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北近畿タンゴ鉄道安全報告書

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北近畿タンゴ鉄道安全報告書
北近畿タンゴ鉄道安全報告書
(2010年度版)
架替前
架替後
宮津線
円山川橋りょう架替工事
北近畿タンゴ鉄道からの御挨拶
日頃から、北近畿タンゴ鉄道に対して格別のご理解とご支援をいただき、誠にあ
りがとうございます。
この報告書は、鉄道事業法第19条の4の規定に基づき、KTRにおける安全の
確保に向けた取組みなどを振り返り、今後の対策に生かすとともに、安全対策の状
況を広くご理解いただくために取りまとめたものです。
本報告書に対するご意見やご助言をいただければ幸いです。
今日、KTRの経営は極めて厳しい状況にあります。
平成5年度に300万人を超えていた利用者の数が、年々減尐を続け、近年は、
200万人前後で推移しています。
宮津線転換開業20周年に当たる平成22年度は沿線の皆さんのご協力によっ
て、203万人に回復してきました。今後とも、沿線自治体等と連携して更なる利
用促進に取り組んでいきたいと思います。
一方、近年の厳しい経営状況のもと、車両などに対する設備投資もままならない
状況です。また、技術部門では社員の世代交代の時期を迎え、ベテランの技術力を
若手に円滑にバトンタッチしていくことが喫緊の課題です。
そうした状況のもと、車両の劣化や技術力の低下によって列車事故が発生するこ
とを絶対に避けなければなりません。掛け声だけの「安全」、スローガンだけの「安
全」に終わることなく、「安全」がKTRの「文化」として社内に浸透し、定着し
ていくことが大切であると考えています。
このため、本年3月には「安全対策監」を設置し、現場の不安や諸課題を調査・
点検のうえ、必要な安全対策を企画・立案し、日常的な安全指導に当たることとし
ました。
尊い人の命を預かる鉄道事業においては、安全確保が経営の基本であるとの認識
のもと、平成18年度に制定した「安全管理規程」を全ての社員に徹底し、安全を
最優先する意識が社内にしっかりと根付いていくよう、これまでの取り組みを検証
しながら、全社を挙げて安全対策の一層の強化に努めてまいります。
今後とも、「沿線の皆様に親しまれ、地域に貢献できる鉄道」を目指して努力を
重ねてまいりますので、よろしくお願いいたします。
北近畿タンゴ鉄道株式会社
代表取締役社長 大 槻
茂
22年度基本方針と安全目標
1 基本方針
当社は、「安全に関する基本的な方針」を次のように掲げ、社長以下社員全員に
「安全に係る行動規範」として周知・徹底しております。
(1)一致協力して輸送の安全の確保に努めます。
(2)輸送の安全に関する法令及び関連する規程 (本規程を含む)をよく理解する
とともに、これを遵守し、厳正忠実に職務を遂行します。
(3)常に輸送の安全に関する状況を理解するよう努めます。
(4)職務の実施に当たり、推測に頼らず確認の励行に努め、疑義のある時は最も
安全と思われる取扱いをします。
(5)事故、事故の恐れのある事態、災害その他輸送の安全確保に支障を及ぼす恐
れのある事態(以下「事故・災害等」という。)が発生したときは、人命救助
を最優先に行動し、速やかに安全適切な処置をとります。
(6)情報は漏れなく迅速、正確に伝え、透明性を確保します。
(7)常に問題意識を持ち、必要な変革に果敢に挑戦します。
2 安全目標
当社が、19年度に策定した経営活性化(再生)5カ年計画の中で「安全運行
の維持・強化」として、
『責任事故ゼロ(15年連続)』を目指して、安全風土の
確立と安全設備整備計画の推進に努めているところです。
鉄道事業の最大の使命である安全な運行を維持します。
責任事故
ゼロ(15年連続)
~安全風土の確立と安全設備整備計画の推進~
内
容
区 分
項
目
定 量 的 列車事故(衝突・脱線・火災) 乗客の死傷者を伴う事故を5年間発生させない。
な目標 踏切障害事故
5年間の発生件数を3件以下とする。
安全風土を確立するためには、「安全」最優先への社員の意識改革が不可欠であ
り、23年3月から、専任の「安全対策監」を設置して、現場における安全対策の
点検を行うとともに、日常的な安全指導を強化してきました。
22年度事故等の発生状況とその再発防止措置
1 鉄道運転事故
安全な運行への設備投資は鉄道事業における当然の責務と位置づけ、国・府
県・沿線市町の支援を得て、閉そく装置の更新(電子閉そく装置の更新)やA
TS-P3の搭載、コンクリート柱化等に取組み、所要の設備投資を行い、輸
送の安全確保の推進に努力してまいりました。
今後も、一層の安全を確保するため必要な安全対策を講じてまいります。
平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度
事故件数
2(2)
1
2(1)
1(1)
3(1)
死傷者
2
1
1
0
2
うち死亡者
0
1
1
0
1
( )内は踏切障害事故件数の再掲で、いずれも宮津線内で発生。
2 輸送障害
部内原因については、ヒューマンエラーによるものが9件(前年6件)発
生し、その内のドア扱いに関わる事例が2件、信号扱いに関わる事例が3件
でした。また、車両故障は13件(前年6件)発生しました。
今後ともヒューマンエラーを防止するために列車添乗等により更に基本の
徹底に努めてまいります。また、車両故障の減尐に向けて車両の計画的な修理
を進めるとともに、更に予兆管理を強化していきたいと考えております。
災害原因では、大雨や大雪による輸送障害が各3件発生いたしましたほか、
由良川橋りょうの強風による運転の見合わせなど、運転休止又は30分以上の
遅れを伴う輸送障害が全体では15件あり、ご利用のお客様には大変御迷惑を
お掛けしました。
原 因 別 平成 22 年度 平成 21 年度 増 減 30分以上の遅延又は運転休止の件数
27
18
9 9件(内7件が車両故障)
部内原因
10
7
3
鉄道外原因
※494
※398
96 6件(大雨-3件・大雪-3件)
災害原因
0
0
0
死
傷
531
423 108
合
計
※災害原因の内(96%)は鹿・猪等の小動物との衝突によるもの(大部分が数分間の遅延)
3
インシデント
平成22年度のインシデントの発生はありませんでした。
4
行政指導等
平成22年8月に国土交通省(近畿運輸局)の保安監査を受験し
(ア)安全対策委員会について、ヒューマンエラーの再発防止対策の検討が
実施されず、事故が繰り返し発生していることから、各要因の再発防
止対策等を検討し、効果の検証と見直しをすること。
(イ)車両検査の管理 KTR001 形及び、KTR8000 形車両の重要部検査及び
全般検査に対して、「内燃動車整備実施基準規程」で定める総合検査
及び試運転の結果について、適切に管理すること。
(ウ)列車等の運転に直接関係する作業を行う係員に対する教育・訓練につ
いて、教育内容、結果等の記録を残し、係員の資質を適切に管理でき
るように仕組みを構築すること。
以上3件の勧告を受け、以下の改善措置を講じました。
○改善措置
(ア)について、安全対策委員会で P・D・C・A を回す体制とする。
P―最初の安全対策委員会で、原因・背後要因を掘り下げて検討する。
D―対策を関係者に徹底し共に実行状況を把握する。
C―調査の実施。(問題点の抽出・効果の検証)
A―上記取り組みの結果必要があれば安全対策委員会により対策の見
直しを行う。
(イ)について、特急車両の各検査実施後の試運転に先立ち、後藤総合車両
所で総合検査として、・床上機器の動作確認 ・床下機器の動作確認
と漏れ確認 ・内燃動車整備実施基準規程に定める各項目について良
好であることを確認したうえ、書面で報告を当社引取検査員が受けた
後、検査結果に異常がないと認めた場合は、引取検査員立ち会いの下、
試運転を行う。
また、引取検査員は、・総合検査結果報告書 ・構内試運転結果報
告書 ・落成車両判定表を受け取り、検修助役が他の検査成績表と共
に保管することとします。
(ウ)について、
「運転関係社員の運転保安に関する教育及び訓練実施要領」
を作成し、これにより記録を行い、運転関係社員の資質の管理を行う
こととします。
22年度輸送の安全確保のための取組み
1 ハード対策
鉄道施設の整備は、輸送の安全確保の基盤であり、また、平成16年の台
風 23 号の被害などから国土交通省河川激甚災害対策特別緊急事業の一環と
して2007年から実施してまいりました「円山川橋りょう架替工事(橋長
309.4mに架け替え、橋桁も約3mこう上した)」も今年度末に無事完
了し、また、国・府県・沿線市町の支援を得て、閉そく装置の更新(電子閉
そく装置の更新)やATS-P3の搭載、コンクリート柱化など所要の設備
投資を行い、安全確保の推進に取り組みました。
{22年度安全対策の実施状況}
項目
実施内容
円山川橋りょう 設置箇所 但馬三江~豊岡
架け替え
事業費
約74億円(全工事費用)
駅装置 野田川~豊岡間 7駅
電子閉そく装置 設置箇所
車載器 68台 閉そく無線駅装置 1駅
の更新
事業費
8,100万円
西舞鶴~四所間
女布踏切
踏切保安設備更 設置箇所
丹後神崎~丹後由良間 神崎大踏切
新
事業費
1,650万円
軌道道床の砕石 設置箇所 西舞鶴~但馬三江間 235m
化
事業費
2,020万円
トンネル防護工 設置箇所 久美浜~但馬三江間 下の宮T11m
新設
事業費
1,080万円
コンクリート柱 設置箇所 西舞鶴~丹後由良間 80本
化
事業費
2,540万円
ATS-P3搭 設置箇所 Dis 4編成 8両
載
事業費
1億5,200万円
法面防護・列車 設置箇所 丹後由良~栗田間・列車無線制御器
無線改良
事業費
890万円
全事業費
約3億1,480万円(円山川工事費用除く)
下の宮トンネル
神崎大踏切
2 ソフト対策
(1)安全対策委員会を年6回開催しました。昨年10月下旬に保安監査に
かかる「勧告」を受けたことを踏まえ、安全対策委員会での協議事項に
ついて、従来の結果報告を主とする内容を改め、事前対策の検討を重視
することとしました。
(2)専任の「安全対策監」を設置し、現場の心配事や安全対策上の課題を
把握するとともに、具体的な安全対策を企画立案し、日常的な安全指導
に生かしています。
(3)ヒヤリハット等事故に繋がる恐れのある事象は必ず報告を求め、原因
を究明するとともに、対策を検討の上、各箇所に周知することによって
再発防止を図っています。
(4)触車事故防止の具体的取組みとして、直轄作業では、日々の作業前ミ
ーティング、線路立ち入り前の運行状況の確認、早期退避、専任列車見
張員の配置、ダイヤ消しの実施を励行するとともに、業者施行の場合は、
施行打合せ票による確実な打合せと、打合せ内容の遵守を指導していま
す。
(5)幹部社員も安全運転の責任を共有するため、積極的に前頭添乗(運転
士の隣で信号等を確認)を行っています。
(6)万一の事故発生時に被害を最小限に止めるため、JR福知山支社との
合同訓練(福知山消防署、福知山警察署、福知山市民病院)に参加し、
また、独自で与謝野消防署、宮津警察署との合同訓練を実施しました。
(与謝野消防署、宮津警察署との合同訓練の様子)
3 事故情報等の活用
運輸安全委員会からの指導文書及び同業他社の事故情報等を収集し、自社の
安全確保に活用するように努めています。
安全管理体制
平成18年3月の鉄道事業法改正を受けて「安全管理規程」を制定し、そ
の後一定の見直しを行い整備してまいりました。経営トップから現場第一線
の社員まで「安全に関する情報を共有化」し、日常的な安全指導などを通じ
て社内の安全文化を構築してまいります。
1 輸送の安全確保に関する管理体制
社長を最高責任者とし、輸送の安全確保に関する業務を統括管理する安全
統括管理者、安全に関する調査・点検、企画立案、日常的指導に当たる安全
対策監をはじめ、各管理者の責任体制を明確化した安全管理体制を推進して
います。
○安全管理体制
社
長
【安全統括管理者】
運行統括本部長
安全対策監
運輸部長
【安全対策推進管理者】
経営企画部長
企画総務課長
輸送課長
【運転管理者】
輸送担当部長
【車両管理者】
運輸部 参与
【乗務員指導管理者】
運転区長
宮津管理駅長
西舞鶴運転区長
福知山運転支区長
豊岡運転派出所長
【施設管理者】
工務部長
工務課長
宮津工務区長
2 主な管理者の役割
役職
社
長
運行統括本部長
(安全統括管理者)
役割
全社的な安全管理体制の確保及び安全意識の徹底
を図り、輸送の安全の確保に関する最終責任を負う。
輸送の安全の確保に関する業務を統括する。
社長、運行統括本部長の命を受け、全社的な安全対
策を企画立案、推進する。
輸送担当部長
安全統括管理者の指揮の下、運転に関する事項を
(運転管理者)
統括する。
運転区長
運転管理者の指揮の下、乗務員の資質(適正、知
(乗務員指導管理者) 識及び技能)の維持に関する事項を管理する。
工務部長
安全統括管理者の指揮の下、鉄道施設に関する事
(施設管理者)
項を統括する。
運輸部参与
安全統括管理者の指揮の下、車両に関する事項を
(車両管理者)
統括する。
経営企画部長
事故防止に関する事項、輸送の安全の確保に必要
(安全対策推進管理者) な設備投資、人事、財務に関する事項を統括する。
安全対策監
23年度輸送の安全確保の具体的取組み
平成23年度は、下記の「安全重点施策」を実効あるものとするため、ソフト
面の取り組みの主眼として、安全対策監による取組みを一層強化し、安全への取
組みが形骸化することのないよう、「定められたことを遵守し確実に実行する」
「プロ意識に徹しプロとしての業務に心掛ける」「悪いことを悪いと言える職場
づくりを進める」ことを目指して日常的な安全指導に務め「安全風土の構築」に
向けて取り組んでまいります。
また、社員の教育訓練等に当たる「人材育成センター(仮称)」の設置を検討
し、技術継承、安全教育の強化と社員の意識改革に努めます。
ハード面では経営活性化5カ年計画の最終年度を前に、21年から引き続き実
施してまいりました「電子閉そく装置の更新」が完了しました。今後は、「安全
輸送設備等整備事業」の補助制度を活用し安全確保に取り組んでまいります。
運転事故防止等につきましても、上記に関するものの他、安全重点施策の実施
により運転事故防止へ向けて取り組んでまいります。
{23年度安全重点施策}
項
目
職場の風土変革
に向けた取組み
(安全文化の構築)
ヒューマンエラー
防止への取組み
ソフト
安全情報の事故
防止への 活用 の充
実
内部監査の充実
タイムリーな「安
全啓発」等の推進
教育、訓練の充実
労働災害の防止
木柱のコンクリ
ート化
障害物検知装置
の新設
警報機、遮断機等
の更新
ハード
道床の砕石化
鋼橋りょう(鋼
桁)の改良
踏切道の拡幅
(歩道設置)
CTCの更新に
向けた調査
合
計
具
体
策
・安全対策監の取組強化
・幹部社員との意見交換
・他部門とのコミュニケーションの推進等
(本社・運行本部・各現業機関内等)
・情報の共有化
・社員の意見、希望の把握
・幹部社員の前頭添乗による責任の共有化
・基本の徹底の推進
・乗務員指導担当者の活用(フォロー教育)
・個人事故防止対策の共有化
・
「ヒヤリハット」
「事故の芽」情報の収集、再発防
止に向けた事例の教材化と活用
・安全情報の分類、分析、評価の充実、及び対応措
置の検討実施。(基本の徹底)
・内部監査の実施
・交通安全運動
・踏切事故防止運動
・人材育成センター(仮称)の設置、運営
(年間の教育訓練計画の策定と実行、若手社員に
対する技術の伝承など)
・列車事故防止訓練等
・請負業者への線区特情教育の実施
・触車事故防止教育の実施
設置箇所
西舞鶴~宮津間
70本
2,240万円
設置箇所
西舞鶴~四所間公文名、宮津踏切
600万円
設置箇所
栗田~宮津間
郡是踏切
630万円
設置箇所
設置箇所
設置箇所
設置箇所
四所~但馬三江間 451m
3,535万円
野田川~丹後大宮間 第一谷内
橋りょう
900万円
栗田~宮津間 宮の谷踏切
7,400万円
宮福線
1億5,305万円
お客様及び沿線の皆様との連携
1 お客様からのご意見
当社に対するあらゆるご意見を電話やメールでお受けするとともに、当社
ホームページにお客様参加型のポータルサイトを開設し、広範な「お客様の
声」を安全対策等に活かせるように検討しています。
2 お客様及び沿線の皆様とともに高める安全
①踏切事故防止キャンペーン
ドライバーや歩行者等地域の皆様に対して、踏切で守るべきルールを再
確認していただくとともに、トラブルに遭遇した際の対処法を広く周知す
ることにより、踏切事故の防止を図ることを目的とした「踏切事故防止キ
ャンペーン」を毎年実施しています。
②「こども110番の駅」の取組み
地域の子供は地域で守り、子供達が安心して暮らせる環境を確保する取
組みとして、引き続き日本民営鉄道協会と連携し「こども110番の駅」
を実施しています。
「こども110番の駅」では、目印となるステッカーを見て、こどもが
駅に助けを求めてきた場合に、こどもを保護し、こどもに代わって110
番通報を行うなどの対応をとります。
安全報告書へのご意見の募集
安全報告書の内容や弊社の取組みについてご意見をお寄せ下さい。
電話:0773-24-2510
御連絡先
FAX:0773―24―2503
E-mail: [email protected]
本
社
(安全対策監)
◆
月~金
9:00~18:00
(祝日を除く)
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