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廃タイヤに係る政策及び政府の取り組み(PDF形式:2203KB)

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廃タイヤに係る政策及び政府の取り組み(PDF形式:2203KB)
2. 中国におけるタイヤリサイクルの現状と課題
2.1 廃タイヤに係る政策及び政府の取り組み
2.1.1
廃タイヤに関する関係法制度等及びその整備計画
2012 年 12 月現在、国際協力機構(JICA)と中国国家発展改革委員会のあいだで、「都市廃
棄物循環利用推進プロジェクト」が進められており、当該プロジェクトでは、対象廃棄物の
1つとして廃タイヤも挙げている。2011 年度の報告書(以下、JICA 報告書)において、中国
社会科学院数量経済・技術経済研究所が、廃タイヤに関する法律・法規及び重要政策につい
て以下のようにまとめている。
21 世紀に入る前は、廃タイヤの発生量が少なく、汚染問題がさほど重視されていなかった
ことから、中国では廃タイヤリサイクルに関連する法規および政策がほとんど打ち出されて
いなかった。しかし廃タイヤ発生量の増加に伴い、廃タイヤ回収・利用の無秩序な発展がも
たらした資源の浪費と環境汚染が日増しに深刻化したため、中国でも徐々に廃タイヤリサイ
クルに関する法律・法規および政策規制の強化に乗り出した。
2001 年から 2002 年にかけ、当時の国務院副総理が、中国タイヤ更生循環利用協会の提出し
た『中国における廃タイヤ修理利用の現状、問題および提案』と、旧国家経済貿易委員会の
提出した『中国の廃タイヤ回収利用関連状況および提案に関する報告』に対し指示を出した
ことを受け、旧国家経済貿易委員会の主導で廃タイヤリサイクルの推進に関する政策・法規
整備が始まった。
2003 年から 2004 年にかけ、国務院の温家宝総理と当時の曾培炎副総理、汪洋副秘書長は廃
タイヤ素材に関するいくつかの指示を出した。これを受け、国家発展改革委員会は『廃タイ
ヤ回収利用管理条例』の制定、タイヤ産業政策および廃タイヤ回収利用に用いる税収政策の
研究・調整に着手した。
これを基に、財政部、旧国家発展計画委員会、国家経済貿易委員会、国家税務総局等の政
府部門が制定した『資源総合利用目録』において、廃タイヤは初めて、廃棄金属・廃プラス
チック・古紙等と共に、再生資源の回収・総合利用製品としてリストアップされた。
2005 年、国務院は『資源節約型社会建設のための短期的取組の徹底に関する通知』および
『循環型経済の発展加速に関する若干意見』
(国発 2005[22]号)を公布し、いずれにおいて
も、廃タイヤの回収利用を再生資源利用の重点事業とし、関連する法律・法規の制定・整備
を行う旨を明確に打ち出した。このうち国発 2005[22]号文書では、拡大生産者責任制度の
確立と、メーカー、販売店、回収企業、使用企業、消費者の、廃棄物回収・処理・再利用に
おける法的義務を明確化することを要求している。
2005 年、
『国民経済と社会発展第 11 次5カ年計画綱要』では、拡大生産者責任制度を確立
し、廃タイヤの回収利用を推進することが打ち出された。2007 年1月、国家発展改革委員会
は『
「第 11 次5カ年計画」資源総合利用に関する指導意見』を公布し、廃タイヤ等再生資源
の産業化プロジェクトを6大資源総合利用重点プロジェクトの一つとすること、また『廃タ
イヤ回収利用管理条例』を 2007 年法規立案計画に組み入れることが打ち出された。しかし多
方面にわたる原因で、廃タイヤの産業化プロジェクトはいまだ実施されていない。
3
2007 年以降の廃タイヤに関する法律・法規及び重要政策を以下に概括する。
(1)循環経済促進法
2008 年の全国人民代表大会常務委員会では、2009 年1月1日より正式に実施される『中華
人民共和国循環経済促進法』が採択され、自動車部品や工作機械等の再製造、タイヤ更生(第
40 条)
、廃棄された電気・電子製品、廃車、廃船、廃タイヤ等の特定製品の解体または再利用
を行う企業に対し国が支援を行うこと、再生に当たっては関連法や行政法規の規定を遵守す
ること(第 38 条)が規定された。
(2)廃タイヤの旧式燃料精製規制実施に関する緊急通達(発改弁運行[2006]2784 号)
国家発展改革委員会と国家環境保護総局は 2006 年 12 月に廃タイヤを利用した違法な燃料
精製に対し、
「廃タイヤの旧式燃料精製規制活動実施に関する緊急通達」を公布し、各地で廃
タイヤを利用した旧式の燃料精製による環境汚染行為を法に基づいて制止するよう要求を出
した。各省の発展改革委員会は、廃タイヤ総合利用企業に対して厳格な市場参入制度を実施
するように促しており、また、商務、環境保護、工商、検疫、公安など関係部署が法に基づ
き、違法行為を取り締まるよう、指示が出された。
(3)都市鉱産モデル基地政策
国家 発展改革委 員会と財務 部が連名 で 2010 年5 月に発表し た共同文書 (発改環 資
[2010]977)によって打ち出された政策で、2010 年から5年間で 30 か所の都市鉱産モデル基
地を建設するというものである。
<目的>
(1)再生資源の利用を促進することで天然資源への需要を緩和
(2)環境汚染の削減
(3)資源-製品-廃棄物-再生資源という循環経済の促進
(4)新しい産業の育成
の4つが掲げられている。
また、モデル基地においては、電気設備、電線・ケーブル、家電、自動車、携帯電話、鉛蓄
電池、プラスチック、ゴムなどを中心とした「都市鉱産」資源の循環利用、規模的利用、価
値的利用を推し進めることを目的としている。
4
国家発展改革委員会、国家財務部
基本的な条件:
①国レベルあるいは省レベル循環経済試験拠点
として許可されている
5年で30カ所
「都市鉱産」モデル基地
②園区化管理を実行している
③土地利用総体計画及び都市総体計画に従って
いる
④国家基準に満たす環境保護処理施設が整備さ
れている
廃ケーブル
廃
機
電
設
備
廃
家
電
廃
自
動
車
廃
携
帯
電
話
廃
ア
ル
ミ
電
池
廃
プ
ラ
図 2-1
⑤年間の資源利用量は30万トン以上であり、合
理的な産業構築が形成され、廃棄物の加工量
は「都市鉱産」資源量の30%以上で、加工技
術が国内でも高いレベルである
※
廃
ゴ
ム
第一次認定:7基地
第二次認定:15基地
(現在計:22基地)
都市鉱産モデル基地の概要
技術面では、最新的で実用的な技術を開発、応用、普及することで、再生資源の開発利用
技術水準を高めるとしている。現在 22 箇所のモデル認定がされており、大連国家生態工業モ
デル園区(静脈産業類)においては、2011 年9月に国家発展改革委員会から認定を受けてい
る。
(4)タイヤ産業政策(工産業政策[2010]第2号)
2010 年9月、工業情報化部は「タイヤ産業政策(工産業政策[2010]第2号)
」を公布した。
これは中国における初めてのタイヤ産業の政策文書で、廃タイヤ回収利用の管理制度を確
立・整備すること、新タイヤの生産・中古タイヤの更生・廃タイヤの再生利用の協調発展を
促進すること、中国におけるタイヤおよびタイヤ更生関連の基準と技術規範を制定・改正す
ること、廃タイヤ回収利用技術の開発、中古タイヤ更生製品の「三包(修理、返品、交換)
」
規定の制定と普及、
「以旧翻新(古いものを更生する)
」 「以旧換新(古いものを新しいもの
と換える)」 のタイヤ販売モデルの確立と普及、という政策目標を明確に掲げ、廃タイヤの
回収と利用について専門的な論述を行った。
(5)廃タイヤ総合利用指導意見(工産業政策「2010」第4号)
2010 年 12 月、中国政府の工業情報化部が「廃タイヤ総合利用指導意見」を公表した。
意見文の中には、製品市場の開拓、合理的産業配置の構築として、中国独自の廃タイヤに
おける総合利用産業を発展させ、廃タイヤの再生事業を重点として、再生ゴムの生産を適切
に発展し、ゴム粉産業も進め、熱分解産業化を推進し、製品の応用範囲を拡大すると記載が
ある。さらには、発展目標として 2015 年までに中国国内の廃タイヤ再生水準を高度なレベル
にすることを目指している。廃タイヤからのゴム製品の年間生産総量 300 万トン、ゴム粉の
年間総量は 100 万トンにし、熱分解は 12 万トンにするとしている。
10 社程度の廃タイヤ総合利用モデル企業を育成する計画が記載されている。
5
(6)廃タイヤ総合利用業界の参入許可条件(工業情報化部公告 2012 年第 32 号)
2012 年7月 31 日発表された「廃タイヤ総合利用業界の参入許可条件」では、生産経営規模
として、既存の廃タイヤ加工利用企業は、年間総合処理能力 10,000 トン以上、新規の廃タイ
ヤ加工利用企業の場合は、年間 20,000 トン以上との条件が設定された。また、新規の廃タイ
ヤ加工利用企業は稼働開始時から、また、既存企業は2年以内に、本参入許可条件に規定さ
れた製品品質、環境保護、エネルギー消耗、安全生産と労働保護等の要求を満たさなければ
ならないとしている。
上記にみられるように、廃タイヤのリサイクルに関する法律・規制の整備は、近年、加速
しており、長いあいだ検討されてきた「廃タイヤ回収利用管理条例」が早期に制定されるこ
とが期待される。廃タイヤのリサイクルに関しては、違法な旧式の燃料精製が問題になって
いること、また、高度な技術が求められることから、熱分解処理はまだ、実業レベルではほ
とんど行われておらず、政府の正規化・大規模化の政策によって、新規で計画する場合は最
低でも年間 20,000 トンの処理能力が必要とされ、熱分解処理事業への参入条件が高くなって
いる。
2.1.2
中国国内における廃タイヤの発生量・再利用率等の統計データ
上述の JICA プロジェクトでは、
対象廃棄物の1つとして廃タイヤを対象に挙げている。
2011
年度の報告書において、中国社会科学院数量経済・技術経済研究所が中国における廃タイヤ
の発生からリサイクルまでのマテリアルフローを算出しており(計算の詳細は JICA 報告書を
参照)
、その結果をまとめると以下のとおりとなっている。
輸出
0.12万トン(00%)
輸入
0.1万トン(00%)
リユース(リトレッド)
57.6万トン(15%)
交換時排出
356.8万トン(91%)
使用済タイヤ総量
391.2万トン(100%)
約1400万本
廃車時排出
34.2万トン(9%)
マテリアル利用(建材他)
23.5万トン(6%)
リサイクル
292.1万トン(75%)
最終処分・流通在庫
41.4万トン(10%)
図 2-2
マテリアル利用(再生ゴム/ゴム粉)
195.0万トン(50%)
エネルギー利用(熱分解燃料油)
11.1万トン(3%)
エネルギー利用(土法煉油)
62.5万トン(16%)
2010 年の中国における廃タイヤのマテリアルフロー
データ出所:「JICA 中国都市廃棄物循環利用推進プロジェクト『廃タイヤ循環利用政策研究報告書
2011/2012』
、中国社会科学院数量経済・技術経済研究所」のデータを基に作成
中国では、年間約 391 万トンの使用済みタイヤが発生しており、そのうちの約 15%はリト
6
レッドタイヤとしてリユースされ、残りの約 50%は再生ゴムやゴム粉としてマテリアル利用
されている。熱分解処理は全体の約3%に留まっている一方で、違法な燃料精製(土法煉油)
は依然、16%も存在するという推計結果となっている。
また、以下に記載した中国統計年鑑の乗用車とトラックの台数割合及び、タイヤ総量を用
いて、種類別の廃タイヤの発生量を算出すると以下のとおりとなる。
表 2-1
中国における乗用車とトラックの台数・割合(2010 年)
全国
乗用車
トラック
合計
台数
6,124.13 万台
1,677.69 万台
7,801.83 万台
割合
78.50%
21.50%
100%
149.8kg
187.0kg
車両一台当たりのタイヤ総量
注:1.表中のデータは中国統計年鑑を引用
2.データ統計の差を考慮し、農業用輸送車、トレーラー、その他の車種は全てトラックに分類した。
3.乗用車とトラックの車両 1 台当たりのタイヤ総量は JICA 報告書を引用した。
表 2-2
中国の廃タイヤの種類別内訳
項目
数値
廃タイヤの発生量合計
391.2 万トン/年
うち乗用車タイヤの発生量
うちトラックタイヤの発生量
291.4 万トン/年
99.6 万トン/年
JICA 報告書の推計結果(図 2-2)によると、中国で発生した廃タイヤの主なものは使用限
界に達したタイヤで、約 91%を占めており、これは日本および EU の状況とほぼ同じであると
のことである。
2.1.3
廃タイヤの輸出入に関する関係法令、量や特徴等のトレンド
(1)廃タイヤの輸出入に関する関連法令 1
2002 年以降、物価改革、原油価格の上昇、および廃タイヤ発生量の激増に伴い、各地で旧
式の廃タイヤ燃料抽出事件が大量発生した。旧式の燃料抽出業者と、再生ゴム・ゴム粉生産
企業やタイヤ更生企業との間で廃タイヤ資源の争奪戦が起こり、業界はゴム廃材や端材等の
名目で廃タイヤを大量輸入するようになった。これに加えてその他の固体廃棄物も中国に大
量輸入されるようになったため、新聞メディアなどでは「洋ゴミ」汚染の問題を盛んに報道
するようになり、社会的に大きな反響が巻き起こった。そのため、2007 年、商務部・海関総
署・環境保護総局は合同で 27 号公告を公布し、ゴム廃材・端材およびその粉・粉粒の輸入・
利用・加工の禁止を明確に規定し、
「禁止輸入固体廃棄物リスト」において、これらの商品コ
ードを 4004000090 とした。これにより、2007 年4月 26 日以降、中国では廃タイヤを含む全
ての廃ゴムが原則、輸入禁止になっている。
1
JICA 報告書 15 ページ
7
(2)廃タイヤの輸出入の量及び特徴等のトレンド
しかし一方では一部、例外的に、タイヤのリトレッドを行っている会社に対し、リトレッ
ドを行う際、台タイヤとなる中古タイヤの輸入を許可しており、2009~2010 年の中国の廃タ
イヤ輸出入量は下表に示すとおりである。
表 2-3
2009 年-月
2009-1
2009-2
2009-3
2009-4
2009-5
2009-6
2009-7
2009-8
2009-9
2009-10
2009-11
2009-12
累計
2009~2010 年の廃タイヤ輸出入状況
輸入
29.21
28.48
1.37
2.59
3.24
2.13
1.30
3.17
4.97
5.64
4.42
4.30
90.81
輸出
97.85
38.75
0.37
4.37
9.49
7.02
3.91
6.57
22.56
17.54
14.34
14.25
237.01
2010 年-月
2010-1
2010-2
2010-3
2010-4
2010-5
2010-6
2010-7
2010-8
2010-9
2010-10
2010-11
2010-12
累計
輸入
2.22
2.88
0.85
0.60
1.44
5.16
2.60
2.79
2.30
4.98
4.79
5.90
36.51
輸出
2.50
0.29
0.00
2.56
9.55
2.56
0.78
4.32
24.38
17.40
12.02
4.28
80.65
注:統計は自動車用の中古空気入りタイヤ
単位:千本
データ出所:中国石油・化学工業協会、
「JICA 中国都市廃棄物循環利用推進プロジェクト『廃タイヤ
循環利用政策研究報告書 2011/2012』
、中国社会科学院数量経済・技術経済研究所」
JICA報告書 2によると、輸入中古タイヤは主に大型車両用タイヤの更生用に用いられ、輸出
タイヤは主に燃料に用いられる。中国の自動車保有台数に基づき概算すると、大型車両用タ
イヤと小型車両用タイヤの比率は2:8であり、大型車両タイヤは1本 45kg、小型車両用タイ
ヤは 1 本 7.4kgとして計算すると、2009 年および 2010 年に中国の輸出入で発生した廃タイヤ
の量はそれぞれ 600 トンおよび 659 トンの純減少である。
(3)最近の動向
最近の動きとして、2012 年 11 月に開催されたタイヤ更生・循環利用協会 2012 年代表大会
での発表によれば、協会は廃タイヤ輸入の解禁を推進するため、2011 年 11 月 16 日、環境保
護部が主催した試験的に廃タイヤ輸入に関する座談会を参加し、専門的な意見を述べている。
また、2012 年8月 14 日の座談会で環境保護部より協会が任命され、
「輸入廃タイヤ環境保護
管理規定」
(試行)などの公文の改定にも参加しており、2012 年9月 28 日、国家発展改革委
員会と環境保護部が共同で開催した専門会議においても、より深く廃タイヤ輸入について研
究を行っている、とのことであった。
また、中国における廃タイヤ研究の第一人者である、青島科技大学ゴム原料工程学院院長
の紀奎江教授の話によれば、廃タイヤの輸入は国家科技部と国家発展改革委員会の反応が良
くなってきたため、近いうちに段階的に解禁される可能性がある。解禁した場合、モデルと
して何カ所かを認定し、量的には恐らく数万トンレベル以上で、多ければ十数万トンになる
可能性も考えられるとのことであった。
2
JICA 報告書4ページ
8
2.1.4
政府(行政担当機関)の現実の取組及び課題の実態
本項では主に対象地域である大連市政府の廃タイヤの回収・循環利用に関する取組と課題
の実態について概括する。
(1)大連市における廃タイヤの回収・循環利用に関する取組
1)大連市循環経済促進条例
2010 年 6 月に大連市人民代表大会を通過し、7月に遼寧省人民代表大会で批准され、10 月
1日に施行された「大連市循環経済促進条例」第 27 条の第2項では、リサイクル産業につい
て以下のように言及している。
「新設の廃電気電子製品、廃自動車、廃タイヤ、廃鉛電池等の特定の製品の解体利用プロジ
ェクトは、大連市人民政府の関係部門が規定するエリア内(=大連国家生態工業モデル園区)
で建設し、そのエリアの建設と管理は関連規定に符合したものでなければならない」と静脈
産業のエコタウンへの新規・拡張事業の集約化が謳われており、対象品目の1つとして、廃
タイヤが挙げられている。
2)大連市政府文書(大政発[2011]23 号)
2011 年3月1日に発表された「大連国家生態工業モデル園区(静脈産業類)の開発建設へ
の支持に関わる若干意見(大政発[2011]23 号)
」では、
「2011 年3月1日より大連市再生資源
利用に関する産業集中配置リストに載っている新規、拡張プロジェクトは必ず生態工業モデ
ル園区に入居する。既存の再生資源利用企業は3年以内に計画的に生態工業モデル園区に移
転する」とし、配置リストには、廃金属、廃電気機器、廃機械、廃自動車、廃バッテリー、
廃プラ、古紙、廃木材、廃油、一般固体廃棄物・危険廃棄物等、11 事業分野が明記されてお
り、廃タイヤもその1つの事業分野に含まれている。
3)
「大連市再生資源回収体系の建設に関わる大連市人民政府官房庁の実施意見」
2011 年 11 月に「大連市再生資源回収システムの建設に関わる大連市人民政府官房庁の実施
意見」
(大政弁発[2011]124 号)
」という文書が発表された。
この文書では総体目標として、住宅団地に規範化された回収拠点を設置し、専門的な回収
及び集中配送センターを活用して、最終的に静脈産業園区に運送し、解体及び加工の作業を
行うこととし、下図のような体系で再生資源原料を回収する計画を打ち出した。さらに、副
市長を長とし、関係する 11 部署等の 30 名から構成される大連市再生資源回収体系建設リー
ダーグループという組織の設置を発表している。また、この文書では、サービス業委員会が
中心となって「大連市再生資源回収体系建設計画」を作成し、具体的な措置については政府
補助を行いながら実施することを定めている。
9
図 2-3
大連市の再生資源回収体系のイメージ
4)
「大連市再生資源回収体系建設実施方案」
2012 年1月、上述の大連市再生資源回収体系建設リーダーグループによる最初の文書とし
て、
「大連市再生資源回収体系建設実施方案印刷発行に関する通知([2012]1号)」が発表さ
れた。この文書では、124 号文書で掲げられた再生資源の回収体系建設について、具体的な方
針を打ち出している。そのなかで、回収ステーション、集積配送センター、集積市場、自動
車リサイクルセンター、再生資源情報サービスシステムの5つの建設基準を定め、また、実
施段階として、2012 年1月から3月までの部署動員段階、3月から 2015 年3月までの実施段
階、2015 年3月から6月までの検収段階と3つの段階による実施を計画している。
5)
「大連市再生資源回収体系建設計画」(未発表)
2011 年の大政弁発[2011]124 号文書で言及のあった「大連市再生資源回収体系建設計画」
はサービス業委員会が中心となって策定が進められており、2013 年当初の発表予定で、今後、
品目ごとの回収システムの詳細検討を踏まえて、2013 年中に「大連市再生資源回収管理条例
(仮称)」が整備される予定となっている。
(2)廃タイヤの回収・循環利用に関する課題
以上がこれまでの大連市政府による廃タイヤに関する取組であり、中国の大都市のなかで
もこれほど再生資源の回収・循環利用について政策を数多く打ち出している都市は他に見ら
れない。しかし、あえて廃タイヤの回収に関する課題について指摘すると、2012 年5月 15 日
に「大連市再生資源回収体系建設計画」の策定の中心となっている大連市サービス業委員会
生産資料流通処を訪問した際、孫志超処長から伺った話では、その時点では、廃タイヤの回
収は上述の住宅団地内の回収拠点からの回収を想定しており、廃タイヤだけを回収するのは
不採算であるため、タイヤ回収企業を決める入札の際には、廃棄物を総合的に回収する企業
を落札するとの方針とのことであった。本事業化可能性調査で得た情報として、大連市では
住宅地ではなく、主にタイヤ販売店や新車販売店から廃タイヤが排出されている現状を報告
した。その上で、それら数百か所を専門に回って廃タイヤを回収する回収業者の正規化を訴
10
えたところ、その提案が「大連市再生資源回収体系建設計画」に反映されたと聞いている。
しかし、本事業としては、回収業者の正規化だけだ不十分であると認識しており、果たし
て、回収業者が市場原理によって大連エコタウンよりも高く廃タイヤを購入する地域に販売
することをどのようにして阻止し、どのように強制的に大連エコタウンへ運ばせるのか、そ
の具体策が依然、不透明であることが課題である。
2.2 処理の現状
2.2.1
現地の既存企業の状況(リサイクル企業、排出事業者)、インフォーマルセクタ
ーの動向
中国における廃タイヤに関わっている既存企業の状況として、(1)回収業者、(2)処理業者、
(3)業界団体、(4)インフォーマルセクターについて、以下に概括する。(2)の処理業者に関し
ては、再生ゴム生産、タイヤ更生(リトレッド)
、ゴム粉生産、熱分解処理業者についてそれ
ぞれまとめた。
(1)回収業者
中国には、地域ごとに廃タイヤの集積地があり、代表的な地域として、河北省曲周、唐山、
滄州、山東省慶雲、鄒平、山西省汾陽などがある。
山東省濱州市鄒平県の廃タイヤ集散地
山東省濱州市は天津市と青島市のちょうど中間に位置し、沿岸都市間の幹線輸送のルートと
なっているため、非常に交通量の多い地域である。
図 2-4
濱州市の地理的位置関係
11
概要


鄒平県は廃タイヤの集散地で全国各地から集められており、遠くは上海から運ばれてく
る。鄒平県には約 100 軒程度の個人回収業者があり、合わせた取扱量は約 1,500 トン/日
(年間約 50 万トン)にもなる。
鄒平県では、廃タイヤの取引が行われているが、廃タイヤを処理する施設は存在しない。
集められたトラックタイヤ
裁断されたタイヤ片
回収業者1
搬入される廃タイヤ
回収業者2
回収業者3
12
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