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コア人材の確保・定着のための戦略 -コア人材の視点から

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コア人材の確保・定着のための戦略 -コア人材の視点から
NRI Public Management Review
コア人材の確保・定着のための戦略
株式会社 野村総合研究所
-コア人材の視点から-
社会産業コンサルティング部
コンサルタント
新井
祥子
では代替の効かない人物で、原則、代表者以
1.はじめに
外の者」と設定している。また、コア人材候
多くの企業にとって、企業を担う中核的な
人材(コア人材)や、将来的にコア人材とな
補者とは、将来(5~10 年後)、コア人材にな
ることが予想される人材を想定している。
る若手の人材(コア人材候補)の確保・育成
は重要な課題である。NRI パブリックマネジ
メントレビュー6 月号(2007)においては、
2.コア人材の獲得
コア人材の充足状況と企業の業績に関係があ
ることや、10 年前と比較して企業の人材ポー
1)採用の重要性
トフォリオの構成に変化があり、経営者の感
ある企業の経営者は、本調査に際して「良
じる「コア人材」の不足感が高まっているこ
い人材を得るためには、育成が 2~3 割、採
とが指摘されている。
用が 7~8 割であると考えている。より重要
野村総合研究所では、平成 18 年 11 月に、
企業を対象とした「キーパーソンの育成や確
保の実態に関するアンケート調査
*1
」および
コア人材とコア人材候補者を対象とした「キ
*2
なのは採用である。」とコメントしている。経
営者が人材に期待するものを「知識・能力(ス
キル)」と「やる気や性格などの適性(ウィル)」
に分類するとすれば、入社後に養成すること
」
(以下、本
がより難しい「ウィル」の部分をあらかじめ
調査とする。)を実施した。本稿ではその結果
備えた人材を獲得することは非常に重要であ
を踏まえて、コア人材およびコア人材候補者
る。そのためには、企業は、採用の段階で適
の視点から、コア人材をどのように確保し定
切に人材を見極め評価する必要があり、また、
着を促すかについて論じる。
人材の定着を促進するために十分な魅力を備
ーパーソンに関するアンケート
なお、本稿では上述のアンケート調査を適
えている必要がある。
宜引用しているが、当該調査でいう「キーパ
ーソン」と同じ意味合いで、より一般的な用
2)コア人材の入社の動機
語である「コア人材」を用いている。また、
本調査結果によると、
「 自分の持っている知
調査の実施にあたっては、コア人材の定義を
識や経験が生かせるから」
(コア人材 44.3%、
「企業において役職などに関わらず、企業競
コア人材候補 38.7%)、
「仕事にやりがいがあ
争上、他社との差別化を図る上でも不可欠と
る か ら 」( コ ア 人 材 28.1 % 、 コ ア 人 材 候 補
なるコアとなる業務を担う、他の社員・職員
30.4%)と、コア人材は入社の時点から、仕
*1
*2
対象企業:全国の中小企業基本法対象の中小企業、配布企業数:任意に選別した 15,000 社、回収率:8.4%
インターネットアンケートにより、全国のお勤めの方 2,000 人(「コア人材」1,000 人、
「コア人材候補」
1,000 人を対象としている。なお、ここで調査対象とした「コア人材」は、事前アンケートにおいて「コ
アとなる業務を担い、他の社員では代替が利かない人材」であると回答した人、
「コア人材候補」は、20
~30 代で、5~10 年後には前述の条件を満たすコア人材と評価されていると回答した人である。
NRI パブリックマネジメントレビュー July 2007 vol.48
-1-
当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法および国際条約により保護されています。
Copyright© 2007 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
事に対するやりがいや自分の持つ知識・経験
き、キャリアを積むことができるから」が
の活躍の場を求める傾向がある。また、コア
36.0%と多く、自分の成長やキャリア形成も
人材候補は「自分が能力を身に付けて成長で
同様に重視していることがわかる。
コア人材の入社の動機
図表1
0%
10%
20%
8.8
5.8
19.5
15.3
4.会社の所在地やオフィス環境が良いから
6.8
6.4
6.自分が能力を身に付けて成長でき、
キャリアを積むことができるから
36.0
25.0
38.7
7.自分の持っている知識や経験が生かせるから
44.3
30.4
28.1
8.仕事にやりがいがあるから
9.社長や経営層の人柄が良いから
7.4
8.4
10.会社に将来性があるから
7.8
7.8
8.5
10.5
11.親戚、知人、友人がいるから
18.8
20.1
12.地元にあるから
13.社会的な評判が高いから
14.その他
50%
13.4
11.5
2.労働時間が短いなど、労務環境が良いから
5.管理職になれる見込みが高いから
40%
24.3
21.7
1.給与や手当てなど、待遇が良いから
3.福利厚生が良いから
30%
4.9
5.1
4.7
6.8
コア人材候補
コア人材
出所)野村総合研究所「キーパーソンに関するアンケート調査」(2006 年)
い傾向にある(図表2参照)。ここで、図表3
3.コア人材の定着
に示すように、勤務先に中・長期的~終身的
に勤めたいと回答した人のうち、その理由が
1)コア人材の定着と業績
コア人材やコア人材候補者の定着は企業に
「業績が良いこと」と回答した人は約 7%と
とって非常に重要であり、時には喫緊の課題
必ずしも多くない。このことから、コア人材
となり得る。コア人材の活躍のために、企業
が定着した結果として、業況感が高まってい
内のコミュニケーションの活発化や戦略的人
るという因果関係が推測できる。企業が業績
事ローテーションなど、積極的な取り組みを
を伸ばし、より発展するためには、コア人材
行っている企業も多くある。
やコア人材候補者の確保・定着が重要である
本調査結果によれば、業況感が良い企業は
といえよう。
コア人材やコア人材候補の勤務継続意向が高
NRI パブリックマネジメントレビュー July 2007 vol.48
-2-
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図表2
勤務先の業況感(勤務継続意向別)
0%
1. すぐにでも辞めるつもりである
(1年以内程度)
2. 1、2年後には辞めるつもりである
3. 中・長期的(5~10年程度)に
勤めたい
20%
40%
21.5%
1.3%
60%
80%
40.5%
28.8%
1.2%
31.9%
35.5%
32.5%
100%
29.1%
7.6%
30.1%
8.0%
3.9%
22.1%
5.9%
38.8%
4. 10年以上~終身的に勤めたい
30.9%
2.1%
19.2%
8.9%
1.非常に良い
2.良い
3.どちらでもない
4.良くない
5.非常に良くない
出所)野村総合研究所「キーパーソンに関するアンケート調査」(2006 年)
一方で、短期的に離職する意向のあるコア人
2)コア人材の勤務継続の意向と離職意向
材は、納得できる給与が支払われていない、
それでは、コア人材にとって、長期的に勤
支払われる見込みがないことを理由とする回
めたいと思う企業や短期で辞めたいと思う企
答が最も多い。また、コア人材候補者では仕
業はどのような企業であろうか。コア人材の
事内容にやりがいや楽しみを感じられないと
勤務継続意向および離職意向の理由を把握し
いう仕事の内容面での意見や、さらにキャリ
たところ、「長期的(10 年以上)~終身的に
アアップできる職場に移りたいという前向き
勤めたい」と考えるコア人材およびコア人材
な意見も相対的に多くなっている。コア人材
候補者は、仕事内容にやりがいや楽しみを感
については、
「 社長・経営陣と意見が合わない」
じていることや、自分の専門性や知識・ノウ
という、勤務先の方向性と自分の方向性の違
ハウが生かせることをその理由に挙げている。
いを挙げる回答も多い。
図表3 コア人材の勤務継続意向、離職意向の理由
(10年以上~終身的に勤めたい人の場合)
0%
10%
20%
30%
40%
50%
18.2%
18.5%
1. 納得のいく給料が支払われているから
51.5%
47.8%
2. 仕事内容にやりがいや楽しみを感じているから
3. 学びの機会が多く与えられ、
成長できることが明確だから
22.0%
15.5%
4. 自分の専門性や知識・ノウハウが
十分に生かせる組織だから
5. 会社の業績が良い、または良くなる見込みだから
6. 社長・経営陣と方向性や目標が一致しているから
36.4%
39.1%
7.2%
6.6%
8.9%
12.8%
20.6%
17.0%
7. 職場の人間関係が良いから
8. 昇進の機会が多いから
3.8%
3.0%
9. 労務環境が良く、自分に合った
ペースで仕事ができるから
10. 福利厚生に満足しているから
22.7%
16.7%
7.9%
3.0%
12.0%
11.0%
11. 他に自社よりも魅力的なところがないから
12.その他
60%
7.2%
4.5%
コア人材候補
コア人材
出所)野村総合研究所「キーパーソンに関するアンケート調査」(2006 年)
NRI パブリックマネジメントレビュー July 2007 vol.48
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図表4 コア人材の勤務継続意向、離職意向の理由
(1年以内に辞めるつもりである人の場合)
0%
10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80%
1. 納得できる給料が支払われていない、
または支払われる見込みがないから
58.2%
69.6%
43.0%
2. 仕事内容にやりがいや楽しみを感じられないから
29.0%
21.5%
11.6%
3. 学びの機会がなく(または少なく)、成長できないから
4. 自分の専門性や知識・ノウハウを生かす機会がな
い、または少ないから
8.9%
10.1%
17.7%
20.3%
5. 会社の業績が悪い、または上昇見込みがないから
19.0%
6. 社長・経営陣と意見が合わないから
30.4%
10.1%
8.7%
7. 職場の人間関係が良くないから
12.7%
17.4%
8. 独立したいから
9. 家業を継ぐから
0.0%
0.0%
10. 留学するから
1.3%
0.0%
11. さらにキャリアアップできる職場に移りたいから
12. 仕事が忙しすぎるなど、労務環境が悪いから
34.2%
5.8%
11.4%
15.9%
13. 福利厚生が不十分だから
7.6%
5.8%
14. その他
6.3%
7.2%
コア人材候補
コア人材
出所)野村総合研究所「キーパーソンに関するアンケート調査」(2006 年)
離職を決心するきっかけとしての要因は、
す必要があり、さらにコア人材の定着を図っ
「衛生要因」
( 満たされなければ不満を感じる
て活躍を促すためには、従業員がやりがいを
が、それが満たされていることを持ってやる
感じながら仕事をできる環境を整えたり、従
気が引き出されるわけではない要因)として
業員に経験・能力の活躍の場を提供すること
の性質を持っており、コア人材の惹きつけの
が求められる。
ために最低限必要なものと捉えられる。上記
の調査結果によれば、離職については、コア
3)コア人材確保のための取り組み
人材にとっては給与などの待遇面が非常に大
コア人材を育成するための取り組みは、
「戦
きく、コア人材候補者にとってはそれに加え
略的ローテーションによって様々な業務を体
て仕事内容が要因になると考えられる。
験させるといった積極的な人事的取り組み」
一方、勤務継続意向の理由は積極的なやる
や、
「 失敗を許容する風土や経営者に触れ合う
気を与える「動機付け要因」である。これに
機会が多い風土づくりといった組織・場づく
ついては、給与はむしろ影響が少なく、仕事
りの取り組み」、「成果に応じた評価体系や相
内容にやりがいがあることや自分の能力が生
応の報酬を支払うなどの評価・報酬面での取
かせることが重要と考えられる。
り組み」などが考えられる。これらのコア人
コア人材・コア人材候補者の離職防止のた
めには、待遇面でのコア人材の納得感を満た
NRI パブリックマネジメントレビュー July 2007 vol.48
材を確保・育成するための取り組みは、コア
人材の定着に繋がっているだろうか。
-4-
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「特に取り組みはしていない」の回答割合は、
本調査において、勤務先におけるコア人材
育成の取り組みの実施状況を聞いたところ、
「すぐにでも辞めるつもりである」は 55.7%
こういったコア人材の確保・育成のための取
と過半数であるのに対し、「10 年以上~終身
り組みを行っているかについては、
「 自社内で
的に勤めたい」は 34.0%と相対的に少ない。
の育成・教育を積極的に行っている」
(コア人
このように、自社で積極的に育成を行って
材 34.7%、コア人材候補者 32.2%)と、「特
いる場合は勤務継続意向が強い傾向がみられ、
に取り組みはしていない」
(コア人材 40.7%、
離職意向のある場合は勤務先で特に取り組み
コア人材候補者 37.9%)が多かった。その結
をしていないと感じている割合が高い傾向が
果を勤務継続意向別にみると(図表5)、「自
みられる。コア人材を育成するための取り組
社内での育成・教育を積極的に行っている」
みがコア人材に認知されている場合には、企
の回答割合は、
「 すぐにでも辞めるつもりであ
業に対するロイヤリティが高い傾向があると
る」は 17.7%であるのに対し、「10 年以上~
みることができるのではないか。
終身的に勤めたい」は 39.9%である。また、
図表5
コア人材確保・育成のための取り組み状況
0%
1. すぐにでも辞めるつもりである
(1年以内程度)
20%
40%
60%
100%
0.0%
17.7% 8.9%10.1%
55.7%
1.3%
2. 1、2年後には辞めるつもりである
80%
6.3%
0.6%
22.7% 11.0% 16.6%
41.7%
3.7%
36.0%
6.8%
3.7%
3. 中・長期的(5~10年程度)に
勤めたい
33.1%
7.9%14.0%
2.0%
0.0%
6.9%12.7%
34.0%
39.9%
4. 10年以上~終身的に勤めたい
0.2%
4.5%
2.1%
1.自社内での育成・教育を積極的に行っている
2.他社で働く優秀な人材を積極的に採用している
3.キーパーソンになることが期待される若年人材を積極的に採用している
4.キーパーソンの社外流出を防ぐための手段を講じている
5.その他
6.特に取組はしていない
7.よくわからない
注)図表はコア人材候補者について示している。なお、コア人材についても類似の結果である。
出所)野村総合研究所「キーパーソンに関するアンケート調査」(2006 年)
具体的な取り組み内容について、勤務先へ
特に、離職意向がある(「すぐにでも辞める
の勤務継続意向別にみた場合、
「 成果に応じた
つもりである」、
「1、2 年後には辞めるつもり
評価体系である」
「 納得のいく処遇である」
「経
である」と回答した人)と勤務継続意向があ
営者と対話する機会や仕事ぶりを肌で感じる
る(「中・長期的に勤めたい」、「10 年以上~
機会がある」「社外の人との交流の機会があ
終身的に勤めたい」と回答した人)では、大
る」
「担当事業・業務における十分な裁量権が
きな差がある場合がみられる。例えば、
「成果
与えられている」などの項目で、勤務継続意
に応じた評価体系となっている」かどうかに
向による顕著な違いがみられた。
ついては、離職意向のある場合は行われてい
NRI パブリックマネジメントレビュー July 2007 vol.48
-5-
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る(「十分に行われている」「ある程度行われ
う結果である。
「 社外の人材との交流の機会が
ている」の合計)割合が約 23%であるのに対
ある」
「 キーパーソンが複数の領域に置いて中
し、勤務継続意向がある場合には 40%に近い
核的な役割・立場でローテーションする」と
割合になっている。また、行われていない(「あ
いった取り組みについても、すぐに辞めるつ
まり行われていない」「全く行われていない」
もりである人材は行われている場合が約
の合計)割合は、離職意向がある場合には約
20%であるのに対し、長期的に勤めたいとす
45%であるが、勤務継続意向がある場合には
る人材の場合は 40%に近く、相対的に多い。
約 25~30%であった。「失敗を許容する組織
このように、コア人材およびコア人材候補者
文化がある」との回答についても、離職意向
の確保・育成のための取り組みが行われてい
がある場合では 31~33%程度であるのに対
る度合いが高ければ、勤務継続意向も高い傾
し、長期的に勤めたい人の場合は約 49%とい
向にあることがはっきりとわかる。
図表6
コア人材に対する取り組み内容と勤務継続意向
社外の人材との交流の機会がある
成果に応じた評価体系となっている
0%
1. すぐにでも辞めるつもりである
(1年以内程度)
2. 1、2年後には辞めるつもりである
3. 中・長期的(5~10年程度)に
勤めたい
20%
40%
60%
16.5%
6.3%
31.6%
16.0%
6.7%
33.7%
29.8%
80%
20.3%
32.0%
16.6%
20.0%
6.8%
11.4%
29.9%
4. 10年以上~終身的に勤めたい
36.1%
17.2%
0%
2. 1、2年後には辞めるつもりである
3. 中・長期的(5~10年程度)に
勤めたい
20%
29.1%
2.5%
28.2%
5.5%
39.5%
60%
35.4%
80%
十分に行われている
あまり行われていない
39.3%
14.7%
36.2%
7.2%
44.3%
4. 10年以上~終身的に勤めたい
35.1%
4.5%
十分に行われている
あまり行われていない
ある程度行われている
全く行われていない
32.3%
11.6%
5.5%
14.1%
2.1%
100%
27.8%
32.0%
21.6%
6.2%
ある程度行われている
全く行われていない
1. すぐにでも辞めるつもりである
(1年以内程度)
2. 1、2年後には辞めるつもりである
12.3%
20.3%
どちらとも言えない
キーパーソンが複数の領域に置いて中核的な
役割・立場でローテーションする
0%
20%
40%
60%
100%
13.9% 19.0%
34.2%
80%
7.9%
どちらとも言えない
40%
60%
22.7% 25.2%
30.1%
17.8%
4.3%
3. 中・長期的(5~10年程度)に
31.1%
28.7%
21.9%
勤めたい
11.8%
6.4%
失敗を許容する組織文化がある
1. すぐにでも辞めるつもりである
(1年以内程度)
40%
2. 1、2年後には辞めるつもりである
7.6%
ある程度行われている
全く行われていない
20%
15.2%
2.5%
4. 10年以上~終身的に勤めたい
9.3%
十分に行われている
あまり行われていない
1. すぐにでも辞めるつもりである
(1年以内程度)
25.3%
27.0%
0%
100%
3. 中・長期的(5~10年程度)に
勤めたい
4. 10年以上~終身的に勤めたい
どちらとも言えない
十分に行われている
あまり行われていない
19.0%
1.3%
35.4%
23.3%
2.5%
27.9%
2.6%
7.9%
ある程度行われている
全く行われていない
19.0%
29.4%
34.4%
30.9%
80%
30.9%
100%
25.3%
28.8%
16.0%
25.0% 10.1%
23.4% 6.9%
どちらとも言えない
注)図はコア人材候補者について示している。なお、コア人材についても類似の結果である。
出所)野村総合研究所「キーパーソンに関するアンケート調査」(2006 年)
とにプライドを持っている人材、企業や経営
4.コア人材が求めるもの
者の持つ社会的ミッションに共感している人
中小企業に対するヒアリング調査によれば、
材、仕事における裁量があり、自己実現が主
活躍するコア人材は、企業や人によって内容
体的に可能であることを重視する人材、高い
は異なるが、仕事に対するモチベーションを
報酬を求める人材、能力アップを求める人材
それぞれ持って働いていることが明らかであ
などが挙げられる。定着・活躍するコア人材
った。仕事で自分の好きなことを追求してい
が求めるものは、図表6に示すように分類さ
る人材、仕事内容が人々の役に立っているこ
れよう。
NRI パブリックマネジメントレビュー July 2007 vol.48
-6-
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Copyright© 2007 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
①価値観の共有:企業のミッションと人材
③自己の成長:コア人材に十分な裁量があ
の価値観や興味が合致し、コア人材が企
る、新しいことにチャレンジできる、外
業ロイヤリティを高く持ってミッション
部の人材との交流の機会が多い、業務に
を追求しながら働いている。
おいて必要な能力を会得できるなど、人
材の成長の機会が多くあり、コア人材は
②やりがいの追求:自分の興味・関心があ
自己成長を重視して働いている。
る仕事ができる、社会的意義を感じるこ
④適切な処遇:評価・給与が相応である。
とができる、自身の知識・経験・能力を
生かすことができる、十分な裁量を持っ
特にコア人材の成果が高かった場合には、
てやりたいことを実現できる、などの条
成果に応じて適切に評価される(衛生要
件が整っており、コア人材がやりがいを
因)。
追及しながら働いている。
図表7
定着・活躍するコア人材が求めるもの
企業や経営者の掲げるミッションに共感する
企業や経営者の掲げるミッションに共感する
価値観の共有
価値観の共有
経営者、上司、同僚などを尊敬できる
経営者、上司、同僚などを尊敬できる
興味・関心がある仕事ができる
興味・関心がある仕事ができる
やりがいを感じ
やりがいを感じ
られる仕事内容
られる仕事内容
仕事に社会的意義を感じることができる
仕事に社会的意義を感じることができる
知識、経験、能力を生かすことができる
知識、経験、能力を生かすことができる
やりがいの追求
やりがいの追求
コア人材の
コア人材の
定着・活躍
定着・活躍
経営者、上司、同僚と触れ合う機会が十分にある
経営者、上司、同僚と触れ合う機会が十分にある
やりがいを追求
やりがいを追求
できる環境
できる環境
自分の裁量で新しいことにチャレンジでき、
自分の裁量で新しいことにチャレンジでき、
自己実現が可能である
自己実現が可能である
知識・経験・能力を得ることができる
知識・経験・能力を得ることができる
自己の成長
自己の成長
社外の人材との交流がある
社外の人材との交流がある
納得のいく報酬が得られる
納得のいく報酬が得られる
適切な処遇
適切な処遇
成果に応じて評価される
成果に応じて評価される
上げなどの対策のみでなく、個々の人材を見
5.おわりに
極めてその人材に適した配置を行い、コア人
労働市場が売り手市場になり、経済が上昇
材がやりがいやミッションを追求できるマネ
傾向にある現在においては、コア人材やコア
ジメントや場づくりをしていく必要があるの
人材候補者のような優秀な人材は、より自分
ではないか。
自身のやりがいや企業のミッションを重視し
て企業を選択し、目的が達成できない企業に
は定着しなくなっていくことが予想される。
企業は、企業特性に合致した人材を選び、確
保したい人材に適したインセンティブの与え
方をしなければならない。人事面での戦略的
なマネジメントシステムの構築や報酬の引き
NRI パブリックマネジメントレビュー July 2007 vol.48
筆 者
新井 祥子(あらい しょうこ)
株式会社 野村総合研究所
社会産業コンサルティング部
コンサルタント
専門は、企業における人材育成、若年雇用
政策 など
E-mail: s3-arai@nri.co.jp
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