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重力崩壊型超新星の爆発メカニズム: 核物理と天文数値
重力崩壊型超新星の爆発メカニズム:� 核物理と天文数値シミュレーションの連携� ν ν 住吉光介� 沼津工業高等専門学校� SN1987A 原子核から星まで • 原子核物理:高温高密度での物質の性質 • 宇宙物理�:超新星の爆発メカニズム 素核宇宙融合レクチャーシリーズ第10回、2014.1.10-11、理研 自己紹介� • 沼津工業高等専門学校� • 東京生まれ� – 5年間一貫(高+大)� – 国立の高等教育機関� – 町田市で育つ� – 下町の親・祖父母� • 江戸っ子、職人気質� • 物理の授業・担任など� • 研究活動も行っている� • 沼津・三島に在住� – 富士山の近く� 沼津高専webより 鮨 鰻 2� 履歴:原子核・計算・天文� • 1993: 東京都立大学 – 原子核理論出身,博士論文:超新星状態方程式データ • 1993: KEK理論部 • 1994-1999: 理化学研究所 – スパコン,�計算科学,�RIビーム加速器施設 • 1996: Max Planck Inst. Astrophys. – 天文数値シミュレーション • 2000~ :沼津高専 • 2011: KEK理論部 – 6Dコード開発� • 専門:宇宙原子核物理学� (Nuclear Astrophysics)� • 天文学者ではない� �� � �(と思う)� 超新星の爆発メカニズムを解明するには� • 4つの力(重力・電磁力・強い力・弱い力)全てが関与する� • 流体力学� • ニュートリノ輻射輸送� • 一般相対論� • 原子核物理学� • 素粒子物理学� • 計算科学� 「星のダイナミクス」と「ミクロ科学」を同時に解明する� 加速器施設 • グランドチャレンジ問題� 数値計算シミュレーションによる解明� – 様々な分野の研究者による協力� – 大規模なスーパーコンピュータ� が必要 計算科学施設 http://www.rarf.riken.jp http://jp.fujitsu.com 4� レクチャーのポイント� • なぜ超新星爆発シミュレーションは難しい?� – 極限物質科学とダイナミクスの競争� • 状態方程式の観点で見る超新星� – どのような極限状態なのか� – ダイナミクスへの関わり� • 核物理が絶妙な役割を果たしている� – 大規模計算の苦労のうらにあるもの� – どんな状況かイメージできるようにしたい� レクチャーの内容� • 超新星爆発メカニズムの謎とは?� – 重い星の最期、重力が爆発エネルギーの源� • どんな極限環境で何が起きるのか?� – 鉄コアから爆発へ:高温高密度、中性子過剰� • 極限物質の性質を決めるには?� – 中性子星・超新星:状態方程式の基本� – 超新星:状態方程式データテーブル� • 爆発における原子核物理の役割は?� – 状態方程式とニュートリノ反応の影響� – 超新星ニュートリノから状態方程式を探る� • もっと大規模な計算が必要なのか?� – ニュートリノ輻射輸送、計算科学との連携� 超新星爆発とは?� 重い星の進化の最期に起こる大爆発� 超新星爆発:ある日突然、非常に明るい星が現れる� 1987年2月23日に観測された超新星 爆発前 実は、重たい星の進化の最期 (~20Msolar ) 爆発後 やがて暗くなり消える A.K.Mann "Shadow of a Star" (W.H. Freeman and Company, 1997) 出現頻度:年間数百個ほど観測されている 一つの銀河で百年で1〜2回起きる程度 SN 2012A - 2012il http://imagine.gsfc.nasa.gov/docs/features/bios/deMello/deMello_image.html http://hubblesite.org • 観測例:6369個+ - 2012年:246個 - 2013年は227個 SN 2013A – 2013hs Crab Nebula (SN1054) http://www.spacetelescope.org/images/opo9919i/ - 今年既に1個 SN 2014A�(1/1) http://www.sai.msu.su/sn/sncat/ • このうち、およそ半分が 重力崩壊型超新星 他に、爆燃型超新星など� SN 1994D SN 1997D 歴史の中の超新星爆発:古くは2世紀から記述� 中国・日本での記録 かに星雲:1054年に観測された超新星爆発の残骸 客星“Guest Star” 、宋史 明月記、藤原定家 国会図書館 From Gravitation by Misner, Thorn, Wheeler 伊藤直紀「宇宙の時、人間の時」より� Wikipedia 超新星で残されるもの:中性子星/ブラックホール かに星雲の中心にはパルサー 中性子星:超高密度の天体 質量: 太陽質量の1.4倍 半径: 10km 密度: 7億t/1cm3=7x1014cm3 中性子星の大きさ 富士山が 隠れるくらい http://chandra.harvard.edu http://hubblesite.org パルサー:規則正しい電波を出す (例:1秒に30回) → 高速回転する中性子星 Sound: http://www.jb.man.ac.uk/~pulsar/ google map 巨大な中性子過剰原子核 A~1057 Z/A~0.1 or Quark? 核物質密度: ρ=3x1014 g/cm3 =0.17 fm-3 超新星で放出されるもの:重元素 高温高密度で、爆発的に重元素合成が行われる 重元素:鉄(原子番号26)以降 作られた元素を放出 X-ray image http://ccinfo.ims.ac.jp/periodic/indexj.html 金・プラチナ・レアアースなどの起源は 超新星か? http://periodictable.com http://chandra.harvard.edu カシオペアA:� 超新星(~1680年)の残骸� 44Tiの存在を確認 超新星SN1987Aからのニュートリノが観測された� ニュートリノ検出研究施設: KAMIOKANDE-II (1983-1996) 水タンク 3000t + 光電子増倍管 1000本 SuperKamiokande 岐阜県神岡鉱山 ~1016 個のニュートリノがタンクを通過 12秒間に11個が検出された 平均エネルギー: Eν ~10 MeV 全エネルギー: ~1053 erg http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/ 2002年ノーベル物理学賞� ニュートリノ天文学の始まり http://nobelprize.org 超新星現象での爆発エネルギー� 放出されるエネルギーのスケール • 放射エネルギー:� – • 爆発エネルギー:� – • 光度: 1041 ~ 1042 erg/s �Erad~1049 erg �Ekin~1051 erg 物質放出の運動エネルギー ニュートリノエネルギー:�Eν~1053 erg – Hans Bethe SN1987Aニュートリノ検出データ� http://www.nobelprize.org 1967年ノーベル物理学賞 星でのエネルギー生成 1[B]=1051 [erg] 太陽が45億年燃える間に放出するエネルギー: ~1051 erg – 太陽の放射光度: 4x1033 erg/s� 原子力発電所の年間発電量: ~1023 erg – 原子炉1基の出力: ~106 kW =109 J/s =1016 erg/s 1[J]=107 [erg] 輪廻転生� 元素� 星の死� 星の誕生� 星の進化� 超新星爆発の役割� • 高密度天体の起源� – 中性子星・ブラックホールが生まれる� • 元素の起源� – 重元素を作り、次の星の材料となる� • エネルギー源� – 物質を放出、混ぜ合わせる、宇宙線加速� • 星の誕生の引き金� – 衝撃波により物質分布に影響、銀河の進化� 超新星爆発へ至る道筋� 星の重力エネルギーの解放� 星の進化と最期:重力エネルギーの解放�� • 太陽: 1Msun �(寿命100億年)� (1Msun=2x1030 kg) – 重力により物質が集まり、高温高密度に� – 核融合反応が起こる�→�エネルギー源� – 星を支える圧力、光り輝く� � 4つの陽子 → ヘリウム原子核+エネルギー • 大質量星:~20Msun �(寿命1千万年)� – より高温高密度、核融合反応が次々と起こる� – 燃料が尽きて潰れてしまう�→�重力崩壊へ� – 超新星爆発、中性子星/ブラックホール誕生� 原子核の安定性� Binding energy per nucleon • 束縛エネルギー ���一核子辺り • 最も安定なのは 56Fe B/A=8.6 MeV 56Fe • 星の進化(核燃焼) は 56Feまで� Mass Number 大質量星の晩年には、鉄コアができる� H He H 星の進化 初期 C/O He H ・・・ Si C He H Fe SiC He H 晩年 星の中心で、温度・密度が上がり、核融合反応が進む H → 4He → 12C → 16O → 20Ne → 24Mg → … → 56Ni/56Fe • タマネギ構造の中心に鉄コア� – 原子核の中で鉄(56Fe)が一番安定� • もう核融合反応が起きない(燃料切れ)� • どんどん鉄が溜まり重くなり → 限界質量に達する� • 星を支える圧力が足りない → 重力により潰れはじめる� 重力崩壊� 重力崩壊型超新星爆発 ~20Msun 重力崩壊 鉄のコア Fe core ν � ρc ~1010 g/cm3 � ρc ~1012 g/cm3 Tc ~1 MeV Yec ~0.42 電子捕獲 反応 ν-閉込め Tc ~2 MeV Yec ~0.34 ν反応 ν ν ν 超新星ν ν 1000 km ν コアバウンス 爆発 � ρc ~3x1014 g/cm3 ν Tc ~5 MeV Yec ~0.31 中性 NS 子星 ν ν ν Shockwave �衝撃波� � ρc ~4x1014 g/cm3 Tc ~10 MeV Yec ~0.31 元素合成� km ~ 10 中性子星 T~0 MeV, Ye<0.1 時系列 大質量星から中性子星まで� ~107 years • 中心のFeコア ~20Msun 星の進化モデル • 重力崩壊,�バウンス,�爆発 ~1 second ここが難問題 ν ~20 seconds 超新星シミュレーション • 原始中性子星誕生・冷却 – 超新星ニュートリノ 中性子星の進化 • 中性子星の冷却 ~103 years http://chandra.harvard.edu/photo/ – Photons Mann "Shadow of a Star" 始まりは鉄コア:重力崩壊に至る直前� 太陽質量の10倍以上の星 星のたまねぎ構造 寿命1千万年 • 星の進化モデルによる結果を用いる� – モデル依存性:核反応率,対流� • 中心の鉄コアが主な役割� Fe Si O, Ne, Mg C, O He H コア=中心部分 – 外層部分は爆発後の元素合成で重要となる� • 質量 ~1.4Msun,半径 ~104 km� – チャンドラセカール限界質量� – 電子の縮退圧で支えられている� 層状に元素が溜まっている • 星の質量・古さ(金属量)などによる違いがありうる� � – どれでも爆発するのか、中性子星�or ブラックホール?� 鉄コアから爆発へ:ダイナミクス概観� 大まかなシナリオ� 鉄コアがつぶれる� �↓� 中心がはね返る� �↓� 衝撃波が発生� �↓� 爆発へ� � 約1秒ほどの出来事� (少し昔の)数値シミュレーションの例 300キロ Adam Burrows (1995) 色は温度に対応する (赤: 熱い、青:冷たい) 爆発メカニズム:鉄コアの重力崩壊� • 鉄コアが潰れだして、密度・温度が上昇� (1)� (2) 内部コア 鉄コア 重力崩壊開始 鉄コア 半径6000キロ 中心の 密度 1010 g/cm3 温度 1010 K 爆発メカニズム:中心がバウンス� • はね返り、衝撃波が発生 →�爆発へ� (3) 鉄コア 衝撃波 (4) 鉄コア 原始中性子星 内部コア コアバウンス 中心の 密度 5x1014 g/cm3 温度 1012 K これ以上圧縮できない、固い核物質 半径20キロ 原始中性子星の誕生 → 超新星爆発へ 爆発のエネルギーはどこから? • 鉄コアから中性子星へ圧縮 (Mcore~1.4Msolar) – RFe~5x103 km → RNS~20 km • 重力エネルギーの解放により得られる ΔE Grav $ GM 2 GM 2 ' 53 = −& − ) ~ 10 erg RNS ( % RFe 100[B] 爆発には十分なエネルギーに思えるが € • 爆発エネルギー: Eexp ~ 1051 erg 1[B] • ニュートリノエネルギー: Eν ~ 1053 erg 99[B] 実は、ほとんどがニュートリノ放出に消費されてしまう 爆発メカニズム:鉄コアの重力崩壊� • 鉄コアが潰れだして、密度・温度が上昇� (1)� ν (2) 鉄コア 内部コア 鉄コア ν ν 中心で ニュートリノ発生 ν 重力崩壊開始 ν ν ν ν ν νν ν ν 半径6000キロ 中心の 密度 1010 g/cm3 温度 1010 K ニュートリノ閉込め →密度100倍 密度が高すぎて ニュートリノは脱出できず 中心に溜まり始める 爆発メカニズム:中心がバウンス� • はね返り、衝撃波が発生 →�爆発へ� (3) (4) 鉄コア ν ν ν ν 鉄コア 原始中性子星 νν ννν ν ν ννν ννν ν ν ννν ν コアバウンス 超新星爆発 中心に大量のニュートリノ 超新星ニュートリノとなる 徐々に放出される 約20秒ほど続く 20世紀末ころの爆発メカニズム分類 Prompt Explosion� – – 衝撃波が無事に� �鉄コア表面に到達� 流体力学的に爆発� • τdyn ~ 10 msec� IF 鉄のコアが小さい 状態方程式が柔らかい� • 1000km 8 10 radius [cm] • 9 10 7 10 6 10 5 10 0.0 0.2 0.4 0.6 time time [sec] Sumiyoshi ‘01 10ms Shock position (radius-time) Delayed Explosion� – – 衝撃波は数100kmで� �失速� ν-加熱により復活?� • 1000km ν-heating τdyn ~ 100~1000 msec� IF ν加熱が十分 100ms time Woosley ‘94 ニュートリノが爆発の鍵を握っている� • 重力エネルギーの変換� – 圧縮 → 熱エネルギー → ニュートリノ発生� – その約1%が爆発エネルギー� • 放出ニュートリノの一部が使われる� – 物質に吸収されて加熱に寄与、衝撃波を後押し� 衝撃波 中心部に ニュートリノ 加熱 一部を吸収 どれくらい ニュートリノが作られる? 中心に溜まっているか? 放出される量は? 途中で吸収されるのか? ν 超新星ニュートリノ ニュートリノ加熱によるディレイド爆発� 半径� Bethe-Wilson (1985) 衝撃波の位置 爆発へ 103km 重元素合成 R-process ν-heating 原始中性子星 Proto-neutron star ~300ms 伝説の爆発計算 (J. Wilson)� コアバウンス後 の時刻� 長い時間スケールを計算 � �〜1秒間� Figure From H. Suzuki