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商学研究所報
ISSN 1345−0239 第36巻 第5号 商学研究所報 2005年3月 専修大学商学部創設40周年・商学教育100周年記念 専修大学商学部・商学研究所共催シンポジウム 学校と市民がつくる地域の未来 −高校・大学生によるまちづくり体験− 【パネリスト】 「GESTOREおだわら」 神奈川県立小田原城東高校 「横浜お試しイロハハハ計画(U18・Y校バージョン)」 神奈川県横浜市立横浜商業高校 「(株)商店街ネットワーク」 早稲田大学ほか 「江古田計画」 武蔵大学・日本大学芸術学部・武蔵野音楽大学 「ショッピングモールシスターズ」 「安芸人力組」 広島修道大学 「専修ナビ(専大生によるキャンパスナビ@生田緑地)」 専修大学商学部 【コーディネータ】 神 原 理 専修大学商学部 助教授 専修大学商学研究所 専修大学商学部創設 40 周年・商学教育 100 周年記念 専修大学商学部・商学研究所共催シンポジウム 学校と市民がつくる地域の未来 ― 高校・大学生によるまちづくり体験 ― 日時・・・11 月7日(日) 16:00∼18:00 場所・・・専修大学生田校舎341教室 主催・・・専修大学商学部・商学研究所 後援・・・川崎市多摩区役所 【パネリスト】 ➢「GESTORE おだわら」神奈川県立小田原城東高校 ➢「横浜お試しイロハハハ計画(U18・Y 校バージョン)」神奈川県横浜市立横浜商業高校 ➢「㈱商店街ネットワーク」早稲田大学ほか ➢「江古田計画」武蔵大学・日本大学芸術学部・武蔵野音楽大学 ➢「ショッピングモールシスターズ」 「安芸人力組」広島修道大学 ➢「専修ナビ(専大生によるキャンパスナビ@生田緑地)」専修大学商学部 <目次> 専修大学商学部創設 40 周年・商学教育 100 周年記念 専修大学商学部・商学研究所共催シンポジウム 学校と市民がつくる地域の未来 ― 高校・大学生によるまちづくり体験 ― Ⅰ.主催者・後援者挨拶 1.専修大学商学部長 大西勝明 2.川崎市多摩区長 金作幸男 Ⅲ.高校生によるまちづくりの成功体験 1.「GESTORE おだわら」神奈川県立小田原城東高校 2.「横浜お試しイロハハハ計画(U18・Y 校バージョン) 」 神奈川県横浜市立横浜商業高校 Ⅳ.大学生によるまちづくり成功体験 1.「㈱商店街ネットワーク」早稲田大学ほか 2.「江古田計画」武蔵大学・日本大学芸術学部・武蔵野音楽大学 3.「ショッピングモールシスターズ」 「安芸人力組」広島修道大学 Ⅴ.多摩区における専修大学の活動 1.「専修ナビ(専大生によるキャンパスナビ@生田緑地) 」専修大学商学部 2.専修大学商学研究所による多摩区との連携活動 Ⅵ.主催者挨拶 ・専修大学商学研究所所長 上田和勇 専修大学商学研究所 渡辺達朗 Ⅰ.シンポジウムの趣旨と各校の活動概要 <シンポジウムの趣旨> 専修大学商学研究所では、2002 年9月より「大学と地域の共生―まちづくりを中心に―」 というテーマのもと、実態調査研究プロジェクトを立ち上げ、多摩区役所との情報交換を行 いながら生田緑地の活性化を中心に調査・研究活動を行ってきました。また、商学部は創設 40 周年をむかえ、これまで培ってきた学内の知的財産にもとづいた地域貢献活動を記念事業 として計画・実施しています。 今回のシンポジウムは、こうした活動の一環として、地域社会における学校(高校や大学) の役割について先行事例から学ぶとともに、まちづくりに関する成功要因や課題・問題点を 参加者の方々と共有していくことを目的としています。 <各校の活動概要> 1.「GESTORE おだわら」神奈川県立小田原城東高校 ・神奈川県小田原市栄町・小田原銀座商店街で高校生が運営するチャレンジショップ。神奈 川県内初で、通年営業は全国的にも珍しい取り組み ・2004 年4月 29 日、小田原駅東口の小田原銀座商店街にオープン(店舗面積約 40 ㎡、年間 売り上げ目標は 250 万円、営業時間は平日が 15:00∼18:00、土日・祝日が 10:00∼18:00、 月曜定休) ・店舗運営は城東高校の「課題研究」の履修者と「店舗経営同好会」のメンバーで担当 ・店内には城東高校の生徒らが製作したアクセサリーをはじめ、全国の農業・水産高校が実 習で製造したアイスやジャム、水産加工品、農産物などが並べられている ・この事業は、小田原銀座商店会や自治会の協力、小田原市や県教育委員会、PTA からの助 成、地元企業による店舗運営や商品管理のノウハウ支援などを得て進められている ・この活動では、高校生の実地就業体験を支援することで次代を担う商業者を育成すること、 そして空き店舗の有効活用による中心市街地の活性化が大きな目的となっている − 1 − 2.「横浜お試しイロハハハ計画(U18・Y 校バージョン) 」神奈川県横浜市立横浜商業高校 ・横浜商業高校の生徒が企画した横浜来訪キャンペーン。 「イロハハハ計画」のイは体験の「体」 の人偏、ロは「味」の口偏、ハハハは「笑顔で楽しむ」という意味 ・このプロジェクトは、総合的な学習の時間がきっかけで 2004 年の5月下旬に立ち上がった。 高校生ならではの視点で横浜の魅力を探り、県外の中学・高校にプロモーションしていくこと で、修学旅行の自由行動で横浜の観光スポットをお試し体験してもらい、リピーターを増やそ うというのが狙い ・今後、PRビデオやホームページを作って全国に発信するほか、企業から割引券や記念品 との引換券などを募り、修学旅行生にプレゼントすることを検討。今秋には、東京方面へ の修学旅行が多い宮城、新潟、愛知、広島など四県を訪問し、学校関係者や生徒に横浜の 魅力を直接紹介する計画もある ・このプランは、同市と地元企業などで作る「横浜観光プロモーションフォーラム」の新規 事業にも選ばれている。地元企業の交流会にも参加し、一部から支援の確約を得るなど、 意欲的な活動を続けている。 3.「㈱商店街ネットワーク」早稲田大学ほか ・http://www.shoutengai.co.jp/index.html ・事業分野は地域活性化に関する調査研究事業、社会問題解決に関する事業開発支援事業 ・取締役社長;木下斉(早稲田大学政治経済学部政治学科4年) −1999 年3月より早稲田商店会のまちづくり活動に参画。著作は「日本型まちづくりの終 焉」2003 年、東京財団委託研究事業「地域再生のための新たな戦略共有化とプラット フォーム創設についての実証研究」2004 年ほか。 ・駒崎弘樹(慶応大学 SFC 研究所訪問研究員) −商店街ネットワークに所属しつつ、 「ソーシャル・イノベーションの水平展開」の研究を 行っている。現在、 「病児保育」領域における革新的なビジネスモデルを実証すべく NPO − 2 − 法人「フローレンス」を設立。2005 年4月からのサービスインを目指す。 ・鈴木敦(東京大学公共政策大学院、政治経済学専攻) −商店街ネットワークの活動には、社会問題をビジネスモデルによって解決していく理念 に惹かれて参加。将来は、企業と市民社会を直接つなぐビジネスモデルや政治の仕組み づくりに、民間、行政を行き来しながら取り組んでいきたいと考えている。 4.「江古田計画」武蔵大学・日本大学芸術学部・武蔵野音楽大学 ・http://ekodakeikaku.hp.infoseek.co.jp/ ・代表;福内大輔(武蔵大学社会学部2年) ・江古田計画とは、東京都練馬区江古田にある武蔵大学、日本大学芸術学部、武蔵野音楽大 学の3大学の有志によって結成されたプロジェクト(今年で4年目)。 ・活動目的は、学生による江古田の街(江古田商店街)の活性化。自分たちがやりたい事を 街で行い、それによって江古田の街を盛り上げていく。 ・現在は、春・秋に開催される ART MARKET が江古田計画の代表的なイベント。また、地元商 店会主催の納涼祭にも参加。その他、新しいイベントを開いたりグッズを作ったりするこ ともある。これらの活動によって人との繋がり、出逢いがあることが江古田計画の最大の 醍醐味となっている。 5.「ショッピングモールシスターズ」広島修道大学 ・代表;田口由佳(広島修道大学大学院商学研究科商学専攻1年) − 3 − ・2003 年3月に広島県広島市本通商店街のソフト事業を請け負う「ショッピングモールシス ターズ(SmS) 」を立ち上げ、活動中 ・活動日は毎週土曜日。SmS は街のお助け隊として、商店街の清掃や道案内を行うほか、自 分たちで考えたイベントを定期的に行っている ・またこれは、コミュニティビジネスとして商店街から委託費をもらって活動している 6.「安芸人力組」広島修道大学 ・代表 高田周作(広島修道大学商学部経営学科3年) ・2年生から中小企業論のゼミに入り、起業について興味を抱く ・2004 年 11 月から宮島(広島県佐伯郡宮島町)で人力車観光サービス事業「安芸人力組」 を結成。土日祝日をメインとした営業活動や結婚式・イベントの出張サービスも行う ・安芸人力組は地域密着型のタウンモビリティーサービスを提供することを心がけて営業し ている 7.「専修ナビ(Senshu-N@vi:専大生によるキャン パスナビ@生田緑地)」 ・「専修ナビ」とは、専修大学商学部創設 40 周年・ 商学教育 100 周年を記念して、2004 年 11 月7日 (日)に行った地域イベント ・主催は商学部 40 周年記念事業運営委員会と商学部 生有志、協賛は㈱ダイエー向ヶ丘遊園店、後援は川 崎市多摩区役所 ・これは、神奈川県内の高校生を中心とした参加者 が、向ヶ丘遊園のダイエー前から生田緑地をと おって専修大学まで、クイズとゲームを楽しみな がら行う「スタンプラリー&キャンパスガイド」 ・高校生の参加者には専大周辺の生活情報とキャン パスガイドの絶好の機会にもなり、生田緑地では − 4 − 多摩区民祭も行われているので、地域住民の方々と一緒に遊ぶこともできる ・専大ウラ山の生田緑地で自然を満喫し、楽しくはしゃぎながら専大のことをもっと知って もらい、みんなで「○○∼!」と叫ぼう!というイベント 8.専修大学商学研究所による多摩区との連携活動 ・専修大学商学研究所では、2002 年9月より「大学と地域の共生のあり方に関する実態調査」 と題した実態調査研究プロジェクトを発足させ、多摩区役所と連携しながら調査・研究を進 めている ・これまでの成果は、 『大学と地域の共生−まちづくりを中心に−』専修大学商学研究所報第 35 巻第7号、2004 年3月)においてまとめられており、それにもとづいた継続的な調査・ 研究が行われている ・現在は、生田緑地を中心とした多摩区の地域資源(財産)の活性化策などについて取り組 んでいるところである − 5 − Ⅱ.主催者・後援者挨拶 1.専修大学商学部長 大西勝明 商学部長の大西です。これより、商学部と商 学研究所、多摩区役所の協力・後援で、シンポ ジウム「学校と市民がつくる地域の未来−高 校・大学生による街づくり体験−」を開催させ て頂きます。本日は皆様、遠くからおこし下さ いました。この場をお借りして感謝の言葉と変 えさせて頂きます。ありがとうございました。 実は、昨日まで私は伊勢市におりました。伊 勢には「おかげ横丁」というところがありまし て、そこで友人とお茶を飲んでいると、 「伊勢市はかつて公衆便所みたいなようなものだった」 と街の人が話していました。「どういうことですか?」と訪ねたら、「公衆便所は用事がある ときだけに立ち寄るだけ」だと。つまり伊勢市は、古くて伝統のある街だけれども、伊勢神 宮へ参拝に行く以外の用事で人々が訪れることはほとんどないので、非常に寂れた街だった そうです。しかし、赤福の社長さんなどの努力によって、今は非常に活気のある街に変わっ てきました。他にも、かつては寂れていたが、今はとても活気が出てきたという街がたくさ ん現れたと言われています。 しかし、街づくりは、ある意味若い人が志をもって取り組んでいき、積極的にどうやれば 明日が切り開けるかを考え、そうしたことに対して情報を集めていかなければならないと思 います。そしてその情報をバネして、地域の未来を切り拓くのだという力強い若者の努力が 活性化につながっていくのではないでしょうか。 日本が戦後、このように明るい現在を拓いてきたように、今日のシンポジウムが未来の日 本の社会を展望できるような場となるよう、時間が限られていますが熱く語り合って頂きた いと思います。 2.川崎市多摩区長 金作幸男 ただいまご紹介を承りました、多摩区長の金 作です。本日は専修大学商学部 40 周年記念、商 学部と研究所による共催シンポジウムにお招き 頂きまして誠にありがとうございます。 今日は、専修大学の鳳祭の最終日で、あわせ て専修大学に隣接している生田緑地というとこ ろ、川崎市で一番大きい緑地ですが、そこで年 に一度の川崎市多摩区民祭をやっておりまして、 同日の開催となりました。多摩区民祭はいつも 10 月開催で、鳳祭とはなかなか一緒になれなかったのですが、今年は一緒ということで本当 − 6 − に良かったです。 実は、今回の多摩区民祭は専修大学の学生さんにお手伝いしてもらっておりまして、先日 の読売新聞の地方版に載っていましたけれども、そんな形でご協力いただいております。ち なみに今日の区民祭は、警察の発表ですと3万人ほどですが、我々の調べですと8万5千人 の参加者だったようです。 専修大学による地域との共生ということで、街づくりを中心に商学研究所が活動してくだ さっています。多摩区は、専修大学、明治大学、日本女子大学と3つの大学がある地域で、 行政といたしましてもそれぞれの大学と地域の皆様方との協力でいろいろなことをしたかっ たのですが、できなかった。この2年ほど、専修大学の商学部の先生方と協力しながら、地 元の商店街等の活性化について、にぎやかな地域・大学にしようじゃないかという思いがあ りまして、少しでも行政として力になればと思い、取り組んでおります。 本日は、全国各地の高校・大学からのシンポジウム参加ということで、地元の商店街の活 性化など、いろいろな実例の報告を楽しみにしております。今日はご苦労様でございます。 − 7 − Ⅲ.高校生によるまちづくりの成功体験 1.「GESTORE おだわら」小田原城東高校 私たち小田原城東高校では、授業や同好会として小田原商店街でお店の経営をしています。 本日は、このお店の設立経緯と運営成果、そこからわかる今後の課題について発表させてい ただきます。 (1)設立経緯 店名となっている GESTORE(ジェストーレ)とは、イタリア語で経営者という意味です。 このお店は、小田原商店街銀座通りの空き店舗をお借りして、小田原城東高校と小田原城北 工業高校、吉田農林高校とのジョイントで運営しています。城北工業高校にはお店のシャッ ターのペイントを行って頂き、吉田農林高校からは花束などを仕入れ販売させて頂いていま す。営業時間は平日午後3時∼6時まで、土日祝日は 10 時∼6時までです。定休日は月曜日 ですが、定期テストや文化祭など学校行事での臨時休業することもあります。 このチャレンジショップの始まりは、私たちが参加した企業プラン・コンテストにありま す。私たちは1次審査を通過した後、2次審査のプレゼンテーションに望みました。結果は 特別賞受賞で、副賞の 10 万円はお店の資本金にあてました。 その後、私たちはお店の運営に向けて準備を行いました。 マスコットキャラクターの考案、 看板の作成、 商品の納入やディスプレイなどを考えることです。お店のマスコットとしては、 「バーニーちゃん」というキャラクターが生まれました。バーニーちゃんの頭の上には3本 のアンテナがあり、それぞれに高校間連携、地域連携、イベント企画の意味があり、ジェス トーレ小田原を支える3本柱となっています。 オープン当日はセレモニーが華やかに行われ、来客数は 130 人を超え、売り上げは 21 万円 を超えました。その後、私たちは様々な地域のイベントに参加していきました。その中で最 も規模が大きかったのは「ゆかた祭り」でした。準備には商店街の方たちの支援のもとで看 板作成に携わりました。当日は祭りに参加する全員が浴衣着用で接客し、本校の吹奏楽部や 音楽部がステージで演奏するなど、高校と商店街との連携で行われました。 店舗で取り扱っている主な商品には、全国の高校生が演習や実習で製作した手作りのイチ − 8 − ゴジャムやパッションフルーツのジュース、サケの中骨昆布巻きなどがあります。企業から 仕入れた商品としては富士屋ホテルのパンがあります。私たちは本校OBの協力も得ながら、 生徒自身で商品の企画・開発・仕入れ・販売を行い、客層や売り上げを分析しながら店舗を 運営しています。 (2)店舗運営の成果と課題 では次に、当店の売り上げと来客データにもとづいて今後の対策を報告させて頂きます。 ① 売り上げと来客数からみた課題 月別の売上金額と来客人数をみると、10 月までの月別売上げ合計は約 300 万円です。総 務省の統計データや当店近辺に在住する女性顧客数から採出した当店の年間売上げ目標が 約 240 万円ですから、半年で年間売上げを達成できたといえます。しかし、それぞれの月 に売上げや来客数にばらつきがあります。その原因は、富士屋ホテルのパンと店舗イベン トにあります。私たちは、箱根湯元にある富士屋ホテルのパンを5月の3連休の目玉商品 として販売したため、それを買い求められるお客様が多くいらっしゃいました。また、夏 には商店街の方と「ゆかた祭り」を企画・運営したため、その参加者が来客数の増加につ ながったと考えられます。しかし、時には地域のイベントを把握しておらず、参加しなかっ たために来客数を伸ばせなかったこともありました。 次に、減収の原因としては臨時休業や品薄になったことが考えられます。体育祭や文化 祭、定期テストなど、学校行事で臨時休業する間は来客数や売上金額が減ってしまいます。 また、仕入先の高校の実習の都合で、夏休み明けなどは製品を作る事ができず、品薄になっ てしまうこともありました。いつも同じ商品しか並んでいなくて、リピーターが減ってし まった時期もありました。 売り上げと来客データの分析からわかった問題点は、①品薄なことやいつも同じ商品し か置いていないこと、②学校行事などのイベントに左右されやすいこと、③地域のイベン トを把握していないということです。これらの問題を改善するためには、次のような解決 策が挙げられます。 まず、品薄にならないためには常に新しい商品を置く必要があります。これは、リピー − 9 − ターを飽きさせないためにも重要です。そのためには、新しい仕入れ先を探し、計画的に 動くこと、物産展などに行って情報収集をすることなどが必要だと思います。また、季節 や時期にあった商品を置くことも必要です。これは常に新しい商品を置くことにもつなが りますが、やはり商店街を通る人やリピーターを飽きさせないためにも、季節にあった商 品を置き、店の見栄えなども変えていかなければならないと思います。 それから、学校行事を活用して文化祭などに店を出していくことが必要です。文化祭は 当店を知らない人にも知って頂くチャンスだと思います。このよう学校のイベントを PR の機会として目を向けていくことも大切だと思います。 最後に地域のイベントに積極的に参加することです。これは、地元の方に私たちのお店 を知って頂くチャンスだと思います。このチャンスを逃さないよう、地域のイベントにつ いて情報を集め積極的に参加していく必要があります。 ② 来客データからみた課題 曜日別の来客数では、平日のお客さんが少ないことと、日曜日の来客率が一番多いこと が挙げられます。5月の3連休など、イベント時には月曜日でも売上げは多いのですが、 これはチラシや富士屋ホテルの効果があると考えられます。平日の来客数が少ないのは営 業時間が短いためで、土日の割合が多いのはイベントやチラシの効果だと思われます。こ れを改善するためには、平日にもチラシを配ることや平日限定の商品を販売するなどの対 策が考えられます。 時間帯別の売上げからわかることは、まず、夕方の4時にお客さんが集中しているとい うことです。これは買い物帰りの主婦層が立ち寄って行くためと考えられます。逆に夕方 の3時はお客さんが少ないです。3時は平日の開店時間ですが、平日と休日とでは開店時 間が違うため、営業時間がわかりづらいという意見をお客さんから頂きました。 それから、 午前中の売上げも少ないのですが、朝は商店街の人通りも少なく、店頭で呼び込みをして もあまり効果がありません。 これらの対策として、時間帯に合わせたサービスを行うことと、営業時間を宣伝するこ とが必要です。時間帯に合わせたサービスとは、朝でもお客さんが来るようなタイムサー ビスを行って売上げを伸ばすことが考えられます。夕方の3時ぐらいには路上でチラシを 配り、買い物帰りの主婦層をターゲットに、夕方の4時から5時の売上げを伸ばそうと思 います。それから、お昼の売上げを伸ばす対策としては、ランチタイムなどを設けて限定 販売をすることも考えられます。営業時間の宣伝方法としては、シャッターに大きく営業 時間を書いたり、1ヶ月のスケジュールを書いたチラシをお客さんに渡したりする方法が 考えられます。 来客層のなかでも、年代別では全体的に中高年の割合が多くなっています。その理由と して考えられるのは、若い人がお店の前を通らないということと、主婦層をターゲットと した商品が多いということ、また当店は、缶詰や炒飯などのお惣菜商品が多いことにある と思います。以上の点を改善するために、①店頭で宣伝する:店の外で呼びかけることで、 興味をもって通行客が入店してくれるはず、②若い人向けの商品を販売する:主婦層だけ − 10 − でなく若者にも買ってもらいたいという私たちの気持ちです、③商店街に活気を出す:現 在の商店街は活気がなく、人通りも少ないので、私たち高校生の力で賑やかにしたいと思 います。 ③ 仕入れ別にみた課題 売上げの上位を占める商品の仕入先は、①岐阜農林、②富士屋ホテル、③アイスコ(氷 の仕入れ先)です。高校別では、岐阜農林が最大の仕入先で、以下、富山海洋高校、種子 島高校となっています。企業別では、富士屋ホテルとアイスコが過半数を占めています。 売り上げ上位の商品は、長い期間店頭に置いてある商品であることから、販売期間が長い ほど売上げも比例する傾向があると考えられます。岐阜農林とアイスコは、アイスという 季節商品を扱っているため、夏場の売り上げが高くなっていますが、夏場しか売上げが見 込めないようです。富山海洋は高校の中で一番売上げを伸ばしていますが、それはスルメ イカの燻製や炒飯など、地方にしかない独特の商品を消費者が求めているからではないか と考えられます。 こうしたことから挙げられる課題としては、高校生がつくる商品の良さを消費者にア ピールすること、売上げ期間を伸ばすために継続的に商品を仕入れること、季節に左右さ れない商品を揃えることで売り上げの変動を乗り切ること、そして、地元にもない商品を 仕入れるために、新たな仕入先を開拓することなどがあります。 売り上げを効率的に伸ばすための対策としては、時間、商品、地域に対する対策が挙げ られます。時間の有効利用とは、時間帯によって売上げの格差があるので、タイムサービ スなどの時間帯に応じたイベントや宣伝活動を行うことです。これを円滑に行うためには、 日中の店員数の調整やチラシの配布方法を検討することが挙げられます。次に、お客さん の年齢に偏りがみられるため、店の更なる集客を目指すには幅広い年齢層に支持されるよ うな仕入れ方法や商品開発が必要です。 それによって、若者の集客を望むことができます。 また高校から仕入れる商品は不足する事が多いため、継続的に取引が行えるよう絶えず連 絡を取り、各高校の実習日程を踏まえた仕入れ予定を組む必要があります。更に、時期に よって売上げが左右される商品の対策として、アイスやお茶などの季節商品の仕入れ調整 をする必要があります。 − 11 − (3)地域との関係 最後に、地域との関わりについてです。商店街に店を構えてから、私たちは商店街の一員 であり、地域活性化の担い手でありました。私たちのお店がオープンを迎えてから約6ヶ月 たち、商店街に活気が出てきたという声も聞きました。地域との連携を目指す私たちにとっ て、それはとても嬉しいことです。今後も商店街とイベントの企画や運営を行い、地域イベ ントに積極的に参加し、更なる地域の活性化を目指したいと考えています。 どうもありがとうございました。 2.「横浜お試しイロハハハ計画(U18・Y 校バージョン) 」神奈川県横浜市立横浜商業高校 (1) 「横浜お試しイロハハハ計画」の経緯 それでは、横浜商業高校(Y 校)が取り組んでいる、修学旅行生を横浜に呼ぼうという「横 浜お試しイロハハハ計画」を説明させて頂きます。 まず、この計画の経緯を説明させて頂きます。横浜市長の中田氏が横浜の観光プロモーショ ン・フォーラムを提唱された頃、横浜商業高校では、総合的な学習の時間のなかで、横浜を 紹介しようという校外講座がありました。その後、横浜コンベンション・ビューローに申し 込んだY校は、34 企画の中から認定 14 企業に入り、キリンビールやJR東日本、近畿日本 ツーリストなどと肩を並べて観光事業に進出することになりました。 それ以降、 Y校は横浜の企業 140 社の協力のもと、 6月のフォーラムでのプレゼンテーショ ンを始めとし、7月から8月にかけて横浜を取材し、9月からはプレゼンテーション製作や 現地に持参するノベルティの収集を行い、10 月には練習として東京や横浜で企業や外国人の 方に横浜を紹介してきました。そして、10 月 25 日からは仙台の中学校 11 校に本格的なプレ ゼンテーションを実施しています。それでは、その時実際に行った、横浜を紹介するプレゼ ンテーションを再現させて頂きます。 (2) 「横浜お試しイロハハハ計画」 これから横浜をもっと知ってもらうために、短い時間ではありますが、横浜の魅力を少し 紹介させて頂きます。 さて、私たちが行う、修学旅行を横浜で楽しんでもらおうというキャンペーンには名前が − 12 − あります。その名も「横浜お試しイロハハハ計画」です。何ともつかみ所のない、そして、 「ハハハ」が言いにくい企画名ですが、この計画は横浜市の認定事業になりました。よって、 本日は横浜のたくさんの企業から頂いたお土産を持ってきました。さらに、今日のプレゼン テーションをお聞きになり、本当に横浜に来て頂くことになった皆様には、色々な施設の割 引券やクーポン券などを送らせて頂きます。どうぞお楽しみに。 ① 横浜お試し 「横浜お試しイロハハハ計画」の「横浜お試し」というのは、来年、修学旅行で横浜を 訪れ、楽しかったらまた来て下さいというメッセージが含まれています。横浜は朝から夜 まで楽しめる街です。また、様々な面を持つたくさんの楽しみ方ができる街です。たくさ んの楽しみ方の中から、今日は私たちがお勧めする横浜での体験や美味しさ、そして楽し さを一部紹介します。 ② イ=体験 まず、 「横浜お試しイロハハハ計画」の「イ」です。イに本物の「本」という字を並べる と「体」という字になります。そうです、イロハハハの「イ」は、横浜で本物を体験しよ うというメッセージです。まもなく港ができて 150 年を迎える横浜では、多くの歴史があ ちこちで残されています。ペリー来航から始まり、幕末の様々な事件、明治からは世界中 の様々な文化が入り、大正時代にはその文化が日本に定着し、昭和には逆に海外へ輸出す る技術力を身につけます。 その最先端の技術を体験できるのが、 「三菱みなとみらい技術館」 です。技術力を身につけた日本は世界でも繁栄した国となりました。 その一方で、日本は世界の国々と協力し、困っている国や貧しい国に様々な援助の手を 差し伸べています。それを体験できる施設が「国際協力機構(JICA) 」です。ここでは、 明治以降、日本人がハワイや南米などの海外へ移住していった歴史を学ぶ事ができます。 さらにJICAでは、世界中から日本の技術を学ぶために来ている研修生との交流もでき ます。日本語のわかる人もいますが、せっかくですから英語でチャレンジしてみてはいか がですか。また、JICAの卒業生の方がいつもいらっしゃるので、外国人との通訳も安 心です。この施設の3階はレストランになっています。テラスから見える景色は、 「赤レン ガ倉庫」や港をまたぐ「ベイ・ブリッジ」など最高のロケーションです。そして、海外の 珍しい食べ物が 500 円くらいで食べられるのもお得です。外国料理の店で出てくる飾られ た料理だけでなく、本当にその国の人達が日ごろ食べている普通の食事が味わえるところ が最大のポイントです。 その他にも、横浜には「みなとみらい」から「山手」という歩けるエリアに多数の博物 館があります。全部は回れませんが、テーマを決めて回ると面白い体験ができます。例え ば「新聞博物館」。これは東京にはない施設です。新聞の歴史と新聞ができるまでを学べま す。見学の後は自分達の写真を入れた新聞が、20 分程で、しかも無料で人数分作れます。 同じ建物には「放送ライブラリー」があり、1万点以上の過去のNHKや民放の番組を見 ることができるので、皆さんが生まれた時代のニュースやドラマも見ることができます。 − 13 − 展示室ではニュースキャスターを体験でき、映った画像には隣に久保純子アナウンサーが 出てきます。 その他にも、環境を考える「都市計画博物館」、 「日本ユーラシア博物館」、 「開港資料館」 、 「人形の家」 、 「マリタイムミュージアム」など、紹介しきれないほどの博物館が集中して います。 ③ ロ=味 次は「イロハハハ」の「ロ」です。 「ロ」を口偏に見立てて考えると「味」です。横浜に は「みなとみらい」という場所があります。口偏に未来の未で「味」、次は味の紹介です。 横浜には食のテーマパークが2つあります。そのひとつが「ラーメン博物館」、で昭和 30 年代の駅前を再現した街に全国で有名なラーメン屋さんが8店入っています。何杯も食べ られるようにと半ラーメンなども用意されています。単にラーメンを食べるのではなく、 駄菓子屋さんがあったり、昔の警察官や駅員、運がよければ昔の泥棒にも会ったりできま す。全国からラーメンを集めたテーマパークは、その後、全国に広がり、広島のお好み焼 きや東京池袋の餃子スタジアムへと発展していきます。その発展のひとつが、 「横浜カレー ミュージアム」です。カレーはインドのものと思っていませんか?実はアフリカ、南米を 含め、今や世界中に様々なカレーが存在しています。もちろん国内にも、その地域の特産 物を入れたカレーがたくさんあります。広島のカツカレー、銚子のさばカレー、北海道の トドカレーなどはお土産として買うことができます。修学旅行から帰ったときにビックリ させるお土産のポイントです。もちろんここでも全国の有名なラーメンを食べることがで きます。売上げ NO.1は東京都の「パク森」です。カレーといっても色んな種類があるの には驚きですね。 さて、何と行っても横浜に来たら「中華街」というのが定番です。世界最大の「中華街」 は高級な中華料理屋が並び、街の至ることころで中国語の会話が聞こえます。この情報は 私たちが伝えなくても、インターネット上で調べることができます。しかし、中華街は中 高生にとって値段が高いのが困ったことです。 そこで、 私たちは中華街で何度も取材をし、 どうしたら安く中華料理を味わえるかを研究したところ、ランチに目をつけました。平日 の 11 時から 14 時頃までは、ほとんどのお店がランチをやっていて、値段は 650 円から 700 円ぐらいです。スープも付いていますし、店によってはご飯をお代わりできるところもあ ります。ひとつの店で3∼4種類のメニューを出しているので、3人以上のグループで別々 に頼めば立派なコース料理になります。でも、本格的に食べたいという人は、 修学旅行 用のメニューを 2,000 円から用意しているお店があります。予約なしでもOK。スープ、 シュウマイ、春巻き、チャーハン、焼きそばまで出て、お腹いっぱいになります。私たち も実際に食べてすごく美味しかったです。 もうひとつは、様々な中華まんです。私たちの取材にもとづいて作った「オリジナル中 華街マップ」があるので見てください。ものすごくたくさんあります。しかも種類豊富で、 肉まん、あんまんは当たり前、トンポーローまん、フカヒレまん、モモまん、パンダまん など、味も形も様々です。大きさも小さいもので直径 10cm くらいですが、大きいものは何 − 14 − と 30cm くらいもあります。値段は 300 円から 500 円が普通です。大きいものは皆で分けて 食べてみて下さい。お勧めは、お肉屋さんがやっているお店で、いまや中華街で売り上げ NO.1だそうです。私たちも食べてみましたが、ジューシーですごく美味しかったです。中 華街で食事の後にもう一品、是非試してみて下さい。コンビニの中華まんとは一味違いま す。 外国との接点である横浜には、他にも世界の味があります。「ワールドポーターズ」は、 積極的に外国製品を日本に紹介しようという考えにもとづいて作られた商業施設です。多 くの外国製品が並んでいるなか、世界各国の食べ物もあります。5階には、フランス、イ タリアはもちろん、インドネシア、インド、アメリカの料理店もあります。これらは値段 が少々高いですが、1階のフードコートには色々なピザの切り売りや、パンなどがお手頃 です。また、ここには横浜の発祥であるアイスクリームのお店が3店もあります。お勧め は「3 月ウサギ」で、種類も多く美味しいと思います。横浜で色々な味を味わいながら、 世界の文化である「食」について考えるのもいいのではと、提案します。 ④ ハ=楽 さて、最後は「ハ」です。「ハ」が上にくる漢字は何だろうと、私たちは考えました。で も、答えはありませんでした。私たちも困ったのですが、修学旅行は楽しい思い出が一番と いうことで、 「ハ」という字が3つも含まれている「楽しい」というテーマにしてみました。 「横浜を楽しむ」、それはたくさんの楽しみ方があります。今日はその中から、いくつか紹 介します。まず、楽しむ内容は、 「みなとみらい」の「コスモワールド」です。日本最大級 で1周 15 分で回る大観覧車を中心に、様々なアトラクションを備えています。大観覧車は どこで回しているか知っていますか?実は、円の左下でタイヤを使って動かしているので す。その他のアトラクションも、 「イ」で紹介した様々な工業技術が応用されています。楽 しみながら、どこで動かしているのかも見てみてください。 次に、お土産で楽しいのは、中華街の「吉本水族館」です。中国の小学校に見立てた場 内に水槽を置いて展示しているユーモラスな水族館です。ここのお土産は吉本興業が得意 とするギャグをついた商品です。その他、横浜には「餃子チョコ」など珍しいお土産がた くさんあります。 次は、ホッと癒される公園を紹介します。横浜には港を囲んでたくさんの公園がありま す。芝生に寝転がりながら、海や豪華客船を眺める「臨港パーク」 、そして大桟橋、ベンチ に座ってベイ・ブリッジを眺める「山下公園」、港全体を見下ろす「港の見える丘公園」や その周辺で洋風の教会や建物を見ながらくつろげる公園などがあります。これらはもちろ ん無料です。少し疲れたらこんな所でボーっとしてみて下さい。 このように景色が見られる横浜では、毎日必ずどこかで映画やドラマ、テレビのCM、 音楽のプロモーションビデオや雑誌の撮影などが行われています。これらは横浜市のコン ペンション・ビューローという組織が積極的にロケの場所を提供しているためで、来年み なさんが来るときも必ずどこかでロケがあります。残念ながら人目を避けてロケが行われ るため、事前の情報提供は無理ですが、そのヒントになるであろう過去のロケ地 88 ヶ所を − 15 − 紹介した「Y校オリジナル MAP」を作りましたので参考にして下さい。また、ロケ地に巡 り合わなかったとしても、今まで見たドラマの主人公になったつもりで同じ場所で写真を 撮ってはいかかでしょうか。 横浜のロケに出てくる場所は、地上だけでなく海上、すなわち船の上もよく使われてい ます。豪華な船なら「ロイヤルウィング」がお勧めです。横浜にお越しになる時に、今回 のプレゼンテーションを聞いてくださった皆様には無料の乗船券を差し上げる予定です。 他にも、 「京浜フェリー」に直接連絡をくだされば、観光船の他、実際港で仕事をしている 船にリクエストコースで乗ることができます。5人から 10 人程度、1人 1000 円ほどだそ うです。これはガイドには載っていません。以上のように、たくさんの「ハハハ」と笑い が思い出として残せるような楽しさを横浜で味わってみて下さい。 (3)最後に さて、たくさんの横浜を紹介してきましたがいかがだったでしょうか。東京にも色々な施 設はあります。しかし、せっかく東京まで来ているのだから、電車で 30 分の横浜も視野に入 れて下さい。都内の移動にもそれぞれ 30 分程度かかります。1日の日程で都内を回るなら 3ヶ所が限度ですが、横浜なら移動時間も少ないので倍は楽しめます。さらに、交通のアク セスもよく、渋滞もなく、移動中も窓からいろんな景色やイベントが楽しませてくれます。 このように、 東京よりあちこち行ける横浜の方がたくさん楽しめることは間違いありません。 「横浜お試しイロハハハ計画」 、横浜で「体験」し、横浜で「味わい」 、横浜で「楽しむ」 、 楽しかったら「また来て下さい」という計画、楽しんで頂けたでしょうか。短い時間のプレ ゼンテーションでは全てはお伝えできませんが、コンベンション・ビューローのHPを見る とポイントが記されています。本日は貴重なお時間を私たちにくださりありがとうございま した。ぜひ今度は横浜でお会いしましょう。 このような形で、私たちは、仙台、名古屋、京都の 25 校でプレゼンテーションをして参り ます。これからも御理解・御協力よろしくお願い致します。 − 16 − Ⅳ.大学生によるまちづくり成功体験 1.「株式会社商店街ネットワーク」早稲田大学ほか (1)商店街ネットワークの経緯 最初に私が商店街に関わり始めたのは高校1年生の 11 月頃でした。 もともと商店街には興 味がなかったのですが、学校の外に出て何かしたいと思ったのがきっかけです。偶然、早稲 田大学の周辺の商店街で行われていた「環境街づくり」をはじめていた時期でした。早稲田 大学周辺は学生が3万人ほど在籍しています。それに対して周辺人口が2万2千人と、完全 に学生が街の人口の半分を占めています。そのため、夏休みになると3万人の学生が急に来 なくなります。96 年に初めて大学と商店街が一体となって、これからの街をつくっていこう というので「環境街づくり」という活動をはじめました。 そこでまず始めたのが空き缶・ペットボトルの回収事業です。これは、回収機にゲームが ついていまして、ここに空き缶を入れてもらって、当たりが出ると商店街のクーポン券・割 引券が出てくるという仕組みです。これを大学の施設内に置かせて頂いて回収事業を始めま したが、これは環境や街づくりにはあまり関係のないのもだと思っていました。それが、 「地 域のため、環境のためにはいいじゃないか」といって商店街の方々が携わってくれるように なりました。 このように、 「環境街づくり」をキーワードにして、地震や災害時に助け合うようなことが 全国各地でみられるようになりました。 空き缶・ペットボトル回収機などの環境街づくりは、 早稲田だけでなく、全国約 100 ヶ所で事業として取り組まれるようになりました。これから の地域において、商店街をとおした街づくりをどのように取り組んでいけばいいかという事 を考えて、また事業を実行するための組織として、2000 年8月に「株式会社商店街ネットワー ク」を設立しました。これは、早稲田の商店街だけでなく、北海道から九州まで 60 の商店街 の方々の共同出資の会社です。設立に際して、99 年からは「リサイクル商店街サミット」と いう会議を年に1回行っています。私自身、こうした活動から会社設立まで携わってきまし た。 − 17 − (2)学校と市民による街づくりの課題 学校と市民による街づくりは、今後大切になるのではないかと思います。先日、アメリカ の街づくりなどを行っている地域を見に行ってきたのですが、若い方がとても活躍されてい るということに驚きました。日本ではボランティア的ですが、アメリカでは NPO などが地元 の企業と提携して、地元の方々と共に組織として運営されています。 「早稲田パッチワークグループ」というサークルがあり、当時は1人で地域活動を行って いました。しかし、8年間あまりで「地球感謝祭」というイベントを学校と商店街で一緒に 行い、当日は 100 人∼150 人くらいの学生が企画に携わりました。8年間でそれほどの学生 が参加し、学生の意識向上がみられた事例は日本でもみられます。 商店街をとおした街づくりでは、お店同士がプラスになっていくような事業を考えなくて はならない。それが商店街のためにも地域のためにもなる。お店にとっては既存の顧客をい かに大切にし、新規顧客をいかに獲得するかという課題があります。商店街では、新しく移 り住んできたお客さんを顧客にするのは難しいことです。早稲田の場合もマンションが増え ました。そこで、空き缶などの回収機からチケットを出すことで、回収機は新規顧客を獲得 する手段として機能する。特に小学生などが回収機を利用する機会が増えてきました。 例えば、中華料理屋さんでは餃子一皿タダというチケットを出しています。そうすること で、無料チケットと共にたくさんの新しい顧客が増えるという流れができる。早稲田の商店 街は「環境街づくり」をキーワードにして、こうした事業を 96 年から 2000 年にかけて力を 入れてきたことで、地元の人達との関係をつくりあげてきました。商店街や地域の活動のな かで重要になってくるのは、商店街の人たちだけでなく、学生を含めた地域の方々と共に街 づくりをしていくことではないかと思います。学生が主体となって商店街に活気が出てくる のを楽しみにしています。 今後、自分自身としてはタウンマネジメント、いかに地域をマネジメントしていくかとい う事を勉強していきたいと思っています。 2.「江古田計画」武蔵大学・日本大学芸術学部・武蔵野音楽大学 (1) 「江古田計画」の経緯 「江古田計画」とは、自分達がやりたいと思ったことを地元の商店街を使って行う団体で − 18 − す。現在では、春と秋に2回行われる「アートマーケット」というイベントが主な活動です。 今回は、先の 10 月 24 日に行われた「第9回アートマーケット」を中心に話をしていきたい と思います。ここでは、商店街のメイン会場を使ってアートや音楽系の出展を行いました。 アクセサリーやビーズなどの作品が多いなか、シャボン玉のようなアートは子供たちに大変 人気でした。 今年で4年目の「江古田計画」ですが、きっかけは商店街からの呼びかけで、そこに武蔵 大学と日本大学芸術学部の代表が集まって、 「楽しいことをやりたい」という思いで始まりま した。最初の頃はまだ何をやっていいのかわからなかったので、とりあえず何か面白いこと をやろうと考えたのが「江古田袋」です。この袋に商店街の名前が入った地図を入れること で、各店舗から広告費として資金をもらい、その広告費から 80 円ほどの資金を集めました。 次に、ノベルティーグッズとしてクリアファイルを作りました。 「江古田計画」は身近なと ころからアピールしていこうという姿勢で進めてきました。ノベルティーグッズを作ってい くにつれて、定期的なイベントが必要なのではないかと考え、 「アートマーケット」を行って いくことにしました。特に第2期のメンバーは、商店街で精力的に活動してくれました。 2003 年6月の「第6回江古田計画」では、江古田駅北口の小さな駐車場を貸し切って、約 20 店舗が出店しました。規模が小さいのでお客さんも少なく、リピーターもいなく大変でし た。しかし、こうした厳しい状況のなかでも先輩たちが「アートマーケット」を続けてきて くれたことが、今の「江古田計画」につながっていると思います。 そして、去年の9月 15 日に行われた「第7回アートマーケット」からは、現在と同じ江古 田駅南口の朝日が丘銀座商店街と江古田銀座商店街の2つの商店街がまとまって、2つの会 場を使って行われ、出店数が約 50 店舗と前回までの倍以上となりました。この時、初めて飲 食店が参加したり、NHK の「昼どき銀座ネット」の中継が入ったり、 「ロード・トレーニング」 という子供たちが好きそうな車が走ったりして盛り上がりました。 (2) 「アートマーケット」の成果 2004 年からは「第4期江古田計画」が始まりました。今年は代表が代わり、4月 25 日に 「アートマーケット」が行われました。前回と同様、2つの商店街を使って 50 店舗が出店し ました。10 月 24 日には「第9回アートマーケット」を開催したのですが、この回では前回 − 19 − の反省を生かし、PR を重点的に行いました。新聞などに折り込みチラシを入れてもらったり、 駅周辺でビラ配りを行ったりしました。また、秋に開催するので、ハロウィンとかけて秋ら しさを強調したイベントにしました。しかし、成功したとは言っても、客数が会場によって 差が出たり、ブースの間隔が広くなってしまい、間延びしてしまったりという問題がありま した。こうした点は、今後の開催に向けて検討していきたいと思います。 「第4期江古田計画」では、練馬区の「木漏れ日」というイベントに招待されたり、地元 商店街の「納涼祭」でゲスト参加もしました。 「納涼祭」では、江古田計画はひまわりやポッ プコーンなどを販売しました。当日は台風が接近していて、雨の中で開催したため、かき氷 がまったく売れなくて残念だったのですけど、商店街のお祭りに参加できたことで、より商 店街の方々との信頼も深まり、それが秋の「アートマーケット」の成功につながったのでは ないかと思います。 (3) 「江古田計画」の課題 これらの活動を通して得られたことは色んな人との出会いです。大学の文化祭と違って、 街でイベントを行うことで、出店者や商店街の人々との関わりが生まれました。こうした経 験は、大学に通っているだけでは得られないことだと思います。それに、何より自分たちが 好きで楽しんでイベントを開催しているので、メンバーのモチベーションも高いからイベン トが成功したのではないかと思います。 個人的な意見ですが、 「江古田計画」は、街の活性化を本気で考えている訳ではなくて、一 番の目的は自分たちがやりたいことを街でやっているだけで、その活動の延長として街が結 果的に活性化してくれれば嬉しいなと思っています。今後の「江古田計画」の活動ですが、 「アートマーケット」のような継続的なイベントは、今後も続けていくことに意義があると 思います。しかし、それは同時にマンネリ化しやすいものでもあるので、今後はいかにして 新しい要素を取り入れ、どのような形で発展させていくかが課題だと思っています。また、 最近は大きな「アートマーケット」のようなイベントを行っていますが、もっと簡単にでき るイベントを企画して、それを年に何回もやることで、 「江古田計画」の存在をよりアピール − 20 − していきたいと思っています。 3.「ショッピングモールシスターズ」、 「安芸人力組」広島修道大学 (1) 「ショッピングモールシスターズ」 私たち「ショッピングモールシスターズ(SMS)」は、毎週土曜日に「本通り商店街」とい う広島で一番大きい商店街で、清掃活動をしたり、子供たちに飴を配ったり、アートバルー ンという動物の形をした風船をプレゼントしたりしています。また、定期的にイベントなど も行っています。私たちは、 「自分たちでできることは何でも行っていこう」というグループ です。この活動は、よくボランティアと間違えられますが、個人事業として立ち上げ、ビジ ネスとして行っています。 ①「ショッピングモールシスターズ」の経緯 「SMS」は 2003 年3月末に活動をスタートしました。きっかけは、私自身がただ単に何 かビジネスをしたかったということと、 ちょうどコーディネートして頂いた方のお話から、 商店街を活動の場にしたビジネスプランを考えたことにあります。 「SMS」は、主に「本 通り商店街」で営利事業と地域貢献事業を行っています。 営利事業としては、「本通り商店街」の清掃やイベント、様々な企画提案をすることで、 振興組合の組合費から報酬をもらっています。広島市の「産業振興センター」からは、今 年と昨年の2年間、商店街の実態調査の委託事業を受けました。また、6つの商店街と5 つのデパートでつくっている中央部の「商店街連合会」からは、イベントの人材派遣など を引き受けています。地域貢献事業としては、市の環境キャンペーンにボランティアで参 加したり、高齢者施設との連携で、車椅子で商店街を利用される方や足の不自由な方と一 緒に買い物をしたりしました。 ②「SMS」の活動実績 高知では、私たちよりも3年前に「エスポーターズ」という組織が地元の商店街で活動 していました。そこで、このグループと合同で活動をしました。商店街の歩道に付いてい るガムを一生懸命とったり、子供向けキャンペーンを行ったり、地元のお祭りにも参画し − 21 − ました。 ボランティア事業としては、「ラブ&ピース」という環境キャンペーンを企画しました。 これは、本通りのショッピングバッグを作ろうという企画を「SMS」のメンバーが提案して 実現しました。愛と平和をテーマにした紙袋で、300 枚ほどお客様に配りました。 「産業振 興センター」から受けた事業としては、バスの乗降客数を調べたり、アンケートをとった りしました。本通り商店街が企画した「本通り探偵団」というスタンプラリー事業では、 事前キャンペーンのお手伝いをしました。また、 「ドキドキ本通り商店街」と名付けたゲー ムも行いました。これは、昔テレビ番組であった「イライラ棒」のようなもので、渦状に 押しピンがかかっている間を細長い風船で通していくというゲームです。1回 100 円で、 割れずにゴールしたら動物の風船を作ってあげるというものです。さらには、突然、通り の真ん中で紙芝居をすることもありました。 昨年9月には「エスポーターサミット」が高知で開催されたのですが、全国で同じよう な活動をしている大学生の4団体が集まって、パネルディスカッションを行ったり、今ま での活動について話し合う討論会をしました。また、 「ベンチャー・メッセ」という、中小 企業にマッチングの機会を提供しているイベントにも出店させて頂きました。「SMS」はこ のような活動を行っています。 (2) 「安芸人力組」 私は今、 「安芸人力組」という人力車の代表をさせて頂いております。今日は、人力組を始 めた経緯と、今後の課題について発表させて頂きます。 ①「安芸人力組」の事業コンセプト まず、私たちの事業コンセプトはそもそも何なのか、ということです。全国には様々な 学生さんがサークルで人力車をしていますが、私たちは学生だけで経営から全てやってし まおうということで、 「学生が運営する観光ビジネス」としてやらせて頂いています。宮島 に来られたお客様に対して、人力車に乗って頂いた場合は、最高の接客でおもてなしをす るというのが私たちの仕事です。私たちは、上は腹賭け、下は股引きを着ています。昨日 も宮島で活動していたのですが、今日も他のメンバーが宮島で人力車を引いています。厳 島神社で結婚式があるときには、お客様に利用して頂いたりしています。人力車の仕事と − 22 − いうは、観光案内をするだけでなく、例えば卒業式に袴を着た後、記念写真を撮るという こともあります。小学校の総合学習で、大学生はどんなことをしているのかということを 紹介しにも行きました。 ②「人力組」の経緯 そもそも、何で私が人力車を始めようと思ったのかと言いますと、私のゼミの先輩が「ビ ジネスプラン・コンテスト」に出すためだけに「安芸人力組」を発案しました。先輩は、 このプランをつくることだけが目標で、それを実行に移すことはありませんでした。それ をゼミの川名先生から聞きまして、是非やってみたいということで人力組を始めました。 しかし、さてやろうと思ったものの、どこで人力車が売られているのかも分からない。 いくらかかるのかも分からないということで、色々電話させて頂きました。一番初めにぶ つかった問題は、新品の人力車を買おうと思ったら 165 万円もしてしまうということでし た。学生に 165 万すぐ出せといいうのは厳しいことですから、どうしようかと考えていま した。そこで私が目をつけたのが、宮島で取り組まれている地域の活性化策でした。宮島 では、月に8回ほどのイベントが行われているのに、広島の人たちにはほとんど知られて いないということ、そして、宮島に新しいものをどんどん入れるのではなく、古いものを 活性化していくという意味で街を盛り上げていこうとしていました。 宮島は、お客様には優しいのですが、そのほかの面ではまだ向上の余地があるのではな いかといったことも含めて、宮島で人力車を引こうと考えました。第一弾として、2004 年 の 10 月に、「かごを無料で走らせたいので買って下さい」と話したところ、地元の企業の 方が人力車を買ってくださいました。しかし、私一人で人力車を引こうと思っても難しい ので、他に引いてくれる人材を集めました。そして、お祭りの時にかごを走らせて、その 時のメンバーを無理やり人力組に入れたということです。今は、新人を含めた5人で人力 車を回しています。 宮島では。かごや人力車についてアンケートを行い、事業者の方々からもいろいろ教え て頂きました。我々が宮島に入ったとき、第一に、 「人力車は大変良いものだ」と素直に言っ て下さったのですが、 「なぜボランティアでやらないのか」 、 「何でお金を取る必要があるの か」と言われました。人力車は僕一人で動かしている訳ではなく、下にも人がついてきて くれているので、仕事への責任を含め、その時にきちんと給料も払いたいし、自分がどこ までできるのかというのも知りたかった。お金を頂くことについてはもめましたが、現在 では多くの理解者のお陰で何とか運営をしています。 そのうち、広島のテレビ番組から、 「ドキュメンタリーを撮らせて欲しい」という話があ りまして、全国放送のドキュメンタリー番組に出させて頂きました。人力車は、買えばす ぐに引けるというわけではないので、メンバー全員で修行に行きました。この時、中古の 人力車を先生から借金して購入しました。そしてちょうど一年前に宮島で人力車を始めま した。 − 23 − ③「人力組」の課題と成果 現在は、後継者不足に悩んでいます。また、競争相手として、飛騨から本物のマゲを結っ た方々が参入したため、現在では2社で頑張っています。今では、六本木ヒルズでも走っ ている「ベロタクシー」や「玉子型タクシー」など、色んな形の乗り物が集まる島となっ ています。競合の出現で、 「宮島と言えばいろんな乗り物がある」という噂につながりまし た。一番大切なのは、お客さんに安全に快適に宮島観光を楽しんでもらうということです。 我々は、地元の方を含め、観光客に対する挨拶の徹底を心がけています。そのお陰で宮島 の評判も上がっているようです。 「人力組」では、川名先生に協力して頂いたことで、先生と同じような問題意識を抱え、 同じような体験ができたことがよかったと思っています。今までは、ただ漠然と学生生活 を過ごしていましたが、川名先生と出会って視野が広がり、そこで「何かビジネスをやっ てみよう」と思いました。そして、人との関わりの大切さを学び、人生の勉強をすること ができました。 人力車で人を運ぶというのはサービス業です。お客さんから頂く色々なアドバイスから、 僕らはサービスを改善することができます。それが勉強になり、強みにもなっています。 体力のいる仕事ですが、みんなにもできることなので、みなさんも是非取り組んでみてく ださい。 − 24 − Ⅴ.多摩区における専修大学の活動 1.「専修ナビ−専大生によるキャンパスナビ@生田緑地−」 (1) 「専修ナビ」の概要 11 月7日に行いました「専修ナビ」というイベントについてお話したいと思います。この イベントの主催は、専修大学商学部 40 周年記念事業運営委員会で、この委員会のもとで商学 部生の有志を募り、今年の7月から約4ヶ月間の準備を経て開催されました。また、協賛と して株式会社ダイエー向ヶ丘店、後援として川崎市多摩区役所の支援を頂きました。 「専修ナビ」とは、高校、大学、地域住民が交流できるようなイベントです。イベントの コンセプトは、専大生が中心となって、地域の高校生に対してはキャンパスガイドになるよ うに、また地域住民の方たちにとっては生田緑地と専修大学を知ってもらう機会にしていこ うということです。 なぜ 11 月7日に行ったかというと、当日は専修大学の大学祭、生田緑地では多摩区民祭が 行われるからです。私たちは、地域の大きな2つの祭りをどうにかつなげることはできない かと考えました。そこで、駅前のダイエー向ヶ丘店をスタートし、生田緑地を通って専修大 学をゴールとする人の流れをつくってはどうかということで、ゲームをしながら地域を回遊 するスタンプラリーを考えました。これによって、専修大学としては、地域のお祭りの活性 化に貢献するとともに、ダイエーや多摩区役所との連携も高められることが期待できます。 イベントを行っている間、朝から駅前と大学を何度も行き来していたのですが、参加者の 方から「専修大学はどこにあるの?」と聞かれました。地域住民の方と大学は、お互いがお 互いのことをよく知らない関係にあります。そこに今の大学の問題があるのではないかと思 い、このようなイベントを立ち上げました。 (2)地域イベントの意義 専修大学の知名度は全国区だと思うのですが、地域の方には馴染みが薄い存在です。理想 として、地域に支持される専修大学であるためには、このギャップを埋め、地域の方から常 に親近感や興味をもって頂けるようになりたいし、 「専修大学はいつも面白いことやっている な」と思ってもらいたい。そうした願いも込めて、このイベントが行われました。学生によ − 25 − る地域イベントの意義はこうしたところにあると思います。 大学周辺には区役所や企業などの大きな組織があますが、お互いの交流がほとんどない。 大学では学生だけで文化祭を楽しんでいるし、生田緑地では区民の皆さんが区民祭を楽しん でいる。この大きな2つの祭りをつなげる役割として、僕たちがイベントを考えました。こ れによって地域の組織や住民間での交流が生まれるのではないかと思いました。これが、地 域イベントを通した理想的な関係です。 イベントの主要ターゲットは、小田急沿線を中とする高校・大学生と地域住民です。多摩 区民の方は専修大学のことをよく知らないし、我々も地域の方と交流する機会がほとんどな い。それに、専修の学生ですら大学に隣接している生田緑地を知らない人が多い。ですから、 このイベントを通してお互いが地域のことをもっと知ってもらおうという意図もあります。 (3)地域イベントの成果 イベントでは、生田緑地から専大までスタンプラリーのポイントを4ヶ所設け、それぞれ で簡単なゲームを行ってもらいます。当初は、このイベントが高校生向けのキャンパスガイ ドになればと思っていたのですが、生田緑地で多摩区民祭が行われていた関係で、地域住民 の方々の参加が多くなりました。また、イベントのことを知らなかった人も、当日のイベン トを見て、途中からゲームに参加してくださいました。結果的には、当初の主旨とは少しず れてしまいましたが、地域の方々がたくさんイベントに参加して下さり、多くの方々と交流 をもてました。当初は定員 300 人で参加者を募っていたのですが、スタンプラリーの参加者 が約 250 名、ゲームだけの参加者が約 250 名と、計 500 名ほどの方々がイベントに参加して くださいました。 イベントの準備期間には、いろいろなことで揉めたりして、途中で投げ出したくなったり もしましたが、ここまでくることができました。僕は当初、イベントのスタッフとして参加 するどうか迷っていたのですが、元々イベントごとが大好きなのと、大学に貢献したかった ので参加しました。いろいろな苦労や問題点がありましたが、スタッフはみな、 「イベントを 成功させたい」という同じ目標をもっていたので、すぐに解決できました。また、このイベ ントはゼロからのスタートだったので、最終的な成果がうまくイメージできませんでした。 でも、ひとつのことをゼロからつくり上げたということ、それをとおして、みんなとの友情 が深まり、貴重な体験ができたこと。僕はイベントから様々なことを学びました。 − 26 − 嬉しかったことは、多摩区役所の方をはじめ、遊園の商店街の方々やいろんな人達とふれ 合えたことです。イベントでは、向ヶ丘遊園駅周辺にある商店のクーポンやチラシを袋に入 れて参加者にプレゼントしようと考えました。でも、おそらく商店街の方々は非協力的なの ではないかと心配しました。ところが、全員でイベントのパーカーを着て商店街を回ったと ころ、 皆さん快く協力してくださいました。 「本当に街と大学が一体となっているな」と感じ、 とても嬉しかったです。 今回は商学部の記念事業としてこのイベントをやらせて頂いたのですが、初めての経験で ここまでの形をつくれたのですから、今回一度限りではなく、来年もこのような地域イベン トをやってみたいし、そういう機会を与えて欲しいと思います。 「多摩区に専大あり」と思っ てもらえるようになりたいです。 最後に、この場をお借りして様々な方に感謝の意を表したいと思います。本当にありがと うございました。 2.専修大学商学研究所による多摩区との連携活動 商学研究所の渡辺達朗と申します。商学研究所では、 「大学と地域の共生のあり方に関する 実態調査」というテーマのもと、2002 年から多摩区役所と連携しながら研究を進めています。 現在は、生田緑地の活性化策について取り組んでいるところです。 これまでの成果は、『大学と地域の共生−まちづくりを中心に−』(専修大学商学研究所報 第 35 巻第7号、2004 年3月)にまとめられております。お手元に配付させて頂いておりま すので、ご一読頂ければ幸いです。 本日はシンポジウムがすでに予定の時間を過ぎてしまっておりますので、こちらの報告書 をもって発表に代えさせて頂きます。 − 27 − Ⅵ.主催者挨拶 ◇商学研究所所長 上田和勇 今日は2時間にわたる熱心なご発表・ご報告ありがとうございます。専修大学では、商学 教育を始めて今年で 100 年になります。商学部は今年で創設 40 周年、そして商学研究所は 1965 年に設立されましたので、39 年を迎えております。こうした長い歴史のうえに、本学の 教育や研究、そしてこうしたシンポジウムのような社会活動が成り立っております。 今日発表して頂いた2つの高校による報告に は大変感動いたしました。非常にハキハキとし ていて素晴らしかったと思います。また4つの 大学と2つの高校が一堂に会して、学校による 地域の活性化について語るということは、非常 に珍しいのではないかと思います。本学研究所 としては初めての試みでして、大変成功したと 思っています。これもひとえに報告して頂いた 方々や、今日参加して頂いた地域の方々をはじ め、多摩区役所や、本学商学部、そして商学研 究所のスタッフのみなさんの協力で成功したと 思っております。大変ありがとうございました。 企業の社会的責任という言葉をみなさんご存知だと思いますが、大学の社会的責任に関し ても我々は考えております。そのひとつが大学と地域との共生であり、今後もこの問題に取 り組んでいきたいと思っております。 今日は長時間にわたりまして、誠にありがとうございました。 − 28 − 平成17年3月15日 発行 専修大学商学研究所報 第36巻 第5号 発行所 専修大学商学研究所 〒214-8580 神奈川県川崎市多摩区東三田2-1-1 発行人 上 田 和 勇 製 作 佐藤印刷株式会社 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-10-2 TEL 03-3404-2561 FAX 03-3403-3409 Bulletin of the Research Institute of Commerce Vol. 36 No.5 Mar 2005 Students' Community Activities (Community Business) 【PANELISTS】 "GESTORE ODAWARA" Odawara Joto High School "YOKOHAMA Otameshi I-RO-HA-HA-HA (Trial Tour) Project" Yokohama Commercial High School "Shoutengai Network Inc." Waseda Univ. "EKOTA Project" Musashi Univ., Nihon Univ. College of Art, Musashino Academia Musicae "Shopping Mall Sisters", "Aki Jinriki-Gumi" Hiroshima Shudo Univ. "Senshu-Navi" Senshu Univ. of Commerce 【COORDINATOR】 Satoshi KAMBARA Published by The Research Institute of Commerce Senshu University 2-1-1 Higashimita, Tama-ku, Kawasaki-shi, Kanagawa, 214-8580 Japan