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出題の意図

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出題の意図
2010(平成22)年度入学試験(B日程)既修者試験(憲法)
について
【出題趣旨】
この設問は、現在、法制審議会での民法改正の検討対処の1つになっている婚姻適齢の男
女区別(民法731)条および未成年者の婚姻に対する親の同意(民法737条)につい
て、その憲法適合性を考えようという趣旨である。前者の論点については、男女18歳に
統一する民法改正の答申が出されている(国会にはまだ提出されず審理に入っていない。
)
ことからわかるように、その問題点が指摘されている。
【採点のポイント】
(設問1)原告は、憲法14条1項にいう「性別による差別」の禁止にあたると主張でき
る。ここでは、婚姻適齢の男女区別(民法731)条が憲法14条に違反することを、平
等原則についての審査基準を使って、違憲であることを述べるとよい。
(事実評価(あてはめ)の例)
「性別による差別」なので、
「厳格な合理性」の基準(判断枠組み)を使って、事案にあて
はめるとよい。
たとえば、この区別の目的(立法理由)を検討して、区別目的は、明治民法の婚姻適齢
の区別(男性17歳、女性15歳)を受けついだもので、制定当時は、女性が中学を卒業
して、婚姻する事例も多かったこと、女性が身体的に出産などが可能になり、出産する事
例も多かったことなどから、この区別が定められてきたが、現在においては、もはやこの
立法理由は重要なものとはいえず、2歳の差は合理的なものとはいえない。したがって民
法731条は違憲である、と展開することができる。
この設問では、憲法14条違反、その審査基準、あてはめがきっちりと展開されている
か。この程度により加点・減点した。
(設問2)原告は、憲法13条違反を主張できる。憲法13条は幸福追求権を定めている
が、そこから派生する権利の1つとして「婚姻の自由」がある。その制約は、規制の目的
が重要なものであり、規制目的がその目的と実質的な関連性も有する場合にのみ規制が合
憲となるにすぎない。
(事実評価(あてはめ)の例)
民法737条1項にいう「親の同意」は、未成年者に対する保護を目的とするものであ
るが、成年年齢の改正(20歳から18歳へ)も議論されている今日、18歳になった少
年にまで親の同意を必要とする必要性はなく、規制目的は重要とはいえず、親の同意がな
ければ、婚姻できないのだから、規制の程度も相当大きな人権の制約にあたる。したがっ
て民法737条1項は違憲である。
この設問では、憲法13条違反あるいは24条違反、その審査基準、あてはめがきっち
りと展開されているか。この程度により加点・減点した。
(設問3)被告側の主張として、民法で法律婚主義をとっている以上、その婚姻適齢をど
うするか、未成年者の場合に親の同意を必要とするか、女性のみに再婚禁止期間をもうけ
るか、近親婚の禁止の範囲をどの程度にするか等は、家族の現状、社会通念に照らして、
立法府の裁量に委されており、裁量の範囲を著しく逸脱して、合理的でないことが明白な
場合に限って、違憲とされるものである。
夫が妻より2歳程度年長であること、女性が出産適齢に入る16歳くらいから婚姻する
事例がしばしばみられること等からして、男性18歳、女性16歳の差をもうけたとして
も、その目的は合理的なものである。また規制がもたらす制約も、男性が16歳から18
歳までは婚姻できないという程度のものにすぎない。したがって、裁量の範囲を著しく逸
脱して、合理的でないことが明白であるとはいえず、違憲とはいえない。
未成年者の婚姻に親の同意が必要だとする規制も、未成年者が未熟であって、その決定
に誤りがないようにというパターナリスチックな(父権的)目的による規制であって、立
法府の裁量の範囲を著しく逸脱して、合理的でないことが明白であるとはいえない限り、
違憲とはいえない。民法737条1項の規定は、民法の上の他の未成年者保護規定(親に
よる契約の取り消し、等)と同様に、合理的でないことが明白とはいえない。したがって、
民法731条および737条1項は違憲とはいえない。
この設問では、立法裁量論、合理性の基準、そのあてはめが展開されていれば、高得点
になる。
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