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世界の一般炭・原料炭需給の推移とその将来見通し
IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 世界の一般炭・原料炭需給の推移とその将来見通し 川上 恭章*、松尾 雄司*、呂 正*、佐川 篤男† 要約 わが国は使用する石炭の殆どを海外に依存し、その 8 割以上を豪州とインドネシアの 2 国に依存するという需給構造をとっている。相対的に供給安定性を有する石炭ではあるも のの、それを取り巻く環境は大きく変化している。本稿は将来の石炭需給動向を予測する ことを目的とし、一般炭・原料炭についてそれを行うとともに、線形計画法による貿易フ ローモデルを構築して 2040 年までの石炭貿易フローの評価を行った。 世界の石炭消費量は特にここ 10 年程度、気候変動問題への関心の高まりとは対照的に増 加の一途をたどっている。これまでは中国にけん引されて増加を続けてきたこの傾向は、 需要増加の中心地を中国からインドへと変えて、2040 年まで継続するだろう。中国での石 炭需要増加が減速すること、また多くの OECD 諸国で石炭需要が減少することから、世界 の 2040 年までの石炭需要の年平均伸び率は近年の実績よりは緩和されるものの、発電用途 の一般炭需要が増加し続ける。今後 2040 年までに予期される石炭需要の増分は、顕著な需 要増となった 2002 年から 2012 年までの 10 年間のそれに比肩する。 多くの国にとって、増大する需要を国内生産のみで賄うことは困難であり、石炭貿易量 は増加していく。モザンビークからインド、ロシアからアジアなどの、新たな主要石炭フ ローが創出される一方で、現在の主要輸出国であるインドネシアは、国内需要拡大と石炭 資源の保護・有効利用の観点から、輸出量をあまり増やさない。 わが国においても、温暖化政策とのバランスを取りながら、石炭は主に発電用燃料とし て重要なエネルギー源であり続ける。本稿では、将来にわたって石炭需要国および生産国 の動向が変化していく中で、原料炭におけるモザンビークといった、わが国にとって新た な石炭供給国の出現の可能性が示唆された。 (一財)日本エネルギー経済研究所 計量分析ユニット (一財)日本エネルギー経済研究所 化石エネルギー・電力ユニット 本レポートは、平成 25 年度石油産業体制等調査研究(アジア・太平洋及び大西洋市場の石炭需給動向調査) に基づくものである。この度、経済産業省の許可を得て公表できることとなった。経済産業省関係者のご 理解・ご協力に謝意を表する。 * † 1 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 1. はじめに わが国は使用する石炭の殆どを海外から輸入し、その 8 割以上を豪州とインドネシアの 2 国に依存している。石炭はわが国において、他の化石燃料である石油や天然ガスと比較し て、相対的に供給安定性を有する燃料であるとされてきた。しかし、2000 年代に入ってか らの中国を代表とする世界の石炭需要の急増や価格の高騰、近年の米国でのシェールガス 増産による石炭貿易フローの変化、また大輸出国であるインドネシアの石炭政策の変化の 兆しなど、石炭を取り巻く環境は大きく変化している。このような状況にあって、石炭が 今後も継続して”安定した”燃料であり続けると捉えることは危険をはらんでいる。世界の将 来の石炭需要はどのように変化し、それに供給はどのように呼応するのだろうか。もし世 界における石炭需給の中心地が変化するならば、石炭の貿易フローはどのように変化する のだろうか。本稿は、このような疑問に答えることを目的としている。 本稿は次のように構成される。まず 2012 年までの石炭需給の実績(需要量、供給量、貿易 フロー)を炭種別、地域別に詳述した後に、これら実績の時系列変化と現時点で得られる政 策情報などをもとに、2040 年までの石炭需要・供給量を予測する。その後、本研究で構築 した、線形計画法(LP)を基礎とする貿易フローモデルを用いて、2025 年および 2040 年の石 炭貿易フローを一般炭・原料炭について予測する。 石炭の需要量を中長期に予測した既往研究は数多く存在する。しかし、石炭の貿易フロ ーを、需給量の整合性を担保しながら定量的に示したものは少ないだろう。世界の石炭需 給の中心地が、現在と 2025 年、また 2040 年でどのように変化し、貿易フローがどのよう なものになるかを把握することは、石炭の殆どを海外からの輸入に依存する我が国にとっ て、将来の石炭安定供給確保のための課題を明確にすることと、供給ソースの確保のため の方策を検討する一助となるだろう。 2. 世界の石炭需給動向 2.1 消費 世界の石炭消費量は、1980 年の 37 億 5,570 万トンから 1989 年には 47 億 3,390 万トンに 増加し、 1990 年代には増減があったものの、 2012 年には 76 億 9,690 万トンに達した1(図 2-1)。 とりわけ 2002 年以降の増加は顕著であり、同年から 2012 年までの年平均伸び率は 4.6%に 達した。この著しい需要増の主役となったのは、中国を中心とするアジア諸国であった。 2002 年に 22 億 5,490 万トンであったアジアの石炭消費量は、図 2-2 に示すように、2012 年 には 50 億 2,330 万トンに達し、この 10 年間で 27 億 6,840 万トン増加(この間の世界全体の 純増分の 100%2)、全世界に占める割合は 19.5 ポイント増加して 65.3%となった。アジア地 実績(~2011 年)は IEA データ(IEA, “Energy Balances of OECD Countries 2013”1), “Energy Balances of Non-OECD Countries 2013” 2))を利用。2012 年については同じく IEA データの 2012 年実績推計デー タを利用。 2 これは、アジア以外の地域で消費量が増加した国が無いことを示すものではない。米国など一部の国で、 1 2 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 域での同増分の約 8 割は中国における需要増であり、その結果、2012 年の国別消費量は第 一位の中国が 36 億 6,590 万トンと、第二位の米国(8 億 2,190 万トン)、第三位のインド(7 億 5,320 万トン)を大きく引き離している。 (百万トン) (百万トン) 8,000 8,000 7,000 7,000 中南米・中東 6,000 6,000 アフリカ 5,000 5,000 4,000 褐炭 4,000 欧州・旧ソ連 原料炭 3,000 3,000 北 米 2,000 2,000 一般炭 アジア・太平洋 1,000 1,000 0 0 '80 '82 '84 '86 '88 '90 '92 '94 '96 '98 '00 '02 '04 '06 注) 2012 年は実績推計。無煙炭は一般炭に含む。 出所) IEA, “Coal Information 2013"3) より作成 '08 '10 '12* '80 '85 '90 '95 '00 '05 '10 図 2-1. 世界の石炭消費量の推移実績(地域別・炭種別) (百万トン) 韓国 1.7% 豪州 1.8% ポーランド 1.8% 日本 2.4% 南アフリカ 2.4% その他 15.4% その他 20.2% 世界計 中国 29.5% 韓国 76億9,690万トン 豪州 (外円:2012年見込み) ポーランド ドイツ 日本 3.1% 49億2,720万トン ロシア 南アフリカ (内円:2002年実績) 3.3% ドイツ 米国 5.0% 19.7% ロシア インド インド 4.5% 7.8% 9.8% 中国 47.6% 2002 中国 1,048.1 1,451.7 3,665.9 2,214.2 米国 818.1 971.7 821.9 ▲ 149.7 インド 251.0 383.4 753.2 369.8 ロシア 313.8 220.7 251.1 30.4 ドイツ 328.9 245.7 241.4 ▲ 4.3 南アフリカ 122.3 151.6 187.2 35.6 日本 118.1 161.3 183.8 22.5 ポーランド 174.6 140.4 139.7 ▲ 0.7 豪州 101.6 130.3 137.3 7.0 韓国 39.8 76.0 127.3 51.3 1,100.3 994.5 1,188.2 193.7 4,416.7 4,927.2 7,696.9 2,769.7 2,768.4 世界計 注) 2012 年は実績推計。 出所) IEA3)より作成 2002-2012年 1992 その他 米国 10.7% 2012 見込み アジア計 1,573.3 2,254.9 5,023.3 (対世界シェア) (35.6%) (45.8%) (65.3%) 増加量 図 2-2. 石炭消費量実績(上位 10 カ国) 当該期間の消費量が減少していることに注意が必要である。米国は同期間に 1 億 4,970 万トンの消費減と なった。 3 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 用途・炭種別に消費実績を見ると、用途別では、図 2-3 に示す通り、発電用燃料としての 需要が増加している。これは、アジア地域を中心とする旺盛な電力需要の伸びを賄うため のものであり、発電用燃料用途が全体に占める割合は、1980 年の 49.9%から 2011 年には 65.0%まで増加した。 炭種別の 2012 年の消費量は、一般炭が 58 億 1,360 万トン(石炭消費全体の 75.5%)、原料 炭が 9 億 7,620 万トン(同 12.7%)であった。図 2-4 および図 2-5 に一般炭・原料炭の国別消費 量実績を示す。一般炭の消費量は、発電用燃料としての需要増を背景に著しく増加してい る。その消費量は 2002 年から 2012 年までの 10 年間に 22 億 1,290 万トン増加し、同期間の 石炭合計の消費増分の 80.5%を占有した。国別消費量は、中国が 30 億 8,650 万トン(一般 炭消費量の 53.1%) 、米国が 7 億 3,070 万トン(同 12.6%) 、インドが 6 億 2,590 万トン(同 10.8%)で、これら 3 ヵ国で全消費量の 76.4%を占めた。 原料炭の需要増加は、伸び率で見ると一般炭よりも大きく、2002 年から 10 年間の増加量 は 5 億 500 万トンであった。原料炭においても、中国が世界の合計消費量の 59.3%を占め ている。また原料炭は、インドや日本、韓国などのアジア地域での消費量が多いことも特 徴的である。2012 年のアジアの原料炭消費量は 7 億 5,570 万トンで、世界の原料炭消費量 の 77.4%を占めた。 (百万トン) 8,000 7,000 759 6,000 816 821 775 5,000 942 4,000 902 641 765 3,000 0 注) 2,562 961 913 その他 他産業 585 3,796 2,262 867 675 646 1,879 813 753 853 746 567 584 2,000 1,000 657 876 751 739 2,803 3,190 (60%) (66%) (63%) 4,388 4,333 4,519 4,025 4,202 (64%) (64%) (65%) (65%) (65%) 4,774 発電 (65%) コークス製造 (50%) (52%) (55%) 539 505 508 519 479 639 686 712 725 714 787 850 '80 '85 '90 '95 '00 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 発電には CHP プラント(Combined Heat and Power Plant)での消費分を含む。 出所) IEA, “Energy Statistics of OECD countries 2013"4)および“Energy Statistics of Non-OECD countries 2013"5)より作成 図 2-3. 用途別石炭消費量の推移実績 4 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 インドネシア 1.0% ポーランド 1.1% カザフスタン その他 1.3% 11.0% 韓国 1.6% その他 ロシア 14.8% 2.0% インドネシア ドイツ 2.3% ロシア 3.2% ポーランド 1992 世界計 中国 カザフスタン 韓国 36.8% 58億1,360万トン ロシア (外円:2012年見込み) 日本 南アフリカ 4.2% 36億70万トン インド 10.8% インド (内円:2002年実績) 8.9% 増加量 962.8 1,324.1 3,086.5 1,762.5 米国 706.9 875.4 730.7 ▲ 144.7 インド 192.6 321.1 625.9 304.8 南アフリカ 117.6 149.5 185.0 35.5 60.2 102.9 131.6 28.7 150.1 103.3 116.9 13.6 韓国 25.4 56.0 95.7 39.7 カザフスタン 60.0 36.3 76.3 40.0 ポーランド 94.2 69.4 64.1 ▲ 5.3 ロシア 中国 53.1% 2002 2002-2012年 中国 日本 インドネシア 米国 24.3% 米国 12.6% 注) (百万トン) 2012 見込み 6.9 29.2 60.2 31.0 546.5 533.7 640.8 107.1 世界計 2,923.2 3,600.7 5,813.6 2,212.9 アジア計 1,328.7 1,954.0 4,194.5 2,240.5 (対世界シェア) (45.5%) (54.3%) (72.1%) その他 2012 年は実績推計。無煙炭を含む。 IEA3)より作成 出所) 図 2-4. 一般炭消費量実績(上位 10 ヵ国) 米国 1.9% ウクライナ 2.8% ポーランド 1.2% カザフスタン 1.3% その他 ドイツ 8.9% 1.6% (百万トン) 1992 その他 19.1% 韓国 3.2% 日本 5.3% 世界計 ポーランド カザフスタン 中国 27.1% 9億7,620万トン (外円:2012年見込み) ドイツ 4.7% 4億7,120万トン インド 米国 ロシア (内円:2002年実績) 7.7% 4.6% 5.8% ウクライナ ロシア 6.2% 韓国 9.3% インド 日本 4.2% 8.6% 12.4% 中国 59.3% 127.7 579.4 451.7 インド 42.7 36.3 83.8 47.5 ロシア 41.0 43.8 56.3 12.6 日本 57.9 58.4 52.2 ▲ 6.2 韓国 14.4 20.0 31.6 11.6 ウクライナ 42.6 29.2 27.1 ▲ 2.0 米国 29.4 21.6 19.0 ▲ 2.6 ドイツ 36.2 21.9 15.3 ▲ 6.6 カザフスタン 24.2 9.3 12.6 3.3 ポーランド 15.0 12.9 11.6 ▲ 1.3 その他 アジア計 出所) IEA3)より作成 112.0 90.1 87.3 ▲ 2.9 500.7 471.2 976.2 505.0 506.9 208.1 248.8 755.7 (41.6%) (52.8%) (77.4%) 図 2-5. 原料炭消費量実績(上位 10 ヵ国) 5 増加量 85.3 (対世界シェア) 2012 年は実績推計。 2002-2012年 中国 世界計 注) 2002 2012 見込み IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 2.2 生産 世界の石炭生産量の推移を概観すると、旧ソ連を中心に需要量が落ち込んだ 1990 年代初 めと、中国と欧州で需要量が減少した 1990 年代後半に世界の生産量は落ち込んだものの、 2000 年以降は、旺盛な需要の伸びに呼応する形で生産量が増加に転じた。2012 年の生産量 は 78 億 3,080 万トンであった(図 2-6)。 国別に生産量の推移をみると、2003 年以降の中国の生産量増加が顕著である。2002 年か ら 2012 年までの世界の石炭生産量増分 29 億 820 万トンのうち、中国がその約 70%である 20 億 1,340 万トンの増産を行った(図 2-7)。中国に次ぐ生産国である米国の生産量は、1997 年以降 10 億トン前後で横ばいに推移している。2012 年には、シェールガス生産の影響など により国内需要が減少し、前年比で生産減となった。インドや豪州、インドネシアは着実 に生産量を伸ばしている。 6,838 6,744 6,559 6,330 5,668 5,273 4,923 4,871 4,649 4,582 4,510 4,637 4,636 4,571 4,417 4,342 4,501 4,451 4,769 4,668 4,689 4,596 4,487 4,380 4,209 4,009 3,820 4,000 3,787 5,000 3,972 6,000 7,831 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 3,000 1,500 2,000 1,000 1,000 500 0 0 '80 '82 '84 石炭生産量 '86 中国 注) 2012 年は実績推計。 出所) IEA3)より作成 '88 '90 米国 '92 '94 '96 インド '98 '00 '02 インドネシア 図 2-6. 世界の石炭生産量の推移実績 6 '04 豪州 '06 '08 ロシア '10 '12* 南アフリカ 国別石炭生産量(百万トン) 石炭生産量(百万トン) 7,000 6,011 8,000 7,608 4,500 7,210 9,000 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 (百万トン) カザフスタン 1.6% ポーランド 1.8% ドイツ 2.5% その他 10.3% その他 13.9% カザフスタン 南アフリカ 3.3% 世界計 中国 31.2% ポーランド ドイツ 78億3,080万トン 4.3% 南アフリカ (外円:2012年見込み) 4.5% 豪州 49億2,260万トン ロシア 5.4% 4.8% (内円:2002年実績) 豪州 インドネシア 6.9% 5.7% 米国 インドネシア 20.2% 2.1% インド ロシア 4.5% インド 7.6% 2002-2012年 2002 中国 1,072.8 1,535.7 3,549.1 2,013.4 米国 905.0 992.7 934.9 ▲ 57.8 インド 255.2 363.9 595.0 231.1 22.0 102.1 442.8 340.7 豪州 228.3 339.9 420.7 80.8 ロシア 316.4 237.6 353.9 116.4 南アフリカ 174.4 220.2 259.3 39.1 ドイツ 314.0 211.0 197.0 ▲ 14.0 ポーランド 198.5 161.9 144.1 ▲ 17.8 カザフスタン 126.5 74.0 126.0 52.0 838.0 683.5 807.9 124.3 4,451.1 4,922.6 7,830.8 2,908.2 2,658.2 インドネシア 中国 45.3% 2012 見込み 1992 その他 増加量 7.4% 世界計 米国 11.9% アジア計 (対世界シェア) 注) 2012 年は実績推計。 出所) IEA3)より作成 1,440.6 2,081.8 4,740.0 (32.4%) (42.3%) (60.5%) 図 2-7. 石炭生産量実績(上位 10 カ国) 2.3 貿易 石炭は他の化石燃料に比べて国際貿易により取引される比率が小さく、世界の生産量に 占める貿易量(本稿では輸出量を貿易量とする)の比率(石炭貿易率:石炭輸出量÷石炭生産 量)は 2012 年で 16.0%に過ぎない(図 2-8)。それでも、世界の石炭貿易量は、主に発電用燃 料として消費される一般炭需要の増加に伴い拡大している。炭種別の石炭貿易率は、原料 炭が 29.5%、一般炭(無煙炭を含む)が 16.2%、褐炭が 0.3%となっている。 石炭生産国は、その生産量と輸出量に応じて、自国消費型、輸出型、およびその中間の 3 タイプに分類できる。2012 年の主要石炭生産国にこの分類を適用すると、石炭貿易率が小 さい中国やインド(それぞれ 0.3%、0.2%)は自国消費型、石炭貿易率が大きいインドネシア や豪州(それぞれ 86.4%、71.7%)は輸出型となる(図 2-9)。石炭貿易率が高い国では、石炭は 自国で消費するエネルギー源であると同時に、重要な輸出商品として位置付けられている。 7 936 929 963 857 894 932 717 789 696 709 820 40 30 609 569 535 689 763 725 678 667 481 478 432 558 551 525 554 369 368 348 457 504 323 299 254 449 520 498 281 253 289 20 290 283 282 212 236 217 202 207 191 186 182 195 187 179 184 197 194 195 195 203 186 202 401 295 50 10 210 400 197 193 367 195 179 175 192 364 363 183 167 330 180 172 287 152 145 130 167 289 286 147 128 275 200 149 128 400 144 119 600 506 800 624 1,000 0 0 '80 '82 '84 '86 '88 '90 '92 '94 '96 '98 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012* 原料炭 貿易量 一般炭 貿易量 褐 炭 貿易量 貿易量/生産量比(原料炭) 貿易量/生産量比(一般炭) 貿易量/生産量比(褐 炭) 注) 60 石炭貿易率(%) 石炭貿易量(輸出量, 百万トン) 1,200 1,144 1,076 1,400 1,255 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 貿易量/生産量比(石炭全体) 2012 年は実績推計。輸出量を貿易量としており、無煙炭は一般炭に含む。 1989 年以前には、旧ソ連内での貿易は計上されていない。 石炭貿易率を次式により算定: 出所) 石炭貿易率(%)=石炭輸出量÷石炭生産量 3) IEA より作成 図 2-8. 世界の石炭貿易量の推移実績 (百万トン) 4,000 3,500 3,549 10 0.3% 上段:生産量 中段:輸出量 下段:石炭貿易率(=石炭輸出量÷石炭生産量) 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 935 114 12.2% 生産量のうち、 輸出量 595 1.5 0.2% 500 443 421 354 383 259 302 197 86.4% 71.7% 134 74 0.4 37.9% 28.7% 0.2% 144 126 7.1 32 25.3% 4.9% 89 34 67 42 82 35 19 22 91.9% 52.3% 65.6% 45.3% 0 出所) IEA3)より作成 図 2-9. 主要生産国(生産上位 10 ヵ国)と主要輸出国の生産量と輸出量(2012 年実績推計) 8 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 石炭輸出の動向 2012 年の世界の石炭輸出量は 12 億 5,530 万トンであった。最大の輸出国はインドネシア でその輸出量は 3 億 8,260 万トン、次いで豪州が 3 億 150 万トンとなっており、この 2 ヵ国 で世界の輸出量の 54.5%を占めた。以下、ロシア、米国、コロンビア、南アフリカと続き、 上位 6 ヵ国で世界の輸出量の 86.7%を占めた(図 2-10)。 主要石炭輸出国の石炭輸出量の推移をみると、2000 年代前半までは豪州の石炭輸出が他 を圧倒してきたが、2000 年代に入りインドネシアの輸出拡大が顕著となり、2011 年には豪 州を上回った(図 2-11)。ロシアは 1999 年以降、堅調な増加傾向を示している。米国は 2010 年以降、シェールガス増産による米国国内ガス価格の下落により国内での石炭消費が減少 したことを受け、輸出を拡大させている。中国は 2000 年以降輸出を急増させ、2001 年から 2003 年までは世界第 2 位の石炭輸出国であったが、2004 年以降は国内需要の増加から輸出 量を大きく減少させ、2012 年の輸出量は 1,050 万トンで世界第 12 位となっている(図 2-11)。 ベトナム モンゴル 1.5% カザフスタン 1.8% その他 2.5% 4.7% カナダ 2.8% 南アフリカ 5.9% その他 21.5% (百万トン) 1992 インドネシア インドネシア 10.9% 世界計 ベトナム コロンビア 0.9% 12億5,530万トン 6.5% カザフスタン (外円:2012年見込み) 豪州 4.1% 30.6% カナダ 6億6,700万トン 4.0% (内円:2002年実績) 米国 南アフリカ 9.1% 10.4% コロンビア 米国 ロシア 5.5% 5.4% 6.6% ロシア 豪州 10.7% 24.0% 2002-2012年 増加量 73.0 382.6 309.6 126.2 204.3 301.5 97.2 ロシア 43.4 44.3 134.2 89.9 米国 93.0 35.9 114.1 78.1 コロンビア 14.6 36.5 82.2 45.7 南アフリカ 52.1 69.2 74.3 5.1 カナダ 28.2 26.9 34.8 7.9 カザフスタン 42.5 27.1 31.9 4.8 0.1 0.0 22.1 22.1 モンゴル ベトナム 1.6 6.0 19.1 13.0 その他 80.6 143.7 58.6 ▲ 85.1 497.7 667.0 1,255.3 588.3 283.9 世界計 アジア計 (対世界シェア) 注) 2012 見込み 15.4 豪州 インドネシア 30.5% 2002 41.2 165.3 449.2 (8.3%) (24.8%) (35.8%) 2012 年は実績推計。 カザフスタンからの輸出量のほとんどはロシアへ、モンゴルの輸出量のほとんどは中国へ輸出さ れている。 出所) IEA3)より作成 図 2-10. 石炭輸出量実績(上位 10 カ国) 9 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 (百万トン) 400 インドネシア 豪 州 350 ロシア 300 米 国 コロンビア 250 南アフリカ 200 カナダ カザフスタン 150 モンゴル 100 ベトナム 北朝鮮 50 中国 0 '80 '82 '84 '86 '88 注) 2012 年は実績推計。 出所) IEA3)より作成 '90 '92 '94 '96 '98 '00 '02 '04 '06 '08 '10 '12* 図 2-11. 石炭輸出量上位 12 ヵ国の輸出量の推移実績 石炭輸入の動向 2012 年における最大の輸入国は中国で、その輸入量は 2 億 8,880 万トン(輸入量全体の 22.6%)であった(図 2-12)。以下、日本 1 億 8,380 万トン(同 14.4%) 、インド 1 億 5,960 万 トン(同 12.5%) 、韓国 1 億 2,550 万トン(同 9.8%) 、台湾 6,450 万トン(同 5.1%)と続く。 中国を含めた東アジア 4 ヵ国・地域の輸入量は 6 億 6,260 万トンで、石炭輸入量全体の 51.9% を占めた。 主要石炭輸入国の石炭輸入量の推移をみると、過去は日本が長らく世界最大の輸入国で あった。しかし、2004 年ごろから石炭需要が急激に増加した中国が、2009 年以降に、国内 炭価格の上昇も一要因として、産炭地域から遠距離にある東南沿岸地域を中心に輸入量を 急増させたことにより、2011 年に日本を上回った(図 2-13)。一方日本は、世界同時不況の影 響から 2009 年に、また東日本大震災の影響から 2011 年に、それぞれ輸入量を減少させてい る。インドの輸入量は、国内需要に国内生産が追い付かないこと、国内炭は高灰分のため 海外炭との混焼を行っていること、また海外炭専焼火力の運開などにより、2008 年以降に 急増している。韓国の輸入量は、新規石炭火力の運開や製鉄所が増設されたことから増加 している。 10 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 (百万トン) 1992 その他 21.9% 中国 22.6% 中国 1.6% 日本 23.6% 世界計 その他 36.7% イタリア 1.9% トルコ 2.2% 12億7,600万トン (外円:2012年見込み) 6億8,430万トン (内円:2002年実績) ロシア 2.5% イギリス 3.5% イタリア トルコ 2.8% ドイツ 1.7% イギリス 3.5% ロシア 4.2% ドイツ 台湾 3.0% 4.9% 5.1% インド 3.4% 日本 14.4% 韓国 10.5% 台湾 7.6% インド 12.5% 韓国 9.8% 出所) IEA3)より作成 増加量 1.6 11.3 288.8 日本 110.6 161.3 183.8 22.5 インド 6.5 23.3 159.6 136.4 韓国 30.8 71.7 125.5 53.8 台湾 22.1 51.8 64.5 12.7 ドイツ 19.1 33.5 45.2 11.7 イギリス 20.3 28.7 44.8 16.1 ロシア 39.7 20.9 31.4 10.5 トルコ 5.4 11.7 28.7 17.0 イタリア 17.8 19.2 24.3 5.1 その他 213.4 251.0 279.4 28.4 487.4 684.3 1,276.0 591.8 547.5 世界計 アジア計 2012 年は実績推計。 2002 2002-2012年 中国 (対世界シェア) 注) 2012 見込み 189.8 348.8 896.4 (38.9%) (51.0%) (70.2%) 277.5 図 2-12. 石炭輸入量実績(上位 10 カ国) (百万トン) 300 中 国 日 本 250 インド 韓 国 200 台 150 湾 ドイツ 英 国 100 ロシア トルコ 50 イタリア 0 '80 '82 '84 '86 '88 注) 2012 年は実績推計。 出所) IEA3)より作成より作成 '90 '92 '94 '96 '98 '00 '02 '04 '06 '08 図 2-13. 石炭輸入量上位 10 ヵ国の輸入量の推移実績 11 '10 '12* IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 石炭貿易フロー 石炭市場は、大別してアジア太平洋市場と欧州大西洋市場の 2 つに分かれている。欧州 大西洋市場の規模はほぼ横ばいで推移しているのに対して、アジア太平洋市場は中国、イ ンドを中心に規模が拡大している。2012 年時点でアジア太平洋市場は欧州大西洋市場の 4 倍以上まで拡大している。 図 2-14 に世界の石炭貿易フローを示す。一般に、アジア太平洋市場へは、インドネシア、 豪州から多くの石炭が供給され、欧州大西洋市場へは、コロンビア、ロシア、米国から多 くの石炭が供給されている。南アフリカは、欧州大西洋市場を主要な市場としていたが、 ロシア、コロンビア、そして米国から同市場への供給量が増えたこと、また近年インドの 輸入量が増加していることから、インドを中心とするアジア太平洋市場へのシフトを強め ている。 図 2-15 および図 2-16 は、 石炭貿易フローをさらに一般炭・原料炭に分類したものである。 一般炭貿易は石炭全体の貿易量の 8 割弱を占めていることからも (図 2-8)、その貿易フロー の構造は石炭全体のものとあまり変わらない。なお、一般炭・原料炭ともに中国が最大輸 入国であり、2012 年の輸入量はそれぞれ 2 億 1,810 万トン、7,060 万トンであった。 その他欧州 53.4Mt 12.8Mt ロシア 134.2Mt OECD欧州 237.2Mt 4.6Mt 13.1Mt 41.0Mt 4.1Mt カナダ 34.7Mt 61.2Mt OECD欧州 237.2Mt 中国 10.5Mt 3.5Mt 8.0Mt 4.3Mt 17.4Mt 7.3Mt その他アジア 729.8Mt 9.9Mt アフリカ・中東 26.6Mt 15.0Mt 333.8Mt 10.0Mt インドネシア 382.5Mt 52.6Mt 50.8Mt 日本 183.8Mt 18.2Mt 米国 114.0Mt 5.2Mt 35.2Mt 115.4Mt 161.5Mt 24.4Mt 9.7Mt 4.1Mt 11.2Mt 北米 25.4Mt 2.1Mt 3.6Mt オーストラリア 301.5Mt 50.6Mt 3.8Mt 7.8Mt 10.4Mt コロンビア 82.2Mt 5.9Mt 11.1Mt 中南米 34.5Mt 南アフリカ 75.1Mt 輸出側 注) 輸入側 図には 200 万トン以上のフローを記載。 “北米”は IEA3)の定義に従い、メキシコを含む。 青色の数字は対前年度増加、赤色の数字は対前年度減少を示す。 出所) IEA3)より作成 図 2-14. 世界の石炭貿易フロー(2012 年実績推計) 12 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 その他欧州 41.3Mt 5.7Mt ロシア 115.9Mt OECD欧州 186.6Mt 3.4Mt 中国 8.7Mt 2.4Mt 5.2Mt アフリカ・中東 24.3Mt 333.8Mt 29.6Mt 2.8Mt 日本 131.6Mt 3.8Mt 9.1Mt 24.1Mt その他アジア 582.1Mt 9.8Mt カナダ 4.0Mt 11.2Mt 34.0Mt 58.0Mt OECD欧州 186.6Mt 50.1Mt 6.7Mt 北米 19.3Mt 米国 50.6Mt 9.6Mt 86.8Mt 85.3Mt コロンビア 81.7Mt 2.4Mt 3.4Mt 14.6Mt インドネシア 382.4Mt 10.0Mt 2.9Mt 7.7Mt 豪州 159.2Mt 52.6Mt 5.9Mt 11.0Mt 中南米 22.2Mt 南アフリカ 73.6Mt 注) 図 2-14 に同じ 出所) IEA3)より作成 図 2-15. 世界の一般炭貿易フロー(2012 年実績推計) その他欧州 12.0Mt OECD欧州 50.6Mt 7.1Mt ロシア 18.3Mt 4.1Mt 3.0Mt 1.9Mt 3.2Mt OECD欧州 50.6Mt 中国 1.7Mt 7.0Mt 15.0Mt 5.2Mt 日本 52.2Mt 2.1Mt その他アジア 147.7Mt 11.2Mt アフリカ・中東 2.3Mt 28.7Mt 76.2Mt 1.1Mt 図 2-14 に同じ 出所) IEA3)より作成 4.6Mt 7.9Mt 2.1Mt 中南米 12.3Mt 図 2-16. 世界の原料炭貿易フロー(2012 年実績推計) 13 1.2Mt 1.0Mt 3.5Mt 豪州 142.4Mt 注) 米国 63.4Mt 北米 6.1Mt インドネシア 0.0Mt 南アフリカ 1.5Mt 16.5Mt 4.5Mt 15.3Mt 0 21.0Mt カナダ 30.7Mt コロンビア 0.5Mt IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 3. 将来の世界の石炭需給見通し 3.1 試算方法と前提条件 本稿における、石炭の需給および貿易フロー推計の枠組みを図 3-1 に示す。GDP や原油 価格、素材生産高などを変数とするマクロ経済モデルにより、産業活動指標や物価指標な ど、エネルギー需要に影響を与える社会・経済指標を予測する。これらをもとに、エネル ギー需要モデル内で石炭の需要量を予測する。石炭は一般炭、原料炭、褐炭と炭種別に分 け、それぞれを関連指標を勘案しながら予測する。他方、各種統計や炭鉱開発計画などか ら石炭供給を予測し、これらの需給を満たす石炭貿易フローを、LP モデルを構築・計算す ることで算出する。 マクロ経済モデル (主要前提) 各種統計, 開発計画, 専門家知見など (主要前提) GDP, 原油価格, 為替レート, 人口, 電源計画, 素材生産高 など エネルギー需要モデル (関連指標) 石炭供給 見通し 石炭需要 見通し 石炭貿易フロー 一般炭 発電電力量, 産業活動量 原料炭 銑鉄・コークス生産量 褐炭 発電電力量 開発計画, 資本状況 図 3-1. 世界の石炭需給見通しの計算フロー 14 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 3.1.1 石炭需給量予測 将来の石炭需給量は、日本エネルギー経済研究所が 2013 年 10 月に報告した「アジア/ 世界エネルギーアウトルック 2013」6)をベースに、石炭について最新情報の反映・再検討 を行い、予測を行った。同アウトルックとの主要な変更点は、石炭の需給量予測を炭種別 (一般炭、原料炭、褐炭)に行ったことである。マクロ経済モデルにおける主要前提や、 石炭を除くエネルギーの需給予測については、同アウトルックを参照されたい。 3.1.2 石炭貿易フローの計算 石炭需要量および供給量を満たしながら、石炭貿易関連費用を世界全体で最小化する石 炭貿易フローを導出する線形計画モデル(LP モデル)を構築した。 この LP モデルは、世界を 26 の国と地域に分類し、各地域間での原料炭と一般炭の貿易 フローを算出する静的モデルである(図 3-2)。石炭貿易関連費用を目的関数とし、これを線 形制約式のもとで最小化する。この LP モデルは、あくまで世界全体を一主体ととらえ、全 費用を最小化して計算を行うことに留意する必要がある。部分最適による貿易決定はなさ れ得ないことに注意されたい。 欧州非OECD/中央アジア 欧州OECD ・ロシア ・旧ソ連・欧州非OECD 北米 ・米国 ・カナダ アジア 中東 アフリカ ・南アフリカ ・他アフリカ ・日本・中国 ・インド ・台湾・韓国・香港 ・インドネシア・マレーシア ・フィリピン・タイ・ベトナム ・シンガポール・ブルネイ ・他アジア オセアニア 中南米 ・コロンビア ・他中南米 ・オーストラリア ・ニュージーランド 図 3-2. LP モデルの対象地域 目的関数(最小化)である総費用は、石炭基地建設コスト、石炭生産コスト(市場価格を代 用)、基地間輸送コストにより構成される。 15 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 石炭基地の建設コストは、代表的なコストを 91.5 万ドル/万トン(年間能力 2,000 万トンの 基地費用が 1,830 百万ドルと想定)とし、それを地域間の平均的な物価・賃金水準を考慮し た上で国と地域ごとに設定した。一般炭と原料炭では区別しない。また投資回収年数は 15 年とした。 各石炭の生産コスト(市場価格を代用)は、原料炭の基準価格(2012 年実質価格に相当)を 110 ドル/トン、一般炭を 80 ドル/トンとし、それを地域間の平均的な物価・賃金水準を考慮 した上で国と地域ごとに設定した。2025 年および 2040 年の基準価格は、 「アジア/世界エネ ルギーアウトルック」で想定している一般炭の価格伸び率を用いて設定した。 国・地域間の輸送コストは、ワールドスケール 7)を利用して計算した。国・地域をそれぞ れ一か所の基地で代表させ、各基地間の距離をワールドスケールから引用する。ただし北 米やロシアなど、東西の基地で各基地との距離が大きく変わってしまう国については、複 数の基地で代表させた。 3.2 試算結果及び考察 3.2.1 石炭需要の見通し 石炭需要は、今後も開発途上国の経済成長に伴って増加する。2011 年に 75.27 億トンであ った石炭需要は、2025 年に 86.71 億トン、2040 年には 100.2 億トンまで増加する。2040 年 までの年平均増加率は 1.0%である(図 3-3)。 炭種別では、一般炭需要の伸びが圧倒的である。これは後述するように電力需要の高ま りに起因するものであり、2011 年に 56.77 億トンであった一般炭需要は 2025 年に 67.23 億 トン、2040 年には 80.95 億トンまで増加する。他方、原料炭は、2011 年の 9.36 億トンから 2020 年に 10.35 億トンまで増加するものの、中国の鉄鋼生産の減少に伴い減少にむかう。 中国の鉄鋼(粗鋼)生産量は、これまで過熱気味ともいえる急増を見せてきた(図 3-4)。しかし、 2020 年付近でピークを迎え、その後は減少するだろう。結果として、世界の 2040 年の原料 炭需要は 9.76 億トンと、2011 年から微増に留まることとなる。すなわち、2011 年から 2040 年までに見込まれる石炭需要の増分 24 億 9,400 万トンのうち、ほぼ全てが一般炭によるも のとなる(図 3-5(a))。 用途別では、アジアを中心とする非 OECD 諸国において、経済成長とともに電力需要が 増加し、それによって発電用途向けの石炭需要が急増する。この発電用需要は 2011 年の 47.74 億トンから 2040 年には 69.84 億トンにまで増加し(年平均 1.3%増)、これに次ぐ需要増 加を見せる産業用(2011 年の 9.61 億トンから 2040 年には 11.39 億トンに増加)と合わせて、 石炭全体の需要増分のうち 96%を占める(図 3-5(b))。 16 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 百万トン 12,000 実績 予測 10,000 8,280 7,527 8,000 6,000 4,664 4,762 1990 2000 10,020 8,671 4,000 2,000 0 出所) 2011 2020 2025 2040 実績は IEA1), 2), 予測はエネ研アウトルック 6)をもとに作成 図 3-3.世界の石炭需要量予測 百万トン 1,000 実績 予測 840 800 819 702 687 600 356 400 200 129 65 0 1990 出所) 2000 2005 2011 2020 2025 実績は鉄鋼統計要覧 8), 予測はエネ研アウトルック 6)をもとに作成 図 3-4. 中国の粗鋼生産量推移と将来見通し 17 2040 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 原料炭 2% 褐炭 1% 産業 7% その他 4% 一般炭 97% 発電 89% (a). 炭種別 (b). 用途別 図 3-5.石炭需要量増分(2011-2040)の項目別比率 地域別の石炭需要の推移を表 3-1 に示す。 2000 年以降に急速に需要が拡大したアジア地域では、引き続き需要が拡大していく。2011 年に 48.10 億トンであったアジアの石炭需要は、2025 年に 59.74 億トン、2040 年に 72.73 億 トンに増加し、世界の石炭需要に占めるアジアの比率は、2011 年の 63.9%から 2040 年には 72.6%まで拡大する。アジアをより詳細に見ると、インドやアセアン地域の石炭需要は拡大 を続ける一方で、2000 年から 10 年間で急速に需要が増加した中国では、その増加は次第に 穏やかになり、2040 年前にはピークを迎える。 北米と OECD 欧州では、環境問題(大気汚染、二酸化炭素排出)への対応を背景とする、ガ スや再生可能エネルギーの発電利用の拡大によって石炭需要は減少する。北米の石炭需要 は 2011 年の 9.63 億トンから 2025 年に 8.32 億トン、2040 年には 7.40 億トンまで減少し、北 米の世界に占める比率は 2011 年の 12.8%から 2040 年には 7.7%となる。OECD 欧州の石炭 需要は 2011 年の 7.93 億トン(世界シェア 10.5%)から 2040 年には 6.87 億トン(同 6.9%)まで減 少する。 非 OECD 欧州は、1990 年代に入り石炭需要の大きな減少を経験したものの、1990 年代終 わりから、経済回復に伴って再び増加をみせている。ロシアの石炭需要は 2025 年頃から減 少することが予想されるが、カザフスタンなどで発電用燃料として需要が拡大することが 見込まれることから、非 OECD 欧州全体の石炭需要は 2040 年まで堅調に増加する。 アフリカや中東においても、石炭火力発電所の建設が見込まれ、石炭需要は拡大する。 世界全体での石炭需要の増加に対する各地域の寄与を見ると、2011 年から 2040 年にかけ ての需要の増分のほぼ全てがアジアによるもとなる(図 3-6)。 18 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 表 3-1. 地域別石炭需要量予測 世界計 北米 米国 中南米 アジア 中国 インド 日本 韓国 中東 OECD欧州 非OECD欧州 ロシア カザフスタン アフリカ オセアニア 出所) 1980 3,756 687 650 19 913 626 108 88 28 2 1,158 814 93 69 1990 4,664 865 816 33 1,544 1,050 221 115 45 5 1,182 800 374 56 136 98 2000 4,762 1,029 966 44 2,077 1,338 357 153 72 13 831 467 230 31 170 130 2011 7,527 963 920 63 4,810 3,501 710 174 131 16 793 545 225 66 200 137 2020 8,280 859 815 96 5,597 3,928 963 168 139 23 743 587 236 81 232 143 (百万トン) 年平均伸び率(%) 2025 … 2040 11/00 25/11 40/25 40/11 8,671 … 10,020 4.3% 1.0% 1.0% 1.0% 832 … 775 -0.6% -1.0% -0.5% -0.7% 793 … 740 -0.4% -1.1% -0.5% -0.7% 115 … 180 3.3% 4.5% 3.0% 3.7% 5,974 … 7,273 7.9% 1.6% 1.3% 1.4% 4,011 … 4,173 9.1% 1.0% 0.3% 0.6% 1,189 … 2,068 6.5% 3.7% 3.8% 3.8% 165 … 150 1.2% -0.4% -0.7% -0.5% 146 … 150 5.6% 0.8% 0.2% 0.5% 28 … 49 2.0% 3.9% 3.9% 3.9% 726 … 687 -0.4% -0.6% -0.4% -0.5% 606 … 625 1.4% 0.8% 0.2% 0.5% 233 … 213 -0.2% 0.3% -0.6% -0.2% 91 … 109 7.0% 2.4% 1.2% 1.8% 250 … 312 1.5% 1.6% 1.5% 1.6% 141 … 119 0.4% 0.2% -1.1% -0.5% 実績は IEA1), 2), 予測はエネ研アウトルック 6)をもとに作成 (百万トン) アジア 北米 2,463 -188 非OECD欧州 OECD欧州 80 -106 アフリカ 113 中南米 117 オセアニア 中東 -100 33 世界計 2,494 図 3-6. 地域別の石炭需要量増分(2011 年-2040 年) 3.2.2 石炭生産量の見通し 主要な産炭国では炭鉱開発、輸送インフラ整備(積出港、鉄道)が計画されている。し かし、実際の生産量は需要量(国内需要と国際市場)により決定され、需要量は生産計画 の進捗にも影響を及ぼす。したがって、生産量の予測にあたっては、国内(もしくは域内) 需要と石炭産業の状況、輸出国ではこれらに加え国際市場状況(輸出需要)と石炭開発計 19 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 画を勘案した。 表 3-2、表 3-3、および表 3-4 に地域別(主要国別)の石炭生産量を炭種別に示す。将来 の石炭生産の動向は、北米・OECD 欧州と、石炭需要が増加するアジア・非 OECD 諸国で 大きく異なるだろう。 北米では、カナダが輸出国としてわずかに生産量を増加させるものの、米国は国内需要 の減少、生産コストの上昇、および炭鉱操業による環境影響などにより生産が減少する。 そのため、北米の石炭生産は、2011 年から 2040 年にかけて年率 0.6%で減少する。なお、 米国では、アパラチア、パウダー・リバー・ベイスン、イリノイが主要な石炭生産地域で あるが、今後は生産性の低いアパラチアでの生産量は減少し、生産性が高く低コストであ るパウダー・リバー・ベイスンは生産を維持すると見込まれる。OECD 欧州では、域内の需 要の減少、生産コストの上昇、数ヵ国での石炭産業への補助金の廃止などから、石炭生産 は年率 0.6%で減少する。 生産量が減少する北米・OECD 欧州とは異なり、アジアの産炭国は、自国の需要拡大に伴 い生産を拡大し、その量は 2011 年から 2040 年にかけて年率 1.3%で増加する。 インドネシアは、これまでもアジア市場の拡大に伴い生産量を大きく拡大してきた。今 後も同国の生産量は着実に増加し、2011 年の 3.6 億トンから 2040 年の 6.5 億トンまで年率 2.0%で増加する。しかし、インドネシア政府は、自国の石炭資源を国民利益のために持続 的かつ効率的に利用する方針であることから、この生産拡大は、あくまで国内需要に見合 った形でのものである。その結果、同国の石炭輸出量は 2020 年頃から横ばいとなり、2025 年頃から減少する。インドの石炭生産は、拡大する国内需要に伴い増加し、2011 年から 2040 年に向け年率 3.7%で増加し、2040 年にその量は 16.33 億トンに達する。しかし、それでも 需要を全てまかなうことはできず、不足分は輸入に頼ることになる。中国は世界最大の石 炭の消費国、生産国、輸入国である。中国の石炭生産は国内需要に対応するため、2030 年 代半ばまで増加した後、需要の減少に伴い生産も減少する。その他アジア諸国では、自国 の需要の増加に伴い、またモンゴルでは中国への輸出量に対応し生産量が増加する。 非 OECD 諸国でも、自国と域内の需要の増加に応えて石炭生産は拡大する。アフリカで はアジア石炭市場の拡大に伴い、南アフリカでは一般炭の生産が、モザンビークでは原料 炭の生産が(それに伴い一般炭の生産も)、それぞれ拡大する。コロンビアでは、最大の市場 である欧州市場の縮小と米国の輸入が減少する一方で、他の南米諸国での需要の拡大が見 込まれることから、一般炭の生産が拡大する。 また、豪州の 2040 年の石炭生産量は、国際石炭市場の拡大に対応して 2011 年の 2 倍以上 に拡大する。中でも一般炭は、市場が大きく拡大するため、2011 年の 3 倍以上となる。 20 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 表 3-2. 地域別の石炭生産量予測 世界計 北米 米国 カナダ 中南米 コロンビア アジア 中国 インド インドネシア 中東 OECD欧州 非OECD欧州 ロシア アフリカ 南ア オセアニア 豪州 1980 3,781 790 753 37 20 4 827 620 110 0 1 1,093 824 120 115 107 105 1990 4,624 1,002 934 68 48 21 1,325 995 219 10 1 1,045 813 372 182 175 207 205 2000 4,598 1,041 972 69 75 38 1,791 1,301 329 79 2 652 496 240 230 224 310 307 2011 7,452 1,060 992 67 122 86 4,373 3,280 575 360 1 581 649 322 258 253 407 402 2020 8,280 973 903 70 118 86 5,101 3,665 750 531 1 541 716 362 334 292 496 491 2025 8,671 954 886 69 126 90 5,401 3,733 929 559 1 525 739 363 364 311 560 555 (百万トン) 年平均伸び率(%) … 2040 11/00 25/11 40/25 40/11 … 10,020 4.5% 1.1% 1.0% 1.0% … 896 0.2% -0.7% -0.4% -0.6% … 824 0.2% -0.8% -0.5% -0.6% … 72 -0.3% 0.2% 0.4% 0.3% … 155 4.5% 0.2% 1.4% 0.8% … 112 7.6% 0.3% 1.5% 0.9% … 6,402 8.5% 1.5% 1.1% 1.3% … 3,900 8.8% 0.9% 0.3% 0.6% … 1,633 5.2% 3.5% 3.8% 3.7% … 647 14.7% 3.2% 1.0% 2.0% … 1 -0.5% -1.6% -0.2% -0.9% … 492 -1.0% -0.7% -0.4% -0.6% … 764 2.5% 0.9% 0.2% 0.6% … 348 2.7% 0.9% -0.3% 0.3% … 442 1.0% 2.5% 1.3% 1.9% … 373 1.1% 1.5% 1.2% 1.4% … 869 2.5% 2.3% 3.0% 2.6% … 863 2.5% 2.3% 3.0% 2.7% 実績は IEA3), 予測はエネ研アウトルック 6)をもとに作成 出所) 表 3-3. 地域別の一般炭生産量予測 世界計 北米 米国 カナダ 中南米 コロンビア アジア 中国 インド インドネシア 中東 OECD欧州 非OECD欧州 ロシア アフリカ 南ア オセアニア 豪州 出所) 1980 2,258 609 592 17 7 3 719 552 87 0 0 365 416 108 105 33 32 1990 2,874 792 760 31 30 20 1,167 909 169 10 0 279 337 152 172 165 96 94 2000 3,254 869 840 30 58 36 1,597 1,178 283 79 0 161 204 102 226 221 138 136 2011 5,559 865 837 28 102 82 3,721 2,771 488 358 0 103 324 180 256 251 187 185 2020 6,331 785 757 29 106 82 4,409 3,114 639 525 0 91 368 197 308 290 264 262 2025 6,723 774 747 27 113 87 4,713 3,219 797 551 0 82 383 195 335 309 322 320 (百万トン) 年平均伸び率(%) … 2040 11/00 25/11 40/25 40/11 … 8,095 5.0% 1.4% 1.2% 1.3% … 730 0.0% -0.8% -0.4% -0.6% … 704 0.0% -0.8% -0.4% -0.6% … 26 -0.6% -0.3% -0.2% -0.2% … 140 5.2% 0.7% 1.5% 1.1% … 108 7.6% 0.4% 1.5% 1.0% … 5,709 8.0% 1.7% 1.3% 1.5% … 3,491 8.1% 1.1% 0.5% 0.8% … 1,401 5.1% 3.6% 3.8% 3.7% … 633 14.7% 3.1% 0.9% 2.0% … 0 -6.8% 0.0% 0.0% 0.0% … 72 -4.0% -1.6% -0.8% -1.2% … 414 4.3% 1.2% 0.5% 0.9% … 185 5.3% 0.6% -0.4% 0.1% … 406 1.1% 1.9% 1.3% 1.6% … 371 1.2% 1.5% 1.2% 1.4% … 623 2.8% 4.0% 4.5% 4.2% … 620 2.8% 4.0% 4.5% 4.3% 実績は IEA3), 予測はエネ研アウトルック 6)をもとに作成 21 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 表 3-4. 地域別の原料炭生産量予測 世界計 北米 米国 カナダ 中南米 コロンビア アジア 中国 インド インドネシア 中東 OECD欧州 非OECD欧州 ロシア アフリカ 南ア オセアニア 豪州 出所) 1980 567 132 118 14 12 1 97 68 18 0 1 128 145 12 11 40 40 1990 610 121 93 28 16 2 124 86 36 0 1 93 180 85 10 9 65 65 2000 488 82 54 28 15 2 146 123 22 1 1 45 90 51 4 3 105 104 2011 982 111 82 29 18 4 578 509 44 3 1 25 98 65 2 2 149 147 2020 1,035 106 77 29 5 3 619 541 51 6 1 18 109 80 21 2 157 155 2025 1,027 103 72 30 6 3 601 514 59 8 1 14 115 86 24 2 164 162 (百万トン) 年平均伸び率(%) … 2040 11/00 25/11 40/25 40/11 … 976 6.6% 0.3% -0.3% 0.0% … 94 2.7% -0.5% -0.6% -0.6% … 60 3.8% -0.9% -1.2% -1.0% … 34 0.4% 0.1% 0.8% 0.5% … 7 2.0% -7.9% 1.1% -3.4% … 4 7.4% -1.0% 1.1% 0.1% … 534 13.3% 0.3% -0.8% -0.3% … 409 13.8% 0.1% -1.5% -0.8% … 86 6.5% 2.1% 2.5% 2.3% … 14 14.9% 7.9% 3.7% 5.7% … 1 0.0% 0.6% -0.2% 0.2% … 3 -5.1% -4.3% -9.7% -7.1% … 126 0.8% 1.2% 0.6% 0.9% … 98 2.3% 2.0% 0.9% 1.4% … 30 -4.9% 18.2% 1.5% 9.3% … 2 -5.9% 1.1% 1.0% 1.0% … 181 3.2% 0.7% 0.7% 0.7% … 179 3.2% 0.7% 0.7% 0.7% 実績は IEA3), 予測はエネ研アウトルック 6)をもとに作成 3.3.3 石炭貿易フロー 構築した LP モデルを用いて、2025 年および 2040 年の一般炭・原料炭の貿易フローを算 出した。予測に際しては、これまでに示した石炭の需要・生産量を満たすことはもちろん のこと、今後予定されている生産案件や資本の注入状況などを勘案した。 一般炭 一般炭の貿易量およびフローを、表 3-5~表 3-6 および図 3-7~図 3-8 に示す。一般炭の貿易 量は、2011 年の 8 億 5,700 万トンから 2025 年に 11 億 800 万トン、2040 年に 14 億 1,700 万 トンに拡大する。環境問題等の影響で一般炭需要が縮小する OECD 欧州に着目すると、こ れまで欧州向け輸出の主力であったロシア、コロンビア、米国、南アフリカのうちコロン ビアからの輸出量が減少する。これはコロンビアの欧州向け市場における相対的な競争力 が低下するというよりは、コロンビアから需要が増加する中南米に対して輸出した方が、 輸送費用が安価で済むためであろう。また、南アフリカやモザンビークの輸出量が増加し、 需要が増加するインドやアフリカ、中東に輸出される。2025 年から 2040 年にかけて輸出量 がほぼ横ばいで推移するロシアは、欧州への輸出量が減少し、反対にアジア向けが増加す る。 アジア市場では、インドネシアからの輸出量が国内需要の増加、石炭資源の有効利用政 策から 2025 年頃をピークに徐々に減少する。 このため、増大するアジアの需要に対しては、 豪州が輸出量を大きく増加させる。豪州の輸出量は 2025 年に 2011 年の 1.5 倍、2040 年に同 22 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 2.5 倍以上となる。実際、インドや中国は豪州で新規炭鉱開発への投資を行っており、これ らの炭鉱からの輸入が拡大するだろう。 表 3-5. 一般炭の貿易量(2025 年) To (百万トン) 北米 米国 中南米 5.3 2.4 OECD 欧州 From 5.0 40.3 中東 欧州 中国 インド 韓国 その他 ・台湾 アジア 0.6 3.1 1.2 2.1 0.3 1.4 5.0 32.8 0.7 1.5 1.0 81.3 14.5 20.2 0.6 13.0 ロシア 60.7 南アフリカ 13.6 モザンビーク 5.5 10.2 7.2 3.0 0.1 1.8 0.8 14.2 39.7 豪州 5.0 1.9 14.0 15.0 3.0 他アジア 0.0 その他 0.8 0.0 7.2 13.0 57.7 151.5 122.3 7.0 2.2 89.3 12.8 2.6 インドネシア 45.0 12.7 中国 注) 日本 30.9 カナダ コロンビア アフリカ 非OECD 0.8 5.7 8.3 27.6 100.2 106.9 68.0 83.9 405.7 61.3 31.7 42.5 57.6 45.9 258.9 1.1 39.0 3.5 1.5 0.1 46.0 111.1 209.0 207.1 157.2 132.1 1,108 25.6 10.3 25.5 33.6 33.7 その他は、コロンビアの除く中南米、ロシアを除く非 OECD 欧州などが含まれる。 輸出側の他アジアは、モンゴル、ベトナムなどが含まれる。 非OECD欧州 33.6Mt OECD欧州 151.5Mt 7.2Mt ロシア 122.3Mt 20.2Mt 60.7Mt OECD欧州 151.5Mt 5.5Mt 5.0Mt 他アジア 46.0Mt 39.0Mt 14.5Mt 2.1Mt 14.2Mt 中国 8.3Mt 2.6Mt 日本 111.1Mt 30.9Mt 米国 45.0Mt 3.1Mt 中東 3.5Mt 中国 25.5Mt 14.0Mt 5.7Mt 209.0Mt 3.0Mt 韓国・台湾 北米 3.0Mt アフリカ 157.2Mt 13.0Mt 27.6Mt 10.3Mt インド 100.2 68.0Mt 10.2Mt 207.1Mt 12.7Mt インドネシア 106.9 405.7Mt 61.3Mt 57.6Mt 39.7Mt 13.6Mt モザンビーク 42.5Mt 12.8Mt 13.0Mt 31.7Mt 83.9Mt 豪州 15.0M 7.0Mt 258.9Mt 南アフリカ 2.2Mt 89.3Mt 45.9Mt 他アジア 132.1Mt 注) カナダ 5.0Mt 32.8Mt 5.3 5.0 40.3 コロンビア 81.3Mt 2.4 中南米 57.7Mt 200 万トン以上のフローを記載。図中凡例は図 2-14 に同じ。メキシコは“中南米”に含まれる。 図 3-7. 一般炭の貿易フロー(2025 年) 23 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 表 3-6. 一般炭の貿易量(2040 年) To (百万トン) 北米 米国 OECD 中南米 4.8 欧州 9.9 カナダ From コロンビア 5.2 58.1 アフリカ 非OECD 中東 欧州 日本 中国 インド 韓国 その他 ・台湾 アジア 21.5 0.6 3.0 2.5 2.1 0.3 1.4 6.3 0.6 1.5 1.0 100.8 12.5 22.2 0.6 13.0 29.3 ロシア 52.0 南アフリカ 10.0 5.0 10.8 12.2 15.7 0.1 1.7 モザンビーク 8.8 2.8 0.8 17.7 44.3 豪州 5.0 40.0 13.0 他アジア 19.0 10.1 注) 108.0 137.8 108.0 5.7 8.5 25.0 84.7 98.4 58.3 90.3 365.2 59.5 51.8 196.1 58.8 150.0 569.2 0.9 32.5 3.3 1.4 104.6 209.0 354.9 152.1 0.8 その他 5.2 11.8 2.8 3.5 123.9 7.0 10.0 中国 インドネシア 43.4 38.9 22.2 17.3 46.2 31.8 41.2 245.5 1,417 その他は、コロンビアの除く中南米、ロシアを除く非 OECD 欧州などが含まれる。 輸出側の他アジアは、モンゴル、ベトナムなどが含まれる。 非OECD欧州 31.8Mt OECD欧州 137.8Mt 8.8Mt ロシア 123.9Mt 52.0Mt 12.5Mt 22.2Mt OECD欧州 137.8Mt 5.0Mt 中東 46.2Mt 32.5Mt 3.5Mt 3.3Mt 5.0Mt 5.0Mt アフリカ 17.3Mt 10.0Mt 13.0Mt インド 12.2Mt 15.7Mt 354.9Mt 2.8Mt 98.4Mt 10.0Mt 44.3Mt モザンビーク 196.1Mt 11.8Mt 13.0Mt 90.3Mt 7.0Mt 南アフリカ 5.2Mt 108.0Mt 他アジア 日本 104.6Mt 韓国・台湾 152.1Mt 北米 10.1Mt 21.5Mt 4.8Mt 5.2Mt 58.1Mt インドネシア 365.2Mt 59.5Mt 9.9Mt 59.6Mt 中南米 108.0Mt 51.8Mt 豪州 569.2Mt 40.0Mt 150.0Mt 図 3-7 に同じ 図 3-8. 一般炭の貿易フロー(2040 年) 24 29.3Mt 米国 43.4Mt 3.0Mt 2.8Mt 5.7Mt 25.0Mt 83.2Mt 58.3Mt 245.5Mt 注) 中国 8.5Mt 中国 209.0Mt カナダ 6.3Mt 2.1Mt 17.7Mt 他アジア 38.9Mt 10.8Mt コロンビア 100.8Mt 5.0Mt IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 原料炭 原料炭の貿易量およびフローを、表 3-7~表 3-8 および図 3-9~図 3-10 に示す。原料炭の貿 易量は、2011 年の 2 億 8,300 万トンから 2025 年に 3 億 2,480 万トン、2040 年に 3 億 5,690 万トンに拡大する。 2011 年から 2025 年にかけては、需要増を背景に中国とインドで輸入量が増加する。これ に対し、生産国側ではロシア、モザンビーク、豪州が生産を拡大し、ロシアと豪州が中国 に、モザンビークがインドに、それぞれ原料炭輸出量を増加させる。新規の輸出国である モザンビークは、インドのほか、南米(ブラジル)や日本へ原料炭を輸出する。またインドネ シアでは中央カリマンタンの原料炭が開発され、日本を含むアジアの原料炭需要国へ輸出 される。 2025 年から 2040 年にかけては、中国が原料炭需要の減少を背景に輸入量を減らすのに対 して、インドは継続して輸入量が増加する。モンゴルから中国への輸出量が増加すること、 日本の需要が減少することから、豪州から中国および日本への輸出量は減少する。その結 果豪州からインド向けの輸出量が顕著に増加する。 表 3-7. 原料炭の貿易量(2025 年) To (百万トン) 北米 米国 3.6 カナダ 1.0 コロンビア 中南米 5.3 OECD 欧州 中東 欧州 日本 中国 インド 5.0 韓国 その他 ・台湾 アジア 4.0 6.0 6.0 56.8 4.8 6.6 9.5 8.0 30.0 11.1 2.0 6.0 3.0 25.1 1.9 2.0 1.3 7.0 2.0 22.3 0.6 3.0 南アフリカ 0.3 モザンビーク 3.0 計 27.0 0.6 ロシア From アフリカ 非OECD 2.0 2.1 0.3 1.0 中国 0.5 インドネシア 2.0 0.5 2.0 1.0 1.9 7.3 37.0 33.4 38.8 23.5 3.2 159.0 豪州 5.3 15.0 2.9 モンゴル 1.5 20.4 その他 20.4 1.5 4.6 注) 1.0 14.3 51.8 5.2 1.0 14.5 1.5 54.1 77.0 52.8 44.5 その他は、コロンビアの除く中南米、ロシアを除く非 OECD 欧州などが含まれる。 25 5.1 324.8 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 非OECD欧州 14.5Mt 11.1Mt OECD欧州 51.8Mt ロシア 25.1Mt 3.0Mt 中国 77.0Mt 中東 1.0Mt アフリカ 5.2Mt インド 52.8Mt 2.1Mt 6.6Mt 7.0Mt 2.0Mt 38.8Mt 27.0Mt 米国 56.8Mt 4.5Mt 6.0Mt 6.0Mt 韓国・台湾 44.5Mt 6.0Mt 3.6Mt 北米 4.6Mt 2.0Mt 2.0Mt モザンビーク 22.3Mt コロンビア 0.6Mt 5.3Mt インドネシア 7.3Mt 37.0Mt 23.5Mt 中南米 14.3Mt 33.4Mt 2.9Mt 豪州 159.0Mt 南アフリカ 0.3Mt 注) 日本 54.1Mt 2.0Mt 2.0Mt 5.0Mt カナダ 30.0Mt 9.5Mt 中国 1.5Mt 20.4Mt 15.0Mt 3.0Mt 3.0Mt 他アジア 20.4Mt OECD欧州 51.8Mt 2.0Mt 4.8Mt 2.0Mt 6.0Mt 3.0Mt 5.3Mt 3.2Mt 他アジア 5.1Mt 図 3-7 に同じ 図 3-9. 原料炭の貿易フロー(2025 年) 表 3-8. 原料炭の貿易量(2040 年) To (百万トン) 北米 中南米 OECD 欧州 中東 欧州 日本 中国 インド 韓国 その他 ・台湾 アジア 米国 3.1 6.0 21.7 2.8 4.2 5.7 5.2 48.6 カナダ 1.0 1.8 8.8 4.5 7.5 2.0 8.0 33.6 15.3 2.0 5.0 3.0 28.3 0.0 3.0 0.5 2.5 32.8 コロンビア 0.4 ロシア 0.4 3.0 南アフリカ From アフリカ 非OECD 0.2 モザンビーク 3.8 3.8 2.1 0.2 2.0 中国 0.4 インドネシア 1.8 豪州 5.9 20.0 4.4 0.0 0.0 30.7 モンゴル 0.9 31.6 1.3 4.4 1.5 3.7 11.4 52.9 23.0 7.6 176.0 23.2 その他 0.5 4.1 注) 15.1 18.4 23.2 0.6 57.3 6.8 2.0 16.0 1.1 45.2 72.0 80.0 44.1 その他は、コロンビアの除く中南米、ロシアを除く非 OECD 欧州などが含まれる。 26 11.3 356.9 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 非OECD欧州 15.9Mt 15.3Mt OECD欧州 57.3Mt ロシア 28.3Mt 3.0Mt 他アジア 23.2Mt OECD欧州 57.3Mt アフリカ 6.8Mt 2.1Mt 3.8Mt 5.7Mt 2.5Mt インド 80.0Mt 4.4Mt 15.1Mt モザンビーク 32.7Mt インドネシア 11.4Mt カナダ 33.6Mt 2.8Mt 7.5Mt 韓国・台湾 44.1Mt 4.4Mt 他アジア 11.3Mt 21.7Mt 4.5Mt 8.0Mt 5.2Mt 米国 48.6Mt 3.1Mt 北米 4.1Mt 6.0Mt 30.7Mt 中南米 18.4Mt 31.6Mt 豪州 176.0Mt コロンビア 0.4Mt 23.0Mt 52.9Mt 3.7Mt 南アフリカ 0.2Mt 注) 3.0Mt 5.0Mt 2.0Mt 2.0Mt 日本 45.2Mt 中国 1.3Mt 中国 72.0Mt 中東 2.0Mt 3.8Mt 12.5Mt 3.0Mt 23.2Mt 20.0Mt 8.8Mt 2.0Mt 5.0Mt 3.8Mt 5.9Mt 7.6Mt 図 3-7 に同じ 図 3-10. 原料炭の貿易フロー(2040 年) 4. おわりに 本稿では、過去の石炭需給実績を炭種、地域別に詳述した上で、2040 年までの石炭需給 を予測した。さらに、線形計画法を応用した石炭貿易モデルを構築し、2025 年および 2040 年の石炭貿易フローを合わせて予測した。 気候変動問題や二酸化炭素排出量への関心の高まりとは対照的に、世界の石炭消費量は 継続して増加してきた。とりわけ 2002 年から 2012 年までは、アジアにけん引される形で、 また年平均 4.6%という極めて大きな伸び率で、発電用途の一般炭を中心に需要量が増加し てきた。この傾向は、需要増加の中心地を中国からインドへと変えて、2040 年まで継続す るだろう。多くの OECD 諸国では石炭需要が減少し、また中国の需要量がピークアウトす ることから、世界の 2040 年までの年平均増加率は 1.0%まで緩和されるものの、発電用途の 一般炭需要は増加し続ける。今後 2040 年までに予期される石炭需要の増分は、2002 年から 2012 年までの 10 年間における増分に比肩する。 多くの国において、増大する需要を国内生産のみで賄うことは困難である。そのため、 石炭貿易量は増加していく。2040 年の貿易量は 2011 年から 65%程度増加する。また、地域 に応じて需要の変化が異なることから、将来の貿易フローは、現時点のものとは異なるだ ろう。モザンビークからインド、ロシアからアジア、コロンビアからその他中南米など、 新たな主要石炭フローが創出される。一方で、現在の主要輸出国であるインドネシアは、 国内需要拡大と石炭資源の保護・有効利用の観点から輸出量をあまり増やさない。 27 IEEJ:2014 年 7 月掲載 禁無断転載 本研究で構築した石炭貿易モデルは、一般炭と原料炭を区分し、線形計画法を用いて世 界合計の総費用を最小化する貿易フローを算出するモデルである。それゆえ、単独の国や 地域を主体とした部分最適や、品質の違いによる選好などを考慮することはできない。そ れでも、需給量の整合を担保しながら、世界の石炭貿易の一つの姿を定量的に示した点は 本研究の特長の一つである。 貿易フロー予測により、わが国にとっては、中印における需要増や生産国での政策転換 を背景に、豪州(一般炭)やインドネシア(原料炭)などの従来の主要な輸入先からの輸入量お よびシェアが減少すること、その一方で新たな輸入先が出現し得ること(モザンビーク、原 料炭)が示唆された。本研究が、他国の需給動向がわが国の貿易フローに強く影響を与え得 ることを再確認する、あるいは将来の石炭資源の安定確保を検討する契機として役立つこ とを期待したい。 参考文献 1) IEA, “Energy Balances of OECD Countries 2013” (2013) 2) IEA, “Energy Balances of Non-OECD Countries 2013” (2013) 3) IEA, “Coal Information 2013" (2013) 4) IEA, “Energy Statistics of OECD countries 2013" (2013) 5) IEA, “Energy Statistics of Non-OECD countries 2013" (2013) 6) 一般財団法人 日本エネルギー経済研究所「アジア/世界エネルギーアウトルック 2013」 (2013) 7) Worldscale Association, “NEW WORLDWIDE TANKER NOMINAL FREIGHT SCALE “WORLDSCALE”” (2013) 8) 一般社団法人 日本鉄鋼連盟「鉄鋼統計要覧」 お問い合わせ:[email protected] 28