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マーシャル - 公益財団法人 海外漁業協力財団

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マーシャル - 公益財団法人 海外漁業協力財団
Overseas Fishery Cooperation Foundation of Japan
評価報告書
マーシャル諸島共和国
― 2012 年 度 地 域 巡 回 機 能 回 復 等 支 援 事 業 ―
(終了時評価-2013 年 4 月)
プロジェクトの概要
国
名
プロジェクト名
実施期間
覚書署名省庁名
及び
事業実施機関
マーシャル諸島共和国
FDAPIN Ⅴプロジェクト
2012 年 7 月 31 日~2013 年 3 月 31 日
覚書署名省庁 : 資源開発省
実 施 機 関 : 資源開発省海洋資源局(MIMRA)
プロジェクト実施の経緯と背景
マーシャル諸島共和国(以下「マーシャル」という。)政府は、National Fisheries
Development Plan に基づき National Fisheries Policy を定めている。
その主な目標として、
① 今後も持続可能な範囲の漁業活動
で民間部門からの経済利益を上げる
こと
② 信頼できる民間部門に導かれた漁
業の発展を促進すること、合理的で
責任を持てる漁業資源の開発
③ その管理を促すための組織的な能
力の強化
などを掲げている。
また「Vision2018」では、その開発戦
略の一つである「離島の振興」の水産
分野の課題として、以下の項目を掲げ
i
ている。
① 資源の維持が可能な範囲での入漁料の最大化
② 漁民による持続的な沿岸漁業活動を通じた収入機会の拡大
③ 水産資源評価に基づいた持続可能な開発計画の策定
④ 漁業・航海訓練センターの強化及び卒業生の雇用機会の拡大
⑤ 持続可能な範囲での水産物の生産、加工、貿易、輸出増大
このような基本政策に基づき、マーシャル政府は各種の漁業振興策を実施しているが、同国
の水産関連施設は、故障や老朽化等のため本来の機能を発揮することが出来ず、漁業活動に支
障をきたしていた。また、離島からの鮮魚運搬事業についても、管理・運営の改善が求められ
ていた。
これらの状況の中、マーシャル政府から公益財団法人海外漁業協力財団(以下、「財団」と
いう。)に対し、水産施設等の修理・修復及び現地技術者への技術移転、並びに関連組織への
指導・助言についての要請がなされた。
財団は、我が国とマーシャルとの漁業関係の重要性を踏まえ、同国政府の漁業振興策を支
援するため、本プロジェクトを実施した。
目標・成果・活動内容等
上位目標
プロジェクト目標
マーシャルの漁業開発・振興
1.関連施設の修理・修復及び技術移転(巡回整備)
水産関連施設の修理・修復及び当該施設の維持・管理に係る技術の向上
2.関連組織への漁業普及指導(漁業普及)
水産関連施設の管理・運営の改善及び活性化・自立化の促進
1.巡回整備
(1) MIMRA 漁船の船外機の修理・修復及び技術移転
漁船の漁獲物収集の機能が回復し、漁業活動が安定することで、漁
民の収入の安定及び市場への安定的な鮮魚供給が可能となる。
(2) MIMRA 漁獲物運搬船の修理・修復及び技術移転
漁獲物運搬船の機能が回復し、安定した集魚活動が確保でき、漁民
の収入の安定及び市場への安定的な鮮魚供給が可能となる。
成
果
(3) MIMRA 製氷機の修理・修復及び技術移転
各施設の機能が回復し、漁獲物の鮮度保持が可能となることで、市
場への安定的な鮮魚供給が可能となる。
(4) MIMRA ワークショップの機能強化に関する技術移転
ピックアップトラックを提供することにより水産施設の点検、保守
整備及び修理を機敏に実施できることとなる。また漁獲物運搬船の
年間及び長期的な整備計画の作成方法について指導することによ
り、水産施設の安定した稼働が可能となる。
ii
2.漁業普及
MIMRA 漁船船外機の修理・修復講習会に関する助言
MIMRA 技術者の指導能力が向上し、同技術者から離島水産基地オペレ
ーター等への船外機整備及び船体修理に関する技術の伝播が行われる
ようになり、水産施設の安定した稼働が可能となる。
1.巡回整備
(1) MIMRA 漁船の船外機の修理・修復及び技術移転
 船外機 2 基(実習用と予備機)の提供
 オペレーターに対する船外機の取扱いに関する講習
 船体の修理実習
(2) MIMRA 漁獲物運搬船の修理・修復及び技術移転
 Lentanir 号
キャプスタン、機関室ファン等の交換
主機関の点検整備、必要部品の交換
 Lain Tok 号
船体補修(ガジョン)
GPS、居住区掃気ファンの交換
主機関の点検整備、必要部品の交換
 Timur 号、Jebro 号及び Jolok 号
運転状況の確認
予備品等の補充
活
動
(3)




MIMRA 製氷機の修理・修復及び技術移転
OIFMC(離島魚市場センター)製氷機の主配電盤の設置及び配線
ジャルート製氷機のオイル交換等点検整備及び冷媒漏えい個所の特定
ウォッジェ製氷機のオイル交換等点検整備
KAFMC 製氷機の貯氷庫の交換
(4) MIMRA ワークショップの機能強化に関する技術移転
 ピックアップトラップの提供
 年間及び長期的な整備計画の策定
2.漁業普及
MIMRA 漁船船外機の修理・修復講習会に関する助言
専門家は、MIMRA 技術者がウォッジェ水産基地及び MIMRA ワークシ
ョップにおいて離島オペレーターへ船外機の適正な保守点検方法、軽
微な故障診断方法、船体の修理方法(上記 1-①と併せ)について、MIMRA
技術者から技術指導を行う際に、説明方法、指導方法に助言を行った。
iii
財団側
・専門家
〔第 1 回 巡回指導〕
チームリーダー 兼 漁船機関:1 名
(2012 年 10 月 23 日~30 日、11 月 28 日~12 月 1 日)
冷凍機器:1 名(2012 年 10 月 15 日~11 月 3 日)
〔第 2 回 巡回指導〕
チームリーダー 兼 漁業普及:1 名(2013 年 1 月 14 日~3 月 5 日)
・事業費
約 19 百万円
・主な資機材
船外機 2 台、船体補修材料(FRP 資材、防水合板)一式、
製氷施設予備部品一式、ピックアップトラック 1 台
相手国側
・カウンターパート
①MIMRA 漁船の船外機の修理・修復及び技術移転
投
入
海洋資源局エンジニア:2 名
(2013 年 1 月 29 日~2 月 1 日、2 月 11 日~22 日)
②MIMRA 漁獲物運搬船の修理・修復及び技術移転
海洋資源局エンジニア:2 名
(2013 年 1 月 21 日~25 日、2 月 4 日~8 日、2 月 18 日~22 日)
③MIMRA 製氷機の修理・修復及び技術移転
海洋資源局エンジニア:2 名
(2012 年 10 月 17 日~30 日、2013 年 1 月 28 日~3 月 4 日)
④MIMRA ワークショップの機能強化に関する技術移転
海洋資源局エンジニア:2 名
(2012 年 11 月 29 日・30 日、2013 年 2 月 22 日・28 日)
⑤MIMRA 漁船船外機の修理・修復講習会に関する助言
海洋資源局エンジニア:2 名
(2013 年 1 月 29 日~2 月 1 日及び 2 月 11~22 日)
・プロジェクト関連予算、土地、施設等
海洋資源局における執務室及び電気・水道・電話(国内回線)の無償
提供
iv
評
価
事
項
妥 当 性
1. プロジェクトは、相手国の開発計画・ニーズに合致していたか
プロジェクトは、マーシャルの水産振興政策に沿った活動であり、同国、対象地域のニ
ーズに合致していた。
2. 環境に対する配慮はなされていたか
冷凍・冷蔵機器類の冷媒は回収器を用いて再利用している。また、船舶機関等の廃油及
び機械の廃棄部品は専用の施設で処理し、周囲の環境を汚染しないように配慮して取り扱
われた。
3. 水産資源に対する配慮はなされていたか
本プロジェクトは、水産関連施設の機能回復を図り、その運営・管理に対する助言を行
うものである。
今回の対象施設は、製氷・冷蔵施設、運搬船であり、周辺水域の水産資源に対する直接
の負荷を与えるものではない。
効 率 性
1. 資機材、専門家の投入における効率性
資機材、施設、専門家は実施計画どおりに投入され、プロジェクト活動は計画期間内に
完了するなど、期待された機能、能力を発揮している。
2. 技術移転の効率性
巡回整備のカウンターパートは、エンジニアとしての経験も長く、これまでの財団プロ
ジェクトにも継続して関わっているため、専門家はその技術水準を熟知しており、それに
合わせた内容の指導を行い、移転技術はカウンターパートの習得水準に適合していた。
v
目標達成度
1. プロジェクト目標の達成度
(1) 巡回指導
水産関連施設の機能回復及び必要な技術移転が計画どおり行われ、目標は達成された。
また、技術移転によるカウンターパートの基礎知識及び技術レベルは年々向上して
おり、日常の運転、点検に重点を置いた指導により、技術移転は順調に行われた。
(2) 漁業普及
ジャルート水産基地施設の管理・運営に対して適宜助言を行い、同基地の業務が活
性化した。
2. プロジェクト活動項目及び期待された成果の達成度
(1) 巡回指導
① MIMRA 漁船の船外機の修理・修復及び技術移転
下記の作業を実施したことにより漁船の機能が回復し、また船外機、船体の
維持管理・修理技術が向上した。
 船外機 2 基(実習用と予備機)の提供
 オペレーターに対する船外機の取扱いに関する講習
 船体の修理実習
② MIMRA 漁獲物運搬船の修理・修復及び技術移転
下記の作業を実施したことにより漁船の機能が回復し、また漁獲物運搬船の
維持管理・修理技術が向上した。
 Lentanir 号
・キャプスタン、機関室ファン等の交換
・過給機の交換
 Lain Tok 号
・船体補修
・インタークーラーの掃除
・その他主機関の点検整備、必要部品の交換
・GPS、居住区掃気ファンの交換
・主機関の点検整備、必要部品の交換
 Timur 号、Jebro 号及び Jolok 号
・運転状況の確認
・予備品等の補充
vi
③ MIMRA 製氷機の修理・修復及び技術移転
下記の作業を実施したことにより
製氷施設の安定した稼働を確保し、
安定的に氷が供給できるようにな
り、漁獲物の鮮度保持が可能となり、
各施設の維持管理・修理技術が向上
した。
 ウリガ製氷機の主配電盤の設
置及び配線
 ジャルート製氷機のオイル交換等
点検整備及び冷媒漏えい箇所の
特定
 ウォッジェ製氷機のオイル交
製氷機の点検
換等点検整備・KAFMC 製氷機の
貯氷庫の交換
④ MIMRA ワークショップの機能強化に関する技術移転
下記の作業を実施したことにより、同ワークショップの水産施設に対する維
持管理能力が向上した。
 ピックアップトラップの提供
 年間及び長期的な整備計画の策定
(2) 漁業普及
MIMRA 漁船船外機の修理・修復講習会に関する助言
下記の活動により MIMRA 技術者の船外機の適正な保守点検方法、軽微な故障
診断方法、船体の修理方法に関するオペレーターへの指導技術が向上した。
 MIMRA 技術者による船外機の適正な保守点検方法、軽微な故障診断方法、
船体の修理方法〔上記(1)-①と併せ〕についての離島オペレーターへの技
術指導
 専門家による MIMRA 技術者の説明方法、指導方法についての助言
インパクト
1. プロジェクト上位目標に対するインパクト
本プロジェクトは、漁業活動が行われている離島や地域を対象とし、既存水産関連施設の機
能回復、維持・管理及びその運営改善を支援するもので、地域沿岸漁業にとって重要である。
本プロジェクトを実施することで、漁業生産基盤が整備され、関連組織の自立化が促進
され漁業振興に一定の効果が見込まれる。
vii
2. 相手国あるいは対象地域に与える その他のインパクト
本プロジェクトの対象施設は、それぞれの対象地域において重要な水産施設である。
これら施設を修理・修復し、あるいは管理・運営の改善が図られたことには、対象地域
での水産業をはじめとする地域経済の活性化につながる効果等が見込まれる。
自立発展性
1. カウンターパート及び供与資機材における有効活用の見込み
対象施設は、離島から運搬されてくる水産物の安定供給に必要であり、それを維持・管
理するための技術を習得したカウンターパート及び供与された資機材は、プロジェクト終
了後も有効に活用される見込みである。
2. プロジェクト効果の持続の見込み
プロジェクト対象は、海洋資源局及び各離島・地域の要となる水産施設である。
プロジェクトの実施によりこれらの施設等は機能を回復し、専門家の指導を受けたカウ
ンターパートが必要な点検整備を行うことで、継続的に稼働し、その本来の機能が持続さ
れる見込みである。
3. その他(自立発展性に影響を与えると考えられる要因等)
カウンターパートの技術力及び所属する政府関連組織等の維持管理に対する意識は、
徐々にではあるが高まっており、自立発展に貢献するものと思われる。
以上
viii
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