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平成 22 年 11 月 25 日 (社)電波産業会 電磁環境

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平成 22 年 11 月 25 日 (社)電波産業会 電磁環境
平成 22 年 11 月 25 日
(社)電波産業会 電磁環境委員会
子ども向けの携帯電話の販売禁止等に関するフランスの法律について
フランス国民議会(下院)は 2010 年 6 月 29 日、
「環境に対する国のコミットメントについ
て」と題する法律を可決しました。なお、この法律は、上院で 2009 年 10 月に可決された
もので、下院での可決を受けて、7 月 19 日付の官報に公告されました1。
この法律は、「建築及び都市計画」「運輸」「エネルギー及び環境」「生物多様性」「リスク、
健康、廃棄物」
「統治」の 6 章で構成されており、全体で 257 項、126 頁にわたる膨大なも
のです。
この中で「リスク、健康、廃棄物」の章の 2 つの項(183 項及び 184 項)に、携帯電話に
関する以下の記述があります。
○
183 項:
・
電話サービス提供のため一般に開放されたネットワークに接続する無線端末は、通話
中の頭部への電波ばく露を制限する付属品なしに販売できない。
・
フランスの規制当局は、全国平均のばく露を大幅に上回る地域を同定するため、公衆
の電波ばく露に関する全国調査を 2012 年 12 月 31 日までに実施しなければならない。
・
保健省は、6 歳以下の子ども向けの電波放射機器の販売または無料配布を禁止する法律
を制定することができる。
・
14 歳以下の子ども向けの携帯電話の広告またはマーケティングを禁止する。
・
幼稚園・学校・大学での児童・学生の携帯電話の使用を禁止する。
・
ばく露測定実験を実施する地方政府は、その結果を国家周波数局及び環境衛生労働安
全局に通知すること。
○
184 項:
・
フランス国内で販売される全ての携帯電話は、比吸収率(SAR)をフランス語で明確
に表示しなければならない。また、通話中の頭部への電波ばく露を制限する付属品の
使用推奨にも言及しなければならない。
(社)電波産業会
電磁環境委員会は、子どもへの影響を含む、電波の健康影響に関する、
世界保健機関(WHO)などの国際的な専門機関ならびに、我が国における「生体電磁環境
研究推進委員会」の科学的根拠に基づく正式な見解を重要視すべきと考えています。
我が国においては、総務省が電波防護指針の根拠となる科学的データの信頼性の向上を図
1
LOI no 2010-788 du 12 juillet 2010 portant engagement national pour l’environnement (1).
JOURNAL OFFICIEL DE LA RÉPUBLIQUE FRANÇAISE. 13 juillet 2010.
http://www.legifrance.gouv.fr/jopdf/common/jo_pdf.jsp?numJO=0&dateJO=20100713&numTexte=1&p
ageDebut=12905&pageFin=12989
1
平成 22 年 11 月 25 日
(社)電波産業会 電磁環境委員会
るために平成 9 年(1997 年)に設置した「生体電磁環境研究推進委員会」が、平成 19 年
(2007 年)4 月に報告書を公表しています。同委員会はこの報告書で、子どもへの影響に
ついて、以下のような見解を示しています。
「我が国の電波防護指針は、電波が人体に与える影響について、これまでに蓄積された
科学的知見を基に十分な安全率を見込んで策定されており、電波法令の規制値となってい
る一般環境の基準値(公衆に対する基準値)は、さまざまな年齢、身体の大きさ、健康状
態などを含んだものである。したがって、現時点では子どもに対するばく露を考慮して、
電波防護指針値を直ちに改訂する必要はないものと考える。
しかし、WHO は、子どもに関する各種研究の必要性を提言していることから、電波防護
指針値の根拠となる科学的データの信頼性の向上を図るためにも、今後とも電波の安全性
評価に関する研究を継続し、国民が安心して電波を利用できるための環境を整備していく
ことが必要である。」2
電波ばく露が子どもに及ぼす影響について、国際的な専門機関は以下のような見解を示し
ています。
世界保健機関(WHO)は 2004 年 6 月イスタンブール(トルコ)で「電磁界に対する子ど
もの感受性」と題するワークショップを開催いたしました。このワークショップにおいて、
国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のパオロ・ヴェッキア委員長は、次のように述べ
ています。
「基本制限と参考レベルを用いた防護体系によって、ICNIRP ガイドラインは、事実上い
かなるばく露条件、いかなる集団にも適用可能な柔軟なものとなっている。
よって、子どもの防護のために特別なアプローチは必要なく、正当化されない。
」3
米国において携帯電話を含む電波放射機器に関する規制策定を担当する食品医薬品局
(FDA)は 2009 年4月、「子どもと携帯電話」に関し、次のような見解を示しています。
「科学的証拠は、子どもやティーンエイジャーを含めて、携帯電話ユーザーに電波ばく
露による危害が生じることを示していない。ばく露を低減するために大人が講じることが
できる以下の方策は、子どもやティーンエイジャーにも適用可能である。
・ 携帯電話の使用時間を減らすこと。
・ スピーカーモードやハンズフリーを使って頭部から携帯電話を離すこと。
また、他国の政府によって支援された一部のグループは、子どもには携帯電話を一切使
用させるべきではないと助言している。こうした助言は厳密には予防的なものであり、何
らかの健康ハザードが存在するという科学的証拠に基づくものではない。」4
2 総務省 平成 19 年(2007 年)4 月 27 日付報道資料 「
『生体電磁環境研究推進委員会』報告書の公表」
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2007/070427_12.html
3 Vecchia P. The Approach of ICNIRP to the protection of children. WHO Workshop: Sensitivity of
Children to EMF Exposure. Istanbul, 9-10 June 2004.
http://www.who.int/peh-emf/meetings/archive/en/vecchia_icnirpapproach.pdf
4 U.S. Food and Drug Administration. Radiation-Emitting Products. Children and Cell Phones. April
2
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(社)電波産業会 電磁環境委員会
ドイツの独立研究機関で、健康・エネルギー・環境・情報通信等の多分野の先端研究を実
施しているユーリッヒ研究所は 2009 年 9 月、「子どもの健康と電波ばく露」と題する報告
書を公表し、次のように結論付けています。
「これまでの科学的文献についてのレビューの結果は全体として、子どもの健康が携帯
電話または基地局からの電波ばく露によって影響を受けるという仮説を支持していない。
特に動物研究は、子どもがリスクにさらされるという具体的な論拠を示していない。」5
携帯電話事業者の国際的な団体である GSM アソシエーション(GSMA)の研究・持続可能
性部門に所属するディレクター、ジャック・ロウリー博士は、今回のフランスの法律制定
に関して、「このような厳格な法律の実施には信頼できる科学的理由はない」として、次の
ように述べています6。
「現行の国際的な安全上の勧告は、確立されている全ての健康リスクから全ての人々を
防護しているということが、30 以上の国々や WHO による独立したレビューで結論付けら
れている。GSMA は、信頼できる情報へのアクセスを支持するが、この法律の一部が根拠
のない警告を生じ、一般の人々の混乱につながるかも知れないということを懸念している。
SAR 値は、実験室条件で認証を受けた最大出力レベルで決定されるが、実生活における
SAR レベルはこの値よりも遥かに低くなる。これは、携帯電話はネットワーク接続に要す
る最小限の出力を使用するように設計されているためである。また、SAR 値は 2000 年以
降、携帯電話製造会社によって広く入手できるようになっている。顧客お客様のニーズに
応えるため、SAR について理解するための背景情報や、端末から生じる最大値を、製品の
取扱説明書または別刷りの小冊子に記載している。ほとんどの製造会社は、自社のウェブ
サイトでもこれら情報を提供している。」
以上
本件に関するお問合せ先:
(社)電波産業会 電磁環境委員会
.TEL:03-5510-8596
FAX:03-3592-1103
30, 2009.
http://www.fda.gov/Radiation-EmittingProducts/RadiationEmittingProductsandProcedures/HomeBusi
nessandEntertainment/CellPhones/ucm116331.htm
5 Wiedemann P, Schuetz H, Boerner F, Berg-Beckhoff G, Croft R, Lerchl A, Martens L, Neubauer G,
Regel S, Repacholi M. Children's health and RF EMF exposure. Forschungszentrum Juelich GmbH.
September 2009. http://juwel.fz-juelich.de:8080/dspace/handle/2128/3683
6 GSM Association. Health and Environment. July 2010. New laws order warning labels on French
mobiles. http://www.gsmworld.com/health/newsletters/gsma_health_env_2010_07.html#3
3
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