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PDF版 - Manulife Asset Management / Home
G l oba l I n tellig enc e 2013年7月号 目次 要約 ���������������������������������� 3 グローバル株式 ���������������� 4 アジア株式 ����������������������� 6 日本株式 ��������������������������� 8 グローバル債券 �������������� 10 アジア債券 ��������������������� 12 日本債券 ������������������������� 14 マニュライフ・アセットについて 主要商品およびグローバル拠点一覧 ����� 16 グローバル・インテリジェンス 〈 2 このページは余白です。 〉 2013年7月 項 目 タイトル 要 約 グローバル株式見通し 下落するも2013年下期の見通しは 全般的には、2013年のグローバル株式の上昇を 確信する兆候が現れている。 改善 アジア株式見通し 相対的価値は北アジアに有利 市場はボラティリティが高まっているものの、 長期的な成長見通しに変わりはない。東南アジア よりも北アジアの方が恩恵を大きく受けると思わ れる。 日本株式見通し 熱すぎて扱えない? 企業業績が改善し、長期の投資家がファンダメン タルズの改善に魅力を感じて市場に参加すると、 このところの市場の激しい値動きは安定すると 思われる。 グローバル債券見通し 不吉な予兆が見られる 将来を見通すと、FRBが現在実施している債券 買い取りプログラムがやがて終了することに注目 が集まると考える。 アジア債券見通し 不透明感の中で金利リスクを削減 日本債券見通し 第3の矢である成長戦略が発表された 金融市場は一旦政策に失望を示したものの、アベ 世界がグローバルな金融緩和策の終結を予期する なか、アジア債券は底堅い展開となる見込み。 ノミクスによるセンチメントの改善基調は継続 していると見られる。 3 グローバル・インテリジェンス グローバル株式見通し 下落するも2013年下期の 見通しは改善 と見なしていました。しかしここ数ヶ月はボラティリティが 劇的に上昇したため、2%の値動きは比較的穏やかなほうで す。1日に2%上昇し、2%下落するなどは全く問題にされま せん。「アベノミクス」に対する熱狂的な期待と、それに伴 って進行する円安を背景に、TOPIXは昨年11月半ばから直近 の最高値をつけた5月22日までに78%以上(円ベース)上昇 しました。 主な地域的事象、外来の事象を受けてボラティリティが急騰 50 指数のレベル 40 30 20 10 2012年6月 ウェンデル・パーキンス 2012年8月 2012年10月 2012年12月 2013年2月 2013年4月 2013年6月 日経225ボラティリティ指数 要旨 全般的には、2013年のグローバル 株式の上昇を確信する兆候が現れ ている。 出所:ブルームバーグ (2013年6月) ところが、日本時間の5月22日から5月23日までに発生し た一連の事象が投資家の信頼感を悪化させることになりまし た。米連邦準備制度理事会(FRB)は米国経済の信頼感改善 MSCIワールド株式指数 2013年6月末時点 直近3ヶ月 米ドルベース収益率 カナダドルベース収益率 0.6% 4.1% 直近1年 18.6% 22.5% 出所:ブルームバーグ 買担当者景気指数(PMI)も予想を大きく下回りました。最 後に日銀は政策方針を公表しましたが、4月に発表した政策 への追加的な刺激策は示されませんでした。これを受けて、 その後数日間にTOPIXは6.5%下落し、国債(JGB)利回り は大幅に上昇しました。 日本の力強い上昇に牽引されて上昇しました。順調な収益の 株価指数はまちまちの動きに 伸び、中央銀行による緩和的な金融政策、および比較的安定 した景気に支えられて、この勢いは下期にかけても続くと見 る楽観論がある一方で、足元の動向は投資家の信頼感に水を 差す可能性があります。新興諸国経済は急速に減速し始め、 すでに一部の新興市場は弱気市場に突入したことが公式に確 認されています。日本市場は「アベノミクス」の成果を性急 に求める投資家の動きを受けて、激しく乱高下しています。 中国の景気減速は世界中の輸出関連企業に影響を及ぼし、新 しい政治指導部が世界第2位の経済を円滑に転換させること ができるかどうかに関心が集まっています。2013年のグロー バル株式市場が上昇することを強く確信する一方で、投資家 のポジションの見直しを受けて短期的には下落する局面が あっても意外ではないでしょう。 4 可能性に言及し始めました。また同日に発表された中国の購 株価指数(2012年10月1日を100とする) 2013年上期(1~6月期)のグローバル株式は当初、米国と の兆候が見られるとして、資産買い入れの「段階的縮小」の 135 130 125 120 115 110 105 100 95 90 2012年10月 2012年11月 2012年12月 2013年1月 2013年2月 2013年3月 2013年4月 2013年5月 2013年6月 2013年7月 東証株価指数(米ドルベース) S&P 500(米ドルベース) 上海総合(米ドルベース) 出所:ブルームバーグ(2013年6月) こうした市場の極端に神経質な反応は、市場センチメントが 実際にはいかに脆弱であり、足元の資産価格の動きが、中央 銀行の刺激策にいかに大きく依存しているかを物語っていま 市場、政策がセンチメントに影響 す。コモディティ価格は中国と新興諸国の景気減速を織り込 日本はかつて、TOPIXが1日に2%変動すると「イベント日」 き続き「必要なことは何でも」行うことが確実と見られるた んでいる模様ですが、中央銀行は景気を下支えするため、引 2013年7月 め、株価は依然として上昇基調が続いています。FRBがこれ たに過ぎません。ごく最近の2007年には為替レートが1ドル まで量的緩和(QE)プログラムを縮小するたびに見られたよ 120円を上回っていました。TOPIX構成企業の収益のおよそ うに、バーナンキFRB議長が、FRBは今年後半から資産買入 3分の1は海外で得られたものですが 、円安は企業収益に著 の縮小を開始すると発表した6月もこうした展開が繰り返さ しく好ましい影響を与えています。政府の再構築イニシアチ れました。FRBが少なくとも2015年までは超低金利政策を ブが実現すれば、安倍政権と日銀の協調によって日本を転換 継続するという公約は変わらないにもかかわらず、全世界の させる可能性があります。 市場は急落しました。市場の調整によって投機的な動きの一 部が解消され、投資家の注目が再びファンダメンタルズに戻 るのであれば、それは必ずしも歓迎されざることではありま せん。多くの場合、ファンダメンタルズは改善している模様 です。現在のところ、市場の関心はFRBが資産買入を縮小す る可能性があるということに集中し、縮小の根拠が注目され ることはありませんが、FRBが言うように、「秋以降、景気 と労働市場の見通しに対するダウンサイド・リスクが後退し た」ことがその理由です。FRBは今年の失業率とインフレ率 欧州経済は低迷が続いているものの、2014年にはユーロ圏 経済は成長に向かうとの確信が強まりつつあります。購買担 当者景気指数(PMI)は、低下した後の水準からではありま すが、上昇基調にあります。いずれにしても、欧州の状況は 改善している模様で、これは歓迎すべき変化です。イングラ ンド銀行金融政策委員会は6月の会合で、「景気回復はより 確実になりつつある」ことを理由に、現在の資産買い入れ枠 を据え置くことを決定しました。 の予想を下方修正し、2014年には失業率が6.5~6.8%に低 世界は金融緩和依存に陥っているという見方が広まってお 下すると予想しています。今年のGDP成長率見通しは2.6% り、市場は実際の政策変更や変更の憶測に敏感に反応してい で、来年は3.5%に上昇する見込みです。住宅市場は回復し、 ます。米国では、景気が回復しつつあることに、投資家は本 製造業にも堅調さが見られます。 当に失望しているのでしょうか。日本は、4月に他のすべて ポジティブ・モメンタムが先入観を覆す 日本では、貿易、一致指数や先行指数の上昇、機械受注とい った幅広い経済指標に改善が見られるように、景気回復は勢 いを増しています。当初の2013年第1四半期(1~3月期) GDP成長率予想は3.5%でしたが、4.0%に上方修正されま した。株価は先頃の上昇の後も依然として魅力的な水準にあ り、収益は増加傾向にあります。アナリスト5,000名を対象 とする最近のブルームバーグの調査によれば、TOPIX構成 企業の利益は2013年に57%も増加することが予想されま す(ベースは低い)。足元では円安が異例の急速なペースで 進行しているものの、実際には2008年以降の円高が反転し の市場を圧倒する量的緩和を日銀が発表しても、翌月にはさ らに一段の上昇が見られなかったことに失望しているのでし ょうか。いずれも逆であるように思われます。世界各国の中 央銀行は極めて緩和的な政策を講じているという現実に変わ りはありません。実質金利は超低水準にとどまり、資産買い 入れプログラムは現在も続いています。足元のグローバル 株式の急落は認識の変化に対する健全な反応であり、株式は 2013年下期も引き続き良好なリターンとリスクの特性を実 現することが期待されます。 ウェンデル・パーキンズ(CFA)は、マニュライフ・アセット・マネジメント のインターナショナル株式運用部門のシニア・ポートフォリオ・マネージ ャーです。パーキンズはマニュライフ・アセット・マネジメントのウィスコ ンシン・オフィス(ミルウォーキー州)に在籍しています。 5 グローバル・インテリジェンス アジア株式見通し 鮮明になると、相対的に新興市場の魅力が薄れることから、 当然、このキャリー・トレードの巻き戻しが発生し、結果的 相対的価値は北アジアに有利 に資金は米国に逆流します。特に東南アジアをはじめとする アジアの企業はここ数年間に株価収益率が上昇していました が、それが低下に転じたのも不思議ではありません。 市場は、相場の牽引役を果たしているQE縮小の可能性とい ったマクロ要因に注目していますが、FRBは米国経済が持続 的成長局面へ移行したことを確信するまで、量的緩和の縮小 に動くことはないということを心に留めておくことが大切で す。このことは、以下の2つの重要なことを意味します。1) 米国経済はまだ十分な力強さを回復していないため、多くの 市場観測者が懸念するほど早急にQEが縮小される可能性は低 リンダ・セラック いこと、および 2) 投資家は当面のマクロ・ショックへの懸念 要旨 市場はボラティリティが高まって いるものの、長期的な成長見通し に変わりはない。東南アジアより も北アジアの方が恩恵を大きく受 けると思われる。 ではなく、長期的な経済成長見通しに基づいて投資決断を下 すことができること。 セクター選定を最優先 流動性が引き締められる状況では、銘柄とセクターの選択が 改めて重要になります。弊社は、世界的な需要回復を最大限 に活かし、イールドカーブのスティープ化によるマイナスの MSCI ACアジア (除く日本)株式指数 直近3ヶ月 米ドルベース収益率 -5.2% 9.2% カナダドルベース収益率 -1.9% 12.8% 2013年6月30日時点 直近1年 出所:ブルームバーグ 2013年第2四半期(4~6月期)のアジア太平洋地域の株式 市場は激しい値動きとなりました。MSCIアジア太平洋(日 本除く)株式指数は5月初めに22ヶ月ぶりの最高値をつけた ものの、翌月に約10%下落しました。この下落はアジア太平 情報技術、一般消費財・サービス、および資本財・サービス といった、北アジアを代表するセクターの銘柄をオーバーウェ イトにすることを意味します。その一方で、不動産、国内銀 行、通信および公益事業の各セクターの銘柄をアンダーウェ イトにするか、最低限でも慎重に選択します。要するに、比 較的割高なディフェンシブ銘柄ではなく、割安な水準にある 景気循環株を選好するということです。また特に台湾、また 台湾ほどではないものの韓国といった北アジア市場の銘柄を 選好します。 洋地域にのみに限らず、米連邦準備制度理事会(FRB)が予 こうした観点から見ると、真に重要な基準であるファンダメン 想よりも早期の量的緩和(QE)終結の可能性を示唆したこと タルズに基づいて魅力的な投資機会があることが分かります。 と、中国経済が減速していることを示す経済指標に対する懸 アジア太平洋の状況を考えると、このアプローチはこれまで 念を受けて、世界各地の株式市場が調整局面入りしました。 かなりの期間にわたって投資家に選好されてきた東南アジア 弊社は全体的に見て、この利益確定売りは健全な動きである と考え、アジア新興諸国の株式市場が米国株式市場をアンダー パフォームした真の理由も理解しています。まず1つ目の理由 は、アジア市場は米ドルが上昇する局面で低迷する傾向があ ることです。2つ目はこの数ヶ月間、景気と収益の見通しが 悪化していたことです。過去18ヶ月間に実施された何回かの 米国のQEは、潤沢な流動性と低迷する先進諸国経済に比べ て有望なファンダメンタルズに魅せられたホットマネーが、 より規模の小さいアジアの株式市場と、特に債券市場に流入 する原動力となりました。しかし、米国経済の回復兆候が 6 影響を受けにくいセクターを選好します。それはすなわち、 市場ではなく、北アジア市場のエクスポージャーを高めるこ とによって、投資家は長期的な成長による利益を確保する可 能性があることを強く示唆しています。 この確信は以下に挙げるいくつかの重要な要因を根拠として います。 バリュエーション – 東南アジアには、健全なファンダメン タルズを有する多数の優良企業が拠点を構えています。し かし、この数年間にこうした要因の多くは株価に完全に織 り込まれています。先頃の相場下落によって東南アジア市 場の銘柄を若干安く買う機会が提供されたとも考えられま 2013年7月 すが、比較すると北アジアの銘柄の方が割安な水準にあり れはASEAN1主導の投資拡大による当然の結果です。今後 ます。韓国は常にアジア株式市場の中で割安な市場という の円安の進行具合と世界経済の回復の力強さによっては、 主張もありますが、同市場に対する期待値は低く、国内経 世界経済の回復が韓国と台湾にプラスに寄与する可能性が 済は底をつけつつあり、低迷する不動産市場は幾分復活の あります。 兆候を示しつつあると言えます。 レバレッジ – この数年間の低金利環境において東南アジア 東南アジア市場の一部に若干のバブル発生の可能性 高いことです。その大部分は対外債務です。アジア域内の -600 10年国債利回りの変動幅 (2009年以降、ベーシスポイント) -500 インドネシア 多くの企業は魅力的な金利を十分に活かして、事業の拡充 フィリピン を図ってきました。これまではそれがうまく機能していま -400 したが、金利が上昇すれば資金調達コストが増大すること -300 により、こうした状況は劇的に変わる可能性があります。 -200 -100 韓国 北アジア経済は債務の対GDP比率が相対的に低いため、 オーストラリア 台湾 世界経済の回復に伴って金利が実際に上昇に転じても影響 シンガポール 0 マレーシア 香港 100 は比較的少ないと思われます。 タイ 中国 200 300 -50% の株式に有利に作用した1つの要因は、債務比率が比較的 FRBは世界経済が持続的成長軌道を辿り始めたことを明らか インド -30% -10% 10% 30% 50% 70% 90% 予想PERの変化率(2009年以降、%) 出所:ファクトセット、Goldman Sachs Global ECS Research(2013年6月) 一方、台湾市場は同市場特有の不安定な値動きとハイテ ク・セクターのウェイトが高いということを理由に、地域 の投資マネジャーの大半は構造的にアンダーウェイトとし ています。しかし、企業は純利益の70~80%もの割合を に確信していますが、FRBのようにそれを確信する投資家 にとって、上述の要因はすべて北アジアがより賢明な選択肢 であることを示唆しています。それは、株価が乱高下するこ とはない、あるいは東南アジアが引き続き銘柄固有の魅力的 な投資機会を提供することはないということを意味するわけ ありません。むしろ、北アジアには銘柄固有の投資機会があ り、持続的経済成長のシナリオにおいて、マクロ経済発展の リターンを増大させる可能性は北アジアの方が高いというこ 配当金として投資家に還元しており、アナリストは収益を とです。 上方修正し、フリー・キャッシュフロー利回りは高く、米 こうした状況を背景に、中国のマクロ経済は減速しつつある ドル高は輸出関連企業の収益に有利に作用します。 経常収支 – 韓国と台湾を除くアジア全域のほとんどの国や 地域は経常収支が悪化しています。この両国は実際に経常 収支が黒字ですが、インドやインドネシアはいずれも経常 赤字です。一般的に、経常収支が悪化している経済はポー トフォリオ・フローへの依存度が高いため、通貨は過去に 大幅な下落を経験しています。資金の流れが縮小すると、 これらの国や地域の通貨は下落する可能性があります。こ ものの、中国企業が割安で取引され、収益の上方修正が見込 まれることから、同国の多数のセクターについても前向きの 見通しを持っています。特にクリーン・エネルギー、情報技 術およびソフトウェアに関連する銘柄と一部の資本財・サー ビスに魅力があると考えています。 リンダ・セラックはマニュライフ・アセット・マネジメント(香港) のアジア・パシフィック株式チームヘッドです。セラックはマニュラ イフ・アセット・マネジメントの香港オフィスに在籍しています。 東南アジア諸国連合(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、 ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム) 1 7 グローバル・インテリジェンス 日本株式見通し ス空室率は9.3%から8.2%に低下し、消費者信頼感は39.9か ら45.7(2007年半ば以来の高水準)へ上昇しました。6月 の銀行融資需要は前年比で2%増加する一方で、経常収支は 熱すぎて扱えない? 黒字に転換して輸出の力強い回復を示しています。輸出業者 の利益率が円安を1つの要因として改善したことから、基本 的な収益性は力強い伸びを見せています。2014年3月までの 総合的なコンセンサス予想は利益が52%増加し、日本市場の 株価収益率は健全な水準である13.2倍になるとしています。 日本のGDP見通しは改善 1.7% 1.5% 1.3% エドワード・リッチー 1.1% 0.9% 要旨 企業業績が改善し、長期の投資家 がファンダメンタルズの改善に魅 力を感じて市場に参加すると、この ところの市場の激しい値動きは 安定すると思われる。 東証株価指数 2013年6月末時点 直近3ヶ月 直近1年 日本円ベース収益率 9.7% 50.6% 米ドルベース収益率 4.0% 21.0% カナダドルベース収益率 7.6% 25.0% 0.5% 1月 2月 3月 4月 5月 6月 日本のGDPコンセンサス予想 2014 2013 出所:ブルームバーグ(2013年6月)) ファンダメンタルズ要因によらないボラティリティ このところの日本市場の乱高下は基本的なファンダメンタルズ の軌道が変化したことが原因で生じたものではありません。ボ ラティリティの原因は日本株式の投資家の特徴に起因してい ます。日本の株式市場参加者の大半は、国内機関投資家、国 内個人投資家、国内法人、海外の年金ファンドおよび海外の 出所:ブルームバーグ ヘッジファンドの5つに分類できます。GaveKalによれば、 日本市場は2012年11月半ば以降、力強く上昇した後、5月 よって日本株式保有制限の上限に達したことから、売却を余 に値動きの激しい展開となりました。そのため投資家にや や懸念が広がりましたが、このような急激な上昇(TOPIX は5月22日までの6ヶ月間に日本円ベースで76.6%上昇)の 後に、ある程度の利益確定売りが広がることは避けられま せん。株式市場は5月に最高値をつけた後、6月13日までに 18.2%下落しました。投資家の最大の関心事は日本市場の変 動の程度と一部の投資家の特徴です。弊社は、企業業績の向 上や景気回復といった基本的なファンダメンタルズの堅調さ が長期的に市場を下支えすると見ています。 足元の日本の経済指標や企業収益予想は、先行きの明るさを 確信させるのに十分なほど良好です。国内総生産(GDP)の コンセンサス予想は1月以降、着実に上昇しています。直近 の予想では2013年のGDP成長率が1.7%、2014年が1.5% となっています。 経済はすべての分野で回復基調にあります。1月以降、オフィ 8 0.7% 国内大手機関投資家のバランス型ファンドは、相場の上昇に 儀なくされていると考えられます。中には、日本株式の組入 比率を引き上げることを発表したところもありますが、こう した変更もまだ国内大手年金ファンドが買い手に転じるのに 十分ではありません。 短期的取引が足元のボラティリティ上昇の要因 6% 4% 2% 0% -2% -4% -6% -8% 2013年1月 2013年2月 2013年3月 2013年4月 2013年5月 東証株価指数の1日の変動幅(%) 出所:ブルームバーグ(2013年6月) 2013年6月 2013年7月 日本株式の主な買い手には信用取引をする国内個人投資家 式の保有比率を引き下げました。しかし、長引くデフレと低 や、日経先物を買う海外ヘッジファンドがあります。どちら 水準のリターンに加え、株主が重視されてないことから、日 の投資家もギヤリングを利用するため、投資は短期的で不安 本株式は常に他の市場を下回るパフォーマンスとなっていま 定です。信用取引の投資家の中には最大で当初投資資金の20 した。そのため、世界のポートフォリオ・マネジャーは日本 倍ものギヤリングをかける人もいます。市場の下落局面では、 市場を地域の重要な保有対象と見なさなくなりました。長期 こうした市場参加者の狼狽売りが相場下落に拍車をかけまし 投資家を日本市場に呼び込めるかどうかは、リターンが持続 た。その結果、5月は1日の変動幅が3%を超える日が4営業日 的に上昇するかどうかにかかっていますが、通貨が下落し、 となり、6月は本稿執筆時点でさらに4日に達しています。 インフレに向かえばその達成はさらに容易になります。 外国人の日本株式保有比率が大幅に上昇 政府は、2014年1月から導入する日本版個人貯蓄口座 (NISA)といった少額投資非課税制度など、国内の長期 100% 26.3% 80% 個人投資家の市場参加を奨励する計画を打ち出していま す。1999年に同様の制度を導入した英国のように、この制 60% 24.9% 40% 20.4% 度は市場の株主構成に極めて大きな影響を与えると弊社は考 えています。英国の税務当局によると、2012年9月現在、英 20% 0% 49 21.6% 4.5% 54 59 64 69 74 79 84 89 94 99 04 09 (会計年度末) 投資家別保有比率 投資信託 法 人 個人投資家 金融機関(インカム・トラストを除く) 国の株式ISAで運用されている資金は1,900億ポンド(英国 株式市場の10.2%を占める)に上っています。 現在、日本株式を長期に保有する投資家が少ないため、日本 市場のボラティリティが他の先進諸国市場よりも高くなる ことは避けられません。しかし、円安の進行、国債利回りが 外国人投資家 その他 出所:National Association of Stock Exchanges、 大和証券が作成(2013年6月) 長期投資家は失望 1989年に日本の資産バブルが崩壊して以来、外国人投資家 は日本企業の持ち合い株を取得し、国内機関投資家は国内株 低水準にとどまっていること、および日本経済の復活に促さ れて国内投資家は再び日本の株式市場に注目するようになる と思われます。日本の株式市場は今なお大幅な上昇余地があ り、国内株式投資家の市場参加が市場を下支えすると弊社は 考えます。 エドワード・リッチーは欧州およびEAFE株式のシニア・インベストメン ト・アナリストです。リッチーはマニュライフ・アセット・マネジメントのロ ンドンオフィスに在籍しています。 9 グローバル・インテリジェンス グローバル債券 見通し アジアは今も心強い配役の一員 アジアが今もエマージング市場の中で弊社が選好する地域であ ることに変わりはありません。アジアには中国など一部に景気 が若干減速している国もありますが、地域全体の成長ペースは 依然として世界の平均を上回っています。例えばフィリピン 不吉な予兆が見られる やインドネシアはこの12ヶ月間に信用格付が引き上げられて 投資適格となりましたが、今年のGDP成長率は6%を上回る 見込みです。アジア域内の債務水準も健全なレベルを維持し ています。例えば、マレーシア、タイ、韓国といった弊社が 魅力的と考える国々はいずれも債務の対GDP比率が55%を下 回っており、米国、英国、ドイツなどの先進国市場と比べて 健全な水準です。これらのアジア各国の中央銀行は、通貨上 昇を国内経済の成長に伴うインフレへの対応手段として活か すことができるため、弊社はこれらの国々の通貨に対して長 ダン・ジャニス 期的な明るい見通しを持っています。したがって、弊社はこ 要旨 将来を見通すと、FRBが現在実施 している債券買い取りプログラムが やがて終了することに注目が集ま ると考える。 バークレイズ・グローバル 総合債券指数 2013年6月末時点 を積極的にとっています。流動性リスクに留意しながらアジ ア域内の投資機会を探すと、現在は国債に最も有利な投資機 会があることが明らかです。しかし弊社は、今後数年間に現 地の社債市場が発展して市場の流動性が高まるにつれて、魅 力的な投資機会を提供すると予想しています。 欧州はまだ花形にはなれない 直近3ヶ月 直近1年 欧州は引き続き金融危機から徐々に回復していくと思われます 米ドルベース収益率 -2.8% 0.7% が、現時点では欧州の投資機会に魅力的なリスク/リターンの カナダドルベース収益率 -2.2% 1.1% 出所:ブルームバーグ 指標は示されていません。ドイツやフランスなど優良な中核国 は、投資家が安全な投資先としての地位に過剰なプレミアムを 支払っているため、利回りがあまりに低すぎます。また、アイ このところの市場の関心は、米連邦準備制度理事会(FRB) ルランドは2010年末に受けた救済措置から著しい立ち直りを が予想よりも早期に量的緩和プログラムを縮小する可能性に 見せ、今後数ヶ月のうちに再び投資適格格付に復活することが 集まっています。米国の経済指標については住宅セクターに 予想されますが、債券はすでに適正に評価されています。イタ 力強さが見られる一方で、雇用の伸びは着実に改善しつつあ リアなど周辺国については、国債を投資対象として検討する前 るものの、期待するほど勢いはありません。GDP成長率も堅 に、まず経済状況の改善の兆候をもう少し見極める必要があり 調に伸びてはいますが、成長ペースは緩慢で、当面は1.75% ます。 ~2.75%の範囲内の成長が続くと思われます。インフレ率も 低水準に抑制されている状況を考えると、当面、FRBが債券 買い入れプログラムを大幅に変更する可能性は低いと思われ ます。しかし、このプログラムを永久に継続することは不可能 アジア諸国の公的債務負担は先進諸国を下回る 90% 50% した環境では、米国の金利リスクには依然として魅力はありま 30% せん。景気回復が堅調に続いた場合、弊社は高利回り社債を通 10% 中でも、固定利付債から変動利付債へとエクスポージャーの重 点を継続的に移行する予定です。 82% 74% 70% であり、2014年上期以降に変更が始まると思われます。こう じてクレジット・リスクを選好します。高利回り債への配分の 10 の地域の債券ポジションをヘッジなしで保有し、為替リスク 54% 51% 43% 34% 2007年12月 2008年12月 2009年12月 2010年12月 2011年12月 2012年12月 公的債務残高の対GDP比率(2012年12月31日) フィリピン マレーシア タイ 韓国 ドイツ 出所:ブルームバーグ、中央情報局(2013年6月) 米国 2013年7月 現在進行中の状況 その他の先進国市場の中央銀行は金融政策に関して概ね中立 からハト派の姿勢をとっています。英国では足元の経済指標 が好調に転じているものの、今後、景気が失速した場合は追 加的な金融緩和プログラムの実施が必要となる可能性もあり ます。元カナダ銀行総裁のマーク・カーニー氏がイングランド 銀行(BOE)総裁に就任したことにより、BOEが追加的な流 動性供給措置を前向きに検討するとの期待が高まっています。 オーストラリアでは、鉱業セクターの設備投資の鈍化と雇用 統計の悪化を受けて、金利はほぼ0.5%引き下げられました。 カナダでは、国内消費の拡大と住宅市場に悪化の兆候が見ら れることから、中央銀行は通貨の下落が望ましいと考える可 能性があります。これと対照的なのがニュージーランドで、 地震による被害を受けたクライストチャーチ地域の復興を牽 引役として経済活動が拡大することが予想されます。これと 住宅市場の力強い回復にやや懸念が生じていることを併せて 考えると、ニュージーランド準備銀行は来年に利上げに踏み 切るものと思われます。 ダン・ジャニスは、マニュライフ・アセット・マネジメントのグロー バル債券運用部門のシニア・ポートフォリオ・マネージャーです。ジャ ニスはマニュライフ・アセット・マネジメントのボストンオフィスに 在籍しています。 11 グローバル・インテリジェンス アジア債券見通し される可能性が高まりましたが、金利上昇を経済的に維持で きる状況にはないとの見方から、債券利回りは安定的に推移 不透明感の中で金利リスクを 削減 するか、低下する可能性さえあると予想しています。世界経 済は2013年下期に「日の出前の明るさ」から「昼間の明る さ」に移行するものの、成長ペースは依然として緩慢な水準 が続くと思われます。 アジアのクレジットは有利な位置づけ 市場が落ち着きを取り戻し、金融緩和の継続と低金利の維持 が確実になると、社債市場が回復する可能性があると見てい ます。5月に市場のボラティリティが上昇し、米国国債利回り が上昇したことを受けて、多くの企業は社債発行を見送りまし た。金利見通しの先行き不透明感が強まり、資金調達コストの 見通しが立たなくなったため、多くの企業が米ドル建て社債を アンドレ・ペダーセン 発行しているアジアで動揺が起こり、特にこうした傾向が顕著 要旨 世界がグローバルな金融緩和策 の終結を予期するなか、アジア債 券は底堅い展開となる見込み。 に現れました。そのため弊社は、アジア全域に潜在的な発行需 要があると見ています。米国国債利回りが安定し、この潜在需 要が解き放たれると、アジア地域の健全なファンダメンタルズ に支えられた優良企業が、大半の先進国市場で発行される社債 を上回る利回りで大量の社債を発行する可能性があります。 JPモルガン・アジア・ クレジット指数 2013年6月末時点 直近3ヶ月 直近1年 米ドルベース収益率 -4.7% 2.3% カナダドルベース収益率 -1.3% 5.7% 出所:ブルームバーグ 2013年第2四半期(4~6月期)のグローバル資本市場は「通 常通り」とは程遠い展開となりましたが、アジアもその影響 を免れることはありませんでした。米国が予想よりも早期に しかし一方で、世界経済の回復が続けば、やがて金融政策は引 き締めと利上げに転じる可能性があります。これは現実のリス ク要因ですが、歴史的に見て社債のクレジット・スプレッドは 国債利回りの絶対水準に対する感応性が相対的に低いため、利 回りの取引が終了すると見るのは時期尚早と思われます。市場 周期を通して、一般的には負の相関関係が見られます。そのた め、社債のデフォルト・リスク特有の周期的性質が利回り上昇 に対する効果的なヘッジとなる可能性があります。 クレジットは長期的な国債利回りへの感応度が低い 量的緩和(QE)の縮小に踏み切り、金利上昇の可能性がある が中国の予想を下回る景気減速を示唆し、ユーロ圏では依然 としてリセッション(景気後退)が続いています。 相次いで難しい状況を伝えるこれらのニュースを受けて、米 国債券市場では米国国債利回りが13ヶ月ぶりの高水準とな り、10年国債利回りは5月末までの1ヶ月間に50ベーシスポ イント上昇して2.16%となりました。1確かに国債利回りの上 昇は懸念要因ではありますが、それを受けて市場のボラティ リティが上昇したことは過剰な反応と思われます。米連邦準 備制度理事会(FRB)はこれまで、米国の失業率が6.5%に 低下するまでQEを縮小しないことを明言しており、大方の市 場関係者はその時期を2014年頃と見ていました。その後の FRBの発言でこのマイルストーンが達成される前にQEが縮小 出所:ブルームバーグ(2013年5月31日) 1 12 ベーシスポイント との懸念から市場に混乱が生じました。その他にも経済指標 800 8% 600 6% 400 4% 200 2% 0 1997 0% 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 アジア社債の信用スプレッド(左軸) 米国10年国債利回り(右軸) 直線(アジア社債(左軸)) 直線(国債利回り(右軸)) 出所:ブルームバーグ、バンクオブアメリカ・メリルリンチ・アジア米ドル 建て投資適格社債指数(2013年6月) 2013年7月 オフショア人民元建て債券が安全性を提供 下落するなかで、オフショア人民元は0.4%上昇しました。3 この そうは言っても予想よりも早期にQEが縮小または終結するリ スクは続き、市場の注目は今後数四半期の間に金利上昇の可 傾向は年初来でも同様で、アジア諸国通貨が対ドルで平均4.7% 下落4するなか、オフショア人民元は1.5%上昇しました。 能性があるかどうかに集中するものと思われます。こうした とはいえ、アジア諸国通貨は全体的に見て米ドルに対して過小 状況を背景に、弊社はアジア債券市場に楽観的ながらも慎重 評価されており、アジア地域の為替レートが上昇する長期的な な姿勢を維持し、ボラティリティを活かして利益を確保し、 可能性に基づいてエクスポージャーを追加する機会と弊社は考 根拠のない金利変動から身を守るあらゆる機会を活かすこと えています。 を目指します。弊社はオフショア(CNH)人民元(RMB)債 券市場がこの戦略の重要な要素であると見ています。中国に は過去12年間に米国の政策金利に対してわずか0.28の低相関 を示す独自の金融政策のサイクルがあると考えるためです。 中国とFRBの金融政策は相関が低い 6% 4% 低相関:0.28 2% 2002 2003 2004 2005 2006 2007 フェデラル・ファンド目標金利 2008 が急落した際にも中国人民元建て社債は底堅い展開となりま した。5月に米国の社債の平均利回りは上昇しましたが、人民 元建て社債は実に価格が上昇し、利回りは低下しました。 中国のクレジット市場は米国市場急落時にも底堅い展開 8% 0% 2001 クレジット:社債については、5月に広範囲にわたる債券市場 2009 2010 2011 2012 2013 中国人民銀行1年貸出金利 出所:ブルームバーグ、マニュライフ・アセット・マネジメント (2013年6月) この低相関は前四半期にも顕著に示され、5月の米国国債急落の 際にアジアと世界の市場は混乱したにもかかわらず、オフショ ア人民元市場が大きく下落することはありませんでした。こう した低相関の影響は以下において証明されています。 3.8% 0.9% 3.6% 0.8% 3.4% 0.7% 3.2% 0.6% 3.0% 0.5% 2.8% 0.4% 2.6% 0.3% 2.4% 0.2% 2.2% 0.1% 2.0% 2013年1月 2013年2月 2013年3月 2013年4月 2013年5月 0.0% 2013年6月 中国投資適格社債利回り(左軸) 米国社債利回り(左軸) 中国と米国の社債利回りの差(右軸) 出所:バークレイズ米国総合社債指数、HSBC中国投資適格社債 指数(2013年6月) オフショア人民元建て債券を保有することによって投資家は 分散化の大きなメリットを得ることができるため、グローバル 債券ポートフォリオに不可欠な要素と見なすべきであると考え ています。その一方で、その他の債券保有の金利リスクはアク 金利:世界の上場債券市場は米国国債価格の急落を受けて平均 ティブなデュレーション管理(変動利付債を用いるなど)や金 で利回りが36ベーシスポイント上昇しましたが、中国の債券は 利先物などのデリバティブといった戦略を使って管理すること 勢いを増し、実に10年中国国債利回りは4 ベーシスポイント低 が可能です。 2 下しました。 通貨:人民元(RMB)は、市場下落局面で米ドルに対して上昇 した唯一のアジア諸国通貨で、アジア全域の通貨が平均で3.0% アンドレ・ペダーセンはマニュライフ・アセット・マネジメントの債券 運用部マネージング・ディレクターです。ペダーセンはシンガポールを 拠点にしています。 2013年5月1日から6月7日までの期間。ブルームバーグ、2013年6月7日 2013年5月1日から6月7日までの期間。ブルームバーグ、2013年6月7日 4 両期間中におけるオーストラリアドル、香港ドル、インドルピー、インドネシアルピア、日本円、マレーシアリンギ、ニュージーランドドル、フィリピンペソ、シン ガポールドル、韓国ウォン、台湾ドル、およびタイバーツの米ドルに対する平均為替レートの下落率を示す。ブルームバーグ、2013年6月7日 2 3 13 グローバル・インテリジェンス 日本債券見通し ではなく、1%達成を成功の条件と想定しています。この2 つの判断基準において、アベノミクスは成功の条件を満たす 第3の矢である成長戦略が 発表された というのが弊社のメインシナリオです。 現時点でマイナス2%程度(IMF試算)と試算される日本の 需給ギャップは、主に第1の矢(大胆な金融緩和)による円 安の恩恵を受けて、緩やかにマイナス幅を縮小する可能性が 高いと見られます。各種センチメント指数の大幅な改善に示 されている通り、日本経済は円安を好感しており、今後も円 安及びグローバル経済の回復(特に米国)の恩恵を受ける中 で、需給ギャップの改善は継続すると予想されます。 2013年後半は緩やかなインフレが期待される 5% 消費税率 引き上げ 4% 金丸 壮史 3% コモディティ 価格急騰 2% 要旨 金融市場は一旦政策に失望を示し たものの、アベノミクスによるセン チメントの改善基調は継続してい ると見られます 1% 0% -1% 2009年以来の プラス圏 -2% -3% 1982 1986 1990 1994 1998 2002 2006 2010 2014 消費者物価指数(東京都区部・生鮮食品除く) 出所:総務省 (2013年6月) 野村BPI総合指数 2013年6月末時点 直近3ヶ月 直近1年 日本円ベース収益率 -1.6% 1.0% 米ドルベース収益率 -6.6% -18.8% カナダドルベース収益率 -3.4% -16.1% 出所:ブルームバーグ 6月12日に安倍首相はアベノミクスのうち第3の矢となる成 長戦略を発表し、産業再興・戦略市場創造・国際展開という 3つのテーマに基づく具体的な政策メニューを打ち出しまし た。即効性のある法人税減税が含まれないなど迫力不足の内 容となったことは失望感をもたらしましたが、弊社ではそも そも第3の矢(成長戦略)の本質は潜在成長率を高めるとい う長期的かつ直接的に観察しにくいものである点を考慮すべ きと考えています。 弊社はアベノミクスの成功は需給ギャップとインフレという 2つのマクロ経済データによって判断されると考えており、 具体的な成功の判断基準としては、①日本が負の需給ギャ ップを解消するかどうか、②①の進展に沿って緩やかな賃金 上昇を伴ってインフレが発生するかどうかの2点としていま す。インフレについては、日本が長年に渡ってデフレに陥っ ていることを勘案すると、日銀が掲げるインフレ目標値の2% 14 デフレ脱却の兆候 外需の恩恵を受けながら国内景気も循環的に好転していくと 考えられ、最終的にインフレ期待の上昇及び賃金上昇圧力に 波及していくと予想しています。既に5月の東京都区部の消 費者物価の対前年上昇率はプラス0.1%とプラス転換してお り、今年後半にかけて物価の伸び率が緩やかに上昇していく 可能性は高いと見られます。 2013年7月 弊社のメインシナリオ下における金融市場の想定レンジ(今後2年程度) 金融市場 日本国債10年国債 利回り 想定レンジ 補足説明 0.50-1.25% 金利上昇圧力(景気回復・インフレ期待)対金利低下要因(日銀の大量国債 購入による需給サポート)という構図を想定しています。この環境下におい ては、米国金利動向の影響力が大きく、米国連邦準備理事会(以下「FRB」) の量的緩和縮小議論及びそれを受けた金融市場の反応が重要ファクターと考え られます。 ドル円相場 1ドル95〜115円 金融引締期待が台頭しない中では名目利回りの日米金利差に大きな変化は ないものの、日銀の実質金利を引き下げる政策及び米国量的緩和縮小期待 に起因した米国実質利回りの上昇による日米実質金利差拡大から、円安圧力 継続を想定しています。 日経平均 株価 10,000-16,000 緩やかな景気回復期待に沿って高値のレンジ相場が継続すると予想します。 景気回復に伴う米国金融緩和縮小期待が上値を抑えるものの、アベノミクス 期待にも支えられて堅調なトレンドは不変と見ています。 米国景気減速リスクはFRBのサポートに よって顕在化は未然に回避される公算 法改正及び集団的自衛権に関する議論から周辺国(特に中国) リスク要因としては、海外、特に堅調に回復してきた米国景 ると考えられます。 気の減速が挙げられます。この場合、リスクセンチメントの 悪化に伴って、安全通貨としての円高圧力が高まり、これま で円安を背景に急上昇してきた国内株価にとっては大きな下 方圧力になると考えられます。こうした流れで国内の企業及 び消費者センチメントが悪化する場合には、アベノミクスへ の期待が剥落する可能性があると言えます。然しながら、弊 社は、米国経済が減速の兆候を示した場合には、FRBが追加 緩和を打ち出すことで実体経済へのリスク顕在化は未然に回 避されると見ています。また、FRBは量的緩和の縮小を議論 しているものの、これについても量的緩和縮小と利上げとは 異なるものであることを明確にすることで、行きすぎた金融 引き締め期待によって実体経済の回復が阻害されるといった との関係悪化によって輸出が悪化するシナリオが挙げられ、 この場合、需給ギャップの改善ペースが遅れる可能性が高ま 日本国債10年利回りの今後2年程度の弊社予想レンジは0.50 〜1.25%です。日銀の「量的・質的金融緩和」に基づく年間 90兆円程度の国債購入は非常に大きな需給サポート要因と考 えられます。「量的・質的金融緩和」の導入決定以降、日本 国債市場の流動性は低下し、ボラティリティは急拡大すると いった結果になったものの、日銀が国債の買いオペレーション をこなしていく中で、ボラティリティはいずれ低下に向かい、 日銀が想定したように金利には低下圧力がかかっていくと予想 しています。景気改善期待、将来的なインフレ期待、株価上昇 といった要因は金利上昇圧力となるものの、日銀の需給サ ポート効果によって相殺される構図となり、こうした環境 リスクシナリオを回避すると見られます。 下においては米国債利回りの動き、従ってFRBの金融政策 日本国内のリスク要因としては、来年4月からの消費税増税の する鍵を握ると思われます。 実施に関する判断(今年の秋に判断予定)が挙げられます。 黒田日銀新総裁は増税に肯定的であることから、仮に増税を 延期し、政府・日銀間で意見の相違が露呈した場合、政府と 日銀が一枚岩ではないと市場に見透かされることで、アベノ ミクスに対する信認が毀損するリスクがあります。増税に関 する判断は非常に複雑であり、増税の実施は経済に悪影響を 及ぼすと考えられる一方、増税を実施しない場合には、財政 リスクの高まりによる日本国債利回りの上昇といった副作用 スタンス(量的緩和縮小議論等)が国内金利の方向性を決定 インフレについては、インフレ実績値は当面低位にとどまる と見られ、債券市場に対して大きなリスク要因となる可能性 は低いと見ています。実績インフレ率が予想外に大きく上昇 する場合には(例:対前年比で1%超)、債券市場は日銀の 出口戦略(国債購入プログラムの縮小及び将来的な利上げ) を織り込むこととなり、イールドカーブ全体に金利上昇圧力 がかかると考えらますが、そうした局面はまだまだ先の展開 への懸念が生じる可能性があります。弊社では、安倍内閣は であると認識しています。 今年秋に来年4月からの消費税増税実施を決定すると同時に、 金丸壮史はマニュライフ・アセット・マネジメント株式会社の債券運用 部に所属するポートフォリオ・マネージャーです。金丸はマニュライ フ・アセット・マネジメントの東京オフィスに在籍しています。 経済への悪影響の軽減を意図して何らかの景気対策を実施す ると予想しています。その他の国内リスク要因としては、憲 15 マニュライフ・アセット・マネジメントについて Manulife Asset Managementは、カナダのグローバル金融サービス企業であるManulife Financial Corporation の資産運用ビジネス 部門です。運用拠点はカナダ、米国、英国、日本、香港を含む世界17ヵ国に構え、伝統的資産からオルタナティブに至るまで多岐にわたるグロー バル投資戦略をご提供しています。2013年3月末時点のグローバル運用総資産は2,482億米ドル(約23兆円)です。 グローバル・オフィス一覧 トロント Manulife Asset Management Limited 200 Bloor St. E., NT-6 Toronto, Ontario M4W 1E5 Canada TEL:+1-416-852-2204 ロンドン Manulife Asset Management (Europe) Limited 10 King William Street London, U.K. EC4N 7TW TEL:+44-20-7256-3500 東京 マニュライフ・アセット・マネジメント株式会社 〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-8-1 丸の内トラストタワーN 館15 階 TEL:03-6267-1940 (セールス・顧客サービス部) ボストン Manulife Asset management (US) LLC 101 Huntington Ave Boston, MA. 02199 United States TEL:+1-617-375-1500 ボストン(実物資産運用/森林・農地投資) Hancock Natural Resource Group 99 High Street, 26th Floor Boston, MA 02110-2320 United States TEL:+1-617-747-1600 香港 Manulife Asset Management(Asia) 47/F Manulife Plaza The Lee Gardens, 33 Hysan Avenue Causeway Bay, Hong Kong TEL:+852-2910-2600 上記以外のアジアにおける資産運用拠点一覧 • 中国(北京市) Manulife TEDA Fund Management Company Ltd. • 台湾 Manulife Asset Management (Taiwan) Co., Ltd. • シンガポール Manulife Asset Management (Singapore) Pte. Ltd. • インドネシア PT Manulife Aset Manajemen Indonesia • マレーシア Manulife Asset Management Malaysia Sdn Bhd • タイ Manulife Asset Management (Thailand) Company Limited • ベトナム Manulife Asset Management (Vietnam) Company Ltd. • フィリピン The Manufacturers Life Insurance Co. (Phils.), Inc. 日本における資産運用業務の展開 日本における資産運用業務は、1999年にマニュライフ・ファイナンシャル・コーポレーションが旧第百生命保険との生命保険事業における合弁を開始したことに さかのぼります。弊社の前身はマニュライフ生命保険会社の資産運用部として保険資産を中心とした業務を行なってきましたが、2005年に投資顧問会社MFC グローバル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社(※) として設立、国内の資産運用ビジネスに参入し、年金基金を含む機関投資家向けの投資一任 業務を開始いたしました。今日弊社では、マニュライフ・グループの保険資産のほか、年金基金をはじめとする機関投資家のお客様向けに国内債券および日本株 式を5年超に亘り運用しているほか、近年実物資産としての注目の高いグローバル森林投資やグローバル農地投資、また成長期待の著しいアジアにおける債券 および株式運用、さらにモーゲージ証券等を活用した債券ソリューション戦略商品をご提供しています。 (※2011年1月11日に社名を変更、マニュライフ・ アセット・マネジメント株式会社となる) 日本国内向け主要運用商品一覧 <株 式> 日本株式クオンツ・アクティブ(バリュー型) アジア小型株式 グローバル株式(Higher Risk/Higher Return) グローバル資源株式 中国A株運用(QFII(適格外国機関投資家)としての認可を 取得しています) <債 券> 日本債券アクティブ(総合型) アジア債券アクティブ グローバル債券(Higher Risk/Higher Return) 人民元(RMB)建て債券(QFII(適格外国機関投資家)とし ての認可を取得しています) <オルタナティブ> グローバル森林投資 グローバル農地投資 米国MBS絶対リターン戦略 米国ハイ・イールド債券 ディスクレーマー Manulife Asset Managementロゴマークはザ・マニュファクチャラーズ・ライフ・インシュアランス・カンパニーのトレードマークであり、同社およびマニュライ フ・ファイナンシャル・コーポレーションを含むグループ企業に帰属するものです。当資料は作成時において信頼できると考えられる情報に基づいて作成しており ますが、情報の正確性、信頼性、完全性を保証するものではありません。また、見解およびコメントは現状に基づいた一般的なものであり、マニュライフ・ファイナ ンシャル、マニュライフ・アセット・マネジメントおよび系列会社がお客様の税務、財務・資産あるいは法務に関するアドバイスを行なうものや、特定の商品につい て勧誘・販売を行うものではありません。お客様固有の事情につきましては、お客様ご自身が適切なプロフェッショナルからアドバイスを受けるようお願い致しま す。当資料に掲載される過去の実績は、将来の運用成果等を保証するものではありません。日本において当該情報を元にお客様が投資を行うとの判断をされる 場合においては、お客様と、日本における運用・顧客サービスの拠点であるマニュライフ・アセット・マネジメント株式会社との間に投資一任契約を締結した上で行 うものとします。 商 号: 設 立: 資 本 金: 登 録 番 号: 加 入 協 会: 主たる業務内容: 代 表 者: マニュライフ・アセット・マネジメント株式会社(金融商品取引業者) 2004年4月 1億4,050万円 関東財務局長(金商)第433号 一般社団法人 日本投資顧問業協会 有価証券等に関する投資一任業務及び投資助言業務 代表取締役社長 チーフ・インベストメント・オフィサー 石田 成 投資にあたっては資産価格の騰落等により投資元本を割り込む事があります。また、マニュライフ・アセット・マネジメント株式会社との投資一任契約に際しお客様 にご負担いただく投資顧問報酬は各種商品、サービス等により異なるため、事前に料率または上限を表示することができません。詳しくは契約に際してお渡しす る「金融商品販売法に基づく確認書(重要事項説明書)」及び「投資一任契約の締結時にお渡しする書面」を十分お読み頂くようお願い申し上げます。 ベンチマークに対するディスクレーマー NOMURA-BPI/Extended 事業債は、野村證券株式会社が公表している指数で、その知的財産権は野村證券株式会社に帰属します。なお、野村證券株式会 社は、対象インデックスの正確性、完全性、信頼性、有用性を保証するものではなく、対象インデックスを用いて行われるマニュライフ・アセット・マネジメント株式 会社の事業活動・サービスに関し一切責任を負いません。 manulifeam.com/japan GI-MC-0112