当するときは、税関は被差押人の申請により第 65 条第 4 項に規定す
る保証金を返還しなければならない。
一、前条第 1 項第 1 号乃至第 4 号に規定する事由により差押が取消され、又は被差押人と申請
人との和解が成立し、すでに保証金の提供を継続する必要がなくなったとき
二、申請人が勝訴の確定判決を受けた後、被差押人が 20 日以上の期間を定め申請人へ権利行使
を催促しても行使しなかったことを証明したとき
三、申請人が返還に同意したとき
第 68 条
前 3 条に規定する差押申請、差押取消、差押物件の検閲、保証金又は担保の納付、提供と返
還の手続き、必要書類及びその他の遵守事項にかかる規定については、主務官庁が財政部と共
にこれを定める。
第 69 条
第 33 条の規定により商標の使用許諾を受けたものは、その使用権が損害を被った場合は、本
章の規定を準用する。
83
■
税関における処置の手順
税関による商標権及び著作権保護措置の執行についての作業要点
200308 頒布施行
(2003 年 6 月 10 日付台総局緝字第 0920103926 号公告により制定、就中三の(四)の 2 の規定は 2003
年 11 月 28 日に施行される外を除き、その他は 2003 年 7 月 1 日より施行された。元の「税関が商標模造
品の輸出入の摘発事件に係る受理事項」は、2003 年 7 月 1 日より適用されない。)
一、商標権者及び著作権者の権益を保障し、世界貿易機関(WTO)の「貿易と関係ある知的財産権の協定」
の趣旨及び当国の関連法令により、公平公正の原則に基づき、正常なる国際貿易を促進し、通関障碍
を引き起こすのを避ける為、特にこの要点を制定する。
二、この要点は、原則上摘発保護方式を採る。但し税関が権利者、権利者の使用許諾先、権利者の代理
人、権利者の団体から提示され、或いはその他の機関から通報され、商標専用権及び著作権を侵害
した容疑に関連した物品を発見した際は、関税法、貿易法、著作権法、商標法、民事訴訟法及び刑
事訴訟法等関連法規により之を処理する。
三、摘発保護方式の作業手続き:
(一) 摘発時に提供すべき資料
凡そ商標権者及び著作権者(専属性の使用許諾先を含む)
、又はその代理人は、商標権又は著
作権を侵害した輸入又は輸出の物品に対し、書面を以って関税総局又は輸出入地の関税局宛に
摘発すべきで、摘発時には併せて下記の資料を提供すべきである:
(1)侵害の事実及び侵害物を識別できるに足る説明。
(2)権利侵害の容疑に関連した輸出入業者の名称、物品の名称、輸出入の地点及び日付、航空機
(船舶)の便名、コンテナの番号、物品の置き場所等関連の具体的資料。
(3)商標登録の書類、著作権の証明又はその他顕かに著作権を認定できるに足る書類。もし代
理人であれば、須らく代理人である証明書類を添付すること。
(二) 通知による摘発事件は受理するか否か?
税関にて第(一)項の摘発の通知を受けた際は、摘発の内容は具体的であるか否かを研討判
断すべきで、もし申請を受理したときは、摘発人に通知すべきである。もし受理しない場合も
亦摘発人にその旨通知し(必要あれば摘発人に現場に出頭させて説明するよう通知することが
できる)及び受理しない理由を説明すべきである。
(三) 認定手続き進行の通知
一旦税関にて摘発事件を受理し検証した結果、もし物品が摘発の内容と一致したときは、即
電話及びファクシミリでもって摘発人に通知し、摘発人は通知を受けた後の一定時間内(空便
で輸出:4 時間、船便で輸出入及び航空便で輸入:1 日の作業日)に税関に赴き認定をする。税
関では同時に電話及びファクシミリでもって物品の輸出入業者に使用許諾の資料の提供を通知
する。
(四)商標専用権侵害疑似事件の処理:
摘発人より商標権の侵害疑似を認定するとき:
1.輸出入業者から使用許諾の書類又はその他侵害の事情なき証明書類を提出できないとき、税
関は商標法の規定により全部のケースを送検する(並びに経済部知的財産局に通知する)。
2.輸出入業者が権利者からの使用許諾書類又はその他権利侵害の事情なき証明書類を提出した
とき、税関は即摘発人に通知し、摘発人側から明確なる反証を提出できない場合、税関では代
表的な見本を取り付けた後に、物品の輸出入を解禁する。但し摘発人から明確なる反対証拠を
提出し、且つ三日間の作業期間内に商標法第 65 条第 2 項の規定により保証金を提供し、又は相
当なる担保を提供して税関に差し押え処分を申請し、又は裁判所に保全処分を申請した場合、
税関では差し押えに協力すべきである。差し押えを受けたものは、上記商標法の同条第四項の
規定により保証金又は相当なる担保を提供した上、差し押え処分を廃止する様税関に請求する
ことができる。
(五)著作権侵害疑似事件の処理:
摘発人より著作権の侵害疑似を認定するとき:
1.輸出入業者から使用許諾の書類を提出できないとき、税関は現場にて書面をもって摘発人に
通知し、摘発人は税関からの書面による通知を受け取った日付より三日間の作業期間に著作
権法第 90 条の 1 及び税関が著作権又は製版権侵害物品の差し押え実施弁法の規定により、税
関に保証金を提供して差し押え処分を申請し、又は裁判所に保全処分を申請し、税関より差
し押えの執行に協力すべきである。期限を逸しても未だ処理しないとき、もしその他の通関
84
規定に違反することがなければ、税関では輸出入業者に権利侵害の事情がない旨の始末書を
作成させた後に、代表的な見本を取り付けた上で、物品の輸出入を解禁し、並びに刑事訴訟
法第 241 条の規定により、見本を取揃えて税関所在地の司法機関宛告発することができる
(経済部知的財産局にも併せ通知すること)。
2.輸出入業者から使用許諾に係る書類を提出したとき、税関は現場にて書面をもって摘発人に
その旨通知し、摘発人は税関からの書面による通知を受か取った日より 3 日の作業日内に、
法の規定により、税関に差し押え処分を申請し、又は裁判所に保全処分の申請を行ない、税
関から差し押えの執行に協力すべきで、もし期限を逸しても処理しないとき、別段その他の
通関規定に違反することがなければ、税関側では代表的な見本を取り付けた後に物品の輸出
入を解禁し、並びに参考迄に主管官庁宛に書面を送付すべきである。
(六)商標権又は著作権の侵害に関連していない事件又は期限を逸しても税関に赴き認定をしていない
事件の処理:
摘発人より商標権又は著作権を侵害した事情がないと認定したとき、又は期限を逸しても税関に
赴き認定をしないとき、もしその他の通関規定に触れる様なことがなければ、税関では直ちに輸
出入を解禁する。
(七)輸入物品が商標権又は著作権を侵害するものと認められ、関税法第 61 条の規定に違反したときは、
関税法の関連規定に則り之を処理する。
(八)税関にて物品を差し押え処分にした際は、摘発人及び輸出入業者に通知するべきである。
四、権利者、権利者の使用許諾先、権利者の代理人、権利者の団体から提示し、又はその他の機関から
の通報による事件の作業手続き:
(一)権利者、権利者の使用許諾先、権利者の代理人、権利者の団体から提示し、又はその他の機関
からの通報により、もし税関にて輸出入の物品が提示乃至通報された商標権又は著作権を侵害
した物品の外観が顕かに一致するとき:
1.税関は権利者、権利者の使用許諾先、権利者の代理人、権利者の団体に通知して認定方協力
を要請し、並びに物品輸出入業者より使用許諾の資料を提供する様通知することができる。
税関にて権利者、権利者の使用許諾先、権利者の代理人、権利者の団体と連絡し、資料を取
り付けることができなければ、ファックシミリを以って経済部知的財産局宛に必要なる協力
を請求することができる。もし税関が 1 日の作業日内に連絡の結果、関連の資料を取り付け
ることができず、又別段その他の輸出入通関規定にも違反する事情がなければ、税関では代
表的な見本を取り付けた上で物品の輸出入を解禁すべきである。
2.権利者、権利者の使用許諾先、権利者の代理人、権利者の団体が税関からの通知を受取った
後は、商標の登録書類、著作権の証明又はその他明らかに著作権を認めるに足りる書類(も
し代理人であれば、須らく代理人の証明書類を添付すること)を提供し、並びに認定に協力
すべきである。作業手続きに関しては、この要点の三、(三)から(七)迄の規定により之
を処理する。
(二)司法機関にて、もし輸出入物品が商標権又は著作権を侵害している具体的な事実、証拠を把
握しており、書面を以て税関に通知し或は差し押え命令を提示し、税関にて事件に関連した
物品を発見したときは、事件の全部と物品を併せ当該機関宛に送検して処理させるべきであ
る。仮に物品の置き場所に困難あるときは、当該機関より権利者の責任で物品を貨物倉庫、
コンテナの集散地又は航空貨物の集散站等之物品の置き場所に置く様請求する。
五、物品には商標権又は著作権を侵害した事実があり、司法機関の判決を経て確定したとき、税関は始
めて権利者に侵害物品に係る出荷人、輸出入業者、荷物引取人及び関連の権利侵害物品の数量等資料
(代表者の姓名、会社名、所在地等を含む)を提供することができる。
85
d-3 水際取締の評価
水際取り締まり事業が直面する実務上の困難点に触れてみる。
1)
通関貨物の量の膨大さによって、サンプリングチェックによって部分的な検査しか出来ない
のが通常である。また、知的財産権侵害如何に関する認定をめぐる技術的な難点もある。論理
上では、知的財産権侵害容疑の貨物が検出された場合、麻薬や拳銃のような物品が見つかる場
合と同じように、法律によって即時押収できるはずだが、知的財産権侵害については、拳銃類
などの典型的な流通禁止品よりも認定上の困難点が多くある。
2)
他方、法律では輸出入業者に誠実な申告義務を課する他、税関に対して知的財産権侵害容疑
の物品に関する通関を差し止める行政上の処分権も与えている。ただし不法業者は常に架空の
貿易会社の名義を借りて輸出を行うことが多く、直接処分を受けることを躱すことによって輸
出を継続する手法が多用され、税関の監督によって取り締まりの実効を求めにくい。
3)
税関法を始めとする諸法規は建前の方針だけを掲げるが、具体的な方法を施行細則などで規
定していない。また、マンパワーと検査技術の制限によって、容疑商品の検出率が低下しがち。
輸入品もほぼ事情が同じである。税関法など法律も実務的な困難点を予想して、税関での検査
の実施に関する具体的な方法と基準については行政機関自身の判断と裁量に委ねるように規
定している。
4) その上国家公務員の守秘義務に制限されて、必要な情報を入手しにくい。一般国家公務員は
秘密保守義務を負い、輸出入業者の通関貨物の詳細品目と数量等の資料を権利者に提供しない
ことにしている。確かに商標専用権者の名義で禁倣小組に相関の資料を入手してもらうことも
考えられる。しかしたとえ禁倣小組が権利者の要請に応じて税関に協力を求めたとしても、税
関がその要請に拘束される訳ではない。むしろ例外的にしか認められない。結果としては、入
用の情報を入手するのに最も有効なアプローチはやはり輸出入業者に対して刑事訴訟を提起
し、検察官の捜査権に基づいて令状のもとで強制力のある捜査活動を進める方法である。又、
訴訟提起の後でも、輸出入業者の従来の模造品輸出入行為について確認したい場合、訴訟継続
中に検察官に書面で主務機関に請求してもらうことができる。
5) 税関の段階での取締りに関して、効果が顕著に現れにくい要素は、やはり有期懲役刑がない
事にあろう。文明国家の基準にしたがえば、規定を違反した者に対する行政処分と罰金を課せ
ば十分だが、禁固刑をなくした法律は往々にして骨抜きにされてしまう。違法が見つかって、
輸出免許を取り上げられたとしても、組織的な犯罪者は会社を新設すれば又旧業を操ることが
出来る。文書偽造罪は有期懲役の罪だが、悪質な業者はその道の常習犯が多い。優良大手メー
カーの名義を盗用してまかり通ることもある。水際措置は確かに知的財産権保護対策のもう一
つ武器だが、法律上の規制と技術上の困難の狭間におかれる税関が既存の障害を取り払って、
もっと有力な運営環境の確保に成功できればその真の価値を発揮できよう。
d-4 商標輸出監視システム
登録受理機関:経済部国際貿易局
執行機関:各地税関
知的財産権の保護を着実に進め、不法コピー商品の外国への流出を食い止めるために、国際
貿易局及び関税総局は関連機関と連携して、『商標輸出監視システム』を導入し、1994年10月1
日に実施をスタートさせた。輸出品に表示された商標は同システムで商標権者による登録手続
きが完了した商標を不法に盗用しているかを税関にてチェックする仕組みになっている。有料
制で登録された商標のデータベースを利用し輸出貨物を対象にサンプリング検査を行う科学的
な管理システムの導入によって、水際取締の効果をあげることを目的とする同システムの利用
を普及させようと、国際貿易局と関税総局は1995年11月25日に登録申請に必要な書類及び料金
算定基準を中心に「商標輸出監視システムの運営執行手続き」を修正した。
❒概要
経済部国際貿易局は1994年10月下旬に、輸出品の商標登録作業の準備を整えた。同作業は
C・C・Code(Standard Classification of Commodities of the Republic of China Code)
によって分類される項目に従って登録を行うが、細かな分類で登録項目の激増を防ぐため、最
低の6桁だけを採用して分類の簡素化を図った。
上記の通りに輸出業者には自社が取り扱う輸出品目に使用する商標について申告し、申告の
対象となる商標を使用する権限のあることを証明する書類の提出も義務づけられている。しか
86
し、輸出業者が誠実に申告するかを問わず、不特定の対象に対して検査が行われる。検査で貨
物に使用された商標とその品目が監視システムで登録済みの商標及び指定商品と一致する場合、
輸出業者の当該商標の正当な使用権限の有無について調査する。輸出業者が当該商標の権利者
の使用許諾を受けていない者である場合、税関は輸出業者に商標権者の指定書類、又は使用許
諾書、その他盗用の事実のないことを証明するに資する書面の提出を命じ、書面を審査した上
で通関を許可する。監視システム登録済みの商標と類似するものの場合、税関は類似の度合が
誤認混同を生じさせるおそれがあるかどうかについて判断し、前述のような措置を取るか、或
いは輸出業者に商標盗用の事情のないことが明記される旨の誓約書を提出させ、商標権侵害の
ないことを確認してから通関を許可し、関連主務官庁に事後の査証を行うよう照会する。
同システムは外圧に応えるためにできあがった制度ではあるが、商標を盗用する商品の取締
強化に寄与することを期待されている。特に通関の過程を長引かせることなく効果的に知的財
産権の侵害行為を規制できるという点において高く評価されている。
❒商標輸出監視システムを利用する際の具体的手続き
A.申請人の資格
(1)台湾で商標登録を受けた商標権者
(2)他国で商標登録を受けた商標権者であって、かつ①すでに台湾知的財産局に商標登
録出願をした者、又は②その商標が著名商標であることを証明できる者、のいずれ
に該当する者。
B.申請に必要な書類:
登録を申請するにあたり、「商標専用権者登録済商標申請書」、「商標専用権者登
録済み商標資料表」、「登録商標表示許諾証明書」、「商標特徴説明書」のほか、次
の書類の提出が必要となる。
一. 既に我が国で商標の登録を受けた商標専用権者は次の証明書類を提出する。
1.商標登録証書コピー
2.代理人が登録を申請するときは代理の権限を明記した委任状を添付すること。
二.外国で登録を受けていて、かつ我が国で登録出願をした商標専用権者は次の書類を提
出する。
1.現地の公証人による公証を経た外国商標登録証書コピー、又は当該外国の商標主務
官庁による認証証明(中国語訳本を添付)。
2.商標登録出願願書(我が国商標主務官庁への出願証明として)及び手数料領収書コ
ピー。
3. 代理人が手続きを代行する場合は代理の権限(登録手続き、書類の提出及び「登録
商標表示に関する使用許諾の同意書」の内容変更などの委任)が明記された委任状を
添付すること。
三. 外国で登録を受けていて、かつその商標は著名商標であることを主張する商標専用
権者は次の証明書類を提出する。
1. 外国商標登録証書コピー(当該外国現地の公証人による公証を経たもの、又は当該
外国商標主務官庁発行の認証証明、中国語訳本添付必要)
2. その商標が著名商標であることを証明する書類
3. 代理人が登録申請手続きを代行する場合は代理の権限を明記した委任状を 添付す
ること。
四. 登録の申請に関し、国際貿易局は必要と認めるときは、申請者又はその代理人に対
して身分証明又は法人資格証明の提出を要求することができる。
C. 登録料金について
1) 基本登録料金:商標登録證の部数によって申請件数を決める。登録証書に列挙された
指定商品の項目を貨物品目分類番号(CCC Code)に転換して、最初の6桁(世界通用の
HSコード)が同じ場合は一類とする。類別が10までの登録は新台湾ドル5,000元、10類
を超える場合は超過部分について一類につき新台湾ドル1,000元を追加徴収する。同シ
ステムは商標登録証書の提出を前提要件としているが、登録は商標の商品分類と関係な
く、H・S-Codeの分類に該当する類別の数によって料金を算定する。一類につきは従来
通りに新台湾ドルNT$ 5,000元の料金を徴収する。登録後の修正は一件につきNT$2,000
元を徴収する。
2)商標権権利期間の更新は資料の変更とみて一件につき毎回NT$2,000元の費用がかかる。
D.検査の対象及び法律上の根拠
(1)我が国で商標登録を受けた商標の場合
a.検査の対象:輸出品全般。
87
b.法律上の根拠:商標法、貿易法、貿易法施行細則、物品輸出管理弁法、輸出物品の
通関検査及び許可弁法。
(2)他国で商標登録を受けた商標であって、我が国に対して商標登録出願中の場合
a.検査の対象:商標登録を受けた当該外国への輸出品に限る。
b.法律上の根拠:商標法、貿易法、貿易法施行細則、物品輸出管理弁法、輸出物品の
通関検査及び許可弁法。
(3)我が国で商標登録を受けていない外国の著名商標の場合
a.検査の対象:すべての輸出品。
b.法律上の根拠:公平取引法、貿易法、貿易法施行細則、物品輸出管理弁法、輸出物
品の通関検査及び許可弁法。台湾では1994年10月1日に 商業輸出監視システム を
発足させた。有料制で登録された商標のデータベースを駆使し輸出品目に対して抽選
検査を行う科学的な管理システムの導入によって、水際取締の効果を大幅に向上させ
る目的が込められている。
d-5 一般的な水際取締を実行するには
(1)
水際取締の対象と範囲(輸出入、権利、申し立て又は職権など)
対象:
a.人的対象:主に輸出業者のみ。外国メーカーに及ばない。
b.物的対象:商標法又は著作権法違反の商品の輸出入に限る。すなわち商標の外見によっ
て侵害の判断が出来る商品に限る。特許技術の分析は摘発者の知的財産局(IPO、元中
央標準局)と法務部指定の鑑定機関の作成した鑑定報告に委ねる。貨物の差し押さえ
は台湾の司法機関の令状と裁判効力について相互承認の有る外国の確定判決のもとで
初めて可能となる。
c.申請者:商標専用権者又は著作権者の本人或はその代理人に限る。
d.受付機関:税関、警察署、調査局又は禁倣小組。貨物の差し押さえ他取締行動が欲し
い場合、常に検察官より捜査状をもらう必要が前提的にある。
e.範囲:国境外の取締、すなわち貨物船が入港して税関に係るまでは税関として検査の
作業を開始出来ない。差し押さえも裁判所の裁定がなければ難しい。
(2)
水際取締手続きの流れ
水際取締を開始するには、次の手続きを取るべきである。
1.侵害容疑製品のある船舶の名称、船便、運送期間、コンテナー・カーゴ番号等の確認と
取得。
2.情報を警察署、調査局又は禁倣小組、或は裁判所に提供する。
3.検事から捜査令状を発行してもらうか、又は民事法廷で担保金を供託して、仮処分裁定
をもらって、貨物の差止めを目指す。
4.カーゴの通関後、司法警察とともに税関に赴き模造品の差し押さえを実施する。
5.案件を検察官に移送する
d-6 最近の動向
税関などによる水際取締は、まだ幾つかの障害が伴っているといえよう。しかし、それは台
湾特有の事情というよりも、経済発展の途上における一過的な現象と捉えるべきところもあろ
う。海外からの外注生産拠点として、製造輸出産業を経済発展の中心に据えてきた過去50年近
くの経済発展の歴史を持つ台湾にとっては、財産権保護制度を完備するのは時間がかかる。し
かし近年台湾の民間及び政府両極のコンセンサスにおいては、知的財産権を重視することによ
って国際経済社会での競争力を更に高めることが認識され、半導体とコンピュータなどハイテ
ク分野の産業の勃興とともに、知的財産権制度の整備を重要国策として進めるべきだとしてい
る。工業生産力の発展とともに、輸出重視型から次第に内需型の形態に進化する現象が見られ、
同時に技術とブランドの開発能力も日増しに成長してきている。こういった先進国に見られた
発展を促進し又保障するために、水際救済措置の効率性と公正度においても先進国並みの水準
に引き上げるべく制度と実務運営の改善の動きが更に顕著になっている。
特に、90年代以来、民間消費力の向上と為替レートの調整などによって、台湾の輸入ブーム
は更に進む。台湾はASEAN乃至中国の重要な輸出先となっているし、同時に同地域からの偽造
品の一大市場にもなりつつある。製造業の海外進出に従って模造品のメーカーの海外移行運動
が盛んに見られる。国内で実際に侵害品の製造販売に従事する業者が減り、輸出量も減少しつ
つある。このような背景に鑑み、輸出に対する監視ばかりではなく、輸入貨物に関する模造品
の水際取締の必要性も次第に高まってきた。それに応じて、禁倣小組も輸出貨物に絡む知的財
産権侵害問題に関する取締の強化を最大の課題の一つに掲げている。
88
税関が密輸貨物若しくはコピー商品を発見又は差押さえた場合、法により取り扱うほか、で
きれば、メーカー、合法な輸入業者若しくは知的財産権者に告知し、協力を求めることを望む
業者もある。だが、関税総局の話では、全国各地の港(基隆、台中、高雄、花蓮などの港)で
処理している貨物の量が多く、当事者や関係者に一々通報するとなると、作業の効率の低下に
つながりかねないので、なかなかそうはいかない。
また、税関は主に関税の賦課・徴収を行い、法律が全面的に改正するまで、輸出入貨物の取
り締まりは付帯事項である。知的財産権侵害物品の取締に関連する規定は関税法第 45 条「禁
制品を輸入してはならない」とあるだけで、そのうえ知的財産権侵害の事実を認定する権限も
なければ、ただ侵害の疑いを理由に長期間係争物品を差押さえる権限もない。輸入業者又は政
治的有力者が人民の権利及び自由を侵害したことを理由に税関の処分に不服を申し立てられ
ることのないように、税関は通常知的財産権侵害物品の取り締まりについて慎重かつ保守的な
立場を取っている。もちろんこれはあくまで総局の立場であり、各地の税関なら、当事者又は
その代理人が積極的かつ十分に情報を提供すれば、税関も積極的に取締行動を行うことができ
る。速やかにコピー商品の予定通関時間及び数量を事前に把握しておいて、タイミングよくそ
れを差押さえた場合、代理人が早速検察官による捜索令状をもらい、法律救済手段を講じるこ
とができる。したがって、税関はやはり知的財産権侵害物品を取り締まる重要なルートの一つ
である。
密輸貨物又はコピー商品の処理、廃棄及び焼却はここ数年大きな問題となっている。例えば、
1999 年から 2000 年までの 2 年間で差押さえられた密輸のたばこは 200 万パックを超えている。
各地の焼却炉はたばこのニコチンで設備が損傷したことから、たばこの焼却を拒否している。
大量の密輸たばこは北部の基隆から中部、更に南部へ運んで処理するときもある。遠隔地に位
置する焼却炉も密輸たばこの焼却を引き受けかねるとの姿勢を示している。そのため密輸貨物
が山積みしている。倉庫の保管能力に限度があり、また保管及び焼却など密輸貨物の処分に要
するコストのアップは間接に税関が取り締まりを行う意欲や能率に影響し、深刻な問題となっ
ている。
89
税関業務関連 Q&A
Q1.貴署の全体の組織、職員数及び権限の範囲並びに水際取締り係わる組織、職員数に
ついて。
A1.当所は 4 箇所(基隆・台北・台中・高雄)の税関を管轄しています。職員数は 3,920 名。主な業務
と権限は日本と同様。取締り職員は輸出入含めて 1,109 名(全体の 28.29%)です。
Q2.貴署の水際取締りに関し、他の機関(外国を含む)との連携はあるのでしょうか。
A2.国内においては、高等検察庁、地方検察庁、特許庁、警察、国際貿易局との連携が
あります。海外においては、アメリカ、オーストラリア、フィリピンと協力協定があ
ります。日本とは協定はありませんが、相互で交流があり、情報交換等を頻繁に行っ
ています。また、韓国、EUの国々と情報の交流を行っています。
Q3.貴署で過去3年間の水際取締り申立て件数とその実績件数を権利別、国別、年度別
にご提示ください。
A3.摘発の件数は2004年と2005年で合計31件ありました。(商標権16件、著作権14
件、商標権と著作権がらみが1件)。また、ペンディングが2件あります。
Q4.貴署で権利侵害品(権利別)の過去3年間の輸入差止件数をご教示ください。また、文房具、家具、
魚釣り用品、硝子製品、玩具、スポーツ用品、プラスチック製日用品、魔法瓶、陶磁器の件数も併
せてご提示ください。
A4.ご希望の品目全ての統計はありませんが、資料を参照してください。
輸入日用品の商標権侵害
侵害の品目及び数量(合計2,393,323)
項
商
目
標
権
時計
化粧
皮製
ゴル
侵
品
品
フ用
期
害
品
間
事
例
20
31
4
1,507
166
0
05
件
1∼
3
4∼
32
123
356
190
8,699
6
件
7∼
63
3
4,719
98
0
9
件
3
48
3
724
934
0
10
件
3
∼
12
計
174
193
7,306
1,388
8,699
件
なお、世界中の光ディスクの7割以上は生産が台湾に集中していると考えています。
したがって、台湾政府も光ディスクの模造品対策には力を入れています。
Q5.貴署に輸入差止めを申し立てる際、どのような情報の提供が必要でしょうかご教示ください。また、
申請は何処にすればよいのでしょうか。
A5.ガイドラインの「苦情に基づいた保護のための手続き」を参照してください。
1.苦情の為に提出する情報。2.苦情が受理されるかどうかの通知。3.識別手続きの通知。4.商標権
侵害と疑いをかけられた場合の取扱い手続き。5.著作権侵害と疑いをかけられた場合の取扱い手続
き。6.商標権・著作権が侵害されない場合の取扱い、又は、原告が定められた時間内に対応しな
い場合。7.製品が留められた場合。通常、原告と輸入業者(輸出業者)に通知します。なお、ガ
イドラインにある関係書類全てを用意出来ない場合でも協力することもあります。
申請には、検挙/提示進出口侵害商標権及び著作物品申請書が必要です。
差止めの申請は、個別の税関に申請した場合は、申請した税関だけで取締りを行います。複数の税
関に申請したい場合、税関総局に申請すれば 4 箇所の税関をカバーできる。また、有効期限は 1 年
90
靴
52
255
282
570
1,159
間であります。(延長可能)
Q6.前問に関連し、貴署に告発することによって刑事告発の手続きをとってもらえると思いますが、そ
の際の提供資料は輸入差止めの際と同じ資料で良いのでしょうか。
A6.質問の趣旨が若干不明ですが、職権又は権利者からの摘発申立てで有れば同じ資料で可能です。手
続き上、職権で摘発する場合、商品真偽の弁別作業は権利者の協力が必要で、一般的に外国の権利
者は代理店や商標の代理人に連絡に行き、権利者からの協力を待ちますが、通関手続きの時間は 24
時間以内に制限され、権利者の連絡が 24 時間以内になかった場合、取り締まることはできません。
Q7.特許等の侵害への刑事罰適用の廃止が輸入差止めに与える影響について。
A7.特許侵害は、裁判所の命令により差し止めの処分を行います。通常は、裁判所の仮処分命令により
行います。ただし、仮処分は、個別の案件に限定するので、差し止めも全ての商品ではなく、船名・
コンテナーナンバー等を特定しないとできません。
ガイドラインの特許に関する項目を参照してください。
Q8.貴署への差止めや告発は知的財産権の権利者でないとだめなのでしょうか。そのライセンシーでも
できるのでしょうか。
A8.ライセンシー(代理人)でもできます。但し、権利者からの委任状が必要です。
Q9.権利侵害による輸入差止めに対し不服が申立てられた割合、また不服申立てに対して権利者がとる
べき手続きについて。
A9.不服申立ての割合は僅かであります。通関の違反に対しては刑事罰があります。ただし、刑事罰が
クリアされても(刑事罰の前提は原則として悪意が必要で、侵害を知らない或いは侵害の故意がな
い場合に、不起訴か無罪になります)行政罰(罰金・没収)は残ります。
Q10.台湾で知的財産権の税関登録は可能ですか、また料金は 1 件幾らでしょうか、税関登録は、特許、
商標の全てが可能でしょうか。また、類否の判断は、税関独自で行うのでしょうか。
A10.台湾で商標登録されていれば税関登録は可能です。料金について現在は無料である。
りますが、将来は業務量によっては有料化を考えています。
税関登録は、商標権と著作権に限定しています。特許権については、裁判所の仮処分命令によっ
て行います。
類否の判断について、特許権侵害については裁判所の命令により行う為、現在は協力している程
度です。商標権侵害については関係書類を吟味し、公正な第三者的立場で判断しています。
Q11.貴署で輸入差止めした製品の処分内容をご教示ください。また、処分の中にシップバック(積戻
し)は有るのですか。
A11.刑事罰と行政罰があり、刑事罰にかかる場合は著作権侵害と商標権侵害は裁判所に移送します。ま
た、刑事罰の場合、税関取締条例 39 条‐1 条で、密輸の場合は 36 条により処罰を行います。税
関の商品差止めについて、著作権侵害品は破棄処分、商標権侵害品は権利者に問合せ、了解を得
られなければ破棄処分にします。
シップバック(積戻し)は行いません。
Q12.関税法上、輸入禁制品は意匠権にも及ぶのでしょうか。
A12.意匠権は特許権と同じ扱いになることから、特許権侵害と同様です。
台湾の専利法には特許、実用新案及び意匠三つの権利を規定しています。従って、意匠権の取
り扱いは特許権と同様です。
Q13.台湾に権利を所有していない場合について、輸入差止めができる方法があれば具体的にご教示く
ださい。
A13.商標について、公平取引法に基準(不正競争防止法)、貿易法に著名商標保護基準はありますが、
著名商標の認定を得るために、大変な資料の提出及び時間がかかることから、出願したほうが早
いと考えます。著作権については、日本の著作権も保護対象として取り扱っています。
Q14.一つの梱包品の中に真正品と模倣品が混在する場合、模倣品はどのような処分になるのでしょう
か。
A14.別々に処理します。従って、真正品は通関し、模倣品は押収することになります。
Q15.Q4 から Q15 は輸入品の輸入差止めに関する質問ですが、輸出品の輸出差止めについても上記と同
じ質問をした場合はどのような回答になりますか。
91
また、台湾に権利のある物を輸出する場合、台湾の国内法で処分すると思いますが、他国に権利
が有る商品を台湾経由で輸出する場合についてはいかがでしょうか。
A15.輸出差止めも輸入差止めとほぼ同じです。また、台湾に権利のある物を輸出する場合については、
商標については属地主義的なところがあり、台湾に登録がないと難しいです。但し、登録がなく
ても著名商標については、資料の提示があれば可能であります。しかし、手続きが面倒ですので、
台湾に商標登録したほうがよいと考えます。
なお、商標登録があれば、国際貿易局に商標輸出監視システムに登録ができ、台湾から輸出する
贋物を監視して発見できます。
Q16.中国本土で製造された侵害品が台湾を経由して日本に輸出されようとしている場合それを防ぐ最
良の方法について。
A16.情報がないと難しいと考えます。ただし、現在、13 品目(知的財産関係ではタバコがメイン、他
には麻薬や、銃などの禁制品)については詳しい申告を必要として規定しています。不実申告で
あれば、没収できます。また、当方に贋物の情報があれば、日本の税関に情報提供をし、そこで
処分できます。
Q17.日本に輸入された商品が権利侵害品であることが判明し、シップバックを命じられた商品に対し、
貴署はどのような措置を講じられるのでしょうか。
A17.シップバックは考えられませんが、もしシップバックされた商品があるとするならば、日本の税関
からの情報により、台湾の法律に基づき対処いたします。
92
e査禁模倣商品小組
■内外を繋ぐ連絡機構--禁倣小組と税関の協力関係
自由貿易を寛大に扱う現代商工業重視の社会において、知的財産権侵害事件に関する水際取締
実務が重視されるがまだ多くの制限を受けている。幸い、台湾に於いては、知的財産権保護の実
績は着実に伸びてきている。その一因に、禁倣小組という政府機関があげられる。同小組は全称
経済部国際貿易局査禁倣冒商品小組 となり、知的財産権侵害事件に政府側が積極的に協力出来
るように1981年行政院経済部の下部機関として設立した特設機関である。台湾の税関には米国の
ITCの様な権限を持たない一方、禁倣小組を介して司法機関の取締を間接的に発動することが出
来る。経済部知的財産局(IPO)が1999年1月に組織再編された以降、同小組は同IPOの傘下に編
入された。
禁倣小組の職務は次の通りである。
1.台湾全国的商標及び特許の侵害事件の防止に関する宣伝及び調査、乃至取締活動の協調と指導。
2.内外の知的財産権者に知的財産権保護に関する相談に応じ、取り締まりの依頼を受け付け、協
力すること。
3.税関に模造品の輸出防止及び取締に関して法律相談サービスの提供;及び
4.治安機関とミッションチームを組んで、模造品の取締を積極的に行うこと。
輸出貨物の商標模倣及び原産地虚偽表示防止辧法 は1993年廃止されたが、同法の輸出入に
関係する条文は殆ど貨物輸出管理辧法の中に組み入れられた。それによれば、税関は知的財産権
を侵害する物品を発見した場合に、その本部、いわゆる海関総税務司署に通報する。同司署はこ
の様な情報をまず経済部禁倣小組に通報して、侵害の成立如何についての検討を待つ。禁倣小組
が初歩的に侵害成立と認めた場合は容疑事件を地方検察庁に移送することになる。検察官によっ
て起訴され、又有罪判決を得られた場合は、同商品の輸出許可を停止することを命じることがで
きる。逆に、当事者が模造品の輸出を差し止めようとするときは、証拠を揃えたうえ禁倣小組に
申し立てれば、同禁倣小組の意見を添え、証拠を更に充実させてから当事者の名義の申請の上で、
検察官の令状に基づいて本格的な取締の段取りを開始させることもできる。禁倣小組に対して協
力を要請する申立てには次の書類が必要である。
(1)商標盗用者の中国語社名、住所及び電話番号。
日本の権利者は何とかして禁倣小組に模造品の製造者を突き止めてもらいたい一方、同小組
はむしろ明白な目標を権利者に指摘して欲しいとのこと。
(2)模倣行為に関する具体的な事実、証拠、又は模倣品の収納場所及び予定輸出先港湾、期日。
禁倣小組が詳細な資料に基づいて、警察機関に的確な協力依頼をして、犯罪容疑事実につい
て検察官により明確に解明出来れば、捜索令状の下付が更に容易になり、証拠物の保全なども
早期に図れる。
(3)差止請求者の台湾での商標登録や特許証書の提出のほか、輸出先の外国で取得した商標権や
特許権を証明する書類のコピー等の資料。特に輸出禁止にあたって、なるべく詳細で正確な証
拠を提出することが望ましい。
■禁倣小組の役割の更迭
禁倣小組が侵害の事実があると認めた場合、税関に関係輸出業者の輸出許可記録を提示しても
らって、更に侵害事実に関する証明証拠を収集する。税関は通常業者の記録を公開しないが、確
実な補充証拠の提示の下で、記録を見せてくれる。税関の輸出記録資料と権利者の提供した資料
が合致した場合、輸出業者乃至製造拠点の割り出しが更に容易になる。
組織的に見れば、同委員会は行政機関である。総統府と並んで台湾の最高行政機関である行政
院の二十近くの部署、例えば法務部、内政部と其の傘下の警政署、法務部とその下の調査局、財
政部傘下関税総局、経済部と傘下の公平取引委員会、商業司、国際貿易局、知的財産局(元中央
標準局)等から、出向者が集まって、禁倣小組のスタッフとなる。組織上は根本的に行政機関の
付属部署であって、行政機関の知的財産権保護を推進するためのアドホック特設機関に当たる。
禁倣小組は1982年に設立されて以来、台湾の知的財産権侵害事件の取締りに多大に貢献してき
た。但し、侵害事件が量的に減少すると同時に、単一事件の規模の拡大と関る容疑者の犯罪技法
の専門化と複雑化は同委員会の効率性をチャレンジしている。
総じて言えば、禁倣小組の主要な役割は当事者と税関又は検察機関の間を取次ぐ連絡機関であ
る。そのゆえ、調査会社など私的な調査機関によって万全な証拠保全措置を最大限に講じた後の
段階で協力してもらうのが正しい利用の仕方であろう。
93
3-2 警告状及び通告書
3-2-1 警告状の要旨
警告状は基本的に侵害事実の告知と差し止めの請求が趣旨の文書である。形式に特にこだわる必
要がないが、内容は主に権利者の権利存在宣言、侵害の事実、侵害行為が該当する刑事責任と民事
責任、並びに侵害の差し止め請求とそれに応じない場合は民事刑事の責任追及の表示が主である。
その外、関連する情報の提供、例えば偽造品の出所と在庫等情報の告知、在庫品の提示、帳簿の開
示等の要請も記載されているが、実効が薄いながら、よく見られる。また、証拠収集を保全するた
めに、警告状を出した直後に令状に基づいて家宅捜査と押収を実行すべきである。
容疑者の侵害行為の程度が軽微で、直ちに刑事告訴を提起する必要がないと判断したときは、ひ
とまず侵害者に警告状を発してもよい。逆に、容疑者の模倣行為が重大なことを十分に証明できる
証拠物をつかんだときは、速やかに刑事告訴及び捜索・押収の行動に移すことができる。この場合、
警告状を発するとしたら、容疑者が自分の犯行がすでに発覚し、マークされたことを知り、さらに
は模造品の隠蔽工作に走ることにもなりかねないので、かえって後日に展開の捜索や押収行動に不
利になる。
警告状の内容に関し、特定の対象に対して侵害行為の停止を求めるときは、侵害の停止を要求
する根拠(権利者であること)を明示し、容疑者にこれ以上侵害行為を継続しないこと、及びこ
れまでの権利者に与えた損害への賠償などを約束するように求める旨の文言を盛り込むべきであ
る。
関連業者又は広く消費者に対して警告をする場合は広く通告書を配布し、若しくは新聞紙に通
告を掲載する方法で、権利者が自己の権利を侵害した行為に対して法律責任を追及する旨の意思
を伝え、権利者の権利保障を図る。
警告状を送付するに当たり、特に競争相手(例えばメーカー、輸入業者)宛てに発する場合、
公平取引法に触れないように行政院公平取引委員会の「著作権、商標権又は特許権侵害事件にお
ける警告状の送付に関する処理原則」に注意しなければならない。
従来では特許法第 131 条により、特許権者がその特許権を侵害した製品のメーカーに刑事告訴
を起こすときは、侵害者に対して侵害の排除を要求する書面通知を提出しなければならない。こ
れらの通知内容は一般の警告状と似ているが、これをしっかり保存するために、内容証明で差し
出したほうがよい。捜索活動が行われる前日、又はその二日間前が内容証明の差し出しに適する
時機と思われる。
警告状の作成・送付名義人・送付に要するコスト
■警告状の核心内容
--権利者として特定権利が侵害された事実を主張
--相手方が頒布する、又は製造販売にかかる製品が模造品、侵害容疑品又は海賊品に該当することの
指摘
--係争の侵害行為及び証拠物件を発見した経緯と権利侵害の厳重性及び悪性の指摘
--違法行為の即刻停止の請求
--違法の製造販売の商品の数量、在庫状況、入手経路、仕入れ価格、販売対象などの関連情報の開示
の請求
■送付名義人
権利者自身の名義で送付する 取引関係などから相手方とある程度関係を維持することを期待し、
婉曲に訴えたい場合は、権利者自身の名義で警告状を出すのもよい。
弁護士が代理して送付する 先方に法手段をとる決心を示してプレシャーをかけたい場合、弁護士
の名義で警告状を送る方法もある。
■コスト
警告状の作成には事実構成を明記の上、法的手段の法律根拠も説得力高く論列されるうえ、公平取引
法など関連規制に触れないための配慮が必要とされる。
又警告状を弁護士の名義で出す場合、弁護士事務所の代理人料もコストに入る。
そのため、事案の複雑性と証拠書類の量などによってずれるが、通常では NT3 万元から 5 万元程度の費
用を見積もる。
94
警告状の実例
警告状(案)
拝啓
1.当事者
(1)
(2)
(3)
より、下記事項の申し立てと委任を受けた。
当社は世界的に有名な
製品の設計開発業者で、製造生産された各種製品及
び開発設計した
等は内容の品質が精良で、
が充実なこと
から世界各地に遍く販売され、深く消費者の好評を得て愛用されている。中でも当社
が設計開発した
は
年
月
日に日本で正式に発行されて、著作権法第 4 条の規定により、当社は上記著
作物の内容(音楽、影像、図片、人物造形及びテーマ等を含む)について、台湾にお
ける著作権を享有しているので、当社にはその著作物の複製、改作等の権利があり、
当社の同意なくしては法により、何人でもこれを複製、模造してはならないことにな
っている。
ところが、
に設置する
(以下佳聯公司と称する)
が出版、陳列、販売の
は当社の授権許諾を得ずに、勝手に当社が創作し
た
を
に複製並びに
に
として掲載した。又、
勝手に当社の上述創作の中に使用した
を
にも登載した。
(添付書類)著作権法第
条の規定では:
同法第
条の規定で
は:「第
条の罪を犯すことを業とする者は、 年以上
年以下の有期懲役に処
し、新台幣ドル
万元以下の罰金を併科することができる。」
が勝手に
の
創作成果を盗用し、連続して台湾で当社の著作財産権を侵害する
等商品を大量的
に複製、陳列、販売した行為は明らかに上述の著作権法の規定に違反し、厳重的に
の合法的権益を侵害するものである。
従って、
に上記の事情を伝達して頂き、本書信到達後 7 日以内に経緯について
の説明を書面で提出して頂き、並びに 2 週間以内に市場に流通している上述
を
回収した後、すべての仕入 及び出荷伝票等の証明資料を開示し、在庫品を併せて貴
弁護士に引渡して廃棄処分を行うこと。又、
に謝罪広告を掲載し、再び当社の
著作権を侵害する
等商品を生産、陳列、販売しないことを保証す、もし違反した
場合は懲罰性違約金として新台幣ドル
元を無条件で支払う旨の誓約書の提出
を求めるものである。さもなければ、当社は民、刑事の告訴を提起し、その負うべき
責任を追及するという趣旨の書函を貴弁護士代理で出状して頂きたい。」
2.ここに上記の如く通知するので、しかるべく処理されたい。
敬具
佳○出版有限公司
御中
添付書類:佳聯出版有限公司の「FINAL FANTASY Ⅸ攻略本」一部分のコピー1 部
台湾国際專利法律事務所
弁護士 陳○○
弁護士 鍾○○
中華民国 89 年 8 月 ○
日
95
3-2-2 送付に関する留意事項
1 特定の対象
送付対象は次の順で優先順序がある(著作権、商標権及び特許権の侵害に関わる警告状の送付に関連
する事件の処理原則参照):
第一順位:警告状の送付に先だって侵害容疑の製造者、輸入者或いは代理商社に対して通知をし、侵害
の排除を要請したもの。
第二順位:小売店、量販店、デパート、一般商号等。
2 不特定の対象(新聞紙への掲載)
警告状の送付方法は目的によって異なる。主に容疑者に侵害行為の停止を求める場合は通常一般の
警告状(対象特定)で行う。また、場合により新聞紙に掲載して公に警告の声明をすることもでき
る。つまり、対象を特定しないで、ただ権利者の権利が侵害され、不法コピー商品を見つけたなどの
事実を述べるだけで、消費者に注意を呼びかける。但し、新聞紙への掲載による公開警告は特許侵害
事件起訴前の書面による侵害排除請求との要件を満たさない。
警告状を発した後、権利侵害容疑者はなお模倣行為を続け、しかも権利者の要求に応じない場合は
告訴を提起して権利を行使するしかない。警告状送付後、鑑定書などの関連書類を揃えて管轄検察署
に告訴を提起することができる。侵害者と示談するときは告訴権の時効に注意しなければならない。
又、複数の不特定の容疑者、販売店又は製造者に対して、個人宛ての警告状の代わりに、通告書を
新聞に掲載するのもよくある。権利者の権利行使の決心の意思表示発露として、権利侵害を威嚇する
効果があるほか、知的財産権を重視するスタンスを一般消費者大衆や業界全般にアピールすることも
できる。但し、公平取引委員会が制定した著作権、商標権及び特許権の侵害に関わる警告状の送付に関
連する事件の処理原則によれば、警告状の送付が公平取引法が取り締まる営業妨害行為を構成しない
ために注意しなければならない。但し、同処理原則は 2003 年 5 月現在において、主務機関の公平取引
委員会の主導で見直し作業が進められている。
▲
解析--著作権、商標権及び特許権の侵害に関わる警告状の送付に関連する事件の処理原則
商業活動を遂行する中で、他人が自分に実害或いは脅威を及ぼしそうな事情に気づく場合、其の当事
者に対して現状を究明してもらって、注意を提起することが普通である。こういう時は、自分の利益が
登録や創作などの条件に基づいて権利として保護されている、例えば著作権、商標権或いは特許権の場
合と、実態権利は無いが相手の行為が不正競争防止法に規制される対象の場合などに実態権利状態の有
無等の条件が異なるので、対処方法と留意点も分かれる。
台湾では、知的財産権の意識が向上する中、知的財産権侵害が企業間紛争の火種になる事案が年増し
に多発する。景況の影響もあろうか、市場戦略の見地とロイヤルティを取り立てる目的などに駆られて
外国の優良企業が主導する侵害訴訟は増える一方だが、ドメスティックの地場企業同士も熾烈に知的財
産権侵害事件でしのぎを削る。次第に、知的財産権侵害が企業競争の切り札になりつつあるが、警告状
や新聞広告の乱発による営業妨害の懸念は権利濫用さしめないための正当な権利行使への反省が広範に
進み、公平取引委員会の処理原則の制定に導いた。(著作権、商標権及び特許権の侵害に関わる警告状の
送付に関連する事件の処理原則・1997 年 5 月初制定・2001 年 1 月最新改正)
同原則は 10 か条設けてあるが、大原則をまとめれば次のとおりである:
1,警告状の送付手順
原則上、警告状の送付に先だって侵害容疑の製造者、輸入者或いは代理商社に対して通知をし、侵害
の排除を要請することが必要である。但し、事業が上記の侵害廃除の通知を実践しないときでも、合
理的な可能な範囲内の注意義務を尽くした場合、もしくは前項の通知が客観上不可能な場合、権利行
使の正当な行為とみなすことが出来る。(処理原則第 3 点から第 5 点まで)
2,警告状の内容と添付書類の要求
(1)権利主張を明確にするための措置
警告状を送付する前に、裁判所の一審判決を経て著作権、商標権或いは特許権の侵害を確認でき
るものは必ず公平取引法に抵触しない。そこまで出来なくても、著作権、商標権或いは特許権を侵害
し得る容疑対象物を、司法院と行政院によって協調指定された鑑定専門機構に送付し、鑑定報告書
を作成してもらって、其の鑑定内容を掲示すれば正当化できる。(処理原則第 3 点から第 5 点まで)
96
(2)競争相手の営業を妨害しないこと
形式的な措置をクリアしても、実質上の競争妨害の配慮も必要。公平取引法第 19 条、第 21 条、
第 22 条又は第 24 条などに違反しないために、関係者の商業信用、市場における競争基本条件への
尊重を念頭に置く必要がある。(処理原則第 6 点から第 10 点まで)
▲特別状況
最近、日本や米国諸外国における特許などの権利を台湾のメーカーや貿易会社に主張する事案が発生
している。外国での権利を台湾内の関係者へ通告するための書状は、上記の著作権、商標権及び特許権の
侵害に関わる警告状の送付に関連する事件の処理原則の適用対象になるかどうかがまず問題になるが、
原則上警告状のあて先が台湾の業者になるので、同公平取引法と処理原則の管轄下に入ると思われる。
また、実態権利の有無によって、警告状の扱いも多少異なると懸念する向きもいるが、何れ権利主張
の基礎となる準拠法に基づく(1)権利侵害実態の分析と(2)関連法律の問題提示が二大ポイントであ
ることは変わりない。 特許権や意匠権を保有していない場合の対応は、原則上類似の配慮を要するが、
侵害する権利に関する説明がそれなりに異なる。即ち、特許や意匠の侵害意見書の形態と違い、この場合
では不正競争防止法違反の根拠に関する最低限の説明と論理を解き明かす必要がある。
3 留意事項
(1)警告状の送付手順:
まずは侵害容疑品を製造又は提供元若しくは入荷元を務めるサプライ業者自体に対する警告状の発送。
侵害容疑品の元となるものにあらかじめコンタクトせず直にその他の第三者、例えば零細商社と小売店
らに対して警告状を送付すると営業妨害の懸念が高まるのでご留意下さい。
(2)文面と内容:
権利存在の捏造は禁止。また、権利範囲と存続期間も虚偽表示してはいけない。其の上、特許や意匠
が如何に侵害されているかについての説明又は技術解析等の裏付も必要。単なる特定の行為を差し止め
や不遠慮な損害賠償の金額を直訴するだけの文脈では、たとえ第三者への送付がなくても、極端な場合
ではあるが強制罪乃至恐喝罪の成立が考えられる。最低限の、即ち権利侵害の実態を客観的に理解でき
る程度の技術内容の説明を設け、警告内容の合理性を確保する。又、過激な表現を避けて、侮辱を感じさ
せない様心がけること。
97
著作権、商標権及び特許権の侵害に関わる
警告状の送付に関連する事件の処理原則
20010115 改正
1
目的
事業の公平競争を確保し、取引の秩序を維持し、また事業が著作権、商標権或いは許権を濫用し、不当
に競争相手が著作権、商標権或いは特許権等を侵害する旨の啓告上を外部へ送付する紛争事件を有効に処
理するために、本処理原則を制定する。
2
用語定義
本処理原則が称する警告状の送付は、事業が下記の方式を用いて、それ自身或いは他の事業の取引相手
もしくは潜在的な取引相手に対して、他の事業が前掲事業自身が所有する著作権、商標権或いは特許権を
侵害する旨の消息を頒布する行為を指す。
1,警告状;
2,敬告状;
3,弁護士状;
4,公開状;
5,新聞広告;
6,其の他の事業自身或いは他の事業の取引相手もしくは潜在的な取引相手に対して知らせ得る方式。
3
著作権、商標権或いは特許権を行使する正当行為の例ーその 1
事業が下記の手続きの何れを実践し権利侵害を確認した後に、警告状を送付する場合、其の行為は著作
権法、商標法或いは特許法による権利行使の正当な行為とされる。
1、裁判所の一審判決を経て著作権、商標権或いは特許権の侵害を確認できるもの。
2 著作権、商標権或いは特許権を侵害し得る容疑対象物を、司法院と行政院によって協調指定された鑑
定専門機構に送付し、鑑定報告書を作成してもらった上に、かつ警告状の送付に先だって侵害容疑の製造
者、輸入者或いは代理商社に対して通知をし、侵害の排除を要請したもの。
事業が前項第 2 号の後半に掲げられる侵害廃除の通知を実践しないときでも、合理的な可能な範囲内の
注意義務を尽くした場合、もしくは前項の通知が客観上不可能な場合、権利行使の正当な行為とみなすこ
とが出来る。
4
著作権、商標権或いは特許権を行使する正当行為の例ーその 2
事業が警告状を送付する前に、下記の手続きのいずれを実践し、かつ第 6 点から第 9 点の違法事情が存
在しない場合、其の行為は著作権法、商標法或いは特許法による権利行使の正当な行為とされる。
1、警告状に司法院と行政院によって協調指定された鑑定専門機構に該当せぬ(他の主体が作成した)鑑
定報告書の添付があり、かつ警告状の送付に先だって侵害容疑の製造者、輸入者或いは代理商社に対して
通知をし、侵害の排除を要請したもの。
2、警告状において、其の著作権、商標権或いは特許権の明確な内容、権利範囲及び侵害される具体的な事
実につき明瞭な説明を付し、かつ警告状の送付に先だって侵害容疑の製造者、輸入者或いは代理商社に対
して通知をし、侵害の排除を要請したもの。
事業が前項第 2 号の後半に掲げられる侵害廃除の通知を実践しないときでも、合理的な可能な範囲内の
注意義務を尽くした場合、もしくは前項の通知が客観上不可能な場合、権利行使の正当な行為とみなすこ
とが出来る。
5
第 3 点と第 4 点を実践せずに警告状を送付する状況に関する処理
事業が第 3 点或いは第 4 点の手続きを実践せずに、直に警告状を送付し、其の行為が取引の秩序に影響
を与えるに足りる場合、公平取引法第 24 条の規定に違反するとされる。直ちに本委員会が処分を作成す
る前に、事業が裁判所の第一審判決を提示し、(警告状の主張の正当性を)証明するものについては、其
の限りでない。
6
公平取引法第 19 条が規定した違法構成要件
事業が第 4 点の規定に従った場合でも、送付された警告状が特定の競争相手を損害することを目的と
し、競争相手の取引相手に同競争相手と特定の交易を拒否するよう勧誘する内容を含む時、其れが競争を
制限する又は公平競争を妨害する恐れを有する場合、公平取引法第 19 条第 1 号の規定に違反するとされ
る。
前項の行為に従事する事業が、競争者の取引相手に自分と取引を行うように勧誘し、其れが競争を制限
する又は公平競争を妨害する恐れを有する場合、公平取引法第 19 条第 3 号の規定に違反するとされる。
98
7
公平取引法第 21 条が規定した違法構成要件
事業が第 4 点の規定に従った場合でも、送付された警告状が警告状の名義人自身の商品又は服務に関し
て、虚偽不実或いは他人を誤解させる陳述を含む場合、公平取引法第 21 条の規定に違反するとされる。
8
公平取引法第 22 条が規定した違法構成要件
事業が第 4 点の規定に従った場合でも、送付された警告状が競争の損害を目的とし、競争相手の営業信
用と名誉を毀損するに足りる虚偽事情の陳述がある場合、公平取引法第 22 条の規定に違反するとされる。
9
公平取引法第 24 条が規定した違法構成要件
事業が第 4 点の規定に従った場合でも、送付された警告状が下記のいずれかの状況に該当し、それが交
易の秩序に影響を与えるに足る場合は、公平取引法第 24 条に違反するとされる:
1、警告状の名義人が合法の著作権、商標権或いは特許権を持っていない場合;
2、著作権、商標権或いは特許権の権利範囲を誇示又は拡張する場合;
3、虚偽の陳述をもって、特定の競争相手又は示唆される市場における他の競争者が警告状の送付主の著作
権、商標権或いは特許権を侵害することを暗示すること;
4、その他第三者を欺瞞あるいは著しく公平を失する陳述の内容を含む場合。
10
不当に異業種事業に対して権利侵害の主張を公表する事案に対する本規定の適用
事業が異業種の事業に対して、自身の著作権、商標権或いは特許権が侵害される旨の警告状を不当に公
表し、従って不公平競争の事情を醸成する場合に於いても、本規定の適用を受けられる。
▲其の他参考条文
公平取引法
第 22 条
事業は、競争の目的をもって他人の営業上の信用を害するような不実な事項を陳述又は散布しては
ならない。
第 37 条
第 22 条の規定に違反したものは、行為者を 1 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 5 千万
元以下の罰金を科し又は併科する。
前項の罪は親告罪とする。
第 19 条
次に掲げる行為の一に該当し、競争を制限し、又は公正な競争を妨害するおそれがあるものは、事
業はこれを行ってはならない。
一.特定企業を損害する目的をもって、他企業又は企業団体をして当該特定企業に対し、供給、購
買又はその他の取引を断絶する行為。
二.正当な理由なく、他企業に対し、差別待遇を与える行為。
三.脅迫、利益による誘引又はその他不正当な手段で、競争者の取引相手方をして自己と取引を行
う行為。
四.脅迫、誘利又はその他不正当な手段を用いて、他企業をして価格上の競争をせず、結合又は連
合に参与させない行為。
五.脅迫、利益による誘引又はその他不正当な手段を用いて、他の事業の製造販売の秘密、取引相
手方の情報或いはその他技術的秘密を獲得する行為。
六.取引の相手方の事業活動に不正当な制限を加えることを条件に取引を行う行為。
第 21 条
事業は、商品又はその広告の上において、或いはその他公衆が知ることができる方法によって、商
品の価格、数量、品質、内容、製造方法、製造日期、有効期限、使用方法、用途、原産地、製造者、
製造地、加工者、加工地等について虚偽不実、若しくは錯誤に導く表示又は標記を行ってはならない。
事業は、前項の虚偽不実又は錯誤に導く表示を記載した商品の販売、運送、輸出又は輸入をしては
ならない。
前二項の規定は事業のサービスにこれを準用する。
広告代理業者があきらかに承知又は承知し得る情況下におかれているにもかかわらず、錯誤に導く
広告を制作又は設計したものは、広告主と損害賠償の連帯責任を負う。広告媒体業者がその伝達又は
掲載の広告が錯誤に導くおそれがあることをあきらかに承知又は承知し得るにもかかわらず、伝達又
は掲載したものは、又広告主と損害賠償の連帯責任を負う。
第 22 条
事業は、競争の目的をもって他人の営業上の信用を害するような不実な事項を陳述又は散布しては
ならない。
第 24 条
99
本法に別段の規定がある場合を除き、企業はその他取引秩序に影響するに足りる欺罔又は著しく公
正さを欠く行為を行ってはならない。
刑法
第 304 条 強制罪
強暴又は脅迫をもって他人に義務のないことをなさしめる、若しくは権利の行使を妨害するものは、
三年以下有期懲役、勾留又は 300 元以下の罰金に処する。
第 305 条 恐喝危害安全罪
他人の生命、身体、自由、名誉又は財産に対する害を与えることで恐喝をし、よって他人の安全に危
害を至らせる者は、二年以下の有期懲役、勾留、又は 300 元以下の罰金に処する。
100
2-3 特許侵害の鑑定
鑑定報告書の作成(特許侵害事件に関して)
従来では特許侵害事件に関しては、告訴を提起する際、鑑定書の提示が必要である。しかし2003
年現在では、すべての特許侵害に関する刑事罰則は既に廃止されている。一方、民事手続きにお
いても鑑定に依存する度合いが高い。以下は従来の経緯も含めて鑑定の留意事項をまとめる。
▼特許法第131条(2003年4月削除)
①本章の罪は第130条を除くほか、親告罪とする。
②特許権者が第123条から第126条までの規定により告訴を提起したときは、侵害鑑定報告書及
び特許権者の侵害者に対する侵害排除請求の書面通知を提出しなければならない。
③前項の書類を提出しないときはその告訴を不適法とする。
④司法院と行政院は協調して、侵害鑑定の専門機構を指定しなければならない。
■過去の経緯----指定鑑定機関
2003年現在では発明特許はおろか、実用新案と意匠の侵害行為に対する刑事罰則は既に廃止さ
れている現況において、刑事告訴の合法条件となっていた「指定鑑定機関による鑑定意見書」の問
題は発生しないが、従来の経緯に付いて触れてみる。
鑑定書を作成する権限を有する機関は標準局指定の鑑定機関に限定するかどうかは一時実務
上の争点となっていた。1995年の8月に法務部と中央標準局が65箇所ほどの機関を知的財産権係
争事件の鑑定機関としてリストアップした。それによって、以降の特許を始めの知的財産権係争
事件の告訴における提出すべき鑑定書は指定機関によるものに限るという原則が掲げられた。当
事者の権利甚大な影響を与えるあまり急な発表なので、実務界に大きな波紋を投げた。
それまでの実務は鑑定書の作成機関について厳格に要求していなかったので、割と迅速に鑑定
書を提出できた。しかし、特定の鑑定機関に限定されると、指定された鑑定機関は必ずしも受理
してくれないし、鑑定費用もNT$5、6万に上り、権利者の出費もかさむ。又、指定の鑑定機関が
鑑定書作成を遅らせる傾向があり、依頼人の告訴の時効が守られにくい恐れがあって、結果的に
は依頼人の訴訟権を害しがちで、知的財産権の保護を弱めることにし兼ねないと企業界と特許代
理人など実務家達から猛烈に反対されている。実際、鑑定機関が見つからない状況も多発するし、
依頼しても鑑定機関は指定の専門分野に関する事件の鑑定依頼を必ずしも引き受けてくれない
ので、当事者はしばしば鑑定不能の状態に陥り、権利行使が立ち往生する。尚、特許の主務官庁
IPO自身は審査業務の立場に齟齬するや余力不足などの理由で鑑定の依頼を固く断る方針である。
欧米先進国では、民間の専門鑑定会社による鑑定書の役割の大きさを参考すれば、鑑定機関を
国で限定する施策の妥当性と必要性を見直すべきだと議論されている。少なくとも、告訴の段階
の初歩的な鑑定は、侵害の有無の確定判決に直結するわけでもない入門検証の性格からすれば、
係争の分野の技術専門家なら十分に鑑定意見書を作れるはずだと唱えられていた。民間実務家ら
は法務部と中央標準局にこう力説した。当時、ほとんどの検察官は鑑定機関の資格を厳格に追究
しないで告訴を受理してくれたが、たまに指定鑑定機関による鑑定書でなければ、告訴は不法と
して却下するケースもあったので。実務界から再三に解釈を促され、とうとう法務部と標準局が
折れて、告訴の鑑定報告について指定の鑑定機関の鑑定報告書に限定しないとの意見書を下付し
た。
その後、一般鑑定人の作成した鑑定報告書が告訴の合法な参考資料として容認されるようにな
ったが、まもなく司法機関から異なる実務見解を示した。
1998年1月頃、最高裁判所の判決が非指定鑑定機関による鑑定書を添付した告訴の合法性を否
定した旨を判示し、物議を醸した。やがて、検察側の合同会議において、告訴の段階の鑑定書は
指定期間によるものに限らないとの決議を発表した節もあった。大分混乱状態も継続しているな
か、法令による定見はまだ確立されていないが、後日に容疑者や相手方から難詰されないよう、
また検察官に強い心証を形成させるために、一定の規模を有する専門鑑定機関の意見書を告訴を
提起するとともに添える者がほとんどである。それに対して、容疑者(被告)側も他の鑑定機関
が作成した鑑定意見書を提出して反論したほうが望ましい。
特許権侵害事件において、特許権者が刑事告訴を提起するときは特許法第 131 条により指定鑑
定機関が作成した鑑定書を提出しなければならない、ということについて大法官会議で出された
見解(第 507 号解釈)により、特許権者が告訴権を濫用する事実がなく、しかも警告状を発して
侵害者に他人の特許権を侵害する可能性のあることを告知したときは、告訴の提起とともに指定
鑑定機関が作成した鑑定報告書を添付しなくてもよい。指定機関による鑑定書の添付を告訴の要
件とするのは人民が裁判を受ける権利を過度に制限することであり、憲法に違反する虞がある。
しかし従来の鑑定書の作成の義務が余りにも繁雑すぎるきらいがあるので、2001 年 10 月の法
改正で規制緩和が行われた。改正法条文によれば、鑑定書の形式は既に要求されずに、「技術対
比報告書」という形態の書類で足りるようになる。報告書の作成者を模して鑑定期間などに限定
されずに、技術専門家或いは権利者自身でも結構になる。
101
しかしその鑑定書の作成の義務が余りにも煩雑すぎるきらいがあるので、2001 年 10 月の法改
正で規制緩和が行われた。改正法条文によれば、鑑定書の形式は既に要求されずに、「技術対比
報告書」という形態の書類で足りるようになる。報告書の作成者を模して鑑定期間などに限定さ
れずに、技術専門家或いは権利者自身でも結構になる。
■仮処分か係争手続きに於ける侵害鑑定人の指定
仮処分をはじめ、裁判所に特許権侵害を主張する場合、有力な鑑定書の提示が必要となる。但
し、2004 年現在の制度では、(刑事罰は既に排除されたから不問にする)民事手続きが開始する時
点から、両方当事者の合意によって押される特定の専門鑑定人を裁判所が指定する場合が極めて
稀で、通常では両方当事者が各自に自分の出費で鑑定人に鑑定報告書の作成を依頼して、めいめ
いに鑑定報告書を裁判側に出すことになる。対立する鑑定意見がある場合鑑定人同士が検察官か
裁判官の前で論争する形態で裁判側の心証を形成させる。しかし、もとより実態技術の判断が苦
手だから裁判官や検察官が鑑定専門化の報告書を要求するのに、ほぼ必然的に対立する両方当事
者自費で雇った鑑定人による鑑定意見の是非を見出すことは不可能に等しい。その時点で再度裁
判官が第三鑑定人を指定する場事案もよくある。
しかし、最初から両方当事者によって拘束力を持つような鑑定意見書の作成を可能とさせたほ
うが、時間と経費の無駄を避けられるだろうとの反省と権利者の希望が強まってきている。最初
から両方当事者の合意で単独の鑑定人を依頼するか、両方当事者の探偵人を依頼する権利を尊重
する場合でも、両方当事者が独自で立てる鑑定人の意見が対立する現象は当然で必然的なことを
予想して、それを公正に見極める第三の鑑定人が仲裁役にまわるべく事前に合意で設けることも
考えられる。商品のライフスパンが短縮化する現代産業環境において、有効に特許権利を保障す
るには、鑑定意見が早期に決着するような工夫を民事手続きに組み入れる必要が大いにある。
▲ 条文参照
特許法 改正条文
第131条
①本章の罪は第130条を除くほか、親告罪とする。
②特許権者が第125及び第126条の規定により告訴を提起したときは、特許権が侵害を受ける対比報告
書を提出しなければならない。
③前項書類を提出しないときはその告訴を不適法とする。
④司法院と行政院は協調して、侵害鑑定の専門機構を指定しなければならない
特許法 旧条文
第131条
①本章の罪は第130条を除くほか、親告罪とする。
②特許権者が第123条から第126条までの規定により告訴を提起したときは、侵害鑑定報告書及び特許
権者の侵害者に対する侵害排除請求の書面通知を提出しなければならない。
③前項の書類を提出しないときはその告訴を不適法とする。
④司法院と行政院は協調して、侵害鑑定の専門機構を指定しなければならない。
3-3-2 鑑定基準の留意事項
目下、台湾の指定鑑定機関は玉石混交で、鑑定報告が特許法の一般法則や「特許侵害鑑定基
準」に反して作成されたことをしばしば耳にする。こうした手続上の瑕疵は事件の進行或いは
当事者の権利保障に深刻な影響を及ぼしかねない。よく問題となるのは「特許の請求範囲」で
ある。特許の請求範囲が重要視されず、「実施例」又は「添付図面」で機械的に対比させるこ
とが場合によって特許権の保護範囲を極端的に狭くすることがよくある。権利者の権利に関わ
る重大な問題なので、これらの瑕疵がないかを十分に検証する必要がある。もしあるとすれば、
依頼人の正当な権益を保護するために、検察官又は裁判所に理詰めで争うべきである。
又、2003 年 5 月現在では知的財産局は「特許侵害鑑定基準」の見直し作業を推進している最中。
中では基本準則の増設のほか、侵害の故意に関する認定の基準と、実例の増設などが議案となっ
ている。実際、現行の侵害鑑定基準に大きな欠点はないが、それを運用する鑑定機関の基本作法
が基準にそぐわないものが多い点に問題が集中すると思われる。
102
付録
指定鑑定機関分野要覧
鑑定機関・分野
台湾大学
台湾工業技術学院
陽明医学院
清華大学
中央大学
交通大学
中興大学
中正大学
雲林技術学院
中山大学
屏東技術学院
台湾海洋大学
成功大学
台湾大学電力研究試
驗中心
台湾營建研究中心
農業工程研究中心
食品工業発展研究所
1
■
■
■
2
■
199911
4
5
■
6
■
7
■
8
9
10
■
■
11
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
12
13
14
■
15
16
17
■
■
18
■
■
19
20
■
21
■
■
22
■
■
23
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
24
■
■
25
■
■
26
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
27
28
29
30
31
32
33
34
35
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
6-1
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■ ■
■
■
■ ■
■-2
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■-2
■-1,3
■-1
■-4 ■
-1,3
生物技術開発中心
■
-1,2,3
農業機械化研究発展
■-1
中心
中華穀類食品工業技
■-3
術研究所
中華経済研究所
台湾経済研究院
台北病理中心
■-1
慶齢工業研究中心
資訊工業策進會
中華電腦中心
台灣電子檢驗中心
工業技術研究院
3
■-1
■-3
■
■
-1,2
■
■-2
■-2
■ ■-1
-1,2
■
■
■-1 ■
■
-1,3
■
■ ■
-1,3
■
■
■-2
103
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
-1,2
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
1
鑑定機関・分野
中國生產力中心
金屬工業研究發展
中心
車輛研究測試中心
中國技術服務社
聯合船舶設計發展
中心
中國紡織工業研究
中心
橡膠工業研究試驗
中心
中央研究院
台灣省農業試驗所
中國石油公司煉製
研究所
台灣糖業研究所
台灣電力綜合研究
所
交通部運輸研究所
中央研究院
行政院衛生署預防 ■
1,4,5
研究所
行政院衛生署藥物
檢驗局
中國化學會
中國機械工程學會
中國化學工程學會
中國工程師學會
中國土木水利工程
學會
中國礦冶工程學會
中國印刷學會
中華民國物理學會
中華民國建築師公
會全國聯合會
中華民國電機技師
公會全國聯合會
2
3
4
5
6
7
8
9
10
■-1
11
12
13
■-1
14
15
16
17
■-1
18
■-1
■-1
19
20
21
22
■
■
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
■
■-1
■
■
■
■-1
■
■
■
■
■
■-3
■-1,3
■
■
■-1
■-3
■-1,2
■-1
■
■
■
■
■
■-3
■-1
■-1
■-2
■-2
■-3
■-1,3
■-1
■
■-1
■-1
■-1
■
■-2
■
■
■
■-1
■
■
■
■-1
■
■
104
■
■
33
34
35
鑑定機関・分野
中國農業工程學會
中華民國醫學工程學
會
中華材料科學學會
台灣區瓦斯器材工業
同業公會
中華民國建築學會
亞洲專利代理人協會
中華民國總會
中華民國土木技師公
會全國聯合會
中華民國律師公會
中華民國工業設計協
會
中華民國光學工程學
會
中華民國珠寶玉石鑑
定協會
1
2
3
4
5
6
7
■-1
8
9
10
11
12
■-3
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
■-1
23
24
25
26
■
■
■
27
28
29
30
31
32
33
■
■
34
35
■
■-1
■-1
■-2,4
■-1
■-1,3
■
■
■-1
■-1
■
■-1,3 ■-1
■-1
■-1
■-1,3
■
■-1,2
■-1
■-1
■
■
■-1
■
■
■
■
■
■
■-1
■
■
105
鑑定分野
1
2
医学・ 農業
病理
医学工程
獣医
牧畜
3
4
5
6
林産加工 水産事業 生物化学 化学
7
8
9
材料工程 印刷工程 気象
化学工程 造紙工程
10
建築
11
12
工業設計 日用品
建造工程 空間設計
動物漁業 食品
土木
ゴム
プラスチ
ック設備
病原微生
物
肝炎血液
試験
13
紡績
14
15
16
17
18
19
20
環境工程 海岸工程 消防救急 交通運輸 機械工程 造船船舶 制御工程
海洋環境
機械
燃焼設備 水資源工 工業安全
程
衛性
熱流処理
空調設備
排気設備
21
22
23
情報管理 通信工程 測量
試験
24
物理
25
26
27
28
29
30
電子電機 光学・ 原子工程 宇宙航空 エネルギ 採鉱
試験工学
ー
エネルギ
ー効率
31
宝石
石油工業
106
32
33
34
35
発破技術 スポーツ マスコミ 法律
武器関係 娯楽
経済分析
農業機械
3-4 侵害訴訟の所要時間及び基本出費の概算
3-4-0 証拠収集・調査と警告状送付
証拠収集期間 通常 1∼3 ヶ月
一社に対する調査費用は平均 2 万元。
一社に対する警告状送付は平均 4 万元。
3-4-1 刑事訴訟の予算
刑事訴訟(1件につき)
告訴から提訴まで検察官による取り調べの期間 2∼4ヶ月;弁護士費用は平均10万元上下(調査
法廷三回ほど開催の場合)。裁判所所在地域によって交通時間の多少などにも左右される。
1) 一審:所要時間:4∼6ヶ月;裁判所での処理期限は1年4ヶ月。起訴から最後の公判廷までの
期間を指す。基本出費:NT$25万元より(公判庭三回開催の場合)。裁判所所在地域によって
交通時間の多少などにも左右される。
2) 二審:所要時間:6ヶ月∼1年。裁判所の処理期限は2年。基本出費:NT$25万元より(公判庭
三回開催の場合)。裁判所所在地域によって交通時間の多少などにも左右される。
3-4-2 民事訴訟の予算
民事訴訟(1件につき)
仮差し止め(仮処分)申請から裁定が下りるまで3∼6週間かかる。被告側の弁論や意見聴取が
原則上必要。担保金の計算は申立て人が算出方法と結論の金額を提示して、裁判官が被告側の意
見を参酌して定める。
仮差押えは通常申請から裁定が下りるまで2∼4週間かかる。申立て人が法律関係の釈明をする
上担保金を納付すれば裁定を求められる。被告側の弁論や意見聴取が不要。仮差押えの場合は申
請者が債権証明で主張する返済すべき債権の金額に相当する担保金を納付する
裁定下付より約10日以内に執行する必要がある。
審理経過と出費:
1)一審:
所要時間は6∼12ヶ月;裁判所での処理期限は1年4ヶ月。起訴から最後の口頭弁論までの期
間を言う。
弁護士依頼基本出費:NT$30乃至50万元上下;特許事件が更に嵩む。(担保金、請求標的に
依って異なる訴訟費用、被告の無効審判請求に対応する為の費用及び仮処分などの偶発又は不
確定の出費はここに含まれて いない、又、法廷弁論の回数に比例して増加するし、裁判所所
在地域によって交通時間の多少などにも左右される。訴訟費用は請求金額の1%から0.8%くらい
に相当する)
2)二審:所要時間は6ヶ月∼1年。裁判所の処理期限は2年。
弁護士依頼基本出費はNT$45万元より(裁判所所在地域によって交通時間の多少などにも左
右される。)。裁判費用は一審の半分を追加する。
3)三審:原告の請求金額がNT$150万元を上回る場合に限ってみとめられる。書面審理によって
行い、通常1年以上かかる。弁護士依頼出費:NT$30万元上下。
報償費用(單位萬元)
地區
項目
徵 信社調查
警告函(含翻譯)
本所取締
取締
徵 信社取締
偵查 庭(3 次)
刑事
一審(3 次)
開庭
二審(3 次)
一審
民事(國
開庭
二審
內 案件)
三審
專利案件
北
中
南
1
1.3
3 4
5
3.5
10 15
15 20
10 15
30 40
30 40
15 20
50 以上
1.5
4
3
6 8
10 15
6 8
20 30
20 30
107
6
4
10 15
15 20
10 15
30 40
30 40
4 告訴
4-1 告訴要件及び告訴状
4-1-1 告訴権者
a 一般告訴權人
犯罪の被害者は告訴をすることが出来る。それが法人の場合、会社の代表者が代理して告訴を提
起することになる。(刑事訴訟法第 232ー236、238 条)
犯罪の事実に対して、誰でも告発することができる。(刑事訴訟法第 240 条)
親告罪となる特許侵害事件と著作権侵害事件において、告訴がないと検察は職権により捜査を開
始しないが、公訴罪であるはずの商標権侵害事件に於いて、将来の刑事訴訟継続中に発言力と影響
力を保つため、告訴を合法的に提起した方がよい。また、検察官が不起訴処分を下す傾向にあると
判断し、不起訴処分が下付される前の段階なら、自訴を提起できるが、告訴人の身分が既に確認さ
れた方が更に提起しやすい。万一検察官から不起訴処分を受けた場合でも、被害者として再議の提
起もできる。又、被告からの受け入れられる和解の提示がある場合、和解を成立させる際、告訴人の
身分として刑事裁判法廷に告訴の取り下げを申し出ることができ、被告人の実刑の免除や緩和に相
当の影響力を持つ立場を確保できる。実際、捜査段階より検察官から告訴提起の催促を受けるケー
スも多い。
b実施権又は使用権者の告訴權・独占実施権者と非独占実施権者の権限上の違い
■実施権者の登録--特許と商標権の実施権授与は登録が対抗条件
商標と特許の実施権授与関係は、主務官庁への申告と登録が第三者へ対抗力の必須条件なので、そ
れがない場合、往々にして告訴の瑕疵になりうる。(特許法第 59 条、商標法第 26 条)
独占実施権者の場合、原則上独自で告訴を提起することが出来る。法律規定では、特許権と著作権
は原則上独占実施権を有するものに限って告訴提起などの権利行使行為を独自で出来る。商標権に
ついては、実施権授与の登録済みの実施権者であれば、権利侵害の権限を行使できる。
c独占販売代表或いは總代理人の權限
■独占的実施権者が特許の侵害容疑者に侵害の排除や防止の権限を行使する前に特許権利者に対す
る通知する義務
独占的ライセンシーが権利者と締結された実施契約は債権的な効果をしか持たない。それによっ
て、特許の実施権だけを主張できる。一方、特許権利者としては依然として権利者の地位を保有し、
その地位がライセンシーに譲渡されたわけではない。よって、特許権が侵害される場合、侵害防止
や侵害行為の差止などの請求権乃至損害賠償請求権の行使については、特許権利者自身がそれらの
権限を放棄しない限り、特許権利者に限ってのみ認められる。但し、独占的ライセンシーにも保護
が与えられている。特許法では独占的ライセンシー(専用実施権者)が特許権を侵害する事実が見
つかる場合、特許権利者に権利行使の催告をした上、特許権利者が然るべく権限を行使しない場合
に限り独占的ライセンシーが代位して侵害行為の主体に対して特許などの権利を主張できるとし
ている。従って独占的ライセンシーの特許権利者に対する通知の内容は、侵害事実だけではなく、
侵害者も知っていれば通知する義務もある。また、商標権の使用許諾を受けた実施権者にも提訴権
があるとされている。
特許法第 88 条
①特許権が侵害を受けたときは、特許権者は損害賠償を請求することができるほか、その侵害を
排除することも請求できる。侵害のおそれがあるときは、それを防止することを請求すること
ができる。
②専用実施権者も前項の請求をすることができる。但し、特許権者が通知を受けた後、前項の請
求をせず、かつ、契約に反する約定がないときに限る。
③特許権利者又は専属特許権実施権者が第 88 条の民事上の請求をするときは、侵害に係る模造
品及びその製品に係る原料や器具の廃棄処分やその他必要とされる処置を請求することがで
きる。
④発明者の氏名表示権が侵害を受けたときは、発明者氏名の表示、又はその他の名誉回復の必要
処分を請求することができる。
⑤本条に規定する請求権は、請求権者が行為及び賠償義務者を知ったときより二年間、行使しな
いときは消滅する。行為があったときより 10 年間を超えたものも同様とする。
商標法第 69 条
第 26 条の規定により使用許諾を受けて商標を使用する者がその使用権を侵害さ
れたときは、本章の規定を準用する。
108
d 共有権利の場合の委任状
刑事告訴を提起する場合、たとえ複数の権利者が享有する権利でも、何れの権利者でも独自で権利
侵害の刑事責任を追及すべく刑事告訴を提起することが出来る。(しかし告訴の後にその取下げを
恣意的に出来るとは限らない)。
委任状は告訴、起訴、上告、上訴それぞれの段階毎に新たに提出する必要があり、それらの手続き
を予め一本にまとめる概括委任状は認められない。
委任状には基本的に①委任者と受任者の名称、②その住所、③委任事件、及び④委任範囲を明記す
る必要がある。
■ 民事委任状との違い:一方、民事訴訟の委任状に関しては、日本と異なり、台湾法上では知的
財産権を共有している場合に、共有者全体の合意を得ずに財産権の処分となるような権利行使は出
来ず、そのために共有者単独で民事訴訟を提起することは出来ないとされている。その理由は民事
上の財産権を巡る訴訟は財産を処分することに近い効果をもたらすためとされている。
商標は共同出願を禁止するので論外にする。
特許権と著作権の場合も分割が原則上不可能な権利として考えられている。訴訟の正確を言うと
「必要共同訴訟」の種類に属すると思われる。よって、一特許権又は一つのコンテンツにかかる著作
権の民事条ノ権利の行使は、共有者全員から委任状を貰う必要があるとされている。
4-1-1-2 委任状の機能と意義
委任状と言うのは依頼者と受託者との委任関係を証明するために、裁判所或は検察署に提出する書
面です。依頼者は外国人である場合に、その依頼者が実際に存在するかどうか及び依頼の真意確認
のために、所在国において公認証手続きを経る事が要求される。
なお、訴訟法の規定によると、委任状は原則的に一審毎に提出しなければならない。
■登録をしている場合と、していない場合の違い
台湾において政府機関に著作権を登録する制度はありません。著作権の発生は原則として創作主義
を採用する。
著作権の登録をしている場合と、していない場合には委任状の提出に対する違いがない。
■権利を共有している場合の考えについて、
台湾法上では著作権を共有している場合に、共有者全体の同意を得ずに権利行使できない。(著作
権法第四十条の一)だから、一つのコンテンツに係る著作権は共有者全体の同意に基づいて行使す
ることができる。
■ライセンシーの位置づけについて
台湾著作権法第三十七条第四項の規定によると、独占的ライセンシーはライセンス範囲内に著作権
者の地位として権利行使ができる。つまり、独占的ライセンシーは著作権の侵害に関する民事訴訟
の提起及び刑事告訴ができる。
■法的に有効な委任状の条件
訴訟法に委任状の記載事項を規定していないが、実務上に最低限として、委任者と受任者の名称、
住所、委任事件、委任範囲(受任者の権限)を明記しなければならない。一般的に裁判所の慣用形
式に従う。民事訴訟の場合に例外的に本人は裁判所に委任の意思を表明して、書記官に調書に記載
させれば、委任状の提出が不要である。
■委任状が必要となる範囲
委任状を提出する者は著作権者或は独占ライセンシーであり、例えば、本の作者或は出版社。著作
権を共有している者が多数の場合に、共有者はその中に代表者を選任して、代表者に著作権を行使
させられるので、共有者が代表者に委任する委任契約及び代表者の委任状を提出すれば良いと定め
られている。
109
4-1-2 告訴期間
親告罪においては、その告訴は告訴権者が犯人を知った後に 6 ヶ月以内に提起しなければならな
い。(刑事訴訟法第 237 条)通常、犯人を知る時点の判断は提出された証拠によって認定する。
そのため、特許の告訴の必要条件になる鑑定書の作成もこの期間に遅れないにする必要がある。
普通公訴罪の商標権侵害事件に於いても、告訴をする場合、告訴期間以内にする必要がある。
著作権も親告罪なので、告訴期間の合致も重要である。
4-1-3 告訴状の書き方及び委任状
告訴状には、通常告訴状の他下記の書類も添付されている:
1.起訴状。
2.容疑者に送付された警告状の写し;
3.権利証明書類:特許証書、或いは商標登録証書、それらを記載する特許や商標広報資料、又は
著作権証書等。特許権証書
4.証拠写真と証拠文書、例えばレシート、広告、採集された販売向きの模造品サンプル;
5.委任状。(告訴代理人に依頼する場合)
a外国人(法人)委任状の認証̶当事者と被告の確認
■告訴と訴訟提起の条件−−法人の認可不要、但し委任状の認証必要
台湾と日本は国交がないが、両国の国民の国内での提訴権利を司法実務上は相互に認めてい
るので、原則的に日本人は台湾で知的財産権侵害について告訴したり、訴訟を提起したりする
権利が保障されている。台湾で認可を受けていない日本の法人は、それらの法律の明文によっ
て告訴と起訴を妨げない。
知的財産権侵害事件は、性質によって公訴罪と親告罪とがある。商標権侵害事件は社会利益
を重視するので、被害者の告訴を待たずに犯罪事実の発覚又は摘発検挙を以って検察官の意思
と職権で起訴する事になる。それと対照して、特許及び著作権侵害の事件に於いては、著作権
侵害の常習犯罪を除いて、殆ど親告罪である。
親告罪に於いては、合法の告訴が起訴の法定条件となるが、その中に侵害の認定が専門知識
を要する特許権の侵害事件については、更に厳格な告訴条件がある。上記の通りに、特許権利
者が特許侵害を警察官に訴えるときに、侵害容疑者に送付した侵害行為の差止請求の書面通知
と侵害に関する鑑定を同時に提出する義務が有る。それらの書類の提出を実行しない場合は、
告訴が違法とされる。
b 空白委任状の問題
委任状が認証を受ける場合、必ず被告人の特定をしなければならない。被告の欄が空白のま
まの委任状に認証を与えないのが目下の主務官庁の原則である。
4-1-4 告訴(告発)受理機関
告訴と告発は、書状或いは口頭で検察官或いは司法警察官に対して行うべきである。口頭の告訴
と告発は調書を作成しなければならない。口頭告訴と告発の便宜を図るため、検察所に告訴と告発
ベルを設置することが出来る。(刑事訴訟法第 242 条)
■司法警察官:中央且各県市自治体の警政署、警政庁、及び警察局の長官、並びに憲兵隊長官は
司法警察官で、検察官による犯罪事件の捜査に協力する職権を持つ。(刑事訴訟法第 229 条)
■検察官の指揮に服従する司法警察官:警察官長、憲兵隊官長、及び法律によって特定事項にお
いて司法警察官の職権を行えるものが検察官の指揮を受け、犯罪の捜査にかかるべきである。
(刑事訴訟法第 230 条)
■司法警察:警察、憲兵及び法律によって特定事項において司法警察官の職権を行えるものが検
察官の指揮を受け、犯罪の捜査にかかるべきである。(刑事訴訟法第 231 条)
以下各告訴と告発の受理機関の特色を要約して説明する。
a管轄法院検察署
管轄検察署に告訴を提起する又は告発する。
しかし、特許侵害容疑の場合、それも特許権に保護された技術を使用して製造行為に係る容疑
者に対しては、特許法第131条によって、警告状の送付を証明する書面と鑑定書を同時に検察官
に提出する義務が有る。警告状と鑑定報告書を提出しないものはその告訴は不合法となる。
■特色
O̶検察官の権限が最も大きく、直接国家訴追権の発動につながる利点がある。
X̶証拠に関する要求が厳しい方で、内部の書類往復も手間取りがちで、警察など司法警察を実際
動かすまでの時間が長引く傾向にある。
110
b.経済部査禁模倣商品小組
経済部知的財産局禁倣小組に検挙する。
同小組事件の検挙を受理してから、侵害に関する鑑定を全て知的財産局の判断に委ねる事にし
ている。IPOから肯定的な鑑定を得た場合、更に事件を司法機関(管轄検察署)に移送する。
同小組が実地調査の必要性があり、迅速に取り締まる実益性が有るとする場合、警政署など関連
機関と連携して、地元の警察機関と組んで調査を行う。確実な証拠を入手した場合、警察側が事
件を直ちに司法機関に移送し、禁倣小組に副本を送付する。
禁倣小組に協力してもらう実益は、もっと能率的に侵害事件の証拠を取得できることと、警察
機関から一層直接な助力を得られることなどが挙げられる。
■特色
O̶税関などの関連行政機関と密接に連絡を取り協力してもらえるフレキシブルな協調力を生か
し、大規模なアクションでよく脚光を浴びた;
X̶近頃の警察及び調査機関の対等に比べて、人員不足と職権の制限などが深刻化し、機能の萎縮
が懸念されている。
c警察局(警察官長)
各地の警察機関に検挙する。付録6参照。
警察機関はすべての刑事犯罪容疑事件の検挙、摘発を受理する権限を持っている。知的財産権
侵害容疑事件の検挙を受けた場合、各地の警察機関は直ちに権限に基づいて、証拠の収集に入る。
確実な証拠を入手した場合は、検察官に移送する。特許又は商標の侵害の成立の認定に疑義が生
じた場合、知的財産局に鑑定を依頼することになる。知的財産局が肯定的な結果を得た場合、事
件を禁倣小組に提出して、同小組が検察機関に移送し、同事件を受理した警察機関に副本の送付
を以って通知する。
地元の訴訟代理人が刑事手続きに精通して、管轄の警察機関に正確な情報を提供出来る場合、
将来本件の強制処分の執行を直接担当する地元の警察機関に最初から協力してもらえるのは、よ
り迅速で効率的な取締を期待する事が出来るので、かなり多用されているアプローチとなってい
る。
■特色
O̶行動力に富み、即効性が高い
X̶管轄区域の制限に弱く、局地性のアクション以外は困難
d 調査局
■特色
O̶ネットワークに強く、スタッフのレベルが高く、上質の事前調査と充足な活動力で大規模の
アクションに適する。
X̶プロットにこだわり、機を失する恐れもある。
4-2 警察・調査機関での調書作成
警察に捜査の担当を依頼した場合、令状を申請するために、まず警察局で告訴状の送付とともに
告訴調書の作成も完了する。本件の取り締まりにつき、既に警察官の了承を得たという書面の証拠
になる。その後、警察官と同行して、検察署に検察官へ起訴状と証拠サンプルなど所要の書類物品
の提示とともに、事情の説明をしたうえ、令状の申請をする。
Q. 差押えられた模造品を計算し、又は模造品であるかどうかを確認するために代理人を押収の現場
に立ち会わせる権限は検察官にあるか。
――検察官が担当事件について職権により強制処分又は命令をする権限があるが、模造品の数量
の計算や模造品の認定について、特に押収物の数が極めて少ない場合、遠隔地にいる代理人
又は当事者を現場まで行かせる必要がないはずである。このような無理な注文に対して、弁
護士は適当に拒否してよい。
4-3 捜索令状の申請
侵害事実の立証と損害賠償額を有利に計算するため、侵害製品を大量に押収する事が望まれる。
特許侵害の場合、警告状を先発する義務が有るが、日にちが経てば不法模造品を隠匿される恐れが
あるため、出来れば警告状差し出した日の翌日ないし二、三日内に捜査令状の申請と発行に成功し
て、同日に捜査現場に踏み込み、証拠物の押収を実行した方が効果的。
又、全国に侵害容疑者の拠点が多数各地に散在する場合、一個所だけ先に取り締まれば、他方の容
疑者らに消息が即刻に伝わり、証拠物隠匿の作業などの戦備体制を敷かれることが多いので、引き
続きの捜査活動の実績に響く恐れがある。タイミングを把握できるだけの行動力に富む弁護士と調
111
査会社の協力がこういう時に非常に肝心である。
特に最近の侵害犯罪者は犯罪証拠の隠滅をはかり、短期間に生産拠点を変えたりするゲリラ型の
生産体制を取るのと、昼間だけ合法の生産や営業を操業し、夜間だけ不法の模造品生産に取り掛か
る昼夜交代体制で運営しているなど犯罪技法の向上が見られ、権利者側は更に追跡調査の工夫と公
権行為の迅速性を講じるべきである。
捜索、差押さえなどの強制処分は検察官による捜索令状をもって行われるものである。ただ、執
行の主体は警察であるため、実務上は直接管轄警察機関に捜索を申し立てることになる。 捜索の申
立を受けた警察機関より担当検察官に対して捜索令状の申立が為される。
捜索令状の申立に必要な証拠物や書類は主に次のものがある。
1. 特許証書及び特許公報。
2. 模造品を購入した領収書又は模造業者によって出された価格表、真正品、模造品及びその写真。
3. 鑑定報告。
証拠が十分に揃った場合、告訴を提起するとともに捜索を請求することもできる。捜索により確
保した証拠物は検察官の心証形成に作用し、訴訟の進行に大いに役立つ。
■捜索、許可の権限は裁判所へ 警察側は対応に大忙し
2001 年 7 月 1 日から捜索をするには裁判官の許可が必要になる。通常捜索及び緊急捜索につい
ては裁判官が検察・警察(捜査機関)の書面による申立て或いは報告を受けて許可するかしない
かを審査する。捜索を受ける者の権益に関わる「自らの意思で同意する捜索」及び「付帯捜索」
については、法務部は注意事項を制定し、捜索に当たる人員が捜索を受けた者に脅迫、詐欺或い
はその他の不正方法により強制的に当事者に同意させることができない。また付帯捜索の範囲に
も制限を加えなければならない。不法に捜索、押収をしたことによって取得した物は審判時に証
拠物として認められない。
通信監察法が施行され、勾留と捜索権は先後して裁判所の権限へ移行した後、一部の警察関係者
の間には、警察側が犯罪捜査においての主導権を失い、犯罪の摘発に悪影響を及ぼしかねないとい
う懸念の声があがっている。しかし一方、改正刑事訴訟法は、警察に現場を封鎖、検証する権限を
ある程度に与えることによって、司法警察の職権執行力を最低限に確保することにした。検察官と
警察官員の職務遂行の実務運用面への影響が思いやられる。
3-4 取締り
3-4-1 取締作業
侵害事実の立証と損害賠償額を有利に計算するため、侵害製品を大量に押収する事が望まれる。
特許侵害の場合、警告状を先発する義務があるが、日にちが経てば不法模造品を隠匿される恐れが
あるため、出来れば警告状を差し出した日の翌日ないし二、三日以内に捜索令状をもって現場踏み
込みの捜査を展開した方が効果的である。
製造設備や装置の押収
特に最近の侵害犯罪者は犯罪証拠の隠滅をはかり、短期間に生産拠点を変えたりするゲリラ型の
生産体制を取るのと、昼間だけ合法の生産や営業を操業し、夜間だけ不法の模造品生産に取り掛か
る昼夜交代体制で運営しているなど犯罪技法の向上が見られ、権利者側は更に追跡調査の工夫と公
権行為の迅速性を講じるべきである。模造品の製造装置や器具は高価なものが多く、それを抑えら
れれば権利侵害の容疑者に大きな打撃を与えられるので、最近侵害容疑品の製造に携わる工場内の
製造装置や器具が稼動中にレイドを発動して、機械設備全体を押収する事例が増える。裁判官によ
って、稼動している最中でなくても、現場で抑えられた証拠から当該設備が模造品の製造に供され
るものと判断できる場合に限って、製造設備や器械を押収する場合もある。又、必ずしも専門に模
造品の製造に使われる設備だけのみ押収できるのではなく、不法に模造品の製造に供されることさ
えあれば、メインに合法の商品の製造に使われる場合でも押収の対象になりうる。
捜査で押収したい対象物は前もって行ってきた調査作業のときと原則上変わらないが、家宅の踏
み込みの権限を与えられたうえ、実際のサンプルの他、製造と販売の仕組みや実績を実証できる帳
簿や契約書、それら複数の容疑者間のやり取り文通などを大量に押さえるべきである。
代理人の役割
捜査活動は実際警察官にのみ権限があるが、本件の経緯に詳しい告訴人やその代理人又は弁護士
に偽造品の判別などに関し協力を命じることも少なくないので、通常弁護士なども同行したうえ、
現場の付近で待機することが多い。一方、代理人は捜査を自ら執行する権限が法律によって与えら
れてないので、必ず警察官や検察官の要請と命令がある場合に限って、捜査現場で捜査の協力や実
施を行うことができる。逆に、たとえ警察官と検察官より要請がないにも関わらずに無断に捜査活
112
動に荷担する場合、公務執行妨害罪を問われることがあり得る。又、たとえ警察官や検察官から協
力を命じられる場合でも、先方側から腹いせで訴えられる実例もあるので、最大限に配慮すべきで
ある。
押収品の内容確認と保管
又、押収したものに対して、量だけではなく具体的な内容の把握も重要である。いったん警察に
押収され、封じられた後は、検察官の承知無しに開封して閲覧させてもらうのが困難になり、せっ
かくの押収も台無しになりかねない。
押収品の保管を当事者に命ずる事例が多い。当事者にはそれを引き受ける法的義務はないものの、
踏み込み捜査まで実行してくれる警察部隊と検察官の功績に免じて政府機関の負担を軽減するた
めに、余裕が許す限り代行保管を受諾するか申し受けることがよくある。特に警察や調査機関が自
発的に発動したアクションにおいて、積極的に協力することが勧められる。その場合、保管の費用
は当事者の自費となっている。
3-4-2 警察調査機関の発動による取締
警察局や調査局よりアクションの通報を受ける場合、代理人は速やかに指定の場所に移動し、押
収された証拠物の数量の計算を行い、証拠物の収納と保管作業に積極的に応じるべきである。
押収されたサンプルの量にこだわらずに、感謝の気持ちを適切に表し、その後の作業を積極的に
事件の送検に向かって進めるべきである。押収された模造品の数量が少ない場合、現場まで行くの
も億劫となる当事者や代理人の反応もある程度理解できるが、それでは警察と調査等法執行部隊側
の好意を踏み躙る愚行になる。せっかく綿密な情報収集と手配の挙句実行できた取締りなので、た
とえ実績が少なくても熱意と功績は肯定すべきである。次の協力の動機を与える意味でも、積極的
にアクションのフォローをすべきだと思われる。
良好なフォローをもって、関連機関の積極的なレスポンスと協力をさらに引き出して行ける。
なお、大規模の捜査活動が実績を上げた後、当事者の方から担当の警察局や調査局に感謝状や表
彰状を送れば、上層部門にアピールの材料になれるし、功績を称える報道材料としての価値もある
ので、喜んでもらえる。台湾では、検察と裁判官等の司法機関は勿論、警察や調査機関が知的財産
権侵害事件で発生した権利金や賠償金より上前を取るようなことは絶対無い。ただし、当事者の感
謝と評価の表しを通して、部署内の実績評価と報奨金を確保する流儀が顕在する。当事者も積極的
に行政機関の実績と貢献を評価して表敬訪問と表彰状の贈呈を通して褒賞すれば、権利行使が更に
スムーズに進行できて、実績の向上に繋がる。
5 捜査と基礎前の取り調べ
【概説】捜査(証拠物を入手するためのアクションも含めて)後の検察官の取り調べ
警察・調査機関が模造品を押収した後、直ちにその模造品、押収に関する調書、告訴状、委任状などを
地方検察署に移送して、検察官により取調べをする。模造品を発見しなかったときは、あらかじめ犯罪
行為を証明する証拠を十分に集めておいたのであれば、直接関係証拠物を揃えて地方検察署に告訴を提
起することも考えられる。
公判において、地方検察署は主に犯罪事実、例えば模造品の出所、係争商標の使用状況などについて
被告に尋問する。
捜査が一段落した後、被告に確かな犯罪の嫌疑があると認めたときは、検察官は起訴を決め、それか
ら、裁判所の刑事法廷によって事件の審理が行われる。検察官が同事件を不起訴処分としたことについ
て不服があるときは、告訴人は不起訴処分書を受け取った日から 7 日内に再議の申立により救済を請求
することができる。このほか、検察官は模造に係る事件について刑事訴訟法第 451 条により略式手続を
請求する可能性がある。
5-1 捜査の手続
5-1-1 捜査手法
捜査は原則として内密で行われる。捜査の行動は公開しない。また、公判に入るまで捜査の内
容は公開しない。
5-1-2 捜査の主体
捜査は検察官が主導権を握り、警察の協力のもとで行われる。そして弁護士が参与する。
1. 検察・警察機関――捜査の主体
権能区分理論に基づき、検察官は捜査機関であり、そして警察・調査機関は捜査に協力する
補助機関である。双方は協力し合って、一方が捜査を指揮し、他方が命令を受けて捜査行動を
起こす関係にある。捜査の開始はいかなる条件をも必要とせず、検察機関は国によって特別に
113
設置された犯罪訴追の司法機関であり、主観的に犯罪の嫌疑があるとさえ認めれば、自ら進ん
で捜査活動を繰り広げることができる。
捜査によって得られた証拠は被疑者を起訴できるかどうかを決めるカギである一方、裁判所
が証拠を調べるときの参考にも役立つ。台湾の刑事訴訟制度は起訴状一本主義を取っていない
ので、起訴状には検察官が認定した事実及び関係証拠物がずらっと並べ立てられ、裁判官の心
証に影響を与えかねない。
2.告訴代理人の役割
告訴は告訴権者が捜査機関に犯罪の事実を申し入れ、訴追を請求する意思表示であるとはい
え、犯罪の類型により、告訴の意味も違ってくる。親告罪において、告訴は捜査の開始を意味
するだけでなく、検察官が起訴か不起訴かを決めるに関係する訴訟条件でもある。検察官が捜
査を始めた後、告訴代理人は警察と連絡をとって捜査の進捗状況を確認し、告訴人に代わって
更なる資料を検察官に提供することができる。
5-2 起訴及び不起訴
起訴になるかどうかは原則として罪証が確実かどうかによる。
5-2-1 起訴
1. 公訴の提起
捜査によって得られた証拠について、被告に犯罪の嫌疑があることを認定するに足りると
認めたときは公訴を提起しなければならない。理論上、検察官は捜査手続の主宰であり、検
察官は自ら捜査して得た証拠をもって公訴を提起するかを決めることになっているが、司法
院の解釈により、検察官が司法警察官の捜査結果、又はその他の方法で得た証拠を根拠に、
被告に犯罪の嫌疑があると 認めた場合においても、公訴を提起することができる。
2. 被告と犯罪事実の追加
刑事訴訟法第 265 条により、第一審の弁論が終結するまでに相関する犯罪又は本件で問わ
れる罪の誣告罪について起訴を追加することができる。
5-2-2 不起訴
1. 不起訴処分の確定と再議
捜査が終わった事件に関し、刑事訴訟法の法定事由に当るものについて、検察官が職権上
の裁量を経て、公訴を提起する必要がないと認めたときは、不起訴処分として訴訟手続きを
終了させることができる。検察官が為した不起訴処分書は告訴人、被告などに送達しなけれ
ばならない。告訴人が検察官の不起訴処分に不服があるときは同不起訴処分書を受け取った
日から 7 日内にその上級検察機関に再議の申立をすることができる。もし、再議に理由がな
いとして却下された場合は、同事件は不成立と確定することになる。
2. 不起訴処分の確定力
不起訴処分が確定すれば、新しい事実若しくは新しい証拠が発見され、又は再審できるそ
の他の特定事由がない限り、同一事件について再び起訴することができない。したがって、
検察官の不起訴処分は裁判所の判決と同じような実質上の確定力がある。
6 刑事訴訟における審理段階
6-1 訴訟手続きの進行
検察官が起訴した刑事事件は、裁判所の刑事法廷によって事件の審理が行われる。裁判官は検察官
の起訴事実及び証拠物についてさらに確認する。例えば、押収物を検証したり、関連問題について関
係主務官庁に鑑定意見の提供を要求したりする。告訴人が地方法院(地裁)の刑事判決に不服がある
ときは、判決書を受け取った日から十日内に検察官に控訴の申立をしなければならない。
6-1-1 審理
1.準備手続
(1)被害者の参加
(2)証拠の提示と証人の陳述
(3)訴訟書類の閲覧にあたっての注意事項
2.口頭弁論
(1)告訴人と被告
(2)告訴代理人及び被告弁護人の注意事項
114
❒簡易手続
簡易手続は原告に不利な場合もある。適用の条件を満たしているかどうかに注意しなければな
らない。適用の条件を満たしていないにもかかわらず、簡易手続を適用した場合、その裁定或い
は判決に抗告又は上訴を提起すべきである。
簡易手続に関する条文を次のとおり列挙する。
●第 449 条 第一審裁判所は被告が取り調べの段階における自白又はその他現に存在する証拠物
によりその犯行を認定するに足りるときは、検察官の申立てにより、通常の審判手続を経ず、直
ちに簡易判決によって処刑することができる。但し、必要があるときは処刑前に被告を訊問する
ことができる。
前項事件の担当検察官は通常の手続により起訴し、裁判所の訊問を経て被告が犯行を自白し、簡
易判決によって処刑すべきと認めるときは、通常の審判手続を経ず直ちに簡易判決によって処刑
することができる。
前二項規定により科される刑は執行猶予を宣告され、又は罰金で刑に代わることのできる有期懲
役若しくは拘留、又は罰金に限る。
●第 449-1 条 簡易手続の事件は簡易法廷により審理する。
●第 450 条 簡易判決によって刑に処したときは没収又はその他必要な処分を併せて処すること
ができる。
第 299 条第 1 項但し書の規定は前項判決において準用する。
●第 451 条 検察官が事件の情状を斟酌して、簡易判決によって刑に処すべきと認めるときは直
ちに書面をもって申し立てなければならない。
第 264 条の規定は前項申立てにおいて準用する。
第一項の申立ては起訴と同一の効力を有する。
被告が取り調べの段階で自白したときは、検察官に対して第一項の申立てを請求することができ
る。
●第 451-1 条 前項第一項の事件に関し、被告が取り調べの段階で自白したときは、検察官に刑
を受け入れようとする範囲又は刑の執行猶予を受ける意向を表明することができ、検察官がそれ
に同意したときは、調書にその旨を明記したうえ、被告の意思表示に基づいて直ちに裁判所に求
刑し又は刑の執行猶予の宣告を請求しなければならない。
検察官が前項の求刑又は請求をする前に、被害者の意見をたずね、また情状を斟酌して被害者の
同意を得た上で、被告に次に掲げる事項を命じることができる。
一. 被害者に謝罪する。
二. 被害者に相当金額の賠償金を支払う。
被告が犯行を自白していて第 1 項の表示をしなかったときは審判中に裁判所にこれをなす
ことができ、検察官もまた被告の表示により裁判所に求刑し又は刑の執行猶予の宣告を請
求することができる。
第一項及び前項の場合において、裁判所は検察官の求刑又は刑の執行猶予に係る請求の範囲内に
判決をしなければならない。但し、次に掲げる場合のいずれに該当するときはこの限りでない。
一. 被告が犯した罪は第 449 条に定める簡易判決によって処刑することのできる事件に当たら
ないとき。
二. 裁判所が認定した犯罪事実は明らかに検察官が求刑の根拠となる事実と一致しない、又は
審判中にその他の裁判上の犯罪事実を発見し、検察官の求刑は明らかに不適切と認めるに
足りるとき。
三. 裁判所が審理を経て無罪、免訴、不受理又は管轄違いとすべきと認めるとき。
四. 検察官の請求が明らかに不当であり又は著しく公平さを欠くものであるとき。
●第 452 条 検察官が簡易判決による処刑の申し立てをした事件について、裁判所が第 451 条ノ 1
第 4 項但し書の場合に該当すると認めるときは通常手続を適用して審判しなければならない。
●第 453 条 簡易判決によって処刑した事件について裁判所は直ちに処分をしなければならない。
●第 454 条 簡易判決は次に掲げる事項を記載しなければならない。
一. 第 51 条第 1 項の記載をする。
二. 犯罪の事実及び証拠。
115
三. 適用すべき条文。
四. 第 309 条各号に掲げる事項。
五. 簡易判決が送達された日より 10 日内に上訴を提起することができる。但し、上訴のできな
いものはこの限りでない。
●第 455 条 書記官が簡易判決の原本を受領した後、直ちに正本を作成した当事者に送達しなけ
ればならない。
●第 455-1 条 簡易判決に不服があるときは、管轄の第二審地方裁判所に対して合議制法廷に上
訴を提起することができる。
一. 第 451 条ノ 1 の請求により為された判決について上訴することができない。
二. 第 1 項の上訴は第 3 編第 1 章及び第 2 章の規定を準用する。
三. 簡易手続を適用する事件について為された裁定に不服があるものは、管轄の第二審地方裁
判所合議制法廷に抗告を提起することができる。
四. 前項の抗告は第 4 編の規定を準用する。
6-1-2 訴訟手続きの停止
審判の停止とは、起訴後何らかの法定事由の存在により暫くの間審判を始めない、又は既に始
まった審判手続の進行を暫く停止することをいう。以下は知的財産権侵害事件に関する特別規定
である停止事項について述べる。
特許権(発明、実用新案、意匠を含む)に係る民事又は刑事訴訟において、出願、異議申立、無
効審判請求、取消しが確定する前に捜査又は審判を停止することができるとなっている(特許法
第 94 条)。実務上、上記規定は捜査手続にも適用する。つまり、捜査中、容疑者又は第三者が告
訴人の特許権に対して異議申立、又は無効審判請求、又は取消しなどを提出した場合、容疑者が
さらに無効審判請求などの行政手続をとることによって訴訟を遅らせようとすることを回避する
ために、検察官は通常捜査手続を一旦停止する。実務上、この訴訟手続きの停止は一回限りとさ
れている。
商標権侵害訴訟の継続中でも商標無効審判などの進行によって訴訟手続きが停止されることが
ある。
Q.特許裁判は無効審判の結果を待たなければならないか?
台湾では知的財産局が無効審判の管轄機関となり、裁判所は直接其の審理を行わない。
無効審判は提起する主体に関して制限がないし、提起する時期も自由である。警告状を受けた権
利侵害容疑者から、無効審判をかけられることもよくあるが、無効審判の動機などもまったく問わ
れることがない。
無効審判の結果に民事裁判又は刑事裁判の判決が依存することがよくあるので、法律によって裁
判所は無効審判の結果が確定となるまで裁判の進行を停止することを許すが、停止することが必ず
しも必要ではない。勿論専門判断の責任を嫌って、停止裁定を下す場合が殆どである。又、2001 年
7 月以降では、係争事件が同時に行政裁判所で継続する場合、刑事や民事の訴訟手続きは停止しな
ければならないようになった。
民事訴訟法第 182 条
訴訟の全部又は一部の裁判が、他の訴訟に掛かる法律関係の成立如何に依存する場合、裁判所は
当該訴訟が終了するまで、裁定を以って本訴訟を停止することが出来る。
前項の規定は、法律関係の成立如何が本件継続の裁判所以外の機関によって決定される場合、そ
れを準用する。
刑事訴訟法第 297 条
犯罪の成立如何又は刑の免除事項につき、民事上の法律関係に依存する場合、当該民事事件は既
に起訴されたとき、其の民事手続きが終結するまで刑事裁判を停止できる。
62 判決
6-2-1 有罪判決
1.双方当事者からの不服がない――判決確定
(1)新聞紙での判決内容の掲載
侵害を受けた者は有罪判決が確定した後、敗訴側の費用負担において判決書の全部又は
一部を新聞に掲載することについて、裁判所に裁定を申立てることができる。
(2)民事賠償への影響
116
2. 上訴
告訴人は宣告刑について不服があるときは、検察官に上訴の申立てをすることができる。
刑事訴訟法第 344 346 条に定める上訴権者は、検察官、自訴人及び被告などの当事者を除い
て、被告の法定代理人若しくは配偶者、又は原審の代理人若しくは弁護人のみに限り、被告
の利益のために独立で上訴することができる。
6-2-2 無罪判決
1. 誣告罪の追加
公訴手続において、検察官は第一審の弁論終結前に、本件に相関する犯罪又は本件で問わ
れる罪の誣告罪について、起訴を追加することができる。
2.上訴
告訴人は地方法院(地裁)の無罪刑事判決に不服があるときは判決書を受け取った日から十
日内に検察官に上訴の申立をしなければならない。当事者が下級法院(裁判所)の未確定判決
に不服があるときは、上級法院に上訴を提出して原判決の取消し又は変更を請求することがで
きる。
6-3 再審の訴え、非常上告
確定した無罪判決又は有罪判決に対して、原告はなお法により非常上告又は再審の訴えを提起す
ることができるが、実益があることにあまり期待できないし、現実にこのようなケースはめったに
ない。
6-3-1 再審の訴え
再審の訴えに関して次の法律規定がある。
●第 420 条 有罪判決が確定した後、次の各号に掲げる場合のいずれに該当するときは、判決
を受けた者の利益のため、再審を申し立てることができる。
一、原判決が根拠にした証拠物は偽造又は変造によるものだと証明されたとき。
二、原判決が根拠にした証言、鑑定又は通訳は偽りであることを証明されたとき。
三、有罪判決を受けた者は誣告されたと証明されたとき。
四、原判決が根拠にした通常裁判所又は特別裁判所の裁判は既に裁判変更と確定したとき。
五、原判決、前審判決若しくは判決前に行われた調査に関与した裁判官、又は取り調べ若し
くは起訴に関与した検察官はその事件において職務上の罪を犯したことが証明されたと
き。
六、確実な新証拠を発見したことで、有罪判決を受けた者が無罪、免訴、刑の執行免除又は
原判決で認定された罪名より軽い罪の判決を受けるべきと認めるに足りるとき。
前項第 1 号から第 3 号まで、及び第 6 号に掲げる場合の証明は、判決が確定した場合、
又はその刑事訴訟を開始若しくは続行できないのは証拠不十分によるものではない場合
に限る。
●第 421 条 第三審裁判所に上訴できない事件は前条規定を除くほか、第二審で確定した有罪
判決に関して、判決に影響を十分に生じさせうる重要な証拠を参酌しなかった場合において
も判決を受けた者の利益のため、再審の申立てをすることができる。
●第 422 条 有罪、無罪、免訴又は不受理の判決が確定した後、次の各号に掲げる場合のいずれ
に該当するときは判決を受ける者の利益のため、最新の申立てをすることができる。
一、第 420 条第 1 号、第 2 号、第 4 号又は第 6 号の場合に該当するとき。
二、無罪若しくは相当の刑より軽い刑の判決を受けた者が、訴訟上又は訴訟外において自
白し、又は確実な新証拠を発見して有罪若しくは重刑判決を受けるべき犯罪事実があ
ると認めるに足り るとき。
三、免訴若しくは不受理の判決を受けた者が、訴訟上又は訴訟外において自ら供述し、又
は確実な新証拠を発見したことで、免訴若しくは不受理とされる原因がないと認める
に足りるとき。
●第 423 条 再審の申立ては刑罰の執行が完了した後、又はすでに刑の執行を受けない場合に
おいてもこれをなすことができる。
●第 424 条 第 421 条規定により、重要な証拠の斟酌に漏れがあって再審の申立てをするとき
は、判決が送達された後 20 日内にこれをしなければならない。
117
●第 426 条 判決を受ける者の不利益のための再審申立は、判決が確定した後、刑法第 80 条第
1 項に定める期間の二分の一を経過した場合はこれを為すことができない。
●第 426 条 再審の申立ては判決の原審裁判所が管轄する。
判決の一部が上訴され、一部が上訴されていないが、そのいずれの部分についても再審の申
立てをし、第二審裁判所においてその上訴審で確定した部分について再審を開始する旨の裁定
をしたときは、第一審で確定した部分についての再審申立も第二審裁判所がこれを管轄する。
第三審で確定した判決についての再審申立は、第三審裁判所の裁判官に第 420 条第 6 号に掲
げる事由がある場合を除き、第二審裁判所がこれを管轄するものとする。
●第 427 条 判決を受けた者の利益のための再審申立は次の各号に掲げる者がこれをすること
ができる。
一、管轄裁判所の検察官。
二、判決を受けた者。
三、判決を受けた者の法定代理人又はその配偶者。
四、判決を受けた者が既に死亡したときはその配偶者、直系血族、三親等内の傍系血族、
二親等内の姻族又は家長、家族。
●第 428 条 判決を受けた者の不利益のための再審申立は、管轄裁判所の検察官又は自訴人が
これをすることができる。但し、自訴人による再審の申立ては第 422 条第 1 項規定に該当する
場合に限る。
自訴人が既に行為能力を喪失し又は死亡したときは、第 319 条第 1 項に列挙する自訴を提起
しうる者が前項の申立てをすることができる。
●第 429 条 再審の申立ては再審の書状に理由を記載したうえ、原判決の抄本及び証拠を添付
して、管轄裁判所にこれを提出する。
●第 430 条 再審の申立ては刑の執行を停止する効力がない。但し管轄裁判所の検察官は再審の
裁定前にその停止を命じることができる。
●第 431 条 再審の申立ては再審の判決が下される前にこれを取り下げることができる。
再審の申立てを取り下げた者は再び同一の理由をもって再審の申立てをすることができな
い。
●第 432 条
第 368 条及び第 360 条規定は再審の申立て及びその取り下げにおいて準用する。
●第 433 条 裁判所は再審申立ての手続が規定に違反すると認めるときは裁定をもってこれを
却下しなければならない。
●第 434 条 裁判所は再審の理由がないと認めるときは、裁定をもってこれを却下しなければな
らない。
前項の裁定をした後、再び同一の理由をもって再審を申し立てることができない。
●第 436 条 裁判所は再審の理由があると認めるときは、再審開始の裁定をしなければならない。
前項の裁定をした後、裁定をもって刑の執行を停止させることができる。
第 1 項の裁定に対して、3 日内に抗告をすることができる。
●第 436 条 再審開始の裁定が確定した後、裁判所はその審級の通常の手続により審判の遣り直
しをしなければならない。
●第 437 条 判決を受けた者がすでに死亡した場合、その利益のために再審の申立てがなされた
事件において口頭弁論を行わず、検察官又は自訴人が書状に意見を陳述した後、直接判決をす
る。但し、自訴人がすでに行為能力を喪失し又は死亡したときは、第 332 条規定に定める訴訟
を引き受けうる者より一ヶ月内に裁判所に対して訴訟の引き受けを申し立てる。訴訟を引き受
ける者がおらず、或いは期間を過ぎても引き受けない場合は、裁判所は直接判決を下し、又は
検察官に意見の陳述を通知することができる。
118
判決を受けた者の利益のため再審の申立が為された事件において、判決を受ける者が再審判
決前にすでに死亡した場合は前項の規定を準用する。
前二項規定により為された判決については、上訴をすることができない。
●第 438 条 判決を受けた者の不利益のために再審の申立が為された事件において、判決を受け
る者が再審判決前に既に死亡した場合は、その再審の申立及び再審の裁定は効力を失う。
●第 439 条 判決を受けた者の利益のために再審の申立が為された事件において、有罪判決を言
い渡すときは、原判決に言い渡された刑より重いものでなければならない。
●第 440 条 判決を受けた者の利益のために再審の申立が為された事件において、無罪判決を言
い渡されたときは、その判決書を公報又はその他の新聞紙に掲載しなければならない。
6-3-2 非常上告
●第 441 条 判決が確定した後、当該事件の審判は法令に違反するものと発見したときは、最高
裁判所検察署検事総長は最高裁判所に非常上告を提起することができる。
●第 442 条 検察官が前条の事情を発見したときは、意見書に当該事件のファイル及び証拠物を
添付して、最高裁判所検察署検事総長に非常上告の提起を申し立てる。
●第 443 条
非常上告の提起は、非常上告書に理由を記載したうえ、最高裁判所に提出する。
●第 444 条
非常上告の判決は口頭弁論を経ずにこれを行う。
●第 446 条 最高裁判所の調査は非常上告の理由に指摘された事項に限る。
第 394 条の規定は非常上告に準用する。
●第 446 条
非常上告は理由のないものと認めるときは判決をもってこれを却下する。
●第 447 条 非常上告は理由のあるものと認めるときはそれぞれ次の各号の判決をしなければ
ならない。
一、原判決が法令に違反したときはその違反の部分を破棄する。但し原判決が被告に不利な
ものであるときは当該事件について改めて判決をしなければならない。
二、訴訟手続が法令に違反したときはその違反した手続を破棄する。
前項第 1 号の場合は、審判権がないと誤認して受理しなかったもの、又はその外被告の
審級上の利益を維持する必要があるときは原判決を取消して、原審裁判所より判決前の
手続に基づいてさらに審判をすることができる。但し、原確定判決より重い刑を言い渡
すことができない。
●第 448 条 非常上告の判決は前条第 1 項第 1 号但し書及び第 2 項規定によりされたものを除い
ては、その効力を被告に及ぼさない。
6-4 被告の抗弁手段
6-4-1 権利の否定
特許権に対して異議の申立又は無効審判の請求をする。商標権については無効審判の請求をし、
又は取消しの訴えを起こす。著作権の場合はその有効性に抗弁する。
6-4-2 反訴
▼申立の種類
(1)損害賠償
(2)誹謗
(3)ライセンス契約の公平取引法違反
例えば A.権利期間満了の権利をパッケージライセンスに盛り込むこと。
B.複数のライセンサーが市場独占又は共同行為(連合行為)の疑いがある。
119
6-5 刑事訴訟の所要期間と経費
■証拠収集及び調査と警告書の送付(訴訟前の準備期間)
所用期間 証拠収集期間として、通常①家月から 3 ヶ月ほどで調査レポートが作成されて権利者に届
く。
費用
一社に対する調査費用 およそNT2 万元
一社に対する警告状送付の費用 およそNT4 万元
■刑事告訴から検察官に夜取り調べ及び提訴までの段階
期間 およそ 2 ヶ月から 4 ヶ月。
費用 平均 12 万間前後(調査法廷が三回ほど開催の場合)裁判所所在地域によっても違う。
■一審
所用期間:裁判に要する期間は 4 ヶ月から 6 ヶ月ほど。裁判所での処理期限は 16 ヶ月。提訴から最
後の公判庭までの期間を言う。
費用:
弁護士費
通常NT$30 万元より。(高判定が三回開催される場合)但し、公判庭の回数と裁判所所在地による交
通時間の多少などに比例して増減する。高判定に出席するほか、告訴代理人として証拠資料と法的主
張を書面を作成して裁判所に提示する業務もふくむ。弁護士費用は原則上勝訴する側でも敗訴する側
に請求することが出来ない。
■二審
所要期間:6 ヶ月から 1 年間ほど。裁判所の処理期限は 2 年。
費用:
弁護士費
通常NT$30 万元前後。(公判庭参会開催の場合)
■三審
所用期間:書面審理によって行い、法律適用問題を上訴理由に限定される。通常一年以上かかる。
費用:弁護士費
通常 30$万元前後となる。
7 自訴
7-1 概説
犯罪の被害者は自訴を提起することができる(刑事訴訟法第 319 条)。自訴人は刑事訴訟手続きの
原告となり、被告の犯罪事実を訴追することができる。被害者が自訴の手続をとろうとするときは、
今後の訴追手続が順調に行われるように、まず被告の犯罪を証明するに足りる十分な証拠を掌握した
うえで、自訴を提起したほうが無難である。
7-2 起訴のタイミング
検察官の捜査はかなり時間がかかる。差押えた証拠をじっくりと検討して民事賠償の主張が採用さ
れるように対応策を考えていくのであれば、捜査中に改めて自訴を提起した方がお薦めである。
7-3 注意事項
1. 自訴状
自訴状には自訴人が押印しなければならない。そして被告の人数に応じて自訴状の謄本を提出し
なければならない。
告訴人は検察官の捜査終了前に改めて自訴を提起することができる。また、被害者も最初から直
接自訴を提起することができる。代理人が委任を受けてこれを行うときは、自訴状における自訴人
のサインがなければ、手続は不適法となる。
2.自訴の主体
特許法第 95 条に定める互恵原則の要件を満たせば、たとえ認許を受けていない外国法人又は団体
であっても自訴を提起することができる。自訴事件は原則として自訴人が検察官の職務を遂行する。
自訴人が召喚を受けて理由無く法廷に出頭せず、又は陳述をしないときは、自訴が取り下げられた
とみなす。この場合には、検察官は裁判所の通知を受けて訴訟を担当することができる。
120
8 民事訴訟手続き
8-0 特許実施権許諾権者及び共同権利人の提訴について
Q.独占的許諾権者の提訴及び訴訟参加
原則として、独占的許諾者(台湾特許法第 84 条の表現では専属被授権者で、唯一単独の実施権者を指
すもので、特許権利者自身の実施権まで排除するとは限らない。) のみが特許権侵害訴訟を提起できる。
また、独占的許諾者の権利行使は、従来では特許権利者に対して権利行使を催促したにも関わらずに特
許権利者自身が特許権利の行使を拒否することを前提としていたが、現在はそういう規制がない。勿論
特許実施許諾契約に反対の約款がない場合に限って権利行使が認められる。
独占的許諾権者の訴訟参加
訴訟参加 他人の訴訟によって利害関係が生じる第三者は、其の中の一方を補助すべく、当該訴訟の継
続中に、訴訟に参加できる。(民事訴訟法第 68 条)独占的許諾権者の立場は、まさに特許侵害の容疑が発
生する場合に提起された特許訴訟によって利害関係が生じる第三者に相当するので、訴訟に参加するこ
とが認められる。しかし実務上の参加実例はそう夥しく見られない。実際訴訟に参加しなくても、証人
として証言を供したり、証拠書類を提示したりする役割を果たせば十分に補助の効果を上げられる。訴
訟参加を認められても、当事者の補助者にみなされるのみで、補助する対象の当事者の訴訟行為に抵触
する場合、参加者の行為は発効しない。(民事訴訟法第 71 条)
参加人には次の権限を持つ:
(1)補助する対象の当事者の故意又は過失の行為によって、参加者が知らない攻撃又は防御の手段を取
らずに終わったか、若しくは参加者に帰責出来ない自由で参加者が有効な攻撃又は防御の手段を取
れなかったことが或場合、参加者は裁判の結果に不服を申し立てることが出きる。(民事訴訟法第 73
条)
(2)両方当事者の同意を得た場合、参加者は本訴訟を補助する対象の当事者から担当することが出来る。
(民事訴訟法第 74 条)
Q.共有される特許権の特許訴訟の提起
一、民事損害賠償請求訴訟に於いて
特許権利を共有するもの同士は、特許権の損滅等の状況において一致した利害を共有するので、訴訟
の提起と訴訟継続中の対応は合い逆らってはならない。共同特許権に関連する訴訟に於いては、共同権
利者は共同で提起して共同原告となるのと、又は共同被告となって防御する事が出来る。(民事訴訟法第
53 条・一般共同訴訟)例えば権利侵害訴訟の場合では、侵害に関する認定の結果次第で権利範囲が不利
に認定されることも有りうるが、共有者全員の共同提訴を強制すると、かえって権利者に不利を被らせ
る虞があるから、原則上権利共有者のいずれでも提起できると考えられている。その時、一の権利共有
者は共有人数割の請求金額しか主張できなくなる。その上、特許侵害訴訟は、民事に於いては損害賠償
請求の他、特許請求範囲が侵害容疑物に及ぶ事に関する確認の請求も前提として判断されるが、後者に
ついては明文で訴訟請求事項に記載されなければ、本件訴訟の訴訟物とみなされずに、判決の既判力が
及ばないとされる。よって、他の権利共有者は本件損害賠償請求訴訟が敗訴確定になった後でも、或い
は訴訟継続中にでも、独自で損害賠償請求訴訟を提起してもよいと考えられる。但し、実務上では分別
提訴しても併合審理を命じられたりするので余り実益もない。他の共有者らも後に共同原告に名を連ね
る事が常態だが、たとえ権利者の一員が権利行使を放棄する場合でも、権利行使が違法とならない。
又、権利共有者の一人が単独提訴した後でも、他の権利共有者が独立に訴訟参加をし、共同訴訟人に
昇格することも出来る。(民事訴訟法第 62 条)
しかし、権利共有者同士らは、前提上内部的に法律関係を統合する必要があるので、訴訟進行中に於
いては、必要共同訴訟人の関係を適用する(民事訴訟法第 56 条・必要共同訴訟)。
単なる特許権の存在を確認するための訴訟に於いては、上記の侵害賠償請求訴訟と違い、原則上権利
共有者全員連名で提起すべきである。
二、刑事訴訟に置いての告訴
告訴については、権利を共有する何れの主体でも、独自で告訴を提起できるとされている。
Q. 共有される著作権の権利行使に関して
著作権法第 40 条は著作権の処分、行使と譲渡に関しては共有者全体によってのみ可能との規定を置くほ
か、第 90 条は権利侵害に対する権利行使は共有者単独でも自分の持分に応じて可能との規定を置いてい
る。
そのため、著作権の侵害を排除するための民事及び刑事訴訟の提起は、原則上著作権共有者の中の単独
者によっても可能のはずである。
121
但し、実務からすれば、非常緊急の事態があり間に合わない場合を除いて、複数の権利共有者がいて
も、権利行使の場合はなるべく中の一名に権限を集中委託して、その委託を受けたものが単独の名義で
弁護士を委任する形態をとったほうが無難である。その理由は主に①他の共有者の承諾を示す書面がな
ければ、被告側が自己防衛のために原告の権利の合法性や原告の適格などについて徒に抗弁して、訴訟
進行を妨害する恐れがある;②権利の実態状態と侵害事実に関する審理のほか、賠償金金額から原告の
持分を定める際、判決が他の共有者に与える拘束力を気に掛け、裁判所側も迅速に判決を下すのに抵抗
を感じる場合がある。また、共有者の一名が単独で提訴する際、請求権の事項を中断するなどの有利な
法律効果は共有者全体に蒙らせるかどうかも疑点が残り得る。
従来の事例では、複数の著作権共有権利者がいる場合では、特定の権利者に権利行使の委託をする旨
の委託書を作成した上、公証と認証を経て、同被委託人によって単独の名義で弁護士の委任状を作成さ
せ、同委任状を公証と認証を経た上裁判所へ提出するアプローチを取るのが普通である。何れ共有者全
体に対して権利行使の効果が及ぶし、裁判所側も原告側の適格の地位を信頼することによるメリットも
あり、又和解や上訴など迅速な対応が必要な際を考えれば、提訴の事前に権利行使の意向を取り合わせ
て、意思の統合を外部に表明したほうが原告側に有利になると思われる。
8-0-1 短期消滅時効
民法第 125 条は一般消滅時効期間を十五年と定めているが、不法行為、それは特許、商標、著作権な
どの知的財産権を含めて、に関する損害賠償請求権の消滅時効は、原則上損害賠償権利者が責任者を
知った時点から二年間、または損害をもたらす不法行為が発生してから十年間を計算して完成する。
(民法第 197 条、特許法第 84 条、商標法第 61 条、著作権法第 89-1 条)不法行為が継続状態にある場
合、その状態が終了する時点より起算する。
不当利得変換請求権は原則上通常の 15 年間の請求権事項の制限を受ける。一方、差止請求権の請求
は特許法で短期時効の特則は置かれているが、商標法と著作権法は特に設けてないので、通常の時効規
定を適用する。
特許や商標などの権利者は、第三者の侵害行為の差し止めを請求する場合は、行為が継続さえすれば、
随時請求できるので、比較的に時効の問題が少ないが、損害賠償の請求に関しては、侵害行為が一段
落して停止した後から、請求権の消滅時効が起算するので、時効にかからないうちに書面で正式に損
害賠償請求の意思を伝えるか、提訴するかで時効の中断を図る用意をすべきである。他に起訴と同等に
消滅時効を中断する効果を持つ方法もある:
1 督促手続きによって支払命令の申し出をすること;
2 調解の申請又は仲裁要請の提起;
3 和解債権若しくは破産債権の申告;
4 告知訴訟の提起;及び
5 執行開始手続き或いは強制執行の申請。
2004 年 7 月までに公告された特許案件は、例え公告期間内に異議申立を受けた場合でも、出願人は擬
似の特許権を与えられる。そのため、正式に特許証書の発行を受けていない時期でも、特許権をある
程度第三者に対して主張できる。異議申立が特許庁の判断を経て、その決定に対して当事者が経済部の
訴願委員会へ不服申し立てを提起できるし、その後も更に口頭行政裁判所と最高行政裁判所など二回
の行政訴訟で争うことが出来るので、確定した結論を得るまで二年間以上もかかる。擬似の権利者は
侵害容疑のあるものによる異議申立への対応ばかりに追われるのではなく、権利行使を妨害するため
に異議申立を濫用するものに対しては、弁護士と相談したうえに、警告状の送付を初め、仮処分の申請
や民事差止と侵害による損害賠償請求の訴訟を提起するなりの法手段を、消滅時効にかからないうち
に講じることを心がけるべきである。
特に異議申立に対して、特許庁から、訴願委員会を経て続けて特許査定を維持するような決定が下され
る場合、ほぼ行政訴訟で逆転されることもないので、裁判所に対しても、異議申立人が侵害行為にか
かるパーティーである場合なら取り分け、先方の異議申立は権利者の権利行使を邪魔する作戦としか
捉えられないと主張して、権利者の請求を強く訴えれば裁判所の心証を権利者側に有利にすることも
期待できる。
8-1 付帯民事訴訟の手続
刑事責任の確定に伴って、付帯民事訴訟を提起することができる。付帯民事訴訟の原告は刑事法
廷で調べた証拠を直接引用することができ、訴訟費用を支払う必要もない。効率的かつ経済的にも
メリットがある。
122
1. 証拠問題
知的財産権に関する特別法には民事賠償責任についての規定が置かれている。刑事訴訟法第 487
条により、犯罪行為により損害を受けた者は二審弁論終結前に、刑事訴訟手続きにおいて付帯民事
訴訟を提起し、被告及び民法により賠償責任を負う者に対してその損害の回復を請求することがで
きる。刑事手続における資料及び事実を効果的に利用するために、付帯民事訴訟は刑事訴訟で調査
した証拠を直接引用することができるとなっている。そしてその判決は刑事訴訟判決で認定された
事実を根拠にし、かつ刑事訴訟と同時に判決を下さなければならない(刑事訴訟法第 499、600、601
条)。
2. 訴訟費用
民事訴訟は刑事手続を通じて、検察官が起訴した後、刑事に付帯する民事訴訟を提起する形で行
われる。刑事付帯民事訴訟の最も大きなメリットは原告は裁判費用を支払わずにすむことである。
民事判決での勝訴を受けて、敗訴側に対して賠償を求める場合、被告には賠償に供する十分な財産
があることを確認するために、民事訴訟を起こす前に、まず興信所に依頼して被告の財産状況を調
査してもらうことである。場合によって、仮差押えの申立をする必要もある。訴訟費用は、請求す
る金額の 0.8%から 1%ほどに相当する金額となる。
3. その他の注意事項
(1)付帯民事訴訟について、刑事法廷は同訴訟の煩雑さからして審判が終わるまで長い時間がかか
るとして民事法廷に移送したときは、同訴訟は独立した民事事件となり、法により単独で事実
の認定をし、法律を適用することができ、刑事法廷で認定された事実に拘束されない。
(2)民事法廷の判決は刑事判決の結果を踏まえて言い渡される場合が多い。刑事法廷に先立って判
決を下すことはめったにない。したがって、事件は刑事法廷から民事法廷に移されたとはいえ、
民事法廷は往々にして訴訟手続きを停止させるので、民事上の問題を速やかに解決することが
期待できない。
8-2 知的財産権侵害に関する民事訴訟
8-2-1 概説
知的財産権に係る民事訴訟における請求の内容は損害賠償及び相手方に対する侵害行為の停止
を主とする。その他、侵害の恐れがある場合、それを未然に防止する措置を要求する内容の請求
もある。
民事手続より刑事手続を優先させることが多いので、刑事事件が起訴された後、刑事に付帯す
る民事訴訟の形で民事手続をとることができる。ただ、権利侵害行為の時効は二年間であり、捜
査、又は再議の過程で時間が長引いて請求権の時効が消滅する可能性があることに注意しなけれ
ばならない。
商標法第 66 条第 1 項第 3 号により、損害賠償額は押収された商標権侵害に係る商品の小売価格
の 500 倍ないし 1500 倍でこれを計算することができる。今までの判決で 800 倍の賠償額を取るの
が普通である。商標権者の信用上の損害は一定の計算基準がないため、結局係争商標の知名度で
賠償額が決まるということになる。知名度が高ければ、賠償が求めやすくなる。
著作権法第 88 条第 3 項により、被害者がその実際の損害額を容易に証明できないときは、裁判
所に対して侵害の状況により新台湾ドル 1 万元以上 50 万元以下の賠償額の算定を請求することが
できる。
特許法第 89 第 1 項には損害賠償の計算基準が定められている。原則として、権利者が被告の売
り上げ資料を取得してその損害を証明することを必要としている。公平取引法も同様である。
商標法第 68 条、著作権法第 89 条及び公平取引法第 34 条はいずれも、権利者は被告の負担にお
いて判決書の全部又は一部の内容を新聞又は雑誌に掲載することを請求することができる、と定
めている。このほか、特許法第 93 条により、侵害された者は勝訴判決が確定した後、裁判所に対
して判決の全部又は一部の新聞での掲載についての裁定を申し立てることができる。その費用は
敗訴側が負担する。
8-2-2 民事損害賠償
1. 基本原則
民事損害賠償の範囲は法律に別段の定め又は契約における別段の約定がある場合を除き、
債権者の受けた損害についても賠償しなければならないほか、因果関係のある逸失利益を補
填する責任もある。これは民法第 216 条に定められている。通常の状況或いは規定の計画、
若しくは設備投資又は其の他特別事情によって予期できる利益も逸失利益と見なされる。
また、被害者は損害を受けたことを既に証明したが、損害の数と額を証明できないときは、
裁判所は損害の原因及びその他一切の事情を斟酌したうえ、自由心証でその額を決める。
123
一方、特許法、商標法と著作権法など特定分野の知的財産権ごとに特則も設けてある。その中
に名誉回復の措置、或いは新聞に於ける謝罪広告の掲載などの形態の民事責任まで特別に規
定する場合もある。
■ 訴訟金額算定の問題点----訴訟金額の設定
(1)客観上の問題---起訴或いは仮処分を申請する時点に於ける訴訟利益或いは訴訟金額の見積
もり問題
訴訟や保全手続きを提起する或いは申請する際、実体上の証拠の準備のほか、訴訟金額の設定
も重要な事項となる。裁判費も訴訟請求金額の 0.8 から 1%に相当する金額となるので、訴訟金額
の認定は重要な事項となる。
訴訟金額は訴訟の種類によって計算の方法も異なるが、各種の知的財産権の侵害訴訟に於いては、
主に原告が被告に対して請求する損害賠償金額に限るように思われがちだが、実際訴状などに出
る請求事項を対照すれば、差し止めの請求が常に最初に順位に並べられるが、訴の差し止めの請
求項目が以下に請求金額に反映すべきかの問題がまず発生する。
例をあげて見る:
特許権侵害訴訟の訴訟請求項目は主に次の二項目に分けられる:
一 被告自身による係争特許権技術を利用する製品の無断の製造、販売、輸出、運送、交付、販
売を目的とする陳列、及び第三者に上記行為を許諾するすべての行為の差し止め、及び
二 被告に対して特許権侵害による損害賠償として金
万元を請求すること。
①問題 この二項目の相互関係につき、第二項目が第一項目の付随請求と位置付ける見解もある
が、この見方からすれば、むしろ金額が具体的に出やすい第二項目の損害賠償金額が、訴訟対象
と見なさないで、訴訟費用の計算の対象からはずせるかのように思える。 この問題をめぐって、
賛否両方の見解が両立している。原告は自分に有利な方針で主張すべきである。
②問題 一方、第一項目の差止請求の訴訟金額の計算はどうすべきか?
被告側の特定の行為
の差し止めによる訴訟利益の設定は状況に基づく仮定でしか推測できないので、
困難度が高いし、
例え客観上ある程度可能でも起訴の時点では十分に参考できる情報がなく、通常では期待しがた
い。そのため、以下三通りの対策が挙げられる:
a 認定が困難なため、最高裁判所に対して控訴できる最低限の控訴利益 150 万元に一割を上乗せ
た 165 万元に設定する方法;
b 原告が被告の特定の行為を差し止めることによって得られる推定の利益で訴訟金額を設定す
る。この方法が比較的に合理的だが、実際この方式で金額の試算が可能なのは、提訴前の段階か
ら原告が既に被告の営業や収益(例えば年間収益報告書、権利を侵害する製品の販売状況、被告
の製造体制に占める比重など)などに関する情報を十分に確保した場合に限られる。
c 原告が嘗て仮処分命令を得た場合、その仮処分申請手続きにおいて主張された損害金額をベー
スに本案裁判訴訟金額にする方法。被告が常に損害賠償金額の計算に所要無し料を開示したがら
ないから、原告が嘗て保全手続きで損害の推定金額に関して十分に測定できる資料を陳述した又
は提示したものがあれば、再度それを利用して本案の訴訟費用の計算に生かすことができる。
(2)主観上の問題--訴訟費用の算定は当事者の営業状況や経営実態に頼るところが多く、被告はおろか、原告の立場
でも積極的に提示したがらない傾向がある。一方、保全手続きも訴訟費用担保が必要な訴訟の提
起を巡って、担保金や訴訟費用の金額を問題にして上告する手段で本案の実体レベルの進行を阻
害する法廷戦略もある。訴訟活動前の情報収集が益々重要になる。
特許権を侵害した場合の損害賠償は、原則上直接財産上の損害と商業信用や名誉に与える損害
とに分けられる。
(一)財産上の損害の計算
財産上の損害の計算は、実際発生した損害と逸失された利益とに大別される。又権利を侵害す
る側の不当利得を損害賠償金額と見なすこともできる。
両者は概念上紛らわしい場合もあるが、無断に他人の特許権利技術を利用して商品を発売した
場合は、権利者にとって期待できる利益を儲け損ねた観点からして、権利者の逸失を填補するほ
うが合理的のようだが、それも抽象概念から抜けがたい。無断実施者が特許権係争技術の利用に
よって儲けた利益を算出して、それを特許侵害による権利者が蒙った損害と見なす規定を適用し
たほうが比較的に損害賠償金額が計算しやすい。それは侵害者の不当利得返還の規定。不当利得
は侵害行為によって儲かった金額から関連のコストを差し引いた浄利益に限定されるが、その金
額を提示する立証責任は原則上原告にある。一方、被告は特許侵害事実が確認された時点で関連
資料を提示するように裁判所に命じられる。
一方、特許技術が製品全体をカバーできるとは限らない。それより、むしろ製品の部品に寄与
124
される特許技術のほうがよくある。この種類の特許技術が侵害される場合、財産上の損害の計算
は多少複雑化する。
実際の特許(実用新案)権侵害事案から見られる損害賠償金額の計算のプロセスを確認してみ
る。
(1)係争特許技術の利用が無断に当該特許技術を利用して製造販売される製品の市販価格に
於いて占める金額上の比重。これは原則上「製品に於ける特許価値の鑑定報告」によって見積も
られる。当該鑑定報告書の作成はいくつかの「某工商研究院」が依頼を受けている。製品の価値
に於ける特許技術が占める価値上の比重を割り出すには、製品の価値を支配する主な11もの項目
を考察する必要がある:
(1)特許安定性に関する三項目:製品の斬新度;品質の良さ;特許戦略;
(2)その他の要素:製品のラインアップ;複数ブランドシリーズ;競争戦略;促販活動;コマー
シャル;促販陣容;生産効率など。特許安定性を図る項目は11項目の中3項目を占めるので、前提
特許案定率が27.3%となる。
(2)更に別の角度から、上記の前提特許案定率が本件の係争製品に於いて実際適用できる数
値を精算する。主に製品の①斬新度、②実施程度;③拡散力;④特許技術の強度と範囲;⑤特許
脅威度などに関して、50点から150点までのスケールで採点して、本件製品の特別偏差値を割り出
す。平均値500点に対して、本件製品が520点の総合得点を得た場合は、当該製品の特許価値比重
偏差値は520/500=1.04となる。その偏差値を蒸気の前提数値にかけた場合、本件の特許価値比
重率は28.4となる。
(3)一方、消費者と関連業者らを対象に行った市場調査で得た本件の製品の特許価値比重数
値は23.8.最終的にこの数字と前項の数値と平均値を取って、26.1との最終数値を得る。
(4)最後に、本件に於ける係争製品の売上を計上した上、そこから原価コスト(一般製作原
本及び特許を実施するにかかる必要なコスト)を差し引いて、残った数字を上記の特許価値比重
数値にかけて、本件に於ける被告が無断に特許技術を利用したことによって得られた不当利益の
金額を算出する。
専門家による特許権価値比重数値=28.3
市場調査による特許価値比重数値=23.8
特許価値比重平均数値
=26.1
総売上金額
=3000万元
控除すべく原本とコスト=①一般製作原価②特許実施の必要なコスト=2000万元
ネット利益
=1000万元
特許価値平均数値
= 26.1%
特許無断実施による不当利得
= 261万元
(二)特許権利者の商業上の名声と信用に対する毀損の損害賠償
特許権の侵害が実際権利者の商業上の名声に対して侵害しているかどうかは、主に侵害行為が
市場に於いて特許権利者の製品或いは役務に関して、消費者、取引関係者等に混同誤認の印象を
与えているかで判断する。ある判決では、製品の部品に関与する特許技術の侵害は、製品の外観
や包装に顕著な形態で特許製品であることの表彰がなければ、一般財産上の損害はあっても、消
費者や取引関係者らは当該無断に特許技術を応用した製品の流通によって特許権利者に対してマ
イナス菜印象をもつようになることもないので、商業上の名声に対する損害賠償の問題は特にな
いとしている。
又、被告が明らかに特許権に抵触しているにもかかわらずに、権利行使の経過において、問題
の特許権が無効であるとか、特許権利者が特許権を乱用しているとか明らかに特許権利者の名誉
を損傷しうる言動を取ったことがある場合でも、特許権利者の商業上の名声の侵害につながる。
第85条 前条規定により、損害賠償を請求するときは、次の各号のいずれを選んでその損害を算
定することができる。
一.民法第216条の規定による。但し、証拠方法を提供してその損害を証明することができない
ときは、特許権者はその特許権を実施して通常得られる利益より、損害を受けた後に同一特
許権を実施して得られる利益を差引いた差額をその受けた損害の額とする。
二.侵害者が侵害行為によって得た利益による。侵害者がそのコスト、又は必要な経費につい
て立証できないときは、当該物品を販売して得た収入の全部をその所得利益とする。
前項規定のほか、特許権者の業務上の信用が侵害行為により毀損されたときは、別途相当金
額の賠償を請求することができる。
前二項規定により侵害行為が故意になされたときは、裁判所は侵害の状況を斟酌して損害額
以上の賠償額を決定することができる。但し、損害額の三倍を超えることはできない。
125
第86条 他人の特許権を侵害するために使用された物、又はその行為により生じた物については、
侵害された者の請求により、仮差押えを行い、賠償すべき判決があった後に、賠償金の全部又は
一部にこれを充当することができる。
当事者が前条の起訴及び本条の仮差押えの申立をしたときは、裁判所は民事訴訟法の規定によ
り訴訟による救済を許可しなければならない。
第 88 条 特許に係る訴訟案件について、裁判所は判決書の正本を一部特許所管機関に送付し
なければならない。
第 89 条 被侵害者は、勝訴判決が確定した後、裁判所に対して敗訴者の費用負担において判決
書の全部又は一部を新聞紙に掲載するよう裁定の申立をすることができる。
2. 特別法の規定
■特許法
a.損害額の見積り
①一般の損害賠償
特許法第85条により、損害賠償を請求するときは、次の各号の一を選んでその損害を算定す
ることができる。
一.民法第216条の規定による。但し、証拠方法を提供してその損害を証明することができな
いときは、特許権者はその特許権を実施して通常得られる利益より、損害を受けた後に同一特
許権を実施して得られる利益を差引いた差額をその受けた損害の額とする。
二.侵害者が侵害行為によって得た利益による。侵害者がそのコスト、又は必要な経費につ
いて立証できないときは、当該物品を販売して得た収入の全部をその所得利益とする。
三.裁判所が特許主務官庁又は専門家に委託して見積った数額による。但し、この条項は2003
年以降廃止された。
②業務上の信用の損害賠償
特許権者の業務上の信用が侵害行為により減損されたときは、別途相当金額の賠償を請求す
ることができる。
侵害行為が故意になされたときは、裁判所は侵害の状況を斟酌して損害額以上の賠償額を決
定することができる。但し、損害額の二倍を超えることはできない。
③新聞での判決内容の掲載
特許法第 93 条により、被侵害者は、勝訴判決が確定した後、裁判所に対し、敗訴者の費用
負担において判決書の全部又は一部を新聞紙に掲載するよう裁定の申立をすることができる。
b.付随条件――特許表示
特許権者は、特許に係る物品又はその包装に特許証書の番号を表示しなければならない。実
施権者又は強制実施権者にも表示を要求することができる。表示しなかった者は損害賠償を請
求することができない。但し、権利侵害者が特許に関わる物品であることを知っていて、又は
それを知り得ることを証明するに足りる事実があるときはこの限りでない。
■商標法
①一般の損害賠償
商標法第 61 条により、商標権者はその商標専用権を侵害した者に対し、損害賠償を請求す
ることができる。又、その侵害の排除を請求することもできる。侵害のおそれがあるときは侵
害を防止することを請求することができる。その損害賠償額の計算は、商標法第 63 条により
次の三つの方法の一を選んでその損害を計上することができる。一.民法第 216 条の規定によ
る。但し、その損害を証明するための証拠方法を提供できないときは、商標権者はその登録商
標を使用することによって通常得られる利益から、侵害された後同一商標の使用によって得た
利益を控除した差額をその受けた損害の額とすることができる。二.商標権を侵害した者がそ
の侵害行為によって得た利益による。商標権侵害者がそのコスト又は必要経費について立証で
きないときは、当該商品を販売して得た収入の全部をその所得利益とする。三.押収した商標
権侵害に係る商品の販売単価の 500 倍から 1500 倍までの金額を損害額とする。但し、押収し
た商品が 1500 点を超過する時は、その総価額で賠償金額を定める。前項の賠償金額が明らか
に相当しないときは、裁判所は情状を参酌して軽減することができる。
②業務上の信用の損害賠償
126
商標権者の業務上における信用が侵害行為により毀損を受けたときは、別途に相当の金
額の賠償を請求することができる。
③新聞での判決内容の掲載
商標専用権者は商標専用権を侵害した者の費用負担において商標権侵害を認定した判決書の
全部又は一部の新聞での掲載を請求することができる。(商標法第 64 条)
■著作権法
①一般の損害賠償
著作権法第 88 条により、著作権者は故意又は過失により他人の著作財産権或いは製版権を
不法侵害した者に対して損害賠償を請求することができる。その損害賠償額については同条第
3 項により次の三つの方法から択一して請求することができる。
一.民法第 216 条の規定により請求する。但し被害者がその損害を証明できないときは、その
権利の行使により一般の情況からして予期できる利益から、侵害を受けた後に同一権利を
行使して得た利益を差引いた差額を以てその受けた損害の額とすることができる。
二.侵害者に対し侵害行為により取得した利益を請求する。但し侵害者がその原価或いは必要
費用を証明できないときは、その侵害行為により取得した全部の収入をその所得利益とす
る。
三.被害者が容易にその実際の損害額を証明できないときは、裁判所に侵害の情状により新台
湾ドル 1 万元以上100 万元以下の賠償額の算定を請求することができる。損害行為が故意
に為され、且つ情状が重大なときは、賠償額を新台湾ドル500 万元までに増やすことがで
きる。これはいわゆる法定損害賠償額という。
②新聞での判決内容の掲載
著作権法第 89 条により、被害者は侵害者の負担において、判決書の内容の全部又は一部の
新聞紙、雑誌での掲載を請求することができる。
③著作人格権が侵害される場合も、侵害するものに対して差止請求、防止措置の請求と損害賠
償請求が出来る。非財産上の損害が発生する場合でも、被害者が金銭の賠償を請求できる。著
作人格権に対する侵害の救済として、他に著作者の氏名又は名称の標示請求権と訂正請求権若
しくは其の他名誉回復の適切な処分が含まれている。
④著作権を侵害するものに侵害排除又は予防若しくは損害賠償請求などをする場合は、併せて
侵害行為によって作成される物品或いは侵害行為に供されるものに対して、破棄か其の他必要
な措置を取ることが出来る。
■公平取引法
①一般の損害賠償
公平取引法第 30 条から第 32 条により、被害者の公平取引法違反の事業に対する侵害行為の差
し止め請求権と侵害防止請求権を設けるほか、損害賠償請求権の規定も設けてある。
同法に違反したことにより、他人の権益を侵害したときは、侵害する側は損害賠償責任を負う。
被害者は裁判所に対して侵害の状況を参酌して、事業が故意に行った行為について損害額以上の
賠償を算定することを請求することができる。但し、既に証明された損害額の三倍を超えてはな
らない。侵害者は侵害行為により利益を獲得したときは、被害者はなお同利益について損害額の
計算を請求することができる。
消滅時効も一般の不法行為と同じく、被害者が加害者の行為及び責任を負うべきものを知って
から 2 年間、侵害行為が発生してから 10 年間となっている。
②新聞での判決内容の掲載
公平取引法第 34 条により、被害者は裁判所に訴えを起こしたときは侵害者の負担において判
決書の内容を新聞に掲載することを請求することができる。
■営業秘密法
①一般の損害賠償
営業秘密法第 13 条により、営業秘密を侵害された者が損害賠償を請求するときは次の方法を
択一して請求することができる。一.民法第 216 条の規定により請求する。但し被害者がその損
害を立証できないときは、通常それを使用するときに予期できる利益から、侵害された後に同一
の営業秘密を使用して得た利益を差し引いて得た差額をその受けた損害の額とすることができ
127
る。侵害者が侵害行為によって取得した利益を請求する。但し、侵害者がそのコスト又は必要な
費用を立証できないときは、その侵害行為によって取得した全部の収入をその所得利益とする。
また、侵害行為が故意になされたときは、裁判所は被害者の請求によりその侵害された情状を考
慮して損害額以上の賠償を算定することができる。但し、既に立証された損害額の三倍を超過し
てはならない。
②新聞での判決内容の掲載
同法に関連規定がない。
■集積回路配置(レイアウト)保護法
①一般の損害賠償
集積回路配置(レイアウト)保護法第 29 条により、回路配置権者はその回路の配置権を侵害
した者に対して、損害賠償のほか、その侵害の排除を請求することもできる。侵害の虞がある
と認めるに足りる事実があるときは、その防止を請求することができる。専属実施権者もまた
請求することができる。但し、回路配置権者が通知を受けても請求せず、かつ契約に反対の約
定がない場合に限る。配置権者又は専属実施権者が権利を行使するときは鑑定書を添付しなけ
ればならない。
損害賠償を請求できる範囲は同法第 30 条により次の方法から択一して計算することができる。
一.民法第 216 条の規定により請求する。但し、その損害を証明する証拠方法を提供できないと
きは、被害者は通常回路の配置を利用して獲得できる利益から、侵害された後に同一の回路配置
を使用して得た利益を差し引いて得た差額をその損害額とすることができる。二.侵害者が侵害
行為によって取得した利益を請求する。但し、侵害者がそのコスト又は必要な費用を立証できな
いときは、同回路の配置又は同回路の配置を含む集積回路を販売して取得した全部の収入をその
所得利益とする。法定損害賠償額について、裁判所は被害者の請求によりその侵害された情状を
参酌して新台湾ドル五百万元以下の金額を算定することができる。
②新聞での判決内容の掲載
第 29 条にいう被侵害者は敗訴側の負担において、別途判決書の内容の全部又は一部を新聞紙
に掲載することを請求することができる。
■コンピュータによる個人データ処理保護法
①一般の損害賠償
損害賠償の計算方法は同法違反に係る主体は公務機関であるかどうかによる。
第 27 条により、公務機関が規定に違反したことにより、当事者に損害を生じさせたときは、
損害賠償責任を負う。但し、損害は天災、事変又はその他の不可抗力による事由により生じた
ときはその責任を免除される。財産上の損害でなくても、被害者は相当金額の賠償を請求する
ことができる。その名誉が侵害されたときは、なお名誉回復に適当な処分を請求することがで
きる。この二つの損害賠償の総額は一事件につき一人当たり、新台湾ドル二万元以上十万元以
下の範囲で計算する。但し、被害者が受けた損害は当該金額を超えることを証明できるときは
この限りでない。同一の原因、事実に基づき、当事者に対して負う損害賠償責任の限度(合計
額)は新台湾ドル二千万元以下とする。また、第 28 条は、非公務機関が同法規定に違反したこ
とにより、当事者の権益に損害を生じさせたときは、故意によるものではないこと、又は過失
のないことを証明できる場合を除き、損害賠償責任を負わなければならない、と定めている。
このほか、第 30 条により、損害賠償においては、本法規定のほか、公務機関は国家賠償法の
規定、そして、非公務機関は民法の規定を適用する。
②業務上の信用の損害賠償
前に述べたように、被害者は財産上の損害を受けなくても、相当金額の賠償を請求すること
ができる。その名誉が侵害された者はなお名誉回復に適当な処分をするよう請求することがで
きる。
8-3 民事訴訟の停止
訴訟の全部又は一部の裁判が、他の訴訟にかかる法律関係の成立如何に依存する場合、裁判所は
当該訴訟が終了するまで、裁定を以って本訴訟を停止することが出来る。
Q.特許裁判は無効審判の結果を待たなければならないか?
台湾では知的財産局が無効審判の管轄機関となり、裁判所は直接其の審理を行わない。
無効審判は提起する主体に関して制限がないし、提起する時期も自由である。警告状を受けた権
128
利侵害容疑者から、無効審判をかけられることもよくあるが、無効審判の動機などもまったく問わ
れることがない。
無効審判の結果に民事裁判又は刑事裁判の判決が依存することがよくあるので、法律によって裁
判所は無効審判の結果が確定となるまで裁判の進行を停止することを許すが、停止することが必ず
しも必要ではない。勿論専門判断の責任を嫌って、停止裁定を下す場合が殆どである。
但し、異議申立や無効審判で権利者の権利行使を騒擾する作戦も目下の法制度では仕方がない現
象だが、権利の有効性が特許庁の決定の次に訴願委員会の決定によっても維持された場合、相当権
利の正当性と有効性を期待できると思われるので、例え侵害容疑者が行政訴訟まで提起しても、権
利者は行政訴訟の判決が確定するまで待たずに、特に民事上の不法行為による請求権が事項にかか
らないうちに然るべき警告又は提訴若しくは仮処分の請求をすべきである。
■民事訴訟法第 182 条
訴訟の全部又は一部の裁判が、他の訴訟に掛かる法律関係の成立如何に依存する場合、裁判所は
当該訴訟が終了するまで、裁定を以って本訴訟を停止することが出来る。
前項の規定は、法律関係の成立如何が本件継続の裁判所以外の機関によって決定される場合、そ
れを準用する。
■刑事訴訟法第 297 条
犯罪の成立如何又は刑の免除事項につき、民事上の法律関係に依存する場合、当該民事事件は既
に起訴されたとき、其の民事手続きが終結するまで刑事裁判を停止できる。
8-4 民事訴訟の期間と経費
■一審
所用期間:裁判に要する期間は 6 ヶ月から 12 ヶ月ほど。裁判所での処理期限は 16 ヶ月。提訴から最
後の口頭弁論までの期間を言う。
費用:
弁護士費
通常NT$30 万元から 50 万元前後。弁護士費用には、担保金、訴訟の請求由標的によって異なる
訴訟費用、被告の無効審判請求に対応するための費用及び仮処分などの偶発又は不確定の実費と
異なる。但し、口頭弁論の回数と裁判所所在地による交通時間の多少などに比例して増減する。
弁護士費用は原則上勝訴する側でも敗訴する側に請求することが出来ない。
裁判費
請求金額の 0.8 から 1%に相当する金額となる。裁判費用は敗訴する側が負担するのが普通。
■二審
所要期間:6 ヶ月から 1 年間ほど。裁判所の処理期限は 2 年。
費用:
弁護士費
通常NT$45 万元より。
裁判費
訴訟費用は一審の半分を追加される。
■三審
所用期間:原告の請求金額がNT$150 元を上回る場合に限って認められる。書面審理によって行い、
法律適用問題を上訴理由に限定される。通常一年以上かかる。
費用:
弁護士費
通常 30 万元前後となる。
裁判費
二審と同じ。
9 保全手続
特許侵害の権利行使は、2002 年頃までは刑事罰則に基づいて刑事訴訟法主導の時代が続いていたが、
刑事罰が撤廃されてから、民事損害賠償と差止請求訴訟に切り替わった。民事訴訟は特許向こう審判な
どによって停止されることが良くあるから、市場での優位性を即時に確保するためには、仮処分と仮差
し押さえなどの民事保全手段が試みられる。2003 年 9 月の民事訴訟法改正で、仮処分の即効性が殺がれ
たが、その代わりに仮差押の制度が多用されるようになった。
129
9-1 仮処分
9-1-1 仮処分の要件
債権者は金銭給付の請求以外の請求に関して、事後の強制進行を保全するために、仮処分を申
請することができる。しかし、仮処分は請求される対象物の現状が事後強制執行ができない或い
は執行が甚だ困難になる虞がある場合に限定されている。(民事訴訟法第 532 条)
知的財産権の権利者は自己権利を侵害行為から守るには、まず考え付くのは侵害者に対して知
的財産権の侵害に関わる商品の製造・販売停止を要求することである。ただ、特許事件について、
検察官は差押えが争議を引き起こしがちな手続であり、被告に対する影響が大きいとして、捜索
状を発行しない可能性がある。また、相手方が権利者のトレードドレスを使用して商品を製造・
販売していた場合、権利者は侵害者が刑事法に違反したことを主張することができず、唯一考え
られるのは民事手続を通じて侵害者の製造・販売行為に仮処分を行うのみである(民事訴訟法第
532 条)。
仮処分はまず、裁判所に仮処分の裁定を申し立てることである。裁判所が許可した仮処分につ
いての裁定には、権利者が義務者が関連商品の製造・販売を差し止めることができる旨の記載以
外、権利者が提供すべき担保金の金額も含まれる。
権利者は裁定の内容により裁判所に担保金を供託した後、裁判所民事執行処に仮処分執行の申
立をする。権利者からの申立を受けて、民事執行処は直ちに裁定に基づいて差し止めの命令を発
し、又は訴訟代理人が立ち会いの上、書記官により差押えの手続を執行する。
9-1-2 仮処分の執行
侵害事件の調査が始まってから訴訟が行われるまでの間、権利侵害者の侵害行為に対する差し
止めは仮処分が最も効果的である。仮処分は金銭以外の請求を対象に取る保全手段であり、訴訟
係属前か訴訟係属中を問わず、申立により仮処分を執り行うことができる。その要件は次の通り
である。
1. 方式合法条件
(1)管轄裁判所に申し立てる。つまり、事件の管轄裁判所が管轄する。但し、差し迫った
場合には、請求対象の所在地にある地方法院がこれを管轄する。
(2)手続に従うこと。請求と仮処分の原因について釈明しなければならないことに注意す
る。債権者は前記釈明をしていないが、債務者が受け得る損害について既に裁判所が
決めた担保を提供したときは、仮処分の命令を妨げない。
(3)相互保護主義:外国人が申請する場合、その所属国が台湾と仮処分の手続きに関して
相互承認の実績があること。勿論特許や商標乃至著作権に基づく仮処分の場合はそれ
ぞれの実体権利の保護に関しても相互の国民に与え合う事実がある国の国民又は所
属法人に限定されている。
(4)合法の委任:会社が請求する場合、その代理人が合法の委任を受けていること。
(5)前提権利があること:知的財産権の侵害行為を差し止める旨の仮処分を請求する場合、
最低限特許権其又はその他の権利が存在していることを示す必要がある。一方、その
権利が例え無効審判にかかっている場合でも、仮処分はそこまで実態状態を判断し確
定するための手続きではないので、取りあえず拘らないことにする。又、権利が存在
するばかりでなく、権利が侵害を受けている事実も釈明する必要がある。最近の裁判
所の裁定によれば、鑑定意見書の提出に関しては一応形式上最低限の釈明義務と見な
される傾向がある。一方、鑑定意見書の釈明があっても、緊急性が存在するかの判断
は又侵害の有無と切り離して当事者それぞれの営業や特許関連技術の実施状況と市
場占有状況などを観察して決定される。要するに純粋な実体問題としての侵害事実の
認定は仮処分命令を下す裁判所にとっては前提(必要)条件ではあるが、決して充分条
件ではない。鑑定の対象と係争の侵害物品との一致性もよく争点になるが、そういう
形式上の議論が優先に主張されるし、裁判所も先に注目する問題である。
2. 実体条件
(1)強制執行の対象となる非金銭的請求を保全するための請求がある。
(2)請求対象の現状が変更され、後日強制執行ができず、又は執行が難しい虞がある。重
大な損害或いは緊急な危険を回避するため、若しくは其の他類似の状況があって必要
がある場合に限定されている。その点仮処分は仮差押より条件が厳しい。(民事訴訟
法第 532 条)
*ご留意:緊急性が欠如と見なされないように
2002 年以降では、権利行使の原因となる事態が発覚してから数ヶ月経過した後に提起される
仮処分請求に対して、権利者自身が権利行使への関心が低いように見えて、仮処分の緊急性
130
が存在しないように裁判所が推考して仮処分の請求を却下した例が増える。そのため、仮処分
を証する状況が発生してから、又はその事実を発見してから、なるべく早めに仮処分の請求を
提起できるように準備を整えるほうが無難。一方、仮処分を提起するのに、適正な準備が必要
なので、そのためにかかる時間が経過しても、不当に仮処分の提起を遅らしたとの主張に反論
できる。例えば、事実の調査と弁護士の選定に相当時間がかかるのは普通で、大抵に三ヶ月間
ほどの余裕が認められる。又特許権が侵害されている事実を示すために提示する必要のある
「特許技術侵害鑑定(意見)書」の作成に関しても、適格で有能な、且つ利害衝突のない鑑定機関
を選定するのと、鑑定意見書自体の作成などに相当時間を費やす。三ヶ月間ほどの余裕が認め
られる。それらの準備を速やかにすすめれば、侵害行為を発見してから四、五ヶ月間ほど経
過した場合でも不当に権利行使を怠ったと認定されることが多分ないだろう。
時間の経過の他、両方当事者がそれぞれ係争の事態において、どのような不利益を蒙ろうと
する実況又は予想される未然の損害の規模、危険の重大さ、又それを回避する必要性の緊急
性も仮処分の正当性を支える緊急性の重要な判断要素になってきている。例えば、特許権利
者が中規模の会社で自社の特許権の技術を大規模に実施していない、若しくは実施があって
も大した市場規模をもっていない場合、仮処分の緊急且つ必要性を巡る説得がやや困難な事
例があった。勿論その緊急性の判断は、必ずしも客観的且つ絶対的な数値でしか測れないだ
ろう。例えば、例え権利者の実施が全体市場占有率が微小でも、権利者にとっては既に精一
杯の業績で、逆に権利者のような中小規模の事業にとっては、ただでさえ限られた市場規模
だからこそ、他社の無断実施による自社の固有市場に対する侵食が死活問題になるとの議論
も出来る。こういう相対性の議論は、無断実施に携わる他社の状況に関してもよく展開され
る。他社が大規模な事業の場合は、無断実施による製品の事業規模はその会社にとって微小
な売上をしか占めないが、侵害を受ける権利者にとっては莫大な被害をもたらす行為との主
張もよくされる。
かつての事例から見れば次の事項が権利者側によってよく主張された:
■技術研究開発への投資の回収が無断実施によって極めて困難になる;
■過去の投資の金額を提示すること;
■係争知的財産権の独占運用によって確保されてきた市場地位
しかし、裁判所は仮処分による差し止めがない場合に、権利者がどの程度の具体的な損害を
蒙り得る予想をより明確に開陳して欲しい旨の決定がよく見られる。
その上、当事者間が対立する直接の競合事業であるかどうかの考慮も仮処分の緊急必要性を
判断する要素になる。また係争の対象権利或いは係争技術が差し止める対象事業に置ける運
用される度合いも考慮される。例えば、無断にチップ専門開発の会社の特許技術を一部採用
して開発されたチップを登載するノートブックを販売する第三者は、果たしてチップ特許権
利者が請求する仮処分の制限を受ける義務があるかとなると、裁判官はもっと多方面に観察
して定めるだろう。
暫定状態を定める仮処分:紛争にかかる法律関係において、重大な損害を防ぐために、又は緊急
な危険を回避するために、若しくは其の他類似の状況がある場合、暫定状態を定める仮処分を
請求することが出来る。これは本案訴訟で紛争にかかる法律関係を確定できる事案に限定され
ている。(第 538 条) これも一般に、特許権が侵害されると主張する権利者が侵害容疑者に侵
害行為を差し止めることを目的とする仮処分の根拠となっている。
3.被告側の対抗手段----反対担保金供託による仮処分の取消し及び反対仮処分
(1) 反対担保金供託による仮処分の取り消し
被告が反対担保金を提供して、仮処分取り消しを申し立てることが出来る。
反対担保金の供託を許容する旨の記載が仮処分の命令になくても、被告は自ら反対担保金の
供託によって仮処分の取消しを請求することができる。但し、それは次の特段の事情のもとで
しか容認されない:仮処分が保全する請求は金銭の給付で目的を達せるもの、或いは債務者側
が仮処分の執行によって補償しがたい重大な損害を受ける場合、又はその他の特別事情がある
場合に限る。
その点、仮処分の決定は仮差押より被告側に厳しい。財産仮差押に関しては、原則上被告の
反対担保金の供託によって取り消すことが出来るが、仮処分の場合は特段の事情が必要。(民事
訴訟法第 536 条)
仮処分の取消しの理由は次に限定される:
131
a
b
c
仮処分が保全する請求が金銭の支払いによって目的達成できるものの場合;或いは
被告が当該仮処分によって保障しがたい重大な損害;または
其の他の特別事情。
(2) 反対仮処分
特許や商標などの知的財産権の権利者が、自分の権利が侵害された又はされていることを主
張して、侵害する側の債務者の侵害行為を差し止めるために仮処分命令を下すよう請求するの
が通常の仮処分だが、逆に権利侵害にならないとともに自分の特定行為を権利者が容認すべき
旨の仮処分請求が債務者側によって提起されている。反対仮処分と略称する。台湾では最近反
対仮処分を先に獲得して、権利者からの権利行使を先手で守る戦術を利用する向きが増えてい
る。又、権利侵害行為差し止めの仮処分請求手続き継続中、または仮処分裁定が下付された後で
も、それに対抗する反対仮処分請求を提起して、侵害容疑者側の行為をなお容認させようとす
る向きも増える。台湾の学者に、日本では権利者側の侵害行為差し止め仮処分より、権利行使の
不作為を命じる反対仮処分のほうが優位に存続させるべきとの通説があると主張するものがい
る。実際日本にそういう通説の存在が確認されていないが、台湾の最高裁判所はその仮説を是
認して、債務者側の後発の反対仮処分を優位に認め、先だった侵害行為差し止めの仮処分を獲
得した権利者が提起した反対仮処分を取り消すための控訴を棄却した事例がある。
Q. 本当に反対の仮処分のほうが優位なのか?----権利侵害行為差し止めの仮処分が執行され
た後でも、反対仮処分を以ってそれに対抗することは可能か?
現在の実務前例に、権利侵害行為差し止めの仮処分の執行の前に提起された反対仮処分に対
して、前者の執行以後にも尚後者の請求を許可した事案がある。又いわゆる反対仮処分優位論
の仮説によれば、たとえ権利侵害行為の差し止めの仮処分が執行されたあとに提起される反対
仮処分請求でも、そのまま許可すべきと主張するものもいるが、登録権利の実体効果が気遣わ
れる。
(3) 仮処分命令に対する抗告
仮処分の裁定が下付された後に、債務者はそれに対してそれを取り消すべく控訴できる。
仮処分が下付されて執行されても、10 日間内に被告側が管轄の高等裁判所に対して抗告すれ
ば、なおその命令を取り消す可能性がある。高等裁判所においては、実体上の審理を含め仮処
分の担保金と下付する理由までその妥当性を判断し、担保金の改定(通常は引き上げ)や仮処分
の取消しなどの決定を下す。
但し元の仮処分を取り消す旨の裁定が確定になるまでに、元の仮処分が既に執行された法律
上の効果は、事後同仮処分が取り消された事実によって影響されることがない。(民事訴訟法
第 528 条)そのため、仮処分裁定を得てから、速やかに執行に移ることも大切である。
■裁判所の被告側意見聴取:2003 年の改正民事訴訟法によって、債務者側の自由を拘束する仮
処分を下す前には、通常債務者と債権者両方の口頭陳述を聴取する必要がある。例外的に裁判
所がそれが妥当でないと判断する場合に限って両方当事者の口頭陳述の機会を与えなくてもよ
いが。この口頭陳述の手続きは、従来の規定では不用だった。この両方当事者による口頭陳述
のプロセスが実践されると伴い、両方当事者が提示する資料と開陳する主張が極端に増加する
一方で、裁判所仮処分の命令となる裁定を下すのに、更に時間をかけて慎重にしなければなら
なくなっている。そのため、仮処分の訴訟手続化の現象が発生して、従来から仮処分請求手続き
に見られた比較的に簡便な特色が大分暈けている。
■原告側に対して一定の期間以内に起訴することを要求する
本案がまだ提訴されて裁判所に繋属していない場合、裁判所は債務者側の請求によって、
原告に一定の期間内に本案訴訟を提起するよう命じる必要がある。債権者が期限内に提訴しな
ければ、債務者は裁判所に許可された仮処分命令の裁定を取り消すよう要求することが出来る。
(民事訴訟法第 529 条) この本案訴訟の訴訟対象も、よく当事者間で激しく主張が対立する。
特に債務者側が反対担保の供託を申し出て仮処分を免除する動きがある場合、債権者が反対担
保金を裁判所に高額に認定してもらうために、権利侵害による損害を極端に厳重に、すなわち金
額的に極めて高額に主張する場合、その損害を計上する金額がそのまま本案訴訟の請求金額に
(場合によっては原告側の意向に反しても)裁判所によって認定されてしまい、膨大な訴訟費用
の納付を余儀なくされてしまう場合がある。仮処分命令を請求する経過においても、債権者側
が慎重に来るべき本案訴訟の訴訟対象に関して予め把握して、戦略を立てて臨むべきである。
132
4.所用期間、執行条件及び経費;
所用期間 従来の制度では、原告側の申立を受理して、裁判所はほぼ職権に基づく審査を経て、
裁定をもって決定命令を下す段取りとるので、仮処分の申請より 2 週間から 4 週間ほどで普通決
定が下される。
2003 年以降の民事訴訟法改正法施行以来、裁判所が殆ど被告側の意見聴取をするようになり、
被告側の反論や抗弁の内容も一層本訴らしき実体化、法律化、ひいては煩雑化と全面化が進み、
本訴に負けないぐらいの法律訴訟手続き攻防戦が展開する事例が定着化している。そのため、数
ヶ月から一年以上まで審理時間が長期化する傾向が見られてきている。
費用
弁護士費用 弁護士費用は従来の制度では NT 二十万元程度ぐらいかかったが、2003 年民事訴訟
法の改正によって、手続きの長期化と煩雑化に拍車がかかり、出廷の回数が激増する中、弁護士
費用も従ってかさむようになってきている。2004 年現在では一件につき弁護士費用が 50 万元以
上かかってしまうケースが増える。
担保金算定
担保金が原告側が将来確定勝訴の場合、原告に戻される。逆に、仮処分の不当によって取り消
され、或いは原告側が一定期間内に提訴しなかった場合、担保金が被告側が蒙った損害の賠償に
優先的に宛てられる。不当な申立が増えていることに鑑みて、担保金の金額は申立人が一年間受
け得る損失の 2 倍から 3 倍まで大幅に引き上げられた。近年の経験から見れば、仮処分に於ける
担保金の認定に関する裁判官の独断がやや気遣われる。又、被告側の抗告によって、担保金が高
等裁判所の二審裁定で一審の 6000 万元から 2 億元ほどに引き上げられる例もある。
申請する側が供託する担保金の金額は請求金額と被告側がこうむる予想損害の金額によって
浮動する。2003 年以降の新制度では、被告側の意見聴取が定例化してきて、担保金の勘案を巡る
反論も多岐化して、意見の対立にさいなまれる裁判官の苦境が伺われる。ある事例では原告側が
既に 2 億元ほどの担保金を算定して供託の準備を整えたのに、被告側からは数十億元に上る損害
を主張されて、暫く事態が膠着した事例もある。
又、両方当事者ともその傾向はあるが、特に被告側の立場からすれば、かかってきた仮処分の
ために、例え仮処分申立て人に巨額の負担を背負わせたい場合でも、必ずしも自社の営業状態、
販売数字などを仮処分の担保金の算定のために明白に提示したいと思わない。その為、担保金適
正金額の把握は、当事者からの申告に頼ることよりも、規模が大きい法人当事者の場合は特にそ
うだが、経済産業界の名声のある出版物に出た統計数字などをベースに算出することが良くある。
但し一旦担保金が裁判所によって定められた以上、例え債務者側より担保金に対する不服の広
告が提起されても、指定の担保金さえ供託すれば原則上仮処分の裁定の下付を妨げることはない。
仮処分の担保金は被告が仮処分を受けた場合処分が解除されるまで、仮処分が将来無効と確定
になったことを仮設して、被告がこれによって蒙った損害を想定した金額となる。
他方、仮処分の反対担保の供託による取り消しは全く禁止されるものではないが、但しそれ
は被告側に回復しがたい損害が予想される場合に限ると規定されている。その上、たとえ反対担
保の供託を条件にもとの仮処分を取り消すことがあっても、反対担保の金額は、絶対元来原告(仮
処分の申立て人側)の供託した金額をそのまま援用するわけがなく、必ず原告側が(被告の行為を
差し止める旨の)仮処分を取り消された場合蒙り得る損害を想定して計上された金額でなければ
ならない。しかし、近頃では原告が納入した担保金と同等の金額の納付を認めて、仮処分裁定を
取り消した事案が増えている。それも極めて法制度の御用の一環と考えられている。
仮処分の原告側の担保金と被告側の反対担保金の計算基準を必ず峻別すべきである。
仮処分決定後に、30 日以内に処分を受けた債権者側が強制執行の申し立てをしなければ決定が
無効になる。執行の請求に別途執行料金がかかる。(強制執行法第 132 条及び第 28-2 条)非財
産行為又は不作為を強制する仮処分は NT3000 元の執行費用がかかる。仮差押は債権金額の 0.7%
に相当する金額の執行費用がかかる。
133
仮処分の流れ
2003年以降は長期化の傾向
▼
が顕著、平均6ヶ月乃至12ヶ
する(債権
月以上経過。
者)側は仮
処分許可
○
裁判所が仮
の命令送
の要請に応じて本案訴
者が債務者の反論
処分の担保金供
達後三十
訟提起の命令裁定を債
に対して書面など
託金額及び許可
日以内に
権者宛てに出した後七
で再答弁。
の命令を下す
執行の申
日間以内に債権者は提
請を行う
訴すべきである
▼仮処分
債権者の申請及び仮処
分の理由を釈明する
上、担保金の金額を提
申請
▼
示する
申請(債権者)
○
(数回にのぼる)
裁判所が債務者側
▼▲両方当事者への交互陳述の
要請
暫定状態を定める仮処分(必ず
重大な損害を防止するか、急迫
の危険を回避する或いは其の他
類似の状況に応じて、又当該法
▲
債務者側が担
▲
債務者は仮処分の
▲
債務者側は
保金の金額に関し
命令或いは担保金金額
原告に対して本
て反論、書面資料
に対して抗告(裁定送
案訴訟の提起を
の提示も可能。(数
達後20日以内に)を提
要求することが
回)
起できるが、執行の効
出来る。
律関係が本案訴訟で確定できる
力に即時に影響を与え
もの)の申請に関して、裁判所は
ない。
仮処分の正当性に関する判断を
するために、必要に応じて両方
当事者に陳述の機会を与えるこ
とが出来る。(1-2回)
134
資料
刑事手続の流れの概要
刑事
告訴
刑事
起訴
2 ヶ月から
12 ヶ月以上
裁判所より
起訴理由補
充状と答弁
状の交換の
通知(その旨
の通知抜き
で準備法定
を開くこと
もよくある)
約 1 ヶ月間
近年では検察官が
通常被害者からなる
告訴人またはその告
訴代理人(弁護士)を
調査法廷に召喚せず
に、容疑者だけを出頭
させて取調べを執り
行う傾向が強まって
いる。
また、事態の複雑度
合いと証拠の入手状
態によって、案件ごと
の調査法廷の回数と
頻度が極めて異なる
減少が目立つ。
また、検察官に対し
て直接告訴を提起す
るほか、警察官に告訴
を提起する場合は、警
察官の判断で検察官
に送致する前に付随
の調査に取り掛かる
こともあるので、日程
のずれ込みがよくあ
る。
1 回目の
交互尋
問法廷
準備
法廷
3-4 週間
3-4 週間
2 回目の
交互尋
問法廷
3-4 週間
3 回目の
交互尋
問法廷
3-4 週間
最終回
の口頭
弁論
3-4 週間
3 回目交互尋問法廷:
交互尋問制度が 2003
年 9 月以降導入されて
以来、刑事法廷の弁論に
費やされる時間が延び、
検察側と被告側及びそ
の弁護人の負担が急減
に高まってきている。
交互尋問形式の口頭
弁論公判定の回数も案
件によって随分異なり、
2 回で終了場合、5 回以
上まで行われる案件が、
それぞれ多くなってい
る。
準備法廷:交互
尋問制度の導入
に伴って、準備法
廷においては必
ず取り調べるべ
き証拠の列挙と
訴訟争点の整理
と確認を行う。
しかし、当事者
主義辺中政策の
導入によって、告
訴人やその代理
人に対する通知
が省略される。ま
た、たとえ出席で
きても、商人とし
ての供述を除い
て、口頭で意見陳
述するなどの発
言権が。通常与え
られない。一方、
書面で告訴人の
希望尋問事項を
提示することを
認める法廷が増
えている。
135
判決の
言渡し
2-4 週間
資料
民事手続の流れの概要
民事手続の流れの概要
裁判所より起訴理
由補充状と答弁状
の交換の通知(その
旨の通知抜きで準
備法定を開くこと
もよくある)
民事
起訴
約 1 ヶ月間
1 回目の
準備
手続
約 1 ヶ月間
2 回目の
準備
手続
3-4 週間
3 回目の
準備
手続
3-4 週間
3-4 週間
3 回目の準
備手続:
通常 3 回
ほどある
1 回目の準備手続:
地方裁判所では、当事
者に緊張感を与えて証
拠資料を早期に裁判所
に提示させるように、ま
た随時訴訟審理を合法
的に終了できるように、
法廷準備手続を省略し
てすべての手続を口頭
弁論と称することがよ
くある。
高等裁判所における
第二審訴訟の場合は、必
ず準備手続形態の法廷
が 2 回から 5 回ほど開
かれる。最後に口頭弁論
公判廷で締めくくる。そ
のため高等裁判所の第
二審手続のほうが早く
終了でいる。
最高裁判所は書面審
理のみで、6 ヶ月ほどで
判決が下される。
136
4 回目の
準備
手続
5 回目の
準備手続
又は最終
口頭弁論
3-4 週間
2-4 週間
5 回目の準
備手続を
とるのは、
複雑案件
の場合
判決の
言渡し
要請書(知的財産権、証明書、侵害者、
侵害地、侵害物、侵害事実)
地裁刑事法廷
地方検察署
刑事警察機関
行政官庁
(自訴)
(告訴)
(告訴)
(摘発)
捜査開始
事情調査
調査依頼
事件担当指定
検察署に捜査令状請求
(令状の発行は裁判官より)
*(2001.07.01 発効)
開廷審理
判決(第一審)
捜 査
捜 査
押 収
高等法院
(控訴)
検察署に送検
最高法院
捜査終了
(上告)
確定
起 訴
不 起 訴
再議成立
付帯民事訴訟は
民事法廷に移送
地裁に移送
再議(不服申立)
再議不成立
確 定
執 行
137
9-2 仮差押え
9-2-1 仮差押えの要件
権利者が侵害者の侵害行為について損害賠償を主張するに足りる十分な証拠を把握していると
きは、これらの証拠を根拠に侵害者の財産を対象に裁判所に仮差押えの申立をすることができる。
権利者が侵害者の場所に権利侵害に係る商品が保管されていることを知り得たときは直ちに仮差
押えの裁定を申立て、仮差押えの裁定を執行する形で事件の関連模造品を差押えることができる。
仮差押えの執行にあたっては、まず裁判所に仮差押えの裁定の申立をしなければならない。
仮差押えの裁定により、債務者が一定の金額を担保に入れれば、仮差押えが取消されることもあ
る。そうすれば、債務者は権利者の仮差押えを取消すことができ、事件に関連する商品も差押えら
れずにすむ。この意味では、資産の価値と担保金の金額の大きさ及び被告者の資産規模との関係次
第で、仮差押えは仮処分のような効果が期待できない。
また、特許権の侵害に対する刑事罰の廃止と伴って、より効果的に第三者の侵害行為を牽制する
のにやはり先に仮処分を掛ける必要が切実になりつつある。一方、2003年の民事訴訟法の改正によ
って、仮処分が原告申告主義から両方当事者進行主義に切り替わったので、仮処分の迅速性も著し
く低下してきた。また、例仮処分を合法に提起できて許可を得た場合でも、何れ本訴の提起が必要
なので、そのためには、実体権利の有効な確保が絶対不可欠な要素であることは変わらない原則で
ある。
2004年以降では、長期化しつつ仮処分の代わりに、特許侵害の容疑者側の製造設備などの資産を
損害賠償金の担保として仮差し押さえを加える手法が多用されるようになってきた。特に中小企業
の被告にとって、抵当など担保権つきの製造機材や重要資産が押収されると、銀行に対する融資信
用が破綻して銀行から取引拒否を受けることになり兼ねなく、絶大なインパクトがあるので、即効
を相当期待できる。又特許侵害の実体面の審理を一切行わないし、担保金の金額も押収される資産
の時価の二分の一乃至三分の一程度で収まるので、原告側にとっては実に便宜的なプロセスである。
ただ侵害に関する技術上の実体鑑定をすべて先送りして経済的な打撃を即時に与えるこのやり方
は、権利の乱用に流れる傾向も見受けられるので、何れ裁判所の対応が慎重に或いは消極的に変わ
るかもしれない。
一方、台湾の現地企業も次第に特許紛争事件への対応方法を心得てきている。特許侵害の警告や
提訴を受けるや、一気に複数の無効審判を権利者の特許に対して提起して強気に反撃をかけるケー
スが増える。その際権利者の特許権の有効性があらゆる観点から検証され、改めて特許出願時期の
先行技術への切抜けから翻訳の性格度までの追求の重要性を痛感する。
中小企業の被告はよく資産を家族の名義に変更などして資産隠蔽を図るが、早急に資産を凍結で
きれば、膨大な損害賠償責任で再犯防止と業界に見せしめの効果を計れる。
仮差押えはつまり金銭的請求又は金銭的請求になり得るものを保全する強制執行であり、
(付帯)
民事損害賠償訴訟を提起するかどうかを決めるにあたって、まず被告の財産状況を調査し、賠償金
の支払いに十分の財力があるかどうかを確認するとともに、差押えに供する財産の価値をも評価す
べきである。訴訟係属前か訴訟係属中を問わず、仮差押えの執行は申立により始まる。その要件は
次の通りである。
1. 合法条件
(1)管轄裁判所に申し立てる。事件の管轄裁判所、及び仮差押えの対象の所在地にある地方法
院(地裁)、両方とも管轄権を有する。
(2)手続に従うこと。請求と仮処分の原因について釈明しなければならないことに注意する。
債権者は前記釈明をしていないが、債務者が受け得る損害について既に裁判所が決めた担
保を提供したときは、仮処分の命令を妨げない。
2. 前提条件
(1)強制執行の対象となる金銭的請求又は金銭的請求になり得るものを保全するための請求が
ある。
(2)後日強制執行ができず、又は執行が難しい虞がある。
3.所用期間、執行条件及び経費
所用期間 従来の制度では、原告側の申立を受理して、裁判所はほぼ職権に基づく審査を経
て、裁定を以って決定命令を下す段取りとるので、仮処分の申請より 3 乃至 4 週間ほどで普通決
定が下される。仮処分制度と対照して、被告の財産隠匿の懸念があるので、仮差押の管轄裁判所
は被告側の意見聴取をしないまま原告の主張と釈明に基づいて審理して、3 週間ほどまでの期間
内で裁定を下すのが普通。
138
費用
弁護士費用 弁護士費用は従来の制度では NT$20 万元程度ぐらいかかったが、2003 年民事訴訟
法の改正によって、手続きの長期化と煩雑化に拍車がかかり、出廷の回数が激増する中、弁護士
費用も従ってかさむようになってきている。2004 年現在では一件につきおよそ NT$40 万元から
50 万元ほどの弁護士費用を見積もる。
仮差押さえ決定後に、30 日以内に処分を受けた債権者側が強制執行の申し立てをしなければ決
定が無効になる。執行の請求に別途執行料金がかかる。(強制執行法第 132 条及び第 28-2 条)
9-2-2 仮差押えの担保金
申請する側が供託する担保金の金額は請求金額と被告側がこうむる予想損害の金額によって浮
動する。仮処分の担保金は被告が仮処分を受けた場合処分が解除されるまで、仮処分が将来無効
と確定になったことを仮設して、被告がこれによって蒙った損害を想定した金額となる。
申立から裁判所の裁定下付まで、通常約 3、4 週間がかかる。仮差押えは権利侵害の容疑者には
損害賠償と弁護士費用の支払いに十分な財産があることを確保する手続である。もし、被告が受
け得る損害について既に担保金を供託したのであれば、請求及び仮差押えの原因についての釈明
は免除されることになる。請求及び仮差押えの原因は釈明されたとはいえ、裁判所はなお債権者
に担保を提供させることができる。したがって、仮差押えの裁定を請求するに前に、通常担保金
を預けなければならない。
担保金の金額は原則として執行名義となる債権の金額の二分の一乃至三分の一を基準とする。
また、差押えられた動産の価値が極めて高い場合には、裁判所は請求の対象を考慮して担保金の
額を引き上げることもある。担保に供するものは現金のほか、裁判所の許可のもとに有価証券な
いし定期預金をもって現金に代わることもできる。
他方、仮差押さえの反対担保の供託によって原則上仮差押はとりけされるのでこの意味では、
資産の価値と担保金の金額の大きさ及び被告者の資産規模との関係次第で、仮差押えは仮処分の
ような効果が期待できない。
仮処分決定後に、30 日以内に処分を受けた債権者側が強制執行の申し立てをしなければ決定が
無効になる。執行の請求に別途執行料金がかかる。(強制執行法第 132 条及び第 28-2 条)
【関連規定】
特許法の定めるところにより、他人の特許権を侵害するために使用されるもの又はその侵害行為
により生じるものについて、被害者の請求により仮差押えを執り行い、賠償すべき旨の判決が下さ
れた後、それを賠償金の一部に当てることができる。これにより、模造品及びその生産設備も最後
の剰余価値を発揮することができる。ただ、一つ注意すべきなのは、模造品のような流通を禁止さ
れているものを販売したり、金銭と引き換えたりすることができないということである。原則とし
て模造品は没収しなければならない(刑法第 38 条)。
9-3 証拠の保全
相手方の侵害を裏付ける証拠を取得することが困難な事件で、裁判所に証拠保全の申立をすること
が考えられる。例えば、製法特許に関連する事件で、相手方が果たして権利者の方法特許の内容を使
用しているかどうかを取得することができない場合(民事訴訟法第 368 条)。
証拠保全の申立が成功するかどうかの重要なカギは、証拠が滅失する虞、又は使用困難の虞がある
ことを釈明することにある。
証拠保全は基礎の前より管轄裁判所に対して申し立てることが出来る。しかし、通常では裁判所は
証拠保全の申立に対する対応が極めて慎重で、申し立て人が主張する事実をある程度証明できる具体
的な証拠がなければ、公権力に基づく証拠の提示させる命令を下すことを避けている。そのため、証
拠保全の申立の実質的な異議が限られている。
9-4 証拠保全手続きの利用と証拠方法の合法性
9-4-1 証拠保全手続き
■ 当事者の申請によって下される証拠保全裁定
証拠保全を許可する裁定に対しては、不服を申し立てることができない。逆に、証拠保全を却下する
裁定に対しては控訴できる。(民事訴訟法第 371 条)
■ 裁判所の職権に基づく証拠保全
裁判所が必要を認めたとき、事件の継続中に職権に基づく証拠保全の裁定を下すことができる。(民
事訴訟法第 372 条)
139
■ 証拠保全裁定の効果とフォロー
▲裁定の内容と訴の効果
現行法の証拠保全は、継続中の訴訟事件の進行のためのみならず、係争される法律事実などに関し
て当事者らがある程度把握して提訴する必要性などを検討するための訴訟前の準備手続きとしての機
能も兼ね合わせているので、従来の実務運営より適用の範囲が多少緩められたと思われる。
▲フォロー
証拠保全手続きが終了して三十日経過した後、本案が尚提訴されていない場合、裁判所は利害関係者
の申請によって、裁定で以って証拠保全命令でなされた文書や物件に対する留置の処分又はその他の
適切な処置を解除することができる。(民事訴訟法第 376 ノ 2 条)又、前記の期限を越えた後に、裁
判所は利害関係人の申請によって、証拠保全手続きの申請人に必要な手続きにかかる費用を負担する
命令を下すことができる。(民事訴訟法第 376 ノ 2 条)
9-4-2 証拠保全手続きの今後の傾向
従来では裁判所は証拠保全の申立に対する対応が極めて慎重で、申し立て人が主張する事実をある
程度証明できる具体的な証拠がなければ、公権力に基づく証拠の提示させる命令を下すことを避けて
いた。そのため、証拠保全の申立の実質的な意味が限られていた。しかし、法改正に合わせて 2005 年
現在では、裁判所側の見解がだいぶ緩和されて、係争事件の筋を立てるべく不明瞭な法律事実を把握
するために、最低限の証拠物の保全や証拠調査など行う必要が具申された場合、証拠保全の実益を認
めて裁定を下すケースが急増している。 特許侵害事件に於いてもっとも肝心で困難な証拠入手の問
題を、証拠保全手続きである程度対処できると期待されている。
10 公平会への摘発
公平取引法第 20 条、第 24 条に違反する模倣事件、例えば他人の所有する有名なアニメのキャラクター
を立体的な人形(キャラクター商品)に作り上げ、又は他人のトレードドレスをコピーする行為が商標、
特許、著作権法の規制を受けない事件について、公平取引法による摘発が考えられる。1999 年改正され
た公平取引法第 35 条により、第 20 条の規定に違反した者は、公平取引委員会に是正を命じられても、
なお法により是正しない場合においてのみ刑事責任を問われる。違法者に対する威嚇効果があまり期待
できないことから、被告を裁く法律がほかにない場合にのみ公平会に摘発する。
摘発が提出されてから、最も速くて公平会は八ヶ月ほど後に結論を出す。
■実務課題に対応する新たな法改正の議論(200602)
商標保護に関する適用法の競合問題について、公平交易委員会(日本の公正取引委員会に相当。通称
「公平会」)と知的財産局が協議した結果、それぞれ公平交易法(日本の独占禁止法と不正競争防止法に
相当。通称「公平法」)と商標法の改正案を提出することで合意したことが明らかにされた。国際的規範
に合致するように、商標権侵害に関しては商標法に立ち返って定めるべきであるとして、公平法におけ
る商標に関する保護規定を削除するほか、未登録著名商標を新たに商標法が保護する対象に加えいれ、
公平法、商標法の競合による適用法の不明確性を解消する。2006年1月頃、IPOは公平取引委員会と協議
を試みて、法改正の必要性と具体的なアプローチについてヒアリングを開いた。
商標やトレードドレスなどといった識別機能をもつ知的財産への保護においては、公平法は商標法の
不足を補う位置付けにあるとされている。登録済み著名商標が商標法によって保護されているにもかか
わらず、公平法第20条は「関連事業者若しくは消費者の間で広く認識されている表示」について、
「商標」
等を列挙している。
商標法では、商標を、文字、図形、記号、色彩、音声、立体的形状であるかこれらの結合からなり、
消費者が商品(役務)の出所を示す標識として認識し、他人の商品、役務と識別できるものと定義して
いる。一方、公平法第20条は、関連事業者若しくは消費者によって広く認識されている他人の氏名、商
号若しくは会社名称、商標、商品の容器、包装の外観その他他人の商品を示す表示を規定している。
実務上、商品表示等が類似し、消費者に混同誤認を生じさせたことにより、公平法違反とされる行為
に対して科される処罰は、商標法のそれよりも厳しい、というのが本末転倒であるとかねてから指摘さ
れている。商標権を侵害された場合、商標法より、公平取引法のほうが実効的な救済を受けられるとい
う印象を権利者に与えているだけでなく、制裁手段が不条理になり、本来ならば司法事件として扱われ
るべき商標権侵害への度を過ぎた行政権の介入というおかしな現象を生み出している。そのため、商標
法と公平取引法の内容が相互に協調できるようにそれぞれ改正する余地があると見られている。同結論
に基づいて、知的財産局と公平取引法が法改正の素案の作成に向かって取り組んでいる。
140
知的財産権保護に関連する特許、商標と特許の侵害容疑者に対する警告状の送付を巡るガイ
ドラインが実務運用の実態に合わせて改定された。又、公平取引法第20条と第24条の運用に関
するガイドラインも頒布された。
著作権、商標権及び特許権の侵害に関わる
警告状の送付に関連する事件の処理原則
20050916 改正
1
目的
事業の公平競争を確保し、取引の秩序を維持し、また事業が著作権、商標権或いは特許権
を濫用し、不当に競争相手が著作権、商標権或いは特許権等を侵害する旨の啓告上を外部へ
送付する紛争事件を有効に処理するために、本処理原則を制定する。
2
用語定義
本処理原則が称する警告状の送付は、事業が下記の方式を用いて、それ自身或いは他の事
業の取引相手もしくは潜在的な取引相手に対して、特定の競争相手を指名して同人が前掲事
業自身が所有する著作権、商標権或いは特許権を侵害する旨の消息を頒布する行為を指す。
1,警告状;
2,敬告状;
3,弁護士状;
4,公開状;
5,新聞広告;
6,其の他の事業自身或いは他の事業の取引相手もしくは潜在的な取引相手に対して知らせ
得る方式。
3
著作権、商標権或いは特許権を行使する正当行為の例ーその 1
事業が下記の手続きの何れを実践し権利侵害を確認した後に、警告状を送付する場合、其
の行為は著作権法、商標法或いは特許法による権利行使の正当な行為とされる。
1、裁判所の一審判決を経て著作権、商標権或いは特許権の侵害を確認できるもの。
2、著作権審議会及び調解委員会を経て著作権侵害の事実が確認されたもの。
3、著作権、商標権或いは特許権を侵害し得る容疑対象物を、鑑定専門機構に送付し、鑑定
報告書を作成してもらった上に、かつ警告状の送付に先だって侵害容疑の製造者、輸入者或い
は代理商社に対して通知をし、侵害の排除を要請したもの。
事業が前項第 2 号の後半に掲げられる侵害廃除の通知を実践しないときでも、事前に権利
救済手続を取った、或いは合理的な可能な範囲内の注意義務を尽くした場合、もしくは前項
の通知が客観上不可能な場合、又は具体的な根拠に基づいて告知を受けるべき者は既に権利
侵害紛争の事情を知得している場合、権利行使の正当な行為とみなすことが出来る。
4
著作権、商標権或いは特許権を行使する正当行為の例ーその 2
事業が下記の手続きのいずれを実践したのち、始めて警告状を送付する場合、かつ第 6 点か
ら第 9 点の違法事情が存在しない場合、其の行為は著作権法、商標法或いは特許法による権利
行使の正当な行為とされる。
1、警告状の送付に先だって侵害容疑の製造者、輸入者或いは代理商社に対して通知をし、侵
害の排除を要請したもの。
2、警告状において、受信者が係争権利が侵害を受ける可能性を知得できるように、其の著
作権、商標権或いは特許権の明確な内容、権利範囲及び侵害される具体的な事実につき明瞭な
説明を付したもの。(例えば係争権利又は技術の成立時、成立地、如何に先方側の製造、使
用、販売又は輸入行為によって侵害されていること)
事業が前項第 2 号の後半に掲げられる侵害廃除の通知を実践しないときでも、合理的な可
能な範囲内の注意義務を尽くした場合、もしくは前項の通知が客観上不可能な場合、権利行
使の正当な行為とみなすことが出来る。
5
第 3 点と第 4 点を実践せずに警告状を送付する状況に関する処理
事業が第 3 点或いは第 4 点の手続きを実践せずに、直に警告状を送付した者に対しては、
其の行為が取引の秩序に影響を与えるに足りるが、明らかに公平を欠く場合かを究明した上、
公平取引法第 24 条の規定に違反するとされる。直ちに本委員会が処分を作成する前に、事業
が裁判所の第一審判決を提示し、(警告状の主張の正当性を)証明するものについては、其の
141
限りでない。
6
公平取引法第 19 条が規定した違法構成要件
事業が第 4 点の規定に従った場合でも、送付された警告状が特定の競争相手を損害するこ
とを目的とし、競争相手の取引相手に同競争相手と特定の交易を拒否するよう勧誘する内容
を含む時、其れが競争を制限する又は公平競争を妨害する恐れを有する場合、公平取引法第
19 条第 1 号の規定に違反するとされる。
前項の行為に従事する事業が、競争者の取引相手に自分と取引を行うように勧誘し、其れ
が競争を制限する又は公平競争を妨害する恐れを有する場合、公平取引法第 19 条第 3 号の規
定に違反するとされる。
7
公平取引法第 21 条が規定した違法構成要件
事業が第 4 点の規定に従った場合でも、送付された警告状が警告状の名義人自信の商品又
は服務に関して、虚偽不実或いは他人を誤解させる陳述を含む場合、公平取引法第 21 条の規
定に違反するとされる。
8
公平取引法第 22 条が規定した違法構成要件
事業が第 4 点の規定に従った場合でも、送付された警告状が競争の損害を目的とし、競争
相手の営業信用と名誉を毀損するに足りる虚偽事情の陳述がある場合、公平取引法第 22 条の
規定に違反するとされる。
9
公平取引法第 24 条が規定した違法構成要件
事業が第 4 点の規定に従った場合でも、送付された警告状が下記のいずれの状況に該当し、
それが交易の秩序に影響を与えるに足りる場合は、公平取引法第 24 条に違反するとされる:
1、警告状の名義人が合法の著作権、商標権或いは特許権を持っていない場合;
2、著作権、商標権或いは特許権の権利範囲を誇示又は拡張する場合;
3、虚偽の陳述をもって、特定の競争相手又は漠然と示唆される市場における他の競争者が警
告状の送付主の著作権、商標権或いは特許権を侵害することを暗示すること;
4、その他第三者を欺瞞するあるいは著しく公平を失する陳述の内容を含む場合。
10
不当に異業種事業に対して権利侵害の主張を公表する事案に対する本規定の適用
事業が異業種の事業に対して、自身の著作権、商標権或いは特許権が侵害される旨の警告状
を不当に公表し、従って不公平競争の事情を醸成する場合に於いても、本規定の適用を受け
られる。
行政院公平交易委員会の公平交易法第 20 条案件に関する処理原則
83.7.6.第 143 回委員会議通過
87.7.8.第 348 回委員会議修正第 10 点通過
88.3.17.第 384 回委員会議修正第 2,3,4,5,7
,10(1)(2)(3)(4)(5),11(1),12(1),13,14,15,17,19 点通過
88.3.20(88)公参字第 00782 号書簡
94.1.13.第 688 回委員会議通過
94.2.24.公法字第 0940001293 号令公布
一、 目的
行政院公平交易委員会(以下、本会)は、事業者間の公平な競争を確保し、消費者の権
益を保障し、公平交易法(以下、本法)第20条に定める模倣事件を効果的に処理する
ため、特に本処理原則を制定する。
二、 名詞釈義一
本法第 20 条においていう関係事業者又は消費者とは、当該商品又は役務に関して販売・購入等
取引関係が発生する可能性のある者をいう。
三、 名詞釈義二
本法第 20 条においていう関係事業者又は消費者の間で広く認識されているとは、相当な知名度
142
を持っていて、関係事業者又は消費者の多くに周知されていることをいう。
四、 名詞釈義三
本法第 20 条においていう表示とは、識別性又はセカンダリー・ミーニングを有する特徴であっ
て、商品又は役務の出所を示し、関係事業者又は消費者がそれによって異なる商品又は役務である
ことを区別することのできるものをいう。
前項の識別性とは、ある特徴が特別に顕著で、関係事業者又は消費者がそれを見れば、その
特徴が表す商品又は役務は特定の事業者によって製造(生産)又は提供されるものであると認
識することのできるものをいう。
第 1 項のセカンダリー・ミーニングとは、本来、識別性を有しない特徴が長期的に継続して使用
されていたことにより、関係事業者又は消費者の間で知られるようになり、彼らはその特徴から商
品又は役務の出所を連想することができ、これによりその特徴に持たせた商品又は役務の出所を区
別することのできるもう一つの意味合いのことをいう。
五、 名詞釈義四
本法第 20 条にいう同一又は類似の使用について、同一とは文字、図形、記号、商品の容器、包
装、形状若しくはその組み合わせの外観、排列、カラー設定が完全に同一であることをいい、類似
とは、主要部分を襲用して関係事業者又は消費者が購入するときに普通の注意を払っても混同誤認
の虞のあるものをいう。
六、 名詞釈義五
本法第 20 条においていう混同誤認とは、商品又は役務の出所につき誤認、誤信があることをい
う。
七、 表示の判断要素
本法第 20 条においていう表示とは、次に掲げる場合のいずれかに該当するものをいう。
(一)文字、図形、記号、商品の容器、包装、形状、又はその組み合わせが特別に顕著で、関係事
業者又は消費者がそれによって商品又は役務を表す標識と認識するに足り、他人の商品又は
役務と区別がつくもの。
(二)文字、図形、記号、商品の容器、包装、形状、又はその組み合わせ自体は特別に顕著ではな
いが、相当の時間にわたって使用されていたことにより、関係事業者又は消費者が認識する
に足り、またこれを商品又は役務の出所と連想することのできるもの。
八、 表示の例示
次に掲げる各号は本法第 20 条でいう表示に該当する。
(一)氏名。
(二)商号又は会社名称。
(三)商標。
(四)標章。
(五)特別に設計され、識別性を持つ商品の容器、包装、外観。
(六)本来、識別性を持たない商品の容器、包装、外観が長期間にわたって継続して使用されていたこ
とにより、セカンダリー・ミーニングを持たせるようになったもの。
九、 表示に該当しないものの例示
次の各号は商品又は出所を表す機能がないため、本法第 20 条でいう表示に該当しない。
(一)商品について慣用されている形状、容器、包装。
(二)商品に関する説明文字、内容又は色彩。
(三)実用的又は技術的機能を有する形状。
(四)商品の内部構造。
(五)営業又は役務の慣用名称。
十、関係事業者又は消費者の間で広く認識されているかの判断要素。
表示が関係事業者又は消費者の間で広く認識されているかどうかを判断するには、次の事項を総
合的に勘案しなければならない。
143
(一)当該表示を売り物にする広告の量が、関係事業者又は消費者に当該表示に対する印象を生じ
させるに足りるか。
(二)当該表示を有する商品又は役務が市場に於いて販売された時間が、関係事業者又は消費者に
当該表示に対する印象を生じさせるに足りるか。
(三)当該表示を有する商品又は役務の市場に於ける販売量が、関係事業者又は消費者に当該表示
に対する印象を生じさせるに足りるか。
(四)当該表示を有する商品又は役務の市場占有率が、関係事業者又は消費者に当該表示に対する
印象を生じさせるに足りるか。
(五)当該表示を有する商品又は役務が媒体の広範な報道を経て、関係事業者又は消費者に当該表
示に対する印象を生じさせるに足りるか。
(六)当該表示を有する商品又は役務の品質及びその評判。
(七)当事者が当該表示に係る商品又は役務について、科学的、公正的、かつ客観的な市場調査資
料を提供している。
(八)関連主務官庁の意見。
前項第七号の当事者が提供した市場調査資料を勘案するときは、本会第 322 回委員会会議を通過し、
また第 347 回会議で修正・可決された「行政院公平交易委員会による当事者提供市場調査報告に関
する評価要項」を適用して処理する。
第一項に列挙された考慮事項は、その他の関連事項を参照して総合的に勘案しなければならない。
十一、混同誤認の判断要素
第 20 条においていう混同誤認を引き起こすか否かを判断するには、次に掲げる事項を勘案しな
ければならない。
(一)普通の知識経験を有する関係事業者又は消費者の注意力の程度。
(二)商品又は役務の特性、差異化、価格等が注意力に対する影響。
(三)表示の知名度、企業規模及び企業イメージ。
(四)表示には独特の創意が見られるか否か。
十二、判断原則
表示の同一又は類似の使用であるか否かを勘案するには、客観的事実に基づき、次の原則によ
りこれを判断する:
(一)普通の知識経験を有する関係事業者又は消費者が普通の注意を払うことを原則とする。
(二)全体観察及び主要部分(要部)比較の原則。
(三)時と場所を異にして隔離的観察をする原則。
十三、認定手続き
表示が関係事業者又は消費者の間で広く認識されているか、同一又は類似の使用か否か、又は
混同誤認を生じる否かについては、次の手続きによってこれを認定する:
(一)本会委員会議により認定する。
(二)相当な争議があって判断し難いものは、公聴会或は座談会を開催することができる。学者・
専門家、業者代表、消費者代表、関連産業組合及び機関の意見を諮問し、本会認定の参考に
供することができる。
(三)影響が重大でかつ相当な争議があって、判断し難いものは、公正・客観的な団体、学術機
構に委託して、アンケート調査で一般大衆又は関連取引相手の意見を聴取することができる。
十四、会社名称
二の会社名称の中に異なる業務種類が明記されているものは、その会社名称は本法第 20 条で
いう同一又は類似の使用に該当しない。
普通の使用方法を以って、会社法により登記した会社名称を使用する場合、関係事業者又は消
費者に広く認識されている他人の営業と混同誤認を生じさせるような積極的行為がないときは、
本法第 20 条の規定に違反しない。
十五、商号名称
普通の使用方法を以って、商業登記法により登記した商号名称を使用する場合、関係事業者又
は消費者に広く認識されている他人の営業と混同誤認を生じさせるような積極的行為がないと
きは、本法第20条の規定に違反しない。
十六、本法第 20 条と第 24 条規定の適用原則
次の各号に掲げる場合が本法第 20 条規定の構成要件に該当しないときは、第 24 条規定違反に
よってこれを処理することができる。
(一)他人の著名な商品又は役務の表示を襲用し、混同誤認を生じさせるようなことがないと謂
144
えども、積極的に他人の商誉に便乗することがある場合。
(二)他人の商品又は役務の外観を模倣し、積極的に他人の努力成果を搾取し、競争者に対して
著しく公正さを欠き、取引秩序に影響するに足りる場合。
前項の場合は、商品の外観が公衆の自由に利用できる技術であるものについては適用しない。
十七、既往に遡及しない原則
公平交易法施行前に、すでに多数の関連業者によって共同使用されている商品の容器、包装、
外観その他の表示であって、関係事業者又は消費者がその容器、標示の外観からその出所を区別
することができないときは、ある特定の事業者から最も先に使用したとの主張があった場合でも、
他人の使用を排除することができない。
十八、告発方式
他の事業者による本法第 20 条規定違反を告発するものは、書面をもって具体的な内容、真実の氏
名及び住所を明記させなければならない。口頭でこれを行うときは、本会が書面記録を作成し、
そこに告発者が署名又は押印する。
告発は、真実の氏名、住所、署名(押印)又は具体的な内容がないときは、これを処理しない
ことができる。但し明らかに公共利益を侵害する虞があるときは、公平な競争及び消費者の利益
を確保するため、職権によりこれを調査・処理することができる。
十九、告発者による事実証拠の提供
他の事業者による本法第 20 条違反を摘発するものは、関連商品又は役務の表示が関係事業者又は
消費者に広く認識されていることについての証拠、及び他の事業者が違法に関わっている具体的
な事実や証拠を提供しなければならない。
前項によって関連資料を提供しないものは、書面を以て相当の期限内に提供するよう通知する。
期限を超過しても提供しないときは、その告発に具体的内容がないものと見なす。
二十、不受理案件の処理手順
次に掲げる場合のいずれかに該当するときは、業務部門が意見を付けて、当番の委員に移送して
審査を行い、長官の認可を経た後、ファイルに保管し(ファイリング)、又は回答書簡を出して
案件を終了し、並びに定期的にまとめて委員会議に報告する。
(一) 告発事件が本処理原則により処理しないことができる場合。
(二) 告発には具体的な内容がない場合。
(三) 告発事項が単に双方当事者の紛争に関するもので、而も双方当事者がすでに和解した
場合、又は告発者が告発を撤回した場合。
二十一、被告発事業者が意見を陳述する機会
本会が事業者に対して処分を為す前に意見陳述の機会を与えなければならない。但し、本会が
期間を限定し、事業者に出頭して意見陳述し、又は書面を提出して説明することを通知した後、
期限を超過しても出頭せず、又は書面による説明を提出しない場合は、この限りでない。
行政院公平交易委員会の公平交易法第 24 条案件に対する処理原則
82.12.29 第 117 次委員会議通過
90.12.20 第 528 次委員会議通過
91.1.9 公法字第 0910000252 号書簡分行
94.1.13 第 688 次委員会議通過
94.2.24 公法字第 0940001299 号令発布
一、(目的)
公平交易法第 24 条(以下、本条)は概括性規定であることに鑑みてその適用の具体化、明確化を
期するため、特に本処理原則を制定する。
二、(公平交易法第 24 条適用の基本精神)
本条と民法、消費者保護法等その他法律の関連規定との別を明確にするため、
「取引
秩序に影響するに足りる」の要件をもって、公平交易法又は本条に適用するかの選別
の準拠と為すべきである。即ち係争行為において市場取引秩序に影響を生じるに足り
るとき、始めて本会は本条の規定によって当該案件を受付けるが、もしも「取引秩序
に影響するに足りる」の要件に合致しないものは民法、消費者保護法或はその他法律
145
をもって救済を要請することを促すということである。
本条の適用範囲を確定するため、
「取引秩序に影響するに足りる」の要件をもって前提と為すべきである。
先に「競争制限」の規範(独占、結合、連合行為及び垂直競争制限)を検証し、次に「不公平競争」
の規範(例えば、商業模倣、不実広告、営業誹謗)を検証する。前記の特別規定が係争行為の不法内
容を十分に規範できない場合に限って、本条適用の余地が有る。よって、本条を以て公平交易法のそ
の他条文の適用と区別することはただ「補充原則」関係の適用が有るわけで、本条は単に公平交易法
のその他条文規定に包攝されない行為においてのみ適用する。もし公平交易法のその他の条文規定が
某違法行為に対して既にこれを十分に論述しているとき、即ち当該個別規定がすでに当該行為の不法
性を十分に評価している、或いは当該規定が当該行為の不法の内容を補充に規定した場合、当該行為
についてはただ当該個別条文規定を構成するか又は構成しないかの問題が有るのみで、更に本条で以
って規範を補充する余地はないのである。これに反して、もし当該個別条文規定では十分に当該違法
行為を評価し切れない時に始めて本条を以て補充規範を加える余地が有るのである。
「消費者権益の保護」に関しては、係争事業者がその相対的優勢の地位をもって、「欺罔」または
「著しく公正さを欠く」販売手段を利用して消費者権益が損害を受けるに至り、「取引秩序を影響
するに足りる」の要件に合致するかを検視して本条規定に適用するかを判断する準拠とする。
三、(その他法律との競合を明確にする。)
本条が事業者に対する規範は、常にその他法律との競合の疑義が有るので左記事項を考慮してこれ
を判断すべきである。
(一)元々事業者と事業者或は消費者との間の契約約定は、自由意志に基づいて締結した取引条件
である。その内容が明らかに不公平か否か、又は事後に約定に依って履行したか否かを問わ
ず、この契約行為は契約法を以ってこれを規範する。係争行為が競争秩序又は市場取引秩序
に危害を及ぼすときにおいて、始めて例外的に本条の適用がある。例えば契約内容に著しく
公正さを欠く部分があっても、若しもそれが「取引秩序に影響するに足りる」の要件に合致
しない場合、民事方法によって救済・解決すべきである。前記要件に合致し、公共利益を考
慮するときにのみ、始めて本条が介入してこれを規範する。
(二)消費者権益の保護は元々公平交易法第 1 条に明定された立法の目的ではあるが、両者の保護
法益の重点を区別するため、本条が消費者権益に対する介入には、「取引秩序に影響するに
足りる」との要件に合致し、かつ公共利益性質を有する行為を限りとする。例えば、業者が
消費者に対して相対的に市場優勢の地位に在る場合、或いは(問題となる一方的なメーカー
優勢現象は)当該業種において普遍的な現象として見られている場合、消費者がサプライヤ
ーに高度に依頼する或いは選択の余地がない等々のために損害を受けた情況に限られるべき
である。
(三)知的財産権者がその知的財産権を侵害する虞がある者に対しては、知的財産権関連法律によっ
て自ら侵害者に通知し、その侵害の排除を請求することができる。但し、確認及び先行通知
の手順を履行する前に、直接その競争相手の販売ルート又は消費者(取引相対人又は潜在的
な取引相対人)に対して、口頭或いは書面をもって、相手方がその権利を侵害したとの表明
を為し、しかも受信者が合理的に知的財産権の濫用により不公正競争の真偽を判断する根拠
を示されていない場合は引き起したことに属するので、これには本条の適用がある。これは
つまり、公平交易法が知的財産権の口頭或は書面警告行為に介入するのは、その権利の非正
当行使が不公正競争を引き起すことを前提としている。又それが公平交易法に違反したか否
かの判断は、ただその形式上の権利行使の正当手順を践行したか否かを以って為せば、足りる
のである。実体上の権利侵害の事実認定迄には及ばない。
四、(公平交易法其他条項規定との区別適用)
本条の規定を適用するには、「補充原則」に符合しなければならない。即ち、本条は公平交易
法のその他の条文が言及していない行為に対してのみ適用する。若しも公平交易法のその他
条文の規定が某違法行為に対して既に包攝し尽した場合、即ち当該個別条文の規定で当該行
為の不法性を充分に評価でき、又は当該個別条文の規定がすでに十分当該行為の不法性を規
制する場合、当該行為はただ当該個別条文の規定を構成するか或は構成しないかの問題しか
なく、別段本条によって規範を補充する余地はないのである。当該個別条文の規定が当該違
法行為の評価規範と為し得ないときにのみ、始めて本条をもって規範を補充する余地がある
のである。
五、(取引秩序に影響するに足りるのかの判断において考慮すべき事項)
本条で称する取引秩序とは、善良風習の社会倫理及び効能競争の商業競争倫理に符合する取引行為
をいう。その具体的な内容は、社会倫理及び自由、公平競争精神がこれを依拠にして維持できる所
146
の取引秩序なのである。
「取引秩序に影響するに足りる」を判断する時、全体の取引秩序に影響するに足りるかを考察する
(例えば、被害者人数の多寡、引起した損害の量及び程度、その他事業者に対して警戒効果がある
か、及び特定の団体や集団に対する欺罔または著しく公正さを欠く行為であるか、等事項)或いは
将来潜在的な多数の被害者に影響を及ぼす効果がある案件であることを
確認する。又、取引秩
序に対する影響は既に発生した事案には限られないのである。尚単一の個別的非経常性の取引紛糾
に関しては、民事救済を求めるべきであり、本条の規定には適用しない。
六、(欺罔の判断において考慮すべき事項)
本条で称する欺罔とは、取引相対人に対して、重要な情報について積極的欺瞞又は消極的な隠匿に
よって人を錯誤に導く方式で取引に従事することをいう。
前項で称する重要な取引情報とは取引決定に影響するに足りる重要な取引情報を指す。所謂人を錯
誤に導くとは、客観上一般大衆の誤認を引起すか否か、或いは取引相手が騙される合理的な確率(可
能性さえあれば、任意ではない)があるかをもって判断の基準とする。同時に、取引相手の判断能
力を考量する基準は「合理的判断」とすべきである。(極端に低い注意程度を以って判断基準とは
しない)。そのよく見られる類型は左記の如くである。
(一)
信頼力ある主体と冒称する或いはそれに依付して便乗する。
(二)
不実な販売促進手段
(三)
重要取引情報を隠匿する
七、(著しく公正さを欠くかの判断において考慮すべき事項)
本条で称される「著しく公正さを欠く」とは、「著しく公正さを欠く方法で競争或いは商業取引を
行う」者をいう。
そのよく見られる主要な内容は三つの類型に分けられる。
(一)商業競争倫理に背く不公正競争行為
1.
他人の努力成果を榨取する
違法の如何を判断する時、原則上次のことを考察すべきである、(一)或いは高度剽窃
された標的は、当該事業者が既に相当程度の努力を投入したもので、市場において一定
の経済利益を有し、而もそれが係争行為によって搾取されたもの(二)その冒称または
剽窃の結果が、取引相対人をして両者が同一の来源、同系列の産品或は関係企業である
と誤認させるに至る等効果がなければならない。しかし、その採用手段の非難性が非常
に高い(例えば完全一致の剽窃)ものは、たとえ前述二要素の情況には属さないけれど
も、やはり違法の虞があり、具体的ケースの実際情況によって、これを総合判断する。
その常に見られる様態は左記の通り:
(1)他人の商誉に依付便乗する
本条の保護する商誉であるかを判断するには、当該ブランドが市場において相当の
知名度を有するか、且つ市場の関係事業者或は消費者が一定の品質の連想を生じる
かを考察すべきである。
(2)高度剽窃
高度剽窃を判断するには、次のことを総合考察する:(一)当該剽窃は「完全一致」
に達したか、或は「高度近似」の程度であるか、(二)剽窃者が払った努力や投資
対価とそれと引き換えに得られた競争優勢又は利益との関連性および相当性、及び
(三)剽窃される対象の市場競争における独特性及び占有状態。
(3)他人の努力を利用して、自己の商品または役務を推展する行為。
2. 競争相手を損害する目的で、公正競争を阻害する行為
その常に見られる類型は次の通り:
(1)不当の比較広告:
比較広告の中に、自己及び他人の商品或いは役務について不実の陳述はしてな
いけれども、同様の製品に対しては異なる計測方法又基準を採用して比較する
手法、或は重要な比較項目の中に、単に自分側の比較的優良な項目を打出し、
故意に相手方の優良項目を無視したりして不公平な比較結果を全体の印象に於
147
いて造り上げることを意図するもので、しかし一方、公平交易法第 22 条の構成
要件には符合しないもの。
(2)競争相手の取引相手側に対して、その競争相手が知的財産権を侵害したと表示
する行為
知的財産権権利者が市場にその権利を侵害する可能がある商品を発見し、その
直接侵害の製造者或いは同等地位にある商品輸入の輸入者または代理者等に対
して、侵害の通知、排除の請求をすることは法により権利を行使する正当行為
であるから、その内容の真偽虚実を問わず、共に知的財産権争議に属すること
である故に、本条の適用はない。もしそれが間接侵害の販売業者又は消費者(即
ち競争相手の取引相手又は潜在取引相対手)に対して、自分の競争がその権利
を侵害したと表明(書面又は口頭方式を問わず)するとき、その必要の確認及
び先行通知の手順を経ないものは、相手方の取引相対人に疑念を生じさせるに
足り、甚だしきに至っては取引を拒絶されることになるもので、本条の「著し
く公正さを欠く行為」を構成するものである。
(二)社会倫理に符合しない手段で取引に従事する行為
よく見られる類型は例えば:取引相対人を脅迫又は騒擾する方式で、取引相対人が取引を決定
する自由意思が抑圧された情況下に、取引を完成させる行為。
(三)市場の相対的優勢な地位を濫用して、不公平取引に従事する行為相対的な市場力又は市場情報
の優勢地位を有する事業者が、取引相手人(事業或は消費者)の情報上不対等又はその取引上
の相対的な弱勢地位を利用して、不公平取引に従事する行為。
常に見られる類型は例えば:
1. 市場機能が停止し、供需の均衡が喪失されたとき、事業が代替性の低い民生必需品または
サービスを提供し、商業倫理或は公序良俗に反する方式で取引に従事する行為。
2. 情報が透明化されないために引き起した著しく公正さを欠く行為。
11 和解
11-1 和解の基本原則
刑事、民事手続又は公平会への摘発が行われるなか、双方当事者に和解の意思があれば、話し合
いで和解を図り、紛争を解決することができる。
1. 和解成立のタイミング
事件が起訴される前の段階では、被告を戒める効果が薄いから、起訴になってはじめて和解の交
渉に入るのがベターである。事件が起訴された後、商標法など親告罪に属しない事件について、告
訴人は告訴を取り下げることができない。但し、被告と告訴人との間に既に和解が成立した場合、
裁判官はそのような事情を考慮して、被告に罰金刑又は執行猶予を言い渡すことができる。特許侵
害に係る事件は親告罪に属するので、告訴人は和解成立時に告訴を取り下げることができる。
2. 和解契約の内容
通常、和解契約には、侵害(1)和解金、(2)今後このような侵害行為を一切しない旨の誓約書、
(3)謝罪広告の掲載、(4)模造品を引き渡すことなど、被告に対する要求が盛り込まれる。
3. 和解金(示談金)の取扱い
和解金の話し合いは訴訟代理人の仲介のもとで協議するのも結構だが、当事者独自で密談するケ
ースもよくある。弁護士費用をカバーできるだけの金額を心がける。和解金の受領は弁護士を経由
することが多いので、信頼できる法律事務所に委託する。
4. 和解成立後の謝罪広告の掲載
謝罪広告の内容と質を確保するために、訴訟代理人が内容を起稿し、費用を侵害者から収めたう
え、掲載を手配する。
11-2 弁護士が和解関連事務処理にあたっての留意事項
11-2-1 和解のマイナス効果
訴訟事件が進んでいる間に、当事者が自ら進んで和解条件を提示してくることがよくある。和
解は争いの当事者の間に妥協点をさぐる試みであるが、往々にして当事者が訴訟による法律上の
救済を回避する言い訳になる。和解成立の可能性を前提にして、事実を歪曲し、証拠隠滅を図る。
法律判断が重視する事実が途中で何かの人為的工作で闇に隠され、事実に基づく公平、正義の価
148
値観を貫くことができなくなり、司法の客観的法的効果に影響をもたらし、検察官・警察及び調
査人員が積極的に犯罪事件に取り組む意欲を妨げ、ひいて司法体制及びその機能にも影響しかね
ない。
和解にも前記のようなマイナスがあることから、弁護士倫理規範には特に和解及びその他の関
連事項の処理原則に関する規定が設けられている。ここに弁護士倫理規則と見比べながら、注意
すべき原則を述べてみる。
1.真実重視原則
多くの被告は取り調べの段階で関連資料を提出せずに、ただひたすら和解に持ち込む。例
えば、原告が模造品の数量及び種類を記録する帳簿の提出を求めても、被告が素直に応じて
くれない。ただ原告が告訴を取り下げ、検察官が捜査を停止することを意図して、和解金の
ことを切り出す。しかし、訴訟の本質は真実を追求すること及び真実の追求により正義を貫
くことであり、当事者が金銭など真実から離れる手段を用いて司法手続に介入し或いはそれ
を干渉しようとすることは断じて許されない。したがって、争訟をやめる機能があるとして
法律上限度的に認められているが、慎重に進めていかなければならない。
和解金の計算は原則として事実の状況をもとに行わればならない。当然、被告が訴追され
ることを予想する状況では、真実を供述し訴訟関連資料或いは証拠物を提供することが期待
できないが、真相を究明しようがなく断念せざるを得ない場合を除き、いったん公権力によ
る犯罪行為の訴追に踏み切った以上、検察官の意向を尊重し、真相を究明する可能性を考慮
して、できるかぎり訴追を徹底すべきである。
●第 11 条 弁護士は訴訟結果の勝敗にこだわって真実の発見を無視してはならない。
●第 27 条 弁護士は受任事件について、正直に法律意見を委任者に告知しなければならず、
故意に法令を曲解し又は告知の内容を欺罔して、委任者が誤って不正確な期待又は判断をす
ることに導くことができない。
●第 28 条
弁護士は受任された事件について、有利な結果を約束することができない。
●第 29 条 弁護士は執務の際、和解によって訴訟をやめることは当事者の利益及び法律正義
に合致すると認めるときは、協力して和解の成立を促すべきである。
●第 36 条 弁護士は取り扱いの事件の対象から金銭上の利益を獲得することができず、また
未解決の訴訟事件について直接或いは間接に係争対象物を譲り受けることもできない。
2.透明化原則̶査証は綿密かつ正確に行う
如何なる和解条件も正義・公平原則に基づいて取り決めるべきである。このため、客観的
に調査し、事実を確認することは肝心である。当事者が和解金の額をいい加減に決め、終始
態度が一貫しない場合、そのペースに乗らないことに要注意。原告にせよ、被告にせよ、確
かな事実に基づいてこそ自己の権益を守るのに最大の保障である。
例えば、和解契約に複数の当事者が関与する場合、各当事者の利害関係及び事実関係を正
確に把握し、各当事者の請求権に依拠して和解金の額を決め、相手方と交渉を進めるべきで
ある。連帯賠償責任を負う共同加害者はまず被害者に対して保険給付責任を負う当事者又は
関係者及び給付金額について確認する。被害者と保険契約を締結した保険者(保険会社)、
被害者の労災保険給付、さらに保険者に再保険者が支払う給付額などをすべて詳しく確認し
ておけば、交渉で主導権を握ることになり、また有利な条件を求めることもできる。
●第 6 条
弁護士は模範として、言行を慎み、社会の風気を正すべきである。
●第 7 条 弁護士は弁護士の職務を公共職務と自覚し、執務にあたって、当事者の合法な権
益及び公共利益をともに考慮しなければならない。
●第 8 条 弁護士は信義、理性及び良知に従い、誠実かつ公平に職務を遂行しなければなら
ない。
●第 16 条 弁護士は法廷外において証人の知っている事実について証人を訊問することが
できる。但し、その訊問は必要とされる事実の説明又は弁護のために必要なものに限られ、
証人を誘導して不実の陳述をさせることができない。
149
●第 19 条
弁護士は当事者の指示を理由に本規範に違反する行為をしてはならない。
3.相手方との関係
単純でかつ公正な立場に立って、相手方が理由をねつ造して訴訟又は交渉の進行を妨げる
ことのないように、弁護士は相手方当事者と適切な関係を保つことが大切である。紛争の発
送を未然に防ぐために、当事者、相手方当事者又はその弁護士との間のやりとりについては
詳しく正確に記録して状況を把握する。
●第 40 条 弁護士が受任された事件について委任者の授権又は同意を得ないで、故なく相手
方と直接商談し、又は相手方の報酬若しくは贈呈を受け取ることができない。
●第 41 条 弁護士は相手方が既に弁護士を委任したことを知ったときは、相手方の弁護士の
同意を得ないで直接相手方と接触すべきではない。
4.相手方弁護人との関係
挙動の怪しげな弁護士、又は弁護士ではないのに、弁護士に成りすまして和解交渉を邪魔
する者もたまにある。この場合、激しく反応せずに、同じ弁護士仲間としてお互いに尊重し
あって、厳正たる態度で接すべきである。
●第 42 条 弁護士はお互いに尊重し合い、同業者の正当な利益に配慮し、また同業者からの
質問に応え、返答できないときはその理由を告げるべきである。
●第 43 条 弁護士はその他の弁護士を誹謗中傷すべきではない。また当事者にそうすること
を教唆し又は放任することもできない。
12 裁判以外の紛争処理
裁判以外の方法により知的財産権の紛争を処理できる機関は一般的ADR及び専門的ADRに分け
られる。
1.一般的ADR:台湾における現行のADR制度の中、仲裁と郷鎮市調解(調停)委員会の調停が民
事確定判決と同一効力を有し、調停できる事項を限定していないので、両者とも知的財産権の紛争の
処理に適用できる。
2.専門的ADR:専門的知的財産権の紛争を処理する ADR制度としては、知的財産権に関する特別法
の規定により、行政機関の協力のもとで調停を達成させるもの、または知的財産権に関係する民間団
体の協力のもとで調停を達成させるものがある。その性質は、当事者間における契約の効力を有する
のみである。この種の調停として下記のものが挙げられる。即ち、
(1)著作権:著作権法第 82 条は、主務機関は次の事項を処理するため、著作権審議及び調停委員会を
設置すべきと規定している。
①著作の譲渡、強制許諾及び使用の最低価格または使用報酬に関する紛争の調停。
②著作権仲介団体と使用者間の使用報酬に関する紛争の調停。
③著作権または製版権に関する紛争の調停
④著作権の審議及び調停に関するその他の相談の受理
(2)集積回路レイアウト:集積回路の回路配置保護法(「積体電路電路布局保護法」)第 37 条は集積
回路レイアウトの管轄専門機関はレイアウト権の鑑定、争議の解決及び強制許諾などの事項を処
理するため、鑑定・調停委員会を設置することができると規定している。
■台湾のADR制度における知的財産権に関する処理機関
1.仲裁:「中華民国商務仲裁協会」
2.調停:
(1)知的財産局著作権審議及び調停委員会(1999.7.28 付経済部令)
(2)知的財産局集積回路配置鑑定・調停委員会(現在はまだ主務機関により設置されていない)
(3)郷鎮市(市町村)調解(調停)委員会
■台湾の仲裁及び調停制度
▼仲裁
1.紛争に関わる当事者は仲裁契約を書面で締結していれば、仲裁人は仲裁法第 1 条により仲裁法廷
を開いて仲裁することができる(1998.6.24 公布施行の仲裁法)。当事者間に仲裁契約がある場合、
もし当事者の一方が仲裁に付さずに、別途訴訟を提起したときは、他方の当事者は裁判所に対して
訴訟停止の裁定を申立て、一定の期間内に仲裁に付することを原告に命じることができる(仲裁法
150
第 4 条第 1 項)。
2.所要時間と費用:仲裁の申立にあたっては係争目的物の金額に応じて仲裁費用を支払う。仲裁の
進行について当事者の間に約定がないときは、仲裁法廷は仲裁人として選定された旨の通知を受け
た日から十日内に、仲裁の場所及び訊問の期日を決めて双方当事者にこれを通知し、かつ六ヶ月内
に判断書を作成しなければならない。必要なときは三ヶ月延長することができる(仲裁法第 21 条
第 1 項)。
3.仲裁の保全:仲裁手続が進行している間でも、当事者は債権の執行を保全するため、民事訴訟法
の規定により裁判所に仮差押又は仮処分を申立てることができる。
4.効力:仲裁判断は当事者間において裁判所の確定判決と同一の効力を有する。但し、当事者は裁
判所に強制執行の申立をする前に、仲裁判断につき裁判所に執行決定の申立をすべきであり、これ
を得てからはじめて強制執行ができるのである(仲裁法第 37 条第 2 項)。
▼調停
1.郷鎮市調停委員会による調停:理論上、郷鎮市調停委員会は当事者または被害者の同意を得て、一
般の知的財産権事件の調停ができるが、知的財産権は高度の専門性を有するため、実務上この種の
事件は稀である。調停の申立があっととき、調停委員会は速やかに調停の期日を決めなければなら
ない。郷鎮市の役所は調停成立した日から七日以内に執行決定のために調停書を管轄裁判所に送達
すべきことになっている。調停が成立した後、当事者は当該事件につき更に訴訟の提起、告訴、ま
たは自訴を行ってはならない。裁判所による執行決定を経た民事調停は、民事確定判決と同一の効
力を有する。
2.知的財産局著作権審議及び調停委員会による調停:本委員会の主任委員は知的財産局局長が兼任
し、15∼21 名の委員については局長が関係機関の代表、学者、専門家及び本局業務の関係者から選
出して兼任させ、任期は 1 年とする。そして紛争事件の調停にあたっては、同委員会が 1 名ないし
3 名の委員を指定してこれを行う。調停が成立したときは、紛争当事者間の契約とみなされる。
13 ライセンス契約
Q1 台湾でライセンス契約を締結する場合、特別の契約発効条件はあるか?特定の政府機関へ届け出や
登録などをする必要はあるか?これらの形式条件は契約の効力発生にどのような影響を与えるか?
それらの条件の内容(基準、要件等)と審査期間に留意すべき事項はあるか?又、届け出や許可を受
けなかった場合、罰則・制裁はどのようになっているか。
A:技術や知的財産権のライセンス契約を一般の民法上の契約と同一視することができる。民法第 153 条
の規定によれば、「当事者は相互に一致した意思を表示したときは、その意思表示は明示又は黙示を
問わず、契約は直ちに成立する」となっている。知的財産権の実施や使用の許諾について、数多くの
関連規定は「ライセンス契約は主務官庁に登録を申請しなければならない。登録手続を経なかった者
は第三者に対抗することができない。」と定めている(商標法第 33 条第 2 項、第 80 条/専利法(台
湾でいう「専利法」は日本の特許、実用新案、意匠の三法をともに同法で規定している。以下は台湾
特許法という)第 59 条、第 108 条、第 126 条/集積回路レイアウト保護法第 22 条)。なお、2003
年 4 月 29 日に改正された商標法第 33 条第 3 項の規定によれば、「使用権の登録後に商標権が移転さ
れた場合、その使用許諾契約は譲受人に対し引き続き有効に存続する」と定めている。一方、これに
対し、著作権法及び営業秘密法は登録をもって対抗する制度をとっていない。
もう一つ注意すべき点は、台湾特許法第 60 条である。同条は、専利権(特許権)の譲渡又は実施許
諾に関する契約は次の事項の一に該当する条項を締結したことにより、不正競争を生じさせた場合、
その約定は無効とする、と定めている。(1)譲受人の使用する物品又は非譲渡人あるいはライセンサ
ーでない者の供給する方法を禁止又は制限する者。(2)譲受人に対し、譲渡人に特許保護を受けてい
ない物品又は原料を購買することを要求する者。この規定は、第 108 条及び第 129 条の規定により新
型専利(実用新案権)及び新式様専利(意匠権)の場合に準用する。
技術合作条例は 1995 年に廃止されたので、技術移転契約は政府機関に許可を申請する必要がなくな
った。但し、前に述べたように、商標、特許及び集積回路の回路配置などに関するライセンス契約を
締結した後、主務官庁に登録手続を済ませてはじめて対抗力を持つことになる。従って、技術移転又
はライセンス契約を締結するにあたって、やはり主務官庁に登録を申請することが不可欠である。
Q1-1 登録のある実施権者の第三者対抗力は、日本特許法の「登録された通常実施権者」の第三対抗
力と同様と考えてよいのでしょうか?それとも、台湾では専用実施権者でなくても、登録された
実施権社は損害賠償請求権や差止め請求権を確保できるのでしょうか?
A:実施権契約の登録の第三者に対する対抗力は、物権的な効果を持ち、契約当事者以外のすべてのパ
ーティーに対して主張できる点に於いては、日本の「登録された通常実施権者」の第三者対抗力と同
様と考えられる。
但し、特許侵害による差止め請求権、又は損害賠償請求権などは、原則上特許権者自身のほか、
151
専用実施権者のみに与えられるもので、通常実施権者には上記の権限がないとされている。それら
の権限の行使は主として特許権者ないし専用実施権者にのみ認められるものとして、他の通常実施
権者の場合は主務官庁での登録の有無と関係なく、原則上与えられない。では、通常実施権者の実
施権登録のメリットは何かというと、主に第三者、場合によっては特許権を譲り受けた第三者の特
許抵触の指摘等に対して自分の権限を主張する根拠となるところである。原則として、通常実施権
者は、損害賠償請求権や差止め請求権の主体にはなれない。
2001年の特許法改正の際、特許権侵害についての刑事罰が廃止され、また2003年1月の改正により
実用新案権の侵害および意匠権侵害についても刑事罰の規定が廃止された。従って、2003年3月31
日に新特許法が施行された後は、特許権、実用新案権、意匠権の侵害に対する刑事罰が無くなり、
特許権者が告訴を提起する権利もなくなることになった。
Q2.台湾で締結される技術提携やライセンス契約に、契約の対象となる実体の権利(特許、商標、著作
権など)の存在が要求されるでしょうか?また、出願中(審査中)のものでも契約の対象となります
か。
A:著作権法第 10 条の定めるところにより、著作者は著作を完成した時点よりその著作権を享有する。
要するに、著作権について我が国は登記主義を採用しておらず、著作権の取得は登記を要件としない。
このため、登記を待つことなく、著作が完成した時点からライセンス契約をすることができる。
著作権を除き、商標権、特許権又は集積回路配置権等の知的財産権は法により登録し又は許可を受
けた後でないと、国から何ら権利を付与されないので、もちろん理論上存在しない権利は契約の対象
となり得ない。従って、登録を受ける前の許諾はできない。
2003 年 2 月 6 日改正された台湾特許法第 51 条第 2 項の規定により、特許出願をした発明は公告の
日から特許権を与え、証書を交付する。また、同条第 1 項の規定により、「特許出願をした発明が査
定を経て許可されたときは、出願人は査定書の送達翌日から 3 ヵ月以内に証書料及び第一年目の年金
を納付した後公告し、期限以内に納付しない者は公告せず、その特許権は初めから存在しなかったも
のとみなす」。この場合、民法第 246 条の規定により、「給付不可能なものを契約の対象としている」
として、契約は無効となる。
Q2-1 未登録の特許出願について実施権許諾契約をしても、契約としての効力がないということでし
ょうか?
A:原則 普通でいう法律上の契約は、相当明確な主体と主な客体の存在が構成要件となる。当事者同
士が不明確なまま、契約は発効するすべがない。同じく、契約の目的若しくは履行義務が課される
事項が不明確な状態では、契約も発効し得ないとされる。
特許権実施契約の場合、同契約の目的に当たる「特許権をライセンシーに実施させる」ことは、特許
権自身の明確な存在と限定が通常不可欠な前提条件と考えられる。そのため、出願中ではあるが、
登録にまでは至っていないという特許権を契約の目的を達成するために対象物に指定するのは、
契約に関する明確な履行可能原則に反すると想定される。
特例
但し、台湾民法第 246 条第 1 項の後半では、「履行不可能の状況がその後除去することが
できる場合、当事者らが契約締結時に履行が可能になる際に履行することを予期する状況であれば、
契約は依然有効である」と規定している。
従って、当事者らが出願中の特許は将来何れ特許権を取得できると見通しを立てたうえでライセ
ンス契約を締結した場合、特に「特許になる」ことを互いに予期することを明文で約定しておけば、
同特許権実施契約自体の効力は維持できないとも限らない。但し、特許出願中の未然の権利化を客
観的に「予期」できるかどうかについて、実務上統一された見解がまだ見られないので、そうと言い
切れるかは未知の要素が残っている。
また、同 246 条の第 2 項は、停止条件又は開始時期付きの約束があれば、条件が実現する、或い
は期限が満了する以前に履行不能の状況が解除されれば、契約は依然有効である、と定めている。
条件付きの形式をとれば、法律上の効力は確保できると解すべきである。
履行不能という概念はきわめて繁雑で、かつ時代の流れに左右されやすいので、近時ではなるべ
く給付不能を理由に契約を無効と解することを容認しないように契約の効力を維持する見解が中心
的になっている。
Q2-2 日本では、「未登録特許の実施許諾契約」は多々締結しておりますが、台湾ではそのような契
約をしても、当事者間で一方が「無効」を理由に解除できますか?
A:日本で「未登録特許の実施許諾契約」が流行する背景には、契約自由原則の定着のほか、特許出願
件数の膨大化による権利付与の牛歩化という十数年来の現象も挙げられる。勿論、権利化のスロ
ーダウンに関して台湾も免れないが、審査請求制度と早期公開制度の実質導入はようやく 2002 年
10 月 26 日以降に実現されることもあり、2003 年 2 月 6 日に改正された特許法においても出願査
152
定が許可され、証書料及び第一年目の年金が納付された後、特許権を与える制度となっているの
で、出願中の特許に関する運用の度合いと共通価値観や信頼性の形成は一般出願人の間、また法
曹界や特許実務界では、まだコンセンサスが薄い。特に特許権の潜在的価値や競争力に目覚めた
台湾の業界では、最近、実施許諾契約を権利侵害の訴えを免れるための最小限の投資と見立てる
傾向を見せている。このような変化を背景に、給付或いは履行不能の疑いのある「未登録特許の実
施許諾契約」を台湾企業を相手に締結しても、先方から契約無効を主張されたり、実施料支払いを
拒否されたり、さらには公平取引法違反などを訴えられる可能性がある。
Q2-3 未登録特許の許諾契約につき、租税、送金などの面で、問題が生じますか?無効な契約に基づ
く送金は許されないのでしょうか?無効な契約で、源泉徴収義務がなくなるのでしょうか?
A:「未登録特許の実施許諾契約」を台湾企業と締結しても、知的財産局に対して同契約を登録すること
ができないので、政府機関を含む第三者に対する対抗力は発生しない。その結果、20%にも及ぶロイ
ヤリティー所得税免除の優遇措置は、登録特許でなければ受けられない。
送金の際、根拠となる契約関係が有効であるかについてまでのチェックは普通行われないが、送
金元のライセンシーが税金免除の申告等をしようとする場合、主務官庁の認定を受けなければなら
ないので、「未登録特許の実施許諾契約」の場合は先ず認定を得られないことによって、申告義務を
クリアした形で所望の送金をしてもらうのが難しい。
また、ロイヤリティーの支払いにあたり、納付税金分を予め差し引いた金額だけを送付し、後に
なって免税措置の適用申請と認可を経て政府より予納税金の返還を受領することになるので、送金
の際には税金が差し引かれた金額となる。
なお、無効な契約に基づいて得られた収入は原則上源泉徴収の対象から除外されない。無効契約
の後始末として実際受領した金額が払い戻された証明がなければ、収入分の金額に応じる源泉徴収
は行われる。
Q2-4 台湾企業であるライセンシーと日本企業であるライセンサーの間で未登録特許実施権許諾契
約の準拠法が「日本国法」に指定された場合、送金や、租税面でどのような影響がありますか?
A:準拠法は契約自体の法律効果と当事者間の権利義務関係に影響するが、租税等の政府による行政上
の管理事項に支配力が及ばない。台湾からの送金と租税などに関する規制や特典などは台湾の法律
規定に従わなければならない。
Q2-5 台湾の専用実施権はどういうふうに定義されていますか?
A:台湾特許法には、専用実施権の用語を定義する条文は置かれていないが、台湾で取得した特許権に
関して、特許権者自身を除いて、実施権を与えられる唯一の実施権者というふうに解されている。
複数の実施権者がいる場合と峻別される単一の排他的な実施権者である。日本特許法第 77 条のよう
に詳細に規定されてはいないが、実務上の見解としてほぼ趣旨は一致しているかと思われる。但し、
台湾では専用実施権を他人に付与した場合でも権利者自身の実施権が保留されるのが普通で、どち
らかというと米国流の実務見解に近い。この点において、権利者自身の実施権まで専用実施権の設
定によって排除される日本の制度とは根本的な違いがある。例えば、特許権者の許諾無しに実施権
の第三者に対する付与や、専用実施権の譲渡などは許されない。
Q3 台湾で締結されたライセンス契約において、ライセンサーに対してどのような法律上の保護が与え
られているか?
A:法律ではライセンサーがその知的財産権の実施又は使用を他人に許諾しても、知的財産権を享有する
者である立場に何ら変更をきたすことはない。故に、ライセンサーは知的財産権を享有する状態を維
持していれば、知的財産権の所有者と同様の権利を有し、著作権法、商標法、特許法、集積回路の回
路配置保護及び営業秘密法等による保護を受けられる。
Q4 ノウハウもライセンス契約の対象になり得るか?ノウハウ実施契約のライセンサーは法律上どの
ように保護されているか?
A:現在、我が国においてライセンサーのノウハウは、主に営業秘密法で保護されている。同法第 2 条に
より、営業秘密とは「方法、技術、製造過程、処方、プログラム、設計又はその他生産、販売あるい
は経営の用途に供する情報であって、次の要件に該当するものをいう。(1)それらの情報に係わる一
般の者の知り得ないもの。(2)その秘密性により、実存又は潜在的経済価値を有するもの。(3)所
有者は合理的秘密保持措置をとったもの」をいう。同法第 11 条から第 13 条までの規定により、営業
秘密を侵害された者は、その侵害行為の排除及び法定金額による損害賠償を請求することができる。
ただ、営業秘密法は刑事的罰則を設けていない。もし、当事者の間で契約を締結しているのであれば、
153
原因無しに営業秘密を漏洩した者は、刑法第 317 条の「工商秘密漏えい罪」に違反する恐れがある。
Q5 特許などのライセンス契約におけるロイヤリティーの外国への送金について、どのような規制或は
優遇措置があるか?
A: 1.規制
所得税法第 71 条、第 73 条及び第 88 条第 2 項により、(1)我が国境内において固定した営業場所
又は居住場所を有する営利事業又は個人に属する者は、その取得したロイヤリティーについて、それ
を支払った営利事業が所定の税率により源泉徴収(天引き)をしたうえ、所得税法第 71 条の規定によ
り、これを併合して申告する。(2)営利事業又は個人は、国内おいて固定した営業場所又は居住場所
を有しない場合、その取得したロイヤリティーについて、ロイヤリティーを支払った営利事業が所定
の税率により、これを源泉徴収するものとする。なお、「各類所得税率標準」第 2 条第 6 項の規定に
より、納税義務者が中華民国国内に居住する個人又は中華民国国内に固定した営業場所を有する営利
事業である場合、そのロイヤリティーを源泉徴収する割合は、給付金額の 15%とし、又、同標準第 3
条第 6 項の規定により、納税義務者は中華民国国内に居住していない個人又は中華民国国内に固定し
た営業場所を有しない営利事業は 20%とする。
上述各規定のほか、「外国為替収支又は取引申告管理法」の規定により、ロイヤリティーを外国に
送金するときは、下記の制限を受けなければならない。内政部が審査・発行する「中華民国在留外国
人居留証」を取得していない外国自然人又は我が国の登記証明を取得していない外国法人は、毎回の
外貨購入金額が 10 万ドル又は同額の外貨を超えていない場合は、直接に「民間送金の外貨購入申告書」
をもって手続をすればよい。もし、毎回の外貨購入金額が 10 万ドル又は同額の外貨を超えている場合
は、中央銀行に届出て許可を得てから行うものとする。
2. 優遇措置
わが国所得税法第 4 条第 21 号には、「営利事業が新しい生産技術或いは製品を導入し、又は製品
の品質を改良し、生産コストの削減を図るため、主務官庁の特別許可を受けて外国営利事業が所有す
る特許権、商標権及び各種特許権利を利用するときは、当該外国営利事業に支払われるロイヤリティ
ー、及び政府主務官庁の認可を受けた重要な生産事業がプラント建設のため外国事業に支払う技術的
役務の報酬については、所得税の納付を免除する。」とある。このため、主務官庁(経済部工業局)
が税金免除の証明を交付するかどうかの審査に当っての準則として、財政部は「外国営利事業が取得
する製造業、技術サービス業及び発電業のロイヤリティー及び技術サービス報酬の免税案件に関する
審査原則(以下は審査原則という。1997 年 5 月 2 日付け改正公布)を公布している。
Q6 ロイヤリティーについて「課税免除」の優遇措置が設けられているが、優遇適用の申請で認められ
る要件は、特許の登録と、実施権の登録のみでしょうか?それ以外に技術内容などで付加要件があり
ますか?
A:1. 優遇措置の方針
最近、ロイヤリティーに関する免税申請について、主務官庁では新しい見解が示された。専門家を
招いて開いた会合で出された結論に基づき、経済部工業局は、今後免税申請案を次の三つの方針にそ
って審査する方針をまとめた。
一.審査原則第 4 条により、外国事業が台湾で登録を受けた特許権の使用を、当該特許権が存続し
ている期間内に、技術提携の形で台湾国内の製造業及び関連技術サービス業に許諾し、かつこれ
を経済部知的財産局に届け出て登録を済ました者は、経済部工業局に特別の認可を申請すること
ができる。認可が下りれば、当該許諾により取得したロイヤリティーに対する所得税の課徴は所
得税法第 4 条第 21 号により免除される。
二.外国事業が台湾で特許権を取得していない場合、審査原則第 6 条により、供与される技術が産
業育成・発展を促しているか、同技術の供与がもたらす実質的な影響について審査する。
三.外国事業が特許権侵害を名目に特許実施料を要求してくる場合、国内の事業者が要求に応じて
支払う特許料は「ロイヤリティー」ではなく、「賠償金」とみて処理する。このような場合は、
所得税免除の優遇措置の対象から外される。
2. ロイヤリティーの免税証明申請の要件
「審査原則」では、外国の営利事業が「専門技術」又は「わが国専利法(日本の特許、実用新案、
意匠三法)により登録を受けた専利権(日本の特許権、実用新案権、意匠権を含む。以下は同じ)を
我が国営利事業に提供して、我が国の営利事業から支払われた(特許)実施料の所得について、所得
税の納付免除を申請するときは、下記の要件を満たさなければならない。
154
(1)この「専門技術」又は「専利権」によって、我が国会社の製品に対し、下記の場合のいずれかに
該当しなければならない。
a.新製品を生産し又は製造することができる。
b.生産量の増加、品質の改良又は生産コストの軽減に貢献できること。
c.新しい生産技術を提供することができること。
(2)
「資本」とせずに、一定のロイヤリティーを取得するという業務提携である旨の約定があること。
(3)提供するのが「専利権」である場合、次の三要件を満たすことが前提となる。
a.わが国専利法(台湾特許法)により、登録を受けた専利権であること。
b.その専利権がなお存続中であること。
c.智慧財産局にて実施許諾登録を済ませたこと。
(4)「専門技術」を提供する場合、次の産業への提供に限られている。
a.通信工業、b.情報工業、c.消費的電子工業、d.航空宇宙工業、e.医療保健工業、f.汚染防止処理
工業、g.特殊化学品及び製薬工業、h.半導体工業、i.高級材料工業、j.精密機械及び自動化工業。
3. 技術役務(サービス)の報酬は所得税の納付が免除される
経済部工業局の審査を経て許可された前記産業に属する股份有限公司(株式会社)が、工場の操業
開始前に、外国の営利事業に工場建設に必要な技術役務の提供(①生産方法、②製造工程の設計、③
工事に必要な基本設計、④工事に必要な細部設計、⑤機械設備の設計に限定)を依頼し、経済部工業
局の許可を得た場合、当該外国の営利事業がそれにより取得した技術役務の報酬は、所得税法第 4 条
第 21 号の規定により所得税の納付が免除される。
会社の形態が股份有限公司(株式会社)である発電業者が発電所の操業開始以前に、外国の営利事
業に発電所のプラント建設に必要な企画、工事の基本設計又は細部設計及び機械設備の設計等に関す
る技術役務の提供を依頼し、経済部能源委員会(エネルギー委員会)の許可を得た場合、当該外国営
利事業がその技術役場の提供により取得した報酬は、同じく所得税法第 4 条第 21 号の規定により、所
得税の納付が免除される。
4. ロイヤリティー(特許実施料)の所得税免除申請に関する実務
(1)主務官庁――経済部工業局
a.
所要日数――約二週間∼三週間《休日を除く》
b.
申請時に提出すべき書類は、a.申請書、b.技術提携により生産する製品のカタログ一部、
c.専利権(特許、実用新案、意匠を含む)実施許諾契約書又は技術供与契約書(ライセン
ス契約)のコピー一部、d.実
施許諾契
約書又は技術供与契約書の中国語約一
部、e.国内業者の工場登記証又は設立許可証のコピー一部、f.実施許諾登録出願について
の委任状(公認証の手続きを要する)一通、g.専利権実施許諾の場合には、別途①専利証
書(特許証書)、及び②実施許諾登録の証明書等をも添付しなければならない。
(2)主務官庁――財政部国税局
a.
所要日数――約二週間∼三週間《休日を除く》
b.
申請時に提出すべき書類は上記の(1)b.の諸書類を加え、経済部工業局の免税許可書を
も添付しなければならない。
5. 納付した税金の返還を申請する場合
我が国経済部工業局よりロイヤリティーの免税証明書が交付される前に、国内業者が国外の営利
事業にロイヤリティーを送金する場合、所得税法により源泉徴収として 20%の所得税を控除しなけ
ればならないので、経済部工業局発行の免税証明書を取得した後、それ以前 5 年間の間に納付した
所得税の返還を台湾国税局に申請することができる。その後は国内の業者に免税証明書さえ提示す
れば、20%の所得税源泉徴収の手続きを取らなくてすむ。
Q7 ライセンス契約のライセンス料料率の算定基準、納付の方法と時期などに関してはどのような規定
がありますか?
A:各権利の実施許諾に関する「実施料」については、特に規定を置いていない。
Q8 台湾での技術提携やライセンス契約における対象製品、対象製品に関する部品の調達方法、販売方
法、品質管理、対象製品の輸出等について具体的な制約や規制がありますか?
A:特許の実施許諾について、台湾特許法第 60 条により、専利権(日本でいう特許、実用新案、意匠を
含めていう)の譲渡又は実施許諾に関する契約は次の事項の一に該当する条項を締結したことにより、
不正競争を生じさせた場合、その約定は無効とする。(1)譲受人の使用する物品又は非譲渡人あるい
はライセンサーでない者の供給する方法を禁止又は制限するもの。(2)譲受人に対し、譲渡人に特許
155
保護を受けていない物品又は原料を購買することを要求するもの。この規定は、第 108 条及び第 129
条の規定により、実用新案権(新型専利)及び意匠権(新式様専利)に準用する。
その他の技術の許諾について、一般的に言えば、法律は当事者が契約の条項を自由に約定すること
を認めている(例えば、著作権法第 37 条及び営業秘密法第 7 条等の規定)。よって、当事者は対象製
品及び対象製品の部品の調達方法、販売方法、品質管理、対象製品の輸出等について自由に約定をす
ることができる。但し、契約の条項はやはり民法の関連規定及び信義誠実の原則に基づいて制定され
なければならない。
Q9 出願中の特許技術はライセンス契約の対象となり得ますか?
A:「契約自由の原則」に基づき、我国では出願中の特許についても原則的にはライセンス許諾契約の客
体となりえます。
しかし、「出願中の特許」は「特許を受けたもの」の持つような排他的に製造、販売等をする権利
は具備していないので、ライセンスを受けるものがライセンス許諾を受けた後も、特許がおりるまで
はこれら排他的権利は行使できないことになります。
また、後日若しライセンス許諾者が特許を取得できなかった場合に契約の効力に影響を及ぼすかに
ついては、双方の約定の目的によって判断することとなる。双方が契約締結時に、ライセンス契約は
契約の目的物が将来取得されるべき特許権であることを明確にしているときには、ライセンス許諾者
が後に特許権を取得できなかった場合に契約は無効となる。契約当事者双方が将来の特許権取得を目
的としていない場合には、もともとの契約は一般的なノウハウの提供契約と見なされ、契約の効力に
は影響は及ばない。
Q10 台湾の関連法規にライセンス契約のライセンス料についての規範や制限はありますか?
A:契約自由の原則に基づき、台湾には特許ライセンス料を規定し、又は制限する法令はない。
Q11 「ノウハウライセンス契約」、「技術援助契約」について
A:台湾には「ノウハウライセンス契約」「技術援助契約」といった類型の契約を特別に定める法令はな
い。よって、ロイヤリティーの約定や契約の期間等に関しても契約自由の原則による。
また、特許ライセンス契約は特許権の存在が前提となるので、ライセンス期間は特許権の存続する
間に限られる。つまり、特許は最長で 20 年(台湾特許法第 51 条第 3 項)、実用新案は 10 年(同法第
101 条第 3 項)、意匠については 12 年(同法第 113 条第 3 項)となる。
Q12 実施権の譲渡や移転について、特別の定めがあるか?仮に日本特許法第 94 条のような規定がある
場合、当該規定は任意規定でしょうか、強行規定でしょうか?
A:台湾特許法第 65 条によると、特許権者は、実施権者又は質権者の承諾を得ないで、特許権を放棄し、
又は特許明細書の補正或いは範囲の減縮をすることができないとなっている。
権利者が実施権者の同意を得ないで上記の行為を行う場合、主務官庁に登録済みの実施権者又は質
権者の申立てによって、当該行為を無効にすることができるとされている。その意味では、それらの
規定は強制力のある規定であるとともに、当事者の意思次第で運用できる条文とは異なる条文である。
Q13 その他特許ライセンスに関する注意事項
(1)特許ライセンス許諾を受けたものに対し、第三者に対する再許諾を制限することができる。
(2)特許ライセンス許諾を受けたものに対し、ライセンス契約によって取得した権利を第三者に譲渡
することを制限できる。
(3)契約を締結するにあたり、ライセンス許諾によって生ずる納税負担についても取り決めをしてお
くべきである。
(4)特許が出願中であるならば、契約の秘密保持義務及び違約によって生じた損害賠償について取り
決めをしておくことが重要であると思われる。
ライセンス契約が無効、解除或いは解約となったときに、ライセンスを受けていた者はただちに当該
特許権による商品の製造、販売を停止し、また一定期間内に回収できるよう明確にしておくべきである。
156
▲
参考 技術実施許諾協定に関する審理の処理原則
(行政院公平交易委員会 審理技術授権協議案件処理原則)
2001 年 1 月 18 日 第 481 回委員会 制定
2001 年 1 月 20 日(90)公法字第 00222 号 告示
科学技術の進歩に従い、産業における取引の型態は、伝統的な有形商品の買売及び役務の提供にとど
まらず、知的財産権の利用許諾をもその内容としてきている。知的財産権の実施許諾(ライセンス)を
通して、実施許諾者(ライセンサー)はそのライセンスにより一定の経済利益を得ることができ、被許
諾者(ライセンシー)もこのライセンスを得た技術の利用により新しい商品市場の開拓をすることがで
きる。したがって、技術取引を代表する「專利」(特許・実用新案・意匠の総称)及び専門技術(ノウ
ハウ)の実施許諾協定(ライセンス協定または契約)は、ライセンス技術の充分な利用に対し競争を促
進する効果をもつものである。しかし、技術ライセンス協定のライセンサーは、その市場での影響力を
増加させるため或いはライセンス協定の当事者間において相互の競争を回避するために、往々にして技
術ライセンス協定に若干の制限条項を附加し、その市場における地位を引き上げ高い経済利益を得よう
とすることがあるものである。これら限制条項に不当な運用があれば、当該ライセンス技術に独占が生
じるだけでなく、競争の制限や不公正競争が生じることとなり、「公平交易法」違反となる虞がある。
行政院公平交易委員会は、公平交易法の関連規範をさらに具体化するため、当委員会の過去の関係事案
における経験及び我国の現在の産業発展状況をもとに、また米国、日本及びEUの技術実施許諾に関す
る規定を参考にし、その運用基準をさらに明確にすることを期し、業者の遵守と関連案件処理に資する
よう本処理原則規定を定めるものである。
一、(本処理原則の目的)
行政院 公平交易委員会(以下本委員会という)は、技術ライセンス案件の処理にあたり、公
平交易法の関連規範を具体化し、運用基準のさらなる明確化を期し、業者の遵守と関連案件処理
に資するよう、本処理原則を定める。
二、(定義)
(一) 本処理原則において技術許諾協定(ライセンス協定)とは、特許実施許諾、ノウハウ
実施許諾、または特許及びノウハウの混合実施許諾に関するライセンス協定をいう。
(二) 本処理原則において特許とは、我国「專利法」により取得された特許または実用新案
をいう。我国において特許・実用新案を取得していないものにつきなされたライセンス
協定で、我国の特定の市場に対し競争の制限若しくは不公正競争の影響を生ぜしめるも
のについては、本処理原則の規定を準用する。
(三) 本処理原則においてノウハウ(専門技術)とは、方法、技術、製造工程、配合方法、
プログラム、設計またはその他生産、販売若しくは経営に用いることのできる情報で、
以下の要件に適合するものをいう。
1、一般の当該種類の情報に関わる者に、知られていないもの
2、その秘密性により実際的または潜在的な経済価値を有するもの
3、所有者がすでに合理的な秘密保護措置をとっているもの
(四) 本処理原則にいう「商品」は、役務を含むものとする。
三、(基本原則)
本委員会の技術ライセンス協定案件の審理は、ライセンサーが特許またはノウハウを有するこ
とにより、その特定の市場において市場力(market power)を有すると推定するものではない。
四、(本処理原則の審査判断の順序)
(一)
本委員会の技術ライセンス協定案件の審理は、先ず公平交易法第 45 条規定による審
査をするものとするが、形式上專利法などに基づく権利行使の正当行為であっても、実
質上特許権などの正当な権利の行使範囲を超え、專利法などの発明創作の保障の立法趣
旨に違背するときには、公平交易法及び本処理原則により処理をしなければならない。
(二) 本委員会の技術ライセンス協定案件の審理は、ライセンス協定の形式若しくは用語の
拘束を受けるものではなく、技術ライセンス協定が以下の特定市場(relevant markets)
に対し、実際に若しくは可能性として競争の制限または不公正競争の影響を生ずるもの
ではないかを重視するものである。
1、ライセンス技術を利用し製造または提供した商品の属する「商品市場」(goods
markets)
2、当該特定技術と代替性を有することにより範囲の画される「技術市場」
157
(technology markets)
3、商品の研究開発に従事する可能性をもって範囲の画される「革新市場」
(innovation markets)
(三) 本委員会の技術ライセンス協定案件の審理は、関連ライセンス協定内容の合理性を考
慮するだけでなく、以下の事項を斟酌しなければならない。
1、ライセンサーがライセンス技術について有する市場力
2、ライセンス協定当事者の特定市場における市場地位及び市場状況
3、ライセンス協定が増加させた技術の利用機会と競争排除効果の影響の程度
4、特定市場への進出の難易度
5、ライセンス協定の制限期間の長短
6、特定ライセンス技術市場の国際慣例または業界慣例
五、(公平交易法に違反しない事項の例示)
技術ライセンス協定が以下の事項についてした取決めは、公平交易法の競争の制限または不公
正競争の規定に違反するものではないものとする。ただし、前述 三、四により審査斟酌し不当
であるとされたものは、この限りでない。
(一) ライセンシーの実施範囲を製造、使用または販売に限るとする制限条項。
(二) 特許の有効期間内において、ライセンス協定に対してした期間の制限。ノウハウがラ
イセンサーに帰責できない事由において、ライセンスしたノウハウが営業秘密性を喪失
するにいたったもので、公開される以前にされたライセンス協定期間の制限も同様とす
る。
(三) ライセンス技術が製造過程の一部分である若しくは部品に属するものであり、計算上
の便宜のため、ライセンス技術の使用により生産した最終商品の製造、販売量またはラ
イセンス技術商品製造に必要な原料、部品の使用量若しくは使用回数をもって、ライセ
ンス費用の計算基準とするもの。
(四) 特許ライセンス費用の支払いを分割払いまたは実施後の後払いにより支払いするとし
たもので、ライセンシーが特許存続期間の満了後もその使用したライセンス技術の実施
費用を支払わなければならないとしたもの。 ライセンサーに帰責できない事由により
ノウハウが公開されても、ライセンシーは一定の期間一定の方法により当事者の自由意
思に基づいて決定されたライセンス費用を、継続してライセンス協定が失効または終了
となるまで支払わなければならないとしたもの。
(五) 技術ライセンス協定が、ライセンシーは改良技術または新しい応用の方法を非独占方
式により原ライセンサーにライセンス許諾すると取決めしたもの。
(六) 技術ライセンス協定が、ライセンシーにその最大の努力を尽くしライセンス商品を製
造、販売するよう取決めしたもの。
(七) ノウハウライセンス協定が、ライセンシーはライセンス期間またはライセンス協定満
了後も、営業秘密性を有するノウハウに対し秘密保持義務を有すると取決めしたもの。
(八) ライセンサーがライセンス費用の最低収入を確保するため、ライセンサーがライセン
シーに、ライセンス技術を利用した商品製造の最低量、ライセンス技術の最低使用回数
または商品販売についての最低量を要求する取決めをしたもの。
(九) ライセンス技術が一定の効能に達するようにしライセンス商品に一定の品質を維持さ
せるために必要な範囲において、ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンス技術
の商品、原材料、部品などについて一定の品質を維持する義務があるとするもの。
(十) ライセンシーはライセンス技術について、その移転または再許諾行為をしてはならな
いとするもの。但し、ライセンサーとライセンシーに別段の取決めのあるものは、この
限りでない。
(十一) ライセンスの特許が有効であるまたはライセンスのノウハウが営業秘密となってい
ることを前提とし、ライセンシーはライセンス協定満了後ライセンス技術を継続実施は
できないとするもの。
六、(公平交易法に違反する事項の例示)
(一) 競争関係にある技術ライセンス協定当事者間において、契約、協定またはその他の方
式の合意をもって、共同でライセンス商品の価格決定または数量、取引対象、取引地域、
研究開発領域等の制限をし、相互に当事者間の事業活動を制約し、特定市場の機能に影
響を与えるものは、公平交易法第 14 条規定に違反するものである。
(二) 技術ライセンス協定の内容が、以下に掲げる各号の一に該当し、特定市場に対し競争
の制限または公正な競争を妨げる虞のあるものは、公平交易法第 19 条第 6 号の規定に
違反するものである。
158
1、
ライセンス協定の当事者または関連事業が、競争商品の研究開発、製造、使用、
販売などについて競争行為をすることを制限するもの。
2、 顧客を隔離する目的で、特定の販売方式を使用しなければならないと規定するも
の、ライセンス協定相手方の技術使用範囲若しくは取引対象を制限するもの。
3、 ライセンシーに、その必要としない特許若しくはノウハウの購入、受入れまたは
使用を強制するもの。
4、 ライセンシーに、ライセンスを受けた特許若しくはノウハウについてした改良を、
独占の方式をもってライセンサーにフィードバックすることを強制するもの。
5、 ライセンスした特許が消滅した後、若しくはノウハウがライセンシーに帰責でき
ない事由により公開された後において、ライセンサーがライセンシーの当該技術
の自由使用を制限するもの、またはライセンシーにライセンス実施費用の支払い
を要求するもの。
6、 ライセンシーの技術ライセンス協定満了後における、競争商品の製造、使用販売、
または競争技術の採用を制限するもの。
7、 ライセンシーのその製造、生産したライセンス商品について、第三者への販売価
格を制限するもの。
8、 技術ライセンス協定が、ライセンシーのライセンス技術の有効性について論議す
ることを制限するもの。
9、 ライセンサーが、ライセンシーにライセンスした特許の内容、範囲または有効期
限等の情報の提供を拒否すること。
(三) 技術ライセンス協定の当事者が独占的事業者であるとき、本項に例示された行為形態
への該当が、公平交易法第 10 条の規定に違反するか否かについては、具体的な個別の
事案によってこれを判断する。
七、(公平交易法に違反する可能性のある事項の例示)
(一) 技術ライセンス協定の内容が、特定市場において競争の制限または公正な競争を妨げ
る虞を有するものは、公平交易法第 19 条第 6 号の規定に違反する可能性のあるもので
ある。
1、 特許ライセンス協定が、特許の有効期間において、我国の領域内でライセンス地
域の区分制限をするもの。ノウハウライセンス協定が、ライセンサーに帰責でき
ない事由によりライセンスしたノウハウが営業秘密性を喪失したもので、公開さ
れる前のノウハウに対する区域制限も、同様とする。
2、 制限の範囲が応用領域とは関連がないにもかかわらず、ライセンシーの販売範囲
または取引対象に制限をするもの。
ライセンシーの実施できるライセンス技術の応用領域及び範囲に制限条項を定
めるもの。
3、 ライセンシーの商品製造若しくは販売に上限を設け、またはその特許、ノウハウ
使用回数に上限を設け制限するもの。
4、 ライセンシーに、必ずライセンサー若しくはその指定するものを通して販売をす
るよう要求するもの。
5、 ライセンシーのライセンス技術使用の有無を問わず、ライセンサーがライセンシ
ーの特定の商品の製造若しくは販売量により、ライセンシーにライセンス実施費
用を支払うよう要求するもの。
(二) 技術ライセンス協定のライセンサーがライセンシーに対し、原材料、部品などをライ
センサー若しくはその指定する者から購入するよう要求するものが、ライセンス技術を
一定の効能に達するようにしライセンス商品の商標の信用評判を維持 またはノウハウ
の秘密性を保持するための合理的で必要な範囲内のものではなく、特定市場において競
争の制限または公正な競争を妨げる虞を有するものは、公平交易法第 19 条第 1 号また
は第 6 号の規定に違反する可能性のあるものである。
(三) 技術ライセンス協定が正当な理由なく、取引条件、ライセンス実施費用等について、
ライセンシーに対し差別待遇をする行為が、特定市場において競争の制限または公正な
競争を妨げる虞を有するものは、公平交易法第 19 条第 2 号の規定に違反する可能性の
あるものである。
八、(補充規定)
技術ライセンス協定の内容が、本処理原則の例示する行為形態に属さないものは、公平交易法
の規定に基づき、具体的個別の事案によりこれを判断する。
159
結び
企業にとっての知的財産権は、市場に於ける独占的な優位性を保つためのツールと言う機能が最も注
目されている。そのために、できるだけ登録権利の形態で知的財産権を確保して、初めてそれを効果的
に主張して行使できる。特に特許と商標の分野では、登録権利がない場合、他人の競合商品を排除する
ことが極めて困難。登録制度がない権利に関しても、権利を具体的に又効果的に主張して他人に対して
行使できるための留意が必要。いざ権利を第三者に主張したいときに困らないように、日頃から権利ご
との関連資料の収集と整理が肝心。例えば著作権者の証明に有効な書類、商標の著名性を立証する資料、
商標を維持するための使用証明資料、乃至他人の悪意を証明する契約書や所管などの書類資料等々、事
前に把握して用意しておかないと権利行使の際は不安。
一方、効果的な権利行使は以下の効果を期待できる:
――市場の優位性を確保する効果
被告側の対応をより迅速に誘致する;権利侵害行為を有効に差し止め、市場に於ける独占的な
優位性を保つ。
――威嚇効果
有力な登録権利があれば、侵害容疑者が比較的に権利者の要請を重視して、損害賠償やライセ
ンスの交渉において良い条件を引き出す要因になる。
――収益効果
有力な権利があれば、権利行使に費やす出費も民事損害賠償によって回収できるし、ライセン
ス契約が成立すればロイヤリティも収入源になる。
――処罰効果
悪質な侵害行為の主体に対して厳重な処罰を与え、再犯を根絶するほか、業界の関係者に見せ
しめの効果を与える。
――長期効果
知的財産権資産と運用による競争力と市場優位性が優良な企業イメージに反映する。製品の競
争力の強化と収益能力の向上のほか、強固なブランド力を発揮する。
■早急に権利を取得する重要性
出願と登録が必要な知的財産権で、特に特許の世界では、台湾はまだPCTを初めとする主な特許の国際
協力体制に加盟していないので、他の国々と比べて権利化のための制度上の融通が利かないこともあり、
権利化の法定期限に遅れない心構えが大変に重要であり、面倒ではあるが権利者方に留意いただきたい。
またWTOの加盟国同士が認めあう加盟国に於ける第一次特許出願日より一年間が優先権期限となり、その
期間内で台湾における特許出願の優先権主張が認められるが、PCTの枠組みほど長い猶予期間は容認され
ていない。
又、商標出願の世界に於いても、台湾はマドリード条約に加盟していないので、第三者が不法に先登録
を受けないうちに有効に台湾特許庁に対する出願を提起することも重要である。
■権利は鍛錬次第で強靱になる
著作権法の改正によって、WTO加盟国所属の国民の著作物は台湾に於いても原則上創作主義に基づいて
著作権が認められて来た。著作権者である事実を立証するための書物や記録を厳重に用意して権利行使
に生かせることが重要であるほか、ライセンスを与える場合でも複製許諾の範囲と形態が明確であるこ
とを心がける必要がある。デジタル・コピーとファイル・スワッピングの技術とネットワークが日進月歩
する中、音楽と映画・ビデオなどコンテンツ産業が消費者の無断複製やファイル交換によって深刻な業績
衰退を強いられてきた。一方ファイル交換のプラットフォームと提供する業者に対する著作権侵害の差
し止めと損害賠償民事判決と無断複製の刑事有罪判決が相次いで下されて、コンテンツ業界にとって不
利なビジネスモードへの歯止めとなる動きが見られている。
たとえ登録制度がない権利に関しても、権利者がより積極的に自己の権利の存在を立証する努力次第
で、その権利の存否と強弱も異なってくる。例えば、商標の著名性や商品の周知性を証明できれば、商
標の類似性の認定が成功しやすくなる。又商標や商品外観の著名性や周知性は、競合する他人の標章に
対して無効審判などを通して自社商標の排他性を積極的に主張して、有利な決定を受けることによって
初めて構築できるものであり、権利取得ばかりでなく、権利を強化する努力と要領も心得る必要がある。
登録制度があるにしろないにしろ、実体権利を確保できれば、上記の権利は何れも日本の個人又は会社
法人が台湾で民事訴訟又は刑事告訴と起訴を提起することが出来ることになっているので、権利を確保
した上の活用が肝要。
160
■多様化する権利行使のアプローチ
権利者側からすれば、第三者に権利を主張して行使する場合、目的によってアプローチが異なること
もある。又法律制度の改正によって目的に応じて取るべきステップも違ってくる。普通権利行使の方法
は訴訟提起を中心とするが、法律制度と実務運用によって、訴訟が権利者にとって必ずしも効果が高い
と言えない場合が増えている。
従来では余り利用されていなかった仮処分手続きは、近年になって第三者の特許権に対する不法侵害
行為を早急に差し止めるためによく利用される傾向がある。また、特許権の侵害に対する刑事罰の廃止
に伴って、より効果的に第三者の侵害行為を牽制するのにやはり先に仮処分を掛けることが重要になり
つつある。一方、2003年の民事訴訟法の改正によって、仮処分が原告申告主義から両方当事者進行主義
に切り替わったので、仮処分の迅速性も著しく低下してきた。そのため、例え仮処分を合法に提起できて
許可を得た場合でも、何れ本訴の提起が必要なので、そのためには、実体権利の有効な確保が絶対不可
欠な要素であることは大原則である。
2004年以降では、長期化する仮処分の代わりに、特許侵害の容疑者側の製造設備などの資産を損害賠
償金の担保として仮差し押さえを加える手法が多用されるようになってきた。特に中小企業の被告にと
って、抵当など担保権つきの製造機材や重要資産が押収されると、銀行に対する融資信用が破綻して銀
行から取引拒否を受けることになりかねず、絶大なインパクトがあるので、即効性をかなり期待できる。
又特許侵害の実体面の審理を一切行わず、担保金の金額も押収される資産の時価の二分の一乃至三分の
一程度で収まるので、原告側にとっては実に便宜的なプロセスである。ただ侵害に関する技術上の実体
鑑定をすべて先送りして経済的な打撃を即時に与えるこのやり方は、権利の乱用に流れる傾向も見受け
られるので、何れ裁判所の対応が慎重になる可能性もある。
又、従来では裁判所は証拠保全の申立に対する対応は極めて慎重で、申し立て人が主張する事実をあ
る程度証明できる具体的な証拠がなければ、公権力に基づく証拠を提示させる命令を下すことを避けて
いた。そのため、証拠保全の申立の実質的な意味が限られていた。しかし、法改正に合わせ2005年現在
では、裁判所側の見解がだいぶ緩和され、係争事件の筋を立てるべく不明瞭な法律事実を把握するため
に、最低限の証拠物の保全や証拠調査など行う必要が具申された場合、証拠保全の実益を認めて裁定を
下すケースが急増している。特許侵害事件に於いてもっとも肝心で困難な証拠入手の問題を、証拠保全
手続きである程度対処できると期待されている。
一方、台湾の現地企業も次第に特許紛争事件への対応方法を心得てきている。特許侵害の警告や提訴
を受けるや否や、一気に複数の無効審判を権利者の特許に対して提起して猛烈に逆襲するケースが増え
る。その際、権利者の特許権の有効性があらゆる観点から検証され、特許の明細書の記載が十分である
か、また明細書の内容の正確さがチェックされるので要注意。
中小企業の被告はよく資産を家族の名義に変更などして資産隠蔽を図るが、早急に資産を凍結できれ
ば、膨大な損害賠償責任で再犯防止と業界に見せしめの効果を計れる。そのため、資産を押収する効果
の仮差押が活発に利用されている。
なお、製品規格を巡る複数権利者の特許とノウハウのライセンス活動が2005年8月に下された行政裁判
所の判決によって連合(共同)行為に該当しないと見なされた。まだ最高行政裁判所の最終判決待ちだ
が、新鋭技術の共同企画の開発と推進に各社間の協力関係が構築されやすくなるだろう。
日系企業にとって重要なことの一つは、従来と異なり著作権法は2002年以降日本の企業と国民にも適
用されるようになった。そのため、日台間知的財産権権利取得を巡る優先権主張の枠がさらに拡大して、
日本企業の台湾での知的財産権の取得が一層活発になってきている。また、登録主義によって権利化を
図れる特許と商標のほか、WTOの枠内で創作主義によって権利行使が可能となった著作権保護に関する動
きも日本企業にとって競争力を増す要因になる。
権利の有効性を十分に確保する配慮と共に権利の早期取得と、権利の強化に関する投資が肝心。台湾の
WTO加盟がもたらすメリットを十分に生かし、より積極的な知的財産権を活用する市場戦略の展開が企業の成
功を支援する。企業体が健全な知的財産権資産を運用できれば、技術力と競争力の向上と収益力の強化、又
強固なブランド力の育成と発揮を通して、莫大な付加価値を期待できよう。
以上
161
II.台湾知的財産権関連判例
特許権・実用新案権・意匠権関連
01 抗がん剤原料特許権侵害 高裁「台湾東洋薬品に敗訴判決」
薬事法「試験免責」が争点
02 製法特許侵害の民事損害賠償の事例
03 明細書誤記事項の補正と訂正の制限に関する事案
04 CD-R 特許巡りフィリップスら三社に勝訴逆転判決
05 意匠権侵害訴訟、ティアックに勝訴判決
ティアック、台湾以外でも訴訟提起 損害賠償金追加請求
06 米 Eli Lilly & Co.が台湾ジェネリック製薬業者を特許侵害で提訴
地裁「試験的使用でない限り、医薬特許侵害物品の輸入利用には
セーフハーバーが適用されない」判断
07 ルイヴィトン新型バッグ、創作性不足 意匠出願も行政訴訟も退けられる
商標権関連
01 商品説明に岩出 101 株をアピール 地裁「品質表示が商標使用に該当せず」
02 ファッション誌「マリ・クレール」 化粧品類への商標登録に失敗
行政裁判所「雑誌の知名度から化粧品の著名商標と類推できない」
03 登録文字商標の変更使用 米ブランド「Naturally JOJO」にただ乗り
04 偽造タバコ関連商標侵害の民事損害賠償事案
05 著名商標か先登録商標を無効にした事案
06 類似商標にならない事案
07 先使用商標が著名商標に対抗できないと判断される事案
08 adidas 商標、台湾ブランド「JUMP」に類似 取消しへ
09「著名であればあるほど自他識別力が高まり 類否判断基準も緩めに」
最高行政裁判所 米スターバックスコーヒーの上告棄却
10 取扱商品が正規品かどうか、販売会社に確認義務有り
地裁「量販店にサプライヤーと連帯で賠償」命令
11『inside』はインテルが独占使用する英文字ではない!
最高行政裁判所、称呼類似が類似商標か 誤認混同のおそれの有無で判断
12「Game boy」がコンドームの商標に?
使い道の違いは明らか、行政訴訟 任天堂の負け
13 JT タバコ著名商標「Seven Stars」と「七星」の不当使用
14「GIOVANNI VALENTINO」はあの有名なヴァレンティノに類似しない
行政裁判所、知財局に新たな処分命じる
15 Jennifer Lopez vs. J.LO BY JENNIFER LOPEZ
162
混同誤認の虞あり 前者に商標登録不可の判決
16 コシヒカリ(越光米)、イネ品種 商標登録できない
17 台湾資生堂の化粧品商標『皇家』 他人の商号や社名等と同一で取り消しへ
18「海洋生成水」、商品の説明的表現 登録要件にあたらない
19 商標の類似非類似をめぐる裁判 象印に有利な判決
20 National vs. Natural、商標類否判断 混同の虞あると言い難い
21 キャラクター「ミッフィー」 に類似、gini Rabbit 登録商標取消処分維持
22 いちごキティ、立体商標登録開放前でも保護対象になりうる
23 地理的表示を含む商標 商品出所の混同を禁止
24 銘酒ブランド「女児紅」 商標登録認められない
25 商標「毎天」と「毎日 C」の類否判断
著作権関連
01 海賊版販売収入 5 万 地裁「1569 万元損害賠償金支払」命令
02 日本超人気漫画「スラムダンク」の無断変更・改作に有罪判決
03 Xbox ゲームソフト海賊版販売 3683 万元の損害賠償支払い命令
著作権法違反でこれまでに最高額
04 著作権と肖像権との衝突の取扱い
台北地裁「著作財産権より人格権である肖像権を優先すべき」判断
05 ライバル社の販促チラシに「×」が著作権侵害?
地裁「創作性のないものは著作権法の対象にならない」
06 白黒漫画を無断でカラーに 改作権侵害か不当改変禁止権侵害?
07 音楽ファイルの違法ダウンロード P2P サイト管理者とユーザーに有罪判決
08 P2P ファイル交換、刑法に抵触せず サイト「ezPeer」管理者に無罪判決
09 台湾漫画「SD2」は日本超人気漫画「slamdunk」第二部作ではない
著作者の同意を得ない改ざん、翻案等行為は著作者人格権侵害に該当
10 アルバム表紙を無断でサイトへ掲載 「販促目的」無罪判決確定
11 ポルノ映画は著作権保護対象から除外?
知財局 裁判所の見解は尊重するが世界ルールに従うべき
12 ネット上の音楽ファイル交換が著作権侵害 被告に執行猶予付きの判決
公平取引法関連
01 混同誤認やデッドコピーが成立せずとも第 24 条の不正行為は成立し得る事案
02 使用分野異なる商品名の襲用が公平取引法違反にならない事案
03 混同誤認と高度模倣の主張が却下された事案
163
特許権・実用新案権・意匠権関連
01 特許法――抗がん剤原料特許権侵害 高裁「台湾東洋薬品に敗訴判決」
薬事法「試験免責」が争点
■ハイライト
本件は、台湾東洋薬品工業が抗がん剤の臨床試験で使用した薬品 Gemcitibine(以下、係争薬品)が
原告米 Eli Lilly & Co.の有する特許発明に係る方法によって製造されたものとして、侵害行為の停止
及び侵害物品の使用等の差止め並びに損害賠償金を請求した事案である。
台北地方裁判所は、台湾東洋で行われていた臨床試験は薬事法に規定された特許権の効力が及ばない
「試験」に当たらないとし、原告特許を侵害した疑いのある係争薬品を中国から輸入し、臨床試験で使
用したことは原告特許権を侵害したとする判決を言い渡した。被告東洋薬品(以下、「控訴人」
)はこれ
を不服として高等裁判所に控訴した。
裁判番号:94 年度智上字第 26 号
裁判期日:2006 年 1 月 10 日
件名:損害賠償請求事件
台湾高等裁判所民事判決
控訴人:台湾東洋薬品工業
被控訴人:Eli Lilly & Co.
判決要旨:
1.控訴人は、中国の医薬品メーカーから係争薬品を輸入したことを認めている。言い換えれば、控訴人
は係争薬品を製造していない。このため、どのような製法を利用して係争薬品を製造したか、被控訴
人の製法特許と同一の製法で製造したか、その製法特許を侵害したかどうかについて比較する必要が
ない。本件において、控訴人は単に係争薬品を輸入しただけであり、ただその責任が問われるか問わ
れないかは、係争薬品を輸入したのは果たして非営利目的で研究試験に利用するためなのかどうかに
かかっている。
2.前掲行為に該当するものならば、輸入された係争薬品が被控訴人の製法特許で製造されたかどうかに
かかわらず、控訴人は免責を主張することができるが、そうでない場合は、係争薬品がどのような製
法で製造されたかを究明する必要が出てくる。被控訴人の製法特許で製造されたものでなければ、本
件において原告の特許権を侵害する行為にならない。逆に、被控訴人の製法特許を利用して製造され
たものならば、専利法(特許法)第 56 条第 2 項により、控訴人の行為が特許権侵害とみなされるこ
とになる。
3.控訴人は被控訴人の特許権範囲は製法に限り、その製法で製造されたものにまで及ばないと主張する。
しかしながら、専利法第 56 条第 2 項により輸入が禁止されるものは、特許製法そのものによって直接
作り出されたものをいう。異なる製法を利用して作り出したものは、たとえその成分又は治療効果が
同じであっても、禁止の対象にならない。
4.控訴人が中国医薬品メーカー、豪○会社から係争薬品を輸入した行為は特許権侵害にあたる、と本件
被控訴人が主張したのは、控訴人が輸入した係争薬品はいったいどういう製法で製造されたものかに
ついて証拠資料を提出していないからである。被控訴人が中国で豪○会社を相手取って提起した特許
権侵害訴訟においても、豪○会社が営業秘密等を理由に係争薬品はどういう製法で製造されたかにつ
いての証拠提出を拒否し、立証責任を果していない。
5.控訴人は、係争薬品が被控訴人所有製法特許でない他の方法によって製造されたという立証責任(民
事訴訟法第 277 条、専利法第 87 条第 2 項参照)を果さなかったため、被控訴人所有製法特許を用いて
製造した侵害物品と推定される(専利法第 87 条第 1 項参照)。当然のこと、被告が係争薬品を輸入し
たことは特許権侵害に該当し、損害賠償責任を負わねばならない。被控訴人は係争薬品に係る製法特
許の権利者であることを証明しており、権利侵害行為に対する損害賠償請求訴訟においては、これを
証明するだけで十分である。
6.控訴人が原料薬とか、臨床試薬とかを言っているが、これは専利法第 56 条第 2 項にいう「当該製法
特許によって直接製造されたもの」に関する概念とを混同させる意図によるもので、取るに足りない。
製法特許で直接製造された物であれば、原料にせよ、合成物にせよ、専利法第 56 条第 2 項が規定する
164
対象になる。
7. 専利法第 56 条第 1 項、2 項は「物の特許権者は、本法に別段の定めがある場合を除き、他人がその
同意を得ないでその物を製造し、販売の申し出をし、販売し、使用し又はこれらの目的のために輸入
することを排除する権利を専有する。製法の特許権者は、本法に別段の定めがある場合を除き、他人
がその同意を得ないでその方法を使用し、及びその方法によって直接製造された物品を使用し、販売
の申し出をし、販売し又はこれらの目的のために輸入することを排除する権利を専有する。」、第 57
条第 1 項 1 号は「特許権の効力は次の各号に及ばない。一.研究、教学、又は実験のため、その発明
を実施し、営利行為に属しないもの。
」と定めている。控訴人が被控訴人の許諾を得ないで、無断で被
控訴人所有特許製法と同一の方法で製造された係争薬品を輸入・使用し、しかも薬事法第 40 条ノ 2
第 5 項と専利法第 57 条第 1 項 1 号に定める免責事由に該当しないため、正当かつ合法な権原なしに被
控訴人の権利を侵害した。損害賠償については、控訴人には輸入行為があったものの、
「販売」等営利
行為をしておらず、また被控訴人がどのように損害を受けたかの事実についても証明できないため、
200 万元の損害を受けたという主張は根拠がなく、認めがたい。
8.被控訴人が侵害排除を請求した範囲は、
「控訴人が、特許第 66262 号、特許第 110476 号、特許第 109978
号の使用、並びに係争薬品についての使用・販売の申し出・販売・輸入及び係争薬品が含まれた薬品
の輸入をしてはならない」とされているが、法律の定めるところにより、被控訴人が請求できる範囲
は「控訴人が、特許第 66262 号、特許第 110476 号、特許第 109978 号の使用を禁止し、また研究、教
学又は試験のために非営利 目的でその発明を実施した場合を除き、前掲特許製法で製造された係争
薬品の使用・販売の申し出、販売・輸入又は前掲特許製法で製造された係争薬品が含まれた薬品の輸
入をしてはならない。」となっており、これを超えた部分は認めない。
9.控訴人が勝訴した部分について、双方当事者はそれぞれ担保を提供し、仮執行の宣告、仮執行の免除
を申立てているため、法によりこれを認めるべきである。被控訴人が敗訴した部分については、仮執
行の申立てが根拠を失ったため、あわせて棄却する。原審では、前に述べた認めるべき部分に関する
決定は妥当であり、控訴趣意書でこの決定を破棄すべきという請求には理由はなく、これを棄却する。
一方、被控訴人の請求のうち、認めるべきでない部分を、原判決が認めた決定には誤りがあったため、
控訴人のこの部分についての破棄請求は理由があるとして、本裁判所において原判決のうちこの部分
を破棄し、並びにこの部分に関する被控訴人の訴え及び仮執行申立てを棄却する。
以上
165
02 特許法―製法特許侵害の民事損害賠償の事例
■ハイライト
美商瑟蘭斯國際公司(Celanese)は、中石化公司が酢酸の生産過程でその特許権を侵害したとして、
告訴を提起した事件について、昨日また一件増え、高雄地方法院が中石化は更に瑟蘭斯公司(Celanese)
に 2382 万台湾ドルを賠償しなければならない旨の判決を下した。この事件は去年の9月に高雄地方法院
により初めて言い渡された。中石化は 8 億 9679 万台湾ドルを賠償しなければならない旨の判決に対して、
中石化が上訴を提起したが、その間に瑟蘭斯(Celanese)は、異なる時期にも、中石化によるその他の
権利侵害行為があると認め、新たに告訴を追加した。中石化は、中石化の酢酸の生産方法は米国会社孟
山都(モンサントス)が許諾したもので、しかも自ら技術を研究した上で酢酸を生産し、瑟蘭斯(Celanese)
の特許技術を侵害していないと主張した。調査の結果、裁判官は、瑟蘭斯(Celanese)が告発した権利
侵害の部分については、モンサントスが許諾したものではないと認めており、且つ中石化の従業員は審
理の時、会社所有の工場で使用されている反応液に関し、1993 年にその特許を申請したが、取得した特
許に従って使用しているのではないと認めた。一方、裁判官は中石化の反応液組成及び比例の配置を、
金属工業発展センターでテストした結果、瑟蘭斯(Celanese)の特許事項と一致しており、また原告の
特許を侵害した行為は、主観的な故意によるものであるはずであると表明した。
裁判番号:89 年重訴字第 1005 号
裁判期日:2006 年 1 月 19 日
裁判事由:損害賠償
原
告
美國瑟蘭斯國際公司(Celanese International Co
被
告
中國石油化學工業開發股份有限公司
rporat.
判決要約
1. 原告は台湾発明特許第 27572 号「メチル・アルコール及び一酸化炭素による酢酸の生産方法」
(以下
係争の特許と称し)の特許権者である。原告は 1995 年 8 月に市場で被告が製造した酢酸を購入し、並び
にテストのために米国西康公司(The Cecon Group Inc.)に送付し、被告の酢酸生産の操作条件を推知
できることになり、被告には係争の特許権を侵害した行為がある旨認知した。
2. 原告の特許侵害の損害賠償請求権は消滅時効を超えているかどうか?
(1) 本件原告は、被告が前記の時期にその特許権を侵害したと主張しており、その損害賠償請求権の
行使は、請求権者が行為又は損害、及び賠償義務者を知ったときから、二年間行使しなかったとき
に消滅する。
また、損害及び賠償義務者を知ったことは、明らかに承知したことであり、もし、当事者の間に
知った時間に関する紛争がある時、賠償義務者は先に請求権者が知った事実に対し、証拠提出の責
任を負わなければならない(最高法院 72 年台上字第 1428 号判例主旨參照)
。
(2) また前記の新聞記事に「ここ数年来、瑟蘭斯公司(Celanese)が中石化の酢酸生産能力が急激に
増加しているが、生産設備が更新されていないことを発見したため、1995 年にその会社が生産し
た酢酸を購入し、並びに米国西康公司(鑑定専門機関)に送付し、テストした結果、その製品は瑟
蘭斯公司(Celanese)の特許範囲で示されている操作条件で製造され、中石化は特許権を侵害した
嫌いがあると認められたので、中石化に対し告訴を提起した」等の文字が記載されているが、その
記事は記者によるものであり、その内容は伝言に過ぎないもので、その信憑性に疑いがあり、且つ
前記の刑事告訴状により、原告は米国西康公司でその製品をテストしたところ、被告が係争の特許
権侵害にかかわっていることを「疑い」
、また前記の記事によって原告が被告の権利侵害行為を「発
見」もしくは「察知」することは、前記の刑事告訴状に記載されていることと違い、原告自身が確
実に知った意思表明ではなく、知っているかどうかを他人は了解することができないので、前記の
記事で原告が 1995 年 8 月に本件権利侵害行為を知った事実を認定することができない。
そのため、
原告の事件損害賠償請求権は時効にかかっていない。
(3) 前記のことにより、1990 年 11 月 12 日から同年 12 月 20 日までの間に被告の大社廠酢酸工場で
生産された酢酸の反応液成分及び組成比率は、確実に係争特許の特許申請の範囲内のもので、モン
サントスが教えた方法で生產 し、又はその添加の ST-90 非よう化物塩類もしくは 8wt%よう化リチ
ウム、又は原告の許諾で係争特許を使用したこと等の被告の弁解は、すべて信用できないものであ
る。被告の製品は原告の特許権を侵害したと推論できる。
4.被告の損害賠償背金の金額
166
(1) 被告は 1990 年 11 月 12 日から同年 12 月 20 日までの間に酢酸生産の方法により係争の特許を侵
害したことは、前述の通りで、当時の特許法(即ち 1986 年 12 月 24 日修正の特許法)第 82 条第 1 項
第 1 、2 号は、前条によって損害賠償を請求するときは、次の各号の一を選んでその損害を計算す
ることができるとしている。
一、民法第 216 条の規定による。但し、証拠方法を提供してその損害を証明することができな
いときは、特許権者は、その特許権を実施して得られる利益を差引いた差額をその受けた損
害の額とする。
二、侵害者が権利侵害行為によって得た利益による。権利侵害者がコスト、又は必要な経費に
ついて立証できないときは、当該部品を販売して得た収入の全部をその所得利益とする。従
って、侵害者は前記の規定による計算方法の一を選んでその損害を計算することができる。
本件の原告は、侵害者が権利侵害行為によって得た利益を本件の賠償金額の基準とすると表
明したことは、法によるものであり、違法とは言えないので、許可すべきである。
(2)次に原告は、陳福隆の前記の報告書により、前記の権利侵害時期に被告所有の大社廠酢酸工場
での平均日産量は 260 トンで、また 1990 年 2 月から 1991 年 1 月までの間に酢酸 1 トンあたり
の利潤は 2,966. 4 台湾ドル(ファイル 1 第 79、82 ページ)であるため、被告が権利侵害行為に
よって得た利益は 30,079,296 台湾ドルであると主張した。一方、被告は、前記の時期に平均稼
動日産量(効率産量即反應生成之酢酸量−不合格酢酸量+酢酸重煉量)は僅か 205.923 トンであ
り、且つ原告が主張した前記の利潤額はコスト及び費用を差引いていない額で、前記の時期に酢
酸を生産・販売したが、利潤がなかったと主張し、並びに被告所有の大社廠前期時期の操作日誌、
生産稼動日誌及び日産統計表(ファイル 4 第 100- 178 ページ)、大社廠 1991 年度の売上高明細
書、売上原価明細書、酢酸 1991 年度の損益計算書等(ファイル 4 第 222-246 ページ)を提出し
た。陳福隆の前記の報告書に記載されている日産量は、会計資料で分析した後、得た概括的な数
字であり、また前記の操作日誌は效率日産量、稼動日産量を毎日記録したものであり、両者を比
べると、操作日誌で統計された数量の方がより正確であるため、毎日の平均産量は 205.923 トン
で計算するという被告の証言は信用できる。さらに被告は、前記の時期に酢酸を生産・販売した
が、利潤がないと主張したことについて、利潤は 1991 年度の酢酸の売上高から、酢酸の産量が
総産品数量における割合に被告の全部営業費用をかける金額、利息費用、及び在庫損失、操業停
止による損失等のコストを差引いた額であるが、被告の各項製品を生産するための営業費用は必
ずしも同じではなく、前記の利息費用、在庫損失、操業停止による損失等については、酢酸の生
産にかかわる更なる資料もなく、詳細が分からないので、被告が提供した前記の明細書、損益計
算書は、酢酸生産でその費用、コストを支出したことを証明することができない。その反面、陳
福隆の報告書により、酢酸 1 トンあたりの値段は 450 ドル(即ち、12,375 台湾ドル)で、1 トン
ごとの生産コストは 9408.6 台湾ドルであることが分かるので、その報告書による酢酸の生産・
販売の利潤は 1 トンにつき 2,966.4 台湾ドルで、コスト又は費用を差引いていないことになる。
双方の前記の陳述及び提出した証拠から見えると、原告主張の 1 トン 2966.4 台湾ドルで被告の
権利侵害行為によって得た利益を計算するのが信用できると思われ、この計算により、被告が前
記の時期に権利侵害行為によって得た利益は 2,382 万 3,150 台湾ドル(2,966.4
×39×205.923=23,823,150、台湾ドル以下は四捨五入)となる。
(3) 被告の権利侵害が故意であったと原告が主張したことは、起訴時(即ち、1994 年 1 月 21 日
修正)の特許法 85 条第 3 項の規定により、2 倍で賠償金額を計算することができるが、1 月 21
日修正の特許法には遡及適用の特別規定がなく、不遡及原則により、被告が 1990 年 11、12 月
に係争の特許権を侵害した行為は、1994 年に修正、施行した規定が適用できない故、被告の前
述の行為には故意があったか否かを審査するまでもないので、原告の前記の主張は信用できな
い。よって、被告の損害賠償責任は上記の計算式通りの金額に止まり、2 倍の加算の適用は免れ
る。
5. 前記のように、被告は原告の許諾を得ずに、1990 年 11 月 12 日から同年 12 月 20 日までの間にその
大社廠酢酸工場で係争特許の特許申請範囲で示している技術方法により酢酸を生産して原告の特許権を
侵害し、並びに 2,382 万 3,150 台湾ドルの利益を得たため、原告は特許法に関する規定により 2,382 万
3,150 台湾ドル、及び起訴状写しの送達の翌日(即ち、2000 年 11 月 16 日)から弁済日まで、年 5%で計
算した利息の給付を被告に要求することは、根拠があるので、許可すべきであり、またこの範囲を超え
た請求は、正当ではないため、却下すべきである。
6. 原告は前記の法律関係に基づき被告に賠償を請求したことについては、一部に勝訴判決が下されたの
で、他に不当利得の法律関係による請求は、審査する必要がなく、また双方のその他攻撃防禦の方法は、
本件勝敗の判断に影響を及ぼさないので、一々論述しないことを、ここに説明する。
167
7. 双方は担保を提供することに同意する旨を陳述し、仮執行許可の宣告を申立てており、前記の許可さ
れた部分については、妥当であるので、適当な担保金額を定め、許可すべきである。また前記の棄却さ
れた部分に関しては、原告の仮執行の申立てには根拠がなくなったことから、合わせて棄却すべきであ
る。
8. 結論:原告の訴については、一部に理由があり、一部に理由がないので、民事訴訟法第 79 条、第 390
条第 2 項、第 392 条第 2 項により、主文の通り判決する。
以上
168
03 特許法―明細書誤記事項の補正と訂正の制限に関する事案
■ハイライト
所謂「誤記の事項」については、一般にその技術に習熟した技術者がその普遍的で共通な知識に基づ
き、客観的に特許説明書の全体内容及び、上下文からすぐに明らかに不正確な誤りであると識別でき、
同時に考え込まなくてもその誤りの本来の意味をどのように訂正復元すればよいかわかるものを指し、
これにより解読時に実質内容の理解に影響がない事項を誤記事項とする。審定広告後或いは特許権取得
後の補充、修正或いは訂正に基づき実質変更であるかどうかを判断する際は、審定広告特許許可の特許
説明書若しくは図式にある内容を基準とし、出願日に提示した内容を基準にするものではない。しかも、
特許説明書或いは図式の事項を補充、修正、訂正する場合、審定広告特許許可の特許説明書若しくは図
式の提示する範囲内でなければならず、且つ審定許可広告が特許を許可した発明若しくは特許出願中の
発明の変更であってはならない。本件訂正の前後が出願特許範囲の変動にあたる疑いをよく調べてみる
と、
「ミクロン」を「ミリメートル」に変更しており、小から大、つまり変更前のミクロンから変更後の
ミリメートルの間は全て変更後の特許範囲であり、係争案件特許出願範囲第 25 項の「研磨工具」、第 29
項の「基体材料」及び第 39 項の「薄片」
、その厚さを 10‒6 から 10‒3 に拡大し、訂正後その意味は元の
審定版の方が広く、明らかに係争案件特許の実質を変更しており、専利法第 67 条で許されている訂正は
実質を変更しないものに限るという趣旨と不一致である。ゆえに、係争訂正は実質変更の疑いがあり、
誤記事項の訂正ではあっても、これをしてはならない。
裁判番号:94 年訴字第 357 号
事件摘要:特許事務関連
裁判期日:2006 年 01 月 19 日
資料元:司法院
関連法律:行政程序法第 102 条(2005.12.28)
専利法第第 67 条(1994.01.21)
台北高等行政方院判決
原告
宋○○
被告
経済部知恵財産局
判決要約
本院の判断は以下のとおりである。;
1.調べてみると、特許訂正案件の訂正不許可処分は、訂正申請人の自由と権利を制限したり剥奪したり
するものではなく、処分前に訂正申請人に意見陳述の機会を与えなかったことに、不当はない。しかも、
被告のこれまでの訂正案件処理方法では、訂正不許可の処分前においては、いずれも訂正申請人に意見
陳述の機会を与えていないので、本件も行政程序法第 102 条規定に違反していないことを、まず説明し
ておく。
2.次に、本件の争点は原告が本件出願特許範囲第 25、29 及び 39 項の「ミクロン」を「ミリメートル」
に訂正したことが、(1)誤記事項にあたるのか(2)実質の変更にあたるのか?どうかである。
3.所謂「誤記の事項」というのは、一般にその技術に習熟した技術者がその普遍的で共通な知識に基づ
き、客観的に特許説明書の全体内容及び、上下文からすぐに明らかに不正確な誤りであると識別でき、
同時に考え込まなくてもその誤りの本来の意味をどのように訂正復元すればよいかわかるものを指し、
これにより解読時に実質内容の理解に影響がない事項を誤記事項とする。
調べてみると、係争案件第 25、
29 及び 39 項は、訂正後以下 3 項目の内容となる。
25、出願特許範囲第 24 項で述べている研磨工具の内、少なくとも一層は 1「ミリメートル」の厚さか
若しくはさらに薄い。
29、ある種の研磨工具で、少なくとも一層は粒状研磨剤の基体材料を含むものであり、その層の厚さ
は 1「ミリメートル」若しくはさらに薄く、またローラーでその基体材料を展圧し、粒状研磨剤の
分布をさらに均一にする。
39、ある種の粒状研磨剤をその基体材料層に均等に分布させる製造方法は、まず基体材料と粒状研磨
剤を混合して薄片にし、再度展圧方式で薄片の厚さを 1「ミリメートル」まで若しくはさらに薄
くする。
169
本件 89 年 6 月 21 日審定広告の特許説明書内容からすると、本件「特許出願範囲」では材料の単位に
言及しており、即ち第 25 項、第 29 項、第 39 項、以上各項目は全て「ミクロン」が単位になっている。
しかし、係争案件審定広告の中国語説明書及び図式内容に照らしてみると、その内説明書第 23 項第二段
では「たとえば、ダイヤモンドのミクロン粉末、材料粉末を既に発見し…」
「その材料は少なくとも 0.1
㎜の厚さに展圧され…」等と言及しており、24∼27 ページの中では、積載固定ダイヤモンド研磨剤粒子
若しくは研磨顆粒の基体、基材若しくは類似物の記載には、すべて「㎜」つまりミリメートルの単位を
標示使用している。また係争案件説明書 5、15、16 ページのところには、いずれも「粒状研磨剤」及び「基
体」の厚さに言及する際、粒状研磨剤「40/50 米国メッシュ」は粒径が「400−297 ミクロン(或いは
0.4-0.297 ミリメートル)」と述べていて、基体材料また粒状研磨剤の 1.5 倍となっている。上記中国語
説明書に基づき、この項目の専門領域に習熟した技術者が判断すれば、方法の中の技術部分は容易に類
推でき、審定広告の第 25 項、第 29 項、第 39 項、各項目は全て「ミクロン」が単位になっていることか
ら、誤記事項に間違いないと思われる。
被告が訴願の答弁時に高○図書有限公司出版、新○○書局総販売代理 81 年 6 月 15 日六版の「工具機」
という本の 11 ページの記載を提出し、表面加工精確度のサイズはその表面加工の精確度が 1 ミクロンで
あり、その可能性があるが、しかしながら係争訂正案件は基体材料或いは薄片物品の厚さが 1 ミクロン
か若しくはさらに薄く、ゆえに両者の比較基礎が異なっているので、論述の基礎とすることはできず、
本判決は再度深く討論する必要はない。
また、双方係争中の上記本件特許説明書で粒状研磨剤は 40/50 或いは 100 米国メッシュであるという
例を挙げ、誤記の証明とすることができるかどうかという点は、判決結果と無関係であり、本院もいち
いち審理して説明を付すことはしない。
4.審定広告後或いは特許権取得後の補充、修正或いは訂正は、実質の変更であるかどうかを判断し、審
定広告が特許を許可した特許説明書或いは図式に提示した内容を基準とすべきであり、出願日に提示し
た内容を基準とするものではない。しかも、特許説明書若しくは図式の事項を補充、修正、訂正する場
合、審定広告特許許可の特許説明書或いは図式に提示してある範囲内でなければならず、なお且つ審定
許可広告特許許可の発明或いは特許出願中の発明を変更するものであってはならない。本案件訂正前後
が出願特許範囲変動の疑いがあるかどうかは、
「ミクロン」を「ミリメートル」に変更することが小を大
へと拡大することであり、つまり変更前のミクロンから変更後のミリメートルの間は、全て変更後の特
許範囲であり、係争案件特許出願範囲第 25 項の「研磨工具」
、第 29 項の「基体材料」及び第 39 項の「薄
片」、その厚さを 10‒6 から 10‒3 に拡大し、訂正後その意味は審定版の方が広く、明らかに係争案件特許
の実質を変更しており、専利法第 67 条で許されている訂正は実質を変更しないものに限るという趣旨と
不一致である。ゆえに、係争訂正は実質変更の疑いがあり、誤記事項の訂正ではあっても、これをして
はならない。
5.従って、被告の所為は訂正不許可の処分とされるべきであり、上述法律規定及び説明から見ても間違
いはなく、訴願が棄却されたことにも誤りはなく、そのままであるべきである。本件原告の訴えは理由
なきものとして、棄却する。上記結論により、本件原告の訴えは理由なきものとして、行政法第 98 条第
3 項前段に基づき、判決を主文のとおりとする。
以上
170
04 CD-R 特許巡りフィリップスら三社に勝訴逆転判決
➮2005 年 8 月 11 日台湾高等行政裁判所判決「92 年度訴字第 908 号」
<事実の概要>
台湾 CD-R メーカー各社に対する CD-R 関連特許の一括ライセンスが公平取引法で禁じられている連
合行為(日本独禁法にいう共同行為)にあたるとされ、公平取引委員会(以下、公平会)から過料処
分を受けたフィリップスら三社が起こした行政訴訟で、台湾高等行政裁判所は 11 日、公平会の処分を
取り消し、原告側によるライセンス供与は連合行為にあたらないとする逆転判決を言い渡した。
判決では、市場状況の著しい変動が生じたにもかかわらず、ライセンシーに交渉の機会を与えず、
従来の実施料率の算定方法を維持していたなど違法な事実があったことを認定している一方、三社が
それぞれ保有する CD-R 関連特許技術は代替不可能な「相互補完性」を有するものであって、互いに競
い合う関係が存在しないことから、連合行為に当たらないと認定し、公平会の見解を覆した。
1999 年、台湾 CD-R メーカー三社は、フィリップスらがライセンス料の料率を共同で決定する合意
に基づいて一括ライセンスの形で台湾 CD-R 特許技術市場で独占的な地位を築き上げ、ライセンス料の
料率を不当に維持し、またライセンシー側に実施許諾に関する重要な情報の提供を拒否し、特許権の
有効性への異議を禁止するなど市場支配力を濫用したとして公平会に告発した。公平会は調査を経て
公平取引法違反と認定し、かかる行為を直ちに停止することを求めるとともに、三社に併せて 1400
万元の過料処分を下した。これを不服としてフィリップスらは訴願手続きを提起したが、処分を逆転
させることに失敗し、転じて高等行政裁判所に裁判を起こした。
裁判が行われていたここ数年の間に、光ディスク産業の環境は大きく変化している。フィリップス
ら三社はとっくに一括ライセンスを取り止めており、各社独自のライセンス供与を行い、ロイヤリテ
ィーを徴収している。要するに、当初問題とされていた「連合行為」はもはや存在しない。あるメー
カーの話しでは、裁判の結果が出たところで、影響を受けることはない。フィリップスら三社の「連
合行為」を公平会に告発したメーカーも、今は一社だけが生産を続けているという。
<解
説>
公平会は「原告らは市場で水平的な競争関係にあり、CD-R 関連特許をそれぞれ保有している。ソニ
ーと太陽誘電はライセンス供与に関してフィリップスに一任し、フィリップスが仕切る形で各社の保
有する関連特許をまとめて台湾 CD-R メーカーに一括ライセンスを受けさせた。相互間の競争が排除さ
れたことによって、市場機能が妨害され、公平取引法第 14 条違反になる」と主張している。これにつ
いて、判決では公平会と異なる見解が次のように示されている。「公平取引法第 14 条に定めた『連合
行為』を構成する主体的要件から、製造販売の同一の段階において水平的競争の段階にあることが必
要である。但し、競争関係が存在するかしないかは事業者が提供する商品又は役務に代替可能性があ
るかないかによる。裁判所が調べたところ、CD-R の技術分野においては、ライセンス供与を受けよう
とする者がフィリップスら三社の特許技術を同時に使用しなければ CD-R を作り上げることができな
い。フィリップスら三社が保有する特許技術に相互補完性があり、他の技術への代替が不可能である。
したがって、三社の間には競争関係が存在しない。競争関係がなければ、当然のこと公平取引法上の
『連合行為』に当たらない。」
次に、
「ライセンス料の算定方法の不当な価格維持」、
「特許権の有効性への異議の拘束(ライセンス
契約の締結を条件にライセンスの対象となる特許権への無効審判請求の取り下げを要求)」は独占的な
市場支配力の濫用であって、公平会が公平取引法第 10 条第 2 号、同条第 4 号違反と認定し、処分した
部分について、判決では、原告らによる不法行為であったことを確認したうえ、処分の根拠となる条
文の適用に誤りがあったことを指摘し、原告らを独占事業者と認定・公告しないまま(注:1999 年 2
月 3 日の法改正で独占事業の公告に関する第 10 条第 2 項の規定は削除。改正法の発効前にたとえ市場
支配力を濫用した行為があったとしても、主務官庁による独占事業公告の手続きを経ない限り、罰さ
れるべきではない)、独占禁止関連規定が引用された処分の適法性に問題があるとして、原処分を取り
消すことにした。
主な参照条文:
公平取引法(2000.04.26)
第 7 条 本法において連合行為とは、事業者が契約、協議その他の方式の合意によって、競争関
係のある他の事業者と共同で商品又は役務の価格を決定し、又は数量、技術、製品、設備、取引相
手方、取引地域等を制限し、互いに事業活動を拘束する行為をいう。
171
第 14 条 事業者は連合行為をしてはならない。・・・
第 41 条前段 公平取引委員会は本法規定に違反した事業者に対して、期限を定めてその行為の停
止、改善又はその是正に必要な措置を命じ、また新台湾ドル 5 万元以上、2500 万元以下の過料
に処することができる。
公平取引法(1999.02.03)(2000.04.26)
第 5 条 本法において、独占とは、事業者が特定市場において競争のない状態、又は圧倒的な地位
にあって、競争を排除できる能力を有することをいう。
二以上の事業者が、実質的な価格競争をしないが、その全体の対外的関係には前項規定に該当
する場合があるときは、独占とみなす。
第 1 項においていう特定市場とは、事業者が一定の商品又は役務について競争を行う区域又は
範囲をいう。
第 10 条 独占の事業は、次に掲げる行為を行ってはならない。
第2号
第4号
【商品の価格又は役務の報酬について不当な決定、維持又は変更を行うこと。
】
【その他市場での地位を濫用する行為。
】
公平取引法施行細則(1999.08.30)
第 2 条 本法第 5 条においていう独占とは、次に掲げる事項を参酌してこれを認定しなければなら
ない。
一.特定市場における事業の占有率。
二.時間、空間などの要素を考慮して特定市場が変動するなかでの商品又は役務の代替可能
性。
三.事業が特定市場の相場への影響力。
四.他の事業が特定市場へ参入するにあたり、容易に克服できない困難の有無。
五.商品又は役務の輸出入状況。
第3条
事業が次の各号のいずれにも該当しないときは、前条独占事業の認定範囲から除外する。
一.特定市場における事業の占有率が二分の一に達する。
二.特定市場における事業全体の占有率が三分の二に達する。
三.特定市場における事業全体の占有率が四分の三に達する。
前項各号の場合のいずれに該当するものであって、その個別事業の当該特定市場における占有
率が十分の一に達していないとき、又は事業の前の会計年度の売上総額が新台湾ドル十億元に達
していないときは、同事業を独占事業の認定範囲から除外する。
事業の設立又は事業者の提供する商品若しくは役務の特定市場への進出が法令、技術の制限を
受け、又はその他市場の需給に影響し、競争能力を排除するに足りる事情があるときは、前二項
の認定範囲から除外される事情があっても、中央主務官庁はなおそれを独占事業と認定すること
ができる。
172
05 意匠権侵害訴訟、ティアックに勝訴判決
ティアック、台湾以外でも訴訟提起 損害賠償金追加請求
➮台湾桃園地方裁判所 2005.06.13 民事判決「93 年度智字第 7 号」
<事実の概要>
日本「ティアック株式会社」が、台湾最大手ドライブメーカー「広明光電」をティアック所有薄型
CD-ROM ドライブに係る意匠権を侵害したとして権利侵害行為停止、損害賠償等を求めた裁判で、台湾
桃園地方裁判所は 13 日、原告側の請求をすべて認める判決を言渡した。これについて、ティアックは
台湾以外でも広明光電を相手に侵害訴訟を起こし、100 万元では損失補てんができないと更なる損害
賠償金の支払いを求める考えを示した。
台湾専利法(日本の特許法、実用新案法、意匠法三法に相当)における特許権、実用新案権、意匠
権の侵害への刑事罰則規定は 2003 年の法改正により同年 3 月 31 日付けで廃止されたため、ティアッ
クが専利法違反で自訴を提起した刑事裁判について、裁判所は免訴の判決を言い渡した。これを受け
て、その刑事裁判に附帯する民事訴訟、つまり本件は、原告ティアックの申立により民事法廷に移送
され、原告側勝訴の判決が出されたわけである。
原告によれば、台湾薄型 CD-ROM ドライブメーカー四社のうち、広明光電だけがティアックからライ
センス供与を受けていない。かつて広明光電の親会社である広達電脳(Quanta Computer)が生産する
ノートパソコンに採用される薄型ドライブの大半はティアックから仕入れていたが、その子会社「広
明光電」は 1999 年設立以降、ティアック保有の意匠権(台湾での登録番号:中華民国第 057117 号新
式様専利)に係る物品と外観が非常に類似している、「超薄型 SCR-242 機種 CD-ROM ドライブ(以下、
係争物品)」を無断で生産しているという。
<解
説>
原告は民法第 184 条第 1 項、専利法第 129 条(同法第 84 条第 1 項準用)により、1.係争物品その
他原告が享有する中華民国第 057117 号新式様専利(以下、原告所有意匠権)と同一又は類似の物品の
製造、販売、使用又はこれらの目的のための輸入を直ちに停止すること、2.100 万元の損害賠償金、
3.仮執行の宣告、4.訴訟費用の負担を求めた。
一方、被告側は「係争物品の形状と同一又は類似の意匠は原告の出願前に既に刊行物に見られてお
り、新規性、創作性がないうえに、当該技術に習熟した者が容易に考えついたものである」と原告所
有意匠権の有効性に疑問を投げつけ、さらに原告側が提出した侵害鑑定報告は「専利侵害鑑定基準」
による全要件と逆均等論という形式要件すら満たしておらず、まして分析や対比等実質的な内容の信
用度も低いとして反論した。
原告所有意匠権に対する被告側の無効審判請求について知的財産局は無効審判不成立の審決、その
後の処分取消しを求める訴願手続き、行政訴訟においても全て知的財産局の見解に同調する結果が出
ていることから、係争意匠権に新規性があること、そして当該技術に習熟した者でも容易に創作でき
ないということは証明されたことになる。また裁判所の嘱託を受けて公正な第三者鑑定機関として鑑
定にあたっていた中華民国工業設計協会の結論から、原告所有意匠権の権利範囲に係争物品が含まれ
ていることをはっきりさせることもできた。
原告と被告の会社はともに薄型 CD-ROM ドライブのメーカーであり、競争関係にあった。何らの正当
な権原も持たない被告による意匠権侵害行為は原告の会社の市場シェアを低下させ、計り知れない損
害をもたらした。権利侵害行為が行われていた間の市場におけるノートパソコン用ドライブの需要が
大きかった分だけ原告が受けた損失は大きい。原告が弁護士経由で送った警告書に被告は 3 年余りに
わたって対処してこなかったため、原告側が主張する 100 万元の損害賠償金は過当ではないと考えら
れる。
主な参照条文:
専利法
第 84 条第 1 項 特許権が侵害されたときは、特許権者は損害賠償を請求し、並びにその侵害の排
除を請求することができる。侵害のおそれがあるときは、その防止を請求することができる。
第 123 条第 1 項 意匠権者は、意匠を施すことを指定した物品について、本法に別段の定めがある
場合を除き、他人がその同意を得ずに当該意匠に係る物品及びそれに類似する物品の製造、販売
の申し出、販売、使用若しくはこれらの目的のための輸入をする行為を排除する権利を専有する。
第 128 条第 2 項
第 12 条第 1 項の規定に違反し、又は前項第 3 号の事由により無効審判を請求す
173
る者は、利害関係人に限られる。その他の事由については、何人でも証拠を添付すれば、特許所
管機関に無効審判を請求することができる。
第 129 条第 1 項 第 27 条、第 28 条、第 33 条から第 35 条まで、第 42 条、第 43 条、第 45 条第 2
項、第 46 条、第 47 条、第 60 条から第 62 条まで、第 65 条、第 66 条、第 67 条第 3 項、第 4 項、
第 68 条から第 71 条まで、第 73 条から第 75 条まで、第 79 条から第 86 条まで、第 88 条から第
92 条までの規定は、意匠について準用する。
174
06 米 Eli Lilly & Co.が台湾ジェネリック製薬業者を特許侵害で提訴
地裁「試験的使用でない限り、医薬特許侵害物品の輸入利用には
セーフハーバーが適用されない」判断
➮台湾台北地方裁判所 2005.05.20 民事判決「93 年度智字第 77 号」
<事実の概要>
今年に入ってからますます白熱化する台湾後発医薬品メーカーと外国製薬会社との市場争奪戦。先
発医薬品を出す製薬メーカーが特許侵害という名の下に裁判を起こし、臨床試験の段階でジェネリッ
ク製薬業者の動きを封じ込めようとするケースが相次いでいる。
本件は、台湾東洋薬品工業が抗がん剤の臨床試験で使用した薬品 Gemcitibine(以下、係争薬品)
が原告米 Eli Lilly & Co.の有する特許発明に係る方法によって製造されたものとして、侵害行為の
停止及び侵害物品の使用等の差止め請求とともに損害賠償の支払いを求め、台湾東洋を相手取って提
訴した事案である。
台北地方裁判所は、台湾東洋で行われていた臨床試験は薬事法に規定された特許権の効力が及ばな
い「試験」に当たらないとし、原告特許を侵害した疑いのある係争薬品を中国から輸入し、臨床試験
で使用したことは原告特許権を侵害したとする判決を言い渡した。被告は高等裁判所に控訴したため、
原告側も被告側も今のところ判決についてのコメントを差し控えている。
これを受けて台湾区製薬公会(製薬業組合)は、ジェネリック医薬品の市場参入を遅らせ、多大な
経済損失が予想されると憂慮している。
<解
説>
後発医薬品等の承認申請に必要な臨床試験等が特許権の効力が及ばない「試験又は研究」に当たる
かどうかをめぐり、これまで欧米、日本においても数多くの紛争が生じている。アメリカでは 1984
年に薬価競争と特許期間回復法(通称、ハッチ・ワックスマン法)」が制定され、後発医薬品の承認申
請に必要な臨床試験は、権利侵害に当たらないとする明文の規定(免責条項)が特許法第 271 条(e)(1)
に追加された。Integra Lifesciences v. Eerck 事件において、米最高裁は 6 月 13 日、カリフォルニ
ア地裁と連邦巡回区控訴裁判所の見解を翻し、新薬開発の初期段階であっても後発メーカーによる前
臨床段階における特許発明の実施は試験研究の例外規定(セーフハーバー)により認められる、と試
験的使用の例外を広く認める判決を下した。
台湾でも試験又は研究に特許権の効力が及ばないことが今年 2 月施行の改正薬事法第 40 条ノ 2 によ
って確認されている。ただ、本件において、被告が係争特許発明に係る方法によって製造された薬物
を輸入し、その薬物にさらに他の成分を添加してできたものをもって主務官庁たる行政院衛生署に対
して認可申請をすることは薬事法第 40 条ノ 2 にいう試験に当たるかどうかが争われているように、薬
事法第 40 条ノ 2 第 5 項に定めるセーフハーバー条項が、衛生署の認可取得を目的とするテストのため
の特許権侵害をも保護するのかという問題について、外国の先発メーカーと台湾の後発メーカーがそ
れぞれ自分に有利なように解釈をしていることから、司直の判断は必要になる。
本件原告は係争薬品の合成方法に関する特許発明を有している。被告が係争薬品を中国から輸入し
たのは臨床試験用薬物の研究開発に使用するためであって、薬事法に基づく免責を主張し、原告の有
する製法特許の権利範囲には当該製法によって生み出されたものにまで及ばないとしている。これに
ついて、判決では、薬事法第 40 条ノ 2 第 5 項が新薬の研究開発促進と知的財産権保護の利益衡量とい
う視点から特許権の強力な排他性を緩和するために制定されたもので、本質上特許権の保護を排除す
る絶対性はなく、特許権による保護がこの条項によって狭められた範囲はあくまで研究、教学又は試
験に限定されることが判示されている。ただ、研究、教学又は試験とは何かについて、裁判所は一概
には言えず、ケースバーケースで判断すべきであると具体的な言及をしなかった。
被告が係争薬品を輸入したことは原則として台湾専利法(日本の特許法、実用新案法、意匠法三法
に相当)第 56 条第 2 項による禁止行為に該当するが、薬事法第 40 条ノ 2 第 5 項の適用があれば、被
告は責任を免れられる。しかしながら、被告は原告の製法特許が実施された結果としての係争薬品に
単に水をつけ加えただけでは、研究又は試験に当たらないと認定された。また、専利法第 56 条第 2
項が保護する対象は製法なのか、それともその製法によって作られたものなのかについて、裁判所は
同条が保護するのは製法そのものであることを確認し、係争薬品が原告所有製法特許でない他の方法
によって製造されたという立証(民事訴訟法第 277 条、専利法第 87 条第 2 項参照)を被告はすること
ができなかったため、中国メーカーが許諾を得ないで原告製法特許を用いて製造した侵害物品と推定
される(専利法第 87 条第 1 項参照)係争薬品を被告が輸入したことは特許権侵害であり、損害賠償責
任を負わねばならないとした。
175
主な参照条文:
薬事法
§第 40 条ノ 2 第 5 項 新薬に係る特許権は、製薬業者が検査登記を申請する前に行った研究、教
学、試験に及ばない。
専利法
第 56 条第 2 項 方法発明の特許権者は、本法に別段の定めがある場合を除き、他人がその同意を
得ないでその方法を使用し、及びその方法によって直接製造された物品を使用し、販売の申し出
をし、販売し又はこれらの目的のために輸入することを排除する権利を専有する。
第 84 条第 1 項 特許権が侵害されたときは、特許権者は損害賠償を請求し、並びにその侵害の排
除を請求することができる。侵害のおそれがあるときは、その防止を請求することができる。
第 87 条 製法特許によって製造された物品が、その製法に係る特許の出願前に国内外において見
られなかったものであるときは、他人が製造した同一の物品はその特許製法によって製造された
ものと推定する。
前項の推定は、反証を提出してこれを翻すことができる。被告が当該同一物品の製造に使用さ
れた方法が特許製法と異なることを立証したときは、反証が提出されたものとする。被告が立証
するにあたって掲げた製造上及び営業上の秘密の合法的な権益は、十分に保障されなければなら
ない。
民事訴訟法
第 277 条 当事者が自己に有利な事実を主張するときは、その事実について立証責任を負う。但し、
法律に別段の定めがあり、又はその事情により著しく公平さを欠く場合は、この限りでない。
176
07 ルイヴィトン新型バッグ、創作性不足 意匠出願も行政訴訟も退けられる
➮2004 年 6 月 30 日台北高等行政裁判所判決「92 年度訴字第 2019 号」
<事実の概要>
世界中に名を馳せるブランドの帝王と言われる、ルイヴィトンの新型バッグについての意匠登録出
願に関し、台湾知財局から拒絶査定がなされ、その後経済部への訴願手続においての主張も認められ
なかったため、ルイヴィトンは高等行政裁判所に訴訟を起こした。裁判所は先日、ルイヴィトンの訴
えは理由がないとして請求を棄却する判決を下した。この判決を不服とする場合は、なお最高行政裁
判所に上告することができる。
ルイヴィトンによると、知財局が拒絶査定の根拠として雑誌「Fashion Accessories」の 1991 年 3
月号に掲載されたバッグの形状、及び 1997 年 9 月号掲載バッグのダミエ柄をそれぞれ引用して、意匠
出願されたルイヴィトンの新品バッグの形状と花柄の創作性を個別に否定した手法は、審査にあたっ
ての「本願意匠と引例意匠との全体を対比して観察し公知性を立証する」原則に違反すると指摘し、
渾然一体となった上品なデザインによってエレガントな外観をもたせた、意匠出願されたダミエ柄は、
決して知財局が援引した二つのバッグが匹敵できるものではないことを強調した。
<解
説>
担当裁判官は、特許法により物品の形状、花柄、色彩又はこれらの結合は、
(観者の)視覚に訴える
創作性が欠けていてはならないとしたうえ、意匠出願されたルイヴィトンの新品バッグは簡単に組み
合わされた構造となっており、特殊なデザインの変化や特徴、視覚効果が見られず、二つの既存商品
(バッグ)を組み合わせたものには創作性があるとは言い難く、特許法が規定する要件を満たしてい
ないことは確実であると認定し、ルイヴィトンの主張を受け入れなかった。裁判官はルイヴィトンバ
ッグのファンでないと断言できないが、ルイヴィトンのデザインの創作性は消費者が慕うほどにない
ことが本件判決で露呈されている。
本件は係争の第三者による異議申立や無効審判請求などではなく、知的財産局の審査官がルイヴィ
トン自身の類似意匠を引例にあげて拒絶査定をしたもので、審査官の意匠設計の創作性についての認
定に関する見解を示す結構な事例となる。
高名轟くルイヴィトンのデザインの創作性を疑問視する声が一部のファンからもあがっている。そ
ういう意味では、今回の判決にそのファンたちが共鳴を起こすこととなるだろう。今までの製品と紛
らわしいデザインでも小さいベーシックバッグは US$380 ドルよりの高値で売られている。といっても、
ダミエ・ラインがルイヴィトンの全商品ラインでは最も経済的な価格で提供されていると言われてい
る。ブランド品はもともと高値が付けられて特定の顧客層に販売されるものだから、主観的な要素が
入りやすいデザインをどのように評価するかは人それぞれによる。
目新しいデザインの新製品なら 3,000 ドルを上回るものが大半を占める。消費者に人気が高いこと
を盾に意匠性の低いデザインまでどんどん世に出して陳腐化する商品ラインナップと一線を画した新
製品の価値を高めようとする手法であることも大体想像がつく。ただ、登録出願当時の特許法第 107
条第 2 項によれば、意匠は、その技芸に習熟した者が容易に思い及ぶ創作であるときは、前項(出願
前に同一又は類似の意匠が刊行物に見られ、又は公然と使用されていたとき、又は展覧会に陳列され
ていたとき)に掲げる事由に該当しない場合であっても、本法により意匠登録を受けることができな
い、こととなっている。
177
商標権関連
01 商標法――商品説明に岩出 101 株をアピール 地裁「品質表示が商標使用に該当せず」
■ハイライト
被告会社で生産販売しているアガリクス・ブラゼイ・ムリル(Agaricus Blazei Murrill の頭文字
から ABM と略称)のコマーシャルで、岩出 101 株という菌株で栽培されたキノコであることを宣伝し
ていることから、台湾で「姫マツタケ岩出 101 株 HIME MATSUTAKE 岩出 101 株」(以下、係争商標)
に関して商標の権利をもつ日本「富士○○有限会社」は被告会社をはじめ、キノコ栽培に携わってい
る農家、コマーシャルに起用された芸能人や広告制作者らを相手取って商標権侵害を理由に300万
元の損害賠償金やお詫び広告の新聞への掲載等を求める訴えを起こした。
台北地方裁判所は、係争コマーシャルは ABM の菌株と岩出 101 株との関連性を強調しているだけで、
「岩出 101 株」を ABM 商品の商標として使用していたわけではないから、原告の請求を退ける判決を
言い渡した。
裁判番号:94 年智字第 33 号
裁判期日:2005 年 11 月 25 日
件名:損害賠償請求事件
台北地方裁判所民事判決
原告:日本「富士○○有限会社」
被告:金○○国際生物科技有限公司
金○○薬業有限公司
黄日平ら
主文:原告の訴え並びに仮執行の申立てを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
判決要旨(理由):
1.係争コマーシャルによると、K 社で扱っている ABM は岩出 101 株の菌株で栽培されたもので、βグル
カンやβガラクトグルカン、核酸、がん細胞の増殖を抑制できる成分が含まれるが、種菌の種類、産
地、栽培方法により含まれる成分や香りが変わり、人体に与える効果も異なるという。コマーシャル
のなかで「岩出 101 株」に触れ、さらに「岩出 101 株」に関する特許証書、米国 FDA(食品医薬品局)
の認可登録を受けた証書を披露したのは、岩出 101 株との関連性をアピールし、ABM の効能を宣伝す
るのが目的であり、また ABM は岩出 101 株の菌株で栽培されたものを裏付けるためでもあった。問題
は、被告らがコマーシャルで「岩出 101 株」に言及したのは、商標として利用したかったのか、それ
とも単に ABM の種菌の種類を説明するに過ぎなかったのかにある。
2.商標法第 30 条第 1 項 1 号により、善意かつ合理的に利用する方法を以って、自己の氏名、名称又は
その商品若しくは役務の名称、形状、品質、効能、産地を表示し、又は商品若しくは役務を説明する
もので、商標として使用されていない場合は、他人の商標権によって拘束されない。被告会社の ABM
製品の包装表示にも「岩出 101 株」という文字が見当たらないので、明らかに被告が係争商標を商標
として ABM 製品に利用していた事実はなく、単に ABM の種菌種類を表すために「岩出 101 株」を利用
したのであり、商品の品質表示にあたる。ぶどう酒にはこのような品質表示方法がよく見られるよう
に、異なるワインファクトリーでワイン作りに同じブドウ品種が使われることがある。びんに品種に
関する表示があっただけで、商標として使用されていたと断定することができない。
3.また、原告は、被告らの行為が公平取引法第 21 条第 1 項、第 30 条に違反すると主張するが、ABM 製
品は果たして岩出 101 株の菌株で栽培されたものかどうかは明確にされておらず、岩出 101 株という
菌株は市場から入手することが不可能なのかについても原告側は立証責任を果さなかったため、品質
に関する虚偽不実又は人の錯誤を招くような表示を禁じる公平取引法違反などといった主張は事実無
根であり、損害賠償請求に十分な根拠はない。
よって、本件原告の損害賠償等請求を棄却し、あわせて仮執行の宣告の申立てを棄却する。
以上
178
02 商標法――ファッション誌「マリ・クレール」 化粧品類への商標登録に失敗
行政裁判所「雑誌の知名度から化粧品の著名商標と類推できない」
■ハイライト
1937 年にフランスで誕生し、現在世界 25 カ国で刊行しているファッション誌「マリ・クレール」を
発行するフランス「marie claire」社は『marie claire 美麗佳人』
(係争商標)の化粧品類についての
商標登録で、台湾全国に店舗展開する大手エステティックサロングループの「媚婷峰(Matinform)」に
敗れた。
「marie claire」社は 1999 年、「marie claire」の連合商標として「marie claire」に中国語文字の
「美麗佳人」を斜めに書き加えた標章『marie claire 美麗佳人』(以下、係争商標)について化粧品類
での商標登録出願をし、知的財産局より登録を認める査定を受けたが、『美麗佳人』(引用商標)はすで
に「媚婷峰」によってヘアデザイン、美容、化粧、サウナ、マッサージ、ダイエット、美容カウンセリ
ングを指定商品(指定役務)に商標登録されているため、異議を申立てられた。知的財産局は異議申立
を不成立処分としたが、経済部の訴願決定で翻された。
「marie claire」社はこれを不服として行政裁判
を起こした。
高等行政裁判所は、『marie claire 美麗佳人』が名を知られたのはファッション誌「マリ・クレール」
の中国版の雑誌名としてであり、本件連合商標登録出願で指定される香水や化粧品の商標としてではな
い。『marie claire』が著名商標であり、化粧品類に使用されているからといって、『marie claire 美麗
佳人』までが化粧品業界で著名になっていると類推することができない。これに加え、その登録出願が
引用商標より後で、かつ指定商品と役務の類似がある」として、
「marie claire」社の請求を退け、最高
行政裁判所でもこの見解が維持された。
裁判番号:94 年判字第 1697 号
裁判期日:2005 年 11 月 3 日
件名:商標異議申立事件
最高行政裁判所判決
上告人:フランス「マリ・クレール」
被上告人:経済部
参加人:媚婷峰美容股份有限公司
主文:
上告を棄却する。
上告審の訴訟費用は、上告人の負担とする。
判決要旨(理由):
1.商標法第 37 条第 7 号、第 12 号により、「他人の著名な商標又は標章と同一で又は類似で、公衆に混
同誤認を生じさせるおそれがあるもの」
、「他人の同一又は類似の商品に係る登録商標と同一又は類似
のもの」は、商標登録を受けることができない。同法施行細則第 15 条第 1 項により、二つの商標が類
似するかどうかを判断するには、普通の知識や経験をもつ消費者が商品購入の際に通常の注意を払っ
て混同誤認を引き起こすおそれがあるかどうかによる。また、著名商標又は標章とは、当該商標又は
標章がすでに関連事業者又は消費者に広く認識されていることと認定するに足りる客観的証拠がある
ものをいう(第 31 条第 1 項)。これは、著名な商標又は標章を保護するにとどまらず、混同防止、取
引の安全確保、消費者の利益保護のためでもある。したがって、同号が適用されるには他人の著名な
商標又は標章と同一又は類似のものが登録を受けようとすることに加え、そのような他人の著名な商
標又は標章が登録されると、公衆に混同誤認を生じさせるおそれがあることが要件となる。他人の著
名商標と同一又は類似でありながら、それぞれ知名度があり、或いは長年市場に併存することから、
消費者はその商標又は標章が表す商品の出所若しくは営業主体を混同するおそれがないのであれば、
第 7 号が適用されない。しかし、このような場合においては、併存する両商標が今まで使用されてい
た商品若しくは役務の範囲に限る。
2.本件係争商標と引用商標を時と場所を異にして隔離的観察をすると、一般の消費者に混同誤認を生じ
させるおそれがあり、なおかつ指定商品が同一だったり類似だったりすることから、類似商標と認定
され、登録拒絶事由に該当し、第 37 条 12 号により登録されない。また、
「類似商品及び類似役務の審
179
査基準」により、係争商標と引用商標の間に商品と役務の類似があることも認められた。判決では、
「一般的な社会通念や市場取引実情に照らして、ヘアサロンやビューティーサロンではサービス提供
に関連する物品としてシャンプーや化粧品などといった特定商品が使用され、消費者もサービス利用
の際にプロのヘアスタイリストや美容師から提供されるこれらの商品に信頼感をもつ。商品の販売場
所と役務の提供場所、及び需用者の範囲でダブるところが多く、商品の出所又は営業主体について混
同誤認を生じさせかねない。
3.二商標が類似するか、商標不登録事由に該当するかどうかは事実認定の問題であり、事実審の裁判所
にはこれについて判断する権限がある。原審では弁論の全趣旨と証拠調べの結果を参酌し判決を下し
ており、論理法則又は経験法則に違反したものでなければ、原判決における判断を恣意的に違法と指
摘するのは許されるべきものではない。
4.上告人の起訴を棄却とするのに適用された法規と適用すべき現行法とは何ら食い違いがなく、今まで
の解釈・判例にも抵触していない。上告人が原判決に関する「証拠の取捨、事実認定、職権の行使」
についての指摘は取るに足らない。
原判決の破棄を請求する上告人の主張には理由があると認めがたく、よって上告人の請求を棄却す
る。
以上
180
03 商標法―登録文字商標の変更使用 米ブランド「Naturally JOJO」にただ乗り
■ハイライト
台湾アパレルメーカー、「新三○公司」の責任者(以下、被告)は「COLORFULLY JOJO」について商標
登録を受けている。実際、N 社は登録文字商標の配列を変更して、消費者に米ブランド「NATURALLY JOJO」
(ナチュラリー・ジョジョ)の製品と誤認させ、台湾代理店から告訴されている。二つの商標を構成す
る英文字は異なるが、裁判所は、被告には消費者に混同誤認を生じさせる意図があったとして、150 万
元の損害賠償金のほか、判決文の新聞への掲載をも命じた。
被告は故意により「NATURALLY JOJO」
(ナチュラリー・ジョジョ)の登録文字商標(黒地に白文字の状
態)の配列を真似て、
「COLORFULLY JOJO」を上下に分け、さらに二行目の「JOJO」を大きく表示するよ
うにその登録商標を改変した。300∼500 元の値段でその改変した商標がつけられた既製服等を販売して
いた。
裁判番号:94 年度智字第 6 号
裁判期日:2005 年 6 月 20 日
件名:損害賠償請求事件
台北士林地方裁判所民事判決
原告:貴○国際流行服飾有限公司
被告:新三○国際服飾有限公司
責任者ら二人
主文:
1.
150 万元の損害賠償金を支払い、被告会社責任者の部分について、2005 年 2 月 2 日から弁済される
日まで、年率 5%の金利で利息を計算する。
2.
原告登録商標「NATURALLY JOJO」と同一又は類似の商標「COLORFULLY JOJO」を衣類、ベルト、ズボ
ン等原告登録商標の指定商品と同一又は類似の商品への使用、又は同類商品の包装、広告、説明書、
価格表その他の文書への使用をしてはならない。既に使用・陳列・販売・頒布したものについては、
直ちにこれらを除去・回収又は焼却する。
3.
被告の費用負担において、判決文を特定の新聞紙に掲載する。
4.
訴訟費用は、被告の負担とする。
5.
本判決第一項について、原告が 50 万元を担保に提供すれば、仮執行を認める。但し、被告が 150
万元の担保金を提供すれば、仮執行を免除する。
判決要旨:
1.警察で押収された物証について、知的財産局が鑑定した結果、被告が実際に使用していた商標と原告
の登録商標の全体的構成からみて、外観上類似しており、また同一又は類似の商品に使用していたた
め、混同誤認を引き起こすおそれがある。通常、商標の使用が類似か混同誤認を生じさせるおそれが
あるかは、対比する二つの商標の外観、称呼、観念上、互いに紛らわしい点があるかを見て判断する。
被告の登録商標「COLORFULLY JOJO」が同じ大きさで一行に配列されているはずなのに、押収された
物品に表示された商標が二行になっていて、しかも「JOJO」が拡大表示されている。明らかに自社の
登録商標を他人所有の登録商標に類似するように変更して使用した。
2.商標法第 61 条により、商標権者がその商標権を侵害した者に対して損害賠償を請求することができ
る。
(1)商標法第 63 条第 1 項 3 号損害賠償を請求するには、商標権侵害物品の小売単価の 500∼1500 倍の
範囲内で損害額を決めることができる。侵害物品が T シャツ、ズボン、ベルト三種類、計 169 点押
収されており、最低価格 300 元を基準として計算する。被告はメーカーであり、インターネットや
全国各地の販売通路で販売していたことから、1000 倍にあたる金額(300 元 x1000+300 元 x1000
+300 元 x1000=900,000 元)を賠償金とするのが妥当である。
(2)商標法第 63 条第 3 項は、商標権者の商業上の信用が侵害行為によって毀損されたときは、外に相
当の損害賠償金を請求することができると定めている。今まで、人格権が侵害された場合、被害者
が非財産上の損害賠償を請求することができるという規定の適用は自然人に限られているが、法人
181
が長年にわたって広告やマーケティングに力を入れて、さらに厳しい品質管理の下、ようやくブラ
ンド価値を少しずつ高めていく。他人が粗悪品をあたかも真正品のように販売するとなると、真偽
の識別ができない消費者に悪い印象を与え、ひいて商標所有権者の名誉を傷付けてしまう。したが
って、信用が毀損されたという原告の主張を妥当だとして、人格権に関する規定による損害賠償請
求を認めるほか、商標法第 63 条も自然人に限らず、商業上の信用毀損についての損害賠償請求を
認めている。被告が低価格で原告登録商標に類似する商標を使用した商品を販売したことにより、
消費者に混同誤認を生じさせ、原告の業務上の信用に損害を与えている。ただ、原告がこれにより
受けた損害は、商標をそのまま模倣されたほど大きくないから、被告による権利侵害行為の態様か
ら、名誉上の損害賠償金を 60 万元とするのが妥当である。
(3)
第 61 条第 3 項により、商標権者は侵害者に対して損害賠償又は侵害排除を請求するときは、商標
権侵害に係る物品又は侵害行為に利用された原料若しくは器具について、廃棄その他必要な処置を
請求することができる。押収された 169 点の侵害物品の廃棄、また原告登録商標「NATURALLY JOJO」
と同一又は類似の商標「COLORFULLY JOJO」を衣類、ベルト、ズボン等原告登録商標の指定商品と
同一又は類似の商品への使用、又は同類商品の包装、広告、説明書、価格表その他の文書への使用
禁止、既に使用・陳列・販売・頒布した商品の回収・廃棄、以上の原告からの請求を認める。
(4) 同法第 64 条により、商標権者は、商標権侵害者の費用負担において商標権を侵害した旨の判決書の
全部又は一部を新聞紙に掲載することを請求することができる。被告が原告商標の指定商品に類似
する製品を勝手に製造し、広く販売したことにより、原告が損害を受けており、その名誉回復のた
めに広く公衆に告知する方法が妥当である。よって原告が判決文の一部の特定新聞紙への掲載を請
求したことを認める。
3.権利侵害行為の法律関係に基づいて、被告らに連帯責任で 150 万元の損害賠償金を原告に支払う。
以上
182
04 商標法―偽造タバコ関連商標侵害の民事損害賠償事案
■ハイライト
台南市に住んでいる男子張永祿による模倣品タバコの販売事件が摘発され、その数量は 24 万箱にのぼ
っていることから、商標法の違反として懲役 10 ヶ月の実刑判決が下されたほか、台灣菸酒公司及び日本
たばこ産業株式会社が賠償請求の訴えを提起し、台南地方法院が張永祿は二社に合計 1100 万余台湾ドル
を賠償すべき旨の判決を下したことは、ここ数年来、台南地区で摘発された模倣品タバコの販売事件の
中、賠償金額が最も多い事件とも言える。
保安警察第三總隊第二大隊は 2003 年 11 月に台南市安南區で、張永祿が外国産タバコ及び国産タバコ
を輸入、販売したことを摘発し、
「MILD SEVEN」
、
「峰-MI-NE」を 11 万 4800 箱、長壽、新樂園タバコを全
部で 12 万 9250 箱も押収した。台灣菸酒公司及び日本たばこ産業株式会社は張永祿がその商標権を侵害
したことにより、会社の収入に損失をもらったとして、台南地方法院に賠償請求の訴えを提起した後、
台南地方法院はその数量、価格に従い、張永祿は二社の營業損失に対しそれぞれ 400 及び 600 万余台湾
ドルを賠償すべき旨の判決を下した。
日本たばこ産業株式会社はまた、張永祿が模倣品タバコを大量に販売したことは、消費者に日本たば
こ産業株式会社が品質の粗末なタバコを製造、またはその生産を許諾したと混同誤認せしめ、営業上の
信用評判にひどいダメージを与えたと認めたことから、改めて非財産的損害の賠償を求めた。
裁判官は、日商日本たばこ産業株式会社が世界的に有名なタバコ業者であることを認め、その生産し
ているタバコ「MILD SEVEN」、「峰 MI -NE」は台湾でも高く評価され、しかも張永祿が販売したタバコの
数量が非常に多かったので、50 万台湾ドルの賠償金が妥当であると認め、張永祿は全部で 1178 万台湾
ドルの賠償金を支払わなければならないことになった。
裁判番号:93 年易字第 352 号
裁判期日:2005 年 4 月 14 日
裁判事由:商標法違反等
公訴人
臺灣臺南地方法院検察署検察官
被告
張永祿
男
以上
183
05 商標法−著名商標か先登録商標を無効にした事案
■ハイライト
商標図形が「他人の著名商標又は標章と同一又は類似し、一般公衆に混同誤認を生じさせるおそれが
あるもの」は登録を受けることができないことは、係争商標の登録を申立てた時の商標法第 37 条第 7 号
に明文が規定されている。商標図形が類似するか否かを判断するには、普通の知識及び経験を有する購
買者が購買する時普通に備える注意で、混同誤認を生じさせるおそれがあるか否かで判断することであ
ることは、同法の施行細則第 15 条第 1 項に明文が規定されている。又、著名商標又は標章というのは、
当該商標又は標章が既に普遍的に関係事業又は消費者に認知されていることを判断する客観的な証拠が
あることを指すことは同法の施行細則第 31 条第 1 項に明文が規定されている。所謂「公衆に混同誤認を
生じさせるおそれがあるもの」は、一般の消費者に当該登録を出願した商標又は標章が表彰する商品、
役務出所又は製造生産、営業主体に関して当該著名商標又は商標が表彰するものと混合誤認させるおそ
れがあることを指し、その認定は当該著名商標の著名性の程度、商標図形の類似程度、商標図形にアイ
デアがあるか否か、商標指定商品との関係及び類似程度(関連性)、商品の販売ルート又は販売陳列の場
所、購買者の商品種類、価格及びその性質に対する注意程度及び二つの商標におけるそれぞれの使用情
況等要素を綜合して判断すべきである。それ故、本号の適用は著名商標又は標章が表彰する商品、役務
と同一又は類似する必要がなく、当該著名商標も既に国内外で登録されていることを必要としていない。
他人が先に使用した著名商標又は標章と同一又は類似し、且つ公衆に混同誤認を生じさせるおそれがあ
れば、それに該当する。台湾における関係業者及び消費者は係争商標の登録出願が申し立てられた当時、
既に普遍的に承知しているので、その商標が前記の商標法第 37 条第 7 条に示されている著名商標に符合
する。双方の商標がほとんど完全に同一で、係争商標が電話機等商品に使用が指定されていて、用途、
功能、販売ルート、場所、買い受け人、原材料、製造者又はその他の要素においても、両者が共に共通
点又は関連性があるので、一般の社会通念及び市場取引情況では、一般の商品購買者に係争商品が参加
人の会社又は参加人の会社と関連がある出所から来たものであるかとの混同誤認を生じせしめやすいも
のだと推し測られる。
参考法律:商標法第 37 条(2002.05.29)
商標法施行細則第 15、31、49 条(2002.04.10)
裁判番号:95 年判字第 52 号
事由摘要:商標無効審判
裁判期日:2006 年 01 月 12 日
資料元:司法院
関連法律:商標法第 37 条(2002.05.29)
商標法施行細則第 15、31、49 条(2002.04.10)
最高行政裁判所判決
上訴人
〇〇科技実業有限公司
被上訴人
経済部智慧財産局
主文
上訴を棄却する。
上訴審の訴訟費用は、上訴人の負担とする。
判決要約:
1. 商標図形が「他人の著名商標又は標章と同一又は類似し、一般公衆に混同誤認を生じさせるおそれ
があるもの」は登録を受けることができないことは、係争商標の登録を申立てた時の商標法第 37 条第 7
号に明文が規定されている。商標図形が類似するか否かを判断するには、普通の知識及び経験を有する
購買者が購買する時普通に所用の注意で、混同誤認を生じさせるおそれがあるか否かで判断することで
あることは、同法の施行細則第 15 条第 1 項に明文が規定されている。又、著名商標又は標章というのは、
当該商標又は標章が既に普遍的に関係事業又は消費者に認知されていることを判断する客観的な証拠が
あることを指すことは同法の施行細則第 31 条第 1 項に明文が規定されている。所謂「公衆に混同誤認を
生じさせるおそれがあるもの」は、一般的な消費者に当該登録を出願した商標又は標章が表彰する商品、
役務出所又は製造生産、営業主体を当該著名商標又は商標が表彰するものと混合誤認させるおそれがあ
184
ることを指し、その認定は当該著名商標の著名程度、商標図形の類似程度、商標図形にアイデアがある
か否か、商標が使用を指定する商品との関係及び類似程度(関連性)、商品の販売ルート又は販売陳列の
場所、購買者の商品種類、価格及びその性質に対する注意程度及び二つの商標におけるそれぞれの使用
情況等要素を綜合して判断すべきである。それ故、本号の適用は著名商標又は標章が表彰する商品、役
務と同一又は類似する必要がなく、当該著名商標も既に国内外で登録されていることを必要としていな
い。他人が先に使用した著名商標又は標章と同一又は類似し、且つ公衆に混同誤認を生じさせるおそれ
があれば、それに該当する。
2. 本件上訴人の商標の前任権利者である台湾〇〇貿易股份有限公司が「DOCOMO」商標を 1998 年 10 月
29 日当時の商標法施行細則第 49 条に規定されている商品及び役務分類表第 9 類の電話機、留守番電話
機、ファックス機、トランシーバー、電子交換機、無線電話機、電子伝動タイプ、ポケットベル等商品
に使用することを指定して被上訴人に出願し、当該主務官庁により登録第 878328 号商標(図一、以下係
争商標と称す)として許可され、2001 年 9 月 28 日に上訴人に移転することを申し立てた。その後、日
本 NTT〇〇〇股份有限公司は係争商標が登録当時の商標法第 37 条第 7、14 号の規定に違反するとして、
図二の商標(以下無効審判を申立てた商標と称す)を付し、無効審判を申し立て、被上訴人が審査した
結果、前掲の商標法第 37 条第 7 号の規定によって、2002 年 9 月 17 日中台評字第 H910111 号商標審判書
を以て係争商標の登録が無効であると処分した。上訴人はそれに不服として、本件の行政訴訟を提起し
た。
3. 原判決では、係争登録第 878328 号「DOCOMO」商標図形は参加人の無効審判請求の根拠となる「DoCoMo」
商標と比較すると、両者が共に単純な外国文字「DOCOMO」で構成されていて、その中の英語文字「o」に
大文字と小文字の区別があるほか、ほとんど同一で、異時異地で隔離して観察した際、客観的には一般
の消費者にその表彰する商品の出所又はそれを生産した主体に対して連想するので、混同誤認を生じせ
しめるおそれがあり、類似商標を構成することについては、双方に共に争議がしないことである。
4. 無効審判を申立てた商標が表彰する信誉及び品質は係争商標が登録を出願した 1998 年 10 月 29 日前
に既に台湾国内の関係事業又は消費者に認定され、著名な程度に達していたことは、参加人が添付した
会社の紹介及び関係報道等の資料で査証できるものである。台湾における関係業者及び消費者は係争商
標の登録出願が申し立てられた当時、既に普遍的に承知していたので、その商標が前記の商標法第 37 条
第 7 条に示されている著名商標に符合する。双方の商標がほとんど完全に同一であり、係争商標が電話
機等商品において使用が指定されていて、用途、功能、販売ルート、場所、買い受け人、原材料、製造
者又はその他の要素においても、両者が共に共同又は関連点があるので、一般的な社会通念及び市場交
易情況では、一般の商品購買者に係争商品が参加人の会社又は参加人の会社と関連がある出所から来た
ものであるとの混同誤認を生じせしめやすいものである。
5. 上訴人は係争商標の登録出願は前記の法条が適用されるので、無効審判を申立てた商標が無効であ
るとした処分及び訴願においてその結果を維持する決定を共に維持することにし、上訴人の原審におけ
る訴を棄却したことは法に違誤がないものである。上訴趣旨では:
「原判決では無効審判を申立てた係争
商標が 1998 年 10 月 29 日に登録を出願した当時既に関係消費者に認知されていた」と指摘したことは、
証拠法則に違反する違誤があるとしている。
6. 又、原判決では申請後に発生した事実を引用し、登録を出願した時、無効審判を申立てた商標の知
名度が地域によって制限されないものと認定したことは、論理法則に違反する云々と述べたが、原判決
は多くの事実及び証拠を綜合し、無効審判を申立てた商標の著名性を判断し、上訴人の敗訴とした原判
決は法において違誤がなく、上訴趣旨が僅かに原審における証拠の取捨及び事実認定の職権行使に対し、
無断で不当であると指摘したことは採用できなく、それにより原判決廃棄と声明するのも理由がないの
で、棄却すべきである。
以上の論結の通り、本件上訴には理由がないので、行政訴訟法第 255 条第 1 項、第 98 条第 3 項前段の
規定により、主文の如く判決する。
以上
185
06 商標法−類似商標にならない事案
■ハイライト
商標図形が「他人の著名商標又は標章と同一又は類似し、一般公衆に混同誤認を生じさせるおそれが
あるもの」又は「同一又は類似の商品における他人の登録商標と同一又は類似するもの」は登録を受け
ることができない。それは係争商標異議審査当時の商標法第 37 条第 7、12 号に明文が規定されているが、
その適用は二つの商標図形の構成が同一又は類似を前提としていて、商標図形が類似するか否かを判断
するには、普通の知識及び経験を有する購買者が購買する時普通に所用の注意で、混同誤認を生じさせ
るおそれがあるか否かで判断することであることは、同法の施行細則第 15 条第 1 項に明文が規定されて
いる。本件二つの標章図形の設計意匠が異となっていて、印象もかなり違っていて、異時異地で隔離し
て観察すると、関係商品の購買人にそれが関連シリーズ商品であるとの混同誤認を生じせしめるおそれ
がないので、類似の標章ではない。
参考法律:商標法第 37 条(1997.05.07)
商標法施行細則第 15 条(1999.09.15)
裁判番号:95 年判字第 47 号
事由摘要:役務標章異議申立
裁判期日:2006 年 01 月 12 日
資料元:司法院
関連法律:商標法第 37 条(1997.05.07)
商標法施行細則第 15 条(1999.09.15)
最高行政裁判所判決
上訴人
米国・〇〇爾公司
被上訴人
経済部智慧財産局
主文
上訴を棄却する。
上訴審の訴訟費用は、上訴人の負担とする。
判決要約:
1. 商標図形が「他人の著名商標又は標章と同一又は類似し、一般公衆に混同誤認を生じさせるおそれ
があるもの」又は「同一又は類似の商品における他人の登録商標と同一又は類似するもの」は登録を受
けることができない。それは係争商標異議審査当時の商標法第 37 条第 7、12 号に明文が規定されている
が、その適用は二つの商標図形の構成が同一又は類似を前提としていて、商標図形が類似するか否かを
判断するには、普通の知識及び経験を有する購買者が購買する時普通に所用の注意で、混同誤認を生じ
させるおそれがあるか否かで判断することであることは、同法の施行細則第 15 条第 1 項に明文が規定さ
れている。
2. 本件係争の標章図形である外国文字「SERVICE INSIDE」はモノクロがベースとなっている円形の図
形の真中に横に排列されていて、その円形図の中に白黒のラインで構成したアーチ形の階段状構図があ
り、それに外国文字「MCS Express」が円形図の下方にある、一方、異議を申立ての根拠となる商標図形
は太いラインでできた外国文字「intel inside」設計図又は単純な外国文字「INTEL INSIDE」、「INTEL
INSIDE XEON」で構成されていて、その構図は具体性を有し、「inside」を強調することがなく、又は単
独使用の事実もなく、外観の構図と意匠及び識別性については、太いラインでできた外国文字「intel
inside」設計図又は「INTEL INSIDE」
、「INTEL INSIDE XEON」に準ずるべきで、分割した単独の外国文字
「inside」とは比較し難く、両者に共に外国文字「INSIDE」の部分があるが、標章図形の設計意匠がそ
れぞれ異なり、与える印象にも大変な違いがあり、異時異地で隔離して観察した際、関係商品の購買人
にそれが関連シリーズ商品であるとの混同誤認を生じせしめるおそれがないので、類似の標章ではない。
それ故、被上訴人が所為した異議不成立の処分は前記した規定及び説明の通りで違誤がないことから、
訴願決定及び原審判決を共に維持する。
3. 又、行政程序法第 6 条の規定では:
「行政行為は正当な理由がない限り、差別待遇をしてはならない。」
186
となっていて、即ち正当な理由がある場合には、不同の待遇をすることができるのが行政法の均等原則
である。上訴人が挙げる査定番号中台異字第 880081 号、第 81269 号等の商標異議決定書等の例について
は、商標個別事件審査原則により、原審判決では各件の内容が本件と異なると認められ、引用すること
ができないわけで、係争商標の登録出願は許可すべきか否かの論拠には正当な理由があるので、不同の
処理をすることができる。
4. 原審判決では既に本件の争点、即ち係争商標は異議を申立てた商標が近似を構成するか否かという
ことで、係争商標異議査定当時の商標法第 37 条第 7、12 号の規定に違反するか否かについて、明確に心
証を得た理由を述べ、並びに上訴人が中台字第 880081、891269 号等商標異議決定書等の例を挙げ、それ
等の商標図形が不同で、事件の内容も異なっているので、本件商標の登録出願は許可すべきか否かの論
拠を引用することができないことは前述の通りである。原審判決及び係争商標の異議審査を申立てた当
時の商標法、同法の施行細則等法令規定に符合しないことがなく、均等原則及び行政恣意禁止原則にも
違背していなく、判決の法規根拠ミス又は適用不当の違法がない。それに原審判決には理由不備の違法
があるとも言い難く、たとえ判決書の中で論断されなかったとしても判決結果に影響を及ぼすこともな
いので、判決理由不備という違法には該当しない。
5. 上訴人が挙げる本院 87 年度判字第 1195 号判決については、その事件の内容が本件と違っていて、
且つ判例でもないので、本件審理を拘束する効力がない。上訴人が称した他の各節については、上訴人
が法律見解の違いに基づいた、原審における証拠の選択、事実認定の職権行使が不当である旨の指摘は
採用できないわけである。前記を綜合して、原審判決に違誤がり、廃棄すべきである旨の指摘は理由が
あるものと認め難いので、棄却すべきである。
6. 又、本院審判の範囲は高等行政裁判所終局判決で認定された事実に限り、即ち高等行政裁判所の判
決は確定した事実を基礎とするべきことは、行政訴訟法第 254 条に明文が規定されている。本件上訴人
は原審 2004 年 6 月 17 日の口頭弁論、及び同年月 28 日の原審判決前に書状で「本件被告参加人イギリス
デジタルネット〇〇有限公司は台湾で設立したデジタルネット股份有限公司が海外での持株会社に属し、
台湾で設立したデジタルネット股份有限公司が既に解散登記を行っているので、本件被告参加人が尚存
在しているか否かについて分らないので、本件係争標章を許可する必要がある否かについての疑義があ
る。」云々と主張しているが、前記の事実が原審で認定されておらず、且つその部分の上訴は訴訟手続の
規定に違背することを理由としているのではないので、行政訴訟法第 254 条第 2 項の規定により、本院
はそれを斟酌しないことをここに併せて説明する。
以上の論結の通り、本件上訴には理由がないので、行政訴訟法第 255 条第 1 項、第 98 条第 3 項前段の
規定により、主文の如く判決する。
以上
187
07 商標法―先使用商標が著名商標に対抗できないと判断される事案
■ハイライト
台湾の某靴業者が「SK-Ⅱ」を靴類の商標としたが、経済部知財局は許可しなかった。業者の考えは、
両者属性が異なっており、化粧品の「SK-Ⅱ」は蕭薔をイメージキャラクターに起用してから人気が出た
のであり、彼らの「SK-Ⅱ」は早くから靴業界では名が知れていたということである。台北高等行政法院
の判断は、化粧品の「SK-Ⅱ」は著名な商標になっており、その他の製品がこの名であると混同されやす
く、「SK-Ⅱ」は身体に塗るものであり、足にはくものではないので製靴業者の請求を棄却した。
自称歴史ある靴業者の話によると、81 年当時、「瑞蒂 SK-Ⅱ」商標を会社の連合商標にし、主に紳士、
婦人用靴、カジュアルシューズ及び運動靴等に使用していたが、91 年に商標期限が切れたので経済部知
財局に延長登録申請をしたところ、棄却された。この業者は、彼らの「SK-Ⅱ」は 82 年に既に使用を許
可されており、化粧品市場と靴類の「SK-Ⅱ」は以前から市場に並存している上、この名で大規模展示会
にも参加していて、両者の性質、機能、製造及び取引市場は全くかかわりがないとしていた。
裁判番号:93 年訴第 1503 号
事件摘要:商標無効審判
裁判期日:2005 年 7 月 20 日
資料元:司法院
関連法律:行政訴訟法 98 条
台北高等行政法院判決
原告
朱勇全
被告
経済部
参加者
米国寶鹼公司
主文
原告の訴えを棄却する。訴訟費用は原告が負担すること。
判決要約
1.連合商標は中国語の「瑞蒂」と英語の「SK-Ⅱ」によって組成されているが、係争連合商標の主要部分
である英語部分は「SK-Ⅱ」であり、評定商標と完全に一致していることから、この二つの商標は高度に
近似していると言える。また、「SK-Ⅱ」は独創性の高い極めて著名な商標であり、排他性が高く、どん
な商標もこれと近似している場合、消費者は二つの商標の製造元が同一であると誤認してしまう。この
為、係争連合商標に中国語の「瑞蒂」があって、他方にはないとしても、これにより消費者の混同を避
けることはできない。
2.また、参加者である米国マックスファクター株式会社は著名な化粧品会社であり、評定商標「SK-Ⅱ」
を「SK-Ⅱ」化粧品シリーズに使用し、72 年には既に台湾の関連会社である台湾蜜佛化学股份有限公司
が広告権を取得し、73 年より皇冠、姐妹、時報周刊、電子周刊など各雑誌広告、中国電視公司広告及び、
商品カタログ、宣伝品等を利用して宣伝販促を行っていたので、係争連合商標が 91 年 2 月 1 日登録延長
申請をする前から既に関連業者や消費者に広く知られた商標となっていたことは、各種証拠からも認め
られる。
3.一方原告が、参加者の提出した広告資料を見ると、係争連合商標の 81 年 6 月 18 日申請登録前におい
ては、評定商標が著名になっていたとは言えないとする点については、本件においては論議しない。依
拠とするべき点は評定商標が、係争連合商標が「延長登録申請時」に既に著名であったかどうかであり、
係争連合商標が「登録申請時」に既に著名であったかどうかではない。参加者が評定申請時に添付した
原処分機関中台評字第 880252 号商標評定書によれば、商標を表彰した商品の信用と名誉は、係争商標登
録申請(79 年 11 月 1 日)前には既に我国消費者の知るところであり、73、74 年各雑誌に掲載の広告や
広告費計算書、また西暦 1983、1988 年輸入証票等証拠資料のコピーからも調べがつくものである。
確かに、これらの適用法律及び使用指定商品が本件と異なっているが、使用証拠は我国消費者がよく
知っていたことを証明できることに間違いなく、本件の証拠資料にすることができるので、原告の訴え
は採用するに値しない。
4.最後に、原告は商品実物、見積り書、業者証明書、広告及び台北国際靴展資料を提出して参加者が本
188
件評定を申し立てる以前から係争連合商標を靴商品に使用して十余年になり、誤認の恐れは全くないと
主張しているが、89 年 4 月 30 日の見積もり書二枚には係争連合商標の図案がなく、靴商品の実物に係
争連合商標の図案はあるものの、日付の標示がない。業者証明書はただ某会社が 89 年に原告から「瑞蒂
SK-Ⅱ」の靴商品を購入したと記載されているだけで、購入数量、型、金額及び売買領収書(発票)など
すべて欠落している。台北県靴類商業同業公会が発行した証明書とその添付資料についても、同公会法
律顧問游文華弁護士の報告を引用しているが、展示日時場所の記載もなく、弁護士自身が経験した事実
ではない上に、原告も同弁護士がどのように証拠を調べ、報告の結論を出したのか説明していない。ま
たこの報告は、90 年 1 月と 7 月の二回の国際靴展において原告が「瑞蒂 SK-Ⅱ」とプリントされた婦人
靴とサンダルを展示した事実を証明できていない。
たとえば、90 年春夏季台北国際靴展平面図には、B30 ブースに「瑞蒂」の文字があるが、平面図に「瑞
蒂一皮」の文字があるだけでは、業者の名称だけであり、係争連合商標の「瑞蒂 SK-Ⅱ」とは異なる。
さらに、参加者提出の商標登録資料によれば、原告は他にも二件「瑞蒂」文字を一部に使った商標を登
録申請しており、その商標図案と係争「瑞蒂 SK-Ⅱ」は異なっていることから、原告が靴展平面図を提
出して「瑞蒂一皮」ブースを示しても、「瑞蒂 SK-Ⅱ」靴製品を展示した証明にはならない。
5.原告が提出した上記証拠では、係争連合商標が靴市場で十年の長きに渡り使用された事実を証明でき
ず、また係争連合商標は一般消費者も識別でき、公衆の誤認を招く恐れがないとは言い難い。
以上をまとめると、本件原告の訴えは、採用するに足りず、被告が「原処分取り消しは、原処分機関
が別途適法により処分する」とした決定に間違いはない。原告が上記陳述を以って、決定の取り消しを
訴えたことには理由がなく、棄却されるべきである。
上記結論により、本件原告の訴えは理由なきものとして、行政訴訟法第 98 条第 3 項前段により、判決
を主文のとおりとする。
以上
189
08 adidas 商標、台湾ブランド「JUMP」に類似 取消しへ
➮2005 年 11 月 2 日台北高等行政裁判所判決 93 年訴字第 3622 号
<事実の概要>
スポーツ用品で世界的に有名なアディダス(adidas)と台湾のスポーツブランド「JUMP」とどちら
の商標が生き残れるか、最高行政裁判所で勝負することになりそうだ。両商標はいずれも 3 本の斜線
の下方に英文字 adidas 、JUMP という構成からなり、余りに類似するために、知的財産局は後願登録
商標である adidas の商標(以下、係争商標。下図一を参照)登録を取り消すことにした。アディダス
はこれを不服として、高等行政裁判所に審決の取消しを求めた。裁判所は、
「JUMP 商標」
(以下、引用
商標。下図二を参照)に類似し、混同を生じやすいとして、アディダスに敗訴判決を言い渡した。
細かに見ると、アディダスと JUMP の商標はいずれも左から右へと長さが少しずつ増えていく、階段
のように並ぶ幅のある 3 本の斜線が引かれていて、向きが違うが、外観においては紛らわしいうえに、
両方ともスニーカーを主力商品に販売している。1989 年に商標登録された JUMP からアディダスの登
録商標に関する無効審判請求があったため、JUMP の商標登録から 9 年ほど経った 1998 年に登録され
た係争商標は取り消されることになった。アディダスの巻き返しが図れるかどうか、最高行政裁判所
の判断はカギを握る。
<解
説>
本件で争っているのは、果たしてアディダスの商標が引用商標に類似するかどうか、もし類似だと
したら、消費者には両商標の区別がつくかどうか、出所を混同するおそれがあり、係争商標の登録を
取り消すべきとした被告知的財産局の審決は妥当かどうかという点である。
係争商標と引用商標を比較すると、両者はともに右から左へと長さが順次短くなる階段状を呈する
3 本の斜線が中心となり、この特殊な図形構成から一般の消費者の注意を容易に引き付けることがで
き、時と場所を異にして隔離的観察をしたところ、全体的に外観が極めて類似していることから、商
標の類似があるものと認められる。また、両者とも帽子、靴やブーツ、マフラー、靴下といった商品
について使用されており、商標の類似の程度及び指定商品の類似から、客観的に、一般の消費者にシ
リーズ商品を連想させ、混同誤認を生じさせるおそれがあると判断するに足りる。図形以外にメーカ
ーを示す英文字の相違があるが、消費者の注意を引き付けやすい要部と比べて識別力が比較的弱く、
出所を区別するのに資する判断材料として足りない。
原告は、アディダスは世界的に知れ渡ったブランドであり、引用商標と市場で長い間市場に併存し、
一般に簡単に区別され、認識されているため、係争商標によって表示される商品の出所や営業主体を
混同するおそれがない旨主張するけれども、もともと原告アディダスが所有する知名度の高い商標の
図形というのは長さがほぼ同じの 3 本のラインが同じ間隔で配列されているもので、本件係争商標と
は明らかに異なっており、これを一概に論ずることはできない。係争商標は引用商標が登録されて 9
年経った後の 1998 年 3 月 1 日に登録されたことから、著名商標であり長年市場に併存しているなどの
主張は事実と食い違い、取るに足りない。
以上のとおり、原告アディダスの主張は理由がないとされ、全面的に退けられた。
主な参照条文:
商標法(2003.04.29 改正、同年 11.28 より施行)
第 23 条
い。
商標であって、次に掲げる各号の一に該当するものは、商標登録を受けることができな
第十三号 【他人の同一又は類似の商品若しくは役務について使用する登録商標、又は出願が先
になされた商標と同一又は類似のものであって、関連消費者に混同誤認を生じさせるおそれがあ
るもの。但し、当該登録商標又は先の出願に係る商標の所有者の同意を得て出願をするものは、
二つの商標及び指定商品又は指定役務が全く同一である場合を除き、この限りでない。
】
第 91 条第 1 項 この法律が中華民国 92 年 4 月 29 日に改正・施行される前に請求され、又は提出
された無効審判で、審決が未だ下されていない案件については、この法律の改正施行前並びに改
正施行後の規定によってともに違法とされる事由に該当する場合に限って、その登録を取り消す。
商標法(2003.04.29 改正前)
第 37 条 商標の図形であって、次に掲げる各号の一に該当するものは、登録を受けることができ
ない。
第十二号【他人の同一又は類似の商品に係る登録商標と同一又は類似のもの。
】
190
09「著名であればあるほど自他識別力が高まり 類否判断基準も緩めに」
最高行政裁判所 米スターバックスコーヒーの上告棄却
➮2005 年 9 月 15 日最高行政裁判所判決「94 年判字第 1410 号」
<事実の概要>
米スターバックスコーヒーは、台湾の「歐瑟咖啡館」のサービスマーク『AUTHOR Coffee 歐瑟咖啡』
(図二を参照。以下、係争商標)がそのサービスマーク『Starbucks Coffee』
(図一を参照。以下、引
用商標)に類似するとして、知的財産局に登録査定の取り消しを求めたが、異議不成立とされ、不服
申立ての訴願手続き、その後の高等行政裁判所での審理においても知的財産局の見解を支持する判断
が下されたため、最高行政裁判所に訴願決定及び原処分の取消しを求めた。先日、最高行政裁判所は、
係争商標は引用商標と同じように二重の同心円形からなり、中心部(内側)と外側にそれぞれブラッ
クとグリーン色、そして図形と文字の構成(詳細は下図を参照)になっているが、
「消費者が通常の取
引の際にとる近い距離から、その文字とキャラクターの図形表現によって両商標を明確に区別するこ
とができ、細かく対比するまでもなく、その主要部分の構成から、両商標は外観、観念において相紛
れるおそれのない非類似のもの」とした原判決に同調する見解を示し、スターバックスの主張を全面
的に退けた。
<解
説>
上告人スターバックスと被上告人知的財産局、双方の主張が真っ向からに分かれた裁判の攻防と裁
判所の認定判断をみてみよう。
スターバックス
知的財産局
裁判所の判断
両商標はともに二重の同心円
形からなり、内側はキャラクター
図形、外側の上半部にそれぞれの
社名の主要部分の英文字で、下半
部にはともに『COFFEE』。そして
両方とも外側の真中に星印がつ
いている。商標の構成要素である
文字と図形の配置とデザイン、カ
ラー設定、そのいずれにおいても
類似することから、類似商標と認
めるに足りる。
係争商標の出願見本と引用商
標中の主要部分を構成する文字
とキャラクター表現の外観、観念
も大いに異なる。時と所を異にし
て隔離的観察をするときに与え
られる印象も違う。
サービスの提供者を混同誤認さ
せるほど相紛れるものとはいえ
ない。両商標は非類似のもので、
商標法第 37 条第 7 号、同条 12 号
が適用される余地はない。
外側の同心円の下半部に共通
する『COFFEE』は指定役務を説明
するもので、双方とも登録出願時
にこれについて商標専用権を主
張しないと声明した。
係争商標が実際営業で使われて 登録資料によると、係争商標と引 係争商標の色や図形を勝手に変
いるときの色は登録出願時の色 用商標はそれぞれ墨色、カラーに えたり文字を付け加えたりして
なっていて、混同誤認のおそれが 使用することは、登録商標の違法
と違う。
ない。たとえ係争商標について色 な使用になる可能性があるが、取
を変えて使用していたとしても 引のときにとられる距離で観察
その文字と図形から区別できる。 すれば、一々対比しなくても混同
誤認させるおそれはない。
遠距離での観察は商標の全貌を 両商標が外観、観念において混同
係争商標を引用商標と同じよう
にブラックとグリーン色の組み 捉えることができず、全体観察の 誤認のおそれがあるかどうかを
判断する方法としては、時と所を
原則に反する。
合わせで使っていることから、一
異にして隔離的観察と全体観察
メールぐらい離れたところでみ
の方法がある。一般の知識と経験
ると、引用商標との区別がつかな
を有する商品(役務)の取引者・
くなる。
需要者が用いる通常の注意力を
基準とする。通常の取引時の近距
離で観察をすべきである
原判決において、原告側が主張する、商標の類似と役務の類似による混同誤認惹起の裏づけとなる
根拠に、高等行政裁判所 89 年度訴字第 655 号決定書における「周知著名性の高さに正比例する自他識
別力と類否の判断基準の度合いとの関係、そして商品と商品との間の、役務と役務との間の関連性を
求める程度に関係する」との認定判断が引用されていることに対し、高等行政裁判所は改めて次のよ
191
うに解釈している。
「商標の著名性が高ければ高いほど、識別力が強くなり、商標の類否判断の基準も
比較的緩めになる。即ち、著名商標の識別力が比較的強いから、他人の商標が著名商標の主要部分に
類似する場合、ほかの部分に著名商標と区別ができる文字、図形又は記号があっても、それによって
非類似を主張することが難しい。本件係争商標と引用商標の主要部分を構成する文字とキャラクター
図形の外観、観念が全く異なるものであるため、類否判断の基準、判断スケールはどうあれ、両商標
が類似するとは言い難い。
」
(図一)
(図二)
主な参照条文:
商標法(1997.05.07)
§第 77 条 サービスマーク、証明標章及び団体標章は本章に別段の定めがある場合を除き、その
性質から本法の商標に関する規定を準用する。
§第 37 条 商標の図形であって、次に掲げる各号の一に該当するものは、登録を受けることがで
きない。
第 7 号 他人の著名商標又は標章と同一又は類似のものであって、公衆に混同を生じさせるおそ
れがあるもの。但し、出願人は商標若しくは標章の所有者又は使用許諾をする者の同意を得て
登録出願をするときは、この限りでない。
第 12 号
他人の同一又は類似の商品に係る登録商標と同一又は類似のもの。
商標近似審査基準(2004.08.01 廃止)
§第 1 条 商標は外観、観念、称呼上いずれかが近似するときは、近似商標になる。
§第 2 条第 9 項 商標見本の図形が類似で、混同誤認のおそれのあるもの。
§第 5 条 商標が外観又は観念上混同誤認の虞があるかどうかは、客観的な事実に基づいて次の原
則によりこれを判断する。・・・
第2項
商標の文字、図形又は記号について、時と場所を異にして隔離的かつ全体的観察を行う
ことを基準とする。
第 3 項 商標は文字、図形又は記号の結合であるときは、それぞれの部分について観察を行い、
主要な部分(要部)の構成を基準とする。
192
10 取扱商品が正規品かどうか、販売会社に確認義務有り
地裁「量販店にサプライヤーと連帯で賠償」命令
➮2005 年 8 月 29 日台湾士林地方裁判所民事判決「93 年智字第 23 号」
<事実の概要>
大型量販店 T で販売されていた冷水・温水用飲用水給水器(以下、係争商品)に他人の登録商標『膳
魔師』
(以下、係争商標)が盗用された事件で、裁判所は他人の商標権を侵害したものと認定し、量販
店に対してサプライヤーと連帯で 134 万 4 千元の損害賠償金の支払いを命じた。取扱商品が数万点も
あり、一々正規品かどうかをチェックするすべはないという量販店側の主張が受け入れられず、業者
には積極的に確認する義務のあることが指摘されている。これにより、サプライヤーの保証があった
だけで販売業者には何の責任もないという言い逃れは通用しなくなる。
判決では、
「商標の登録と公告に関する制度が設けられている。何人も簡単な手続きで商標が合法的
に登録されているかどうかを検索することができる。取扱商品が数万点に達するという大型量販店で
も例外ではない。品質保証の観点から、専門の量販店にはなおさら店内で販売する商品が正規品かど
うかをチェックする体制づくりが必要である。違法コピー商品ではないとサプライヤーから提出され
た誓約書はあくまでサプライヤーと売り場(販売業者)間の内部的契約であって、販売業者が正規品
かどうかを確認する責任と義務を免れられるものではない」としている。
<解
説>
まず、本件判決にみる商標権侵害認定へ至る経緯を説明しておく。
1992.06.27
原告が文字商標『膳魔師』について真空保温調理器、ステンレス鍋等料理鍋への使
用を指定し商標登録されている
1998.04.21
本件訴外人「林亭吟」は、係争商品が属する指定商品分類第 11 類を指定し、係争
商標について登録出願
1998
『膳魔師』は台湾国内で著名商標として広く知られている(2003.05.29 最高行政
裁判所判決 92 年度判字第 663 号で認定)
1999.07.16
訴外人による商標登録出願が査定公告へ
2000.12.26
原告が訴外人の登録商標について異議申立て、取消しへ
2003.04.16
係争商標が原告によって新たに出願され、登録へ
2003.05.29
本件訴外人が知的財産局の取消し決定を不服として行政訴訟を提起。最高行政裁判
所は原告「林亭吟」の上告を退ける判決
2003.06.19
原告は T 量販店 N 支店で係争商品を 1 台購入(レシート、保証書、写真提出)
2003
本件原告は係争商品メーカーと量販店 T の経営者を商標法違反で刑事告訴
2004.03.01
係争商標の取消し決定が確定し、公告へ。
2004.04.19
原告は T 量販店 N 支店で係争商品を 1 台購入(メーカーから T 量販店への納品期日
が、箱に貼ってあった運送会社の配達証明で判明している。
)
2004.10.08
原告は T 量販店 N 支店で係争商品を 1 台購入
2004.07.22
台北地検は被告らに対する刑事告訴について証拠不十分で不起訴処分
2005.06.27
訴外人と証人(訴外人の夫)の係争商標についての証言が矛盾している。(口頭弁
論における証人の供述記録)
上記の表で示したように、被告らは 2003 年に原告が所有する著名商標『膳魔師』を盗用した疑いで
原告によって刑事告訴されており、係争商品に付けられていた商標の使用が問題になっていることを
明らかに知っていながら、登録商標が取り消され権利者でなくなった訴外人から係争商標の使用許諾
を受けていることを理由に商標権侵害行為をし続けた。商標には登録と公告の制度があり、だれもが
簡単な手続きで合法的に登録されている商標に関する情報を入手できることからすれば、被告らは上
記注意義務を怠ったものといわざるを得ない。
訴外人の係争商標に対する商標権は 2000 年 12 月、
原告の異議申立により取り消されることになり、
2004 年 3 月 1 日に取消し決定が確定したにもかかわらず、2003 年から 2004 年 10 月までの間でも被告
メーカーは引き続き係争商品を製造・販売していた。係争商品の本体と包装用の箱に文字商標『膳魔
師』が印刷されていて、フォントが僅かに原告の登録商標のそれと異なるのでは、外観、観念及び称
呼において消費者に混同誤認を引き起こすおそれがないといいがたく、原告の商標権を侵害したと認
193
めてよい。被告は答弁で商標法第 23 条第 2 項により「善意使用」を主張したが、以上の経緯から、詭
弁を弄するだけのもので、取るに足りない。
一方、被告量販店 T が店内で販売する商品が正規品かどうかをチェックする体制が欠如しているう
え、刑事告訴があってからも商標権の確認をきちんとしなかったため、明らかに過失があったと考え
られる。
主な参照条文:
商標法(2002.05.29)
第 23 条 善意且つ合理的に使用する方法で、自己の氏名、商号若しくはその商品の名称、形状、
品質、効能、産地若しくは商品自体に関する説明を表示するために商品に付記するのであって、
商標として使用するものではないときは、他人の商標権の効力による拘束を受けない。
2
他人が商標登録を出願する前に、善意で同一又は類似の商標の図形を同一又は類似の商品に
使用したときは、他人の商標権の効力による拘束を受けない。但し、元使用商品に限る。この
場合、商標権者は区別に資する適当な標示を付け加えることを要求することができる。
3
商標を付した商品が商標権者又はその同意を得た者によって市場において取引され流通する
ときは、商標権者は当該商品について商標権を主張することができない。但し、商品の変質、
毀損を防止するため、又はその他の正当な事由があるときは、この限りでない。
商標法(2003.04.29)
第 61 条 商標権者はその商標権を侵害した者に対し、損害賠償を請求することができる。また、そ
の侵害を排除することを請求することもできる。侵害のおそれがあるものは侵害を防止するこ
とを請求することができる。
2 商標権者の同意を得ないで第 29 条第 2 項各号に定める場合のいずれかに該当するときは、
商標権侵害とする。
3 商標権者は第 1 項の規定により請求をするときは、商標権侵害に係る物品又は侵害行為に利
用される原料若しくは器具について、廃棄その他必要な処置を請求することができる。
第 63 条 商標権者が第 61 条の規定により損害賠償を請求するときは次の各号から一を選択してそ
の損害を計上することができる。
一.民法第 216 条の規定による。但し、その損害を証明するための証拠方法を提供できないと
きは、商標権者はその登録商標を使用することによって通常得られる利益から、侵害され
た後同一商標の使用によって得た利益を控除した差額をその受けた損害の額とすること
ができる。
二.商標権侵害行為によって得た利益による。商標権侵害者がそのコスト又は所要費用につい
て立証できないときは、当該商品を販売して得た収入の全部をその所得利益とする。
三.押収した商標権侵害に係る商品の販売単価の 500 倍から 1500 倍までに相当する金額を損
害額とする。但し、押収した商品が 1500 点を超過するときは、その総価額で賠償金額を
定める。
2 前項の賠償金額が明らかに相当しないときは、裁判所は情状を参酌して軽減することができ
る。
3 商標権者の業務上の信用が侵害行為により毀損を受けたときは、他に相当の金額の賠償を請
求することができる。
194
11『inside』はインテルが独占使用する英文字ではない!
最高行政裁判所、称呼類似が類似商標か 誤認混同のおそれの有無で判断
➮2005 年 7 月 21 日最高行政裁判所判決「94 年度判字第 1066 号」
<事実の概要>
コンピュータを使ったことがあるなら、インテル社の商標「intel inside」
(図一を参照。以下、引
用商標)を知らない人はいないといっても過言ではない。CPU やチップセットで世界市場を制覇する
インテルが、係争商標「DSP inside」
(図二を参照)の商標登録査定への異議申立に関連して、台湾知
的財産局の異議不成立処分を不服として最高行政裁判所まで争った事件で、係争商標は引用商標と類
似する商標にあたらないとして訴願決定及び原処分取消し等原告側の請求を棄却する判決が下された。
最高行政裁判所は判決で、商標の類似は、普通の知識や経験を有する消費者が商品を購入するにあ
たり、通常の注意を払って(商品の出所につき)混同誤認のおそれがあるかないかによって判断され
るとするのが原則であり、称呼において近似する場合でも、誤認混同のおそれがなければ、商標法に
違反しないとしている。
<解
説>
係争商標への登録異議申立に対して、知的財産局は商標登録を維持すべき決定をした時の商標法第
37 条第 7 号、第 12 号により、商標が「他人の著名な商標または標章と同一または類似で、公衆に混
同誤認を生じさせるおそれがある」
、「他人の同一商品又は類似商品に係る登録商標と同一又は類似で
ある」という場合のいずれかに該当するときは、登録を受けることができないが、同条文の適用は、
対比する両商標の構成が同一で、又は類似することが前提となっている。商標の有する外観、称呼及
び観念のうち一つでも類似であれば類似商標となりうる。また、商標の類否は、一般的取引者・需要
者の通常有する注意力を基準として混同のおそれがないかを判断しなければならない。
本件係争商標は外観では、インテルの「intel inside」
、「INTEL INSIDE」
、「INTEL INSIDE XEON」等
商標との区別がつきやすい。また取引における経験則に基づき場所と時間を異ならせて隔離的な観察
をしても、需要者層で関連のあるシリーズ商品と間違えて商品の出所を混同するおそれがあるとはと
うてい言い難い。
インテルは、世界中の二百余りの国で商標登録を受けている「intel inside」が同社のコンピュー
タプロセッサー製品を表す商標として周知されている事実を強調し、係争商標のように商標中に
「inside」が含まれている場合、インテルが連想されると主張する。これに対して、知的財産局は両
商標とも英文字「---inside」が含まれているが、係争商標の中心的な部分、白文字の「DSP」は立体
的にデザインされた黒地の三つのスクエアのなかに均等に配列されていて、平面的で太いラインで描
かれたちょっぴり変形のサークルに「intel inside」が走り書きのように書かれている引用商標とは
構成が大いに異なると反論。
主な参照条文:
商標法(1997.05.07)
第 37 条 商標の図形であって、次に掲げる各号のいずれかに該当するものは、登録を受けること
ができない。
第七号【他人の著名商標又は標章と同一又は類似のものであって、公衆に混同を生じさせるお
それがあるもの。但し、出願人は商標若しくは標章の所有者又は使用許諾をする者の同意を
得て登録出願をするときは、この限りでない。
】
第十二号【他人の同一商品又は類似商品に係る登録商標と同一又は類似のもの。
】
商標法施行細則(1999.09.15)
第 15 条第 1 項 商標図形の類似は、普通の知識や経験を有する一般の商品購買者が商品を購入す
るときに通常の注意を払って混同誤認の虞があるか否かによって判断する。
(図1)
(図2)
195
12「Game boy」がコンドームの商標に?
使い道の違いは明らか、行政訴訟 任天堂の負け
➮ 2005 年 4 月 13 日台北高等行政裁判所判決「93 年度訴字第 489 号」
<事実の概要>
コンドームメーカー、
「台湾不二乳膠(Taiwan Fuji Latex)
」は任天堂のテレビゲームの登録商標「Game
Boy」に中国語の「勁小子(勁:エネルギッシュ、精力旺盛の意。小子:男の子、坊や)
」三文字を加
えて自社製品の避妊具の商標として登録を受けている。これを知った任天堂は、消費者が任天堂を商
品の出所と誤認するおそれがあるとして、異議申立てをしたが、その主張が認められなかったため、
台北高等行政裁判所に訴願決定及び原処分の取消しを求める裁判を起こした。
かつて家庭用ビデオゲーム業界で無敵を誇った任天堂は、1990 年以前に「Game Boy」を創り出し、
各種類にわたって商標使用商品を指定し、本国の日本はもとより、台湾も含めて世界各国で商標登録
を受けている。原告によれば、
「Game Boy」
(以下、引用商標)を知らない人はいないといっても過言
ではないほどの人気商品で、台湾だけで 60 万台が販売されたことからも著名商標であることは疑う余
地もない。それを本件訴訟参加人(係争商標商標権者)が「Game」或いは「Boy」のどちらかではなく、
そのまま商標の要部に引用したことは明らかに「Game Boy」の知名度にただ乗りする意図があったこ
とに加えて、「Game Boy 勁小子」
(以下、係争商標)と引用商標とを対比して、外観、観念、称呼上互
いに紛らわしい点があり、公衆に商品の出所或いは製造元を原告会社と連想させ、混同誤認を引き起
こすおそれがないと言いがたく、よって異議決定時の商標法第 37 条第 7 号に定める不登録事由に該当
して登録されるべきではないという。
<解
説>
本件の争点は、係争商標ははたして異議申立決定時の商標法第 37 条第 7 号に定めた商標登録の拒絶
事由に該当するか否かというところにある。つまり、「・・・他人の著名の商標若しくは標章と同一若し
くは類似のもので、公衆に混同誤認を生じさせるおそれがあるもの」であるかどうかで、登録が適法
かどうかを判断する。まず、判決では、引用商標が著名商標であることを認めており、被告側もこの
点については争わない。次に、両商標は同一又は類似の要件を満たしているかについて、両方とも「Game
Boy」という英文字が含まれていて、類似商標と考えてよいとしながらも、これだけでは商標法第 37
条第 7 号の適用があるという結論に直結するわけにはいかないと被告側は主張し、両商標はどれだけ
類似しているか、オリジナリティがあるかないか、指定商品の性質、関連性、販売或いは陳列の場所、
そして消費者がどれだけの注意を払えば間違えたりしない等を勘案して判断しなければならないと答
弁した。
これについて、原告側は、改正前の商標法第 22 条「著名商標は商品性質の相関性による制限を受け
ない」を根拠に、たとえ係争商標が使われる商品の類別と性質は引用商標のそれと異なった場合でも、
著名商標の商標権者である事業者がゲーム機以外の事業で製造されたもの、或いは関係企業によって
製造されたものというような印象を消費者に与える、要するに混同誤認を引き起こす可能性があると
指摘したうえ、両商標がそれぞれ使われているゲーム機、コンドームを購入する消費者の年齢層はい
ずれも 15 歳から 40 歳、さらに情報化した社会では売り場に行かなくても商品情報を入手することが
できるため、陳列の場所が違うからといって混同誤認を生じないことにはならないと強調している。
裁判所は判決で、被告側の主張に同調した見解を示し、任天堂ゲーム機「ゲームボーイ」の商標「Game
Boy」は広く周知された著名商標であり、性質にしろ、効能や用途にしろ、ゲーム機と避妊具とは根本
的な相違がはっきりしていて、また消費市場も中心顧客層も別々で、商品を購入する際に普通の注意
を払えば、混同が生じることはないとして、任天堂の請求をすべて退けた。
196
13 JT タバコ著名商標「Seven Stars」と「七星」の不当使用
➮ 2005 年 1 月 13 日台北高等裁判所民事判決「93 年度智上字第 20 号」
<事実の概要>
日本たばこ産業の銘柄「セブンスター」は 1986 年に英語の「Seven Stars」、1990 年に中国語の「七
星」を商標登録出願し、登録されている。同社の「マイルドセブン(MILD SEVEN)
」の売上げは台湾に
おける輸入たばこ市場ではシェア首位の 48%を獲得している。セブンスターは 1995 年、セブンスター
の台湾での販売・取次について「七星煙草股份公司(株式会社)」と総販売代理契約を交わし、2001
年 12 月 31 日をもって契約期間が満了し、更新はしなかった。ところが、契約では、双方の業務提携
関係が終了した後の七星煙草公司その他これに類似する名称の使用が禁止されているにもかかわらず、
七星煙草公司は引き続きJTが権利を所有する商標「七星」と「Seven Stars」をその中国語、英語の
会社名称に使用し、また 2003 年に七星煙草公司の責任者と取締役、監査役が新設会社「七星事業公司」
の重役になって新たに輸入たばこ事業を立ち上げたときにも「七星」と「Seven Star」の使用を取り
止めなかった。そこでJTは商標専用権侵害として商標法、公平取引法により侵害行為の排除及び会
社名称の変更を求める裁判を起こした。
<解
説>
1.本件控訴人「七星煙草股份公司」の会社設立登記と被控訴人「日本たばこ産業」による「Seven
Stars」の登録商標出願とどちらが先か。
――1986 年に「Seven Stars」の商標登録出願当時、控訴人はその中国語訳の「七星」をあわせ
て出願しなかった。
「七星」について出願がなされたのは 1989 年 6 月 6 日、1990 年に商標登録証
が交付されている。自分は被控訴人の商標登録出願より先に 1989 年 9 月 1 日に同一名称の「七
星」と「Seven Stars」をそれぞれ中国語と英語の社名に会社登記申請をしたといった控訴人の
答弁は事実と若干異なる。
2.控訴人が契約終了後においても引き続き「七星」(「Seven Stars」の中国語訳。台湾のたばこ業
界、喫煙者をはじめ消費者に広く認識されているたばこの銘柄。以下、係争名称)を社名に使用
することが契約違反にならないか。被控訴人が所有する著名商標「七星」(知的財産局が認定)
にただ乗りする意図はあったかどうか。商標権者でないが、かつてセブンスターの台湾での総販
売代理だった控訴人が「七星」を、商標権者であるJTとの販売代理・取次関係が終了した後に
おいても、継続的に使用していたことは、消費者に混同誤認を生じさせる虞があるか。
――双方の業務提携関係が終了した後、控訴人が対外的に「七星煙草股份公司」の名義のもとで
営業を続けないということで双方が合意したうえ、契約締結に至ったわけだから、控訴人による
被控訴人所有の商標の継続的使用は明らかに契約違反である。そもそも双方が業務提携を開始す
る以前にたばこ関係の事業を営んでいなかった控訴人は、双方の業務提携関係があってこそ係争
名称を使用し始めた。また、セブンスターは台湾市場でシェア首位級の銘柄であるが故に、控訴
人が係争名称の使用を続けていたことは係争名称の高名さにただ乗りする意図があったと考え
られる。かつて販売代理関係にあった一方の当事者による同一名称の使用はいうまでもなく、消
費者に混同誤認を生じさせるおそれがあり、控訴人は契約にしたがって名称を変更する義務があ
る。
権利侵害行為の排除は、今起きている侵害行為と、将来起きる可能性のある侵害行為を対象とする
のであるから、控訴人が被控訴人の登録商標を使用していることは現在、実際に存在している事実で
あり、明らかに権利侵害行為にあたる。また控訴人は係争名称を使用する権利がなくなってからもな
お係争名称を新設会社の名称に襲用したことは、たとえ現下営業の事実がなくても、被控訴人にして
みれば、いつか侵害される可能性があるにちがいない。よって、被控訴人には商標法第 61 条第 1 項の
後段規定によりその侵害行為の排除を請求する権利がある。
主な参照条文:
商標法(2003 年 11 月 28 日現行商標法改正前の旧法)
第 61 条第 1 項 商標権者はその商標専用権を侵害した者に対し、損害賠償を請求することができ
る。又、その侵害を排除することを請求することもできる。侵害のおそれがあるものは侵害を防
止することを請求することができる。
商標法(現行法)
第 62 条
商標権者の同意を得ないで、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、商標
197
権侵害とみなす。
第一号 【他人の著名な登録商標であることを明らかに知っていて、同一若しくは類似の商標
を使用し、又は当該著名商標中の文字を自己の会社名称、商号、ドメイン名その他営業主体
若しくは出所を表示する標識として使用することによって著名商標の識別性又は信用を減
損した場合。】
第二号 【他人の登録商標であることを明らかに知っていて、当該商標中の文字を自己の会社
名称、商号、ドメイン名その他営業主体若しくは出所を表示する標識として使用することに
よって、商品又は役務の関連消費者に混同誤認を生じさせた場合。
】
公平取引法
第 24 条 本法に別段の規定がある場合を除き、企業は他の取引秩序に影響するに足りる欺瞞的、
又は著しく公正さを欠くような行為を行ってはならない。
民事訴訟法
第 457 条 仮執行の宣告
198
14「GIOVANNI VALENTINO」はあの有名なヴァレンティノに類似しない
行政裁判所、知財局に新たな処分命じる
➮ 2004 年 11 月 11 日台北高等行政裁判所判決「92 年度訴字第 3739 号」
<事実の概要>
イタリア人「Giovanni Valentino」は、その氏名「GIOVANNI VALENTINO」
(以下、係争商標)で構成
された標章に関して、知的財産局(以下、知財局)に商標登録出願をしたところ、
「公衆に混同誤認を
生じさせるおそれがある」と拒絶査定がなされたため、それを不服として本件行政訴訟を起こした。
原告側は「VALENTINO とはイタリア人によくある苗字で、様々な商品にイタリア人の氏名からなる
商標が付され世界中に売り渡されている。
『GIOVANNI VALENTINO』はあのパリコレで有名なイタリアの
デザイナーヴァレンティノ ガラバーニ氏(VALENTINO GARAVANI)がデザインするブランド
『VALENTINO』の商標( V ロゴと「VALENTINO」という文字からなる。以下、引用商標)に類似し、
加えて GIOVANNI と GARAVANI の構成文字には外観上の類似性が見られるため、混同誤認を引き起こし
やすい等を理由に原告による係争商標の登録出願を拒絶査定とした被告側の処分は不当である」と主
張。台北高等行政裁判所は、イタリアのありふれた苗字「VALENTINO」で構成された商標は本来構成外
観が果し得る識別機能が薄弱であるとする一方、これまで「VALENTINO」と他の文字や図形の組み合わ
せからなる商標が登録された前例は幾らでもあることから、消費者が普通の注意を払ってさえいれば
区別がつくものだと判断し、原告の主張の一部を認め、知財局に新たな処分を命じる判決を言い渡し
た。
<解
説>
ゴールド、シルバー、ひすい、パール、ダイヤモンド、ブローチ、ブレスレット、ネックレス、指
輪、ピアス等貴金属、宝飾品について使用することが指定された係争商標には登録出願時の商標法第
37 条第七号(不登録事由)に該当する、「他人の著名な商標又は標章と同一又は類似のもので、公衆
に混同誤認を生じさせるおそれがあるとき」という事実があったかどうかは本件の争点である。被告
の知財局はヴァレンティノを著名商標と認定し、それを根拠に「VALENTINO」という文字が含まれた係
争商標を拒絶査定とした。ところが、当の「VALENTINO」は原告の家族が営む会社の異議申立によって
「公衆を欺罔し又は公衆を誤信させるおそれがある」(当時の商標法第 37 条第 1 項第六号)と認めら
れ、登録査定を取り消された前歴がある。その理由には腑に落ちないものを原告が感じたのもそうい
う事情があったためである。
「VALENTINO」が含まれた表示が商標登録され、異なる分類の商品(役務)
について実施されているケースは少なくない。例えば、
「ORLANDI VALENTINO」
、
「VALENTINO & DEVICE」
、
「VALENTINO RUDOLFO」など。
「VALENTINO」が商標の一部を構成しているからといって、それを同一又
は類似の指定商品について使用すると、混同誤認を引き起こす虞があるとは限らない。かつて最高行
政裁判所が出した判決においてもそういった見解が示されている。ありふれた苗字からなる商標の排
他性には限界があり、特定の個人が独占使用するのには適していない。
知財局が主張した係争商標と引用商標はともに「VALENTINO」という文字を有することと、デザイナ
ーの氏名と文字の構成外観が類似していると判断したのだが、判決では、一、係争商標は単にローマ
字の「GIOVANNI VALENTINO」で構成されており、登録商標「VALENTINO」にあった V ロゴは係争商標に
はない、二、両方とも「VALENTINO」という文字があるが、今まで「VALENTINO」からなる商標は多数
登録され、併存していることから、それだけで消費者に混同誤認を生じさせるおそれがあると決め付
けることができない、三、両商標の類否判断にあたって、被告は係争商標の始めにくる「GIOVANNI」
をヴァレンティノのデザイナーの名前と対比させて係争商標は引用商標に類似するという結論を出し
たが、問題は引用商標にはデザイナーの名前が入っていない、つまり係争商標「GIOVANNI VALENTINO」
は引用商標「VALENTINO & V ロゴ」に類似しない、といった点を挙げて被告の処分を妥当でないとし
たのである。なお、引用商標はいったい著名商標なのかどうかは本件の判断に何ら影響を与えるもの
ではないため、本件判決で言及するに及ばない。
主な参照条文:
商標法(本件係争商標の登録出願がなされた当時の)
第 37 条第七号 【他人の著名な商標又は標章と同一又は類似のもので、公衆に混同誤認を生じさ
せるおそれがあるとき。
】
商標法施行細則
第 31 条第 1 項
本法第 37 条第七号にいう著名な商標又は標章とは、客観的な証拠によって当該商
199
標又は標章が関係事業者又は消費者に広く認識されていると認定されたものをいう。
第 15 条第 1 項 商標図形の類似は、普通の知識・経験を有する一般の商品購買者が(商品を)購
入するときに普通の注意を払って混同誤認の虞があるかないかによって判断する。
商標法(引用商標が利害関係者の異議申立により取消しとされた当時)
第 37 条第 1 項第六号 【公衆を欺罔し又は公衆を誤信させるおそれがあるとき。】
200
15 Jennifer Lopez vs. J.LO BY JENNIFER LOPEZ
混同誤認の虞あり 前者に商標登録不可の判決
➮2004 年 2 月 11 日台北高等行政裁判所判決「91 年度訴字第 4893 号」
<事実の概要>
アメリカの芸能界で女優、シンガーとして活躍中のジェニファー-ロペスは、自分の名前を使って
「J.LO BY JENNIFER LOPEZ」というブランドで香水や洋服まで出すぐらいの人気者。そのビジネステリ
トリーはアメリカにとどまらず、台湾にまで拡大してきている。米での商標登録(出願日:2001 年 3
月 5 日)をもとに優先権を主張しようとしたところ、台湾では女優の名前の「Jennifer Lopez」が既
に商標登録されていることが判明した。本件訴訟の原告 A が 2001 年 5 月 2 日に出願し商標登録を受け
た「Jennifer Lopez」商標(以下、係争商標)は、商標全体の構成からして、あのジェニファー-ロペ
スの「J.LO BY JENNIFER LOPEZ」商標とあまりにもよく似ていて、そのうえ両商標の指定商品は分類が
同一だったことから、ジェニファー-ロペスの所属事務所「Murphy & Kress」は異議を申立てて寄越し
た。
知的財産局による異議成立の決定を不服として、A は行政救済手続きの第二段階にあたる訴願審議
委員会に対して訴願手続を提出したが、それでも有利な結果を得られなかったので、台北高等行政裁
判所に裁判を起こした。先日、訴えに理由がないとして請求棄却の判決が言い渡された。
<解
説>
商標法第 4 条第 1 項、第 36 条前段はそれぞれ「出願人は、中華民国と商標の相互保護に関する条
約若しくは協定を締結しており、又は相互に優先権を承認する国において、法により登録出願をした
商標で最初の出願日の翌日より 6 ケ月以内に中華民国に登録出願をしたものについて、優先権を主張
することができる。」、「二人以上の者が、同一商品又は類似商品について同一又は類似の商標に係る
登録出願を別々にしたときは、先に出願をした者に登録を許可しなければならない。」と定めている。
出願商標が他人の先行商標と類似するかどうかは、通常の知識や経験をもつ消費者が商品を購入する
ときに通常の注意を払うだけで、混同誤認を引き起こす虞がないかを判断する。また、類似商品を判
断するにあたって、一般の社会通念や市場取引の実情を踏まえて、さらに当該商品の原材料、用途、
効能、製造元、販売ルート及び場所又は買受人等の要素を総合的に考察しなければならない。これら
の判断要素は、商標法施行細則第 15 条第 1 項、第 2 項にも明確に規定されている。
係争商標「Jennifer Lopez」は、異議申立の基礎となる商標「J.LO BY JENNIFER LOPEZ」と同様に、
すべて英文字で構成されている。後者の商標中の「BY」は一般の言葉で、ここに使うと、「J.LO」は
「JENNIFER LOPEZ」によるものだ、或いは「・・・からくるもの」だという印象を他人に与える。即ち、
「JENNIFER LOPEZ」は消費者の注意を引きつけようとする、この商標の要部のはずである。両者を時
と所を異にして引き離して別々に観察すると、どちらも英文字「Jennifer Lopez」で構成されている
ことから、出所が同じのシリーズ商品であるというイメージを消費者に連想させ、外観、観念の判断
要素からみて商標が使用される商品の主たる需要者に混同誤認を生じさせるおそれがあると言わざ
るを得ない。したがって、商標の類否にあたると裁判所は判断した。
主な参照条文:
商標法(係争商標登録当時の商標法)第 4 条第 1 項、第 36 条前段
201
16 コシヒカリ(越光米)、イネ品種 商標登録できない
➮2003 年 10 月 8 日台北高等行政裁判所判決「91 年度訴字第 3337 号」
<事実の概要>
「コシヒカリ」
(注:台湾では越光米という)はイネの品種かどうか、商標を構成し得るかをめぐっ
て争われた行政事件について、台北高等行政裁判所は、イネの品種であるため商標登録を受けること
ができないとする原告敗訴の判決を言い渡した。
「越光米」は 1996 年に米、麦等商品について使用する商標(以下、係争商標)として「陸協精米工
場」によって出願され、当時の商標主務官庁である経済部中央標準局(知的財産局の前身)の査定を
受けて登録しており、2001 年に本件原告に譲り渡された。その後、商標法違反として「億東企業」か
ら係争商標についての無効審判が請求され、知的財産局は審査を経て、登録は無効で、連合商標も併
せて取り消すべきとしており、その後の訴願手続きにおいても原処分を維持するとの決定が下された。
無効審判請求の際に引用された、元台湾省政府糧食局訳注「台湾主要稲作品種外観識別参考マニュア
ル」には「越光米」の外観、品質や特性などが記載されていることから、
「越光」をイネの品種と考え
てよいと請求者の「億東企業」は判断した(訳注:行政改革による省庁再編で糧食局は行政院農業委
員会に移管)。これに対して、原告は裁判で、その主張の根拠として台湾省政府糧食局作成の「稲・米
品質小百科」を持ち出し、米の種類には粳米、もち米等があるが、コシヒカリの名前が挙がっていな
いと反論したうえで、
「正式な文献ではない、あくまで参考用の上記マニュアルのみをよりどころに、
商標『コシヒカリ』は指定商品そのものの説明と密接な関係があるという知的財産局の判断にとても
納得できない」ことを強調した。
<解
説>
本件の争点は、係争商標中の中国語文字「越光」ははたして米の品種であるか、指定商品に関する
説明的な表示にあたるか、というところにある。
知的財産局によれば、商品を説明するものだったり、商品について慣用されている名称だったり、
或いは形状、品質、効能・用途等の表示をした標章のみからなる商標で、繰り返して使用されること
により識別力を失ったものは、登録されないという。係争商標の権利が移転される前に、出願人の陸
協精米工場はお米商品の包装パックに「越光」品種の米であることを明記するほか、消費者が識別で
きるように「大橋」という商標もつけており、くわえてパックの裏にも「粳米・越光」とあることか
ら、コシヒカリが米の品種であることは間違いないと考えられる。
高等行政裁判所の判決でも、原告が根拠に援引した「稲・米品質小百科」は稲を大きく分けて幾つ
かの種類をあげているだけで、細部までの分類にはふれていない。粳米の一種である「越光」を商標
として米商品に使用すると、一般的社会通念に照らして指定商品を説明する表示としてとらえられが
ちなため、法によりその商標登録を無効とすべきであるとした。
コシヒカリは 1977 年、日本から導入されたお米の品種で、台湾では「越光米」と言っている。
「『米
の中の尊い爵』といわれるお米の品種『コシヒカリ』、『粳米--越光』」と、原告に商標権を譲り渡し
た陸協精米工場のお米商品パックにもこう書かれていた。さらに、上記「参考マニュアル」における
「越光」に関する記載からして、粳米であることは確かで、
「稲・米品質小百科」で言及されていない
からといって、お米の品種でないとは限らない。よって、原告の訴えには理由がないとして棄却され
た。
主な参照条文:
商標法(係争商標登録当時)
第 37 条第 1 項第十号 【文字、図形、記号、色彩の組合せ又はこれらの結合が登録出願に係る商
標を使用する商品の形状、品質、効能、通用名称その他の説明を表示するもの。但し、第 5 条第
2 項の規定に該当するものであって、通用の名称でないときはこの限りでない。】
202
17 台湾資生堂の化粧品商標『皇家』 他人の商号や社名等と同一で取消しへ
➮2003 年 9 月 24 日台北高等行政裁判所判決「91 年度訴字第 3395 号」
<事実の概要>
商標先使用の事実があったとしても、ほかの法人または団体の名称、全国的に名を知られた商号と
同じで、かつその指定商品が同一または類似のものである場合は、商標登録を受けられない。台北高
等行政裁判所はこのほど、これを理由に資生堂の台湾現法による行政処分不服申立を棄却する判決を
下した。
台湾資生堂は 2000 年、
「皇家訳注」(ロイヤルの意、以下係争商標)を化粧品やシャンプーなどの商
品について使用する標章として知的財産局に出願をし、商標登録を許可された。だが、その後有限会
社「皇家日用衛生用品廠」
(以下異議申立人)から、係争商標とその社名が同一で商標法の規定に反す
ることを理由に異議が申立てられた。知的財産局の異議申立に対する商標取り消し処分を不服として、
台湾資生堂は訴訟を起こした。(訳注:SHISEIDO『クリーム リバイタル』の中国語商品名に「皇家」
という文字が使用されている)
台湾資生堂により、商標登録出願に関しては、商標法に基づき審査を経て登録か拒絶かどちらかの
査定をするわけであり、知的財産局が審査を行う際に係争商標が他の法人の名称と同じであるかどう
かを審査せず、一度登録の査定をした後でその商標登録を取り消すというのは手続き上妥当なもので
ないし、異議申立人の会社設立以来 40 年の間に一度も商標登録出願をしなかったのに、資生堂が広告
費を投入して宣伝活動を始めた後になっていきなり異議申立を切り出したのは、資生堂の商業上の信
用に便乗しようとして、公平さを欠く行為であるという。
原告の陳述に対し、知的財産局は「商標に係る名称が他人のそれと重複し、同一または類似の商品
についての使用を指定するものは法により登録されることができず、先使用権があるかないかは審査
の対象ではない。商標登録及び公告査定は登録の準備手続きに属し、審査不十分を補うために、何人
も当該商標の登録査定について規定に違反すると認めたときは三ヶ月の公告期間内に異議の申立てを
することができる。」と主張している。
<解 説>
本件判決の争点は、原告の台湾資生堂が商標登録出願前に本件訴訟参加人、つまり異議申立人より
承諾を得ないで、その社名の主要部分である「皇家」の二文字を異議申立人の会社営業項目と同一か
これに類似する商品について使用することを指定し商標出願をしたことを、被告が商標法第 37 条第
十一号に違反するとして係争商標を取り消すとする処分にはちゃんとした理由があったかどうかと
いうところにある。
裁判所は原告と被告両側の主張を勘案して、次の通り判示した。
係争商標中の「皇家」は異議申立人の社名の主要部分と同じであり、また化粧品等指定商品も「皇
家」有限会社の会社登記の際の営業項目と同一でありまたは類似する商品の範疇に入る。そのうえ、
原告の商標登録出願日は「皇家」が 1999 年に登記変更を行った後の会社免許に記された日付より後
であることから、原告が同社の承諾を得ずに同一または類似の商品について「皇家」を標章として使
用することを指定し登録出願をしたのは当然前掲条文(第 37 条第十一号)の適用がある。なお、審
査が十分に行われていなかったような場合に備えて、登録査定に係る商標について商標法違反と認め
たときはだれもが公告期間内に異議の申立てをすることができ、「皇家」社による異議申立は商標法
の規定に合致したもので、本件原処分には何ら不当なところはない。
また、登録出願及び査定公告は登録準備手続きに過ぎず、必ず登録された日からはじめて商標権を
取得するといえる。ところで、原告は、商標法第 23 条第 2 項により係争商標の先使用権(2000 年 6
月 17 日商標登録出願をした後、係争商標を使用しはじめた。新聞紙への掲載広告から証明できる)
を取得したはずであるというのだが、これは本件訴訟において問うべきことではない。
主な参照条文:
商標法(2002.05.29)
第 37 条第 1 項 商標の図形であって、左記の各号の一に該当するときは、登録出願を受けること
ができない。
第十一号【他人の肖像、法人及びその他の団体若しくは全国著名の商号名称若しくは氏名、芸
名、筆名、別名があり、その承諾を得ていないもの。但し、商号又は法人の営業範囲内にそ
の商品及び登録出願がなされた商標の指定商品と同一又は類似でないものはこの限りでな
い。】
203
18「海洋生成水」、商品の説明的表現 登録要件にあたらない
➮2003 年 9 月 18 日台北高等行政裁判所判決「91 年度訴字第 2806 号」
<事実の概要>
ミネラルウォーター等飲料水に付される商標の「海洋生成水」はいったい、商品についての説明的
な表示なのか、暗示的なものなのかを争う裁判で、台北高等行政裁判所は、台湾唯一の製塩会社であ
る「臺塩」が生産する飲料水における「海洋生成水」という商標の使用は、直接消費者に濃度の高い
海水を原料に作られたものと連想させる表現方法であり、改正前の商標法第 37 条第十号により商品の
説明にあたるものが商標登録されないとして、同社が原処分(商標登録拒絶査定)及び訴願決定(原
処分維持)の取り消しを求めて起こした行政訴訟を棄却する判決を下した。
「海洋生成水」
(以下係争商標)は、ここ数年経営の多角化への取り組みを積極的に行ってきた「臺
塩」の事業と海洋とは深い関係にあることを表すために、蒸留水、ソーダ水、ミネラルウォーター等
飲料水に付される商標として登録出願がなされたという。いわゆる「生成水」とは自らが創り出し、
広告文案などによる説明がなければ消費者にとってはわけの分からない言葉であると指摘したうえ、
係争商標の位置付けについて説明的な表現ではなく「暗示的(暗喩的)」な性格を有するものであるこ
とを「臺塩」は主張した。
<解
説>
知的財産局は、「『海洋生成水』と『海洋深層水』の呼び名注は同じだから、それをミネラルウォー
ターや蒸留水等飲料水商品について使用すると、海洋深層水を原料としたものというイメージを消費
者に与える可能性があり、商標法で定める不登録事由のうち商品についての説明的な表示に該当す
る」とした(訳注:中国語での発音が近いだけで、全く同じなわけではない)。出願人(原告)が「生
成水」について商標権を専用しない、いわゆる「不専用声明」制度の適用を主張したが、こちらのほ
うも「本件係争商標については適用しない」という理由で退けられた。
原告によると、
「海洋生成水」を「海洋」と「生成水」に分けてみると、前者は普通名称であるの
に対し、後者は固有名詞ではなく、出願人が創り出したオリジナルな語彙だからこそ、この新しい飲
料水を消費者に理解し、認知してもらうためには、広告文案等による説明をマスコミを通じて広く宣
伝する必要があるという。要するに、原告の説明をもとに消費者が推理を働かせてはじめて係争商標
に係る指定商品の性質や内容と連想することが可能になる。以上のことから、係争商標は明らかに「説
明的な」表示をした標章のみからなる商標ではなく、商品の特徴を暗示的な表現(暗喩法)によって
示したものである。
判決で、被告が称呼類似から「海洋深層水」と連想させられるなどを理由に商品に関する説明とし
て登録を認めなかった査定には多少妥当でないところはあったとしても、原告による訴願趣意書、及
び起訴状に添付された記事報道にも『海洋生成水』は海水から食塩を採取し、製造する過程において
蒸発した水を冷却させた後、さらに UV 殺菌や逆浸透などといったプロセスを経て作り出した飲料水」
と述べられたように、係争商標はその指定商品であるミネラルウォーターや蒸留水等飲料水商品の品
質、効能、製造方法及び原料の供給源等を具体的に表示するものであると客観的に考えることができ、
また観念上係争商標の構成文字そのものも原告が宣伝しようとする商品本来の品質、効能、製造方法
及び原料の出所と全く一致していることから、係争商標は単なる暗示的なものではなく、説明的な表
示をした標章のみからなる商標に属すると認めてよい、としている。
主な参照条文:
商標法(2002.05.29)
第 37 条第 1 項 商標の図形であって、左記の各号の一に該当するときは、登録出願を受けること
ができない。
第十号【文字、図形、記号、色彩の組合せ又はこれらの結合が登録出願に係る商標を使用する
商品の形状、品質、効能、通用の名称又はその他説明を表示するもの。但し、第 5 条第
2 項の規定に該当するものであって、通用の名称でないときはこの限りでない。】
商標法(2003.05.28 改正法)
第 23 条第 1 項
できない。
商標であって、次に掲げる各号の一に該当するものは、商標登録を受けることが
第二号【商品又は役務の形状、品質(質)、効能を表示するもの、又はその他説明的なもの。】
204
19 商標の類似非類似をめぐる裁判 象印に有利な判決
➮2003 年 8 月 21 日台北高等行政裁判所判決「91 年度訴字第 2462 号」
<事実の概要>
動物のデザインを商標とする場合は、様々な美術的表現があるが、商標の類否を判断する基準から
みて僅かの差でも、商標の類似を構成し登録を取り消されることがある。
台湾の日象実業公司(会社)は 1999 年に象の頭部を商標(以下、係争商標)に炊飯器、電気ポット、
電子レンジ、マホービン、電子ジャー等商品についての使用を指定し出願したところ、2001 年 2 月 1
日に登録された。これに対し、日本象印マホービン株式会社は係争商標登録時の商標法第 37 条第 7
号、第十二号規定違反を理由に無効審判を請求した。知的財産局が審査した結果、同条第十二号に定
める商標不登録事由に該当するとして、象印社の請求が認容された。日象社はこの審決を不服として
すぐに知的財産局の上級機関である経済部に訴願の申立てをしたが、これも退けられた。そこで、日
象は台北高等行政裁判所に訴願決定と原処分の取消を求め、知的財産局を相手取って訴訟を起こした
のが今回の事件である。
行政裁判所はこの間、日象の訴えを棄却する判決を言い渡した。
<解
説>
他人の登録商標又はこれに類似する商標を、商標登録に係る指定商品(指定役務)又はこれらに類
似する商品(役務)について使用するときは、商標登録を受けることができないし、商標権の侵害と
みなされることもある。
現行商標法第 52 条第 1 項(下記条文をご参照)により、第 37 条第 1 項の規定に違反する商標登録
について、利害関係を有する者は、無効審判を請求することができる。また、本件商標登録時の同法
第 37 条第十二号及び同法施行細則第 15 条第 1 項により、商標の類否は、通常の知識と経験をもって
いる購入者が普通の注意をはらって商品を購入するときに商品の出所を混同誤認するおそれがある
かないかによって判断する。二つの商標を対比して、外観、称呼、観念上、互いに紛らわしい点が一
つでもあれば、商標の類似を構成することになる。係争商標は象の頭部から構成され、象の目や象牙
などが細かく描かれているのに対し、象印の登録商標は象のからだ全体と英文字「ZOJIRUSHI」から
構成され、アニメのキャラクターのように抽象的に表現されている点において異なるが、全体的に観
察してみると、両方とも左向き顔で、鼻が上を向いているようにして象の頭部を強調している。その
うえ、商標登録に係る指定商品が象印のそれと同一又はこれに類似するものであることが明白な事実
であり、言うまでもなく法により登録を受けることができない、とされている。
主な参照条文:
商標法(2002.05.29)
第 37 条 1 項 商標の図形であって、左記の各号のいずれかに該当するときは、登録出願を受ける
ことができない。
第十三号【他人の同一商品又は類似商品の登録商標と同一又はこれに類似するもの。】
第 52 条 1 項 商標の登録が第 31 条第 5 項、第 36 条、第 37 条第 1 項又は第 42 条第 2 項後段の規
定に違反したときは、利害関係人は商標主務官庁に対し、その登録を無効にすることについて審
判を請求することができる。
商標法(2003.05.28 改正法)
第 23 条 1 項 商標であって、次に掲げる各号の場合のいずれかに該当するものは、商標登録を受
けることができない。
第十三号【他人の同一又は類似の商品又は役務について使用する登録商標又は出願が先になされ
る商標と同一又は類似のものであって、関連消費者に混同誤認を生じさせるおそれがあると
き。但し、当該登録商標又は先の出願に係る商標の所有者の同意を得て出願をするときは、
二つの商標及び指定商品又は指定役務がすべて同一の場合を除き、この限りでない。】
第 50 条第 1 項 商標の登録が第 23 条第 1 項又は第 59 条第 4 項に定めるところに違反するもので
あるときは、その登録について利害関係者は商標事務専門担当機関に対し無効審判を請求し、
又は審査員はそれを提起することができる。
205
20 National vs. Natural、商標類否判断 混同の虞あると言い難い
➮2003 年 8 月 14 日台北高等行政裁判所判決「91 年度訴字第 2082 号」
<事実の概要>
「National」
(ナショナル)と「Natural」
(ナチュラル)は商標の類似を構成するかどうかについて、
台北高等行政裁判所は判決で、国際語としての性格が強い英語の「National」、
「Natural」という二つ
の言葉は読み方も意味も異なり、消費者に誤認を生じさせるようなことはなかろうとの見解を示して
いる。
本件行政訴訟の原告である、佳圓有限会社(台湾企業)によって 2000 年 5 月 5 日に登録出願がなさ
れた「Natural」商標(以下は係争商標)は、知的財産局の審査を経て登録査定を受けた直後、松下電
器所有の「National」商標に類似するとして、ある消費者から商標法第 37 条第 7 号及び第 12 号違反
を根拠に異議が申立てられた。知的財産局はこれについて審査した結果、異議不成立の処分を下した
が、申立人はそれでは気が済まず、経済部に対する訴願手続きに踏み切った。これでようやく経済部
から「原処分取消、原処分機関が新たに適法な処分をするよう」との決定を得ることができた。しか
し一方では、係争商標の出願人、佳圓社は経済部の決定に納得できず、経済部の訴願決定の取消を求
めて行政裁判所に訴訟を起こした。
<解
説>
係争商標は「National」と同じく、電球やランプなどについての使用を指定しており、しかも文字
だけで構成されている。くわえて、両方ともにアルファベット「Nat」と「al」をそれぞれ言葉の初
めと後ろにもっている。異議申立人によると、係争商標に係る指定商品は「National」のそれと同じ
たぐいのもので、明らかに消費者の「National」に対する認知度を利用して、その周知性にただ乗り
しようとしたという。申立人(本件訴訟に参加)は「National」と係争商標が使われた電球製品の包
装パックを提出して、係争商標が実際に商品に書かれていた書体やカラーコーディネートにしろ、包
装パックの全体的構成にしろ、日本語の説明まで National のそのものと全く同じだから、
「National」
ブランドの製品を買おうとした家族がつい見誤って係争商標が付けられたほうの商品を買ってしま
ったことがあると指摘した。しかし、この点について、判決では、公益の保護を目的とする異議申立
だったというのだが、公平取引法の範疇に属するもので、本件訴訟で問われることではないとした。
一方、被告の経済部は、「普通の場合、消費者が商品を購入するときにぱっと見た感じで取ってし
まうことが多く、商品につけられた商標を手に取って一々確かめたりはしない。だから、見誤る可能
性がある。(係争商標は)日本で商標登録を受けたからといって、台湾でもその登録が認容されるべ
きだということの根拠にはならない。
」と主張する。
結果的に、裁判官は、台湾国民の語学力から「国民の、国家の、全国的の」等を意味する「national」
と「自然(天然)の、自然界の、生まれつきの、本能的な」等の意味をもつ「natural」を間違える
なんてことは可能性としては非常に低いし、客観的な一般的取引者・需要者が用いる通常の注意力を
判断基準として全体的に観察してみれば、外観、観念、称呼上はっきりと異なる二つの商標を容易に
区別できるはずであるとしたうえ、さらに時と所を異にして離隔的に観察しても一般の消費者に混同
誤認を起こすおそれがあると言いがたい、などを理由に経済部の決定を取り消すべき判断をした。
主な参照条文:
商標法(2003.05.28 改正法)
第 23 条 1 項 商標であって、次に掲げる各号のいずれかに該当するときは、商標登録を受けるこ
とができない。
第十二号【他人の著名商標又は標章と同一又はこれに類似するものであって、公衆に混同を生じ
させるおそれがあるとき、又は著名商標若しくは標章の識別的性質若しくは信用を減損する
(ダイリューション)おそれがあるとき。但し、当該商標又は標章を所有する者の同意を得て
登録出願がなされたときは、この限りでない。
第十三号【他人の同一又は類似の商品又は役務について使用する登録商標又は出願が先になされ
る商標と同一又は類似のものであって、関連消費者に混同誤認を生じさせるおそれがあるとき。
但し、当該登録商標又は先の出願に係る商標の所有者の同意を得て出願をするときは、二つの
商標及び指定商品又は指定役務がすべて同一の場合を除き、この限りでない。】
商標法(2002.05.29)
第 37 条 1 項
商標の図形であって、左記の各号のいずれかに該当するときは、登録出願を受ける
206
ことができない。
第七号【他人の著名商標又は標章と同一又は類似のものであって、公衆に混同を生じさせるおそ
れがあるとき。但し、出願人は商標又は標章の所有者又は使用許諾をする者の同意を得て登
録出願をするときは、この限りでない。
】
第十二号【他人の同一商品又は類似商品に係る登録商標と同一又はこれに類似するとき。】
207
21 キャラクター「ミッフィー」 に類似、gini Rabbit 登録商標取消処分維持
➮2003 年 7 月 30 日台北高等行政裁判所判決「91 年度訴字第 2271 号」
<事実の概要>
オランダの「メルシス」社は台湾「笙翔」社が 1999 年に商標出願し、2000 年に登録を受けた「gini
Rabbit 吉妮兔」(以下係争商標)に対して、同社所有既登録商標「Miffy」(device mark NIJNTJE)に
類似することを理由に無効審判を請求し、知的財産局から「gini Rabbit 吉妮兔」商標登録取消の審
決が下った。これを受けて、
「笙翔」は経済部に訴願を提起した結果、原処分維持の決定となり、同社
はこれを不服としてさらに高等行政裁判所に訴訟を起こした。本件訴訟について、台北高等行政裁判
所は先日、係争商標が「Miffy」に類似するとして、原告「笙翔」の訴えを棄却する判決を言い渡した。
原告が上訴しなければ係争商標及びその連合商標はともに取り消されることになる。
判決で、「Miffy」は多くの国で商標登録を受けており、その商標が付された商品も多く市場に売り
出され、消費者の間で広く認識されていて、「著名商標」と認めてよいとされ、中国語の「吉妮兔」、
英語の「gini Rabbit」及び擬人化された二匹のメスの兔で構成され、丸い耳と目、楕円の形をする鼻、
小さな口などの特徴をもつ係争商標は、とがった耳、小さな目、お口が「×」となっている「Miffy」
とは著しく異なり、商標の類似にあたらないとの原告の主張は受け入れられなかった。
<解
説>
商標法(旧法)第 37 条第 7 号により、他人の著名商標若しくは標章と同一又はこれに類似し、公
衆に混同誤認を生じさせるおそれのあるものは、登録を受けることができない。そして商標の類否を
判断するにあたって、通常の知識と経験を有する消費者が商品を購入するときに通常の注意を払って、
混同誤認を引き起こすおそれがあるかどうかによる。また、商標法施行細則第 15 条第 1 項及び第 31
条第 1 項の定めるところにより、著名な商標若しくは標章といえるものは、当該商標若しくは標章は
関連業者若しくは消費者の間で普遍的に認知されていると認定するに足りる客観的証拠のあるもの。
係争商標は、一番上に英語の「gini Rabbit」が描かれており、真中に中国語の「吉妮兔」、その真
下に擬人化された二匹のメスの兔で構成されるのに対し、
「Miffy」は単に一匹の白い兔で構成されて
いる。両方を細かに比較して、中国語と外国語、及び二匹の兔と一匹の兔という点で相違があるとは
いえ、前者も後者も兔が商標の要部となっており、かつ細かいラインで描かれ、まっすぐ前に向かっ
て立っているという構図から、商標全体の外観が似ていて、時と所を異にして離隔的に観察すると、
シリーズ商品であると認識されがちなので、全く混同誤認を引き起こすおそれがないと言いがたい。
また、係争商標を付した商品の販売関連資料のほとんどが出願日より後のもので、係争商標が出願
された当時には既に消費者によく知られていて「Miffy」と誤認されるおそれがない、ということを
十分に証明することはできない。なお、原告の委託を受けて台湾経済発展研究院が作成した「deivce
mark NIJNTJE と gini Rabbit 商標のマーケッティングリサーチ」報告書で、
「通常の注意を払う」、
「時
と所を異にして離隔的観察をする」
、
「全体的に観察する」三つのポイントで一般の消費者を対象に調
査を実施したところ、同一の出所源からのシリーズ商品と思わないと答えた人は 60%以上を占めるこ
とから、混同誤認を消費者に生じさせるおそれはないとあるが、同報告書の内容から著作権の範疇に
属するもので、本件において対比する二つの商標を不類似とする論拠にはならない。
208
22 いちごキティ、立体商標登録開放前でも保護対象になりうる
➮2003 年 7 月 17 日台北高等行政裁判所判決「91 年訴字第 2112 号」
<事実の概要>
台北高等行政裁判所は最近の判決で、現行商標法では立体商標が保護される対象になっていないが、
他人の著名商標に類似する標章やキャラクターに係る出願についてはやはり登録が認められないとの
見解を示している。
本件訴訟において、台湾三麗鴎(サンリオの台湾法人)社は、
「いちごキティ」は同社の周知商標「HELLO
KITTY」をもとに派生的に創り出した変身キティシリーズの一つであり、キティと同じ特徴をしていて、
両方には一貫性がみられ、商標の類似を構成するとしたうえ、係争商標「Hat Family」
(登録査定を受
けて公告期間内に三麗鴎から異議申立をされた。
)のデザインがキティと瓜二つだという点は、興信所
「蓋洛普」が実施した調査で調査を受けた対象の七割以上が「Hat Family」も変身キティシリーズの
一つと思うと答えたことからも明らかに消費者に混同誤認を生じさせており、その登録査定を取り消
すべきだ、と主張した。これに対して、被告の経済部は、
「わが国商標制度は登録主義をとっており、
いちごキティは商標登録を受けていない。いちごキティのぬいぐるみやキーホルダーなどのキャラク
ターグッズ、つまりこれら外国の立体商標を商標法が保護する対象として寛大に認めるには、現行制
度からして適法性の問題がある。」と指摘し、現行商標法違反を理由に知的財産局の異議申立成立処分
を取り消すとする訴願決定を下した。
一方、松林紙品(係争商標の出願人)は、
「いちごキティは単なるグッズのデコレーションに過ぎず、
商標ではない。たとえ『Hat Family』といちごキティのデザインが似ていたとしても、それは著作権
に関わる問題で、著作権法の基本原則の下では著作物だけが保護され、創作の概念及び構想には保護
が及ばない」と云々している。
理由はともあれ、商標法第 37 条により、商標の図案が他人の著名商標と同一で又はこれに類似して、
消費者に混同誤認を生じさせやすいものは、登録をうけることができないとあり、現行商標法は立体
商標を規定の対象としていないが、いちごキティがその有名な「HELLO KITTY」の変身キティシリーズ
の仲間である以上、立体商標としてではなく平面的商標からしても、いちごキティに類似する係争商
標「Hat Family」の登録はどうかと改めて見直すべきであって、原告の訴願決定取り消し請求に理由
があるとする判決が下った。
<解
説>
台湾の商標法は(2003 年)4 月に改正が行われ、11 月 28 日に施行することになっている。この改
正で、商品の出所表示として機能するものであれば、音声と立体的形状からなる標章でも商標登録を
受けられることになる。ところで、商標法第 37 条に定める商標不登録事由に関し、他人の著名商標を
異議申立の根拠とする場合、
「登録済」が先決かどうかについて、知的財産局は、実務上商品出所表示
機能さえあれば商標と見なされ、必ずしも「登録済」である必要はないが、主務官庁の立場からは、
登録しておくほうが法律によって権利を保障されることになるという。
本件判決で、原処分(三麗鴎の異議申立に対して知的財産局が異議申立を認め、係争商標「Hat
Family」の登録査定を取り消すとする処分)は、いちごキティが「HELLO KITTY」の変身シリーズキテ
ィの仲間であり、キティの知名度から、それをもとに創り出された様々な変身キティの図案が施され
たキャラクターグッズもきっとキティの愛用者が熱心して集めるにちがいないと考え、平面的ないち
ごキティの図案も著名であると判断したのであって、いちごキティを立体商標として寛大に認めたの
ではないとし、被告の経済部が誤って、いちごキティを立体商標と認め、係争商標の登録査定を取り
消すとした原処分を妥当なものではないと判断し、それを理由に松林紙品による訴願提起に対し原処
分取消しの決定を下したわけで、原告が提出した証拠のうちいちごキティの平面的な商標をもとに、
「当該平面的商標が広く知られており、かつ、係争商標と類似している」という原処分の認定が適法
的かつ妥当であるかどうかについて、改めて審査したうえで、新たな決定をすべきであるとした。
209
23 地理的表示を含む商標 商品出所の混同を禁止
➮2003 年 7 月 17 日台北高等行政裁判所判決「91 年度訴字第 1926 号」
<事実の概要>
台北高等行政裁判所は先日、
「大成長城企業」が干し肉等肉類の加工食品について使用する商標『大
成鹿野』
(以下、係争商標)に係る登録出願に関し、本件商標の要部となる『鹿野』について消費者に
商品の供給源又は生産地を混同誤認させかねないとして、
「大成長城」が提起した本件訴訟を棄却する
判決を言い渡した。判決で、係争商標シリーズ商品の宣伝広告には「ここに放し飼いにされる鶏は自
然に親しんで健やかに成長している」云々という謳い文句が出ており、くわえて、
「チキンエッセンス
は鹿野農場からの地鶏で作られる」と言い立てるから、消費者が連想して、商品の産地と思い違いす
る可能性があるとされている。
これに対し、原告は、「『鹿野』は台東県の観光地で、天候、土壌、雨量等気候上の条件が揃い、お
茶の生産で知られている。係争商標が丸ごと焼き鳥、フライドチキン、チキンエッセンス等商品表示
に使用されるからといって、消費者がそれを台東県の鹿野で産出されるものと誤認して購入すること
にならない」と主張。同社はまた、次のように述べている。
「国内において地名を商標として登録を受
けている前例が少なくない。指定商品が有名な生産地又は集散地でない限り、地名が含まれる商標で
も登録を受けられる。係争商標が付された商品は以前から大型量販店やコンビニで販売されており、
消費者によく認識されていて自他商品識別力をもつ表示であって、商品の出所について混同誤認を生
ぜしめるおそれがあるといいがたい。」
知的財産局は、本件に関し「商標法第 37 条により、公衆に商品の性質、品質又は産地を誤認させる
ような商標は、登録を受けることができない。台東の鹿野は近年、人気のある観光地となり、お茶の
生産で知られているほか、牧場や農場もあり、国民にとって自然の美しい町である。これを商標にす
ると、消費者に混同誤認を生じさせるおそれがある。」との見解を示している。
<解 説>
商標法(旧法)第 37 条第六号により、公衆に(商標が付された)商品の性質、品質又は産地を誤
認させるおそれのある商標は登録されない。この規定は、商標上の文字、記号又は図形そのものが指
定商品の性質、品質又は産地を表示するものであって、公衆に誤認させるおそれのある場合に適用さ
れる。
本件連合商標は中国語文字の「大成鹿野」だけで構成され、うち「鹿野」は近年、観光名所として
著名になってきており、そこの牧場や農場に放し飼いされ、大自然に囲まれて育つ地鶏も良質な肉質
で名を知られるようになり、
「地鶏の名産地ではない」という原告の主張が容認しがたい。また、原告
の起訴理由に「
『ここに放し飼いにされる鶏は自然に親しんで健やかに成長している』云々はただの販
促のための宣伝用語に過ぎず、産地の説明ではない」とあるから、係争商標の指定商品である干し肉、
フライドチキン、チキンエッセンス等加工品の原料は鹿野からのものでないことは明白な事実である。
にもかかわらず、原告による商品の説明にチキンエッセンスの原料について「鹿野の農場からの地鶏」
などの記載があった。すると、係争商標を干し肉、焼き鳥、フライドチキン、鶏のフレークなどの肉
加工品や味付け卵などに使用すれば、消費者が鹿野を原料の出所ととらえることは可能性として十分
にある。
確かにこれまで地理的名称からなる商標が登録された事例は少なからずあるが、これらの事例は本
件と異なり、商標審査における個別案件拘束原則に基づいて、係争商標を登録査定とすべき根拠とし
て援引し、対比させることはできない。
210
24 銘酒ブランド「女児紅」 商標登録認められない
➮2003 年 5 月 14 日台北高等行政裁判所判決「91 年度訴字第 1485 号」
<事実の概要>
ある日本会社が、銘酒の紹興酒に用いられる「女児紅」について台湾での商標登録出願が拒絶され、
行政訴訟を起こして争っていた事件について、台北高等行政裁判所はこのほど、
「女児紅」は酒類の一
般的名称で、商標登録が受けられない法定事由にあたるとした判決を言い渡した。
同社の話では、
「女児紅」という名の陳年紹興酒を日本で十数年間販売しており、また毎年主要メデ
ィアを通じて宣伝広告を度々出している。さらに、数年前から中国の業者と業務提携し、
「女児紅」の
中国での商標権も順調に取得して、販売を始めている。
台湾商標法第 37 条第十号により、文字、図形、記号、色彩の組合せ又はこれらの結合が登録出願
に係る商標を使用する商品の形状、品質、効能、通用の名称又はその他説明を表示する商標に該当す
る場合は、商標登録が受けられない。例えば、
「ビール」だけで商標とすることができない。知的財
産局も、台湾国民の考えでは、「女児紅」はもともと黄酒の種類で、商標出願の対象にはならないと
の見解を示している。
<解
説>
中国屈指の本格的な紹興酒の一つ「女児紅」に係る商標登録出願が台湾においてだけでなく、本場
の中国でも浙江省紹興県にある鹹亨醸酒廠によって 1988 年に初めての商標登録出願がなされたとき
から、論議の的となった。当時、中国国家工商行政管理局商標局は、
「女児紅」という別名をもつ「花
彫」
(はなほり)は黄酒の品種として慣用的に使用されるようになった名称で、
「女児紅」も花彫同様、
黄酒の一種の慣用名称と考えられるとして、同出願を拒絶査定にした。同局はついでに同じ理由で、
紹興市醸酒総公司(現在の中国黄酒グループ)の登録商標「花彫」を取り消した。しかし、その後、
同局が 1995 年に【商標「女児紅」の異議申立の決定について】の発表で、係争商標「女児紅」は確
かに異議申立人「国営紹興越泉酒廠」が自ら創り出したものだと論点がぼやけるような見解を示し、
さらに 1996 年、越泉酒廠(
「女児紅」について登録を受けた直後、名前を「女児紅醸酒総公司」に変
更し民営化を図った)による「女児紅」の登録出願について商標専用権を与える決定をしてから、「女
児紅」の商標登録をめぐる論争はおさまるどころか、疑惑が深まる一方であった。紹興県内の黄酒醸
造会社 18 社が連名で中国商標当局に抗議する事態にまで至った。
(注:「女児紅」は 1998 年に浙江省の著名商標とされることになった)
浙江大学教授の陳橋驛先生、中国法学会行政法研究会の張尚明理事によると、
「女児紅」は紹興県
の人民が生み出した貴重な歴史的遺産であり、紹興県内の黄酒業界で共用されていた黄酒の一種の名
称でもある。中国の王朝「唐」、
「清」の時代から伝わってきた数々の典籍、現代の著書「中国紹興酒
文化」、また幾つか有名な小説の至るところに「女児酒」
、
「女児紅酒」、
「女児紅陳(年)紹(興酒)
」、
「紹興女児紅」などの言葉が散見されることから、1919 年に設立された造酒会社が創り出したものと
云々の説は筋違いも甚だしい。
211
25 商標「毎天」と「毎日 C」の類否判断
➮2003 年 4 月 30 日台北高等行政裁判所判決「91 年訴字第 747 号」
台北高等行政裁判所はこの間、黒松社(大手ドリンクメーカー)が乳製品飲料について使用する商
標【毎天】は、味全社(大手食品メーカー)がジュースシリーズに使っている登録済み商標【毎日 C】
に類似することから、登録を認めることができないとし、黒松が起こした本件訴訟を棄却する判決を
言い渡した。
(訳注:中国語でいう「毎天」
、「毎日」は同義語で、日本語の「毎日」と同じ意味で使
われる)
黒松は 1999 年、紅茶、緑茶、アイスクリーム、コーヒー等を使用指定商品として登録済商標【毎天】
について連合商標(以下は係争商標)の出願をし、登録査定を受けていた。その後、味全は、同社所
有商標【毎日 C PLUS DAILY C PLUS】、連合商標の【毎日 C DAILY C】と【毎日 C】に類似することを
理由に、係争商標について無効審判を請求したが、知的財産局から請求不成立の処分が下った。門前
払いを食わされた味全はこれを不服として、さらに訴願を提起した結果、経済部は知的財産局による
原処分を取り消し、新たに適法な処分を下すことを命じた。一方、経済部の訴願決定を受けて、黒松
はすぐに行政訴訟提起をもって反撃に出た。
係争商標【毎天】を味全の【毎日 C PLUS DAILY C PLUS】
、
【毎日 C DAILY C】と対比してみると、
「毎
天」と「毎日」は外観、観念が類似し、またジュース、ミネラルウォーター、ソーダ水、蒸留水、ス
ポーツドリンク、コーラ、野菜汁等同一の商品について使用することを指定したため、需用者に混同
誤認を生じさせるようなことはないと言い切れず、商標の類似と判断してよかろう。黒松は、
【毎日 C】
は中国語の「毎日」と英語の「C」を組み合わせたもので、切り離して考えることができず、これま
での宣伝広告によって【毎日 C】は一体化した商標として消費者に認知されていると主張するが、味
全の商標を調べたところ、
「毎日」と「C」の組み合わせには独創性も新規性も見いだせず、それを切
り離して対比することができないなんてことは当然通用しない。そのうえ、英語「C」はドリンクメ
ーカーによく使われているアルファベットであり、単に付け加えて記したものとして機能するに過ぎ
ず、標章全体においては要部ではない。いわんや、味全が係争商標について無効審判請求をする前に、
既に「毎日××」をもって何件もの商標登録出願をしていることから、同社が主観的に「毎日」と「C」
を不可分なものとするのではなく、「毎日」を将来的に市場に売り出そうとするドリンク商品シリー
ズの商標として使うと考えているはずである。
主な参照条文:
商標法(2003.05.28 改正法)
第 18 条 二人以上の者が、同日に同一又は類似の商品又は役務について使用する同一又は類似の
商標に係る登録出願を別々にした場合において、関連消費者に混同誤認を生じさせるおそれがあ
り、出願の先後が判明しないときは、各出願人が協議してこれを定める。協議が成立しない場合
は、抽せんによりこれを定める。
第 36 条前段規定 二人以上の者が、同一商品又は類似商品について同一又は類似の商標に係る登
録出願を別々にしたときは、最先の出願人に登録を許可しなければならない。
第 37 条第 1 項 商標の図形であって、左記の各号の一に該当するときは、登録出願を受けること
ができない。
第七号 【他人の著名商標又は標章と同一又はこれに類似するものであって、公衆に混同を生
じさせるおそれがあるとき。但し、出願人は商標若しくは標章の所有者又は使用許諾をする
者の同意を得て登録出願をするときは、この限りでない。】
212
著作権関連
01 著作権法――海賊版販売収入 5 万 地裁「1569 万元損害賠償金支払」命令
■ハイライト
24 歳の男性が専門学校の学生だった頃、月給 5000 元で同級生(別件で審理中)に雇われ、マイクロ
ソフト社の XBOX、あわせて 513 種類の海賊版ゲームソフトを一枚につき 100∼130 元の値段で電子メー
ルやインターネットを通じて販売していた。現在、兵隊に入っている被告は当時、海賊版の販売で計5
万元の収入を得たが、本件で台北地裁から1569万元の損害賠償金支払を命じられた。海賊版は中国
のウェブサイトからダウンロードしたり、レンタルで借りたり買い入れたりして大量複製し、注文に応
じた。
2004 年 11 月、被告の犯行が発覚し、マイクロソフト社は被告に対して 25 億 7000 万元の損害賠償を
請求した。判決で、一種のゲームソフトにつき 3 万元、これに 30 万元の商標権侵害賠償金を上乗せして、
あわせて 1569 万元の損害賠償金の支払を命じた。刑事告訴の部分については、懲役 8 月、執行猶予 3 年
の判決が確定した。
被告は法廷でお金がないと主張するが、責任を免れることができない。マイクロソフトは、知的財産
権を侵害する個人に対する民事判決の執行が困難で、結果的に賠償金が支払われずじまいになることが
多いとコメントしている。
裁判番号:94 年度智字第 90 号
裁判期日:2006 年 2 月 20 日
件名:損害賠償請求事件
台北地方裁判所民事判決
原告:マイクロソフト
被告:羅興文
判決要旨(理由):
1. 原告が主張した事実について、被告は犯行を認めている。被告は販売の目的で無断で光ディスクに
複製して他人の著作財産権を侵害したことで、懲役 8 ヶ月、執行猶予 3 年の判決を受けている。
2. 故意又は過失により他人の著作財産権を不法に侵害したものは損害賠償責任を負う。被害者がその
被害額を容易に証明できない場合は、裁判所に侵害の状況により 10,000 元以上 1,000,000 元以下の
範囲内で賠償金を算定することを求めることができる。その行為が意図的かつ侵害の状況が重大な
場合においては、著作権法第 88 条第 1 項、第 3 項により賠償金を 5,000,000 元にまで増やすことが
できる。警察で押収された海賊版の数は一種類のゲームソフトにつき 1∼4 枚程度で、正規品は 1,000
∼2,000 元で販売されていることからすれば、一の著作物につき 30,000 元で計算して合せて
15,390,000 元の賠償金が妥当だと考える。これを超過した部分については認めない。
3. 著作権法第 89 条、商標法第 64 条により、被害者は侵害者の費用負担において判決文の全文又は一
部の新聞紙、雑誌への掲載を請求することができる。よって、前掲規定に基づいて、被告の費用負
担においてお詫び広告、本件刑事裁判の最終事実審の判決文及び事実欄並びに本件民事裁判の最終
事実審判決文の主文欄を経済日報に掲載するという原告の請求を認める。
4. 起訴状の謄本が送達された日(2006 年 1 月 17 日)の翌日から、損害賠償金 1569 万元が弁済される
まで年率 5%で金利を計算する。
5. 原告が相当の担保金を提供したうえで、本判決第一項の金銭給付についての仮執行宣告の申立てを
認めるが、お詫び広告及び判決文の掲載については、財産権関連訴訟に属しないので、原告のこの
部分に関する仮執行申立てを棄却する。
以上
213
02 著作権法――日本超人気漫画「スラムダンク」の無断変更・改作に有罪判決
■ハイライト
「台湾井上○○有限公司」
(有限会社)責任者(以下、黄被告)と観天下○○股份有限公司(株式会
社)責任者(以下、林被告)は、日本超人気漫画「スラムダンク」
(台湾では「灌藍高手」というタイ
トルで出版)の一部内容を剽窃して「灌藍二部」、
「SD2 灌藍二部」に改作したのが著作権侵害として、
台北地方裁判所は二社にそれぞれ 30 万元の罰金、黄被告に懲役 1 年 4 ヶ月、被告に 1 年 2 ヶ月の判決
を下した。
判決では、黄被告は「スラムダンク」は日本人「井上雄彦」氏が創作したものであることを明らか
に知っていながら、原作者井上氏の許諾を得ないまま、原著作における場面設定や構図を参考に、主
役の名前を変更したうえ、ストーリーの展開を書き直して、
「灌藍二部」という作品名で出版し、一冊
69 元の価格でコンビニや本屋で陳列・販売していた。翌年、黄被告はさらに「SD2 灌藍二部」の出版
について、林被告に発行・販売を依頼し、販売部数に応じてリベートを林被告に支払う約束を交わした。
民事損害賠償訴訟では、台北高等裁判所が被告らは告訴人井上氏との間に和解が成立したため、黄
被告、林被告にそれぞれ 4 年、2 年の刑の執行猶予を言い渡した。
裁判番号:94 年度訴字第 1665 号
件名:著作権法違反事件
裁判期日:2006 年 1 月 25 日
参照条文:刑法第 11、28、74 条(2005.02.02)
刑事訴訟法第 273 ノ 1、299 条(2004.06.23)
著作権法第 92、94、101 条(2004.09.01)
214
03 Xbox ゲームソフト海賊版販売 3683 万元の損害賠償支払い命令
著作権法違反でこれまでに最高額
➮2005 年 10 月 26 日台北地方裁判所民事判決「94 年智字第 24 号」
➮2005 年 5 月 26 日台湾高等裁判所刑事判決「94 年上訴字第 1012 号」
<事実の概要>
米マイクロソフト社のゲームソフト『Xbox』を違法コピーした海賊版を販売していた被告 A と B に
対し、MS 社が 3 億 5000 万元余りの損害賠償を求めた民事裁判で、台北地方裁判所は昨日、被告 A に
3683 万元の損害賠償金の支払いを命じる判決を言い渡した。著作権法違反事件の損害賠償金でこれま
での最高額となる。
本件に関連する刑事裁判において、台湾高等裁判所は著作権法及び商標法違反で被告 A に懲役 1 年
4 ヶ月、執行猶予 5 年の判決を下し、被告は上告せず、判決が確定している。一方、被告 B には懲役 1
年 3 ヶ月、A と同様に執行猶予 5 年の判決が言い渡されたが、B は不服を申立て、現在最高裁で審理中。
MS 社は、「『Xbox』は台湾で商標として登録されており、被告 A と B は商標法第 63 条により、小売
価格の 1500 倍にあたる 8600 万元、そして著作権法違反でさらにソフトの種類ごと 100 万元の方法に
より算出された 2 億 7100 万元に加え、MS 社の商業上の信用毀損で 100 万元、計 3 億 5810 万元の賠償
金を支払わなければならない。」と主張。これに対し、裁判官は、「被告 A が経営するゲームソフト販
売会社から 271 種類のゲームソフト、あわせて 287 枚が押収されている。一つの種類につき 1∼2 枚の
程度では、賠償金として小売価格の 500 倍に相当する 2870 万元が妥当である。また、著作権侵害の部
分については、ソフトの種類ごとの数に応じて一つ 3 万元で計算すると、813 万元になる。このほか、
判決の主文及び謝罪広告をメディアに掲載する。」とした。
<解
説>
今年 3 月、ある会社はマイクロソフト社の Windows、Office や AUTO-CAD 等ソフトの海賊版を使用し
ていたことで、板橋地方裁判所から 1550 万元の賠償金支払を命じられ、違法コピーで中小企業に対す
るこれまでの損害賠償支払命令の最高額を記録する事件があった。従業員わずか十数名という小さな
会社で、会社所有のパソコンも 10 数台程度。パソコンに組み込まれた OS 等ソフトはすべて海賊版。
これまでの著作権侵害事件では、海賊版の製造・販売に携わった業者が裁判所から多額の賠償金を支払
わされるケースが殆どで、中小企業による海賊版ソフトの不法利用行為についてこれだけ多額の賠償
金支払命令が出たのは、今までに例を見ない厳しいものである。
私権である著作権が侵害された場合、外国では民事損害賠償訴訟で救済を求めることが一般的だが、
台湾の司法実務上、刑罰による威嚇効果はもとより、民事損害賠償訴訟の成り行きが刑事裁判の結果
に左右されがちなので、権利者が刑事告訴に附帯して損害賠償を求める民事訴訟を提起することを好
む傾向がある。しかし、実際著作権侵害に係る刑事裁判で、執行猶予つきか刑を罰金に替えるかの判
決が最も多く、
「量刑が軽すぎる」、
「賠償金が少ない」など外国権利者団体から厳しく指摘されている
ところである。行為態様を問わず、全ての著作権侵害を非親告罪とすべきか、最高刑をさらに引き上
げるかどうか、著作権法に関する刑事政策の議論が十分すぎるほどなされてきた。現行著作権法にお
ける最高刑は 7 年以下の懲役(例えば光ディスクを用いた無断複製を業とする)とあるのに対し、ほ
とんどの国では罰金刑を主とすることから、去年の著作権法改正で自由刑より罰金刑を加重すべきと
の意見を反映させた。
本件刑事裁判の控訴審では原判決の量刑が軽すぎるという控訴趣意書に反する判決が言い渡された
一方、民事訴訟においては、記録的な賠償金支払い命令が出され、金銭的制裁を重んじるべき方向性
を裏付ける意味をもつ結果になった。
主な参照条文:
著作権法
第 64 条 第 44 条から第 47 条まで、第 48 条ノ 1 から第 50 条まで、第 52 条、第 53 条、第 55 条、
第 57 条、第 58 条、第 60 条から第 63 条までの規定により、他人の著作物を利用する者は、その
出所を明示しなければならない。
2
前項の出所の明示は、氏名を表示しない、若しくは著作者が不明な場合を除き、著作者の氏
名又は名称について、合理的な方法をもってこれを表示しなければならない。
第 88 条
故意又は過失により他人の著作財産権又は出版権を不法に侵害した者は、損害賠償の責
任を負う。数人が共同で不法に侵害したときは連帯して賠償責任を負う。
2 前項の損害賠償につき、被害者は次の規定により択一して請求することができる。
215
一. 民法第 216 条の規定により請求する。但し、被害者がその損害を証明できないときは、
その権利の行使により通常の情況からして予期できる利益から、侵害を受けた後に同一権
利を行使して得た利益を差引いた差額を以てその受けた損害の額とすることができる。
二. 侵害者に対し侵害行為により得た利益を請求する。但し、侵害者がその原価又は所要費用
を証明できないときは、その侵害行為により取得した全部の収入をその得た利益とする。
3
前項の規定により、被害者がその実際の損害額を容易に証明できないときは、裁判所に対して
侵害の情状を斟酌して新台湾ドル 1 万元以上 100 万元以下の賠償額を算定するよう請求すること
ができる。損害行為が故意に為され、且つ情状が重大な場合は、賠償額を新台湾ドル 500 万元に
まで増やすことができる。
第 89 条 第 89 条
被害者は侵害者の費用負担において、判決書内容の全部又は一部を新聞紙、
雑誌に掲載することを請求することができる。
第 91 条ノ 1 無断で所有権を移転する方法により著作物の原作品又はその複製物を頒布し他人の著
作財産権を侵害したものは、3 年以下の懲役、拘留又は新台湾ドル 75 万元以下の罰金を科し、又
はこれを併科する。
2
著作財産権を侵害した複製物であることを明らかに知っていながら、これを頒布し、又は頒
布を意図して公開に陳列し若しくは保有するものは、3 年以下の懲役に処し、新台湾ドル 7 万
元以上 75 万元以下の罰金を併科することができる。
3 前項の罪を犯した場合、その複製物が光ディスクであるときは、6 ヶ月以上 3 年以下の懲役に
処し、新台湾ドル 20 万元以上 200 万元以下の罰金を併科することができる。但し、第 87 条第
4 号の規定に違反して輸入した光ディスクは、この限りでない。前二項の罪を犯した者がその
物品の出所を供述し、これにより摘発に成功したときは、その刑を軽減することができる。
第 94 条 第 91 条第 1 項、第 2 項、第 91 条ノ 1、第 92 条又は第 93 条に定める罪を業とする者は、
1 年以上 7 年以下の懲役に処し、並びに新台湾ドル 30 万元以上 300 万元以下の罰金を併科するこ
とができる。
2 第 91 条第 3 項に定める罪を業とする者は、1 年以上 7 年以下の懲役に処し、並びに新台湾ド
ル 80 万元以上 800 万元以下の罰金を併科することができる。
商標法
第 6 条 この法律で商標の使用とは、販売の目的で商標を商品又はサービス、又は平面の図形、デ
ジタル画面や音声、電子媒体又はその他の媒介物に使用して、もって関連消費者に商標として認
識させるに足りることをさす。
第 61 条 商標権者はその商標権を侵害した者に対し、損害賠償を請求することができる。また、
その侵害を排除することを請求することもできる。侵害のおそれがあるものは侵害を防止するこ
とを請求することができる。
2 商標権者の同意を得ないで第 29 条第 2 項各号に定める場合のいずれかに該当するときは、商
標権侵害とする。
3 商標権者は第 1 項の規定により請求をするときは、商標権侵害に係る物品又は侵害行為に利
用される原料若しくは器具について、廃棄その他必要な処置を請求することができる。
第 63 条 商標権者が第 61 条の規定により損害賠償を請求するときは次の各号から一を選択してそ
の損害を計上することができる。
一.民法第 216 条の規定による。但し、その損害を証明するための証拠方法を提供できないと
きは、商標権者はその登録商標を使用することによって通常得られる利益から、侵害され
た後同一商標の使用によって得た利益を控除した差額をその受けた損害の額とすることが
できる。
二.商標権侵害行為によって得た利益による。商標権侵害者がそのコスト又は所要費用につい
て立証できないときは、当該商品を販売して得た収入の全部をその所得利益とする。
三.押収した商標権侵害に係る商品の販売単価の 500 倍から 1500 倍までに相当する金額を損
害額とする。但し、押収した商品が 1500 点を超過するときは、その総価額で賠償金額を定
める。
2
前項の賠償金額が明らかに相当でないときは、裁判所は情状を参酌して軽減することができ
る。
3
商標権者の業務上の信用が侵害行為により毀損を受けたときは、他に相当の金額の賠償を請
求することができる。
216
第 82 条 前条の商品であることを明らかに知っていて、これを販売し、又は販売を意図して陳列
し、輸出し、又は輸入した者は 1 年以下の懲役、拘留若しくは新台湾ドル 5 万元以下の罰金に処
し、又はこれを併科する。
217
04 著作権と肖像権との衝突の取扱い
台北地裁「著作財産権より人格権である肖像権を優先すべき」判断
➮2005 年 10 月 17 日台北地方裁判所民事判決「94 年度訴字第 1653 号」
<事実の概要>
本件被告 A は、ある大学法学部に在籍中の女子学生(以下、原告)をモデルに起用し写真を撮り、
写真の使用の対価として 3000 元を支払い、その写真を撮影愛好家の交流の場として自らが管理するウ
ェブサイトに掲載した。使用料を支払ったため、A は原告の写真を任意に利用したり他人に利用を再
許諾したりすることが認められたと思い込み、原告に何の断りもなくその写真を被告出版社 B に利用
させ、撮影関係のガイドブック(以下、係争書籍)に載せた。原告は自分の写真が出版社に無断利用
されたことに憤りを覚え、肖像権侵害を理由に裁判所に 25 万元の損害賠償等を求める裁判を起こした。
判決では、
「著作権と肖像権との権利衝突が発生したときに、対立する権利への利益考量的価値判断
から、財産権である著作権よりも人格権である肖像権に対する保護が重要である」とし、被告 A に 8
万元の賠償金の支払い、被告 B に係争書籍及び同梱 CD-ROM に使われていた原告肖像の除去を命じた。
<解
説>
著作権に対する保護は私権の財産権が保障されることを意味するだけでなく、社会の公共利益を調
和し、国家の文化発展を促進する側面もある。但し、財産権であるだけに、正当な権利行使の範囲を
越える権利の濫用はあってはならないというのが法律の基本原則である。民法第 195 条第 1 項は個人
の人格権を尊重し、個人の尊厳が確立されることを保障する重要な規定である。
「人」の要素を重視す
る肖像権と、経済的な利益、経済的取引の客体を目的とする財産権の一つである著作権とが衝突した
場合の調整をいかに解するかが本件の争点となるが、このいずれも基本的な人権であって、特に人格
権は個人の尊厳を確保し、人々が幸福を追求する権利の保障に必要不可欠な権利であるため、等価値
的利益衡量から著作財産権よりも人格権である肖像権を優先して保護すべきと解されている。
民法第 18 条により人格権を侵害されたときに、裁判所にその侵害の除去を、侵害されるおそれがあ
るときには、その侵害の防止を請求することができる。肖像権は人格権の一つであり、他人の肖像を
勝手に利用したりすることは肖像権侵害となり、民法第 184 条第 1 項前段規定により、財産上の損害
について原状回復を求めることができ、原状回復の請求ができず、又は原状回復が著しく困難なとき
には金銭的な賠償を求めることができる。非財産上の損害に関しては、法律に特別の規定がある場合
に限って、相当の金銭的な賠償請求が認められる(民法第 194 条)
。
同法第 195 条第 1 項により、他人の身体、健康、名誉、自由、信用、プライバシー、貞操その他の
人格的法益への不法な侵害が金銭的な損害賠償請求の対象となり、また侵害の情状が重大な場合、非
財産上の損害についても賠償請求ができる。他人の写真をいかにして取得したかを問わず、本人の同
意なしでそれを頒布するとなると、肖像権侵害を構成する。本件被告 A が原告の写真を恣意的に被告
B に利用させ、不特定の人間が係争書籍に同梱する CD-ROM を利用して原告肖像を転載、伝達、改変加
工、編集することを可能にした。これが原因で、他人による写真(画像)の悪用を危惧する状態の中
で、原告は家族との関係が悪化し、原告人格権への侵害は大きくないとはいえない。
218
05 ライバル社の販促チラシに「×」が著作権侵害?
地裁「創作性のないものは著作権法の対象にならない」
➮2005 年 10 月 7 日台北地方裁判所民事判決「94 年智字第 58 号」
<事実の概要>
香港を本拠地とし、アジア各地に多数の店舗を展開するドラッグストアチェーン、ワトソンズ
(Watsons、以下被告)が、台湾流通小売業界でのライバル社である COSMED(台湾コンビニ最大手の
「統一グループ」が経営)の DM チラシポスター(以下、係争チラシ)に「×」をつけ、
「誓います!
以上の商品は当店が一番安い!」を書き加えたうえ、七店舗の店頭に貼っていたことで、COSMED(以
下、原告)から著作権侵害及び商業上の信用毀損を訴えられた事件である。
台北地方裁判所は、
「額に汗の理論」を持ち出して、同業界ではごくありふれた宣伝手法であり、著
作物として保護されるためには必要とされる創作性は係争チラシにはないと係争チラシの著作物性を
否定し、原告側の主張を退ける判決を言い渡した。
<解 説>
限られた紙面に販促商品を体系的に分類し表示するような宣伝広告は、量販店やスーパー、デパー
トの業界によく使われている。係争チラシ全体の構成から他の宣伝広告チラシにないオリジナリティ
というものが見られず、編集著作物としての創作性もなく、また美術的、芸術的に見ても、社会文化
の進化への寄与という観点から見ても、著作権法上の保護を与えるに値するものではない。係争チラ
シの著作物性が否定された以上、それを不当に改作され(改作権:日本でいう翻案権に相当)、著作権
を侵害されたという原告側の主張は根拠を失うことになる。
次に、係争チラシを店頭に貼り、当店の商品が COSMED より安いということを消費者に印象付けよう
とする被告の宣伝手法が、消費者が COSMED で買い物する意欲を低下させることを意図するものであり、
結果的に原告の商業上の信用に損害を与えたとの原告側の主張について、判決では、
「自社とライバル
社との取扱商品広告を店頭に置き、消費者にどちらが安いかを比較できるようにする販促手法そのも
のには法律上の問題がなく、市場経済主義の下、マーケティング活動における必然的な結果であり、
情報流通に伴う必然的な現象でもある」と指摘したうえで、広告不実の事実がないかぎり、法律のレ
ベルで論ずることではないと判示した。即ち、消費者が両方の価格を比べたところ、原告の店ではな
く、被告の店で買い物することにしたとしても、それは消費者が理性に基づいて判断した結果で、こ
れにより原告の権利を侵害したことにはならないとの見解を示している。
主な参照条文:
著作権法
第 3 条第 1 項 1 号
この法律における用語の意義は下記の通りとする。
一. 著作物:文学、科学、芸術若しくはその他の学術の範囲に属する創作物をいう。
第 7 条第 1 項 データの選択及び編集・配列につき独創性を有するものは、編集著作物であり、独
立の著作物としてこれを保護する。
219
06 白黒漫画を無断でカラーに 改作権侵害か不当改変禁止権侵害?
➮2005 年 9 月 30 日台北地方裁判所民事判決「93 年智字第 98 号」
<事実の概要>
ここ数年、中国に活動拠点を移している有名な台湾漫画家 X は、その多数の作品の利用権を A 社に
許諾しており、契約期間は X の死後 50 年を経過するまでの間とする。ところが、A は X に無断で中国
上海の出版会社 B に X の白黒漫画作品をカラーに書き換えさせたうえ、X の名前を勝手に使って中国
で販売していた。X は、著作権法上著作者が専有する原作品を改作する権利(日本でいう翻案権)を A
が侵害したことに加えて、ライセンス料の未払いや帳簿等資料の提供拒否など債務不履行を理由に、
契約の解除及び損害賠償の支払いを求めた。
裁判所は、著作権法上の「不当改変禁止権」
(日本では「無断改変禁止権」という)を侵害したとし
て、契約解除のほか、慰謝料の支払い及び謝罪広告の掲載を A に命じる判決を下した。
<解 説>
本件の主な争点は、被告が原告の承諾を得ないで、勝手に上海の出版会社に白黒漫画でできていた
原作品をカラーに書き換えさせたことが「改作」による侵害にあたるかである。
原告 X は、白黒でできていた漫画を著作者に無断でカラーに書き換えたことは「改作権」
(翻案権)
を侵害したと主張しているが、判決では、これは著作財産権ではなく、著作人格権として保護されて
いる「不当改変禁止権」を侵害したものと認定した。ただ、どのようなことを根拠に「著作人格権侵
害」と認めたのか、その理由について、
「白黒漫画をカラーにしたものは二次的著作物でもなければ、
編集著作物でもない。これは著作権法第 28 条にいう改作に該当しない。被告行為は著作権法第 17 条
に定める不当改変禁止権を侵害し、・・・原告の作品の風格に影響をもたらしたことは確かで、その著作
人格権に損害を及ぼした」と述べるにとどめた。
著作権法第 28 条により、著作者は、その著作物を二次的著作物に改作し、又はそれを編集著作物に
編集する権利を専有する。いわゆる「改作」とは、翻訳、編曲、書き換え、映画の撮影その他の方法
により原作品について新たに創作をすることをいう。また、二次的著作物について、第 6 条は「原著
作物を改作した創作は二次的著作物であり、独立の著作物としてこれを保護する。二次的著作物に対
する保護は、原著作物の著作権に影響を及ぼさない。
」と定めている。もともと白黒で描かれた漫画を
カラーに書き換えたものは二次的著作物に属するかどうかは、創作性いかんで判断すべきであり、著
作者の個性が認められる創作的な表現であれば、二次的著作物と認定されるべきである。
「白黒をカラ
ーに書き換えたものは二次的著作物にならない」とあるだけでは、拙速な判断といわざるを得ない。
主な参照条文:
著作権法(2003.07.09)
第 3 条第 1 項第 11 号 改作:翻訳、編曲、書き換え、映画の撮影その他の方法により原作品につ
いて新たに創作をすることをいう。
第 6 条 原著作物を改作した創作は二次的著作物であり、独立の著作物としてこれを保護する。二
次的著作物に対する保護は、原著作物の著作権に影響を及ぼさない。
第 17 条 著作者は、他人が歪曲、切り裂き、改ざんその他の方法でその著作物の内容、形式又は
名目を改変することによって、その名誉を毀損するに至らしめることを禁止する権利を享有する。
第 28 条 著作者は、その著作物を二次的著作物に改作し、又はそれを編集著作物に編集する権利
を専有する。但し、実演についてはこれを適用しない。
220
07 音楽ファイルの違法ダウンロード P2P サイト管理者とユーザーに有罪判決
➮2005 年 9 月 9 日台北地方裁判所刑事判決「92 年訴字第 2146 号」
<事実の概要>
著作物の利用について事前に著作権者から許諾を得ないで、P2P ソフトを公衆が音楽ファイル等の
交換に利用できるような状態にする一部のウェブサイトへの法的責任の追及が相次いでいる。
台湾国内最大級の P2P サイト、
「KURO」の経営者ら三人とそのサービスを利用していた会員が著作権
法違反で起訴された事件において、台北地裁刑事法廷は 9 月 9 日、有罪判決を言い渡した。
KURO は、KURO で提供する P2P ソフトとインターネットサービスを利用すれば違法ダウンロードが行
えることを明らかに知っていながら、金もうけのために会員数の拡大を狙って広告に「KURO のソフト
とサービスを利用すれば数十万曲の新曲がダウンロードできる」と宣伝し、KURO への加入を勧誘した。
その広告内容から、会員(被告)による著作権侵害の結果を KURO が主観的に予見していたはずであっ
て、且つ本意に反するものではないということが分かる。したがって、KURO の責任者ら三人と被告会
員には犯罪の意思(犯意)連絡があり、ともに犯罪行為を分担した共同正犯である。
被告会員は KURO のソフトを利用してインターネットから 970 曲の楽曲をダウンロードし、他人が有
する著作財産権(複製権)を侵害したとされ、懲役 4 ヶ月、執行猶予 3 年の判決が言い渡された。
他方、KURO と同様で P2P ソフトをユーザーに提供して会員からの入会費と固定制の月額利用料金を
主な収入源とするウェブサイトで、レコード会社から著作権法違反で提訴された「ezPeer」は今年 6
月 30 日、士林地裁から無罪判決を受けている。
「ezPeer」の責任者を無罪とした理由について、判決
では、現行法にはオンラインファイル交換のプラットフォーム提供を禁止し若しくは制限する規定は
なく、またユーザーによって伝送されたりするファイルが違法なものかどうかをフィルタリングする
ことを業者に義務付けていないなどを挙げている。
同じ P2P サイトでありながら、それぞれ無罪と有罪、何が裁判の結果を分けたのか、KURO と ezPeer
の弁護を担当する弁護士は、経営モデルの相違や件を裁判官の自由心証を理由に挙げた。
<解
説>
P2P ソフトを開発し、誰もが利用できるように提供したからといって、法的責任が発生するとは限
らない。ezPeer 事件の判決では、「現行刑法では P2P ソフトの使用を制限し又は禁止していない。罪
刑法定主義の下では、既定の刑法に定めのない行為は刑罰の対象にならない。ファイル伝達のプラッ
トフォームとして様々な使い道があり、ezPeer 自体は犯罪道具ではない。たとえユーザーが ezPeer
を利用して権利者に無断で著作物のファイルを伝送したりダウンロードしたりすることがあっても、
合理的に利用される可能性が残されている。」さらに一人一人のユーザーについていえば、著作権法第
51 条、第 65 条により著作物の合理的な利用を主張することができれば、著作財産権侵害を構成する
ことはない。しかしながら、ボーダレスや情報の速報性などの特性から、インターネット上で他人の
著作物を伝送したり複製したりすることが「合理的な利用」と認められることが難しく、著作権侵害
が成り立つ可能性は極めて高い。ezPeer と KURO の著作権法違反事件で、経営モデルや裁判官の見解
の相違で判決が大きく分かれたが、二つの事件に共通するものは、ユーザーによる P2P ソフトを利用
したコンテンツの公開伝達及び複製は、著作権法で容認する合理的な利用の範囲を逾越さえすれば著
作権侵害になるということである。
同じ P2P サイトでありながら、なぜ ezPeer の責任者が無罪、KURO は有罪になったのか?無断利用
行為に関する不法行為の成否について、最も重要なポイントは、ユーザーによる不法利用を明らかに
知っていて、それを煽るような行為をしたかどうかにある。KURO の責任者とその従業員は、インター
ネットユーザーに対して、同サイトに加入してサイトで提供される P2P ソフトを利用すれば最新作を
含め数十万曲にのぼる楽曲のダウンロードができるなどといった広告内容を各種メディアを通じて宣
伝していたため、ユーザーとは共同正犯の関係にあったと認定された。
二つの判決から、次の三つのポイントが挙げられる。1.P2P 技術を利用することは必ずしも違法で
はない。2.ユーザーによる P2P ソフトを利用したファイル伝送行為は、合理的な利用の範囲を越えさ
えれば著作権侵害になる。3.P2P サイトの経営モデルの違法性の成否については、ユーザーの不法利
用行為をサイト管理者が知っているかどうかによって判断される。
主な参照条文:
著作権法(2004.09.01)
第 51 条 営利を目的としない個人若しくは家庭での私的使用のために、合理的な範囲内で図書館
221
及び公衆の使用に供されない機器を利用し、公表された著作物を複製することができる。
第 65 条 著作物の合理的な利用は、著作財産権の侵害を構成しない。
2 著作物の利用が第 44 条から第 63 条までの規定に該当するかどうか、又はその他の合理的な
利用の情況に該当するかどうかは、一切の状況を考慮し、特に判断の基準として次に掲げる事
項に留意しなければならない。
一. 利用の目的及び性質。商業の目的若しくは非営利的で教育の目的を含む。
二. 著作物の性質。
三. 利用された質量及びそれが著作物の全体に占める割合。
四. 利用の結果として著作物の潜在的市場と現在の価値に対する影響。
3 著作権者団体と利用者団体が、著作物の合理的な利用の範囲について協議が成立した場合は、
前項の判断の参考にすることができる。
4 前項の協議の過程においては、著作権所管庁の意見を諮問することができる。
第 91 条 (著作物を)無断で複製し、他人の著作財産権を侵害した者は、3 年以下の懲役、拘留に
処し、又は新台湾ドル 75 万元以下の罰金を科し又はこれを併科する。
2 販売又は貸与を意図して複製、他人の著作財産権を侵害した者は、6 ヶ月以上 5 年以下の懲役
に処するほか、新台湾ドル 20 万元以上 200 万元以下の罰金を併科することができる。
3
光ディスクに複製して前項の罪を犯した者は、6 ヶ月以上 5 年以下の懲役に処するほか、新台
湾ドル 50 万元以上 500 万元以下の罰金を併科することができる。
4 著作物を個人的に参考し又は合理的に利用したときは、著作権侵害を構成しない。
第 94 条 第 91 条第 1 項、第 2 項、第 91 条ノ 1、第 92 条又は第 93 条に定める犯罪を業とする者は、
1 年以上 7 年以下の懲役に処し、並びに新台湾ドル 30 万元以上 300 万元以下の罰金を併科するこ
とができる。
2
第 91 条第 3 項に定める犯罪を業とする者は、1 年以上 7 年以下の懲役に処し、並びに新台湾
ドル 80 万元以上 800 万元以下の罰金を併科することができる。
第 101 条 法人の代表者、法人若しくは自然人の代理人、又は被用者その他の従業員が、業務の遂
行により第 91 条から第 96 条ノ 1 までの罪を犯したときは、各当該規定によりその行為者を処罰
するほか、当該法人又は自然人に対しも各当該条文に定める罰金を科する。
2
前項の行為者、法人又は自然人の一方に対してした告訴又は告訴の取り下げは、他方にも効力
が及ぶ。
222
08 P2P ファイル交換、刑法に抵触せず サイト「ezPeer」管理者に無罪判決
➮台北士林地方裁判所 2005.06.30 刑事判決(92 年度訴字第 728 号)
➮台北士林地方裁判所 2005.06.30 民事判決(93 重附民 2)
<事実の概要>
国際レコード産業連盟(IFPI)が台湾の音楽ファイル交換サイト「ezPeer」を著作権法違反で刑事
告訴した事件について、台北士林地裁は 30 日、著作権法で禁止している「無断で他人の著作物を複製
し又は公開伝達する」事実はなかったとして、同サイト責任者に無罪判決を言渡した。裁判長は、本
審理において裁判所が審理すべきことは、音楽ファイル交換のためにプラットフォームを提供してい
ることが果して刑法上の犯罪を構成するかどうかにあり、民事上の権利侵害についてはここで問うこ
とではない、と強調している。
ezPeer はインターネットで P2P ソフトによるファイル交換サービスを提供している。同サイトを利
用するユーザーたちはサーバーを経ることなく、互いにパソコンのシェアフォルダに保存してあるフ
ァイルをダウンロードしあうことができる。
この判決について、知的財産局は次のように述べた。「これはあくまで ezPeer とその責任者がソフ
トを提供しサイトを経営していることについての判決であり、他人が著作権を所有する音楽、録音、
映画、言語等著作物の P2P ソフトによる複製或いは公開伝達が権利侵害に当たらないというわけでは
ない。判決でも、P2P ソフトを利用して他人の著作物を複製したり公開伝達したりする行為は、権利
侵害を構成する可能性を明確に示している。」
IFPI をはじめとする三つの音楽著作物権利者団体はこの判決に納得がいかず、音楽の創作に携わっ
ている人々のために公平を求め真理を追究すべく、控訴の考えを明らかにするほか、P2P のユーザー
にも宣戦布告を行った。
<解
説>
本件刑事訴訟に附帯して民事訴訟が提起されたが、刑事法廷で無罪判決が下されたことに加えて、
原告の一部の請求が刑事附帯民事訴訟の提起しうる対象とされていないため、損害賠償請求に関する
原告の訴え及び仮執行宣言の申立はいずれも却下された。
27 日、米映画制作会社 MGM と P2P ファイル交換ソフトサービスを提供する Grokster との間で争わ
れていた裁判で、米連邦最高裁からユーザーの著作権侵害行為に関して Grokster の法的責任を認める
判決が出たばかりだけに、IFPI などの権利者団体は共同記者会見で、音楽業界にとって暗黒の一日だ、
「罪刑法定主義」に基づく無罪判決は理解に苦しむと落胆のコメントを発表する一方、ユーザーの刑
事責任を否めた結果ではないと釘をさしておいた。これからは P2P サイトに限らず、ユーザーにも矛
先を向け、最後の勝利を勝ち取ろうとする姿が、今アメリカをはじめ、各国で繰り広げられているレ
コード会社と P2P ユーザー間の争いを反映しているように見える。
P2P ファイル交換サービスの可否を巡るアメリカの裁判は全てが権利侵害行為の認定や損害賠償責
任の有無を問う民事事件であるという点においては、台湾と異なる。台湾では、権利者が「刑事訴訟
附帯民事訴訟」により相手を負かす効果的かつ強力な手段として運用する場合が多い。今回の判決で
は、刑罰は国が国民の基本的権利をはく奪する最も厳重で最終的な手段であるが故に、P2P ソフトの
配布を犯罪行為と位置付けて制限したりする規定が刑法にはない限り、ユーザーが P2P ソフトを利用
して著作権を侵害したことから生ずる不法の結果を配布者の責めに帰すべきではない、とした。被告
の会社はインターネットを利用した新しい形の情報伝達方法を提供している。合法的なファイルも含
めていろいろなコンテンツがその方法によって伝達されている。たとえ権利者の許諾がなく著作物を
ダウンロードしたりするユーザーがいたとしても、著作権法上認められているフェアユースにあたる
行為が存在し得る。P2P ソフトそのものは犯罪行為に利用されることを目的に開発されたものではな
く、また P2P ソフトによるファイルの交換やダウンロードが違法になる必然性もない。
223
09 台湾漫画「SD2」は日本超人気漫画「slamdunk」2 部作ではない
著作者の同意を得ない改ざん、翻案等行為は著作者人格権侵害に該当
➮2004 年 11 月 17 日台北高等裁判所民事判決「93 年度智上字第 14 号」
<事実の概要>
控訴人「台湾井上国際公司」(会社)は 2002 年 5 月 15 日に訴外人の「宣武公司」の名義を使って
「www.slamdunk2.com.tw」をドメイン名に登録をし、中国語「灌藍二部」という作品名で宣伝広報活
動を行った。事情を知った被控訴人の井上雄彦(日本超人気漫画「スラムダンク」の作者)からその
ような行為を停止するようと警告書が送りつけられてきたにもかかわらず、
「www.slamdunk2.com.tw」、
「灌藍二部」、「流川」などを広報活動に使って宣伝を続けていた。
控訴人台湾井上国際公司には「井上」という日本名になっている従業員がいない。また同社がこれ
まで発行した唯一の作品である「灌藍二部」の登場人物の一部、場面の設定や動作はスラムダンクと
そっくりだし、ストーリーの展開にしろ、キャラクターにしろ、スラムダンクが表出する風格を真似
して書かれたものである以外は考えられない。明らかに被控訴人の作品を襲用し、無断で複製したも
ので、決して控訴人の発想で創り出された作品ではない。したがって著作権侵害の事実があったと判
断してよい。
<解
説>
著作権法第 17 条により、著作者は、他人が歪曲、切り裂き、改ざんその他の方法でその著作物の内
容、形式又は名目を改変することにより、その名誉を毀損するに至らしめることを禁止する権利を享
有する。控訴人の台湾井上国際公司と観天下公司二社は被控訴人の許可、同意又は利用許諾を受けて
いないと認めたということは、無断で被控訴人の作品の風格、筆致、手法を真似してあたかもスラム
ダンクシリーズの一作品のように「灌藍二部」を発行し、他人に混同誤認を生じさせる意図があった
ということになる。イギリスの Moore v. News of the World Ltd.,「1972」1 QB441 事件における解
釈を比較法の観点から勘案すれば、控訴人台湾井上国際らによる行為は故意によって被控訴人の名誉
権及び著作者人格権を侵害したとすべきである。
一方、裁判所において仮処分の決定がなされたことを明らかに知っていて、なお「灌藍二部」の出
版を続けていたことから、控訴人には被控訴人の著作財産権及び著作者人格権を侵害する故意があっ
たことは明白である。台湾井上国際は原審で「灌藍二部」の発行コストを証明する如何なる証拠も提
出しなかった。控訴審になってはじめて提出した第一話と第二話のコストを証明する書類にも不審な
点があった。そしてもう一方の控訴人の観天下公司はコストに関する物的証拠の提出ができずじまい
だった。コストが証明されないときは、著作権法第 88 条第 2 項第二号により、控訴人の売上高を係争
作品を販売して得た利益として損害賠償額を算定することができるため、被控訴人の原審における賠
償金請求は理由があるとされた。
224
10 アルバム表紙を無断でサイトへ掲載 「販促目的」無罪判決確定
➮2004 年 8 月 17 日台北高等裁判所刑事判決「93 年度上易字第 927 号」
<事実の概要>
著作権者から許諾を得ていないにもかかわらず、アルバムのカバーをホームページに掲載するなど
して「滾石」をはじめとするレコード会社 13 社が享有すべき著作財産権を侵害した疑いがあるとして、
台湾最大手 P2P サイトの「KURO」
(飛行網)は告訴された。この事件について、台北高等裁判所による
無罪判決が確定した。
判決では、KURO は単に自社或いは他社の商品を販売する目的でパッケージのカバーを複製したわけ
でなく、アルバム等のネット販売を行っていることを宣伝し、消費者が歌手やアルバムの収録内容を
知ってもらうためにこれらのレコード会社が発売した音楽著作物のカバーをホームページに掲載した
ので、合理的な利用行為に属し、著作権法に違反して刑事責任を問われることにならないとしている。
これとは別に、KURO が P2P サイトを開設して、ISP 業者が提供する接続サービスを利用して加入会員
間で音楽ファイル交換が行われたり MP3 形式の音楽ファイルダウンロードサービスを提供したりして
著作権侵害を訴えられた、P2P サービスの可否をめぐる事件は未だに台北地裁に係属中。
<解
説>
本件で争われているのは、レコード会社は果たして被告に対し著作物の利用を許諾したかどうか、
そして検察側で主張している写真著作物と美術著作物(アルバムのカバー)の「無断複製」が本当は
著作権法にいう合理的利用行為にあたるかどうか、という点である。
判決では、まず、海賊版でない真正品のアルバムを被告がオンラインで販売していたのは、調査で
判明した事実であると確かめた。しかしながら、レコード会社が被告による著作物利用を黙認してい
るという被告側の弁解は取るに足りないもので、証拠として提出された電子メールにも利用を「許諾」
するような内容が見当たらないから、レコード会社との間に取次委託販売の関係がなかったことはは
っきりしており、著作権法第 37 条第 1 項によれば、未許諾のままカバーを利用したのも確かなことで
ある。だからといって、アルバムの収録楽曲などのコンテンツを宣伝し、販促の目的を達成するため
に、被告がそのカバー(アーティストの写真やアルバム名、発売元を掲載)を勝手にデジタル化して
ホームページにアップロードした行為そのものは、著作権法第 91 条第 1 項に違反し、同法第 101 条第
1 項により罰金刑に処されるべきだという結論に直結できるものではない。
それでは、ホームページに他人が著作財産権を所有する係争写真著作物と美術著作物を掲載した行
為は、著作権の制限の法的根拠となる第 44 条から第 63 条までの規定に定める合理的利用その他著作
権が制限される正当性のある利用に該当するかどうかを考えよう。著作権法第 65 条第 1 項には判断の
基準が四項目用意されている。本件におけるカバーの利用はあくまで宣伝・販促が目的で、またカバ
ーというものは、通常利益を得るための販売用の書籍やポスター、アーティストの写真などと著作物
としての性格が全く違うし、商品の情報を提供するもので、販売の対象ではない。マイナスや悪影響
を与えるどころか、アルバムの売上げにプラスになり、写真著作物であれ美術著作物であれ、カバー
としての機能を十分に果させているといってよい。
現にインターネットやブロードバンドの普及につれて、電子商取引が活発に行われており、購入し
ようとする商品に関する情報をオンラインで探したり集めたりすることは新しい商慣習になりつつあ
る。被告による係争カバーの複製、陳列、公開伝達はまさに商取引の変化に即応した経営手法である。
なお、著作権法違反の確証がない限り、被告の刑事責任を追及する余地はないとされ、無罪判決が
下された。
主な参照条文:
著作権法
第 37 条第 1 項 著作財産権者は他人に対し、その著作物の利用を許諾することができ、利用の許
諾に係る地域、期間、内容、利用方法又はその他の事項は当事者の約定による。その約定が不明
な部分については、未許諾と推定する。
第 52 条 報道、評論、教学、研究若しくはその他正当な目的のために、合理的な範囲内で既に公
表された著作物を引用することができる。
第 65 条第 1 項
著作物の合理的使用は、著作財産権の侵害を構成しない。
同条第 2 項 著作物の利用が第 44 条から第 63 条までの規定に該当するかどうか、又はその他の
合理的な使用の情況に該当するかどうかは、一切の状況を考慮し、特に判断の基準として次に掲
225
げる事項に留意しなければならない。
第一号
【利用の目的及び性質。商業目的若しくは非営利的で教育の目的を含む。】
第二号【著作物の性質。】
第三号【利用された質量及びそれが著作物の全体に占める割合。】
第四号【利用の結果として著作物の潜在的市場と現在の価値に対する影響。】
第 91 条第 1 項 営利を目的として複製の方法により他人の著作財産権を侵害した者は、5 年以下の
懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 20 万元以上 200 万元以下の罰金を併科する。
第 101 条第 1 項 法人の代表者、法人若しくは自然人の代理人、又は被用者その他の従業員が、業
務の遂行により第 91 条から第 96 条ノ 1 までの罪を犯したときは、各当該規定によりその行為者
を処罰するほか、当該法人又は自然人に対しも各当該条文に定める罰金を科する。
226
11 ポルノ映画は著作権保護対象から除外?
知財局 裁判所の見解は尊重するが世界ルールに従うべき
➮2004 年 3 月 25 日判決「93 年度自字第 771 号」
<事実の概要>
ポルノは社会の善良な風俗を害するもので著作権法による保護を受けられないとして海賊版業者に
無罪判決が下されたことについて、著作権主務官庁の知的財産局は昨日、
「裁判所の判決を尊重するが、
世界的ルールでもポルノ映画を著作権保護の対象から除外していないため、WTO 加盟国である以上、
台湾の司法機関も当然ながらこうしたルールを逸脱するわけにはいかない」と指摘したうえ、ポルノ
については行政措置による規制が望ましいとの見解を示した。
<解
説>
この判決は、
「ポルノ映画だから著作権法による保護を受けられないという解釈は如何なものか、著
作権法の対象外としたことは、違法コピーを助長する恐れがあるのではないか」と、是か非か大きな
論議を呼んでいる。1999 年の最高裁のある判決を根拠にポルノ映画を著作権法の対象から除いたとい
う今回の判決について、知財局は、その見解には同調できないといわんばかりに、時代の流れに即し
た判断を期待するという遠回しな言い方になってしまったが、WTO 加盟国の一員として知的財産権に
対する保護を世界並みの水準にしなければならないというのが同局の持論であり、関係者によれば、
行政機関としては独立した司法権の行使を代表する裁判官の事案に対する権限を必ず尊重するが、オ
リジナリティのある著作物なら、内容はどうあれ、保護を受けるべきであるという。
本件自訴人は、係争映画について著作権を有する日本の映像制作会社から利用許諾を受けており、
それを証明するために台湾の駐日経済文化代表処によって認証された許諾証明と著作権所持証明書と
原産地証明を裁判所に提出した。しかし、争点は、著作権を自訴人がもっているかいないかにあらず、
係争映画そのものが著作権法にいう保護される対象の著作物に該当するかどうかというところにある。
判決では、係争映画は性的交渉のシーンが映像全体に占める割合が多すぎて、
「制限級」
(台湾にお
ける映画作品の段階区分、日本の成人映画に相当)で許される範囲を超えているから、社会通念上公
共秩序および善良な風俗を害するものと認めるのは妥当で、最高裁の判決にもあったように、著作権
法が保護する対象であると言い難く、当然のこと、本件における自訴人の著作権主張が認められない、
としている。また、被告には他人が享有する著作権を侵害する犯意が十分にあったと考えにくく、く
わえて、被告による係争映画の複製、販売、翻案などといった行為を有罪と認定し得る積極的な証拠
も犯罪事実も乏しい。よって、裁判所は自訴人の申立てを根拠薄弱なものとして、被告に無罪の判決
を言渡した。
主な参照条文:
著作権法(2003.07.09)
第 1 条第 1 項 著作者の著作物に対する権益を保障し、社会の公共的利益の調和を図り、国家の文
化発展を促すため、特にこの法律を制定する。この法律に定めのないものは、その他の法律の
規定を適用する。
第 3 条第 1 項
第一号
この法律における用語の意義は下記の通りとする。
【著作物:文学、科学、芸術若しくはその他の学術の範囲に属する創作物をいう。】
刑事訴訟法(2003.02.06)第 258 条ノ 1
映画法(2002.06.12)第 1 条、第 26 条、第 30 条
映画検査規範(規則)(1997.02.26)第 1 条
映画等級処理弁法(方法)(2002.12.23)第 2 条、第 3 条
227
12 ネット上の音楽ファイル交換が著作権侵害 被告に執行猶予付きの判決
➮2003 年 10 月 8 日台北地方裁判所刑事判決「92 年度易字第 1261 号」
<事実の概要>
著作権侵害をめぐってインターネットで音楽ファイル交換サービスを提供するウェブサイトとレコ
ード会社間において熱戦が展開されている最中に、今年 6 月に改正が行われた後の著作権法(以下新
法)を初めて適用する判決は昨日下された。台北地裁は、営利的目的によらないとはいえ、ネットワ
ークや CD-R ライターを利用して光ディスク 108 枚を無断で複製したことが著作権法に違反するとして、
懲役 8 ヶ月、執行猶予 2 年の判決を言い渡した。今回の判決を皮切りに、インターネット上の音楽フ
ァイル交換は著作権法違反とされる可能性が出てきた。
この判決について、台湾情報知財権ネットワーク協会(資訊知財権網路協会)の陳家駿副理事長は、
「まず、判決では被告が音楽交換サイトからサーチしてきたファイルを複製したものを他人がダウン
ロードできるようにしたことは著作物の合理的な利用に該当しないとしている。さらに、改正法施行
後、他人がダウンロードできるようにファイルを任意で提供することは公開伝達権を侵害することに
なりうるので、音楽ファイル交換を行うときには法に触れないように注意が必要である。
」との見方を
示している。
<解
説>
今回の判決は改正著作権法が初めて適用された判決であるだけに、インターネット上の音楽等ファ
イル交換の適法性をめぐる議論が激しく戦わされるなか、裁判所はどういう見解を示すか関心が集ま
っている。
本件被告人は、音楽著作物について著作権を所有する権利者であるレコード会社からいかなる形で
の同意や承諾も得ずに、「天馬音楽網」と名づけたウェブサイトを開設し、Ezpeer、KURO 等サイトか
らダウンロードした楽曲を MP3 若しくは rm ファイルに圧縮して CD に焼いたりするなど無断で音楽フ
ァイルを複製し、海外のレンタルサーバーに保存していた。その後、ホームページに歌手やアルバム
の名称によってファイル・ディレクトリを作成し、不特定の人間に向けて前記サイト内から選んだフ
ァイルの保存先にジャンプするようにダイレクトリンクを貼った。さらに、そのホームページには「本
サイトにある全てのファイルは無料でダウンロード、ファイル変換、CD ライティングができる。さあ
ー、このサイトをどんどん利用し、友達にも紹介してくださいね。」との宣伝文句があるほか、誰に
もできるように(ダウンロードしたファイルの)再生方法、rm ファイルの MP3 形式へのファイル変換
方法及び手順を公開に提供した。
上に述べた事実を一応認めているが、利用料金を取らなかったので、
(著作物の)合理的な利用に
あたると被告人は弁解した。しかしながら、訴訟ファイルの添付別表に示されているように、被告人
が開設するサイトで提供していた楽曲はネットワークからかき集めてきたもので、合法的な手段によ
って取得した複製物ではない。この点については被告人の供述からも明らかである。これらの楽曲を
さらに複製し、誰もが自由にダウンロードできるようにホームページにハイパーリンクを貼っていた
ことは著作権法で定められた例外に該当する目的で利用したとはとうてい考えられない。したがって、
被告人の言い訳は取るに足りないと判断した。
刑法第 2 条第 1 項により、犯罪の行為が行われた後、法律に変更があった場合は裁判時の法律を適
用する。但し、裁判前の法律のほうが行為者に有利な場合は、行為者に最も有利な法律を適用して処
断する(最高裁判例参照)。行為者に有利なのか不利なのかは諸事情を総合的に判断すべきである。
被告人は、非営利手目的で複製の方法により他人の著作財産権を侵害し、複製されたものの数が五件
を超え、しかも著作権侵害に係るものであることを知っていながらそれを頒布した。これらの一連の
行為は被告人の包括的犯意の下に繰り返してなされたもので、連続犯であり、また被告人が犯した二
つの罪(著作権が他人に帰属する著作物の無断複製、及び複製物の権限なき頒布)の間に手段と結果
の関連性があることから、牽連犯でもある。旧法より新法のほうが被告人に有利なので、改正著作権
法を適用することとし、さらに被告人が法廷において自分のしたことを悪かった、このようなことを
二度としないと悔悟の意を表明したため、裁判官は情状を酌量して執行猶予付きの判決を言い渡した。
主な参照条文:
著作権法(2003.07.09)
第 91 条第 2 項 非営利目的で複製の方法により他人の著作財産権を侵害し、その複製の部数が五
点を超え、又は摘発された時点で合法的複製物の時価にしてその侵害総額が新台湾ドル 3 万元
を超えたときは、3 年以下の懲役若しくは拘留に処し、又は新台湾ドル 75 万元以下の罰金を科
228
し又はこれを併科する。
第 93 条第 1 項 営利を目的として次に掲げる場合のいずれかに該当するものは、2 年以下の懲役
若しくは拘留に処し、又は新台湾ドル 50 万元以下の罰金を併科する。
二号【第 87 条第二号、第三号、第五号又は第六号の方法により他人の著作財産権を侵害した
とき。】
第 87 条第六号 著作財産権侵害に係るものであることを明らかに知っていながら、所有権を移転
し又は賃貸し以外の方法により頒布し、又は著作財産権侵害に係るものであることを明らかに
知っていながら、頒布を意図して公開に陳列し若しくは所持していたとき。
旧法(2003.07.09 改正前の著作権法)
第 91 条第 1 項 無断で複製の方法を以て他人の著作財産権を侵害した者は、6 ヶ月以上 3 年以下
の懲役に処し、並びに新台湾ドル 20 万元以下の罰金を併科することができる。
第 93 条第三号 次の各号のいずれかに該当するものは、2 年以下の懲役に処し、並びに新台湾ド
ル 10 万元以下の罰金を併科することができる。
第三号【第 87 条各号のいずれかの方法をもって他人の著作権を侵害したとき。
】
229
公平取引法関連
01 公平取引法―混同誤認やデッドコピーが成立せずとも第 24 条の不正行為は成立し得る事案
■ハイライト
公平取引法第 24 条の規定は、同法各条の補正条項に該当し、公平取引法第 18 条乃至 23 条に規定され
ている不公平行為以外の類別に属するだけではない。それ故、事業者は、他人の名声に便乗したり、他
人の商品外観を不正に襲用したりして、その外観設計及び販売をもって参入し、他人の努力の成果を剽
窃とした行為に該当し、商業競争の倫理に反するときは、公平取引法第 20 条の規定に違反しなくても、
襲用された事業者にとって、相当な損害を蒙り、市場における公正な競争制度の違反になるので、同法
第 24 条の適用により、始めて取引秩序の維持、及び市場における自由、公正な競争の確保ができる。
更に、公平取引法第 24 条の適用は、実際に侵害を受けることを前提としていず、事業者による行為は、
同条にいう「取引秩序に影響するに足りる」ことを構成するかどうかを判断するにあたり、当該行為が
実施された後、取引秩序に影響する可能性があり、抽象的な危険性に達することだけで事足りる。
裁判番号:94 年判字第 479 号
事件摘要:公平取引法
裁判期日:2005 年 3 月 31 日
資料元:司法院
関連法律:公平取引法第 18、20、23、24 条(1999 年 2 月 3 日版)
参考条項:公平取引法第 18、20、23、24 条(1999、2、3)
判決要約:
1、本院で審理した結果、原判決には見識がないものでもないが、
「本法に別段の規定がある場合を除き、
事業者はその他取引秩序に影響するに足りる欺罔又は著しく公正さを欠く行為を行ってはならな
い」、
「公平取引委員会は本法規定に違反した事業者に対して、期限を定めてその行為の停止、改善
又はその是正に必要な措置を命じ、並びに新台湾ドル 5 万元以上、2500 万元以下の過料に処するこ
とができる。」と公平取引法第 24 条、第 41 条前段にそれぞれ明文が規定されている。
2、次に、公平取引法第 24 条の規定は、同法各条の補正条項に該当し、公平取引法
第 18 条乃至 23 条に規定されている不公平行為以外の類別に属するだけではない。それ故、事業者
は、他人の名声に便乗したり、他人の商品外観を不正に襲用したりして、その外観設計及び販売を
もって参入し、他人の努力の成果を剽窃とした行為に該当し、商業競争の倫理に反するときは、公
平取引法第 20 条の規定に違反しなくても、襲用された事業者にとって、相当な損害を蒙り、市場
における公正な競争制度の違反になるので、同法第 24 条の適用により、始めて取引秩序の維持、
及び市場における自由、公正な競争の確保ができる。
3、更に、公平取引法第 24 条の適用は、実際に侵害を受けることを前提としていず、
事業者による行為は、同条にいう「取引秩序に影響するに足りる」ことを構成するかどうかを判
断するにあたり、当該行為が実施された後、取引秩序に影響する可能性があり、抽象的な危険性に
達することだけで事足りる。本件の被上告者が、販売する意図の下で、他人の商品に極めて類似し
た模倣品を大量に輸入した行為は、取引秩序に影響を与える虞があるとされ、上告人は原処分書に
ある「販売」の二文字は「販売の意図」の誤記であると認めたのにもかかわらず、原判決では、被
上告人が輸入した係争商品のすべてが裁判所による没収が宣告され、被上告人に係争商品を販売す
る行為がなかったのに、上告人が被上告人の販売行為を処分したことは、明らかに根拠がないとの
認定は、余りにも速断である。
4、原判決では、公平取引法を競争法とし、一つの欺罔又は公正さを欠く競争行為が、
取引秩序に影響するに足りるとき、始めて同法の規定違反に問われるもので、事業者に欺罔又は公
正さを欠く競争行為があるだけで、公平取引法第 24 条を適用するのではないことから、競争者又は
消費者に損害を及ぼすことを前提とし、事業者の行為に具体的な危険性を有することが処分の要件
とされるべきである。
5、本件の係争商品が、すでに没収されたので、当然市場に出回る可能性がないこと
から、消費者又は競争者に損害を来たしめる虞がないとして、本件は公平取引法第 24 条にいう「取
引秩序に影響するに足りる」ことが有り得ないと認められた。原判決には法律の適用の不備の違法
230
がある。前記の説明を踏まえて、原判決では調査もせず、前記の理由で原処分及び訴願の決定を取
消したことは、誤りがないとは言い難いものである。上告の趣旨に、原判決に不備があるとした指
摘は理由があり、原判決を破棄し、原裁判所で詳しく調査し、改めて適法な判決が言渡されるべき
である。
231
02 公平取引法―使用分野異なる商品名の襲用が公平取引法違反にならない事案
■ハイライト
春水堂
社名の重複使用、喫茶店が科技公司に敗訴
台湾における泡沫紅茶の元祖である春水堂は、ネットで人気を集めている「阿貴」というバーチャル
キャラクターを創出した春水堂科技公司を発見し、商品名が襲用されたとし、消費者に混同誤認を引起
こさせないようにするために、公平会に告発した。
泡沫紅茶の老舗である台中の春水堂「実業」は、春水堂を社名とし、ネットのバーチャルキャラクタ
ーである阿貴でもって人気を集めている春水堂「科技」を相手取り攻撃した。春水堂実業は、相手方が
春水堂の文字を使用したことにより、消費者に誤認をなさしめるとし、公平取引法に違反するとして、
公平取引委員会に告発した。
裁判所で審理した結果、市場の区分及び商品役務の出所が同一ではなく、春水堂「科技」が春水堂実業
の商業上の信用に便乗したり、他人の努力の成果を詐取したりした行為に該当しないと認定し、春水堂実
業に敗訴の判決を言渡した。
裁判番号:94 年訴訟更一字第 9 号
事由摘要:公平取引法
裁判期日:2005 年 10 月 13 日
資料元:司法院
関連法律:公平取引法第 20 条、24 条
行政院公平取引委員会の公平取引法第 20 条に対する事件処理原則第 14、
16 条
判決要旨:会社の名称、標章は公平取引法第 20 条第 1 項第 2 号に定義づけられている表彰であるが、参
加人はその社名とした「科技娯楽」が、原告会社の業務別と異なり、被告が公布した「公平取
引法第 20 条事件処理原則」第 14 点前段に基づき、
「二社の社名の中では異なる業務の種類を
表記するとき、その社名は本法第 20 条にいう同一又は類似の使用に該当しない」
、
【会社法第
18 条第 1 項に「会社の名称は他人の名称と同一であってはならない。二つの会社の名称に業
務の種類が同一でないこと又は識別に資する文字を表示したときは、同一でないものとみな
す。」も参考になる】の規定により、原告は参加人が会社名称を「春○堂」として使用したこ
とにより、参加人の会社名称が公平取引法第 20 条第 1 項第 2 号の規定に違反するとは認定し
難く、また、被告は公布した「公平取引法第 20 条事件処理原則」第 14 点後段に基づき「普
通の使用方法で、会社法に基づき登記した会社社名の使用は、関連事業者又は消費者に通常
認識されている営業と混同誤認を引起こさせる積極的な行為がない場合には、本法第 20 条に
違反しない。」規定されているので、参加人には、関連事業者又は消費者に通常認識されてい
る営業と混同誤認を来たしめる積極的な行為があるとき、公平取引法第 20 条に違反する可能
性がある。更に「公平取引法第 24 条事件処理原則」に、
「他人の努力の成果の搾取」の不法
行為の類型(常に見られる行為態様に:他人の商業上の信用に便乗すること、高度に模倣す
ること、他人の努力を利用し、自らの商品又は役務を促進する行為等がある)が規定されて
いて、法に違反するかどうかを判断するにあたり、原則的に:便乗され又は高度に模倣され
た標的については、当該事業者がすでに相当な努力を投入し、市場において一定の経済利益
を有していること;商業上の信用に便乗された場合には、当該ブランドが市場において相当
な知名度があるかどうか、且つ市場における関連事業者又は消費者に一定品質の連想を生じ
せしめること;模倣された標的については、市場の競争において独特又は占有の状態...な
どの要素を考えるべきである。しかしながら、原告はその商業上の信用、役務等が「相当な努
力をし、市場における一定の経済利益を有する」、「当該ブランドは市場において相当な知名
度を有する」、「市場における関連事業者又は消費者に一定の品質を連想させる」、「当該標的
の、市場の競争上に独特性及び占有の状態」などについて、まだ証明していないので、参加
人に公平取引法第 24 条に違反した事情があるとは当然言い難い。
参考法律:公平取引法第 20 条、第 24 条
232
行政院公平取引委員会の公平取引法第 20 条に対する事件処理原則第 14 条、第 16 条
台北高等行政法院判決
原告
春水堂実業股份有限公司
被告
行政院公平取引委員会
参加人
春水堂科技娯楽股份有限公司
判決要約:
1、 公平取引法の主務機関である被告が公布した「公平取引法第 20 条に対する事件処理原則」の第二
点に「本法第 20 条にいう関連事業者又は消費者とは、当該商品又は役務と販売、購入等の取引関
係を形成する可能性のある者をいう」...(省略)
前記の規定は、公平取引法に基づく取引秩序及び消費者の利益を守ることと一致し、公正な競争
の立法精神を確保し、本件の判断に引用、参考できるものである。
2、 公平取引法の主務機関である被告が、公布した「公平取引法第 24 条に対する事件処理原則」に基
づき...(省略)
前記の規定は、被告が公平取引法第 24 条に基づいて行う解釈的行政規則で、事業者の行為が公平
取引法第 24 条に違反するかどうかを審理するときに使用するものであり、法律の保留原則と異なる
ことがなく、又、許諾が明確であるかどうかの問題もないことから、本件の判断に引用、参考でき
ることは論を待たない。
3、 原告は、参加人の元事業名称が、その「春水堂」の会社名称及びサービスマークの「春水堂」を襲
用し、その従事するネット動画を表彰したことは、原告による営業又は役務の施設又は活動と混同
を来たしめることから、公平取引法第 20 条第 1 項第 2 号及び第 24 条に違反する云々と主張した。
これに対して、被告は「原告は『茶葉、茶具、芸術品、食品、飲料』商品及び関連役務を表彰する
『春水堂』をもって、商標及びサービスマークの専有権を取得し、公平取引法第 20 条にいう表彰
に属するものであるが、原告が相当な努力をしたと称しても、その提供した商標証書のコピー、支
店分布の現況、茶訊月刊及び新聞切り抜き等の資料に基づき、原告が有する 12 店の支店は主に台
中地区に所在し、総店舗 16 店の 75%を占めることから、商品又は役務は市場における販促広告の
程度、販売状況、営業規模、市場シェア率及び大衆のイメージなどを綜合的に判断すれば、原告の
使用している春水堂のサービスマークは、公平取引法第 20 条にいう関連事業者又は消費者に通常
認識される表彰であるとは言い難い。
また、被告発者が従事している事業は『録音出版社、テレビ映画製作興行業、娯楽用品卸小売業、
情報ソフト卸サービス業、通信工程業』などであるほか、阿貴、a-kuei、春水及び springhouse を
商品及びサービスの表彰とし、全般的に原告及び被告発者の会社名称、商品表示及び表彰方式、商
品及び役務の類別など市場の区分を判断したうえ、客観的に一般の消費者に同二社の商品又は役務
の出所について混同誤認を来たしめる虞もないことから、公平取引法第 20 条に違反するとは言い
難い。
被告発者は、『春水堂』を会社名称の一部として使用していることは、会社法に基づいて登記を
申請し、更に「阿貴動画」でもって自らの商業上の信用を建立した。原告は一歩進んで、被告発者
に原告と関連のあると誤認を来たしめるその他の行為があると指摘していないが、被告発者の営業
項目、商品又は役務などの市場が原告と区分されており、消費者に混同誤認を来たしめる虞がなく、
被告発者に積極的に原告の商業上の信用に便乗したり、又は他人の努力の成果を搾取したりした行
為があるとか、取引秩序に影響するに足りる公正さを欠く事由があることから、原告の茶飲市場に
おける競争の効力を減損させたとは認められ難いので、公平取引法第 24 条に違反しないものであ
る。
被告が、参加人が公平取引法第 20 条第 1 項第 2 号及び第 24 条に違反しないとした処分は、前記
の条項、公平取引法第 20 条事件処理原則、公平取引法第 24 条事件処理原則などの規定とは如何な
る違反もなく、維持するとした訴願の決定は、誤りがないので、維持されるべきである。
4、 会社の名称、標章は、公平取引法第 20 条第 1 項第 2 号に定義付けられている表彰であるが、参加
人はその会社名称に表記した「科技娯楽」が原告会社の業務と同一ではないので、被告が公布した
「処理公平取引法第 20 条事件原則」第 14 点前段に「二つの会社の名称の中に異なる業務類別を表
示するとき、その会社名称は、本法第 20 条にいう同一又は類似の使用ではない」(省略)
調べたところ、前記の証拠資料を踏まえて、原告の商品又は役務の市場における販促広告の程度、
市場の販売状況、営業規模、市場シェア率及び大衆イメージなどから、関連事業者又は消費者が原
233
告の主張した表彰に対して印象があると立証するに足りぬものであり、原告はその後、TVBS 民意
調査中心に依頼し、提出した「春水堂品牌名称混淆」(春水堂ブランドの混同誤認)市場調査報告
【この調査報告書での調査地域の範囲、サンプル数が合理性又は目的性と合致するかどうかを問わ
ず、公平取引法第 20 条にいう「関連事業者又は消費者」とは、当該商品又は役務と販売、購入等
の取引関係を有する可能性のある者を言うので、本件の泡沫紅茶又は茶芸館は一般の商品又は役務
に該当し、関連消費者を認定するには、販売、購入など取引関係を有している潜在又は現在の消費
者が含まれるべきであり、原告が指摘した「原告の支店などが設立された地区に居住し、お茶及び
冷たい飲み物を飲む習慣のある、茶芸館に通う消費者」に限定されることは有り得ない】の三、結
論及び建議の部分は、インタピューを受けた半数以上の消費者から、「春水堂阿貴網站」及び「春
水堂茶芸館」は同一の関係企業に属するか、それとも関連があるかと示された意見を記載したが、
同報告の四、資料分析の部分について、更に、インタピュ−を受けた者から、原告の「春水堂茶芸
館」を聞いたことがないと返答したのが 82%にも達していると記載されていたことから、原告が
春水堂を会社の名称又は標章として使用したことは、公平取引法第 20 条にいう関連事業者又は消
費者に通常認識されている表彰とは言い難い。
原告は参加人による如何なる同一又は類似の使用行為が、原告の営業又は役務の施設又は活動に
混同誤認を来たしめる部分に対して、PC HOME 雑誌のインタピュー−資料、サイト、新聞報道、
星報、自由時報及び民生報等を提出しただけで、当該資料のいずれも参加人による同一又は類似し
た積極的使用行為ではなく、参加人がその設立したテーマレストランで原告会社と同一のサービス
マークを使用したとした原告の指摘は、裏付けとする証明証拠が提出されなかったため、参加人に
公平取引法第 20 条第 1 項第 2 号に違反する事情があったと認定できる如何なる事由がないことは
言うまでもない。
5、
「公平取引法第 24 条事件処理原則」に、
「他人の努力の成果の搾取」の不法行為の類型(常に見られ
る行為態様に:他人の商業上の信用に便乗すること、高度に模倣すること、他人の努力を利用し、
自らの商品又は役務を促進する行為等がある)が規定されていて、法に違反するかどうかを判断す
るにあたり、原則的に:便乗され又は高度に模倣された標的については、当該事業者は相当な努力
を投入し、市場において一定の経済利益を有していること;商業上の信用に便乗された場合は、当
該ブランドが市場において相当な知名度があるかどうか、且つ市場における関連事業者又は消費者
に一定品質の連想を生じせしめること;模倣された標的については、市場の競争における独特又は
占有の状態...などの要素を考えるべきである。しかしながら、原告はその商業上の信用、役務等が
「相当な努力をし、市場において一定の経済利益を有する」、「当該ブランドは市場において相当な
知名度を有する」、「市場における関連事業者又は消費者に一定の品質を連想させる」、「当該標的の
市場の競争上に独特性及び占有の状態」などについて、未だ証明していないので、参加人に公平取
引法第 24 条に違反した事情があるとは当然言い難い。
6、 本件は、原告が告発事項を説明し、関連証拠を提供した後、被告は参加人に事実上及び法律上の意
見の書面陳述を求め、原告による告発事項について、調査手続を完了したものである。また、すべ
ての証拠の綜合的調査を経て、全ての陳述を酌量し、事実及び証拠を調査した結果、原告と参加人
にとって有利及び不利な事項に対して一々注意をし、論理及び経験法則に基づいて、参加人の行為
が、現行証拠により公平取引法に違反するとは認定し難いと判断し、且つ理由を付した上、行政手
続法等の関連規定に違反しないとした旨を書簡にて原告に返答した。
7、前記の理由を踏まえて、被告による処分では、参加人が公平取引法第 20 条第 1 項第 2 号及び第 24
条に違反しないとしたことには、誤りがなく、訴願での維持する旨の決定も法に合致するので、原
告が取り消しを申立てて、及び参加人が公平取引法第 20 条第 1 項第 2 号及び第 24 条に違反する処
分をするよう被告に請求したことは、ともに理由がないので、棄却すべきである。
8、双方当事者によるその他の攻撃防御方法のいずれも、本件の判決結果に影響を及ぼさないので、一々
論断しないことを併せて説明する。
前記を綜合すると、本件原告の訴えに理由がないので、行政訴訟法第 98 条第 3 項前段に基づいて、主
文の通り判決する。
234
03 公平取引法−混同誤認と高度模倣の主張が却下された事案
■ハイライト
公平取引法第 20 条及び第 24 条の関係から見れば、事業者が、その営業所で提供する商品又は役務が
同法第 20 条に掲げる各号の事由に該当しなくても、事業者は営業競争の手段として、他人の名声に便乗
したり、他人の商品の外観又は表彰を不正に模倣したりしたとき、他人の努力の成果を搾取した行為と
なり、商標競争の倫理に反する不正競争行為に該当し、市場における効能の競争の抑制及び妨害を構成す
ることから、他人が実際に侵害を受けることを要しないことは明らかである。
次に、商品の外観設計が公平取引法第 24 条に違反するかどうかについては、商品の外観全体が高度模
倣を構成するかどうかを審査の重点に置く。高度模倣を構成するかどうかを判断するにあたっては、商
品の外観全体を全般的に観察すべきであり、商品の外観、形状、色等の各部分だけとか、それとも商品
の商標の一部又は中国語、英語の説明文字を照合し、区分して比較観察するだけではなく、全般的に比
較観察したうえ、係争二商品の容器、色、シール又は構図設計が酷似しているので、上訴人は告発人の商
品表彰を高度に模倣し、他人が努力し、享有すべき商業利益を不当に搾取し、市場における効能の競争
を妨害したと認定に足りるものである。上告人は、その瓶の形状又はシールについて、業界の慣習によ
る設計概念又は通念による意思表示をしたにすぎなく、高度模倣原則に合致しないと主張したことは、
信用に足りぬものである。
裁判番号:94 年判字第 2032 号
事件摘要:公平取引法
裁判期日:2005 年 12 月 29 日
資料元:司法院
関連法律:行政訴訟法第 255、98 条(1998、10、28)
公平取引法第 20、24、41 条(2002 年 2 月 6 日版)
最高行政法院判決
上告人
被上告人
台湾妙○○股份有限公司
行政院公平取引委員会
主文
上告を棄却する。
上告審の訴訟費用は、上告人の負担とする。
判決要約
1、本院で調べたところ、公平取引法第 20 条及び 24 条の関係から見れば、事業者がその営業所で提供
する商品又は役務が、たとえ同法第 20 条各項事由に該当しなくても、もし事業者がその営業手段と
して他人の信用に便乗したり、他人の商品外観を不正に模倣したりした行為があれば、他人の努力
の成果を搾取した行為となり、商業競争の倫理に反する不正競争行為に該当し、市場における効能
競争の抑制及び妨害を構成することから、他人が実際に侵害を受けることを要しないことは明らか
である。
2、次に、商品の外観設計が公平取引法第 24 条に違反するかどうかを審査する際には商品の外観全体の
高度模倣が構成するかどうかを重点に置くことにし、また、判断するにあたっては、商品の外観全体を
全般的に観察すべきであり、商品の外観、形状、色等の各部分だけとか、それとも商品の商標の一部又
は中国語、英語文字を区分けして比較観察するだけではない。調べた結果、原判決では、上告人の「快
速疏通劑」商品の外観は、荘○公司の「快速通楽」商品の外観と同じく、赤色の一体型取手付プラスチ
ック瓶、紺色スクリューキャップを使用し、正面のシールに瓶の流線型図面、その上に黄色赤枠放射図
を使用していて、紺色の下地を使用していて、関係人が使用している黒色と差異がある以外は、その排
列位置は全て荘○公司の設計を模倣していて、その上にある文字説明については、細部の髑髏及び商品
に強アルカリ性を有する注意文字の位置が関係人と異なっているのを除き、上告人が黄色赤枠放射図に
使用する黒色方形字体の「超濃度強力新配方」及びその上側の「MAGIC AMAH」赤色小文字、シールの真
中にある赤色方形字体「快速疏通剤」
、シールの右下側にある黄色方形字体「不侵蝕管路」及び白色方形
字体「馬桶、水管均適用」等は、荘○公司が黄色赤枠放射図に使用する黒色方形字体の「超高濃度強力配
235
方」、その上側の赤色小文字「荘○ Johnson」
、シールの真中にある赤色方形字体「快速 Drano」、シー
ル右下側の黄色方形字体「不侵蝕水管」及び白色方形字体「馬桶、水管均適用」等の色、字体、意味、排
列などはすべて関係人と同一又は類似している;又上告人の「妙○○及び水管図」に使用している赤色
及び正面シールの表示位置は、関係人の「通楽及び水管図」と同一である;上告人の「快速疏通剤」商
品の背面シールに紺色の下地を関係人が使用している黒色と差異があるだけで、シールの形状、色彩、
説明文字及び図案の排列順序などは、
「快速通楽」商品と類似し、全体的に比較観察した際、係争二商品
の容器、色、シール及び構図設計は極めて類似しているので、上告人は告発人である荘○公司の前記商
品の表彰を高度に模倣したものと認定するに足りるもので、他人が努力し、享有すべき商業上の利益を
搾取し、市場における効能競争を障害し、上告人による製品の瓶又はシールは、業者慣習の設計観念又
は通念による意思表示だけのもので、高度模倣原則と合致しないとした上告人の主張は、信用に足りぬ
ものである。
3、 更に調査したところ、荘○公司による製造、販売の通楽シリーズ製品は、各アイテムに対する酸性
洗剤の効能及び類別について、前後にわたり、「馬桶通楽」、「浴室通楽」、「快速通楽」等の製品を
発売し、その正面シールに「瓶状流線型、上側に黄色赤枠放射図、赤色通楽及び水管図」の排列配
置図形を使用し、また商標登録を出願し、商標権を取得していることは、当該商標図形設計に顕著
性及び独特性を有することが立証でき、商品の出所を表彰するに足りるものである。また、荘○公
司は、当該「快速通楽」商品に対して、1995 年、1996 年、1998 年にそれぞれ広告費に計 NT$16,397,000
元を投下していて、ここ五年来の売上げが計 885,000 余本を数え、売上金額が 100,000,000 元を超
えていて、原審で検証を行った際に当該「快速通楽」の広告ビデオを再生したところ、ファイルに
付されている荘○公司の「快速通楽」の商品外観の写真が類似していたほか、潤利公司が原審に送
付した快速通楽のメディア広告放映回数ランキング、広告ビデオ及び 1997 年から 2001 年かけての
「快速通楽」売上げリストが裏付けとして立証できるほか、「快速通楽」は荘○公司の関連通楽シ
リーズ製品であることは消費者に周知され、製品の前記赤色一体型取手付プラスチック瓶及びその
シール等の商品外観は、消費者が当該商品を識別する表彰になる。
4、 上告人は、荘○公司の広告が消費者にイメージさせるのはその登録した「通楽」
「Drano」商標及び
「荘○」会社だけであり、製品外観の瓶、色、シールなどには及ばないとした主張は、信用に足り
ぬものである。
係争二商品の市場シェア率の増加及び減少と、上告人が他人の商品外観を高度に模倣したり、積
極的に他人の商業上の信用に便乗したりした不法行為の認定とは直接の関係がなく、更に商品の市
場シェア率に影響する理由が数多くあり、上告人は、荘臣公司の「快速通楽」の 90 年市場シェア率
が成長したが、逆に「妙○○快速通楽剤」の市場シェア率がこのために成長していないので、関係
人の商業上の信用に便乗したことがなく、その努力の成果を搾取したこともないとした主張は誤解
である。
5、 最後に、原処分では、前項の不法行為を停止するよう上告人に命じたもので、つまり上訴人が前記
の不法商品を販売してはならず、もし同一の不法行為を犯したとき、被上告人は、公平取引法第 41
条後段に基づき重く処断されることになる。これに対して、上告人は、すでに「妙○○快速疏通楽」
旧包装の使用を停止したのに、原処分ではなおその停止を求めたことは、比例原則に違反する云々
と主張したことは、原処分及び規制法律の趣旨の誤解であることが明らかである。
6、 上告人が日盛眼鏡行事件を例にしてあげているが、それと上告人が違反し、責任を負うべき行為と
は同一ではなく、前者は高度に模倣し、商業上の信用に便乗したり他人の努力の成果を搾取したり
した行為であり、後者は不実の広告をした行為であり、二者の行為評価が同一であるとは言い難く、
上告人にとって有利な認定として引用され難いことは言うまでもないので、併せて説明する。原審
では、前記の事実を審査した上、原決定及び原処分を維持し、上告人の訴えを棄却したことは、誤
りがない。上告の趣旨で、原判決に誤りがあり、破棄するようにとの前言を繰り返して指摘された
ことは、理由があるとは認められ難いので、棄却されるべきである。
236
付録1.台湾特許出願フロー図
表1
特許、意匠出願のプロセス
出
願
(表 1B)
出願変更(意匠
への変更、又は
類似意匠
独
立意匠)○
專25 34、116
出願変更(実用
新案への変更)
O
六
ヶ
出願番号及び補
正期限通知
月
初審の段階に戻る
審定書の送達
日の翌日より
60日以内
(表 2)
拒絶査定
特許査定
補正完了 △
(中国語明細書を含み)
30
訴願請求
△
2002/10/26 より
の新規特許出願
專 47
について表 1A
をご参照
再審査審定
(表 3)
実体審査通知
再審查 審定前
No
Yes
No
審査意見提示
(OA)?
60
60
審査意見提示
(OA)?
答弁書提
出○
Yes
分割出願 ○
專46. II
訴願又は行政
訴訟の差
戻し
專33
2002/10/26 以後、分
割出願提起した特許
分割出願について、
表 1A をご参照
出願番号及び
補正期限通知
実体審査通知
答弁書提出○
補正完了
○
補正完了
○
專43
初審審定
六
ヶ
再審査理由書
提出期限通知
分割出願に対
する継続審査
月
特許査定
拒絶査定
再審査請求○
(表 2)
專46.I
60日
→官庁
註:專→專利法
→出願人/特許権者
施→專利法施行細則
訴→訴願法
行→行政訴訟法
→第三者(異議申立人/無効審判請求人)
○→自発補正可能の時期
237
△→自発補正不可能ですが、許可されたケースがある
表1A
特許出願における早期公開及び
実体審査請求のプロセス
上記のプロセスは下記の出願に限って適用される:
1.
2002 年 10 月 26 日より新規に出願した特許出願 (專 41)
2.
2002 年 10 月 26 日より専 33-1 に基づいて、
分割手続を行った特許出願
3.
(專 37-2)
2002 年 10 月 26 日より専 102 に基づいて、
特許出願へ出願変更した出願
(專 37-2)
1. 優先権日
1. 出願日
出願日(優先権主
張の場合、優先日)
の翌日より 15 ヵ 專 49-2
月以内
出願日(優先権主張の場
明細書または図面
合、優先日)の翌日より
の自発補正
18 ヶ月を経過した時。
出願人の申請により 18
ヵ月満了前に公開でき
る。
專 36-1
出願公開
專 37-1
実体審査の請求○
238
1.
新規出願:何人でも出願日の翌日より
3 年以内に実体審査を請求することがで
きる。(專 37)
2. 分割出願または実用新案出願から特
許出願へ変更するもの:もし、分割又は
出願変更の際にすでに上述期間を過ぎ
た場合、分割または変更の手続を提起し
た日の翌日より 30 日以内実体審査を請
求することができる。(專 37-2)
3.
期間内に実体審査請求しなかった場合、
出願は取下げられたものと見なす。(專
37-4)。
表1B
実用新案出願のプロセス
出願
六ヶ月
二ヶ月
出願番号及び補正
期限通知
専 100
明細書及び図面にお
ける自発補正
補正完了
(表1)
形式審査通知
専 102、114
出願変更(特許又は意匠へ
No
審査意見提示
(OA)
60 日
専 97-2
の変更)
Yes
60日
答弁書提出 ○
(表3)
訴願請求
査定
30日
専 99
専 98
登録査定
拒絶査定
(表 2)
239
表2
特許査定または登録査定から権利期間満了まで
特許査定
三ヶ月
専 51,101,113
証書料及び第1
年度の年金納付
専 45
実用新案に限り
公告、証書発行
(公告日より権利が発生)
専 81,82
無効審判の過程
(表4をご参照)
Yes
年金納付
(毎年)
第三者による
無効審判請求
無効審判請求
不成立確定
権利期間満了(出願日より起算)
特許権利期間:20年
実用新案権利期間:10年
意匠権利期間:12年
240
専 103∼105
技術評価書の
請求
表3
行政救済
訴願請求 △
被告側答弁
訴 62
補正期限通知
準備法庭
20 日
口頭弁論
補正完了△
判決(一審)
原処分官庁答弁
訴願決定
拒絶査定
取 消
再審査
OA通知
(表1)
訴願決定
取消
拒絶査定
拒絶査定
維 持
2
ヶ
月
行 106
確 定
(訴願法第 97
条に該当する
情況があった
場合)
20 日
審査通知
訴願決定
拒絶査定
維持
20
日
確定
確定
原告側上訴
被告側上訴
行 245
、246
(表1)
補正完了
行政訴訟
(一審)提起
訴願の再審
提 起
補正完了
被上訴人答弁
被告側答弁
補正期限通 行 59
、107
知
判決(上訴審)
補正完了
原判決維持(行
政訴訟法第 273、
274 条の情況に
当れば)
原判決廃棄
241
30
日
行 276
一審に差戻し241
再度審理
行 241
再審の訴提起
表4
無効審判
專 67,107,128
無効審判
請 求
理由書提出期限
1 ヶ月
通
專 67(3)
知
請求人による
專 67(3)
補正完了
專 69
特許権者へ答弁
期限通知
1 ヶ月
專 69(2)
Yes
特許権者から答
弁延期請求
答弁延期?
No
答弁延期許可
特許権者から
特許権者から
期限通知
答弁書提出
答弁書提出
○
專 71
実体審査通知
審査官の指示又は自発で
クレームの補正、修正を行
う(実質内容の変更不可)
專 70
無効審判審定書
無効審判
無効審判
成 立
不 成 立
30 日
(表 3)
Yes
30 日
特許権者か
請求人から
ら訴願提起?
訴願提起?
無効審判請求
成立確定
特許権取消
(表 3)
No
No
專 73
Yes
242
無効審判請求不
成立確定
(表 2)
表5
国内優先権
(特許、実案)
1. 先願は専 27 条又は専 29 条の規定に
よる優先権を主張することができ
ない。(専 29-1-2)
国内優先権主張の基
礎となる先願の提出
2. 先願が専 33 条第 1 項の規定による
分割出願又は専 102 条の規定によ
る出願変更を行ったもの国内優先
権の基礎とされることができない。
12 ヶ月
(専 29-1-3)
専 29-1
1. 専 29 条第 1 項により優先権を主張
するものは、先願の出願日の翌日よ
り 12 ヶ月以内に出願すべく。(専
国内優先権の主張
を伴う後願の提出
29-1-1)
15 ヶ月
2. 専 29 条第 1 項により優先権を主張
するものは、出願と同時に声明し、
且つ願書に先願の出願日及び出願
番号を明記しなければならない。
出願時に声明せず、又は先願の出願
日及び出願番号を明記しない
場合、優先権を喪失する。
(専 29-7)
専 29-2
1. 先願はその出願日の翌日より 15 ヶ
月を経過した時に、取下げたものと
見なす。(専 29-2)
先願は取下げたと
見なす
2. 先願の出願日の翌日より 15 ヶ月を
経過した後、優先権の主張を取下げ
ることができない。(専 29-3)
3. 国内優先権を主張する後願が、先願
の出願日の翌日より 15 ヶ月以内に
取下げられた時は、同時に優先権の
主張が取下げられたものと見なす。
(専 29-4)
243
表 6 台湾特許実務に於ける期限管理一覧表
補正事項
起算点
旧法
現行法
20040701 以降
委任状、譲渡証明書
出願日より
3 ヶ月+3 ヶ月延長可能
4 ヶ月+2 ヶ月延長可能
優先権証明書
出願日より
3 ヶ月
4 ヶ月(延長不可)
中国文明細書
出願日より
3 ヶ月+3 ヶ月延長可能
4 ヶ月+2 ヶ月延長可能
微生物の寄託証明書
出願日より
3 ヶ月
3 ヶ月
審査意見(OA)応答
意見書送達日の翌
日より
60 日
60 日
再審査請求
審定書送達日の翌
日より
30 日
60 日
3 ヶ月+3 ヶ月延長可能
4 ヶ月+2 ヶ月延長可能
再審査審定書送達
日の翌日より
30 日
30 日
訴願提起日より
20 日
20 日
再審査請求理由書の補足
訴願提起
訴願理由書の補足
行政訴訟提起
再審査請求日より
訴願審決書送達日
の翌日より
判決書送達日の翌日より
2 ヶ月
2 ヶ月
約 2 週間
約 2 週間
無効審判提起日よ
り
1 ヶ月
1 ヶ月
無効審判に対する答弁書
理由書送達日より
1 ヶ月
1 ヶ月
登録料及び第 1 年度年金
公告期間満了後
行政訴訟訴状の補足
無効審判理由書
提起日より
指定期間内に(異議なしの
場合)
査定書送達日より
3 ヶ月
第 2 年度よりの年金納付
前年度の期間満了
日前
(一括納付可能)
(一括納付可能)
年金追納料
納付期間満了日よ
り
6 ヶ月
6 ヶ月
*新旧法それぞれの起算点が異なる場合は、現行法の欄に下線付きの説明文字で示される。
244
III、台湾商標出願フロー図
表1、商標に関する手続のフロ−図
拒
絶
理
由
拒絶理由通知
出
願
方
式 審 査
実
体 審 査
(9ケ月)
(30日内)
意見書提出
登
録 査 定
(60 日間)
未納付
審決却下
登録料納付通知
(一括納付/分割)
納付済み
(2 ケ月以内)
登録廃止
成
立
廃
止
登録公告
異議申立
成
立
登録取消
し
無
不
効 審 判
成 立
登録料納付通知(後期)
(登録日より三年満了日
前の 3 ケ月前)
存続期間満了
更
新
245
表 2、
246
表3、異議申立の手続
異
議 申 立
知財局からの異議申立
理由書の補正期限通知
異議申立理由書の補正
知財局より被異議
人への異議答弁理
由書の提出期限通知
30 日
被異議人の異議答弁
知財局から被異議人の答弁
書を異議人に送付し、期限付
補充理由書を提出
異
議 審 決
訴願理由書の補正(表ニ参照)
訴願理由書の補正(表ニ参照)
提出あり
提出あり
被異議人から
の訴願申立
異議不成立
被異議商標の
30 日
異議人訴願
30 日
登録査定取消
提出なし
提出なし
査定の取消公告
登録確定
247
表4、無効審判請求の手続
無効審判請求
知財局からの無効審判請求
理由書の補正期限通知
30 日
無効審判請求理由書の補正
知財局より被請求者
へ無効審判答弁理由
書の提出期限通知
30 日
被請求者の無効審判答弁
知財局から被請求者の答弁
書を請求者に送付し、期限付
補充理由書を提出
訴願理由書の補正(表ニ参照)
無効審判審決
訴願理由書の補正(表ニ参照)
提出あり
提出あり
登録者から
の訴願申立
30 日
無効審判成
無効審判
立登録無効
請求不成立
提出なし
請求者から
30 日
の訴願申立
提出なし
登録の無効公告
無効審判不成立確定
248
表5、廃止(取消審判請求)の手続(利害関係人)
廃
止 請 求
知財局からの廃止理
由書の補正期限通知
30 日
廃止理由書の補正
知財局より被異議人へ
の無効審判答弁理由書の
提出期限通知
30 日
被請求者の廃止答弁
知財局から被請求者の答弁
書を請求者に送付し、期限付
補充理由書を提出
廃
止 処 分
訴願理由書の補正(表ニ参照)
訴願理由書の補正(表ニ参照)
提出あり
提出あり
被請求者から
の訴願申立
30 日
廃止請求成
廃止請求
立登録取消
不成立
提出なし
請求者から
30 日
の訴願申立
提出なし
登録の取消公告
取消審判不成立確定
249
IV.台湾知的財産権関連法律条文
2004 年改正特許法
(新設 24 ヶ条、削除 32 ヶ条、修正 98 ヶ条)
2003 年 1 月 3 日立法院を通過
2003 年 2 月 6 日付総統令公布
2004 年 7 月 1 日施行
第一章
総則
第 1条
発明と考案の奨励、保護、及び利用を図ることにより、産業の発達に寄与する目的をもって、
本法を制定する。
第 2条
本法で特許とは、次の三つの種類に分ける。
一、発明特許。
二、実用新案。
三、意匠。
第 3条
本法の所管機関は経済部とする。
特許事務は経済部が主務官庁を指定し処理する。
第 4条
外国人の所属する国と台湾とが共同で特許の保護に同一の国際条約に加盟していないとき、又
は特許を相互に保護する条約、協定、若しくは団体、機関によって締結され、主務官庁の許可
を受けた特許保護に関する相互協議がないとき、又は台湾国民の特許出願を受理しないときは、
その特許出願を受理しないことができる。
第 5条
特許出願権とは、本法により特許を出願できる権利をいう。
特許出願権者とは、本法に別段の定めがある場合、又は契約において別途約定がある場合を除
き、発明者、創作者又はその譲受人、相続人をいう。
第 6条
特許出願権及び特許権は、ともにこれを譲渡、又は相続することができる。
特許出願権は質権の目的とすることができない。
特許権を目的として質権を設定したものは、契約で別段の定めがある場合を除き、質権者は当
該特許権を実施することができない。
第 7条
被用者が職務により完成した発明、実用新案、又は意匠について、その特許出願権及び特許権
は使用者に属し、使用者は被用者に適当な報酬を支払わなければならない。但し、契約によっ
て別に約定がある場合はその約定に従う。
前項の職務上の発明、実用新案、又は意匠は、被用者が雇用関係中の職務の遂行において完成
した発明、実用新案、又は意匠をいう。
一方が出資し、他人を招聘して研究開発に従事させるときは、その特許出願権及び特許権の帰
属は双方の契約の約定に従う。 契約に約定がない場合は、発明者又は創作者に属する。但し、
出資者はその発明、実用新案、又は意匠を実施することができる。
第 1 項、前項の規定により、特許出願権及び特許権が使用者又は出資者に帰属するときは、発
明者又は創作者は氏名表示権を享有する。
第 8条
250
被用者が非職務上において完成した発明、実用新案、又は意匠について、その特許出願権及び
特許権は被用者に属する。但し、その発明、実用新案、又は意匠が使用者の資源或いは経験を
利用したものであるときは、使用者は合理的報酬を支払ったうえで、当該事業において、その
発明、実用新案、又は意匠を実施することができる。
被用者が非職務上において発明、実用新案、又は意匠を完成したときは、直ちに書面をもって
使用者に通知しなければならない。必要がある場合は、創作の過程についても告知しなければ
ならない。
使用者が前項の書面通知の送達後 6 ヶ月以内に被用者に対して反対の表示をしなかったとき
は当該発明、実用新案、又は意匠を職務上の発明、実用新案、又は意匠として主張することが
できない。
第 9条
前条の使用者と被用者の間に締結された契約であって、被用者がその発明、実用新案、又は意
匠による権益を享受できないようにしたものであるときは、無効とする。
第 10 条
使用者又は被用者が第 7 条及び第 8 条に定めた権利の帰属について、争議があって、協議を達
成したときは、証明書類を添付して、特許主務官庁に対して権利者名義の変更を申請すること
ができる。特許主務官庁は必要があると認めたときは、当事者にその他の法令によって取得し
た調停、仲裁又は判決書類を添付すべき旨を通知することができる。
第 11 条
出願人は、特許出願及び特許に関する事項の処理について、代理人に委任して処理することが
できる。
台湾国境内において、住所又は営業所がない者は、特許出願及び特許に関する事項の処理につ
いては、代理人に委任しなければならない。
代理人は、法律に別段の定めがある場合を除き、専利師(弁理士)に限る。
専利師(特許代理人)の資格及び管理は別途法律をもってこれを定める。法律が制定される前
は代理人資格の取得、取り下げ、廃止及びその管理規則は主務官庁がこれを定める。
第 12 条
特許出願権が共有に係るときは、共有者全員によって出願をしなければならない
い。
二人以上の者が共同して特許出願以外の特許関連手続をするときは、取り下げ若しくは放棄の
申請、出願分割、出願変更、又は本法に別段の定めがあるものについては共同で連署するほか、
その他の手続は各人が単独で行うことができる。但し、代表者に関する約定があるときはその
約定に従う。
前二項の共同連署はその内の一人につき送達を受けるべき者として指定しなければならない。
送達を受けるべき者を指定していない場合、特許主務官庁は第一順位の出願人を送達を受ける
べき者とし、かつ送達事項をその他の者にも通知しなければならない。
第 13 条
特許出願権が共有であるときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を他
人に譲渡することができない。
第 14 条
特許出願権を継承した者は、出願の際に継承人の名義で特許出願をしておらず、又は出願後、
特許主務官庁に対して名義の変更を申請しなければ、これをもって第三者に対抗することがで
きない。
前項の変更を申請した者は、譲渡又は相続を問わず、すべて証明書類を添付しなければならな
い。
第 15 条
特許主務官庁の職員及び特許審査人員は、その在職期間内に相続による場合を除き、特許出願
をすることができず、且つ直接、又は間接を問わず、特許に関わる如何なる権益も受けられな
い。
251
第 16 条
特許主務官庁の職員及び特許審査人員は、職務上知り得た、又は所持する特許に係る発明、実
用新案若しくは意匠、又は出願人の事業上の秘密について秘密保持の義務がある。
第 17 条
出願人が特許出願及びその他の手続について、法定若しくは指定の期間に遅れ、又は期限内に
料金を納付しなかったときは、これを受理してはならない。但し、指定期間に遅れ、又は期限
内に料金を納付しなかった場合において、処分前に補正をしたときは、なおこれを受理しなけ
ればならない。
出願人が天災又は自己の責めに帰すことのできない事由により、法定期間に遅れたときは、そ
の原因が消滅した後 30 日以内に書面をもって理由を説明し、特許主務官庁に原状の回復を請
求することができる。但し、法定期間に遅れて一年を経過したときは、この限りでない。
原状の回復を請求するときは、同時に期間内にすべき手続を補正しなければならない。
第 18 条
査定書又はその他の書類を送達することができないときは、特許公報においてこれを公告し、
公報に掲載した日から三十日を経過したときは送達したものとみなす。
第 19 条
特許出願またはその他の手続きは、電子方式で行なわれることができる。施行期日及び規定は、
主務官庁がこれを定める。
(新設)
第 20 条
本法でいう期間の計算は初日を含まない。
第 51 条第 3 項、第 101 条第 3 項及び第 113 条第 3 項の規定に基づく特許権期限は、出願日か
ら起算する。
(新設)
第二章
第1節
発明特許
特許要件
第 21 条
発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作をいう。
第 22 条
産業上利用することができる発明は、次に掲げる事由の一に該当するものを除き、本法によっ
て特許を受けることができる。
一、出願前、既に刊行物に記載され、又は公然実施をされたもの。
二、出願前、公衆に周知されたもの。
発明は、次に掲げる事由の一に該当し、前記の何れの事由が発生した場合に、その事実が発生
した日から起算して六ヶ月以内に出願したものは、前項の各号のいずれに制限されない。
一、研究または実験のために発表または使用されたもの。
二、政府が主催又は認可した展覧会に展示されたもの。
三、出願人の意に反して、漏洩されたもの。
出願人が前項第 1 号、第 2 号の事情を主張するときは、出願時に年月日を記載してその事実を
説明し、並びに特許主務官庁が指定した期間内に証明書類を提出しなければならない。
発明は、第一項の規定に該当する事情がないにもかかわらず、その発明の属する技術分野にお
ける通常の知識を有する者が出願前の既存技術に基づいて容易に完成をすることができたと
きは、本法により特許を受けることができない。
第 23 条
特許出願に係る発明は、出願が先になされ、公開若しくは公告がこの出願より後になった発明
又実用新案出願に添付された明細書若しくは図面に明記された内容と同じであるときは、発明
特許を受けることができない。但し、その出願人と先になされた発明又は実用新案出願の出願
人と同一の者であるときはこの限りでない。
252
第 24 条
次に掲げる各号は、特許を受けることができない。
一、動・植物及び動・植物を製造する主な生物学の方法。但し、微生物学による製造方法は、
この限りでない。
二、人体、又は動物の疾病の診断、治療、又は外科手術の方法。
三、公共秩序、善良の風俗又は衛生を害するもの。
第2節
出願
第 25 条
特許出願は、特許出願権者が願書、明細書、必要な図面をそろえて、これを特許主務官庁に提
出する。
出願権者が雇用者、譲受人又は相続人である場合は、発明者の氏名を明記し、雇用、譲受又は
相続の証明書類を添付しなければならない。
特許出願は出願書、明細書及び必要な図面が完備した日を出願日とする。
前項によりその明細書及び必要な図面が外国語で提出され、特許主務官庁の指定期間内に中国
語の翻訳文を補正したときは、その外国語で提出した日は出願日とする。指定期間内に補正さ
れなかった場合には、出願を受理しないものとする。但し、処分がなされる前に補正したもの
は補正の日を出願日とする。
第 26 条
前条の明細書には、発明の名称、発明の詳細な説明、発明の要約及び特許請求の範囲を記載し
なければならない。
発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその内容を
理解し、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとする。
特許請求の範囲は、特許を受けようとする発明が明確であること、請求項ごとの記載が簡潔で
あること、発明の詳細な説明及び図面に支持されるものとする。
発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面は、本法の施行細則で定めるところにより記載さ
れる。
(新設)
第 27 条
出願人が世界貿易機関の加盟国または台湾と相互に優先権を認めている外国において、法律に
より最初に特許出願をし、且つ最初の特許出願日から12ヶ月以内に同一の発明について、台湾
に特許出願をしたときは、優先権を主張することができる。
前項の規定によって、出願人が一出願について二以上の優先権を主張するときは、その優先権
期間の起算日は最先の優先権の翌日とする。
外国出願人が世界貿易機関の加盟国に該当しない国の国民であり、かつその国と我が国とは優
先権を相互に承認していない場合、世界貿易機関の加盟国または互恵国の領域内に住所を有し
或いは営業所を設けているときにも、第一項規定により優先権を主張することもできる。
優先権を主張したときは、その特許要件の審査は優先権日を基準とする。
第 28 条
前条の規定により優先権を主張しようとする者は、特許出願と同時に申立てをし、且つ願書に
外国における出願日、出願番号及び同出願が受理された国の国名を明記しなければならない。
出願人は出願日から四ヶ月内に、前項当該国の政府が受理したことを証明する出願書類を提出
しなければならない。
前二項規定に違反したものは優先権を失う。
第 29 条
出願人は先に台湾で為した出願に係る発明又は実用新案に基づいて、再び特許出願を提出した
ときは、先の出願の明細書或いは図面に記載された発明或いは考案について優先権を主張する
ことができる。但し、次の各号に掲げる事情があるときはこれを主張することができない。
一、先の出願がなされた日からすでに 12 ヶ月を経過したとき。
二、先の出願に記載された発明或いは考案についてすでに第 27 条又は本条の規定により優先
253
権を主張していたとき。
三、先の出願は第 33 条第 1 項規定により分割出願、又は第 102 条規定により出願を変更した
ものであるとき。
四.先の出願がすでに査定または処分を受けたとき。
前項先の出願はその出願日から 15 ヶ月を満了したときに取り下げしたものとみなす。
先の出願は出願がなされた日から 15 ヶ月を経過したときに優先権の主張を取り下げることが
できない。
第 1 項により優先権を主張した後の出願は、先願がなされた日から 15 ヶ月内に取り下げられ
たときは、優先権の主張を同時に取り下げしたものとみなす。
出願人が一の出願に二項目以上の優先権を主張するときは、その優先権の起算期間は最も先の
優先権日の翌日とする。
優先権を主張したものはその特許要件の審査は優先権日を基準とする。
第 1 項により優先権を主張する者は、特許の出願と同時に声明を提出し、かつ出願書に先の出
願の出願日及び出願番号を明記しなければならず、出願人が出願と同時に声明を提出しておら
ず、又は先の出願の出願日及び出願番号を明記していないときは優先権を失う。
本条により主張する優先権日は、台湾 90 年(2001 年)10 月 26 日より先であってはならない。
第 30 条
生物材料又はその利用に係る発明の特許出願に関し、出願人は遅くても出願日に当該生物材料
を特許主務官庁が指定する国内の寄託機構に寄託し、並びに出願書に寄託機構、寄託期日及び
寄託番号を明記しなければならない。但し、当該生物材料はその属する技術の分野における通
常の知識を有する者が容易に入手することのできるものであるときは、寄託を要しない。
出願人は出願日から 3 ヶ月内に寄託に関する証明書類を提出しなければならない。期間が満了
しても提出しないときは、未寄託とみなす。
出願前にすでに特許主務官庁が認可した国外の寄託機構に寄託しており、出願時にその事実を
声明し、かつ前項規定の期限内に特許主務官庁が指定する国内の寄託機構に寄託した証明書類
及び国外における寄託機構が発行した証明書類を提出したものは、遅くても出願日に国内での
寄託を要する第 1 項の制限を受けない。
第 1 項生物材料寄託の受理の要件、種類、形式、数量、費用徴収の料率及びその他寄託の執行
に係る方法については、特許主務官庁がこれを定める。
第 31 条
同一の発明について二以上の特許出願があるときは、最も先に出願した者にのみ発明特許を付
与することができる。但し、後に出願した者が主張する優先権日は先の出願の出願日より先で
あるものは、この限りでない。
前項の出願日、優先日が同日である場合は、これを協議により定めるべき旨を出願人に通知し
なければならない。協議が成立しないときは、いずれも、その発明について特許を受けること
ができない。出願人が同一のものであるとき、期限内に定めた一の特許出願をすべき旨を出願
人に通知しなければならない。期限が満了したとき、出願しなかった場合、いずれもその発明
について特許を受けることができない。
各出願人が協議をするときは、特許主務官庁は相当の期間を指定して協議の結果を報告するよ
う出願人に通知しなければならない。期限が満了しても報告しないものは、協議不成立とみな
す。
同一の発明或いは考案についてそれぞれ発明特許及び実用新案の出願をするものは前三項規
定を準用する。
第 32 条
特許出願は、発明ごとに出願しなければない。
二以上の発明については、一の広義的発明概念に属するものは、一の願書で特許出願をするこ
とができる。
第 33 条
特許出願の発明が実質上二以上の発明であるときは、特許主務官庁の通知により、又は出願人
の申請によって、それぞれの出願に分割することができる。
前項の分割出願は、元の出願の再審査の査定前に行わなければならない。分割出願を許可され
たときは、元の出願の日を出願日とする。優先権がある場合は、優先権を主張できる。審査は、
254
元の出願について完成した部分より続行しなければならない。
第 34 条
特許出願権者でない者が出願して特許を受け、特許出願権者がその出願の公告日より二年以内
に特許無効の審判を請求し、且つ審決で無効が確定した日より 60 日以内に出願したときは、
特許出願権者でない者の出願日を特許出願権者の出願日とする。
前項により特許出願者が特許を出願したとき、公告しないものとする。
第3節
審査及び再審査
第 35 条
特許主務官庁長官は、発明特許出願の実体審査について、特許審査人員を指定してこれを審査
させなければならない。
特許審査人員の資格は法律でこれを定める。
第 36 条
特許主務官庁が発明特許に係る出願の書類を受け取った後、審査を経て規定にそぐわないこと
がなく、しかも公開を許可すべきでない事情がないと認めたときは、出願の日から18ヶ月を経
過した後に当該出願を公開しなければならない。
特許主務官庁は出願人の請求により、早めにその出願を公開することができる。
発明特許出願が次に掲げる各号の一に該当するときは、公開をしない。
一、出願の日から15ヶ月内に取り下げられたとき。
二、国防機密又はその他国家安全の機密に関わるとき。
三、公共秩序又は善良な風俗を害するとき。
第一項、前項期間は、優先権の主張があるときは、優先権日の翌日から起算する。二以上の優
先権を主張するときは、最も先の優先権日の翌日から起算する。
第 37 条
発明特許出願の日から三年以内に、何人も特許主務官庁に実体審査請求をすることができる。
第33条第1項により分割して出願され、又は第102条規定により発明特許出願に変更さ
れたものが前項期間を超えたときは、分割出願または変更出願の日から30日内に特許主務官庁
に実体審査の請求をすることができる。
前二項規定による審査の請求は取り下げることができない。
第 1 項又は第 2 項が規定する期間内に実体審査の請求がなかったときは、
この発明特許出願は、
取り下げたものとみなす。
第 38 条
前条審査の請求をする者は、請求書を提出しなければならない。
特許主務官庁は審査請求の事実を特許公報に掲載しなければならない。
審査の請求は発明特許の出願人以外の者によってなされたときは、特許主務官庁はこの事実を
発明特許の出願人に通知しなければならない。
生物材料又は生物材料の利用に係る発明特許出願の出願人が申請の請求をするときは、寄託機
構が発行した生存証明を提出しなければならない。発明特許出願の出願人以外の者が審査の請
求をするときは、特許主務官庁は 3 ヶ月以内に生存証明を提出するよう発明特許出願の出願人
に通知しなければならない。
第 39 条
発明特許出願が公開された後、特許出願人でない者による商業上の実施があったときは、特許
主務官庁は請求により審査を優先することができる。
前項請求は関連証明書類を提出しなければならない。
第 40 条
発明特許出願の出願人が出願の公開後、書面をもって発明特許の内容を通知したにもかかわら
ず、通知を受けた後、査定公告がなされる前に依然としてその発明の商業上の実施を継続して
いた者に対し、発明特許出願が公告後に適当の補償金を請求することができる。
255
発明特許出願がすでに公開されたことを明らかに知っていながら、公告前に当該発明の商業上
の実施を継続していた者に対しても前項の請求をすることができる。
前二項規定の請求権はその他の権利行使を妨げない。
第1項、第2項の補償金請求権は公告の日から起算して、二年の間に権利の行使がなかったとき
に消滅する。
第 41 条
前五條規定は台湾91年(2002年)10月26日から為された発明特許出願においてはじめて適用す
る。
第 42 条
特許審査人員が次の各号の一に該当するときは、自ら回避しなければならない。
一、本人またはその配偶者が当該出願の出願人、代理人、代理人の共同事業者、又は代理人と
雇用関係を有する者であるとき。
二、当該出願の出願人若しくはその代理人の四親等内の血族若しくは三親等内の姻族であると
き。
三、本人及びその配偶者が当該特許出願について、出願人と共同権利者、共同義務者又は償還
義務者の関係にあるとき。
四、現在当該出願について、出願人の法定代理人、家長若しくは家族であり、又はかつてそう
であったとき。
五、現在は当該出願の出願人の訴訟代理人又は補佐人であり、又はかつてそうで
あったとき。
六、現在は当該出願の証人、鑑定人、異議申立人、又は無効審判の請求人であり、又はかつて
そうであったとき。
り、又はかつてそうであったとき。
特許審査人員に回避すべき事由がありながら、回避しなかったときは、特許主務官庁は職権で
又は請求により、同審査人員が為した処分を取り消した後、別途適当な処分をすることができ
る。
第 43 条
特許出願についての審査が終わった後、査定書を作成し出願人又はその代理人に送達しなけれ
ばならない。
拒絶をすべき旨の審査をするときは、拒絶の理由を査定書に附さなければならない。
査定書は特許審査人員による署名がなければならない。再審査、無効審判の審査、及び特許権
存続期間の延長審査の査定書も同様である。
第 44 条
発明特許出願が第 21 条から第 24 条、第 26 条、第 30 条第 1 項、第 2 項、第 31 条、第 32 条ま
たは第 49 条第 4 項の規定に反するものは、拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
(新設)
第 45 条
審査の結果、特許を拒絶すべき理由がないものと認めた発明特許出願については、特許をすべ
き査定をし、且つ特許請求の範囲及び図面を公告しなければならない。
公告された出願は、何人も閲覧、抄録、撮影、又はその査定書、明細書、図面及びすべてのフ
ァイルの資料をコピーすることができる。但し、特許主務官庁が法律の規定により秘密を保持
しなければならないものについてはこの限りでない。
第 46 条
特許出願人は、出願拒絶の査定に対して不服があるときは、査定書送達の日より 60 日以内に
理由書を備えて再審査を申請することができる。但し、出願手続の不適法、又は出願人不適格
の理由で受理されなかったまたは却下されたものは、直ちに法により行政救済を提起できる。
再審査の結果、特許を拒絶すべき理由を発見したときは、査定前に、先ず期限を定めて意見書
の提出を出願人に通知しなければならない。
第 47 条
256
再審査をするときは、特許主務官庁は原審査に関与しなかった特許審査人員を指定して審査に
当たらせ、かつ査定書を作成しなければならない。
前項の再審査の査定書は、出願人に送達しなければならない。
第 48 条
特許主務官庁は審査について申請又は職権により、期間を限定して、出願人に次に掲げる事項
を行わせることができる。
一、特許主務官庁に出頭し、面接を受けること。
二、必要な実験を行い、模型又は見本を補足すること。
前項第 2 号の実験、模型又は見本の補足について、特許主務官庁は必要なときに現場、又は場
所を指定して検証を行うことができる。
第 49 条
特許主務官庁は審査にあたり、出願人に期限を限定して明細書又は図面の補充、修正を通知す
ることができる。
出願人は発明特許出願の日から 15 ヶ月内に明細書又は図面の補充・修正をすることができる。
15 ヶ月後に、明細書又は図面の補充、修正をするとき、元の出願公開をすることができる。
出願人は発明特許出願の日から 15 ヶ月後に、次の各号の期日又は期間内にのみ明細書又は図
面の補充・修正をすることができる。
一、実体審査の請求と同時に。
二、出願人以外の者による実体審査の請求は出願について実体審査を行う旨の通知が送達され
た後 3 ヶ月内に。
三、特許主務官庁の拒絶理由について意見書の提出を通知された期間内に。
四、再審査の申請と同時に、又は再審査の理由書を補充できる期間内に。
前三項によりなされる補充・修正は元の出願明細書又は図形の範囲を超えることができない。
第 2 項、第 3 項の期間は、優先権が付与されたときは優先権日の次の日から起算する。
第 50 条
発明について審査した結果、国家の安全に影響するおそれがあるときは、その明細書を国防部
又は国家安全関係機構に提示して意見を聴取し、秘密保持の必要があると認められるときは、
その発明を公告せず、
出願書類は封じて保存し、閲覧に供せず、並びに査定書を作成して出願人、代理人及び発明者
に送達する。
出願人、代理人及び発明者は、前項の発明に対して、秘密を保持しなければならない。違反し
たものは、その特許出願権を放棄したものと見なす。
秘密保持の期間は、査定書を出願人に送達した日から一年間とし、毎回一年、引き続き秘密保
持期間を延長することができる。期間満了一ヶ月前に特許主務官庁は国防部又は国家安全関係
機構に問合わせ、秘密保持の必要がないものは、直ちに公告しなければならない。
秘密保持期間に、出願人が受けた損失について、政府はそれ相当の補償を与えなければならな
い。
第4節 特許権
第 51 条
特許出願をした発明が査定を経て許可されたときは、出願人は査定書の送達翌日から 3 ヶ月以
内に証書料及び第一年目の年金を納付した後公告し、期限以内に納付しない者は公告にせず、
その特許権は初めから存在しなかったものとみなす。
特許出願をした発明は公告の日から特許権を与え、証書を交付する。
特許権の存続期間は出願日より起算して20年をもって満了する。
第 52 条
医薬品、農薬品、又はその製造方法に係る特許権の実施について、その他の法律の規定により、
許可証を取得する必要がある場合において、その取得に出願の公告後二年以上の期間を要する
ときは、特許権者は特許権を一回に限り、2年から5年まで延長することを出願することができ
る。但し、延長を許可する期間は中央目的事業の主務官庁より許可証を取得するのに要した期
257
間を越えることができない。許可証の取得期間が5年を越える場合においても、その延長期間
は5年を限りとする。
前項の出願をするときは、証明書類を添付して、第 1 回許可証を取得した日から三ヶ月以内に
特許主務官庁に出願書を提出しなければならない。但し、特許権存続期間満了前六ヵ月以内は、
これをすることができない。
主務官庁は、前項の出願について、延長期間の決定にあたり、国民の健康に対する影響を考慮
し、且つ中央目的事業の所管機関と協議のうえ審査の方法を制定しなければならない。
第 53 条
特許主務官庁は、特許権の延長登録出願について、特許審査人員を指定して審査させたうえ、
査定書を作成して特許権者又はその代理人に送達しなければならない。
第 54 条
何人も許可された特許権の存続期間の延長について、次に掲げる事由の一に該当すると認める
ときは、証拠を添付して、特許主務官庁に対して無効審判を請求することができる。
一、発明特許の実施について許可証を取得する必要がないとき。
二、特許権者又は実施権者が許可証を取得していないとき。
三、延長を許可された期間が実施をすることができなかった期間を越えているとき。
四、特許権存続期間延長登録の出願人は特許権者でないとき。
五、特許権が共有であって、共有者全員の名義による出願ではないとき。
六、許可証の取得において承認された外国での試験期間に基づいて特許権の延長登録を出願し
た場合において、許可された期間がその外国の特許主務官庁の許可した期間を越えている
とき。
七、許可証取得に要する期間が2年未満のとき。
特許権の延長に対する無効審判について、無効にすべき旨の審決が確定したときは、延長を許
可された期間は初めから存在しなかったものとみなす。但し、第 1 項第 3 号、第 6 号の規定の
違反に対する無効審判について無効にすべき旨の決定が確定したときは、当該超過期間につい
て、その延長がされなかったものとみなす。
第 55 条
特許主務官庁は前条第 1 項各号の一に該当すると認めるときは、職権により延長した特許権の
期間を取消すことができる。
特許権の延長を取消すべき旨の審決が確定したときは、その許可された延長期間は初めから存
在しなかったものとみなす。但し、前条第 1 項第 3 号、第 6 号の規定に違反する場合において、
取消すべき旨の決定が確定したときは、当該超過した期間について、その延長がされなかった
ものとみなす。
第 56 条
物の特許権者は、本法に別段の定めがある場合を除き、その同意を得ないで、他人がその特許
製品の製造又は販売の為の申出、又は販売、使用若しくは上記の目的のための輸入等の行為を
排除する権利を専有する。
方法の特許権者は、本法に別段の定めがある場合を除き、他人がその同意を得ないでその方法
の使用及びその方法で直接製造された物品の使用、又は販売の為の申出、又は販売若しくは上
記の目的のため輸入する等の行為を排除する権利を専有する。
特許権の範囲は、明細書に記載された特許請求範囲を基準とする。特許請求範囲を解釈すると
きは、発明説明及び図面を参酌することができる。
第 57 条
特許権の効力は次の各号に及ばない。
一、研究、教学、或いは実験のため、その発明を実施し、営利行為に属しないもの。
二、出願前、既に国内で使用されていたもの、又は既に必要な準備を完了したもの。但し、出
願前の六ヵ月以内に特許出願人よりその製造方法を知悉し、並びに特許出願人がその特許
権を留保する旨の表明があったときはこの限りでない。
三、出願前、既に国内に存在していた物。
四、単に国境を通過するに過ぎない交通機関又はその装置。
五、特許出願権者でない者が受けた特許権が特許権者の審判請求のため無効にされたときは、
258
その実施権者が無効審判請求前に善意で国内にて使用し、又は既に必要な準備を完了した
もの。
六、特許権者が製造し、又はその同意を得て製造された特許の物の販売後に、当該物品物を使
用し、又は再販売する行為。上記の製造、販売行為は国内に限らない。
前項第 2 号及び第 5 号の使用者は、その元来の事業においてのみ引き続いて利用することがで
きる。第 6 号の販売をすることができる区域は、裁判所が事実に基づいてこれを認定する。
第 1 項第 5 号の実施権者は実施許諾に係る特許権が無効審判により取り消された後、なお実施
を継続するときは、特許権者の書面通知を受け取った日から、特許権者に対して合理的な実施
料を支払わなければならない。
第 58 条
二種類以上の医薬品を混合して製造した医薬品、若しくは方法は、その特許権の効力は医師の
処方箋又は処方箋により調剤される医薬品に及ばない。
第 59 条
特許権者はその発明に係る特許権を他人に譲渡し、信託し、又は実施を許諾する又は質権を設
定するときは、特許主務官庁に登録しなければ、第三者に対抗することができない。
第 60 条
特許権の譲渡又は実施許諾について、契約に次の事由の一に該当する約定があることにより、
不正競争が生じたときは、その約定は無効とする。
一、譲受人に対し、特定の物品、又は譲渡人若しくは許諾者でない者が提供する方法を使用す
ることを禁止又は制限するもの。
二、譲受人に対し、譲渡人より特許による保護を受けない製品又は原料の購入を要求するもの。
第 61 条
特許権が共有であるときは、共有者自身が実施する以外は、共有者全員の同意を得ないで譲渡
又は他人に実施を許諾することができない。但し、契約に別に約定があるときは、その約定に
従う。
第 62 条
特許権の各共有者は他の共有者の同意を得なければ、その持分を他人に譲渡し、信託し又はそ
の持分を目的として質権を設定することができない。
第 63 条
特許権者が台湾と外国の間に発生した戦争により損失を蒙ったときは、一回に限り、5年以上
10年以下特許権の存続期間の更新を出願することができる。但し、交戦国の国民に属する特許
権は更新を出願することができない。
第 64 条
特許権者が明細書又は図面の補正を出願するときは、次に掲げる事項についてのみこれをする
ことができる。
一、特許請求の範囲の減縮。
二、誤記事項の訂正。
三、明瞭でない記載の釈明。
前項の補正について、元の明細書及び図面に掲載する範囲を超えてはいけなく、且つ実質拡大
又は特許請求の範囲の変更もできない。
特許主務官庁が上述の更正許可をした後、その事由特許公報に掲載しなければならない。
明細書、図面が補正され、公告されたときは出願日に溯って効力を生じる。
第 65 条
特許権者は、実施権者又は質権者の同意を得ないで、特許権を放棄し又は前条の出願をするこ
とができない。
第 66 条
次に掲げる事項の一に該当するときは、特許権は当然消滅する。
259
一、特許権の存続期間が満了したときは、その満了の次の日から消滅する。
二、特許権は、特許権者が死亡し、相続人であることを主張する者がないときは、民法第 1185
条の規定により国庫に帰属する日から消滅する。
三、追納期間の満了までに第 2 年以降の特許料の納付がないときは、原納付期間の満了の次の
日から消滅する。但し、第 17 条第 2 項の規定により原状に回復したものはこの限りでな
い。
四、特許権者が権利の放棄をするときは、書面にその旨が表示された日から消滅する。
第一年の特許料及び証書費が追納期限の満了までに納付されないときは、その特許権は始
めから存在しない。
第 67 条
次の各号の一に該当するときは、特許主務官庁は摘発又は職権によりその特許権を取消し、並
びに期間を限定して証書を返還させなければならない。返還されなかったときは、証書を取消
す旨の公告をしなければならない。
一、第12条第1項、第21条から第24条まで、第26条、第31条又は第49条第4項の規定に違反する
とき。
二、特許権者の所属国家は台湾の国民の特許出願を受理しないとき。
三、特許権者が特許出願権者でないとき。
第12条第1項又は前項第3号の規定に違反する事情により摘発するのは利害関係者に限るが、そ
の他の事情の場合、何人も証拠を付した上、特許主務官庁に摘発することができる。
摘発人は理由及び証拠の補足は摘発から30日以内にするべき。但し、無効審判審決前に提示さ
れたものは、斟酌すべきである。
摘発は審査を経て不成立とされたときは何人も同一の事実及び同一の証拠をもって再び摘発
ができない。
第 68 条
利害関係者が特許権の取消しにより回復されるべき法律上の利益があるときは、特許権の存続
期間満了後、又は当然消滅後においても、特許無効の審判を請求することができる。
第 69 条
特許主務官庁は摘発文を受け取った後、摘発文の副本を特許権利者に送付する。権利者は副本
が到着後 1 ヶ月内に質問に応じなければならない。先ず期限の延期を与えた者が釈明する外に
当日釈明に応じない者は審査を行う。
(新設)
第 70 条
特許主務官庁は摘発に関して審査を行う際、以前に原案の特許審査を行っていない審査員を指
定しなければならない。査定書を作成し特許権利者及び摘発人に送付する。
(新設)
第 71 条
特許主務官庁は摘発に関して審査を行う際、出願或いは職権により特許権利者に以下の各項の
行為の期限を通知しなければならない。
一、特許主務官庁まで直接問い合わせる。
二、必要な実験の模型或いはサンプルを補う。
三、第 64 条第 1 項及び第 2 条の規定により、実験、模型或いはサンプルを補う前項第 2 号の
更正をする。
特許主務官庁は必要な時、現場或いは指定場所で検証を実施することができる。
第 1 項第 3 号の規定によって特許明細書又は図面の補正をすることがある時、主務官庁は無効
審判申立人にそれを通知すべきである。
(新設)
第 72 条
第 54 条、発明特許権の延長の摘発するところにより、第 67 条第 3 項、第 4 項及び前 4 条規定
を以って許可する。
(新設)
260
第 73 条
特許権が取消された後、次の各号の一に該当するときは、取消しが確定したものとする。
一、法により行政救済を提起しなかったとき。
二、行政救済を提起し、却下の決定が確定したとき。
特許権の取消が確定したときは、特許権の効力は初めから存在しなかったものとみなす。
第 74 条
特許主務官庁は、発明に係る特許権の付与、変更、延長、譲渡、信託、実施許諾、特許の実施、
取消し、消滅、質権の設定及びその他公告すべき事項を特許公報に掲載しなければならない。
第 75 条
特許主務官庁は特許原簿を備え置き、付与した特許、特許権の異動及びその他特許に関する権
利及び法令に規定するすべての事項を記載しなければならない。
前項の特許原簿は電子方式にすることができ、国民の閲覧、抄録、撮影、若しくはコピーに供
しなければならない
第5節
実施
第 76 条
国家の緊急事態に対応し、若しくは公益を増進するための非営利目的の使用又は出願者が合理
的商業条件を提示したにもかかわらず、相当期間内に実施許諾について協議が達成できなかっ
た場合、特許主務官庁は請求により、当該出願者に特許権の強制実施を許可することができる。
その実施は国内市場の需要に供給することを主としなければならない。但し、半導体技術に係
る特許について強制実施許諾を出願するときは公益の増進を目的とする非営利的使用に限る。
特許権者が競争制限又は不公正競争の事情により、裁判所の判決を経て、又は行政院公平交易
委員会の処分が確定したときは、前項の事由がない場合であっても、特許主務官庁は請求によ
り、当該出願者に特許権の強制実施を許可することができる。
特許主務官庁が強制実施の請求書を受理した後、当該請求書の副本をその請求に係る特許権者
に送達し、3 ヶ月以内に答弁をさせなければならない。期限内に答弁しなかったときは、直ち
にこれを処理することができる。
特許権の強制実施は他人が同一の発明に係る特許権について実施権を取得することを妨げな
い。
強制実施権者は特許権者に適当な補償金を支払わなければならない。争議があるときは、特許
主務官庁がこれを裁定する。
強制実施権は強制実施に関する営業と共に移転し、譲渡し、信託し、相続し、許諾し又は質権
の設定をしなければならない。
強制実施の原因が消滅したときは、特許主務官庁は請求により強制実施を廃棄させることがで
きる。
第 77 条
特許権の強制実施は他人が同一の発明に係る特許権について実施権を取得することを妨げな
い。
強制実施権者は特許権者に適当な補償金を支払わなければならない。争議があるときは、特許
主務官庁がこれを裁定する。
強制実施権は強制実施に関する営業と共に移転し、譲渡し、信託し、相続し、許諾し又は質権
の設定をしなければならない。
強制実施の原因が消滅したときは、特許主務官庁は請求により強制実施を廃棄させることがで
きる。
第 78 条
再発明は他人の発明を利用する又は実用新案の主要技術内容に基づき完成した発明を指す。
特許権者は元特許権者の同意を得なければ、その発明を実施することができない。
製造方法の特許権者がその製造方法により製造した物が、他人の特許に係るものであるときは、
その他人の同意を得なければ、当該発明を実施することができない。
261
前二項の再発明の特許権者と元発明の特許権者、又は製造方法の特許権者と物の特許権者は協
議により交互に実施許諾をすることができる。
前項の協議が成立しない場合において、再発明の特許権者及び元発明の特許権者又は製造方法
の特許権者及び物の特許権者は、第76条により強制実施を出願することができる。但し、再発
明又は製造方法の発明に表現された技術については、元発明又は物の発明より、相当な経済的
意義を有する重要な技術上の改良に限って、強制実施を出願することができる。
再発明の特許権者又は製造方法の特許権者が取得した強制実施権は、その特許権と共に譲渡し、
信託し、相続し、実施を許諾し又は質権の設定をしなければならない。
第 79 条
特許権者は、特許に係る物品又はその包装に特許証書の番号を表示しなければならない。実施
権者又は強制実施権者にも表示を要求することができる。表示しなかった者は損害賠償を請求
することができない。但し、権利侵害者が特許に関わる物品であることを知っていて、又はそ
れを知り得ることを証明するに足りる事実があるときはこの限りでない。
第6節
料金の納付
第 80 条
発明特許に関する各出願について、出願人は出願をするときに、出願手数料を納付しなければ
ならない。
特許を付与された者は、特許権者は証書費及び特許料を納付しなければならない。特許の延長、
更新を許可されたときは、延長又は更新の期間内においても、なお特許料を納付しなければな
らない。
出願の手数料、証書費及び特許料の金額は経済部がこれを定める。
第 81 条
特許料は公告の日から起算する。第1年分は、第51条第1項の規定によって納付しなければなら
ず、第2年以降の各年分は期限満了までに納付しなければならない。
前項の特許料は、数年分を一括して納付することができ、特許料の調整があったときは、その
差額の追納を要しない。
第 82 条
第2年以上の特許料は、納付期限内に納付しなかったときは、期間満了の日から6ヶ月以内に追
納することができる。但し、その特許料は料金の一倍を加算して納付しなければならない。
第 83 条
特許権者は自然人、学校又は中小企業者のときは、特許主務官庁に対して特許料の減免を出願
することができる。減免の取扱条件、年限、金額及びその他の従うべき規則は主管官庁がこれ
を定める。
第7節
損害賠償及び訴訟
第 84 条
特許権が侵害を受けたときは、特許権者は損害賠償を請求することができ、並びにその侵害を
排除することも請求できる。侵害のおそれがあるときは、それを防止することを請求すること
ができる。
専属実施権者も前項の請求をすることができる。但し、契約に他の約定がある場合はその約定
に従う。
発明の特許権者又は専属実施権者が前二項の規定により請求をするときは、特許権の侵害に係
る物品又は侵害行為に係る原料若しくは器具について、廃棄又はその他必要な処置を請求する
ことができる。
発明者の氏名表示権が侵害を受けたときは、発明者氏名の表示、又はその他名誉回復に必要処
分を請求することができる。
本条に定める請求権は、請求権者が行為及び賠償義務者を知ったときから二年間、行使しない
ときに消滅する。行為があったときから10年間を超えたものも同様とする。
262
第 85 条
前条の規定により、損害賠償を請求するときは、次の各号の一を選んでその損害を算定するこ
とができる。
一、民法第216条の規定による。但し、証拠方法を提供してその損害を証明することができな
いときは、特許権者はその特許権を実施して通常得られる利益より、損害を受けた後に同
一特許権を実施して得られる利益を差引いた差額をその受けた損害の額とする。
二、侵害者が侵害行為によって得た利益による。侵害者がそのコスト、又は必要な経費につい
て立証できないときは、当該物品を販売して得た収入の全部をその所得利益とする。
前項規定のほか、特許権者の業務上の信用が侵害行為により減損されたときは、別途相当
金額の賠償を請求することができる。
前二項の規定により侵害行為が故意になされたときは、裁判所は侵害の状況を斟酌して損害額
以上の賠償額を決定することができる。但し、損害額の三倍を超えることはできない。
第 86 条
他人の特許権を侵害するために使用された物、又はその行為により生じた物については、侵害
された者の請求により、仮差押えをし、賠償の判決があった後に、賠償金の全部又は一部にこ
れを充当することができる。
当事者が前条の起訴及び本条の仮差押えの申立をしたときは、裁判所は民事訴訟法の規定によ
り訴訟による救済を許可しなければならない。
第 87 条
製造方法に係る特許により製造された物品が、その製造方法の特許出願前に国内外において発
見されなかったものであるときは、他人が製造した同一物品はその方法特許によって製造され
たものと推定する。
前項の推定は、反証を提出してそれを翻すことができる。被告が当該同一物品の製造に使用さ
れた方法は製造方法特許と異なることを立証したときは、反証が提出されたものとする。被告
が立証する際に掲示される製造上及び営業上の秘密の合法的権益は、十分に保障されなければ
ならない。
第 88 条
発明特許に係る訴訟案件について、裁判所は判決書の正本を一部特許主務官庁に送付しなけれ
ばならない。
第 89 条
被侵害者は、勝訴判決が確定した後、裁判所に対して敗訴者の費用負担において判決書の全部
又は一部を新聞紙に掲載するよう裁定の申立をすることができる。
第 90 条
特許権に関する民事訴訟は、出願案、無効審判の請求、取消の請求が確定するまで裁判を停止
させることができる。
裁判所は前項の規定によって審判停止を裁定するときは、無効審判提出の正当性に注意しなけ
ればならない。
侵権訴訟の審理に関わる無効審判は主務官庁はそれを優先として審査することができる。
第 91 条
認許を経ていない外国法人又は団体は、本法が規定する事項については民事訴訟を提起するこ
とができる。但し、条約又はその本国の法令、慣例により、台湾国民又は団体が同国において
同等な権利を受けられる場合に限る。団体又は機構が相互に特許を保護する協議を取り決めて
おり、主管官庁の許可を受けた場合も同様とする。
第 92 条
裁判所は、発明特許に係る訴訟案件を処理するために専門の法廷を設け、又は専門の担当者を
指定して処理させることができる。
司法院は特許侵害鑑定の専門機構を指定することができる。
裁判所は発明特許訴訟案件を受理するときは、前項の機構を嘱託して鑑定させることができる。
263
第三章
実用新案
第 93 条
実用新案とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち、物品の形状、構造又は装置に関
するものをいう。
第 94 条
産業上利用することのできる実用新案であって、次に掲げる事項の一に該当しないものは、本
法により出願し、実用新案登録を受けることができる。
一、出願前に既に刊行物に記載され、又は公然実施をされたもの。
二、出願前に既に公衆に周知されたもの。
実用新案は下記の事由により前項に掲げる各号の場合に該当し、またその事実が発生した日か
ら6ヶ月以内に出願をするときは、前項各号に規定する制限を受けない。
一、研究、実験のためであった場合。
二、政府が主催し又は認可した展覧会に陳列した場合。
三、出願人の本意から漏えいしたものでない場合。
出願人が前項第1号、第2号の事由を主張するときは、出願時に事実を年月日を記して疎明し、
かつ特許主務官庁が指定した期間内に証明書類を提出しなければならない。
実用新案は、第一項に掲げる事由がない場合でも、その属する技術分野における通常の知識を
有する者が出願前の先行技術に基づいて、容易に完成することができたときは、本法により出
願し実用新案登録を受けることができない。
第 95 条
出願がなされようとする実用新案は、出願が先で公開又は公告がその出願より後の発明又は実
用新案に係る出願に添付された明細書又は図面に記載された内容と一致したときは、実用新案
権を取得することができない。但し、その出願人は、先に出願がなされた発明又は実用新案登
録出願の出願人と同一人物であるときは、この限りでない。
第 96 条
公の秩序、善良の風俗、又は衛生を害する実用新案については、実用新案登録を受けることが
できない。
第 97 条
実用新案登録出願に係る考案は、形式審査(訳注:日本の方式審査)を経て次の各号に掲げる
場合のいずれに該当するものと認めるときは、特許を付与しない処分にしなければならない。
一、物品の形状、構造又は装置に属しない。
二、前条規定に違反する。
三、第 108 条が準用する第 26 条第 1 項、第 4 項の形式(方式)の開示に関する規定に違反す
る。
四、第 108 条が準用する第 32 条規定に違反する。
五、説明書及び図面には必須事項が掲げられていない、又はその開示が明らかでない。
前項処分をする前に、期間を限定して意見の陳述又は明細書若しくは図面の補正をするよう出
願人に通知しなければならない。
(新設)
第 98 条
登録を受けようとする実用新案について、形式審査を経て前条規定に該当すると認めるときは、
理由を示した処分書を作成して、出願人又はその代理人に送達しなければならない。
(新設)
第 99 条
登録を受けようとする実用新案について、形式審査を経て第 97 条に規定する登録拒否事由に
該当しないと認めるときは、実用新案登録を認め、かつ実用新案請求の範囲及び図面を公告し
なければならない。
264
(新設)
第 100 条
出願人が明細書又は図面の補正を請求するときは、出願の日から 2 ヶ月以内にこれをしなけれ
ばならない。
前項による補正は、出願時の原明細書又は図面に掲げられた範囲を超えてはならない。
(新設)
第 101 条
登録を受けようとする実用新案は、出願人が登録を認められた処分書が送達された日から 3
ヶ月以内に証書代及び第 1 年目の特許料を納付するのをまって公告をする。納付期限を超えて
も納付しなかったものは公告をせず、その特許権は初めから存在しなかったものとする。
登録を受ける実用新案について、公告の日から実用新案権を付与し、証書を交付する。
実用新案権の存続期間は出願日から起算して10年をもって満了する。
第 102 条
特許又は意匠登録の出願をした後、これを変更して実用新案登録出願をし、又は実用新案登録
を出願した後、これを変更して特許出願をするときは、元の出願の出願日をその変更出願の出
願日とする。但し、元の出願の特許査定書、処分書の送達後、又は元の出願の拒絶査定書、処
分書の送達の日から60日を経過した後は、変更することができない。
第 103 条
登録を受ける実用新案が公告された後、何人も、第 94 条第 1 項第 1 号、第 2 号、第 4 号、第
95 条又は第 108 条が準用する第 31 条の規定について、特許所管機関に、実用新案の技術報告
を請求することができる。
特許所管機関は、前項実用新案の技術報告が請求された事実を特許公報に掲載しなければなら
ない。
特許所管機関は、第 1 号の請求について、特許審査官を指定して実用新案の技術報告を作成さ
せ、かつ報告書には審査官が署名しなければならない。
第 1 項の規定により実用新案の技術報告を請求するときは、実用新案権者でない者が商業目的
の実施をしていると説明し、かつ関連証明書類が添付してある場合は、特許所管機関は 6 ヶ月
以内に実用新案の技術報告を完成しなければならない。
実用新案についての技術報告請求は、実用新案権が当然消滅した後においても、これをするこ
とができる。
第 1 項規定によりなされた請求は、撤回することができない。
(新設)
第 104 条
実用新案権者が、実用新案権を行使するときは、実用新案の許技術報告を提示して警告しなけ
ればならない。
(新設)
第 105 条
実用新案権者の権利が取り消されたときは、その取消し前に実用新案権の行使により他人に与
えた損害については、賠償責任を負わなければならない。
前項の場合において、実用新案技術報告に基づき、又は相当の注意を払って権利行使をしたと
きは、無過失と推定する。
(新設)
第 106 条
実用新案権者は、本法に別段の定めがある場合を除き、他人がその同意を得ずに当該実用新案
に係る物品の製造、販売のための申出、販売、使用又は上記目的のための輸入の行為を排除す
る権利を専有する。
実用新案権の範囲は、明細書に記載された実用新案登録請求の範囲を基準とする。実用新案登
録請求の範囲を解釈するときは、創作説明書及び図面を参酌することもできる。
265
第 107 条
次の各号の一に該当するときは、特許所管機関は無効審判により、その実用新案権を取消し、
並びに期間を限定して証書を返還させなければならない。返還させることができなかったとき
は、取消す旨の公告をしなければならない。
一、第12条第1項、第93条から第96条まで、第100条第2項、第108条が準用する第26条、又は第
108条が準用の第31条の規定に違反するとき。
二、実用新案権者の属する国が台湾国民による実用新案登録出願について、受理しないとき。
三、実用新案権者が実用新案の出願権者でないとき。
第12条第1項の規定に違反し、又は前項第3号の事由があることにより、無効審判請求を請求す
る者は、利害関係人に限る。その他の事由については、何人も、証拠を添付して特許所管機関
に無効審判を請求することができる。
無効審判審決書には、特許審査官の署名がなければならない。
第 108 条
第25条から第29条まで、第31条から第34条まで、第35条第2項、第42条、第45条第2項、第50
条、第57条、第59条から第62条まで、第64条から第66条まで、第67条第3項、第4項、第68条か
ら第71条まで、第73条から第75条まで、第78条第1項、第2項、第4項、第79条から第86条まで、
第88条から第92条までの規定は、実用新案に準用する。
第四章
意匠
第 109 条
意匠とは物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美観を起こ
させる創作を指す。
類似意匠とは、同一の者がその本意匠に基づいて創作し、且つ当該意匠に類似するものを指す。
第 110 条
産業上利用できる意匠であって、次に掲げる場合の一に該当しないものは、本法により出願を
して意匠登録を受けることができる。
一、出願前に同一又は類似の意匠がすでに刊行物に掲載され、又は公然使用されたもの。
二、出願前に公衆に知られているもの。
下記事情の一つがあることにより、前項各号の事情が生じた場合、その事実が発生した日から
6 ヵ月以内に出願したものは、前項各号規定の制限を受けない:
一、政府が主催し又は認可した展覧会に陳列されたもの。
二、出願人の本意に反して漏洩されたもの。
出願人が前項第 1 号の事情を主張するときは、出願時に事実及びその年、月、日を明記し、特
許主務官庁が指定した期間内に証明書類を添付しなければならない。
意匠は、第 1 項の事情がないにもかかわれず、その属する技芸分野における通常の知識を有す
る者が出願前の以前の技芸により容易に考え付いたものであるときは、本法により出願をして
意匠登録を受けることができない。
同一の者が類似の意匠について登録出願をするときは、類似意匠の登録出願をすべきであり、
第1項及び前項規定の制限を受けない。但し、本意匠の登録出願前にすでに類似意匠と同一又
は類似の意匠が刊行物に掲載され、公然使用され又は公衆に知られているときは、本法により
類似意匠の出願をし、意匠登録を受けることができない。
同一の者は類似意匠に類似する意匠について類似意匠の出願をし、登録を受けることができな
い。
第 111 条
意匠登録出願に係る意匠が、出願がこれより先で、公告がこれより後の意匠登録出願に添付さ
れた図面説明の内容と同一、又は類似であるきは、意匠登録を受けることができない。但し、
その出願人と先に出願した意匠登録出願の出願人が同一人物であるときはこの限りでない。
第 112 条
次の各号に該当するものは意匠登録を受けることができない。
一、純機能的設計の物品造形。
266
二、純粋なる芸術創作又は美術工芸品。
三、集積回路の回路配置及び電子回路の回路配置(レイアウト)。
四、物品が公共の秩序、善良の風俗、又は衛生を害するもの。
五、物品が党旗、国旗、国父の肖像、国の紋章、軍旗、印章、勲章と同一又は類似であるもの。
第 113 条
出願した意匠が査定された後、出願人は査定書の送達後 3 ヵ月以内に証書費及び一年分の登録
料を納付しなければならず、それで始めて公告される。期限内に納付しないときは、公告され
ず、その意匠権は初めから存在しなかったものとする。
出願意匠は公告の日から意匠権を付与し、証書を交付する。
意匠権の存続期間は、出願日より起算して 12 年をもって満了する。類似意匠の存続期間は本
意匠の存続期間と同時に満了する。
第 114 条
特許又は実用新案登録を出願した後に、これを意匠登録出願に変更するときは、もとの出願の
出願日を変更出願の出願日とする。但し、もとの出願を認可した査定書、処分書が送達された
後、又はもとの出願を拒絶した査定書、処分書が送達された日から60日を経過した後は変更す
ることができない。
第 115 条
独立の意匠登録を出願した後に、これを類似意匠の登録出願に変更するとき、又は類似意匠の
登録出願をした後に、これを独立意匠の登録出願に変更するときは、もとの出願の出願日を変
更出願の出願日とする。但し、もとの出願を認可した査定書が送達された後、又はもとの出願
を拒絶した査定書が送達された日から60日を経過した後は変更することができない。
第 116 条
意匠登録出願は出願権者が願書、図面説明書を備えて、特許主務官庁に提出しなければならな
い。
出願権者が雇用者、譲受人又は相続人であるときは、創作者の氏名を明記し、雇用、譲受又は
相続の証明書類を添付しなければならない。
意匠の登録出願は願書、図面説明書が完備した日を出願日とする。
前項の図面説明書を外国語書面で提出し、且つ特許主務官庁が指定した期間に中国語の翻訳文
を補正したときは、外国語書面の提出日を出願日とする。指定期間内に補正しなかったときは、
出願を受理しない。
但し、処分前に補正したときは、補正日を出願日とする。
第 117 条
前条の図面説明書は意匠に係る物品の名称、創作説明、図面説明及び図面を記載しなければな
らない。図面説明書は明確で十分に内容を表していなければならず、当該意匠の属する技芸分
野における通常の知識を有する者がその内容を理解でき、それに基づいて実施することができ
なければならない。
意匠の図面説明方法は本法の施行細則で定める。
(新設)
第 118 条
同一又は類似の意匠について二以上の意匠登録出願があったときは、最先の意匠登録出願人の
みがその意匠について意匠登録を受けることができる。但し、後から出願した者が主張する優
先権日が先に出願した者の出願日より早いときはこの限りでない。
前項の出願日、優先権日が同日であるときは、協議のうえ決めるように出願人に通知しなけれ
ばならず、協議が成立しないときは、いずれも意匠登録を受けることができない。その出願人
が同一人物であるときは、期限を定めて択一出願することを出願人に通知し、期限内に択一出
願しなかったときは、いずれも意匠登録を受けることができない。
各出願人が協議をするとき、特許主務官庁は相当の期間を指定して協議結果を届け出る旨を出
願人に通知しなければならず、期限内に届出がないときは、協議が成立しなかったものとみな
す。
(新設)
267
第 119 条
意匠登録出願は意匠ごとにしなければならない。
意匠登録の出願には、意匠を施す物品を指定しなければならない。
第 120 条
意匠登録出願が第 109 条から第 112 条まで、第 117 条、第 118 条、第 119 条第 1 項又は第 122
条第 3 項の規定に違反するときは、拒絶査定をしなければならない。
(新設)
第 121 条
出願した意匠を審査して、拒絶の理由がないと認めたときは、意匠を付与して図面を公告しな
ければならない。
(新設)
第 122 条
特許主務官庁は意匠を審査するとき、申請又は職権により、期間を指定して、下記各号の行
為をすることを出願人に通知することができる。
一、特許主務官庁に出向いて、面接を受ける。
二、模型又は見本を補足する。
三、図面説明を補充、修正する。
前項第2号の模型又は見本の補足は、特許主務官庁が必要なときに現場又は指定場所へ行って
検証をすることができる。
第1項第3号の補充、修正は、出願時の原図面説明の範囲を越えてはならない。
第五章
罰則
第 123 条
意匠権者は意匠を施すことを指定した物品について、本法に別段の定めがある場合を除き、他
人がその同意を得ずに、当該意匠に係る物品及びそれに類似した物品の製造、その販売のため
の申出又は販売、使用若しくは上記目的のための輸入等の行為排除する権利を専有する。
意匠権の権利範囲は図面を基準とし、創作説明書を斟酌することができる。
第 124 条
類似意匠に係る意匠権は、本意匠権に従属し、単独で主張することはできず、且つ類似する範
囲にも及ばない。
本意匠権が取消され、又は消滅したときは、類似意匠に係る意匠権も共に取消され、又は消滅
する。
第 125 条
意匠権の効力は次の各号に掲げる事項には及ばない。
一、研究、教学又は試験のために意匠を実施し、営利行為ではないもの。
二、出願前にすでに国内で使用され、又は必要な準備を完了させたもの。但し、出願する 6
ヵ月以内に出願人のところでその意匠を知ることができ、出願人がその意匠権の留保を声
明したときはこの限りでない。
三、出願前に国内に存在した物品。
四、単に国境を通過するにすぎない交通機関、又はその装置。
五、意匠登録出願権者でない者が登録を受けた意匠権が、意匠権者の無効審判請求により取消
された時、その実施権者が無効審判前に善意で国内において使用し、又は必要な準備を完
了したもの。
六、意匠権者が製造し、又はその同意を得て製造した意匠に係る物品の販売後、当該物品を使
用し、又は再販売する行為。上記の製造、販売は国内に限らない。
前項第 2 号及び第 5 号の使用者は、その既存の事業範囲内に限って利用を継続することができ
る。第 6 号の販売できる区域は裁判所が事実に基づいて認定する。
第 1 項第 5 号の実施権者は、当該意匠権が無効審判により取消された後も依然として実施して
268
いたときは、意匠権者の書面通知を受け取った日から、意匠権者に合理的な実施料を支払わな
ければならない。
第 126 条
意匠権者は、意匠を施すことを指定した物品について、その意匠権を他人に譲渡し、信託し、
実施許諾し、又は質権を設定することができ、特許主務官庁に登録しなければ、第三者に対抗
することができない。但し、類似意匠に係る権利は単独で譲渡、信託、実施許諾、又は質権の
設定をすることができない。
第 127 条
意匠権者は、意匠の図面説明に対し、誤記又は不明瞭な事項についてのみ特許主務官庁に補
正を申請することができる。
特許主務官庁は補正を許可した後、その事由を特許公報に掲載しなければならない。
図面説明は補正、公告された後、出願日に遡って効力を生じる。
第 128 条
次に掲げる各号の一に該当するときは、特許主務官庁は無効審判又は職権により、その意匠権
を取消し、期間を限定して証書を返還させなければならない。返還されなかったときは、取消
す旨の公告をしなければならない。
一、第 12 条第 1 項、第 109 条から第 112 条まで、第 117 条、第 118 条又は第 122 条第 3 項の
規定に違反するとき。
二、意匠権者の属する国が台湾国民の意匠登録出願を受理しないとき。
三、意匠権者が意匠登録出願権者でないとき。
第12条第1項の規定に違反し、又は前項第3号の事由があることにより、無効審判を提起する者
は、利害関係人に限られる。その他の事由は、何人でも証拠を添付すれば、特許主務官庁に無
効審判を提起することができる。
第 129 条
第 27 条、第 28 条、第 33 条から第 35 条まで、第 42 条、第 43 条、第 45 条第 2 項、第 46 条、
第 47 条、第 60 条から第 62 条まで、第 65 条、第 66 条、第 67 条第 3 項、第 4 項、第 68 条か
ら第 71 条まで、第 73 条から第 75 条まで、第 79 条から第 86 条まで、第 88 条から第 92 条ま
での規定は、意匠において準用する。
第27条第1項に定める期間は意匠権においては6ヵ月とする。
第六章
附則
第 130 条
特許の出願書類、明細書、図式及び図面説明は、特許主務官庁が永久に保存し、その他の書類
は、少なくとも30年間保存しなければならない。
前項の特許書類は、マイクロフィルム、磁気ディスク、磁気テープ、光ディスクで保存するこ
とができる。保存記録は、特許主務官庁が確認した後は、原書類と同一とみなし、原紙面書類
は焼却することができる。保存記録の複製物は特許主務官庁が確認した後は、真正のものと推
定する。
前項代替物の確認、管理、及び使用規則は主務官庁が定める。
第 131 条
主務官庁は、発明、創作を奨励するために奨励補助方法を制定なことができる。
第 132 条
1994 年 1 月 23 日以前に提出された出願は、第 52 条の規定により、存続期間の延長登録を出
願することができない。
第 133 条
2001年10月24日の本法改正施行前に提出された追加特許出願は審査が確定していないとき、又
はその追加特許権が存続しているときは、改正前の追加特許関連規定に従って処理する。
269
第 134 条
1994年1月21日の本法改正施行前に査定公告された特許権の存続期間は、改正施行前の規定を
適用する。但し、世界貿易機関協定が台湾管轄区域内で発効した日に、特許権が存続している
ときは、その存続期間は改正施行後の規定を適用する。
西暦2003年1月3日の本法改正施行前に査定公告された実用新案権の存続期間は改正施行前の
規定を適用する。
意匠に関し、世界貿易機関協定が台湾管轄区域内で発効した日に、意匠権が存続しているとき
は、その存続期間は1997年5月7日の本法改正施行後の規定を適用する。
第 135 条
西暦 2003 年 1 月 3 日の本法改正施行前に査定していない特許出願は、改正施行後の規定を適
用する。
(新設)
第 136 条
西暦 2003 年 1 月 3 日の本法改正施行前に提出した異議申立は、改正施行前の規定を適用する。
西暦 2003 年 1 月 3 日の本法改正施行前に査定公告された特許出願は、改正施行後も改正施行
前の規定に従って異議申立を提起できる。
(新設)
第 137 条
本法の施行細則は主務官庁が定める。
第 138 条
本法の施行期日は第 11 条が公布日に施行開始となる他、行政院がそれを定める。
270
商
標
法
2003 年年 5 月 28 日公布
2003 年 11 月 28 日施行
第一章
総則
第1条
商標権及び消費者の利益を保障し、市場の公正な競争秩序を維持し、商工企業の健全な発展を
促進するために、この法律を制定する。
第2条
自己の商品又は役務であることを表彰するために商標権を取得しようとするものは、本法によ
り登録出願しなければならない。
第3条
外国人の属する国が、台湾と商標の保護に関する相互条約又は協定を締結しておらず、又はそ
の本国の法令において台湾の国民に対して登録出願を受理しない場合は、その商標登録出願を
受理しないことができる。
第4条
台湾と優先権を相互に承認する関係にある国において、法により商標登録を出願し、その出願
人が最初の出願日の翌日から 6 ヶ月以内に台湾へ登録出願したときは、優先権を主張すること
ができる。
前項の規定により優先権を主張するものは、登録出願と同時にその旨を声明し、願書において
当該外国における出願日及び出願受理国を明記しなければならない。
出願人は、出願日の翌日から 3 ヶ月以内に、当該外国政府が出願を受理した証明書を提出しな
ければならない。
前 2 項の規定に反するときは、当該優先権を喪失する。
優先権を主張するときは、優先日をその登録出願日とする。
第5条
商標は、文字、図形、記号、色彩、音声、立体形状又はその組み合わせにより構成することが
できる。
前項の商標とは、商品又は役務に関連する消費者が商品又は役務の標識を示すものであること
を認識するに足り、他人の商品又は役務と区別できるものでなければならない。
第6条
この法律で商標の使用とは、販売を目的として、商標を商品、役務又はその関連物に用い、又
は平面図形、デジタル映像音声、電子媒体又はその他の媒体に利用され、関連する消費者に商
標として認識されるに足ることをいう。
第7条
この法律で主務官庁は経済部とする。 商標業務は、経済部により指定された専属の責任機関
がこれを処理する。
第8条
商標出願及び商標に関する手続業務については、商標代理人にその業務を委任することができ
る。但し、台湾国内に住所又は営業所を有しないものは、商標代理人にその業務を委任しなけ
ればならない。
商標代理人は国内に住所を有さなければならない。その専属の事業者は、法律が別途規定する
場合を除き、商標師に限る。商標師の資格及び管理については、法律により定められる。
第9条
出願人が行う商標出願及びその他の手続が法定期間を徒過し、法定の方式に違反し補正できず、
又は法定の方式に違反し通知された補正期間内に補正を行わないときは、商標出願を却下しな
ければならない。
出願人が天災又は自己の責任に帰すことのできない事由により法定期間を徒過したときは、そ
271
の原因が消滅した後 30 日以内に書面を以って詳細な理由を記述し、商標専属責任機関へ原状
回復の申請を提出することができる。但し、法定期間を徒過し既に一年を過ぎているときはこ
の限りでない。
原状回復の申請を行うと同時に、徒過した手続きを追完しなければならない。
第 10 条
商標出願及びその他の手続きは、当該書類又は物件が商標専属責任機関に到達した日を基準と
する。郵送の場合は、差出地の郵政消印日を基準とする。
消印日が判読しがたいときは、当事者が挙証する場合を除き、商標専属責任機関に到達した日
を基準とする。
第 11 条
商標登録及び商標に関するその他の出願については、政府料金を納付しなければならない。
商標に関する政府料金の額は、主務官庁が命令によりこれを定める。
第 12 条
商標専属責任機関は公報を刊行し、登録商標及びその関連事項を掲載しなければならない。
第 13 条
商標専属責任機関は商標登録原簿を備え付け、商標登録、商標権の変動及び法令が定める一切
の事項を記載し、対外的に公開しなければならない。
前項の商標登録原簿は、電子方式によることができる。
第 14 条
商標出願及びその他の手続きに関しては、電子方式により行うことができる。その実施日、出
願手続及びその他の遵守すべき事項については、主務官庁によりこれを定める。
第 15 条
商標専属責任機関は、商標登録出願、異議申立、無効審判及び廃止(取消)案件の審査に対して
は、審査官を指定しこれを審査させなければならない。
前項の審査官の資格は、法律を以ってこれを定める。
第 16 条
商標専属責任機関が前条第 1 項の案件の審査を行うときは、書面により処分書を作成し、併せ
て理由を記載して出願人(申立人、請求者)に送達しなければならない。
前項の処分書には、審査官の氏名を記載しなければならない。
第二章
登録出願
第 17 条
商標登録を出願する際、出願人は願書を準備し、商標を明記し、使用にかかる商品又は役務及
びその区分を指定し、商標専属責任機関へ出願しなければならない。
前項の商標は、視覚により感知できる図案で表示しなければならない。
商標登録の出願においては、願書に出願人、商標見本及び使用にかかる商品及び役務の指定を
明記し、願書を提出した日を出願日とする。
出願人は一の商標登録出願において、使用にかかる二以上の区分の商品又は役務を指定するこ
とができる。
商品又は役務の区分は、この法律の施行規則においてこれを定める。
類似商品又は役務の認定は、前項の商品又は役務の区分による制限を受けない。
第 18 条
二人以上の者がそれぞれ同日に同一又は類似の商標について、同一又は類似の商品又は役務に
登録出願を行い、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあり、出願の先後が識別で
きないときは、各出願人の協議によりこれを定める。協議が成立しないときは、抽選によりこ
れを定める。
272
第 19 条
商標が説明的であり、又は識別性を具えない文字、図形、記号、色彩又は立体形状を含み、当
該部分を削除すれば商標の一体性を失う場合、出願人が当該部分について専用権の不主張を声
明したときは、当該商標を以って登録出願できる。
第 20 条
商標登録出願事項の変更は、商標専属責任機関へ申請し許可を得なければならない。
商標及びその使用にかかる指定商品又は役務は、出願後に変更することができない。但し、使
用にかかる指定商品又は役務の減縮についてはこの限りでない。
第 1 項の変更は、一商標ごとに各々申請しなければならない。但し、同一人が二以上の申請案
件を有し、その変更事項が同一であるときは、一件の変更案件に併合して変更申請することが
できる。
第 21 条
出願人は、商標専属責任機関へ使用にかかる指定商品又は役務を二以上の出願に分割すること
ができ、分割後の出願日は原出願日とする。
第 22 条
商標登録の出願により生じた権利は、他人に移転することができる。 前項の権利を譲り受け
た者は、原出願人の名義変更の許可を受けなければ、第三者に対抗することができない。
第三章
審査及び査定
第 23 条
商標が次に掲げる情況の一に該当するときは、登録を受けることができない
一、第 5 条の規定に該当しないもの
二、商品又は役務の形状、品質、効能又はその他説明的なもの
三、指定商品又は役務の一般的標章又は名称であるもの
四、商品又は包装の立体的形状がその機能性を発揮するために必要なもの
五、台湾の国旗、国章、国璽、軍旗、軍章、官印、勲章又は外国の国旗と同一又は類似のもの
六、国父又は国家元首の肖像又は氏名と同一のもの
七、台湾政府機関又は展覧性を有する集会の標章又はそれにより授与される褒章と同一又は類
似のもの
八、国際的に著名な組織又は国内外において著名な機構の名称、記章、徽章、又は標章と同一
又は類似のもの
九、認証標記又はその他国内外において同様の性質を有する認証標記と同一又は類似のもの
十、公共の秩序又は善良の風俗を害するもの
十一、商品又は役務の性質、品質又は産地について公衆に誤認、誤信を生じさせるおそれがあ
るもの
十二、他人の著名な商標又は標章と同一又は類似し、関連する公衆に誤認混同を 生じさせる
おそれがあり、又は著名商標又は標章の識別性又は信用・名声に損害を生じさせるおそれ
があるもの。但し、当該商標又は標章の所有者の同意を得て登録出願するときはこの限り
でない
十三、同一又は類似の商品又は役務における他人の登録商標又は先に出願された商標と同一又
は類似であり、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるもの。但し、当該登
録商標又は先に出願された商標の所有者の同意を得て出願するときは、互いの商標及び使
用にかかる指定商品又役務が共に同一である場合を除き、この限りでない
十四、同一又は類似商標又は役務について他人の先使用にかかる商標と同一又は類似であり、
出願人が当該他人との間で契約関係、地縁、業務取引又はその他の関係を有することによ
り、他人の商標の存在を知悉していたとき。但し、当該他人の同意を得て登録出願すると
きはこの限りでない
十五、他人の肖像又は著名な氏名、芸名、筆名、別名であるもの。但し、その者の同意を得て
登録出願するときはこの限りでない
十六、著名な法人、商号又はその他の団体の名称であり、関連する公衆に誤認混同を生じさせ
るおそれがあるもの
十七、他人の著作権、特許権又はその他の権利を侵害する商標であると判決が確定したもの。
273
但し、当該他人の同意を得て登録出願するときはこの限りでない
十八、わが国又はわが国と相互に商標の保護を承認した国家、又は地酒の地理的表示と同一又
は類似し、酒類の商品を指定するもの
前項第 12 号、第 14 号乃至第 16 号及び第 18 号の規定に定めるものは、出願時を基準とし
て適用する。
第1項第 7 号及び第 8 号の規定は、政府機関又は関連する機構が出願人であるときは、適
用しない。
第1項第 2 号の規定に該当する場合、又は第 5 条第 2 項の規定に該当しない場合でも、出
願人の使用により取引上既に出願人の商品又は役務であることを識別できる標識となっ
ているときは、この規定を適用しない。
第 24 条
商標登録出願が審査を経て前条第 1 項又は第 59 条第 4 項の規定により登録できないと認めら
れたときは、拒絶査定にしなければならない。
前項の拒絶査定前に、当該拒絶理由を書面で出願人へ通知しなければならず、送達の翌日から
30 日以内に意見を陳述することを指定する。
第 25 条
商標登録出願が審査を経て前条第 1 項の規定に該当しないと認められたときは、登録査定にし
なければならない。
登録査定された商標について、出願人が査定書送達の翌日から 2 ヶ月以内に登録料を納付した
場合においてのみ登録公告をし、商標登録証を発行する。期間内に納付しないものは、登録公
告されず、原登録査定はその効力を失う。
第 26 条
前条第 2 項の登録料は、2 期に分けて分納することができる。分納によるときは、後期分の登
録料は登録公告日から起算して 3 年が満了する前 3 ヶ月以内に納付しなければならない。
後期分の登録料が前項の期間内に納付されないときは、期間満了後 6 ヶ月以内に、所定の登録
料の倍額を納付することができる。
前項の規定により納付されないときは、商標権は当該倍額の追納期間満了の翌日から消滅する。
第四章
商標権
第 27 条
商標は登録公告の日よりその権利者が商標権を取得し、商標権の存続期間は 10 年とする。
商標権の存続期間は、更新登録することができ、更新の専用期間は 10 年とする。
第 28 条
商標権の存続期間の更新登録は、存続期間満了前 6 ヶ月から満了後 6 ヶ月以内に申請しなけれ
ばならない。存続期間満了後 6 ヶ月以内に出願した場合は、倍額の登録料を納付しなければな
らない。
前項の更新登録期間は、商標権の存続期間が満了した翌日から起算される。
第 29 条
商標権者が登録を経てその指定商品又は役務について商標権を取得する。
本法第 30 条の別途規定する場合を除き、次に掲げる事情は、商標権者の同意を得なければな
らない。
一、同一の商品又は役務について、その登録商標と同一の商標を使用するとき
二、類似の商品又は役務について、その登録商標と同一の商標を使用し、関連する消費者に誤
認混同を生じさせるおそれがあるとき
三、同一又は類似の商品又は役務について、その登録商標と類似の商標を使用し、関連する消
費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるとき
第 30 条 以下に掲げる事情は、他人の商標権の効力に拘束されない。
一、 善意且つ合理的な使用方法により、自己の氏名、名称又はその商品又は役務の名称、形
状、品質、効能、産地又はその他の関連する商品又は役務自体の説明を表示するもので、
274
商標として使用されていないもの
二、 商品又は包装の立体形状が、その機能性を発揮するために必要なもの
三、 他人の商標登録出願日より前に、善意で同一又は類似の商標を同一又は類似の商品又は
役務に使用するもの。但し、原使用の商品又は役務に限られる。この場合、商標権者は
適当な識別標示を付記するよう要求することができる
登録商標が付される商品が、商標権者により又はその同意を得たものにより市場において取引
流通され、又は関連する機関が法により競売又は処分するときは、商標権者は当該商品につい
て商標権を主張することができない。但し、商品の変質、毀損を防止するため、又はその他の
正当な事由によるときは、この限りでない。
第 31 条
商標権者は、登録商標が指定する商品又は役務について、商標専属責任機関に商標権の分割を
出願することができる。
前項による商標権の分割は、登録商標の異議申立又は無効審判が確定する前にも、これを行う
ことができる。
第 32 条
商標登録事項の変更は商標専属責任機関へ登録しなければならない。登録を経ないものは、第
三者に対抗することができない。
商標及び指定商品又は役務は登録後に変更することはできない。但し、指定商品又は役務の減
縮はこの限りでない。
第 20 条第 3 項及び前条第 2 項の規定は、商標登録事項の変更において準用する。
第 33 条
商標権者は、その登録商標の指定商品又は役務の全部又は一部について、その商標の使用を他
人に許諾することができる。
前項の使用許諾については、商標専属責任機関に登録しなければならない。登録を経ないもの
は、第三者に対抗することができない。使用権者が、商標権者の同意を得て、他人に再使用許
諾するときも同様とする。
使用権の登録後に商標権が移転される場合、その使用許諾契約は譲受人に対し引き続き有効に
存続する。
使用権者は、その商品、包装、容器又は営業上の物品、文書において、顕著で識別しやすい使
用許諾を受けていることの表示をしなければならない。その表示が困難なときは、営業場所又
はその他の関連物品にその使用権の授権表示をすることができる。
第 34 条
使用権者が前条第 4 項の規定に違反したときは、商標専属責任機関が職権又は請求により期間
を限定しこれを是正するよう通知し、期限を超えても是正されないときは、その使用権登録を
廃止(取消)しなければならない。
商標の使用許諾期間が満了する前に次に掲げる事情の一に該当するときは、当事者又は利害関
係人は、関連する証拠を添付し、使用権登録の廃止(取消)を請求することができる。
一、 商標権者及び使用権者の双方が終了に同意した場合。再使用許諾の場合も同様とする
二、 使用許諾契約に、商標権者又は使用権者により使用許諾を任意終了できると明記してあ
り、当事者が終了声明した場合
三、商標権者は、使用権者が使用許諾契約の約定に違反したことをもって、使用権者に契約解
除又は終了を通知し、使用権者がそれに異議を有しない場合
第 35 条
商標権の移転は、商標専属責任機関へ登録しなければならない。登録していないものは、第三
者に対抗することができない。
第 36 条
商標権を移転したことにより、二以上の商標権者が同一商標において類似の商品又は役務を使
用する場合、又は類似商標において同一又は類似の商品又は役務を使用する場合で、関連する
消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるときは、各商標権者が商標使用時に適当な区別標
示を付け加えなければならない。
275
第 37 条
商標権者は質権の設定、質権の変更又は消滅について、商標専属責任機関へ登録しなければな
らない。登録していないものは、第三者に対抗することができない。
商標権者が複数の債権担保のために商標権に複数の質権を設定するときは、登記の先後により
その順位を定める。
質権の存続期間中、質権者は商標権者の使用許諾を経ずに、当該商標を使用することができな
い。
第 38 条
商標権者は、商標権を放棄することができる。但し、使用許諾の登録又は質権の登録があると
きは、使用権者又は質権者の同意を経なければならない。
前項の放棄は、書面を以って商標専属責任機関に行わなければならない。
第 39 条
次に掲げる事情の一に該当するものは、商標権は当然に消滅する。
一、28 条の規定により更新登録を行わないもの
二、商標権者が死亡し、相続人が存在しないもの
第五章
異議申立
第 40 条
商標の登録が、第 23 条第 1 項又は第 59 条第 4 項の規定に違反するときは、何人も、商標登録
の公告日から 3 ヶ月以内に、商標専属責任機関に異議申立をすることができる。
前項の異議申立は、登録商標の指定商品又は役務の一部について行うことができる。
異議申立は、登録商標毎にしなければならない。
第 41 条
異議申立をするものは、異議申立書において事実及び理由を明記し、副本を添付しなければな
らない。異議申立書に添付書類の提出があった場合、副本にも提出しなければならない。
商標専属責任機関が異議申立の方式に合わないが、補正できるものと認めるときは、期限を限
定し、補正するよう通知しなければならない。
商標専属責任機関は、第 1 項の副本を添付書類と共に商標権者に送達し、期限を限定し答弁さ
せなければならない。
第 42 条
異議申立の審理については、原出願審査に参与しない審査官を指定し、審査させなければなら
ない。
第 43 条
異議申立人又は商標権者は市場調査報告を証拠として提出することができる。
商標専属責任機関は異議申立人又は商標権者へ市場調査報告の意見陳述の機会を与えなけれ
ばならない。
商標専属責任機関は、当事者の意見陳述及び市場調査報告の結果を総合して判断しなければな
らない。
第 44 条
異議申立の手続きの進行中、異議を申し立てられた商標権が移転されたときでも、異議申立の
手続きは影響を受けない。
前項の商標権の譲受人が被異議人の地位を受け継ぐ旨を声明できるときは、引き続き異議申立
の手続きを続行する。
第 45 条
異議申立人は、異議決定書が送達される前にその異議申立を取り下げることができる。
異議申立人は異議を取り下げるときは、同一の事実、同一の証拠及び同一の理由をもって、再
び異議申立し、又は無効審判を請求することができない。
276
第 46 条
異議申立が審査を経て成立したときは、その登録を取消されなければならない。
第 47 条
前条の取消事由が、登録商標の指定商品又は役務の一部に該当する場合は、当該部分の商品又
は役務についてその登録を取り消すことができる。
第 48 条
異議申立が確定した後の登録商標については、何人も同一の事実、同一の証拠及び同一の理由
により、無効審判を請求することができない。
第 49 条
異議申立の手続き進行中に、商標権に関する民事又は刑事訴訟が提起されたときは、異議決定
確定前に、その訴訟手続きの進行を停止することができる。
第六章
第1節
無効審判及び廃止(取消)
無効審判
第 50 条
商標の登録が第 23 条第 1 項又は第 59 条第 4 項の規定に違反するときは、利害関係人又は審査
官は商標専属責任機関に無効審判を請求又は提起することができる。
商標登録前に、他人の著作権、特許権又はその他の権利を侵害し、登録後に裁判所による侵害
の確定判決を受けた場合は、前項の規定を準用する。
第 51 条
商標の登録が第 23 条第 1 項第 1 号、第 2 号、第 12 号乃至第 17 号又は第 59 条第 4 項の規定に
違反するときでも、登録公告の日から 5 年を経過したものは、無効審判を請求又は提起するこ
とができない。
前条第 2 項の規定の場合は、その確定判決の日から 5 年を経過したものは、無効審判を請求又
は提起することができない。
商標の登録が第 23 条第 1 項第 12 号の悪意を有するものは、第 1 項の期間的制限を受けない。
第 52 条
登録商標の無効審判における不登録事由の有無については、その登録公告時の規定による。
第 53 条
商標の無効審判案件は商標専属責任機関の長官が 3 名以上の審査官を審判官として指定し審
理を行う。
第 54 条
無効審判請求の審決が成立した案件においては、その登録を取消さなければならない。但し、
審決時において、当該不登録事由が既に存在しないものは、公益及び当事者の利益を参酌した
後、不成立の審決にすることができる。
第 55 条
無効審判案件の審決後、何人も同一の事実、同一の証拠及び同一の理由により無効審判を請求
することができない。
第 56 条
第 40 条第 2 項、第 3 項、第 41 条第 1 項、第 2 項、第 42 条乃至第 45 条、第 47 条及び第 49
条の規定は、商標の無効審判において準用する。
第2節
廃止(取消)
277
第 57 条
商標登録後に次に掲げる事情の一に該当するものは、商標専属責任機関が職権又は請求により
その登録を廃止(取消)しなければならない。
一、 自ら商標を変更し又は付記を加えたことにより、同一又は類似の商品又は役務において、
他人が使用する登録商標と同一又は類似を構成し、関連する消費者に誤認混同のおそれを
生じさせるとき
二、 正当な事由なくして不使用又は使用の停止が引き続き 3 年を経過したもの。但し、使用
権者が使用しているときは、この限りでない
三、 第 36 条の規定に反し、適当な区別標示を付け加えないとき。但し、商標専属責任機関が
処分する前に区別標示を付加し、誤認混同を生じさせるおそれがないときは、この限りで
ない
四、 商標が既に指定商品又は役務の一般的な標章、名称又は形状となっているとき
五、 商標の実際使用時に、公衆にその商品又は役務の性質、品質又は産地を誤認誤信させる
おそれがあるとき
六、 商標が使用された結果、他人の著作権、特許権又はその他の権利を侵害するものと裁判
所の侵害判決が確定したとき
使用権者が前項第 1 号の行為をなし、商標権者が明らかに知っている又は知ることができるの
に、その反対を示さないときも同様とする。
第 1 項第 2 号の規定に該当し、廃止(取消)請求時に当該登録商標が使用されているときは、他
人の廃止(取消)請求を知り廃止(取消)請求前 3 ヶ月以内に使用を開始したものを除き、その登
録を廃止(取消)しない。
廃止(取消)事由が登録商標の指定商品又は役務の一部のみに存在するときは、当該部分の商品
又は役務についてその登録を廃止(取消)することができる。
第 58 条
商標権者が次に掲げる事情の一に該当するときは、その登録商標を使用しているものと認める。
一、 実際に使用している商標とその登録商標とが同一でないが、一般的な社会通念によりそ
の同一性が失われていないとき
二、 輸出目的の商品又はその関連物件に登録商標が標示されているもの
第 59 条
商標専属責任機関は廃止(取消)請求の旨を商標権者へ通知し、期間を限定し答弁させなければ
ならない。但し、請求者の請求が具体的な事実及び証拠を具えず、又はその主張が明らかに理
由のないときは、その請求を却下することができる。
第 57 条第1項第2号の規定に該当し、答弁の通知が送達されたときは、商標権者はその使用
の事実を証明しなければならず、期間内に答弁しないものは、その登録を廃止(取消)すること
ができる。
前項の商標権者がその使用の事実を証明するときは、商業上の取引慣習に合致するものでなけ
ればならない。
登録商標が第 57 条第 1 項第 1 号、第 6 号の規定に該当し、その登録を廃止(取消)されたとき
は、原商標権者は廃止(取消)の日から 3 年内に原商標見本と同一又は類似の商品又は役務にお
いて同一又は類似の商標を登録出願し、譲り受け或いは使用権の許諾を受けることができない。
その商標専属責任期間の処分前においてその商標権の放棄を声明したものも同様とする。
第 60 条
第 40 条第2項、第 3 項、第 41 条第 1 項、第 2 項、第 42 条乃至第 44 条の規定は、廃止(取消)
案件の審査において準用する。
第七章
権利侵害の救済
第 61 条
商標権者はその商標権を侵害したものに対し、損害賠償を請求することができ、その侵害排除
を請求することができる。侵害のおそれがあるときは、その防止を請求することができる。
商標権者の同意を得ず、第 29 条第2号の各規定の一に該当するときは、商標権を侵害するも
のとする。
278
商標権者が第1項の規定により請求を行うときは、商標権侵害に係る物品又は侵害行為に用い
られた原料又は器具に対し、廃棄又はその他の必要な処置を請求することができる。
第 62 条
商標権者の同意を得ず、次に掲げる事情の一に該当するものは、商標権を侵害するものとみな
す。
一、他人の著名な登録商標であることを明らかに知りながら同一又は類似の商標を使用し、又
は当該著名商標にある文字を自らの会社名、商号名、ドメイン名又はその他の営業主体を
表彰し、又は出所の標識として、著名商標の識別性又は信用・名声に損害を生じさせると
き
二、他人の登録商標であることを明らかに知りながら、当該商標にある文字を自らの会社名、
商号名、ドメイン名又はその他の営業主体を表彰し、又は出所の標識として、商品又は役
務に関連する消費者に誤認混同を生じさせるとき
第 63 条
商標権者が損害賠償を請求するときは、次の各号に掲げる一を選択してその損害を計算するこ
とができる。
一、民法第 216 条の規定による。ただし、その損害を証明する証拠方法を提供できないときは、
商標権者はその登録商標を使用することにより通常得られる利益から、侵害された後に同
一の商標を使用して得た利益を差し引いた差額をもって損害を受けた額とすることがで
きる
二、商標権侵害行為により得た利益による。商標権侵害者がその原価又は必要経費を挙証でき
ないときは、当該商品を販売した収入の全部をその所得利益とする
三、押収した商標権侵害にかかる商品の販売単価の 500 倍から 1500 倍迄の金額を損害額とす
る。但し、押収した商品が 1500 個を越えるときは、その総額で賠償金額を定める
前項の賠償金額が明らかに相当しないときは、裁判所がそれを参酌し減額することができる。
商標権者の業務上の信用・名声が侵害により損害されたときは、別途相当する賠償額を請求す
ることができる。
第 64 条
商標権者は、商標権侵害者に商標権侵害案件の判決書全文又は一部を新聞に掲載する費用の負
担を請求することができる。
第 65 条
商標権者は輸入又は輸出において商標権を侵害する物品に対し、税関に予め差押を申請するこ
とができる。
前項の申請は、書面をもって行い、侵害事実を釈明しなければならず、税関において当該輸入
貨物の CIF 価格又は輸出貨物の FOB 価格の保証金相当又は相当の担保を提供する。
税関が差押申請を受理したときは、速やかに申請人へ通知しなければならない。前項の規定を
具備するものと認定し、差押を実施するときは、書面を以って申請人及び被差押人へ通知しな
ければならない。
被差押人は、第 2 項の保証金額の倍額の保証金又は相当の担保を提供し、税関へ差押の取消及
び輸出入貨物の通関に関する規定による処分を請求することができる。
税関は対象の差押物件の機密資料を保護する状況において、申請人又は被差押人の申請により
その差押物件を検閲することができる。
差押物件に関して、申請人が裁判所により商標権侵害の確定判決を受けた場合、第 66 条第 4
項の規定に該当するものを除き、被差押人は差押物件の貨物延滞費、倉庫賃貸費、積み卸し費
用等の関連費用を負担しなければならない。
第 66 条
次に掲げる情況の一に該当するものは、税関は差押を取消さなければならない。
一、 申請人が税関の差押通知を受理した日から 12 日以内に、第 61 条の規定により差押物件
を侵害物件として訴訟を提起せず、税関へ通知しなかったとき
二、 申請人が差押物件を侵害品として訴訟を提起し、裁判所の裁定により請求棄却が確定し
たとき
三、 差押物件が裁判所による確定判決を経て、商標権侵害に該当しないとされたとき
279
四、 申請人が差押の取消を申請したとき
五、 前条第 4 項の規定に該当するとき
前項第 1 号に規定する期限は、税関が必要により 12 日の延長をすることができる。
税関が第 1 項の規定により差押を取り消すときは、輸出入貨物の通関に関連する規定により処
理しなければならない。
第 1 項第 1 号乃至第 4 号の事由により差押を取り消す場合、申請人は差押物件の貨物延滞費、
倉庫賃貸費、積み卸し費用等の関連費用を負担しなければならない。
第 67 条
差押物件が裁判所の判決を経て商標権侵害に該当しないと確定したときは、申請人は被差押人
が貨物を差押えられたことにより、又は第 65 条第 4 項の規定により提出した保証金で受けた
損害を賠償しなければならない。
申請人は第 65 条第 4 項に規定する保証金について、被差押人は第 65 条第 2 項に規定する保証
金について、質権者と同一の権利を有する。ただし、前条第 4 項及び第 65 条第 6 項に規定す
る貨物延滞費、倉庫賃貸費、積み卸し費用等の関連費用は、申請人又は被差押人の損害を優先
して賠償する。
次に掲げる情況の一に該当するときは、税関は申請人の申請により第 65 条第 2 項に規定する
保証金を返還しなければならない。
一、 申請人が勝訴の確定判決を受け、又は被差押人との和解が成立し、すでに保証金の提供
を継続する必要がなくなったとき
二、 前条第1項第1号乃至第 4 号に規定する事由により差押が取消され、被差押人が損害を
被るに至った後、又は被差押人が勝訴の確定判決を受けた後、申請人が 20 日以上の期間
を定め被差押人へ権利行使を催促しても行使しなかったことを証明したとき
三、 被差押人が返還に同意したとき
次に掲げる一の情況に該当するときは、税関は被差押人の申請により第 65 条第 4 項に規定す
る保証金を返還しなければならない。
一、 前条第1項第1号乃至第 4 号に規定する事由により差押が取消され、又は被差押人と申
請人との和解が成立し、すでに保証金の提供を継続する必要がなくなったとき
二、 申請人が勝訴の確定判決を受けた後、被差押人が 20 日以上の期間を定め申請人へ権利行
使を催促しても行使しなかったことを証明したとき
三、 申請人が返還に同意したとき
第 68 条
前 3 条に規定する差押申請、差押取消、差押物件の検閲、保証金又は担保の納付、提供と返還
の手続き、必要書類及びその他の遵守事項にかかる規定については、主務官庁が財政部と共に
これを定める。
第 69 条
第 33 条の規定により商標の使用許諾を受けたものは、その使用権が損害を被った場合は、本
章の規定を準用する。
第 70 条
外国法人又は団体でも認許を受けたものに限らず、本法に規定する事項について告訴、自訴又
は民事訴訟を提起することができる。
第 71 条
裁判所が商標訴訟案件を処理するために、専門の法廷を設立し、又は専任者を指定して処理す
ることができる。
第八章
証明標章、団体標章及び団体商標
第 72 条
標章をもって他人の商品又は役務の特性、品質、精密度、産地又はその他の事項を証明するた
めに、その標章を専用しようとするものは、証明標章の登録を出願しなければならない。
証明標章の出願人は、他人の商品又は役務を証明する能力を有する法人、団体又は政府機関に
限られる。
280
前項の出願人が、証明しようとする商品又は役務の業務に従事するときは、登録出願すること
ができない。
第 73 条
証明標章の使用とは、証明標章権者が他人の商品又は役務の特性、品質、精密度、産地又はそ
の他の事項の意思表示を証明するために、その商品又は役務に関連する物品又は書類に当該証
明標章の標示に同意することをいう。
第 74 条
法人資格を有する組合、協会又はその他の団体がその組織又は会員籍を表彰するためにその標
章を専用しようとするものは、団体標章の登録を出願しなければならない。
前項の団体標章の出願は、願書に関連事項を明記し、団体標章の使用規則を添付して、商標専
属責任機関へ出願しなければならない。
第 75 条
団体標章の使用とは、団体又はその構成員の身分を表彰するために、団体又はその構成員がそ
の標章を関連する物品又は書類に標示することをいう。
第 76 条
法人資格を有する組合、協会又はその他の団体が、当該団体の構成員が提供する商品又は役務
を表彰し、他人の提供する商品又は役務と区別するために標章を専用しようとするものは、団
体商標の登録を出願することができる。
前項の団体商標の出願は、願書に商品又は役務の類別及び名称を明記し、団体商標の使用規則
を添付して、商標専属責任機関へ出願しなければならない。
第 77 条
団体商標の使用とは、団体構成員が提供する商品又は役務を表彰するために、団体構成員が団
体商標を商品又は役務について使用し、他人の商品又は役務と区別することをいう。
第 78 条
証明標章権、団体標章権又は団体商標権は移転譲渡、使用許諾、又は質権の対象とすることが
できない。但し、その移転又は他人への使用許諾が消費者の利益を損害せず、又公平な競争に
反するおそれがなく、商標専属責任機関への許可を経たときは、この限りでない。
第 79 条
標章権者又は使用権者が証明標章、団体標章又は団体商標を不当に使用し、他人又は公衆に損
害を生じさせたときは、商標専属責任機関が何人かの請求、又は職権によりその登録を廃止(取
消)することができる。
前項の不正使用とは、次に掲げる状況の一に該当するものをいう。
一、 証明標章を商標として使用し、又は証明標章権者の商品又は役務に関連する物件又は書
類に標示したとき
二、 団体標章又は団体商標の使用が、社会公衆に当該団体の性質について誤認を生じさせた
とき
三、 前条の規定に違反して移転譲渡、使用許諾、又は質権設定をしたとき
四、 標章使用規則に違反したとき
五、その他不正な方法で使用したとき
第 80 条
証明標章、団体標章、又は団体商標は本章に個別の規定がある場合を除き、その性質により本
法の商標に関連する規定を準用する。
第九章
罰則
第 81 条
商標権者又は団体商標権者の同意を得ず、次に掲げる情況の一に該当するものは、3 年以下の
有期懲役、拘留、又は 20 万元以下の罰金を科し又は併科する。
281
一、 同一商品又は役務において、同一の登録商標又は団体商標を使用したとき
二、 類似商品又は役務において、同一の登録商標又は団体商標を使用し、関係する消費者に
誤認混同を生じさせるおそれがあるとき
三、 同一又は類似商品又は役務において、その登録商標又は団体商標と類似する商標を使用
し、関係する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるとき
第 82 条
前条の商品であることを明らかに知りながら販売し、販売の意図をもって陳列し、輸出又は輸
入したものは、一年以下の有期懲役、拘留、又は 5 万元以下の罰金を科し又は併科する。
第 83 条
前 2 条の罪を犯して製造、販売、陳列、輸出又は輸入した商品又は役務の提供に使用した物品
又は書類は、犯人が所有するものかを問わず、これを没収する。
第十章
附則
第 84 条
2003 年 4 月 29 日に改正された本法施行前に、既に登録された商標又は標章は、第 26 条の規
定を適用しない。
第 85 条
2003 年 4 月 29 日に改正された本法施行前に、既に登録された役務標章は本改正法施行日より
商標とみなす。
2003 年 4 月 29 日に改正された本法施行前に、まだ登録されていない役務標章の出願案件は、
本改正法施行日より商標登録出願案件とみなす。
第 86 条
2003 年 4 月 29 日に改正された本法施行前に、既に登録された連合商標、連合役務標章、連合
団体標章又は連合証明標章は、本改正法施行日より独立の登録商標又は標章とみなす。その存
続期間は、原登録を受けたものに準ずる。
2003 年 4 月 29 日に改正された本法施行前に、
まだ登録されていない連合商標、
連合役務標章、
連合団体標章又は連合証明標章の出願案件は、本改正法施行日より独立の商標又は標章出願案
件とみなす。
前項の出願人は、登録査定が送達される前に出願を取下げ、政府料金の返還を請求することが
できる。
第 87 条
2003 年 4 月 29 日に改正された本法施行前に、既に登録された防護商標、防護役務標章、防護
団体標章又は防護証明標章は、その登録時の規定による。その存続期間満了前に、独立の登録
商標又は標章への変更を出願しなければならず、期間満了迄に変更の出願がされないときは、
その商標権を消滅する。
2003 年 4 月 29 日に改正された本法施行前に、
まだ登録されていない防護商標、
防護役務標章、
防護団体標章又は防護証明標章の出願案件は、2003 年 4 月 29 日に改正された本法施行日より
独立の商標又は標章出願案件とみなす。
前項の出願人は、登録査定が送達される前に出願を取下げ、政府料金の返還を請求することが
できる。
第 88 条
第 86 条第 1 項の規定により独立の登録商標又は標章とみなされるものは、第 57 条第 1 項第 2
号に規定する 3 年の期間は、2003 年 4 月 29 日に改正された本法施行日より起算する。
前条第 1 項により独立の登録商標又は標章への変更を出願するものは、第 57 条第 1 項第 2 号
に規定する 3 年の期間は、変更日より起算する。
第 89 条
2003 年 4 月 29 日に改正された本法施行前に、既に公告査定を受けた出願案件について、本改
正法施行時に原査定が取下げられていないものは、改正後の規定により直ちに登録される。第
282
一期に納付しなければならない登録費用は、既に納付したものとみなす。
2003 年 4 月 29 日に改正された本法施行前に、公告査定が取消され、本法施行後に行政訴訟に
より原処分の取消が確定し登録されるべきものは、改正後の規定によりこれを登録する。第一
期に納付しなければならない登録費用は、既に納付したものとみなす。
第 90 条
2003 年 4 月 29 日に改正された本法施行前に、既に異議申立を行ったが、まだ異議の決定が下
されていない案件については、本改正法施行前及び本改正法施行後の規定によりいずれの違法
事由にも該当する場合に限り、初めてその登録を取消す。その手続きは改正後の規定により処
理する。
第 91 条
2003 年 4 月 29 日に改正された本法施行前に、既に無効審判を請求、又は提起したが、未だそ
の審決が下されていない案件については、本改正法施行前及び本改正施行後の規定によりいず
れの違法事由にも該当する場合に限り、初めてその登録を取消す。その手続きは改正後の規定
により処理する。
2003 年 4 月 29 日に改正された本法施行前の登録商標、証明標章及び団体標章に対して、本改
正施行後に無効審判を請求、又は提起するものは、その登録時及び本改正施行後の規定により
いずれの違法事由にも該当する場合に限る。
第 92 条
2003 年 4 月 29 日に改正された本法試行前に、まだ処分が下されていない商標廃止(取消)案件
は、本改正施行後の商標廃止(取消)案件の規定を適用し処理する。
第 93 条
本法の施行細則は、主務官庁がこれを定める。
第 94 条
本法は公布の日から 6 ヶ月後に施行する。
283
2004 年 著 作 権 法 改 正 条 文
(新設 1 ヶ条、修正 13 ヶ条)
2004 年 8 月 27 日立法院を通過
2004 年 9 月 1 日付総統令公布
(*記号の付いた箇所は 2004 年 9 月 1 日に公布された改正条文である)
第一章
総 則
第1条
著作者の著作物の権益を保障し、社会の公共的利益の調和を図り、国家の文化発展を促すため、
特にこの法律を制定する。この法律に定めのないものは、その他の法律の規定を適用する。
第2条
この法律でいう主務官庁は経済部とする。
2 著作権に関する事務は、経済部が所管庁を指定して扱うものとする。
*第 3 条
この法律における用語の意義は下記の通りとする。
一、著作物:文学、科学、芸術若しくはその他の学術の範囲に属する創作物をいう。
二、著作者:著作物を創作する者をいう。
三、著作権:著作物の完成により生じる著作人格権及び著作財産権をいう。
四、公衆:不特定の者又は特定且つ多数の者をいう。但し家庭及びそれと正常の社交関係にあ
る多数の者はこの限りでない。
五、複製:印刷、複写、録音、録画、撮影、筆記その他の方法により直接、間接、永久又は一
時的に再製することをいい、脚本、音楽の著作物その他これに類する著作物の実演、放送
を録音し、又は録画すること、また建築に関する設計図若しくは模型に従って建築物を完
成することもこれに属する。
六、公開口述:口述又はその他の方法により著作物の内容を公衆に伝達することをいう。
七、公開放送:公衆に直接聞かせ又は見せることを目的として、有線電気通信、無線通信その
他の設備の放送システムによる送信を行うことにより、音声若しくは映像を通じて著作物
の内容を公衆に伝達することをいう。原放送者以外の者によって、有線電気通信、無線通
信その他の設備の放送システムによる送信を行うことにより、元放送されていた音声若し
くは映像を公衆に伝達することもこれに属する。
八、公開上映:単一又は複数の視聴機器その他映像を伝送する方法により、同一の時間に著作
物の内容を現場若しくは現場以外の一定の場所にいる公衆に伝達することをいう。
九、公開実演(上演・演奏)
:演技、舞踊、歌唱、楽器の演奏その他の方法により著作物の内容
を現場の公衆に伝達することをいう。拡声器その他の装置により元放送されていた音声又
は映像を公衆に向けて伝達するのもこれに属する。
十、公開伝送:有線電気通信、無線通信の電気通信回路その他の通信方法により、音声又は映
像を通じて公衆に対して著作物の内容を提供し又は伝達することをいい、公衆が各自に選
定する時間に、又は場所において上記の方法により著作物の内容を受信することを含むも
のとする。
十一、改作:翻訳、編曲、書き換え、映画の撮影又はその他の方法により原作品について別途
創作をすることをいう。
十二、頒布:有償であるか又は無償であるかを問わず、著作物の原作品若しくは複製物を公衆
の取引又は流通に提供することをいう。
十三、公開展示:公衆に著作物の内容を展示することをいう。
十四、発行:権利者が公衆の合理的需要を満足させることのできる複製物を頒布することをい
う。
十五、公表:権利者が発行、放送、上映、口述、実演(上演・演奏)
、展示その他の方法により
著作物の内容を公衆に提示することをいう。
十六、原作品:著作物に最初固定されているものをいう。
十七、電子的権利管理情報:著作物の原作品又はその複製物において、又は著作物の公衆への
伝達がなされるときに表示される著作物、著作の名称、著作者、著作財産権者又はその利用
284
許諾を受けた者及び利用期間若しくは条件を特定するに足る電子的関連情報をいい、数字、
符号を用いてこれらの情報を表示するものもこれに属する。
十八、デッドコピー防止措置:著作権者が他人が無断に著作に侵入すること又はそれを利用
することを有効に禁止又は制限するために儲ける設備、機材、部品、技術若しくは其の他
の科学技術手段。
2 前項第 8 号にいう現場若しくは現場以外の一定の場所とは、映画館、倶楽部、ビデオテー
プ若しくはレーザーディスクが再生される場所、旅館(ホテル)の部屋、公衆の使用に供さ
れる交通機関その他不特定の者の出入りに供される場所を含む。
第4条
外国人の著作物であって、次に掲げる場合のいずれかに該当するときは、この法律により著作
権を享有することができる。但し条約或いは協定にて別段の約定があり、それが立法院(国会)
の議決を経て通過したものであるときは、その約定に従う。
一、台湾の管轄区域内において初めて発行され、或いは台湾の管轄区域外において初めて発行
された日から 30 日以内に台湾の管轄区域内で発行されたものであるとき。但し当該外国
人が属する本国が同じ情況の下においても台湾国民の著作物を保護することが調査で事
実であると認められた場合に限る。
二、条約、協定或いはその本国の法令、慣例により、台湾国民の著作物が当該国家において著
作権を享有できるとき。
第二章
著作物
第5条
この法律にいう著作物を例示すると、次の通りである。
一 言語の著作物
二 音楽の著作物
三 演劇、舞踊の著作物
四 美術の著作物
五 撮影の著作物
六 図形の著作物
七 映画の著作物
八 録音の著作物
九 建築の著作物
十 コンピュ−タプログラムの著作物
2 前項各号に例示された著作物の内容は、主務官庁がこれを定める。
第6条
原著作物を改作した創作は二次的著作物であり、独立の著作
物としてこれを保護する。二次的著作物の保護は、原著作物の著作権に影響を及ぼさない。
第7条
資料の選択及び編集・レイアウトにつき独創性を有するものは、編集著作物であり、独立の著
作物としてこれを保護する。
2 編集著作物の保護は、それに収録された著作物の著作権に影響を及ぼさない。
第 7 条ノ 1 実演家が現存の著作物又は民俗的創作をもとにした実演は独立の著作物としてこ
れを保護する。
2 実演に対する保護は原著作物の著作権に影響を及ぼさない。
第8条
二人以上の者が共同で完成した著作物であって、各々の創作を分離して利用するこ
とができないものは、共同著作物とする。
第9条
次の各号に該当するものは、著作権の目的とすることができない。
285
一. 憲法、法律、命令或は公文書。
二. 中央或いは地方官庁が前号の著作物について作成した翻訳物或いは編集物。
三. 標語及び通用の記号、名詞、公式、図表、記入用紙、帳簿或いはカレンダー。
四. 単に事実を伝達する新聞報道からなる言語著作物。
五. 法令により行なわれる各種の試験問題及びその予備用の試験問題。
2 前項第 1 号にいう公文書とは、公務員が職務上書き上げた告示文書の原稿、演説の原稿、
新聞の原稿及びその他の文書を含む。
第三章
第一節
著作者及び著作権
通則
第 10 条
著作者は著作物を完成した時に著作権を享有する。但し、この法律に別段の定めがあるときは、
その規定による。
第 10 条ノ 1
この法律による著作権の保護は当該著作物の表現にとどまり、それによって表現しようとする
思想、手続き、製造過程、システム、操作方法、概念、原理、発見には及ばない。
第二節
著作者
第 11 条
被用者(従業員)が職務上完成した著作物は、被用者を著作者とする。但し、契約に使用者
を著作者とする旨の約定があるときは、その約定に従う。
2 前項の規定により、被用者を著作者とするときは、その著作財産権は使用者の享有に帰属
する。但し、契約にその著作財産権は被用者が享有する旨の約定があるときは、その約定に
従う。
3 前二項にいう被用者とは、公務員を含む。
第 12 条
出資して他人を招聘し、著作物を完成させたときは、前条の事由を除き、当該招聘を受けた者
を著作者とする。但し、契約に出資者を著作者とする旨の約定があるときは、その約定による。
2 前項の規定により、招聘を受けた者を著作者とする場合、その著作財産権は契約の約定に
より、招聘を受けた者若しくは出資者が享有する。著作財産権の帰属につき約定がない場合、
その著作財産権は招聘を受けた者が享有する。
3 前項の規定により、著作財産権を招聘を受けた者が享有するときは、出資者は当該著作物
を利用することができる。
第 13 条
著作物の原作品若しくは既に発行された複製物において、又は著作物を公表するときに、著作
者の本名若しくは周知の別名が通常の方法により表示されている者はその著作物の著作者と
推定する。
2 前項の規定は、著作物発行の日付、場所及び著作財産権者を推定する場合においてもこれを
準用する。
第 14 条
削除
第三節
著作人格権
第 15 条
著作者はその著作物につき、それを公表する権利を有する。但し公務員が第 11 条及び第 12
条の規定により著作者でありながら、著作財産権が公務員が所属する法人に帰属するときは、
これを適用しない。
2 次の各号のいずれかに該当するときは、著作者がその著作物を公表することに同意したも
286
のと推定する。
一. 著作者は、その著作物でまだ公表されていないものの著作財産権を他人に譲渡し
又は他人に利用を許諾したとき、著作財産権の行使若しくは利用により、公表され
た場合。
二. 著作者は、その著作物でまだ公表されていない美術の著作物又は撮影の著作物の
原作品又はその複製物を他人に譲渡し、譲受人がその著作物の原作品又はその複製
物を公に展示したとき。
三. 学位授与法により著述した修士論文、博士論文であって、著作者が既に学位を取得
したとき。
3 第 11 条第 2 項及び第 12 条第 2 項の規定により、使用者又は出資者は、まだ公表されてい
ない著作物の著作財産権をはじめから取得し、その著作財産権の譲渡、行使又は利用によりそ
れを公表したときは、著作者がその著作物を公表することに同意したものとみなす。
4 前項の規定は、第 12 条第 3 項においてもこれを準用する。
第 16 条
著作者は著作物の原作品若しくはその複製物において又は著作物の公表に際し、その本名、別
名を表示し、又はそれを表示しないとする権利を有する。著作者はその著作物に基づいて創り
出された二次的著作物についても、同一の権利を有する。
2 前条第 1 項但し書きの規定は、前項においてこれを準用する。
3 著作物を利用する者は自ら設計した表紙を使用し、並びに設計者又は編集主幹の氏名又は
名称を付け加えることができる。但し、著作者から特別の意思表示があり、又はそれが社会上
の使用慣習に反する場合は、この限りでない。
4 著作物利用の目的及び方法により、それが著作者の利益に損害を与える虞がなく、且つ社
会上の使用慣習に反しないときは、著作者の氏名若しくは名称を省略することができる。
第 17 条
著作者は、他人が歪曲、切り裂き、改ざんその他の方法でその著作物の内容、形式又は名目を
改変することにより、その名誉を毀損するに至らしめることを禁止する権利を享有する。
第 18 条
著作者が死亡し又は消滅したときは、その著作人格権の保護に関しては、なお生存し又は存続
するものとみなし、何人も侵害してはならない。但し、利用の性質及び程度、社会の変動その
他の事情により、当該著作者の意思に違反しないものと認められるときは侵害を構成しない。
第 19 条
共同著作物の著作人格権は著作者全体の同意を得なければ、行使することができない。各著作
者に正当の理由がなければ、同意を拒むことができない。
2 共同著作物の著作者は著作者の中から代表者を選定して著作人格権を行使することができ
る。
3 前項の代表者の代表権に加えられた制限は善意の第三者に対抗することができない。
第 20 条
まだ公表されていない著作物の原作品及びその著作財産権が売買の目的とされ、又は本人の承
諾を得た場合を除き、強制執行の目的とすることができない。
第 21 条
著作人格権は専ら著作者本人に属し、譲渡又は相続することができない。
第四節
著作財産権
第一款
著作財産権の種類
*第22条 1
この法律に別段の定めがある場合を除き、著作者はその著作物を複製する権利を専有する。
2 実演家は、録音、録画又は撮影によってその実演を複製する権利を専有する。
287
3 前二項規定は、ネットワークにおける中継的伝送又は合法的著作物を合法的に利用する場
合の技術 的操作の過程に必要な過渡的、付帯的かつ独立した経済的意義を有しない一時的複
製には適用しない。但し、コンピュータプログラムはこの限りでない。
4 前項のネットワークにおける合法的な中継伝送の場合の一時的複製は、インターネットサ
ーフィン、迅速な読み取りその他伝送の機能を達成させるには避けて通ることのできないコン
ピュータ又は機器本来の技術的なものを含む。
第 23 条
著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有する。
第 24 条
著作者は、この法律に別段の定めがある場合を除き、その著作物を公開放送する権利を専有す
る。
2 実演家は、その実演が複製され、又は公開放送されたものについてさらに公開放送をする
場合においては、前項の規定を適用しない。
第 25 条 著作者はその映画の著作物を公に上映する権利を専有する。
*第 26 条
1 著作者はこの法律に別段の定めがない限り、その言語、音楽又は演劇、舞踊
の著作物を公に実演(上演・演奏)する権利を専有する。
2 実演家は、拡声器その他の機材でその実演を公に上演・演奏する権利を専有
する。但し、その実演を複製し、又は公開放送した後にさらに拡声器その
他の機材で公開に演出する場合は、この限りでない。
3 録音の著作物が公に実演された場合、著作者は公開実演をした者に対して利
用報酬(使用料)の支払いを請求することができる。
4 前項の録音著作物に関する実演が複製された場合は、録音著作物の著作者及
び実演家が共同して利用の報酬の支払いを請求する。その一方が先に請求し
たときは、利用の報酬を他方に分配しなければならない。
第 26 条ノ 1
著作権者は、本法に別段の定めがある場合を除き、その著作を公開伝送する権利を専有する。
2 実演家は、その実演が録音の著作物に複製されたものについて、これを公開伝送する権利
を専有する。
第 27 条
著作者は、未発行の美術の著作物若しくは撮影の著作物を公に展示する権利を専有する。
第 28 条
著作者は、その著作物を二次的著作物に改作し、又はそれを編集著作物に編集する権利を専有
する。但し、実演についてはこれを適用しない。
第 28 条ノ 1
著作権者は、本法に別段の定めがある場合を除き、所有権を移転する方法によりその著作を頒
布する権利を専有する。
2 実演家は、その実演が録音の著作物に複製されたものについて、所有権を移転する方法に
よりこれを頒布する権利を専有する。
第 29 条
著作者は、本法に別段の定めがある場合を除き、その著作物を貸与する権利を専有する。
2 実演家は、その実演が録音の著作物に複製されたものについて、これを貸与する権利を専
有する。
第 29 条ノ 1
288
第 11 条第 2 項又は第 12 条第 2 項の規定により、著作財産権を取得した使用者又は出資者は、
第 22 条から第 29 条までの規定に定める権利を専有する。
第二款
著作財産権の存続期間
第 30 条
著作財産権はこの法律に別段の定めがある場合を除き、著作者の生存している間、及びその死
後 50 年を経過するまでの間、存続する。
2 著作物が著作者の死後 40 年ないし 50 年の間に初めて公表された場合、著作財産権は公表
時から 10 年を経過するまでの間、存続する。
第 31 条
共同著作物の著作財産権は最終に死亡した著作者の死後 50 年を経過するまでの間、存続する。
第 32 条 (著作者が)別名で表示される著作物若しくは無記名著作物の著作財産権は著作物
の公表後 50 年を経過するまでの間、存続する。但しその著作者が死亡して 50 年を超えたこと
が証明されたとき、その著作財産権は消滅したものとする。
2 前項の規定は著作者の別名が周知のものであるときは、これを適用しない。
第 33 条
法人が著作者である著作物の著作財産権は、その著作物が公表後 50 年を経過するまでの間存
続する。但し、かかる著作物が創作の完成時より起算して 50 年以内に公表されない場合、そ
の著作財産権は創作完成時より 50 年を経過するまでの間、存続する。
第 34 条
撮影、映画、録音及び実演に関する著作財産権はその著作物の公表後 50 年を経過するまでの
間存続する。
2 前条但し書きの規定は前項について準用する。
第 35 条
第 30 条から第 34 条までの規定に定める存続期間は当該期間が満了するその年の最終日をもっ
て期間の終了とする。
2 継続的又は逐次に公表された著作物について、その公表の日をもって著作財産権の存続期
間を計算する場合は、各回の公表が一つの独立した著作物を成すことができるときは、著作財
産権の存続期間は各回の公表日より起算する。各回の公表が一つの独立した著作物を成すこと
ができない場合は、独立した一つの著作物を成すことができるときの公表日から起算する。
3 前項の場合において、継続すべき部分が前回の公表の日から 3 年以内に公表されないとき
は、その著作財産権の存続期間は前回の公表日から起算する。
第三款
著作財産権の譲渡、行使及び消滅
第 36 条 著作財産権の全部若しくは一部を他人に譲渡し、又はそれを他人と共有することがで
きる。
2 著作財産権の譲受人は、その譲り受ける範囲内において、著作財産権を取得する。
3 著作財産権譲渡の範囲は、当事者の約定による。その約定に不明な部分があるときは、未
譲渡のものと推定する。
第 37 条 著作財産権者は他人に対し、その著作物の利用を許諾することができ、利用の許諾に
係る地域、期間、内容、利用方法又はその他の事項は当事者の約定による。その約定が不明な
部分については、未許諾と推定する。
2 前項の許諾は、著作権者が後にその著作財産権を譲渡し又は再許諾することにより影響を受
けない。
3 非専属許諾における被許諾者(ライセンシー)が著作財産権者の承諾を得ないで、その授与
された権利をさらに第三者の利用に許諾することができない。
4 専属許諾における被許諾者はその許諾された範囲内において、著作財産権者の地位をもって
権利を行使し、また自己の名義をもって訴訟上の行為をすることができる。著作財産権者は、
289
専属許諾の範囲内での権利行使ができない。
5 第 2 項から前項(第 4 項)までの規定は、台湾 90 年(2001 年)11 月 12 日付け本法改正施
行以前に為された許諾については、適用しない。
6 音楽著作物は、利用許諾のもとでカラオケ装置に複製された場合、利用者はそのカラオケ装
置を利用して当該著作物を公開に実演するときには、第 7 章の規定を適用しない。但し、音楽
著作物が著作権仲介団体の管理下におかれた場合は、この限りでない。
第 38 条
削除
第 39 条 著作財産権を質権の目的とした場合には、設定時に別段の定めがない限り、著作財
産権者はその著作財産権を行使することができる。
第 40 条 共同著作物の各著作者の持分は、共同著作者間の約定によりこれを定める。約定がな
いときは、各著作者が創作に関与した程度によりこれを定める。各著作者が創作に関与した程
度が不明なときは、均等であるものと推定する。
2 共同著作物の著作者がその持分を放棄したときは、その持分はその他の共同著作者の持分
の比例により割り当てるものとする。
3 前項の規定は共同著作物の著作者は死亡した後に相続人がなく、又は(法人である著作者
が)消滅した後に承継人がない場合には、これを準用する。
第 40 条ノ 1
著作財産権が共有のものは、著作財産権者全員の同意を得なければ、行使する
ことができない。各著作財産権者はその他の共有著作財産権者の同意を得なければ、その持
分を他人に譲渡し、又は他人のためにそれを質権の目的として設定してはならない。各著作
財産権者に正当な理由がないかぎり、拒むことができない。
2 著作財産権を共有する者は、そのうちから代表者を選定して著作財産権を行使することが
できる。代表者の代表権に加えられた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
3 前条 2 項及び第 3 項の規定は、著作財産権の共有においても、これを準用する。
第 41 条
著作財産権者が新聞紙、雑誌に寄稿し、又は著作物の公開放送を許諾したとき、別段の定めが
ない限り、一回限りの掲載又は公開放送をする権利を許諾したものと推定し、著作財産権者の
その他の権利には影響を及ぼさない。
第 42 条 著作財産権は存続期間の満了により消滅する。存続期間内に次の各号のいずれかに
該当する場合も、同様とする。
一. 著作財産権者が死亡し、その著作財産権が法により国庫に帰属することになるとき。
二. 著作財産権者である法人が消滅した後、法によりその著作財産権は地方自治団体に帰属す
ることになるとき。
第 43 条
著作財産権が消滅した著作物はこの法律に別段の定めがないかぎり、何人も自由に利用するこ
とができる。
第四款
著作財産権の制限
第 44 条
中央又は地方機関が立法又は行政の目的のために、他人の著作物を内部の参考資料として必要
と認めるときは、合理的な範囲内で他人の著作物を複製することができる。但し当該著作物の
種類、用途及びその複製物の数量、方法により著作財産権者の利益を害するようなことがある
場合は、この限りでない。
第 45 条
専ら司法手続の使用に供するために必要とされるときは、合理的範囲内で他人の著作物を複製
することができる。
2 前条但し書きの規定は前項の場合において、これを準用する。
290
第 46 条
法により設立した各級の学校及びその教育担当者は学校の授業のために、合理的な範囲内で他
人が既に公表した著作物を複製することができる。
2 第 44 条但し書きの規定は前項の場合において、これを準用する。
第 47 条
法令により教育行政機関の審査を経るべきとされる教科書を編集作成するため、又は
教育行政機関が教科書を編集作成するために、合理的な範囲内で、他人が既に公表した著作物
を複製し、改作し又は編集することができる。
2 前項の規定は、当該教科書に付属する、教育者の教育用補助品を編集・作成
する場合においてこれを準用する。但しそれは当該教科書の編集者が編集する
ものに限る。
3 法により設立した各級の学校又は教育機関は、教育の目的で必要なときに、
合理的範囲内で、他人が既に公表した著作物を公に放送することができる。
4 前三項の事情につき、利用者は使用状況を著作財産権者に通知し、且つ利用
の報酬(使用料)を支払わなければならない。使用料率は、主務官庁がこれを定める。
第 48 条
公衆の使用に供する図書館、博物館、歴史館、科学館、芸術館その他の文教機関であって、次
の各号のいずれかに該当するものは、その収蔵する著作物を複製することができる。
一. 閲覧者の個人的研究に供する要求により、既に公表された著作物の一部又は定期刊行物、
又は既に公表されたセミナーの論文集中の単一著作物を一人につき一部限り複製すること
ができる。
二. 資料保存のために必要なとき。
三. 絶版又は入手が困難な著作物につき、同じ性質を持つ機関の要求に応じるとき。
第 48 条ノ 1
中央又は地方機関、法により設立した教育機関若しくは公衆の使用に供する図書館は、次の公
表されていた著作物に付属する要約書を複製することがでる。
一. 学位授与法により著述した修士、博士論文で著作者が既に学位を取得したもの。
二. 定期刊行物に掲載された学術論文。
三. 既に公表されたセミナーの論文集又は研究レポ−ト。
第 49 条
放送、撮影、録画、新聞紙、ネットワークその他の方法により時事を報道する者は、報道のた
めに必要と認められる範囲内において、報道の過程で接触した著作物を利用することができる。
第 50 条
中央又は地方機関又は公法人の名義で公表された著作物は、合理的な範囲内でそれを複製し、
公開放送し、又は公開伝送することができる。
第 51 条
営利を目的としない個人若しくは家庭の私用に供するため、合理的な範囲内で図書館及び公衆
の使用に供されない機器を利用して、公表された著作物を複製することができる。
第 52 条
報道、評論、教学、研究若しくはその他正当な目的のために、合理的な範囲内で既に公表され
た著作物を引用することができる。
第 53 条
すでに公表された著作物について、視覚障害者、聴覚障害者のために点字、手話通訳又は文字
を付け加えることによりこれを複製することができる。
2 視覚障害者、聴覚障害者の福祉増進を目的として、法により設立された非営利的団体、機
構は、専ら視覚障害者、聴覚障害者の使用に供するために、録音、コンピュータ、映像を口述
291
し、手話通訳を付け加え又はその他の方法により、すでに公表された著作物を利用することが
できる。
第 54 条
中央又は地方機関、法により設立した各級の学校若しくは教育機関が行う各種試験において公
表された著作物を複製して試験問題とすることができる。但し公表された著作物が試験問題で
あるときは、これを適用しない。
第 55 条
営利を目的とせず、直接又は間接に観衆又は聴衆から如何なる費用も受けないで、且つ出演者
に対しても報酬を支払わない場合、その活動中において他人が公表した著作物を公開口述、公
開放送、公開上映若しくは公開実演することができる。
第 56 条
ラジオ放送局又はテレビ放送局は、公開放送のために、自己の設備で当該著作物を録音し又は
録画することができる。但し、その公開放送は、著作財産権者の利用許諾を受けており、又は
本法の規定に適合する場合に限る。
2 前項の録音・録画されたものは、著作権所管庁の許可を経て指定された場所に保存する場
合を除き、録音又は録画してから六ヶ月以内にこれを焼却しなければならない。
第 56 条ノ 1
(テレビ放送の)受信効果を高めるために、法令により設立した住宅団地の共同アンテナで、
法により設立された無線テレビ放送局が放送する著作物をその形式又は内容を変更せず、同時
に中継放送することができる。
第 57 条
美術著作物若しくは撮影著作物の原作品若しくは複製物の合法的な所有者又はその同意を得
た者は、当該著作物の原作品若しくは合法的な複製物を公開展示することができる。
2 前項の公開展示をした者は参観者に著作物を解説するために案内書に当該著作物を複製す
ることができる。
第 58 条
街道、公園、建築物の外壁その他公衆に開放する屋外の場所において、長期的に展示される美
術の著作物若しくは建築の著作物は次の各号の場合を除き、如何なる方法をもってこれを利用
することができる。
一. 建築の方法により建築物を複製する。
二. 彫刻の方法により彫刻物を複製する。
三. 本条が規定する場所に長期的展示を目的とする複製。
四. 専ら美術著作物の複製物の販売を目的とする複製。
第 59 条
コンピュータプログラム著作物の複製物を合法に所有している者は、その使用する機器の需要
に合わせてそのプログラムを修正し、又はバックアップ保存のために、そのプログラムを複製
することができる。但し、当該所有者が自ら使用する場合にのみ限る。
2 前項の所有者が滅失以外の事由により、原複製物の所有権を喪失したときは著作財産権者
の同意を得た場合を除き、その修正若しくは複製がなされたそのプログラムを焼却廃棄しなけ
ればならない。
第 59 条ノ 1
台湾の管轄区域内において、著作物の原作品又はその合法的複製物の所有権を取得した者は、
所有権を移転する方法によりこれを頒布することができる。
第 60 条
著作物の原作品又はその著作物の合法的複製物の所有者は、当該原作品又は複製物を貸与に出
すことができる。但し、録音及びコンピュータプログラムの著作物についてはこれを適用しな
い。
292
2 貨物、機器若しくは設備に付属したコンピュ−タプログラム著作物の複製物は、貨物、機器
若しくは設備に付随して合法的に貸与され、且つそれが当該貸与の主な対象物でない場合にお
いては、前項但し書きの規定を適用しない。
第 61 条
新聞紙、雑誌若しくはネットワーク上に掲載する政治、経済若しくは社会時事問題に関する論
述については、他の新聞紙、雑誌がこれを転載し、又はラジオ放送局若しくはテレビ放送局に
より公開放送され、又はネットワーク上での公開伝送ができる。但し、転載、公開放送又は公
開伝送を許さない旨の表示がある場合は、この限りでない。
第 62 条
政治若しくは宗教上の公開演説、裁判手続及び中央若しくは地方機関における公開陳述は、何
人もこれを利用することができる。但し、専ら特定の者によって為された演説又は陳述を編集
著作物に編集したものは、著作財産権者の同意を経なければならない。
第 63 条
第 44 条、第 45 条、第 48 条第 1 号、第 48 ノ 1 から第 50 条まで、第 52 条から第 55
条まで、第 61 条及び第 62 条の規定により、他人の著作物を利用することのできる者は、当該
著作物を翻訳することができる。
2 第 46 及び第 51 条の規定により、他人の著作物を利用することのできる者は、当該著作物
を改作することができる。
3 第 46 条から第 50 条まで、第 52 条から第 54 条まで、第 57 条第 2 項、第 58 条、第 61 条及
び第 62 条の規定により他人の著作物を利用する者は、当該著作物を頒布することができる。
第 64 条
第 44 条から第 47 条まで、第 48 条ノ 1 から第 50 条まで、第 52 条、第 53 条、第 55 条、第 57
条、第 58 条、第 60 条から第 63 条までの規定により、他人の著作物を利用する者は、その出
所を明示しなければならない。
2 前項の出所の明示は、氏名を表示しない、若しくは著作者が不明な場合を除き、著作者の
氏名又は名称について、合理的な方法をもってこれを表示しなければならない。
第 65 条
著作物の合理的使用は、著作財産権の侵害を構成しない。
2 著作物の利用が第 44 条から第 63 条までの規定に該当するかどうか、又はその他の合理的
な使用の情況に該当するかどうかは、一切の状況を考慮し、特に判断の基準として次に掲げる
事項に留意しなければならない。
一. 利用の目的及び性質。商業の目的若しくは非営利的で教育の目的を含む。
二. 著作物の性質。
三. 利用された質量及びそれが著作物の全体に占める割合。
四. 利用の結果として著作物の潜在的市場と現在の価値に対する影響。
3 著作権者団体と利用者団体が、著作物の合理的な利用範囲について協議を達成した場合は、
前項の判断の参考となることができる。
4 前項の協議の過程においては、著作権所管庁の意見を諮問することができる。
第 66 条
第 44 条から第 63 条まで、及び第 65 条の規定は、著作者の著作人格権に影響を及ぼさない。
第五款
著作物の利用に対する強制使用許諾
第 67 条
削除
第 68 条
削除
第 69 条
293
音楽の著作物が録音された販売用の録音著作物が発行されてから 6 ヶ月を経過しており、その
音楽の著作物を利用して他の販売用録音著作物に製作しようとするときは、著作権事務所官庁
による強制利用許諾の許可を申請し、並びに利用の報酬(利用料)を支払ったうえ、当該音楽
著作物を利用して別途録音・製作することができる。
2 前項の音楽著作物に係る強制利用許諾の許可、使用料の計算方式及びその他遵守すべき事
項に関する規則は、主務官庁がこれを定める。
第 70 条
前条の規定により音楽著作物を利用した者は、その録音著作物の複製物を台湾の管轄区域外に
販売してはならない。
第 71 条
第 69 条の規定により、強制利用許諾の許可をした後、その申請に偽りがあったことを発見し
たときは、著作権所管庁はその許可を取消さなければならない。
2 第 69 条の規定により、強制利用許諾の許可を受けた者が、著作権所管庁が許可した方法に
より当該著作物を利用していない場合、著作権所管庁はその許可を廃止しなければならない。
第 72 条
削除
第 73 条
削除
第 74 条
削除
第 75 条
削除
第 76 条
削除
第 77 条
削除
第 78 条
削除
第四章
出版権
第 79 条
著作財産権がなく、又は著作財産権が消滅した文字的著述又は美術の著作物について、出版者
が文字的著述を整理、印刷し又は美術著作物の原作品を複写し、印刷し又はこれらに類する方
法により複製のうえ最初に発行し、並びに法により登記をした場合には、出版者はその版面に
つき、複写し、印刷し又はこれらに類する方法により複製する権利を専有する。
2 出版者の権利は、出版完成時から起算して 10 年存続する。
3 前項の保護期間は、当該期間が満了する当年の最終日を以て期間の終了とする。
4 出版権の譲渡又は信託は、登記を経なければ、第三者に対抗することができない。
5 出版権登記、譲渡登記、信託登記及びその他遵守すべき事項の規則は、主務官庁がこれを
定める。
第 80 条
著作財産権の消滅に関する第 42 条及び第 43 条の規定、著作財産権の制限に関する第 44 条か
ら第 48 条まで、第 49 条、第 51 条、第 52 条、第 54 条、第 64 条及び第 65 条の規定は、出版
権においてこれを準用する。
294
第四章ノ一
権利管理に関する電子情報及びデッドコピー防止措置
第 80 条ノ 1
著作権者によってなされた権利管理に関する電子的情報は、これを削除し又は変更することが
できない。但し、次に掲げる場合のいずれかに該当するものは、この限りでない。
一.行為時の技術的制限により、著作の権利管理に関する電子的情報を削除し又は変更しなけ
れば、当該著作物を合法的に利用することができない。
二.録音(録画)又は伝送のシステム転換にあたって、技術上削除又は変更が必要とされると
き。
2 著作の権利管理に関する電子情報が不法に削除され又は変更されたことを明らかに知って
いる場合は、当該著作物の原作品又はその複製物を頒布し、又は頒布を意図してそれを輸入し
若しくは所持することができず、また公開放送、公開実演又は公開伝送をすることもできない。
*第 80 条ノ 2(新設)
1 著作権者が他人が無断に著作物に侵入することを禁止又は制限するために設置したデッド
コピー防止措置は、著作権者の合法許諾を受けるまでは、誰でもそれを分解、破壊、若しくは
其の他の手段で忌避してはいけない。
2 蒸気のデッドコピー防止措置を分解、破壊、玉は忌避するための設備、機材、部品、技術
又は情報は、合法の許諾を受けずにはそれを製造、輸入、公衆に対する提供又は服務の提供の
行為を行ってはいけない。
3 前二項の規定は、下記の状況に於いては適用しない:
一.国家安全を維持するための場合;
二.中央又は地方機関が行う場合;
三.ファイル保存機構、教育機構、又は一般公衆開放の図書館等が(著作物の)情報の取得に関
する事前評価を行う場合;
四.未成年者を保護するため;
五.個人情報を保護するため;
六.電脳又はネットワークの安全試験を実施するため;
七.インクリプト工程の研究のため;
八.リバース工程を実施するため;
九.其の他主務官庁が定める状況。
4 前項角帽の規定の具体的な内容は、主務官庁が定める上、定期検討を行うべきである。
第五章
著作権仲介団体並びに著作権の審議及び調停委員会
第 81 条
著作財産権者は権利の行使、使用料の受取り及び分配のために、著作権所管庁の許可を経て著
作権仲介団体を組織することができる。
2 専属利用許諾における被許諾者(利用権者)も著作権仲介団体に加入することができる。
3 第 1 項の団体の設立許可、組織構成、職権及びその監督、輔導は、別途法律をもってこれ
を定める。
*第 82 条 1
著作権所管庁は、著作権の審議及び調停にあたる委員会を設置して、次に掲げる事項を処理さ
せなければならない。
一. 第 47 条第 4 項に定める使用料率について審議すること。
二. 著作権仲介団体と利用者間の使用料をめぐる紛争の調停をすること。
三. 著作権又は出版権をめぐる紛争の調停をすること。
四. その他著作権の審議及び調停についての諮問に応じること。
2 前項第 2 号の調停が成立しない場合は、法により仲裁に付する。
3 第 1 項第 3 号に定める紛争の調停が刑事に関わるものであるときは、親告罪の事件に限る。
第 82 条ノ 1
著作権所管庁は、調停が成立してから 7 日間以内に調停書を管轄裁判所に送り、査に付しなけ
ればならない。
295
2 前項調停書に関し、裁判所は速やかに審査を行い、法令、公序良俗に反し又は強制執行が
不可能なものを除き、裁判官が署名し、並びに裁判所の判を押した上、保存のために一通を取
っておくほかは、著作権所管庁に返還し当事者に送達させなければならない。
3 裁判所において確定審査をしなかった事件については、その理由を著作権所管庁に通知し
なければならない。
第 82 条ノ 2
調停が裁判所の審査を経て確定したものは、当事者は当該事件について再び起訴、告訴又は自
訴をすることができない。
2 前項裁判所の確定審査を経た民事調停は、民事の確定判決と同一の効力を有する。裁判所
の確定審査を経た刑事調停であって、金銭の給付又はその他の代替物若しくは有価証券の一定
の数量を目的とするものは、その調停書は執行の名義を有する。
第 82 条ノ 3
裁判所に係属中の民事事件について、判決が確定する前に調停が成立し、かつ裁判所が確定審
査をしたものは、調停成立時に起訴の取下げがあったとみなす。
2 刑事事件について、捜査中又は第一審裁判所における弁論終結前に調停が成立し、裁判所
の確定審査を経て、かつ当事者が取り下げに同意したものは、調停成立時に起訴又は自訴の取
下げがあったとみなす。
第 82 条ノ 4
裁判所の確定審査を経た民事調停について、無効又は取り消しにすべき事由があった場合、当
事者は原確定審査に関わった裁判所に対して調停を無効又は取り消しとする訴えを提起する
ことができる。
2 前項の訴えは、当事者が裁判所の定審査した調停書が送達された後 30 日以内にこれを提起
しなければならない。
第 83 条
前条の著作権審議及び調停委員会の組織規程並びに紛争に関する調停方法は、主務官庁が起草
して行政院の審査を経たうえ、これを公布する。
第六章
権利侵害の救済
第 84 条
著作権者又は出版権者は、その権利を侵害した者に対し、その侵害の排除を請求することがで
きる。侵害のおそれがあるときは、その防止を請求することができる。
第 85 条
著作人格権を侵害した者は、損害賠償の責任を負わなければならない。財産上の損害ではない
場合においても、被害者は相当の金額の賠償を請求することができる。
2 前項の侵害について、被害者は著作者の氏名若しくは名称の表示、内容の訂正又はその他
名誉回復に適当な処分を請求することができる。
第 86 条
著作者が死亡した後にその遺言状に別段の指定がないかぎり、次に掲げる者は、順位に従って
第 18 条に違反し又は違反のおそれがある者に対し、第 84 条及び前条第 2 項の規定により、救
済を請求することができる。
一. 配偶者
二. 子女
三. 父母
四. 孫、孫女
五. 兄弟姉妹
六. 祖父母
*第 87 条
次の各号のいずれかに該当するときは、この法律に別段の定めがある場合を除き、著作権又は
296
出版権を侵害したものとみなす。
一. 著作権者の名誉を侵害する手段で著作物を利用するもの;
二. 出版権の侵害に係るものであることを明らかに知っていながら、それを頒布し、又は頒
布を意図して公開に陳列し若しくは所持していたとき。
三. 著作財産権者又は出版権者から複製についての許諾を受けない複製物又は出版物を輸
入したとき。
四. 著作財産権者の同意を得ないで著作物の原作品若しくはその複製物を輸入したとき。
五. コンピュータプログラムに関する著作財産権の侵害に係る複製物であることを明らか
に知っていながら、営業のために使用したとき。
六. 著作財産権侵害に係るものであることを明らかに知っていながら、所有権を移転し又は
賃貸し以外の方法により頒布し、又は著作財産権侵害に係るものであることを明らかに
知っていながら、頒布を意図して公開に陳列し若しくは所持していたとき。
第 87 条ノ 1
次の各号のいずれかに該当するときは、前条第 4 号の規定を適用しない。
一. 中央又は地方機関の利用に供するために輸入したとき。但し学校又はその他の教育機構の
利用に供するために輸入し、又は資料保存を目的とせずに映画著作物の原作品若しくはそ
の複製物を輸入したときは、この限りでない。
二. 営利を目的としない学術、教育若しくは宗教機構の資料保存のため、映画著作物の原作品
若しくは一定の数量の複製物を輸入し、又はその図書館での借覧若しくは資料保存の目的
で映画著作物以外のその他の著作物の原作品若しくは一定の数の複製物を輸入し、かつ第
48 条の規定によりこれを利用しなければならないとき。
三. 輸入者の個人的使用に供するため、又は入国者の荷物の一部として著作物の原作品若しく
は一定の数量の複製物を輸入したとき。
四. 貨物、機器、若しくは設備に付けられた著作物の原作品若しくはその複製物であって、貨
物、機器若しくは設備の合法的輸入とともに輸入されたときは、当該著作物の原作品若し
くはその複製物を使用する際、又は貨物、機器若しくは設備を操作する際には、それを複
製してはならない。
五. 貨物、機器又は設備の案内書又はマニュアルに付属して貨物、機器又は設備の合法的輸入
とともに輸入されたとき。但し、主に案内書又はマニュアルを輸入したときは、この限り
でない。
2 前項第 2 号及び第 3 号の一定の数量は、主務官庁が別途これを定める。
第 88 条
故意又は過失により他人の著作財産権又は出版権を不法に侵害した者は、損害賠償の責任を負
う。数人が共同で不法に侵害したときは連帯して賠償責任を負う。
2 前項の損害賠償につき、被害者は次の規定により択一して請求することができる。
一. 民法第 216 条の規定により請求する。但し、被害者がその損害を証明できないときは、
その権利の行使により通常の情況からして予期できる利益から、侵害を受けた後に同一権
利を行使して得た利益を差引いた差額を以てその受けた損害の額とすることができる。
二. 侵害者に対し侵害行為により得た利益を請求する。但し、侵害者がその原価又は所要費用
を証明できないときは、その侵害行為により取得した全部の収入をその得た利益とする。
3 前項の規定により、被害者が容易にその実際の損害額を証明できないときは、裁判所に対
して侵害の情状を斟酌して新台湾ドル 1 万元以上 100 万元以下の賠償額を算定するよう請求す
ることができる。損害行為が故意に為され、且つ情状が重大な場合は、賠償額を新台湾ドル
500 万元にまで増やすことができる。
第 88 条ノ 1
第 84 条若しくは前条第 1 項により請求するときは、侵害行為により製作された物、若しくは
主として侵害の用途に使われた物について、焼却廃棄その他必要な処置を請求することができ
る。
第 89 条
被害者は侵害者の費用負担において、判決書内容の全部又は一部を新聞紙、雑誌に掲載するこ
とを請求することができる。
297
第 89 条ノ 1
第 85 条及び第 88 条の損害賠償請求権は、請求権者が損害のあったこと及び賠償義務のある人
を知った時から起算して 2 年間行使しないことにより消滅する。権利侵害行為のあった時から
10 年間を超えたときも同様とする。
第 90 条
共同著作物の各著作権者はその著作物を侵害した者に対し、それぞれ本章の規定により救済を
請求し、並びにその持分に基づき、損害賠償を請求することができる。
2 前項の規定は、その他の関係により成り立つ共同著作財産権若しくは出版権の共有者にお
いてもこれを準用する。
*第 90 条ノ 1
著作権者又は出版権者は、その著作権若しくは出版権の侵害に係る物品を輸入し、若しくは輸
出した者に対し、あらかじめ税関に差押えを申し立てることができる。
2 前項の申立ては書面を以てこれをし、侵害の事実を釈明するとともに、差押処分を受ける
者が差押えにより蒙った損害の賠償の担保として、その輸入貨物について税関が見積った税金
完納後の価格又は輸出貨物の本船渡し価格に相当する保証金を提供しなければならない。
3 税関が差押えの申し立てを受理したときは、直ちに申立人に通知しなければならない。前
項規定に適合して差押えを行うときは、書面をもって申立人及び差押えを受ける者に通知しな
ければならない。
4 申立人又は差押え処分を受けた者は、税関に対し差押えられた物件の検査を申し立てるこ
とができる。
5 差し押えられたものについて、申立人が裁判所の民事確定判決を経て著作権又は出版権の
侵害に係るものとされたときは、税関がこれを官没する。官没された物のコンテナ使用期間超
過料金、倉庫賃貸、積み卸し等の関連費用及び焼却廃棄処分に要する費用は、差押処分を受け
た者が負担しなければならない。
6 前項の焼却廃棄処分に要する費用に関し、税関が期間を限定して納付することを通知して
も納付のないときは、法により移送して強制執行を行う。
7 次の各号のいずれかに該当するものは、税関が差押処分を廃止し、輸出入貨物の通関に関
連する規定により処理するほか、申立人は差押処分を受けた者が差押えにより蒙った損害を賠
償しなければならない。
一. 差し押えられたものが、裁判所の確定判決を経て著作権又は出版権を侵害したものに当た
らないと判断されたとき。
二. 税関が申立人に差し押えの受理を通知した日から 12 日内に、差し押えの物件を侵害物品
とする訴訟が提起された旨の告知を受けなかったとき。
三. 申立人が差押処分廃止の申立てがあったとき。
8 前項第 2 号に定める期間は、必要なときに税関がこれを 12 日間延長することができる。
9 次の各号のいずれかに該当するものは、税関は申立人の申立てにより保証金を返還しなけ
ればならない。
一. 申立人が勝訴の確定判決を取得し、又は差し押えを受けた者との間に和解が成立し、引続
き保証金を提供する必要がなくなったとき。
二. 差押処分廃止後、申立人は、20 日以上の期間を定めて差押処分を受けた者に権利の行使
を催告したにもかかわらず、権利行使の行為がなかったことを証明したとき。
三. 差押処分を受けた者が返還に同意したとき。
10 差押えを受けた者が、第二項の保証金につき、質権者と同一の権利を有する。
11 税関が職務を執行する際、輸出入の貨物の外観から判断して著作権の侵害の容疑を発覚
する場合、一ヶ日以内に権利者に通知して、且つ輸出入名義人に合法許諾の資料の提示を要
求できる。権利人が通知を受けたあと、空輸の輸入塚も角場合は 4 時間以内に、空輸の輸入
貨物又は海運の輸出入貨物の場合は一ヶ日以内に税関に至って貨物検分の協力を行うべきで
ある。権利人が不明瞭、又はそれに通知が不能、又は権利人が通知の期限内に税関まで貨物
検分の協力に行かなかった場合、又は権利人の検分協力によって係争貨物が権利を侵害して
いないことが判明する等の場合に於いては、其の他痛感関連規定に違反していなければ、税
関が貨物を通関させるべきである。
12 検分の結果、著作権侵害の容疑のある貨物に対しては、税関は通関の中止(差し控える)
措置を取るべきである。
13 税関が通関を中止する場合、権利人が三ヶ日以内に、本条第 1 項から第 10 項までの規定
298
によって、税関に差押えの請求をしない場合、又は権利を保全する民事も地区は刑事訴訟手
続きを取らない場合、其の他通関関連の規定に違反していなければ、通関させるべきである。
第 90 条ノ 2
前条の実施方法は、主務官庁が財政部と共同でこれを定める。
*第 90 条ノ 3
第 80 条ノ 1 又は 80 条ノ 2 の規定に違反して著作権者に損害を生じさせたものは、賠償責任
を負う。数人が共同して違反したときは、賠償の連帯責任を負う。
2 第 84 条、第 88 条ノ 1、第 89 条ノ 1 及び第 90 条ノ 1 の規定は、第 80 条ノ 1 の規定に違反
した場合において準用する。
第七章
罰
則
*第 91 条 1
無断に複製の手段によって、他人の著作財産権を侵害するものは、三年以下の有期懲役、又
は拘束のほか、選択的に NT75 万元以下の罰金を科する若しくは併科する刑に処する。
2 販売又は貸し出しの目的で無断に複製の手段によって他人の著作財産権を侵害するもの
は、6 ヶ月以上 5 年以下の有期懲役の上、選択的に NT20 万元以上 200 万元以下の罰金を併科
する刑に処する。
3 光ディスクに複製する方法により、第 1 項の罪を犯したものは、6 ヶ月以上 5 年以下の懲
役、拘留に処し、又は新台湾ドル 50 万元以上 500 万元以下の罰金を併科する。
4 個人参考用又は合理的仕様の著作物(の複製)は著作権侵害にならない。
*第 91 条ノ 1
所有権を移転する手段で著作物の原作品又はその複製品を頒布して、他人の著作権を侵害す
るものは、3 年以下の有期懲役、拘束、又は NT50 万元以下の罰金を科する若しくは併科する
刑に処する。
2 著作財産権を侵害する服製品の事を知り、それを頒布する又は頒布の意図で公開陳列する
或いはそれを所持するものは、3 年以下の有期懲役系のほか、選択的に NT7万元以上 70 万元
以下の罰金を併科する刑に処する。
3 前項の罪を犯して、その複製物が光ディスクである場合は、6 ヶ月以上 3 年以下の有期懲
役のほか、選択的に NT20 万元以上 200 万元以下の罰金を併科する罪に処する。但し、第 87
条第 4 号の規定に違反して光ディスクを輸入する場合は、この限りでない。
4 前 2 項の罪を犯したものが、その物品の出所を供述し、これにより(捜査機関による)検挙
が成功した時は、その刑を軽減することが出来る。
*第 92 条
無断に営利を目的として公開口述、公開放送、公開上映、公開実演、公開伝送、公開展示、改
作、編集又は貸与の方法により他人の著作財産権を侵害した者は、3 年以下の懲役、拘留に処
し、又は新台湾ドル 75 万元以下の罰金を併科する。
2 非営利目的で前項の罪を犯し、その侵害した著作物が五つを超え、又は権利者が受けた損
害が新台湾ドル 3 万元を超えるときは、2 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 50 万
元以下の罰金を科し又はこれを併科する。
*第 93 条 1
営利を目的として次に掲げる場合のいずれかに該当するものは、2 年以下の懲役、拘留に処し、
又は新台湾ドル 50 万元以下の罰金を併科する。
一. 第 15 条から第 17 条までの著作人格権を侵害したもの;
二. 第 70 条の規定に違反したとき。
三. 第 87 条第 2 号、第 3 号、第 5 号又は第 6 号のいずれの方法により他人の著作財産権を
侵害したとき。但し第 91 条ノ 1 第二項及び第三項の情況はその限りでない。
2 非営利目的で前項の罪を犯し、その複製物が五つを超え、又は権利者が受けた損害が新台
湾ドル 5 万元を超えるときは、1 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 25 万元以下の
罰金を科し又はこれを併科する。
299
第 94 条
第 91 条第 1 項、第 2 項、第 91 条ノ 1、第 92 条又は第 93 条に定める犯罪を業とする者は、1
年以上 7 年以下の懲役に処し、並びに新台湾ドル 30 万元以上 300 万元以下の罰金を併科する
ことができる。
2 第 91 条第 3 項に定める犯罪を業とする者は、1 年以上 7 年以下の懲役に処し、並びに新台
湾ドル 80 万元以上 800 万元以下の罰金を併科することができる。
第 95 条
第 112 条の規定に違反したものは、1 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 2 万元以上
25 万元以下の罰金を科し又はこれを併科する。
第 96 条
第 59 条第 2 項又は第 64 条の規定に違反したものは、新台湾ドル 5 万元以下の罰金を科する。
*第 96 条ノ 1
以下の状況の何れに該当する場合、1 年以下の有期懲役、拘束、又な NT2 万間以上 25 万間以
下の罰金をかする若しくは併科する罪に処する:
1 第 80 条ノ 1 に違反したもの;
2 第 80 条ノ 2 第 2 項に違反したもの。
第 96 条ノ 2
本章により罰金を科するときは、犯人の資力及び犯罪収益を斟酌しなければならない。犯罪収
益が罰金の最も多い額を超えるときは、その犯罪収益の範囲内で情状を考慮して加重すること
ができる。
第 97 条
削除
第 98 条
第 91 条から第 96 条ノ 1 までの規定に定める犯罪に関し、犯罪の用途に供され、又は犯罪によ
り得た物は、これを没収することができる。但し、第 91 条第 3 項及び第 91 条ノ 1 第 3 項に定
める犯罪に関し、没収し得る物は犯人に属するものに限らない。
第 98 条ノ 1
第 91 条第 3 項又は第 91 条ノ 1 第 3 項に定める犯罪を犯した行為者が逃げ失せ、確認するすべ
がない場合、犯罪の用途に供され、又は犯罪により得た物について、司法警察機関は直接これ
を官没することができる。
2 前項官没に係る物について、官没された金員を国庫に納めるほかは、これを焼却する。そ
の焼却又は官没金の処理手続については、社会秩序保護法の関連規定を準用してこれを行う。
第 99 条
第 91 条から第 95 条までの罪を犯した者は、被害者その他告訴権を有する者の申立により、判
決書の全部又は一部を新聞紙に掲載させることができ、その費用は被告の負担とする。
第 100 条
本章の罪は告訴をまって論ずる。但し、第 91 条第 3 項、第 91 条ノ 1 第 3 項及び第 94 条の罪
はこの限りでない。
第 101 条
法人の代表者、法人若しくは自然人の代理人、又は被用者その他の従業員が、業務の遂行によ
り第 91 条から第 96 条ノ 1 までの罪を犯したときは、各当該規定によりその行為者を処罰する
ほか、当該法人又は自然人に対しも各当該条文に定める罰金を科する。
2 前項の行為者、法人又は自然人の一方に対して為した告訴又は告訴の取り下げは、他方に
も効力が及ぶ。
300
第 102 条
認許を受けない外国法人は、第 91 条から第 96 条ノ 1 までの罪に対して告訴し又は自訴を提
起することができる。
第 103 条
司法警察官又は司法警察は、他人の著作権又は出版権を侵害することで告訴され、告発された
者に対して、法によりその侵害物品を差押え、送検することができる。
第 104 条
削除
第八章
附
則
第 105 条
この法律により強制利用許諾、出版権登記、出版権譲渡登記、出版権信託登記、調停、出版権
登記の調査・閲覧若しくは謄本の発給を請求した者は、政府料金を納付しなげればならない。
2 前項の料金基準は、主務官庁がこれを定める。
第 106 条
この法律が 1992 年年 6 月 10 日に改正・施行される前に完成した著作物であって、かつ 1998
年 1 月 21 日に改正・施行される前の第 106 条から第 109 条までの規定のいずれかに該当するも
のは、本章に別段の定めがある場合を除き、この法律を適用する。
2 この法律が台湾 81 年 6 月 10 日に改正・施行された後に完成した著作物は、この法律を適用
する。
第 106 条ノ 1
著作物が世界貿易機関(WTO)協定が台湾の管轄区域内において効力を生じる日の前に完成さ
れたもので、この法律の従来の規定により著作権を取得しておらず、この法律が定める著作財
産権期間の計算によりなお存続中のものは、本章別段の規定がある場合を除き、この法律を適
用する。但し、外国人の著作物であって、その本国における保護期間が満了したものは、これ
を適用しない。
2 前項の但し書きにいう本国とは、西暦 1971 年文学及びと芸術的著作物を保護するベルヌ条
約第 5 条の規定により、これを定める。
第 106 条ノ 2
前条の規定により保護を受ける著作物について、その利用者は世界貿易機関協定が台湾の管轄
区域内において効力を生じる日の前に、既に当該著作物の利用に着手し、又は当該著作物
を利用するために重大な投資を行った場合、本章に別段の規定がある場合を除き、当該効力発
生日から起算して 2 年内に引き続き利用することができ、第 6 章及び第 7 章の規定を適用しな
い。
2 この法律が台湾 92 年(2003 年)6 月 6 日に改正・施行される日から、利用者が前項規定に
より著作物を利用するときは、賃貸し又は貸出しを除き、著作物を利用された著作財産権者に
対し、当該著作物について通常商談を経た場合に支払うべき合理的な使用料を支払わなければ
ならない。
3 前条規定により保護を受ける著作物について、利用者が許諾を受けないで完成した複製物
は、この法律が改正・公布された日から一年を経過した後に、これをさらに販売してはならな
い。但し、その賃貸し又は貸出しがなおできる。
4 前条規定により保護を受ける著作物を利用して別途創り出した著作物の複製物は、前項の
規定を適用しない。但し、第 44 条から第 65 条までの規定に該当する場合を除き、著作物を利
用された著作財産権者に対し、当該著作物につき通常商談を経た場合に支払うべき合理的な使
用料を支払わなければならない。
第 106 条ノ 3
世界貿易機関協定が台湾の管轄区域内において発効する日前に、第 106 条ノ 1 に定める著作物
を改作して完成した二次的著作物で、且つこの法律の保護を受けるものは、当該効力発生日以
降にも引き続き利用することができ、第 6 章及び第 7 章の規定を適用しない。
301
2 この法律が台湾 92 年(2003 年)6 月 6 日に改正・施行される日から、利用者が前項規定に
より著作物を利用するときは、原著作物の著作財産権者に対し、当該著作物につき通常商談を
経て支払うべき合理的な使用料を支払わなければならない。
3 前二項の規定は、二次的著作物に対する保護に影響を及ぼさない。
第 107 条
削除
第 108 条
削除
第 109 条
削除
第 110 条
第 13 条の規定は、この法律が 1992 年 6 月 10 日に改正・施行される前に既に登録を完了した
著作物については、これを適用しない。
第 111 条
次の各号のいずれかに該当するものは、第 11 条及び第 12 条の規定を適用しない。
一. この法律が 1992 年 6 月 10 に改正・施行される前の第 10 条及び第 11 条の規定により著
作権を取得したとき。
二. この法律が 1998 年 1 月 21 日に改正・施行される前の第 11 条及び第 12 条の規定により、
著作権を取得したとき。
第 112 条
この法律が 1992 年 6 月 10 日に改正・施行される前に、その翻訳が台湾 81 年 6 月 10 日に改正・
施行される以前のこの法律による保護を受ける外国人の著作物については、その著作権者の承
諾を得たものでなければ、81 年 6 月 10 日にこの法律が改正・施行された後には、第 44 条から
第 65 条までの規定に該当する場合を除き、これをさらに複製してはならない。
2 前項翻訳の複製物は、この法律が台湾 81 年 6 月 10 日に改正・施行されて 2 年を経過した後
に、これをさらに販売してはならない。
第 113 条
この法律の改正・施行がなされる台湾 92 年 6 月 6 日以前に取得した出版権に関し、この法律に
定める権利期間により計算してなお存続中の場合は、この法律の規定を適用する。
第 114 条
削除
第 115 条 本国と外国の団体又は機関が相互に著作権保護の取り決めを締結して行政院の許可
を得たものは、第 4 条にいう協定とみなす。
第 115 条ノ 1
出版権の登記原簿、登録台帳又は出版物の見本は、公衆の閲覧・抄録に提供しなければならな
い。
2 1998 年 1 月 21 日にこの法律が改正・施行される以前の著作権登録台帳、登記原簿又は著
作物の見本は、公衆の閲覧・抄録に提供することができる。
第 115 条ノ 2
裁判所は著作権の訴訟事件を処理するために、専門法廷を設け、又は専門の者を指定して担当
させることができる。
2 著作権に係る訴訟事件について、裁判所は判決書の正本を一通著作権事務所管庁に送らなけ
ればならない。
302
第 116 条
削除
第 117 条
この法律は、1998 年 1 月 21 日に改正・公布された第 106 条ノ 1 から第 106 条ノ 3 までの規定
が世界貿易機関協定が台湾の管轄区域内において発効する日より施行するほか、公布日より施
行する。
303
公 平 取 引 法
*1991 年 2 月 4 日公布施行
*1999 年 2 月 3 日改正公布施行
*2000 年 4 月 26 日改正公布施行
*2002 年 2 月 6 日改正公布施行(第 5 条ノ 1、第 11 条ノ 1、第 27 条ノ 1 及び第 42 条ノ 1 を新
設、並びに第 7 条、第 8 条、第 11 条から第 17 条まで、第 23 条ノ 4 及び第 40 条を修正)
第
一
章
総
則
第 1 条
立法趣旨
取引秩序と消費者利益を保護し、公平な競争を確保し、経済の安定と繁栄を促進する目的をも
って本法を制定する。本法に定めのない場合は、その他の関係法律の規定を適用する。
第 2 条
事業者の定義
本法において事業者とは、次に掲げるものをいう。
一.会社。
二.一人資本又は合資の商工業商号。
三.同業組合)。
四.その他商品又は役務を提供して取引をする個人又は団体。
第 3 条
取引相手方
本法において取引相手方とは、事業者と取引し、又は取引を成立させる供給者又は需要者をい
う。
第 4 条
競争の認定
本法において競争とは、二以上の事業者が市場において比較的有利な価格、数量、品質、役務
又はその他の条件によって取引の機会を求める行為をいう。
第 5 条
独占の意義
本法において、独占とは、事業者が特定市場において競争のない状態にあり、又は圧倒的な地
位を有して、競争を排除することのできる能力を有することをいう。
二以上の事業者は、実際価格競争をしておらず、その全体の対外関係が前項規定に該当する場
合は、独占とみなす。
第一項でいう特定市場とは、事業者が一定の商品又は役務につき競争する区域又は範疇をいう。
第 5 条ノ 1
独占事業認定の対象外
事業者は、左の各号に掲げる場合のいずれにも該当しないときは、前条独占事業者の認定範囲
に含まない。
一. 一の事業が特定分野での市場占拠率が二分の一に達している場合。
二. 二の事業全体が特定分野での市場占拠率が三分の二に達している場合。
三. 三の事業全体が特定分野での市場占拠率が四分の三に達している場合。
前項各号の場合の一に該当して、その個別事業が当該特定分野での市場占拠率が十分の一に
達していないとき、又は前の会計年度の事業の売上高が新台湾ドル10億元に達していないとき
は、当該事業を独占事業の認定範囲に含まない。
事業を設立し、又は事業者が商品若しくは役務を提供して特定分野の市場に参入することが
法令、技術による制限を受け、又はその他市場の需給に影響し、競争を排除することになると
きは、前二項認定範囲に含まない場合においても、中央主務官庁はそれを独占事業と認定する
ことができる。
304
第 6 条
事業の結合
本法において結合とは、事業者が次の各号の一に該当する場合をいう。
一.他の事業者と合併する場合。
二.他の事業者の株式若しくは出資額を所有し若しくは取得し、他の事業者の議決権を有する
株式若しくは総資本額の三分の一以上に達した場合。
三.他の事業者の全部若しくは重要部分の営業若しくは財産を譲受け、又は賃借する場合。
四.他の事業者と経常的に共同で事業者を経営し、又は他の事業者の委託を受けて経営する場
合。
五.直接又は間接に他の事業者の業務経営又は人事の任免を支配する場合。
前項第二号の株式又は出資額を計算するときは、当該事業者と支配又は従属の関係にある
事業者が所有し若しくは取得している他の事業者の株式又は出資額を併せて計上しなけ
ればならない。
第 7 条
連合行為(共同行為)の意義
本法において連合行為とは、事業者が契約、協定又はその他の方式の合意によって、競争関係
のある他の事業者と共同して商品又は役務の価格を決定し、又は数量、技術、製品、設備、取
引対象、取引地区等に制限を加え、相互に事業活動を拘束する行為をいう。
前項でいう連合行為は、同一の生産、販売の段階における事業者の水平的統合が、生産、商品
の取引或いは役務の需給に関わる市場機能に影響するものに限る。
第一項でいうその他の方式による合意とは、法律上の拘束力の有無を問わず、契約、協定以外
の意思の連絡が形成されることによって、事実上共同行為の成立に至らしめるものをいう。
同業組合が、定款(会則)或いは会員大会、理事会、監事会の決議又は他の方法によって事業
活動を拘束する行為も第二項の水平的統合にあたる。
第 8 条
多層連鎖販売の意義
本法において多層連鎖販売(無限連鎖講)とは、宣伝普及或いは販売に関する計画又は組織に
対して、加入者が一定の代価を支払うことで、商品又は役務の宣伝普及、販売及び他人の加入
を紹介する権利を取得し、またそれによりリベート、賞金又はその他の経済利益を獲得するこ
とができるものをいう。
前項でいう一定の代価とは、金銭の給付、商品の購入、役務の提供又は債務の負担をいう。
この法律において多層連鎖販売事業者とは、多層連鎖販売について運営計画を立て或いは組織
を設立して、多層連鎖販売の企画を統括する事業者をいう。
外国事業の加入者又は第三者が、当該事業の多層連鎖販売に関連する計画又は組織を導入する
ときは、前項の多層連鎖販売事業者とみなす。
この法律において加入者とは次の者をいう。
一.多層連鎖販売事業に関する計画又は組織に加入して、商品又は役務の宣伝普及、販売をし、
並びに他人の加入を紹介する者。
二.多層連鎖販売事業者と約定して、代価を支払って一定の額に累積してはじめて商品或いは
役務の宣伝普及、販売及び他人の加入を紹介する権利を取得する者。
第 9 条
主務官庁
本法において主務官庁とは、中央においては行政院公平取引委員会、直轄市においては直轄市
政府、県(市)においては県(市)政府をいう。
本法に規定する事項が他の部会の所掌事務に関わるときは、行政院公平取引委員会が各該当部
会と協議してこれを処理する。
305
第二章
独占、結合、連合行為
第 10 条
独占事業による不正行為の禁止
独占の事業者は、次に掲げる行為をしてはならない。
一.不公平な方法をもって直接又は間接他の事業者が競争に参入することを阻害すること。
二.商品の価格又は役務の報酬について不当な決定、維持又は変更をすること。
三.正当な理由がなく取引相手方に優遇させること。
四.その他市場の地位を濫用する行為。
第 11 条
事業結合の届出
事業者の結合が次に掲げる場合の一に該当するときは、予め中央主務官庁に届け出なければな
らない。
一. 事業者の結合により、その市場占拠率が三分の一に達する場合。
二. 結合に参加した事業者の一の市場占拠率が四分の一に達している場合。
三. 結合に参加した事業者の前の会計年度の売上高が中央主務官庁で公告する金額を超える
場合。
前項第三号の売上高について、中央主務官庁は、金融機関と非金融機関に分けてそれぞれ公告
することができる。
事業者は、中央主務官庁が事業者の届出につき提出した資料すべてを受理した日から三十日を
経過するまでは、結合をしてはならない。ただし、中央主務官庁は、その必要があると認める
場合には、書面をもって届け出た事業者に通知して、当該期間を短縮し或いは延長することが
できる。
中央主務官庁が前項但し書により延長する期間は三十日間を超えてはならない。期間が延長さ
れた届出については、第 12 条の規定により決定をしなければならない。
中央主務官庁が期間を過ぎても第三項但し書の延長に関する通知或いは前項の決定をしてい
ない場合、事業者は直ちに結合をすることができる。ただし次に掲げる場合のいずれに該当す
るときは、直ちに結合をすることができない。
一. 届け出た事業者の同意を得て期間を再延長した場合。
二. 事業者の届出事項には虚偽の記載があった場合。
第 11 条ノ 1
結合規定の適用除外
前条第一項の規定は次の場合には適用しない。
一、 結合会社のうち、いずれか一の会社が他の会社の 50%以上議決権のある株式又は出資額
を所有し、さらに当該他の会社と結合をしようとする場合。
二、 同一の会社が 50%以上議決権のある株式又は出資額を所有する会社間の結合である場合。
三、 会社がその営業、財産の全部若しくは重要部分、又は独立して運営することのできる営
業の全部若しくは一部を、独自新たに開設した他の会社に譲渡する場合。
四、 会社が会社法第 167 条第 1 項但し書又は証券取引法第 28 条ノ 2 の規定に基づいて株主が
所有していた株式を取り戻し、それが原因で他の株主が第 6 条第 1 項第 2 号に掲げる場合
に該当することに至らしめる場合。
第 12 条
事業結合届出の条件
事業結合の届出に関し、その結合によりもたらされる経済全体の利益が競争制限による不利益
よりも大きい場合、中央主務官庁は、その結合を禁止してはならない。
中央主務官庁は、経済全体の利益が競争制限による不利益より大きいことを確保するため、第
11 条第 4 項の届出について為された決定に条件又は負担を付けることができる。
第 13 条
結合規定違反の処罰
事業者が第 11 条第 1 項、第 3 項の規定に違反して結合をし、又は届け出た後、中央主務官庁
より結合を禁止されているにもかかわらず結合をし、又は前条第 2 項の結合に付けられた負担
306
を履行しない場合、中央主務官庁はその結合を禁止し、期間を限定して事業を分けて設立させ、
株式の全部若しくは一部を処分し、営業の一部を譲渡し、担当職務を免除することを命じ、又
はその他必要な処分を為すことができる。
事業者が中央主務官庁が前項により為した処分に違反したときは、中央主務官庁は、解散、営
業停止又は強制休業を命じることができる。
第 14 条
連合行為の禁止と例外
事業者は連合行為をしてはならない。ただし、次に掲げる場合の一に該当し、かつ経済全体と
公共利益に有益で、かつ申請を経て中央主務官庁の許可を受けた場合はこの限りではない。
一.コストの削減、品質の改良又は能率の向上のため、商品の規格又は型式を統一する場合。
二.技術のレベルアップ、品質の改良、コストの削減又は能率の向上のため、共同して商品又
は市場を研究開発する場合。
三.事業者の経営の合理化を促進するため、それぞれ専門分野において事業を展開する場合。
四.輸出を確保し又は促進するため、専ら海外市場での競争について約定をする場合。
五.貿易機能を強化するため、外国商品の輸入について共同行為をする場合。
六.経済が不景気な間に、商品の市場価格が平均生産コストより低くて、当該業種に従事する
事業者が引続き事業を維持するのが難しく、又は生産が過剰になるため、計画的に需給に
応じて生産販売の数量、設備又は価格に制限を加える共同行為である場合。
七.中小企業の経営の効率向上を促進し、又はその競争能力を強化するための共同行為である
場合。
中央主務官庁は、前項の申請を受け付けた日から三ヶ月以内に許可か不許可の決定をしなけれ
ばならず、必要なときは一回限り延長することができる。
第 15 条
条件等の付加
中央主務官庁が前条の許可をするときは、条件又は負担を付加することができる。
許可に期限をつけ、その期限は三年を超えてはならない。事業者は、正当な理由があるときは、
期限が満了するまでの三ヶ月間の間に、書面をもって中央主務官庁に期間の更新を申請するこ
とができ、更新は一回につき三年を超えてはならない。
第 16 条
許可の取り消し、変更
連合行為について許可を受けた後、許可された事由の消滅、経済事情の変更、若しくは事業者
に許可の範囲を踰越する行為があった場合、中央主務官庁は、許可を廃止し、許可の内容を変
更し、その行為の停止若しくは改正を命じ、又は必要な是正措置を講ずることができる。
第 17 条
連合行為許可の記録及び公告
中央主務官庁は、前三ヶ条の許可、条件、負担、期限及び関連処分について、専ら登記に資す
る帳簿を設置し、並びに政府公報にこれを掲載しなければならない。
第三章
不正競争
第 18 条
転売価格決定の自由
事業者はその取引の相手方に対し、供給した商品を第三者に転売し、又は第三者が更に転売す
るときに、自由に価格を決定することを容認しなければならず、これと相反する約定がある場
合、その約定は無効とする。
第 19 条
公正競争妨害の禁止行為
次に掲げる行為の一に該当するものであって、競争を制限し、又は公正な競争を妨害するおそ
れがあるときは、事業者はこれを行ってはならない。
一.特定の事業者に損害を加える目的で、他の事業者が当該特定事業者に対し、供給、購入又
はその他の取引を断絶するように勧める行為。
307
二.正当な理由がなく、他の事業者を差別的に取り扱う行為。
三.脅迫、利益による誘引又はその他不正当な方法で、競争者の取引相手方を自己と取引する
ようにする行為。
四.脅迫、利益による誘引又はその他不正当な方法で、他の事業者が価格上の競争をしない、
又は結合若しくは連合に参加しないようにする行為。
五.脅迫、利益による誘引又はその他不正当な方法で、他の事業者の製造販売の秘密、取引相
手方の情報若しくはその他技術上の秘密を取得する行為。
六.取引相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもって取引する行為。
第 20 条
模倣行為の禁止
事業者は、その営業において提供する商品又は役務について、次に掲げる行為をしてはならな
い。
一.関係事業者又は消費者に通常認識されている他人の氏名、商号若しくは社名、商標、商品
の容器、包装の外観又はその他他人の商品を示す表示と同一若しくは類似のものを使用し、
他人の商品と混同誤認を生じさせ、又は当該表示を使用した商品を販売、運送、輸出若しく
は輸入する行為。
二.関係事業者又は消費者に通常認識されている他人の氏名、商号若しくは社名、標章又はそ
の他他人の営業、役務を示す表示と同一若しくは類似のものを使用し、他人の営業若しくは
役務の施設又は活動と混同誤認を生じさせる行為。
三.同一の商品若しくは同類の商品について、登録を受けていない外国の著名商標と同一若し
くは類似のものを使用し、又は当該商標を使用した商品を販売、運送、輸出若しくは輸入す
る行為。
前項の規定は、次に掲げる各号の行為について適用しない。
一.普通の使用方法で、商品自体について慣習上通用されている名称、若しくは取引上同類の
商品に慣用されている表示を使用するもの、又は当該名称若しくは表示を使用した商品を販
売、運送、輸出若しくは輸入するもの。
二.普通の使用方法で取引上同種の営業又は役務で慣用の名称若しくはその他の表示を使用す
るもの。
三.善意で自己の氏名を使用する行為、又はその氏名を使用した商品を販売、運送、輸出若し
くは輸入するもの。
四.前項第 1 号又は第 2 号に掲げる表示について、関係事業者又は消費者に通常認識されるに
なる以前からこれと同一又は類似のものを善意に使用していた行 為、又はその表示は善意
の使用者からその営業とともに承継して、使用したもの、又はその表示を使用した商品を販
売、運送、輸出若しくは輸入した行為。
事業者は他の事業者の前項第 3 号及び第 4 号の行為により、その営業、商品、施設若しくは活
動が損害を受け、又は混同を生じさせるおそれがあるときは、他の事業者に適当な表示の付記
をするよう求めることができる。但し、単に商品の運送を行うものに対しては、これを適用し
ない。
第 21 条
虚偽の記載又は広告
事業者は、商品若しくはその広告に、若しくはその他公衆に知らせる方法で、商品の価格、数
量、品質、内容、製造方法、製造日期、使用期限(賞味期限)、使用方法、用途、原産地、製
造者、製造地、加工者、加工地等について、虚偽不実若しくは錯誤を招く表示又は表徴をして
はならない。
事業者は、前項の虚偽不実若しくは錯誤を招く表示を記載した商品の販売、運送、輸出若しく
は輸入をしてはならない。
前二項の規定は事業者の役務にこれを準用する。
広告代理業者が明らかに知っていながら、又は知ることのできる情況の下にもかかわらず、錯
誤を招く広告を制作し、若しくは設計したときは、広告主と損害賠償の連帯責任を負う。広告
媒体業者がその伝達又は掲載した広告が他人の錯誤を招くおそれがあることを明らかに知っ
ていて、若しくは知り得るにもかかわらず、それを伝達し又は掲載したものは、広告主と損害
賠償の連帯責任を負う。
第 22 条
308
商業上信用毀損の禁止
事業者は、競争の目的をもって他人の営業上の信用を害するような不実な事柄を陳述し又は流
布してはならない。
第 23 条
多層連鎖販売の管理
多層連鎖販売は、その加入者がリベート、賞金又はその他の経済利益を取得するのは他人の加
入を紹介することによるもので、商品又は役務の宣伝普及若しくは販売の合理的市価によるも
のでない場合、これを行ってはならない。
第 23 条ノ 1
加入者の解約及び返品の申請
多層連鎖販売の加入者が契約締結日から十四日以内に書面をもって多層連鎖販売事業者に契
約の解除を通知することができる。
多層連鎖販売事業者は、契約の解除が効力を生じた後、三十日以内に加入者からの返品請求に
より商品を取り戻し、又は加入者が自ら商品を送り返すことを受諾し、並びに加入者が契約を
解除する際にすべての商品仕入の代金及びその他加入時に支払った費用を返還しなければな
らない。
多層連鎖販売事業者は、前項の規定により加入者の支払いについて返還するときは、商品が返
品される際に加入者の責めに帰すことのできる事由により商品が毀損、滅失した価格、及び当
該商品の仕入により加入者に支払った賞金又は報酬を差し引くことができる。
前項の返品は当該事業者による取り戻しであるときは、その商品を取り戻すために必要な運送
費用を差し引くこともできる。
第 23 条ノ 2
多層連鎖販売加入者の契約終止及び脱退
加入者は前条第 1 項の契約解除権の期間が経過した後においても随時に書面をもって契約を
終了させ、多層連鎖販売計画又は組織を脱退することができる。
加入者が前項の規定により契約を終了した日から三十日以内に、多層連鎖販売事業者は加入者
の元仕入価格の九割で加入者が所持している商品を買い戻さなければならない。ただし、すで
に当該取引により加入者に支払われた賞金又は報酬、及び取り戻した商品の価値に減損があっ
たときはその減損した価額を差し引くことができる。
第 23 条ノ 3
加入者に対する損売賠償、違約金の請求禁止
加入者が前二条の規定により契約の解除権又は終了権を行使するときは、多層連鎖販売事業者
は加入者に対し、当該契約の解除又は終了により受けた損害の賠償又は違約金を請求すること
ができない。
前二条の商品に関する規定は労務を提供する場合にもこれを準用する。
第 23 条ノ 4
多層連鎖販売事業に関する規定
多層連鎖販売事業の届け出、業務検査、財務諸表における会計士の署名証明かつ外部への開示
が必要なこと、加入者に対する告知すべき事項、加入契約の内容、加入者の権益保障、加入者
の権益を大きく影響する禁止行為及び加入者に対する管理義務などの関連事項に関する規則
は、中央主務官庁がこれを定める。
第 24 条
その他不正行為の禁止
本法に別段の規定がある場合を除き、企業はその他取引秩序に影響するに足りる欺罔又は著し
く公正さを欠く行為を行ってはならない。
第四章
公平取引委員会
第 25 条
公取委の設置
309
本法における公平な取引に関する事項を処理するため、行政院は公平取引委員会を設置しなけ
ればならない。その所掌事務は次のとおりとする。
一.公平取引政策及び法規の制定に関すること。
二.本法における公平な取引の審議に関すること。
三.事業活動及び経済情況の調査に関すること。
四.本法違反事件の調査、処分に関すること。
五.公正な取引に関するその他の事項。
第 26 条
調査権の独立行使
公平取引委員会は、本法規定に違反し、公共利益に危害を与える事件に対し、告発又は職権に
より、これを調査し処理することができる。
第 27 条
調査の手続き
公平取引委員会が本法により調査を行うときは、左に掲げる手続に従って進めることができる。
一.当事者及び関係者に通知して出頭させ、意見を陳述させること
二.関係機関、団体、事業者又は個人に通知して帳簿、書類及びその他必要な資料又は証拠物
件を提出させること
三.人員を派遣して関係団体又は事業者の事務所、営業所又はその他の場所において必要な調
査を行うこと。
調査にあたる人員が法により公務を執行する時は、職務執行に関する証明書類を提示しなけれ
ばならない。提示をしない場合は、調査を受ける者がこれを拒否することができる。
第 27 条ノ 1
関係資料の閲覧、コピー等申請
当事者又は関係者が前条調査手続きの進行中に、次の各号の一に該当する場合を除き、主張の
ため、又はその法律上の利益を保護するのに必要なため、関係資料又はファイルの閲覧、謄写、
コピー若しくは撮影を申請することができる。
一.行政決定前の下書き若しくはその他準備作業の書類。
二.国防、軍事、外交及び一般公務に関わる機密、法規の定めるところにより秘密保持の必要
があるもの。
三.個人のプライバシー、職業上の秘密、営業秘密に関わり、法規の定めるところにより秘密
保持の必要があるもの。
四.第三者の権利を侵害する恐れのあるもの。
五.社会治安、公共安全或いはその他公共利益に関する職務が正常に行われるのをひどく妨害
する恐れのあるもの。
前項申請者の資格、申請時間、資料或いはファイルの閲覧の範囲、進行の方法などに関連する
手続上の事項及びその制限は、中央主務官庁がこれを定める。
第 28 条
職権の独立行使
公平取引委員会は、法により独立して職権を行使し、公正取引事件に関して為された処分の処
理にあたっては、委員会の名義でこれをすることができる。
第 29 条
法による組織構成
公平取引委員会の組織は、別途法律でこれを定める。
310
第五章
損害賠償
第 30 条
権利保護
事業者が本法の規定に違反し、他人の権益を侵害した場合、被害者はそれを排除することを請
求することができる。また侵害のおそれがあるときは、その防止を併せて請求することもでき
る。
第 31 条
権利侵害行為の責任
事業者が本法の規定に違反し、他人の権益を侵害した場合は、損害賠償の責任を負わなければ
ならない。
第 32 条
損害賠償の計算
裁判所は前条被害者の請求により、事業者の故意による行為である場合、侵害の情状を斟酌し
て損害額以上の賠償額を定めることができる。但し、すでに立証された損害額の三倍を超過し
てはならない。
侵害者が侵害行為によって利益を受けている場合、被害者は専ら当該利益について損害額を計
算することを請求することができる。
第 33 条
消滅時効
本章に定める請求権は、請求者が行為及び賠償義務者を知った時から二年間、これを行使しな
いことによって消滅する。行為の時から十年間を経過したときも同様である。
第 34 条
判決書内容の公開
被害者が本法の規定により裁判所に裁判を起こしたときは、侵害者の費用負担において判決書
の内容を新聞紙に掲載することを請求することができる。
第六章
罰則
第 35 条
独占、連合及び模倣行為の処罰
第 10 条、第 14 条、第 20 条第 1 項の規定に違反したときは、中央主務官庁が第 41 条の規定に
より期限を定めてその行為の停止、改善又は必要な是正措置を命じたにもかかわらず、期間を
超えてその行為の停止、改善をせず、又は必要な是正措置を講ぜず、又は停止した後に再び同
一若しくは類似の違反行為をしたときは、行為者に対して三年以下の有期懲役、拘留に処し、
又は新台湾ドル一億元以下の罰金を科し、又はこれを併科する。
第 23 条の規定に違反したものは行為者に対して三年以下の有期懲役、拘留に処し、又は新台
湾ドル一億元以下の罰金を科し、又はこれを併科する。
第 36 条
公正競争妨害の処罰
第 19 条の規定に違反し、中央主務官庁が第 41 条の規定により期限を定めてその行為の停止、
改善又はその是正に必要な措置を命じたにもかかわらず、期間を超えてその行為の停止、改善
をせず、又はその是正に必要な措置を講ぜず、又は停止した後再び同一若しくは類似の違反行
為をしたときは、行為者に対して二年以下の有期懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 5 千万元
以下の罰金を科し又はこれを併科する。
第 37 条
商業上信用毀損の処罰
第 22 条の規定に違反したものは、行為者を一年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 5
千万元以下の罰金を科し、又はこれを併科する。
前項の罪は親告罪とする。
311
第 38 条
法人に対する処罰
法人が前三ヶ条の罪を犯した場合は、前三ヶ条の規定によってその行為者を処罰するほか、当
該法人に対しても各該当条文の罰金を科する。
第 39 条
重罰
前四ヶ条の処罰が、他の法律においてより重い規定が置かれている場合は、その規定による。
第 40 条
事業結合規定違反に対する過料処分
事業者が第 11 条第 1 項、第 3 項の規定に違反して結合をし、又は届出後中央主務官庁からそ
の結合を禁止されているにもかかわらず結合をし、又は第 12 条第 2 項の結合に付けられた負
担を履行しない場合、第 13 条の規定により処分するほか、新台湾ドル 10 万元以上 5000 万元
以下の過料に処する。
事業の結合に関し、第 11 条第 5 項但し書第 2 号に定める場合に該当するときは、新台湾ドル
5 万元以上 50 万元以下の過料に処する。
第 41 条
違法行為の期限付き停止又は改善
公平取引委員会は本法規定に違反した事業者者に対して、期限を定めてその行為の停止、改善
又はその是正に必要な措置を命じ、並びに新台湾ドル 5 万元以上、2500 万元以下の過料に処
することができる。期限を超えても、なおその行為を停止、改善せず、又はその是正に必要な
措置を講じなかったときは、引き続きその行為の停止、改善又はその是正に必要な措置を命じ
ることができ、またその行為が停止若しくは改善され、又はその是正に必要な措置が講じられ
るまで、回数に応じて連続して新台湾ドル 10 万元以上、5000 万元以下の過料に処することが
できる。
第 42 条
違法な多層連鎖販売の処分
第 23 条の規定に違反したものは、第 41 条の規定により処分するほか、その状況が重大なもの
は解散、営業停止又は強制休業を命ずることができる。
第 23 条ノ 1 第 2 項、第 23 条ノ 2 第 2 項又は第 23 条ノ 3 の規定に違反したものは、期限を定
めてその行為の停止、改善又はその是正に必要な措置を命じ、並びに新台湾ドル 5 万元以上、
2500 万元以下の過料に処することができる。期限を超えても、なおその行為を停止、改善せ
ず、又はその是正に必要な措置を講じなかったときは、引き続きその行為の停止、改善又はそ
の是正に必要な措置を命じることができ、またその行為が停止若しくは改善され、又はその是
正に必要な措置が講じられるまで、回数に応じて連続して新台湾ドル 10 万元以上、5000 万元
以下の過料に処することができる。その情状が重大なものは解散、営業停止又は強制休業を命
じることもできる。中央主務官庁が第 23 条ノ 4 により定めた管理規則に違反したものは、第
41 条の規定により処分する。
第 42 条ノ 1
営業停止期間
本法により処する営業停止の期間は、一回につき 6 ヶ月間に限る。
第 43 条
調査拒否の処罰
公平取引委員会が第 27 条の規定により調査を行うときに、調査を受ける者が期限内に正当な
理由がなく調査を拒否し、出頭して意見を陳述することを拒否し、又は関係帳簿、書類等の資
料若しくは証拠物件の提出を拒んだ場合、新台湾ドル 2 万元以上 25 万元以下の過料に処する。
調査を受ける者が再び通知を受けたにもかかわらず、正当な理由無しにこれを拒み続けた場合、
公平取引委員会は引き続き調査を通知し、並びに出頭して意見を陳述し、又は関係帳簿、書類
等の資料若しくは証拠物件の提出がなされるまで、回数に応じて連続して新台湾ドル 5 万元以
上 50 万元以下の過料に処することができる。
312
第 44 条
過料の強制執行
前四ヶ条の規定により処された過料の納付を拒んだ者は、裁判所に移管して強制執行を行うも
のとする。
第七章
付則
第 45 条
知的財産権の正当行使の適用排除
著作権法、商標法又は特許法(日本の特許法、実用新案法、意匠法)により権利を行使する正
当な行為は、本法の規定を適用しない。
第 46 条
適用例外
事業者の競争に関する行為について、他の法律に別段の規定がある場合は、本法の立法趣旨に
抵触しない範囲内において、その他の法律規定を優先して適用する。
第 47 条
互恵主義
認許を受けていない外国法人又は団体は、本法が規定することについて、告訴、自訴、又は民
事訴訟を提起することができる。但し、条約又はその本国の法令、慣例により、中華民国国民
又は団体が当該国においても同等の権利を享有できる場合に限る。それが団体又は機構の間で
締結された相互保護に関する協定であって、中央主務官庁の認可を受けたものも同様である。
第 48 条
施行細則
本法の施行細則は、中央主務官庁がこれを定める。
第 49 条
施行期日
本法は公布の日から 1 年を経過した後に施行する。
本法の改正条文は公布の日から施行する。
313
営業秘密法
1996 年 1 月 17 日より施行
第1条
営業秘密を保障し、産業倫理と競争秩序を維持し、社会の公共利益を調和する為に、特にこの
法律を制定する。この法律で定めていないときは、その他の法律の規定を適用する。
第 2条
この法律において営業秘密とは、方法、技術、製造工程、配合、プログラム、設計又はその他
生産、販売若しくは経営の情報に使われるものであって、且つ下記の要件に該当するものをい
う。
これらの類の情報に関わる一般の人に知られているものではない。
その機密性により、実在的又は潜在的経済価値を有するもの。
保有者により秘密保持のための合理的な措置が取られているもの。
第 3条
被用者(従業員)が職務において研究又は開発した営業秘密は使用者が所有するものとする。
但し、契約にて別途約定あるときは、その約定に従う。
被用者が非職務上研究又は開発した営業秘密は従業員が所有するものとする。但し、その営業
秘密は使用者の資源又は経験を利用して得たものであるときは、使用者は合理的な報酬を支払
ってその営業秘密を当該事業に使用することができる。
第 4条
出資して他人を招聘し、研究又は開発を従事させて得た営業秘密の帰属は、契約の約定通りと
する。契約において約定なきときは、招聘を受けた人の所有とする。但し出資者はその営業秘
密を業務に使用することができる。
第 5条
数人が共同で研究又は開発した営業秘密について、各人が有すべき部分は契約の約定による。
約定なきときは均等であると推定する。
第 6条
営業秘密の全部或いは一部を他人に譲渡し又は他人と共有することができる。
営業秘密が共有のものである場合、営業秘密の使用又は処分について契約に約定がないときは、
共有者全員の同意を得なければならない。但し各共有者に正当な理由がなければ同意を拒絶す
ることができない。
各共有者は他の共有者の同意を経なければ、その所持する部分を他人に譲渡することができな
い。但し、契約に別段の約定があるときは、その約定に従う。
第 7条
営業秘密の所有者は、その営業秘密の使用を他人に許諾することができる。その使用許諾の地
域、時間、内容、使用方法又はその他の事項は、当事者の約定による。
前項のライセンシー(許諾を受けた者)は営業秘密所有者の同意を得ないでその使用許諾を受
けた営業秘密を第三者に再許諾することができない。
営業秘密の共有者は共有者全員の同意を経なければ、他人に当該営業秘密の使用を許諾するこ
とができない。但し各共有者に正当な理由がなければ、同意することを拒絶することはできな
い。
第 8条
営業秘密を質権及び強制執行の目的対象とすることはできない。
第 9条
公務員が公務の取扱により他人の営業秘密を知悉し又は保有したときは、これを使用し又は故
なくこれを漏らしてはならない。
当事者、代理人、弁護人、鑑定人、証人及びその他の関係者が司法機関の取調べ又は審理によ
314
り他人の営業秘密を知悉し又は保有したときは、これを使用又は故なく漏らしてはならない。
仲裁人及びその他の関係者が仲裁事件を処理するときは、前項の規定を準用する。
第 10 条
左に掲げる場合の一に該当するときは、営業秘密の侵害とする。
1. 不正な方法をもって、営業秘密を取得したとき。
2. 前号の営業秘密であることを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取
得し、使用し又は漏えいしたとき。
3. 営業秘密を取得した後に第 1 号の営業秘密であることを知りつつ、又は重大な過失により
知らないでそれを使用し又は漏えいしたとき。
4. 法律行為により取得した営業秘密を不正な方法をもって使用し又は漏えいしたとき。
5. 法令により営業秘密を守る義務があるにもかかわらず、それを使用し、又は故なく漏えい
したとき。
前項にいう不正な方法とは窃取、詐欺、脅迫、賄賂、無断複製、守秘義務違反、他人を誘引し
て秘密保持義務を違反させるものその他これらに類似する方法を指す。
第 11 条
営業秘密が侵害されたときは、被害者はその侵害の排除を請求することができる。侵害のおそ
れがあるときは、その防止を請求することができる。
被害者が前項の請求をしたとき、侵害行為により作成されたもの又は専ら侵害の行為に供され
たものの廃棄処分その他必要な措置を請求することができる。
第 12 条
故意又は過失により不法に他人の営業秘密を侵害した者は、損害賠償の責任を負う。数人が共
同で不法に侵害したときは、連帯損害賠償の責任を負う。
前項の損害賠償請求権は、請求権者が侵害行為のあったこと及び賠償義務者を知った時から 2
年間行使いないときは、時効によって消滅する。侵害行為の時から 10 年を経過したときも、
同様とする。
第 13 条
前条により損害賠償を請求したとき、被害者は、次の各号に掲げる規定から一つを選んで請求
することができる。
1. 民法第 216 条の規定により請求する。但し被害者がその損害を立証できないときは、通常
それを使用するときに予期できる利益から、侵害された後に同一の営業秘密を使用して得
た利益を差し引いて得た差額をその受けた損害の額とすることができる。
2. 侵害者が侵害行為によって取得した利益を請求する。但し、侵害者がそのコスト又は必要
な費用を立証できないときは、その侵害行為によって取得した全部の収入をその得た利益
とする。
前項の規定により侵害行為が故意になされたときは、裁判所は被害者の請求によりその侵害さ
れた情状を斟酌して損害額以上の賠償を算定することができる。
但し、既に立証された損害額の三倍を超過してはならない。
第 14 条
営業秘密に係る訴訟事件を審理するために、裁判所は専門の法廷を設け又は専門の担当者を指
定して審理させることができる。
当事者が提出した攻撃又は防禦方法が営業秘密に関わる場合においては、当事者が申立てをし
たうえ、裁判所がそれを妥当と認めたときは、裁判を公開しないとし、又は訴訟資料の閲覧を
制限することができる。
第 15 条
外国人が所属する国家と中華民国との間に相互に営業秘密を保護する条約或いは協定がなく、
又はその本国の法令により中華民國国民の営業秘密を保護しない者に対してはその営業秘密
を保護しない。
第 16 条
この法律は公布の日より施行する。
315
財団法人交流協会では特許庁からの委託により、海外進出日系企業を対象とし
た産業財産権の侵害対策事業を実施しております。具体的には、財団法人交流協
会が現地特許法律事務所と契約をし、現地にて以下の活動をしております。
1.台湾における産業財産権の模倣対策に資する情報の収集
2.弁護士、弁理士など産業財産権の専門家を講師としたセミナーの開催
現地で活躍する専門家から最新の情報を得る機会です。
3.法律事務所の弁護士による産業財産権に関する相談窓口の設置
産業財産権の権利取得手続きから、産業財産権の侵害に関する相談まで、幅
広いご質問に弁護士がお答えいたしますので、是非ご利用ください。
(なお、相談料は基本的に無料ですが、個別・具体的な場合は、弁護士の判断
により告知をした上で、別途費用が発生する場合もございます。)
※相談窓口の利用、セミナーへの出席、その他ご不明な点については、
財団法人交流協会 貿易経済部までお問い合わせください。
TEL:03−5573−2600
FAX:03−5573−2601
H P:http://www.koryu.or.jp/
[特許庁委託]
台湾模倣対策マニュアル
平成18年3月
発行
【禁無断転載】
発行者
発行所
印刷所
松倉浩司
財団法人交流協会
東京都港区六本木3−16−33
青葉六本木ビル7階
株式会社宝円堂
執筆協力:台湾国際専利法律事務所(TIPLO Attorneys-At-Law)
台北市南京東路二段 125 号偉成大楼 7 楼
Fly UP