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企業の持続的発展を目指す会計 - 独立行政法人 中小企業基盤整備機構
平成 28 年度 中小企業大学校 中小企業会計啓発・普及セミナー 企業の持続的発展を目指す会計 平成 28 年4月 独立行政法人 中 小 企 業 基 盤 整 備 機 構 *無断転載、複写を禁ずる テキストの作成にあたって 中小企業会計啓発・普及セミナーは、当機構の発足以来、全国で延べ3千9百回を開催し、延 べ11万6千人の受講実績とともに、受講された多くの皆様から好評を頂いています。 このセミナーは、中小企業庁が平成17年5月に策定した「中小企業会計の質の向上に向けた 推進計画」の一環として実施しているものです。 中小企業の皆様が「中小企業の会計に関する基本要領」に基づき、質の高い決算書類を作成し、 積極的に開示し、経営計画を策定することで、金融機関及び取引先への信用を高め、資金調達の 安定や取引の拡大を図り、経営力を向上し、もって健全な企業発展の実現を目指しています。 平成28年度は、平成24年2月に公表された「中小企業の会計に関する基本要領」に基づい た、平易かつ実際的な会計ルールに基づく会計の啓発・普及として、 (1)正しい会計ルールに基づく信用力のある決算書の作成の必要性 (2)会計を経営へ活かすポイント (3)知っていなければならない税制改正のポイント 等を分かり易く解説するこれまでの方針を引き継ぎながら、セミナー受講後も復習や実務に役立 つようテキストを改訂しました。 このテキストが、セミナーでの理解を助け、また、実務における適正な会計処理の一助となれ ば幸いです。 セミナーの実施にあたっては、全国の商工団体をはじめ、中小企業支援センター、地域金融機 関、認定経営革新等支援機関、業界団体等の皆様に多大なるご協力を賜り、厚く御礼申し上げま す。 平成28年4月 独立行政法人中小企業基盤整備機構 人材支援グループ 大学校運営支援課 -1- 中小機構の地域本部、中小企業大学校のご案内 http://www.smrj.go.jp/ □地域本部 北海道本部 札幌市中央区北2条西1丁目1番地7 ORE札幌ビル6階 Tel. 011-210-7470 東北本部 仙台市青葉区一番町4-6-1 仙台第1生命タワービル6階 Tel. 022-399-6111 関東本部 東京都港区虎ノ門3-5-1 虎ノ門37森ビル3 階 Tel. 03-5470-1509 中部本部 名古屋市中区錦2-2-13 名古屋センタービル4階 Tel. 052-201-3003 北陸本部 金沢市広岡3-1-1 金沢パークビル10階 Tel. 076-223-5761 近畿本部 大阪市中央区安土町2-3-13 大阪国際ビルディング27階 Tel. 06-6264-8611 中国本部 広島市中区八丁堀5番7号 Tel. 082-502-6300 四国本部 高松市サンポート2-1 高松シンボルタワー タワー棟7階 Tel. 087-811-3330 九州本部 福岡市博多区祗園町4-2 サムティ博多祇園BLDG. Tel. 092-263-1500 沖縄事務所 那覇市字小禄1831-1 沖縄産業支援センター313-1 Tel. 098-859-7566 広島KSビル3階 □中小企業大学校 旭川校 北海道 旭川市緑が丘東3条2-2-1 Tel. 0166-65-1200 仙台校 宮城県 仙台市青葉区落合4-2-5 Tel. 022-392-8811 三条校 新潟県 三条市上野原570 Tel. 0256-38-0770 東京校 東京都 東大和市桜が丘2-137-5 Tel. 042-565-1192 瀬戸校 愛知県 瀬戸市川平町79 Tel. 0561-48-3400 関西校 兵庫県 神崎郡福崎町高岡1929 Tel. 0790-22-5931 広島校 広島県 広島市西区草津新町1-21-5 Tel. 082-278-4955 直方校 福岡県 直方市永満寺1463-2 Tel. 0949-28-1144 人吉校 熊本県 人吉市鬼木町梢山1769-1 Tel. 0966-23-6800 *中小企業大学校では、会計情報を経営に活かすための研修「会計アドバンスコース」を開催 しています。詳しくは各大学校のホームページをご覧下さい。 http://www.smrj.go.jp/jinzai/seminar/066588.html -2- 目 次 基本編 1章 中小会計要領を活用すると、どのように企業にプラスになるか・・・・・・・・・・・ 9 2章 財務会計の基本構造を知る・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 3章 キャッシュ・フロー体質を創る・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 4章 財務の構造を理解する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 応用編 5章 事業計画の策定1 重点方針を作る・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 6章 事業計画の策定2 売上予算を作る・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 7章 事業計画の策定3 利益計画を作る・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 8章 事業計画の策定4 資金計画を作りシミュレーションする・・・・・・・・・・・・・・・ 26 9章 事業計画を実現する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 10章 改正税制のポイント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 -3- -4- 基 本 編 -5- 基本編で学ぶこと ・会計の基本は1点だけです。儲け(利益)とお金(資金)の関係を理解することに尽きます。儲 かったら本当にお金があるのでしょうか? この「儲け」と「お金」=「利益」と「資金」の関係を理解できなければどんなビジネスをして も最後は失敗します。 ・経営を行う上で皆さんなりの目標があると思います。この経営目標を実現するためには、経営 活動を行うための資金が必要になります。 ・経営活動で必要な資金(お金)は利益から生まれますが、本当でしょうか? ・利益は売上から生じますが、売上が増えても損失が生ずる場合もあります。 ・会計は、このような経営活動を行う上では不可欠の、売上・利益・資金の関係を分かりやすく 経営者に伝える技術です。言い換えると、正しい経営意思決定を支援する技術です。 -6- 1章 中小会計要領を活用すると、どのように企業にプラスになるか 豊かな生活をしたい=現金があり、財産があり、借金が少ない+社会貢献 ← 経営をする道具(資産)が必要 ← 道具はお金で買う ← お金を増やす方法は3つ 10期 貸借対照表 平成27年3月31日現在 借入金 現金 (借金) (お金) 純資産 資本金+剰余金 (もとで) 固定資産 (財産) お金を増やす方法は3つ ①借金する →後での返済が大変 借入金 (借金) ※豊かでない生活 ※豊かな生活 純資産 (もとで) 11期 貸借対照表 平成28年3月31日現在 借入金 (借金) 現金 パターン1 (お金) 純資産 (豊かな生活の場合) ①現金を増 1千万 資本金+剰余金 ←儲けた利益3千万 (もとで) で現金と固定資産 固定資産 を増加させてます。 (財産) ②固定資産増 2千万 利益 3千万 ②固定資産を売却する →商売ができなくなる ③利益をだす →返済義務のないお金を増やす 一番良い方法は 利益をだす こと! 11期 損益計算書 平成27年4月1日~平成28年3月31日 売上原価 (仕入) 収益 売上 販売管理費 利益 3千万 パターン2 現金 (お金) 固定資産 (財産) 借入金 (豊かでない生活の場合) (借金) ←儲けた利益3千万 ③借入金減 3千万 で借入金を返済してます。 現金や固定資産は増加して 純資産 おらず、儲かったのに (もとで) お金が増えてません。どうして? 利益 3千万 儲けた結果は、①資産増、②負債減 又はその組み合わせが生じます。 財政状態の把握 ~財産と借金はどうなっているのか~ 経営成績の把握 ~儲かっているのか~ 中小会計要領でできること 1 財務の把握 中小会計要領でできること 2 中小会計要領でできること 3 経営改善等 金融機関等との信頼関係 -7- 1. 『財務の把握』 ①「損益計算書」には、売買効率(売上高総利益率) 、経営管理の効率まで含めた売上高営業 利益率、さらに財務効率まで勘案した経常利益率が表示されています。この各種の利益率 を、前年対比、同業対比すると当社の儲ける力(経営成績)が見えてきます。 ②なさそうであるのが借金ですし、ありそうでないのが財産です。当社が長年努力し、儲け を積み上げた結果、どのような財産が増加しているのでしょうか。また、仕入のための資 金や設備を買うための資金のために借りた借金はいくら残っているのでしょうか。厳しい 経済環境を乗り越えるために資金をどのように用意し、借金をいくら返済しなければなら ないかと言ったことの確認は、 「貸借対照表」で把握できます。 ③当社の儲ける力と、財産と借金の現状が把握できれば、将来の方向が見えてきます。 ④IT技術の進歩によって、パソコンも会計ソフトも安く手に入れられ、操作方法も簡単に なっています。日々のほんのちょっとの努力を継続することで、財政状態と経営成績とい う当社にとっての羅針盤が、月単位で把握できます。 2. 『経営改善等』 ①売上高総利益率で当社の売買方法の良し悪しを判断しましょう。 損益計算書の売上高総利益率(粗利益率)を見ると、他社と比較した売買効率が分かりま す。当社は他社と比較して、優れている点はどこか、劣っている点はどこか。仕入方法や 販売方法を工夫するヒントが見えてきます。 ②経常利益(率)で、経営の良し悪しを判断しましょう。 どんな経費が多いのか、金利負担は多いのか少ないのかが見えてきます。 ③売掛金や在庫がたくさんあると、資金繰りが厳しくなります。 在庫切れによる販売ロスと、在庫負担によって発生する資金負担の関係を理解し、資金繰 りの改善ができます。 ④あと何年借金を返さないとならないのかが見えてきます。 借入金合計と、返済原資である利益を比べると、何年で返済できるかが分かります。 後継者への事業継承の時期や、経営改善に必要な年数も判断できるようになります。 ⑤自己資本比率は、創業から現在までの経営努力の凝縮です。 どのように改善して、どのように純資産を増加させていくのかが見えてきます。 ⑥これらの結果、経営を高度化する具体的方法まで落とし込めるので、 「何をしたらよいのか」 といった経営改善に取り組めるようになります。 3-1. 『金融機関等との信頼関係』 金融機関 金融機関は、お客様に対して下記のように思っています。 ①金融機関は借入金を期日どおりに、キッチリ払ってくれるお客様に融資をしたい。 ②将来、設備投資のできる成長企業には、資金をたくさん提供したい。 ③事業計画があり、高い経営力があるお客様に、安心して融資をしたい。 ④財政基盤がしっかりしており、安定している会社は融資額が確実に回収できます。 -8- ⑤国は金融機関に対し、お客様が良い企業になるように指導して欲しいという基本方針(リ レーションシップバンキング)を持っています。そのためにも、経営状況が正しく判断で きる決算書が必要になってきます。 3-2. 『金融機関等との信頼関係』 得意先、仕入先 得意先、仕入先は、取引先に対して下記のように思っています。 ①期日に代金を確実に回収できる、儲けさせてくれるお客様に販売したい。 ②当社の商品をたくさん販売してくれる、経営力のある会社とお付き合いしたい。 ③良い商品を切らさないで供給してくれる、仕入先と取引したい。 ④倒産しない、財政的に安定し成長する仕入先に支援して欲しい。 ⑤良い得意先、仕入先に恵まれて経営することが資金、利益の源泉となります。 4.小規模企業でも取り組めるのが「中小会計要領」です 「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領) 」は、小規模企業も含めた中小企業の実態 やニーズを考えてつくられた新しい会計ルールです。取り組みやすく、経営の高度化を目指す ことができます。 ①経理担当者の人数が少なく、高度な会計処理に対応できる能力や十分な経理体制を持ち合 わせていない小規模企業でも取り組める簡素な会計ルールとなっています。 ②会計情報は、中小企業の主な利害関係者である金融機関、取引先、同族株主等に開示され ることを前提とし、実務上で使われている基本的な項目に限定された会計ルールとなって います。大企業のように不特定多数の株主等への開示は考慮されていないので複雑な会計 処理はありません。 ③必ず行わなければならない法人税の税務申告処理との調和を意識した会計ルールとなって います。 5.会計の活用に取り組む中小企業に対する普及支援策 平成 24 年 2 月に公表された「中小会計要領」や、同じく中小企業向けの会計ルールである「中 小企業の会計に関する指針(中小会計指針)」(注)に従った計算書類を作成する中小企業に対し て、下記のような支援策があります。 ① 日本政策金融公庫(中小企業事業) :「中小企業会計活用強化資金」融資制度 「中小企業の会計に関する基本要領」等に準拠した計算書類を作成し、資金計画等で会計 の活用を目指す中小企業に対して、優遇金利(一例:基準利率▲0.4%)で貸付を行う 融資制度があります。金利については、日本政策金融公庫に個別にお訊ねください。 ② 日本政策金融公庫(国民生活事業) :「会計関連融資制度」 「中小会計要領」又は「中小会計指針」を適用している小規模企業に対して利率を ▲0.1%優遇します。 ③ 信用保証協会: 「中小企業会計割引制度」 -9- 信用保証協会は「中小会計要領」を適用して計算書類を作成したことを税理士(もしくは 税理士法人)又は公認会計士が確認した中小企業に対して、保証料率を▲0.1%割引す る制度を取り扱っています。 (注)「中小会計指針」:一定の水準を保った会計処理を示した中小企業向けの会計ルール。 - 10 - 2章 財務会計の基本構造を知る 1.会計の原理原則をシンプルに理解します。 【コップの水で,貸借対照表,損益計算書,キャッシュフロー計算書を理解する】 会社設立 1年後 売上 100 ①現金売上 ②掛売上 ③現金売上 10ℓ 仕入 95 ①現金仕入 ②現金仕入(悲惨) ③掛仕入(資金潤沢) 1月1日の財産(純資産) 5ℓ 10ℓ 12月31日の財産(純資産) 10万円(10㍑)もって開業しました。1年間の売上は100万、仕入は95万、利益は5 万円でした。はたしてお金はいくら貯まったでしょうか? 同じ条件で会社設立した次の 3 人の人たちのケースで考えてみましょう。 ① 堅実なAさんは、すべて現金取引 ② 優しいBさんは、仕入は現金支払、売上は後日回収 ③ 要領の良いCさんは、売上は現金回収、仕入は後日支払 ①Aさんの場合 すべての商売が現金で行われると、 【儲け】と【お金】は一致します。 ②Bさんの場合 販売しても全ての代金が未回収(売掛金)です。仕入代金を支払うことができないので、 借金をしないと支払できません。また、借金は返さなければなりません。 【儲かって】も【お 金】は無い。これが現実のようです。売掛金が増えるとお金が減少します。 ③Cさんの場合 すべて現金で販売し、支払いは掛のまま残す(買掛金)と、 【儲け】以上に【お金】が残り ます。 会計で一番大切な事は、儲け(利益)とお金(資金)の関係を理解することです。 【儲け=利益】 と 【お金=資金】は必ず一致するとは限りません。 【儲け=利益】 > 【お金=資金】となる場合が実務では多いです。 これが、 「勘定合って銭足らず」です。この事実を知り経営に活かすことが大切です。 - 11 - 2.なぜ儲かるとお金があると思うのでしょうか? 「利益」≠「資金」という事実を知らずに経営をしている経営者が多くいます。理由が明らかになれば経 営上克服する方法はいくらでもあります。 ①世の中には3つの大きな経済計算があります。第一が財政、第二が会計、第三が家計。財政と家計 の共通点は、収入-支出=現預金(財政では 歳入-歳出=収支差額)です。これを単式簿記と呼 びます。会計はこの計算に加え、収益-費用=利益があるので複式簿記と呼んでいます。 支出 費用 = = 現金 利益 = - - = = 収入 収益 全ての取引が現金で決済される場合だけ が、資金(現金)=利益 となる。 みなさんの会社の取引は全て現金ですか? 現金売上 現金仕入 一致 給与は? 地代は? 売上は? 仕入は? ②家計は単式簿記=現金経済。ところが企業会計は複式簿記(上記の2つの計算体系がある)=信用 経済(信用での決済、つまり掛がある)だということを理解しなければなりません。 ③家庭で生まれ家庭の計算体系=現金経済で生まれ育ってきたために、企業経営の計算体系である 会計も単式簿記=現金経済と思い込んでしまうところに間違いが生まれます。 ④現金経済、信用経済以外に、車を買ったらお金が減ります。借金を返済したらお金が減ります(反対 に、借金したら現金が増えます)。常にこのような取引に直面している企業では、利益=資金である はずがありません。 3.貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書 貸借対照表‥‥‥経営をするために使う道具(資産)をどのように使っているか(運用) 、そし て、どのように準備(調達)したかの一覧表。商売の道具は自分で買ったほうがよいですね。 借金で道具(資産)を揃えると、道具を使って利益がでる前に借金の返済に迫られます。→ コップの水のように取引方法が違えば ① ② ③ は大きく異なる。 それぞれの取引ごとの貸借対照表がどう変わるか考えてみるとよくわかります。 損益計算書‥‥‥「道具」を使ってどのように儲けたかの一覧表。どのような取引をしても損 益計算書はみな同じです。損益計算書をみると、どのように儲けたのかがよくわかります。 ① 粗利益率が大きい。売上が多い。商売上手。→売上高総利益 ② 給与を上手に使っている。接待交際が上手。管理が上手い。→営業利益 ③ 借金をしないで商売している。在庫が少ない。過剰投資が無い。→経常利益 ④ 損益計算書も全体を見ましょう。売上ばかり見ていてはいけません。 キャッシュ・フロー計算書‥‥‥お金がどのように増加、減少したかの一覧表。 上記の 3 人のケースで再度確認しましょう。 ①Aさんの場合 現金経済(すべて現金取引)でした。そのため、儲けの5万円が現金で増えました。開始した ときに10万円持っていたので、10万円+5万円=15万円の現金残高となりました。 - 12 - ②Bさんの場合 儲けの5万円は現金で増えるはずです。しかし、売上代金は全額、後日回収するので、入 ってくるはずの現金100万円は入ってきません(売掛金が100万円増えたということで す) 。仕入代金を支払うために、85万円の借入を行い、最初の現金10万円に加算し、現 金を95万円として仕入代金支払いました。 10万円+5万円-100万円+85万円=0 現金は増えません。 問題は100万円の売掛金増加です。 ③Cさんの場合 儲けの5万円が現金で増えました。仕入代金は全額、後日支払ですので、支払うべき現金 95万円は、まだ支払っていません(買掛金が95万円増えたということです) 。 買掛金が95万円増えた分だけ、後日支払うべき現金が95万円増えています。 10万円+5万円+95万円=110万円 と現金残高は大幅に増加します。 貢献したのは95万円の買掛金増加です。 - 13 - 3章 キャッシュ・フロー体質を創る 損益計算書 貸借対照表 現金預金 ↑ ⑪売上債権 ↓ ⑫棚卸資産 ↓ ②仕入 ↓ ⑦買入債務 ↑ ③人件費 ↓ ⑧借入金 ↑ ④減価償却費 ↓ ⑨資本金 ↑ ⑤その他経費 ↓ ⑩剰余金 × ⑬固定資産 ↓ 当期利益 ↑ ①売上 ↑ ⑥支払利息 ↓ ← 当期利益 ↑ ※難しく考えない 貸借対照表も、損益計算書も同じ ↑は増加 ↓ は減少 1.損益計算書で利益をだす まずは、損益計算書で計算される利益を増やすことを考えます。 ①売上を増やす‥‥どのお客さまに、どの商品を販売するのか、いつ販売するのか、販売する方 法があきらかになっていると重点的な販売促進ができます。 ②利益率を上げる‥‥儲かっている商品、儲かっていない商品がわかれば具体的な手が打てます。 儲けの少ない商品は早めに入れ替え、儲けの多い商品を売る努力をします。 ③人件費を下げる‥‥人件費は単価(時給)と数量(時間)で計算されます。このいずれかを下 げると人件費は下がってきます。しかし、人の時給を下げるとは考えず(給与カットではなく)、 仕事にかかる時間を下げると考えて取り組むことが大切となります。 ④減価償却費を下げる‥‥減価償却費は固定費で一度決まれば金額は下げられません。購入時の 意思決定が一番大切になってきます。そして固定資産を購入したらトコトン使いましょう。 ⑤諸経費を下げる‥‥諸経費を下げるためには予算による管理が一番妥当と思われます。予算に よる管理を行うためには、自社のパソコンで会計処理を行うことが一番です。 ⑥支払利息を下げる‥‥金融機関を変える、金利交渉をするといったことではありません。借入 金が発生した元(売上債権、在庫、投資)を減らし、借入金自体を減らすことが、支払利息を下げ ることにつながります。 2.貸借対照表で現預金を増やす 損益計算書の利益が貸借対照表の純資産を増加させます。この増加した純資産をどう使うかで 現預金が変化します。また、利益以外で現預金を増加させる方法も考えます。 ⑦買入債務を増やす‥‥買掛金、支払手形を増やせば(払わない)現預金は増加するが商品の入 荷はストップします。商人としての信義則を遵守し期日に確実に支払いましょう。また、仕入れ 条件(支払が長い)仕入先を探すことも大切です。 ⑧借入金を増やす‥‥借金を増やす、返済しなければ現預金は一時的に増加します。しかし、増 えた借金は返済しなければならないし、金融機関は借金を返済しない人・企業にはお金は貸しま せん。買入債務と同様、かならず返済しなければなりません。 ⑨資本金を増やす、⑩剰余金を増やす‥‥増資はめったに無いでしょう。剰余金は過去の利益の - 14 - 積み上げです。この2つの勘定で現預金を増加させることはなかなかできません。 ⑪売上債権を減らす‥‥売上が増加した割合だけ受取手形・売掛金が増加するのは仕方がありま せん。しかし、この金額(残高)を減らすことができれば“お金”は増えてきます。 → 回収管理を実施し、良いお客様をもつことです。 ⑫在庫を減らす‥‥在庫はお金になっていないが、仕入代金は支払っているためその分お金があ りません。売上債権と異なり在庫を減らすということは各人の取り組みで実現できます。→ 適正 在庫で管理し、過剰在庫、デッドストックをもたないことです。 ⑬固定資産を減らす‥‥車(資産)とお金の交換なので当然のようにお金は減少します。→ 経 営する上で本当に必要な固定資産だけを購入しましょう。不要な資産は処分し、身の丈に合った 経営をしましょう。 3.キャッシュ・フロー体質を創る3つの考え方 (1)利益=収益-費用 原理原則1 利益はどのように計上されるか 利益は上記のように差額として計算されます。そうであるならば、それぞれを増減させれば良 い。この当たり前のことが売上総額至上主義になって忘れられている。 ①売上は総額ではなく、商品別、得意先別、月別に確実に把握しましょう。 ②売上だけを考えるのではなく、粗利益額を考えて、確実に把握しましょう。その際、粗利益率 にも注意して商売をしましょう。 ③諸経費の金額に注意を払いましょう。本当に経営上必要な経費かどうかを判断し、習慣で発生 している経費であれば、再度見直しをしましょう。 ④金利の削減も大切です。金利を発生させる元(売上債権、在庫、投資)の削減を考えましょう。 (2)利益≠資金 原理原則 2 利益と資金の関係を理解する 利益と資金の因果関係はありますが、この2つは等しくはなりません。実務では 利益>資金と なる傾向があります。儲かってもお金がないというのが多くの方が感じている現実です。この現 実をいかに 利益=資金 に近づけるかがポイントになります。 ① 資産が増えると → 資金は減る。 売上債権、在庫を増加させないように気を配ります(できれば削減する) 。経営上、収益性に貢献 できていない固定資産は増加させないように注意します(遊休資産は売却する) 。 ② 負債が増えると → 資金は増える。 仕入先からの信用供与(資金提供)に感謝することは大切ですが、安易に仕入をしないようにし ましょう。金融機関からの借入金で一時的資金は増加しますが、必ず返済することを忘れないで ください。 (3)P → D → C → A を回す 原理原則 3 計画を策定し、常に反省・改善する 理解した利益と資金の原理原則を計画として策定することとなります。みなさんの“想い”を 形にし、迅速に実績を把握し、計画との対比を行い、日々反省と改善を繰り返すことでキャッシ ュ・フロー体質は実現します。コツコツ実践する以外に近道はありません。 - 15 - - 16 - 0.0% - - - - - 9,100 100 700 700 8,500 3,570 Ⅲ販売管理費 □営業利益 Ⅳ営業外収益 Ⅴ営業外費用 支払利息 □経常利益 法人税等 □当期利益 合計 15,000 30.0% 非緩特殊ネジ 55,000 11.1% 1.0% 10,000 船舶用特殊ネジ 5.0% 伸び率 30,000 第1期 第2期 売上予算 ボルト・ナット 製品名 その他経費 4,930 - 15,000 10.0% 6,000 10.0% - 21,000 □売上総利益 人件費 30,100 減価償却費 - 3,000 10.0% 900 0.0% 諸経費 人件費 1,000 10.0% 20,000 10.0% 第1期 伸び率 55,000 11.1% 24,900 - 材料費 Ⅱ売上原価 Ⅰ売上高 勘定科目 61,100 19,500 10,100 31,500 第2期 5,846 4,234 420 10,080 100 420 6,600 10,400 16,500 23,100 1,200 33,500 3,300 22,000 1,100 61,100 27,600 第2期 2期間 損益計算書(第2期 利益計画) 4章 財務の構造を理解する 36,070 70,000 33,930 4,930 9,000 63,787 39,776 5,846 13,930 20,000 18,000 24,011 30,000 20,000 4,234 3,570 1,777 63,787 2,500 50,000 40,000 18,800 15,000 70,000 3,222 4,333 3,000 2,000 ▲12,568 第2期 第1期 10,000 ▲6,213 5,846 営業CF 財務CF 投資CF 期末現預金残高 期首現預金残高 当期CF 借入金減少 Ⅲ財務CF 土地増加 機械装置増加 Ⅱ投資CF 法人税 買掛金減少 在庫増加 売掛金増加 減価償却費 税引前利益 Ⅰ営業CF ②上記①の結果在庫や売掛金が増えるのは仕方ない。仕入先への支払条件を改善する。 ⑤上記のような計画を立案すると会社の財務状態はどうなりますか? ④利益がでるので機械を導入し,隣接する土地倉庫用に買収する。 ③借入金の返済は月1,000千円,年間12,000千円ある。 (単位:千円) ▲12,000 ▲10,000 ▲5,000 ▲3,570 ▲723 ▲1,222 1,200 ▲1,333 10,080 ▲12,568 10,000 ▲12,000 ▲22,568 ▲15,000 4,432 第2期 キャッシュ・フロー計算書 ①非緩ネジは当社の特許製品。絶対に緩まず,中国でも真似ができない。積極的に販売する。 次期計画の要約 通常現金はマイナスになりません。 916 4,930 0 ▲12,059 ▲12,000 664 ▲723 ▲6,213 10,000 3,800 1,222 1,333 増減 ▲22,568 現金がマイナスになってます。倒産です!! □純資産・負債合計 □純資産合計 当期利益 繰越剰余金 資本金 □負債合計 借入金 未払法人税 買掛金 □資産合計 土地 機械装置 在庫 売掛金 現金 勘定科目 2期間 貸借対照表(第2期 資金計画) 儲かっても金がありません。これでは経営は成り立ちません。 応 用 編 - 17 - 応用編で学ぶこと ・経営の羅針盤としての利益・資金計画の作り方です。 ・利益・資金計画が出来れば①金融機関への信頼、②経営の方向性が定まり、経営資源を集中で きます。是非マスターして自社の利益・資金計画を作ってみてください。 - 18 - 5章 事業計画の策定 1 重点方針を作る 1.事業計画は経営者の“想い” こんな会社にしたいと“想う”ことが利益・資金計画です。その“想い”を形にすることで、 利害関係者の理解と支援を得ることができます。 ①金融機関は、資金を供給した貴社がどのような経営をしていくのかに関心があります。 ②取引先は、協調協力関係をどのように築いていくのかを決めるでしょう。 ③スタッフは会社の今後の方針と、自らがなさなければならない課題が明確になります。 ④経営者は事業計画を基準として経営管理を行うことができるようになります。 重点方針 売上予算 ①市場 ②商品 ③価格帯 ④販売方法 ①商品群・得意先別の売上 ③月別に計上した一覧表 利 資 売上予算 = だれに、どの商品を、いつ売 = 資金の 根本 を稼ぐ るのか、販売方法は 益 金 粗利益予算 = だれが儲けさせてくれるか、 = なにを売れば儲かるか 売上を利益にする 計 計 回収予算、在庫予算 = 売掛金はいつ回収するか、 = 在庫はどれくらいもつか 利益を資金に変える 画 画 諸経費予算 ①人件費の水準 ②減価償却費 ③その他の経費でザックリ計上 2.重点方針を作る 重点方針とは何でしょうか。経営者として実現したい目標は沢山あります。しかし、中小企業 は経営基盤が弱いのが通常です。「自社の努力で取り組める」 「頑張れば1年程度で結果が生まれ る」といった課題を明確に絞り込んだアクションプランが重点方針です。沢山はできません。4 つでまとめるとよいでしょう。 ① どのお客様を狙うか=市場の選択。 ② どの商品に力をいれて販売していくか=重点商品の決定。 ③ どれくらいの価格帯で勝負をするか=価格の決定。 ④ どのような販売方法で勝負するか=販売促進方法。 この4つでまとめた重点方針を作ることで経営資源が乏しい中小企業でも集中の効果が生まれ ます。この重点課題を着実に取り組むことで 計画=“想い”は実現されるのです。 - 19 - 6章 事業計画の策定 2 売上予算を作る 1.売上予算作成は全ての事業者の必須条件 商品、得意先に対する売上が商売の中心です。売上が計上できて初めて、利益、資金が計上で きるし、この資金(お金)で生活が成り立ちます。ところがこの一番大切な売上に対する目標が 立てられていないのが現状です。目標があれば目標を達成するように行動できますが、目標がな ければ日々同じことを繰り返すことになりがちです。変化が速い経済であればあるほど、目標を 立て(P)、実行し(D)、チェックし(C)、改善(A)を繰り返す必要があります。 2.売上予算をなぜ作ることができないのか 作ることができない理由は簡単です。意志が無いからです。想いが無いからです。そのように 考えることが必要です。こうしたいという熱い想いがあれば到達地点である目標を作ることがで きるはずです。売上予算を作成することが難しい、面倒だという理由をつけて自分の想いを放棄 しているのと同じと考えます。放棄したところに目標の達成はあり得ません。 3.売上予算を作る ①まず、1年間にいくら売りたいかを決めることです。エイヤーでも構いません。この金額を、 商品、得意先別、担当者等に割り振って年間売上を決めてしまいます。経営者なら決めること ができます。 ②次は、この商品群、得意先別、担当者別売上を月別に計上します。こうすると、月別での売上 の変化や、各月での実現可能性が見えてきます。1年間の大きな売上ではなく、月別売上とし て小さくしてみると実現可能性が見えてくるのです。 ③毎月の売上高で実現可能性を検討します。法人企業であれば法人税申告書の事業概況書に毎月 の売上高が計上されています。個人事業でも所得税申告の際に月別の売上が計上されています。 こういった過去の月別売上を参考にするのは一つの方法です。 ④こういった作業を何度も繰り返すことで作成される一覧表が売上予算です。売上予算を作りな がら、重点商品、重点顧客、販売の中心となる価格帯、具体的な販売促進方法が決まってきま す。これを文書化すれば販売戦略になります。 ⑤売上予算の策定は電卓で行うからできません。パソコンを使い、表計算を使うことです。 4.売上予算を作るプロセスが大切 結果も大切だが経過も大切 ①1人で売上予算を作るから実現可能性が低くなります。誰が日々の販売活動を支えているので しょうか?従業員であり、配偶者でしょう。売上予算を作るプロセスに関係者も参加してもら うことで計画の実現可能性は高くなります。 ②「三人よれば文殊の知恵」みんなの知恵を出してもらいながら参加意欲を刺激します。 - 20 - - 21 - ~ 44,229 37,081 29,211 28,352 20,276 18,111 4 クロワッサン類 5 サンド類 6 バラエティブレッド類 7 食パン類 8 ケーキ類 9 ドーナッツ類 28,993 1,487 1,652 2,478 2,643 2,891 3,635 4,378 4,709 5,120 28,993 1,487 1,652 2,478 2,643 2,891 3,635 4,378 4,709 5,120 30,523 重 点 販 売 方 針 1,566 1,739 2,608 2,783 3,044 3,826 4,609 4,956 5,392 2016年 6月 30,523 25,000 具材の産地等を表示し,高品質であることをアピールしながら,単価 を上げながら,売上を増加させる。 このまま自然増で売上が増加する。 季節限定商品を作り,購入意欲をかきたて,売上を増加させる。 3 総菜パン類 4 クロワッサン類 5 サンド類 このまま自然増で売上が増加する。 新商品(製品)の提供によって売上を増加させる。 8 ケーキ類 9 ドーナッツ類 10 販売単価を改定して、売上高を増加させる。 7 食パン類 0 5,000 10,000 15,000 20,000 30,000 6 バラエティブレッド類 販売数量を増加して、売上高を増加させる。 1,566 1,739 2,608 2,783 3,044 3,826 4,609 4,956 5,392 2016年 9月 35,000 21,353 1,090 1,217 1,826 1,947 2,130 2,678 3,226 3,469 3,770 2016年 8月 キャラクターパンや動物パンを開発し,売上を増加させる。 30,523 1,566 1,739 2,608 2,783 3,044 3,826 4,609 4,956 5,392 2016年 7月 商品別売上予算 2 お菓子パン類 1 フランス(ハード)類 得意先を差別化(囲い込んで)売上の増大を図る。 № 商品(商品群)名称 351,000 18,000 20,000 30,000 32,000 35,000 44,000 53,000 57,000 62,000 2016年 5月 第25期 商品別売上予算 を実現する販売方針 343,659 51,858 3 総菜パン類 合 計 55,054 2 お菓子パン類 10 59,487 1 フランス(ハード)類 2016年 4月 2017年3月 № 商品(商品群)名称 前年実績 予算合計 2016年4月 30,523 1,566 1,739 2,608 2,783 3,044 3,826 4,609 4,956 5,392 2016年 10月 28,993 1,487 1,652 2,478 2,643 2,891 3,635 4,378 4,709 5,120 2016年 12月 売上予算の推移 30,523 1,566 1,739 2,608 2,783 3,044 3,826 4,609 4,956 5,392 2016年 11月 28,993 1,487 1,652 2,478 2,643 2,891 3,635 4,378 4,709 5,120 2017年 1月 30,522 1,566 1,739 2,608 2,783 3,044 3,826 4,609 4,956 5,391 30,538 1,566 1,741 2,614 2,783 3,042 3,826 4,608 4,959 5,399 (単位:千円) 2017年 2017年 2月 3月 7章 事業計画の策定 3 利益計画を作る 1.販売管理費は3つの費目で考える 損益計算書には経費の勘定科目が沢山あることが分かります。このすべての勘定科目で予算を 立てると考えると大変です。最初は3つの大きな経費にまとめて考えるとよいでしょう。 ①人件費 役員報酬、給料、賞与、法定福利費、福利厚生費の合計が人件費です。会社で働く人に関する 経費と考えると良いでしょう。人件費は、どのような人材(給与水準)を、どれだけ使うか(就業 時間)で考えます。具体的には昇給率と、新規採用(定年退職)等を考慮して決めます。 ②減価償却費 減価償却費を計算するのは難しいです。会計事務所に次期の予測金額を教えてもらいます。次 期に設備投資を予定していればこの減価償却額を勘案して計算します。 ③その他の経費 その他の経費は、売上と比例する変動費と、売上とはあまり連動しない固定費に区分し、月別 売上に応じて計上します。 2.営業外損益、特別利益 営業外費用は金利だけを考えればよいでしょう。金融機関への返済一覧表から計算できます。 営業外収益の受取利息はほとんど無い時代です。特別損益は特別なので計上は不要です。 3.月別利益計画の考え方 ①毎月利益が計上されていなければならないのか? 月別利益計画を策定する際に、毎月利益が計上出来ないといけないという専門家がいます。閑 散月もあるし、繁忙月(繁忙期)もあります。こういった季節変動を考慮して月別利益計画を策 定します。 ②閑散月(閑散期)にすべきこと 閑散月にしかできないことがあります。イ)体を休めておく。有給休暇を消化しておく。ロ) 仕事を標準化・改善しておく。ハ)新商品の種まき・営業活動に取り組む。ニ)整理・整頓を実 施しておく。ホ)棚卸をして在庫を把握しておく。こういった閑散期にしかできない作業に取り 組むことです。閑散期をどう過ごすかで経営は変わります。 ③繁忙月(繁忙期)にしてはいけないこと 繁忙期に頑張ってはいけません。普通に仕事をすれば普通以上に売上があがり、利益がでるの が繁忙期です。それでなくとも忙しいのに無理して頑張るからクレームが発生します。 遅くまで仕事をするから怪我や病気になります。繁忙期は、閑散期で準備した仕事を淡々とこな す時期と考えます。 - 22 - - 23 - 2,703 5,745 法人税等 当期純利益 0 8,448 特別損失 税引前当期純利益 0 8,448 特別利益 2,558 経常利益 144 営業外費用計 雑損失 支払利息割引料 2,414 2,140 営業外収益計 営業外費用 2,138 2 8,866 219,284 96,225 9,719 113,340 228,150 雑収入 受取利息配当金 営業外収益 営業利益 販売管理費計 その他販売管理費 減価償却費 人件費 販売管理費 売上高総利益 65.0% 122,850 売上原価 売上高総利益率 351,000 年間予算 ~ 売上高 勘定科目 2016年4月 - - 543 0 0 543 213 12 201 178 178 0 578 18,267 8,012 810 9,445 18,845 65.0% 10,148 2016年 4月 28,993 - - 543 0 0 543 213 12 201 178 178 0 578 18,267 8,012 810 9,445 18,845 65.0% 10,148 2016年 5月 28,993 2017年3月 販売費及び一般管理費の当期予算の設定 勘定科目 予算額 前期の金額 伸び率 人件費実績 110,039 3.0% 113,340 減価償却費実績 10,799 -10.0% 9,719 その他販管費実績 91,643 5.0% 96,225 - - 1,496 0 0 1,496 213 12 201 178 178 0 1,531 18,309 8,054 810 9,445 19,840 65.0% 10,683 2016年 6月 30,523 - - 1,496 0 0 1,496 213 12 201 178 178 0 1,531 18,309 8,054 810 9,445 19,840 65.0% 10,683 2016年 7月 30,523 第25期 - - -4,213 0 0 -4,213 213 12 201 178 178 0 -4,178 18,057 7,802 810 9,445 13,879 65.0% 7,474 2016年 8月 21,353 - - 1,496 0 0 1,496 213 12 201 178 178 0 1,531 18,309 8,054 810 9,445 19,840 65.0% 10,683 2016年 9月 30,523 - - 1,496 0 0 1,496 213 12 201 178 178 0 1,531 18,309 8,054 810 9,445 19,840 65.0% 10,683 2016年 10月 30,523 利益計画(月別利益計画) - - 1,496 0 0 1,496 213 12 201 178 178 0 1,531 18,309 8,054 810 9,445 19,840 65.0% 10,683 2016年 11月 30,523 販売費及び一般管理費の固定費,変動費の設定 諸経費の配分基準 人件費 その他販売管理費 固定費割合を入力 100.0% 90.0% 変動費割合を入力 0.0% 10.0% - - 543 0 0 543 213 12 201 178 178 0 578 18,267 8,012 810 9,445 18,845 65.0% 10,148 2016年 12月 28,993 - - 543 0 0 543 213 12 201 178 178 0 578 18,267 8,012 810 9,445 18,845 65.0% 10,148 - - 1,495 0 0 1,495 213 12 201 178 178 0 1,530 18,309 8,054 810 9,445 19,839 65.0% 10,683 (単位:千円) 2017年 2017年 1月 2月 28,993 30,522 税金の設定 実効税率 均等割税額 32.0% 80 - - 1,512 0 0 1,512 215 12 203 182 180 2 1,545 18,305 8,051 809 9,445 19,850 65.0% 10,688 2017年 3月 30,538 8章 事業計画の策定 4 資金計画を作りシミュレーションする 1.利益計画からキャッシュ・フロー計算書を作成する ①利益がないと始まりません。赤字による資金減少から始まると資金繰りが大変になります。 ②減価償却費は非現金支出費用なので、現金は流出していないので必ず加算します。 ③売上が増加した割合だけ売掛金、受取手形が増加してもよいですが、それ以上の増加は資金繰 りを圧迫します。 ④売上が増加した割合だけ在庫は増加してもよいですが、増加分が資金負担となるため、在庫を 削減するような努力をします。売掛金、受取手形と異なり、在庫は自社の努力で圧縮が可能で す。マメに棚卸を実施する、基準在庫の設定、発注方式の見直し等を実施します。 ⑤買掛金等は仕入が増加した割合だけ増加します。支払は絶対伸ばしてはいけません。 ⑥設備投資を行った分だけ資金は減少します。利益の増加による資金増加で賄えない場合は、借 入金で資金調達することを考えます。また、遊休資産を処分すれば資金を調達できます。 ⑦借入金の返済額の分だけ資金は減少することを忘れてはいけません。利益と同額だけ借入金の 返済があれば資金は増加しません。 2.利益・資金のシミュレーションを何度も繰り返す 上記の手順で計算した期末の現金預金残高は、通常は期首現預金残高と同額かそれ以上でなく てはいけません。この期末現金預金残高の金額が期首現金預金残高を下回った場合は以下の手順 で事業計画を作り直す必要があります。 ①利益を増加させる。利益計画の見直しを行う。 売上を増やす、売価を見直す、数量の増加が可能かを検討します。得意先別、商品別、季節別 の売上、販促方法を見直します。仕入価格の見直し、仕入先の変更はできないでしょうか。 諸経費(人件費、その他諸経費)を検討します。設備投資を検討し、金利負担を軽減します。 ②売掛金、受取手形は売上の増加割合以上に増えていないでしょうか。売上が減少している場合 は、売上の減少割合(例えば 10%の下落)以下で減少(8%の下落)していないかを確認し、回 収管理についての行動目標と、回収方法、売上債権残高の目標を見直します。 ③在庫は自社の努力で削減が可能です。確実に棚卸を行い、デットストック等を把握するなどの 行動目標を定め、在庫金額の削減目標を見直します。 ④買掛金、支払手形はきつくても増やしてはいけません。信用不安の原因になります。 ⑤設備投資を控え、投資金額を見直します。遊休資産、不要資産を売却し資金を用意します。 ⑥金融機関との信頼関係を維持するためにも、借入金は確実に返済します。返済した結果として 資金が不足することが明らかな場合は、金融機関に相談します。事業計画の段階で相談してお けば、借り換え、短期資金等の支援を受けることが可能です。 - 24 - - 25 - Ⅰ.営業活動によるキャッシュ・フロー 税引前利益 減価償却費 受取手形 売掛金 棚卸資産増加 (CF減少) 支払手形 買掛金増加 (CF増加) 法人税等支払額 営業CF調整額 営業活動によるキャッシュ・フロー Ⅱ.投資活動によるキャッシュ・フロー 固定資産売却による収入 土地・建物取得による支出 機械装置取得による支出 車輌運搬具取得による支出 工具器具備品取得による支出 その他取得による支出 投資CF調整額 投資活動によるキャッシュ・フロー Ⅲ.財務活動によるキャッシュ・フロー 短期借入金借入による収入 短期借入金返済による支出 長期借入金借入による収入 長期借入金返済による支出 財務活動によるキャッシュ・フロー Ⅳ.現金の増加額 Ⅴ.現金の期首残高 ※3 Ⅵ.現金の期末残高 500 ▲500 10,000 ▲8,400 0 0 ▲12,000 ▲400 0 0 8,448 9,719 0 0 ▲300 0 130 ▲2,703 第25期 キャッシュ・フロー計算書 1,600 4,494 42,255 46,749 ▲12,400 15,294 (単位:千円) 新規借入額 年間返済額 財務CF2 新規借入額 年間返済額 財務CF1 投資CFの明細 投資CF 売却価格 購入価格 0 400 12,000 合計 ※2 ↑ その他 0 400 合計 購入金額 工具器具備品 400 0 車輌運搬具 工具器具備品 購入金額 車輌運搬具 12,000 ワゴン車 12,000 機械装置 他は計画期のデータとなります。 現金増減判定 増減割合 予算 増減額 351,000 7,341 - 2.1% 0 0 0.0% 0 0 0.0% 1,326 300 減少 0 0 0.0% 6,225 130 増加 0.0% 32.0% ※1 昨年実績だけは昨年のデータです。 3,600 東大和銀行 東大和銀行 4,800 D銀行 10,000 D銀行 長 期 借 入 金 桜ケ丘信用金庫 日本政策公庫 500 500 桜ケ丘信用金庫 日本政策公庫 短 期 借 入 金 経営者 友人 500 500 0 合計 10,000 8,400 合計 購入金額 0 12,400 合計 300 (単位:千円) 増減調整 - ※2 G11,K11の明細はありません。購入価格をG13,K13セルに直接入力してください。 合計 機械装置 石窯 ※2 ↑ 土地・建物 昨年実績※1 営業CF 売上高 343,659 受取手形 0 売掛金 0 棚卸資産 1,026 支払手形 0 買掛金 6,095 法人税の実効税率 キャッシュ・フロー計算書作成根拠 9章 事業計画を実現する 事業計画を実現するためには P → D → C → A の流れを確実に回していくことが必要 です。 すでに P(プラン)は事業計画という形で完成しています。D(ドゥー)も日々の業務を遂行 することで終了しています。後はC(チェック)とA(アクション=改善)です。 1.売上をチェックする 売上をチェックするには、売上実績が把握されていなければいけません。 商品別の予算は作成されているので、商品(製品)毎の実績売上を把握し、予算と対比させる (予算実績検討)ことで、予算に対しての達成状況が把握できます。この原因を明らかにするこ とがC(チェック)で、対策を立てるのがA(アクション=改善)になります。 2016年8月 予算・実績検討表 当月予算 当月実績 累計予算 累計実績 商品(商品群)名称 差額 達成率 2016年8月 2016年8月 2016年8月迄 2016年8月迄 ビール 4,220 3,460 ▲ 760 82.0% 38,720 40,590 日本酒 4,440 5,461 1,021 123.0% 31,800 34,963 焼酎 3,130 2,974 ▲ 156 95.0% 23,910 25,198 ウイスキー 1,960 2,136 176 109.0% 22,850 22,580 その他リキュール 1,080 994 ▲ 86 92.0% 7,900 8,546 タバコ 630 636 6 101.0% 6,040 5,845 醤油・調味料 560 655 95 117.0% 5,400 5,418 おつまみ・嗜好品 320 266 ▲ 54 83.1% 3,450 3,460 クリーニング取次料 250 265 15 106.0% 2,530 2,546 宅配便 410 406 ▲4 99.0% 2,480 2,433 合 計 17,000 17,253 253 101.5% 145,080 151,579 2.利益計画の予算実績検討 (単位:千円) 差額 1,870 3,163 1,288 ▲ 270 646 ▲ 195 18 10 16 ▲ 47 6,499 達成率 104.8% 109.9% 105.4% 98.8% 108.2% 96.8% 100.3% 100.3% 100.6% 98.1% 104.5% ~自計化(自社で月次決算ができること)が前提です~ 売上の予算実績検討で問題点が把握できたら、次は月次試算表と月別利益計画を対比させるこ とで諸経費の無駄等をチェックできます。諸経費の無駄が明らかになったら、原因を明らかにし て対策を決定します。この際、月次試算表が迅速に作成されていなければなりません。 IT化以前は、翌月の20日~25日を目処に作成されなければならないと言われていました が、今は翌月の5日前後が目標といえるでしょう。 3.資金計画は資金繰り表で 資金計画を月次試算表でチェックすることは難しいでしょう。 資金計画は各社の実態にあわせた資金繰り表を用意し、最低でも3ヶ月先まで、できれば常に 6ヶ月先を考えた資金繰りを行う必要があります。 - 26 - 資 金 繰 り 表 項 目 2016年5月 2016年6月 2016年7月 2016年8月 2016年9月 2016年10月 Ⅰ.経常資金収支 (1) 現金売上 300 万 400 万 350 万 380 万 290 万 350 万 (2) 売掛金現金回収 200 万 180 万 190 万 190 万 210 万 180 万 計 500 万 580 万 540 万 570 万 500 万 530 万 (1) 買掛金現金支払 260 万 280 万 300 万 300 万 310 万 280 万 (2) 諸経費現金支払 100 万 100 万 100 万 100 万 100 万 100 万 計 360 万 380 万 400 万 400 万 410 万 380 万 営業資金収支過不足 140 万 200 万 140 万 170 万 90 万 150 万 Ⅱ.財務等資金収支 (1) 長短期借入金借入 100 万 計 100 万 0 万 0 万 0 万 0 万 0 万 (1) 長短期借入金返済 70 万 70 万 70 万 170 万 70 万 70 万 計 70 万 70 万 70 万 170 万 70 万 70 万 財務等資金収支過不足 30 万 ▲ 70 万 ▲ 70 万 ▲ 170 万 ▲ 70 万 ▲ 70 万 総合資金収支過不足 170 万 130 万 70 万 0 万 20 万 80 万 前月繰越 1,000 万 1,170 万 1,300 万 1,370 万 1,370 万 1,390 万 次月繰越 1,170 万 1,300 万 1,370 万 1,370 万 1,390 万 1,470 万 - 27 - 10 章 改正税制のポイント ここでは、中小企業にとって関連すると思われる税制改正のポイントを説明します。 1.法人税率の引き下げ 「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」という考え方を背景として、 「稼ぐ力」のある企 業等の税負担を軽減することにより、企業の収益力拡大に向けた前向きな投資や継続的・積極的 な賃上げが可能な体質への転換を促すことを目的として、現行 23.9%の法人税の税率が下記のよ うに引き下げられます。 (1)平成 28 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度 23.4% (2)平成 30 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度 23.2% 上記の改正により、中小法人の法人税の税率は、下記の通りとなります。 税率 年 800 万円以下の金額(中小法人の特例) 15% 年 800 万円超の金額 平成 28 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度 23.4% 平成 30 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度 23.2% (注 1)中小法人とは、資本金 1 億円以下の法人となります。 (注 2)上記の改正により、法人の実効税率(法人の実質的な所得に対する税金負担割合=法人 税だけでなく、法人県民税、法人市民税、事業税等まで考慮した実質的な負担割合)は 約 30%程度となります。 2.建物附属設備及び構築物の償却方法 平成 28 年 4 月 1 日以後に取得をする建物附属設備及び構築物の償却の方法については、下記 の通り、定額法に一本化されます。 改正前 届出によって 選択可能な方法 建物附属設備 及び構築物 改正後 届出をしない場合 定額法及び定率法 定率法 定額法 3.少額減価償却資産の即時償却制度の延長 青色申告をしている中小企業者が取得した 30 万円未満の資産(合計 300 万円限度)につき、 取得時に全額経費とすることができる制度については、対象となる法人から「従業員 1000 人超 の法人」が除外され、適用期限が平成 30 年 3 月 31 日までの取得等に延長(2 年延長)されます。 (注)中小企業者とは、資本金 1 億円以下の法人のうち、資本金 1 億円超の大規模法人の子会社 等以外となります。 - 28 - 4.交際費の損金不算入制度の延長 法人が支出する交際費の損金不算入制度については、制度の内容についての変更はありません が、適用期限が平成 30 年 3 月 31 にまでに開始する事業年度まで延長(2 年延長)されます。 5.通勤手当の非課税限度額の引上げ 給与所得者の通勤手当や通勤定期券代について、通勤に必要な交通機関の利用などで一般の通 勤者に通常必要と認められるものについての非課税限度額が、月額 10 万円から月額 15 万円に引 き上げられます。 この改正は、平成 28 年 1 月 1 日以後に受けるべき通勤手当について適用されます。 6.地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設 青色申告をしている法人が、地域再生法の認定地方公共団体に対して、その認定地方公共団体 が行ったまち・ひと・しごと創生寄附活用事業に関連する寄付をした場合には、現行の寄付金の 損金算入制度に加えて、法人事業税・法人住民税及び法人税から一定の金額が税額控除されます。 (寄付をした金額の約 6 割程度の税負担軽減となります) ただし、法人税額の 5%、法人事業税の 20%、法人住民税の 20%が税額控除の限度額となりま す。 ※ 平成 26 年 4 月 1 日より消費税率が 8%になりましたが、消費税転嫁対策については地域の商 工会議所、商工会、認定支援機関等の開催するセミナーをご利用ください。そのため、消費税に 関する改正内容については、割愛させていただきました。 - 29 - - 30 - - 31 - - 32 - - 33 - 平成28年度 中小企業大学校 中小企業会計啓発・普及セミナー ~企業の持続的発展を目指す会計~ 独立行政法人 中小企業基盤整備機構 人材支援グループ 〒105-8453 東京都港区虎ノ門3-5-1 虎ノ門37森ビル Tel.03-5470-1645 Fax.03-5470-1561 http://www.smrj.go.jp/jinzai/seminar/001398.html 28.4 - 34 -