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入賞者演奏会を聴いて
第2 5回ピアノ・オーディション 入賞者演奏会を聴いて 2 0 0 9 年 3 月 2 8 日( 土 ) 11 : 0 0 開 演 津 田 ホ ー ル 梅 谷 進 不順な天候が続き、開花した桜も寒さにちぢこまるような中、3月28日千駄ヶ谷の津田ホールに おいて恒例の入賞者演奏会が開催されました。昨年11月の地区予選で選ばれ、更に3月26日、27日 の両日の本選会で入賞された28名の方たちのフレッシュな演奏が披露されました。出演者の内訳は、 小学生10名、中学生8名、高校生5名、大学生5名(E部門1名を含む)。それぞれに個性的で、 しょうじん 音楽的才能にあふれた演奏で、日頃の精進が偲ばれる感じがいたしました。今回はグリーグの作品 が多く、北欧情緒がみなぎる雰囲気でありました。 た か は し 橋 このみ(北海道江別市立東野幌小学校6年) 1. グリーグ:「抒情小曲集」Op.12 より 4. 妖精の踊り ドビュッシー:「2つのアラベスク」より 2. ト長調 2曲とも非常に軽快で、リズム感のよさを示していました。ドビュッシーの 多彩な音色を出せるようになれば、もっとよくなるでしょう。 い け う ち たかし 2.池 内 堯 (大阪府茨木市立養精中学校1年) グリーグ:「抒情小曲集」Op.43 より 1. 蝶々 カバレフスキー:ソナタ 第3番 ヘ長調 Op.46 第1楽章 1曲目はテンポの緩急を巧みに活かしていました。2曲目は現代的な和声や リズムによっていながら、伝統的なソナタ形式で作られていることをしっかり と表現できたと思います。 し ぜ ん ゆういちろう 3.紫 前 佑一朗(札幌市立平岡公園小学校6年) グリーグ:「抒情小曲集」Op.38 より 1. 子守歌 ショパン:ワルツ ホ短調 遺作 1曲目は母親の腕に抱かれて心地よいゆらぎの中で聞く子守唄を思わせまし た。2曲目は手慣れたショパンという印象でした。 さ い と う な お き 4.斉 藤 直 樹(北海道立札幌南高等学校2年) グリーグ:ソナタ ホ短調 Op.7 より 任意の二つの楽章 第2楽章のたとえようもない美しい民謡風の旋律が最後に大きく盛り上がっ て感動的に歌われました。第4楽章は技術的に余裕を感じましたが、やや画一 的に思えました。 36 第25回ピアノ・オーディション た か や ま え り な 5.高 山 衿 菜(札幌市立新川中央小学校6年) グリーグ:「抒情小曲集」Op.38 より 1. 子守歌 ショパン:ワルツ ホ短調 遺作 1曲目の子守歌はやはりゆれるリズム感がよかったし、中間部の変化が面白 く感じられました。2曲目のショパンは、フレーズのまとめと音楽の流れがよ かったと思います。 こん し ょ う ご 6.近 祥 伍(北海道恵庭市立恵み野中学校2年) グリーグ:「抒情小曲集」Op.43 より 1. 蝶々 カバレフスキー:ソナタ 第3番 ヘ長調 Op.46 第1楽章 グリーグは右手の音列の中にある別の音の動きがよく浮き出ていました。カ バレフスキーはとかく無機質に 陥 りやすいのですが、温かく包みこむような音 で成功していました。 おちい あ し は ら か の ん 7.芦 原 花 音(福井県坂井市立平章小学校5年) グリーグ:「抒情小曲集」Op.12 より 1. アリエッタ、2. ワルツ スカルラッティ:ソナタ ハ長調 K.159/L.104 グリーグの1曲目は夢見るような旋律をこどもらしい感覚で歌い、2曲目は リズムにのって楽しく弾けました。スカルラッティは気負いがあったのか、慌 てて弾き直したのが惜しまれます。 あわ む ら か み ふ み た か 8.村 上 史 昂(千葉大学附属中学校1年) グリーグ:「抒情小曲集」Op.43 より 1. 蝶々 カバレフスキー:ソナタ 第3番 ヘ長調 Op.46 第1楽章 1曲目は指がよくまわりますが、かえって蝶々のイメージが薄くなったよう に思います。2曲目は、この曲の面白さをよく知っている感じがしました。 つ か も と ふ み か 9.塚 本 芙美香(兵庫県立西宮高等学校1年) リスト:リゴレット・パラフレーズ 即興的な導入部はよかったですが、オペラ歌手的に歌うのは研究の余地があ ります。後の各部分の特長を考えて表現することも必要です。実力があり、こ れからの成長が期待できる方です。 か じ き み さ 10.梶 木 美 紗(宮城学院女子大学2年) グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.16 第1楽章 よく合わせ込んだと見え、アンサンブルができています。コンチェルトの華 やかさも感じられました。特にカデンツァがとても効果的でした。 く ど う あ や り 11.工 藤 彩 里(札幌市立みどり小学校5年) グリーグ:「抒情小曲集」Op.12 より 4. 妖精の踊り ドビュッシー:「2つのアラベスク」より 2. ト長調 グリーグはフレーズ毎の変化、pp と f のコントラスト、ひびきの美しさなど が印象に残りました。ドビュッシーは軽妙なリズムと色彩感があり、十分楽し めました。 ごと た に ぐ ち さ あ や 12.谷 口 紗 彩(奈良学園中学校2年) グリーグ:「抒情小曲集」Op.62 より 1. 風の精 モーツァルト:ソナタ ニ長調 KV.576 第1楽章 グリーグは躍動感と即興的な表現がこの曲を引き立てていました。モーツァ ルトはしっかりしたタッチによって構築され、音色の変化もあり、特に多声部 的な部分がよかったと思います。 37 ろ っ か く ゆ う か 13.六 角 優 香(東京都中野区立大和小学校6年) グリーグ:「抒情小曲集」Op.38 より 1. 子守歌 ショパン:ワルツ ホ短調 遺作 グリーグは右手の中で二つの動きを同時に弾くのが難しいのですが、とても よく弾きこなしていました。中間部もその特徴がよく表現できていました。シ ョパンはやや平凡でした。 い と う さ と な 14.伊 藤 賢 奈(石川県小松市立丸内中学校2年) グリーグ:「抒情小曲集」Op.43 より 1. 蝶々 カバレフスキー:ソナタ 第3番 ヘ長調 Op.46 第1楽章 1曲目は気まぐれな蝶々の生態を連想させました。加速減速が巧みなためで しょう。2曲目はなかなかダイナミックで低音部のリズムが効果的でした。色 彩感もありました。 な か が わ え り 15.中 川 愛 梨(高松市立高松第一高等学校2年) シューマン:ソナタ 第3番 ヘ短調 Op.14 第1楽章 しっかりした響きでなかなかダイナミックな演奏でしたが、内声部に聴きと り難い所がありました。付点リズムは躍動感があり、各声部がからみあって進 むのがよく表現されていました。 にく た な か か な 16.田 中 花 奈(横浜市立奈良小学校5年) グリーグ:「抒情小曲集」Op.12 より 4. 妖精の踊り ドビュッシー:「2つのアラベスク」より 2. ト長調 グリーグはかなり速く、上下のテーマがあまり浮き出ていないように思いま した。ドビュッシーはいきいきした演奏でしたが、フランス音楽の雰囲気はま だ十分とはいえないようです。 ま つ い た く や 17.松 井 拓 弥(札幌市立山鼻中学校1年) グリーグ:「抒情小曲集」Op.62 より 1. 風の精 モーツァルト:ソナタ ニ長調 KV.576 第1楽章 モーツァルトを先に弾きました。安定感があり、よく弾き込んでありました。 できれば f と p の差をもっとはっきり示すべきではありませんか。2曲目は軽快 に楽しく演奏できました。 し ぶ や あ い か 18.渋 谷 藍 香(北海道・旭川明成高等学校2年) シューマン:ソナタ 第3番 ヘ短調 Op.14 第1楽章 清楚な中に情熱を秘めたとても素敵なシューマンでした。音楽的感性をもっ ている上に表現力が備わっていて感心しました。将来が楽しみです。 せ い そ し ぶ や あ り さ 19.渋 谷 有 佐(京都市立芸術大学2年) グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.16 第3楽章 冒頭部から情熱的な演奏で実力が感じられました。また、 郷 愁 を誘うような 中間部の第2主題が美しく歌い上げられ、コーダは歓喜の渦に巻き込まれるよ うに進み、感動裡に終わってこの楽章の魅力を十分引き出せていました。 きょうしゅう か ん の か な え 20.貫 野 佳菜恵(大阪府岸和田市立城東小学校5年) グリーグ:「抒情小曲集」Op.12 より 4. 妖精の踊り ドビュッシー:「2つのアラベスク」より 2. ト長調 グリーグはやわらかい音色で、幻想的な妖精の世界を描き出しました。ドビ ュッシーは軽快というよりは歌うような表現、鋭い sf などやや異質な感じで、 38 第25回ピアノ・オーディション 中間部も個性的でした。 さ か も と ま い 21.坂 本 麻 衣(広島大学附属福山中学校1年) グリーグ:「抒情小曲集」Op.43 より 1. 蝶々 カバレフスキー:ソナタ 第3番 ヘ長調 Op.46 第1楽章 1曲目は花から花へと移り、止まると見せてまた舞い上がる蝶の姿を彷彿と させました。2曲目はペダルを長めに用い、ロマンチックに歌い継いで、管弦 楽を思わせる感じでした。 ほうふつ ひ な た あかり 22.日 向 陽(北海道岩見沢市立中央小学校6年) グリーグ:「抒情小曲集」Op.12 より 1. アリエッタ、2. ワルツ スカルラッティ:ソナタ ハ長調 K.159/L.104 アリエッタは、旋律が遠くから聞こえる歌声のように思えました。ワルツは 戸惑い、立ち止まり、また踊りだす憂いを含んだメロディーの変化を楽しめま した。スカルラッティはコントラストがもう少しあれば、と思います。 うれ さ わ い 23.澤 井 くるみ(北海道教育大学附属旭川中学校2年) グリーグ:「抒情小曲集」Op.43 より 6. 春に寄す リスト:「2つの演奏会用練習曲」より 2. 小人の踊り 1曲目は抒情小曲集で最も有名な曲で、長く厳しい冬が 漸 く終わり、待望久 しい春の訪れが描かれていますが、その気持ちがよく伝わりました。リストは 細かくキラキラと輝く音が、華やかな効果を生み出しました。 ようや よ し だ 24.吉 田 サハラ(島根県松江市立内中原小学校5年) グリーグ:「抒情小曲集」Op.12 より 4. 妖精の踊り ドビュッシー:「2つのアラベスク」より 2. ト長調 グリーグはやや歯切れが足りないようでした。またコントラストも欲しいで す。ドビュッシーはある程度フランス風の雰囲気が出せたと思います。 じ ょ う じ み さ き 25.上 路 実早生(福島県・いわき秀英高等学校1年) グリーグ:ソナタ ホ短調 Op.7 より 任意の二つの楽章 第1楽章は抒情的な出だしで、その後も丹念な歌い方と上下の対話がよい結 果を生みました。第2楽章は詩情あふれる主題が和音の変化に伴って微妙に変 化し、素敵な効果を挙げました。 い と う ゆ き こ 26.伊 藤 由貴子(桐朋学園大学4年) リスト:「巡礼の年 第2年 イタリア」より 7. ダンテを読んで∼ソナタ風幻想曲 技巧的な難曲で、しかも内容が深い曲ですが、女性らしい解釈で激しさより も美しさと宗教的な高度の精神性を追求するといった方向で表現しようとして いるように思いました。 の と た い き 27.能 登 泰 輝(くらしき作陽大学3年) グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.16 第1楽章 骨太でスケールの大きい演奏です。技巧的に十分ゆとりがあり、この協奏曲 の華やかさが発揮されました。第2主題の詩情もよく表現されていました。特 にカデンツァは説得力がありました。第2ピアノもよくソロをフォローしてい たと思います。 に し む ら な つ き 28.西 村 夏 葵(桐朋学園大学2年) グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.16 第3楽章 テクニックを存分に発揮し、速いテンポで一気に弾き進めました。中間部は 抒情的で美しく、懐かしさにあふれていました。今後はあまり技巧に 偏 らず、 音楽表現を深めるように心掛けてください。 かたよ 39