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コントロール感と曖昧性が確率判断に与える影響
日心第70回大会(2006) コントロール感と曖昧性が確率判断に与える影響 ○足立邦子1・山 祐嗣2 ( 神戸女学院大学大学院人間科学研究科・2神戸女学院大学人間科学部) Key words: コントロールの錯誤・曖昧性・比較無知仮説 1 Ellsberg(1961)は,くじの中のポーカーチップの分布が明確 な箱(赤 50 個+黒 50 個=100 個)の方が,不明確な箱(赤?個+ 黒?個=100 個)よりも高い成功確率を期待し,曖昧性忌避 (ambiguity aversion) が 生 じ る こ と を 示 し た . Fox & Tversky(1995)は2つの箱を直接比較しない場合,曖昧性忌避 は消滅し,両者の間に差がなくなることを明らかにし,これ を比較無知仮説(comparative ignorance hypothesis)と呼んだ.本 研究では,Fox & Tversky(1995)によるパラダイムを用いるが, これは当たりの色決定とくじを引く行為が与えられているの で,コントロールの錯誤(illusion of control; Langer, 1975)生起 を期待する条件と考えられる.そこで,コントロールの錯誤 を生起させない条件も設定し,コントロール感と曖昧性が確 率判断にどのような影響を与えるのか検討する. 結果の予測 実験参加者が当たりの色を決め,くじ引きをする方がそう でないよりも高い金額を賭けるだろう(Langer, 1975).また, 2つの箱を比較する場合,明確箱の方が曖昧箱よりも高い金 額を賭けるであろう.しかし2つの箱を比較しない場合,賭 ける金額に差は出ないだろう(Fox & Tversky, 1995). 実験1 方 法 実験参加者 大学生 114 名(男性 38 名, 女性 76 名)であった. 課題 Fox & Tversky(1995)によるパラダイムを用いた. 手続き 集団実験を行った.実験参加者が当たりの色を決め, くじ引きを行う(関与あり)条件と,競争相手が当たり目を決 め,くじ引きを行う(関与なし)条件の2群に実験参加者を配 置した.両群に明確な箱(明確箱)と不明確な箱(曖昧箱)が示さ れた質問紙を配布した.もしそれらのくじ引きを行うならば, いくら賭けるか(¥0 から¥10,000)答えてもらった. 結 果 Figure 1 に結果を示した.分散分析の結果,関与と箱タイ プともに主効果が有意であった(F(1, 112)=6.53, p<.05; F(1, JPY 3500 2500 Certain 3153 3000 Ambiguity 2481 2426 2000 1500 1027 1000 500 0 Inducing IC Diminishing IC Situations Figure 1 Comparative bets 112)=29.29, p<.01).関与×箱タイプの交互作用は有意な傾向 を示した (F(1, 112)=3.61, p=.06).関与あり/なしともに曖昧 性忌避を示した.関与あり/なし間における曖昧箱を比較す ると,予測に反して関与のない方があるよりも高い金額であ ることが示された( p<.01). 実験2 方 法 大学生 168 名(男性 64 名,女性 104 名)であった. Fox & Tversky(1995)によるパラダイムを用いた. 手続き 実験参加者を4群に配置し,明確箱と曖昧箱を別々 に提示した.これ以外は実験1と同様であった. 結 果 Figure 2 に結果を示した.分散分析を行った結果,箱タイ プの主効果のみ有意であった(F(1, 164)=6.57, p<.05).予測に 反して曖昧性忌避が生じることがわかった. 実験参加者 課題 JPY Certain 3500 Ambiguity 3000 2500 2320 2298 2000 1457 1500 1376 1000 500 0 Inducing IC Diminishing IC Situations Figure 2 Noncomparative bets 総合的考察 実験1の曖昧箱では,予測に反して関与 のない方があるよりも高い金額が賭けられた.また実験2に おいて,関与ありと関与なしでは差がなかった.Ji, Peng, & Nisbett(2000)は,西洋人にとってコントロール感は重要であ るが,東洋人にとってそうではないことを示した.よって, コントロールに対する認知のし方に文化差があるからではな いかと考えられる. 比較無知仮説と曖昧性の効果 実験参加者は2つの箱を相対的 に判断しても絶対的に判断しても,曖昧性忌避を示し,比較 無知仮説は支持されなかった.2つの箱を直接比較しない場 合でも,暗にもう一方の箱と比較し,判断していたと考えら れる.これは全体的思考を行う東洋人独特の思考スタイルに 一致する(Nisbett, Peng, Choi, & Norenzayan, 2001). 引用文献 Ellsberg, D. 1961 Risk, ambiguity, and the Savage axioms. Quarterly of Journal of Economics, 75, 643-669. Fox, C. R. & Tversky, A. 1995 Ambiguity aversion and comparative ignorance. Quarterly Journal of Economics, 110, 585-603. Ji, L., Peng, K., & Nisbett R. E. 2000 Culture, control, and perception of relationships in the environment. Journal of Personality and Social Psychology, 78, 943-955. Langer, E. J. 1975 The illusion of control. Journal of Personality and Social Psychology, 32, 311-328. Nisbett, R.E., Peng, K., Choi, I., & Norenzayan, A., 2001 Culture and systems of thought: Holistic vs. analytic cognition. Psychological Review, 108, 291-310. (ADACHI Kuniko, YAMA Hiroshi) コントロールの錯誤