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ブータンコース(PDF/9.76MB)

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ブータンコース(PDF/9.76MB)
5
平成 25 年度
教師海外研修報告書
∼国際理解教育の授業実践事例集∼
研修国:ブータン王国
(東京都・群馬県・山梨県・長野県教員)
地球ひろば
目 次
■はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
■参加者リスト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
■教師海外研修概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
■国内研修・授業実践報告会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
■海外研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
・研修国概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
・研修日程 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
・研修トピックス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
・私の1枚 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
・参加者の声/同行者より ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
・現地新聞掲載記事 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
■授業実践 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
氏名
学校名
荒川 妙子
世田谷区立給田小学校
タイトル
「幸せ」って何だろう?
~ブータンを通して考える~
授業実施学年
授業実施教科
小学4年生
道徳
22
今福 真紀
中央市立玉穂南小学校
ブータンを通して日本の環境問題を考えよう 小学4年生
総合的な学習
矢嶋 幸子
八王子市立横山第一小学校
世界の国へとびだそう
小学6年生
総合的な学習の時間、道徳
33
小林 ゆかり
南アルプス市立白根東小学校
これからの食料生産
小学5年生
社会科・道徳
39
松島 千尋
安曇野市立豊科南中学校
ブータンってどんな国
特別支援学級1~3年生
総合、道徳
45
長谷川 陽介
八王子学園八王子高等学校
ブータンの自立と課題
高校1年生
世界史 A
52
田中 隆志
群馬県立桐生女子高等学校
ブータンを通して「相互依存の世界」の 高校2年生
中で、日本が外国をどのように接してい 世界史 A
けばよいのかを考える
57
遠藤 圭
東京都立大島高等学校定時制
ディスカッション「幸せについて考える」 高校1~4年生
国語
63
丸山 妙子
長野県若槻養護学校
ブータンを通して考えるぼく・わたしの 中学2~3年生
幸せ
総合的な学習の時間
69
27
■ JICA 国際理解教育支援プログラムのご案内 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74
■おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76
-1-
はじめに
独立行政法人国際協力機構(JICA)では、開発途上国の現状や日本との関係、そこに暮
らす人々の生活や国際協力に対する理解を深め、学校における教育活動の一層の充実を図
ることを目的に、教師海外研修を毎年実施しています。
平成 25 年度、JICA 地球ひろばでは東京都、埼玉県、千葉県、栃木県、群馬県、新潟県、
山梨県、長野県から 22 名の教員を募り、国内研修を経て、ブータン、エルサルバドルの
2カ国に派遣いたしました。本報告書は、今年度の研修の概要及び帰国後の勤務校におけ
る授業実践の実例を中心にまとめたものです。
現在、学校教育をとりまく環境は、グローバル化の急速な進展にともなって刻々と変化
しています。平成 23 年度より実施されている新しい学習指導要領には、新たに持続発展
教育の視点が盛り込まれました。これは、私たちが生きる世界が相互に依存した一つの世
界であり、将来に渡って安心して生活できる持続可能な社会を築いていくためには、地球
的な視野と豊かな人間性を兼ね備えた将来の担い手を育むことが急務であるとの判断に
立ったものと考えられます。こうした中、国際理解教育 / 開発教育が積極的に推進される
ことを期待するとともに、学校現場の先生方にとって本報告書が少しでもお役に立てれば
幸いです。
また、「国際協力を日本の文化に」をキャッチフレーズとして平成 18 年に東京・広尾に
開設した JICA 地球ひろば(平成 24 年 10 月に市ヶ谷に移転)は、平成 25 年 10 月に
100 万人目の来館者を迎えました。JICA 地球ひろばでは、見て、聞いて、触って体験で
きる展示と現場での国際協力の経験を持つ「地球案内人」の体験談と説明で、開発途上国
の現状と世界の課題を体験いただけます。本施設をぜひ校外学習等でご活用いただければ
幸いです。
結びに、本研修の実施にあたりご支援をいただいた外務省、文部科学省、各教育委員会
並びに関係諸団体に感謝を申し上げるとともに、今後とも JICA が取り組む市民参加協力
事業にご協力を賜りますようお願い申し上げます。
平成 26 年3月
独立行政法人国際協力機構(JICA)地球ひろば
所 長 芳賀 克彦
-2-
平成 25 年度教師海外研修参加者
ブータンコース(9名)
氏名
都県名
学校名
担当教科
荒川 妙子
東京都
世田谷区立給田小学校
全教科
今福 真紀
山梨県
中央市立玉穂南小学校
全教科
矢嶋 幸子
東京都
八王子市立横山第一小学校
全教科
小林 ゆかり
山梨県
南アルプス市立白根東小学校
全教科
松島 千尋
長野県
安曇野市立豊科南中学校
英語、特別支援
長谷川 陽介
東京都
八王子学園八王子高等学校
地理歴史
田中 隆志
群馬県
群馬県立桐生女子高等学校
地理歴史
遠藤 圭
東京都
東京都立大島高等学校定時制
国語
丸山 妙子
長野県
長野県若槻養護学校
英語
エルサルバドルコース(13 名)
氏名
都県名
学校名
担当教科
飯野 直美
埼玉県
鶴ヶ島市立杉下小学校
全教科
寺西 雅子
埼玉県
飯能市立加治小学校
全教科
小倉 久宜
千葉県
野田市立北部小学校
全教科
内田 美希
埼玉県
春日部市立幸松小学校
全教科
馬塲 吉郎
栃木県
日光市立日光小学校
理科
榎本 砂織
新潟県
長岡市立与板中学校
英語
冨永 真琴
埼玉県
上尾市立上平中学校
英語
瀧澤 綾子
新潟県
長岡市立山本中学校
養護
小島 江津子
千葉県
千葉県立佐倉南高等学校
地理歴史・公民
渡辺 清史
千葉県
千葉県立鎌ヶ谷高等学校
地理歴史
野田 政樹
千葉県
市原中央高等学校
地理歴史・公民
川島 千枝
栃木県
栃木県立佐野松桜高等学校
英語
降矢 睦
千葉県
千葉県立佐原高等学校
公民
海外研修同行者
氏名
所属
コース
五島 政一
文部科学省国立教育政策研究所
エルサルバドル
深山 拓己
千葉日報社 編集局 社会部記者
エルサルバドル
本田 龍輔
JICA 新潟デスク 国際協力推進員
エルサルバドル
市川 裕美
JICA 山梨デスク 国際協力推進員
ブータン
-3-
教師海外研修概要
■研修の目的
国際理解教育/開発教育に関心を持つ教員を対象に、実際に開発途上国を訪問することで、
開発途上国が置かれている現状や国際協力の現場、開発途上国と日本との関係に対する理解を深
め、その成果を次代を担う児童・生徒の教育に役立ててもらうことを目的として実施します。
また研修参加後は、JICA地球ひろばと協力し、教育現場で国際理解教育/開発教育の推進に活
躍していただくこともねらいとしています。
■主催:独立行政法人 国際協力機構
■後援:外 務省、文部科学省、各都県及び政令指定都市の教育委員会、各都県の私立中学高等学校協会、・
各都県の国際交流協会
■研修国と募集人数
ブータンコース:9名(東京都、群馬県、山梨県、長野県の学校に所属の教員)
エルサルバドルコース:13名(埼玉県、千葉県、栃木県、新潟県の学校に所属の教員)
※研修国は年度により異なります。
■応募資格
・小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、高等専門学校(1~3年生を担当)、特別支援学校に
おいて教育活動に従事していること。
・応募時の年齢が満50歳以下であること。
・所属校の校長の推薦があること。
・過去に、本研修、JICA海外ボランティア、JICA専門家、ODA民間モニター/国際協力レポー
ター等のJICA関連事業で海外に派遣された経験がないこと。
■参加条件
・研修の趣旨・目的を十分理解し、同研修の実施及び、以後JICAが実施する国際理解教育/開発教
育支援事業に協力可能であること。
・国内研修及び海外研修の全行程に参加可能であること。
・研修国の事情を勘案した上で、参加するに耐えうる健康状態であること。
・帰国後、所定の期日内に海外研修報告書を提出することに同意すること。
・帰国後、本研修の定めた期間内に所属校において授業の実践を行い、当該授業の実践報告書を提
出し、JICAのウェブサイトにて一般公開されることに同意すること。
・パソコンメールアドレスでの連絡が可能なこと。
・参加者メーリングリストでの情報共有に賛同いただけること。
※平成25年度の募集要項は、JICAのホームページでご覧いただけます。
※平成26年度の募集要項は、4月上旬にJICAのホームページに掲載します。
-4-
研修の流れ(平成25年度)
◇国内事前研修
■第 1 次研修 : 6 月 16 日(日)
研修の趣旨および、 JICA や日本の国際協力に関する理解を深
め る。 国 際 理 解 教 育 / 開 発 教 育 に つ い て 理 解 を 深 め る た め の
ワークショップ体験など。
■第 2 次研修 : 7 月 6 日(土) ・ 7 日(日)
研修国の事前学習。海外研修日程の確認や渡航手続きなど。
◇海外研修
■ブータンコース : 8 月 1 日(木)~ 11 日(日)(11 日間)
■エルサルバドルコース:8 月 7 日(水)~ 17 日(土)(11 日間)
帰国後、海外研修報告書の提出。
◇帰国時研修
8 月 25 日(日)
海外研修の経験を活かした授業の実施 ・ 教材作成について考える。
◇勤務校における授業実践
9 月~12 月
授業実践報告書の作成
◇授業実践報告会
■都県別授業実践報告会 : 12 月~ 2 月
研修での経験を活かして実施した授業について、 地域の方々に報告
する。
◇全体会
3 月 9 日(日)
1年間の研修のまとめ。また、過去の参加者とのネットワークを構築
することで、今後の各校/各地域での国際理解教育の推進につな
げる。
-5-
国 内 研 修
国内研修
授業実践報告会
-6-
第1次研修
日時:平成 25 年6月 16 日(日)10:30 ~ 17:00
場所:JICA 市ヶ谷ビル
対象:教師海外研修参加者
目的:☞ JICA や日本の国際協力に関する理解を深める
☞ ESD や国際理解教育についての理解を深める
☞研修国の概要を知る
時 間
研修の様子
内 容
講 師・備 考
開会式・
(主催者挨拶、共催団体挨拶、スタッフ紹介)
来賓:文部科学省大臣官房政策課 佐藤 兆昭様
10:00
30 分
10:30
30 分
参加者紹介
立教大学 上條 直美氏
11:00
30 分
JICA 概要説明
JICA 地球ひろば 地域連携課 長谷川 敏久
11:30
30 分
JICA 国際理解教育/開発教育支援事業の紹介
教師海外研修について
教師海外研修担当者
12:00
50 分
昼食
12:50
50 分
講義Ⅰ「持続発展教育(ESD)と国際理解教育」
文部科学省国立教育政策研究所 五島 政一氏
13:40
50 分
講義Ⅱ「開発教育入門」
立教大学 上條 直美氏
14:30
10 分
休憩
14:40
30 分
<コース別プログラム>・
参加者紹介・海外研修の日程説明・渡航手続
教師海外研修担当者(同行者)
15:10
60 分
<コース別プログラム>・
JICA 関係者による体験談・意見交換
関 健作氏(元青年海外協力隊/ブータン)
川上 哲也氏(元 JICA 企画調査員/エルサルバドル)
16:10
15 分
休憩
16:25
30 分
16:55
5分
17:00
渡航ブリーフィング・
(保険の加入・参加型研修への準備等)
連絡事項
教師海外研修担当者
教師海外研修担当者
閉会
講師の五島先生による ESD と
国際理解教育に関する講義
講師の上條先生による開発教育に関する講義と
ワークショップ体験
-7-
国 内 研 修
☞教師海外研修の目的・内容について理解を深める
第2次研修
日時:平成 25 年7月6日(土)10:30 ~ 18:00
7月7日(日)10:00 ~ 17:00
場所:JICA 市ヶ谷ビル、東京国際センター
対象:教師海外研修参加者
国 内 研 修
目的: ☞研修国の開発課題や、訪問先の概要を知る
☞参加型学習の手法への理解を深める
体験ゾーンの見学
☞帰国後の授業実践について考える
☞海外研修における各自の目的や役割
分担を明確にする
☞参加者・関係者同士の関係を築き、
深める
訪問国の開発課題に関する講義
【1日目】
時 間
10:30
内 容
講 師
5分
開会・連絡事項
10:35
5分
移動
10:40
30 分
JICA 地球ひろば体験ゾーン見学
11:10
10 分
移動
11:20
10 分
<コース別プログラム>海外研修の日程について
教師海外研修担当者(同行者)
11:30
60 分
<コース別>・
過年度参加者体験談・意見交換
ブータン:東京都立立川高等学校 保坂 理絵
エルサル:埼玉県県民生活部 花田 洋司
12:30
60 分
昼食
13:30
50 分
<コース別プログラム>・
訪問国の開発課題と JICA 事業について
14:20
10 分
休憩
14:30
60 分
ワークショップ体験「援助する前に考えよう」
立教大学 上條 直美氏
多摩地区デスク 浦 輝大
15:30
90 分
<コース別プログラム>・
参加型研修への準備(健康・安全対策・交流)
教師海外研修担当者(同行者)
17:00
90 分
移動・チェックイン
18:30
120 分
地球案内人
ブータン:JICA 駒ヶ根 仁田 知樹
エルサル:JICA 中南米部 細川 幸成
参加者・スタッフとの懇親会
※ JICA 東京国際センターにて宿泊
【2日目】
時 間
9:00
9:30
内 容
30 分
連絡事項(報告書・授業実践・報告会について)
教師海外研修担当者
30 分
<コース別プログラム>・
参加型研修への準備(役割分担)
教師海外研修担当者(同行者)
講義Ⅰ「開発教育と参加型手法」
立教大学 上條 直美氏
10:00
120 分
12:00
60 分
昼食休憩
13:00
60 分
講義Ⅱ「授業作りのコツ」
14:00
10 分
休憩
14:10
100 分
15:50
10 分
休憩
16:00
40 分
全体共有と海外研修に向けて
16:40
20 分
連絡事項
17:00
講 師
国立教育政策研究所 五島 政一氏
<コース別プログラム>・
授業作りのための準備計画案・チームでの共有
立教大学 上條 直美氏
閉会
-8-
帰国時研修
時 間
授業実践に向けての話し合い
内 容
講 師
10:30
5分
10:35
25 分
ワークショップⅠ「研修体験を共有しよう」
立教大学 上條 直美氏
11:00
60 分
各チームからの研修報告
ブータンコース参加者、エルサルバドルコース参加者
12:00
50 分
昼食
12:50
50 分
講義Ⅰ「体験を伝えよう!教材化のコツ」
13:40
50 分
講義Ⅱ「授業づくりのコツ~授業実践に向けて~」 文部科学省国立教育政策研究所 五島 政一氏
14:30
10 分
休憩・移動
14:40
80 分
ワークショップⅡ「授業実践の計画作り」
16:00
10 分
休憩・移動
16:10
30 分
全体共有
16:40
20 分
事務連絡
17:00
開会・連絡事項
立教大学 上條 直美氏
教師海外研修担当者
立教大学 上條 直美氏
閉会
全体会
日時:平成 26 年 3 月 9 日(日)10:30 ~ 17:15
場所:JICA 市ヶ谷ビル
対象:教師海外研修の今年度参加者、過去参加者
目的:☞1年間の研修の学びを振り返る
☞国際理解教育実践の情報や悩みを共有する
☞教師海外研修の過去の参加者の年度や地域を越えたネットワークを構築する
☞上記を通して、今後の各地域や教育現場での国際理解教育の推進につなげる。
【午前の部(本年度参加者対象プログラム)
】
時 間
10:30
5分
内 容
講 師
開会
10:35
40 分
授業実践報告(アイスブレーク)
立教大学 上條 直美氏
11:15
20 分
県別報告会実施報告
国際協力推進員
11:35
15 分
修了式
11:50
10 分
連絡事項
【午後の部(今年度参加者・過去参加者対象プログラム】
時 間
内 容
講 師
13:00
10 分
開会・スタッフ紹介
13:10
30 分
参加者紹介(アイスブレーク)
立教大学 上條 直美氏
13:40
50 分
ワークショップ(参加型学習)体験
JICA 国際協力推進員、JICA 地球ひろばスタッフ
14:30
10 分
休憩
14:40
90 分
①中学校での国際理解教育の実践事例 ②教師海外研修特別
支援教育チーム活動報告 ③高等学校での ESD 実践事例
16:10
30 分
意見交換・実践共有
立教大学 上條 直美氏
16:40
15 分
国際理解教育に関する情報
各団体担当者、JICA 国際協力推進員
16:55
15 分
連絡事項
17:15
過去参加教員による実践報告
閉会
-9-
①川口市立幸並中学校 古山 三保教諭 ②立川ろう学校 藤原 英二教諭、
小平特別支援学校 清水 マヤ教諭 ③専修大学松戸高等学校 泉 貴久教諭
文部科学省国立教育政策研究所 二井 正浩氏
国 内 研 修
日時:平成 25 年8月 25 日(日)10:30 ~ 17:00
場所:JICA 市ヶ谷ビル
対象:教師海外研修参加者
目的:☞海外研修の体験を振り返り、気付きを共有する
☞研修の経験を活かした授業実践について考える
授業実践報告会
■山梨県報告会
参加者の各都県で実施された国際理解教育セミナー
やグローバルセミナーにおいて、地域の方々に海外研修
や授業実践についての報告を行いました。
イベント名:青年海外協力隊&教師海外研修活動報告会
日時:1 月 18 日(土)13:30 ~ 16:30
場所:山梨県立国際交流センター
主催:山梨県青年海外協力隊協会
■栃木県報告会①
国 内 研 修
イベント名:平成 25 年度国際理解教育研究会
日時:11 月 27 日(水)13:00 ~ 16:00
場所:栃木県総合教育センター
主催:栃木県高等学校教育研究会国際理解教育部/栃木
県高等学校国際教育研究協議会
■千葉県報告会
イベント名:国際理解セミナー
日時:1 月 26 日(日)11:00 ~ 16:30
場所:千葉市文化センター
主催:(公財)ちば国際コンベンションビューロー
■栃木県報告会②
イベント名:平成 25 年度教師海外研究報告会
日時:2 月 8 日(土)10:00 ~ 12:00
場所:栃木県国際交流センター
主催:JICA 栃木デスク 栃木県国際交流協会
■長野県報告会
イベント名:
「世界で学び、日本でシェア!~教師海外
研修&青年海外協力隊 帰国報告会」
日時:2 月 8 日(土)13:00 ~ 16:20
場所:松本市あがたの森文化会館 IT 教室
主催:JICA 駒ヶ根
■新潟県報告会
イベント名:第四回国際教育研究会
日時:12 月 1 日(日)13:30 ~ 16:45
場所:クロスパルにいがた 405 講座室
主催:にいがた NGO ネットワーク
■埼玉県報告会
イベント名:グローバルセミナー 2014
日時:2 月 9 日(日)10:00 ~ 17:00
場所:カルタスホール
主催:埼玉 NGO ネット、(公財)埼玉県国際交流協会、
JICA 地球ひろば
■群馬県報告会(予定)
イベント名:ぐんまグローバルセミナー
日時:3 月 23 日(日)13:00 ~ 16:30
場所:群馬県庁 29 階 291 会議室
主催:(公財)群馬県観光物産国際協会
■東京都報告会
イベント名:国際理解教育ワークショップと仲間作りと
仲間づくりの一日
日時:2 月 23 日(日)10:00 ~ 18:00
場所:JICA 地球ひろば
主催:JICA 多摩地区デスク
- 10 -
海外研修
- 11 -
海 外 研 修
ブータン王国
研修国の概要
ブータン王国
正式名称:
(和文)ブータン王国
(英文)Kingdom of Bhutan
首 都:ティンプー(Thimphu)
元 首:ジグメ・ケサル・ナムギャル・
ワンチュク国王陛下(第 5 代)
政 体:立憲君主制
面 積:約 38.394 平方キロメートル 人 口:約 70.8 万人
(ブータン政府資料 2011 年)
民 族:チベット系、東ブータン先住民、
海 外 研 修
ネパール系等
言 語 :ゾンカ語(公用語)、英語等
宗 教:チベット系仏教、ヒンドゥー教等
通 貨:ニュルタム(Nu)
※1ニュルタム=約 1.5 円(2012 年 8 月現在)
日本との時差:マイナス 3 時間
主要産業:農業(米、麦等)、林業、電力
G N I:15.3 億米ドル(世銀資料 2011 年)
一人当たりGDP:2,288 米ドル(世銀資料 2011 年)
経済成長率:8.5%(ブータン政府資料 2011 年)
略 史: 9 世紀北方から到来したチベット人がヒマラヤの先住民と融合。
17 世紀ラマ教の高僧ガワン・ナムゲルが現国土に相当する地域での聖俗界の実権を掌握。
1865 年イギリスと衝突、講和条約により南部のドゥアル地方がイギリス領となる。
1907 年現王朝の初代国王が即位。1910 年イギリスとの間にプナカ条約を調印し、関係を強める。
1947 年インド独立とともに、独立国として認定される。
1972 年国連加盟。
1974 年国王ジグミ・シンゲ・ウォンチュック戴冠。
2008 年 11 月にジグメ・ケサル・ナムギャル・ワンチュック国王戴冠。
2008 年より民主化を目指して二院制議会を設立し、立憲君主制をとっている。
気 候:北部は山岳性気候、首都ティンプーのある中部は内陸性、南部は亜熱帯性気候に属する。
全般に南西モンスーンの影響が強いため降雨量が多い。
在留日本人: 144 人(2011 年)
JICA 事務所開設:1987 年 ※青年海外協力隊の派遣は 1988 年から
【参考資料】
・外務省ホームページ ‐ 各国・地域情勢(ブータン)
< http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/bhutan/index.html >(2013 年 10 月アクセス)
・JICA ホームページ ‐ 国別生活情報(ブータン)
< http://www.jica.go.jp/regions/seikatsu/ku57pq000005g185-att/Bhutan-p.pdf >(2013 年 10 月アクセス)
- 12 -
海外研修日程
期間:平成25年8月1日(木)~8月11日(日)
日
曜日 時間
午前
8月1日
水
訪問先・活動
主な面会者
羽田→バンコク
バンコク→ティンプー
ティンプー
午後 JICAブータン事務所(ブリーフィング)
午前
8月2日
木
午後
午前
8月3日
金
場所
朝熊 由美子所長
デチェンチョリン小中学校
(JICAボランティア活動視察/学校見学/文化交流/意見交換)
青年海外協力隊
山根 大典氏(体育)
教育省(表敬訪問)
教育省学校教育局局長
内務文化省地方行政局
(JICA技術協力「地方行政プロジェクト」視察)
JICA専門家
津川 智明氏(地方行政)
JDWNR病院
(JICAボランティア活動視察)
青年海外協力隊
土屋 あゆみ氏(看護師)
伊東 瑞歩氏(栄養士)
谷川 聡子氏(看護師)
ティンプー
ティンプー
パロ
午後 ホームステイ体験
午前
8月4日
日
Mr.Pema Dorji一家、他3家族
市内散策
(市場、ダショー西岡チョルテン、農業機械化センター訪問)
パロ
午後 ホームステイ体験
午前
8月5日
土
午後
パロ教育大学
(JICAボランティア活動視察/学生との意見交換会)
シニアボランティア
中屋 拓久氏(保健体育教育)
パロ
国立ポストハーベストセンター
(JICAボランティア活動視察)
シニアボランティア
橋本 俊郎氏(食品加工)
パロ
パロ →ティンプー
ティンプー
中間振り返りミーティング
午前
8月6日
ティンプー→ウォンディポダン
月
ガセロ小中学校
午後
(JICAボランティア活動視察/学校見学/生徒・教員との交流)
8月7日
火
青年海外協力隊
高井 温子氏(青少年活動)
メメラカごみ処理場・サルベタンコンポストサイト・リサイクルセ
シニアボランティア
午前 ンター
柏木 昭雄氏(廃棄物処理)
(JICAボランティア活動視察)
ウォンディ
ポダン
ティンプー
午後 市内視察と教材収集
午前 タンゴ僧院
8月8日
水
午後
クズチェン小中学校
(JICAボランティア活動視察/学校見学/生徒・教員との交流)
青年海外協力隊
塚田 芽生氏(小学校教諭)
ティンプー
JICAスタッフ・ボランティアとの茶話会
午前 市内視察と教材収集
8月9日
木
教育省次官
教育省(研修報告)
ティンプー
午後
JICAブータン事務所(研修報告)
8月10日 金 午前
パロ→バンコク
8月11日 土 午前
バンコク→成田着
バンコク
- 13 -
海 外 研 修
ティンプー→パロ
活動する隊員の葛藤や「幸せの国」が抱える課題を
海外研修トピックス
知ることができました。
◆デチェンチョリン小中学校
青年海外協力隊が活動している学校を訪問し、授
業見学や現地の教員との意見交換を行いました。朝
礼時には日本の歌と踊りを紹介し、生徒からもブー
タンの踊りの披露がありました。また、昼食を生徒
たちと一緒にとりながらインタビューをするなど交
流を深めました。
◆ホームステイ
ブータンの一般
海 外 研 修
的な農家の家庭で
2泊3日のホーム
ステイを行い、伝
統的な唐辛子を
使った食事や大き
な仏間でのお祈り
等、現地の文化・
◆内務文化省地方行政局
県や地区の行政にかかる法律や規程を整備して
いる地方行政局を訪問し、同局で活動する JICA 専
門 家 よ り、 ブ ー タ ン の 地 方 行 政 や GNH(Gross
National Happiness /国民総幸福量)政策と同国
の歴史や憲法との関係について説明を受けました。
また、自身の国際協力の経験やブータンで感じてい
ることも話していただきました。
習慣を体験しまし
た。また、家族と
のピクニックや団らん等の交流を通して、ブータン
への理解を深めました。
◆ダショー西岡チョルテン、農業機械化センター
1964 年に JICA の前身である国際協力事業団の
専門家としてブータンを訪れ、28 年間農業指導に
尽力した故西岡京治氏の記念仏塔(チョルテン)を
訪問しました。西岡氏が活躍した農業機械化セン
ターやパロの町に広がる棚田を見学し、現地の同僚
の方から当時の話を伺ったり、様々な資料の閲覧を
通して西岡氏の足跡を辿りました。
◆ JDWNR 病院
ブータンで最大規模の JDWNR 病院を訪問し、
同病院で活動している青年海外協力隊員3名から、
それぞれの活動やブータンの医療事情に関する説明
を受けました。ブータンの医療は無料であるものの、
日本の病院と比べると設備は整っておらず、そこで
- 14 -
◆パロ教育大学
教員養成に携わっているシニアボランティアか
ら、ブータンの教育大学のシステムやカリキュラム、
学生生活に関する説明を受け、現地の学生とのディ
スカッションを行いました。学生からは、日本の教
育システムや教員としての心構えに関する質問等が
あり、両国の教育に関して様々な意見が交わされま
した。
◆メメラカごみ処理場・サルベタンコンポスト
サイト・リサイクルセンター
廃棄物処理の分野で活動をしているシニアボラン
ティアから、ブータンのゴミ処理に関する現状や課
題、教育の重要性等の説明を受けました。これまで
中、ゴミの問題が深刻になっていることを実感しま
した。
◆国立ポストハーベストセンター
農業が主な産業であるブータンにおいて、農家へ
の指導や農機具の貸出等を行っているポストハーベ
ストセンターを訪問しました。これまで自給自足の
生活が基本だったブータンにおいて、農業を発展さ
せ、安定した収入を得られるように食品加工技術を
指導しているシニアボランティアから施設の案内や
説明を受けました。
◆教育省
研修の最初と最後に教育省を表敬訪問しました。
研修最終日後のプレゼンテーションでは、参加教員
が研修での学びの成果をまとめ、農業、伝統と近代
化、教育、交流の4つのテーマで発表を行いました。
この様子はブータン国営放送で放映され、翌朝の新
聞「KUENSEL」にも記事が掲載されました。
◆ガセロ小中学校
首都から車で約5時間移動した地方都市ウォン
ディーポダンにあるガセロ小中学校を訪問しまし
た。同校で活動している青年海外協力隊による授業
を見学し、ブータンの生徒との交流授業を行ったり、
生徒たちと給食を食べたりしました。テントの教室
や寮生活を送る様子等、地方都市におけるブータン
の教育事情を学びました。
- 15 -
海 外 研 修
自給自足をしていたブータンが経済発展をしていく
教師海外研修 私の 1 枚
in ブータン
ブータンでの海外研修では様々な学びや出会いがありました。
参加された先生方に、印象に残ったシーンの1枚の写真を選んでいただきました。
年長者を大切にする国
ブータン東部に行く、山越え途中にあったチョルテン(仏塔)で
パロでのピクニックの帰り道。孫が祖母の手をとり、歩調を合わ
ツアーガイドのペマ氏と撮影した一枚。今回の研修旅行では実にさ
せながら歩んでいく姿。ほほえましい風景に思わずシャッターを押
まざまな体験をしたが、日本人に対する理解が深い同氏の仲立ちが
した。年長者を敬い大切にする国、ブータンの温かい1場面を目に
あってこそ、日本とブータンを相対的につかむことが可能であった
した瞬間だった。
海 外 研 修
friendship
と思う。感謝と友情を込めて。
名 前
遠藤 圭
学 校 東京都立大島高等学校定時制
名 前
丸山 妙子
Heart to Heart
学 校 長野県若槻養護学校
子ども達の眼差し
笑顔に勇気をもらい、
や さ し さ に 癒 さ れ、 思
いやりに感謝しました。
幸せの国『ブータン』
に は、 人 が 人 と し て 生
き て い く 上 で、 大 切 な
ものがあふれていまし
た。 そ れ は 本 来、 人 間
の本質として心の中に
宿っているものなのに
…。 何 か 忘 れ か け て い
た 大 切 な も の を、 思 い
出 さ せ て く れ た『 ブ ー
ガセロ小学校で授業をさせていただいたときの子ども達の眼差し
タン』でした。
が、今も強く心に残っています。ブータンの子どもたちは、純粋でまっ
すぐ。優しくて一生懸命。それが全て子どもたちの眼差しに表れてい
たように思います。未来の宝である大切な子どもたちと、授業を通し
てあたたかく幸せな出会いを結ぶことができました。
名 前
松島 千尋
学 校 安曇野市立豊科南中学校
名 前
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荒川 妙子
学 校 世田谷区立給田小学校
国境を越えて通う心
どっちがブータン人?
ブータン最後の夜に、ガイドのペマさんと参加者みんなで撮影し
た一枚。年齢も、出身地も、国境も越えて、みんなが心を通わせて
すごした10日間。国際理解教育は、相手に何かしてあげよう、と
いう心ではなく、相手と対等な立場で心を通わせることなのだとい
うことに気づくことができました。
名 前
生きていることに誇りをもつ
経験となりました。アウトドアのトイレにお風呂なしの生活。自給
自足や資源を無駄に使わない生活を肌で感じた瞬間でした。働き者
ある学校を訪問した時
のブータン人のママに教わったゾンカ語。言葉は通じなくても心が
通じる…この経験は、私の宝物です。
に、生徒の民族舞踊を見せ
名 前
とした表情で踊る姿から感
今福 真紀
て頂いた時の写真です。凛
学 校 中央市立玉穂南小学校
じられたのは、
「今ここに
生きていること」に対する
素朴な、しかし確かな誇り
ユニセフテントの授業
でした。他人の評価に戦々
恐 々 と し な い で、 自 信 を
もって生きることは難しい
ことですが、幸せには欠か
せない要素なのでしょう。
名 前
長谷川 陽介
学 校 八王子学園八王子高等学校
幸せな時間
クズチェン小中学校は、ウォンディポダンという町の郊外にある
山間部の学校です。2011 年の秋、
地震で学生寮が倒壊したため、
以降、
教室の一部が仮の寮となり、低学年の子供たちはこうしたテントで
授業を受けています。経済的に貧しく WFP の学校給食プログラム
を受け入れている子供たちも多いのですが、こうした大変な状況の
中でも真剣に授業を受ける子供たちの姿がここにはありました。
名 前
田中 隆志
学 校 群馬県立桐生女子高等学校
ブータンで、たくさんの方と出会いました。この写真は、ホームス
テイをさせていただいたホストファミリーのおばあさんと 2 人の兄
妹。お互いを思いやり、優しくあたたかな雰囲気にとても安心しまし
た。家族の絆の大切さ、そして本当の幸せについてブータンの方々か
ら教えていただきました。
名 前
- 17 -
矢嶋 幸子
学 校 八王子市立横山第一小学校
海 外 研 修
2泊3日のホームステイは、短い期間でしたが、かけがえのない
学 校 南アルプス市立白根東小学校
小林 ゆかり
参加者の声(海外研修報告書から)
・研修で得たメンバーとのつながりは財産であり、
これからも大切にしていきたい。
・研修で得た学びを今後の教育活動に活かし、子ど
もたちに伝えることで還元していきたい。
◆海外研修の所感
・発展途上国を訪問することで、本やテレビ、イン
ターネットでは知ることができない情報を自らの
■児童生徒に伝えたいこと、考えてもらいたいこと
体験をもって学び、考えることができた。
・世界には、様々な文化や生き方があり、様々な価
値観の人達がいること。その世界を舞台に、一人
・現地の方やチームメンバーと向き合い、協力し、経
の人間としてどう生きるかを考えて欲しい。
験や想いを共有することを通して、観光旅行では
・幸せは国や人種に関係のない普遍的なものである
得られない深い学びと感動を得ることができた。
ことを児童に感じて欲しい。
・ホームステイで途上国の暮らしを体験し、自分自
身がカルチャーショックを受けた。この経験を活
・夢を持つことの素晴らしさや、夢を描くことがで
きる環境にいることの有難さを伝えたい。
かして、生徒と共に自分たちの生活を振り返って
・家族やコミュニティの絆について伝えたい。
いきたい。
海 外 研 修
・先進国で生きる我々日本人も、途上国の人々から
・日本人と外国人が共生するためにはどうしたら良
いのかを生徒と共に考えていきたい。
学ぶことがたくさんあると感じた。
・途上国の人が、国外からの支援を受け入れ、自分
・開発途上国が発展し、現代化する中での苦悩や、
今自分たちにできることを考えさせたい。
たちの国の問題を解決していこうとする姿勢に胸
・日本の技術を必要としている人々が途上国にいる
を打たれた。
ことや、日本の技術を世界に伝え、世界中の人々
・国際協力の現場で活躍している日本人と出会い、
と協力していく大切さを伝えたい。
様々な考え方に触れ、視野を広げることができた。
・夢と情熱をもって異国で活動している日本の若者
・日本と外国との違いを知ると共に、日本の伝統や
文化の良さにも気づくきっかけとさせたい。
がいることを知り、感動した。
・日本の国際協力について、日本人として誇りに感じ
・日本から遠く離れた外国で、世界の人々のために
た。このような日本の素晴らしい一面を生徒に伝
日々頑張っている日本人がいることを伝えたい。
え、日本人としての自覚や誇りを育てていきたい。
・国際協力は、難しいことではなく誰にでもでき
・支援とは何か?どんな支援が本当に必要なのか?
ること。まずはその国について知り、その国の
を初めて考えさせられた。これから生徒と共に考
人達と話をすることが国際協力につながること
えていきたい。
を伝えたい。
・教員としてどのように国際理解教育を推進してい
くか、また一人の人間として自分がこれからどう
生きていくのかを考えるきっかけとなった。
・教師という職業が大切な役割を担っていることを
改めて認識し、教師として子どもたちに何を伝え
られるのかを考える機会になった。
・現状に満足せず、これからも一人の教育者として
成長しなければという思いを強くした。
・国際理解教育の方法を学ぶことができ、体験型・
参加型の学習の有効さを認識した。
・ESDという新しい視点での授業構成について学
■今後の参加者へのアドバイス
<海外研修前>
・出発前に、自らの研修の目的と授業実践の内容を
び、今度の授業作りに広がりが出ると感じる
明確にしておくと現地でより深く学べる。
・地域、校種、年齢の異なるメンバーでの研修は刺
激や学びが多く、意義の高い研修であった。
・チームとしての目標を立て、各自の役割分担も明
- 18 -
・現地の学校での交流授業を、自らの授業実践の素
確にしておくと良い。
・現地での時間は限られているので、事前に訪問先で
材集めを目的とするのではなく、現地の子どもた
の質問項目を整理しておくことをお勧めしたい。
ちにメッセージを伝え、双方向でのコミュニケー
ションがある方が得るものが多い。
・メーリングリストによる情報交換に積極的に参加
してスタッフやメンバーとのコミュニケーション
・現地で毎日行う「振り返り」は重要。毎日イン
プットする情報を処理・整理しないとオーバーフ
を図り、人間関係を築いておくことが大切。
ローしてしまう。また、共有することにより多面
・事前研修で配布される資料は、現地でボランテイ
的な見方ができ理解が深まる。
ア活動現場等を視察する際に参考となる基礎資料
なので必ず目を通すとともに、現地にも持参して
・時間が予定通りに行かないことも受け入れる心の
広さが必要。一方で、研修参加者の都合でスケ
訪問前に確認すると良い。
ジュールを遅らせることがないよう、質問は時間
・参加者間でそれぞれの授業のイメージや欲しい情
内に納めるように全体で調整すると良い。
報が共有できていると、訪問先でのインタビュー
・日本の常識から離れて、多少のトラブルや体調不
や写真撮影、教材購入などで協力し合える。
良は起きて当然という気持ちで臨むと良い。
・旅行ではなく研修に参加していることを自覚し、
・チームメンバーと話す機会を多く持つと良い。一
人ひとりの持ち味や考え方を理解し合うことでお
スが広がる。
互いが高め合いチーム力も増す。
・体調管理は出発前から始まる。常備薬や携帯食も
準備しておくと安心して研修に臨める。
<海外研修中>
・訪問先では「日本の教師の代表者」として見られ
ていることを意識し、常に先方に敬意を示し、行
動することが大事。
・訪問国の人と正面から向き合い、語り、何を感じ
るかが大切。自分が感じたことしか子どもたちに
は伝えられないので、五感をフルに働かせ、感じ
ることを大切にしてほしい。
たちとの交流や現地の教員たちとのディスカッ
ションではブータンの教育を通じて日本につい
海外研修同行者より
ても考える機会となりました。
エマダツィの辛さ、街の臭い、民族衣装の着
「発展」と「幸せ」を両立させようと独自の
心地、お坊さんの声、祈りの旗を通る風、この
道を進むブータン。教師海外研修では、その国
経験はこれからも先生方の授業の中で活き続け
づくりをサポートする日本の国際協力事業や教
ると思います。自らの体験をもって話された言
育を中心に医療や行政、環境問題に取り組む日
葉は生徒たちの心に残るはずです。先生方の授
本人の活動現場を訪問し、話を伺いました。
業から世界に目を向け、自分のくらしと世界の
研修では首都と地方にある学校を訪問し、
ホームステイでは一般家庭での生活も経験しま
ことを考えられる国際理解が広がっていくこと
を願っています。
した。研修に参加した先生方はブータンで幸せ
について考え、現地の人たちから感じることが
できたのではないでしょうか。教育大学の学生
- 19 -
JICA山梨デスク 国際協力推進員 市川 裕美
海 外 研 修
自立的・協力的に動くことで学びや成長のチャン
【新聞記事】
ブータン国営新聞 “Kuensel” 2013 年 8 月 10 日掲載記事
海 外 研 修
Kuensel オンラインサイト
< http://www.kuenselonline.com/picture-story-224/ >(2013 年 8 月 12 日アクセス)
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授業実践
研修を活かした国際理解教育の事例
授 業 実 践
※教員、および児童/生徒の原文を活かして掲載しています。一部表現のばらつきがありま
すがご了承ください。
※過去の実践事例を、JICA地球ひろばのホームページに掲載しています。
http://www.jica.go.jp/hiroba/menu/teacher/
- 21 -
学校名:世田谷区立給田小学校
●実践教科等: 道徳
氏名: 荒川 妙子
[担当教科: 小学校全科]
●時間数:
3時間
●対象:
小学4年生
●対象人数:
33人
〔1〕単元名
「幸せ」って何だろう?~ブータンを通して考える~
〔2〕単元の目的/目標 (ESD の能力・態度)
・ブータンの文化や生活を知ることを通して、異文化への興味・関心を高める。(進んで参加する態度)
・「幸せ」に必要なものを考えていく中で、多様な価値観に気付く。(多面的・総合的に考える力)
・世界で活躍する日本人 について知ることで、異文化共存の大切さや人のために行動することの価値
について考える。(他者と協力する態度)
・自分の考えや気付きを人に伝える力を高める。(コミュニケーションを行う力)
〔3〕ESD(持続可能な社会づくり)の視点
多様性
相互性
有限性
公平性
連携性
責任性
・日本とブータンの文化や生活、価値観の違いに気付く。(多様性)
・日本とブータンのつながりに気付く。(連携性)
・「物質的豊かさ」の有限性について考える。(有限性)
〔4〕単元の構成
授 業 実 践
時限
本時のねらい、テーマ
学習活動・学習内容
使用教材
評価の
観点と方法
1
【幸せって何だろう?】
・「幸せ」に必 要なもの
を考える。
2
【ブータンってどんな
国?】
・ブータンについて知
り、異文化に興味を
もつ。
・ブータンの人 々の幸
せのとらえ方につい
て考える。
【世界で活躍する日本
人について知ろう】
・日 本 とブータンの深
いつながりについて
知り、国際協力の
大切さに気付く。
・人 のために行 動 する
ことの価値について
考える。
3
・「幸 せ」についてのアンケ
ートを実施する。
・幸せに必要 なものを考え、
意見を共有し、ウェビング
マップにまとめる。
・幸せな国 に必 要なものを
話し合う。
・クイズなどを通して、ブータ
ンの文化や生活について
知る。
・「幸 せの国 」に抱 いた自 分
のイメージと実際を照らし
合わせて考える。
・アンケート用紙
・ウェビングマップ
・自 分 の「幸 せ」に対 す
る考 え方 を確 認 する
ことができたか。
(発言・ワークシート)
・パワーポイント
・ワークシート
・民族衣装
「キラ」
・日本とブータンには深いつ
ながりがあることを知る。
・青 年 海 外 協 力 隊 の姿を通
して、人 のために行 動 す
ることの価 値 について考
える。
・道徳教材「ブータ
ンに日 本 の農 業
を」
・パワーポイント
・青年海外協力隊
のインタビュー映
像
・異文化に興味・関心
をもつことができた
か。
・幸せのとらえ方の多
様 性 に気 付 き、自 分
の考 えを振 り返 るこ
とができたか。
(発言・ワークシート)
・国 際 協 力 の大 切 さに
気付いているか。
・自 分 の「幸 せ」に対 す
る考 えを再 考 してい
るか。
(発言・ワークシート)
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〔5〕授業の詳細
1時限目:【幸せって何だろう? 】
まず、自分たちが「幸せ」をどのように捉えているかを知るために、アンケートを行った。
① 今、「幸せ」だと感じているか。(「幸せ・まあまあ幸せ・あまり幸せではない・幸せではない」の四択)
② それは、なぜか。(記述)
以上2点についてワークシートに記入させた。記入した内容について特に全体で取り上げることはせず、
児童が自分自身の「幸せの捉え方」を意識化できるようにした。
次に、「幸せ」から連想することを一人一人ワークシートに書き出していった。その後、書き出したこと
をクラスで共有した。多様な意見を一枚のウェビングマップにまとめる中で、幸せを感じるための要素に
は様々なものがあることに児童は気付いていった。
ココがポイント!
まず、「幸 せ」について意 識 化 させること
が大切である。アンケートやウェビングマ
ップを作成し話し合うことで、「幸せ」につ
いてのイメージを十 分 に もたせる。これ
がこの先 の話 し合 いの土 台 となってい
く。一 人 一 人 の考えを尊 重 し、様 々な捉
え方があることを全体で確認する。
写真1
幸せから連想するものを出し合って作った
ウェビングマップ
写真2
幸せの国に必要だと思うものを話し合い、班ごとに付箋紙を整理したものの例
全ての班のまとめを黒板に貼り出し、共通するところや相違点なども話し合っていった。まとめ方も班
によって様々である。
- 23 -
授 業 実 践
その後、「幸せの国」と呼ばれている国があることを知らせた。児童は「そんな国ってあるの?」「どこ
の国かな。」と、興味津々であった。「どんな国だと思う?」と問うと、意見が様々出た。そこで、4、5人の
班で幸せの国とはどのような国か話し合うことにした。「幸せの国」に必要だと思うものを一人一人付箋
に書き出し、話し合いながら班ごとその付箋を仲 間 分けした。ウェビングマップに出た幸 せの要 素を参
考にしながら、みんなが幸せだと感じるために必要なものは何か考えていったのである。
班での話し合いの様子を聞いていくと、多くの班から共通して「豊かさ」という言葉が挙がった。「豊か
さってどういうこと?」と問うと、思いやりや優しさなどの精神的豊かさのことだという意見と、土地や食べ
物、家などの物質的豊かさだという意見とが出た。途中どちらが重要かという話題になり意見が対立す
る場面もあった。児 童が「幸せとは何か」について課題 意 識をもつことができ、話し合いは白熱した。こ
の時間にその結論を出すことはしなかったが、「幸せの国」というくらいだから精神的にも物質的にも豊
かで、全てがそろっている極楽のような国だろう、という話になっていった。そして、幸せの国について知
りたいという意欲を高めることができた。
2時限目:【ブータンってどんな国?】
前時に考えた内容を確認した後、幸せの国として知られている国はブータンであったことを伝えた。そ
して、ブータンとはどんな国なのかをクイズ形式で知らせていった。(※添付1参照)教師が海外研修で
経験したエピソードなども織り交ぜて、ブータンの人々の様子がイメージできるようにした。
ブータンの国の基礎知識からユニークな点、日本との違いなどを次々と提示すると、児童は大きな反
応を示しながら、ブータンの国について理解していった。
ココがポイント!
ブータンのイメージを掴 みやすくするため、パ
ワーポイントを用 いて写 真 を効 果 的 に提 示 し
たり民 族 衣 装 である「キラ」を着 て登 場 したり
するなど工 夫 した。クイズは選 択 問 題 を取 り
入 れたり、人 口 や面 積 などの数 値 は 身 近 な
数値と比較できたりするようにするとわかりや
すくなる。
写真3
大 型 テレビを使 用 して写 真 を提 示 している
様子
授 業 実 践
ブータンのことについて様々知ったあと、ブータンは幸せの国として知られていることを再度確認し、2
枚の写 真 を見てどちらがブータンか当 てるクイズを行 った。例えば、最 新 式 水 洗 トイレと自 分で水を汲
んで流すトイレ、全 自動 食 器 洗い機と食 器を手 洗 いする少 女 の写真を見 せ、どちらが幸せの国 ブータ
ンの写 真 かを当てるのである。一 見 貧 しいように見 える写 真 の方 がブータンであることを知 り、児 童 は
驚きを隠せない様子であった。「幸せの国というくらいだから、もっと裕福な国なのかと思った。」「都会み
たいなところなのかと思った。」と、自分がもっていた「幸せの国」のイメージと現実とのギャップにとまど
っていた。そこで、「どうしてブータンの人々は幸せだと感じているのだろう。」と問いかけた。児童は思い
思いに考えをワークシートに書いた。考える中で児童は生活や文化の違いが価値観の違いに繋がって
いること、物 質的 豊かさだけが幸せなのではなく精神 的 豊かさがとても重 要であることなどに気付いて
いった。
【児童の感想より抜粋】
●ぼくは、ブータンのことを知って驚きました。豪華だったりピカピカだったりはしないけれど、友達や
家族みんなでごはんを食べたりしていて、心があたたかで思いやりがあるから幸せなんだと思いま
した。それから、いろいろなことをありがたいと感じる「ありがとうの気持ち」をもっているから幸せな
んじゃないかと思いました。
●私は、幸せの国とは、東 京みたいに都会でにぎやかだろうと思ったけれど、予想とは違 いました。
ブータンは伝統を大切にしているから幸せだと感じているのかもしれないと思いました。
●ぼくは、ブータンの人達は自分達の生活に満足しているから幸せなのだと思いました。今のぼくで
はその暮らしには満足できないかもしれません。世界にはいろいろな暮らし方をしている人達がい
ることがわかりました。
●日本はブータンとは違うところがたくさんあります。ブータンは幸せの国。でも、日本だって幸せだっ
て言える方法はないのかな。ブータンに行って、ブータンを自分の目で見てみたいです。
3時限目:【世界で活躍する日本人について知ろう】
日本とブータンは深い関係のある国であり、たくさんの日本人がブータンで活躍しているのだというこ
とを資料や映像を用いて伝えた。
まず、道徳教材である「ブータンに日本の農業を」を読み聞かせ、西岡京治氏について説明した。そ
して、JICAについて説明した後、今も青年海外協力隊員やシニア海外ボランティアとしてブータンで活
躍している日本人がいることを、パワーポイントを用いて写真を提示しながら説明していった。
- 24 -
青年海外協力隊員やシニア海外ボランティアの方々の写真を見せながら説明していると、「みんな笑
顔だね。」とつぶやいた児 童がいた。そこで、「なぜみんな笑 顔 なんだろう。活 動している人 達の幸せっ
て何なのだろうね。」と問いかけ、ワークシートに考えを書かせた。
児 童 は、考 え話 し合 う中 で、自 分 のためだけに生 きるのではなく、誰 かの役 に立 つように生 きていく
幸せもあるのだということに気付いていった。「みんなが幸せになることが結局自分の幸せになるのでは
ないか。」という意見も出た。これまで考えてきた幸せの捉え方がまた一歩深まった場面であった。
最後に、青年 海外協 力隊 の方のインタビュー映像を見せた。その中で「私は、はじめは開 発途上 国
の人達に何かをしてあげるために来たと思っていました。今思うと、ブータンの人達を上から見ていたの
かもしれません。でも、実際に活動してみるとその考えは間違いであることに気付き、自分が恥ずかしく
なりました。ブータンの人 達と共に働く中で教えてもらったことがたくさんあります。国が発 展しているか
どうかではなく、人間として対等に接していくことがとても大切です。」との話があった。授業冒頭に紹介
した西岡氏の姿勢と共通するものがあることに児童は気付いていた。学習を通して、「幸せ」から「国際
理解」、「人間理解」へと児童の思考は広がっていった。
【児童の感想より抜粋】
●人のために何かをして、人の幸せを自分の幸せだと感じられるのはすごいことだと思う。将来、何
か人の役に立てる人になりたいと思った。
●ぼくは、インタビューを聞いて、確かにそうだなと思いました。日本は豊かで偉くてブータンはかわい
そう、ではなく、同じ人間として自分のもっている力を人のために使うことが大事なのだと思いまし
た。
●「ブータン人と日本人 は違うけれど、同じ地球で生きている人 間だ。」という言葉がとても心に残り
ました。私は、ブータンだけでなく、他の国の人々も同じだということがわかりました。
●ブータンの人々は日本のことを好きだと思ってくれているので、ぼくももっとブータンのことを知りた
いです。ブータンと日本が仲良くすること、国と国が仲良くすることも幸せだと思います。
〔7〕授業実践の成果と課題
成果としては、〔5〕に記述したように、ねらいとしていた「幸せ」に対する捉え方が深まったこと、ブータ
ンや世界の国々への関心が高まったこと、国や人種が違っても同じ人間として生きることの大切さに気
付けたことなどがある。写真や映像等の資料を活用したりクイズを取り入れたりして展開したことや、グ
ループで話し合う時間を意図的に設けたことなどが、内容への理解を促し思考を深める要因となり、こ
のような成果に繋がったのだと考えられる。
今後熟考していく必要があると思うのは、ブータンの「幸せの国」としての側面を強調し、国の抱える
現在の課題については扱わなかったことについてである。小学4年生という発達段階を考慮して、今回
はブータンの幸福度が下がっていることや社会的な問題となっている点等については扱わなかった。し
かし、児童の実態によってはそれらの点 も扱った方が、「幸せとは」というテーマをさらに深めていくこと
ができると考えられる。児童の実態と話し合いの深まりをよく見て、それらの内容も効果的に取り入れら
れたらよいと思う。
- 25 -
授 業 実 践
〔6〕児童・生徒の反応/変化
今回の授業を通して、児童の「幸せ」の捉え方が大きく広がっていったように思う。物質的な幸せだけ
でなく、心の中から生み出す幸せ、他 者のために生きる幸せ、他者と共に築いていく幸せがあることに
気付いていった。また、ブータンという児童にとってあまり耳にしたことのなかった国の様子を知ることで、
世界には様々な国があることに気付き、視野を広げることができたのも大きな収穫の一つである。授業
後も、図 書 室 で世界の国 の本を探して読んだり、自 主学 習で他 の国のことについて調べたりする姿が
見られ、関心を広げることができたと感じる。
「幸せ」について考えを深めていくことが今回の大きなねらいであったが、それだけでなく、「幸せ」を一
つの切り口として、児童の目を世界に向けることができたように思う。
〔8〕参考文献(引用文献・参考資料)
・「ブータンに日本の農業を」 木暮正夫 光村図書「きみがいちばんひかるとき」 2013年
・「私たちの地球と未来『ブータン王国』」 公益財団法人愛知県国際交流協会 2012年
〔9〕使用教材(写真/図などの実物)
添付1 2時限目で使用したパワーポイントの一部
添付1-1 ブータン3択クイズ
添付1-2 ブータン3択クイズ答え
添付1-3 ブータンはどっちクイズ
添付1-4 ブータンの家族との思い出
授 業 実 践
〔10〕教師海外研修を終えて(感想・今後の展望)
教師海外研修に参加できてよかったと、授業を終え改めて感じている。自分で目で見て肌で感じた経
験は、説得力のある素晴らしい教材になることを確信した。
教師海外研修では、学校現場や医療現場、一般の家庭や官公庁など様々な場所を訪問させていた
だき、たくさんの出会いを結ぶことができた。この経験により、私はブータンという国を多面的に見ること
ができるようになった。また、一緒に研修に参加したメンバーと一つ一つの経験について話し合うことで、
私自身の視野が大きく広がっていくのを感じた。
経験を授業 にしていくことは容易ではなく、難しいものであった。まだまだ指導 が未熟で、反 省すべき
点の多い授業であったと思う。しかし、授業後、「先生、またブータンの授業やりたいな。」「もっと世界の
ことを知りたいなあ。」「私も世界で働いてみたい!」とキラキラした瞳で話しかけてきた児童の姿に、海
外研修という経験のもつ「教材としての力」を感じずにはいられなかった。教師が経験を通して視野を広
げていくことが、そのまま視野の広い子どもたちを育てていくことに繋がるのだと思った。
今回の経験は発達段階に合わせて、どの学年でも授業化していくことができると思う。児童の実態に
応じてアレンジしながら、様々な学 年 で授 業 実 践 を続けていきたい。また、国 際 理 解 についてさらに学
び、自分自身の視野を広げていく努力も続けていきたいと思う。
- 26 -
学校名:中央市立玉穂南小学校
● 実践教科等: 総合的な学習
氏名: 今福 真紀
[担当教科: 全 科
]
● 時間数
: 7時間
● 対象
: 小学校4年生
● 対象人数 : 28人
〔1〕単元名
ブータンを通して日本の環境問題を考えよう
〔2〕単元の目的/目標 (ESD の能力・態度)
・ 日本と異なる文化・生活を知り、環境によい行動や生活に気づくことができる。(批判的に考える力)
・ 自分達の生活を見直し、環境によい行動を考えたり実践しようとしたりできる。
(未来像を予測して計画を立てる力、多面的・総合的に考える力、進んで参加する態度)
〔3〕ESD(持続可能な社会づくり)の視点
多様性
相互性
有限性
公平性
連携性
責任性
- 27 -
授 業 実 践
・ 日本とブータンの相違点や類似点に気づく。【多様性】
・ 自分達に合った取り組みを考え、仲間と協力して実践できる。【相互性・連携性・責任性】
〔4〕単元の構成
評価の
本時のねらい、テーマ
学習活動・学習内容
使用教材
時限
観点と方法
【なるほど!ブータン】
・写真や資料でブータンの概要を知る。 ・パワーポイント 学習活動の観察
○ 日 本 と の 相 違 点 や 類 似 点 ・写真を見ながら日本と似ているところ、
1
を 見 つ け さ せ る こ と で 理 解 異なることを考える。
を深 め、これからの学 習 へ ・面積、人 口 、人 口 密度、GDP、幸 福 度
の興味をもたせる。
を数 値 や順 位 で比 較 した表を見 て気
づいたことを話し合う。
学習活動の観察
【ちょこっと体験!
・小 グループごとに使 うたらいの数 や洗 ・たらい
感想文の記述
ブータン人の生活】
剤 の 量 、 洗 い方 な どを 考 え、 一 人 に ・洗剤
○ エ コ だ け ど 大 変 な 手 洗 い つき靴下一本を手洗いする。
・リットルます
2
と、エコではないが、楽な洗 ・もう一 本 はクラス全 員 分 まとめて洗 濯 ・洗濯機
・
濯機について実感させる。
機 で洗 い、使 用 した水 の量 や洗 剤 の ・時計
3
○手洗いの方法など選択した 量などを手洗いの場合と比べる。
・物干し竿
行 動 によってエコな度 合 い ・体 験 後 の感 想 を話 し合 い、各 自 用 紙 ・洗濯ばさみ
が変わることを知らせる。
にまとめる。
・感想記入用紙
・前 時 の体 験 を振 り返 り、ブータンと日 ・パワーポイント 学習活動の観察
ワークシートの記述
【ブータンから学ぼう!
本の生活をエコという視点で比較して
環境への取り組み】
考える。
・ブータンの 3 枚の写真から環境によい ・各グループ
4 ○環 境 という視 点で日 本 の生 と思 われるエコポイントを小 グループ 3枚ずつの写真
・ワークシート
・
活 と比 較 させ、自 分 の生 活 ごとに見つけて話し合う。
5 を見直させる。
・「トライ!エコ生活」と題して、学校や家
○ 学 校 や 家 庭 で 自 分 達 に で 庭で自分達にできそうなエコな取り組
きそうなエコな取り組みを考 みを 小 グ ル ープごと に 考 え、 実 施 計
えさせる。
画を立てる。
・計画を立てたグループは準備をする。 エコ生活準備品
【ふり返ろう!エコ生活】
・自 分 達 が 取 り 組 んだ こ とをふり返 り 、 ・ワークシート 学習活動の観察
ワークシートの記述
○取 り組 みの反 省 からエコ生 改 善 点 や続 けてできそうなことを話 し
活 で 大 切 な こ と を 考 え さ せ 合う。
6
る。
・便 利 ・楽 とエコについて意 見 を出 し合
・
○環 境 問 題 、便 利 さ、幸 せの い感想をもつ。
7
関係を話し合い、これから、 ・世界の環境問題や GNH への取り組み ・パワーポイント
どのように行 動 するか考 え などブータンの人々の考 え方を知り、
させる。
これまでの学習の感想を書く。
〔5〕授業の詳細
ココがポイント!
1 時限目:【なるほど!ブータン 】
最 初 から思 い切り日 本 と比 較 して考えさせる構
1学期に、ブータンの子 ども達へ向けた英語の
成 を選 びました。子 ども達 もブータンを通 して、
メッセージを録画したこともあり、子ども達は授業
日本や自 分 のことをよく考えていました。この視
前からブータンにとても興味をもっていた。
点は、環境を考える時にも役立っていました。
最 初 に行 った世 界 地 図 からブータンの場 所 探
しは、国名が書いてある地図を提示したが、数名チャレンジしてもなかなか見つけることができず、国土
の小ささを実感したようであった。次に、ブータンの基本情報(国旗や言語、通貨、地形や気候など)を
紹介し、日本 と面積、人口 、人口 密 度、GDP、幸福 度 を数値や順 位で比 較した表を見せて気づいたこ
とを発表させた。子ども達は、人口や GDP は少ないのに、幸福度が高いブータンに興味をもつ一方で、
経済は豊かなのに幸福度が低い日本に驚く発言が多かった。そして、日本と似ているところと似ていな
いところや、学校や家庭生活などの様子をクイズ形式で紹介した。次の学習につなげるために、洗濯は
川から引いた外の水道で手洗いしていることや農村ではお風呂がない家が多いことなど、ホームステイ
の体験や感想を交えながら話をした。最後に、日本とのつながりにふれた。内容の区切りごとに、質問
が出たため、最後の質問タイムはとらなかった。
授 業 実 践
2・3 時限目:【ちょこっと体験!ブータン人の生活】
まず、4・5人のグループごとに道具 や洗う方法を考えさせた。
「環 境 によい方 法 で、汚 れもしっかり落 として」と伝 えたが、大 き
なたらい一つをみんなで使うグループと小さいたらいを数名ずつ
で使うグループに分かれた。洗剤については、洗濯機で使う量と
同じだけ渡し、使う量は自分達で決めさせたが、使った量はまち
まちだった。
そして、使 った水の量をリットルますで量り、各グループの結 果を比較
させた。すると、たらいの数が少なくて、使用した洗剤も少ない方が水を
たくさん使わないで済んだことが分かった。全てのグループで使った水を
合計しても洗濯機の半分にもならないので、手洗いはとてもエコであるこ
とが分 かった。また、最 後 に「エコだと分 かっているのに、なぜ家 では手
洗いではなく洗濯機を使うことが多いのだろう.」と投げかけてみると、「便
利 」「楽 」「何 かをしながらでもできる」という答 えが返 ってきた。「便 利 」
「楽」という言 葉は環 境 問 題を考えていく上でキーワードだと伝え、体 験
の感想を書かせた。
感想より
●手洗いは自分が使う洗剤の量を決められるので環境にいいと思う。
●ブータンの人は、毎日洗たくものを手洗いして大変だと思った。
●足が痛くなったり、手が冷たくなったりした。
●これいがいにふくやいろんなものを洗っているのはすごいと思った。
●それでも幸せと思っている人が多くてびっくりしました。
4・5時限目:【ブータンから学ぼう!環境への取り組み】
最初にブータンのマーケット、トイレ、教室の様子が写った写真から環境によいと思われるエコポイン
トをグループごとにできるだけたくさん見つけさせた。
マイバッグでレジ袋がない。
木とシートでテント。
レジを使わない。
商品がラッピングしていない。
箱を逆さにして商品の台。
ゴミになる物は使わない。etc
トイレットペーパーがない。
水を流すところがない。
ボットントイレ?
水をくんで流している。
電気を使っていない。
- 28 -
一つの机に 3 人で座り、はさみ
色鉛筆など回して使っている。
電気が少ない。太陽の光を取り
入れている。
制服を着ている。
男の子の髪の毛が短い。etc
次に、「比べてみよう!日 本とブータン」と題したパワーポイントを使って、3
枚の写真の続編として別アングルの写真を見せたり、エコという視点で、前時
の手洗い体験を振り返ったりした。水の使用量やゴミの排出量など生活の様
子の写真とともに、具体的な数値で日本と比較してみせた。
そして「トライ!エコ生活」として、ブータン人の生活をヒントにして学校や家
庭で自 分 達 にできそうなエコな取り組 みを考え、実 際に取り組んでみようと、
グループごとに実施計画を話し合わせた。話し合い
では、「使ってない電気を消す」「水を出しっぱなしに
しない」という意 見 の他 に、「電 気 を消 して勉 強 す
る」「班で一本の鉛筆・はさみを回して使う」など、少
し首 をかしげたくなる意 見 も出 されていた。授 業 後
に行った研究会でのアドバイスもあり、後の 2 点に
ついては、確かにエコにはなる
ココがポイント!
けれど、本 当 に自 分 達 に合 っ
計 画 では違 ったのですが、話 し合 いを
た取り組みといえるのか、全体
2回 に分けたことです。子 ども達が深く
で意見を出し合わせてから、も
考 えずに出 したアイディアの問 題 点 を
う一 度 話 し合 わせることにした。
一度全体に問い直したので、その後の
話し合いは、より具体的になりました。
- 29 -
授 業 実 践
全 体 の 話 し 合 いでは、電 気 を消
すことについては「天 気 が悪 いときは目 が悪 くなる」
「勉強している時は、消さなくてよいのでは」という意見
がすぐに出された。「晴れているときは、窓際の列の電
気 は消 してもよいと思 う」という意 見 も多 かったので、
学 習 の時 にどのくらい電 気 が必 要 なのか、クラスでし
ばらく試してみることになった。鉛筆やはさみ一本をみ
んなで使 うという意 見 についても「書 いたり切 ったりす
るのに時 間 がかかる」「今 ある鉛 筆 やはさみを使 わな
い方 が無 駄 」と、批 判 的 な意 見 が多 く出 された。鉛 筆
やペンをたくさん持 ってきすぎている人 の数 を減 らす
のはよいが、今 ある鉛 筆 やはさみを最 後 まで大 切 に
使うことを考 えた方がよいという意見でまとまった。また、教 師からブータンと
日本は経済などの状況が違い、一つのはさみを 3 人で使っているのは、エコのためではないということ
を確認した。ただ、少ない物をみんなで分け合って大切に使う気持ちは、エコにつながるということを知
らせ、グループごとに 2 回目の話し合いを行った。計画を立て終わったグループから準備をした。
《学校での取り組み》
1 班…「紙をむだづかいしない」・裏が白い紙を再利用する箱を作る。・裏が白い紙でメモ帳を作る。
2 班…「水の節約」・全校の水道点検・点検表を作って貼る。・ポスターをかく。
3 班…「ものを大切にする」・持ち物に名前を書かせる。・落とし物点検をする。
4 班…「水をむだにしない」・水を出しっぱなしにしないように呼びかけたり、点検したりする。
5班…「物をむだにしない」・まだ使える物は、最後まで使う(短い鉛筆はキャップをつける)。・トイレッ
トペーパーが落ちていないか点検する。・落とし物を消しゴムや鉛筆を忘れた人にかす。
6班…「電気を節約する」・窓側の電気を消す。・節電するように全校へ呼びかけたり消したりする。
感想より
●メモ帳を使ってくれた人がいて、エコができたと思いました。作ってよかったと思った。
●3階は3日間すべて水がとまっていた。すごい。さすが5・6年生だなと思った。ぼくもちゃんと水をとめ
ます!取り組みをして、水はもっと大切に使おうと思いました。
●名前を書いてもらい、落とし物が減った。3学期もできればそうしてほしです。トライエコ生活で、この提
案をできてよかった。
●取り組みをして、トイレットペーパーが、(ペーパーフォルダーつけていなくて)たくさん落ちているのにび
っくりしました。トイレットペーパーがたくさんすくわれたからよかったです。
●休み時間に電気がついているところには、消してといえば消してくれて電気の節約になったと思う。理
由を言えば消してくれてよかった。電気のつけっぱなしがだんだん少なくなったので節電につながった
と思った。少しでもエコになってよかった。
《家庭での取り組みの一部》
○こたつ・廊下・洗面所・部屋など電気をこまめに消す。
○テレビの音量を小さくする。
○小便は「小」で流す。
○厚着をしてストーブをなるべく使わない。
○シャワーを使わずにお風呂のお湯を使う。
○使っていないコンセントを抜く。 ○裏が白い紙を使う。
○タオルなど何度も使える物を使って、ゴミを減らす。
○シャワーや歯磨きの時に水を出しっぱなしにしない。
○ティッシュをむだづかいしない。
感想より
●シャワーを止めると寒くなるけど、寒くなったぶんやりがいが
あるので、これからも続けたい。
●見たいものがちがって、テレビを 1 台にあまりできなかった。
●エコ生活は、いつもより少し大変だった。
授 業 実 践
6・7時限目:【ふり返ろう!エコ生活】
最初に、取り組みの感想を紹介した。自分達が取り組んだことをふり返り、改善点や続けてできそう
な取り組みを考えさせた。「トイレットペーパーの点検では、置いてあるトイレットペーパーをぼくがフォル
ダーにつけたが、もっとみんなにしっかりつけてほしかった。呼びかけをすればよかった。」「水道の点検
を休み時間の終わり頃と決めたが、昼休みはみんなが歯磨きで水道を使うので、その時に点検をした
方がよかった。」などの意見が出された。改善点から、エコ活動は、自分達の生活に合っていて、効果
があることが大切であることや、みんなに広めて予防することが効果的であると気づくことができた。ま
た、続けるためには、無理なくできることに取り組んだ方がよいという意見が出された。
次に、洗濯体験の時にも出された「便利」「楽」と反することが多いエコに、どのように取り組んで行け
ばよいのか考えさせるため、ディベートゲームをした。テーマは、「便利・楽とエコ…あなたはどちらを大
切にしますか」で、学級を便利・楽チームとエコチームの2チームに分けた。最初はエコの方を大切にす
ると答えた人が多かった(28 人中 25 人)ため、助っ人を募って同数にした。ジャッジと進行の役は教師
が担当した。チームでの話し合いは時間で区切り、代表者による意見の交換を 3 回行った。
〈便利・楽チームから出された主な意見〉
・遠くに行くときは、どうやっていくのか。歩いたり自転車に乗っ
たりするのは大変ではないか。それに海外へ行くときは、飛行
機や船に乗らないと行けないからエコでいられない。
・便利な物がないと困ることがある。大きな病気にかかった時、
便利な機械などがないと治せないと思う。どうするのか。
・人を助けたいのなら、募金でお金を集めてあげればよいので
はないか。そちらの方が早い。
〈エコチームから出された主な意見〉
・エコに気をつけると地球にもよいし、人のためにもなる。例えば、
水や食べ物を大切にして、足りなくて困っている国へ送れば人
助けになる。
・全てエコにはできないかもしれないけれど、遠くへ行くときにはソ
ーラーカーみたいに、自然エネルギーやエコ燃料を使うなど、で
きるだけエコにすることはできると思う。
・物を無駄にして、物がなくなってしまったらお金も意味がなくなる
し、人も助けられなくなる。
- 30 -
エコチームの方が反論に知識が必要なことが多く、意見を考えるのに苦労していた。意見の勢いは便
利・楽チームの方があったが、よりチームで協力して意見を出していたのはエコチームの方だったため、
ジャッジは引き分けとした。
そして、世界の環境問題に関する写真を見せ、取り組んできたエコ活動が、これらの悪化防止に少し
だけだが役立つことや、人間は気をつけないと便利・楽な行動を選んでしまうので、エコを大切にする気
持ちはとても重要であることを知らせた。また、ブータンの GNH への取り組みやポブジカの谷の話など、
人々の考え方を知らせ、物質が豊かで便利な社会だからといって人々は幸せを感じているわけではな
いということを、グラフを見せて考えさせた。
最後は、ブータンで教わった「たるを知る」「幸せにはリミットが必要」「どこかをきれいにすることはどこ
かを汚しているということ」という言葉を紹介して授業後の感想を書かせた。
〔7〕授業実践の成果と課題
思っている以上に子ども達は外国について興味をもっており、異文化を敬遠するのではなく、理解しよ
うという意欲があることが分かった。指導者である教師が実際に経験したことを交えながら授業実践で
きたので、より興味や意欲をもたせることができたように感じた。今回は「環境」という切り口で授業を行
ったが、ブータンの様 子を知らせるたびに、子ども達 が色々な角 度から日 本 や自 分達の現 状と比べて
考える様子がみられた。「ブータンに学ぼう」とこちらから投げかけなくても、ぼくたちも○○すればいいじ
ゃん。」と、つぶやく声がいくつも聞こえた。
体験活動を取り入れたことで、自分達が選択する行動でこれほど環境への影響に違いが出ることを
実感させることができたこともよかった。同時に水の冷たさや手間がかかるといった大変さも味わったの
で、エコ活動がもつジレンマも少なからず感じることができたと考える。また、エコへの取り組みを実践し
たことは、一人ひとりの環境に対する意識を高めることにつながったようである。取り組み前と比べて、
学級では落とし物が減り、電気をこまめに消そうとするなど、行動に変化が見られた。そして、あまり肩
肘 張らずに、取り組みやすいことから実 践していくことや、現 状 から正しく課 題を見つけ、それにあった
取り組みをしていくことが取り組みを成功させたり続けたりする秘訣であることも実感できた。
今後の課 題は、この取 り組みを日常 化できるようにしていくことである。そして机上では学んだが、時
には「楽」「便利」よりエコの方を選択して行動する気持ちを少しでもつことができれば素晴らしい。また、
国 際理 解という子ども達 の興味 関 心 に応え、できれば学習にリンクするような教材をもっと開発してい
けるとよい。
- 31 -
授 業 実 践
〔6〕児童・生徒の反応/変化
・ブータンの人は、鶴のために電柱をなくしたのがすごいと思った。ぼくだったら DS の充電もできないし、
ストーブもつかなくなるからできない。話し合いは裁判みたいで面白かった。便利・楽もいいけど、エコを
心がけて生活したい。
・エコ生活をして、節電は少し生活しにくかったです。無理かもしれないけど、ブータンの生活に負けない
ような生活をしていきたいです。
・私はこの勉強をして、エコって大切ということを改めて思い出しました。特にびっくりしたことは、日本の
経済力の方がブータンよりずっと高いのに、ブータンの方が幸せを感じる人がずっと多いということです。
わたしも、ブータンの人のように幸せと思いながら暮らしていきたいです。学校の写真で物を分け合って
学習していたので、エコだと思いました。これからも少しでもブータンを見習うようにエコ生活を続けてい
こうと思いました。
・エコと便利・楽は、どちらも必要だと思いました。エコは地球によくて、便利・楽は、病気になったりした
ら薬 がなくて困 ることもあるかもしれない
から必要だと思います。エコは、身近なと
ころで色 々なことができるので、ぼくもで
きることはやってみたいです。
・ぼくは、今 まで自 分 のことだけしか考 え
て いな か った け ど、 この 勉 強 を してほ か
の人 のことも考 えたいと思 いました。エコ
をして地球を大事にするのが大切だと思
いました。これからは、エコ活 動 をやって
地 球 をこれ以 上 汚 さないようにしていき
たいです。(ブータンの)お坊 さんが言 っ
たことを忘 れないでいたいです。今 度 か
ら欲ばらないようにしていきたいです。
〔8〕参考文献(引用文献・参考資料)
『人と地球の生命のみなもと 水の大研究 不思議な世界をのぞいてみよう!』 橋本淳司 PHP 研究
所 2005年
Wikipedia「ブータン」(2013 年 7 月 13 日アクセス)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%B3
Wikipedia「日本」(2013 年 7 月 13 日アクセス)http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC
Wikipedia「国民総幸福量」(2013 年 7 月 13 日アクセス)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E6%B0%91%E7%B7%8F%E5%B9%B8%E7%A6%8F%E9%87%8F
ネットワーク「地球村」(2013 年 7 月 13 日アクセス)
http://www.chikyumura.org/environmental/report/2012/11/01144225.html
〔9〕使用教材(写真/図などの実物) 「なるほど!ブータン」スライド一部
「比べてみよう!日本とブータン」スライド一部
授 業 実 践
〔10〕教師海外研修を終えて(感想・今後の展望)
海外の経験をただお知らせするのではなく、子ども達が学び合い・考える「授業」として実践できたこと
は、私にとって大きな喜びである。旅行 だけでなく、在外教 育施 設に派遣され、3年間も海外経験があ
るのにも関わらず、そのことをあまり教育実践に活用できていなかった。そのことをずっと後ろめたく感じ
ていたが、今回の経験で目から鱗が落ちたようであった。これまでは、授業で自分の経験を扱うときは、
その国についての知識を知らせたり、自分の経験 を話したりすることが中心でよいと考えていた。私の
場合、全校集会で台湾の概要についてクイズ形式で紹介してしまったので、再び授業として取り上げる
のが難 しいように感 じていた。しかし、今 回 のように切 り口 を与 えて考 えるための教 材 として使 えば、
色々な場面で活用していくことができることを学べたのは大きな収穫である。子ども達の興味・関心を教
師の実体験で刺激し、より深く学び合える授業をもっと実践していきたいと感じた。
- 32 -
学校名: 東京都八王子市立横山第一小学校
● 実践教科等: 総合的な学習の時間
氏名: 矢嶋 幸子
道徳
● 時間数
[担当教科: 小学校全科]
: 13時間
● 対象 : 小学校6年生
● 対象人数 :30人
〔1〕単元名
世界の国へとびだそう
〔2〕単元の目的/目標 (ESD の能力・態度)
・ブータンの文化や生活の様子について知り、世界の国々への興味・関心を高める。
(進んで参加する態度)
・自分の課題をもって調べることで、異なる文化や習慣に対する理解を深める。
(多面的・総合的に考える力)
・「幸せ」についての多様な価値観にふれ、自分の考えをもつ。(批判的に考える力)
・世界の国と日本のつながりについて考える。(つながりを尊重する態度)
・世界で活躍する日本人の姿から、自分の将来の夢や生き方について考える。
(他者と協力する態度)
〔3〕ESD(持続可能な社会づくり)の視点
多様性
相互性
有限性
公平性
連携性
責任性
〔4〕単元の構成
時限
本時のねらい、テーマ
学習活動・学習内容
使用教材
評価の
観点と方法
1
【幸せの国とは?】
・ 自 分 た ち に と って の 幸 せ
とはどんなことか考え
る。
・自 分 達 が「幸 せ」と感 じるとき
は ど ん な 時 か 、「 幸 せ の 国 」
とはどんな国なのか考え、友
達と伝え合う。
・ワークシート
・話し合いの様
子
・ワークシート
2
【ブータンはどんな国?】
・ブータンの文 化 について
知り、世界の国々の文
化に興味をもつ。
・ブータンの国 の文 化 、衣 食 住
等について知る。
・学習 活 動 の観
察
・ワークシート
3
4
【ブータンについて知ろう】
・ブータンの学 校 や生 活 の
様子について知り、自分
達 との共 通 点 や相 違 点
に気付く。
・ブータンの学校の様子や生活
の様 子 の写 真 を見 て、日 本
との共 通 点 や相 違 点 につい
て話し合う。
・パワーポイント
・地図
・民族衣装
・国旗
・ルンタ
・通貨
・ワークシート
・写真
・ワークシート
- 33 -
・話し合いの様
子
・ワークシート
授 業 実 践
・世界の国々に興味をもち、文化や考え方の多様性について気付く。【多様性】
・ブータンと日本のつながりについて知る。【連携性】
5
【幸せについて考えよう】
・幸せには多様な考え方が
あることに気付く。
・GNHの考え方を知る。
・ブータンの人 々の大 切 にして
いることについて考える。
・ワークシート
・学習 活 動 の観
察
・ワークシート
6
【ブータンと日本のつながり
について知ろう】
・西 岡 京 冶 さんの活 躍 か
ら、ブータンと日 本 のつ
ながりについて知る。
(道徳)
・西岡京冶さんの活躍について
学 び、日 本 とブータンのつな
がりについて考える。
・学習 活 動 の観
察
・ワークシート
7
8
9
【世界の国について知ろう】
・世 界 の国 に興 味 をもち、
自 分 の課 題 について調
べる。
・友 達 と発 表 し合 うことで、
世 界 の国 々について理
解を深める。
【世界で活躍する日本人に
ついて知ろう】
・世界で活躍する日本人の
活動について知る。
【世界の国へとびだそう】
・今まで学習してきたことか
ら、自 分 の生 き方 にいき
たいことを考える。
・ブータンについて学習したこと
から、世界に目を向け、日本
とつながりのある国につい
て、自 分 の課 題 を決 めて調
べる。
・調 べたことを友 達 に発 表 し、
伝え合う。
・青 年 海 外 協 力 隊 の活 動 につ
いて知り、人のために活動す
ることについて考える。
・「ブータンに日
本の農業を」
(6年道徳副
読本 「きみが
いちばんひか
るとき」 光 村
図書)
・ワークシート
・本
・インターネット
・ワークシート
10
11
12
13
・今までの学習を振り返り、「幸
せ」のために大 切 にしていき
たいことを考える。
・学習 活 動 の観
察
・ワークシート
・発表
・写真
・ワークシート
・学習 活 動 の観
察
・ワークシート
・ワークシート
・学習 活 動 の観
察
・ワークシート
授 業 実 践
〔5〕授業の詳細
1 時限目:【幸せの国とは?】
自分が「幸せ」と感じる時とはどんな時か考えさせた。ワークシートに一人一人が自分の考えを書き、
グループごとにお互いの考えを伝え合ったあと、クラス全体で発表をした。その後、「幸せの国」とは、ど
んな国だと思 うか、イメージを話し合った。児童は自 由に自分たちの意見を話し合い、様々な考えがで
てきた。
(児童の考え)
幸せと感じる時
友達と遊んでいる時、おいしいものを食べている時、寝る時、遊園地に行く時、ゲームをしている時、
学校、おこづかいをもらった時、ほしいものを買ってもらった時、笑顔でいる時、家族が元気な時、
スポーツをしている時、誕生日、等
幸せの国のイメージ
物が豊か、自然が豊か、GDPが高い、自由、平和、安全、みんな仲良し、優しい、笑顔がいっぱ
い、ゲームがたくさんある、争いがない、災害がない、犯罪がない、等
- 34 -
2時限目:【ブータンはどんな国?】
「幸せの国 」といわれている国がどこの国か、ヒントをもとに考 えさせた。児 童が興 味をもてるよう、実
物 を見 せながら授 業 を進 めた。民 族 衣 装 のキラを着 て授 業 を行 い、民 族 衣 装 を見 て、児 童 から、「タ
イ?」「インド?」「中国?」と様々な意見がでてきた。ブータンの国旗を見せ、国旗に込められた意味に
ついて説明しても答えがわかる児童はいなかったが、 国王が2011年に来 日したことは、覚えている
児童が多く、国王の写真を見せると、「ブータンだ」という答えがでてきた。
世 界 地 図 でブータンの位 置 を確 認 したあと、パワーポイ
ココがポイント!
ントを使用し、写真や動画を見せながら、ブータンの国の概
児 童 が関 心 をもてるよう、民 族 衣
要について、地形、民族、宗教、言語等を伝えた
装 やルンタ、通 貨 など、実 物 を提 示
した。
3・4時限目:【ブータンについて知ろう】
ブータンの学校の様子と生活の様子の写真を見せ、日本での自分達の学校の様子や生活の様子と
比べて、共通 点や相違点 について考えさせた。グループご
ココがポイント!
とに話し合って意見を出させ、クラス全 体で発表を行った。
異 なる文 化 に興 味 をもち 、理 解 を
児童は写真に大きく反応し、積極的に意見を発表していた。
深めさせるため、自
分 達 の生 活と比
自分たちの生活が当たり前ではなく、世界には様々な文化
べて考えられるようにした。
があるということに興味をもって考えていた。
(児童の感想)
・幸せは、国によって考え方がちがうと思った。幸せは、いろいろな考え方があると思った。
・幸せとは、物だけではなく、家族とかが一緒にいられること。あたりまえのことが幸せだとわかった。そ
う考えたら、自分も幸せだと思った。
・ブータンの人々と、私たちが考えていた幸せは違った。いつか自分も人の幸せを考えられるような人
になりたいと思った。
・よく考えてみると、毎日家族や友達と過ごしていることが1番の幸せだとわかりました。世界の人が笑
顔で暮らせるように願います。
・幸せとは、自分だけではなく、世界のみんなが笑顔で毎日を過ごすことだと思った。
6時限目:【ブータンと日本のつながりについて知ろう】
ブータンの農業指導に力を尽くした西岡京冶さんについて、道徳の副読本「ブータンに日本の農業を」
(『きみがいちばんひかるとき』 光村 図 書出版 株式 会社)を教材 にして学習した。ブータンの田んぼや
野菜の写真は、日本と似ている部分が多く、児童は写真を見て、「秋田県?」「山梨県?」という反応を
していた。ブータンの野菜や風景だと知ると、「ブータンは遠い国だと思っていたけれど、近い国だったん
だ。」という感 想がでてきた。ブータンと日 本とのつながりを知ることで、今まで遠い国のように感じてい
- 35 -
授 業 実 践
5時限目:【幸せについて考えよう】
前時までの学習で、ブータンの生活は、自分たちのイメージしていた幸せの国とは違うという意見が多
かった。「ブータンは幸せの国とは少し違うと思う」という意見の理 由として、「日 本よりも物 が豊かでは
ないこと」や、「学校に通うのに、遠くから時間をかけて歩いている子どももいること」などがあげられた。
また、「ブータンは幸せの国だと思う」という理由としては、「家族や友達を大切にしているように感じたこ
と」や、「写真でみたブータンの人はみんな笑顔だから」という意見がでた。
その後 、GDPと、世 界から注 目されているブータンの国 の政 策、「GNH」について説 明した。また、
「足るを知る」等、チベット仏教の教えにもとづいた考え方や、ブータンで子ども達にインタビューしてきた
ことについて話をした。児童は、物の豊かさと心の豊かさがあることに気付き、「幸せ」と一言でいっても、
多様な価値観があることについて考えていた。
たブータンを身近に感じたようだった。 また、28年間もの間、ブータンの農業指導に貢献し、「ダショー」
の称号を授かった西岡さんの活躍を知ることで、国際協力についても考えるきっかけとなった。
(児童の感想)
児童の感想
・西 岡 さんの農 業 がブータン人 に受 け入 れられたのは、相 手 を思 いやり、時 間 をかけて伝 えていった
からだと思います。自分も、相手を思いやり、行動していきたいと思いました。
・国が違っても、相手の立場に立って思いやりをもてば、仲良くなれたりしたわれたりするのだと思いま
した。日本の伝統を伝えるだけではなく、その国の伝統も学び、大切にしていかないといけないと思
いました。
・世界の人と仲良くするためには、まず、自分が相手の立場に立って、自分の考えをただいうだけでな
く、一緒にやって理解してもらった方がいいと思いました。西岡さんは、ブータンの人に受け入れても
らってすごいと思いました。
授 業 実 践
7・8・9・10・11時限目:【世界の国について知ろう】
ブータンについて学習したことから、世界の国について興味をもち、日本と関わりのある国について、
一人一人が、自分の課題を決めて調べ学習を行った。世界の国々の文化、衣食住や、教育について、
日本との共 通点や相違 点を考えながら調べ、調べたことを、友達に発表できるようにポスターにまとめ
た。また、児 童 は、自 分 の調 べた国 の幸 せについても考 えてい
ココがポイント!
た。
ポスターセッションで、全 員 が
11限 目 では、調 べた国 の地 域 ごとにグループを作 り、ポスタ
発 表 を行 い、お互 いに質 問 をし
合 うことで、学 習 を深 めることが
ーセッションを行って、調べたことをお互いに伝え合った。
できた。
12時限目:【世界で活躍する日本人について知ろう】
研修中に訪問した、JICA隊員の活動している場所を紹介し、ブータンで活躍する青年海外協力隊や
シニア海外ボランティアの活動について、写真や動画を見せながら児童に伝えた。
(児童の感想)
・人のために何かをする優しい心、親切な心をもって活動している人を知って、ぼくも人の役にたてるよ
うになりたいと思った。
・国はちがっても、同じ人 間同士だから、助け合う心をみんながもてば、地球 の困っている人も助かる
から、助け合う心を大事にした方がいいと思った。
・ぼくも、この人達みたいに、人のために何かできる仕事についてみたいです。
・はじめは、人のために生きて何が幸せなんだろうと思ったけれど、授業を聞いて、人のために何かす
ることが幸せという考えがわかってよかったと思いました。
13時限目:【世界の国へとびだそう】
今までの学習を振り返り、「幸せ」のために大切にしていきたいこと何か考え、話し合いを行った。最後
に、今の思いを、未来の自分へのメッセージとして書いた。
- 36 -
〔6〕児童・生徒の反応/変化
この学習を通して、幸せについて考えたことで、自分だけの幸せだけではなく、他者との関係で生ま
れる幸せも自分の幸せにつながるというとらえ方をするようになり、幸せには、多様な考え方があるこ
とに気付いた。
また、ブータンについて知 ることをきっかけに、世 界 の国 について学 習 を広 げたことから、世 界 の
国々へも目を向けることができた。
・ぼくたちは初め、自分のためだけのことを幸せと考 えていたけれど、ブータンの人たちは、人と一緒に
いることや、誰かを幸せにすることも幸せだと考えていた。
・本当の幸せとは、一人じゃないこと。自分だけの幸せではなく、人の幸せも思うこと。
・幸せとは、他人を思うこと。物だけでなく、心の豊かさが本当の幸せだと思う。そして、人の幸せを願う
ことだと思う。
・調べていて、日本とはまったく違う国があるのだなと思いました。
・この学習で、自分の印象とは全くちがったことや、想像してあっていたことなど、たくさんのことを知るこ
とができました。食 事 や衣 類、住 居 や民 族など、調 べないとわからないことなども知りました。まだま
だ調べてみたいことがたくさんあり、行ってみたくなりました。
・友達の発表を聞いていて、どの国も旅してみたくなりました。
・今回の学習で、様々な国の文化を知り、国々が十人十色であることを改めて深く感じた。そして、日本
のすばらしさも感じた。
〔8〕参考文献(引用文献・参考資料)
・「私たちの地球と未来『ブータン王国』」〈http://www2.aia.pref.aichi.jp/topj/indexj.html〉
(交易財団法人 愛知県国際交流協会)
・『ブータン幸せの国の子 どもたち』 NHKドキュメンタリーWAVE 取材班 アグネスチャン 東京 書 籍
2013年
・『ブータン、これでいいのだ』 御手洗瑞子 新潮社 2012年
・『ブータンの笑顔』 関建作 径書房 2013年
〔9〕使用教材(写真/図などの実物)
・『きみがいちばんひかるとき』
「ブータンに日本の農業を」 6年道徳副読本
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光村図書出版株式会社
授 業 実 践
〔7〕授業実践の成果と課題
成果
・授業の中で、実物や、実際に訪問してきた写真や動画を活用したことで、児童に興味関心をもたせる
ことができた。
・ブータンという一つの国を知ることをきっかけに、世界の国々へ目を向けさせることができた。
・一人一人が自分の課題を決めて学習し、発表をすることで、自分の考えを友達と伝え合い、学び合う
ことができた。
課題
・児童に伝えたいことや考えさせたいことがうまく厳選できず、毎時間、ゆとりのない授業になってしまっ
ていた。
・ブータンから世界へ広げられたことはよかった部分でもあるが、広げすぎてしまい、児童の理解が浅い
まま終わってしまったところもある。ブータンに絞った授業展開をしたら、もっと学びが深まったかもし
れない。
添付1
幸せとかんじる時
添付2
授 業 実 践
学校の様子を知ろう
生活の様子を知ろう
〔10〕教師海外研修を終えて(感想・今後の展望)
教師海外研修での経験は、自分にとって、かけがえのないものとなった。この研修で、初めて国際協
力の現場を訪れ、たくさんの体験をさせていただくことができた。海外旅行や、日本で学んでいるだけで
はわからなかったことを、自分の目で見て、感じてくることができ、自分の視野を広げることができた。
しかし、学んできた多くのことを教材に、授業実践を考えた時、何をどのように伝えていけば、子ども
たちの心に響く国際理 解教育の授業ができるのか悩み、授業をつくっていくことは、とても難しかった。
試 行 錯 誤 しながら授 業 を行い、1回 、1回、子 ども達と共 に考えてきたことは、とても貴 重 な経 験 となっ
た。
また、異なる県、異なる校種の先生方、この研修に参加しなければ関わることのできなかったたくさん
の方々と出会えたことも、自分にとってとても大きかったと思う。この研修での経験や出会いを大切に、
教師として、一人の人間として、自分にできることに一つ一つ挑戦していきたい。
- 38 -
学校名:南アルプス市立白根東小学校
● 実践教科等: 社会科・道徳
氏名: 小林 ゆかり
● 時間数
:8時間
● 対象 :5年生
[担当教科:小学校全科 ]
● 対象人数 : 34人
〔1〕単元名
これからの食料生産
〔2〕単元の目的/目標 (ESD の能力・態度)
・日 本 と世 界 の農 業 の共 通 点 ・相 違 点 に目 を付 け、様 々な角 度 から物 事 を考 える力 を育 てる。(多 面
的・総合的に考える力)
・日本の農業技術がブータンの人々と協同で活用されていることを知る。(他者と協力する態度)
・日本と世界のこれからの農業のあり方を考える。(未来像を予測して計画を立てる力)
〔3〕ESD(持続可能な社会づくり)の視点
多様性
相互性
有限性
公平性
連携性
責任性
〔4〕単元の構成
時限
本時のねらい、テーマ
学習活動・学習内容
使用教材
評価の
観点と方法
1
【もし食料の輸入がストップ
したら?】
もし、食 料 の輸 入 ができな
くなったら、自 分 たちの食
事がどうなるのか知る。
(社会・5年)
2
【世界の食料事情】
世 界 の 食 料 事 情 は どの よ
うな状 況 になっているのか
を知る。
(社会・5年)
【食料生産の工夫】
現 在 行 われている食 料 生
産の工夫を知る。
(社会・5年)
3
・教科書の図を見て、輸入がス
トップした場 合 の食 事 について
考える。
・食 料 自 給 率 や 日 本 産 と外 国
産 の 食 料 の 値 段 のグラ フを 見
て、食 料 の輸 入 が増 えたわけ
を考える。
・教科書や資料集のグラフを読
みとり、世 界 の食 料 事 情 がど
のような状 況であるのかを知
る。
・社会科教科書
・社会科資料集
・ノート
学習活動の観
察
ノート
・社会科教科書
・社会科資料集
・ノート
学習活動の観
察
ノート
・資料 集から、現在 行われてい
る食 料 生 産 の工 夫 にはどんな
ものがあるのかを読み取る。
・読 み取 った工 夫 の中 から、食
料 自 給 率 を上 げるために効 果
的だと思われる工夫を選ぶ。
・社会科教科書
・社会科資料集
・ノート
学習活動の観
察
ノート
- 39 -
授 業 実 践
・日本は食料を外国から輸入したり、日本の農業技術を外国に伝えたりして、外国の国々と関わりあっ
ていることを知る。【相互性】
・日本の農業技術をブータンに伝え、ブータンの人々と協同で農業を営むことにより、互いに協力し合う
大切さに気付く。(連携性)
・持 続 可 能 な国 際 社 会 を構 築 ・維 持 するために、日 本 が農 業 技 術 を世 界 に伝えてきた役 割 の重 要 性
に気付き、将来の日本の国際社会で果たす役割を考えることができる。(責任性)
4
5
・
6
7
8
【遺伝子組み換え作物って
何?】
遺 伝 子 組 み換 え作 物 につ
いて知る。
(社会・5年)
【遺伝子 組 み換え作 物 に
ついて考えよう】
遺 伝 子 組 み換 え作 物 を作
ることに賛 成 か、反 対 か考
える。
(社会・5年)
【世 界 で活 用 される日 本 の
農業技術】
日 本 の農 業 技 術 が世 界 で
のどのように活 用 されてい
るかを知る。
(社会・5年)
【国際協力って何だろう?】
(道徳・5年)
・資 料 集 や百 科 事 典 の資 料 を
読 み、 遺 伝 子 組 み 換 え 作 物 と
はどんなものなのかを知る。
・社会科教科書
・社会科資料集
・百科事典
・ノート
学習活動の観
察
ノート
・自 分 たちが集めた資 料 を根
拠にし、賛成意見、反対意見を
ノートにまとめる。
・社会科教科書
・社会科資料集
・百科事典
・Web ページ
・ノート
学習活動の観
察
ノート
・ブータンの食料
自 給 率 と食 料 輸
入率の表
・パワーポイント
・You Tube
学習活動の観
察
授業後の感想
文
・心のノート
・パワーポイント
・ワークシート
学習活動の観
察
授業後の感想
文
・討論をする。
・自 分 の考 えをノートにまとめ
る。
・ブータンの食 料 自 給 率 と食 料
輸入率の表を読み取り、ブータ
ンの食料生産の様子を考え
る。
・日本の農業技術がブータンの
食料生産を変えた事を知る。
・ブータンで活 動 した青 年 海 外
協力隊員の話を聞く。
・具体 的な場 面から、自 分 がで
きる国 際 協 力 とは何 かを考 え
る。
〔5〕授業の詳細
※本 来は第 5学 年 時 に8時 間 実 施 する内 容であるが、授 業 者 の都 合で、7・8時 間 目のみ第6学 年 時
に実施した。
授 業 実 践
7 時限目:【世界で活用される日本の農業技術】
まず、現在の日本の農業が抱える問題点(農薬・高齢化・土地不足・遺伝子組み換え・自給率)につ
いて復習をした。
ココがポイント!
その後 、日 本 の「道 の駅 」で売 られている野 菜 と、
パワーポイントで、自分たちの身近にある「道の
ブータンの市 場 で売 られている農 作 物 の写 真 を提
駅 」の写 真 からブータンの市 場 の写 真 につなげ
示し、ブータンでは日本と同じ種類の野菜が売られ
ていくことにより、視点を身近な地域から世界へ
ていることに気 付 かせた。そしてブータンの人 たち
広げさせる。
は、日 本と同 じ農作 物をどのようにして手に入れた
のか考えさせた。
(子どもの意見)
「日本から農作物を輸入した。」
「日本から、種や苗を輸入して育てた。」
ココがポイント!
子 どもたちは「日 本 から輸 入 した」と考 える子 が
ブータンの公的機関が発行している資料を提示
多かった。そこでブータンの食料自給率と輸入率の
することにより、社会科で求められている資料活
表 を見 せた。子 どもたちはブータンの食 料 自 給 率
用の力も伸ばすことができる。
が 86%、食料輸入率が 23%であることから、ブータ
ンが農作物を自給していることに気づいた。
それから、日本の農業技術をブータンに伝えた西岡京治氏について、動画サイト【You Tube】を見せ
て知らせた。そして現 在 のブータンの農 業 の様 子 を写 した写 真 を提 示 し、西 岡 氏 が伝えた技 術 は、現
在もブータンで受け継がれていることを伝えた。 また、西 岡 氏 の活 動 により日 本 とブータンに友 好 関 係
が築かれ、震災後の第5代国王の来日につながったことも紹介した。
- 40 -
そして、ブータンは日本から何を手に入れたのか、子どもたちに考えさせた。
(子どもの意見)
・ブータン、日本から農業技術を手に入れた。
・ブータンは、日本から幸せを手に入れた。
授業の最後に、日本の農業は、いろいろ問題点があるけれど、長年培われてきた高い技術は、国際
協 力に役 立 っていることに気づかせ、日 本の農 業 技 術は、JICAの活 動を通 して世 界 各 地に伝わって
いることを知らせ、次時につなげた。
(子どもの感想)
・一 人 の「人 」が一 つの「国 」を救 ったので、やっぱり人 間 の力 はとても強 いなと思 いました。もしかした
ら、一人の人 で一人の国が救えるのなら、日本が協 力すればこの世界が救えるのかもしれないと思い
ました。でも、その力は救える代わりに破滅させる力に変わってしまうかもしれない。その力の使い方は
人次第。何かを救うか救わないかを決めるのも人次第なのだろうと思いました。
・国一つを動かせるほど、日本の技術がすごく高いので、日本の技術はすごいと思った。
・西岡さんがいたから、今の世界一幸せな国、ブータンがあるのだと思いました。ブータンでも農業がで
きるほど、日本の農業技術が高いことが分かりました。いろいろな問題があり、農業をしている中で、少
しずつ問題がけらせられれば、もっと技術が高くなるのではないかと思いました。
・ブータンの今の国王が震災後、最初に来たのはなぜかと思っていたけど、西岡さんがブータンを助け
たから、ブータンの国王さんたちも、助けに来たってことを知った。
【問題】
「あなたはつりの名人だとします。最先端の釣竿を持ち、貧しい国で釣りをしました。あなたはたくさん魚
が連れましたが、隣にいた現地の人は、1匹も釣れず困っています。このとき、あなたはどうしますか。」
4人グループで相談しながら答えを考 えさせた。参観に来ていた大人にも考えを聞きに行かせ、答え
を考えさせた。
ココがポイント!
考えを発 表してもらうと、多 くの人たちが「魚を分
参 観 に来ている大 人 も巻 き込 んで答えを考えさ
けてあげる」と考 えていた。するとK君 が、「釣 竿 の
せることにより、さらに考えを深めさせることがで
作り方を教える。」と発言した。また、Mさんが、「参
きる。
観している人(大島高校の遠藤教諭)から話を聞い
たのですが、魚を分けてあげると、そのときはいいけど、食べちゃえばそれまでだから、魚を取る技術を
- 41 -
授 業 実 践
8 時限目:【国際協力ってなんだろう?】
元青年海外協力隊員(ブータン:青少年活動)市川裕美さんによる出前授業を行った。
最初に、道徳「心のノート」高学年版に、JICAの活動の写真がたくさん紹介されているページがある
ので、そこを全員で読んでから、市川さんの話を聞いた。
まずブータンの国の様子を紹介していただいた。国土は九州と同じくらいの大きさであること。周りは
山に囲まれていて、山梨の様子とよく似ていること。唐辛子を使った料理が多く、たくさんの大きな唐辛
子が作られていることを教えてもらい、実物の唐辛子を見せていただいた。
次に、ブータンの写真を提示し、日本 とブータンの違いに気付 かせた。ブータンでは、学 校や仕事に
行くときに、民族衣装を着ていくことや、会話の中で、首を傾けるしぐさは、「YES」の意味であること、食
事は箸を使 わず、手を使って食べることを教えていただいた。食事の話を聞 いた際は、子どもたちから
「え~!」という声が上がったが、市川さんから、「日本の人たちは、手で食べることはよくないこと、と思
うよね。でも、ブータンの人たちにいわせると、日本人はなぜ枝2本をつかって食事をするの?と不思議
に思うんだって。これが文化の違いです。」とお話を聞き、国による「文化の違い」の具体的な例を知り、
それを認め、尊重することが大切であると気づくことができたようだった。
次に、ブータンでの市川さんの仕事内容を紹介。「青少年センター」という施設を活用する仕事をし、
様々なイベントを考え、施設をみんなで使えるように工夫したこと、レクレーション的な活動ばかりでなく、
日本のことも紹介した。その中で広島・長崎の原爆被害についても紹介したことを教えていただいた。
この後、国際協力の方法を考えさせた。市川さんから次のような問題が出された。
教えてあげたほうがいいそうです。」と発 言した。この発言を聞いて、みんな「そうか。」と思 ったようだっ
た。
このあと、市川さんが、「魚を分けてあげたり、釣竿をあげるという方法もありますが、それでは食べて
しまったり、壊れてしまったりしたら、また魚が手に入らなくなってしまいます。だから、魚を取る技術を教
えて、未来もずっと魚が手 に入るようにする事が大 事です。」と話をしてくださった。「この間学 習した西
岡京治さんは、まさしくこのことをしたのであり、西岡さんが自ら書いて現地の人に伝えたお米の作り方
の紙は、今も現地の人たちが大切にしているのですよ。」というお話もしてくださった。
「『国際協力』と聞くと、難しいことのように感じてしまいがちですが、決して難しいことではありません。
相手の国について知ることも、国際協力の一つです。かつて日本も貧しかった時代に、子どもたちの給
食をユニセフから支援してもらっていました。給食を残さず食べることも、国際協力につながるのですよ。
できることからやっていきましょう。」という市川さんのお話を聞いて、授業を終えた。
(子どもの感想)
僕は、国際協力はすごいなと思ったことがあります。一つ目は、授業の最後に、「外国 の人は魚がぜ
んぜんつれなくて困っている」という問題で、僕は当然のように魚をあげると書きました。しかし、それは
そのときだけなので、現地の人たちのためになりません。なので、釣りの技術を教えると聞いたとき、な
るほどと思いました。国際協力は、ものではなく、技術というものを現地の人にあげるということがよく分
かりました。二つ目は、西岡さんのように、技術を教えたことで、国を幸せにすることができるとわかりま
した。
今日の授業で思ったことは、世界の人たちが手を取り合って生きていくことが大切だと思いました。今は
豊 かな日 本 も、昔 は外 国 から支 援 を受 けていたし、日 本 も豊 かになったので、豊 かではない世 界 の
国々に協力して、世界の国々が手を取り合い、支えあって生きていくことが大切だと思い、世界のほか
の国について知ることも、国際協力なので、他のいろいろな国のよいところについて知り、もっともっとた
くさんの国際協力をしていきたいと思います。
授 業 実 践
今日の話を聞いて、僕は少し国際 協 力で外国に行って、いろいろなことを教えてあげたいなと思いま
した。理由は、現地の言葉が分からなかったりして大変なこともあるけど、現地の人に技術を伝えて、現
地の人たちが幸せになるので、とてもいいことなのでしたいし、こういうことをすると自 分もとても気 持ち
がよくなるからです。更にその技術を教えれば、教えた人がその国で広めて、後の時代に伝えてくれれ
ば、ずっと幸せに暮らせると思うからです。なので、国際協力をして世界に貢献したいです。
今日の勉強を通して、これからは「国際協力」がとても重要になることを学びました。私は、それまで
政治家さんなどの偉い人が、外国の人たちと話し合ったり、何か決めることを「国際協力」だと思ってい
ました。ですが、自分の国ではない、違う国のことを学ぶことも「国際協力」であることをはじめて知りま
した。私たちは、今日ブータンのことをたくさん学び、「国際協力」をしましたが、これで終わりではなく、こ
れからも様々な国の人々、文化などを学び、「国際協力」を積極的にしていきたいと思いました。
今日の授 業で、私はできる国際 協 力をたくさんしようと思いました。外国 にいって何かを手伝うことは
できないけれど、外国のことについての勉強はできると思います。今は勉強することしかできないけど、
大人になったら、実際に外国へ行って、国際協力したいです。
〔6〕児童・生徒の反応/変化
今回の授業は、第 5 学年時に社会科で農業の学習をした際、日本の農業は食料自給率の低下、農
薬の使用・高齢化・土地不足・外国との競争など、多くの問題を抱えていて、クラスの半数以上が専業、
又 は兼 業 の果 樹 農 家 である担 任 クラスの子 どもたちにとっては、自 分 たちの未 来 を暗 くとらえてしまう
学習となってしまったため、自分たちの農業に誇りを持ち、少しでも日本の農業に明るい未来の考えが
持てるようになってほしいと願い、考えたものである。
授業を通して、日本の農業技術がブータンで活用されたことが分かった子どもたちは、農作物そのも
のを輸出するのではなく、日本の高い農業技術を外国に輸出していくことも可能であることに気付くこと
ができ、自分たちが受け継ぐ果樹栽培の技術も、世界という場で活用できる考えを持つことができた様
子だった。また、国際協力に対する考え方が変化したようで、特に「給食を残さないことも国際協力の一
- 42 -
つ」という話を聞いたせいか、その日以降、給食の残菜がほとんどなくなった。さらに、自分も将来外国
で国際協力活動をしたいと考える児童が出てきた。この日の授業内容が子どもたちの心のどこかに残
り、将来国際社会の中で生きていく日本人として、誇りを持って行動できる大人になってくれることを願
っている。
〔7〕授業実践の成果と課題
今回は、国際協力の場で日本の農業技術を広めた西岡京治氏と、ブータンで行われている農業につ
いて、社会科の食料生産の学習とリンクさせて授業を行った。このことにより、子どもたちは社会科の教
科 書 だけでは知 ることのできなかった日 本 の農 業 技 術 の高 さを実 感 し、日 本 の農 業 に誇 りを持 つこと
ができたと同時に、国際協力の大切さについて学ぶこともでき、当初の目的であった「自分たちの農業
に誇りを持つことができる」授業実践ができたと思う。
しかし、第 7 時の部分は、プレゼンテーション的な授業になってしまい、ブータンの食料自給率や輸出
率のグラフを読み取る場面を取り入れたものの、子どもたちが資料と向き合い、考えた場面はその部分
のみとなってしまったため、社会科の授業としては若干内容が薄いものになってしまった。授業内容をさ
らに工夫し、社会科の授業として厚みのある授業を考えていくことが今後の課題である。
〔8〕参考文献(引用文献・参考資料)
・『ブータンの朝 日 に夢 をのせて―ヒマラヤの王 国 で真 の国 際 協 力 をとげた西 岡 京 治 の物 語 』、木 暮
正夫 、くもん出版(くもんのノンフィクション・愛のシリーズ)、1996 年
・『ブータン神秘の王国』、西岡 京治・西岡 里子、NTT 出版、1998 年
・「ブータン農業父 西岡京治」〈http://www.youtube.com/watch?v=yG92I6toRCc〉鶴明 (2013 年 10
月 8 日アクセス)
・「BHUTAN RNR STATISTICS 2012」〈http://www.moaf.gov.bt/moaf/?wpfb_dl=846〉royal government
of bhutan ministry of agriculture and forests (2013 年 10 月 8 日アクセス)
・国際協力機構ホームページ〈http://www.jica.go.jp/〉(2013 年 10 月 8 日アクセス)
授 業 実 践
〔9〕使用教材(写真/図などの実物)
パワーポイント(一部)
- 43 -
授 業 実 践
〔10〕教師海外研修を終えて(感想・今後の展望)
今回私が教師海外研修に参加した理由は、担任クラスの子どもたちに、西岡京治氏の活動を知り、
自分たちの農業に誇りを持てるようになってほしいという願いからであった。日本でも、インターネット等
で授 業に必 要な資 料は集められるので、ブータンに行 ったことがない教 師 でも、この授 業を作ることは
可能であるが、授業の中で教師が語る言葉は、やはり実際に現 地に行った教師しか語ることができな
いものであり、もしもブータンに行かないまま私がこの授業をしていたら、子どもたちがここまでブータン
を感じ、西岡氏の功績を学び、自己改革をしていくことはできなかったであろうと思う。実際に現地に行
って研修できたことを感謝したい。
しかし、今 回 の研 修 で私 が学 んできたことは、ブータンの農 業のことだけではない。今 回 の実 践 は、
あの 10 日間に自分が学んだことの数十分の一しか授業化していない。もっともっと、たくさんの切り口
から、ブータンの授 業 が展 開 できるのではないかと思 う。これからの教 師 人 生 の中で、あの10日 間 の
学びを、いろいろな切り口から授業化し、子どもたちに伝えていきたい。
- 44 -
学校名:長野県安曇野市立豊科南中学校
● 実践教科等: 総合 道徳
氏名: 松島 千尋
● 時間数
: 5時間
● 対象 : 特別支援学級1年生~3年生
[担当教科: ] 英語・特別支援
● 対象人数 : 5人
〔1〕単元名
ブータンってどんな国
〔2〕単元の目的/目標 (ESD の能力・態度)
・ブータンの異文化を知ることを通して自分自身を見つめ直すことができる。
・ブータンを知ることで日本のよさや自分たちの生活の豊かさに気づくことができる。
・ブータンを知ることをきっかけに、今まで学習してきた発展途上国への理解をより深め、更に日本以外
の国へ目を向け、興味・関心をもつことができる。
・異文化を身近に感じると同時に異文 化やその多様性を認め、他国を尊重する気持ちを育むことがで
きる。
・民族衣装や食文化に触れ、体験して感じたことを顔の表情や言葉で伝えたりすることができる。
〔3〕ESD(持続可能な社会づくり)の視点
多様性
相互性
有限性
公平性
連携性
責任性
・日本の日常生活とブータンの日常生活の違いに気づく。【多様性】
・ブータンの衣食住について理解する。【相互性】
・自分を振り返る。【責任性】
・ブータンについて理解する。【公平性】
・発展途上国ブータンと日本が関係していることに気づく。【連携性】
〔4〕単元の構成
本時のねらい、テーマ
学習活動・学習内容
使用教材
1
【ブータンってどんな国?】
・ブータンについて興味をもつこと
ができる。
・世界地 図でブータンの位
置を調べる。
・ブータンで撮 影 した写 真
や雑 貨 等 を 見 なが ら、 ク
イズ形 式 (選 択 式 )のブ
ータンクイズに答える。
・ブータンの民族衣装『ゴ』
と『キラ』をゲストティーチ
ャーに着付けてもらう。
・民 族 衣 装 を着 て、ゾンカ
語のあいさつや自己紹
介を学ぶ。
・ゾンカ語 で あいさつや自
己紹介をしてみる。
・ブータン料 理 『ケワダチ』
をブータン式 に手 で食 べ
てみる。
・世界地図
・ブータンの国旗
・ブータンのルンタ
・パワーポイント
・ブータンのお金
・ブータンの米
・ブータンの CD
・ブータン語 (ゾンカ)の
カード
・ブータンの民 族 衣 装
『ゴ』と『キラ』
・ブータン料 理 『ケワダ
チ』
・学習活動
の観察
・事後のワ
ークシート
の記述の
確認
・学習活動
の観察
・事後のワ
ークシート
の記述の
確認
・ブータン料 理 『ケワダチ』
を作る。
・ブータンのお茶 『スジャ』
を作る。
・スライドショーを見 ながら
『ケワダチ』を食 べたり、
『スジャ』を飲んだりする。
・じゃがいも
・チーズ
・とうがらし
・にんにく
・バター
・壇茶
・塩
・学習活動
の観察
・事後のワ
ークシート
の記述の
確認
2
3
【ブータン人になってみよう!】
・ ブ ータ ン の 民 族 衣 装 『 ゴ 』 と 『 キ
ラ』を着 ることでブータンを感 じ
る。
・ブータンの母 語 『ゾンカ語 』を学
び、簡 単 なあいさつと自 己 紹 介
をすることができる。
・ブータン料 理 『ケワダチ』をブー
タンの 食 事 の仕 方 で 食 し、ブー
タンの食 文 化 を知 ることができ
る。
【ブータンの料理『ケワダチ』『スジ
ャ』を作って味わおう!】
・実 際 にブータン料 理 を作 り、ブ
ータンの食 文 化 を理 解 すること
ができる。
- 45 -
授 業 実 践
評価の
観点と方法
時限
〔5〕授業の詳細
1 時限目:【ブータンってどんな国?】
学習活動
1 ブータンについて学習することを知る。
①国際理解教育を通して、発展途上国について学習してき
た生 徒 。諸 外 国 について興 味 があり、関 心 が高 い。そこ
で、教師が夏休みを利用して外国へ出かけたことを知り、
授業に期待感をもつ。
②世界地 図やプレゼンテーションを利用して、国 獣、国花、
国鳥について学習する。
③プレゼンテーションを利用したクイズに答える。
ココがポイント!
生徒が興味・関心をもって授業に臨めるように、教師
海外研修へ出かけた時の状況を再現した。
クイズ形 式 (3択 問 題 )にしてどこの国 へ出 かけたの
か推測させた。
生徒の様子
発 展 途 上 国 について学 習 してきた生 徒
に「今 日 も世 界 の国 について知 ろうと思 う
んだけどどうかなぁ。」と問 いかけると、生
徒 はみんな「いいね!」と言 って笑 み を浮
かべ楽しみにしている様子 だった。そして、
学 びた い 外 国 の 名 前 を 次 々 に 口 に し た 。
学習したいという思いが高まったとき、教師
は研修時に着ていったポロシャツにプリント
されているブータンのシンボルに注 目 させ
た。そして、スーツケースを取 り出 すと、生
徒 は座 席 から立 ち上 がり、興 味 ・関 心 をも
ってスーツケースに近 づき、自 分 の考 えや
思いを口にする姿が見られた。
④世界地図でブータンを見つける。
ココがポイント!
ブータンの民族衣装を着た GT と AT が登場すること
により、ブータンの雰囲気をより醸し出せるようにした。
民族衣装を着た GT が体験に基づいた話をしてくださ
ることにより、より学習に深まりが出た。
2 ブータンの民族衣装をまとった GT(ゲストティーチャー)と、
AT(アシスタントティーチャー)が教室に突然入ってくる。
授 業 実 践
3 「ブータンってどんな国?」ブータンについて学習する。
①ブータンの位置と日本の位置と人口を確認する。
②学校、生徒、授業、給食の様子について話を聞く。
③ごはんを手 で食 べることやランチバスケットなど実 物 を見
ながら食文化について考える。
④トイレやお風呂の文化にふれる。
⑤犬などの生 物を殺 傷 したり花を切 ったりしないため、花 屋
がないことなどブータンの輪廻転生の考え方を理解する。
⑥ホームスティ先のお母さんが作る料理や唐辛子、チーズ、
ブータンのお菓子、ガジャなどの食べ物にふれる。
⑦ブータンで放送されているアニメや言語について知る。
⑧お墓がないこと、ルンタ、お寺、国にひとつしかない手信号
機などの社会文化を理解する。
⑨病院、ゴミ処理場、リサイクル等の問題を理解する。
- 46 -
生徒は教師が訪問した外国の名前を夢
中になって当てようとしていた。世界地図を
みんなで一生懸命に見て、次々に知ってい
る国 の名 前 をあげていった。その国 の多 さ
に教師は驚かされた。
プレゼ ンテ ーション の クイ ズに答 えな が
ら、教 師 の訪 問 した外 国 をあてていく活 動
では、自 分 の考 えをもちながら答 えていく
姿 が見 られた。正 解 した際 の喜 びが生 徒
の意 欲 的 な学 習 への取 り組 みに拍 車 をか
けた。
GT と AT が民族衣装で登場した時の生
徒の驚きと感激は非常に大きいものであっ
た。思 わず「かわいい!」と声 が上 がった。
初めて会う GT の先生ともすぐに打ち解け、
みんな笑 顔 で知 らない国 ブータンについて
学びたいという思いが表情や姿を通して見
られた。
【生徒の振り返りより】
・ブータンのクイズをやって、ブータンの
ことがいろいろと知 れて楽 しかった。ブ
ータンの民 族 衣 装 はとてもきれいだと
思った。
・ブータンのトイレとかお風呂とか日本と
だいぶ 違 う こ とがわ か った 。 自 分 た ち
の生 活 が恵 まれているということを感
じた。
・国 語 以 外 の教 科 は、全 部 英 語 で授 業
をしているのですごいと思った。
生徒はブータンという国について、自分の
生 活 習 慣 と対 比 しながら、考 えたり思 いを
めぐらせたりすることができた。
2 時限目:【ブータンの人になってみよう!】
学習活動
生徒の様子
1 ブータンの民族衣装『ゴ』『キラ』について学習する。
①ブータンを五 感 で感 じる。そのひとつとして民 族 衣 装 『ゴ』
や『キラ』を着ることにより、よりブータンの生活様式を心と
身体で感じる。
ココがポイント!
ブータンの民族衣装『ゴ』と『キラ』を、現地で生活してい
らした GT の市川さんと、 現 JICA 駒ケ根の所長でいらっ
しゃる仁田 所長さんに着せていただけたことで、正しい
着 こなしを学 ぶことができた。また、着 せていただきな
がら、体験に基づいた民族衣装での日常生活を教えて
いただき、本質を伝えていただいているように感じた。
ココがポイント!
ブータンの民 族 衣 装 を実 際 に着 てみるということは、ブ
ータンの人 々の日 常 生 活 にふれることができる初 めの一
歩であり、『ゴ』や『キラ』の着心地を体験することで、学校
の制服としても使用されていることが、学校生活を送る上
で、自分たちにとっては不便であることに気が付くことがで
きる良い経験になった。
②ブータン人になった気分で記念写真を撮影する。
- 47 -
きれいな民 族 衣 装 を着 ることができた生
徒 は、たいへん満 足 した表 情 で記 念 写 真
の撮影に臨んだ。
授 業 実 践
生徒は GT と AT の着ていた民族衣装に
関 心 をもった。教 師 は1時 間 目 の授 業 が
終 わったとき、「2時 間 目 には民 族 衣 装 の
『ゴ』や『キラ』を実際に着てみて、みんなも
ブ ー タ ン 人 に な って み よ う !」 と 投 げ か け
た。すると、「やった!」と喜 ぶ生 徒 がいる
中で「恥ずかしい!」と照れる M 生の姿も
見 られたが、みんなうれしそうな表 情 で微
笑んでいた。
教 師 は大 きなスーツケースの中 から、こ
の日 のために現 地 で調 達 してきた『ゴ』と
『キラ』を取 り出 した。「わぁ!」という歓 声
があがり、女 子の生徒は 思い思いの好き
な色や柄の『キラ』を選び、着せていただ
く順番をうれしそうに待っていた。
GT の先生が用意してくださった『ゴ』を
ブ ー タ ン JICA 事 務 所 に 勤 務 さ れ 、 現
JICA 駒ケ根の所長さんでいらっしゃる仁
田所長に着せていただいた R 生は、ベ
ルトで締 められ「苦 しい!」と言 いながら
もうれしそうに着ていた。
2 ブータンの母語『ゾンカ語』について学習する。
①GT による『ゾンカ語』の日常会話を学習する。
②学習した『ゾンカ語』を使ってゲストの方と対話をする。
クズサンポーラ
チョギミンガチモ
イン
ニギミン
カディンチュラ
ログジェゲ
(こんにちは。)
(あなたの名前はなんですか?)
(私の名前は○○です。)
(ありがとうございます。)
(また、会いましょう!)
生 徒 は覚 えたての『ゾンカ語 』を使 い、
face to face でゲストの方々とあいさつを
交 わし、自 己 紹 介 をした。「上 手 に話 せる
ね。」と声をかけられると、とてもうれしそう
にニコニコしながら対 話 を続 ける姿 が見 ら
れた。
生徒は GT にブータンの食事の仕方を
教えていただき、実際に手でブータン料理
『ケワダチ』とご飯 をいっしょに食 べた。上
手に指を使 って『ケワダチ』とご飯を固め、
親 指 で上 手 に口 に入 れて食 べることがで
きるようになり、「おいしい!」「最 高 !」と
言 ってブータンの食 文 化 を味 わうことがで
きた。
3 時限目:【ブータンの料理『ケワダチ』『スジャ』を作って味わおう!】(授業の詳細略)
3 ブータン料理『ケワダチ』について学習する。
①ブータンの家庭料理『ケワダチ』をブータンの食文化になら
って食べてみる。
授 業 実 践
〔6〕児童・生徒の反応/変化
ブータンの民族衣装『キラ』を「また着たい。」と何度も訴えてくる生徒や、授業をした放課後「ログジェ
ゲ」と言って下校する生徒の姿。「もっとブータン料理を作って食べたい。」とブータンの学習の深まりが
感じられるような学びが広がっていくことを、生徒の姿を通して感じている。生徒にとって体験を通して異
文化を学ぶことは、生徒の心や身体にその学びが刻まれ本物になっていくことを実感した。
〔7〕授業実践の成果と課題
カンボジアの学習をした時の生徒の目の輝きが忘れられなかった。今回も教師自身がずっと惚れ込
んできた憧れの国『ブータン』について、生徒に語りかけ共々に学び合える授業ができたなら、きっと私
自身のテーマであった『心と五感でブータンを感じたい』を、生徒も共有できるのではないかと考えた。そ
のために教室をブータンそのものに設えられるように努めた。実物を提示 したり体験したりしたことは、
生徒が五感で感じ、考えや思いをめぐらせ、心と身体に刻まれる授業になったように思う。途中で飽き
てしまうのではないかという不安を抱きながらも、ブータンを追究していく生徒の意識を途切れさせない
ために、100分間の授業を構成したが、ブータンを満喫できる体験を取り入れることによって、意欲 的
に学習に取り組む姿が見られた。K 生の「日本とはすごく違いのある国だと思った。日本の技術がすごく
感じ、でもブータンはブータンなりに頑 張って暮らしていてすごかった。衣装 似合っているかなあ?と思
いました。民族衣装を着たらもっとブータンを感じられたような気がしました。とっても楽しかったです。」
の振り返りから、ブータンの国を知るという学習と、民族衣装『キラ』を着た体験を重ね合わせて、ブータ
ンという国を感じていると捉えた。生徒の姿を通して、国際理解教育のすばらしさをあらためて実感させ
られる授業になった。
- 48 -
〔8〕参考文献(引用文献・参考資料)
〔9〕使用教材(写真/図などの実物)
【教材①】パワーポイント抜粋資料
授 業 実 践
- 49 -
【教材②】ブータンの民族衣装
【教材③】ブータンの国旗 ルンタ
【教材④】ワークシート
授 業 実 践
【教材⑤】ブータン国王夫妻の写真
【教材⑥】ブータンの生徒からの Greeting Card
- 50 -
〔10〕教師海外研修を終えて(感想・今後の展望)
全教育活動を通して実践することができる国際理解教育の素晴らしさは、生徒の姿をもって実感していまし
た。私自身が惚れ込んだ『ブータン』という教材は、私自身が実際に体験することを通して、本物を生徒に伝え
ることができると考えていました。本物は何よりも強く、教師自身が心と身体で惚れ込んだ材のすばらしさは、
必ず生徒に伝わると信じています。『ブータン』という国から多種多様な材をいただき、教師としての私自身が
どのようにその材を活かした授業ができるのか日々悩み考えております。
英語 教 育では通常 学級 の3年生でダショウ西岡さんの功績を英語で読み取り、それについて生徒 が自分
の考えや思いを英語にして表現しました。道徳教育では通常学級の2年生で学研の道徳資料『心の中の龍』
という資料を使用して授業を行ってみました。どのような学習形態であれ、生徒は諸外国について「知りたい」
というねがいを強くもっていることが伝わってきました。今後 ESD の視点に立った学習指導や「持続可能な社
会づくり」の構成概念、開発教育について更に学び、これらを踏まえた授業づくりを考え実践していきたいと思
います。
授 業 実 践
- 51 -
学校名:八王子学園八王子高等学校
● 実践教科等:世界史A
氏名: 長谷川 陽介
[担当教科:地理歴史科]
● 時間数
:2時間
● 対象
:高等学校1年生
● 対象人数 :36人
〔1〕単元名
ブータンの自立と課題
〔2〕単元の目的/目標 (ESD の能力・態度)
・ブータンの近代化と国際化の目的について,内政の観点のみならず国際関係の観点から理解する。
(多面的・総合的に考える力)
・自 国の存 立 をかけて奮 闘しているブータンの様 子 を学ぶことで,少 子 高 齢 化を迎える日 本の今 後の
在り様を考察する。(未来像を予測して計画を立てる力)
〔3〕ESD(持続可能な社会づくり)の視点
多様性
相互性
有限性
公平性
連携性
責任性
・ブータンの自然・文化・社会を地理的及び歴史的観点から考察し,日本との比較を通してその多様性
を把握する。【多様性】
・国 内 総 幸 福 (GNH)を国 家のアイデンティティーとしての観 点 から考 察し,公 平な社 会 の構 築 と国 家
の安定の関連性を理解する。【公平性】
・ブータンと近隣諸国との関係について知ることで,限られた国力の中で国家の存立を図って奮闘して
きた様子を感得する。【有限性】
・自己と社会の関係を相対化し,持続可能な社会をつくる上での各自の責任を認識する。【責任性】
授 業 実 践
〔4〕単元の構成
時限
本時のねらい、テーマ
学習活動・学習内容
使用教材
評価の
観点と方法
1
2
【ブータンの概要】
ブータンの自 然 ・文 化 ・社
会について知る。
【ブータンの建国と動揺】
17 世紀の建国以降のブー
タン史 について,国 際 関 係
に注目しながら学習する。
(世A・高等学校1年)
【ブータンの自立と課題】
・20 世紀以降のブータンを
取り巻く国際情勢を学ぶ。
・国 民 総 幸 福 (GNH)が提
唱 された背 景 を考 察 し,国
家 の存 立 に奮 闘 するブー
タンの姿を感じ取る。
・「『幸 せの国 』」とは?」と
いう テ ーマで 意 見 交 換 し ,
社会と社会の構成員として
の自 己 の責 任 について考
える。
【ブータンの概要】
・地図や写真を見て,以後の学
習に必要な情報を得る。
【ブータンの建国と動揺】
プリント学 習 を基 本 として,現
代に至る過程を理解する。
・プリント学習及び PowerPoint
の視 聴 を通 し,学 習 に必 要 な
知識を得る。
・「幸 せの要 素 とは?」「幸 せの
『国』とはどういう国?」というテ
ーマに対 し,意 見 を発 表 すると
ともに,他の生徒の意見を耳を
傾ける。
- 52 -
・プリント
・PowerPoint
学習活動の
観察
・プリント
・PowerPoint
・民族衣装(ゴ)
学習活動の
観察
発表の内容と
傾聴する態度
- 53 -
授 業 実 践
〔5〕授業の詳細
1 時限目:【ブータンの概要・ブータン建国と動揺】
はじめに,ブータンの自 然 ・文化・社会 について授業する。生 徒 の学習 活動 は受け身になってしまう
が,視覚教材を活用することでブータンに興味・関心をもたせるよう努める。
次に,ブータンという国家がどのように成立したのかを,8 世紀にさかのぼって授業する。8 世紀から
16 世紀のブータン史は,多分に神話的内容を含んでいるため,授業には注意を要するが,ブータンと
いう国家の成立に関わる文化的背景として紹介していきたい。その後,17 世紀にチベットでの宗教紛
争に敗れたガワン=ナムゲルがブータンにやってきて,チベットやモンゴルの侵入を撃退しながらブータ
ンを統一していった過程を授業する。この授業の中で,ヒマラヤ山脈のふもとの渓谷が,自然の要塞と
なってブータンは外敵から守った一方,「谷ごとに言葉が違う」といわれるほど国家としての統一を阻ん
だことに気づかせたい。
本時の中核となるのは,大自然に守られて孤立「できていた」ブータンが,19 世紀後半の帝国主義
の影響を受けて対外関係を意識せざるを得なくなった点である。この点につき,イギリスによるインドの
植民地化について簡単に言及した後,地図を活用してイギリス勢がひたひたとブータンに迫った様子を
感覚的に理解させたい。そして,こうした外圧が,それまで分立し抗争を続けてきたブータンの諸勢力を
結 集 させたことと,イギリスに対 し親 和 政 策 をとり対 外 的 な支 持 を得たウゲン=ワンチュックが統 一 国
家ブータン王国を成立させたことをしっかりと理解させ,次時につなげたい。
2 時限目:【ブータンの自立と課題】
まず,前時の復習と本時の導入を兼ねて,初代国王となったウゲン=ワンチュックの政策を授業する。
その後,第2代国王の時代がちょうど戦間期であったことに触れ,わずか 30 年間でブータンを取り巻く
国際情勢が激変したことを解説し,こうした変化が「最後の秘境」「シャングリラ」と呼ばれ世界から隔絶
されてきたブータンに,世界との関わりを否応なしに迫ることになったことに気づかせたい。
ブータンの近代化は,鎖国を解き世界に(ごく僅かではあるが)門戸を開いた第3代国王の治世によ
って推進されたことを解説する。具体的な政策名を列挙することで,生徒が近代化するブータンの様子
について実感をもって理解できるよう,工夫して授業を進めたい。
本 時の中 核 は,第 4代 国 王による,革 新 的ともいえる近 代 化である。この国 王は,かの有 名な国 民
総幸福(GNH)を提唱した国王なので,生徒も多少親近感をもてるかと思われる。まずはそれを利用し
て興味・関心を引き出したい。そして,なぜ 1976 年に国際社会にGNHをアピールしたのかを考察した
い。ブータン王室と血縁がある隣国のシッキム王国は,1975 年にネパール系住民の力によってインドに
併合され消滅した。この出来事を紹介し,小国ブータンが国家存立の危機を感じていた(であろう)こと
を推察させたい。この考察を通し,GNHという概念が,国際社会に対しブータンの存在をアピールする
スローガン的側面を有していることに気づかせたい。さらに,国家存立の危機という,日本に暮らしてい
ればまず考えられない事態を生徒に感じ取らせ,国家というものが,生徒が思うより脆い存在なのだと
いうことを感じさせたい。この理解が,結びの「『幸せの国』とは?」というテーマ考察につながる。
展 開の最 後 に,現 国 王の治 世について,前2代の国 王から続 けられてきた近 代 化が民 主 化と憲 法
制定という形で結実したことを解説する。
本時の結びとして,近代化するブータンの様子を,研修旅行で得た写真などの教材を活用して感じさ
せる。伝統衣装を着ながら iPhone をいじるブータン人の姿や,ゴミが山と積まれた廃棄物処理場の様
子など紹介し,はたして近代化と国際化がブータンを幸せにしてきたのかどうかについて,生徒各自に
自由に考えさせたい。その上で「『幸せの国』とは?」という大テーマを掲げたい。いきなりこの大テーマ
を考えるのは酷であろうから,小テーマとして①「幸せの要素とは?」②「幸せの『国』とはどういう国?」
という小テーマを掲げる。そして,②の小テーマの考察を通し,生徒は「個人が幸せであること」と「『国』
として幸せだといえる」というのは違うという点に気づかせたい。
最後に,次のどちらかの課題を選はぜる。
① 新 聞 記 事 「『幸 福 の国 』の悩 み」 を読 んで,記 事 の最 後 にある「欲 望 の落 ち着 き先 はどこなの
か。」という問いかけに対するあなたの考えを述べなさい。
② ブータンは,世界で自国の存在感を高めるためにGNHを掲げています。さて,日本は今でこそ世界
でその存在を認められていますが,これから少子高齢化の時代を迎え,国家の規模は縮小していきま
す。では,日本は「Japan」として世界の中で生き残るために,何を目標とすればよいと思いますか。あな
たの考えを述べなさい。
提出された回収した課題の中から考察が優れているものを抽出し,教師の所見を添えて生徒にフィ
ードバックする。
〔6〕児童・生徒の反応/変化
ちょうど本校で採択している英 語の教科 書でブー
タンが扱われていることから,生徒たちは授業前か
らある程 度 ブータンに関 する知 識 を持 っていた。但
し,その教科書ではブータンの国情を説明しないま
ま「世界一幸せな国」として紹介していたので,生徒
たちは曖昧な印象しかもっていなかったようである。
こうした背 景 から,生 徒 たちはブータンを歴 史 的 観
点から分 析 する授 業 に関 心をもって臨んでくれた。
特 に,GNHが複 雑 な国 際 情 勢 の中 で生 み出 され
た概念であるという考察には強い関心を示してくれ,
国 是 として幸 せを追 求 するとはどういうことかを真
摯に考えてくれた。
以下に,生徒から提出されたレポートの文章を幾つか紹介する。(表現は荒削りであるが,若い感性
で懸命に考えてくれたものなので,原文のまま掲載する。)
・「欲望ばかり追い求めていても先に幸せはないと思います。しかし,それはきっと不可能なのだと思い
ます。『生きる』ということ自体が『生への欲望』なのだと思います。」
・「欲 望の落 ち着く先などはない。だが,その欲 望の質はいくらでも変えられる。それは,指 導 者などの
人達がどのような欲望に満たされているのかが影響してくるだろう。」
・「ブータンのGNHをもとに,地球全体の幸福を世界が目標として,各国が良いところを持ち寄り築き上
げていくことが現代の社会では求められているのだ。」
授 業 実 践
〔7〕授業実践の成果と課題
正直に言って,今回の授業実践は不安に駆られ怖いものだった。最後の感想に記したように,私自
身がブータンをどう分析し,何を学び得るのかについて最後まで自信がもてなかったからである。そこで,
思い切って生 徒に「私にできるのは,歴史という切り口で私なりに分析したブータンを伝えること。授 業
によって共有した知見をもとに,ブータンから何が学べるかを一緒に考えよう。」と呼びかけた。これに対
し,上掲の生 徒のレポートから分かるように,グローバル社会における国家の在り様や,「『国』が国民
を『幸せ』にするとはどういうことなのか」を考えてくれたことが,今回の授業実践で得た何よりの成果だ
った。この問いを共有し続け,考え続けることが何よりの今後の課題である。
〔8〕参考文献(引用文献・参考資料)
・『The HISTORY of BHUTAN』Karma Phuntsho,Random House India,2013 年
・『ブータンの歴史-ブータン小・中学校歴史教科書』ブータン王国教育省教育部,明石書店,2008 年
・『体験取材!世界の国ぐに-21 ブータン』岡崎務,ポプラ社,2007 年
・「GNH(国民総幸福量)の概念とブータン王国の将来-GNPからGNHへ-」宮下史明,早稲田商学
第 420・421 合併号,2009 年
・「ブータン王国新憲法草案の特徴及び概要」諸橋邦彦,レファレンス(国立国会図書館)平成 18 年 3
月号,2006 年
・「ブータンの情報化にかかわる諸様相-そのダイナミズムと構造的特性」藤原整,社学研論集(早稲
田大学),2013 年
・「COMPARATIVE SOCIO-ECONOMIC INDICATORS FOR BHUTAN June 2013」National Statistics
Bureau of Bhutan,2013
- 54 -
〔9〕使用教材(写真/図などの実物)
以下は,全て授業実践で使用した PowerPoint の資料です。
ブータン王国の建国(初代国王)
ブータンを取り巻く国際情勢の激変
第二次世界大戦後のブータンの隣国関係
ブータンの近代化と国際化の時代の幕開け
近代化の例(農業の近代化)
近代化の例(国王による政治改革)
改革の難しさ(ネパールとの比較)
授 業 実 践
2時限目の冒頭(第3代~第5代国王)
- 55 -
〔10〕教師海外研修を終えて(感想・今後の展望)
渡航前,「幸せの国」に関する様々な資料にあたってみると,浮かび上がってきたのは必死に世界と
向き合うヒマラヤの小国の姿であった。「幸せの国」を象徴とも言える「GNH」というピースも,その姿の
中に収まってしまった。果たして,このブータン像は正しいのか。現地での研修は,その答えを探すもの
であった。私が現地で見たのは,近代化と国際化に懸命に向き合うブータンの人々の姿だった。それと
同 時に,昔ながらの生 活 様 式を続け,幸せを少しずつ味わいながら生きている素 朴なブータン人の姿
だった。近代化と国際化の正負の両面が混在している現在のブータンをどう分析し,伝え,生徒に何を
考察させればよいのか,暗中模索しながら授業の日を迎えた。しかし,ブータンを訪れ得たものを生徒
に提示し生徒と同じ目線で共に考える中で,素のままのブータンの姿から少しずつ削り取るように学ん
でいけばよいのかなと思い始めた。今後もブータンから学びたい。
授 業 実 践
- 56 -
学校名:群馬県立桐生女子高等学校
● 実践教科等:世界史A(3 単位)
氏名: 田中 隆志
● 時間数
● 対象
[担当教科:地理歴史科]
:2 時間
:高等学校2年生
● 対象人数 :42 人
〔1〕単元名
ブータンを通して,「相互依存の世界」の中で,日本が外国とどのように接していけばよいのかを考える
〔3〕ESD(持続可能な社会づくり)の視点
多様性
相互性
有限性
公平性
連携性
責任性
- 57 -
授 業 実 践
〔2〕単元の目的/目標 (ESD の能力・態度)
今回のブータンの主題学習に対して,私は 2 つの学習目標を設定した。
まず一つは,多くの課題をもつ一方で,たくさんの魅力にも恵まれた両面性をもつ国・ブータンを通し,
「内向き志向」といわれる今の日本に必要とされる,「外国との相互依存的なかかわり方」をトレーニン
グする目 的 である【多 様 性 】】【相 互 性 】【連 携 性 】【公 平 性 】。つまり相 互 依 存 度 が高まってきている
現代世界ではとくに,政治,文化,宗教,経済力の差を越えたところで,困っている国があれば手をさしの
べ,またお互いのことを尊重して学ぶべき点があれば謙虚に学んでいく姿勢が求められている。そうし
た姿勢や思考方法をトレーニングしていく上でも,両面性のはっきりしているブータンは教材として適し
ていると考えた。
また二つ目 は, ブータンの歴 史 的・地 理 的 特 性 から,生 徒 たちに多くの課 題 を考えさせるという目
的である。今 回取り上げたブータンについては,歴史・地理教科書 での扱いは多くはない。植民地時
代にイギリスがインド支配を強めていく中で,北にある中国の清に対する防衛ライン(緩衝国)として支
配下に組み込んでいったことが,若干触れられる程度である。しながら私は,JICA の平成 25 年度教師
海外研修事業で,実際に 10 日間ブータンを訪問する中で,この国が,実に多くの特殊性を有した国だ
という事実を伺い知ることができた。つまり①原初的なガウタマ=シッダ=ルタの思想を色濃く残すチ
ベット仏教を世界で唯一 国教にした国,②歴史 的に中華人 民共 和国やインド・イギリスなどとの力の
均衡で国家の枠組みを維持してきた政治的緩衝国,さらには③1990 年から多くのネパール系難民を
発生させ国連,世界銀行,UNHCR などから非難を受けている国,④国王によるトップダウンによる特
異な民主化を断行した国。⑤GNH(国民総幸福量)を政策ビジョンとして掲げ,国際政治に大きな影響
力を与えている国,⑥温暖化による GLOF(氷河湖決壊洪水)により自然・生活環境が脅かされる国
というさまざまな面をもつことを知った。したがって私は,このブータンを,より丁寧に生徒に分析,考
察させていくことで,仏教思想,国と国との関係,マイノリティの問題,民主化のプロセス,国際社会のあ
るべき姿,自然環境の問題など,歴史的・地理的課題に気づかせることにつながるのではないかと考
えた【責任性】【有限性】。
〔4〕単元の構成
時
本時のねらい、テーマ
学習活動・学習内容
使用教材
評価の観点と方法
1 授業の主旨確認
・主 旨 の一 つが,外 国 との接 し
方 において,日 本 に足 りない
ものを謙 虚 に学 び,その国 に
不足するものを支援するとい
う相 互 支 援 という思 考 のトレ
ーニングにあったことを確 認
する。
・主旨の二つ目が,仏教とはどう
いうものか,国 家 と国 家 との
関係,難民問題 ,民主化のプ
ロセス,国 際 社 会 のあるべき
姿など,様々な歴史的な課題
への気 づきだったことを確 認
する。
・PowerPoint 資
料
・傾聴する態度
2 プレゼンのローカ
ルール確認
・「はじめます」でスタート,「終わ
りにします」で終了というルー
ルや,各班の発表を 10 分前
後 で行 うことなどのローカル
ルールを確認する。
・相 互 の発 表 のシェアのため,
事 前 に配 布 したワークシート
に他の班の発 表 に対して,気
づいた点 や 印 象 に残 った点
を最低 1 つ以上書くことを予
告する。
・PowerPoint 資
料
・傾聴する態度
3 各班の発表
(1 班~6 班)
・各班のプレゼンを行わせる。
・他 の班 のプレゼンの際 には,
ワークシ ート に, 気 づ いた 点 ,
印 象 に残 った点 を最 低 1つ
以上かく。
・ワークシート
・傾聴する態度
・ワークシート
への書き込み
4 各班の代表者の感想
・各 班 の代 表 者 より,今 回 のワ
ーキング全 体 を通 しての感
想を言わせる。
・傾聴する態度
5 まとめ
・今 回 のワーキングを通 して学
んだ視 点,気 づいた点を今 後
の世 界 の学 習 でも,覚 えてお
いてほしい旨生徒に告げる。
・傾聴する態度
限
1
・
2
授 業 実 践
〔5〕授業の詳細
1限:ブータンとその 6 分野についての概観
まず生徒を整番によって 6~7 人の班に分け,机についてもグループ学習の形態にシフトした(これ以
降,すべての活動をグループワークとした)。そのうえで,次の時間から,歴史的特殊性をもつブータンにつ
いて,班別にテーマを決めてワーキング方式で考察してもらう予告した。
続いて PowerPoint を使ってブータンの位置,6 分野(自然・政治・医療・教育・生活文化・信仰)につい
ての基本情報を,教師が PowerPoint をつかって概観した。教師が基本情報をレクチャーする際,生徒に
- 58 -
- 59 -
授 業 実 践
は白紙の用紙を配布し,ペンでそこに六分割するラインを引かせ,メモ用紙として使わせた。事後の情報
整理学習のための予備知識として,全分野の基礎情報が必要だと考えたためである。もちろんレクチャ
ーの中では, ①原初的なガウタマ=シッダ=ルタの思想を色濃く残すチベット仏教を世界で唯一国教に
した国,②歴史的に中華人民共和国やインド・イギリスなどとの力の均衡で国家の枠組みを維持してい
る政治的緩衝国,さらには③1990 年から多くのネパール系難民を発生させ国連,世界銀行などから非難
を受けている国,④国王によるトップダウンによる民主化を断行した国。⑤GNH(国民総幸福量)を政策ビ
ジョンとして掲 げ,国 際 政 治 に大 きな影 響 力 を与 えている国 というさまざまな面 をもつことを生 徒 に示 し
た。
2 限:班ごとのテーマ決め,ブータンの「よい面」についての情報抽出と情報整理①
前時の教師のレクチャーをもとに,班ごとに,自分たちの取り扱うテーマを 6 分野(自然・政治・医療・教
育・生 活 文 化 ・信仰)から選 択させた。その上で,模 造 紙,マジック,さらに各 テーマの「ブータンの良い面,
課題点,その他を示す自作カード 190 枚強(L 判のもの数十枚ずつ)」をシャッフルしてそれぞれの班に配
布し,「よい面と課題点を示すカード」の 2 つに仕訳をさせた(情報抽出)。なおその作業にあたっては,特
定の生徒に作業が集中しないように,作業をシェアして行うよう指示を与えた。
また次の段階で,模造紙の目立つところに大きく「分野名」を書き,まわりに「よい面を示すカード」を,関
連のあるものを近くに置くルールで配置させ,それらを線で囲むなどグルーピングすること。さらにその周
りにタイトルやテキスト,イラストを書くなどして,「何がよい面なのかを伝えるためのキャラクターマップ」を
作るよう作業 の指示を出した。作業については,グループワークだったので司会 役のような人を決めて,
話し合いをすすめながら行うように指示を出したが,班ごとに進行役が自然に決まっていった。また後日
のプレゼンによって自 分たちの班が扱 った分 野についての「ブータンの良い面 」が明 確に伝 わるような
まとめ方をするように指示を出した(情報整理)。また適時,机間巡視をして生徒から質問を受け,作業の
助言をした。
3 限:ブータンの「よい面」についての情報抽出と情報整理②
班ごとに,模造紙作業の進捗や,完成度に差があったが,多くの班で前向きな取り組みがおこなわれた。
そして模造紙上のまとめを軸に情報整理が進められた。
4 限:ブータンの「よい面」についての情報整理内容のシェア①
班 ごとに,前 時までに作 成した模 造 紙を使 った情 報 整 理 内 容 を,全 員の前 でプレゼンさせた。発 表に
あたっては,「はじめます」でスタート,「終わりにします」で終了というルールや,各班の発表を最大 10 分で
行うことなどのローカルルールを確認し,6 班中,4つの班の発表を行わせた。また情報整理の形式(プレ
ゼンの仕方),情報整理の内容の精度について相互評価させるために,評価票(別紙あり)を全員に配布
して,それぞれの発表が終わるごとに評価票への記入を行わせた。6 班のうち,時間の都合で 4 班の発
表にとどまった。
5 限:ブータンの「よい面」についての情報整理内容のシェア②,整理した情報の焦点化
前時と同様の流れで,残る 2 班にプレゼンを行わせた。
すべての班の発表が終わったところで,「情報整理の上でのポイントが絞られていない課題」が見いだ
された。そのため,各班にはさらに「よい面を焦点 化するための作業」を行わせ,その結果を各班の代 表
者に発表させた。つまりまず A3 サイズの画用紙,付箋紙を配布し,一人 3 枚ほど「各分野についてのよ
い面」を出させて,同じような内容のものを 1 つにグルーピングさせるなどして,それをまとめさせた。付箋
紙を使ったブレーンストーミングによる情報 整 理である。そして「そのまとめたもの」をもとに各グループ
の代表者に短時間で発表させた。
6 限:ブータンの「課題点」についての情報抽出と情報整理①
続いて,「課 題 点」についても,模 造紙と配布したカードを使って情 報整 理を進 めさせた。このような情
報整理の作業は 2 度目であったため,「よい面」について情報整理を行わせたときよりも,効率的に行え
る班も出てきた。一方で,イラストなども手書きのものを加えるなど,様々な工夫を行う班も現れた。
7 限:ブータンの「課題点」についての情報整理内容のシェア①
班ごとに,前時までに作成した模造紙を使った情報整理内容の発表を,全員の前で発表させた。発表
にあたっては,「はじめます」でスタート,「終わりにします」で終了というルールや,各班の発表を最大 10 分
で行うことなどのローカルルールを確認して,3 つの班の発表を行わせた。また情報整理の形式(プレゼ
ンの仕方),情報整理の内容の精度について相互評価させるために,評価票を全員に配布して,それぞれ
の発表が終わるごとに評価票への記入を行わせた。6 班のうち,時間の都合で 3 班の発表にとどまっ
た。
8 限:ブータンの「課題点」についての情報整理内容のシェア②,整理した情報の焦点化
前時と同様の流れで,残る 3 班に発表を行わせた。
そして「5 限で行った付箋を利用した焦点化作業」が有効と考えられたため,ここでも,各班にはさらに
「課題点を焦点化するための作業」を行わせ,その結果を各班の代表者に発表させた。つまり A3 サイズ
の画用紙,付箋紙を配布し,一人 3 枚ほど「各分野についてのよい面」を出させて,同じような内容のもの
を 1 つにグルーピングさせるなどして,それをまとめさせた。そして「そのまとめたもの」をもとに各グループ
で代表者を決めさせ,短時間で発表させた。
9 限:これまでのワーキングを踏まえた,ブータンとの関わりについての「意見」検討
この時間には,1 限~8 限までのワーキングの中で,整理をすすめてきた「ブータンのよい面と課題点」
の情報に基づいて,「今後 ,日本人はブータンに対して,どのようにかかわっていくべきかの意 見」を,各班
で検討させた。とくに,ここでは,これからの日本に必要となる「外国との接し方において,日本に足りない
ものを謙虚に学び,その国に不足するものを支援するという相互支援」というコンセプトで「意見」を検討
させた。なおこの際にも,各班に A3 サイズの画用紙,付箋紙を各班に配布し,一人 3 枚以上の「アイデ
ア」を出させ,それをまとめさせた。
10 限:これまでのワーキング成果を総合化した「主張」の組立て
これまで模造 紙や画 用 紙 で整理してきたブータンについての情 報,相 互 支 援 のための提案を統 合し
た,「一つの主張」となるように「情報の総合化」を行わせた。またその際,最終的なプレゼンに向けてのイ
メージができるように,「発表原稿」のフォーマットを提示して,原稿を作成させた。具体的には,各班が 12
分以内でプレゼンできるように,「主張」の組立てを考えさせた。またこれまで作成した模造紙などを材料
として,主張ができるよう組立てを考えさせた。
授 業 実 践
〔6〕生徒の反応/変化
今回の主題学習は,教師が配布した情報カードをもとに生徒たちに,模 造紙や付箋紙を使って情報
整理を行わせ,考えさせ,最後,それらを総合した「主張」をプレゼンさせる展開で行われた。こうした学
習パターンは生徒もはじめてだったため,当初は,戸惑いもあり作業,議論が進まない班もあった。ただ
そのうちどの班の中にも,そのうちイニシアティブを取る生徒が現れ,きちんと議論を進め,創意工夫し
て模 造 紙 を作 成 していた。普 段 の座 学 の授 業 では無 気 力 な印 象 の生 徒 が,中 心 になっている光 景 も
見られた。授業終了後,ワークシートに書かせた感想には,他国をじっくり考え,その中から様々な課題,
学びに気づけたことに対する「達成感」を伺わせる内容が多かった。また他国を「幸せの国」といった一
面的な見方で見るのではなく,客観的な情報に基づいて良い点,課題点を客観的に分析し,可能な学
びや支援を考えるべきだとの感想も得られた。
〔7〕授業実践の成果と課題
ワーキングはクラスを 6 班に分け,それぞれの班に自然,医療,教育,政治,生活文化,宗教と他宗
教への対応といった 6 分野について探求させる形で行わせた。それぞれの分野ごとの学習は大いに深
まったと考える。ただ時間 的な都 合で,最 終的なプレゼンのあとのクラス全体での情報 交 流 ,シェアが
行えなかった。今後は,生徒たちが作成した模造紙,プレゼンの様子を録画したビデオ,プレゼン後生
徒たちに乾燥などを書かせた「ワークシート」などを素材として,ワーキング全体をふりかえる時間をもう
けたい。
〔8〕参考文献(引用文献・参考資料)
・YouTube 動画「緒方貞子 JICA 理事長 2011.11.21」(http://www.youtube.com/watch?v=TfdvYKQAuQM)
・世界銀行公式サイト(http://data.worldbank.org/country/bhutan)
・世界銀行ブログ
(http://blogs.worldbank.org/endpovertyinsouthasia/how-can-poverty-mapping-support-development-bhutan)
・WHO 公式サイトブータン健康プロフィール(http://209.61.208.233/EN/Section313/Section1517_6788.htm)
・文部科学省「ブータンの氷河湖決壊洪水に関する研究」
・UNHCR公式サイト(http://www.unhcr.org/pages/49e487646.html)
・Bhutanese Refugees in Nepal(http://www.ne.jp/asahi/jun/icons/bhutan/main.html)
- 60 -
・ブータン生活紹介(http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Desert/2332/index.htm)など
〔9〕使用教材(写真/図などの実物)
添付 1
・生徒に,配布した 190 強のカード(L版で印刷)の一部
授 業 実 践
- 61 -
添付 2
・添付 1 をもとに生徒が情報整理して作成したプレゼン資料(模造紙)の一例
授 業 実 践
〔10〕教師海外研修を終えて(感想・今後の展望)
今回の研修を通し,私は,現代の「相互依存の世界」の中で,自分たち日本人が外国とどのように接
していけばよいのかを考 える,大 変 貴 重 な機 会 を得 たと認 識 しています。相 互 依 存 の関 係 とは,利 害
関係だけでなく,政治,宗教,文化,経済力の差を越え,助けを求め,課題を抱える国があれば,支援
の手を差し伸べる。お互いのことを尊重しあって,学ぶべき点があったら,謙虚な姿勢で学んでいく関係
です。互いが互いを必要とする家族のような関係です。ただ現状,「内向き志向の日本」ではまだまだ,
外国を第三者的に評価し,この国は「貧しい」とか,「幸せだ」というレッテルを貼り,全てを理解したよう
に思い込み満足する風潮もあるかと思います。私は,今後も,学校での授業実践を通し,「是々非々で
付き合っていくことが,外国との相互依存の関係を構築する上では必要なのだ」という,研修を通してま
とめた自分の思いを,生徒たちに伝えたいと考えます。
- 62 -
学校名:東京都立大島高等学校定時制
● 実践教科等: 国語
氏名: 遠藤 圭
● 時間数
:3時間
● 対象 :高校1~4年
[担当教科: ] 国語
● 対象人数 :14人
〔1〕単元名
ディスカッション 『幸せについて考える』
〔2〕単元の目的/目標 (ESD の能力・態度)

客観的な情報や公平な判断に基づいて本質を考える力を養うこと。

人や世界の拡がりを理解して尊重する態度を育むこと。

根拠を明らかにして自分の意見を発表する論理的な力を養うこと。
〔3〕ESD(持続可能な社会づくり)の視点
多様性
相互性
有限性
公平性
連携性
責任性
〔4〕単元の構成
本時のねらい、テーマ
時限
学習活動・学習内容
使用教材
評価の
観点と方法
1

2


3





ブータンの医療事情を
紹介し、「医療費無
料 」のメリット・デメリッ
トについて意 見を述べ
させる。
ブータン人 の考 え方 と
ゴミ問題を紹介し、「な
るようになる」という発
想 のメリット・デメリット
について意見を述べさ
せる。
ディスカッション

「病 院 は、有 料 であるべき
か?それとも、無 料 にする
べきか?」

「『これでいいのだ』『これ
ではよくない』 今、日本に
必要な考え方はどっち
か?」
パワーポイント
発展が進んできたブ
ータンに生まれた問題
点 を紹 介 し、「幸 せと
開 発 は両 立 するか」と
いう問 いについて考 え
させる。
発展学習として島嶼
地 区 である伊 豆 大 島
の開 発 について意 見
を述べさせる。
ディスカッション

「『幸 せ』と『開 発 』どちらを
優 先 して考 えるべきなの
か?」

「大 島 の『幸 せ』にとって、
『開発』は必要か?」
パワーポイント
ブータン概要紹介
ブータンクイズ
ワークシート
「バーン村にて」
- 63 -
パワーポイント
ワークシート
ディスカッション・
リアクションペ
ーパー
ディスカッション・
リアクションペー
パー
内容を理解して
いる。
【発言の内容・
提出物】
主 体 的 に活 動 に
取り組んでいる。
【発言の内容・
提出物】
主 体 的 に活 動 に
取り組んでいる。
【発言の内容・
提出物】
授 業 実 践

ブータンの地理・文
化・憲法など一般事
情について学ばせる。
開 発 途 上 国 に対 する
援助について考えさせ
る。
〔5〕授業の詳細
※ 本単元は、主にパワーポイントを教材として展開した。
現地で撮影した写真と、その説明のコメントをまとめたものを使用した。
1 時限目:【ブータンの地理・文化・憲法など一般事情について学ばせる。開発途上国に対する援助に
ついて考えさせる。】
(参考スライド)
○ ブータン一般事情の確認事項

ブータン王国の地理関係

民族構成

民族衣装

ブータン料理

ブータン王国憲法

GHN

総人口における僧侶の割合
○ 上記事項の確認をスライドで行った後、クイズを通してブータンを知る取り組みを行った。
Q1、2008年、ブータンは王政から民主主義へと移行しました。言い出したのは誰でしょう?
1 農民
2 政治家
3 王様
Q2、ブータンで一番の名誉官位「ダショー(最高の人)」を唯一与えられた外国人は日本人である。
○か×か?
(正解 ○)
Q3、ブータンにおける危険な動物!この中で、「もっとも危険が少ない動物」はどれでしょう?
1 野犬
2 寄生虫
3 人間
授 業 実 践
Q4、所変われば物の価値も変わる?「日本では価値があるのに、ブータンではそうでもないもの」は?
1 トリュフ
2 マツタケ
3 冬虫夏草
○ ワーク学習「バーン村にて」
ココがポイント!
事 前 研 修 で学 んだ「バーン村 にて」のワーク学
習 は開 発 途 上 国 への援 助 について考 えさせる
格 好 の学 習 であると思 い、第 一 回 の山 場 として
取り入れた。
・「寄付する金額は?」
・「この活動に賛成か、反対か?」
・「活動をよりよくするためのアドバイスは?」
以上3点について考えさせた。
生 徒 からはさまざまな意 見 が出 た。寄 付 する金 額 の幅 は0~20ドルだったが、「寄 付 しない」という生
徒が半 数 であった。寄 付 しない理 由 としては、「信 用できない」「日 本 人 の評 判を逆 に落としかねない」
「村の人間が自立できなくなる」というものが見られた。
「活動をよりよくするためのアドバイス」では、「募金で物資を送るのではなく、技術や経験を伝えるため
に使う」「現地に立て札を立てるのではなく、日本でネットなどを通して募金をつのる」
など、多様な考えを引き出すことができた。
- 64 -
2 時限目:【ブータンの医療事情を紹介し、「医療費無料」のメリット・デメリットについて意見を述べさせ
る。ブータン人の考え方とゴミ問題を紹介し、「なるようになる」という発想のメリット・デメリッ
トについて意見を述べさせる。 】
(参考スライド)
○ 日本の医療制度と、ブータンの医療制度の比較

医療費について

人工透析の設備について

集中治療室について

医療に対する国民の考え方について
日本の医療は技術・設備のレベルが高く、救命率が高い。しかし、医療費が高額である。対してブータ
ンの医療は全て無料だが、衛生面・設備面に問題が多い。このような現状を伝え、ディスカッションへの
導入とした。
○ディスカッション テーマ①
ココがポイント!
本校生徒の現状から考えると、様々な意見を積
極的に出し合えるようなディスカッションを成立さ
せることは難 しい。よって、左 画 像 のような二 項
対立 的な命 題を提示することで意見 を出しやす
くさせた。また授 業 者 がパネラーとなり、全 ての
生徒に発言の機会を与えるような展開を心がけ
た。そして、「意見と理由をセットで述べること」と
学習目標を単純化し、徹底することで生徒が達
成感を持てるよう工夫した。
(参考スライド)
○ ブータン人の考え方と、ゴミ問題について
「これでいいのだ」「なんとかなるさ」という発想が
もたらす安心感と、反対にゴミ問題に対する認識の
甘さなどを紹介し、次のディスカッションへの
導入とした。
○ ディスカッション テーマ②
「なるようになる」「くよくよしない」とは、人生を生きる上でとて
も大 事 な考 え方 である反 面 、「目 の前 にある深 刻 な問 題 を
見ようとしない」とも取れる場合がある、ということをブータン
人の運 命 観 や時 間 感 覚 、そしてメメラカ処分 場などの紹介
を通して説明した。
テーマに対する生徒の意見は、「『これではよくない』が大事、
国 としての進 歩 がなくなる」「規 律 を大 事 にしつつも、ゆとり
や余 裕を持 つ心 構えが大 事なのではないか」という声が上
がった。
- 65 -
授 業 実 践
ほとんどの生徒が「有料であるが、安心して医療を受けられるほうがいい」という意見であった。それに
対して「じゃあ、お金が払 えない人 が病 院 にいけない場 合 はどうするのか?」と、反 対 の立 場 からの質
問を投げかけたところ「その場合には税金から支出すれば良い」「それは稼げない人の自己責任」など、
さまざまに意見が分かれた。
3 時 限 目 :【発 展 が進 んできたブータンに生 まれた問 題 点 を紹 介 し、「幸 せと開 発 は両 立 するか」と
いう問いについて考えさせる。発 展 学 習 として島 嶼 地 区である伊 豆 大 島の開 発について
意見を述べさせる。 】
※本時は「東京都教師道場 国語科研究授業」という扱いで行った。
ココがポイント!
○ 導入

民族衣装「ゴ」の紹介

前回までの内容確認
実 際 に「ゴ」を生 徒 に着 させてみ
ることで興味喚起をはかった。そ
れから、本時のキーワードである
「幸 せ」の推 奨 が国 家 政 策 「GN
H」であることを再 確 認 し、「ゴ」
の着 用 がGNHの観 点 の一 つで
ある「伝 統 文 化 の保 護 」につな
がっていることを導 入 として伝 え
た。
○ 展開1 スライドを使った内容の確認

憲法とGNHについて

GNHと教育について (あらゆる学習を『幸せ』に結び付けて行っていること)

仏教と幸せについて (『足るを知る』『幸せにはリミットが必要だ』という発想の紹介)
授 業 実 践


開発の推進とODAからの脱却について (売電、換金農業、英語教育などの紹介)
開発における問題点 (ゴミ問題、母国語への興味の低下、都市部における幸福度の低下など)
授業者自身が研修旅行中に感じた最も大きな疑問となった、
「幸せと開発というのは、両立するのだろうか?」という問いを生徒に投げかけ、
ディスカッションへの契機とした。
- 66 -
○ ディスカッション テーマ①
「開発が優先されるべき」と答える生徒が目立ち、「幸せ」を
支持する生徒は少なかったことが印象的だった。
理由は「地理関係から考えて、開発して国力を上げないと
侵略されてしまう」「こんな状態で幸せなはずがない」「開発
で技術力を上げ、幸せを作り出せるような技術を生み出せ
ばよい」などが上がった。
「幸せ」を支持した生徒は、伊豆大島出身の女生徒であっ
た。この結果は、次のディスカッションテーマにも反映してい
く。
○展開2 スライドを使った内容確認

伊豆大島とブータンの類似点 (さまざまな開発が必要だが、環境や今までの生活も大事)

伊豆大島の概要確認

開発における弊害

地域ごとの利害関係やしがらみの意識
○ ディスカッション テーマ②
ココがポイント!
東 京 都大 島 支 庁の方から、事 前に伊 豆 大 島
における開 発 の課 題 点 を取 材 することでリア
ルな問題提起ができるよう努めた。
リアクション・ペ―パーを使 い、発 言 の内 容 を
記 録 させることでディスカッションの流 れを把
握しながら授業に参加できるようにした。
また、発 言の記 録 を参 考 にすることで、「各ク
ラスにおける、テーマに対する結論」を導き出
しやすいよう留意した。
研究授 業として行ったクラスの結論は、「島の良さを残しながら、他者の幸せのことも考えられるような
開発が必要」というものであった。この結論は、「幸せ」と「開発」で話し合いが行き詰ったときに、「視点
を変えて、他の誰かのためになることが幸せ、という方向からも考えてみてはどうか?」というこちらの示
唆によるところも大きかったと思われる。
その他のクラスの結論は、「他の何者かを幸せにすることが自分の幸せだから必要ない」、「外から来た
人の幸せを大事にするが、昔からの島を大事にする」というものが出た。
- 67 -
授 業 実 践
他にも「産業が少なく、優秀な若い人の島離れが進んでいること」「新しいもの、公的でないものに対す
る警戒心が強いこと」などの問題点を紹介し、「大島と、そこに住む人たちにとって本当に必要なものと
は何か?」という問いを投げかけて最終ディスカッションへの導入とした。
〔6〕児童・生徒の反応/変化
上記ディスカッションで非常に興味深かったのは、「開発」を支持する生徒は本土出身、「幸せ」を支持
する生徒は大島出身と、かなり明確に結果が分かれたことである。これは、開発の対象がブータンの場
合でも大島の場合でも同じであった。
伊豆大島は東京本土に比べて、娯楽施設などの都会的な環境が乏しい。反面、梅や山など豊かな自
然環境があり、大島で生まれ育った生徒はこうした環境で充足している。しかし東京本土で育ち、高校
から大島に移ってきた生徒にとっては物足りなさを覚えるというのが本音であろう。ブータンでも発展前
と後、そして都市部と地方では「幸せ」というものに対する意識がかなり違っていたようであるが、日本で
も類似した条件下ではほぼ同様の結果が出た、というのは印象深い反応であった。
〔7〕授業実践の成果と課題
今回の学習のまとめとして、「ブータンの授業から学んだこと」というテーマで作文を書かせた。
「お金の援助をしたあとに、持続性のある技術援助が大切だ」「ブータンの田舎は物が少ないところなの
に、みんな仲 良く支えあっているところに心がぽかぽかした」などの感 想が見られた。持 続 可能な発 展
のための援助がなぜ重要かということや、またブータンが保っている人々の心のつながりを日本も忘れ
てはいけないことを伝えられた点、そして上 記のように生 徒 各 自 が「幸せ」について本 音 で議 論する機
会を設けられた点は大きな成果となった。
課題として残った点は、「調べ学習」など生徒が主体的かつ発展的に国際理解を深めようとする学習が
実践できなかったことである。また、「幸せ」「ディスカッション」というテーマに焦点を絞って学習を展開し
たので、ブータンと日本との歴史的なかかわりや素晴らしい教育 制度などにほとんど触れることができ
なかった。今後、国際理解教育と向き合うときには是非ともこのような面にも触れてみたい。
〔8〕参考文献(引用文献・参考資料)

『幸福王国ブータンの知恵』斉藤利也・小原美千代 光文社

『ブータン・これでいいのだ』御手洗瑞子 新潮社

『これからの正義の話をしよう』マイケル・サンデル 早川書房

『グループディスカッションで学ぶ社会学トレーニング』宮内泰介 三省堂
授 業 実 践
〔9〕使用教材(写真/図などの実物)
〔5〕で載せたスライドを参照
〔10〕教師海外研修を終えて(感想・今後の展望)
私が今回の教師海外研修に応募した動機は、「専門教科である国語と国際 理解教育・開発教育を複
合的な視点で実践すること」であった。任意で受講している東京都主催の授業力向上研修と関連させ、
従来の国語教育という枠を飛び越えた可能性を追求してみたかったのだ。
実際に授業実践を終えてみて、その思惑はおおむね成功であったと思う。定番教材を使い板書で授業
するという形式を離れ、生徒にとって未知の領域である開発途上国を教材として表現力や問題解決能
力を培えるような新しいスタイルの原型が見出せたように感じた。
しかし、今回の研修はそういった教授法以上のものを私にもたらしてくれたように思う。個人のバックパ
ッカーとしてたくさんの国 を旅したことはあるが、今 回のように公 的な性 格を帯 びた団 体 の研 修は初 め
てのことだった。出発の前までは他人同士であったメンバーが、それぞれの目的と役割のもとお互いに
助け合って道中を供にした。そして、最終的には各自が得たものを一つにまとめブータン政府と JICA に
報告する、という一連の経験は私にとって貴重な輝かしい財産となった。JICA と現地でお世話になった
方々に感謝し、今後の国際理解教育の普及と自分の人生に生かしていきたい。 カディンチェラ!
- 68 -
学校名:長野県若槻養護学校
● 実践教科等: 総合的な学習の時間
氏名: 丸山 妙子
[担当教科: 英語]
● 時間数
: 5 時間
● 対象
: 中学生 2 年・3 年
● 対象人数
: 5人
〔1〕単元名
ブータンを通して考えるぼく・わたしの幸せ
〔2〕 単元の目的/目標 (ESD の能力・態度)
① ブータンと日本の生活、文化の相違点に気づき、他国の文化を尊重する気持ちを育てる(多面)
② JICA ボランティアの活動を通して、ブータンと日本のつながりを知る(関連)
③ 多様な価値観に触れることを通して自分の身近にある幸せに気づく(参加・伝達)
〔3〕ESD(持続可能な社会づくり)の視点
多様性
相互性
有限性
公平性
連携性
責任性
〔4〕単元の構成
時限
本時のねらい、テーマ
学習活動・学習内容
使用教材
評価の
観点と方法
【くらべてみよう ブータンと
日本】
・クイズを通して楽しみなが
らブータンについて知る。
①三択クイズ
②○×クイズ
③フォトランゲージ
④体験コーナー(衣装試着等)
・パワーポイント
・写真
・衣装
・マニ車
・学習活動の観察
(クイズに答えよう
としていたか)
2
【ブータンと日本のつながり
~ブータンで活躍する日 本
人①~ 】
・西 岡 京 治 氏 のブータンで
の功績を知る
・青 年 海 外 協 力 隊 、シニア
海外ボランティアで活躍し
ている人を知る。
【ブータンと日本のつながり
~ブータンで活躍する日 本
人②~】
・元青年 海 外協 力隊 員 の
方の出前講座
①英語教科書(3 年)
②ダショー西 岡 の動 画 映 像 を
見る
③ブータンで活 動 している青 年
海外協力隊、シニア海外ボラン
ティアの方々の紹介
・TOTAL
ENGLISH3
・You tube 映像
・青年海 外 協力
隊 、シニア海 外
ボランティアの
方々の写真
・学習活動の観察
(西 岡 京 治 氏 の功
績に対 して感 想を
持 ち、語 ることがで
きたか)
①長 野 市 在 住 で ブ ータ ンで 活
躍 されていた元 青 年 海 外 協
力 隊 の方 から現 地 での活 動
の様子、活動から得たことな
どをお聞きする
講師:榎本智恵子さん
①英 語 のレシピ本 から材 料 を
知る
②ケワダツィを作って試食
・パワーポイント
・映像
・学習活動の観察
(講座での反応、
講座後の感想発
表)
・レシピ本
・食材
・学習活動の観察
(調 理 活 動 への関
わり方)
①GNHの考え方に触れる
②現地の中学 2 年生へのイン
タビュー「どんな時、幸せを感じ
ますか?」を見る
③自 分 はどんな時 に幸 せを感
じるのか考える
・パワーポイント
・ GNH,GDP ラ ン
キング
・ワークシート
・学習活動の観察
(ワークシー トへの
記 入 、自 分 の考 え
発表)
3
4
5
【ブータン料理に挑戦】
・ブータンの料理を作り、試
食 する こ と で 食 文 化 に 触
れる。
【ブータンを通して考える
ぼく・わたしの幸せ】
・GNHの考え方に触れたり
インタビュー映 像 を見 るこ
とを通 して、自 分 の身の
回りの幸せに気づく。
- 69 -
授 業 実 践
1
〔5〕授業の詳細
1 時限目:【くらべてみよう ブータンと日本】
① 3択クイズ(国の概要について) ※添付 1 参照
例)・ブータンはどこにあるでしょうか?
①アジア大陸 ②アメリカ大陸 ③アフリカ大陸
ココがポイント!
・ブータン王国の建国はいつ?
・楽しくブータンに触れられる
ようクイズ形式でテンポよく
① 紀元前 ②西暦 1907 年 ③西暦 158 年
進めた。
・ブータンの面積は?
・答えは説得力のある写真や
① 日本と同じくらい ②日本の2分の1
資料をパワーポイントで示す
③ 長野県の3.5倍
ことを心がけた。
② ○×クイズ(生活や学校について)※添付2参照
・さらに知りたい生徒にはパソ
例)・ブータンの授業は英語で行われる →○
コンで調べる時 間を改 めて
確保した。
・ブータンには野犬が一匹もいない →×
・ブータンでもリンゴが収穫できる →○
③ フォトランゲージ ※添付 3 参照
1枚写真を選び、何を表わしているのか自分の考えを語る
④ 体験コーナー
キラやゴの試着、マニ車・お金・切手・民芸品などの展示見学等
授 業 実 践
2 時限目:【ブータンと日本のつながり~ブータンで活躍する日本人① 】
① ダショー西岡のブータンでの功績について知る
You Tube ダショー西岡 http://www.youtube.com/watch?v=4SLzh726sIs を見る
(3年生は TOTAL ENGLISH3 Lesson4 A Man’s Life in Bhutan を事前に学習)
~生徒の感想~
ココがポイント!
・焼畑をやめて稲作に切り替えるように800回も農民と
・ダショー西岡について動画を
話しあったってことは年間180回も・・・すごい
利 用 した。短 時 間で効 率 よく
・食料自給率86パーセントにまであがったなんてすごい
ダショー西 岡の功 績につい
・敗血症ってどんな病気なんだろう?
て知ることができた。
・葬儀に参列した人3000人ってすごい
② 青 年 海 外 協 力 隊 やシニア海 外 ボランティアで現 在 活 躍 し
ている方々の紹介
・写真を示し、活動内容を紹介
3 時限目:【ブータンと日本のつながり~ブータンで活躍する日本人② 】
①元青年海外協力隊員(ブータン:青少年活動)榎本智恵子さんによる出前講座
・パワーポイントで青年海外協力隊の隊員として派遣されるまでの訓練の様子、現地(デゥゲル
小中学 校付 属ろう学校)で美術の授 業を行うことになり、何もない状態から活動を生み出して
いく様子を紹介していただいた。動画もあり、興味を持ってお話を聞くことができた。
・2年間の活動を通して感じた、自分の価値観だけで決めるのではなくて国や立場によって違う
価値感をみんな認めてあげることが大切だということに触れていただいた。
ココがポイント!
・事前に講師と授業内容の打ち合わせを綿密に行った(生徒たちの様子をお伝えし、興味の
ある内容と適切な量、授業の目的等を顔を合わせて打ち合わせし、当日を迎えた)。
~生徒の感想~
・謝らないで許してもらえる文化って素敵だなと感じた。
・子どもたちが元気で、元気を分けてもらえるような気がして元気になった。
・ブータンの生活が見れてよかった。
・すぐ停電してしまうことや茶色い水が出ることに驚いた。
・人 の幸せを願 うこと大 切なことだから見 習 いたいしすごいなと思 った。自 分の幸 せを願うの
が日本では当たり前なのにブータンの人は人の幸せを優先するってすごいなと思った。
- 70 -
4 時限目:【ブータン料理に挑戦】
① ケワダツィを作る
レシピは事前に模造紙に大きく書いておいき、当日はいつでも
見ることができるよう調理室に掲示した。
② 試食
ココがポイント!
・現地で購入した英文レシピ本を利用した。
・レシピの材料は英語の時間に生徒たちが分担して訳した。
・あらかじめレシピを扱っておいたので、見通しを持って調理活
動に取り組めた。
<調理の様子>
5 時限目:【ブータンを通して考えるぼく・わたしの幸せ】
① ブータンのGNH政策について知る(パワーポイント)
② ブータンの8年生のインタビュー映像を見る “When do you feel happy?” ※添付4を参照
③ 「どんな時に幸せを感じますか?身の回りの幸せを見つけてみましょう」
④ 友達と考えをシェアし合う
「ペットショップに行けた時」「絵を描いている時」「きれいな景色を見た時」
「友達が楽しそうなのが幸せ」「友達が笑っているのが幸せ」
ココがポイント!
・始めに教師 が感じる身近 な幸せについて例をあげ、幸せに対
するイメージをふくらませるきっかけとした。
・イラストを描 くことが得 意 な生 徒もいたので、ワークシートの記
入方法はイラスト・付箋どちらか自分で選べるようにした。
< ワークシート>
〔6〕児童・生徒の反応/変化
① 異文化を認める気持ちの育ち
今回ブータンを連続して扱ったことでブータンの文化に何度か触れた。事象の違いだけでなく、いろい
ろな考え方や価値観の違いに気づき、受け止めたり認めたりするようになっていった。
② 日本のよさ、日本人の素晴らしさに改めて気づいた生徒達
ダショー西岡が村 人 と何回も話し合いをして農 業を伝えていったこと、農 業以 外にも橋や水路の作
り方 等 生 活 全 体 の改 善 に貢 献 したことに初 めて触 れ、改 めて日 本 人 、日 本 のすばらしさを感じ、日 本
人としての誇りを感じた様子だった。
~生徒の感想~
・日本とブータンの学習で一番印象に残っているのは西岡氏がブータンへ行って野菜の育て方を
ずっと教えていたことを知り、日本人、すごい人がいるなと思いました。
③ 幸せのあり方についての気づき
いろいろな幸せのあり方(経済的に豊かなことだけが幸せではない、人の幸せが自分の幸せ、身近な
ところに幸 せがたくさんある、等 )について触れ、自 分 の身 の回 りに小さな幸 せがたくさんあることや自
分が幸せであることで周りも幸せになることに気づく生徒もいた。
~生徒の感想~
・幸せを考えることは難しいけど、大切なことだと思いました。ブータンの人々は他人の幸福を願う
ということに尊敬します。
・ブータンの人々が幸せを感じる時は人の幸せを感じた時。人の笑顔が自身の幸せになるんだと
思える人々はきっと何があってもみんなで励まし合って生きていくんだなと思った。
・彼らのように人を人として心配し、笑いあって行けるのなら、それ以上の幸せはない。私も人の幸
せを心から願い、そして一緒に笑顔になれるような人間になりたい。ブータンを知るこができて良
かった。心からそう思う。
- 71 -
授 業 実 践
~生徒の感想~
・幸せはつきない。
・幸せっていっぱい。
・まず笑顔。「私が笑わずにどうしてみんなが笑えるんだい?」
〔7〕授業実践の成果と課題
<成果>
① ブータンの GNH 政策を知ることや現地の学生への幸せインタビューの映像を見ることをきっかけと
して自 分 の身 近 な幸 せを探 したことは、生 徒 たちが身 の回 りに小 さな幸 せがたくさんあることや自
分が幸せでいることが周りの人にとっての幸せにつながるということに気づくきっかけとなった。
② ブータンという国を通して様々な国や暮らし、経済の発展優先でない考え方等様々な価値観がある
ことを投げかけることができた。
③ 西岡京冶 氏の功績、世界各地で活躍する日 本人、日本 の技術協力 等について扱うことで世界の
中での日本の役割に関心を持つことができた。
<課題>
① 生徒たちの発達段階に合わせ、心を揺さぶるような題材の開発をさらに行っていきたい。
② 「経 験 して終わり」「「知 って終わり」とならないように、生 徒 たちが自 分の生き方 や価 値 観 について
考えを深めたり広げたりできる展開を持ち、授業に臨みたい。
〔8〕参考文献(引用文献・参考資料)
・「ブータンの朝日に夢をのせて」
小暮正夫
くもん出版 1996年
・「現代ブータンを知るための60章」 平山修一
明石書店 2005年
・「ブータン、これでいいのだ」
御手洗瑞子 新潮社
2012年
・「ブータンの学校に美術室をつくる」 榎本智恵子 WAVE 出版 2013年
・「Foods of the Kingdom of Bhutan」 THE TARAYANA FOUNDATION & THE BHUTAN FOUNDATION
・ブータン Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%B3
・ブータン政府観光局 http://www.travel-to-bhutan.jp/
〔9〕使用教材(写真/図などの実物)
・TOTAL ENGLISH 3 学校図書
・You Tube ダショー西岡 http://www.youtube.com/watch?v=4SLzh726sIs
授 業 実 践
・添付1 三択クイズ(一部)
- 72 -
・添付2 ○×クイズ(一部)
・添付3 フォトランゲージ(一部)
<ランチボックスのかご>
<マニ車>
・添付4 When do you feel happy?(動画)
<母といる時>
<友達と会っている時>
<雨が降っている時>
<ゲームをしている時>
〔10〕教師海外研修を終えて(感想・今後の展望)
長年国際理 解教育に携わりながらも、自分が授業実践をする機会はほとんどなかった。今回、ブー
タンで体験し感じたことをもとに授業実践するという機会をいただき、本当に感謝している。JICA の研修
ということもあり、校内の職員、長野県 JICA の方々にも協力していただいた。自分一人ではできないか
けがえのない経験をすることができた。
本校は病弱特別支援学校で、心身の不調や病気で社会経験や他者との関わりが少ない生徒が多
い。このような生徒たちが外国の文化や様々な価値観に触れることができる国際理解学習は大変意義
のある学習だと思う。違いを認め仲良くすることの大切さ、知らないことを知る楽しさ、自分ならどう思う
か、自分ができそうなことは何か等国際理解教育で扱いたい内容は尽きない。生徒たちがよりよく生き
ていく手助けとなるような国際理解教育をさらにめざしていきたい。
- 73 -
授 業 実 践
<エイトイレブン>
学校・教員のための
国際理解教育支援プログラム
JICAでは、世界の現状や開発途上国が抱える課題への理解を深めるため、
学校現場で活用いただける国際理解教育/開発教育支援のための各事業を
実施しています。
教員向けプログラム
●教師海外研修
開発途上国の現状、日本との関係や国際協力への理解を深め、その成果を子ども
たちの教育に役立てることを目的とした研修です。校種や地域の違う先生方が
チームとなって国内と海外の研修に取り組みます。研修で得た学びと感動を、
授業や教材作成を通じて子どもたちに伝えてください!
毎年、全国で約160人の教員が研修に参加しています。
●国際理解教育セミナー
教員をはじめとした国際理解教育に関心がある方々を対象にした国際理解教育/
開発教育の基本的な考え方を学ぶ講座を、各地のNGOや教育委員会、国際交流
協会と協力して開催しています。ワークショップや参加型学習の手法を体験しな
がら、世界を学ぶ授業作りにお役立てください。
●グローバル教育コンクール
世界が抱えるさまざまな問題について考え、その解決のために行動できる人材を育成するため、学校現
場などで活用できる素材を作品として募集しています。応募部門は次の二つ。
①「写真」部門・・・写真や映像を通して現地の人たちの暮らし、表情、そして言葉などと共に、
「こんなことを、伝えたい!」というメッセージをお寄せください。
②「グローバル教育取り組み」部門・・・学校や市民団体での国際協力や教育への取り組みをはじめ、
NPOやNGOなどの国内・海外での活動について報告ください。
●青年海外協力隊 (現職教員特別参加制度)
教員の方々が身分を保持したまま、青年海外協力隊または日系社会青年ボランティアへ参加するための制
度です。毎年、春募集時(3~5月)に募集しています。
児童・生徒向けプログラム
●国際協力出前講座
開発途上国の実情や日本との関係、日本の国際協力について知っていただくために、
教室にJICAボランティアの経験者が講師としてお伺いします。講座は、異文化理解、多文化共生、保健
教育や農業、医療、スポーツ、音楽といったテーマや、対象国や地域を決めて行う
ことも可能です。また、道徳や人権学習、ボランティア学習、環境教育、キャリア
教育などの授業でも活用されています。
●国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト
毎年、開発途上国や国際協力をテーマに中学生・高校生を対象としたエッセイ
コンテストを開催しています。上位入賞者には、開発途上国でのJICA事業の
現場視察など研修に参加する機会が与えられます。コンテストの開催概要や
募集作品のテーマについては、毎年6月頃にJICA地球ひろばのHPで発表されます。
- 74 -
国際理解教育/開発教育のための教材
●ぼくら地球調査隊 小冊子5種
環境、感染症、教育、食料問題など、私たちの身近で起こっている地球規模の課題について、
楽しく学ぶことができます。
※ホームページよりダウンロードいただけます
世界の水問題
(環境)
学校に行けない
世界の子どもたち
(教育)
砂漠化する惑星
(環境)
いのち、輝け!
(保健・公衆衛生)
世界の食料
(食糧)
●ぼくら地球調査隊 ウェブコンテンツ
博士と3人の子どもたちが世界を旅しながら地球について学ぶウェブ
コンテンツです。アニメーションを見ながら、地球で起きている様々な
ことを知り開発途上国を身近に感じることができます。
「JICA地球ひろば」のご案内
●JICA地球ひろば
JICA地球ひろばでは、開発途上国の暮らしの現状や、地球が抱える問題、国際
協力の実情などを、見て・聞いて・さわって体験できる展示と、開発途上国での
活動体験談や参加型体験学習を組み合わせたプログラムを実施しています。
修学旅行、社会科見学等の団体訪問も受け入れており、年間約1万人に見学いた
だいています。
開館時間:10時~20時(平日)/10時~18時(土・日・祝)
休館日:第1・第3月曜日、年末年始
○入館無料
連絡先:〒162-8433 東京都新宿区市谷本村町10-5
TEL:03-3269-2911/0120-767278
あなたの近くのJICA相談窓口
●JICAデスク
開発途上国で活動した経験を持つ国際協力推進員が、皆さんのお越しをお待ちしています。
東京都(23区外)八王子市役所市民活動推進部国際交流課内 Tel: 042-620-7437
✉[email protected]
※東京都(23区)については、JICA地球ひろばまでお問合せください。
埼玉県
千葉県
栃木県
群馬県
新潟県
山梨県
(公財)埼玉県国際交流協会内 Tel: 048-833-2992
✉[email protected]
(公財)ちば国際コンベンションビューロー内 Tel: 043-297-0245
✉[email protected]
(公財)栃木県国際交流協会内 Tel: 028-621-0777
✉[email protected]
(公財)群馬県観光物産国際協会内 Tel: 027-243-7271
✉[email protected]
(公財)新潟県国際交流協会内 Tel: 025-290-5650
詳しくはコチラ
✉[email protected]
(公財)山梨県国際交流協会内 Tel: 055-228-5419
JICA地球ひろば
✉[email protected]
- 75 -
検索
おわりに
今日の社会は、情報通信技術の進展、交通手段の発達による移動の容易化、市場の国際
的な開放等により、人、物、資本、情報の国際的移動が活性化して、様々な分野で「国境」
の意義があいまいになるとともに、各国が相互に依存し、他国や国際社会の動向を無視で
きなくなっています。このような状況の中で、教育現場では様々な課題に応えるため多く
の先生たちが日々汗を流しています。3年前の東日本大震災以降、既存の価値観に疑問が
投げかけられることも多く、将来に緊張感を持って臨むことの必要性を強く感じるように
なりました。学校においても、従来のやり方で全てがうまくいくといった発想は、もはや
当てはまらなくなってきています。
今回の教師海外研修では、忙しい毎日を過ごしている先生方が、しばし立ち止まり、自
身のこれまでの取組を見つめ直すとともに、これからのグローバル化社会に生きていく児
童生徒たちに必要となる授業のヒントを見つけることを目指しました。3日間にわたる事
前研修、帰国時研修等で、国立教育政策研究所の五島先生、立教大学の上條先生からいた
だいたご指導は、普段の教員研修では得ることのできない実践的な理論や手法が含まれて
いたのではないでしょうか。
これまで途上国はとかく馴染みが薄く、訪問に際して不安や疑問を感じられた方々も、
意外と日本との心理的距離は近く、共に生きていく仲間である、ということに気付かれた
と思います。日本人の生活が世界中の多くの人々との関係性の中に成り立っていることに、
先生方自身が体験を通して気付くことは非常に重要なことであると考えます。
参加された先生方お一人お一人が、海外研修や国内研修、また各学校における授業実践
等の中で得られた多くの「気づき」を、社会の変化やニーズを踏まえてさらに発展させ、
ご自身の授業に生かしていかれることを期待します。
JICA 学校教育アドバイザー 掛川 達雄
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平成 25 年度 教師海外研修報告書
∼国際理解教育の授業実践事例集∼
ブータンコース
国内事業部 地球ひろば地域連携課
〒151-0066
東京都渋谷区西原 2-49-5 JICA 東京内
Tel:03-3485-7680(地域連携課直通)
http://www.jica.go.jp/tokyo/
http://www.jica.go.jp/hiroba/
2
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