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- 名古屋大学 地理学教室
経済地理学会中部⽀部6⽉例会(09/6/27) 2009年度経済地理学会中部⽀部6⽉例会(名城⼤学 2009年6⽉27⽇) 横⼭智(名⼤・地理学講座) Department of Geography, Nagoya University 調査研究の⽬的 第3次フードレジーム下における新たな対⽇農産物・⾷料輸出の展 開と当事国農業・流通に及ぼす影響[科研基盤B(⼀般)] 期 間:平成19〜21年度(3年間 今年が最終年!) 代表者:荒⽊⼀視・⼭⼝⼤ (中国と韓国/⻘果物のフードシステム) 韓 ⻘ 物 分担者:後藤拓也・⾼知⼤ (中国/⽇系⾷品企業⽴地と産地変化) ⾼柳⻑直・東京農⼤ (イタリア/トマト⽣産と加⼯品) Department of Geograp phy, Nagoya University 北タイにおける⽇本輸出向け 農産物契約栽培と⼭地の⼟地利⽤ 川久保篤志・島根⼤ 横⼭ (オーストラリア/⿊⽜肥育と⽜⾁の対⽇輸出) 智 横⼭ 名古屋⼤学⼤学院環境学研究科・地理学講座 研究⽬的 ` 研究の⽬的 第3次フードレジーム下における、(1)わが国の農産物輸⼊が新たに どのような貿易パターンを形成したのか、その結果、(2)国内農業や 農産物流通にどのような影響を与え、かつ (3)対⽇輸出国の農業と 流通体系にどのような影響を与えてきたのかを明らかにすること ⽇本に農産物を輸出することによって、北タイの農業および農⺠の ⽣活がどのように変化したのかを明らかにする。 北部 東北部 中央平地部 北タイでの調査経緯 ` 2007年度(カウンターパート:チェンマイ⼤学社会科学部地理学科) トウモロコシ栽培農家への調査で、農産物加⼯企業P社が⽇本に加 ⼯⾷品を輸出していることが判明 → 現地農家は、P社とナス、カボチャ、トウモロコシ、タマネギ、 パプリカ、ズッキーニ等を契約栽培。農産物は、⼯場で加⼯した 後、⽇本の⼤⼿スーパーや商社に販売 中国ギョウザ事件(2008年2⽉)の発⽣後 調査継続を断られる 中国ギョウザ事件(2008年2⽉)の発⽣後、調査継続を断られる ` 2008年度(カウンターパート:チェンマイ⼤学農学部) 事前にカウンターパートにお願いして、チェンマイ近郊の農産物加 ⼯企業に調査内容を説明、納得したうえで調査に協⼒してもらう → ⽇本に加⼯農産物を輸出している2社の企業から調査許可を得る Department of Geograp phy, Nagoya University Department of Geograp phy, Nagoya University 統計上、北タイは、17県からなる ⼈⼝約1,166万(総⼈⼝6,476万の18%) 農地⾯積は、約440万ha(総農地⾯積2097万の21%) ⼭岳部には⼭地⺠(チャオ・カオ)と分類される多くの少数⺠族 が居住。また、インフラの整備も遅れている。 • 北部チェンマイの沖積低地は、チャオプラヤ川の源流をなすピン 川、ヨム川、ナン川、ワン川の4つの川が流れ、肥沃な⼟壌を形 成し 稲作と熱帯野菜の栽培 成し、稲作と熱帯野菜の栽培 • ⼭岳部は、⽐較的冷涼な気候で、寒暖の差もあるため、⽇本で⾒ られるような温帯野菜や果実の栽培 Chiang Mai 南部 北タイの特徴(2005年の統計より) • • • • Department of Geograp phy, Nagoya University 第1次レジーム:戦前の植⺠地との交易を中⼼ 第2次レジーム:戦後のGATT体制 第3次レジ ム(今⽇):グロ バル化の下で多国籍企業が貿易を再編成 第3次レジーム(今⽇):グローバル化の下で多国籍企業が貿易を再編成 研究対象地域 Department of Geograp phy, Nagoya University ` フードレジーム論 2国間の輸出⼊に焦点を当てる従来の視点ではなく、世界的なス ケールでの農産物・⾷料貿易を1つの動きとして把握する視点 (Friedman and McMichael 1989) 智・名古屋⼤ (タイ/⽇系⾷品加⼯企業との農産物契約栽培) 調査した農産物:冷凍エダマメ、加⼯ショウガ、浅漬けナス 本⽇扱うメインの作物 1 経済地理学会中部⽀部6⽉例会(09/6/27) 横⼭智(名⼤・地理学講座) 本⽇の発表内容 契約栽培の形態 ` ⽇本輸出向け農作物の契約栽培の現状 ` 換⾦作物の導⼊と⼟地利⽤の変化 y ショウガ栽培を中⼼にした、⼭地の⼟地利⽤(ローテーション) を明らかにする Department of Geograp phy, Nagoya University y Hsu Chuan Foods Co., Ltd. (HCF) ナス浅漬け → 契約栽培 ショウガ(塩蔵と酢調整)・梅⼲し → 仲買⼈との取引(半契約 栽培:使⽤農薬の指導 クォーター) 栽培:使⽤農薬の指導、クォーター) 契約栽培の形態と⽣産⽅法を中⼼に報告 Department of Geograp phy, Nagoya University y Lanna Agro Industry Co., Ltd. (LACO)・・・エダマメ → 別の機会で発表します… 農産物、製品、資源などによって、契約栽培の形態は異なる(Eaton and Shepherd, 2001)。6形態が考えられるが、そのうち4つが北タ イで⾒られる形態とされる(Sriboonchitta, S. and Wiboonpongse, A, 2008) y ⼭地⺠がショウガを栽培するに⾄ったアクターの役割を明らかに する 輸⼊ショウガの分類 貿易統計では、ショウガは4区分されている ⽣鮮 ⽣⾷、薬味⽤ 塩蔵 ⼀次加⼯品 酢調整 紅ショウガ 調整 ガリ・ハジカミ Department of Geograp phy, Nagoya University Department of Geograp phy, Nagoya University 加⼯ショウガの輸⼊ 輸⼊後、国内で再加⼯ ⽣鮮ショウガ写真・(株)マナカ商事: http://www.manaka.co.jp/main.html 酢調整、調整ショウガ写真・(株)ほった:http://hotta.ocnk.net/より転載 ⽇本の加⼯ショウガ国別輸⼊量 (軒) 0 15 1,000 10 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 0 1997 5 0 1996 500 1995 0.20 20 1,500 1994 5,000 25 2 000 2,000 1993 0.40 30 2,500 1992 0.60 35 3,000 1991 0.80 中国 40 1990 1.00 45 3,500 1989 2006 2004 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 全てのショウガの流通量 (兆円) ⽇本料理・すし・そば店 4,000 1988 タイ 10,000 1988 2006 2004 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 1988 酢調整ショウガ(紅ショウガ等) 0 カレー・丼店 Department of Geograp phy, Nagoya University 0 Department of Geograp phy, Nagoya University 5,000 10,000 外⾷産業売上⾼ 4,500 1987 タイ 1986 中国 10,000 20,000 注)1994年以前は未公表 出典:農畜産業振興機構「ベジ探」(原資料:財務省「貿易統計」) 中国産 その他外国産 2006 2004 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 0.00 1988 15,000 台湾 15,000 30,000 (トン) 調整ショウガ(ガリ等) (トン) 20,000 中国 1985 台湾 1984 タイ 40,000 1983 塩蔵ショウガ(⼀次加⼯) (トン) 50,000 外⾷産業売上⾼・業種別外⾷店舗数の推移 国内産 注)「カレー・丼店」には⽜丼チェーン,「⽇本料理・すし・そば店」には回転寿司 チェーンの店舗数がそれぞれ含まれる。 資料:(社)⽇本フランチャイズチェーン協会「FC統計調査」 2 経済地理学会中部⽀部6⽉例会(09/6/27) 横⼭智(名⼤・地理学講座) ショウガ:タイの⽣産と⽇本の輸⼊ 19.7 24.9 14.2 11.5 17.5 150 100 50 ` 北部がショウガ産地 y 冷涼な気候が栽培に向いている y 病気の発⽣を避けるため連作で きない → 毎年作付けするた めには、広い⼟地が必要 ` ⽇本輸出向けは量的には少ない y 国内でも多くが消費される 2004 2003 2002 2001 2000 1999 0 y パキスタンやEU諸国にも多く ⽣ショウガが輸出されている ショウガ⽣産量(北部) ショウガ⽣産量(北部以外) タイからのショウガ総輸⼊量* 農産物加⼯企業の紹介 HCFの事例 Department of Geograp phy, Nagoya University 200 ⾚字:⽇本輸出向けの⽐率(%) Department of Geograp phy, Nagoya University 250 24.3 千トン * ショウガ総輸⼊量とは、⽣、塩蔵、 酢調整、容器⼊りの総合計 出典:農畜産業振興機構「ベジ探」 (原資料:財務省「貿易統計」)、タ イ農業統計 HCFのプロモーション・ビデオ(⽇本向け) HCFのショウガ⽣産量 Department of Geograp phy, Nagoya University Department of Geograp phy, Nagoya University ショウガ処理量 約76トン/⽇ 平均トリミング量 138kg/⼈ ←シオダ⾷品のHPによると、 熟練社員で約20kg/時間のトリ ミング量だと書かれている。 HCFで138kg/⼈ということ は、8時間労働で約17kg/時間 http://www.shiodafoods.com/pc/activities.html トリミング⾵景 ショウガの輸送ケースは⽊製 Department of Geograp phy, Nagoya University Department of Geograp phy, Nagoya University ショウガの取引先は、22社(すべて⽇本) プラスチックに変えたいが通気性の⾯でダメらしい 3 経済地理学会中部⽀部6⽉例会(09/6/27) 横⼭智(名⼤・地理学講座) 実際にHCFのショウガを販売している⽇本企業 Department of Geograp phy, Nagoya University Department of Geograp phy, Nagoya University ここで加⼯されたショウガは、⽇ 本でこんな⾵にインターネットで 紹介され、売られています。 梅⼲しの選果 http://www.sugano-foods.co.jp/products2.html ⼤きさで選果。梅⼲しの取引先は、4社(すべて⽇本) 浅漬けナスの製造 ナスの育苗施設 Department of Geograp phy, Nagoya University Department of Geograp phy, Nagoya University ショウガとは別棟で⽣産。取引先は、1社(⽇本)のみ ⼯場に隣接して育苗施設と試験圃場が⽴地。組織上は別会社。 ナス新種開発の試験圃場 調査を実施した契約栽培村落(2008年) 中国 ベトナム ラオス ミャンマー Pacha Pack Dee (ショウガ) ラオス タイ Mae Poon Luang (ショウガ) Hsu Chuang Foods(HCF) Mae Wan Noi(ショウガ) Hang (ナス) Prick (ショウガ) Department of Geograp phy, Nagoya University Department of Geograp phy, Nagoya University ミャン マー ラフ リス Lanna Agro Industry チェンマイ 市街地 Rong (エダマメ) ヤオ Santisuck (ショウガ) モン タイ HFCと契約栽培を⾏う村の多くは少数⺠族である⼭地⺠の村 4 経済地理学会中部⽀部6⽉例会(09/6/27) 横⼭智(名⼤・地理学講座) ナス栽培(Hang村およびその近郊) 2003年に栽培を開始、2008年は11世帯が11トンを⽣産 ナス栽培⽤地 • ナス苗:2.5バーツ/本 • 買い取り:7バーツ/kg • ⽔は乾季は週に1回 • 殺⾍剤 (⽯灰硫⻩合剤)1回/週 • 1⽇で30〜80kg/raiの収穫 (天 候による) 顧客 • 収⼊:13, 000バーツ/11t ⽣産コスト:50,000バーツ 利益:80,000バーツ(約7300バー ツ/t、約36,000バーツ/ha)→メイ ズの2〜3倍 加⼯企業(普及スタッフ) 技術指導 苗⽊提供 定期巡回 技術指導 ⽀払(15⽇毎) ⼯場への輸送 ⽀払(15⽇毎) 集荷 現地農家リーダー(=仲買⼈) 肥料農薬管理 契約農家(11⼈) 普及スタッフがフィールド調査を実施して栽培対象地域(輸送の問 題のない地域)を決定する。個別の農家単位で契約。 • 加⼯企業と農家リーダー(仲買⼈)、加⼯企 業と契約農家は、公式に契約を結ぶ Department of Geograp phy, Nagoya University → ナス栽培によって作物は変化し たが、基本的な⼟地ローテーション ⽅法は同じ • 播種後40〜45⽇で収穫が始ま る。8〜10cmの⻑さのものを収 穫(ちょうど⼿のひらの⻑ さ) これより⻑くなると規格 さ)。これより⻑くなると規格 外 • 施肥 (NPK)1回⽬播種後7〜10 ⽇⽬、その後15⽇おき 浅漬け⽤ナス契約栽培(HCF) Department of Geograp phy, Nagoya University • 乾季に栽培するには⽔が容易に得 られる場所か灌漑が必要。 • 連作不可で、⽔⽥との⼆⽑作(ナ ス栽培後は、⽔⽥でコメ、新たな ナスの農地は違う⽔⽥を利⽤。 • かつては、コメ収穫後は、メイズ やキャベツを作付け • ⾼畝マルチ栽培、1×2m間隔 で、800本/rai (1rai=0.16ha) • 収量は、1.6t/rai (5t/ha) Department of Geograp phy, Nagoya University Department of Geograp phy, Nagoya University ナスの契約栽培 → Formal Model • 技術指導は主に加⼯企業が担当し、栽培管理 は農家リーダーが担当。農家リーダーは、集 荷と⽀払いを担当し、重要な役割を担う。 かつての⼭地⺠村落の⼟地利⽤ ` Santisuck村(モン族):1984年まで約70世帯で陸稲を焼畑で 栽培しながら森の中を移動。1年耕作約10年の休閑。1970年 代後半までケシ栽培も実施。焼畑陸稲の休閑地で適地を選ん で、5〜6年連作。 ` Prick村(ヤオ族):1971年までケシを3〜5年で連作。1990年 代中盤まで陸稲を焼畑で実施。メイズ栽培も昔から実施し今に ⾄る。マメ科植物を混作し、すき込んで地⼒維持。 Department of Geograp phy, Nagoya University Department of Geograp phy, Nagoya University ショウガの半契約栽培 ` Mea Poon Luang村(ラフ族):陸稲を現在でも焼畑で継続。 3年連作(2年⽬から施肥)して5年の休閑。ケシは1975年ま で、4〜5年連作し約15年の休閑。 ` Mea Wan Noi村(リス族):1990年後半まで陸稲を焼畑で栽 培。3年連作(2年⽬から施肥)して5〜7年の休閑。1970年代後 半までケシも3〜4年連作で栽培。 ` Pacha Pack Dee村(モン族):1982年まで森の中を政府から 逃げ回りながら共産ゲリラとして⽣活。陸稲とケシを焼畑で栽 培。詳細不明。 陸稲・ケシ・メイズが中⼼ → 農法は焼畑 5 経済地理学会中部⽀部6⽉例会(09/6/27) 横⼭智(名⼤・地理学講座) Mae Poon Luang(ラフ族) • 市場の値段によって、新ショウガ(加⼯⽤)で出荷するか、成熟ショウ ガ(⽣⾷⽤もしくは種⽤)で出荷するか⾒極める。種ショウガは⾃給。 Santisuck(Hmong) Prick(ヤオ族) Pacha Pack Dee(モン族) • ケシ栽培は、1971年に軍の指導で中⽌。メイズに変えた。 • 村の仲買⼈が2年前にショウガを導⼊。現在、10世帯が栽培中だ が、まだ販売には⾄っていない。この村の主要な農産物はメイ ズ、リンチ(ライチ)、トウガラシ、陸稲。メイズと陸稲は施肥し て3〜4年連作。リンチは、かつての焼畑耕地。 • 村の仲買⼈は、1995年からショウガの取り扱いを開始。この数年 は種ショウガをラオスのサイヤブリーから購⼊している。 → ラオスでは農薬を使⽤していない(残留農薬の⼼配がない)。 Department of Geograp phy, Nagoya University Department of Geograp phy, Nagoya University • 野⽣動物保護区内に158世帯が住む。1984年に軍によって定着さ せられた。その時に、換⾦作物として軍がヘリコプターでショウガ を持ってきた。売り始めたのは1989〜90年から。 • 現在、多くの住⺠は、他村の⼟地を借りてショウガを栽培。お⾦を 払う場合、約4ライで2,000バーツ/年。 → 野⽣動物保護区に指定されてから、村で耕耘機の使⽤が禁⽌さ れた • 30年前にモン族の村からショウガを購⼊して栽培を開始(最初の10年 間は試験栽培)。現在は、全世帯(90世帯)が栽培。 1世帯あたり3〜5 区画の農地を所有し、世帯平均で3〜4トンを⽣産。ショウガ(1年)→ 常畑陸稲(3年)→メイズ(約5年)をローテーションさせている。 • 病気を避けるため連作はしない。栽培には、殺⾍剤は使⽤しないが 肥料と殺菌剤は使⽤。 Department of Geograp phy, Nagoya University Department of Geograp phy, Nagoya University • 1972年にモン族の村からショウガを持ってきて栽培を開始。当時 は、道が無く⾺で運んだ。⼟地は、ショウガとメイズと陸稲をロー テンションしている。 • 1975年にロイヤル・プロジェクト(⼭地⺠の⽣活改善を⽬的とした温 帯野菜・果樹の導⼊プロジェクト)が村で実施され、ケシ栽培をやめ た。ウメ、チェリー、キャベツ、ブロッコリーが導⼊。⼭茶も販 売。 • 1985年に道が通じて、仲買⼈が⼊ってくるようになり、ショウガの 栽培が盛んになる。現在は、村⺠が⾞を持っているので、⾃ら町の 仲買⼈に売りに⾏く Mae Wan Noi(リス族) 複合経営の事例 ` Mae Poon Luang村(ラフ族)のBさん 常畑6ライ・果樹4ライ・⽔⽥2ライ y ウメ:4ライ 3トン(3〜4B/kg) y タロ:2ライ 今年はまだ y ⽔稲:2ライ 845kg (⾃家⽤) y ⼭茶:森の中にたくさんあるが、⼈⼿不⾜のため収穫していない y 出稼ぎ:2006年と2007年にそれぞれ3ヶ⽉間、チェンマイで建 設作業員の仕事。⽇当190バーツ(宿泊費は無料、⾷事60バーツ が引かれて実収⼊は130バーツ) Department of Geograp phy, Nagoya University Department of Geograp phy, Nagoya University • この村では、果樹(ミカン、リンチ、ロンガン)、パラゴム、陸 稲、ショウガ、メイズ、キャベツがメイン。ショウガは1998年に 導⼊された。低地に⼟地を借りている世帯も多い。村にパラゴム が導⼊されたのは2004年で、まだ収穫はない。 • 農地は必ず耕起する。耕耘機の利⽤料は傾斜地の場合、1,000 バーツ/rai(下りしか耕すことができないので、平地の倍額)。写真 の耕耘機の価格は60,000バーツ。耕起前はメイズで、耕起後は キャベツを移植する予定。 y ショウガ:4ライ 1トン (種ショウ ガ 5B/kg)販売、1tは来年⽤の種 ショウガ。病気で収量が低かった。 伝統的な焼畑による陸稲とケシ栽培の終了後は、果樹と畑作物 の少量多品種栽培。中でも、現⾦収⼊としてショウガは重要な 作物となっている。 6 経済地理学会中部⽀部6⽉例会(09/6/27) 横⼭智(名⼤・地理学講座) ショウガ栽培の⼟地ローテーション ショウガ(半)契約栽培(HCF) 陸稲 メイズ* もしメイズの収量が低ければ、やせている⼟地とみなされる ので ショウガに戻る前に2 3年間の休閑期間を設ける ので、ショウガに戻る前に2〜3年間の休閑期間を設ける。 キャベツ メイズ キャベツ 70⽇間 120⽇間 70⽇間 Pacha Pack Dee村(Hmong)で は、メイズ収量を⼟地の肥沃度の指標 とし、作物の作付け順序を決めてい る。 メイズの収量が低い場 合、キャベツを作付けせ ずにそのまま休閑 加⼯企業 技術講習会(主に農薬) ⼯場への輸送 ⺠間仲買⼈ 資材および種 ショウガの提供 ⽀ 払 出 肥料農 荷 薬管理 資材サプライヤー 種ショウガ栽培農家 農家 固定している流れ 固定していない流れ • 加⼯企業と仲買⼈の関係は固定だが、契約農家と 仲買⼈は完全に固定ではない。 • 新ショウガは契約した加⼯企業に、成熟ショウガ は、他の⼯場に販売するので、仲買⼈は複数の企 業とつきあう Department of Geograp phy, Nagoya University ショウガ 顧客 栽培指導(必要なら) Department of Geograp phy, Nagoya University タ イ 北 部 ⼭ 地 部 で は 、 1 世 帯 あ た り 単 年 度 で 10 ラ イ 程 度 ( 約 1.6ha) の耕地を所有し、それを数種類の作物を組み合わせ、 ローテーションさせながら使っている。 → Informal Modelに近い新しいモデル • 技術指導も栽培管理も⺠間仲買⼈が⾏う。 農産物の契約栽培の構造と実態 ショウガの栽培者と仲買⼈たち ` ショウガは在来品種(原産がインド〜東南アジア)で、⼀部のモン 族では、古くから栽培していた(←要確認) y 軍(国境警察?)による定住化促進のために導⼊が進んだ村もあり、 政策とも密接に関係している。 y ショウガだけではなく、メイズ+陸稲の複合的農業経営。ショウ ガは連作すると病気が発⽣するため、⼟地のローテーションが必 要。平地よりも、耕地⾯積が広い⼭地部には適している。 ` 仲買⼈の存在と役割が重要 y 企業と仲買⼈の結びつきが固定化しており、企業が仲買⼈に対し て講習を⾏い、仲買⼈も企業が求める品質を理解している。 y 仲買⼈が農⺠の施肥・農薬管理をしている。半契約栽培でこうし た体制が築かれているのは、東南アジアではタイだけ? 半契約栽培(仲買⼈が企業と農⺠の間を取り持つ)・・・ショウガ • 企業は仲買⼈に技術指導を⾏い、⽣産量を割り当てる。仲買 ⼈は⾃分の受け持つ範囲内で農家に⽣産量を割り当てる。 • 栽培した農産物で規格内のものは仲買⼈が全て買い上げる。 • 技術指導は必要に応じて仲買⼈が実施する。 • 種⼦(苗)、肥料、農薬は農家が⾃ら購⼊する。ただし、仲買 ⼈から指定された種類を購⼊するのが⼀般的である。 • 施肥/農薬は仲買⼈によって厳しく管理される。 ` 先進国への農産物加⼯品輸出で今の状態に⾄る(?) y 北タイでは多くの農産物加⼯企業が⽴地し、先進国からの需要が 多く、先進国取引先から求められる要求も⾼いレベルにある(ex. ⽇本のポジティブリスト制度:残留する可能性のある全ての農薬 に基準値を設定する制度。2003年に制定、2006年5⽉より実 施。)企業側が仲買⼈を指導し、その仲買⼈らが⼭地⺠を指導し ている。 → ラオス北部の中国との契約栽培では、中国商⼈に⾔われるままに施肥・ ラオス北部の中国との契約栽培では 中国商⼈に⾔われるままに施肥・ 農薬散布しているが、安全⾯は全く考慮されていない。 ` タイからその先へ y ⼀部の仲買⼈が残留農薬を⼼配して、ラオスから種ショウガを仕 ⼊れている。 y ⽇本輸出向け農産物加⼯企業は、⽣産拠点としてラオスやミャン マーを視野に⼊れ始めている(実際にLanna Agro Industryでは、 ラオスのフエイサイでインゲンを契約栽培している。) Department of Geograp phy, Nagoya University y 2. 北タイのショウガ栽培と⽇本 Department of Geograp phy, Nagoya University ⼭地⺠による栽培 y 北タイのショウガ栽培は、1970年代に⼭地⺠が焼畑陸稲作の代 替作物として導⼊したのが始まり→タイの森林政策と強く関係 契約栽培(企業上位のヒエラルキー)・・・ナス • 企業は各農家(もしくは地域)に⽣産量を割り当てる。 • 栽培した農産物で規格内のものは企業が全て買い上げる。 • 契約農家を統括するための「リーダー農家」が存在する。 • 企業担当者が定期巡回し、技術指導を⾏う。 • 種⼦(苗)、肥料、農薬は企業が提供する。 • 施肥/農薬は「リーダー農家」によって厳しく管理される。 Department of Geograp phy, Nagoya University Department of Geograp phy, Nagoya University まとめと課題 1. 7 経済地理学会中部⽀部6⽉例会(09/6/27) 横⼭智(名⼤・地理学講座) 北タイ⼭地⺠と⽇本、そして・・・(課題) 現状 関与 ラオス 種ショウガ 肥料農薬 ⼟地資源 ⽇本のショウガ需要 農業資材サプライヤー 契約農家の誕⽣(⼭地⺠) 先進国の⾷の安全性 ` 北タイの焼畑から常畑化へのDriving Forceは何だったの 政策・流通と経済・資源と技術 ` 隣国への影響(ラオスやミャンマー) 調査途中の内容のため、まとまりのない 発表で申し訳ございませんでした。これ からも現地調査を継続する予定です。い ろいろとご指導ください。 Department of Geograp phy, Nagoya University ショウガ栽培 加⼯企業・⺠間仲買⼈誕⽣ Department of Geograp phy, Nagoya University 北タイ⼭地⺠ タイの森林政策 ` ⽇本(先進国の⾷)の影響 将来的な需要、ポジティブリスト ` 中国の⽣産にも⼤きく影響 ライバルでもあるが、中国が失態すればタイでの⽣産が増える 8