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日消外会誌 22(7)i1839∼ 1846,1989年 在宅静脈栄養法 にお け る完全皮下埋 め込み式 カテ ーテルの有用性 に関す る検討 大阪大学第 1外 科,'小 児外科 キ 一 井上 善 文 根 津理 郎 中 井 澄 雄 ・川 島 康 生 Ⅲ 高木 洋 治 岡 田 正 TOTALLY IMPLANTABLE SUBCUTANEOUS INFUS10N PORT IN HOME PARENTERAL NUTRIT10N Yoshifumi INOU□ Yoj二TAKAGIち ,Riichiro Nコ ZU,Sulnio NAKAI中 , Akira OKADAtt and Yasunaru KAWASHIMA First Department of Surgery and Pediatric Surgeryホ Osaka University Medical School ー 14症 完全皮下埋 め込 み式 カテ テル (SIP)を 用 いた 間歌的投与 に よる在宅 静脈栄養法 (HPN)を 比 べ て,SIPで は 例 に施 行 した.従 来 よ り用 い られて きた体 外露 出部分を有す る Broviac catheterに ー ー 改善 が得 られた。合併症 は カテ 輪液非投与時 には カテ テルの管理 が容易 とな り,quality of lifeの ー テルの閉塞 が 1例 にみ られた のみで,カ テ テル感染 は 1例 に もみ られ なか った。抜 去 を要 した合併 で に 症発生頻度 は BrOviacで は2.04回/1000日で あ ったのに対 し,SIPで は0.18回/1000日と有意 低率 か 面 ら あ った。以上 SIPは 合併症 の発生頻 度 が低 く,安 全 に使用可能 で あ り,ま た quality of lifeの も SIPの HPN用 カテ ーテル としての有用性 は高 い と考 え られた。 ー 索引用語 :完 全皮下埋 め込み式 カテ テル,在 宅静脈栄養法,間 欧的輸液法 は じめ に 在宅静脈 栄養法 home parenteral nutrition (以 下 HPN)は ,種 々の原 因 で長期 にわた り十分 な経 口摂取 また は経管 栄 養 ので きな い 患 者 が,静 脈 栄 養 (total 下 TPN)施 行下 に家庭或 は社 parenteral nutrition以 。分 こ 会生活 に復 帰す る とを可能 とした方法 であ る .わ ー 。 れわ れが1985年に行 った全 国 ア ン ケ ト調 査 で は, 1982年か ら1985年11月末 まで の 期 間 に205例の適 応 と 考 え られ る症 例 が存 在 した が, う ち65例 (32%)が HPNを 行 って いた にす ぎな い。 そ の後 1985年に在 宅 静脈 栄養 法 指 導管 理 料 が 新 た に医 療 保 険 の 適 用 を受 け,そ の恩恵 は広 く認識 され るよ うにな り,症 例 数 も 増加 しつつ あ る。 しか しなが ら,実 際 には正 しい適応 患者 を選 び,長期 間 にわた リ トラ ブル な く輸液 を行 い, さ らに は息者 の快適 な社会生活 を保障す るには い まだ <1989年 3月 8日 受理>別 刷請求先 :井上 善 文 〒553 大阪市福島区福 島 1-1-50 大 阪大学医学 部第 1外 科 解決す べ き数多 くの問題 が あ る。 そ の 1つ に実施方法 としての カテ ー テルの問題 が あ る。 輸液 の実施方法 として は,携 帯用輸液 システ ムを用 い て 持 続 的 に輸 液 を 行 う方 法 お よ び 間 歓 的 投 与 法 。 (cyclic TPN)の 2つ の方法 が行 われて い る .間 欣的 一 投与法 は 1日 の うち 定時間内 に必要 な輸液量 を投与 し,投 与終 了後 カテ ー テル を ロ ックして お くとい う方 ー 法 で あ る.患 者 は これ に よ リ 定時間輸液 システ ムか ら解放 され ,自 由 に行動す る ことが可能 とな る(図 1). しか し, こ の場合 BrOviac catheter(以下 BrOviac) ー な どの従 来 よ り用 い られ て い る カテ テ ル の 場 合 に ー は,輸 液非投与時 で も カテ テルの皮膚刺 入部や体外 ・ 露 出部 分 につ きま と う感染 破損 な どの危険 が常 に存 ー 在 し,ま た入浴時 には カテ テル露 出部 の保護 が必要 で あ り, 日常 生活上 の制約 か ら完全 に解放 され る こと はない。 一 方,完 全皮下 埋 め込 み式 カテ ーテル (totally im‐ plantable subcutaneous infuslon port i SIP)ヤ ま, 従 112(1840) 在宅静脈栄養法における完全皮下埋め込み式 カテーテルの有用性 日 消外会誌 22巻 図 1 間 歌的輸液法 図 2 SIPの 構造 回 回 0 0 0 ︲ 獅 針 針 先も G 鈍2 = = = ヽ \ H u b ●r 針 7号 Huber針 輸液 システムよ り解放 ( 学校, 会 社 な ど) ! リン , 日 午ナー七ロフク ヘフ ト 来 癌 化 学療 法 な どの 際 の 動脈 あ るい は 静脈 用 の v a S ‐ cular accessと して開発 された もので, 患 者 の 日常生 活 に大 きな制約 を加 える こ とな く, 外 来 で容 易 かつ 計 図 3 鎖 骨下穿刺法に よる S I P の 留置 a t catheter, b i sheath, c i dilator, d i guidewire, e : p o r t を埋め込 む皮下 ポケ ッ ト 画的 に制癌治療 を反 復 で きる方法 として, 現 在制癌療 法 の重要 な手段 の 1 つ とな って きて い るい 9 ) . 今回, S I P ( I n f u s e A―‐P o r t ① ) を H P N 患 者 の静脈 用 v a s c u ‐ l a r a c c e s s として 用 い, 従 来 よ り用 い られ て き た B r o v i a c との比較検 討 を行 った。 I o S I P の構造 お よび使 用方法 S I P は 薬剤 お よび輸液投与 を穿刺 して行 う自己密 閉 型 隔型 ( s e l sf e‐a l i n g e n t t t s e p t u m )r と eservoirを 有 した本体 ( p o r t ) および血 管内 に留置す る s i l i c o n e r u b ‐ ber tt catheteか r とらな る システ ムで あ る。e n t t t s e ‐ か きて p t u m は 特殊加工 を施 した s i l i c O n e r u b b e rらで お り, H u b e r 針 を用 いれば1 9 G 針 で1 0 0 0 回以上, 2 2 G 針 で2 0 0 0 回以上 の 穿 刺 に 耐 え うる と され て い る ( 図 2). 1.SIP留 置法 SIPの 留置法 は1の 静脈切開 あ るいは直接 穿刺 法 にて カテ ーテルを挿入 し,これ に pOrtを 皮下 に埋 め込 む と い う操作 を加 えるだ けで,特殊 な操 作 は必要 としない。 用 い る静脈 は外頸 静脈 ,内 頸静脈,顔 面静脈,椀 側皮 静脈 な どで あ る。 まず,皮 膚切開後 目的 とす る静脈 を 露 出 し,皮 下 ポ ケ ッ トを作成 し, カ テ ーテル を皮下 ト ンネ ル を通 して 静脈 切開部 に導 出 し,静 脈 内 に挿 入す る。 鎖骨下穿刺 法 の場合 (図 3)に は,通 常 の方法で穿 刺 して guidewireを静脈 内 に 留置 し,そ の 後 皮 下 ポ ケ ッ トを作成 して portを留置 し,カ テ ー テルを皮下 ト ン ネ ル を 通 して guidewire挿 入 部 に 誘 導 す る。 d i l a t o r , s h e a t gh uをi d e w i r e 沿 に って 挿 入 した 後, sheathだ けを静脈 内 に残 して d i l a t o r gとu i d e w i r e を 抜去 す る。 つ いで s h e a t h 内 に カテ ー テ ル を挿 入 し, 徐 々に sheathを 裂 きなが ら抜去 し,カ テ ー テルのみを 血 管 内 に留置す る.カ テ ーテル と pOrtが と りはず し可 能 な タイプの もので は,カ テ ー テルを静脈 内 に挿 入 し てか ら皮下 トンネル と皮下 ポ ケ ッ トを作成 し,カ テ ー テル と pOrtを 接続 す る. portを 埋 め込 む皮下 ポ ケ ッ トの位 置 は,HPNの 場 合 には患者 が 毎 日自分 で 見 なが ら Huber針 の 穿刺 が で きる位置 に留置す る こ とが必要 で,前 屈位 で刺 入点 を見 る こ とがで きるよ うに前胸部やや下 方 とす る。約 4cmの 皮膚切 開を お き,皮 下組織 を切開 して大胸筋膜 を露 出 し,portが 入 るだ けの腔 を作成す る。port周 囲 の 固定用 の穴 に非 吸収性 の糸 を通 し,大 胸筋膜 に縫合 固定 した後,皮 下 ポ ケ ッ ト内 の上血 を十 分 に行 い,皮 膚縫合 を行 う。 2.輸 液投与方法 輸出 ラインは0.2μの IInal ttter, IIOw checker, lRJ 113(1841) 1989年7月 一 注用 Y字 管 を 体化 した ものを用 い,こ れに穿刺針 を 接続す る。穿刺針 は Huber針 を直角 に曲げた ものに回 定用翼 を つ けた ものを用 い る(図 4)。 穿刺部位 は外表 よ りの触診 にて容易 に確認 で き る。穿刺部位 を イ ツジ ンで 消毒 し,通常患 者 は左手 で portを 固定 しなが ら右 手 に穿刺針 の翼 の部 分 を把 持 し,刺 入す る。穿刺後 は, 翼 の部 分 を絆創膏 で 固定 し,刺 入部 にイ ソジ ングル を 一 塗布 し, ガ ーゼで覆 う。輸液 ライ ンの 部 も固定 した 後,輸 液 を開始す る(図 5).脂 肪製剤 の投与 は輸液 ラ イ ンに組み込 んであ る側注用 Y字 管 よ り行 う. 輸液 終 了 時 に は側 注 用 Y字 管 よ り10倍希釈 ヘパ リ ン加生理食塩水 を注入 し,さ らに ウ ロキナ ーゼ :6000 単位 十ヘパ リン t1000単位 十生理 食塩 水5mlを 用 いて カテ ーテル を ロ ックの状態 とし,穿 刺針 を抜去す る. 穿刺部 は ガ ーゼで覆 う (図 6). II,対 象症例 SIP使 用症例 は14例で ,年齢 は12歳か ら81歳,男性 7 あ る。症pl1 5,6は Dow、Corning社 製 例,女 性 74/11で 図 4 Huber針 .固定用の翼状部,ロ ック用の Y字 管 を とりつけてある, rubber catheter(SIL)を HPNを 施行 0型 silicone‐ Broviac 時中途 で SIPヤこ,症 1717, 8, 9,10,11,12は を S I P に 変 えた症例 で あ る. ま た, 症 例 1 3 , 1 4 , 1 5 , 1 6 , 1 7 , 1 8 は H P N 開 始 当初 よ りS I P を 使用 した症例 で あ る。症例 1 か ら 4 は B r o v i a c にて管理中 の症例 で あ る。 これ らの症例 の B r o v i a c 使用期間 と, S I P 使 用 期間 での合併症 お よび管理状況 につ いて検討 した。疾 患 の 内訳 は表 1 に 示す とお りで あ る。 S I P の 留置 は 9 4/1は 鎖骨下静脈 穿刺法 に よ り, 5 4 / 1 は外頭静脈切 開法 に よ り行 った。麻酔 法 は, 胆 石症手術 時 に S I P の 留置 にて行 った。 局 を行 った症例 9 を 除 き, 全 4 / 1 1所麻酔法 図 5 P o r t の 穿刺手順. 1 . イ ツジンで穿刺部を消毒 し, 2 . 穿 刺す る1 3 . 翼 状部 の回 定を確実 にす るためにガーゼで枕をつ くり, 4 . 輸 液 ラインも絆創膏で固定 し, 輸液 を開始す る. 在宅静脈栄養法 にお ける完全皮下埋め込み式 カテ ーテルの有用性 日 消外会誌 22巻 114(1842) 図 6 輸 液投与 システム. 脂 防製剤 の投与 は側注用 Y 字管 に針 を さして行 う. ロ ックも側注用 Y 字 管 よ り 1 , 2 の 順 に ロ ック液 をと入 して行 う。 7号 行 って い るの は1 0 例で, 残 りの 4 例 は 家族 が 穿 刺 を 行 ってい る。 I I I . 結果 1.SIPの 合併症 SIP留 置 に関 しまず 問題 とな るのは,留 置後 早期 で は port埋 め込 み部 の皮下 ポ ケ ッ トの血 腫形 成 お よび 創 出血,創 感染 な どであ る。第 1例 目の症例 11で血 腫 形成がみ られたが,内 容血液 の 吸引 と 3日 間 の圧迫 に よ り消失 し,そ の後膿瘍形成,感 染 な どの合併症 はみ られ なか った。 それ以外 の症例 では皮下 ポ ケ ッ トに関 す る合併症 は発生 していない。 カテ ーテ ル 留置 中抜 去 を要 す る合 テ ー テ ル の不 可逆 的 閉 塞 が 症 LOCKの / 偶注用 Y字 害 方法 ' ヘ パ リン il記 (10m単位) n t よ 9 生 2 ウ ロキナーゼ 16000単位 ヘ バ リン il"て ,的 い位) 生 食 i5いで 部 のみを抜去 し,新 しい カテ ーテル を挿 入 して portに 接続 した,portの 変換 は行 っていない.閉 塞 の原 因 は 明 かにはで きなか ったが,抜 去 した カテ ーテルが凝血 塊 で 閉塞 した よ うな所見ではなか った こと,乳 白色 の 結 晶状物 が得 られた こ と,ま た 本症例 は時 々輸液終 了 表 1 対 象症例 症例 ♀ 断 ffH catheter SIP留 置期間(日) ♀ ク ロ ー ン病 (SIL)→SIP (SIL)→SIP BRO→ SIP 短 腸症候 群 BRO→ SIP 短 陽症候 群 BRO→ SIP BRO→ SIP 腸 性肢 端 皮 膚 炎 り,現 在 もなお使用 中であ る.そ の他,滴 下不 良 が 2 例 にみ られたが, ウ Pキ ナ ーゼ及 びヘパ リンの使用 に よ り容易 に再開通 した 。 また ,輸 液投与 は夜間 に行 っ てい るが,朝 方,針 の 固定 が ゆ るみ針 が抜浅 して皮下 SIP と にな った症例 を 2例 に経験 した 。 そ の後針 の長 さを 3 6 ♀ BRO→ SIP BRO― SIP 9 6 む CIIPS ク ロ ー ン病 開存性 は 良好 で あ った。 その後 は 問題 な く経過 してお 7 ︲ ♀ 短 腸 症候 群 BR0 6 3 ♀ 多発 性 小 陽 潰 場 ク ロ ー ン病 0 4 む BR0 ︲ 4 ♀ CIIPS ク ロ ー ン病 後 ロ ックを忘れた りす る こ とな どか ら判 断 して,側 管 か らの脂肪投与 が関与 した 閉塞 と考 え られた 11). また,症例 11では留置 2年 後 に pOrt留置部 に血 腫 の 発生 を見たが,血 液 の 吸引 と圧迫 に よ り消失 した。原 因 として カテ ー テルの破損 に よ り血液 が漏 出 し,皮 下 に血 腫 が形成 された可 能性 も考 えたが, カテ ーテル の 9 4 合 BRO 2 7 む BR0 CIIPS 3 3 む 短 腸症 候群 8 ︲ ♀ SIP 短 腸症候 群 SIP 短 腸症候 群 ク ロ ー ン病 SIP 8 ♀ 脳 梗塞 後遣 症 調節す る こ とに よ り固定 が確実 とな り, この問題 は発 生 していない。 また, 2例 に カテ ー テル感染 が疑 われ る発熱 がみ られた.症 例 11では カテ ーテル か らの逆流 血 液 の培養 は陰性 であ り,抗 生剤 お よび ウ ロキナ ーゼ ︲ 2 ♀ SIP 4 3 む 低 蛋 白血 症 0 4 6 YN 9 2 18 2 5 17 SM 0 8 16 HS ︲ 8 15. IT 6 4 14.HD 4 2 13 KH 7 ︲ 12. NM 8 3 ll YK 2 ︲ 10 AY 5 2 9 TU 9 3 8 TT 3 3 7 HM 6 5 6 MO ♀ 5 NM ︲ 4 ヽ 4S 3 2 YN 4 4 3 3 診 早 KT 0 3 2 ︲ 4 l KS 年 齢 ・性 例 13にみ られ た の み で あ った。こ れ は留置後約 1年 が経過 した 時点で の発生 で, ウ Pキ ナ ーゼ を用 いての血 栓溶解 を試 みたが完全 閉塞 の状態 で再 開通 させ ることはで きず, カ テ ー テル 8注 踊 Y字 書に3tをさして行 う。 投与終了後は ロ ンクす る。 ワ 併 症 と して は カ SIP BRO t BrOviac catheter, SIL:sllicone― rubber catheter SIP isubcutaneous infusiOn pOrt, CIIPS i chronic idiopathic intestinal pseudO― obstruct10n syndrome ロ ックに よ り解熱 し,以 後 は発熱 な く経過 してい る。 症 例1 0 では 逆 流 血 液 の 培 養 に て A c h r o m o b a c t e r xylosoxidansが検 出 されたが,感 受性 の あ る抗生物質 輸液方法 は症例 5 , 6 , 1 0 , 1 1 , 1 2 , 1 5 , 1 7 , 1 8 で 連 日の間歌投与, 症 例 7 , 8 , 9 , 1 3 , 1 4 , 1 6 で は は週 3 ∼ 6 回 の 間歓投与 を行 った。症例 1 5 は持続投与 で, 週 2 回 針 の刺 し替 えを行 った。患者 自身 で針 の穿刺 を の投与 に よ り解 熱 し,以 後発熱 な く経過 してい る。 そ の他 カテ ーテル に基 づ くと思われ る感染 のため に, カ テ ーテル を抜去 した症例 は ない (表 2). 2.Broviacと の合併症 の比較 115(1843) 1989年 7月 表 2 SIPの 合併症 術後血腫形成……… ……………… 1 …………………… 1 遠隔期血腫7 / / 成 … 発熱……………………………… 2 …2 … ……………………… 滴下不良 …………… 2 の による皮下注 針 抜浅 カテ ーテル閉塞 …………………… ■ 1 計 (本 抜去回数) 9(1) 表 3 人 工腸管 システ ムにおける Brosrlac catheter とSIPの 比較 Broviac 延べ留置 日数 (症例数,使 用本数) 9299日 5465日 (10例 ,22本 ) (14例 ,15本 ) 1071日 723日 最長留置 日数 抜去理由 発 0 熱 (0) (catheter sepsis) Broviacは 10症4/11に 対 し22本使用 した。延 べ 留置 日 事故抜去 数 は9299日,最 長 1071日,症 例 当 りの平均留置 日数 は 929.9日, カテ ーテル 当 りの平均 留置 日数 は4227日 で あ った 。一 方,SIPは 14症例 に対 し15本を使用 し,延 べ 留置 日数 は5465日 (80日か ら723日),症 例 当 りの平均 ー 留置 日数 は390.4日,カ テ テル 当 りの平均留置 日数 は 364.3日で あ った。留置 中 の 合併 症 は BrOviacで は 発 ー 熱 が18回, うち細菌学的検索 に よ リカテ テル敗 血 症 と診断 されたのは10回お よび事故抜去 1回 で,計 19回 ー 用 発生 した 。 また ,カ テ テルが破損 し repair kitを いて修復 した回数 は 8回 で あ った,一 方,SIPで は カ テ ーテルの 閉塞 が 1回 発生 したのみで, カテ ー テル敗 血 症 に よ リカテ ー テルを抜去 した症例 は 1例 もなか っ ブこ . カテ ー テル抜去 を要 した合 併症発 生頻度 を比較す る と, B r o v i a c で は留置 9 2 9 9 日あ た り1 9 回の合併症発 生 ー 回数であ り, 合 併症発生頻度 は4 8 9 . 4 日に 1 回 , カ テ テル留置 1 0 0 0 日当 り2 . 0 4 回で あ った。これ に対 し, S I P で は閉塞 に よるカテ ーテル抜去 が 1 回 あ ったのみであ ー り, 合 併症発生頻 度 は5 4 6 5 日に 1 回 , カテ テル留置 1 0 0 0 日当 り0 . 1 8 回で あ った. こ の合併症発生頻度 は, S I P が B r O v i a c に比 べ て有意 に低値 で あ った ( 表 3 ) . 3. quality of life B r o v i a c および S I L か ら S I P に 変 更 した 8 症 例 に 対 し問診 し, どの よ うに q u a l i t y o f l i f改善 e が したか につ いて, 患 者 の表現 した内容 につ いて述 べ る。す べ ての患者 が言 った事で あ るが, 1 ) 入 浴 が安心 して行 え るよ うにな った 。 カテ ーテルの体外露 出部 を濡 らさな い よ うにす るため胸 の下 あた りまで しか人浴す る こ と がで きな か ったが, S I P に 変更 してか らは肩 まで ゆ っ く り入浴す る こ とが可能 とな った。また, B r o v i a c の場 合 には カテ ーテルが濡 れ な い よ うにす るため に防水加 工 の された T e g a d e r m ⑥な どを貼 って いたが これ が不 ー 要 とな り費用 の節約 とな った。 入浴 のた びに カテ テ ル挿 入部 の消毒 お よび ガーゼ変換 が必 要 であ ったが, SIP 1 0 0 0 1 閉 塞 終 了 1 死 亡 1 (使用中) 抜去を要 した合併症発生頻度 (* : p<0.05 vs Broviac) 一 これ も不要 とな った。2)夏 季 には多量 の発汗 のため ー ー 日の うちで も何 回 もカテ テル挿 入部 の ガ ゼ変換 を 必要 としたが,SIPで はその必要 が な くな った .これ は カテ ー テル感染 の問題 だ けで な く,輸 液非投与時 の活 ー 動性,解 放感 を大 き く改善 させた。3)カ テ テルの皮 膚刺 入部 の消毒操作 が不 要 とな ったため手技的 に簡略 ー 化 された。4)外 観 上 ,カ テ テルの体外露 出郎分 がな いため 洋服 を着 てい る とカテ ー テルが挿 入 されて い る ことがわ か らず,ま た 夏 には襟元 の開 いた 涼 しい洋服 を着 る ことがで き る。5)絆 創膏 を常 に貼 ってお く必要 が ないので,かゆ みやか がれ とい う問題 がな くな った 。 ー 6)日 常 の 1つ 1つ の行動 に関 し,カ テ テルの管理 に 気 を使 う必要 がな くな り,す べ ての面 で解放感 が強 く な った,な どであ った。 I V . 考察 ー 行患者 において は, カ テ テル管理, 代 謝 上 の問題 点, そ の他 医療上 の問題点 が あ る。 この うち, カテ ー テル管 理 の 面 で B r O v i a c を用 いた 現 在 の 間 歌 HPN施 ー ー 的輸液方法 では, カテ テル留置 に伴 うカテ テル敗 血症 お よび事故抜去, 破 損 そ の他 のル ー トに纏 わ る ト ラブル だ けで はな く, 日常 生活 を行 うにあた って, 輸 ー 液 中 は もちろん ロ ック時で もカテ テルの体外露 出部 が存在す ることに よ り, ル ー トを破損 しない よ うに注 意 をは らわ な くてはな らない とい う問題 が あ る。 この 116(1844) 在宅静脈栄養法 にお ける完全皮下埋め込み式 カテ ーテルの有用性 日 消外会誌 22巻 点 の解決 が息者 の quality of lifeを さ らに向上 させ る ための大 きな方策 で あ る と考 え られ る。 それ を主た る 目的 として この SIPを HPN思 者 に使用 し,従 来 よ り い 用 られてい る Broviacと の比 較 を行 った。 1.挿 入 ・留置 SIPの 挿 入 留置 に関 して は portを 埋 め 込 む とい う 操 作 が 加 わ るだ けで,特 別 な技 術 は 必 要 と しな い. Broviacの 場合 に も Dacron ①cuffを埋 め込 む とい う 操作 が必要 で あ る。 静脈 切開 に よって挿 入す る場合 に は皮下 トンネル を作 成 して c u r を 埋 め 込 む ので あ る が, S I P の 場合 には c u f f のかわ りに p O r t を埋 め 込 む 皮 下 ポ ケ ッ トを作 成 す る と考 えれ ば 同様 の 操 作 とな る。皮下 ポ ケ ッ トの作成時 には この部 の血 腫形成 が 間 この血 腫形成 がみ られた以 題 とな るが, 最 初 の症4 / 1 で 外 には問題 とな ってはいない, 電 気 メスを用 い るか否 かにつ いての議論 もな されてい るが, 出 血 点 を 1 つ 1 7号 来 で制 癌 治療 を施 行 中 の 症例 に対 しS I P , H i c k m a n も c a t h e t e r ( H I ) , 従 来 よ り用 い られ て い る s i l i c o n e ‐ r u b b e r 製カテ ーテル ( S I L ) , p o l y u r e t h a n e 製 カテ ー テ ル ( P U ) を 用 いた管理 を行 い, カテ ーテル敗 血 症 の発 生頻度 を比較 してい るが, この報告 で もカテ ーテル留 置 1 0 0 0当日りで S I L S I P i 3 2 . 3 , P U : 2 9 . 4 , H I t i O S, I1 P5 で と 最 も 低 値 で あ った 。 そ の 他 Gyves17), wallace13), soucy19), Golladay20)らも SIP の カテ ー テル敗 血 症発生頻度 が低値 で あ る こ とを報告 してい る。 われわれの症4/1では,SIP症 4alでは ヵテ ーテルの 閉 塞 に よって抜去 した症例 を 14/11経 験 した のみで,明 ら かな カテ ーテル感染 は発生 しなか った 。 Broviacと の 比較 で,SIPの 合併症発生頻 度,カ テ ーテル敗 血 症発生 閉錬 す る とい う注意 をは ら うこ とに よ り, そ の後 は血 頻度 は ともに有 意 に低値 で あ った。 なぜ カテ ーテル敗血症 の発生頻 度 が従来 の体外露 出 部分を有す るカテ ー テルに比 して低 率であ るのか に関 しては, 1つ には体外 での輸液 ライ ン とカテ ー テルの 腫形成 な どの合併症 は発生 していない。 接続 部 分 (hub)が な い こ と, し たが って接続部 分 が 2 . 合 併症 お よび安全性 につ いて S I P シ ステ ムを静脈用 に使用 した場 合 の合併症 につ 2 ) らに よ り詳 細 な検 が いて は B r O t h e r ぎ 討 な され て い Huber針 の先 端 の み とな る こ とが大 きな要 因 で あ る と考 え られ る。す なわ ち, カ テ ー テル敗血症発生 の大 つ結繁 に よって止血 し, 十分 に止血 を確認 した後, 創を る。300症frlに対 し,329本 の SIPを ,5年 間 (318 学 療 法,血 液採取 お よび血 液製剤 の patient years),化 投与,TPN用 な ど多 目的 に用 いた 場合 につ いて検 討 してい るが, これ に よれば全 く合併症 な く経過 した症 きな要 因 が hubか らの contaminationで あ る とす る リを考 えれば, こ の結果 はそれ を支持す hub theory21レ るものであ る と考 え られ る。 また ,Huber針 か らの細 菌混 入の可能性 もあ るが,Wintersら 2りは皮 膚組織 が そ の barrierとしての働 きを有 して い る可能 性 が あ る 例 が61.1%で ,局所感染 15.2%,全 身感染 1.2%,カ テ ー テル 閉塞9.1%で あ った と報告 され てい る。Gyveぎめら と述 べ てい る。 以上, ど の報告 において も従来 の カテ ーテルに比 べ も35症例 に延 べ 2980日間 SIPを 血 液 採 取 及 び化 学 療 て SIPの 合併症発生頻度 は低 く,わ れわれの検討 結果 法 の 目的で用 い,合併症 の発生 は カテ ーテル 閉塞 1回 , 薬液 の extravasation l回 ,穿 刺部 の び らん 1回 の 計 と同様 で あ り,安 全性 は高 い とい え よ う.し か しひ と た び合併症 が発生 した場合 には従来 の カテ ーテルに比 3回 で,1000日 当 り 1回 と低率で あ った こ とを報 告 し てい る。また,本 邦 で は,木 村 ら1ゆ が99症例 の癌息者 に 動注用,静 注用,腹 腔用 として SIPを 用 い,カ テ ーテ べ てその対処法 が煩雑 になる ことは否 めず, し たが っ て, き わめて厳 格 な管理 が必要 で あ る。 ル 閉塞 が11471,感染 が 7421,皮膚壊死 が 4 allに み られ た と報 告 してい る。 カテ ー テル感染 に関 しては,Gag‐ 1"は 間歓 的投 与 法 を施 行 中 の HPN息 者 6症 giotiら Broviacか ら SIPに 変 更 した 8症 4/1のSIPに 対 す る反応 は きわめて 良好 で あ る。体外露 出部分の ない こ 3.問 題 ″ 点 とは予想以上 に患者 の生活上 の制 約 を解除す る もの と 例 で従来 よ り用 い られ て きた percutaneous silicone‐ 思わ れ る,問 題 点 は Huber針 の 穿 刺 に伴 う問題 で あ rubber catheterと SIPと ι D historical cOntrOl study る。息者 が 自分で針 を穿刺す る とい う行為 に関 しては を行 いそ の結果 につ いて報告 してい る。それに よれば, す べ ての患者 にほ とん ど抵 抗 な く受 け入れ られた。 た だ症4/112は 12歳の症例 で母親 が穿刺 を行 ってい るが, p e r c u t a n e o u s c a t h e t e rカテ の ーテル 敗 血 症 発 生頻 度 は延 べ 施行 日数9 0 1 日当 り3 回 ( 3 . 3 / 1 0 0 0 )日であ ったの 穿刺 に際 し患児 が 当初疼痛 を訴 え, こ の点 にお け る母 に対 し, S I P で は1 1 1 4 日当 り1 回 ( 0 9 / 1 0 0 0 日) で , 有 親 の精 神 的 負担 が 大 き く問題 とな った が,患 者 自身 意 差 は ないがS I P で 低 率 で あ った . S h u m a n ら 1 いも外 Broviacか ら SIPに 変 更 して か らの生 活 上 の 改 善 度 l 117(1845) 1989年7月 が大 き く,SIPの 利点 が理解 され,また慣 れ るに従 い疼 に用 い ,安 全 性 お よび有 用 性 に 関 し,従 来 よ り用 い ら 痛 が緩和 された ことに よ りこの問題 は解決 した. この方法 を採用す るにあた りわれわれが最 も問題 と れ て い る Broviac catheterとの比 較 検 討 を行 った 。合 併 症 の 発 生 頻 度 で は SIPが Broviacに 比 べ て 有 意 に したのは穿刺時 の疼痛 で あ る。SIP使 用開始時 には全 面 低 くそ の 安 全 性 が 確 認 され ,ま た ,quality of lifeの 例疼痛 を訴 えたが,経 過 とともに緩和 されて い る.症 例 に よる差 は あ るが,少 な くとも疼痛 のため に SIPの で Broviac使 用 時 に比 べ て 明 ら か な改 善 が 認 め られ ー た とい う点 で 有 用 で あ った 。 しか し,従 来 の カテ テ 使用 が待J限され た症例 は な い。 また ,同 じ点を穿刺す ル に比 べ て い まだ使 用 期 間 は短 く,entry septumの 耐 る場合 にはほ とん ど痛 み はないが他 の点 を穿刺す る場 用 期 間 の 問題 もあ り, さ らに長 期 間 にわ た る検 討 が 必 合 にはや は り痛 みがあ る とほ とん どの症例 が訴 えて い 要 で あ る と考 え られ る。 る。 しか し,針 を抜去 した後 の解放感 は これ に優 るも ので あ る と考 え られ る, また,確 実 に resettoirを穿刺す る こ とがで きる か とい う問題 が あ る.約 1週 間芽刺 の指導 を行 った後, 患者 自身 または家族 に穿刺 させ る とい う方法 で行 って い る。症例 8で は使用開始 当初何度 も穿刺 に失敗 した が,家 族 に刺 入部 と刺 入角度 をみて もらい, また鏡 を 用 いて行 うとい う工夫 に よ り解決 した。他 の症例 で は 特 に問題 とはな って い な い. また,夜 間 の注入 で あ るため,輸 液 中 に針 が抜 けて しま うとい う問題 が あ る。こ れ に関 して は 2例 で針 が 抜浅 して皮下 に輸液 を行 った とい う経験 が あ る.直 角 に曲げた Huber針 に 固定 の実 を つ けた穿刺 針 を作 成 文 献 1)高 木 洋 治,岡 田 正 ,金 昌 雄 ほ か 1人 工 腸 管 ― Home hyperalimentationを含む一.医 のあゆ ブ 共 120:600--606, 1982 2 ) 高 木洋治, 岡 田 正 : 外 科栄養 におけ る新 しい動 向. 木 本誠 二 , 和 国達雄 監修. 新 外科学大系 7 . 中山書店, 東 京, 1 9 8 7 , p 3 1 2 - 3 2 4 3 ) 岡 田 正 , 高木洋治, 板倉丈夫 : 在 宅静脈栄養法 の ー 現 況一全 国 ア ン ケー ト調 査 よ リ . 医 の あゆ み 137: 1067--1070, 1986 4 ) 高 木洋治, 岡 田 正 : 在 宅静脈栄養法. 医 のあゆみ 140i361--364, 1987 5)Baind KJ,WoodOCk T t Totally implantable venous access systenl for cyclic administration of cytotoxic chemotherapyo Am J Surg 147: 815--816, 1984 して固定 の工 夫 を行 ってい るが, こ の システム導入当 初 は針 の長 さが長 く,針 が浮 き上 が った よ うな状態 で 6)ヽVilkes G,Vannicola P,Starck P: Longterln 固定 が悪 く,そ のため この問題 が生 じた もの と思われ , 7)Starkhammer H,Bengtsson M: Totally im‐ 針 の長 さを調節 し,固定 を よ くす る工夫 を行 ってい る。 4. quality of life HPN患 者 は,そ の病 態 の故 に輸液 システ ムか ら完 全 に解放 され る ことは 困難 で あ る。 しか し,間 歌 的投 与法 に よ り輸液非投与期 間 は輸液 システ ム よ り解放 さ れ,自 由 に行動す る こ とが可能 とな った 。SIPシ ステ ム は輸液非投与時,カ テ ーテルの体外露 出部分 をな くす ことに よ りさらに活動性 お よび行動範 囲を拡大 した こ とになる.体 外露 出部 分 がない こ とは単 に入浴 が支障 な く行 える とい うよ うな問題 だ けで な く,常 に留意 し, 気 に とめ ておかなけれ ばな らな か った カテ ーテルの管 理 か らも一 時的 にではあ るがほぼ完全 に解放 されたわ けで あ る。輸液非投与 時 には,外 観的 に も port埋 め込 み部 分 が 少 し隆起 してい るのみで,健 常人 とほぼ同様 とな った とい う点 で も この SIPシ ス テ ム の HPN患 は大 きい と思 向上 に果たす役害」 者 の quality of lifeの われ る。 V . まと め 完全皮下埋 め込 み式 カテ ーテルを1 4 例の H P N 患 者 venous access.Am J Nurs7:793-796, 1985 planted device for venous access.Acta Radiol Onco1 24: 173--176, 1985 8)Champault G: Totally implantable catheters for cancer chemotherapy: French experience on 325 cases. 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