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工事技術調査報告書(PDF:183KB)

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工事技術調査報告書(PDF:183KB)
ma
足 立 区
平成27年度工事監査
工 事 技 術 調 査 結 果 報 告 書
平成28年1月25日
受託者名 公益社団法人 大阪技術振興協会
調査員氏名 技術士(建設部門・総合技術監理部門)
一級建築士 構造設計一級建築士
一級建築施工管理技士
新谷 晃崇
調 査 実 施 日: 平成28年1月7日(木)
調 査 場 所: 当該工事現場及び足立区役所 南館 6 階監査室
調査対象機関: 都市建設部建築室長付住宅課
資産管理部営繕管理課
監査執行者
調査立会者
監査委員事務局
調査対象工事
代表監査委員
監査委員
加納 將史
荒井 喜一郎
かねだ 正
いいくら 昭二
事務局長
紙谷 衛
監査担当係長
齊藤 悟
(仮称)区営中央本町四丁目第2アパートその他改築工事
・区営中央本町四丁目第2アパート解体工事
・(仮称)区営中央本町四丁目第2アパートその他改築工事
・(仮称)区営中央本町四丁目第2アパートその他改築空調設備工事
・(仮称)区営中央本町四丁目第2アパートその他改築給排水衛生設備工
事
・(仮称)区営中央本町四丁目第2アパートその他改築電気設備工事
・(仮称)区営中央本町四丁目第2アパートその他改築昇降機工事
目 次
1. 工 事 監 査 出 席 者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P3
(1)技術調査出席者
(2)現場調査
2. 工 事 概 要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P5
3. 書 類 調 査 における所 見 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P7
3−1.設 計 図 書 に関 する所 見
3−2.積 算 について
3−3.契 約 について
3−4.施 工 管 理 に関 する書 類 について
3−5.品 質 管 理 について
4. 現 場 施 工 状 況 調 査 における所 見 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P13
4−1.現 場 施 工 状 況 について
5. まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P15
2
(仮称)区営中央本町四丁目第2アパートその他改築工事
1. 工事監査出席者
監査委員
代表監査委員
監査委員
加納 將史
荒井 喜一郎
かねだ 正
いいくら 昭二
(1)技術調査出席者
技術士
新谷 晃崇
担当課区役所職員
①都市建設部建築室長付住宅課 住宅課長
真鍋 兼
②同
住宅更新担当係長
鴨居 正雄
③都市建設部建築室長付住宅更新担当課 住宅更新担当課長
石井 高雄
④資産管理部営繕管理課
営繕管理課長 淺見 壽和
⑤同
管理係長
大野 民枝
⑥同
技術調整担当係長
池田 雅行
⑦同
技術調整担当係長
山下 敬毅
⑧同
技術調整担当係長
井川 雅行
⑨同
建築第一係長 角田 修次
⑩同
建築第一係主任主事
尾崎 賢裕
⑪同
建築第二係長 金子 俊之
⑫同
機械設備係長 岡部 康則
⑬同
機械設備係主任主事
大野 直樹
⑭同
電気設備係長 石井 由介
⑮同
電気設備係主任主事
小原 靖隆
⑯同
電気設備係主任主事
関塚 亜希
監査事務局
①事務局長
紙谷 衛
②監査担当係長
齊藤 悟
3
(2)現場調査
技術士
新谷 晃崇
担当課区役所職員
①都市建設部建築室長付住宅課 住宅課長
真鍋 兼
②同
住宅更新担当係長
鴨居 正雄
③都市建設部建築室長付住宅更新担当課 住宅更新担当課長
石井 高雄
④資産管理部営繕管理課
営繕管理課長 淺見 壽和
⑤同
管理係長
大野 民枝
⑥同
技術調整担当係長
池田 雅行
⑦同
技術調整担当係長
山下 敬毅
⑧同
技術調整担当係長
井川 雅行
⑨同
建築第一係長 角田 修次
⑩同
建築第一係主任主事
尾崎 賢裕
⑪同
建築第二係長 金子 俊之
⑫同
機械設備係長 岡部 康則
⑬同
機械設備係主任主事
大野 直樹
⑭同
電気設備係長 石井 由介
⑮同
電気設備係主任主事
小原 靖隆
⑯同
電気設備係主任主事
関塚 亜希
監査事務局
①事務局長
紙谷 衛
②監査担当係長
齊藤 悟
工事監理者 株式会社 桂設計
中山(総括・建築担当)
宮城島、金森(構造担当)
君塚(電気担当)
福士(機械設備担当)
工事施工者・現場代理人他
建築工事 三浦・田中・竹内建設共同企業体
現場代理人 平塚 祐次
薄井、乙黒、小西
空調設備工事 オールワン・東洋設備建設共同企業体
4
現場代理人 高木 貢
給排水衛生設備工事 拓進・東京セントラル建設共同企業体
現場代理人 菅原 博和
宮田
電気設備工事 栗駒・馬場・ティーエムディー建設共同企業体
現場代理人 西山 英孝
友田
昇降機工事 東芝エレベータ㈱東京支社
現場代理人 本田 賢一
早川、佐々木
2.工事概要
足立区は、江戸時代に千住宿(現在の北千住付近)として栄えた地域などを含む東京
都北東部の人口約 67 万人を擁する特別区 23 区の一つである。北側は埼玉県草加市や
川口市であり、隣接の北区、葛飾区や墨田区などとともに東京都内では住宅地域として、
また準工業地域としても存在感がある。都市化の進行のもと、賃貸住宅入居者に対する
公営住宅の役割は大きく、今後の高齢化に伴う単身者用賃貸住宅の需要増が予測され
ている。
足立区では「足立区区営住宅等長寿命化計画」を策定し、建物の安全性、居住性、高
齢者対応の必要がある住棟を「建替、用途廃止予定」とし、敷地の高度利用も考慮して、
比較的管理効率が悪い「管理戸数 20 戸未満」の団地について「集約型建替」を実施する
こととしている。
既設の中央本町四丁目第2アパートは、耐震上問題があり、居住継続したままでの耐
震工事が困難な団地であった。また昇降設備もなく、高齢化対応も不十分なものであっ
た。
今回の工事は既存 14 団地 535 戸のうち、「中央本町四丁目第2アパート」(鉄筋コンクリ
ート造 5 階建て 2 棟(共同住宅 53 戸、栗島住区センター等))を解体し、この敷地で既存
の関原三丁目アパート、六月二丁目第3アパート及び大谷田二丁目第2アパートを集約
することで敷地の高度利用を図り、栗島住区センターだけでなく、足立福祉事務所を合築
した複合施設を建設するものである。
1)工事場所
足立区中央本町四丁目438番地1(住居表示中央本町四丁目5番)
2)監査対象工事概要
〈解体工事〉
鉄筋コンクリート造5階建て 1号棟、3号棟の解体(共同住宅 53 戸、栗島住区センター
等)
〈建設工事〉
共同住宅 120 戸、住区センター、福祉事務所を有する複合施設
敷地面積:
4,731.74 ㎡
5
構
造 : 鉄筋コンクリート 地上 11 階建て
建築面積 :
1,806.18 m2
延床面積 :
9,813.25 m2
最高高さ :
32.85m
①解 体 工 事 :鉄筋コンクリート造5階建て 1号棟、3号棟の解体
共同住宅 53 戸 栗島住区センター等
② 改 築 工 事 :鉄筋コンクリート造 地上 11 階建て
外 部 仕 上: 屋根・・・屋上部改質アスファルトシート断熱露出防水、庇、バルコニ
ー部塗膜防水
外装・・・複層塗材、ステンレス製建具アルミ製建具他
屋外施設工事: 自転車置場、バイク置場鉄骨平屋建て
屋外共同住宅ゴミ置場鉄筋コンクリート造平屋建て
③空調設備工事: 電気式空冷ヒートポンプエアコン、全熱交換設備、換気扇
上記のための冷媒、加湿配管、ダクト、ダンパー、自動制御工事
一式
④給排水衛生設備工事:衛生器具設備工事、給水設備工事、排水設備工事
給湯設備工事、消火設備工事
⑤電気設備工事:電灯、動力、避雷、受変電、通信、監視、配線器具等の取り付け
テレビ共同受信設備、火災報知設備工事(複合受信機 P型1級)
⑥昇降機工事 :(住宅部分) 機械室レスタイプ 2 基 各定員 9 名 積載重量 600kg
停止階 11 箇所、可変電圧可変周波数制御
(福祉事務所部分) 機械室レスタイプ1基 定員11名
積載重量 750kg 停止階3箇所、可変電圧可変周波数制御
3)工事請負業者 (足立区内に営業所を設置し、実績をも考慮した有資格業者の中から条
件つき一般競争入札)
①解体工事:株式会社関口興業(4者参加、3 回目で落札)
予定価格 112,320,000 円 請負金額 101,088,000 円(請負率 90.00%)
変更後請負金額 108,162,000 円
(第 1 回:インフレスライド、第 2 回:土壌汚染対策、家屋調査対象件数増)
②改築工事:三浦・田中・竹内建設共同企業体(2 者参加、1 回目で落札)
予定価格 3,246,717,600 円 請負金額 3,246,480,000 円(請負率 99.99%)
変更後請負金額 3,365,776,800 円
(第 1 回:地中障害物撤去処分、第 2 回:インフレスライド)
③空調設備工事:オールワン・東洋設備建設共同企業体(5 者参加、1回目で落札)
予定価格 183,718,800 円 請負金額 182,520,000 円(請負率 99.35%)
④給排水衛生設備工事:拓進・東京セントラル建設共同企業体(5 者参加、1回目で落
札)
予定価格 251,488,800 円 請負金額 251,316,000 円(請負率 99.93%)
変更後請負金額 241,844,400 円
(住戸内便器仕様(洗浄型便座)変更取りやめ)
6
⑤電気設備工事:栗駒・馬場・ティーエムディー建設共同企業体(4者参加、1回目で落
札)
予定価格 340,092,000 円 請負金額 339,660,000 円(請負率 99.87%)
変更後請負金額 337,456,800 円
(第 1 回:一部設備(ナースコール)変更取りやめ、第 2 回:インフレスライド)
⑥昇降機工事:東芝エレベータ㈱東京支社(8者参加、1回目で落札)
予定価格 55,836,000 円 請負金額 50,810,760 円(請負率 91.00%)
4)設計業務受託業者
株式会社桂設計(11 者参加、1 回目で落札)
(監理も委託)
5)財源内訳
単 費(地方債 1,712,048千円、一般財源 1,405,261千円)
その他(国庫支出金 642,555千円、都支出金 526,707千円)
請負金額
4,286,570,760円
6)工事期間 ①:平成 26 年 1 月 16 日∼平成 26 年 6 月 30 日
②:平成 26 年 6 月 20 日∼平成 28 年 6 月 30 日
③④⑤:平成 26 年 10 月 1 日∼平成 28 年 6 月 30 日
⑥:平成 26 年 11 月 13 日∼平成 28 年 6 月 30 日
7)工事進捗状況 ①100% ②71%(計画 74.48%) ③39% ④48%(計画 56%) ⑤39%(計画 52%)
⑥30% ②改築工事は地中障害物撤去のための遅れ発生。④給排水衛
生設備工事、⑤電気設備工事の遅れは改築工事に伴うもの
8)工事監督職員
①②
:営繕管理課建築第一係
主任主事
尾崎 賢裕
③④
:営繕管理課機械設備係
主任主事
大野 直樹
⑤
:営繕管理課電気設備係
主任主事
関塚 亜希
⑥
:営繕管理課電気設備係
主任主事
小原 靖隆
3.書類調査における所見
3−1.設計図書に関する所見
建築計画、安全と健康に対する設計上の配慮などに関して、足立区監督員にいくつかの確
認をした。
1)計画全般に関する想定
居住対象者、工程計画、耐震設計、LCC など全般計画について質問した。
① 既存の公営住宅を順次改良していく中で、入居者の収入に対する家賃の想定およ
び、面積、住設機器などから区営住宅全般のこれまでの改築工事の実施状況の説
明を受けた。足立区区営住宅長寿命化計画及び足立区公共施設等整備基準の策
定について説明を聞き、改築計画は民間の賃貸住宅と比較しても過大でないと判断
した。
② 杭基礎工法の設計方針について質問したところ、敷地全体で 3 箇所のボーリング調
査を行い、GL−37m付近のN値 50 以上の細砂層を支持層としている。中間にも厚
さ 3m程度のN値 50 程度の層があるが、これを貫通して、下部の深い層を支持層とし
7
ている。杭について、現場造成杭ではなく、既製杭とした理由を質問したところ、コス
トを考慮したもので、杭の施工については、試験杭を始めに施工し、監理者が体制を
確認する計画としていた。杭の設計計画については問題ないと判断する。
③ 耐震設計の考え方について、庁舎機能を含む北棟は用途係数 1.25、区営住宅のみ
の南棟は 1.0 としている。一般的な公共施設の事例と比較しても計画について問題
ないと判断した。
④ イニシャルコスト・ランニングコスト・LCC に関しての考え方について、外部委員を含
むVE委員会により、基本設計の検討が為され、それを採用するか否かを区役所内
で再検討していた。住宅棟の用途係数を当初の 1.25 から 1.0 としたのはこれによって
いるとのことであった。また、イニシャルコストが下がっても、長期的に維持保全費用
が多額となるものは不採用としていた。公共のストックの考え方として優良であると判
断する。
2) シックハウス対策について
シックハウス対策について、仕上げ表及び認定番号一覧に記載されている。現実にどの
ような対策を計画したか設計上及び施工上の対応策を質問した。
① 材料はホルムアルデヒドの放散量が最も少ない建材であるF☆☆☆☆を採用するよう
仕上表に明記し、材料安全シートやカタログで確認していた。
② 各タイプの部屋を網羅できるように設定した合計 31 ヶ所でVOC(トルエン、キシレン、
パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、ホルムアルデヒド)をアクティブ型
測定方式により計測することが予定されていて、判定基準は東京都建築工事標準仕
様書が定める数値以下としていた。
③ 塗料や接着剤等、VOCを発散する材料の保管場所をどこにするのか質問したところ、
その日に使用する数量のみを持ち込むことにしており、工事中の換気や最終クリーニ
ングでも VOC 対策を配慮した計画であるということであった。
④ 当該工事でのシックハウス対策として適切な対応と判断した。
3) 利用効率、LCC、設備計画について
① 本区営住宅では住宅部分の年間の維持費は、使用料、利用者負担金で賄えている
とのことであった。建物全体の維持費用が多いのは、複合施設部分によるものであり、
維持保全費用については別途予算化しているとのことである。今後は都市部で核家
族化が進み、高齢化に伴い単身の高齢者が増加する傾向を予測して、1DK:41 戸、
2DK:53 戸、3DK:26 戸の計 120 戸を計画している。都営住宅では全住戸の 50%が
1DK という例もあるということである。
② 長寿命化計画に従い、建物の寿命を 80 年とし、構造体は 100 年の寿命を設定して
いる。足立区では 13 団地 480 戸の区営住宅があるので、順番に維持保全を行って
いるとのことである。
③ 給排水設備において、加圧ポンプによる給水として、高架水槽を使用しない結果、
水槽の点検維持費が不要になることでランニングコストが節減できるということであっ
た。しかし、停電時の給水は別途考慮しなければならないということであった。
受水量の目安として、住戸 1DK:1.5 人、2DK:2.5 人、3DK:4 人合計 298 人として最大
使用量 318ℓ/min として算定していた。必要十分な容量と判断する。
8
④ 受電容量は、事務所棟では屋外キュービクルで高圧(6600V)受電により 400KVA、
住宅棟は南棟 1 階に東電借室を設け高圧(6600V)受電により 350KVA としている。幹
線容量も問題ないと思われる。事務所棟約 3,570 ㎡に対し 112VA/㎡、共同住宅部
分約 6,240 ㎡に対し 56VA/㎡となっていた。必要十分と判断する。
以上より、利用効率、LCC、設備計画について、よく検討計画されていると判断した。
3−2.積算について
① 数量積算は、設計者の株式会社桂設計に委託していた。設計事務所が作成した調
書を区担当者が全工事において最終確認している。値入れも同様である。
② 「単価」、「歩掛」については、「東京都標準単価」を基本とし、「公共建築積算基準」
に準拠して積算としている。東京都では「RIBC(Research Institute on Building Cost)
により、実勢による単価を改訂して積算をしているということであった。
③ 上記基準に記載のない項目については複数の専門業者から見積を徴収し、最も安
価となる単価を採用している。
④ 積算書の内容の照査は担当者が東京都財務局積算基準に基づき照査を行ってい
た。建築工事で一般的に使われる延べ面積に対する単位面積当たりの工事費を質
問したところ、公共工事では最近の経済情勢により 40 万円/㎡を上回ってきていると
いうことであった。当工事では約 436,800 円/㎡であった。
⑤ 積算は適切に行なわれたと判断した。
3−3.契約について
① 入札参加業者の見積期間は、足立区では 5 千万円以上 1 億 8 千万円未満の案件で
は最低 10 日間、1 億 8 千万円以上の案件では最低 15 日間(土日祝日等除く)を見
積期間としているが、今回工事では設計委託、解体工事、昇降機工事が 12 日間、改
築工事、空調設備工事、給排水衛生設備工事、電気設備工事が 17 日間で、規定通
りであった。
② 質疑は設計委託で 3 件、改築工事で 2 件、昇降機工事で 1 件あり、他は提出されて
いなかったので、理由を質問したところ、足立区で同様の工事を何度か受注している
業者が多く、入札参加業者が質問する事項は特になかったためということであった。
③ 解体工事のみ最低制限価格以下となったため、入札が 3 回となったが、他は最低制
限価格割れのため再入札ということはなかった。足立区には解体工事業者が多く、競
争が厳しいという事情があるという。
④ 「工事カルテ」は CORINS(工事実績情報システム)に提出されていた。
⑤ 現場代理人、監理技術者は専任で、「監理技術者資格者」等の資格の保持者で、所
定の要求事項を満足する者が選定されていた。
⑥ 前払金保証、履行の保証ともに所定の手続がされていた。
⑦ 建設業退職金共済制度による証紙の購入の領収書も整備されていた。
契約について、適正に行われたと判断した。
3−4.施工管理に関する書類について
9
① 共通仕様書は原則として建築、電気設備、機械設備とも平成 23 年版「東京都標準仕
様書」を適用しており、そのほか種々の規基準も特記仕様書に明示されていた。
② 「施工計画書」は必要な費目について作成・提出、承諾の手順が当初から指示され
ていた。
③ それらの施工計画書の承認手続きは、監理者及び監督員により適切になされてい
た。
④ 使用材料の品質・性能は、材料承認時にカタログ等により確認し、現場搬入時には
品番、規格等を照合していた。
⑤ 実施工程表は、「ネットワーク手法」で表現されていた。「クリティカルパス(一連の工
事の経路の中で、その経路に遅れが生じると全体の工事が遅れることになる経路)」
は、躯体工事であると把握しており、実施工程でも確認していた。予定日と実施日の
ズレの表現も日数にて表記されていた。
また、 「作図・製作工程」は、施工図は作業の 3 週間前、製作物は概ね 2 か月前とし
ており、事前承諾が適正に行われていた。
⑥ 「特定建設作業(騒音・振動)」の届けは出されていた。
⑦ 工事記録写真はよく整備されていた。
⑧ 「建設副産物」の「運搬収集・中間処理・最終処分」の契約は適切に契約され、マニフェス
トの使用も適切に行なわれていることを、監督員が確認していた。
⑨ 定例打合せ会は毎週火曜日午後、足立区監督員、担当監理者、各工事請負業者の
参加のもとに開催されている。記録は議事録として残されていた。
3−5.品質管理について
工事に関する品質管理の状況を検分した。検分した工事項目とその結果を以下に記す。
1)仮設工事について
① 総合仮設計画図が作成され、適切であることを監理者、監督員が確認している。
② 労働安全衛生法 88 条 2 項、4項の届け出は所定の期限までに足立労働基準監督署
に提出されていた。
2)土工事について
土壌調査を行った結果、鉛が基準値より微量多く検出されたので除去工事を行っている。
履歴を調査したところ、過去にカメラ工場が操業していた形跡がある。操業当時の有害物
質取扱状況は確認できないが、可能性があると考えられる。
3)地業工事について
① 杭工事において、支持層の確認方法について質問した。既製杭の埋め込み工法で
あり、支持層のサンプルをとることが難しく、深さとオーガの回転時の抵抗により発生
する電流値から判断せねばならないためである。当工事では、支持層の深さはほぼ
平坦であり、杭の掘削深さは一定の GL-37m であること、電流計の確認を全数施工
担当者が行っており、監理者による報告書確認も全数なされていた。
② 杭先端の根固め工法について、使用セメント量と設計上必要セメント量について質
問したところ、セメント使用量が必要量を上回っており、納品書も整理されていた。
③ 個別の杭の材料、施工確認記録写真も全数揃っていた。
10
④ 杭の偏芯、レベルなどの誤差の記録も残っており、地中障害により1本だけ偏芯量が
基準より大きいものがあったが、所定の処置がなされていた。
⑤ 杭工事は適正であると判断した。
4)鉄筋の品質管理について
① 配筋検査の検査記録及び記録写真は揃っていた。監督員の是正指摘事項及び是
正確認記録も管理されていた。
② 鉄筋材料の納品書、ミルシートは揃っていた。
③ 収縮ひび割れ対策には躯体に目地を適宜設け、開口補強筋は適切に配筋され、監
理者の立会記録・写真が整備されていた。
④ 監理者及び監督員は検査記録表を確認の上、配筋の検査立会いを行っていた。
⑤ 鉄筋工事は適切であったと判断した。
5)コンクリートの品質管理について
① 生コンプラントは、植木生コン㈱、関東コンクリート㈱東京工場、横山産業㈱川口第
一工場、豊川興業㈱の四社であり、JIS規格表示工場の、(適)工場であった。
② 運搬所要時間は、上記プラント順にそれぞれ 20 分、35 分、30 分、30 分であり、問題
はない。
③ 骨材産地は細骨材、粗骨材とも、栃木県または茨城県産の陸砂、砕砂、砕石を使用
しており、海砂は使用していない。アルカリ骨材反応及び塩分量は無害であることが
確認されていた。
④ 単位水量は、JASS5 規定の 185kg/㎥以下であった。
⑤ 荷卸し地点での検査は、スランプ、フロー値、空気量、塩化物濃度、コンクリート温度、
について確認し、記録の保管、写真整理とも良好であった。
⑥ 圧縮強度試験成績書による確認が適正に行われ、一覧表による記録も整備されてい
た。
⑦ 型枠取り外し後の確認や補修についても適正に確認されていた。
⑧ コンクリート工事は適切に行われており、特に問題はなかったと判断した。
6)防水について
① 屋上防水について、特にドレイン周りの水張り試験について質問した。一般に平坦な
部分からの漏水はあまりなく、ドレイン周りの防水層接着部からの漏水や、パラペット
立ち上がり最上端からの漏水の事例が多くみられるためである。広い屋上であるが、
ドレイン周囲に水を張り、樋にゴムまりを詰めるなどの方法で漏水がないことを確認す
ることを依頼した。
② 施工のし難い部位もないとのことであり、保証期間の確認もされていた。
③ 今から施工を行うとのことであり、部位別の施工数量及び必要材量数量、現場搬入
数量及び使用数量などが確認できる書類・写真を整備していく予定とのことである。
7)木工事
① 木材の規格は、搬入時及び出荷証明で施工者が確認している。
② 床コンクリートに接する面はなく、接着剤は F☆☆☆☆品の使用が確認記録されて
いた。
③ 木工事の施工管理に問題はないと判断した。
11
8)屋根及び樋工事
樋工事では、縦樋の塩化ビニル製パイプがあるが、外構工事での最終接続を確認して、
稀に発生する桝へのつなぎ忘れがないことを確認されることを依頼した。
9)金属工事
天井下地 LGS のふところ高さについて質問したが、標準仕様書により水平方向の振れ止
め補強が必要な 1.5m 以上の個所はなかった。
10)建具工事について
① アルミ製建具の耐風圧性、気密性、水密性は、建具性能表を仕様書と照合して確認
していた。
② 1階防災倉庫に重量シャッターがあるが、常時閉鎖のものであり、はさまれ事故が問
題となることはないということであった。
③ 建具工事は問題なく管理されていると判断した。
11)塗装工事について
① 表面仕上げ用塗料は、VOC放散量の小さい F☆☆☆☆を選定することにしている。
② 塗料置場は1階部分に材料保管部屋を設定して施工に必要な数量をその都度搬入
しているとのことであった。
③ 塗装下地の確認方法は施工計画書において計画しているが、段階確認を予定して
いるとのことであった。
④ 塗料の膜厚について、空缶の確認など材料の使用記録を整備していた。塗り回数の
写真記録も、塗り色を変えるなどの対応をしていた。
⑤ 塗装工事について、問題はないと判断した。
12)内装・雑工事について
① 内装材、接着剤にはVOC放散量の小さい F☆☆☆☆を選定することにしている。材
料についてもカタログ及び商品表示等で確認している。
② 内装材、接着剤にはアスベストを含有しない材料が選定されており、データシート、
品質証明書等により確認されていた。
③ 階段や水回り床材で、防滑性を確認したうえで材料選定がおこなわれていた。
④ 1DK タイプの住戸は将来高齢者向け住宅となることが予想されるので、電気錠やナ
ースコールが設置可能な配管をしているとのことである。手摺の取り付け補強はどうし
ているのかを質問したところ、玄関壁下地を補強しているとのことであった。
⑤ 現在の書類管理状況に問題はないと判断した。
13)建築工事その他
① 照明器具の球替えが困難な個所はなく、LED 器具を使用しているため取り換え回数
も少ないものとなっていた。
② 点検開口が必要な個所も設備工事との調整を総合図により行っているとのことであっ
た。
③ 防火区画、排煙区画なども消防の中間検査や、施工図、工程内検査等でよく確認し
ているとのことであった。
14)空調設備工事
① 設計時の空調負荷についての質問をしたが、国土交通省 設備設計基準に準拠し、
12
空調温度を夏季 28℃、冬季 22℃とし、全熱交換機を使用するなど、省エネルギーに
も配慮していた。
② 天井内の空調機器の地震時の落下防止対策について質問したところ、吊りボルトに
対して全ネジボルトで固定する振れ止めのほか、落下防止対策として吊りボルト以外
にワイヤー吊りも行っているということであった。費用と効果のバランスの良い方法で
ある。
③ 排煙区画の考え方について質問した。区施設は建設省告示 1436 号四のハによる区
画、共同住宅住戸については建築基準法施行令 126 条の 2-1-1 の区画によってい
た。
④ 維持管理、例えばフィルターやドレイン、ダンパーの点検の際、点検口の位置が問
題になるが、総合図、天井伏図など施行図による位置確認をしていた。
15)給排水衛生設備工事
① 3−1.3)③で述べた給水量及び排水計画となっている。公共の上下水道の容量も
十分であり、排水管接続の際の管底深さについても、既設公共桝が利用できるので
問題ないということであった。
② 建物導入部の給水配管はスリークッションにより地震による変位を吸収することを計
画していた。
③ 多目的便所で、リモコンやスイッチ類が操作しやすい位置にあるか、車いすが転回
できる機器配置となっているかの工夫をされているということであったので、完成時に
車いすをもってきて確認検査をすることを依頼した。
16)電気設備工事
① 照明器具の球替えが困難な場所はないとのことであった。最近は LED 電球の演色も
よくなり、寿命も 4 万時間(約 10 年)となっており、この点では有利となっている。
② トップランナー変圧器、上記の LED 照明、昼光センサー、人感センサーなどを採用し
て省エネを図るほか、太陽光発電による照明も計画している。
③ 火災報知設備は事務所棟に 3 階事務所 P 型 1 級複合盤、1 階事務室に表示器を設
置、住宅棟は 1 階管理人室に P 型 1 級複合盤を設置、いずれも不在時に機械警備
に移報することとしている。なお、住宅棟の各住戸には共同住宅用受信機を設置す
ることとしている。
17)昇降機工事
① 建物中央部に 9 人乗り 90m/min 2 台を配置し、居住人数に対しても過不足ないもの
としていた。
② 身体障がい者や高齢者に対して、点字表示、音声案内、扉のはさまれ防止などの対
策を行っていた。
③ 事故防止対策について質問したところ、フルメンテナンス契約を予定しており、遠隔
監視、カメラ設置を採用しているということであった。
その他、設備関連事項や身体障がい者対応など説明を受け、問題がないと判断した。
4.現場施工状況調査における所見
4−1.現場施工状況について
13
当該工事は契約工期である平成 28 年 6 月 30 日に対して2.7)で述べた通り、概ね計画
通り進捗している。躯体工事は南棟が完了、防水工事準備中、北棟が 10 階型枠工事施工
中、であり、北棟は最上階までアルミ製建具を取り付け、内部仕上げを着手している。北棟
は 10 階と 11 階の躯体工事が残るが、工期的に問題はないと思われる。庁舎部のアルミ製建
具取り付け、ステンレス、鋼製建具枠取り付けは完了していて、1∼3階 LGS、内装ボード貼
り、実施中であった。外装は左官薄塗り下地や階段仕上げ、溝仕上げのほか、一部吹付け
も行っていた。現場の足場の整備状況や通路の確保、整理整頓などもよく行われていた。
現場の調査では、屋上→11∼1階→外部の順に確認した。
現場で検分した事項と、その結果について以下に記す。
1)工事の施工状況
① 杭工事では電流計のデータについて全て記録が残されており、波形などを調査した
が問題はなかった。総使用セメント量は 861.58 トンであり、計画量 817.51 トンに対し
ても問題はない。杭材はトーヨーアサノ製で、杭頭鋼管巻きはクボタ鋼管のものを使
用していた。
② コンクリート躯体工事全般の状態には問題はない。豆板補修の記録も残されていた。
③ 南棟屋上で、ルーフドレインが 1 箇所パラペット立ち上がり壁に近接している箇所が
あったので、後日アスファルト防水の弱点になりやすいことを説明し、対策を立案され
ることを提言した。
④ 開放廊下などから屋上バルコニーへの出口では、バルコニー側がアスファルト防水
で、廊下側が塗膜防水であるため、50∼100mm の立ち上がりを設けて防水の見切り
を行っているが、立ち上がりの不足や、防水端部の仕舞が悪い場合に雨漏りの原因
となりやすいので、施工で特に注意されることを提言した。
⑤ 庁舎部の防火区画で、常時開放型防火扉の戸袋があるが、この吊元部分は扉を吊
込むと塗装が不可能となる。この部分だけ仕上げ塗装を先行することを注意喚起し
た。
⑥ 庁舎部トイレでは、壁に耐水石膏ボードを施工していたが、耐水性を要する部位とそ
うでない部位での混用が起こることがあり、仕上げをしてしまうとわからなくなるので、
耐水ボードが必要な箇所の施工確認をされることを提言した。
⑦ 庁舎部 1 階玄関ホールの天井石膏ボード張りを施工していたが、廊下のダウンライト
開口が、1 箇所玄関中心線と少し離れていたので、天井照明器具の開口位置を、正
面玄関からの中心線とするのか、廊下での均等割り付けとするのか、再度確認される
ことを提言した。
⑧ 塗装・防水などの使用材料の風袋の写真記録は準備されていた。
⑨ 建築確認、建設業許可票・労災保険成立票・施工体系図等は適切に掲示されてい
た。
2)安全管理の状況
安全日誌、朝礼看板などの管理状態は良好であり、場内の整理整頓、通路の管理もよ
くできていた。
3)品質管理の状況
躯体工事、仕上げ工事、設備工事とも計画に従って進捗し、記録も整備されていた。監
14
督員の検査、指摘、是正確認の記録は整備されていた。工事中の定例会議での業者間
の調整及び分科会での詳細確認の議事録も整備されていた。
現場の管理状態は、良好と判断した。
5.まとめ
全般の計画出来高に対し、概ね工程計画通りの進捗情況である。
書類検査では、計画・仕様の妥当性、積算、契約、施工計画、材料確認、施工段階確認
記録、定例会議議事録を調査したが、問題はないと判断した。
現場検査では、工事途中で是正中の事項は格別、前述の軽微な是正事項を提言した。
足立区では、高層住宅はあまりないので、これまでに実施した工事と同様というわけでは
ないが、仕様書、施工計画に従い、丁寧に施工されているので、今後も P(Plan),D(Do),
C(Check),A(Action)の QC 手法にいうデミングサークルにより充実した改善をされていくこと
を提言する。
以上
15
足立区
平成27年度
工事技術調査結果報告書
平成28年 1 月29日
公益社団法人 大阪技術振興協会
技術士(建設部門)
藏
正幸
調 査 実 施 日:
平成28年 1 月13日(水)
調 査 場 所:
足立区役所南館6階監査室及び当該現場
調 査 立 会 者:
足立区監査事務局 紙谷
その他関係各職員
調査対象工事:
足立区立関原小学校改築工事
事 業 主 管 課:
学校教育部学校施設課
工 事 担 当 課:
学校教育部学校施設課
監督員:建 築 工 事 安藤 啓人
電気設備工事 鈴木 哲也
機械設備工事 齋藤
進
衛事務局長
目
次
Ⅰ.目 的
・・・
1
Ⅱ.調査概要
・・・
2
・・・
5
Ⅲ−1 総括的所見
・・・
5
Ⅲ−2 個別的所見
・・・
6
・・・
6
・・・
6
Ⅱ−1 工事内容説明者
Ⅱ−2 工事概要
Ⅲ.調査結果
1.書類調査における所見
(1)工事着手前における書類調査
1)計画・設計に関する書類について
2)積算に関する書類について
3)入札・契約に関する書類について
(2)工事着手後における書類調査
・・・
14
・・・
16
・・・
18
1)施工に関する書類について
2)工事監理に関する書類について
3)試験・検査等に関する書類について
2.現場視察調査における所見
(1)工事看板、安全対策等
(2)現場施工状況について
(3)今後の工事での要望
Ⅳ.その他の所見
Ⅰ.目 的
当該工事は、足立区が平成 25 年1月に策定した「足立区立小・中学校の施設更新
計画」に基づく、区立関原小学校の改築工事である。当小学校は、築 50 年を超えた
建築物を含む老朽化の進んだ校舎で構成されており、書類等を調査した結果改築が
妥当との判断により建て替えられることとなった。改築に当っては、近くの旧本木
東小学校の校舎を仮校舎として利用し、経費節減を図っている。改築計画では、児
童の安全・安心の学校生活の確保を最大のコンセプトとし、児童数に応じた学校運
営が行えるような学校環境を整えることを目指している。
当技術調査は上記の背景から、用途・目的に合致した施設の建設に対するこれま
での計画・設計・積算・入札経過ならびに施工プロセス、工事監理などに関して、
その合理性・経済性・効率性・有効性の観点から検討・検証するものである。その
結果を今後のプロジェクトに反映していただければ幸いである。
1
Ⅱ.調査概要
Ⅱ― 1
工事内容説明者
1.計画・工事概要について
学校教育部学校施設課
稲本
望
課長
2.工事の現況について
似鳥・武家田・小倉建設共同企業体
Ⅱ― 2
現場代理人
澤村
一也
氏
工事概要
1.工事場所
足立区関原三丁目38番3号
2.工事件名
足立区立関原小学校改築工事
3.計画概要
(1)施設概要
敷地面積
7,151.19㎡
建築面積
3,000.18㎡
延床面積
7,661.88㎡
主要施設
校舎棟、付属棟(体育倉庫、飼育小屋、駐輪場、屋外トイレ)ほか
想定学級規模
普通教室 18室、多目的室 3室
特別支援学級
普通教室
3室、特別支援活動室
1室
(2)建物概要
規模・構造
鉄骨造(以下S造と称す)、地上4階建
基礎・杭
場所打ちコンクリート杭
アースドリル式拡底工法
(3) 計画の基本方針
・時代の変化に対応できる施設
・健康で安全な環境が整った施設
・人にやさしく地域に開かれた施設
・情報社会に対応できる施設
・環境にやさしい施設
・地域のシンボルとしての施設
・地域防災の拠点としての施設
・地域に開かれた施設
(4) 工事内容
校舎棟、付属棟、外構の築造に伴う建築工事(一部既存校舎の撤去を含む)、
電気設備工事(昇降機設備工事含む)、給排水衛生設備工事(ガス設備工事
含む)、空調設備工事ならびに太陽光発電設備工事
2
4.
入札
(1)入札方式
条件付き一般競争入札
建築工事、電気設備工事は3者構成による建設共同企業体
給排水衛生設備工事、空調設備工事は2者構成による建設共同企業体
太陽光発電設備工事は単独業者(当工事のみ希望制指名競争入札)
(2)公告日・入札年月日
建築工事
(
)内は入札年月日を示す
平成26年4月9日(5月26日)
電気設備工事
平成26年6月30日(8月8日)
給排水衛生設備工事
空調設備工事
平成26年6月30日(8月8日)
太陽光発電設備工事
5.
平成26年6月30日(8月8日)
平成27年5月11日(5月25日)
工事請負会社
建 築 工 事
似鳥・武家田・小倉建設共同企業体
電気設備工事
雄光・青路・拓電建設共同企業体 監理技術者:雨谷 愼一
給排水衛生設備工事
空調設備工事
坂田・東管建設共同企業体
玉紘・カンノ建設共同企業体
太陽光発電設備工事
6.
設計業務委託
7.
工事監理
8.
契約工期
監理技術者:市川 正夫
主任技術者:福手
設計責任者:吉岡
㈱相和技術研究所
監理責任者:吉岡
平成26年6月20日
∼
和昭
和昭
平成28年5月31日
9.事業費(消費税込)
(1)総事業費:4,082,233,000円
国 庫 補 助 金:
163,281,000円(公立学校施設整備費国庫負担金
学校施設環境改善交付金)
起
債:1,229,000,000円(校舎建設債)
基
金:2,385,698,000円(義務教育施設建設資金積立基金)
一 般 会 計:なし
(2)工事金額
1)建 築 工 事
予定価格
2,977,074,000円
請負金額
2,977,020,000円
99.998 %
落 札 率
最終変更契約額
2)電 気 設 備 工 事
予定価格
3,044,260,800円
253,746,000円
3
一也
監理技術者:鈴木 秀行
㈱デジタル通信システム
㈱相和技術研究所
監理技術者:澤村
英文
請負金額
253,692,000円
落 札 率
99.98 %
最終変更契約額
3)給排水衛生設備工事
予定価格
請負金額
231,238,800円
230,364,000円
99.62%
落 札 率
最終変更契約額
4)空調設備工事
221,767,200円
請負金額
220,879,440 円
99.60 %
最終変更契約額
5)太陽光発電設備工事
予定価格
請負金額
222,620,400円
23,400,360円
20,943,360円
89.50%
落 札 率
最終変更契約額
10.契約日
231,519,600円
予定価格
落 札 率
◆全工事合計
257,990,400円
設計価格
21,588,120円
3,707,226,360円(1,599,500円/坪)
当初請負金額
3,702,898,800円(設計額の99.88%)
最終変更契約額
3,777,979,320円(1,630,00000/坪)
(建築工事) 平成26年6月19日
(各設備工事) 平成26年9月30日
(太陽光設備工事)平成27年5月26日
11.履行保証
12.工事進捗率
履行保証保険(東日本建設業保証㈱に加入)
建築工事≒70% 、各設備工事≒32∼50%
4
Ⅲ.調査結果
Ⅲ−1 総括的所見
当工事は、足立区が平成25年に策定した「足立区立小・中学校の施設更新計画」に
基づき平成25年度から施設更新に着手した。当校の校舎は築50年を超えるものを含
めて校舎全体の老朽化が進み、耐震補強を行っている校舎の耐震性も文科省の推奨
する耐震性能基準値(Is≧0.7)(*注1)を満足せず(Is=0.30∼0.65)、また改修には
多額の費用がかかることも判明、それらの状況を総合的に判断し、区内各施設の建
築年次順を繰り上げて改築することとなった。改築に当っては、近くの旧本木東小
学校の校舎を仮校舎として利用し、無駄な出費を極力抑えるよう努力している。
また、計画に際しては旧校舎の解体、改築工事の内容、工期延長などについて近
隣説明会を実施、地域住民の理解を得ながら工事を進めてきている。
ただ、先の「足立区立小・中学校の施設更新計画」において、今後の改築手法とし
ては、工事費削減や工期短縮の観点からS造を基本とするとしており、今計画にお
いてもその採用を取り入れてS造による改築とした。このことに関しては、工事費
などの経済性、仕上げ工事の複雑性、維持管理の容易性などにおいて、今後の計画
の際などで再考する部分がある。このことは後の稿で詳細に分析、所見を述べる。
以上、当改築計画は周到な準備を重ねて実施されており、その合理性・効率性・有
効性については妥当で問題となるところはない。
(*注:1) “構造耐震指標 Is”について
既存建物の耐震性を表す指標。建物が保有する性能(保有性能基本指標)、建物の形状(形状指標)、
建物の年齢(経年指標)の積であらわされる。大地震(震度 6 強程度)での安全性を確保するためには、
Is≧0.6 が必要とされる(第 2 次、3 次診断の場合)
。Is≦0.3 は、大地震において倒壊の恐れがある
ことを示しており、耐震補強が急がれる。なお、学校建築物については、文科省:学校建築構造設
計指針・同解説において、Is≧0.7 を推奨している。
設計については、施設の特性を的確に把握し、当初設定した8つのコンセプトを
基に、居住環境、自然環境に配慮した設計、耐震性、材料の安全性、防犯体制、バ
リアフリー対応、省エネ・自然エネルギー利用、地域住民への配慮、防災拠点とし
ての整備、維持管理の容易性などに配慮した内容となっている。
積算については、公的な積算資料に基づいて正確に積算、単価も各種単価、各業
者の見積もりを比較して最適、低価格のものを最優先に採用している。積算の内容
は、学校施設課の担当者ならびに係長がチェックして万全を期している。ただ工事
費については、近年の公立小中学校の一般的な金額と比較してかなり高めである。
これは狭小な周辺道路の影響を勘案した杭工法の選定、生コン車の搬入を極力減ら
すための鉄筋コンクリート造(以下RC造と称す)の回避、S造の採用などが影響
している。これについても後述する。
入札・契約については、地元振興、公平性に最大限に配慮、設計、施工を担当す
5
る技術者については、その経験、技術力の評価を見極めたうえで業者の選定を行っ
ている。
工事監理については、実施設計を担当した設計事務所の監理技術者が学校施設
課の監督員、施工者と連携して定期的に的確な監理を行い、品質管理に努めている。
実施設計を担当した設計事務所が引き続き工事監理を行うことは、設計の内容を熟
知した技術者によることで、監理の効率性、的確性を期する意味で大変重要なこと
である。
施工は、周辺道路が狭小で状況の悪い中、各種工事とも事前に施工計画書を作成、
各業種連携の基、設計図書に忠実に施工を行っており品質にも問題はない。安全に
ついては、建築工事を担当する業者の主導で各業者が協力、ここまでのところ無事
故を達成している。工事工程もマスター工程通り遂行されており、遅れはない。
試験・検査も工事監理者を中心に的確な対応が行われており、ここまでのところ
問題となる項目はない。学校建築でのシックスクール対策は、最も重要な管理項目
である。仕上げ工事はこれから本格化するが、材料の搬入から施工、最後の環境測
定まで油断のない対応をして欲しい。まずは材料搬入時の水際での対応が重要であ
る。留意いただきたい。
以上、当新築工事は、計画時のS造採用に関わる今後の課題があるものの設計か
ら施工まで、現在までのところ特に問題となるところはない。
Ⅲ−2
1.
個別的所見
書類調査における所見
設計図書、積算設計書、入札・契約関連書類、工事関連書類などについて調査をした
結果、一連の書類は必要かつ十分であり、よく整理・保存されている。
調査の方法は、こちらで準備した各項目の質疑書に基づき書類等の提出を求める方法
で行った。その結果、的確に書類の提示が行われ、疑問点の質問に関しても担当者より
的確な回答を得た。
以下、主だった調査の結果を記述する。
(1)工事着手前における書類調査
1)計画・設計に関する書類について
(ⅰ)基本計画
・工法の選定について
当計画では、校舎棟の工法を「S造」としている。
その目的とするところは、工事費の削減と工期短縮としている。そこを観点
6
に書類調査、意見聴取を行った。以下にその内容と考察を述べる。
*工事費:当計画にかかった建築工事費は、同類の公立小中学校の工事費と比
較してかなり高めである。鉄骨工事費、仕上げ工事費に関わる部分が大きい。
屋上にプールを載せていることによる重量の増加、RC造なら不要な外壁材
(プレキャスト板)の取り付け、そのための下地材などがそれに当たる。ま
た、S造には直接関係はないが、杭工法に場所打ちコンクリート杭を採用し
ていることも工事費に影響した。これは周辺道路の関係で当工法を採用せざ
るを得なかったとのこと。なお、設備工事費についてはS造によるコスト増
大の影響はない。
*設計について:近年の公立小中学校の校舎は、利便性、敷地の有効活用など
から、屋上にプールを設置してRC造とする3∼4階建ての建物が多い。
RC造が多い理由は下記のようなことが考えられる
・一般的に建設費が安い(躯体用資材の変動で逆転の可能性もある)
・仕上げ工事が容易(Ex:外壁、内壁の躯体がそのまま仕上げ下地になる)
・防火、防音対策が容易(Ex:S造は乾式壁となるので継ぎ目はシールに頼
る。また一般的に基準は満足するもののRC壁に比して性能は落ちる)
・構造設計が容易。屋上にプールを設置する場合は特に頂部が重く、S造で
は部材が大きくなったり、地震時の変形が大きく揺れやすい。
*施工について:施工については利点も多い。S造による特徴を列挙する。
・工期が短縮できる。RC造は下から積み上げる施工法となるが、S造は最
上階まで一気に建てて、仕上げ、設備工事が各階並行して進められる。
・RC造での生コン車などの大型車両の出入りが少なく、今計画のような周
辺の道路事情がよくない敷地には向いている。環境対策上、近隣対策上も
有利。
・難点としては、工数が多くなる(Ex:RC造は躯体に直に仕上げを施すこ
とが可能だが、S造では、骨組み、下地が必要)
*維持管理、耐久性について:S造では外壁が乾式工法となるため、部材の継
ぎ目はシールにより一体性を保つ。シールは耐久性に限界があり、それは比
較的短い。維持管理、修繕計画においては、かなりの頻度でシールの更新が
求められる。
以上、RC造とS造を比較しながらそれぞれの得失を述べてきたが、今計画
においては、物理的にS造を採用せざるを得ない事情があったようである。
今後の計画においては、今計画の結果を分析して工法の選定に当たられるこ
とを希望する。
7
・本工事の設計は、建築基準法をはじめ関連法規ならびに各種設計基準に則っ
て設計、施工されている。また、設計を行う設計事務所は一級建築士事務所
として登録された業者で、設計担当技術者は一級建築士の資格者(さらに構造
設計者は構造設計一級建築士、設備設計者は設備設計一級建築士)であること
を確認した。なお、積算業務は外部事務所に外注しているが、公的な資格を
持った事務所、技術者であることを確認した。
・実施設計に際し、事前にVE手法を用いて各工事項目、各部位の性能・コス
ト・耐久性などの比較検討を行い最適、最良、最安値の仕様を選択している。
前向きな対応を評価する。
・本工事の計画に対し、建築基準法第18条第3項の規定による確認済証を取得し
ている。また構造設計に関しては構造計算適合性判定を受けている。
・調査の結果、各工事設計図書間の整合性に問題はない。
(ⅱ)計画設計
・事前調査:計画に先立ち、既設校舎のアスベスト調査、測量、地盤調査、土壌
汚染調査などを行っている。アスベストは存在することが確認され、適切な
対応がとられた。
・基本計画は、基本構想に準じて立案された。主な項目を下記に示す
*時代の変化に対応できる施設
➝多目的教室、放課後こども教室の設置など
*健康で安全な環境が整った施設
➝給食室・トイレなどはドライ方式採用
➝防犯カメラ、電気錠の設置など
➝職員室の配置考慮
*人にやさしく地域に開かれた施設
➝ユニバーサルデザインの採用、身障者対応EVの設置
*情報社会に対応できる施設
➝図書室に隣接してコンピュータ室を設置、LAN設備設置
*環境にやさしい施設
➝太陽光発電、LED照明、環境配慮設計(断熱、遮光、複層ガラス、屋上緑
化など)
*地域のシンボルとしての施設
➝住宅に隣接する北側をセットバック対応
*地域防災の拠点としての施設
➝第一次避難所(備蓄倉庫、マンホールトイレ、かまどベンチなど設置)
*地域に開かれた施設
8
➝PTA室、放課後こども教室の設置など
・マスタープランでの特徴は、
*校舎棟の配置は2案を検討の結果、教室を南面に向けた敷地の北側に校舎群、
グランドを南側に配した案となった。妥当である。
*立面上の特徴は、セットバックにより近隣への日影に配慮、自然採光、通風、
遮光などにも配慮した計画としている。
*生徒の昇降口はグランド側、校舎南東面に配置、東西2か所の通用門から便
利な位置に設置。
*通用門には電気錠、防犯カメラ、校庭周囲にはフェンスを設置、防犯対策が
取られている。
*職員室は、昇降口に接してグランド側に面し、観察しやすい位置に配置。
*体育館は北側に配置、プールは管理上アリーナの上部に設置されている。ア
リーナの窓面は、西日を避けるように配置されている。
*給食室は西側に配置、学校施設との間に管理上の対応がなされている。
*普通教室は、1階には設置せず2階から上部に配置、防犯対策上の処置がと
られている。
*1階に特別支援学級が設置されている。
・建築設計については経済性を重視し、使用材料はほとんど汎用品を使用して
いる。また、石、タイルなどの高級材料は局部的な使用に止めている。
・外壁は、押し出し成形セメント板としている。乾式工法の外壁材としては無
難な選択である。
・VOC,シックハウス対策としては、F☆☆☆☆材料の使用を原則としており、
竣工後の化学物質の濃度測定も計画されている。
・利用者の安全対策としての各所の手すり高さは、法で規制されている高さ(H≧1,
100mm)をすべてクリアーしている。特に屋上施設に関してはさらに高いフェン
スを設置し、安全対策に万全を期している。また、屋上の非利用区域については、
常時施錠して生徒の侵入がないよう安全対策が取られている。
・階段の踏み面、蹴上、踊り場の寸法は、法で規制する小学校の規定をすべて満足
している。なお、階段の手すりは児童の年令に対応して2段手すりとしている。
・床段差の解消、スロープの設置、視覚障害者用タイル、多目的トイレ、滑りにく
い床材の採用など利用者のためのバリアフリー対策、ユニバーサルデザインには
最大限配慮している。
・各室の出入り口は、引き戸を基本として利用者への利便性、安全性を図っている。
・外壁面には、複層ガラス、断熱材など冷暖房負荷を低減するための断熱対策が取
9
られている。また、バルコニーや庇を大きく張り出すことにより、遮光を図って
断熱対策に配慮している。
・主な居室の天井の高さは2.7m、階高は3.8mで標準的な高さとしている。
・ガラスには、必要な部位に安全対策として強化ガラスを採用している。
・アリーナの有効高さは8.0m、平面的なスペースも小学校の標準的な大きさを確
保している。また、天井は法の規制(特定天井)を回避するため、直天井としてい
る。
・屋外に面する金属材料は、耐久性、維持管理に配慮してアルミ、ステンレスなど
の耐蝕性の高い材料が使用されている。
・グランドには、近隣への対策として防球ネットを設置している。
以上、計画設計については、施設の特性を十分に把握した設計となっている。ま
た、適法性、ユニバーサルデザイン、環境対策、安全性、省エネ、経済性、耐久
性、維持管理の容易性にも十分配慮した妥当な設計となっている。
(ⅲ)構造設計
・基礎工法:基礎は、地中40数mの堅固な地盤に場所打ちコンクリート杭(アース
ドリル式拡底工法、杭頭部鋼管併用)で建物を支えている。コスト的には高い工
法であるが、杭長が長いこと、周辺道路の事情による施工性からはやむを得ない
選択であり、妥当性に問題はない。
・地盤調査時に液状化の検証を行っており、液状化の懸念があると判定されている。
対策としては杭で抵抗させるとしており、液状化による建物への影響はない。
・重要度係数(I)の採用:公立学校の標準としてI=1.25を採用している。計算の結
果、Qu/Qun=1.36≧1.25で、さらに9%程度の余力があることを示している。
・構造設計方針:架構形式は、S造純ラーメン工法としている。
・層間変形角、剛性率はそれぞれ法の規定値を満足しているが、偏心率は、プール
が偏載している関係で、大きく規定値を超えている。超過した分は法に従って保
有水平耐力の割り増しを行っており、耐震上の問題はない。
・使用材料は、すべて標準的な材料を使用しており、問題はない。
・主要構造部(柱、梁など)の断面の大きさは標準的で、過大なものはない。
・鉄骨の量は少なくはないが、プールを屋上に設置した4階建てのS造として重要
度係数(I)=1.25を採用している建物としては、特に過大ではない。S造として計
画した結果としては妥当である。
以上、構造設計に関しては、基礎構造、上部構造には十分な耐力を保有したうえ
に、現場の特性、施工性、品質確保にも配慮した設計となっている。また、設計
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デザインに関しても構造的な観点から随所で協力をしており、前向きな取り組み
を評価する。建築確認取得に際して構造計算適合性判定を受け、公的機関で構造
計算の妥当性が確認されている。
(ⅳ)電気設備の設計
・屋上に電気室を設置して受電している。受変電設備は開放型として経済性、更新
に有利なタイプを採用している。非常時の自家発電装置の設置はない。
・発電容量20kwの太陽光発電設備を屋上に設置して校内の電力として使用、余っ
た分は売電するとしている。1階昇降口にモニターを設置、太陽光発電の状況を
逐次表示、教育の一環に供している。
・屋上設置機器類は設計震度k=1.5以上で設計し、耐震性の確保を図っている。
・建築基準法、消防法に準拠し自動火災報知設備、非常用照明、誘導灯設備、排煙
設備などの防災設備を設置している。
・機器類はメーカー標準品を基本とし、経済的な配慮をしている。
・各種照明器具には高効率型の器具、LED照明を採用し、省エネに配慮している。
また、点灯・消灯には普通教室は昼光センサー、トイレなどは人感センサーとし
省エネにも配慮している。なお、ケーブルは環境に配慮してエコケーブルを使用
している。
・昇降機は、身障者対応の仕様としている。
・防犯対策として通用門に防犯カメラ、門扉に電気錠などを装備している。
・各機器は中央監視・自動制御により、人件費削減、管理の効率化を図っている。
(ⅴ)給排水衛生設備の設計
・給水は、直結による給水と増圧ポンプによる給水を使い分けて経済性に配慮して
いる。また、増圧ポンプは室内型として騒音に配慮している。
・防災時の緊急用飲料水としての受水槽の設置はない。ペットボトルでの対応とし
ている。
・建築基準法、消防法に準拠し屋内消火栓設備を設置している。
・屋上設置の設備機器は設計震度k=1.5以上で設計し、耐震性の確保を図ってい
る。
・地中埋設の給排水管は高耐久性のあるものを採用している。
・衛生器具は耐久性、維持管理の保守性ならびに省エネ対応に配慮した節水型器具、
多目的トイレには、自動水栓、自動洗浄などを採用している。また、各フロアー
に多目的トイレを設置している。
・給湯は、省エネと経済性に配慮して局所給湯方式としている。
・災害時にプールの水を利用するマンホールトイレを設置している。
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・屋上緑化のために自動散水設備が設置されている。
・耐久性に配慮して、給水・給湯管にはSUSを用いている。
・漏水を速やかに感知するため、漏水検知器を設置している。
(ⅵ)空気調和設備・換気設備の設計
・空調方式は、電気ヒートポンプ方式とガスヒートポンプ方式の個別空調を使い分
けて省エネを図っている。空調管理は1階職員室、管理室にて集中リモコンによ
り一括管理を行う。アリーナは自然通風効果を利用し空調の対応はない。暖房設
備として遠赤外線放射暖房を設置している。
・換気は、給食室はシロッコファンによる1種換気(給気、排気とも機械換気)、各居
室は全熱交換器を中心の1種換気とし、その他の部屋は換気ファンとするなどの
使い分けをして省エネに配慮している。
・屋外機など屋上設置の設備機器は設計震度k=1.5以上で設計し、耐震性の確保
を図っている。
・給食室の屋上排気ファンは、騒音と臭気対策として近隣から遠い南側に設置して
いる。
以上、設備関連の設計は、発注者の意図を十分に把握し、基本計画に遵守した環
境対策、省エネ対応、自然エネルギー利用、身障者対応設備、安全対策などに積極
的に取り組んでいる。また、耐久性、維持管理のしやすさ、LCC を含めた経済性な
どにも配慮した設計となっている。各種法律に準拠して防火設備、避難設備、消防
設備も設置されており、耐震性の向上も図っている。特に問題となる部分はない。
2)積算に関する書類について
・積算に当っては、東京都財務局「(平成25年4月 建築工事積算標準単価)積算
基準(建築工事編)」(平成25年4月版)に準拠している。また、定期刊行物など
の積算資料を参考にしている。準拠基準に問題はない。
・設計事務所から上がってきた積算数量の照査は、学校施設課の専門の技術者
により行われている。
・単価は、ビニール床シート、壁硬質石膏ボード、天井ロックウール化粧吸音
板など使用数量の多い仕上げ材、ならびに構造材料の資材を抽出してチェッ
クした。特に今計画はS造であるので鋼材の単価が大きな影響を持つ。調査
の結果、どの単価も標準的で特に異常な単価はなかった。
・単価表に無い特殊な材料の見積りについては、3者以上の業者から見積りを
取得して最安値の単価を採用している。業者間で見積り金額に大きな開きの
あるものについて担当者に質問したところ、金額差の大きなものについては、
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内容のチェックを綿密に行って必ずしも最安値を採用することではなく、業
者へのヒアリングも行って妥当な金額の見積もりを採用しているとの回答を
得た。妥当な判断である。
・積算数量:躯体の主要資材をもとに数量の検証を行った。主要構造がS造で
あるので、コンクリート、鉄筋、型枠などRC部分の資材は少ない。鉄骨用
鋼材は、延べ床面積1㎡当り162.9kg/㎡で、少なくはないが、プールを載せて
いる4階建てでI=1.25ということを考えると特に問題となる数字ではない。
・建築工事費:建築工事費を単価で表示しコメントを述べる。
単位:円/坪<>内は円/㎡を示す。
(延床面積:2,317.72 坪<7,661.88 ㎡>)
共通仮設費:
86,100< 26,000>
躯体工事費: 440,400<133,200>
仕上工事費: 424,600<128,400>
付帯工事費:
経費合計
直接工事費
85,100< 25,700>
: 153,100< 46,300>➝直接工事費の 16.1%
建築工事合計:1,189,300< 359,800>
建築工事費の坪当たり単価119万円弱はやはり高い。杭が長いことにもよるが、
やはりS造によるところが大きいと思われる。これに設備工事費を加えると、
坪当たり単価148万円にもなる。近年のエコスクールと称するRC造の建物の
場合、100万円前後が一般的である。今後の計画の参考とされたい。
・建築工事の現場管理費、一般管理費のいわゆる経費について、直接工事費に
対する比率を算出してみたところ、16.1%で妥当な経費率といえる。
以上、積算上の問題については特に指摘する項目はない。
3)入札・契約に関する書類について
・基本構想から各種事前調査、既存校舎解体設計・監理、改築工事実施設計・工事監理
などを委託する設計事務所の選定は条件付き一般競争入札としている。予定価格は非
公表としている。各種調査から実施設計と工事監理を同一業者に発注する方式は、設
計の内容を熟知していることや、品質管理の面から妥当な判断である。
・各工事の入札は、共同企業体または単体業者の条件付き一般競争入札として多くの業
者に参加の機会を与えている。
・入札条件として、業者の施工能力を重視しており、価格と同時に品質の確保に努めて
いる。
・入札に参加できる業者は区内関連業者とし、地元振興に配慮している。
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・各工事の入札とも予定価格の事前公表を行っている。
・品質確保の観点から低入札調査基準価格を設定している(非公表)
。
・各工事とも入札保証金は免除している。
・契約保証については、
「保証証書」の閲覧によりそれを確認した。
・工事請負契約書は適正に交わされている。契約書を確認した。
・変更契約:各工事、1∼2回契約が変更された。その理由は以下による(建築工事の場
合)。
*インフレスライド
*地中障害物の撤去
*平面計画の変更
*工期の延長など
以上、入札、契約に関する手続き、執行について特に問題となるところはない。
(2)工事着手後における書類調査
1) 施工に関する書類について
(ⅰ) 施工管理
・各工事施工者の建設業許可証、監理技術者、主任技術者の公的な資格は、資格者
証、講習終了証を調査の結果問題はない。
・総合施工計画書、各種工事施工計画書、安全衛生管理計画書などは、公的な仕様
書に準拠して的確に作成されている。
・施工体制台帳の作成、内容に問題はない。
・施工報告書、工事記録写真は、適宜適切に作成、保管されている。
・周辺への環境対策として、低騒音低振動機器の使用を厳守している。
・諸官庁への届け出は遵守されている。書類を確認した。
・近隣には絶えず気を配って施工を行っている。作業時間は8:00∼17:00と設定
し、日曜祝日は休日としている。この条件から外れるときは必ず事前に了解を得
て作業を行っている。近隣住民には資料配布もしくは戸別訪問により工程などの
お知らせをしている。児童の登校時9:00までは工事車両の入場制限を行ってい
る。近隣からの苦情には随時対応している。今までのところ大きなクレームはな
い。
(ⅱ)品質管理
・再生資源利用計画書を作成、再生資源(砕石など)利用に努めている。
・建設廃棄物の収集運搬・中間処理・最終処分については、マニフェスト等を確認
した。適正に処理されている。
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・地業工事については時節柄詳しく説明を求めた。杭工法は場所打ちコンクリート
杭アースドリル式拡底工法で、近時社会的に話題となっている工法とは異なるが、
孔壁の管理などは共通するところがあり、孔壁の精度、深さの電流計による確認、
コンクリートの使用量、計画された杭の長さとボーリングの深さの関係、それぞ
れの杭データの重複(データの改ざんの懸念)、杭頭の精度などを工事監理者、施
工者が再確認をしたかを質問した。綿密な再チェックを行ったとの回答を得、そ
れぞれのデータに目を通した。幸い当敷地の杭支持層は均一で、長さの変化はな
く、的確に施工されたものと確認した。
・入荷する材料については、材料受け入れ時の目視検査、製品検査証明書、を確認
することで行われている。鉄筋の材料規格を証明する規格証明書(ミルシート)を
確認した。また、現場に納入されている資材がミルシートと同じものであること
の確認を“タグ”により行った。鉄骨鋼材の規格証明書(ミルシート)も確認した。
性能上問題となる部分はなかった。
・仕上げ材・塗料・接着剤・設備用機材、家具類等のF☆☆☆☆の規格を受け入れ
時に確実に管理するよう指示した。
以上、品質管理は施工計画書に基づいて的確に行われている。施工報告書、施工
記録写真などにより、それらを確認した。
(ⅲ)安全管理
安全管理について調査した主な内容を以下に示す。
・安全対策としての仮設計画図を検証した。
*敷地周囲には高さ3mの仮囲いを設置、外部への安全対策としている。
*敷地内の重機走行範囲は地盤改良のうえ鉄板を敷き、重機の転倒に備えている。
*車両の出入り口には常時監視員を置き、事故防止に備えている。また、場外へ出
る車両は洗浄を行い、道路汚染などのないように努めている。
*建物外部全面に900mmの手すり先行型の枠組み足場を設置して外部作業を行っ
ている。建物との隙間にもネットを張って対策をとっている。
・施工者相互間での安全衛生協議会、安全パトロールは計画書に基づき定期的に実
施されており、安全衛生日誌も怠りなく記入されている。毎朝安全朝礼を開催し
てから業務を開始している。
・新規入場者には、全員入所時教育を実施しており、新規入場者教育実施報告書を
提出させている。60歳以上の高齢者も受け入れており、高所作業を控えるなど、
慎重な対応で雇用している。それらを書類により確認した。今までのところ無事
故。
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(ⅳ)工程管理
工程は当初設定の工程より3ケ月延長された。労務事情、地中障害物処理の拡大、
北側計画道路の遅延などによる。その後の工程は特に遅れることもなく推移して
いる。今後も契約工期通りに竣工の予定である。工程管理は適切に行われている。
調査時点での工事進捗率は建築工事 70%、各設備工事 32∼50%程度となってい
る。
以上、これまでのところ施工関連の書類に問題となるところはない。
2)工事監理に関する書類について
・工事監理は、委託された工事監理者により常駐監理方式で行われている。
・工事監理を行うに当り、工事監理計画書を作成している。内容を精査の結果、特
に問題となる項目はない。
・発注者には、毎月「監理業務報告書」(月報)を監督員経由で提出している。日報と
共に内容の確認を行った。
・監理者は毎週水曜日の定例会議に出席、発注者、施工者などと業務の調整を行っ
て、工事を円滑に進めている。会議の内容は議事録として残し、関係者一同の意
思疎通を図っている。各担当責任者の捺印が押された会議議事録を確認した。問
題はない。
・施工者からの要請に基づき、各種検査、試験の立会いを監督員と共に行っている。
検査報告書、立会写真などで確認した。
・特定工程:建築基準法第18条第21項の規定により、特定工程(1階の鉄骨建て方工
事)での中間検査を受検、適合していることが証明された。中間検査合格証によ
りこれを確認した。
以上、工事監理は適切に行われている。
3)試験・検査等に関する書類について
・試験・検査は、施工者からの依頼に基づき、工事監理者が立会のもとで行われて
いる。検査報告書、立会写真などでこれを確認した。
・第3者によるコンクリートの4週圧縮強度試験、鉄筋圧接部引張試験、鉄骨溶接
部の超音波検査の結果は適正で、問題はない。報告書を確認した。
・環境測定:揮発性有機化合物の環境測定は、竣工間際に行われる。周到な準備の
上、漏れのない測定を行っていただきたい。
以上、これまでのところ、試験・検査での結果に問題はない。
2.現場視察調査における所見
現場視察は躯体工事が完了し、仕上げ、設備工事が最盛期の状況で行われた。工
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事は順調に推移しており、安全対策、出来高、出来形とも特に大きな問題はなかっ
た。以下に主な調査結果を述べる。
(1)工事看板、安全対策等
・工事看板、施工業者の資格、労災保険加入証、近隣へのお知らせ看板等は見やす
いところに適切に掲げられている。
・足場の設置、仮囲いなど仮設の管理状況に問題はない。クレーンの使用状況にも
問題はなかった。通用門には監視員が配置されており、場内の整理整頓にも問題
はない。調査の結果、現時点での安全上の問題はなかった。
(2)現場施工状況について
1)建物内部の施工状況
・建築工事では、S造特有の仕上げ・下地の状況を中心に、間仕切り壁の施工性(隙
間による防音、防火性能)、鉄骨の耐火被覆、手すりの高さ、サッシの状態(断熱
性、防音性など)、外壁内側の納まり、床の段差、出入り口の安全性(引き戸下部
のレール溝など)、防火扉・防火区画などの安全性能等を見て回った。床の仕上
げ、天井の施工状況(天井吊り材などの下地ならびに施工精度)などは未施工の
ため確認できなかった。
・設備工事では、天井裏のダクト・配管・吊り材、床転がしの配管・配線類、天井
面の空調機・電灯などの設置物の精度、スイッチ・コンセントの位置と精度、P
S内の配管類の状況、屋内消火栓などの防火設備、避難経路表示の避難設備など
を主に見て回った。給食室の特にダクトが密集する部分も無理なく収まっていた。
調査の結果、校舎棟、体育館とも建物内部の施工状況は、建築工事、各設備工事
ともほぼ設計通りに施工されている。特に指摘する問題点はなかった。
2) 建物外部の施工状況
・建築工事では、主に外壁の状況をつぶさに視察した。外壁は押し出し成形セメン
ト板で、収まり精度、シールの状況も現時点では問題なかった。シールについて
は劣化が早いので、定期的な維持管理を行うよう要望した。
・手すり、フェンスなどの設置に問題はなかった。
・屋根の防水状況、水勾配、排水溝、ルーフドレインとも適切に施工されていた。
・金物類はすべて、耐蝕性のある材料で施工されていた。
・プールは施工途中であったが、現在のところ問題点は見当たらなかった。
・設備工事では、屋外の設置機器類はまだ未施工が多く、特に指摘する項目はなか
った。
以上、屋外の施工状況は全般的に良好で、特に指摘するような問題点はなかった。
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(3)今後の工事での要望
竣工まで4.5ケ月を残すのみとなったが、これからの工事は重要である。
特に留意して欲しい項目を述べる。
・室内環境対策:これについては随所で述べてきたが、当施設においては極めて重
要な要素であるので重ねてお願いする。これから色々な仕上げ材、塗料、接着材
が頻繁に納入される。まずは水際での材料規格の確認(F☆☆☆☆、MSDSなど)が
重要である。さらに環境測定。家具類の設置もあるので、周到な準備、十分な換
気を行ったうえ、慎重な対応・測定をお願いしたい。
・各設備工事については、引き渡し前の調整・試運転を励行して欲しい。真っ先に
クレームの対象となるのは設備工事に多い。
・今後は各工事が錯綜してくるので、事故の起こりやすい状況となる。事故にはく
れぐれも気をつけていただきたい。
・周辺は道路事情が悪い上に住宅が密集している。近隣対策には十分な対応をお願
いしたい。
Ⅳ.
その他の所見
LCM計画について
当計画においては、LCM計画を策定している。
修繕・更新計画、LCC、LCCO2など、どの項目も建物を健全に維持して活用し
ていく上で欠かせない。特に当建物はS造として建設された。公立小学校としては
類例が少ないので、特に入念な計画のもとで運用していただきたい。修繕・更新計
画は特に重要で、外壁の劣化はRC造に比較して不利であることを認識いただき、
計画通り綿密な対応を遵守いただきたい。今次の建物は、100年近い耐久性を目途に
建設される。気の遠くなるような長さである。LCM計画を次世代、次々世代に確
実に伝えていくことも忘れてはならない重要な項目である。
以上
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