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滋賀県大BASSER`S 2012 年度 活動報告書

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滋賀県大BASSER`S 2012 年度 活動報告書
バ
サ
ー
ズ
滋賀県大BASSER'S
2012 年度 活動報告書
目次
はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
活動メンバー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
運営体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
活動概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
神上沼における活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
学内における活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
エクスカーション・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
外来魚駆除釣り大会補助・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
神上沼外来魚駆除釣り大会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
お魚探検隊 in 不飲川・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
水族展示・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
模擬店・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
魚粉作り・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
エイリアンバスター事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32
まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
1
はじめに
400 万年以上の歴史を持つ古代湖である琵琶湖は、そこにしか見られない数多くの生き物
が生息する世界的にも貴重な湖である。しかし、近年オオクチバスやブルーギルなどの外
来種の増殖によって古くから成り立ってきた湖の生態系が崩れてきている。琵琶湖では、
かつて多く生息していた在来魚類の数が極端に減少し、絶滅が危惧されている魚種も少な
くない。在来魚類の絶滅を防ぐためには、在来魚類にとって棲みやすく、その稚魚が生育
しやすい環境を守っていく必要がある。
琵琶湖に繋がっている小湖沼、いわゆる内湖ではコイ科在来魚類をはじめとした多くの
在来種の生息地および産卵場所となっている。しかし、そうした在来魚類にとって重要な
場所も外来魚によって脅威にさらされている。現在の内湖のこうした環境は、外来魚問題
に瀕している琵琶湖の縮図ともいえる。
バ
サ
ー
「滋賀県大BASSER
ズ
S」では、琵琶湖の内湖の一つである神上沼において、外来魚の駆
除を行ない、神上沼に生息する外来魚の数を減少させ、在来魚類に棲みやすい環境を作ろ
うとしている。そのため、神上沼周辺地域の人々中心に企業、行政と協力しながら、神上
沼の外来魚を駆除している。
また、それと並行して在来魚類のモニタリング調査を行なっている。内湖は季節によっ
て、魚の移動が顕著に見られる水域であるため、こうした内湖におけるモニタリング調査
を継続することで、外来魚駆除の効果と在来魚類の生息数の変化および季節変動を調べる
ことができる。この活動を継続し、神上沼での記録を積み重ねることで他の水域での研究
においても有用なデータになると考えられる。
神上沼ではオオクチバスやブルーギルといった外来魚だけでなく、ナガエツルノゲイト
ウという外来植物による問題も起きている。ナガエツルノゲイトウは滋賀県では神上沼で
初めて発見され、拡散が危惧されている。神上沼で定期的に活動している我々は、この外
来植物の拡散を防ぐという重要な役割も担っている。
さらに、地域の人々や学生たちに対し、琵琶湖での外来種問題についての啓発を行ない、
広く問題を認知してもらう試みも行なっている。これにより、地域と学生が一体となって
地域の水域環境管理を継続させ、失われつつある内湖の水域環境の回復に貢献することを
目標としている。
バ
サ
ー
「滋賀県大BASSER
ズ
S」では、琵琶湖およびその内湖における外来種問題に対して、学
生としてこの問題の解決のためにすべき役割を担い、遂行する。そして、琵琶湖の豊かな
環境を将来の世代に伝えることを活動の趣旨としている。
2
活動メンバー
活動顧問 浦部 美佐子 (環境科学部環境生態学科)
野間 直彦 (環境科学部環境生態学科)
代 表 曽我部 共生 (環境科学部環境生態学科)
副 代 表 小島 翼 (環境科学部生物資源管理学科)
活動コアメンバー 岡本 健吾 (環境科学部環境生態学科)
片岡 寛大 (環境科学部環境生態学科)
金田 拓也 (環境科学部生物資源管理学科)
北野 大輔 (環境科学部生物資源管理学科)
北山 善裕 (環境科学部生物資源管理学科)
佐竹 祐亮 (環境科学部生物資源管理学科)
佐飛 雅史 (環境科学部生物資源管理学科)
友田 充彦 (環境科学部生物資源管理学科)
中島 麻衣 (環境科学部生物資源管理学科)
稗田 真也 (環境科学部環境生態学科)
藤井 佳祐 (環境科学部生物資源管理学科)
藤井 暢之 (環境科学部環境生態学科)
丸野 慎也 (環境科学部環境生態学科)
三橋 俊介 (工学部電子システム工学科)
芳本 悠未 (環境科学部生物資源管理学科)
3
運営体制
バ
サ
ー
滋賀県大BASSER
ズ
S のつながり
滋賀県
滋賀県大
・エイリアンバスター事業
BASSER’S
地域
・イベントへの参加
・外来魚駆除協力隊
・広報協力
地域貢献型活動
・物品貸与
水域保全活動
調査データ
啓発活動
彦根市・愛西土地改良区
滋賀県立大学
・全体コーディネート
(近江楽座)
・広報協力
・広報協力
・資金的サポート
外部団体
全国ブラックバス防
除市民ネットワーク
・情報共有
・(株)タスポ
・びわ湖サテライトエリア
他団体情報
研究会
・林研究室
・とよさらだ
・
自治会(薩摩町・普光寺町・柳川町・甲崎町)
・活動協力
・広報協力
滋賀県大 BASSER’S は、滋賀県立大学環境科学部の学生が主体となって活動を展開して
いる。この活動には、神上沼周辺 4 町自治体や企業、行政などに調査活動へ協力を受けて
いる。さらに、
「神上沼外来魚駆除釣り大会」や「おさかな探検隊 in 不飲川(魚とり)」な
どのイベントを通して、学生や地域の人々、行政などを結びつけて啓発活動を行なってい
る。
4
活動概要
神上沼周辺での活動 外来魚駆除活動
外来魚駆除釣り大会
投網・刺し網・釣りによる
駆除釣り大会を通して学生
月数回の外来種の駆除及び在
や地域の人々に身近な水辺環
来種の生物調査。
境に関心を持ってもらう。
エイリアンバスター事業
(侵略的外来植物ナガエツルノゲイトウの駆除)
お魚探検隊
水族展示
勉強会
学生の発表や専門家を招へいしてのワークショップなどを通して、外来魚問
題についての知識を養う。また、外来種の生態やその駆除方法について学ぶ。
学内での駆除活動
広報活動
滋賀県立大学内の環濠に生息す
琵琶湖で起きている外来種問題に
るオオクチバスを駆除し、学内水
ついてイベントなどを開催し、多く
域生態系の保全を目指す。
の人に関心を持ってもらう。身近な
自然や生き物への興味を喚起する。
滋賀県大 BASSER’S では、勉強会を主軸として、知識をメンバーで共有している。そこ
で得られた知識を駆除活動や広報活動に活かして、彦根市の神上沼を拠点に滋賀県内の各
地で活動を展開している。
学内だけでなく、学外の専門家や行政、地域住民とも協力して活動している。滋賀県大
BASSER’S の活動は地域貢献型活動として、滋賀県立大学近江楽座プロジェクトに参入し
ており、近江楽座事務局から助成を受けて活動を展開している。
滋賀県大 BASSER’S は大学と地域をつなぎ、地域へと働きかけられる学生団体を目指し
ている。
5
1. 神上沼における活動
1.1. 目 的
琵琶湖の内湖である神上沼にお
いて侵略的外来種(オオクチバ
ス・ブルーギル)を駆除し、在来種
にとっての棲みよい環境作りを目
指す(図 1.1.)。今年度は活動 2 年目
であるため、侵略的外来種をより
効率良く駆除し、その生息数を減
少させることを目標とした。
また、在来魚のモニタリング調
図 1.1. 神上沼概略図
査も行ない、神上沼における在来
魚類の季節変動や生息状態も明ら
かにするための記録の蓄積も行なう。
さらに、この駆除活動を通じて、地域住民や釣り人への啓発活動も行なっていく。
1.2. 内 容
現在、琵琶湖をはじめとした日本各地の湖沼河川で外来魚による生態系破壊問題が起き
ている。その問題を引き起こしている外来魚は、主にオオクチバスとブルーギルである。
この 2 種は、日本の生態系を脅かす可能性のある生物として侵略的外来種と呼ばれている。
また、2006 年に施行された外来生物法によって特定外来生物として、飼育や生体での運搬
などが禁止されている。
オオクチバス(Micropterus salmoides)はスズキ目サンフィッシュ科に属する淡水魚であ
る(図 1.2.)。原産地は北アメリカ南東部で、魚食性の魚である。オオクチバスは 1925 年に
日本に移入された後、人為的な放流により北海道を除く全国に生息範囲を急速に拡大して
いる。その強い食肉性から、捕食により在来魚をはじめとした在来水生生物を減少させて
いる。また、それら在来種の減少に伴い、間接的にその他の生物群集にも影響を及ぼすこ
とが報告されてきた。いくつかの湖沼ではオオクチバスの捕食により希少魚種の存続が脅
かされている例もある。 図 1.2. オオクチバス
6
ブルーギル(Lepomis macrochirus)は、オオクチ
バス同様に北アメリカ原産のスズキ目サンフィッ
シュ科に属する淡水魚である(図 1.3.)。食性は雑食
性だが魚食性も強く、魚卵も捕食するので、在来魚
類の卵が食べられる食害が各地の水域で起きてい
る。また、汚染にも強く、適応力の高い魚である。
図 1.3. ブルーギル 繁殖力も強く、短期間で個体数を増やすことができ
る。
神上沼において、これらの侵略的外来種で
あるオオクチバス、ブルーギルの駆除を行な
った(図 1.4.)。駆除活動の頻度は、オオクチ
バスとブルーギルの産卵期である春季にお
いて月に 3∼4 回、その他の時期はおおむね
月 2 回であった。外来魚の捕獲には、投網、
刺し網、釣り、遮光カゴ、もんどり(お魚キ
ラー)を用いた(図 1.5.)。また、オオクチバス
の浮遊稚魚が出現する時期にはタモ網によ
図 1.4. 投網による外来魚駆除
る稚魚掬いも行なった。
神上沼において、環境要因ごとに大まかに
調査地点を分類し、各地点ごとに捕獲した生
物を記録した。
捕獲した在来魚は、全長・体長を測定した
後、神上沼に再放流した。
また、捕獲した外来魚は餌生物の吐き出し
を最小限に抑えるためにその場で即殺し、
10%ホルマリンを腹腔注射した。その後、実
験室に持ち帰り、全長、体長、重量を測定し
た。その後、解剖を行ない、胃の内容物を観
図 1.5. 投網で捕獲された外来魚
察して食性を調べた。活動ごとにこれらのデ
ータをまとめ、記録を残した。
さらに外来魚の食性調査では、オオクチバスおよびブルーギルが餌として重要視してい
る生物を示す餌料重要度指数(IRI)を複合的な指標として調べた。ただし、この指標はその
7
ままでは他者と比較できないため、餌料重要度百分率(%IRI)を求めた。
1.3. 結 果
2012 年 4 月から 2013 年 2 月までの調査結果を以下に示す。神上沼で確認された 23 種類
の魚種を表 1.1.に示す。国内移入種を含む外来魚は 5 種(オオクチバス、ブルーギル、カム
ルチー、ワカサギ、ツチフキ)、在来魚は 18 種(コイ、フナ類、オイカワ、モツゴ、ハス、
カネヒラ、ワタカ、ゼゼラ、カマツカ、ホンモロコ、スゴモロコ、ニゴイ、ウグイ、アユ、
メダカ、ドジョウ、トウヨシノボリ、ナマズ)が確認された。昨年度と比較すると確認され
た魚種は増加した。また、確認された在来魚の中にはワタカやホンモロコのような琵琶湖
固有種がおり、環境省や滋賀県のレッドリストで絶滅危惧種に指定されている在来魚もい
た。
表 1.1. 神上沼で確認された魚種とその数量
科 名 和 名 サンフィッシュ科 オオクチバス Micropterus salmoides
105
サンフィッシュ科 ブルーギル Lepomis macrochirus
195
タイワンドジョウ科 カムルチー Channa argus
2
コイ科 コイ Cyprinus carpio
5
コイ科 フナ類 Carassius spp.
118
コイ科 オイカワ Zacco platypus
15
コイ科 ハス Opsariichthys uncirostris uncirostris
4
コイ科 ホンモロコ Gnathopogon caerulescens
30
コイ科 スゴモロコ Squalidus chankaensis
12
コイ科 ワタカ Ischikauia steenacheri
6
コイ科 モツゴ Pseudorabora parva
30
コイ科 ニゴイ Hemibarbus barbus
1
コイ科 ウグイ Tribolodon hakonensis
1
コイ科 カネヒラ Acheilognathus rhombeus
4
コイ科 ツチフキ Abbottina rivularis
8
コイ科 ゼゼラ Biwia zezera
5
コイ科 カマツカ Pseudogobio esocinus esocinus
3
キュウリウオ科 ワカサギ Hypomesus transpacificus nipponensis
2
メダカ科 メダカ Oryzias latipes
5
ドジョウ科 ドジョウ Misgurnus anguilliicaudatus
2
アユ科 アユ Plecoglossus altivelis altivelis
4
ハゼ科 ナマズ科 総計 学 名 トウヨシノボリ Rhinogobius kurodai
ナマズ Silurus asotus
数量(尾) 9
2
568
8
14
チバスは 105 個体、ブルーギル
は 195 個体が捕獲された。その
合計駆除量は約 50kg であった。
外来魚はほぼ投網よって捕獲さ
N=105
12
個体数(尾) 今年度の調査期間に、オオク
10
8
6
4
2
れ、投網による外来魚の捕獲量
0
は約 46kg であった。オオクチバ
40 80 120 160 200 240 280 320 360 400 440
スの体長組成を図 1.6.に、ブルー
体長(mm) ギルの体長組成を図 1.7.に示す。
図 1.6. オオクチバスの体長組成
ただし、30mm 以下のオオクチ
バスの稚魚は個体数が多いため、
捕獲した外来魚の体長組成は、
オ オ ク チ バ ス は 体 長
120~160mm、ブルーギルは体
長 60~80mm の個体が多くなっ
ている。また、オオクチバスで
は親魚となる大型個体も多く捕
獲されていることがわかる。
個体数(尾) 体長組成は省略する。
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
N=195
10
30
50
70 90 110 130 150 170
体長(mm) 図 1.7. ブルーギルの体長組成
今年度は、外来魚の産卵抑制措置として、外来魚の親魚の捕獲だけでなく、オオクチバ
スの浮遊稚魚の掬い取りを行なった。ブルーギルは稚魚の浮遊時期を逃したため、掬い取
ることができなかった。
2012 年 5 月∼6 月にかけて神上沼のアシ際の浅瀬にオオクチバスの稚魚の群れが出現し
た。オオクチバスの稚魚掬いは 3 日間行ない、稚魚群を 11 群掬い取った(図 1.8.)。捕獲し
た稚魚を計数したところ、およそ 1 万匹であ
った。稚魚は体長 10mm 以下の遊泳力がほと
んどないものから体長 30mm ほどのものまで
捕獲できた。 また、一つのオオクチバスの稚魚の群れが
1 つの親魚のペアから生まれたと仮定すると、
少なくとも 11 ペアが神上沼において産卵に
成功していたことになる。この推測結果から、
オオクチバスの産卵抑制には親魚に対してさ
らなる漁獲圧をかける必要性が示唆された。
9
図 1.8. 捕獲したオオクチバスの稚魚
次に外来魚の食性調査の結果を示す。
オオクチバスの胃内容物出現率を図 1.9.に示す。この結果から、神上沼に生息するオオク
チバスは、魚類や甲殻類を多く捕食していることが分かった。また、オオクチバスの%IRI
を図 1.11.に示す。この結果から、神上沼では魚類がオオクチバスの重要な餌となっている
ことが明らかになった。これらの結果は、昨年度の調査結果と同様の結果となった。
ブルーギルの胃内容物出現率を図 1.10.に示す。この結果から、神上沼に生息するブルー
ギルは、藻類を多く捕食しており、魚類や甲殻類、魚卵も捕食していることが分かった。
また、ブルーギルの%IRI を図 1.12.に示す。この結果から、神上沼では藻類がブルーギル
の重要な餌となっていることが明らかとなった。これらの結果は、昨年度の調査結果と同
様の結果となった。
その他 13% 魚卵 8% その他 3% 甲殻類 34% 甲殻類 10% 魚類 63% 藻類 50% 魚類 19%
図 1.9. オオクチバスの胃内容物出現率
図 1.10. ブルーギルの胃内容物出現率
(n=105)
(n=65)
100%
100%
80%
80%
巻貝 その他 %IRI %IRI 60%
甲殻類 40%
魚類 60%
魚卵 昆虫 40%
魚類 甲殻類 藻類 20%
20%
0%
0%
図 1.12. ブルーギルの餌料重要度百分率
図 1.11. オオクチバスの餌料重要度百分率
10
図 1.12.ブルーギルの餌料重要度百分率
1.4. 評 価
今年度は 2 年目の活動であり、外来魚のより効率的な駆除を行なった。主にオオクチバ
スの産卵期である春季の駆除活動に尽力した。この活動により、親魚を多く駆除し、産卵
抑制を図ることができたと考えられる(図 1.13.)。昨年度の冬季にはオオクチバスの当歳魚
が多く捕獲されたが、今年度は当歳魚がほとんど捕獲されなかった。また、昨年と比較す
ると、確認された在来魚の魚種が増えた。しかしながら、これらの影響がすべて我々の駆
除活動によるものかは定かではない。今後も駆除活動を継続し、外来魚および在来魚の生
息数の経年変化をみていく必要があると考える。
また、今年度は継続的な活動の成果として、地域の中で我々の活動の認知度が高まって
いると実感できた。活動をしていると地域の人々や釣り人から声をかけられることが多く
なり、時折、我々の活動ブログを閲覧しているという人にも出会うこともあった。今後も
積極的に情報発信を行ない、我々の活動の認知度を高め、外来種問題の啓発を行なってい
きたい。
1.5. 今 後 の 課 題
2 年の調査活動を通して、神上沼における効率の良い駆除方法や在来魚の季節変化がおお
よそ明らかになってきた。そこで、今後の課題としては、我々の駆除効果の評価が挙げら
れる。継続的にデータを集積し、我々の駆除活動の効果を検討していきたい。
さらに、現状に満足するのではなく、これまで以上に効率良く駆除ができるようにして
いく必要がある。そのために、メンバーの投網技術の統一化や新たな駆除方法を模索する
ことが必要であると考えられる。
図 1.13. 捕獲したオオクチバスの親魚
11
2. 学内における活動 2.1. 目 的
滋賀県立大学内には環濠と調整池がある。環濠は学舎を囲むように流れており、環濠と
調整池とは水路で繋がっている。このような学内の限られた水域にもオオクチバスが生息
しており、在来生物への影響が懸念されている。そのため、今年度は大学内の環濠におけ
るオオクチバスの完全駆除を目指した。
2.2. 内 容
大学内の環濠においてオオクチバスを完全駆
除するために、環濠の干し上げを行なった。環濠
の干し上げ作業は「エコキャンパス・プロジェク
ト」[1]と共同で実施した。
2012 年 3 月 26 日に環濠への注水をやめ、同
月 27∼29 日にかけて環濠と水路の水位を下げて
環濠および水路の干し上げ作業を行なった(図
図 2.1. 干し上げた環濠
2.1.)。干し上げ作業期間の 3 日間は環濠および
水路を干し上げ、オオクチバスの取り残しがない
ように努めた(図 2.2.)。その後、環濠への注水を
再開した。干し上げ作業では、環濠と水路に生息
する生物をタモ網を用いてすべて取り上げ、在来
種は保護し、オオクチバスは駆除した(図 2.3.)。
保護した在来種については、4 月 5 日に環濠へ再
放流した。
なお、環濠および水路の干し上げ作業は、干し
図 2.2. 干し上げ中の水路
上げによる鳥類や抽水植物等への影響について
滋賀県立大学の教授各位とも十分に協議した上で実施した。
在来種は種の同定および体長を記録した。オオクチバスは体長・体重を測定し、解剖し
て胃の内容物も確認した。
魚類では、体重と体長から肥満度として栄養状態を把握することが可能である。そこで
今回は環濠で捕獲されたオオクチバスの肥満度について次式を用いて算出した。また、参
考のため、神上沼において同時期に捕獲されたオオクチバスの肥満度と環濠および水路で
採集したオオクチバスの肥満度とを比較した。水路で捕獲されたオオクチバスについては、
個体数が少なかったので肥満度の算出は行わない。
肥満度(
)= 体重 標準体長
1000
12
また、オオクチバスは頭部にある耳石によって
ある程度の年齢が判定できる。捕獲したオオクチ
バスのうち、16 個体から耳石を取り出し、耳石の
輪門数から年齢判定を行なった。今回は便宜的に
孵化日を 5 月 1 日と仮定した。
[1]:滋賀県立大学内における環境保全管理を行な
う学生団体である。主に、大学内における水生生
図 2.3. 生き物の捕獲作業
物調査、鳥類調査、犬上川河畔の竹林における放
置竹林の管理作業を行なっている。
2.3. 結 果
今回の干し上げ作業によって捕獲された魚種を表 2.1.に示す。環濠および水路において在
来種は 13 種が確認された。今回得られた記録は学内水域の生態系把握に役立つと考えられ
る。
この干し上げ作業によって捕獲されたオオクチバスは 53 個体であった。干し上げ作業に
よって環濠および水路に生息していたほとんどのオオクチバスを捕獲することができたが、
その後の目視による調査で環濠内において 2 尾のオオクチバスの生存が確認された。その
ため、今回の干し上げ作業では環濠内におけるオオクチバスの完全駆除は達成できなかっ
た。
表.2.1. 環濠および水路の魚類相と捕獲された数量
科 名 和 名 サンフィッシュ科 オオクチバス コイ科 学 名 数量(尾) Micropterus salmoides
53
オイカワ Zacco platypus
157
コイ科 ギンフナ Carassius auratus langsdorfii
55
コイ科 ヌマムツ Nipponocypris sieboldii
38
コイ科 コイ Cyprinus carpio
12
コイ科 カネヒラ Acheilognathus rhombeus
8
コイ科 モツゴ Pseudorabora parva
2
コイ科 ニゴイ Hemibarbus barbus
1
コイ科 ソウギョ Ctenopharyngodon idellus
5
ハゼ科 トウヨシノボリ ハゼ科 ウキゴリ カジカ科
ウツセミカジカ
ナマズ科
ナマズ
総計
Rhinogobius kurodai
120
Gymnogobius urotaenia
7
Cottus reinii
1
Silurus asotus
24
483
13
12
環濠および水路に生息していたオオクチ
10
個体数(尾) バスの体長組成を図 2.4.に示す。耳石によ
る年齢査定も行なった結果、環濠および水
路には、昨年生まれの 1 歳魚から、産卵可
能な大きさに成熟した 3 歳魚までのオオク
チバスが生息していたことが分かった(図
8
6
4
2
2.5.)。体長組成では、3 つのピークが見ら
0
れる。100∼110 ㎜をピークとする個体群が
80 100 120 140 160 180 200 220 240 260
体長(mm) およそ 1 歳魚、170 ㎜をピークとする個体
群がおよそ 2 歳魚、230∼270 ㎜までの体長
図 2.4. オオクチバスの体長組成
の個体がおよそ 3 歳魚であった。琵琶湖に
生息するオオクチバスは 3 歳魚で体長は
300mm を超えるため、環濠内に生息してい
たオオクチバスは琵琶湖に生息するオオク
チバスよりも成長速度が遅いことが分かっ
た。
環濠内に生息していたオオクチバスの肥
満度について表 2.2.に示す。干し上げ作業
を行なった同時期に琵琶湖の内湖である神
上沼で捕獲されたオオクチバスと環濠で捕
図 2.5. 捕獲したオオクチバス
獲されたオオクチバスの肥満度について 2
標本 t 検定で比較したところ、環濠に生息していたオオクチバスの肥満度が 5%両側検定に
おいて有意に低いことが分かった(t=4.67 >1.688)。これにより、環濠は神上沼と比べてオオ
クチバスにとって餌の少なく、成長が抑制される環境であったと考えられる。
表 2.2. 環濠と神上沼で採集されたオオクチバスの標準体長、体重、肥満度の比較
採集個体数
標準体長 mm
体重 g
肥満度 ‰
数値は平均
環濠
神上沼
53
10
127±6.2
272.4±17.7
(262‐75)
(375‐175)
70.6±14.6
669.2±137.2
(473‐10.1)
(1558‐121)
22.5±0.4
28.5±1.3
(32.5‐19.0)
(35.5‐22.6)
標準誤差.
カッコ内の数値は最大値と最小値
14
2.4. 評 価
2 団体が共同で行なった事業だったが、作業を分担・協力して進めることができ、うまく
連携することができた。干し上げの最中には、環濠の一部の水位が十分に下がらず、作業
がしづらかったので、あらかじめ考慮しておく必要があった。しかし、環濠の水位調整に
関しては、滋賀県立大学の施設部とうまく連携して環濠の水位を微調整することができた。
それによって、魚の斃死が少なくなったと考えられる。
今回の干し上げによる駆除活動は、イベント性を持たせ、事前に滋賀県大 BASSER’S の
ブログを通じて外部からの参加者を募った。しかし、団員以外の外部参加者はいなかった。
外部からの参加者を募るには、ブログでの発信だけでは広報力に欠けると考えられる。
2.5. 今 後 の 課 題
水域面積の大きな環濠と水路での活動であったが、参加人数が少なく、作業の進行が遅
かった(図 2.6.)。作業をより迅速に進めるために十分な人員を確保することが課題となった。
今後の活動の実施に際しては、ブログでの告知だけでなく、大学内・周辺地域への広報を
行なって、団体メンバー以外の参加を促したい。
外来魚駆除活動としての池干し等の作業は啓発活動としても有効である。作業自体は比
較的容易であるため、子どもたちでも作業に参加することができる。こうしたことから、
干し上げ作業による駆除活動は環境教育の一環として、また啓発活動として行なうことが
できると考えられる。
環濠
水路
図 2.6. 滋賀県立大学の概略図
15
3. エクスカーション
3.1. 水 生 生 物 観 察 会
3.1.1. 目 的
希少な在来種や指定外来種となっている生物の観察を行なう。また、それらの生物が生
息している環境の視察を行ない、滋賀県各地の自然環境を知る。 3.1.2. 内 容
今年度は、滋賀県では指定外来種となっているオ
ヤニラミ、彦根周辺ではあまり見かけない在来魚の
ムギツク、琵琶湖固有種のホンモロコ、希少種であ
るホトケドジョウの野外観察会を行なった。
図 3.1. オヤニラミ
3.1.3. 結 果
今回、オヤニラミは 10 数匹ほど採捕された(図
3.1.)。オヤニラミは国内移入種であり、滋賀県では
指定外来種に指定されているため、採捕した個体は
図 3.2. ムギツク
すべて駆除した。オヤニラミは大小さまざまな体長
の個体が確認されたため、繁殖している可能性が示
唆された。オヤニラミは指定外来種であるため、採
捕場所の公表は控える。
ムギツクは愛知川水系において、10 数匹ほど採捕す
図 3.3. ホンモロコ
ることができた(図 3.2.)。普段の活動では見かけな
い魚種であり、知見を広げることができた。
ホンモロコは釣りによって採捕した。場所は大同
川河口部で、アカムシを餌にして釣った(図 3.3.)。
図 3.4. ホトケドジョウ
外道として 25cm ほどのギンブナも採捕された。当
日は釣り人が多く、釣り場所の確保が困難であったが、ホンモロコは 20 匹ほど採捕するこ
とができた。
ホトケドジョウは 3 匹採捕することができた(図 3.4.)。当日はドジョウが多く確認された
が、ホトケドジョウの個体数は少なかった。ホトケドジョウは希少種であるため、採捕場
所の公表は控える。
16
3.1.4. 評 価
この観察会を通して、希少な魚種や脅威となる外来種の生息を確認することができた。
また、希少な魚種の生息環境を知ることができ、生息環境の復元に寄与する知識を得るこ
とができた。
3.1.5. 今 後 の 課 題
今後は、滋賀県内だけでなく、県外でも観察会を行ない、知見を広げていきたい。
また、オヤニラミのような指定外来種については、継続的なモニタリング調査を行なって
いきたい。
3.2. タ ン カ イ ザ リ ガ ニ 調 査
3.2.1. 目 的
特定外来生物であるウチダザリガニの近縁
種であるタンカイザリガニが滋賀県内に生息
しており、その生息環境の把握と個体群の観察
を行なった。
図 3.5. タンカイザリガニ
3.2.2. 内 容
タンカイザリガニは特定外来生物であるウチダザリガニの近縁種である(図 3.5.)。タンカ
イザリガニおよびウチダザリガニの原産地はアメリカ北西部であり、1930 年に北海道の摩
周湖に放流された。現在は北海道の摩周湖や釧路川・阿寒川水系など道東全域に生息地を
広げており、道外では福島県の小野田川湖にも生息が確認されている。また、タンカイザ
リガニは滋賀県の淡海湖や長野県にも生息している。
滋賀県大 BASSER'S では滋賀県淡海湖周辺において、タンカイザリガニの個体群の観察
を行なった。
2012 年 8 月 8∼9 日にかけて、滋賀県高島市にある淡海湖周辺で調査を行なった。調査
方法は、タモ網と銛を用いた。調査は淡海湖の流入河川と淡海湖内で行なった。
17
3.2.3. 結 果
淡海湖への流入河川では 1 時間ほどの調査で、約 30 匹のタンカイザリガニを捕獲した(図
3.6.)。捕獲したタンカイザリガニは比較的小さな個体が多かったが、手のひらほどの大き
さの個体も捕獲された(図 3.7.)。しかし、淡海湖内ではタンカイザリガニは確認できなかっ
た。捕獲したタンカイザリガニはすべて殺処分した。
3.2.4. 評 価
図鑑や写真のみではなく実際に観察するこ
とによって、普段よく観察されるアメリカザリ
ガニとの違いを知ることができた。また、この
活動が滋賀県大 BASSER’S において、新たな
観察会を開催するきっかけになっていくであ
ろう。
図 3.6. 捕獲したタンカイザリガニ
3.2.5. 今 後 の 課 題
淡海湖内において水深の深い場所では調査を行なうことができなかった。今回の調査結
果から、より詳細な調査の必要性が示唆された。
また、普段駆除を行なっているオオクチバスやブルーギル以外の外来種にも目を向け、
知見を広げるための観察会を行なっていきたい。
図 3.7. 大型のタンカイザリガニ
18
4. 外来魚駆除協力隊の活動
4.1. 目 的
滋賀県琵琶湖環境部政策課琵琶湖レジャー対策室(以下、琵琶湖レジャー対策室)主催の外
来魚駆除釣り大会に補助スタッフとして参加することで、外来魚駆除釣り大会の運営体制
と危機管理体制を学ぶ。
4.2. 内 容
滋賀県大 BASSER'S は琵琶湖レジャー対策室が毎年募集
している「外来魚駆除協力隊」に参入している。今年度は
外来魚駆除協力隊の活動として、琵琶湖レジャー対策室が
主催している外来魚駆除釣り大会に大会運営補助スタッフ
として参加した。参加した外来魚駆除釣り大会は、2012 年
7 月 21 日に大津市浜大津アーカス前付近において開催され
たものと、2013 年 1 月 26 日に彦根市彦根旧港湾において
開催されたものである。
大会運営補助スタッフとして、主に駆除釣り大会の巡回
指導や会場準備、撤収の補助を行なった。
会場準備では、のぼり旗の設置作業を担当した。
図 4.1. 巡回指導
巡回指導では、駆除釣り大会参加者の中に
は初めて釣りをする人もおり、そうした人た
ちにも安全に釣りをしてもらえるように会
場を巡回した。巡回中は絡まった仕掛けや釣
り針の交換、針を飲み込んだ魚の針外しなど
も手伝った。また、転落者の救出のために、
浮き輪および投入用のライフジャケットと
クレモロープを持ちながら巡回し、危機管理
を行なった。
撤収作業では、終了時刻の呼びかけやゴミ
を回収などの作業も担当し、駆除釣り大会終
了後にテントやのぼり旗の撤収を行なった。
19
図 4.2. 駆除釣り大会風景
4.3. 結 果
2012 年 7 月 21 日の駆除釣り大会の参加
者数は 400 人弱であった。滋賀県だけでな
く、京都府や大阪府、兵庫県からの参加も
あった。参加者の中には親子連れが多かっ
た。参加者は試行錯誤しながらも楽しく釣
りをしていた(図 4.2.)。
2013 年 1 月 26 日の駆除釣り大会の参加
者数はおよそ 200 名程度であった。
両駆除釣り大会ともに釣り上げられた
外来魚はブルーギルの方がオオクチバス
図 4.3. 1 月 26 日の外来魚駆除釣り大会の釣果
よりも数が多かった(図 4.3.)。
4.4. 評 価
巡回指導中に天候の急変もあり、危機管理の重要性を感じた。2 大会ともに参加者に事故
はなく、無事終了することができた。こうした大規模な駆除釣り大会の運営補助スタッフ
として活動する中で、危機管理および大会本部と巡回との連携といった運営体制など、我々
が駆除釣り大会を自主開催するにあたって活かすことのできる知識を学ぶことができた。
これらの大会で得られた知識を今後の我々の活動に活かしていきたい。
4.5. 今 後 の 課 題
今回、駆除釣り大会運営補助スタッフとして参加した琵琶湖レジャー対策室主催の外来
魚駆除釣り大会ではスタッフの数が多く運営体制が整えられていた。滋賀県大 BASSER’S
では神上沼外来魚駆除釣り大会の自主開催にあたって、少人数のスタッフでの運営体制を
うまく機能させることが課題として挙げられる。事前の打ち合わせを重ね、万全の体制を
築く必要があると考えられる。
また、駆除釣り大会中の巡回指導では参加者に楽しく釣りをしてもらうように配慮する
べきである。さらに、事故が起きないように、危機管理を徹底し、安全に釣りができる環
境を整えることも必要である。
20
5. 神上沼駆除釣り大会 (外来魚駆除釣り大会 in 神上沼)
5.1. 目 的
神上沼での外来魚駆除釣り大会への参加を通して、参加者に近年問題となっている外来
種問題について関心を持ってもらう。
また、捕獲したオオクチバスの解剖を体験することにより、体験を通して外来魚の生態
を学んでもらい、生き物に対して関心を持ってもらう。
5.2. 内 容
今年度、滋賀県大 BASSER’S では第 4 回神上
沼駆除釣り大会を自主開催した。開催日時は、
2012 年 6 月 30 日 9∼13 時である。駆除釣り大
会の告知は、ブログや自治会の子ども会を通じて
地域の子どもたちを対象に参加を呼びかけた。当
日は、参加料無料で竿や仕掛けの貸し出しを行な
った。
メンバーは、参加者に対して安全に釣りを楽し
んでもらうためにスタッフとして巡回指導と危
図 5.1. 駆除釣り大会風景
機管理を行なった(図 5.1.)。
ま た 、 駆 除 釣 り 大 会 の 企 画 と し て 滋 賀 県 大
BASSER’S が普段の活動で行なっている投網の
実演も行ない、参加者に我々の普段の活動の様子
を見てもらった(図 5.2.)。
その他にも、オオクチバスの解剖の実演を見て
もらった(図 5.3.)。さらに、希望者には外来魚の
解剖体験してもらい、投網で捕獲したばかりのオ
オクチバスの胃内容物や卵の観察をした(図 5.4.)。
図 5.2. 投網実演
5.3. 結 果
神上沼外来魚駆除釣り大会へは、地域の子どもたちや高齢の方まで幅広い年齢層の人々
に参加をしてもらうことができた。また、遠方からの参加者もおり、ブログを通して我々
の活動に興味を持ってもらっている人々にも参加してもらうことができた。
釣果としては、ブルーギルとフナがほとんどであったが、投網では、オオクチバスも捕
獲された。
21
大会の企画として参加者にオオクチ
バスの解剖をしてもらうことで、オオ
クチバスの生態やその食性を知っても
らった。また、この大会を通して地域
の水辺に外来魚が生息し、定着してい
ることを参加者に実感してもらうこと
ができた。
5.4. 評 価
今年度は、昨年度と同時期に神上沼
図 5.3. オオクチバスの解剖の実演
駆除釣り大会行ない、地域住民にイベ
ントを習慣化してもらうことを狙った。
こうした駆除釣り大会に次回以降も参
加したいという参加者の声を聞くこと
ができた。引き続きこうしたイベント
を来年度も開催し、地域の人々が身近
な環境で生き物と触れ合うことのでき
る機会を提供していきたい。
神上沼外来魚駆除釣り大会を通して、
外来魚が身近な水辺環境に生息いるこ
図 5.4. 参加者による解剖体験
とを知ってもらうことができ、地域の
子どもたちに身近な環境問題として関
心を持ってもらう良い機会になった。大人から子どもまで幅広い世代の人々に身近な水辺
で起きている外来魚問題について、知ってもらうことができたと考えられる。
5.5. 今 後 の 課 題
参加者数は昨年度と比べて微増傾向にあった。今後はさらに多くのメディアを通して広
報を行なうことでイベントの開催について多くの人々に知ってもらい、参加者数を増やし
ていきたい。来年度以降にも引き続き駆除釣り大会を開催できるように、引き継ぎや指導
を行なう必要があると考えられる。
また、駆除釣り大会での新たな企画も考え、参加者にさらに楽しんでもらえるように努
める必要がある。
これまでの駆除釣り大会では事故は起きていないので、今後も引き続き事故のない安全
で楽しい大会を運営していきたい。
22
6. お魚探検隊 in 不飲川
6.1. 目 的
地域の人々に身近な水辺環境で生息して
いる生き物について知ってもらい、地域の自
然環境に関心を持ってもらう。また、地域の
自然の中での活動を通して、地域の自然に愛
着を持ってもらう。
開催場所
不飲川
6.2. 内 容
2012 年 10 月 21 日に「お魚探検隊 in 不飲
川」を開催した。場所は、滋賀県彦根市普光
図 6.1. 開催場所の概況図
の ま ず がわ
寺町「東之辻広場」前の不飲川下流域におい
て行なった(図 6.1.)。
このイベントでは、地域の子どもを対象として、身
近な川での魚とりを行なった。近年、水路や川が護岸
工事され、子どもたちが簡単に川に入られなくなり、
水辺で遊ぶ機会が減っている。このイベントを通して、
身近な川にどんな生き物がいるのか知ってもらい、生
き物と触れ合う楽しさを感じてもらう。
イベントを開催するにあたって、開催の一週間前に
開催予定場所の河川の生物を調査し、危険な場所の確
認や、生物相の調査を実施した。
イベントの告知はブログと、自治会の子ども会を通
図 6.2. お魚図鑑
して行なった。広報は薩摩町、柳川町、普光寺町、甲崎町の 4 町の自治会に協力を依頼し
た。
滋賀県大 BASSER’S では参加者にタモ網を無料で貸し出した。また、簡易な「お魚図鑑」
を製作して当日参加者に配布した(図 6.2.)。
開会式では、川に入る際の注意点やタモ網の使い方などを説明した。また、「お魚図鑑」
を配布し、魚とりをしながら魚の名前を調べることができるようにした。参加者が魚とり
をしている間、メンバーは、胴長を着用して一緒に川に入り参加者の安全確認を行なった。
また、参加者に採れた生き物の説明などをしながら、参加者が安全にかつ、楽しく活動で
きるよう監視を行なった(図 6.3.)。
活動の最後には、閉会式を催し、同時に捕れた生き物について参加者全体に対して説明
を行なった(図 6.4.)。採れた生き物は、その後、元の生息地に放流した。
23
6.3. 結 果
このイベントを通して、身近な自然の中
で生き物と触れ合う機会を提供することが
できた。身近な自然の中にも多くの生き物
が生息していることを参加者に知ってもら
うことができ、地域の水辺環境に関心を持
ってもらうことができたと感じている。
また、参加者のほとんどが家族単位での
参加であり、魚などが捕れた際には、保護
図 6.3. フィールドでの活動風景
者も含め喜んでもらえた。
さらに、配布したお魚図鑑を用いて採れ
た生き物の名前を調べる様子も見受けら
れた。お魚図鑑を活用してもらうことで、
生き物についてより詳しく知ってもらう
ことができた。
6.4. 評 価
お魚図鑑を用いて不飲川に生息する生
き物の名前を知ってもらい、適切な生き物
の採り方を指導できたことで参加者が楽
図 6.4. 採れた生き物の説明
しく活動できたと考えられる(図 6.5.)。ス
タッフによる危機管理も徹底して行なうことができたので、参加者に怪我もなく、無事に
イベントを終えることができた。水辺での活動は危険が多く潜んでいるため、今後も徹底
した危機管理のもと、イベントを開催していきたい。
6.5. 今 後 の 課 題
今回行なわれた「お魚探検隊 in 不
飲川」では、身近な水辺環境に関心
を持ってもらうことが目標であった。
今後も地域の人々に生き物を身近に
感じ、地域の自然に関心を持っても
らうために、こうした啓発活動を継
続していく必要がある。
図 6.5. 集合写真
24
7. 水族展示
7.1. 目 的
多くの一般の人々に琵琶湖をはじめとした水
辺環境について関心を持ってもらうことを目的
として淡水魚類の水族展示を行なった。近年、水
辺環境について関心が向けられ、琵琶湖の外来魚
問題も注目されつつある。しかし、外来魚を駆除
する意義や必要性については漠然としか理解さ
図 7.1. 湖風祭における水族展示
れていないことも多々ある。これは琵琶湖の生物
多様性が十分に知られていないことが、外来魚問
題を十分に理解されない要因の一つであると考
えた。そこで、琵琶湖に生息する生き物を見ても
らい、その生物多様性を実感してもらうことを目
標とした。
また、同時に我々の活動について紹介し、琵琶
湖で起きている外来魚問題について理解を深め
てもらう。
図 7.2. 生き物の紹介
7.2. 内 容
今年度は 2 つのイベントにおいて水族展示を行
なった。
7.2.1. 湖 風 祭 で の 水 族 展 示
2012 年 6 月 16 日に滋賀県立大学で行われたプ
レ学園祭「夏湖風祭」において、神上沼や大学周
辺で捕獲した生き物の水族展示を行なった。
120cm、90cm、60cm の 3 つの大型水槽を設置し、
図 7.3. カムルチーの展示水槽
10 種類の魚種(フナ類、オイカワ、ヌマムツ、カネヒラ、タモロコ、ホンモロコ、ニゴイ、
ゼゼラ、ナマズ、カムルチー)やアメリカザリガニ、外来水生植物を展示した。在来魚だ
けでなく、大型の外来魚(カムルチー)も同時に展示することで、外来魚の存在感を視覚
的に認知してもらった。
展示水槽の前には、展示している魚の解説パネルを設置し、生き物の特徴が分かるよう
にした。解説パネルでは、その生き物の希少性や絶滅危惧の程度も記載し、一般の人にも
生き物が生息の危機に瀕していることを分かりやすく示した。
大人や大学生、小学生といった幅広い年齢層の人々に我々の展示を見てもらうことがで
25
きた(図 7.1.)。また、ただ展示するだけではなく、来場してもらった人に展示している生き
物の解説や外来魚問題についての啓発を行なった(図 7.2.)。さらに、我々の活動パンフレッ
トを配布し、普段の活動についても知ってもらった。
7.2.2. 水 土 里 ふ れ あ い 体 験 で の 生 き 物 学 習
会
2012 年 6 月 17 日には、愛西土地改良区主催
「水土里ふれあい体験」イベントの中での企画
として、滋賀県大 BASSER'S が講師となって地
域の子どもたちを対象に生き物学習会を行なっ
た。参加者は 40 名ほどであった。湖風祭におい
て展示した魚類を大学から運搬し、湖風祭と同
様の方法で生き物を展示した(図 7.4.)。外来魚は
図 7.4. 生き物学習会
何が問題なのか、外来生物法とは何か、タモロ
コとホンモロコの違いなどについて生き物を見
てもらいながら説明した。また、実際にナマズ
の歯を触ってもらうという体験企画も行なった
(図 7.5.)。この体験企画は、子どもたちにとって
普段は見かけない大きな魚に触れる機会であり、
好評であった。説明を終えた後、自由に水槽を
見てもらう時間を設け、展示水槽の前で生き物
の解説を交えながら、子どもたちからの質問に
答えた。
図 7.5. ナマズの歯に触れる体験
7.3. 結 果
今回の水族展示を行なったことで多くの来場者に琵琶湖に生息する生き物を見てもらっ
た。生き物学習会では展示している生き物について、実際に生き物を見せながらクイズ形
式で説明をしたので、より楽しく生き物について学んでもらうことができた。多くの種類
の生き物を紹介することで、琵琶湖における生き物の多様性を知ってもらうことができた。
来場者の中には生き物を見て懐かしがるお年寄りや水槽を泳ぐ魚を楽しそうに見ている子
どもたちも見受けられ、生き物を通して人々が楽しむ場を提供することができた。こうし
た水族展示イベントや学習会を通して身近な水辺環境や外来魚問題について関心を持って
もらえたと実感している。また、地域の人々と交流を果たすことでより強い信頼関係を形
成することができたと感じた。
今年度の水族展示では、カムルチー水槽が特に人気を博していた(図 7.3)。
26
7.4. 評 価
今年度の水族展示では、50cm を越える
大型の魚を数多く展示することができ、来
場者の目を惹きつけたと考えられる。こう
した企画を定期的に開催することは、啓発
活動の一環としてとても効果的である。し
かし、淡水魚類の展示としては普遍的な展
示方法であるため、生き物の展示方法にも
う少し工夫を凝らしても良いと考える(図
7.6.)。また、今年度は展示を運営している
メンバーの中で、展示している生き物や
図 7.6. 展示水槽
我々の活動について十分に説明できるメ
ンバーとできないメンバーがいた。そのため、団体内での知識の共有が重要である。
愛西土地改良区と共同でイベントを開催したことで地域との良好な信頼関係を築くこと
ができたと考えられる我々の活動は地域の人々との協力のもとで成り立っているため、今
後も地域の人々と積極的な交流を図っていくことが必須である。
7.5. 今 後 の 課 題
毎年同じような水族展示をしていては変化がなく、展示への人々の興味が薄れる可能性
が考えられる。そのため、展示ごとに何かテーマを決めるなど工夫が必要である。これま
では一般の人々を主な対象にしていたが、学内の人々に対しても啓発していくことも必要
である。年間を通して展示を行なう機会が数回程であるため、展示を行なう頻度を上げる
必要もある。また、展示する魚を良好な状態で管理できる場所があればより良い展示が行
なうことができると考えられる。
地域の人々の間で外来種問題について関心を持ってもらうためには、身近な環境につい
て発信する企画を開催していくことはとても重要である。今後も地域の人々とより良い関
係を継続していくために、啓発活動を定期的に行なうことが大切である。
27
8. 模擬店
8.1. 目 的
オオクチバスは本来、食用として 1925 年に赤星氏によって日本に持ち込まれた魚である。
しかし、現在は汚い魚、美味しくない魚という印象を持たれている。オオクチバスの利用
法の一つとして食用の可能性を考え、オオクチバスを使った料理の普及を目指す。
8.2. 内 容
滋賀県立大学の学園祭「湖風祭」が 2012 年
11 月 10∼11 日に開催された。同年 6 月に開催
されたプレ学園祭「夏湖風祭」よりも大規模な
イベントで多くの一般の人々が大学に訪れた。
我々は 11 月 10 日に模擬店を出店し、オオク
チバス料理を販売した。オオクチバス料理は「バ
スボール」という商品名で売り出した(図 8.1.)。
バスボールは、オオクチバスの切り身をミン
チにし、片栗粉などを混ぜ合わせて球状に丸め、
図 8.1. バスボール それを油で揚げたものである。生食を避けるた
め、油で揚げる際には十分に火を通し、油で揚
げたものをさらにコンソメスープで湯がいた。
ミートボールのような料理であり、バスボール 5
個を 150 円で売り出した(図 8.2.)。
ち な み に 、 こ の 料 理 方 法 は 滋 賀 県 大
BASSER'S で考案したものである。
また、今回はバスボールを購入してもらった
人には任意のアンケートを実施した。5 段階評価
では、数値が高いほど評価が高いことを示して
図 8.2. 模擬店「バス屋」
いる。アンケート項目は、以下の 4 つである。
1.バスボールは美味しかったか。(5 段階評価)
2.外来生物法や特定外来生物について知っているか。(知っている・知らない)
3.外来魚駆除についてどう思っているか。(賛成・反対・何とも言えない)
4.琵琶湖の外来魚問題への危機感はどの程度か。(5 段階評価)
28
8.3. 結 果
表 8.1. バスボールの評価と
一日限りの営業であったが、84 食を販売する
外来魚問題への危機感の調査結果
ことができた。
美味しさ
外来魚問題への危機感
4.5
4.12
今回実施したアンケートでは 78 人から有効回
答を得ることができた。バスボールの味の評価は、
5 段階評価で 4.5 の評価をもらうことができた(表
8.1.)。また、外来魚問題への危機感については 5
70
段階評価で 4.12 の評価とであった。
60
では、約 8 割の人が外来生物法や特定外来生物に
ついて認知していた(図 8.3.)。また、外来魚駆除
への意識調査では、約 6 割の人が駆除に賛成して
いた(図 8.4.)。これらの結果から、今回の来店者
回答者数(人) 外来生物法や特定外来生物への認知度の調査
の多くは外来魚問題に関心を持ち、深刻にとらえ
50
40
30
20
10
ているようであった。
0
知っている 8.4. 評 価
知らない 図 8.3. 外来生物法や特定外来生物の
バスボールが予想以上に評判が良く、当初の目
認知度調査結果
標を上回る数を販売することができた。
60
また、バスボールの販売と並行して行なった来
店者へのアンケート調査を通して、外来魚問題に
50
クチバス料理に関心を持って来店しているので、
意識調査の結果に偏りが生じていることが考え
られる。
回答者数(人) 関する意識調査ができた。しかし、来店者はオオ
40
30
20
8.5. 今 後 の 課 題
今回はバスボールを料理する中で、ガスボンベ
を用いた簡易コンロを用いた。しかし、簡易コン
ロでは火力が弱く、料理を供給する速度が遅くな
り、店の運営に支障をきたしていた。次回以降は、
10
0
賛成 何とも言え
ない 反対 2 口ガスコンロを用いるなどの工夫をして、効率
よく販売できる体制を築くことが課題である。
次回からは、販売だけでなく、パンフレットの
配布や活動紹介など、啓発活動も盛り込んでいく
29
図 8.4. 外来魚駆除への意識調査結果
と良いと考える。
9. 魚粉作り
9.1. 目 的
我々は活動を通して多くの外来魚を捕獲し、駆除してい
る。しかし、その外来魚の中には元来は重要なタンパク源
として日本に導入された魚もおり、資源として利用されう
る。
滋賀県においては、漁業者によって捕獲された外来魚や
外来魚回収箱に集められた外来魚を原料にして魚粉を作り、
有効利用している。そこで、我々も今年度より滋賀県立大
学環境科学部環境政策学科林研究室と共同で外来魚を用い
た魚粉作りを試みた。
図 9.1. 家庭用生ごみ処理機
9.2. 内 容
魚粉作りには林研究室が管理している家
庭用生ごみ処理機「リサイクラー」を用い
た(図 9.1.)。捕獲した外来魚を 10cm 角程度
の細切れにして、リサイクラーの中に入れ
て乾燥・粉砕した。粉砕された魚肉は水分
をほとんど含まず、魚独特の臭いが弱まっ
ていた(図 9.2.)。本来、魚粉は乾燥・粉砕し
た後に発酵させることで肥料としての効果
が高まるといわれるが、今回は発酵させず、
図 9.2. 製作した魚粉
魚肉を乾燥・粉砕させたものを魚粉とした。
完成した魚粉は滋賀県立大学近江楽座プロジェクト団体の一つである「とよさらだ」 [2]
に提供し、共同で魚粉の肥料としての効果を検証した。「とよさらだ」へ外来魚から製作し
た魚粉を提供し、大根への魚粉の効果を検証した。大根を栽培した畑の面積は 1.72m2 であ
る。魚粉 1.3kg を施肥した実験区と何も肥料を施肥しない対照区を設置して、大根を栽培
した。
[2]:滋賀県豊郷町の畑で学生が中心となってさまざまな無農薬野菜の栽培を行っている。
収穫した作物を地域の祭りや朝市において出荷・販売し、積極的な地域参加を目指してい
る。
30
9.3. 結 果
今年度、魚粉作りに用いた外来魚の総湿重量は約 20kg であった。また、製作した魚粉重
量は約 4kg であった。魚肉を乾燥・粉砕する過程で水分がなくなり、およそ 5 分の 1 の目
方になった。
大根の栽培実験において両区から収穫された大根の全長と重量を表 7.1 に示す。大根の栽
培における魚粉の効果の検証においては、2 標本 t 検定を用いた。魚粉の有無は栽培した大
根の重量に対して、t=3.97 ( >2.145 )で、5%両側検定の結果において有意に差があった。
これより、魚粉は大根の成長に寄与していることが分かった(図 9.3.)。
9.4. 評 価
これまでは焼却処分してきた
表 9.1. 収穫された大根の全長と重量
番号
魚粉あり
魚粉なし
全長(cm)
重量(g)
全長(cm)
重量(g)
1
32
1447
28
1138
2
20
1245
27
710
3
24
1272
30
1084
できた。
4
31
1417
23
586
しかし、今回魚粉作りの作業に
5
30
681
24
550
実際に携わるメンバーが一部の
6
34
1226
31
738
者に限られており、団体全体での
7
35
1559
27
674
情報共有ができていなかった。滋
8
31
1017
25
660
駆除した外来魚を魚粉として有
効利用することができた。また、
外来魚から作られる魚粉の肥料
としての効果も検証することが
賀県大 BASSER'S と林研究室、
「とよさらだ」が三位一体となって活動を展開
できる体制作りが重要であると考える。
9.5. 今 後 の 課 題
今年度は魚粉製作が夏から始まり、捕獲した
外来魚すべてを魚粉に利用することができなか
った。来年度はさらに多くの外来魚を有効利用
して魚粉を作っていきたい。
また、今回は魚粉ありの実験区と魚粉なしの
対照区での効果検証であったが、次は既成品の
肥料と魚粉との効果の差についても検証してい
きたい。
図 9.3. 収穫した大根
31
10. エイリアンバスター事業 10.1. 目 的 琵琶湖本湖に注ぐ河川においての駆除活
動を行ない、侵略的外来生物であるナガエツ
ルノゲイトウの本湖への侵入を防ぐ。 10.2. 内 容
ナガエツルノゲイトウは、ヒユ科多年草の
水草で、南アメリカ原産の帰化植物である
図 10.1. ナガエツルノゲイトウ
(図 10.1.)。2006 年に施行された外来生物法
において、特定外来生物に指定された。滋賀
県では 2004 年に彦根市神上沼において初め
て確認された。ナガエツルノゲイトウは、茎
駆除作業場所
断面からも栄養繁殖を行なうことができ、非
常に強い繁殖力を持っている。そのため、他
の植物を駆逐する可能性が高く、「地球上で
最悪の侵略的植物」とも呼ばれている。この
植物が繁茂して水面全体を覆ってしまうこ
とで、水中の酸素濃度が下がり、その他の水
不飲川
生生物が生息できない環境となる。また、人
的被害としてボートの進行が阻まれる事例
図 10.2. 駆除作業場所の概況図
も起きている。
昨年度に引き続き、我々は滋賀県の「エイリアンバスター事業」に参加している。エイ
リアンバスター事業では、滋賀県行政や企業、地元の自治会が共同でナガエツルノゲイト
ウの駆除を行なっている。
今年度、我々が参加したエイリアンバスター事業は 2012 年 10 月 20 日の 9∼12 時に彦
根市不飲川河口域において行なわれた(図 10.2)。参加者は 20 名で、駆除は基本的に手によ
る抜き取りによって行なった。 10.3. 結 果
今回、ナガエツルノゲイトウの駆除作業を行なった場所では、本活動の直前にも行政に
よる同種の駆除作業が行なわれており、ナガエツルノゲイトウの個体数は昨年度の活動時
よりも少なかった。しかし、ナガエツルノゲイトウと同じ侵略的外来植物のチクゴスズメ
ノヒエも繁茂しており、ナガエツルノゲイトウと混在していた(図 10.3.)。 32
今回のナガエツルノゲイトウの駆除量は
25 ㎏ネット 30 個分(チクゴスズメノヒエ
などを含む)であった(図 10.4.)。 ヨシ群落に入り込んでいる個体もおり、
すべて駆除することはできなかった。ナガ
エツルノゲイトウの断片は、チクゴスズメ
ノヒエに引っかかっている状態のものもよ
く見られ、そこから発根しているものも見
られた。 図 10.3. チクゴスズメノヒエの群落
10.4. 評 価
ナガエツルノゲイトウの駆除活動は行政も行なっており、滋賀県内においてかなり深刻
な問題となっている。 今回は全て手作業での駆除活動であった
が、大部分は重機で除去し、残りを人海戦
術で手作業による駆除を行なう方が、はる
かに効率的であると考えられる。
今回駆除したナガエツルノゲイトウの中
にはチクゴスズメノヒエも混ざっている。
こうしたナガエツルノゲイトウとチクゴス
ズメノヒエの 2 種類の混在は、周辺環境に
多大な悪影響を与える。今回は一部ではあ
るが、チクゴスズメノヒエも駆除すること
図 10.4. 駆除結果
ができた。 10.5. 今 後 の 課 題
今回行なった駆除活動だけでは、ナガエツルのゲイトウの侵出を抑えることはできない。
そのため、今後も継続して駆除活動を行なっていくことが重要である。 今後、我々が侵略的外来種の駆除を行なっていく上では、地域の水辺においてどのよう
な活動が、どのような理由でなされているかを地域の人々に知ってもらう必要があると考
える。地域の人々へナガエツルノゲイトウという侵略的外来植物が身近に存在していると
いうことを発信することで、駆除作業への参加者も増え、ナガエツルノゲイトウの根絶に
つながっていくと考えられる。 33
まとめ
今年度は、琵琶湖の内湖である神上沼における定期的な外来魚駆除活動だけでなく、地
域への啓発活動にも力を入れた。昨年度の反省から、神上沼周辺地域の人々、また一般の
多くの人に我々の活動を発信することを試みた 1 年間であった。
「定例会」と称して行なっ
てきた神上沼での外来魚駆除活動の頻度を落とさず、新たなイベントを企画・運営してい
くことはメンバーの皆に負担となったが、それぞれが協力し合い、団体一丸となって取り
組むことができた。さまざまな企画に挑戦し、運営してきた原動力は、それぞれの興味・
関心であったように感じている。在来魚の採集が好きなメンバーが軸となって水生生物観
察会や水族展示の企画を進める一方で、外来魚に関心のあるメンバーやバス釣りを趣味と
しているメンバーが神上沼での定例会を首尾よく運営した。それぞれのメンバーの得意分
野を活かして活動を展開することができた。
神上沼での定例会だけでは自己満足の活動に終わりかねない。しかし、積極的に地域へ
身近な水辺で起きている外来魚問題について発信することで、地域とともに活動を展開す
ることができた。さらに、滋賀県大 BASSER'S では、学生が大学で学んでいる専門知識や
環境問題へ向き合う意識などを活動を通して地域に還元することができたと考えている。
地域の子どもを対象としたイベントを定期的に開催することで、地域の中で我々の活動が
徐々に浸透してきたように感じている。これからも滋賀県大 BASSER'S と地域とが連携し
て地域の自然環境を守る活動を継続していきたい。
近年、子どもたちの自然離れ、理科離れが進んでいるといわれている。こうした中、滋
賀県大 BASSER'S が神上沼周辺地域において、子どもたちに自然と触れ合う機会を提供で
きる環境コーディネーターのような立場となりたいと考えている。そのために、団体を構
成するメンバーの意識や活動意欲の向上、自然科学分野における知識の蓄積、野外活動に
おける技術の習得が必須であると考える。
また、学生団体の最大の課題として、世代交代が挙げられる。今年度をもって滋賀県大
BASSER'S の創立メンバーが引退となる。来年度以降は次世代のメンバーが主体となり、
活動を展開していくことになる。ただ単にこれまでの活動を引き継ぐだけでなく、積極的
に新たな取り組みにも挑戦していってほしい。今後の滋賀県大 BASSER'S のさらなる飛躍
を期待してまとめとする。
2013 年 3 月 8 日
2010∼2012 年度 滋賀県大 BASSER'S 代表
曽我部共生
34
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