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第 5 回 ピロリ菌感染を考慮した 胃がん検診研究会
第5回 ピロリ菌感染を考慮した 胃がん検診研究会 第5回 ピロリ菌 感 染 を 考 慮した 胃 が ん 検 診 研 究 会 http://hp-igan-kenshin.kenkyuukai.jp/ 会 期:2014年8月9日(土)・10日(日) 会 場:<8月9日土曜日 パネルディスカッション> 北海道大学学術交流会館 2階 講堂 〒060-0811 北海道札幌市北区北8条西5丁目 <8月10日日曜日 北海道地区研修会> 札幌厚生病院 新館3階 大会議室 〒060-0033 北海道札幌市中央区北3条東8丁目5番地 当番世話人:北海道大学大学院医学研究科がん予防内科 間部 克裕 北海道対がん協会札幌がん検診センター 北本 哲也 <運営事務局>マイス株式会社 〒060-0041 札幌市中央区大通東7丁目18-2 EAST7ビル7F TEL:011-280-8008 FAX:011-280-4000 E-mail: [email protected] 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 ご挨拶 この度、第5回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会を開催する運びとなりました。会場のご 配慮頂いた第23回消化器疾患病態治療研究会長の加藤元嗣先生に深謝致します。 本邦における胃がんの99%以上はピロリ菌感染が原因であり、健常者に対する除菌治療の胃が ん予防効果が示されました。胃がん対策がピロリ菌対策へとシフトする中、胃がん検診の役割、あり 方はどうなるのでしょうか。 “胃がん検診”は症状のないピロリ菌感染胃炎を診断し医療に誘導する入口、除菌後の早期発見 (出口)を担います。すなわち胃がん対策=ピロリ菌対策の入口と出口を支える根幹となます。第4 回研究会では、胃X線検診、内視鏡検診ともに背景粘膜診断、胃炎診断を行うべき、というコンセン サスが得られました。第5回研究会では、対策型検診、任意型健診、胃X線、内視鏡、ABC分類そ れぞれの現状と課題を踏まえて、今後の胃がん検診システムの構築のために必要なデータ、前向 き研究について話し合い、コンセンサスを得ることを目的としています。皆様の参加、活発な議論の ほど、宜しくお願い致します。 第5回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 当番世話人 北海道大学大学院医学研究科がん予防内科 間部 克裕 近年背景粘膜診断が脚光を浴びている様です。大部分の胃がんが、ピロリ菌感染で引き起こされ ると判明したからでしょうか。実際胃がん検診の現場では、色々な胃粘膜表面のX線所見を感じ取 れます。そうなりますと当然ピロリ菌感染胃粘膜のX像所見が気になってきます。 確かに現在の胃がんの対策型検診においては、胃がんリスク評価が異なる対象が混在している のが現状です。さらに平成25年2月に慢性胃炎でのピロリ菌除菌が保険適用され、今後益々除菌 群も入り背景粘膜診断は、混迷化されるのが予想されます。今回は、研修会を通して未感染、既感 染、現感染と思われる背景粘膜診断のX線所見のコンセンサスが得られればと思いますが、北海道 地区研修会は初回ですので少なくても未感染と思われるX線所見のコンセンサスが得られれば、十 分かもしれません。 演者の皆さん、会場の皆さんからご意見を頂き胃がん対策型検診の明日につながる議論ができ れば幸いかと考えております。皆様方の多数のご参加をお待ちしております。又、この様な北海道 地区研修会の機会を与えて頂いた、中島 滋美世話人代表並びに当番世話人間部 克裕先生に 感謝を申し上げます。 第5回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 北海道地区研修会 当番世話人 北海道対がん協会札幌がん検診センター 北本 哲也 ̶1̶ 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 交通案内 8 月 9 日( 土 )会 場 ↑ 地下鉄 北12条駅 8月9日 パネルディスカッション 北海道大学学術交流会館 北海道大学 北大正門 北9条西4丁目 東横イン 北8条西4丁目 札幌アスペンホテル ローソン セブンイレブン サンクス ヨドバシカメラ 北口広場 北口 (北海道大学方面) 札幌駅 大丸 JRタワー 南口 (大通公園方面) 南口広場 ホテル日航札幌 ビックカメラ 8月9日土曜日 パネルディスカッション 北海道大学学術交流会館 2階 講堂 〒060-0811 北海道札幌市北区北8条西5丁目 TEL: 011-706-2141 <アクセス> JR 札幌駅 北口から徒歩10分 地下鉄 南北線さっぽろ駅から徒歩10分、東豊線さっぽろ駅から徒歩15分 地下鉄 南北線北12条駅から徒歩10分 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 交通案内 8 月 1 0 日( 日 )会 場 JR札幌駅 サッポロビール ホクレン ホームセンター ホテル日航札幌 アリオ札幌 ビックカメラ 東急 北3条通 東8丁目通 石狩街道 道庁 JR苗穂駅 サッポロ ファクトリー 8月10日 北海道地区研修会 札幌厚生病院 国道12号線 大通駅 豊平川 バスセンター前駅 8月10日日曜日 北海道地区研修会 札幌厚生病院 新館3階 大会議室 〒060-0033 北海道札幌市中央区北3条東8丁目5番地 TEL: 011-261-5331 <アクセス> 1)札幌駅よりタクシー利用の場合 1,000円前後 2)自動車利用の場合は病院駐車場(有料)がございます。 3)最寄り駅 JR苗穂駅 徒歩8分 地下鉄東西線 バスセンター前駅 徒歩13分 正面玄関 北 3 条通り 駐車場入口 旧棟 駐車場への通路 正面玄関 新館入口 北 3 条通り側 エレベーターで3階へ 新館 病院駐車場 正面玄関側(北 3 条通り側から) お越しの場合は、正面向かって左手の 駐車場への通路を利用して新館入口まで お越しください。 旧棟入口 線路 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 参 加 者・演 者・座 長・司 会 の 皆 様 へ の お 願 い 1. 参加の皆様へ 1) 事務局よりお送りしております参加証を受付にてご提示ください。 2) 参加費について ◇8月9日から参加の場合 医師 4,000円、コメディカル 2,000円 ※8月9日から参加の皆様は第23回消化器疾患病態治療研究会にも参加頂くようお願いいたします。第5回 ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会の参加費1,000円を入金済の方は差額を当日現金にて申し受 けます。上記参加費で10日のプログラムも参加いただけます。 ◇8月10日のみ参加の場合 1,000円(会員、非会員共通) 3) 会場内ではネームカードを必ず着用してください。 2.演者の方へ 1) 発表はPCプレゼンテーションのみとします。 2) 形式はご自身のノートパソコンを使用する場合と学会事務局にて用意したノートパソコンを使用す る場合の2通りがございます。 3) ご発表のセッション開始前に次演者席にお着きください。 【ご自身のノートパソコンを使用される場合】 □PCの電源アダプタをご持参ください。 □パソコンはスリープしないようにあらかじめ設定しておいてください。 ワイド液晶画面のノートパソコ ンをご使用の場合、画面が一部きれることがありますので、解像度を1,024×768にしておいてくだ さい。 □Mini D-sub15ピンコネクタが接続できることをあらかじめご確認ください。パソコンによっては専用 の変換コネクタが必要ですので、その場合は必ずご持参ください。 □万一に備えて、USB メモリにてバックアップファイルをお持ちください。 □データは、OS に標準的に搭載されているフォントを使用してください。 □ご発表の際は、動作の確認のうえ、会場内のPC操作台にPCをお持ちください。 【学会事務局のノートパソコンを使用される場合】 □データは、USBメモリにてお持ちください。念のため、別のUSBメモリに発表用のファイルを保存い ただくなど、バックアップファイルを必ずご用意ください。 □CD-Rでのデータ持参も可能ですが、必ずCD-Rにデータを書き込みした端末とは別のPCでデー タが保存されているかを確認のうえお持ちください。 □データは、OS に標準的に搭載されているフォントを使用してください。 □発表用スライドに動画を用いている場合は、発表用スライドと同様、USBメモリの同フォルダ内に動 画ファイルも必ずご用意ください。(動画ファイルをご用意いただいていない場合は、正常に動作し ないことがあります。) □発表スライドの動作確認につきましては、会場のPC受付にてご確認ください。 3.座長・司会の方へ 1) ご担当セッションの5分前までに次座長席にお着きください。 2) 時間厳守の進行にご協力ください。 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 日程表 8:00 9:00 10:00 11:00 9日(土)北大学術交流会館 2階講堂 8:30−15:35 第23回消化器疾患病態治療研究会 プログラム ※8月9日から参加の方はこちらの プログラムにもご出席ください。 <参加費> 医師 4,000円 コメディカル 2,000円 上記には第5回ピロリ菌感染を考慮した 胃がん検診研究会参加費1,000円が含ま れております。入金済みの方は当日差額 をお支払いいただきます。 12:00 15:00 16:00 ― 18:30 パネルディスカッション 「ピロリ菌除菌時代の胃がん検診方法の 確立に向けた前向き研究」 18:00 19:00 20:00 9:25 ―10:25 基調講演 「今でしょ! 背景胃粘膜診断」 10:25 ―10:50 背景粘膜診断ミニテスト 10:55 ―11:45 ミニワークショップ 「ピロリ菌感染を考慮したX線を用いた胃がん 検診を考える∼除菌時代の胃がん検診を視野に 入れながら∼」 13:00 ―13:05 閉会の辞 14:00 17:00 9:00 ―9:05 開会の辞 9:05 ―9:25 背景粘膜診断ミニテスト 11:55 ―13:00 ミニランチョンセミナー 背景粘膜を加味した胃がん症例検討会 総 括 13:00 16:00 10日(日)札幌厚生病院 新館3階大会議室 18:40 ― 19:10(1階 第6会議室にて) 世話人会 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 プログラム 2014 年 8 月 9 日(土)北海道大学学術交流会館 2 階 講堂 16:00 ー 18:30 パネルディスカッション 「ピロリ菌除菌時代の胃がん検診方法の確立に向けた前向き研究」 司会:北海道大学大学院医学研究科がん予防内科 間部 克裕 大泉胃腸科内科クリニック 大泉 晴史 コメンテーター:茨城県メディカルセンター 斎藤 洋子 埼玉医科大学病院 消化器内科・肝臓内科 岡 政志 P–1 胃 X 線診断における胃炎診断:コンピューター画像診断支援装置 北海道大学大学院医学研究科がん予防内科 間部 克裕 P–2(1) 「ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診」? ピロリ菌感染を考慮した「胃がん検診」? 「胃がん検診」 においてピロリ菌感染を考慮する? ピロリ菌感染を考慮した、 だけ? NPO 日本胃がん予知診断治療研究機構 笹島 雅彦 P–2(2) H.pylori 感染を考慮した胃がん検診における ABC 分類の有用性と問題点 大泉胃腸科内科クリニック 大泉 晴史 P–3(1) X 線検診の現状と今後の課題 徳島県総合検診センター 青木 利佳 P–3(2) 胃 X 線検診における前向き研究のポリシーと具体案 地域医療推進機構滋賀病院 総合診療科 中島 滋美 P–4 内視鏡検診における前向き研究の課題 加古川西市民病院診療部 寺尾 秀一 P–5 Helicobacter pylori 感染胃炎を考慮した任意型胃がん検診 KKR 高松病院健康医学センター 安田 貢 P–6 対策型検診の立場から 宮城県対がん協会がん検診センター 加藤 勝章 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 2014 年 8 月 10 日(日)札幌厚生病院 新館 3 階 大会議室 ― 北海道地区研修会 ― 9:00 ー 9:05 開会の辞 公財北海道労働保健管理協会 小牟田 学 挨 拶 北海道大学大学院医学研究科がん予防内科 間部 克裕 9:05 ー 9:25 ① 背景粘膜診断ミニテスト 司会:地域医療推進機構滋賀病院 総合診療科 中島 滋美 JA 北海道厚生連倶知安厚生病院 戸田 康文 9:25 ー 10:25 ② 基調講演 「今でしょ ! 背景胃粘膜診断」 司会:北海道大学大学院医学研究科がん予防内科 間部 克裕 演者:地域医療推進機構滋賀病院 総合診療科 中島 滋美 10:25 ー 10:50 ③ 背景粘膜診断ミニテスト 10:55 ー 11:45 ④ ミニワークショップ 「ピロリ菌感染を考慮したX線を用いた胃がん検診を考える 〜除菌時代の胃がん検診を視野に入れながら〜」 司会:JA 北海道厚生連札幌厚生病院 萩原 武 JA 北海道厚生連札幌厚生病院 山田 泰司 指定発表:JA 北海道厚生連倶知安厚生病院 戸田 康文 公財北海道対がん協会札幌がん検診センター 南川 浩二 JA 北海道厚生連札幌厚生病院 和田 智文 ※ FPD 検出器使用基準撮影法2での X 線画像評価 ミニテスト使用 QR コード <接続先> http://wevo.withzeal.net/140810/ ミニテストではスマートフォン、携帯電話を利用して集計をとります。 その際に上記サイトへアクセスをお願いいたします。 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 ミニランチョンセミナー 司会:船員保険北海道健康管理センター 高橋 伸之 11:55 ー 12:50 ⑤ 背景粘膜を加味した胃がん症例検討会 症 例 提 示:JA 北海道厚生連札幌厚生病院 萩原 武 コメンテーター:JA 北海道厚生連札幌厚生病院 萩原 武 北海道大学大学院医学研究科がん予防内科 間部 克裕 12:50 ー 13:00 ⑥ 総括 地域医療推進機構滋賀病院 総合診療科 中島 滋美 公財北海道対がん協会札幌がん検診センター 北本 哲也 集計技術:提供船員保険北海道健康管理センター 杉本 芳則 13:00 ー 13:05 閉会の辞 船員保険北海道健康管理センター 杉沢 猛 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 パネルディスカッション P-1 胃 X 線診断における胃炎診断:コンピューター画像診断支援装置 間部 克裕 1)、宮本 秀一 2 )、吉井 新二 3)、石原 賢太 4)、小川 貴弘 4)、長谷山 美紀 4)、 中島 滋美 5)、加藤 元嗣 2 )、浅香 正博 1) 1)北海道大学大学院医学研究科 がん予防内科 2)北海道大学病院 光学医療診療部 3)NTT 東日本札幌病院 消化器内科 4)北海道大学大学院 院情報科学研究科 メディアネットワーク専攻 5)地域医療機能推進機構 滋賀病院 背景:ピロリ菌感染が胃がんの原因であり、除菌治療により胃がん発生が抑制されることが明らか になった。国の胃がん対策は従来の早期発見、早期治療に加え、除菌治療による胃がん予防を進め る方向性が示されている。 現状と課題:ピロリ菌感染状態により胃がんリスクは大きく異なるため、胃 X 線、内視鏡共にピロ リ菌感染状態を判定して対応する必要がある。しかし、現状では背景粘膜診断によるピロリ菌感染 状態の診断方法や事後指導について確立されておらず、全国的な普及も図られていない。 除菌時代に求められる胃がん検診: 1960 年代以降に出生した世代はピロリ菌感染率が 10 − 20% 代と低くこの年代の胃がん罹患率は急激に減少している。40 歳以上の全員を対象に行う逐年検診で はなく、リスクに応じた検診システムが求められる。また、保険診療では症状等で内視鏡検査を受 け胃炎の診断が成された場合にのみピロリ菌の診断と除菌治療が行える。胃がん検診において胃炎 診断を行えば、ピロリ菌に感染しているが症状のない無症状の健常者を医療に誘導することが可能 となり、除菌後には本来の早期発見の役割を果たすことが出来る。また、ピロリ菌未感染者は任意 型検診に誘導することが可能となる。 前向き研究:リスクに応じた胃がん検診を行うため、ピロリ菌感染状態についての診断基準の確立 と普及が必要である。一方、胃 X 線検診は読影医の減少や高齢化など課題も多く、コンピューター 診断支援、CAD の導入が期待される。北海道大学における医工連携により胃 X 線画像の CAD 装置 を開発し、感度、特異度はそれぞれ 87%、82%であった。胃 X 線検診では対策型、任意型に対し てそれぞれ基準撮影法1、2により行われているが、実際には使用するバリウム濃度や発泡剤の量、 撮影機器の違い等が異なっている。今回開発した胃 X 線 CAD 装置が普遍的に使用可能かどうかを検 証し、精度を上げるため、全国複数カ所の施設と共同で検討を行う。具体的には内視鏡画像、血清 抗体、除菌歴などピロリ菌感染状態が判明している症例の胃 X 線造影検査を CAD によって自動判定 し、その精度を検証する。製品化を目指し 2014 年度に一定の効果を示したい。 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 パネルディスカッション P-2 (1) 「ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診」? ピロリ菌感染を考慮した「胃がん検診」? 「胃がん検診」においてピロリ菌感染を考慮する? ピロリ菌感染を考慮した、だけ? 笹島 雅彦 NPO 日本胃がん予知診断治療研究機構 本研究会名はたいへん悩ましいのである。 「ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診」であれば、ピロリ菌感染診断を行うことにより構築される 新しい胃がん検診システムとなり、このシステムの有効性評価、すなわち死亡率減少効果を問わな なくてはならなくなる。 ピロリ菌感染を考慮した「胃がん検診」ならば、すでに有効性評価の得られている「胃がん検診」を、 ピロリ菌感染を考慮するという工夫で、効率化したり、受診率を向上させるといった、オペレーショ ンの手法を考えることになる。 「胃がん検診」においてピロリ菌感染を考慮する、ということであれば、胃がん検診で得られた情 報から、(おまけで)ピロリ菌感染も考慮する、ということになる。 どの立場をとるかで、今回のテーマである「ピロリ菌除菌時代の胃がん検診方法確立に向けた前 向き研究」の方向性は変わってくる。 ピロリ菌感染を考慮する、を検診にとりいれることは、実はとても難しい。ピロリ菌感染を考慮 することで得られるメリットが、まだ明確ではないからである。 本会で 2 年にわたり続いた、ABC「検診」を検診と呼ぶか否かの議論の根源もそこにある。 我々が 20 年来携わってきた「ペプシノゲン法」、「胃がんリスク検診」は、ピロリ菌感染を考慮し た・・・だけ、の手法なので、いまだ正当な評価を得られていない。 どの立場をとるにせよ、まずは「ピロリ菌感染を考慮すること」を、どう評価するかが、今回の 議論の出発点になるとおもいます。 我々が高崎市で頓挫した「ペプシノゲン法による胃がん死亡率減少効果」の研究、そして性懲り もなく夢見ている目黒区での「胃がんリスク検診による死亡率減少効果」の研究についてお話する ことが、他山の石となれば、とおもっております。 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 パネルディスカッション P-2 (2) H.pylori 感染を考慮した胃がん検診における ABC 分類の有用性と問題点 大泉 晴史 1)、吉澤 和哉 2) 1)大泉胃腸科内科クリニック 2)山形県立中央病院 内科 <目的> ABC 分類の有用性と A 群の問題点を明らかにし、今後の胃がん検診戦略に寄与する。 <検討項目> 1)山形市一般住民検診で行なったX線、ABC 分類併用での成績と X 線所見からみた A 群に混在す る胃粘膜萎縮のある偽 A 群の頻度の検討 2)A 群 (D 群 ) における H.p 抗体陰性高値例の頻度の検討 3)Hp 抗体陰性高値例 (3 ≦ Hp 抗体値 <10U/mL) の UBT による Hp 陽性率の検討 4)発見胃がんの ABC 分類からみた A 群の検討 ABC 分類の使用キット;Hp 抗体は E プレート〝栄研〟カットオフ 10U/ml 以上陽性。PG 法はオー トペプシノゲン BML-2G(ラテックス凝集比濁法)、PGI ≦ 70ng/ml、PGI/ Ⅱ比≦ 3.0 を陽性とした。 <方法と結果> 1)a ;2010 年 6 月~ 2011 年 10 月の期間で山形市一般住民検診を受けた 3,517 名に ABC 分類も 併せて実施し、X 線要精検者と BCD 群に内視鏡検査を勧奨した。胃がん発見は A 群で0、BCD 群で 21 例、うち 15 例が X 線で異常を指摘されず ABC 分類を契機に発見された。また、早期がん 16 例 中 13 例が ABC 分類が契機となっていた。 b;採血結果を伏せて、A 群の X 線画像の胃小区と雛壁を読影し、非萎縮群、萎縮群、判断困難な中 間群の 3 郡に分類した。読影結果では萎縮群が 21.5%( 非萎縮群 62.7%、中間群 15.8%) みられた。 2)2012 年 4 月~ 2014 年 4 月の期間、山形市医師会健診センターで胃 X 線検診と ABC 分類を同 時に受けた 6,405 例について検討した。A 群は 3,445 名 (53.8%) であり、その Hp 抗体価が 3.0 ~ 9.9U/ml の陰性高値例が 15.3%(526 名 ) 存在した。D 群は 2.2%(139 名 ) と少ないが、Hp 陰性高値 例は 69.1%(96 名 ) と高率であった。 3)2013 年 7 月~ 2014 年 4 月の期間の当院での A 群 D 群における Hp 抗体陰性高値例は 72 例であっ たが、全例に UBT での再検を行なったところ、Hp 陽性が 41.7%(30 例 ) と高率にみられた。 4)2011 年 6 月~ 2014 年 2 月に当院で発見した胃がん 89 例の ABC 分類で 12 例 (13.5%) が A 群 に分類された。発見時の内視鏡検査では全例 C3 ~ O3 の萎縮を認めていた。Hp 抗体価は 8 例が 3U/ml 未満、陰性高値例が 4 例 (4U/ml 2 例、6U/ml 1 例、9U/ml 1 例 ) であったが、UBT による 再検で 9U/ml の 1 例のみが 26.3‰と現感染例であった。従って 12 例の中 11 例が自然排菌例、1 例が B1 という結果となった。 <結語> ・胃がん検診において ABC 分類は高リスク群の集約に極めて有用であるが、A 群の中に約 20% 萎縮 例が混在するため、A 群でも一度は画像検査が必要である。また、Hp 抗体陰性高値例 (D 群も含め ) に対しては、画像検査とともに、正確な Hp 感染診断と陽性の場合の除菌治療を勧奨すべきである。 ・BC 群は画像検査後、除菌を行い、D 群、E 群と同様、全例長期にわたる定期的な内視鏡検査が望 まれるが、内視鏡検査の capacity のない地域では、Hp 感染読影診断スキルの普及を図りながら X 線検診に組み入れた follow-up system を構築する必要がある。 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 パネルディスカッション P-3 (1) X 線検診の現状と今後の課題 青木 利佳 徳島県総合健診センター Helicobacter pylori(HP) 感染者に対する除菌療法が保険適応となり、国民総除菌時代が訪れつつあ る。一方、HP 未感染者からの胃がん発生の頻度については極めて低率ということは既に報告されて いる。 現在、胃 X 線検診読影時に背景胃粘膜診断を施行している施設が増えつつあり、HP 感染状況の判 定が、ある程度なされていると推測される。また、これまでの当研究会でも、HP 未感染相当胃とそ れ以外(HP 現感染および既感染群)についての胃 X 線画像による判別方法について、皺襞の性状や 分布、胃小区模様を見て行うという点でコンセンサスが得られてきた。しかし、いわゆる中間型と 未感染相当胃の境界については、あいまいな点が残ると感じている。この境界を明らかに示すことは、 未感染相当胃の中に萎縮の進行した既感染群を混入させないという重要な課題である。当研究会に おいて、早急に X 線画像診断による HP 感染状況の診断基準を作成し、多施設においてその基準に よる読影を行い HP 感染状況が一致するかどうかの検証が望まれる。その基準に基づき、HP 未感染 相当胃からの胃がん発生の頻度が低率であるという多施設共同前向き研究を行う必要があると考え ている。 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 パネルディスカッション P-3 (2) 胃 X 線検診における前向き研究のポリシーと具体案 中島 滋美 地域医療推進機構滋賀病院 総合診療科 厚労省が唯一胃がん検診として認めている胃 X 線検診は、とくに都市部での受診率が低く、全国 平均では 10% 以下で厚労省の目標としている 50% に達していない。内視鏡検診を含めても、胃の 検診受診率は全国平均で約 30% である。そこで胃の検診を受けていない残りの約 7 割に画像検査を 受けてもらうために ABC 検診やヘリコバクター・ピロリ(Hp)検診が期待されている。また、Hp 感染者が減少してきている現在、胃がんリスクが低いと考えられる Hp 未感染者の胃がん検診間隔を 延ばしたり、対象者から除外することも考慮しなければならない。 そこで、胃 X 線検診において必要なエビデンスは、(1)胃 X 線検査で Hp 未感染と同等の胃粘膜 を保有する人(X 線正常胃)は、どのくらい胃がんリスクが低いのか?(2)X 線正常胃と診断し た人のうち、未感染者、既感染者、現感染者の割合はどのくらいか?(3)X 線正常胃の診断一致 率はどのくらいか?(4)診断一致率の高い X 線正常胃の診断基準と典型画像は何か?(5)X 線 正常胃の中で、胃がんリスクの異なる亜分類があるのか?(6)どのような画像保有者を胃がん検 診の対象者から外せるか?(7)低リスク者を対象者から外すためには X 線正常胃以外に Hp 抗体 価などの検査が必要か?ということである。 以上より、前向き研究として以下のステップを提案する。ステップ1:背景胃粘膜を N:X 線正常胃、 I:判定保留(Indeterminate)、H:慢性胃炎(明らかに X 線正常胃でないもの= Hp 感染歴あり疑い) に分類し(NIH 分類)、各施設から提出された症例を複数の読影者が読影し、診断一致率を調べる。 ステップ2:高い一致率で背景胃粘膜 N と診断するための診断基準と典型的画像を決定し、さらに 多くの読影者により診断一致率が高いことを確認する。ステップ3:一致率が高かった読影者から 背景胃粘膜別に症例を登録してもらい、一定期間後に胃がん発生率と死亡率を調査し、背景胃粘膜 N の胃がんリスクがどの程度低いかを調べる。ステップ4:背景胃粘膜 N を、除菌既往歴のある人、 血清 Hp 抗体価が高い人(E プレート栄研 H. ピロリ抗体の場合 3.0U/mL 以上)、十二指腸潰瘍瘢痕 のある人、胃底腺ポリープのある人、ひだの発達した人、その他などで亜分類し、亜分類ごとの胃 がんリスクをサブ解析する。ステップ5:以上の結果から、背景胃粘膜 N の人の胃がん検診間隔を どの程度まで伸ばせるか、あるいはどの亜分類の人を対象者から除外できるか、画像だけで除外で きるのか(Hp 検査を併用すべきか)などを明らかにし、これからの胃がん検診のあるべき方法を提 案する。 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 パネルディスカッション P-4 内視鏡検診における前向き研究の課題 寺尾 秀一 加古川西市民病院消化器内科 ピロリ菌除菌時代の胃がん検診方法の一つとしての内視鏡検診の役割を見直し、未解決な課題を 明らかにするための前向き研究を提案する。 新しい内視鏡検診の果たすべき役割とは、1 ) 胃癌の早期発見、2) Hpylori( 以下 Hp) 感染状態の診 断、3) 発癌リスクの予測に基づく階層化と管理区分の設定、この3つであると考える。 1) 胃癌の早期発見:Hp 感染状態を正しく診断することを前提とした本研究では、噴門部癌や胃底 腺型胃癌など Hp 未感染胃癌の実像・頻度を検証することも課題である。 2)Hp 感染状態の診断:「Hp 未感染者の検診からの除外、Hp 現感染者への除菌指導、Hp 既感染 者への定期画像検査への振り分け」という異なった3つの指導区分を明確に示すための基礎である。 そのためには、内視鏡的な Hp 診断能 ( 未、現、既 ) を検証する必要がある。とりわけ現と既の鑑別 が重要でありかつ問題を孕んでいる。現と既の正しい鑑別のためには、萎縮性所見ではなく炎症性 所見とその除菌後変化を診断すること、特に除菌後の経過時間に左右されす頻度・感度・特異度に 優れた指標を用いることが重要である。診断能向上のためには内視鏡読影訓練の場と、診断困難例 の中央集積の場を会として設ける。なお Hp 診断基準のゴールドスタンダードは尿素呼気試験とし、 同意の得られた例では胃体中位小彎と前庭部大彎の 2 か所生検による updated Sydney System によ る組織評価も加えることとしたい。 3) 発癌リスクの予測に基づく階層化と管理区分の設定:リスク評価は、共通の尺度とスコア化と いう面から現在策定中の京都分類を用いる。リスク評価上の重要で未解決な問題は、萎縮と I.M. の 内視鏡評価である。2) の現と既の鑑別の問題点と合わせて当日具体例を供覧します。なお管理区分 の設定後の経年フォローは、Ba 健診との相互乗り入れも可とする。 なお、最も重要なのは管理区分設定後のフォロー体制の構築であるがこれは、ABC 健診および Ba 検 診と統合した全体のシステムの議論に委ねたい。 以上の内容を具体化した一つの案を当日提示しますのでご検討をよろしくお願いします。 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 パネルディスカッション P-5 Helicobacter pylori 感染胃炎を考慮した任意型胃がん検診 安田 貢 KKR 高松病院 人間ドックセンター Helicobacter pylori(Hp) 感染胃炎の保険適応追加により,任意型胃がん検診においても Hp 感染状 態の判定と除菌に関する適切な情報提供が重視されるようになった。Hp 感染状態には現感染,既 感染,未感染があり,現感染では除菌治療と経過観察,既感染では主に逐年検診指導が求められる。 従って今後は X 線や内視鏡による Hp 感染状態の標準的判定基準の確立が急務と言えよう。とくに 任意型検診では,血清 Hp 抗体価や pepsinogen(PG) 値の検体検査が実施可能であることから,こ れらと画像所見を組み合わせた感染状態の判定方法の標準化が望まれる。今後の検討課題として は,胃がんリスク別の内視鏡所見を決定すること,さらに画像所見と検体検査等を用いた Hp 感染 状態の判定法が適切であるかどうかの検証である。そのために必要な検査は,尿素呼気試験あるい は便中抗原,組織学的検索等と考えられる。 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 パネルディスカッション P-6 対策型検診の立場から 加藤 勝章 宮城県対がん協会がん検診センター ピロリ菌除菌時代にあって対策型胃がん検診として考えなければならない課題として、胃がん低リ スクであるピロリ菌未感染者に対する逐年検診の必要性があげられる。対策型検診において低リス ク群を設定し逐年検診の対象から除外するためには、コンセンサスの得られた方法でエビデンスを 示す必要がある。低リスク群を設定するには ABC リスク検診による胃がんリスク評価(またはピロ リ菌感染検査単独)、画像検査による胃炎・萎縮の診断、除菌歴の把握が必要である。しかしながら、 ABC リスク検診の A 群には偽 A 群の混入が避けられないため血液検査のみで低リスクと判定するの は問題があり、胃 X 線検査や内視鏡検査による胃炎・萎縮診断にも判定困難例が存在する。もちろ ん、問診による除菌歴の把握には限界がある。従って、対策型検診から除外することを想定して低 リスク群を設定するならば、その判定基準は慎重に策定しなければならない。宮城県対がん協会で は平成 26 年度から対策型胃がん検診の胃 X 線読影区分を変更し、胃炎・萎縮のないピロリ菌未感 染相当胃と慢性胃炎を区別して診断することとし、平成 27 年度対策分から除菌歴の問診などとと もにデータベース化する予定でいる。さらに、県内に ABC リスク検診と胃 X 線検診を併用して実施 しデータを一括管理してコール・リコールを行うモデル地区を設定している。現時点では準備のた めの準備という段階だが、地域がん登録とも連携し、がん死亡や罹患、また、検診の感度・特異度、 がん発見率や費用対効果などを指標に、低リスク群が対策型検診から除外可能か否か、また、何が 検診中止の判断材料となり得るか、さらに、除菌群に対する対策型検診の効果についても検討でき るようデータベースの整備を進める予定である。 第 5 回ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 ミニワークショップ 司会のことば ピロリ菌感染を考慮したX線を用いた胃がん検診を考える 〜除菌時代の胃がん検診を視野に入れながら〜 司会:萩原 武 JA 北海道厚生連札幌厚生病院 山田 泰司 JA 北海道厚生連札幌厚生病院 ピロリ菌除菌療法が保険適用になった現在、胃X線検査でも背景粘膜を評価する動きがあり、 アトラスの作成や画像を分析した報告等が散見されつつあります。 そこで今回のミニワ-クショップでは、日々、胃X線検査に従事している診療放射線技師の 方々にピロリ菌の未感染、現感染、既感染といった背景粘膜の評価をおこなっていただき、そ の評価の傾向や問題点等を確認しながら、除菌時代の胃X線による胃がん検診を視野に入れな がら、現場からの声をお伝えできればと考えております。 ―ピロリ菌 感 染 を 考 慮した 胃 が ん 検 診 研 究 会 入 会 のご 案 内 ― このたびは、本会にご興味をもっていただき、誠にありがとうございます。入会の手続き(入会金支払) は、下記のホームページからのみ可能です。 入会金:1,000円 年会費:無料 研究会U R L http://hp-igan-kenshin.kenkyuukai.jp/ ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 事務局 〒520-0846 滋賀県大津市富士見台16-1 地域医療機能推進機構滋賀病院(代表世話人 中島滋美) Tel:077-537-3101 fax:077-534-0566 ピロリ菌感染を考慮した胃がん検診研究会 <代表世話人> 中島 滋美 (地域医療機能推進機構滋賀病院 ) <副代表世話人> 安田 貢 (KKR 高松病院健康医学センター ) <世 話 人> 青木 利佳 (徳島県総合健診センター ) 五十音順 伊藤 高広 (奈良医大放射線科 ) 伊藤 慎芳 (四谷メディカルキューブ消化器内科 ) 入口 陽介 (東京都がん検診センター消化器科 ) 大泉 晴史 (山形市 大泉胃腸科内科クリニック ) 岡 政志 (埼玉医科大学消化器内科・肝臓内科 ) 加藤 勝章 (宮城県対がん協会がん検診センター ) 川田 和昭 (静岡赤十字病院) 小林 正夫 (京都第二赤十字病院健診部 ) 齋藤 洋子 (茨城県メディカルセンター ) 笹島 雅彦 (目黒区 ひもんや内科 ) 鈴木 英雄 (筑波大学消化器内科 ) 寺尾 秀一 (加古川西市民病院診療部 ) 間部 克裕 (北海道大学がん予防内科 ) 村岡 直子 (ウェルネス天神クリニック ) 吉澤 和哉 (山形県立中央病院内科 ) 吉村 理江 (人間ドックセンターウェルネス )