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最終氷期以降の偏西風ジェットの変動とアジア夏季モンスーン

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最終氷期以降の偏西風ジェットの変動とアジア夏季モンスーン
最終氷期以降の偏西風ジェットの変動とアジア夏季モンスーンとの関係
○長島 佳菜(海洋研究開発機構),多田
豊田
隆治・磯崎
裕子・久保田
好美(東京大学),
新(岡山理科大学)
,谷 篤史(大阪大学),Sun Youbin(中国科学院), 内田 昌男(環境研)
1.はじめに
現在、東アジア上空の偏西風ジェットは、冬から夏にかけて徐々に高緯度側へとシフトし、初夏
にはチベット高原の北へとジャンプする。このような偏西風ジェットの位置は、アジア夏季モンスー
ンの北限の位置を規定するため(Liang and Wang, 1998)、偏西風ジェットとアジア夏季モンスーンは
密接に関係していると考えられる。そこで本研究では、海底の堆積物から過去の偏西風ジェットの位
置を復元し、最終氷期以降の数千年~数万年スケールでのアジア夏季モンスーン変動(e.g., Wang et
al.,2001, 2008)と偏西風との関係を検証した。
日本海は、東アジアの主要な砂漠域の風下に位置し、アジア冬季モンスーンの北西風や上空の偏
西風ジェットに乗って運ばれた風成塵が多く堆積している(Nagashima et al., 2007)。そのため、海
底に堆積する風成塵のフラックスや供給源の緯度変化を調べることで、過去のアジア冬季モンスーン
や偏西風の位置や強さに関する情報を得ることができる。本研究では、偏西風ジェット軸の過去の変
動を復元するため、2002 年、2007 年の「かいれい」航海で日本海の南部および中部から採取された2
つのコア試料(KR02-06 D-GC-6, KR07-12 PC-8)を用いて、最終氷期以降の風成塵の起源を推定し、
その時間・空間変動から過去の偏西風の変動を復元した。
2.分析内容
日本海から採取されたピストン/グラビティコア試料について、炭酸塩、有機物、生物源オパール、
鉄・マンガン酸化物の除去を行って砕屑物を抽出し、更にその中から日本海に堆積する風成塵に相当
するシルトフラクション(>4μm; Nagashima et al., 2007)を抽出し、電子スピン共鳴(Electron
Spin Resonance; 以後 ESR)分析、XRD 分析を行い、石英の ESR 信号強度や結晶化度(石英の生成年代・
生成環境をそれぞれ反映すると考えられている)の測定を行った。またその結果を中国の砂漠域の値
と比較し、風成塵の起源推定を行った。
3.結果
日本海の南北に堆積する風成塵は、ESR信号強度と結晶化度共にタクラマカン砂漠とモンゴル/
中国北部におけるゴビ砂漠との間の値を持ち、タクラマカン砂漠、ゴビ砂漠を起源とすることがわか
った。また、最終氷期から後氷期にかけてタクラマカン砂漠からの寄与率が徐々に増加する傾向が見
られた。更に、各々の砂漠からの相対的な寄与率は、最終氷期~後氷期において千年スケールで変動
していることがわかった。タクラマカン砂漠で発生する風成塵は上空の偏西風によって、ゴビ砂漠で
発生する風成塵はアジア冬季モンスーン風によって日本海まで運ばれると考えられ、風成塵の主な供
給源がタクラマカン砂漠からゴビ砂漠に入れ替わる緯度帯が偏西風ジェットの北限と考えられる
(e.g., Ono et al., 1998)。そこで次に日本海中部、南部でのESR信号強度の差をとり、風成塵を
運搬する春~初夏において日本海付近にまで偏西風ジェットの軸が南下している時期を調べた。その
結果、日本海の中部・南部での風成塵のESR信号強度の差は、北半球の夏の日射量に連動して変動
しており、夏の日射量が少ない時代にはESR信号強度の差が大きい、すなわち偏西風ジェットの軸
が日本海付近まで南下していることが分かった。更に、最終氷期、融氷期、後氷期それぞれにおいて
千年スケールで南北の差が拡大する時期が見られ、そのタイミングは夏季モンスーンが弱くなる時期
と一致する場合が多いことがわかってきた。
本発表ではさらに 2005 年の「かいれい」航海で日本海の北部から採取されたピストンコアを用い
た分析結果を示し、偏西風ジェットの軸の変動をより詳しく議論する予定である。
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