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県立高校今昔物語

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県立高校今昔物語
平成 26 年度 アーカイブズ講座
県立高校今昔物語
~アーカイブズが語る「学び」の歴史~
平成 26 年 11 月 16 日
神奈川県立公文書館 清水 善仁
はじめに
■企画展示「
『学び』でつなぐ人々のあゆみ」
○5月9日~9月 28 日までの 143 日間開催、のべ 1,500 名以上が観覧
○明治維新から現代にいたる教育や学びの歴史を、公文書館収蔵資料を軸に振り返る。
○構成
(1)かながわ「学び」の近代史 /(2)
「15 の春は泣かせない」―神奈川方式の入試と百
校計画― /(3)学務委員からみる明治はじめの小学校 /(4)戦後「学び」の風景 /
(5)生徒・学生の記録にみる「学び」/(6)食と教育のかかわり
○アンケートから
・コーナーの数がちょうど良く、あきることなく見れました。歴史の教科書には載っていな
いことを学べて面白かったです。
(20 代女性)
・非常に面白い。展示だけでは分からないが、解説があると大変興味深いものになる。(60
代男性)
・県令及び県職員がどの様に努力したのか解かるよう展示してほしい。特に大江県令・中島
県令について。
(60 代男性)
○本日のお話は…
・企画展示では取り上げていない部分も含めて、神奈川の「学び」の歴史を、2つのテーマ
からご紹介します。
・とくに対象とするのは、県立高校です。明治 30 年の神奈川県立尋常中学校の創立に始まる
県立高校 120 年の歴史の一コマを、当館収蔵のアーカイブズ資料からたどります。
1、神奈川の「ナンバースクール」~県立第三中学校を題材に~
■「ナンバースクール」とは?
○起源:旧制高等学校のなかで数字を冠した学校
旧制高校
開設年
所在地
後身新制大学
第一高等学校(一高)
明治 19 年
東京市
東京大学
第二高等学校(二高)
明治 19 年
仙台市
東北大学
第三高等学校(三高)
明治 19 年
京都市
京都大学
第四高等学校(四高)
明治 19 年
金沢市
金沢大学
第五高等学校(五高)
明治 19 年
熊本市
熊本大学
第六高等学校(六高)
明治 33 年
岡山市
岡山大学
14
第七高等学校造士館(七高) 明治 34 年
鹿児島市
鹿児島大学
第八高等学校(八高)
名古屋市
名古屋大学
明治 41 年
○「ナンバースクール」の普及
・旧制高校の名称をならって、旧制中学の学校名もまた全国的にナンバースクールとなって
いった。
・神奈川県における「ナンバースクール」の変遷【資料1】
・
「ナンバースクール」の歩みを、神奈川県立第三中学校(現在の神奈川県立厚木高等学校)
を題材にたどってみましょう。
■県立第三中学校の設立をめぐって
○小田原の県立第二中学校設立の後、第三中学校建設への機運が高まる。→誘致運動の展開
○厚木派 vs.藤沢派→県会において議員が対立、流会を重ねる。
【資料2】
○最終的には知事が原案執行、高座郡海老名村への設置を決定
○その後、用地確保が困難となり、愛甲郡南毛利村に設置場所を変更
○明治 35 年4月開校、入学者数 350 名、8クラス
「戦前期社会教育関係資料」
(公文書館所蔵)
○神奈川県で社会教育主事を務めた藤井徳三郎の関係資料(総点数 306 点)
○神奈川県における社会(通俗)教育の実態を知ることができる貴重な資料
○藤井は昭和3年 10 月から、県立厚木中学校(第三中学校のこと)の校長に就任
→昭和の厚木中学校にかんする資料も含まれる
■昭和の「ナンバースクール」
(1)
「神奈川県下中等学校長会議」
(ID:2600300087)
・昭和4年2月に開催された標記会議の配布資料【資料3】
一、生徒訓育ニ関スル件 / 二、思想ノ善導ニ関スル件 / 三、教材教法ノ研究ニ関スル
件 / 四、体育ニ関スル件 / 五、学校教練振作ニ関スル件 / 六、生徒校外取締ニ関ス
ル件 / 七、生徒保健ニ関スル件 / 八、設備ノ完備ニ関スル件 / 九、教科用図書ニ関
スル件
一、教職員ノ進退ニ関スル件 / 二、教科用図書選定並ニ変更手続ニ関スル件
・当該期の中等教育に対する考え方が明示
・厚木中学校での取り組みについての藤井校長のメモ
(2)
「神奈川県立厚木中学校資料一括」
(ID:2600300091)
・昭和5年当時の厚木中学校の状況が分かる資料【資料4】
生徒出身郡市別 / 生徒家庭職業別 / 生徒通学状況 / 卒業生の状況 /
「我校の特色、我等の自警」
(3)
「厚木中学校ニ関スル書類」
(ID:2200437207)※本資料は「間宮家文書」に所収
・間宮家の子息が厚木中学校に入学した際にまとめられたものか?
・中学校入学にかかる費用 / 生徒指導への在り方【資料5】
15
2、映像でみる戦後の県立高校
戦後の県立高校にかかわる映像資料:
「神奈川ニュース」から
①「水産高校 練習船完成」
(昭和 29 年3月)
②「第一回県民討論会開かる」
(昭和 50 年 12 月)
③「県立高校を地域の人々に―コミュニティスクール―」
(昭和 55 年7月)
④「うるおいと個性ある施設づくり」
(昭和 62 年9月)
⑤「県立高校デイサービス」
(平成 13 年4月)
■百校計画の推進:県民討論会・文化のための1%システム
○百校計画:昭和 48~60 年度「新総合計画」で明示(津田文吾知事時代)
→中学校卒業生の増加、高学歴化による高校新設の必要性
○昭和 50 年、長洲一二新知事の誕生→選挙公報にも百校計画を明記
○「長洲色」の打ち出し1→県民討論会【資料6】
・第1回県民討論会のテーマ:
「これからの高校教育問題を考える」→百校計画が議題に
○「長洲色」の打ち出し2→「文化のための1%システム」
【資料7】
・県立高校を皮切りに、県合同庁舎や道路・橋の建設に適用
■地域のなかの県立高校:コミュニティスクールとして
○「新総合計画」から「新神奈川計画」へ
・県立高校の位置づけに変化→コミュニティ(地域)のなかの県立高校
・
「新神奈川計画」策定時から議論【資料8】→同計画に反映(昭和 53 年度から)【資料9】
○コミュニティスクールの開設
・昭和 56 年度の開設状況【資料 10】→県立高校の存在役割の変化
むすびにかえて
■県立高校 120 年の歩みを知るために
○県立高校をめぐる様々なテーマ
・戦前戦後の学生生活 / 戦争・災害と県立高校 / 県立高校と入学試験...etc
○県立高校 120 年史への手掛かり
・
『神奈川県史』
『神奈川県教育史』/ 公文書館収蔵資料
■アーカイブズの持つ可能性
○歴史の検証と複眼的な視点
・複眼的な視点=多様な資料から時代や出来事を検証する=より客観的な歴史像の構築
○公文書館資料の特性
・歴史的公文書、古文書・私文書、行政刊行物、図書、写真、映像...etc
→性質が異なれば、書かれる/分かる内容もまた異なる:アーカイブズの持つ可能性
○アーカイブズの利用とアーカイブズへの意識
16
県立高校今昔物語
資料編
※下線は特に断らない限り引用者によります。
【資料2】県立第三中学校の設立をめぐる新聞記事
〔毎日新聞 明治三十三年五月六日〕
○神奈川県会紛紜余沫
今回同県々会の紛紜は是亦時々報道したるが〔中略―引用者註〕事の此に至れるは中学校設立
問題として同県には横浜附近に第一中学校あり第二中学を小田原に建つること丈を議定して未
だ成らざるに昨年第三中学設置の建議を郡部会より建議したるが近日の臨時会は此建議者が
暗々裏に当局者を脅迫し其実は臨時会の必要なきも強て之を開かしめたるなりこは学事熱心の
為めに非ずして裏面には一種腐敗の気を含めりソハ学校敷地の件にして理事者は之を明言せざ
るも愛甲郡厚木町近傍海老名村に設立せんとするは公然の秘密にして之に反対する一派は藤沢
こそ全県の中央にして汽車の便あれば適当の地なれといふに在り之が為めに郡部の内二派に分
裂し市部は学校其者に賛成なれども斯かる秘密の運動を助くることは能はず且第二中学すら建
設未成の今日臨時会を開きて此の如き波瀾を生ずるは不可なりといふに在り且更に其裏面を穿
ては海老名村予定地は川に傍へる低地にして水害に悩む場所なれば之を学校に買上げしめて一
ト儲せんとする者ありて一派の間に賄賂行はるゝも亦公然の秘密なり此等の内情ある為めに郡
部議員の頭数纏らず肝心の設置案不成立となり之に附属せる支出案のみ議定せられたれば厄鬼
派は設置原案の執行を迫り臨時会を脅迫せられたる知事は否むの力なく原案執行を内務省に上
申すべし知らず内務省は之を如何にせんとするや
(『神奈川県会史』第3巻、173~174 ページ)
【資料3】神奈川県下中等学校長会議(昭和4年2月5日)
二、思想ノ善導ニ関スル件
我光輝アル国史ノ成跡ニ鑑ミ国民道徳ヲ涵養シ国民精神ヲ作興スルコトニ関シテハ平素十分
ナル注意ヲ払ヒ学校内外ニ渉リ努力ヲ惜マサル所ナルヘシト雖モ現下ノ世相ト生徒心理ノ趨
ク所トヲ稽ヘ慎重之カ指導ノ方策ヲ定メ教養宜シキヲ制シ質実剛健真ニ皇国ノ柱石タルヘキ
人物ノ養成ニ努メラレンコトヲ望ム殊ニ本県ノ地位ニ深ク鑑ミ各位ノ門ヨリハ断シテ浮華放
縦ニ流レ若クハ軽佻奇劇ノ風ニ惑フガ如キ者ヲ出スカ如キ無カラムコヨ期セラルヘシ。
⇒ 一、思想ニ関シ職員ノ研究ヲ必要トス
一、生徒ハ一般ニ思想上ノ問題ニ無関係ノ状態ニ在リ、将来上級学校等ニ於テ「思想ず
れ」無キ様相当理解セシムルヲ要ス
一、生徒図書室ニ於テ健全ナル読物ヲ奨励シ時々生徒読物ノ調査ヲ行フノ要アリ
一、各士ノ講演ノ機会ヲ多カラシメ思想ノ善導ニ資ス
一、式日、記念日、朝礼等ノ訓話ハ校長ノ外職員ヲ之ニ当ラシメ職員ノ研究ヲ奨励スル
ト共ニ生徒思想ノ善導ニ資ス
一、修身科ヲ重ンセシカ為学校長ノ外修身科専任教員ヲ設ケントス
一、左ノ諸項ニ特ニ留意スルコト
イ、職員生徒ノ親和ヲ図ルコト
ロ、団体的ノ作業運動ヲ奨励スルコト
17
ハ、趣味ヲ高メ自然ニ親シマシムルコト
六、生徒校外取締ニ関スル件
品性ヲ陶冶シ健全ナル思想ヲ養フノ途多々アルヘシト雖日常生活ノ指導ハ極メテ重要ナル其
ノ一方面タルヤ論ヲ俟タス、就中校外ニ於ケル生活指導ハ最モ必要ナル事項ニシテ然モ最モ
困難ナル事項ナリ、各位ハ平素之カ指導監督ニ付充分注意セラルヽ所ナリト雖一層周到ナル
注意ヲ以テ之ヲ観察シ指導ノ方法ヲ研究シ相互誘掖、自己抑制ノ途ヲ講スル等常ニ修養ノ態
度ヲ失ハシメサル様馴致セラレムコトヲ望ム、殊ニ通学車中娯楽観覧場等ニ於ケル指導取締
ニ付一層研究ヲ重ネ生徒訓育上遺憾ナキヲ期セラレンコトヲ望ム、
⇒ 一、校外監督ヲ設ケ生徒通学ノ分区ヲ定メ校外ニ於ケル生徒ノ監督ヲナス
一、小学校(長)トノ連絡ヲ図リ生徒校外監督ニ資セントス
一、活動写真常設館ニ時々生徒係出張シ観覧物ニ関スル取締ヲナス
一、生徒係ハ電車、汽車通学生徒ノ状況ニ付時々駅長ト談合ス
一、生徒住居ニ名札ヲ掲ケシム
一、外出ノ際ハ概ネ制服制帽トス
(神奈川県立公文書館所蔵「神奈川県下中等学校長会議」ID:2600300087)
【資料4】昭和5年の厚木中学校概要
(神奈川県立公文書館所蔵「神奈川県立厚木中学校資料一括」ID:2600300091)
18
【資料5-1】新入学生所要経費調(昭和6年度)
新入学生所要経費調(昭和六年度)神奈川県立厚木中学校
一ヶ月分
一ヶ年(十一ヶ月)分
四
五〇〇
四九
五〇〇
整理ノ都合ニヨリ納額
校友会費
八〇〇
八
八〇〇
告知書発付ノ翌日納付
父兄会費
二〇〇
二
二〇〇
セラレタシ
旅行貯金
五〇〇
五
五〇〇
六
〇〇〇
六六
〇〇〇
授業料
計
摘
要
寄宿
食費
一五
〇〇〇
一六五
〇〇〇
舎生ノ多少ニヨリ
舎費
舎費
二
〇〇〇
二二
〇〇〇
増減アリ
一七
〇〇〇
一八七
〇〇〇
計
新入学当時ノミノ必要経費
種
別
金
額
摘
要
入学料
一
〇〇〇
県税外諸収入(県収入)入学式当日納付ノ事
校友会入会金
一
〇〇〇
四月分授業料納付ノ際納付ノコト
一五
〇〇〇
図書用具
一
五〇〇
冬服
六
八〇〇
夏服
四
五〇〇
靴
四
五〇〇
帽子
二
〇〇〇
ゲートル
一
〇〇〇
剣道具費
七
〇〇〇
柔道具費
四
〇〇〇
四八
三〇〇
教科書
計
概算ニ付多少ノ差アリ
合計 金参百〇壱円参拾銭 一ヶ年(十一ヶ月)分
(神奈川県立公文書館所蔵「厚木中学校ニ関スル書類」ID:2200437207 より作成)
【資料5-2】父兄保証人心得
父 兄 保 証 人 心 得
生徒ノ教養ハ学校ノ状況ガ家庭ニ、家庭ノ事情ガ学校ニ通ジ学校ト家庭トガ互ニ連絡協力シテ初
メテ適切ニ行ハレ其実績モ揚リ又過無キヲ得ルモノナルヲ以テ特ニ左記ニ就テ御留意ヲ願ヒタシ
連
絡
一、時々或ハ序ヲ以テ来校シ、子弟ノ学習、行動ノ状況ヲ参観シ又学校ヨリ子弟ノ身上ニツキ来
校ヲ求メタル時ハ必ズ出校セラレタシ
二、父兄会其他学校ノ会合ニツキ出席方ヲ通知セル場合ニハ万障繰合セ来校セラレタシ
出 席
19
一、精勤ハ勉学ノ基礎ナレバ本人ノ病気又ハ忌引以外ハ欠席、欠課、遅刻、早退等ナキ様且ツ其
度数ノ多キモノハ進級ニ関係アルヲ以テ特ニ注意アリタシ
二、祝祭日、記念日、旅行等学校ノ行事ニハ授業日ト同様必ズ出席セシメラレタシ
勉 学
一、自学、自習ハ学業ノ進歩ニ極メテ肝要ナルヲ以テ家業ノ手伝ノ余暇ハ努メテ勉学セシメラレ
タシ
二、休業日ニハ家事ノ労務又ハ予習、復習ヲナサシメ遊惰ニ流レヌ様注意セラレタシ
訓 育
一、生徒ノ訓練ト学費ノ節約上、服装学用品等ハ出来ル限リ質素ニセシメラレタシ
襟巻ハ使用セシメズ外套又ハ「マント」ハ雨雪天、病気等ノ外ハ可成着用セヌ様セシメラレ
タシ
二、訓育上特ニ左ノ諸点ニ御留意アリタシ
1
教科書以外ノ書籍、雑誌、新聞等ノ閲読ニ就テハ其内容ニ関シ思想上、風紀上注意ヲ払
ハレタシ
2 交友ニ注意シ夜間ノ外出ハ家庭ノ用務以外ハ禁止セラレタシ
3 保護者同伴ノ外単独ニ興行物、飲食店等ニ出入セシメヌコト
4 外出ノ際ハ制帽、制服、和服ノ時ハ袴ヲ着用セシムルコト
5
金銭ノ使用ニ注意セラレ掛買、生徒相互間ノ貸借等ヲナサヌ様又登校ノ際ハ成ルベク金
銭ヲ携帯セシメヌコト
6 飲酒、喫煙ハ絶対ニ禁止セラレタシ
三、正科外校友会ニ於テ学芸、運動、訓練ニ関シ各種ノ施設ヲ行フニヨリ参加セシメラルヽコト
通 報
一、生徒ノ勤惰、学業成績、身体検査ノ状況等ハ其都度通信簿ニヨリ通知ス可キヲ以テ閲覧ノ上
捺印シ其状況不良ノ場合ニハ特ニ注意セラレタシ
二、学校ニ対スル諸願届ハ通信簿ニヨリ遅滞無ク提出セラレタシ
三、生徒並ニ保証人ノ身分、住所、印鑑等ニ異動ヲ生シタル時ハ速ニ学校長宛ニ届出ヲナスコト
四、学校ニ対スル不審、希望等ハ遠慮ナク通信簿書面又ハ口頭等便宜ノ方法ニヨリテ申出ラレタ
シ
五、生徒又ハ同居者伝染性病気ニ罹リタル時ハ其旨速ニ届出ラルヽコト
授業料其他
一、授業料ハ毎月概ネ二十三日ニ納付ノ取扱ヲナス、納付ヲ怠ル場合ハ登校ヲ停止スルコトアル
ニヨリ注意アリタシ
一、校舎、校具等ヲ毀損シ又ハ亡失シタル場合ハ其事情ニ依リ弁償セシムルコトアルベシ
神奈川県立厚木中学校
(神奈川県立公文書館所蔵「厚木中学校ニ関スル書類」ID:2200437207)
【資料6-1】県民討論会開催への意識的背景(昭和 50 年5月6日・部長会議)
知事〔長洲一二〕 まあ私は、例えば高等学校増設というものを当面の県政の大きな柱にしよう
ということになれば、やはりそのことを県民にアピールして、その代わり他のことは少し遅れ
20
るかも知れないが、そのことを率直に県民にいって、それでもなおかつこれをなさるかと、そ
ういう問題の投げかけ方をしながら、一種の県民運動のような形で支えてもらわないと、我々
だけでキリキリ舞して土地を探してもうまくいかないと思います。
そんなことで例えば県民会議というようなもののイメージを理解していただいて、例えば高
校増設県民会議といったようなスタイルの組織がどういうふうに考えられるか、環境、公害の
問題にしても、あるいは環境と開発の調和の問題にしても、全体としてこういうスタイルをい
つも考えてほしいと思います。
(神奈川県立公文書館所蔵「昭和 50 年度 部長会議記録(5月)
」H25-001-01/ID:1201301596)
【資料6-2】第1回県民討論会の評価
齋藤〔荘之助・教育長〕 今、知事からお話がありましたけれども、私もその第一回の県民討論
会に、鎌倉の横浜国大の附属小学校に参りました。ちょうど雨の日だったんですが、大変な熱
気でした。考えますと、あれだけの大事業は、やはり県民討論会というか、県民参加でなけれ
ばできなかったと思うんです。県民参加の行政スタイルというのは、知事の最初からのご主張
だったけれども、県民参加がなければこの事業はできなかったと思います。
渋谷〔正己・前教育庁管理部長〕
第一回の県民討論会は、当時の県民課長が現在監査委員の大
竹さんで、時々思い出話を聞くんですけれども、今お話があったように、冷たい雨がしょぼし
ょぼ降っていて、五人来るんだか、十人来るんだか冷や冷やしたそうで、知事に来てもらうの
をやめてもらおうかとか、大変だったらしいんですけれども、その「米百俵」のお話で相当熱
気にあふれて、第一回討論会は本当に大成功だったというお話を聞いたことがあります。
(神奈川県発行『伸びゆけ若者たち―高校百校計画達成の軌跡』K376-0-15-87)
知事 それと、この間、第1回の県民討論会を高校問題をテーマとして開催したが、第1回とし
ては、まあまあ成功であったと思う。県民もかなり真剣に考えてくれているという感想を深く
した。
高校問題に限らず、これからはいろいろな面でいやみにならない形でコスト意識をもっても
らうようにしていくことが前提だと思う。県民にできるだけ情報をわかりやすく提供するよう
考えてほしい。
(神奈川県立公文書館所蔵「昭和 50 年度 部長会議記録」H25-001-01/ID:1201301602)
【資料7-1】
「文化のための1%システム」の発端①
八木〔敏行・元教育長〕 県立高校で、やっぱり僕が非常にユニークだと思うのは、
「文化のため
の一%システム」ですね。知事の発案で昭和五十三年から始めましたがこれはうまくいったみ
たいですね。
知事 でき上がった高校がコンクリートの塊みたいになって、何か虚しくなってね。それで思い
切って……。
(学校建設課長) 昭和五十一年のときの高校教育問題を考える県民討論会のときも、知事が特色
ある学校づくりということを言われて討議したわけですが、一応それを受けたような形で、学
校にも「文化のための一%システム」を導入されたわけです。
知事 これは別途、僕の方で、フランスの作家マルローの文化相としての仕事などを調べてきて、
21
昭和五十三年からはじめました。
(前掲『伸びゆけ若者たち―高校百校計画達成の軌跡』
)
【資料7-2】
「文化のための1%システム」の発端②(昭和 53 年5月9日・部長会議)
◎個性ある高校づくりについて
教育長 以前、県内産業界の人たちに個性ある高校づくりの話しをした時、芸術とか音楽だけで
なく、もっと日本とか本県の伝統工芸とか、そうしたものを含めて考えたらどうかといったよ
うな話があった。
そうしたら先日、丹波コレクションで有名な丹波商会社長、丹波さんから、本県産業界、例
えばスカーフのデザインとかになるのか、何かそういった工業デザイン、伝統工芸等を積極的
に取り込んだものが考えられないか、また県の商工界についても、いろいろもの申したいこと
があるとのことで、10 日に商工部長と一緒に会うことになっている。仮に芸術高校といったよ
うなアングルでとらえるならば、そういうものを入れてもらいたいと考えているようだ。
知事
面白いではないか。ただ問題は、芸大とかあるいは雇用の場につながらないと遊びの場に
なってしまう恐れがある。また産業保護機関のようになってしまってもいけない。
商工部長
本県の木工業界でも芸大卒業者を6人位抱えている。従って幅広い意味のものなら雇
用にもつながると思うので、ぜひお願いしたい。
実は小田原市から木製品だけの訓練校をつくってほしいといった話もある。やはりこれから
は単に作るだけでなくデザインの問題だと思う。
知事
問題は高校だけ出て使いものになるのか、ならないのかである。従って場合によっては専
修学校にするとかということも考えられる。
いずれにしても検討に値すると思うのでよろしく。
教育長 思い切って1つ位自由な学校を作ってもよいと思う。
とにかく、高校建設なども同じものばかり作っているとうんざりしてくる。
商工部長 建設費の1%とかを文化的面に使うとか、そういうパーセンテージを標準にする方法
もあるようだ。
知事 それはフランスでやっている。アンドレ・マルローが公共建設費の1%を文化に使うべき
だと唱えている。それも少し検討してみて1%で良いのか、あるいはそれ以上プラスするのか
決めて、契約の際必ずその分を文化に使わせるとするかですね。
校舎に壁面を書かせろといったような意見もあるが、例えば県民ホールの高い塀などもヨー
ロッパなら恐らく壁画を作るはずだ。何かそういう文化アセスを考えて良いと思う。
教育長 ボチボチ高校も画一的なものでなく、何かを打出す時期にきていると思う。そこでまだ
コンプリートに固まったわけではないが、いくつかパターンを出して、議会中にでも知事、副
知事、総務部長あたりに議会筋に打診していただきたいと思っている。
(神奈川県立公文書館所蔵「昭和 53 年度 部長会議記録(5月)
」H25-001-04/ID:1201301648)
【資料8】コミュニティのなかの県立高校という意識
(第3回ブレーン・ストーミングの結果に関する白根副知事の報告)
学者グループとの第3回目の会合では、次のような意見が出された。
22
〔中 略〕
高校をつくれという住民の声はもっともだが、その中にコミュニティという問題を含めた高校づ
くりを進めていくべきではないのか。単なる高等学校生徒の教育の場でなく、社会活動の一助に
していこうという気持をこの高校の建設運動の中に入れていきたい。
(新神奈川計画に関する部長会議発言内容(50.12.26)
)
知事〔長洲一二〕 信州やなんかだと学校がコミュニティのセンターとしてある。いろいろある
と町長さんの席の隣に校長さんがすわるとか。一種の権威のシンボルにもなっている。
白根〔雄偉・副知事〕 やはり精神的な面が非常に強いという。
知事 それが非常に大事じゃないかという気がします。
福山〔善雄・教育庁管理部長〕 村で名士が集まった時、村長、警察の駐在のおまわりさん、そ
れから学校の校長とその3人が中心ですね。そういう風土のなかで育って行きますから。また
尊敬されればされるほど。
知事 子供がふえる、だから学校 100 校というフィジカルプランも必要だが、学校がコミュニテ
ィのセンターになるようなそういう社会でないと本当に。
(「昭和 50~52 年度 新神奈川計画(案)基本構想・基本計画・実施計画(原稿)」H11-012-10/ID:1199905644)
【資料9】新神奈川計画(一部)
(基本計画)
3 家庭、地域社会の教育機能の回復と拡充
〔施策の方向〕
(2)地域社会と学校との連携強化
ア 地域における教育・文化活動の活発化をはかるため、学校施設の積極的な解放と活用を進
める。特に高等学校の新設にあたっては地域との調和を考慮した特色ある学校建設を進める
とともに、地域に開かれた学校として施設開放を円滑に行うことができるよう創意工夫する。
(実施計画)
3 家庭、地域社会の教育機能の回復と拡充
(1)地域社会と学校との連携強化
ア 県立高等学校の開放
高等学校を地域における教育・文化・スポーツ活動の核として地域の人びとの生活に結び付
けていくため、学校の施設を開放し、講座を開催するなど、開放を拡充していく。
(神奈川県発行『新神奈川計画』昭和 53 年、K312-0-115)
23
【資料 10】昭和 56 年度のコミュニティスクール開設状況
(神奈川県立公文書館所蔵「調査回答」S63-283/ID:1200467402)
24
25
【参考】昭和6年 神奈川県管内図(
『神奈川県統計書』昭和6年より)
26
M41.4
神奈川県立
第四中学校
S25.4
神奈川県立
希望ヶ丘高等学校
S23.4
神奈川県立
横浜第一高等学校
T12.4
神奈川県立
横浜第一中学校
T2.4
神奈川県立
第一横浜中学校
S23.4
神奈川県立
小田原高等学校
T2.4
神奈川県立
小田原中学校
S23.4
神奈川県立
厚木高等学校
T2.4
神奈川県立
厚木中学校
S23.4
神奈川県立
横須賀高等学校
T2.4
神奈川県立
横須賀中学校
T2.5
神奈川県立
第二横浜中学校
S23.4
神奈川県立
横浜第三高等学校
S25.4
S25.4
神奈川県立
神奈川県立
横浜緑ヶ丘高等学校 横浜平沼高等学校
S23.4
神奈川県立
横浜第二高等学校
S25.4
神奈川県立
横浜翠嵐高等学校
S23.4
神奈川県立
横浜第一女子高等学校
T12.5
神奈川県立
横浜第三中学校
T12.4
神奈川県立
横浜第二中学校
S5.4
神奈川県立
横浜第一高等女学校
M34.5
神奈川県立
高等女学校
M34.5
神奈川県立
第二中学校
M34.5
神奈川県立
第一中学校
M35.4
神奈川県立
第三中学校
M33.4
神奈川県
高等女学校
M33.4
神奈川県
第二中学校
小田原英学校
文武館
小田原藩校集成館
M33.4
神奈川県
第一中学校
M32.2
神奈川県中学校
M30.6
神奈川県
尋常中学校
【資料1】神奈川県における「ナンバースクール」の変遷
S25.4
神奈川県立
横浜立野高等学校
S23.4
神奈川県立
横浜第二女子高等学校
S11.4
神奈川県立
横浜第二高等女学校
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